0041◎仏説0287無量寿経 巻下
曹魏天竺三蔵康僧鎧訳
二 Ⅱ ⅱ c 摂衆生【衆生往生因】
イ 摂凡夫
(一)住正定聚益【第11願成就】
【22】◎^▼仏、 *阿難に告げたまはく、 「△それ衆生ありて、 かの国に生るるものは、 みなことごとく▼正定の聚に住す。 ゆゑはいかん。 かの仏国のなかには▼もろもろの邪聚および不定聚なければなり。
◎○仏0043告ゲタマハク↢阿難ニ↡、其レ有リテ↢衆生↡生ズル↢彼ノ国ニ↡者ハ、皆悉ク住ス↢於正定之聚ニ↡。所以者何ン。彼ノ仏国ノ中ニハ無ケレバナリ↢諸ノ邪聚及ビ不*定聚↡。
二 Ⅱ ⅱ c イ (二)念仏往生益
(Ⅰ)諸仏讃嘆【第17願成就】
^△十方恒沙の諸仏如来は、 みなともに無量寿仏の威神功徳の不可思議なるを讃歎したまふ。
○十方恒沙ノ諸仏如来ハ、皆共ニ讃↢歎シタマフ無量寿仏ノ威神功徳ノ不可思議ナルヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ c イ (二)(Ⅱ)願成就【第18願成就】
^△あらゆる▼衆生、 ▼その名号を聞きて▼信心歓喜せんこと、 ▼乃至▼*一念せん。 ▼*至心に回向したまへり。 ▼かの国に生れんと願ずれば、 ▼すなはち往生を得、 不退転に住せん。 ▼ただ 五逆と誹謗正法とをば除く」 と。
○諸有ル衆生聞キテ↢其ノ名号ヲ↡、信心歓喜シテ、乃チ至ルマデ↢一念ニ↡。至シ↠心ヲ廻向シテ、願ズレバ↠生ゼムト↢彼ノ国ニ↡、即チ得↢往生ヲ↡、住ス↢不退転ニ↡。●唯除クト↢五逆ト誹謗正法トヲバ↡。
二 Ⅱ ⅱ c イ (三)諸行往生益【三輩往生】〔第19願成就〕
(Ⅰ)総標
【23】^△仏、 阿難に告げたまはく、 「十方世界の諸天・人民、 それ心を至してかの国に生れんと願ずることあらん。 おほよそ三輩あり。
○仏告ゲタマハク↢阿難ニ↡、十方世界ノ諸天・人民、其レ有ルニ↢至シテ↠心ヲ願ズルコト↟生ゼムト↢彼ノ国ニ↡、凡ソ有リ↢三輩↡。
二 Ⅱ ⅱ c イ (三)(Ⅱ)別説
(ⅰ)上輩
(a)正説
^▼それ上輩といふは、 ▼家を捨て欲を棄てて沙門となり、 ▼菩提心を発して▼一向にもつぱら無量寿仏を念じたてまつり、 ▼もろもろの功徳を修して▼かの国に生れんと願ぜん。
○其レ上輩トイフ者、捨テ↠家ヲ棄テテ↠欲ヲ而作リ↢沙門ト↡、発シテ↢菩提心ヲ↡、一向ニ専ラ念ジタテマツリ↢無量寿仏ヲ↡、修シテ↢諸ノ功徳ヲ↡、願ズ↠生ゼムト↢彼ノ国ニ↡。
^▼これらの衆生、 ▼寿0042終らん時に臨んで、 ▼無量寿仏は、 も0288ろもろの大衆とともにその人の前に現れたまふ。 ^すなはちかの仏に随ひてその国に往生す。 すなはち七宝の華のなかより自然に化生して不退転に住せん。 智慧勇猛にして神通自在ならん。
○此等ノ衆生臨ミテ↢寿終ル時ニ↡、無量寿仏ハ与↢諸ノ大衆↡現ジタマフ↢其ノ人ノ前ニ↡。○即チ随ヒテ↢彼ノ仏ニ↡*往↢生ス其ノ国ニ↡。便チ於リ↢七宝ノ華ノ中↡自然ニ化生シテ住ス↢不退転ニ↡。智慧勇猛ニシテ神通自在ナリ。
二 Ⅱ ⅱ c イ (三)(Ⅱ)(ⅰ)(b)結勧
^◆このゆゑに▼阿難、 それ衆生ありて、 今世において無量寿仏を見たてまつらんと欲はば、 無上菩提の心を発し功徳を修行してかの国に生れんと願ずべし」 と。
○是ノ故ニ阿難、其レ有リテ↢衆生↡、欲セバ↧於テ↢今世ニ↡見タテマツルラムト↦無量寿仏ヲ↥、応シト↧発0044シ↢無上菩提之心ヲ↡修↢行シテ功徳ヲ↡、願ズ↞生ゼムト↢彼ノ国ニ↡。
二 Ⅱ ⅱ c イ (三)(Ⅱ)(ⅱ)中輩
(a)上輩に簡ぶ
【24】^◆仏、 阿難に語りたまはく、 「それ中輩といふは、 十方世界の諸天・人民、 それ心を至してかの国に生れんと願ずることありて、 ▼行じて沙門となりて大きに功徳を修することあたはずといへども、
○仏*語リタマハク↢阿難ニ↡、其レ中輩トイフ者、十方世界ノ諸天・人民、其レ有リテ↢至シテ↠心ヲ願ズルコト↟生ゼムト↢彼ノ国ニ↡、雖モ↠不ト↠能ハ↧行ジテ作リテ↢沙門ト↡大ニ修スルコト↦功徳ヲ↥、
二 Ⅱ ⅱ c イ (三)(Ⅱ)(ⅱ)(b)正説
^◆まさに無上菩提の心を発して▼一向にもつぱら無量寿仏を念じたてまつるべし。
○当ニシ↧発シテ↢無上菩提之心ヲ↡、一向ニ専ラ念ジタテマツル↦無量寿仏ヲ↥。
^◆多少、 善を修して、 *斎戒を奉持し、 ▼塔像を起立し、 ▼沙門に飯食せしめ、 ▼*繒を懸け灯を燃し、 華を散じ香を焼きて、 ▼これをもつて回向してかの国に生れんと願ぜん。
○多少修シテ↠善ヲ奉↢持シ斎戒ヲ↡、起↢立シ塔像ヲ↡、飯↢食セシメ沙門ニ↡、懸ケ↠繒ヲ然シ↠灯ヲ、散ジ↠華ヲ焼キテ↠香ヲ、以テ↠此ヲ廻向シテ願ゼム↠生ゼムト↢彼ノ国ニ↡。
^▼その人、 終りに臨みて、 ▼無量寿仏はその身を化現したまふ。 光明・相好はつぶさに*真仏のごとし。 もろもろの大衆とともにその人の前に現れたまふ。 すなはち化仏に随ひてその国に往生して不退転に住せん。 功徳・智慧は、 次いで上輩のもののごとくならん」 と。
○其ノ人臨ミテ↠終ニ、無量寿仏ハ化↢現シタマフ其ノ身ヲ↡。光明相好ハ具ニ如クシテ↢真仏ノ↡、与↢諸ノ大衆↡現ジタマフ↢其ノ人ノ前ニ↡。即チ随ヒテ↢化仏ニ↡往↢生シテ其ノ国ニ↡住ス↢不退転ニ↡。功徳・智慧ハ、次イデ如シト↢上輩ノ者ノ↡也。
二 Ⅱ ⅱ c イ (三)(Ⅱ)(ⅲ)下輩
(a)中輩に簡ぶ
【25】^▼仏、 阿難に告げたまはく、 「それ下輩といふは、 十方世界の諸天・人民、 そ0043れ心を至0289してかの国に生れんと欲することありて、 たとひもろもろの功徳をなすことあたはざれども、
○仏*告ゲタマハク↢阿難ニ↡、其レ下輩トイフ者、十方世界ノ諸天・人民、其レ有リテ↢至シテ↠心ヲ欲スルコト↟生ゼムト↢彼ノ国ニ↡、仮使不レドモ↠能ハ↠作スコト↢諸ノ功徳ヲ↡、
二 Ⅱ ⅱ c イ (三)(Ⅱ)(ⅲ)(b)正説
^◆まさに無上菩提の心を発して▼一向に意をもつぱらにして、 ▼乃至十念、 無量寿仏を念じたてまつりて、 その国に生れんと願ずべし。
○当ニシ↧発シテ↢無上菩提之心ヲ↡、一向ニ専ニシテ↠意ヲ、乃チ至ルマデ↢十念ニ↡念ジタテマツリテ↢無量寿仏ヲ↡、願ズ↞生ゼムト↢其ノ国ニ↡。
^◆もし深法を聞きて歓喜信楽し疑惑を生ぜずして、 ▼乃至一念、 かの仏を念じたてまつりて、 ▼至誠心をもつてその国に生れんと願ぜん。
○若シ聞キテ↢深*法ヲ↡歓喜信楽シ、不シテ↠生ゼ↢疑惑ヲ↡、乃チ至ルマデ↢一念ニ↡念ジタテマツリテ↢於彼ノ仏ヲ↡、以テ↢至誠心ヲ↡願ゼム↠生ゼムト↢其ノ国ニ↡。
^▼この人、 終りに臨んで、 夢のごとくにかの仏を見たてまつりて、 ▼また往生を得。 功徳・智慧は、 次いで中輩のもののごとくならん」 と。
○此ノ人臨ミテ↠終ニ、夢ノゴトクニ見タテマツリテ↢彼ノ仏ヲ↡、亦得↢往生ヲ↡。功徳・智慧ハ、次イデ如シト↢中輩ノ者ノ↡也。
二 Ⅱ ⅱ c ロ 摂聖人
(一)摂他土
(Ⅰ)長行
(ⅰ)諸仏勧讃〔第17願成就〕
【26】^仏、 阿難に告げたまはく、 「△無量寿仏の威神極まりなし。 十方世界の無量無辺不可思議の諸仏如来、 かれを*称歎したまはざることなし。
○仏告ゲタマハク↢阿難ニ↡、無量寿仏ノ威神無シ↠極リ。十方世界ノ無量無辺不可思議ノ諸仏如来、莫シ↠不ルハ↢称歎シタマハ↡。
二 Ⅱ ⅱ c ロ (一)(Ⅰ)(ⅱ)聖衆往詣
^▼ 東方恒沙 仏国の無量無数の諸菩薩衆、 みなことごとく無量寿仏の所に往詣して、 *恭敬し供養したてまつり、 もろもろの菩薩・声聞の大衆に及ぼさん。 *経法を聴受し、 *道化を宣布す。 南西北方・四維・上下 ˆの菩薩衆ˇ、 またまたかくのごとし」 と。▼
○於リ↢彼ノ。東方*恒沙仏国↡無量無数ノ諸ノ菩薩衆、皆悉ク往0045↢詣シテ無量寿仏ノ所ニ↡、恭敬シ供養シタテマツリ、及ボサム↢諸ノ菩薩・声聞ノ*大衆ニ↡。聴↢受シ経法ヲ↡、宣↢布ス道化ヲ↡。○南○西○北方・○四維・○上下モ亦復如シト↠是クノ。
二 Ⅱ ⅱ c ロ (一)(Ⅱ)偈頌【往覲偈】
(ⅰ)標
【27】^▼その時に、 世尊、 しかも頌を説きてのたまはく、
○爾ノ時ニ世尊、而モ説キテ↠頌ヲ曰ク、
二 Ⅱ ⅱ c ロ (一)(Ⅱ)(ⅱ)正偈頌
(a)菩薩往覲
^「東方の諸仏の国、 その数恒沙のごとし。
^かの土の菩薩衆、 往いて*無量覚を覲たてまつる。
0044^▼南西北・四維・上下 ˆの仏国ˇ、 またまたしかなり。
^▼かの土の菩薩衆、 往いて無量覚を覲たてまつる。
^▼一切のもろもろの菩薩、 おのおの天の妙華・
^宝香・*無価の衣を齎つて、 無量覚を供養したてまつる。
^▼*咸然として天の楽を奏し、 和雅の音を*暢発して、
○咸然トシテ奏シ↢天ノ楽ヲ↡ | 暢↢発シテ和雅ノ音ヲ↡ |
^*最勝の尊を*歌歎して、 無量覚を供養したてまつる、
歌↢歎シテ最勝ノ尊ヲ↡ | 供↢養シタテマツル無量覚ヲ↡ |
^ª神通と慧とを*究達して、 *深法門に遊入し、
^功徳蔵を具足して、 妙智、 *等倫なし。
^▼*慧日、 世間を照らして、 生死の雲を消除したまふº と。
^恭敬して繞ること*三帀して、 無上尊を稽首したてまつる。
恭敬シテ繞ルコト三帀シテ | 稽↢首シタテマツル無上尊ヲ↡ |
^▼かの厳浄の土の、 微妙にして思議しがたきを見て、
^よりて*無上心を発して、 ◗わが国もまたしか らんと願ず。
因リテ発シテ↢無*上心ヲ↡ | 願ズ↢我ガ国モ亦然ラムト↡ |
二 Ⅱ ⅱ c ロ (一)(Ⅱ)(ⅱ)(b)弥陀授記説法を頌す相
(イ)現相
^▼時に応じて無量尊、 容を動かし欣笑を発したまひ、
○応ジテ↠時ニ無量尊 | 動シ↠容ヲ発シタマヒ↢欣笑ヲ↡ |
^口より無数の光を出して、 あまねく十方国を照らしたまふ。
口ヨリ出シテ↢無数ノ光ヲ↡ | 徧ク照シタマフ↢十方国ヲ↡ |
^▼光を回らして身を囲繞すること、 三帀して*頂より入る。
○廻ラシテ↠光ヲ囲↢繞スルコト身ヲ↡ | 三帀シテ従リ↠頂入ル |
0045^一切0291の天・人衆、 踊躍してみな歓喜す。
二 Ⅱ ⅱ c ロ (一)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)上首請問
^*大士観世音、 服を整へ稽首して問うて、
^仏にまうさく、 ªなんの縁ありてか笑みたまふや。 やや、 しかなり。 願はくは意を説きたまへº と。
白サク↠仏ニ何ノ縁アリテカ笑ミタマフヤ | 唯然ナリ願クハ説キタマヘト↠意ヲ |
二 Ⅱ ⅱ c ロ (一)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ハ)授記説法
^▼ˆ仏のˇ*梵声はなほ雷の震ふがごとく、 八音は妙なる響きを暢ぶ、
○梵声ハ猶ク↢雷ノ震フガ↡ | 八音ハ暢ブ↢妙ナル響ヲ↡ |
^ªまさに菩薩に記を授くべし。 いま説かん。 なんぢあきらかに聴け。
当ニシ↠授ク↢菩薩ニ記ヲ↡ | 今説カム仁諦ニ聴ケ |
^▼十方より来れる*正士、 われことごとくかの願を知れり。
^▼厳浄の土を志求し、 *受決してまさに仏となるべし。
^一切の法は、 なほ *夢・幻・響きのごとしと覚了すれども、
○0046覚↣了シ一切ノ法ハ | 猶如シト↢夢・幻・響ノ↡ |
^もろもろの妙なる願を満足して、 かならずかくのごときの*刹を成ぜん。
満↢足シテ諸ノ妙ナル願ヲ↡ | 必ズ成ゼム↢如キノ↠是クノ刹ヲ↡ |
^法は電・影のごとしと知れども、 菩薩の道を究竟し、
●知リ↣法ハ如シト↢電・影ノ↡ | 究↢竟シ菩薩ノ道ヲ↡ |
^もろもろの功徳の本を具して、 受決してまさに仏となるべし。
具シテ↢諸ノ功徳ノ本ヲ↡ | 受決シテ当ニシ↠作ル↠仏ト |
^▼*諸法の性は、 一切、 空無我なりと通達すれども、
^もつぱら浄き仏土を求めて、 かならずかくのごときの刹を成ぜんº と。
専ラ求メテ↢浄キ仏土ヲ↡ | 必ズ成ゼムト↢如キノ↠是クノ刹ヲ↡ |
二 Ⅱ ⅱ c ロ (一)(Ⅱ)(ⅱ)(c)諸仏勧讃
(イ)讃徳発遣
^諸仏は菩薩に告げて、 *安養仏を覲せしむ、
0046^ª▼法を0292聞きて楽ひて*受行して、 疾く*清浄の処を得よ。
^▼かの*厳浄の国に至らば、 すなはちすみやかに神通を得、
^かならず無量尊において、 記を受けて等覚を成らん。
○必ズ於テ↢無量尊ニ↡ | 受ケテ↠記ヲ成ゼム↢等覚ヲ↡ |
・破地獄文〔願17成就〕
^△その仏の本願力、 ▼名を聞きて往生せんと欲へば、
○其ノ仏ノ本願力 | 聞キテ↠名ヲ欲スレバ↢往生セムト↡ |
^▼みなことごとくかの国に到りて、 おのづから不退転に致る。
二 Ⅱ ⅱ c ロ (一)(Ⅱ)(ⅱ)(c)(ロ)命を受け往詣す〔第9願成就〕
^△菩薩、 *至願を興して、 ◗おのれが国も異なることなからんと願ふ。
○菩薩興シテ↢*至願ヲ↡ | 願ズ↢己ガ国モ無カラムト↟異ナルコト |
^あまねく一切を度せんと念じ、 名、 顕れて十方に達せん。
普ク念ジ↠度セムト↢一切ヲ↡ | 名顕レテ*達セム↢十方ニ↡ |
^▼億の如来に奉事するに、 飛化してもろもろの刹に遍し、
○奉↢事スルニ億ノ如来ニ↡ | 飛化シテ徧シ↢諸ノ刹ニ↡ |
^恭敬し歓喜して去り 、 還りて安養国に到る。
二 Ⅱ ⅱ c ロ (一)(Ⅱ)(ⅱ)(d)釈迦勧讃
(イ)難信の所以を明す
[一]能信の本縁を示す
^▼もし人善本なければ、 この経を聞くことを得ず。
○若シ人無ケレバ↢善*本↡ | 不↠得↠聞クコトヲ↢此ノ経ヲ↡ |
^清浄に戒を有てるもの、 いまし正法を聞くことを獲。
清浄ニ有テル↠戒ヲ者 | 乃チ獲↠聞クコトヲ↢正法ヲ↡ |
^▼曽更*世尊を見たてまつりしものは、 すなはちよく*この事を信じ、
○曽更見タテマツレバ↢世尊ヲ↡ | 則チ能ク信ジ↢此ノ事ヲ↡ |
^▼*謙敬にヘリヰウヤマフして*聞きて奉行し、 踊躍して大きに歓喜す。
^▼憍慢と*弊と懈怠とは、 もつて*この法を信ずること難し。
○憍慢ト弊ト懈怠トハ | 難シ↣以テ信ズルコト↢此ノ法ヲ↡ |
^▼*宿世に諸仏を見たてまつりしものは、 ▼楽んでかくのごときの教を聴かん。
宿世ニ見タテマツレバ↢諸仏ヲ↡ 楽ミテ聴ク↢如キノ↠是クノ教ヲ↡ |
二 Ⅱ ⅱ c ロ (一)(Ⅱ)(ⅱ)(d)(イ)[二]所信の深広を讃ず
0047^▼声聞0293あるいは菩薩、 よく*聖心を究むることなし。
^*たとへば生れてより盲ひたるものの、 行いて人を*開導せんと欲はんがごとし。
譬ヘバ如シ↤従リ↠生レテ盲タルモノ | 欲スルガ↣行キテ開↢導セムト人ヲ↡ |
^▼如来の智慧海は、 深広にして涯底なし。
^▼*二乗の測るところにあらず。 ▼ただ仏のみ独りあきらかに了りたまへり。
二乗ノ非ズ↠所ニ↠測ル | 唯仏ノミ独リ明カニ了リタマヘリ |
^たとひ一切の人、 具足してみな道を得、
^*浄慧、 *本空を知り 、 億劫に仏智を思ひ 、
^力を窮め 、 *講説を極めて、 寿を尽すとも、 なほ知らじ。
○0047窮メ↠力ヲ極メテ↢*講説ヲ↡ | 尽ストモ↠寿ヲ猶不↠知ラ |
^仏慧は辺際なくして、 かくのごとく清浄に致る。
仏慧ハ無クシテ↢辺際↡ | 如ク↠是クノ致ルト↢清浄ニ↡ |
二 Ⅱ ⅱ c ロ (一)(Ⅱ)(ⅱ)(d)(ロ)徳を挙げ結勧す
^▼寿命はなはだ得がたく、 *仏世また値ひがたし。
^▼人*信慧あること難し。 もし ˆ法をˇ 聞かば精進して求めよ。
^▼法を聞きてよく忘れず、 ▼*見て敬ひ 得て大きに慶ばば、
^すなはち▼わが善き親友なり。 このゆゑにまさに*意を発すべし。
^▼たとひ世界に満てらん火をも、 かならず過ぎて要めて法を聞かば、
○設ヒ満テル↢世界ニ↡火アルモ | 必ズ過ギテ要メテ聞ケ↠法ヲ |
^▼かならずまさに仏道を成じて、 広く*生死の流を済ふべしº」 と。
会ズ当ニシト↧成ジテ↢仏道ヲ↡ | 広ク*済フ↦生死ノ流ヲ↥ |
二 Ⅱ ⅱ c ロ (二)摂自国【衆生往生果】
(Ⅰ)広く諸徳を嘆ず
(ⅰ)総じて内外の徳を嘆ず
(a)其の位を明す〔第22願成就〕
【004828】^0294仏、 阿難に告げたまはく、 「△かの国の菩薩は、 みなまさに一生補処を究竟すべし。 その本願、 衆生のためのゆゑに、 弘誓の功徳をもつてみづから荘厳して、 あまねく一切衆生を*度脱せんと欲ふをば除く。
○仏告ゲタマハク↢阿難ニ↡、彼ノ国ノ菩薩ハ、皆当ニシ↣究↢竟ス一生補処ヲ↡。除ク↫其ノ本願アリテ、為ノ↢衆生ノ↡故ニ、以テ↢弘誓ノ功徳ヲ↡而自ラ荘厳シテ、普ク欲スルヲバ↪度↩脱セムト一切衆生ヲ↨。
二 Ⅱ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)其の身光を明す
(イ)通明
^▼阿難、 かの仏国のなかのもろもろの声聞衆の身光は*一尋なり。 菩薩の光明は百由旬を照らす。
○阿難、彼ノ仏国ノ中ノ諸ノ声聞衆ノ身光ハ一尋ナリ。菩薩ノ光明ハ照ス↢百由旬ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ロ)別して上首を明す
[一]略標
^▼ふたりの菩薩ありて最尊第一なり。 威神の光明はあまねく三千大千世界を照らす」 と。
○有リテ↢二ノ菩薩↡最尊第一ナリ。威神ノ光明ハ普ク照スト↢三千大千世界ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ロ)[二]問答して本因を示す
^▼阿難、 仏にまうさく、 「かのふたりの菩薩、 その号いかん」 と。
○阿難白サク↠仏ニ、彼ノ二ノ菩薩、其ノ号云何ト。
^仏のたまはく、 「ひとりをば*観世音と名づけ、 ふたりをば*大勢至と名づく。 このふたりの菩薩は、 ▼この国土において菩薩の行を修して、 命終りて*転化してかの仏国に生れたまへり。
○仏言ク、一ヲバ名ケ↢観世音ト↡、二ヲバ名ク↢大勢至ト↡。○*是ノ二ノ菩薩ハ於テ↢*此ノ国土ニ↡修シテ↢菩薩ノ行ヲ↡、命終シ転化シテ生ジタマヘリ↢彼ノ仏国ニ↡。
二 Ⅱ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(c)其の具相を明す〔第21願成就〕
^阿難、 それ衆生ありて、 △かの国に生るるものは、 みなことごとく三十二相を具足す。
○阿難、其レ有リテ↢衆生↡生ズル↢彼ノ国ニ↡者ハ、皆悉ク具↢足ス三十二相ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(d)其の功徳を明す〔第41願成就〕
^△智慧成満して深く諸法に入り、 *要妙を究暢し、 神通無礙にして*諸根明利なり。
○智慧成満シテ深ク入リ↢諸法ニ↡、究↢暢シ要妙ヲ↡、神通無礙ニシテ諸根明利ナリ。
二 Ⅱ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(e)得忍の不同を判ず
^▼その鈍根のものは*二忍を成就し、 その利根のものは不可計の無生法忍を得。
○其ノ鈍根ノ者ハ成↢就シ二忍ヲ↡、其ノ利根ノ者ハ得↢*不可計ノ無生法忍ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(f)不更悪趣を明す〔第2・5願成就〕
^△またかの菩薩、 乃至成仏まで悪趣に更らず。 △神通自在にしてつねに宿命を識る。 他方の五濁悪世に生じて、 示現して*かれに同ずること、 *わが国のごとくなるをば除く」 と。
○又彼ノ菩薩、乃チ至ルマデ↢成仏ニ↡不↠*更ラ↢悪趣ニ↡。○神通自在ニシテ常ニ識ル↢宿命ヲ↡。除クト↧生ジテ↢他方ノ五濁悪世ニ↡、示現シテ同ズルコト↠彼ニ如クナルヲバ↦我ガ国ノ↥也。
二 Ⅱ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)別して供仏聞法の徳を嘆ず
(a)供養他方相
(イ)往詣速疾を嘆ず〔第23願成就〕
^△仏、 阿難に告げたまはく、 「かの国の菩薩は、 仏の威神 ˆ力ˇ を承けて、 一食0049のあひだに十方無量の世界に往詣して、 諸仏世尊を恭敬し供養したてまつらん。
○仏*告ゲタマハク↢阿難ニ↡、彼ノ国ノ菩薩ハ承ケテ↢仏ノ威神ヲ↡、一食之*頃ニ往↢詣シテ十方無量ノ世界ニ↡、恭↢敬シ供0048↣養シタテマツル諸仏世尊ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(a)(ロ)供具如意を嘆ず〔第24願成就〕
[一]正明
^△心の所念に随0295ひて、 華香・伎楽・繒蓋・幢幡、 無数無量の供養の具、 自然に化生して念に応じてすなはち至らん。
○随ヒテ↢心ノ所念ニ↡、華香・伎楽・*繒蓋・幢旛、無数無量ノ供養之具、自然ニ化生シテ、応ジテ↠念ニ即チ至ル。
^珍妙殊特にして、 世の所有にあらず。 すなはちもつてもろもろの仏・菩薩・声聞の大衆に*奉散せん。
○珍妙殊特ニシテ、非ズ↢世ノ所有ニ↡。*輒チ以テ奉↢散スルニ諸ノ仏・*菩薩・声聞ノ*大衆ニ↡、
^▼ˆ散ぜし華はˇ 虚空のなかにありて、 化して華蓋となる。 光色*昱爍して、 香気あまねく熏ず。 その華の周円 、 四百里なるものあり。 かくのごとく*うたた倍してすなはち三千大千世界に覆へり。 その*前後に随ひて、 次いでをもつて化没す。
○在リテ↢虚空ノ中ニ↡化シテ成ル↢華蓋ト↡。光色*昱*爍トシテ、香気普ク熏ズ。其ノ華ノ*周円、四百里ナル者アリ。如ク↠是クノ転タ倍シテ乃チ覆ヘリ↢三千大千世界ニ↡。随ヒテ↢其ノ前後ニ↡、以テ↠次デヲ化没ス。
二 Ⅱ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(a)(ロ)[二]聞法歓喜を明す
^▼そのもろもろの菩薩、 *僉然として欣悦す。 虚空のなかにおいてともに天の楽を奏し、 微妙の音をもつて仏徳を歌歎す。 経法を聴受して歓喜すること無量なり。
○其ノ諸ノ菩薩、僉然トシテ欣悦ス。於テ↢虚空ノ中ニ↡共ニ奏シ↢天ノ楽ヲ↡、以テ↢微妙ノ音ヲ↡歌↢歎シ仏徳ヲ↡、聴↢受シテ経法ヲ↡*歓喜スルコト無量ナリ。
二 Ⅱ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(a)(ハ)還来速疾を嘆ず
^▼仏を供養したてまつること已りていまだ食せざるの前に、 *忽然として*軽挙してその*本国に還る」 と。
○供↢養シタテマツルコト仏ヲ↡已リテ未ダル↠食セ之前ニ、忽然トシテ軽挙シテ還ルト↢其ノ本国ニ↡。
二 Ⅱ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)自土法楽相
(イ)弥陀説法相
【29】^仏、 阿難に語りたまはく、 「▼無量寿仏、 もろもろの声聞・菩薩の大衆のために法を*班宣したまふ時、 すべてことごとく▼七宝の講堂に集会して、 広く*道教を宣べ妙法を*演暢したまふに、 ˆ聞くものˇ 歓喜 し、 心に解り、 道を得ざることなし。
○仏語リタマハク↢阿難ニ↡、無量寿仏為ニ↢諸ノ声聞・菩薩ノ*大衆ノ↡*班↢宣シタマフ法ヲ↡時、都テ悉ク集↢会シテ七宝ノ講堂ニ↡、広ク宣ベ↢道教ヲ↡演↢暢シタマフニ妙法ヲ↡、莫シ↠不ルハ↢歓喜シ心ニ解シ得↟道ヲ。
二 Ⅱ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)(ロ)聖衆供養相
^▼即時に四方より自然に風起りて、 あまねく宝樹を吹くに、 *五つの音声0050を出し、 無量の妙華を雨らす。 風に随ひて周遍して自然に供養すること、 かくのごとくして絶えず。
○即時ニ四方ヨリ自然ニ風起リテ、*普ク吹クニ↢宝樹ヲ↡、出シ↢*五ノ音声ヲ↡、*雨ラス↢無量ノ妙華ヲ↡。随ヒテ↠風ニ*周徧シテ自然ニ供養スルコト如クシテ↠是クノ不↠絶エ。
^一切の諸天、 みな天上の百千の華香・万種の伎楽を齎つて、 その仏およびもろもろの菩薩・声聞の大衆を供養したてまつる。 あまねく華香を散じ、 もろもろの音楽を奏し、 前後0296に来往して、 かはるがはるあひ*開避す。 この時に当りて ˆ大衆のˇ *熙怡快楽すること、 勝げていふべからず」 と。
○一切ノ諸天、皆齎チテ↢天上ノ百千ノ華香・万種ノ伎楽ヲ↡、供↢養シタテマツル其ノ仏及ビ諸ノ菩薩・声聞ノ*大衆ヲ↡。普ク散ジ↢華香ヲ↡、奏シ↢諸ノ音楽ヲ↡、前後ニ来往シテ、更ル相開避ス。当リテ↢斯之時ニ↡熙*怡快楽スルコト不ト↠可カラ↢勝ゲテ言フ↡。
二 Ⅱ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(c)一切智徳を説く
(イ)総標〔第25願成就〕
【30】^仏、 阿難に語りたまはく、 「△かの仏国に生るるもろもろの菩薩等は、 *講説すべきところにはつねに正法を宣べ、 智慧に随順して違なく失なし。
○仏*語リタマハク↢阿難ニ↡、生ズル↢彼ノ仏国ニ↡諸ノ菩薩等ハ、所ニハ↠可キ↢講説ス↡、常ニ宣ベ↢正法ヲ↡、随↢順シテ智慧ニ↡無ク↠違無シ↠失。
二 Ⅱ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(c)(ロ)正明
[一]先づ其の内徳を嘆ず
[Ⅰ]法に約して別して嘆ず
[ⅰ]其の心念を嘆ず
[a]不着万物〔第10願成就〕
^△その国土のあらゆる万物において我所の心なく、 染着の心なし。 ▼去くも来るも、 進むも止まるも、 情に係くるところなく、 ▼意に随ひて自在にして*適莫するところなし。 彼なく我なく、 競なく訟なし。
○於テ↢其ノ国土ノ所有ル万物ニ↡無ク↢我所ノ心↡、無シ↢染著ノ心↡。去クモ来ルモ進ムモ止ルモ、情ニ無ク↠所0049↠係クル、随ヒテ↠意ニ自在ニシテ無シ↠所↢適莫スル↡。無ク↠彼無ク↠我、無ク↠競無シ↠訟。
二 Ⅱ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(c)(ロ)[一][Ⅰ][ⅰ][b]悲済衆生
^もろもろの衆生において大慈悲*饒益の心を得たり。 ^*柔軟調伏にして忿恨の心なく、 *離蓋清浄にして厭怠の心なし。 *等心・*勝心・*深心・*定心、 *愛法・楽法・喜法の心のみなり。 もろもろの煩悩を滅して悪趣の心を離る。
○於テ↢諸ノ衆生ニ↡得タリ↢大慈悲饒益之心ヲ↡。柔*軟調伏ニシテ無ク↢忿恨ノ心↡、離蓋清浄ニシテ無シ↢厭怠ノ心↡。等心・勝心・深心・定心、愛法・楽法・喜法之心ノミナリ。滅シテ↢諸ノ煩悩ヲ↡離ル↢悪趣ノ心ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(c)(ロ)[一][Ⅰ][ⅱ]其の具徳を嘆ず
[a]総標〔第36願成就?〕
^△一切菩薩の所行を究竟して、 無量の功徳を具足し成就せり。
○究↢竟シテ一切ノ菩薩ノ所行ヲ↡、具↢足シ成↣就ス無量ノ功徳ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(c)(ロ)[一][Ⅰ][ⅱ][b]別嘆
[イ]定慧兼備〔第6~9願成就〕
^△深き禅定ともろもろの*通明慧を得て、
○得テ↢深キ禅定ト諸ノ通明慧ヲ↡、
二 Ⅱ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(c)(ロ)[一][Ⅰ][ⅱ][b][ロ]具足道品
^志を*七覚に遊ばしめ、 心に仏法を修す。
○遊バシメ↢志ヲ七覚ニ↡、修ス↢心ニ仏法ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(c)(ロ)[一][Ⅰ][ⅱ][b][ハ]具足五眼〔第6願成就〕
^△*肉眼は清徹にして分了ならざることなし。 天眼は通達して無0051量無限なり。 法眼は観察して諸道を究竟す。 慧眼は真を見てよく彼岸に度す。 仏眼は具足して法性を覚了す。
○肉眼ハ清徹ニシテ靡シ↠不ルハ↢分了ナラ↡。天眼ハ通達シテ無量無限ナリ。法眼ハ観察シテ究↢竟ス諸道ヲ↡。慧眼ハ見テ↠真ヲ能ク度ス↢彼岸ニ↡。仏眼ハ具足シテ覚↢了ス法性ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(c)(ロ)[一][Ⅰ][ⅱ][b][ニ]智弁無礙〔第29・30願成就〕
^△*無礙の智をもつて人のために ˆ法をˇ 演説す。 ^等しく三界の空・無所有なるを観じて仏法を志求し、 もろもろの弁才を具して衆生の煩悩の患へを除滅す。 *如より来生して法の如々を解り、 よく*習滅の音声の方便を知0297りて*世語を欣はず、 楽ひ正論にあり。
○以テ↢無礙ノ智ヲ↡為ニ↠人ノ演説ス。等シク観ジテ↢三界ノ空・無所有ナルヲ↡志↢求シ仏法ヲ↡、具シテ↢諸ノ*弁才ヲ↡除↢滅ス衆生ノ煩悩之患ヲ↡。従リ↠如来生シテ解シ↢法ノ如如ナルヲ↡、善ク知リテ↢*習滅ノ音声ノ方便ヲ↡不↠欣バ↢世語ヲ↡、楽ヒテ在リ↢正論ニ↡。
二 Ⅱ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(c)(ロ)[一][Ⅰ][ⅱ][b][ホ]真俗双融〔第44願成就?〕
^△もろもろの善本を修して、 志仏道を崇む。 一切の法はみなことごとく寂滅なりと知りて、 *生身・煩悩、 *二余ともに尽せり。 ^甚深の法を聞きて心に疑懼せず、 つねによく 修行す 。
○修シテ↢諸ノ善本ヲ↡、志崇ム↢仏道ヲ↡。知リテ↢一切ノ法ハ皆悉ク寂滅ナリト↡、生身ト煩悩トノ二余倶ニ尽ク。聞キテ↢甚深ノ法ヲ↡心ニ不↢疑懼セ↡、常ニ能ク修行ス。
二 Ⅱ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(c)(ロ)[一][Ⅰ][ⅱ][b][ヘ]悲智双運
^▼その大悲は深遠微妙にして*覆載せずといふことなし。 ▼一乗を究竟して ˆ衆生をˇ 彼岸に至らしむ。 疑網を決断して、 慧、 心によりて出づ。 *仏の教法において該羅して外なし。
○其ノ大悲者深遠微妙ニシテ靡シ↠不ルハ↢覆載セ↡。究↢竟シテ一乗ヲ↡至ラシム↢于彼岸ニ↡。決↢断シテ疑網ヲ↡、慧由リテ↠心ニ出ヅ。於テ↢仏ノ教法ニ↡該羅シテ無シ↠外。
二 Ⅱ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(c)(ロ)[一][Ⅱ]譬に約して総嘆す
^ˆ浄土の菩薩のˇ ▼智慧は大海のごとく、 ^三昧は*山王のごとし。 ^▼慧光は明浄にして日月に超踰せり。
○智慧ハ如ク↢大海ノ↡、○三昧ハ如シ↢山王ノ↡。○慧光ハ明浄ニシテ超↢*踰シ日月ニ↡、
^*清白の法具足し円満すること、 ^なほ雪山のごとし、 もろもろの功徳を照らすこと等一にして浄きがゆゑに。
○清白之法具足シ円満セリ。猶如シ↢雪山ノ↡、照スコト↢諸ノ功徳ヲ↡等一ニシテ浄キガ故ニ。
^なほ大地のごとし、 浄穢・好悪、 *異心なきがゆゑに。
○猶如シ↢大地ノ↡、浄穢・好悪無キガ↢異心↡故ニ。
^なほ浄水のごとし、 *塵労もろもろの*垢染を洗除するがゆゑに。
○猶如シ↢浄水ノ↡、洗↢除スルガ塵労諸ノ垢染ヲ↡故ニ。
^▼なほ*火王のごとし、 一切の煩悩の薪を焼滅するがゆゑに。
○猶如シ↢火王ノ↡、焼↢滅スルガ一切ノ煩悩ノ薪ヲ↡故ニ。
^なほ大風のごとし、 もろもろの世界に行ずるに障礙なき0052がゆゑに。
○猶如シ↢大風ノ↡、行クニ↢諸ノ世0050界ヲ↡無キガ↢障礙↡故ニ。
^なほ虚空のごとし、 *一切の有において所着なきがゆゑに。
○猶如シ↢虚空ノ↡、於テ↢一切ノ有ニ↡無キガ↢所著↡故ニ。
^▼なほ蓮華のごとし、 もろもろの世間において汚染なきがゆゑに。
○猶如シ↢蓮華ノ↡、於テ↢諸ノ世間ニ↡無キガ↢*汚染↡故ニ。
^▼なほ*大乗のごとし、 群萌を運載して生死を出すがゆゑに。
○猶如シ↢大乗ノ↡、運↢載シテ群萌ヲ↡出スガ↢生死ヲ↡故ニ。
^なほ重雲のごとし、 大法の雷を震ひて未覚を覚せしむるがゆゑに。
○猶如シ↢重雲ノ↡、*震ヒテ↢大法ノ雷ヲ↡覚セシムルガ↢未覚ヲ↡故ニ。
^なほ大雨のごとし、 甘露の法を雨らして衆生を潤すがゆゑに。
○猶如シ↢大雨ノ↡、雨ラシテ↢甘露ノ法ヲ↡潤スガ↢衆生ヲ↡故ニ。
^*金剛山のごとし、 衆0298魔・外道、 動かすことあたはざるがゆゑに。
○如シ↢金剛山ノ↡、衆魔・外道モ不ルガ↠能ハ↠動スコト故ニ。
^梵天王のごとし、 もろもろの善法において最上首なるがゆゑに。
○如シ↢梵天王ノ↡、於テ↢諸ノ善法ニ↡最上首ナルガ故ニ。
^*尼拘類樹のごとし、 あまねく一切を覆ふがゆゑに。
○如シ↢尼*拘*類樹ノ↡、普ク覆フガ↢一切ヲ↡故ニ。
^▼*優曇鉢華のごとし、 希有にして遇ひがたきがゆゑに。
○如シ↢優曇鉢華ノ↡、希有ニシテ難キガ↠遇ヒ故ニ。
^*金翅鳥のごとし、 外道を威伏するがゆゑに。
○如シ↢金翅鳥ノ↡、威↢伏スルガ外道ヲ↡故ニ。
^もろもろの遊禽のごとし、 *蔵積するところなきがゆゑに。
○如シ↢衆ノ遊禽ノ↡、無キガ↠所↢蔵積スル↡故ニ。
^なほ牛王のごとし、 よく勝つものなきがゆゑに。
○猶如シ↢牛王ノ↡、無キガ↢能ク勝ルルモノ↡故ニ。
^なほ象王のごとし、 よく調伏するがゆゑに。
○猶如シ↢象王ノ↡、善ク調伏スルガ故ニ。
^獅子王のごとし、 畏るるところなきがゆゑに。
○如シ↢師子王ノ↡、無キガ↠所↠畏ルル故ニ。
^▼曠きこと虚空のごとし、 大慈、 等しきがゆゑに。
○*曠キコト若シ↢虚空ノ↡、大慈等シキガ故ニ。
二 Ⅱ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(c)(ロ)[二]正しく説法の徳を嘆ず
^ˆ菩薩はˇ 嫉心を摧滅す、 勝れるを忌まざるがゆゑに。 もつぱら法を楽ひ求めて、 心 *厭足なし。 つねに広説を欲ひて、 志疲倦なし。 法鼓を撃ち、 法幢を建て、 慧日を曜かし、 *痴闇を除く。 六和敬を修してつねに法施を行ず。 志勇精進にして心退弱せず。
○摧↢滅シテ嫉心ヲ↡、不ルガ↠*忌マ↠勝ルルヲ故ニ、専ラ楽ヒ↢求メテ法ヲ↡、心無シ↢厭足↡。常ニ欲シテ↢広ク説カムト↡、志無シ↢疲倦↡。○撃チ↢法鼓ヲ↡、建テ↢法幢ヲ↡、曜カシ↢慧日ヲ↡、除キ↢痴闇ヲ↡、修シテ↢六和敬ヲ↡、常ニ行ジ↢法施ヲ↡、志勇精進ニシテ心不↢退弱セ↡。
^世の灯明となりて最勝の*福田なり。 つねに*導師0053となり 、 等しくして憎愛なし。 ただ正道を楽ひて余の*欣戚なし。 もろもろの*欲の刺を抜いてもつて群生を安んず。 *功慧、 殊勝にして尊敬せられざることなし。
○為リテ↢世ノ灯明ト↡、最勝ノ福田ナリ。常ニ為リ↢*導師ト↡、等シクシテ無シ↢憎愛↡。唯楽ヒテ↢正道ヲ↡無シ↢余ノ欣*戚↡。抜キテ↢諸ノ欲ノ刺ヲ↡以テ安ズ↢群生ヲ↡。功・*慧殊勝ニシテ莫シ↠不ルハ↢尊敬セラレ↡。
二 Ⅱ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(c)(ロ)[三]総じて威力を嘆ず(二十力)
^三垢の障を滅し、 もろもろの神通に遊ぶ。 *因力・*縁力・*意力・*願力・*方便の力・*常力・*善力・*定力・*慧力・*多聞の力、 *施・戒・忍辱・精進・禅定・智慧の力、 *正念・正観・もろもろの通明の力、 法のごとくもろもろの衆0299生を調伏する力、 かくのごときらの力、 一切具足せり。
○滅シ↢三垢ノ障ヲ↡、遊ブ↢諸ノ神通ニ↡。因力・縁力・意力・願力・方便之力・常力・善力・定力・慧力・多聞之力、施・戒・忍辱・精進・禅定・智慧之力、正念・*正観・諸ノ通明ノ力、如ク↠法ノ調↢伏スル諸ノ衆生ヲ↡力、如キ↠是クノ等ノ力、一切具足セリ。
二 Ⅱ ⅱ c ロ (二)(Ⅱ)結嘆〔第42願成就?〕
^身色・相好・功徳・弁才を具足し荘厳して、 ともに等しきものなし。 △無量の諸仏を恭敬し供養したてまつりて、 つねに諸仏のためにともに称歎せらる。 ▼菩薩のもろもろの波羅蜜を究竟し、 *空・無相・無願三昧と、 *不生不滅 ˆ等のˇ もろもろの三昧門を修して、 声聞・縁覚の地を遠離す。
○身色・相好・功徳・*弁才ヲ具足シ荘厳シテ、無シ↢与ニ等シキ者↡。恭↢敬シ供↣養シタテマツリテ無量ノ諸仏ヲ↡、常ニ為ニ↢諸仏ノ↡所ル↢共0051ニ称歎セ↡。究↢竟シ菩薩ノ諸ノ波羅蜜ヲ↡、修シテ↢空・無相・無願三昧ト、不生不滅ノ諸ノ三昧ノ門ヲ↡、遠↢離ス声聞・縁覚之地ヲ↡。
二 Ⅱ ⅲ 総結
^阿難、 かのもろもろの菩薩、 かくのごときの無量の功徳を成就せり。 われただなんぢがために略してこれを説く のみ。 もし広く説かば、 百千万劫にも窮尽することあたはじ」 と。
○阿難、彼ノ諸ノ菩薩成↢就ス如キノ↠是クノ無量ノ功徳ヲ↡。我但為ニ↠汝ガ略シテ*説ク↠之ヲ耳。若シ広ク説カバ者、百千万劫ニモ不ト↠能ハ↢窮尽スルコト↡。
二 Ⅲ 世尊別して勧めて欣厭を生ぜしむるを明す【釈迦指勧】
ⅰ 総じて浄穢相対し欣厭を勧む【浄穢欣厭】
a 略して浄土を嘆じ欣求せしむ
イ 前を牒して後を起す
【31】^仏、 *弥勒菩薩ともろもろの天・人等に告げたまはく、 「無量寿国の声聞・菩薩の功徳・智慧は、 称説すべからず。 またその国土は、 微妙安楽にして清浄なることかくのごとし。
○仏告ゲタマハク↢弥勒菩薩ト諸ノ天人等ニ↡、無量寿国ノ声聞・菩薩ノ功徳・智慧ハ不↠可カラ↢称説ス↡。又其ノ国土ハ、微妙安楽ニシテ清浄ナルコト若シ↠此クノ。
二 Ⅲ ⅰ a ロ 正しく欣求を勧む
(一)証果を勧む
^▼なんぞつとめて善をなして、 ▼道の自然なるを念0054じて、 ▼*上下なく洞達して辺際なきことを著さざらん。
○何ゾ不ラム↫力テ為シテ↠善ヲ、念ジテ↢道之自然ナルヲ↡、著サ↪於無ク↢上下↡洞達シテ無キコトヲ↩辺際↨。
二 Ⅲ ⅰ a ロ (二)往生を勧む
(Ⅰ)正勧〔第11願成就〕
^よろしくおのおのつとめて精進して、 つとめてみづからこれを求むべし。
○宜シクシ ↢各ノ*勤テ精進シテ、努力テ自ラ求ム↟之ヲ。
^△かならず ˆ迷ひの世界をˇ ▼超絶して去つることを得て安養国に往生して、 ▼*横に五悪趣を截り、 ▼悪趣自然に閉ぢ、 ▼道に昇るに窮極なからん。▼
○必ズ得テ↢超絶シテ去ツルコトヲ↡往↢生シテ安*養国ニ↡、横ニ截リ↢五悪*趣ヲ↡、悪*趣自然ニ閉ヂ、昇ルニ↠道ニ無シ↢窮極↡。
二 Ⅲ ⅰ a ロ (二)(Ⅱ)如来傷嘆
^ˆ安養国はˇ ▼*往き易くして人なし。 *その国逆違せず、 自然の牽くところなり。
○易クシテ↠往キ而無シ↠人。其ノ国不↢逆違セ↡、自然之所ナリ↠牽ク。
二 Ⅲ ⅰ a ロ (三)結勧
^なんぞ世事を棄てて勤行して*道徳を求めざらん。 極長の生を獲て、 ▼寿の楽しみ極まりあることなかるべし。▼
○何ゾ不ラム↧棄テテ↢世事ヲ↡*勤行シテ求メ↦道徳ヲ↥。可シ↧*獲テ↢極長ノ生ヲ↡、寿ノ楽ミ無カル↞有ルコト↠極リ。
二 Ⅲ ⅰ b 広く穢苦を挙げ厭離せしむ
イ 総標
^しかるに世0300の人、 薄俗にしてともに*不急の事を諍ふ。
○然ルニ世ノ人薄俗ニシテ共ニ諍フ↢不急之事ヲ↡。
二 Ⅲ ⅰ b ロ 正明
(一)貧富営務苦
(Ⅰ)総挙
^この劇悪極苦のなかにして、 身の営務を勤めてもつてみづから給済す。 尊となく卑となく、 貧となく富となく、 少長・男女ともに銭財を憂ふ。 有無同然にして、 憂思まさに等し。 *屏営として愁苦し 、 *念を累ね、 慮りを積みて、 ˆ欲ˇ 心のために走り使はれて、 安き時あることなし。
○於テ↢此ノ劇悪極苦之中ニ↡、勤メテ↢身ノ営務ヲ↡以テ自ラ給済ス。無ク↠尊ト無ク↠卑ト、無ク↠貧ト無ク↠富ト、少長・男女共ニ憂フ↢銭財ヲ↡。有モ無モ同然ニシテ、憂思スルコト適ニ等シ。*屏営トシテ愁苦シ、累ネ↠念ヲ積ミテ↠慮リヲ、為ニ↠心ノ走リ使ハレテ、無シ↠有ルコト↢安キ時↡。
二 Ⅲ ⅰ b ロ (一)(Ⅱ)別明
(ⅰ)富貴の苦を示す
(a)有財苦
^田あれば田に憂へ、 宅あれば宅に憂ふ。 牛馬六畜・奴婢・銭財・衣食・*什物、 またともにこれを憂ふ。 思を重ね息を累みて、 憂念愁怖す。
○有レバ↠田憂ヘ↠田ニ、有レバ↠宅憂フ↠宅ニ。牛馬六畜・奴婢・銭財・衣食・什物、復共ニ憂フ↠之ヲ。重ネ↠思ヲ累ミテ↠息ヲ、憂念愁怖ス。
二 Ⅲ ⅰ b ロ (一)(Ⅱ)(ⅰ)(b)失財苦
^横に非常の水火・盗賊・怨家・債主のために焚かれ、 漂され、 劫奪せられ、 消散し磨滅せば、 憂毒*忪々として解くる時あることなし。 憤りを心中に結びて、 憂悩を離れず。 心堅く意固く、 まさに*縦捨することなし。
○横ニ為ニ↢非常ノ水火・盗賊・怨家・債主ノ↡焚カレ*漂サレ劫奪セラレ消散シ磨滅セバ、憂毒忪忪トシテ無シ↠有ルコト↢*解クル時↡。結ビテ↢憤ヲ心中ニ↡、不↠離レ↢憂悩ヲ↡。心堅ク意固ク、適ニ無シ↢縦捨スルコト↡。
^あるい0055は*摧砕によりて身亡び命終れば、 これを棄捐して去るに、 たれも随ふものなし。
○或イハ坐リテ↢摧0052砕ニ↡身亡ビ命終セバ、棄↢捐シテ之ヲ↡去ルニ、莫シ↢誰モ随フ者↡。
二 Ⅲ ⅰ b ロ (一)(Ⅱ)(ⅰ)(c)結
^尊貴・豪富もまたこの患へあり。 *憂懼万端にして、 勤苦することかくのごとし。 もろもろの*寒熱を結びて痛みとともに居す。
○尊貴・豪富モ亦有リ↢斯ノ患↡。憂懼万端ニシテ、*勤苦スルコト若シ↠此クノ。結ビテ↢衆ノ*寒熱ヲ↡与↠痛ミ共ニ*居ス。
二 Ⅲ ⅰ b ロ (一)(Ⅱ)(ⅱ)貧賎の苦を示す
(a)無財苦
^貧窮・下劣のものは、 困乏してつねに無けたり。 田なければ、 また憂へて田あらんことを欲ふ。 宅なければ また憂へて宅あらんことを欲ふ。 牛馬六畜・奴婢・銭財・衣食・什物なければ また憂へてこれあらんことを欲ふ。
○貧窮・下劣ノモノハ、困乏シテ常ニ無シ。無ケレバ↠田亦憂ヘテ欲シ↠有ラムト↠田、無ケレバ↠宅亦憂ヘテ欲シ↠有ラムト↠宅、無ケレバ↢牛馬六畜・奴婢・銭財・衣食・什物↡亦憂ヘテ欲ス↠有ラムト↠之。
二 Ⅲ ⅰ b ロ (一)(Ⅱ)(ⅱ)(b)求財苦
^たまたま一つあればまた一つ少け、 これあればこれを少く。 *斉等に0301あらんと思ふ。 たまたまつぶさにあらんと欲へば、 すなはちまた*糜散す。 かくのごとく憂苦してまさにまた求索すれども、 時に得ることあたはず。 *思想するも益なく、 身心ともに労れて、 坐起安からず、 憂念あひ随ひて勤苦することかくのごとし。
○適マ有レバ↠一復少キ↠一ヲ、有レバ↠是少ク↠是ヲ。思ヒ↢有ルコト↢斉等ナラムト↡、適マ欲セバ↢具ニ有ラムト↡、便チ復糜散ス。如ク↠是クノ憂苦シテ、当ニシ↢復求索スレドモ不ル↟能ハ↢時ニ得ルコト↡。思想スルモ無ク↠益、身心倶ニ労レテ、坐起不↠安カラ、憂念相随ヒテ*勤苦スルコト若シ↠此クノ。
二 Ⅲ ⅰ b ロ (一)(Ⅱ)(ⅱ)(c)結
^またもろもろの寒熱を結びて痛みとともに居す。
○亦結ビテ↢衆ノ寒熱ヲ↡与↠痛ミ*共ニ*居ス。
二 Ⅲ ⅰ b ロ (一)(Ⅲ)総じて無常に帰すを示す
^ある時はこれによつて身を終へ、 命を夭ぼす。 あへて善をなし道を行じて徳に進まず。 寿終り、 身死してまさに独り遠く去るべし。 趣向するところあれども、 *善悪の道よく知るものなし。
○或時ハ坐リテ↠之ニ終ヘ↠身ヲ、*夭ス↠命ヲ。不↢肯テ為シ↠善ヲ行ジテ↠道ヲ進マ↟徳ニ。寿終リ身死シテ、当ニシ↢独リ遠ク去ル↡。有レドモ↠所↢趣向スル↡、善悪之道莫シ↢能ク知ル者↡。
二 Ⅲ ⅰ b ロ (二)眷属別離苦
(Ⅰ)正明
(ⅰ)和睦の徳を挙ぐ
^世間の人民、 父子・兄弟・夫婦・*家室・*中外の親属、 まさにあひ敬愛してあひ憎嫉することなかるべし。 *有無あひ通じて貪惜を得ることなく、 *言色つねに和してあひ*違戻することなか0056れ。
○世間ノ人民、父子・兄弟・夫婦、*家室・中外ノ親属、当ニシ↣相敬愛シテ無カル↢相憎嫉スルコト↡。有無相通ジテ、無ク↠得ルコト↢*貪惜ヲ↡、言色常ニ和シテ莫レ↢相違戻スルコト↡。
二 Ⅲ ⅰ b ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)不和の過を挙ぐ
^ある時は心諍ひて恚怒するところあり。 ▼今世の恨みの意は微しきあひ憎嫉すれども、 後世にはうたた劇しくして 大きなる怨となるに至る。 ゆゑはいかんとなれば、 世間の事たがひにあひ*患害す。 即時に急にあひ破すべからずといへども、 しかも毒を含み怒りを畜へて憤りを精神に結び、 自然に*剋識してあひ離るることを得ず。 みなまさに*対生してたがひにあひ報復すべし。
○或ル時ハ心諍ヒテ有リ↠所↢恚怒スル↡。今世ノ恨ノ意ハ微シク相憎嫉スレドモ、後世ニハ転タ劇シクシテ、至ル↠成ズルニ↢大キナル怨ヲ↡。所以者何ントナレバ。世間之事更ル相患害シ、雖モ↠不ト↣即時ニ応カラ↢急ニ*相破ス↡、然モ含ミ↠毒ヲ畜ヘテ↠怒ヲ結ビ↢憤ヲ精神ニ↡、自然ニ剋識シテ不↠得↢相離ルルコトヲ↡。皆当ニシ↢対生テ更ル相報復ス↡。
二 Ⅲ ⅰ b ロ (二)(Ⅰ)(ⅲ)生死変化の相を明す
^人、 世間愛欲のなかにありて、 独り生れ独り死し、 独り去り独り来る。 ▼*行に当りて苦楽の地0302に至り趣く。 身みづからこれを当くるに、 代るものあることなし。 善悪 変化して、 *殃福処を異にし、 あらかじめ厳しく待ちてまさに独り趣入すべし。 遠く他所に到りぬれば*よく見るものなし。
○人在リテ↢世間ノ愛欲之中ニ↡、独リ生ジ独リ死シ、独リ去リ独リ来ル。当ニシ↣行キテ至リ↢趣ク苦楽之地ニ↡。身自ラ当リテ↠之ニ、無シ↠有ルコト↢代ル者↡。善悪変化シテ、殃福異ニシ↠処ヲ、宿予厳シク待シテ当ニシ↢独リ趣入ス↡。遠ク到レバ↢他所ニ↡莫シ↢能ク見ル者↡。
^善悪自然にして行を追うて生ずるところなり。 *窈々冥々として別離久しく長し。 道路同じからずして会ひ見ること期なし。 はなはだ難く、 はなはだ難ければ、 またあひ値ふことを得んや。
○善悪自然ニシテ追ヒテ↠行ヲ所0053ナリ↠生ズル。窈窈冥冥トシテ別離久シク長シ。道路不シテ↠同ジカラ会ヒ見ルコト無シ↠期。甚ダ難ク甚ダ難ケレバ、*復得ムヤ↢相値フコトヲ↡。
二 Ⅲ ⅰ b ロ (二)(Ⅱ)結勧
^なんぞ衆事を棄てざらん。 おのおの強健の時に曼びて、 つとめて善を勤修し精進して*度世を願ひ、 *極長の生を得べし。 いかんぞ道を求めざらん。 いづくんぞすべからく待つべきところある。 なんの楽をか欲するや。
○何ゾ不ラム↠棄テ↢衆事ヲ↡。各ノ*曼ビテ↢強健ノ時ニ↡、努力*勤↢*修シ善ヲ↡精進シテ願ジ↢度世ヲ↡、可シ↠得↢極長ノ生ヲ↡。如何ゾ不ラム↠求メ↠道ヲ。安クンゾ所アラム↠須クキ↠待ツ。欲セム↢何ノ楽ヲカ↡*哉。
二 Ⅲ ⅰ b ロ (三)五趣流転苦
(Ⅰ)其の因を挙ぐ
(ⅰ)不信の過を挙ぐ
(a)総じて其の相を列ぬ
^かくのごときの世人、 善をなして善を得、 道をなして道を得ることを信ぜず。 人死してさらに0057生じ、 恵施して福を得ることを信ぜず。 善悪の事すべてこれを信ぜずして、 これをしからずと謂うてつひに是することあることなし。
○如キノ↠是クノ世ノ人、不↠信ゼ↢作シテ↠善ヲ得↠善ヲ為シテ↠道ヲ得ルコトヲ↟道ヲ。不↠信ゼ↢人死シテ更ニ生ジ恵施シテ得ルコトヲ↟福ヲ。善悪之事都テ不シテ↠信ゼ↠之ヲ、謂ヒテ↢之ヲ不ト↟然ラ、終ニ無シ↠有ルコト↠是スルコト。
二 Ⅲ ⅰ b ロ (三)(Ⅰ)(ⅰ)(b)其の所由を明す
(イ)総明
^ただ*これによるがゆゑに、 またみづからこれを見る。 たがひにあひ*瞻視して*先後同じくしかなり。 うたたあひ*承受するに父の余せる*教令をもつてす。
○但坐ルガ↠此ニ故ニ、且自ラ見テ↠之ヲ、更ル相瞻視シテ先後同ジク然ナリ。転タ相承受スルニ父ノ余セル教令ヲモテス。
二 Ⅲ ⅰ b ロ (三)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ロ)別して先人の迷執を明す
^*先人・祖父もとより善をなさず、 道徳を識らず、 身愚かに神闇く、 心塞がり意閉ぢて、 死生の趣、 善悪の道、 みづから見ることあたはず、 語るものあることなし。 吉凶・禍福、 競ひておのおのこれをなすに、 ひとりも怪しむものな0303し。
○先人・祖父素ヨリ不↠為サ↠善ヲ、不↠識ラ↢道徳ヲ↡、身愚ニ神闇ク、心塞リ意閉ヂテ、死生之趣、善悪之道、自ラ不↠能ハ↠見ルコト、無シ↠有ルコト↢語ル者↡。吉凶・禍福、競ヒテ各ノ作スニ↠之ヲ、無シ↢一モ怪ムモノ↡也。
二 Ⅲ ⅰ b ロ (三)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)迷執を破す
^*生死の常の道、 うたた*あひ嗣ぎて立つ。 あるいは父、 子に哭し、 あるいは子、 父に哭す。 兄弟・夫婦たがひにあひ哭泣す。 *顛倒上下することは、 無常の根本なり。 みなまさに過ぎ去るべく、 つねに保つべからず。 ˆ道理をˇ 教語し開導すれども、 これを信ずるものは少なし。 ここをもつて生死 流転し、 休止することあることなし。
○生死ノ常ノ道、転タ相嗣ギテ立ツ。或イハ父哭シ↠子ニ、或イハ子哭シ↠父ニ、兄弟・夫婦更ル相哭泣ス。顛倒上下スルコトハ無常ノ根本ナリ。皆当ニク↢過ギ去ル↡、不↠可カラ↢常ニハ保ツ↡。教語シ開導スレドモ、信ズル↠之ヲ者ハ少シ。是ヲ以テ生死流転シ、無シ↠有ルコト↢休止スルコト↡。
二 Ⅲ ⅰ b ロ (三)(Ⅰ)(ⅱ)造業の相を明す
(a)総じて傷嘆を挙ぐ
^かくのごときの人、 *矇冥抵突して経法を信ぜず、 心に*遠き慮りなくして、 おのおの意を快くせんと欲へり。 *愛欲に痴惑せられて道徳を達らず、 瞋怒に迷没し*財色を貪狼す。 これによつて道を得ず、 まさに悪趣の苦に更り、 生死窮まりやむことなかるべし。 哀れなるかな、 はなはだ傷むべし。
○如キ↠此クノ之人、*矇冥*抵突シテ不↠信ゼ↢経法ヲ↡、心ニ無クシテ↢遠キ慮リ↡各ノ欲シ↠快クセムト↠意ヲ、痴↢惑セラレテ*於愛欲ニ↡不↠達セ↢於道徳ニ↡、迷↢没シ於瞋怒ニ↡貪↢狼ス於財色ヲ↡。坐リテ↠之ニ不↠得↠道ヲ、当ニシ↧更リテ↢悪趣ノ苦ニ↡生死無カル↦窮リ已ムコト↥。哀レナル哉、甚ダ可シ↠傷ム。
二 Ⅲ ⅰ b ロ (三)(Ⅰ)(ⅱ)(b)別挙
(イ)愚痴の業
^ある時は*室家の父子0058・兄弟・夫婦、 ひとりは死しひとりは生きて、 たがひにあひ哀愍し、 恩愛思慕して憂念 ˆ身心をˇ 結縛す、 心意*痛着してたがひにあひ顧恋す。 日を窮め歳を卒へて、 解けやむことあることなし。
○或ル時ハ室家ノ父子・兄弟・夫婦、一ハ死シ一ハ生キテ更ル相哀愍シ、*恩愛思慕シテ憂念結縛シ、心意痛著シテ迭ニ相顧恋ス。窮メ↠日ヲ卒ヘテ↠歳ヲ、無シ↠有ルコト↢解ケ已ムコト↡。
^道徳を教語すれども心開明せず、 *恩好を思想して情欲を離れず。 *昏矇閉塞して愚惑に覆はれたり。 深く思ひ、 つらつら計り 、 心みづから端正にして*専精に道を行じて世事を決断することあたはず。 *便旋として竟りに 至る。 年寿終り尽きぬれば、 道を得ることあたはず、 いかんともすべきことなし。
○教↢語スレドモ道徳ヲ↡心不↢開明セ↡、思↢想シテ恩好ヲ↡不↠離0054レ↢情欲ヲ↡。*昏*矇閉塞シテ愚惑ニ所タリ↠覆ハ。不↠能ハ↣深ク思ヒ熟ツラ計リ、心自ラ端正ニシテ専精ニ行ジテ↠道ヲ決↢断スルコト世事ヲ↡。便旋トシテ至リ↠竟ニ、年寿終リ尽キヌレバ、不↠能ハ↠得ルコト↠道ヲ、無シ↠可キコト↢奈何トモス↡。
二 Ⅲ ⅰ b ロ (三)(Ⅰ)(ⅱ)(ロ)貪欲の業
^*総猥憒擾にしてみな愛欲を貪る。 道0304に惑へるものは衆く、 これを悟るものは寡なし。 世間*怱々として*憀頼すべきものなし。
○総猥憒擾ニシテ皆貪ル↢愛欲ヲ↡。惑フ↠道ニ者ハ衆ク、悟ル↠之ヲ者ハ*寡シ。世間怱怱トシテ、無シ↠可キモノ↢*憀頼ス↡。
二 Ⅲ ⅰ b ロ (三)(Ⅰ)(ⅱ)(ハ)瞋恚の業
^尊卑・上下・貧富・貴賎、 勤苦*怱務しておのおの*殺毒を懐く。 *悪気窈冥にしてためにみだりに事を興す。 天地に違逆し、 人心に従はず。
○尊卑・上下・貧富・貴賎、*勤苦怱務シテ各ノ懐ク↢殺毒ヲ↡。悪気窈冥トシテ為ニ*妄ニ興ス↠事ヲ。違↢逆シ天地ニ↡、不↠従ハ↢人心ニ↡。
二 Ⅲ ⅰ b ロ (三)(Ⅱ)感業の相を明す
^自然の*非悪、 まづ随ひてこれに与し、 ほしいままに所為を聴してその罪の極まるを待つ。 その寿いまだ尽きざるに、 すなはちたちまちにこれを奪ふ。 悪道に下り入りて*累世に勤苦す。 そのなかに展転して数千億劫も出づる期あることなし。 痛みいふべからず、 はなはだ哀愍すべし」 と。
○自然ノ非悪、先ヅ随ヒテ与シ↠之ニ、恣ニ聴シテ↢所為ヲ↡待ツ↢其ノ罪ノ極ルヲ↡。其ノ寿*未ダルニ↠尽キ、便チ頓チニ奪ヒ↠之ヲ、下リ↢入リテ悪道ニ↡累世ニ*勤苦ス。展↢転シテ其ノ中ニ↡数千億劫ニモ無シ↠有ルコト↢出ヅル期↡。痛ミ不↠可カラ↠言フ。甚ダ可シト↢哀愍ス↡。
二 Ⅲ ⅱ 別して時会の大衆を教誡す
a 上を牒して勧む
イ 総勧
【32】^▼仏、 弥勒菩薩ともろもろの天・人等に告げたまはく、 「われいまなんぢに0059世間の事を語る。 人これをもつてのゆゑに坐まりて道を得ず。 まさにつらつら思ひ計りて衆悪を遠離し、 その善のものを択びてつとめてこれを行ずべし。 愛欲・栄華つねに保つべからず、 みなまさに別離すべし。 楽しむべきものなし。 仏の在世に曼びて、 まさにつとめて精進すべし。
○仏告ゲタマハク↢弥勒菩薩ト諸ノ天人等ニ↡、我今語レリ↢汝ニ世間之事ヲ↡。人用テノ↠是ヲ故ニ坐リテ不↠得↠道ヲ。当ニシ↧熟ツラ思ヒ計リテ遠↢離シ衆悪ヲ↡、択ビテ↢其ノ善ノ者ヲ↡*勤メテ而行ズ↞之ヲ。愛欲・栄華不↠可カラ↢常ニハ保ツ↡。皆当ニシ↢別離ス↡。無シ↢可キ↠楽ム者↡。*曼ビテ↢仏ノ在世ニ↡、当ニシ↢*勤テ精進ス↡。
二 Ⅲ ⅱ a ロ 別して願生を勧む
^▼それ至心に安楽国に生れんと願ずることあるものは、 智慧あきらかに達り、 功徳殊勝なることを得べし。 心の所欲に随ひて、 *経戒を虧負して、 人の後にあることを得ることなかれ。 もし疑の意ありて経を解らざるものは、 つぶさに仏に問ひたてまつるべし。 まさにためにこれを説くべし」 と。
○其レ有ル↢至シテ↠*心ヲ願ズルコト↟生ゼムト↢安楽国ニ↡者ハ、可シ↠得↢智慧明カニ達シ功徳殊勝ナルコトヲ↡。勿レ↠得ルコト↧随ヒテ↢心ノ所欲ニ↡、*虧↢負シテ経戒ヲ↡、在ルコトヲ↦人ノ後ニ↥也。儻シ有リテ↢疑ノ意↡不ハ↠解セ↠経ヲ者、可シ↢具ニ問ヒタテマツル↟仏ニ。当ニシト
↢為ニ説ク↟之ヲ。
二 Ⅲ ⅱ b 弥勒領解を述ぶ【弥勒領解】
イ 総領
^弥0305勒菩薩、 *長跪してまうさく、 「仏は威神尊重にして、 説きたまふところ快く善し。
○弥勒菩薩、長跪シテ白シテ言ク、仏ハ威神尊重ニシテ、所↠説キタマフ快ク善シ。
二 Ⅲ ⅱ b ロ 別して人法に約して領す
(一)所説の法を領す
^仏の経語を聴きたてまつりて、 心に貫きてこれを思ふに、 世人まことにしかなり。 仏ののたまふところのごとし。 いま仏、 *慈愍して大道を顕示したまふに、 耳目開明にして長く度脱を得。
○聴キタテマツリテ↢仏ノ経*語ヲ↡、貫キテ↠心ヲ思フニ↠之ヲ、世ノ人実ニ爾ナリ。如シ↢仏ノ所ノ↟言フ。今仏慈愍シテ顕↢示シタマフニ大道ヲ↡、耳*目開明ニシテ長ク得↢度脱ヲ↡。
^仏の所説を聞きたてまつりて歓喜せざることなし。 諸天・人民、 *蠕動の類、 みな慈恩を蒙りて憂苦を解脱す。 ^仏語の教誡ははなはだ深くはなはだ善し。
○聞キタテマツリテ↢仏ノ所説ヲ↡莫0055シ↠不ルハ↢歓喜セ↡。諸天・人民・蠕動之類、皆蒙リテ↢慈恩ヲ↡解↢脱ス憂苦ヲ↡。仏語ノ教*誡ハ甚ダ深ク甚ダ善シ。
二 Ⅲ ⅱ b ロ (二)能説の人を領す
^智慧あきらかに 、 八方上下、 *去来今の事を見そなはして、 *究暢せざることなし。
○智慧ハ明カニ見ソナハシテ↢八方上下、去来今ノ事ヲ↡、莫シ↠不ルハ↢究暢セ↡。
^いまわれ衆等、 度脱を得ることを0060蒙るゆゑは、 みな仏の前世に求道の時↓*謙苦せしが致すところなり。 恩徳あまねく ˆ衆生をˇ 覆ひて*福禄巍々たり。 光明徹照して空を達ること 極まりなし。 ˆ人をしてˇ *泥洹に開入せしめ、 *典攬を教授し、 *威制消化して十方を感動せしめたまふこと無窮無極なり。
○今我衆等ノ所↢以ハ蒙ル↟得ルコトヲ↢度脱ヲ↡、皆仏ノ前世ニ求道之時謙苦セルノ所ナリ↠致ス。恩徳普ク覆ヒテ福禄巍巍タリ。光明徹照シテ達スルコト↠空ニ無シ↠極リ。開↢入セシメ泥洹ニ↡、教↢授シ典攬ヲ↡、威制消化シテ感↢動セシメタマフコト十方ヲ↡、無窮無極ナリ。
^仏は*法王たり、 尊きこと衆聖に超えたまへり。 あまねく一切の天・人の師となりて、 ˆ人々のˇ 心の所願に随ひてみな道を得しめたまふ。
○仏ハ為リ↢法*王↡。尊キコト超エタマヘリ↢衆聖ニ↡。普ク為リテ↢一切ノ天人之師ト↡、随ヒテ↢心ノ所願ニ↡皆令メタマフ↠得↠道ヲ。
二 Ⅲ ⅱ b ロ (三)総じて能所を領す
^いま仏に値ひたてまつることを得、 また無量寿仏の声を聞きたてまつりて、 歓喜せざるものなし。 心開明なることを得たり」 と。
○今得↠値ヒタテマツルコトヲ↠仏ニ、復聞キタテマツリテ↢無量寿*仏ノ声ヲ↡靡ク↠不ルハ↢歓喜セ↡、心得タリト↢開明ナルコトヲ↡。
二 Ⅲ ⅱ c 重ねて開誨す
イ 前説を印可す
(一)総標
【33】^仏、 弥勒菩薩に告げたまはく、 「なんぢがいへることは是なり。
○仏告ゲタマハク↢弥勒*菩薩ニ↡、汝ガ言ヘルコトハ是也。
二 Ⅲ ⅱ c イ (二)別説
(Ⅰ)能説の人を領し印す
^もし仏を慈敬することあらば、 実に大善なりとす。 天下に久々にしていましまた仏まします。 いまわれこの世0306において仏となりて、 経法を演説し、 道教を宣布して、 もろもろの疑網を断ち、 愛欲の本を抜き、 衆悪の源を杜ぐ。 三界に*遊歩するに*拘礙するところなし。
○若シ有ラバ↣慈↢敬スルコト於仏ヲ↡者、実ニ為ス↢大善ナリト↡。天下ニ久久ニシテ乃チ復有ス↠仏。今我於テ↢此ノ世ニ↡作リテ↠仏ト、演↢説シ経法ヲ↡、宣↢布シテ道教ヲ↡、断チ↢諸ノ疑網ヲ↡、抜キ↢愛欲之本ヲ↡、杜グ↢衆悪之源ヲ↡。遊↢歩スルニ三界ニ↡無シ↠所↢*拘礙スル↡。
^典攬の智慧は衆道の要なり。 *綱維を執持して昭然分明なり。 五趣を開示していまだ度せざるものを度し、 生死と泥洹の道を決正す。
○典攬ノ智慧ハ衆道之要ナリ。執↢持シテ綱維ヲ↡*昭然分明ナリ。開↢示シテ五趣ヲ↡度シ↢未ダル↠度セ者ヲ↡、決↢正ス生死ト泥洹之道トヲ↡。
二 Ⅲ ⅱ c イ (二)(Ⅱ)所説の法を領し印す
^弥勒まさに知るべし、 なんぢ無数劫よりこのかた菩薩の行を修して衆生を度せんと欲するに、 それすでに久遠なり。 なんぢに従ひて道を得、 泥洹に至0061るもの、 称り数ふべからず。
○弥勒、当ニシ↠知ル。汝従リ↢無数劫↡来修シテ↢菩薩ノ行ヲ↡欲スルニ↠度セムト↢衆生ヲ↡、其レ已ニ久遠ナリ。従ヒテ↠汝ニ得↠道ヲ、至ルモノ↢于泥洹ニ↡、不↠可カラ↢称リ数フ↡。
^▼なんぢおよび十方の諸天・人民、 一切の四衆、 永劫よりこのかた五道に展転して、 憂畏勤苦つぶさにいふべからず。 乃至今世まで生死絶えず。 仏とあひ値うて経法を聴受し、 またまた無量寿仏を聞くことを得たり。 快きかな、 はなはだ善し。 われ、 なんぢを助けて喜ばしむ。
○汝及ビ十方ノ諸天・人民、一切ノ四衆、永劫ヨリ已来タ展↢転シテ五道ニ↡、憂畏*勤苦スルコト不↠可カラ↢具ニ言フ↡。乃チ至ルマデ↢今世ニ↡生死不ルニ↠絶エ、与↠仏相値ヒテ聴↢受シ経法ヲ↡、又復得タリ↠聞クコトヲ↢無量寿仏ヲ↡。快キ哉甚ダ善シ。吾助ケテ↠爾ヲ喜バシム。
二 Ⅲ ⅱ c ロ 正重誨
(一)仏重誨
(Ⅰ)厭欣を勧む
(ⅰ)厭離を勧む
^なんぢいままたみづから生死老病の痛苦を厭ふべし。 *悪露不浄にして楽しむべきものなし。
○汝今亦可シ↣自ラ厭フ↢生・死・老0056・病ノ痛苦↡。悪露不浄ニシテ無シ↢可キ↠楽シム者↡。
二 Ⅲ ⅱ c ロ (一)(Ⅰ)(ⅱ)欣浄を勧む
^よろしくみづから決断し、 身を端しくし行ひを正しくして、 ますますもろもろの善をなし、 おのれを修めて体を潔くし、 心垢を洗除し、 言行 *忠信にして表裏相応すべし。 人よくみづから度してうたたあひ*拯済し、 *精明に求願して善本を積累せよ。
○宜シクシ ↧自ラ決断シ、端シクシ↠身ヲ正シクシテ↠行ヲ益マス作シ↢諸ノ善ヲ↡、修シテ↠己ヲ潔クシ↠*体ヲ、洗↢除シ心垢ヲ↡、言行忠信ニシテ表裏相応ス↥。人能ク自ラ度シテ転タ相拯済シ、精明ニ求願シテ積↢累セヨ善本ヲ↡。
二 Ⅲ ⅱ c ロ (一)(Ⅰ)(ⅲ)益を挙げて勧修す
^▼*一世に勤苦すといへども須臾のあひだなり 、 後に無量寿仏国に生れて快楽極まりなし。 長く*道徳と合明して永く生死の根本を抜き、 また貪・恚0307・愚痴の苦悩の患へなく、 寿一劫・百劫・千万億劫ならんと欲へば、 自在に意に随ひてみなこれを得べし。
○雖モ↢一世ニ勤苦スト↡須臾之間ニシテ、後ニ生ジテ↢無量寿*仏国ニ↡快楽無シ↠極リ。長ク与↢道徳↡合明シテ*永ク抜キ↢生死ノ根本ヲ↡、無シ↢復貪・恚・愚痴ノ苦悩之患↡。○欲スレバ↢寿一劫・百劫・千*万億劫ナラムト↡、自在ニ随ヒテ↠意ニ皆可シ↠得↠之ヲ。
二 Ⅲ ⅱ c ロ (一)(Ⅱ)信疑の得失を示す
^ˆ浄土はˇ ▼*無為自然にして泥洹の道に次し。 ▼なんぢら、 よろしくおのおの精進して心の所願を求むべし。 ˆ仏智をˇ 疑惑し*中悔して、 みづから*過咎をなして、 かの辺地の七宝の宮殿に生れて、 五百歳のうちにもろもろの*厄を受くることを得ることなかれ0062」 と。
○無為自然ニシテ次シ↢於泥洹之道ニ↡。汝等宜クシ↣各ノ精進シテ求ム↢心ノ所願ヲ↡。無レト↠得ルコト↧疑惑シテ中悔シテ、自ラ為シテ↢過咎ヲ↡、生ジテ↢彼ノ辺地ノ七宝ノ宮殿ニ↡、五百歳ノ中ニ受クルコトヲ↦諸ノ厄ヲ↥也。
二 Ⅲ ⅱ c ロ (二)弥勒信受
^弥勒、 仏にまうしてまうさく、 「仏の*重誨を受けて専精に修学し、 教のごとく奉行して、 あへて疑ふことあらじ」 と。
○弥勒白シテ↠*仏ニ*言ク、受ケテ↢仏ノ重誨ヲ↡専精ニ修学シ、如ク↠教ノ奉行シテ、不ト↢敢テ有ラ↟疑フコト。
二 Ⅲ ⅲ 広く此世の修善を嘆勧す【五善五悪】
a 総勧
【34】^仏、 弥勒に告げたまはく、 「なんぢらよくこの世にして、 心を端しくし意を正しくして衆悪をなさざれば、 はなはだ至徳なりとす。 十方世界にもつとも*倫匹なけん。 ゆゑはいかん。 諸仏の国土の天・人の類は、 自然に善をなして大きに悪をなさざれば、 開化すべきこと易し。
○仏告ゲタマハク↢弥勒ニ↡、汝等能ク於テ↢此ノ世ニ↡、端シクシ↠心ヲ正シクシテ↠意ヲ不レバ↠作サ↢衆悪ヲ↡、甚ダ為ス↢至徳ナリト↡。十方世界ニ最モ無カラム↢倫匹↡。所以者何ン。諸仏ノ国土ノ天人之類ハ、自然ニ作シテ↠善ヲ不レバ↢大ニ為サ↟悪ヲ、易ケレバナリ↠可キコト↢開化ス↡。
二 Ⅲ ⅲ b 別して五悪を捨て五善を修すを勧む
イ 総標
^いまわれこの世間において仏になりて五悪・*五痛・*五焼のなかに処すること、 もつとも劇苦なりとす。 群生を教化して五悪を捨てしめ、 五痛を去らしめ、 五焼を離れしめ、 その意を*降化して五善を持たしめて、 その福徳・度世・長寿・泥洹の道を獲しめん」 と。
○今我於テ↢此ノ世間ニ↡作リテ↠仏ト、処スルコト↢於五悪・五痛・五焼之中ニ↡為ス↢最モ劇苦ナリト↡。教↢化シテ群生ヲ↡令メ↠捨テ↢五悪ヲ↡、令メ↠去ラ↢五痛ヲ↡、令メ↠離レ↢五焼ヲ↡、降↢化シテ其ノ意ヲ↡令メテ↠持タ↢五善ヲ↡、獲シメムト↢其ノ福徳・度世・長寿・泥洹之道ヲ↡。
二 Ⅲ ⅲ b ロ 微起
^仏のたまはく、 「なんら か五悪 、 なんらか五痛、 なんらか五焼なる。 なんらか五悪を消化して五善を持たしめて、 その福徳・度世・長寿・泥洹の道を獲しむる」 と。
○仏言ク、何*等カ五悪、何等カ五痛、何等カ五焼ナル。何等カ消↢化シテ五悪ヲ↡令メテ↠持タ↢五善ヲ↡、獲シムルト↢其ノ福徳・度世・長寿・泥洹之道ヲ↡。
二 Ⅲ ⅲ b ハ 列釈
(一)殺生を誡む
(Ⅰ)其の過失を挙ぐ
(ⅰ)標
【35】^*仏0308のたまはく、 「その一つの悪と は、
○*仏0057言ク、其ノ一ノ悪ト者、
二 Ⅲ ⅲ b ハ (一)(Ⅰ)(ⅱ)正明
(a)作悪の相を明す
(イ)正明
^諸天・人民、 蠕動の類、 衆悪をなさんと欲へり、 みなしからざるはなし。 強きものは弱きを伏し、 うたたあひ*剋賊し、 残害殺戮してたがひにあひ*呑噬ノミスフす。
○諸天・人民・蠕動之類、欲シテ↠為サムト↢衆悪ヲ↡、莫シ↠不ルハ↢皆然ラ↡。強キ者ハ伏シ↠弱キヲ、転タ相剋賊シ、残害殺戮シテ、*迭ニ相呑噬ス。
二 Ⅲ ⅲ b ハ (一)(Ⅰ)(ⅱ)(a)(ロ)現果を以て過因を推す
^善を修することを知らず、 悪逆無道に0309して、 後に*殃罰を受けて、 自然に ˆ悪道にˇ 趣向す。
○不↠知ラ↠修スルコトヲ↠善ヲ、悪逆無道ニシテ、後ニ受ケテ↢殃罰ヲ↡、自然ニ趣向ス。
^*神明は*記識して、 犯0063せるものを赦さず。 ◗ゆゑに貧窮・下賎・*乞丐・孤独・聾・盲・*瘖瘂・愚痴・*弊悪のものありて、 *・狂・*不逮の属あるに至る。 また尊貴・豪富・高才・明達なるものあり。 みな宿世に慈孝ありて、 善を修し徳を積むの致すところによるなり。
○神明ハ記識シテ、犯セバ者ヲ不↠赦サ。故ニ有リテ↢貧窮・下賎・乞丐・孤独・聾盲・瘖*瘂・愚痴・*弊悪ナルモノ↡、至ル↠有ルニ↢・狂・不逮之属↡。又有リ↢尊貴・豪富・高才・明達ナルモノ↡。皆由ルナリ↢宿世ニ慈孝アリテ修シ↠善ヲ積メルノ↠徳ヲ所ニ↟致ス。
二 Ⅲ ⅲ b ハ (一)(Ⅰ)(ⅱ)(b)現在の痛苦を明す
^世に常道の*王法の牢獄あれども、 あへて畏れ慎まず。 悪をなし罪に入りてその殃罰を受く。 解脱を求望すれども、 免れ出づることを得がたし。 世間に、 この目前に見ることあり。
○世ニ有レドモ↢常道ノ王法ノ牢獄↡、不↢肯テ畏レ慎マ↡、為シ↠悪ヲ入リテ↠罪ニ受ク↢其ノ殃罰ヲ↡。求↢望スレドモ解脱ヲ↡難シ↠得↢*免レ出ヅルコトヲ↡。世間ニ有リ↢此ノ目前ニ*見ル事↡。
二 Ⅲ ⅲ b ハ (一)(Ⅰ)(ⅱ)(c)死後の焼苦を明す
(イ)現在を以て未来を暁す
^寿終りて後世に ˆ受くるところの苦しみはˇ もつとも深く、 もつとも劇し。 その*幽冥に入り 、 生を転じて身を受くること、 たとへば王法の痛苦極刑なるがごとし。
○寿終リテ後世ニ尤モ深ク尤モ劇シ。入リ↢其ノ幽冥ニ↡、転ジテ↠生ヲ受クルコト↠身ヲ、譬ヘバ如シ↢王法ノ痛苦極*刑ナルガ↡。
二 Ⅲ ⅲ b ハ (一)(Ⅰ)(ⅱ)(c)(ロ)正明
[一]三塗の苦報を明す
^ ゆゑに自然の三塗無量の苦悩ありて、 うたたその身を貿へ、 形を改め、 ˆ生死輪廻してˇ 道を易へて、 受くるところの寿命、 あるいは長く、 あるいは短し。 *魂神精識、 自然にこれに趣く。
○故ニ有リテ↢自然ニ三塗ノ無量ノ苦悩↡。転タ*貿ヘ↢其ノ身ヲ↡、改メ↠形ヲ易ヘテ↠道ヲ、所ノ↠受クル寿命、或イハ長ク或イハ短クシテ、魂神精識、自然ニ趣ク↠之ニ。
^まさに独り値ひ向かひ、 あひ従ひてともに生れて、 たがひにあひ報復して絶えやむことあることなかるべし。 *殃悪いまだ尽きざれば、 あひ離るることを得ず。 そのなかに展転して出づる期あることなく、 解脱を得がたし。 痛みいふべからず。
○当ニシ↢独リ値ヒ向ヒ、相従ヒテ共ニ生ジ、更ル相報復シテ無カル↟有ルコト↢*絶エ已ムコト↡。殃悪未ダレバ↠尽キ、不↠得↢相離ルルコトヲ↡。展↢転シテ其ノ中ニ↡無ク↠有ルコト↢出ヅル期↡、難シ↠得↢解脱ヲ↡。痛ミ不↠可カラ↠言フ。
二 Ⅲ ⅲ b ハ (一)(Ⅰ)(ⅱ)(c)(ロ)[二]因果自然を明す
^天地のあひだに自然に*これあり。 即時ににはかに善悪の道に至るべからずといへども、 かならずまさにこれに帰すべし。
○天地之間ニ自然ニ有リ↠是。雖モ↠不ト↢即時ニ卒暴ニ応カラ↟至ル↢善悪之道ニ↡、会ズ当ニシ↠帰ス↠之ニ。
二 Ⅲ ⅲ b ハ (一)(Ⅰ)(ⅲ)結
^これを一つ0310の大悪・一つの痛・一0064つの焼とす。 勤苦かくのごとし。 たとへば大火の人身を焚焼するがごとし。
○是ヲ為ス↢一ノ大悪・一ノ痛・一ノ焼ト↡。*勤苦スルコト如シ↠是クノ。譬ヘバ如シ↣大火ノ焚↢焼スルガ人身ヲ↡。
二 Ⅲ ⅲ b ハ (一)(Ⅱ)正しく修善を勧む
^人よく*なかにおいて一心に意を制し、 身を端しくし行ひを正しくして、 独りもろもろの善をなして衆悪をなさざれば、 身独り度脱して、 その福徳・度世・上天・泥洹の道を獲ん。 これを一つの大善とす」 と。
○人能ク於テ↠中ニ一心ニ制シ↠意ヲ、端シクシ↠身ヲ正シクシテ↠行ヲ、独リ作シテ↢諸ノ善ヲ↡不レバ↠為サ↢衆悪ヲ↡者、身独リ度脱シテ、獲ム↢其ノ福徳・度世・上天・泥洹之道ヲ↡。是ヲ為スト↢一ノ大善ト↡也。
二 Ⅲ ⅲ b ハ (二)偸盗を誡む
(Ⅰ)其の過失を挙ぐ
(ⅰ)標
【36】^仏のたまはく、 「その二つの悪と は、
○仏0058言ク、其ノ二ノ悪ト者、
二 Ⅲ ⅲ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅱ)正明
(a)作悪の相を明す
(イ)先づ造業の因縁を明す
[一]人に約す
[Ⅰ]総じて身口の悪を標す
^世間の人民、 父子・兄弟・室家・夫婦、 すべて義理なくして*法度に順はず。 *奢婬・*憍縦にしておのおの意を快くせんと欲へり。 心に任せてみづからほしいままにたがひにあひ欺惑す。 ▼心口おのおの異にして、 言念実なし。 *佞諂不忠にして、 *巧言諛媚なり。 賢を嫉み善を謗りて、 *怨枉に陥し入る。
○世間ノ人民、父子・兄弟・室家・夫婦、都テ無クシテ↢義理↡不↠順ゼ↢法度ニ↡。奢婬憍縦ニシテ、各ノ欲シ↠快クセムト↠意ヲ、任セテ↠心ニ自ラ恣ニ更ル相欺惑ス。心口各ノ異ニシテ、言念無シ↠実。佞諂不忠ニシテ、巧言*諛媚ナリ。嫉ミ↠賢ヲ謗リテ↠善ヲ、陥シ↢入ル怨枉ニ↡。
二 Ⅲ ⅲ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(a)(イ)[一][Ⅱ]別して君臣に約す
^*主上あきらかならずして、 臣下を任用すれば、 臣下自在にして*機偽多端なり。 *度を践みよく行ひてその形勢を知る。 位にありて正しからざれば、 それがために欺かれ、 みだりに忠良を損じて*天 心に当らず。
○主上不シテ↠明カナラ、任↢用スレバ臣下ヲ↡、臣下自在ニシテ機偽多端ナリ。践ミ↠度ヲ能ク行ジテ知ルモ↢其ノ形勢ヲ↡、在リテ↠位ニ不レバ↠正カラ、為ニ↠其ガ所↠欺カ、妄ニ損ジテ↢忠良ヲ↡不↠当ラ↢天ノ心ニ↡。
二 Ⅲ ⅲ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(a)(イ)[一][Ⅲ]結責
^臣はその君を欺き、 子はその父を欺く。 兄弟・夫婦・中外・*知識、 たがひにあひ欺誑す。
○臣ハ欺キ↢其ノ君ヲ↡、子ハ欺キテ↢其ノ父ヲ↡、兄弟・夫婦・中外・知識、更ル相欺誑ス。
二 Ⅲ ⅲ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(a)(イ)[二]心に約す
[Ⅰ]総じて意の三悪を標ず
^おのおの貪欲・瞋恚・愚痴を懐きて、
○各ノ懐キテ↢貪欲・瞋恚・愚痴ヲ↡、
二 Ⅲ ⅲ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(a)(イ)[二][Ⅱ]別して欲悪の相を申ず
[ⅰ]通じて過失を明す
^みづからおのれを厚くせんと欲ひ、 多くあることを欲貪す。 尊卑・上下、 心ともに同じくしかなり。 家を破り身を亡ぼし 、 前後を顧みず、 親属内外こ0311れによりて滅ぶ。
○欲シ↢自ラ厚クセムト↟己ヲ、欲↢貪ス多ク有ラムト↡。尊卑・上下、心倶ニ同ク然ナリ。破リ↠家ヲ亡ボシ↠身ヲ、不↠顧ミ↢前後ヲ↡、親属内外坐リテ↠之ニ*而滅ブ。
二 Ⅲ ⅲ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(a)(イ)[二][Ⅱ][ⅱ]其の行相を明す
^ある時は室家0065・知識・*郷党・*市里・愚民・野人、 うたたともに事に従ひてたがひにあひ*利害し、 忿りて怨結をなす。
○或時ハ室家・知識・郷党・市里・愚民・野人、転タ共ニ従ヒテ↠事ニ更ル相*利害シ、忿リテ成ズ↢怨結ヲ↡。
^富有なれども*慳惜してあへて施与せず。 宝を愛して貪ること重く、 心労し身苦しむ。
○富有ナレドモ慳惜シテ不↢肯テ施与セ↡。愛シテ↠*宝ヲ貪ルコト重ク、心労レ身苦ム。
二 Ⅲ ⅲ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(a)(イ)[二][Ⅲ]結責
^かくのごとくして、 竟りに至りて*恃怙するところなし。 ▼独り来り独り去り 、 ひとりも随ふものなけん。 善悪・禍福、 *命を追ひて生ずるところなり。 あるいは*楽処にあり、 あるいは*苦毒に入る。 しかる後に、 いまし悔ゆともまさにまたなんぞ及ぶべき。
○如クシテ↠是クノ至リテ↠竟ニ無ク↠所↢恃怙スル↡、独リ来リ独リ去リ、無カラム↢一モ随フ者↡。善悪・禍福追ヒテ↠命ヲ所ニシテ↠生ズル、或イハ在リ↢楽処ニ↡、或イハ入ル↢苦毒ニ↡。然シテ後ニ乃チ悔ユトモ当ニシ↢復何ゾ及ブ↡。
二 Ⅲ ⅲ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(a)(ロ)正しく盗悪を明す
^世間の人民、 心愚かにして智少なし。 善を見ては憎み謗りて、 慕ひ及ばんことを思はず、 ただ悪をなさんと欲ひて、 みだりに非法をなす。 つねに盗心を懐きて他の利を悕望す。 消散し*糜尽してしかもまた求索す。 邪心にして正しからざれば、 人の色ることあらんことを懼る。 あらかじめ思ひ計らずして、 事至りていまし悔ゆ。
○世間ノ人民、心愚カニシテ*少↠智ナリ。見テハ↠善ヲ憎ミ謗リテ、不↠思ハ↢慕ヒ及ブコトヲ↡、但欲シテ↠為サムト↠悪ヲ、*妄ニ作ス↢非法ヲ↡。常ニ懐キテ↢盗心ヲ↡悕↢望シ他ノ利ヲ↡、消散シ*糜尽シテ而モ復求索ス。邪心ニシテ不レバ↠正カラ、懼ル↢人ノ有ルヲ↟色ルコト。不シテ↢*予メ思ヒ計ラ↡、事至リテ乃チ悔ユ。
二 Ⅲ ⅲ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)現在痛苦
^今世に現に王法の牢獄あり。 罪に随ひて趣向してその殃罰を受く。 その前世に道徳を信ぜず、 善本を修せざるによりていままた悪をなさば、 天神、 *剋識してその*名籍を別つ。
○今世ニ現ニ有リ↢王法ノ牢獄↡。随ヒテ↠罪ニ趣向シテ受ク↢其ノ殃罰ヲ↡。因リテ↧其ノ前世ニ不↠信ゼ↢道徳ヲ↡、不ルニ↠修セ↢善本ヲ↡、*今復為スニ↞悪ヲ、天神ハ剋識シテ別ツ↢其ノ名籍ヲ↡。
二 Ⅲ ⅲ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(c)死後焼苦
^寿終り、 神逝きて悪道に下り入る。
○寿終レバ神逝キテ下リ↢入ル悪0059道ニ↡。
^ ゆゑに自然の三塗の無量の苦悩あり。 そのなかに展転して世々に劫を累ねて出づる期あることなく、 解脱を得がたし。 痛みいふべからず。
○故ニ有リ↢自然ニ三塗ノ無量ノ苦悩↡。展↢転シテ其ノ中ニ↡世世ニ*累ネテ↠劫ヲ無ク↠有ルコト↢出ヅル期↡、難シ↠得↢解脱ヲ↡。痛ミ不↠可カラ↠言フ。
二 Ⅲ ⅲ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅲ)結
^これを二0312つの大悪・二つの痛・二つの焼とす0066。 勤苦かくのごとし。 たとへば大火の人身を焚焼するがごとし。
○是ヲ為ス↢二ノ大悪・二ノ痛・二ノ焼ト↡。*勤苦スルコト如シ↠是クノ。譬ヘバ如シ↣大火ノ焚↢焼スルガ人身ヲ↡。
二 Ⅲ ⅲ b ハ (二)(Ⅱ)正しく修善を勧む
^人よくなかにおいて一心に意を制し、 身を端しくし行ひを正しくして、 独りもろもろの善をなして衆悪をなさざれば、 身独り度脱して、 その福徳・度世・上天・泥洹の道を獲ん。 これを二つの大善とす」 と。
○人能ク於テ↠中ニ一心ニ制シ↠意ヲ、端シクシ↠身ヲ正シクシテ↠行ヲ、独リ作シテ↢諸ノ善ヲ↡不レバ↠為サ↢衆悪ヲ↡者、身独リ度脱シテ、獲ム↢其ノ福徳・度世・上天・泥洹之道ヲ↡。是ヲ為スト↢二ノ大善ト↡也。
二 Ⅲ ⅲ b ハ (三)邪淫を誡む
(Ⅰ)其の過失を挙ぐ
(ⅰ)標
【37】^仏のたまはく、 「その三つの悪と は、
○仏言ク、其ノ三ノ悪ト者、
二 Ⅲ ⅲ b ハ (三)(Ⅰ)(ⅱ)正明
(a)作悪の相を明す
^世間の人民、 あひより寄生してともに天地のあひだに居す。 *処年寿命、 よくいくばくなることなし。 上に賢明・長者・尊貴・豪富あり。 下に貧窮・*廝賎・*劣・愚夫あり。 なかに不善の人ありてつねに邪悪を懐けり。
○世間ノ人民、相因リ寄生シテ共ニ居ス↢天地之間ニ↡。処年寿命、無シ↠能ヘルコト↢幾何モ↡。上ニ有リ↢賢明・長者・尊貴・豪富↡。下ニ有リ↢貧窮・*廝賎・劣・愚夫↡。中ニ有リテ↢不善之人↡。常ニ懐キテ↢邪悪ヲ↡、
^ただ*婬妷を念ひて、 煩ひ胸のうちに満ち、 愛欲交乱して坐起安からず。 貪意*守惜して、 ただいたづらに得んことを欲ふ。 *細色を眄睞して*邪態ほかにほしいままにす。 自妻をば厭ひ憎みて、 ひそかにみだりに入出す。 家財を費損して、 事非法をなす。
○但念ズ↢*婬*妷ヲ↡。煩ヒ満チ↢胸ノ中ニ↡、愛欲交乱シテ坐起不↠安カラ。貪意守惜シテ、但欲ス↢唐ニ得ムコトヲ↡。眄↢睞シテ細色ヲ↡邪態外ニ逸ニシ、自妻ハ厭ヒ*憎ミテ、私ニ妄ニ*入出ス。費↢損シテ家財ヲ↡、事為ス↢非法ヲ↡。
^*交結聚会して師を興してあひ伐つ。 攻め劫ひ殺戮して強奪すること不道なり。 悪心ほかにありて*みづから業を修せず。 盗窃して趣かに得れば、 *欲繋して事をなす。 *恐熱迫愶して妻子に*帰給す。 心をほしいままにし、 意を快くし、 身を極めて楽しみをなす。 あるいは親属において*尊卑を避けず。 家室・中外患へてこれに苦しむ。
○交結聚会シテ興シテ↠師ヲ相伐ツ。攻メ劫ヒ殺戮シテ強奪スルコト*不道ナリ。悪心在リテ↠外ニ不↢自ラ修セ↟業ヲ。盗窃シテ趣ニ得レバ欲*繋シテ成ジ↠事ヲ、恐*熱迫*愶シテ帰↢給ス妻子ニ↡。恣ニシ↠心ヲ快クシ↠意ヲ、極メテ↠身ヲ作ス↠楽シミヲ。或イハ於テ↢親属ニ↡不↠避ケ↢尊*卑ヲ↡、家室・中外患ヘテ而苦ム↠之ニ。
二 Ⅲ ⅲ b ハ (三)(Ⅰ)(ⅱ)(b)現在痛苦
^またまた王法の0067禁0313令を畏れず。 かくのごときの悪は*人・鬼に著され、 日月も照見し、 神明も記識す。
○亦復不↠畏レ↢王法ノ禁令ヲ↡。如キ↠是クノ之悪ハ著サレ↢於人鬼ニ↡、日月モ照見シ、神明モ記識ス。
二 Ⅲ ⅲ b ハ (三)(Ⅰ)(ⅱ)(c)死後焼苦
^ ゆゑに自然の三塗の無量の苦悩あり。 そのなかに展転して世々に劫を累ねて出づる期あることなく、 解脱を得がたし。 痛みいふべからず。
○故ニ有リ↢自然ニ三塗ノ無量ノ苦悩↡。展↢転シテ其ノ中ニ↡世世ニ累ネテ↠劫ヲ無ク↠有ルコト↢出ヅル期↡、難シ↠得↢解脱ヲ↡。痛ミ不↠可カラ↠言フ。
二 Ⅲ ⅲ b ハ (三)(Ⅰ)(ⅲ)結
^これを三つの大悪・三つの痛・三つの焼とす。 勤苦かくのごとし。 たとへば大火の人身を焚焼するがごとし。
○是ヲ為ス↢三ノ大悪・三ノ痛・三ノ焼ト↡。*勤苦スルコト如シ↠是クノ。譬ヘバ如シ↣大火ノ焚↢焼スルガ人身ヲ↡。
二 Ⅲ ⅲ b ハ (三)(Ⅱ)正しく修善を勧む
^人よくなかにおいて一心に意を制し、 身を端しくし行ひを正しくして、 独りもろもろの善をなして衆悪をなさざれば、 身独り度脱して、 その福徳・度世・上天・泥洹の道を獲ん。 これを三つの大善とす」 と。
○人能ク於テ↠中ニ一0060心ニ制シ↠意ヲ、端シクシ↠身ヲ正シクシテ↠行ヲ、独リ作シテ↢諸ノ善ヲ↡不レバ↠為サ↢衆悪ヲ↡者、身独リ度脱シテ、獲ム↢其ノ福徳・度世・上天・泥洹之道ヲ↡。是ヲ為スト↢三ノ大善ト↡也。
二 Ⅲ ⅲ b ハ (四)口過を誡む
(Ⅰ)其の過失を挙ぐ
(ⅰ)標
【38】^仏のたまはく、 「その四つの悪と は、
○仏言ク、其ノ四ノ悪ト者、
二 Ⅲ ⅲ b ハ (四)(Ⅰ)(ⅱ)正明
(a)作悪の相を明す
^世間の人民、 善を修せんと念はず、 うたたあひ*教令してともに衆悪をなす。 *両舌・*悪口・*妄言・*綺語、 *讒賊闘乱す。
○世間ノ人民不↠念ゼ↠修スルコトヲ↠善ヲ、転タ相教令シテ共ニ為ス↢衆悪ヲ↡。両舌・悪口・妄言・綺語、讒賊闘乱ス。
^善人を憎嫉し、 賢明を敗壊して、 傍らにして快喜す。 二親に孝せず、 師長を軽慢し、 朋友に信なくして、 誠実を得がたし。 *尊貴自大にしておのれに道ありと謂ひ、 横に威勢を行じて人を*侵易し、 みづから知ることあたはず。 悪をなして恥づることなし。 みづから強健なるをもつて、 人の*敬難せんことを欲へり。
○憎↢嫉シ善人ヲ↡、敗↢壊シテ賢明ヲ↡、於テ↠傍ニ快喜ス。不↠孝セ↢二親ニ↡、軽↢慢シ師長ヲ↡、朋友ニ無クシテ↠信、難シ↠得↢誠実ヲ↡。尊貴自大ニシテ謂ヒ↢己ニ有リト↟道、横ニ行ジテ↢威勢ヲ↡侵↢易ス於人ヲ↡。不↠能ハ↢自ラ知ルコト↡、為シテ↠悪ヲ無シ↠恥ヅルコト。自ラ以テ↢強健ナルヲ↡欲ス↢人ノ敬難スルコトヲ↡。
^天地・神明・日月を畏れず、 あへて善をなさず、 降化すべきこと難し。 みづからもつて*偃して、 つね0314にしかるべしと謂ひ、 憂懼するところなく、 つねに0068憍慢を懐けり。
○不↠畏レ↢天地・神明・日月ヲ↡、不↢肯テ作サ↟善ヲ、難シ↠可キコト↢降化ス↡。自ラ用テ偃*シテ、謂ヒ↠可シト↢常ニ爾ル↡、無ク↠所↢憂懼スル↡、常ニ懐ク↢憍慢ヲ↡。
二 Ⅲ ⅲ b ハ (四)(Ⅰ)(ⅱ)(b)現在痛苦
^かくのごときの衆悪、 天神記識す。 その前世に*すこぶる福徳をなせるによりて、 小善*扶接し*営護してこれを助く。 今世に悪をなして福徳ことごとく滅しぬれば、 もろもろの善鬼神、 おのおのともにこれを離る。 身独り空しく立ちて、 またよるところなし。
○如キノ↠是クノ衆悪、*天神記識ス。頼リテ↣其ノ前世ニ頗ル作セルニ↢福徳ヲ↡、小善扶接シ営護シテ助クルモ↠之ヲ、今世ニ為シテ↠悪ヲ福徳尽ク滅ヌレバ、諸ノ善*鬼神各ノ*共ニ離レ↠之ヲ、身独リ空シク立チテ無シ↠所↢復依ル↡。
二 Ⅲ ⅲ b ハ (四)(Ⅰ)(ⅱ)(c)死後焼苦
^寿命終り尽きて諸悪の帰するところ 自然に*迫促してともに趣きてこれに頓る。
○寿命終リ尽キテ諸悪ノ所↠帰スル自然ニ迫促シテ共ニ趣キ*頓ル↠*之ニ。
^またその名籍、 記して神明にあり。 *殃咎牽引して、 まさに往いて ˆ悪道にˇ 趣向すべし。 罪報自然にして従ひて捨離することなし。 ただ前み行いて*火鑊に入ることを得て、 身心摧砕し精神痛苦す。 この時に当りて悔ゆともまたなんぞ及ばん。 *天道自然にして、 *蹉跌することを得ず。
○又其ノ名籍、記シテ在リ↢神明ニ↡。殃咎牽引シテ当ニシ↢*往キテ趣向ス↡。罪報自然ニシテ、無シ↢従ヒテ捨離スルコト↡。但得↧前ニ行キテ入リ↢於火鑊ニ↡、身心摧砕シテ精神痛苦スルコトヲ↥。当リテ↢斯之時ニ↡悔ユトモ復何ゾ及バム。天道*自然ニシテ、不↠得↢蹉跌スルコトヲ↡。
^ ゆゑに自然の三塗の無量の苦悩あり。 そのなかに展転して、 世々に劫を累ねて出づる期あることなく、 解脱を得がたし。 痛みいふべからず。
○故ニ有リ↢自然ニ三塗ノ無量ノ苦悩↡。展↢転シテ其ノ中ニ↡世世ニ累ネテ↠劫ヲ無ク↠有ルコト↢出ヅル期↡、難シ↠得↢解脱ヲ↡。痛ミ不↠可カラ↠言フ。
二 Ⅲ ⅲ b ハ (四)(Ⅰ)(ⅲ)結
^これを四つの大悪・四つの痛・四つの焼とす。 勤苦かくのごとし。 たとへば大火の人身を焚焼するがごとし。
○是ヲ為ス↢四ノ大悪・四ノ痛・四ノ焼ト↡。*勤苦スルコト如シ↠是クノ。譬ヘバ如シ↣大火ノ焚↢焼スルガ人身ヲ↡。
二 Ⅲ ⅲ b ハ (四)(Ⅱ)正しく修善を勧む
^人よくなかにおいて、 一心に意を制し、 身を端しくし行ひを正しくして、 独りもろもろの善をなして衆悪をなさざれば、 身独り度脱して、 その福徳・度世・上天・泥洹の道を獲ん。 これを四つの大善とす」 と。
○人能0061ク於テ↠中ニ一心ニ制シ↠意ヲ、端シクシ↠身ヲ正シクシテ↠行ヲ、独リ作シテ↢諸ノ善ヲ↡不バ↠為サ↢衆悪ヲ↡*者、身独リ度脱シ、獲ム↢其ノ福徳・度世・上天・泥洹之道ヲ↡。是ヲ為スト↢四ノ大善↡也。
二 Ⅲ ⅲ b ハ (五)飲酒を誡む
(Ⅰ)其の過失を挙ぐ
(ⅰ)標
【39】^仏のたまはく、 「その五つの悪と は、
○仏言ク、其ノ五ノ悪ト者、
二 Ⅲ ⅲ b ハ (五)(Ⅰ)(ⅱ)正明
(a)作悪の相を明す
(イ)其の人を責む
^世間の人民、 *徙倚懈惰にして、 あへ0069て善0315をなし身を治め業を修せずして、 家室眷属、 飢寒困苦す。 父母、 教誨すれば、 目を瞋らし怒りて譍ふ。 言令和らかならず。 違戻し反逆すること、 たとへば怨家のごとし。 子なきに しかず。
○世間ノ人民、徙倚懈*惰ニシテ、不シテ↢肯テ作シ↠善ヲ治メ↠身ヲ修セ↟業ヲ、*家室・眷属、飢寒困苦ス。父母教誨スレバ、瞋ラシ↠目ヲ怒リテ*譍ヘ、言令ニ不シテ↠和セ、違戻シ反逆スルコト、譬ヘバ如シ↢怨家ノ↡。不↠如カ↠無キニハ↠子。
^取与 に*節なくして、 衆ともに患へ厭ふ。 恩に負き義に違して*報償の心ムクヒツグノフコヽロあることなし。
○取与ニ無クシテ↠節、衆共ニ患ヘ厭フ。負キ↠恩ニ違シテ↠義ニ、無シ↠有ルコト↢報償之心↡。
二 Ⅲ ⅲ b ハ (五)(Ⅰ)(ⅱ)(a)(ロ)正しく飲酒の相を明す
^貧窮困乏にしてまた得ることあたはず。 *辜較縦奪してほしいままに*遊散す。 しばしばいたづらに得るに*串ひて、 もつてみづから*賑給す。 酒に耽り、 美きを嗜みて、 飲食、 *度なし。 心をほしいままに蕩逸して*魯扈牴突す。 ^人の情を識らず 、 しひて抑制せんと欲ふ。
○貧窮困乏ニシテ不↠能ハ↢復得ルコト↡。辜較縦奪シテ放恣ニ遊散ス。串ヒテ↢数バ唐ニ得ルニ↡、用テ自ラ*賑給ス。耽リ↠酒ニ嗜ミテ↠美ヲ、飲食無シ↠度。肆ニシ↠心ヲ蕩逸シテ、魯扈*牴突ス。不↠識ラ↢人ノ情ヲ↡、強ヒテ欲シ↢抑制セムト↡、
二 Ⅲ ⅲ b ハ (五)(Ⅰ)(ⅱ)(a)(ハ)広く造罪の相を明す
^人の善あるを見て、 憎嫉してこれを悪む。 義なく礼なくして ˆわが身をˇ 顧み難るところなし。 みづからもつて*職当して*諌暁すべからず。 六親眷属の*所資の有無、 憂念することあたはず。 父母の恩を惟はず、 師友の義を存せず。 心につねに悪を念ひ、 口につねに悪をいひ、 身につねに悪を行じて、 かつて一善もなし。
○見テハ↢人ノ有ルヲ↟善、*憎嫉シテ悪ム↠之ヲ。無ク↠義無クシテ↠礼、無シ↠所↢顧ミ*難ル↡。自ラ用テ*職当シテ不↠可カラ↢諌暁ス↡。六親眷属ノ所資ノ有無、不↠能ハ↢憂念スルコト↡。不↠惟ハ↢父母之恩ヲ↡、不↠存ゼ↢師友之義ヲ↡。心ニ常ニ念ヒ↠悪ヲ、口ニ常ニ言ヒ↠悪ヲ、身ニ常ニ行ジテ↠悪ヲ、曽テ無シ↢一善モ↡。
^先聖・諸仏の経法を信ぜず、 道を行じて度世を得べきことを信ぜず、 死して後に*神明さらに生ずることを信ぜず。 善をなせば善を得、 悪をなせば悪を得ることを信ぜず。 *真人を殺し、 *衆僧を闘乱せんと欲ひ、 父母 兄弟 眷属を害せんと欲ふ。 六親、 憎悪してそれをして死せしめんと願ふ。
○不↠信ゼ↢先聖・諸仏ノ経法ヲ↡、不↠信ゼ↢行ジテ↠道ヲ可キコトヲ↟得↢度世ヲ↡、不↠信ゼ↢死シテ後ニ神明ノ更ニ生ズルコトヲ↡、不シテ↠信ゼ↢作セバ↠善ヲ得↠善ヲ、為セバ↠悪ヲ得ルコトヲ↟悪ヲ、欲シ↧殺シ↢真人ヲ↡、闘↦乱セムト衆僧ヲ↥、欲ス↠害セムト↢父母・兄弟・眷属ヲ↡。六親憎悪シテ願ズ↠令メムト↢其ヲシテ死セ↡。
二 Ⅲ ⅲ b ハ (五)(Ⅰ)(ⅱ)(b)現在痛苦
^かくのごと0070きの世人、 心意ともにしかなり。 愚痴*矇昧にしてみづから智慧ありと以う0316て、 生の従来するところ、 死の趣向するところを知らず。 *仁ならず、 順ならず、 天地に悪逆してそのなかにおいて*僥倖を悕望し、 長生を求めんと欲すれども、 かならずまさに死に帰すべし。
○如キノ↠是クノ世ノ人、心意倶ニ然ナリ。愚痴*矇昧ニシテ而自ラ以ヒテ↢智慧アリト↡、不↠知ラ↧生ノ所↢従来スル↡、死ノ所ヲ↦趣向スル↥。不↠仁ナラ不↠順ナラ、*悪↢逆シテ天地ニ↡而於テ↢其ノ中ニ↡悕↢望シ僥倖ヲ↡、欲スレドモ↠求メムト↢長生ヲ↡、会ズ当ニシ↠帰ス↠死ニ。
二 Ⅲ ⅲ b ハ (五)(Ⅰ)(ⅱ)(c)死後焼苦
(イ)其の迷情を責む
[一]臨終悔𢣷
^*慈心をもつて教誨して、 それをして善を念ぜしめ、 *生死・善悪の趣、 自然にこれあることを開示すれども、 しかもあへてこれを信ぜず。 心を苦きてともに語れども、 その人に益なし。 心中閉塞して意開解せず。
○慈心ヲモテ教誨0062シテ、令メ↢其ヲシテ念ゼ↟善ヲ、開↢示スレドモ生死・善悪之趣、自然ニ有ルコトヲ↟是而モ不↢*肯テ信ゼ↟之ヲ。苦↠心与ニ語レドモ、無シ↠益スルコト↢其ノ人ヲ↡。心中閉塞シテ意不↢開解セ↡。
^*大命まさに終らんとするに、 *悔懼こもごも至る。 あらかじめ善を修せずして、 窮まるに臨んでまさに悔ゆ。 これを後に悔ゆとも まさになんぞ及ばんや。
○大命将ニルニ↠終ラムト悔懼交至ル。不シテ↢*予メ修セ↟善ヲ、臨ミテ↠窮ルニ方ニ悔ユ。悔ユトモ↢之ヲ於後ニ↡将ニ何ゾ及バム乎。
二 Ⅲ ⅲ b ハ (五)(Ⅰ)(ⅱ)(c)(イ)[二]死後受苦
^天地のあひだに五道 ˆの輪廻の道理ˇ、 分明なり。 *恢廓窈窕として*浩々茫々たり。 善悪報応し、 禍福あひ承けて、 身みづからこれに当る。 たれも代るものなし。 *数の自然なり。 その所行に応じて、 殃咎、 命を追うて、 縦捨を得ることなし。
○天地之間ニ五道分明ナリ。恢廓窈*窕トシテ浩浩茫茫タリ。善悪報応シ、禍福相承ケテ、身自ラ当ル↠之ニ。無シ↢誰モ代ル者↡。数之自然ナリ。応ジテ↢*其ノ所行ニ↡、殃*咎追ヒテ↠命ヲ無シ↠得コト↢縦捨ヲ↡。
^善人は善を行じて、 楽より楽に入り、 明より明に入る。 悪人は悪を行じて、 苦より苦に入り、 *冥より冥に入る。 たれかよく知 るものぞ、 独り仏の知りたまふのみ。 教語開示すれども、 信用するものは少なし。 生死休まず、 悪道絶えず。 かくのごときの世人、 つぶさに ˆ述べˇ 尽すべきこと難0071し。
○善人ハ行ジテ↠善ヲ、従リ↠楽入リ↠楽ニ、従リ↠明入ル↠明ニ。悪人ハ行ジテ↠悪ヲ、従リ↠苦入リ↠苦ニ、従リ↠冥入ル↠冥ニ。誰カ能ク知ル者アラムヤ。独リ仏ノ知リタマフ耳。教語シ開示スレドモ信用スル者ハ少シ。生死不↠休マ、悪道不↠絶エ。如キノ↠是ノ世ノ人難シ↠可キコト↢具ニ尽ス↡。
二 Ⅲ ⅲ b ハ (五)(Ⅰ)(ⅱ)(c)(ロ)正明
^ ゆゑに自然の三塗の無量の苦悩あり。 そのなかに展転して世々に劫を累ねて出づる期あることなく、 解0317脱を得がたし。 痛みいふべからず。
○故ニ有リ↢自然ニ三塗ノ無量ノ苦悩↡。展↢転シテ其ノ中ニ↡世世ニ累ネテ↠劫ヲ無ク↠有ルコト↢出ヅル期↡、難シ↠得↢解脱ヲ↡。痛ミ不↠可カラ↠言フ。
二 Ⅲ ⅲ b ハ (五)(Ⅰ)(ⅲ)結
^これを五つの大悪・五つの痛・五つの焼とす。 勤苦かくのごとし。 たとへば大火の人身を焚焼するがごとし。
○是ヲ為ス↢五ノ大悪・五ノ痛・五ノ焼ト↡。*勤苦スルコト如シ↠是クノ。譬ヘバ如シ↣大火ノ焚↢焼スルガ人身ヲ↡。
二 Ⅲ ⅲ b ハ (五)(Ⅱ)正しく修善を勧む
^人よくなかにおいて一心に意を制し、 身を端しくし念を正しくして、 言行あひ副ひ、 なすところ誠を至し、 語るところ語のごとく、 心口転ぜずして、 独りもろもろの善をなして衆悪をなさざれば、 身独り度脱して、 その福徳・度世・上天・泥洹の道を獲ん。 これを五つの大善とす」 と。
○人能ク於テ↠中ニ一心ニ制シ↠意ヲ、端シクシ↠身ヲ正シクシテ↠念ヲ、言行相副ヒ、所↠作ス至シ↠誠ヲ、所↠語ル如クシ↠語ノ、心口不シテ↠転ゼ、独リ作シテ↢諸ノ善ヲ↡不レバ↠為サ↢衆悪ヲ↡*者、身独リ度脱シテ、獲ム↢其ノ福徳・度世・上天・泥洹之道ヲ↡。是ヲ為スト↢五ノ大善ト↡也。
二 Ⅲ ⅳ 弥勒に嘱して教誡せしむ
a 仏勅
イ 前を牒して教誨す
(一)前を牒して後を起す
【40】^仏、 弥勒に告げたまはく、 「われなんぢらに語りしごとく、 この世の五悪、 勤苦かくのごとし。 五痛・五焼、 展転してあひ生ず。
○仏告ゲタマハク↢弥勒ニ↡、吾語レリ↢汝等ニ↡。是クノ世ノ五悪、*勤苦スルコト若シ↠此クノ。五痛・五焼、展転シテ相生ズ。
二 Ⅲ ⅳ a イ (二)正しく教誨す
(Ⅰ)五悪を制す
(ⅰ)其の悪・痛・焼の相を明す
^ただ衆悪をなして善本を修せざれば、 みなことごとく自然にもろもろの悪趣に入る。
○但作シテ↢衆悪ヲ↡不レバ↠修セ↢善本ヲ↡、皆悉ク自然ニ入ル↢諸ノ悪趣ニ↡。
^あるいはそれ今世にまづ*殃病を被りて、 死を求むるに得ず。 生を求むるに得ず。 罪悪の招くところ衆に示してこれを見せしむ。 身死して行に随うて三悪道に入りて、 苦毒無量にしてみづからあひ*燋然す。
○或イハ*其レ今世ニ先ヅ被リテ↢殃病ヲ↡、求ムルニ↠死ヲ不0063↠得、求ムルニ↠生ヲ不↠得。罪悪ノ所↠招ク、示シテ↠衆ニ見セシム↠之ヲ。身死シテ随ヒテ↠行ニ入リテ↢三悪道ニ↡、苦毒無量ニシテ自ラ相燋然ス。
二 Ⅲ ⅳ a イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)造悪の所由を明す
^その久しくして後に至りて ˆ再び人間界に生じˇ ともに怨結をなし、 *小微より起りてつひに大悪となる。 みな財色に貪着して施恵することあたはざるによりてなり。 *痴欲に迫められて心に随うて思想0072す。 煩悩結縛して解けやむことあることなし。
○至リテ↢其ノ久シクシテ後ニ↡共ニ作シ↢怨結ヲ↡、従リ↢小微↡起リテ遂ニ成ズ↢大悪ヲ↡。皆由リテナリ↧貪↢著シテ財色ニ↡不ルニ↞能ハ↢施*恵スルコト↡。痴欲ニ所レテ↠迫メ随ヒテ↠心ニ思想シ、煩悩結縛シテ無シ↠有ルコト↢解ケ已ムコト↡。
^おのれを厚くし利を諍ひて*省録するところなし。 富貴・栄華、 時に当りて意を快くして忍辱することあたはず。 つとめて善を修せざれば、 威勢い0318くばくもなくして、 随ひてもつて磨滅す。 身坐まりて労苦す。 久しくして後 大きに劇し。
○厚クシ↠己ヲ諍ヒテ↠利ヲ無シ↠所↢省録スル↡。富貴・栄華、当リテ↠時ニ快クシテ↠意ヲ、不↠能ハ↢忍辱スルコト↡、不レバ↢務メテ修セ↟善ヲ、威勢無クシテ↠幾クモ、随ヒテ以テ磨滅ス。身*坐リテ↢労苦ニ↡。久シクシテ後ニ大ニ劇シ。
二 Ⅲ ⅳ a イ (二)(Ⅰ)(ⅲ)受報自然を結嘆す
^*天道、 施張して自然に*糺挙し、 *綱紀の羅網、 上下 相応す。 *煢々忪々として、 まさにそのなかに入るべし。 古今にこれあり。 痛ましきかな、 傷むべし」 と。
○天道施張シテ自然ニ糾挙シ、綱*紀ノ羅網、上下相応ス。煢煢忪忪トシテ、当ニシ↠入ル↢其ノ中ニ↡。古今ニ有リ↠是。痛マシキ哉可シト↠傷ム。
二 Ⅲ ⅳ a イ (二)(Ⅱ)五善を修すを勧む
(ⅰ)仏化の勝益を標す
^仏、 弥勒に語りたまはく、 「世間かくのごとし。 仏みなこれを哀れみたまひて、 威神力をもつて 衆悪を摧滅してことごとく善に就かしめたまふ。 *所思を棄捐し、 *経戒を奉持し、 道法を受行して違失するところなくは、 つひに度世・泥洹の道を得ん」 と。
○仏語リタマハク↢弥勒ニ↡、世間如シ↠是クノ。仏皆哀ミタマヒテ↠之ヲ、以テ↢威神力ヲ↡摧↢滅シテ衆悪ヲ↡悉ク令メタマフ↠就カ↠善ニ。棄↢捐シ所思ヲ↡、奉↢持シ経戒ヲ↡、受↢行シテ道法ヲ↡無クハ↠所↢違失スル↡、終ニ得ムト↢度世・泥洹之道ヲ↡。
二 Ⅲ ⅳ a イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)正勧
(a)総勧
^仏のたまはく、 「なんぢいまの諸天・人民、 および後世の人、 仏の経語を得て、 まさにつらつらこれを思ひて、 よくそのなかにおいて心を端しくして行ひを正しくすべし。
○仏言ク、汝今ノ諸天・人民及ビ後世ノ人、得テ↢仏ノ経語ヲ↡、当ニシ↧熟ツラ思ヒテ↠之ヲ、能ク於テ↢其ノ中ニ↡端シクシテ↠心ヲ正シクス↞行ヲ。
二 Ⅲ ⅳ a イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)別して主上を勧む
^主上善をなして、 その下を*率化して*うたたあひ勅令し、 おのおのみづから端しく守り、 聖 ˆ者ˇ を尊び、 善 ˆ人ˇ を敬ひ、 仁慈博愛にして、 仏語の教誨あへて*虧負することなかれ。 まさに度世を求めて生死衆悪の本を抜断すべし。 まさに三塗の無量の憂畏苦痛の道を離るべし。
○主上為シテ↠善ヲ、率↢化シテ其ノ下ヲ↡転タ相勅令シ、各ノ自ラ端シク守リ、尊ビ↠聖ヲ敬ヒ↠善ヲ、仁慈博愛ニシテ、仏語ノ教誨無レ↢敢テ虧負スルコト↡。当ニシ↧求メテ↢度世ヲ↡抜↦断ス生死衆悪之本ヲ↥。*当ニシ↠離ル↢三塗ノ無量ノ憂*畏苦痛之道ヲ↡。
二 Ⅲ ⅳ a イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(c)修善の益を挙ぐ
^なんぢら▼ここにおいて広く0073*徳本を植ゑて、 恩を布き恵を施して、 道禁を犯すことなかれ。 忍辱・精進・一心・智慧をもつてうたたあひ教化し、 徳をなし善を立てよ。 心を正しくし意を正しくして、 斎戒清浄なること一日一夜すれば、 無量寿国にありて善をなすこと百歳せんに勝れたり。
○汝等於テ↠是ニ広ク*植エテ↢徳本ヲ↡、布キ↠恩ヲ施シテ↠*恵ヲ、勿レ↠犯スコト↢道禁ヲ↡。忍辱・精進・一心・智慧ヲモテ転タ相教化シ、為シ↠徳ヲ立テヨ↠善ヲ。正シクシ↠心ヲ正シクシテ↠意ヲ斎戒清浄ナルコト一日一夜スレバ、勝レタリ↧在リテ↢無量寿国ニ↡為スコト↠善百歳スルヨリモ↥。
^◆ゆ0319ゑはいかん。 ▼かの仏国土は無為自然にして、 みな衆善を積んで*毛髪の悪もなければなり。
○所以者何ン。彼ノ仏国土ハ無為自然ニシテ、皆積ミ↢衆善ヲ↡、無ケレバナリ↢毛髪之0064悪モ↡。
◆*ここにして善を修すること十日十夜すれば、 他方の諸仏国土にして善をなすこと千歳するに勝れたり。
○於テ↠此ニ修スルコト↠善ヲ十日十夜スレバ、勝レタリ↧於テ↢他方ノ諸仏ノ国*土ニ↡為スコト↠善ヲ千歳スルヨリモ↥。
ゆゑはいかん。 他方の仏国は、 善をなすものは多く悪をなすものは少なし。 福徳自然にして造悪の地なければなり。
○所以者何ン。他方ノ仏国ハ、為ス↠善ヲ者ハ多ク為ス↠悪ヲ者ハ少シ。福徳自然ニシテ無ケレバナリ↢造悪之地↡。
^ただ*このあひだのみ悪多くして、 自然なることあることなし。 勤苦して欲を求め、 うたたあひ*欺紿し、 *心労し形困しみて、 苦を飲み毒を食らふ。 かくのごとく怱務して、 いまだかつて*寧息せず。
○唯此ノ間ノミ多クシテ↠悪、無シ↠有ルコト↢自然ナルコト↡。*勤苦シテ求メ↠欲ヲ、転タ相欺*紿シ、心労レ形困ミテ、飲ミ↠苦ヲ食ラフ↠毒ヲ。如ク↠是クノ*怱務シテ、未ダ↢嘗テ寧息セ↡。
二 Ⅲ ⅳ a ロ 正教誨
(一)仏世の勝益を明す
(Ⅰ)教法の勝
^われなんぢら天・人の類を哀れみて、 ねんごろに誨喩し、 教へて善を修せしむ。 *器に随ひて開導し 、 経法を授与するに承用せざることなし。 意の所願にありてみな道を得しむ。
○吾哀ミテ↢汝等天人之類ヲ↡、苦心ニ誨喩シ、教ヘテ令メム↠修セ↠善ヲ。随ヒテ↠*器ニ開導シ、授↢与スルニ経法ヲ↡莫シ↠不ルハ↢承用セ↡。在リテ↢意ノ所願ニ↡皆令メム↠得↠道ヲ。
二 Ⅲ ⅳ a ロ (一)(Ⅱ)国土の勝
^仏の*遊履したまふところの*国邑・*丘聚、 化を蒙らざるはなし。 天下和順し日月清明なり。 風雨時をもつてし、 *災厲起らず、 国豊かに民安くして、 *兵戈用ゐることなし。 ˆ人民ˇ 徳を崇め仁を興し 、 つとめて*礼譲を修す0074」 と。
○仏ノ所ノ↢遊履シタマフ↡国邑・丘聚、靡シ↠不ルハ↠蒙ラ↠化ヲ。*天下和順ニシテ日月清明ナリ。風雨以テシ↠時ヲ、災厲不↠起ラ。国豊カニ民安カニシテ、兵戈無シ↠用ヰルコト。○崇メ↠徳ヲ興シ↠仁ヲ、務メテ修スト↢礼譲ヲ↡。
二 Ⅲ ⅳ a ロ (一)(Ⅲ)護念の勝
^仏のたまはく、 「われなんぢら諸天・人民を哀愍すること、 父母の子を念ふよりもはなはだし。 いまわれこの世間において仏となり、 五悪を降化し、 五痛を消除し、 五焼を絶滅して、 善をもつて悪を攻め、 生死の苦を抜いて*五徳を獲しめ 、 *無為の安きに昇らし0320む。
○仏言ク、我哀↢愍スルコト汝等諸天・人民ヲ↡、甚ダシ↢於父母ノ念フヨリモ↟子ヲ。今*我於テ↢此ノ世*間ニ↡作リ↠仏ト、降↢化シ五悪ヲ↡、消↢除シ五痛ヲ↡、絶↢滅シテ五焼ヲ↡、以テ↠善ヲ*攻メ↠悪ヲ、抜キテ↢生死之苦ヲ↡、令メム↧獲シメ↢五徳ヲ↡*昇ラ↦無為之安キニ↥。
二 Ⅲ ⅳ a ロ (二)滅後の劣相を明す
^われ世を去りて後、 経道やうやく滅し、 人民*諂偽にしてまた衆悪をなし、 五痛・五焼還りて前の法のごとく、 久しくして後にうたた劇しからんこと、 ことごとく説くべからず。 われただなんぢがために略してこれをいふ のみ」 と。
○吾去リテ↠世ヲ後、経道漸ク滅シ、人民諂偽ニシテ復為シ↢衆悪ヲ↡、五*痛・五焼還リテ如ク↢前ノ法ノ↡、久シクシテ後ニ転タ劇シカラムコト。不↠可カラ↢悉ク説ク↡。我但為ニ↠汝ガ略シテ言フ↠之ヲ耳ト。
二 Ⅲ ⅳ a ロ (三)上を結して正しく嘱す
^仏、 弥勒に語りたまはく、 「なんぢらおのおのよくこれを思ひ、 うたたあひ教誡し、 仏の経法のごとくして犯すこと得ることなかれ」 と。
○仏*語リタマハク↢弥勒ニ↡、汝等各ノ善ク思ヒ↠之ヲ、転タ相教誡シ、如クシテ↢仏ノ経法ノ↡、無レト↠得ルコト↠犯スコトヲ也。
二 Ⅲ ⅳ b 弥勒領受
^ここにおいて弥勒菩薩、 合掌してまうさく、 「仏の所説、 はなはだねんごろなり。 世人まことにしかなり。 如来あまねく慈しみて哀愍し 、 ことごとく度脱せしめたまふ。 仏の重誨を受けてあへて違失せじ」 と。
○於テ↠是ニ弥勒菩薩合掌シテ白シテ言ク、仏ノ所説甚ダ*苦ナリ。世ノ人実ニ爾ナリ。如来普ク慈シミテ哀愍シ、悉ク令メタマフ↢度脱セ↡。受ケテ↢仏ノ重誨ヲ↡不ト↢敢テ違失セ↡。
二 Ⅳ 現土証誠【霊山現土】
ⅰ 見土方法
a 仏教令
【41】^▼仏、 阿難に告げたまはく、 「なんぢ起ちてさらに衣服を整へ、 合掌し恭敬して無量寿仏を礼したてまつれ。 ▼十方国土の諸仏如来は、 つねにともにかの仏の無着・無礙なるを称揚し讃歎したまへばなり」 と。
○仏告ゲタマハク↢阿*難ニ↡、汝起チテ更ニ整ヘ↢衣服ヲ↡、合掌シ恭敬シテ礼シタテマツレ↢無量寿仏ヲ↡。十方国土ノ諸仏如0065来ハ、常ニ共ニ称↢揚シ讃↣歎シタマヘバナリト彼ノ仏ノ無著・無礙ナルヲ↡。
二 Ⅳ ⅰ b 阿難受命
^ここにおいて阿難起ちて衣服を整へ、 身を正しくし面を西にして、 恭敬し合掌して、 五体を地に投0075げて、 無量寿仏を礼したてまつりてまうさく、 「世尊、 願はくは かの仏・安楽国土、 およびもろもろの菩薩・声聞の大衆を見たてまつらん」 と。
○於テ↠是ニ阿難起チテ整ヘ↢衣服ヲ↡、正シクシ↠身ヲ西ニシテ↠*面ヲ、恭敬シ合掌シテ、五体ヲ投ゲテ↠地ニ、礼シタテマツリテ↢無量寿仏ヲ↡白シテ言ク、世尊、願クハ見タテマツラムト↢彼ノ仏・安楽国土及ビ諸ノ菩薩・声聞ノ大衆ヲ↡。
二 Ⅳ ⅱ 現土妙相
a 正現
^この語を説きをはるに、 即時に無量寿仏は、 大光明を放ちてあまねく一切諸仏の世界を照らしたまふ。 *金剛囲山、 須弥山王、 大小0321の諸山、 一切のあらゆるものみな同じく一色なり。
○説キ↢是ノ語ヲ↡已ルニ、即時ニ無量寿仏ハ放チテ↢大光明ヲ↡普ク照シタマフ↢一切諸仏ノ世界ヲ↡。金剛囲山、須弥山王、大小ノ諸山、一切ノ所有ルモノ皆同ジク一色ナリ。
二 Ⅳ ⅱ b 譬に約し其の相を明す
^たとへば*劫水の世界に*弥満するに、 そのなかの万物、 沈没して現れず、 *滉瀁浩汗としてただ大水をのみ見るがごとし。 かの仏の光明もまたまたかくのごとし。 声聞・菩薩の一切の光明、 みなことごとく隠蔽して、 ただ仏光の*明曜顕赫なるを見たてまつる。
○譬ヘバ如シ↧劫水ノ弥↢満スルニ世界ニ↡、其ノ中ノ万物沈没シテ不↠現ゼ、滉瀁浩汗トシテ唯見ルガ↦大水ノミヲ↥。彼ノ仏ノ光明モ亦復如シ↠是クノ。声聞・菩薩ノ一切ノ光明、皆悉ク隠蔽シテ唯見ル↢仏ノ光ノ明曜顕赫ナルヲ↡。
二 Ⅳ ⅱ c 彼此相見
^その時 阿難、 すなはち無量寿仏を見たてまつるに、 威徳*巍々として、 須弥山王の、 高くして一切のもろもろの世界の上に出づるがごとし。 相好 ˆより放つˇ 光明の照曜せざることなし。 *この会の四衆、 一時にことごとく見たてまつる。 *かしこにしてこの土を見ること、 またまたかくのごとし。
○爾ノ時阿難即チ見タテマツルニ↢無量寿仏ヲ↡、威徳巍巍トシテ、如シ↣須弥山王ノ高クシテ出ヅルガ↢一切ノ諸ノ世界ノ上ニ↡。相好ノ光明ノ靡シ↠不ルハ↢照曜セ↡。此ノ会ノ四衆一時ニ悉ク見タテマツリ、○彼ノ見ルコトモ↢此ノ土ヲ↡亦復如シ↠是クノ。
二 Ⅳ ⅲ 広く真化を判じ信疑の得失を証す【胎化得失】
a 真化の二土を弁定す
イ 真土
(一)浄土を証定す
【42】^その時 仏、 阿難および慈氏菩薩 (弥勒) に告げたまはく、 「なんぢかの国を見るに、 地より以上浄居天に至るまで、 そのなかのあらゆる微妙厳浄なる自然の物、 ことごとく見ると せんやいなや」 と。
○爾ノ時仏告ゲタマハク↢阿難及ビ慈氏菩薩ニ↡、汝見ルニ↢彼ノ国ヲ↡、従リ↠地已上至ルマデ↢浄居天ニ↡、其ノ中ノ所有ル微妙厳浄ナル自然之物、為スヤ↢悉ク見タリト↡不ヤト。
^阿難対へてまうさく、 「*やや0076、 しかなり。 すでに見たてまつれり」 と。
○阿難対ヘテ曰ク、唯然ナリ、已ニ見タリト。
二 Ⅳ ⅲ a イ (二)法身を証定す
^「なんぢむしろまた無量寿仏の大音、 一切世界に宣布して、 衆生を化したまふを聞くやいなや」 と。
○汝寧ニ復聞ケリヤ↧無量寿仏ノ大音ノ宣↢布シテ一切世界ニ↡化シタマフヲ↦衆生ヲ↥不ヤト。
^阿難対へてまうさく、 「やや、 しかなり。 すでに聞きたてまつれり」 と。
○阿難対ヘテ曰ク、唯然ナリ、已ニ聞ケリト。
二 Ⅳ ⅲ a イ (三)摂衆生を証定す
^「かの国の人民、 百千由旬の七宝の宮殿に乗じて障礙あることなく、 あまねく十方に至りて諸仏を供養するを、 なんぢまた見るやいなや」 と。
○彼ノ国ノ人民乗ジテ↢百千由旬ノ七宝ノ宮殿ニ↡無ク↠*有ルコト↢障礙↡、徧ク至リテ↢十方ニ↡供↢養シタテマツル諸仏ヲ↡。汝復見タリヤ不ヤト。
^対0322へてまうさく、 「すでに見たてまつれり」 と。
○対ヘテ曰ク、已ニ見タリト。
二 Ⅳ ⅲ a ロ 化土
(一)正報を証定す
^「かの国の人民に胎生のものあり。 なんぢまた見るやいなや」 と。
○彼ノ国ノ人民ニ有リ↢胎*生ノ者↡。汝復見タリヤ不ヤト。
^対へてまうさく、 「すでに見たてまつれり」 と。
○対ヘテ曰ク、已ニ見タリト。
二 Ⅳ ⅲ a ロ (二)依報を証定す
^「▼その胎生のものの処するところの宮殿は、 あるいは百由旬、 あるいは五百由旬なり。 おのおのそのなかにして、 もろもろの快楽を受くること忉利天上のごとくにして、 またみな自然なり」 と。
○其ノ胎0066生ノ者ノ所ノ↠処スル宮殿ハ、或イハ百由旬、或イハ五百由旬ナリ。各ノ於テ↢其ノ中ニ↡受クルコト↢諸ノ快楽ヲ↡如クニシテ↢忉利天*上ノ↡、亦皆自然ナリト。
二 Ⅳ ⅲ b信疑の得失を証す
イ 弥勒請問
【43】^▼その時に、 慈氏菩薩 (弥勒)、 仏にまうしてまうさく、 「世尊、 なんの因 なんの縁ありてか、 かの国の人民、 胎生・化生なる」 と。
○爾ノ時ニ慈氏菩薩白シテ↠仏ニ言ク、世尊、何ノ因何ノ縁アリテカ彼ノ国ノ人民、胎生・化生ナルト。
二 Ⅳ ⅲ b ロ 仏開示
(一)正しく因縁を答ふ
(Ⅰ)化土因縁
(ⅰ)其の因を挙ぐ
^▼仏、 慈氏に告げたまはく、 「▼もし衆生ありて、 疑惑の心をもつてもろもろの功徳を修して、 かの国に生れんと願はん。 ▼*仏智・▼不思議智・▼不可称智・▼大乗広智・▼無等無倫最上勝智を了らずして、 ▼この諸智において▼疑惑して信ぜず。しかるになほ罪福を信じ0077、 善本を修習して、 その国に生れんと願ふ。
○仏告ゲタマハク↢慈氏ニ↡、若シ有リテ↢衆生↡、以テ↢疑惑ノ心ヲ↡修シテ↢諸ノ功徳ヲ↡願ゼム↠生ゼムト↢彼ノ国ニ↡。不シテ↠了ラ↢仏智・不思議智・不可称智・大乗広智・無等無倫最上勝智ヲ↡、於テ↢此ノ諸智ニ↡疑惑シテ不↠信ゼ。然ルニ猶信ジ↢罪福ヲ↡修↢習シテ善本ヲ↡、願ズ↠生ゼムト↢其ノ国ニ↡。
二 Ⅳ ⅲ b ロ (一)(Ⅰ)(ⅱ)其の果を明す〔第20願成就〕
^△このもろもろの衆生、 ▼かの宮殿に生れて、 寿五百歳、 つねに仏を見たてまつらず、 経法を聞かず、 菩薩・声聞の聖衆を見ず。
○此ノ諸ノ衆生、生ジテ↢彼ノ宮殿ニ↡寿五百歳、常ニ不↠見タテマツラ↠仏ヲ、不↠聞カ↢経法ヲ↡、不↠見↢菩薩・声聞ノ聖衆ヲ↡。
二 Ⅳ ⅲ b ロ (一)(Ⅰ)(ⅲ)其の名を結す
^◆このゆゑに、 かの国土においてこれを胎生といふ。
○是ノ故ニ於テ↢彼ノ国土ニ↡謂フ↢之ヲ胎生ト↡。
二 Ⅳ ⅲ b ロ (一)(Ⅱ)真土因縁
(ⅰ)凡夫往生
^▼もし衆生ありて、 ▼あきらかに仏智乃至勝智を信じ、 もろもろの功徳をなして信心回向すれば、 このもろもろの衆生、 ▼七宝の華のなかにおいて▼自然に化生し 、 *跏趺して坐し、 須臾のあひだに身相・光明・智慧0323・功徳、 もろもろの菩薩のごとく具足し成就せん。
○若シ有リテ↢衆生↡、明カニ信ジ↢仏智乃至勝智ヲ↡、作シテ↢諸ノ功徳ヲ↡信心廻向スレバ、此ノ諸ノ衆生、於リ↢七宝ノ華ノ中↡自然ニ化生シ、*跏趺シテ而坐シ、須臾之*頃ニ身相・光明・智慧・功徳、如ク↢諸ノ菩薩ノ↡具足シ成就ス。
二 Ⅳ ⅲ b ロ (一)(Ⅱ)(ⅱ)聖人往生
【44】^また次に慈氏 (弥勒)、 他方仏国の諸大菩薩、 発心して無量寿仏を見たてまつり 、 ˆ無量寿仏ˇ およびもろもろの菩薩・声聞の衆を恭敬し供養せんと欲はん。 かの菩薩等、 命終りて無量寿国に生ずることを得て、 七宝の華のなかにおいて自然に化生せん。
○復次ニ慈氏、他方*仏国ノ諸ノ大菩薩、発心シテ欲セム↧見タテマツリ↢無量寿仏ヲ↡、恭↦敬シ供↦養シテ、及ボサムト↦諸ノ菩薩・声聞*之衆ニ↥。彼ノ菩薩等、命終シテ得テ↠生ズルコトヲ↢無量*寿国ニ↡、於リ↢七宝ノ華ノ中↡自然ニ化生ス。
二 Ⅳ ⅲ b ロ (二)其の得失を判ず
(Ⅰ)正明
^▼弥勒まさに知るべし、 かの化生のものは智慧勝れたるがゆゑなり。 その胎生のものはみな智慧なし。 五百歳のなかにおいてつねに仏を見たてまつらず、 経法を聞かず、 菩薩・もろもろの声聞の衆を見ず、 仏を供養するに由なし。 ▼菩薩の法式を知らず、 *功徳を修習することを得ず。
○弥勒、当ニシ↠知ル、彼ノ化生ノ者ハ智慧勝レタルガ故ナリ。其ノ胎生ノ*者ハ皆無シ↢智慧↡。於テ↢五百歳ノ中ニ↡常ニ不↠見タテマツラ↠仏ヲ、不↠聞カ↢経法ヲ↡、不↠見↢菩薩・諸ノ声聞ノ衆ヲ↡、無シ↠由↣供↢養シタテマツルニ於0067仏ヲ↡。不↠知ラ↢菩薩ノ法式ヲ↡、不↠得↣修↢習スルコトヲ功徳ヲ↡。
^まさに知るべし、 この人は宿世の時、 ▼智慧あることなくして疑惑せしが致すとこ0078ろなり」 と。
○当ニシ↠知ル、此ノ人ハ宿世之時ニ、無クシテ↠有ルコト↢智慧↡疑惑セルノ所ナリト↠致ス。
二 Ⅳ ⅲ b ロ (二)(Ⅱ)別して譬を設けて化土の劣相を明す
(ⅰ)正しく譬を設く
(a)仏問
【45】^▼仏、 弥勒に告げたまはく、 「たとへば転輪聖王のごとき、 別に七宝の*宮室 ありて、 種々に荘厳し*床帳を張設し、 もろもろの繒幡を懸く。 ▼もしもろもろの小王子ありて罪を王に得れば、 すなはちかの宮中に内れて、 繋ぐに金鎖をもつてす。
○仏告ゲタマハク↢弥勒ニ↡、譬ヘバ如シ↣転輪聖王ニ*別ニ有ルガ↢*七宝ノ*宮室↡。種種ニ荘*厳シ、張↢設シ床帳ヲ↡、懸ク↢諸ノ繒*旛ヲ↡。若シ有リテ↢諸ノ小王子↡得レバ↢罪ヲ於王ニ↡、輒チ内レテ↢彼ノ*宮中ニ↡、繋グニ以テス↢金鎖ヲ↡。
^◆飲食・衣服・*床褥・華香・妓楽を供給せんこと、 転輪王のごとくして乏少するところなけん。 意においていかん。 このもろもろの王子、 むしろかの処を楽ふやいなや」 と。
○供↢*給スルコト*飲食・衣服・床*褥・華香・妓楽ヲ↡、如クシテ↢転輪王ノ↡無カラム↠所↢乏少スル↡。於テ↠意ニ云何ン。此ノ諸ノ王子、寧ロ楽フヤ↢彼ノ処ヲ↡不ヤト。
二 Ⅳ ⅲ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)弥勒答
^対へてまうさく、 「いななり。 ▼ただ種々に方便して、 もろも0324ろの大力 ˆある人ˇ を求めてみづから免れ出でんことを欲ふ」 と。
○対ヘテ曰ク、不也。但種種ニ方便シテ、求メテ↢諸ノ大力ヲ↡欲スト↢自ラ*免レ出デムト↡。
二 Ⅳ ⅲ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)法合
(a)正合
^▼仏、 弥勒に告げたまはく、 「▼このもろもろの衆生も、 またまたかくのごとし。 仏智を疑惑せしをもつてのゆゑに、 かの ˆ胎生のˇ ▼宮殿に生じて、 刑罰乃至一念の悪事もあることなし。 ただ▼五百歳のうちにおいて三宝を見たてまつらず、 ˆ諸仏をˇ 供養してもろもろの善本を修することを得ず。 これをもつて苦とす。 余の楽ありといへども、 なほかの処を楽はず。
○仏告ゲタマハク↢弥勒ニ↡、此ノ諸ノ衆生モ亦復如シ↠是クノ。以テノ↣疑↢惑セルヲ仏智ヲ↡*故ニ、生ズ↢*彼ノ宮殿ニ↡。○無ケレドモ↠有ルコト↢*刑罰乃至一念ノ悪事モ↡、但於テ↢五百歳ノ中ニ↡不↠見タテマツラ↢三宝ヲ↡、不↠得↣供養シタテマツリテ修スルコトヲ↢諸ノ善本ヲ↡。以テ↠此ヲ為ス↠苦ト。雖モ↠有リト↢余ノ楽↡、猶不↠楽ハ↢彼ノ処ヲ↡。
二 Ⅳ ⅲ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)罪滅し仏を見る相を明す
^▼もしこの衆生、 その*本の罪を識りて、 深くみづから*悔責して、 かの処を離れんことを求めば、 すなはち意のごとく 、 無量寿仏の所に往詣して恭敬し供養したてまつることを得0079、 またあまねく無量無数の諸余の仏の所に至りて、 もろもろの功徳を修することを得ん。
○若シ此ノ衆生、識リテ↢其ノ本ノ罪ヲ↡、深ク自ラ悔*責シテ、求ムレバ↠離ルルコトヲ↢彼ノ処ヲ↡、即チ得↧如ク↠意ノ往↢詣シテ無量寿*仏ノ所ニ↡恭敬シ供養シタテマツルコトヲ↥、亦得ム↧徧ク至リテ↢無量無数ノ諸*余ノ仏ノ所ニ↡、修スルコトヲ↦諸ノ功徳ヲ↥。
二 Ⅳ ⅲ b ロ (三)総結し疑を誡め信を勧む
^▼弥勒まさに知るべし、 ▼それ菩薩ありて▼疑惑を生ずるものは、 大利を失すとす。 このゆゑに、 まさにあきらかに*諸仏無上の智慧を信ずべし」 と。
○弥勒、当ニシ↠知ル、其レ有リテ↢菩薩↡生ズル↢疑惑ヲ↡者ハ、為ス↠失スト↢大利ヲ↡。是ノ故ニ応ニ当シト↣明カニ信ズ↢諸仏ノ無上ノ智慧ヲ↡。
二 Ⅴ 十方来生の相を述ぶ【十方来生】
ⅰ 弥勒請問
【46】^▼弥勒菩薩、 仏にまうしてまうさく、 「世尊、 この世界において、 いくばくの*不退の菩薩ありてか、 かの仏国に生ぜん」 と。
○弥勒菩薩白シテ↠仏ニ言ク、世尊、於テ↢此ノ世界ニ↡、有リテカ↢幾所ノ不退ノ菩薩↡、生ズルト↢彼ノ仏国ニ↡。
二 Ⅴ ⅱ 仏開示
a 正列
イ 此土往生を記す
^▼仏、 弥勒に告げたまはく、 「▼この世界において六十七億の▼不退の菩薩ありて、 かの国に往生せん。 一々の菩薩は、 すでにかつて無数の諸仏を供養したてまつること、 ▼*次いで弥勒のごときものなり。▼もろもろの*小行の菩薩および少功徳を修習せんもの、 称計すべからず。 みなまさに往生すべ0325し」 と。
○仏告ゲタマハク↢弥勒ニ↡、於テ↢此ノ世界ニ↡*有リテ↢六十七億ノ不退ノ菩薩↡、往↢生ス彼ノ国ニ↡。一一ノ菩薩ハ已ニ曽0068テ供↢養シタテマツルコト無数ノ諸仏ヲ↡。次イデ如キ↢弥勒ノ↡*者也。諸ノ小行ノ菩薩及ビ修↢習スル少功徳ヲ↡者、不↠可カラ↢称計ス↡。皆当ニシト↢往生ス↡。
二 Ⅴ ⅱ a ロ 他土往生を記す
(一)標
^仏、 弥勒に告げたまはく、 「ただわが刹のもろもろの菩薩等のみかの国に往生するにあらず、 ▼他方の仏土 ˆの菩薩等ˇ も、 またまたかくのごとし。
○仏告ゲタマハク↢弥勒ニ↡、不ズ↣但我ガ刹ノ諸ノ菩薩等ノミ往↢生スルニ彼ノ国ニ↡。他方ノ仏土モ亦復如シ↠是クノ。
二 Ⅴ ⅱ a ロ (二)正列
(Ⅰ)別列
^◆その第一の仏を名づけて遠照といふ。 かしこに百八十億の菩薩あり、 みなまさに往生すべし。
○其ノ第一ノ仏ヲ名ケテ曰フ↢遠照ト↡。彼ニ有リ↢百八十億ノ菩薩↡、皆当ニシ↢往生ス↡。
^◆その第二の仏を名づけて宝蔵といふ。 かしこに九十億の菩薩あり、 みなまさに往生すべし。
○其ノ第二ノ仏ヲ名ケテ曰フ↢宝蔵ト↡。彼ニ有リ↢九十億ノ菩薩↡、皆当ニシ↢往生ス↡。
^◆その第三の仏を名づけて無量音といふ。 かしこに二百二十億の菩薩あり、 みなまさに往生すべし。
○其ノ第三ノ仏ヲ名ケテ曰フ↢無量音ト↡。彼ニ有リ↢二百二十億ノ菩薩↡、皆当ニシ↢往生ス↡。
^◆その第四の仏を名づけて甘露味といふ。 かしこに二百五十億の菩0080薩あり、 みなまさに往生すべし。
○其ノ第四ノ仏ヲ名ケテ曰フ↢甘露味ト↡。彼ニ有リ↢二百五十億ノ菩薩↡、皆当ニシ↢往生ス↡。
^◆その第五の仏を名づけて龍勝といふ。 かしこに十四億の菩薩あり、 みなまさに往生すべし。
○其ノ第五ノ仏ヲ名ケテ曰フ↢龍勝ト↡。彼ニ有リ↢十四億ノ菩薩↡、皆当ニシ↢往生ス↡。
^◆その第六の仏を名づけて勝力といふ。 かしこに万四千の菩薩あり、 みなまさに往生すべし。
○其ノ第六ノ仏ヲ名ケテ曰フ↢勝力ト↡。彼ニ有リ↢万四千ノ菩薩↡、皆当ニシ↢往生ス↡。
^◆その第七の仏を名づけて師子といふ。 かしこに五百億の菩薩あり、 みなまさに往生すべし。
○其ノ第七ノ仏ヲ名ケテ曰フ↢師子ト↡。彼ニ有リ↢五百*億ノ菩薩↡、皆当ニシ↢往生ス↡。
^◆その第八の仏を名づけて離垢光といふ。 かしこに八十億の菩薩あり、 みなまさに往生すべし。
○其ノ第八ノ仏ヲ名ケテ曰フ↢離垢光ト↡。彼ニ有リ↢八十億ノ菩薩↡、皆当ニシ↢往生ス↡。
^◆その第九の仏を名づけて徳首といふ。 かしこに六十億の菩薩あり、 みなまさに往生すべし。
○其ノ第九ノ仏ヲ名ケテ曰フ↢徳首ト↡。彼ニ有リ↢六十億ノ菩薩↡、皆当ニシ↢往生ス↡。
^◆その第十の仏を名づけて妙徳山といふ。 かしこに六十億の菩薩あり、 みなまさに往生すべし。
○其ノ第十ノ仏ヲ名ケテ曰フ↢妙徳山ト↡。彼ニ有リ↢六十億ノ菩薩↡、皆当ニシ↢往生ス↡。
^◆その第十一の仏を名づけて人王といふ。 かしこに十億の菩薩あり、 みなまさに往生すべし。
○其ノ第十一ノ仏ヲ名ケテ曰フ↢人王ト↡。彼ニ有リ↢十億ノ菩薩↡、皆当ニシ↢往生ス↡。
^◆その第十二の0326仏を名づけて無上華といふ。 かしこに無数不可称計のもろもろの菩薩衆あり、 みな不退転にして智慧勇猛なり。 すでにかつて無量の諸仏を供養したてまつりて、 七日のうちにおいてすなはちよく百千億劫に大士の修するところの*堅固の法を摂取す。 これらの菩薩みなまさに往生すべし。
○其ノ第十二ノ仏ヲ名ケテ曰フ↢無上華ト↡。彼ニ有リ↧無数ニシテ不ル↠可カラ↢称計ス↡諸ノ菩薩衆↥、皆不退転ニシテ智慧勇猛ナリ。已ニ曽テ供↢養シタテマツリテ無量ノ諸仏ヲ↡、於テ↢七日ノ中ニ↡即チ能ク摂↢取ス百千億劫ニ大士ノ所↠修ノ堅固之法ヲ↡。斯等ノ菩薩、皆当ニシ↢往生ス↡。
^◆その第十三の仏を名づけて無畏といふ。 かしこに七百九十億の大菩薩衆、 もろもろの*小菩薩および*比丘等の称計すべからざるあり、 みなまさに往生すべし」 と0081。
○其ノ第十三ノ仏ヲ名ケテ曰フ↢無畏0069ト↡。彼ニ有リ↢七百九十億ノ大菩薩衆、諸ノ小菩薩及ビ比丘等ノ不ル↟可カラ↢称計ス↡、皆当ニシト↢往生ス↡。
二 Ⅴ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)広く無数を明す
^仏、 弥勒に語りたまはく、 「▼ただこの十四仏国のなかのもろもろの菩薩等のみまさに往生すべきにあらざるなり。 十方世界無量の仏国より、 その往生するものまたまたかくのごとし、 はなはだ多くして無数なり。
○仏語リタマハク↢弥勒ニ↡、不ズ↣但此ノ十四仏国ノ中ノ諸ノ菩薩等ノミ当ニキニ↢往生ス↡也。十方世界ノ無量ノ仏国ヨリ、其ノ往生スル者モ亦復如シ↠是クノ。甚ダ多クシテ無数ナリ。
二 Ⅴ ⅱ b 総結
^◆われただ十方諸仏の名号と、 および ˆそれらの仏国のˇ 菩薩・比丘のかの国に生ずるものを説かんに、 昼夜一劫すとも なほいまだ竟ることあたはじ。 われいまなんぢがために略してこれを説く のみ」 と。▼
○我但説カムニ↧十方諸仏ノ名号ト及ビ菩薩・比丘ノ生ズル↢彼ノ国ニ↡者ヲ↥、昼夜一劫ストモ尚未ダ↠能ハ↠*竟ルコト。我今為ニ↠汝ガ略シテ説ク↠之ヲ耳ト。
三 流通分
Ⅰ 法を嘆じて付嘱す【弥勒付属】
ⅰ 総じて所詮の宗要を讃ず
【47】^▼仏、 弥勒に語りたまはく、 「▼それかの仏の名号を聞くことを得て、 ▼歓喜踊躍して乃至▼一念せんことあらん。 ▼まさに知るべし、 この人は大利を得とす。 すなはちこれ▼無上の功徳を具足するなりと。
○仏*語リタマハク↢弥勒ニ↡、其レ有リテ↠得ルコト↠聞クコトヲ↢彼ノ仏ノ名号ヲ↡、歓喜踊躍シテ乃チ至ルマデセム↢一念ニ↡。当ニシ↠知ル、此ノ人ハ為ス↠得ト↢大利ヲ↡。則チ是具↢足スルナリト無上ノ功徳ヲ↡。
三 Ⅰ ⅱ 能詮の教法を讃ず
a 難きを挙げ聞信を勧む
イ 正しく難きを挙げ勧む
^このゆゑに弥勒、 ▼たとひ大火ありて三千大千世界に充満すとも、 かならずまさにこれを過ぎて、 この経法を聞きて歓喜信楽し、 受持読誦して説のごとく修行すべし。
○是ノ故ニ弥勒、設ヒ有リテ↢大火↡充↢満ストモ三千大千世界ニ↡、要ズ当ニシ↧過ギテ↠此ヲ、聞キテ↢是ノ経法ヲ↡歓喜信楽シ、受持シ読誦シテ如ク↠説ノ修行ス↥。
三 Ⅰ ⅱ a ロ 其の所以を明す
(一)聞経難きを明す
^◆ゆゑはいかん。 多く菩薩ありてこの経を聞かん0327と欲すれども、 得ることあたはざればなり。
○所以者何ン。多ク有リテ↢菩薩↡欲スレドモ↠聞カムト↢此ノ経ヲ↡而不レバナリ↠能ハ↠得ルコト。
三 Ⅰ ⅱ a ロ (二)其の勝益を明す
^◆もし衆生ありて、 この経を聞くものは、 無上道においてつひに退転せず。 このゆゑにまさに専心に信受し、 持誦し、 説行すべし」 と。
○若シ有リテ↢衆生↡聞ク↢此ノ経ヲ↡者ハ、於テ↢無上道ニ↡終ニ不↢退転セ↡。是ノ故ニ応ニ当シト↢専心ニ信受シ持誦シ説行ス↡。
三 Ⅰ ⅱ a ハ 除疑生信を勧む
^仏のたまはく、 「われいまもろもろの衆生のためにこの経法を説きて、 無量寿仏およびその国土の一切の0082所有を見せしむ。 まさに*なすべきところのものは、 みなこれを ˆ尋ねˇ 求むべし。 ▼わが滅度の後をもつて、 また疑惑を生ずることを得ることなかれ。
○*仏言ク、吾今為ニ↢諸ノ衆生ノ↡説キテ↢此ノ経法ヲ↡、令メム↠見セ↢無量寿仏及ビ其ノ国土ノ一切ノ所有ヲ↡。所ノ↠当ニキ↠為ス者ハ皆可シ↠求ム↠之ヲ。無レ↠得ルコト↧以テ↢我ガ滅度之後ヲ↡復生ズルコトヲ↦疑惑ヲ↥。
三 Ⅰ ⅱ b 哀愍特留益【特留此経】
^▼*当来の世に*経道滅尽せんに、 われ慈悲をもつて哀愍して、 特に此の経を留めて止住すること*百歳せん。 それ衆生ありて、 この経に値ふものは、 意の所願に随ひてみな*得度すべし」 と。
○当来之世ニ経道滅尽セムニ、我以テ↢慈悲ヲ↡哀愍シテ、*特ニ留メテ↢此ノ経ヲ↡止住スルコト百歳セム。其レ有リテ↢衆生↡値フ↢斯ノ経ニ↡者ハ、随ヒテ↢意ノ所願ニ↡皆可シト↢得度ス↡。
三 Ⅰ ⅱ c 信受の難きを讃ず
イ 総じて諸難を列ぬ
^◆仏、 弥勒に語りたまはく、 「▼如来の*興世に値ひがたく、 見たてまつること難し。 諸仏の経道、 得がたく聞きがたし。 菩薩の勝法、 諸波羅蜜、 聞くことを得ることまた難し。 ▼善知識に遇ひ、 ▼法を聞き、 よく行ずること、 これまた難しとす。
○仏語リタマハク↢弥勒ニ↡、如来ノ興世ニ、難ク↠値ヒ難シ↠見エ。諸仏ノ経道、難ク↠得難シ↠聞キ。菩薩ノ勝法0070諸波羅蜜、得ルコト↠聞クコトヲ亦難シ。遇ヒ↢善知識ニ↡、聞キ↠法ヲ能ク行ズルコト、此モ亦為ス↠難シト。
三 Ⅰ ⅱ c ロ 別して今経の信を嘆ず
^▼もしこの経を聞きて信楽受持することは、 ▼難のカタキガなかの難、カタシ これに過ぎたる難はなカタキコト けん。
○若キハ↧聞キテ↢斯ノ経ヲ↡信楽シ受持スルガ↥、難ノ中之難ニシテ無シ↢過ギタル↠此ニ難ハ↡。
三 Ⅰ ⅲ 総結して信行を勧む
^▼このゆゑにわが法はかくのごとくなし、 かくのごとく説き、 かくのごとく教ふ。 まさに信順して法のごとく修行すべし」 と。
○是ノ故ニ我ガ法ハ、如ク↠是クノ作シ、如ク↠是クノ説キ、如ク↠是クノ教フ。応ニ当シト↢信順シテ如ク↠法ノ修行ス↡。
三 Ⅱ 時会得益
ⅰ 正しく得益を明す
【48】^その時に、 世尊、 この経法を説きたまふに、 無量の衆生、 みな*無上正覚の心0328を発しき。 万二千那由他の人、 *清浄法眼を得、 二十二億の諸天・人民、 *阿那含果を得、 八十万の比丘、 *漏尽意解し、 四十億の菩薩、 不退転を得、 *弘誓の功徳をもつてみづから荘厳し 、 将来の世においてまさに正覚を成る0083べし。
○爾ノ時ニ世尊説キタマフニ↢此ノ経法ヲ↡、無量ノ衆生、皆発シキ↢無上正覚之心ヲ↡、万二千那由他ノ人、得↢清浄法眼ヲ↡、二十二億ノ諸天・人民、得↢阿那含*果ヲ↡、八十万ノ比丘、漏尽意解シ、四十億ノ菩薩、得タリ↢不退転ヲ↡。以テ↢弘誓ノ功徳ヲ↡而自ラ荘厳シ、於テ↢将来ノ世ニ↡当ニシ↠成ズ↢正覚ヲ↡。
三 Ⅱ ⅱ 満会霊相
^その時に、 三千大千世界、 *六種に震動し、 大光あまねく十方国土を照らす。 百千の音楽、 自然にしてなし、 無量の妙華、 *紛々として降る。
○爾ノ時ニ三千大千世界六種ニ震動シ、大光普ク照シ↢十方ノ国土ヲ↡、百千ノ音楽自然ニシテ而作リ、無量ノ妙華*紛紛トシテ而降ル。
三 Ⅲ 信受奉行
^仏、 経を説きたまふこと已りて、 弥勒菩薩および十方より来れるもろもろの菩薩衆、 長老阿難、 もろもろの大声聞、 一切の大衆、 仏の所説を聞きたてまつりて、 歓喜せざるはなし。▼
○仏説キタマフコト↠経ヲ已リタマフニ、弥勒菩薩及ビ十方ヨリ来レル諸ノ菩薩衆、長老阿難、諸ノ大声聞、一切ノ大衆、*聞キタテマツリテ↢仏ノ所説ヲ↡、靡シ↠不ルハ↢歓喜セ↡。
仏説無量寿経 巻下
**貞和三歳 丁亥 林鐘仲旬候以聖人御点秘本延写于仮名令授与之訖
願主空善
延書の底本は兵庫県毫摂寺蔵本。 なお、 宗祖加点本を元にした延書と対校し、 相違箇所を赤の点下線(クリックで内容表示)、 減語句を青の点下線で示している。 ただし、 功祚:功祚などの音の違いは割愛した。
至心に回向したまへり 通常は 「至心に回向して」 と読む。 親鸞聖人は如来回向の義をあらわすために、 このように読みかえた。
繒 仏殿にかける絹の天蓋 (かさ)。
真仏 上輩の臨終に現れる仏を指す。
経法 阿弥陀仏が説く教法。
道化を宣布す 阿弥陀仏の教法を、 十方衆生の人々に広く説きのべるという意。
最勝の尊 阿弥陀仏のこと。
深法門に遊入し 深い真理をさとること。
頂 頭。
夢幻響き 次々行の 「電・影」 と合せて五喩を出す。 すなわち、 あらゆる存在は因縁により生ずるものであり、 実体がないことを、 夢・幻・こだま・いなずま・かげに喩える。
刹 刹 (せつ) は梵語クシェートラ(kṣetra)の音写。 国土・世界の意。ここでは阿弥陀仏の浄土のこと。
諸法の性 あらゆる存在の本性。
安養仏 阿弥陀仏のこと。
清浄の処・厳浄の国 阿弥陀仏の浄土を指す。
世尊 諸仏のこと。
この事・この法 阿弥陀仏の本願を指す。
聞きて奉行し 聞いた教えのままに行じて。
見て…慶ばば 見は聞見のこと。 名号のいわれを聞きひらき、 信を得て法を敬い深く心によろこべば。
生死の流 流転輪廻している迷いの世界を指す。
一尋 尋は長さの単位。 両腕を左右に広げた時の長さを一尋とする。
転化 娑婆世界の身を転じて、 浄土へ化生すること。
要妙を究暢し 経典の本旨を究め尽し、 通達すること。
諸根明利 眼・
耳・
鼻・
舌・
身・
意の
六根が明朗で利発であること。
六神通を得て自在であることをいう。
かれに同ずること 五濁の悪世間の人々と同じ相をとること。
わが国のごとくなる 釈尊みずからがこの娑婆世界に応化して、 衆生済度するのと同じであるという意。
前後に… 現れた順序に従って、先のものから次々に消えるという意。
軽挙 神通力によって身軽く飛ぶこと。
本国 阿弥陀仏の浄土を指す。
班宣 班は分かつの意で、 仏が相手の能力に応じて、 法を分けのべること。
熙怡快楽 心身ともにやわらぎよろこぶこと。
講説 教えを説きのべること。
柔軟調伏 心をやわらかく保ち、 自制すること。
離蓋 真実を覆う煩悩 (蓋) を離れること。
愛法楽法喜法の心 仏法を愛楽し歓喜する心。
習滅の音声の方便 善を習い悪を滅する教誡 (音声) を衆生に会得させる種々の手だて。
世語 仏道修行にとって利益にならない世間の俗論。
生身煩悩 迷いの果としての肉体と、 迷いの因としての煩悩。
二余 生身の苦しみと煩悩との二つの余習。
覆載せずといふことなし 仏の大悲は、 天が一切万物を差別なく覆い、 地が残すことなく載せるように、 衆生に対してわけへだてしないという意。
仏の教法… 仏教のすべてに精通していて余すところがない。
火王 盛んに燃える火。
一切の有 あらゆる存在。
大乗 大きな乗物。
蔵積するところなき 遊禽 (小鳥) は食べ物をたくわえない、すなわち足ることを知って欲を離れているという意。
欲の刺 貪欲の煩悩。
因力 直接の原因となる業の力。 ここでは過去に修めた善根力の意。
縁力 因を育てて果を結ばせる間接的な力。 ここでは諸仏・善知識の教導の力を指す。
意力 さとりを求める意志力。
願力 衆生救済を願う力。
方便の力 修行のことを方便という場合と衆生救済の手段を方便という場合とがある。
常力 常に怠ることなく修行する力。
善力 悪をなさず善をなす力。
定力 精神統一によって得る力。
慧力 智慧の力。
多聞の力 多くの教えを聞いて心にさとった力。
正念正観…通明の力 正しく教法を念ずる力と真実の道理を正しく見る力、 および六神通と三明の力。
上下なく洞達して 上下の別なくさとりを得ること。
その国…牽く 浄土は真実信心の行者をたがうことなく、 願力の自然によりひきよせるとの意。
不急の事 急がなくてもよいこと。 急ぐべき出離生死に対し、 世俗の欲望をみたそうとするすべての事柄をいう。
念を累ね慮りを積み 過去をおもい、 未来をおもんぱかる。
摧砕 盗賊・水火等の災難が身を打ち砕くこと。
憂懼万端 憂いや恐れが数かぎりなくあること。
寒熱 肝を冷やし身に汗をかくほどの苦しみ。
思想 思い悩むこと。
善悪の道 善悪因果の道理。
中外の親属 内外の親属。 父方の親類を内、 母方の親類を外という。
有無あひ通じて 衣食金銭等をたがいに融通し合って。
言色 言葉と表情。
対生 二人が同じ世界にあい対して生れること。
行に当りて… 自己のなす善悪の行業に従って、 その苦楽の果報を得るという意。
よく見るものなし 業報により境界を異にするため、 愛し合った者同士でも再びめぐり会うことはできない。
窈々冥々 奥深く暗いさま。
極長の生 涅槃の常楽のこと。
これ 善悪因果の道理を信じない邪見を指す。
先後 先祖と子孫。
生死の常の道 生と死を繰り返すという不変の道。
あひ嗣ぎて立つ 生と死が次々に続いて絶えることがないという意。
顛倒上下 ここでは老少不定のこと。 老人が先に死に、 若者が後で死ぬとは限らないこと。
矇冥抵突 心が愚かでくらいために、 道理に背くこと。
遠き慮り 将来を思いはかること。 後世を心にかけること。
愛欲に痴惑せられて 欲望にまどわされて。
財色を貪狼す 財欲・色欲をむさぼる。
痛着 悲嘆にくれること。
恩好を思想して 先立ったものに対する恩愛とよしみを思い出して。
昏矇閉塞 心がくらく閉じふさがること。
総猥憒擾 世の中がすべて濁り、 心煩わしく乱れること。
殺毒 殺生のもとである瞋恚 (いかり) を毒に喩えていう。
悪気窈冥 内に悪意を含み外に顕さないこと。
経戒を虧負して 仏の戒めを守らず、 それに背いて。
去来今 過去・未来・現在。
福禄巍々たり 仏果 (仏のさとり) の福徳が高くすぐれている。
典攬を教授し 経典の要義を取ってこれを学ばせるという意。
威制消化 仏の威光をもって、 外道を制伏し、 邪見を消して教え導くこと。
悪露不浄 醜悪さがあらわれて汚いこと。
精明 専精明信。 ひたすら明瞭な心でつとめること。
一世 一生。
道徳と合明して 仏道に相応し智慧が明らかなこと。
厄 三宝を見聞できないことや、 有情利益ができないことなどを指す。 自利利他の行ができないことが辺地のわざわいである。
仏のたまはく… 以下の 「五善五悪」 の経文は、 従来 「
五悪段」 と称して布教されてきたものである。 →
補註5
記識して (罪を) 記録して忘れず。
これ 因果必然の道理を指す。
なかにおいて 五濁の世の中において。
佞諂不忠 こびへつらって、 誠実さがないこと。
巧言諛媚 言葉たくみに相手にとりいること。
怨枉に陥し入る 人を恨んで無実の罪におとし入れる。
機偽多端 いろいろなからくりを設けて偽ること。
度を践み… よく法度を実践し、 天下の大勢を知る。
天心に当らず 天地のことわりに背く。
知識 友人。 知人。
利害 自分の利益をはかり、 他人に害を加えること。
命を追ひて 自己のなす業に従って。
楽処 人天を指す。
苦毒 地獄・餓鬼・畜生の三悪道を指す。
名籍を別つ 罪相とその名前を名簿にはっきりと書き記すこと。
処年寿命 生をうけてから死ぬまでの年月。
細色を眄睞して 美しい人に流し目を送って。
交結聚会 同心のものがより集まり徒党を組むこと。
みづから業を修せず 自分の正当の仕事を怠る。
欲繋して事をなす 欲にかられてより大きな悪事をはたらくようになるという意。
恐熱迫愶 悪事をするため心は落ちつかず、 熱の出たようにみずから恐れながらも、 他人を脅迫し財宝を奪い取ること。
帰給 支給すること。
尊卑を避けず 上下の区別を顧みないで礼儀を乱す。
人鬼に著され 人にも知られ鬼神にも見られ。
教令 ここでは教えそそのかすという意。
讒賊闘乱す 人をそしり害し、 仲違いさせて争わせること。
尊貴自大 わが身ほど尊いものはないと思いあがること。
偃 おごりたかぶること。 ここでは善事をなそうとせずに、 横着をきめこむこと。
天道 業の道理、 因果の道理のこと。
蹉跌することを得ず ここでは業の道理に少しもくい違いがないという意。
節 節度。
報償の心 恩をかえそうとする心。 恩義に報いる心。
徙倚懈惰 心が落ち着かず、 おこたりなまけること。
辜較縦奪 利益を独占し、 ほしいままに他人のものを奪うこと。
串ひて 慣れて。 習慣となって。
賑給 口腹を満たし養うこと。 すなわち、 ぜいたくな生活をすること。
度 節度。
魯扈牴突 自己の愚かさを顧みず、 人と衝突すること。
職当 うぬぼれて自己をあくまでも主張すること。
所資 生活の資。 衣食などの資材。
衆僧を闘乱せん 僧伽 (仏教教団) の和を乱すという意。
矇昧 心がくらく道理をわきまえないこと。
仁ならず順ならず 他人に対しておもいやりがなく柔順でない。
生死善悪の趣 生死輪廻や善悪因果の道理。
悔懼こもごも至る 後悔と恐怖が入り混じっておこる。
恢廓窈窕 広大で、 奥深いさま。
浩々茫々 広大として果てしのないさま。
数 道理。 ここでは善悪因果の道理のこと。
冥 暗闇の世界。
省録 悪事を反省し、 善事を進んで行うこと。
天道施張して 五道の因果の道理が網の目のように天地の間に張りめぐらされているという意。
綱紀の羅網上下相応す 大綱小綱からなる業道の網が八方上下に張りめぐらされ、 それからのがれることができないという意。
煢々忪々 孤独で頼るものがなく、 心がおののきみだれること。
所思を棄捐し 五悪をなそうとする思いを棄て去るという意。
経戒 仏の戒め。 ここでは五善の教え。
うたたあひ勅令し 国王より人々へ次々と戒めを伝えていくという意。
徳本 功徳の本である
六波羅蜜 (六度) のこと。 次下の 「恩を布き恵を施す」 は
布施、 「道禁を犯すことなかれ」 は
持戒、 「一心」 は
禅定にあたる。
毛髪の悪 毛すじほどの少しの悪。
ここ 娑婆世界。
このあひだ 娑婆世界。
心労し形困しみて 身心ともに疲労して。
器 器量。 機根。 人それぞれの性質。
五徳 五善を修めて得た五つの功徳。
無為の安き 無為涅槃の安楽。
明曜顕赫 光り輝き鮮明にあらわれているさま。
この会 霊山 (霊鷲山、 耆闍崛山) での説法の会座。
かしこ 阿弥陀仏の浄土を指す。
功徳 大乗の菩薩の修すべき六波羅蜜 (六度) のこと。
宮室 宮殿。 宋版大蔵経等には 「牢獄」 とある。
床帳を張設し 坐臥する床を設け、 その上に幕 (帳) を張りめぐらして。
本の罪 仏智を疑惑した罪。
諸仏無上の智慧 先に説く阿弥陀仏の五智を略して諸仏無上の智慧という。 すなわち、 阿弥陀仏のすぐれた智慧のこと。 阿弥陀仏は、 すべての仏を仏たらしめる諸仏の本源であるから、 阿弥陀仏の智慧を諸仏の智慧ともいう。
不退の菩薩 不退転の位を得た菩薩。 親鸞聖人は真実信心の行者とする。
小行の菩薩および少功徳を修習せんもの 行の劣った菩薩たちや、 わずかな功徳を修めた人々。 親鸞聖人は自力の行者とする。
堅固の法 菩薩が勇猛精進して修する利他大悲の尊い行。
比丘 ここでは少功徳を修習するものをいう。
なすべきところのもの 釈尊が説いた教法についての疑念、 不審におもう事柄についての質疑。
百歳 満数の意。 いつまでもということ。
清浄法眼 声聞の
修道階位である四果の最下位、
須陀洹果に入って得る
四諦の理をさとる
智慧の眼。
漏尽意解し 煩悩を滅し尽して智慧を得、 声聞の修道階位である四果の最高位、
阿羅漢果に達するという意。
弘誓の功徳 衆生済度の誓願を立て、 その誓いに応じて修行し、 種々の善根功徳を積むこと。
底本は◎本派本願寺蔵版本。 Ⓐ高麗版(再雕本)¬大蔵経¼所収本、 Ⓑ宋版(思溪版)¬大蔵経¼所収本、 Ⓒ元版(善寧寺版)¬大蔵経¼所収本、 Ⓓ明版(万歴版)¬大蔵経¼所収本、 Ⓔ京都府清浄華院蔵平安時代書写本、 Ⓕ本派本願寺蔵正平六年書写本、 Ⓖ愛知県祐誓寺蔵建仁四年刊本 と対校。 ª全部対校º 人天→ⒷⒸⒹ天人、 硨磲→ⒶⒺⒻⒼ車
勤→Ⓖ懃
定→Ⓐ定[之]
往→Ⓔ住
語→ⒷⒸⒹ告
告→Ⓐ語
法→Ⓑ生
恒→ⒷⒸⒹ恒[河]
大→ⒷⒸⒹ之
菩薩衆→Ⓐ諸菩薩
照→ⒷⒸⒹ朗
上→ⒶⒷⒸⒹ量
性→Ⓐ門
国→Ⓐ土
至→Ⓐ志
達→ⒸⒹ満
本→ⒸⒹ心
涯→ⒶⒷⒺⒼ崖
知→Ⓐ如
講→Ⓒ称
済→ⒷⒸⒹ度→Ⓕ度(濟イと左傍註記)
是→ⒷⒸⒹ此
此→ⒷⒸⒹ是
不可計→Ⓐ阿僧祇
更→ⒷⒸⒹ受
告→ⒶⒷⒸⒹ語
頃→Ⓖ項
繒→ⒷⒸⒹ衣
輒→ⒶⒻ転
菩→ⒷⒸⒹ[及諸]菩
大→ⒷⒸⒹ之
昱→Ⓐ晃→Ⓖ煜
爍→Ⓐ曜
周→Ⓔ同
歓→ⒷⒸ歎
大衆→ⒷⒸⒹ天人
班→ⒶⒷⒸⒹⒻ頒
普吹→ⒷⒸⒹ吹七
五→Ⓕ其
雨 ⒷⒸⒹになし
周徧→ⒷⒸⒹ四散
怡→Ⓐ然
語→Ⓐ告
軟→ⒷⒸⒹ潤
弁→ⒺⒻⒼ辦
習→ⒸⒹ集
汚染→ⒶⒷⒸⒹ染汚
踰→ⒷⒸ喩
震→ⒷⒸⒺⒼ振
拘→ⒺⒼ狗
類→Ⓕ律
曠→ⒺⒼ広 Ⓕ廣イと左傍註記
忌→Ⓐ望→Ⓑ要→ⒺⒻⒼ忘
導師→ⒶⒷⒸⒹ師導
戚→Ⓐ慼→Ⓕ蹙
慧→Ⓐ徳
正→ⒶⒷⒸⒹⒼ止
説→ⒶⒷⒸⒹ言
養→ⒷⒸⒹ楽
趣→ⒷⒸⒹ道
獲→ⒷⒸⒹ得
屏→Ⓑ并
漂→ⒷⒸⒺⒼ
解→ⒺⒻⒼ懈
寒→Ⓔ塞
居→Ⓐ倶
共→Ⓔ苦
夭→Ⓓ天
家室→室家
貪→Ⓔ貧
相→ⒷⒸⒹ想
復→ⒸⒹ今
曼→ⒹⒻ遇
修善精進→Ⓕ精進修善
哉→ⒶⒷⒸⒹ乎
矇→ⒷⒸⒹⒺⒼ蒙
抵→Ⓕ牴
於 ⒷⒸⒹになし
恩→Ⓒ貪
昏→Ⓐ惛
矇閉→ⒷⒸⒹ蒙闇
寡→ⒷⒸⒹ少
憀→ⒶⒷⒸⒹ聊
妄→ⒷⒸ忘
未→ⒷⒸⒹ未[終]
勤→Ⓐ懟→Ⓖ懃
心 ⒶⒷⒸⒹになし
虧→ⒷⒸ戯
語→Ⓐ者
目→Ⓒ自
誡→ⒷⒸⒹⒻⒼ戒
王→Ⓕ主
仏 ⒶⒷⒸⒹⒺⒼになし
Ⓕ佛字本无イ入之と左傍註記
菩薩 ⒶⒷⒸⒹになし
拘→ⒷⒸⒹ罣→Ⓔ
昭→ⒺⒼ照
体→ⒸⒹ浄
仏 ⒷⒸⒹになし
永→Ⓖ求
万億→ⒶⒷⒸⒹ億万
言 Ⓐになし
等→ⒶⒻ等[為]
仏言 ⒶⒷⒸⒹⒺⒼになし
Ⓕ仏言二字本无但入之と上欄註記
迭→ⒺⒼ遞
瘂→ⒺⒼ唖
弊→Ⓐ憋
免→ⒷⒸⒹ勉
見→ⒶⒷⒸⒹ現
Ⓕ本現イ合點と左傍註記
刑→Ⓑ形
貿→Ⓔ資
絶→ⒶⒷⒸⒹ止
諛→ⒷⒼ諭
而滅→ⒶⒷⒸⒹ滅族
利→Ⓐ剥→Ⓑ殺
宝→ⒶⒷⒸⒹ保
少→Ⓕ無(少本但入無イ云々スクナクシテと左傍註記)
妄→Ⓖ忘
糜→ⒶⒷⒸⒹ麿→Ⓕ麿(糜本但麿イ云々合點と左傍註記)
予→Ⓐ預
今→Ⓕ令 今イ云々と左傍註記
累→Ⓔ界
廝→ⒷⒸⒹⒼ斯
婬→Ⓒ泆
妷→Ⓑ佚→Ⓓ泆
憎→Ⓔ僧
入出→ⒶⒷⒸⒹⒻ出入
不→ⒷⒸⒹ無
繋→ⒶⒷⒸⒹⒼ撃
熱→ⒶⒷⒸⒹⒻ勢
愶→ⒶⒷⒸⒹⒼ脅
卑→Ⓕ貴
→ⒶⒷⒸⒹⒺⒼ蹇
天→Ⓔ夭
鬼神→Ⓐ神鬼
共→ⒶⒷⒸⒹⒻ去
頓→ⒶⒹⒻ奪
之→ⒷⒸ乏
往→Ⓕ独
自→ⒷⒸⒹ冏
勤→ⒷⒼ懃
者 ⒶⒷⒸⒹになし
惰→ⒺⒼ堕
家室→Ⓕ室家
譍→ⒶⒷⒸⒹ応
賑→ⒷⒺⒼ振
牴→ⒶⒷⒸⒹⒺⒼ抵
憎→ⒸⒹ妬→Ⓔ僧
難→Ⓐ録
職→ⒷⒸⒹ識
矇→ⒷⒸⒹ蒙
悪逆→Ⓐ逆悪
肯 Ⓐになし
予→Ⓐ預
窕→ⒶⒷⒸⒹ冥
其→ⒷⒸⒹ期
咎→Ⓔ各
者 ⒷⒸⒹⒺⒼになし
其→Ⓓ有
恵→Ⓐ慧
坐→Ⓐ生
紀→Ⓓ維
当→Ⓐ永
畏→ⒷⒸⒹ怖
植→ⒶⒷⒸⒼ殖
恵→Ⓐ慧
土→ⒶⒷⒸⒹ中
紿ⒶⒷⒸⒹⒺ殆
怱→ⒷⒸⒹ悪
器→ⒷⒸⒹ宜
天→Ⓖ大
我→Ⓐ吾
間 ⒶⒷⒸⒹになし
攻→Ⓔ改→Ⓖ政
昇→ⒷⒸⒹ升
痛五焼→ⒶⒷⒸⒹⒺⒼ焼五痛
語→Ⓐ告
苦→ⒶⒷⒸⒹ善→Ⓕ善(苦ナリ本善但善イ合点と左傍註記)
難→Ⓖ歎
面→Ⓐ向
有→ⒶⒷⒸⒹⒻ所
生→Ⓒ住
上 Ⓐになし
跏→Ⓐ加
頃→Ⓖ項
仏国 ⒶⒷⒸⒹⒺⒼになし
Ⓕ二字點本无但入イ云々合點と左傍註記
之→ⒷⒸⒹ聖
寿→Ⓕ寿[仏]
者 ⒷⒸⒹになし
別 ⒷⒸⒹになし
七宝宮室種種→Ⓐ宮室七宝
宮室→ⒷⒸⒹ牢獄
厳→Ⓐ飾
幡→ⒷⒸ蓋
宮→ⒷⒸⒹ獄
給→ⒷⒸⒹ養→Ⓔ終
飲→ⒷⒸⒹ飯
褥→ⒶⒷⒸⒹⒺⒼ蓐
免→ⒶⒷⒸⒹ勉
故 Ⓐになし
彼→ⒷⒸⒹ彼[七宝]
刑→Ⓑ形
責→Ⓑ憤
仏 ⒷⒸⒹになし
余仏→Ⓐ如来
有 ⒷⒸⒹになし
者也 ⒺⒼになし
Ⓕ二字无但入イ云々と左傍註記
億 ⒷⒸⒹになし
竟→ⒷⒸⒹ尽
語→ⒷⒸⒹ告
仏言 ⒶⒷⒸⒹⒺⒼになし
Ⓕ二字无但入イ合點と左傍註記
特→Ⓔ持
果 Ⓐになし
紛紛→ⒶⒷⒸⒹⒺⒼ芬芬
聞仏所説 ⒷⒸⒹになし
生ず
中
し
生ぜ
す
の
しむ
捨家棄欲し
ず
臨寿終時に
現ず
華中
り
、
懸繒然灯
散華焼香し
つくる
无極なり
せ
は
かの
より
すること
して、
こく
諸
え
難思議なる
ちなんで
す。
ねがはくは
な
廻光
雷震の
妙響
来の
る
決をうけ
作仏す
仏
夢・幻・響
妙願
せち
ほん
浄
処
りて
ねがはくは
異
け
ことを
ず。
諸刹
て
きは
ねがひて
く
欲せ
てい
明了なり
にん
極講説し
なをし
ぶは
う
かならず
け。
度す
二
一
命終
深入し
普熏す
にして
頒
せざることな
心解得道す
すなはちのとき
た
いて
ふる
さらに
所有の
去来進止に
随意
し。
しよう
深
・
し、
その大悲を
るものなり
り、
無外なり
せり。
らい
ふり
律
すぐる
楽求し
に
しやう
しや
之力
りき
如法調伏諸衆生力
まく
勤
せよ。
わう
づ。
寿楽
世人
も
適等なり
累念積慮す。
あるものは
重思累息し
焚漂
らる。
おこた
心堅意固にして
身亡命終す。
にして
なきものは
常無なり
とも
欲すれ
労し
夭
つくり
みち
室家
いたりて
。
ぶ。
しき
まさにゆいて
至趣すべし
異処にして
ゆくにしたがひ
久長なり
不同に
甚難に
たり
あへり
勤精進して善を修し
願ぜよ
が
いづれ
作善
為道
同然
教令をのこす
む
さとら
して
こと
過去す
るに
こゝろ
ふ
るべし。
なら
生じ
心自
すなはち
めぐり
りて、
貪ず
妄のために
をあたふ。
罪極
頓
下入し
まうあへり
明達し
人後
疑意
解せず
問す
所説快善なり
所言
えつ
るい
甚深甚善なり
みて
ずといふ
達す
する
として
尊にして
得道せしむ
あ
みな
ことば
るは
まこと
断じ
ほん
未度の
得道し
称数す
已来
つ
快哉
甚善なり
すべし。
端身正行に
修己潔体にして
あり
人能自度
転相
といへども
無極なり
合してあきらかに、
く。
じゆ
随意に
ちかづけり
諸厄
つ。
如教
ひ
端心正意に
つくら
つくらずは
とする
いふ
欲して
かるが
りよう
衆善積徳
所致
免出
うることかた
目のまへの現事
寿終し
くして、
すべし、
当
いたる
制意
う
たく
各異
陥入す
か
はしおほし
践度能行し
る。
して、
く。
へり
がう
殺
愛宝貪重にして
身苦す
いのち
しかうして
無智なり
憎謗し
慕及する
つくることを
欲し
磨
つくれ
下入す
累劫に
相因
しち
ひて、
出入
攻劫
えて
勢
つからかし
ら
三
修善を
して、
まこと
ひて、
ほしいまゝに
へり。
尽滅
さりて
終尽し
なり。
を
うばふ
ひとり
四
つくらず、
いかりてみ、
不和にして、
からん
じ
はかることなし
放恣
串数唐得し
耽酒嗜美にし
はかること
肆心
人情
さと
无議无礼に
顧難する
自用
つくりて
と
欲す
願ず
生じて
死して
不仁不順にして
悕望僥倖して
欲求
苦心に
語すれ
まじはり
をはり
のちにをいて
ばうばう
相承し
うく
ること、
苦
きう
そうぞう
れ
のみ
へりまく
五
所作
所語
相生す
すにいたりて
するにより
快意
修善をいとなまず
ふに
ふべし。
端心正行して、
端守して
立して、
正心正意し
求欲して
形困し
食す
きの
むかしにも
苦心
まかせ
得道せ
く、
まつりごと
おこなふ
れい
作仏して
安
つくりて
ならん。
ふて
すること
犯を
よし
き
慈をもて
つ、
せよ
所有
皆同
現ぜ
れば
でた
や
たまへつ
するところ
といふは
了せず
じゆ
せん。
華中
て恭敬供養すること
にをよぼさん
命終し
より
にく
ひてん
免出する
欲せん
本罪
さと
なることをえて
所
せん。
ることをえ
すべし
むかし
くなる
ざる、
所修
甚多
くこと
うることあり
如説に
にん
う。
来の
ずといふこと
宗祖加点本による延書〔毫摂寺蔵貞和三年乗専書写本〕の奥書。