0014
標挙
0140▼諸仏称名の願 ▼**浄土真実の行 ▼選択*本願の行
題目
0141◎▼顕浄土真実▼行文類 ▼二
▼愚禿釈*親鸞集
一 正説
Ⅰ 正しく大行を顕す【大行釈】
ⅰ 通じて行信を標す
【1】 ◎^▼つつしんで▼往相の*回向を案ずるに、 △大行あり、 ▽大信あり。
◎謹0015デ按ズルニ↢往相ノ廻向ヲ↡、有リ↢大行↡、有リ↢大信↡。
一 Ⅰ ⅱ 別して大行を釈す
a 直釈【出体出願】
イ 出体
^▼大行とはすなはち▲無礙光如来の名を称するなり。
大行ト者則チ称スルナリ↢无光如来ノ名ヲ↡。
一 Ⅰ ⅱ a ロ 弁徳
^▼この行はすなはちこれ▼*もろもろの善法を摂し、 ▲もろもろの徳本を具せり。 ▲*極速円満す、 ▼*真如一実の▲功徳宝海なり。 ゆゑに大行と名づく。
斯ノ行ハ即チ是摂シ↢諸ノ善法ヲ↡、具セリ↢諸ノ徳本ヲ↡。極速円満ス、真如一実ノ功徳宝海ナリ。故ニ名ク↢大行ト↡。
一 Ⅰ ⅱ a ハ 正しく出願を明かす
^▼しかるにこの行は▼大悲の願 (第十七願) より出でたり。
然ルニ斯ノ行者出デタリ↠於リ↢大悲ノ願↡。
一 Ⅰ ⅱ a ニ 願の異名を挙ぐ
^すなはちこれ諸仏▼*称揚の願と名づく、 また諸仏▼称名の願と名づく、 また諸仏▼*咨嗟の願と名づく、 また往相回向の願と名づくべし、 また選択称名の願と名づくべきなり。▼
即チ是名ケ↢諸仏称揚之願ト↡、復名ク↢諸仏称名之願ト↡、復名ク↢諸仏*咨嗟之願ト↡、亦可シ↠名ク↢往相廻向之願ト↡、亦可キ↠名ク↢選択称名之願ト↡也。
一 Ⅰ ⅱ b 引証【引文】
イ 正引 (一)経説 (Ⅰ)引文 (ⅰ)本経 (a)正依 (イ)因願 [一]¬大経¼二文
1.第十七願文
【2】 ^△諸仏称名の願、 ¬*大経¼ (上) にのたまはく、
諸仏称名願 *第十七願 ¬大経ニ¼言ハク、
^「▲たとひわれ仏を得たらんに、 十方世界の無量の▼諸仏、 ことごとく咨嗟して、 わが名を称せずは、 ▼正覚を取らじ」 と。 以上
「*設ヒ我得タラムニ↠仏ヲ、十方世界ノ无量ノ諸仏、不↣悉ク*咨嗟シテ、称セ↢我ガ名ヲ↡者、不ト↠取ラ↢正覚ヲ↡。」 已上
2.重誓(名号摂化)
【3】 ^▼またのたまはく (大経・上)、
又言ク、
^「▲われ仏道を成らんに至りて、 名声十方に超え0142ん。 究竟して聞ゆるところなくは、 誓ふ、 正覚を成らじと。
「我至リテ↠成ラムニ↢仏道ヲ↡ | 名声超エム↢十方ニ↡ |
*究竟シテ*靡クハ↠所↠聞ユル | 誓フ不ト↠成ラ↢正覚ヲ↡ |
^▲衆のために宝蔵を開きて、 広く功徳の宝を施せん。 つねに大衆のなかにして、 ▼説法獅子吼せん」 と。 抄要
為ニ↠衆ノ開キテ↢宝蔵ヲ↡ | 広ク*施セム↢功徳ノ宝ヲ↡ |
常ニ於テ↢大衆ノ中ニ↡ | 説法師子吼セムコト。」 抄要 |
一 Ⅰ ⅱ b イ (一)(Ⅰ)(ⅰ)(a)(ロ)成就
[一]¬大経¼三文
1.第十七願成就文
【4】 ^▼願 (第十七願) 成就の文、 ¬経¼ (大経・下) にのたまはく、
願成就ノ文、¬経ニ¼言ク、
^「▲十方恒沙の諸仏如来、 みなともに無量寿仏の▼威神功徳不可思議なるを讃嘆したまふ」 と。 以上
「十方恒砂ノ諸仏如来、皆共ニ讃↢嘆シタマフ无量寿仏ノ威神功徳不可思議ナルヲ↡。」 已上
2.諸仏称嘆
【5】 ^▼またのたまはく (大経・下)、
又0016言ク、
^「▲無量寿仏の威神極まりなし。 ▼十方世界無量無辺不可思議の諸仏如来、 ▼かれを称嘆せざるはなし」 と。 以上
「无量寿仏ノ威神无シ↠極。十方世界无量无辺不可思議ノ諸仏如来、莫シト↠不ルハ↣称↢嘆セ於↟彼。」 已上
3.聞名往生
【6】 ^▼またのたまはく (大経・下)、
又言ク、
^「▲その仏の▼本願力、 ▼名を聞きて往生せんと欲へば、 みなことごとくかの国に到りて、 ▼おのづから▼不退転に至る」 と。 以上
「其ノ仏ノ本願力 | 聞キテ↠名ヲ欲ヘバ↢往生セムト↡ |
皆悉ク到リテ↢彼ノ国ニ↡ | 自ラ致ルト↢不退転ニ↡」 已上 |
一 Ⅰ ⅱ b イ (一)(Ⅰ)(ⅰ)(b)異訳
(イ)¬如来会¼二文
1.万徳回施(重誓偈)
【7】 ^▼¬*無量寿如来会¼ (上) にのたまはく、
¬*无量寿如来会ニ¼言ク、
^「▲いま如来に対して▼弘誓を発せり。 *まさに無上菩提の因を証 (証の字、 験なり) すべし。 もしもろもろの*上願を満足せずは、 ▼*十力無等尊を取らじと。
「今対シテ↢如来ニ↡発セリ↢弘誓ヲ↡ | 当ニシ↠証ス↢ *証字 験也 无上菩提ノ因ヲ↡ |
若シ不ハ↣満↢足セ諸ノ上願ヲ↡ | 不ト↠取ラ↢十力无等尊ヲ↡ |
^◆*心、 あるいは*常行に堪へざらんものに施せん。 広く貧窮を済ひてもろもろの苦を免れしめ、 世間を利益して安楽ならしめんと。 乃至
心或イハ※不ラムモノニ↠堪ヘ↢常行ニ↡施セム | 広ク*済ヒテ↢貧窮ヲ↡免レシメ↢諸ノ苦ヲ↡ |
利↢益シテ世間ヲ↡使メムト↢安楽ナラ↡。 乃至 |
^▲*最勝丈夫修行しをはりて、 かの貧窮において*伏蔵とならん。 善法を円満して0143*等倫なけん。 大衆のなかにして獅子吼せん」 と。 以上抄出
最勝丈夫修行シ已リテ | 於テ↢彼ノ貧窮ニ↡為ラム↢伏蔵ト↡ |
円↢満シテ善法ヲ↡无ケム↢等*倫↡ | 於テ↢大衆ノ中ニ↡師子吼セムト」 已上抄出 |
2.諸仏称讃(成就文)
【8】 ^▼またのたまはく (如来会・下)、
又言ク、
^「▲阿難、 この*義利をもつてのゆゑに、 無量無数不可思議無有等等無辺世界の諸仏如来、 みなともに無量寿仏の所有の功徳を称讃したまふ」 と。 以上
「阿難、以テノ↢此ノ義利ヲ↡故ニ无量无数不可思議无有等等无辺世界ノ諸仏如来、皆共ニ称↢讃シタマフト无量寿仏ノ所有ノ功徳ヲ↡。」 已上
一 Ⅰ ⅱ b イ (一)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ロ)¬大阿弥陀経¼
【9】 ^▼¬*仏説*諸仏阿弥陀三耶三仏薩楼仏檀過度人道経¼ (上) ¬大阿弥陀経¼ といふ、 ¬二十四願経¼ といふ にのたまはく、
¬仏説諸仏阿弥陀三那三仏*薩*楼仏檀過度人道経ニ¼ ¬*大阿弥陀経ト¼云フ¬廿四願経¼ト云フ 言ク、
^「▲第四に願ずらく、 ª▼某作仏せしめん時、 わが名字をもつてみな、 八方上下*無央数の仏国に聞かしめん。 みな諸仏おのおの比丘僧大衆のなかにして、 わが功徳・国土の善を説かしめん。 ▼諸天・人民、 ▼*蜎飛*蠕動の類、 わが名字を聞きて慈心せざるはなけん。 歓喜踊躍せんもの、 みなわが国に来生せしめ、 この願を得ていまし作仏せん。 この願を得ずは、 つひに作仏せじº」 と。 以上
「第四ニ願ズラク、使メム↢某作仏セ↡時、令メム↣我ガ名*字ヲモテ皆聞ヘ↢八方上下无央数ノ仏国ニ↡。皆令メム↧諸仏各ノ於テ↢比丘僧大衆ノ中ニ↡、説カ↦我ガ功徳・国土之善ヲ↥。諸天・人民、*蜎ムクメク*飛*蠕ムクメク*動之類、聞キテ↢我ガ名字ヲ↡莫ケム↠不ルハ↢慈心セ↡。歓喜踊躍セム者、皆令メ↣来↢生セ我ガ国ニ↡、得テ↢是ノ願ヲ↡乃シ作仏セム。不ハ↠得↢是ノ願ヲ↡、終ニ不ト↢作仏セ↡。」 已上
一 Ⅰ ⅱ b イ (一)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)¬平等覚経¼四文
1.称名信楽願(第十七・十八願意)
【10】^▼¬*無量清浄平等覚経¼ の巻上にのたまはく、
¬*无0017量清浄平等覚*経ノ¼巻上ニ言ク、
^「▲ªわれ作仏せん時、 ▼わが名をして八方上下無数の仏国に聞かしめん。 諸仏おのおの弟子衆のなかにして、 わが功徳・国土の善を嘆ぜん。 諸天・人民、 蠕動の類、 わが名字を聞きてみなことごとく踊躍せんもの、 ▼わが国に来生せしめん。 しからずはわれ作仏0144せじº と。
「我作仏セム時、令メム↣我ガ名ヲシテ聞カ↢八方上下无数ノ仏国ニ↡。諸仏各ノ於テ↢弟子衆ノ中ニ↡、嘆ゼム↢我ガ功徳・国土之善ヲ↡。諸天・人民蠕*動之類、聞キテ↢我ガ名字ヲ↡皆悉ク踊躍セムモノ、来↢生セシメム我ガ国ニ↡。不↠爾ラ者、我不ト↢作仏セ↡。
2.聞名果遂願(第二十願意)
^ª▲われ作仏せん時、 他方仏国の人民、 ▼前世に*悪のためにわが名字を聞き、 およびまさしく道のためにわが国に来生せんと欲はん。 寿終へてみなまた三悪道に更らざらしめて、 すなはちわが国に生れんこと、 心の所願にあらん。 しからずはわれ作仏せじº と。
我作仏セム時、他方仏国ノ人民、前世ニ為ニ↠悪ノ聞キ↢我ガ名字ヲ↡、及ビ正シク為ニ↠道ノ欲ハム↣来↢生セムト我ガ国ニ↡。寿終ヘテ皆令メテ↠不ラ↣復更ラ↢三*悪道ニ↡、則チ生レムコト↢我ガ国ニ↡、在ラム↢心ノ所願ニ↡。不↠爾ラ者我不ト↢作仏セ↡。
3.聞経宿縁
^▲*阿闍世王太子および五百の長者子、 *無量清浄仏の二十四願を聞きて、 みな大きに歓喜し踊躍して、 心中にともに願じていはまく、 ªわれらまた作仏せん時、 みな無量清浄仏のごとくならしめんº と。
阿闍世王太子及ビ五百ノ長者子、聞キテ↢无量清浄仏ノ二十四願ヲ↡、皆大ニ歓喜シ踊躍シテ、心中ニ倶ニ願ジテ言マク、令メムト↣我等復作仏セム時、皆如クナラ↢无量清浄仏ノ↡。
^◆仏すなはちこれを知ろしめして、 もろもろの比丘僧に告げたまはく、 ªこの阿闍世王太子および五百の長者子、 後無央数劫を却りて、 みなまさに作仏して無量清浄仏のごとくなるべしº と。
仏則チ知シテ↠之ヲ、告ゲタマハク↢諸ノ比丘僧ニ↡、是ノ阿闍世王太子及ビ五百ノ長者子、却リテ↢後无央数劫ヲ↡、皆当ニ シト↣作仏シテ如クナル↢无量清浄仏ノ↡。
^◆仏ののたまはく、 ªこの阿闍世王太子・五百の長者子、 菩薩の道をなしてこのかた無央数劫に、 みなおのおの四百億仏を供養しをはりて、 いままた来りてわれを供養せり。 この阿闍世王太子および五百人等、 みな前世に*迦葉仏の時、 わがために弟子となれりき。 いまみなまた会してこれともにあひ値へるなりº と。
仏ノ言ハク、是ノ阿闍世王太子・五百ノ長者子、作シテ↢菩薩ノ道ヲ↡以来タ无*央数劫ニ、皆各ノ供↢養シ四百億仏ヲ↡已リテ、今復来リテ供↢*養セリ我ヲ↡。是ノ阿闍世王太子及ビ五百人等、皆前世ニ迦葉仏ノ時、為ニ↠我ガ作レリキ↢弟子ト↡。今皆復*会シテ是共ニ相値ヘル也ト。
^◆すなはちもろもろの比丘僧、 仏の言を聞きて、 みな心踊躍して歓喜せざるものなけんと。 乃至
則チ諸ノ比丘僧、聞キテ↢仏ノ言ヲ↡、皆心踊躍シテ莫ケムト↧不ル↢歓喜セ↡者↥。 乃至
4.聞名利益
^▲ªかくのごときの人、 仏の名を聞きて、 快く安穏にして大利を得ん。 われらが類この0145徳を得ん。 もろもろのこの*刹に好きところを獲ん。
如キノ↠是クノ人聞キテ↢仏ノ名ヲ↡ | 快ク安穏ニシテ得ム↢大利ヲ↡ |
0018吾等ガ類得ム↢是ノ徳ヲ↡ | 諸ノ此ノ*刹ニ獲ム↠所ヲ↠好キ |
^▲*無量覚その*決を授けん。 «われ前世に本願あり。 一切の人、 法を説くを聞かば、 みなことごとくわが国に来生せん。
无量覚授ケム↢其ノ*決ヲ↡ | 我前世ニ有リ↢本願↡ |
一切ノ人聞カバ↠説クヲ↠法ヲ | 皆悉ク来↢生セム我ガ国ニ↡ |
^◆わが願ずるところみな具足せん。 もろもろの国より来生せんもの、 みなことごとくこの間に来到して、 一生に不退転を得ん» と。
吾ガ所↠願ズル皆具足セム | 従リ↢衆ノ国↡来生セム者 |
皆悉ク来↢到シテ此ノ*間ニ↡ | 一生ニ得ムト↢不退転ヲ↡ |
^▲すみやかに疾く超えて、 すなはち安楽国の世界に到るべし。 無量光明土に至りて、 無数の仏を供養せん。
速カニ疾ク超エテ便チ※可シ↠到ル↢ | 安楽国之世界ニ↡ |
至リテ↢无量光明土ニ↡ | 供↢養セム於无数ノ仏ヲ↡ |
^▲この功徳あるにあらざる人は、 この経の名を聞くことを得ず。 ただ清浄に戒を有てるもの、 いまし還りてこの正法を聞く。
非ザル↠有ルニ↢是ノ功徳↡人ハ | 不↠得↠聞クコトヲ↢是ノ経ノ名ヲ↡ |
唯有テル↢清浄ニ戒ヲ↡者 | 乃シ還リテ聞ク↢斯ノ正法ヲ↡ |
^▲悪と憍慢と*蔽と懈怠のものは、 もつて*この法を信ずること難し。 *宿世の時仏を見たてまつれるもの、 楽んで世尊の教を聴聞せん。
悪ト*驕慢ト*蔽ト*懈怠ノモノハ | 難シ↣以テ信ズルコト↢於此ノ法ヲ↡ |
宿世ノ時見タテマツレル↠仏ヲ者 | 楽ムデ*聴↢ユルサレテキク聞セムシンジテキク世尊ノ教ヲ↡ |
^▲人の命希に得べし。 仏、 世にましませどもはなはだ値ひがたし。 *信慧ありて致るべからず。 もし聞見せば*精進して求めよ。
人之命希ニ可シ↠得 | 仏在セドモ↠世ニ甚ダ難シ↠値ヒ |
有リテ↢信慧↡不↠可カラ↠致ル | 若シ聞見セバ精進シテコノミススムナリ求メヨ |
^◆この法を聞きて忘れず、 すなはち*見て敬ひ得て大きに慶ばば、 すなはちわが善き*親厚なり。 これをもつてのゆゑに*道意を発せよ。
聞キ↢是ノ法ヲ↡而不↠忘レ | 便チ見テ敬ヒ得テ大ニ慶バヾ |
0019則チ我ガ之善キ*親原ナリ | 以テノ↠是ヲ故ニ発セヨ↢道意ヲ↡ |
^◆たとひ世界に満てらん火にも、 このなかを過ぎて法を聞くことを得ば、 かならずまさに世尊となりて、 まさに一切生老死を度せんとすべしº」 と。 以上
設令満テラム↢世界ニ↡火ニモ | 過ギテ↢此ノ中ヲ↡得バ↠聞クコトヲ↠法ヲ |
会ズ*当ニ シト↧作リテ↢世尊ト↡*将ス ニ↞ | 度セムト↢一切生老死ヲ↡」 已上 |
一 Ⅰ ⅱ b イ (一)(Ⅰ)(ⅱ)末教
(a)¬悲華経¼
【11】^▼¬*悲華経¼ の 「*大施品」 の二巻にのたまはく、 *曇無讖三蔵の訳
¬悲華経ノ¼「大施品」之二巻ニ言ク、 *曇無讖三蔵ノ*訳
^「願はくは0146、 われ阿耨多羅三藐三菩提を成りをはらんに、 無量無辺阿僧祇の余仏の世界の所有の衆生、 わが名を聞かんもの、 もろもろの善本を修してわが界に生ぜんと欲はん。 願はくは、 それ命を捨てての後、 必定して生を得しめん。 ただ五逆と聖人を*誹謗せんと、 正法を廃壊せんとを除かん」 と。 以上
「願クハ我成リ↢阿耨多羅三藐三菩提ヲ↡已ラムニ、无量无辺阿僧祇ノ余仏ノ世界ノ所有ノ衆生、聞カム↢我ガ名ヲ↡者、修シテ↢諸ノ善本ヲ↡欲ハム↠生ゼムト↢我ガ界ニ↡。願クハ其レ捨↠命之後、必定シテ得シメム↠生ヲ。唯除カムト↧五逆ト誹↢謗セムト聖人ヲ↡、廃↦*壊セムトヲ正法ヲ↥。」*已上
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)述成【称名破満】
【12】^▼しかれば、 ▲名を称するに、 よく衆生の一切の無明を破し、 よく衆生の*一切の志願を*満てたまふ。 ▼称名はすなはちこれ最勝真妙の正業なり。 正業はすなはちこれ念仏なり。 念仏はすなはちこれ南無阿弥陀仏なり。 南無阿弥陀仏はすなはちこれ正念なりと、 知るべしと。
爾レ者称スルニ↠名ヲ能ク破シ↢衆生ノ一切ノ无明ヲ↡、能ク満テタマフ↢衆生ノ一切ノ志願ヲ↡。称名ハ則チ是最勝真妙ノ正業ナリ。正業ハ則チ是念仏ナリ。念仏ハ則チ是南无阿弥陀仏ナリ。南无阿弥陀仏ハ即チ是正念也ト、可シト↠知ル。
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)師釈
(Ⅰ)引文
(ⅰ)南天引意(¬十住毘婆娑論¼九文)
(a)「入初地品」
1.入初地相
【13】(註:この段は 「為得十力故 入於必定聚 則生↓如来家 ↓無有諸過咎 即↓転世間道 入出世上道 是以↓得初地 無有諸過咎」 の釈。)
^▼¬*十住毘婆沙論¼ (*入初地品) にいはく、
¬*十住毘婆沙論ニ¼曰ク、
^「ある人のいはく、 ▼*般舟三昧および大悲を↑諸仏の家と名づく。 この二法よりもろもろの如来を生ず。 このなかに般舟三昧を父とす、 また大悲を母とす。 また次に般舟三昧はこれ父なり、 無生法忍はこれ母なり。
「有ル人ノ言ク、般舟三昧及ビ大悲ヲ名ク↢諸仏ノ家ト↡。従リ↢此ノ二法↡生ズ↢諸ノ如来ヲ↡。此ノ中ニ般舟三昧ヲ為↠父ト、又大悲ヲ為↠母ト。復次ニ般舟三昧ハ是父ナリ、无生法忍ハ是母ナリ。
^¬*助菩提¼ のなかに説くがごとし。 ª^般舟三昧の父、 大悲無生の母、 一切のもろもろの如来、 この二法より生ずº と。
如シ↢¬助菩提ノ¼中ニ説クガ↡。
般舟三昧ノ父 | 大悲无生ノ母 |
一切ノ諸ノ如来 | 従リ↢是ノ二法↡生ズト |
1.入初地相 ・無有過咎
^家に↑過咎なければ家清浄なり。 ゆゑに清浄とは▼六波羅蜜・四功徳処なり。 方便・般若波羅蜜は善慧なり。 般舟三昧・大悲・▼諸忍、 この諸法清浄にして過あることなし。 ゆ0147ゑに家清浄と名づく。 この菩薩、 この諸法をもつて家とするがゆゑに、 過咎あることなし。
家ニ无ケレ↢*過*咎↡者家清浄ナリ。故ニ清浄ト者六波羅蜜0020・四功徳処ナリ。方便・般若波羅蜜ハ善慧ナリ。般舟三昧・大悲・諸忍、是ノ諸法清浄ニシテ无シ↠有ルコト↠過。故ニ名ク↢家清浄ト↡。是ノ菩薩、以テ↢此ノ諸法ヲ↡為ルガ↠家ト故ニ、无ケム↠有ルコト↢過咎↡。
1.入初地相 ・転凡入聖
^↑↓世間道を↓転じて↓出世↓上道に↓入るものなり。
転ジテ↢於世間道ヲ↡入ル↢出世上道ニ↡者ナリ。
^↑世間道をすなはちこれ凡夫所行の道と名づく。 *↑転じて休息と名づく。 凡夫道は究竟して涅槃に至ることあたはず、 つねに生死に往来す。 これを凡夫道と名づく。 ↑出世間は、 この道によりて三界を出づることを得るがゆゑに、 出世間道と名づく。 ↑上は妙なるがゆゑに名づけて上とす。 ↑入はまさしく道を行ずるがゆゑに名づけて入とす。 この心をもつて↑初地に入るを歓喜地と名づくと。
世間道ヲ名ク↢即チ是凡夫所行ノ道ト↡。転ジテ名ク↢*休息ト↡。凡夫道者不↠能ハ↣究竟シテ至ルコト↢涅槃ニ↡、常ニ往↢来ス生死ニ↡。是ヲ名ク↢凡夫道ト↡。出世間者、因リテ↢是ノ道ニ↡得ルガ↠出ヅルコトヲ↢三界ヲ↡故ニ名ク↢出世間道ト↡。上者妙ナルガ故ニ名ケテ為↠上ト。入者正シク行ズルガ↠道ヲ故ニ名ケテ為↠入ト。以テ↢是ノ心ヲ↡入ルヲ↢初地ニ↡名クト↢歓喜地ト↡。
2.名歓喜地
^問うていはく、 初地なんがゆゑぞ名づけて歓喜とするやと。
問ウテ曰ク、初地何ガ故ゾ名ケテ為ルヤト↢歓喜ト↡。
^答へていはく、 ª↓*初果の究竟して涅槃に至ることを得るがごとし。 菩薩この地を得れば、 心つねに歓喜多し。
答ヘテ曰ク、
如シ↠得ルガ↣於初果ノ | 究竟シテ至ルコトヲ↢涅槃ニ↡ |
菩薩得レバ↢是ノ地ヲ↡ | 心常ニ多シ↢歓喜↡ |
^自然に諸仏如来の種を増長することを得。 このゆゑにかくのごときの人を、 賢善者と名づくることを得º と。
自然ニ得↠増↢長スルコトヲ | 諸仏如来ノ種ヲ↡ |
是ノ故ニ如キノ↠此クノ人ヲ | 得ト↣名クルコトヲ↢賢善者ト↡ |
^ª▽↑初果を得るがごとしº といふは、 人の▼須陀洹道を得るがごとし。 よく三悪道の門を閉づ。 法を見て法に入り、 法を得て堅牢の法に住して傾動すべからず、 究竟して涅槃に至る。 ▼*見諦所断の法を断ずるがゆゑに、 心大いに歓喜す。 たとひ睡眠し*懶堕なれども▼二十九有に至らず。
如シトイフ↠得ルガ↢初果ヲ↡者、如シ↣人ノ得ルガ↢須陀洹道ヲ↡。善ク閉ヅ↢三悪道ノ門ヲ↡。見テ↠法ヲ入リ↠法ニ得テ↠法ヲ住シテ↢*堅牢ノ法ニ↡不↠可カラ↢傾動ス↡、究竟シテ至ル↢涅槃ニ↡。断ズルガ↢見*諦所断ノ法ヲ↡故ニ、心大ニ歓喜ス。設使睡眠シ*懶堕ナレドモ不↠至ラ↢二十九有ニ↡。
^▼一毛をもつて百分となして、 *一分の毛を0148もつて大海の水を分ち取るがごときは、 二三渧の苦すでに滅せんがごとし。 大海の水は余のいまだ滅せざるもののごとし。 二三渧のごとき心、 大きに歓喜せん。
如キハ↧以テ↢一毛ヲ↡為シテ↢百分ト↡、以テ↢一分ノ毛ヲ↡分チ↦取ルガ大海ノ水ヲ↥、若シ↢二三渧ノ*苦已ニ滅セムガ↡。如シ↢大海ノ水ハ余ノ未ダル↠滅セ者ノ↡。如キ↢二三渧ノ↡心大キニ歓喜セム。
^菩薩もかくのごとし、 ^初地を得をはるを如来の家に生ずと名づく。 一切*天・竜・夜叉・乾闥婆、 乃至 声聞・辟支等、 ともに供養し*恭敬するところなり。 なにをもつてのゆゑに、 この家過咎あることなし。 ゆゑに世間道を転じて出世間道に入る。 ただ仏を*楽敬すれば、 四功徳処を得、 六波羅蜜の果報を得ん。
菩薩モ如シ↠是クノ、得↢初地ヲ↡已ルヲ名ク↠生ズト↢如来ノ家ニ↡。一切天・竜・夜叉・乾闥婆、 乃至 声聞・辟支等、所ナリ↢共ニ供養シ恭敬スル↡。何ヲ以テノ故ニ。是ノ家无シ↠有ルコト↢過咎↡。故ニ*転ジテ↢世間道ヲ↡入ル↢出世間道ニ↡。但楽↢敬スレバ仏ヲ↡、得↢四功0021徳処ヲ↡、得ム↢六波羅蜜ノ果報ヲ↡。
^滋味もろもろの*仏種を断たざるがゆゑに、 心大きに歓喜す。 *この菩薩所有の余の苦は二三の水渧のごとし。 百千億劫に阿耨多羅三藐三菩提を得といへども、 *無始生死の苦においては二三の水渧のごとし。 滅すべきところの苦は大海の水のごとし。 このゆゑにこの地を名づけて歓喜とす」 と。
*滋味コキアヂワイ不ルガ↠断タ↢諸ノ仏種ヲ↡故ニ心大ニ歓喜ス。是ノ菩薩所有ノ余ノ苦ハ如シ↢二三ノ水渧ノ↡。雖モ↣百千億劫ニ得ト↢阿耨多羅三藐三菩提ヲ↡、於テハ↢无始生死ノ苦ニ↡如シ↢二三ノ水渧ノ↡。所ノ↠可キ↠滅ス苦ハ如シ↢大海ノ水ノ↡。是ノ故ニ此ノ地ヲ名ケテ為ト↢歓喜ト↡。
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)「地相品」
1.歓喜所由
(*地相品) ^「問うていはく、 初歓喜地の菩薩、 この地のなかにありて多歓喜と名づく。 もろもろの功徳を得ることをなすがゆゑに歓喜を地とす。 法を歓喜すべし。 なにをもつて歓喜するやと。
問ウテ曰ク、初歓喜地ノ菩薩、在リテ↢此ノ地ノ中ニ↡名テ↢多歓喜ト↡、為スガ↠得ルコトヲ↢諸ノ功徳ヲ↡故ニ歓喜ヲ為↠地ト。法ヲ応シ↢歓喜ス↡。以テ↠何ヲ而歓喜スルヤト。
^答へていはく、 ª*つねに↓諸仏および↓諸仏の大法を念ずれば、 ↓必定して↓希有の行なり。 このゆゑに歓喜多しº と。
答ヘテ曰ク、
常ニ念ズレバ↢於諸仏 | 及ビ諸仏ノ大*法ヲ↡ |
必定シテ希有ノ行ナリ | 是ノ故ニ多シト↢歓喜↡ |
^かくのごときらの歓喜の因縁のゆゑに、 菩薩0149、 初地のなかにありて心に歓喜多し。
如キ↠是クノ等ノ歓喜ノ因縁ノ故ニ菩薩在リテ↢初地ノ中ニ↡心ニ多シ↢歓喜↡。
^ª↑諸仏を念ずº といふは、 *燃灯等の過去の諸仏、 阿弥陀等の現在の諸仏、 *弥勒等の将来の諸仏を念ずるなり。 つねにかくのごときの諸仏世尊を念ずれば、 現に前にましますがごとし。 三界第一にしてよく勝れたるひとましまさず。 このゆゑに歓喜多し。
念ズトイフ↢諸仏ヲ↡者、念ズルナリ↢然灯等ノ過去ノ諸仏、阿弥陀等ノ現在ノ諸仏、弥勒等ノ将来ノ諸仏ヲ↡。常ニ念ズレバ↢如キノ↠是クノ諸仏世尊ヲ↡、如シ↢現ニ在スガ↟前ニ。三界第一ニシテ无マサズ↢能ク勝レタル者↡。是ノ故ニ多シ↢歓喜↡。
^ª↑諸仏の大法を念ぜばº、 略して諸仏の*四十不共法を説かんと。 一つには自在の飛行意に随ふ、 二つには自在の変化辺なし、 三つには自在の所聞無礙なり、 四つには自在に無量種門をもつて一切衆生の心を知ろしめすと。 乃至
念ゼ↢諸仏ノ大法ヲ↡者、略シテ説カムト↢諸仏ノ四十不共法ヲ↡。一ニハ自在ノ飛行随フ↠意ニ、二ニハ自在ノ変化无シ↠辺、三ニハ自在ノ所聞无*閡サワルナリ、四ニハ自在ニ以テ↢无量種門ヲ↡知シメスト↢一切衆生ノ心ヲ↡。 乃至
^ª↑*念必定のもろもろの菩薩º は、 もし菩薩、 阿耨多羅三藐三菩提の記を得つれば、 *法位に入り無生忍を得るなり。 千万億数の魔の軍衆、 壊乱することあたはず。 大悲心を得て*大人法を成ず。 乃至 これを念▼必定の菩薩と名づく。
念必定ノ諸ノ菩薩者、若シ菩薩得ツレバ↢阿耨多羅三藐三菩提ノ記ヲ↡、入リ↢法位ニ↡得ルナリ↢无生忍ヲ↡。千万億数ノ魔之軍衆不↠能ハ↢*壊ヤブル*乱ミダルスルコト↡。得テ↢大悲心ヲ↡成ズ↢大人法ヲ↡。 乃至 是ヲ名ク↢念必定ノ菩薩ト↡。
^ª↑希有の行を念ずº といふは、 必定の菩薩、 *第一希有の行を念ずるなり。 心に歓喜せしむ。 一切凡夫の及ぶことあたはざるところなり。 一切の声聞・辟支仏の行ずることあたはざるところなり。 仏法*無礙解脱および*薩婆若智を開示す。 また十地のもろもろの所行の法を念ずれば、 名づけて心多歓喜とす。 このゆゑに菩薩初地に入ることを得れば、 名づけて歓喜とすと。
念ズトイフ↢希有ノ行ヲ↡者、念ズルナリ↢必定ノ菩薩、第一希有0022ノ行ヲ↡。令ム↢心ニ歓喜セ↡。一切凡夫ノ所ナリ↠不ル↠能ハ↠及ブコト。一切ノ声聞・辟支仏ノ所ナリ↠不ル↠能ハ↠行ズルコト。開↢示ス仏法无*閡解脱及ビ薩婆若智ヲ↡。*人念ズレバ↢十地ノ諸ノ所行ノ法ヲ↡、名ケテ為↢心多歓喜ト↡。是ノ故ニ菩薩得レバ↠入ルコトヲ↢初地ニ↡、名ケテ為ト↢歓喜ト↡。
2.歓喜差別
^0150問うていはく、 凡夫人のいまだ*無上道心を発せざるあり、 あるいは発心するものあり、 いまだ歓喜地を得ざらん、 この人、 諸仏および諸仏の大法を念ぜんと、 必定の菩薩および希有の行を念じて、 また歓喜を得んと。 初地を得ん菩薩の歓喜とこの人と、 なんの差別かあるやと。
問ウテ曰ク、有リ↢凡夫人ノ未ダル↟発セ↢无上道心ヲ↡、或イハ有リ↢発心スル者↡、未ダ ラム↠得↢歓喜地ヲ↡、是ノ人念ゼムト↢諸仏及ビ諸仏ノ大法ヲ↡、念ジテ↢必定ノ菩薩及ビ希有ノ行ヲ↡、亦得ムト↢歓喜ヲ↡。得ム↢初地ヲ↡菩薩ノ歓喜ト与↢此ノ人↡、有ルヤト↢何ノ差別カ↡。
^答へていはく、 ª菩薩初地を得ば、 その心歓喜多し。 諸仏無量の徳、 われまたさだめてまさに得べしº と。
答ヘテ曰ク、
菩薩*得バ↢初地ヲ↡ | 其ノ心多シ↢歓喜↡ |
諸仏无量ノ徳 | 我亦定メテ当ニ シト↠得 |
^初地を得ん必定の菩薩は、 諸仏を念ずるに無量の功徳います。 われまさにかならずかくのごときの事を得べし。 なにをもつてのゆゑに。 われすでにこの初地を得、 必定のなかに入れり。 余はこの心あることなけん。 このゆゑに初地の菩薩多く歓喜を生ず。 余はしからず。 なにをもつてのゆゑに。 余は諸仏を念ずといへども、 この念をなすことあたはず、 われかならずまさに作仏すべしと。
得ム↢初地ヲ↡必定ノ菩薩ハ、念ズルニ↢諸仏ヲ↡有ス↢无量ノ功徳↡。我当ニシ↣必ズ得↢如キ↠是クノ之事ヲ↡。何ヲ以テノ故ニ。我已ニ得↢此ノ初地ヲ↡、入レリ↢必定ノ中ニ↡。余者无ケム↠有ルコト↢是ノ心↡。是ノ故ニ初地ノ菩薩多ク生ズ↢歓喜ヲ↡。余者不↠爾ラ。何ヲ以テノ故ニ。余者雖モ↠念ズト↢諸仏ヲ↡不↠能ハ↠作スコト↢是ノ念ヲ↡、我必ズ*当ニ シト↢作仏ス↡。
^たとへば転輪聖子の、 転輪王の家に生れて、 転輪王の相を成就して、 過去の転輪王の功徳尊貴を念じて、 この念をなさん。 われいままたこの相あり。 またまさにこの豪富尊貴を得べし。 心大きに歓喜せん。 もし転輪王の相なければ、 かくのごときの喜びなからんがごとし。
譬ヘバ如シ↧転輪聖子ノ、生レテ↢転輪王ノ家ニ↡、成↢就シテ転輪王ノ相ヲ↡、念ジテ↢過去ノ転輪王ノ功徳尊*貴ヲ↡、作サム↢是ノ念ヲ↡、我今亦有リ↢是ノ相↡、亦当ニシ↠得↢是ノ豪富尊貴ヲ↡、心大ニ歓喜セム、若シ无ケレ↢転輪王ノ相↡者、无カラムガ↦如キノ↠是クノ喜ビ↥。
^必定の菩薩、 もし諸仏および諸仏の大功徳・威儀・尊貴を念ずれば、 われこの相あ0151り。 かならずまさに作仏すべし、 すなはち大きに歓喜せん。 余はこの事あることなけん。
必定ノ菩薩、若シ念ズレバ↢諸仏及ビ諸仏ノ大功徳・威*儀・尊貴ヲ↡、我有リ↢是ノ相↡。必ズ当ニシ↢作仏ス↡、即チ大ニ歓喜セム。余者无ケム↠有ルコト↢是ノ事↡。
^定心は深く仏法に入りて心動ずべからず」 と。
定心者深ク入リテ↢仏法ニ↡心不ト↠可カラ↠動ズ。」
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(c)「浄地品」
1.信力増上
【14】(註:この段は 「↓信力転増長 ↓深行大悲心 慈愍衆生類 修善心無倦」 の釈。)
^またいはく (*浄地品)、
又0023*云ク、
^「ª↑信力増上º はいかん。 *聞見するところありてかならず受けて疑なければ増上と名づく、 殊勝と名づくと。
「信力増上者*何ン。名ク↧有リテ↠所↢聞見スル↡、必受シテ无ケレバ↠疑増上ト↥、名クト↢殊勝ト↡。
^問うていはく、 二種の増上あり。 一つには多、 二つには勝なり。 いまの説なにものぞやと。
問ウテ曰ク、有リ↢二種ノ増上↡。一ニ者多、二ニ者勝ナリ。今ノ説何者ゾヤト。
^答へていはく、 このなかの二事ともに説かん。 菩薩初地に入ればもろもろの功徳の味はひを得るがゆゑに、 信力転増す。 この信力をもつて諸仏の功徳無量深妙なるを*籌量してよく信受す。 このゆゑにこの心また多なり、 また勝なり。
答ヘテ曰ク、此ノ中ノ二事倶ニ説カム。菩薩入レバ↢初地ニ↡得ルガ↢諸ノ功徳ノ味ヲ↡故ニ信力転増ス。以テ↢是ノ信力ヲ↡*籌↢ハカラフ量シテ諸仏ノ功徳无量深妙ナルヲ↡能ク信受ス。是ノ故ニ此ノ心亦多ナリ亦勝ナリ。
2.深行大悲
^ª↑深く大悲を行じº とは、 衆生を*愍念すること*骨体に徹入するがゆゑに名づけて深とす。 一切衆生のために仏道を求むるがゆゑに名づけて大とす。
深ク行ジト↢大悲ヲ↡者、愍↢念スルコト衆生ヲ↡*徹↢入スルガ骨体ニ↡故ニ名ケテ為↠深ト。為ニ↢一切衆生ノ↡求ムルガ↢仏道ヲ↡故ニ名ケテ為↠大ト。慈心者常ニ求メテ↢利事ヲ↡安↢穏ス衆生ヲ↡。
^慈心はつねに*利事を求めて衆生を安穏す。 *慈に三種あり」 と。 乃至
慈ニ有リト↢三種↡。」 乃至
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(d)「易行品」
1.難易二道
【15】^またいはく (*易行品)、
又曰ク、
^「▲仏法に無量の門あり。 ◆世間の道に難あり、 易あり。 陸道の歩行はすなはち苦しく、 水道の乗船はすなはち楽しきがごとし。 ◆菩薩の道もまたかくのごとし。 あるいは勤行精進のものあり、 あるいは信0152方便の易行をもつて疾く阿惟越致に至るものあり。 乃至
「仏法ニ有リ↢无量ノ門↡。如シ↢世間ノ道ニ有リ↠難有リ↠易、陸道ノ歩行ハ則チ苦シク、水道ノ乗船ハ則チ楽シキガ↡。菩薩ノ道モ亦如シ↠是クノ。或イハ有リ↢*懃行精進ノモノ↡、或イハ有リ↧以テ↢信方便ノ易行ヲ↡疾ク至ル↢*阿惟越致フタイノクライナリニ↡者↥。 乃至
2.弥陀易行 ・十仏章
^ª▲もし人疾く不退転地に至らんと欲はば、 *恭敬の心をもつて執持して名号を称すべしº。
若シ人疾ク欲ハ↠至ラムト↢ | 不退転地ニ↡者 |
応シ↧以テ↢恭敬ノ心ヲ↡ | 執持シテ称ス↦名号ヲ↥ |
2.弥陀易行 ・十仏章 ・十方仏
^◆もし菩薩、 この身において阿惟越致地に至ることを得、 阿耨多羅三藐三菩提を成らんと欲はば、 まさにこの*十方諸仏を念ずべし。 名号を称すること ◆¬*宝月童子所問経¼ の ª阿惟越致品º のなかに説くがごとしと。 乃至
若シ菩薩欲ハ↧於テ↢此ノ身ニ↡得↠至ルコトヲ↢阿惟越致地ニ↡、成ラムト↦阿耨多羅三藐三菩提ヲ↥者、応シ↣*当ニ念ズ↢是ノ十方諸仏ヲ↡。称スルコト↢名号ヲ↡如シト↢¬宝月童子所問経ノ¼阿惟越致品ノ中ニ説クガ↡。 乃至
2.弥陀易行 ・十仏章 ・西方無量明
^ª▲西方に善世界の仏を無量明と号す。 身光智慧あきらかにして、 照らすところ辺際なし。 それ名を聞くことあるものは、 すなはち不退転を得と。 乃至
西方ニ善世界ノ | 仏ヲ号ス↢无量明ト↡ |
身光智慧*明ニシテ | 所↠照ス无シ↢辺際↡ |
其レ有ル↠聞クコト↠名ヲ者ハ | 即チ得ト↢不退転ヲ↡ 乃至 |
2.弥陀易行 ・十仏章 ・過去海徳仏
^▲過去無数劫に仏まします。 *海徳と号す。 このもろもろの現在の仏、 みなかれに従つて願を発せり。
過去无数劫ニ | 有ス↠仏 号ス↢海徳ト↡ |
是ノ諸ノ現在ノ仏 | 皆従テ↠彼ニ発セリ↠願ヲ |
^◆寿命量りあることなし。 光明照らして極まりなし。 国土はなはだ清浄なり。 名を聞きてさだめて仏にならんº と。 乃至
寿命无シ↠有ルコト↠量 | 光明照シテ无シ↠極 |
国土甚ダ清浄ナリ | 聞キテ↠名ヲ定メテ作ラムト↠仏0024ニ 乃至 |
2.弥陀易行 ・百七仏章(与門)
^▲問うていはく、 ただこの十仏の名号を聞きて執持して心に在けば、 すなはち阿耨多羅三藐三菩提を退せざることを得。 また余仏・余菩薩の名ましまして、 阿惟越致に至ることを得とやせんと。
問ウテ曰ク、但聞キテ↢是ノ十仏ノ名号ヲ↡執持シテ在ケバ↠心ニ、便チ得↠不ルコトヲ↠退セ↢阿耨多羅三藐三菩提ヲ↡。為ムト↧更有シテ↢余仏・余菩薩ノ名↡、得ト↠至ルコトヲ↢阿惟越致ニ↡邪↥。
^◆答へていはく、 ▼ª阿弥陀等の仏および諸大菩薩、 ▼名を称し一心に念ずれば、 また不退転を得ることかくのごとしº と。
答ヘテ曰ク、
阿弥陀等ノ仏 | 及ビ諸大菩薩 |
称シ↠名ヲ一心ニ念ズレバ | 亦得ルコト↢不退転ヲ↡ 如シ↠是クノ |
^◆阿弥陀等の諸仏、 また恭敬礼拝し、 そ0153の名号を称すべし。
阿弥陀等ノ諸仏、亦応シ↣恭敬礼拝シ称ス↢其ノ名号ヲ↡。
2.弥陀易行 ・弥陀章(奪門)
^◆*いままさにつぶさに無量寿仏を説くべし。 ^▼*世自在王仏 乃至その余の仏まします ◆この諸仏世尊、 現在十方の清浄世界に、 みな名を称し◆阿弥陀仏の本願を憶念することかくのごとし。 ª^▼もし人われを念じ▼名を称しておのづから帰すれば、 すなはち必定に入りて阿耨多羅三藐三菩提を得、 ^◆このゆゑにつねに憶念すべしº と。
今当ニシ↣具ニ説ク↢无量寿仏ヲ↡。世自在王仏 乃至有ス↢其ノ余仏↡ 是ノ諸仏世尊、現在十方ノ清浄世界ニ、皆称シ↠名ヲ憶↢念スルコト阿弥陀仏ノ本願ヲ↡如シ↠是クノ。若シ人念ジ↠我ヲ称シテ↠名ヲ自ラ帰スレバ、即チ入リテ↢必定ニ↡得↢阿耨多羅三藐三菩提ヲ↡、是ノ故ニ常ニ応シト↢憶念ス↡。
3.偈讃 ・無量光明慧
^◆偈をもつて称讃せん。
以テ↠偈ヲ称讃セム。
^◆ª無量光明慧、 身は*真金の山のごとし。 われいま身口意をして、 合掌し稽首し礼したてまつると。 乃至
无量光明慧 | 身ハ如シ↢真金ノ山ノ↡ |
我今身口意ヲシテ | 合掌シ稽首シ礼シタテマツルト 乃至 |
3.偈讃 ・即時入必定
^▲人よくこの仏の無量力功徳を念ずれば、 ▽即の時に必定に入る。 このゆゑにわれつねに念じたてまつる。 乃至
人能ク念ズレバ↢是ノ仏ノ | 无量力功徳ヲ↡ |
即ノ時ニ入ル↢必定ニ↡ | 是ノ故ニ我常ニ念ジタテマツル 乃至 |
3.偈讃 ・帰命本願力
^▲もし人仏にならんと願じて、 心に阿弥陀を念じたてまつれば、 時に応じてために身を現じたまはん。 このゆゑにわれ、
若シ人願ジテ↠作ラムト↠仏ニ | 心ニ念ジタテマツレバ↢阿弥陀ヲ↡ |
応ジテ↠時ニ為ニ現ジタマハム↠身ヲ | 是ノ故ニ我帰↢*命ス |
^◆かの仏の本願力を帰命す。 十方のもろもろの菩薩も、 来りて供養し法を聴く。 このゆゑにわれ稽首したてまつると。 乃至
彼ノ仏ノ本願力ヲ↡ | 十方ノ諸ノ菩薩モ |
来リテ供養シ聴ク↠法ヲ | 是ノ故ニ我稽首シタテマツルト 乃至 |
3.偈讃 ・信心清浄華開
^▲もし人善根を種ゑて疑へば、 すなはち華開けず。 信心清浄なるものは、 華開けてすなはち仏を見たてまつる。
若シ人種エテ↢善根ヲ↡ | 疑ヘバ則チ華不↠開ケ |
信心清浄ナル者ハ | 華開ケテ則チ見タテマツル↠仏ヲ |
^◆十方現在の仏、 種々の因縁をもつて、 かの仏の功徳を嘆じたまふ。 われいま帰命し礼したてまつると。 乃至
十方現在ノ仏 | 以テ↢種種ノ因縁ヲ↡ |
嘆ジタマフ↢彼ノ仏ノ功徳ヲ↡ | 我今帰命シ礼シタテマツルト 乃至 |
3.偈讃 ・乗船度海
^▲かの八道の船に乗じて、 よく難度海を度す。 みづから度し、 またかれを度せん。 われ自在人を礼したてまつる。
乗ジテ↢彼ノ八道ノ船ニ↡ | 能ク度ス↢難度海ヲ↡ |
自ラ度シ亦度セム↠彼ヲ | 我礼シタテマツル↢自在人ヲ↡ |
^◆諸仏無量劫にその功0154徳を讃揚せんに、 なほ尽すことあたはじ。 清浄人を帰命したてまつる。
0025諸仏无量劫ニ | 讃↢*揚アグセムニ其ノ功徳ヲ↡ |
猶尚不↠能ハ↠尽スコト | 帰↢命シタテマツル清浄人ヲ↡ |
^◆われいままたかくのごとし。 無量の徳を称讃す。 この福の因縁をもつて、 願はくは仏、 つねにわれを念じたまへº」 と。 抄出
我今亦如シ↠是クノ | 称↢*讃ス无量ノ徳ヲ↡ |
以テ↢是ノ福ノ因縁ヲ↡ | 願クハ仏常ニ念ジタマヘト↠我ヲ」 抄出 |
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)北天引意(¬浄土論¼三文)
(a)成上起下の偈
【16】^▼¬*浄土論¼ にいはく、
¬*浄土論ニ¼曰ク、
・如実修行
^「▲われ*修多羅真実功徳相によりて、 *願偈総持を説きて仏教と相応せりと。
「我依リテ↢修多羅 | 真実功徳相ニ↡ |
説キテ↢願偈*総持ヲ↡ | 与↢仏教↡相応セリト |
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)不虚作住持功徳の偈
・速満宝海
^▲仏の本願力を*観ずるに、 *遇うて空しく過ぐるものなし。 よくすみやかに功徳の大宝海を満足せしむ」 と。
観ズルニ↢仏ノ本願力ヲ↡ | 遇テ无シ↢空シク過グル者↡ |
能ク令ムト↣速ニ満↢足セ | 功徳ノ大宝海ヲ↡」 |
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(c)利行満足章の終文
【17】^▼またいはく (浄土論)、
又曰ク、
・自利利他
^「▲菩薩は*四種の門に入りて自利の行成就し*たまへりと、 知るべし。 ◆菩薩は*第五門に出でて*回向利益他の行成就したまへりと、 知るべし。
「菩薩ハ入リテ↢四種ノ門ニ↡自利ノ行成就シタマヘリト、応シ↠知ル。菩薩ハ出デテ↢第五門ニ↡回向利益他ノ行成就シタマヘリト、応シ↠知ル。
^◆菩薩はかくのごとく五門の行を修して自利利他してすみやかに阿耨多羅三藐三菩提を成就することを得たまへるがゆゑに」 と。 抄出
菩薩ハ如ク↠是クノ修シテ↢五門ノ行ヲ↡自利利他シテ速ニ得タマヘルガ↣成↢就スルコトヲ阿耨多羅三藐三菩提ヲ↡故ニト。」 抄出
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅲ)雁門引意(¬論註¼四文)
(a)序題興由
【18】^▼¬*論の註¼ (上) にいはく、
¬*論ノ註ニ¼曰ク、
・二祖一致 ・龍樹論判
^「▲つつしんで龍樹菩薩の ¬十住毘婆沙¼ を案ずるにいはく、 ª菩薩、 阿毘跋致を求むるに二種の道あり。 一つには難行道、 二つには易行道なり。
「謹テ案ズルニ↢龍樹菩薩ノ¬十住毘婆沙ヲ¼↡云ク、菩薩求ムルニ↢阿毘跋致ヲ↡有リ↢二種ノ道↡。一ニ者難行道、二ニ者易行道ナリ。
・二祖一致 ・龍樹論判 ・難行道(五難)
^◆難行道とは、 いはく、 ▼五濁の世、 ▼無仏の時において、 阿毘跋致を求むるを難とす。 この難にいまし多くの途あり。 ほぼ▼五三をいひてもつて義の意を示さん。 ^一つには▼外道の相善は菩薩の法を乱る。 二0155つには▼声聞は自利にして大慈悲を障ふ。 三つには▼無顧の悪人、 他の勝徳を破す。 四つには▼顛倒の善果よく梵行を壊す。 五つには▼ただこれ自力にして他力の持つなし。 ^これらのごときの事、 目に触るるにみなこれなり。 たとへば陸路の歩行はすなはち苦しきがごとし。
難行道ト者、謂ク於テ↢五濁之世无仏ノ時ニ↡、求ムルヲ↢阿毘跋致ヲ↡為↠難ト。此ノ難ニ乃シ有リ↢多クノ*途↡。粗言フテ↢五三ヲ↡以テ示サム↢義ノ意ヲ↡。一ニ者外道ノ相 *修醤反 善ハ乱ル↢菩薩ノ法ヲ↡。二ニ者声聞ハ自利ニシテ障フ↢大慈悲ヲ↡。三ニ者無*顧ノカヘリミル悪人破ス↢他ノ勝徳ヲ↡。四ニ者顛倒ノ善果能ク壊ス↢梵行ヲ↡。五ニ者唯是自力ニシテ无シ↢他力ノ持ツ↡。如キノ↢斯レ等ノ↡事、触ルヽニ↠目ニ皆是ナリ。譬ヘバ如シ↢陸路ノ歩行ハ則チ苦シキガ↡。
・二祖一致 ・龍樹論判 ・易行道
^◆易行道とは、 いはく、 ただ信仏の因縁をもつて浄土に生ぜんと願ず。 仏願力に乗じてすなはちかの清浄の土に往生を得しむ。 仏力住持してすなはち▽大乗正定の聚に入る。 正定はすなはちこれ阿毘跋致なり。 たとへば水路に船に乗じてすなはち楽しきがごとしº と。
易行道ト者、謂ク但以テ↢信仏ノ因縁ヲ↡願ズ↠生ゼムト↢浄土ニ↡。乗ジテ↢仏願力ニ↡便チ得シム↣往↢生ヲ彼ノ清浄ノ土ニ↡。仏力住持シテ即チ入ル↢大乗正0026定之聚ニ↡。正定ハ即チ是阿毘跋致ナリ。譬ヘバ如シト↢水路ニ乗ジテ↠船ニ則チ楽シキガ↡。
・二祖一致 ・本論分斉
^◆この ¬無量寿経優婆提舎¼ は、 ▼けだし上衍の極致、 不退の▼風航なるものなり。
此ノ¬无量寿経優婆提舎ハ¼、蓋シ上衍 *衍字 口且反楽也 之極*致ムネ、不退之風*航ナル *航字フナワタシ ホナリ 者也。
・二祖一致 ・随順仏教
^◆ª無量寿º はこれ安楽浄土の如来の別号なり。 釈迦牟尼仏、 ▼王舎城および舎衛国にましまして、 大衆のなかにして無量寿仏の荘厳功徳を説きたまふ。 すなはち仏の名号をもつて経の体とす。
无量寿ハ是安楽浄土ノ如来ノ別号ナリ。釈迦牟尼仏、在シテ↢王舎城及ビ舎衛国ニ↡、於テ↢大衆之中ニ↡説キタマフ↢无量寿仏ノ荘厳功徳ヲ↡。即チ以テ↢仏ノ名号ヲ↡為↢経ノ体ト↡。
^◆後の聖者婆藪槃頭菩薩 (天親)、 如来大悲の教を服膺して、 経に傍へて願生の偈を作れり」 と。 以上
後ノ聖者婆藪槃頭菩薩、*服↢シタガイ*膺モチヰルシテ 一升反 如来大悲之教ヲ↡、傍エテ↠経ニ作レリト↢願生ノ偈ヲ↡。」 已上
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅲ)(b)建章偈註
【19】^またいはく (論註・上)、
又云ク、
・易行修相
^「▲また所願軽からず。 もし如来威神を加せずは、 まさになにをもつてか達せん。 神力を乞加す。 このゆゑに仰いで告げたまへり。
「又所願不↠軽カラ。若シ如来不ハ↠*加セクワウ↢威神ヲ↡、将ニ何ヲ以テカ*達セムサトル 。*乞コウ↢加ス神力ヲ↡。所以ニ仰イデ告ゲタマヘリ。
・易行修相 ・我一心
^◆ª我一心º とは天親菩薩の自督 (▼督の字、 勧なり、 率なり、 正なり) の詞0156なり。 ◆いふこころは無礙光如来を念じて安楽に生ぜんと願ず。 *心々相続して他想間雑することなし。 ▼乃至
我一心ト者天親菩薩ノ自* *督字アキラカナリ 勧也 率也 正也 俗作 之詞ナリ。言ハ念ジテ↢无光如来ヲ↡願ズ↠生ゼムト↢安楽ニ↡。心心相続シテ无シ↢*他想間雑スルコト↡。 乃至
・仏教相応
^▲ª帰命尽十方無礙光如来º とは、 ª帰命º はすなはちこれ礼拝門なり、 ª尽十方無礙光如来º はすなはちこれ讃嘆門なり。
*帰命尽十方无光如来ト者、帰*命ハ即チ是礼拝門ナリ。尽十方无光如来ハ即チ是讃嘆門ナリ。
・仏教相応 ・礼拝門
^◆なにをもつてか知らん、 帰命はこれ礼拝なりとは。
何ヲ以テカ知ラム帰命ハ是レ礼拝ナリトハ。
^◆龍樹菩薩、 阿弥陀如来の讃を造れるなかに、 あるいは ª稽首礼º といひ、 あるいは ª我帰命º といひ、 あるいは ª帰命礼º といへり。 この ¬論¼ (浄土論) の長行のなかにまた ª五念門を修すº といへり。 五念門のなかに礼拝はこれ一つなり。 天親菩薩すでに往生を願ず、 あに礼せざるべけんや。 ゆゑに知んぬ、 帰命はすなはちこれ礼拝なりと。
龍樹菩薩造レル↢阿弥陀如来ノ讃ヲ↡中ニ、或イハ言ヒ↢稽首礼ト↡、或イハ言ヒ↢我帰命ト↡、或イハ言ヘリ↢帰命礼ト↡。此ノ¬論ノ¼長行ノ中ニ亦言ヘリ↠修スト↢五念門ヲ↡。五念門ノ中ニ礼拝ハ是レ一ナリ。天親菩薩*既キ ニ願ズ↢往生ヲ↡、豈容ケムヤ↠不ル↠礼セ。故ニ知ンヌ帰命ハ即チ是礼拝ナリト。
^◆しかるに礼拝はただこれ恭敬にして、 かならずしも帰命ならず。 帰命はこれ礼拝なり。 もしこれをもつて推するに、 帰命は重とす。 偈は己心を申ぶ、 よろしく帰命 (命の字、 ▽使なり、 教なり、 道なり、 信なり、 計なり、 召なり) といふべし。 ¬論¼ に偈義を解するに、 汎く礼拝を談ず。 *彼此あひ成ず、 義においていよいよ顕れたり。
然ルニ礼拝ハ但是恭*敬ニシテ、不↢必ズシモ帰命ナラ↡。帰命ハ是礼拝ナリ。若シ以テ↠此ヲ*推ヲススルニ、帰命ハ為↠重ト。偈ハ申シンブ↢己オノレ心ヲ↡、宜ベ クシ↠言フ↢帰命ト↡ *命字 眉マユ病反 使也 教也 道也 信也 計也 召也。¬論ニ¼解スルニ↢偈義ヲ↡、汎ハンク談ズ↢礼拝ヲ↡。彼此相成ズ、於テ↠義ニ弥0027*顕レタリ。
・仏教相応 ・讃嘆門
^◆なにをもつてか知らん、 ª尽十方無礙光如来º はこれ讃嘆門なりとは。
何ヲ以テカ知ラム尽十方无光如来ハ是レ賛嘆門ナリトハ。
^◆下の長行のなかにいはく、 ª^いかんが讃嘆する。 いはく、 かの如来の名を称 (▼称の字、 軽重を知るなり。 ¬*説文¼ にいはく、 銓なり、 是なり、 等0157なり、 俗に秤に作る、 斤両を正すをいふなり) す。 かの如来の光明智相*のごとく、 かの名義のごとく、 実のごとく修行し相応せんと欲ふがゆゑにº と。 ▼乃至
下ノ長行ノ中ニ言ハク、云何ガ讃嘆スル。謂ク称ス↢ *称字 処陵ノ反 知ル↢軽重ヲ↡也 ¬説文¼曰*銓也 是也 等也 *俗ハ作ル↠秤ニ 云正↢*斤両↡也 *昌孕ノ反 昌陵ノ反 彼ノ如来ノ名ヲ↡。如ク↢彼ノ如来ノ光明智相ノ↡、如ク↢彼ノ名義ノ↡、欲フガ↢如ク↠実ノ修行シ相応セムト↡故ニト。 乃至
^▲天親、 いま ª尽十方無礙光如来º とのたまへり。 すなはちこれかの如来の名によりて、 かの如来の光明智相のごとく讃嘆するがゆゑに、 知んぬ、 この句はこれ讃嘆門なりとは。
天親今言ヘリ↢尽十方无光如来ト↡。即チ是依リテ↢彼ノ如来ノ名ニ↡、如ク↢彼ノ如来ノ光明智相ノ↡讃嘆スルガ故ニ知ンヌ、此ノ句ハ是賛嘆門ナリトハ。
・仏教相応 ・作願門
^◆ª願生安楽国º とは、 この一句はこれ作願門なり、 天親菩薩帰命の意なり。 ▼乃至
願生安楽国ト者、此ノ一句ハ是作願門ナリ、天親菩薩帰命之意也。 乃至
・仏教相応 ・願生問答
^▲問うていはく、 大乗経論のなかに、 処々に ª衆生畢竟無生にして虚空のごとしº と説きたまへり。 いかんぞ天親菩薩 ª願生º とのたまふやと。
問ウテ曰ク、大乗経論ノ中ニ、処処ニ*説キタマヘリ↣衆生畢竟无生ニシテ如シト↢虚空ノ↡。云何ゾ天親菩薩言フ↢願生ト↡邪ト。
^◆答へていはく、 ª衆生無生にして虚空のごとしº と説くに二種あり。
答ヘテ曰ク、説クニ↣衆生无生ニシテ如シト↢虚空ノ↡有リ↢二種↡。
^◆一つには、 凡夫の実の衆生と謂ふところのごとく、 凡夫の所見の実の生死のごとし。 この所見の事、 畢竟じて*所有なけん、 亀毛のごとし、 虚空のごとしと。
一ニ者如ク↢凡夫ノ所ノ↟謂フ↢実ノ衆生ト↡、如シ↢凡夫ノ所見ノ実ノ生死ノ↡。此ノ所見ノ事、*畢ヲワル竟ジテ无ケム↠所コト↠有ラ、如シ↢亀毛ノ↡、如シト↢虚空ノ↡。
^◆二つには、 いはく、 *諸法は因縁生のゆゑに、 すなはちこれ不生にして、 所有なきこと虚空のごとしと。 ^天親菩薩、 願生するところはこれ因縁の義なり。 因縁の義なるがゆゑに仮に生と名づく。 凡夫の実の衆生、 実の生死ありと謂ふがごときにはあらざるなりと。
二ニ者謂ク諸法ハ因縁生ノ故ニ、即チ是不生ニシテ、无キコト↠所↠有如シト↢虚空ノ↡。天親菩薩所↢願生スル↡者是因縁ノ義ナリ。因縁ノ義ナルガ故ニ*仮ケ ニ名ク↠生ト。非ザル↠如キニハ↢凡夫ノ謂フガ↟有リト↢実ノ衆生実ノ生死↡也ト。
・仏教相応 ・往生問答
^0158◆問うていはく、 なんの義によりて往生と説くぞやと。
問ウテ曰ク、依リテ↢何ノ義ニ↡説クゾヤト↢往生ト↡。
^◆答へていはく、 この間の仮名の人のなかにおいて五念門を修せしむ。 *前念と後念と因となる。 穢土の仮名の人、 浄土の仮名の人、 決定して一を得ず、 決定して異を得ず。 前心・後心またかくのごとし。 なにをもつてのゆゑに。 もし一ならばすなはち因果なけん、 もし異ならばすなはち相続にあらず。 ▼この義*一異を観ずる門なり、 ▼論のなかに委曲なり。
答ヘテ曰ク、於テ↢此ノ間ノ仮名ノ人ノ中ニ↡修セシム↢五念門ヲ↡。前念ト与↢後念↡作ル↠因ト。穢土ノ仮名ノ人、浄土ノ仮名ノ人、不↠得↢決定シテ一ヲ↡、不↠得↢決定シテ異ヲ↡。前心・後心亦如シ↠是クノ。何ヲ以テノ故ニ。若シ一ナラバ則チ无ケム↢因果↡、若シ異ナラバ則チ非ズ↢相続ニ↡。是ノ義観ズル↢一異ヲ↡門ナリ、論ノ中ニ*委クワシ*曲ナリ。
^◆第一行の三念門を釈しをはんぬと。 ▼乃至
釈シ↢第一行ノ三念門ヲ↡竟ンヌト。 乃至
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅲ)(c)成上起下偈註
・依
^▲ª^我依修多羅 真実功徳相 説願偈総持 与仏教相応º とのたまへりと。 ▼乃至
我依修多羅真実功徳相説願0028偈総持与仏教相応トノタマヘリト。 乃至
^▲いづれのところにか依る、 なんのゆゑにか依る、 いかんが依ると。 いづれのところにか依るとならば、 修多羅に依るなり。 なんのゆゑにか依るとならば、 如来すなはち真実功徳の相なるをもつてのゆゑに。 いかんが依るとならば、 五念門を修して相応せるがゆゑにと。 乃至
何レノ所ニカ依ル、何ノ故ニカ依ル、云何ガ依ルト。何・所・依・者、依ルナリ↢修多羅ニ↡。何・故・依・者、以テノ↢如来即チ真実功徳ノ相ナルヲ↡故ニ。*云何・依・者、修シテ↢五念門ヲ↡相応セルガ故ニト。 乃至
・修多羅
^▲ª修多羅º は▼十二部経のなかの直説のものを修多羅と名づく。 いはく、 四阿含・三蔵等のほかの大乗の諸経をまた修多羅と名づく。 このなかに ª依修多羅º といふは、 これ三蔵のほかの大乗修多羅なり、 阿含等の経にはあらざるなり。
修多羅者十二部経ノ中ノ直説ノ者ヲ名ク↢修多羅ト↡。謂ク*四阿*含フウム・三蔵等ノ外ノ大乗ノ諸経ヲ亦名ク↢修多羅ト↡。此ノ中ニ言フ↢依修多羅ト↡者、是三蔵ノ外ノ大乗修多羅ナリ、非ザル↢阿含等ノ経ニハ↡也。
・真実功徳
^◆ª真実功徳相º とは、 二種の功徳あり。 一つには有漏の心より生じて法性に順ぜず。 いはゆる凡夫、 人天の諸善、 人0159天の果報、 もしは因、 もしは果、 みなこれ顛倒す、 みなこれ虚偽なり。 このゆゑに不実の功徳と名づく。
真実功徳相ト者有リ↢二種ノ功徳↡。一ニ者従リ↢有漏ノ心↡生ジテ不↠順ゼ↢法性ニ↡。所↠謂ハ凡夫、人天ノ諸善、人天ノ果報、若シハ因若シハ果、皆是顛倒ス、皆是虚*偽ナリイツワル 。是ノ故ニ名ク↢不実ノ功徳ト↡。
^◆二つには菩薩の智慧清浄の業より起りて仏事を荘厳す。 法性によりて清浄の相に入れり。 この法顛倒せず、 虚偽ならず、 真実の功徳と名づく。 いかんが顛倒せざる。 法性により*二諦に順ずるがゆゑに。 いかんが虚偽ならざる。 衆生を摂して畢竟浄に入るるがゆゑなり。
二ニ者従リ↢菩薩ノ智慧清浄ノ業↡起リテ荘↢厳ス仏事ヲ↡。依リテ↢法性ニ↡入レリ↢清浄ノ相ニ↡。是ノ法不↢顛倒セ↡、不↢虚偽ナラ↡、名ク↢真実ノ功徳ト↡。云何ガ不ル↢顛倒セ↡。依リ↢法性ニ↡順ズルガ↢二諦ニ↡故ニ。云何ガ不ル↢虚偽ナラ↡。摂シテ↢衆生ヲ↡入ルガ↢畢竟浄ニ↡故ナリ。
・総持
^◆ª説願偈総持与仏教相応º とは、 ª持º は不散不失に名づく、 ª総º は少をもつて多を摂するに名づく。 ▼乃至 ª願º は欲楽往生に名づく。 ▼乃至 ª与仏教相応º とは、 たとへば函蓋相称するがごとしと。 ▼乃至
説願偈総持与仏教相応ト者、持ハ名ク↢不散不*失ニ↡、総ハ名ク↢以テ↠少ヲ摂スルニ↟多ヲ。 乃至 願ハ名ク↢欲楽往生ニ↡。 乃至 与仏教相応ト者、譬ヘバ如シト↢函*蓋相称スルガ↡也。 乃至
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅲ)(d)起観生信章
・他力回向
(論註・下) ^▲ªいかんが*回向する。 一切苦悩の衆生を捨てずして、 心につねに*作願すらく、 回向を首として大悲心を成就することを*得たまへるがゆゑにº とのたまへり。
云何ガ廻向スル。不シテ↠捨テ↢一切苦悩ノ衆生ヲ↡、心ニ常ニ作願スラク、廻向ヲ為テ↠首ト得タマヘルガ↣成↢就スルコトヲ大悲心ヲ↡故ニトノタマヘリ。
^◆回向に二種の相あり。 一つには往相、 二つには還相なり。 ◆往相とは、 おのれが功徳をもつて一切衆生に回施して、 *作願してともに阿弥陀如来の安楽浄土に往生せしめたまへるなり」 と。 抄出
廻向ニ有リ↢二種ノ相↡。一ニ者往相、二ニ者還相ナリ。往相ト者、以テ↢己ガ功徳ヲ↡廻↢施シテ一切衆生ニ↡、作願シテ共ニ往↢生セシメタマヘルナリト阿弥陀如来ノ安楽浄土ニ↡。」*抄出
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅳ)西河引意(¬安楽集¼四文)
(a)正しく念仏三昧の徳を明かす
(イ)第一大門中宗旨不同
・念仏功能
【20】^▼¬*安楽集¼ (上) にいはく、
¬*安0029楽集ニ¼云ク、
^「¬*観仏三昧経¼ にいはく、 ▲ª^*父の王を勧めて念仏三昧を行ぜしめたまふ。
「¬観仏三昧経ニ¼云ク、令メタマフ↧勧メテ↢父ノ王ヲ↡行ゼ↦念仏三昧ヲ↥。
^◆父の王、 仏にまうさく、 «仏地の果徳、 真0160如実相第一義空、 なにによりてか弟子をしてこれを行ぜしめざる» と。
父ノ王白サク↠仏ニ、仏地ノ果徳、真如実相第一義空、何ニ因リテカ不ルト↠*遣ケンメ↢弟子ヲシテ行ゼ↟之ヲ。
^◆仏、 父の王に告げたまはく、 «諸仏の果徳、 無量深妙の境界、 神通解脱まします。 これ凡夫の所行の境界にあらざるがゆゑに、 父の王を勧めて念仏三昧を行ぜしめたてまつる» と。
仏告ゲタマハク↢父ノ王ニ、諸仏ノ果徳、有ス↢无量深妙ノ境界、神通解脱↡。非ザルガ↢是レ凡夫ノ所行ノ境界ニ↡故ニ勧メテ↢父ノ王ヲ↡行ゼシメタテマツルト↢念仏三昧ヲ↡。
^◆父の王、 仏にまうさく、 «念仏の功、 その状いかんぞ» と。
父ノ王白ク↠仏ニ、念仏之功、其ノ状云何ゾト。
^◆仏、 父の王に告げたまはく、 «伊蘭林の方四十由旬ならんに、 一科の牛頭栴檀あり。 根芽ありといへどもなほいまだ土を出でざるに、 その伊蘭林ただ臭くして香ばしきことなし。 もしその華菓を*噉することあらば、 狂を発して死せん。 後の時に栴檀の根芽やうやく生長して、 わづかに樹にならんとす。 香気昌盛にして、 つひによくこの林を改変してあまねくみな香美ならしむ。 衆生見るものみな希有の心を生ぜんがごとし» と。
仏告ゲタマハク↢*父ノ王ニ↡、如シト↧伊*蘭ワル林キ ノ方四十由旬ナラムニ、有リ↢一科ノ牛頭栴檀↡、雖モ↠有リト↢*根芽クキ↡猶未ダ ルニ↠出デ↠土ヲ、其ノ伊蘭林唯*臭シユクシテ無シ↠香バシキキコト、若シ有ラバ↠*噉スルコトナムル クラフ ↢其ノ華菓ヲ↡、発↠*狂ヲクルウ而死セム、後ノ時ニ栴檀ノ*根芽漸漸ク生長シテ、纔ニ欲↠成ラムト↠樹ニ、香気昌*盛ニシテ、遂ニ能ク*改↢アラタム変シテ此ノ林ヲ↡普ク皆香*美ナラシム、衆生見ル者皆生ゼムガ↦希有ノ心ヲ↥。
^◆仏、 父の王に告げたまはく、 «一切衆生、 生死のなかにありて念仏の心もまたかくのごとし。 ただよく念を繋けて止まざれば、 さだめて仏前に生ぜん。 一たび往生を得れば、 すなはちよく一切の諸悪を改変して大慈悲を成ぜんこと、 かの香樹の伊蘭林を改むるがごとし»º と。
仏告ゲタマハク↢父ノ王ニ↡、一切衆生、在リテ↢生死ノ中ニ↡念仏之心モ亦復如シ↠是クノ。但能ク繋ケテ↠念ヲ不レバ↠止マ、定メテ生ゼム↢仏前ニ↡。一タビ得レバ↢往生ヲ↡、即チ能ク改↢変シテ一切ノ諸悪ヲ↡成ゼムコト↢大慈悲ヲ↡、如シト↣彼ノ香樹ノ改ムルガ↢伊蘭林ヲ↡。
^◆いふところの ª伊蘭林º とは、 衆生の身の内の三毒・三障、 無辺の重罪に喩ふ。 ª栴檀º といふは、 衆生の念仏の心に喩ふ。 ªわづかに樹と0161ならんとすº といふは、 いはく、 一切衆生ただよく念を積みて断えざれば業道成弁するなり。
所ノ↠言フ伊蘭林ト者、喩フ↢衆生ノ身ノ内ノ三*毒・三障无辺ノ重罪ニ↡。言フ↢栴檀ト↡者、喩フ↢衆生ノ念仏之心ニ↡。纔ニ欲トイフ↠成ラムト↠樹ト者、謂ク一切衆生但能ク積ミテ↠念ヲ不レバ↠断ヘ業道成*弁スル也。
^◆問うていはく、 一衆生の念仏の功を計りてまた一切を知るべし。 なにによりてか一念の功力よく一切の諸障を断ずること、 一つの香樹の、 四十由旬の伊蘭林を改めて、 ことごとく香美ならしむるがごとくならんやと。
問ウテ曰ク、*計シテハカリテ↢*一衆生ノ念仏之功ヲ↡亦応シ↢一切ヲ知ル↡。何ニ因リテカ一念之功力能ク断ズルコト↢一切ノ諸障ヲ↡、如クナラム↧一ノ香樹ノ改メテ↢四十由旬ノ伊蘭林ヲ↡、悉ク使ムルガ↦香美ナラ↥也ト。
^◆答へていはく、 諸部の大乗によりて念仏三昧の功能の不可思議なるを顕さんとなり。
答ヘテ曰ク、依リテ↢諸*部ノ大乗ニ↡顕サムト↢念仏三昧ノ功能ノ不可思議ナルヲ↡也。
^◆いかんとならば ¬*華厳経¼ にいふがごとし。 ª^たとへば人ありて、 獅子の筋を用ゐて、 もつて琴の絃とせんに、 音声一たび奏するに一切の余の絃ことごとくみな断壊するがごとし。 もし人菩提心のなかに念仏三昧を行ずれば、 一切の煩悩、 一切の諸障、 ことごとくみな断滅すと。
何者如0030シ↢¬*華厳経ニ¼云フガ↡。譬ヘバ如シ↧有リテ↠人、用テ↢師子ノ筋ヲ↡以テ為ムニ↢琴ノ絃ト↡、音声一タビ奏スルニ一切ノ余ノ絃悉ク皆断壊スルガ↥。若シ人菩提心ノ中ニ行ズレ↢念仏三昧ヲ↡者、一切ノ煩悩、一切ノ諸障、悉ク皆断滅スト。
^◆また人ありて、 牛・羊・驢馬一切のもろもろの乳を*搆り取りて一器のなかに置かんに、 もし獅子の乳一渧をもつてこれを投ぐるに、 ただちに過ぎて難なし、 一切の諸乳ことごとくみな破壊して変じて清水となるがごとし。 もし人ただよく菩提心のなかに念仏三昧を行ずれば、 一切の悪魔諸障ただちに過ぐるに難なしº と。
亦如シ↧有リテ↠人搆シ↢取リテ*牛・羊・*驢馬一切ノ諸ノ乳ヲ↡置カムニ↢一器ノ中ニ↡、若シ*将テマサニ↢師子ノ乳一渧ヲ↡*投ルニナグルニ↠之ヲ、直ニ過ギテ无シ↠難、一切ノ諸乳悉ク皆破壊シテヤブル 変ジテ為ルガ↦清水ト↥。若シ人但能ク菩提心ノ中ニ行ズレ↢念仏三昧ヲ↡者、一切ノ悪魔諸障直ニ過グルニ无シ↠難。
^◆またかの ¬経¼ (華厳経) にいはく、 ª^たとへば人ありて、 翳身薬をもつて処々に0162遊行するに、 一切の余行この人を見ざるがごとし。 もしよく菩提心のなかに念仏三昧を行ずれば、 一切の悪神、 一切の諸障、 この人を見ず、 もろもろの処々に随ひてよく遮障することなきなり。
又彼ノ¬経ニ¼云ク、譬ヘバ如シ↧有リテ↠人持テ↢*翳カクス身薬ヲ↡処処ニ*遊行スルニ、一切ノ余行不ルガ↞見↢是ノ人ヲ↡。若シ能ク菩提心ノ中ニ行ズレ↢念仏三昧ヲ↡者、一切ノ悪神、一切ノ諸障、不↠見↢是ノ人ヲ↡、随ヒテ↢諸ノ処処ニ↡无キ↢能ク*遮サイギル障スルコト↡也。
^◆なんがゆゑぞとならば、 よくこの念仏三昧を念ずるは、 すなはちこれ一切三昧のなかの王なるがゆゑなりº」 と。
何ガ故ゾトナラバ能ク念ズルハ↢此ノ念仏三昧ヲ↡、即チ是一切三昧ノ中ノ王ナルガ故也ト。」
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅳ)(a)(ロ)第四大門中第三問答解釈
【21】^▼またいはく (安楽集・下)、
*又云ク、
・諸障皆除
^「▲¬▼摩訶衍¼ のなかに説きていふがごとし。 ª^諸余の三昧は三昧ならざるにはあらず。
「如シ↢¬摩訶衍エン反ノ¼中ニ説キテ云フガ↡。諸余ノ三昧ハ非ズ↠不ルニハ↢三昧ナラ↡。
^◆なにをもつてのゆゑに、 あるいは三昧あり、 ただよく貪を除いて瞋痴を除くことあたはず。 あるいは三昧あり、 ただよく瞋を除いて痴貪を除くことあたはず。 あるいは三昧あり、 ただよく痴を除いて瞋を除くことあたはず。 あるいは三昧あり、 ただよく現在の障を除いて過去・未来の一切諸障を除くことあたはず。
何ヲ以テノ故ニ。或イハ有リ↢三昧↡、但能ク除イテ↠貪ヲ不↠能ハ↠除クコト↢瞋痴ヲ↡。或イハ有リ↢三昧↡、但能ク除イテ↠瞋ヲ不↠能ハ↠除クコト↢痴貪ヲ↡。或イハ有リ↢三昧↡、但能ク除イテ↠痴ヲ不↠能ハ↠除クコト↠瞋ヲ。或イハ有リ↢三昧↡、但能ク除イテ↢現在ノ障ヲ↡不↠能ハ↠除クコト↢過去・未来ノ一切諸障ヲ↡。
^◆もしよくつねに念仏三昧を修すれば、 現在・過去・未来の一切諸障を問ふことなくみな除くなりº」 と。
若シ能ク常ニ修スレバ↢念仏三昧ヲ↡、无ク↠問フコト↢現在・過去・未来ノ一切諸障ヲ↡皆除ク*也ト。」
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅳ)(a)(ハ)第五大門中修道延促
【22】^▼またいはく (安楽集・下)、
*又云ク、
・具足功徳
^「▲¬大経の讃¼ (*讃弥陀偈) にいはく、
「¬大経ノ¼賛ニ云ク、
^◆ªもし阿弥陀の徳号を聞きて歓喜讃仰し、 心帰依すれば、 下一念に至るまで大利を得。 すなはち功徳の宝を具足すとす。
若シ聞キテ↢阿弥陀ノ徳号ヲ↡ | 歓喜賛仰シ *心帰依スレバ |
下至ルマデ↢一念0031ニ↡得↢大利ヲ↡ | 則チ為↣具↢足スト功徳ノ宝ヲ↡ |
^◆たとひ大千世界に満てらん火をも、 またただちに過ぎて仏の名を聞くべし。 阿弥陀を聞かばまた退せず。 このゆゑに心を0163至して稽首し礼したてまつるº」 と。
設ヒ満テラム↢大千世界ニ↡火ヲモ | 亦応シ↣直ニ過ギテ聞ク↢仏ノ名ヲ↡ |
聞カバ↢阿弥陀ヲ↡不↢復退セ↡ | 是ノ故ニ至シテ↠心ヲ稽首シ礼シタテマツルト」 |
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅳ)(b)易行を結勧す(第三大門中第四引教勧信)
【23】^▼またいはく (安楽集・上)、
又*云ク、
・証誠勧信
^「▲また ¬*目連所問経¼ のごとし。 ª^仏、 目連に告げたまはく、 «たとへば万川長流に草木ありて、 前は後ろを顧みず、 後ろは前を顧みず、 すべて大海に会するがごとし。 世間もまたしかなり。 豪貴富楽自在なることありといへども、 ことごとく生老病死を勉るることを得ず。 ただ仏経を信ぜざるによりて、 後世に人となつて、 さらにはなはだ困劇して千仏の国土に生ずることを得ることあたはず。
「又如シ↢¬*目連所問経ノ¼↡。仏告ゲタマハク↢目連ニ↡、譬ヘバ如シ↧万*川長流ニ有リテ↢草木↡、前ハ不↠顧↠後ヲ、後ハ不↠顧↠前ヲ、都テ会スルガ↦大海ニ↥。世間モ亦爾ナリ。雖モ↠有リト↢豪貴富楽自在ナルコト↡、悉ク不↠得↠勉ルヽコトヲ↢生老病死ヲ↡。只由リテ↠不ルニ↠信ゼ↢仏経ヲ↡、後世ニ為テ↠人ト、更ニ甚ダ困*劇ハゲシシテ不↠能ハ↠得ルコト↠生ズルコトヲ↢千仏ノ国土ニ↡。
^◆このゆゑにわれ説かく、 "無量寿仏国は往き易く取り易くして、 人、 修行して往生することあたはず、 かへつて九十五種の邪道に事ふ" と。 ▼われこの人を説きて眼なき人と名づく、 耳なき人と名づく»º と。
是ノ故ニ我説カク、无量寿仏国ハ易ク↠往キ易ク↠取リ而人不↠能ハ↢修行シテ往生スルコト↡、反テ事フト↢九十五種ノ邪道ニ↡。我説キテ↢是ノ人ヲ↡名ク↢无キ↠眼人ト↡、名クト↢无キ↠耳人ト↡。
^◆経教すでにしかなり。 なんぞ難を捨てて易行道によらざらん」 と。 以上
経教既ニ爾ナリ。何ゾ不ラムト↣捨テヽ↠難ヲ依ラ↢易行道ニ↡矣。」 已上
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅴ)終南引意
(a)正しく宗師を挙ぐ
(イ)引文
[一]¬礼讃¼五文
1.前序(一行三昧) ・称名易行 ・不簡機類
【24】^▼*光明寺の和尚 (*善導) のいはく (*礼讃)、
*光明寺ノ和尚ノ云ク、
^「▲また ¬*文殊般若¼ にいふがごとし。 ª^一行三昧を明かさんと欲ふ。 ただ勧めて、 独り▼空閑に処してもろもろの乱意を捨てて、 心を一仏に係けて相貌を観ぜず、 もつぱら名字を称すれば、 すなはち念のなかにおいて、 かの阿弥陀仏および一切の仏等を見るこ0164とを得º といへり。
「*又如シ↢¬文殊般若ニ¼云フガ↡。欲フ↠明サムト↢一行三昧ヲ↡。唯勧メテ、独リ処シテ↢空*閑ニ↡シヅカナリ捨テテ↢諸ノ乱意ヲ↡、係ケテ↢心ヲ一仏ニ↡不↠観ゼ↢相*貌カタチヲ↡、専ラ称スレバ↢名字ヲ↡、即チ於テ↢念ノ中ニ↡得トイヘリ↠見ルコトヲ↢彼ノ阿弥陀仏及ビ一切ノ仏等ヲ↡。
^◆問うていはく、 なんがゆゑぞ観をなさしめずして、 ただちにもつぱら名字を称せしむるは、 なんの意かあるやと。
問ウテ曰ク、何ガ故ゾ不シテ↠令メ↠作サ↠観ヲ、直ニ遣ケンムル↣専ラ称セ↢名字ヲ↡者、有ル↢何ノ意カ↡也ト。
^◆答へていはく、 いまし衆生障重くして、 境は細なり、 心は粗なり。 識颺り、 神飛びて、 観成就しがたきによりてなり。 ここをもつて大聖 (釈尊) 悲憐して、 ただちに勧めてもつぱら名字を称せしむ。 ▼まさしく称名易きに由 (由の字、 行なり、 経なり、 従なり、 用なり) るがゆゑに、 相続してすなはち生ずと。
答ヘテ曰ク、乃シ由リテ↣衆生障リ重クシテ、境ハ*細ナリコマカニ 心ハ*麁アラシナリ、*識タマシイ颺リ神飛ブテ、観難キニ↢成就シ↡也。是ヲ以テ大聖悲*憐シテアワレム 、直ニ勧メテ専ラ称セシム↢名字ヲ↡。正シク由ルガ↢ *由字 以周反 行也 経也 従ヨル也 用也 称名易キニ↡故ニ、相続シテ即チ生ズト。
1.前序(一行三昧) ・称名易行 ・不問多少
^◆問うていはく、 すでにもつぱら一仏を称せしむるに、 なんがゆゑぞ境現ずることすなはち多き。 これあに邪正あひ交はり、 一多雑現するにあらずやと。
問ウテ曰ク、既ニ遣ムルニ↣専ラ称セ↢一仏ヲ↡、何ガ故ゾ*境サカイ現ズルコト即チ多キ。此豈非ズ↢邪正相交ハリ、一多雑0032現スルニ↡也ト。
^◆答へていはく、 ▼仏と仏と斉しく証して形二の別なし。 たとひ一を念じて多を見ること、 なんの大道理にか乖かんや。
答ヘテ曰ク、仏ト仏ト*斉シクナル フタヽビ証シテ形无シ↢二ノ別↡。縦使念ジテ↠一ヲ見ルコト↠多ヲ、乖ム↢何ノ大道理ニカ↡也。
^◆また ¬観経¼ にいふがごとし。 ^勧めて座観礼念等を行ぜしむ。 ▼みなすべからく面を西方に向かふは最勝なるべし。 樹の先より傾けるが倒るるに、 かならず曲れるに随ふがごとし。 ゆゑにかならず事の礙ありて西方に向かふに及ばずは、 ただ西に向かふ想をなす、 また得たりと。
又如シ¬観経ニ¼云フガ↡。行ゼシム↢勧メテ座観礼念等ヲ↡。皆須クシ↧面ヲ向フ↢西方ニ↡者最勝ナル↥。如シ↢樹ノ先ヨリ傾カタブケルガ倒タフルヽニ必ズ随フガ↟曲レルニ。故ニ必ズ有リテ↢事ノ↡不↠及バ↠向フニ↢西方ニ↡者、但作ス↢向フ↠西ニ想ヲ↡、亦得タリト。
1.前序(一行三昧) ・称名易行 ・別願因縁
^◆問うていはく、 一切諸仏、 三身おなじく証し、 悲智*果円にしてまた無二なるべし0165。 方に随ひて一仏を礼念し課称せんに、 また生ずることを得べし。 なんがゆゑぞひとへに西方を嘆じてもつぱら礼念等を勧むる、 なんの義かあるやと。
*問ウテ曰ク、一切諸仏、三身同ジク証シ、悲智果円ニシテ亦※応シ↢无二ナル↡。随ヒテ↠方ニ礼↢念シ課↣オホセ称セムニ一仏ヲ↡、亦応シ↠得↠生ズルコトヲ。何ガ故ゾ偏ニ嘆ジテ↢西方ヲ↡勧ムル↢専ラ礼念等ヲ↡、有ル↢何ノ義カ↡也ト。
^◆答へていはく、 諸仏の所証は平等にしてこれ一なれども、 ▼もし願行をもつて来し取むるに因縁なきにあらず。
答ヘテ曰ク、諸仏ノ所証ハ平等ニシテ是一ナレドモ、若シ以テ↢願行ヲ↡来シ*取ルニ非ズ↠无キニ↢因縁↡。
^◆しかるに弥陀世尊、 ▼もと深重の誓願を発して、 ▽光明・名号をもつて十方を摂化したまふ。 ▼ただ▼信心をして求念せしむれば、 ▼上一形を尽し、 下十声一声等に至るまで、 ▼仏願力をもつて▼往生を得易し。 このゆゑに釈迦および諸仏、 勧めて西方に向かふるを別異とすならくのみ。 ▼またこれ余仏を称念して障を除き、 罪を滅することあたはざるにはあらざるなりと、 知るべし。
然ルニ弥陀世尊、本発シテ↢深重ノ誓願ヲ↡、以テ↢光明・名号ヲ↡摂↢化シタマフ十方ヲ↡。但使ムレバ↢信心ヲシテ求念セ↡、上尽シ↢一形ヲ↡、下至ルマデ↢十声一声等ニ↡、以テ↢仏願力ヲ↡易シ↠得↢往生ヲ↡。是ノ故ニ釈迦及以諸仏、勧メテ向ウルヲ↢西方ニ↡為↢別異ト↡耳ト。亦非ザル↧是レ称↢念シテ余仏ヲ↡不ルニハ↞能ハ↢除キ↠障ヲ滅スルコト↟罪ヲ也ト、応シ↠知ル。
1.前序(一行三昧) ・専修勝徳
^◆もしよく▼上のごとく▼念々相続して、 ▼畢命を期とするものは、 ▼*十即十生、 百即百生なり。 なにをもつてのゆゑに、 ▼外の雑縁なし、 *正念を得たるがゆゑに、 ▼仏の本願と相応することを得るがゆゑに、 ▼教に違せざるがゆゑに、 ▼仏語に随順するがゆゑなり」 と。 以上
若シ能ク如ク↠上ノ念念相続シテ畢命ヲ為ル↠期ト者ハ、十即十生、百即百生ナリ。何ヲ以テノ故ニ。無シ↢外ノ雑縁↡得タルガ↢正念ヲ↡故ニ、与↢仏ノ本願↡得ルガ↢相応スルコトヲ↡故ニ、不ルガ↠違セ↠教ニ故ニ、随↢順スルガ仏語ニ↡故ナリト。」 已上
2.日没讃(摂取不捨)
【25】^▼またいはく (礼讃)、
又*云ク、
^「▲ただ念仏の衆生を観そなはして、 摂取して捨てざるがゆゑに、 阿弥陀と名づく」 と。 以上
「唯観シテ↢念*仏ノ衆生ヲ↡、摂取シテ不ルガ↠捨テ故ニ、*名クト↢阿弥陀ト↡。」 已上
3.初夜讃(名号摂化)
【26】^▼またいはく (礼讃)、
又云ク、
^「▲弥陀の智願海は、 深広にして涯底なし。 名を0166聞きて往生せんと欲へば、 みなことごとくかの国に到る。
「弥陀ノ智願海ハ | 深広ニシテ无シ↢*涯底↡ |
聞キテ↠名ヲ欲ヘバ↢往生セムト↡ | 皆悉ク到ルト↢彼ノ国ニ↡ |
^▲たとひ大千に満てらん火にも、 ただちに過ぎて仏の名を聞け。 名を聞きて歓喜し讃ずれば、 みなまさにかしこに生ずることを得べし。
設ヒ満テラム↢大千ニ↡火ニモ | 直ニ過ギテ聞ケ↢仏ノ名ヲ↡ |
聞キテ↠名ヲ歓喜シ讃ズレバ | 皆当ニシ↠得↠生ズルコトヲ↠彼ニ |
^▲万年に三宝滅せんに、 この経住すること百年せん。 その時聞きて一念せん。 みなまさにかしこに生ずることを得べし」 と。 抄要
万年ニ三宝滅セムニ | 此ノ経住0033スルコト百年セム |
爾ノ時聞キテ一念セム | 皆当ニシト↠得↠生ズルコトヲ↠彼ニ」 抄要 |
4.後序(求願往生)
【27】^▼またいはく (礼讃)、
又云ク、
^「▲現にこれ生死の凡夫、 罪障深重にして六道に輪廻せり。 苦しみいふべからず。 いま善知識に遇ひて弥陀本願の名号を聞くことを得たり。 一心に称念して往生を求願せよ。 願はくは仏の慈悲、 本弘誓願を捨てたまはざれば、 弟子を*摂受したまへり」 と。 以上
「現ニ是生死ノ凡夫、罪障深重ニシテ輪↢回セリ六道ニ↡。苦シミ不↠可カラ↠言フ。今遇ヒテ↢善知識ニ↡得タリ↠聞クコトヲ↢弥陀本願ノ名号ヲ↡。一心ニ称念シテ求↢願セヨト往生ヲ↡。願クハ仏ノ慈悲、不レバ↠捨テタマハ↢本弘誓願ヲ↡、摂↢受シタマフベシト弟子ヲ↡。」 已上
5.後序(四種増上縁)
【28】^▼またいはく (礼讃)、
又云ク、
^「▲問うていはく、 阿弥陀仏を称念し礼観して、 現世にいかなる功徳利益かあるやと。
「問ウテ曰ク、称↢念シ礼↣観シテ阿弥陀仏ヲ↡、現世ニ有ルヤト↢何ナル功徳利益カ↡。
5.後序(四種増上縁) ・滅罪縁
^◆答へていはく、 もし阿弥陀仏を称すること一声するに、 すなはちよく八十億劫の生死の重罪を除滅す。 礼念以下もまたかくのごとし。
答ヘテ曰ク、若シ称スルコト↢阿弥陀仏ヲ↡一声スルニ、即チ能ク除↢滅ス八十億劫ノ生死ノ重罪ヲ↡。礼念已下モ亦如シ↠是クノ。
5.後序(四種増上縁) ・護念縁 一
^◆¬*十往生経¼ にいはく、 ª^もし衆生ありて、 阿弥陀仏を念じて往生を願ずれば、 かの仏すなはち二十五菩薩を遣はして、 行者を擁護して、 もしは行もしは座、 もしは住もし0167は臥、 もしは昼もしは夜、 一切時・一切処に、 悪鬼・悪神をしてその便りを得しめざるなりº と。
¬十往生経ニ¼云ク、若シ有リテ↢衆生↡、念ジテ↢阿弥陀仏ヲ↡願ズレ↢往生ヲ↡者、彼ノ仏即チ遣シテ↢二十五菩薩ヲ↡擁↢護シテ行者ヲ↡、若シハ行若シハ座、若シハ住若シハ臥、若シハ昼若シハ夜、一切時・一切処ニ、不ル↠令メ↣悪鬼・悪神ヲシテ得↢其ノ便ヲ↡也ト。
5.後序(四種増上縁) ・護念縁 二
^◆また ¬観経¼ にいふがごとし。 ª^もし阿弥陀仏を称し礼念してかの国に往生せんと願へば、 かの仏すなはち無数の化仏、 無数の化観音・勢至菩薩を遣はして、 行者を護念したまふ。 また前の二十五菩薩等と百重千重行者を囲繞して、 行住坐臥、 一切時処、 もしは昼もしは夜を問はず、 つねに行者を離れたまはずº と。
又如シ↢¬観経ニ¼云フガ↡。若シ称シ↢礼↣念シテ阿弥陀仏ヲ↡願ヘ↣往↢生セムト彼ノ国ニ↡者、彼ノ仏即チ遣シテ↢无数ノ化仏、无数ノ化観音・勢至菩薩ヲ↡、護↢念シタマフ行者ヲ↡。復与↢前ノ二十五菩薩等↡百重千重囲↢繞シテ行者ヲ↡、不↠問ハ↢行住坐臥、一切時処、若シハ昼若シハ夜ヲ↡、常ニ不ト↠離レタマハ↢行者ヲ↡。
^◆いますでにこの勝益まします。 憑むべし。 願はくはもろもろの行者、 おのおの*至心を須ゐて往くことを求めよ。
今既ニ有ス↢斯ノ勝益↡。可シ↠憑ヘウム。願クハ諸ノ行者、※各ノ須テ↢至心ヲ↡求メヨ↠往ズルコトヲ。
5.後序(四種増上縁) ・摂生縁
^◆また ¬無量寿経¼ にいふがごとし。 ª^もしわれ成仏せんに、 十方の衆生、 ▼わが名号を称せん。 下十声に至るまで、 もし生れずは、 正覚を取らじº と。
又如シ↢¬无量寿経ニ¼云フガ↡。若シ我成仏セムニ、十方ノ衆生、称セム↢我名号ヲ↡。下至ルマデ↢十声ニ↡、若シ不↠生レ者、不ト↠取ラ↢正覚ヲ↡。
^◆かの仏いま現にましまして成仏したまへり。 まさに知るべし、 本誓重願虚しからず、 衆生称念すればかならず往生を得と。
彼ノ仏今現ニ在シテ成仏シタマヘリ。当ニシ↠知ル、本誓重願不↠虚シカラ、衆0034生称念スレバ必ズ得ト↢往生ヲ↡。
5.後序(四種増上縁) ・証生縁
^◆また ¬弥陀経¼ にいふがごとし。 ª^«もし衆生ありて、 阿弥陀仏を説くを聞きて、 すなはち名号を執持すべし。 もしは一日、 もしは二日、 乃至七日、 一心に仏を称して乱れざれ。 命終らんとする時、 阿弥陀仏、 もろもろの聖衆と現じてその前にましまさん。 この人終らん時、 心顛倒せず、 すなはちかの国に往生することを得ん» と。 ^仏、 舎利0168弗に告げたまはく、 «われこの利を見るがゆゑにこの言を説く。 もし衆生ありて、 この説を聞かんものは、 まさに願を発し、 かの国に生ぜんと願ずべし»º と。
又如シ¬弥陀経ニ¼云フガ↡。若シ有リテ↢衆生↡、聞キテ↠説クヲ↢阿弥陀仏ヲ↡、即チ応シ↣執↢持ス名号ヲ↡。若シハ一日若シハ二日乃至七日、一心ニ称シテ↠仏ヲ不レ↠乱レ。命欲ル↠終ラムト時、阿弥陀仏与↢諸ノ聖衆↡現ジテ在サム↢其ノ前ニ↡。此ノ人終ラム時、心不↢顛倒セ↡、即チ得ムト↣往↢生スルコトヲ彼ノ国ニ↡。仏告ゲタマハク↢舎利弗ニ↡、我見ルガ↢是ノ利ヲ↡故ニ説ク↢是ノ言ヲ↡。若シ有リテ↢衆生↡聞カム↢是ノ説ヲ↡者ハ、応シト↢当ニ発シ↠願ヲ願ズ↟生ゼムト↢彼ノ国ニ↡。
^◆次下に説きていはく、 ª^東方の如恒河沙等の諸仏、 南西北方および上下一々の方に恒河沙等の諸仏のごとき、 おのおの本国にしてその舌相を出して、 あまねく三千大千世界に覆ひて誠実の言を説きたまはく、 «なんだち衆生、 みなこの一切諸仏の護念したまふところの経を信ずべし» と。
次下ニ説キテ云ク、東方如恒河沙等ノ諸仏、南西北方及ビ上下一一ノ方ニ如キ↢恒河沙等ノ諸仏ノ↡、各ノ於テ↢本国ニ↡出シテ↢其ノ舌相ヲ↡、徧ク覆ヒテ↢三千大千世界ニ↡説キタマハク↢誠実ノ言ヲ↡、汝等衆生、皆応シト↠信ズ↧是ノ一切諸仏ノ所ノ↢護念シタマフ↡経ヲ↥。
^◆いかんが «護念» と名づくると。 もし衆生ありて、 阿弥陀仏を称念せんこと、 もしは七日、 一日、 下至▽一声、 乃至十声▽一念等に及ぶまで、 かならず往生を得と。 この事を証誠せるがゆゑに護念経と名づくº と。
云何ガ名クルト↢護*念ト↡。若シ有リテ↢衆生↡、称↢念セムコト阿弥陀仏ヲ↡、若シハ七日、及ブマデ↢一日下至一声乃至十声一念等ニ↡、必ズ得ト↢往生ヲ↡。証↢成セルガ此ノ事ヲ↡故ニ名クト↢護念経ト↡。
^◆次下の文にいはく、 ª^もし仏を称して往生するものは、 つねに六方恒河沙等の諸仏のために護念せらる。 ゆゑに護念経と名づくº と。
次下ノ文ニ云ク、若シ称シテ↠仏ヲ往生スル者ハ、常ニ為ニ↢六方恒河沙等ノ諸仏之↡所↢護念セ↡。故ニ名クト↢護念経ト↡。
^◆いますでにこの増上の誓願います、 憑むべし。 もろもろの仏子等、 なんぞ意を励まして去かざらんや」 と。
今既ニ有ス↢此ノ増上ノ誓願↡、可シ↠憑ム。諸ノ仏子等、何ゾ不ラム↢励シテ↠意ヲ*去ラユ カ↡也ト。」
*智昇法師の ¬*集諸経礼懴儀¼ の下巻は善導和尚の ¬礼讃¼ なり。 これによる。
智昇法師ノ¬集諸経*礼懴儀ノ¼下巻者善導和尚ノ¬礼懴¼也。依ル↠之ニ。
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅴ)(a)(イ)[二]「玄義分」二文
【29】^▼またいはく (*玄義分)、
又云ク、
1.弘願釈(全託法体)
^「▲弘願といふは ¬大経¼ の説のごとし。 一切善悪の凡夫、 生ずることを得るは、 みな阿弥陀仏の▼大願業力に乗 (乗の字0169、 駕なり、 勝なり、 登なり、 守なり、 覆なり) じて▼増上縁とせざるはなし」 と。
「言フ↢弘願ト↡者如シ↢¬大経ノ¼説ノ↡。一切善悪ノ凡夫得ル↠生ズルコトヲ者、莫キ↠不ルハ↧皆乗ジテ↢ *乗字 食陵反 *又宝証反 *駕ノル也 勝也 登也ノボル 守也マモル *覆也オヽフ 阿弥陀仏ノ大願業力ニ↡為↦増上縁ト↥也ト。」
2.六字釈(願行具足)
【30】^またいはく (玄義分)、
又云ク、
^「▲南無といふは、 すなはちこれ帰命なり、 またこれ▽発願回向の義なり。 阿弥陀仏といふは、 ▽すなはちこれその行なり。 この義をもつてのゆゑに▽かならず往生を得」 と。
「言フ↢南无ト↡者、即チ是帰命ナリ、亦是発願回向之義ナリ。言フ↢阿弥陀仏ト↡者、即0035チ是其ノ行ナリ。以テノ↢斯ノ義ヲ↡故ニ必ズ得ト↢往生ヲ↡。」
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅴ)(a)(イ)[三]¬観念法門¼二文
【31】^▼またいはく (*観念法門)、
又云ク、
1.摂生増上縁
^「▲摂生増上縁といふは、 ◆¬無量寿経¼ の四十八願のなかに説くがごとし。 ª仏ののたまはく、 «もしわれ成仏せんに、 十方の衆生、 わが国に生ぜんと願じて、 わが名字を称すること、 下十声に至るまで、 わが願力に乗じて、 もし生れずは正覚を取らじ»º と。 これすなはちこれ往生を願ずる行人、 命終らんとする時、 願力摂して往生を得しむ。 ゆゑに摂生増上縁と名づく」 と。
「*言フ↢摂生増上縁ト↡者、如シ↢¬无量寿経ノ¼四十八願ノ中ニ説クガ↡。仏ノ言ハク、若シ我成仏セムニ、十方ノ衆生、願ジテ↠生ゼムト↢我ガ国ニ↡、称スルコト↢我ガ名字ヲ↡、下至ルマデ↢十声ニ↡、乗ジテ↢我ガ願力ニ↡、若シ不↠生レ者、不ト↠取ラ↢正覚ヲ↡。此レ即チ是願ズル↢往生ヲ↡行*人、命欲ル↠終ラムト時、願力摂シテ得シム↢往生ヲ↡。故ニ*名クト↢摂生増上縁ト↡。」
2.証生増上縁
【32】^またいはく (観念法門)、
又云ク、
^「▲善悪の凡夫、 回心し起行して、 ことごとく往生を得しめんと欲す。 これまたこれ証生増上縁なり」 と。 以上
「欲ス↠使メムト↣善悪ノ凡夫、回*心シ起行シテ、尽ク得↢往生ヲ↡。此亦是証生増上縁ナリト。」 已上
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅴ)(a)(イ)[四]¬般舟讃¼
【33】^▼またいはく (*般舟讃)、
*又云ク、
・念仏真宗
^「▲門々不同にして▼*八万四なり。 ▼無明と果と業因とを滅せんための利剣は、 すなはちこれ弥陀の号なり。 一声称念するに罪みな除こると。
「門門不同ニシテ八万四ナリ | 為ノ↠滅セム↢无明ト果ト業因トヲ↡ |
*利剣ハ 即チ是弥陀ノ号ナリ | 一声称念スルニ罪皆除コルト |
^▲微塵の故業と*随智と滅す。 ▼覚へざるに真如の門に転入す。
微塵ノ故業ト随智ト滅ス | 不ルニ↠覚ヘ *覚字 教音 転↢入ス真如ノ門ニ↡ |
^▲娑0170婆長劫の難を免るることを得ることは、 ことに知識釈迦の恩を蒙れり。 種々の*思量巧方便をもつて、 選びて弥陀弘誓の門を得しめたまへり」 と。 以上抄要
得ルコトハ↠免ルルコトヲ↢娑婆長劫ノ難ヲ↡ | 特ニ蒙レリ↢知識釈迦ノ恩ヲ↡ |
種種ノ思量巧方便ヲモテ | 選ビテ得シメタマヘリト↢弥陀弘誓ノ門ヲ↡」 已上抄要 |
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅴ)(a)(ロ)解釈【六字釈】
【34】^▼しかれば、 △「南無」 の言は帰命なり。 「▼帰」 の言は、 至なり、 また*帰説なり、 説の字は、 悦の音なり。 また*帰説なり、 説の字は、 税の音なり。 悦税二つの音は告なり、 述なり、 人の意を宣述するなり。 「▼命」 の言は、 △業なり、 招引なり、 使なり、 教なり、 道なり、 信なり、 計なり、 召なり。 ここをもつて 「帰命」 は*本願招喚の勅命なり。
爾レ者南无之言ハ帰命ナリ。帰ノ言ハ 至也 又*帰説也ヨリタノムナリ、説ノ字ハ 悦ヨロコブノ音ナリ 又帰説也ヨリカヽルナリ、説ノ字ハ 税ノ音ナリ 悦税二ノ音ハ告也 述也 *宣↢*述ル人ノ意ヲ↡也 命ノ言ハ 業也 *招 メス 引也 使也 教也 道也 信也 計也 召也 是ヲ以テ帰命者本願*招マネク 喚ヨバウ之 勅オホセ命也。
^「△発願回向」 といふは、 如来すでに発願して衆生の行を回施したまふの心なり。
言フ↢発願回向ト↡者、如来已ニ発願シテ回↢施シタマフ衆生ノ行ヲ↡之心也。
^「△即是其行」 といふは、 すなはち*選択本願これなり。
言フ↢即是其0036行ト↡者、即チ選択本願是也。
^「△必得往生」 といふは、 不退の位に至ることを獲ることを彰すなり。 ¬経¼ (大経) には 「▲即得」 といへり、 釈 (易行品) には 「▲必定」 といへり。 「即」 の言は願力を聞くによりて報土の真因決定する*時剋の極促を*光闡するなり。 「▼必」 の言は 審なり、 然なり、 分極なり、 金剛心成就の貌なり。
言フ↢必得往生ト↡者、彰ス↠獲ルコトヲ↠至ルコトヲ↢不退ノ位ニ↡也。¬経ニハ¼言ヘリ↢「即得ト」↡、釈ニハ云ヘリ↢「必定ト」↡。即ノ言ハ由リテ↠聞クニ↢願力ヲ↡光↢闡セル報土ノ真因決定スル時*剋キワム之*極促ヲ↡也。必ノ言ハ *審 アキラカ 也 然也 *分極也 金剛心成就之貌也。
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅴ)(b)衝州を引く
(イ)法照¬五会法事讃¼八文
・長行 1.序分(念仏最勝)
【35】^▼¬*浄土五会念仏略法事儀讃¼ にいはく、
¬浄土五会念仏略法事儀讃ニ¼云ク、
^「▼それ如来、 教を設けたまふに、 *広略、 根に随ふ。 つひに実相に帰せしめんとなり。 真の無生を得んものに0171は、 たれかよくこれを与へんや。 しかるに▼念仏三昧は、 これ真の無上深妙の▼門なり。 弥陀法王四十八願の名号をもつて、 ▼*焉に仏、 願力を事として衆生を度したまふ。 ▼乃至
「夫レ如来設ケタマフニ↠教ヲ、広略随フ↠根ニ。終ニ帰セシメムトナリ↠乎↢実相↡。得ム↢真ノ无生ヲ↡者ニハ、熟カ能ク与ヘム↢於此ヲ↡哉。然ルニ念仏三昧ハ、是真ノ无上深妙ノ門ナリ矣。以テ↢弥陀法王四十八願ノ名号ヲ↡、焉ニ仏事トシテ↢願力ヲ↡度シタマフ↢衆生ヲ↡。 乃至
・長行 2.五会念仏釈(極成其義)
^▼如来つねに三昧海のなかにして、 *網綿の手を挙げたまひて、 *父の王にいうてのたまはく、 ª^王いま座禅してただまさに念仏すべし。 *あに離念に同じて無念を求めんや。 生を離れて無生を求めんや。 相好を離れて法身を求めんや。 文を離れて解脱を求めんやº と。 乃至
如来常ニ於テ↢三昧海ノ中ニ↡、挙ゲタマヘルヲ↢細クハシ*綿ヲ↡乎。謂ウテ↢父ノ王ニ↡曰ク、王今座禅シテ但当ニ シト↢念仏ス↡。豈同ジテ↢離念ニ↡求メムヤ↠乎↢无念↡。離レテ↠生ヲ求メム↢於无生ヲ↡乎。離レテ↢相好ヲ↡求メムヤ↠乎↢法身↡。離レテ↠文ヲ求メムヤト↢解脱ヲ↡。 乃至
・長行 3.荘厳文(易修易証)
^▼それ大いなるかな、 至理の真法、 一如にして物を化し、 人を利す。 弘誓各別なるがゆゑに、 わが釈迦、 *濁世に応生し、 阿弥陀、 浄土に出現したまふ。 方は穢浄両殊なりといへども利益斉一なり。 もし修し易く証し易きは、 まことにただ浄土の教門なり。 しかるにかの西方は殊妙にしてその国土に比びがたし。 また厳るに百宝の蓮をもつてす。 九品に敷いてもつて人を収むること、 それ仏の名号なりと。 乃至
爾大ナル哉、至*理ノコトワリ真法、一如ニシテ化シ↠物ヲ利ス↠人ヲ。弘誓各別ナルガ故ニ、我ガ釈迦応↢生シ於濁世ニ↡、阿弥陀出↢現シタマフ於浄土ニ↡。方ハ雖モ↢穢浄両*殊コトナリナリト↡利益*斉ヒトシ一ナリ。若シ易ク↠修シ易キハ↠証シ、真ニ唯浄土ノ教門ナリ。然ルニ彼ノ西方ハ殊妙ニシテ難シ↠比ビ↢其ノ国土ニ↡。也厳ルニ以テス↢百宝ノ蓮ヲ↡。敷イテ↢九品ニ↡以テ収ムルコト↠人ヲ、其仏ノ名号也ト。 乃至
・偈頌 1.浄土楽讃(念仏最勝)
^▼¬*称讃浄土経¼ による。 釈*法照
依ル↢¬称讃浄土経ニ¼↡。 釈法照
^ª▼如来の尊号は、 はなはだ分明なり。 ▼十方世界にあまねく流行せしむ。 ▼ただ名を称するのみありて、 みな往くことを得。 ▼観音・勢至おのづから来り迎へたまふ。
如来ノ尊号ハ甚ダ分明ナリ | 十方世界ニ普ク流行セシム |
0037但有リテ↠称スルノミ↠名ヲ皆得↠往クコトヲ | 観音・勢至*自ラ*来リ迎ヘタマフ |
^◆弥陀の本願ことに超殊せり。 慈悲方便して凡夫を引く。 一切衆生みな*度脱す。 名を称すれば、 すなはち罪消除す0172ることを得。
弥陀ノ本願特ニ起タツ ヲコス 殊スグレセリ | 慈悲方便シテ引ク↢凡夫ヲ↡ |
一切衆生皆度脱ス | 称スレバ↠名ヲ即チ得↢罪消除スルコトヲ↡ |
^◆凡夫もし西方に到ることを得れば、 曠劫塵沙の罪消亡す。 六神通を具し自在を得。 永く老病を除き無常を離るº。
凡夫若シ得レバ↠到ルコトヲ↢西方ニ↡ | 曠劫塵沙ノ罪消亡ス ホロブ |
具シ↢六神通ヲ↡得↢自在ヲ↡ | 永ク除キ↢老病ヲ↡離ル↢无常ヲ↡ |
・偈頌 2.正法楽讃(決真宗義)
^▼¬*仏本行経¼ による。 法照
依ル↢¬仏本行経ニ¼↡。 法照
^ª▼なにものをかこれを名づけて*正法とする。 もし*道理によらばこれ*真宗なり。 好悪今の時すべからく*決択すべし。 一々に子細*朦朧することなかれ。 ▼正法よく世間を超出す。
何者ヲカ名ケテ↠之ヲ為ル↢正法ト↡ | 若シ箇ラバ↢道理ニ↡是真マコト宗ムネナリ |
好悪今ノ時須 ベ クシ↢決択エラブス | 一一ニ子細莫レ↢朦クラシ朧コモルスルコト↡ |
正法*能ク超↢出ス世間ヲ↡ |
^◆持戒・座禅を正法と名づく。 ▼念仏成仏はこれ真宗なり。 仏言を取らざるをば外道と名づく。 因果を*撥無する見を*空とす。 正法よく世間を超出す。
持戒・座禅ヲ名ク↢正法ト↡ | 念仏成仏ハ是真宗ナリ |
不ルヲバ↠取ラ↢仏言ヲ↡名ク↢外道ト↡ | 撥スツ↢無スル因果ヲ↡*見ヲ為↠空ト |
正法能ク超↢出ス世*間ヲ↡ |
^◆禅・律いかんぞこれ正法ならん。 念仏三昧これ真宗なり。 性を見、 心を了るはすなはちこれ仏なり。 いかんが道理相応せざらんº。 略抄
禅・律如何ゾ是正法ナラム | 念仏三昧是真宗ナリ |
見↠性ヲ了ルハ↠心ヲ便チ是仏ナリ | 如何ガ道理不ラム↢相応セ↡ 略抄 |
・偈頌 3.西方楽讃(西方易証)
^▼¬*阿弥陀経¼ による。
依ル↢¬阿弥陀経ニ¼↡。
^ª西方は道に進むこと娑婆に勝れたり。 五欲および邪魔なきによつてなり。 成仏にもろもろの善業を*労しくせず。 華台に端座して弥陀を念じたてまつる。
0038西方ハ進ムコト↠道ニ勝レタリ↢娑婆ニ↡ | 縁テナリ↠无キニ↢五欲及ビ邪魔↡ |
成仏ニ不↠労クセ↢諸ノ善業ヲ↡ | 華台ニ端ウルワシ座シテ念ジタテマツル↢弥陀ヲ↡ |
^◆五濁の修行は多く退転す。 念仏して西方に往くにはしかず。 かしこに到れば自然に正覚を成る。 苦界に還来りて*津梁とならん。
五濁ノ修行ハ多ク退転ス | 不↠如カ↣念仏シテ往クニハ↢西方ニ↡ |
到レバ↠彼ニ自然ニ成ル↢正覚ヲ↡ | 還↢来リテ苦界ニ↡作ラム↢津 ツ 梁ヤナ ト↡ |
^▲万行のなかに急要とす。 迅速なること浄土門に過ぎたるはなし。 ただ本師金口の説のみにあらず。 十方諸仏ともに伝へ証したまふ。
万行之中ニ為↢急要イソガハシト↡ | 迅トシ速ナルコトスミヤカ也 无シ↠過ギタルハ↢浄土門ニ↡ |
不ズ↢但本師金口ノ説ノミニ↡ | 十方諸仏共ニ伝ヘ証シタマフ |
^◆この界に一人、 仏の名を念0173ずれば、 西方にすなはち一つの蓮ありて生ず。 ただ一生つねにして不退ならしむれば、 一つの華この間に還り到つて迎へたまふとº。 略抄
此ノ界ニ一人念ズレバ↢仏ノ名ヲ↡ | 西方ニ便チ有リテ↢一ノ蓮↡生ズ |
但シ使ムレバ↢一生常ニシテ不退ナラ↡ | *一ノ華還リ↢到テ此間ニ↡迎ヘタマフト 略抄 |
・偈頌 4.般舟三昧楽讃(勧発)
^▼¬*般舟三昧経¼ による。 *慈愍和尚
依ル↢¬般舟三昧経ニ¼↡。 慈愍和尚
^ª今日道場の諸衆等、 恒沙曠劫よりすべて経来れり。 この人身を度るに値遇しがたし。 たとへば優曇華のはじめて開くがごとし。
今日道場ノ諸衆*等 | 恒沙曠劫ヨリ総テ経来レリ |
度ルニ↢此ノ人身ヲ↡難シ↢値遇シ↡ | 喩ヘバ若シ↢優曇華ノ始テ開クガ↡ |
^◆まさしくまれに浄土の教を聞くに値へり。 まさしく念仏の法門の開けるに値へり。 まさしく弥陀の弘誓の*喚ばひたまふに値へり。 まさしく大衆の信心ありて回するに値へり。
正シク値ヘリ↣希ニ聞クニ↢浄土ノ教ヲ↡ | 正シク値ヘリ↢念仏ノ法門ノ開ケルニ↡ |
正シク値ヘリ↢弥陀ノ弘誓ノ喚クワンイタマフニ↡ | 正シク値ヘリ↢大衆ノ信心シテ*回スルニ↡ |
^◆まさしく今日経によりて讃ずるに値へり。 まさしく契を*上華台に結ぶに値へり。 まさしく道場に魔事なきに値へり。 まさしく無病にしてすべてよく来れるに値へり。
正シク値ヘリ↢今日依リテ↠経ニ賛ズルニ↡ | 正シク値ヘリ↠結ブニ↢契ヲ上華台ニ↡ |
0039正シク値ヘリ↣道場ニ无キニ↢魔事↡ | 正シク値ヘリ↢无病ニシテ総テ能ク来レルニ↡ |
^◆まさしく七日の功成就するに値へり。 四十八願かならずあひ携ふ。 あまねく道場の同行のひとを勧む。 *ゆめゆめ回心して*帰去来。
正シク値ヘリ↢七日ノ功成就スルニ↡ | 四十八願要ズ相携フセイ ケイ |
普ク勧ム↢道場ノ同行ノ者ヲ↡ | 努力回心シテ帰去来 |
^◆借問ふ。 *家郷はいづれの処にかある。 極楽の池のうち七宝の台なり。 ▲かの仏の因中に弘誓を立てたまへり。 ▼名を聞きてわれを念ぜば▼すべて迎へ来らしめん。
借問フカル 家郷ハ何ノ処ニカ在ル | 極楽ノ池ノ中七宝ノ台ナリ |
彼ノ仏ノ因中ニ立テタマヘリ↢弘誓ヲ↡ | 聞キテ↠名ヲ念ゼバ↠我ヲ総テ*迎ヘ来ラシメム |
^◆貧窮と富貴とを簡ばず、 ▼下智と高才とを簡ばず、 ▼多聞と浄戒を持てるとを簡ばず、 ▼破戒と罪根の深きとを簡ばず。
不↠簡バ↣貧窮ト将ニ↢富貴トヲ↡ | 不↠簡バ↣下智ト与ヲ↢高才↡ |
不↠簡バ↣多聞ト持テルトヲ↢浄戒ヲ↡ | 不↠簡バ↢破戒ト罪根深キトヲ↡ |
^◆ただ回心して多く念仏せしむれば、 ▼よく瓦礫をして変じて金と成さんがごとくせしむ。 語を現前の大衆等0174に寄す。 同縁去らんひとはやくあひ尋ねん。
但使ムレバ↢回心シテ多ク念仏セ↡ | 能ク令ム↢瓦礫ヲシテ変ジテ成サムガゴトクセ↟金ト |
寄ス↢語ヲ現前ノ大衆等ニ↡ | 同縁去スツラム者早ク相尋ネム |
^◆借問ふ。 いづれの処をあひ尋ねてか去かんと。 報へていはく、 弥陀浄土のうちへ。 借問ふ。 なにによりてかかしこに生ずることを得ん。 報へていはく、 念仏おのづから功を成ず。
借問フ相↢尋ネテカ何ノ処ヲ↡去カムト | 報ヘテ道ハク弥陀浄土ノ中ヘ |
借問フ何ニ縁リテカ得ム↠生ズルコトヲ↠彼ニ | 報ヘテ道ハク念仏自ラ成ズ↠功ヲ |
^◆借問ふ。 今生の罪障多し、 いかんぞ浄土にあへてあひ容らんや。 報へていはく、 名を称すれば罪消滅す、 たとへば明灯の闇中に入るがごとし。
借問フ今生ノ多シ↢罪障↡ | 如何ゾ浄土ニ肯テ相容ラムヤ |
報ヘテ道ク称スレバ↠名ヲ罪消滅ス | 喩ヘバ若シ↣明灯ノ入ルガ↢闇中ニ↡ |
^◆借問ふ。 凡夫生ずることを得やいなや、 いかんぞ一念に闇中あきらかならんや。 報へていはく、 疑を除きて多く念仏すれば、 弥陀決定しておのづから親近したまふº と。 抄要
借問フ凡夫得ヤ↠生ズルコトヲ否ヤ | 如何ゾ一念ニ闇中明カナラムヤ |
0040報ヘテ道ク除キテ↠疑ヲ多ク念仏スレバ | 弥陀決定シテ自ラ親近シタマフト 抄要 |
・偈頌 5.観経楽讃(追釈勝易)
^▼¬*新無量寿観経¼ による。 法照
依ル↢¬新无量寿観経ニ¼↡。 法照
^ª十悪・五逆至れる愚人、 永劫に沈淪して*久塵にあり。 一念弥陀の号を称得して、 かしこに至れば、 還りて法性身に同ずº」 と。 以上
十悪・五逆至レル愚人 | 永劫ニ*沈淪シテ在リ↢久塵ニ↡ |
一念称↢得シテ弥陀ノ号ヲ↡ | 至レバ↠彼ニ還リテ同ズト↢法性身ニ↡」 已上 |
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅴ)(a)(ロ)憬興¬述文賛¼十文
1.二種因果
【36】^▼*憬興師のいはく (*述文賛)、
憬興師ノ云ク、
^「▼*如来の広説に二つあり。 初めには広く▼如来浄土の因果、 すなはち*所行・所成を説きたまへり。 後には広く▼衆生往生の因果、 すなはち*所摂・所益を顕したまへるなり」 と。
「如来ノ広説ニ有リ↠二。初メニハ広ク説キタマヘリ↢如来浄*土ノ因果、即チ所行・所成ヲ↡也。後ニハ広ク顕シタマヘル↢衆生往生ノ因果、即チ所摂・所益ヲ↡也ト。」
2.弥陀因果
【37】^*またいはく、
又*云ク、
^「▼¬*悲華経¼ の ª諸菩薩本授記品º にいはく、 ª^その時に、 *宝蔵如来、 *転輪王を讃めていはく、 «善いかな善いかな、 乃至 大王、 なんぢ西方0175を見るに百千万億の仏土を過ぎて世界あり、 尊善無垢と名づく。 かの界に仏まします、 尊音王如来と名づく。 乃至
「¬悲華経ノ¼諸菩薩本授記品ニ云ク、爾ノ時ニ宝蔵如来、讃メテ↢転輪王ヲ↡言ハク、善イ哉善イ哉、 乃至 大王、汝見ルニ↢西方ヲ↡過ギテ↢百千万億ノ仏土ヲ↡有リ↢世界↡、名ク↢尊善无垢ト↡。彼ノ界ニ有ス↠仏、名ク↢尊音王如来ト↡。 乃至
^いま現在にもろもろの菩薩のために正法を説く。 乃至 純一大乗清浄にして雑はることなし。 そのなかの衆生、 等一に化生す。 また女人およびその名字なし。 かの仏世界の所有の功徳、 清浄の荘厳なり。 ことごとく大王の所願のごとくして異なけん。 乃至 いまなんぢが字をあらためて無量清浄とす»º と。 以上
今現在ニ為ニ↢諸ノ菩薩ノ↡説ク↢於正法ヲ↡。 乃至 純一大乗清浄ニシテ无シ↠雑ルコト。其ノ中ノ衆生、等一ニ化生ス。亦无シ↢女人及ビ其ノ名字↡。彼ノ仏世界ノ所有ノ功徳、清浄ノ荘厳ナリ。悉ク如クシテ↢大王ノ所願ノ↡无ケム↠異。 乃至 今改テ↢汝ガ字ヲ↡為ト↢无量清浄ト↡。 已上
^▼¬無量寿如来会¼ (上) にいはく、 ª^▲広くかくのごとき大弘誓願を発して、 みなすでに成就したまへり。 世間に希有なり。 ◆この願を発しをはりて、 実のごとく安住して種々の功徳具足して、 威徳広大清浄の仏土を荘厳したまへりº」 と。 以上
¬无量寿如来会ニ¼云ク、広ク発シテ↢如キ↠是クノ大弘誓願ヲ↡、皆已ニ成就シタマヘリ。世間ニ希有ナリ。発シ↢是ノ願ヲ↡已リテ、如ク↠実ノ安住シテ種種ノ功徳具足シテ、荘↢厳シタマヘリト威徳広大清浄ノ仏土ヲ↡。」 已上
3.回施功徳
【38】^▼またいはく (述文賛)、
又0041*云ク、
^「*福智の二厳成就したまへるがゆゑに、 *つぶさに等しく衆生に行を施したまへるなり。 おのれが所修をもつて、 衆生を利したまふがゆゑに、 功徳成ぜしめたまへり」 と。
「福智ノ二厳カザリ成就シタマヘルガ故ニ、備ニツブサニ施シタマヘル↢等シク衆生ニ行ヲ↡也。以テ↢己ガ所修ヲ↡利シタマフガ↢衆生ヲ↡故ニ、令メタマヘリト↢功徳成ゼ↡。」
4.宿因聞法
【39】^▼またいはく (述文賛)、
又云ク、
^「久遠の因によりて、 仏に値ひ、 法を聞きて慶喜すべきがゆゑに」 と。
「籍ジヤクリテ↢久遠ノ因ニ↡、値ヒ↠仏ニ聞キテ↠法ヲ可キガ↢慶喜ス↡故ニト。」
5.正勧往生
【017640】^またいはく (述文賛)、
又云ク、
^「▼人聖に、 国妙なり。 たれか力を尽さざらん。 善をなして生を願ぜよ、 ▼*善によりてすでに成じたまへる、 おのづから果を獲ざらんや。 ゆゑに自然といふ。 ▼貴賎を簡ばず、 みな往生を得しむ。 ゆゑに ª▲著無上下º といふ」 と。
「人聖ニ、国妙ナリ。誰カ不ラム↠尽サ↠力ヲ。作シテ↠善ヲ願ゼヨ↠生ヲ、因リテ↠善ニ既ニ成ジタマヘル、不ラムヤ↢自ラ獲↟果ヲ。故ニ云フ↢自然ト↡。不↠簡バ↢貴 賎ヲトフトクイヤシ↡、皆得シム↢往生ヲ↡。故ニ云フト↢著无上下ト↡。」
6.傷嘆重勧
【41】^▼またいはく (述文賛)、
又云ク、
^「ª▲易往而無人 其国不逆違 自然之所牽º と。 ^▼因を修すればすなはち往く、 ▼修することなければ生ずること尠し。 ▼因を修して来生するに、 つひに違逆せず。 すなはち易往なり」 と。
「易往而无人其国不逆違自然之所牽ヒクト。修スレバ↠因ヲ即チ往ク、无ケレバ↠修スルコト生ズルコト尠シ。修シテ↠因ヲ来生スルニ、終ニ不↢違逆セ↡。即チ易往也ト。」
7.願力釈
【42】^▼またいはく (述文賛)、
又云ク、
^「ª▲本願力故º といふは、 ▼すなはち*往くこと誓願の力なり。 ª▲満足願故º といふは、 ▼願として欠くることなきがゆゑに。 ª▲明了願故º といふは、 ▼これを求むるに虚しからざるがゆゑに。 ª▲堅固願故º といふは、 ▼縁として壊ることあたはざるがゆゑに。 ª▲究竟願故º といふは、 ▼かならず果し遂ぐるがゆゑに」 と。
「本願力ノ故トイフハ、 即チ往クコト誓願之力ナリ。 満足願故トイフハ、 願トシテ无キガ↠欠クルコト故ニ。 明了願故トイフハ、 求ムルニ↠之ヲ不ルガ↠虚シカラ故ニ。 堅固願故トイフハ、 縁トシテ不ルガ↠能ハ↠壊ルコト故ニ。 究竟願故トイフハ、 必ズ果シ遂グルガ故ニト。」
8.勝聖共生釈
【43】^▼またいはく (述文賛)、
又云ク、
^「総じてこれをいはば、 *凡小をして欲往生の意を増さしめんと欲ふがゆゑに、 すべからくかの土の勝れたることを顕すべし」 と。
「総而テ言ハヾ↠之ヲ、欲フガ↠令メムト↣凡小ヲシテ増スヽムサ↢欲往生之意ヲ↡故ニ、須ク シト↠顕ス↢彼ノ土ノ勝レタルコトヲ↡。」
9.此土修行釈
【44】^▼またいはく (述文賛)、
又云ク、
^「すでに ª▲*この土にして菩薩の行を修すº とのたまへり。 すなはち知んぬ、 ▼*無諍王この方にましますことを。 ▼*宝海もまたしかなり」 と。
「既ニ言ヘリ↧於テ↢此ノ土ニ↡修スト↦菩薩ノ行ヲ↥。即チ知ヌ、无諍王在スコトヲ↢於此ノ方ニ↡。宝海モ亦然ナリト。」
10.聞名不退
【017745】^▼またいはく (述文賛)、
又云ク、
^「仏の威徳広大を聞くがゆゑに、 不退転を得るなり」 と。 以上
「聞クガ↢仏ノ威徳広大ヲ↡故ニ、得ル↢不退転ヲ↡也ト。」 已上
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅴ)(a)(ハ)宗暁¬楽邦文類¼
・易行捷径
【46】^▼¬*楽邦文類¼ にいはく、
¬楽邦文類ニ¼云ク、
^「▼総官の*張掄いはく、 ª^仏号はなはだ持ち易し、 浄土はなはだ往き易し。 *八万四千の法門、 この*捷径にしくなし。 ただよく*清晨▼俛仰の暇を輟めて、 つひに永劫不壊の資をなすべし。 これすなはち力を用ゐることは、 はなはだ微にして、 功を収むることいまし尽くることあることなけん。 衆生またなんの苦しみあればか、 みづから棄ててせざらんや。
「総官ノ張掄云ク、仏号甚ダ易シ↠持チ、浄土甚ダ易シ↠往キ。八万四千ノ法0042門、無シ↠如ク↢是ノ之捷 トキ *径ニスヽチ↡。但能ク輟メテ↢清晨アシタ 俛ノケフス仰之暇ヲ↡、遂ニ可シ↠為ス↢永劫不壊ヤブル之資ヲ↡。是 レ則チ用ヰルコトハ↠力ヲ甚ダ微ニ而、収ムルコト↠功ヲ乃シ无ケム↠有ルコト↠尽クルコト。衆生亦何ノ苦アレバカ、自ラ棄テ而不ラム↠為乎。
^ああ、 夢幻にして真にあらず。 *寿夭にして保ちがたし。 ▼呼吸のあひだにすなはちこれ来生なり。 一たび人身を失ひつれば万劫にも復せず。 この時悟らずは、 仏もし衆生をいかがしたまはん。 願はくは、 深く無常を念じて、 いたづらに後悔を貽すことなかれと。 浄楽の居士張掄縁を勧むº」 と。 以上
噫夢ユメ幻ニシテマボロシ 非ズ↠真ニ。寿夭モロシニシテ難シ↠保チ。*呼吸之頃ニクヰヤウ即チ是来生ナリ。一タビ失ヒツレバ↢人身ヲ↡万劫ニモ不↠復カヘルセ。此ノ時不ハ↠悟ラ、仏如衆生ヲ何ガシタマハム。願クハ深ク念ジテ↢於无常ヲ↡、勿レト↣徒ニ貽スコト↢於後悔ヲ↡。浄楽ノ*居士ヰルヒト張掄勧ムト↠縁ヲ。」 已上
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅴ)(a)(ニ)慶文
・念仏勝徳
【47】^▼*台教 (天台) の祖師、 山陰 *慶文法師 のいはく、
臺教ノ祖師山陰ノ 慶文法師 云ク、
^「まことに仏名は*真応の身よりして建立せるがゆゑに、 慈悲海よりして建立せるがゆゑに、 誓願海よりして建立せるがゆゑに、 智慧海よりして建立せるがゆゑに、 法門海よりして建立せるによるがゆゑに、 もしただもつぱら一仏の名号を称するは、 す0178なはちこれつぶさに諸仏の名号を称するなり。 功徳無量なればよく罪障を滅す。 よく浄土に生ず。 なんぞかならず疑を生ぜんや」 と。 以上
「良ニ由ルガ↧仏名ハ従リ↢真応ノ身↡而建立セルガ故ニ、従リ↢慈悲海↡而建立セルガ故ニ、従リ↢誓願海↡而建立セルガ故ニ、従リ↢智慧海↡而建立セルガ故ニ、従リ↢法門海↡而建立セルニ↥故ニ、若シ但専ラ称スルハ↢一仏ノ名号ヲ↡、則チ是具ニ称スルナリ↢諸仏ノ名号ヲ↡。功徳无量ナレバ能ク滅ス↢罪障ヲ↡。能ク生ズ↢浄土ニ↡。何ゾ必ズ生ゼム↠疑ヲ乎ト。」 已上
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅴ)(a)(ホ)元照¬観経義疏¼¬阿弥陀経義疏¼計七文
1.信心正因
【48】^▼律宗の祖師、 *元照のいはく (*観経義疏)、
律宗ノ祖師*元照ノ云ク、
^「いはんやわが仏大慈、 浄土を開示して慇懃にあまねく*諸大乗を勧嘱したまへり。 目に見、 耳に聞きてことに疑謗を生じて、 みづから甘く沈溺して*超昇を慕はず。 如来説きて*憐憫すべきもののためにしたまへり。 まことにこの法の特り*常途に異なることを知らざるによりてなり。
「況ヤ我ガ仏大慈、開↢示シテ浄土ヲ↡慇懃ニ勧↢スヽメ 嘱ツゲテシタマヘリ徧ク諸大乗ヲ↡。目ニ見耳ニ聞キテ特ニ生ジテ↢疑謗ヲ↡、自ラ甘ク沈溺オボルシテ不↠慕ハ↢超昇ヲ↡。如来説キテ為ニシタマヘリ↧可キ↢憐アワレミ 憫スアワレム↡者ノ↥。良ニ由リテナリ↠不ルニ↠知ラ↣此ノ法ノ特リコトニ異ナルコトヲ↢常途ミチニ↡。
^賢愚を択ばず、 *緇素を簡ばず、 修行の久近を論ぜず、 造罪の重軽を問はず、 ただ決定の信心すなはちこれ往生の因種ならしむ」 と。 以上
不↠択バ↢賢カシコシ愚ヲ↡、不↠簡バ↢緇ソウナリ 素ヲ↡オトコナリ、不↠論ゼ↢修行ノ久近ヲ↡、不↠問ハ↢造罪ノ重軽ヲ↡、但令ムト↢決定ノ信心即チ是往生ノ因種ナラ↡。 已上
2.此法無魔
【49】^▼またいはく (観経義疏)、
又云ク、
^「いま浄土の諸経にならびに魔をいはず。 すなはち知んぬ、 この法に魔なきことあきらけしと。 山陰の*慶文法師の ª▼*正信法門º にこれを弁ずること、 はなはだ詳らかなり。 いまためにつぶさにかの問を引きていはく、
「今浄土ノ諸経ニ並ニ不↠言ハ↠魔ヲ。即チ知ヌ此ノ法ニ無キコト↠魔明ケシト矣。山陰ノ慶文法0043師ノ正信法門ニ*弁ワキマウズルコト↠之ヲ甚ダ詳カナリ。今為ニ具ニ※引キテ↢彼ノ問ヲ↡曰ク
^ª▼あるいは人ありていはく、 «臨終に仏・菩薩の光を放ち、 台を持したまへるを見たてまつり、 天楽異香来迎往生す。 ならびにこれ魔事なり» と。 この説いかんぞや。
或イハ有リテ↠人云ク、臨終ニ見タテマツリ↢仏・菩薩ノ放チ↠光ヲ、持シタマヘルヲ↟台ヲ、天楽異香*来迎往生ス。並ニ是魔事ナリト。此ノ説如何ゾヤ。
^答へていはく、 ▼¬*首楞厳¼ によりて三昧を修習することあり。 あるいは*陰魔を発動す。 ¬▼*摩訶衍論¼ によりて三昧を修習することあり0179、 あるいは*外魔 (天魔をいふなり) を発動す。 ¬▼*止観論¼ によりて三昧を修習することあり、 あるいは▼*時魅を発動す。
答ヘテ曰ク、有リ↧依リテ↢¬首楞厳ニ¼↡修↦習スルコト三昧ヲ↥、或イハ発↢動ス陰魔ヲ↡。有リ↧依リテ↢¬摩訶衍論ニ¼↡修↦習スルコト三昧ヲ↥、或イハ発↢動ス外魔ヲ↡。謂フ↢天魔ヲ↡也 有リ↧依リテ↢¬止観論ニ¼↡修↦習スルコト三昧ヲ↥、或イハ発↢動ス時魅ガクヰヲ↡。
^これらならびにこれ禅定を修する人、 その自力に約してまづ魔種あり、 さだめて撃発を被るがゆゑにこの事を現ず。 もしよくあきらかに識りておのおの対治を用ゐれば、 すなはちよく除遣せしむ。 もし*聖の解をなせば、 みな魔障を被るなりと。 上にこの方の入道を明かす、 すなはち魔事を発す。
此等並ニ是修スル↢禅定ヲ↡人、約ヨルシテ↢其ノ自力ニ↡先ヅ有リ↢魔種↡、被ルガ↢定メテ撃 ウツ 発ヲ↡故ニ現ズ↢此ノ事ヲ↡。儻シ能ク明カニ識リテ各ノ用ヰレバ↢対治ヲ↡、即チ能ク除ノゾク 遣ツカハスセシム。若シ作セバ↢聖ノ解ヲ↡、皆被ルナリト↢魔障ヲ↡。上ニ明ス↢此ノ方ノ入道ヲ↡則チ発ス↢魔事ヲ↡。
^いま所修の念仏三昧に約するに、 いまし仏力を憑む。 帝王に近づけばあへて干犯すものなきがごとし。 けだし阿弥陀仏、 大慈悲力・大誓願力・大智慧力・大三昧力・大威神力・*大摧邪力・*大降魔力・*天眼遠見力・*天耳遥聞力・*他心徹鑑力・光明遍照摂取衆生力ましますによりてなり。
今約ツクスルニ↢所修ノ念仏三昧ニ↡、乃シ憑ム↢仏力ヲ↡。如シ↧近ヅケバ↢帝王ニ↡無キガ↦敢テ干犯スモノ↥。蓋シ由リテナリ↣阿弥陀仏有スニ↢大慈悲力・大誓願力・大智慧力・大三昧力・大威神力・大摧クダク邪力・大降魔力・天眼遠見力・天耳遥聞力・他心徹トヲリ 鑑カガム力・光明徧照摂取衆生力↡。
^かくのごときらの不可思議功徳の力まします。 あに念仏の人を護持して、 臨終の時に至るまで障礙なからしむることあたはざらんや。
有ス↢如キ↠是クノ等ノ不可思議功徳之力↡。豈不ラム↠能ハ↧護↢持シテ念仏之人ヲ↡、至ルマデ↢臨終ノ時ニ↡令ムルコト↞無カラ↢障サワル↡邪。
^もし護持をなさずは、 すなはち慈悲力なんぞましまさん。 もし魔障を除くことあたはずは、 智慧力・三昧力・威神力・摧邪力・降魔力、 またなんぞましまさんや。 もし鑑察することあたはずして、 魔、 障をなすことを被らば、 天眼遠見力・天耳遥聞力・他心徹鑑力、 またなんぞましまさんや。
若シ不↠為サ↢護持ヲ↡者、則チ慈悲力何ゾ在サム。若シ不↠能ハ↠除クコト↢魔障ヲ↡者、智慧力・三昧力・威神力・摧邪力・降魔力、復何ゾ在サム*邪。若シ不シテ↠能ハ↢鑑カヾム 察カヾムスルコト↡、被ラ↢魔為スコトヲ↟障ヲ者、天眼遠見力・天耳遥聞力・他心徹鑑力、復何ゾ在サム邪。
^¬経¼ (観経) にいはく、 «^▲阿弥陀仏0180の相好の光明あまねく十方世界を照らす。 念仏の衆生をば摂取して捨てたまはず» (意) と。 ^もし念仏して臨終に魔障を被るといはば、 光明遍照摂取衆生力、 またなんぞましまさんや。 いはんや念仏の人の臨終の感相、 衆経より出でたり。 みなこれ仏の言なり。 なんぞ貶して魔境とすることを得んや。 いまために邪疑を決破す。 まさに正信を生ずべしº」 と。 以上彼文
¬経ニ¼云ク、阿弥陀仏ノ相好ノ光明徧ク照ス↢十方世界ヲ↡。念仏ノ衆生ヲバ摂取シテ不ト↠捨テタマハ。若シ謂ハ↣念仏シテ臨0044終ニ被ブルト↢魔障ヲ↡者、光明徧照摂取*衆生力、復何ゾ在サム邪。況ヤ念仏ノ人ノ臨終ノ感カヾム相、出デタリ↠自リ↢衆経↡。皆是仏ノ言ナリ。何ゾ得ム↣貶オトシムシテ為ルコトヲ↢魔境サカイト↡乎。今為ニ決↢破ス邪疑ヲ↡。当ニシト↠生ズ↢正信ヲ↡。」 已上彼文
3.法体円成
【50】^▼また 元照律師の ¬*弥陀経義¼ の文 いはく、
又 *元*昭律師ノ¬弥陀経義ノ¼文 云ク、
^「▼*一乗の極唱、 *終帰を▼ことごとく*楽邦を指す。 万行の円修、 最勝を独り*果号に推る。 まことにもつて因より願を建つ。 志を秉り行を窮め、 *塵点劫を歴て*済衆の仁を懐けり。 ▼*芥子の地も*捨身の処にあらざることなし。 *悲智六度摂化してもつて遺すことなし。 ▼*内外の両財、 求むるに随うてかならず応ず。 ▼機と縁と熟し、 行満じ功なり、 一時に円かに三身を証す。 万徳すべて*四字に彰る」 と。 以上
「一乗ノ極唱トナフ、終*帰ヲ咸ク指ス↠於↢楽邦クニ↡。万行ノ円修、最勝ヲ独リ推ル↠於↢果号↡。良ニ以テ従リ↠因建ツ↠願ヲ。秉リ↠志ヲ*躬メ↠行ヲ、歴テ↢塵点シルス劫ヲ↡懐ケリ↢済タスク衆之仁ヲアワレミ↡。無シ↣芥ミ 子ノ地モ非ザルコト↢捨身之処ニ↡。悲智六度摂化シテ以テ無シ↠遺スコト。内外ノ両財随フ↠求ムルニ而必ズ応ズ。機ト与↠縁熟シ、行満ジ功成リ、一時ニ円カニ証ス↢於三身ヲ↡。万徳総テ彰ルト↢於四字ニ↡。」 已上
4.至徳具徳
【51】^▼またいはく (阿弥陀経義疏)、
又云ク、
^「いはんやわが弥陀は名をもつて*物を接したまふ。 ここをもつて耳に聞き口に誦するに、 無辺の聖徳、 *識心に*攬入す。 永く仏種となりて頓に億劫の重罪を除き、 無上菩提を獲証す。 まことに知んぬ、 少善根にあらず、 これ多功徳なり」 と。 以上
「況ヤ我ガ弥陀ハ以テ↠名ヲ接シタマフ↠物ヲ。是ヲ以テ耳ニ聞キ口ニ誦ヨムスルニ、无辺ノ聖徳攬↢ トル ミルトモ入ス識心ニ↡。永ク為リテ↢仏種ト↡頓ニ トシ ニワカニ除キ↢億劫ノ重罪ヲ↡、獲 ウル ↢証カナウス无上菩提ヲ↡。信ニ知ヌ非ズ↢少善根ニ↡、是多功徳也ト。」 已上
5.臨終勝益
【018152】^▼またいはく (阿弥陀経義疏)、
又云ク、
^「▼正念のなかに、 凡人の臨終は*識神主なし。 善悪の業種発現せざることなし。 あるいは悪念を起し、 あるいは邪見を起し、 あるいは*繋恋を生じ、 あるいは猖狂悪相を発せん。 もつぱらみな顛倒の因と名づくるにあらずや。 前に仏を誦して罪滅し、 障除こり、 浄業内に薫じ、 慈光外に摂して、 苦を脱れ楽を得ること一刹那のあひだなり。 ▼*下の文に生を勧む、 その利ここにあり」 と。 以上
「正念ノ中ニ、凡人ノ臨終ハ、識神无シ↠主。善悪ノ業種無シ↠不ルコト↢発現セ↡。或イハ起シ↢悪念ヲ↡、或イハ起シ↢邪見ヲ↡、或イハ生ジ↢繋ツナグ 恋ヲ↡、シタウ コウトモ或イハ発セム↢猖狂クルウ悪相ヲ↡。非ズヤ↣一ラ皆名クルニ↢顛倒ノ因ト↡。前ニ誦シテ↠仏ヲ罪滅シ障除コリ、浄業内ニ熏ジ、慈光外ニ摂シテ、脱レ↠苦ヲ得ルコト↠楽ヲ一刹那ノ間ナリ。下ノ文ニ勧ム↠生ヲ、其ノ利在リト↠此ニ。」 已上
6.古釈勧信
【53】^(元照観経義疏)
^「▼*慈雲法師 天竺寺の遵式 のいはく、 ª^ただ安養の浄業*捷真なり、 修すべし。 もし四衆ありて、 またすみやかに無明を破し、 永く五逆・十悪重軽等の罪を滅せんと欲はば、 まさにこの法を修すべし。 ^*大小の戒体、 遠くまた清浄なることを得しめ、 念仏三昧を得しめ、 菩薩の諸波羅蜜を成就せんと欲はば、 まさにこの法を学すべし。
「慈0045雲法師ノ *天竺寺ノ遵式 云ク、唯安養ノ浄業捷トシ真ナリ、可シ↠修ス。若シ有リテ↢四衆↡、欲ハヾ↧復速ニ破シ↢无明ヲ↡、永ク滅セムト↦五逆・十悪重軽等ノ罪ヲ↥、当ベ ニシ↠修ス↢此ノ法ヲ↡。欲ハヾ↧得シメ↢大小ノ戒体、遠ク復清浄ナルコトヲ↡、得シメ↢念仏三昧ヲ↡、成↦ 就セムトツク ナルトモ菩薩ノ諸波羅蜜ヲ↥、当ニシ↠学ス↢此ノ法ヲ↡。
^*臨終にもろもろの怖畏を離れしめ、 身心安快にして衆聖現前し、 授手接引せらるることを得、 はじめて*塵労を離れてすなはち不退に至り、 長劫を歴ず、 すなはち無生を得んと欲はば、 まさにこの法等を学すべしº と。 ^*古賢の法語によく従ふことなからんや。
欲ハヾ↪※得↧臨終ニ離レシメ↢諸ノ怖オソレ 畏オソルヲ↡、身心安快ニシテ衆聖現前シ、授サヅケ手接引セラルルコトヲ↥、初メテ離レテ↢塵労ヲイタワシ↡便チ至リ↢不退ニ↡、不↠歴↢長劫ヲ↡、即チ得ムト↩无生ヲ↨、当ニシト↠学ス↢此ノ法等ヲ↡。古賢ノカシコシ法語ニ能ク無カラム↠従フコト乎。
^▼以上五門、 綱要を略標す。 自余は尽さず、 ▼くはしく釈文にあり。
已上五門、略↢標スアラハス綱ツナ要ヲ↡。自余ハ不↠尽サ、委シク在リ↢釈文ニ↡。
^¬*開元の0182蔵録¼ を案ずるに、 ▼この ¬経¼ におほよそ両訳あり。 前本はすでに亡じぬ。 いまの本はすなはち*畺良耶舎の訳なり。 ¬*僧伝¼ にいはく、 ª畺良耶舎はここには時称といふ。▼*宋の元嘉の初めに、 ▼*京邑に建めたり。 ▼*文帝のときº」 と。
按ズルニ↢¬開元ノ蔵録ヲシルス¼↡、此ノ¬経ニ¼凡ソ有リ↢両訳↡。前本ハ已ニ亡ジヌ。今ノ本ハ乃チ畺良*邪舎ノ訳ナリ。¬僧伝ニ¼云ク、畺良*邪舎ハ此ニハ云フ↢時称ト↡。宋ノ元嘉ノ初メニ建メタリ↢于京邑ムラニ↡。文帝ノトキト。」
7.結嘆 ・遵式
【54】^▼*慈雲 遵式なり の讃にいはく、
慈雲ノ *遵式也 讃ニ云ク、
^「*了義のなかの了義なり。 *円頓のなかの円頓なり」 と。 以上
7.結嘆 ・元照
【55】^▼大智 元照律師なり 唱へていはく (元照観経義疏)、
*大智 *元照律師也 唱ヘテ云ク、
^「*円頓一乗なり。 純一にして雑なし」 と。 以上
「円頓一乗ナリ | 純モハラ一ニシテ無シト↠*雑」 已上 |
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅴ)(a)(ヘ)戒度¬観経義疏正観記¼
・仏名万徳
【56】^▼律宗の*戒度 元照の弟子なり のいはく (*正観記)、
律宗ノ*戒度ノ *元照之弟子也 云ク、
^「仏名はすなはちこれ劫を積んで*薫修し、 その万徳を攬る、 すべて四字に彰る。 このゆゑにこれを称するに益を獲ること、 浅きにあらず」 と。 以上
「仏名ハ乃チ是積ンデ↠劫ヲ薫修シ、攬ル↢其ノ万徳ヲ↡、総テ彰ル↢四字ニ↡。是ノ故ニ称スルニ↠之ヲ獲ルコト↠益ヲ非ズト↠浅キニ。」 已上
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅴ)(a)(ト)用欽二文
1.功徳具足
【57】^▼*律宗の*用欽 元照の弟子なり のいはく、
律宗ノ用欽ノ *元照之弟子也 云ク、
^「いまもしわが心口をもつて一仏の嘉号を称念すれば、 すなはち因より果に至るまで、 無量の功徳具足せざることなし」 と。 以上
「今若シ以テ↢我ガ心口ヲ↡称↢念スレバ一仏ノ嘉ヨキ号ヲ↡、則チ従リ↠因至ルマデ↠果ニ、无量ノ功徳无シト↠不ルコト↢具足セ↡。」 已上
2.不思議功徳
【58】^またいはく、
又0046云ク、
^「一切諸仏、 *微塵劫を歴て実相を了悟して、 *一切を得ざるがゆゑに、 *無相の大願を発して、 *修するに妙行に住することなし。 証するに菩0183提を得ることなし。 住するに国土を荘厳するにあらず。 現ずるに神通の神通なきがゆゑに、 *舌相を大千にあまねくして無説の説を示す。 ゆゑにこの経を勧信せしむ。 あに心に思ひ、 口に議るべけんや。
「一切諸仏、歴テ↢微塵劫ヲ↡了↢悟シテ実相ヲ↡、不ルガ↠得↢一切ヲ↡故ニ、発シテ↢无相ノ大願ヲ↡、修スルニ无シ↠住スルコト↢妙行ニ↡。証スルニ无シ↠得ルコト↢菩提ヲ↡。住スルニ非ズ↣荘↢厳スルニ国土ヲ↡。現ズルニ無キガ↢神通之神通↡故ニ、舌相ヲ徧クシテ↢於大千ニ↡示ス↢无説之説ヲ↡。故ニ勧↢信セシム是ノ経ヲ↡。豈容ケム↢心ニ思ヒ口ニ議ル↡邪。
^わたくしにいはく、 諸仏の不思議の功徳、 須臾に弥陀の*二報荘厳に収む。 *持名の行法はかの諸仏のなかに、 またすべからく弥陀を収むべきなり」 と。 以上
私ニ謂ク諸仏ノ不思議ノ功徳、須臾ニ*収ム↢弥陀ノ二報荘厳ニ↡。持名ノ行法ハ彼ノ諸仏ノ中ニ、亦須ベ クキ↠*収ム↢於弥陀ヲ↡也ト。」 已上
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅴ)(a)(チ)嘉祥¬観経義疏¼
・無量功徳
【59】^▼三論の祖師、 *嘉祥のいはく (*観経義疏)、
三論ノ祖師嘉祥ノ云ク、
^「問ふ。 念仏三昧はなにによりてか、 よくかくのごとき多罪を滅することを得るやと。 ^解していはく、 仏に無量の功徳います。 仏の無量の功徳を念ずるがゆゑに、 無量の罪を滅することを得しむ」 と。 以上
「問フ。念仏三昧ハ何ニ因リテカ、能ク得ル↠滅スルコトヲ↢如キ↠此クノ多罪ヲ↡邪ト。解シテサトス 云ク、仏ニ有ス↢无量ノ功徳↡。念ズルガ↢仏ノ无量ノ功徳ヲ↡故ニ、得シムト↠滅スルコトヲ↢无量ノ罪ヲ↡。」 已上
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅴ)(a)(リ)法位¬大経義疏¼
・称名称徳
【60】^▼法相の祖師、 *法位のいはく (*大経義疏)、
法相ノ祖師法位ノ云ク、
^「諸仏はみな徳を名に施す。 名を称するはすなはち徳を称するなり。 徳よく罪を滅し福を生ず。 名もまたかくのごとし。 もし仏名を信ずれば、 よく善を生じ悪を滅すること決定して疑なし。 称名往生これなんの惑ひかあらんや」 と。 以上
「諸仏ハ皆徳ヲ施 スホドコス↠名ニ。称スルハ↠名ヲ即チ称スルナリ↠徳ヲ。徳能ク滅シ↠罪ヲ生ズ↠福ヲ。名モ亦如シ↠是クノ。若シ信ズレバ↢仏名ヲ↡、能ク生ジ↠善ヲ滅スルコト↠悪ヲ決定シテ無シ↠疑。称名往生此有ラムヤト↢何ノ惑カ↡。」 已上
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅴ)(a)(ヌ)飛錫¬念仏三昧宝王論¼
・三昧王
【61】^▼禅宗の*飛錫のいはく (*念仏三昧宝王論)、
禅宗ノ飛錫ノ云ク、
^「念仏三昧の善、 これ最上なり。 万行の元首なるがゆゑに、 三昧王といふ」 と。 以上
「念仏三昧ノ善、之最上ナリ。万行ノ元ハジメ 首カウベナルガ故ニ、曰フト↢三昧王ト↡焉。」 已上
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅵ)横川引意(¬往生要集¼四文)
(a)念仏証拠門
1.衆機斉入
【018462】^▼¬*往生要集¼ (下) にいはく、
¬往生要集ニ¼云ク、
^「▲¬双巻経¼ (大経・下) の三輩の業、 浅深ありといへども、 しかるに通じてみな ª一向専念無量寿仏º といへり。
「¬双巻経ノ¼三輩トモガラ之業、雖モ↠有リト↢浅深↡、然ルニ通ジテ皆云ヘリ↢一向専念无量寿仏ト↡。
^◆三つに四十八願のなかに、 念仏門において別して一つの願を発してのたまはく、 ª乃至十念 若不生者 不取正覚º と。
三ニ四十八願ノ中ニ、於テ↢念仏門ニ↡別シテ発シテ↢一ノ願ヲ↡云ハク、乃至十念若0047不生者不取正覚ト。
^◆四つに ¬観経¼ には ª極重の悪人他の方便なし。 ただ弥陀を称して極楽に生ずることを得º」 と。 以上
四ニ¬観経ニハ¼極重ノ悪人无シ↢他ノ方便↡。唯称シテ↢弥陀ヲ↡得ト↠生ズルコトヲ↢極楽ニ↡。」 已上
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅵ)(b)正修念仏門
2-1.六種功徳
【63】^▼またいはく (往生要集・上)、
又云ク、
^「▲¬*心地観経¼ の六種の功徳によるべし。 一つには無上大功徳田、 二つには無上大恩徳、 三つには無足・二足および多足衆生のなかの尊なり。 四つにはきはめて値遇しがたきこと、 優曇華のごとし。 五つには独り三千大千界に出でたまふ。 六つには世・出世間の*功徳円満せり。 義つぶさにかくのごときらの六種の功徳による。 つねによく一切衆生を利益したまふ」 と。 以上
「応シ↠依ル↢¬心地観経ノ¼↡六種ノ功徳ニ↡。一ニハ无上大功徳田、二ニハ无上大恩徳、三ニハ无足タル・二足及以多*足ノ衆生ノ中ノ尊ナリ。四ニハ極テ難キコト↢値アフ遇シ↡如シ↢優曇華ノ↡。五ニハ独リ出デタマフ↢三千大千界ニ↡。六ニハ世・出世間ノ功徳円満セリ。義依ル↢具ニ如キ↠此クノ等ノ六種ノ功徳ニ↡。常ニ能ク利↢益シタマフト一切衆生ヲ↡。」 已上
2-2.六応念
【64】^この六種の功徳によりて信和尚 (*源信) のいはく (往生要集・上)、
依リテ↢此ノ六種ノ功徳ニ↡、信和尚ノ云ク、
^「▲一つには念ずべし、 *一称南無仏皆已成仏道のゆゑに、 われ無上功徳田を帰命し礼したてまつる。
「一ニハ応シ↠念ズ、一称南无仏皆已成仏道ノ故ニ我帰↢命シ礼シタテマツル↣无上功徳田ヲ↡。
^◆二つには念ずべし、 慈眼をもつて衆生を視そなはすこと、 平等にして一子のごとし。 ゆゑにわれ極大慈悲母を帰命し礼したてまつる。
二ニハ応シ↠念ズ、慈眼ヲモテ視スコト↢衆生ヲ↡、平等ニシテ如シ↢一子ノ↡。故ニ我帰↢命シ礼シタテマツル↣極大慈悲母ヲ↡。
^◆三つには念0185ずべし、 十方の諸大士、 弥陀尊を恭敬したてまつるがゆゑに、 われ*無上両足尊を帰命し礼したてまつる。
三ニハ応シ↠念ズ、十方ノ諸大士恭↢敬シタテマツルガ弥陀尊ヲ↡故ニ我帰↢命シ礼シタテマツル↣无上両足尊ヲ↡。
^◆四つには念ずべし、 一たび仏名を聞くことを得ること、 優曇華よりも過ぎたり。 ゆゑにわれ*極難値遇者を帰命し礼したてまつる。
四ニハ応シ↠念ズ、一タビ得ルコト↠聞クコトヲ↢仏名ヲ↡、過ギタリ↠於リモ↢優曇華↡。故ニ我帰↢命シ礼シタテマツル↣極難値遇者ヲ↡。
^◆五つには念ずべし、 一百倶胝界には二尊並んで出でたまはず。 ゆゑにわれ希有大法王を帰命し礼したてまつる。
五ニハ応シ↠念ズ、一百倶胝界ニハ二尊不↢並ビヤウンデ出デタマハ↡。故ニ我帰↢命シ礼シタテマツル↣希有大法王ヲ↡。
^◆六つには念ずべし、 仏法衆徳海は三世同じく一体なり。 ゆゑにわれ*円融万徳尊を帰命し礼したてまつる」 と。 以上
六ニハ応シ↠念ズ、仏法衆徳海ハ三世同ジク一体ナリ。故ニ我帰↢命シ礼シタテマツルト↣円融万徳尊ヲ↡。」 已上
3.一念大利
【65】^▼またいはく (往生要集・上)、
又云ク、
^「▲*波利質多樹の華、 一日衣に薫ずるに、 *瞻蔔華・*波師迦華、 千歳薫ずといへども、 及ぶことあたはざるところなり」 と。 以上
「波利質多樹ノ華、一日薫ズルニ↠衣ニ、瞻ミル*蔔華・波師迦華、雖モ↢千歳薫ズト↡、所0048ナリト↠不ル↠能ハ↠及ブコト。」 已上
4.悪機得生
【66】^▼またいはく (往生要集・下)、
又云ク、
^「▲一斤の石汁、 よく千斤の銅を変じて金となす。
「如シト↧一斤ノ石汁、能ク変ジテ↢千斤ノ銅ヲ↡為ス↠金ト、
^▲雪山に草あり、 名づけて忍辱とす。 牛もし食すればすなはち醍醐を得。
雪山ニ有リ↠草、名ケテ為↢忍辱ト↡、牛若シ食スレ者即チ得↢醍醐ヲ↡、
^▲尸利沙昴星を見ればすなはち菓実を出すがごとし」 と。 以上
*月利沙見レバ↢昴星ヲ↡則チ出スガ↦菓ハナ実ヲ↥。」 已上
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅶ)吉水引意(¬選択集¼二文)
(a)正しく集文を引く
1.念仏為本
【67】^▼¬*選択本願念仏集¼ *源空集 にいはく、
¬選択本願念仏集ニ¼ 源空集 云ク、
^「▲南無阿弥陀仏 往生の業は念仏を本とす」 と。
「南无阿弥陀仏 往生之業ハ念仏ヲ為ト↠本ト」
2.三選之文
【68】^▼またいはく (選択集)、
又云ク、
^「▲それすみやかに生死を離れんと欲はば、 二種0186の勝法のなかに、 しばらく聖道門を閣きて、 選んで浄土門に入れ。 浄土門に入らんと欲はば、 正雑二行のなかに、 しばらくもろもろの雑行を抛ちて、 選んで正行に帰すべし。 正行を修せんと欲はば、 正助二業のなかに、 なほ助業を傍らにして、 選んで正定をもつぱらにすべし。
「夫速カニ欲ハヾ↠離レムト↢生死ヲ↡、二種ノ勝法ノ中ニ且ク閣キテ↢聖道門ヲ↡、選デ入レ↢浄土門ニ↡。欲ハヾ↠入ラムト↢浄土門ニ↡、正雑二行ノ中ニ且ク抛チテ↢諸ノ雑行ヲ↡、選デ応シ↠帰ス↢正行ニ↡。欲ハヾ↠修セムト↢於正行ヲ↡、正助二業ノ中ニ猶傍ニシテ↢於助業ヲ↡、選デ応シ↠専ラニス↢正定ヲ↡。
^◆正定の業とはすなはちこれ仏の名を称するなり。 称名はかならず生ずることを得。 仏の本願によるがゆゑに」 と。 以上
正定之業ト者即チ是称スルナリ↢仏ノ名ヲ↡。称名ハ必ズ得↠生ズルコトヲ。依ルガ↢仏ノ本願ニ↡故ニト。」 已上
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅶ)(b)略釈
【69】^▼あきらかに知んぬ、 ▼これ*凡聖自力の行にあらず。 ゆゑに不回向の行と名づくるなり。
明カニ知ヌ是非ズ↢凡聖自力之行ニ↡。故ニ名クル↢不回向之行ト↡也。
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅶ)(c)勧帰
(イ)正勧
・念仏成仏釈
^*大小の聖人・重軽の悪人、 みな同じく斉しく選択の大宝海に帰して念仏成仏すべし。
大小ノ聖人・重軽ノ悪人、皆同ジク斉シク応シ↧帰シテ↢選択ノ大宝海ニ↡念仏成仏ス↥。
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅶ)(c)(ロ)引証(¬論註¼)
・同一念仏
【70】^▼ここをもつて ¬論の註¼ (下) にいはく、
是ヲ以テ¬論ノ註ニ¼曰ク、
^「▲かの安楽国土は、 阿弥陀如来の▼正覚浄華の▼化生するところにあらざることなし。 ▼同一に念仏して▼別の道なきがゆゑに」 とのたまへり。 以上
「彼ノ安楽国土ハ、莫シ↠非ザルコト↣阿弥陀如来ノ正覚浄華之所ニ↢化生スル↡。同一ニ念仏シテ无キガ↢別ノ道↡故ニトノタマヘリ。」 已上
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅱ)釈成
(ⅰ)行信の利益を明かす【行信利益】
1.正説
【71】^しかれば、 ▼真実の行信を獲れば、 心に歓喜多きがゆゑに、 これを歓喜地と名づく。 △これを初果に喩ふることは、 初果の聖者、 なほ睡眠し懶堕なれども二十九有に至らず。 いかにいはんや▼十方群生海、 △この行信に0187帰命すれば摂取して捨てたまはず。 ゆゑに阿弥陀仏と名づけたてまつると。 これを↓他力といふ。
爾レ者獲レ↢真実ノ行信ヲ↡者、心ニ多キガ↢歓喜↡故ニ是ヲ名ク↢歓喜地ト↡。是ヲ喩フルコト↢初果ニ↡者、初果ノ聖者、尚睡眠シ懶堕ナレドモ不↠至ラ↢二十九有ニ↡。何ニ況ヤ十方群生海、帰↢命スレ斯0049ノ行信ニ↡者摂取シテ不↠捨テタマハ。故ニ名ケタテマツルト↢阿弥陀仏ト↡。是ヲ曰フ↢他力ト↡。
2.引証
^◆ここをもつて龍樹大士は 「▲*即時入必定」 (易行品) といへり。 曇鸞大師は 「▲*入正定聚之数」 (論註・上) といへり。 仰いでこれを憑むべし。 もつぱらこれを行ずべきなり。
是ヲ以テ龍樹大士ハ曰ヘリ↢「即時入必定ト」↡。曇*鸞大師ハ云ヘリ↢「入正定聚之数ト」↡。仰イデ可シ↠憑ム↠斯ヲ。専ラ可キ↠行ズ↠斯ヲ也。
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)行信の交際を弁ず【両重因縁】
1.正釈
【72】^▼まことに知んぬ、 ▼*徳号の慈父ましまさずは*能生の因闕けなん。 光明の悲母ましまさずは*所生の縁乖きなん。 能所の因縁和合すべしといへども、 信心の*業識にあらずは光明土に到ることなし。 ▼真実信の業識、 これすなはち内因とす。 光明・名の父母、 これすなはち外縁とす。 内外の因縁和合して報土の真身を得証す。
良ニ知ヌ无ハ↢徳号ノ慈父↡能生ノ因闕クヱチケナム。无ハ↢光明ノ悲母↡所生ノ縁乖キナム。能所ノ因縁雖モ↠可シト↢和合ス↡、非ズハ↢信心ノ業識ニ↡无シ↠到ルコト↢光明土ニ↡。真実信ノ業識、斯則チ為↢内因ト↡。光明・名ノ父母、斯則チ為↢外縁ト↡。内外ノ因縁和合シテ得↢証ス報土ノ真身ヲ↡。
2.引証
^ゆゑに宗師 (善導) は、 「△光明・名号をもつて十方を摂化したまふ、 ただ信心をして求念せしむ」 (礼讃) とのたまへり。 ^また 「△念仏成仏これ真宗」 (*五会法事讃) といへり。 ^また 「▲真宗遇ひがたし」 (*散善義) といへるをや、 ^知るべしと。
故ニ宗師ハ言ヘリ↧「以テ↢光明・名号ヲ↡摂↢化シタマフ十方ヲ↡、但使ムト↦信心ヲシテ求念セ↥ト。」又云ヘリ↢「念仏成仏是真宗ト」↡、又云ヘルヲ↢「真宗叵シト↟遇ヒ」也、可シト↠知ル。
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅲ)行信一念を明かす【行一念釈】
(a)総標
【73】^おほよそ往相回向の行信について、 行にすなはち一念あり、 また信に一念あり。
凡ソ就イテ↢往相回向ノ行信ニ↡、行ニ則チ有リ↢一念↡、亦信ニ有リ↢一念↡。
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(b)別釈
(イ)正しく一念を釈す
[一]正釈
[Ⅰ]直釈
^▼行の一念といふは、 いはく、 称名の遍数について選択易行の至極を顕開す。
言フ↢行之一念ト↡者、謂ク就テ↢称名ノ徧数ニ↡顕↢開ス選択易行ノ至極ヲ↡。
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(b)(イ)[一][Ⅱ]出文
[ⅰ]正出
[a]¬大経¼
【018874】^▼ゆゑに ¬*大本¼ (大経・下) にのたまはく、
故ニ¬大本ニ¼言ク、
^「▲仏弥勒に語りたまはく、 ªそれかの仏の名号を聞くことを得て、 ▼歓喜踊躍して↓乃至↓一念せんことあらん。 まさに知るべし、 この人は↓大利を得とす。 すなはちこれ↓無上の功徳を具足するなりº」 と。 以上
「仏語リタマハク↢弥勒ニ↡、其有ラム↧得テ↠聞クコトヲ↢彼ノ仏ノ名号ヲ↡、歓喜踊躍シテ乃至一念セムコト↥。当ニシ↠知ル、此ノ人ハ為↠得ト↢大利ヲ↡。則チ是具↢足スルナリト无上ノ功徳ヲ↡。」 已上
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(b)(イ)[一][Ⅱ][ⅰ][b]~[d](終南)
【75】^光明寺の和尚 (善導) は 「▲↓下至一念」 (散善義・意) といへり。 また 「▲一声△一念」 (礼讃) といへり。 また 「▲↓専心↓専念」 (散善義・意) といへり。 以上
光明寺ノ和尚ハ云ヘリ↢「下至一念ト」↡。又云ヘリ↢「一声一念ト」↡。又云ヘリ↢「専心専念ト」↡。 已上
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(b)(イ)[一][Ⅱ][ⅰ][e]¬集諸経礼懴儀¼
【76】^▼智昇師の ¬*集諸経礼懴儀¼ の下巻にいはく、
智0050昇師ノ¬集諸経礼懴儀ノ¼下巻ニ云ク、
^「▲深心はすなはちこれ真実の信心なり。 自身はこれ煩悩を具足せる凡夫、 ▼善根薄少にして三界に流転して火宅を出でずと信知す。 いま弥陀の本弘誓願は、 ▼名号を▼称すること*下至▼十声聞等に及ぶまで、 さだめて往生を得しむと信知して、 一念に至るに及ぶまで疑心あることなし。 ゆゑに深心と名づく」 と。 以上
「深心ハ即チ是真実ノ信心ナリ。信↧知ス自身ハ是具↢足セル煩悩ヲ↡凡夫、善根薄少ニシテ流↢転シテ三界ニ↡不ト↞出デ↢火宅ヲ↡。今信↪知シテ弥陀ノ本弘誓願ハ、及ブマデ↧称スルコト↢名号ヲ↡下至十*声*聞等ニ↥、定メテ得シムト↩往生ヲ↨、及ブマデ↠至ルニ↢一念ニ↡无シ↠有ルコト↢疑心↡。故ニ名クト↢深心ト↡。」 已上
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(b)(イ)[一][Ⅱ][ⅱ]解釈
[a]乃至を釈す
【77】^▲¬経¼ (大経) に 「↑乃至」 といひ、 釈 (散善義) に 「↑下至」 といへり。 乃下その言異なりといへども、 その意これ一つなり。 ^また▼乃至とは*一多包容の言なり。
経ニ言ヒ↢「乃至ト」↡、釈ニ曰ヘリ↢「下至ト」↡。乃下其ノ言雖モ↠異ナリト、其ノ意惟一也。復乃至ト者一多包カヌ容イルヽ之言ナリ。
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(b)(イ)[一][Ⅱ][ⅱ][b]大利無上を釈す
^「↑大利」 といふは小利に対せるの言なり。 「↑無上」 といふは有上に対せるの言なり。 まことに知んぬ、 大利無上は一乗真実の利益0189なり。 小利有上はすなはちこれ八万四千の仮門なり。
言フ↢大利ト↡者対セル↢小利ニ↡之言ナリ。言フ↢无上ト↡者対セル↢有上ニ↡之言也。信ニ知ヌ大利无上者一乗真実之利益也。小利有上者則チ是八万四千ノ仮カリニ門也。
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(b)(イ)[一][Ⅱ][ⅱ][c]一念を釈す
^▼釈 (散善義) に 「↑専心」 といへるはすなはち一心なり、 二心なきことを形すなり。 「↑専念」 といへるはすなはち一行なり、 二行なきことを形すなり。
釈ニ云ヘル↢専心ト↡者即チ一心ナリ、形ス↠无キコトヲ↢二心↡也。云ヘル↢専念ト↡者即チ一行ナリ、形ハス↠无キコトヲ↢二行↡也。
^▼いま弥勒付属の 「↑一念」 はすなはちこれ一声なり。 一声すなはちこれ一念なり。 一念すなはちこれ一行なり。 一行すなはちこれ正行なり。 正行すなはちこれ正業なり。 正業すなはちこれ正念なり。 正念すなはちこれ念仏なり。 すなはちこれ南無阿弥陀仏なり。
今弥勒付嘱之一念ハ即チ是一声ナリ。一声即チ是一念ナリ。一念即チ是一行ナリ。一行即チ是正行ナリ。正行即チ是正業ナリ。正業即チ是正念ナリ。正念即チ是念仏ナリ。則チ是南无阿弥陀仏也。
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(b)(イ)[二]結嘆
【78】^しかれば、 大悲の願船に乗じて光明の広海に浮びぬれば、 至徳の風静かに衆禍の波転ず。 すなはち無明の闇を破し、 すみやかに無量光明土に到りて大般涅槃を証す、 普賢の徳に遵ふなり、 知るべしと。
爾レ者乗ジテ↢大悲ノ願船ニ↡浮ビヌレバ↢光明ノ広海ニ↡、至徳ノ風静ニ衆禍ノワザワイ波転ズ。即チ破シ↢无明ノ闇ヲ↡、速ニ到リテ↢无量光明土ニ↡証ス↢大般涅槃ヲ↡、遵ジユンフ↢普賢之徳ニ↡也、可シト↠知ル。
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(b)(ロ)因みに十念を釈す
【79】^▼¬安楽集¼ (上) にいはく、
¬安楽集ニ¼云ク、
^「▲十念相続とは、 これ*聖者の一つの数の名ならくのみ。 すなはちよく念を積み、 思を凝らして他事を縁ぜざれば、 業道成弁せしめてすなはち罷みぬ。 また*労しくこれが頭数を記せざれと。 ◆またいはく、 もし久行の人の念は、 多くこれによるべし。 もし始行の人の念は、 数を記する、 また好し。 これまた聖教によるなり」 と。 以上▼
「十念相続ト者、是聖者ノ一ノ数之名耳。即チ能ク積ミ↠念ヲ、凝シテ↠思ヲ不0051レバ↠縁ゼ↢他事ヲ↡、使メテ↢業道成*弁セスナハチ↡便チ罷ミヌ。亦不レト↣労シク記セ↢之ヲ頭ハシ数ヲ↡也。又*云ク、若シ久行ノ人ノ念ハ、多ク応シ↠依ル↠此ニ。若シ始ハジメ行ノ人ノ念者、記スル↠数ヲ亦好シ。此亦依ルナリト↢聖教ニ↡。」 已上
一 Ⅰ ⅱ b ロ 結示
【019080】^▼これすなはち真実の行を顕す明証なり。
斯乃チ顕ス↢真実ノ行ヲ↡明証ナリ。
一 Ⅰ ⅱ c 結嘆
^▼まことに知んぬ、 選択摂取の本願、 超世希有の勝行、 *円融真妙の正法、 至極無礙の大行なり、 知るべしと。
誠ニ知ヌ選択摂取之本願、超世希有之勝行、円融真妙之正法、至極无之大行也、可シト↠知ル。
一 Ⅱ 要義を追釈する【追釈】
ⅰ 他力を釈す【他力釈】
a 正標
【81】^▼↑他力といふは如来の本願力なり。
言フ↢他力ト↡者如来ノ本願力也。
一 Ⅱ ⅰ b 引証
イ ¬論註¼利行満足章
(一) 略明
・標示本願力
【82】^▼¬論¼ (論註・下) にいはく、
¬論ニ¼曰ク、
^「▲本願力といふは、 *大菩薩、 法身のなかにして、 つねに三昧にましまして、 種々の身、 種々の神通、 種々の説法を現じたまふことを示す。 みな本願力より起るをもつてなり。 たとへば、 阿修羅の琴の鼓するものなしといへども、 しかも音曲自然なるがごとし。 これを教化地の*第五の功徳相と名づく。 乃至
「言フ↢本願力ト↡者、示ス↧大菩薩於テ↢法身ノ中ニ↡、常ニ在シテ↢三昧ニ↡而テ現ジタマフコトヲ↦種種ノ身、種種ノ神通、種種ノ説法ヲ↥。皆以テナリ↢本願力ヨリ起ルヲ↡。譬ヘバ如シ↧阿修羅ノ琴ノ雖モ↠无シト↢鼓ウツスル者↡、而モ*音曲自然ナルガ↥。是ヲ名ク↢教化地ノ第五ノ功徳相ト↡。 乃至
一 Ⅱ ⅰ b イ (二) 広釈
(Ⅰ) 仏の修成を弁ず
・法体成就 ・二利満足 ・入
^◆ª菩薩は*四種の門に入りて、 自利の行成就したまへりと、 知るべしº と。 ◆ª成就º とは、 いはく自利満足せるなり。 ª応知º といふは、 いはく自利によるがゆゑにすなはちよく利他す。 これ自利にあたはずしてよく利他するにはあらざるなりと知るべし。
菩薩ハ入リテ↢四種ノ門ニ↡自利ノ行成就シタマヘリト、応シト↠知ル。成就ト者、謂ク自利満足セル也。応知トイフ者、謂ク応シ↠知ル↩由ルガ↢自利ニ↡故ニ則チ能ク利他ス、非ザル↧是不↠能ハ↢自利ニ↡而能ク利他スルニハ↥也ト↨。
・法体成就 ・二利満足 ・出
^◆ª菩薩は*第五門に出でて回向利益他の行成就したまへりと、 知るべしº と。 ◆ª成就º とは、 いはく回向の因をもつて教化地の果を証す。 もしは因、 もしは果0191、 一事として利他にあたはざることあることなきなり。 ª応知º といふは、 いはく利他によるがゆゑにすなはちよく自利す、 これ利他にあたはずしてよく自利するにはあらざるなりと知るべし。
菩薩ハ出デテ↢第五門ニ↡廻向利益他ノ行成就シタマヘリト、応シト↠知ル。成就ト者、謂ク以テ↢回向ノ因ヲ↡証ス↢教化地ノ果ヲ↡。若シハ因若シハ果、无キ↠有ルコト↢一事トシテ不ルコト↟能ハ↢利他ニ↡也。応知トイフ者、謂ク応シ↠知ル↧由ルガ↢利他ニ↡故ニ則チ能ク自利ス、非ザルナリト↦是不↠能ハ↢利他ニ↡而能ク自利スルニハ↥也。
・法体成就 ・成就菩提
^◆ª菩薩はかくのごとき五門の行を修して、 自利利他して、 すみやかに阿耨多羅三藐三菩提を成就することを得たまへるがゆゑにº と。 ◆仏の所得の法を、 名づけて阿耨多羅三藐三菩提とす。 この菩提を得たまへるをもつてのゆゑに、 名づけて仏とす。 いま ª速得阿耨多羅三藐三菩提º といへるは、 これはやく仏になることを得たまへるなり。
菩薩ハ如キ↠是クノ修シテ↢五門ノ行ヲ↡、自利利他シテ、速ニ得タマヘルガ↣成↢就スルコトヲ阿耨多羅三藐三菩提ヲ↡故ニト。仏ノ所得ノ法ヲ、名ケテ為↢阿耨多羅三藐三菩提ト↡。以テノ↠得タマヘルヲ↢此0052ノ菩提ヲ↡故ニ、名ケテ為↠仏ト。今言ヘルハ↢速得阿耨多羅三藐三菩提ト↡、是得タマヘル↢早ク作ルコトヲ↟仏ニ也。
^◆ª阿º をば無に名づく、 ª耨多羅º をば上に名づく、 ª三藐º をば正に名づく、 ª三º をば遍に名づく、 ª菩提º をば道に名づく、 統ねてこれを訳して、 名づけて ª無上正遍道º とす。
阿ヲバ名ク↠无ニ、耨多羅ヲバ名ク↠上ニ、三藐ヲバ名ク↠正ニ、三ヲバ名ク↠徧ニアマネシ、菩提ヲバ名ク↠道ニ、ネ而訳シテ↠之ヲ、名ケテ為↢无上正徧道ト↡。
^◆ª無上º は、 いふこころは、 この道、 理を窮め、 性を尽すこと、 さらに過ぎたるひとなけん。 なにをもつてかこれをいはば、 ª正º をもつてのゆゑに。
无上者、言ハ此ノ道、窮メ↠理ヲ尽スコト↠性ヲ、更ニ无ケム↢過ギタル者↡。何ヲ以テカ言ハヾ↠之ヲ、以テノ↠正ヲ故ニ。
^◆ª正º は聖智なり。 法相のごとくして知るがゆゑに、 称して正智とす。 法性は相なきゆゑに聖智無知なり。
正者聖智也。如ク↢法相ノ↡而知ルガ故ニ、称シテ為↢正智ト↡。法性ハ无キ↠相故ニ、※聖智无知也。
^◆ª遍º に二種あり。 一つには聖心、 あまねく一切の法を知ろしめす。 二つには法身、 あまねく法界に満てり。 もしは身、 もしは心、 遍せざることなき0192なり。
徧ニ有リ↢二種↡。一ニ者聖心、徧ク知ス↢一切ノ法ヲ↡。二ニ者法身、徧ク満テリ↢法界ニ↡。若シハ身若シハ心、无キ↠不ルコト↠徧セ也。
^◆ª道º は無礙道なり。 ▼¬経¼ (*華厳経) にいはく、 ª十方の無礙人、 一道より生死を出でたまへりº と。 ª一道º は一無礙道なり。 ª無礙º は、 いはく、 生死すなはちこれ涅槃なりと知るなり。 かくのごときらの入不二の法門は無礙の相なり。
道者无道也。¬経ニ¼言ク、十方ノ无人、一道ヨリ出デタマヘリト↢生死ヲ↡。一道者、一无道也。无者、謂ク知ルナリ↢生死即チ是涅槃ナリト↡。如キ↠是クノ等ノ入不二ノ法門ハ无ノ相也。
・往還因果 ・問
^◆問うていはく、 なんの因縁ありてか ª速得成就阿耨多羅三藐三菩提º といへるやと。
問ヒテ曰ク、有リテカ↢何ノ因縁↡言ヘルヤト↢速得成就阿耨多羅三藐三菩提ト↡。
・往還因果 ・答 ・引論
^◆答へていはく、 ¬論¼ (浄土論) に ª▼五門の行を修してもつて自利利他成就したまへるがゆゑにº といへり。
答ヘテ曰ク、¬論ニ¼言ヘリ↧修シテ↢五門ノ行ヲ↡以テ自利利*他成就シタマヘルガ故ニト↥。
一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ) 本願力を釈す
・往還因果 ・答 ・略標
^◆しかるに覈に其の本を求むれば、 阿弥陀如来を増上縁とするなり。
然ルニ覈ニ求ムレバ↢其ノ本ヲ↡、阿弥陀如来ヲ為ルナリ↢増上縁ト↡。
・往還因果 ・答 ・弁名
^◆他利と利他と、 談ずるに左右あり。 もし仏よりしていはば、 よろしく利他といふべし。 衆生よりしていはば、 よろしく他利といふべし。 いままさに仏力を談ぜんとす、 このゆゑに利他をもつてこれをいふ。 まさに知るべし、 この意なり。
※他利ト↠之ヲ与↢利他↡、談ズルニ有リ↢左右↡。若シ自ラ仏ヲ而言ハヾ、宜ベ シクシ ↠言フ↢利他ト↡。自ラ衆生ヲ而言ハヾ、宜ベ シクシ ↠言フ↢他利ト↡。今将ニス ↠談ゼムト↢仏力ヲ↡、是ノ故ニ以テ↢利他ヲ↡言フ↠之ヲ。当ニシ↠知ル、此ノ意也。
・往還因果 ・答 ・反顕
^◆おほよそこれかの浄土に生ずると、 およびかの菩薩・人・天の起すところの諸行は、 みな阿弥陀如来の本願力によるがゆゑに。 なにをもつてこれをいはば、 もし仏力にあらずは、 四十八願すなはちこれいたづらに設けたまへらん。
凡ソ是レ生ズルト↢彼ノ浄土ニ↡、及ビ彼ノ菩薩・人・天ノ所↠起ノ諸行ハ、皆縁ルガ↢阿弥陀如来ノ本願力ニ↡故ニ。何ヲ以テ言ハヾ↠之ヲ、若シ非ズハ↢仏力ニ↡、四十八願便チ是徒ニ設ケタマヘラム。
・往還因果 ・答 ・引証(三願的証)
^◆いま的しく三願を取りて、 もつて義の意を証せん。
今的シク取リテ↢三願ヲ↡、用テ証セム↢義ノ意ヲ↡。
・往還因果 ・答 ・引証(三願的証) ・第十八願
^0193◆願 (第十八願) にのたまはく、 ªたとひわれ仏を得たらんに、 十方の衆生、 心を至し信楽してわが国に生ぜんと欲うて、 乃至十念せん。 もし生れずは、 正覚を取らじと。 ただ五逆と誹謗正法とをば除くº と。
*願ニ言ク、設ヒ我得タラムニ↠仏ヲ、十方ノ衆生、至シ↠心ヲ信楽シテ欲フテ↠生ゼムト↢我ガ国ニ↡、乃至十0053念セム。若シ不↠生レ者、不ト↠取ラ↢正覚ヲ↡。唯除クト↢五逆ト誹謗正法トヲバ↡。
^◆仏願力によるがゆゑに十念念仏してすなはち往生を得。 往生を得るがゆゑに、 すなはち三界輪転の事を勉る。 輪転なきがゆゑに、 このゆゑに速やかなることを得る一つの証なり。
縁ルガ↢仏願力ニ↡故ニ十念念仏シテ便チ得↢往生ヲ↡。得ルガ↢往生ヲ↡故ニ即チ勉ル↢三界輪転之事ヲ↡。无キガ↢輪転↡故ニ、所以得ル↠速ナルコトヲ一ノ証也。
・往還因果 ・答 ・引証(三願的証) ・第十一願
^◆願 (第十一願) にのたまはく、 ªたとひわれ仏を得たらんに、 国のうちの人天、 定聚に住し、 かならず滅度に至らずは、 正覚を取らじº と。
*願ニ言ク、設ヒ我得タラムニ↠仏ヲ、国ノ中ノ人天、不↧住シ↢定聚ニ↡必ズ至ラ↦滅度ニ↥者、不ト↠取ラ↢正覚ヲ↡。
^◆仏願力によるがゆゑに正定聚に住せん。 正定聚に住せるがゆゑにかならず滅度に至らん。 もろもろの回伏の難なし、 このゆゑに速やかなることを得る二つの証なり。
縁ルガ↢仏願力ニ↡故ニ住セム↢正定聚ニ↡。住セルガ↢正定聚ニ↡故ニ必ズ至ラム↢滅度ニ↡。无シ↢諸ノ回カヘル 伏シタガフ之難↡、所以得ル↠速ナルコトヲ二ノ証也。
・往還因果 ・答 ・引証(三願的証) ・第二十二願
^◆願 (第二十二願) にのたまはく、 ªたとひわれ仏を得たらんに、 他方仏土のもろもろの菩薩衆、 わが国に来生して、 究竟してかならず一生補処に至らしめん。 その本願の自在の所化、 衆生のためのゆゑに、 弘誓の鎧を被て、 徳本を積累し、 一切を度脱して、 諸仏の国に遊び、 菩薩の行を修して、 十方の諸仏如来を供養し、 恒沙無量の衆生を開化して無上正真の道を立せしめんをば除く。 *常倫に超出し、 諸地の行現前し、 普賢の徳を修習せん。 もししからず0194は、 正覚を取らじº と。
*願ニ言ク、設ヒ我得タラムニ↠仏ヲ、他方仏土ノ諸ノ菩薩衆、来↢生シテ我ガ国ニ↡、究竟シテ必ズ至ラシメム↢一生補処ニ↡。除ク↧其ノ本願ノ自在ノ所化、為ノ↢衆生ノ↡故ニ、被テ↢弘誓ノ鎧ヨロイヲ↡、積↢累シ徳本ヲ↡、度↢脱シテ一切ヲ↡、遊ビ↢諸仏ノ国ニ↡、修シテ↢菩薩ノ行ヲ↡、供↢養シ十方ノ諸仏如来ヲ↡、開↢化シテ恒砂无量ノ衆生ヲ↡使メムヲバ↞立セ↢无上正真之道ヲ↡。超↢出シ常倫ニ↡、諸地之行現前シ、修↢習セム普賢之徳ヲ↡。若シ不↠爾ラ者、不ト↠取ラ↢正覚ヲ↡。
^◆仏願力によるがゆゑに、 常倫に超出し、 諸地の行現前し、 普賢の徳を修習せん。 常倫に超出し、 諸地の行現前するをもつてのゆゑに、 このゆゑに速やかなることを得る三つの証なり。
縁ルガ↢仏願力ニ↡故ニ超↢出シ常倫ニトモガラ↡、諸地之行現前シ、修↢習セム普賢之徳ヲ↡。以テノ↧超↢出シ常倫ニ↡、諸地之行現前スルヲ↥故ニ、所以得ル↠速ナルコトヲ三ノ証也。
・往還因果 ・答 ・結成
^◆これをもつて他力を推するに増上縁とす。 しからざることを得んやと。
以テ↠斯ヲ而推スルニオシテオモフ↢他力ヲ↡為↢増上縁ト↡。得ム↠不ルコトヲ↠然ラ乎。
・往還因果 ・答 ・例示
^◆まさにまた例を引きて自力・他力の相を示すべし。 ◆人、 三塗を畏るるがゆゑに禁戒を受持す。 禁戒を受持するがゆゑによく禅定を修す。 禅定を修すをもつてのゆゑに神通を修習す。 神通をもつてのゆゑによく四天下に遊ぶがごとし。 かくのごときらを名づけて自力とす。
当ニシ↣復引キテ↠例ヲ示ス↢自力・他力ノ相ヲ↡。如シ↧人畏ルルガ↢三塗ヲ↡故ニ受↢持ス禁イマシメ戒ヲ↡、受↢持スルガ禁戒ヲ↡故ニ能ク修ス↢禅定ヲ↡、以テノ↠修スヲ↢禅定ヲ↡故ニ修↢習ス神通ヲ↡、*以テノ↢神通ヲ↡故ニ能ク遊ブガ↦四天下ニ↥。如キ↠是クノ等ヲ名ケテ為↢自力ト↡。
^◆また劣夫の驢に跨つて上らざれども、 転輪王の行くに従へば、 すなはち虚空に乗じて四天下に遊ぶに障礙するところなきがごとし。 かくのごときらを名づけて他力とす。
又如シ↧劣オトル夫ノ跨 クワ テ↠驢ニ不レドモ↠上ラ、従ヘバ↢転輪王ノ行クニ↡、便チ乗ジテ↢虚空ニ↡遊ブニ↢四天下ニ↡无キガ↞所↢障スル↡。如キ↠是クノ等ヲ名0054ケテ為↢他力ト↡。
一 Ⅱ ⅰ b イ (三) 結勧
^◆愚かなるかな後の学者、 他力の乗ずべきを聞きてまさに信心を生ずべし。 みづから局分 (局の字、 せばし、 ちかし、 かぎる) することなかれ」 と。 以上
愚ナル哉後之学者、聞キテ↢他力ノ可キヲ↟乗ズ当ニシ↠生ズ↢信心ヲ↡。勿レト↢自ラ局 *局字 古玉反 セバシ チカシ カギル 分スルコト↡也。」 已上
一 Ⅱ ⅰ b ロ 元照¬観経義疏¼
【83】^▼元照律師のいはく (観経義疏)、
元照律師ノ云ク、
^「あるいは*この方にして惑を破し真を証すれば、 すなはち自力を運ぶがゆゑに、 *大小の諸経に談ず。 あるいは他方に往きて法を聞き道を悟るは、 すべからく他力を憑むべきがゆゑに、 往生浄土0195を説く。 彼此異なりといへども方便にあらざることなし。 自心を悟らしめんとなり」 と。 以上
「或イハ於テ↢此ノ方ニ↡破シ↠惑ヲ証スレバ↠真ヲ、則チ運ブガ↢自力ヲ↡故ニ、談ズ↢大小ノ諸経ニ↡。或イハ往キテ↢他方ニ↡聞キ↠法ヲ悟ルハ↠道ヲ、須ベ クキガ↠憑ム↢他力ヲ↡故ニ、説ク↢往生浄土ヲ↡。彼此雖モ↠異ナリト莫シ↠非ザルコト↢方便ニ↡。令メムトナリト↠悟ラ↢自心ヲ↡。」 已上
一 Ⅱ ⅱ 一乗海を釈す【一乗海釈】
a 正釈
イ 牒標
【84】^▼「↓一乗↓海」 といふは、
言フ↢一乗海ト↡者、
一 Ⅱ ⅱ a ロ 釈義
(一)一乗を釈す
(Ⅰ)直釈
(ⅰ)異名を会合す
^「↑一乗」 は大乗なり。 大乗は*仏乗なり。
一乗者大乗ナリ。大乗者仏乗ナリ。
一 Ⅱ ⅱ a ロ (一)(Ⅰ)(ⅱ)一乗の力を釈す
^一乗を得るは阿耨多羅三藐三菩提を得るなり。 阿耨菩提はすなはちこれ涅槃界なり。 涅槃界はすなはちこれ*究竟法身なり。 究竟法身を得るはすなはち一乗を究竟するなり。 *異の如来ましまさず、 異の法身ましまさず。 如来はすなはち法身なり。 一乗を究竟するはすなはちこれ*無辺不断なり。
得ル↢一乗ヲ↡者得ルナリ↢阿耨多羅三藐三菩提ヲ↡。阿耨菩提者即チ是涅槃界ナリ。涅槃界者即チ是究竟法身ナリ。得ル↢究竟法身ヲ↡者則チ究↢竟スルナリ一乗ヲ↡。※无サズ↢異如来↡、无サズ↢異法身↡。如来ハ即チ法身ナリ。究↢竟スル一乗ヲ↡者即チ是无辺不断ナリ。
一 Ⅱ ⅱ a ロ (一)(Ⅰ)(ⅲ)対弁・出体
^大乗は二乗・三乗あることなし。 二乗・三乗は一乗に入らしめんとなり。 一乗はすなはち第一義乗なり。 ただこれ*誓願一仏乗なり。
大乗ハ无シ↠有ルコト↢二乗・三乗↡。二乗・三乗者入ラシメムトナリ↢於一乗ニ↡。一乗者即チ第一義乗ナリ。唯是誓願一仏乗也。
一 Ⅱ ⅱ a ロ (一)(Ⅱ)引文
(ⅰ)正引
(a)¬涅槃経¼四文
1.聖行品
【85】^▼¬*涅槃経¼ (*聖行品) にのたまはく、
¬涅槃経ニ¼*言ク、
^「善男子、 *実諦は名づけて大乗といふ。 大乗にあらざるは実諦と名づけず。 善男子、 実諦はこれ仏の所説なり。 魔の所説にあらず。 もしこれ魔説は仏説にあらざれば、 実諦と名づけず。 善男子、 ▼実諦は▼一道清浄にして二つあることなし」 と。 以上
「善男子、実諦者名ケテ曰フ↢大乗ト↡。非ザル↢大乗ニ↡者不↠名ケ↢実諦ト↡。善男子、実諦者是仏ノ所説ナリ。非ズ↢魔ノ所説ニ↡。若シ是魔説ハ非ザレバ↢仏説ニ↡不↠名ケ↢実諦ト↡。善男子、実諦者一道清ニシテ浄ニシテ无シト↠有ルコト↠二也。」 *已上
2.徳王品
【86】^またのたまはく、 (涅槃経・*徳王品)
又言ク、
^「いかんが菩薩、 ▼一実に信順する。 菩薩は一切衆生をしてみな一道に帰せしむと了知するなり。 一道はいはく大乗なり0196。 諸仏・菩薩、 衆生のためのゆゑに、 これを分ちて三つとす。 このゆゑに菩薩、 *不逆に信順す」 と。 以上
「云何ガ菩薩信↢順スル一実ニ↡。菩薩ハ了↣知スルナリ一切衆生ヲシテ皆帰セシムト↢一道0055ニ↡。一道者謂ク大乗也。諸仏・菩薩為ノ↢衆生ノ↡故ニ、分チテ↠之ヲ為↠三ト。是ノ故ニ菩薩信↢順スト不逆ニ↡。」 已上
3.師子吼品(畢竟)
【87】^またのたまはく (涅槃経・*師子吼品)、
又言ク、
^「善男子、 畢竟に二種あり。 一つには*荘厳畢竟、 二つには*究竟畢竟なり。 一つには*世間畢竟、 二つには*出世畢竟なり。 荘厳畢竟は六波羅蜜なり。 究竟畢竟は一切衆生得るところの▼一乗なり。
「善男子、畢竟ニ有リ↢二種↡。一ニ者荘厳畢竟、二ニ者究竟畢竟ナリ。一ニ者世間畢竟、二ニ者出世畢竟ナリ。荘厳畢竟者六波羅蜜ナリ。究竟畢竟者一切衆生所ノ↠得ル一乗ナリ。
^一乗は名づけて仏性とす。 この義をもつてのゆゑに、 われ一切衆生悉有仏性と説くなり。 一切衆生ことごとく一乗あり。 無明覆へるをもつてのゆゑに、 見ることを得ることあたはず」 と。 以上
一乗者名ケテ為↢仏性ト↡。以テノ↢是ノ義ヲ↡故ニ我説クナリ↢一切衆生悉有仏性ト↡。一切衆生悉ク有リ↢一乗↡。以テノ↢无明覆ヘルヲ↡故ニ不ト↠能ハ↠得ルコト↠見ルコトヲ。」 已上
4.師子吼品(一非)
【88】^またのたまはく (涅槃経・獅子吼品)、
又言ハク、
^「いかんが一とする。 一切衆生ことごとく一乗なるがゆゑに。 いかんが非一なる。 三乗を説くがゆゑに。 いかんが非一・非非一なる。 *無数の法なるがゆゑなり」 と。 以上
「云何ガ為ル↠一ト。一切衆生悉ク一乗ナルガ故ニ。云何ガ非一ナル。説クガ↢三乗ヲ↡故ニ。云何ガ非一・非非一ナル。无数ノ法ナルガ故ナリト。」 已上
一 Ⅱ ⅱ a ロ (一)(Ⅱ)(ⅰ)(b)¬華厳経¼
【89】^▼¬*華厳経¼ (*明難品・晋訳) にのたまはく、
¬華厳経ニ¼言ク、
^「*文殊の法はつねにしかなり。 *法王はただ一法なり。 一切の無礙人、 一道より生死を出でたまへり。
「文殊ノ法ハ常ニ爾ナリ | 法王ハ唯一法ナリ |
一切ノ无人 | 一道ヨリ出デタマヘリ↢生死ヲ↡ |
^一切諸仏の身、 ただこれ一法身なり。 一心一智慧なり。 *力・無畏もまたしかなり」 と。 以上
一切諸仏ノ身 | 唯是一法身ナリ |
一心一智慧ナリ | 力・无畏モ亦然ナリト」 已上 |
一 Ⅱ ⅱ a ロ (一)(Ⅱ)(ⅱ)示意
【90】^▼しかれば、 これらの覚悟は、 みなもつて安養*浄刹の大利、 仏願難0197思の至徳なり。
爾レ者斯等ノ覚悟サトリハ、皆以テ安養浄刹之大利、仏願難思之至徳也。
一 Ⅱ ⅱ a ロ (二)海を釈す
【91】^▼「↑海」 といふは、 久遠よりこのかた、 凡聖所修の*雑修雑善の川水を転じ、 逆謗闡提恒沙無明の海水を転じて、 本願大悲智慧真実恒沙万徳の大宝海水となる。 これを海のごときに喩ふるなり。 まことに知んぬ、 *経に説きて 「▲煩悩の氷解けて功徳の水となる」 とのたまへるがごとし。 以上
言フ↠海ト者、従リ↢久遠↡已来転ジ↢凡聖所修ノ雑修雑善ノ川水ヲ↡、転ジテ↢逆謗闡提恒沙无明ノ海水ヲ↡、成ル↢本願大悲智慧真実恒沙万徳ノ大宝海水ト↡。喩フル↢之ヲ如キニ↟海ノ也。良ニ知ヌ如シ↤経ニ説キテ言ヘルガ↣「煩悩ノ氷解ケテ成ルト↢功徳ノ水ト↡。」 已上
^願海は▼二乗雑善の*中下の屍骸を宿さず。 いかにいはんや人天の虚仮邪偽の善業、 雑毒雑心の屍骸を宿さんや。
願海者不↠宿0056サ↢二乗雑善ノ中下ノ屍骸カバネヲ↡。何ニ況ヤ宿サム↢人天ノ虚仮邪偽ノイツワル善業、雑毒雑心ノ屍骸ヲ↡乎。
一 Ⅱ ⅱ a ロ (三)引証
(Ⅰ)¬大経¼
【92】^▼ゆゑに ¬大本¼ (大経・下) にのたまはく、
故ニ¬大本ニ¼言ク、
^「▲声聞あるいは▼菩薩、 よく聖心を究むることなし。 ▼たとへば生れてより盲ひたるものの、 行いて人を開導せんと欲はんがごとし。
「声聞或イハ菩薩 | 莫シ↣能ク究ムルコト↢聖心ヲ↡ |
譬ヘバ如シ↤従リ↠生レテ盲タルモノヽ | 欲ハムガ↣*行イテ開↢導セムト人ヲ↡ |
^如来の智慧海は、 深広にして涯底なし。 ▼二乗の測るところにあらず。 ただ仏のみ独りあきらかに了りたまへり」 と。 以上
如来ノ智慧海ハ | 深広ニシテ无シ↢涯底↡ |
二乗ノ非ズ↠所ニ↠惻ル | 唯仏ノミ独リ明カニ了リタマヘリト」 已上 |
一 Ⅱ ⅱ a ロ (三)(Ⅱ)¬論註¼二文
1.不虚作住持功徳
【93】^▼¬浄土論¼ (論註・下) にいはく、
¬浄土論ニ¼曰ク、
^「▲ªなにものか荘厳*不虚作住持功徳成就、 偈に、 «^仏の本願力を観ずるに、 遇うて空しく過ぐるものなし。 よくすみやかに功徳の大宝海を満足せしむ» といへるがゆゑにº とのたまへり。
「何者カ荘厳不虚作住持功徳成就、偈ニ言ヘリ↧観ズルニ↢仏ノ本願力ヲ↡、遇ヒテ无シ↢空シク過グル者↡、能ク令ムトイヘルガ↣速ニ満↢足セ功徳ノ大宝海ヲ↡故ニト↥。
^◆ª不虚作住持功徳成就º とは、 けだしこれ阿弥陀如来の本願力なり。 ◆いままさ0198に略して虚作の相の住持にあたはざるを示して、 もつてかの不虚作住持の義を顕す。 乃至
不虚作住持功徳成就ト者、蓋シ是阿弥陀如来ノ本願力也。今当ニ略シテ示シテ↢虚*空之相ノ不ルヲ↟能ハ↢住持ニ↡、用テ顕ス↢彼ノ不虚作住持之義ヲ↡。 乃至
^▲いふところの不虚作住持は、 もと法蔵菩薩の四十八願と、 今日阿弥陀如来の自在神力とによる。 願もつて力を成ず、 力もつて願に就く。 願徒然ならず、 力虚設ならず。 力願あひ符うて、 畢竟じて差はず。 ゆゑに成就といふ」 と。
所ノ↠言フ不虚作住持者、依ル↢本法蔵菩薩ノ四十八願ト、今日阿弥陀如来ノ自在神力トニ↡。願以テ成ズ↠力ヲ、力以テ就ク↠願ニ。願不↢徒イタヅラ 然ナラシカラシム↡、力不↢虚設マウクナラ↡。力願相府フテ畢竟ジテ不↠差ハ。故ニ曰フト↢成就ト↡。」
2.大衆功徳
【94】^▼またいはく (論註・上)、
又曰ク、
^「▲ª海º とは、 いふこころは、 仏の一切種智深広にして涯なし、 二乗雑善の▼中下の▼屍骸を▼宿さず、 これを海のごとしと喩ふ。 このゆゑに、 ª^天人不動衆 清浄智海生º (浄土論) といへり。
「海ト者、言ハ仏ノ一切種智深広ニシテ无シ↠涯、不↠宿サ↢二乗雑善ノ中下ノ屍骸ヲ↡、喩ルカ↢之ヲ如シト↟海ノ。是ノ故ニ言ヘリ↢天人不動衆清浄智海生ト↡。
^◆ª不動º とは、 いふこころは、 かの天・人、 *大乗根を成就して傾動すべからざるなり」 と。 以上
不動ト者、言ハ彼ノ天・人、成↢就シテ大乗根ヲ↡不ル↠可カラ↢傾動ス↡也ト。」 已上
一 Ⅱ ⅱ a ロ (三)(Ⅲ)「玄義分」
【95】^▼光明師 (善導) のいはく (玄義分)、
光明師ノ云ク、
^「▲われ▼菩薩蔵▼頓教と▼一乗海とによる」 と。
一 Ⅱ ⅱ a ロ (三)(Ⅳ)「般舟讃」
【96】^▼またいはく (般舟讃)、
又0057云ク、
^「▲¬瓔珞経¼ のなかには漸教を説けり。 万劫に功を修して▼不退を証す。 ◆¬観経¼・¬弥陀経¼ 等の説は、 すなはちこれ頓教なり、 ▼菩提蔵なり」 と。 以上
「¬瓔珞経ノ¼中ニハ説ケリ↢漸教ヲ↡ | 万劫ニ修シテ↠功ヲ証ス↢不退ヲ↡ |
¬観経¼・¬弥陀経¼等ノ説ハ | 即チ是頓教ナリ 菩提蔵ナリト」 已上 |
一 Ⅱ ⅱ a ロ (三)(Ⅴ)¬楽邦文類¼
【019997】^▼¬楽邦文類¼ にいはく、
¬楽邦文類ニ¼云ク、
^「▼*宗暁禅師のいはく、 ª▼*還丹の一粒は鉄を変じて金と成す。 ▼真理の一言は悪業を転じて善業と成すº」 と。 以上
「宗釈禅師ノ云ク、丹ノ一粒ハ変ジテ↠鉄ヲ成ス↠金ト。真理ノ一言ハ転ジテ↢悪業ヲ↡成スト↢善業ト↡。」 已上
一 Ⅱ ⅱ b 対顕【二経二機対】
イ 教に約す
(一)対論して勝を顕す
【98】^▼しかるに教について念仏諸善比挍対論するに、 ▼1難易対、 2頓漸対、 3横竪対、 *4超渉対、 5順逆対、 6大小対、 7多少対、 8勝劣対、 9親疎対、 10近遠対、
然ルニ就テ↠教ニ念仏諸善比校タクラブ対論スルニ、有リ↢難易対ムカフ、頓タチマチ 漸ヤウヤク対、横竪タヽサマ対、超渉ヤウヤク対、順逆サカサマ対、大小対、多少対、勝劣オトル対、親疎ウトキ対、近遠対、
11深浅対、 12強弱対、 13重軽対、 14広狭対、 15純雑対、 *16径迂対、 *17捷遅対、 *18通別対、 19不退退対、 *20直弁因明対、
深浅アサキ対、強コハク 弱ヨハシ対、重軽カロシ対、広狭セバシ対、純モハラ雑対、径スヽナリ 迂メグル対、捷トシ 遅オソシ対、通カヨウ 別ワカツ対、不退退シリゾク対、直マサシク*弁ワキマウ 因チナミ明対、
21名号定散対、 *22理尽非理尽対、 *23勧無勧対、 24無間間対、 25断不断対、 26相続不続対、 *27無上有上対、 28上上下下対、 *29思不思議対、 *30因行果徳対、
名号定散対、理コトハリ 尽ツクス非理尽対、勧スヽム無勧対、無間ヒマ間対、断タツ不断対、相続ツク不続対、无上有上対、上上下下対、思不思議対、因行果徳対、
*31自説他説対、 *32回不回向対、 33護不護対、 34証不証対、 35讃不讃対、 36付嘱不嘱対、 *37了不了教対、 *38機堪不堪対、 39選不選対、 40真仮対、
自説他説*対、*回不回向対、護マモル不護対、証不証対、讃不讃対、付ツク嘱*不嘱対、了不了教対、機ハタモノ 堪タヘタリ不堪対、選不選対、真仮カリナリ対、
41仏滅不滅対、 *42法滅利不利対、 43自力他力対、 *44有願無願対、 45摂不摂対、 *46入定聚不入対、 *47報化対あり。 ^この義かくのごとし。
仏滅不滅対、法*滅利不利対、自力他力対、有願無願対、摂不摂対、入定聚不入対、報化対↡。斯ノ義如シ↠斯クノ。
一 Ⅱ ⅱ b イ (二)一乗に帰結す
^しかるに本願一乗海を案ずるに、 円融満足極速無礙*絶対不二の教なり。
然ルニ按ズルニ↢本願一乗海ヲ↡、円融トホル満足タル極速トシ无絶対不二之教也。
一 Ⅱ ⅱ b ロ 機に約す
(一)対論して勝を顕す
【99】^また機について対論するに、 ▼1信疑対、 *2善悪対、 3正邪対、 4是非対、 5実虚対、 6真偽対、 7浄穢対、 8利鈍対、 9*奢促対、 10豪賎対、 *11明闇対あり。 ^この義かくのごとし。
亦0058就テ↠機ニ対論スルニ、有リ↢信疑対、善悪対、正邪対、是非対、実虚対、真偽イツワル対、浄穢対、利トシ 鈍ニブシ対、奢オソシ促トシ対、豪賎対、明闇対↡。斯ノ義如シ↠斯クノ。
一 Ⅱ ⅱ b ロ (二)一乗に帰結す
^しかるに一乗海の機を案ずるに、 金剛の信心は絶対不二0200の機なり、 知るべし。
然ルニ按ズルニ↢一乗海之機ヲ↡、金剛ノ信心ハ絶対不二之機也。可シ↠知ル。
一 Ⅱ ⅱ c 嘆徳【一乗嘆徳】
イ 略明
(一)正明
【100】^敬つて一切往生人等にまうさく、 弘誓一乗海は、 無礙無辺最勝深妙不可説不可称不可思議の至徳を成就したまへり。
敬テ白サク↢一切往生人等ニ↡、弘誓一乗海者、成↢就シタマヘリ无无辺最モトモ勝深妙不可説不可称不可思議ノ至徳ヲ↡。
一 Ⅱ ⅱ c イ (二)所由
^なにをもつてのゆゑに、 誓願不可思議なるがゆゑに。
何ヲ以テノ故ニ。誓願不可思議ナルガ故ニ。
一 Ⅱ ⅱ c ロ 広嘆
▼1悲願はたとへば太虚空のごとし、 もろもろの妙功徳広無辺なるがゆゑに。
悲願ハ喩ヘバ如シ↢太虚空ノ↡、諸ノ妙功徳広无辺ナルガ故ニ。
▲2なほ大車のごとし、 あまねくよくもろもろの凡聖を運載するがゆゑに。
猶如シ↢大車ノ↡、普ク能ク運↢ハコブ載ノルスルガ諸ノ凡聖ヲ↡故ニ。
▲3なほ妙蓮華のごとし、 一切世間の法に染せられざるがゆゑに。
猶如シ↢妙蓮華ノ↡、不ルガ↠染ソムセラレ↢一切世間ノ法ニ↡故ニ。
▲4*善見薬王のごとし、 よく一切煩悩の病を破するがゆゑに。
如シ↢善見薬王ノ↡、能ク破スルガ↢一切煩悩ノ病ヲ↡故ニ。
5なほ利剣のごとし、 よく一切憍慢の鎧を断つがゆゑに。
猶如シ↢利剣ノ↡、能ク断ツガ↢一切驕慢ノ鎧カブトヲ↡故ニ。
6*勇将幢のごとし、 よく一切のもろもろの魔軍を伏するがゆゑに。
如シ↢勇タケシ将幢ノ↡ハタボコ、能ク伏スルガシタガフ ↢一切ノ諸ノ魔軍ヲ↡故ニ。
7なほ利鋸のごとし、 よく一切無明の樹を截るがゆゑに。
猶如シ↢利鋸ノノコギリ↡、能ク截ルガ↢一切无明ノ樹ヲ↡故ニ。
8なほ利斧のごとし、 よく一切諸苦の枝を伐るがゆゑに。
猶如シ↢利斧オノノ↡、能ク伐ルガ↢一切諸苦ノ枝ヲ↡故ニ。
9善知識のごとし、 一切生死の縛を解くがゆゑに。
如シ↢善知識ノ↡、解クガ↢一切生死ノ縛シバルヲ↡故ニ。
10なほ導師のごとし、 よく凡夫*出要の道を知らしむるがゆゑに。
猶如シ↢導師ノ↡、善ク令ムルガ↠知ラ↢凡夫出要ノ道ヲ↡故ニ。
11なほ涌泉のごとし、 智慧の水を出して窮尽することなきがゆゑに。
猶如シ↢涌ワク 泉イヅミノ↡、出シテ↢智慧ノ水ヲ↡无キガ↢窮キワメ尽スルコト↡故ニ。
12なほ蓮華のごとし、 一切のもろもろの罪垢に染せられざるがゆゑに。
猶如シ↢蓮華ノ↡、不ルガ↠染セラレ↢一切ノ諸ノ罪垢アカニ↡故ニ。
13なほ疾風のごとし、 よく一切諸障の霧を散ずるがゆゑに。
猶如シ↢疾トキ風ノ↡、能ク散ズルガ↢一切諸障ノ霧キリヲ↡故ニ。
14なほ好蜜のごとし、 一切功徳の味は0201ひを円満せるがゆゑに。
猶如シ↢好蜜ノ↡、円↢満セルガ一切功徳ノ味ヲ↡故ニ。
15なほ正道のごとし、 もろもろの群生をして智城に入らしむるがゆゑに。
猶如シ↢正道ノ↡、令ムルガ↣諸ノ群生ヲシテ入ラ↢智城ミヤコニ↡故ニ。
16なほ磁石のごとし、 本願の因を吸ふがゆゑに。
猶如シ↢磁石ノ↡、吸フガ↢本願ノ因ヲ↡故ニ。
17閻浮檀金のごとし、 一切有為の善を映奪するがゆゑに。
如シ↢閻浮檀金ノ↡、映↢カヾヤキ 奪ウバフスルガ一切有為ノ善ヲ↡故ニ。
18なほ*伏蔵のごとし、 よく一切諸仏の法を摂するがゆゑに。
猶如シ↢伏蔵ノ↡、能ク摂スルガ↢一切諸仏ノ法ヲ↡故0059ニ。
19なほ大地のごとし、 三世十方一切如来出生するがゆゑに。
猶如シ↢大地ノ↡、三世十方一切如来出生スルガ故ニ。
20日輪の光のごとし、 一切凡愚の痴闇を破して信楽を出生するがゆゑに。
如シ↢日輪ノ光ノ↡、破シテ↢一切凡愚ノ痴闇オロカナリヲ↡出↢生スルガ信楽ヲ↡故ニ。
21なほ君王のごとし、 一切上乗人に勝出せるがゆゑに。
猶如シ↢君王ノ↡、勝↢出セルガ一切上乗人ニ↡故ニ。
22なほ厳父のごとし、 一切もろもろの凡聖を訓導するがゆゑに。
猶如シ↢厳キビシ父ノ↡、訓オシヘ↢導スルガミチビク 一切諸ノ凡聖ヲ↡故ニ。
23なほ悲母のごとし、 一切凡聖の報土真実の因を長生するがゆゑに。
猶如シ↢悲母ノ↡、長↢生スルガ一切凡聖ノ報土真実ノ因ヲ↡故ニ。
24なほ乳母のごとし、 一切善悪の往生人を養育し守護したまふがゆゑに。
猶如シ↢乳母ノ↡、養↢育シ守↣護シタマフガ一切善悪ノ往生人ヲ↡故ニ。
25なほ大地のごとし、 よく一切の往生を持つがゆゑに。
猶如シ↢大地ノ↡、能ク持ツガ↢一切ノ往生ヲ↡故ニ。
26なほ大水のごとし、 よく一切煩悩の垢を滌ぐがゆゑに。
猶如シ↢大水ノ↡、能ク滌グガ↢一切煩悩ノ垢ヲ↡故ニ。
27なほ大火のごとし、 よく一切諸見の薪を焼くがゆゑに。
猶如シ↢大火ノ↡、能ク焼クガ↢一切諸見ノ薪ヲ↡故ニ。
28なほ大風のごとし、 あまねく世間に行ぜしめて礙ふるところなきがゆゑに。
猶如シ↢大風ノ↡、普ク行ゼシメテ↢世間ニ↡无キガ↠所↠フル故ニ。
一 Ⅱ ⅱ c ハ 結勧
^よく三有繋縛の城を出して、 よく二十五有の門を閉づ。 よく真実報土を得しめ、 よく邪正の道路を弁ず。 よく愚痴海を竭かして、 よく願海に流入せしむ。 一切智船に乗ぜしめて、 もろもろの群生海0202に浮ぶ。 福智蔵を円満し、 方便蔵を開顕せしむ。 まことに奉持すべし、 ことに頂戴すべきなり。
能ク出シテ↢三有繋ツナギ 縛シバルノ城ヲ↡、能ク閉ヅ↢二十五有ノ門ヲ↡。能ク得シメ↢真実ノ報土ヲ↡、能ク弁ズ↢ワキマフ邪正ノ道路ヲ↡。能ク竭 ガチ シテ↢愚痴海ヲ↡、能ク流↢入セシム願海ニ↡。乗ゼシメテ↢一切智船ニ↡、浮ブ↢諸ノ群生海ニ↡。円↢満シ福智蔵ヲ↡、開↢顕セシム方便蔵ヲ↡。良ニ可シ↢奉持ス↡ウケタマハル、特ニヒトリ可キ↢頂イタヾキ 戴スイタヾク↡也。
二 偈頌
Ⅰ 序説【偈前序説】
ⅰ 経意を述ぶ
a 総標
【101】^おほよそ誓願について真実の行信あり、 また▽方便の行信あり。
凡ソ就テ↢誓願ニ↡有リ↢真実ノ行信↡、亦有リ↢方便ノ行信↡。
二 Ⅰ ⅰ b 別明
イ 正明
^その真実の行の願は、 ▲諸仏称名の願 (第十七願) なり。 その真実の信の願は、 ▲至心信楽の願 (第十八願) なり。 これすなはち選択本願の行信なり。 その機はすなはち一切善悪大小凡愚なり。 往生はすなはち難思議往生なり。 仏土はすなはち報仏・報土なり。
其ノ真実ノ行ノ願者、諸仏称名ノ願ナリ。其ノ真実ノ信ノ願者、至心信楽ノ願ナリ。斯乃チ選択本願*之行信也。其機者則チ一切善悪大小凡愚也。往生者則チ難思議ハカラフ往生也。仏土者則チ報仏・報土也。
二 Ⅰ ⅰ b ロ 結示
^▽これすなはち誓願不可思議一実真如海なり。 ¬大無量寿経¼ の▲宗致、 他力真宗の正意なり。▼
斯乃チ誓願不可思議一実真如海ナリ。¬大无量寿経¼之宗致ムネ、他力真宗之正意也。
二 Ⅰ ⅱ 釈文を引く
^▼ここをもつて知恩報徳のために▼宗師 (曇鸞) の釈 (論註・上) を披きたるにのたまはく、 「^▲それ菩薩は仏に帰す。 孝子の父母に帰し、 忠臣の君后に帰して、 動静おのれにあらず、 出没かならず由あるがごとし。 恩を知りて徳を報ず、 理よろしくまづ啓すべし。 △また所願軽からず、 もし如来、 威神を加したまはずは、 まさになにをもつてか達せんとする。 神力を乞加す、 このゆゑに仰いで告ぐ」 とのたまへり。 以上
是0060ヲ以テ為ニ↢知恩メグム報徳ノ↡披キタルニ↢宗師ノ釈ヲ↡言ク、「夫菩薩ハ帰ス↠仏ニ。如シ↧孝子之帰シ↢父母ニ↡、忠コヽロ臣ザシ之帰シテ↢ヨリタノム君后ニ↡、動 静シヅカナリ非ズ↠己ニ、出没必ズ由アルガ↥。知リテ↠恩ヲ報ズ↠徳ヲ、理宜ベ シクシ ↢先ヅ啓スヒラク↡。又所願不↠軽カラ、若シ如来不ハ↠加シタマハ↢威神ヲ↡、将ス ニル↢何ヲ以テカ達サトルセムト↡。乞コウ↢加クワウス神力ヲ↡、所以仰デ告グトノタマヘリ。」 已上
二 Ⅰ ⅲ 造意を明かす
^▼しかれば、 大聖 (釈尊) の*真言に帰し、 *大祖の解釈に閲して、 ▼仏恩の深0203遠なるを信知して、 「▼正信念仏偈」 を作りていはく、
爾レ者帰シ↢大聖ノ真言ニ↡、閲ミルシテ↢大祖ノオホヂ解釈ニ↡、信↢知シテ仏恩ノ深遠ナルヲ↡、作リテ↢「正信念仏偈ヲ」↡曰ク、
二 Ⅱ 正讃【正信偈】
1.総讃
【102】 ^▼無量寿如来に帰命し、 ▼不可思議光に南無したてまつる。
帰↢命シ无量寿如来ニ↡ | 南↢无シタテマツル不可思議光ニ↡ |
|
2.依経段 a.弥陀章 ・因願
^▲法蔵菩薩の因位のとき、 ▲世自在王仏の所にましまして、
法蔵菩薩ノ因位ノ時 | 在シテ↢世自在王仏ノ所ニ↡ |
|
^▲諸仏の浄土の因、 ▲国土人天の善悪を覩見して、
^▲無上殊勝の願を建立し、 希有の大弘誓を超発せり。
建↢立ハジメナスシ无上殊勝ノ願ヲ↡ | 超↢発セリ希有ノ大弘誓ヲ↡ |
|
^▲五劫これを思惟して*摂受す。 ▲重ねて誓ふらくは、 名声十方に聞えんと。
五劫思↢惟シテ之ヲ↡摂受ス | 重ネテ誓フラクハ名声聞エムト↢十方ニ↡ |
|
2.依経段 a.弥陀章 ・果成
^▲あまねく▼無量・▼無辺光、 ▼無礙・▼無対・▼光炎王、
^▼清浄・▼歓喜・▼智慧光、 ▼不断・▼難思・▼無称光、
^▼超日月光を放ちて▼*塵刹を照らす。 ▲一切の群生、 光照を蒙る。
超日月光ヲ↡照ス↢塵ヂン刹クニヲ↡ | 一切ノ群ムラガル生蒙ル↢光照ヲ↡ |
|
^▲本願の名号は正定の業なり。 ▲至心信楽の願 (第十八願) を因とす。
本願ノ*名号ハ正定ノ業ナリ | 至心信楽ノ願ヲ為↠因ト |
|
^▲*等覚を成り大涅槃を証することは、 ▲必至滅度の願 (第十一願) 成就なり。
0061成リ↢等覚ヲ↡証スルコトハ↢大涅槃ヲ↡ | 必至滅度ノ願成就ナリ |
|
2.依経段 b.釈迦章 ・出世本懐
^▲如来、 世に興出したまふゆゑは、 ▼ただ弥陀の本願海を説かんとなり。
*如来所↣以ハ興↢オコス出シタマフ世ニ↡ | 唯説カムトナリ↢*弥陀ノ本願海ヲ↡ |
|
^▲五濁悪時の群生海、 ▲如来如実の言を信ずべし。
2.依経段 b.釈迦章 ・一念大利
^▲よく*一念喜愛の心を発すれば、 ▲煩悩を断ぜずして涅槃を得るなり。
能ク発スレバ↢一念喜愛ノ心ヲ↡ | 不シテ↠断ゼ↢煩悩ヲ↡得ルナリ↢涅槃ヲ↡ |
|
^▲凡聖・逆謗斉しく*回入すれば、 ▲衆水海に入りて一味なるがごとし。
凡聖・逆謗斉シク*回入スレバ | 如シ↢衆水入リテ↠海ニ一味ナルガ↡ |
|
2.依経段 b.釈迦章 ・光摂益
^0204▲摂取の心光、 つねに照護したまふ。 ▲すでによく無明の闇を破すといへども、
摂取ノ心光常ニ照護シタマフ | 已ニ能ク雖モ↠破スト↢无明ノ闇ヲ↡ |
|
^▲貪愛・瞋憎の雲霧、 つねに*真実信心の天に覆へり。
^▲たとへば日光の雲霧に覆はるれども、 雲霧の下あきらかにして闇なきがごとし。
譬ヘバ如シ↧日*光ノ覆ハルレドモ↢雲霧ニ↡ | 雲霧之下明ニシテ无キガ↞闇 |
|
2.依経段 b.釈迦章 ・信心勝利
^▲信を獲て見て敬ひ大きに慶喜すれば、 ▲すなはち*横に▼*五悪趣を超截す。
獲↠信*見敬大慶*人 | 即チ横ニ超↢截キルス五悪ノ趣ヲ↡ |
|
^▲一切善悪の*凡夫人、 如来の弘誓願を聞信すれば、
^▲仏、 *広大勝解のひととのたまへり。 ▲この人を分陀利華と名づく。
仏言ヘリ↢広大勝解ノ者ト↡ | 是ノ人ヲ名ク↢分陀利華ト↡ |
|
2.依経段 b.釈迦章 ・慈悲教誡
^▲弥陀仏の本願念仏は、 ▼邪見・憍慢の悪衆生、
弥陀仏ノ本願念仏ハ | 邪見・驕オゴル 慢ノアナドル悪衆生 |
|
^▲*信楽▼受持することはなはだもつて難し。 ▲難のなかの難これに過ぎたるはなし。▼
信楽受持スルコト甚ダ以テ難シ | 難ノ中之難无シ↠過ギタルハ↠斯ニ |
|
3.依釈段 a.総嘆
^▼印度西天の論家、 中夏 (中国)・日域 (日本) の高僧、
^▼大聖 (釈尊) *興世の正意を顕し、 ▼如来の本誓、 機に応ぜることを明かす。
0062顕シ↢大聖興世ノ正意ヲ↡ | 明ス↢如来ノ本誓応ゼルコトヲ↟機ニ |
|
3.依釈段 b.七祖 ・龍樹
^▲釈迦如来、 *楞伽山にして、 衆のために告命したまはく、
釈迦如来楞伽山ニシテ | 為ニ↠衆ノ告命オホセシタマハク南天竺ニ |
|
^▼南天竺 (南印度) に*龍樹大士世に出でて、 ことごとくよく*有無の見を*摧破せ0205ん。
龍樹大士出デテ↢於世ニ↡ | 悉ク能ク摧↢クダク破セム有無ノ見ヲ↡ |
|
^▼大乗無上の法を宣説し、 歓喜地を証して安楽に生ぜんと。
宣ノブ↢説シ大乗无上ノ法ヲ↡ | 証シテ↢歓喜地ヲ↡生ゼムト↢安楽ニ↡ |
|
^▲難行の陸路、 苦しきことを顕示して、 ▲易行の水道、 楽しきことを信楽せしむ。
顕↢示シテ難行ノ陸路苦シキコトヲ↡ | 信↢楽セシム易行ノ水道楽シキコトヲ↡ |
|
^▲弥陀仏の本願を憶念すれば、 ▼自然に即の時必定に入る。
憶↢念スレバ弥陀仏ノ本願ヲ↡ | 自然ニ即ノ時入ル↢必定ニ↡ |
|
^▼ただよくつねに如来の号を称して、 ▼大悲弘誓の恩を報ずべしといへり。
唯能ク常ニ称シテ↢如来ノ号ヲ↡ | 応シトイヘリ↠報ズ↢大悲弘誓ノ恩ヲ↡ |
|
3.依釈段 b.七祖 ・天親
^▲*天親菩薩 ¬論¼ (*浄土論) を造りて説かく、 ▲無礙光如来に帰命したてまつる。
天親菩薩造リテ↠¬論ヲ¼説カク | 帰↢命シタテマツル无光如来ニ↡ |
|
^▲修多羅によりて真実を顕して、 ▼横超の大誓願を光闡す。
依リテ↢修多羅ニ↡顕シテ↢真実ヲ↡ | 光↢闡スヒラク横超ノ大誓願ヲ↡ |
|
^▲広く本願力の回向によりて、 ▲群生を度せんがために▼一心を彰す。
広ク由リテ↢本願力ノ回向ニ↡ | 為ニ↠度セムガ↢群生ヲ↡彰ス↢一心ヲ↡ |
|
^▲功徳大宝海に帰入すれば、 ▲かならず*大会衆の数に入ることを獲。
帰↢入スレバ功徳大宝海ニ↡ | 必ズ獲↠入ルコトヲ↢大会衆ノ数ニ↡ |
|
^▲蓮華蔵世界に至ることを得れば、 ▲すなはち真如法性の身を証せしむと。
得レバ↠至ルコトヲ↢蓮華蔵世界ニ↡ | 即チ証セシムト↢真如法性ノ身ヲ↡ |
|
^▲煩悩の林に遊んで神通を現じ、 生死の園に入りて応化を示すといへり。
遊デ↢煩悩ノ林ニ↡現ジ↢神通ヲ↡ | 入リテ↢生死ノ園ソノニ↡示ストイヘリ↢応化ヲ↡ |
|
3.依釈段 b.七祖 ・曇鸞
^▲*本師*曇鸞は、 ▼*梁の天子、 つねに鸞 (曇鸞) の処に向かひて菩薩と礼したてまつる。
本師曇鸞ハ梁ノ天子 | 常ニ向フテ↢鸞ノ処ニ↡菩薩ト礼シタテマツル |
|
^▼*三蔵流支、 *浄教を授けしかば、 仙経を焚焼して楽邦に帰したまひき。
0063三蔵流支授ケシカバ↢浄教ヲ↡ | 焚ヤク↢焼シテ仙経ヲ↡帰シタマヒキ↢楽邦ニ↡ |
|
^0206▲天親菩薩の ▼¬論¼ (浄土論) を註解して、 ▼報土の因果誓願に顕す。
天親菩薩ノ¬論ヲ¼註ツウ シルス解シテ | 報土ノ因果顕ス↢誓願ニ↡ |
|
^▲往還の回向は他力による。 ▲正定の因はただ信心なり。
往還ノカヘル回向ハ由ル↢他力ニ↡ | 正定之*因ハ唯信心ナリ |
|
^▲惑染の凡夫、 ▼信心発すれば、 ▲生死すなはち涅槃なりと証知せしむ。
惑染ノ凡夫信心発スレバ | 証↢知セシム生死即チ*涅槃ナリト↡ |
|
^▲かならず無量光明土に至れば、 ▲*諸有の衆生みなあまねく化すといへり。
必ズ至レバ↢无量光明土ニ↡ | 諸有ノ衆生皆普ク化ストイヘリ |
|
3.依釈段 b.七祖 ・道綽
^▲*道綽、 *聖道の証しがたきことを決して、 ▲ただ*浄土の通入すべきことを明かす。
道綽決シテサダム ↢聖道ノ難キコトヲ↟証シ | 唯明ス↣浄土ノ可キコトヲ↢通入ス↡ |
|
^▲万善の自力、 勤修を貶す。 ▲円満の徳号、 専称を勧む。
万善ノ自力貶ス↢オトシム勤修ヲ↡ | 円満ノ徳号勧ム↢専称ヲ↡ |
|
^▲三不三信の誨慇懃にして、 ▲*像末・法滅同じく悲引す。
三不三信ノ誨慇ネムゴロ懃ニシテ | 像末・法滅同ジク悲カナシミ引ス |
|
^▼一生悪を造れども、 弘誓に値ひぬれば、 安養界に至りて妙果を証せしむといへり。
一生造レドモ↠悪ヲ値ヒヌレバ↢弘誓ニ↡ | 至リテ↢安養界ニ↡証セシムトイヘリ↢妙果ヲ↡ |
|
3.依釈段 b.七祖 ・善導
^▲*善導独り仏の正意をあきらかにせり。 ▲定散と逆悪とを*矜哀して、
善導独リ明ナリ↢仏ノ正意ヲ↡ | 矜↣オホキニ哀シテ定散ト与ヲ↢逆悪↡ |
|
^▲*光明・名号因縁を顕す。 ▲本願の大智海に開入すれば、
光明・名号顕ス↢因縁ヲ↡ | 開↢入スレバ本願ノ大智海ニ↡ |
|
^▲行者まさしく金剛心を受けしめ、 ▼慶喜の一念相応して後、
行者正シク受ケシメ↢金剛心ヲ↡ | 慶喜ノ一念相応シテ後 |
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^▲*韋提と等しく▼三忍を獲、 ▲すなはち法性の常楽を証せしむといへり。
与↢韋提↡等シク獲↢三忍ヲ↡ | 即チ証セシムトイヘリ↢法性之常楽ヲ↡ |
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3.依釈段 b.七祖 ・源信
^▲*源信広く一代の教を開きて、 ▲ひとへに安養に帰して一切を勧む。
源信広ク開キテ↢一代ノ教ヲ↡ | 偏ニ帰シテ↢安養ニ↡勧ム↢一切ヲ↡ |
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^0207▲*専雑の執心、 浅深を判じて、 報化二土まさしく弁立せり。
0064専雑ノ執心判ジテ↢浅深ヲ↡ | 報化二土正シク*弁ワキマヘ立セリ |
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^▲極重の悪人はただ仏を称すべし。 ▲われまたかの摂取のなかにあれども、
極重ノ悪人ハ唯称スベシ↠仏ヲ | 我亦在レドモ↢彼ノ摂取ノ中ニ↡ |
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^▲煩悩、 眼を*障へて見たてまつらずといへども、 大悲、 *倦きことなくしてつねにわれを照らしたまふといへり。
煩悩障ヘテ↠眼ヲ雖モ↠不ト↠見タテマツラ | 大悲无ク↠倦キコト常ニ照シタマフトイヘリ↠我ヲ |
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3.依釈段 b.七祖 ・源空
^▼本師*源空は、 仏教にあきらかにして、 善悪の凡夫人を憐愍せしむ。
本師源空ハ明カニシテ↢仏教ニ↡ | 憐↢愍 アワレム セシム善悪ノ凡夫人ヲ↡ |
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^▼真宗の教証、 *片州に興す。 選択本願、 悪世に弘む。
真宗ノ教証興スオコス↢片州ニ↡ | 選択本願弘ム↢悪世ニ↡ |
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^▲生死輪転の家に還来ることは、 決するに*疑情をもつて*所止とす。
還↢来コトハ生死輪転ノ家ニ↡ | 決スルニ以テ↢疑情ヲ↡為↢所止ト↡ |
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^▲すみやかに寂静無為の楽に入ることは、 かならず信心をもつて*能入とすといへり。
速ニ入ルコトハ↢寂静无為ノ楽ニ↡ | 必ズ以テ↢信心ヲ↡為トイヘリ↢能入ト↡ |
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3.依釈段 c.結勧
^▼弘経の*大士・*宗師等、 無辺の極濁悪を*拯済したまふ。
弘経ノ大士・宗師等 | 拯↢済シタマフ无辺ノ極濁悪ヲ↡ |
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^▼道俗*時衆ともに同心に、 ただこの高僧の説を信ずべしと。
道俗時衆共ニ同心ニ | 唯可シト↠信ズ↢斯ノ高僧ノ*説ヲ↡ |
^六十行すでに畢りぬ。 一百二十句なり。
六十行已ニ畢リヌ 一百二十句ナリ
顕0208浄土真実行文類 二
延書の底本は本山蔵本(所謂清書本)ˆ原漢文の校訂本Ⓐˇ。
浄土真実の行… 諸仏讃嘆の
名号が往生浄土の真実の行であり、 その名号が
選択本願 (第十八願) の 「
乃至十念」 の称名となってあらわれているということを示す。 →
補註10
浄土 真跡本では右傍に補記されている。 真仏上人書写本にはない。
本願 真跡本では右傍に補記されている。 真仏上人書写本には 「選択本願之行」 全体がない。
もろもろの善法を… 名号大行にはあらゆる善根功徳がおさまっているということを示す。
極速円満す きわめて速やかに往生の因が満足する。 名号大行のはたらきがすぐれていることを示す。
称揚・咨嗟 讃嘆の意で、 ほめたたえること。
聞ゆるところなくは 聞えないところがあるならという意。
功徳の宝 阿弥陀仏の名号のこと。
まさに無上菩提の因を証すべし 「この誓願が私 (法蔵菩薩) の無上菩提の因となることを証明したまえ」 あるいは 「衆生を無上菩提に至らせるための因を成就するであろう」 という意か。 ただし経の原文では 「無上菩提を証する日に当たりて」 と読む。
上願 すぐれた願。 四十八願のこと。
十力無等尊 仏のこと。 十種の力をそなえたこの上なく等い者の意。 →
十力
心…安楽ならしめんと 通常は 「心あるいはつねに施を行じ、 広く貧窮を済ひ、 もろもろの苦を免れしめ、 世間を利益し、 安楽ならしむるに堪へずは…」 と読む。
常行…施せん 行を修めることができないものに (真実の功徳を) 回施しようという意。 底本の訓点では 「常行の施に堪へざらんものに」 と読む。
悪のために… 仏教をそしるためや名聞利養のために名号の法を聞くという意か。 あるいは 「悪をなして」 と読み、 悪をなしたことが縁となって名号を聞くという説もある。
阿闍世王太子 阿闍世王の太子、
和休とする説と、 阿闍世王自身のこととする説とがある。
この法 阿弥陀仏の本願を指す。
信慧… 信心の智慧を得ることはむずかしい。
精進 「このみすすむるなり」 (左訓)
見て…慶ばば 見は聞見のこと。 名号のいわれを聞きひらき、 信を得て法を敬い深く心によろこべば。
大施品 引用の文は 「大施品」 になく 「諸菩薩本授記品」 にある。
一切の志願 往生成仏の願を根本とする一切の願。
満てたまふ 「たまふ」 は尊敬の意。 無明を破し、 志願を満たすのは、 阿弥陀仏の力によることをあらわす。
転じて休息と名づく 通常は 「転とは休息に名づく」 と読む。
一分…歓喜せん 通常は 「一分の毛をもつて大海の水の二三渧のごときを分ち取るがごとし。 苦のすでに滅するは大海の水のごとし。 余のいまだ滅せざるものは二三渧のごときなれば心大いに歓喜す」 と読む。 「渧」 はしずくの意。 親鸞聖人は 「信心の行者は煩悩具足の身であって、 滅した苦しみは、 大海の水の二三滴ほどでしかないが、 それでもなお歓喜する」 という意に転じ、 原文を読み改めた。
この菩薩所有の… 信心の行者のもつ滅すべき罪苦は、 大海の水のごとくであるが、 本願力によって転ぜられるのであるから、 行者にとっては二三の水渧に等しいという意であろう。
つねに諸仏…行なり 通常は 「つねに諸仏および諸仏の大法と、 必定と稀有の行とを念ず」 と読む。
四十不共法 仏のみに具わっている四十種のすぐれた特質。
念必定のもろもろの菩薩 他力信心の行者のこと。 通常は 「必定のもろもろの菩薩を念ず」 と読む。
大人法 菩薩の自利利他の法、 あるいは仏のさとりの法の意か。
無礙解脱 無礙道 (無間道) と解脱道。 前者は
煩悩を断ずる位、 後者は煩悩を断じ終って
無為を得る位。
聞見…殊勝と名づく 通常は 「聞見するところありてかならず受けて疑なきに名づく。 増上とは殊勝に名づく」 と読む。
骨体に徹入する 骨身にまでしみとおる。
利事 衆生を利益すること。
慈に三種あり 衆生縁・法縁・無縁の三種の慈悲を指す。 →
三縁
恭敬 つつしみ敬う心。 ここでは他力の信心のこと。
十方諸仏 「易行品」 の原文では、 東方無憂世界の善徳仏をはじめとする十方十仏。 親鸞聖人はそのうち西方善世界の無量明仏のみをここに示している。
いま…かくのごとし 通常は 「いままさにつぶさに説くべし。 無量寿仏・世自在王仏…この諸仏世尊、 現に十方の清浄世界にまします。 みな名を称し憶念すべし。 阿弥陀仏の本願はかくのごとし」 と読む。 親鸞聖人は 「諸仏はすべて阿弥陀仏の名号を称揚讃嘆する」 という意に転じ、 原文を読み改めた。
修多羅 親鸞聖人は ¬銘文
¼ で 「
浄土三部経」 のこととする。
願偈総持を説きて 願偈は ¬浄土論¼ の 「願生偈」 のこと。 総持は親鸞聖人の解釈では 「
無礙光の智慧」 (¬銘文¼) の意。 阿弥陀仏の智慧を 「願生偈」 として説くということ。
四種の門 五念門の中の
礼拝・
讃嘆・
作願・
観察の前四門。
たまへり ¬浄土論¼ の当分は願生行者の自利利他行の成就であるが、 親鸞聖人は法蔵菩薩の自利利他行の成就に転意し、 「たまへり」 と敬語を付した。
回向利益他 衆生に功徳を施して利益を与えること。
心々相続して… 一心帰命の信が持続して他の思い (自力疑心) がまじらないという意。
彼此…顕れたり 偈頌で 「帰命」 といい、 長行で 「礼拝」 ということによって、 帰命には礼拝の意が含まれ、 如実の礼拝は帰命からあらわれるという信心と礼拝の関係がいよいよ明らかとなる。
説文 ¬説文解字¼ のこと。 後漢の許慎の撰。 中国最古の部首別字書。
のごとく 「…にかなって」 「…のままに」 の意味。
所有なけん 通常は 「所有なし」 と読む。
諸法は…虚空のごとし すべての現象は固有の実体を持つ事物の集合としてあるのではなく、 関係によって仮に生じたものにほかならないから、 不生であり、
虚空のようなものである。 →
五薀
前念と後念と因となる 通常は 「前念は後念のために因となる」 と読む。
一異を…論のなかに 通常は 「一異の門を観ずる論のなかに」 と読む。 「一異の門を観ずる論」 とは、 龍樹菩薩の ¬中論¼、 あるいは ¬因縁心論¼ の異訳 ¬十二因縁論¼ を指すか。
作願 衆生救済を願うこと。
首として 第一にして。 中心にして。
得たまへるがゆゑに 通常は 「得んとするがゆゑに」 と読む。 ここでは阿弥陀仏の回向に転意している。
作願して…たまへるなり 通常は 「ともにかの阿弥陀如来の安楽浄土に往生せんと作願するなり」 と読む。
噉する 口にする。 食べる。
搆り 底本には 「搆し」 とある。
十即十生百即百生 十人は十人ながら、 百人は百人ながらみな往生するという意。
正念 ここでは信心のこと。
摂受したまへり 大谷派本願寺蔵本 (坂東本) では 「摂受したまはんと」 とあったのを 「摂受したまふべし」 と改めている。
勝益 すぐれた利益。
至心…求めよ 「阿弥陀仏の真実をもちいて」 を意味する読み方。 通常は 「すべからく心を至して往くことを求むべし」 と読む。
八万四 八万四千 (多数の意) の法門。 仏の説いた教法全体のことであるが、 親鸞聖人は 「
仮門 (本願の法以外の自力方便の教え)」 の意とする。
随智と滅す 随智は自力の智慧の意か。 通常は 「智に随ひて滅す」 と読む。
思量巧方便 思慮たくみなてだて。
帰説 「たよりのむといふ」 (右訓) 「よりたのむなり」 (左訓)
帰説 「よりかかるなり」 (左訓)
時剋の極促 時間のきわまり。 聞信の一念に往生浄土の因が定まることをいう。
広略根に随ふ 広く詳しく説くか簡略に説くかは、 教えを受ける者の素質能力にしたがう。
焉に…事として ¬五会法事讃¼ の原文には 「仏事を為し、 願力、 …」 とある。
あに離念に… 念を離れて
無念を求めることがどうしてできるであろうか。
労しくせず つとめる必要がない。
喚ばひ 「よばふ」 は呼びつづけるの意。
上華台 すぐれた蓮華の台座 (うてな)。
帰去来 さあ帰ろう。 陶淵明 (365-427) の 「帰去来辞」 の中の言葉。 故郷に帰る決意を述べたものであるが、 ここでは浄土に生れたいという意をあらわす。
久塵にあり ながく煩悩の塵にまみれていること。
如来の広説… ¬大経¼ の大綱を示す。
所行所成 法蔵菩薩の願行とその成就のありさま。
所摂所益 阿弥陀仏が衆生を救いとり、 利益するありさま。
またいはく… 以下の ¬悲華経¼ と ¬如来会¼ の文は ¬述文賛¼ にはない。 おそらく【44】【45】の意を明確にするためにあげたのであろう。
福智の二厳 福方便と智方便。 ¬述文賛¼ の原文では、 ¬大経¼ 法蔵修行の 「三宝を恭敬す」 を福方便、 「師長に奉事す」 を智方便とする。
つぶさに…たまへるなり 通常は 「施等のもろもろの聖行を備ふ」 (¬述文賛¼ の原文では、 「生」 は 「聖」 の字) と読む。 ここでは如来回向の意をあらわすために読み改めた。
善によりて…たまへる 通常は 「因の善すでに成ずれば」 と読む。 ここでは如来の徳をあらわすために読み改めた。
往くこと… 原文の 「往誓願」 は通常 「往の誓願」 と読む。 ここでは往生は本願力によることをあらわす。
清晨俛仰の暇を輟めて 明け方のわずかの時間をさいて。
台教の祖師山陰のいはく… 引用の出典不明。 山陰は会稽山の北 (現在の中国浙江省紹興) の地域。 ここでは慶文法師の称。
真応の身 報身のこと。 真を法・報の二身、 応を応身とする説もある。
諸大乗 いろいろな大乗経典。
憐憫すべき…したまへり 通常は 「憐憫すべきものとなす」 と読む。
正信法門 慶文の ¬浄土文¼ の中の一篇。
聖の解 みずから聖者になったと思うこと。
大摧邪力 邪悪を打ちくだく大いなる力。
大降魔力 魔を降伏させる大いなる力。
一乗の極唱 一乗教の至極の説法。
済衆の仁 衆生を救済しようとする慈悲の心。
芥子の地 けしの粒ほどの小さな場所。
悲智六度 布施・
持戒・
忍辱・
精進・
禅定・
智慧の六度 (
六波羅蜜) の中、 前五は慈悲の行、 後一は智慧の行で、 六度は悲智に
統摂される。
内外の両財 布施をする財宝を内財と外財に分けたもの。 内財とはみずからの身心をいい、 外財とは物質的な財宝をいう。
四字 阿弥陀仏の四字。
識心 衆生の心。
臨終…得 Ⓐでは 「臨終に得、 もろもろの怖畏を離れしめ、 身心衆聖現前し授手接引せらるることを安快にして」 と返点されている。
古賢の法語 古賢は慈雲を指す。 以下は元照の語。
宋の元嘉 424-453。 劉宋の三代、 文帝の年代。
京邑に建めたり 元照の ¬観経義疏¼ の原文では 「建」 は 「達」 となっている。 都に来たという意。
慈雲の讃にいはく… 引用は ¬楽邦文類¼ 巻四所収の慈雲 「往生浄土決疑門」、 元照 ¬観経義疏¼ 所引の慈雲同書の文等によるか。
律宗の用欽のいはく… 【57】【58】の引用は用欽の ¬阿弥陀経疏超玄記¼ の文ともいわれるが、同書は現存しない。
一切を得ざるがゆゑに 一切を固定的な実体として認識しないがために。 あらゆる執着を離れた立場であることを示す。
無相の大願 実体的なすがたはないということをさとって発された願。
修するに…神通なき 通常は 「無住の妙行を修し、 無得の菩提を証し、 非荘厳の国土に住し、 無神通の神通を現ず」 と読む。
舌相を大千にあまねくして 諸仏が舌を出して、 あまねく三千大千世界をおおい、 念仏の教えが真実であることを証明したことをいう。
持名の行法 名号をたもつ行業。 称名のこと。
世出世間の功徳 世間の功徳 (世俗の倫理的な善) と出世間の功徳 (さとりの世界の功徳)。
功徳…による ¬往生要集¼ の現行本は 「功徳円満して、 一切の義の依たり。 かくのごとき等の六種功徳を具して」 となっている。
一称南無仏… 「一たび南無仏と称するに、 みなすでに仏道を成ぜり」 ¬法華経¼ 「方便品」 の文。
無上両足尊 人の中にあってこの上なく尊い方の意。 阿弥陀仏のこと。
極難値遇者 遇うことがきわめてむずかしい方の意。 阿弥陀仏のこと。
円融万徳尊 完全自在であらゆる徳を具えた尊い方の意。 阿弥陀仏のこと。
波師迦華 波師迦は梵語ヴァールシカ (vārṣika) の音写。 雨時華と漢訳する。 雨季に咲く香気の強い花。
石汁 錬金術に用いる薬の名。
昴星 スバルのこと。
大小の聖人 大乗の聖者と小乗の聖者。
即時入必定 「即の時に必定に入る」。 信心を獲得すると同時に、 必ず仏になることに定まったくらいに入ること。
入正定聚之数 「正定聚の数に入る」 ¬論註¼ の原文には 「入大乗正定之聚」 とある。
能生の因・所生の縁 父母を能生と所生に分けたのは、 父は生ませる側 (子種を下す下種)、 母は生ませられる側 (子種をたもち育てる持種) であるという俗説によっている。 また因と縁に分けたのは、 名号は正定の業因となり、 光明は摂取の外縁となるからである。 ただし光明と名号は別なものではなく、 しばらく因と縁に配当しただけである。
下至十声聞等 高田派専修寺蔵宗祖加点 ¬礼讃¼ には 「下至十声一声等」 とある。 親鸞聖人は 「聞」 の語を示すために ¬礼讃¼ を直接引用せず、 ¬礼懴儀¼ を引用したのであろう。
一多包容の言 一念も他念も包みいれるという意味をあらわす言葉。
聖者 仏のこと。
労しく わずらわしく。
円融真妙の正法 万物一如という完全にして最高の真理にかなった行法。
大菩薩 ¬論註¼ の当分は、 浄土に往生した菩薩のことであるが、 親鸞聖人は法蔵菩薩のこととみなすから、 以下の引文は 「現じたまふ」 「成就したまへり」 等と、 敬語を付している。
四種の門 五念門の中の
礼拝・
讃嘆・
作願・
観察の前四門。
常倫に…現前し 通常は 「常倫諸地の行を超出し、 現前に」 と読む。 常倫はつねなみ、 普通一般の意。
この方 娑婆世界。
底本では 「異なること如来にましまさず、 異なること法身にましまさず」 と訓点されている。
究竟法身 無色無形の
法性真如そのもの。 法性法身のこと。 →
補註1。
無辺不断 空間と時間を超越すること。
誓願一仏乗 阿弥陀仏の誓願によって成就された南無阿弥陀仏は、 生きとし生けるものを平等に成仏せしめる絶対唯一の教法であるという意。
不逆に信順す 通常の訓点では 「信順して逆はず」 と読む。 親鸞聖人の訓点によると 「不逆」 は 「一実」 の意。
究竟畢竟 因果をこえた究極的な真理そのものである
仏性をいう。
世間畢竟・出世畢竟 世間畢竟は荘厳畢竟、 出世畢竟は究竟畢竟を指すという説、 また世間畢竟・出世畢竟は荘厳畢竟を二種に開いたものとする説がある。
無数の法 一とか三といった数であらわせない絶対の法門のことで、 一乗の本質をいう。
文殊の法はつねにしかなり 文殊の法は念仏の教えを指す。 念仏は智慧の法であるから、 智慧を象徴する菩薩である文殊の法としたものか。 通常は 「文殊よ、 法はつねにしかなり」 と読む。
雑修雑善 自力心で修するさまざまな善。
経 経名不明。 ¬往生要集¼ の文によるものか。
中下の屍骸 中は縁覚乗、 下は声聞乗。 縁覚・声聞は利他の心を持たない小乗の根性 (性質) だからこれを死骸に喩える。 ただし次の引文では声聞と菩薩を二乗とする。 この場合は果仏に対する因人を指す。
荘厳不虚作住持功徳成就 仏荘厳八種の第八荘厳。 阿弥陀仏の願力は虚妄なものではなく、 衆生を完全に救いとげるものであるということを示す。
大乗根 大乗の根性。 大乗にふさわしい素質。
還丹 錬金術に用いる薬の名。
超渉対 念仏は迷いをとびこえる (超) が、 諸善は歩いて渡る (渉) ようなものである。
径迂対 念仏はさとりを得る近道 (径) であるが、 諸善はまわり道 (迂) である。
通別対 念仏は特別のすぐれた法であるが、 諸善は通常の法である。
捷遅対 念仏ははやく成仏できる法であるが、 諸善はおそい法である。
無上有上対 念仏の利益はこの上ないが、 諸善の利益は限りがある。
了不了教対 念仏は完全な教えであるが、 諸善は不十分な教えである。
直弁因明対 念仏は往生の要行として直ちに説かれたものであるが、 諸善は自力の機に応じて因みに明かされた法である。
思不思議対 念仏は衆生の思議がおよばない尊い法であるが、 諸善は思いはかることのできる法である。
有願無願対 念仏は本願の行であるが、 諸善は本願の行ではない。
理尽非理尽対 念仏は道理を尽すが、 諸善は道理を尽さない。
勧無勧対 念仏は諸仏が勧めるが、 諸善は勧めない。
因行果徳対 念仏は阿弥陀仏の果上の徳がおさまる果分の行であるが、 諸善は仏になるために積む因分の行である。
自説他説対 念仏は阿弥陀仏がみずから往生行として説いたものであるが、 諸善はそうでない。 ¬愚禿鈔¼ では 「自説不説対」 として出る。
入定聚不入対 念仏はこの世で正定聚の位に入る法であるが、 諸善はそうではない。
回不回向対 念仏は衆生から回向する行ではないが (不回向)、 諸善は衆生から回向する行である (回向)。
機堪不堪対 念仏は衆生の根機 (素質能力) に適するが、 諸善は適しない。
法滅利不利対 念仏は法滅 (
三宝滅尽) の時代にも
利益があるが、 諸善は利益がない。 ¬愚禿鈔¼ と対応して
法滅不滅対 (念仏は滅しないが、 諸善は滅する) 利不利対 (念仏は利益があるが、 諸善は利益がない) の二対のこととする説もある。
報化対 念仏は真実報土に往生する法であるが、 諸善は方便化土に往生する法である。
絶対不二 絶対は比較すべきものがないという意。 不二は唯一無二の意。
奢促対 念仏の行者はすみやかに (促) さとりに至るが、 諸善の行者はおそい (奢)。
善悪対 念仏の行者は本願を信じるから善であるが、 諸善の人はこれを疑うから悪である。
明闇対 念仏の行者は智明であるが、 諸善の行者は無明の闇である。
出要の道 生死を出離するためのかなめの道。
大祖の解釈 七高僧の論釈。 前の文をうけ、
曇鸞大師の ¬論註¼ を指すという説もある。
大会衆の数に… 浄土で阿弥陀仏が説法する時の集会を広大会と名づけ、 それに参列し聞法する大衆を大会集という。 ここでは信心の行者が、 現生において正定聚に入り、 阿弥陀仏の眷属となることをいう。
本師 本宗の祖師。
梁の天子 南朝梁の
武帝 (464-549) のこと。 名は
蕭衍。 仏教を深く信奉した。
浄教を… ¬続高僧伝¼ 巻六では ¬観経¼ を授けたとするが、 諸説があって定かではない。
光明名号… 名号は衆生に与えられて信心の因となり、 光明はこの人を照らしまもる縁となるという救済のありさまをいう。
専雑の… 専修の者は本願を
執りたもつ信心が深く
決定しているから
報土に往生するが、
雑修の者は信心が浅く不決定であるから
化土にしか往生できないと弁立 (解き明かすこと) されたという意。
障へて さえぎって。
倦きことなく 飽きることなく。 ここでは見捨てることなくという意。
大士 龍樹菩薩・天親菩薩を指す。
宗師 曇鸞大師・道綽禅師・善導大師・源信和尚・法然上人を指す。
底本は◎真宗大谷派蔵親鸞聖人真筆本。 Ⓐ本派本願寺蔵鎌倉時代写本、 Ⓑ高田派専修寺蔵真仏上人書写本、 Ⓒ本派本願寺蔵存如上人授与本、 Ⓓ本派本願寺蔵版 と対校。
咨嗟 左ⒶⒷホムルナリ
第十七願 ◎Ⓐ上欄註記(◎別筆) ⒷⒸⒹになし
設 Ⓐ諸仏咨嗟之願と右傍註記
咨嗟 左◎ホムルナリⒷ―
究竟 左ⒶⒷキワメキワム
靡 左ⒶⒷナビク
施 左ⒶⒷホドコシ アタフ
无 Ⓐ成就行と左傍にあり
証字諸応反験也 ◎Ⓐ上欄註記(但しⒶは前頁に同様の註記及び証字の註記あり) Ⓑになし
済→Ⓑ斉
不ラムモノ↠堪ヘ↢常行ニ↡施セム→ⒶⒷⒸ不ラムモノニ↠堪ヘ↢常行ノ施ニ↡
倫 左ⒶⒷトモガラ
薩 Ⓐ成就行と左傍にあり
楼 左ⒶⒷロウ
大…云12字 ◎上欄註記(別筆) ⒷⒸになし
字 左Ⓐシテ
蜎 左◎ムクメクⒷムクメキ
飛 右ⒶⒷヒ反
蠕 左◎ムクメク
動 左Ⓐウゴク
无 Ⓐ成就行と左傍にあり
経 ◎上欄補記
動 左Ⓑムクメク
悪 左Ⓐマク反
央 左ⒶⒷナカバ
養 左Ⓐス
会 左ⒶⒷアウ
刹 左Ⓐクニ反Ⓑクニ
決 左ⒶⒷサダメ
間→Ⓒ国
驕慢 左ⒶⒷオゴリアナドル
蔽 左ⒶⒷボムナウナリ
懈怠 左ⒶⒷオコタリオコタル
聴聞 左ⒶⒷ
親原→Ⓒ親厚
当 左Ⓑベシト
将 左Ⓑ―
可…土14字→Ⓑ可シ↧到リテ↢安楽国之世界ニ↡至ル↦无量光明土ニ↥
曇無讖→Ⓒ曇無纖
曇 Ⓐ成就行と左傍にあり
訳 左ⒶⒷツタヘタマフトナリ
壊 左ⒶⒷヱ反
已上 Ⓑになし
十 Ⓐ成就行と左傍にあり
過 左ⒶⒷトガ
咎 左ⒶⒷトガ
休息 左ⒶⒷヤメヤム
堅牢 左ⒶⒷカタクカタシ
諦 左ⒶⒷアキラカナリ
懶 左ⒶミダレガワシⒷミダレガハシ
苦 Ⓑ若歟と上欄註記
転 左ⒶⒷウツル
滋味 左◎コキアヂワイⒷシゲシ コキ アヂワイ
法→Ⓑ海(法と上欄註記)
閡 左◎サワルⒶサカリⒷサワリ
壊 左◎ヤブル
乱 左◎ミダル
閡 左ⒶⒷサワル
人→ⒶⒷⒹ又
得 左Ⓑエテハ
当 左Ⓑベシ
貴 左ⒶⒷタントシ
儀→Ⓑ議(儀イと上欄註記)
云→Ⓑ言
何 左Ⓑゾ
籌量 左◎ハカラフⒷハカラウコヽロナリ
徹 左ⒶトヲリⒷトオリ
懃 左ⒶネンゴロⒷネムゴロ
阿惟越致 左ⒶフタイノクラヰナリⒷ―
当 左Ⓐベシ
明 Ⓐ「ケシイ本」と左傍註記
命 左Ⓐシタテマハ
揚 左◎アグⒷ―
讃 左Ⓐシ
浄 Ⓐ成就行と左傍にあり
総 左◎スベテⒷ―
論 Ⓐ成就行と左傍にあり
途 左◎ヅⒷ―
修醤→◎Ⓐ循醤→Ⓑ修将酉修 左Ⓐシウ
顧 左◎カヘリミル
衍字口且反楽也 ◎ⒶⒷ上欄註記(但しⒶは前頁にもあり)
衍字 Ⓒになし 衍 左Ⓑエン
致 左◎ムネⒷ―
航 左Ⓐナル反 フネノホナリⒷフネノホナリ
航字 左◎フナワタシⒶフナワタシ ホナリ ◎Ⓐ上欄註記(但しⒶは前頁にもあり) ⒷⒸになし
服 左◎シタガイⒷ―
膺 左◎モチヰル
加 右Ⓑシタマハ 左◎クワウ
達 左◎サトル
乞 左◎コウ
→Ⓒ督
督…11字 ◎Ⓐ上欄註記 Ⓑになし
督字→Ⓒ冬毒反 左◎アキラカナリ
他想間雑 左ⒶⒷヨノオモヒヘダテマジズ
帰 Ⓑ□命事と右上に張紙
命 Ⓐ命字眉病反使也教也道也信也計也召也と上欄註記
既 左◎キⒷ―
敬 左Ⓑウヤマフ
推 左◎ヲスⒶⒷオス
命…也17字 ◎上欄註記 ⒶⒷになし
命字 Ⓒになし
顕 左ⒶⒷアラワル
「称…反」32字 ◎Ⓐ上欄註記 Ⓑになし
称字 Ⓒになし
銓→Ⓒ詮
俗→Ⓐ俗[也]
斤→Ⓒ力 Ⓐ秤イ本と下に註記
昌孕反昌陵反 Ⓒになし
説 右ⒶキタマヘリⒷク
畢 左◎ヲワルⒶオハルⒷ―
仮 左◎ケⒷ―
委 左◎クワシ Ⓑクワシク
曲 左ⒶⒷキヨク
云 左Ⓐウン
四 ◎上欄補記
含 左◎フクム
偽 左◎イツワル
失 左ⒶⒷウシナフ
蓋 ◎蓋と上欄訂記 左Ⓑフタ
抄→Ⓑ[已上]抄
安 Ⓐ成就行と左傍にあり
遣 左◎ケンⒶⒷケン反
父王 ◎上欄補記
蘭林 左◎ワル キⒷ―
根 左ⒶⒷネ
臭 左◎シユⒷ―
噉 左◎ナムル クラウⒶナムル クラフ
狂 左◎クルウⒶクルフⒷクルフナリ
根芽 左ⒶⒷネ クキ
盛 左ⒶⒷサカリナル
改 左◎アラタムⒷアラタムル
美 左ⒶⒷヨシ
毒 左ⒶⒷニガシ
弁→Ⓑ辨
計 左◎ハカリテⒶハカリテ反Ⓑケシテ反
一→Ⓒ一[切] Ⓑ切と上欄補記
部 Ⓐ「障イマ字歟」と下欄註記し、 さらに「イ本」と左傍註記
華 成就行と左傍にあり
牛羊 左ⒶⒷウシ ヒツジ
驢馬 左ⒶⒷウサギムマ
将 左◎マサニⒷ―
投 右◎トウ ニⒶイルヽニ トウ反 ニ 左◎ナグルニⒶナグルⒷ―
翳 左◎カクス
遊行 左ⒶⒷアソビアルク
遮障 左◎サイギルⒶサイギル反 サヘ反 サワル反Ⓑサヘ サワル
又 ◎上に一字抹消あり
也→Ⓑ也[已上]
又 ◎上に一字抹消あり
心 左Ⓑニ
云→Ⓑ曰
目 Ⓐ成就行と左傍にあり
川 Ⓑ「カ」と左傍にあり
劇 左◎ハゲシⒷ―
光明寺和尚云 ◎右傍補記
又如 ◎上欄補記
閑 左◎シヅカナリⒶシヅカ
貌 左◎カタチⒷ―
細 左◎コマカニ
麁 左◎アラシ
識 左◎タマシイⒶタマシヰ
憐 左アワレムⒶアワレミⒷアハレム
「由…也」13字 ◎Ⓐ上欄註記 Ⓑになし
由字 Ⓒになし
境 左◎サカイⒷ―
斉 左◎ナル フタヽビ
問→Ⓐ間
応シ↢无二ナル↡→Ⓐ応シ↢无ル二ナルナラビ ↡→Ⓑ応シ↠无ル↠二ビ→Ⓒ応シ↠无ル↠二ナルナラビ
取 Ⓒ收イと左傍註記
云→Ⓑ言
仏 ◎上欄補記
名 右Ⓑナヅケタテマツル
涯 左Ⓑキシ
憑 左ヘウ
各須テ↢至心ヲ↡求メヨ↠往ヲ→Ⓑ各須クシ↣至テ↠心ヲ↢求ム↠往コトヲ↡
念→ⒷⒸ念[経]
去 左◎ユカⒷユカ反
礼 Ⓑになし
乗…也19字 Ⓑになし
乗字 Ⓒになし
又宝証反 Ⓒになし
駕 左Ⓐ―
覆 左Ⓐオオフ
言 ◎上欄補記
人…33段末要 ◎別筆
名 ◎上欄補記
心→Ⓑ向(心イと上欄註記)
又云ク Ⓒ「二字イ無」と左傍註記
利剣 左ⒶトキツルギⒷトキツクキ
覚字教音 Ⓑになし
覚字 Ⓑになし
巧 左ⒶⒷタクミナリ
要 Ⓒ出イと左傍註記
帰説 右Ⓐタヨリノムトイフ
宣述 左Ⓐセンジュツスルナリ
述 左Ⓑノブル
招引 左Ⓐセウイン
招喚 左Ⓑマネキヨビタマフ
剋 左Ⓑキムルナリ
極促 左Ⓑキワメテトキナリ
審 左ⒶⒷアキラカナリ
分極 左ⒶⒷワカチキワムル
綿 Ⓒ連-と左傍註記
理 左◎コトワリⒶコトハリ
殊 左◎コトナリⒶコトハリ
斉→Ⓐ斎
自 Ⓑ「ミヅカライ」と左傍註記
来迎 Ⓑ十七願来迎と上欄に張紙
能 ◎右傍註記
見 Ⓑ「ヲイ」と左傍註記
間 Ⓑ「ニイ」と左傍註記
一→Ⓒ「此」
等 Ⓒ「生イと右傍註記
回 Ⓒ「廻イと左傍註記
迎来 Ⓑ十八願来迎と上欄に張紙
沈淪 左ⒶⒷシヅム シヅム
土 Ⓒ因本疏有此字と左傍註記
云→Ⓑ言
云→Ⓑ言
径 ◎挳を径と上書訂記
呼吸 左ⒶⒷイヅルイキ イルイキ
復 左Ⓑカヘラズ
徒 左ト Ⓐ-
居士 右◎オトコ也Ⓐコ反ジ反 オトコナリⒷ― 左◎ⒶヰルヒトⒷオトコ
元照 Ⓒ観経義疏と左傍註記
憐憫 左アワレミアワレム Ⓑアハレミアハレム
特 左コトニ Ⓑ-
途 左ミチ
賢 左カシコシ Ⓑ-
緇素 クロク ソウナリ シロシ オトコナリ
弁→Ⓒ辨
引テ↢彼ノ問ヲ↡→Ⓑ引テ↠彼ヲ問→ⒷⒸ引テ↠彼ヲ問ク
来迎 Ⓑ臨終来迎と上欄に張紙
約 左ツク Ⓑ-
摧 左クダク
徹 左トヲリ
鑑 左カヾム Ⓑヾミ カヾム
左サワル
摧 左Ⓑクダク
邪 Ⓑ耶歟と左傍註記
衆生→Ⓑ不捨
元…文9字 ◎左傍註記 Ⓑになし Ⓐ上欄註記 Ⓒ「云」の下に割註
昭→Ⓒ照
帰 Ⓑ「シテ歟」と左傍註記
躬→Ⓒ窮
不 ◎上欄補記
繋 左ツナグ
恋 左シタウ コウトモ Ⓑシタウ反コヒ
狂 左クルウ Ⓐクルフ
天竺寺遵式 ◎Ⓐ上欄註記 Ⓑになし Ⓒ「云」の下に割註
得…引19字 Ⓐ得↢臨終ニ↡離シメ↢諸ノ怖畏ヲ↡、身心安↢快ニシテ衆聖現前シ、授手接引ラルルコトヲ↡
邪→Ⓒ耶
遵式也 ◎Ⓐ上欄註記 Ⓑになし Ⓒ「云」の下に割註
大智 Ⓑ元照律師イと左傍註記
元照律師也 ◎Ⓐ上欄註記 Ⓑになし Ⓒ「云」の下に割註
雑 Ⓐ「スルコト イマノ本云」と左傍註記
戒度 Ⓑ元照之弟子イと左傍註記
元照之弟子也 ◎Ⓐ上欄註記 Ⓑになし Ⓒ「云」の下に割註
元照之弟子也 ◎上欄註記 ⒶⒷⒹになし Ⓒ「云」の下に割註
収 ◎Ⓐと上欄註記
収 ◎と上欄註記
足→Ⓑ即(「足イと右傍註記)
蔔→Ⓒ匐
月→Ⓒ尸
鸞→巒
声→Ⓑ声[一声]
聞 ⒷⒸになし
弁→Ⓒ辨
云→Ⓑ言
音 Ⓑ「オム歟」と左傍註記
聖智无知也→Ⓑ聖智ヲ无キ↠知コト也
他→Ⓑ多(他歟と上欄註記)
他利ト↠之ヲ→Ⓑ他利ト之→Ⓒ他↢利ト之ヲ↡
願 Ⓒ第十八願と右傍註記
願 Ⓒ十一願と右傍註記
願 Ⓐ廿二と上欄註記 Ⓒ二十二願と右傍註記
以神通 Ⓑになし
局…ル14字 ◎Ⓐ上欄註記 Ⓑになし Ⓒ古玉反と割註
无サズ↢異如来↡、无サズ↢異法身↡→Ⓑ无サズ↠異コト↢如来ニ↡、无サズ↠異コト↢法身ニ↡
言→Ⓑ云
已上 Ⓑになし
行 Ⓑ「ユクテ歟」と左傍註記
空→Ⓒ作
弁→Ⓒ辨
対 Ⓑ下に装入符号あり、 回不歟と右傍註記
回不 Ⓑになし
不→Ⓒ不[付]
滅→Ⓒ滅[不滅]
之 Ⓑになし
名号 ◎浄土を名号と上書訂記
如来 ◎釈迦を如来と上書訂記
弥陀本願 ◎本願一乗を弥陀本願と上書訂記
如来 ◎釈迦を如来と上書訂記
回→Ⓑ向
光 ◎月を光と上書訂記→Ⓒ月
見敬 ◎大慶を見敬と上書訂記
人 ⒶⒷⒸⒹ喜
因 ◎業を因と上書訂記
涅槃 Ⓒ菩提と右傍註記
弁 Ⓒ辨
説 Ⓒ談イと左傍註記