0121◎▼仏▼説▼阿弥陀▼経
*姚秦*三蔵法師*鳩摩羅什奉詔訳
一 序分
Ⅰ 五成就証
【1】 ◎^▼かくのごとく、 われ聞きたてまつりき。 ひと時、 仏、 舎衛国の*祇樹給孤独園にましまして、
◎○如0105ク↠是クノ我聞キタテマツリキ。一時仏在シテ↢舎衛国ノ祇樹給*孤独園ニ↡、
一 Ⅱ 衆成就証
ⅰ 声聞衆
a 類数を標す
^◆*大比丘の衆、 千二百五十人と倶なりき。
○与↢大比丘ノ*衆、千二百五十人↡倶ナリキ。
一 Ⅱ ⅰ b 値徳を嘆ず
^◆みなこれ大阿羅漢なり。 ▼衆に知識せらる。
○皆是大阿羅漢ナリ。衆ニ所ル↢知識セ↡。
一 Ⅱ ⅰ c 上首を列ぬ
^◆*長老*舎利弗・*摩訶目犍連・*摩訶迦葉・*摩訶迦旃延・*摩訶倶絺羅・*離婆多・*周利槃陀伽・*難陀・*阿難陀・*羅睺羅・*憍梵波提・*賓頭盧頗羅堕・*迦留陀夷・*摩訶劫賓那・*薄拘羅・*阿楼駄、 かくのごときらのもろもろの大弟子、
○長老舎利弗・摩訶目*犍連・摩訶迦葉・摩訶迦*旃延・摩訶*倶絺羅・離婆多・周*利*槃陀*伽・難陀・阿難陀・羅睺羅・憍梵波提・賓頭盧頗羅堕・迦留陀夷・摩訶劫賓那・薄*拘羅・阿楼駄、如キ↠是クノ等ノ諸ノ大弟子、
一 Ⅱ ⅱ 菩薩衆
a 数類位を標す
^◆ならびにもろもろの菩薩*摩訶薩、
○并ニ諸ノ菩薩摩訶薩、
一 Ⅱ ⅱ b 上首を列ぬ
^◆*文殊師利法王子・*阿逸多菩薩 (弥勒)・乾陀訶提菩薩・常精進菩薩、 かくのごときらのもろもろの大菩薩、
○文殊師利法王子・阿逸多菩薩・乾陀*訶提菩薩・常精進菩薩、与↢如キ↠是クノ等ノ諸ノ大菩薩
一 Ⅱ ⅲ 雑類衆を挙げ集会を結す
^◆および*釈提桓因等の無量の諸天大衆と倶なりき。▼
○及ビ釈提桓因等ノ無量ノ諸天ノ大衆↡*倶ナリキ。
▼(註)
二 正宗分
Ⅰ 広く依正妙果を讃じ信を啓く【依正段】
ⅰ 対機告命
【2】 ^▼その時、 仏、 長老舎利弗に告げたまはく、
○爾ノ時仏告ゲタマハク↢長老舎利弗ニ↡、
二 Ⅰ ⅱ 法を示して正しく讃ず
a 総じて依正を標す
イ 方所を示して依を標す
^「▼*これより西方に、 十万億の仏土を過ぎて世界あり、 名づけて極楽といふ。
○従リ↠是西方ニ過ギテ↢十万億ノ仏土ヲ↡有リ↢世界↡、名ケテ曰フ↢極楽ト↡。
二 Ⅰ ⅱ a ロ 化主を示して徳を標す
^▼その土に仏まします、 *阿弥陀と号す。 いま現にましまして法を説きたまふ。
○其ノ土ニ有ス↠仏、号ス↢阿弥陀ト↡。今現ニ在シテ説キタマフ↠法ヲ。
二 Ⅰ ⅱ b 別して二報を釈す
イ 依報
(一)総じて名義を微釈す
【01223】 ^◆舎利弗、 かの土をなんがゆゑぞ名づけて極楽とする。 ▼その国の衆生、 もろもろの苦あることなく、 ただもろもろの楽を受く。 ゆゑに極楽と名づく。
○舎利弗、彼ノ土ヲ何ガ故ゾ名ケテ為ス↢極楽ト↡。其ノ国ノ衆生、無ク↠有ルコト↢衆ノ苦↡、但受ク↢諸ノ楽ノミヲ↡。故ニ名ク↢極楽ト↡。
▼(註)
二 Ⅰ ⅱ b イ (二)別して荘厳を陳説す
(Ⅰ)宝樹
(ⅰ)相を明す
^▼また舎利弗、 極楽国土には七重の*欄楯・▼七重の*羅網・▼七重の*行樹あり。 みなこれ*四宝*周帀し囲繞せり。
○又0106舎利弗、極楽国土ニハ七重ノ欄楯・七重ノ羅網・七重ノ行樹アリ。皆是四宝ヲモテ周帀シ囲繞セリ。
二 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)結嘆
^◆このゆゑにかの国を名づけて極楽といふ。
○是ノ故ニ彼ノ国ヲ名ケテ*曰フ↢極楽ト↡。
▼(註)
二 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅱ)宝池
(ⅰ)相を明す
^▼また舎利弗、 極楽国土には▼七宝の池あり。 八功徳水そのなかに充満せり。 池の底にはもつぱら金の沙をもつて地に布けり。
○又舎利弗、極楽国土ニハ有リ↢七宝ノ池↡。八功徳水充↢満セリ其ノ中ニ↡。池ノ底ニハ純ラ以テ↢金ノ沙ヲ↡布キ↠地ニ、
二 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)池畔
^◆四辺の*階道は、 金・銀・瑠璃・玻瓈合成せり。 上に*楼閣あり。 また金・銀・瑠璃・玻瓈・硨磲・赤珠・碼碯をもつて、 これを厳飾す。
○四辺ノ階道ハ金・銀・*瑠璃・*玻瓈合成セリ。上ニ有リ↢楼閣↡。亦以テ↢金・銀・*瑠璃・*玻瓈・*硨磲・赤珠・*碼碯ヲ↡而厳↢飾ス之ヲ↡。
二 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅲ)池華
^◆池のなかの蓮華は、 *大きさ車輪のごとし。 青色には青光、 黄色には黄光、 赤色には赤光、 白色には白光ありて、 微妙香潔なり。
○池ノ中ノ蓮華ハ、大キサ如シ↢車輪ノ↡。青色ニハ青光、黄色ニハ黄光、赤色ニハ赤光、白色ニハ白光アリテ、微妙香潔ナリ。
二 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅳ)結嘆
^◆舎利弗、 極楽国土には、 かくのごときの功徳荘厳を成就せり。
○舎利弗、極楽国土ニハ成↢就セリ如キノ↠是クノ功徳荘厳ヲ↡。
▼(註)
二 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅲ)天楽
^▼また舎利弗、 かの仏国土には、 つねに*天の楽をなす。
○又舎利弗、彼ノ仏国土ニハ常ニ作ス↢天ノ楽ヲ↡。
二 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)金地
^▼黄金を地とし、
○黄金ヲモテ為シ↠地ト、
二 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅴ)雨華
(ⅰ)正明
^▼昼夜*六時に天の*曼陀羅華を雨らす。
○昼夜六時ニ*而雨ラス↢▼曼陀羅華ヲ↡。
二 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅴ)(ⅱ)供仏
^◆その国の衆生、 つねに*清旦をもつて、 おのおの*衣裓をもつて、 もろもろの妙華を盛れて、 他方の十万億の仏を供養したてまつる。 すなはち*食時をもつて本国に還り到りて、 飯食し*経行す。
○其ノ*国ノ衆生、常ニ以テ↢清旦ヲ↡、各ノ以テ↢衣裓ヲ↡盛レテ↢衆ノ妙華ヲ↡、供↢養シタテマツル他方ノ十万億ノ仏ヲ↡。即チ以テ↢食時ヲ↡還リテ到リテ↢本国ニ↡、飯食シ経行ス。
二 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅴ)(ⅲ)結嘆
^◆舎利弗、 極楽国土には、 かくのごときの功徳荘厳を成就せり。
○舎利弗、極楽国土ニハ成↢就セリ如キノ↠是クノ功徳荘厳ヲ↡。
▼(註)
二 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅵ)鳥音
(ⅰ)欲宣法徳
(a)名を列して音を嘆ず
^0123▼また次に舎利弗、 かの国にはつねに種々奇妙なる雑色の鳥あり。 *白鵠・孔雀・鸚鵡・*舎利・*迦陵頻伽・*共命の鳥なり。 ▼このもろもろの鳥、 昼夜六時に和雅の音を出す。 その音、 五根・五力・七菩提分・八聖道分、 かくのごときらの法を*演暢す。
○復次ニ舎利弗、彼ノ国ニハ常ニ有リ↢種種ノ奇妙ナル雑色之鳥↡。白*鵠・孔雀・鸚鵡・舎利・迦陵頻伽・共命之鳥ナリ。是ノ諸衆ノ鳥、昼夜六時ニ出ス↢和雅ノ音ヲ↡。其ノ音演↢暢ス五根・五力・七菩提分・八聖道分、如キ↠是クノ等ノ法ヲ↡。
二 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅵ)(ⅰ)(b)得益
^◆その土の衆生、 この音を聞きをはりて、 ▼みなことごとく仏を念じ、 法を念じ、 僧を念ず。
○其ノ土ノ衆生聞キ↢是ノ音ヲ↡已リテ、皆悉ク念0107ジ↠仏ヲ念ジ↠法ヲ念ズ↠僧ヲ。
二 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅵ)(ⅱ)釈去疑執
^▼舎利弗、 なんぢこの鳥は実にこれ罪報の所生なりと謂ふことなかれ。 ゆゑはいかん。 かの仏国土には、 三悪趣なければなり。 舎利弗、 その仏国土にはなほ三悪道の名すらなし。 いかにいはんや実あらんや。 このもろもろの鳥は、 みなこれ阿弥陀仏、 ▼法音を*宣流せしめんと欲して、 *変化してなしたまふところなり。
○舎利弗、汝勿レ↠謂フコト↢此ノ鳥ハ実ニ是罪報ノ所生ナリト↡。所以者何ン。彼ノ仏国土ニハ無ケレバナリ↢三悪*趣↡。舎利弗、其ノ仏国土ニハ尚無シ↢*三悪道之名スラ↡。何ニ況ヤ有ラムヤ↠実。是ノ諸衆ノ鳥ハ、皆是阿弥陀仏ノ、欲シテ↠令メムト↢法音ヲシテ宣流セ↡、変化シテ所ナリ↠作シタマフ。
二 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅶ)風声
(ⅰ)法音を出し示す
^◆舎利弗、 かの仏国土には、 微風吹きて、 もろもろの宝行樹および宝羅網を動かすに、 微妙の音を出す。 たとへば百千種の楽を同時にともになすがごとし。
○舎利弗、彼ノ仏国土ニハ微風吹キテ動スニ↢諸ノ宝行樹及ビ宝羅網ヲ↡、出ス↢微妙ノ音ヲ↡。譬ヘバ如シ↢百千種ノ楽ノ同時ニ倶ニ作ルガ↡。
二 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅶ)(ⅱ)得益
^◆この音を聞くもの、 みな自然に仏を念じ、 法を念じ、 僧を念ずるの心を生ず。
○聞ク↢是ノ音ヲ↡者、*皆自然ニ生ズ↢念ジ↠仏ヲ念ジ↠法ヲ念ズル↠僧ヲ之心ヲ↡。
二 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅶ)(ⅲ)結嘆
^◆舎利弗、 その仏国土には、 かくのごときの功徳荘厳を成就せり。
○舎利弗、其ノ仏国土ニハ成↢就セリ如キノ↠是クノ功徳荘厳ヲ↡。
▼(註)
二 Ⅰ ⅱ b ロ 正報
(一)化主を挙ぐ
(Ⅰ)名義を解す
(ⅰ)徴問
【4】 ^▼舎利弗、 なんぢが意においていかん。 かの▼仏を▼なんがゆゑぞ阿弥陀と号する。
○舎利弗、於テ↢汝ガ意ニ↡云何ン。彼ノ仏ヲ何ガ故ゾ号スル↢阿弥陀ト↡。
二 Ⅰ ⅱ b ロ (一)(Ⅰ)(ⅱ)釈して嘉号の具徳を示す【光寿二無量】
(a)光徳
^◆舎利弗、 ▼かの仏の光明無量にして、 ▼十方の国を照らすに障礙するところ0124なし。 このゆゑに号して阿弥陀とす。
○舎利弗、彼ノ仏ノ光明無量ニシテ、照スニ↢十方ノ国ヲ↡無シ↠所↢障礙スル↡。是ノ故ニ号シテ為ス↢阿弥陀ト↡。
二 Ⅰ ⅱ b ロ (一)(Ⅰ)(ⅱ)(b)寿徳
^▼また舎利弗、 ▼かの仏の寿命およびその人民 ˆの寿命ˇ も▼無量無辺阿僧祇劫なり。 ゆゑに阿弥陀と名づく。
○又舎利弗、彼ノ仏ノ寿命及ビ其ノ人民モ無量無辺阿僧祇劫ナリ。故ニ名ク↢阿弥陀ト↡。
二 Ⅰ ⅱ b ロ (一)(Ⅱ)兼ねて已成の劫数を示す
^◆舎利弗、 阿弥陀仏は、 成仏よりこのかたいまに▼十劫なり。
○舎利弗、阿弥陀仏ハ成仏ヨリ已来タ於テ↠今ニ十劫ナリ。
二 Ⅰ ⅱ b ロ (二)聖衆を明す
(Ⅰ)旧住
(ⅰ)声聞衆
^◆また舎利弗、 かの仏に無量無辺の▼声聞の弟子あり、 みな阿羅漢なり。 これ算数のよく知るところにあらず。
○又舎利弗、彼ノ仏ニ有リ↢無量無辺ノ声聞ノ弟子↡、皆阿羅漢ナリ。非ズ↣是算数之所ニ↢能ク知ル↡。
二 Ⅰ ⅱ b ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)菩薩衆
^◆もろもろの菩薩衆、 またまたかくのごとし。
○諸ノ菩薩*衆モ亦復如シ↠是クノ。
二 Ⅰ ⅱ b ロ (二)(Ⅰ)(ⅲ)結嘆
^◆舎利弗、 かの仏国土には、 かくのごときの功徳荘厳を成就せり。
○舎利弗、彼ノ仏国土ニハ成↢就セリ如キノ↠是クノ功徳荘厳ヲ↡。
▼(註)
二 Ⅰ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)新住
(ⅰ)不退の徳を示す
【5】 ^▼また舎利弗、 極楽国土には、 ▼衆生生ずるものはみなこれ▼阿鞞跋致なり。
○又舎利弗、極楽国土ニハ衆生生ズル者ハ皆是阿鞞跋致ナリ。
二 Ⅰ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)究竟の益を明す
^▼そのなかに多く▼一生補処 ˆの菩薩ˇ あり。 その数はなはだ多し。 これ算数のよくこれを知るところにあらず。 ただ無量無辺阿僧祇劫をもつて説くべし。
●其ノ中ニ多ク有リ↢一生補処↡。其ノ数甚ダ多シ。非ズ↣是算数ノ所ニ↢能ク知ル↟之ヲ。但可シ↧以テ↢無量無辺阿僧祇*劫ヲ↡説ク↥。
二 Ⅱ 正しく願生の真因を示して往を勧む【因果段】
ⅰ 総じて願を発し生を求むを勧む
a 正しく勧誘す
^◆舎利弗、 ▼衆生*聞かんもの、 まさに発願してかの国に生ぜんと願ふべし。
○舎0108利弗、衆生聞ク者ハ応ニ当シ↢発願シテ願ズ↟生ゼムト↢彼ノ国ニ↡。
二 Ⅱ ⅰ b 所以を示す
^◆ゆゑはいかん。 かくのごときの*諸上善人とともに*一処に会することを得ればなり。
○所以者何ン。得レバナリ↧与↢如キノ↠是クノ諸ノ上善人↡倶ニ会スルコトヲ↦一処ニ↥。
二 Ⅱ ⅰ c 定生の因を揀ぶ
^◆舎利弗、 ▼*少善根福徳の因縁をもつてかの国に生ずることを得べからず。
○舎利弗、▼不↠可ラ↧以テ↢少善根福徳ノ因縁ヲ↡得↞生ズルコトヲ↢彼ノ国ニ↡。
▼(註)
二 Ⅱ ⅱ 別して願生の方法を示す
a 正しく示す【執持名号】
^▼舎利弗、 ▼もし善男子・善女人ありて、 ▼阿弥陀仏を説くを聞きて、 ▼名号を▼*執持すること、 ▼もしは一日、 もしは二日、 もしは三日、 もしは四日、 もしは五日、 もしは六日、 もしは七日、 ▼一心にして乱れざれば、
○舎利弗、若シ有リテ↢善男子・善女人↡、聞キテ↠説クヲ↢阿弥陀仏ヲ↡、執↢持スルコト名号ヲ↡、若ハ一日、若ハ二日、若ハ三日、若ハ四日、若ハ五日、若ハ六日、若ハ七日、一心ニシテ不レバ↠乱レ、
二 Ⅱ ⅱ b 益を明す
^▼その人、 命終の時に臨みて0125、 ▼阿弥陀仏、 もろもろの聖衆と現じてその前にましまさん。 ▼この人終らん時、 ▼心顛倒せずして、 すなはち阿弥陀仏の極楽国土に▼往生することを得。
○其ノ人ノ臨ミテ↢命終ノ時ニ↡、阿弥陀仏与↢諸ノ聖衆↡現ジテ在ス↢其ノ前ニ↡。是ノ人終ル時、心不シテ↢顛倒セ↡、即チ得↣往↢生スルコトヲ阿弥陀仏ノ極楽国土ニ↡。
二 Ⅱ ⅱ c 自証を結す
^◆舎利弗、 ▼われこの利を見るがゆゑに、 この言を説く。 もし衆生ありて、 この説を聞かんものは、 まさに発願してかの国土に生るべし。
○舎利弗、我見ルガ↢是ノ利ヲ↡故ニ説ク↢此ノ言ヲ↡。若シ有リテ↢衆生↡、聞ク↢是ノ説ヲ↡者ハ、応シ当ニ↣発願シテ生ズ↢彼ノ国土ニ↡。
▼(註)
二 Ⅲ 広く諸仏同勧の証益を挙ぐ
ⅰ 自他の証勧を陳ぶ
a 自を挙げ他を列す
【6】 ^▼舎利弗、 われいま阿弥陀仏の▼不可思議の功徳を讃歎するがごとく、
○舎利弗、如ク↣我今者讃↢歎スルガ阿弥陀仏ノ不可思議ノ功*徳ヲ↡、
二 Ⅲ ⅰ b 正しく他証を示す【▼六方段】
イ 東方
^▼東方にまた、 *阿閦鞞仏・須弥相仏・大須弥仏・須弥光仏・妙音仏、 ▼かくのごときらの恒河沙数の諸仏ましまして、 おのおのその国において、 *広長の舌相を出し、 あまねく三千大千世界に覆ひて、 ▼誠実の言を説きたまはく、 ªなんぢら衆生、 ▼まさにこの不可思議の功徳を称讃したまふ一切諸仏に護念せらるる経を信ずべしº と。
○東方ニ亦有シテ↢阿閦鞞仏・須弥相仏・大須弥仏・須弥光仏・妙音仏、如キ↠是クノ等ノ恒河沙数ノ諸仏↡、各ノ於テ↢其ノ国ニ↡出シ↢広長ノ舌相ヲ↡、徧ク覆ヒテ↢三千大千世界ニ↡、説キタマハク↢誠実ノ言ヲ↡、汝等衆生当ニシト↠信ズ↢是ノ称↢讃シタマフ不可思議ノ功徳ヲ↡一切0109諸仏ニ所ル↢護念セ↡経ヲ↡。
▼(註)
二 Ⅲ ⅰ b ロ 南方
【7】 ^▼舎利弗、 南方の世界に、 日月灯仏・名聞光仏・大焔肩仏・須弥灯仏・無量精進仏、 △かくのごときらの恒河沙数の諸仏ましまして、 おのおのその国において、 広長の舌相を出し、 あまねく三千大千世界に覆ひて、 誠実の言を説きたまはく、 ªなんぢら衆生、 まさにこの不可思議の功徳を称讃したまふ一切諸仏に護念せらるる経を信ずべしº と。
○舎利弗、南方ノ世界ニ有シテ↢日月灯仏・名聞光仏・大焔肩仏・須弥灯仏・無量精進仏、如キ↠是クノ等ノ恒河沙数ノ諸仏↡、各ノ於テ↢其ノ国ニ↡出シ↢広長ノ舌相ヲ↡、徧ク覆ヒテ↢三千大千世界ニ↡、説キタマハク↢誠実ノ言ヲ↡、汝等衆生当ニシト↠信ズ↢是ノ称↢讃シタマフ不可思議ノ功徳ヲ↡一切諸仏ニ所ル↢護念セ↡経ヲ↡。
▼(註)
二 Ⅲ ⅰ b ハ 西方
【01268】 ^▼舎利弗、 西方の世界に、 無量寿仏・無量相仏・無量幢仏・大光仏・大明仏・宝相仏・浄光仏、 △かくのごときらの恒河沙数の諸仏ましまして、 おのおのその国において、 広長の舌相を出し、 あまねく三千大千世界に覆ひて、 誠実の言を説きたまはく、 ªなんぢら衆生、 まさにこの不可思議の功徳を称讃したまふ一切諸仏に護念せらるる経を信ずべしº と。
○舎利弗、西方ノ世界ニ有シテ↢無量寿仏・無量相仏・無量幢仏・大光仏・大明仏・宝相仏・浄光仏、如キ↠是クノ等ノ恒河沙数ノ諸仏↡、各ノ於テ↢其ノ国ニ↡出シテ↢広長ノ舌相ヲ↡、徧ク覆ヒテ↢三千大千世界ニ↡、説キタマハク↢誠実ノ言ヲ↡、汝等衆生当ニシト↠信ズ↢是ノ称↢讃シタマフ不可思議ノ功徳ヲ↡一切諸仏ニ所ル↢護念セ↡経ヲ↡。
▼(註)
二 Ⅲ ⅰ b ニ 北方
【9】 ^▼舎利弗、 北方の世界に、 焔肩仏・最勝音仏・難沮仏・日生仏・網明仏、 △かくのごときらの恒河沙数の諸仏ましまして、 おのおのその国において、 広長の舌相を出し、 あまねく三千大千世界に覆ひて、 誠実の言を説きたまはく、 ªなんぢら衆生、 まさにこの不可思議の功徳を称讃したまふ一切諸仏に護念せらるる経を信ずべしº と。
○舎利弗、北方ノ世界ニ有シテ↢焔肩仏・最勝音仏・難*沮仏・日生仏・網明仏、如キ↠是クノ等ノ恒河沙数ノ諸仏↡、各ノ於テ↢其ノ国ニ↡出シ↢広長ノ舌相ヲ↡、徧ク覆ヒテ↢三千大千世界ニ↡、説キタマハク↢誠実ノ言ヲ↡、汝等衆生当ニシト↠信ズ↢是ノ称↢讃シタマフ不可思議ノ功徳ヲ↡一切諸仏ニ所ル↢護念セ↡経ヲ↡。
▼(註)
二 Ⅲ ⅰ b ホ 下方
【10】^▼舎利弗、 下方の世界に、 師子仏・名聞仏・名光仏・達摩仏・法幢仏・持法仏、 △かくのごときらの恒河沙数の諸仏ましまして、 おのおのその国において、 広長の舌相を出し、 あまねく三千大千世界に覆ひて、 誠実の言を説きたまはく、 ªなんぢら衆生、 まさにこの不可思議の功徳を称讃したまふ一切諸仏に護念せらるる経を信ずべしº と。
○舎利弗、下方ノ世界ニ有シテ↢師子仏・名聞仏・名光仏・達摩仏・法幢仏・持法仏、如キ↠是クノ等ノ恒河沙数ノ諸仏↡、各ノ於テ↢其ノ国ニ↡出シ↢広長ノ舌相ヲ↡、徧ク覆ヒテ↢三千大千世界ニ↡、説キタマハク↢誠実ノ言↡、汝等衆生当ニシト↠信ズ↢是ノ称↢讃シタマフ不可思議ノ功徳ヲ↡一切諸仏ニ所ル↢護念セ↡経ヲ↡。
▼(註)
二 Ⅲ ⅰ b ヘ 上方
【012711】^▼舎利弗、 上方の世界に、 梵音仏・宿王仏・香上仏・香光仏・大焔肩仏・雑色宝華厳身仏・娑羅樹王仏・宝華徳仏・見一切義仏・如須弥山仏、 △かくのごときらの恒河沙数の諸仏ましまして、 おのおのその国において、 広長の舌相を出し、 あまねく三千大千世界に覆ひて、 誠実の言を説きたまはく、 ªなんぢら衆生、 まさにこの不可思議の功徳を称讃したまふ一切諸仏に護念せらるる経を信ずべしº と。
○舎利弗、上方ノ世界ニ有シテ↢梵音仏・宿王仏・香上仏・香光仏・大焔肩仏・雑色0110宝華厳身仏・娑羅樹王仏・宝華徳仏・見一切義仏・如須弥山仏、如キ↠是クノ等ノ恒河沙数ノ諸仏↡、各ノ於テ↢其ノ国ニ↡出シ↢広長ノ舌相ヲ↡、徧ク覆ヒテ↢三千大千世界ニ↡、説キタマハク↢誠実ノ言ヲ↡、汝等衆生当ニシト↠信ズ↢是ノ称↢讃シタマフ不可思議ノ功徳ヲ↡一切諸仏ニ所ル↢護念セ↡経ヲ↡。
▼(註)
二 Ⅲ ⅱ 所勧の得益を明す
a 経名を徴起し意信受を勧めんと欲す
【12】^▼舎利弗、 ▼なんぢが意においていかん。 なんがゆゑぞ名づけて一切諸仏に護念せらるる経とするや。
○舎利弗、於テ↢汝ガ意ニ↡云何ン。何ガ故ゾ名ケテ為ス↢一切諸仏ニ所ル↢護念セ↡経ト↡。
二 Ⅲ ⅱ b 経名を釈通し正しく得益を明す
イ 聞信の益を明す
(一)正しく明す
^◆舎利弗、 ▼もし善男子・善女人ありて、 ▼この諸仏の所説の*名および経の名を聞かんもの、 ▼このもろもろの善男子・善女人、 ▼みな一切諸仏のためにともに護念せられて、 ▼みな阿耨多羅三藐三菩提を退転せざることを得ん。
○舎利弗、若シ有リテ↢善男子・善女人↡、聞カバ↢是ノ*諸仏ノ所説ノ名及ビ*経ノ名ヲ↡者ハ、是ノ諸ノ善男子・善女人ハ、皆為ニ↢一切諸仏ノ↡*共ニ所レテ↢護念セ↡、皆得ン↠不ルコトヲ↣退↢転セ於阿耨多羅三藐三菩提ヲ↡。
二 Ⅲ ⅱ b イ (二)信受を勧む
^◆このゆゑに舎利弗、 ▼なんぢらみなまさにわが語および諸仏の所説を信受すべし。
○是ノ故ニ舎利弗、汝等皆当ニシ↣信↢受ス我ガ語及ビ諸仏ノ所説ヲ↡。
二 Ⅲ ⅱ b ロ 発願の益を示す
(一)正しく明す
^◆舎利弗、 もし人ありて、 ▼すでに発願し、 いま発願し、 *まさに発願して、 ▼阿弥陀仏国に生ぜんと欲はんものは、 このもろもろの人等、 みな阿耨多羅三藐三菩提を退転せざることを得て、 かの国土において、 もしはすでに生れ、 もしはいま生れ、 もしはまさに生れん。
○舎利弗、若シ有リテ↠人、已ニ発願シ、今発願シ、当ニクシテ↢発願ス↡欲スレバ↠生ゼムト↢阿弥陀仏国ニ↡者ハ、是ノ諸ノ人等、皆得テ↠不ルコトヲ↣退↢転セ於阿耨多羅三藐三菩提ヲ↡、於テ↢彼ノ国土ニ↡、若シハ已ニ生ジ、若シハ今生ジ、若シハ当ニシ↠生ズ。
二 Ⅲ ⅱ b ロ (二)願生を勧む
^◆このゆゑに舎利弗、 もろもろの▼善男0128子・善女人、 もし信あらんものは、 まさに発願してかの国土に生るべし。
○是ノ故ニ舎利弗、諸ノ善男子・善女人、若シ有ラバ↠信者ハ、応ニ当シ↣発願シテ生ズ↢彼ノ国土ニ↡。
▼(註)
二 Ⅳ 互讃の難を証し興世の懐を結す
ⅰ 自、他を讃ず
【13】^▼舎利弗、 われいま諸仏の不可思議の功徳を称讃するがごとく、
○舎利弗、如ク↣我今者称↢讃スルガ諸仏ノ不可思議ノ功徳ヲ↡、
二 Ⅳ ⅱ 他、自を讃ず
^◆かの諸仏等もまた、 わが不可思議の功徳を称説してこの言をなしたまはく、 ª▼*釈迦牟尼仏、 ▼よく*甚難希有の事をなして、 ▼よく娑婆国土の▼五濁悪世、 劫濁・見濁・煩悩濁・衆生濁・命濁のなかにおいて、 阿耨多羅三藐三菩提を得て、 もろもろの衆生のために、 ▼この一切世間▼*難信の法を説きたまふº と。
○彼ノ諸仏等モ亦称↢*説シテ我ガ不可思議ノ功徳ヲ↡而作シタマハク↢是ノ言ヲ↡、釈迦牟尼仏能ク為シテ↢甚難希有之事ヲ↡、能ク於テ↢娑婆国土ノ五濁悪世、劫濁・見濁・煩悩濁・衆生濁・命濁ノ中ニ↡得テ↢阿耨多0111羅三藐三菩提ヲ↡、為ニ↢諸ノ衆生ノ↡説キタマヘリト↢是ノ一切世間難信之法ヲ↡。
二 Ⅳ ⅲ 自ら難を証す
^◆舎利弗まさに知るべし、 われ五濁悪世において▼この難事を行じて、 阿耨多羅三藐三菩提を得て、 ▼一切世間のために、 この難信の法を説く。 これを甚難とす」 と。▼
○舎利弗、当ニシ↠知ル、我於テ↢五濁悪世ニ↡行ジテ↢此ノ難事ヲ↡、得テ↢阿耨多羅三藐三菩提ヲ↡、為ニ↢一切世間ノ↡、説ク↢此ノ難信之法ヲ↡。是ヲ為スト↢甚ダ難シト↡。
三 流通分
【14】^▼仏、 この経を説きたまふこと已りて、 舎利弗およびもろもろの比丘、 一切世間の天・人・阿修羅等、 仏の所説を聞きて、 歓喜し信受して、 礼をなして去りにき。
○仏説キタマフコト↢此ノ経ヲ↡已リテ、舎利弗及ビ諸ノ比丘、一切世間ノ天・人・阿修羅等、聞キタテマツリテ↢仏ノ所説ヲ↡歓喜シ信受シテ、作シテ↠礼ヲ而去リヌ。
▼(註)
▼仏説阿弥陀経
▼(裏)
延書の底本は兵庫県毫摂寺蔵本。
姚秦 後秦 (384-417) のこと。 王室の姓をとって姚秦と呼ぶ。
長老 年長の比丘、 また智徳ある比丘に対する尊称。
これ 娑婆世界。
四宝 金・銀・瑠璃・玻瓈のこと。
周帀し囲繞せり あまねくめぐりかこんでいる。
大きさ車輪のごとし 「大」 の字を 「形」 の意とし 「かたち車輪のごとし」 と読む場合もある。 梵本では 「大きさ」 の意。
食時 一食をたべ終るわずかな時間。 一説では昼前の時間を指すという。
聞かんもの 極楽浄土および阿弥陀仏と聖者のことを聞くものは。
諸上善人 もろもろのすぐれた聖者。
一処 極楽浄土を指す。
執持 しっかりととりたもつこと。 親鸞聖人は阿弥陀仏の名号を信じ称えることと解釈した。
広長の舌相を出し 広長の舌相は仏の三十二相の一。 仏の舌は広く長くてその顔面をおおうといわれる。 ここでは三千大千世界をおおうとされている。 仏が舌を出すのは教説が真実であることを証明する意味を持つ。
名 阿弥陀仏の名。
まさに 将来に。
甚難希有の事 非常に難しく、 世にまれなこと。
底本は◎本派本願寺蔵版本。 Ⓐ高麗版(再雕本)¬大蔵経¼所収本、 Ⓑ宋版(思溪版)¬大蔵経¼所収本、 Ⓒ元版(善寧寺版)¬大蔵経¼所収本、 Ⓓ明版(万歴版)¬大蔵経¼所収本、 Ⓔ京都府清浄華院蔵平安時代書写本、 Ⓕ本派本願寺蔵正平六年書写本 と対校。 なお、 格段末のリンクより、 宗祖の¬小経註¼において書き込まれている¬法事讃¼ほかの本文が参照できる。
孤→Ⓔ狐
衆→ⒶⒷⒸⒹ僧
犍→Ⓐ乾→ⒸⒹⒺⒻ揵
旃→ⒶⒹ栴
倶→ⒶⒺⒻ拘
利→ⒶⒺⒻ梨
槃陀→ⒺⒻ般他
伽→Ⓐ迦
拘→Ⓐ倶
訶→ⒺⒻ呵
倶 Ⓔになし
曰→ⒺⒻ為
瑠→ⒶⒷⒸ琉
玻瓈→ⒶⒺⒻ頗梨
硨磲→ⒶⒺⒻ車
碼碯→ⒶⒺⒻ馬瑙
而雨→ⒷⒸⒹ雨天
而→Ⓐ天
国→ⒸⒹⒺⒻ土
鵠ⒷⒸⒹ鶴
趣→ⒷⒸⒹ道
三 ⒷⒸⒹになし
皆自然→ⒷⒸⒹ自然皆
衆 Ⓐになし
劫 Ⓑになし
徳→ⒷⒸⒹ徳[之利]
沮→ⒺⒻ俎
諸仏所説名→ⒶⒷⒸⒹ経受持者
経→ⒶⒷⒸⒹ聞諸仏
共→ⒷⒸⒹ之
説→ⒷⒸⒹ讃