聞書

(1)

一 ¬おうじょうようしゅう¼ のじょうにいはく、

一 ¬往生要集¼上云、

天台てんだいの ¬じゅう¼ にいふがごとし。 「阿弥陀あみだぶつべつだいじゅう八願はちがんましまして、 しゅじょうしょういんしたまふ。 またかのぶつこうみょうあまねく法界ほっかい念仏ねんぶつしゅじょうてらして、 せっしゅしててず。 十方じっぽうにおのおのごうしゃ諸仏しょぶつしたべて三千さんぜんかいおおひて、 一切いっさいしゅじょう阿弥陀あみだぶつねんじて、 ぶつだい本願ほんがんりきじょうじて、 けつじょうして極楽ごくらくかいしょうずることをることを証成しょうじょうしたまふ。

如↢天台¬十疑¼云↡。「阿弥陀仏別マシテ↢大悲四十八願↡、接↢引シタマフ衆生↡。又彼光明遍シテ↢法界念仏衆生↡、摂取シテ↠捨。十方恒河沙諸仏、舒↠舌↢三千界↡、証↧成シタマフ一切衆生念ジテ↢阿弥陀仏↡、乗ジテ↢仏大悲本願力↡、決定シテルコトヲ↞生ルコト↢極楽世界↡。

-また ¬りょう寿じゅきょう¼ にいはく、 まつ法滅ほうめつときに、 ひとりこのきょうとどめてひゃくねんにあらしめて、 しゅじょうしょういんし、 かのこくしょうぜしめむ。 ゆゑにりぬ、 阿弥陀あみだぶつはこのかい極悪ごくあくしゅじょうと、 ひとへに因縁いんねんまします。

又¬無量寿経¼云ハク、末後法滅之時、特メテ↢此↡百年在ラシメテ↠世、接↢引衆生↡、生ゼシメム↢彼国土↡。故、阿弥陀仏↢此世界極悪衆生↡、偏マス↢因縁↡。

(2)

一 ¬ようしゅう¼ のちゅうにいはく、 「ふ。 いふところの弥陀みだ一身いっしんはすなはち一切いっさい仏身ぶっしんなりといふことは、 なんのしょうかある。 こたふ。 天台てんだいだいのいはく、 阿弥陀あみだぶつねんじたてまつればすなはちこれ一切いっさいぶつねんずるなり。 ゆゑに ¬ごんぎょう¼ にいはく、 一切いっさい諸仏しょぶつしんはすなはちこれ一仏いちぶつしんなり。 一心いっしんなり、 いち智慧ちえなり。 りき無畏むいもまたしかなり。

一 ¬要集¼中云、「問。所↠言弥陀一身即一切仏身也ト云コト、有↢何証拠↡。答。天台大師ハク、念ジタテマツレバ↢阿弥陀仏↡即是念ル也↢一切↡。故¬花厳経¼云ハク一切諸仏一仏。一心、一智慧。力・無畏亦然

(3)

一 ¬おうじょうようしゅう¼ のじょうまつ 十六半 ちゅうしょにいはく、

一 ¬往生要集¼上末注書ハク

「わたくしにいはく、 一切いっさいぶつとは、 これ弥陀みだ分身ぶんしんなり。 あるいはこれ十方じっぽう一切いっさい諸仏しょぶつなり。」

私云、一切弥陀分身。或十方一切諸仏。」

(4)

一 ¬ようしゅう¼ のにいはく、 大文第十 ふ。 阿弥陀あみだぶつ極楽ごくらくじょうはこれなんのしんなんのぞや。 こたふ。 天台てんだいのいはく、 応身おうじんぶつどうなり。 おんほっのいはく、 これ応身おうじんおうなり。 しゃくほっのいはく、 これ報仏ほうぶつほうなりと。 きゅう相伝そうでんに、 みな化土けどしんといふ。 これ大失だいしつとなす。 ¬だいじょうどうしょうきょう¼ にいはく、 じょうなかじょうぶつするものはことごとく報身ほうじんなり。 穢土えどなかじょうぶつするものはことごとくこれしんなりと。

一 ¬要集¼下云、「問。阿弥陀仏極楽浄土身何耶。答。天臺ハク、応身仏、同居土遠法師ハク応身応土綽法師ハク報仏報土也ト。古旧等相伝、皆云↢化土化身↡。↢大失↡。¬大乗同性経¼云ハク、浄土成仏スルモノ報身。穢土成仏スル化身也ト

-またかの ¬きょう¼ にいはく、 阿弥陀あみだ如来にょらいれんかいしょうおう如来にょらいりゅうしゅ如来にょらい宝徳ほうとく如来にょらいとうの、 もろもろの如来にょらい清浄しょうじょう仏刹ぶっせつにしてげん得道とくどうしたまへるもの、 まさに得道とくどうしたまへるごときもの、 かくのごとき一切いっさいみなこれ報身ほうじんぶつなりと。 なにもの如来にょらいしんとならば、 なほ今日こんにち踊歩ゆぶごん如来にょらい恐怖くふ如来にょらいとうのごときなり。 以上 ¬安楽集¼

又彼¬経¼云ハク、阿弥陀如来・蓮花開敷星王如来・竜主如来・宝徳如来等、諸如来清浄仏刹ニシテ得道シタマヘル、如↢当得道シタマヘル↡者、如↠是一切皆報身仏也如来化身トナラバナホキ也↢今日踊歩健如来・魔恐怖如来等↡。 已上¬安楽集¼

(5)

またいはく、 (要集巻下) 「ふ。 たとひほうにあらずも、 惑業わくごうおもものはあにじょうんや。 こたふ。 天台てんだいのいはく、 りょう寿じゅこくほうしゅしょうなりといへども、 りんじゅうときさん念仏ねんぶつすれば、 ごっしょうすなはちてんじてすなはちおうじょう惑染わくぜんせりといへども、 願力がんりきしんたもちてまたすることをるなりと。」

又云、「問。設↢報土↡、惑業重ムヤ↢浄土↡。答。天臺、无量寿国↢果報殊勝也ト↡、臨終之時懴悔念仏スレバ、業障便ジテ得↢往生↡。雖↠具セリト↢惑染↡、願力持↠心亦得↠居スルコトヲ。」

(6)

(要集巻下) 「また ¬じゅう¼ にしゃくしていはく、 三種さんしゅどうをもつて軽重きょうじゅう校量きょうりょうするにじょうなり。 せつごんしょうにはらず。 いはく、 なにをか三とする。 一にはしんり、 二にはえんり、 三にはけつじょうり。 しんりとは、 つみつくときもう顛倒てんどうしんよりしょうず。 念仏ねんぶつしんは、 ぜんしきしたがひて阿弥陀あみだぶつ真実しんじつどくみょうごうくをしんよりしょうず。 一は、 一はじつなり。 あにあひすることをんや。」

又¬十疑¼釈シテハク、以↢三種道理↡校↢量スルニ軽重↡不定。不↠在↢時節久近・多少ニハ↡。云、何ヲカ↠三。一者在↠心、二者在↠縁、三者在↢決定↡。↠心、造↠罪之時従↢自ヨ リ虚妄顛倒心↡生。念仏、従↢善知識↡聞↠説クヲ↢阿弥陀仏真実功徳名号↡心ヨリ。一虚、一。豈ムヤスルコトヲ↡。」

(7)

(要集巻下) 「ざいけつじょうとは、 つみつくときには間心けんしん有後うごしんをもつてすとなり。 念仏ねんぶつときには間心けんしん無後むごしんをもつてす。」

在決定、造↠罪之時ニハテスト↢有間心・有後↡也。念仏之時ニハテス↢无間心・无後心↡。」

(8)

一 大文だいもん第三だいさんに、 (要集巻上) 「西方さいほうしょうあかさば、 二あり。 一は十方じっぽうたいす。 二はそつたいす。 はじめに十方じっぽうたいすとは、 はく。 十方じっぽうじょうあり。 なんぞただ極楽ごくらくしょうぜんとのみがんずるや。 こたふ。 天台てんだいだいいはく、 しょきょうろんに、 処々しょしょにただしゅじょうすすめてひとへに阿弥陀あみだぶつねんじ、 西方さいほう極楽ごくらくかいもとめしめたり。 ¬りょう寿じゅきょう¼・¬かんぎょう¼・¬おうじょうろん¼ とうすうじゅう余部よぶきょうろんもんに、 慇懃おんごんじゅして西方さいほうしょうずることをすすめたり。 これをもつてひとへにねんずるなりと。

一 大文第三 (要集巻下)、「↢西方証拠、有↠二。一対↢十方↡。二対↢兜率↡。スト↢十方ハク。十方有↢浄土↡。何タヾズル↠生ムトノミ↢極楽答。天臺大師云、諸経論、処々唯勧メテ↢衆生↡偏↢阿弥陀仏↡、令タリ↠求↢西方極楽世界↡。¬无量寿経¼・¬観経¼・¬往生論¼等数十余部経論、慇懃指授シテタリ↠生コトヲ↢西方↡。是

(9)

一 ¬ようしゅう¼ のにいはく、 「ふ。 しんものいかなる罪報ざいほうこたふ。 ¬しょうよう諸仏しょぶつどくきょう¼ のかんにいはく、「それ阿弥陀あみだぶつみょうごうどく讃嘆さんだんしょうようするをしんぜずして、 ほうすることあらむものは、 五こうなかにまさにごくして、 つぶさにもろもろのくべし。」

一 ¬要集¼下云、「問。不信者得↢何ナル罪報↡。。¬称揚諸仏功徳経¼下巻、「ラム↧不シテ↠信↤讃↢嘆称↣揚スルヲ阿弥陀仏名号功徳↡、而謗↥毀スルコト、五劫↧堕シテ↢地獄↡、具↦衆↥。」

(10)

またいはく、 (要集巻中) 「あるいはかのぶつこの三身さんしん一体いったいしん応現おうげんしたまふなり。 かの一身いっしんにおいて所見しょけんどうなり。 あるいはじょうろく、 あるいははっしゃく、 あるいは広大こうだいしんなり。 所現しょげんみな金色こんじきなり。 やくするところおのおのりょうなり。 一切いっさい諸仏しょぶつとその同一どういつなり。化身

又云、「或応↢現シタマフ彼仏是三身一体之身↡也。↢彼一身↡所見不同。或丈六、或八尺、或広大身。所現皆金色。所↢利益↡各无量。与↢一切諸仏↡其事同一化身

(11)

またいはく、 (要集巻中) 「行住ぎょうじゅう坐臥ざがもく作々ささ。」

又云、「行住坐臥、語黙作々。」

(12)

一 ¬ようしゅう¼ のちゅうに、 「¬仏蔵ぶつぞうきょう¼ の 「念仏ねんぶつぼん」 にいはく、 しょなしとるをづけて念仏ねんぶつとなす、 諸法しょほう実相じっそうるをづけて念仏ねんぶつとなす。 分別ふんべつあることなく、 ることなくつることなき、 これをしん念仏ねんぶつとす。

一 ¬要集¼中、「¬仏蔵経¼「念仏品」云、見↠无シト↢所有↡名↢念仏↡、見↢諸法実相↡名↢念仏↡。无↠有ルコト↢分別↡、无↠取无↠捨コト、是念仏トス

(13)

一 ¬ようしゅう¼ のほんに、 「ざいのいはく、 しゅじょうぎょうおこすにすでに千殊せんじゅあれば、 おうじょうしてこともまた万別まんべつあるなり。」

一 ¬要集¼下本、「迦才云、「衆生起スニ↠行レバ↢千殊↡、往生シテコトモ↠土亦有↢万別↡也。」

(14)

一 ¬ようしゅう¼ のほんに、 「¬じゅうぶつみょうきょう¼ のにのたまはく、 もしひとぶつみょうたもてばしゅおよびじゅん行住ぎょうじゅう坐臥ざがところに、 その便たよりをることあたはず。」

一 ¬要集¼下本、「¬十二仏名経¼偈云、若人持テバ↢仏名↡衆魔及波旬、行住坐臥処、↠能↠得コト↢其便↡。」

(15)

一 ¬ようしゅう¼ のまつに、 十二丁

一 ¬要集¼下末、

一切いっさい万法まんぽうはみなりきりきしょうしょうにあり。 千開せんかい万閉まんぺいりょうへんなり。 あに有礙うげさとりをもつてかの無礙むげほううたがふことをむや。 また五不ごふ思議しぎなかには仏法ぶっぽうもつとも不可ふか思議しぎなり。 あに三界さんがいごうをもつておもしとなして、 かのしょう念法ねんぽううたがひてかろしとせんや。」 以上略抄

一切万法皆有↢自力・他力、自摂・他摂↡。千開万閉、無量无辺。豈↧以↢有礙サトリ↡疑フコト↦彼无礙。又五不思議ニハ仏法最不可思議。豈↢三界繋業↡為シテ↠重シト、疑↢彼少時念法↡為ムヤ↠軽シト。」 已上略抄

(16)

一 ¬ようしゅう¼ のじょうまつにいはく、

一 ¬要集¼上末云、

「¬はんぎょう¼ の三十二にいはく、 善男ぜんなん、 もしひとありてはく、 このしゅなかにはありや、 なきや。 さだめてこたへていふべし、 またはりまたはしと。 なにをもつてのゆゑに。 たねはなれてほかにしょうずることあたはず。 このゆゑにづく。 たねいまだくきいださず。 このゆゑにづく。 このをもつてのゆゑに、 やくやくなり。

¬涅槃経¼卅二、善男子、若↠人問ハク、是種子ニハ↠果、无↠果。応↢定↡、亦有亦。何。離タネ之外↠能↠生ズルコト↠果。是↠有。子未↠出↠クキ。是↠无。以↢是↡故、亦有亦无

-ゆゑはなんとなれば、 せつあれどもそのたいこれいちなり。 しゅじょうぶっしょうもまたかくのごとし。 もししゅじょうなかべつぶっしょうありといはば、 このしからず。 なにをもつてのゆゑに。 しゅじょうはすなはちぶっしょうなり、 ぶっしょうすなはちしゅじょうなり。 ただちに時異じいをもつてじょうじょうあり。 善男ぜんなん、 もしるといはばひとひていわく、 このたねはよくしょうずやいなや、 このよくたねしょうずやいなやと。 さだめてこたへていふべし、 またはしょうじ、 またはしょうぜずと。

所以レバ、時節レドモ↠異其体是一。衆生仏性亦復如↠是。若↣衆生↢仏性↡者、是義不↠然。何。衆生即仏性、仏性即衆生。直以↢時異↡有↢浄・不浄↡。善男子、若有ルトイハヾ人問、是タネズヤ↠果、是果能生ズヤ↠子ヤト。応↢定言↡、亦、亦↠生

(17)

一 ¬ようしゅう¼ のにいはく、

一 ¬要集¼下云、

「一は旃檀せんだんじゅ出成しゅつじょうするときには、 よく四十じゅんらんりんへんじてあまねくみなこうならしむ。

旃檀樹出成スルニハ、能ジテ↢四十由旬伊蘭林↡普皆香美カウバシクナラシム

-二は師子ししすぢもちいてもつてこととすれば、 おんじょう一たびそうするに、 一切いっさいげんをばことごとくみなだんしぬ。

↢師子スヂ↡以レバ↢琴オト↡、音声一スルニ、一切余絃ヲバ皆断壊シヌ

-三は一こんいしじるよく千斤せんごんあかがねへんじてこがねとなす。

コンジルジテ↢千斤アカヾネ↡為↠金

-四は金剛こんごうけんなりといへども、 羖羊 ひつじ つのをもつてこれをたたけば、 すなはちかんねんとしてこおりのごとくけぬ。 滅罪譬 

金剛雖↢堅固也ト↡、以羖羊 ヒツジ ツノタタケバ↠之、則クワントシテノゴトクケヌ 滅罪譬 

-五は雪山せっせんくさあり、 づけて忍辱にんにくとなす。 うしもしじきすればすなはちだい

雪山↠草、名↢忍辱↡。牛若スレ即得↢醍醐↡。

-六はしゃやくにおいてただることあるものは、 寿いのちりょうなることをないねんずるもの宿命しゅくみょう

↢沙河薬↡但有↠見コト↢寿无量ナルコトヲ↡。乃至念ズル↢宿命智↡。

-七はじゃくいかづちこえきて有身 はら むことを

孔雀聞↢雷有身 ハラ ムコトヲ

-八は尸利しりしゃぼうせいてすなはちじつ出生しゅっしょうす。 以上生

尸利沙バウ↡則出↢生菓実↡。 已上生

-九はじゅうすいたからをもつてその瓔珞ようらくしつれば深水じんすいなかるにしずおぼれず。

↢住水↡瓔↢珞シツレバ↡入ルニ↢深水↡而不↢シヅオボ↡。

-十はしゃりゃくはもつともすくなしといへどもなほしみずうかぶことあたはず。 ばんじゃくだいなりといへどもふねれつればよくうかぶ。 以上総譬

沙礫↢最シト↡尚↠能↠浮ブコト↠水。磐石雖↠大也トレツレバ↠船已上総譬

-諸法しょほう力用りきゆうおもひがたきことかくのごとし。 念仏ねんぶつりき、 これになぞらへてうたがふことなかれ。」

諸法力用、難キコト↠思↠是。念仏功力、准↠之↠疑フコト。」

(18)

一 ¬ようしゅう¼ のちゅうかん大文だいもんだいにいはく、 「もし念珠ねんじゅもちいんときに、 じょうもとめむとおもはば木槵もくげんもちいよ。 どくおおくせんとおもはばだいもちいよ。 ないあるひはすいしょうれんとう ¬念珠ねんじゅどくきょう¼ を

一 ¬要集¼中巻大文第五云、「若用↢念珠↡時、欲ハヾ↠求ムト↢浄土↡用↢木槵子↡。欲ハヾ↠多ムト↢功徳↡用↢菩提子↡。乃至或水精・蓮子等。 ↢¬念珠功徳経¼↡

(19)

一 ¬ようしゅう¼ の大文だいもんだい (巻上) にいはく、 「ぞうさつは、 毎日まいにちじんじょう恒沙ごうじゃじょうりて、 法界ほっかいしゅうへんしてしゅじょうく。 しょがんだいえたり。 ¬じゅうりんぎょうの¼ こころ

一 ¬要集¼大文第二云、「地蔵菩薩、毎日晨朝↢恒沙↡、周↢遍シテ法界↢苦衆生↡。所有悲願超タリ↢余大士↡。¬十輪経¼意

-かの ¬きょう¼ のにいはく、 一日いちにちぞうどくだいみょうもんしょうするは、 ていこうなかに、 しゃとくしょうするにすぐれり。 たとひひゃくこうなかにそのどく讃説さんせつすとも、 なほくすことあたはず。 ゆゑにみなまさにようすべし。

¬経¼偈云、一日称ルハ↢地蔵功徳、大名聞↡、勝タリ↣倶胝劫、称スルニ↢余智者↡。仮使百劫讃↢説トモ功徳↡、猶尚 ナホ ↠能↠尽コト。故皆当↢供養↡。

かんおんさつのいはく、 しゅじょうありて三たびわがしょうせんに、 きてすくはずといはばしょうがくらじ。 ¬みょうかいきょう¼ のこころ

観世音菩薩、衆生有↠苦三セムニ↢我名↡、不トイハ↢往不↠取↢正覚↡。 ¬ミヤウ海恵経¼意

-もしひゃくせんてい那庾多なゆた諸仏しょぶつみょうごうしょうねんすることあらん。 またしばらくのときにわがみょうごうにおいてこころいたしてしょうねんすることあらん。 かの二どくびょうどうびょうどうなり。 もろもろのわがみょうごうしょうねんすることあるものは、 一切いっさいみな退転たいてんるなり。 ¬じゅう一面いちめんぎょう¼

若有ラム↣称↢念スルコト百千倶胝那庾多諸仏名号↡。復有ラム↧暫クノ↢我名号↡至シテ↠心称念スルコト↥。彼二功徳平等平等。諸↣称↢念スルコト名号、一切皆得ル也↢不退転地↡。 ¬十一面経¼

-しゅじょうきてはなれてだつんとまたごく遊戯ゆげして、 だいかわりてけん」 ¬しょう観音かんのんぎょう¼ の

衆生聞↠名↠苦ムト↢解脱亦遊↢戯シテ地獄↡、大悲代ケム↠苦¬請観音経¼偈

(20)

一 ¬ようしゅう¼ の大文だいもん第八だいはち (巻下) にいはく、 「¬占察せんざつきょう¼ のかんにのたまはく、 もしひとほう現在げんざいじょうこくしょうぜんとおもはば、 まさにかのかいぶつみょうしたがひて、 せん誦念じゅねんして一心いっしんにしてらんにすべし。 かみのごとく観察かんざつするものは、 けつじょうしてかのぶつじょうこくしょうずることを善根ぜんごんぞうじょうして、 すみやかに退たいじょうぜん。 かみのごとく観察かんざつするものは、 ぞうさつ法身ほっしんおよび諸仏しょぶつ法身ほっしんうえにおのれしんとをかんずるなり。 びょうどう無二むになりしょうめつなり、 じょうらくじょうにして、 どく円満えんまんせりと。 またおのがじょうなり、 如幻にょげんなり、 いとふべきとかんずるなり。」

一 ¬要集¼大文第八云、「¬占察経¼下巻、若人欲↠生ムト↢他方現在浄国、応↧当↢彼世界仏之名字↡、専意誦念シテ一心ニシテ不乱ニス↥。如↠上観察スル、決定シテ↠生コトヲ↢彼浄国↡。善根増長シテ、速ゼム↢不退↡。↠上観察スル、観ズル也↢地蔵菩薩法身及諸仏法身上己自身↡。平等无二、不生不滅、常楽我浄ニシテ、功徳円満セリト。又観ズル↢己无常ナリ、如幻、可キト↠厭↡也。」

(21)

一 ¬ようしゅう¼ の大文だいもんだいじゅう (巻下) にいはく、 「ふ。 極楽ごくらくかいることいくばくのところぞ。 こたふ。 ¬きょう¼ にのたまはく、 これより西方さいほうじゅう万億まんおくぶつぎて極楽ごくらくかいあり。 ある ¬きょう¼ にいはく、 これより西方さいほうにこのかいることひゃきゅせんてい那庾多なゆたぶつぎてぶつかいあり。 づけて極楽ごくらくといふ。

一 ¬要集¼大文第十云、「問。極楽世界ルコト答。¬経¼云、従↠此西方過↢十万億仏土↡有↢極楽世界↡。¬経¼云、従↠是西方ルコト↢此世界ギテ↢百千倶胝那庾多仏土↡有↢仏世界↡。名↢極楽↡。

-ふ。 二きょうなにゆゑぞどうなる。 こたふ。 ¬ろん¼ のこうの ¬しょ¼ のこころにいはく、 ていといふは、 ここにはおくとなすなり。 那庾多なゆたとは、 このけんがいしゅあたれり。 ぞくのいはく、 十せんまんといふ。 十まんおくといふ。 十おくちょうといふ。 十ちょうけいといふ。 十けいがいといふ。 がいはなほこれ大数だいしゅなり。 ひゃくせんていはすなはち十万億まんおくなりおくに四あり。 一はじゅうまん、 二はひゃくまん、 三は千万せんまん、 四は万々まんまんなり。 いまおくといふはすなはちこれ万々まんまんなり。」

問。二経何故不同ナル答。¬論¼智光¬疏¼意、言↢倶胝↡者、此ニハ↠億也。那庾多アタレリ↢此間ガイシユ↡也。世俗、十千曰↠万。十万↠億。十億テウ。十兆↠経。十経曰↠ガイ。欬シユ也。百千倶胝即十万億。億↢四位↡。一者十万、二者百万、三者千万、四者万々。今言↠億即是万々。」

(22)

またいはく、 (論註巻下) 「きょうかんじゅし、 さいまもること一日いちにちいちするも、 そのふく不可ふかなり。 おのづからゆいおっいたりぬ。 所願しょがんのものを

又云、「誦↢持経巻↡、最後ルコト一日一夜スルモ、其福不可計。自致↢阿惟越致↡。所願者

-ふ。 もししかればものけつじょうしてしんずべし。 なにゆゑぞくといへどもしんしんある。 こたふ。 りょう清浄しょうじょうぶつみょうかんやくし、 いよだつことをなしばっしゅつのごとくせんもの、 みなことごとく宿しゅく宿命しゅくみょうにすでにぶつをなせるものなり。 それひとありてうたがひてしんぜざらんものは、 みな悪道あくどうなかによりきたりて、 おうあくいまだきざるなり。 これいまだだつざるなり。」

問。若爾決定シテ↠信。何故↠聞有↢信不信↡。答。无量清浄仏ミヤウ歓喜ヤク、身毛為イヨダツコトヲクセム↢抜出↡者、皆悉宿世宿命セルモノ也↢仏事↡。其有↠人疑ヒテラム↠信、皆従↢悪道↡来アウ悪未ルナリ↠尽。此未ル也↠得↢解脱↡也。」

(23)

一 ¬大般だいはつはんぎょう¼ のだい二十四 (北本徳応品) にのたまはく、

一 ¬大般涅槃経¼第二十四言、

西方さいほうこのしゃかいること四十二ごうしゃとう諸仏しょぶつこくわたりてかしこにかいあり、 づけてしょうといふ。 かのをなんがゆゑぞづけてしょうといふ。 そのしょ厳麗ごんれい、 ことごとくみなびょうどうにして差別しゃべつあることなし。 なほし西方さいほう安楽あんらくかいのごとし。 また東方とうぼう満月まんがつかいのごとし。」

西方去ルコト↢此娑婆世界↡度↢二恒河沙等諸仏国土↡彼↢世界↡、名↢无勝↡。彼↢无勝↡。其所有厳麗之事、悉皆平等ニシテ↠有コト↢差別↡。猶西方安楽世界↡。↢東方満月世界↡。」

(24)

一 ¬しょうかんおんさつきょう¼ にのたまはく、 一丁半

一 ¬請観世音菩薩経¼言、

「そのときそんちょうじゃげてのたまはく、 ここをることとおからず、 まさしく西方さいほうまします、 ぶつそんりょう寿じゅなづく。 かれにさつあり、 かんおんおよびだいせいづく。 つねにだい憐愍れんみんをもつて一切いっさいやくさいす。」

「爾時世尊告↢長者↡言ハク、去コト↠此不↠遠カラ、正シクマシマ↢西方↡、ナヅ↢仏世尊无量寿↡。彼↢菩薩↡、名↢観世音及大勢至↡。恒↢大悲憐愍↡一切救↢済スクフ 苦厄。」

(25)

一 ¬りょう寿じゅかんぎょう¼ にのたまはく、 二丁半

一 ¬无量寿観経¼言、

「そのときそんだいげたまはく、 なんぢいまれりやいなや。 阿弥陀あみだぶつここをることとおからず。 なんぢまさにねんしてあきらかにかのくにじょうごうじょうじたまへるひとをかんずべし。」

爾時世尊告韋提希、汝今知不。阿弥陀仏去此不遠。汝当繋念諦観彼国浄業成者。」

(26)

一 ¬だいほうしゃくきょう¼ かん一七 (如来会) にのたまはく、十五丁半

一 ¬大宝積経¼巻一七言、

「そのときなんぶつにまうしてまうさく、 そん、 かの法処ほうしょさつだいじょうじたまへるは、 過去かことやせん、 らいとやせん、 いま現在げんざいほうかいとやせん。 ぶつなんげたまはく、 西方さいほうここをること十万じゅうまんおく仏刹ぶっせつにして、 かしこにかいあり。 いまげんにましましてほうきたまふ。 りょうさつおよびしょうもんしゅぎょうにょうせり。」

爾時阿難白↠仏言、世尊、彼法処菩薩成↢菩提↡者、↢過去↡、為↢未来耶↡、為↢今現在他方世界耶↡。仏告↢阿難↡、西方去↠此十万億仏刹、彼有↢世界↡。今現在説法。无量菩薩及声聞衆、恭敬囲繞。」

(27)

一 ¬般舟はんじゅ三昧ざんまいきょう¼ のじょう (行品) のたまはく、 八丁半

一 ¬般舟三昧経¼上言、

西方さいほう阿弥陀あみだぶつ、 いまげんにまします。 所聞しょもんしたがひてまさにねんずべし。 このけんること千億せんおくまん仏刹ぶっせつなり、 そのくにしゅだいづく。 在衆ざいしゅさつちゅうおうにしてきょうき、 一切いっさいつねに阿弥陀あみだぶつねんぜり。」

西方阿弥陀仏、。随↢所聞↡当↠念。去ルコト↢此↡千億万仏刹、其↢須摩提↡。在衆菩薩中央説経一切常念阿弥陀仏。」

(28)

一 ¬しょうさんじょうきょう¼ にのたまはく、

一 ¬称讃浄土経¼言、

「そのときそんしゃ利子りしげたまはく、 なんぢいまれりやいなや。 これより西方さいほう、 このかいひゃくせんてい那庾多なゆたぶつぎてぶつかいあり、 づけて極楽ごくらくといふ。 そのなかそんりょう寿じゅおよびりょうこう如来にょらいおうしょう等覚とうがくじゅうごう円満えんまんづけたてまつる。 いま現在げんざいにかしこに安隠あんのんじゅうして、 もろもろのじょうのために甚深じんじんみょうほう宣説せんぜつしたまひて、 しゅしょうやく安楽あんらくしめたまへり。」

爾時世尊告タマハク↢舎利子↡、汝今知レリヤナヤ西方、去↢此世界↡過↢百千倶胝那庾多仏土↡有↢仏世界↡、名↢極楽↡。世尊ケタテマツル↢无量寿及无量光・如来・応・正等覚、十号円満↡。今現在彼安隠住持シテ、為↢諸有情↡宣↢説シタマヒテ甚深微妙↡、令メタマヘリ↢殊勝利益安楽↡。」

(29)

一 ¬しょう阿弥陀あみだきょう¼ にのたまはく、

一 ¬小阿弥陀経¼言、

「これより西方さいほうじゅう万億まんおくぶつぎてかいあり、 づけて極楽ごくらくといふ。 そのぶつまします、 阿弥陀あみだごうす。 いまげんにましましてほうきたまふ。 しゃほつ、 かのをなんがゆゑぞづけて極楽ごくらくとする。 そのくにしゅじょう、 もろもろのあることなし、 ただもろもろのらくく。 ゆゑに極楽ごくらくづく。」

従↠是西方↢十万億仏土↡有↢世界↡、名曰↢極楽↡。其土有↠仏、号↢阿弥陀↡。今現シテタマフ↠法舎利弗、彼↢極楽↡。其国衆生、無↠有コト↢衆苦↡、タヾ↢諸↡。故↢極楽↡。」

(30)

一 ¬だい阿弥陀あみだきょう¼ のじょうにのたまはく、 十三丁

一 ¬大阿弥陀経¼上言、

ぶつなんげたまはく、 阿弥陀あみだぶつしてよりこのかた、 およそ十しょうこうなり。 しょこくしゅだいづく。 まさしく西方さいほうにあり。 このえんだいかい千億せんおくまんしゅせん仏国ぶっこくる。 そのくにはみなねん七宝しっぽうなり。 その一ぽうびゃくごん、 二ほう黄金おうごん、 三ぽうすいしょう、 四ほう琉璃るり、 五ほうさん、 六ぽうはく、 七ぽうしゃなり。 これを七宝しっぽうとなす。」

仏告↢阿難↡、阿弥陀作仏已来、凡十小劫。所居国土名↢須摩題↡。正在↢西方↡。去↢是閻浮提地界千億万須弥山仏国↡。其国地皆自然七宝。其一宝白銀、二宝黄金、三宝者水精、四宝琉璃、五宝珊瑚、六宝琥珀、七宝車渠。是為↢七宝↡。」

(31)

またのたまはく、 (大阿弥陀経上) 「またしゅんしゅうとうあることなし、 また大寒だいかんなくまた大熱だいねつなし。 つねに調じょうちゅうちやくにしてはなはだぜんならびなし。」

又云、「亦無↠有ルコト↢春夏秋冬↡、亦無↢大寒↡↢大熱↡。常和調中チヤクニシテ快善無ナラビ。」

(32)

またのたまはく、 (大阿弥陀経上) 「ぶついつさつげたまはく、 阿弥陀あみだぶつ頂中ちょうちゅうこうみょうきわめてだいみょうなり。 その日月にちがつしょうしんみなくうなかにありてじゅうして、 またてんすべからず。 ぎょうはこびてまたしょうこうあることなし、 そのみょうみなおおはれてまたえず。 ぶつこうみょうくになかてらしたまふに、 およびほう仏国ぶっこくえんしょうしたまふに、 つねにだいみょうなり。 おわりくらきことあることなし。

又云、「仏告ハク↢阿逸菩薩↡、阿弥陀仏頂中光明極メテ大明。其日月星辰↢虚空↡住止シテ↠可廻転↡。運↠行↠有ルコト↢精光↡、其↡。仏光明照シタマフニ↢国↡、及焔↢照シタマフニ他方仏国↡、常大明オハリ↠有ルコトクラキコト↡。

ときにそのくに一日いちにちにちあることなし、 またにちじゅうにちなし、 またじゅうにち一月いちがつなし、 またがつじゅうがつさいじゅうさいなし、 またひゃくさい千歳せんざいなし、 また万歳まんざい億万おくまんざいなし、 ひゃく千億せんおく万歳まんざいなし、 一劫いっこう十劫じっこうひゃくこう千劫せんこうあることなし、 万劫まんごうひゃく万劫まんごうなし、 千万せんまんごうなくして、 ひゃく億万おくまんごうなり。

↠有ルコト↢一日・二日↡、↢五日・十日↡、↢十五日・一月↡、↢五月・十月・五歳・十歳↡、↢百歳・千歳↡、↢万歳・億万歳↡、無↢百千億万歳↡、無↠有コト↢一劫・十劫・百劫・千劫↡、無↢万劫・百万劫↡、無シテ↢千万劫↡、百億万劫

阿弥陀あみだぶつこうみょうあきらかにしてきわめあることなし。 きゃくのちしゅこうしゅこうにして、 かさねてまたしゅこうしゅこうしゅこうにて、 おうしゅなり。 つひにまさにみょうするべきときあることなし。」

阿弥陀仏光明明ニシテ↠有コト ハメ。却無数劫無数劫ニシテ、重ネテ無数劫無数劫ニテ、無央数ナリツイ↠有ルコト↢当↠冥↡。」

(33)

一 ¬だいりょう寿じゅきょう¼ のじょうにのたまはく、 十五丁

一 ¬大无量寿経¼上言、

なんぶつにまうさく、 法蔵ほうぞうさつすでにじょうぶつしてめつりたまへりとやせん、 いまだじょうぶつしたまはぬとやせん、 いまげんにましますとやせむと。 ぶつなんげたまはく、 法蔵ほうぞうさつ、 いますでにじょうぶつしてげん西方さいほうにまします。 ここをることじゅう万億まんおくせつなり。 そのぶつかいづけて安楽あんらくといふ。

阿難白サク↠仏、法蔵菩薩成仏シテリタマヘリトヤ↢滅度↡、↠未トヤ↢成仏シタマハ↡、ムトストヤ↡。仏告ハク↢阿難↡、法蔵菩薩、成仏シテ↢西方↡。去ルコト↠此十万億。其世界↢安楽↡。

なん、 またひたてまつる、 そのぶつじょうどうしたまひしよりこのかたいくばくのときたまへりとかせんと。 ぶつののたまはく、 じょうぶつよりこのかたおよそ十劫じっこうたまへり。 その仏国ぶっこくには、 ねん七宝しっぽうきんぎん瑠璃るりさんはくしゃのうごうじょうしてとなせり。」

阿難、又問タテマツル、其仏成道シタマヒシヨリ已来ムトタマヘリトカイクバク↡。ハク、成仏ヨリ已来タマヘリ↢十劫↡。仏国土ニハ、自然七宝、金・銀・瑠璃・珊瑚・琥珀・硨磲・碼碯合成シテ↠地。」

(34)

またのたまはく、 (大経巻上) 「またそのこくしゅせんおよび金剛こんごうてっ一切いっさい諸山しょせんなし。 また大海だいかいしょうかい谿けいしょうこくなし。 ぶつ神力じんりきのゆゑに、 んとおもへばすなはちげんず。 またごく餓鬼がきちくしょう諸難しょなんしゅなし。 また四時しじ春秋しゅんじゅうとうなし。 さむからあつからず、 つねにおだやかに調じょうちゃくなり。」

又云、「又其国土↢須弥山及金剛鉄囲、一切諸山↡。亦無↢大海・小海・谿ケイヒロキタニミゾシヤウヰ コクタニ↡。仏神力、欲ヘバ↠見ムト則現亦無↢地獄・餓鬼・畜生、諸難之趣↡。亦無↢四時春秋冬夏↡。サムカラアツカラ、常カニ調チヤク。」

(35)

一 ¬だいりょう寿じゅきょう¼ のじょうにのたまはく、 二〇丁半

一 ¬大无量寿経¼上言、

「ただほういんじゅんするがゆゑに、 てんにんあり。 げんみょうたんじょうにしてへて希有けうなり。 容色ようしきみょうにして、 てんにあらずひとにあらず。 みなねん虚無こむしんごくたいけたり。」

但因↢順スルガ余方↡故、有↢天・人之名↡。顔貌端正ニシテヘテ↠世希有。容色微妙ニシテ、非↠天↠人タリ↢自然虚無身、無極タイ↡。」

(36)

またじょうにのたまはく、 十六願成就 二〇丁

又上言、十六願成就

さんなんあることなし、 ただねんらくこえあり。 このゆゑにそのくにづけて安楽あんらくといふ。」

↠有ルコト↢三塗苦難↡、タヾ↢自然快楽↡。是故↢安楽↡。」

(37)

おなじきかんにのたまはく、 七丁

同下巻言、

さつしょ波羅はらみつきょうし、 くうそうがん三昧ざんっまいしょうめつもろもろの三昧さんまいもんしゅして、 しょうもん縁覚えんがくおんせり。」

究↢竟菩薩諸波羅蜜↡、修シテ↢空・無相・無願三昧、不生不滅諸三昧門↡、遠↢離セリ声聞・縁覚之地↡。」

(38)

一 ¬金光こんこう明経みょうきょう¼ のかん二 「分別ふんべつ三身さんしんぼん」 にのたまはく、

一 ¬金光明経¼巻二「分別三身品」云、

「この法身ほっしんにおいてよく如来にょらい種々しゅじゅごうあらはす。 善男ぜんなん、 これしん因縁いんねんきょうかいしょところほんる、 なん思議じぎがゆゑに。 もしこのさとれば、 このしんはすなはちこれだいじょうなり、 これ如来にょらいしょうなり、 これ如来にょらいぞうなり。」

「於↢此法身↡能ハス↢如来種種事業↡。善男子、是身因縁果依↠本、難思議。若レバ↢此義↡、是身大乗如来性如来蔵。」

(39)

一 ¬金光こんこう明経みょうきょう¼ のかん三 「めつごうしょうぼん」 にのたまはく、

一 ¬金光明経¼巻三「滅業障品」云、

法身ほっしん一切いっさい諸法しょほうしょうぞうす。 一切いっさい諸法しょほうには法身ほっしんせっせず。」

「法身摂↢蔵一切諸法↡。一切諸法ニハ↠摂↢法身↡。」

(40)

一 ¬大般だいはつはんぎょう¼ の巻第かんだい二十一 「こうみょうへんじょうこう徳王とくおうさつぼん (北本) にのたまはく、

一 ¬大般涅槃経¼巻第二十一「光明遍照高貴徳王菩薩品」 (北本) 云、

こうみょうはすなはちこれ念仏ねんぶつなり、 念仏ねんぶつはこれを常住じょうじゅうづく、 常住じょうじゅうほう因縁いんねんしたがはず。」

「光明者即是念仏、念仏↢常住↡、常住之法↢因縁↡。」

(41)

一 ¬じゅういん¼ のだい (往生拾因) にいはく、

一 ¬十因¼第九 (往生拾因) 云、

一心いっしん阿弥陀あみだぶつしょうねんすれば、 法身ほっしん同体どうたいのゆゑに、 かならずおうじょうすることを。 ¬双巻そうかんぎょう¼ にのたまはく、 諸法しょほうしょう一切いっさいくう無我むがなりと通達つうだつすれども、 もつぱらじょうぶつもとめて、 かならずかくのごときせつじょうずと。 ¬信論しんろん¼ にいはく、 しゅ多羅たらせつのごとし。 もしひと西方さいほう極楽ごくらくかい阿弥陀あみだぶつ専念せんねんして所修しょしゅ善根ぜんごんこうして、 かのかいしょうぜんとがんすればすなはちおうじょうすることを、 つねにぶつたてまつりて、 ゆゑにつひに退たいすることあることなし。 もしかのぶつ真如しんにょ法身ほっしんかんじてつねにつとしゅじゅうすればひっきょうじてしょうずることをじょうじゅじゅうす。」

「一心称↢念阿弥陀仏↡、法身同体故、必得↢往生↡。¬双巻経¼云、通↢達スレドモ諸法性一切空・無我也ト↡、専↢浄仏土↡、必成ズト↢如↠是刹↡。¬起信論¼云ハク、如↢修多羅↡。若人専↢念シテ西方極楽世界阿弥陀仏↡所修善根廻向シテ、願↣求スレバ↢彼世界↡即↢往生↡、常タテマツリテ↠仏、故↠有ルコト↠退コト。若ジテ↢彼真如法身↡常修習スレバ畢竟ジテ↠生、住↢定聚↡。」

(42)

一 ¬だいじゅう念仏ねんぶつ三昧ざんまいきょう¼ のだい (讃三昧相品) にのたまはく、

一 ¬大集念仏三昧経¼第七 (讃三昧相品) 云、

「まさにるべし、 かくのごときの念仏ねんぶつ三昧ざんまいは、 すなはちそうじて一切いっさい諸法しょほうせっすることをなす。 このゆゑにかのしょうもん縁覚えんがくじょうきょうがいにあらず。 もしひとしばらくもこのほうくをかんもの、 この ひとは当来とうらいけつじょうしてぶつるべし、 うたがひあることなかれ。」

「当、如キノ↠是念仏三昧、則ソウジテスルコトヲ↢一切諸法↡。是故↢彼声聞・縁覚、二乗境界↡。若人暫クモカム↠説クヲ↢此、是人↢来決定シテ↟仏、無↠有ルコト也。」

(43)

一 ¬大般だいはつはんぎょう¼ の巻第かんだい (北本如来性品) にのたまはく、

一 ¬大般涅槃経¼巻第四 (北本如来性品) 言、

善男ぜんなん今日こんにちよりはじめてしょうもん弟子でし食肉じきにくゆるさず。 もし檀越だんおつしんけんときは、 このじきにくそうのごとしとかんずべし。 しょうさつまたぶつにまうしてまうさく、 そん、 いかんぞ如来にょらい食肉じきにくゆるしたまはざると。 善男ぜんなん、 それ食肉じきにくだいたねだんずればなり。 しょうまた如来にょらいにまうさく、 なんがゆゑぞさき比丘びく三種さんしゅじょうにくじきせんことをゆるしたまふや。 しょう、 この三種さんしゅじょうにくしたがひて漸制ぜんせいす。 善男ぜんなん、 かのけん所見しょけんどうずべからず。 如来にょらいせいしたまふところの一切いっさい禁戒きんかい、 おのおの意々いいことなることあるがゆゑに、 三種さんしゅじょうにくじきすることをゆるす。 そうのゆゑに十種じっしゅにくだんず。 そうのゆゑに一切いっさいことごとくだんず。 自死じしするものにおよぶ。 しょう、 われ今日こんにちよりもろもろの弟子でしせいす、 また一切いっさいにくじきすることをざれとなり。」

「善男子、従↢今日↡始ユル↢声聞弟子食肉↡。若ケム↢檀越信施↡之、応↠観↣是シト↢子肉↡。迦葉菩薩復白シテ↠仏言、世尊、云何如来ルトユルシタマハ↢食肉↡。善男子、食肉ズレバ也↢大慈↡。迦葉又マフサク↢如来↡、何ユルシタマフヤ↣比丘食セムコトヲ↢三種浄肉↡。迦葉、是三種浄肉↠事漸制 善男子、↠応↠同↢彼ケン所見↡。如来所↠制シタマフ一切禁戒、各有↠異↢意意↡故ユル↠食コトヲ↢三種浄肉↡。異想↢十種↡。異想一切悉オヨ↢自死スルモノ↡。迦葉、我従↢今日↡制↢諸弟子↡、不レト也マタスルコトヲ↢一切↡也。」

(44)

一 巻第かんだい三十一 「獅子吼ししくさつぼんだい十一の五 (北本) にのたまはく、

一 巻第三十一「獅子吼菩薩品」第十一之五言、

「また誓願せいがんおこしてほうしゅじょうせむとおもふがためのゆゑに、 あるいはしょう鹿ろくゆう鴿こうこうりゅうこんちょうぎょべつじゃしんとなる。

「復発シテ↢誓願↡為↠欲フガ↣説↠法↡度ムト↢衆生↡故、或シヤウカモシヽ鹿ロクカノシヽクマ・鴿ハト・獼猴サル ・龍・金翅鳥・魚・ベチウミノカメウサギ蛇・牛・馬之身↡。

(45)

一 だい十八かん (北本梵行品)に、 「あるいはのたまはく、 如来にょらい十種じっしゅにく比丘びくじきすることをゆるさず。 なんじゅうとする。 にんじやぞう師子ししちょこうなり、 そのはことごとくゆるすと。 あるいはのたまはく、 一切いっさいゆるさずと。」

一 第十八巻、「或言マハク、如来ユル↣比丘食コトヲ↢十種↡。ナン↠十ニンジヤザウ・師子・チヨ獼猴ミゴ、其ユルスト。或、一切ユル。」

(46)

一 ¬大般だいはつはんぎょう¼ の巻第かんだい三十三 (北本師子吼品) に、

一 ¬大般涅槃経¼巻第三十三 (北本師子吼品)

さつ摩訶まかさつきんにおいてへたるしゅじょうて、 ぎょしんりょうじゅんとなりてまたこのがんをなす。 ねがはくはもろもろのしゅじょう、 わがにくらんときるにしたがしょうしたがひてわがにくじきするによりてかつはなれて、 一切いっさいことごとくのく多羅たらさんみゃくさんだいしんおこす。 さつ発願ほつがんす、 もしわれによることあらん。 かつものといへども、 らいにすみやかに二十五かつうれえおんすることをん。 さつ摩訶まかさつ、 かくのごとくのけてしん退たいせざるものは、 まさにるべし、 ひつじょうしてのく多羅たらさんみゃくさんだいん。 またつぎさつ疫疾やくしつにおいてびょうものは、 このゆいをなす。 薬樹やくじゅおうのごとし。 もしびょうしゃありてくきえだはなかわはだる、 ことごとくやまいゆることをねがはくはわがこのもまたかくのごとし。 もしびょうしゃありてしょうもんれ、 にくない骨髄こつずいぶくじきせば、 やまいことごとくじょせん。 ねがはくはもろもろのしゅじょう、 わがにくじきせんとき悪心あくしんしょうぜずしてにくじきするがごとくせよ。 われやまいしおはりてつねに説法せっぽうのために、 ねがはくはかれを信受しんじゅゆいてんぎょうせん。」

「菩薩摩訶薩、於カム↡見ヘタル衆生↡、作↢亀魚身無量由旬↢是↡。願クハ衆生、取ラム↢我、随↠取↠生↠食スルニ↢我↡離↢飢渇↡、一切悉↢阿耨多羅三藐三菩提↡。菩薩発願、若ラムルコト↠我。雖↢飢渇↡、未来カニ↣遠↢離スルコトヲ廿五有飢渇。菩薩摩訶薩、受↢如↠是↡心不↠退、当、必定シテ↢阿耨多羅三藐三菩提↡。菩薩、於疫疾ヤクシチ↡見↢病苦↡者↢是思惟↡。如↢薬樹王↡。若↢病者↡取クキエダハナカハ↠膚、悉ユルコトヲ↠病。願亦復 タ↠是。若↢病者↡声聞↠身ブク↢食セバ血肉乃至骨髄↡、セム イ ヤス。願衆生、食セム↢我、不シテ↢悪心↡如クセヨ↠食スルガ↢子肉↡。↠病↢説法↡、願クハ信受思惟転教セム。」

(47)

一 ¬大般だいはつはんぎょう¼ の巻第かんだい三十四 (北本迦葉品) にのたまはく、

一 ¬大般涅槃経¼巻第三十四言、

一法いっぽうなかにおいて二しゅせつをなし、 一みょうほうにおいてりょうく、 一なかにおいてりょうき、 りょうにおいてりょうく。」

↢一法↡作↢二種↡、於↢一名↡説↢无量↡、於↢一義↡説↢无量↡、於↢无量↡説↢无量↡。」

(48)

一 ¬大般だいはつはんぎょう¼ の巻第かんだい二十一 (北本徳王品) にのたまはく、

一 ¬大般涅槃経¼巻第二十一言、

「またじゅういちきょうあり、 ぶつりゃくのぞく。 またかくのごときの深密じんみつなし。 今日こんにちこのきょうしかもこれをることを善男ぜんなん、 これをかざるをしかもよくくことをづく。 きおはりてやくするものなり。 もしよくこの大般だいはつはんぎょうちょうじゅして、 ことごとくよくつぶさに一切いっさい方等ほうどうだいじょうきょうてん甚深じんじん義味ぎみる。 たとへば男女なんにょ明浄みょうじょうきょうにおいてその色像しきぞうること了々りょうりょうぶんみょうなるがごとし。」

「復有↢十一部経↡、除↢毘仏略↡。↢如↠是深密義↡。今日此経而↠知コトヲ↟之。善男子、是↢不↠聞而↠聞コトヲ利益スル。若聴↢受シテ大般涅槃経↡、悉↢一切方等大乗経典甚深義味↡。譬ヘバ↧男女於↢明浄鏡↡見ルコト↢其色像↡了了分明ナルガ↥。」

(49)

一 ¬大般だいはつはんぎょう¼ の巻第かんだい二十五 (北本徳王品) にのたまはく、

一 ¬大般涅槃経¼巻第廿五言、

「もしよくこのじゅう二部にぶきょう甚深じんじんものを、 づけてちょうほうとなす。 ちょうほうとは、 すなはちこれだいじょう方等ほうどうきょうてんなり。 方等ほうどうきょうくをしんちょうほうづく。 しんちょうほうとは、 すなはちこれだいはんぎょうちょうじゅす。」

「若↢是十二部経甚深、名↢聴法↡。聴法、則大乗方等経典。聴クヲ↢方等経↡名↢真聴法↡。真聴法、即聴↢受大涅槃経↡。」

(50)

一 ¬大般だいはつはんぎょう¼ の巻第かんだい (北本如来性品) にのたまはく、

一 ¬大般涅槃経¼巻第九 (北本如来性品)言、

しょうぼうめっせんとほっせんに、 このきょうまづまさにこのもっすべし。 まさにるべし、 しょうぼうそうなり。 しょうぼうめっせんとほっせんにまさに賓けいひんいたりてそくけつにてひそかにちゅうもっすべし。 あるいは信者しんじゃあり、 信者しんじゃあらん。 かくのごときのだいじょう方等ほうどうきょうてんかんほう、 ことごとくらん。 このきょうもっしおはりて、 一切いっさいしょだいじょうきょうてん、 みなことごとく滅没めつもつせん。」

「正法欲セムニ↠滅セムト、是↢此地↡。当↠知、正法裏相 正法欲セムニ↠滅セムト↧至賓ケイヒン↡具足無欠ニテヒソカ↦地中↥。或↢信者↡、有ラム↢不信者↡。如↠是大乗方等経典、甘露法味、悉ラム↠地。是経没、一切諸余大乗経典、コトゴト滅没セム。」

(51)

一 ¬大般だいはつはんぎょう¼ の巻第かんだい (北本巻七如来性品) にのたまはく、

一 ¬大般涅槃経¼巻第六 (北本巻七如来性品)言、

「もしきて如来にょらいしゅじょうせむとほっすためのゆゑに方等ほうどうきょうたまふといふことあらば、 まさにるべし、 このひとしんにわが弟子でしなり。 もし方等ほうどうきょうけざることあらば、 まさにるべし、 このひとはわが弟子でしににあらず、 仏法ぶっぽうのためにしゅっせざるなり。 すなはちこれ邪見じゃけんどう弟子でしなり。」

「若ラバ↫説コト↪如来↠欲↠度セムト↢衆生↡故タマフト↩方等経↨、当↠知、是我弟子。若↠不ルコト↠受↢方等経、当知、是↢我弟子↡、不↧為↢仏法↡而出家↥也。即是邪見外道弟子也。」

(52)

一 ¬大般だいはつはんぎょう¼ の巻第かんだい二 「寿じゅみょうぼん」 の二 (北本) に、

一 ¬大般涅槃経¼巻第二「寿命品」之二、

「なんぢいままさに諸仏しょぶつきょうがいかんずべし。 ことごとくみなじょうなり。 しょぎょうしょうそうもまたかくのごとし。 すなはちじゅんのためにきてのたまはく、

今当↢諸仏境界↡。悉皆無常也。諸行性相亦復 タ如↠是。即↢純陀↡而説↠偈タマハク

一切いっさいのもろもろのけんに、 しょうずるものはみなす。 寿じゅみょうりょうなりといへども、 かならずまさにくることあるべし。

一切世間 生ズル皆帰↠死 寿命雖↢无量也ト↡ 要必↠有↠尽ルコト

それさかりなるものはかならずおとろふることあり、 合会ふものはべつあり。 そうねんなれどもひさしくとヾまらず。 さかりなるいろやまいおかさる。

サカリナルモノハルコト 合会アフモノ↢別離↡ シヤウナレドモサカンナルトシ  ↢久トヾマ↡ サカリナルオカ

いのちのためにまる。 ほうとしてつねのものあることなし。 諸王しょおうざいれども、 勢力せいりき等双とうそうなけむ。

↠死 無↠有ルコト↢法トシテ↡ 諸王レドモウルコト ↢自在↡ 勢力無ケム↢等双↡

一切いっさいみなせんどうす。 寿じゅみょうもまたかくのごとし。 しゅりんきわなし、 てんしてそくなけん。

一切皆センウツリオゴク 寿命↠是 衆苦輪無キハ 流転シテケム↢休息↡

三界さんがいみなじょうなり、 しょたのしみあることなし。 ほんしょうそうちかづくことあれば、 一切いっさいみなくうなり」

三界無常 諸有無↠有ルコト シミ 有レバチカヅクコト↢本性↡ 一切空无

(53)

一 ¬だい円覚えんがくきょう¼ のかんにのたまはく、 (一丁半)

一 ¬大円覚経¼下巻言、 (一丁半)

善男ぜんなんじょうみょうがくもろもろの十方じっぽうへんじて如来にょらい出生しゅっしょうす。 一切いっさいほう同体どうたいびょうどうなり。」

「善男子、无上妙覚遍ジテ↢諸十方↡出↢生如来↡。与↢一切法↡同体平等。」

(54)

一 ¬しゅりょうごんぎょう¼ の巻第かんだい十に、

一 ¬首楞厳経¼巻第十、

「もろもろの十方じっぽうじゅうしゅじょう、 ことごとくそのたぐいつくす。」

「見↢諸十方十二衆生↡畢ツク↢其↡。」

(55)

一 ¬ごんぎょう¼ の巻第かんだい三に、 (晋訳廬舎那仏品 )

一 ¬華厳経¼巻第三、

一切いっさい十方じっぽうぶつかい。」

「一切十方仏世界。」

(56)

一 ¬大般だいはつはんぎょう¼ の巻第かんだい (北本如来性品) にのたまはく、

一 ¬大般涅槃経¼巻第四言、

善男ぜんなん、 またさつ摩訶まかさつありてだいはんじゅうして、 一切いっさい十方じっぽうりょう諸仏しょぶつかいりておのれがれて、 そのなかしゅじょうことごとく迫迮はくさくなし。」 云 乃至

「善男子、復有↢菩薩摩訶薩↡住シテ↢大涅槃↡、断↢取一切十方無量諸仏世界レテ↡、其衆生悉迫迮ハクサク↡。」 乃至

(57)

一 ¬法華ほけきょう¼ の一かん (序品) にのたまはく、 十五丁

一 ¬法華経¼一巻云、

しゃほつ一切いっさい十方じっぽう諸仏しょぶつほうもまたかくのごとし。」

「舎利弗、一切十方諸仏亦如↠是。」

(58)

一 ¬ごんぎょう¼ だい三十九 (晋訳巻三八離世間品) に、

一 ¬華厳経¼第三十九、

しんおこさず、 ようもとめず、 また盗法とうほうしんおんす。」

「不↠起↢疑心↡、不↠求↢利養↡、又復遠↢離盗法之心↡。」

(59)

一 ¬ごんぎょう¼ 二ちつ十五かんの四 (晋訳巻一四十廻向品) に、

一 ¬華厳経¼二帙十五巻四、

しゅじょうをしてともにとこしなへに思議しぎじんみょうしゅじゅうせしめむとほっして、 あまねく一切いっさいしゅじょうのためのゆゑに、 思議しぎこうのあひだごくに住す。」

「欲↠令メムト↣衆生ヲシテトモ修↢習トコシナヘ不思議深妙
アマネ↢一切衆生↡故不思議劫ノアヒダ↢地獄↡。」

(60)

一 ¬だいはんぎょう¼ のかん三十一 「師子吼ししくさつぼん (晋訳巻一四十廻向品) にのたまはく、

一 ¬大涅槃経¼巻三十一「師子吼菩薩品」言、

さつ摩訶まかさつごくごうなけれども、 しゅじょうのためのゆゑにだい誓願せいがんおこしてごくなかしょうず。 善男ぜんなんおうじゃく寿いのちひゃくねんとき恒沙ごうじゃしゅじょうごくほうく。 われこれをおはりてすなはち大願だいがんおこしてごくく。 さつそのときじつにこのごうなけれども、 しゅじょうのためのゆゑにごくく。 われそのときにおいて、 ごくなかにありてりょうさいて、 もろもろの罪人ざいにんのためにじゅう二部にぶきょう広開こうかい分別ふんべつす。 諸人しょにんきおはりてあくほうしてごくむなしからしむ、 いっ闡提せんだいのぞく。 これをさつ摩訶まかさつげんしょうにあらずこの悪業あくごうくとづく。」

「菩薩摩訶薩ケレドモ↢地獄業↡、為↢衆生↡故シテ↢大誓願↡生↢地獄↡。善男子、住昔寿百年時、恒沙衆生受↢地獄↡。↠是即発シテ↢大願↡受↢地獄↡。菩薩爾ケレドモ↢是業↡、為↢衆生↡故↢地獄↡。↢爾↡、在↢地獄↡経↢无量歳↡、為↢諸罪人↡広↢開分↣別十二部経↡。諸人↢悪果報↢地獄ムナシカラ↡、除↢一闡提↡。是↧菩薩摩訶薩非↢現生↡受クト↦是悪業↥。」

(61)

一 ¬ごんぎょう¼ 巻第かんだい六十 (晋訳巻五九入法界品) にのたまはく、 二丁半

一 ¬華厳経¼巻第六十言、

えんおうのためにだいこうみょうはなち、 あまねくごくてら一切いっさいめっす。」

「為↢閻羅王↡放↢大光明↡、普↢地獄↡滅↢一切↡。」

(62)

一 ¬法華ほけきょう¼ の巻第かんだい (譬喩品) にのたまはく、

一 ¬法華経¼巻第二 (譬喩品) 言、

「ただ水草すいそうねんじて、 るところなし。」

タヾ↢水草↡ 余  ロ↠知。」

(63)

一 ¬仏説ぶっせつ像法ぞうぼうけつきょう¼ にのたまはく、

一 ¬仏説像法決疑経¼言、

十方じっぽう諸仏しょぶつならびにしょさつおよびしょうもんしゅようせんよりはしからず。 ひとありてちくしょうに一因食いんじきせん、 そのふくかれにすぐるることひゃく千万せんまんばいりょうへんなり。」

「供↢養セムヨリハ十方諸仏諸菩薩及声聞衆↡不↠如。有↠人施セム↢畜生一口因食↡、其福勝ルコト↠彼百千万倍无量无辺。」

(64)

一 ¬かんぎょう¼ にのたまはく、 ごんじょうえん

一 ¬観経¼言、欣浄縁

「ややねがはくはそん、 わがためにひろのうなきところたまへ。 われまさにおうじょうすべし。 えんだいじょくあくねがはず。 このじょくあくところごく餓鬼がきちくしょうようまんして、 ぜんともがらおおし。 ねがはくはわれらいあくこえかじ。 悪人あくにんじ。 いまそんむかひたてまつりてたいあいさんす。 ややねがはくは仏日ぶつにち、 われに清浄しょうじょう業処ごっしょんことをおしへたまへ。

ヤヽ世尊、為↠我タマヘ↧無↢憂悩↡処↥。我当↢往生↡。不↠楽↢閻浮提濁悪世↡也。濁悪地獄・餓鬼・畜生ヤウシテ、多↢不善 ガラ↡。願未来↠聞↢悪↡。↠見↢悪人↡。今向タテマツリテ↢世尊↡五体↠地求哀懴悔ヤヽ仏日、教ヘタマヘ↠我ムコトヲ↢清浄業処↡。

-そのときそんけんひかりはなたまふ。 そのひかり金色こんじきにしてあまねく十方じっぽうりょうかいてらして、 かえりてぶついただきじゅうして、 して金台こんだいとなりぬ。 しゅせんのごとし。 十方じっぽう諸仏しょぶつ浄妙じょうみょうこく、 みななかにおいてげんず。 あるいはこくあり、 七宝しっぽうごうじょうせり。 またこくあり、 もはらこれれんなり。 またこくあり、 ざいてんのごとし。 またこくあり、 玻瓈はりきょうのごとし。 十方じっぽうこく、 みななかにおいてげんず。 かくのごときらのりょうへん諸仏しょぶつこくあり、 厳顕ごんけんにしてつべし。 だいをしてせしめたまふ。

爾時世尊放タマフ↢眉間↡。其金色ニシテシテ↢十方无量世界↡、シテ↢仏↡、化シテ↢金台↡。如↢須弥山↡。十方諸仏浄妙国土、↠中↢国土↡、七宝合成セリ。復有↢国土↡、モハ是蓮華。復有↢国土↡、如↢自在天宮↡。復有↢国土↡、如玻瓈ハリ↡。十方国土、↠中。有↢如↠是无量无辺諸仏国土↡、厳顕ニシテ。令メタマフ↢韋提希ヲシテ↡。

-ときだいぶつにまうしてまうさく、 そん、 このしょぶつは、 また清浄しょうじょうにしてみなこうみょうありといへども、 われいま極楽ごくらくかい阿弥陀あみだぶつみもとしょうずることをねがふ。 ややねがはくはそん、 われにゆいおしへたまへ、 われにしょうじゅおしへたまへと↢。」

韋提希白シテ↠仏サク、世尊、是諸仏土、雖清浄ニシテ皆有↢光明↡、↠生コトヲ↢極楽世界阿弥陀仏ミモト↡。ヤヽ世尊、教↢我思惟↡、教ヘト↢我正受↡。」

(65)

一 ¬しゅりょうごんぎょう¼ の巻第かんだい五にのたまはく、

一 ¬首楞厳経¼巻第五言、

だいせい法王ほうおう、 その同倫どうりん五十二さつと、 すなはちよりちて仏足ぶっそくちょうらいぶつにまうしてまうさく、 われおうじゃくおもふに、 ごうしゃこうぶつしゅっありき、 りょうこうづく。 十二の如来にょらい、 一こうをあひぎたまひて、 そのさいぶつちょう日月にちがっこうづけたてまつりき。 かのぶつわれに念仏ねんぶつ三昧ざんまいおしへき。 たとへばひとあり、 ひとりはもはらおくすることをなし、 一人いちにんはもはらわすれんがごとし。 かくのごときにんは、 もしははず、 あるいはるにあらず。 にんあひおもふ、 ふたりの憶念おくねんふかきはかくのごとし。 ないしょうよりしょういたるに、 かたちかげとをおなじくしてあひかいせず。 十方じっぽう如来にょらいしゅじょう憐念みんねんしたまひき。 ははおもふがごとし。 もしけば、 おもふといへどもいかんせん。 もしははおもふことははおもふがごとくなるときは、 母子もししょうれどもあひおんせず。 もししゅじょうこころぶつおくねんずれば、 ぶつ現前げんぜんにも当来とうらいにもひつじょうぶつたてまつりてぶつることとおからず。 方便ほうべんらおのずからしんひらくことをること、 染香ぜんこうにんこうあり、 これすなはちづけて香光こうこうしょうごんといふがごとし。 われもといんにして、 念仏ねんぶつしんをもつてしょうにんる。 いまこのかいにおいて、 念仏ねんぶつひとせっしてじょうす。ぶつ円通えんずうはく、 われせんじゃくなく、 すべて六根ろっこんせっしてじょうねんあひぎてさん摩地まじたる。 これを第一だいいちとす。」

「大勢至法王子、↢其同倫五十二菩薩↡、即従↠座起頂↢礼仏足↡而白↠仏言、我憶↢往昔↡、恒河沙劫↢仏出世↡、名↢无量光↡。十二如来、相↢ギタマヒテ一劫↡、其最後ケタテマツリキ↢超日月光↡。彼仏教ヘキ↢我念仏三昧↡。譬ヘバ如↢有↠人一リハハラ↠憶、一人レム↡。如↠是二人、若逢↠逢、或見非↠見。二人相憶、二憶念深キハ如↠是。乃至従↠生至ルニ↠生、同クシテ↢形↡不↢相乖異↡。十方如来憐↢念シタマヒキ衆生↡。如↢母憶↠子。若子、雖↠憶フトイカ。子若憶コト↠母クナル↢母↡時、母子歴レドモ↠生相違遠。若衆生↠仏ズレバ、仏現前ニモ当来ニモ必定見タテマツリテ↠仏ルコト↠仏不↠遠。シテラ↢方便↡自得ルコト↢心開コトヲ↡、如↧染香人↢香気↡、此則名曰↦香光荘厳↥。我本因地ニシテ、以↢念仏心↡入↢无生忍↡。今於↢此界↡、摂シテ↢念仏↡帰↢浄土↡。仏問↢円通↡、我無↢選択↡、スベシテ↢六根↡浄念相ギテタル↢三摩地↡。斯為↢第一↡。」

(66)

一 ¬しゅりょうごんぎょう¼ の巻第かんだい七にのたまはく、

一 ¬首楞厳経¼巻第七言、

きょうらのかたまりりてとなし、 およびきょうちょう毒樹どくじゅをもつていだきてそのとなすに、 父母ぶもりぬ、 みなそのじきふがごとし。」

「如↧土梟等リテ↠塊為↠児、及破鏡鳥以↢毒樹果イダキテスニ↢其↡、子リヌ↢父母↡、皆フガ↦其↥。」

(67)

一 ¬しゅりょうごんぎょう¼ の巻第かんだい十にのたまはく、

一 ¬首楞厳経¼巻第十言、

十方じっぽう草木そうもく、 みなしょうしてじょうにして、 ひとなし。 草木そうもくひととなり、 ひとしてかえりて十方じっぽう草樹そうじゅる。」

「十方草木、皆称有情ニシテ、与↠人无↠異。草木為↠人、人死シテ↢十方草樹↡。」

(68)

一 ¬しゅりょうごんぎょう¼ の巻第かんだい四にのたまはく、

一 ¬首楞厳経¼巻第四言、

「すなはち殺貪せっとんをもつてほんとなす。 ひとひつじじきするをもつて、 ひつじしてひととなり、 ひとしてひつじとなる。 かくのごとくないしょうたぐい死々しし生々しょうじょうにたがひにきたりてあひくらふ。 悪業あくごうともにしょうじてらいさいきわむ。」

「則↢殺貪↡為↠本。以↢人食スルヲ↟羊、羊死シテ↠人、人死シテ。如↠是乃至十生類、死死生生タガヒクラ。悪業トモジテキハ↢未来際↡。」

(69)

一 ¬般舟はんじゅ三昧ざんまいきょう¼ のじょう (行品) にのたまはく、

一 ¬般舟三昧経¼上言、

阿弥陀あみだぶつ、 このさつかたりてのたまはく、 わがくにらいしょうせんとおもはば、 つねにわがねんずべし。 しばしばつねにまさに守念しゅねんしてそくあることなかれ。 この念仏ねんぶつもちゐるがゆゑに、 まさに阿弥陀あみだ仏国ぶっこくしょうずることを。」

「阿弥陀仏カタ↢是菩薩バチダワボサツハク、欲↣来↢生セムト我国、常ズベシ↢我↡。数数シバシバ守念シテ↠有ルコトソクヤミヤムコトルガ↢是念仏↡故、当↠生ズルコトヲ↢阿弥陀仏国↡。」

(70)

一 ¬みつぞうきょう¼ にのたまはく、

一 ¬秘密蔵経¼言、

諸仏しょぶつしゅっ本懐ほんかいは、 阿弥陀あみだぶつみょうごうかんがためなり。」

「諸仏出世本懐、阿弥陀仏名号カムガ。」

(71)

一 ¬りょう清浄しょうじょうびょう等覚どうがくきょう¼ のかんじょう (巻一意) にのたまはく、

一 ¬无量清浄平等覚経¼巻上言、

「四十八がん約対やくたいして、 二十四がん結得けっとくす。」

「約↢対シテ四十八願↡、結↢得二十四願↡。」

(72)

一 ひっめつそうもん (平等覚経巻二) にのたまはく、 にこれあり

一 必至滅度相文 (平等覚経巻二) 云、偈在之

安楽あんらくこくかいの りょうこうみょういたりて しゅぶつようす」こうみょうちゅうおう諸仏しょぶつちゅうおうなり」 (平等覚経巻一意 )

安楽国之世界 至↢无量光明土↡ 供↢養於無数仏↡」光明中王、諸仏中王也」

(73)

一 ¬法華ほけきょう¼ (巻二 譬喩品) にのたまはく、 「無智むちひとなかにして このきょうくことなかれ」

一 ¬法華経¼言、「無智人中 莫説此経」

(74)

一 ¬じゅうおうじょうきょう¼ (意) にのたまはく、

一 ¬十往生経¼言、

無智むちしんひとなかにしてこのきょうくことなかれ」 ¬安楽あんらくしゅう¼ かんまつにあり

无智无信ニシテ↠説クコト↢是↡」¬安楽集¼下巻ニアリ

(75)

一 ¬尼母びにもきょう¼ (巻四) にのたまはく、 大石だいせきをもつてぶつちたてまつる。 諸天しょてんすなはちこのいしりてざんく。 しょうせきありてれたるきたりてぶつみあしやぶる。」

一 ¬尼母経¼云、「以↢大石チタテマツル↠仏。諸天即↢此他山↡。有↢小石↡レタルヤブ↢仏ミアシ↡。」

(76)

一 ¬金剛こんごう宝戒ほうかいしょう¼ のじょうにいはく、

一 ¬金剛宝戒章¼上云、

調じょうだつ悪心あくしんおこしてすなはち臥長ふしたけじょうしゃくいしりて、 きん坡羅ぱらじょうのぞみて、 ぶつつ。 とききん坡羅ぱらしゃ、 そのいしけてざんぐ。 そのいしれ、 つひに仏足ぶっそくいたましむ。 いだしてよりて調じょうだつごくつ。

「調達発シテ↢悪心↡即臥長フシタケ一丈五尺↡、臨↢欽坡羅城↡、↠仏欽坡羅夜叉、受↢其↡投↢他山↡。其ツイイタマシ↢仏足↡。出↠血仍調達堕↢地獄↡。

(77)

一 ¬金剛こんごう宝戒ほうかいしょう¼ のにいはく、

一 ¬金剛宝戒章¼下云、

「¬きょう¼ にのたまはく、 諸法しょほうもとよりこのかた、 つねにおのずからじゃくめつそうなり。 せんだいとう本来ほんらいじゃくめつしんなり。 万法ばんぽうかたちしめいろあらはす、 これ草木そうもく説法せっぽうなり。 いろいでさとる、 これ説法せっぽうちょうもんするなり。 おんせつは、 こんのための説法せっぽうなり。 こえいだもんく、 これはこれしょうなきめむがためなり。 あへて大人だいにんのための説法せっぽうにはあらざるなり。 およそしん説法せっぽうとは、 われは草木そうもく説法せっぽうき、 草木そうもくはわが説法せっぽうく。 これ如来にょらいけん学者がくしゃまへ説法せっぽうなり。」

「¬経¼云ハク、諸法従↠本来、常自寂滅。山河・大地トウ、本来寂滅。万法示↠形ハス↠色草木説法也。見↠色イデ聴↢聞スル説法↡也。口音↢下根↡之説法也。出↠音↠文メムガ↢小児ナキ↡也。敢ヘテ↧為↢大人↡之説法ニハ↥也。凡説法↢草木説法↡、草木ワガ之説法↡。如来知見、学者説法也。」

(78)

一 ¬念仏ねんぶつえん¼ のじょうにいはく、

一 ¬念仏縁起¼定云、

西山せいざんいただきむしあり、 はっちんといふ。 しょうかなしみて終夜よもすがらく。 西海せいかいそこうおあり、 げいといふ。 じょうなげきて終日ひねもすいきづく。 ちゅうなほえんこころあり、 いはんや人倫じんりんをや。

「西山イタヾキ↠虫、チン。悲ミテ↢生死終夜ヨモスガラ。西海ソコウヲ、云↢冤ゲイ。嘆↢無常終日ヒネモスイキヅ・虫ナホ↢厭離↡、云何イハンヤ人倫ジンリンヲヤ

(79)

一 ¬教行きょうぎょうしょう¼ の六 (化身土巻) にいはく、 「禿とくしゃくらん論主ろんじゅ解義げぎあおぎ、 しゅうかんによりて、 ひさしくまんぎょう諸善しょぜんもんでて、 なが双樹そうじゅりんおうじょうはなる。 善本ぜんぽん徳本とくほん真門しんもんにゅうして、 ひとへになんおうじょうしんおこしき。 しかるにいままさに方便ほうべん真門しんもんでてせんじゃく願海がんかいてんにゅうせり。 すみやかになんおうじょうしんはなれてなん思議じぎおうじょうげんとほっす。 すいちかい、 まことにゆえあるかな。 ここにひさしく願海がんかいりてふか仏恩ぶっとんれり。 とく報謝ほうしゃのために、 しんしゅう簡要かんようひろふてごうじょう不可ふか思議しぎ徳海とくかいしょうねんす。」

一 ¬教行証¼六云、「愚禿釈鸞、仰↢論主解義↡、依↢宗師勧化↡、久デヽ↢万行諸善仮門↡、永↢双樹林下往生↡。廻↢入シテ善本徳本真門↡、偏シキ↢難思往生之心↡。ルニデヽ↢方便真門↡転↢入セリ↢選択願海↡。速レテ↢難思往生↡欲↠遂ゲムト↢難思議往生↡。果遂之誓、良有↠由カナ久入↢願海↡深レリ↢仏恩↡。為↣報↢謝至徳↡、ヒロフテ↢真宗簡要↡恒常称↢念不可思議徳海↡。」

(80)

また (化身土巻) いはく、

(化身土巻)

「¬大論だいろん¼ に四依しえしゃくしていはく、 はんらむとほっせしとき、 もろもろの比丘びくかたりたまはく、 今日こんにちよりほうりてひとらざるべし、 りてらざるべし、 りてしきらざるべし、 りょうきょうりてりょうらざるべし。

¬大論¼釈シテ↢四依↡云セシ↠入ラムト↢涅槃、語リタマハク↢諸比丘↡、従↢今日↡応↢依↠法↟依↠人、応↢依↠義↟依↠語、応↢依↠智↟依↠識、応↢了義経↡不↞依↢不了義↡。

-ほうらば、 じゅう二部にぶあり、 このほうしたがふべし、 ひとしたがふべからず。

ルト、有↢十二部↡、応↠随↢此↡、↠応↠随↠人

-るとは、 なかこうあく罪福ざいふくじつあらそふことなし、 ゆゑにはすでにたり、 にあらざるなり。 ひとゆびをもつてつきおしふ、 もつてわれをきょうす、 ゆびかんしてつきざるがごとし。 ひとかたりていはん、 われゆびをもつてつきおしふ、 なんぢをしてこれをらしむ、 なんぢなんぞゆびてしかしてつきざるやと。 これまたかくのごとし。 ゆびとす、 にあらざるなりと。 これをもつてのゆゑに、 るべからず。

ルト↠義、義↠諍コト↢好悪・罪福・虚実↡、故タリ↠義、義↠語。如↧人以↠指オシ↠月↢教↡、カンシテ↠月。人語リテハム、我以↠指↠月↢汝ヲシテ↟之、汝何↠指シテルヤト↠月亦如↠是。語↢義↡、語↠義。以↠此↠応↠依↠語

-るとは、 はよく善悪ぜんあくちゅうりょう分別ふんべつす。 しきはつねにらくもとむ、 しょうようらず。 このゆゑにおうしきへり。

↠智、智チウハカラヒハカリ分↣別善悪↡。識サトル↠楽↠入↢正要↡。是故ヘリ↢不応依識↡。

-りょうきょうとは、 一切いっさいにんいます、 ぶつ第一だいいちなり。 一切いっさいしょきょうしょなか仏法ぶっぽう第一だいいちなり。 一切いっさいしゅなか比丘びくそう第一だいいちなり。 ぶつしゅじょうを、 ぶつ、 これをじゅうざいとしたまへり、 見仏けんぶつ善根ぜんごんへざるひとなり。」

依了義経イマ↢一切智人↡仏第一。一切諸経書仏法第一。一切衆比丘僧第一无仏世衆生、仏タマヘリ↢此重罪↡、不↠種↢見仏善根↡人

-しかれば末代まつだい道俗どうぞく、 よく四依しえりてほうしゅすべきなりと。 しかるにしょうしんきょうりてとく伝説でんせつひらく。 しょうどうじょうしん顕開けんかいして、 じゃしゅうきょうきょうかいす。 如来にょらいはんだい勘決かんけつしてしょうぞう末法まっぽうさいかいす。

末代道俗、善↧知↢四依↡修↞法ルニ↢正真教意ヒラ↢古徳伝説↡。顕↢開シテ聖道・浄土真仮↡、教↢カイイマシム邪偽異執外教↡。勘↢カンガヘシテサダム 如来涅槃之時代↡開↢示正像末法旨際↡。

-ここをもつてげんちゅうしゃくしょうのいはく、 しかるに修道しゅどうしん相続そうぞくしてへずして、 一万劫まんごうてはじめて退たいくらいしょうす。 当今とうこんぼんげん信想しんそうきょうもうづく。 またみょうといへり、 またじょうじゅづく、 またぼんづく。 いまだたくでず。

玄忠寺綽和尚修道之身、相続シテシテ↠絶、逕↢一万劫↡始↢不退↡。当今凡夫↢信想軽毛↡。亦曰ヘリ↢仮名↡、亦名↢不定聚↡、亦名↢外凡夫↡。未↠出↢火宅↡。

-なにをもつてることをんと、 ¬さつ瓔珞ようらくきょう¼ にりて、 つぶさににゅうどうぎょうべんずるに、 ほうなるがゆゑになんぎょうどうづく。 またいはく、 きょうこうしょあかして、 やくかぶらしめてじょうかんすることありては、 もしきょうそむけば、 しゅしがたくりがたし。」

ムト↠知ルコトヲ、拠↢¬菩薩瓔珞経¼↡、具ベンズルニ↢入道行位↡、法爾ナルガ↢難行道↡。又云、有↧明シテ↢教興オコリ所由↡、約ヨル↠時ラシメテ↠機勧↦帰スルコト浄土、若ケバ、難↠修↠入。」

(81)

一 親鸞しんらんしょうにん (化身土巻) いはく、

一 親鸞上人云

きょうりてしゃくひらくに、 ぞうぎょうなかぞうぎょう雑心ざっしんぞうぎょう専心せんしんせんぎょう雑心ざっしんあり。 また正行しょうぎょうなか専修せんじゅ専心せんしん専修せんじゅ雑心ざっしん雑修ざっしゅ雑心ざっしんは、 これみなへんたいまんがい業因ごういんなり。 ゆゑに極楽ごくらくしょうずといへども三宝さんぼうたてまつらず。 仏心ぶっしんこうみょう雑業ぞうごうぎょうじゃ照摂しょうしょうせざるなり。 りょう誓願せいがんまことにゆえあるかな。 もんきょうごんしゃく、 これいよいよあきらかなり。

↢経家ヒラクニ↢師釈↡、雑行之中雑行雑心・雑行専心・専行雑心アリ。亦正行之中専修専心・専修雑心・雑修雑心辺地・胎宮・懈慢界業因。故↠生↢極楽↠見タテマツラ↢三宝↡。仏心光明、不↣照↢摂雑業行者↡也。仮令誓願マコトユヘ。仮門教、ゴンネガイ慕之ボノシタフ 釈、イヨイヨ

(82)

一 ¬観音かんのん悲華ひけきょう¼ にのたまはく、

一 ¬観音悲華経¼言、

「むかしりょうぜんにましましてはみょうほうづけ、 いま西方さいほうにましましては弥陀みだとなづけ、

マシマシテハ↢霊山↡名↢妙法テハ↢西方↡名↢弥陀

じょく末代まつだいにしては観音かんのんづく。 三やくおなじく一体いったいなり。

濁世末代ニシテハ↢観音三世利益ジク一体

一切いっさい如来にょらいだい慈悲じひは、 みな一体いったいかんおんあつむ。

一切如来大慈悲ミナアツ↢一体観世音

極楽ごくらくにしてはしょうしてりょう寿じゅとなし、 しゃにしてはかんおんげんす。

極楽ニシテハシテ↢無量寿娑婆ニシテハ示↢現観世音

(83)

一 (智者大師別伝意 ) 「これ ¬みょうほっ¼ のほんじゃくもんなり。 その甚遠じんのんにして、 さとりがたくしてりがたし。 しばらくかたろんぜざれ。 すなはち西方さいほうもうでてぶつひたてまつりてみなさとる。」 もんこころは、 ¬ほっ¼ 四かんまでみて、 いまのこはんは、 西方さいほう弥陀みだひたてまつりてみなさとるべしとおおせられき。

一 「是¬妙法花¼本ジヤク二門。其理甚ニシテ、難クシテサト↠入シバラ シヤ カタ↠論。即マウデヽ西方ヒタテマツリテ↠仏。」、¬法花¼四巻マデヨミテ、今ノコリ半部ハ、西方ノミダニアヒタテマツリテミナサトルベシトオホセラレキ

(84)

一 「このどくをもつてしゅするところのぜんは、 しょしょう存亡そんもうとうにす。 ねがはくはわれしゅするところのみょうほうぜんは、 極楽ごくらく弥陀みだそんこうしたてまつる。」

一 「以↢此功徳↡所↠修スル、廻↢向所生存亡ソンマウ↡。願↠修スル妙法、廻↢向シタテマツル極楽弥陀尊↡。」

(85)

一 ¬業報ごうほう差別しゃべつきょう¼ にのたまはく、

一 ¬業報差別経¼言、

こうしょう念仏ねんぶつきょうするに、 十しゅどくあり。 一にはよく睡眠ずいめんのぞく、 二にはてんきょうす、 三にはこえ十方じっぽうへんす、 四にはさんむ、 五にはほかこえらず、 六にはしんをしてらざらしむ、 七にはゆうみょうしょうじんなり、 八には諸仏しょぶつかんしたまふ、 九には三昧さんまい現前げんぜんす、 十にはさだめてじょうしょうず。」 以上抄出

高声念仏・読経スルニキヤウヲヨムナリ↢十種功徳。一ニハノゾ↢睡眠 ネブリ ↡、二ニハ天魔驚オドロキ怖スオソル、三ニハヘン↢十方↡、四ニハ三途↠苦、五ニハホカ↠入、六ニハ↢心ヲシテ、七ニハ猛精進、八ニハ諸仏歓喜シタマフ、九ニハ三昧現前、十ニハメテ↢浄土↡。」 已上抄出

(86)

一 きょうごう (述文賛巻下) いはく、

一 キヤウゴウ (述文賛巻下) イハ

ぶっ 清浄しょうじょう法界ほうかい 不思議ふしぎ だいえんきょう 不可ふかしょう びょうどうしょう だいじょうこう みょうかんざつ とうりんさいじょうしょう じょうしょ作智さち

仏智 清浄シヤウジヤウ法界ホフカイ 不思議フシギヱンキヤウ 不可称智 ビヤウドウシヤウ 大ジヨウコウ メウクワンザチ トウリンサイシヨウ ジヤウシヨ作智サチ

(87)

一 ¬ごんぎょう¼ にのたまはく、

一 ¬華厳経¼言、

「一たび一切いっさいのもろもろのじんらいすれば、 蛇身じゃしんに五百たびしょうずることをるなり。 げんには福徳ふくとくさらにきたらず、 しょうにはごくだいるなり。

「一スレバ↢一切神祇↡、生ズルコトヲルナリクル 蛇身五百度↡。現世ニハ福徳更↠来、後生ニハ地獄ル也↢大苦↡。

(88)

一 しんじょう じゃかつ  愚痴ぐちじょう さぎ  淫欲いんよくじょう 鴿はと

一 瞋恚熾盛 ジヤヘンビ カチムカデ  愚痴熾盛 サギ  淫欲熾盛 鴿ハト

(89)

一 十二るいしょう
らんしょう 二たいしょう 三湿しっしょう 四しょう 五しきしょう 六しきしょう 七そうしょう 八そうしょう 九非有ひうしきしょう 十非無ひむしきしょう 十一非有ひうそうしょう 十二非無ひむそうしょう

一 十二類生者
一卵生 二胎生 三湿生 四化生 五有色生 六无色生 七有相生 八無相生 九非有色生 十非无色生 十一非有相生 十二非无相生

(90)

一 しょうだいじょうには七しゅしょう
分段ぶんだんしょう (三界さんがいほうなり) 二らいしょう (迷真めいしんはじめなり) 三ほんしゅつしょう (痴志ちしはじめなり) 四方便ほうべんしょう 五因縁いんねんしょう 六有後うごしょう 七無後むごしょう

一 摂大乗ニハ 立↢七種生死
一分段生死 (三界果報也) 二流来生死 (迷真始也) 三反出生死 (痴志始也) 四方便生死 五因縁生死 六有後生死 七無後生死

(91)

¬だいきょう¼ のじょうにのたまはく、 十二光仏

¬大経¼上言、

りょう寿じゅぶつを、 りょうこうぶつへんこうぶつ無礙むげこうぶつたいこうぶつ焔王えんのうこうぶつ清浄しょうじょうこうぶつかんこうぶつ智慧ちえこうぶつだんこうぶつなんこうぶつしょうこうぶつちょうにち月光がっこうぶつごうす。」

無量寿仏、号↢无量光仏・无辺光仏・无光仏・无対光仏・炎王光仏・清浄光仏・歓喜光仏・智慧光仏・不断光仏・難思光仏・无称光仏・超日月光仏↡。」

(92)

¬りょう寿じゅ如来にょらい¼ (巻上) にのたまはく、 十五光

¬無量寿如来会¼言、

なん、 このをもつてのゆゑに、 りょう寿じゅぶつにまたみょうまします。 いはくりょうこうへんこうじゃくこう無碍むげこうこうしょうおう端厳たんごんこう愛光あいこうこうかんこう思議しぎこうとうこう不可ふか称量しょうりょうこう映蔽ようへい日光にっこう映蔽ようへい月光がっこう掩奪あんだつ日月にちがっこうなり。

阿難、以↢是義↡故、无量寿仏マシマ↢異名↡。イハ无量光・无辺光・无ヂヤクツク 光・クルフ无光・光照王・端厳タンゴム光・愛光・喜光・可観光・不思議光・无等光・不可称量光・映蔽エイヘイ日光・映蔽月光・アンオヽウダチウバフ日月光ナリ

(93)

一 四おうしょうとは
じょうぼんのうしょう 悉達しっだつ  二なん     二びゃくぼんのうしょう 調じょうだつ 二なん 
斛飯こくぼんのうしょう  摩訶まかなん阿那あなりつ    四かんぼんのうしょう 跋提ばつだい  二提沙だいしゃ

一 四王生八子者
一浄飯王生  一悉達  二難陀    二白飯王生  一調達  二阿難 
三斛飯王生  一摩訶男 二阿那律   四甘露飯王生 一跋提  二提沙

(94)

一 ぶつだい弟子でし
しゃほつ しんほんず 智慧ちえ第一だいいち  二目連もくれん  さいしゅくほん神通じんずう第一だいいち  三しょう  飲光おんこうほん頭陀ずだ第一だいいち
しゅだい くうしょうほんじょう第一だいいち  五富楼那ふるな 慈子じしほん説法せっぽう第一だいいち   六旋延せんえん せんじょうほんろん第一だいいち
阿那あなりつ とんほんず 天眼てんげん第一だいいち  八優波離うぱり ごんしゅうほんかい第一だいいち  九羅睺羅らごら しょうへいほんみつぎょう第一だいいち
なん きょうほんもん第一だいいち

一 仏十大弟子
一舎利弗 翻↢身子↡ 智慧第一  二目連  翻↢採菽↡ 神通第一  三迦葉  翻↢飲光↡ 頭陀第一
四須菩提 翻↢空生↡ 无諍第一  五富楼那 翻↢慈子↡ 説法第一  六迦旋延 翻↢扇縄↡ 論義第一
七阿那律 翻↢無貪↡ 天眼第一  八優波離 翻↢近執↡ 持戒第一  九羅睺羅 翻↢障蔽↡ 密行第一
十阿難陀 翻↢慶喜↡ 多聞第一

(95)

一 ¬善悪ぜんあくいんきょう¼ にきて (意) のたまはく、 十二来

一 ¬善悪因果経¼説言、

六根ろっこんそくかいなかよりきたる 諸根しょこん不具ふぐ破壊はえなかよりきた
たんじょう忍辱にんにくなかよりきたる   愚痴ぐちきょうなかよりきた
福徳ふくとく布施ふせなかよりきたる    びん貪欲とんよくなかよりきた
せんきょうまんなかよりきたる   こうしょう礼拝らいはいなかよりきた
盲聾もうろうしんなかよりきたる    おんほうなかよりきた
たんみょう敬生きょうしょうなかよりきたる  ちょうみょう慈悲じひなかよりきた

「六根具足者自↢持戒中↡来  諸根不具者自↢破壊中↡来
端正者自↢忍辱中↡来     愚痴者自↢不孝中↡来
福徳者自↢布施中↡来     貧窮者自↢貪欲中↡来
下賎者自↢憍慢中↡来     高姓者自↢礼拝中↡来
盲聾者自↢不信中↡来     瘖瘂者自↢誹謗中↡来
短命者自↢敬生中↡来     長命者自↢慈悲中↡来」

(96)

一 ¬大集だいじっきょう¼ にのたまはく、 十来

一 ¬大集経¼言、十来

たんじょう忍辱にんにくなかよりきたる  びん慳貪けんどんなかよりきた
こうしょう礼拝らいはいなかよりきたる   せんきょうまんなかよりきた
おんほうなかよりきたる   盲聾もうろうしんなかよりきた
ちょう寿じゅ慈悲じひなかよりきたる   たんみょう敬生きょうしょうなかよりきた
諸根しょこん不具ふぐ破壊はえなかよりきたる 六根ろっこんそくかいなかよりきた

「端正者忍辱中来     貧窮者慳貪中来
高性者礼拝中来      下賎者憍慢中来
瘖瘂者誹謗中来      盲聾者不信中来
長寿者慈悲中来      短命者敬生中来
諸根不具破壊中来     六根具足持戒中来」

(97)

一 ¬ようしゅう¼ のちゅうかん大文だいもんだい五にいはく、

一 ¬要集¼中巻大文第五云、

「¬びょう等覚どうがくきょう¼ にのたまはく、 りょう清浄しょうじょうぶつりょう清浄しょうじょうぶつとは、 これ阿弥陀あみだぶつなり。」

¬平等覚経¼云、「无量清浄仏、无量清浄仏阿弥陀仏也。」

(98)

一 きのこぶくすべからざること

一 不↠可ブクキノコ

 (98-1)

¬十住じゅうじゅう断結だんけつきょう¼ にのたまはく、
しゃくそんきのこじきしたまひて、 七にちなやんで説法せっぽうなかへたまふ。」

¬十住断結経¼言、
「釈尊食タマヒテキノコナヤムデ↢七日↡説法ナカヘタマフ。」

 (98-2)

¬じょうりんぎょう¼ にのたまはく、
きのこじきするゆゑに、 諸仏しょぶつしゅだんじてじょうどうず。」

¬有情輪廻経¼言、
「食スル↠茸、断ジテ↢諸仏種子↡不↠得↢无上道↡。」

 (98-3)

大蔵だいぞう一蘭いちらんに ¬しゅくきょう¼ をきてのたまはく、
きのこありとらせたらんものには、 どうすべからず。 いかにいはんやみずからじきせんをや。」

大蔵一ラム↢¬阿経¼↡言、
ラセタラムリトキノコモノニハ、不↠可↢同↡。何セムヲ。」

 (98-4)

また ¬義軌ぎき¼ にきょうきてのたまはく、
きのこじきするに十三のとがあり。 一には大寝おおいねす、 二には癲狂てんおう、 三はとん、 四はかくらん、 五はしっぺい、 六はびゃくらい、 七はしつねん、 八は闇目あんもくないえん便たよりて、 さい無記むきにしてつひに ごくにつ。」

又¬義クヰ¼引↢秘経↡言
「食スルニ↠茸↢十三トガ↡。一ニハ大寝オホイネ、二ニハ癲狂テンワウ、三トム、四クワクラン、五シチニハカニ病、ヤマヒオコルビヤクライ、七シチ念、八闇目アムモクメクラナル乃至魔縁得便タヨリ、最後無記ニシテ↢地獄↡。」

(99)

一 ふ。 善導ぜんどうといふこときょうもんへたりや

一 問。善導云事、経文ヘタリ

 (99-1)

こたふ。 ¬だいきょう¼ にのたまはく、 「しゃ如来にょらいめつまっ善導ぜんどうでて、 悪人あくにんみちびくべし。」

答。¬ダイ¼言ハク、「釈迦如来滅後、末世善導出デヽ↠世、可ミチビ↢悪人↡。」

 (99-2)

また ¬ゆいきょうぎょう¼ にも、 「善導ぜんどう」 といふ。

又¬ユイ教経ニモ¼、「善導」云。

(100)

一 「一見いっけんともがら、 ともにぶっすべし。」
     しょうとくたい天王てんのうかわら銘文めいもんなり。

一 「一ケントモガラ、共スベシ仏果↡。」
     聖徳太子、天王寺瓦銘文也。

文永ぶんえいねん 、 このもんあらはたまへり。 天王てんのうにまします。

文永六年 、此文ハアラハレ給ヘリ。天王寺ニマシマス。

(101)

一 御入滅日記事

釈迦如来、穆王壬申二月十五日
龍樹菩薩 十月十八日
天親菩薩 三月三日 御年八十
菩提留支 十一月四日 御年百五十六
羅什三蔵 八月廿日
曇鸞法師 七月七日 御年六十七
道綽禅師 四月廿七日 御年八十四
善導和尚 三月十四日或廿七日
懐感禅師 八月三十日
小康   十月三日
聖徳太子 二月廿二日 御年四十九
恵慈禅師 六月廿二日 太子一年オトリテ
空也聖人 九月十一日 御年七十
源信和尚 六月十日
永観律師 十一月二日 御年七十九
源空上人 正月廿五日 御年八十
信空法師 九月九日
隆寛律師 六月十六日 御年八十
聖覚法印 三月五日 御年六十九
親鸞上人 十一月廿八日 御年九十
真仏法師 三月八日 御年五十

(102)

一 馬鳴菩薩 三月三日
  伝教大師 六月十四日 御年五十六
  弘法大師 三月廿一日
  慈覚大師 正月十四日 御年七十一
  行基菩薩 二月二日 御年八十

(103)

一 百丈ひゃくじょうぜんしんびょうそうだんにのたまはく、

一 百丈禅師シンキノ病僧ハク

だいいまだほつみょうせずは、 弥陀みだみょうごうすすむべし。」

「大事未↢発明、可↠勧↢弥陀名号↡。」

(104)

一 ¬金剛こんごうちょう瑜伽ゆが念珠ねんじゅきょう¼ (意) にのたまはく、

一 ¬金剛頂瑜伽念珠経¼言、

念珠ねんじゅかずは、 一千八十、 一百八、 五十四、 二十七。」 とあげたり 

「念珠、一千八十、一百八、五十四、二十七。」トアゲタリ 

(105)

一 ¬校量きょうりょうじゅどくきょう¼ (意) にのたまはく、

一 ¬校量数珠功徳経¼言、

念珠ねんじゅかず、 百八、 五十四、 二十七、 十四」 とさだめたり。

つねに、 かず種々しなじなになすは、 これらのもんによりてか。 またじゅたいは、 もとよりほんぎょうそむけり。 かの二きょうには、 おなじくこがねしろがねあかがねくろがねじゅをあげたり。 あるいはすいしょう真珠しんじゅとうじゅをあげ、 あるいは木槵むくろじのみ蓮子はすのみとうじゅをあげたり。 しかるを日本にっぽんこく風俗ふうぞくとして諸木しょもくをすて、 まるになしたいらになす。 このこと、 まつたくかの二きょうげざるところなり。 いはんやじょうもんには、 念珠ねんじゅ数取かずとりさだむ。 またかずたいこころまかこころか。

「念珠数、百八、五十四、廿七、十四」ト定タリ

ヨノツネニ、カズヲ種々シナジナニナスハ、コレラノ文ニ依テ歟。又数珠ノ体ハ、モトヨリ本経ニソムケリ。カノ二経ニハ、同ジク金・銀・銅・鉄ノズヾヲアゲタリ。或ハ水精・真珠等ノズヾヲアゲ、或ハ木槵子・蓮子ハスノミ等ノズヾヲアゲタリ。シカルヲ日本国ノ風俗トシテ諸木ヲステ、円ニシ平ニ成ス。此ノ事、全カノ二経ニアゲザルトコロナリ。況ヤ浄土門ニハ、念珠ノ数取ト定ム。又数モ体心歟。

(106)

一 曇鸞どんらんろん講説こうせつてたること

一 曇鸞捨↢四論講説↡事

ふ。 ろんとはなにや。 こたふ。 一には ¬ひゃくろん¼、 二には ¬ちゅうろん¼、 三には ¬じゅうもんろん¼、 四には ¬智度ちどろん¼、 これをろんづくなり。

問。四論者何。答。一ニハ¬百論¼、二ニハ¬中論¼、三ニハ¬十二門論¼、四ニハ¬智度論¼、是↢四論↡也。

(107)

一 だいまどづること

一 大兎出マド

枳哩枳きりきおうゆめにいはく、 だいまどづるに、 一のためにへらる。 このゆえ思議しぎなりとおもひて、 しょうぶつまえもうでてこのゆえひたてまつる。 しょうぶつこたへていはく、 とうことにあらず。 まっしゃといふぶつでたまはむときじょくぞうにしてしゅじょうすといへどもしょうでがたきゆゑに、 かくのごとくるなり。

枳哩枳キリキユメハク、大兎出ルニ↠窓、為↢一尾不思議也、迦葉仏之御前ヘニデヽ↠問↢此↡。迦葉仏答ハクタウ。末世釈迦仏出↠世ハム時、五濁増而雖↠化スト↢衆生↡難↠出↢生死↡故、如↠此也。

(108)

¬仁王にんのうぎょう¼ (巻下嘱累品) にのたまはく、 「びゃくこう比丘びくりゅう。」

¬仁王経¼云ハク、「ビヤクカウザウボフノトキニハ比丘ビクオトコハタカキリフ。」トコロニオル也

(109)

一 しゅれん 青  黄  赤 どん ふん白 陀利だり

一 四種蓮華 青 ハチクヱ 黄 モチクヱ 赤 ドム華 フン白 陀利ダリ

(110)

一 天竺てんじくしょうあり

一 天竺四姓アリ

せつしゅしょう おうしょうなり 婆羅ばらもんしゅしょう しんしょうなり しゃしゅしょう 商人あきびとしょうなり しゅしゅしょう 百姓ひゃくしょうしょうなり

セチシユシヤウ 王ノ姓也 婆羅バラモン種姓 シンノ姓也 シヤ種姓 商人アキビトノ姓也 シユ種姓 百姓ノ姓也

(111)

一 ¬りっしゅうしんがくみょう¼ (巻中意) にいはく、

一 ¬律宗シンガクミヤウ¼云ハク

かいみょうにいはく、 しゅしょうじき、 一いい、 二乾飯ほしいい、 三こむぎ、 四うお、 五にく こえあるものあしあるものこれらをいます

カイミヤウイハ、五シユシヤウジキ、一イヽ、二乾飯ホシイヽ、三コムギ、四ウヲ、五ニク コヱアルモノアルモノコレラヲイマス

(112)

一 しん、 みな七日しちにちしちといへり。 これはぎょうじなんとすることなりと

一 五辛、ミナ七日七日ト云ヘリ。是ハギヤウオコナヒナムトスル事也ト

(113)

¬そうれい¼ にいはく、 「そうしんじきすれば、 三十にち苦使つつしめ。」

¬僧尼令ニ¼云ハク、「ソウスレ↢五辛、三十日苦使ツヽシメ。」

(114)

一 しん、 ¬報応ほうおうきょう¼ にのたまはく、

一 五辛、¬報応経¼云ハク

やまいあらんとき、 らんほかびやくにありてふくするに、 四十九にちつと沐浴もくよくのちゆるす。」

ヤマヒ開、アラムトキリテランホカビヤク服已フクスルツト↢四十九日沐浴モクヨクノチユル。」

(115)

一 ¬毘奈耶びなやぞう¼ にいはく、

一 ¬毘奈耶ビナヤザフ¼イハ

ひるにちにちにらにち。」

ヒル七日三日夜、ニラ一日夜。」

(116)

一 しん、 ¬梵網ぼんもうきょう¼ にこれをく。

一 五シム、¬梵網ボムマウ¼説↠之

だい一 さん 二 そう かく三 そう らん四 そう こう五 きょ。」

大蒜ダイサンオオヒル ソウキ   角葱カクソウニラ  蘭葱ランソウアラヽギ カウキヨ クレノオモ。」

(117)

一 薬師十二夜叉大将軍
寅 宮羅クビラ大将  普賢菩薩
卯 伐析ダキ羅大将  薬師菩薩
辰 迷企メキ羅大将  文殊師利菩薩
巳 アン羅大将  地蔵菩薩
午 アン羅大将  虚空蔵菩薩
未 サン羅大将  摩利子天
申 イン羅大将  観世音菩薩
酉 波夷ハイ羅大将  阿弥陀如来
戌 摩虎マコ羅大将  大勢至菩薩
亥 シン羅大将  弥勒菩薩
子 セウ羅大将  釈迦如来
丑 キヤ羅大将  金剛寿菩薩

(118)

一 六地蔵
救勝地蔵  光味地蔵  獲散地蔵  牟尼ムニ地蔵  華供地蔵  諸龍地蔵

(119)

一 ¬しょう阿弥陀あみだきょう¼ にのたまはく、「十劫じっこう」。」

一 ¬小阿弥陀経¼言、「十劫」。」

(120)

一 ¬しょうさんじょうきょう¼ にのたまはく、 「じゅう大劫だいこう」。」

一 ¬称讃浄土経¼言、「十大劫」。」

(121)

一 ¬だい阿弥陀あみだきょう¼ (巻上) にのたまはく、 「じゅうしょうこう」。」

一 ¬大阿弥陀経¼言、「十小劫」。」

(122)

一 ¬だいきょう¼ (巻上) にのたまはく、 「十劫じっこう」。」

一 ¬大経¼言、「十劫」。」

(123)

¬ちゅうじゅうろん¼ にいはく、 「しゃだい一代いちだい説法せっぽう処々しょしょ聖教しょうぎょうに、 ただしゅじょうこころをもつぱらにしてひとへに阿弥陀あみだぶつねんぜよとすすめたり。」

¬注十疑論¼云、「釈迦大師一代説法、処々聖教タヾメタリ↣衆生専ニシテ↠心ヘニゼヨト↢阿弥陀仏↡。」

(124)

一 ¬はんぎょう¼ (北本巻一〇大衆所聞品意) にのたまはく、

一 ¬涅槃経¼言、

金沙こんしゃだいじきにゅう西海さいかい」 といへり。
このもんこころは、 一大千だいせんかいにあるかわは、 みなゆがうたれども、 このかわばかり、 すぐに西にしうみながりたり。 摩耶まやにんおんこころをば、 このかわたとへてしゃくせられたり。 かわみなゆがうたり。 一切いっさい女人にょにんは、 こころゆがめるによりて、 このかわたとへずとるべし。

金沙大河、直入西海」ト云ヘリ。
此文ノ心ハ、一大千世界ニアル河ハ、ナユガウタレドモ、此ノ河バカリ、スグニ西ノ海ヘ流レ入リタリ。摩耶夫人ノ御心オバ、此ノ河ニ譬ヘテ釈セラレタリ。余ノミナユガウタリ。一切ノ女人ハ、ユガメルニ依リテ、此ノ河ニ譬ヘズト知ルベシ。

(125)

一 しょうとくたい善光ぜんこう如来にょらいしょをたてまつる。 おん使つかい稲目いなめの宿すくそく甲斐かい黒義くろよしなり。

一 聖徳太子奉ツル↢善光寺如来御書↡。御使ツカヒ稲目イナメノ宿祢子息、甲斐黒義クロヨシ也。

みょうごうしょうようすること七日しちにちおはりぬ。 これはこれ広大こうだいおんほうぜんがためなり。
あおねがはくはほん弥陀みだそん、 われをたすけてさいしてつねにねんしたまへ。

「名号称揚スルコト七日オハリヌ↠報ゼムガ↢広大
クハ本師弥陀尊ケテ↠我済度シテ護念シタマヘ

 如来にょらい返報へんぽうにいはく、

 如来御返報云、

一日いちにちしょうよう息留むことなし。 いにいはんや七日しちにちだいどくをや。
われしゅじょうつことしんひまなし。 なんぢよくさいせよ、 ここにまもらざらんや。

一日息留ムコト七日大功徳ヲヤ
ツコト↢衆生↡心ヒマ済度セヨコヽムヤマモ

 命長みょうじょう七年しちねん とし

 命長七年 歳」

(126)

尊善そんぜん無垢むくかい尊音そんのん王仏おうぶつ本願ほんがんをたてたまひけるを、 法蔵ほうぞうさつせんじゃくしてじょうをたてたまへり。

尊善无垢世界ノ尊音王仏ノ本願ヲタテタマヒケルヲ、法蔵菩薩ハ選択シテ浄土ヲタテタマヘリ。

(127)

一 さんとは、 ほんしょう死有しう
ほんといふは、 もとより六道ろくどうしょうにまよふをいふなり。 いまうまるるをしょうといふ、 するを死有しうといふなり。

一 三有、本有・生有・死有。
本有トイフハ、本ヨリ六道四生ニマヨウヲイフ也。イマムマルヽヲ生有トイフ、死スルヲ死有ト云也。

(128)

一 じゅうとは、 せつとういんもう

一 四重、殺・盗・婬・妄語。

(129)

戒律かいりつ三種さんしゅしゃとは
駆烏くうしゃさいより十三さいいた 二応法おうほうしゃ 十四さいより十九さいいた 三みょうしゃ 二十さいより七十さいいた

戒律三種沙弥者
駆烏クウ沙弥 従七歳至↢十三歳↡也 二応法沙弥 従十四歳至↢十九歳↡也  三名字沙弥 従二十歳至↢七十歳↡也 

 

えんきょうだい しょしゅう上旬じょうじゅん これを書写しょしゃしおはりぬ

*延慶第二 初秋上旬 書写之畢

(130)

一 「ぎゃくは、 いんのときるをぎゃくといふ。
とく」 のは、 果位かいときいたりてるをとくといふなり。
みょう」のは、 いんときみょうといふ。
ごう」 のは、 果位かいときごうといふ。

一 グヰヤクハ、 インノトキウルヲグヰヤクトイフ。
「得」 字ハ、 果位ノ時ニイタリテウルヲ得ト云也。
「名」字ハ、 因位ノ時ノナヲ名トイフ。
「号」 字ハ、 果位ノ時ノナヲ号ト云フ。

ねん」 といふは、

」 はおのづからといふ、 ぎょうじゃのはからいにあらず。 しからしむといふことばなり。
ねん」 といふは、 しからしむといふことばぎょうじゃのはからいにあらず、 如来にょらいちかいにてあるがゆへに。 「ほう」 といふは、 この如来にょらいおんちかいなるがゆへに、 しからしむるをほうといふ。 ほうは、 このおんちかいなりけるゆへに、 すべてぎょうじゃのはからひなきをもて、 このほうとくのゆへにしからしむといふなり。 すべて、 ひとのはじめてはからはざるなり。 このゆへにりきにはなきをとすとるべしとなり。 「ねん」 といふは、 もとよりしからしむといふことばなり。

「自然」 トイフハ、

「自」 ハオノヅカラトイフ、 行者ノハカライニアラズ。 シカラシムトイフコトバ也。
「然」 トイフハ、 シカラシムトイフコトバ、 行者ノハカライニアラズ、 如来ノチカヒニテアルガユヘニ。 「法爾」 トイフハ、 コノ如来ノオムチカヒナルガユヘニ、 シカラシムルヲ法爾トイフ。 法爾ハ、 コノオムチカヒナリケルユヘニ、 スベテ行者ノハカラヒナキヲモテ、 コノ法ノトクノユヘニシカラシムトイフナリ。 スベテ、 人ノハジメテハカラハザルナリ。 コノユヘニ他力ニハ義ナキヲ義トストシルベシトナリ。 「自然」 トイフハ、 モトヨリシカラシムトイフコトバ也。

弥陀みだぶつおんちかいの、 もとよりぎょうじゃのはからひにあらずして、 南無なも阿弥陀あみだぶつとたのませて、 むかへんとはからはせたまひたるによりて、 ぎょうじゃからむともしからむともおもはぬを、 ねんとはまふすぞときてそうろうちかいようは、 じょうぶつにならしめむとちかひたまへるなり。 じょうぶつとまふすは、 かたちもなくまします。 かたちのましまさぬゆへに、 ねんとはまふすなり。 かたちましますとしめすときには、 じょうはんとはまふさず。 かたちもましまさぬようらせむとて、 はじめて弥陀みだぶつとぞきならひてそうろう弥陀みだぶつねんようらせむりょうなり。 このどうこころつるのちには、 ねんのことはつねに沙汰さたすべきにはあらざるなり。 つねにねん沙汰さたせば、 なきをとすといふことは、 なほのあるになるべし。 これはぶっ不思議ふしぎにてあるなり。

弥陀仏ノ御チカヒノ、 モトヨリ行者ノハカラヒニアラズシテ、 南无阿弥陀仏トタノマセテ、 ムカヘントハカラハセタマヒタルニヨリテ、 行者ノヨカラムトモアシカラムトモオモハヌヲ、 自然トハマフスゾトキヽテ候。 チカヒノヤウハ、 无上仏ニナラシメムトチカヒタマヘルナリ。 无上仏トマフスハ、 カタチモナクマシマス。 カタチノマシマサヌユヘニ、 自然トハマフスナリ。 カタチマシマストシメストキニハ、 无上涅槃トハマフサズ。 カタチモマシマサヌヤウヲシラセムトテ、 ハジメテ弥陀仏トゾキヽナラヒテ候。 ミダ仏ハ自然ノヤウヲシラセムレウナリ。 コノ道理ヲコヽロエツルノチニハ、 自然ノコトハツネニサタスベキニハアラザルナリ。 ツネニ自然ヲサタセバ、 義ナキヲ義トストイフコトハ、 ナホ義ノアルニナルベシ。 コレハ仏智ノ不思議ニテアルナリ。

禿とく親鸞しんらん八十六さい

愚禿親鸞八十六歳

しょう元年がんねんつちのえうま十二がつ じつ善法ぜんぽうぼうそう御坊おんぼうさんじょう富小路とみのこうじ御坊おんぼうにて、 しょうにんいまいらせての聞書ききがき、 そのときけんこれをく。

*正嘉元年戊午十二月 日、善法坊僧都御坊、三条トミノコウヂノ御坊ニテ、 聖人ニアイマイラセテノキヽガキ、 ソノ時顕智コレヲカク也。

(131)

一 河内国かわちのくにわかこおり木本このもとさとあとはら稲村いなむらたち、 これは守屋もりやの大臣おおおみ所在しょざいなり。
天王てんのうかめは、 もとはかのわかこおりにありけるを、 しょうとくたいとらせたまひて天王てんのうにはおかせたまふ。 はじめはしゃくりゅううづませたまひけるが、 あまりにあくりゅうにて、 やぶりてげたりけるあひだ、 のちしょうりゅううづませたまひけり。

一 河内国ワカヰノコホリ木本コノモトサトアトハライナムラノタチ、 コレハ守屋大臣ノ所在地也。
天王寺ノカメヰハ、 モトハカノワカヰノ郡ニアリケルヲ、 聖徳太子トラセ給テ天王寺ニハオカセ給フ。 ハジメハシヤクリウヲウヅマセ給ケルガ、 アマリニ悪龍ニテ、 ウチヤブリニゲタリケルアヒダ、 ノチシヤウリウウヅマセ給ケリ。

(132)

一 はたの川勝かわかつすみよしのみょうじんうぢなり。

一 ハタノ川勝カハカツスミヨシノミヤウジンウヂナリ

(133)

一 もりそん従類じゅるい二百七十三にんは、 てらのながき奴卑ぬひさだめおはりぬ。 しょりょう田園でんおん、 十八万六千八百九十しろもっかんしててらぶんとす。 河内国かわちのくに弓削ゆげくらつくり祖父間おおじまずり虵屮はくさ足代あじろたち葦原あしはらとうの八ヶしょしゅうして十二万八千六百四十しろ摂津国せっつのくに於勢おせかたとび熊凝くまこりとうさんしゅうして五万八千二百五十しろ。 三ヶしょ居宅きょたくならびにざいとうを、 ことごとくてらぶんとかぞへおさめおはりぬ。

一 守屋ガソン従類ジユルイ二百七十三人ハ、 寺ノナガキ奴卑ヌヒサダメオハヌ。 所領ノ田園デンオン、 十八万六千八百九十代ヲモチクワンシテ寺ノ分トス。 河内国弓削ユゲ・クラツクリ・オホヂマ・キズリ・ハクサ・アジロ・ミタチ・アシハラトウノ八ケ所ノ地、 シフシテ十二万八千六百四十代。 摂津国オセ・カタエ・トビタ・クマコリトウサン、 都集シテ五万八千二百五十代。 三ケ所居宅キヨタクナラビニザイトウヲ、 コトゴトク寺ノ分トカゾヘ メ畢。

(134)

一 善光よしみつほん在所ざいしょは、 信乃国しなののくにきふのごう伊奈いなこおり、 かむのみさかのふもとに、 あさうみのさとうてうのむらといふところなり。 かのところへきょうより如来にょらいひたてまつりて、 三日にっちゅうちゃくす。 そののち水内みのちこおりなかじょういもごううつれり。 いまの善光ぜんこうこれなり。

一 善光ガ本在所ハ、 信乃国キフノゴウイナノ郡、 カムノミサカノフモトニ、 アサウミノ里ウテウノ村トイフ所也。 カノ所ヘ京ヨリ如来ヲオヒタテマツリテ、 三日々中ニ下著ス。 ソノヽチ水内郡中条ノイモ井ノ郷ニウツレリ。 今ノ善光寺コレ也。

(135)

(一期物語) 「一 あるときふ。 ひとおおさいすすむ、 このじょういかん。 こたふ。 そうじきほうはもつともしかるべきなり。 しかりといへども当世とうせいすでにおとろへ、 じきすでにめっす。 この分際ぶんざいをもつて一食いちじきせば、 こころひとへにじきおもひて念仏ねんぶつこころしずかならず。 ¬だいしんぎょう¼ にのたまはく、 じきだいさまたげず。 そのうえしんをあひはからふべきなり。」

「一 或時問。人多↢持斎↡、此条如何。答。僧尼作法↠然也。雖↠然当世ジキ。以↢此分際↡一食、心↢食事↡念仏心不↠静ナラ。¬菩提心経¼云ハク、食不↠妨↢菩提↡。自身也。」

(136)

(三心料簡事 ) 「一 ほうばんせっすること

「一 スル↢万機↡事。

だい十八のがん十方じっぽうしゅじょうといふ、 十方じっぽうれたるしゅじょうなし、 わががんうち十方じっぽうめんとなり。」

第十八云↢十方衆生↡、無↧レタル↢十方↡之衆生↥、我メムト↢十方↡也。」

(137)

(三心料簡事 ) 「一 無智むちほんとなすこと

「一 無智為↠本事。

いはく、 しょうどうもん智慧ちえきわめてしょうはなれ、 じょうもん愚痴ぐちかえりて極楽ごくらくうまる。 このゆへにしょうどうもんおもむときは、 智慧ちえみが禁戒きんかいまもり、 しんしょうきよむるをもつてしゅうとなす。 じょうもんは、 智慧ちえたのまずかいぎょうまもらず、 しんをも調ととのへず、 ただいふに甲斐かいなき無智むちのものにりて、 本願ほんがんりきたのみておうじょうねがふなり。」

、聖道門メテ↢智慧↡離↢生死↡、浄土門↢愚痴↡生↢極楽↡。所以コノユヘニオモム↢聖道門↡之時ミガ↢智慧↡守↢禁戒↡、以↠浄ムルヲ↢心性↡為↠宗。入↢浄土門↡之日タノ↢智慧↠護↢戒行↡、↠調↢心器オモ↡、只フニ↢甲斐↡成↢無智↡、憑↢本願力↡願↢往生↡也。」

(138)

(三心料簡事 ) 「一 本願ほんがんじょうじゅこと

「一 本願成就事。

念仏ねんぶつはわがしょなり、 おうじょうぶつしょなり。 おうじょうぶつおんちからにてせしめたまふものを、 わがこころにとかくせんとおもふはりきなり。 ただすべからく称名しょうみょうにつきたる来迎らいこうつべし。」

念仏所作也、往生所作也。往生ニテセシメ、我ニトカクセムトフハ自力也。タヾラクシ ↧付タル↢称名↡之来迎↥。」

(139)

(三心料簡事 ) 「一 ¬礼讃らいさん¼ のにゃくのうにょじょう念々ねんねん相続そうぞくこと

「一 ¬礼讃¼若能如上念念相ゾク事。

¬おうじょうようしゅう¼ には三心さんしんねんしゅしてにょじょうといふなり。 これによりてこれをいはば、 三心さんしんねんしゅなかしょうじょぎょうあかす、 これをして念々ねんねん相続そうぞくといふなり。」

¬往生要集ニハ¼シテ↢三心・五念・四修↡云↢如上↡也。依↠之ハバ、三心・五念・四修↢正助二行↡、指シテ↠之↢念々相続↡也。」

(140)

一 ひていはく、 極楽ごくらくぼん差別しゃべつのあることは、 弥陀みだ本願ほんがんかまへたるべくそうろうか。 こたへていはく、 極楽ごくらくぼん弥陀みだ本願ほんがんにあらず、 さらに四十八がんなかにはあらず。 これしゃくそんぎょうごんなり。 もし善人ぜんにん悪人あくにん一所いっしょうまるとかば、 悪業あくごうのものは等慢とうまんこころおこすべきがゆゑに、 ほん差別しゃべつをあらしめて、 善人ぜんにんじょうぼんすす悪人あくにんぼんくだるとくなり。 いそぎまいりてるべし。

一 問云、極楽↢九品差別↡事、可↢弥陀本願↡候歟。答云、極楽九品↢弥陀本願↡、更↢四十八願ニハ↡。釈尊巧言也。若カバ↣善人・悪人生↢一所、悪業可↠起↢等慢↡故、令↠有↢品位之差別↡、説↧善人↢上品↡悪人ルト↦下品↥也。イソ可↠見。

(141)

一 法然ほうねんしょうにんの ¬三昧さんまい発得ほっとく¼ に、

一 法然聖人¬三昧発得記¼、

しょうにんぞんしょうときしょう三昧ざんまい発得ほっとくして、 つねにじょうしょうたまふ。 ひつをもつてこれをしるしたまふ。 勢観せいかんぼうこれをつたふ。 しょうにんおうじょうのちみょうへんそうこれをたずねて、 一見いっけんくわへてかんなみだながして、 すなはち本所ほんじょおくらる。 当初そのかみいささかこのよしおよぶといへども、 いまだほんざればそのむねしるせず。 のちにかのてこれをうつす。 生年せいねん六十六にあたりて。 *長承ちょうしょうねんみずのとうしのとしたんじょうなり

聖人御存生之時、発↢得シテ口称三昧↡、常タマフ↢浄土依正↡。以↢自筆↡記シタマフ↠之。勢観房伝↠之。聖人往生之ノチ、明遍僧都尋↠之、加ヘテ↢一見↡流シテ↢歓喜↡、即↠送↢本所↡。当初ソノカミ↢及ブト↡、未↠見↠本↠記↢其↡。後↢彼↡写↠之。御生年当↢六十六↡。*長承二年癸丑年御誕生也

(142)

一 ひていはく、 りきりきもうこと何様いかようこころべくそうろうや。 こたふ。 源空げんくう殿でんじょうまいるべきりょうにあらずといえども、 かみよりせば二まで殿でんじょうまいりぬ。 これわがまいるべきしきにはあらず、 かみおんちからなり。 いかにいはんや阿弥陀あみだぶつおんちから称名しょうみょうがんこたへて来迎らいこうしたまふこと、 なんのしんかあらん。 しんつみおもく、 無智むちのものなれば、 いかにしておうじょうげんとうたがふべからず。

一 問云、自力他力事、何様可↠得↠心候答。源空↠非ズト↧可↠参↢殿上↡機量↥、自マデ参↢殿上↡。↢我↠参之式ニハ↡、上也。何況阿弥陀仏コタヘテ↢称名↡来カウシタマフ事、有不審↡。自身罪重、無智ナレバ、云何ニシテ↠可↠疑↠遂ゲムト↢往生↡。

(143)

(三心料簡事 ) 「一 善悪ぜんあくこと

「一 善悪機事。

念仏ねんぶつもうさんものは、 ただまれつきのままにてもうすべし。 善人ぜんにん善人ぜんにんながら、 悪人あくにん悪人あくにんながら、 ほんのままにてもうすべし。 この念仏ねんぶつるゆゑに、 はじめてかいかいなにくれといふべからず。 ただ本体ほんたいありのままにてもうすべしと。」

念仏申サム、只生付マヽニテ申ベシ。善人ハナガラ↢善人↡、悪人↢悪人↡、本ノマヽニテ申ベシ。此↢念仏↡之故、始持戒・破戒ナニクレトイフベカラズ。只本体アリノマヽニテ申ベシト。」

(144)

(三心料簡事 ) 「一 あく一人いちにんきてこのおうじょうしけるは、 いはれたるどうなりけりとるほどにならひたるを、 じょうしゅうがくしたるとはいふなり。 このしゅうは、 悪人あくにんほんとなして善人ぜんにんまでせっするなり。 しょうどうもん善人ぜんにんほんとなして悪人あくにんをもせっするなり。」

「一 一人置往生シケルハ、謂タル道理也ケリトタルヲ、浄土宗シタルトハ云也。此、悪人シテ↢手本↡善人マデスル也。聖道門善人シテ↢手本↡悪人ヲモスル也。」

 

已上了

 

延書は底本の訓点にしたがって有国が行った。 なお、 表記は現代仮名遣いとしている。
底本は高田派専修寺蔵顕智上人自筆本