0246◎安楽集 巻下
釈*道綽撰
二 Ⅳ【第四大門】
ⅰ 標列
【28】◎^第四大門のなかに三番の*料簡あり。 第一に↓中国 (印度) の*三蔵法師ならびに此土 (中国) の*大徳等みなともに聖教を詳審し、 歎じて浄土に帰するにより、 いまもつて勧めてよらしむ。 第二に↓この ¬経¼ (観経) の*宗および余の大乗諸部によるに、 *凡聖の修入多く念仏三昧を明かして、 もつて*要門となす。 第三に↓問答解釈して、 念仏者の種々の功能利益を得ること不可思議なることを顕す。
◎第0616四大門ノ中ニ有リ↢三番ノ料簡↡。第一ニ依リ↧中国ノ三蔵法師并ニ此ノ土ノ大徳等皆共ニ詳↢審シ聖教ヲ↡、歎ジテ帰スルニ↦浄土ニ↥、今以テ勧メテ依ラシム。第二ニ拠ルニ↢此ノ¬経ノ¼宗及ビ余ノ大乗諸部ニ↡、凡聖ノ修入多ク*明シテ↢念仏三昧ヲ↡、以テ為ス↢要門ト↡。第三ニ問答解釈シテ、顕ス↧念仏者ノ得ルコト↢種種ノ功能利益ヲ↡不可思議ナルコトヲ↥。
二 Ⅳ ⅱ 解釈
a 師承念仏要門【念仏大徳所行】
イ 標
【29】^第一に↑中国および此土の大徳の所行によるとは、
第一ニ依ルト↢中国及以此土ノ大徳ノ所行ニ↡者、
二 Ⅳ ⅱ a ロ 釈
(一)師承を挙げて意を叙す
^▼余 (道綽) は*五翳にして面牆なり。 ▼あにいづくんぞみづからたやすくせんや。 ただおもんみれば遊歴し披き勘ふるに、 敬ふに*師承あり。
餘ハ*五翳ニシテ面牆ナリ。豈ニ寧ンゾ自ラ輒クセムヤ。但以レバ遊歴シ披キ勘フルニ、敬フニ有リ↢師承↡。
二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)正挙
(Ⅰ)六師の名徳を列嘆す
(ⅰ)別嘆
^▼なんとなれば、 いはく、 中国の大乗法師流支三蔵 (*菩提流支) あり。
何トナレバ者謂ク中国ノ大乗法師流支三*蔵アリ。
^次に大徳の*名利を*呵避するあり、 すなはち*恵寵法師あり。
次ニ有リ↣大徳ノ呵↢避スル名利ヲ↡、則チ有リ↢恵寵法*師↡。
^次に大徳の尋常に*敷演するごとに聖僧の来聴を感ずるあり、 すなはち*道場法0247師あり。
次ニ有リ↢大徳ノ尋常ニ敷演スル毎ニ感ズル↢聖僧ノ来聴ヲ↡、則チ有リ↢道場法*師↡。
^次に大徳の光を和らげて孤り栖みて、 二国 (梁・魏) 慕仰するあり、 すなはち*曇鸞法師あり。
次ニ有リ↢大徳ノ和ラゲテ↠光ヲ孤リ栖ミテ二国慕仰スル↡、則チ有リ↢曇*鸞法師↡。
^次に大徳の禅観に独り秀でたるあり、 すなはち*大海禅師あり。
次ニ有リ↢大徳ノ禅観ニ独リ秀デタル↡、則チ有リ↢大海禅師↡。
^次に大徳の聡慧にして戒を守るあり、 すなはち*斉朝の上統あり。
次ニ有リ↢大徳ノ聡恵ニシテ守ル↟戒ヲ、則チ有リ↢斉朝ノ上*統↡。
二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)総嘆
(a)嘆人
^しかるに前の六大徳は、 *ならびにこれ*二諦の神鏡、 これすなはち仏法の綱維なり。 志行、 倫を殊にして古今に実に希なり。
然ルニ前ノ六大徳ハ並ニ是二諦ノ神鏡、斯乃チ仏法ノ綱維ナリ。志行、殊ニシテ↠倫ヲ古今ニ実ニ希0617ナリ。
二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)嘆法
^みなともに大乗を詳審し、 歎じて浄土に帰す。 すなはちこれ無上の要門なり。
皆共ニ*詳↢審シ大乗ヲ↡、歎ジテ帰ス↢浄土ニ↡。乃チ是无上ノ要門也。
二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)且に終端に就きて徳を顕す
(ⅰ)問
^問ひていはく、 すでに歎じて浄土に帰す、 すなはちこれ要門なりといはば、 いまだ知らず、 これらの諸徳臨終の時、 みな*霊験ありやいなや。
問ヒテ曰ク、既ニ云ハバ↧歎ジテ帰ス↢浄土ニ↡、乃チ是要門ナリト↥者、未ダ↠知ラ、此等ノ諸徳臨終ノ時、皆有リヤ↢*霊験↡已不ヤ。
二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)答
(a)総じて不虚を略答す
^答へていはく、 みなあり、 虚しからず。
答ヘテ曰ク、皆有リ、不↠虚シカラ。
二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)別して鸞祖の徳を略明す
(イ)先づ平生の徳化を明す
[一]自行
^▼曇鸞法師のごときは、 *康存の日つねに浄土を修す。
如キハ↢曇*鸞法師ノ↡、康存之日常ニ修ス↢浄土ヲ↡。
二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[二]化他
[Ⅰ]断疑徳
[ⅰ]君子の疑を決す
[a]難
^▼またつねに*世俗の君子ありて、 来りて法師を呵していはく、 「十方仏国みな浄土たり、 法師なんぞすなはち独り意を西に注むる。 あに偏見の生にあらずや」 と。
亦毎ニ有リテ↢世俗ノ君子↡、来リテ呵シテ↢法師ヲ↡曰ク、十方仏国皆為リ↢浄土↡、法師何ゾ乃チ独リ意ヲ注ムル↠西ニ。豈ニ非ズ↢偏見ノ生ニ↡也ト。
二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[二][Ⅰ][ⅰ][b]決
^▼法師対へていはく、 「われすでに凡夫にして、 智慧浅短なり。 いまだ*地位に入らざれば、 念力すべからく均しくすべけんや。 草を置きて牛を引くに、 つねにすべからく心を*槽櫪に繋ぐべきがごとし。 あにほしいままにして、 まつたく帰するところなきことを得んや」 と。
法師対ヘテ曰ク、吾既ニ凡夫ニシテ、智恵浅短ナリ。未ダレバ↠入ラ↢地位ニ↡、念力須クケムヤ↠*均シクス。如↢似シ置キテ↠草ヲ引クニ↠牛ヲ、恒ニ須クキガ↟繋グ↢心ヲ槽櫪ニ↡。豈ニ得ムヤト↢縦放シテ、全ク无キコトヲ↟所↠帰スル。
二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[二][Ⅰ][ⅱ]衆人の疑を決す
^◆また*難者紛紜たりといへども、 法師独り決せ0248り。
雖モ↢復難者紛紜タリト↡而法師独リ決セリ。
二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[二][Ⅱ]生信徳
^▼ここをもつて一切*道俗を問ふことなく、 ただ法師と一面あひ遇ふものは、 もしいまだ正信を生ぜざるには、 勧めて信を生ぜしめ、 もしすでに正信を生ぜるものには、 みな勧めて浄国に帰せしむ。
是ヲ以テ无ク↠問フコト↢一切道俗ヲ↡、但与↢法師↡一面相遇フ者ハ、若シ未ダルニハ↠生ゼ↢正信ヲ↡、勧メテ令メ↠生ゼ↠信ヲ、若シ已ニ生ゼル↢正信ヲ↡者ニハ、皆勧メテ帰セシム↢浄国ニ↡。
二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)正しく終時の霊験を明す
^◆このゆゑに法師命終の時に臨みて、 寺の傍らの左右の道俗、 みな*幡華の院に映ずるを見、 ことごとく*異香・音楽迎接して往生を遂げたまへるを聞く。
是ノ故ニ法師臨ミテ↢命終ノ時ニ↡、寺ノ傍ノ*左右ノ道俗、皆見↢幡花ノ映ズルヲ↟院ニ、尽ク聞ク↣異香・音楽迎接シテ遂ゲタマヘルヲ↢往生ヲ↡也。
二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(c)総じて余師の終端を結す
^余の大徳命終の時に臨みて、 みな*徴祥あり。 もしつぶさに往生の相を談ぜんと欲せば、 ならびに不可思議なり。
余之大徳臨ミテ↢命終ノ時ニ↡、皆有リ↢徴祥↡。若シ欲セバ↣具ニ談ゼムト↢往生之相ヲ↡、並ニ不可思議也。
二 Ⅳ ⅱ b 諸経念仏要門【諸経所明念仏】
イ 標章
【30】^第二に↑*此彼の諸経に多く念仏三昧を明かして宗となすことを明かすとは、
第二ニ明スト↧此彼ノ諸経ニ多ク明シテ↢念仏三昧ヲ↡為スコトヲ↞宗ト者、
二 Ⅳ ⅱ b ロ 引釈
(一)列分
^なかにつきて八番あり。 初めの二は*一相三昧を明かし、 後の六は縁につき相によりて念仏三昧を明かす。
就キテ↠中ニ有リ↢八番↡。初ノ二ハ明シ↢一相三昧ヲ↡、後ノ六ハ就キ↠縁ニ依リテ↠相ニ明ス↢念仏三昧ヲ↡。
二 Ⅳ ⅱ b ロ (二)正引
(Ⅰ)観仏三昧を明す文
(ⅰ)二種を標す
^第一に ¬*華首経¼ (意) によるに、 「仏、 堅意菩薩に告げたまはく、 ª三昧に二種あり。 一には一相三昧あり、 二には衆相三昧あり。
第一ニ依ルニ↢¬花首経ニ¼↡「仏告ゲタマハク↢堅意菩薩ニ↡、三昧ニ有リ↢二種↡。一ニ者有リ↢一相三昧↡、二ニ者有リ↢衆相三昧↡。
二 Ⅳ ⅱ b ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)正しく一相を明す
(a)修勧相
(イ)所観境
^一相三昧とは、 菩薩あり、 その世界にその如来ましまして現にましまして法を説きたまふと聞き、 菩薩この仏の相を取るに、 もつて現じて前にまします。 もしは道場に坐し、 もしは法輪を転じ、 大衆*囲繞す。
一相三昧ト者、有リ↢菩薩↡、聞キ↧*其ノ世界ニ有シテ↢*其ノ如来↡現ニ在シテ説キタマフト↞法ヲ、菩薩取ルニ↢是ノ仏0618ノ相ヲ↡、以テ現ジテ在ス↠前ニ。若シハ坐シ↢道場ニ↡、若シハ転ジ↢法輪ヲ↡、大衆囲遶ス↥
二 Ⅳ ⅱ b ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(a)(ロ)能観相
^かくのごとき相を取る。 *諸根を収摂して心*馳散せず、 もつぱら一仏を念じてこの縁を捨てず。 かくのごとき菩薩は、 如来の相お0249よび世界の相において無相を了達し、 つねにかくのごとく観じ、 かくのごとく行じて、 この縁を離れず。
取ル↢如キ↠是クノ相ヲ↡。収↢摂シテ諸根ヲ↡心不↢馳散セ↡、専ラ念ジテ↢一仏ヲ↡不↠捨テ↢是ノ縁ヲ↡。如キ↠是クノ菩薩ハ、於テ↢如来ノ相及ビ世界ノ相ニ↡了↢達シ无相ヲ↡、常ニ如ク↠是クノ観ジ、如ク↠是クノ行ジテ、不↠離レ↢是ノ縁ヲ↡。
二 Ⅳ ⅱ b ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)観成益
(イ)定中益
^この時に仏像すなはち現じて前にましまして、 ために法を説きたまふ。 菩薩その時深く*恭敬を生じて、 この法を聴受し、 もしは深、 もしは浅、 *うたた尊重を加ふ。 菩薩この三昧に住して、 諸法はみな*可壊の相なりと説くを聞く。 聞きをはりて受持して、
是ノ時ニ仏像即チ現ジテ在シテ↠前ニ而為ニ説キタマフ↠法ヲ。菩薩爾ノ時深ク生ジテ↢恭敬ヲ↡、聴↢受シ是ノ法ヲ↡、若シハ深若シハ浅、転タ加フ↢尊重ヲ↡。*菩薩住シテ↢是ノ三昧ニ↡、聞ク↠説クヲ↢諸法ハ皆可壊ノ相ナリト↡。聞キ已リテ受持シテ、
二 Ⅳ ⅱ b ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)(ロ)定起益
^三昧より起ちてよく四衆のためにこの法を演説すº と。
従リ↢三昧↡起チテ能ク為ニ↢四衆ノ↡演↢説スト是ノ法ヲ↡。
二 Ⅳ ⅱ b ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(c)結
^仏、 堅意に告げたまはく、 ªこれを菩薩の一相三昧門に入ると名づくº」 と。
仏告ゲタマハク↢堅意ニ↡、是ヲ名クト↣菩薩ノ入ルト↢一相三昧門ニ↡。」
二 Ⅳ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)念仏三昧を明す文
(ⅰ)標
^第二に ¬*文殊般若¼ (意) によりて*一行三昧を明かさば、
第二ニ依リテ↢¬文殊*般若ニ¼↡明サバ↢一行三昧ヲ↡者、
二 Ⅳ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)釈
(a)問
^「時に*文殊師利、 仏にまうしてまうさく、 ª世尊いかなるをか名づけて一行三昧となすº と。
「*時ニ文殊師利白シテ↠仏ニ言ク、世尊、云何ナルヲカ名ケテ為スト↢一行三昧ト↡。
二 Ⅳ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)答
^仏のたまはく、 ª▼一行三昧とは、 もし善男子・善女人*空閑の処にありて、 もろもろの乱意を捨て、 仏の*方所に随ひて端身正向にして、 *相貌を取らず、 心を一仏に繋けてもつぱら名字を称して念ずること休息なくは、 すなはちこの念のうちによく過・現・未来の三世の諸仏を見たてまつるべし。 なにをもつてのゆゑに。 一仏を念ずる功徳無量無辺にして、 すなはち無量の諸仏の功徳と無二なればなり。
仏言ク、一行三昧ト者若シ善男子・善女人応シ↧在リテ↢空*閑ノ処ニ↡、捨テ↢諸ノ乱意ヲ↡、随ヒテ↢仏ノ方所ニ↡端身正向ニシテ、不↠取ラ↢相貌ヲ↡、繋ケテ↢心ヲ一仏ニ↡専ラ称シテ↢名字ヲ↡念ズルコト无クハ↢休息↡、即チ是ノ*念ノ中ニ能ク見タテマツル↦過・現・未来ノ三世ノ諸仏ヲ↥。何ヲ以テノ故ニ。念ズル↢*一仏ヲ↡功徳无量无辺ニシテ、即チ与↢无量ノ諸仏ノ功徳↡无二ナレバナリ。
^これを菩薩の一行三昧と名づくº」 と。
是ヲ名クト↢菩薩ノ一行三昧ト↡。」
二 Ⅳ ⅱ b ロ (二)(Ⅲ)念仏冥益の文
(ⅰ)文を括りて示す
^0250第三に ▼¬*涅槃経¼ によるに、 仏のたまはく、 「もし人ただよく心を至してつねに念仏三昧を修すれば、 十方諸仏つねにこの人を見そなはすこと、 現に前にましますがごとし」 と。
第三ニ依ルニ↢¬涅槃経ニ¼↡、仏言ク、若シ人但能ク至シテ↠心ヲ常ニ修スレバ↢念仏三昧ヲ↡者、十方諸仏恒ニ見ソナハスコト↢此ノ人ヲ↡如シト↢現ニ在スガ↟前ニ。
二 Ⅳ ⅱ b ロ (二)(Ⅲ)(ⅱ)正しく文を引く
^◆このゆゑに ¬涅槃経¼ (意) にのたまはく、 「仏、 *迦葉菩薩に告げたまはく、 ªもし善男子・善女人ありてつねによく心を至しもつぱら念仏するものは、 もしは山林にもあれ、 もしは*聚落にもあれ、 もしは昼、 もしは夜、 もしは坐、 もしは臥に、 諸仏世尊つねにこの人を見そなはすこと、 目の前に現ずるがごとし。 つねにこの人と▼住して施を受けたまふº」 と。
是ノ故ニ¬涅槃経ニ¼云ク、「仏告ゲタマハク↢迦葉菩薩ニ↡、若シ有リテ↢善男子・善女人↡常ニ能ク至シ↠心ヲ専ラ念仏スル者ハ、若シハ在レ↢山林ニモ↡若シハ在レ↢聚落ニモ↡、若シハ昼若シハ夜、若シハ坐*若0619シハ臥ニ、諸仏世尊常ニ見ソナハスコト↢此ノ人ヲ↡如シ↠現ズルガ↢*目ノ前ニ↡。恒ニ与↢此ノ人↡而*住シテ受ケタマフト↠施ヲ。」
二 Ⅳ ⅱ b ロ (二)(Ⅳ)諸行念仏の得失を明す文
(ⅰ)並べて二行を挙ぐ
(a)万行の回生を明す
^第四に ¬*観経¼ および余の諸部によるに、 所修の▼万行ただよく*回願してみな生ぜざるはなし。
第四ニ依ルニ↢¬観経¼及ビ余ノ諸部ニ↡、所修ノ万行但能ク廻願シテ莫シ↠不ルハ↢皆生ゼ↡。
二 Ⅳ ⅱ b ロ (二)(Ⅳ)(ⅰ)(b)念仏の為要を示す
^▼しかるに念仏の一門、 もつて要路となす。
然ルニ念仏ノ一*門、将テ為ス↢要路ト↡。
二 Ⅳ ⅱ b ロ (二)(Ⅳ)(ⅱ)特に念仏の得を明す
(a)両益を標す
^なんとなれば、 聖教を*審量するに始終の両益あればなり。 もし善を生じ行を起さんと欲すれば、 すなはちあまねく*諸度を該ぬ。 もし悪を滅して災を消すれば、 すなはち総じて諸障を治す。
何トナレバ者審↢量スルニ聖教ヲ↡有レバナリ↢始終ノ両益↡。若シ欲スレバ↢生ジ↠善ヲ起サムト↟行ヲ、則チ普ク該ヌ↢諸度ヲ↡。若シ滅シテ↠悪ヲ消スレバ↠災ヲ、則チ総ジテ治ス↢諸障ヲ↡。
二 Ⅳ ⅱ b ロ (二)(Ⅳ)(ⅱ)(b)釈
(イ)始益
^ゆゑに下に ¬経¼ (観経・意) にのたまはく、 ▼「▲念仏の衆生を摂取して捨てたまはず、 ▲寿尽きてかならず生ず」 と。 これを*始益と名づく。
故ニ下ニ¬経ニ¼云ク、「念仏ノ衆生ヲ摂取シテ不↠捨テタマハ、寿尽キテ必ズ生ズト。」此ヲ名ク↢始益ト↡。
二 Ⅳ ⅱ b ロ (二)(Ⅳ)(ⅱ)(b)(ロ)終益
^◆*終益といふは、 ¬*観音授記経¼ (意) によるにのたまはく、 「▼阿弥陀仏、 世に住したまふこと長久にして*兆載永劫なるも、 また滅度したまふことあり。 *般涅槃の時、 た0251だ*観音・*勢至のみありて、 安楽を*住持して十方を*接引したまふ。 その仏の滅度また住世の時節と等同なり。 しかるにかの国の衆生は一切、 仏を*覩見したてまつるものあることなし。
言フ↢終益ト↡者、依ルニ↢¬*観音授記経ニ¼↡云ク、「阿弥陀仏住シタマフコト↠世ニ長久ニシテ兆載永劫ナルモ、亦有リ↢滅度シタマフコト↡。般涅槃ノ時、唯有リテ↢観音・勢至ノミ↡、住↢持シテ安楽ヲ↡接↢引シタマフ十方ヲ↡。其ノ仏ノ滅度亦与↢住世ノ時節↡等同ナリ。然ルニ彼ノ国ノ衆生ハ一切无シ↠有ルコト↧覩↢見シタテマツル仏ヲ↡者↥。
^◆ただ*一向にもつぱら阿弥陀仏を念じて往生するもののみありて、 つねに弥陀現にましまして滅したまはざるを見る」 と。 これすなはちこれその*終時の益なり。
唯有リテ↧一向ニ専ラ念ジテ↢阿弥陀仏ヲ↡往生スル者ノミ↥、常ニ見ルト↢弥陀現ニ在シテ不ルヲ↟滅シタマハ。」此即チ是其ノ終時ノ益也。
二 Ⅳ ⅱ b ロ (二)(Ⅳ)(ⅲ)万行の失を決す
^修するところの*余行、 回向してみな生ずるも、 世尊の滅度に覩ると覩ざるとあり。
所ノ↠修スル余行、廻向シテ皆生ズルモ、世尊ノ滅度ニ有リ↢覩ルト不ルト↟*覩。
二 Ⅳ ⅱ b ロ (二)(Ⅳ)(ⅳ)結勧
^後代を勧めて審量して遠益に沾さしむ。
勧メテ↢後代ヲ↡審量シテ使ム↠*沾サ↢遠益ニ↡也。
二 Ⅳ ⅱ b ロ (二)(Ⅴ)念仏正因を決する文
(ⅰ)修相
^第五に ¬*般舟経¼ (意) によるにのたまはく、 「▼時に跋陀和菩薩あり、 この国土に阿弥陀仏ましますと聞きて、 しばしば念を係く。
第五ニ依ルニ↢¬般舟経ニ¼↡云ク、「時ニ有リ↢跋陀和菩薩↡、於テ↢此ノ国土ニ↡聞キテ↠有スト↢阿弥陀仏↡、数数係ク↠念ヲ。
二 Ⅳ ⅱ b ロ (二)(Ⅴ)(ⅱ)行益
(a)仏を見て咨嗟す
^◆この念によるがゆゑに阿弥陀仏を見たてまつる。 すでに仏を見たてまつりをはりて、 すなはち従ひて啓問すらく、 ªまさにいかなる法を行じてか、 かの国に生ずることを得べきº と。
因ルガ↢是ノ念ニ↡故ニ見タテマツル↢阿弥陀仏ヲ↡。既ニ見タテマツリ↠仏ヲ已リテ、即チ従ヒテ啓問スラク、当ニキト↧行ジテカ↢何ナル法ヲ↡得↞生ズルコトヲ↢彼ノ国ニ↡。
二 Ⅳ ⅱ b ロ (二)(Ⅴ)(ⅱ)(b)仏生因を決す
^◆その時阿弥陀仏、 この菩薩に語りてのたまはく、 ª▼わが国に来生せんと欲せば、 つねにわが名を念じて休息あることなかれ。 かくのごとくして、 わが国土に来生することを得ん。
爾ノ時阿弥陀仏語リテ↢是ノ菩薩ニ↡言ク、欲セバ↣来↢生セムト我ガ国ニ↡者、常ニ念ジテ↢我ガ名ヲ↡莫レ↠有ルコト↢休息↡。如クシテ↠是クノ、得ム↣来↢生スルコトヲ我ガ国土ニ↡。
二 Ⅳ ⅱ b ロ (二)(Ⅴ)(ⅲ)重ねて方便を教ふ
^まさに仏身の三十二相ことごとくみな具足して、 光明徹照し*端正無比なるを念ずべしº」 と。
当ニシト↠念ズ↢仏身ノ三十二相悉ク皆具足シテ、光明徹照シ端正无比ナルヲ↡。」
二 Ⅳ ⅱ b ロ (二)(Ⅵ)徳を具す故須く常念すべきを明す文
(ⅰ)標
^第六に▼¬*大智度論¼ (意) によるに三番の解釈あり。
第0620六ニ依ルニ↢¬大智度論ニ¼↡有リ↢三番ノ解釈↡。
二 Ⅳ ⅱ b ロ (二)(Ⅵ)(ⅱ)釈
(a)無上法王
^▼「第一に仏はこれ無上法王0252にして、 菩薩は法臣たり。 尊ぶところ重くするところはただ仏世尊なり。 このゆゑにまさにつねに念仏すべし。
「第一ニ仏ハ是无上法王ニシテ、菩薩ハ為リ↢法臣↡。所↠尊ブ所ハ↠重クスル唯仏世尊ナリ。是ノ故ニ応ニ当シ↢常ニ念仏ス↡也。
二 Ⅳ ⅱ b ロ (二)(Ⅵ)(ⅱ)(b)報恩
^◆第二にもろもろの菩薩ありてみづからいはく、 ªわれ*曠劫よりこのかた、 世尊の長養を蒙ることを得たり。 われらが法身・*智身・*大慈悲身、 禅定・智慧、 無量の*行願、 仏によりて成ずることを得たり。 報恩のためのゆゑに、 つねに仏に近づかんと願ず。 また大臣、 王の恩寵を蒙りて、 つねにその主を念ふがごとしº と。
第二ニ有リテ↢諸ノ菩薩↡自ラ云ク、我従リ↢曠劫↡以来タ、得タリ↠蒙ルコトヲ↢世尊ノ長養ヲ↡。我等ガ法身・智身・大慈悲身、禅定・智*慧、无量ノ行願、由リテ↠仏ニ得タリ↠成ズルコトヲ。為ノ↢報恩ノ↡故ニ、常ニ願ズ↠近ヅカムト↠仏ニ。亦如シト↧大臣蒙リテ↢王ノ恩寵ヲ↡、常ニ念フガ↦其ノ主ヲ↥。
二 Ⅳ ⅱ b ロ (二)(Ⅵ)(ⅱ)(c)念仏三昧徳
^▼第三にもろもろの菩薩ありてまたこの言をなさく、 ªわれ*因地において、 *悪知識に遇ひて*般若を誹謗して悪道に堕して、 無量劫を経たり。 余行を修すといへども、 いまだ出づることを得ることあたはず。 ^後に一時に*善知識の辺によるに、 われを教へて念仏三昧を行ぜしむ。 その時にすなはちよく諸障を*併せ遣り、 まさに解脱を得たり。 この大益あるがゆゑに、 願じて仏を離れずº」 と。
第三ニ有リテ↢諸ノ菩薩↡復作サク↢是ノ言ヲ↡、我於テ↢因地ニ↡、遇ヒテ↢悪知識ニ↡誹↢謗シテ*般若ヲ↡*堕シテ↢於悪道ニ↡、経タリ↢无量劫ヲ↡。雖モ↠修スト↢余行ヲ↡、未ダ↠能ハ↠得ルコト↠出ヅルコトヲ。後ニ於テ↢一時ニ↡依ルニ↢善知識ノ辺ニ↡、教ヘテ↠我ヲ行ゼシム↢念仏三昧ヲ↡。其ノ時ニ即チ能ク*併セ↢遣リ諸障ヲ↡、方ニ得タリ↢解脱ヲ↡。有ルガ↢斯ノ大益↡故ニ、*願ジテ不ト↠離レ↠仏ヲ。」
二 Ⅳ ⅱ b ロ (二)(Ⅶ)見仏に勝益有るを示す文
(ⅰ)平生堅誓相
^第七に ¬*華厳経¼ によるにのたまはく、
第七ニ依ルニ↢¬花厳経ニ¼↡云ク、
^「むしろ無量劫において、 つぶさに一切の苦を受くとも、
つひに、 如来に遠ざかりて自在力を覩たてまつらざることなからん」 と。
「寧ロ於テ↢无量劫ニ↡ | 具ニ受クトモ↢一切ノ*苦ヲ↡ |
終ニ不カラムト↧遠ザカリテ↢如来ニ↡ | 不ルコト↞覩タテマツラ↢自在力ヲ↡。」 |
二 Ⅳ ⅱ b ロ (二)(Ⅶ)(ⅱ)臨終必見益
^またのたまはく (華厳経)、
又云ク、
0253^「念仏三昧はかならず仏を見たてまつり、 命終の後に仏前に生ず。
かの臨終を見ては念仏を勧め、 また尊像を示して*瞻敬せしめよ」 と。
「念仏三昧ハ必ズ見タテマツリ↠仏ヲ | 命終之後ニ生ズ↢仏前ニ↡ |
見テハ↢彼ノ臨終ヲ↡勧メ↢念仏ヲ↡ | 又示シテ↢尊像ヲ↡令メヨト↢瞻敬セ↡。」 |
二 Ⅳ ⅱ b ロ (二)(Ⅶ)(ⅲ)深契離倒益
^また (華厳経・意) 「*善財童子、 善知識を求めて*功徳雲比丘の所に詣りてまうさく、 ª大師いかんが菩薩の道を修して*普賢の行に帰するやº と。
又善財童子求メテ↢善知識ヲ↡詣リテ↢功徳雲比丘ノ所ニ↡白シテ言ク、「大師云何ガ修シテ↢菩薩ノ道ヲ↡帰スル↢普賢ノ行ニ↡也ト。
^この時▼比丘、 善財に告げていはく、 ªわれ世尊の智慧海のなかにおいてただ一法を知る。 いはく念仏三昧門なり。 なんとなれば、 この三昧門のなかにおいて、 ことごとくよく一切の諸仏およびその眷属、 厳浄の*仏刹を覩見して、 よく衆生をして顛倒を遠離せしむ。
是ノ時比丘告ゲテ↢善財ニ↡曰ク、我於テ↢世尊ノ智*慧海ノ中ニ↡唯知ル↢一法ヲ↡。謂ク念仏三昧門ナリ。何トナレバ者於テ↢此ノ三昧門ノ中ニ↡、悉ク能ク覩↢見シテ一切ノ諸仏及ビ其ノ眷属、厳浄ノ仏刹ヲ↡、能ク令ム↣衆生ヲシテ遠↢離セ顛倒ヲ↡。
^念仏三昧門は、 微細の境界のなかにおいて一切の仏の自在の境界を見、 *諸劫の不顛倒を得。 念仏三昧門はよく一切の仏刹を起すに、 よく壊するものなし。 あまねく諸仏を見たてまつりて、 *三世の不顛倒を得º と。
念仏三昧門者、於テ↢微細ノ境界ノ中ニ↡見0621↢一切ノ仏ノ自在ノ境界ヲ↡、得↢諸劫ノ不顛倒ヲ↡。念仏三昧門者、能ク起スニ↢一切ノ仏刹ヲ↡、无シ↢能ク壊スル者↡。普ク見タテマツリテ↢諸仏ヲ↡、得ト↢三世ノ不顛倒ヲ↡。
^時に功徳雲比丘、 善財に告げていはく、 ª仏法の深海は広大無辺なり。 わが知るところは、 ただこの一の念仏三昧門を得たるのみ。 余の妙境界は数量に出過して、 われいまだ知らざるところなりº」 と。
時ニ功徳雲比丘告ゲテ↢善財ニ↡言ク、仏法ノ深海ハ広大无辺ナリ。我ガ所↠知ル者、唯得タルノミ↢此ノ一ノ念仏三昧門ヲ↡。余ノ妙境界ハ出↢過シテ数量ニ↡、我所↠未ダル↠知ラ也ト。」
二 Ⅳ ⅱ b ロ (二)(Ⅷ)見仏諸国を明す文
(ⅰ)八法を標す
(a)正しく標す
^第八に ¬*海竜王経¼ (意) によるに、 「時に海竜王、 仏にまうしてまうさく、 ª世尊、 弟子、 阿弥陀仏国に生ぜんと求む。 まさにいかなる行を修してか、 かの0254土に生ずることを得べきº と。
第八ニ依ルニ↢¬海竜王経ニ¼↡、「時ニ海竜王白シテ↠仏ニ言ク、世尊、弟子求ム↠生ゼムト↢阿弥陀仏国ニ↡。当ニキト↧修シテカ↢何ナル行ヲ↡得↞生ズルコトヲ↢彼ノ土ニ↡。
^仏、 竜王に告げたまはく、 ªもしかの国に生ぜんと欲せば、 まさに八法を行ずべし。 なんらをか八となす。 一にはつねに諸仏を念ず。 二には如来を供養す。 三には世尊を*咨嗟す。 四には仏の形像を作りてもろもろの功徳を修す。 五には回して往生を願ず。 六には心*怯弱ならず。 七には一心に精進す。 八には仏の*正慧を求むº と。
仏告ゲタマハク↢竜王ニ↡、若シ欲セバ↠生ゼムト↢彼ノ国ニ↡者、当ニシ↠行ズ↢八法ヲ↡。何等ヲカ為ス↠八ト。一ニ者常ニ念ズ↢諸仏ヲ↡。二ニ者供↢養ス如来ヲ↡。三ニ者咨↢嗟ス世尊ヲ↡。四ニ者作リテ↢仏ノ形像ヲ↡修ス↢諸ノ功徳ヲ↡。五ニ者廻シテ願ズ↢往生ヲ↡。六ニ者心不↢怯弱ナラ↡。七ニ者一心ニ精進ス。八ニ者求ムト↢仏ノ正*慧ヲ↡。
^仏、 竜王に告げたまはく、 ª一切衆生この八法を具すれば、 つねに仏を離れずº」 と。
仏告ゲタマハク↢竜王ニ↡、一切衆生具スレバ↢斯ノ八法ヲ↡、常ニ不ト↠離レ↠仏ヲ也。」
二 Ⅳ ⅱ b ロ (二)(Ⅷ)(ⅰ)(b)具欠を分別す
^問ひていはく、 八法を具せずとも、 仏前に生じ仏を離れざることを得やいなや。
問ヒテ曰ク、不トモ↠具セ↢八法ヲ↡、得ヤ↧生ジ↢仏前ニ↡不ルコトヲ↞離レ↠仏ヲ不ヤ。
^答へていはく、 生ずることを得ること疑はず。 なにをもつてか知ることを得る。 仏、 ¬*宝雲経¼ を説きたまひし時のごとし。 また*十行具足して浄土に生ずることを得て、 つねに仏を離れざることを明かしたまへり。
答ヘテ曰ク、得ルコト↠生ズルコトヲ不↠疑ハ。何ヲ*以テカ得ル↠知ルコトヲ。如シ↧仏説キタマヒシ↢¬宝雲経ヲ¼↡時ノ↥。亦明シタマヘリ↧十行具足シテ得テ↠生ズルコトヲ↢浄土ニ↡、常ニ不ルコトヲ↞離レ↠仏ヲ。
^「時に除蓋障菩薩ありて仏にまうさく、 ª十行を具せずして生ずることを得やいなやº と。 仏のたまはく、 ª生ずることを得。 ただよく十行のなかに一行具足して闕くることなければ、 余の九行もことごとく清浄と名づく。 疑を致すことなかれº」 (意) と。
「時ニ有リテ↢除蓋障菩薩↡白サク↠仏ニ、不シテ↠具セ↢十行ヲ↡得ヤ↠生ズルコトヲ已不ヤト。仏言ク、得↠生ズルコトヲ。但能ク十行之中ニ一行具足シテ无ケレバ↠闕クルコト、余之九行モ悉ク名ク↢清浄ト↡。勿レト↠致スコト↠疑ヲ也。」
二 Ⅳ ⅱ b ロ (二)(Ⅷ)(ⅱ)類を引く
(a)汎く四法を明す
^また ¬*大樹緊陀羅王経¼ (意) にのたまはく、 「菩薩は四種の法を行じてつねに仏前を離れず。 なんらをか四となす。 一にはみづから善法を修し兼ね0255て衆生を勧めて、 みな往生して如来を見たてまつる意をなさしむ。 二にはみづから勧め他を勧めて正法を聞くことを楽はしむ。 三にはみづから勧め他を勧めて菩提心を発さしむ。 四には一向に志をもつぱらにして念仏三昧を行ず。
又¬大樹*緊*陀羅王経ニ¼云ク、「菩薩ハ行ジテ↢四種ノ法ヲ↡常ニ不↠離レ↢仏前ヲ↡。何等ヲカ為ス↠四ト。一ニ者自ラ修シ↢善法ヲ↡兼ネテ勧メテ↢衆生ヲ↡、皆作サシム↧往生シテ見タテマツル↢如来ヲ↡意ヲ↥。二ニ者0622自ラ勧メ勧メテ↠他ヲ楽ハシム↠聞クコトヲ↢正法ヲ↡。三ニ者自ラ勧メ勧メテ↠他ヲ発サシム↢菩提心ヲ↡。四ニ者一向ニ専ニシテ↠志ヲ行ズ↢念仏三昧ヲ↡。
^この四の行を具すれば、 一切の生処つねに仏前にありて諸仏を離れず」 と。
具スレバ↢此ノ四ノ行ヲ↡、一切ノ生処常ニ在リテ↢仏前ニ↡不ト↠離レ↢諸仏ヲ↡。」
二 Ⅳ ⅱ b ロ (二)(Ⅷ)(ⅱ)(b)偏に第四を証す
^また ¬経¼ (大樹緊陀羅王経・意) にのたまはく、 「仏、 菩薩の行法を説きたまふに、 三十二の器あり。 なんとなれば、 布施はこれ大富の器、 忍辱はこれ端正の器、 持戒はこれ聖身の器、 五逆不孝はこれ*刀山・剣樹・鑊湯の器、 *発菩提心はこれ成仏の器、 つねによく念仏して浄土に往生するはこれ見仏の器なり」 と。
又¬経ニ¼云ク、「仏説キタマフニ↢菩薩ノ行法ヲ↡、有リ↢三十二ノ器↡。何トナレバ者布施ハ是大富ノ器、忍辱ハ是端政ノ器、持戒ハ是聖身ノ器、五逆不孝ハ是刀山・剣樹・*鑊湯ノ器、発菩提心ハ是成仏ノ器、常ニ能ク念仏シテ往↢生スルハ浄土ニ↡是見仏ノ器ナリト。」
^略して六門を挙げて余は述べず。 聖教すでにしかり。 行者生ぜんと願ぜば、 なんぞつねに念仏せざらんや。
略シテ挙ゲテ↢六門ヲ↡余者不↠述ベ。聖教既ニ*爾リ。行者願ゼバ↠生ゼムト、何ゾ不ラム↢常ニ念仏セ↡也。
二 Ⅳ ⅱ b ロ (二)(Ⅷ)(ⅲ)念仏に結帰す
^また ¬*月灯三昧経¼ によるにのたまはく、
又依ルニ↢¬月灯三昧経ニ¼↡云ク、
^「仏の相好および徳行を念じ、 よく諸根をして乱動せざらしめ、
心に迷惑なく法と合して、 聞くことを得れば、 智を得ること大海のごとし。
「念ジ↢仏ノ相好及ビ徳行ヲ↡ | 能ク使メ↣諸根ヲシテ不ラ↢乱動セ↡ |
心ニ无ク↢迷惑↡与↠法合シテ | 得レバ↠聞クコトヲ、得ルコト↠智ヲ如シ↢大海ノ↡ |
^智者この三昧に住して、 念を摂して行ずれば、 *経行のところにおいて、
よく千億のもろもろの如来を見たてまつり、 また無量恒沙の仏に値ひたてまつる」 と。
智者住シテ↢於是ノ三昧ニ↡ | 摂シテ↠念ヲ行ズレバ、於テ↢経行ノ所ニ↡ |
能ク見タテマツリ↢千億ノ諸ノ如来ヲ↡ | 亦値ヒタテマツルト↢无量恒沙ノ仏ニ↡」 |
二 Ⅳ ⅱ c 念仏の得益を釈顕す【念仏三昧利益】
イ 標
【025631】^第三に↑問答解釈して、 念仏三昧に種々の利益あることを顕すに、 その五番あり。
第三ニ問答解釈シテ、顕スニ↣念仏三昧ニ有ルコトヲ↢種種ノ利益↡、有リ↢其ノ五番↡。
二 Ⅳ ⅱ c ロ 問答
(一)一番問答
(Ⅰ)問
^第一に問ひていはく、 いま↓つねに念仏三昧を修すといはば、 なほ余の三昧を行ぜざるや。
第一ニ問ヒテ曰ク、今云ハバ↣常ニ修スト↢念仏三昧ヲ↡、仍不ル↠行ゼ↢余ノ三昧ヲ↡也。
二 Ⅳ ⅱ c ロ (一)(Ⅱ)答
^答へていはく、 いま↑常念といへども、 また余の三昧を行ぜずとはいはず。 ただ念仏三昧を行ずること多きがゆゑなり。 ゆゑに常念といふ。 まつたく余の三昧を行ぜずといふにはあらず。
答ヘテ曰ク、今言ヘドモ↢常念ト↡、亦不↠言ハ↠不トハ↠行ゼ↢余ノ三昧ヲ↡。但行ズルコト↢念仏三昧ヲ↡多キガ故ナリ。故ニ言フ↢常念ト↡。非ズ↠謂フニハ↢全ク不ト↟行ゼ↢余ノ三昧ヲ↡也。
二 Ⅳ ⅱ c ロ (二)二番問答
(Ⅰ)問
^▼第二に問ひていはく、 もしつねに念仏三昧を修することを勧めば、 余の三昧とよく*階降ありやいなや。
第二ニ問ヒテ曰ク、若シ勧メバ↣常ニ修スルコトヲ↢念仏三昧ヲ↡、与↢余ノ三昧↡能ク有リヤ↢階降↡以不ヤ。
二 Ⅳ ⅱ c ロ (二)(Ⅱ)答
^◆答へていはく、 念仏三昧の*勝相は不可思議なり。 これいかんが知る。
答ヘテ曰ク、念仏三昧ノ勝相ハ不可思議ナリ。此云何ガ知ル。
^▼¬*摩訶衍¼ のなかに説きていふがごとし。 「もろもろの余の三昧、 三昧ならざるにはあらず。
如シ↢¬摩訶衍ノ¼中ニ説キテ云フガ↡。「諸ノ余ノ三0623昧、非ズ↠不ルニハ↢三昧ナラ↡。
^◆なにをもつてのゆゑに。 あるいは三昧あり、 ただよく貪を除きて瞋痴を除くことあたはず。 あるいは三昧あり、 ただよく瞋を除きて痴貪を除くことあたはず。 あるいは三昧あり、 ただよく痴を除きて貪瞋を除くことあたはず。 あるいは三昧あり、 ただよく現在の障を除きて過去・未来の一切諸障を除くことあたはず。
何ヲ以テノ故ニ。*或イハ有リ↢三昧↡、但能ク除キテ↠貪ヲ不↠能ハ↠除クコト↢瞋痴ヲ↡。或イハ有リ↢三昧↡、但*能ク除キテ↠瞋ヲ不↠能ハ↠除クコト↢痴貪ヲ↡。或イハ有リ↢三昧↡、但能ク除キテ↠痴ヲ不↠能ハ↠除クコト↢貪瞋ヲ↡。或イハ有リ↢三昧↡、但能ク除キテ↢現在ノ*障ヲ↡不↠能ハ↠除クコト↢過去・未来ノ一切諸障ヲ↡。
^◆もしよくつねに念仏三昧を修すれば、 現在・過去・未来を問ふことなく一切諸障ことごとくみな除こる」 と。
若シ能ク*常ニ修スレバ↢念仏三昧ヲ↡、无ク↠問フコト↢現在・過去・未来ヲ↡一切諸障悉ク皆除コルト也。」
二 Ⅳ ⅱ c ロ (三)三番問答
(Ⅰ)問
^0257第三に問ひていはく、 念仏三昧すでによく障を除き福を得ること*功利大ならば、 いぶかし、 またよく行者を*資益して年を延べ寿を益せしむやいなや。
第三ニ問ヒテ曰ク、念仏三昧既ニ能ク除キ↠障ヲ得ルコト↠福ヲ功利大ナラバ者、未審、亦能ク資↢益シテ行者ヲ↡使ムヤ↢延ベ↠年ヲ益セ↟寿ヲ以不ヤ。
二 Ⅳ ⅱ c ロ (三)(Ⅱ)答
(ⅰ)直答
^答へていはく、 かならず得るなり。
答ヘテ曰ク、*必ズ得ルナリ。
二 Ⅳ ⅱ c ロ (三)(Ⅱ)(ⅱ)引証
(イ)惟無三昧経
^なんとなれば、 ¬*惟無三昧経¼ にのたまふがごとし。 「兄弟二人あり。 兄は因果を信ず。 弟は信心なし、 しかもよく*相法を解れり。 ちなみにその鏡のなかにみづから面上を見るに、 死相すでに現じて七日を過ぐさじ。 時に智者ありて往きて仏に問はしむ。
何トナレバ者如シ↢¬惟无三昧経ニ¼云フガ↡。「有リ↢兄弟二人↡。兄ハ信ズ↢因果ヲ↡。弟ハ无シ↢信心↡、而モ能善ク*解レリ↢相法ヲ↡。因ニ其ノ鏡ノ中ニ自ラ見ルニ↢面上ヲ↡、死相已ニ現ジテ不↠過グサ↢七日ヲ↡。時ニ有リテ↢智*者↡往キテ問ハシム↠仏ニ。
^仏時に報へてのたまはく、 ª七日といふは虚ならず。 もしよく一心に念仏し戒を修せば、 あるいは難を度することを得んº と。 すなはち教によりて*繋念す。 時に六日に至りてすなはち二鬼あり、 来りて耳にその念仏の声を聞きてつひによく前進むことなし。 還りて閻羅王に告ぐ。 閻羅王符を索む。 符すでに注していはく、 ª持戒・念仏の功徳によりて*第三炎天に生ずº」 と。
仏時ニ報ヘテ言ク、七日トイフハ不↠虚ナラ。若シ能ク一心ニ念仏シ修セバ↠戒ヲ、或イハ得ムト↠度スルコトヲ↠難ヲ。尋即チ依リテ↠教ニ繋念ス。時ニ至リテ↢六日ニ↡即チ有リ↢二鬼↡、来リテ*耳ニ聞キテ↢其ノ念仏之声ヲ↡竟ニ无シ↢能ク*前進ムコト↡。還リテ告グ↢閻羅王ニ↡。閻羅王索ム↠*符ヲ。*符已ニ*注シテ云ク、由リテ↢持戒・念仏ノ功徳ニ↡生ズト↢第三炎天ニ↡。」
二 Ⅳ ⅱ c ロ (三)(Ⅱ)(ⅱ)(ロ)譬喩経
^また ¬*譬喩経¼ のなかに、 「一の長者あり、 罪福を信ぜず、 年すでに五十、 たちまちに夜夢に見らく、 *殺鬼符を索め来りて、 これを取らんと欲して十日を過ぐさじと。
又¬譬*喩経ノ¼中ニ、「有リ↢一ノ長者↡、不↠信ゼ↢*罪福ヲ↡、年已ニ五十、忽ニ*夜夢ニ見ラク、*殺鬼*索メ↠符ヲ来リテ、欲シテ↠取ラムト↠之ヲ不ト↠過グサ↢十日ヲ↡。
^その人眠り覚めて*惶怖することつねにあらず。 明に至りて*相師を求覓めて夢を占はしむ。 師*卦兆を作りていはく、 ª殺鬼あり、 かならずあひ害せんと欲す、 十日を過ぐさじº と。 その人惶怖する0258ことつねに倍す。 仏に詣りて求請す。
其ノ人眠リ覚メテ惶怖スルコト非ズ↠常ニ。至リテ↠明ニ求↢覓メテ相師ヲ↡占ハシム↠夢ヲ。師作リテ↢卦兆ヲ↡云ク、有リ↢*殺鬼↡、必ズ欲ス↢相害セムト↡、不ト↠過グサ↢十日ヲ↡。其ノ人惶怖スルコト倍ス↠常ニ。詣リテ↠仏ニ求請ス。
^仏時に報へてのたまはく、 ªもしこれを攘はんと欲せば、 いまより以去意をもつぱらにして念仏し、 戒を持ち、 香を焼き、 灯を燃し、 *繒幡蓋を懸け、 三宝を*信向せば、 この死を勉るべしº と。
仏時ニ報ヘテ云ク、若シ欲セバ↠攘ハムト↠此ヲ、従リ↠今已去専ニシテ↠意ヲ念仏シ、持チ↠戒0624ヲ、焼キ↠香ヲ、然シ↠灯ヲ、懸ケ↢繒幡蓋ヲ↡、信↢向セバ三宝ヲ↡、可シト↠*勉ル↢此ノ死ヲ↡。
^すなはちこの法によりて専心に信向す。 殺鬼、 門に到りて功徳を修するを見、 つひに害することあたはず。 鬼すなはち走げ去れり。 その人この功徳によりて寿百年を満てて、 死して天に生ずることを得たり。
即チ依リテ↢此ノ法ニ↡専心ニ信向ス。*殺鬼到リテ↠門ニ見↠修スルヲ↢功徳ヲ↡、遂ニ不↠能ハ↠害スルコト。*鬼即チ走ゲ去レリ。其ノ人縁リテ↢斯ノ功*徳ニ↡寿満テテ↢百年ヲ↡、死シテ得タリ↠生ズルコトヲ↠天ニ。
^また一の長者あり、 名づけて執持といふ。 戒を退して仏に還し、 現に悪鬼のこれを打つを被る」 と。
復有リ↢一ノ長者↡、名ケテ曰フ↢執持ト↡。退シテ↠戒ヲ還シ↠仏ニ、現ニ被ルト↢悪鬼ノ打ツヲ↟之ヲ。」
二 Ⅳ ⅱ c ロ (四)四番問答
(Ⅰ)問
^第四に問ひていはく、 この念仏三昧はただよく諸障を*対治し、 ただ*世報のみを招くや、 またよく遠く*出世の*無上菩提を感ずやいなや。
第四ニ問ヒテ曰ク、此ノ念仏三昧ハ但能ク対↢治シ諸障ヲ↡、唯招クヤ↢世報ノミヲ↡、亦能ク遠ク感ズヤ↢出世ノ无上菩提ヲ↡以不ヤ。
二 Ⅳ ⅱ c ロ (四)(Ⅱ)答
^答へていはく、 得るなり。 なんとなれば、 ¬華厳経¼ の 「十地品」 にのたまふがごとし。 始め初地よりすなはち十地に至るまで一々の地のなかにおいて、 みな*入地の加行道と*地満の功徳利と*已不住道とを説きをはりて、 すなはちみな結してのたまはく、 「このもろもろの菩薩余行を修すといへども、 みな念仏・念法・念僧を離れず。 *上妙の楽具をもつて三宝を供養す」 (意) と。
答ヘテ曰ク、得ルナリ。何トナレバ者如シ↢¬花厳経ノ¼「十地品ニ」云フガ↡。始メ従リ↢初地↡乃チ至ルマデ↢十地ニ↡於テ↢一一ノ地ノ中ニ↡、皆説キ↢入地ノ加行道ト地満ノ功徳利ト已不住道トヲ↡訖リテ、即チ皆結シテ云ク、「是ノ諸ノ菩薩雖モ↠修スト↢余行ヲ↡、皆不↠離レ↢念仏・念法・念僧ヲ↡上妙ノ楽具ヲモテ供↢養スト三宝ヲ↡。」
^この文証をもつて知ることを得。 もろもろの菩薩等、 すなはち*上地に至るまで、 つねに念仏・念法・念僧を学して0259、 まさによく無量の行願を成就して功徳海を満つ。 いかにいはんや二乗・凡夫、 浄土に生ぜんと求めて念仏を学せざらんや。 なにをもつてのゆゑに。 この念仏三昧はすなはち一切の四摂・六度を具する*通の行、 *通の伴なるがゆゑなり。
以テ↢斯ノ文証ヲ↡得↠知ルコトヲ。諸ノ菩薩等、乃チ至ルマデ↢上地ニ↡、*常ニ学シテ↢念仏・念法・念僧ヲ↡、方ニ能ク成↢就シテ无量ノ行願ヲ↡満ツ↢功徳海ヲ↡。何ニ況ヤ二乗・凡夫求メテ↠生ゼムト↢浄土ニ↡不ラム↠*学セ↢念仏ヲ↡也。何ヲ以テノ故ニ。此ノ念仏三昧ハ即チ具スル↢一切ノ四摂・六度ヲ↡通ノ行、*通ノ伴ナルガ故ナリ。
二 Ⅳ ⅱ c ロ (五)五番問答
(Ⅰ)問
^第五に問ひていはく、 初地以上の菩薩は、 仏と同じく真如の理を証するをもつて仏家に生ずと名づく。 みづからよく仏と作りて衆生を*済運す。 なんぞさらに念仏三昧を学して仏を見たてまつらんと願ずるを須ゐんや。
第五ニ問ヒテ曰ク、初地已上ノ菩薩ハ、与↠仏同ジク証スルヲモテ↢真如之理ヲ↡名ク↠生ズト↢仏家ニ↡。自ラ能ク作リテ↠仏ト済↢運ス衆生ヲ↡。何ゾ須ヰム↧更ニ学シテ↢念仏三昧ヲ↡願ズルヲ↞見タテマツラムト↠仏ヲ也。
二 Ⅳ ⅱ c ロ (五)(Ⅱ)答
^答へていはく、 その真如を論ずるに、 広大無辺にして虚空と等し。 その量知りがたし。 たとへば一の大きなる闇室に、 もし一灯・二灯を燃せば、 その明あまねしといへども、 なほ闇となすがごとし。 やうやく多灯に至れば、 大明と名づくといへども、 あに日光に及ばんや。 菩薩の所証の智は、 *地々あひ望むるにおのづから階降ありといへども、 あに仏の日の明らかなるがごとくなるに比ぶることを得んや。
答ヘテ曰ク、論ズルニ↢其ノ真如ヲ↡、広大无辺ニシテ与↢虚空↡等シ。其ノ量難シ↠知リ。譬ヘバ如シ↧一ノ大ナル闇室ニ、若シ然セバ↢一灯・二灯ヲ↡、其ノ明雖モ↠遍シト、猶為スガ↞闇ト也。漸ク至レバ↢多灯ニ↡、雖モ↠名クト↢大明ト↡、豈ニ及バムヤ↢日光ニ↡。菩薩ノ所証ノ智ハ、雖0625モ↣地地相望ムルニ自ラ有リト↢階降↡、豈ニ得ム↠比ブルコトヲ↣仏ノ如クナルニ↢日ノ明カナルガ↡也。
二 Ⅴ【第五大門】
ⅰ 標列
【32】^第五大門のなかに四番の料簡あり。 第一に↓あまねく修道の*延促を明かして、 すみやかに不退を獲しめんと欲す。 第二に↓*此彼の禅観*比校して*往を勧む。 第三に↓此彼の浄穢二境、 また*漏・無漏と名づけて比校す。 第四に↓聖教を引きて*証成し、 後代を勧めて信を生じ往くことを求めしむ。
第五大門ノ中ニ有リ↢四番ノ料簡↡。第一ニ汎ク明シテ↢修道ノ延促ヲ↡、欲ス↠令メムト↣速ニ獲↢不退ヲ↡。第二ニ此彼ノ禅観比*挍シテ勧ム↠*往ヲ。第三ニ此彼ノ浄穢二境、亦名ケテ↢漏・无漏ト↡比挍ス。第四ニ引キテ↢聖教ヲ↡証成シ、勧メテ↢後代ヲ↡生ジ↠信ヲ求メシム↠往クコトヲ。
二 Ⅴ ⅱ 解釈
a【修道延促】
イ 標
【026033】^第一に↑あまねく修道の延促を明かすとは、 なかにつきて二あり。 一には修道の↓延促を明かし、 二には↓問答解釈す。
第一ニ汎ク明スト↢修道ノ延促ヲ↡者、就キテ↠中ニ有リ↠二。一ニハ明シ↢修道ノ延促ヲ↡、二ニハ問答解釈ス。
二 Ⅴ ⅱ a ロ 釈
(一)延促を明す
(Ⅰ)歎身
(ⅰ)堪
^一に↑延促を明かすとは、 ▼ただ一切衆生苦を厭ひて楽を求め、 *縛を畏れて*解を求めざるはなし。 みな早く無上菩提を証せんと欲せば、 先づすべからく菩提心を発すを首となすべし。 この心識りがたく、 起しがたし。 たとひこの心を発得すとも、 *経によるに、 つひに、 すべからく十種の行、 いはゆる*信・*進・*念・*戒・*定・*慧・*捨・*護法・*発願・*回向を修して、 菩提に進詣すべし。
一ニ明スト↢延促ヲ↡者、但一切衆生莫シ↠不ルハ↢厭ヒテ↠苦ヲ求メ↠楽ヲ、畏レテ↠縛ヲ求メ↟解ヲ。皆欲セバ↣早ク証セムト↢无上菩提ヲ↡者、先ヅ須クシ↧発スヲ↢菩提心ヲ↡為ス↞首ト。此ノ心難ク↠識リ難シ↠起シ。縦令発↢得ストモ此ノ心ヲ↡、依ルニ↠経ニ終ニ須クシ↧修シテ↢十種ノ行、謂ハユル信・進・念・戒・定・恵・捨・護法・発願・廻向ヲ↡進↦詣ス菩提ニ↥。
二 Ⅴ ⅱ a ロ (一)(Ⅰ)(ⅱ)不堪
^▼しかるに修道の身相続して絶えずして、 一万劫を経てはじめて不退の位を証す。 当今の凡夫は現に*信想軽毛と名づけ、 または*仮名といひ、 または不定聚と名づけ、 または*外の凡夫と名づく。 いまだ火宅を出でず。
然ルニ修道之身相続シテ不シテ↠絶エ、逕テ↢一万劫ヲ↡始テ証ス↢不退ノ位ヲ↡。当今ノ凡夫ハ現ニ名ケ↢信想軽毛ト↡、亦ハ曰ヒ↢仮名ト↡、亦ハ名ケ↢不定聚ト↡、亦ハ名ク↢外ノ凡夫ト↡。未ダ↠出デ↢火宅ヲ↡。
二 Ⅴ ⅱ a ロ (一)(Ⅱ)経証
(ⅰ)菩薩瓔珞経
^◆なにをもつてか知ることを得る。 ¬*菩薩瓔珞経¼ によりてつぶさに*入道行位を弁ずるに、 *法爾なるがゆゑに難行道と名づく。
何ヲ以テカ得ル↠知ルコトヲ。拠リテ↢¬菩薩瓔珞経ニ¼↡具ニ弁ズルニ↢入道行位ヲ↡、法爾ナルガ故ニ名ク↢難行道ト↡。
^またただおもんみれば一劫のうちの受身生死すらなほ数へ知るべからず、 いはんや一万劫のうちにいたづらに痛焼を受くるをや。 もしよくあきらかに仏経を信じて浄土に生ぜんと願ずれば、 寿の長短に随ひて、 *一形にすなはち至りて位不退に階ふ。 この修道一万劫と功を斉しくす。 もろもろの仏子等、 なんぞ思量せずして難を捨てて易を求め0261ざらんや。
*又但以レバ一劫之中ノ受身生死スラ尚不↠可カラ↢数ヘ知ル↡。況ヤ一万劫ノ中ニ徒ニ受クルヲヤ↢痛焼ヲ↡。若シ能ク明カニ信ジテ↢仏経ヲ↡願ズレバ↠生ゼムト↢浄土ニ↡、随ヒテ↢寿ノ長短ニ↡、一形ニ即チ至リテ位階フ↢不退ニ↡。与↢此ノ修道一万劫↡斉シクス↠功ヲ。諸ノ仏子等、何ゾ不シテ↢思量セ↡不ラム↢捨テテ↠難ヲ求メ↟易ヲ也。
二 Ⅴ ⅱ a ロ (一)(Ⅱ)(ⅰ)倶舎論
^¬*倶舎論¼ のなかにまた難行・易行の二種の道を明かすがごとし。
如シ↣¬倶舎論ノ¼中ニ亦明スガ↢難行・易行0626ノ二種之道ヲ↡。
^難行とは、 ¬論¼ (菩薩瓔珞経・意) に説きていふがごとし。 「三大阿僧祇劫において、 一々の劫のうちに、 みな*福智の資糧六波羅蜜一切の諸行を具す。 一々の行業にみな百万の難行の道ありて、 はじめて一位に充つ」 と。 これ難行道なり。
難行ト者、如シ↢¬論ニ¼説キテ云フガ↡。「於テ↢三大阿僧祇劫ニ↡、一一ノ劫ノ中ニ、皆具ス↢福智ノ資糧六波羅蜜一切ノ諸行ヲ↡。一一ノ行業ニ皆有リテ↢百万ノ難行之道↡、始テ充ツト↢一位ニ↡。」是難行道也。
^易行道とは、 すなはちかの ¬論¼ (菩薩瓔珞経・意) にいはく、 「もし別に方便あるによりて解脱することあるを易行道と名づく」 と。
易行道ト者、即チ彼ノ¬論ニ¼云ク、「若シ由リテ↣別ニ有ルニ↢方便↡有ルヲ↢解脱スルコト↡者名クト↢易行道ト↡也。」
二 Ⅴ ⅱ a ロ (一)(Ⅲ)結勧
^いますでに勧めて極楽に帰せしむ。 一切の行業ことごとくかしこに回向して、 ただよく専至なれば、 寿尽きてかならず生ず。 かの国に生ずることを得れば、 すなはち究竟して清涼なり。 あに易行の道と名づけざるべけんや。 すべからくこの意を知るべし。
今既ニ勧メテ帰セシム↢極楽ニ↡。一切ノ行業悉ク廻↢向シテ彼ニ↡、但能ク専至ナレバ、寿尽キテ必ズ生ズ。得レバ↠生ズルコトヲ↢彼ノ国ニ↡、即チ究竟シテ清涼ナリ。豈ニ可ケムヤ↠不ル↠名ケ↢易行之道ト↡。須クシ↠知ル↢此ノ意ヲ↡也。
二 Ⅴ ⅱ a ロ (二)問答
(Ⅰ)問
^二に↑問ひていはく、 すでに浄土に往生せんと願ずれば、 この寿尽くるに随ひてすなはち往生を得といふは、 聖教の証ありやいなや。
二ニ問ヒテ曰ク、既ニ言フ↧願ズレバ↣往↢生セムト浄土ニ↡、随ヒテ↢此ノ寿尽クルニ↡即チ得ト↦往生ヲ↥者、有リヤ↢聖教ノ証↡不ヤ。
二 Ⅴ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)答
(ⅰ)標
^答へていはく、 七番あり。 みな経論を引きて証成せん。
答ヘテ曰ク、有リ↢七番↡。皆引キテ↢経論ヲ↡証成セム。
二 Ⅴ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)引経
(a)大経
(イ)正引
^一には ¬*大経¼ (下・意) によるにのたまはく、 「▲仏、 *阿難に告げたまはく、 ªそれ衆生ありて、 今世において無量寿仏を見たてまつらんと欲せば、 無上菩提の心を発し功徳を修行してかの国に生ぜんと願ずべし。 すなはち往生を得るがゆゑなりº」 と。
一ニハ依ルニ↢¬大経ニ¼↡云ク、「仏告ゲタマハク↢阿難ニ↡、其有リテ↢衆生↡、欲セバ↧於テ↢今世ニ↡見タテマツラムト↦无量寿仏ヲ↥者、応シ↧発シ↢无上菩提之心ヲ↡修↢行シテ功徳ヲ↡願ズ↞生ゼムト↢彼ノ国ニ↡。即チ得ルガ↢往生ヲ↡故ナリト。」
二 Ⅴ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)釈引
^▼¬大経の讃¼ にいはく (*讃0262阿弥陀仏偈)、
¬大経ノ讃ニ¼云ク、
^「▲もし阿弥陀の*徳号を聞きて、 歓喜し讃仰し、 心帰依すれば、
下一念に至るまで大利を得。 すなはち功徳の宝を具足すとなす。
「若シ聞キテ↢阿弥*陀ノ徳*号ヲ↡ | 歓喜シ讃仰シ心帰依スレバ |
下至ルマデ↢一念ニ↡得↢大利ヲ↡ | 則チ為ス↣具↢足スト功徳ノ宝ヲ↡ |
^◆たとひ大千世界に満てらん火をも、 またただちに過ぎて仏の名を聞くべし。
阿弥陀を聞けば、 また退かず。 このゆゑに心を至して稽首し礼したてまつる」 と。
設ヒ満テラム↢大千世界ニ↡火ヲモ | 亦応シ↣直ニ過ギテ聞ク↢仏ノ名ヲ↡ |
聞ケバ↢阿弥陀ヲ↡、不↢復退カ↡ | 是ノ故ニ至シテ↠心ヲ稽首シ礼シタテマツルト」 |
二 Ⅴ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)観経
^二には ¬観経¼ (意) によるに、 九品のうちにみなのたまはく、 「▲臨終正念にしてすなはち往生を得」 と。
二ニハ依ルニ↢¬観経ニ¼↡、九品之内ニ皆言ク、「臨終正念ニシテ即チ得ト↢往生ヲ↡。」
二 Ⅴ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(c)起信論
^三には ¬*起信論¼ (意) によるにいはく、 「もろもろの衆生を教へて真如平等*一実を観ぜよと勧む。 また*始発意の菩薩あり、 その心軟弱にして、 みづからつねに諸仏に値ひたてまつりて*親承供養することあたはずと謂ひ、 意退せんと欲するものには、 まさに知るべし、 如来に*勝方便ましまして信心を摂護したまふ。
三ニハ依ルニ↢¬起信論ニ¼↡云ク、「教ヘテ↢諸ノ衆生ヲ↡勧ム↠観ゼヨト↢真如平等一実ヲ↡。亦*有リ↢始発意ノ菩薩↡、其ノ心軟弱ニシテ、自ラ謂ヒ↠不ト↠能ハ↧常ニ値ヒタテマツリテ↢諸仏ニ↡親承供養スルコト↥、意欲スル↠退セムト者ニハ、当ニシ↠知ル、如来ニ有0627シテ↢勝方便↡摂↢護シタマフ信心ヲ↡。
^いはく、 意をもつぱらにして仏を念ずる因縁をもつて、 願に随ひて往生す。 つねに仏を見たてまつるをもつてのゆゑに、 永く悪道を離る」 と。
謂ク以テ↢専ニシテ↠意ヲ念ズル↠*仏ヲ因縁ヲ↡、随ヒテ↠願ニ往生ス。以テノ↢常ニ見タテマツルヲ↟仏ヲ故ニ永ク離ルト↢悪道ヲ↡。」
二 Ⅴ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(d)鼓音陀羅尼経
^四には ¬*鼓音陀羅尼経¼ (意) によるにのたまはく、 「その時世尊、 もろもろの比丘に告げたまはく、 ªわれまさになんぢがために演説すべし。 西0263方安楽世界にいま現に仏まします。 阿弥陀と号けたてまつる。
四ニハ依ルニ↢¬鼓音陀羅尼経ニ¼↡云ク、「爾ノ時世尊告ゲタマハク↢諸ノ比丘ニ↡、我当ニシ↢為ニ↠汝ガ演説ス↡。西方安楽世界ニ今現ニ有ス↠仏。号ケタテマツル↢阿弥陀ト↡。
^もし四衆ありて、 よくまさしくかの仏の名号を受持し、 その心を堅固にして憶念して忘れざること十日十夜、 散乱を除捨して*精勤して念仏三昧を修習し、 もしよく念々に絶えざらしむれば、 十日のうちにかならずかの阿弥陀仏を見たてまつることを得て、 みな往生を得º」 と。
若シ有リテ↢四衆↡、能ク正シク受↢持シ彼ノ仏ノ名号ヲ↡、堅↢固ニシテ其ノ心ヲ↡憶念シテ不ルコト↠*忘レ十日十夜、除↢*捨シテ散乱ヲ↡精懃シテ修↢習シ念仏三昧ヲ↡、若シ能ク令ムレバ↢念念ニ不ラ↟絶エ、十日之中ニ必ズ得テ↠見タテマツルコトヲ↢彼ノ阿弥陀仏ヲ↡、*皆得ト↢往生ヲ↡。」
二 Ⅴ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(e)法鼓経
^五には ▼¬*法鼓経¼ によるにのたまはく、 「もし人臨終の時に念をなすことあたはざれども、 ただかの方に仏ましますと知りて往生の意をなせば、 また往生を得」 と。
五ニハ依ルニ↢¬法鼓経ニ¼↡云ク、「若シ人臨終之時ニ不レドモ↠能ハ↠作スコト↠念ヲ、但知リテ↢彼ノ方ニ有スト↟仏作セバ↢往生ノ意ヲ↡、亦得ト↢往生ヲ↡。」
二 Ⅴ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(f)十方随願往生経
^六には ¬*十方随願往生経¼ (意) にのたまふがごとし。 「もし終りに臨み死に及びて地獄に堕することあらんに、 家のうちの眷属その亡者のために念仏しおよび*転誦し*斎福すれば、 亡者すなはち地獄より出でて浄土に往生す。 いはんやその現在にみづからよく修念せば、 なにをもつてか往生することを得ざるものあらんや」 と。
六ニハ如シ↢¬十方随願往生経ニ¼云フガ↡。「若シ有ラムニ↣臨ミ↠終ニ及ビテ↠死ニ*堕スルコト↢地獄ニ↡、家ノ内ノ眷属為ニ↢其ノ*亡者ノ↡念仏シ及ビ転誦シ斎福スレバ、亡者則チ出デテ↢地獄ヨリ↡往↢生ス浄土ニ↡。況ヤ其ノ現在ニ自ラ能ク修念セバ、何ヲ以テカ不ル↠得↢往生スルコトヲ↡者アラム也ト。」
^このゆゑにかの ¬経¼ (十方随願往生経・意) にのたまはく、 「現在の眷属、 亡者のために*追福すれば、 遠人に餉するにさだめて食を得るがごとし」 と。
是ノ故ニ彼ノ¬経ニ¼云ク、「現在ノ眷属為ニ↢亡者ノ↡追福スレバ、如シト↧餉スルニ↢遠人ニ↡定メテ得ルガ↞食ヲ也。」
二 Ⅴ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(g)諸経
(イ)大法鼓経
^第七には広く諸経を引きて証成す。 ^¬*大法鼓経¼ に説きたまふがごとし。 「もし善男子・善女人つねによく意を繋けて諸仏の名号を称念すれば、 十方の諸仏、 一切の*賢聖つねにこの人を見ること目の前に0264現ずるがごとし。 このゆゑにこの経を大法鼓と名づく。 まさに知るべし、 この人は十方浄土に願に随ひて往生す」 と。
第七ニハ広ク引キテ↢諸経ヲ↡証成ス。如シ↢¬大法鼓経ニ¼説キタマフガ↡。「若シ善男子・善女人常ニ能ク繋ケテ↠意ヲ称↢念スレバ諸仏ノ名号ヲ↡者、十方ノ諸仏・一切ノ賢聖常ニ見ルコト↢此ノ人ヲ↡如シ↠現ズルガ↢*目ノ前ニ↡。是ノ故ニ此ノ経ヲ名ク↢大法鼓ト↡。当ニシ↠知ル、此ノ人ハ十方浄土ニ随ヒテ↠願ニ往生スト。」
二 Ⅴ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(g)(ロ)大悲経
^また ▼¬*大悲経¼ (意) にのたまはく、 「なにをか名づけて大悲となす。 もしもつぱら念仏相続して断えざるものは、 その命終に随ひてさだめて安楽に生ず。 もしよく*展転してあひ勧めて念仏を行ずるものは、 まさに知るべし、 これらをことごとく大悲を行ずる人と名づく」 と。
又¬大悲経ニ¼云ク、「何ヲカ名ケテ為ス↢大悲ト↡。若シ専ラ念仏相続シテ不ル↠断エ者ハ、随ヒテ↢其ノ命終ニ↡定メテ生ズ↢安楽ニ↡。若0628シ能ク展転シテ相勧メテ行ズル↢念仏ヲ↡者ハ、当ニシ↠知ル、此等ヲ悉ク名クト↧行ズル↢大悲ヲ↡人ト↥也。」
二 Ⅴ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(g)(ハ)涅槃経
^このゆゑに ¬涅槃経¼ (意) にのたまはく、 「仏、 大王に告げたまはく、 ªたとひ大庫蔵を開きて一月のうちに一切衆生に布施すとも、 所得の功徳、 人ありて仏を称する一口の功徳にしかず。 前に過ぎたること*校量すべからずº」 と。
是ノ故ニ¬涅槃経ニ¼云ク、「仏告ゲタマハク↢大王ニ↡、仮令開キテ↢大庫蔵ヲ↡一月之中ニ布↢施ストモ一切衆生ニ↡、所得ノ功徳、不↠如カ↢有リテ↠人称スル↠*仏ヲ一口ノ功徳ニ↡。過ギタルコト↠前ニ不ト↠可カラ↢挍量ス↡。」
二 Ⅴ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(g)(ニ)増一阿含経
^また ¬*増一阿含経¼ (意) にのたまはく、 「仏、 阿難に告げたまはく、 ªそれ衆生ありて、 一閻浮提の人に衣服・飲食・臥具・湯薬を供養せんに、 所得の功徳、 むしろ多しとなすやいなやº と。 阿難、 仏にまうしてまうさく、 ª世尊、 はなはだ多しはなはだ多し、 数へ量るべからずº と。
又¬増一阿含経ニ¼云ク、「仏告ゲタマハク↢阿難ニ↡其有リテ↢衆生↡、供↢養セムニ一閻浮提ノ人ニ衣服・飲食・臥具・湯薬ヲ↡、所得ノ功徳、寧ロ為スヤ↠多シト不ヤト。阿難白シテ↠仏ニ言ク、世尊、甚ダ多シ甚ダ多シ、不ト↠可カラ↢数ヘ量ル↡。
^仏、 阿難に告げたまはく、 ªもし衆生ありて善心相続して仏の名号を称すること、 一たび牛乳を搆るあひだのごとくせんに、 所得の功徳上に過ぎたること量るべからず。 よく量るものあることなしº」 と。
仏告ゲタマハク↢阿難ニ↡、若シ有リテ↢衆生↡善心相続シテ称スルコト↢仏ノ名号ヲ↡、如クセムニ↧一タビ搆ル↢牛乳ヲ↡*項ノ↥、所*得ノ功徳過ギタルコト↠上ニ不↠可カラ↠量ル。无シト↠有ルコト↢能ク量ル者↡。」
二 Ⅴ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(g)(ホ)大品経
^¬*大品経¼ (意) にのたまはく、 「もし人*散心念仏すれば、 す0265なはち苦を畢るに至るまでその福尽きず。 もし人散華念仏すれば、 すなはち苦を畢るに至るまでその福尽きず」 と。
¬大品経ニ¼云ク、「若シ人散心念仏スレバ、乃チ至ルマデ↠畢ルニ↠苦ヲ其ノ福不↠尽キ。若シ人散花念仏スレバ、乃チ至ルマデ↠畢ルニ↠苦ヲ其ノ福不ト↠尽キ。」
二 Ⅴ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)結
^ゆゑに知りぬ、 念仏の利、 大なること不可思議なり。 ¬*十往生経¼、 諸大乗経等、 ならびに文証あり、 つぶさに引くべからず。
故ニ知リヌ念仏ノ利大ナルコト不可思議也。¬十往生経¼、諸大乗経等、並ニ有リ↢文証↡、不↠可カラ↢具ニ引ク↡也。
二 Ⅴ ⅱ b【禅観難易】
イ 標
【34】^第二に次に↑此彼の禅観比校して往生を勧むることを明かすとは、
第二ニ次ニ明スト↣此彼ノ禅観比挍シテ勧ムルコトヲ↢往生ヲ↡者、
二 Ⅴ ⅱ b ロ 釈
(一)穢境禅定の劣
(Ⅰ)乱想
^ただこの方は穢境にして、 乱想ありて入りがたし。
但此ノ方ハ穢境ニシテ、乱想アリテ難シ↠入リ。
二 Ⅴ ⅱ b ロ (一)(Ⅱ)味染
^たとひ修得するも、 ただ*事定を獲て多く*味染を喜ぶ。
*就令修得スルモ、唯獲テ↢事定ヲ↡多ク憙ブ↢味染ヲ↡。
二 Ⅴ ⅱ b ロ (一)(Ⅲ)退転
^またただよく*業報の生を伏し、 *上界の寿尽きぬれば多く退す。
又復但能ク伏シ↢業報ノ生ヲ↡、上界ノ寿尽キヌレバ多ク退ス。
二 Ⅴ ⅱ b ロ (一)(Ⅳ)引論
^このゆゑに ¬智度論¼ にいはく、
是ノ故ニ¬智度論ニ¼云ク、
^「多聞と持戒と禅とは、 いまだ無漏法を得ざれば、
この功徳ありといへども、 この事いまだ信むべからず」 と。
「多聞ト持戒ト禅トハ | 未ダレバ↠得↢无漏法ヲ↡ |
雖モ↠有リト↢此ノ功徳↡ | 是ノ事未ダト↠可カラ↠信ム」 |
二 Ⅴ ⅱ b ロ (二)西方定観の勝
^もし西に向かひて修習せんと欲せば、 *事境光浄にして、 *定観成じやすし。 罪を除くこと多劫にして、 永く定まりすみやかに進みて究竟して清涼なり。 ¬大経¼ に広く説きたまふがごとし。
若シ欲セバ↢向ヒテ↠西ニ修習セムト↡、事境光浄ニシテ*定観易シ↠成ジ。除クコト↠罪ヲ多劫ニシテ、永ク定リ速ニ進ミテ究竟0629シテ清涼ナリ。如シ↢¬大経ニ¼広ク説キタマフガ↡。
二 Ⅴ ⅱ b ロ (三)此界色天との比校
(Ⅰ)問
^問ひていはく、 もし西方の境界勝にして禅定をなして感ずべくは、 この界の*色天は弱くして禅定をなして招くべからざるや。
問ヒテ曰ク、若シ西方ノ境界勝ニシテ可クハ↧為シテ↢禅定ヲ↡感ズ↥、此ノ界ノ色天ハ*弱クシテ不ルヤ↠応カラ↧為シテ↢禅定ヲ↡招ク↥。
二 Ⅴ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)答
(ⅰ)因の該通
^答へていはく、 もし修定の因0266を論ぜば、 *彼此に該通す。
答ヘテ曰ク、若シ論ゼバ↢修定ノ因ヲ↡、該↢通ス於彼此ニ↡。
二 Ⅴ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)西方果の勝
^しかるにかの界は位これ不退にして、 ならびに▲他力の持つあり。 このゆゑに説きて勝となす。
然ルニ彼ノ界ハ位是不退ニシテ并ニ有リ↢他力ノ持ツ↡。是ノ故ニ説キテ為ス↠勝ト。
二 Ⅴ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)色天果の劣
^この所はまた定を修するに剋すといへども、 ただ*自分の因のみありて、 闕けて他力の摂することなし。 業尽くれば、 退することを勉れず。 これにつきてしかずと説く。
此ノ*所ハ雖モ↢復修スルニ↠定ヲ剋スト↡、但有リテ↢自分ノ因ノミ↡、闕ケテ无シ↢他力ノ摂スルコト↡。*業尽クレバ、不↠*勉レ↠退スルコトヲ。就キテ↠此ニ説ク↠不ト↠如カ。
二 Ⅴ ⅱ c【此彼浄穢】
イ 標
【35】^第三に↑此彼の浄穢二境をまた漏・無漏と名づくるによるとは、
第三ニ拠ルト↣此彼浄穢ノ二境ヲ亦名クルニ↢漏・无漏ト↡者、
二 Ⅴ ⅱ c ロ 釈
(一)此土有漏相
^もしこの処の境界を論ずれば、 ただ三塗・丘坑・山澗・沙鹵・蕀刺・水旱・暴風・悪触・雷電・礰・虎狼・毒獣・悪賊・悪子・荒乱・破散・三災・敗壊あり。
若シ論ズレバ↢此ノ処ノ境界ヲ↡、唯有リ↢三塗・丘坑・山澗・沙鹵・*蕀刺・水*旱・暴風・悪触・雷電・礰・虎狼・毒獣・*悪賊・悪子・荒乱・破散・三災・敗壊↡。
^正報を語り論ずれば、 三毒・八倒・憂悲・嫉妬・多病・短命・飢渇・寒熱あり。 つねに*伺命害鬼の追逐するところとなる。 深く穢悪すべし。 つぶさに説くべからず。 ゆゑに有漏と名づく。 深く厭ふべし。
語リ↢論ズレバ正報ヲ↡、三毒・八倒・憂悲・嫉妬・多病・短命・飢渇・寒熱アリ。常ニ為ル↣*伺命害鬼之所ト↢追逐スル↡。深ク可シ↢穢悪ス↡。不↠可カラ↢具ニ説ク↡。故ニ名ク↢有漏ト↡。深ク可シ↠厭フ也。
二 Ⅴ ⅱ c ロ (二)彼土無漏相
(Ⅰ)総讃
^かの国に往生するは勝なりとは、 ¬大経¼ (意) によるにのたまはく、 「▽十方の人天ただかの国に生ずれば、 みな種々の利益を獲ざるはなし」 と。
往↢生スルハ彼ノ国ニ↡勝ナリト者、拠ルニ↢¬大経ニ¼↡云ク、「十方ノ人天但生ズレバ↢彼ノ国ニ↡者、莫シト↠不ルハ↣皆獲↢種種ノ利益ヲ↡也。」
二 Ⅴ ⅱ c ロ (二)(Ⅱ)受楽
^なんとなれば、 一たびかの国に生ずれば、 行けばすなはち金蓮足を捧げ、 坐すればすなはち宝座躯を承け、 出づればすなはち帝釈前にあり、 入ればすなはち梵王後に従ふ。 一切の聖衆はわれと親朋なり。 阿弥陀仏はわが大師たり。 宝樹・宝林の下には意に任せて*翺翔し、 *八徳の池のな0267かには*神を遊ばせ足を濯ぐ。 形はすなはち身金色に同じく、 寿はすなはち命仏と斉し。
何トナレバ者一タビ生ズレバ↢彼ノ国ニ↡者、行ケバ則チ金蓮捧ゲ↠足ヲ、坐スレバ則チ宝座承ケ↠躯ヲ、出ヅレバ則チ帝釈在リ↠前ニ、入レバ則チ梵王従フ↠後ニ。一切ノ聖衆ハ与↠我親朋ナリ。阿弥陀仏ハ為リ↢我ガ大師↡。宝樹・宝林之下ニハ任セテ↠意ニ翺翔シ、八徳ノ池ノ中ニハ遊バセ↠神ヲ濯グ↠足ヲ。形ハ則チ身同ジク↢金色ニ↡、寿ハ則チ命与↠仏斉シ。
二 Ⅴ ⅱ c ロ (二)(Ⅲ)行楽
^学すればすなはち衆門並び進み、 止まればすなはち*二諦虚融す。 十方に*済運すればすなはち大神通に乗じ、 *晏安すれば暫時にすなはち*三空門に坐す。 遊べばすなはち*八正の路に入り、 至ればすなはち*大涅槃に到る。
学スレバ則チ衆門*並ビ進ミ、止レバ則チ二諦虚融ス。十方ニ済運スレバ則チ乗ジ↢大神通ニ↡、晏安スレバ暫時ニ則チ坐ス↢三空門ニ↡。遊ベバ則チ入リ↢八正之路ニ↡、至レバ則0630チ到ル↢大涅*槃ニ↡。
二 Ⅴ ⅱ c ロ (二)(Ⅳ)結勧
^一切衆生ただかの国に至れば、 みなこの益を証す。 なんぞ思量せずしてすみやかに去かざらんや。
一切衆生但至レバ↢彼ノ国ニ↡者、皆証ス↢此ノ益ヲ↡。何ゾ不シテ↢思量セ↡不ラム↢速ニ去カ↡也。
二 Ⅴ ⅱ d【引証勧信】
イ 標
【36】^第四に↑聖教を引きて証成し、 後代を勧めて信を生じ往くことを求願せしむとは、
第四ニ引キテ↢聖教ヲ↡証成シ、勧メテ↢後代ヲ↡生ジ↠信ヲ求↢願セシムト往クコトヲ↡者、
二 Ⅴ ⅱ d ロ 釈
(一)生信
^¬*観仏三昧経¼ (意) によるにのたまはく、 「▼その時*会中に十方諸仏ましまして、 おのおの*華台のなかにおいて*結跏趺坐して空中に現じたまふ。 東方の善徳如来を首となして、 大衆に告げてのたまはく、 ªなんぢらまさに知るべし、 われ過去無量世の時を念ふに、 仏ましましき、 宝威徳上王と名づけたてまつる。 かの仏出でたまふ時、 また今日のごとく三乗の法を説きたまふ。
依ルニ↢¬観仏三昧経ニ¼↡云ク、「爾ノ時会中ニ有シテ↢十方諸仏↡、各ノ於テ↢花台ノ中ニ↡結跏趺坐シテ於テ↢空中ニ↡現ジタマフ。東方ノ善徳如来ヲ為シテ↠首ト、告ゲテ↢大衆ニ↡言ク、汝等当ニシ↠知ル、我念フニ↢過去无量世ノ時ヲ↡、有シキ↠仏名ケタテマツル↢宝威徳上王ト↡。彼ノ仏出デタマフ時、亦如ク↢今日ノ↡説キタマフ↢三乗ノ法ヲ↡。
^かの仏の滅後末世のなかに一の比丘ありて、 弟子九人を将て*仏塔に往詣して仏像を礼拝するに、 一の宝像の厳顕にして観ずべきを見る。 観じをはりて敬礼して、 目にあきらかにこれを観ず。 おのおの一偈を説きて、 もつて讃歎をなす。 寿の*修0268短に随ひて各自に命終す。 すでに命終しをはりてすなはち仏前に生ず。
彼ノ仏ノ滅後*末世之中ニ有リテ↢一ノ比丘↡、将テ↢弟子九人ヲ↡往↢詣シテ仏塔ニ↡礼↢拝スルニ仏像ヲ↡、見ル↢一ノ宝像ノ厳顕ニシテ可キヲ↟観ズ。観ジ已リテ敬礼シテ、目ニ諦ニ観ズ↠之ヲ。各ノ説キテ↢一偈ヲ↡、用テ為ス↢讃歎ヲ↡。随ヒテ↢寿ノ修短ニ↡各自ニ命終ス。*既ニ命終シ已リテ即チ生ズ↢仏前ニ↡。
^これより以後つねに無量の諸仏に値遇することを得て、 諸仏の所において広く*梵行を修して念仏三昧海を得。 すでにこれを得をはりて諸仏現前にすなはち*授記を与へたまふ。 十方の面において意に随ひて仏と作る。
従リ↠此已後恒ニ得テ↣値↢遇スルコトヲ无量ノ諸仏ニ↡、於テ↢諸仏ノ所ニ↡広ク修シテ↢梵行ヲ↡得↢念仏三昧海ヲ↡。*既ニ得↠此ヲ已リテ諸仏現前ニ即チ与ヘタマフ↢授記ヲ↡。*於テ↢十方ノ面ニ↡随ヒテ↠意ニ作ル↠仏ト。
^東方の善徳仏とはすなはちわが身これなり。 *自余の九方の諸仏はすなはちこれ本昔の弟子九人これなり。 十仏世尊は塔を礼し、 一偈をもつて讃ずるによるがゆゑに仏となることを得たり。 あに異人ならんや、 われら十方の仏これなりº と。
東方ノ善徳仏ト者即チ我ガ身是ナリ。自余ノ九方ノ諸仏者即チ是本昔ノ弟子九人是ナリ。*十仏世尊ハ因↢由ルガ礼シ↠塔ヲ一偈ヲモテ讃ズルニ↡故ニ得タリ↣成↢為ルコトヲ仏ト↡。豈ニ異人ナラム乎、我等十方ノ仏是ナリト。
二 Ⅴ ⅱ d ロ (二)願往(念仏三昧を勧む)
^この時十方の諸仏空より下りて千の光明を放ち、 色身*白毫相の光を顕現して、 おのおのみな釈迦仏の床に坐す。 阿難に告げてのたまはく、 ªなんぢ知るや、 *釈迦文仏は無数の精進、 百千の苦行をもつて仏の智慧を求めてこの身を報得したまへり。 いまなんぢがために説きたまふ。 なんぢ仏語を持ちて、 未来世の天・竜・大衆・*四部の弟子のために、 観仏相好および念仏三昧を説くべしº と。
是ノ時十方ノ諸仏従リ↠空而下リテ放チ↢千ノ光明ヲ↡、顕↢現シテ色身白*豪相ノ光ヲ↡、各各皆坐ス↢釈迦仏ノ床ニ↡。告ゲテ↢阿難ニ↡言ク、*汝知ルヤ、釈迦文仏ハ无数ノ精進、百0631千ノ苦行ヲモテ求メテ↢仏ノ智*慧ヲ↡報↢得シタマヘリ是ノ身ヲ↡。今為ニ↠汝ガ説キタマフ。汝持チテ↢仏語ヲ↡、為ニ↢未来世ノ天・竜・大衆・四部ノ弟子ノ↡、説クベシト↢観仏相好及ビ念仏三昧ヲ↡。
^この語を説きをはりて、 しかる後に釈迦文仏に問訊す。 問訊しをはりておのおの本国に還りたまへり」 と。
説キ↢是ノ語ヲ↡已リテ、然ル後ニ問↢訊ス釈迦文仏ニ↡。問訊シ訖已リテ各ノ還リタマフト↢本国ニ↡。」
二 Ⅵ【第六大門】
ⅰ 標列
【37】^第六大門のなかに三番の料簡あり。 第一に↓十方浄土ともに来して比校す。 第0269二に↓*義推す。 第三に↓経の住滅を弁ず。
第六大門ノ中ニ有リ↢三番ノ料簡↡。第一ニ十方浄土共ニ来シテ比挍ス。第二ニ義推ス。第三ニ弁ズ↢経ノ住滅ヲ↡。
二 Ⅵ ⅱ 解釈
a【十方西方比校】
イ 標
【38】^第一に↑十方浄土ともに来して比校すとは、 その三番あり。
第一ニ十方浄土共ニ来シテ比挍スト者、有リ↢其ノ三番↡。
二 Ⅵ ⅱ a ロ 釈
(一)娑婆有縁
^一には ¬*随願往生経¼ (意) にのたまふがごとし。 「十方仏国みなことごとく厳浄なり。 願に随ひてならびに往生を得。 しかりといへども、 ことごとく西方の無量寿国にはしかず。 なんの意をもつてか、 かくのごとくなる。 ただ阿弥陀仏、 観音・大勢至と先に*発心したまひし時、 *この界より去りたまへり。 この衆生においてひとへにこれ縁あり。 このゆゑに釈迦処々に*歎帰したまふ」 と。
一ニハ如シ↢¬随願往生経ニ¼云フガ↡。「十方仏国皆悉ク厳浄ナリ。*随ヒテ↠願ニ並ニ得↢往生ヲ↡。雖モ↠然リト悉ク不↠如カ↢西方ノ无量寿国ニハ↡。何ノ意ヲモテカ如クナル↠此クノ。但阿弥陀*仏与↢観音・大勢*至↡先ニ発心シタマヒシ時、従リ↢此ノ界↡去リタマヘリ。於テ↢此ノ衆生ニ↡偏ニ是有リ↠縁。是ノ故ニ釈迦処処ニ歎帰シタマフト。」
二 Ⅵ ⅱ a ロ (二)法蔵願取
^二には ¬大経¼ (上・意) によるに、 「▲*法蔵菩薩*因中に*世饒王仏の所において、 つぶさに*弘願を発してもろもろの浄土を取りたまふ。 ▲時に仏、 ために二百一十億の諸仏*刹土の天・人の善悪、 国土の*精粗を説きて、 ことごとく現じてこれを与へたまふ。 ◆時に法蔵菩薩願じて西方を取りて▲成仏したまひ、 いま現にかしこにまします」 と。 これ二の証なり。
二ニハ拠ルニ↢¬大経ニ¼↡、「法蔵菩薩因中ニ於テ↢世饒王仏ノ所ニ↡、具ニ発シテ↢弘願ヲ↡取リタマフ↢諸ノ浄土ヲ↡。時ニ仏為ニ説キテ↢二百一十億ノ諸仏刹土ノ天・人ノ善悪、国土ノ精麁ヲ↡、悉ク現ジテ与ヘタマフ↠之ヲ。於テ↠時ニ法蔵菩薩願ジテ取リテ↢西方ヲ↡成仏シタマヒ、*今現ニ在スト↠彼ニ。」是二ノ証也。
二 Ⅵ ⅱ a ロ (三)偉大請楽
^三にはこの ¬観経¼ (意) のなかによるに、 「▲*韋提夫人また浄土を請ふ。 ◆如来 (釈尊) 光台にために十方一切の浄土を現じたまふ。 ▲韋提夫人、 仏にまうしてまうさく、 ªこの諸仏の土また清浄にしてみな光明ありといへども、 ◆われいま極楽世界の阿弥陀仏の所に生ぜんと楽ふº」 と。 これその三0270の証なり。
三ニハ依ルニ↢*此ノ¬観経ノ¼中ニ↡、「韋提夫人復*請フ↢浄土ヲ↡。如来光*台ニ為ニ現ジタマフ↢十方*一切ノ浄土ヲ↡。韋提夫人白シテ↠仏ニ言ク、此ノ諸仏ノ土雖モ↣復清浄ニシテ皆有リト↢光明↡、我今楽フト↠生ゼムト↢極楽世界ノ阿弥陀仏ノ所ニ↡。」是其ノ三0632ノ証ナリ。
二 Ⅵ ⅱ a ハ 結
^ゆゑに知りぬ、 もろもろの浄土のなかに安楽世界は最勝なり。
故ニ知リヌ諸ノ浄土ノ中ニ安楽*世界ハ最勝也。
二 Ⅵ ⅱ b【義推】
イ 標
【39】^第二に↑義推すとは、
第二ニ義推スト者、
二 Ⅵ ⅱ b ロ 問答
(一)問
^問ひていはく、 なんがゆゑぞかならず面を西に向かへて坐して*礼・念・観するを須ゐる。
問ヒテ曰ク、何ガ故ゾ要ズ須ヰル↢面ヲ向ヘテ↠西ニ坐シテ礼念観スルヲ↡者。
二 Ⅵ ⅱ b ロ (二)答
(Ⅰ)正答
^答へていはく、 閻浮提には、 日の出づる処を生と名づけ、 没する処を死と名づくといふをもつて、 死地によるに*神明の趣入その相*助便なり。 このゆゑに法蔵菩薩願じて成仏し、 西にありて衆生を*悲接したまふ。 坐して観・礼・念等によるに、 面を仏に向かふるはこれ世の礼儀に随ふ。
答ヘテ曰ク、以テ↣閻浮提ニハ云フヲ↢日ノ出ヅル処ヲ名ケ↠生ト、没スル処ヲ名クト↟死ト、藉ルニ↢於死地ニ↡神明ノ趣入*其ノ相助便ナリ。是ノ故ニ法蔵菩薩願ジテ成仏シ、在リテ↠西ニ悲↢接シタマフ衆生ヲ↡。由ルニ↢*坐シテ観礼念等ニ↡、面ヲ向フル↠仏ニ者是随フ↢世ノ礼儀ニ↡。
^もしこれ聖人ならば、 飛報自在なることを得て*方所を弁ぜず。 ただ凡夫の人は身心あひ随ふ。 もし余方に向かはば、 西に往くことかならず難からん。
若シ是聖人ナラバ、得テ↢飛報自在ナルコトヲ↡不↠辨ゼ↢方所ヲ↡。但凡夫之人ハ身心相随フ。若シ向ハバ↢余方ニ↡、西ニ往クコト必ズ難カラム。
二 Ⅵ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)引証
(ⅰ)智度論
^このゆゑに ¬智度論¼ (意) にいはく、 「一の比丘あり、 康存の日 ¬*阿弥陀経¼ を誦し、 および般若波羅蜜を念じ、 命終に臨みて弟子に告げていはく、 ª阿弥陀仏、 もろもろの聖衆といまわが前にましますº と。 合掌帰依して須臾に捨命す。
是ノ故ニ¬智度論ニ¼云ク、「有リ↢一ノ比丘↡、康存之日誦シ↢¬阿弥*陀経ヲ¼↡、及ビ念ジ↢般若波羅蜜ヲ↡、臨ミテ↢命*終ニ↡告ゲテ↢弟子ニ↡言ク、阿弥陀仏与↢諸ノ聖衆↡今在スト↢我ガ前ニ↡。合掌帰依シテ須臾ニ捨命ス。
^ここにおいて弟子火葬の法によりて火をもつて屍を焚くに、 一切焼き尽くれども、 ただ舌根の一種ありて本と異せず。 つひにすなはち収め取りて塔を起てて供養す」 と。
於テ↠是ニ弟子依リテ↢火葬ノ法ニ↡以テ↠火ヲ焚クニ↠屍ヲ、一切焼キ尽クレドモ、唯有リテ↢舌根ノ一種↡与↠本不↠異セ。遂ニ即チ収メ取リテ起テテ↠塔ヲ供養スト。」
^*龍樹菩薩釈していはく (大智度論・意)、 「¬阿弥陀経¼ を誦するがゆゑに、 ここをもつて終りに垂んとするに、 仏みづから来迎し、 般若波羅蜜0271を念ずるがゆゑに、 ゆゑに舌根尽きず」 と。 この文をもつて証す。 ゆゑに知りぬ、 一切の行業ただよく回向するに往かざるはなし。
龍樹菩薩釈シテ云ク、「誦スルガ↢¬阿弥*陀経ヲ¼↡故ニ、是ヲ以テ垂スルニ↠終ニ、仏自ラ来迎シ、*念ズルガ↢般若波羅蜜ヲ↡故ニ、所以ニ舌根不ト↠尽キ。」以テ↢斯ノ文ヲ↡証ス。故ニ知リヌ一切ノ行業但能ク廻向スルニ*无シ↠不ルハ↠往カ也。
二 Ⅵ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)須弥四域経
^ゆゑに ¬*須弥四域経¼ にのたまはく、 「天地はじめて開くる時、 いまだ日・月・星辰あらず。 たとひ天人来下することあれども、 ただ項の光をもつて照用す。 その時人民多く苦悩を生ず。
故ニ¬須弥四*域経ニ¼云ク、「天地初テ開クル之時、未ダ↠有ラ↢日月・星辰↡。縦ヒ有レドモ↢天人来下スルコト↡、但用テ↢*項ノ光ヲ↡照用ス。爾ノ時人民多ク生ズ↢苦悩ヲ↡。
^ここにおいて阿弥陀仏、 二菩薩を遣はす。 ▼一は*宝応声と名づけ、 二は*宝吉祥と名づく。 すなはち*伏羲・*女媧これなり。 この二菩薩ともにあひ*籌議して*第七の梵天の上に向かひて、 その七宝を取りてこの界に来至して、 日・月・星辰*二十八宿を造り、 もつて天下を照らしてその四時春秋冬夏を定む。
於テ↠是ニ阿弥陀仏遣ス↢二菩薩ヲ↡。一ハ名ケ↢宝応声ト↡、二ハ名ク↢宝吉祥ト↡。即チ伏*羲・女媧是ナリ。此ノ二菩薩共ニ相籌議0633シテ向ヒテ↢第七ノ梵天ノ上ニ↡、取リテ↢其ノ七宝ヲ↡来↢至シテ此ノ界ニ↡、造リ↢日月・星辰二十八宿ヲ↡、以テ照シテ↢天下ヲ↡定ム↢其ノ四時春秋冬夏ヲ↡。
^時に二菩薩ともにあひいひていはく、 ª日・月・星辰二十八宿の西に行く所以は、 一切の諸天・人民ことごとくともに阿弥陀仏を稽首したてまつれº となり。 ここをもつて日・月・星辰みなことごとく心を傾けてかしこに向かふ。 ゆゑに西に流る」 と。
時ニ二菩薩共ニ相謂ヒテ言ク、所↢以日月・星辰二十八宿ノ西ニ行ク↡者、一切ノ諸天人民尽ク共ニ稽↢首シタテマツレトナリ阿弥陀仏ヲ↡。是ヲ以テ日月・星辰皆悉ク傾ケテ↠心ヲ向フ↠彼ニ。故ニ西ニ流ルト也。」
二 Ⅵ ⅱ c【経教住滅】
イ 引経
【40】^第三に▼↑経の住滅を弁ずとは、 いはく、 「▲*釈迦牟尼仏一代、 正法五百年、 像法一千年、 末法一万年には、 衆生減じ尽き、 諸経ことごとく滅す。 如来痛焼の衆生を悲哀して、 ことにこの経を留めて止住すること百年ならん」 (大経・下意0272) と。
第三ニ弁ズト↢経ノ住滅ヲ↡者、謂ク「釈迦牟尼仏一代、正法五百年、像法一千年、末法一万年ニハ、衆生*減ジ尽キ、諸経悉ク滅ス。如来悲↢哀シテ痛焼ノ衆生ヲ↡特ニ留メテ↢此ノ経ヲ↡止住スルコト百年ナラムト。」
二 Ⅵ ⅱ c ロ 釈成
^この文をもつて証す。 ゆゑに知りぬ、 かの国はこれ浄土なりといへども、 しかも*体上下に通ず。 *相無相を知るはまさに上位に生ずべし。 凡夫は火宅にして一向に相に乗じて往生するなり。
以テ↢斯ノ文ヲ↡証ス。故ニ知リヌ彼ノ国ハ雖モ↢是浄土ナリト↡、然モ体通ズ↢上下ニ↡。知ルハ↢相无相ヲ↡当ニシ↠生ズ↢上位ニ↡。凡夫ハ火宅ニシテ一向ニ乗ジテ↠相ニ往生スル也。
二 Ⅶ【第七大門】
ⅰ 標列
【41】^第七大門のなかに両番の料簡あり。 第一門のなかに↓*此彼の取相に*縛・*脱を料簡す。 第二に次に↓此彼の修道に功を用ゐるに軽重ありて、 報を獲るに真偽あることを明かし、 ことさらに勧めてかしこに向かはしむ。
第七大門ノ中ニ有リ↢両番ノ料簡↡。第一門ノ中ニ此彼ノ取相ニ料↢簡ス縛・脱ヲ↡。第二ニ次ニ明シ↢此彼ノ修道ニ用ヰルニ↠功ヲ軽重アリテ而獲ルニ↠報ヲ真偽アルコトヲ↡、故ラニ勧メテ向ハシム↠彼ニ。
二 Ⅶ ⅱ 解釈
a【此彼取相縛脱】
イ 標
【42】^第一に↑此彼の取相に縛・脱を料簡すとは、
第一ニ此彼ノ取相ニ*料↢簡スト縛・脱ヲ↡者、
二 Ⅶ ⅱ a ロ 釈
(一)総釈
^もし西方の浄相を取らば、 疾く解脱を得、 もつぱら極楽を受けて、 智眼開けて朗らかなり。 もしこの方の穢相を取らば、 ただ妄楽・痴盲・厄縛・憂怖のみあり。
若シ取ラバ↢西方ノ浄相ヲ↡、疾ク得↢解脱ヲ↡、純ラ受ケテ↢極楽ヲ↡、智眼開キテ朗カナリ。若シ取ラバ↢此ノ方ノ穢相ヲ↡、唯有リ↢*妄楽・痴盲・厄縛・憂怖ノミ↡。
二 Ⅶ ⅱ a ロ (二)別釈
(Ⅰ)出難
^問ひていはく、 大乗の諸経によるに、 みな 「無相はすなはちこれ出離の要道なり、 相に執し*拘礙するは*塵累を勉れず」 といへり。 いま衆生を勧めて穢を捨て浄を欣はしむ、 この義いかん。
問ヒテ曰ク、依ルニ↢大乗ノ諸経ニ↡、皆云ヘリ↢「无相ハ乃チ是出離ノ要道ナリ、執シ↠相ニ*拘礙スルハ不ト↟*勉レ↢塵*累ヲ↡。」今勧メテ↢衆生ヲ↡捨テ↠穢ヲ*忻ハシム↠浄ヲ、是ノ義云何ン。
二 Ⅶ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)正答
^答へていはく、 この義類せず。 なんとなれば、 おほよそ相に二種あり。 一には*五塵の欲境において妄愛貪染して境に随ひて執着す。 これらのこの相、 これを名づけて縛となす。 二には仏の功徳を愛して浄土に生ぜんと願ず。 これ相なりといふといへども、 名づけて解脱となす。
答ヘテ曰ク、此ノ義不↠類セ。何トナレバ者凡ソ相ニ有リ↢二種↡。一ニ者於テ↢*五0634塵ノ欲境ニ↡妄愛貪染シテ随ヒテ↠境ニ執着ス。此等ノ是ノ相、名ケテ↠之ヲ為ス↠縛ト。二ニ者愛シテ↢仏ノ功徳ヲ↡願ズ↠生ゼムト↢浄土ニ↡。雖モ↠言フト↢是相ナリト↡、名ケテ為ス↢解脱ト↡。
二 Ⅶ ⅱ a ロ (二)(Ⅲ)引証
(ⅰ)十地経
^なにを0273もつてか知ることを得る。 ¬*十地経¼ (意) にのたまふがごとし。 「初地の菩薩、 なほみづから*二諦を別観して心を厲まして作意す。 先には相によりて求め、 終りにはすなはち無相なり。 もつてやうやく増進して大菩提を体す。 *七地の終心を尽して*相心はじめて息む。 その*八地に入りて相求を絶す。 まさに無功用と名づく」 と。
何ヲ以テカ得ル↠知ルコトヲ。如シ↢¬十地経ニ¼云フガ↡。「初地ノ菩薩、尚自ラ別↢観シテ二諦ヲ↡厲シテ↠心ヲ作意ス。先ニハ依リテ↠相ニ求メ、終ニハ則チ无相ナリ。以テ漸ク増進シテ体ス↢大菩提ヲ↡。尽シテ↢七地ノ終心ヲ↡相*心始テ息ム。入リテ↢其ノ八地ニ↡絶ス↢於相求ヲ↡。方ニ名クト↢无功用ト↡也。」
^このゆゑに ¬論¼ (*十地経論・意) にいはく、 「七地以還は悪貪を障となし、 *善貪を治となす。 八地以上は善貪を障となし、 無貪を治となす」 と。 いはんやいま浄土に生ぜんと願ずるは、 現にこれ*外凡なり。 所修の善根みな仏の功徳を愛するより生ず。 あにこれ縛ならんや。
是ノ故ニ¬論ニ¼云ク、「七地已還ハ悪貪ヲ為シ↠障ト、善貪ヲ為ス↠治ト。八地已上ハ善貪ヲ為シ↠障ト、无貪ヲ為スト↠治ト。」況ヤ今願ズルハ↠生ゼムト↢浄土ニ↡、現ニ是外凡ナリ。所修ノ善根皆従リ↠愛スル↢仏ノ功徳ヲ↡生ズ。豈ニ是縛ナラム也。
二 Ⅶ ⅱ a ロ (二)(Ⅲ)(ⅱ)涅槃経
^ゆゑに ¬涅槃経¼ (意) にのたまはく、 「一切衆生に二種の愛あり。 一には善愛、 二には不善愛なり。 不善愛はただ愚のみこれを求め、 善法愛は諸菩薩これを求む」 と。
故ニ¬涅槃経ニ¼云ク、「一切衆生ニ有リ↢二種ノ愛↡。一ニ者善愛、二ニ者不善愛ナリ。不善愛者唯愚ノミ求メ↠之ヲ、善法愛者諸菩薩求ムト↠是ヲ。」
二 Ⅶ ⅱ a ロ (二)(Ⅲ)(ⅲ)論註
^ゆゑに ¬浄土論¼ (*論註・下意) にいはく、 「▲観仏国土清浄味・摂受衆生大乗味・類事起行願取仏土味・畢竟住持不虚作味、 かくのごとき等の無量の仏道の味あり」 と。
故ニ¬浄土論ニ¼云ク、「観仏国土清浄味・摂受衆生大乗味・類事起行願取仏土味・畢竟住持不虚作味、有リト↢如キ↠是クノ等ノ无量ノ仏道ノ味↡。」
二 Ⅶ ⅱ a ロ (二)(Ⅳ)結成
^ゆゑにこれ相を取るといへども、 執縛に当るにあらず。 またかの浄土にいふところの相とは、 すなはちこれ無漏の相、 実相の相なり。
故ニ雖モ↢是取ルト↟相ヲ、非ズ↠当ルニ↢執縛ニ↡也。又彼ノ浄土ニ所ノ↠言フ相ト者、即チ是无漏ノ相、実相ノ相也。
二 Ⅶ ⅱ b【此彼修道】
イ 標
【43】^▼第二段のなかに↑此彼の修道に功を用ゐるに軽重ありて、 報を獲るに真偽0274あることを明かすとは、
第二段ノ中ニ明スト↢此彼ノ修道ニ用ヰルニ↠功ヲ軽重アリテ而獲ルニ↠報ヲ真偽アルコトヲ↡者、
二 Ⅶ ⅱ b ロ 釈
(一)総釈
^◆もし発心して西に帰せんと欲するものは、 ひとへに少時の礼・観・念等をもつて、 寿の長短に随ひて、 命終の時に臨めば*光台迎接して、 迅くかの方に至りて位不退に階ふ。
若シ欲スル↢発心シテ帰セムト↟*西ニ者ハ、単ニ用テ↢*少時ノ礼観念等ヲ↡、随ヒテ↢寿ノ長短ニ↡、臨メバ↢命終ノ時ニ↡光台迎接シテ、迅ク至リテ↢彼ノ方ニ↡位0635*階フ↢不退ニ↡。
二 Ⅶ ⅱ b ロ (二)別釈
(Ⅰ)不退転
^◆このゆゑに ¬大経¼ (上・意) にのたまはく、 「▲十方の人天、 わが国に来生して、 もしつひに滅度に至らずしてさらに退転あらば、 正覚を取らじ」 (第十一願) と。 この方は多時につぶさに*施・戒・忍・進・定・慧を修して、 ▼いまだ一万劫を満たざるよりこのかたは、 つねにいまだ火宅を免れず、 顛倒墜堕す。 ゆゑに功を用ゐることは至りて重く、 報を獲ることは偽なりと名づく。
是ノ故ニ¬大経ニ¼云ク、「十方ノ人天来↢生シテ我ガ国ニ↡、若シ不シテ↣畢ニ至ラ↢滅度ニ↡更ニ有ラバ↢退転↡者、不ト↠取ラ↢正覚ヲ↡。」此ノ方ハ多時ニ具ニ修シテ↢施・戒・忍・進・定・恵ヲ↡、未ダルヨリ↠満タ↢一万劫ヲ↡已来タハ、恒ニ未ダ↠免レ↢火宅ヲ↡、顛倒*墜*堕ス。故ニ名ク↢用ヰルコトハ↠功ヲ*至リテ重ク、獲ルコトハ↠報ヲ偽ナリト也↡。
二 Ⅶ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)横截
^▼¬大経¼ (下・意) にまたのたまはく、 「▲わが国に生ずるものは↓横に五悪趣を截る」 と。
¬大経ニ¼復云ク、「生ズル↢我ガ国ニ↡者ハ横ニ截ルト↢五悪趣ヲ↡。」
^いまこれは弥陀の浄刹に約対して、 娑婆の五道を斉しく悪趣と名づく。 地獄・餓鬼・畜生は純悪の所帰なれば、 名づけて悪趣となす。 娑婆の人天は*雑業の所向なれば、 また悪趣と名づく。
今此ハ約↢対シテ弥陀ノ浄刹ニ↡、娑婆ノ五道ヲ斉シク名ク↢悪趣ト↡。地獄・餓鬼・畜生ハ純悪ノ所帰ナレバ、名ケテ為ス↢悪趣ト↡。娑婆ノ人天ハ雑業ノ所向ナレバ、亦名ク↢悪趣ト↡。
^▼もしこの方の*修治断除によらば、 先づ*見惑を断じて三塗の因を離れ、 三塗の果を滅す。 後に*修惑を断じて人天の因を離れ、 人天の果を絶つ。 これみな漸次に断除すれば、 横截と名づけず。
若シ依ラバ↢此ノ方ノ修治断除ニ↡、先ヅ断ジテ↢見惑ヲ↡離レ↢三塗ノ因ヲ↡、滅ス↢三塗ノ果ヲ↡。後ニ断ジテ↢修惑ヲ↡離レ↢人天ノ因ヲ↡、絶ツ↢人天ノ果ヲ↡。此皆漸次ニ断除スレバ、不↠名ケ↢横截ト↡。
^◆もし弥陀の浄国に往生することを得れば、 娑婆の五道一時にたちまちに捨つ。
若シ得レバ↣往↢生スルコトヲ弥陀ノ浄国ニ↡、娑婆ノ五道一時ニ頓チニ捨ツ。
^◆ゆゑに 「↑▲横截五悪趣」 と名づくるはその果を截るなり。 「▲悪0275趣自然閉」 (同・下) とはその因を閉づるなり。 これ所離を明かす。 「▲昇道無窮極」 (同・下) とはその所得を彰すなり。
故ニ名クル↢「横截五悪趣ト」↡者截ル↢其ノ果ヲ↡也。「悪趣自然閉ト」者閉ヅル↢其ノ因ヲ↡也。此明ス↢所離ヲ↡。「*昇道无窮極ト」者彰スナリ↢其ノ所得ヲ↡。
^もしよく作意し回願して西に向かへば、 上一形を尽し下十念に至るまで、 みな往かざるはなし。 一たびかの国に到ればすなはち正定聚に入りて、 ここにして道を修する一万劫と功を斉しくす。
若シ能ク作意シ廻願シテ向ヘバ↠西ニ、上尽シ↢一形ヲ↡下至ルマデ↢十念ニ↡无シ↠不ルハ↢皆往カ↡。一タビ到レバ↢彼ノ国ニ↡即チ入リテ↢正定聚ニ↡、与↢此ニシテ修スル↠道ヲ一万劫↡斉シクス↠功ヲ也。
二 Ⅷ【第八大門】
ⅰ 標列
【44】^第八大門のなかに三番の料簡あり。 第一に↓略して諸経を挙げて来し証して、 勧めてここを捨ててかしこを欣はしむ。 第二に↓弥陀・釈迦二仏比校す。 第三に↓往生の意を釈す。
第八大門ノ中ニ有リ↢三番ノ料簡↡。第一ニ略シテ挙ゲテ↢諸経ヲ↡来シ証シテ、*勧メテ捨テテ↠此ヲ*忻ハシム↠彼ヲ。第二ニ弥陀・釈迦二仏比挍ス。第三ニ釈ス↢往生ノ意ヲ↡。
二 Ⅷ ⅱ 解釈
a【経論勧説】
イ 標
【45】^第一に↑略してもろもろの大乗経を挙げて来し証して、 みな勧めてここを捨ててかしこを悕はしむとは、
第一ニ略シテ挙ゲテ↢諸ノ大乗経ヲ↡来シ証シテ皆勧メテ捨テテ↠此ヲ悕ハシムト↠彼ヲ者、
二 Ⅷ ⅱa ロ 挙
(一)大経
^一にはいはく*耆闍崛山の説、 ¬*大経¼ 二巻。
一ニハ謂ク耆闍崛山ノ説、¬大経0636¼二巻。
二 Ⅷ ⅱa ロ (二)観経
^二には ¬*観経¼ 一部、 *王宮・耆闍両会の正説なり。
二ニハ¬観経¼一部、王宮・耆闍両会ノ正説ナリ。
二 Ⅷ ⅱa ロ (三)小経
^三には ¬少巻無量寿経¼ (*小経)、 *舎衛の一説。
三ニハ¬少巻无量寿経¼、舎衛ノ一説。
二 Ⅷ ⅱa ロ (四)十方随願往生経
^四にはまた ¬*十方随願往生経¼ の明証あり。
四ニハ復有リ↢¬十方随願往生経ノ¼明証↡。
二 Ⅷ ⅱa ロ (五)無量清浄覚経
^五にはまた ¬*無量清浄覚経¼ 二巻一会の正説あり。
五ニハ復有リ↢¬无量清浄覚経¼二巻一会ノ正説↡。
二 Ⅷ ⅱa ロ (六)十往生経
^六にはさらに ¬*十往生経¼ 一巻あり。
六ニハ更ニ有リ↢¬十往生経¼一巻↡。
二 Ⅷ ⅱa ハ 結
^諸余の大乗経論に*指讃する処多し。 ¬*請観音¼・¬*大品経¼ 等のごとし。 また*龍樹・天親等の論のごとし。 *歎勧一にあらず。 △余方の浄土はみなかくのごと0276く丁寧ならず。
諸余ノ大乗経論ニ指讃スル処多シ。如シ↢¬請観音¼・¬大品経¼等ノ↡。又如シ↢龍樹・天親*等ノ*論ノ↡。歎勧非ズ↠一ニ。余方ノ浄土ハ皆不↢如ク↠此クノ丁寧ナラ↡。
二 Ⅷ ⅱ b【二尊比校】
イ 標
【46】^第二に↑弥陀・釈迦二仏比校すとは、
第二ニ弥陀・釈迦二仏比挍スト者、
二 Ⅷ ⅱ b ロ 釈
(一)釈迦仮相
(Ⅰ)住世の短
^いはく、 この仏釈迦如来、 八十年世に住まりてしばらく現じてすなはち去りたまひ、 去りて返りたまはず。 *忉利の諸天に比するに、 一日にも至らず。
謂ク此ノ仏釈迦如来、八十年住マリテ↠世ニ蹔ク現ジテ即チ去リタマヒ、去リテ而不↠返リタマハ。比スルニ↢於忉利ノ諸天ニ↡、不↠至ラ↢一日ニモ↡。
二 Ⅷ ⅱ b ロ (一)(Ⅱ)救縁の弱
^また釈迦の在時救縁また弱し。
又釈迦ノ在時救縁亦弱シ。
二 Ⅷ ⅱ b ロ (一)(Ⅱ)(ⅰ)例証
^毘舎離国にして人の現患を救ひたまへる等のごとし。 なんとなれば、 ▼時に毘舎離国の人民五種の悪病に遭へり。 一には眼赤きこと血のごとし。 二には両の耳より膿を出す。 三には鼻のなかより血を流す。 四には舌噤みて声なし。 五には食らふところの物化して粗渋となる。 六識閉塞せることなほ酔人のごとし。
如キナリ↧毘舎離国ニシテ救ヒタマヘル↢人ノ現患ヲ↡等ノ↥。何トナレバ者時ニ毘舎離国ノ人民遭ヘリ↢五種ノ悪病ニ↡。一ニ者眼赤キコト如シ↠血ノ。二ニ者両ノ耳ヨリ出ス↠膿ヲ。三ニ者鼻ノ中ヨリ流ス↠血ヲ。四ニ者舌噤ミテ无シ↠声。五ニ者所↠食フ之物化シテ為ル↢麁渋ト↡。六識閉塞セルコト猶如シ↢酔人ノ↡。
^五夜叉あり、 あるいは訖拏迦羅と名づく。 面の黒きこと墨のごとくして五眼あり、 狗牙上に出でて人の精気を吸ふ。 良医の*耆婆その道術を尽すも、 救ふことあたはざるところなり。
有リ↢五*野叉↡、*或イハ名ク↢訖拏迦羅ト↡。面ノ黒キコト如クシテ↠墨ノ而有リ↢五眼↡、狗牙上ニ出デテ吸フ↢人ノ精気ヲ↡。良医ノ耆婆尽スモ↢其ノ道術ヲ↡、*所ナリ↠不ル↠能ハ↠救フコト。
^時に月蓋長者あり。 首となりて病人を*部領し、 みな来りて仏に帰して*頭を叩きて哀れみを求む。 その時世尊無量の*悲愍を起して、 病人に告げてのたまはく、 「西方に阿弥陀仏・観世音・大勢至菩薩まします。 なんぢら一心に合掌して見たてまつらんと求めよ」 と。
時ニ有リ↢月蓋長者↡。為リテ↠首ト部↢領シ病人ヲ↡、皆来リテ帰シテ↠仏ニ叩キテ↠頭ヲ求ム↠哀ミヲ。爾ノ時世尊起シテ↢无量ノ悲愍ヲ↡、告ゲテ↢病人ニ↡曰ク、西方ニ有ス↢阿弥陀仏・観世音・大勢至菩薩↡。汝等一心ニ合掌シテ求メヨト↠見タテマツラムト。
^ここにおいて大衆みな仏の勧めに従ひて、 合掌して哀れみを求む。 その時かの仏、 大光明を放ちて、 観音・大勢と一時0277にともに到りて*大神呪を説きたまふに、 一切の病苦みなことごとく消除して、 平復すること故のごとし。
於テ↠是ニ大衆皆従ヒテ↢仏ノ勧ニ↡、合掌シテ求ム↠哀ミヲ。爾0637ノ時彼ノ仏放チテ↢大光明ヲ↡、観音・大勢ト一時ニ*倶ニ*到リテ説キタマフニ↢大神呪ヲ↡、一切ノ病苦皆悉ク消除シテ、平復スルコト如シ↠故ノ。
二 Ⅷ ⅱ b ロ (二)釈迦真意
^▼しかるに二仏 (阿弥陀仏・釈尊) の*神力また斉等なるべし。 ただ釈迦如来おのが能を申べたまはずして、 ことさらにかの ˆ阿弥陀仏のˇ 長を顕して、 一切衆生をして斉しく帰せざるはなからしめんと欲す。 このゆゑに釈迦処々に ˆ阿弥陀仏をˇ 歎じて帰せしめたまへり。 すべからくこの意を知るべし。
然ルニ二仏ノ神力応シ↢亦斉等ナル↡。但釈迦如来不シテ↠申ベタマハ↢己ガ能ヲ↡、故ラニ顕シテ↢彼ノ長ヲ↡、欲ス↠使メムト↢一切衆生ヲシテ莫カラ↟不ルハ↢斉シク帰セ↡。是ノ故ニ釈迦処処ニ歎ジテ帰セシメタマヘリ。須クシ↠知ル↢此ノ意ヲ↡也。
二 Ⅷ ⅱ b ロ (二)(Ⅰ)鸞師領解
^◆このゆゑに曇鸞法師意を正して西に帰す。 ゆゑに ¬大経¼ に傍へて奉讃していはく (讃阿弥陀仏偈)、
是ノ故ニ曇*鸞法師正シテ↠意ヲ帰ス↠西ニ。故ニ傍ヘテ↢¬大*経ニ¼↡奉*讃シテ云ク、
^「▲安楽の声聞・菩薩衆、 人天、 智慧ことごとく洞達せり。
身相の荘厳殊異なし。 ただ他方に順ずるがゆゑに名を別つ。
顔容端正にして比ぶべきなし。 精微妙躯にして人天にあらず。
虚無の身無極の体なり。 このゆゑに平等力を頂礼したてまつる」 と。
「安楽ノ声聞・菩薩衆・ | 人・天、智恵*咸ク洞達セリ |
身相ノ荘厳无シ↢殊異↡ | 但順ズルガ↢他方ニ↡故ニ*別ツ↠名ヲ |
顔容端正ニシテ无シ↠可キ↠比ブ | 精微妙躯ニシテ非ズ↢人天ニ↡ |
虚无之身无極ノ体ナリ | 是ノ故ニ頂↢礼シタテマツルト平等力ヲ↡」 |
二 Ⅷ ⅱ c【往生意趣】
イ 標
【47】^第三に↑往生の意を釈すとは、 なかにつきて二あり。 一には↓往生の意を釈し、 二には↓問答解釈す。
第三ニ釈スト↢往生ノ意ヲ↡者、就キテ↠中ニ有リ↠二。一ニハ釈シ↢往生ノ意ヲ↡、二ニハ問答解釈ス。
二 Ⅷ ⅱ c ロ 釈
(一)往生の意
(Ⅰ)問
^第一に↑問ひていはく、 いま浄土に生ぜんと願ず、 いまだ知らず、 なんの意をかなすや。
第一ニ問ヒテ曰ク、今願ズ↠生ゼムト↢浄土ニ↡、未ダ↠知ラ、作スヤ↢何ノ意ヲカ↡也。
二 Ⅷ ⅱ c ロ (一)(Ⅱ)答
^答へていはく、 ただ疾く自利利他を成じ、 *利物深広ならんと欲す。 十0278信・三賢より正法を*摂受して、 不二に契会し、 仏性を見証し、 あきらかに実相を暁る。 *観照の暉心、 有無の二諦、 因果の先後、 十地の優劣、 *三忍、 *三道、 *金剛無礙、 大涅槃を証す。 大乗寛く運びて無限の時に住せんと欲す。 無辺の生死海を尽さんがためのゆゑなり。
答ヘテ曰ク、只欲ス↧疾ク成ジ↢自利・利他ヲ↡、利物深広ナラムト↥。十信・三賢ヨリ摂↢受シテ正法ヲ↡、契↢会シ不二ニ↡、見↢証シ仏性ヲ↡、明カニ暁ル↢実相ヲ↡。観照ノ暉心、有无ノ二諦、因果ノ先後、十地ノ優劣、三忍三道、金*剛无礙ニシテ証ス↢大涅槃ヲ↡。大乗寛ク運ビテ欲ス↢无限ノ時ニ住セムト↡。為ノ↠尽サムガ↢*无辺ノ生死海ヲ↡故ナリ。
二 Ⅷ ⅱ c ロ (二)問答解釈
^↑問に三番あり。
問ニ有リ↢三番↡。
二 Ⅷ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)問
^問ひていはく、 浄土に生ぜんと願ずるは、 利物を欲するに擬すとは、 もししからば、 *所抜の衆生はいま現にここにあり、 すでによくこの心を発得すれば、 ただここにありて苦の衆生を抜くべし。 なにによりてかこの心を得をはりて、 先づ浄土に生ぜんと願ずる。 衆生を捨ててみづから菩提の楽を求むるに似如たり。
問ヒテ曰ク、願ズルハ↠生ゼムト↢浄土ニ↡、擬スト↠欲スルニ↢利物ヲ↡者、若シ爾ラバ、所抜ノ衆生ハ今現ニ在リ↠此ニ、已ニ能ク発↢得スレバ此ノ心ヲ↡、只応シ↣在リテ↠此ニ抜ク↢苦ノ衆生ヲ↡。何ニ因リテカ得↢此ノ心ヲ↡竟リテ、先ヅ願ズル↠生ゼムト↢浄土ニ↡。似↧如タリ捨テテ↢衆生ヲ↡自ラ求ムルニ↦菩0638提ノ楽ヲ↥也。
二 Ⅷ ⅱ c ロ (二)(Ⅱ)答1
^答へていはく、 この義類せず。 なんとなれば、 ¬智度論¼ (意) にいふがごとし。 「たとへば二人ともに父母・眷属の深淵に没在するを見るに、 一人はただちに往きて力を尽してこれを救ふ。 力の及ばざるところなればあひともに没す。 一人ははるかに走りて一の舟船に趣き、 乗り来りて済接するに、 ならびに難を出づることを得るがごとし。
答ヘテ曰ク、此ノ義不↠類セ。何トナレバ者如シ↢¬智度論ニ¼云フガ↡。「譬ヘバ如シ↧二人*倶ニ見ルニ↣父母眷属ノ没↢在スルヲ深淵ニ↡、一人ハ直ニ往キテ尽シテ↠力ヲ救フ↠之ヲ、力ノ所ナレバ↠不ル↠*及バ相与倶ニ没ス、一人ハ*遥ニ走リテ*趣キ↢一ノ舟船ニ↡、乗リ来リテ済接スルニ、並ニ得ルガ↞出ヅルコトヲ↠難ヲ。
^菩薩もまたしかなり。 もしいまだ発心せざる時は、 生死に流転すること衆生と無別なり。 ただすでに菩提心を発す時は、 先づ願じて浄土に往生し、 大悲の船を取りて*無礙の弁才に乗じて生0279死の海に入り、 衆生を済運す」 と。
菩薩モ亦爾ナリ。若シ未ダル↢発心セ↡時ハ、生死ニ流転スルコト与↢衆生↡无別ナリ。但已ニ発ス↢菩提心ヲ↡時ハ、先ヅ願ジテ往↢生シ浄土ニ↡、取リテ↢大悲ノ船ヲ↡乗ジテ↢无礙ノ弁*才ニ↡入リ↢生死ノ海ニ↡、済↢運スト衆生ヲ↡。」
二 Ⅷ ⅱ c ロ (二)(Ⅲ)答2
^二に ¬大論¼ (大智度論・意) にまたいはく、 「菩薩浄土に生じて大神通を具し、 弁才無礙にして衆生を教化する時も、 なほ衆生をして善を生じ悪を滅し、 *道を増し位を進めて、 菩薩の意に称はしむることあたはず。 もしすなはち穢土にありて抜済するものは、 闕けてこの益なし。 ▲鶏を逼めて水に入るるがごとし。 あによく湿はざらんや」 と。
二ニ¬大論ニ¼復云ク、「菩薩生ジテ↢浄土ニ↡具シ↢大神通ヲ↡、弁才无ニシテ教↢化スル衆生ヲ↡時モ、尚不↠能ハ↠令ムルコト↣衆生ヲシテ生ジ↠善ヲ滅シ↠悪ヲ、増シ↠道ヲ進メテ↠位ヲ、称ハ↢菩薩ノ意ニ↡。若シ即チ在リテ↢穢土ニ↡抜済スル者ハ、闕ケテ无シ↢此ノ益↡。*如↢似シ逼メテ↠鶏ヲ入ルルガ↟水ニ。豈ニ能ク不ラム↠湿ハ也ト。」
二 Ⅷ ⅱ c ロ (二)(Ⅳ)答3
^三に ¬大経の讃¼ にいはく(讃阿弥陀仏偈・意)、
三ニ¬大*経ノ讃ニ¼云ク、
^「▲安楽仏国のもろもろの菩薩、 それ宣説すべきことは智慧に随ふ。
おのが万物において我所を亡ず。 浄きこと蓮華の塵を受けざるがごとし。
「安楽仏国ノ諸ノ菩薩 | 夫レ可キコトハ↢宣説ス↡随フ↢智*慧ニ↡ |
於テ↢己ガ万物ニ↡*亡ズ↢我所ヲ↡ | 浄キコト若シ↢蓮花ノ不ルガ↟受ケ↠塵ヲ |
^◆往来進止汎べる舟のごとし。 利安を務めとなして適莫を捨つ。
かれもおのれも空のごとくして二想を断ず。 智慧の炬を燃して長夜を照らす。
往来進止若シ↢汎ベル舟ノ↡ | 利安ヲ為シテ↠務ト捨ツ↢適莫ヲ↡ |
彼モ己モ猶クシテ↠空ノ断ズ↢二想ヲ↡ | 燃シテ↢智*慧ノ炬ヲ↡昭ス↢長夜ヲ↡ |
^◆三明六通みなすでに足れり。 菩薩の万行心眼に観ず。
かくのごとき功徳辺量なし。 このゆゑに心を至してかしこに生ぜんと願ず」 と。
三明六通皆已ニ足レリ | 菩薩ノ万行観ズ↢心眼ニ↡ |
如キ↠是クノ功徳无シ↢辺量↡ | 是ノ故ニ至シテ↠心ヲ願ズト↠生ゼムト↠彼ニ」 |
二 Ⅸ【第九大門】
ⅰ 標列
【48】^第九大門のなかに両番の料簡あり。 第一に↓苦楽善悪相対す。 第二に*彼此の0280↓寿命の長短を明かして比校す。
第九大門ノ中ニ有リ↢両番ノ料簡↡。第一ニ苦楽善悪相対ス。第二ニ明シテ↢彼此ノ寿命ノ長短ヲ↡比挍ス。
二 Ⅸ ⅱ 解釈
a【苦楽善悪】
イ 標
【49】^↑初段のなかにつきて二あり。 一には↓苦楽善悪相対す。 二には ↓¬大経¼ を引きて証となす。
*就キテ↢初段ノ中ニ↡有リ↠二。一ニハ苦楽善悪相対ス。二ニハ引キテ↢¬大経ヲ¼↡為ス↠証ト。
二 Ⅸ ⅱ a ロ 釈
(一)苦楽善悪相対
^初めに↑苦楽善悪相対すといふは、 この娑婆世界にありては苦楽二報ありといへども、 つねにもつて楽は少なく苦は多し。 重きはすなはち三塗にして痛焼し、 軽きはすなはち人天にして刀兵・疾病あひ続きて連なり注ぎ、 *遠劫よりこのかた断ゆる時あることなし。 たとひ人天に少楽ありとも、 なほ泡沫・電光のすみやかに起りすみやかに滅するがごとし。 このゆゑに名づけて唯苦唯悪となす。
初ニ言フ↢苦楽善悪0639相対スト↡者、在リテハ↢此ノ娑婆世界ニ↡雖モ↠有リト↢苦楽二報↡、恒ニ以テ楽ハ少ク苦ハ多シ。重キハ則チ三塗ニシテ痛焼シ、軽キハ則チ人天ニシテ刀兵・疾病相続キテ連ナリ注ギ、遠劫ヨリ已来タ无シ↠有ルコト↢断ユル時↡。縦ヒ有リトモ↢人天ニ少楽↡、猶如シ↢泡沫・電光ノ速ニ起リ速ニ滅スルガ↡。是ノ故ニ名ケテ*為ス↢唯苦唯悪ト↡。
^弥陀の浄国は水・鳥・樹林つねに法音を吐きて、 あきらかに*道教を宣ぶ。 *清白を具足してよく悟入せしむ。
弥陀ノ浄国ハ水・鳥・樹林常ニ吐キテ↢法音ヲ↡、明カニ宣ブ↢道教ヲ↡。具↢足シテ清白ヲ↡能ク令ム↢悟入セ↡。
二 Ⅸ ⅱ a ロ (二)引証
^二に↑聖教を引きて証となすとは、
二ニ引キテ↢聖教ヲ↡為スト↠証ト者、
二 Ⅸ ⅱ a ロ (二)(Ⅰ)浄土論
^¬*浄土論¼ (意) にいはく、 「▲十方の人天、 かの国に生ずるものは、 すなはち*浄心の菩薩と無二なり。 浄心の菩薩、 すなはち上地の菩薩と*畢竟じて同じく*寂滅忍を得。 ゆゑにさらに退転せず」 と。
¬浄土論ニ¼云ク、「十方ノ人天生ズル↢彼ノ国ニ↡者ハ、即チ与↢浄心ノ菩薩↡无二ナリ。浄心ノ菩薩即チ与↢上地ノ菩薩↡畢竟ジテ同ジク得↢寂滅忍ヲ↡。故ニ更ニ不ト↢退転セ↡。」
二 Ⅸ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)大経
^△また ¬大経¼ の四十八願を引くなかに五番の大益あり。
又引ク↢¬大経ノ¼四十八願ヲ↡中ニ有リ↢五番ノ大益↡。
二 Ⅸ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅰ)第三願
^第一に ¬大経¼ (上・意) にのたまはく、 「▲十方の人天、 わが国に来生することあらんに、 ことごとく真金色ならずは、 正覚を取らじ」 (第三願) と。
第一ニ¬大経ニ¼云ク、「有ラムニ↣十方ノ人天来↢生スルコト我ガ国ニ↡、不ハ↢悉ク真金色ナラ↡者不ト↠取ラ↢正覚ヲ↡。」
二 Ⅸ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)第四願
^二にのたまはく (大経・上意)、 「▲十方の人天、 わが国に来生して、 もし形色不0281同にして好醜あらば、 正覚を取らじ」 (第四願) と。
二ニ云ク、「十方ノ人天来↢生シテ我ガ国ニ↡、若シ形色不同ニシテ有ラバ↢好醜↡者不ト↠取ラ↢正覚ヲ↡。」
二 Ⅸ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)第五願
^三にのたまはく (大経・上意)、 「▲十方の人天、 わが国に来生して*宿命智を得ず、 下百千億那由他の諸劫の事を知らざるに至らば、 正覚を取らじ」 (第五願) と。
三ニ云ク、「十方ノ人天来↢生シテ我ガ国ニ↡不↠得↢宿命智ヲ↡、下至ラバ↠不ルニ↠知ラ↢百千億那由他ノ*諸劫ノ事ヲ↡者不ト↠取ラ↢正覚ヲ↡。」
二 Ⅸ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅳ)第七願
^四にのたまはく (大経・上意)、 「▲十方の人天、 わが国に来生して*天耳通を得ず、 下百千億那由他の諸仏の所説を聞かず、 ことごとく受持せざるに至らば、 正覚を取らじ」 (第七願) と。
四ニ云ク、「十方ノ人天来↢生シテ我ガ国ニ↡不↠得↢天耳通ヲ↡、下至ラバ↧不↠聞カ↢百千億那由他ノ諸仏ノ所説ヲ↡、不ルニ↦悉ク受持セ↥者不ト↠取ラ↢正覚ヲ↡。」
二 Ⅸ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅴ)第八願
^五にのたまはく (大経・上意)、 「▲十方の人天、 わが国に来生して*他心智を得ず、 下百千億那由他の諸仏国のうちの衆生の心念を知らざるに至らば、 正覚を取らじ」 (第八願) と。
五ニ云ク、「十方ノ人天来↢生シテ我ガ国ニ↡不↠得↢他心智ヲ↡、下至ラバ↠不ルニ↠知ラ↢百千億那由他ノ諸仏国ノ中ノ衆生ノ心念ヲ↡者不ト↠取ラ↢正覚ヲ↡。」
二 Ⅸ ⅱ a ハ 結
^かの国の利益の事を論ぜんと欲するに、 つぶさに陳ぶべきこと難し。 ただまさに生ぜんと願ずべし。 かならず不可思議なり。 このゆゑにかの方は唯善唯楽にして、 苦なく悪なし。
欲スルニ↠論ゼムト↢彼ノ国ノ利益之事ヲ↡、難シ↠可キコト↢具ニ陳ブ↡。但当ニシ↠願ズ↠生ゼムト。必ズ不可思議ナリ。是ノ故ニ彼0640ノ方ハ唯善*唯楽ニシテ无ク↠苦无シ↠悪也。
二 Ⅸ ⅱ b【寿命長短】
イ 標
【50】^第二に↑寿命の長短を明かすとは、
第二ニ明スト↢寿命ノ長短ヲ↡者、
二 Ⅸ ⅱ b ロ 釈
(一)此方寿命の短促
(Ⅰ)正釈
^この方の寿命大期百年に過ぎず。 百年のうち少しきは出づるも、 多くは減ず。 あるいは生年に夭喪し、 乃至童子にして身亡ず。 あるいはまた*胞胎にして傷堕す。 なんの意かしかるとならば、 まことに衆生因を作る時雑なるによる。 ここをもつて報を受くることまた斉同なることを得ず。
此ノ方ノ寿命大期不↠過ギ↢百年ニ↡。百年之内少シクハ出ヅルモ、多クハ減ズ。或イハ*生年ニ夭喪シ、乃至童子ニシテ身亡ズ。或イハ復*胞胎ニシテ*傷堕ス。何ノ意カ然ルトナラバ者、良ニ由ル↢衆生作ル↠因ヲ時雑ナルニ↡。是ヲ以テ受クルコト↠報ヲ亦不↠得↢斉同ナルコトヲ↡也。
二 Ⅸ ⅱ b ロ (一)(Ⅱ)引証
(ⅰ)涅槃経
^このゆゑに ¬涅槃経¼ (意) にのたまはく、 「*作業の時*黒なれば果報0282また黒なり。 作業の時*白なれば果報また白なり。 *浄雑またしかなり」 と。
是ノ故ニ¬涅槃経ニ¼云ク、「作業ノ時黒ナレバ果報亦黒ナリ。作業ノ時白ナレバ果報亦白ナリ。浄雑亦爾ナリト。」
二 Ⅸ ⅱ b ロ (一)(Ⅱ)(ⅱ)浄度菩薩経1
^また ¬*浄度菩薩経¼ によるにのたまはく、 「人寿百歳なるも、 夜その半ばを消す。 すなはちこれ五十年を減却す。 五十年のうちにつきて、 十五以来はいまだ善悪を知らず、 八十以去は昏耄虚劣なり、 ゆゑに老苦を受く。 おのづからこのほかはただ十五年あり。
又拠ルニ↢¬浄度菩*薩経ニ¼↡云ク、「人寿百歳ナルモ、*夜消ス↢其ノ半ヲ↡。即チ是減↢*却ス五十年ヲ↡也。就キテ↢五十年ノ内ニ↡、十五已来ハ未ダ↠知ラ↢善悪ヲ↡、八十已去ハ昏耄虚劣ナリ、故ニ受ク↢老苦ヲ↡。自ラ此之外ハ唯有リ↢十五年↡。
^中にありて、 外にはすなはち王官逼迫して*長征・*遠防し、 あるいは繋がれて牢獄にあり、 内はすなはち門戸の吉凶の衆事に牽き纏はれ、 *煢々忪々としてつねに求むるに足らず。
在リテ↢於中ニ↡、外ニハ則チ王官逼迫シテ長征遠防シ、或イハ繋ガレテ在リ↢牢獄ニ↡、内ハ則チ門戸ノ*吉凶ノ衆事ニ牽キ纏ハレ、煢煢忪忪トシテ常ニ求ムルニ不↠足ラ。
^かくのごとく推計するに、 いくばくの時ありてか*道業を修することを得べけんや。 かくのごとく思量するに、 あに哀しまざらんや。 なんぞ厭はざることを得んや」 と。
如ク↠斯クノ推計スルニ、可ケムヤ↧有リテカ↢幾クノ時↡*得↞修スルコトヲ↢道業ヲ↡。*如ク↠此クノ思量スルニ、豈ニ不ラム↠哀シマ哉。何ゾ得ムヤト↠不ルコトヲ↠厭ハ。」
二 Ⅸ ⅱ b ロ (一)(Ⅱ)(ⅲ)浄度菩薩経2
^またかの ¬経¼ (浄度菩薩経) にのたまはく、 「人世間に生じておほよそ一日一夜を経るに、 八億四千万の念あり。 *一念悪を起せば一悪身を受け、 十念悪を念へば十生の悪身を得、 百念悪を念へば一百の悪身を受く。 一衆生の一形のうちを計るに、 百年悪を念へば、 悪すなはち*三千国土に遍満してその悪身を受く。 悪法すでにしかり。
又彼ノ¬経ニ¼云ク、「人生ジテ↢世間ニ↡凡ソ経ルニ↢一日一夜ヲ↡、有リ↢八億*四千万ノ念↡。一念起セバ↠悪ヲ受ケ↢一悪身ヲ↡、十念念ヘバ↠悪ヲ得↢十生ノ悪身ヲ↡、百念念ヘバ↠悪ヲ受ク↢一百ノ悪身ヲ↡。計ルニ↢一衆生ノ一形之中ヲ↡、百年念ヘバ↠悪ヲ、悪即チ遍↢満シテ三千国土ニ↡受ク↢其ノ悪身ヲ↡。悪法既ニ爾リ。
^善法もまたしかなり。 一念善を起せば一善身を受け、 百念善を念へば一百の善身を受く。 一衆生の一形のうちを計るに、 百年善を念へば、 三千国土に善身また満つ。 もし0283十年・五年阿弥陀仏を念じ、 あるいは多年に至ることを得れば、 後に無量寿国に生れ、 すなはち浄土の法身を受くること恒沙無尽にして不可思議なり」 と。
善法モ亦然ナリ。一念起セバ↠善ヲ受ケ↢一善身ヲ↡、百念念ヘバ↠善ヲ受ク↢一百ノ善身ヲ↡。計ルニ↢一衆生ノ*一形之中ヲ↡、百年念ヘバ↠善ヲ、三0641千国土ニ善身亦満ツ。若シ得レバ↧十*年・五年念ジ↢阿弥陀仏ヲ↡、或イハ至ルコトヲ↦多年ニ↥、後ニ生レ↢无量寿国ニ↡、即チ受クルコト↢浄土ノ法身ヲ↡恒沙无尽ニシテ不可思議也ト。」
二 Ⅸ ⅱ b ロ (二)浄国寿命の長遠
(Ⅰ)正釈
^いますでに穢土は短促にして、 命報遠からず。 もし阿弥陀浄国に生ずれば、 寿命長遠にして不可思議なり。
今既ニ穢土ハ短促ニシテ、命報不↠遠カラ。若シ生ズレバ↢阿弥陀浄国ニ↡、寿命長遠ニシテ不可思議ナリ。
二 Ⅸ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)引証
(ⅰ)小経
^このゆゑに ¬*無量寿経¼ にのたまはく、 「▲仏、 *舎利弗に告げたまはく、 ªかの仏をなんがゆゑぞ阿弥陀と号くる。 ▲舎利弗、 十方の人天、 かの国に往生するものは、 寿命長遠にして億百千劫なり。 仏と同等なるがゆゑに阿弥陀と号くº」 と。 おのおのよろしくこの利の大なることを量りて、 みな往かんと願ずべし。
是ノ故ニ¬无量寿経ニ¼云ク、「仏告ゲタマハク↢舎利弗ニ↡、彼ノ仏ヲ何ガ故ゾ号クル↢阿弥陀ト↡。舎利弗、十方ノ人天往↢生スル彼ノ国ニ↡者ハ、寿命長遠ニシテ億百千劫ナリ。与↠仏同等ナルガ故ニ号クト↢阿弥陀ト↡。各ノ宜シクシ↧量リテ↢此ノ利ノ大ナルコトヲ↡、皆願ズ↞*往カムト也。」
二 Ⅸ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)善王皇帝尊経
^また ¬*善王皇帝尊経¼ にのたまはく、 「それ人ありて、 道を学して西方阿弥陀仏国に往生せんと念欲するものは、 憶念すること昼夜一日、 もしは二日、 あるいは三日、 もしは四日、 もしは五日、 六日、 七日に至るべし。
又¬善王皇帝尊経ニ¼云ク、「其レ有リテ↠人、*学シテ↠道ヲ念↣欲スル往↢生セムト西方阿弥陀仏国ニ↡者ハ、憶念スルコト*昼夜一日、若シハ二日、或イハ三日、若シハ四日、若シハ五日、至ルベシ↢六日・七日ニ↡。
^もしまた中において還悔せんと欲するものは、 われこの善王の功徳を説くを聞くべし。 命尽きんと欲する時、 八菩薩ありて、 みなことごとく飛び来りてこの人を迎へ取り、 西方阿弥陀仏国のうちに到りて、 つひに止まることを得ざらん」 と。
若シ復於テ↠中ニ欲スル↢還悔セムト↡者ハ、聞クベシ↣我説クヲ↢是ノ善王ノ功徳ヲ↡。命欲スル↠尽キムト時、有リテ↢八菩薩↡、皆悉ク飛ビ来リテ迎ヘ↢取リ此ノ人ヲ↡、到リテ↢西方阿弥陀仏国ノ中ニ↡、終ニ不ラムト↠得↠止マルコトヲ。」
二 Ⅸ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)讃弥陀偈
^これより以下、 また ¬大経の偈¼ (讃阿弥陀仏偈) を引きて証となす。 ¬讃¼ にいはく (同・意)、
自リ↠此已下、又引キテ↢¬大経ノ偈ヲ¼↡為ス↠証ト。¬讃ニ¼云ク、
0284^「▲それ衆生ありて安楽に生ずれば、 ことごとく三十有二相を具す。
智慧満足して深法に入る。 道要を究暢して障礙なし。
「其レ有リテ↢衆生↡生ズレバ↢安楽ニ↡ | 悉ク具ス↢三十有二相ヲ↡ |
智*慧満足シテ入ル↢深法ニ↡ | 究↢暢シテ道要ヲ↡无シ↢障礙↡ |
^◆根の利鈍に随ひて忍を成就す。 三忍乃至不可説なり。
宿命五通つねに自在にして、 仏に至るまで雑悪趣に更らず。
随ヒテ↢根ノ利鈍ニ↡成↢就ス忍ヲ↡ | 三忍乃至不可説ナリ |
宿命五通常ニ自在ニシテ | 至ルマデ↠仏ニ不↠更ラ↢雑悪趣ニ↡ |
^◆他方の五濁の世に生じて、 示現して同じく大牟尼 (釈尊) のごとくなるを除く。
安楽国に生じて大利を成ず。 このゆゑに心を至してかしこに生ぜんと願ず」 と。
除ク↧生ジテ↢他方ノ五濁ノ世ニ↡ | 示現シテ同ジク如クナルヲ↦大牟尼ノ↥ |
生ジテ↢安楽国ニ↡成ズ↢大利ヲ↡ | 是ノ故ニ至シテ↠心ヲ願ズト↠生ゼムト↠彼ニ」 |
二 Ⅹ【第十大門】
ⅰ 標列
【51】^第十大門のなかに両番の料簡あり。 第一に ↓¬大経¼ によりて類を引きて証誠す。 第二に↓回向の義を釈す。
第十大門ノ中ニ有リ↢両番ノ料簡↡。第一ニ依リテ↢¬大経ニ¼↡引キテ↠類ヲ証*誠ス。第二ニ釈ス↢廻向ノ義0642ヲ↡。
二 Ⅹ ⅱ 解釈
a【引類証誠】
イ 標
【52】^第一に ↑¬大経¼ によりて類を引きて証誠すとは、
第一ニ依リテ↢¬大経ニ¼↡引キテ↠類ヲ証*誠スト者、
二 Ⅹ ⅱ a ロ 釈
(一)正釈
^十方の諸仏西方に帰することを勧めたまはざるはなく、 十方の菩薩同じく生ぜざるはなし。 十方の人天、 意あるは斉しく帰す。 ゆゑに知りぬ、 不可思議の事なり。
十方ノ諸仏无ク↠不ルハ↠勧メタマハ↠帰スルコトヲ↢西方ニ↡、十方ノ菩薩无シ↠不ルハ↢同ジク生ゼ↡。十方ノ人天、有ルハ↠意斉シク帰ス。故ニ知リヌ不可思議ノ事也。
二 Ⅹ ⅱ a ロ (二)引証
^このゆゑに ¬大経の讃¼ にいはく (讃阿弥陀仏偈)、
是ノ故ニ¬大経ノ讃ニ¼云ク、
^「▲神力無極の阿弥陀は、 十方無量の仏の讃じたまふところなり。
0285東方恒沙の諸仏の国、 菩薩無数にしてことごとく往覲す。
「神力无極ノ阿弥陀ハ | 十方无量ノ仏ノ所ナリ↠讃ジタマフ |
東方恒沙ノ諸仏ノ国 | 菩薩无数ニシテ悉ク往覲ス |
^◆また安楽国の菩薩・声聞・もろもろの大衆を供養し、
経法を聴受して道化を宣ぶ。 自余の九方もまたかくのごとし」 と。
亦復供↢養シ安楽国ノ | 菩薩・声聞・諸ノ大衆ヲ↡ |
聴↢受シテ経法ヲ↡宣ブ↢道化ヲ↡ | 自余ノ九方モ亦如シト↠是クノ」 |
二 Ⅹ ⅱ b【回向釈義】
イ 標
【53】^第二に▼↑回向の義を釈すとは、
第二ニ釈スト↢廻向ノ義ヲ↡者、
二 Ⅹ ⅱ b ロ 釈
(一)正釈
(Ⅰ)回向の意
^◆ただ一切衆生すでに仏性あるをもつて、 人々みな成仏を願ふ心あり。 しかれども所修の行業いまだ一万劫に満たざるよりこのかたは、 なほいまだ火界を出でざるによりて、 輪廻を免れず。 このゆゑに聖者この長苦を愍れみて西に回向するを勧むるは、 大益を成ぜしめんがためなり。
但以テ↣一切衆生既ニ有ルヲ↢仏性↡、人人皆有リ↧願フ↢成仏ヲ↡心↥。然レドモ依リテ↧所修ノ行業未ダルヨリ↠満タ↢一万劫ニ↡已来タハ猶未ダルニ↞出デ↢火界ヲ↡、不↠免レ↢輪廻ヲ↡。是ノ故ニ聖者愍ミテ↢斯ノ長苦ヲ↡勧ムルハ↣廻↢*向スルヲ西ニ↡、為ナリ↠成ゼシメムガ↢大益ヲ↡。
二 Ⅹ ⅱ b ロ (一)(Ⅱ)回向の功
^◆しかるに回向の功は六を越えず。 なんらをか六となす。
然ルニ廻向之功ハ不↠*越エ↢於六ヲ↡。何等ヲカ為ス↠六ト。
^◆一には所修の諸業をもつて弥陀に回向すれば、 すでにかの国に至りて、 還りて*六通を得て衆生を済運す。 これすなはち*道に住せざるなり。
一ニ者将テ↢所修ノ諸業ヲ↡廻↢向スレバ弥陀ニ↡、既ニ至リテ↢彼ノ国ニ↡、還リテ得テ↢六通ヲ↡済↢運ス衆生ヲ↡。此即チ不ル↠住セ↠道ニ也。
^◆二には因を*回して果に向かふ。
二ニハ廻シテ↠因ヲ向フ↠果ニ。
^◆三には下を*回して上に向かふ。
三ニハ廻シテ↠下ヲ向フ↠上ニ。
^◆四には遅を*回して速に向かふ。 これすなはち世間に住せざるなり。
四ニハ廻シテ↠遅ヲ向フ↠速ニ。此即チ不ルナリ↠住セ↢世*間ニ↡。
^◆五には衆生に回施して、 悲念して善に向かはしむ。
五ニハ廻↢施シテ衆生ニ↡、悲念シテ向ハシム↠善ニ。
^◆六には*回入して分別の心を去却す。
六ニハ廻入シテ去↢却ス分別之心ヲ↡。
^◆回向の功ただこの六を成ず。
廻向之功只成ズ↢斯ノ六ヲ↡。
二 Ⅹ ⅱ b ロ (二)引証
(Ⅰ)大経
^このゆゑに ¬大経¼ (上・意) にのたまはく、 「▲それ衆生ありて、 わが国に生ずるものは自然に勝進して、 *常倫諸地の行に超出して、 仏道を成ずるに至るまでさらに*回復の難なし」 (第二0286十二願) と。
是ノ故ニ¬大経ニ¼云ク、「其レ有リテ↢衆生↡、生ズル↢我ガ国ニ↡者ハ自然ニ勝進シテ、超↢出シテ常倫諸地之行ニ↡、至ルマデ↠成ズルニ↢仏道ヲ↡更ニ无シト↢廻復之難↡。」
二 Ⅹ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)讃弥陀偈
^ゆゑに ¬大経の讃¼ にいはく (讃阿弥陀仏偈)、
故ニ¬大経ノ讃ニ¼云ク、
^「▲安楽の菩薩・声聞の輩、 この世界において比方なし。
釈迦無礙の大弁才をもつて、 もろもろの仮令を設けて少分を示し、
「安楽ノ菩薩・声0643聞ノ輩 | 於テ↢此ノ世界ニ↡无シ↢比方↡ |
釈迦无ノ大弁才ヲモテ | 設ケテ↢諸ノ仮令ヲ↡示シ↢少分ヲ↡ |
^◆最賎の乞人を帝王に並べ、 帝王をまた金輪王に比ぶ。
かくのごとく展転して六天に至る。 次第してあひ類することみな始めのごとし。
最賎ノ乞人ヲ並ベ↢帝王ニ↡ | 帝王ヲ復比ブ↢金輪王ニ↡ |
如ク↠是クノ展転シテ至ル↢六天ニ↡ | 次第テ相類スルコト皆如シ↠始ノ |
^◆天の色像をもつてかれに喩ふるに、 千万億倍すともその類にあらず。
みなこれ法蔵願力のなせるなり。 大心力を稽首し頂礼したてまつる」 と。
*以テ↢天ノ色像ヲ↡喩フルニ↢於彼ニ↡ | 千万億倍ストモ非ズ↢其ノ類ニ↡ |
皆是法蔵願力ノ為セルナリ | 稽↢首シ頂↣礼シタテマツルト大心力ヲ↡」 |
二 Ⅺ【第十一大門】
ⅰ 標列
【54】^第十一大門のなかに略して両番の料簡をなす。 第一に一切衆生を↓勧めて善知識に託して西に向かふ意をなさしむ。 第二に↓死後に生縁の勝劣あることを弁ず。
第十一大門ノ中ニ略シテ作ス↢両番ノ料簡ヲ↡。第一ニ勧メテ↢一切衆生ヲ↡託シテ↢善知識ニ↡作サシム↢向フ↠西ニ意ヲ↡。第二ニ死後ニ弁ズ↢生縁ノ勝劣アルコトヲ↡。
二 Ⅺ ⅱ 解釈
a【勧託善知識】
イ 標
【55】^第一に↑勧めて善知識に託すとは、
第一ニ勧メテ託スト↢善知*識ニ↡者、
二 Ⅺ ⅱ a ロ 釈
(一)善知識の意
^¬*法句経¼ によるに、 衆生のために善知識となる。 「宝明菩薩あり。 仏にまうしてまうさく、 ª世尊、 いかんが名づけて善知識となすやº と。
依ルニ↢¬法句経ニ¼↡、与ニ↢衆生ノ↡作ル↢善知識ト↡。「有リ↢宝明菩薩↡。白シテ↠仏ニ言ク、世尊、云何ガ名ケテ為ス↢善知識ト↡也ト。
^仏のたまはく、 ª善知識はよく深法を説く。 いはく*空と無相と無願となり。 諸法平等にして業なく報なく、 因なく果なし。 *究竟如々0287にして*実際に住す。 しかるに*畢竟空のなかにおいて、 熾燃として一切の諸法を建立す。 これを善知識となす。
仏言ク、善知識者能ク説ク↢深法ヲ↡。謂ク空ト无相ト无願トナリ。諸法平等ニシテ无ク↠業无ク↠報、无ク↠因无シ↠果。究竟如如ニシテ住ス↢於実際ニ↡。然ルニ於テ↢畢竟空ノ中ニ↡、熾然トシテ建↢立ス一切ノ諸法ヲ↡。是ヲ*為ス↢善知識ト↡。
^善知識はこれなんぢが父母なり、 なんぢらが菩提の身を養育するがゆゑなり。
善知識者是汝ガ父母ナリ、養↢育スルガ汝等ガ菩*提ノ身ヲ↡故ナリ。
^善知識はこれなんぢが眼目なり、 よく一切の善悪の道を見るがゆゑなり。
善知識者是汝ガ眼目ナリ、能ク見ルガ↢一切ノ善悪ノ道ヲ↡故ナリ。
^善知識はこれなんぢが大船なり、 なんぢらを*運度して生死海を出すがゆゑなり。
善知識者是汝ガ大船ナリ、運↢度シテ汝等ヲ↡出スガ↢生死海ヲ↡故ナリ。
^善知識はこれなんぢが*緪縄なり、 よくなんぢらを挽き抜きて生死を出すがゆゑなりº」 と。
善知識者是汝ガ絚縄ナリ、能ク挽キ↢抜キテ汝等ヲ↡出スガ↢生死ヲ↡故也ト。」
二 Ⅺ ⅱ a ロ (二)勧帰西方
^また勧む。 衆生のために善知識となるといへども、 かならずすべからく西に帰すべし。 なにをもつてのゆゑに。 この火界に住まれば、 *違順の境多々にして、 退没ありて出づること難きによるがゆゑなり。
又勧ム。雖モ↧与ニ↢衆生ノ↡作ルト↦善知識ト↥、必ズ須クシ↠帰ス↠西ニ。何ヲ以テノ故ニ。由ルガ↧住マレバ↢斯ノ火界ニ↡、違順ノ境多多ニシテ、有リテ↢退没↡難キニ↞出ヅルコト故也。
^このゆゑに*舎利弗ここにおいて発心して菩薩の行を修すること、 すでに六十劫を経たり。 *悪知識の乞眼の因縁に逢ひて、 つひにすなはち退転す。 ゆゑに知りぬ、 火界にして道を修することははなはだ難し。
是ノ故ニ舎0644利弗於テ↠此ニ発心シテ修スルコト↢菩薩ノ行ヲ↡、已ニ経タリ↢六十劫ヲ↡。逢ヒテ↢悪知識ノ乞眼ノ因縁ニ↡、遂ニ即チ退転ス。故ニ知リヌ火界ニシテ修スルコトハ↠道ヲ甚ダ難シ。
^ゆゑに勧めて西方に帰せしむ。 一たび往生を得れば、 三学自然に勝進し、 万行あまねく備はる。
故ニ勧メテ帰セシム↢西方ニ↡。一タビ得レバ↢往生ヲ↡、三学自然ルニ勝進シ、万行普ク備ハル。
二 Ⅺ ⅱ a ロ (三)引証
^ゆゑに ¬大経¼ (下・意) にのたまはく、 「▲弥陀の浄国は造悪の地毛髪ばかりのごときもなし」 と。
故ニ¬大経ニ¼云ク、「弥陀ノ浄国ハ无シト↣造悪之地如キモ↢毛髪許ノ↡也。」
二 Ⅺ ⅱ b【死後受生勝劣】
イ 標
【56】^第二に次に衆生の↑死後に受生の勝劣あることを弁ずとは、
第二ニ次ニ弁ズト↢衆生ノ死後ニ受生ノ勝劣アルコトヲ↡者、
二 Ⅺ ⅱ b ロ 釈
(一)勝劣1
^*この界の衆生寿0288尽き命終りて、 みな善悪の二業に乗ぜざるはなし。 つねに伺命の獄率と妄愛の煩悩のためにあひともに生を受く。 すなはち無数劫よりこのかた、 いまだ免離することあたはず。
此ノ界ノ衆生寿尽キ命終リテ、莫シ↠不ルハ↣皆乗ゼ↢善悪ノ二業ニ↡。恒ニ為ニ↢*伺命ノ獄率ト妄*愛ノ煩*悩ノ↡相与ニ受ク↠生ヲ。乃チ従リ↢无数劫↡来タ、未ダ↠能ハ↢免離スルコト↡。
^もしよく信を生じて浄土に帰向し意を策まして専精なれば、 ▲命終らんと欲する時、 阿弥陀仏、 観音聖衆と光台をもつて行者を*迎接したまふ。 歓喜し随従し合掌して台に乗じ、 須臾にすなはち到りて快楽ならざるはなく、 すなはち成仏に至る。
若シ能ク生ジテ↠信ヲ帰↢向シ浄土ニ↡策シテ↠意ヲ専精ナレバ、命欲スル↠終ラムト時、阿弥陀仏与↢観音聖衆↡光台ヲモテ迎↢接シタマフ行者ヲ↡。歓喜シ随従シ合掌シテ乗ジ↠台ニ、須臾ニ即チ到リテ无ク↠不ルハ↢快楽ナラ↡、乃チ至ル↢成仏ニ↡。
二 Ⅺ ⅱ b ロ (二)勝劣2
^また一切衆生、 業を造ること不同にして、 その三種あり。 いはく上・中・下なり。 みな*閻羅に詣りて判を取らざるはなし。 もしよく*信仏の因縁をもつて浄土に生ぜんと願じて、 所修の行業ならびにみな回向すれば、 命終らんと欲する時、 仏みづから来迎して*死王に干されず。
又復一切衆生造ルコト↠業ヲ不同ニシテ、有リ↢其ノ三種↡。謂ク上・中・下ナリ。莫シ↠不ルハ↧皆詣リテ↢閻羅ニ↡取ラ↞*判ヲ。若シ能ク信仏ノ因縁ヲモテ願ジテ↠生ゼムト↢浄土ニ↡、所修ノ行業並ニ*皆廻向スレバ、命欲スル↠終ラムト時、仏自ラ来迎シテ不↠干サレ↢死王ニ↡也。
二 Ⅻ【第十二大門】
ⅰ 標列
【57】^第十二大門のなかに一番あり。 ¬十往生経¼ につきて証となして往生を勧む。
第十二大門ノ中ニ有リ↢一番↡。就キテ↢¬十往生経ニ¼↡為シテ↠証ト勧ム↢往生ヲ↡也。
二 Ⅻ ⅱ 解釈
a【総結勧信】
イ 総勧
^仏 (釈尊)、 阿弥陀仏国に生ずることを説くに、 もろもろの大衆のために観身正念解脱を説きたまふがごとし。
如シ↧仏説クニ↠生ズルコトヲ↢阿弥陀仏国ニ↡、為ニ↢諸ノ大衆ノ↡説キタマフガ↦観身正念解脱ヲ↥。
二 Ⅻ ⅱ a ロ 引証
^¬十往生経¼ (意) にのたまはく、 「阿難、 仏にまうしてまうさく、 ª世尊、 一切衆生の観身の法はその事いかん。 ただ願はくはこれを説きたまへº と。
¬十往生経ニ¼云ク、「阿難白シテ↠仏ニ言ク、世尊、一切衆生ノ観身之法ハ其ノ事云何ン。唯願クハ説キタマヘト↠之ヲ。
^仏、 阿難に告げたまはく、 ªそれ観身の法は東西を観ぜず、 南北を観ぜず、 *四維・上下を観ぜず、 虚空を観ぜず、 *外縁を観0289ぜず、 *内縁を観ぜず、 *身色を観ぜず、 *色声を観ぜず、 *色像を観ぜず、 ただ*無縁を観ず。
仏告ゲタマハク↢阿難ニ↡、夫レ観身之法者不↠観ゼ↢東西ヲ↡、不↠観ゼ↢南北ヲ↡、不↠観ゼ↢四維・上下ヲ↡、不↠観ゼ↢虚空ヲ↡、不↠観ゼ↢外縁0645ヲ↡、不↠観ゼ↢内縁ヲ↡、不↠観ゼ↢身色ヲ↡、不↠観ゼ↢色声ヲ↡、不↠観ゼ↢色像ヲ↡、唯観ズ↢无縁ヲ↡。
^これを正真の観身の法となす。 この観身を除きて十方にあきらかに求むること在々処々なるも、 さらに別法にして解脱を得ることなしº と。
是ヲ為ス↢正真ノ観身之法ト↡。除キテ↢是ノ観身ヲ↡十方ニ諦ニ求ムルコト在在処処ナルモ、更ニ无シト↣別法ニシテ而得ルコト↢解脱ヲ↡。
^仏また阿難に告げたまはく、 ªただみづから身を観ずるに善力自然なり、 正念自然なり、 解脱自然なり。
仏復告ゲタマハク↢阿難ニ↡、但自ラ観ズルニ↠身ヲ善力自然ナリ、正念自然ナリ、解脱自然ナリ。
^なにをもつてのゆゑに。 たとへば人ありて精進*直心にして正解脱を得るがごとし。 かくのごとき人は解脱を求めざるに、 解脱おのづから至るº と。
何ヲ以テノ故ニ。譬ヘバ如シ↣有リテ↠人精進直心ニシテ得ルガ↢正解脱ヲ↡。如キ↠是クノ之人ハ不ルニ↠求メ↢解脱ヲ↡、解脱自ラ至ルト。
^阿難また仏にまうしてまうさく、 ª世尊、 世間の衆生もしかくのごとき正念解脱あらば、 一切の地獄・餓鬼・畜生の三悪道なかるべしº と。
阿難復白シテ↠仏ニ言ク、世尊、世間ノ衆生若シ有ラバ↢如キ↠是クノ正念解脱↡、応シト↠无カル↢一切ノ地獄・餓鬼・畜生ノ三悪道↡也。
^仏、 阿難に告げたまはく、 ª世間の衆生解脱を得ず。 なにをもつてのゆゑに。 一切衆生はみな虚多く実少なきによりて、 一として正念なし。 この因縁をもつて地獄のものは多く、 解脱のものは少なし。
仏告ゲタマハク↢阿難ニ↡、世間ノ衆生不↠得↢解脱ヲ↡。何ヲ以テノ故ニ。一切衆生ハ皆由リテ↢多ク↠虚少キニ↟実、无シ↢一トシテ正念↡。以テ↢是ノ因縁ヲ↡地獄ノ者ハ多ク、解脱ノ者ハ少シ。
^たとへば人ありて、 みづからの父母および師僧において、 外には孝順を現じ内には不孝を懐くがごとく、 外には精進を現じ内には不実を懐く。 かくのごとき悪人報いまだ至らずといへども、 三塗遠からず、 正念あることなし、 解脱を得ずº と。
譬ヘバ如ク↧有リテ↠人、於テ↢自ラノ父母及以師僧ニ↡、外ニハ現ジ↢孝順ヲ↡内ニハ*懐クガ↢不孝ヲ↥、外ニハ現ジ↢精進ヲ↡内ニハ懐ク↢不実ヲ↡。如キ↠是クノ悪人報雖モ↠未ダト↠*至ラ、三塗不↠遠カラ、无シ↠有ルコト↢正念↡、不ト↠得↢解脱ヲ↡。
^阿難また仏にまうしてまうさく、 ªもしかくのごときものは、 さらになんの善根を修してか正解脱を得る0290º と。
阿難復白シテ↠仏ニ言ク、若シ如キ↠是クノ者ハ、更ニ修シテカ↢何ノ善根ヲ↡得ルト↢正解脱ヲ↡。
^仏、 阿難に告げたまはく、 ªなんぢいまよく聴け。 われいまなんぢがために説かん。 十の往生の法ありて解脱を得べし。 いかんが十となす。
仏告ゲタマハク↢阿難ニ↡、汝今善ク聴ケ。吾今為ニ↠汝ガ説カム。有リテ↢十ノ往生ノ法↡可シ↠得↢解脱ヲ↡。云何ガ為ス↠十ト。
^一には観身正念にしてつねに歓喜を懐き、 飲食・衣服をもつて仏および僧に施せば、 阿弥陀仏国に往生す。
一ニ者観身正念ニシテ常ニ懐キ↢歓喜ヲ↡、以テ↢飲食・衣服ヲ↡施セバ↢仏及ビ僧ニ↡、往↢生ス阿弥陀仏国ニ↡。
^二には正念にして甘妙の良薬をもつて一の病比丘および一切衆生に施せば、 阿弥陀仏国に往生す。
二ニ者正念ニシテ*以テ↢甘妙ノ良薬ヲ↡施セバ↢一ノ病比丘及ビ一切衆生ニ↡、往↢生ス阿弥陀*仏国ニ↡。
^三には正念にして一の生命をも害せずして一切を慈悲すれば、 阿弥陀仏国に往生す。
三ニ者正念ニシテ不シテ↠害セ↢一ノ生命ヲモ↡慈↢悲スレバ於一切ヲ↡、往↢生ス阿弥陀仏国ニ↡。
^四には正念にして師の所に従ひて戒を受け、 *浄慧をもつて梵行を修し、 心につねに歓喜を懐けば、 阿弥陀仏国に往生す。
四ニ者正念ニシテ従ヒテ↢師ノ所ニ↡受ケ↠戒ヲ、浄恵ヲモテ修シ↢梵0646行ヲ↡、心常ニ懐ケバ↢歓喜ヲ↡、往↢生ス阿弥陀*仏国ニ↡。
^五には正念にして父母に孝順し、 *師長に敬奉して憍慢の心を起さざれば、 阿弥陀仏国に往生す。
五ニ者正念ニシテ孝↢順シ於父母ニ↡、敬↢奉シテ於師長ニ↡不レバ↠起サ↢憍慢ノ心ヲ↡、往↢生ス阿弥陀*仏国ニ↡。
^六には正念にして僧房に往詣し、 塔寺を恭敬し、 法を聞きて一義を解れば、 阿弥陀仏国に往生す。
六ニ者正念ニシテ往↢詣シ於僧房ニ↡、恭↢敬シ於塔寺ヲ↡、聞キテ↠法ヲ解レバ↢一義ヲ↡、往↢生ス阿弥陀*仏国ニ↡。
^七には正念にして一日一夜のうちに*八戒斎を受持して一をも破らざれば、 阿弥陀仏国に往生す。
七ニ者正念ニシテ一日一夜ノ中ニ受↢持シテ八戒*斎ヲ↡不レバ↠破ラ↠一ヲモ、往↢生ス阿弥陀*仏国ニ↡。
^八には正念にしてもしよく斎月・斎日のうちに房舎を遠離してつねに善師に詣れば、 阿弥陀仏国に往生す。
八ニ者正念ニシテ若シ能ク斎月・斎日ノ中ニ遠↢離シテ於房舎ヲ↡常ニ詣レバ↢於善師ニ↡、往↢生ス阿弥陀*仏国ニ↡。
^九には正念にしてつねによく浄戒を持ちて禅定を勤修し、 法を護りて悪口せず。 もしよくかくのごとく行ずれば、 阿弥陀仏国に往生す。
九ニ者正念ニシテ常ニ能ク持チテ↢浄戒ヲ↡懃↢修シ於禅定ヲ↡、護リテ↠法ヲ不↢悪口セ↡。若シ能ク如ク↠是クノ行ズレバ、往↢生ス阿弥陀*仏国ニ↡。
^十には正念にして、 もし*無上道において誹謗の心を起さず、 精進にして浄戒を持0291ち、 また無智のものを教へてこの経法を流布し、 無量の衆生を教化す。 かくのごときもろもろの人等は、 ことごとくみな往生を得º と。
十ニ者正念ニシテ、若シ於テ↢无上道ニ↡不↠起サ↢誹謗ノ心ヲ↡、精進ニシテ持チ↢浄戒ヲ↡、復教ヘテ↢无智ノ者ヲ↡流↢布シ是ノ経法ヲ↡、教↢化ス无量ノ衆*生ヲ↡。如キ↠是クノ諸ノ人等ハ悉ク皆得ト↢往生ヲ↡。
^その時*会中に一の菩薩あり、 山海恵と名づく。 仏にまうしてまうさく、 ª世尊、 かの阿弥陀国になんの妙楽勝事ありてか一切衆生みなかしこに往生せんと願ずるº と。
爾ノ時会中ニ有リ↢一ノ菩薩↡、名ク↢山海恵ト↡。白シテ↠仏ニ言ク、世尊、彼ノ阿弥陀国ニ有リテカ↢何ノ妙楽勝事↡一切衆生皆願ズルト↣往↢生セムト彼ニ↡。
^仏、 山海恵菩薩に告げたまはく、 ªなんぢいままさに起立し合掌して身を正しくし、 西に向かひて正念にして阿弥陀仏国を観じ、 阿弥陀仏を見たてまつらんと願ずべしº と。
仏告ゲタマハク↢山海恵菩薩ニ↡、汝今応ニ当シト↧起立シ合掌シテ正シクシ↠身ヲ向ヒテ↠西ニ正念ニシテ観ジ↢阿弥陀*仏国ヲ↡、願ズ↞見タテマツラムト↢阿弥陀仏ヲ↡。
^その時一切の大衆またみな起立し合掌してともに阿弥陀仏を観じたてまつる。 その時阿弥陀仏、 大神通を現じて大光明を放ち、 山海恵菩薩の身を照らしたまふ。
爾ノ時一切ノ大衆*亦皆起立シ合掌シテ共ニ観ジタテマツル↢阿弥陀仏ヲ↡。爾ノ時阿弥陀仏現ジテ↢大神通ヲ↡放チ↢大光明ヲ↡、照シタマフ↢山海恵菩薩ノ身ヲ↡。
^その時山海恵菩薩等、 すなはち阿弥陀仏の国土のあらゆる荘厳妙好の事を見たてまつるに、 みなことごとく七宝なり。 七宝の山、 七宝の国土あり。 水・鳥・樹林つねに法音を吐き、 かの国には日々につねに法輪を転ず。 かの国の人民*外事を習はず、 まさしく*内事を習ふ。 口に*方等の語を説き、 耳に方等の声を聴き、 心に方等の義を解る。
爾ノ時山海恵菩薩等即チ見タテマツルニ↢阿弥陀仏ノ国土ノ所有ル荘厳妙好之事ヲ↡、皆悉ク七宝ナリ。七宝ノ山、七宝ノ国土アリ。水・鳥・樹林常ニ吐キ↢法音ヲ↡、彼ノ国ニハ日日0647ニ常ニ転ズ↢法輪ヲ↡。彼ノ国ノ人民不↠習ハ↢外事ヲ↡、正シク習フ↢内事ヲ↡。口ニ説キ↢方等ノ語ヲ↡、耳ニ聴キ↢方等ノ声ヲ↡、心ニ解ル↢方等ノ義ヲ↡。
^その時山海恵菩薩、 仏にまうしてまうさく、 ª世尊、 われらいまかの国を*覩見するに、 勝妙の利益不可思議なり。 われいま願はくは一切衆生ことごとくみな往生せんことを。 しかして後にわれらも0292また願はくはかの国に生ぜんº と。
爾ノ時山海恵菩薩、白シテ↠仏ニ言ク、世尊、我等今者覩↢見スルニ彼ノ国ヲ↡、勝妙ノ利益不可思議ナリ。我今願クハ一切衆生悉ク皆往生セムコトヲ。然シテ後ニ我等モ亦願クハ生ゼムト↢彼ノ国ニ↡。
^仏これを記してのたまはく、 ª正観・正念せば正解脱を得て、 みなことごとくかしこに生ぜん。 もし善男子・善女人ありてこの経を正信し、 この経を*愛楽して衆生を勧導せば、 説者も聴者もことごとくみな阿弥陀仏国に往生せん。
仏記シテ↠之ヲ曰ク、正観正念セバ得テ↢正解脱ヲ↡、皆悉ク生ゼム↠彼ニ。若シ有リテ↢善男子・善女人↡正↢信シ是ノ経ヲ↡、愛↢楽シテ是ノ経ヲ↡勧↢導セバ衆生ヲ↡、説者モ聴者モ悉ク皆往↢生セム阿弥陀仏国ニ↡。
^もしかくのごとき等の人あらば、 われ今日よりつねに▼*二十五菩薩をしてこの人を護持せしめ、 つねにこの人をして病なく悩なからしめん。 もしは*人、 もしは*非人、 その便を得ず、 *行住坐臥に昼夜を問ふことなく、 つねに安穏なることを得んº と。
若シ有ラバ↢如キ↠是クノ等ノ人↡、我従リ↢今日↡常ニ使メ↣二十五菩薩ヲシテ護↢持セ是ノ人ヲ↡、常ニ令メム↢是ノ人ヲシテ无ク↠病无カラ↡悩。*若シハ人、若シハ非人、不↠得↢其ノ便ヲ↡、行住坐臥ニ无ク↠問フコト↢昼夜ヲ↡、常ニ得ムト↢安*穏ナルコトヲ↡。
^山海恵菩薩、 仏にまうしてまうさく、 ª世尊、 われいま尊教を頂受してあへて疑ふことあらず。 しかるに世に衆生あり、 多く誹謗してこの経を信ぜざることあらん。 かくのごとき人は、 後においていかんº と。
山海恵菩薩白シテ↠仏ニ言ク、世尊、我今頂↢受シテ尊教ヲ↡不↢敢テ有ラ↟疑フコト。然ルニ世ニ有リ↢衆生↡、多ク有ラム↢誹謗シテ不ルコト↟信ゼ↢是ノ経ヲ↡。如キ↠是クノ之人ハ、於テ↠後ニ云何ト。
^仏、 山海恵菩薩に告げたまはく、 ª▼後において閻浮提に、 あるいは比丘・比丘尼ありて、 この経を読誦することあるものを見て、 あるいはあひ瞋恚し心に誹謗を懐かん。 この*謗正法によるがゆゑに、 この人現身のなかに諸悪・重病・*身根不具・聾盲瘖瘂・水腫・鬼魅を来致して、 坐臥安からず、 生を求むるに得ず、 死を求むるに得ず。
仏告ゲタマハク↢山海恵菩薩ニ↡、於テ↠後ニ閻浮提ニ、或イハ有リテ↢比丘・比丘尼↡、見テ↧有ル↣読↢誦スルコト是ノ経ヲ↡者ヲ↥、或イハ相瞋恚シ心ニ懐カム↢誹謗ヲ↡。由ルガ↢是ノ謗正法ニ↡故ニ、是ノ人現身之中ニ来↢致シテ諸悪・重病・身*根不具・聾盲・瘖瘂・水腫・鬼魅ヲ↡、坐臥不↠安カラ、求ムルニ↠生ヲ不↠得、求ムルニ↠死ヲ不↠得。
^あるいはすなはち死するに致りて地獄に堕し、 八万劫のうちに大苦悩を受く。 百千万世にいまだかつて水食の名を0293聞かず。 久しくして後に出づることを得れども、 牛・馬・猪・羊にありて人のために殺されて大極苦を受く。 後に人となることを得れども、 つねに下処に生れ、 百千万世にも自在を得ず。 永く三宝の名字を聞かず。
或イハ乃チ致リテ↠死スルニ*堕シ↢於地獄ニ↡、八万劫ノ中ニ受ク↢大苦悩ヲ↡。百千万世ニ未ダ↣曽テ*聞カ↢水食之名ヲ↡。久シクシテ後ニ得レドモ↠出ヅルコトヲ、在リテ↢牛・馬・猪・羊ニ↡為ニ↠人ノ所テ↠殺サ受ク↢大極苦ヲ↡。後ニ得レドモ↠為ルコトヲ↠人ト、常ニ生レ↢下処ニ↡、百0648千万世ニモ不↠得↢自在ヲ↡。永ク不↠聞カ↢三宝ノ名字ヲ↡。
^このゆゑに▼無智・無信の人のなかにして、 この経を説くことなかれº」 と。
是ノ故ニ无智无信ノ人ノ中ニシテ、莫レト↠説クコト↢是ノ経ヲ↡也。」
三 流通
【58】 ^*撰集流通の徳、 あまねく一切に施して、
先づ菩提心を発し、 同じく浄国に帰向して、
みなともに仏道を成ぜん。
撰集流通ノ徳 | 普ク施シテ↢於一切ニ↡ |
先ヅ発シ↢菩*提心ヲ↡ | 同ジク帰↢向シテ浄国ニ↡ |
皆共ニ成ゼム↢仏道ヲ↡ |
|
安楽集 巻下
この集一部、 *現行本につきて開彫刻印せり。 ただ浄教を通ぜしめ、 *蒼生を沾さんがためなり。 ただ*虎唐の謬、 魚魯詳らかにしがたし。 正本流伝せば、 *後昆*刪定せよ。 庶はくは、 乃至一聞の類をして同じく九品の縁を結ばしめんのみ。
斯集一部、就↢現行本↡開彫刻印。唯為↧通↢浄教↡、沾↦蒼生↥也。但虎唐之謬、魚魯難↠詳正本流伝、後昆刪定。庶使↣乃至一聞之類同結↢九品之縁↡而已。
*寛元三年 乙巳 *仲秋の日
願主比丘*往成
寛元三年 乙巳 仲秋日
願主比丘往成
延書の底本は龍谷大学蔵(写字台旧蔵)寛元三年刊本ˆ原漢文の底本と同一ˇ。 ただし返点については本派本願寺蔵版によるか。
五翳にして面牆なり 五翳は日月の光をおおいかくす五種のもの。 煙・雲・塵・霧・羅睺阿修羅王 (日食・月食を起す阿修羅王)。 面牆は顔をかきねに向けていること。 ともに無知の身という意。 道綽禅師が自らをへりくだっていった言葉。
斉朝の上統 統は大統 (僧官の名)。
北斉の大統の地位にあった
法上法師のことか。
世俗の君子 東魏の孝静帝 (在位534-550) か。
難者紛紜たり 論難する者がさまざまにあったという意。
此彼の諸経 ¬観経¼ および他の諸大乗経。
可壊の相 無常のありさま。
終時の益 終益に同じ。
余行 念仏以外のさまざまな行業。
般若 ここでは仏法の意。
併せ遣り すべて除き。
功徳雲比丘 ¬華厳経¼ 「入法界品」 に説かれる五十三人の善知識の第二。
普賢の行に帰す ここでの帰は帰入するの意。 →
普賢
諸劫|三世の不顛倒 常住 (消滅変化がなく永久に存在すること) の意。
刀山剣樹鑊湯 刀の山、剣の樹、熱鉄の湯。 地獄を指していう。
相法 人相を占う法。
殺鬼 人の命を奪う悪鬼。
卦兆を作り 八卦などをたてて占うこと。
入地の加行道 十地のそれぞれの位に入るための行。
地満の功徳利 十地のそれぞれの位を満たした時に得る功徳利益。
已不住道 初地から二地、 二地から三地へと進むありさま。
上妙の楽具 すぐれて妙なる楽器。
通の行 凡夫も聖者もすべてみな通じるところの行。
通の伴 いかなる行にも通じて伴う行。 四摂であれ六度であれ、 一切の行は、 念仏を離れてはないという意。
地々 十地の各地。
此彼 此土 (穢土) と彼土 (浄土)。
往 往生浄土。
念 心に保持して忘れないこと。
信想軽毛 信心が薄いことは、 そよ風にも飛ぶ軽い毛のようなものであるという意。
仮名 名ばかりの菩薩。 菩薩の位の最初、
十信位を指す。
外の凡夫 少分の煩悩をも断じていないもの。 また
外凡の位とする説もある。
入道行位 さとりに到達するまでの修行の階梯。
法爾 法のごとくあること。 ここでは修行によって一段一段と菩薩の階位を昇らなければならないことを指す。
福智の資糧 福徳と
智慧の
善根。 福徳は六波羅蜜のうちの
布施・
持戒・
忍辱・
精進・
禅定の五をいい、 智慧は第六の
般若を指す。 →
六波羅蜜
親承供養 親しく仕えて香華等をささげること。
勝方便 すぐれた方法。
散心念仏 散乱した心のままで念仏すること。 ¬大品般若経¼ の原文では、 「散」 の字は 「敬」 となっている。
事定 三界のうちの無色界に生ずる煩悩に染った禅定。
味染 禅定の味に染まって執着すること。
業報の生を伏し 煩悩に染った禅定の力で欲界の業報があらわれないようにおさえているという意。
上界 三界のうちの色界・無色界。
彼此 彼は西方の浄土、 此は諸天を指す。
自分の因 自己のなした業因。
大涅槃 大いなる仏のさとり。
自余の九方 東方以外の南西北・四維・上下のこと。
この界 娑婆世界を指す。
因中 因位の時。 仏果 (仏のさとり) に至るまでの修行中の期間。
体上下に通ず 往生者の上根・下根すべてかねおさめる。
相無相 相即無相。 すべての事物には固定的なすがたがないという意。
此彼の取相 此土 (穢土) の相を取ることと、 彼土 (浄土) の相を取ること。
善貪 仏のさとりを求めるような善き貪愛。
修治断除 修行によって煩悩を対治し、排除すること。
王宮耆闍両会の正説 仏が王舎城宮で阿難と韋提希のために説法した王宮会と、阿難が耆闍崛山の大衆のために王宮会での仏の説法を再説した耆闍会。
大神呪 不思議な呪文。
他方に… 他の世界になぞらえて、 声聞・菩薩・人天の名を立てているだけで、 実体のないこと。
精微妙躯 不可思議ですぐれた身体。
観照の暉心 智慧の光で真実の道理を照らしみる心。
所抜の衆生 救われるところの衆生。
無礙の弁才 自由自在なる弁説の才能。
彼此 彼土 (浄土) と此土 (穢土)。
黒 悪。
白 善。
浄雑 浄は煩悩のけがれのないこと。 雑は善悪の業がまじっていること。
煢々忪々 孤独で頼るものがなく、 恐れて心が乱れ動くこと。
無量寿経 引用は ¬小経¼ の取意の文。
道に住せざる さとりの世界にとどまらない。
回して ふり向けて。
回して ひるがえし捨てて。
この界 娑婆世界を指す。
外縁 色・声・香・味・触・法の六境のこと。
内縁 眼・耳・鼻・舌・身・意の六識、 六根のこと。
身色 身体。
色声 声。
外事・内事 文脈からみて、 内事は下の 「方等」、 外事はそれ以外の法のこと。
方等 大いに増広発展させられたの意。 ここでは大乗の法を指す。
人・非人 人間と人間以外の天・竜・
夜叉などの鬼神をいう。 →
補註8
撰集流通 ¬安楽集¼ を撰述して、 世にひろめるという意。
現行本 現在、世に流布している本。
虎唐の謬魚魯 文字の誤りの意。 虎と唐、 魚と魯は文字がよく似ていて誤りやすいところからいう。
後昆 後世の人。
刪定 (本文を) 改め確定すること。
仲秋 八月のこと。
往成 往成はこの ¬安楽集¼ のほか、 宝治二年 (1248) に ¬往生拾因¼、 建長二年 (1250) に ¬群疑論¼ を版行している。
底本は◎高野山寶壽院蔵鎌倉時代刊本(上巻)/龍谷大学蔵(写字台旧蔵)寛元三年刊本(下巻)。 Ⓐ高野山寶壽院蔵天永三年書写本、 Ⓑ龍谷大学蔵正平二年書写本、 Ⓒ本派本願寺蔵版¬七祖聖教¼所収本 と対校。 全部校訂 弁→Ⓒ辨
明→Ⓐ相
五→Ⓐ吾
蔵 Ⓑ「ト云者アリ」と右傍註記
師 Ⓑ「ト云者アリ」と右傍註記
鸞→Ⓐ巒
統→Ⓑ絞
詳→Ⓐ祥
霊→Ⓐ露
均→Ⓐ劣
左右→Ⓐ右方
其→Ⓐ某
菩→Ⓐ[亦]菩
般→Ⓐ波
時 Ⓐになし
閑→Ⓒ間
念 Ⓐになし
一→Ⓒ是
若 Ⓐになし
目→Ⓐ在
住→Ⓐ作
門→Ⓒ行
観→Ⓐ現
覩→Ⓐ都
沾→◎Ⓑ沽
慧→ⒶⒷ恵
堕→Ⓐ随
併 Ⓐになし
願不→Ⓐ不願
苦→Ⓐ身
慧→ⒶⒷ慧
慧→Ⓐ恵
以→Ⓐ意
緊→Ⓐ竪
陀→Ⓐ那
鑊→Ⓐ潅
爾→Ⓐ爾[時]
或→Ⓐ惑
能 Ⓐになし
障 Ⓐになし
常 Ⓐになし
必 Ⓐになし
解 Ⓐになし
者→ⒶⒸ者[教]
耳→Ⓐ取
前 Ⓐになし
符→Ⓐ簿
符→Ⓐ簿 Ⓑになし
注→Ⓐ住
喩→Ⓐ兪
罪→Ⓐ羅
夜 Ⓐになし
殺→Ⓒ刹
索→Ⓐ
勉→Ⓒ免
鬼 Ⓐになし
徳→Ⓐ能
常→Ⓐ当
学→Ⓐ覚
通→Ⓐ道
挍→Ⓐ交
往→Ⓐ往[生]
又→Ⓐ又[来]
陀→Ⓐ陀[号]
号 Ⓐになし
有 Ⓐになし
仏→Ⓐ仏[修]
忘→◎Ⓑ妄
捨 Ⓐになし
皆→Ⓐ倶
堕→Ⓑ随
亡者→Ⓐ若
目→Ⓐ自
仏→Ⓐ念
項→Ⓒ頃
得→◎Ⓑ徳
就 Ⓐ久也と左傍註記
定→Ⓐ是
弱→Ⓒ劣
所→Ⓒ処
業→Ⓐ乗
蕀→Ⓐ棘
旱→Ⓐ早
悪→Ⓐ怨
伺→Ⓒ司
並→Ⓐ普
槃→Ⓐ槃[城]
末→Ⓑ未
既→Ⓒ即
既→Ⓐ[即]既
於 Ⓐになし
十→Ⓒ十[方] Ⓑ方イと右傍註記
豪→Ⓒ毫
汝→Ⓐ汝[師]
慧→ⒶⒷ恵
随→ⒶⒷ[経云]随
仏 Ⓐになし
至 Ⓐになし
今→Ⓑ命
此 Ⓐになし
請→Ⓐ清
台→Ⓐ豪
一切 Ⓐになし
世界 Ⓐになし
其相→Ⓐ甚想
坐 Ⓐになし
陀→Ⓐ陀[佛]
終→ⒶⒸ終[時]
念→Ⓑ誦
无→Ⓐ无[上]
域→Ⓐ城
項→Ⓐ須
犧→Ⓐ義→Ⓒ犠
減→感→Ⓒ滅
料簡 Ⓐになし
妄→Ⓐ忘
拘→Ⓐ物
累→Ⓐ畜
忻→Ⓐ悕
五 Ⓐになし
心 Ⓐになし
西→Ⓐ西[方]
少→Ⓐ小
階→Ⓐ皆
墜堕→Ⓐ堕墜
堕→Ⓑ随
至 Ⓐになし
昇→Ⓐ勝
勧→Ⓐ[皆]勧
等→Ⓐ等[得]
論 Ⓐになし
野→Ⓒ夜
或…眼14字 Ⓐになし
所不能→Ⓐ不能所
倶→Ⓑ但
到→Ⓐ倒
経→Ⓐ乗
讃 Ⓐ讀歟と右傍註記
咸→◎減
別→ⒶⒸ列
剛→Ⓐ則
无辺 Ⓐになし
倶→Ⓐ但
及→Ⓐ加
遥→Ⓐ逕
趣→Ⓐ疾
才→Ⓐ才[口]
如 Ⓐになし
経 Ⓐになし
慧→ⒶⒷ恵
亡→Ⓑ云
就 Ⓐになし
為 Ⓐになし
諸劫→Ⓐ劫諸
唯 Ⓐになし
生→Ⓐ上
胞 Ⓐになし
傷→Ⓐ腹
薩 Ⓑになし
夜→Ⓐ応
却→Ⓐ劫
吉→Ⓐ去
得 Ⓐになし
如→Ⓐ加
四→Ⓐ五
一形之中 Ⓐになし
年 Ⓐになし
往→ⒶⒸ往[生]
学→Ⓐ挙(立也と右傍註記)
昼→Ⓑ尽
誠→Ⓐ成
誠→ⒶⒷ成
向 Ⓐになし
越→Ⓐ超
間→Ⓒ間[也]
以天→Ⓐ天以
識→Ⓐ議
為→Ⓐ名
提→Ⓐ薩(提歟と右傍註記)
伺→Ⓒ司
愛→Ⓑ受
悩→◎煩 Ⓑ同と右傍註記
判→Ⓐ刺
皆 Ⓐになし
懐→Ⓐ壊
至→Ⓐ至[毎皆前相]
以→Ⓐ以[世]
仏 Ⓐになし
斎→Ⓐ斎[一日一夜中受持]
生 Ⓐになし
亦 Ⓐになし
若 Ⓐになし
穏→Ⓐ隠
根→Ⓐ相
堕→Ⓑ随
聞→Ⓐ聞[有]
提→Ⓐ薩(提と右傍註記)