0385◎称讃浄土仏摂受経
*大唐三蔵法師玄奘奉詔訳
【1】 ◎かくのごとくわれ聞きたてまつりき。 ひと時薄伽梵室羅筏にありて、 誓多林給孤独園に住したまひて、
◎○如ク↠是クノ我聞キタテマツリキ。一時薄伽梵在リテ↢室羅筏ニ↡、住シタマヒテ↢誓多林給孤独園ニ↡、
大苾芻衆千二百五十人と倶なりき。
○与↢大苾芻衆千二百五十人↡倶ナリキ。
一切みなこれ尊宿の声聞にして、 衆の望み識るところの大阿羅漢なり。
○一切皆是尊宿ノ声聞ニシテ、衆ノ望ミ所ノ↠識ル大阿羅漢ナリ。
その名を尊者*舎利子・*摩訶目犍連・*摩訶迦葉・*阿泥律陀といひき。 かくのごときらのもろもろの大声聞もつて上首たり。
○其ノ名ヲ曰ヒキ↢尊者舎利子・摩訶目*犍連・摩訶迦葉・阿泥律陀ト↡。如キ↠是クノ等ノ諸ノ大声聞而為リ↢上首↡。
また無量の菩薩摩訶薩と倶なりき。
○復与↢無量ノ菩薩摩訶薩↡倶ナリキ。
一切みな不退転位に住して、 無量の功徳衆に荘厳せられたり。
●一切皆住シテ↢不退転位ニ↡、無量ノ功徳衆ニ所レタリ↢荘厳セ↡。
その名を*妙吉祥菩薩・無能勝菩薩・常精進菩薩・不休息菩薩といひき。 かくのごときらのもろもろの大菩薩もつて上首たり。
○其ノ名ヲ曰ヒキ↢妙吉祥菩薩・无能勝菩薩・常精進菩薩・不休息菩薩ト↡。如キ↠是クノ等ノ諸ノ大菩薩而為リ↢上首↡。
また帝釈・大梵天王なる堪忍界主・護世四王あり。 かくのごとき上首、 百千倶胝那庾多数なり。
○復有リ↢帝釈・大梵天王ナル堪忍界主・護世四王↡。如キ↠是クノ上首、百千倶胝那庾多数ナリ。
もろもろの天子衆および余の世間の無量の天・人・阿素洛等、 聞法のためのゆゑに倶に来会して坐せり。
●諸ノ天子衆及ビ余ノ世間ノ無量ノ天・人・阿素洛等、為ノ↢聞法ノ↡故ニ倶ニ来会シテ坐セリ。
【2】 その時世尊舎利子に告げたまはく、 なんぢいま知るやいなや。
○爾ノ時世尊告ゲタマハク↢舎利子ニ↡、汝今知ルヤ不ヤ。
▼ここより西方、 この世界を去ること百千倶胝那庾多の仏土を過ぎて仏の世界あり、 名づけて極楽といふ。
○於リ↠是西方、去ルコト↢此ノ世界ヲ↡過ギテ↢百千倶胝那庾多ノ仏土ヲ↡有リ↢仏ノ世界↡、名ケテ曰フ↢極楽ト↡。
そのなかの世尊を無量寿および無量光・如来・応・正等覚と名づく。 十号円満して、 いま現にかしこにましまして安隠に住持し、 もろもろの有情のために甚深微妙の法を宣説して、 殊勝の利益と安楽とを得しめたまへり。
○其ノ中ノ世尊ヲ名ク↢無量寿及ビ无量光・如0386来・応・正等覚ト↡。十号円満シテ、今現ニ在シテ↠彼ニ安隠ニ住持シ、為ニ↢諸ノ有情ノ↡宣↢説シテ甚深微妙之法ヲ↡、令メタマヘリ↠得↢殊勝ノ利益ト安楽トヲ↡。
【3】 また舎利子、 なんの因なんの縁ありてか、 かの仏の世界を名づけて極楽となすや。 舎利子、 かの界のうちのもろもろの有情の類、 一切身心の憂苦あることなく、 ただ無量清浄の喜楽のみあるによりてなり。 このゆゑに名づけて極楽世界となす。
○又舎利子、何ノ因何ノ縁アリテカ、彼ノ仏ノ世界ヲ名ケテ為スヤ↢極楽ト↡。舎利子、由リテナリ↧彼ノ界ノ中ノ諸ノ有情ノ類、無ク↠有ルコト↢一切身心ノ憂苦↡、唯有ルニ↦无量清浄ノ喜楽ノミ↥。是ノ故ニ名ケテ為ス↢極楽世界ト↡。
【4】 また舎利子、 極楽世界浄仏土のなかには、 処々にみな七重に行列せる妙宝欄楯、 七重に行列せる宝*多羅樹あり。 および七重の妙宝羅網ありて、 周帀し囲繞して、 四宝をもつて荘厳せり。 金宝・銀宝・*吠琉璃宝・*頗胝迦宝をもつて妙飾間綺せり。
○又舎利子、極楽世界浄仏土ノ中ニハ、処処ニ皆有リ↢七重ニ行列セル妙宝欄楯、七重ニ行列セル宝多羅樹↡。及ビ有リテ↢七重ノ妙宝羅網↡、周帀シ囲繞シテ、四宝ヲモテ荘厳セリ。金宝・銀宝・吠*琉璃宝・頗胝迦宝ヲモテ妙飾間綺セリ。
舎利子、 かの仏土のなかにはかくのごときらの衆妙綺飾の功徳荘厳ありて、 はなはだ愛楽すべし。
●舎利子、彼ノ仏土ノ中ニハ有リテ↢如キ↠是クノ等ノ衆妙綺飾ノ功徳荘厳↡、甚ダ可シ↢愛楽ス↡。
このゆゑに名づけて極楽世界となす。
○是ノ故ニ名ケテ為ス↢極楽世界ト↡。
【5】 また舎利子、 極楽世界浄仏土のなかには、 処々にみな七妙宝池ありて、 八功徳水そのなかに弥満せり。 ▼なんらをか名づけて八功徳水となすや。 一つには澄浄、 二つには清冷、 三つには甘美、 四つには軽軟、 五つには潤沢、 六つには安和、 七つには飲む時飢渇等の無量の過患を除き、 八つには飲みをはりてさだめてよく諸根の四大を長養し、 種々殊勝の善根を増益す。 多福の衆生つねに楽みて受用す。 このもろもろの宝池の底には金沙を布けり。
○又舎利子、極楽世界浄仏土ノ中ニハ、処処ニ皆有リテ↢七妙宝池↡、八功徳水弥↢満セリ其ノ中ニ↡。何等ヲカ名ケテ為スヤ↢八功徳水ト↡。一ニ者澄浄、二ニ者清冷、三ニ者甘美、四ニ者軽軟、五ニ者潤沢、六ニ者安和、七ニ者飲ム時除キ↢飢渇等ノ无量ノ過患ヲ↡、八ニ者飲ミ已リテ定メテ能ク長↢養シ諸根ノ四大ヲ↡、増↢益ス種種殊勝ノ善根ヲ↡。多福ノ衆生常ニ楽ミテ受用ス。是ノ諸ノ宝池ノ底ニハ布ケリ↢金沙ヲ↡。
四面に周帀して四つの階道あり。 四宝をもつて荘厳せり。 はなはだ愛楽すべし。 もろもろの池を周帀して妙宝樹あり。 間飾行列して香気芬馥せり。 七宝の荘厳はなはだ愛楽すべし。 七宝といふは、 一つには金、 二つには銀、 三つには吠琉璃、 四つには頗胝迦、 五つには赤真珠、 六つには*阿湿摩掲拉婆宝、 七つには*牟娑落掲拉婆宝なり。
○四面ニ周帀シテ有リ↢四ノ階道↡。四宝ヲモテ荘厳セリ。甚ダ可シ↢愛楽ス↡。諸ノ池0387ヲ周帀シテ有リ↢妙宝樹↡。間飾行列シテ香気芬馥セリ。七宝ノ荘厳甚ダ可シ↢愛楽ス↡。言フ↢七宝ト↡者、一ニハ金、二ニハ銀、三ニハ吠*琉璃、四ニハ頗胝迦、五ニハ赤真珠、六ニハ阿湿摩掲拉婆宝、七ニハ牟娑落掲拉婆宝ナリ。
このもろもろの池のなかにはつねに種々雑色の蓮華あり、 量るに車輪のごとし。 青形には青顕・青光・青影あり、 黄形には黄顕・黄光・黄影あり、 赤形には赤顕・赤光・赤影あり、 白形には白顕・白光・白影あり、 四形には四顕・四光・四影あり。
○是ノ諸ノ池ノ中ニハ常ニ有リ↢種種雑色ノ蓮華↡、量ルニ如シ↢車輪ノ↡。青形ニハ青顕・青光・青影アリ、黄形ニハ黄顕・黄光・黄影アリ、赤形ニハ赤顕・赤光・赤影アリ、白形ニハ白顕・白光・白影アリ、四形ニハ四顕・四光・四影アリ。
舎利子、 かの仏土のなかにはかくのごときらの衆妙綺飾の功徳荘厳ありて、 はなはだ愛楽すべし。 このゆゑに名づけて極楽世界となす。
○舎利子、彼ノ仏土ノ中ニハ有リテ↢如キ↠是クノ等ノ衆妙綺飾ノ功徳荘厳↡、甚ダ可シ↢愛楽ス↡。是ノ故ニ名ケテ為ス↢極楽世界ト↡。
【6】 また舎利子、 極楽世界浄仏土のなかには、 自然につねに無量無辺衆妙の伎楽あり。 音曲和雅にしてはなはだ愛楽すべし。 もろもろの有情の類この妙音を聞きて、 もろもろの悪煩悩ことごとくみな消滅し、 無量の善法漸次に増長して、 すみやかに無上正等菩提を証す。
○又舎利子、極楽世界浄仏土ノ中ニハ、自然ニ常ニ有リ↢無量无辺衆妙ノ伎楽↡。音曲和雅ニシテ甚ダ可シ↢愛楽ス↡。諸ノ有情ノ類聞キテ↢斯ノ妙音ヲ↡、諸ノ悪煩悩悉ク皆消滅シ、無量ノ善法漸次ニ増長シテ、速ニ証ス↢無上正等菩提ヲ↡。
舎利子、 かの仏土のなかにはかくのごときらの衆妙綺飾功徳荘厳ありて、 はなはだ愛楽すべし。 このゆゑに名づけて極楽世界となす。
●舎利子、彼ノ仏土ノ中ニハ有リテ↢如キ↠是クノ等ノ衆妙綺飾ノ功徳荘厳↡、甚ダ可シ↢愛楽ス↡。是ノ故ニ名ケテ為ス↢極楽世界ト↡。
【7】 また舎利子、 極楽世界浄仏土のなかに周遍せる大地は、 真金をもつて合成す。 それに触るるに柔軟香潔なり。 光明無量無辺にして妙宝間飾す。
○又舎利子、極楽世界浄仏土ノ中ニ周遍セル大地ハ、真金ヲモテ合成ス。其ニ触ルルニ柔軟香潔ナリ。光明無量无辺ニシテ妙宝間飾ス。
舎利子、 かの仏土のなかにはかくのごときらの衆妙綺飾の功徳荘厳ありて、 はなはだ愛楽すべし。 このゆゑに名づけて極楽世界となす。
●舎利子、彼ノ仏土ノ中ニハ有リテ↢如キ↠是クノ等ノ衆妙綺飾ノ功徳荘厳↡、甚ダ可シ↢愛楽ス↡。是ノ故ニ名ケテ為ス↢極楽世界ト↡。
【8】 また舎利子、 極楽世界浄仏土のなかには、 昼夜六時に、 つねに種々上妙の天華を雨ふらす。 光沢香潔にして細軟雑色なり。 見る者をして身心適悦ならしむといへども、 しかも貪著せず、 有情の無量無数不可思議殊勝の功徳を増長す。 かの有情の類、 昼夜六時に、 つねに持ちて無量寿仏を供養したてまつる。
○又舎利子、極楽世界浄仏土ノ中ニハ、昼夜六時ニ、常ニ雨ラス↢種種上妙ノ天華ヲ↡。光沢0388香潔ニシテ細軟雑色ナリ。雖モ↠令ムト↢見ル者ヲシテ身心適悦ナラ↡、而モ不↢貪著セ↡、増↢長ス有情ノ無量无数不可思議殊勝ノ功徳ヲ↡。彼ノ有情ノ類、昼夜六時ニ、常ニ持チテ供↢養シタテマツル無量寿仏ヲ↡。
*晨朝の時ごとにこの天華を持ちて、 一食のあひだにおいて飛びて他方の無量世界に至り、 百千倶胝の諸仏を供養したてまつり、 諸仏の所においておのおの百千倶胝の樹の花をもつて持散し供養して、 本処に還り至りて、 *天住等に遊ぶ。
○毎ニ↢晨朝ノ時↡持チテ↢此ノ天華ヲ↡、於テ↢一食ノ頃ニ↡飛ビテ至リ↢他方ノ無量世界ニ↡、供↢養シタテマツリ百千倶胝ノ諸仏ヲ↡、於テ↢諸仏ノ所ニ↡各ノ以テ↢百千倶胝ノ樹ノ花ヲ↡持散シ供養シテ、還リ↢至リテ本処ニ↡、遊ブ↢天住等ニ↡。
舎利子、 かの仏土のなかにはかくのごときらの衆妙綺飾の功徳荘厳ありて、 はなはだ愛楽すべし。 このゆゑに名づけて極楽世界となす。
○舎利子、彼ノ仏土ノ中ニハ有リテ↢如キ↠是クノ等ノ衆妙綺飾ノ功徳荘厳↡、甚ダ可シ↢愛楽ス↡。是ノ故ニ名ケテ為ス↢極楽世界ト↡。
【9】 また舎利子、 極楽世界浄仏土の中には、 つねに種々奇妙の愛すべき雑色の衆鳥あり。 いはゆる鵝雁・鶖鷺・鴻鶴・孔雀・鸚鵡・*羯羅頻伽・*命命鳥らなり。 かくのごときの衆鳥、 昼夜六時に、 つねにともに集会して、 和雅の声を出す。 その類音に随ひて妙法を宣楊す。 いはゆる甚深の念住・正断・神足・根力・覚・道支等の無量の妙法なり。
○又舎利子、極楽世界浄仏土ノ中ニハ、常ニ有リ↢種種奇妙ノ可キ↠愛ス雑色ノ衆鳥↡。所謂ル鵝鴈・鶖鷺・鴻鶴・孔雀・鸚鵡・羯羅頻*伽・命命鳥等ナリ。如キノ↠是クノ衆鳥、昼夜六時ニ、恒ニ共ニ集会シテ、出ス↢和雅ノ声ヲ↡。随ヒテ↢其ノ類音ニ↡宣↢*楊ス妙法ヲ↡。所謂ル甚深ノ念住・正断・神足・根力・覚・道支等ノ無量ノ妙法ナリ。
かの土の衆生この声を聞きをはりて、 おのおの仏を念じ法を念じ僧を念じ、 無量の功徳を得てその身に薫修す。
○彼ノ土ノ衆生聞キ↢是ノ声ヲ↡已リテ、各ノ得テ↢念ジ↠仏ヲ念ジ↠法ヲ念ジ↠僧ヲ、無量ノ功徳ヲ↡熏↢修ス其ノ身ニ↡。
なんぢ舎利子、 意においていかん。 かの土の衆鳥は、 あにこれ*傍生悪趣の摂ならんや。 この見をなすことなかれ。 ゆゑはいかん。 かの仏の浄土には三悪道なし、 なほ三悪趣の名すらあることを聞かず、 いかにいはんや実の罪業所招の傍生の衆鳥あらんや。 まさに知るべし、 みなこれ無量寿仏の変化の所作なりと。 それをして無量の法音を宣暢して、 もろもろの有情の利益と安楽とをなさしむ。
○汝舎利子、於テ↠意ニ云何ン。彼ノ土ノ衆鳥ハ、豈ニ是傍生悪趣ノ摂ナラム耶。勿レ↠作スコト↢是ノ見ヲ↡。所以者何ン。彼ノ仏ノ浄土ニハ無シ↢三悪道↡、尚不↠聞カ↠有ルコトヲ↢三悪趣ノ名スラ↡、何ニ況ヤ有ラムヤ↢実ノ罪業所招ノ傍生ノ衆鳥↡。当ニシ↠知ル、皆是無量寿仏ノ変化ノ所作ナリト。令ム↧其ヲシテ宣↢暢シテ無量ノ法音ヲ↡、作サ↦諸ノ有情ノ利益ト安楽トヲ↥。
舎利子、 かの仏土のなかにはかくのごときらの衆妙綺飾の功徳荘厳ありて、 はなはだ愛楽すべし。 このゆゑに名づけて極楽世界となす。
●舎利子、彼ノ仏0389土ノ中ニハ有リテ↢如キ↠是クノ等ノ衆妙綺飾ノ功徳荘厳↡、甚ダ可シ↢愛楽ス↡。是ノ故ニ名ケテ為ス↢極楽世界ト↡。
【10】また舎利子、 極楽世界浄仏土のなかには、 つねに妙風ありてもろもろの宝樹および宝羅網を吹くに微妙の音を出すこと、 たとへば百千倶胝の天楽の同時にともになして微妙の声を出すがごとし、 はなはだ愛玩すべし。 かくのごとくかの土にはつねに妙風ありてもろもろの宝樹および宝羅網を吹き、 種々微妙の音声を撃ち出して種々の法を説く。
○又舍利子、極楽世界浄仏土ノ中ニハ、常ニ有リテ↢妙風↡吹クニ↢諸ノ宝樹及ビ宝羅網ヲ↡出スコト↢微妙ノ音ヲ↡、譬ヘバ如シ↣百千倶胝ノ天楽ノ同時ニ倶ニ作シテ出スガ↢微妙ノ声ヲ↡、甚ダ可シ↢愛玩ス↡。如ク↠是クノ彼ノ土ニハ常ニ有リテ↢妙風↡吹キ↢衆ノ宝樹及ビ宝羅網ヲ↡、撃チ↢出シテ種種微妙ノ音声ヲ↡説ク↢種種ノ法ヲ↡。
かの土の衆生この声を聞きをはりて、 仏法僧の念・作意等の無量の功徳を起す。
○彼ノ土ノ衆生聞キ↢是ノ声ヲ↡已リテ、起ス↢仏法僧ノ念・作意等ノ無量ノ功徳ヲ↡。
舎利子、 かの仏土のなかにはかくのごときらの衆妙綺飾の功徳荘厳ありて、 はなはだ愛楽すべし。 このゆゑに名づけて極楽世界となす。
○舍利子、彼ノ仏土ノ中ニハ有リテ↢如キ↠是クノ等ノ衆妙綺飾ノ功徳荘厳↡、甚ダ可シ↢愛楽ス↡。是ノ故ニ名ケテ為ス↢極楽世界ト↡。
【11】また舎利子、 極楽世界浄仏土のなかには、 かくのごときらの無量無辺の不可思議にして、 はなはだ希有なる事あり。 ▼たとひ百千倶胝那庾多劫を経てその無量百千倶胝那庾多の舌をもつて、 一々の舌の上に無量の声を出して、 その功徳を讃ずるもまたよく尽くすことあたはず。 このゆゑに名づけて極楽世界となす。
●又舎利子、極楽世界浄仏土ノ中ニハ、有リ↢如キ↠是クノ等ノ無量无辺ノ不可思議ニシテ、甚ダ希有ナル事↡。仮使経テ↢於百千倶胝那庾多劫ヲ↡以テ↢其ノ無量百千倶胝那庾多ノ舌ヲ↡、一一ノ舌ノ上ニ出シテ↢無量ノ声ヲ↡、讃ズルモ↢其ノ功徳ヲ↡亦不↠能ハ↠尽スコト。是ノ故ニ名ケテ為ス↢極楽世界ト↡。
【12】また舎利子、 極楽世界浄仏土のなかの仏を、 なんの縁ありてか無量寿と名づくる。
○又舎利子、極楽世界浄仏土ノ中ノ仏ヲ、有リテカ↢何ノ縁↡名クル↢無量寿ト↡。
舎利子、 かの如来およびもろもろの有情も、 寿命無量無数大劫なるによる。 この縁によるがゆゑに、 かの土の如来を無量寿と名づけたてまつるなり。
○舎利子、由ル↢彼ノ如来及ビ諸ノ有情モ、寿命無量无数大劫ナルニ↡。由ルガ↢是ノ縁ニ↡故ニ、彼ノ土ノ如来ヲ名ケタテマツルナリ↢無量0390寿ト↡。
舎利子、 無量寿仏阿耨多羅三藐三菩提を証得したまひてよりこのかた▼十大劫を経たり。
○舎利子、无量寿仏証↢得シタマヒテヨリ阿耨多羅三藐三菩提ヲ↡已来タ▲経タリ↢十大劫ヲ↡。
舎利子、 なんに縁りてかかの仏を無量光と名づくる。
○舎利子、何ニ縁リテカ彼ノ仏ヲ名クル↢無量光ト↡。
舎利子、 かの如来つねに無量無辺の妙光を放ちて、 あまねく一切十方の仏土を照らし、 仏事を施作したまふに障礙あることなきによる。 この縁によるがゆゑに、 かの土の如来を無量光と名づけたてまつるなり。
○舎利子、由ル↧彼ノ如来恒ニ放チテ↢無量無辺ノ妙光ヲ↡、遍ク照シ↢一切十方ノ仏土ヲ↡、施↢作シタマフニ仏事ヲ↡無キニ↞有ルコト↢障↡。由ルガ↢是ノ縁ニ↡故ニ、彼ノ土ノ如来ヲ名ケタテマツルナリ↢無量光ト↡。
舎利子、 かの仏土のなかにはかくのごときらの衆妙綺飾の功徳荘厳ありて、 はなはだ愛楽すべし。 このゆゑに名づけて極楽世界となす。
●舎利子、彼ノ仏ノ浄土ニハ成↢就ス如キノ↠是クノ功徳荘厳ヲ↡。甚ダ可シ↢愛楽ス↡。是ノ故ニ名ケテ為ス↢極楽世界ト↡。
【13】また舎利子、 極楽世界浄仏土のなかの無量寿仏には、 つねに無量の声聞の弟子あり。 一切みなこれ大阿羅漢なり。 種々微妙の功徳を具足せり。 その量無辺にして称げて数ふべからず。
○又舎利子、極楽世界浄仏土ノ中ノ無量寿仏ニハ、常ニ有リ↢無量ノ声聞ノ弟子↡。一切皆是大阿羅漢ナリ。具↢足セリ種種微妙ノ功徳ヲ↡。其ノ量無辺ニシテ不↠可カラ↢称ゲテ数フ↡。
舎利子、 かの仏土のなかにはかくのごときらの衆妙綺飾の功徳荘厳ありて、 はなはだ愛楽すべし。 このゆゑに名づけて極楽世界となす。
●舎利子、彼ノ仏ノ浄土ニハ成↢就ス如キノ↠是クノ功徳荘厳ヲ↡。甚ダ可シ↢愛楽ス↡。是ノ故ニ名ケテ為ス↢極楽世界ト↡。
【14】また舎利子、 極楽世界浄仏土のなかの無量寿仏には、 つねに無量の菩薩の弟子あり。 一切みなこれ一生所繋にして、 種々微妙の功徳を具足せり。 その量無辺にして称げて数ふべからず。 たとひ無数量の劫を経てその功徳を讃めんに、 つひに尽くすことあたはず。
○又舎利子、極楽世界浄仏土ノ中ノ無量寿仏ニハ、常ニ有リ↢無量ノ菩薩ノ弟子↡。一切皆是一生所繋ニシテ、具↢足セリ種種微妙ノ功徳ヲ↡。其ノ量無辺ニシテ不↠可カラ↢称ゲテ数フ↡。仮使経テ↢於無数量ノ劫ヲ↡讃メムニ↢其ノ功徳ヲ↡、終ニ不↠能ハ↠尽スコト。
舎利子、 かの仏土のなかにはかくのごときらの衆妙綺飾の功徳荘厳ありて、 はなはだ愛楽すべし。 このゆゑに名づけて極楽世界となす。
○舎利子、彼ノ仏土ノ中ニハ成↢就ス如キノ↠是クノ功徳荘厳ヲ↡。甚ダ可シ↢愛楽ス↡。是ノ故ニ名ケテ為ス↢極楽世界ト↡。
【15】また舎利子、 もしもろもろの有情かの土に生ぜば、 みな不退転にしてかならずまたもろもろの険悪趣・辺地・下賎・*蔑戻車のなかに堕せず。 つねに諸仏の清浄国土に遊びて、 殊勝の行願念々に増進し、 決定してまさに阿耨多羅三藐三菩提を証すべし。
○又舎利子、若シ諸ノ有情生ゼバ↢彼ノ土ニ↡者、皆不退転ニシテ必ズ不↣復堕セ↢諸ノ険悪趣・辺地・下賎・蔑戻車ノ中ニ↡。常ニ遊ビテ↢諸仏ノ清浄国土ニ↡、殊勝ノ行願念念ニ増進シ、決定シテ当0391ニシ↠証ス↢阿耨多羅三藐三菩提ヲ↡。
舎利子、 かの仏土のなかにはかくのごときらの衆妙綺飾の功徳荘厳ありて、 はなはだ愛楽すべし。 このゆゑに名づけて極楽世界となす。
●舎利子、彼ノ仏土ノ中ニハ成↢就ス如キノ↠是クノ功徳荘厳ヲ↡。甚ダ可シ↢愛楽ス↡。是ノ故ニ名ケテ為ス↢極楽世界ト↡。
【16】また舎利子、 もしもろもろの有情かの西方無量寿仏の清浄仏土の無量の功徳衆に荘厳せらるるを聞かば、 みなかの仏土に生ぜんと発願すべし。
○又舎利子、若シ諸ノ有情聞カバ↢彼ノ西方無量寿仏ノ清浄仏土ノ無量ノ功徳衆ニ所ルルヲ↢荘厳セ↡、皆応シ↤発↣願ス生ゼムト↢彼ノ仏土ニ↡。
ゆゑはいかん。 もしかの土に生ぜば、 かくのごときの無量の功徳衆に荘厳せらるるもろもろの大士らと同一に集会することを得。
○所以者何ン。若シ生ゼバ↢彼ノ土ニ↡、得↩与↧如キノ↠是クノ無量ノ功徳衆ニ所ルル↢荘厳セ↡諸ノ大士等↥同一ニ集会スルコトヲ↨。
かくのごときの無量の功徳衆に荘厳せらるる清浄仏土の大乗の法楽を受用して、 つねに退転することなく、 無量の行願、 念々に増進して、 すみやかに無上正等菩提を証するがゆゑなり。 舎利子、 かの仏土に生ずるもろもろの有情の類は、 無量無辺の功徳を成就す。
●受↧用シテ如キノ↠是クノ無量ノ功徳衆ニ所ルル↢荘厳セ↡清浄仏土ノ大乗ノ法楽ヲ↥、常ニ無ク↢退転スルコト↡、無量ノ行願、念念ニ増進シテ、速ニ証スルガ↢無上正等菩提ヲ↡故ナリ。舎利子、▲生ズル↢彼ノ仏土ニ↡諸ノ有情ノ類ハ、成↢就ス無量无辺ノ功徳ヲ↡。
少善根のもろもろの有情の類、 まさに無量寿仏の極楽世界清浄仏土に往生することを得べきにあらざるなり。
○非ザルナリ↢少善根ノ諸ノ有情ノ類、当ニキニ↟得↣往↢生スルコトヲ無量寿仏ノ極楽世界清浄仏土ニ↡。
【17】また舎利子、 もし浄信のもろもろの善男子あるいは善女人ありて、 かくのごときの無量寿仏の無量無辺不可思議の功徳の名号、 極楽世界の功徳荘厳を聞くことを得、 聞きをはりて思惟すること、 もしは一日夜、 あるいは二、 あるいは三、 あるいは四、 あるいは五、 あるいは六、 あるいは七、 念を繋けて乱れざれば、
○又舎利子、若シ有リテ↢浄信ノ諸ノ善男子或イハ善女人↡、得↠聞クコトヲ↢如キノ↠是クノ無量寿仏ノ无量無辺不可思議ノ功徳ノ名号、極楽世界ノ功徳荘厳ヲ↡、聞キ已リテ思惟スルコト△、若ハ一日夜、或イハ二、或イハ三、或イハ四、或イハ五、或イハ六、或イハ七、繋ケテ↠念ヲ不レバ↠乱レ、
この善男子あるいは善女人▼命終の時に臨みて、 無量寿仏その無量の声聞の弟子・菩薩衆と倶に、 前後に囲繞せられ、 その前に来住して、 ▼慈悲加祐し、 心をして乱れざらしむ。 すでに捨命しをはりて、 仏の衆会に随ひて、 無量寿の極楽世界清浄仏土に生ずべし。
○是ノ善男子或イハ善女人▲臨ミテ↢命終ノ時ニ↡、無量寿仏与↢其ノ無量ノ声聞ノ弟子・菩薩衆↡倶ニ、前後ニ囲繞セラレ、来↢住シテ其ノ前ニ↡、慈悲加祐シ、令ム↢心ヲシテ不ラ↟乱レ。既ニ捨命シ已リテ、随ミテ↢仏ノ衆会ニ↡、生ズベシ↢無量寿ノ極楽世界清浄仏土ニ↡。
【19】また舎利子、 われかくのごときの利益と安楽との大事因縁を観て、 誠諦の語を説く。 もし浄信のもろもろの善男子あるいは善女人ありて、 かくのごときの無量寿仏の不可思議功徳の名号、 極楽世界の浄仏土を聞くことを得れば、 一切みな信受して願を発し説のごとく修行してかの仏土に生ずべし。
○又0392舎利子、我観テ↢如キノ↠是クノ利益ト安楽トノ大事因縁ヲ↡、説ク↢誠諦ノ語ヲ↡。若シ有リテ↢浄信ノ諸ノ善男子或イハ善女人↡、得レバ↠聞クコトヲ↢如キノ↠是クノ無量寿仏ノ不可思議功徳ノ名号、極楽世界ノ浄仏土ヲ↡者、一切皆応シ↣信受シテ発シ↠願ヲ如ク↠説ノ修行シテ生ズ↢彼ノ仏土ニ↡。
【20】また舎利子、 われいま無量寿仏の無量無辺不可思議なる仏土の功徳を称楊し讃歎するがごとく、
○又舎利子、如ク↤我今者称↢*楊シ讃↣歎スルガ无量寿仏ノ無量無辺不可思議ナル仏土ノ功徳ヲ↡、
かくのごとく東方にもまた現在して不動如来・山幢如来・大山如来・山光如来・妙幢如来まします。 かくのごときらの仏、 殑伽沙のごとく東方自仏の浄土に住在して、 各々広長の舌相を示現し、 あまねく三千大千世界世界を覆ひ、 周帀し囲繞せられ、 誠諦の言を説きたまふ。 なんぢら有情、 みなかくのごときの不可思議なる仏土の功徳を称讃したまふ一切諸仏の摂受せらるる法門を信受すべしと。
○如ク↠是クノ東方ニモ亦有ス↢現在シテ不動如来・山幢如来・大山如来・山光如来・妙幢如来↡。如キ↠是クノ等ノ仏如ク↢殑伽沙ノ↡住↢在シテ東方自仏ノ浄土ニ↡、各各ニ示↢*現シ広長ノ舌相ヲ↡、遍ク覆ヒ↢三千大千世界ヲ↡、周帀シ囲繞セラレ、説キタマフ↢誠諦ノ言ヲ↡。汝等有情、皆応シト↧信↦受ス如キノ↠是クノ称↢讃シタマフ不可思議ナル仏土ノ功徳ヲ↡一切諸仏ノ摂受セラルル法門ヲ↥。
【21】また舎利子、 かくのごとく南方にもまた現在して日月光如来・名称光如来・大光蘊如来・迷盧光如来・無辺精進如来まします。 かくのごときらの仏、 殑伽沙のごとく南方自仏の浄土に住在して、 各々広長の舌相を示現し、 あまねく三千大千世界を覆ひ、 周帀し囲繞せられ、 誠諦の言を説きたまふ。 なんぢら有情、 みなかくのごときの不可思議なる仏土の功徳を称讃したまふ一切諸仏の摂受せらるる法門を信受すべしと。
○又舎利子、如ク↠是クノ南方ニモ亦有ス↢現在シテ日月光如来・名称光如来・大光蘊如来・迷盧光如来・無辺精進如来↡。如キ↠是クノ等ノ仏如ク↢殑伽沙ノ↡住↢在シテ南方自仏ノ浄土ニ↡、各各ニ示↢現シ広長ノ舌相ヲ↡、遍ク覆ヒ↢三千大千世界ヲ↡、周帀シ囲繞セラレ、説キタマフ↢誠諦ノ言ヲ↡。汝等有情、皆応シト↧信↦受ス如キノ↠是クノ称↢讃シタマフ不可思議ナル仏土ノ功徳ヲ↡一切諸仏ノ摂受セラルル法門ヲ↥。
【22】また舎利子、 かくのごとく西方にもまた現在して無量寿如来・無量蘊如来・無量光如来・無量幢如来・大自在如来・大光如来・光焔如来・大宝幢如来・放光如来まします。 かくのごときらの仏、 殑伽沙のごとく西方自仏の浄土に住在して、 各々広長の舌相を示現し、 あまねく三千大千世界を覆ひ、 周帀し囲繞せられ、 誠諦の言を説きたまふ。 なんぢら有情、 みなかくのごときの不可思議なる仏土の功徳を称讃したまふ一切諸仏の摂受せらるる法門を信受すべしと。
○又舎利子、如ク↠是クノ西方ニモ*亦有ス↢現在シテ無量寿如来・無量蘊如来・無量光如0393来・无量幢如来・大自在如来・大光如来・光焔如来・大宝幢如来・放光如来↡。如キ↠是クノ等ノ仏如ク↢殑伽沙ノ↡住↢在シテ西方自仏ノ浄土ニ↡、各各ニ示↢現シ広長ノ舌相ヲ↡、遍ク覆ヒ↢三千大千世界ヲ↡、周帀シ囲繞セラレ、説キタマフ↢誠諦ノ言ヲ↡。汝等有情、皆応シト↧信↦受ス如キノ↠是クノ称↢讃シタマフ不可思議ナル仏土ノ功徳ヲ↡一切諸仏ノ摂受セラルル法門ヲ↥。
【23】また舎利子、 かくのごとく北方にもまた現在して無量光厳通達覚慧如来・無量天鼓震大妙音如来・大蘊如来・光網如来・娑羅帝王如来まします。 かくのごときらの仏、 殑伽沙のごとく北方自仏の浄土に住在して、 各々広長の舌相を示現し、 あまねく三千大千世界を覆ひ、 周帀し囲繞せられ、 誠諦の言を説きたまふ。 なんぢら有情、 みなかくのごときの不可思議なる仏土の功徳を称讃したまふ一切諸仏の摂受せらるる法門を信受すべしと。
○又舎利子、如ク↠是クノ北方ニモ亦有ス↢現在シテ无量光厳通達覚慧如来・無量天鼓*震大妙音如来・大蘊如来・光網如来・娑羅帝王如来↡。如キ↠是クノ等ノ仏如ク↢殑伽沙ノ↡住↢在シテ北方自仏ノ浄土ニ↡、各各ニ示↢現シ広長ノ舌相ヲ↡、遍ク覆ヒ↢三千大千世界ヲ↡、周帀シ囲繞セラレ、説キタマフ↢誠諦ノ言ヲ↡。汝等有情、皆応シト↧信↦受ス如キノ↠是クノ称↢讃シタマフ不可思議ナル仏土ノ功徳ヲ↡一切諸仏ノ摂受セラルル法門ヲ↥。
【24】また舎利子、 かくのごとく下方にもまた現在して示現一切妙法正理常放火王勝徳光明如来・師子如来・名称如来・誉光如来・正法如来・妙法如来・法幢如来・功徳友如来・功徳号如来まします。 かくのごときらの仏、 殑伽沙のごとく下方自仏の浄土に住在して、 各々広長の舌相を示現し、 あまねく三千大千世界を覆ひ、 周帀し囲繞せられ、 誠諦の言を説きたまふ。 なんぢら有情、 みなかくのごときの不可思議なる仏土の功徳を称讃したまふ一切諸仏の摂受せらるる法門を信受すべしと。
○又舎利子、如ク↠是クノ下方ニモ亦有ス↢現在シテ示現一切妙法正理常放火王勝徳光明如来・師子如来・名称如来・誉光如来・正法如来・妙法如来・法幢如来・功徳友如来・功徳号如来↡。如キ↠是クノ等ノ仏如ク↢殑伽沙ノ↡住↢在シテ下方自仏ノ浄土ニ↡、各各ニ示↢現シ広長ノ舌相ヲ↡、遍ク覆ヒ↢三千大千世界ヲ↡、周帀シ囲繞セラレ、説キタマフ↢誠諦ノ言ヲ↡。汝等有情、皆応シト↧信↦受ス如キノ↠是クノ称↢讃シタマフ不可思議ナル仏土ノ功徳ヲ↡一切0394諸仏ノ摂受セラルル法門ヲ↥。
【25】また舎利子、 かくのごとく上方にもまた現在して梵音如来・宿王如来・香光如来・如紅蓮華勝徳如来・示現一切義利如来まします。 かくのごときらの仏、 殑伽沙のごとく上方自仏の浄土に住在して、 各々広長の舌相を示現し、 あまねく三千大千世界を覆ひ、 周帀し囲繞せられ、 誠諦の言を説きたまふ。 なんぢら有情、 みなかくのごときの不可思議なる仏土の功徳を称讃したまふ一切諸仏の摂受せらるる法門を信受すべしと。
○又舎利子、如ク↠是クノ上方ニモ亦有ス↢現在シテ梵音如来・宿王如来・香光如来・如紅蓮華勝徳如来・示現一切義利如来↡。如キ↠是クノ等ノ仏如ク↢殑伽沙ノ↡住↢在シテ上方自仏ノ浄土ニ↡、各各ニ示↢現シ広長ノ舌相ヲ↡、遍ク覆ヒ↢三千大千世界ヲ↡、周帀シ囲繞セラレ、説キタマフ↢誠諦ノ言ヲ↡。汝等有情、皆応シト↧信↦受ス如キノ↠是クノ称↢讃シタマフ不可思議ナル仏土ノ功徳ヲ↡一切諸仏ノ摂受セラルル法門ヲ↥。
【26】また舎利子、 かくのごとく東南方にもまた現在して最上広大雲雷音王如来まします。 かくのごときらの仏、 殑伽沙のごとく東南方自仏の浄土に住在して、 各々広長の舌相を示現し、 あまねく三千大千世界を覆ひ、 周帀し囲繞せられ、 誠諦の言を説きたまふ。 なんぢら有情、 みなかくのごときの不可思議なる仏土の功徳を称讃したまふ一切諸仏の摂受せらるる法門を信受すべしと。
●又舎利子、如ク↠是クノ東南方ニモ亦有ス↢現在シテ最上広大雲雷音王如来↡。如キ↠是クノ等ノ仏如↢殑伽沙↡住↢東南方自仏ノ浄土ニ↡、各各ニ示↢現シ広長ノ舌相ヲ↡、遍ク覆ヒ↢三千大千世界ヲ↡、周帀シ囲繞セラレ、説キタマフ↢誠諦ノ言ヲ↡。汝等有情、皆応シト↧信↦受ス如キノ↠是クノ称↢讃シタマフ不可思議ナル仏土ノ功徳ヲ↡一切諸仏ノ摂受セラルル法門ヲ↥。
【27】また舎利子、 かくのごとく西南方にもまた現在して最上日光名称功徳如来まします。 かくのごときらの仏、 殑伽沙のごとく西南方自仏の浄土に住在して、 各々広長の舌相を示現し、 あまねく三千大千世界を覆ひ、 周帀し囲繞せられ、 誠諦の言を説きたまふ。 なんぢら有情、 みなかくのごときの不可思議なる仏土の功徳を称讃したまふ一切諸仏の摂受せらるる法門を信受すべしと。
●又舎利子、如ク↠是クノ西南方ニモ亦有ス↢現在シテ最上日光名称功徳如来↡。如キ↠是クノ等ノ仏如↢殑伽沙↡住↢西南方自仏ノ浄土ニ↡、各各ニ示↢現シ広長ノ舌相ヲ↡、遍ク覆ヒ↢三千大千世界ヲ↡、周帀シ囲繞セラレ、説キタマフ↢誠諦ノ言ヲ↡。汝等有情、皆応シト↧信↦受ス如キノ↠是クノ称↢讃シタマフ不可思議ナル仏土ノ功徳ヲ↡一切諸仏ノ摂受セラルル法門ヲ↥。
【28】また舎利子、 かくのごとく西北方にもまた現在して無量功徳火王光明如来まします。 かくのごときらの仏、 殑伽沙のごとく西北方自仏の浄土に住在して、 各々広長の舌相を示現し、 あまねく三千大千世界を覆ひ、 周帀し囲繞せられ、 誠諦の言を説きたまふ。 なんぢら有情、 みなかくのごときの不可思議なる仏土の功徳を称讃したまふ一切諸仏の摂受せらるる法門を信受すべしと。
●又0395舎利子、如是西北方ニモ亦有ス↢現在シテ無量功徳火王光明如来↡。如キ↠是クノ等ノ仏如↢殑伽沙↡住↢西北方自仏ノ浄土ニ↡、各各ニ示↢現シ広長ノ舌相ヲ↡、遍ク覆ヒ↢三千大千世界ヲ↡、周帀シ囲繞セラレ、説キタマフ↢誠諦ノ言ヲ↡。汝等有情、皆応シト↧信↦受ス如キノ↠是クノ称↢讃シタマフ不可思議ナル仏土ノ功徳ヲ↡一切諸仏ノ摂受セラルル法門ヲ↥。
【29】また舎利子、 かくのごとく東北方にもまた現在して無数百千倶胝広慧如来まします。 かくのごときらの仏、 殑伽沙のごとく東北方自仏の浄土に住在して、 各々広長の舌相を示現し、 あまねく三千大千世界を覆ひ、 周帀し囲繞せられ、 誠諦の言を説きたまふ。 なんぢら有情、 みなかくのごときの不可思議なる仏土の功徳を称讃したまふ一切諸仏の摂受せらるる法門を信受すべしと。
●又舎利子、如↠是東北方ニモ亦有ス↢現在シテ無数百千倶胝広慧如来↡。如キ↠是クノ等ノ仏如↢殑伽沙↡住↢東北方自仏ノ浄土ニ↡、各各ニ示↢現シ広長ノ舌相ヲ↡、遍ク覆ヒ↢三千大千世界ヲ↡、周帀シ囲繞セラレ、説キタマフ↢誠諦ノ言ヲ↡。汝等有情、皆応シト↧信↦受ス如キノ↠是クノ称↢讃シタマフ不可思議ナル仏土ノ功徳ヲ↡一切諸仏ノ摂受セラルル法門ヲ↥。
【30】また舎利子、 なにによりてこの経を名づけて不可思議なる仏土の功徳を称讃したまふ一切諸仏の摂受せらるる法門となすや。
○又舎利子、何ニ縁リテ此ノ経ヲ名ケテ為スヤ↧称↢讃シタマフ不可思議ナル仏土ノ功徳ヲ↡一切諸仏ノ摂受セラルル法門ト↥。
舎利子、 この経のなかに無量寿仏の極楽世界の不可思議なる仏土の功徳を称楊し讃歎し、 および▼十方面の諸仏世尊、 方便をもつてもろもろの有情を利益し安楽ならしめんと欲するがためのゆゑに、 おのおの本土に住し、 大神変を現じ、 誠諦の言を説きて、 もろもろの有情にこの法を信受せんことを勧めたまふによる。
○舎利子、由ル↫此ノ経ノ中ニ称↢*楊シ讃↣歎シ無量寿仏ノ極楽世界ノ不可思議ナル仏土ノ功徳ヲ↡、及ビ十方面ノ諸仏世尊、為ノ↠欲スルガ↤方便ヲモテ利↢益シ安↣楽ナラシメムト諸ノ有情ヲ↡故ニ、各ノ住シ↢本土ニ↡、現ジ↢大神変ヲ↡、説キテ↢誠諦ノ言ヲ↡、勧メタマフニ↪諸ノ有情ニ信↩受セムコトヲ此ノ法ヲ↨。
このゆゑにこの経を名づけて不可思議なる仏土の功徳を称讃したまふ一切諸仏の摂受せらるる法門となす。
○是ノ故ニ此ノ経ヲ名ケテ為ス↧称↢讃シタマフ不可思議ナル仏土ノ功徳ヲ↡一切諸仏ノ摂受セラルル法門ト↥。△
【31】また舎利子、 もし善男子あるいは善女人、 あるいはすでに聞くことを得、 あるいはまさに聞くことを得、 あるいはいま聞くことを得ん。 この経を聞きをはりて深く信解を生じ、 信解を生じをはりて、 かならずかくのごとき十方面に住したまへる十殑伽沙の諸仏世尊の摂受したまふところとなる。 説のごとく行ぜん者は、 一切さだめて阿耨多羅三藐三菩提より退転せざることを得、 一切さだめて無量寿仏の極楽世界清浄仏土に生ぜん。 このゆゑに舎利子、 なんぢら有情、 一切みなわれおよび十方の仏世尊の語を信受し領解すべし。 まさにつとめて精進し、 説のごとく修行して、 疑慮を生ずることなかるべし。
●又舎利子、若シ善男子或イハ善女人、或イハ已ニ得↠聞クコトヲ、或イハ当ニ得↠聞クコトヲ、或イハ今得ム↠聞クコトヲ。聞0396キ↢是ノ経ヲ↡已リテ深ク生ジ↢信解ヲ↡、生ジ↢信解ヲ↡已リテ、必ズ為ル↧如キ↠是クノ住シタマヘル↢十方面ニ↡十殑伽沙ノ諸仏世尊之所ト↦摂受シタマフ↥。如ク↠説ノ行ゼム者ハ、一切定メテ於リ↢阿耨多羅三藐三菩提↡得↣不ルコトヲ↢退転セ↡、一切定メテ生ゼム↢無量寿仏ノ極楽世界清浄仏土ニ↡。是ノ故ニ舎利子、汝等有情、一切皆応シ↤信↢受シ領↣解ス我及ビ十方ノ仏世尊ノ語ヲ↡。当ニシ↧勤メテ精進シ、如ク↠説ノ修行シテ、勿ル↞生ズルコト↢疑慮ヲ↡。
【32】また舎利子、 ▼もし善男子あるいは善女人無量寿の極楽世界清浄仏土の功徳荘厳において、 もしはすでに発願し、 もしはまさに発願し、 もしはいま発願せんに、 かならずかくのごとき▼十方面に住したまへる十殑伽沙の諸仏世尊の摂受したまふところとなる。 説のごとく行ぜん者は、 一切さだめて阿耨多羅三藐三菩提より退転せざることを得、 一切さだめて無量寿仏の極楽世界清浄仏土に生ぜん。
○又舎利子、若シ善男子或イハ善女人▲於テ↢無量寿ノ極楽世界清浄仏土ノ功徳荘厳ニ↡、若シハ已ニ発願シ、若シハ当ニ発願シ、若シハ今発願セムニ、必ズ為ル↧如キ↠是クノ住シタマヘル↢十方面ニ↡十殑伽沙ノ諸仏世尊之所ト↦摂受シタマフ↥。如ク↠説ノ行ゼム者ハ、一切定メテ於リ↢阿耨多羅三藐三菩提↡得↠不ルコトヲ↢退転セ↡、一切定メテ生ゼム↢無量寿仏ノ極楽世界清浄仏土ニ↡。
このゆゑに舎利子、 もし浄信のもろもろの善男子あるいは善女人あらば、 一切みな無量寿の極楽世界清浄仏土において、 深く心に信解し、 発願して往生し、 放逸を行ずることなかるべし。
○是ノ故ニ舎利子、若シ有ラバ↢浄信ノ諸ノ善男子或イハ善女人↡、一切皆応シ↧於テ↢無量寿ノ極楽世界清浄仏土ニ↡、深ク心ニ信解シ、発願シテ往生シ、勿ル↞行ズルコト↢放逸ヲ↡。△
【33】また舎利子、 われいま無量寿仏の極楽世界の不可思議なる仏土功徳を称楊し讃歎するがごとく、
○又舎利子、如ク↤我今者称↢*揚シ讃↣歎スルガ無量寿仏ノ極楽世界ノ不可思議ナル仏土ノ功徳ヲ↡、
かの十方面の諸仏世尊もまたわが不可思議無辺の功徳を称讃して、 みなこの言をなしたまふ。 はなはだ奇しく希有なり。 釈迦寂静・釈迦法王、 如来・応・正等覚・明行・円満・善逝・世間解・無上・丈夫調御士・天人師・仏・世尊、 すなはちよくこの堪忍世界において五濁悪時のいはゆる劫濁・もろもろの有情濁・もろもろの煩悩濁・見濁・命濁のなかにおいて、 阿耨多羅三藐三菩提を証得し、 方便をもつてもろもろの有情を利益し安楽ならしめんと欲するがためのゆゑに、 この世間極難信の法を説きたまふと。
○彼ノ十方面ノ諸仏世尊モ亦称↢讃シテ我ガ不可思議無辺ノ功徳ヲ↡、皆作シタマフ↢是ノ言ヲ↡。甚ダ奇シク希有ナリ。釈迦寂静・釈迦法王、如来・応・正等覚・明行円満・善逝0397・世間解・無上・丈夫調御士・天人師・仏・世尊、乃チ能ク於テ↢是ノ堪忍世界ニ↡五濁悪時ノ所謂ル劫濁・諸ノ有情濁・諸ノ煩悩濁・見濁・命濁ノ於テ↠中ニ、証↢得シ阿耨多羅三藐三菩提ヲ↡、為ノ↠欲スルガ↤方便ヲモテ利↢益シ安↣楽ナラシメムト諸ノ有情ヲ↡故ニ、説キタマフト↢是ノ世間極難信ノ法ヲ↡。
このゆゑに舎利子、 まさに知るべし、 われいまこの雑染の堪忍世界の五濁悪時において、 阿耨多羅三藐三菩提を証得し、 方便をもつてもろもろの有情を利益し安楽ならしめんと欲するがためのゆゑに、この世間極難信の法を説くこと、 はなはだ希有不可思議なりとなすと。
○是ノ故ニ舎利子、当ニシ↠知ル、我今於テ↢此ノ雑染ノ堪忍世界ノ五濁悪時ニ↡、証↢得シ阿耨多羅三藐三菩提ヲ↡、為ノ↠欲スルガ↤方便ヲモテ利↢益シ安↣楽ナラシメムト諸ノ有情ヲ↡故ニ、説クコト↢是ノ世間極難信ノ法ヲ↡、甚ダ為スト↢希有不可思議ナリト↡。
また舎利子、 ▼この雑染の堪忍世界の五濁悪時において、 もし浄信のもろもろの善男子あるいは善女人ありて、 かくのごときの▼一切世間▼極難信の法を説きたまふを聞きて、 よく信解を生じ、 受持し演説して、 教のごとく修行せば、 まさに知るべし、 この人ははなはだ希有なりとなす。 無量の仏の所にして、 かつて善根を種う。 この人命終し、 さだめて西方極楽世界に生じ、 種々の功徳をもつて荘厳せらるる清浄仏土の大乗の法楽を受用し、 日夜六時に、 無量寿仏に親近し供養して、 十方に遊歴し諸仏を供養して、 諸仏の所において法を聞き受記せらる。 福・慧の資糧、 疾く円満することを得て、 すみやかに無上正等菩提を証せんと。
●又舎利子、於テ↢此ノ雑染ノ堪忍*世界ノ五濁悪時ニ↡、若シ有リテ↢浄信ノ諸ノ善男子或イハ善女人↡、聞キテ↠説キタマフヲ↢如キノ↠是クノ一切世間極難信ノ法ヲ↡、能ク生ジ↢信解ヲ↡、受持シ演説シテ、如ク↠教ノ修行セバ、当ニシ↠知ル、是ノ人ハ甚ダ為ス↢希有ナリト↡。無量ノ仏ノ所ニシテ、曽テ種ウ↢善根ヲ↡。是ノ人命終シ、定メテ生ジ↢西方極楽世界ニ↡、受↢用シ種種ノ功徳ヲモテ荘厳セラルル清浄仏土ノ大乗ノ法楽ヲ↡、日夜六時ニ、親↢近シ供↣養シテ無量寿仏ニ↡、遊↢歴シ十方ニ↡供↢養シテ諸仏ヲ↡、於テ↢諸仏ノ所ニ↡聞キ↠法ヲ受記セラル。福・慧ノ資糧、疾ク得テ↢円満スルコトヲ↡、速ニ証セムト↢無上正等菩提ヲ↡。△
時に薄伽梵この経を説きをはりたまふに、 尊者舎利子等のもろもろの大声聞およびもろもろの菩薩摩訶薩衆、 無量の天・人・阿素洛等一切の大衆、 仏の所説を聞きて、 みなおほきに歓喜し、 信受して奉行したてまつりき。
○時ニ薄伽梵説キ↢是ノ経ヲ↡已リタマフニ、尊者舎利子*等ノ諸ノ大声聞及ビ諸ノ菩薩摩訶薩衆、無量ノ天・人・阿素洛等一切ノ大衆、聞キテ↢仏ノ所説ヲ↡、皆大ニ歓喜シ、信受シテ奉行シタテマツリキ。
*称0398讃浄土仏摂受経
延書は底本の訓点に従って有国が行った(固有名詞の訓は保証できない)。
底本は◎高麗版(再雕本)¬大蔵経¼所収本、 Ⓐ高麗版(初雕本)¬大蔵経¼所収本、 Ⓑ金版¬大蔵経¼所収本、 Ⓒ宋版(思溪版)¬大蔵経¼所収本、 Ⓓ元版(善寧寺版)¬大蔵経¼所収本、 Ⓔ明版(万歴版)¬大蔵経¼所収本 と対校。
大 ⒸⒺになし
犍→ⒸⒹ揵
琉→ⒸⒹⒺ瑠
琉→Ⓔ瑠
伽→ⒸⒹⒺ迦
楊→ⒶⒷⒸⒹⒺ揚
現→Ⓔ視
亦 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
震→ⒸⒹⒺ振
揚→ⒶⒷⒸⒹⒺ揚[諸仏]→Ⓑ楊諸仏
世界→ⒶⒷⒸⒹⒺ界中
等 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
称讃 Ⓓになし