0223◎*仏説無量清浄平等覚経 巻第二
*後漢月支国三蔵支婁迦讖訳
【9】 ◎仏、 阿難に告げたまはく、 なんぢが言是なり。 帝王のごときは人中において好しく比びなしといへども、 まさに*遮迦越王の辺にありて住せしめば、 その面目・形貌はなはだ醜悪にして、 その状好しからざること、 たとへば乞人の帝王の辺にありて住するがごとくなるべきのみ。 帝王の面醜くして、 なほまた遮迦越王の面色の姝好なるにしかざること百千億万倍なり。
◎○仏告ゲタマハク↢阿難ニ↡、若ガ言是也。如キハ↢帝王ノ↡雖モ↧於テ↢人*中ニ↡好シク無シト↞比、当ニキ↪令バ↧在リテ↢遮迦越王ノ辺ニ↡住セ↥者、其ノ面目・形貌甚ダ醜悪ニシテ、其ノ状不ルコト↠好シカラ、比ヘバ*如クナル↩乞人ノ在リテ↢帝王ノ辺ニ↡住スルガ↨耳。帝王ノ面醜クシテ、尚復不ルコト↠如カ↢遮迦越王ノ面色ノ*姝好ナルニ↡百千億万倍也。
遮迦越王のごときは天下において絶えて好しきこと比びなきも、 まさに第二忉利天の帝釈の辺にありて住せしめば、 その面はなはだ醜くして好しからざること、 なほまた天帝釈の面貌端正にして姝好なるにしかざること百千億万倍なるべし。
○如キハ↢遮迦越王ノ↡於テ↢天下ニ↡絶エテ好シキコト無キモ↠比、当ニシ↩令メバ↧在リテ↢第二忉利天ノ帝釈ノ辺ニ↡住セ↥者、其ノ面甚ダ醜クシテ不ルコト↠好シカラ、尚復不ルコト↠如カ↢天帝釈ノ面貌端正ニシテ*姝好ナルニ↡百千億万倍ナル↨也。
天帝釈のごときも第六天王の辺にありて住せしめば、 その面貌はなはだ醜くして好しからざること、 なほまた第六天王の面貌端正にして姝好なるにしかざること百千億倍なり。
○如キモ↢天帝釈ノ↡令メバ↧在リテ↢第六天王ノ辺ニ↡住セ↥者、其ノ面貌甚ダ醜クシテ不ルコト↠好シカラ、尚復不ルコト↠如カ↢第六天王ノ面貌端正ニシテ*姝好ナルニ↡百千*億倍也。
第六天王のごときも無量清浄仏国中のもろもろの菩薩・阿羅漢の辺にありて住せしめば、 その面はなはだ醜くして、 なほまた無量清浄仏国中のもろもろの菩薩・阿羅漢の面貌端正にして姝好なるにしかざること百千億万倍なりと。
○如キモ↢第六天王ノ↡令メバ↧在リテ↢無量清浄仏国中ノ諸ノ菩薩・阿羅漢ノ辺ニ↡住セ↥者、其ノ面甚ダ醜クシテ、尚復不ルコト↠如カ↢無量清浄仏国中ノ諸ノ菩薩・阿羅漢ノ面貌端正ニシテ*姝好ナルニ↡百千億万倍也ト。
【10】仏のたまはく、 無量清浄仏のもろもろの菩薩・阿羅漢の面貌はことごとくみな端正にして絶えて好しきこと比びなし。 泥洹の道に次しと。
●仏言ク、无量清浄仏ノ諸ノ菩薩・阿羅漢ノ面貌ハ悉ク皆端正ニシテ絶テ好シキコト無シ↠比。○次シト↢於泥0224洹之道ニ↡也。
二 Ⅲ ⅶ 宝樹荘厳
仏、 阿難に告げたまはく、 無量清浄仏およびもろもろの菩薩・阿羅漢の講堂・精舎・所居の処の舎宅の中外の浴池の上にみな七宝樹あり。 なかに純銀の樹あり、 なかに純金の樹あり、 なかに純じゅん水すい精しょう樹じゅあり、 なかに純じゅん琉璃るりの樹きあり、 なかに純じゅん白びゃく玉ごくの樹きあり、 なかに純じゅん珊さん瑚ごの樹きあり、 なかに純じゅん虎こ珀はくの樹きあり、 なかに純じゅん車しゃこの樹きあり、 種々しゅじゅにおのおのおのづから異い行ごうするなり。
○仏告ゲタマハク↢阿難ニ↡、无量清浄仏及ビ諸ノ菩薩・阿羅漢ノ講堂・精舎・所居ノ処ノ舎宅ノ中外ノ浴池ノ上ニ皆有リ↢七宝樹↡。中ニ有リ↢純銀ノ樹↡、中ニ有リ↢純金ノ樹↡、中ニ有リ↢純水精ノ樹↡、中ニ有リ↢純琉璃ノ樹↡、中ニ有リ↢純白玉ノ樹↡、中ニ有リ↢純珊瑚ノ樹↡、中ニ有リ↢純虎珀ノ樹↡、中ニ有リ↢純*車樹↡、種種ニ各ノ自ラ異行スルナリ。
なかにまた両りょう宝ほうのともに一いち樹じゅとなるものあり。
○中ニ復有リ↧両宝ノ共ニ作ル↢一樹ト」↡者↥。
銀樹ごんじゅには銀ごん根こん・金こん茎きょう・銀ごん枝し・金こん葉よう・銀ごん華け・金こん実じつあり。 金こん樹じゅには金こん根こん・銀ごん茎きょう・金こん枝し・銀ごん葉よう・金こん華け・銀ごん実じつあり。 この両りょう宝ほう樹じゅうたたともにあひ成じょうじておのおのおのづから異い行ごうするなり。
○銀樹ニハ銀根・金茎・*銀枝・金葉・銀華・金実アリ。金樹ニ者金根・銀茎・金枝・銀葉・金華・銀実アリ。是ノ両宝樹転タ共ニ相成ジテ各ノ自ラ異行スルナリ。
なかにまた三宝さんぽうのともに一いち樹じゅとなるものあり。 銀ごん樹じゅには銀ごん根こん・金こん茎きょう・水すい精しょう枝し・銀ごん葉よう・金こん華け・水すい精しょう実じつあり。 金こん樹じゅには金こん根こん・銀ごん茎きょう・水すい精しょう枝し・金こん葉よう・銀ごん華け・水すい精しょう実じつあり。 水すい精しょう樹じゅには水すい精しょう根こん・銀ごん茎きょう・金こん枝し・水すい精しょう葉よう・銀ごん華け・金こん実じつあり。 この三宝さんぽう樹じゅうたたともにあひ成じょうじておのおのおのづから異い行ごうするなり。
●中ニ復有リ↧三宝共ニ作ル↢一樹ト↡者↥。銀樹ニハ銀根・金茎・水精枝・銀葉・金華・水精実アリ。金樹ニ者金根・銀茎・水精枝・金葉・銀華・水精実アリ。水精樹ニ者水精根・銀茎・金枝・水精葉・銀華・金実アリ。是ノ三宝樹転タ共ニ相成ジテ各ノ自ラ異行スルナリ。
なかにまた四し宝ほうのともに一いち樹じゅとなるものあり。 銀ごん樹じゅには銀ごん根こん・金こん茎きょう・水すい精しょう枝し・琉璃るり葉よう・銀ごん華け・金こん実じつあり。 金こん樹じゅには金こん根こん・銀ごん茎きょう・水すい精しょう枝し・琉璃るり葉よう・金こん華け・銀ごん実じつあり。 水すい精しょう樹じゅには水すい精しょう根こん・琉璃るり茎きょう・銀ごん枝し・金こん葉よう・水すい精しょう華け・琉璃るり実じつあり。 琉璃るり樹じゅには琉璃るり根こん・水すい精しょう茎きょう・金こん枝し・銀ごん葉よう・琉璃るり華け・水すい精しょう実じつあり。 この四し宝ほう樹じゅうたたともにあひ成じょうじておのおのおのづから異い行ごうするなり。
●中ニ復有リ↧四宝共ニ作ル↢一樹ト↡者↥。銀樹ニハ銀根・金茎・水精枝・琉璃葉・銀華・金実アリ。金樹ニ者金根・銀茎・水精枝・琉璃葉・金華・銀実アリ。水精樹ニ者水精根・琉璃茎・銀枝・金葉・水精華・琉璃実アリ。琉璃樹ニ者琉璃根・水精茎・金枝・銀葉・琉璃華・水精実アリ。是ノ四宝樹転タ共ニ相成ジテ各ノ自ラ異行スルナリ。
なかにまた五ご宝ほうのともに一いち樹じゅとなるものあり。 銀ごん樹じゅには銀ごん根こん・金こん茎きょう・水すい精しょう枝し・琉璃るり葉よう・珊さん瑚ご華け・金こん実じつあり。 金こん樹じゅには金こん根こん・銀ごん茎きょう・水すい精しょう枝し・琉璃るり葉よう・珊さん瑚ご華け・銀ごん実じつあり。 水すい精しょう樹じゅには水すい精しょう根こん・琉璃るり茎きょう・珊さん瑚ご枝し・銀ごん葉よう・金こん華け・琉璃るり実じつあり。 琉璃るり樹じゅには琉璃るり根こん・珊さん瑚ご茎きょう・水すい精しょう枝し・金こん葉よう・銀ごん華け・珊さん瑚ご実じつあり。 珊さん瑚ご樹じゅには珊さん瑚ご根こん・琉璃るり茎きょう・水すい精しょう枝し・金こん葉よう・銀ごん華け・琉璃るり実じつあり。 この五ご宝ほう樹じゅうたたともにあひ成じょうじておのおのおのづから異い行ごうするなり。
●中ニ復有リ↧五宝ノ共ニ作ル↢一樹ト↡者↥。銀樹ニハ銀根・金茎・水精枝・*琉璃葉0225・珊瑚華・金実アリ。金樹ニ者金根・銀茎・水精枝・琉璃葉・珊瑚華・銀実アリ。水精樹ニ者水精根・琉璃茎・珊瑚枝・銀葉・金華・琉璃実アリ。琉璃樹ニ者琉璃根・珊瑚茎・水精枝・金葉・銀華・珊瑚実アリ。珊瑚樹ニ者珊瑚根・琉璃茎・水精枝・金葉・銀華・琉璃実アリ。是ノ五宝樹転タ共ニ相成ジテ各ノ自ラ異行スルナリ。
なかにまた六宝ろっぽうのともに一いち樹じゅとなるものあり。 銀ごん樹じゅには銀ごん根こん・金こん茎きょう・水すい精しょう枝し・琉璃るり葉よう・珊さん瑚ご華け・虎こ珀はく実じつあり。 金こん樹じゅには金こん根こん・銀ごん茎きょう・水すい精しょう枝し・琉璃るり葉よう・虎こ珀はく華け・珊さん瑚ご実じつあり。 水すい精しょう樹じゅには水すい精しょう根こん・琉璃るり茎きょう・珊さん瑚ご枝し・銀ごん葉よう・虎こ珀はく華け・金こん実じつあり。 琉璃るり樹じゅには琉璃るり根こん・珊さん瑚ご茎きょう・虎こ珀はく枝し・水すい精しょう葉よう・金こん華け・銀ごん実じつあり。 珊さん瑚ご樹じゅには珊さん瑚ご根こん・虎こ珀はく茎きょう・銀ごん枝し・金こん葉よう・水すい精しょう華け・琉璃るり実じつあり。 虎こ珀はく樹じゅには虎こ珀はく根こん・珊さん瑚ご茎きょう・金こん枝し・銀ごん葉よう・琉璃るり華け・水すい精しょう実じつあり。 この六宝ろっぽう樹じゅうたたともにあひ成じょうじておのおのおのづから異い行ごうするなり。
●中ニ復有リ↧六宝ノ共ニ作ル↢一樹ト↡者↥。銀樹ニハ銀根・金茎・水精枝・琉璃葉・珊瑚華・虎珀実アリ。金樹ニ者金根・銀茎・水精枝・琉璃葉・虎珀華・珊瑚実アリ。水精樹ニ者水精根・琉璃茎・珊瑚枝・銀葉・虎珀華・金実アリ。琉璃樹ニ者琉璃根・珊瑚茎・虎珀枝・水精葉・金華・銀実アリ。珊瑚樹ニ者珊瑚根・虎珀茎・銀枝・金葉・水精華・琉璃実アリ。虎珀樹ニ者虎珀根・珊瑚茎・金枝・銀葉・琉璃華・水精実アリ。是ノ六宝樹転タ共ニ相成ジテ各ノ自ラ異行スルナリ。
なかにまた七宝しっぽうのともに一いち樹じゅとなるものあり。
●中ニ復有リ↧七宝ノ共ニ作ル↢一樹ト↡者↥。
銀ごん樹じゅには銀ごん根こん・金こん茎きょう・水すい精しょう節せつ・琉璃るり枝し・珊さん瑚ご葉よう・虎こ珀はく華け・車しゃこ実じつあり。
○銀樹ニハ銀根・金茎・水精節・琉璃枝・珊瑚葉・虎珀華・*車実アリ。
金こん樹じゅには金こん根こん・水すい精しょう茎きょう・琉璃るり節せつ・珊さん瑚ご枝し・虎こ珀はく葉よう・車しゃこ華け・銀ごん実じつあり。
○金樹ニ者金根・水精茎・琉璃節・珊瑚枝・虎珀葉・*車華・銀実アリ。
水すい精しょう樹じゅには水すい精しょう根こん・琉璃るり茎きょう・珊さん瑚ご節せつ・虎こ珀はく枝し・車しゃこ葉よう・白びゃく玉ごく華け・金こん実じつあり。
○水精樹ニ者水精根・琉璃茎・珊瑚節・虎珀枝・*車葉・白玉華・金実アリ。
琉璃るり樹じゅには琉璃るり根こん・珊さん瑚ご茎きょう・虎こ珀はく節せつ・白びゃく玉ごく枝し・車しゃこ葉よう・水すい精しょう華け・銀ごん実じつあり。
○琉璃樹ニ者琉璃根・珊瑚茎・虎珀節・白玉枝・*車葉・水精華・銀実アリ。
珊さん瑚ご樹じゅには珊さん瑚ご根こん・虎こ珀はく茎きょう・白びゃく玉ごく節せつ・銀ごん枝し・明みょう月がつ珠しゅ葉よう・金こん華け・水すい精しょう実じつあり。
○珊瑚樹ニ者珊瑚根・虎珀茎・白玉節・銀枝・明月珠葉・金華・水精実アリ。
虎こ珀はく樹じゅには虎こ珀はく根こん・白びゃく玉ごく茎きょう・珊さん瑚ご節せつ・琉璃るり枝し・車しゃこ葉よう・水すい精しょう華け・金こん実じつ。
○虎珀樹ニ者虎珀根・白玉0226茎・珊瑚節・琉璃枝・*車葉・水精華・金実アリ。
白びゃく玉ごく樹じゅには白びゃく玉ごく根こん・車しゃこ茎きょう・琉璃るり節せつ・珊さん瑚ご枝し・虎こ珀はく葉よう・金こん華け・摩尼まに珠しゅ実じつあり。
○白玉樹ニ者白玉根・*車茎・琉璃節・珊瑚枝・虎珀葉・金華・摩尼珠実アリ。
この七宝しっぽう樹じゅうたたともにあひ成じょうじて種々しゅじゅおのおのおのづから異い行ごうするなり。 行々ごうごうおのづからあひ値あひ、 茎々きょうきょうおのづからあひ准じゅんじ、 枝々ししおのづからあい値あひ、 葉々ようようおのづからあひ向むかひ、 華々けけおのづからあひ望のぞみ、 極きわめておのづから軟好なんこうにして、 実々じつじつおのづからあひ当あたれりと。
○是ノ七宝樹転タ共ニ相成ジテ種種各ノ自ラ異行スルナリ。行行自ラ相値ヒ、茎茎自ラ相准ジ、枝枝自ラ相値ヒ、葉葉自ラ相向ヒ、華華自ラ相望ミ、極テ自ラ軟好ニシテ、実*実自ラ相当レリト。
仏ぶつのたまはく、 無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつの講堂こうどう・精しょう舎じゃのなかの外げ内ないの七宝しっぽうの浴よく池ちの辺へん上じょうを繞めぐれるもろもろの七宝しっぽう樹じゅ、 およびもろもろの菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かんの七宝しっぽうの舎宅しゃたくの中ちゅう外げの七宝しっぽうの浴よく池ちの池ち辺へんを繞めぐれる七宝しっぽう樹じゅ、 数しゅ千せん百重ひゃくじゅうに行ならぶ。 みなおのおのかくのごとし。
●仏言ク、无量清浄仏ノ講堂・精舎ノ中ノ外内ノ七宝ノ浴池ノ繞レル↢辺上ヲ↡諸ノ七宝樹、及ビ諸ノ菩薩・阿羅漢ノ七宝ノ舎宅ノ中外ノ七宝ノ*浴池ノ繞レル↢池辺ヲ↡七宝樹、数千百重ニ行ナラブ。皆各各如シ↠是クノ。
行々ごうごうみづから五いつつの音おん声じょうをなす。 はなはだ好このましきこと比ならびなし。
○行行自ラ作ス↢五ノ音声ヲ↡。甚ダ好シキコト無シ↠比。
二 Ⅲ ⅷ 楽音荘厳
【11】仏ぶつ、 阿あ難なんに語かたりたまはく、 世せ間けんの帝王たいおうの万種まんじゅの伎ぎ楽がくの音おん声じょうのごときは、 遮しゃ迦か越王おつおうのもろもろの伎ぎ楽がくの一ひとつの音おん声じょうの好このましきにしかざること百ひゃく千億せんおく万倍まんばいなり。 遮しゃ迦か越王おつおうの万種まんじゅの伎ぎ楽がくの音おん声じょうのごときも、 なほまた第だい二に忉とう利り天てん上じょうのもろもろの伎ぎ楽がくの一ひとつの音おん声じょうの好このましきにしかざること百ひゃく千億せんおく万倍まんばいなり。 忉とう利り天てん上じょうの万種まんじゅの伎ぎ楽がくの声こえのごときも、 なほまた第六だいろく天てん上じょうのもろもろの伎ぎ楽がくの一ひとつの音おん声じょうの好このましきにしかざること百ひゃく千億せんおく万倍まんばいなり。 第六だいろく天てん上じょうの万種まんじゅの音おん楽がくの声こえのごときも、 なほまた無む量りょう清浄しょうじょう仏国ぶっこく中ちゅうの七宝しっぽう樹じゅの一ひとつの音おん声じょうの好このましきにしかざること百ひゃく千億せんおく万倍まんばいなり。
○仏語リタマハク↢阿難ニ↡、如キハ↢世間ノ帝王ノ万種ノ伎楽ノ音声ノ↡、不ルコト↠如カ↢遮迦越王ノ諸ノ伎楽ノ一ノ音声ノ好シキニ↡百千億万倍也。如キモ↢遮迦越王ノ万種ノ伎楽ノ音声ノ↡、尚復不ルコト↠如カ↢第二忉利天上ノ諸ノ伎楽ノ一ノ音声ノ好シキニ↡百千億万倍也。如キモ↢忉利天上ノ万種ノ伎楽之声ノ↡、尚復不ルコト↠如カ↢第六天上ノ諸ノ伎楽ノ一ノ音声ノ好シキニ↡百千*億万倍也。如キモ↢第六天上ノ万種ノ音楽之声ノ↡、尚復不ルコト↠如カ↢無量清浄仏国中ノ七宝樹ノ一ノ音声ノ好シキニ↡百千億万倍也。
無む量りょう清浄しょうじょう仏国ぶっこくにまた万種まんじゅ自じ然ねんの伎ぎ楽がくありて極きわまりなし。
○無量清浄仏国ニ亦有リテ↢万種自然之伎楽↡無シ↠極リ也。
無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつおよびもろもろの菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かん、 浴よくせんと欲ほっする時ときには、 すなはちおのおのみづからその七宝しっぽうの池いけのなかに入いりて浴よくす。 もろもろの菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かん、 意こころに水みずをして足あしを没ひたさしめんと欲ほっせば、 水みずすなはち足あしを没ひたす。 意こころに水みずをして膝ひざに至いたらしめんと欲ほっせば、 水みずすなはち膝ひざに至いたる。 意こころに水みずをして腰こしに至いたらしめんと欲ほっせば、 水みずすなはち腰こしに至いたる。 意こころに水みずをして腋わきに至いたらしめんと欲ほっせば、 水みずすなはち腋わきに至いたる。 意こころに水みずをして頚くびに至いたらしめんと欲ほっせば、 水みずすなはち頚くびに至いたる。 意こころに水みずをしてみづから身みの上うえに潅そそがしめんと欲ほっせば、 水みずすなはち身みの上うえに潅そそぐ。 意こころに水みずをしてうたたまたかえりて故もとのごとくならしめんと欲ほっせば、 水みずすなはちうたたかえりてまた故もとのごとし。 ほしいままに意こころの所欲しょよく好こう憙きに随したがふと。
○无量清浄仏及ビ諸ノ菩薩・阿羅漢、欲スル↠浴セムト時ニハ、便チ各ノ自ラ入リテ↢其ノ七宝ノ池0227ノ中ニ↡浴ス。諸ノ菩薩・阿羅漢、意ニ欲セバ↠令メムト↢水ヲシテ没サ↟足ヲ、水則チ没ス↠足ヲ。意ニ欲セバ↠令メムト↢水ヲシテ至ラ↟膝ニ、水則チ至ル↟膝ニ。意ニ欲セバ↠令メムト↢水ヲシテ至ラ↟腰ニ、水則チ至ル↠腰ニ。意ニ欲セバ↠令メムト↢水ヲシテ至ラ↟腋ニ、水則チ至ル↠腋ニ。意ニ欲セバ↠令メムト↢水ヲシテ至ラ↟頚ニ、水則チ至ル↠頚ニ。意ニ欲セバ↠令メムト↣水ヲシテ自ラ潅ガ↢身ノ上ニ↡、水則チ潅グ↢身ノ上ニ↡。意ニ欲セバ↠令メムト↢水ヲシテ転タ復還テ如クナラ↟故モトノ、水則チ転タ還テ復如シ↠故モトノ。恣若ホシイママニ随フト↢意ノ所欲好憙ニ↡。
仏ぶつのたまはく、 無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつおよびもろもろの菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かん、 みな浴よくしをはりて、 ことごとくみづから一いち蓮れん華げの上うえにおいて坐ざすればすなはち四し方ほうより自じ然ねんの乱風らんぷう起おこる。 その乱風らんぷうはまた世せ間けんの風かぜにあらず。 また天てん上じょうの風かぜにもあらず。 この乱風らんぷうは、 すべて八方はぽう上じょう下げの衆風しゅふうのなかの自じ然ねんなり、 すべてあひ合ごう会えしてともに化け生しょうするのみ。 その乱風らんぷうまた大寒だいかんならず、 また大温だいおんならず、 つねに和わ調じょう中適ちゅうちゃくなり。 その涼りょう好こうなること比ならびなし。 乱風らんぷうおもむろに起おこりて、 また遅おそからずまた疾とからず、 まさに中ちゅう宜ぎを得えたり。
○仏言ク、無量清浄仏及ビ諸ノ菩薩・阿羅漢、皆浴シ已リテ、悉ク自ラ於テ↢一蓮華ノ上ニ↡坐スレバ則チ四方ヨリ自然ノ乱風起ル。其ノ乱風者亦非ズ↢世間之風ニ↡也。亦復非ズ↢天上之風ニモ↡也。是ノ乱風者、都テ為リ↢八方上下ノ衆風ノ中之自然↡、都テ相合会シテ共ニ化生スル耳。其ノ乱風亦不↢大寒ナラ↡、亦不↢大温ナラ↡、常ニ和調中適ナリ。其ノ涼好ナルコト無シ↠比。乱風徐ニ起リテ、亦不↠遅カラ亦不↠疾カラ、適ニ得タリ↢中宜ヲ↡。
国こく中ちゅうの七宝しっぽう樹じゅを吹ふくに、 七宝しっぽう樹じゅみなまたおのづから五いつつの音おん声じょうをなす。
○吹ニ↢国中ノ七宝樹ヲ↡、七宝樹皆復自ラ作ス↢五ノ音声ヲ↡。
乱風らんぷう華はなを吹ふきてことごとくその国こく中ちゅうに覆ふ蓋がいす。 華はなみなおのづから無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつおよびもろもろの菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かんの上うえに散さんず。 華はなまさに地じに堕おつるに華はなみな厚あつさ四し寸すんなり。 極きわめておのづから軟好なんこうなること比ならびなし。
○乱風吹キテ↠華ヲ悉ク覆↢蓋ス其ノ国中ニ↡。華皆自ラ散ズ↢无量清浄仏及ビ諸ノ菩薩・阿羅漢ノ上ニ↡。華適ニ堕ツルニ↠*地ニ華皆厚サ四寸ナリ。極テ自ラ軟好ナルコト無シ↠比。
華はな小すこしく萎しぼめばすなはち自じ然ねんの乱風らんぷう吹ふきて、 萎しぼめる華はなことごとく自じ然ねんに去さる。 すなはちまた四し方ほうよりまた自じ然ねんの乱風らんぷう起おこりて七宝しっぽう樹じゅを吹ふけば、 七宝しっぽう樹じゅみなまたおのづから五いつつの音おん声じょうをなす。 乱風らんぷう華はなを吹ふきてことごとくまた自じ然ねんに無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつおよびもろもろの菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かんの上うえに散さんず。 華はな地じに堕おつればすなはち自じ然ねんの乱風らんぷうまた吹ふきて萎しぼめる華はなことごとく自じ然ねんに去さる。 すなはちまた四し方ほうより自じ然ねんの乱風らんぷう起おこりて七宝しっぽう樹じゅの華はなを吹ふきかくのごとくするもの四し反へんなり。
○華小シク萎メバ則チ自然ノ乱風吹キテ、萎メル華悉ク自然ニ去ル。則チ復四方ヨリ復自然ノ乱風起リテ吹ケバ↢七宝樹ヲ↡、七宝樹皆復自ラ作ス↢五ノ音声ヲ↡。乱風吹キテ↠華ヲ悉ク復自然ニ散ズ↢無量清浄仏及ビ諸ノ菩薩・阿羅漢ノ上ニ↡。華堕ツレバ↠地ニ則チ自然ノ乱風復吹キテ萎メル華悉ク自然ニ去ル。則チ復四方ヨリ自然ノ乱風起0228リテ吹キ↢七宝樹ノ華ヲ↡如クスル↠是クノ者四*反ナリ。
もろもろの菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かんのなかに、 ただ経きょうを聞きかんと欲ほっするものあり、 なかにただ音おん楽がくの声こえを聞きかんと欲ほっするものあり、 なかにただ華け香こうを聞かがんと欲ほっするものあり、 なかに経きょうを聞きくことを欲ほっせざるものあり、 なかに五ご音おんを聞きくことを欲ほっせざるものあり、 なかに華け香こうを聞かぐことを欲ほっせざるものあり。 その聞きかんと欲ほっするところのものはすなはち独ひとりこれを聞きき、 その聞きくことを欲ほっせざるところのものはつひに独ひとり聞きかず。 すなはちみな自じ然ねんに意こころに随したがひ欲ほっし憙き楽ぎょうするところのごとくにありて、 その心しん中ちゅうの欲願よくがんするところに違たがはず。
●諸ノ菩薩・阿羅漢ノ中ニ、有リ↢但欲スル↠聞カムト↠経ヲ者↡、中ニ有リ↧但欲スル↠聞カムト↢音楽ノ声ヲ↡者↥、中ニ有リ↧但欲スル↠聞カガムト↢華香ヲ↡者↥、中ニ有リ↢不ル↠欲セ↠聞クコトヲ↠経ヲ者↡、中ニ有リ↧不ル↠欲セ↠聞クコトヲ↢五音ヲ↡者↥、中ニ有リ↧不ル↠欲セ↠聞カグコトヲ↢華香ヲ↡者↥。其ノ所ノ↠欲スル↠聞カムト者ハ輒則チ独リ聞キ↠之ヲ、其ノ所ノ↠不ル↠欲セ↠聞クコトヲ者ハ了ニ独リ不↠聞カ也。則チ皆自然ニ随ヒ↠意ニ在リテ↠所ノゴトクニ↢欲シ憙楽スル↡、不↠違ハ↣其ノ心中ノ所ニ↢欲願スル↡也。
無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつおよびもろもろの菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かん、 みな浴よくしをはればおのおのみづから去さる。
●無量清浄仏及ビ諸ノ菩薩・阿羅漢、皆浴シ訖已 オハ レバ各ノ自ラ去ル。
そのもろもろの菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かん、 おのおのみづから行ぎょう道どうするなかに地じにありて経きょうを講こうずるものあり、 なかに地じにありて経きょうを誦じゅするものあり、 なかに地じにありて経きょうを説とくものあり、 なかに地じにありて経きょうを口く受じゅするものあり、 なかに地じにありて経きょうを聴きくものあり、 なかに地じにありて経きょうを念ねんずるものあり、 なかに地じにありて道どうを思おもふものあり、 なかに地じにありて坐ざ禅ぜん一心いっしんなるものあり、 なかに地じにありて経行きょうぎょうするものあり。
●其ノ諸ノ菩薩・阿羅漢、各ノ自ラ行道スル中ニ有リ↢在リテ↠地ニ講ズル↠経ヲ者↡、中ニ有リ↢在リテ↠地ニ誦スル↠経ヲ者↡、中ニ有リ↢在リテ↠地ニ説ク↠経ヲ者↡、中ニ有リ↧在リテ↠地ニ口↢受スル経ヲ↡者↥、中ニ有リ↢在リテ↠地ニ聴ク↠経ヲ者↡、中ニ有リ↢在リテ↠地ニ念ズル↠経ヲ者↡、中ニ有リ↢在リテ↠地ニ思フ↠道ヲ者↡、中ニ有リ↢在リテ↠地ニ坐禅一心ナル者↡、中ニ有リ↢在リテ↠地ニ経行スル者↡。
なかに虚こ空くうのなかにありて経きょうを講こうずるものあり、 なかに虚こ空くうのなかにありて経きょうを誦じゅするものあり、 なかに虚こ空くうのなかにありて経きょうを説とくものあり、 なかに虚こ空くうのなかにありて経きょうを口く受じゅするものあり、 なかに虚こ空くうのなかにありて経きょうを聴きくものあり、 なかに虚こ空くうのなかにありて経きょうを念ねんずるものあり、 なかに虚こ空くうのなかにありて道どうを思し念ねんするものあり。 なかに虚こ空くうのなかにありて坐ざ禅ぜん一心いっしんなるものあり、 なかに虚こ空くうのなかにありて経行きょうぎょうするものあり。
●中ニ有リ↧在リテ↢虚空ノ中ニ↡講ズル↠経ヲ者↥、中ニ有リ↧在リテ↢虚空ノ中ニ↡誦スル↠経ヲ者↥、中ニ有リ↧在リテ↢虚空ノ中ニ↡説ク↠経ヲ者↥、中ニ有リ↧在リテ↢虚空ノ中ニ↡口↢受スル経ヲ↡者↥、中ニ有リ↧在リテ↢虚空ノ中ニ↡聴ク↠経ヲ者↥、中ニ有リ↧在リテ↢虚空ノ中ニ↡念ズル↠経ヲ者↥、中ニ有リ↧在リテ↢虚空ノ中ニ↡思↢念スル道ヲ↡者↥。中ニ有リ↧在リテ↢虚空ノ中ニ↡坐禅一心ナル者↥、中ニ有リ↧在リテ↢虚空ノ中ニ↡経行スル者↥。
なかにいまだ須しゅ陀だ洹おん道どうを得えざるものあればすなはち須しゅ陀だ洹おん道どうを得え、 なかにいまだ斯陀しだ含ごん道どうを得えざるものあればすなはち斯陀しだ含ごん道どうを得え、 なかにいまだ阿那あな含ごん道どうを得えざるものあればすなはち阿那あな含ごん道どうを得え、 なかにいまだ阿羅あら漢かん道どうを得えざるものあればすなはち阿羅あら漢かん道どうを得え、 なかにいまだ阿あ惟ゆい越おっ致ちの菩ぼ薩さつを得えざるものあればすなはち阿あ惟ゆい越おっ致ちの菩ぼ薩さつを得うるなり。
●中ニ有レバ↧未ダル↠得↢須陀洹道ヲ↡者↥則チ得↢須陀洹道ヲ↡、中ニ有レバ↧未ダル↠得↢斯陀含道ヲ↡者↥則チ得↢斯陀含道ヲ↡、中ニ有レバ↧未ダル↠得↢阿那含道ヲ↡者↥則チ得↢阿那含道ヲ↡、中ニ有レバ↧未ダル↠得↢阿羅漢道ヲ↡者↥則チ得↢阿羅漢道ヲ↡、中ニ有レバ↧未ダル↠得0229↢阿惟越致ノ菩薩ヲ↡者↥則チ得ルナリ↢阿惟越致ノ菩薩ヲ↡。
菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かん、 おのおのみづから経きょうを説とき道どうを行ぎょうじて、 みなことごとく道どうを得えて、 歓かん喜ぎし踊ゆ躍やくせざるものなし。
●菩薩・阿羅漢、各ノ自ラ説キ↠経ヲ行ジテ↠道ヲ、皆悉ク得テ↠道ヲ、莫シ↧不ル↢歓喜シ踊躍セ↡者。
二 Ⅲ ⅸ 供養諸仏
もろもろの菩ぼ薩さつのなかに、 意こころに八方はっぽう上じょう下げの無む央数おうしゅの諸仏しょぶつを供く養ようせんと欲ほっするものあらば、 すなはちともに前すすみて無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつのために礼らいをなし、 却しりぞき長じょう跪き叉手しゃしゅして仏ぶつにまうさく、 辞じし行ゆきて八方はっぽう上じょう下げのもろもろの無む央数おうしゅの仏ぶつを供く養ようしたまはんと欲ほっすと。 無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつすなはちこれを然ねん可かして、 すなはちそれをして行ゆきて供く養ようせしめたまふ。 もろもろの菩ぼ薩さつらのみなおほきに歓かん喜ぎするもの、 数しゅ千億せんおく万人まんにん無む央数おうしゅにしてまた計かぞふべからず。 みな智慧ちえ勇ゆう猛みょうにして、 おのおのみづから翻ひるがえり飛とび、 等輩とうはいあひ追おひてともに散ちり飛とびてすなはち行ゆく。 すなはち八方はっぽう上じょう下げの無む央数おうしゅの諸仏しょぶつの所みもとに到いたり、 みな前すすみて仏ぶつのために礼らいをなして、 すなはち諸仏しょぶつを供く養ようす。
○諸ノ菩薩ノ中ニ、有ラバ↤意ニ欲スルモノ↣供↢養セムト八方上下ノ無央数ノ諸仏ヲ↡、即チ皆倶ニ前ミテ為ニ↢无量清浄仏ノ↡作シ↠礼ヲ、却キ長跪叉手シテ白サク↠仏ニ、辞シ行キテ欲スト↣供↢養シタマハムト八方上下ノ諸ノ無央数ノ仏ヲ↡。无量清浄仏則チ然↢可シテ之ヲ↡、則チ使メタマフ↢其ヲシテ行キテ供養セ↡。諸ノ菩薩等ノ皆大ニ歓喜スルモノ、数千億万人無央数ニシテ不↠可カラ↢復計フ↡。皆智慧勇猛ニシテ、各ノ自ラ翻リ飛ビ、等輩相追ヒテ倶共 トモ ニ散リ飛ビテ則チ行ク。即チ到リ↢八方上下ノ无央数ノ諸仏ノ所ニ↡、皆前ミテ為ニ↠仏ノ作シテ↠礼ヲ、便則チ供↢養ス諸仏ヲ↡。
そのもろもろの菩ぼ薩さつ、 意こころに万種まんじゅ自じ然ねんのものの前まえにあるを得えんと欲ほっせば、 すなはち自じ然ねん百ひゃく雑色ざっしきの華はな・百ひゃく種しゅ自じ然ねんの雑繒ざつぞう幡綵ばんさい・百ひゃく種物しゅもつ自じ然ねんの*劫こう波は育いく衣え・自じ然ねんの七宝しっぽう・自じ然ねんの灯とう火か・自じ然ねんの万種まんじゅの伎ぎ楽がく、 ことごとくみな前まえにあり。
○其ノ諸ノ菩薩、意ニ欲セバ↠得ムト↢万種自然之物ノ在ルヲ↟前ニ、則チ自然*百雑色ノ華・百*種自然ノ雑繒幡綵・百種物自然ノ劫波育衣・自然ノ七宝・自然ノ灯火・自然ノ万種ノ伎楽、悉ク皆在リ↠前ニ。
その華け香こうの万種まんじゅ自じ然ねんのものは、 また世せ間けんのものにあらず。 また天てん上じょうのものにあらず。 この万種まんじゅのものはすべてために八方はっぽう上じょう下げの衆物しゅもつ、 自じ然ねんにともに合ごう会えして化け生しょうするのみ。 意こころに得えんと欲ほっせばすなはち自じ然ねんに化け生しょうして前まえにあり、 意こころに用もちゐざらんとせばすなはちおのづから化去けこす。 もろもろの菩ぼ薩さつすなはちともに持じして諸仏しょぶつおよびもろもろの菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かんの上うえに供く養ようす。 辺傍へんぼう・前ぜん後ご徊え繞にょうし周しゅう帀そうすること自じ在ざいに意こころの得えんと欲ほっするところのごとくすなはちみな至いたる。 その時ときに当あたりて快け楽らくいふべからず。
○其ノ華香ノ万種自然之物者、亦非ズ↢世間之物↡也。亦復非ズ↢天上之物ニモ↡也。是ノ万種之物ハ都テ為ニ八方上下ノ衆物、自然ニ共ニ合会シテ化生スル耳。意ニ欲セバ↠得ムト者則チ自然ニ化生シテ在リ↠前ニ、意ニ不ラムトセバ↠用ヰ者便則チ*自ラ化去ス。諸ノ菩薩便チ共ニ持シテ供↢養ス諸仏及ビ諸ノ菩薩・阿羅漢ノ上ニ↡。辺傍・前後*徊繞シ周帀スルコト自在ニ意ノ所ノゴトク↠欲スル↠得ムト則輒チ皆至ル。当リテ↢爾之時ニ↡快楽不↠可カラ↠言フ也。
もろもろの菩ぼ薩さつ意こころにおのおの四し十じゅう里りの華はなを得えんと欲ほっせば、 すなはち自じ然ねんの四し十じゅう里りの華はな前まえにあり。 もろもろの菩ぼ薩さつみな虚こ空くうのなかにおいてともに華はなを持じして、 すなはち諸仏しょぶつおよびもろもろの菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かんの上うえに散さんず。 華はなみな虚こ空くうのなかにありて下くだり向むかふ。 華はなはなはだ香かぐわしく好このまし。 華はなまさに小すこしく萎しぼみてすなはちおのづから地じに堕おつれば、 すなはち自じ然ねんの乱風らんぷう吹ふきて萎しぼめる華はなことごとく自じ然ねんに去さる。
●諸ノ菩薩意ニ各ノ欲セバ↠得ムト↢四十里ノ華ヲ↡、則チ自然ノ四0230十里ノ華在リ↠前ニ。諸ノ菩薩皆於テ↢虚空ノ中ニ↡共ニ持シテ↠華ヲ、則チ散ズ↢諸仏及ビ諸ノ菩薩・阿羅漢ノ上ニ↡。華皆在リテ↢虚空ノ中ニ↡下リ向フ。華甚ダ香シク好シ。華適ニ小シク萎ミテ便チ自ラ堕ツレバ↠地ニ則チ自然ノ乱風吹キテ萎メル華悉ク自然ニ去ル。
もろもろの菩ぼ薩さつ意こころにおのおのまた八はち十じゅう里りの華はなを得えんと欲ほっせば、 すなはち自じ然ねんの八はち十じゅう里りの華はな前まえにあり。 もろもろの菩ぼ薩さつみなまた虚こ空くうのなかにおいてともに華はなを持じして、 もろもろの菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かんの上うえに散さんず。 華はなみなまた虚こ空くうのなかにありて下くだり向むかふ。 華はな小すこしく萎しぼみてすなはちおのづから地じに堕おつれば、 すなはち自じ然ねんの乱風らんぷう吹ふきて萎しぼめる華はな去さる。
●諸ノ菩薩意ニ各ノ復欲セバ↠得ムト↢八十里ノ華ヲ↡、則チ自然ノ八十里ノ華在リ↠前ニ。諸ノ菩薩皆復於テ↢虚空ノ中ニ↡共ニ持シテ↠華ヲ、散ズ↢諸ノ菩薩・阿羅漢ノ上ニ↡。華皆復在リテ↢虚空ノ中ニ↡下リ向フ。華小シク萎ミテ便チ自ラ堕ツレバ↠地ニ、則チ自然ノ乱風吹キテ萎メル華去ル。
もろもろの菩ぼ薩さつ意こころにおのおのまた百ひゃく六ろく十じゅう里りの華はなを得えんと欲ほっせば、 すなはち自じ然ねんの百ひゃく六ろく十じゅう里りの華はな前まえにあり。 もろもろの菩ぼ薩さつみなまた虚こ空くうのなかにおいてともに華はなを持じして、 すなはち諸仏しょぶつおよびもろもろの菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かんの上うえに散さんず。 華はなみなまた虚こ空くうのなかにおいて下くだり向むかふ。 華はなまさに小すこしく萎しぼみてすなはちおのづから地じに堕おち、 すなはち自じ然ねんの乱風らんぷう吹ふきて華はなことごとく自じ然ねんに去さる。
●諸ノ菩薩意ニ各ノ復欲セバ↠得ムト↢百六十里ノ華ヲ↡、則チ自然ノ百六十里ノ華在リ↠前ニ。諸ノ菩薩皆復於テ↢虚空ノ中ニ↡共ニ持シテ↠華ヲ、則チ散ズ↢諸仏及ビ諸ノ菩薩・阿羅漢ノ上ニ↡。華皆復於テ↢虚空ノ中ニ↡下リ向フ。華適ニ小シク萎ミテ便チ自ラ堕ツレバ↠地ニ、則チ自然ノ乱風吹キテ華悉ク自然ニ去ル。
もろもろの菩ぼ薩さつ意こころにおのおのまた三さん百びゃく二に十じゅう里りの華はなを得えんと欲ほっせば、 すなはち自じ然ねんの三さん百びゃく二に十じゅう里りの華はな前まえにあり。 もろもろの菩ぼ薩さつみなまた虚こ空くうにおいてともに華はなを持じして、 すなはち諸仏しょぶつおよびもろもろの菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かんの上うえに散さんず。 華はなみなまた虚こ空くうのなかにありて下くだり向むかふ。 華はなまさに小すこしく萎しぼみてすなはちおのづから地じに堕おち、 すなはち自じ然ねんの乱風らんぷう吹ふきて華はなことごとく自じ然ねんに去さる。
●諸ノ菩薩意ニ各ノ復欲セバ↠得ムト↢三百二十里ノ華ヲ↡、則チ自然ノ三百二十里ノ華在リ↠前ニ。諸ノ菩薩皆復於テ↢虚*空ニ↡共ニ持シテ↠華ヲ、則チ散ズ↢諸仏及ビ諸ノ菩薩・阿羅漢ノ上ニ↡、華皆復在リテ↢虚空ノ中ニ↡下リ向フ。華適ニ小シク萎ミテ便チ自ラ堕ツレバ↠地ニ、則チ自然ノ乱風吹キテ華悉ク自然ニ去ル。
もろもろの菩ぼ薩さつ意こころにおのおのまた六ろっ百ぴゃく四し十じゅう里りの華はなを得えんと欲ほっせば、 すなはち自じ然ねんの六ろっ百ぴゃく四し十じゅう里りの華はな前まえにあり。 もろもろの菩ぼ薩さつみなまた虚こ空くうのなかにおいてともに華はなを持じして、 諸仏しょぶつおよびもろもろの菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かんの上うえに散さんず。 華はなみなまた虚こ空くうのなかにありて下くだり向むかふ。 華はなまさに小すこしく萎しぼみてすなはちおのづから地じに堕おち、 すなはち自じ然ねんの乱風らんぷう吹ふきて華はなことごとく自じ然ねんに去さる。
●諸ノ菩薩意ニ各ノ復欲セバ↠得ムト↢六百四十里ノ華ヲ↡、則チ自然ノ六百四十里ノ華在リ↠前ニ。諸ノ菩薩皆復於テ↢虚空ノ中ニ↡共ニ持シテ↠華ヲ、散ズ↢諸仏及ビ諸ノ菩薩・阿羅漢ノ上ニ↡。華皆復在リテ↢虚空ノ中ニ↡下リ向フ。華適ニ小シク萎ミテ便チ自ラ堕ツレバ↠地ニ、則チ自然ノ乱風吹キテ華悉0231ク自然ニ去ル。
もろもろの菩ぼ薩さつ意こころにおのおのまた千せん二に百ひゃく八はち十じゅう里りの華はなを得えんと欲ほっせば、 すなはち自じ然ねんの千せん二に百ひゃく八はち十じゅう里りの華はな前まえにあり。 もろもろの菩ぼ薩さつみなまた虚こ空くうのなかにおいてともに華はなを持じして、 諸仏しょぶつおよびもろもろの菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かんの上うえに散さんず。 華はなみなまた虚こ空くうのなかにありて下くだり向むかふ。 華はなまさに小すこしく萎しぼみてすなはちおのづから地じに堕おち、 すなはち自じ然ねんの乱風らんぷう吹ふきて華はなことごとく自じ然ねんに去さる。
●諸ノ菩薩意ニ各ノ復欲セバ↠得ムト↢千二百八十里ノ華ヲ↡、則チ自然ノ千二百八十里ノ華在リ↠前ニ。諸ノ菩薩皆復於テ↢虚空ノ中ニ↡共ニ持シテ↠華ヲ、散ズ↢諸仏及ビ諸ノ菩薩・阿羅漢ノ上ニ↡。華皆復在リテ↢虚空ノ中ニ↡下リ向フ。華適ニ小シク萎ミテ便チ自ラ堕ツレバ↠地ニ、則チ自然ノ乱風吹キテ華悉ク自然ニ去ル。
もろもろの菩ぼ薩さつ意こころにおのおのまた二に千せん五ご百ひゃく六ろく十じゅう里りの華はなを得えんと欲ほっせば、 すなはち自じ然ねんの二に千せん五ご百ひゃく六ろく十じゅう里りの華はな前まえにあり。 もろもろの菩ぼ薩さつみなまた虚こ空くうのなかにおいてともに華はなを持じして、 諸仏しょぶつおよびもろもろの菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かんの上うえに散さんず。 華はなみなまた虚こ空くうのなかにありて下くだり向むかふ。 華はなまさに小すこしく萎しぼみてすなはちおのづから地じに堕おち、 すなはち自じ然ねんの乱風らんぷう吹ふきて華はなことごとく自じ然ねんに去さる。
●諸ノ菩薩意ニ各ノ復欲セバ↠得ムト↢二千五百六十里ノ華ヲ↡、則チ自然ノ二千五百六十里ノ華在リ↠前ニ。諸ノ菩薩皆復於テ↢虚空ノ中ニ↡共ニ持シテ↠華ヲ、散ズ↢諸仏及ビ諸ノ菩薩・阿羅漢ノ上ニ↡。華皆復在リテ↢虚空ノ中ニ↡下リ向フ。華適ニ小シク萎ミテ便チ自ラ堕ツレバ↠地ニ、則チ自然ノ乱風吹キテ華悉ク自然ニ去ル。
もろもろの菩ぼ薩さつ意こころにおのおのまた五ご千せん一いっ百ぴゃく二に十じゅう里りの華はなを得えんと欲ほっせば、 すなはち自じ然ねんの五ご千せん一いっ百ぴゃく二に十じゅう里りの華はな前まえにあり。 もろもろの菩ぼ薩さつみなまた虚こ空くうのなかにおいてともに華はなを持じして、 すなはち諸仏しょぶつおよびもろもろの菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かんの上うえに散さんず。 華はなみなまた虚こ空くうのなかにありて下くだり向むかふ。 華はなまさに小すこしく萎しぼみてすなはちおのづから地じに堕おち、 すなはち自じ然ねんの乱風らんぷう吹ふきて華はなことごとく自じ然ねんに去さる。
●諸ノ菩薩意ニ各ノ復欲セバ↠得ムト↢五千一百二十里ノ華ヲ↡、則チ自然ノ五千一百二十里ノ華在リ↠前ニ。諸ノ菩薩皆復於テ↢虚空ノ中ニ↡共ニ持シテ↠華ヲ、則チ散ズ↢諸仏及ビ諸ノ菩薩・阿羅漢ノ上ニ↡。華皆復在リテ↢虚空ノ中ニ↡下リ向フ。華適ニ小シク萎ミテ便チ自ラ堕ツレバ↠地ニ、則チ自然ノ乱風吹キテ華悉ク自然ニ去ル。
もろもろの菩ぼ薩さつ意こころにおのおのまた万まん二に百ひゃく四し十じゅう里りの華はなを得えんと欲ほっせば、 すなはち自じ然ねんの万まん二に百ひゃく四し十じゅう里りの華はな前まえにあり。 もろもろの菩ぼ薩さつみなまた虚こ空くうのなかにおいてともに華はなを持じして、 諸仏しょぶつおよびもろもろの菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かんの上うえに散さんず。 華はなみなまた虚こ空くうのなかにありて下くだり向むかふ。 華はなまさに小すこしく萎しぼみてすなはちおのづから地じに堕おち、 すなはち自じ然ねんの乱風らんぷう吹ふきて華はなすなはち自じ然ねんに去さる。
●諸ノ菩薩意ニ各ノ復欲セバ↠得ムト↢万二百四十里ノ華ヲ↡、則チ自然ノ万二百四十里ノ華在リ↠前ニ。諸ノ菩薩皆復於テ↢虚空ノ中ニ↡共ニ持シテ↠華ヲ、散ズ↢諸仏及ビ諸ノ菩薩・阿羅漢ノ上ニ↡。華皆復在リテ↢虚空ノ中ニ↡下リ向フ。華適ニ小シク萎ミテ便チ自ラ堕ツレバ↠地ニ、則チ自然ノ乱風吹キテ華則自然去。
もろもろの菩ぼ薩さつ意こころにおのおのまた二に万まん四し百ひゃく八はち十じゅう里りの華はなを得えんと欲ほっせば、 すなはち自じ然ねんの二に万まん四し百ひゃく八はち十じゅう里りの華はな前まえにあり。 もろもろの菩ぼ薩さつみなまた虚こ空くうのなかにおいて華はなを持じして、 諸仏しょぶつおよびもろもろの菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かんの上うえに散さんず。 華はなみなまた虚こ空くうのなかにありて下くだり向むかふ。 華はなまさに小すこしく萎しぼみてすなはちおのづから地じに堕おつれば、 自じ然ねんの乱風らんぷう吹ふきて華はなことごとく自じ然ねんに去さる。
●諸ノ菩薩意ニ各ノ復欲セバ↠得ムト↢二万四百八十里ノ華ヲ↡、則チ自然ノ二万四百八十里ノ華在リ↠前ニ。諸0232ノ菩薩皆復於テ↢虚空ノ中ニ↡持シテ↠華ヲ、散ズ↢諸仏及ビ諸ノ菩薩・阿羅漢ノ上ニ↡。華皆復在リテ↢虚空ノ中ニ↡下リ向フ。華適ニ小シク萎ミテ便チ自ラ堕ツレバ↠地ニ、自然ノ乱風吹キテ華ル悉ク自然ニ去ル。
もろもろの菩ぼ薩さつ意こころにおのおのまた五ご万まん里りの華はなを得えんと欲ほっせば、 すなはち自じ然ねんの五ご万まん里りの華はな前まえにあり。 もろもろの菩ぼ薩さつみなまた虚こ空くうのなかにおいてともに華はなを持じして、 諸仏しょぶつおよびもろもろの菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かんの上うえに散さんず。 華はなみな虚こ空くうのなかにありて下くだり向むかふ。 華はなまさに小すこしく萎しぼみてすなはちおのづから地じに堕おち、 すなはち自じ然ねんの乱風らんぷう吹ふきて華はなことごとく自じ然ねんに去さる。
●諸ノ菩薩意ニ各ノ復欲セバ↠得ムト↢五万里ノ華ヲ↡、則チ自然ノ五万里ノ華在リ↠前ニ。諸ノ菩薩皆復於テ↢虚空ノ中ニ↡共ニ持シテ↠華ヲ、散ズ↢諸仏及ビ諸ノ菩薩・阿羅漢ノ上ニ↡。華皆在リテ↢虚空ノ中ニ↡下リ向フ。華適ニ小シク萎ミテ便チ自ラ堕ツレバ↠地ニ、則チ自然ノ乱風吹キテ華悉ク自然ニ去ル。
もろもろの菩ぼ薩さつ意こころにおのおのまた十じゅう万まん里りの華はなを得えんと欲ほっせば、 すなはち自じ然ねんの十じゅう万まん里りの華はな前まえにあり。 もろもろの菩ぼ薩さつみなまた虚こ空くうのなかにおいてともに華はなを持じして、 すなはち諸仏しょぶつおよびもろもろの菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かんの上うえに散さんず。 華はなみな虚こ空くうのなかにありて下くだり向むかふ。 華はなまさに小すこしく萎しぼみてすなはちおのづから地じに堕おち、 すなはち自じ然ねんの乱風らんぷう吹ふきて華はなことごとく自じ然ねんに去さる。
●諸ノ菩薩意ニ各ノ復欲セバ↠得ムト↢十万里ノ華ヲ↡、則チ自然ノ十万里ノ華在リ↠前ニ。諸ノ菩薩皆復於テ↢虚空ノ中ニ↡共ニ持シテ↠華ヲ、則チ散ズ↢諸仏及ビ諸ノ菩薩・阿羅漢ノ上ニ↡。華皆在リテ↢虚空ノ中ニ↡下リ向フ。華適ニ小シク萎ミテ便チ自ラ堕ツレバ↠地ニ、則チ自然ノ乱風吹キテ華悉ク自然ニ去ル。
もろもろの菩ぼ薩さつ意こころにおのおのまた二に十じゅう万まん里りの華はなを得えんと欲ほっせば、 すなはち自じ然ねんの二に十じゅう万まん里りの華はな前まえにあり。 もろもろの菩ぼ薩さつみなまた虚こ空くうのなかにおいてともに華はなを持じして、 すなはち諸仏しょぶつおよびもろもろの菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かんの上うえに散さんず。 華はなみな虚こ空くうのなかにありて下くだり向むかふ。 華はなまさに小すこしく萎しぼみてすなはちおのづから地じに堕おち、 すなはち自じ然ねんの乱風らんぷう吹ふきて華はなことごとく自じ然ねんに去さる。
●諸ノ菩薩意ニ各ノ復欲セバ↠得ムト↢二十万里ノ華ヲ↡、則チ自然ノ二十万里ノ華在リ↠前ニ。諸ノ菩薩皆復於テ↢虚空ノ中ニ↡共ニ持シテ↠華ヲ、則チ散ズ↢諸仏及ビ諸ノ菩薩・阿羅漢ノ上ニ↡。華皆在リテ↢虚空ノ中ニ↡下リ向フ。華適ニ小シク萎ミテ便チ自ラ堕ツレバ↠地ニ、則チ自然ノ乱風吹キテ華悉ク自然ニ去ル。
もろもろの菩ぼ薩さつ意こころにおのおのまた四し十じゅう万まん里りの華はなを得えんと欲ほっせば、 すなはち自じ然ねんの四し十じゅう万まん里りの華はな前まえにあり。 もろもろの菩ぼ薩さつみなまた虚こ空くうのなかにおいてともに華はなを持じして、 すなはち諸仏しょぶつおよびもろもろの菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かんの上うえに散さんず。 華はなみな虚こ空くうのなかにありて下くだり向むかふ。 華はなまさに小すこしく萎しぼみてすなはちおのづから地じに堕おち、 すなはち自じ然ねんの乱風らんぷう吹ふきて華はなことごとく自じ然ねんに去さる。
●諸ノ菩薩意ニ各ノ復欲セバ↠得ムト↢四十万里ノ華ヲ↡、則チ自然ノ四十万里ノ華在リ↠前ニ。諸ノ菩薩皆復於テ↢虚空ノ中ニ↡共ニ持シテ↠華ヲ、則チ散ズ↢諸仏及ビ諸ノ菩薩・阿羅漢ノ上ニ↡。華皆在リテ↢虚空ノ中ニ↡下リ向フ。華適ニ小シク萎ミテ便チ自ラ堕ツレバ↠地ニ、則チ自然ノ乱風吹キテ華悉ク自然ニ去ル。
もろもろの菩ぼ薩さつ意こころにおのおのまた八はち十じゅう万まん里りの華はなを得えんと欲ほっせば、 すなはち自じ然ねんの八はち十じゅう万まん里りの華はな前まえにあり。 もろもろの菩ぼ薩さつみなまた虚こ空くうのなかにおいてともに華はなを持じして、 すなはち諸仏しょぶつおよびもろもろの菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かんの上うえに散さんず。 華はなみな虚こ空くうのなかにありて下くだり向むかふ。 華はなまさに小すこしく萎しぼみてすなはちおのづから地じに堕おつれば、 すなはち自じ然ねんの乱風らんぷう吹ふきて華はなすなはち自じ然ねんに去さる。
●諸ノ菩薩意ニ各ノ復欲セバ↠得ムト↢八十万0233里ノ華ヲ↡、則チ自然ノ八十万里ノ華在リ↠前ニ。諸ノ菩薩皆復於テ↢虚空ノ中ニ↡共ニ持シテ↠華ヲ、則チ散ズ↢諸仏及ビ諸ノ菩薩・阿羅漢ノ上ニ↡。華皆在リテ↢虚空ノ中ニ↡下リ向フ。華適ニ小シク萎ミテ便チ自ラ堕ツレバ↠地ニ、則チ自然ノ乱風吹キテ華則チ自然ニ去ル。
もろもろの菩ぼ薩さつ意こころにおのおのまた百ひゃく六ろく十じゅう万まん里りの華はなを得えんと欲ほっせば、 すなはち自じ然ねんの百ひゃく六ろく十じゅう万まん里りの華はな前まえにあり。 もろもろの菩ぼ薩さつみなまた虚こ空くうのなかにおいてともに華はなを持じして、 すなはち諸仏しょぶつおよびもろもろの菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かんの上うえに散さんず。 華はなみな虚こ空くうのなかにありて下くだり向むかふ。 華はなまさに小すこしく萎しぼみてすなはちおのづから地じに堕おち、 すなはち自じ然ねんの乱風らんぷう吹ふきて華はなことごとく自じ然ねんに去さる。
●諸ノ菩薩意ニ各ノ復欲セバ↠得ムト↢百六十万里ノ華ヲ↡、則チ自然ノ百六十万里ノ華在リ↠前ニ。諸ノ菩薩皆復於テ↢虚空ノ中ニ↡共ニ持シテ↠華ヲ、則チ散ズ↢諸仏及ビ諸ノ菩薩・阿羅漢ノ上ニ↡。華皆在リテ↢虚空ノ中ニ↡下リ向フ。華適ニ小シク萎ミテ便チ自ラ堕ツレバ↠地ニ、則チ自然ノ乱風吹キテ華悉ク自然ニ去ル。
もろもろの菩ぼ薩さつ意こころにおのおのまた三さん百びゃく万まん里りの華はなを得えんと欲ほっせば、 すなはち自じ然ねんの三さん百びゃく万まん里りの華はな前まえにあり。 もろもろの菩ぼ薩さつみなまた虚こ空くうのなかにおいてともに華はなを持じして、 すなはち諸仏しょぶつおよびもろもろの菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かんの上うえに散さんず。 華はなみな虚こ空くうのなかにありて下くだり向むかふ。 華はなまさに小すこしく萎しぼみてすなはちおのづから地じに堕おち、 すなはち自じ然ねんの乱風らんぷう吹ふきて華はなことごとく自じ然ねんに去さる。
●諸ノ菩薩意ニ各ノ復欲セバ↠得ムト↢三百万里ノ華ヲ↡、則チ自然ノ三百万里ノ華在リ↠前ニ。諸ノ菩薩皆復於テ↢虚空ノ中ニ↡共ニ持シテ↠華ヲ、則チ散ズ↢諸仏及ビ諸ノ菩薩・阿羅漢ノ上ニ↡。華皆在リテ↢虚空ノ中ニ↡下リ向フ。華適ニ小シク萎ミテ便チ自ラ堕ツレバ↠地ニ、則チ自然ノ乱風吹キテ華悉ク自然ニ去ル。
もろもろの菩ぼ薩さつ意こころにおのおのまた四し百ひゃく万まん里りの華はなを得えんと欲ほっせば、 すなはち自じ然ねんの四し百ひゃく万まん里りの華はな前まえにあり。 もろもろの菩ぼ薩さつ心しん意こころともにおほきに歓かん喜ぎし踊ゆ躍やくして、 みな虚こ空くうのなかにありてともに華はなを持じして、 すなはち諸仏しょぶつおよびもろもろの菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かんの上うえに散さんず。
●諸ノ菩薩意ニ各ノ復欲セバ↠得ムト↢四百万里ノ華ヲ↡、則チ自然ノ四百万里ノ華在リ↠前ニ。諸ノ菩薩心意倶ニ大ニ歓喜シ踊躍シテ、皆在リテ↢虚空ノ中ニ↡共ニ持シテ↠華ヲ、則チ散ズ↢諸仏及ビ諸ノ菩薩・阿羅漢ノ上ニ↡。
華はなすべて自じ然ねんに合がっして一いっ華けとなる。 華はな正しょう団だんにしてまどかに周しゅう帀そうし、 おのおのまさに等ひとし。 華はなうたた前さきに倍ばいして、 極きわめておのづから軟好なんこうにして、 うたた前さきの華はなの好このましきに勝すぐるること数しゅ百ひゃく千色せんじきなり。 色々しきじきの異い香こう、 はなはだ香かぐわしきこといふべからず。
○華都テ自然ニ合シテ為ル↢一華ト↡。華正団ニシテ円ニ周帀シ、各ノ適ニ等シ。華転タ倍シテ↠前ニ、極テ自ラ軟好ニシテ、転タ勝ルルコト↢於前ノ華ノ好シキニ↡数百千色ナリ。色色ノ異香、甚ダ香シキコト不↠可カラ↠言フ。
もろもろの菩ぼ薩さつみなおほきに歓かん喜ぎして、 ともに虚こ空くうのなかにおいておほきにともに衆音しゅおん自じ然ねんの伎ぎ楽がくをなして、 仏ぶつおよびもろもろの菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かんを楽たのしましむ。 この時ときに当あたりて快け楽らくいふべからず。 もろもろの菩ぼ薩さつみなことごとく却しりぞき坐ざして経きょうを聴きく。 経きょうを聴ききをはりてすなはちことごとくみな諷ふ誦じゅし通つう利りして重かさねて経きょう道どうを知しり、 ますます智慧ちえあきらかなり。
○諸ノ菩薩*皆大ニ歓喜シテ、倶ニ於テ↢虚空ノ中ニ↡大ニ共ニ作シテ↢衆音自然ノ伎楽ヲ↡、楽マシム↢仏及ビ諸ノ菩薩・阿羅漢ヲ↡。当リテ↢是之時ニ↡快楽不↠可カラ↠言0234フ。諸ノ菩薩皆悉ク却キ坐シテ聴ク↠経ヲ。聴キ↠経ヲ竟リテ則チ悉ク皆諷誦シ通利シテ重ネテ知リ↢経道ヲ↡、益マス明カナリ↢智慧↡。
そのもろもろの華け香こう、 小すこしく萎しぼみてすなはちおのづから地じに堕おつれば、 すなはち自じ然ねんの乱風らんぷう吹ふきて華はなことごとくみな自じ然ねんに去さる。
●其ノ諸ノ華香、小シク萎ミテ便チ自ラ堕ツレバ↠地ニ、則チ自然ノ乱風吹キテ華悉ク皆自然ニ去ル。
すなはち諸しょ仏国ぶっこくのなかに第一だいいち四し天王てんのう上じょうより三さん十じゅう六天ろくてん上じょうに至いたるまでのもろもろの菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かん・天人てんにん、 みなまた虚こ空くうのなかにおいておほきにともに衆音しゅおんの伎ぎ楽がくをなせり。
●則チ諸仏国ノ中ニ従リ↢第一四天王上↡至ルマデノ↢三十六天上ニ↡諸ノ菩薩・阿羅漢・天人、皆復於テ↢虚空ノ中ニ↡大ニ共ニ作セリ↢衆音ノ伎楽ヲ↡。
もろもろの天人てんにんの前さきに来きたれるもの、 うたた去さりて後のちに来きたるものを避さく。 後のちに来きたれるものうたたまた供く養ようすること前さきのごとくして、 たがひに開かい避ひす。
●諸ノ天人ノ前ニ来レル者、転タ去リテ避ク↢後ニ来ル者ヲ↡。後ニ来レル者転タ復供養スルコト如クシテ↠前ノ、更相 タガヒ ニ開避ス。
もろもろの天人てんにん歓かん喜ぎし経きょうを聴ききてみなおほきにともに音楽おんがくをなす。 この時ときに当あたりて快け楽らく極きわまりなし。
●諸ノ天人歓喜シ聴キテ↠経ヲ皆大ニ共ニ作ス↢音楽ヲ↡。当リテ↢是之時ニ↡快楽無シ↠極リ。
もろもろの菩ぼ薩さつ供く養ようし経きょうを聴ききをはりて、 すなはちみな起たちて諸仏しょぶつのために礼らいをなして去さる。 すなはちまた八方はっぽう上じょう下げの無む央数おうしゅの諸仏しょぶつの所みもとに飛とび到いたりて、 すなはちまた供く養ようして経きょうを聴きくこと、 みなおのおの前さきの時ときのごとし。
●諸ノ菩薩供養シ聴キ↠経ヲ訖竟 ヲハ リテ、便チ皆起チテ為ニ↢諸仏ノ↡作シテ↠礼ヲ而去ル。則チ復飛ビ↢到リテ八方上下ノ无央数ノ諸仏ノ所ニ↡、則チ復供養シテ聴クコト↠経ヲ、皆各ノ如シ↢前ノ時ノ↡。
ことごとく遍へんして以後いご、 日ひのいまだ中ちゅうならざる時とき、 もろもろの菩ぼ薩さつすなはちみな飛とびて去さりすなはちその国くにに還かえり、 ことごとく前すすみて無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつのために礼らいをなして、 みな却しりぞき一面いちめんに坐ざして経きょうを聴きく。 経きょうを聴ききをはりてみなおほきに歓かん喜ぎすと。
○悉ク遍シテ以後、日ノ未ダル↠中ナラ時、諸ノ菩薩則チ皆飛ビテ而去リ則チ還リ↢其ノ国ニ↡、悉ク*前ミテ為ニ↢無量清浄仏ノ↡作シテ↠礼ヲ、皆却キ坐シテ↢一面ニ↡聴ク↠経ヲ。聴キ↠経ヲ竟リテ皆大ニ歓喜スト。*
仏ぶつのたまはく、 無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつおよびもろもろの菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かん、 食じきせんと欲ほっする時ときはすなはち自じ然ねんの七宝しっぽうの机つくえ・自じ然ねんの劫こう波は育いく・自じ然ねんの罽けい氎ちょう、 もつて座ざとなる。 無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつおよびもろもろの菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かんみな坐ざしをはれば、 前まえにことごとく自じ然ねん七宝しっぽうの鉢はちあり。 なかにみな自じ然ねん百ひゃく味みの飲食おんじきあり。 飲食おんじきはまた世せ間けんの飲食おんじきの味あじはひに類るいせず。 また天てん上じょうの飲食おんじきの味あじはひにもあらず。 この百ひゃく味みの飲食おんじきはすべて八方はっぽう上じょう下げのもろもろの自じ然ねんの飲食おんじきのなかの精しょう味みたり、 はなはだ香こう美みにして比ならびあることなし。 すべて自じ然ねんに化け生しょうするのみ。 その飲食おんじきは自じ在ざいに所欲しょよくのごとく味あじはひの甜酢てんさくを得えて、 鉢はちも自じ在ざいに所欲しょよくのごとく得う。
○*仏言ク、无量清浄仏及ビ諸ノ菩薩・阿羅漢、欲スル↠食セムト時ハ則チ自然ノ七宝ノ机・自然ノ劫波育・自然ノ罽氎、以テ為ル↠座ト。無量清浄仏及ビ諸ノ菩薩・阿羅漢皆坐シ已レバ、前ニ悉ク有リ↢自然七宝ノ鉢↡。中ニ皆有リ↢自然百味ノ飲食↡。飲食者亦不↠類セ↢世間ノ飲食之味ニ↡也。亦復非ズ↢天上ノ飲食之味ニモ↡也。此ノ百味ノ飲食者都テ為リ↢八方上下ノ衆ノ自然之飲食ノ中ノ精味↡、甚ダ香美ニシテ无シ↠有ルコト↠比。都テ自然ニ化生スル耳。其ノ飲食ハ自在0235ニ所欲ノゴトク得↢味ノ甜酢ヲ↡、鉢モ自在ニ所欲ノゴトク得。
もろもろの菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かんのなかに、 銀鉢ごんはちを得えんと欲ほっするものあり、 なかに金鉢こんはちを得えんと欲ほっするものあり、 なかに水すい精しょう鉢はちを得えんと欲ほっするものあり、 なかに琉璃るり鉢はちを得えんと欲ほっするものあり、 なかに珊さん瑚ご鉢はちを得えんと欲ほっするものあり、 なかに虎こ珀はく鉢はちを得えんと欲ほっするものあり、 なかに白びゃく玉ごく鉢はちを得えんと欲ほっするものあり、 なかに車しゃこ鉢はちを得えんと欲ほっするものあり、 なかに瑪め瑙のう鉢はちを得えんと欲ほっするものあり、 なかに明みょう月がつ珠しゅ鉢はちを得えんと欲ほっするものあり、 なかに摩尼まに珠しゅ鉢はちを得えんと欲ほっするものあり、 なかに紫磨しま金ごん鉢はちを得えんと欲ほっするものあり、 みなそのなかに百ひゃく味みの飲食おんじきを満みたせり。 おのづからほしいままに意こころに随したがひてすなはち至いたる。 また従じゅう来らいするところもなく、 また供く作さするものもあることなし。 自じ然ねんに化け生しょうするのみ。
○諸ノ菩薩・阿羅漢ノ中ニ、有リ↧欲スル↠得ムト↢銀鉢ヲ↡者↥、中ニ有リ↧欲スル↠得ムト↢金鉢ヲ↡↡者↥、中ニ有リ↧欲スル↠得ムト↢水精鉢ヲ↡↡者↥、中ニ有リ↧欲スル↠得ムト↢琉璃鉢ヲ↡↡者↥、中ニ有リ↧欲スル↠得ムト↢珊瑚鉢ヲ↡↡者↥、中ニ有リ↧欲スル↠得ムト↢虎珀鉢ヲ↡↡者↥、中ニ有リ↧欲スル↠得ムト↢白玉鉢ヲ↡↡者↥、中ニ有リ↧欲スル↠得ムト↢*車鉢ヲ↡↡者↥、中ニ有リ↧欲スル↠得ムト↢*瑪瑙鉢ヲ↡↡者↥、中ニ有リ↧欲スル↠得ムト↢明月珠鉢ヲ↡↡者↥、中ニ有リ↧欲スル↠得ムト↢摩尼珠鉢ヲ↡↡者↥、中ニ有リ↧欲スル↠得ムト↢紫磨金鉢ヲ↡↡者↥、*皆満タセリ↢其ノ中ニ百味ノ飲食ヲ↡。自ラ恣若ホシイママニ随ヒテ↠意ニ則チ至ル。亦無ク↠所モ↢従来スル↡、亦無シ↠有ルコト↢供作スル者モ↡。自然ニ化生スル耳。
もろもろの菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かんみな食じきするに、 食じきまた多おおからずまた少すくなからずことごとく自じ然ねんに平びょう等どうなり。 もろもろの菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かん食じきするに、 また美み悪あくをいはず、 また美うまきをもつてのゆゑに喜よろこばず。 食じきしをはればもろもろの飯ぼん具ぐ・鉢はち・机つくえ・坐ざ、 みな自じ然ねんに化去けこし、 食じきせんと欲ほっする時ときはすなはちまた化け生しょうするのみ。 もろもろの菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かんみな心こころ清しょう潔けつにして、 飯食ぼんじきを慕したはずただ用もちゐて気け力りきをなすのみ。 みな自じ然ねんに消しょう散さんし糜み尽じんして化去けこすと。
○諸ノ菩薩・阿羅漢*皆食スルニ、食亦不↠多カラ亦不↠少カラ悉ク自然ニ平等ナリ。諸ノ菩薩・阿羅漢食スルニ、亦不↠言ハ↢美悪ヲ↡、亦不↢以テノ↠美ヲ故ニ喜バ↡。食シ已レバ諸ノ飯具・鉢・机・坐、皆自然ニ化*去シ、欲スル↠食セムト時ハ乃チ復化生スル耳。諸ノ菩薩・阿羅漢皆心清潔ニシテ、不↠慕ハ↢飯食ヲ↡但用ヰテ作ス↢気力ヲ↡耳。皆自然ニ消散シ*糜尽シテ化去スト。
二 Ⅲ ⅹ 聖衆無量
【12】仏ぶつ、 阿あ難なんに告つげたまはく、 阿あ弥陀みだ仏ぶつもろもろの菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かんのために法ほうを説ときたまふ時とき、 すべてことごとくおほきに講堂こうどうの上うえに会えす。 その国くにのもろもろの菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かんおよび諸天しょてん・人民にんみん無む央数おうしゅにして、 すべてまた計かぞふべからず。 みな無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつの所みもとに飛とび到いたりて、 ことごとく前すすみて無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつのために礼らいをなし、 却しりぞき坐ざして経きょうを聴きく。 無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつすなはちもろもろの比丘びく僧そう、 もろもろの菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かん、 諸天しょてん・人民にんみんのために、 広ひろく道どう智ち大だい経きょうを説ときたまふ。 みなことごとく経きょう道どうを聞もん知ちして、 歓かん喜ぎ踊ゆ躍やくして心こころ開かい解げせざるものなし。
○仏告ゲタマハク↢阿難ニ↡、阿弥陀仏為ニ↢諸ノ菩薩・阿羅漢ノ↡説キタマフ↠法ヲ時、都テ悉ク大ニ会ス↢講堂ノ上ニ↡。其ノ国ノ諸ノ菩薩・阿羅漢及ビ諸天・人民無央数ニシテ、都テ不↠可カラ↢復計フ↡。皆飛ビ↢到リテ無量清浄仏ノ所ニ↡、悉ク前ミテ為ニ↢无量清浄仏ノ↡作シ↠礼ヲ、却キ坐シテ聴ク↠経ヲ。无量清浄仏便則チ為ニ↢諸ノ比丘僧、諸ノ菩薩・阿羅漢、諸天・人民ノ↡、広ク説キタマフ↢道智大経ヲ↡。皆悉ク聞↢知0236テ経道ヲ↡、莫シ↧不ル↢歓喜踊躍シテ心開解セ↡者↥。
すなはち四し方ほうより自じ然ねんの乱風らんぷう起おこりて国こく中ちゅうの七宝しっぽう樹じゅを吹ふくに、 七宝しっぽう樹じゅみなまた五いつつの音おん声じょうをなせり。 乱風らんぷう七宝しっぽうの華はなを吹ふくに、 華はなその国くにに覆ふ蓋がいし、 みな虚こ空くうのなかにありて下くだり向むかふ。 華はなはなはだ香かぐわしくして極きわめておのづから軟好なんこうなり。 香かおり国こく中ちゅうに遍へんして、 華はなみなおのづから無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつおよびもろもろの菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かんの上うえに散さんず。 華はな地じに堕おちてみな厚あつさ四し寸すんなり。 華はなまさに小すこしく萎しぼめばすなはち自じ然ねんの乱風らんぷう吹ふきて萎しぼめる華はな自じ然ねんに去さる。 すなはち四し方ほうよりともにまた自じ然ねんの乱風らんぷう起おこりて七宝しっぽう樹じゅを吹ふくに、 七宝しっぽう樹じゅみなまたおのづから五いつつの音おん声じょうをなせり。 乱風らんぷう七宝しっぽう樹じゅの華はなを吹ふくに、 華はなまた前さきのごとくみな自じ然ねんに無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつおよびもろもろの菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かんの上うえに散さんず。 華はな地じに堕おちてまた厚あつさ四し寸すんなり。 華はな小すこしく萎しぼめばすなはち自じ然ねんの乱風らんぷう吹ふきて萎しぼめる華はなことごとく自じ然ねんに去さる。 乱風らんぷう華はなを吹ふくことかくのごとく四し反へんす。
○即チ四方ヨリ自然ノ乱風起リテ吹クニ↢国中ノ七宝樹ヲ↡、七宝樹皆復作セリ↢五ノ音声ヲ↡。乱風吹クニ↢七宝ノ華ヲ↡、*華覆↢蓋シ其ノ国ニ↡、皆在リテ↢虚空ノ中ニ↡下リ向フ。華甚ダ香シクシテ極テ自ラ軟好ナリ。香遍シテ↢国中ニ↡、華皆自ラ散ズ↢無量清浄仏及ビ諸ノ菩薩・阿羅漢ノ上ニ↡。華堕チテ↠地ニ皆厚サ四寸ナリ。華適ニ小シク萎メバ則チ自然ノ乱風吹キテ萎メル華自然ニ去ル。則チ四方ヨリ倶ニ復自然ノ乱風起リテ吹クニ↢七宝樹ヲ↡、七宝樹皆復*自ラ作セリ↢五ノ音声ヲ↡。乱風吹クニ↢七宝樹ノ華ヲ↡、華復如ク↠前ノ皆自然ニ散ズ↢无量清浄仏及ビ諸ノ菩薩・阿羅漢ノ上ニ↡。華堕チテ↠地ニ復厚サ四寸ナリ。華小シク萎メバ則チ自然ノ乱風吹キテ萎メル華悉ク自然ニ去ル。乱風吹クコト↠華ヲ如ク↠是クノ四反ス。
すなはち第一だいいち四し天王てんのうの諸しょ天人てんにん・第だい二に忉とう利り天てん上じょうの諸しょ天人てんにん・第三だいさん天てん上じょうの諸しょ天人てんにん・第だい四し天てん上じょうの諸しょ天人てんにん・第だい五ご天てん上じょうの諸しょ天人てんにん・第六だいろく天てん上じょうの諸しょ天人てんにん・第七だいしち梵天ぼんてん上じょうの諸しょ天人てんにん、 上かみ第だい十じゅう六ろく天てん上じょうの諸しょ天人てんにんに至いたり、 上かみ三さん十じゅう六ろく天てん上じょうの諸しょ天人てんにんに至いたるまで、 みな天てん上じょう万種まんじゅ自じ然ねんの物もの・百ひゃく種しゅの雑色ざっしき華け・百ひゃく種しゅの雑香ざっこう・百ひゃく種しゅの雑ざつ繒綵ぞうさい・百ひゃく種しゅの劫こう波は育いく畳じょう衣え・万種まんじゅの伎ぎ楽がくのうたた倍ばいして好このましくあひ勝すぐるるを持もち、 おのおの持もちて来きたり下くだり、 無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつのために礼らいをなして、 すなはち無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつおよびもろもろの菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かんを供く養ようす。 もろもろの天人てんにんみなまたおほきに伎ぎ楽がくをなして、 無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつおよびもろもろの菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かんを楽たのしましむ。 この時ときに当あたりて快け楽らくいふべからず。 もろもろの天人てんにん、 前さきに来きたれるものうたた去さりて後のちに来きたるものを避さく、 後のちに来きたるものうたたまた供く養ようすること前さきのごとくして、 たがひに開かい避ひす。
○則チ第一四天王ノ諸天人・第二忉利天上ノ諸天人・第三天上ノ諸天人・第四天上ノ諸天人・第五天上ノ諸天人・第六天上ノ諸天人・第七梵天上ノ諸天人、上至リ↢第十六天上ノ諸天人ニ↡、上至ルマデ↢三十六天上ノ諸天人ニ↡、皆持チ↢天上万種自然之物・百種ノ雑色華・百種ノ雑香・百種ノ雑繒綵・百種ノ*劫波育畳衣・万種ノ伎楽ノ転タ倍シテ好ク相勝ルルヲ↡、各ノ持チテ来リ下リ、為ニ↢无量清浄仏ノ↡作シテ↠礼ヲ、則チ供↢養ス无量清浄仏及ビ諸ノ菩薩・阿羅漢ヲ↡。諸ノ天人皆復*大ニ作シテ↢伎楽ヲ↡、楽マシム↢無量清浄仏及ビ諸ノ菩薩・阿羅漢ヲ↡。当リテ↢是0237之時ニ↡快楽不↠可カラ↠*言フ。諸ノ天人、前ニ来レル者転タ去リテ避ク↢後ニ来ル者ヲ↡、後ニ来ル者転タ復供養スルコト如クシテ↠前ノ、更相 タガヒ ニ開避ス。
すなはち東方とうぼう無む央数おうしゅの仏国ぶっこく、 また計かぞふべからず、 恒水ごうすいの辺ほとりの流る沙しゃの一沙いっしゃを一仏いちぶつとするがごとし。 その数かずかくのごとき諸仏しょぶつ、 おのおのもろもろの菩ぼ薩さつの無む央数おうしゅにしてまた計かぞふべからざるを遣つかはすに、 みな無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつの所みもとに飛とび到いたり、 すなはち無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつのために礼らいをなし、 頭ず面めんをもつて仏足ぶっそくに著つけて、 ことごとく却しりぞき一面いちめんに坐ざして経きょうを聴きく。 経きょうを聴ききをはりてもろもろの菩ぼ薩さつみなおほきに歓かん喜ぎし、 ことごとく起たちて無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつのために礼らいをなして去さる。
○則チ東方无央数ノ仏国、不↠可カラ↢復計フ↡、如シ↢恒水ノ辺ノ流沙ノ一沙ヲ一仏トスルガ↡。其ノ数如キ↠是クノ諸仏、各ノ遣スニ↢諸ノ菩薩ノ无央数ニシテ不ルヲ↟可カラ↢復計フ↡、皆飛ビ↢到リ無量清浄仏ノ所ニ↡、則チ為ニ↢无量清浄仏ノ↡作シ↠礼ヲ、以テ↢頭面ヲ↡著ケテ↢仏足ニ↡、悉ク却キ坐シテ↢一面ニ↡聴ク↠経ヲ。聴キ↠経ヲ竟リテ諸ノ菩薩皆大ニ歓喜シ、悉ク起チテ為ニ↢無量清浄仏ノ↡作シテ↠礼ヲ而去ル。
すなはち西方さいほう無む央数おうしゅの諸仏しょぶつの国くに、 また恒水ごうすいの辺ほとりの流る沙しゃの一沙いっしゃを一仏いちぶつとするがごとし。 その数かずかくのごとき諸仏しょぶつ、 おのおのまたもろもろの菩ぼ薩さつの無む央数おうしゅにしてすべてまた計かぞふべからざるを遣つかはすに、 みな無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつの所みもとに飛とび到いたり、 すなはち前すすみて無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつのために礼らいをなし、 頭ず面めんをもつて仏足ぶっそくに著つけて、 ことごとく却しりぞき一面いちめんに坐ざして経きょうを聴きく。 経きょうを聴ききをはりてもろもろの菩ぼ薩さつみなおほきに歓かん喜ぎし、 起たちて無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつのために礼らいをなして去さる。
○則チ西方无央数ノ諸仏ノ国、復如シ↢恒水ノ辺ノ流沙ノ一沙ヲ一仏トスルガ↡。其ノ数如キ↠是クノ諸仏、各ノ復遣スニ↢諸ノ菩薩ノ无央数ニシテ都テ不ルヲ↟可カラ↢復計フ↡、皆飛ビ↢到リ無量清浄仏ノ所ニ↡、則チ前ミテ為ニ↢无量清浄仏ノ↡作シ↠礼ヲ、以テ↢頭面ヲ↡著ケテ↢仏足ニ↡、悉ク却キ坐シテ↢一面ニ↡聴ク↠経ヲ。聴キ↠経ヲ竟リテ諸ノ菩薩皆大ニ歓喜シ、起チテ為ニ↢無量清浄仏ノ↡作シテ↠礼ヲ而去ル。
すなはち北方ほっぽう無む央数おうしゅの諸仏しょぶつの国くに、 また恒水ごうすいの辺ほとりの流る沙しゃの一沙いっしゃを一仏いちぶつとするがごとし。 その数かずかくのごとき諸仏しょぶつ、 おのおのまたもろもろの菩ぼ薩さつの無む央数おうしゅにしてすべてまた計かぞふべからざるを遣つかはすに、 みな無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつの所みもとに飛とび到いたり、 すなはち前すすみて無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつのために礼らいをなし、 頭ず面めんをもつて仏足ぶっそくに著つけて、 ことごとく却しりぞき一面いちめんに坐ざして経きょうを聴きく。 経きょうを聴ききをはりてもろもろの菩ぼ薩さつみなおほきに歓かん喜ぎし、 起たちて無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつのために礼らいをなして去さる。
○則北方无央数諸仏国、復如シ↢恒水ノ辺ノ流沙ノ一沙ヲ一仏トスルガ↡。其ノ数如キ↠是クノ諸仏、各ノ復遣スニ↢諸ノ菩薩ノ无央数ニシテ都テ不ルヲ↟可カラ↢復計フ↡、皆飛ビ↢到リ无量清浄仏ノ所ニ↡、則チ前ミテ為ニ↢無量清浄仏ノ↡作シ↠礼ヲ、以テ↢頭面ヲ↡著ケテ↢仏足ニ↡、悉ク却キ坐シテ↢一面ニ↡聴ク↠経ヲ。聴キ↠経ヲ竟リテ諸ノ菩薩皆大ニ歓喜シ、起チテ為ニ↢无量清浄仏ノ↡作シテ↠礼ヲ而去ル。
南方なんぽう無む央数おうしゅの諸仏しょぶつの国くに、 また恒水ごうすいの辺ほとりの流る沙しゃの一沙いっしゃを一仏いちぶつとするがごとし。 その数かずかくのごとき諸仏しょぶつ、 おのおのまたもろもろの菩ぼ薩さつの無む央数おうしゅにしてすべてまた計かぞふべからざるを遣つかはすに、 みな無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつの所みもとに飛とび到いたりて、 すなはち前すすみて無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつのために礼らいをなして去さる。
○南方無央数諸仏国、復如シ↢恒水ノ辺ノ流沙ノ一沙ヲ一仏トスルガ↡。其ノ数如キ↠是クノ諸仏、各ノ復遣スニ↢諸ノ菩薩ノ无央数ニシテ都テ不ルヲ↟可カラ↢復計0238フ↡、皆飛ビ↢到リテ無量清浄仏ノ所ニ↡、則チ前ミテ為ニ↢無量清浄仏ノ↡作シテ↠*礼ヲ而去ル。
すなはちまた四し角かくの無む央数おうしゅの諸仏しょぶっ国こく、 おのおのまた恒水ごうすいの辺ほとりの流る沙しゃの一沙いっしゃを一仏いちぶつとするがごとし。 その数かずおのおのかくのごとき諸仏しょぶつ、 おのおのまたもろもろの菩ぼ薩さつの無む央数おうしゅにしてすべてまた計かぞふべからざるを遣つかはすに、 みな無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつの所みもとに飛とび到いたりて、 前すすみて無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつのために礼らいをなしをはりて、 頭ず面めんを仏足ぶっそくに著つけて、 ことごとく却しりぞき一面いちめんに坐ざして経きょうを聴きく。 経きょうを聴ききをはりてもろもろの菩ぼ薩さつみなおほきに歓かん喜ぎし、 起たちて無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつのために礼らいをなして去さる。
○則チ復四角无央数ノ諸仏国、各ノ復如シ↢恒水ノ辺ノ流沙ノ一沙ヲ一仏トスルガ↡。其ノ数各ノ如キ↠是クノ諸仏、各ノ復遣スニ↢諸ノ菩薩ノ无央数ニシテ都テ不ルヲ↟可カラ↢復計フ↡、皆飛ビ↢到リテ无量清浄仏ノ所ニ↡、前ミテ為ニ↢無量清浄仏ノ↡作シ↠礼ヲ已リテ、頭面ヲ著ケテ↢仏足ニ↡、悉ク却キ坐シテ↢一面ニ↡聴ク↠経ヲ。聴キ↠経ヲ竟リテ諸ノ菩薩皆大ニ歓喜シ、起チテ為ニ↢无量清浄仏ノ↡作シテ↠礼ヲ而去ル。
仏ぶつのたまはく、 八方はっぽう上じょう下げのもろもろの無む央数おうしゅの仏ぶつ、 さらにもろもろの菩ぼ薩さつを遣つかはすに、 無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつの所みもとに飛とび到いたり、 経きょうを聴ききて供く養ようし、 うたたたがひに開かい避ひすることかくのごとし。 すなはち下げ面めんのもろもろの八方はっぽう無む央数おうしゅの仏国ぶっこくも、 一方いっぽうはおのおのまた恒水ごうすいの辺ほとりの流る沙しゃの一沙いっしゃを一仏いちぶつとするがごとし。 その数かずまたかくのごとき諸仏しょぶつ、 おのおのもろもろの菩ぼ薩さつの無む央数おうしゅにしてすべてまた計かぞふべからざるを遣つかはすに、 みな無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつの所みもとに飛とび到いたりて、 前すすみて阿あ弥陀みだ仏ぶつのために礼らいをなし、 頭ず面めんをもつて仏足ぶっそくに著つけて、 ことごとく却しりぞき坐ざして経きょうを聴きく。 経きょうを聴ききをはりてもろもろの菩ぼ薩さつみなおほきに歓かん喜ぎし、 起たちて無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつのために礼らいをなして去さる。 上じょう方ほうの諸仏しょぶつさらにもろもろの菩ぼ薩さつを遣つかはして、 無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつの所みもとに飛とび到いたりて、 経きょうを聴ききて供く養ようしあひ開かい避ひす。 前さきに来きたれるものはすなはち去さりて後のちに来きたるものを避さく、 後のちに来きたるもの供く養ようすることまたかくのごとくして、 つひに休く絶ぜつし極きわまる時ときなし。
○仏言ク、八方上下ノ諸ノ無央数ノ仏、更ニ遣スニ↢諸ノ菩薩ヲ↡、飛ビ↢到リテ无量清浄仏ノ所ニ↡、聴キテ↠経ヲ供養シ、転タ更相 タガヒ ニ開避スルコト如シ↠是クノ。則チ下面ノ諸ノ八方無央数ノ仏国モ、一方者各ノ復如シ↢恒水ノ辺ノ流沙ノ一沙ヲ一仏トスルガ↡。其数復如キ↠是クノ諸仏、各ノ遣スニ↢諸ノ菩薩ノ无央数ニシテ都テ不ルヲ↟可カラ↢復計フ↡、皆飛ビ↢到リテ無量清浄仏ノ所ニ↡、前ミテ為ニ↢阿弥*陀仏ノ↡作シ↠礼ヲ、以テ↢頭面ヲ↡著ケテ↢仏足ニ↡、悉ク却キ坐シテ聴ク↠経ヲ。聴キ↠経ヲ竟リテ諸ノ菩薩皆大ニ歓喜シ、起チテ為ニ↢無量清浄仏ノ↡作シテ↠礼ヲ而去ル。上方ノ諸仏更ニ遣シテ↢諸ノ菩薩ヲ↡、飛ビ↢到リテ无量清浄仏ノ所ニ↡、聴キテ↠経ヲ供*養シ相開避ス。前ニ来レル者ハ則チ去リテ避ク↢後ニ来ル者ヲ↡、後ニ来ル者供養スルコト亦復如クシテ↠是クノ、終ニ無シ↢休絶シ極ル時↡。
たとへば恒沙ごうじゃのごとき刹くに 東方とうぼうの仏国ぶっこくかくのごとし
○譬若 タト ヘバ如キ↢恒沙ノ↡刹 | 東方ノ仏国如シ↠是クノ |
おのおのもろもろの菩ぼ薩さつを遣つかはして 無む量りょう覚かくを稽首けいしゅし礼らいしたてまつる
各各遣シテ↢諸ノ菩薩ヲ↡ | 稽↢首シ礼シタテマツル↣无量覚ヲ↡ |
西せい・南なん・北面ほくめんもみなしかなり かくのごとき恒沙ごうじゃ数しゅの土ど
○0239西・南・北面モ皆爾ナリ | 如キ↠是クノ恒沙数ノ土 |
この諸仏しょぶつ、 菩ぼ薩さつを遣つかはして 無む量りょう覚かくを稽首けいしゅし礼らいしたてまつる
是ノ諸仏遣シテ↢菩薩ヲ↡ | 稽↢首シ礼シタテマツル↣無量覚ヲ↡ |
この十方じっぽうの菩ぼ薩さつ飛とびて みな衣え裓こく・もろもろの華はな・
天てんの拘く蚕さん種々しゅじゅの具ぐをもつて 往ゆきて無む量りょう覚かくを供く養ようしたてまつる
天ノ拘蚕種種ノ具ヲ↡ | 往テ供↢養シタテマツル无量覚ヲ↡ |
もろもろの菩ぼ薩さつみなおほきに集つどひて 無む際さい光こうを稽首けいしゅし礼らいしたてまつる
○諸ノ菩薩皆大ニ集ヒテ | 稽↢首シ礼シタテマツル↣無際光ヲ↡ |
遶めぐること三帀さんぞうして叉手しゃしゅして住じゅうし 国尊こくそん無む量りょう覚かくを歎たんじたてまつる
遶ルコト三帀シテ叉手シテ住シ | 歎ジタテマツル↢国尊无量覚ヲ↡ |
みな華はなを持じして仏ぶつの上うえに散さんじ 心こころ清浄しょうじょうにして無む量りょうを称しょうしたてまつる
○皆持シテ↠華ヲ散ジ↢仏ノ上ニ↡ | 心清浄ニシテ称シタテマツル↢無量ヲ↡ |
仏前ぶつぜんにおいて住じゅうしてみづから説とく 願ねがはくはわが刹くにをしてかくのごとくならしめんと
於テ↢仏前ニ↡住シテ自ラ説ク | 願クハ使メムト↢我ガ刹ヲシテ如クナラ↟此クノ |
散さんずるところの華はな虚こ空くうに止とどまりて 合ごう成じょうして百ひゃく由ゆ旬じゅんを蓋おおふ
●所ノ↠散ズル華止リテ↢虚空ニ↡ | 合成シテ蓋フ↢百由旬ヲ↡ |
その柄え妙みょう厳ごん飾好じきこうにして ことごとくあまねく衆しゅ会えの上うえを覆おおふ
もろもろの菩ぼ薩さつすべて 諸尊しょそんの刹くにに往ゆき至いたるも値あふことを得えがたし
●諸ノ菩薩都テ往キ↢至ルモ | 諸尊ノ刹ニ↡難シ↠得↠値フコトヲ |
▼かくのごときの人ひと仏ぶつの名みなを聞きかば 快ここよろく安隠あんのんにして大だい利りを得えん
如キノ↠是クノ人聞カバ↢仏ノ名ヲ↡ | 快ク安隠ニシテ得ム↢大利ヲ↡ |
わが等類とうるいこの徳とくを得えん もろもろのこの刹くにに好このましきところを獲えん
●吾ガ等類得ム↢是ノ徳ヲ↡ | 諸ノ此ノ刹ニ獲ム↠所ヲ↠好シキ |
本国ほんごくを計はかるに夢ゆめのごとし 無む数劫しゅこうにも浄きよきはこの土どなり
計ルニ↢本国ヲ↡若↢如 ゴト シ夢ノ↡ | 無数劫ニモ浄キハ此ノ*土ナリ |
菩ぼ薩さつの世せ尊そんを遶めぐるを見みるに 威い神じん猛みょうにして寿いのち極きわまりなし
●0240見ルニ↣菩薩ノ遶ルヲ↢世尊ヲ↡ | 威神猛ニシテ寿无シ↠極リ |
国くにの覚衆かくしゅはなはだ清浄しょうじょうなることは 無む数劫しゅこうにも思議しぎしがたし
国ノ*覚衆*甚ダ清浄ナルコトハ | 無数劫ニモ難シ↢思議シ↡ |
時ときに無む量りょう世せ尊そん笑えみたまふ 三さん十じゅう六億ろくおく那な術じゅつ
この数かずの光ひかり口くちより出いでて あまねくもろもろの無む数しゅの刹くにを炤てらす
此ノ数ノ光従リ↠口出デテ | 遍ク炤テラス↢諸ノ无数ノ刹ヲ↡ |
すなはち廻え光こう還かえりて仏ぶつを遶めぐること 三帀さんぞうしをはりて頂いただきより入いる
○則チ廻光還リテ遶ルコト↠仏ヲ | 三帀シ已リテ従リ↠頂入ル |
色しき霍然かくねんとしてまた現げんぜず 天てんまた人にんもみな歓かん喜ぎす
*あう楼ら亘こう坐ざより起たちて 衣え服ぶくを正ただして稽首けいしゅし問とひて
○楼亘従リ↠坐起チテ | 正シテ↢衣服ヲ↡稽首シ問ヒテ |
仏ぶつにまうしてまうさく、 なんによりてか笑えみたまふ ただ世せ尊そんこの意こころを説ときたまへ
白シテ↠仏ニ言ク何ニ縁リテカ笑ミタマフ | 唯世尊説キタマヘ↢是ノ意ヲ↡ |
願ねがはくはわれに本空ほんくうの莂へつを授さずけ 慈護じごして百ひゃく福ふくの相そうを成じょうぜしめよと
●願クハ授ケ↢我ニ本空ノ莂ヲ | 慈護シテ成ゼシメヨト↢百福ノ相ヲ↡ |
このもろもろの音おん声じょうを聞きくもの 一切いっさいの人ひと踊ゆ躍やくして喜よろこぶ
梵ぼんの音こえは雷霆らいていに及および 八種はっしゅの音こえは深じん重じゅうの声こえなり
仏ぶつ、 あう楼ら亘こうに決けつを授さずけたまふ いまわれ説とかん、 なんぢあきらかに聴きけ
仏授ケタマフ↢楼亘ニ決ヲ↡ | 今吾説カム仁ナンヂ諦ニ聴ケ |
もろもろの世せ界かいの諸しょ菩ぼ薩さつ 須しゅ阿あ提だいに到いたりて仏ぶつを礼らいし
聞ききて歓かん喜ぎし広ひろく奉ぶ行ぎょうして 疾とく浄じょう処しょを得うるに至いたることを得う
聞キテ歓喜シ広ク奉行シテ | 疾ク得↠至ルコトヲ↠*得ルニ↢浄処ヲ↡ |
すでにこの厳ごん浄じょうの国くにに到いたりぬれば すなはちすみやかに神足じんそくの倶そなはるを得えて
○0241已ニ到リヌレバ↢此ノ厳浄ノ国ニ↡ | 便チ速ニ得テ↢神足ノ倶ハルヲ↡ |
眼まなこあきらかに視み耳みみあきらかに聴きき また還かえりて宿命しゅくみょうを知しることを得えん
眼洞アキラカニ視耳徹アキラカニ聴キ | 亦還リテ得ム↠知ルコトヲ↢宿命ヲ↡ |
▼無む量りょう覚かくその決けつを授さずけん われ前ぜん世せに本願ほんがんあり
一切いっさいの人ひと法ほうを説とくを聞きかば みな疾とくわが国くにに来らい生しょうせん
一切ノ人聞カバ↠説クヲ↠法ヲ | 皆疾ク来↢生セム我ガ国ニ↡ |
◆わが所願しょがんみな具ぐ足そくせん もろもろの国くにより来らい生しょうせんもの
みなことごとくこの間けんに来到らいとうして 一いっ生しょうに不ふ退転たいてんを得えん
もし菩ぼ薩さつさらに願がんを興おこして 国くにをしてわが刹くにのごとくならしめんと欲ほっし
○若シ菩薩更ニ興シテ↠願ヲ | 欲シ↠使メムト↣国ヲシテ如クナラ↢我ガ刹ノ↡ |
またおもへらく一切いっさい人にんを度どし おのおの願がんじて十方じっぽうに達たっせしめんとせば
亦念ヘラク度シ↢一切人ヲ↡ | 令メムトセバ↣*各ノ願ジテ達セ↢十方ニ↡ |
▼すみやかに疾とく超こえてすなはち 安楽あんらく国こくの世せ界かいに到いたるべし
▼無む量りょう光こう明みょう土どに至いたりて 無む数仏しゅぶつを供く養ようす
それ億万おくまんの仏ぶつに奉事ぶじし 飛とび変へん化げして諸国しょこくに遍へんし
○其レ奉↢事シ億万ノ仏ニ↡ | 飛ビ変化テ遍シ↢諸国ニ↡ |
恭く敬ぎょうしをはりて歓かん喜ぎして去さり すなはち須しゅ摩ま提だいに還かえる
▼この功く徳どくある人ひとにあらずは この経きょうの名なを聞きくことを得えず
○非ズハ↧有ル↢是ノ功徳↡人ニ↥ | 不↠得↠聞クコトヲ↢是ノ経ノ名ヲ↡ |
ただ清浄しょうじょう戒かいを有たもてるもののみ すなはちこの正しょう法ぼうを聞きくに逮およべり
唯有タモテル↢清浄戒ヲ↡者ノミ | 乃チ逮オヨベリ↠聞クニ↢此ノ正法ヲ↡ |
かつて世せ尊雄そんおうを見みたてまつりて すなはちこの事じを信しんずることを得えて
○0242曽更テ見タテマツリテ↢世尊雄ヲ↡ | 則チ得テ↠信ズルコトヲ↢於是ノ事ヲ↡ |
謙へりくだりて恭く敬ぎょうし聞ききて奉ぶ行ぎょうして すなはち踊ゆ躍やくしておほきに歓かん喜ぎす
謙ヘリクダリテ恭敬シ聞キテ奉行シテ | 便チ踊躍シテ大ニ歓喜ス |
▼悪あくと憍きょう慢まんと弊へいと懈け怠だいのものは もつてこの法ほうを信しんずることかたし
○悪ト憍慢ト弊ト懈怠ノモノハ | 難シ↣以テ信ズルコト↢於此ノ法ヲ↡ |
宿しゅく世せの時とき仏ぶつを見みたてまつるもの 楽このみて世せ尊そんの教きょうを聴ちょう聞もんせん
宿世ノ時見タテマツル↠仏ヲ者 | 楽コノミテ聴↢聞セム世尊ノ教ヲ↡ |
たとへば生うまれてより盲もう冥みょうなるもの 行ゆきて人ひとを開導かいどうすることを得えんと欲ほっするがごとし
○譬ヘバ従リ↠生レテ盲冥ナル者 | 欲スルガゴトシ↠得ムト↣行キテ開↢導スルコトヲ人ヲ↡ |
声しょう聞もんすらことごとく大だい乗じょうに惑まどふ いかにいはんや俗凡ぞくぼんのもろもろにおいてをや
声聞スラ悉ク*惑フ↢大乗ニ↡ | 何ニ況ヤ於テヲヤ↢俗凡ノ諸ニ↡ |
天てん中ちゅうの天てんは意こころをあひ知しる 声しょう聞もんは仏ぶつの行ぎょうを了さとらず
○天中ノ天ハ相↢知ル意ヲ↡ | 声聞ハ不↠了サトラ↢仏ノ行ヲ↡ |
辟びゃく支し仏ぶつもまたかくのごとし 独ひとり正しょう覚がくのみすなはちこれを知しる
一切いっさいをしてことごとく作さ仏ぶつせしめ その浄じょう慧え本空ほんくうを知しり
○使メ↢一切ヲシテ悉ク作仏セ↡ | 其ノ浄慧*知リ↢本空ヲ↡ |
またこの億万おくまん劫こうを過すぎて 仏ぶっ智ちを計はかるともよく及およぶことなく
復過ギテ↢此ノ億万劫ヲ↡ | 計ルトモ↢仏智ヲ↡無ク↢能ク及ブコト↡ |
講こう議ぎして説とくこと無む数劫しゅこうにして 寿じゅ命みょうを尽つくすともなほ知しらず
○講議シテ説クコト無数劫ニシテ | 尽ストモ↢寿命ヲ↡猶不↠知ラ |
仏ぶつの慧えは辺幅へんぷくなし かくのごとく清浄しょうじょうの致ちを行ぎょうず
仏之慧ハ無シ↢辺幅↡ | 如ク↠是クノ行ズ↢清浄ノ致ヲ↡ |
わが教きょうを奉ほうじてすなはちこれを信しんずること ただこの人ひとのみよく解げ了りょうす
●奉ジテ↢我ガ教ヲ↡乃チ信ズルコト↠是ヲ | 唯此ノ人ノミ能ク解了ス |
仏ぶつの説ときたまふところみなよく受うく これをすなはち第一だいいちの証しょうとなす
仏ノ所↠説キタマフ皆能ク受ク | 是ヲ則チ為ス↢第一ノ証ト↡ |
▼人ひとの命いのちまれに得うべし 仏ぶつ、 世よにましますははなはだ値あひがたし
○0243人之命希ニ可シ↠得 | 仏在スハ↠世ニ甚ダ難シ↠値ヒ |
信しん慧ねありて致いたるべからず もし聞見もんけんせば精しょう進じんして求もとめよ
有リテ↢信慧↡不↠可カラ↠致ル | 若シ聞見セバ精進シテ求メヨ |
◆この法ほうを聞ききて忘わすれず すなはち見みて敬うやまひ得えておほきに慶よろこばば
○聞キテ↢是ノ法ヲ↡而不↠忘レ | 便チ見テ敬ヒ得テ大ニ慶ババ |
すなはちわが善よき親厚しんこうなり これをもつてのゆゑに道どう意いを発おこせよ
則チ我ガ之善キ親*厚ナリ | 以テノ↠是ヲ故ニ発セヨ↢道意ヲ↡ |
◆たとひ世せ界かいに満みてらん火ひをも このなかを過すぎて法ほうを聞きくことを得えば
○設令ヒ満テラム↢世界ニ↡火ヲモ | 過ギテ↢此ノ中ヲ↡得バ↠聞クコトヲ↠法ヲ |
▼かならずまさに世せ尊そん将しょうとなりて 一切いっさい生しょう・老ろう・死しを度どすべし
会ズ当ニシ↧作リテ↢世尊将ト↡ | 度ス↦一切生・老・死ヲ↥ |
【13】仏ぶつ、 阿あ難なんに語かたりたまはく、 無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつもろもろの菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かんのために経きょうを説ときをはるに、 諸天しょてん・人民にんみんのなかに、 いまだ須しゅ陀だ洹道おんどうを得えざるものあればすなはち須しゅ陀だ洹道おんどうを得え、 なかにいまだ斯陀しだ含道ごんどうを得えざるものあればすなはち斯陀しだ含道ごんどうを得え、 なかにいまだ阿那あな含道ごんどうを得えざるものあればすなはち阿那あな含道ごんどうを得え、 なかにいまだ阿羅あら漢道かんどうを得えざるものあればすなはち阿羅あら漢道かんどうを得え、 なかにいまだ阿あ惟ゆい越おっ致ちの菩ぼ薩さつを得えざるものあればすなはち阿あ惟ゆい越おっ致ちの菩ぼ薩さつを得う。
●仏語リタマハク↢阿難ニ↡、無量清浄仏為ニ↢*諸ノ菩薩・阿羅漢ノ↡説キ↠経ヲ竟ルニ、諸天・人民ノ中ニ、有レバ↧未ダル↠得↢須陀洹道ヲ↡者↥則チ得↢須陀洹道ヲ↡、中ニ有レバ↧未ダル↠得↢斯陀含道ヲ↡者↥則チ得↢斯陀含道ヲ↡、中ニ有レバ↧未ダル↠得↢阿那含道ヲ↡者↥則チ得↢阿那含道ヲ↡、中ニ有レバ↧未ダル↠得↢阿羅漢道ヲ↡者↥則チ得↢阿羅漢道ヲ↡、中ニ有レバ↧未ダル↠得↢阿惟越致ノ菩薩ヲ↡者↥則チ得↢阿惟越致ノ菩薩ヲ↡。
阿あ弥陀みだ仏ぶつすなはちそのもとの宿命しゅくみょうに道どうを求もとむる時とき心こころの喜き願がんするところの大だい小しょうに随したがひ、 随ずい意いにために経きょうを説ときてすなはちこれを授さずけて、 それをして疾とく開かい解げ得道とくどうしみなことごとく明みょう慧えならしむ。 おのおのみづから願ねがふところの経きょう道どうを好こう喜きし、 喜き楽らくせざるはなし。 誦じゅ習じゅうするものは、 すなはちおのおのみづから経きょう道どうを諷ふ誦じゅし通つう利りして、 無む厭えん無む極ごくなり。
●阿弥陀仏輒チ随ヒ↧其ノ本ノ宿命ニ求ムル↠道ヲ時心ノ所ノ↢喜願スル↡大小ニ↥、随意ニ為ニ説キテ↠経ヲ輒チ授ケテ↠之ヲ、令ム↢其ヲシテ疾ク開解得道シ皆悉ク明慧ナラ↡。各ノ自ラ好↢喜シ所ノ↠願フ経道ヲ↡、莫シ↠不ルハ↢喜楽セ↡。誦習スル者ハ、則チ各ノ自ラ諷↢誦シ経道ヲ↡通利シテ、无*厭無極也。
もろもろの菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かんのなかに経きょうを誦じゅするものあり、 その音こえ雷らい声しょうのごとし。 なかに経きょうを説とくものあり、 疾風しっぷう暴雨ぼうの時ときのごとし。 もろもろの菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かん経きょうを説とき道どうを行ぎょうずることみなおのおのかくのごとし。 一劫いっこうを尽つくすともつひに懈おこたり倦うむ時ときなし。 みなことごとく智慧ちえ勇ゆう猛みょうに、 身体しんたいみな軽きょう便べんにして、 つひに痛痒つうよう極きわまる時ときあることなし。 行ぎょう歩ぶ坐起ざき、 みなことごとく才健ざいごん勇ゆう猛みょうなり。
●諸ノ菩薩・阿羅漢ノ中ニ有リ↢誦スル↠経ヲ者↡、其ノ音如シ↢雷声ノ↡。中ニ有リ↢説ク↠経ヲ者↡、如シ↢疾風暴雨ノ時ノ↡。諸ノ菩薩・阿羅0244漢説キ↠経ヲ行ズルコト↠道ヲ皆各ノ如シ↠是クノ。尽ストモ↢一劫ヲ↡竟終 ツヒ ニ無シ↢懈リ倦ム時↡也。皆悉ク智慧勇猛ニ、身体皆軽便ニシテ、終ニ無シ↠有ルコト↢痛痒極ル時↡。行歩坐起、皆悉ク*才健勇猛ナリ。
師子しし中ちゅうの王おうのごときは深林じんりんのなかにありてまさに趣向しゅこうするところあるべき時とき、 あへて当あたるものあることなし。 無む量りょう清浄しょうじょう仏国ぶっこくのもろもろの菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かん、 経きょうを説とき道どうを行ぎょうずること、 みな勇ゆう猛みょうにして疑ぎ難なんの意こころあることなし。 すなはち心こころの作為さいするところのごとくにありてあらかじめ計はからざること百ひゃく千億せんおく万倍まんばいなり。 これ猛みょう師子しし中ちゅうの王おうなり。 かくのごときの猛みょう師子しし中ちゅうの王おう、百ひゃく千億せんおく万倍まんばいすとも、 なほまたわが第だい二にの弟子でし摩訶まか目もく揵連けんれんの勇ゆう猛みょうなるにしかざること百ひゃく千億せんおく万倍まんばいなり。 無む量りょう清浄しょうじょう国こくのもろもろの菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かん、 みなわが第だい二にの弟子でし摩訶まか目もく揵連けんれんに勝すぐるるなり。
●如キハ↢師子中ノ王ノ↡在リテ↢深林ノ中ニ↡当ニキ↠有ル↠所↢趣向スル↡時、無シ↠有ルコト↢敢テ当ル者↡。無量清浄仏国ノ諸ノ菩薩・阿羅漢、説キ↠経ヲ行ズルコト↠道ヲ、皆勇猛ニシテ無シ↠有ルコト↢疑難之意↡。則チ在リテ↣心ノ所ノゴトクニ↢作為スル↡不ルコト↢予メ計ラ↡百千億万倍ナリ。是猛師子中ノ王也。如キノ↠是クノ猛師子中ノ王、百千億万倍ストモ、*尚復不ルコト↠如カ↢我ガ第二ノ弟子摩訶目*揵連ノ勇猛ナルニ↡百千億万倍也。无量清浄国ノ諸ノ菩薩・阿羅漢、*皆勝ルル↢我ガ第二ノ弟子摩訶目*揵連ニ↡也。
仏ぶつのたまはく、 摩訶まか目もく揵連けんれんの勇ゆう猛みょうなるがごときは諸しょ仏国ぶっこくのもろもろの阿羅あら漢かんのなかにおいてもつとも比ならびなしとなす。 摩訶まか目もく揵連けんれんのごとき、 飛ひ行ぎょう進しん止し智慧ちえ勇ゆう猛みょうに、 あきらかに視みあきらかに聴きき、 八方はっぽう上じょう下げ、 去こ・来らい・現在げんざいの事じを知しること百ひゃく千億せんおく万倍まんばいなるを、 すべて合がっして一いち智慧ちえ勇ゆう猛みょうとなして、 まさに無む量りょう清浄しょうじょう仏国ぶっこくのもろもろの阿羅あら漢かんのなかにあれば、 その徳とくなほまた無む量りょう清浄しょうじょう仏国ぶっこくの一ひとりの阿羅あら漢かんの智慧ちえ勇ゆう猛みょうにしかざるは千億せんおく万倍まんばいなるべしと。
●仏言ク、如キハ↢摩*訶目*揵連ノ勇猛ナルガ↡於テ↢諸仏国ノ諸ノ阿羅漢ノ中ニ↡最モ為ス↠無シト↠比。如キ↢摩*訶目*揵連ノ↡、飛行進止智慧勇猛ニ、洞アキラカニ視徹アキラカニ聴キ、知ルコト↢八方上下、去・来・現在之事ヲ↡百千億万倍ナルヲ、都テ合シテ為シテ↢一智慧勇猛ト↡、当ニシト↧在レバ↢無量清浄仏国ノ諸ノ阿羅漢ノ中ニ↡者、其ノ徳尚復不ル↠如カ↢無量清浄仏国ノ一ノ阿羅漢ノ智慧勇猛ニ↡者千億万倍ナル↥也。
この時とき坐ざ中ちゅうに一ひとりの菩ぼ薩さつあり、 阿あ逸いつ菩ぼ薩さつと字なづく。 阿あ逸いつ菩ぼ薩さつすなはち起たちて前すすみて長じょう跪き叉手しゃしゅし、 仏ぶつに問とひたてまつりてまうさく、 阿あ弥陀みだ仏国ぶっこくのなかのもろもろの阿羅あら漢かん、 むしろすこぶる般はつ泥洹ないおんして去さるものありやいなや。 願ねがはくはこれを聞きかんと欲ほっすと。 仏ぶつ、 阿あ逸いつ菩ぼ薩さつに告つげたまはく、 なんぢ知しらんと欲ほっせば、 かくのごとき四し天てん下げの星ほし、 なんぢこれを見みるやいなやと。 阿あ逸いつ菩ぼ薩さつまうさく、 ややしかなり。 みなこれを見みると。 仏ぶつのたまはく、 なんぢわが第だい二にの弟子でし摩訶まか目もく揵連けんれん、 四し天てん下げを飛ひ行ぎょうし一日いちにち一いち夜やあまねく星ほしを数かぞへて幾枚いくまいかあるを知しらんとする。 かくのごとき四し天てん下げの星ほしはなはだ衆しゅ多たにして、 計かぞふることを得うべからざるもの、 なほ百ひゃく千億せんおく万倍まんばいするはこの四し天てん下げの星ほしなりと。
○是ノ時坐中ニ有リ↢一ノ菩薩↡、字ナヅク↢阿逸菩薩ト↡。阿逸菩薩則チ起チテ前ミテ長跪叉手シ、問ヒタテマツリテ↠仏ニ言ク、阿弥陀仏国ノ中ノ諸ノ阿羅漢、寧ロ頗ル有リヤ↢般泥洹シテ去ル者↡不ヤ。願クハ欲スト↠聞カムト↠之ヲ。仏告ゲタマハク↢阿逸菩薩ニ↡、若欲セバ↠知ラムト者、如キ↠是クノ四天下ノ星、若見ルヤ↠之ヲ不ヤト。阿逸菩0245薩言ク、唯然ナリ。皆見ルト↠之ヲ。仏言ク、而ナンヂ我ガ第二ノ弟子摩*訶目*揵連、飛↢行シテ四天下ヲ↡一日一夜遍ク数ヘテ↠星ヲ知ラムトスル↠有ルヲ↢幾枚カ↡也。如キ↠是クノ四天下ノ星甚ダ衆多ニシテ、不ルモノ↠可カラ↠得↠計フルコトヲ、尚為ルハ↢百千億万倍↡是ノ四天下ノ星也ト。
仏ぶつのたまはく、 天てん下げの大海だいかいの水みずのごときは一渧いったい水すいを減げんじ去さらば、 むしろよく海水かいすいをしてために減げんぜしむるやいなやと。 阿あ逸いつ菩ぼ薩さつまうさく、 大だい海水かいすい百ひゃく千億せんおく万まん斗と石こくの水みずを減げんずともなほまた海うみをして減げんじて少しょうならしむることあたはずと。
○仏言ク、如キハ↢天下ノ大海ノ水ノ↡減ジ↢去ラバ一渧水ヲ↡、寧ロ能ク令ムルヤ↢海水ヲシテ為ニ減ゼ↡不ヤト。阿逸菩薩言ク、減ストモ↢大海水百千億万斗石ノ水ヲ↡尚復不ト↠能ハ↠令ムルコト↢海ヲシテ減ジテ少ナラ↡也。
仏ぶつのたまはく、 阿あ弥陀みだ仏国ぶっこくのもろもろの阿羅あら漢かんのなかに、 般はつ泥洹ないおんして去さるものありといへども、 この大海だいかいの一いち小しょう水すいを減げんずるがごときのみ。 諸在しょざいの阿羅あら漢かんために減げんじて少しょうなりと知しらしむることあたはずと。
●仏言ク、阿弥陀仏国ノ諸ノ阿羅漢ノ中ニ、雖モ↠有リト↢般泥洹シテ去ル者↡、如キ↣是ノ大海ノ減ズルガ↢一小水ヲ↡耳。不ト↠能ハ↠令ムルコト↢諸在ノ阿羅漢為ニ減ジテ知ラ↟少ナリト也。
仏ぶつのたまはく、 大だい海水かいすいの一いち渓水けいすいを減げんぜば、 むしろよく海水かいすいを減げんぜんやいなやと。 阿あ逸いつ菩ぼ薩さつまうさく、 大海だいかいの百ひゃく千万せんまん億おくの渓水けいすいを減げんずとも、 なほまた海水かいすいを減げんじて減げんじて少しょうなりと知しらしむることあたはずと。
●仏言ク、減ゼバ↢大海水ノ一渓水ヲ↡、寧ロ能ク減ゼムヤ↢海水ヲ↡不ヤト。阿逸菩薩言ク、減ズトモ↢大海ノ百千万億ノ渓水ヲ↡、尚復不ト↠能ハ↧減ジテ↢海水ヲ↡令ムルコト↞知ラ↢減ジテ少ナリト↡也。
仏ぶつのたまはく、 阿あ弥陀みだ仏国ぶっこくのもろもろの阿羅あら漢かんのなかに、 般はつ泥曰ないわつして去さるものあらんも、 この大海だいかいの一いち渓水けいすいを減げんずるがごときのみ。 諸在しょざいの阿羅あら漢かんを減げんじてために減げんじて少しょうなりと知しることあたはず。
●仏言ク、阿弥陀仏国ノ諸ノ阿羅漢ノ中ニ、有ラムモ↢般泥*曰テ去ル者↡、如キ↣是ノ大海ノ減ズルガ↢一渓水ヲ↡耳。不↠能ハ↧減ジテ↢諸在ノ阿羅漢ヲ↡為ニ減ジテ知ルコト↞少ナリト也。
仏ぶつのたまはく、 もし大海だいかい一いち恒水ごうすいを減げんぜば、 むしろよく海水かいすいを減げんぜんやいなやと。 阿あ逸いつ菩ぼ薩さつまうさく、 大だい海水かいすいの百ひゃく千万せんまん億おくの恒水ごうすいを減げんずとも、 なほまた大だい海水かいすいを減げんじて減げんじて少しょうなりと知しらしむることあたはずと。
●仏言ク、而モシ大海減ゼバ↢一恒水ヲ↡、寧ロ能ク減ゼムヤ↢海水ヲ↡不ヤト。阿逸菩薩言ク、減ズトモ↢大海水ノ百千万億ノ恒水ヲ↡、尚復不ト↠能ハ↧減ジテ↢大海水ヲ↡令ムルコト↦減ジテ知ラ↞少ナリト也。
仏ぶつのたまはく、 阿あ弥陀みだ仏国ぶっこくのもろもろの阿羅あら漢かん、 般はつ泥曰ないわつして去さるものも無む央数おうしゅなり。 そのあるもののあらたに阿羅あら漢かんを得うるものもまた無む央数おうしゅなり。 すべて増減ぞうげんをなさずと。
●仏言ク、阿弥陀仏国ノ諸ノ阿羅漢、般泥*曰テ去ル者モ无央数ナリ。其ノ在ル者ノ新ニ得ル↢阿羅漢ヲ↡者モ亦無央数ナリ。都テ不ト↠為サ↢増減ヲ↡也。
仏ぶつのたまはく、 天てん下げの諸水しょすいをしてすべて流る行ぎょうして大海だいかいのなかに入いらしめんに、 むしろよく海水かいすいをして増ぞう多たならしむるやいなやと。 阿あ逸いつ菩ぼ薩さつまうさく、 海水かいすいをして増ぞう多たならしむることあたはず。 ゆゑはいかん。 この大海だいかいは天てん下げの諸水しょすい衆善しゅぜんのなかの王おうたるなり。 ゆゑによくしかるのみと。
●仏言ク、令メムニ↣天下ノ諸水ヲシテ都テ流行シテ入ラ↢大海ノ中ニ↡、寧ロ能ク令ムルヤ↣海水ヲシテ為ラ↢増多↡不ヤト。阿逸菩薩言ク、不↠能ハ↠令ムルコト↢海水ヲシテ増多ナラ↡也。所以0246者何ン。是ノ大海ハ為ル↢天下ノ諸水衆善ノ中ノ王↡也。故ニ能ク爾ル耳ト。
仏ぶつのたまはく、 無む量りょう清浄しょうじょう仏国ぶっこくもまたかくのごとし。 ことごとく八方はっぽう上じょう下げの無む央数おうしゅの仏国ぶっこくの無む央数おうしゅの諸天しょてん・人民にんみん・蜎けん飛ぴ蠕動ねんどうの類たぐいをしてすべて無む量りょう清浄しょうじょう仏国ぶっこくに往おう生じょうせしめんは、 その輩ともがら甚大じんだい衆しゅ多たにしてまた計かぞふべからざれども、 無む量りょう清浄しょうじょう仏国ぶっこくのもろもろの菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かん、 もろもろの比丘びく僧そう、 すべて常つねのごとく一法いっぽうにして異ことに増ぞう多たをなさず。
●仏言ク、無量清浄仏国モ亦如シ↠是クノ。悉ク令メム↣八方上下ノ无央数ノ仏国ノ無央数ノ諸天・人民・蜎飛蠕動之類ヲシテ都テ往↢生セ無量清浄仏国ニ↡者、其ノ輩甚大衆多ニシテ不レドモ↠可カラ↢復計フ↡、無量清浄仏国ノ諸ノ菩薩・阿羅漢、衆ノ比丘僧、都テ如ク↠常ノ一法ニシテ不↣異ニ為サ↢増多ヲ↡也。
ゆゑはいかん。 無む量りょう清浄しょうじょう仏国ぶっこくは最さい快けにして八方はっぽう上じょう下げの無む央数おうしゅの諸しょ仏国ぶっこくのなかのもろもろの菩ぼ薩さつのなかの王おうなればなり。 無む量りょう清浄しょうじょう仏国ぶっこくはもろもろの無む央数おうしゅの仏国ぶっこくのなかの雄国おうこくなればなり。 無む量りょう清浄しょうじょう仏国ぶっこくはもろもろの無む央数おうしゅの仏国ぶっこくのなかの珍宝ちんぽうなればなり。 無む量りょう清浄しょうじょう仏国ぶっこくはもろもろの無む央数おうしゅの仏国ぶっこくのなかの極ごく長じょう久くなればなり。 無む量りょう清浄しょうじょう仏国ぶっこくはもろもろの無む央数おうしゅの仏国ぶっこくの衆傑しゅけつなればなり。 無む量りょう清浄しょうじょう仏国ぶっこくはもろもろの無む央数おうしゅの仏国ぶっこくのなかの広大こうだいなればなり。 無む量りょう清浄しょうじょう仏国ぶっこくはもろもろの無む央数おうしゅの仏国ぶっこくのなかの都みやこ、 自じ然ねんの無為むいなればなり。 無む量りょう清浄しょうじょう仏国ぶっこくは最さい快け明みょう好こうにして、 甚楽じんらくの無む極ごくなればなり。
●所以者何ン。無量清浄仏国ハ為レバ↢最快ニシテ八方上下ノ無央数ノ諸仏国ノ中ノ衆ノ菩薩ノ中ノ王↡也。無量清浄仏国ハ為レバ↢諸ノ无央数ノ仏国ノ中之雄国↡也。無量清浄仏国ハ為レバ↢諸ノ无央数ノ仏国ノ中之珍宝↡也。無量清浄仏国ハ為レバ↢諸ノ無央数ノ仏国ノ中之極長久↡也。無量清浄仏国ハ為レバ↢諸ノ无央数ノ仏国*之衆傑↡也。無量清浄仏国ハ為レバ↢諸ノ無央数ノ仏国ノ中之広大↡也。無量清浄仏国ハ為レバ↢諸ノ無央数ノ仏国ノ中ノ都、自然之无為↡也。無量清浄仏国ハ為レバ↢最快明好ニシテ、甚楽之无極↡也。
無む量りょう清浄しょうじょう仏国ぶっこくの独どく勝しょうたるはいかん。 もと菩ぼ薩さつとなりて道どうを求もとめたまひし時とき、 所願しょがん勇ゆう猛みょう精しょう進じんにして懈おこたらず徳とくを累かさねて致いたすところなるがゆゑにすなはちしかるのみと。
●無量清浄仏国ノ独勝タル者何ン。本為リテ↢菩薩ト↡求メタマヒシ↠道ヲ時、所願勇猛精進ニシテ不↠懈ラ累ネテ↠徳ヲ所ナルガ↠致ス故ニ*乃チ爾ル耳ト。
阿あ逸いつ菩ぼ薩さつすなはちおほきに歓かん喜ぎし長じょう跪き叉手しゃしゅしてまうさく、 仏ぶつ、 無む量りょう清浄しょうじょう仏国ぶっこくのもろもろの阿羅あら漢かん、 般はつ泥洹ないおんし去さるものはなはだ衆しゅ多たにして、 無む央数おうしゅの国こく土どの快け善ぜんの極ごく明みょう好こう最姝さいしゅ無比むひなるを説ときたまふこと、 すなはち独ひとりしかるやと。
●阿逸菩薩則チ大ニ歓喜シ長跪叉手シテ言ク、仏説キタマフコト↢无量清浄仏国ノ諸ノ阿羅漢、般泥洹シ去ル者甚ダ衆多ニシテ、无央数ノ国土ノ快善之極明好最*姝無比ナルヲ↡、乃チ独リ爾ル乎ト。
仏ぶつのたまはく、 無む量りょう清浄しょうじょう仏国ぶっこくのもろもろの菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かんの所しょ居ごの七宝しっぽうの舎宅しゃたくのなかに、 虚こ空くうのなかにありて居おるものあり、 なかに地じにありて居おるものあり。 なかに意こころに舎宅しゃたくをしてもつとも高たかからしめんと欲ほっするものあらば、 舎宅しゃたくすなはち高たかし。 なかに意こころに舎宅しゃたくをしてもつとも大だいならしめんと欲ほっするものあらば、 舎宅しゃたくすなはち大だいなり。 なかに意こころに舎宅しゃたくをして虚こ空くうのなかにあらしめんと欲ほっするものあらば、 舎宅しゃたくすなはち虚こ空くうのなかにあり。 みな自じ然ねんに意こころに随したがひ作為さいするところのごとくあり。
●仏言ク、无量清浄0247仏国ノ諸ノ菩薩・阿羅漢ノ所居ノ七宝ノ舎宅ノ中ニ、有リ↧在リテ↢虚空ノ中ニ↡居ル者↥、中ニ有リ↢在リテ↠地ニ居ル者↡。中ニ有ラバ↧意ニ欲スル↠令メムト↢舎宅ヲシテ最モ高カラ↡者↥、舎宅則チ高シ。中ニ有ラバ↧意ニ欲スル↠令メムト↢舎宅ヲシテ最モ大ナラ↡者↥、舎宅則チ大ナリ。中ニ有ラバ↧意ニ欲スル↠令メムト↣舎宅ヲシテ在ラ↢虚空ノ中ニ↡者↥、舎宅則チ在リ↢虚空ノ中ニ↡。皆自然ニ随ヒ↠意ニ在リ↠所ノゴトク↢作為スル↡。
なかに殊ことにその舎宅しゃたくをして意こころに随したがひ作為さいするところのごとくせしむることあたはざるものあり。 ゆゑはいかん。 なかによくするものあるは、 みなこれ前ぜん世せ宿命しゅくみょうに道どうを求もとむる時とき、 慈じ心しんをもつて精しょう進じんしますます諸善しょぜんをなして徳とく重おもきがよく致いたすところなり。 なかに致いたすことあたはざるものあるは、 みなこれ前ぜん世せ宿命しゅくみょうに道どうを求もとむる時とき、 慈じ心しんをもつて精しょう進じんせず善ぜんをなすこと少すくなく徳とく小しょうなればなり。 ことごとくおのおの自じ然ねんにこれを得う。
●中ニ有リ↧殊ニ不ル↠能ハ↠令ムルコト↣其ノ舎宅ヲシテ随ヒ↠意ニ所ノゴトクセ↢作為スル↡者↥。所以者何ン。中ニ有ルハ↢能クスル者↡、皆是前世宿命ニ求ムル↠道ヲ時、慈心ヲモテ精進シ益マス作シテ↢諸善ヲ↡徳重キガ所↢能ク致ス↡也。中ニ有ルハ↢不ル↠能ハ↠致スコト者↡、皆是前世宿命ニ求ムル↠道ヲ時、不↢慈心ヲモテ精進セ↡作スコト↠善ヲ少ク徳小ナレバナリ。*悉ク各ノ自然ニ得↠之ヲ。
衣え被ひ服ぶくし飲食おんじきするところはともに自じ然ねん平びょう等どうなるのみ。 このゆゑに同おなじからざるは、 徳とくに大だい小しょうあれば、 勇ゆう猛みょうなるものを別べっ知ちし、 衆しゅをして見みしむるのみと。
●所ハ↢衣被服シ飲食スル↡倶ニ自然平等ナル耳。是ノ故ニ不ルハ↠同ジカラ、徳ニ有レバ↢大小↡、別↢知シ勇猛ナルモノヲ↡、令ムル↢衆ヲシテ見↡耳ト。
仏ぶつ、 阿あ逸いつ菩ぼ薩さつに告つげたまはく、 なんぢこの第六だいろく天てん上じょうの天王てんのうの所しょ居ごの処ところを見みるやいなやと。 阿あ逸いつ菩ぼ薩さつまうさく、 ややしかなり、 みなこれを見みると。
●仏告ゲタマハク↢阿逸菩薩ニ↡、若見ルヤ↢是ノ第六天上ノ天王ノ所居ノ処ヲ↡不耶ト。阿逸菩薩言ク、唯然ナリ、皆見ルト↠之ヲ。
仏ぶつのたまはく、 無む量りょう清浄しょうじょう仏国ぶっこく土どの講堂こうどう・舎宅しゃたく、 ますますまた第六だいろく天王てんのうの所しょ居ごの処ところに勝すぐるること百ひゃく千億せんおく万倍まんばいなり。
●仏言ク、無量清浄仏国土ノ講堂・舎宅、倍ス復勝ルルコト↢第六天王ノ所居ノ処ニ↡百千億万倍也。
無む量りょう清浄しょうじょう仏国ぶっこくは、 そのもろもろの菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かん、 ことごとくみなあきらかに視みあきらかに聴きき、 ことごとくまた八方はっぽう上じょう下げ、 去こ・来らい・現在げんざいの事じを見けん知ちす、 またもろもろの無む央数おうしゅの天てん上じょう・天てん下げの人民にんみんおよび蜎けん飛ぴ蠕動ねんどうの類たぐいを知しり、 みなことごとく心しん意いに念ねんずるところの善悪ぜんあく、 口くちにいはんと欲ほっするところを知しる。 みないづれの歳としいづれの劫こうのなかに度ど脱だつを得え人道にんどうを得え、 まさに無む量りょう清浄しょうじょう仏国ぶっこくに往おう生じょうすべきことを知しり、 菩ぼ薩さつ道どうをなし阿羅あら漢道かんどうを得うべきことを知しり、 みなあらかじめこれを知しれり。
●无量清浄仏国ハ、其ノ諸ノ菩薩・阿羅漢、悉ク皆洞アキラカニ視徹アキラカニ聴キ、悉ク復見↢知ス八方上下、去・来・現在之事ヲ↡、復知リ↢諸ノ無央数ノ天上・天下ノ人民及ビ蜎飛蠕動之類ヲ↡、皆悉ク知ル↢心意ニ所ノ↠念ズル善悪、口ニ所ヲ↟欲スル↠言ハムト。皆知リ↠当キコトヲ↧何ノ歳何ノ劫ノ中ニ得↢度脱ヲ↡得↢人道ヲ↡、当ニ往↦生ス無量清浄仏国ニ↥、知リ↠当キコトヲ↧作シ↢菩薩道ヲ↡得↦阿羅漢道ヲ↥、皆予メ知0248レリ↠之ヲ。
無む量りょう清浄しょうじょう仏国ぶっこくのもろもろの菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かんのその項こう中ちゅうの光こう明みょう、 みなことごとくおのづから光こう明みょうありて照てらすところ大だい小しょうあり。
○无量清浄仏国ノ諸ノ菩薩・阿羅漢ノ其ノ項中ノ光明、皆悉ク自ラ有リテ↢光明↡所↠照ス大小アリ。
そのもろもろの菩ぼ薩さつのなかに、 最尊さいそんの両りょう菩ぼ薩さつありて、 つねに無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつの左右さうの座ざ辺へんにありて坐侍ざじして政しょう論ろんし、 無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつつねにこの両りょう菩ぼ薩さつとともに対たい坐ざして、 八方はっぽう上じょう下げ、 去こ・来らい・現在げんざいの事じを議ぎしたまふ。 無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつ、 もしこの両りょう菩ぼ薩さつをして八方はっぽう上じょう下げの無む央数おうしゅの諸仏しょぶつの所みもとに到いたらしめんと欲ほっせば、 この両りょう菩ぼ薩さつすなはち飛ひ行ぎょうして、 すなはち八方はっぽう上じょう下げの無む央数おうしゅの諸仏しょぶつの所みもとに到いたる。 心こころの所欲しょよくに随したがひて何が方ほうの仏所ぶっしょにも至到いたる。 この両りょう菩ぼ薩さつ、 すなはちともに飛ひ行ぎょうしてすなはち到いたる。 飛ひ行ぎょうの駃はやく疾ときこと仏ぶつのごとく、 勇ゆう猛みょうなること比ならびなし。
○其ノ諸ノ菩薩ノ中ニ、有リテ↢最尊ノ両菩薩↡、●常ニ在リテ↢无量清浄仏ノ左右ノ座辺ニ↡坐侍シテ政論シ、無量清浄仏常ニ与↢是ノ両菩薩↡共ニ対坐シテ、議シタマフ↢八方上下、去・来・現在之事ヲ↡。无量清浄仏、若シ欲セバ↠使↣令メムト是ノ両菩薩ヲシテ到ラ↢八方上下ノ無央数ノ諸仏ノ所ニ↡、是ノ両菩薩便チ飛行シテ、則チ到ル↢八方上下ノ无央数ノ諸仏ノ所ニ↡。随ヒテ↢心ノ所欲ニ↡至↢到 イタ ル何方ノ仏所ニモ↡。是ノ両菩薩、則チ倶ニ飛行シテ則チ到ル。飛行ノ駃ク疾キコト如ク↠仏ノ、勇猛ナルコト無シ↠比。
その一ひとりの菩ぼ薩さつをはあう楼ら亘こうと名なづけ、 その一ひとりの菩ぼ薩さつをば摩訶まか那なと名なづく。 光こう明みょう・智慧ちえもつとも第一だいいちなり。 その両りょう菩ぼ薩さつの項こう中ちゅうの光こう明みょうはおのおの他た方ほう千せん須しゅ弥み山せんの仏国ぶっこくを焔えん照しょうして、 つねに大だい明みょうなり。 そのもろもろの菩ぼ薩さつの項こう中ちゅうの光こう明みょうはおのおの千億せんおく万まん里りを照てらし、 もろもろの阿羅あら漢かんの項こう中ちゅうの光こう明みょうはおのおの七しち丈じょうを照てらすと。
○其ノ一ノ菩薩ヲバ名ケ↢楼亘ト↡、其ノ一ノ菩薩ヲバ名ク↢摩訶*那ト↡。光明・智慧最モ第一ナリ。其ノ両菩薩ノ項中ノ光明ハ各ノ焔↢照シテ他方千須弥山ノ仏国ヲ↡、常ニ大明ナリ。其ノ諸ノ菩薩ノ*項中ノ光明ハ各ノ照シ↢千億万里ヲ↡、諸ノ阿羅漢ノ*項中ノ光明ハ各ノ照スト↢七丈ヲ↡。
仏ぶつのたまはく、 それ世せ間けんの人民にんみん、 善男ぜんなん子し・善ぜん女人にょにん、 もしもつぱら急きゅうに県官けんかんに遭あふことを恐怖くふするものあらば、 ただみづからこのあう楼ら亘こう菩ぼ薩さつに帰き命みょうせよ。 解げ脱だつを得えざるところのものなからんと。
●仏言ク、其レ世間ノ人民、善男子・善女人、若シ有ラバ↩*一ラ急ニ恐↧怖スル遭フ↢県官ニ↡事ヲ↥者↨、但自ラ帰↢命セヨ是ノ楼亘菩薩ニ↡。無カラムト↧所ノ↠不ル↠得↢解脱ヲ↡者↥也。
*仏説ぶっせつ無む量りょう清浄しょうじょう平びょう等覚どうがく経きょう 巻かん*第だい二に
延書は底本の訓点に従って有国が行った(固有名詞の訓は保証できない)。
底本は◎高麗版(再雕本)¬大蔵経¼所収本。 Ⓐ高麗版(初雕本)¬大蔵経¼所収本、 Ⓑ宋版(思溪版)¬大蔵経¼所収本、 Ⓒ元版(善寧寺版)¬大蔵経¼所収本、 Ⓓ明版(万歴版)¬大蔵経¼所収本 と対校。 ª全部対校º 琉→ⒷⒸⒹ瑠、 項→ⒷⒸⒹ頂、 虎→ⒷⒸⒹ琥
仏…二13字 ⒷⒸⒹになし
後…訳12字 ⒷⒸⒹになし
中→ⒷⒸⒹ中[獲]
如→ⒷⒸⒹ而
姝→ⒷⒸⒹ殊
億→ⒷⒸⒹ億[万]
車→ⒷⒸⒹ硨磲
銀→Ⓐ金
琉→Ⓓ瑠
実 Ⓐになし
浴 ⒷⒸⒹになし
億 ⒷⒸⒹになし
地→Ⓑ池
反→ⒷⒸⒹ及
百→ⒷⒸⒹ百[種]
種→Ⓐ種[種]
自→Ⓐ化
徊→Ⓓ廻
空→ⒷⒸⒹ空[中]
皆 ⒷⒸⒹになし
前為→ⒷⒸⒹ為前
Ⓓここで巻上終り、 次行に 仏説無量清浄平等覚経巻上 の尾題あり
Ⓓ前に 仏説無量清浄平等覚経巻中/後漢月支三蔵支婁迦讖訳 の主題訳者名あり
瑪瑙→ⒷⒸⒹ碼碯
瑪→Ⓐ馬
皆 ⒷⒸⒹになし
皆→Ⓐ者
去→Ⓐ生
糜→ⒷⒸⒹ靡
華 ⒷⒸⒹになし
自→ⒷⒸⒹ自[然]
劫 ⒷⒸⒹになし
大→Ⓐ天
言→ⒷⒸⒹ言[也]
礼→Ⓓ礼[以頭面著仏足悉却坐一面聴経聴経竟諸菩薩皆大歓喜起為無量清浄仏作礼]
陀→Ⓓ阿
養→ⒷⒸⒹ養[更]
土→Ⓐ去
覚→ⒷⒸⒹ学
甚→ⒷⒸⒹ其
諸→ⒷⒸⒹ語
得→ⒷⒸⒹ清
各→ⒷⒸⒹ名
驕=憍ⒷⒸⒹ
惑→ⒷⒸⒹ或
知→ⒷⒸⒹ智
厚→Ⓒ辱
諸 ⒷⒸⒹになし
厭→Ⓐ懕
才→Ⓓ身
尚→Ⓐ常
揵→Ⓓ犍
皆→ⒶⒷⒸⒹ皆[不]
訶 ⒶⒷⒸになし
訶 ⒷⒸになし
曰→ⒷⒸⒹ洹
之…国17字 Ⓐになし
乃→Ⓑ及
悉→ⒷⒸⒹ患
那→ⒷⒸⒹ那[鉢]
項→ⒸⒹ頂
一 ⒷⒸⒹになし
佛…二13字 Ⓓになし(巻を分けず)
仏説 ⒷⒸになし
第二→ⒷⒸ上