二 Ⅲ ⅰ b ハ 結文
^以上四十二対 教法に就くと、 知るべし。 |
已上四十二対 就クト↢教法ニ↡応シ↠知ル |
二 Ⅲ ⅱ 明一乗機
a 就絶対明
イ 顕其機
【27】^▲真実浄信心は、 ▲内因なり。 |
真実浄信心ハ 内因ナリ |
▲摂取不捨は、 外縁なり。 |
摂取不捨ハ 外縁ナリ |
二 Ⅲ ⅱ a ロ 釈其相
【28】^▼本願を信受するは、 ▲前念命終なり。 |
信↢受スルハ本願ヲ↡、前念命終ナリ |
「▲すなはち正定聚の数に入る」 (*論註・上意) と。 文 |
即チ入ルト↢正定聚之数ニ↡」文 |
^▼即得往生は、 ▲後念即生なり。 |
即得往生ハ、後念即生ナリ |
「▲即の時必定に入る」 (*易行品) と。 文 |
「即ノ時入ルト↢必定ニ↡」文 |
また 「▲*必定の菩薩と名づくるなり」 (*地相品・意) と。 文 |
又「名クル↢必定ノ菩薩ト↡也ト」文 |
二 Ⅲ ⅱ a ハ 結具徳
【051029】^▲他力金剛心なりと、 知るべし。 |
他力金剛心也ト、応シ↠知ル |
^▲すなはち弥勒菩薩に同じ。 |
便チ同ジ↢弥勒菩薩ニ↡ |
▼*自力金剛心なりと、 知るべし。 |
自力金剛心也ト、応シ↠知ル |
¬大経¼ (下) には 「▲次如弥勒」 とのたまへり。 文 |
¬大経ニハ¼言ヘリ↢「次如弥勒ト」↡文 |
二 Ⅲ ⅱ b 約相対弁
イ 総標
【30】^二機対 |
二288B機対 |
^一乗円満の機は、 他力なり。 |
一乗円満ノ機ハ他力ナリ |
^*漸教回心の機は、 自力なり。 |
漸教廻心ノ機ハ自力ナリ |
二 Ⅲ ⅱ b ロ 別明
▲ 1信疑対 -賢愚対 |
信疑対 賢愚対 |
2善悪対 3正邪対 |
善悪対 正邪対 |
4是非対 5実虚対 |
是非対 実虚対 |
6真偽対 7浄穢対 |
真偽対 浄穢対 |
-好醜対 -妙粗対 |
好醜対 妙麁対 |
8利鈍対 9奢促対 |
利鈍対 奢促対 |
*-希常対 -強弱対 |
希常対 強弱対 |
-上上下下対 -勝劣対 |
上々下々対 勝劣対 |
*-直入回心対 11明闇対 |
直入廻心対 明闇対 |
二 Ⅲ ⅱ b ハ 結文
^以0511上 十八対 二機に就くと、 知るべし。 |
已上 十八対 就クト↢二機ニ↡応シ↠知ル |
二 Ⅲ ⅱ c 広明機類
イ 標列
【31】^▲また二種の機について、 また二種の性あり。 |
又就イテ↢二種ノ機ニ↡復有リ↢二種ノ性↡ |
^二機とは、 |
289A二機ト者 |
一には↓善機、 |
二には↓悪機なり。 |
一ニハ善機 |
二ニハ悪機ナリ |
一には↓善性、 |
二には↓悪性なり。 |
一ニハ善性 |
二ニハ悪性ナリ |
二 Ⅲ ⅱ c ロ 別釈
(一)明善機
【32】^また↑善機について二種あり。 |
又復就イテ↢善機ニ↡有リ↢二種↡ |
また↓傍正あり。 |
又有リ↢傍正↡ |
一には定機、 |
二には散機なり。 |
一ニハ定機 |
二ニハ散機ナリ |
¬疏¼ (*序分義) に 「▲一切衆生の機に二種あり、 一には定、 二には散なり」 といへり。 文 |
¬疏ニ¼云ヘリ↢「一切衆生ノ機ニ有リ↢二種↡、一ニ者定二ニ者散ナリト」↡文 |
【33】^また↑傍正ありとは、 |
又有リト↢傍正↡者 |
一には菩薩、 大小 |
二には縁覚、 |
一ニハ菩薩 大小 |
二ニハ縁覚 |
三には声聞・*辟支等、 | |
三ニハ声聞・辟支等 | |
四には天、 |
五には人等なり。 |
四ニハ天 |
五ニハ人等ナリ |
二 Ⅲ ⅱ c ロ (二)明善性
【34】^また↑善性について五種あり。 |
又復就イテ↢善性ニ↡有リ↢五種↡ |
一には善性、 |
二には正性、 |
一ニハ善性 |
二ニハ正性 |
三0512には実性、 |
四には是性、 |
289B三ニハ実性 |
四ニハ是性 |
五には真性なり。 |
|
五ニハ真性ナリ |
|
二 Ⅲ ⅱ c ロ (三)明悪機
【35】^また↑悪機について▲七種あり。 |
又復就イテ↢悪機ニ↡有リ↢七種↡ |
一には十悪、 |
二には四重、 |
一ニハ十悪 |
二ニハ四重 |
三には破見、 |
四には破戒、 |
三ニハ破見 |
四ニハ破戒 |
五には五逆、 |
六には謗法、 |
五ニハ五逆 |
六ニハ謗法 |
七には闡提なり。 |
|
七ニハ闡提ナリ |
|
二 Ⅲ ⅱ c ロ (四)明悪性
【36】^また↑悪性について五種あり。 |
又復就イテ↢悪性ニ↡有リ↢五種↡ |
一には悪性、 |
二には邪性、 |
一ニハ悪性 |
二ニハ邪性 |
三には虚性、 |
四には非性、 |
三ニハ虚性 |
四ニハ非性 |
五には偽性なり。 |
|
五ニハ偽性ナリ |
|
二 Ⅲ ⅲ 結引諸文【引証成義】
a 玄義分
【37】^光明寺の和尚 (善導) のいはく (玄義分)、 |
光明寺ノ和尚ノ曰ハク |
「▲道俗時衆等、 |
「道290A俗時衆等 |
おのおの無上の心を発せども、 |
各ノ発セドモ↢無上ノ心ヲ↡ |
生死はなはだ厭ひがたく、 |
生死甚ダ難ク↠厭ヒ |
仏法また欣ひがたし。 |
仏法復難シ↠忻ヒ |
ともに金剛の志を発して、 |
共ニ発シテ↢金剛ノ志ヲ↡ |
横に四流を超断せよ。 |
横ニ超↢断セヨ四流ヲ↡ |
弥陀界に*観入して、 |
観↢入シテ弥陀界ニ↡ |
帰依し合掌し礼したてまつ*れ。 |
帰依シ合掌シ礼シタテマツレ |
▲*相応一念の後、 |
相応一念ノ後 |
果、 涅槃を得んひと0513」 といへりと。 文 |
果得ン↢涅槃ヲ↡者トイヘリト」文 |
二 Ⅲ ⅲ b 浄土論
【38】^¬*浄土論¼ にいはく、 |
¬浄土論ニ¼曰ク |
「▲世尊、 われ一心に、 |
「世尊我一心ニ |
尽十方無礙光如来に |
帰↢命シタテマツリテ尽十方 |
帰命したてまつりて、 |
無光如来ニ↡ |
◆安楽国に生ぜんと願ず。 |
願ズ↠生ゼント↢安楽国ニ↡ |
◆われ修多羅の |
我依リテ↢修多羅ノ |
真実功徳相によりて、 |
真実功徳相ニ↡ |
願偈総持を説きて、 |
説ク↢願偈総持ヲ↡ |
仏教と相応せり」 と。 文 |
与↢仏教↡相応セリトノタマヘリ」文 |
二 Ⅲ ⅲ c 無量寿経
【39】^¬*仏説無量寿経¼ (下) にのたまはく、 *康僧鎧三蔵訳 |
¬仏説無量寿経ニ¼言ク 康僧鎧三蔵訳 |
^「▲ªわが滅度の後をもつて、 また疑惑を生ずることを得ることなかれ。 ◆当来の世に経道滅尽せんに、 われ慈悲哀愍をもつて、 特に此の経を留めて止住すること百歳せん。 それ衆生ありて、 この経に値ふもの、 意の所願に随ひてみな得度すべしº と。 |
「無レ↠得ルコト↧以テ↢我ガ滅度之後ヲ↡、復生ズルコトヲ↦疑惑ヲ↥。当来之世ニ、経道滅尽センニ、我以テ↢慈悲哀愍ヲ↡、特ニ留メテ↢此ノ経ヲ↡、止住スルコト百歳セン。其レ有リテ↢衆生↡、値フ↢斯ノ経ニ↡者、随ヒテ↢意ノ所願290Bニ↡、皆可シト↢得度ス↡。 |
^◆仏、 弥勒に語りたまはく、 ª如来の興世、 値ひがたく見たてまつりがたし。 諸仏の経道、 得がたく聞きがたし。 菩薩の勝法、 諸波羅蜜、 聞くを得ることまた難し。 善知識に遇ひ、 法を聞き、 よく行ずること、 これまた難しとす。 ◆もしこの経を聞きて信楽し受持すること、 難のなかの難、 この難に過ぎたるはなけん。 |
仏語リタマハク↢弥勒ニ↡。如来ノ興世、難ク↠値ヒ難シ↠見タテマツリ。諸仏ノ経道、難ク↠得難シ↠聞キ。菩薩ノ勝法、諸波羅密、得ルコト↠聞クヲ亦難シ。遇ヒ↢善知識ニ↡、聞キ↠法ヲ能ク行ズルコト、此亦為↠難シト。若シ聞キテ↢斯ノ経ヲ↡、信楽シ受持スルコト、難ノ中之難、無ケン↠過ギタルハ↢此ノ難ニ↡。 |
^◆このゆゑにわが法かくのごとくなしき、 かくのごとく説き、 かくのごとく教ふ。 まさに信順して法のごとく修行すべしº」 と。 文 |
是ノ故ニ我ガ法、如ク↠是クノ作シキ、如ク↠是クノ説キ、如ク↠是クノ教フ、応シト↢当ニ信順シテ如ク↠法ノ修行ス↡。」文 |
二 Ⅲ ⅲ d 如来会
【051440】^¬*無量寿如来会¼ (下) にのたまはく、 *菩提流志三蔵訳 |
¬無量寿如来会ニ¼言ハク 菩提流支三蔵訳 |
「▲*如来の勝智、 遍虚空の |
「如来ノ勝智徧虚空ノ |
所説の義言は、 ただ仏のみの悟なり。 |
所説ノ義言ハ唯仏ノミノ悟ナリ |
このゆゑに博く諸智土を聞きて、 |
是ノ故ニ博ク聞キテ↢諸智土ヲ↡ |
わが教、 如実の言を信ずべし」 と。 文 |
応シト↠信ズ↢我ガ教如実ノ言ヲ↡」文 |
二 Ⅲ ⅲ e 平等覚経
【41】^¬*無量清浄平等覚経¼ (二) にのたまはく、 *帛延三蔵訳 |
¬無量清浄平等覚経ニ¼言ク 帛延三蔵訳 |
「▲速疾に超えてすなはち、 |
「速疾ニ超エテ便チ可シ↠到ル↢ |
安楽国の世界に到るべし。 |
安楽国之世界ニ↡ |
無量光明土に至りて、 |
至リテ↢無量光明土ニ↡ |
無数の仏に供養したてまつれ」 と。 文 |
供↢養シタテマツレト於無数ノ仏ニ↡」文 |
二 Ⅲ ⅲ f 大阿弥陀経
【42】^¬**諸仏阿弥陀三耶三仏薩楼仏檀過度人道経¼ (下) にのたまはく、 *支謙三蔵訳 |
¬諸仏阿弥陀三耶三仏薩楼仏檀過度人道経ニ¼言ク 支謙三蔵訳 |
^「▲われ般泥洹して去きて後、 経道留止せんこと千歳せん。 千歳の後、 経道断絶せん。 われみな慈哀して、 ことにこの経法を留めて止住せんこと百歳せん。 百歳のうちに竟らん。 いまし休止し断絶せん。 心の所願にありてみな道を得べし」 と。 略出 |
「我291A般泥洹シテ去キテ後、経道留止センコト千歳セン。千歳ノ後、経道断絶セン。我皆慈哀シテ、特ニ留メテ↢是ノ経法ヲ↡、止住センコト百歳セン。百歳ノ中ニ竟ラン。乃シ休止シ断絶セン。在リテ↢心ノ所願ニ↡、皆可シト↠得↠道ヲ。」 略出 |
二 Ⅲ ⅲ g 照師義疏
【43】^*元照律師 ¬*阿弥陀経の義疏¼ にいはく、 大智律師なり |
元照律師¬阿弥陀経ノ義疏ニ¼云ク 大智律師也 |
^「ª*勢至章º にいはく、 ª十方の如来、 衆生を憐念したまふこと、 母の子を憶ふがごとしº と。 ¬大論¼ (*大智度論) にいはく、 ª▲たとへば魚母のもし子を念はざ0515れば、 子すなはち壊爛する等のごとしº と。 |
「勢至章ニ云ク、十方ノ如来、憐↢念シタマフコト衆生ヲ↡、如シト↢母ノ憶フガ↟子ヲ。¬大論ニ¼云ク、譬ヘバ如シト↢魚母ノ若シ不レバ↠念ハ↠子ヲ、子即チ壊爛スル等ノ。 |
^阿耨多羅、 ここには無上と翻ず、 三藐は正等といふ、 三菩提は正覚といふ。 すなはち仏果の号なり。 |
阿耨多羅、此ニハ翻ズ↢无上ト↡。三藐ハ云フ↢正等ト↡。三菩提ハ云フ↢正覚ト↡。即チ仏果ノ号ナリ。 |
^▼*薄地の凡夫、 業惑に纏縛せられて五道に流転せること百千万劫なり。 たちまちに浄土を聞きて、 志願して生を求む。 一日名を称すればすなはちかの国に超ゆ。 諸仏護念してただちに菩提に趣かしむ。 |
薄地ノ凡夫、業惑ニ纏縛セラレテ、流↢転セルコト五道ニ↡、百千万劫ナリ。忽ニ聞キテ↢浄土ヲ↡、志願シテ求ム↠生ト。一日称スレバ↠名ヲ、即チ超フ↢彼ノ国ニ↡。諸仏護念シテ、直ニ趣カシム↢菩提ニ↡。 |
^謂ふべし、 万劫にも逢ひがたし。 千生に一たび誓に遇へり。 今日より未来を終尽すとも、 在所にして讃揚し、 多方にして勧誘せん。 所感の身土・所化の機縁、 阿弥陀と等しくして異あることなけん。 この心極まりなし、 ただ仏、 証知したまへ。 |
可シ↠謂フ、万劫ニモ難シ↠逢ヒ、千生ニ一タビ遇291Bヘリ↠誓ニ。従リ↢今日↡終↢尽ストモ未来ヲ↡、在処ニシテ讃揚シ、多方ニシテ勧誘セン。所感ノ身土・所化ノ機縁、与↢阿弥陀↡等シクシテ、无ケン↠有ルコト↠異。此ノ心罔シ↠極リ、唯仏証知シタマヘ。 |
^このゆゑに下に三たび信を勧む。 わが語を信ずるものは、 教を信ずといふなり。 *わが十方諸仏を信ぜざるがごとしと、 あに虚妄なるをや」 と。 略出 |
是ノ故ニ、下ニ三タビ勧ム↠信ヲ。信ズル↢我ガ語ヲ↡者ハ、謂フ↠信ズト↠教ヲ也。如シト↠不ルガ↠信ゼ↢我ガ十方諸仏ヲ↡、豈ニ虚妄ナルヲ乎ト。」 略出 |
*本にいはく |
本ニ云ク |
*建長七年乙卯八月二十七日これを書く。 |
建長七年 乙卯 八月廿七日書ク↠之ヲ |
愚禿*親鸞八十三歳 |
愚禿親鸞 八十三歳 |
|
先年随得本且書下帖今日為満部追写当巻只為備自見乍振折臂初三丁余雖励之猶不堪之間仮両筆終一帖畢坐筆麁註等任自由之愚案之子細如截下帖之奥而已于時*康永元年壬午九月十一日記之 存覚 五十三歳 |
0516愚禿鈔 下
0292
・述意
【44】^*賢者の信を聞きて、 愚禿が心を顕す。 |
聞293Aキテ↢賢者ノ信ヲ↡ 顕ス↢愚禿ガ心ヲ↡ |
^賢者の信は、 内は賢にして外は愚なり。 |
賢者ノ信ハ 内ハ賢ニシテ外ハ愚也 |
^愚禿が心は、 内は愚にして外は賢なり。 |
愚禿ガ心ハ 内ハ愚ニシテ外ハ賢也 |
二 Ⅳ 重引弁心相
ⅰ【略標疏文】
a 科釈
【45】^*唐朝の*光明寺の和尚 (*善導) の ¬観経義¼ (*散善義) にいはく、 |
唐朝ノ光明寺ノ和尚ノ¬観経義ニ¼云ク |
^「▲まづ上品上生の位のなかについて、 乃至 ◆一には ª仏告阿難º より以下は、 すなはちならべて二の意を標す。 ◆一には告命を明かす。 ◆二にはその位を弁定することを明かす。 これすなはち大乗の上善を修学する凡夫人なり。 |
「先ヅ就イテ↢上品上生ノ位ノ中ニ↡、 乃至 一ニハ従リ↢仏告阿難↡以下ハ、即チ双ベテ標ス↢二ノ意ヲ↡。一ニハ明ス↢告命ヲ↡、二ニハ明ス↣辨↢定スルコトヲ其ノ位ヲ↡。此即チ修↢学スル大乗ノ上善ヲ↡凡夫人也。 |
^◆三には ª若有衆生º より下 ª即便往生º に至るまでこの0517かたは、 まさしく総じて有生の類を挙ぐることを明かす。 すなはちそれに四あり。 ◆一には能信の人を明かす。 ◆二には往生を求願することを明かす。 ◆三には発心の多少を明かす。 ◆四には*得生の益を明かす。 |
三ニハ従リ↢若有衆生↡下、至ルマデ↢即便往生ニ↡已来タハ、正シク明ス↣総ジテ挙グルコトヲ↢有生之類ヲ↡。即チ有リ↢其ニ四↡。一ニハ明ス↢能信之人293Bヲ↡、二ニハ明ス↣求↢願スルコトヲ往生ヲ↡、三ニハ明ス↢発心ノ多少ヲ↡、四ニハ明ス↢得生之益ヲ↡。 |
^◆四には ª何等為三º より下 ª必生彼国º に至るまでこのかたは、 まさしく三心を弁定してもつて正因となすことを明かす。 すなはち二あり。 ◆一には世尊、 機に随ひて益を顕すこと、 意密にして知りがたし。 仏みづから問ひてみづから徴したまふにあらざれば、 解を得るに由なきことを明かす。 ◆二には如来、 還りてみづから前の三心の数を答へたまふことを明かす。 |
四ニハ従リ↢何等為三↡下、至ルマデ↢必生彼国ニ↡已来タハ、正シク明ス↧辨↢定シテ三心ヲ↡、以テ為スコトヲ↦正因ト↥。即チ有リ↠二。一ニハ明ス↧世尊随ヒテ↠機ニ顕スコト↠益ヲ、意密ニシテ難シ↠知リ、非ザレバ↢仏自ラ問ヒテ自ラ徴シタマフニ↡、无キコトヲ↞由↠得ルニ↠解ヲ。二ニハ明ス↣如来還リテ自ラ答ヘタマフコトヲ↢前ノ三心之数ヲ↡。 |
二 Ⅳ ⅰ b 正釈
イ 牒経
^◆¬経¼ (観経) にのたまはく、 ª↓一には至誠心º。 |
¬経ニ¼云ク、一ニ者至誠心。 |
二 Ⅳ ⅰ b ロ 釈字
^◆至とは真なり、 誠とは実なり。 |
至ト者真ナリ、誠ト者実ナリ、 |
二 Ⅳ ⅰ b ハ 釈義
(一)総釈
(Ⅰ)直弁
^◆一切衆生、 身口意業に修するところの解行、 *かならず真実心のうちになしたまへるを須ゐんことを明かさんと欲ふ。 |
欲フ↠明サント↣一切衆生、身口意業ニ所ノ↠修スル解行、必ズ須ンコトヲ↢真実心ノ中ニ作シタマヘルヲ↡。 |
二 Ⅳ ⅰ b ハ (一)(Ⅱ)簡非
^◆外に賢善精進の相を現ずることを得ざれ、 内に虚仮を懐ければなり。 ◆貪瞋・邪偽・奸詐百端にして悪性侵めがたし、 事、 蛇蝎に同じ。 三業を起すといへども、 名づけて雑毒の善となす、 また虚仮の行と名づく、 真実の業と名づけざるなり。 |
不レ↠得↣外ニ現ズルコトヲ↢賢善精進之相ヲ↡、内ニ懐ケレバナリ↢虚仮ヲ↡。貪瞋・邪偽・奸294A詐百端ニシテ、悪性難シ↠侵メ。事同ジ↢蛇蝎ニ↡。雖モ↠起スト↢三業ヲ↡、名テ為ス↢雑毒之善ト↡、亦名ク↢虚仮之行ト↡、不ル↠名ケ↢真実ノ業ト↡也。 |
^◆もしかくのごとき安心・起行をなすは、 たとひ身心を苦励して日夜十二時、 急に走め急になすこと、 頭燃を灸ふがごとくするは、 すべて雑毒の善と名づく。 この雑毒の行を回してかの仏の浄土に求生せんと欲ふは、 これかならず不可なり。 |
若シ作ス↢如キ↠此クノ安心・起行ヲ↡者、縦使ヒ苦↢励シテ身心ヲ↡、日夜十二時、急ニ走メ急ニ作スコト如クスル↠灸フガ↢頭燃ヲ↡者、衆テ名ク↢雑毒之善ト↡。欲フ↧廻シテ↢此ノ雑毒之行ヲ↡、求↦生セント彼ノ仏ノ浄土ニ↥者、此必ズ不可也。 |
二 Ⅳ ⅰ b ハ (一)(Ⅲ)示由
^◆なにをもつてのゆゑに、 まさしくかの阿弥陀仏、 因中に菩薩の行を行じたまひし時、 乃至一念一刹那も、 三業の所修みなこれ真実心のなかに*なしたまひしによりてなり。 ^▽おほよ0518そ施したまふところ趣求をなす、 またみな真実なりと。 |
何ヲ以テノ故ニ。正シク由リテナリ↧彼ノ阿弥陀仏、因中ニ行ジタマフシ↢菩薩ノ行ヲ↡時、乃至一念一刹那モ、三業ノ所修、皆是真実心ノ中ニ作シタマヒシニ↥。凡ソ所↠施シタマフ為ス↢趣求ヲ↡、亦皆真実ナリト。 |
二 Ⅳ ⅰ b ハ (二)別釈
(Ⅰ)標二種
^◆また真実に二種あり、 一には↓自利真実、 二には↓利他真実なり」 と。 文 |
又真実ニ有リ↢二種↡。一ニ者自利真実、二ニ者利他真実ナリト。」 文 |
二 Ⅳ ⅰ b ハ (二)(Ⅱ)別釈
(ⅰ)助釈利他
【46】^↑利他真実について、 また二種あり。 |
就イテ↢利他真実ニ↡亦有リ↢二種↡ |
^一には、 「▲おほよそ施したまふところ趣求をなすは、 またみな真実なり」 と。 |
一ニ者凡ソ所↠施シタマフ為スハ↢趣求ヲ↡、亦皆真実ナリト。 |
^二には、 「▲*不善の三業は、 かならず真実心のなかに捨てたまひしを須ゐよ。 またもし善の三業を起さば、 かならず真実心のなかになしたまひしを須ゐて、 ◆内外明闇を簡ばず、 みな真実を須ゐるが◆ゆゑに至誠心と名づく」 と。 文 |
二ニ者不善ノ三業ハ必ズ須ヰヨ↢真実心ノ中ニ捨テタマヒシヲ↡、又若シ起サ↢善294Bノ三業ヲ↡者、必ズ須ヰテ↢真実心ノ中ニ作シタマヒシヲ↡、不↠簡バ↢内外明闇ヲ↡、皆須ヰルガ↢真実ヲ↡故ニ名クト↢至誠心ト↡ 文 |
二 Ⅳ ⅰ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)引自利文
(a)標
【47】^「▲↑自利真実といふは、 また二種あり。 |
「言フ↢自利真実ト↡者、復有リ↢二種↡。 |
二 Ⅳ ⅰ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)釈
(イ)竪出真実
^◆一には、 真実心のなかに自他の諸悪および穢国等を制捨して、 行住坐臥に ª一切菩薩の諸悪を制捨するに同じく、 われもまたかくのごとくせんº と想へとなり。 ^◆二には、 真実心のなかに自他凡聖等の善を勤修すべしと。 |
一ニ者真実心ノ中ニ、制↢捨シテ自他ノ諸悪及ビ穢国等ヲ↡、行住坐臥ニ、想フ↧同ジク↣一切菩薩ノ制↢捨スルニ諸悪ヲ↡、我モ亦如クセムト↞是ノ也。二ニ者真実心ノ中ニ、勤↢修スベシト自他凡聖等ノ善ヲ↡。 |
二 Ⅳ ⅰ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)横出真実
[一]口業
^◆↓真実心のなかの口業に、 かの阿弥陀仏および依正二報を讃嘆すべし。 また↓真実心のなかの口業に、 三界六道等の自他の依正二報、 苦悪の事を毀厭し、 また一切衆生三業所為の善を讃嘆すべし。 もし善業にあらずは、 敬みてこれを遠ざかれ、 また随喜せざれとなり。 |
真実心ノ中ノ口業ニ、讃↢嘆スベシ彼ノ阿弥陀仏及ビ依正二報ヲ↡。又真実心ノ中ノ口業ニ、毀↢厭シ三界六道等ノ自他ノ依正二報、苦悪之事ヲ↡、亦讃↢嘆スベシ一切衆生三業所為ノ善ヲ↡。若シ非ズ↢善業ニ↡者、敬ミ而遠ザカレ↠之ヲ、亦不レト↢随喜セ↡也。 |
二 Ⅳ ⅰ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[二]身業
^◆また↓真実心の0519なかの身業に、 合掌し礼敬して、 四事等をもつてかの阿弥陀仏および依正二報を供養したてまつれ。 また↓真実心のなかの身業に、 この生死三界等の自他の依正二報を軽慢し厭捨すべし。 |
又真実心ノ中ノ身業ニ、合掌シ礼敬シテ、四事等ヲモテ供↢養シタテマツレ彼ノ阿弥陀仏及ビ依正二報ヲ↡。又真実心ノ中ノ身業ニ、軽↢慢シ厭↣捨スベシ此ノ生死三界等ノ自他ノ依正二報ヲ↡。 |
二 Ⅳ ⅰ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[三]意業
^◆また↓真実心のなかの意業に、 かの阿弥陀仏および依正二報を思想し観察し憶念して、 目の前に現ぜるがごとくすべし。 また↓真実心のなかの意業に、 この生死三界等の自他の依正二報を軽賎し厭捨すべし」 となり。 文 |
又真実心295Aノ中ノ意業ニ、思↢想シ観↣察シ憶↤念シテ彼ノ阿弥陀仏及ビ依正二報ヲ↡、如クスベシ↠現ゼルガ↢目ノ前ニ↡。又真実心ノ中ノ意業ニ、軽↢賎シ厭↣捨スベシトナリ此ノ生死三界等ノ自他ノ依正二報ヲ↡。」 文 |
二 Ⅳ ⅱ 広明三心
a 正明三心
イ 至誠心
(一)就文略定
(二)就義広判
(Ⅰ)正明二種
【48】^「↑一には至誠心」 といふは、 至とは真なり、 誠とは実なり。 すなはち真実なり。 真実に二種あり。 |
一ニ者至誠心トイフ者 至ト者真ナリ、誠ト者実ナリ、即チ真実也 真実ニ有リ二種 |
^一には↑自利真実なり。 |
一ニ者自利真実ナリ |
難行道 |
聖道門 |
難行道 |
聖道門 |
竪超 即身是仏・即身成仏、 自力なり。 |
竪出 自力のなかの漸教、 歴劫修行なり。 |
竪超 即身是仏即身成仏自力也 |
竪出 自力ノ中之漸教歴劫修行也 |
^二には↑利他真実なり。 |
二ニ者利他真実ナリ |
易行道 |
浄土門 |
易行道 |
浄土門 |
横超 如来の誓願他力なり。 |
横出 他力のなかの自力なり。 定0520散諸行なり。 |
横超 如来ノ誓願他力也 |
横出 他力ノ中之自力ナリ定散諸行也 |
二 Ⅳ ⅱ a イ (二)(Ⅱ)別釈自利
(ⅰ)分別二門
【49】^↑自利真実について、 また二種あり。 |
就295Bイテ↢自利真実ニ↡復有リ↢二種↡ |
^一には*厭離真実なり。 |
一ニ者厭離真実ナリ |
聖道門 |
難行道 |
聖道門 |
難行道 |
竪出 |
自力 |
竪出 |
自力 |
竪出とは難行道の教なり、 厭離をもつて本とす、 自力の心なるがゆゑなり。 |
竪出ト者難行道之教ナリ、以テ↢厭離ヲ↡為↠本ト、自力之心ナルガ故也 |
^二には*欣求真実なり。 |
二ニ者忻求真実ナリ |
浄土門 |
易行道 |
浄土門 |
易行道 |
↓横出 |
他力 |
横出 |
他力 |
横出とは易行道の教なり、 欣求をもつて本とす、 なにをもつてのゆゑに、 願力によりて生死を厭捨せしむるがゆゑなりと。 |
横出ト者易行道之教ナリ、以テ↢忻求ヲ↡為↠本ト、何ヲ以テノ故ニ、由リテ↢願力ニ↡令ムルガ↣厭↢捨セ生死ヲ↡之故也ト |
二 Ⅳ ⅱ a イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)弁明横出
【50】^また↑横出の真実について、 また三種あり。 |
又就イテ↢横出ノ真実ニ↡、復有リ↢三種↡ |
^一には↑口業に欣求真実、 |
296A一ニ者口業ニ忻求真実 |
↑口業に厭離真実なり、 |
口業ニ厭離真実ナリ |
^二0521には↑身業に欣求真実、 |
二ニ者身業ニ忻求真実 |
↑身業に厭離真実なり、 |
身業ニ厭離真実ナリ |
^三には↑意業に欣求真実、 |
三ニ者意業ニ忻求真実 |
↑意業に厭離真実なり。 |
意業ニ厭離真実ナリ |
二 Ⅳ ⅱ a イ (二)(Ⅱ)(ⅲ)指示文段
【51】^宗師 (善導) の釈文を案ずるに、 △「一者真実心中」 以下より、 「自他凡聖等善」 に至るまでは、 厭離を先とし欣求を後とす。 すなはちこれ難行道、 自力竪出の義なり。 △「真実心中口業」 以下より、 「自他依正二報」 に至るまでは、 すなはちこれ易行道、 他力横出の義なり。 |
按ズルニ↢宗師ノ釈文ヲ↡、従リ↢「一者真実心中」已下↡、至ルマデ↢「自他凡聖等善ニ」↡者、厭離ヲ為↠先ト、忻求ヲ為↠後ト。則チ是難行道・自力・竪出之義也。従リ↢「真実心中口業」已下↡、至ルマデ↢「自他依正二報ニ」者、則チ是易行道・他力・横出之義也。 |
二 Ⅳ ⅱ a ロ 深信
(一)略標疏文
(Ⅰ)本疏
(ⅰ)牒経釈名
【52】^「▲二には深心。 ◆深心といふは、 すなはちこれ深信の心なり。 また二種あり。 |
「二ニ者深心。言フ↢深心ト↡者、即チ是深信之心也。亦有リ↢二種↡。
|
二 Ⅳ ⅱ a ロ (一)(Ⅰ)(ⅱ)弁深信相
^◆一には、 決定して ª自身は現にこれ罪悪生死の凡夫、 曠劫よりこのかたつねに没し、 つねに流転して、 出離の縁あることなしº と深信す。 |
一ニ者決定シテ深↢信ス自身ハ現ニ是罪悪生死ノ凡夫、曠劫ヨリ已来タ、常ニ没シ常ニ流転シテ、无シト↟有ルコト↢出離296B之縁↡。 |
^◆二には、 決定して ªかの阿弥陀仏、 四十八願をもつて衆生を摂受したまふ、 疑なく慮りなく、 彼の願力に乗ずれば、 さだめて往生を得º と深信せよ」 となり。 文 |
二ニ者決定シテ深↧信セヨトナリ彼ノ阿弥陀仏四十八願ヲモテ、摂↢受シタマフ衆生ヲ↡、无ク↠疑无ク↠慮、乗ズレバ↢彼ノ願力ニ↡、定メテ得ト↦往生ヲ↥。」 文 |
二 Ⅳ ⅱ a ロ (一)(Ⅱ)私釈
^いまこの深信は他力至極の金剛心、 一乗無上の真実信海なり。 |
今斯ノ深信者、他力至極之金剛心、一乗无上之真実信海也 |
二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)案文分別
(Ⅰ)総列二種
(ⅰ)標
【53】^文の意を案ずるに、 深信について▼↓七深信あり、 ↓六決定あり。 |
按ズルニ↢文ノ意ヲ↡、就イテ↢深信ニ↡有リ↢七深信↡、有リ↢六決定↡ |
二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)列
(a)七深信
^↑七0522深信とは、 |
七深信ト者 |
^▲第一の深信は、 「決定して自身を深信する」 と、 すなはちこれ*自利の信心なり。 |
第一ノ深信ハ、決定シテ深↢信スルト自身ヲ↡、即チ是自利ノ信心也 |
^▲第二の深信は、 「決定して乗彼願力を深信する」 と、 すなはちこれ利他の信海なり。 |
第二ノ深信ハ、決定シテ深↢信スルト乗彼願力ヲ↡、即チ是利他ノ信海也 |
^▲第三には、 「決定して ¬観経¼ を深信す」 と。 |
第三ニハ決定シテ深↢信スト¬観経ヲ¼↡ |
^▲第四には、 「決定して ¬弥陀経¼ を深信す」 と。 |
第四ニハ決定シテ深↢信スト¬弥陀経ヲ¼↡ |
^▲第五には、 「↓唯仏語を信じ決定して行による」 と。 |
第五ニハ唯信ジ↢仏語ヲ↡決定シテ依ルト↠行ニ |
^▲第六には、 「↓この ¬経¼ (観経) によりて深信す」 と。 |
297A第六ニハ依リテ↢此ノ¬経ニ¼↡深信スト |
^▲第七には、 「↓また深心の深信は決定して自*心を建立せよ」 となり。 |
第七ニハ又深心ノ深信者、決定シテ建↢立セヨトナリ自心ヲ↡ |
二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)六決定
^↑*六決定とは、 以上*次いでのごとし、 知るべし。 |
六決定ト者 已上如シ↠次デノ応シ↠知ル |
二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)別顕後三
(ⅰ)明第五信
(a)標
【54】^*第五の「↑唯信仏語」 について、 ↓三遣・▼↓三随順・↓三是名あり。 |
就イテ↢第五ノ唯信仏語ニ↡、有リ↢三遣・三随順・三是名↡ |
二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)列
^↑*三遣とは、 |
三遣ト者 |
一には、 「▲仏の捨て遣めたまふをば、 すなはち捨つ」 と。 |
一ニハ仏ノ遣メタマフヲ↠捨テ者即チ捨ツト |
二には、 「▲仏の行ぜ遣めたまふをば、 すなはち行ず」 と。 |
二ニハ仏ノ遣メタマフヲ↠行ゼ者即チ行ズト |
三0523には、 「▲仏の去ら遣めたまふ処をば、 すなはち去る」 となり。 |
三ニハ仏ノ遣メタマフ↠去ラ処ヲバ即チ去ルトナリ |
^↑*三随順とは、 |
三随順ト者 |
一には、 「▲是を仏教に随順すと名づく」 と。 |
一ニハ是ヲ名クト↣随↢順スト仏教ニ↡ |
二には、 「▲仏意に随順す」 と。 |
二ニハ随↢順スト仏意ニ↡ |
三には、 「▲是を仏願に随順すと名づく」 となり。 |
三ニハ是ヲ名クトナリ↣随↢順スト仏願ニ↡ |
^↑*三是名とは、 |
297B三是名ト者 |
一には、 「▲是を真仏弟子と名づく」 となり。 |
一ニハ是ヲ名クトナリ↢真仏弟子ト↡ |
上の是名とこれと合して三是名なり。 |
上ノ是名ト与↠此合シテ三是名也 |
二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)明第六信
(a)標
【55】^*第六に「↑この ¬経¼ (観経) によりて深信する」 について、 ▼↓六即・↓三印・↓三無・↓六正・↓二了あり。 |
就イテ↧第六ニ依リテ↢此ノ¬経ニ¼↡深信スルニ↥、有リ↢六即・三印・三無・六正・二了↡ |
二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)列
^↑*六即とは、 |
六即ト者 |
一には、 「▲もし仏意に称へば、 ↓即ち印可して ª如是如是º とのたまふ」 と。 |
一ニハ若シ称ヘバ↢仏意ニ↡、即チ印可シテ言フト↢如是如是ト↡ |
二には、 「▲もし仏意に可はざれば、 即ち ªなんぢらが説くところ、 この義不如是º とのたまふ」 と。 |
二ニハ若シ不レ↠可ハ↢仏意ニ↡者、即チ言フト↢汝等ガ所説是ノ義不如是ト↡ |
三0524には、 「▲↓印せざるは、 即ち↓無記・↓無利・↓無益の語に同じ」 と。 |
三ニハ不ル↠印セ者、即チ同ジト↢无記・无利・无益之語ニ↡ |
四には、 「▲↓仏の印可したまふは、 即ち仏の正教に随順するなり」 と。 |
四ニハ仏ノ印可シタマフ者、即チ随↢順スルナリト仏之正教ニ↡ |
五には、 「▲もし仏の所有の言説は、 即ちこれ正教なり」 と。 |
五ニハ若シ仏ノ所有ノ言説ハ、即チ是正教ナリト |
六には、 「▲もし仏の所説は、 即ちこれ了教なり」 となり。 |
298A六ニハ若シ仏ノ所説ハ、即チ是了教ナリトナリ |
^↑三印とは、 |
三印ト者 |
一には↑即印可、 |
二には↑不印、 |
一ニハ即印可 |
二ニハ不印 |
三には↑仏印可なり。 三印は上の六即の文のなかにあり。 |
三ニハ仏印可ナリ 三印者有リ↢上ノ六即ノ文ノ中ニ↡ |
^↑三無とは、 |
三無ト者 |
一には↑無記、 |
二には↑無利、 |
一ニハ无記 |
二ニハ无利 |
三には↑無益なり。 三無は六即の文のなかにあり。 |
三ニハ无益ナリ 三無者有リ↢六即ノ文ノ中ニ↡ |
^▲↑*六正とは、 |
六正ト者 |
一には正教、 |
二には正義、 |
一ニハ正教 |
二ニハ正義 |
三には正行、 |
四には正解、 |
三ニハ正行 |
四ニハ正解 |
五には正業、 |
六には正智なり。 |
五ニハ正業 |
六ニハ正智ナリ |
^↑*二0525了とは、 |
二了ト者 |
一には、 「▲もし仏の所説は、 すなはちこれ了教なり」 と。 |
一ニハ若シ仏ノ所説ハ、即チ是了教ナリト |
二には、 「▲菩薩等の説は、 ことごとく不了教と名づくるなり」 と、 知るべし。 |
二ニハ菩薩等ノ説ハ、尽ク名クル↢不了教ト↡也ト、応シ↠知ル |
二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)明第七信
(a)就人立信
(イ)総明
[一]標
【56】^*第七の「↑また深心の深信」 については、 決定して自心を建立するに、 ↓二別・↓三異・↓一問答あり。 |
就イテ↢第七ノ又深心ノ深信ニ↡者、決定シテ建↢立スルニ自心ヲ↡、有リ↢二別・三異・一問答↡ |
二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(a)(イ)[二]列
[Ⅰ]明二別三異
一には別解、 |
二には別行なり。 |
一ニハ別解 |
二ニハ別行ナリ |
一には異学、 |
二には異見、 |
一ニハ異学 |
二ニハ異見 |
三には異執なり。 |
|
三ニハ異執ナリ |
|
二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(a)(イ)[二][Ⅱ]明一問答
[ⅰ]標
【57】^▲↑一問答のなかに、 ↓四別・↓四信あり。 |
一問答ノ中ニ有リ↢四別・四信↡ |
二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(a)(イ)[二][Ⅱ][ⅱ]列
[a]四別
一には処別、 |
二には時別、 |
一ニハ処別 |
二ニハ時別 |
三には対機別、 |
四には利益別なり。 |
三ニハ対機別ナリ |
四ニハ利益別ナリ |
二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(a)(イ)[二][Ⅱ][ⅱ][b]四信
^↑*四0526信とは、 |
四信ト者 |
一には▲往生の信心、 凡夫の*疑難なり。 |
一ニハ往生ノ信心 凡夫ノ疑難也 |
二には▲清浄の信心、 地前の菩薩・羅漢・辟支仏等の疑難なり。 |
二ニハ清浄ノ信心 地前ノ菩薩・羅漢・辟支仏等ノ疑難也 |
三には▲↓上上の信心なり、 初地以上十地このかたの疑難なり。 |
299A三ニハ上々ノ信心ナリ 初地已上十地已来タノ疑難也 |
四には▲畢竟じて一念疑退の心を起さざるなり。 ↓報仏・化仏の疑難なり。 |
四ニハ畢竟ジテ不ル↠起サ↢一念疑退之心ヲ↡也 報仏・化仏ノ疑難也 |
二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(a)(ロ)別示
[一]上々信心
[Ⅰ]標
【58】^↑上上の信心について、 ↓五実・↓二異あり。 |
就イテ↢上々ノ信心ニ↡、有リ↢五実・二異↡ |
二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(a)(ロ)[一][Ⅱ]列
一には真実決了の義なり、 |
二には実知、 |
一ニハ真実決了ノ義ナリ |
二ニハ実知 |
三には実解、 |
四には実見、 |
三ニハ実解 |
四ニハ実見 |
五には実証なり。 |
|
五ニハ実証ナリ |
|
^▲↑二異とは、 |
二異ト者 |
一には異見、 |
二には異解なり。 |
一ニハ異見 |
二ニハ異解ナリ |
二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(a)(ロ)[二]報化疑難
[Ⅰ]標
【59】^↑報化二仏の疑難について、 ¬弥陀経¼ を引いて信を勧むるに、 ↓二専・↓四同・↓二所化・↓六悪・↓二同・↓三所あり。 |
就イテ↢報化二仏ノ疑難ニ↡、引キテ↢¬弥陀経ヲ¼↡勧ムルニ↠信ヲ、有リ↢二専・四同・二所化・六悪・二同・三所↡ |
二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(a)(ロ)[二][Ⅱ]列
一0527には専念、 |
二には専修なり。 *五種なり。 |
299B一ニハ専念 |
二ニハ専修ナリ 五種也 |
一には同讃、 |
二には同勧、 |
一ニハ同讃 |
二ニハ同勧 |
三には同証、 |
四には同体なり。 |
三ニハ同証 |
四ニハ同体ナリ |
^▲↑二*所化とは、 |
二所化ト者 |
一には、 「一仏の所化はすなはちこれ一切仏の化なり」 と、 |
一ニハ一仏ノ所化ハ、即チ是一切仏ノ化ナリト |
二には、 「一切仏の所化はすなはちこれ一仏の化なり」 となり。 |
二ニハ一切仏ノ所化ハ、即チ是一仏ノ化ナリトナリ |
^▲↑*六悪とは、 |
六悪ト者 |
一には悪時、 |
二には悪世界、 |
一ニハ悪時 |
二ニハ悪世界 |
三には悪衆生、 |
四には悪見、 |
三ニハ悪衆生 |
四ニハ悪見 |
五には悪煩悩、 |
六には*悪邪無信盛時なり。 |
五ニハ悪煩悩 |
六ニハ悪邪无信盛時也 |
^▲↑*二同とは、 |
二同ト者 |
一には十方仏等同心なり、 |
300A一ニハ十方仏等同心ナリ |
二には同時におのおの舌相を出す。 |
二ニハ同時ニ各ノ出ス↢舌相ヲ↡ |
^▲↑*三所とは、 |
三所ト者 |
一には所説、 |
二には所讃、 |
一ニハ所説 |
二ニハ所讃 |
三0528には所証なり。 |
|
三ニハ所証ナリ |
|
二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(a)(ロ)[二][Ⅲ]結
【60】^「▲一仏の所説は、 すなはち一切仏同じくその事を証成したまふなり。 ◆これを人に就いて信を立つと名づくるなり」 と、 知るべし。 |
一仏ノ所説ハ、即チ一切仏同ジク証↢成シタマフ其ノ事ヲ↡也。此ヲ名クル↢就イテ↠人ニ立ツト↟信ヲ也ト、応シト↠知ル |
二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(b)就行立信
(イ)総標二行
【61】^「◆次に行に就いて信を立つとは、 しかるに行に二種あり。 |
次ニ就イテ↠行ニ立ツト↠信ヲ者、然ルニ行ニ有リ↢二種↡ |
一には↓正行、 二には雑行なり」 と。 |
一ニ者正行 |
二ニ者雑行ナリト |
二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(b)(ロ)別釈二行
[一]標
【62】^↑正行について、 ↓五正行・↓六一心・↓六専修あり。 |
就イテ↢正行ニ↡、有リ↢五正行・六一心・六専修↡ |
二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(b)(ロ)[二]列
一には一心に専読誦、 |
二には一心に専観察、 |
一ニハ一心ニ専読誦 |
二ニハ一心ニ専観察 |
三には一心に専礼仏、 |
四には一心に専称仏名、 |
三ニハ一心ニ専礼仏 |
四ニハ一心ニ専称仏名 |
五には一心に専讃嘆供養なり。 |
|
五ニハ一心ニ専讃嘆供養ナリ |
|
^▲またこの正のなかについて、 また二種あり。 |
又300B就イテ↢此ノ正ノ中ニ↡復有リ↢二種↡ |
一には、 「▲一心に弥陀の名号を専念する、 これを正定の業と名づく」 と。 |
一ニ者一心ニ専↢念スル弥陀ノ名号ヲ↡、是ヲ名クト↢正定之業ト↡ |
二には、 「▲もし礼誦等によるはすなはち名づけて助業となす」 となり。 |
二ニ者若シ依ルハ↢礼誦等ニ↡、即チ名ケテ為ストナリ↢助業ト↡ |
^↑*六0529一心とは、 次いでのごとく一心なり。 |
六一心ト者 如ク↠次デノ一心也 |
^↑*六専修とは、 次いでのごとく専修なり。 |
六専修ト者 如ク↠次デノ専修也 |
二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(b)(ハ)広明正雑
[一]双開二種
【63】^また正雑二行について、 また二行あり。 |
又復就イテ↢正雑二行ニ↡、復有リ↢二行↡ |
一には*定行、 |
二には↓*散行なり。 |
一ニ者定行 |
二ニ者散行也 |
【64】^また正雑について、 また二種あり。 |
又復就イテ↢正雑ニ↡復有リ↢二種↡ |
一には↓念仏、 |
二には↓観仏なり。 |
一ニハ念仏 |
二ニハ観仏ナリ |
二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(b)(ハ)[二]錯綜別釈
[Ⅰ]念仏正雑
【65】^また↑念仏について、 また二種あり。 |
又就イテ↢念仏ニ↡復有リ↢二種↡ |
一には↓弥陀念仏、 |
二には↓諸仏念仏なり。 |
一ニハ弥陀念仏 |
二ニハ諸仏念仏ナリ |
法身 報身 応身 化身 |
法身 報身 応身 化身 |
二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(b)(ハ)[二][Ⅱ]正念仏定散
【66】^また↑弥陀念仏について、 二種あり。 |
又復就イテ↢弥陀念仏ニ↡、有リ↢二種↡ |
一には正行*定心念仏、 |
301A一ニハ正行定心念仏ナリ |
二には正行*散心念仏なり。 |
二ニハ正行散心念仏ナリ |
^弥陀定散の念仏、 これを浄土の真門といふ、 また一向専修と名づくるなりと、 知るべし。 |
弥陀定散ノ念仏、是ヲ曰フ↢浄土ノ真門ト↡、亦名クル↢一向専修ト↡也ト、応シ↠知ル |
二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(b)(ハ)[二][Ⅲ]雑念仏定散
【67】^また↑諸仏念仏について、 二種あり。 |
又復就イテ↢諸仏念仏ニ↡、有リ↢二種↡ |
一0530には雑行定心念仏、 |
一ニハ雑行定心念仏 |
二には雑行散心念仏なり。 |
二ニハ雑行散心念仏ナリ |
^諸仏定散の念仏は、 これ雑中の専行なりと、 知るべし。 |
諸仏定散ノ念仏ハ、是雑中之専行也ト、応シ↠知ル |
二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(b)(ハ)[二][Ⅳ]観仏正雑
【68】^また↑観仏について、 また二種あり。 |
又復就イテ↢観仏ニ↡、復有リ↢二種↡ |
一には↓*正の観仏、 |
二には↓*雑の観仏なり。 |
一ニハ正之観仏 |
二ニハ雑之観仏ナリ |
二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(b)(ハ)[二][Ⅴ]正観真仮
【69】^また↑正の観仏について、 また二種あり。 |
又復就イテ↢正ノ観仏ニ↡、復有リ↢二種↡ |
一には*真観、 |
二には*仮観なり。 |
一ニハ真観ナリ |
二ニハ仮観ナリ |
【70】^また真仮について、 十三の観想あり。 |
又復就イテ↢真仮ニ↡、有リ↢十三ノ観想↡ |
▲日想 ▲水想 ▲地想 ▲宝樹想 |
301B日想 水想 地想 宝樹想 |
▲宝池 ▲宝楼 ▲華座 ▲像想 |
宝池 宝楼 華座 像想 |
▲真観 ▲観音 ▲勢至 ▲普観 |
真観 観音 勢至 普観 |
▲雑観 |
雑観 |
二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(b)(ハ)[二][Ⅵ]正中散行
【71】^また↑正の散行について、 四種あり。 |
又復就イテ↢正ノ散行ニ↡、有リ↢四種↡ |
読誦 礼拝 讃嘆 供養 |
読誦 礼拝 讃嘆 供養 |
二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(b)(ハ)[二][Ⅶ]結示雑修
【72】^上よりこのかた*定散六種兼行するがゆゑに雑修といふ、 これを*助業と名0531づく、 名づけて方便仮門となす、 また浄土の要門と名づくるなりと、 知るべし。 |
上ヨリ来タ、定散六種兼行スルガ故ニ曰フ↢雑修ト↡、是ヲ名ク↢助業ト↡、名ケテ為ス↢方便仮門ト↡、亦名クル↢浄土ノ要門ト↡也ト、応シト↠知ル |
二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(b)(ハ)[二][Ⅷ]雑観理事
【73】^また↑雑の観仏について、 二種あり。 また真仮あり。 |
又復就イテ↢雑ノ観仏ニ↡、有リ↢二種↡ 又有リ↢真仮↡ |
一には*無相離念、 |
二には*立相住心なり。 |
一ニハ无相離念 |
二ニハ立相住心ナリ |
二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(b)(ハ)[二][Ⅸ]雑中散行
【74】^また▲↑雑の散行について、 三福あり。 |
又復就イテ↢雑ノ散行ニ↡、有リ↢三福↡ |
一には、 孝養父母・奉事師長・慈心不殺・修十善業なり。 |
一ニハ孝養父母、奉事師長、慈心不殺、302A修十善業ナリ |
二には、 受持三帰・具足衆戒・不犯威儀なり。 |
二ニハ受持三帰、具足衆戒、不犯威儀ナリ |
三には、 発菩提心・深信因果・読誦大乗・勧進行者なり。 |
三ニハ発菩提心、深信因果、読誦大乗、勧進行者ナリト |
二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(b)(ハ)[二][Ⅹ]結示雑行
【75】^上よりこのかた一切の定散の諸善ことごとく雑行と名づく、 六種の正に対して六種の雑あるべし。 雑行の言は人・天・菩薩等の解行雑するがゆゑに雑といふなり。 もとよりこのかた浄土の業因にあらず、 これを発願の行と名づく、 また*回心の行と名づく、 ゆゑに浄土の雑行と名づく、 これを浄土の方便仮門と名づく、 また浄土の要門と名づくるなり。 |
上ヨリ来タ、一切ノ定散諸善悉ク名ク↢雑行ト↡、対シテ↢六種ノ正ニ↡応シ↠有ル↢六種ノ雑↡。雑行之言ハ、人・天・菩薩等ノ解行雑スルガ故ニ曰フ↠雑ト也。自リ↠元来タ非ズ↢浄土ノ業因ニ↡、是ヲ名ク↢発願ノ行ト↡、亦名ク↢廻心ノ行ト↡、故ニ名ク↢浄土ノ雑行ト↡、是ヲ名ク↢浄土ノ方便仮門ト↡、亦名クル↢浄土ノ要門ト↡也。
|
二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(b)(ハ)[三]結示分斉
^おほよそ聖道・浄土、 正雑、 定散、 みなこれ回心の行なりと、 知るべし。 |
凡ソ聖道・浄土、正雑定散、皆是廻心之行也ト、応シ↠知ル |
二 Ⅳ ⅱ a ハ 廻向発願心
(一)引釈疏文
(Ⅰ)牒釈
【76】^「▲三には回向発願心」 とは、 回向発願心といふは、 二種あり。 |
三ニ者廻向発願心ト者、言フ↢廻向発願心ト↡者、有リ↢二種↡ |
二 Ⅳ ⅱ a ハ (一)(Ⅱ)後列
(ⅰ)自利廻向心
^一0532には、 「▲過去・今生の自他所作の善根をもって、 みな真実の深信心のなかに回向してかの国に生れんと願ずるなり」 と。 |
一ニハ過去・今生ノ、自他所作ノ善根ヲモテ、皆真実302Bノ深信心ノ中ニ廻向シテ、願ズルナリト↠生レント↢彼ノ国ニ↡ |
二 Ⅳ ⅱ a ハ (一)(Ⅱ)(ⅱ)利他廻向心
^二には、 「▲回向発願して生るるものは、 *かならず決定して真実心のなかに回向せしめたまへる願を須ゐて得生の想をなすなり」 となり。 |
二ニハ廻向発願シテ生ルヽ者ハ、必ズ須ヰテ↢決定シテ真実心ノ中ニ廻向セシメタマヘル願ヲ↡、作スナリトナリ↢得生ノ想ヲ↡ |
二 Ⅳ ⅱ a ハ (二)就文広示
(Ⅰ)先釈信相
【77】^回向発願して生るるものについて、 信心あり。 |
就イテ↢廻向発願シテ生ルヽ者ニ↡、有リ↢信心↡ |
^信心とは、 |
信心ト者 |
「▲得生の想をなす、 ▽この心↓深信すること、 なほ金剛のごとし」 となり。 |
作ス↢得生ノ想ヲ↡、此ノ心深信スルコト、由若シ↢金剛ノ↡ |
二 Ⅳ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)総就文明
(ⅰ)標
【78】^この↑深信について、 ↓一譬喩・↓二異・↓二別・↓一問答・↓二回向あり。 |
就イテ↢此ノ深信ニ↡、有リ↢一譬喩・二異・二別・一問答・二廻向↡ |
二 Ⅳ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)列
(a)一譬喩
^↑一譬喩とは、 |
一譬喩ト者 |
「△この心深信すること、 なほ金剛のごとし」 となり。 |
此ノ心深信ルコト、由若シ↢金剛ノ↡ |
二 Ⅳ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)二異
一には異見、 |
二には異学なり。 |
一ニハ異見 |
二ニハ異学ナリ |
二 Ⅳ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(c)二別
一0533には別解、 |
二には別行なり。 |
一ニハ別解 |
二ニハ別行ナリ |
二 Ⅳ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(d)一問答
(イ)標
【79】^▲↑一問答について、 ↓七悪・↓六譬・↓二門・↓四有縁・↓二所求・↓二所愛・↓二欲学・↓二必あり。 |
就303Aイテ↢一問答ニ↡、有リ↢七悪・六譬・二門・四有縁・二所求・二所愛・二欲学・二必↡ |
二 Ⅳ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(d)(ロ)列
[一]七悪
一には十悪、 |
二には五逆、 |
一ニハ十悪 |
二ニハ五逆 |
三には四重、 |
四には破戒、 |
三ニハ四重 |
四ニハ破戒 |
五には破見、 |
六には謗法、 |
五ニハ破見 |
六ニハ謗法 |
<
七には闡提なり。 |
|
七ニハ闡提ナリ |
|
二 Ⅳ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(d)(ロ)[二]六譬
一には、 明よく闇を破す。 |
二には、 空よく有を含む。 |
一ニハ明能ク破ス↠闇ヲ |
二ニハ空能ク含ム↠有ヲ |
三には、 地よく載養す。 |
四には、 水よく生潤す。 |
三ニハ地能ク載養ス |
四ニハ水能ク生潤ス |
五には、火よく成壊す。 |
六には、↓二河 水の河・火の河。 |
五ニハ火能ク成壊ス |
六ニハ二河 水河火河 |
二 Ⅳ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(d)(ロ)[三]二門
^↑二門とは、 |
二門ト者 |
一には、 「▲*随ひて一門を出づるは、 すなはち一煩悩門を出づるなり」 と、 |
一ニハ随ヒテ出ヅルハ↢一門ヲ↡即チ出ヅル↢一煩悩門ヲ↡也ト |
0534二には、 「▲*随ひて一門に入るは、 すなはち一解脱智慧門に入るなり」 となり。 |
二ニハ随ヒテ入ルハ↢一門ニ↡即チ入ル↢一解脱智慧門ニ↡也トナリ |
二 Ⅳ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(d)(ロ)[四]四有縁
^↑四有縁とは、 |
四有縁ト者 |
^一には、 「▲なんぢ、 なにをもつて、 いましまさに有縁の要行にあらざるをもつて、 われを障惑する」 と。 |
一ニハ汝何ヲ以テ乃シ将ニテ↠非ザルヲ↢有縁之要行ニ↡、障↢惑スルト於↟我 |
^二には、 「▲しかるにわが↓所愛はすなはちこれわが有縁の行なり、 すなはちなんぢが↓所求にあらず」 と。 |
二ニハ然ルニ我ガ之所愛ハ即チ是我ガ有縁之行ナリ、即チ非ズト↢汝ガ所求ニ↡ |
^三には、 「▲なんぢが↓所愛はすなはちこれなんぢが有縁の行なり、 またわが↓所求にあらず。 このゆゑにおのおの所楽に随ひてその行を修すれば、 ↓必ず疾く解脱を得るなり」 と。 |
三ニハ汝ガ之所愛ハ即チ是汝ガ有縁之行ナリ、亦非ズ↢我ガ所求ニ↡、是ノ故ニ各ノ随フ↢所楽ニ↡而修スレ↢其ノ行ヲ↡者、必ズ疾ク得ル↢解脱ヲ↡也ト |
^四には、 「▲もし*行を学ばんと欲はば、 ↓必ず有縁の法によれ。 少しき功労を用ゐるに多く益を得」 となり。 文 |
四ニハ若シ欲ハ↠学バント↠行ヲ者、必ズ藉レ↢有縁之法ニ↡。少シキ用ヰルニ↢功労ヲ↡多ク得トナリ↠益ヲ 文 |
二 Ⅳ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(d)(ロ)[五]二所求
^↑二所求とは、 ↑上の文のごとし。 |
304A二所求ト者 如シ↢上ノ文ノ↡ |
二 Ⅳ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(d)(ロ)[六]二所愛
^↑二所愛とは、 ↑上の文のごとし。 |
二所愛ト者 如シ↢上ノ文ノ↡ |
二 Ⅳ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(d)(ロ)[七]二欲学
^↑二欲学とは、 |
二欲学ト者 |
^一0535には、 「▲行者まさに知るべし、 もし*解を学ばんと欲はば、 凡より聖に至るまで、 乃至仏果まで一切礙なくみな学ぶことを得んとなり」 と。 |
一ニハ行者当ニシ↠知ル、若シ欲ハバ↠学バント↠解ヲ、従リ↠凡至ルマデ↠聖ニ、乃至仏果マデ、一切无ク↠、皆得ント↠学ブコトヲ也ト |
^二には、 「△もし行を学ばんと欲はば、 必ず有縁の法によれ」 となり。 乃至 |
二ニハ若シ欲ハ↠学バント↠行ヲ者、必ズ藉レトナリト↢有縁之法ニ↡ 乃至 |
二 Ⅳ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(d)(ロ)[八]二必
^↑二必とは、 ↑上の文のごとし。 |
二必ト者 如シ↢上ノ文ノ↡ |
二 Ⅳ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(e)二廻向
【80】^この深信のなかについて、 ↑二回向といふは、 |
就イテ↢此ノ深信ノ中ニ↡、二廻向トイフ者 |
^一には、 「▲つねにこの想をなせ、 つねにこの解をなす。 ゆゑに回向発願心と名づく」 と。 |
一ニハ常ニ作セ↢此ノ想ヲ↡、常ニ作ス↢此ノ解ヲ↡故ニ名クト↢廻向発願心ト↡ |
^二には、 「▲また回向といふは、 かの国に生れをはりて還りて大悲を起して生死に回入して衆生を教化するを、 また回向と名づくるなり」 となり。 |
二ニハ又言フ↢廻向ト↡者、生レ↢彼ノ国ニ↡已リテ、還リテ起シテ↢大悲ヲ↡廻↢入シテ生死ニ↡教↢化スルヲ衆生ヲ↡、亦名ク↢廻向ト↡也トナリ |
二 Ⅳ ⅱ a ハ (二)(Ⅲ)解二河譬【二河譬釈】
(ⅰ)標説譬意
【81】^↑二河のなかについて、 「▲一つの譬喩を説きて信心を守護して、 もつて外邪異見の難を防がん」 と。 |
就イテ↢二河ノ中ニ↡ 説キテ↢一ノ譬喩ヲ↡守↢護シテ信心ヲ↡、以テ防ガント↢外304B邪異見之難ヲ↡ |
二 Ⅳ ⅱ a ハ (二)(Ⅲ)(ⅱ)正釈文義
(a)釈百歩
^「▲この道、 東の岸より西の岸に至るまで、 また長さ0536百歩なり」 となり。 文 |
此ノ道従リ↢東ノ岸↡至ルマデ↢西ノ岸ニ↡、亦長サ百歩ナリトナリ 文 |
^「百歩」 とは、 |
百歩ト者 |
人寿百歳に譬ふるなり。 |
譬フル↢人寿百歳ニ↡也 |
二 Ⅳ ⅱ a ハ (二)(Ⅲ)(ⅱ)(b)釈群賊悪獣
^「▲群賊・悪獣」 とは、 |
群賊・悪獣ト者 |
「群賊」 とは、 別解・別行・異見・異執・悪見・邪心・定散・自力の心なり。 |
群賊ト者、別解・別行・異見・異執・悪見・邪心・定散自力之心也 |
「悪獣」 とは、 六根・六識・六塵・五陰・四大なり。 |
悪獣ト者、六根・六識・六塵・五陰・四大也 |
二 Ⅳ ⅱ a ハ (二)(Ⅲ)(ⅱ)(c)釈常随悪友
^「▲つねに悪友に随ふ」 といふは、 |
常ニ随フトイフ↢悪友ニ↡者 |
「悪友」 とは、 善友に対す、 雑毒虚仮の人なり。 |
悪友ト者対ス↢善友ニ↡、雑毒虚仮之人也 |
二 Ⅳ ⅱ a ハ (二)(Ⅲ)(ⅱ)(d)釈無人空迥沢
(イ)挙文
^「▲ª*無人空迥の沢º といふは、 |
言フ↢无人空迥ノ沢ト↡者 |
悪友なり。 ↓真の↓善知識に値はざるなり」 となり。 |
悪友也、不ル↠値ハ↢真ノ善知識ニ↡也トナリ |
二 Ⅳ ⅱ a ハ (二)(Ⅲ)(ⅱ)(d)(ロ)対顕
^「↑真」 の言は仮に対し偽に対す。 「↑善知識」 とは、 悪知識に対するなり。 |
真ノ言ハ対シ↠仮ニ対ス↠偽ニ、善知識者対スル↢悪知識ニ↡也 |
真の善知識、 |
正の善知識、 |
305A真ノ善知識 |
正ノ善知識 |
実の善知識、 |
是の善知識、 |
実ノ善知識 |
是ノ善知識 |
善0537の善知識、 |
善性人なり。 |
善ノ々知識 |
善性人也 |
^悪の知識とは、 |
仮の善知識、 |
悪ノ知識ト者 |
仮ノ善知識 |
偽の善知識、 |
邪の善知識、 |
偽ノ善知識 |
邪ノ善知識 |
虚の善知識、 |
非の善知識、 |
虚ノ善知識 |
非ノ善知識 |
悪の善知識、 |
悪性人なり。 |
悪ノ善知識 |
悪性人也 |
二 Ⅳ ⅱ a ハ (二)(Ⅲ)(ⅱ)(e)釈白道
(イ)釈譬文
^「▲白道四五寸」 といふは、 |
言フ↢白道四五寸ト↡者 |
^「白道」 とは、 白の言は黒に対す、 *道の言は路に対す、 白とは、 すなはちこれ六度万行、 定散なり。 これすなはち自力小善の路なり。 黒とは、 すなはちこれ六趣・四生・二十五有・十二類生の黒悪道なり。 |
白道ト者、白ノ言ハ対ス↠黒ニ、道ノ言ハ対ス↠路ニ、白ト者則チ是六度万行定散也、斯則チ自力小善ノ路也。黒ト者則チ是六趣・四生・二十五有・十二類生ノ黒悪道也 |
^「四五寸」 とは、 四の言は*四大、 毒蛇に喩ふるなり。 五の言は*五陰、 悪獣に喩ふるなり。 |
305B四五寸ト者、四ノ言ハ喩フル↢四大毒蛇ニ↡也、五ノ言ハ喩フル↢五陰悪獣ニ↡也 |
二 Ⅳ ⅱ a ハ (二)(Ⅲ)(ⅱ)(e)(ロ)釈合喩文
^「▲能生清浄願往生心」 といふは、 |
言フ↢能生清浄願往生ト↡心ヲ者 |
無上の信心、 金剛の真心を発起するなり、 これは如来回向の信楽なり。 |
発↢起スル无上ノ信心金剛ノ真心ヲ↡也、斯ハ如来廻向之信楽也 |
二 Ⅳ ⅱ a ハ (二)(Ⅲ)(ⅱ)(f)釈一分二分
^「▲あ0538るいは行くこと一分二分す」 といふは、 |
言フ↢或イハ行クコト一分二分スト↡者 |
*年歳時節に喩ふるなり。 |
喩フル↢年歳時節ニ↡也 |
二 Ⅳ ⅱ a ハ (二)(Ⅲ)(ⅱ)(g)釈悪見人
^「▲悪見人等」 といふは、 |
言フ↢悪見人等ト↡者 |
憍慢・懈怠・邪見・疑心の人なり。 |
憍慢・懈怠・邪見・疑心之人也 |
二 Ⅳ ⅱ a ハ (二)(Ⅲ)(ⅱ)(h)釈西岸上等
【82】^「▲また、 ↓西の岸の上に、 人ありて喚ばうていはく、 ª↓汝↓一心↓正念にして↓直ちに↓来れ、 ↓我↓能く↓護らんº」 といふは、 |
言フ↢又西ノ岸ノ上ニ有リテ↢人喚フテ言ハク、汝一心正念ニシテ直ニ来レ、我能ク護ラント↡者、 |
^「↑西の岸の上に、 人ありて喚ばうていはく」 といふは、 阿弥陀如来の誓願なり。 |
西ノ岸ノ上ニ有リテ↠人喚バフテ言ハクトイフ者、阿弥陀如来ノ誓願也、 |
^「↑汝」 の言は行者なり、 これすなはち必定の菩薩と名づく。 龍樹大士 ¬十住毘婆沙論¼ (易行品) にいはく、 「△即時入必定」 となり。 曇鸞菩薩の ¬論¼ (論註・上意) には 「△入正定聚之数」 といへり。 善導和尚は、 「▲希有人なり、 最勝人なり、 妙好人なり、 好人なり、 上上人なり、 △真仏弟子なり」 (散善義・意) といへり。 |
汝ノ言ハ行者也、斯則チ名ク↢必306A定ノ菩薩ト↡。龍樹大士¬十住毘婆沙論ニ¼曰ハク、「即時入必定トナリ。」曇鸞菩薩ノ¬論ニハ¼曰ヘリ↢「入正定聚之数ト」↡。善導和尚ハ言ヘリ↢「希有人也、最勝人也、妙好人也、好人也、上々人也、真仏弟子也ト」↡。 |
^「↑一心」 の言は、 真実の信心なり。 |
一心ノ言ハ真実ノ信心也、 |
^「↑正念」 の言は、 選択摂取の本願なり。 また*第一希有の行なり、 *金剛不壊の心なり。 |
正念ノ言ハ選択摂取ノ本願也、又第一希有ノ行也、金剛不壊ノ心也、 |
^「↑直」 の言は、 回に対し迂に対するなり。 ^また 「直」 の言は、 方便仮門を捨てて如来大願の他力に帰するなり、 諸仏出世の直説を顕さしめんと欲してなり。 |
直ノ言ハ対シ↠廻ニ対スル↠迂ニ也、又直ノ言ハ捨テヽ↢方便仮門ヲ↡帰スルナリ↢如来大願ノ他力ニ↡、欲シテ↠使メムト↠顕サ↢諸仏出世之直説ヲ↡也、 |
^「↑来0539」 の言は、 去に対し往に対するなり。 また報土に還来せしめんと欲してなり。 |
来ノ言ハ対シ↠去ニ対スル↠往ニ也、又欲シテ↠令メムト↣還↢来セ報土ニ↡也、 |
^「↑我」 の言は、 尽十方無礙光如来なり、 不可思議光仏なり。 |
我ノ言ハ尽十方无光如来也、不可思議光仏也、 |
^「↑能」 の言は、 不堪に対するなり、 疑心の人なり。 |
能ノ言ハ対スル↢不堪ニ↡也、疑心之人也、 |
^「↑護」 の言は、 阿弥陀仏果成の正意を顕すなり、 また摂取不捨を形すの貌なり、 すなはちこれ現生護念なり。 |
護ノ言ハ顕ス↢阿弥陀仏果成之正意ヲ↡也、亦形ス↢摂取不捨ヲ↡之貌也、則チ是現生護念也、 |
二 Ⅳ ⅱ a ハ (二)(Ⅲ)(ⅱ)(i)釈念道言
^「▲念道」 の言は、 他力白道を念ぜよとなり。 |
念道ノ言306Bハ念ゼヨト↢他力白道ヲ↡也、 |
二 Ⅳ ⅱ a ハ (二)(Ⅲ)(ⅱ)(j)釈慶楽言
^「▲慶楽」 とは、 「慶」 の言は印可の言なり、 獲得の言なり、 「楽」 の言は悦喜の言なり、 歓喜踊躍なり。 |
慶楽ト者慶ノ言ハ印可之言也、獲得之言也、楽ノ言ハ悦喜之言也、歓喜踊躍也 |
二 Ⅳ ⅱ a ハ (二)(Ⅲ)(ⅱ)(k)釈信順言
【83】^「▲仰いで釈迦発遣して、 指へて西方に向かへたまふことを蒙る」 といふは、 順なり。 |
仰イデ蒙ルトイヘル↣釈迦発遣シテ指ヘテ向ヘタマフコトヲ↢西方ニ↡者順也、 |
^「▲また弥陀の悲心招喚したまふによる」 といふは、 信なり。 |
又藉ルトイフ↢弥陀ノ悲心招喚シタマフニ↡者信也、 |
^「▲いま二尊の意に信順して、 水火二河を顧みず、 念々に遺るることなく、 かの願力の道に乗ず」 といへり。 |
今信↢順シテ二尊之意ニ↡、不↠顧ミ↢水火二河ヲ↡、念々ニ无ク↠遺ルヽコト、乗ズトイヘリ↢彼ノ願力之道ニ↡ |
二 Ⅳ ⅱ b【追釈至誠心】
イ 標列
【84】^至誠心について、 ↓難易対 ↓彼此対 ↓去来対 ↓毒薬対 ↓内外対 |
就イテ↢至誠心ニ↡ 難易対 彼此対 去来対 毒薬対 内外対 |
二 Ⅳ ⅱ b ロ 解釈
(一)難易対
^↑難易対 |
難易対 |
難とは三業修善不真実の心なり、 |
難ト者三業修善不真実之心也 |
易とは如来願力回向の心なり。 |
易ト者如来願力廻向之心也 |
二 Ⅳ ⅱ b ロ (二)彼此対
^↑彼此対 |
彼此対 |
彼0540とは浄邦なり、 此とは穢国なり。 |
彼ト者浄邦也、此ト者穢国也 |
二 Ⅳ ⅱ b ロ (三)去来対
^↑*去来対 |
307A去来対 |
去とは釈迦仏なり、 来とは弥陀仏なり。 |
去ト者釈迦仏也、来ト者弥陀仏也 |
二 Ⅳ ⅱ b ロ (四)毒薬対
^↑毒薬対 |
毒薬対 |
毒とは善悪雑心なり、 薬とは純一専心なり。 |
毒ト者善悪雑心也、薬ト者純一専心也 |
二 Ⅳ ⅱ b ロ (五)内外対
内は外道、 外は仏教。 |
内は聖道、 外は浄土。 |
内ハ外道外ハ仏教 |
内ハ聖道外ハ浄土 |
内は疑情、 外は信心。 |
内は悪性、 外は善性。 |
内ハ疑情外ハ信心 |
内ハ悪性外ハ善性 |
内は邪、 外は正。 |
内は虚、 外は実。 |
内ハ邪外ハ正 |
内ハ虚外ハ実 |
内は非、 外は是。 |
内は偽、 外は真。 |
内ハ非外ハ是 |
内ハ偽外ハ真 |
内は雑、 外は専。 |
内は愚、 外は賢。 |
内ハ雑外ハ専 |
内ハ愚外ハ賢 |
内は仮、 外は真。 |
*内は退、 外は進。 |
内ハ仮外ハ真 |
内ハ退外ハ進 |
内は疎、 外は親。 |
*内は遠、 外は近。 |
内ハ疎外ハ親 |
内ハ遠外ハ近 |
内は迂、 外は直。 |
*内は違、 外は随。 |
307B内ハ迂外ハ直 |
内ハ違外ハ随 |
内は逆、 外は順。 |
内は軽、 外は重。 |
内ハ逆外ハ順 |
内ハ軽外ハ重 |
内0541は浅、 外は深。 |
内は苦、 外は楽。 |
内ハ浅外ハ深 |
内ハ苦外ハ楽 |
内は*怯弱、 外は強剛。 |
内は懈怠、 外は勇猛。 |
内ハ怯弱外ハ強剛 |
内ハ懈怠外ハ勇猛 |
*内は間断、 外は無間。 |
内は自力、 外は他力。 |
内ハ間断外ハ無間 |
内ハ自力外ハ他力 |
二 Ⅳ ⅲ【結成旨帰】
a 列目
【85】^おほよそ心について、二種の三心あり。 |
凡ソ就イテ↠心ニ有リ↢二種ノ三心↡ |
一には*自利の三心、 |
二には*利他の三信なり。 |
一ニ者自利ノ三心 |
二ニ者利他ノ三信ナリ |
【86】^また二種の往生あり。 |
又有リ↢二種ノ往生↡ |
一には↓*即往生、 |
二には↓*便往生なり。 |
一ニ者即往生 |
二ニ者便往生ナリ |
二 Ⅳ ⅲ b 解釈
【87】^ひそかに ¬観経¼ の三心往生を案ずれば、 これすなはち*諸機自力各別の三心なり。 ¬大経¼ の三信に帰せしめんがためなり、 諸機を勧誘して三信に通入せしめんと欲ふなり。 |
窃ニ按ズレ↢¬観経ノ¼三心往生ヲ↡者、是則チ諸機自力各別之三心也。為↠帰セシメムガ↢¬大経ノ¼三信ニ也、勧↢誘シテ諸308A機ヲ↡欲フ↠使メムト↣通↢入セ三信ニ↡也。 |
^三信とは、 これすなはち金剛の真心、 不可思議の信心海なり。 |
三信ト者、斯則チ金剛ノ真心、不可思議ノ信心海也。 |
^また 「↑即往生」 とは、 これすなはち難思議往生、 真の報土なり。 |
亦即往生ト者、斯則チ難思議往生、真ノ報土也。 |
^「↑便往生」 とは、 すなはちこれ諸機各別の業因果成の土なり、 胎宮・辺地・懈慢界、 双樹林下往生なり、 また難思往生なりと、 ^知るべし。 |
便往生ト者、即チ是諸機各別ノ業因果成ノ土ナリ、胎宮・辺地・懈慢界双樹林下往生ナリ、亦難思往生也ナリト、応シト↠知ル |
*本0542にいはく |
本ニ云ク |
*建長七年乙卯八月二十七日これを書く。 |
建長七歳乙卯八月廿七日書ク↠之ヲ |
愚禿親鸞八十三歳 |
愚禿親鸞八十三歳 |
|
*暦応三歳庚辰十二月廿五日書写之件写本者以右御真筆所書写之本也註麁以下坐筆不思様之間廻愚案任自由書之点又同前不及写之者也展転書写之間非無其誤歟但本失錯歟自僻案歟只就愚推之所覃令自専許也不須及他見而已 |
|
存覚五十一歳 |
延書の底本は京都府常楽寺蔵存覚上人書写本ˆ原漢文の底本と同一ˇ。
賢者 よきひと。 総じては七高僧に通じ、 別しては法然上人を指す。
聖道浄土の教 仏教全体を指す。
麟喩独覚 仲間をもたず一人だけで修行する独覚。 麒麟 (元来は犀。 漢訳者が麒麟と同定) の角が一つであることに喩えていう。
部行独覚 仲間を組んで修行する独覚。
浄土回向発願自力方便の仮門 本願他力をただちに受けいれることのできない者のために、 自力の諸善を積んで往生を願えば仮の浄土に往生させると誓った仮の法門。
証成 所説の法に誤りのないことを証明し、 成立させること。 親鸞聖人の他の聖教にはすべて 「証誠」 とあるので、 「成」 は 「誠」 の音通表記かもしれない。
釈迦に二あり・諸仏に二あり 異本では二行後の 「功徳証成」 の下にある。
頓極 本願一乗の法は、 他の頓教も及ぶことができない法であるから頓極という。
頓速 底下の凡愚を速やかに疾く仏のさとりに至らせるので頓速という。
前念命終・後念即生 善導大師の ¬礼讃¼ に出る語。 念仏行者は前念に命が終れば、 後念にただちに浄土に往生するという意であるが、 親鸞聖人は、 現世において信心を獲得すると同時に、 正定聚の位に入る意とした。
自力金剛心 第十八願の行者は、 他力の金剛心 (信心) であるが、 弥勒菩薩は自力の金剛心であることをいう。
漸教回心 「漸教回向」 とする異本がある。
希常対 念仏の行者は希有人 (きわめてまれな人) であるが、 諸善の行者は常有人 (ありふれた人) である。
直入回心対 念仏の行者は直ちに真実報土に入るが、 諸善の行者は自力の心をひるがえしてから入る。
観 「観の字、 東大寺の覚寿僧都の観経義にこれあり。 世に流布するは願の字なり」 と註記がある。 高田派専修寺蔵宗祖加点 ¬観経疏¼ や本山蔵宗祖真蹟 ¬観経集註¼ では 「願」 の字を用いている。
れ 異本には続けて 「まさしく金剛心を受く」 とある。
相応一念 仏智に相応する信の一念。
如来の勝智…悟なり 通常は 「如来の勝智は、 虚空に遍し、 所説の義言はただ仏のみ悟りたまへり」 と読む。
薄地の凡夫 聖者の域に達しない下劣な者。 凡夫を三種に分け、 三賢 (十住・十行・十回向) を内凡、 十信を外凡、 それ以下を薄地とする。
纏縛 まとわりつかれ、 しばられること。
わが十方… 通常は 「もしわれを信ぜざらんには、 十方諸仏、 あに虚妄ならんや」 と読む。
本にいはく 「本」 とは書写原本のこと。 原本にあった奥書をそのまま転写したことを示す。
賢者 よきひと。 総じては七高僧に通じ、 別しては法然上人を指す。
唐朝の… 以下、 本書下巻では 「散善義」 の文について釈す。
得生の益 ¬観経¼ の即便往生のこと。 親鸞聖人はこれを即往生と便往生の二種往生の益とみた。
かならず…懐ければなり 通常は 「かならずすべからく真実心のうちになすべきことを明かさんと欲す。 外に賢善精進の相を現じ、 内に虚仮を懐くことを得ざれ」 と読む。
なしたまひ…真実なりと 通常は 「なしたまひ、 おほよそ施為・趣求したまふところ、 またみな真実なるによりてなり」 と読む。 「施為」 は利他、 「趣求」 は自利の意。 親鸞聖人は、 如来回向の真実をもちい (領受し) て、 浄土を趣求 (願生) するという意に転じた。
不善の三業は…名づく 通常は 「不善の三業は、 かならずすべからく真実心のうちに捨つべし。 またもし善の三業を起さば、 かならずすべからく真実心のうちになすべし。 内外明闇を簡ばず、 みなすべからく真実なるべし。 ゆゑに至誠心と名づく」 と読む。 親鸞聖人は如来回向の義をあらわすために 「須」 の字を 「もちゐ」 と読んだ。
自利の信心 自力の信心の意。 ここでは第二の深信と一具でない第一の深信 (みずからの罪業を嘆きおそれている心) を指して自力の信心としたのであろう。
心 「力」 とする異本がある。
六決定 七深信の中、 第六深信以外の深信に決定の語が出ているのを数えて六決定という。 決定は明了に決択するという意で、 深信の相を示す語。
次いでのごとし 順次に示されている。
第五 右傍に 「利他信心」 と註記がある。
三遣 雑行雑修を捨てて、 正行 (念仏) を行じ、 異学異解雑縁乱動のところを去れ、 という仏の仰せ。
三随順 釈尊の教え (仏教)・諸仏の意 (仏意)・阿弥陀仏の願 (仏願) にしたがうこと。
三是名 真実信心の人を称讃する語。 次々行の 「上の是名」 は三随順の一と三を指す。
第六 右傍に 「観経に依る」 と註記がある。
六即 六の文を列ねて、 仏の所説を信ずべきことを示す。 文中に即の字が六回出るので六即という。
二了 仏説が了教 (真理の全相が明らかに説き示された教え) であるのに対し、 菩薩等の説がすべて不了教 (真理がまだ十分に説き示されていない教え) であることを示す。
第七 有傍に 「自利信心」 と註記がある。
二別 別の見解を持ち、 別の行法を修めること。
三異 異なった見解を持ち、 異なった教えを学び、 異なった思想・見解に執着すること。
四別 聖道の諸経と浄土の経とは、 その説かれた場所、 時、 教えの対象、 利益が別であることを示す。
疑難 念仏往生の教えを疑い非難すること。 凡夫の疑難は実難 (実際にある難) であるが、 後の三難は仮設の難 (仮に設定した難) である。
五実 信の対象が真実であることを五種の語で示す。 初めの一は仏の説く教え、 後の四は教えを説く仏についていう。 「散善義」 深信釈の文参照。
二専 釈尊が専念・専修を勧めることを示す。
五種 読誦・
観察・
礼拝・称名・
讃嘆供養の
五正行を指す。
四同 諸仏が釈尊と同じく説くことを示す。 初めの三はその言説が同一であることを示し、 後の一は同体の大悲 (同じ真如のさとりからおこった大悲) であることを示す。
所化 教化されるところの法
六悪 釈尊の濁世における教化を諸仏が讃嘆することを示す。 また教化の対象を示す。
悪邪無信盛時 五濁が盛んになり、 仏法を聞いても疑いそしるばかりで信じないものが多くなる時代のことをいう。
二同 諸仏の証誠 (証成) の相を示す。
三所 釈尊が説き讃嘆し証明した法を諸仏が勧めることを示す。
五正行 ここでは要門の行としての五専修を示したものとみられる。 →
専修
六一心・六専修 五専修 (要門の行) の一心と弘願の一心とを合わせて六一心とするものか。 六専修も同様。
定心念仏 思いをとどめ心を一つに集中して称名念仏すること。
散心念仏 散乱した心のままで称名念仏すること。
正の観仏 阿弥陀仏を観想すること。
雑の観仏 諸仏を観想すること。
真観 浄土の真実の荘厳と阿弥陀仏の真身とを観想すること。
仮観 浄土の真実の荘厳を観想するためのてだてとして日没や水を観じ、 阿弥陀仏の真身を観想するためのてだてとして仏像を観ずること。 日観 (日想)・水観 (水想)・像観 (像想) の三をいう。 他の十観は真観。
定散六種兼行 五正行の第五讃嘆供養を開いて六種とし、 この六行を自力心をもって雑え修することを六種兼行といい、 雑修の部類に属する。
助業 六種兼行の場合は称名も正定業としての地位を失って助業と同格になるから、 六行すべてを助業という。
回心の行 その行業を回向して往生を願わなければならない自力行のこと。 あるいは自力の心をひるがえして、 他力に帰さなければならない自力行のこと。
かならず…想をなすなり 通常は 「かならずすべからく決定真実心のうちに回向し願じて、 得生の想をなすべし」 と読む。
随ひて一門を出づる… それぞれの縁にしたがい、 どれか一つの法門によって出るのは一つの迷いの門を出ることであるという意。
随ひて一門に入る… それぞれの縁にしたがい、 どれか一つの法門によって入るのは一つのさとりに入る門であるという意。
行を学ばん 行を修めて迷いの世界を出離する。
解を学ばん 仏教を学問的に研究する。
無人空迥の沢 ここでは真の善知識にあわないことを無人という。 空迥の沢は広々とした野原。
道の言は路に対す 親鸞聖人は道を大きなみち (大道)、 路を小さなみち (小路) とする。
四大毒蛇・五陰悪獣 四大・五陰は行者の身心をいい、 毒蛇・悪獣は貪瞋煩悩をいう。
金剛不壊の心 金剛のように堅く、 破壊されることのない信心。
浄邦 阿弥陀仏の浄土のこと。
去来対 釈尊は 「去け」 と発遣し、 阿弥陀仏は 「来れ」 と召喚することをいう。
内外対 内心と外相とが相応しない不真実のありさま。
内は退… 内心はたじろいでいながら、 外相には白道を進むふりをしている。
内は遠… 内心は阿弥陀如来から遠ざかりながら、 外相には近づいているような姿を示している。
内は違… 内心は教えに違いながら、 外相では随順しているふりをする。
内は間断… 内心では信心が持続していないのに、 外には持続の姿を示す。
自利の三心 ¬観経¼ の三心 (至誠心・深心・回向発願心) は、 顕説 (経文に顕著にあらわれた教え) の意味からいえば自力の心であるので自利の三心と名づける。
利他の三信 ¬観経¼ の三心は、 隠彰 (微かにあらわされた教え) の意味からいえば阿弥陀仏の利他 (他力) 回向の信心であるので利他の三信と名づける。
諸機自力格別の三心 自力の三心は機によって各々異なるので、 このようにいう。
本にいはく 「本」 とは書写原本のこと。 原本にあった奥書をそのまま転写したことを示す。
建長七年 1255年。
底本は◎京都府常楽寺蔵存覚上人書写本。 Ⓐ高田派専修寺蔵永仁元年顕智上人書写本、 Ⓑ新潟県浄興寺蔵永享六年書写本 と対校されているが省略。