0501禿とくしょう じょう

・述意

【1】 ^*賢者けんじゃしんきて、  禿とくしんあらわす。 283A↢賢者↡ 顕↢愚禿
^賢者けんじゃしんは、   うちけんにしてほかなり。 賢者    内ニシテ愚也
^禿とくしんは、   うちにしてほかけんなり。 愚禿    内ニシテ賢也

大判略説
  列標

【2】 ^*しょうどうじょうきょうについて、 きょうあり。 ↢聖道・浄土↡有↢二教↡
一にはだいじょうきょう 二には小乗しょうじょうきょうなり。 ニハ大乗 ニハ小乗ナリ

正判
    分判
      大乘
        総示

【3】 ^だいじょうきょうについて、 きょうあり。 ↢大乗教↡有↢二教↡
一にはとんぎょう 二にはぜんぎょうなり。 ニハ頓教 ニハ漸教ナリ

一 Ⅱ ⅰ a 別明【二双四重
          (一)頓教
            (Ⅰ)標挙

【4】 ^とんぎょうについて、 またきょうちょうあり。 ↢頓教↡復有↢二教・二超↡

一 Ⅱ ⅰ a ロ (一)(Ⅱ)牒判
              (ⅰ)二教

^きょうとは、 二教
^一にはなんぎょうしょうどうじっきょうなり。 いはゆる*ぶっしん*真言しんごん*ほっ*ごんとうきょうなり。 283Bニハ難行聖道之実教ナリ↠謂仏心・真言・法華・華厳等之教也
^0502にはぎょうじょう本願ほんがん真実しんじつきょう、 ¬*だいりょう寿じゅきょう¼ とうなり。 ニハ易行浄土本願真実之教、¬大无量寿経¼等也

一 Ⅱ ⅰ a ロ (一)(Ⅱ)(ⅱ)二超

^ちょうとは、 二超
^一にはしゅちょう 即身そくしんぶつ即身そくしんじょうぶつとうしょうなり。 ニハ竪超 即身是仏・即身成仏等之証果也
^二にはおうちょう せんじゃく本願ほんがん真実しんじつほう即得そくとくおうじょうなり。 ニハ横超 選択本願・真実報土・即得往生也

一 Ⅱ ⅰ a ロ (二)漸教
            (Ⅰ)標挙

【5】 ^ぜんぎょうについて、 またきょうしゅつあり。 ↢漸教↡復有↢二教・二出↡

一 Ⅱ ⅰ a ロ (二)(Ⅱ)牒釈
              (ⅰ)二教

^きょうとは、 二教
^一にはなんぎょうどうしょうどうごんきょう*法相ほっそうとうりゃくこうしゅぎょうきょうなり。 284Aニハ難行道聖道権教、法相等、歴劫修行之教也
^二にはぎょうどうじょう要門ようもん、 ¬*りょう寿じゅぶつかんぎょう¼ のこころじょうさん三福さんぷくぼんきょうなり。 ニハ易行道浄土要門、¬无量寿仏観経¼之意、定散三福九品之教也

一 Ⅱ ⅰ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)二出

^しゅつとは、 二出
^一にはしゅしゅつ しょうどうりゃくこうしゅぎょうしょうなり。 ニハ竪出聖道、歴劫修行之証也
^二にはおうしゅつ じょうたいへんまんおうじょうなり。 ニハ横出浄土、胎宮・辺地・懈慢之往生也

一 Ⅱ ⅰ 小乗
       

【6】 ^小乗しょうじょうきょうについて、 きょうあり。 ↢小乗教↡有↢二教↡

一 Ⅱ ⅰ b 正明
          (一)縁覚乗

^一には縁覚えんがくきょう ニハ縁覚教
一に*りんどくかく、 二に*ぎょうどくかく 麟喩独覚部行独覚

一 Ⅱ ⅰ b ロ (二)声聞乗

^二にはしょうもんぎょうなり。 ニハ声聞教ナリ
*しょ預流よるこうだい一来いちらいこう第三だいさんげんこう0503だい阿羅あらかんこう八輩はっぱいなり。 初果  預流向 第二果 一来向第三果 不還向 第四果 阿羅漢向 八輩也

一 Ⅱ 結成

【7】 ^ただ弥陀みだ如来にょらいせんじゃく本願ほんがんのぞきて以外いげの、 だいしょう権実ごんじつ顕密けんみつしょきょうは、 みなこれなんぎょうどうしょうどうもんなり。 またぎょうどうじょうもんきょうは、 これを*じょうこう発願ほつがんりき方便ほうべんもんといふなりと、 るべし。 唯除↢阿弥陀如来選択本願↡已外、大小・権実・顕密諸教、皆是難行道、聖道門ナリ。又易行道、浄土門之教、是↢浄土廻向発願284B自力方便仮門↡也、応↠知

別釈広陳
  示三経宗致【三経宗致】
    正明
      正約三経一致
        大経
          (一)

【8】 ^¬*だいきょう¼ に、 せんじゃく三種さんしゅあり。 ¬大経¼選択三種アリ

二 Ⅰ ⅰ a イ (二)列釈
            (Ⅰ)法蔵菩薩

^*法蔵ほうぞうさつ 一 蔵菩薩
せんじゃく本願ほんがん せんじゃくじょう 選択本願 選択浄土
せんじゃくせっしょう せんじゃくしょう 選択摂生 選択証果

二 Ⅰ ⅰ a イ (二)(Ⅱ)世饒王仏

^*にょうおうぶつ 二 饒王仏
せんじゃく本願ほんがん せんじゃくじょう 選択本願 選択浄土
せんじゃく讃嘆さんだん せんじゃく*証成しょうじょう 選択讃嘆 選択証成

二 Ⅰ ⅰ a イ (二)(Ⅲ)釈迦如来

^*しゃ如来にょらい 三 迦如来
せんじゃく*ろくぞく 選択弥勒付属

二 Ⅰ ⅰ a 観経
          (一)

【9】 ^¬*かんぎょう¼ に、 せんじゃくしゅあり。 ¬観経¼選択二種アリ

二 Ⅰ ⅰ a ロ (二)列釈
            (Ⅰ)釈迦選択

^ しゃ如来にょらい 一 迦如来
せん0504じゃくどく せんじゃく摂取せっしゅ 選択功徳 選択摂取
せんじゃく讃嘆さんだん せんじゃくねん 285A選択讃嘆 選択護念
せんじゃくなんぞく 選択阿難付属

二 Ⅰ ⅰ a ロ (二)(Ⅱ)韋提選択

^*だいにん 二 提夫人
せんじゃくじょう せんじゃくじょう 選択浄土 選択浄土

二 Ⅰ ⅰ a 小経
          (一)

【10】^¬*小経しょうきょう¼ に、 勧信かんしんに二、 証成しょうじょうに二、 ねんに二、 讃嘆さんだんに二、 なんに二あり。 ¬小経¼勧信、証成、護念二、讃嘆二、難易アリ

二 Ⅰ ⅰ a ハ (二)列釈
            (Ⅰ)正釈
              (ⅰ)勧信

^勧信かんしんに二とは、 勧信
一にはしゃ勧信かんしんなり、 *しゃに二あり。 ニハ釈迦勧信ナリ 釈迦アリ
二には諸仏しょぶつ勧信かんしんなり、 *諸仏しょぶつに二あり。 ニハ諸仏勧信ナリ 諸仏アリ

二 Ⅰ ⅰ a ハ (二)(Ⅰ)(ⅱ)証誠

^証成しょうじょうに二とは、 証成
一にはどく証成しょうじょう 二にはおうじょう証成しょうじょうなり。 ニハ功徳証成 ニハ往生証成ナリ

二 Ⅰ ⅰ a ハ (二)(Ⅰ)(ⅲ)護念

^ねんに二とは、 護念
一にはしゅうねん しゃねんなり。 285Bニハ執持護念 釈迦護念ナリ
二には発願ほつがんねん 諸仏しょぶつねんなり。 ニハ発願護念 諸仏護念ナリ

二 Ⅰ ⅰ a ハ (二)(Ⅰ)(ⅳ)讃嘆

^讃嘆さんだんに二とは、 讃嘆
0505にはしゃ讃嘆さんだんに二あり。 二には諸仏しょぶつ讃嘆さんだんに二あり。 ニハ釈迦讃嘆アリ ニハ諸仏讃嘆アリ

二 Ⅰ ⅰ a ハ (二)(Ⅰ)(ⅴ)難易

^なんに二とは、 難易
一にはなんじょうなり。 二には信心しんじんなり。 疑情ナリ 信心ナリ

二 Ⅰ ⅰ a ハ (二)(Ⅱ)追釈

^しゅうに三あり。 こんとうなり。 発願ほつがんに三あり。 こんとうなり。 執持アリ 已今当ナリ 発願アリ 已今当ナリ

二 Ⅰ ⅰ 因約三経差別

【11】^¬*ほうさん¼ にさんおうじょうあり。 ¬法事讃¼有↢三往生↡
一には、 なん思議じぎおうじょうは、 ¬だいきょう¼ の*しゅうなり。 難思議往生  ¬大経¼宗ナリ
二には、 双樹そうじゅりんおうじょうは、 ¬かんぎょう¼ のしゅうなり。 双樹林下往生 ¬観経¼宗ナリ
三には、 なんおうじょうは、 ¬*弥陀みだきょう¼ のしゅうなり。 難思往生   ¬弥陀経¼宗ナリ

二 Ⅰ 追釈

【12】^¬だいきょう¼ (意) にのたまはく、 「本願ほんがん証成しょうじょうしたまふに、 三身さんしんまします」 と。 ¬大経¼言ハク 証↢成シタマフニ本願↡三身マシマス
法身ほっしん証成しょうじょう ¬きょう¼ (大経・上) にのたまはく、 「くうちゅうにしてさんじてのたまはく、 ªけつじょうしてかならずじょうしょうがくじょうじたまふべしº」 と。 文 286A法身証成 ¬経¼言ハク、「空中ニシテハク、決定シテタマフベシト↢无上正覚↡」文
報身ほうじん証成しょうじょう 十方じっぽう如来にょらいなり。 報身証成 十方如来ナリ
*しん証成しょうじょう にょうおうぶつなり。 化身証成 世饒王仏ナリ

論身土差別【仏身仏土】
    総標

【13】^ぶつについてしゅあり。 ↢仏土↡有↢二種↡
0506にはぶつ 二にはなり。 者仏 者土ナリ

二 Ⅱ 別釈
      示仏
        標列

【14】^ぶつについてしゅあり。 ↠仏↢四種↡
一には法身ほっしん 二には報身ほうじん ニハ法身 ニハ報身
三には応身おうじん 四には化身なり。 ニハ応身 ニハ化身ナリ

二 Ⅱ ⅱ a 分判
          (一)明法身

【15】^法身ほっしんについてしゅあり。 ↢法身↡有↢二種↡
一にはほっしょう法身ほっしん 二には方便ほうべん法身ほっしんなり。 ニハ法性法身 ニハ方便法身ナリ

二 Ⅱ ⅱ a ロ (二)明報身

【16】^報身ほうじんについてさんしゅあり。 ↢報身↡有↢三種↡
一には弥陀みだ 二にはしゃ ニハ弥陀 ニハ釈迦
三には十方じっぽうなり。 ニハ十方ナリ

二 Ⅱ ⅱ a ロ (三)合示応化

【17】^おうについてさんしゅあり。 ↢応・化↡有↢三種↡
一には弥陀みだ 二にはしゃ 286B弥陀 釈迦
三には十方なり。 十方ナリ

二 Ⅱ ⅱ 明土
        標列

【18】^についてしゅあり。 ↠土↢四種↡
一には法身ほっしん 二には報身ほうじん 法身 報身
三には応身おうじん 四にはしんなり。 応身 化身ナリ

二 Ⅱ ⅱ b 分判
          (一)報土

050719】^ほうについてさんしゅあり。 イテ↢報土↡有↢三種↡
一には弥陀みだ 二にはしゃ 弥陀 釈迦
三には十方じっぽうなり。 十方ナリ

二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)化土

【20】^弥陀みだ化土けどについてしゅあり。 ↢弥陀化土↡有↢二種↡
一にはじょうたい 二にはまんへんなり。 ニハ疑城胎宮 ニハ懈慢辺地ナリ

明一乗機法【一乗機教】
    顕一乗法
      約絶対明
        正明

【21】^本願ほんがんいちじょうは、 *頓極とんごく*頓速とんそくえんにゅう円満えんまんきょうなれば、 絶対ぜったい不二ふにきょう一実いちじつ真如しんにょどうなりと、 るべし。 せんがなかのせんなり、 とんがなかのとんなりしんのなかのしんなり、 えんのなかのえんなり。 いちじょう一実いちじつだい誓願せいがんかいなり。 *第一だいいち希有けうぎょうなり。 本願一乗、頓極・頓速・円融・円満之教ナレ者、絶対不二之教、一実真如之道也、応↠知。専中之専ナリ、頓中之頓ナリ、真中之真ナリ、円中之円ナリ。一乗一実大誓願海ナリ 第一希有之行也
【22】^金剛こんごう真心しんしんは、 無礙むげ信海しんかいなりと、 るべし。 287A真心、无信海ナリト、応↠知

二 Ⅲ ⅰ a 引証

【23】^¬しょ¼ (*玄義分) にいはく、 「われさつぞうとんぎょういちじょうかいとによる」 と。 ¬疏¼云、「我依ルトイヘリ↢菩薩蔵頓教一乗海トニ↡。」
【24】^¬さん¼ (*般舟讃) にいはく、 「¬瓔珞ようらくきょう¼ のなかにはぜんぎょうく。 万劫まんごうこうしゅして退たいしょうす。 ¬かんぎょう¼・¬弥陀みだきょう¼ とうせつは、 すなはちこれとんぎょうだいぞうとなり」 と。 ¬讃¼云、「¬瓔珞経¼中ニハ↢漸教↡。万劫修シテ↠功↢不退↡。¬観経¼・¬弥陀経¼等、即是頓教菩提蔵トナリ。」

二 Ⅲ ⅰ a 釈字

【25】^円頓えんどんとは、 えんえんにゅう円満えんまんづく。 とん頓極とんごく頓速とんそくづく。 円頓↢円融・円満↡頓↢頓極・頓速

二 Ⅲ ⅰ 約相対論
        総示
          (一)標挙

【26】^きょうたい 二教対

二 Ⅲ ⅰ b イ (二)指定

^ほん0508がんいちじょうかいは、 頓極とんごく頓速とんそくえんにゅう円満えんまんきょうなりと、 るべし。 本願一乗海、頓極・頓速・円融・円満之教也、応↠知
^じょう要門ようもんは、 じょうさんぜん方便ほうべんもん三福さんぷくぼんきょうなりと、 るべし。 浄土要門、定散二善・方便仮門・三福九品之教也、応↠知

二 Ⅲ ⅰ b 別列

 1なんたい        3横竪おうじゅたい 難易対    横竪対
 2頓漸とんぜんたい        4超渉ちょうしょうたい 287B頓漸対    超渉対
40しんたい     5順逆じゅんぎゃくたい    15じゅんぞうたい 真仮対  順逆対  純雑対
じゃしょうたい       8しょうれつたい 邪正対    勝劣対
 9しんたい        6だいしょうたい 親疎対    大小対
 7しょうたい      13重軽じゅうきょうたい 多少対    重軽対
18通別つうべつたい       16きょうたい 通別対    径迂対
17しょうたい      14こうきょうたい 捷遅対    広狭対
10近遠ごんおんたい       37りょうりょうきょうたい 近遠対    了不了教対
42だいしょうたい    27じょうじょうたい 大利小利対  无上有上対
32不回ふえこうたい     31せつせつたい 不廻廻向対  自説不説対
44がんがんたい     せいせいたい 有願无願対  有誓无誓対
39せん0509せんたい      35さんさんたい 選不選対   讃不讃対
34しょうしょうたい     33不護ふごたい 288A証不証対   護不護対
20いんみょう直弁じきべんたい    22じんじんたい 因明直辨対  理尽非理尽対
24けんけんたい     26相続そうぞくぞくたい 無間有間対  相続不続対
19退たい退たいたい      25だんだんたい 退不退対   断不断対
30いんぎょうとくたい    42法滅ほうめつめつたい 因行果徳対  法滅不滅対
43りきりきたい     45摂取せっしゅせつたい 自力他力対  摂取不摂対
46にゅうじょうじゅにゅうたい   29思議しぎたい 入定聚不入対 思不思議対
47ほう二土にどたい 報化二土対

二 Ⅲ ⅰ b 結文

 ^じょうじゅうたい きょうぼうくと、 るべし。  已上四十二対 クト↢教法↡応↠知

二 Ⅲ 明一乗機
      就絶対明
        顕其機

【27】^真実しんじつじょう信心しんじんは、 内因ないいんなり。 真実浄信心 内因ナリ
摂取せっしゅしゃは、 えんなり。 摂取不捨 外縁ナリ

二 Ⅲ ⅱ a 釈其相

【28】^本願ほんがん信受しんじゅするは、 前念ぜんねん命終みょうじゅうなり。 信↢受スルハ本願↡、前念命終ナリ
すなはち正定しょうじょうじゅかず(*論註・上意) と。 文 ↢正定聚之数↡」文
^即得そくとくおうじょうは、 ねんそくしょうなり。 即得往生、後念即生ナリ
そくときひつじょう(*易行品) と。 文 「即時入↢必定↡」文
また 「*ひつじょうさつづくるなり(*地相品・意) と。 文 又「名↢必定菩薩↡也」文

二 Ⅲ ⅱ a 結具徳

051029】^りき金剛こんごうしんなりと、 るべし。 他力金剛心也、応↠知
^すなはちろくさつおなじ。 便↢弥勒菩薩
*りき金剛こんごうしんなりと、 るべし。 自力金剛心也、応↠知
¬だいきょう¼ (下) には 「にょろく」 とのたまへり。 文 ¬大経ニハ¼言ヘリ↢「次如弥勒」↡文

二 Ⅲ ⅱ 約相対弁
        総標

【30】^たい 288B機対
^いちじょう円満えんまんは、 りきなり。 一乗円満他力ナリ
^*ぜんぎょうしんは、 りきなり。 漸教廻心自力ナリ

二 Ⅲ ⅱ b 別明

 1しんたい       けんたい 信疑対    賢愚対
 2善悪ぜんあくたい        3しょうじゃたい 善悪対    正邪対
 4是非ぜひたい        5じつたい 是非対    実虚対
 6しんたい        7じょうたい 真偽対    浄穢対
こうしゅたい       みょうたい 好醜対    妙麁対
 8どんたい        9奢促しゃそくたい 利鈍対    奢促対
*じょうたい      ごうにゃくたい 希常対    強弱対
上上じょうじょう下下げげたい    しょうれつたい 上々下々対  勝劣対
*じきにゅうしんたい     11みょうあんたい 直入廻心対  明闇対

二 Ⅲ ⅱ b 結文

 ^0511じょう じゅうはちたい 二機にきくと、 るべし。  已上 十八対 クト↢二機↡応↠知

二 Ⅲ ⅱ 広明機類
        標列

【31】^またしゅについて、 またしゅしょうあり。 又就↢二種↡復有↢二種性↡
^二機にきとは、 289A二機
一にはぜん 二にはあくなり。 ニハ善機 ニハ悪機ナリ
^しょうとは、 二性
一にはぜんしょう 二にはあくしょうなり。 ニハ善性 ニハ悪性ナリ

二 Ⅲ ⅱ c 別釈
          (一)明善機

【32】^またぜんについてしゅあり 又復就↢善機↡有↢二種↡
またぼうしょうあり。 又有↢傍正↡
一にはじょう 二にはさんなり。 ニハ定機 ニハ散機ナリ
¬しょ¼ (*序分義) に 「一切いっさいしゅじょうしゅあり、 一にはじょう、 二にはさんなり」 といへり。 文 ¬疏¼云↢「一切衆生二種、一者定二者散ナリ」↡文
【33】^またぼうしょうありとは、 又有↢傍正↡者
一にはさつだいしょう 二には縁覚えんがく ニハ菩薩 大小 ニハ縁覚
三にはしょうもん*びゃくとう ニハ声聞・辟支等
じょうぼうなり。 浄土之傍機也
四にはてん 五には人等にんとうなり。 ニハ ニハ人等ナリ
じょうしょうなり。 浄土之正機也

二 Ⅲ ⅱ c ロ (二)明善性

【34】^またぜんしょうについてしゅあり。 又復就↢善性↡有↢五種↡
一にはぜんしょう 二にはしょうしょう ニハ善性 ニハ正性
0512にはじつしょう 四にはしょう 289Bニハ実性 ニハ是性
五にはしんしょうなり。 ニハ真性ナリ

二 Ⅲ ⅱ c ロ (三)明悪機

【35】^またあくについて七種しちしゅあり。 又復就↢悪機↡有↢七種↡
一にはじゅうあく 二にはじゅう ニハ十悪 ニハ四重
三にはけん 四にはかい ニハ破見 ニハ破戒
五にはぎゃく 六には謗法ほうぼう ニハ五逆 ニハ謗法
七には闡提せんだいなり。 ニハ闡提ナリ

二 Ⅲ ⅱ c ロ (四)明悪性

【36】^またあくしょうについてしゅあり 又復就↢悪性↡有↢五種↡
一にはあくしょう 二にはじゃしょう ニハ悪性 ニハ邪性
三にはしょう 四にはしょう ニハ虚性 ニハ非性
五にはしょうなり。 ニハ偽性ナリ

二 Ⅲ 結引諸文【引証成義】
      玄義分

【37】^こうみょうしょう (善導) のいはく (玄義分) 光明寺和尚ノタマハク
道俗どうぞくしゅとう 「道290A俗時衆等
 おのおのじょうしんおこせども、  各セドモ↢無上
 しょうはなはだいとひがたく、  生死甚↠厭
 仏法ぶっぽうまたねがひがたし。  仏法復難↠忻
 ともに金剛こんごうこころざしおこして、  共シテ↢金剛
 おう四流しるちょうだんせよ。  横超↢断セヨ四流
 弥陀みだかい*かんにゅうして、  観↢入シテ弥陀界
 帰依きえがっしょうらいしたてまつ*れ。  帰依合掌シタテマツレ
*相応そうおう一念いちねんのち  相応一念
 はんんひと0513」 といへりと。  果得↢涅槃↡者トイヘリ

二 Ⅲ ⅲ 浄土論

【38】^¬*じょうろん¼ にいはく、 ¬浄土論¼曰
そん、 われ一心いっしんに、 「世尊我一心
 じん十方じっぽう無礙むげこう如来にょらい  帰↢命シタテマツリテ尽十方
 みょうしたてまつりて、  無光如来
安楽あんらくこくしょうぜんとがんず。  願↠生ゼント↢安楽国
われしゅ多羅たら  我依↢修多羅
 真実しんじつどくそうによりて、  真実功徳相
 がんそうきて、  説↢願偈総持
 ぶっきょう相応そうおうせり」 と。  与↢仏教↡相応セリトノタマヘリ

二 Ⅲ ⅲ 無量寿経

【39】^¬*仏説ぶっせつりょう寿じゅきょう¼ (下) にのたまはく、 *こう僧鎧そうがい三蔵さんぞうやく ¬仏説無量寿経¼言 康僧鎧三蔵訳
^ªわがめつのちをもつて、 またわくしょうずることをることなかれ。 当来とうらいきょうどう滅尽めつじんせんに、 われ慈悲じひ哀愍あいみんをもつて、 こときょうとどめてじゅうすることひゃくさいせん。 それしゅじょうありて、 このきょうもうあふもの、 こころ所願しょがんしたがひてみなとくすべしº と。 「無↠得ルコト↧以↢我滅度之後↡、復生ズルコトヲ↦疑惑↥。当来之世、経道滅尽センニ、我以↢慈悲哀愍↡、特↢此↡、止住スルコト百歳セン。其↢衆生↡、値↢斯↡者、随↢意所願290B↡、皆可シト↢得度↡。
^ぶつろくかたりたまはく、 ª如来にょらいこうもうあひがたくたてまつりがたし。 諸仏しょぶつきょうどうがたくきがたし。 さつしょうぼうしょ波羅はらみつくをることまたかたし。 ぜんしきひ、 ほうき、 よくぎょうずること、 これまたかたしとす。 もしこのきょうきてしんぎょうじゅすること、 なんのなかのなん、 このなんぎたるはなけん。 仏語リタマハク↢弥勒如来興世、難↠値↠見タテマツリ。諸仏経道、難↠得難↠聞。菩薩勝法、諸波羅密、得ルコト↠聞亦難。遇↢善知識↡、聞↠法ズルコト、此亦為↠難シト。若↢斯↡、信楽受持スルコト、難中之難、無ケン↠過タルハ↢此↡。
^このゆゑにわがほうかくのごとくなしき、 かくのごとくき、 かくのごとくおしふ。 まさにしんじゅんしてほうのごとくしゅぎょうすべしº」 と。 法、如↠是シキ、如↠是、如↠是シト↢当信順シテ↠法修行↡。」

二 Ⅲ ⅲ 如来会

051440】^¬*りょう寿じゅ如来にょらい¼ (下) にのたまはく、 *だい流志るし三蔵さんぞうやく ¬無量寿如来会¼言ハク 菩提流支三蔵訳
*如来にょらいしょうへんくう 「如来勝智徧虚空
 所説しょせつごんは、 ただぶつのみのさとりなり。  所説義言唯仏ノミナリ
 このゆゑにひろしょきて、  是キテ↢諸智土
 わがきょう如実にょじつごんしんずべし」 と。  応シト↠信↢我教如実↡」

二 Ⅲ ⅲ 平等覚経

【41】^¬*りょう清浄しょうじょうびょうどうがくきょう¼ (二) にのたまはく、 *帛延はくえん三蔵さんぞうやく ¬無量清浄平等覚経¼言 帛延三蔵訳
速疾そくしつえてすなはち、 「速疾便↠到
 安楽あんらくこくかいいたるべし。  安楽国之世界
 りょうこうみょういたりて、  至↢無量光明土
 しゅぶつようしたてまつれ」 と。  供↢養シタテマツレト於無数↡」

二 Ⅲ ⅲ 大阿弥陀経

【42】^¬**諸仏しょぶつ弥陀みださん三仏さんぶつ薩楼さるぶつだん過度かど人道にんどうきょう¼ (下) にのたまはく、 *けん三蔵さんぞうやく ¬諸仏阿弥陀三耶三仏薩楼仏檀過度人道経¼言 支謙三蔵訳
^われはつ泥洹ないおんしてきてのちきょうどう留止るしせんこと千歳せんざいせん。 千歳せんざいのちきょうどう断絶だんぜつせん。 われみなあいして、 ことにこのきょうぼうとどめてじゅうせんことひゃくさいせん。 ひゃくさいのうちにおわらん。 いまし休止くし断絶だんぜつせん。 こころしょがんにありてみなどうべし」 と。 「我291A般泥洹後、経道留止センコト千歳セン。千歳後、経道断絶セン。我皆慈哀シテ、特メテ↢是経法↡、止住センコト百歳セン。百歳ラン。乃休止断絶セン。在↢心所願↡、皆可シト↠得↠道。」

二 Ⅲ ⅲ 照師義疏

【43】^*がんじょうりっ ¬*弥陀みだきょうしょ¼ にいはく、 だいりっなり 元照律師¬阿弥陀経義疏¼云 大智律師也
^「ª*せいしょうº にいはく、 ª十方じっぽう如来にょらいしゅじょう憐念れんねんしたまふこと、 ははおもふがごとしº と。 ¬大論だいろん¼ (*大智度論) にいはく、 ªたとへばぎょのもしおもはざ0515れば、 すなはちらんするとうのごとしº と。 「勢至章、十方如来、憐↢念シタマフコト衆生↡、如シト↢母↟子。¬大論¼云、譬ヘバシト↢魚母レバ↠念↠子、子即壊爛スル
^のく多羅たら、 ここにはじょうほんず、 さんみゃくしょうとうといふ、 さんだいしょうがくといふ。 すなはちぶっごうなり。 阿耨多羅、此ニハ↢无上↡。三藐↢正等↡。三菩提↢正覚↡。即仏果ナリ
^*はくぼん業惑ごうわく纏縛てんばくせられてどうてんせることひゃく千万せんまんごうなり。 たちまちにじょうきて、 がんしてしょうもとむ。 一日いちにちみなしょうすればすなはちかのくにゆ。 諸仏しょぶつねんしてただちにだいおもむかしむ。 薄地凡夫、業惑纏縛セラレテ、流↢転セルコト五道↡、百千万劫ナリ。忽キテ↢浄土↡、志願シテ↠生。一日称スレバ↠名、即↢彼↡。諸仏護念シテ、直カシム↢菩提↡。
^おもふべし、 万劫まんごうにももうあひがたし。 せんしょうひとたびちかいもうあへり。 今日こんにちよりらいしゅうじんすとも、 在所ざいしょにして讃揚さんようし、 ほうにして勧誘かんゆうせん。 所感しょかんしんしょえん弥陀みだひとしくしてあることなけん。 このしんきわまりなし、 ただぶつしょうしたまへ。 ↠謂、万劫ニモ↠逢、千生タビ291Bヘリ↠誓。従↢今日↡終↢尽ストモ未来↡、在処ニシテ讃揚、多方ニシテ勧誘セン。所感身土・所化機縁、与↢阿弥陀↡等シクシテ、无ケン↠有コト↠異。此心罔↠極、唯仏証知シタマヘ
^このゆゑにしもたびしんすすむ。 わがことばしんずるものは、 おしえしんずといふなり。 *わが十方じっぽう諸仏しょぶつしんぜざるがごとしと、 あにもうなるをや」 と。 、下タビ↠信。信ズル↢我↡者、謂↠信ズト↠教也。如シト↠不ルガ↠信↢我十方諸仏↡、豈虚妄ナルヲ。」
 *ほんにいはく  本
   *けんちょう七年しちねんきのとのうはちがつじゅう七日しちにちこれをく。    建長七年 八月廿七日書
禿とく*親鸞しんらんはちじゅうさんさい 愚禿親鸞 八十三歳
先年随得本且書下帖今日為満部追写当巻只為備自見乍振折臂初三丁余雖励之猶不堪之間仮両筆終一帖畢坐筆麁註等任自由之愚案之子細如截下帖之奥而已于時*康永元年壬午九月十一日記之             存覚 五十三歳

0516禿とくしょう 

  0292

・述意

【44】^*賢者けんじゃしんきて、  禿とくしんあらわす。 293Aキテ↢賢者↡ 顕↢愚禿
^賢者けんじゃしんは、   うちけんにしてほかなり。 賢者    内ニシテ愚也
^禿とくしんは、   うちにしてほかけんなり。 愚禿    内ニシテ賢也

重引弁心相
    【略標疏文】
      科釈

【45】^*とうちょう*こうみょうしょう (*善導) の ¬かんぎょう¼ (*散善義) にいはく、 唐朝光明寺和尚¬観経義¼云
^まづじょうぼん上生じょうしょうくらいのなかについて、 一には ª仏告ぶつごうなんº より以下いげは、 すなはちならべてひょうす。 一にはごうみょうかす。 二にはそのくらいべんじょうすることをかす。 これすなはちだいじょうじょうぜん修学しゅがくするぼんにんなり。 「先↢上品上生↡、 ニハ↢仏告阿難↡以下、即ベテ↢二↡。一ニハ↢告命↡、二ニハ↣辨↢定スルコトヲ↡。此即修↢学スル大乗上善↡凡夫人也。
^三には ªにゃくしゅじょうº よりしも ª即便そくべんおうじょうº にいたるまでこの0517かたは、 まさしくそうじてしょうるいぐることをかす。 すなはちそれにあり。 一には能信のうしんにんかす。 二にはおうじょうがんすることをかす。 三には発心ほっしんしょうかす。 四には*とくしょうやくかす。 ニハ↢若有衆生↡下、至ルマデ↢即便往生↡已来タハ、正↣総ジテグルコトヲ↢有生之類↡。即↢其四↡。一ニハ↢能信之人293Bニハ↣求↢願スルコトヲ往生ニハ↢発心多少ニハ↢得生之益↡。
^四には ªとうさんº よりしも ªひっしょうこくº にいたるまでこのかたは、 まさしく三心さんしんべんじょうしてもつてしょういんとなすことをかす。 すなはちあり。 一にはそんしたがひてやくあらわすこと、 みつにしてりがたし。 ぶつみづからひてみづからあらわしたまふにあらざれば、 るによしなきことをかす。 二には如来にょらいかえりてみづからさき三心さんしんかずこたへたまふことをかす。 ニハ↢何等為三↡下、至マデ↢必生彼国↡已来タハ、正↧辨↢定シテ三心↡、以コトヲ↦正因↥。即↠二。一↧世尊随↠機コト↠益、意密ニシテ↠知ザレ↢仏自シタマフニ↡、无キコトヲ↞由↠得ルニ↠解。二ニハ↣如来還ヘタマフコトヲ↢前三心之数↡。

二 Ⅳ ⅰ 正釈
        牒経

 ^¬きょう¼ (観経) にのたまはく、 ª一にはじょうしんº。 ¬経¼云、一者至誠心。

二 Ⅳ ⅰ b 釈字

^とはしんなり、 じょうとはじつなり。 者真ナリ、誠者実ナリ

二 Ⅳ ⅰ b 釈義
          (一)総釈
            (Ⅰ)直弁

^一切いっさいしゅじょうしん口意くいごうしゅするところのぎょう*かならず真実しんじつ心のうちになしたまへるをもちゐんことをかさんとおもふ。 ↠明サント↣一切衆生、身口意業↠修スル解行、必ンコトヲ↢真実心シタマヘルヲ↡。

二 Ⅳ ⅰ b ハ (一)(Ⅱ)簡非

^ほか賢善けんぜんしょうじんそうげんずることをざれ、 うち虚仮こけいだければなり。 貪瞋とんじんじゃかんひゃくたんにしてあくしょうめがたし、 こと蛇蝎じゃかつおなじ。 三業さんごうおこすといへども、 づけて雑毒ぞうどくぜんとなす、 また虚仮こけぎょうづく、 真実しんじつごうづけざるなり。 ↠得↣外ズルコトヲ↢賢善精進之相↡、内レバナリ↢虚仮↡。貪瞋・邪偽・奸294A詐百端ニシテ、悪性難↠侵。事同↢蛇蝎↡。雖↠起↢三業↡、名↢雑毒之善↡、亦名↢虚仮之行↡、不↠名↢真実↡也。
^もしかくのごとき安心あんじんぎょうをなすは、 たとひ身心しんしんれいしてにちじゅう二時にじきゅうもときゅうになすこと、 ねんはらふがごとくするは、 すべて雑毒ぞうどくぜんづく。 この雑毒ぞうどくぎょうしてかのぶつじょうしょうせんとおもふは、 これかならず不可ふかなり。 ↢如↠此安心・起行↡者、縦使苦↢励シテ身心↡、日夜十二時、急スコトクスル↠灸フガ↢頭燃↡者、衆↢雑毒之善↡。欲↧廻シテ↢此雑毒之行↡、求↦生セント浄土↥者、此必不可也。

二 Ⅳ ⅰ b ハ (一)(Ⅲ)示由

^なにをもつてのゆゑに、 まさしくかの弥陀みだぶついんちゅうさつぎょうぎょうじたまひしときない一念いちねんいちせつも、 三業さんごう所修しょしゅみなこれ真実しんじつしんのなかに*なしたまひしによりてなり。 ^おほよ0518ほどこしたまふところしゅをなす、 またみな真実しんじつなりと。 シクテナリ↧彼阿弥陀仏、因中タマ↢菩薩↡時、乃至一念一刹那、三業所修、皆是真実心シタマヒシニ↥。凡所↠施シタマフ↢趣求↡、亦皆真実ナリト

二 Ⅳ ⅰ b ハ (二)別釈
            (Ⅰ)標二種

^また真実しんじつしゅあり、 一には自利じり真実しんじつ、 二には利他りた真実しんじつなり」 と。 又真実↢二種↡者自利真実、二者利他真実ナリト。」

二 Ⅳ ⅰ b ハ (二)(Ⅱ)別釈
              (ⅰ)助釈利他

【46】^利他りた真実しんじつについて、 またしゅあり。 ↢利他真実↡亦有↢二種↡
^一には、 「おほよそほどこしたまふところしゅをなすは、 またみな真実しんじつなり」 と。 者凡所↠施シタマフスハ↢趣求↡、亦皆真実ナリト
^二には、 「*ぜん三業さんごうは、 かならず真実しんじつしんのなかにてたまひしをもちゐよ。 またもしぜん三業さんごうおこさば、 かならず真実しんじつしんのなかになしたまひしをもちゐて、 ないみょうあんえらばず、 みな真実しんじつもちゐるがゆゑにじょうしんづく」 と。 者不善三業ヰヨ↢真実心テタマヒシヲ↡、又若↢善294B三業↡者、必ヰテ↢真実心シタマヒシヲ↡、不↠簡↢内外明闇↡、皆須ヰルガ↢真実↡故クト↢至誠心

二 Ⅳ ⅰ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)引自利文
                (a)

【47】^自利じり真実しんじつといふは、 またしゅあり。 「言↢自利真実↡者、復有↢二種↡。

二 Ⅳ ⅰ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)
                  (イ)竪出真実

^一には、 真実しんじつしんのなかに自他じた諸悪しょあくおよびこくとう制捨せいしゃして、 行住ぎょうじゅう坐臥ざがに ª一切いっさいさつ諸悪しょあく制捨せいしゃするにおなじく、 われもまたかくのごとくせんº とおもへとなり。 ^二には、 真実しんじつしんのなかに自他じたぼんしょうとうぜん勤修ごんしゅすべしと。 者真実心、制↢捨シテ自他諸悪及穢国等↡、行住坐臥、想↧同ジク↣一切菩薩制↢捨スルニ諸悪↡、我亦如クセムト↞是也。二者真実心、勤↢修スベシト自他凡聖等↡。

二 Ⅳ ⅰ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)横出真実
                    [一]口業

^真実しんじつしんのなかのごうに、 かの弥陀みだぶつおよびしょうほう讃嘆さんだんすべし。 また真実しんじつしんのなかのごうに、 三界さんがい六道ろくどうとう自他じたしょうほうあくえんし、 また一切いっさいしゅじょう三業さんごうしょぜん讃嘆さんだんすべし。 もし善業ぜんごうにあらずは、 つつしみてこれをとおざかれ、 またずいせざれとなり。 真実心口業、讃↢嘆スベシ阿弥陀仏及依正二報↡。又真実心口業、毀↢厭三界六道等自他依正二報、苦悪之事↡、亦讃↢嘆スベシ一切衆生三業所為↡。若↢善業↡者、敬而遠ザカレ↠之、亦不レト↢随喜↡也。

二 Ⅳ ⅰ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[二]身業

^また真実しんじつしん0519なかの身業しんごうに、 がっしょうらいきょうして、 四事しじとうをもつてかの弥陀みだぶつおよびしょうほうようしたてまつれ。 また真実しんじつしんのなかの身業しんごうに、 このしょう三界さんがいとう自他じたしょうほうきょうまん厭捨えんしゃすべし。 又真実心身業、合掌礼敬シテ、四事等ヲモテ供↢養シタテマツレ阿弥陀仏及依正二報↡。又真実心身業、軽↢慢厭↣捨スベシ生死三界等自他依正二報↡。

二 Ⅳ ⅰ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[三]意業

^また真実しんじつしんのなかのごうに、 かの弥陀みだぶつおよびしょうほうそう観察かんざつ憶念おくねんして、 まえげんぜるがごとくすべし。 また真実しんじつしんのなかのごうに、 このしょう三界さんがいとう自他じたしょうほうきょうせん厭捨えんしゃすべし」 となり。 又真実心295A意業、思↢想観↣察憶↤念シテ阿弥陀仏及依正二報↡、如クスベシ↠現ゼルガ↢目↡。又真実心意業、軽↢賎厭↣捨スベシトナリ生死三界等自他依正二報↡。」

二 Ⅳ 広明三心
      正明三心
        至誠心
          (一)就文略定
          (二)就義広判
            (Ⅰ)正明二種

【48】^一にはじょうしん」 といふは、 とはしんなり、 じょうとはじつなり。 すなはち真実しんじつなり。 真実しんじつしゅあり。 者至誠心トイフ者 至者真ナリ、誠者実ナリ真実也 真実二種
^一には自利じり真実しんじつなり。 者自利真実ナリ
なんぎょうどう しょうどうもん 難行道 聖道門
しゅちょう 即身そくしんぶつ即身そくしんじょうぶつりきなり。 しゅしゅつ りきのなかのぜんぎょうりゃくこうしゅぎょうなり。 竪超 即身是仏即身成仏自力也 竪出 自力中之漸教歴劫修行也
^二には利他りた真実しんじつなり。 者利他真実ナリ
ぎょうどう じょうもん 易行道 浄土門
おうちょう 如来にょらい誓願せいがんりきなり。 おうしゅつ りきのなかのりきなり。
じょう0520さんしょぎょうなり。
横超 如来誓願他力也 横出 他力中之自力ナリ定散諸行也

二 Ⅳ ⅱ a イ (二)(Ⅱ)別釈自利
              (ⅰ)分別二門

【49】^自利じり真実しんじつについて、 またしゅあり。 295B↢自利真実↡復有↢二種↡
^一には*えん真実しんじつなり。 者厭離真実ナリ
しょうどうもん なんぎょうどう 聖道門 難行道
しゅしゅつ りき 竪出 自力
しゅしゅつとはなんぎょうどうきょうなり、 えんをもつてほんとす、 りきしんなるがゆゑなり。 竪出者難行道之教ナリ、以↢厭離↡為↠本、自力之心ナルガ故也
^二には*ごん真実しんじつなり。 者忻求真実ナリ
じょうもん ぎょうどう 浄土門 易行道
おうしゅつ りき 横出 他力
おうしゅつとはぎょうどうきょうなり、 ごんをもつてほんとす、 なにをもつてのゆゑに、 願力がんりきによりてしょう厭捨えんしゃせしむるがゆゑなりと。 横出者易行道之教ナリ、以↢忻求↡為↠本、何、由↢願力↡令ムルガ↣厭↢捨生死↡之故也

二 Ⅳ ⅱ a イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)弁明横出

【50】^またおうしゅつ真実しんじつについて、 またさんしゅあり。 又就↢横出真実↡、復有↢三種↡
^一にはごうごん真実しんじつ 296A者口業忻求真実
ごうえん真実しんじつなり、    口業厭離真実ナリ
^0521には身業しんごうごん真実しんじつ 者身業忻求真実
身業しんごうえん真実しんじつなり、    身業厭離真実ナリ
^三にはごうごん真実しんじつ 者意業忻求真実
ごうえん真実しんじつなり。    意業厭離真実ナリ

二 Ⅳ ⅱ a イ (二)(Ⅱ)(ⅲ)指示文段

【51】^しゅう (善導)しゃくもんあんずるに、 一者いっしゃ真実しんじつしんちゅう以下いげより、 「自他じたぼんしょうとうぜん」 にいたるまでは、 えんさきとしごんのちとす。 すなはちこれなんぎょうどうりきしゅしゅつなり。 真実しんじつしんちゅうごう以下いげより、 「自他じたしょうほう」 にいたるまでは、 すなはちこれぎょうどうりきおうしゅつなり。 ズルニ↢宗師釈文↡、従↢「一者真実心中」已下↡、至ルマデ↢「自他凡聖等善」↡者、厭離為↠先、忻求為↠後。則是難行道・自力・竪出之義也。従↢「真実心中口業」已下↡、至ルマデ↢「自他依正二報」者、則是易行道・他力・横出之義也。

二 Ⅳ ⅱ a 深信
          (一)略標疏文
            (Ⅰ)本疏
              (ⅰ)牒経釈名

【52】^二には深心じんしん深心じんしんといふは、 すなはちこれ深信じんしんしんなり。 またしゅあり。 「二者深心。言↢深心↡者、即是深信之心也。亦有↢二種↡。

二 Ⅳ ⅱ a ロ (一)(Ⅰ)(ⅱ)弁深信相

^一には、 けつじょうして ªしんげんにこれ罪悪ざいあくしょうぼん曠劫こうごうよりこのかたつねにもっし、 つねにてんして、 しゅつえんあることなしº と深信じんしんす。 者決定シテ深↢信自身是罪悪生死凡夫、曠劫ヨリ已来、常流転シテ、无シト↟有コト↢出離296B之縁↡。
^二には、 けつじょうして ªかの弥陀みだぶつじゅう八願はちがんをもつてしゅじょうしょうじゅしたまふ、 うたがいなくおもんぱかりなく、 願力がんりきじょうずれば、 さだめておうじょうº と深信じんしんせよ」 となり。 者決定シテ深↧信セヨトナリ阿弥陀仏四十八願ヲモテ、摂↢受シタマフ衆生↡、无↠疑无↠慮、乗ズレバ↢彼願力↡、定↦往生↥。」

二 Ⅳ ⅱ a ロ (一)(Ⅱ)私釈

 ^いまこの深信じんしんりきごく金剛こんごうしんいちじょうじょう真実しんじつしんかいなり。 今斯深信者、他力至極之金剛心、一乗无上之真実信海也

二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)案文分別
            (Ⅰ)総列二種
              (ⅰ)

【53】^もんこころあんずるに、 深信じんしんについてしち深信じんしんあり、 ろくけつじょうあり ズルニ↢文↡、就↢深信↡有↢七深信↡、有↢六決定↡

二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)
                (a)七深信

^しち0522深信じんしんとは、 七深信
^だい一の深信じんしんは、 「けつじょうしてしん深信じんしんする」 と、 すなはちこれ*自利じり信心しんじんなり。 第一深信、決定シテ深↢信スル自身↡、即是自利信心也
^だい深信じんしんは、 「けつじょうしてじょう願力がんりき深信じんしんする」 と、 すなはちこれ利他りた信海しんかいなり。 第二深信、決定シテ深↢信スル乗彼願力↡、即是利他信海也
^だいさんには、 「けつじょうして ¬かんぎょう¼ を深信じんしん」 と。 第三ニハ決定シテ深↢信¬観経¼↡
^だいには、 「けつじょうして ¬弥陀みだきょう¼ を深信じんしん」 と。 第四ニハ決定シテ深↢信¬弥陀経¼↡
^だいには、 「ただぶつしんけつじょうしてぎょうによる」 と。 第五ニハ唯信↢仏語↡決定シテ↠行
^だいろくには、 「この ¬きょう¼ (観経) によりて深信じんしん」 と。 297A第六ニハ↢此¬経¼↡深信
^だいしちには、 「また深心じんしん深信じんしんけつじょうして*しんこんりゅうせよ」 となり。 第七ニハ又深心深信者、決定シテ建↢立セヨトナリ自心

二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)六決定

^*ろくけつじょうとは、 じょう*いでのごとし、 るべし。 六決定已上如↠次デノ↠知

二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)別顕後三
              (ⅰ)明第五信
                (a)

【54】^*だいの「唯信ゆいしんぶつ」 について、 三遣さんけんさんずいじゅんさんみょうあり。 イテ利他信心第五唯信仏語↡、有↢三遣・三随順・三是名↡

二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)

^*三遣さんけんとは、 三遣
一には、 「ぶつめたまふをば、 すなはち」 と。 ニハメタマフヲ↠捨者即
二には、 「ぶつぎょうめたまふをば、 すなはちぎょう」 と。 ニハメタマフヲ↠行者即
0523には、 「ぶつめたまふところをば、 すなはち」 となり。 ニハメタマフ↠去ヲバルトナリ
^*さんずいじゅんとは、 三随順
一には、 「これぶっきょうずいじゅんすとづく」 と。 ニハ↣随↢順スト仏教
二には、 「ぶつずいじゅん」 と。 ニハ随↢順仏意
三には、 「これ仏願ぶつがんずいじゅんすとづく」 となり。 ニハクトナリ↣随↢順スト仏願
^*さんみょうとは、 297B三是名
一には、 「これしんぶつ弟子でしづく」 となり。 ニハトナリ↢真仏弟子
かみみょうとこれとがっしてさんみょうなり。 是名与↠此合シテ三是名也

二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)明第六信
                (a)

【55】^*だいろくに「この ¬きょう¼ (観経) によりてじんしんする」 について、 六即ろくそく三印さんいんさんろくしょうりょうあり。 イテ依¬観経¼第六↢此¬経¼↡深信スルニ↥、有↢六即・三印・三無・六正・二了↡

二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)

^*六即ろくそくとは、 六即
一には、 「もしぶつかなへば、 すなわいんして ªにょにょº とのたまふ」 と。 ニハヘバ↢仏意↡、即印可シテ↢如是如是
二には、 「もしぶつかなはざれば、 すなわち ªなんぢらがくところ、 このにょº とのたまふ」 と。 ニハ↠可↢仏意↡者、即↢汝等所説是義不如是
0524には、 「いんせざるは、 すなわ無記むきやくおな」 と。 ニハ↠印者、即ジト↢无記・无利・无益之語
四には、 「ぶついんしたまふは、 すなわぶつ正教しょうきょうずいじゅんするなり」 と。 ニハ印可シタマフ者、即随↢順スルナリ仏之正教
五には、 「もしぶつしょ言説ごんせつは、 すなわちこれ正教しょうきょうなり」 と。 ニハ所有言説、即是正教ナリ
六には、 「もしぶつ所説しょせつは、 すなわちこれ了教りょうきょうなり」 となり。 298Aニハ所説、即是了教ナリトナリ
^三印さんいんとは、 三印
一にはそくいん 二にはいん ニハ即印可 ニハ不印
三にはぶついんなり。 三印さんいんかみ六即ろくそくもんのなかにあり。 ニハ仏印可ナリ 三印者有↢上六即
^さんとは、 三無
一には無記むき 二には無利むり ニハ无記 ニハ无利
三にはやくなり。 さん六即ろくそくもんのなかにあり。 ニハ无益ナリ 三無者有↢六即
^*ろくしょうとは、 六正
一には正教しょうきょう 二にはしょう ニハ正教 ニハ正義
三には正行しょうぎょう 四にはしょう ニハ正行 ニハ正解
五にはしょうごう 六にはしょうなり。 ニハ正業 ニハ正智ナリ
^*0525りょうとは、 二了
一には、 「もしぶつ所説しょせつは、 すなはちこれ了教りょうきょうなり」 と。 ニハ所説、即是了教ナリ
二には、 「さつとうせつは、 ことごとく了教りょうきょうづくるなり」 と、 るべし。 ニハ菩薩等、尽クル↢不了教↡也、応↠知

二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)明第七信
                (a)就人立信
                  (イ)総明
                    [一]

【56】^*だいしちの「また深心じんしん深信じんしん」 については、 けつじょうしてしんこんりゅうするに、 べつさんいち問答もんどうあり。 イテ自利298B信心第七又深心深信↡者、決定シテ建↢立スルニ自心↡、有↢二別・三異・一問答↡

二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(a)(イ)[二]
                      [Ⅰ]明二別三異

^*べつとは、 二別
一にはべつ 二にはべつぎょうなり。 別解 別行ナリ
^*さんとは、 三異
一にはがく 二にはけん ニハ異学 ニハ異見
三にはしゅうなり。 ニハ異執ナリ

二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(a)(イ)[二][Ⅱ]明一問答
                        [ⅰ]

【57】^いち問答もんどうのなかに、 べつしんあり。 一問答↢四別・四信↡

二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(a)(イ)[二][Ⅱ][ⅱ]
                          [a]四別

^*べつとは、 四別
一には処別しょべつ 二にはべつ ニハ処別 ニハ時別
三にはたいべつ 四にはやくべつなり。 ニハ対機別ナリ ニハ利益別ナリ

二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(a)(イ)[二][Ⅱ][ⅱ][b]四信

^*0526しんとは、 四信
一にはおうじょう信心しんじんぼん*なんなり。 往生信心 凡夫疑難也
二には清浄しょうじょう信心しんじんぜんさつかんびゃくぶつとうなんなり。 清浄信心 地前菩薩・羅漢・辟支仏等疑難也
三には上上じょうじょう信心しんじんなり、 しょじょうじゅうこのかたのなんなり。 299Aニハ上々信心ナリ 初地已上十地已来タノ疑難也
四にはひっきょうじて一念いちねん退たいしんおこさざるなり。 報仏ほうぶつぶつなんなり。 畢竟ジテ↠起↢一念疑退之心↡也 報仏・化仏疑難也

二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(a)(ロ)別示
                    [一]上々信心
                      [Ⅰ]

【58】^上上じょうじょう信心しんじんについて、 じつ二異にいあり。 ↢上々信心↡、有↢五実・二異↡

二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(a)(ロ)[一][Ⅱ]

^*じつとは、 五実
一には真実しんじつけつりょうなり、 二にはじっ 真実決了ナリ 実知
三にはじつ 四には実見じっけん ニハ実解 ニハ実見
五にはじっしょうなり。 ニハ実証ナリ
^二異にいとは、 二異
一にはけん 二には異解いげなり。 異見 ニハ異解ナリ

二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(a)(ロ)[二]報化疑難
                      [Ⅰ]

【59】^ほうぶつなんについて、 ¬弥陀みだきょう¼ をいてしんすすむるに、 せんどうしょ六悪ろくあくどう三所さんしょあり。 ↢報化二仏疑難↡、引↢¬弥陀経¼↡勧ムルニ↠信、有↢二専・四同・二所化・六悪・二同・三所↡

二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(a)(ロ)[二][Ⅱ]

^*せんとは、 二専
0527には専念せんねん 二には専修せんじゅなり。 *しゅなり。 299Bニハ専念 ニハ専修ナリ 五種也
^*どうとは、 四同
一には同讃どうさん 二には同勧どうかん ニハ同讃 ニハ同勧
三にはどうしょう 四には同体どうたいなり。 ニハ同証 ニハ同体ナリ
^*しょとは、 二所化
一には、 「一仏いちぶつしょはすなはちこれ一切いっさいぶつなり」 と、 一仏所化、即是一切仏ナリ
二には、 「一切いっさいぶつしょはすなはちこれ一仏いちぶつなり」 となり。 一切仏所化、即是一仏ナリトナリ
^*六悪ろくあくとは、 六悪
一にはあく 二にはあくかい ニハ悪時 ニハ悪世界
三にはあくしゅじょう 四には悪見あくけん ニハ悪衆生 ニハ悪見
五にはあく煩悩ぼんのう 六には*悪邪あくじゃしんじょうなり。 ニハ悪煩悩 ニハ悪邪无信盛時也
^*どうとは、 二同
一には十方じっぽうぶつとう同心どうしんなり、 300Aニハ十方仏等同心ナリ
二にはどうにおのおの舌相ぜっそういだす。 ニハ同時↢舌相
^*三所さんしょとは、 三所
一には所説しょせつ 二には所讃しょさん ニハ所説 ニハ所讃
0528にはしょしょうなり。 ニハ所証ナリ

二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(a)(ロ)[二][Ⅲ]

【60】^一仏いちぶつ所説しょせつは、 すなはち一切いっさいぶつおなじくその証成しょうじょうしたまふなり。 これをにんいてしんつとづくるなり」 と、 るべし。 一仏所説、即一切仏同ジク証↢成シタマフ↡也。此クル↢就↠人ツト↟信、応↠知

二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(b)就行立信
                  (イ)総標二行

【61】^つぎぎょういてしんつとは、 しかるにぎょうしゅあり。 ↠行ツト↠信者、然↢二種↡
一には正行しょうぎょう、 二にはぞうぎょうなり」 と。 者正行 者雑行ナリ

二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(b)(ロ)別釈二行
                    [一]

【62】^正行しょうぎょうについて、 正行しょうぎょうろく一心いっしんろく専修せんじゅあり。 ↢正行↡、有↢五正行・六一心・六専修↡

二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(b)(ロ)[二]

^*正行しょうぎょうとは、 五正行
一には一心いっしんせんどくじゅ 二には一心いっしんせんかんざつ 一心専読誦 一心専観察
三には一心いっしんせんらいぶつ 四には一心いっしんせんしょうぶつみょう 一心専礼仏 一心専称仏名
五には一心いっしんせん讃嘆さんだんようなり。 一心専讃嘆供養ナリ
^またこのしょうのなかについて、 またしゅあり。 300B↢此↡復有↢二種↡
一には、 「一心いっしん弥陀みだみょうごう専念せんねんする、 これを正定しょうじょうごうづく」 と。 者一心専↢念スル弥陀名号↡、是↢正定之業
二には、 「もし礼誦らいじゅとうによるはすなはちづけて助業じょごうとなす」 となり。 者若ルハ↢礼誦等↡、即ストナリ↢助業
^*ろく0529一心いっしんとは、 いでのごとく一心いっしんなり。 六一心↠次一心也
^*ろく専修せんじゅとは、 いでのごとく専修せんじゅなり。 六専修↠次専修也

二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(b)(ハ)広明正雑
                    [一]双開二種

【63】^またしょうぞうぎょうについて、 またぎょうあり。 又復就↢正雑二行↡、復有↢二行↡
一には*定行じょうぎょう 二には*さんぎょうなり。 者定行 者散行也
【64】^またしょうぞうについて、 またしゅあり。 又復就↢正雑↡復有↢二種↡
一には念仏ねんぶつ 二には観仏かんぶつなり。 ニハ念仏 ニハ観仏ナリ

二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(b)(ハ)[二]錯綜別釈
                      [Ⅰ]念仏正雑

【65】^また念仏ねんぶつについて、 またしゅあり。 又就↢念仏↡復有↢二種↡
一には弥陀みだ念仏ねんぶつ 二には諸仏しょぶつ念仏ねんぶつなり。 ニハ弥陀念仏 ニハ諸仏念仏ナリ
法身ほっしん   報身ほうじん   応身おうじん   しん 法身 報身 応身 化身

二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(b)(ハ)[二][Ⅱ]正念仏定散

【66】^また弥陀みだ念仏ねんぶつについて、 しゅあり。 又復就↢弥陀念仏↡、有↢二種↡
一には正行しょうぎょう*じょうしん念仏ねんぶつ 301Aニハ正行定心念仏ナリ
二には正行しょうぎょう*散心さんしん念仏ねんぶつなり。 ニハ正行散心念仏ナリ
 ^弥陀みだじょうさん念仏ねんぶつ、 これをじょう真門しんもんといふ、 また一向いっこう専修せんじゅづくるなりと、 るべし。  弥陀定散念仏、是↢浄土真門↡、亦名クル↢一向専修↡也、応↠知

二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(b)(ハ)[二][Ⅲ]雑念仏定散

【67】^また諸仏しょぶつ念仏ねんぶつについて、 しゅあり。 又復就↢諸仏念仏↡、有↢二種↡
0530にはぞうぎょうじょうしん念仏ねんぶつ ニハ雑行定心念仏
二にはぞうぎょう散心さんしん念仏ねんぶつなり。 ニハ雑行散心念仏ナリ
 ^諸仏しょぶつじょうさん念仏ねんぶつは、 これぞうちゅうせんぎょうなりと、 るべし。  諸仏定散念仏、是雑中之専行也、応↠知

二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(b)(ハ)[二][Ⅳ]観仏正雑

【68】^また観仏かんぶつについて、 またしゅあり。 又復就↢観仏↡、復有↢二種↡
一には*しょうかんぶつ 二には*ぞう観仏かんぶつなり。 ニハ正之観仏 ニハ雑之観仏ナリ

二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(b)(ハ)[二][Ⅴ]正観真仮

【69】^またしょう観仏かんぶつについて、 またしゅあり 又復就↢正観仏↡、復有↢二種↡
一には*真観しんかん 二には*かんなり。 ニハ真観ナリ ニハ仮観ナリ
【70】^またしんについて、 じゅうさん観想かんそうあり。 又復就↢真仮↡、有↢十三観想↡
日想にっそう  水想すいそう  そう  宝樹ほうじゅそう 301B日想 水想 地想 宝樹想
ほう  宝楼ほうろう  華座けざ  像想ぞうそう 宝池 宝楼 華座 像想
真観しんかん  観音かんのん  せい  かん 真観 観音 勢至 普観
雑観ざっかん 雑観

二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(b)(ハ)[二][Ⅵ]正中散行

【71】^またしょうさんぎょうについて、 しゅあり。 又復就↢正散行↡、有↢四種↡
読誦どくじゅ   礼拝らいはい   讃嘆さんだん   よう 読誦 礼拝 讃嘆 供養

二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(b)(ハ)[二][Ⅶ]結示雑修

【72】^かみよりこのかた*じょうさん六種ろくしゅけんぎょうするがゆゑに雑修ざっしゅといふ、 これを*助業じょごう0531づく、 づけて方便ほうべんもんとなす、 またじょう要門ようもんづくるなりと、 るべし。 ヨリ、定散六種兼行スルガ↢雑修↡、是↢助業↡、名↢方便仮門↡、亦名クル↢浄土要門↡也、応↠知

二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(b)(ハ)[二][Ⅷ]雑観理事

【73】^またぞう観仏かんぶつについて、 しゅあり。 またしんあり。 又復就↢雑観仏↡、有↢二種↡ 又有↢真仮↡
一には*そうねん 二には*立相りっそうじゅうしんなり。 ニハ无相離念 ニハ立相住心ナリ

二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(b)(ハ)[二][Ⅸ]雑中散行

【74】^またぞうさんぎょうについて、 三福さんぷくあり。 又復就↢雑散行↡、有↢三福↡
一には、 きょうよう父母ぶも奉事ぶじちょうしんせつしゅじゅうぜんごうなり。 ニハ孝養父母、奉事師長、慈心不殺、302A修十善業ナリ
二には、 じゅさんそく衆戒しゅかいぼん威儀いぎなり。 ニハ受持三帰、具足衆戒、不犯威儀ナリ
三には、 ほつだいしん深信じんしんいん読誦どくじゅだいじょう勧進かんじんぎょうじゃなり。 ニハ発菩提心、深信因果、読誦大乗、勧進行者ナリ

二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(b)(ハ)[二][Ⅹ]結示雑行

【75】^かみよりこのかた一切いっさいじょうさん諸善しょぜんことごとくぞうぎょうづく、 六種ろくしゅしょうたいして六種ろくしゅぞうあるべし。 ぞうぎょうごんにんてんさつとうぎょうぞうするがゆゑにぞうといふなり。 もとよりこのかたじょう業因ごういんにあらず、 これを発願ほつがんぎょうづく、 また*しんぎょうづく、 ゆゑにじょうぞうぎょうづく、 これをじょう方便ほうべんもんづく、 またじょう要門ようもんづくるなり。 ヨリ、一切定散諸善悉↢雑行↡、対シテ↢六種↡応↠有↢六種雑↡。雑行之言、人・天・菩薩等解行雑スルガ↠雑也。自↠元来↢浄土業因↡、是↢発願↡、亦名↢廻心↡、故↢浄土雑行↡、是↢浄土方便仮門↡、亦名↢浄土要門↡也。

二 Ⅳ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(b)(ハ)[三]結示分斉

^おほよそしょうどうじょうしょうぞうじょうさん、 みなこれしんぎょうなりと、 るべし。 聖道・浄土、正雑定散、皆是廻心之行也、応↠知

二 Ⅳ ⅱ a 廻向発願心
          (一)引釈疏文
            (Ⅰ)牒釈

【76】^三にはこう発願ほつがんしん」 とは、 こう発願ほつがんしんといふは、 しゅあり。 者廻向発願心者、言↢廻向発願心↡者、有↢二種↡

二 Ⅳ ⅱ a ハ (一)(Ⅱ)後列
              (ⅰ)自利廻向心

^自利0532には、 「過去かここんじょう自他じたしょ善根ぜんごんをもって、 みな真実しんじつ深信じんしんじんのなかにこうしてかのくにうまれんとがんずるなり」 と。 自利ニハ過去・今生、自他所作善根ヲモテ、皆真実302B深信心廻向シテ、願ズルナリ↠生レン↢彼

二 Ⅳ ⅱ a ハ (一)(Ⅱ)(ⅱ)利他廻向心

^二には、 「こう発願ほつがんしてうまるるものは、 *かならずけつじょうして真実しんじつしんのなかにこうせしめたまへるがんもちゐてとくしょうおもいをなすなり」 となり。 ニハ廻向発願シテルヽ、必ヰテ↢決定シテ真実心廻向セシメタマヘル↡、作スナリトナリ↢得生

二 Ⅳ ⅱ a ハ (二)就文広示
            (Ⅰ)先釈信相

【77】^こう発願ほつがんしてうまるるものについて、 信心しんじんあり。 ↢廻向発願シテルヽ↡、有↢信心↡
^信心しんじんとは、 信心
とくしょうおもいをなす、 このしん深信じんしんすること、 なほ金剛こんごうのごとし」 となり。 ↢得生↡、此心深信スルコト、由若金剛

二 Ⅳ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)総就文明
              (ⅰ)

【78】^この深信じんしんについて、 いち譬喩ひゆ二異にいべついち問答もんどうこうあり。 イテ↢此深信↡、有↢一譬喩・二異・二別・一問答・二廻向↡

二 Ⅳ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)
                (a)一譬喩

^いち譬喩ひゆとは、 一譬喩
このしん深信じんしんすること、 なほ金剛こんごうのごとし」 となり。 心深信ルコト、由若金剛

二 Ⅳ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)二異

^二異にいとは、 二異
一にはけん 二にはがくなり。 ニハ異見 ニハ異学ナリ

二 Ⅳ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(c)二別

^べつとは、 二別
0533にはべつ 二にはべつぎょうなり。 ニハ別解 ニハ別行ナリ

二 Ⅳ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(d)一問答
                  (イ)

【79】^いち問答もんどうについて、 しちあくろっもんえんしょしょあい欲学よくがくひつあり。 303Aイテ↢一問答↡、有↢七悪・六譬・二門・四有縁・二所求・二所愛・二欲学・二必↡

二 Ⅳ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(d)(ロ)
                    [一]七悪

^しちあくとは、 七悪
<
一にはじゅうあく 二にはぎゃく ニハ十悪 ニハ五逆
三にはじゅう 四にはかい ニハ四重 ニハ破戒
五にはけん 六には謗法ほうぼう ニハ破見 ニハ謗法
七には闡提せんだいなり。 ニハ闡提ナリ

二 Ⅳ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(d)(ロ)[二]六譬

^ろっとは、 六譬
一には、 みょうよくあんす。 二には、 くうよくふくむ。 ニハ明能 ニハ空能
三には、 よくさいようす。 四には、 すいよくしょうにんす。 ニハ地能載養 ニハ水能生潤
五には、よくじょうす。 六には、二河にが みずかわかわ ニハ火能成壊 ニハ二河 水河火河

二 Ⅳ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(d)(ロ)[三]二門

^もんとは、 二門
一には愚痴門を出ず、 「*したがひて一門いちもんづるは、 すなはちいち煩悩ぼんのうもんづるなり」 と、 ニハ出愚303B痴門ヒテヅルハ↢一門↡即ヅル↢一煩悩門↡也
0534二には智願海に入る、 「*したがひて一門いちもんるは、 すなはちいちだつ智慧ちえもんるなり」 となり。 ニハ入智願門ヒテルハ↢一門↡即↢一解脱智慧門↡也トナリ

二 Ⅳ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(d)(ロ)[四]四有縁

^えんとは、 四有縁
^一には、 「なんぢ、 なにをもつて、 いましまさにえんようぎょうにあらざるをもつて、 われをしょうわくする」 と。 ニハ汝何↠非ザル↢有縁之要行↡、障↢惑スルト於↟我
^二には、 「しかるにわが所愛しょあいはすなはちこれわがえんぎょうなり、 すなはちなんぢがしょにあらず」 と。 ニハルニ之所愛是我有縁之行ナリ、即ズト↢汝所求
^三には、 「なんぢが所愛しょあいはすなはちこれなんぢがえんぎょうなり、 またわがしょにあらず。 このゆゑにおのおのしょぎょうしたがひてそのぎょうしゅすれば、 かならだつるなり」 と。 ニハ之所愛是汝有縁之行ナリ、亦非↢我所求↢所楽↡而修スレ↢其↡者、必↢解脱↡也
^四には、 「もし*ぎょうまなばんとおもはば、 かならえんほうによれ。 すこしきろうもちゐるにおおやく」 となり。 ニハ↠学ント↠行者、必↢有縁之法↡。少シキルニ↢功労↡多トナリ↠益

二 Ⅳ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(d)(ロ)[五]二所求

^しょとは、 かみもんのごとし。 304A二所求

二 Ⅳ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(d)(ロ)[六]二所愛

^所愛しょあいとは、 かみもんのごとし。 二所愛

二 Ⅳ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(d)(ロ)[七]二欲学

^欲学よくがくとは、 二欲学
^0535には、 「ぎょうじゃまさにるべし、 もし*まなばんとおもはば、 ぼんよりしょういたるまで、 ないぶっまで一切いっさいさわりなくみなまなぶことをんとなり」 と。 ニハ行者当↠知、若ハバ↠学バント↠解、従↠凡至マデ↠聖、乃至仏果マデ、一切无↠、皆得ント↠学コトヲ
^二には、 「もしぎょうまなばんとおもはば、 かならえんほうによれ」 となり。 ニハ↠学バント↠行者、必レトナリ↢有縁之法

二 Ⅳ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(d)(ロ)[八]二必

^ひつとは、 かみもんのごとし。 二必

二 Ⅳ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(e)二廻向

【80】^この深信じんしんのなかについて、 こうといふは、 ↢此深信↡、二廻向トイフ
^自利には、 「つねにこのおもいをなせ、 つねにこのをなす。 ゆゑにこう発願ほつがんしんづく」 と。 自利ニハ↢此↡、常↢此↡故↢廻向発願心
^二には、利他他力の回向またこうといふは、 かのくにうまれをはりてかえりてだいおこしてしょうにゅうしてしゅじょうきょうするを、 またこうづくるなり」 となり。 ニハ又言利他他力之廻向 ↢廻向↡者、生↢彼↡已、還シテ↢大悲↡廻↢入シテ生死↡教↢化スル衆生↡、亦名↢廻向↡也トナリ

二 Ⅳ ⅱ a ハ (二)(Ⅲ)解二河譬【二河譬釈】
              (ⅰ)標説譬意

【81】^二河にがのなかについて、 「ひとつの譬喩ひゆきて信心しんじんしゅして、 もつてじゃけんなんふせがん」 と。 ↢二河↡ 説↢一譬喩↡守↢護シテ信心↡、以ガント↢外304B邪異見之難

二 Ⅳ ⅱ a ハ (二)(Ⅲ)(ⅱ)正釈文義
                (a)釈百歩

^このどうひがしきしより西にしきしいたるまで、 またなが0536ひゃくなり」 となり。 道従↢東岸↡至マデ↢西↡、亦長百歩ナリトナリ
^ひゃく」 とは、 百歩
人寿にんじゅひゃくさいたとふるなり。 ↢人寿百歳↡也

二 Ⅳ ⅱ a ハ (二)(Ⅲ)(ⅱ)(b)釈群賊悪獣

^群賊ぐんぞくあくじゅう」 とは、 群賊・悪獣
群賊ぐんぞく」 とは、 べつべつぎょうけんしゅう悪見あくけんじゃしんじょうさんりきしんなり。 群賊者、別解・別行・異見・異執・悪見・邪心・定散自力之心也
あくじゅう」 とは、 六根ろっこん六識ろくしき六塵ろくじんおんだいなり。 悪獣者、六根・六識・六塵・五陰・四大也

二 Ⅳ ⅱ a ハ (二)(Ⅲ)(ⅱ)(c)釈常随悪友

^つねにあくしたが」 といふは、 フトイフ↢悪友↡者
あく」 とは、 ぜんたいす、 雑毒ぞうどく虚仮こけにんなり。 悪友者対↢善友↡、雑毒虚仮之人也

二 Ⅳ ⅱ a ハ (二)(Ⅲ)(ⅱ)(d)釈無人空迥沢
                  (イ)挙文

^ª*にんくうきょうたくº といふは、 ↢无人空迥↡者
あくなり。 しんぜんしきはざるなり」 となり。 悪友也↠値↢真善知識↡也トナリ

二 Ⅳ ⅱ a ハ (二)(Ⅲ)(ⅱ)(d)(ロ)対顕

^しん」 のごんたいたいす。 「ぜんしき」 とは、 あくしきたいするなり。 ↠仮↠偽善知識者対スル↢悪知識↡也
しんぜんしき しょうぜんしき 305A善知識 善知識
じつぜんしき ぜんしき 善知識 善知識
ぜん0537ぜんしき ぜんしょうにんなり。 々知識 善性人也
^あくしきとは、 ぜんしき 知識 善知識
ぜんしき じゃぜんしき 善知識 善知識
ぜんしき ぜんしき 善知識 善知識
あくぜんしき あくしょうにんなり。 善知識 悪性人也

二 Ⅳ ⅱ a ハ (二)(Ⅲ)(ⅱ)(e)釈白道
                  (イ)釈譬文

^びゃくどう四五しごすん」 といふは、 ↢白道四五寸↡者
^びゃくどう」 とは、 びゃくごんこくたいす、 *どうごんたいす、 びゃくとは、 すなはちこれろくまんぎょうじょうさんなり。 これすなはちりきしょうぜんなり。 こくとは、 すなはちこれ六趣ろくしゅしょうじゅうじゅうるいしょう黒悪ごくあくどうなり。 白道者、白↠黒、道↠路、白者則是六度万行定散也斯則自力小善路也。黒者則是六趣・四生・二十五有・十二類生黒悪道也
^四五しごすん」 とは、 ごん*だい毒蛇どくじゃたとふるなり。 ごん*おんあくじゅうたとふるなり。 305B四五寸者、四↢四大毒蛇↡也↢五陰悪獣↡也

二 Ⅳ ⅱ a ハ (二)(Ⅲ)(ⅱ)(e)(ロ)釈合喩文

^のうしょう清浄しょうじょうがんおうじょうしん」 といふは、 ↢能生清浄願往生
じょう信心しんじん金剛こんごう真心しんしんほっするなり、 これは如来にょらいこうしんぎょうなり。 発↢起スル无上信心金剛真心↡也、斯如来廻向之信楽也

二 Ⅳ ⅱ a ハ (二)(Ⅲ)(ⅱ)(f)釈一分二分

^0538るいはくこと一分いちぶんぶん」 といふは、 ↢或イハクコト一分二分スト↡者
*年歳ねんさいせつたとふるなり。 フル↢年歳時節↡也

二 Ⅳ ⅱ a ハ (二)(Ⅲ)(ⅱ)(g)釈悪見人

^悪見あくけんにんとう」 といふは、 ↢悪見人等↡者
きょうまんだい邪見じゃけんしんひとなり。 憍慢・懈怠・邪見・疑心之人也

二 Ⅳ ⅱ a ハ (二)(Ⅲ)(ⅱ)(h)釈西岸上等

【82】^また、 西にしきしうえに、 ひとありてばうていはく、 ªなんじ一心いっしんしょうねんにしてただちにきたれ、 われまもらんº」 といふは、 ↢又西リテ人喚フテハク、汝一心正念ニシテ、我能ラン↡者、
^西にしきしうえに、 ひとありてばうていはく」 といふは、 弥陀みだ如来にょらい誓願せいがんなり。 西↠人喚バフテハクトイフ者、阿弥陀如来誓願也、
^なんじ」 のごんぎょうじゃなり、 これすなはちひつじょうさつづく。 りゅうじゅだい ¬十住じゅうじゅう毘婆びばしゃろん¼ (易行品) にいはく、 「そくにゅうひつじょう」 となり。 曇鸞どんらんさつの ¬ろん¼ (論註・上意) には 「にゅう正定しょうじょうじゅじゅ」 といへり。 善導ぜんどうしょうは、 「希有けうにんなり、 さいしょうにんなり、 みょうこうにんなり、 好人こうにんなり、 上上じょうじょうにんなり、 しんぶつ弟子でしなり(散善義・意) といへり。 行者也、斯則↢必306A菩薩↡。龍樹大士¬十住毘婆沙論¼曰ハク、「即時入必定トナリ。」曇鸞菩薩¬論ニハ¼曰ヘリ↢「入正定聚之数」↡。善導和尚ヘリ↢「希有人也、最勝人也、妙好人也、好人也、上々人也、真仏弟子也」↡。
^一心いっしん」 のごんは、 真実しんじつ信心しんじんなり。 一心真実信心也、
^しょうねん」 のごんは、 せんじゃく摂取せっしゅ本願ほんがんなり。 また*第一だいいち希有けうぎょうなり、 *金剛こんごう不壊ふえしんなり。 正念選択摂取本願也又第一希有行也、金剛不壊心也、
^じき」 のごんは、 たいたいするなり。 ^また 「じき」 のごんは、 方便ほうべんもんてて如来にょらい大願だいがんりきするなり、 諸仏しょぶつしゅっ直説じきせつあらわさしめんとおぼしてなり。 ↠廻スル↠迂又直テヽ↢方便仮門↡帰スルナリ↢如来大願他力↡、欲シテ↠使メムト↠顕↢諸仏出世之直説↡也
^らい0539」 のごんは、 たいおうたいするなり。 またほう還来げんらいせしめんとおぼしてなり。 ↠去スル↠往又欲シテ↠令メムト↣還↢来報土↡也
^」 のごんは、 じん十方じっぽう無礙むげこう如来にょらいなり、 不可ふか思議しぎこうぶつなり。 尽十方无光如来也、不可思議光仏也
^のう」 のごんは、 かんたいするなり、 しんにんなり。 スル↢不堪↡也、疑心之人也
^」 のごんは、 弥陀みだぶつじょうしょうあらわすなり、 また摂取せっしゅしゃあらわすのかおばせなり、 すなはちこれげんしょうねんなり。 ↢阿弥陀仏果成之正意↡也、亦形↢摂取不捨↡之貌也、則是現生護念也

二 Ⅳ ⅱ a ハ (二)(Ⅲ)(ⅱ)(i)釈念道言

^念道ねんどう」 のごんは、 りきびゃくどうねんぜよとなり。 念道306Bゼヨト↢他力白道↡也

二 Ⅳ ⅱ a ハ (二)(Ⅲ)(ⅱ)(j)釈慶楽言

^きょうらく」 とは、 「きょう」 のごんいんごんなり、 ぎゃくとくごんなり、 「らく」 のごんえつごんなり、 かんやくなり。 慶楽者慶印可之言也、獲得之言也、楽悦喜之言也、歓喜踊躍也

二 Ⅳ ⅱ a ハ (二)(Ⅲ)(ⅱ)(k)釈信順言

【83】^あおいでしゃ発遣はっけんして、 おしへて西方さいほうかへたまふことをかぶ」 といふは、 じゅんなり。 ルトイヘル↣釈迦発遣シテヘテヘタマフコトヲ↢西方↡者順也
^また弥陀みだしんしょうかんしたまふによる」 といふは、 しんなり。 又藉ルトイフ↢弥陀悲心招喚シタマフニ↡者信也
^いまそんおんこころしんじゅんして、 すい二河にがかえりみず、 念々ねんねんわするることなく、 かの願力がんりきどうじょう」 といへり。 今信↢順シテ二尊之意↡、不↠顧↢水火二河↡、念々↠遺ルヽコト、乗ズトイヘリ↢彼願力之道

二 Ⅳ ⅱ 【追釈至誠心】
        標列

【84】^じょうしんについて、 なんたい 彼此ひしたい らいたい 毒薬どくやくたい ないたい イテ↢至誠心↡ 難易対 彼此対 去来対 毒薬対 内外対

二 Ⅳ ⅱ b 解釈
          (一)難易対

^なんたい 難易対
なんとは三業さんごう修善しゅぜん真実しんじつしんなり、 者三業修善不真実之心也
とは如来にょらい願力がんりきこうしんなり。 者如来願力廻向之心也

二 Ⅳ ⅱ b ロ (二)彼此対

^彼此ひしたい 彼此対
0540とはじょうほうなり、 とはこくなり。 者浄邦也、此者穢国也

二 Ⅳ ⅱ b ロ (三)去来対

^*らいたい 307A去来対
とはしゃぶつなり、 らいとは弥陀みだぶつなり。 者釈迦仏也、来者弥陀

二 Ⅳ ⅱ b ロ (四)毒薬対

^毒薬どくやくたい 毒薬対
どくとは善悪ぜんあく雑心ざっしんなり、 やくとはじゅんいつ専心せんしんなり。 者善悪雑心也、薬者純一専心也

二 Ⅳ ⅱ b ロ (五)内外対

^*ないたい 内外対
ないどうぶっきょう ないしょうどうじょう 外道外仏教 聖道外浄土
ないじょう信心しんじん ないあくしょうぜんしょう 疑情外信心 悪性外善性
ないじゃしょう ないじつ 邪外 虚外
ない ないしん 非外 偽外
ないぞうせん ないけん 雑外 愚外
ないしん *ない退たいしん 仮外 退外
ないしん *ないおんごん 疎外 遠外
ないじき *ないずい 307B迂外 違外
ないぎゃくじゅん ないきょうじゅう 逆外 軽外
ない0541せんじん ないらく 浅外 苦外
ないどくやく 毒外
ない*こうにゃく強剛ごうごう ないだいゆうみょう 怯弱外強剛 懈怠外勇猛
*ない間断けんだんけん ないりきりき 間断外無間 自力外他力

二 Ⅳ 【結成旨帰】
      列目

【85】^おほよそしんについて、しゅ三心さんしんあり。 ↠心↢二種三心↡
一には*自利じり三心さんしん 二には*利他りた三信さんしんなり。 者自利三心 者利他三信ナリ
【86】^またしゅおうじょうあり。 又有↢二種往生↡
一には*そくおうじょう 二には*便べんおうじょうなり。 者即往生 者便往生ナリ

二 Ⅳ ⅲ 解釈

【87】^ひそかに ¬かんぎょう¼ の三心さんしんおうじょうあんずれば、 これすなはち*しょりき各別かくべつ三心さんしんなり。 ¬だいきょう¼ の三信さんしんせしめんがためなり、 しょ勧誘かんゆうして三信さんしんつうにゅうせしめんとおもふなり。 ズレ↢¬観経¼三心往生↡者、是則諸機自力各別之三心也。為↠帰セシメムガ↢¬大経¼三信也、勧↢誘シテ308A↡欲↠使メムト↣通↢入三信↡也。
^三信さんしんとは、 これすなはち金剛こんごう真心しんしん不可ふか思議しぎ信心しんじんかいなり。 三信者、斯則金剛真心、不可思議信心海也。
^また 「そくおうじょう」 とは、 これすなはちなん思議じぎおうじょうしんほうなり。 亦即往生者、斯則難思議往生、真報土也。
^便べんおうじょう」 とは、 すなはちこれしょ各別かくべつ業因ごういんじょうなり、 たいへんまんがい双樹そうじゅりんおうじょうなり、 またなんおうじょうなりと、 ^るべし。 便往生者、即是諸機各別業因果成ナリ、胎宮・辺地・懈慢界双樹林下往生ナリ、亦難思往生也ナリト、応↠知
 *ほん0542にいはく  本
   *けんちょう七年しちねんきのとのうはちがつじゅう七日しちにちこれをく。    建長七歳乙卯八月廿七日書
禿とく親鸞しんらんはちじゅうさんさい 愚禿親鸞八十三歳
*暦応三歳庚辰十二月廿五日書写之件写本者以右御真筆所書写之本也註麁以下坐筆不思様之間廻愚案任自由書之点又同前不及写之者也展転書写之間非無其誤歟但本失錯歟自僻案歟只就愚推之所覃令自専許也不須及他見而已
存覚五十一歳

 

延書の底本は京都府常楽寺蔵存覚上人書写本ˆ原漢文の底本と同一ˇ。
賢者 よきひと。 総じては七高僧に通じ、 別してはほうねん上人を指す。
聖道浄土の教 仏教全体を指す。
麟喩独覚 仲間をもたず一人だけで修行する独覚。 りん (元来はさい。 漢訳者が麒麟と同定) の角が一つであることに喩えていう。
部行独覚 仲間を組んで修行する独覚。
初果預流向… →こう四果しか
浄土回向発願自力方便の仮門 本願他力をただちに受けいれることのできない者のために、 自力の諸善を積んで往生を願えば仮の浄土に往生させると誓った仮の法門。
証成 所説の法に誤りのないことを証明し、 成立させること。 親鸞聖人の他の聖教にはすべて 「証誠」 とあるので、 「成」 は 「誠」 の音通表記かもしれない。
釈迦に二あり・諸仏に二あり 異本では二行後の 「功徳証成」 の下にある。
化身 応身仏のこと。 →おうじんしん
頓極 本願一乗の法は、 他の頓教も及ぶことができない法であるから頓極という。
頓速 底下のぼんを速やかに疾く仏のさとりに至らせるので頓速という。
前念命終・後念即生 善導ぜんどうだいの ¬礼讃らいさん¼ に出る語。 念仏行者は前念に命が終れば、 後念にただちに浄土に往生するという意であるが、 親鸞聖人は、 現世において信心をぎゃくとくすると同時に、 正定聚の位に入る意とした。
自力金剛心 第十八願の行者は、 他力の金剛心 (信心) であるが、 ろく菩薩は自力の金剛心であることをいう。
漸教回心 「漸教回向」 とする異本がある。
希常対 念仏の行者は希有人 (きわめてまれな人) であるが、 諸善の行者は常有人 (ありふれた人) である。
直入回心対 念仏の行者は直ちに真実ほうに入るが、 諸善の行者は自力の心をひるがえしてから入る。
 「観の字、 東大寺の覚寿僧都の観経義にこれあり。 世に流布するは願の字なり」 と註記がある。 高田派専修寺蔵宗祖加点 ¬観経疏¼ や本山蔵宗祖真蹟 ¬かんぎょうしっちゅう¼ では 「願」 の字を用いている。
 異本には続けて 「まさしく金剛心を受く」 とある。
相応一念 仏智に相応する信の一念。
如来の勝智…悟なり 通常は 「如来の勝智は、 虚空にあまねし、 所説の義言はただ仏のみ悟りたまへり」 と読む。
諸仏 ¬開元かいげんろく¼ 巻三に示された経名にはこの二字ががる。 ¬浄土和讃¼ (60) の異本左訓には、 ¬諸仏阿弥陀…¼ の経名を釈して 「弥陀を諸仏とまうす。 過度人道 (経) のこころなり」 とある。
勢至章 ¬首楞厳経¼ 巻五の 「勢至念仏円通章」 を指す。 →しゅりょうごんぎょう
薄地の凡夫 しょうじゃの域に達しない下劣な者。 凡夫を三種に分け、 三賢さんげん (十住・十行・十こう) を内凡ないぼんじっしんぼん、 それ以下を薄地とする。
纏縛 まとわりつかれ、 しばられること。
わが十方… 通常は 「もしわれを信ぜざらんには、 十方諸仏、 あに虚妄ならんや」 と読む。
本にいはく 「本」 とは書写原本のこと。 原本にあった奥書をそのまま転写したことを示す。
賢者 よきひと。 総じては七高僧に通じ、 別しては法然ほうねん上人を指す。
唐朝の… 以下、 本書下巻では 「散善義」 の文について釈す。
得生の益 ¬観経¼ の即便往生のこと。 親鸞聖人はこれを即往生と便往生の二種往生の益とみた。
かならず…懐ければなり 通常は 「かならずすべからく真実心のうちになすべきことを明かさんと欲す。 外に賢善精進の相を現じ、 内に虚仮を懐くことを得ざれ」 と読む。
なしたまひ…真実なりと 通常は 「なしたまひ、 おほよそ施為・趣求したまふところ、 またみな真実なるによりてなり」 と読む。 「施為」 は利他、 「趣求」 は自利の意。 親鸞聖人は、 如来こうの真実をもちい (領受し) て、 浄土を趣求 (願生) するという意に転じた。
不善の三業は…名づく 通常は 「不善の三業は、 かならずすべからく真実心のうちに捨つべし。 またもし善の三業を起さば、 かならずすべからく真実心のうちになすべし。 内外明闇を簡ばず、 みなすべからく真実なるべし。 ゆゑに至誠心と名づく」 と読む。 親鸞聖人は如来回向の義をあらわすために 「須」 の字を 「もちゐ」 と読んだ。
自利の信心 自力の信心の意。 ここでは第二の深信と一具でない第一の深信 (みずからの罪業ざいごうを嘆きおそれている心) を指して自力の信心としたのであろう。
 「力」 とする異本がある。
六決定 七深信の中、 第六深信以外の深信に決定の語が出ているのを数えて六決定という。 決定は明了に決択するという意で、 深信の相を示す語。
次いでのごとし 順次に示されている。
第五 右傍に 「利他信心」 と註記がある。
三遣 ぞうぎょう雑修ざっしゅを捨てて、 正行 (念仏) を行じ、 異学異解雑縁乱動のところを去れ、 という仏の仰せ。
三随順 釈尊の教え (仏教)・諸仏の意 (仏意)・阿弥陀仏の願 (仏願) にしたがうこと。
三是名 真実信心の人を称讃する語。 次々行の 「上の是名」 は三随順の一と三を指す。
第六 右傍に 「観経に依る」 と註記がある。
六即 六の文を列ねて、 仏の所説を信ずべきことを示す。 文中に即の字が六回出るので六即という。
二了 仏説が了教 (真理の全相が明らかに説き示された教え) であるのに対し、 菩薩等の説がすべて不了教 (真理がまだ十分に説き示されていない教え) であることを示す。
第七 有傍に 「自利信心」 と註記がある。
二別 別の見解を持ち、 別の行法を修めること。
三異 異なった見解を持ち、 異なった教えを学び、 異なった思想・見解に執着すること。
四別 聖道の諸経と浄土の経とは、 その説かれた場所、 時、 教えの対象、 やくが別であることを示す。
疑難 念仏往生の教えを疑い非難すること。 ぼんの疑難は実難 (実際にある難) であるが、 後の三難は仮設の難 (仮に設定した難) である。
五実 信の対象が真実であることを五種の語で示す。 初めの一は仏の説く教え、 後の四は教えを説く仏についていう。 「散善義」 深信釈の文参照。
二専 釈尊が専念・専修せんじゅを勧めることを示す。
五種 読誦どくじゅ観察かんざつ礼拝らいはい・称名・讃嘆さんだんよう正行しょうぎょうを指す。
四同 諸仏が釈尊と同じく説くことを示す。 初めの三はその言説が同一であることを示し、 後の一は同体の大悲 (同じ真如しんにょのさとりからおこった大悲) であることを示す。
所化 教化されるところの法
六悪 釈尊の濁世における教化を諸仏が讃嘆することを示す。 また教化の対象を示す。
悪邪無信盛時 じょくが盛んになり、 仏法を聞いても疑いそしるばかりで信じないものが多くなる時代のことをいう。
二同 諸仏の証誠しょうじょう (証成) の相を示す。
三所 釈尊が説き讃嘆し証明した法を諸仏が勧めることを示す。
五正行 ここでは要門の行としての五専修を示したものとみられる。 →専修せんじゅ
六一心・六専修 五専修 (要門の行) の一心とがんの一心とを合わせて六一心とするものか。 六専修も同様。
定心念仏 思いをとどめ心を一つに集中して称名念仏すること。
散心念仏 散乱した心のままで称名念仏すること。
正の観仏 阿弥陀仏を観想すること。
雑の観仏 諸仏を観想すること。
真観 浄土の真実の荘厳と阿弥陀仏の真身とを観想すること。
仮観 浄土の真実の荘厳を観想するためのてだてとして日没や水を観じ、 阿弥陀仏の真身を観想するためのてだてとして仏像を観ずること。 日観にっかん (日想)・水観 (水想)・像観 (像想) の三をいう。 他の十観は真観。
定散六種兼行 五正行の第五讃嘆さんだんようを開いて六種とし、 この六行を自力心をもって雑え修することを六種兼行といい、 雑修ざっしゅの部類に属する。
助業 六種兼行の場合は称名も正定しょうじょうごうとしての地位を失って助業と同格になるから、 六行すべてを助業という。
回心の行 そのぎょうごうこうして往生を願わなければならない自力行のこと。 あるいは自力の心をひるがえして、 他力に帰さなければならない自力行のこと。
かならず…想をなすなり 通常は 「かならずすべからく決定真実心のうちに回向し願じて、 得生の想をなすべし」 と読む。
随ひて一門を出づる… それぞれの縁にしたがい、 どれか一つの法門によって出るのは一つの迷いの門を出ることであるという意。
随ひて一門に入る… それぞれの縁にしたがい、 どれか一つの法門によって入るのは一つのさとりに入る門であるという意。
行を学ばん 行を修めて迷いの世界をしゅつする。
解を学ばん 仏教を学問的に研究する。
無人空迥の沢 ここでは真のぜんしきにあわないことを無人という。 空迥の沢は広々とした野原。
道の言は路に対す 親鸞聖人は道を大きなみち (大道)、 路を小さなみち (小路) とする。
四大毒蛇・五陰悪獣 四大・五陰は行者の身心をいい、 毒蛇・悪獣は貪瞋とんじん煩悩ぼんのうをいう。
年歳時節に喩ふる ¬一多証文¼ には 「一分二分ゆくといふは、 一年二年すぎゆくにたとへたるなり」 とある。
金剛不壊の心 金剛のように堅く、 破壊されることのない信心。
浄邦 阿弥陀仏の浄土のこと。
去来対 釈尊は 「け」 と発遣はっけんし、 阿弥陀仏は 「きたれ」 としょうかんすることをいう。
内外対 内心と外相とが相応しない不真実のありさま。
内は退… 内心はたじろいでいながら、 外相には白道を進むふりをしている。
内は遠… 内心は阿弥陀如来から遠ざかりながら、 外相には近づいているような姿を示している。
内は違… 内心は教えに違いながら、 外相では随順しているふりをする。
内は間断… 内心では信心が持続していないのに、 外には持続の姿を示す。
自利の三心 ¬観経¼ の三心 (じょうしん深心じんしんこうほつがんしん) は、 顕説けんぜつ (経文に顕著にあらわれた教え) の意味からいえば自力の心であるので自利の三心と名づける。
利他の三信 ¬観経¼ の三心は、 おんしょう (微かにあらわされた教え) の意味からいえば阿弥陀仏の利他 (他力) 回向の信心であるので利他の三信と名づける。
諸機自力格別の三心 自力の三心は機によって各々異なるので、 このようにいう。
本にいはく 「本」 とは書写原本のこと。 原本にあった奥書をそのまま転写したことを示す。
建長七年 1255年。
底本は◎京都府常楽寺蔵存覚上人書写本。 Ⓐ高田派専修寺蔵永仁元年顕智上人書写本、 Ⓑ新潟県浄興寺蔵永享六年書写本 と対校されているが省略。