0317*大宝積経 巻第十八
*大唐三*蔵菩提流志奉詔訳
◎無量寿会第五之*二
二 Ⅲ ⅶ 宝河荘厳
【11】◎また次に阿難、 かの極楽界にはもろもろの黒山・鉄囲山・大鉄囲山・妙高山等なしと。
◎○復次ニ阿難、彼ノ極楽界ニハ無シト↢諸ノ黒山・鉄囲山・大鉄囲山・妙高山等↡。
阿難仏にまうしてまうさく、 世尊、 その四天王天・三十三天、 すでに諸山なくはなにによりてか住するやと。
○阿難白シテ↠仏ニ言ク、世尊、其ノ四天王天・三十三天、既ニ無クハ↢諸山↡依リテカ↠何ニ而住スルヤト。
仏、 阿難に告げたまはく、 なんぢが意においていかん。 妙高已上に夜摩天乃至他化自在天および色界の諸天等あり、 なにによりてか住するやと。
○仏告ゲタマハク↢阿難ニ↡、於テ↢汝ガ意ニ↡云何ン。妙高已上ニ有リ↢夜摩天乃至他化自在天及ビ色界ノ諸天等↡、依リテカ↠何ニ而住スルヤト。
阿難仏にまうしてまうさく、 世尊、 不可思議なる業力の致すところなりと。
○阿難白シテ↠仏ニ言ク、世尊、不可思議ナル業力ノ所ナリト↠致ス。
仏、 阿難に語りたまはく、 不思議なる業、 なんぢ知るべけんやと。 答へてまうさく、 いななりと。 仏、 阿難に告げたまはく、 諸仏および衆生の善根の業力、 なんぢ知るべけんやと。 答へてまうさく、 いななり。
○仏語リタマハク↢阿難ニ↡、不思議ナル業、汝可ケム↠知ル耶ト。答ヘテ言ク、不也ト。仏告ゲタマハク↢阿難ニ↡、諸仏及ビ衆生ノ善根ノ業力、汝可ケム↠知ル耶ト。答ヘテ言ク、不也。
世尊、 われいまこの法のなかにおいて実に惑ふところなし。 未来の疑網を破せんがためのゆゑにこの問を発せりと。
○世尊、我今於テ↢此ノ法ノ中ニ↡実ニ無シ↠所↠惑フ。為ノ↠破セムガ↢未来ノ疑網ヲ↡故ニ発セリト↢斯ノ問ヲ↡。
仏、 阿難に告げたまはく、 かの極楽界のその地には、 海なくして諸河あり。 河の狭きものも十由旬に満ち、 水の浅きものも十二由旬なり。 かくのごときの諸河の深広の量、 あるいは二十・三十乃至百数なり。 あるいは極めて深広なるものありて、 千由旬に至れり。
○仏告ゲタマハク↢阿難ニ↡、彼ノ極楽界ノ其ノ地ニハ、無クシテ↠海而有リ↢諸河↡。河之狭キ者モ満チ↢十由旬ニ↡、水之浅キ者モ十二由旬ナリ。如キノ↠是クノ諸河ノ深広之量、或イハ二十・三十乃至百数ナリ。或イハ有リテ↢極メテ深広ナル者↡、至レリ↢千由旬ニ↡。
その水清冷にして八功徳を具せり。
○其ノ水清冷ニシテ具セリ↢八功徳ヲ↡。
濬流つねに激して微妙の音を出すこと、 たとへば諸天の百千の伎楽のごとくにして、 安楽世界にその声あまねく聞ゆ。 もろもろの名花ありて、 流に沿ひて下り、 和風微動すれば種々の香を出す。
○濬流恒ニ激シテ出スコト↢微妙ノ音ヲ↡、譬ヘバ若クニシテ↢諸天ノ百千ノ伎楽ノ↡、安楽世界ニ其ノ声普ク聞ユ。有リテ↢諸ノ名花↡、沿0318ヒテ↠流ニ而下リ、和風微動スレバ出ス↢種種ノ香ヲ↡。
両岸の辺に多くの栴檀樹居りて、 修条・密葉河に交り覆ひ、 実を結び花を開きて芳輝玩ぶべし。
○居リテ↢両岸ノ辺ニ多クノ栴檀樹↡、修条・密葉交リ↢覆ヒ於河ニ↡、結ビ↠実ヲ開キテ↠花ヲ芳輝可シ↠玩ブ。
群生遊楽し、 意に随ひて往来す。 あるいは河を渉り流に濯ぎて嬉戯するものあり。 もろもろの天水のよく物のよろしきに順ひ、 深浅・寒温つぶさに人の好みに従ふことを感ず。
●群生遊楽シ、随ヒテ↠意ニ往来ス。或イハ有リ↢渉リ↠河ヲ濯ギテ↠流ニ嬉戯スルモノ↡。感ズ↧諸ノ天水ノ善ク順ヒ↢物ノ宜シキニ↡、深浅・寒温曲ニ従フコトヲ↦人ノ好ニ↥。
阿難、 大河の下地には金砂を布きて、 もろもろの天香ありて世によく喩ふるものなし。 風に随ひて馥を散じ水に雑りて馩を流す。
●阿難、大河之下地ニハ布キテ↢金砂ヲ↡、有リテ↢諸ノ天香↡世ニ无シ↢能ク喩フルモノ↡。随ヒテ↠風ニ散ジ↠馥ヲ雑リテ↠水ニ流ス↠*馩ヲ。
天の曼陀羅花・優鉢羅花・波頭摩花・拘物頭華・芬陀利花、 その上に弥覆せり。
○天ノ曼陀羅花・優鉢羅花・波頭摩花・拘*物頭華・芬陀利花、弥↢覆セリ其ノ上ニ。
また次に阿難、 かの国の人衆、 あるいは時に遊覧して同じく河浜に萃り、 激流の響を聞くことを願はざるものあれば、 天耳を獲といへどもつひに聞かず。 あるいは聞くことを願ふものあれば、 即時に百千万種の喜愛の声を領悟す。
●復次ニ阿難、彼ノ国ノ人衆、或イハ時ニ遊覧シテ同ジク萃リ↢河浜ニ↡、有レバ↠不ルモノ↠願ハ↠聞クコトヲ↢激流之響ヲ↡、雖モ↠獲ト↢天耳ヲ↡終竟ニ不↠聞カ。或イハ有レバ↠願フモノ↠聞クコトヲ、即時ニ領↢悟ス百千万種ノ喜愛之声ヲ↡。
いはゆる仏法僧の声・止息の声・無性の声・波羅蜜の声・十力四無所畏の声・神通の声・無作の声・無生無滅の声・寂静の声・辺寂静の声・極寂静の声・大慈大悲の声・無生法忍の声・潅頂受位の声なり。 かくのごとき種々の声を聞くことを得をはれば、 広大なる愛楽歓悦を獲得す。
○所謂ル仏法僧ノ声・止息之声・無性ノ声・波羅蜜ノ声・十力四無所畏ノ声・神通ノ声・无作ノ声・無生無滅ノ声・寂静ノ声・辺寂静ノ声・極寂静ノ声・大慈大悲ノ声・無生法忍ノ声・潅頂受位ノ声ナリ。得↠聞クコトヲ↢如キ↠是クノ種種ノ声ヲ↡已レバ、*獲↢得ス広大ナル愛楽歓悦ヲ↡。
しかうして観察と相応し、 厭離と相応し、 滅壊と相応し、 寂静と相応し、 辺寂静と相応し、 極寂静と相応し、 義味と相応し、 仏法僧と相応し、 力無畏と相応し、 神通と相応し、 止息と相応し、 菩提と相応し、 声聞と相応し、 涅槃と相応す。
○而シテ与↢観察↡相応シ、厭離ト相応シ、滅壊ト相応シ、寂静ト相応シ、辺寂静ト相応シ、極寂静ト相応シ、義味ト相応シ、仏法僧ト相応シ、力無畏ト相応シ、神通ト相応シ、止息ト相応シ、菩提ト相応シ、声聞ト相応シ、涅槃ト相応ス。
【12】また次に阿難、 かの極楽世界にはもろもろの悪趣の名を聞かず、 辺にも障礙・煩悩・覆蔽の名なし。 地獄・琰摩・畜生の名あることなく、 辺にも八難の名なく、 また苦受・不苦不楽受の名もなくして、 なほ仮設もなし。 いかにいはんや実の苦をや。 このゆゑにかの国を名づけて極楽となす。 阿難、 われいま略して極楽の因縁を説かん。 もし広く説かば、 劫を窮むとも尽きず。
○復次ニ阿難、彼ノ極楽世界ニハ不↠聞カ↢諸ノ悪趣ノ名ヲ↡、辺ニモ無シ↢障・煩悩・覆蔽ノ名↡。无ク↠有0319ルコト↢地獄・琰摩・畜生ノ名↡、辺ニモ無ク↢八難ノ名↡、亦无クシテ↢苦受・不苦不楽受ノ名モ↡、尚無シ↢仮設モ↡。何ニ況ヤ実ノ苦ヲヤ。是ノ故ニ彼ノ国ヲ名ケテ為ス↢極楽ト↡。阿難、我今略シテ説カム↢極楽ノ因縁ヲ↡。若シ広ク説カバ者、窮ムトモ↠劫ヲ不↠尽キ。
二 Ⅲ ⅷ 眷属荘厳
また次に阿難、 かの極楽世界のあらゆる衆生、 あるいはすでに生じ、 あるいは現に生じ、 あるいはまさに生ぜんもの、 みなかくのごときのもろもろの妙なる色身を得、 形貌端正にして、 神通自在に、 福力具足して、 種々の宮殿・園林・衣服・飲食・香華・瓔珞を受用す。 意の須ゐるところに随ひてことごとくみな念のごときこと、 たとへば他化自在の諸天のごとし。
○復次ニ阿難、彼ノ極楽世界ノ所有ル衆生、或イハ已ニ生ジ、或イハ現ニ生ジ、或イハ当ニ生ゼムモノ、皆得↢如キノ↠是クノ諸ノ妙ナル色身ヲ↡、形貌端正ニシテ、神通自在ニ、福力具足シテ、受↢用ス種種ノ宮殿・園林・衣服・飲食・香華・瓔珞ヲ↡。随ヒテ↢意ノ所ニ↟須ヰル悉ク皆如キコト↠念ノ、譬ヘバ如シ↢他化自在ノ諸天ノ↡。
【13】また次に阿難、 かの仏国中には、 微細の食あり。
○復次ニ阿難、彼ノ仏国中ニハ、有リ↢微細ノ食↡。
もろもろの有情の類、 かつて噉ふものなく、 第六天の思念するところに随ふがごとし。 かくのごときの飲食、 すなはち食しをはれるに同じて、 色力増長して便穢なし。
○諸ノ有情ノ類、嘗テ無ク↢噉フ者↡、如シ↢第六天ノ随フガ↟所ニ↢思念スル↡。如キノ↠是クノ飲食、即チ同ジテ↢食シ已レルニ↡、色力増長シテ而無シ↢便穢↡。
また無量の如意の妙香・塗香・末香ありて、 その香あまねくかの仏国界に熏じ、 および散花・幢幡もまたみな遍満せり。 それ香を聞かんと欲するものあれば、 願ひに随ひてすなはち聞き、 あるいは楽はざるもの、 つひに受くるところなし。
●復有リテ↢無量ノ如意ノ妙香・塗香・末香↡、其ノ香普ク熏ジ↢彼ノ仏国界ニ↡、及ビ散花・幢幡モ亦皆遍満セリ。其レ有レバ↢欲スル↠聞カムト↠香ヲ者↡、随ヒテ↠願ニ即チ聞キ、或イハ不ル↠楽ハ者、終ニ無シ↠所↠受クル。
また無量の上妙の衣服・宝冠・環釧・耳璫・瓔珞・花鬘・帯鎖あり、 諸宝をもつて荘厳せり。 無量の光明・百千の妙色、 ことごとくみな具足して自然に身にあり。 また金・銀・真珠・妙宝の網あり、 もろもろの宝鈴を懸けてあまねく厳飾せり。 もしもろもろの有情ありて須ゐるところの宮殿・楼閣等あれば、 楽欲するところに随ひて高下・長短・広狭・方円にして、 およびもろもろの床座妙衣を上に敷き、 種々の宝をもつてこれを厳飾せり。 衆生の前において自然に出現す。 人みなみづからおのおのその宮に処すと謂ふ。
○復有リ↢无量ノ上妙ノ衣服・宝冠・環釧・*耳璫・瓔珞・花鬘・帯鎖↡、諸宝ヲモテ荘厳セリ。無量ノ光明・百千ノ妙色、悉ク皆具足シテ自然ニ在リ↠身ニ。復有リ↢金・銀・真珠・妙宝之網↡、懸ケテ↢諸ノ宝鈴ヲ↡周遍ク厳飾セリ。若シ諸ノ有情アリテ所ノ↠須ヰル宮殿・楼閣等アレバ、随ヒテ↠所ニ↢楽欲スル↡高下・長短・広狭・方円ニシテ、及ビ諸ノ床座妙衣ヲ敷キ↠上ニ、以テ↢種種ノ宝ヲ↡而厳↢飾セリ之ヲ↡。於テ↢衆生ノ前ニ↡自然ニ出現ス。人皆自ラ謂フ↣各0320ノ処スト↢其ノ宮ニ↡。
また次に阿難、 極楽国土のあらゆる衆生には差別の相なく、 余方の俗に順じて天・人の名あり。
○復次ニ阿難、極楽国土ノ所有ル衆生ニハ無ク↢差別ノ相↡、順ジテ↢余方ノ俗ニ↡有リ↢天・人ノ名↡。
阿難、 たとへば下賎の*半挓迦人の、 輪王に対せばすなはち諭ふべきなく、 威光・徳望ことごとくみなあることなきがごとし。
○阿難、譬ヘバ如シ↧下賎ノ半挓迦人ノ、対セバ↢於輪王ニ↡則チ無ク↠可キ↠諭フ、威光・徳望悉ク皆無キガ↞有ルコト。
また帝釈を第六天に方ぶるに、 威光等の類みな及ばざるところのごとく、 園苑・宮殿・衣服・雑飾・尊貴・自在・階位・神通および変化は比となすべからず。 ただ法楽を受けてすなはち差別なし。
○又如ク↧帝釈ヲ方ブルニ↢第六天ニ↡、威光等ノ類皆所ノ↞不ル↠及バ、●園苑・宮殿・衣服・雑飾・尊貴・自在・階位・神通及以変化ハ不↠可カラ↠為ス↠比ト。唯受ケテ↢法楽ヲ↡則チ無シ↢差別↡。
阿難、 知るべし、 かの国の有情、 なほ他化自在天王のごとし。
○阿難、応シ↠知ル、彼ノ国ノ有情、猶如シ↢他化自在天王ノ↡。
阿難、 かの極楽界には晨朝の時において、 あまねく四方に和風微動せり。 逆はず乱れず、 もろもろの雑花を吹くに、 種々の香気あり。 その香あまねく熏り、 国界に周遍せり。
○阿難、彼ノ極楽界ニハ於テ↢晨朝ノ時ニ↡、周遍ク四方ニ和風微動セリ。不↠逆ハ不↠乱レ、吹クニ↢諸ノ雑花ヲ↡、種種ノ香気アリ。其ノ香普ク熏リ、周↢遍セリ国界ニ↡。
一切の有情風の身に触るるがために、 安和調適なること、 なほ比丘の滅尽定を得たるがごとし。
○一切ノ有情為ニ↢風ノ触ルルガ↟身ニ、安和調適ナルコト、猶如シ↣比丘ノ得タルガ↢滅尽定ヲ↡。
その風七宝の樹林を吹き動かすに、 華飄りて聚を成すこと高さ七人量にして、 種々の色光仏土を照曜せり。
○其ノ風吹キ↢動カスニ七宝ノ樹林ヲ↡、華飄リテ成スコト↠聚ヲ高サ七人量ニシテ、種種ノ色光照↢曜セリ仏土ヲ↡。
たとへば人ありて、 花をもつて地に布き、 手をもつて按じて平ならしめ、 雑色の花に随ひて、 間錯分布するがごとし。 かのもろもろの花聚もまたかくのごとし。 その花微妙にして広大柔軟なること兜羅綿のごとし。 もしもろもろの有情、 足をもつてかの花を蹈めば、 没むこと深さ四指、 その足を挙ぐるに随ひて、 還復すること初めのごとし。
○譬ヘバ如シ↧有リテ↠人、以テ↠花ヲ布キ↠地ニ、手ヲモテ按ジテ令メ↠平ナラ、随ヒテ↢雑色ノ花ニ↡、間錯分布スルガ↥。彼ノ諸ノ花聚モ亦復如シ↠是クノ。其ノ花微妙ニシテ広大柔軟ナルコト如シ↢兜羅綿ノ↡。若シ諸ノ有情、足ヲモテ蹈メバ↢彼ノ花ヲ↡、没ムコト深サ四指、随ヒテ↢其ノ挙グルニ↟足ヲ、還復スルコト如シ↠初ノ。
晨朝を過ぎをはれば、 その花自然に地に没入す。 旧き花すでに没して大地清浄なり。 さらに新しき花を雨らして、 還復周遍せり。 かくのごとく中時・晡時、 初・中・後夜に、 花を飄し聚を成すことまたかくのごとし。
○過ギ↢晨朝ヲ↡已レバ、其ノ花自然ニ没↢入ス於地ニ↡。旧キ花既ニ没シテ大地清浄ナリ。更ニ雨ラシテ↢新シキ花ヲ↡、還復周遍セリ。如ク↠是クノ中時・晡時、初・中・後夜ニ、飄シ↠花ヲ成スコト↠聚ヲ亦*復如シ↠是クノ。
阿難、 一切の広大珍奇の宝、 極楽界に生ぜざるものあることなし。
●阿難、一切ノ広大珍奇之宝、无シ↠有ルコト↧不ル↠生ゼ↢極楽界ニ↡者↥。
阿難、 かの仏国中に七宝の蓮花ありて、 一々の蓮花に無量百千億の葉あり。 その葉に無量百千の珍奇の異色あり、 百千の摩尼妙宝をもつて荘厳し、 覆ふに宝網をもつてしてうたたあひ映飾せり。
●阿難、彼ノ仏国中ニ有リテ↢七宝ノ蓮花↡、一一ノ蓮花ニ有リ↢无量百千億ノ葉↡。其ノ葉ニ有リ↢無量0321百千ノ珍奇ノ異色↡、以テ↢百千ノ摩尼妙宝ヲ↡荘厳シ、覆フニ以テシテ↢宝網ヲ↡転タ相映飾セリ。
二 Ⅲ ⅸ 華光出仏
阿難、 かの蓮花の量、 あるいは半由旬、 あるいは一・二・三・四乃至百千由旬のものあり。
○阿難、彼ノ蓮花ノ量、或イハ半由旬、或イハ一・二・三・四乃至百千由旬ノ者アリ。
この一々の花より三十六億那由他百千の光明を出し、 一々の光のなかより三十六億那由他百千の諸仏を出す。 身金色のごとく、 三十二大丈夫の相、 八十随好の殊勝の荘厳を具して、 百千の光を放ちてあまねく世界を照らせり。 この諸仏等、 現に東方に往きて衆のために説法したまふは、 みな無量の有情を仏法のなかに安立せしめんがためなり。 南西北方・四維・上下も、 またかくのごとし。
○是ノ一一ノ花ヨリ出シ↢三十六億那由他百千ノ光明ヲ↡、一一ノ光ノ中ヨリ出リ↢三十六億那由他百千ノ諸仏ヲ↡。身如ク↢金色ノ↡、*具シテ↢三十二大丈夫ノ相、八十随好ノ殊勝ノ荘厳ヲ↡、放チテ↢百千ノ光ヲ↡普ク照セリ↢世界ヲ↡。是ノ諸仏等、現ニ往キテ↢東方ニ↡為ニ↠衆ノ説法シタマフハ、皆為ナリ↣安↢立セシメムガ無量ノ有情ヲ於仏法ノ中ニ↡。南西北方・四維・上下モ、亦復如シ↠是クノ。
また次に阿難、 極楽世界には昏闇あることなく、 また火光なし。 湧泉・陂湖、 かれみな有にあらず。 また住著する家室・林苑の名および表示の像、 幼童の色類なく、 また日月・昼夜の像なし。 一切の処において、 標式すでになく、 また名号なし。 ただ如来の威を加へられたるものをば除く。
●復次ニ阿難、極楽世界ニハ無ク↠有ルコト↢昏闇↡、亦無シ↢火光↡。湧泉・陂湖、彼皆非ズ↠有ニ。亦無ク↢住著スル家室・林苑之名及ビ表示之像、幼童ノ色類↡、亦無シ↢日月・昼夜之像↡。於テ↢一切ノ処ニ↡、標式既ニ無ク、亦无シ↢名号↡。唯除ク↢如来ノ所レタル↠加ヘ↠威ヲ者ヲバ↡。
二 Ⅳ 往生因果
ⅰ 十一・十七・十八願成就
阿難、 ▼かの国の衆生、 もしまさに生ずればみなことごとく無上菩提を究竟し涅槃処に到るべし。 なにをもつてのゆゑに。 邪定聚および不定聚のごときは、 建立せられたるかの因を了知することあたはざるがゆゑなり。
○阿難、彼ノ国ノ衆生、若シ当ニシ↧生ズレバ者皆悉ク究↢竟シ無上菩提ヲ↡到ル↦涅槃処ニ↥。何ヲ以テノ故ニ。若キハ↢邪定聚及ビ不定聚ノ↡、不ルガ↠能ハ↣了↢知スルコト建立セラレタル彼ノ因ヲ↡故ナリ。
阿難、 東方に恒沙のごとき界あり。 一々の界中に恒沙のごとき仏あり。 かの諸仏等、 おのおの阿弥陀仏の無量の功徳を称歎したまへり。 南西北方・四維・上下の諸仏の称讃したまふもまたかくのごとし。 なにをもつてのゆゑに。
○阿難、東方ニ如キ↢恒沙ノ↡界アリ。一一ノ界中ニ如キ↢恒沙ノ↡仏アリ。彼ノ諸仏等、各各称↢歎シタマヘリ阿弥陀仏ノ無量ノ功徳ヲ↡。南西北方・四維・上下ノ諸仏ノ称讃シタマフモ亦復如シ↠是クノ。何ヲ以テノ*故ニ。
▼他方の仏国のあらゆる衆生、 無量寿如来の名号を聞きて乃至よく一念の▼浄信を発し、 歓喜▼愛楽して、 あらゆる善根を回向し、 無量寿国に生ぜんと願ぜば、 願に随ひてみな生れて不退転乃至無上正等菩提を得ればなり。 五無間と誹毀正法および謗聖のものとをば除く。
○他方ノ仏国ノ所有ル衆生、聞キテ↢无量寿如来ノ名号ヲ↡乃至能ク発シ↢一念ノ浄信ヲ↡、歓喜愛楽シテ、所有ル善根ヲ廻向シ、願ゼバ↠生ゼムト↢無量寿国ニ↡者、随ヒテ↠願ニ皆生0322レテ得レバナリ↢不退転乃至無上正等菩提ヲ↡。除ク↢五無間ト誹*毀正法及ビ謗聖ノ者トヲバ↡。
二 Ⅳ ⅱ 衆生往生
阿難、 もし衆生ありて他の仏刹において菩提心を発して、 もつぱら無量寿仏を念じ、 およびつねに衆多の善根を種殖し、 発心し回向してかの国に生れんと願ずれば、 この人命終の時に臨みて、 無量寿仏、 比丘衆のために前後に囲繞せられ、 その人の前に現じたまふ。
○阿難、若シ有リテ↢衆生↡於テ↢他ノ仏刹ニ↡発シ↢菩提心ヲ↡、専ラ念ジ↢無量寿仏ヲ↡、及ビ恒ニ種↢*殖シ衆多ノ善根ヲ↡、発心シ廻向シテ願ズレバ↠生レムト↢彼ノ国ニ↡、○是ノ人臨ミテ↢命終ノ時ニ↡、無量寿仏与ニ↢比丘衆ノ↡前後ニ囲繞セラレ、現ジタマフ↢其ノ人ノ前ニ↡。
すなはち如来に随ひてかの国に往生し、 不退転を得てまさに無上正等菩提を証すべし。
○即チ随ヒテ↢如来ニ↡往↢生シ彼ノ国ニ↡、得テ↢不退転ヲ↡当ニシ↠証ス↢無上正等菩提ヲ↡。
このゆゑに阿難、 もし善男子・善女人ありて、 極楽世界に生れんと願じ、 無量寿仏を見たてまつらんと欲せば、 無上菩提の心を発すべし。 またまさにもつぱら極楽国土を念じ、 善根を積集して、 持ちて回向すべし。 これによりて仏を見たてまつり、 かの国中に生じて、 不退転乃至無上菩提を得ん。
○是ノ故ニ阿難、若シ有リテ↢善男子・善女人↡、願ジ↠生レムト↢極楽世界ニ↡、欲セバ↠見タテマツラムト↢無量寿仏ヲ↡者、応シ↠発ス↢无上菩提ノ心ヲ↡。復当ニ専ラ念ジ↢極楽国土ヲ↡、積↢集シテ善根ヲ↡、応シ↢持チテ廻向ス↡。由リテ↠此ニ見タテマツリ↠仏ヲ、生ジテ↢彼ノ国中ニ↡、得ム↢不退転乃至無上菩提ヲ↡。
阿難、 もし他国の衆生菩提心を発して、 もつぱら無量寿仏を念ぜずまたつねに衆多の善根を種うるにあらずといへども、
○阿難、若シ他国ノ衆生発シテ↢菩提心ヲ↡、雖モ↫不↣専ラ念ゼ↢無量寿仏ヲ↡亦非ズト↪恒ニ種ウルニ↩衆多ノ善根ヲ↨、
おのが修行せる諸善の功徳に随ひて、 かの仏に回向して、 願じて往生せんと欲せば、
○随ヒテ↢己ガ修行セル諸善ノ功徳ニ↡、廻↢向シテ彼ノ仏ニ↡、願ジテ欲セバ↢往生セムト↡、
この人命終の時に臨みて、 無量寿仏、 すなはち化身の比丘衆のために前後に囲繞されたるを遣はさん。 その所化の仏の光明と相好とは、 真と異なることなし。 その人の前に現じて摂受し導引して、 すなはち化仏に随ひてその国に往生し、 無上菩提より退転せざることを得ん。
○此ノ人臨ミテ↢命終ノ時ニ↡、無量寿仏、即チ遣サム↧化身ノ与ニ↢比丘衆ノ↡前後ニ囲繞セラレタルヲ↥。其ノ所化ノ仏ノ光明ト相好トハ、与↠真無シ↠異ナルコト。現ジテ↢其ノ人ノ前ニ↡摂受シ導引シテ、即チ随ヒテ↢化仏ニ↡往↢生シ其ノ国ニ↡、得ム↠不ルコトヲ↣退↢転セ無上菩提ヨリ↡。
阿難、 もし衆生ありて大乗に住するもの、 清浄心をもつて無量寿如来に向かひ、 乃至十念、 無量寿仏を念じ、 その国に生れんと願じて、 甚深の法を聞きて、 すなはち信解を生じ、 心に疑惑なく、 乃至一念の浄心を獲得せん。
○阿難、若シ有リテ↢衆生↡住スル↢大乗ニ↡者、○以テ↢清浄心ヲ↡向ヒ↢無量寿如来ニ↡、乃至十念、念ジ↢無量寿仏ヲ↡、願ジテ↠生レムト↢其ノ国ニ↡、聞キテ↢甚深ノ法ヲ↡、即チ生ジ↢信解ヲ↡、心ニ無ク↢疑惑↡、乃至獲↢得セム一念ノ浄心ヲ↡。
一念の心を発して無量寿仏を念ずれば、 この人命終の時に臨みて、 夢中にあるがごとく無量寿仏を見たてまつりて、 定めてかの国に生れ、 無上菩提より退転せざることを得ん。
○発シテ↢一念ノ心ヲ↡念ズレバ↢无量寿仏ヲ↡、○此ノ人臨ミテ↢命終ノ時ニ↡、如ク↠在ルガ↢夢中ニ↡見タテマツリテ↢無量寿仏ヲ↡、定メテ生0323レ↢彼ノ国ニ↡、得ム↠不ルコトヲ↣退↢転セ無上菩提ヨリ↡。
▼阿難、 この義利をもつてのゆゑに、 無量無数不可思議無有等等無辺の世界の諸仏如来、 みなともに無量寿仏のあらゆる功徳を称讃したまふと。
○阿難、以テノ↢此ノ義利ヲ↡故ニ、無量无数不可思議無有等等无辺ノ世界ノ諸仏如来、皆共ニ称↢讃シタマフト无量寿仏ノ所有ル功徳ヲ↡。
仏、 阿難に告げたまはく、 東方に恒河沙のごとき界あり。 一々の界中に恒沙のごとき菩薩ありて、 無量寿仏およびもろもろの聖衆を瞻礼し供養せんと欲するがために、 仏の所に来詣す。 南西北方・四維・上下もまたかくのごとしと。
○仏告ゲタマハク↢阿難ニ↡、東方ニ如キ↢恒河沙ノ↡界アリ。一一ノ界中ニ有リテ↧如キ↢恒沙ノ↡菩薩↥、為ニ↠欲スルガ↤瞻↢礼シ供↣養セムト无量寿仏及ビ諸ノ聖衆ヲ↡、来↢詣ス仏ノ所ニ↡。南西*北方・四維・上下モ亦復如シト↠是クノ。
二 Ⅳ ⅲ 往覲偈
【14】その時世尊、 しかうして頌を説きてのたまはく、
○爾ノ時世尊、而シテ説キテ↠頌ヲ曰ク、
東方のもろもろの仏刹 数恒河沙のごとし
かくのごときの仏土中の 恒沙の菩薩衆
みな神通を現じ来りて 無量寿仏を礼したてまつる
○東方ノ諸ノ仏刹 | 数如シ↢恒河沙ノ↡ |
如キノ↠是クノ仏土中ノ | 恒沙ノ菩薩衆 |
皆現ジ↢神通ヲ↡来リテ | 礼シタテマツル↢无量寿仏ヲ↡ |
三方のもろもろの聖衆も 礼覲してまた同じく帰したてまつる
かれ沙界のなかにおいて 道光をもつてもろもろに弁論し
深禅定の楽 四無所畏の心に住す
○三方ノ諸ノ聖衆モ | 礼覲シテ亦同ジク帰シタテマツル |
彼於テ↢沙界ノ中ニ↡ | 道光ヲモテ諸ニ弁論シ |
住ス↢深禅定ノ楽 | 四無所畏ノ心ニ↡ |
おのおのもろもろの妙花と 名香のみな悦ぶべきを齎し
ならびにもろもろの天楽 百千の和雅の音を奏して
もつて天人師の 名十方に聞ゆるものに献じたてまつる
○各ノ齎シ↢衆ノ妙花ト | 名香ノ皆可キヲ↟悦ブ |
○并ニ奏シテ↢諸ノ天楽 | 百千ノ和雅ノ音ヲ↡ |
以テ献ジタテマツル↧天人師ノ | 名聞ユル↢十方ニ↡者ニ↥ |
威神力を究竟して よくもろもろの法門を学び
種々に供養するなかに 勤修して懈倦なく
○究↢竟シテ威神力ヲ↡ | 善ク学ビ↢諸ノ法門ヲ↡ |
種種ニ供養スル中ニ | 勤修シテ无ク↢*懈*倦↡ |
功徳智慧の景 よくもろもろの幽冥を破す
ことごとく尊重の心をもつて もろもろの珍妙の供を奉る
○功徳智慧ノ景 | 能ク破ス↢諸ノ幽冥ヲ↡ |
咸ク以テ↢尊重ノ心ヲ↡ | 奉ル↢諸ノ珍妙ノ供ヲ↡ |
かれ殊勝の刹の 菩薩衆の無辺なるを観じて
すみやかに菩提を成じ 浄界安楽のごとくならしめんと願ず
○彼観ジテ↢殊勝ノ刹ノ | 菩薩衆ノ无辺ナルヲ↡ |
願ズ↧速ニ成ジ↢菩提ヲ↡ | 浄界如クナラシメムト↦安楽ノ↥ |
世尊欲楽の 広大不思議なるを知ろしめして
微笑を金容に現じ 成ぜんこと所願のごとくならんと告げたまふ
○世尊知シテ↢欲楽ノ | 広大不思議ナルヲ↡ |
微笑ヲ*現ジ↢金容ニ↡ | 告ゲタマフ↣成ゼムコト如クナラムト↢所願ノ↡ |
諸法は幻のごとく 仏国はなほ夢響のごとしと了るも
つねに誓を発し荘厳して まさに微妙の土を成ずべし
○了ルモ↣諸法ハ如ク↠幻ノ | 仏国ハ猶シト↢夢響ノ↡ |
0324恒ニ発シ↠誓ヲ荘厳シテ | 当ニシ↠成ズ↢微妙ノ土ヲ↡ |
菩薩願力をもつて 勝菩提の行を修し
土は影像のごとしと知るも もろもろの弘誓の心を発す
○菩薩以テ↢願力ヲ↡ | 修シ↢勝菩提ノ行ヲ↡ |
知ルモ↣土ハ如シト↢影像ノ↡ | 発ス↢諸ノ弘誓ノ心ヲ↡ |
もしあまねく清浄にして 殊勝無辺の刹を求めば
▼仏の聖徳の名を聞き 安楽国に生ぜんと願ぜよ
○若シ求メバ↢遍ク清浄ニシテ | 殊勝无辺ノ刹ヲ↡ |
聞キ↢仏ノ聖徳ノ名ヲ↡ | 願ゼヨ↠生ゼムト↢安楽国ニ↡ |
もし諸菩薩ありて 清浄の土を志求せば
法の無我を了知して 安楽国に生ぜんと願ぜよと
○若シ有リテ↢諸菩薩↡ | 志↢求セバ清浄ノ土ヲ↡ |
了↢知シテ法ノ无我ヲ↡ | 願ゼヨト↠生ゼムト↢安楽国ニ↡ |
二 Ⅳ ⅳ 菩薩功徳
【15】また次に阿難、 極楽世界のあらゆる菩薩、 無上菩提においてみなことごとく一生補処に安住す。 ただ大願ありてよく師子吼し、 大なる甲冑を擐けたる摩訶薩衆の、 群生を度せんがために大涅槃を修するものをば除く。
○復次ニ阿難、極楽世界ノ所有ル菩薩、於テ↢无上菩提ニ↡皆悉ク安↢住ス一生補処ニ↡。唯除ク↧大願アリテ能ク師子吼シ、擐ケタル↢大ナル甲冑ヲ↡摩訶薩衆ノ、為ニ↠度セムガ↢群生ヲ↡修スル↢大涅槃ヲ↡者ヲバ↥。
また次に阿難、 かの仏刹中のもろもろの声聞衆、 みな身光ありてよく一尋を照らす。 菩薩の光照百千尋を極む。
○復次ニ阿難、彼ノ仏刹中ノ諸ノ声聞衆、皆有リテ↢身光↡能ク照ス↢一尋ヲ↡。菩薩ノ光照極ム↢百千尋ヲ↡。
二菩薩の光明のつねに三千大千世界を照らすをば除くと。
○除クト↣二菩薩ノ光明ノ常ニ照スヲバ↢三千大千世界ヲ↡。
阿難仏にまうしてまうさく、 世尊、 かの二菩薩の名をなんらとすると。
○阿難白シテ↠仏ニ言ク、世尊、彼ノ二菩薩ノ名ヲ為ルト↢何等ト↡。
仏、 阿難に告げたまはく、 なんぢいまあきらかに聴け、 かの二菩薩、 一りを観自在と名づけ、 二りを大勢至と名づく。 阿難、 この二菩薩娑婆世界より寿量を捨てをはりてかの国に往生せりと。
○仏告ゲタマハク↢阿難ニ↡、汝今諦ニ聴ケ、彼ノ二菩薩、一ヲ名ケ↢観自在ト↡、二ヲ名ク↢大勢至ト↡。○阿難、此ノ二菩薩従リ↢娑婆世界↡捨テ↢寿量ヲ↡已リテ往↢生セリト彼ノ国ニ↡。
阿難、 かの極楽界に生ずるところの菩薩、 みな三十二相を具せり。 膚体柔軟にして、 諸根聰利なり。
○阿難、彼ノ極楽界ニ所ノ↠生ズル菩薩、皆具セリ↢三十二相ヲ↡。膚体柔軟ニシテ、諸根聰利ナリ。
智慧善巧にして、 差別の法において了知せざることなし。 禅定・神通ありて、 よく遊戯す。 みな薄徳・鈍根の流にあらず。
○智慧善巧ニシテ、於テ↢差別ノ法ニ↡無シ↠不ルコト↢了知セ↡。禅定・神通アリテ、善能ク遊戯ス。皆非ズ↢薄徳・鈍根之流ニ↡。
かの菩薩のなかに初忍あるいは第二忍を得ることあるもの、 無量無辺にして、 あるいは無生法忍を証得するものあり。
○彼ノ菩薩ノ中ニ有ル↠得ルコト↢初忍或イハ第二忍ヲ↡者、無量無辺ニシテ、或イハ有リ↣証↢得スルモノ無生法忍ヲ↡。
阿難、 かの国の菩薩、 乃至菩提まで悪趣に堕せず、 生々の処によく宿命を了る。 ただ五濁の刹中に世に出現するをば除く。
○阿難、彼ノ国ノ菩薩、乃至菩提マデ不↠堕セ↢悪趣ニ↡、○生生之処ニ能ク了ル↢宿命ヲ↡。唯除ク↣五濁0325ノ刹中ニ出↢現スルヲバ於世ニ↡。
阿難、 かの国の菩薩みな晨朝において他方の無量百千の諸仏を供養す。
○阿難、彼ノ国ノ菩薩皆於テ↢晨朝ニ↡供↢養ス他方ノ無量百千ノ諸仏ヲ↡。
希求するところに随ひて、 種々の花鬘・塗香・末香・幢幡・繒蓋およびもろもろの音楽、 仏の神力をもつてみな手中に現じて諸仏を供養す。
○随ヒテ↠所ニ↢希求スル↡、種種ノ花鬘・塗香・末香・幢幡・繒蓋及ビ諸ノ音楽、以テ↢仏ノ神力ヲ↡皆*現ジテ↢手中ニ↡供↢養ス諸仏ヲ↡。
かくのごときの供具、 広大にしてはなはだ多く、 無数無辺不可思議なり。 もしまた種々の名花を求めんと楽へば、 花に無量百千の光色ありて、 みな手中に現じて諸仏に奉散す。
○如キノ↠是クノ供具、広大ニシテ甚ダ多ク、無数无辺不可思議ナリ。若シ復楽ヘバ↠求メムト↢種種ノ名花ヲ↡、花ニ有リテ↢無量百千ノ光色↡、皆現ジテ↢手中ニ↡奉↢散ス諸仏ニ↡。
阿難、 その散ずるところの花、 すなはち空中において変じて花蓋と成る。 蓋の小なるものも十由旬に満てり。 もしさらに新花をもつて重ねて散ぜずは、 前に散ずるところの花つひに堕落せず。 阿難、 あるいは花蓋あり、 二十由旬に満てり。 かくのごとく三十・四十乃至千由旬、 あるいは四洲に等しく、 あるいは小千・中千乃至三千大千世界に遍す。
○阿難、其ノ所ノ↠散ズル花、即チ於テ↢空中ニ↡変ジテ成ル↢花蓋ト↡。蓋之小ナル者モ満テリ↢十由旬ニ↡。若シ不ハ↧更ニ以テ↢新花ヲ↡重ネテ散ゼ↥、前ニ所ノ↠散ズル花終ニ不↢堕落セ↡。阿難、或イハ有リ↢花蓋↡、満テリ↢二十由旬ニ↡。如ク↠是クノ三十・四十乃至千由旬、或イハ等シク↢四洲ニ↡、或イハ遍ス↢小千・中千乃至三千大千世界ニ↡。
この諸菩薩希有の心を生じて大喜愛を得、 晨朝の時において無量百千億那由他の仏を奉事し供養し尊重し讃歎し、 およびもろもろの善根を種えをはりて、
○此ノ諸菩薩生ジテ↢希有ノ心ヲ↡得↢大喜愛ヲ↡、於テ↢晨朝ノ時ニ↡奉↢事シ供↣養シ尊↤重シ讃↯歎シ無量百千億那由他ノ仏ヲ↡、及ビ種エ↢諸ノ善根ヲ↡已リテ、
すなはち晨朝において還りて本国に到る。 これみな無量寿仏の本願の加威とおよびかつて如来を供せるによれり。 善根相続して欠減なきがゆゑに、 よく修習するがゆゑに、 よく摂取するがゆゑに、 よく成就するがゆゑなり。
○即チ於テ↢晨朝ニ↡還リテ到ル↢本国ニ↡。此皆由レリ↣無量寿仏ノ本願ノ加威ト及ビ曽テ*供セルニ↢如来ヲ↡。善根相続シテ無キガ↢欠減↡故ニ、善ク修習スルガ故ニ、善ク摂取スルガ故ニ、善ク成就スルガ故ナリ。
【16】また次に阿難、 かの極楽界のもろもろの菩薩衆の説くところの語言、 一切智と相応せり。 受用するところよりもみな摂取することなし。
○復次ニ阿難、彼ノ極楽界ノ諸ノ菩薩衆ノ所ノ↠説ク語言、与↢一切智↡相応セリ。於リモ↠所↢受用スル↡皆無シ↢摂取スルコト↡。
あまねく仏刹に遊びて、 愛することなく厭ふことなし。 また希求・不希求の想なく、 自想なく、 煩悩想なく、 我想なく、 闘諍相・違怨瞋の想なし。
○遍ク遊ビテ↢仏刹ニ↡、无ク↠愛スルコト無シ↠厭フコト。亦無ク↢希求・不希求ノ想↡、無ク↢自想↡、無ク↢煩悩想↡、无ク↢我想↡、無シ↢闘諍相・違怨瞋之想↡。
なにをもつてのゆゑに。 かの諸菩薩一切の衆生において大慈悲をもつて利益する心あるがゆゑなり。 柔軟無障礙心・不濁心・無忿恨心あり、 平等調伏寂静の心・忍心・忍調伏心あり、 等引澄浄無散乱心・無覆蔽心・浄心・極浄心・照曜心・無塵心・大威徳心・善心・広大心・無比心・甚深心・愛法心・喜法心・善意心、 一切の執著を捨離する心、 一切の衆生の煩悩を断ずる心、 一切の悪趣を閉づる心あるがゆゑなり。
○何ヲ以テノ故ニ。彼ノ諸菩薩於テ↢一切0326ノ衆生ニ↡有ルガ↢大慈悲ヲモテ利益スル心↡故ナリ。有リ↢柔軟無障心・不濁心・無忿恨心↡、有リ↢平等調伏寂静之心・忍心・忍調伏心↡、有ルガ↧等引澄浄無散乱心・无覆蔽心・浄心・極浄心・照曜心・無塵心・大威徳心・善心・広大心・無比心・甚深心・愛法心・喜*法心・善意心、捨↢離スル一切ノ執著ヲ↡心、断ズル↢一切ノ衆生ノ煩悩ヲ↡心、閉ヅル↢一切ノ悪趣ヲ↡心↥故ナリ。
智慧の行を行じをはりて無量の功徳を成就し、 禅定覚分においてよく演説し、 しかもつねに無上菩提に遊戯し、 勤修し敷演す。
○行ジ↢智慧ノ行ヲ↡已リテ成↢就シ無量ノ功徳ヲ↡、○於テ↢禅定覚分ニ↡善能ク演説シ、○而モ常ニ遊↢戯シ無上菩提ニ↡、勤修シ敷演ス。
肉眼発生してよく簡択あり、 天眼出現してもろもろの仏土を鑑み、 法眼清浄にしてよく諸著を離れ、 慧眼通達して彼岸に到り、 仏眼成就して覚悟し開示して、
○肉眼発生シテ能ク有リ↢簡択↡、天眼出現シテ鑑ミ↢諸ノ仏土ヲ↡、法眼清浄ニシテ能ク離レ↢諸著ヲ↡、慧眼通達シテ到リ↢於彼岸ニ↡、仏眼成就シテ覚悟シ開示シテ、
無礙慧を生じ他のために広く説きて、 三界のなかにおいて平等に勤修す。 すでにみづから調伏し、 またよく一切の有情を調伏して、 よく勝奢摩他を獲得せしむ。 一切の法において無所得を証し、 よく説法して言辞巧妙なり。 勤修して一切の諸仏を供養し、 有情の一切の煩悩を摧伏して、 もろもろの如来の悦可するところとなり、 しかうしてよく如是如是と思惟す。 この思惟をなす時、 よく集めよく見るに、 一切の諸法みな所得なく、 方便智をもつて滅法を修行し、 よく理・非理の趣を取捨することを知りて、 理趣・非理趣のなかにおいてみな善巧を得たり。 世の語言において心に愛楽せず、 出世の経典をもつて誠信に勤修す。
○生ジ↢無慧ヲ↡為ニ↠他ノ広ク説キテ、於テ↢三界ノ中ニ↡平等ニ勤修ス。既ニ自ラ調伏シ、亦能ク調↢伏シテ一切ノ有情ヲ↡、能ク令ム↣獲↢得セ勝奢摩他ヲ↡。於テ↢一切ノ法ニ↡証シ↢無所得ヲ↡、善能ク説法シテ言辞巧妙ナリ。勤修シテ供↢養シ一切ノ諸仏ヲ↡、摧↢伏シテ有情ノ一切ノ煩悩ヲ↡、為リ↣諸ノ如来之所ト↢悦可スル↡、而シテ能ク如是如是ト思惟ス。作ス↢是ノ思惟ヲ↡時、能ク集メ能ク見ルニ、一切ノ諸法皆無ク↢所得↡、以テ↢方便智ヲ↡修↢行シ滅法ヲ↡、善ク知リテ↣取↢捨スルコトヲ理・非理ノ趣ヲ↡、於テ↢理趣・非理趣ノ中ニ↡皆得タリ↢善巧ヲ↡。於テ↢世ノ語言ニ↡心ニ不↢愛楽セ↡、出世ノ経典ヲモテ誠信ニ勤修ス。
善巧をもつて一切の諸法を尋求し、 一切の法を求めて増長して了知す。 法はもと実なくして不可得なりと知りて、 所行の処においてもまた取捨なく、 老病を解脱してもろもろの功徳に住す。
○善巧ヲモテ尋↢求シ一切ノ諸法ヲ↡、求メテ↢一切ノ法ヲ↡増長シテ了知ス。知リテ↢法ハ本無クシテ↠実不可得ナリト↡、於0327テモ↢所行ノ処ニ↡亦無ク↢取捨↡、解↢脱シテ老病ヲ↡住ス↢諸ノ功徳ニ↡。
もとよりこのかた、 神通に安住して深法を勤修し、 甚深の法において退転なく、 難解の法においてことごとくよく通達し、 一乗の道を得て疑惑あることなし。 仏の教法において他の悟によらず、
○従リ↠本已来タ、安↢住シテ神通ニ↡勤↢修シ深法ヲ↡、於テ↢甚深ノ法ニ↡而無ク↢退転↡、於テ↢難解ノ法ニ↡悉ク能ク通達シ、得テ↢一乗ノ道ヲ↡无シ↠有ルコト↢疑惑↡。於テ↢仏ノ教法ニ↡不↠由ラ↢他ノ悟ニ↡、
その智宏深なることこれを巨海に譬ふ。
○其ノ智宏深ナルコト譬フ↢之ヲ巨海ニ↡。
菩提の高広なることたとへば須弥のごとし。
○菩提ノ高広ナルコト喩バ若シ↢須弥ノ↡。
自身の威光日月に超えたり。
○自身ノ威光超エタリ↢於日月ニ↡。
およそ思択するところ慧と相応し、 なほ雪山のごとくその心潔白なり。
○凡ソ所↢思択スル↡与↠慧相応シ、猶如ク↢雪山ノ↡其ノ心潔白ナリ。
光明あまねく照らして、 無辺の功徳、 煩悩の薪を焼くことこれを火に方ぶ。
○光明普ク照シテ無辺ノ功徳、焼クコト↢煩悩ノ薪ヲ↡方ブ↢之ヲ於火ニ↡。
善悪の動揺するところとならず、 心静につねに安きことなほ大地のごとし。
○不↠為ラ↣善悪之所ト↢動揺スル↡、心静ニ常ニ安キコト猶如シ↢大地ノ↡。
煩惑を洗滌すること清浄なる水のごとし。
○洗↢滌スルコト煩惑ヲ↡如シ↢清浄ナル水ノ↡。
心に所主なきことなほ火のごとし。
●心ニ無キコト↢所主↡猶如シ↠火ノ。
世間に著せざることなほ風のごとし。
○不ルコト↠著セ↢世間ニ↡猶如シ↠風ノ。
もろもろの有情を養ふことなほ地のごとし。
●養フコト↢諸ノ有情ヲ↡猶如シ↠地ノ。
もろもろの世界を観ずること虚空のごとし。
○観ズルコト↢諸ノ世界ヲ↡如シ↢虚空ノ↡。
衆生を荷載することなほ良乗のごとし。
○荷↢載スルコト衆生ヲ↡猶如シ↢良乗ノ↡。
世法に染まらざることこれを蓮花に譬ふ。
○不ルコト↠染ラ↢世法ニ↡譬フ↢之ヲ蓮花ニ↡。
遠く法音を暢ぶることなほ雷震のごとし。
○遠ク暢ブルコト↢法音ヲ↡猶如シ↢雷震ノ↡。
一切の法を雨らすことこれを大雨に方ぶ。
○雨ラスコト↢一切ノ法ヲ↡方ブ↢之ヲ大雨ニ↡。
光賢聖を蔽ふことなほかの大仙のごとし。
●光蔽フコト↢賢聖ヲ↡猶シ↢彼ノ大仙ノ↡。
よく調伏すること大竜象のごとし。
○善能ク調伏スルコト如シ↢大竜象ノ↡。
勇猛にして畏れなきこと師子王のごとし。
○勇猛ニシテ无キコト↠畏如シ↢師子王ノ↡。
衆生を覆護すること尼拘陀樹のごとし。
○覆↢護スルコト衆生ヲ↡如シ↢尼拘陀樹ノ↡。
他論に動ぜざること鉄囲山のごとし。
○他論ニ不ルコト↠動ゼ如シ↢鉄囲山ノ↡。
慈無量を修することかの恒河のごとし。
○修スルコト↢慈無量ヲ↡如シ↢彼ノ恒河ノ↡。
もろもろの善法の王としてよく前導をなすこと大梵天のごとし。
○諸ノ善法ノ王トシテ能ク為スコト↢前導ヲ↡如シ↢大梵天ノ↡。
聚積するところなきことなほ飛鳥のごとし。
○無キコト↠所↢聚積スル↡猶如シ↢飛鳥ノ↡。
他論を摧伏すること金翅王のごとし。
○摧↢伏スルコト他論ヲ↡如シ↢金翅王ノ↡。
遇ひがたく希有なること優曇花のごとし。
○難ク↠遇ヒ希有ナルコト如シ↢優曇花ノ↡。
最勝の丈夫、 その心正直にして懈怠あることなく、 よく修行す。 諸見のなかにおいて善巧決定し、 柔和忍辱にして嫉妬の心なし。 法を論じて厭ふことなく、 法を求めて倦まず、 つねに勤めて演説し、 衆生を利益す。
○最勝ノ丈夫、其ノ心正直ニシテ無ク↠有ルコト↢懈怠↡、能善ク修行ス。於テ↢諸見ノ中ニ↡善巧決定シ、柔和忍辱ニシテ無シ↢嫉妬ノ心↡。論ジテ↠法ヲ無ク↠厭フコト、求メテ↠法ヲ不↠倦マ、常ニ勤メテ演説シ、利↢益ス衆生ヲ↡。
戒は琉璃のごとく内外明潔にして、 よく諸法を聞きて勝宝となす。 その説くところの言、 衆をして悦伏せしむ。
●戒ハ若ク↢琉璃ノ↡内外明潔ニシテ、善ク聞キテ↢諸法ヲ↡而為ス↢勝宝ト↡。其ノ所0328ノ↠説ク言、令ム↢衆ヲシテ悦伏セ↡。
智慧力をもつて、 大法幢を建て、 大法螺を吹き、 大法鼓を撃ち、 つねに勤修してもろもろの法の表を建てんことを楽ひ、 智慧光によりて心に迷惑なく、 衆の過失を遠ざけてまた損害なし。 淳浄の心をもつて、 もろもろの穢染を離れ、 つねに恵施を行じて、 ながく慳貪を捨つ。 性を稟くること温和にしてつねに慚恥を懐き、 その心寂定にして智慧明察なり。
○以テ↢智慧力ヲ↡、建テ↢大法幢ヲ↡、吹キ↢大法*螺ヲ↡、撃チ↢大法鼓ヲ↡、常ニ楽ヒ↣勤修シテ建テムコトヲ↢諸ノ法ノ表ヲ↡、由リテ↢智慧光ニ↡心ニ無ク↢*迷惑↡、遠ザケテ↢衆ノ過失ヲ↡亦無シ↢損害↡。以テ↢淳浄ノ心ヲ↡、離レ↢諸ノ穢染ヲ↡、常ニ行ジテ↢*恵施ヲ↡、永ク捨ツ↢慳貪ヲ↡。稟クルコト↠性ヲ温和ニシテ常ニ懐キ↢慚恥ヲ↡、其ノ心寂定ニシテ智慧明察ナリ。
世間の灯となりて衆生の闇を破し、 利養を受くるに堪へたる殊勝の福田なり。 大導師となりてあまねく群物を済ひ、 憎愛を遠離し心浄くして憂ひなし。 勇進して怖れなく、 大法将となり、 地獄を了知して自他を調伏す。 有情を利益してもろもろの毒箭を抜き、 世間解となりて世間の師となり、 群生を引導して、 もろもろの愛著を捨てしめ、
○作リテ↢世間ノ灯ト↡破シ↢衆生ノ*闇ヲ↡、堪ヘタル↠受クルニ↢*利養ヲ↡殊勝ノ福田ナリ。為リテ↢大導師ト↡周ク済ヒ↢群物ヲ↡、遠↢離シ憎愛ヲ↡心浄クシテ無シ↠憂。勇進シテ無ク↠怖、為リ↢大法将ト↡、了↢知シテ地獄ヲ↡調↢伏ス自他ヲ↡。利↢益シテ有情ヲ↡抜キ↢諸ノ毒箭ヲ↡、為リテ↢世間解ト↡為リ↢世間ノ師ト↡、引↢導シテ群生ヲ↡、捨テシメ↢諸ノ愛著ヲ↡、
ながく三垢を離れ、 神通に遊戯す。 因力・縁力・願力・発起力・世俗力・出生力・善根力・三摩地力・聞力・捨力・戒力・忍力・精進力・定力・慧力・奢摩他力・毘鉢舎那力・神通力・念力・覚力・摧伏一切大魔軍力、 ならびに他論法力・能破一切煩悩怨力、 および殊勝大力あり。
○永ク離レ↢三垢ヲ↡、遊↢戯ス神通ニ↡。因力・縁力・願力・発起力・世俗力・出生力・善根力・三摩地力・聞力・捨力・戒力・忍力・精進力・定力・慧力・奢摩他力・毘鉢舎那力・神通力・念力・覚力・摧伏一切大魔軍力、并ニ他論法力・能破一切煩悩怨力、及ビ殊勝大力アリ。
威福具足し、 相好端厳にして、 智慧弁才の善根円満す。 目浄く修広にして人に愛楽せられ、 その身清潔にして貢高を遠離し、 尊重の心をもつて諸仏に奉事し、 諸仏の所においてもろもろの善本を植え、 憍慢を抜除し、 貪瞋痴を離れ、 殊勝吉祥にして、 応供のなかの最なり。 勝智境に住し、 赫奕たる慧光をもつて心に歓喜を生じ、 雄猛無畏にして福智具足し、 滞限あることなし。 ただ聞くところを説きて群物に開示し、 聞くところの法に随ひてみなよく解了す。 菩提分の法において、 勇猛に空無相願を勤修してつねに安住し、 および不生不滅のもろもろの三摩地の行、 道場に遍して二乗の境を遠ざかる。
○威福具足シ、相好端厳ニシテ、智慧弁才ノ善根円満ス。目浄ク修広ニシテ人ニ所レ↢愛楽セ↡、其ノ身清潔ニシテ遠↢離シ貢高ヲ↡、以テ↢尊重ノ心ヲ↡奉↢事シ諸仏ニ↡、於テ↢諸仏ノ所ニ↡植エ↢衆ノ善本ヲ↡、抜↢除シ憍慢ヲ↡、離レ↢貪瞋痴ヲ↡、殊勝吉祥ニシテ、応供ノ中ノ最ナリ。住シ↢勝智境ニ↡、赫奕タル慧光ヲモテ心ニ生ジ↢歓喜ヲ↡、雄猛無畏ニシテ福智具足シ、無シ↠有ルコト↢滞限↡。但説キテ↠所ヲ↠聞ク開↢示シ群物ニ↡、随ヒテ↢所ノ↠聞ク法ニ↡皆能ク解了ス。於テ↢菩提分ノ法ニ↡、勇猛ニ勤0329↢修シテ空無相願ヲ↡而常ニ安住シ、及ビ不生不滅ノ諸ノ三摩地ノ行、遍シテ↢道場ニ↡遠ザカル↢二乗ノ境ヲ↡。
阿難、 われいま略してかの極楽界に生ずるところの菩薩摩訶薩衆の真実功徳を説くこと、 ことごとくみなかくのごとし。 阿難、 たとひわが身寿百千億那由他劫に住し、 無礙の弁をもつてつぶさにかのもろもろの菩薩摩訶薩等の真実功徳を称揚せんと欲すとも、 窮尽すべからず。 阿難、 かの菩薩摩訶薩等、 その寿量を尽くすともまた知ることあたはずと。
○阿難、我今略シテ説クコト↢彼ノ極楽界ニ所ノ↠生ズル菩薩摩訶薩衆ノ真実功徳ヲ↡、悉ク皆如シ↠是クノ。阿難、仮令ヒ我ガ身住シ↢寿百千億那由他劫ニ↡、以テ↢無ノ弁ヲ↡欲ストモ↣具ニ称↢揚セムト彼ノ諸ノ菩薩摩訶薩等ノ真実功徳ヲ↡、不↠可カラ↢窮尽ス↡。阿難、彼ノ諸ノ菩薩摩訶薩等、尽ストモ↢其ノ寿量ヲ↡亦不ト↠能ハ↠知ルコト。
二 Ⅴ 釈迦指勧
ⅰ 霊山現土
【17】その時世尊阿難に告げてのたまはく、 これはこれ無量寿仏の極楽世界なり。 なんぢ坐より起ち、 合掌し恭敬して、 五体を地に投げ、 仏のために礼をなすべし。 かの仏の名称十方に遍満す。 かの一々の方の恒沙の諸仏、 みなともに称讃したまふこと礙なく断ゆることなしと。
○爾ノ時世尊告ゲテ↢阿難ニ↡言ク、此ハ是無量寿仏ノ極楽世界ナリ。汝応シ↢従リ↠坐而起チ、合掌シ恭敬シテ、五体ヲ投ゲ↠地ニ、為ニ↠仏ノ作ス↟礼ヲ。彼ノ仏ノ名称遍↢満ス十方ニ↡。彼ノ一一ノ方ノ恒沙ノ諸仏、皆共ニ称讃シタマフコト無ク↠無シト↠断ユルコト。
この時阿難、 すなはち坐より起ち、 ひとへに右の肩を袒ぎ、 西に面かひ合掌し、 五体を地に投げ、 仏にまうしてまうさく、 世尊、 われいま極楽世界の無量寿如来を見たてまつり、 ならびに無量百千億那由他の仏および菩薩衆を供養し奉事しもろもろの善根を種えんと欲すと。
○是ノ時阿難、即チ従リ↠坐起チ、偏ニ袒ギ↢右ノ肩ヲ↡、西ニ面ヒ合掌シ、五体ヲ投ゲ↠地ニ、白シテ↠仏ニ言ク、世尊、我今欲スト↧見タテマツリ↢極楽世界ノ無量寿如来ヲ↡、并ニ供↢養シ奉↣事シ无量百千億那由他ノ仏及ビ菩薩衆ヲ↡種エムト↦諸ノ善根ヲ↥。
時に無量寿仏、 すなはち掌中より大光明を放ち、 あまねく百千倶胝那由他の刹を照らしたまふ。 かのもろもろの仏刹のあらゆる大小の諸山、 黒山・宝山・須弥盧山・迷盧山・大迷盧山・目真隣陀山・摩訶目真隣陀山・鉄囲山・大鉄囲山・叢薄園林およびもろもろの宮殿・天人等の物、 仏の光明をもつてみなことごとく照見せり。
○時ニ無量寿仏、即チ於リ↢掌中↡放チ↢大光明ヲ↡、遍ク照シタマフ↢百千倶胝那由他ノ刹ヲ↡。彼ノ諸ノ仏刹ノ所有ル大小ノ諸山、黒山・宝山・須弥盧山・迷盧山・大迷盧山・目真隣陀山・摩訶目真隣陀山・鉄囲山・大鉄囲山・叢薄園林及ビ諸ノ宮殿・天人等ノ物、以テ↢仏ノ光明ヲ↡皆悉ク照見セリ。
たとへば人ありて浄天眼をもつて一尋の地を観ずるにもろもろの所有を見るがごとく、 また日光出でて万物の現わるるがごとく、 ここにかのもろもろの国中を覩るに、 比丘・比丘尼・優婆塞・優婆夷、 ことごとく無量寿如来の須弥山王のごとくなるを見たてまつる。 もろもろの仏刹を照らす時、 もろもろの仏国みなことごとくあきらかに現ずること一尋に処るがごとし。 無量寿如来の殊勝の光明極めて清浄なるをもつてのゆゑに、 かの高座およびもろもろの声聞・菩薩等の衆を見れり。 たとへば大地に洪水の盈満して、 樹林・山河みな没して現ぜず、 ただ大水のみあるがごとし。
○譬ヘバ如ク↧有リテ↠人以テ↢浄天眼ヲ↡観ズルニ↢一尋ノ地ヲ↡見ルガ↦諸ノ所有ヲ↥、又0330如ク↣日光出デテ現ズルガ↢万物ノ↡、斯ニ覩ルニ↢彼ノ諸ノ国中ヲ↡、比丘・比丘尼・優婆塞・優婆夷、悉ク見タテマツル↣無量寿如来ノ如クナルヲ↢須弥山王ノ↡。照ス↢諸ノ仏刹ヲ↡時、諸ノ仏国皆悉ク明カニ現ズルコト如シ↠処ルガ↢一尋ニ↡。以テノ↢无量寿如来ノ殊勝ノ光明極メテ清浄ナルヲ↡故ニ、見レリ↢彼ノ高座及ビ諸ノ声聞・菩薩等ノ衆ヲ↡。譬ヘバ如シ↣大地ニ洪水ノ盈満シテ、樹林・山河皆没シテ不↠現ゼ、唯有ルガ↢大水ノミ↡。
かくのごとく阿難、 かの仏刹中には他論および異の形類あることなし。 ただ一切の大声聞衆の一尋の光明あると、 およびかの菩薩摩訶薩の踰繕那等の百千尋の光あるとをば除く。 かの無量寿如来・応・正等覚の光明、 一切の声聞および諸菩薩を映蔽し、 もろもろの有情をしてことごとくみな見ることを得しむ。
○如ク↠是クノ阿難、彼ノ仏刹中ニハ無シ↠有ルコト↢他論及ビ異ノ形類↡。唯除ク↢一切ノ大声聞衆ノ一尋ノ光明アルト、及ビ彼ノ菩薩摩訶薩ノ*踰繕那等ノ百千尋ノ光アルトヲバ↡。彼ノ無量寿如来・応・正等覚ノ光明、映↢蔽シ一切ノ声聞及ビ諸菩薩ヲ↡、令ム↢諸ノ有情ヲシテ悉ク皆得↟見ルコトヲ。
かの極楽界の菩薩・声聞・人天衆らも、 一切みな娑婆世界の釈迦如来および比丘衆に囲繞せられ説法するを覩たてまつれり。
○彼ノ極楽界ノ菩薩・声聞・人天衆等モ、一切皆覩タテマツレリ↢娑婆世界ノ釈迦如来及ビ比丘衆ニ囲繞セラレ説法スルヲ↡。
二 Ⅴ ⅱ 胎化得失
【18】その時仏、 弥勒菩薩に告げてのたまはく、 なんぢすこぶる清浄威徳の荘厳を具足せる仏刹を見、 および空中の樹林・園苑・湧泉・池沼を見たるやいなや。 なんぢ大地乃至色究竟天を見、 虚空中において樹林に散花してもつて荘厳となし、 また衆鳥ありて虚空界に住し、 種々の音を出すことなほ仏の声のごとくにしてあまねく世界に聞ゆ。 このもろもろの衆鳥、 みなこれ化作にして実の畜生にあらず。 なんぢこれを見たるやと。
○爾ノ時仏告ゲテ↢弥勒菩薩ニ↡言ク、汝頗ル見↧具↢足セル清浄威徳ノ荘厳ヲ↡仏刹ヲ↥、及ビ見タルヤ↢空中ノ樹林・園苑・湧泉・池沼ヲ↡不耶。汝見↢大地乃至色究竟天ヲ↡、於テ↢虚空中ニ↡散↢花シテ樹林ニ↡以テ為シ↢荘厳ト↡、復有リテ↢衆鳥↡住シ↢虚空界ニ↡、出スコト↢種種ノ音ヲ↡猶如クニシテ↢仏ノ声ノ↡普ク聞ユ↢世界ニ↡。是ノ諸ノ衆鳥、皆是化作ニシテ非ズ↢実ノ畜生ニ↡。汝見タル↠是ヲ耶ト。
弥勒、 仏にまうしてまうさく、 ややしかなり、 すでに見たりと。
○弥勒白シテ↠仏ニ言ク、唯然ナリ、已ニ見タリト。
仏また弥勒菩薩に告げてのたまはく、 なんぢこのもろもろの衆生踰繕那百千の宮殿に入りをはりて、 虚空に遊行すること無著無礙にして、 もろもろの刹土に遍して諸仏を供養するを見、 およびかの有情昼夜分において、 仏を念じ相続するを見たるやいなやと。
○仏復告ゲテ↢弥勒菩薩ニ↡言ク、汝見↧此ノ諸ノ衆生入リ↢踰繕那百千ノ宮殿ニ↡已0331リテ、遊↢行スルコト虚空ニ↡無著无ニシテ、遍シテ↢諸ノ刹土ニ↡供↦養スルヲ諸仏ヲ↥、及ビ見タルヤ↧彼ノ有情於テ↢昼夜分ニ↡、念ジ↠仏ヲ相続スルヲ↥不耶ト。
弥勒まうしてまうさく、 ややしかなり、 ことごとく見たりと。
○弥勒白シテ言ク、唯然ナリ、尽ク見タリト。
仏また告げてのたまはく、 なんぢ他化自在天と極楽の諸人と、 受用する資具に差別あるを見たるやいなやと。
○仏復告ゲテ言ク、汝見タルヤ↧他化自在天ト与↢極楽ノ諸人↡、受用スル資具ニ有ルヲ↦差別↥不ヤト。
弥勒まうしてまうさく、 われかしこに少しも差別あるを見ずと。
○弥勒白シテ言ク、我不ト↠見↣彼ニ有ルヲ↢少シモ差別↡。
仏、 弥勒に告げたまはく、 なんぢ極楽世界の人胎に住するを見たるやいなやと。
○仏告ゲタマハク↢弥勒ニ↡、汝見タルヤ↢極楽世界ノ人住スルヲ↟胎ニ不ヤト。
弥勒まうしてまうさく、 世尊、 たとへば三十三天・夜摩天等の百由旬もしは五百由旬の宮殿の内に入りて遊戯歓楽するがごとし。
○弥勒白シテ言ク、世尊、譬ヘバ如シ↧三十三天・夜摩天等ノ入リテ↢百由旬若シハ五百由旬ノ宮殿之内ニ↡遊戯歓楽スルガ↥。
われ極楽世界の人の胎に住するものを見るに、 夜摩天の宮殿に処るがごとし。 また衆生の蓮華の内において、 結加趺坐して自然に化生するを見たると。
○我見ルニ↢極楽世界ノ人ノ住スル↠胎ニ者ヲ↡、如シ↣夜摩天ノ処ルガ↢於宮殿ニ↡。又見タルト↧衆生ノ於テ↢蓮華ノ内ニ↡、結*加趺坐シテ自然ニ化生スルヲ↥。
時に弥勒菩薩、 また仏にまうしてまうさく、 世尊、 なんの因縁のゆゑに、 かの国の衆生に胎生のものと化生のものとあるやと。
○時ニ弥勒菩薩、復白シテ↠仏ニ言ク、世尊、何ノ因縁ノ故ニ、彼ノ国ノ衆生ニ有ルヤト↢胎生ノ者ト化生ノ者ト↡。
▼仏、 弥勒に告げたまはく、 もし衆生ありて疑悔に堕して、 善根を積集し、 仏智・普遍智・不思議智・無等智・威徳智・広大智を希求するも、 みづからの善根において信を生ずることあたはず。
○仏告ゲタマハク↢弥勒ニ↡、若シ有リテ↢衆生↡堕シテ↢於疑悔ニ↡、積↢集シ善根ヲ↡、希↢求スルモ仏智・普遍智・不思議智・无等智・威徳智・広大智ヲ↡、於テ↢自ラノ善根ニ↡不↠能ハ↠生ズルコト↠信ヲ。
◆この因縁をもつて、 五百歳において宮殿のなかに住し、 仏を見たてまつらず、 法を聞かず、 菩薩および声聞衆を見ず。
○以テ↢此ノ因縁ヲ↡、於テ↢五百歳ニ↡住シ↢宮殿ノ中ニ↡、不↠見タテマツラ↠仏ヲ、不↠聞カ↠法ヲ、不↠見↢菩薩及ビ声聞衆ヲ↡。
もし衆生ありて疑悔を断除して、 善根を積集し、 仏智乃至広大智を希求するに、 おのが善根を信ず。 この人蓮華の内において、 結加趺坐し、 忽然として化生し、 瞬息に出づること、 たとへば他国より人ありて来至するがごとし。 すなはちこの菩薩もまたかくのごとし。
○若シ有リテ↢衆生↡断↢除シテ疑悔ヲ↡、積↢集シ善根ヲ↡、希↢求スルニ仏智乃至広大智ヲ↡、信ズ↢已ガ善根ヲ↡。此ノ人於テ↢蓮華ノ内ニ↡、結*加趺坐シ、忽然トシテ化生シ、瞬息ニ而出ヅルコト、譬ヘバ如シ↢他国ヨリ有リテ↠人来至スルガ↡。而チ此ノ菩薩モ亦復如シ↠是クノ。
余国にて発心し極楽に来生して、 無量寿仏を見たてまつり、 奉事し供養したてまつりて、 もろもろの菩薩・声聞の衆に及ぶ。
○余国ニテ発心シ来↢生シテ極楽ニ↡、見タテマツリ↢无量寿仏ヲ↡、奉事シ供養シタテマツリテ、及ブ↢諸ノ菩薩・声聞之衆ニ↡。
▼阿逸多、 なんぢ殊勝の智者を観ぜよ。 かれ▼広慧力によるがゆゑにかしこに化生するを受け、 蓮華のうちにおいて結加趺坐す。 なんぢ下劣の輩を観ぜよ。 五百歳のうちにおいて、 仏を見たてまつらず、 法を聞かず、 菩薩および声聞衆を見ず、 菩薩の威儀法則を知らず、 もろもろの功徳を修習することあたはず、 ゆゑに無量寿仏に奉事せる因なし。 このもろもろの人らみな昔縁の疑悔をなして致すところなればなり。
○阿逸多、汝観ゼヨ↢殊勝ノ智者ヲ↡。彼因ルガ↢広0332慧力ニ↡故ニ受ケ↢彼ニ化生スルヲ↡、於テ↢蓮花ノ中ニ↡結*加趺坐ス。汝観ゼヨ↢下劣之輩ヲ↡。於テ↢五百歳ノ中ニ↡、不↠見タテマツラ↠仏ヲ、不↠聞カ↠法ヲ、不↠見↢菩薩及ビ声聞衆ヲ↡、不↠知ラ↢菩薩ノ威儀法則ヲ↡、不↠能ハ↣修↢習スルコト諸ノ功徳ヲ↡、故ニ無シ↠因↣奉↢事セル无量寿仏ニ↡。是ノ諸ノ人等皆為シテ↢昔縁ノ疑悔ヲ↡所ナレバナリ↠致ス。
たとへば刹帝利の王、 その子法を犯さばこれを内宮に幽し、 処するに花観・層楼・綺殿・妙飾・奇珍・宝帳・金床をもつてし、 茵褥を重敷し、 名花を地に布き、 大宝香を焼き、 服御の所資ことごとくみな豊備して、 閻浮金の鎖をもつてその両足を繋がんがごとしと。
○譬ヘバ如シト↧刹帝利ノ王、其ノ子犯サバ↠法ヲ幽シ↢之ヲ内宮ニ↡、処スルニ以テシ↢花観・層楼・綺殿・妙飾・奇珍・宝帳・金床ヲ↡、重↢敷シ茵褥ヲ↡、名花ヲ布キ↠地ニ、焼キ↢大宝香ヲ↡、服御ノ所資悉ク皆豊備シテ、而以テ↢閻浮金ノ鎖ヲ↡繋ガムガ↦其ノ両足ヲ↥。
仏、 弥勒に告げたまはく、 意においていかん。 かの王子、 心寧くこれを楽むやいなやと。
○仏告ゲタマハク↢弥勒ニ↡、於テ↠意ニ云何ン。彼ノ王子、心寧ク楽ムヤ↠此ヲ不ヤト。
答へてまうさく、 いななり。 世尊、 かれ幽縶の時、 つねに解脱を思ひ、 もろもろの親識・居士・宰官・長者・近臣を求む。 王の太子出離を希ふといへどもつひに心に従はず。 すなはち刹帝利の王の心に歓喜を生ずるに至らばまさに解脱を得んと。
○答ヘテ言ク、不也。世尊、彼幽縶ノ時、常ニ思ヒ↢解脱ヲ↡、求ム↢諸ノ親識・居士・宰官・長者・近臣ヲ↡。王之太子雖モ↠希フト↢出離ヲ↡終ニ不↠従ハ↠心ニ。乃チ至ラバ↣刹帝利ノ王ノ心ニ生ズルニ↢歓喜ヲ↡方ニ得ムト↢解脱ヲ↡。
▼仏、 弥勒に告げたまはく、 かくのごとしかくのごとし。 もし疑悔に堕して、 もろもろの善根を種えて仏智乃至広大智を希求することあるも、 みづからの善根において信を生ずることあたはず。 仏の名を聞くによりて信心を起すがゆゑに、 ▼かの国に生ずといへども蓮華のなかにおいて出現することを得ず。 かれら衆生花胎のなかに処すること、 なほ園苑・宮殿の想のごとし。
○仏告ゲタマハク↢弥勒ニ↡、如シ↠是クノ如シ↠是クノ。若シ有ルモ↧堕シテ↢於疑悔ニ↡、種エテ↢諸ノ善根ヲ↡希↦求スルコト仏智乃至広大智ヲ↥、於テ↢自ラノ善根ニ↡不↠能ハ↠生ズルコト↠信ヲ。由リテ↠聞クニ↢仏ノ名ヲ↡起スガ↢信心ヲ↡故ニ、雖モ↠生ズト↢彼ノ国ニ↡於テ↢蓮花ノ中ニ↡不↠得↢出現スルコトヲ↡。彼等衆生処スルコト↢花胎ノ中ニ↡、猶如シ↢園苑・宮殿之想ノ↡。
なにをもつてのゆゑに。 かしこのなかは清浄にしてもろもろの穢悪なく、 一切楽しむべからざるものあることなければなり。 しかれどもかの衆生五百歳において、 仏を見たてまつらず、 法を聞かず、 菩薩および声聞衆を見ず、 諸仏を供養し奉事することを得ず、 菩薩の法蔵を問ふことを得ず、 一切の殊勝なる善根を遠離す。 かれらはなかにおいて欣楽を生ぜず、 出現して善法を修習することあたはず。
○何ヲ以テノ故ニ。彼ノ中ハ清浄ニシテ无ク↢諸ノ穢悪↡、一切無ケレバナリ↠有ルコト↢不ル↠可カラ↠楽ム者↡。然レドモ彼ノ衆生於テ↢五百歳ニ↡、不↠見タテマツラ↠仏ヲ、不↠聞カ↠法ヲ、不↠見↢菩薩及ビ声聞衆ヲ↡、不↠得↤供↢養シ奉↣事スルコトヲ諸仏ヲ↡、不↠得↠問フコトヲ↢於菩薩ノ法蔵ヲ↡、遠↢離ス一切ノ殊勝ナル善根ヲ↡。彼等ハ於テ↠中ニ不↠生0333ゼ↢欣楽ヲ↡、不↠能ハ↣出現シテ修↢習スルコト善法ヲ↡。
往昔世のなかの過失尽きをはりて、 しかる後にすなはち出づれども、 かれ出づる時において、 心上下四方の所に迷ふ。
●往昔世ノ中ノ過失尽キ已リテ、然ル後ニ乃チ出ヅレドモ、彼於テ↢出ヅル時ニ↡、心迷フ↢上下四方之所ニ↡。
もし五百歳に疑惑なきもの、 すなはちまさに無量百千倶胝那由他の仏を供養し、 ならびに無量無辺の善根を種うべし。
○若シ五百歳ニ无キ↢疑惑↡者、即チ当ニシ↧供↢養シ無量百千倶胝那由他ノ仏ヲ↡、并ニ種ウ↦无量無辺ノ善根ヲ↥。
なんぢ阿逸多、 まさに知るべし、 疑惑諸菩薩のために大損害たることをと。
○汝阿逸多、当ニシ↠知ル、疑惑与ニ↢諸菩薩ノ↡為ルコトヲト↢大損害↡。
二 Ⅴ ⅲ 諸方来生
【19】その時弥勒菩薩仏にまうしてまうさく、 世尊、 この国界において不退の菩薩のまさに極楽国に生べきもの、 その数いくばくぞやと。
○爾ノ時弥勒菩薩白シテ↠仏ニ言ク、世尊、於テ↢此ノ国界ニ↡不退ノ菩薩ノ当ニキ↠生ズ↢極楽国ニ↡者、其ノ数幾何ゾヤト。
▼仏、 弥勒に告げたまはく、 この仏土中に七十二億の菩薩ありて、 かれ無量億那由他百千の仏の所において、 もろもろの善根を種え不退転を成じ、 まさにかの国に生ずべし。 ▼いはんや余の菩薩、 少善根によりてかの国に生ずるもの、 称計するべからず。
○仏告ゲタマハク↢弥勒ニ↡、此ノ仏土中ニ有リテ↢七十二億ノ菩薩↡、彼於テ↢無量億那由他百千ノ仏ノ所ニ↡、種エ↢諸ノ善根ヲ↡成ジ↢不退転ヲ↡、当ニシ↠生ズ↢彼ノ国ニ↡。○況ヤ余ノ菩薩、由リテ↢少善根ニ↡生ズル↢彼ノ国ニ↡者、不↠可カラ↢称計ス↡。
阿逸多、 難忍如来の仏国より、 十八億の不退の菩薩ありて、 まさに極楽世界に生ずべし。
○阿逸多、従リ↢難忍如来ノ仏国↡、有リテ↢十八億ノ不退ノ菩薩↡、当ニシ↠生ズ↢極楽世界ニ↡。
東北方の宝蔵仏の国中に、 九十億の不退の菩薩ありて、 まさにかの土に生ずべし。
○東北方ノ宝蔵仏ノ国*中ニ、有リテ↢九十億ノ不退ノ菩薩↡、当ニシ↠生ズ↢彼ノ土ニ↡。
無量声如来の国中より、 二十二億の不退の菩薩ありて、 まさにかの土に生ずべし。
○従リ↢無量声如来ノ国中↡、有リテ↢二十二億ノ不退ノ菩薩↡、当ニシ↠生ズ↢彼ノ土ニ↡。
光明如来の国中より、 三十二億の不退の菩薩ありて、 まさにかの土に生ずべし。
○従リ↢光明如来ノ国中↡、有リテ↢三十二億ノ不退ノ菩薩↡、当ニシ↠生ズ↢彼ノ土ニ↡。
竜天如来の国中より、 十四億の不退の菩薩ありて、 まさにかの土に生ずべし。
○従リ↢竜天如来ノ国中↡、有リテ↢十四億ノ不退ノ菩薩↡、当ニシ↠生ズ↢彼ノ土ニ↡。
勝天力如来の国中より、 十二千の不退の菩薩ありて、 まさにかの土に生ずべし。
○従リ↢勝天力如来ノ国中↡、有リテ↢十二千ノ不退ノ菩薩↡、当ニシ↠生ズ↢彼ノ土ニ↡。
師子如来の国中より、 五百の不退の菩薩ありて、 まさにかの土に生ずべし。
○従リ↢師子如来ノ国中↡、有リテ↢五百ノ不退ノ菩薩↡、当ニシ↠生ズ↢彼ノ土ニ↡。
離塵如来の国中より、 八十一億の不退の菩薩ありて、 まさにかの土に生ずべし。
○従リ↢離塵如来ノ国中↡、有リテ↢八十一億ノ不退ノ菩薩↡、当ニシ↠生ズ↢彼ノ土ニ↡。
世天如来の国中より、 六十億の不退の菩薩ありて、 まさにかの土に生ずべし。
○従リ↢世天如来0334ノ国中↡、有リテ↢六十億ノ不退ノ菩薩↡、当ニシ↠生ズ↢彼ノ土ニ↡。
勝積如来の国中より、 六十億の不退の菩薩ありて、 まさにかの土に生ずべし。
○従リ↢勝積如来ノ国中↡、有リテ↢六十億ノ不退ノ菩薩↡、当ニシ↠生ズ↢彼ノ土ニ↡。
人王如来の国中より、 十倶胝の不退の菩薩ありて、 まさにかの土に生ずべし。
○従リ↢人王如来ノ国中↡、有リテ↢十倶胝ノ不退ノ菩薩↡、当ニシ↠生ズ↢彼ノ土ニ↡。
勝花如来の国中より、 五百の菩薩ありて、 大精進を具し一乗に発趣して、 七日のうちにおいて、 よく衆生をして百千億那由他劫の生死の流転を離れしめ、 かれらもまたまさに極楽界に生ずべし。
○従リ↢勝花如来ノ国中↡、有リテ↢五百ノ菩薩↡、具シ↢大精進ヲ↡発↢趣シテ一乗ニ↡、於テ↢七日ノ中ニ↡、能ク令メ↣衆生ヲシテ離レ↢百千億那由他劫ノ生死ノ流転ヲ↡、彼等モ亦当ニシ↠生ズ↢極楽界ニ↡。
発起精進如来の国中より、 六十九億の不退の菩薩ありて、 まさにかの土に生ずべし。
○従リ↢発起精進如来ノ国中↡、有リテ↢六十九億ノ不退ノ菩薩↡、当ニシ↠生ズ↢彼ノ土ニ↡。
かの国に到りをはりて、 無量寿如来および菩薩衆を供養し礼拝したてまつる。
○到リ↢彼ノ国ニ↡已リテ、供↢養シ礼↣拝シタテマツル无量寿如来及ビ菩薩衆ヲ↡。
阿逸多、 われもしつぶさに諸方の菩薩の極楽界に生じ、 もしはすでに到り、 いま到り、 まさに到りて、 ために無量寿仏等を供養し礼拝し瞻仰したてまつるものを説かんに、 ただその名のみを説くも、 劫を窮むとも尽きず。
○阿逸多、我若シ具ニ説カムニ↧諸方ノ菩薩ノ生ジ↢極楽界ニ↡、若シハ已ニ到リ、今到リ、当ニ到リテ、為ニ供↢養シ礼↣拝シ瞻↤仰シタテマツル无量寿仏等ヲ↡者ヲ↥、但説クモ↢其ノ名ノミヲ↡、窮ムトモ↠劫ヲ不↠尽キ。
三 流通分
Ⅰ 弥勒付属
【20】▼阿逸多、 なんぢかのもろもろの菩薩摩訶薩のよく利益を獲るを観ぜよ。 もしかの仏の名を聞くことありて、 ▼よく一念喜愛の心を生ぜば、 まさに上のごとき所説の功徳を獲、 心に下劣なくまた貢高ならず、 善根を成就してことごとくみな増上すべし。
○阿逸多、汝観ゼヨ↣彼ノ諸ノ菩薩摩訶薩ノ善ク獲ルヲ↢利益ヲ↡。若シ有リテ↠聞クコト↢彼ノ仏ノ名ヲ↡、能ク生ゼバ↢一念喜愛之心ヲ↡、当ニシ↧獲↢如キ↠上ノ所説ノ功徳ヲ↡、心ニ無ク↢下劣↡亦不↢貢高ナラ↡、成↢就シテ善根ヲ↡悉ク皆増上ス↥。
阿逸多、 このゆゑになんぢおよび天人・世間・阿修羅等に告げて、 いまこの法門をなんぢに付嘱す。 まさに愛楽し修習し、 すなはち一昼夜を経るに至れども受持し読誦して希望の心を生じ、 大衆のなかにおいて他のために開示すべし。 まさに経巻を書写し執持して、 この経中において導師の想を生ぜしむべし。
●阿逸多、是ノ故ニ告ゲテ↢汝及ビ天人・世間・阿修羅等ニ↡、今此ノ法門ヲ付↢嘱ス於汝ニ↡。応ニ当シ↧愛楽シ修習シ、乃チ至レドモ↠経ルニ↢一昼夜ヲ↡受持シ読誦シテ生ジ↢希望ノ心ヲ↡、於テ↢大衆ノ中ニ↡為ニ↠他ノ開示ス↥。当ニシ↠令ム↧書↢写シ執↣*持シテ経巻ヲ↡、於テ↢此ノ経中ニ↡生ゼ↦導師ノ想ヲ↥。
阿逸多、 このゆゑに菩薩摩訶薩、 無量のもろもろの衆生らをして、 すみやかに疾く阿耨多羅三藐三菩提より退転せざることに安住せしめんと欲し、 およびかの広大なる荘厳を見、 殊勝なる仏刹の円満せる功徳を摂受せんと欲せんもの、 まさに精進力を起すべし。
○阿逸多、是ノ故ニ菩薩摩訶薩、欲シ↠令メムト↰无量ノ諸ノ衆生等ヲシテ、速ニ疾ク安↯住セ不ルコトニ↤退↣転セ於リ↢阿耨多0335羅三藐三菩提↡、及ビ欲セム↧見↢彼ノ広大ナル荘厳ヲ↡、摂↦受セムト殊勝ナル仏刹ノ円満セル功徳ヲ↥者、応ニ当シ↣起ス↢精進力ヲ↡。
この法門を聴くに、 たとひ大千世界のなかに満てらん猛火を経過すとも、 法を求めんがためのゆゑに退屈・諂偽の心を生ぜず。 経巻を読誦し受持し書写して、 乃至須臾のあひだにおいてなりとも、 他のために開示し、 勧めて聴聞して憂悩を生ぜざらしめよ。 たとひ大火に入るも疑悔すべからず。
○聴クニ↢此ノ法門ヲ↡、仮使経↢過ストモ大千世界ノ満テラム↠中ニ猛火ヲ↡、為ノ↠求メムガ↠法ヲ故ニ不↠生ゼ↢退屈・諂偽之心ヲ↡。読↢誦シ受↣持シ書↤写シテ経巻ヲ↡、乃至於テナリトモ↢須臾ノ頃ニ↡、為ニ↠他ノ開示シ、勧メテ令メヨ↢聴聞シテ不ラ↟生ゼ↢憂悩ヲ↡。設ヒ入ルモ↢大火ニ↡不↠応カラ↢疑悔ス↡。
なにをもつてのゆゑに。 かの無量億のもろもろの菩薩等、 みなことごとくこの微妙の法門を求め、 尊重し聴聞して違背を生ぜざればなり。 このゆゑになんぢらこの法を求むべし。
○何ヲ以テノ故ニ。彼ノ无量億ノ諸ノ菩薩等、皆悉ク求メ↢此ノ微妙ノ法門ヲ↡、尊重シ聴聞シテ不レバナリ↠生ゼ↢違背ヲ↡。是ノ故ニ汝等応シ↠求ム↢此ノ法ヲ↡。
阿逸多、 かのもろもろの衆生大善なる利を獲ん。 もし来世乃至正法滅せん時において、 まさに衆生ありてもろもろの善本を殖うれば、 すでにかつて無量の諸仏を供養し、 ▼かの如来の加威力によるがゆゑに、 よくかくのごときの広大の法門、 一切の如来の称讃・悦可を得べし。 もしかの法において摂取し受持せば、 まさに広大なる一切智智を獲、 意の楽ふところに随ひてもろもろの善根を種うべし。 もし善男子・善女人等、 かの法のなかにおいて▼広大にこれを勝解すれば、 まさによく聴聞して大歓喜を獲、 受持し読誦して広く他のために説き、 つねに楽しみて修行すべし。
●阿逸多、彼ノ諸ノ衆生獲ム↢大善ナル利ヲ↡。若シ於テ↢来世乃至正法滅セム時ニ↡、当ニシ↧有リテ↢衆生↡*殖ウレバ↢諸ノ善本ヲ↡、已ニ曽テ供↢養シ無量ノ諸仏ヲ↡、由ルガ↢彼ノ如来ノ加威力ニ↡故ニ、能ク得↦如キノ↠是クノ広大ノ法門、一切ノ如来ノ称讃・悦可ヲ↥。若シ於テ↢彼ノ法ニ↡摂取シ受持セバ、当ニシ↧獲↢広大ナル一切智智ヲ↡、随ヒテ↢意ノ所ニ↟楽フ種ウ↦諸ノ善根ヲ↥。若シ善男子・善女人等、於テ↢彼ノ法ノ中ニ↡広大ニ勝↢解スレバ之ヲ↡者、当ニシ↧能ク聴聞シテ獲↢大歓喜ヲ↡、受持シ読誦シテ広ク為ニ↠他ノ説キ、*常ニ楽シミテ修行ス↥。
阿逸多、 無量億数のもろもろの菩薩等、 この法を求請してかつて厭背せず。 このゆゑになんぢらもろもろの善男子および善女人、 今・来世においてよくこの法において、 もしはすでに求め、 現に求め、 まさに求めんもの、 みな善利を獲。 阿逸多、 如来なすべきところは、 みなすでにこれをなしたまへり。 なんぢらまさに無疑に安住してもろもろの善本を種うべし。 つねに修学して疑滞することなからしむべし。 一切の種類の珍宝をもつて成就せる牢獄に入らざれ。
●阿逸多、無量億数ノ諸ノ菩薩等、求↢請シテ此ノ法ヲ↡不↢曽テ厭背セ↡。是ノ故ニ汝等諸ノ善男子及ビ善女人、於テ↢今・来世ニ↡能ク於テ↢是ノ法ニ↡、若シハ已ニ求メ、現ニ求メ、当ニ求メム者、皆獲↢善利ヲ↡。阿逸多、如来所↠応キ↠作ス者、皆已ニ作シタマヘリ↠之ヲ。汝等応ニ当シ↧安↢住シテ無疑ニ↡種ウ↦諸ノ善本ヲ↥。応シ↢常ニ修学シテ使ム↟无カラ↢疑滞スルコト↡。不レ↠入ラ↢一切ノ種類ノ珍宝ヲモテ成就セル牢獄ニ↡。
阿逸多、 ▼かくのごときらの大威徳に類するもの、 よく広大なる仏法の異門に生ず。 この法によりて聴聞せざるがゆゑに、 一億の菩薩ありて、 阿耨多羅三藐三菩提より退転す。
●阿逸多0336、如キ↠是クノ等ノ類スル↢大威徳ニ↡者、能ク生ズ↢広大ナル仏法ノ異門ニ↡。由リテ↢於此ノ法ニ↡不ルガ↢聴聞セ↡故ニ、有リテ↢一億ノ菩薩↡、退↢転ス阿耨多羅三藐三菩提ヨリ↡。
阿逸多、 仏、 世に出づること難し。 八難の身を離るることもまた得がたしとなす。 諸仏如来の無上の法、 十力・無畏・無礙・無著の甚深の法、 および波羅蜜等の菩薩の法、 よく法を説ける人もまた開示しがたし。 阿逸多、 よく法を説く人には遇ふべきこと易きにあらず、 堅固なる深信の時にもまた遭ひがたし。
○阿逸多、仏出ヅルコト↠世ニ難シ。離ルルコトモ↢八難ノ身ヲ↡亦為ス↠難シト↠得。諸仏如来ノ无上之法、十力・無畏・无・無著ノ甚深之法、及ビ波羅蜜等ノ菩薩之法、能ク説ケル↠法ヲ人モ亦難シ↢開示シ↡。阿逸多、善ク説ク↠法ヲ人ニハ非ズ↠易キニ↠可キコト↠遇フ、○堅固ナル深信ノ時ニモ亦難シ↠遭ヒ。
このゆゑにわれいま理のごとく宣説す。 なんぢら修習して教へのごとく住すべし。
○是ノ故ニ我今如ク↠理ノ宣説ス。汝等修習シテ応シ↢如ク↠教ノ住ス↡。
なんぢ阿逸多、 われこの法門および諸仏の法をもつてなんぢに嘱累す。 なんぢまさに修行して滅没せしむることなかるべし。 かくのごときの広大微妙の法門、 一切の諸仏の称讃したまふところなり。 仏教に違してこれを棄捨し、 まさになんぢら不善の利を獲て、 長夜に淪没し、 もろもろの危苦を備はらしむることなかれ。 このゆゑにわれいまためにおほきに嘱累す。 まさにこの法をして久しく住し滅せざらしむべし。 勤めて修行しわが教に随順すべしと。
●汝阿逸多、我以テ↢此ノ法門及ビ諸仏ノ法ヲ↡嘱↢累ス於汝ニ↡。汝当ニシ↢修行シテ無カル↟令ムルコト↢滅没セ↡。如キノ↠是クノ広大微妙ノ法門、一切ノ諸仏之所ナリ↢称讃シタマフ↡。勿レ↫違シテ↢仏教ニ↡而棄↢捨シ之ヲ↡、当ニ令ムルコト↪汝等獲テ↢不善ノ利ヲ↡、淪↢没シ長夜ニ↡、備ラ↩衆ノ危苦ヲ↨。是ノ故ニ我今為ニ大ニ嘱累ス。当ニシ↠令ム↢是ノ法ヲシテ久シク住シ不ラ↟滅セ。応シト↣勤メテ修行シ随↢順ス我ガ教ニ↡。
三 Ⅱ 流通偈
【21】その時世尊、 すなはち頌を説きてのたまはく、
●爾ノ時世尊、而チ説キテ↠頌ヲ曰ク、
もし福徳において初めより修せざるは つひにこの微妙の法を聞かず
○若シ於テ↢福徳ニ↡初ヨリ未ダルハ↠修セ | 終ニ不↠聞カ↢斯ノ微妙ノ法ヲ↡ |
勇猛によくもろもろの善利を成ぜるは まさにかくのごときの甚深の経を聞くべし
勇猛ニ能ク成ゼルハ↢諸ノ善利ヲ↡ | 当ニシ↠聞ク↢如キノ↠是クノ甚深ノ経ヲ↡ |
かの人かつてもろもろの世尊の よく大光をなして濁世に拯ひたまふに見え
○彼ノ人曽テ見エ↧諸ノ世尊ノ | 能ク作シテ↢大光ヲ↡*拯ヒタマフニ↦濁世ヲ↥ |
多聞総持すること巨海のごとくして かれ聖賢喜愛の心を獲ん
多聞総持スルコト如クシテ↢巨海ノ↡ | 彼獲ム↢聖賢喜愛ノ心ヲ↡ |
懈怠・邪見・下劣の人 如来のこの正法を信ぜず
○懈怠・邪見・下劣ノ人 | 不↠信ゼ↢如来ノ斯ノ正法ヲ↡ |
もしかつて仏において衆善を殖うるは 救世の行かれよく修せり
0337若シ曽テ於テ↠仏ニ*殖ウルハ↢衆善ヲ↡ | 救世之行彼能ク修セリ |
たとへば盲人のつねに闇に処して 他路を開導することあたはざるがごとし
○譬ヘバ如シ↤盲人ノ恒ニ処シテ↠闇ニ | 不ルガ↣能ハ開↢導スルコト於他路ヲ↡ |
声聞の仏智におけるもまたしかなり いはんや余の有情にして悟解せんや
声聞ノ於ケルモ↢仏智ニ↡亦然ナリ | 況ヤ余ノ有情ニシテ而悟解セムヤ |
▼如来の功徳は仏のみみづから知ろしめせり ただ世尊のみましましてよく開示したまふ
○如来ノ功徳ハ仏ノミ自ラ知セリ | 唯有シテ↢世尊ノミ↡能ク開示シタマフ |
天・竜・夜叉の及ばざるところなり 二乗おのづから名言を絶つ
天・竜・夜叉ノ所ナリ↠不ル↠及バ | 二乗自ラ絶ツ↢於名言ヲ↡ |
◆もしもろもろの有情まさに作仏して 行普賢に超え彼岸に登りて
○若シ諸ノ有情当ニ作仏シテ | 行超エ↢普賢ニ↡登リテ↢彼岸ニ↡ |
一仏の功徳を敷演せんに 時多劫の不思議を逾えん
敷↢演セムニ一仏之功徳ヲ↡ | 時逾エム↢多劫ノ不思議ヲ↡ |
この中間において身は滅度すとも 仏の勝慧はよく量ることなけん
○於テ↢是ノ中間ニ↡身ハ滅度ストモ | 仏之勝慧ハ莫ケム↢能ク量ルコト↡ |
◆このゆゑに信聞 およびもろもろの善友の摂受を具足して
かくのごときの深妙の法を聞くことを得ば まさにもろもろの聖尊を愛重することを獲べし
得バ↠聞クコトヲ↢如キノ↠是クノ深妙ノ法ヲ↡ | 当ニシ↠獲↣愛↢重スルコトヲ諸ノ聖尊ヲ↡ |
▼如来の勝智虚空に遍し 説くところの義言はただ仏のみ悟りたまへり
○如来ノ勝智遍シ↢虚空ニ↡ | 所ノ↠説ク義言ハ唯仏ノミ悟リタマヘリ |
◆このゆゑに博く▼もろもろの智士に聞きて ▼わが教の如実の言を信ずべし
是ノ故ニ博ク聞キテ↢諸ノ智士ニ↡ | 応シ↠信ズ↢我ガ教ノ如実ノ言ヲ↡ |
人趣の身得ることはなはだ難し 如来の出世に遇ふこともまた難し
○人趣之身得ルコト甚ダ難シ | 如来ノ出世ニ遇フコトモ亦難シ |
◆信慧多き時まさにすなはち獲ん このゆゑに修せんもの精進すべし
信慧多キ時方ニ乃チ獲ム | 是ノ故ニ修セム者応シ↢精進ス↡ |
かくのごときの妙法すでに聴聞し つねに諸仏を念じたてまつりて喜びを生ぜん
○0338如キノ↠是クノ妙法已ニ聴聞シ | 常ニ念ジタテマツリテ↢諸仏ヲ↡而生ゼム↠喜ヲ |
かの人往昔まことにわが友にして よく仏の菩提を楽欲せりと
彼ノ人往昔真ニ吾ガ友ニシテ | 善能ク楽↢欲セリト仏ノ菩提ヲ↡ |
【22】その時世尊、 この経を説きをはりたまふに、 天人・世間万二千那由他億の衆生ありて、 塵を遠ざかり垢を離れて法眼浄を得、 二十億の衆生阿那含果を得、 六千八百の比丘、 諸漏すでに尽きて心に解脱を得、 四十億の菩薩、 無上菩提より退転せざるに住し、 大なる甲冑を被りてまさに正覚を成ずべし。
○爾ノ時世尊、説キ↢是ノ経ヲ↡已リタマフニ、天人・世間有リテ↢万二千那由他億ノ衆生↡、遠ザカリ↠*塵ヲ離レテ↠垢ヲ得↢法眼浄ヲ↡、二十億ノ衆生得↢阿那含果ヲ↡、六千八百ノ比丘、諸漏已ニ尽キテ心ニ得↢解脱ヲ↡、四十億ノ菩薩、於リ↢無上菩提↡住シ↠不ルニ↢退転セ↡、被リテ↢大ナル甲冑ヲ↡当ニシ↠成ズ↢正覚ヲ↡。
二十五億の衆生ありて不退忍を得、 四万億那由他百千の衆生ありて、 無上菩提においていまだかつて意を発さず、 いまはじめて発してもろもろの善根を種え、 極楽世界に生じて阿弥陀に見えんと願じて、 みなまさにかの如来の土に往生すべし。 おのおの異方において次第に成仏して、 同じく妙音と名づけん。 八万億那由他の衆生ありて、 法忍を授記せらるることを得、 無上菩提を成ず。 かの無量寿仏の昔菩薩の道を行ぜるによりて、 時に有情を成熟したまふ。 ことごとくみなまさに極楽世界に生じ、 もろもろの昔発すところの思願を憶念し、 みな成満することを得たり。
●有リテ↢二十五億ノ衆生↡得↢不退忍ヲ↡、有リテ↢四万億那由他百千ノ衆生↡、於テ↢無上菩提ニ↡未ダ↢曽テ発サ↟意ヲ、今始初テ発シテ種エ↢諸ノ善根ヲ↡、願ジテ↧生ジテ↢極楽世界ニ↡見エムト↦阿弥陀仏ニ↥、皆当ニシ↣往↢生ス彼ノ如来ノ土ニ↡。各ノ於テ↢異方ニ↡次第ニ成仏シテ、同ジク名ケム↢妙音ト↡。有リテ↢八万億那由他ノ衆生↡、得↣授↢記セラルルコトヲ法忍ヲ↡、成ズ↢无上菩提ヲ↡。彼ノ無量寿仏ノ昔行ゼルニヨリテ↢菩薩ノ道ヲ↡、時ニ成↢熟シタマフ有情ヲ↡。悉ク皆当ニ生ジ↢極楽世界ニ↡、憶↢念シ*儔ノ昔所ノ↠発ス思願ヲ↡、皆得タリ↢成満スルコトヲ↡。
【23】その時三千大千世界、 六種に震動し、 ならびに種々の希有なる神変を現ぜり。 大光明を放ちてあまねく世界を照らし、 無量億那由他百千の天・人、 同時に音楽するに、 鼓せざるにおのづから鳴り、 天の曼陀羅花を雨らし、 没して膝に至る。 すなはち阿迦膩吒天に至るまで、 みな種々殊妙なる供養をなす。
○爾ノ時三千大千世界、六種ニ震動シ、并ニ現ゼリ↢種種ノ希有ナル神変ヲ↡。放チテ↢大光明ヲ↡普ク照シ↢世界ヲ↡、無量億那由他百千ノ天・人、同時ニ音楽スルニ、不ルニ↠鼓セ自ラ鳴リ、雨ラシ↢天ノ曼陀羅花ヲ↡、没シテ至ル↢于膝ニ↡。乃チ至ルマデ↢阿迦膩吒天ニ↡、皆作ス↢種種ノ殊妙ナル供養ヲ↡。
仏、 経を説きをはりたまふに、 弥勒菩薩等および尊者阿難、 一切の大衆、 仏の所説を聞きてみなおほきに歓喜しき。
○仏説キ↠経ヲ已0339リタマフニ、弥勒菩薩等及ビ尊者阿難、一切ノ大衆、聞キテ↢仏ノ所説ヲ↡皆大ニ歓喜シキ。
大宝積経 巻第十八
延書は底本の訓点に従って有国が行った(固有名詞の訓は保証できない)。
底本は◎高麗版(再雕本)¬大蔵経¼所収本。 Ⓐ宋版(思溪版)¬大蔵経¼所収本、 Ⓑ元版(善寧寺版)¬大蔵経¼所収本、 Ⓒ明版(万歴版)¬大蔵経¼所収本、 Ⓓ正倉院聖語蔵本 と対校。
大…二27字→Ⓓ大宝積経無量寿会第五之二[大唐三蔵菩提流志奉詔訳巻十八]
大 Ⓒになし
蔵→Ⓒ蔵[法師]
二→Ⓑ下
馩→ⒶⒷⒸⒹ芬
物→ⒶⒷⒸⒹ勿
獲→Ⓒ復
耳→ⒶⒹ珥
復→Ⓐ言
具→Ⓒ其
故→Ⓓ故[也]
毀→ⒶⒷⒸ謗
殖→ⒶⒷⒸ植
北→Ⓑ比
懈→Ⓓ解
倦→Ⓒ怠
現→ⒶⒷⒸⒹ見
現→Ⓓ見
供→ⒶⒷⒸ供[養]
法心→ⒶⒷⒸⒹ心法
螺→ⒶⒹ蠡
迷→Ⓒ疑
恵→Ⓓ慧
闇→ⒷⒸ暗
利→ⒶⒷⒸ供→Ⓓ物
踰→Ⓓ
加→ⒶⒹ跏
加→Ⓓ跏
中 Ⓓになし
持→Ⓒ此
殖→ⒶⒷⒸ植
常→Ⓑ当
拯→Ⓓ極
殖→ⒶⒷⒸ植
塵離→Ⓒ離塵
儔→ⒶⒷⒸⒹ疇