0154
標挙
0336▼*光明無量の願
▼寿命無量の願
題号
0337◎▼顕浄土真仏土文類 五
愚禿釈*親鸞集
一 正釈【真仏土釈】
Ⅰ 直明【仏土出願】
ⅰ 仏土を明かす
【1】 ◎^▼つつしんで真仏土を案ずれば、 ▼仏はすなはちこれ▼不可思議光如来なり、 土はまたこれ▽無量光明土なり。
◎謹0155デ按ズレ↢真仏土ヲ↡者、仏者則チ是不可思議光如来ナリ、土者亦是无量光明土也。
一 Ⅰ ⅱ 法義を示す
^しかればすなはち、 大悲の誓願に*酬報するがゆゑに、 真の報仏土といふなり。
然レバ則チ酬↢コタフ報スルガ大悲ノ誓願ニ↡故ニ、曰フナリ↢真ノ報仏土ト↡。
一 Ⅰ ⅲ 因願を指す
^すでにして願います、 すなはち光明・寿命の願 (第十二・十三願) これなり。
既ニ而有ス↠願、即チ光明・寿命之願是也。
一 Ⅱ 引文
ⅰ 経説
a 本経
イ 正依
(一)因願
(Ⅰ)¬大経¼二文
・第十二願
【2】 ^▼¬*大経¼ (上) にのたまはく、
¬大経ニ¼言ク、
^「▲たとひわれ仏を得たらんに、 光明よく限量ありて、 下百千億那由他の諸仏の国を照らさざるに至らば、 正覚を取らじ」 と。
「*設ヒ我得タラムニ↠仏ヲ、光明有リテ↢能ク限量↡、下至ラ↠不ルニ↠照サ↢百千億那由他ノ諸仏ノ国ヲ↡者、不ト↠取ラ↢正覚ヲ↡。」
・第十三願
【3】 ^▼また願 (第十三願) にのたまはく (大経・上)、
又願ニ言ク、
^▲「たとひわれ仏を得たらんに、 寿命よく限量ありて、 ▼下百千億那由他の劫に至らば、 正覚を取らじ」 と。
「*設ヒ我得タラムニ↠仏ヲ、寿命有リテ↢能ク限量↡、下至ラ↢百千億那由他ノ劫ニ↡者、不ト↠取ラ↢正覚ヲ↡。」
一 Ⅱ ⅰ a イ (二)成就
(Ⅰ)¬大経¼
・第十二願
【4】 ^▼願 (第十二・十三願) 成就の文にのたまはく (大経・上)、
*願成就ノ文ニ言ク、
「^▲仏、 *阿難に告げたまはく、 ª無量寿仏の威神光明、 ▼最尊第一にして、 諸仏の光明の及ぶことあ0338たはざるところなり。 ▼乃至
「*仏告ゲタマハク↢阿難ニ↡、无量寿仏ノ威神光明、最尊第一ニシテ、諸仏ノ光明ノ所ナリ↠不ル↠能ハ↠及ブコト。 乃至
^▲このゆゑに無量寿仏をば無量光仏・▽無辺光仏・無礙光仏・無対光仏・炎王光仏・清浄光仏・歓喜光仏・智慧光仏・不断光仏・難思光仏・無称光仏・超日月光仏と号す。
是ノ故ニ无量寿仏ハ号ス↢无量光仏・无辺光仏・无光仏・无対光仏・炎王光仏・清浄光仏・歓喜光仏・智慧光仏・不断光仏・難思光仏・无称光仏・超日月光仏ト↡。
^◆それ衆生ありて、 この光に遇ふものは、 ▼三垢消滅し、 身意柔軟なり。 歓喜踊躍し善心生ず。 ◆もし三塗勤苦の処にありて、 この光明を見れば、 みな休息を得てまた苦悩なけん。 ▼寿終へての後、 みな▼解脱を蒙る。▼
*其有リテ↢衆生↡、遇フ↢斯光ニ↡者ハ、三垢消滅シ身0156意柔軟ナリ。歓喜踊躍シ善心生ズ焉。コヽニ若シ在リテ↢三塗懃苦之処ニ↡、見レバ↢此ノ光明ヲ↡、皆得テ↢休息ヤミヤムヲ↡無ケム↢復苦悩↡。寿終ヘテ之後、皆蒙ル↢解脱ヲ↡。
^◆無量寿仏の光明顕赫にして、 十方諸仏の国土を照耀して聞えざることなし。 ◆ただわれいまその光明を称するのみにあらず、 一切の諸仏・声聞・縁覚・もろもろの菩薩衆、 ことごとくともに嘆誉すること、 またまたかくのごとし。
无量寿仏ノ光明顕赫カヾヤクニシテ、照↢耀シテカヾヤク 十方諸仏ノ国土ヲ↡莫シ↠不ルコト↠聞ヘ焉。不ズ↣但我今称スルノミニ↢其ノ光明ヲ↡、一切ノ諸仏・声聞・縁覚・諸ノ菩薩衆、咸ク共ニ嘆誉ホメホムスルコト、亦復如シ↠是クノ。
^◆もし衆生ありて、 その光明の威神功徳を聞きて、 日夜に▼称説し、 心を至して断えざれば、 ▼意の所願に随ひて、 その国に生ずることを得て、 もろもろの菩薩・声聞大衆のために、 ともにその功徳を嘆誉し称せられん。 ◆それしかうして後、 仏道を得る時に至りて、 あまねく十方の諸仏・菩薩のために、 その光明を嘆ぜられんこと、 またいまのごときならんº と。
若シ有リテ↢衆生↡、聞キテ↢其ノ光明ノ威神功徳ヲ↡、日夜ニ称説シ、至シテ↠心ヲ不レバ↠断ヘ、随ヒテ↢意ノ所願ニ↡、得テ↠生ズルコトヲ↢其ノ国ニ↡、為ニ↢諸ノ菩薩・声聞大衆ノ↡、所レム↤共ニ嘆↢誉シ称セ↣其ノ功徳ヲ↡。至リテ↧其然シテ後得ル↢仏道ヲ↡時ニ↥、普ク為ニ↢十方ノ諸仏・菩薩ノ↡、嘆ゼラレムコト↢其ノ光明ヲ↡、亦如キナラムト↠今ノ也。
^◆仏ののたまはく、 ªわれ無量寿仏の光明威神、 巍々殊妙なるを説かんに、 昼夜一劫すともなほいまだ尽すことあたはじº と▼。
仏ノ言ハク、我説カムニ↢无量寿仏ノ光明威神、巍ヨシ巍殊スグレ妙ナルヲ↡、昼夜一劫ストモ尚未ジ ダト↠能ハ↠尽スコト。
・第十三願
^0339◆仏、 阿難に語りたまはく、 ª▼無量寿仏は、 寿命長久にして勝計すべからず。 なんぢむしろ知らんや。 ◆たとひ十方世界の無量の衆生、 みな人身を得て、 ことごとく声聞・縁覚を成就せしめて、 すべてともに集会して、 思をもつぱらにし心を一つにして、 その智力を竭して、 百千万劫においてことごとくともに推算して、 その寿命の長遠の数を計へんに、 窮尽してその限極を知ることあたはじº」 と。 抄出
*仏語リタマハク↢阿難ニ↡、无量寿仏ハ、寿命長久ニシテ不↠可カラ↢勝計ス↡。汝寧ロ知ラム乎。仮使十方世界ノ无量ノ衆生、皆得テ↢人身ヲ↡、悉ク令メテ↣成↢就セ声聞・縁覚ヲ↡、都テ共ニ集会シテ、禅ニシ↠思ヲ一ニシテ↠心ヲ竭シテ↢其ノ智力ヲ↡、於テ↢百千万劫ニ↡悉ク共ニ推オシテ算シテカゾフ 、計エムニ↢其ノ寿命ノ長遠之数ヲ↡、不ト↠能ハ↣窮キワメ尽シテツクス 知ルコト↢其ノ限カギリ極ヲ↡。」 抄出
一 Ⅱ ⅰ a ロ 異訳
(一)¬如来会¼(不可思議光の名を出す)
【5】 ^▼¬*無量寿如来会¼ (上) にのたまはく、
¬*无量寿如来会ニ¼言ク、
^「▲阿難、 この義をもつてのゆゑに、 無量寿仏にまた異名まします。 いはく、 *無量光・無辺光・無着光・無礙光・光照王・端厳光・愛光・喜光・可観光・▼不可思議光・無等光・不可称量光・*暎蔽日光・暎蔽月光・*掩奪日月光なり。 ◆かの光明清浄広大にして、 あまねく衆生をして身心悦楽せしむ。 ◆また一切余の*仏刹のうちの*天・竜・夜叉・阿修羅等みな歓悦を得しむ」 と。 以上
「阿難、以テノ↢是ノ義ヲ↡故ニ无量寿仏ニ復有ス↢異名↡。謂ク无量光・无辺光・无 著ツク クルフトモ光・无光・光照王・端ナホシ厳光・愛光・喜光・可ユルス観光・不可思議光・无等・不可称量光・映蔽日光・映オヽウ 蔽オヽウ月光・掩オヽウ 奪ウバウ日月光ナリ。彼之0157光明清浄広大ニシテ、普ク令ム↢衆生ヲシテ身心悦楽ヨロコブ セ↡。復令ムト↣一切余ノ仏刹クニノ中ノ天・竜・夜叉・阿修羅等皆得↢歓悦ヲ↡。」 已上
一 Ⅱ ⅰ a ロ (二)¬平等覚経¼(無量光明土の名を出す)
【6】 ^▼¬*無量清浄平等覚経¼ (二) *帛延の訳 にのたまはく、
¬*无量清浄平等覚経ニ¼ *帛延ノ訳 言ク、
^「▲速疾に超えて、 すなはち安楽国の世界に到るべし。 △無量光明土に至りて、 無数の仏を供養す」 と。 以上
「速疾ニ超エテ 便チ可シ↠到ル↢ | 安楽国之世界ニ↡ |
至リテ↢无量光明土ニ↡ | 供↢養スト於无数ノ仏ヲ↡」 已上 |
一 Ⅱ ⅰ a ロ (三)¬大阿弥陀経¼(諸仏に超過するの義を説く)
【03407】 ^▼¬*仏説*諸仏阿弥陀三耶三仏薩楼仏檀過度人道経¼ (上) *支謙の訳 にのたまはく、
¬仏説諸仏阿弥陀三那三仏薩楼仏檀過度人道経ニ¼ 友謙ノ訳 言ク、
^「▲仏ののたまはく、 ª阿弥陀仏の光明は最尊第一にして比びなし。 諸仏の光明みな及ばざるところなり。 ◆八方上下無央数の▼諸仏のなかに、 仏の頂中の光明、 七丈を照らすあり。 仏の頂中の光明、 一里を照らすあり。 乃至 ◆仏の頂中の光明、 二百万仏国を照らすありº と。
「仏ノ言ハク、阿弥陀仏ノ光明ハ最尊第一ニシテ无シ↠比。諸仏ノ光明皆所↠不ル↠及バ也。八方上下无央ナカバ数ノ諸仏ノ中ニ、有リ↣仏ノ頂中ノ光明照ス↢七*丈ヲ↡。有リ↣仏ノ頂中ノ光明照ス↢一里ヲ↡。 乃至 有リ↣仏ノ頂中ノ光明照ス↢二百万仏国ヲ↡。
^◆仏ののたまはく、 ªもろもろの八方上下無央数の仏の頂中の光明の炎照するところ、 みなかくのごとくなり。 阿弥陀仏の頂中の光明の炎照するところ、 千万仏国なり。 ◆諸仏の光明の照らすところに近遠あるゆゑはいかんとなれば、 もとそれ*前世の宿命に、 *道を求めて菩薩たりし時、 所願功徳おのおのおのづから大小あり。 それしかうして後、 仏になる時に至りて、 おのおのみづからこれを得たり。
仏ノ言ハク、諸ノ八方上下无央数ノ仏ノ頂中ノ光明ノ所↢炎カヾヤカシ照スル↡、皆如ク↠是クノ也。阿弥陀仏ノ頂中ノ光明ノ所↢炎照スル↡、千万仏国ナリ。所↣以諸仏ノ光明ノ所ニ↠照ス有ル↢近遠↡者何ントナラバ本其前世ノ宿命ニ求メテ↠道ヲ為リシニ↢菩薩↡時、照スニ↢所願ヲ↡功徳各ノ自ラ有リ↢大小↡。至リテ↢其然シテ後作ル↠仏ニ時ニ↡、各ノ自ラ得タリ↠之ヲ。
^◆このゆゑに光明うたた同等ならざらしむ。 諸仏の威神同等なるならくのみと。 *自在の意の所欲、 作為してあらかじめ計らず。 阿弥陀仏の光明の照らすところ最大なり。 諸仏の光明みな及ぶことあたはざるところなりº と。
是ノ故ニ令ム↣光明転タ不ラ↢同等ナラ↡。諸仏ノ威神同等ナル耳ト。自在ノ意ノ所欲、作為シテ不↢予メ計ラ↡。阿弥陀仏ノ光明ノ所↠照ス最大ナリ。諸仏ノ光明皆所↠不ル↠能ハ↠及ブコト也ト。
^◆仏、 阿弥陀仏の光明の極善なることを*称誉したまふ。 ª阿弥陀仏の光明は極善にして、 善のなかの明好なり。 それ快きこと比びなし、 *絶殊無極なり。 阿弥陀仏の光明は清潔にして*瑕0341穢なく欠減なきなり。 阿弥陀仏の光明は殊好なること、 日月の明よりも勝れたること百千億万倍なり。 諸仏の光明のなかの極明なり、 光明のなかの極好なり、 光明のなかの極雄傑なり、 光明のなかの快善なり、 ▽諸仏のなかの王なり、 光明のなかの極尊なり、 光明のなかの最明無極なり。
仏称↢誉ホムシタマフ阿弥陀仏ノ光明ノ極善ナルコトヲ↡。阿弥陀仏ノ光明ハ極善ニシテ、善ノ中ノ明好ナリ。其快キコト无シ↠比、絶タエ殊无スグル 極也。阿弥0158陀仏ノ光明ハ清潔ニシテアザヤカナリ イサギヨシ无シ↢瑕キズ 穢↡ケガラハシ无キ↢欠カクル咸↡オトル也。阿弥陀仏ノ光明ハ殊好ナルコト、勝レタルコト↠於リモ↢日月之明↡百千億万倍マスナリ。諸仏ノ光明ノ中之極明也、光明ノ中之極好也、光明ノ中之極雄スグレ傑也スグル 、光明ノ中之快善也、諸仏ノ中之王也、光明ノ中之極尊也、光明ノ中之最明无極也。
^◆もろもろの無数天下の*幽冥の処を炎照するに、 みなつねに大明なり。 諸有の人民、 *蜎飛*蠕動の類、 阿弥陀仏の光明を見ざることなきなり。 見たてまつるもの、 慈心歓喜せざるものなけん。
炎↢ホノオ カヾヤキ照スルニ諸ノ无数天下ノ幽カソカニ冥之クラシ 処ヲ↡、皆常ニ大明ナリ。諸有ノ人民、蜎ムクメキ飛 蠕ムクメク動之類、莫キ↠不ルコト↠見↢阿弥陀仏ノ光明ヲ↡也。見タテマツル者莫ケム↧不ル↢慈心歓喜セ↡者↥。
^◆世間諸有の*婬泆・*瞋怒・愚痴のもの、 阿弥陀仏の光明を見たてまつりて、 善をなさざるはなきなり。 もろもろの*泥梨・*狩・*辟茘、 *考掠勤苦の処にありて、 阿弥陀仏の光明を見たてまつれば、 至りてみな休止して、 また治することを得ざれども、 死して後、 憂苦を解脱することを得ざるものはなきなり。
世間諸有ノ婬泆・ヨクナリ瞋怒・イカル愚 痴ノオロカナリ者、見タテマツリテ↢阿弥陀仏ノ光明ヲ↡、莫キ↠不ルハ↠作サ↠善ヲ也。諸ノ在リテ↢泥ガクヰ梨ナリ・狩・トリケダモノナリ チウシヤウナリ辟茘、考掠勤ツトム苦之処ニ↡、見タテマツレバ↢阿弥陀仏ノ光明ヲ↡、至リテ皆休ヤミ止シテヤンデ 不レドモ↠得↢復治スルコトヲ↡、死シテ後莫キ↧不ル↠得↣解↢脱スルコトヲマヌカル ヌグトモ憂苦ヲ↡者ハ↥也。
^◆阿弥陀仏の光明と名とは、 八方上下無窮無極無央数の諸仏の国に聞かしめたまふ。 諸天・人民、 聞知せざることなし。 聞知せんもの、 *度脱せざるはなきなりº と。
阿弥陀仏ノ光明ト名トハ、聞カシメタマフ↢八方上下无窮キワメ无極无央数ノ諸仏ノ国ニ↡。諸天・人民莫シ↠不ルハ↢聞知セ↡。聞知セム者、莫キ↠不ルハ↢度脱ヌグセ↡也ト。
^◆仏ののたまはく、 ª独りわれ、 阿弥陀仏の光明を称誉するのみにあらざるなり。 八方上下無央数の仏・*辟支仏・菩薩・阿羅漢、 称誉するところみなかくのごとしº と。
仏ノ言ハク、不ル↣独リ我称ホメ↢誉ホムセ阿弥陀仏ノ光明ヲ↡也。八方上下无央数ノ仏・辟ヒガム支仏・菩薩・阿羅漢、所↢称誉スル↡皆如シト↠是クノ。
^◆仏ののたまはく、 ªそれ人民、 善男子・善女人ありて阿0342弥陀仏の声を聞きて、 光明を称誉して、 朝暮につねにその*光好を称誉して、 心を至して断絶せざれば、 心の所願にありて、 阿弥陀仏国に往生すº」 と。 以上
仏ノ言ハク、其有リテ↢人民、善男子・善女人↡聞キテ↢阿弥陀仏ノ声ヲ↡、称↢誉シテ光明ヲ↡、朝暮ニ常ニ称↢誉シテ其ノ光好ヲ↡、至シテ↠心ヲ不レバ↢断絶セ↡、在リテ↢心ノ所願ニ↡、往↢生スト阿弥陀仏国ニ↡。」已上
一 Ⅱ ⅰ b 末経
イ ¬不空羂索神変真言行¼(報土の義を顕す)
【8】 ^▼¬*不空羂索神変真言経¼ にのたまはく、
¬*不空羂索神変真言経ニ¼言ク、
^「なんぢ*当生の処は、 これ阿弥陀仏の清浄報土なり。 蓮華より化生して、 つねに諸仏を見たてまつる。 もろもろの*法忍を証せん。 寿命無量百千劫数ならん。 ただちに阿耨多羅三藐三菩提に至る、 また退転せず。 われつねに*祐護す」 と。 以上
「汝当生ノ処ハ、是阿弥陀仏ノ清浄報土ナリ。蓮0159華ヨリ化生シテ、常ニ見タテマツル↢諸仏ヲ↡。証セム↢諸ノ法忍ヲ↡。寿命无量百千劫数ナラム。直ニ至ル↢阿耨多羅三藐三菩提ニ↡、不↢復退転セ↡。我常ニ祐タスケ護ストタスク 。」 已上
一 Ⅱ ⅰ b ロ ¬涅槃経¼(真報土は即ち涅槃界なることを顕し往生する者は悉く性を見ることを示す)
(一)「四相品」
【9】 ^▼¬*涅槃経¼ (*四相品) にのたまはく、
¬*涅槃経ニ¼言ク、
^「ªまた解脱は名づけて*虚無といふ。 虚無はすなはちこれ解脱なり、 解脱はすなはちこれ如来なり、 如来はすなはちこれ虚無なり、 *非作の所作なり。 乃至
「又解サトリ脱者サトル 名ケテ曰フ↢虚无ト↡。虚无ハ即チ是解脱ナリ、解脱ハ即チ是如来ナリ、如来ハ即チ是虚无ナリ。非作ノ所作ナリ。 乃至
^真解脱は不生不滅なり、 このゆゑに解脱はすなはちこれ如来なり。 如来またしかなり。 不生不滅、 不老不死、 不破不壊にして*有為の法にあらず。 この義をもつてのゆゑに、 名づけて如来入大涅槃といふ。 乃至
真解脱者不生不滅ナリ、是ノ故ニ解脱ハ即チ是如来ナリ。如来亦爾ナリ。不生不滅、不老不*死、不破ヤブレ不壊ヤブルニシテ、非ズ↢有為ノ法ニ↡。以テノ↢是ノ義ヲ↡故ニ名ケテ曰フ↢如来入大涅槃ト↡。 乃至
^▼また解脱は*無上上と名づく。 乃至 ▼無上上はすなはち真解脱なり、 真解脱はすなはちこれ如来なり。 乃至
又解脱者名ク↢无上上ト↡。 乃至 无上上者即チ真解脱ナリ、真解脱者即チ是如来ナリ。 乃至
^もし阿耨多羅三藐三菩提を成ずることを得をはりて、 *無愛無疑なり。 無愛無疑はすなはち真解脱なり、 真解脱はすなはちこれ如来なり。 乃至
若シ得↠成ルコトヲ↢於阿耨多羅三藐三菩提ヲ↡已リテ、无愛ヨミス无疑ナリ。无愛无疑ハ即チ真解脱ナリ、真解脱者即チ是如来ナリ。 乃至
^▼如来はすなはちこれ涅槃なり、 涅槃はすなはちこれ0343無尽なり、 無尽はすなはちこれ仏性なり、 仏性はすなはちこれ*決定なり、 決定はすなはちこれ阿耨多羅三藐三菩提なりº と。
如来者即チ是涅槃ナリ、涅槃者即チ是无尽ナリ、无尽ツクル者即チ是仏性ナリ、仏性者即チ是決定ナリ、決定者即チ是阿耨多羅三藐三菩提ナリト。
^*迦葉菩薩、 仏にまうしてまうさく、 ª世尊、 もし涅槃と仏性と決定と如来と、 これ*一義名ならば、 いかんぞ説きて三帰依ありとのたまへるやº と。
迦葉菩薩白シテ↠仏ニ言サク、世尊、若シ涅槃ト仏性ト決定ト如来ト、是一義名ナラバ、云何ゾ説キテ言ヘルヤト↠有リト↢三帰依↡。
^仏、 迦葉に告げたまはく、 ª善男子、 一切衆生、 生死を*怖畏するがゆゑに三帰を求む。 三帰をもつてのゆゑに、 すなはち仏性と決定と涅槃とを知るなり。 善男子、 法の▼↓*名一義異なるあり、 法の▼↓*名義倶異なるあり。
仏告ゲタマハク↢*迦葉ニ↡、善男子、一切衆生怖オソレ↢畏オソルスルガ生死ヲ↡故ニ求ム↢三帰ヲ↡。以テノ↢三帰ヲ↡故ニ則チ知ルナリト↢仏性ト決定ト涅槃トヲ↡。善男子、有リ↢法ノ名一義異ナル↡、有リ↢法ノ名義倶異ナル↡。
^↑名一義異とは、 *仏の常、 *法の常、 *比丘僧の常なり。 涅槃・虚空みなまたこれ常なり。 これを名一義異と名づく。
名一義異ト者、仏ト常法ト常比丘僧トハ常ナリ。涅槃・虚空皆亦是常ナリ。是ヲ名ク↢名一義異ト↡。
^↑名義倶異とは、 仏を名づけて*覚とす、 法を*不覚と名づく、 僧を和合と名づく、 涅槃を解脱と名づく、 虚空を*非善と名づく、 また無礙と名づく。 これを名義倶異とす。 善男子、 三帰依とはまたまたかくのごとしº」 と。 略出
名義倶異ト者、仏ヲ名0160ケテ為↠覚ト、法ヲ名ク↢不覚ト↡、僧ヲ名ク↢和合ト↡、涅槃ヲ名ク↢解脱ト↡、虚空ヲ名ク↢非善ト↡、亦名ク↢无ト↡。是ヲ為↢名義倶異ト↡。善男子、三帰依ト者亦復如シト↠是クノ。」 *略出
一 Ⅱ ⅰ b ロ (二)「四依品」
【10】^またのたまはく (涅槃経・*四依品)、
又言ハク、
^「光明は*不羸劣に名づく。 不羸劣とは名づけて如来といふ。 また光明は名づけて智慧とす」 と。 以上
「光明者名ク↢不 羸オトロヘ劣ニ↡オトロフ。不羸劣ト者名ケテ曰フ↢如来ト↡。又光明者名ケテ為ト↢智慧ト↡。」 已上
一 Ⅱ ⅰ b ロ (三)「聖行品」
【11】^またのたまはく (涅槃経・*聖行品)、
又言ハク、
^「▼善男子、 一切有為はみなこれ無常なり。 虚空は無為なり、 このゆゑに常とす。 仏性は無為なり、 このゆゑに常とす。 虚空0344はすなはちこれ仏性なり、 仏性はすなはちこれ如来なり、 如来はすなはちこれ無為なり、 無為はすなはちこれ常なり、 常はすなはちこれ法なり、 法はすなはちこれ僧なり、 僧はすなはち無為なり、 無為はすなはちこれ常なり」 と。 乃至
「善男子、一切有為ハ皆是无常ナリ。虚空ハ无為ナリ、是ノ故ニ為↠常ト。仏性ハ无為ナリ、是ノ故ニ為↠常ト。虚空者即チ是仏性ナリ、仏性者即チ是如来ナリ、如来者即チ是无為ナリ、无為者即チ是常ナリ、常者即チ是法ナリ、法者即チ是僧ナリ、僧ハ即チ无為ナリ、无為者即チ是常ナリト。 乃至
^「▼善男子、 ▼たとへば牛より*乳を出す、 乳より酪を出す、 酪より生蘇を出す、 生蘇より熟蘇を出す、 熟蘇より醍醐を出す。 醍醐最上なり。 もし服することあるものは、 衆病みな除こる。 所有のもろもろの薬、 ことごとくそのなかに入るがごとし。
善男子、譬ヘバ如シ↧従リ↠牛出ス↠乳ヲ、従リ↠乳出ス↠酪ヲ、従リ↠酪出ス↢生蘇ヲ↡ヨミガヘル、従リ↢生蘇↡出ス↢熟蘇ヲ↡、従リ↢熟蘇↡出ス↢醍醐ヲ↡、醍醐最上ナリ、若シ有ル↠服スルコト者ハ、衆病皆除コル、所有アラユルノ諸ノ薬、悉ク入ルガ↦其ノ中ニ↥。
^◆善男子、 ▼仏もまたかくのごとし。 仏より十二部経を出す、 十二部経より修多羅を出す、 修多羅より方等経を出す、 方等経より般若波羅蜜を出す、 般若波羅蜜より大涅槃を出す。 なほし醍醐のごとし。 醍醐といふは▼仏性に喩ふ、 仏性はすなはちこれ如来なり。 善男子、 かくのごときの義のゆゑに、 説きて ª如来所有の功徳、 無量無辺*不可称計º とのたまへり」 と。 抄出
善男子、仏モ亦如シ↠是クノ。従リ↠仏出ス↢十二部経ヲ↡、従リ↢十二部経↡出ス↢修多羅ヲ↡、従リ↢修多羅↡出ス↢方等経ヲ↡、従リ↢方等経↡出ス↢般若波羅蜜ヲ↡、従リ↢般若波羅蜜↡出ス↢大涅槃ヲ↡。猶シ如シ↢醍醐ノ↡。言フ↢醍醐ト↡者喩フ↢於仏性ニ↡、仏性者即チ是如来ナリ。善男子、如キノ↠是クノ義ノ故ニ説キテ言ヘリト↢如来所有ノ功徳、无量无辺不可称計ト↡。」 抄出
一 Ⅱ ⅰ b ロ (四)「梵行品」
【12】^またのたまはく (涅槃経・*梵行品)、
又言ク、
^「▼善男子、 道に二種あり。 一つには常、 二つには無常なり。 菩提の相にまた二種あり。 一つには常、 二つには無常なり。 涅槃もまたしかなり。 外道の道を名づけて無常とす、 内道の道はこれを名づけて常とす。 声聞・縁覚所有の菩提を名づけて無常とす、 菩薩・諸仏の所0345有の菩提、 これを名づけて常とす。 外の解脱は名づけて無常とす、 内の解脱はこれを名づけて常とすと。
「善男子、道ニ有リ↢二種↡。一ニ者常、二ニ者无常ナリ。菩薩之相ニ亦有0161リ↢二種↡。一ニ者常、二ニ者无常ナリ。涅槃モ亦爾ナリ。外道ノ道ヲ名ケテ為↢无常ト↡、内道ノ道者名ケテ↠之ヲ為↠常ト。声聞・縁覚所有ノ菩提ヲ名ケテ為↢无常ト↡、菩薩・諸仏ノ所有ノ菩提、名ケテ↠之ヲ為↠常ト。外ノ解脱者名ケテ為↢无常ト↡、内ノ解脱者名ケテ↠之ヲ為ト↠常ト。
^◆善男子、 道と菩提および涅槃と、 ことごとく名づけて常とす。 一切衆生は、 つねに無量の煩悩のために覆はれて慧眼なきがゆゑに、 見ることを得ることあたはず。 しかしてもろもろの衆生、 見んと欲ふがために*戒・定・慧を修す。 修行をもつてのゆゑに、 道と菩提とおよび涅槃とを見る。 これを*菩薩の得道菩提涅槃と名づく。 道の*性相、 実に不生滅なり。 この義をもつてのゆゑに捉持すべからず。 乃至
善男子、道ト与↢菩提及以涅槃↡、悉ク名ケテ為↠常ト。一切衆生ハ、常ニ為ニ↢无量ノ煩悩ノ↡所テ↠覆ハ无キガ↢慧眼↡故ニ不↠能ハ↠得ルコト↠見ルコトヲ。而、諸ノ衆生、為ニ↠欲フガ↠見ムト↠修ヲ↢戒・定・慧ヲ↡、以テノ↢修行ヲ↡故ニ見ル↢道ト菩提ト及以涅槃トヲ↡。是ヲ名ク↢菩薩ノ得道菩提涅槃ト↡。道之性相、実ニ不生滅ナリ。以テノ↢是ノ義ヲ↡故ニ不↠可カラ↢投トル持ス↡。 乃至
^◆*道は色像なしといへども見つべし、 *称量して知んぬべし、 しかるに実に*用ありと。 乃至 衆生の心のごときは、 これ色にあらず、 長にあらず短にあらず、 粗にあらず細にあらず、 縛にあらず解にあらず、 見にあらずといへども、 法としてまたこれ有なり」 と。 抄出
道者雖モ↠无シト↢色*像↡可シ↠見ツ、称量シテ可シ↠知ヌ、而ルニ実ニ有リト↠用。 乃至 如キハ↢衆生ノ心ノ↡、雖モ↧非ズ↢是色ニ↡、非ズ↠長ニ非ズ↠短ニ、非ズ↠麁ニアラシ非ズ↠細ニ、コマカナリ非ズ↠縛ニシバル非ズ↠解ニ、非ズト↞見ニ、法而トシテ亦是有ナリト。」 抄出
一 Ⅱ ⅰ b ロ (五)「徳王品」三文
【13】^またのたまはく (涅槃経・*徳王品)、
又言ク、
^「善男子、 ▼*大楽あるがゆゑに大涅槃と名づく。 涅槃は*無楽なり。 *四楽をもつてのゆゑに大涅槃と名づく。 なんらをか四つとする。
「善男子、有ルガ↢大楽↡故ニ名ク↢大涅槃ト↡。涅槃ハ无楽ナリ。以テノ↢四楽ヲ↡故ニ名ク↢大涅槃ト↡。何等ヲカ為ル↠四ト。
・断受楽
^一つには*諸楽を断ずるがゆゑに。 楽を断ぜざるは、 すなはち名づけて苦とす。 もし苦あらば大楽と名づけず。 楽を断ずるをもつてのゆゑに、 すなはち苦あることなけん。 無苦無楽をいまし大楽と名づく。 涅槃の性は無苦無0346楽なり。 このゆゑに涅槃を名づけて大楽とす。 この義をもつてのゆゑに、 大涅槃と名づく。
一ニ者断ズルガ↢諸楽ヲ↡故ニ。不ル↠断ゼ↠楽ヲ者則チ名ケテ為↠苦ト。若シ有ラ↠苦者不↠名ケ↢大楽ト↡。以テノ↠断ズルヲ↠楽ヲ故ニ則チ无ケム↠有ルコト↠苦。无苦无楽ヲ乃シ名ク↢大楽ト↡。涅槃之性ハ无苦无楽ナリ。是ノ故ニ涅槃ヲ名ケテ為↢大楽ト↡。以テノ↢是ノ義ヲ↡故ニ名ク↢大涅槃ト↡。
^また次に善男子、 楽に二種あり、 一つには凡夫、 二つには諸仏なり。 凡夫の楽は無常*敗壊なり、 このゆゑに無楽なり。 諸仏は常楽なり、 *変易あることなきがゆゑに大楽と名づく。
復次ニ善男子、楽ニ有リ↢二種↡、一ニ者凡夫、二ニ者諸仏ナリ。凡夫*之楽ハ无常敗ヤブレ壊ナリヤブル 、是ノ故ニ无楽ナリ。諸仏ハ常楽ナリ、无キガ↠有ルコト↢変易↡故ニ名ク↢大楽ト↡。
^また次に善男子、 三種の*受あり。 一つには苦受、 二つには楽受、 三つには不苦不楽受なり。 不苦不楽これまた苦とす。 涅槃も不苦不楽に同じといへども、 しかるに大楽と名づく。 大楽をもつてのゆゑに大涅槃と名づく。
復次ニ善男子、有リ↢三種ノ受↡。一ニ者苦受、二ニ者0162楽受、三ニ者不苦不楽受ナリウクル 。不苦不楽是亦為↠苦ト。涅槃モ雖モ↠同ジト↢不苦不楽ニ↡、然ルニ名ク↢大楽ト↡。以テノ↢大楽ヲ↡故ニ名ク↢大涅槃ト↡。
・寂静楽
^二つには*大寂静のゆゑに名づけて大楽とす。 涅槃の性これ大寂静なり。 なにをもつてのゆゑに、 一切*憒鬧の法を遠離せるゆゑに。 大寂をもつてのゆゑに大涅槃と名づく。
二ニ者大寂静ノ故ニ名ケテ為↢大楽ト↡。涅槃之性是大寂静ナリ。何ヲ以テノ故ニ。遠↢離セル一切憒イツワル ワロキコトナリ 鬧イツノワル法ヲ↡故ニ。以テノ↢大寂ヲ↡故ニ名ク↢大涅槃ト↡。
・覚知楽
^三つには*一切智のゆゑに名づけて大楽とす。 一切智にあらざるをば大楽と名づけず。 諸仏如来は、 一切智のゆゑに名づけて大楽とす。 大楽をもつてのゆゑに大涅槃と名づく。
三ニ者一切智ノ故ニ名ケテ為↢大楽ト↡。非ザルヲバ↢一切智ニ↡不↠名ケ↢大楽ト↡。諸仏如来ハ、一切智ノ故ニ名ケテ為↢大楽ト↡。以テノ↢大楽ヲ↡故ニ名ク↢大涅槃ト↡。
・不壊楽
^四つには身不壊のゆゑに名づけて大楽とす。 身もし壊すべきは、 すなはち楽と名づけず。 如来の身は金剛にして壊なし。 煩悩の身、 無常の身にあらざるがゆゑに大楽と名づく。 大楽をもつてのゆゑに大涅槃と名づく」 と。 以上
四ニ者身不壊ノ故ニ名ケテ為↢大楽ト↡。身若シ可キハ↠壊ス則チ不↠名ケ↠楽ト。如来之身ハ金剛ニシテ无シ↠壊。非ズ↢煩悩ノ身、无常之身ニ↡故ニ名ク↢大楽ト↡。以テノ↢大楽ヲ↡故ニ名クト↢大涅槃ト↡。」 已上
【14】^またのたまはく (涅槃経・徳王品)、
又言ク、
^「不可称量不可思議なるがゆゑに、 名0347づけて大般涅槃とすることを得。 ▼純浄をもつてのゆゑに大涅槃と名づく。 いかんが純浄なる。 浄に四種あり。 なんらをか四つとする。
「不可称量不可思議ナルガ故ニ得↣名ケテ為ルコトヲ↢大般涅槃ト↡。以テノ↢純モハラ浄ヲ↡故ニ名ク↢大涅槃ト↡。云何ガ純浄ナル。浄ニ有リ↢四種↡。何等ヲカ為ル↠四ト。
^一つには二十五有を名づけて不浄とす。 よく永く断ずるがゆゑに、 名づけて浄とすることを得。 浄はすなはち涅槃なり。 *かくのごときの涅槃、 また有にしてこれ涅槃と名づくることを得。 実にこれ有にあらず。 諸仏如来、 世俗に随ふがゆゑに涅槃有なりと説きたまへり。
一ニ者二十五有ヲ名ケテ為↢不浄ト↡。能ク永ク断ズルガ故ニ得↢名ケテ為ルコトヲ↟浄ト。浄ハ即チ涅槃ナリ。如キノ↠是クノ涅槃、亦得↠名クルコトヲ↢有ニ而是涅槃ト↡。実ニ非ズ↢是有ニ↡。諸仏如来、随フガ↢世俗ニ↡故ニ説キタマヘリ↢涅槃有ナリト↡。
^たとへば世人の、 父にあらざるを父といひ、 母にあらざるを母といふ、 実に父母にあらずして父母といふがごとし。 涅槃もまたしかなり。 世俗に随ふがゆゑに、 *説きて諸仏有にして大涅槃なりとのたまへり。
譬ヘバ如シ↧世人ノ非ルヲ↠父ニ言ヒ↠父ト、非ザルヲ↠母ニ言フ↠母ト、実ニ非ズ↢父母ニ↡而言フガ↦父母ト↥。涅槃モ亦爾ナリ。随フガ↢世俗ニ↡故ニ説キテ言ヘリ↢諸仏有ニシテ大涅槃ナリト↡。
^二つには*業清浄のゆゑに。 一切凡夫の業は、 不清浄のゆゑに涅槃なし。 諸仏如来は業清浄のゆゑに、 ゆゑに大浄と名づく。 大浄をもつてのゆゑに大涅槃と名づく。
二ニ者業清浄ノ故ニ。一切凡夫ノ業ハ、不清浄ノ故ニ无シ↢涅槃↡。諸仏如来ハ業清浄ノ故ニ、故ニ名ク↢大浄ト↡。以テノ↢大浄ヲ↡故ニ名ク↢大涅槃ト↡。
^三つには身清浄のゆゑに。 身もし無常なるをすなはち不浄と名づく。 如来の身は常なるがゆゑに大浄と名づく。 大浄をもつてのゆゑに大涅槃と名づく。
三ニ者身清浄ノ故ニ。身若シ无常0163ナルヲ則チ名ク↢不浄ト↡。如来ノ身ハ常ナルガ故ニ名ク↢大浄ト↡。以テノ↢大浄ヲ↡故ニ名ク↢大涅槃ト↡。
^四つには心清浄のゆゑに。 心もし有漏なるを名づけて不浄といふ。 仏心は無漏なるがゆゑに大浄と名づく。 大浄をもつてのゆゑに大涅槃と名づく。 善男子、 *これを善男子・善女人と名づく」 と。 抄出
四ニ者心清浄ノ故ニ。心若シ有漏ナルヲモラス 名ケテ曰フ↢不浄ト↡。仏心ハ无漏ナルガ故ニ名ク↢大浄ト↡。以テノ↢大浄ヲ↡故ニ名ク↢大涅槃ト↡。善男子、是ヲ名クト↢善男子・善女人ト↡。」 抄出
【034815】^またのたまはく (涅槃経・徳王品)、
又言ク、
^「善男子、 諸仏如来は煩悩起らず、 これを涅槃と名づく。 所有の智慧、 法において無礙なり、 これを如来とす。 如来はこれ凡夫・声聞・縁覚・菩薩にあらず、 これを仏性と名づく。 如来は身心智慧、 無量無辺阿僧祇の土に遍満したまふに、 障礙するところなし、 これを虚空と名づく。 如来は常住にして変易あることなければ、 名づけて実相といふ。 この義をもつてのゆゑに、 如来は実に*畢竟涅槃にあらざる、 *これを菩薩と名づく」 と。 以上
「善男子、諸仏如来ハ煩悩不↠起ラ、是ヲ名ク↢涅槃ト↡。所有ノ智慧於テ↠法ニ无ナリ、是ヲ為↢如来ト↡。如来ハ非ズ↢是凡夫・声聞・縁覚・菩薩ニ↡、是ヲ名ク↢仏性ト↡。如来ハ身心智慧、徧↢満シタマフニ无量无辺阿僧祇ノマコト土ニ↡、无シ↠所↢障スル↡、是ヲ名ク↢虚空ト↡。如来ハ常住ニシテ无ケレバ↠有ルコト↢変易↡、名ケテ曰フ↢実相ト↡。以テノ↢是ノ義ヲ↡故ニ如来ハ実ニ不ザル↢畢竟涅槃ニ↡、是ヲ名クト↢菩薩ト↡。」 已上
一 Ⅱ ⅰ b ロ (六)「迦葉品」二文
【16】^またのたまはく (涅槃経・*迦葉品)、
又言ク、
^「迦葉菩薩まうさく、 ª世尊、 仏性は常なり、 なほ虚空のごとし、 なんがゆゑぞ如来説きて未来とのたまふやと。 如来、 もし一闡提の輩、 善法なしとのたまはば、 一闡提の輩それ同学・同師・父母・親族・妻子において、 あにまさに*愛念の心を生ぜざるべきや。 もしそれ生ぜば、 これ善にあらずやº と。
「迦葉菩薩言ハク、世尊、仏性者常ナリ、猶如シ↢虚空ノ↡、何ガ故ゾ如来説キテ言フヤト↢未来ト↡。如来若シ言ハ↣一闡提ノ輩无シト↢善法↡者、一闡提ノ輩、於テ↢其同学・同師・父母・親族・ヤカラ妻メ 子ニ↡、豈当ニキ↠不ル↠生ゼ↢愛念ノ心ヲ↡邪。如其生ゼ者、非ズ↢是善ニ↡乎ト。
^仏ののたまはく、 ª善いかな善いかな、 善男子、 快くこの問を発せり。 仏性はなほ虚空のごとし、 過去にあらず、 未来にあらず、 現在にあらず。 一切衆生に三種の身あり、 いはゆる過去・未来・現在なり。 ▽衆生、 未来に荘厳清浄の身を具足して、 仏性を見ることを得ん。 こ0349のゆゑにわれ仏性未来といへり。
仏ノ言ク、善イ哉善イ哉、善男子、快ク発セリ↢斯ノ問ヲ↡。仏性者猶如シ↢虚空ノ↡、非ズ↢過去ニ↡、非ズ↢未来ニ↡、非ズ↢現在ニ↡。一切衆生ニ有リ↢三種ノ身↡、所ル↠謂ハ過去・未来・現在ナリ。衆生、未来ニ具↢足シ荘厳清浄之身ヲ↡而得ム↠見ルコトヲ↢仏性ヲ↡。是ノ故ニ我言ヘリト↢仏性未来ト↡。
^善男子、 あるいは衆生のために、 ある時は因を説きて果とす、 ある時は果を説きて因とす。 このゆゑに経のなかに*命を説きて食とす、 *色を見て触と名づく。 未来の身浄なるがゆゑに仏性と説くº と。
善男子、或イハ為ニ↢衆生ノ↡、或0164時ハ説キテ↠因ヲ為↠果ト、或時ハ説キテ↠果ヲ為↠因ト。是ノ故ニ経ノ中ニ説キテ↠命ヲ為↠食ト、見テ↠色ヲ名ク↠触トフルヽ。未来ノ身浄ナルガ故ニ説クト↢仏性ト↡。
^ª世尊、 仏の所説の義のごとし。 かくのごときのもの、 なんがゆゑぞ説きて一切衆生悉有仏性とのたまへるやº と。
世尊、如シ↢仏ノ所説ノ義ノ↡。如キノ↠是クノ者、何ガ故ゾ説キテ言ヘルヤト↢一切衆生悉有仏性ト↡。
^ª善男子、 衆生の仏性は現在に無なりといへども、 無といふべからず。 虚空のごとし。 性は無なりといへども、 現在に無といふことを得ず。 一切衆生また無常なりといへども、 しかもこれ仏性は常住にして変なし。
善男子、衆生ノ仏性ハ雖モ↢現在ニ无ナリト↡、不↠可カラ↠言フ↠无ト。如シ↢虚空ノ↡。性ハ雖モ↠无ナリト、現在ニ不↠得↠言フコトヲ↠无ト。一切衆生雖モ↢復无常ナリト↡、而モ是仏性ハ常住ニシテ无シ↠変。
^このゆゑにわれこの経のなかにおいて、 «*衆生の仏性は非内非外にして、 なほ虚空のごとし» と説く。 非内非外にして、 それ虚空のごとくして有なり。 内外は虚空なれども、 名づけて一とし、 常とせず。 また一切処有といふことを得ず。 虚空はまた非内非外なりといへども、 しかれどももろもろの衆生ことごとくみなこれあり。 衆生の仏性もまたまたかくのごとし。
是ノ故ニ我於テ↢此ノ経ノ中ニ↡、説キタマフ↣衆生ノ仏性ハ非内非外ニシテ、猶如シト↢虚空ノ↡。非内非外ニシテ、如クシテ↢其虚空ノ↡有ナリ。内外者虚空ナレドモ、不↢名ケテ為↠一ト為↟常ト。亦不↠得↠言フコトヲ↢一切処有ト↡。虚空ハ雖モ↢復非内非外ナリト↡、而レドモ諸ノ衆生悉ク皆有リ↠之。衆生ノ仏性モ亦復如シ↠是クノ。
^なんぢいふところの一闡提の輩のごとし、 もし身業・口業・意業・取業・求業・施業・解業、 かくのごときらの業あれども、 ことごとくこれ邪業なり。 なにをもつてのゆゑに、 因果を求めざるがゆゑなり。 善男子、 *訶梨勒の果0350、 根・茎・枝・葉・華・実、 ことごとく苦きがごとし。 一闡提の業もまたまたかくのごとしº」 と。 以上
如シ↢汝所ノ↠言フ一闡提ノ輩ノ↡、若シ有レドモ↢身業・口業・意業・取業・求業・後業・解業、如キ↠是クノ等ノ業↡、悉ク是邪業ナリ。何ヲ以テノ故ニ。不ルガ↠求メ↢因果ヲ↡故ナリト。善男子、如シ↢訶梨勒ノ果、根・茎・枝・葉・華・実悉ク苦キガ↡。一闡提ノ業モ亦復如シト↠是クノ。」 已上
【17】^またのたまはく (涅槃経・迦葉品)、
又言ハク、
^「ª善男子、 如来は*知諸根力を具足したまへり。 このゆゑによく衆生の上・中・下の根を解り分別して、 よくこの人を知ろしめして下を転じて中となす、 よくこの人を知ろしめして中を転じて上となす、 よくこの人を知ろしめして上を転じて中となす、 よくこの人を知ろしめして中を転じて下となす。
「善男子、如来ハ具↢足シタマヘリ知諸根力ヲ↡。是ノ故ニ善ク解リ↢分↣別シテ衆生ノ上・中・下ノ根ヲ↡、能ク知シテ↢是ノ人ヲ↡転ジテ↠下ヲ作ス↠中ト、能ク知シテ↢是ノ人ヲ↡転ジテ↠中ヲ作ス↠上ト、能ク知シテ↢是ノ人ヲ↡転ジテ↠上ヲ作ス↠中ト、能ク知シテ↢是ノ人ヲ↡転ジテ↠中ヲ作ス↠下ト。
^このゆゑにまさに知るべし、 衆生の*根性に決定あることなし。 定なきをもつてのゆゑに、 あるいは善根を断ず、 断じをはりて還りて生ず。 もしもろもろの衆生の根性定ならば、 つひに先に断じて、 断じをはりてまた生ぜざらん。 また一闡提の輩、 地獄に堕して寿命一劫なりと説くべからず。 善男子、 このゆゑに如来、 一切の法は*定相あることなしと説きたまへりº と。
是ノ故ニ当ニシ↠知ル衆生ノ根性ニ无シ↠有ルコト↢決定↡。以テノ↠无キヲ↠定故ニ或イハ断ズ↢善根ヲ↡、断ジ已リテ還リテ生ズ。若シ諸ノ衆生ノ根性定ナラ者、終ニ不ラム↢先ニ断ジテ断ジ已リテ復0165生ゼ↡。亦不ト↠応カラ↠説ク↧一闡提ノ輩、*堕シテ↢於地獄ニ↡寿命一劫ナリト↥。善男子、是ノ故ニ如来説キタマヘリト↢一切ノ法ハ无シト↟有ルコト↢定相↡。
^▼迦葉菩薩、 仏にまうしてまうさく、 ª世尊、 如来は知諸根力を具足して、 さだめて*善星まさに善根を断ずべしと知ろしめさん。 なんの因縁をもつてその出家を聴したまふº と。
迦葉菩薩白シテ↠仏ニ言ク、世尊、如来ハ具↢足シテ知諸根力ヲ↡、定メテ知サム↢善星当ニシト↠断ズ↢善根ヲ↡。以テ↢何ノ因縁ヲ↡聴シタマフト↢其ノ出家ヲ↡。
^◆仏ののたまはく、 ª善男子、 われ往昔の初において出家の時、 わが弟*難陀、 従弟*阿難・*提婆達多、 子*羅睺羅、 かくのご0351ときらの輩、 みなことごとくわれに随ひて家を出で道を修しき。 われもし善星が出家を聴さずは、 その人次にまさに王位を紹ぐことを得べし。 その力自在にして、 まさに仏法を壊すべし。 この因縁をもつて、 われすなはちその出家修道を聴す。
仏ノ言ハク、善男子、我於テ↢往昔ムカシノ初ニ↡出家ノ時、吾ガ弟難陀、従フ↢弟阿難・提婆達多、子羅睺羅ニ↡、如キ↠是クノ等ノ輩、皆悉ク随ヒテ↠我ニ出テ↠家ヲ修シキ↠道ヲ。我若シ不ハ↠聴サ↢善星ガ出家ヲ↡、其ノ人次ニ当ニシ↠得↠紹グコトヲ↢王位ヲ↡。其ノ力自在ニシテ、当ニシ↠壊ス↢仏法ヲ↡。以テ↢是ノ因縁ヲ↡、我便チ聴ス↢其ノ出テ↠家ヲ修スルコトヲ↠道ヲ↡。
^◆善男子、 善星比丘もし出家せずは、 また善根を断ぜん。 無量世においてすべて利益なけん。 いま出家しをはりて善根を断ずといへども、 よく戒を受持して*耆旧・長宿・有徳の人を供養し*恭敬せん、 初禅乃至四禅を修習せん。 これを善因と名づく。 かくのごときの善因、 よく善法を生む。 善法すでに生ぜば、 よく道を修習せん。 すでに道を修習せば、 まさに阿耨多羅三藐三菩提を得べし。 このゆゑにわれ善星が出家を聴せり。
善男子、善星比丘若シ不ハ↢出家セ↡、亦断ゼム↢善根ヲ↡。於テ↢无量世ニ↡都テ无ケム↢利益↡。今出家シ已リテ雖モ↠断ズト↢善根ヲ↡、能ク受↢持シテ戒ヲ↡供↢養シ恭↣敬セム耆旧・長宿・有徳之人ヲ↡、修↢習セム初禅乃至四禅ヲ↡。是ヲ名ク↢善因ト↡。如キノ↠是クノ善因、能ク生ム↢善法ヲ↡。善法既ニ生ゼバ、能ク修↢習セム道ヲ↡。既ニ修↢習セバ道ヲ↡、当ニシ↠得↢阿耨多羅三藐三菩提ヲ↡。是ノ故ニ我聴ス↢善星ガ出家ヲ↡。
^◆善男子、 もしわれ善星比丘が出家を聴し戒を受けしめずは、 すなはちわれを称して如来具足十力とすることを得ざらんと。 乃至 善男子、 如来よく衆生のかくのごとき上・中・下の根と知ろしめす。 このゆゑに仏は具知根力と称せしむº と。
善男子、若シ我不ハ↧聴シ↢善星比丘ガ出家ヲ↡受ケシメ↞戒ヲ、則チ不ラムト↠得↣称シテ↠我ヲ為ルコトヲ↢如来具足十力ト↡。 乃至 善男子、如来善ク知ス↢衆生ノ如キ↠*是クノ上・中・下ノ根ト↡。是ノ故ニ称セシムト↢仏ハ具知根力ト↡。
^◆迦葉菩薩、 仏にまうしてまうさく、 ª世尊、 如来はこの知根力を具足したまへり。 このゆゑによく一切衆生上・中・下の根、 利鈍の差別を知ろしめして、 *人に随ひ、 意に随ひ、 時に随ふがゆゑに、 如来知諸根力と名づけたてまつると。 乃至 あるいは説き0352て犯四重禁、 作五逆罪、 一闡提等、 みな仏性ありといふことありº と。 乃至
迦葉菩薩白シテ↠仏ニ言ク、世尊、如来ハ具↢足シタマヘリ是ノ知根力ヲ↡。是ノ故ニ能ク知シテ↢一切衆生上・中・下ノ根、利鈍ノ差別ヲ↡、随ヒ↠人ニ随ヒ↠意ニ随フガ↠時ニ故ニ名ケタテマツルト↢如来知諸根力ト↡。 乃至 或イハ有リト↤説キテ言フコト↣犯四重禁、作0166五逆罪、一闡提等、皆有リト↢仏性↡。 乃至
^ª如来世尊、 国土のためのゆゑに、 時節のためのゆゑに、 *他語のためのゆゑに、 人のためのゆゑに、 *衆根のためのゆゑに、 一法のなかにおいて二種の説をなす。 一名の法において無量の名を説く、 一義のなかにおいて無量の名を説く、 無量の義において無量の名を説く。
如来世尊、為ノ↢国土ノ↡故ニ、為ノ↢時節ノ↡故ニ、為ノ↢他語ノ↡故ニ、為ノ↠人ノ故ニ、為ノ↢衆根ノ↡故ニ、於テ↢一法ノ中ニ↡作ス↢二種ノ説ヲ↡。於テ↢一名ノ法ニ↡説ク↢无量ノ名ヲ↡、於テ↢一義ノ中ニ↡説ク↢无量ノ名ヲ↡、於テ↢无量ノ義ニ↡説ク↢无量ノ名ヲ↡。
^いかんが一名に無量の名を説くや。 なほし涅槃のごとし。
云何ガ一名ニ説クヤ↢无量ノ名ヲ↡。猶シ如シ↢涅槃ノ↡。
^また涅槃と名づく、 また無生と名づく、 また*無出と名づく、 また無作と名づく、 また無為と名づく、 また帰依と名づく、 また窟宅と名づく、 また解脱と名づく、 また光明と名づく、 また灯明と名づく、 また彼岸と名づく、 また無畏と名づく、 また*無退と名づく、 また安処と名づく、 また寂静と名づく、 また無相と名づく、 また無二と名づく、 また一行と名づく、 また清涼と名づく、 また無闇と名づく、 また無礙と名づく、 また無諍と名づく、 また無濁と名づく、 また広大と名づく、 また甘露と名づく、 また吉祥と名づく。 これを一名に無量の名を作ると名づく。
亦名ク↢涅槃ト↡、亦名ク↢无生ト↡、亦名ク↢无出ト↡、亦名ク↢无作ト↡、亦名ク↢无為ト↡、亦名ク↢帰タノム ヨルトモ依ト↡、亦名ク↢窟アナ宅ト↡、亦名ク↢解脱ト↡、亦名ク↢光明ト↡、亦名ク↢灯明ト↡、亦名ク↢彼岸ト↡、亦名ク↢无畏トオソレ↡、亦名ク↢无退トシリゾク↡、亦名ク↢安処ト↡、亦名ク↢寂シヅカニ 静ト↡シヅカナリ、亦名ク↢无相ト↡、亦名ク↢无二ト↡、亦名ク↢一行ト↡、亦名ク↢清涼スヾシト↡、亦名ク↢无闇ヤミト↡、亦名ク↢无トサハル↡、亦名ク↢无静ト↡、亦名ク↢无濁ト↡、亦名ク↢広大ト↡、亦名ク↢甘露ト↡、亦名ク↢吉祥ト↡。アキラカナリ*是ヲ名ク↣一名ニ作ルト↢无量ノ名ヲ↡。
^いかんが一義に無量の名を説くや。 なほし帝釈のごとし。 乃至
云何ガ一義ニ説クヤ↢无量ノ名ヲ↡。猶シ如シ↢帝釈ノ↡。 乃至
^いかんが無量の義において無量の名を説くやと。 仏・如来の名のごとし。
云何ガ於テ↢无量ノ義ニ↡説クヤト↢无量ノ名ヲ↡。如シ↢仏・如来ノ名ノ↡。
^如来の義異名異とす、 また阿羅呵と名づく、 義異名0353異なり。 また三藐三仏陀と名づく、 義異名異なり。
為↢如来ノ義異名異ト↡、亦名ク↢阿羅呵ト↡、義異名異ナリ。亦名ク↢三藐三仏陀ト↡、義異名異ナリ。
^また船師と名づく、 また導師と名づく、 また正覚と名づく、 また明行足と名づく、 また*大師子王と名づく、 また沙門と名づく、 また婆羅門と名づく、 また寂静と名づく、 また施主と名づく、 また到彼岸と名づく、 また*大医王と名づく、 また*大象王と名づく、 また*大竜王と名づく、 また*施眼と名づく、 また*大力士と名づく、 また大無畏と名づく、 また*宝聚と名づく、 また*商主と名づく、 また得解脱と名づく、 また大丈夫と名づく、 また天人師と名づく、 また*大分陀利と名づく、 また*独無等侶と名づく、 また大福田と名づく、 また大智海と名づく、 また無相と名づく、 また*具足八智と名づく。
亦名ク↢船フネ師ト↡、亦名ク↢導師ト↡、亦名ク↢正覚ト↡、亦名ク↢明行足ト↡、亦名ク↢大師子王ト↡、亦名ク↢沙門ト↡、亦名ク↢婆羅門ト↡、亦名ク↢寂静ト↡、亦名ク↢施主ホドコスト↡、亦名ク↢到彼岸ト↡、亦名ク↢大医王ト↡、亦名ク↢大象王ト↡、亦名ク↢大竜王ト↡、亦名ク↢施眼ト↡、亦名ク↢大力士ト↡、亦名ク↢大无畏ト↡、亦名ク↢宝聚トトッモガラ↡、亦名ク↢商主アキナイ ト↡、亦名ク↢得解脱ト↡、亦名ク↢大丈夫ト↡、亦名ク↢天人師ト↡、亦名ク↢大分陀利ト↡、亦0167名ク↢独ヒトリ无等侶トトモガラ↡、亦名ク↢大福田ト↡、亦名ク↢大智サトル海ト↡、亦名ク↢无相ト↡、亦名ク↢具足八智ト↡。
^かくのごとき一切、 義異名異なり。 善男子、 これを無量義のなかに無量の名を説くと名づく。
如キ↠是クノ一切、義異名異ナリト。善男子、是ヲ名ク↣无量義ノ中ニ説クト↢无量ノ名ヲ↡。
^また一義に無量の名を説くことあり。 いはゆる*陰のごとし。
復有リ↣一義ニ説クコト↢无量ノ名ヲ↡。所ル↠謂ハ如シ↠陰ノ。
^また名づけて陰とす、 また顛倒と名づく、 また名づけて*諦とす、 また名づけて四念処とす、 また四食と名づく、 また四識住処と名づく、 また名づけて有とす、 また名づけて道とす、 また名づけて*時とす、 また名づけて*衆生とす、 また名づけて*世とす、 また第一義と名づく、 また三修と名づく、 いはく身・戒・心なり。 また因果と名づく、 また煩悩と名づく、 また0354解脱と名づく、 また十二因縁と名づく、 また*声聞・辟支仏と名づく、 仏をまた地獄・餓鬼・畜生・人・天と名づく、 また過去・現在・未来と名づく。 これを一義に無量の名を説くと名づく。
亦名ケテ為↠陰ト、亦名ク↢顛タフレ倒トタフル↡、亦名ケテ為↠諦ト、アキラカナリ亦名ケテ為↢四念処ト↡、亦名ク↢四食ト↡、亦名ク↢四識シル住処ト↡、亦名ケテ為↠有ト、亦名ケテ為↠道ト、亦名ケテ為↠時ト、亦名ケテ為↢衆生ト↡、亦名ケテ為↠世ト、亦名ク↢第一義ト↡、亦名ク↢三修トツクロウ↡、謂ク身・戒・イマシム心ナリ。亦名ク↢因果ト↡、亦名ク↢煩悩ト↡、亦名ク↢解脱ト↡、亦名ク↢十二因縁ト↡、亦名ク↢声聞・辟支アヤマル 仏ト↡、仏ヲ亦名ク↢地獄・餓鬼・畜生・人・天ト↡、亦名ク↢過去・現在・未来ト↡。是ヲ名ク↣一義ニ説クト↢无量ノ名ヲ↡。
^善男子、 如来世尊、 衆生のためのゆゑに、 広のなかに略を説く、 略のなかに広を説く。 第一義諦を説きて世諦とす、 世諦の法を説きて第一義諦とすº」 と。 略出
善男子、如来世尊、為ノ↢衆生ノ↡故ニ広ノ中ニ説ク↠略ヲ、略ノ中ニ説ク↠広ヲ。第一義 諦ヲアキラカナリ説キテ為↢世諦ト↡、説キテ↢世諦ノ法ヲ↡為ト↢第一義諦ト↡。」*略出
一 Ⅱ ⅰ b ロ (七)「梵行品」
【18】^またのたまはく (涅槃経・梵行品)、
*又言ハク、
^「▼迦葉またまうさく、 ª世尊、 第一義諦をまた名づけて道とす、 また菩提と名づく、 また涅槃と名づくº」 と。 乃至
「迦葉復言ク、世尊、第一義諦ヲ亦名ケテ為↠道ト、亦名ク↢菩提ト↡、亦名クト↢涅槃ト↡。」 乃至
一 Ⅱ ⅰ b ロ (八)「迦葉品」二文
【19】^またのたまはく (涅槃経・迦葉品)、
又言ク、
^「善男子、 われ経のなかに如来の身を説くに、 おほよそ二種あり。 一つには↓生身、 二つには↓法身なり。
「善男子、※我以経ノ中ニ説クニ↢如来ノ身ヲ↡、凡ソ有リ↢二種↡。一ニ者生身、二ニ者法身ナリ。
^↑生身といふは、 すなはちこれ方便応化の身なり。 かくのごときの身は、 これ生老病死、 長短黒白、 是此是彼、 *是学無学といふことを得べし。 わがもろもろの弟子、 この説を聞きをはりて、 わが意を解らざれば、 唱へていはく、 ª如来さだめて仏身はこれ有為の法なりと説かんº と。
言フ↢生身ト↡者、即チ是方便応化之身ナリ。如キノ↠是クノ身者、可シ↠得↠言フコトヲ↢是生老病死、長短黒白、是此是彼、是学无学ト↡。我ガ諸ノ弟子、聞キ↢是ノ説ヲ↡已リテ不レバ↠解0168ラ↢我ガ意ヲ↡、唱ヘテサカリ 言ク、如来定メテ説カムト↢仏身ハ是有為ノ法ナリト↡。
^↑法身はすなはちこれ*常楽我浄なり。 永く*一切生老病死、 非白非黒、 非長非短、 非此非彼、 非学非無学を離れたまへれば、 もし仏の出世および不出世に、 つねに動ぜずして変易あることなけん。 善男0355子、 わがもろもろの弟子、 この説を聞きをはりて、 わが意を解らざれば、 唱へていはく、 ª如来さだめて仏身はこれ無為の法なりと説きたまへりº」 と。
法身ハ即チ是常楽我浄ナリ。永ク離レタマヘレバ↢一切生老病死、非白非黒、非長非短、非此非彼、非学非无学ヲ↡、若シ仏ノ出世及ビ不出世ニ、常ニ不シテ↠動ゼ无ケム↠有ルコト↢変易↡。善男子、我ガ諸ノ弟子、聞キ↢是ノ説ヲ↡已リテ不レバ↠解ラ↢我ガ意ヲ↡、唱ヘテ言ク、如来定メテ説キタマヘリト↢仏身ハ是无為ノ法ナリト↡。」
【20】^またのたまはく (涅槃経・迦葉品)、
又言ク、
^「わが所説の十二部経のごとし、 あるいは↓随自意説、 あるいは↓随他意説、 あるいは↓随自他意説なり。乃至
「如シ↢我ガ所説ノ十二部経ノ↡、或イハ随自意説、或イハ随他意説、或イハ随自他意説ナリ。 乃至
^善男子、 わが所説のごとき、 *十住の菩薩少しき仏性を見る、 これを↑随他意説と名づく。 なにをもつてのゆゑに*少見と名づくるや。 十住の菩薩は*首楞厳等の三昧、 *三千の法門を得たり。 このゆゑに了々としてみづから阿耨多羅三藐三菩提を得べきことを知るも、 一切衆生さだめて阿耨多羅三藐三菩提を得んことを見ず。 このゆゑに▽われ十住の菩薩、 少分仏性を見ると説くなり。
善男子、如キ↢我ガ所説ノ↡、十住ノ菩薩少シキ見ル↢仏性ヲ↡、是ヲ名ク↢随他意説ト↡。何ヲ以テノ故ニ名クルヤト↢少見ト↡。十住ノ菩薩ハ得タリ↢首楞厳等ノ三昧、三千ノ法門ヲ↡。是ノ故ニ声聞自ラ知テ↠当ニクトモ↠得↢阿耨多羅三藐三菩提ヲ↡、不↠見↣一切衆生定メテ得ムコトヲ↢阿耨多羅三藐三菩提ヲ↡。是ノ故ニ我説クナリ↣十住ノ菩薩、少分見ルト↢仏性ヲ↡。
^善男子、 つねに一切衆生悉有仏性と宣説する、 これを↑随自意説と名づく。 一切衆生不断不滅にして、 乃至阿耨多羅三藐三菩提を得る、 これを随自意説と名づく。 ▼一切衆生はことごとく仏性あれども、 煩悩覆へるがゆゑに見ることを得ることあたはずと。
善男子、*常ニ宣ノブ↢説スル一切衆生悉有仏性ト↡、是ヲ名ク↢随自意説ト↡。一切衆生不断不滅ニシテ、乃至得ル↢阿耨多羅三藐三菩提ヲ↡、是ヲ名ク↢随自意説ト↡。一切衆生ハ悉ク有レドモ↢仏性↡、煩悩覆エルガ故ニ不ト↠能ハ↠得ルコト↠見ルコトヲ。
^わが説かくのごとし、 なんぢが説またしかなりと。 これを↑随自他意説と名づく。 善男子、 如来あるときは一法のためのゆゑに無量の法を説く」 と。 抄出
我ガ説如シ↠是クノ、汝ガ説亦爾ナリト。是ヲ名ク↢随自他意説ト↡。善男子、如来或時ハ為ノ↢一法ノ↡故ニ説クト↢无量ノ法ヲ↡。」 抄出
一 Ⅱ ⅰ b ロ (九)「獅子吼品」
【21】^またのたまはく (涅槃経・*師子吼品)、
又言ク、
^「▼ª一切覚者を名づけて仏性とす。 十住0356の菩薩は名づけて一切覚とすることを得ざるがゆゑに、 このゆゑに見るといへども明了ならず。 善男子、 見に二種あり。 一つには眼見、 二つには聞見なり。
「一切覚者ヲ名ケテ為↢仏性ト↡。十住ノ菩薩ハ不ルガ↠得↣名ケテ為ルコトヲ↢一切0169覚ト↡故ニ是ノ故ニ雖モ↠見ルト而不↢明了ナラ↡。善男子、見ニ有リ↢二種↡。一ニ者眼見、二ニ者聞見ナリ。
^◆諸仏世尊は眼に仏性を見そなはす、 掌のうちにおいて*阿摩勒菓を観ずるがごとし。 十住の菩薩、 仏性を聞見すれども、 ことさらに了々ならず。 十住の菩薩、 ただよくみづからさだめて阿耨多羅三藐三菩提を得ることを知りて、 一切衆生はことごとく仏性ありと知ることあたはず。
諸仏世尊ハ眼ニ見ス↢仏性ヲ↡、如シ↧於テ↢掌ノ中ニ↡観ズルガ↦阿摩勒菓ヲ↥。十住ノ菩薩、聞↢見スレドモ仏性ヲ↡、故ニ不↢了了ナラ↡。十住ノ菩薩、唯能ク自ラ知リ↣定メテ得ルコトヲ↢阿耨多羅三藐三菩提ヲ↡而不↠能ハ↠知ルコト↣一切衆生ハ悉ク有リト↢仏性↡。
^◆善男子、 また眼見あり。 *諸仏如来なり。 十住の菩薩は、 仏性を眼見し、 また聞見することあり。 一切衆生、 乃至*九地までに、 仏性を聞見す。 菩薩、 もし一切衆生ことごとく仏性ありと聞けども、 心に信を生ぜざれば、 聞見と名づけずº と。 乃至
善男子、復有リ↢眼見↡。諸仏如来ナリ。十住ノ菩薩ハ、眼↢見シ仏性ヲ↡、復有リ↢聞見スルコト↡。一切衆生、乃至九地マデニ、聞↢見ス仏性ヲ↡。菩薩若シ聞ケドモ↣一切衆生悉ク有リト↢仏性↡、心ニ不レバ↠生ゼ↠信ヲ、不ト↠名ケ↢聞見ト↡。 乃至
^◆*師子吼菩薩摩訶薩まうさく、 ª世尊、 一切衆生は如来の心相を知ることを得ることあたはず。 まさにいかんが観じて知ることを得べきやº と。
師子吼菩薩摩訶薩言サク、世尊、一切衆生ハ不↠能ハ↠得ルコト↠知ルコトヲ↢如来ノ心相ヲ↡。当ベ ニシ↢云何ガ観ジ而得↟知ルコトヲ邪ト。
^◆ª善男子、 一切衆生は実に如来の心相を知ることあたはず。 もし観察して知ることを得んと欲はば、 二つの因縁あり。 一つには眼見、 二つには聞見なり。
善男子、一切衆生ハ実ニ不↠能ハ↠知ルコト↢如来ノ心相ヲ↡。若シ欲ハ↢観察シ而得ムト↟知ルコトヲ者、有リ↢二ノ因縁↡。一ニ者眼見、二ニ者聞見ナリ。
^◆もし如来、 所有の身業を見たてまつらんは、 まさに知るべし、 これすなはち如来とするなり。 これを眼見と名づく。 もし如来所有の口業を観ぜん、 まさに知るべし、 これすな0357はち如来とするなり。 これを聞見と名づく。
若シ見タテマツラムハ↢如来所有ノ身業ヲ↡、当ニシ↠知ル是則チ為ル↢如来ト↡也。是ヲ名ク↢眼見ト↡。若シ観ゼム↢如来所有ノ口業ヲ↡、当ニシ↠知ル是則チ為ル↢如来ト↡也。是ヲ名ク↢聞見ト↡。
^◆もし*色貌を見たてまつること、 一切衆生のともに等しきものなけん、 まさに知るべし、 これすなはち如来とするなり。 これを眼見と名づく。 もし音声微妙最勝なるを聞かん、 衆生所有の音声には同じからじ、 まさに知るべし、 これすなはち如来とするなり。 これを聞見と名づく。
若シ見タテマツルコト↢色貌ヲ↡、一切衆生ノ无ケム↢与ニ等シキ者↡、当ニシ↠知ル是則チ為ル↢如来ト↡也。是ヲ名ク↢眼見ト↡。若シ聞カム↢音声微妙最勝ナルヲ↡、不↠同ジカラ↢衆生所有ノ音声ニハ↡、当ニシ↠知ル是則チ為ル↢如来ト↡也。是ヲ名ク↢聞見ト↡。
^◆もし如来所作の神通を見たてまつらんに、 衆生のためとやせん、 利養のためとやせん。 もし衆生のためにして利養のためにせず、 まさに知るべし、 これすなはち如来とするなり。 これを眼見と名づく。 もし如来を観ずるに、 他心智をもつて衆生を観そなはす時、 利養のために説き、 衆生のために説かん。 もし衆生のためにして利養のためにせざらん、 まさに知るべし、 これすなはち如来とするなり。 これを聞見と名づくº」 と。 略出
若シ見タテマツラムニ↢如来所作ノ神通ヲ↡、為ム↠為トヤ↢衆生ノ↡、為ム↠為トヤ↢利養ノ↡。若シ為ニシテ↢衆生ノ↡不↠為ニセ↢利養ノ↡、当ニシ↠知ル是則チ為ル↢如来ト↡也。是ヲ名ク↢眼見ト↡。若シ観ズルニ↢如来ヲ↡、以テ↢他心智ヲ↡観ス↢衆生ヲ↡時、為0170ニ↢利養ノ↡説キ、為ニ↢衆生ノ↡説カム。若シ為ニシテ↢衆生ノ↡不ラム↠為ニセ↢利養ノ↡、当ニシ↠知ル是則チ為ル↢如来ト↡也。是ヲ名クト↢聞見ト↡。」 略出
一 Ⅱ ⅱ 師釈
a 北天(¬浄土論¼)
【22】^▼¬*浄土論¼ にいはく、
¬*浄土論ニ¼曰ク、
^「▲世尊、 われ一心に▽尽十方の無礙光如来に帰命したてまつりて、 ◆安楽国に生ぜんと願ず。
「世尊 我一心ニ | 帰↢命シマツリテ尽十方ノ |
无光如来ニ↡ | 願ズ↠生ゼムト↢安楽国ニ↡ |
^▲かの世界の相を観ずるに、 三界の道に勝過せり。 ◆究竟して虚空のごとし、 広大にして辺際なし」 とのたまへり。 以上
観ズルニ↢彼ノ世界ノ相ヲ↡ | 勝↢過セリ三界ノ道ニ↡ |
究竟シテ如シ↢虚空ノ↡ | 広大ニシテ无シトノタマヘリ↢辺際↡」 已上 |
一 Ⅱ ⅱ b 雁門(¬論註¼六文、¬讃弥陀偈¼、計七文)
イ 真土を証す
(一)清浄功徳釈文
【23】^▼¬註論¼ (*論註・下) にいはく、
¬*註論ニ¼曰ク、
^「▲ª荘厳清浄功徳成就とは、 偈に、 «^観彼世界相 勝過三界道» といへるがゆゑにº (浄土論) と。
「荘厳清浄功徳成就ト者、偈ニ言ヘリ↢観彼世界相勝過三界道故ト↡ト。
^◆これいかん0358が不思議なるや。 凡夫人、 煩悩成就せるありて、 またかの浄土に生ずることを得るに、 三界の繋業畢竟じて牽かず。 すなはちこれ煩悩を断ぜずして涅槃分を得。 いづくんぞ思議すべきや」 と。
此云何ガ不思議ナルヤ。有リテ↢凡夫人煩悩成就セル↡、亦得ルニ↠生ズルコトヲ↢彼ノ浄土ニ↡、三界ノ繋業畢竟ジテ不↠牽ケンカ。則チ是不シテ↠断ゼ↢煩悩ヲ↡得↢涅槃分ヲ↡。焉ンゾ可キヤト↢思議ス↡。」
一 Ⅱ ⅱ b イ (二)性功徳釈文
【24】^▼またいはく (論註・上)、
又*云ク、
^「▲ª*正道の大慈悲は、 出世の善根より生ずº (浄土論) とのたまへり。
「正道ノ大慈悲ハ、出世ノ善根ヨリ生ズトノタマヘリ。
^◆この二句は、 荘厳性功徳成就と名づく。 乃至
此ノ二句ハ、名ク↢荘厳性功徳成就ト↡。 乃至
^▲性はこれ本の義なり。 いふこころは、 これ浄土は▼法性に随順して法本に乖かず。 ▼事、 ¬華厳経¼ の▼宝王如来の▼性起の義に同じ。
性ハ是本ノ義ナリ。言ハ此レ浄土ハ随↢順シテ法性ニ↡不↠乖カ↢法本ニ↡。事、同ジ↢¬華厳経ノ¼宝王如来ノ性起ノ義ニ↡。
^◆またいふこころは、 積習して性を成ず。 *法蔵菩薩を指す、 もろもろの波羅蜜を集めて積習して成ぜるところなり。
又言ハ、積ツム習シテナラウ 成ズ↠性ヲ。指ユビス↢法蔵菩薩ヲ↡、集メテ↢諸ノ*波羅蜜ヲ↡積習シテ所ナリ↠成ゼル。
^◆また性といふは、 これ▼聖種性なり。 序めに法蔵菩薩、 世自在王仏の所にして無生忍を悟る。 そのときの位を聖種性と名づく。 この性のなかにおいて四十八の大願を発して、 この土を修起したまへり。 すなはち安楽浄土といふ。 これかの因の所得なり。 果のなかに因を説く、 ゆゑに名づけて性とす。
亦言フ↠性ト者是聖種性ナリ。序ニ法蔵菩薩、於テ↢世自在王仏ノ所ニ↡悟ル↢无生忍ヲ↡。爾ノ時ノ位ヲ名ク↢聖種性ト↡。於テ↢是ノ性ノ中ニ↡発シテ↢四十八ノ大願ヲ↡、修↢起シタマヘリ此ノ土ヲ↡。即チ曰フ↢安楽浄土ト↡。是彼ノ因ノ所得ナリ。果ノ中ニ説ク↠因ヲ、故ニ名ケテ為↠性ト。
^◆また性といふは、 これ必然の義なり、 不改の義なり。 海の性、 一味にして衆流入るものかならず一味となつて、 海の味はひ、 かれに随ひて改まらざるがごとしとなり。
又言フ↠性ト者是必然ノ義ナリ、不 改ノアラタマル義ナリ。如シト↧海ノ性、一味ニシテ衆流入ル者必ズ為テ↢一味ト↡、海ノ味不ルガ↦随ヒテ↠彼ニ改ラ↥也。
^◆また人身の性不浄なるがゆゑに、 種々の妙好色・香・美味、 身に入0359りぬれば、 みな不浄となるがごとし。 ▼安楽浄土はもろもろの往生のひと、 不浄の色なし、 不浄の心なし、 畢竟じてみな清浄平等無為法身を得しむ。 安楽国土清浄の性、 成就したまへるをもつてのゆゑなり。
又如0171シ↣人身ノ性不浄ナルガ故ニ、種種ノ妙好色・香・美ヨシ味、入リヌレバ↠身ニ皆為ルガ↢不浄ト↡。安楽浄土ハ*諸ノ往生ノ者无シ↢不浄ノ色↡、无シ↢不浄ノ心↡、畢竟ジテ皆得シム↢清浄平等无為法身ヲ↡。以テノ↢安楽国土清浄ノ性成就シタマヘルヲ↡故ナリ。
^◆ª正道の大慈悲は、 出世の善根より生ずº といふは、 平等の大道なり。 ▼平等の道を名づけて正道とするゆゑは、 ▼平等はこれ諸法の体相なり。 ▼諸法平等なるをもつてのゆゑに発心等し、 ▼発心等しきがゆゑに道等し、 ▼道等しきがゆゑに大慈悲等し。 大慈悲はこれ仏道の正因なるがゆゑに、 ª正道大慈悲º とのたまへり。
正道ノ大道大慈悲ハ出世ノ善根ヨリ生ズトイフ者、平等ノ大道也。平等ノ道ヲ所↣以名ケテ為ル↢正道ト↡者、平等ハ是諸法ノ体相ナリ。以テノ↢諸法平等ナルヲ↡故ニ発心等シ、発心等シキガ故ニ道等シ、道等シキガ故ニ大慈悲等シ。大慈悲ハ是仏道ノ正因ナルガ故ニ言ヘリ↢正道大慈悲ト↡。
^◆慈悲に三縁あり。 一つには衆生縁、 これ小悲なり。 二つには法縁、 これ中悲なり。 三つには無縁、 これ大悲なり。 大悲はすなはちこれ出世の善なり。 ▼安楽浄土はこの大悲より生ぜるがゆゑなればなり。 ゆゑにこの大悲をいひて浄土の根とす。 ゆゑに ª出世善根生º といふなり」 と。
慈悲ニ有リ↢三縁↡。一ニ者衆生縁、是小悲ナリ。二ニ者*法縁、是中悲ナリ。三ニ者无縁、是大悲ナリ。大悲ハ即チ是出世ノ善也。安楽浄土ハ従リ↢此ノ大悲↡生ゼルガ故ナレバナリ。故ニ謂ウテ↢此ノ大悲ヲ↡為↢浄土之根ト↡。故ニ曰フナリト↢出世善根生ト↡。」
一 Ⅱ ⅱ b イ (三)大義門功徳釈文
【25】^▼またいはく (論註・上)、
又云ク、
^「▲問うていはく、 法蔵菩薩の本願 (第十四願)、 および龍樹菩薩の所讃 (易行品) を尋ぬるに、 みなかの国に声聞衆多なるをもつて奇とするに似たり。 これなんの義かあるやと。
「問ウテ曰ク、尋ヌルニ↢法蔵菩薩ノ本願力、及ビ龍樹菩薩ノ所讃ヲ↡、皆似タリ↧以テ↢彼ノ国ニ声聞衆多ナルヲ↡為ルニ↞奇ヨシト。此有ルヤト↢何ノ義カ↡。
^◆答へていはく、 声聞は実際をもつて証とす。 計るにさらによく仏道の根芽を生ずべからず。 しかる0360を仏、 本願の不可思議の神力をもつて、 摂してかしこに生ぜしむるに、 かならずまさにまた神力をもつて、 それをして無上道心を生ぜしむべし。
答ヘテ曰ク、声聞ハ以テ↢実際キワヲ↡為↠証ト。計ルニ不↠応カラ↣更ニ能ク生ズ↢仏道ノ根芽クキヲ↡。而ルヲ仏以テ↢本願ノ不可思議ノ神力ヲ↡、摂シテ令ムルニ↠生ゼ↠彼ニ、必ズ当ニシ↧復以テ↢神力ヲ↡、生ゼシム↦其ヲシテ无上道心ヲ↥。
^◆たとへば鴆鳥、 水に入れば▼魚蜯ことごとく死す、 犀牛これに触るれば死するものみな活るがごとし。 かくのごとき生ずべからずして生ぜしむ、 このゆゑに奇とすべし。 しかるに▼↓五不思議のなかに、 仏法もつとも不可思議なり。 仏よく声聞をしてまた無上道心を生ぜしめたまふ。 まことに不可思議の至りなり」 と。
譬ヘバ如シ↢鴆鳥入レバ↠水ニ魚蚌カイ咸ク死ス、犀牛触ルレバ↠之ニ死スル者皆活ルガ↡。如キ↠此クノ不↠応カラ↠生ズ而生ゼシム、所以可シ↠奇トス。然ルニ五不思議ノ中ニ、仏法最モ不可思議ナリ。仏能ク使メタマフ↣声聞ヲシテ復生ゼ↢无上道心ヲ↡。真ニ不可思議之至也ト。」
一 Ⅱ ⅱ b イ (四)成就不可思議力釈文
【26】^▼またいはく (論註・下)、
又0172云ク、
^「▲ª不可思議力º とは、 すべてかの仏国土の*十七種荘厳功徳力不可得思議なることを指すなり。 諸経に説きてのたまはく、 ↑五種の不可思議あり。 一つには衆生多少不可思議、 二つには業力不可思議、 三つには竜力不可思議、 四つには禅定力不可思議、 五つには仏法力不可思議なり。
「不可思議力ト者、総テ指ス↢彼ノ仏国土ノ十七種荘厳功徳力不可得思議ナルコトヲ↡也。諸経ニ説キテ*言ク、有リ↢五種ノ不可思議↡。一ニ者衆生多少不可思議、二ニ者業力不可思議、三ニ者竜力不可思議、四ニ者禅定力不可思議、五ニ者仏法力不可思議ナリ。
^◆このなかに仏土不可思議に二種の力あり。 一つには業力、 いはく法蔵菩薩の出世の善根と大願業力の所成なり。 二つには正覚の阿弥陀法王のよく住持力をして摂したまふところなり」 と。
此ノ中ニ仏土不可思議ニ有リ↢二種ノ力↡。一ニ者業力、謂ク法蔵菩薩ノ出世ノ善根ト大願業力ノ所成ナリ。二ニ者正覚ノ阿弥陀法王ノ善ク住持力ヲシテ所ナリト↠摂シタマフ。」
一 Ⅱ ⅱ b イ (五)示現自利利他釈文
【27】^▼またいはく (論註・下)、
又云、
^「▲自利利他を示現すといふは、 ª^略してかの阿弥陀仏の国土の十七種の荘厳功徳成就を説きつ、 如来の自身利益大功徳力0361成就と利益他功徳成就とを示現したまへるがゆゑにº (浄土論) とのたまへり。
「示↢現ストイフ自利利他ヲ↡者、略シテ説キツ↢彼ノ阿弥陀仏ノ国土ノ十七種ノ荘厳功徳成就ヲ↡、示↢現シタマヘルガ如来ノ自身利益大功徳力成就ト利益他功徳成就トヲ↡故ニトノタマヘリ。
^◆ª略º といふは、 かの浄土の功徳無量にして、 ただ十七種のみにあらざることを彰すなり。 それ▼須弥を芥子に入れ、 毛孔に大海を納む、 ▼あに山海の神ならんや、 毛芥の力ならんや、 能神のひとの神ならくのみ」 と。
言フ↠略ト者、彰ス↣彼ノ浄土ノ功徳无量ニシテ、非ザルコトヲ↢唯十七種ノミニ↡也。夫須弥ヲ之ヲ入レ↢芥子ニ↡、毛孔ニ之ヲ納ム↢大海ヲ↡、豈山海之神ナラム乎、毛芥之力ナラム乎、能神ノ者ノ神之耳ト。」
一 Ⅱ ⅱ b ロ 真仏を証す
(一)不虚作住持功徳釈文
【28】^▼またいはく (論註・下)、
又云ク、
^「▲ªなにものか荘厳不虚作住持功徳成就、 ¬偈¼ に、 «^仏の本願力を観ずるに、 遇うて空しく過ぐるものなし。 よくすみやかに功徳大宝海を満足せしむ» といへるがゆゑにº (浄土論) と。
「何者カ荘厳不虚作住持功徳成就、偈ニ言ヘリ↧観ズルニ↢仏ノ本願力ヲ↡、遇ヒテ无シ↢空シク過グル者↡、能ク令ムルガ↣速ニ満↢足セ功徳大宝海ヲ↡故ニト↥ト。
^◆ª不虚作住持功徳成就º とは、 けだしこれ阿弥陀如来の本願力なり。 ▼乃至
不虚作住持功徳成就ト者、蓋シ是阿弥陀如来ノ本願力也。 乃至
^▲いふところの ª不虚作住持º は、 本法蔵菩薩の四十八願と、 今日の阿弥陀如来の自在神力とによりてなり。 ▼願もつて力を成ず、 力もつて願に就く。 願徒然ならず、 力虚設ならず。 力願あひ符うて、 畢竟じて差はず。 ゆゑに成就といふ」 と。 抄出
所ノ↠言フ不虚作住持者、依リテナリ↢本法蔵菩薩ノ四十八願ト、今日ノ阿弥陀如来ノ自在神力トニ↡。願以テ成ズ↠力ヲ、力以テ就ク↠願ニ。願不0173↢徒然ナラ↡、力不↢虚設ナラ↡。力願相府フテ、畢竟ジテ不↠差ハ。故ニ曰フト↢成就ト↡。」 抄出
一 Ⅱ ⅱ b ロ (二)¬讃弥陀偈¼
【29】^▼¬*讃阿弥陀仏偈¼ にいはく、 *曇鸞和尚の造
¬*讃阿弥陀仏偈ニ¼曰ク、 曇鸞和尚ノ造
^「▲南無阿弥陀仏 ▼*釈して ¬無量寿▼傍経¼ と名づく、 ▼讃めたてまつりて▼また安養といふ。
南无阿弥陀仏 釈シテ名ク↢¬无量寿傍経ト¼↡、奉リテ↠賛メ亦曰フ↢安養ト↡。
^▲成仏よりこのかた十劫を歴たまへり。 寿命まさに量りあることなけん。
▼法身の光輪、 法界に遍して、 世の盲冥を照らす、 ゆゑに頂礼したてまつる。
成仏ヨリ已来タ歴タマヘリ↢十劫ヲ↡ | 寿命方将ニ无ケム↠有ルコト↠量リ |
法身ノ光輪徧シテ↢法界ニ↡ | 照ス↢世ノ盲冥ヲ↡故ニ頂礼シタテマツル |
^◆智慧の光明量るべ0362からず、 ゆゑに仏をまた▽無量光と号す。
有量の諸相光暁を蒙る、 このゆゑに真実明を稽首したてまつる。
智慧ノ光明不↠可カラ↠量ル | 故ニ仏ヲ又号ス↢无量光ト↡ |
有量ノ諸相蒙ル↢光暁ヲ↡ | 是ノ故ニ稽↢首シタテマツル真実明ヲ↡ |
^◆解脱の光輪限斉なし、 ゆゑに仏をまた▽無辺光と号す。
光触を蒙るもの▼有無を離る、 このゆゑに平等覚を稽首したてまつる。
解脱ノ光輪无シ↢限カギル斉↡ヒトシ | 故ニ仏ヲ又号ス↢无辺光ト↡ |
蒙ル↢光触ヲフルヽ↡者離ル↢有無ヲ↡ | 是ノ故ニ稽↢首シタテマツル平等覚ヲ↡ |
^◆光、 雲のごとくにして無礙なること虚空のごとし、 ゆゑに仏をまた▽無礙光と号す。
一切の有礙光沢を蒙る、 このゆゑに難思議を頂礼したてまつる。
光雲ノゴトクニシテ无ナルコト如シ↢虚空ノ↡ | 故ニ仏ヲ又号ス↢无光ト↡ |
一切ノ有蒙ル↢光沢ヲ↡ | 是ノ故ニ頂↢礼シタテマツル難思議ヲ↡ |
^◆清浄の光明対あることなし、 ゆゑに仏をまた▽無対光と号す。
この光に遇ふものは業繋除こる、 このゆゑに畢竟依を稽首したてまつる。
清浄ノ光明无シ↠有ルコト↠対 | 故ニ仏ヲ又号ス↢无対光ト↡ |
遇フ↢斯ノ光ニ↡者ハ業繋除コル | 是ノ故ニ稽↢首シタテマツル畢竟依ヲ↡ |
^◆仏光照耀して最第一なり、 ゆゑに仏をまた▽光炎王と号す。
三塗の黒闇光啓を蒙る、 このゆゑに大応供を頂礼したてまつる。
仏光照耀シテ最第一ナリ | 故ニ仏ヲ又号ス↢光炎王ト↡ |
三塗ミチノ黒闇蒙ル↢光啓ヲヒラク↡ | 是ノ故ニ頂↢礼シタテマツル大応供ヲ↡ |
^◆道光明朗にして、 色超絶したまへり。 ゆゑに仏をまた▽清浄光と号す。
一たび光照を蒙るに罪垢除こり、 みな解脱を得しむ、 ゆゑに頂礼したてまつる。
道光明朗ニシテホガラカナリ色超絶シタマヘリ | 故ニ仏ヲ又号ス↢清浄光ト↡ |
*一タビ蒙ルニ↢光*照ヲ↡罪垢アカ除コル | 皆得シム↢解脱ヲ↡故ニ頂礼シタテマツル |
^◆慈光はるかに被らしめ安楽を施す、 ゆゑに仏をまた▽歓喜光と号す。
光の至るところの処に法喜を得しむ、 大安慰を稽首し頂礼したてまつる。
慈光遐ニ被ラシメ施ス↢安楽ヲ↡ | 故ニ仏ヲ又号ス↢歓喜光ト↡ |
光ノ所ノ↠至ル処ニ得シム↢法喜ヲ↡ | 稽↢首シ頂↣礼シタテマツル大安慰ヲ↡ |
^◆仏光よく無明の闇を破す、 ゆゑに仏をまた▽智慧光と号す。
一切諸仏・三乗衆ことごとくともに嘆誉す、 ゆゑに稽首したてまつる。
仏光能ク破ス↢无明ノ闇ヲ↡ | 故ニ仏ヲ又号ス↢智慧光ト↡ |
一切諸仏・三乗衆 | 咸ク共ニ嘆誉ホムス故ニ稽首シタテマツル |
^◆光明一切の時にあまねく照らす、 ゆゑに仏をまた▽不断光と号す。
▼聞光力のゆゑに、 心断えず0363してみな往生を得しむ、 ゆゑに頂礼したてまつる。
光明一切ノ時ニ普ク照ス | 故ニ仏ヲ又号ス↢不断光ト↡ |
聞光力ノ故ニ心不シテ↠断ヘ | 皆得シム↢往生ヲ↡故ニ頂礼シタテマツル |
^◆その光、 仏を除きてはよく測ることなけん、 ゆゑに仏をまた▽難思光と号す。
十方諸仏往生を嘆じ、 その功徳を称せしむ、 ゆゑに稽首したてまつる。
其ノ光除キテハ↠仏ヲ莫ケム↢能ク*惻ルコト↡ | 故ニ仏ヲ又号ス↢難思光ト↡ |
十方諸仏嘆ジ↢往生ヲ↡ | 称セシム↢其ノ功0174徳ヲ↡故ニ稽首シタテマツル |
^◆神光は相を離れたること名づくべからず、 ゆゑに仏をまた▽無称光と号す。
光によりて成仏したまふ、 光赫然たり、 諸仏の嘆じたまふところなり、 ゆゑに頂礼したてまつる。
神光ハ離レタルコト↠相ヲ不↠可カラ↠名ク | 故ニ仏ヲ又号ス↢无称光ト↡ |
因リテ↠光ニ成仏シタマフ光 赫カヾヤク然ナリ | 諸仏ノ所ナリ↠嘆ホムジタマフ故ニ頂礼シタテマツル |
^◆光明照曜して日月に過ぎたり、 ゆゑに仏を▽超日月光と号す。
釈迦仏嘆じたまふことなほ尽きず、 ゆゑにわれ無等等を稽首したてまつると。 ▼乃至
光明照曜シテ過ギタリ↢日月ニ↡ | 故ニ仏ヲ号ス↢超日月光ト↡ |
釈迦仏嘆ジタマフコト尚不↠尽キ | 故ニ我稽↢首シタテマツルト无等等ヲ↡ 乃至 |
^▲本師龍樹摩訶薩、形を像始に誕じて、 ▼頽綱 (頽の字、 崩なり、 破なり、 落なり、 纏るなり) を理る。
▼邪扇を関閉して▼正轍 (轍の字、 通なり、 車なり、 跡なり) を開く。 これ閻浮提の一切の眼なり。
本師龍樹摩訶薩 | 誕ウムズ↢形像ヲ↡始メテ理ル↢*頽綱ツナヲ↡ |
関↢閉シテフサグ 邪扇ヲアフギ↡開ク↢正*轍ヲ↡ | 是閻浮提ノ一切ノ眼ナリ |
^▼*尊語を伏承して歓喜地にして、 阿弥陀に帰して安楽に生ぜしむ。
伏↢シタガイ承シテウケタマハル尊語ヲ↡歓喜地ニシテ | 帰シテ↢阿弥陀ニ↡生ゼシム↢安楽ニ↡ |
^▲われ無始より三界に循りて、 虚妄輪のために回転せらる。
一念一時に造るところの業、 足六道に繋がれ三塗に滞まる。
我従リ↢无始↡循リテ↢三界ニ↡ | 為ニ↢虚妄ミダル輪ノ↡所ル↢回転セ↡ |
一念一時ニ所ノ↠造ル業 | 足繋ガレ↢六道ニ↡滞ル↢三塗ニ↡ |
^▼やや、 願はくは慈光、 われを護念して、 われをして菩提心を失せざらしめたまへ。
唯願クハ慈光護↢念シテ我ヲ↡ | 令メタマヘ↢我ヲシテ不ラ↟失セウシナフ↢菩提心ヲ↡ |
^◆われ仏恵功徳の音を讃ず。 願はくは十方のもろもろの有縁に聞かしめて、
安楽に往生を得んと欲はんもの、 あまねくみな意のごとくして障礙なからしめん。
我讃ズ↢仏恵功徳ノ音ヲ↡ | 願クハ聞カシメテ↢十方ノ諸ノ有縁ニ↡ |
欲ハム↠得ムト↣往↢生ヲ安楽ニ↡者 | 普ク皆如クシテ↠意ノ无カラシメム↢障↡ |
^◆あらゆ0364る功徳、 もしは大小一切に回施して、 ともに往生せしめん。
▼不可思議光に南無し、 一心に帰命し稽首し礼したてまつる。
所ル↠有ラ功徳若シハ大小 | 回↢施シテ一切ニ↡共ニ往生セシメム |
南↢无シ不可思議光ニ↡ | 一心ニ帰ヨル命シオホセ稽イタス首シカウベ礼シタテマツル |
^◆十方三世の無量慧、 同じく一如に乗じて正覚と号す。
二智円満して道平等なり。 摂化すること縁に随ふ、 まことに*そこばくならん。
十方三世ノ无量慧 | 同ジク乗ジテ↢一如ニ↡号ス↢正覚ト↡ |
二智円満シテ道平等ナリ | 摂化スルコト随フ↠縁ニ故ニコトサラニ若干ナラム |
^◆われ阿弥陀の浄土に帰するは、 すなはちこれ諸仏の国に帰命するなり。
われ一心をもつて一仏を讃ず、 願はくは十方無礙人に遍せん。
我帰スルハ↢阿弥陀ノ浄土ニ↡ | 即チ是帰↢命スルナリ諸仏ノ国ヲ↡ |
我以テ↢一心ヲ↡賛ズ↢一仏ヲ↡ | 願クハ徧セム↢十方无人ニ↡ |
^◆かくのごとき十方無量仏、 ことごとくおのおの心を至して頭面に礼したてまつるなり」 と。 以上抄出
如キ↠是クノ十方无量仏 | 咸ク各ノ至シテ↠心ヲ頭面ニ礼シタテマツルナリト」 已上抄出 |
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一 Ⅱ ⅱ c 終南(¬観経疏¼三文、¬法事讃¼三文、計六文)
イ 報身土を証す
(一)「玄義分」
【30】^▼光明寺の和尚 (*善導) いはく (*玄義分)、
*光明寺ノ和尚云ク、
^「▲問うていはく、 ▼弥陀の浄国は、 はたこれ報なりや、 これ化なりとやせんと。
「問ウテ曰ク、弥陀ノ浄国ハ為ム↢当是報ナルヤ、是化ナリト↡也ト。
^◆答へていはく、 これ報にして化にあらず。
答ヘテ曰ク、是報ニシテ非ズ↠化ニ。
^◆いかんが知ることを得る。 ▼¬*大乗▼同性経¼ に説くがごとし。 ª^西方の安楽阿弥陀仏は、 これ報仏報土なりº (意) と。
云何ガ得ル↠知ルコトヲ。如シ↢¬大乗同性経ニ¼説クガ↡。西方ノ安楽阿弥陀仏ハ、是報仏・報土0175ナリト。
^◆また ¬無量寿経¼ (上) にのたまはく、 ª^▼法蔵比丘、 世饒王仏の所にましまして、 菩薩の道を行じたまひし時、 四十八願を発して、 ▼一々の願にのたまはく、 «^もしわれ仏を得たらんに、 十方の衆生、 ▼わが名号を称して、 わが国に生ぜんと願ぜん。 下十念に至るまで、 もし生ぜずは、 正覚を取らじ»º と。
*又¬无量寿経ニ¼云ク、法蔵比丘在リテ↢世饒王仏ノ所ニ↡、行ジタマヒシ↢菩薩ノ道ヲ↡時、発シテ↢四十八願ヲ↡、一一ノ願ニ言ハク、若シ我得タラムニ↠仏ヲ、十方ノ衆生、称シテ↢我ガ名号ヲ↡、願ゼム↠生ゼムト↢我ガ国ニ↡。下至ルマデ↢十*念ニ↡、若シ不↠生ゼ者、不ト↠取ラ↢正覚ヲ↡。
^◆いますでに成仏したまへり0365、 すなはちこれ▼酬因の身なり。
今既ニ成仏シタマヘリ、即チ是酬コタウ因之身也。
^◆また ¬観経¼ のなかに、 上輩の三人、 命終の時に臨んで、 みな ª阿弥陀仏および化仏と与に、 この人を来迎すº (意) とのたまへり。 ◆しかるに報身、 化を兼ねてともに来りて手を授くと。 ゆゑに名づけて ª与º とす。 この文証をもつてのゆゑに、 知んぬ、 これ報なりと。
又¬観経ノ¼中ニ、上輩ノ三人臨デ↢命終ノ時ニ↡、皆言ヘリ↧阿弥陀仏及ビ与ニ↢化仏ト↡、来↦迎スト此ノ人ヲ↥。然ルニ報身兼ネテ↠化ヲ共ニ来リテ授クト↠手ヲ。故ニ名ケテ為↠与ト。以テノ↢此ノ文証ヲ↡故ニ知ヌ、是報ナリト。
^◆しかるに報応二身とは、 眼目の異名なり。 ▼前には報を翻じて応となす、 後には応を翻じて▼報となす。 ◆おほよそ報といふは、 因行虚しからず、 さだめて来果を招く、 果をもつて因に応ず、 ゆゑに名づけて報とす。 ▼また三大僧祇の所修の万行、 必定して菩提を得べし。 いますでに道、 成ぜり、 すなはちこれ応身なり。
然ルニ報応二身ト者、眼目之異名ナリ。前ニハ翻ジテヒルガヘス↠報ヲ作ル↠応ト、後ニハ翻ジテ↠応ヲ作ル↠報ト。凡ソ言フ↠報ト者、因行不↠虚シカラ、定メテ招セウク↢来果ヲ↡、以テ↠果ヲ応ズ↠因ニ、故ニ名ケテ為↠報ト。又三大僧祇ノ所修ノ万行、必定シテ応シ↠得↢菩提ヲ↡。今既ニ道成ゼリ、即チ是応身ナリ。
^◆これすなはち▼過現の諸仏、 三身を弁立す。 これを除きて以外はさらに別の体ましまさず。 たとひ▼無窮の八相、 名号塵沙なりとも、 体に剋して論ぜば、 すべて化に帰して摂す。 ◆いまかの弥陀、 現にこれ報なりと。
斯乃チ過現ノ諸仏、*弁↢立ス三身ヲ↡。除キテ↠斯ヲ已外ハ更ニ无サズ↢別ノ体↡。縦使无窮ノキワマリ八相、名号塵沙ナリトモ、剋シテ↠エテ トキトモ体ニ而シテ論ゼバ、衆テ帰シテ↠化ニ摂ス。今彼ノ弥陀、現ニ是報也ト。
^◆問うていはく、 ▼すでに報といふは、 報身常住にして永く生滅なし。 なんがゆゑぞ ¬*観音授記経¼ に説かく、 ª阿弥陀仏また入涅槃の時ありº と。 この一義いかんが通釈せんやと。
問ウテ曰ク、既ニ言フ↠報ト者、報身常住ニシテ永ク无シ↢生滅↡。何ガ故ゾ¬*観音授記経ニ¼説カク、阿弥陀仏亦有リト↢入涅槃ノ時↡。此之一義若為ガ通釈セムヤト。
^◆答へていはく、 入・不入の義は、 ▼ただこれ諸仏の境界なり。 なほ三乗浅智の0366闚ふところにあらず。 あにいはんや、 ▼小凡たやすくよく知らんや。
答ヘテ曰ク、入・不入ノ義者、唯是諸仏ノ境サカイ界ナリサカイ 。尚非ズ↢三乗浅智ノ所ニ↟闚フ。豈況ヤ小凡輒ク能ク知ラム也。
^◆しかりといへども、 ▼かならず知らんと欲はば、 あへて仏経を引きてもつて明証とせん。
雖モ↠然リト必ズ欲ハ↠知ラムト者、敢テ引キテ↢仏経ヲ↡以テ為ム↢明証ト↡。
^◆いかんとならば ¬*大品経¼ の ª涅槃▼非化品º のなかに説きていふがごとし。
何者*如シ↢¬大品経ノ¼涅槃非化品ノ中ニ説キテ云フガ↡。
^ª◆仏、 *須菩提に告げたまはく、 «なんぢが意においていかん。 もし化人ありて化人をなす。 この化すこぶる実事ありやいなや。 空しきものなりやいなや» と。
仏告ゲタマハク↢須菩提ニ↡、於テ↢汝ガ意ニ↡云何。若シ有リテ↢化人↡作ス↢化人ヲ↡、是ノ化頗ル有リヤ↢実事↡不ヤ、空シキ者ナリヤ0176不ヤト。
^◆須菩提のまうさく、 «いななり、 世尊» と。
須菩提ノ言サク、不也、世尊ト。
^◆仏、 須菩提に告げたまはく、 «色すなはちこれ化なり、 受・想・行・識すなはちこれ化なり、 乃至一切種智すなはちこれ化なり» と。
仏告ゲタマハク↢須菩提ニ↡、色即チ是化ナリ、受・想・行・識即チ是化ナリ、乃至一切種智即チ是化ナリト。
^◆須菩提、 仏にまうしてまうさく、 «▼世尊、 もし世間の法これ化なりや、 出世間の法またこれ化なりや。 いはゆる▼四念処・▼四正勤・▼四如意足・▼五根・▼五力・▼七覚分・▼八聖道分・▼三解脱門、 ▼仏の十力・▼四無所畏・▼四無礙智・▼十八不共法、 ならびに▼諸法の果および賢聖人、 いはゆる須陀洹・斯陀含・阿那含・阿羅漢・辟支仏・菩薩摩訶薩・諸仏世尊、 この法またこれ化なりやいなや» と。
須菩提白シテ↠仏ニ言ク、世尊、若シ世間ノ法是化ナリヤ、出世間ノ法亦是化ナリヤト。所ル↠謂ハ四念処・四正勤・ツトム四如意足タル・五根・五力・七覚分・八*聖道分・三解脱*門、仏十力・四无所畏・オソル四无智・十八不共法、并ニ諸法ノ果及ビ賢カシコシ聖人、所ル↠謂ハ須陀洹・斯陀含・阿那含・阿羅漢・辟支仏・菩薩摩訶薩・諸仏世尊、是ノ法亦是化ナリヤ不ヤト。
^◆仏、 須菩提に告げたまはく、 «一切の法はみなこれ化なり。 この法のなかにおいて、 声聞の法の変化あり、 辟支仏の法の変化あり、 菩薩の法の変化あり、 諸仏の法の変化あり、 煩悩の法の変化あり、 業因縁の法の変化0367あり。 この因縁をもつてのゆゑに、 須菩提、 一切の法みなこれ化なり» とのたまへり。
仏告ゲタマハク↢須菩提ニ↡、一切ノ法ハ皆是化ナリ。於テ↢是ノ法ノ中ニ↡、有リ↢声聞ノ法ノ変化↡、有リ↢辟支仏ノ法ノ変化↡、有リ↢菩薩ノ法ノ変化↡、有リ↢諸仏ノ法ノ変化↡、有リ↢煩悩ノ法ノ変化↡、有リ↢業因縁ノ法ノ変化↡。以テノ↢是ノ因縁ヲ↡故ニ、須菩提、一切ノ法皆是化ナリトノタマヘリ。
^◆須菩提、 仏にまうしてまうさく、 «世尊、 このもろもろの煩悩断は、 いはゆる須陀洹果・斯陀含果・阿那含果・阿羅漢果・辟支仏道は、 もろもろの煩悩の習を断ず。 みなこれ変化なりやいなや» と。
須菩提白シテ↠仏ニ言サク、世尊、是ノ諸ノ煩悩断ハ、所ル↠謂ハ須陀洹果・斯陀含果・阿那含果・阿羅漢果・辟支仏道ハ、断ズ↢諸ノ煩悩ノ習ヲナラウ↡。皆是変化ナリヤ不ヤト。
^◆仏、 須菩提に告げたまはく、 «もし法の生滅の相あるは、 みなこれ変化なり» とのたまへり。
仏告ゲタマハク↢須菩提ニ↡、若シ有ル↢法ノ生滅ノ相↡者、皆是変化ナリトノタマヘリ。
^◆須菩提まうさく、 «世尊、 なんらの法か変化にあらざる» と。
須菩提言サク、世尊、何等ノ法カ非ザルト↢変化ニ↡。
^◆仏ののたまはく、 «もし法の無生無滅なる、 これ変化にあらず» と。
仏ノ言ハク、若シ法ノ无生无滅ナル、是非ズト↢変化ニ↡。
^◆須菩提まうさく、 «なんらかこれ不生不滅にして変化にあらざる» と。
須菩提言サク、何等カ是不生不滅ニシテ非ザルト↢変化ニ↡。
^◆仏ののたまはく、 «誑相なき涅槃、 この法変化にあらず» と。
仏ノ言ハク、无キ↢誑クルウ相↡涅槃、是ノ法非ズト↢変化ニ↡。
^◆«世尊、 仏みづから説きたまふがごとき、 ▼諸法平等にして声聞の作にあらず、 辟支仏の作にあらず、 もろもろの菩薩摩訶薩の作にあらず、 諸仏の作にあらず。 ▼有仏・無仏、 諸法の性つねに空なり。 ▼性空なる、 すなはちこれ涅槃なり。 *いかなるか涅槃の一法、 化のごとくにあらざる» と。
世尊、如キ↢仏自ラ説キタマフガ↡、諸法平等ニシテ非ズ↢声聞ノ作ニ↡、非ズ↢辟支仏ノ作ニ↡、非ズ↢諸ノ菩薩摩訶薩ノ作ニ↡、非ズ↢諸仏ノ作ニ↡。有0177仏・无仏、諸法ノ性常ニ空ナリ。性空ナル即チ是涅槃ナリ。云何カ涅槃ノ一法、非ザルト↠如クニ↠化ノ。
^◆仏、 須菩提に告げたまはく、 «かくのごとし、 かくのごとし。 諸法は平等にして▼声聞の所作にあらず、 乃至▼性空なればすなはちこれ涅槃なり。 ▼もし新発意の菩薩、 この一切の法みな畢竟じて性空なり、 乃至涅槃もまたみな化のごとし0368と聞かば、 心すなはち驚怖しなん。 この新発意の菩薩のために、 ことさらに生滅のものは化のごとし、 不生不滅のものは化のごときにあらざるを分別するをや»º と。
仏告ゲタマハク↢須菩提ニ↡、如シ↠是クノ如シ↠是クノ。諸法ハ平等ニシテ非ズ↢声聞ノ所作ニ↡、乃至性空ナレバ即チ是涅槃ナリ。若シ新発意ノ菩薩、聞カ↢是ノ一切ノ法皆畢竟ジテ性空ナリ、乃至涅槃モ亦皆如シト↟化ノ者、心則チ驚オドロキ怖オドシナムロク 。為ニ↢是新発意ノ菩薩ノ↡、故ニ※分↢別スルヲ生滅ノ者ハ如シ↠化ノ、不生不滅ノ者ハ不ザルヲト↟如クニ↠化ノ邪ト。
^◆いますでにこの聖教をもつて、 あきらかに知んぬ、 弥陀はさだめてこれ報なり。 ▼たとひ後に涅槃に入らん、 その義妨げなけん。 ▼もろもろの有智のもの、 知るべしと。
今既ニ以テ↢斯ノ聖教ヲ↡、験ニ知ヌ、弥陀ハ定メテ是報也。縦使後ニ入ラム↢涅槃ニ↡、其ノ義无ケム↠妨バウ。諸ノ有智ノ者、応シト↠知ル。
^◆問うていはく、 かの仏および土、 すでに報といはば、 報法▼高妙にして▼小聖階ひがたし。 垢障の凡夫、 いかんが入ることを得んやと。
問ウテ曰ク、彼ノ仏及ビ土、既ニ言ハ↠報ト者、報法高妙ニシテ小聖難シ↠階ヒ。垢障ノ凡夫、云何ガ得ムヤ↠入ルコトヲ。
^◆答へていはく、 ▼もし衆生の垢障を論ぜば、 実に欣趣しがたし。 ▼まさしく仏願に託するによりて、 もつて強縁となりて、 五乗▼斉しく入らしむることを致す」 と。
答ヘテ曰ク、若シ論ゼバ↢衆生ノ垢障ヲ↡、実ニ難シ↢忻ネガヒ趣シ↡オモムキ。正シク由リテ↠託スルニ↢仏願ニ↡、以テ作リテ↢強縁ト↡、致スト↠使ムルコトヲ↢五乗斉シク入ラ↡。」
一 Ⅱ ⅱ c イ (二)「序分義」
【31】^▼またいはく (*序分義)、
又云ク、
^「▲ª我今楽生弥陀º より以下は、 まさしく夫人 (*韋提希) 別して所求を選ぶことを明かす。
「従リ↢我今楽生弥陀↡已下ハ、正シク明ス↣夫人別シテ選ブコトヲ↢所求ヲ↡。
^◆これは弥陀の▼本国、 ▼四十八願なることを明かす。 ◆願々みな*増上の▼勝因を発せり、 因によりて*勝行を起せり、 行によりて*勝果を感ず、 果によりて*勝報を感成せり、 報によりて極楽を感成せり、 ▼楽によりて▼悲化を顕通す、 悲化によりて▼智慧の門を顕開せり。
此ハ明ス↢弥陀ノ本国、四十八願ナルコトヲ↡。願願皆発セリ↢増上ノ勝因ヲ↡、依リテ↠因ニ起セリ↢於勝行ヲ↡、依リテ↠行ニ感ズ↢於勝果ヲ↡、依リテ↠果ニ感↢成セリ勝報ヲ↡、依リテ↠報ニ感↢成セリ極楽ヲ↡、依リテ↠楽ニ顕↢通ス悲化ヲ↡、依リテ↢於悲化ニ↡顕↢開セリ智慧之門ヲ↡。
^◆しかるに悲心無尽にして、 智また無窮なり。 悲智双べ行じて、 すなはち▼広く▼甘露0369を開けり。 これによりて▼法潤あまねく群生を摂したまふなり。
然ルニ悲心无尽ニシテ、智亦无窮ナリ。悲智双ベ行ジテ、即チ広ク開ケリ↢甘露ヲ↡。因リテ↠茲ニ法潤ウルオウ普ク摂シタマフ↢群生ヲ↡也。
^◆諸余の経典に勧むるところ弥く多し。 ▼衆聖、 心を斉しくして、 みな同じく指讃したまふ。
諸余ノ経典ニ勧ムル処弥ク多シ。衆聖斉シクシテ↠心ヲ、皆同ジク指オシフ讃シタマフ。
^◆この因縁ありて、 如来ひそかに夫人 (韋提希) を遣はして、 別して選ばしめたまふことを致すなり」 と。
有リテ↢此ノ因縁↡、致ス↠使メタマフコトヲ↧如来密ニ遣ハシテ↢夫人ヲ↡、別シテ選バ↥也ト。」
一 Ⅱ ⅱ c ロ 報身土の真義を明かす
(一)「定善義」
【32】^▼またいはく (*定善義)、
又0178云ク、
^「▲西方寂静無為の楽は、 畢竟逍遥して有無を離れたり。
大悲、 心に薫じて法界に遊ぶ。 *分身して物を利すること等しくして殊なることなし。
「西方寂静无為ノ楽ハ | 畢竟逍遥シテ離レタリ↢有无ヲ↡ |
大悲薫ジテ↠心ニ遊ブ↢法界ニ↡ | 分身シテ利スルコト↠物ヲ等シクシテ无シ↠殊ナルコト |
^▲帰去来、 魔郷には停まるべからず。
曠劫よりこのかた六道に流転して、 ことごとくみな経たり。
^到る処に余の楽しみなし。 ただ愁歎の声を聞く。
この生平を畢へて後、 かの涅槃の城に入らん」 と。
帰去来 | 魔郷ニハ不↠可カラ↠停ル |
曠劫ヨリ来タ流↢転シテ | 六道ニ↡尽ク皆逕タリ |
到ル処ニ无シ↢余ノ楽↡ | 唯聞ク↢*愁嘆ノ声ヲ↡ |
畢ヘテ↢此ノ生平ヲ↡後 | 入ラムト↢彼ノ涅槃ノ城ニ↡」 |
一 Ⅱ ⅱ c ロ (二)¬法事讃¼三文
【33】^▼またいはく (*法事讃・下)、
又云ク、
^「▲極楽は無為▼涅槃の界なり。 ▼随縁の雑善▼おそらくは生じがたし。 ▼ゆゑに如来 (釈尊) ▼要法を選びて、 ▼教へて弥陀を念ぜしめて▼もつぱらにしてまたもつぱらならしめたまへり」 と。
「極楽ハ无為涅槃ノ界ナリ | 随縁ノ雑善恐ハ難シ↠生ジ |
故ニ使メタマヘリト↧如来選ビテ↢要法ヲ↡ | 教ヘテ念ゼシメテ↢弥陀ヲ↡専ニシテ復専ナラ↥」 |
【34】^▼またいはく (法事讃・下)、
又云ク、
^「▲仏に従ひて逍遥して▼自然に帰す。 自然はすなはちこれ弥陀の国なり。 ▼無漏▼無生還りてすなはち真なり。 行来進止につねに仏に随ひて、 無為法性身を証得す」 と。
「 | 従ヒテ↠仏ニ逍遥シテ帰ス↢自然ニ↡ |
自然ハ即チ是弥陀ノ国ナリ | 无漏无生還リテ即チ真ナリ |
行来進止ニ常ニ随ヒテ↠仏ニ | 証↢得スト无為法性身ヲ↡」 |
【037035】^▼またいはく (法事讃・下)、
又云ク、
^「▲弥陀の妙果をば、 号して無上涅槃といふ」 と。 以上抄出
「弥陀ノ妙果ヲバ、号シテ曰フト↢无上涅槃ト↡。」 已上抄出
一 Ⅱ ⅱ d憬興(¬述文賛¼)
【36】^▼*憬興師のいはく (*述文賛)、
憬 ケイ 興師ノ云ク、
^「△無量光仏 ▼算数にあらざるがゆゑに。
「无量光仏 非ルガ↢算数ニ↡故ニ。
^△無辺光仏 ▼縁として照らさざることなきがゆゑに。
无辺光仏 无キガ↢縁トシテ不ルコト↟照サ故ニ。
^△無礙光仏 ▼*人法としてよく障ふることあることなきがゆゑに。
无光仏 无キガ↠有ルコト↢人法ト而能ク障フルコト↡故ニ。
^△無対光仏 ▼もろもろの菩薩の及ぶところにあらざるがゆゑに。
无対光仏 非ルガ↢諸ノ菩薩之所ニ↟及ブ故ニ。
^△光炎王仏 ▼光明自在にしてさらに上となすことなきがゆゑに。
光炎王仏 光明自在ニシテ更ニ无キガ↠為スコト↠上ト故ニ。
^△清浄光仏 ▼無貪の善根よりして現ずるがゆゑに、 また衆生の貪濁の心を除くなり。 貪濁の心なきがゆゑに清浄といふ。
清浄光仏 従リ↢无貪ノ善根↡而現ズルガ故ニ、亦除ク↢衆生ノ貪濁之心ヲ↡也。无キガ↢貪濁之心↡故ニ云フ↢清浄ト↡。
^△歓喜光仏 ▼無瞋の善根よりして生ずるがゆゑに、 よく衆生の瞋恚盛心を除くがゆゑに。
歓喜光仏 従リ↢无瞋ノ善根↡而生ズルガ故ニ、能ク除クガ↢衆生ノ瞋恚盛心ヲ↡故ニ。
^△智慧光仏 ▼無痴の善根の心より起れり。 また衆生の*無明品心を除くがゆゑに。
智慧光仏 従リ↢无痴ノ善根ノ心↡起レバ、復除クガ↢衆生ノ无明品心ヲ↡故ニ。
^△不断光仏 ▼仏の常光つねに照益をなすがゆゑに。
不断光仏 仏之常光恒ニ為スガ↢照益ヲ↡故ニ。
^△難思光仏 もろもろの二乗の*測度するところにあらざるがゆゑに。
難思光仏 非ザルガ↣諸ノ二乗ノ所ニ↢惻度スル↡故ニ。
^△無称光仏 また*余乗等説くこと堪ふるところにあらざるがゆゑに。
无称光仏 亦非ザルガ↢余乗等所ニ↟堪フル↠説クコト故ニ。
^△超日月光仏 *日応じてつねに照らすこと周からず、 娑婆一耀の光なるがゆゑに。
超日月光仏 ※日ハ応ジテ恒ニ照スコト不↠周カラ、娑婆一耀ク之光ナルガ故ニ。
^▼みなこれ光触を身に蒙るものは▲*身心柔軟の願 (第三十三願) の致すところなり」 と。 以上抄要
皆是蒙ル↢光触ヲ身ニ↡者身心柔軟ノ願之所↠致ス也ト。 已上*抄要
一 Ⅲ 結成【真仏土結釈】
ⅰ 正しく所明を結す
【37】^▼しかれば、 如来の真説、 宗師の釈義、 あきらかに知んぬ、 安養*浄0371刹は真の報土なることを顕す。
0179爾レ者如来ノ真説、宗師ノ釈義、明ニ知ヌ顕ス↢安養浄刹ハ真ノ報土ナルコトヲ↡。
一 Ⅲ ⅱ 対弁して徳を顕す
^▼*惑染の衆生、 ここにして*性を見ることあたはず、 煩悩に覆はるるがゆゑに。 ▼¬経¼ (涅槃経・迦葉品) には、 「△われ十住の菩薩、 少分仏性を見ると説く」 とのたまへり。 ゆゑに知んぬ、 安楽仏国に到れば、 すなはちかならず仏性を顕す。 本願力の回向によるがゆゑに。 また ¬経¼ (涅槃経・迦葉品) には 「△衆生未来に清浄の身を具足し荘厳して、 仏性を見ることを得」 とのたまへり。
惑染ノ衆生於テ↠此ニ不↠能ハ↠見ルコト↠性ヲ、所ルガ↠覆ハ↢煩悩ニ↡故ニ。¬経ニハ¼言ヘリ↤「我説クト↣十住ノ菩薩、少分見ルト↢仏性ヲ↡。」故ニ知ヌ到レバ↢安楽仏国ニ↡、即チ必ズ顕ス↢仏性ヲ↡。由ルガ↢本願力ノ回向ニ↡故ニ。亦¬経ニハ¼言ヘリ↧「衆生未来ニ具↢足シテ荘↣厳シ清浄之身ヲ↡而得ト↞見ルコトヲ↢仏性ヲ↡。」
一 Ⅲ ⅲ 引文・勧進
a 馬鳴¬起信論¼
【38】^▼¬*起信論¼ にいはく、
¬*起信論ニ¼曰ク、
^「ªもし説くといへども、 *能説のありて説くべきもなく、 また能念の念ずべきもなしと知るを、 名づけて随順とす。 もし念を離るるを名づけて得入とすº と。
「若シ知ルヲ↪雖モ↠説クト無ク↧有リテ↢能説ノ↡可キモ↞説ク、亦无シト↩能念ノ可キモ↝念ズ、名ケテ為↢随順ト↡。若シ離ルヽヲ↢於念ヲ↡名ケテ為↢得入ト↡。
^得入とは*真如三昧なり。 いかにいはんや、 無念の位は妙覚にあり、 *けだしもつて了心は初生の相なり。 しかも初相を知るといふは、 いはゆる無念は菩薩十地の知るところにあらず。 しかるに今の人、 なほいまだ十信に階はず、 すなはち*馬鳴大士によらざらんや。 ª説より無説に入り、 ▼念より▼無念に入るº とのたまへり」 と。 略抄▼
得入ト者真如三昧也。況乎无念之位ハ在リ↠於↢妙覚↡、蓋シ以テ了心ハ初生之相也。而モ言フ↠知ルト↢初相ヲ↡者、所ル↠謂ハ无念ハ非ズ↢菩薩十地ノ所ニ↟知ル。而ルニ今之人、尚未ズ ダ↠階ハ↢十信ニ↡、即チ不ラムヤ↠依ラ↢馬鳴大士ニ↡。従リ↠説入リ↢无説ニ↡、従リ↠念入ルトノタマヘリト↢於无念ニ↡。」 略抄
二 対弁【真仮対弁】
Ⅰ 真仮を対弁す
ⅰ 先づ報の義を明かす
【39】^▼それ報を案ずれば、 如来の*願海によりて果成の土を酬報せり。 ゆゑに報といふなり。
夫按ズレ↠報ヲ者、由リテ↢如来ノ願海ニ↡酬↢コタウ報セリ果成ノ土ヲ↡。故ニ曰フ↠報ト也。
二 Ⅰ ⅱ 正しく真仮を弁ず
^しかるに願海について真あり仮あり。 ここをもつてまた0372仏土について真あり仮あり。
然ルニ就イテ↢願海ニ↡有リ↠真有リ↠仮。カリナリ是ヲ以テ復就テ↢仏土ニ↡有リ↠真有リ↠仮。
^選択本願の正因によりて、 真仏土を成就せり。
由リテ↢選択本願之正因ニ↡、成↢就セリ真仏土ヲ↡。
^真仏といふは、 ¬大経¼ (上) には 「△無辺光仏・無礙光仏」 とのたまへり、 また 「△諸仏中の王なり、 光明中の極尊なり」 (大阿弥陀経・上) とのたまへり。 以上 ^¬論¼ (浄土論) には 「△帰命尽十方無礙光如来」 といへり。
言フ↢真仏ト↡者、¬大経ニハ¼言ヘリ↢「无辺光仏・无光仏ト」↡、又言ヘリ↢「諸仏中之王也、*光明中之極尊也ト」↡。 已上 ¬論ニハ¼曰ヘル↢「帰命尽十方无光如0180来ト」↡也。
^真土といふは、 ¬大経¼ には 「△無量光明土」 (平等覚経・二) とのたまへり、 あるいは 「▲*諸智土」 (*如来会・下) とのたまへり。 以上 ^¬論¼ (浄土論) には 「△究竟して虚空のごとし、 広大にして辺際なし」 といふなり。
言フ↢真土ト↡者、¬大経ニハ¼言ヘリ↢「无量光明土ト」↡。或イハ言ヘリ↢「諸智土ト」↡。 已上 ¬論ニハ¼曰フ↧「究竟ジテ如シ↢虚空ノ↡、広大ニシテ无シト↦辺際キワ↥」也。
^往生といふは、 ¬大経¼ (上) には 「▲皆受自然虚無之身無極之体」 とのたまへり。 以上 ^¬論¼ (浄土論) には 「▲如来浄華衆 正覚華化生」 といへり。 また 「▲同一念仏無別道故」 (論註・下) といへり。 以上 ^また 「▲難思議往生」 (法事讃・上) といへるこれなり。
言フ↢往生ト↡者、¬大経ニハ¼言ヘリ↢「皆受自然虚无之身无極之体ト」↡。 已上 ¬論ニハ¼曰ヘリ↢「如来浄華衆正覚華化生ト」↡。又ハ云ヘリ↧「同一念仏シテ无別ノ道故ト」↥。 已上 又云ヘル↢「難思議ハカリ往生ト」↡是也。
^仮の仏土とは、 *下にありて知るべし。
仮之仏土ト者、在リテ↠下ニ応シ↠知ル。
^すでにもつて真仮みなこれ大悲の願海に酬報せり。 ゆゑに知んぬ、 報仏土なりといふことを。 ▼まことに仮の仏土の業因千差なれば、 土もまた千差なるべし。 これを方便化身・化土と0373名づく。
既ニ以テ真仮皆是酬↢報セリ大悲ノ願海ニ↡。故ニ知ヌ報仏土也トイフコトヲ。良ニ仮ノ仏土ノ業因千差シナワイナレバ、土モ復応シ↢千差タガフナル↡。是ヲ名ク↢方便化身・化土ト↡。
二 Ⅱ 一篇の製意を述ぶ
^真仮を知らざるによりて、 如来広大の*恩徳を迷失す。 ^これによりて、 いま真仏・真土を顕す。 これすなはち真宗の正意なり。 *経家・*論家の正説、 浄土*宗師の解義、 仰いで敬信すべし。 ことに奉持すべきなり。 知るべしとなり。
由リテ↠不ルニ↠知ラ↢真仮ヲ↡、迷↢マドヒ失ス如来広大ノ恩徳ヲ↡。因リテ↠茲ニ今顕ス↢真仏・真土ヲ↡。斯乃チ真宗之正意也。経家・論家之正説、浄土宗師之解義、仰イデ可シ↢敬信ス↡、特ニ可キ↢奉ウケタマハリ持ス↡也。可シトナリ↠知ル。
顕浄土真仏土文類 五
延書の底本は本山蔵本(所謂清書本)ˆ原漢文の校訂本Ⓐˇ。
無量光…掩奪日月光 阿弥陀仏の異名である十五光。 ¬大教¼ に説かれる十二光に対応している。
暎蔽日光・暎蔽月光 日光・月光を照らしておおいかくすという意。
掩奪日月光 日月の光をおおいかくしてうばうという意。
前世の宿命 過去世の境涯。
自在の意の所欲 諸仏それぞれの心のままの願。
絶殊無極 すぐれて極まりないこと。
法忍 忍は認可決定の意で、 真理をはっきりと確かめて受け入れること。
非作の所作 人間の分別を離れ、 あるがままにおのずとなされたはたらき。
決定 絶対究極の安定。
名一義異 言葉は同じであっても、 その意味が異なること。
名義倶異 言葉もその意味もともに異なること。
仏の常 仏は常住で、 生滅変化しないという意。
法の常 真理は永遠であるという意。
比丘僧の常 教団が永続するという意。
覚 覚者の意。
不覚 真理はさとるものではなく、 さとられるものであるので不覚という。
非善 善悪という相対的なものを超えているという意。
不羸劣 疲れず衰えないという意で、 阿弥陀仏の徳をあらわす。
乳・酪・生蘇・熟蘇・醍醐 五味のこと。 牛乳より最上の美味である醍醐をつくる精製の順序。 ¬
涅槃経¼ では醍醐味は涅槃に比定される。
天台宗では五味を順に五時に配当し、 教判として用いる。
不可称計 思いはかることができないという意。
菩薩の得道菩提涅槃と名づく 菩薩が道と菩提と涅槃とを得るという意。
道は色像…知んぬべし 通常は 「道は色像の見るべく、 称量して知るべきなしといへども」 と読む。
四楽 断受楽、 寂静楽、 覚知楽、 不壊楽の四をいう。
諸楽 世間のさまざまな楽。
かくのごときの涅槃…有にあらず 通常は 「かくのごとく涅槃もまた有と名づくることを得れども、 しかもこの涅槃は実にこれ有にあらず」 と読む。
説きて諸仏…とのたまへり 通常は 「説きて諸仏に大涅槃有りといふ」 と読む。
業清浄 仏のはたらきには少しも煩悩がまじらないから清浄であること。
これを善男子… ¬涅槃経¼ の原文には 「これを善男子善女人かくのごとく大涅槃経を修業して初分の功徳を具足し成就すと名づく」 とあるが、 語を省略することによって、 大涅槃を得るものを善男子、 善女人と名づくというように転意したのである。
畢竟涅槃にあらざる 如来は絶えず生死の迷いの世界で活動するから、 涅槃にとどまらないという意。
これを菩薩と名づく ¬
涅槃経¼ の原文には 「これを菩薩、 大涅槃微妙の経典を修して、 第七
功徳を具足し成就すと名づく」 とあるが、 語を省略することによって、 従果降因の
還相の徳をあらわそうとしたのであろう。
愛念の心 愛する心。
命を説きて食とす 食することによって生命を維持するから、 食が因、 生命は果であるが、 「食物が生命」 と語るように果の生命を因の食といいあらわす。
色を見て触と名づく 色 (物質) は触 (根・境・識の三者の接触によって感覚や知覚の認識作用が生ずること) によって存在を認められるから、 触が因で色が果であるが、 物質を 「触れるもの」 と語るように果の色を因の触といいあらわす。
衆生の仏性…常とせず 通常は 「衆生の仏性は非内非外にして、 なほし虚空の非内非外なるがごとしと説く。 もしそれ虚空に内外あらば、 虚空を名づけて一とし、 常とせず」 と読む。
知諸根力 衆生の能力や性質の優劣を知る力。
根上下智力ともいう。
十力の一。
定相 常住不変の相。
耆旧長宿 経験を積み、 徳望の高い先輩、 長老。
人に随ひ…たてまつると この文は ¬涅槃経¼ の原文では、【17】の末尾の 「世諦の法を説きて第一義諦とす」 から百三十七字 (原漢文の字数) をへだてた後にある。
他語のため 教えを受ける人の使用している言葉に応じるため。
衆根のため 教えを受ける人々各自の性質や能力に応じるため。
無出 再び迷いの世界に出ることがないこと。
無退 再び迷いの世界に退転しないこと。
大師子王 百獣を畏伏させる獅子のような方。
大医王 すべての煩悩の病をなおす医師のような方。
大象王 群獣を圧する威力をもつ象のような方。
大竜王 神変不思議の威徳をもつ竜のような方。
施眼 衆生に智慧の眼を施す方。
大力士 すぐれた力をもつ力士のような方。
宝聚 功徳の宝を集めた方。
商主 人々を安穏に目的地に導く隊商の長のような方。
独無等侶 世に並ぶものがないほど尊い方。
諦 有漏 (
煩悩のある状態) の五陰は苦諦・集諦に関わり、
無漏 (煩悩のない状態) の五陰は道諦に関わることよりいう。 →
四諦
時 五陰には時間的変化があるからこのようにいう。
衆生 衆生は五陰が仮に和合したものであることよりいう。
世 現象のすがたはすべて五陰が仮に和合したものであることよりいう。
声聞辟支仏と名づく仏をまた 通常は 「声聞・辟支仏・仏と名づく、 また」 と読む。 迷悟不二・悉有仏性の意を強調するために、 本文のように読み改めたのであろう。
是学無学 なお学ぶべき余地を残す有学と、 もはや学ぶべきことのない無学。
一切生老病死…離れたまへれば 通常は 「一切生老病死を離れ、 非白非黒…」 と読む。
十住の菩薩 第
十地 (法雲地) の菩薩のこと。 ¬
涅槃経¼ では菩薩の修行の階位を五十位に分け、 第四十一位より五十位までを十住とする。 この十住は ¬
瓔珞経¼ 五十二位説の十地にあたる。 →
菩薩
少見 実際に見たところが少ないこと。
首楞厳経等の三昧 首楞厳は梵語シューランガマ (śūraṃgama) の音写で、 健相・健行などと漢訳する。 勇猛で堅固な三昧 (深い精神統一の境地) の名。
三千の法門 一切の法門という意。
諸仏如来なり…聞見することあり 通常は 「諸仏如来と十住の菩薩は仏性を眼見す。 また聞見あり…」 と読む。
九地 十地 (十住) の中の第九地 (
善慧地) のことであろう。 →
菩薩
正道…生ず 通常は 「(浄土は) 正道の大慈悲、 出世の善根より生ず」 と読む。 正道は平等の大道、 一如平等のさとりのこと。
法蔵菩薩…ところなり 通常は 「法蔵菩薩、 諸波羅蜜を集めて積習して成ぜるところを指す」 と読む。 →
法蔵菩薩
魚蜯 魚介類。 蜯は、 どぶ貝、 またははまぐり。
釈して…安養といふ 通常は 「釈して無量寿と名づく。 経に傍へて奉讃す。 また安養ともいふ」 と読む。 ¬讃弥陀偈¼ を経典と同等とみて、 本文のように読み改めたのであろう。
尊語を伏承して 釈尊のお言葉をうけたまわって。
そこばく 相当の数量。
いかなるか…あらざる 通常は 「いかんが涅槃の一法のみ化のごとくにあらざる」 と読む。
人法 人は有情 (感情や意識を有するもの。 衆生)、 法は非情 (感情や意識のないもの。 草木・山河・大地など) を指す。
無明品心 一切衆生の愚痴無明の品類に属する心。
日応じて…ゆゑに ¬述文賛¼ の原文は 「日夜恒に照らすこと、 娑婆二曜の輝きに同じからざるゆゑに」 となっている。 二曜とは太陽と月のこと。
能説の…知るを 原文には 「亦」 (また) の上に 「雖念」 (念ずといへども) の字があり、 「能説可説あることなく、 念ずといへども、 また能念可念なしと知るを」 と読む。
けだし…無念は 通常は 「けだし心の初生の相を了するをもってなり。 しかも初相を知るといふは、 いわゆる無念なり」 と読む。 初生の相は、 無始無明の初起、 忽然として無明が起り、 真如が妄想へ初めて動きだした相をいう。 無念は、 妄想分別を離れ、 真如になりきることをいう。
諸智土 阿弥陀仏の
真実報土。
高麗版大蔵経等は 「諸智士」 となっている。 この場合は諸菩薩を意味する。
下 次の 「仮身土巻」 のこと。
底本は◎真宗大谷派蔵親鸞聖人真筆本。 Ⓐ本派本願寺蔵鎌倉時代写本、 Ⓑ高田派専修寺蔵真仏上人書写本、 Ⓒ本派本願寺蔵存如上人授与本、 Ⓓ本派本願寺蔵版 と対校。
設 Ⓐ「十二光明无量之願」と右傍註記
設 Ⓐ「十三寿命无量之願」と右傍註記
願 Ⓐ「光明无量之願成就文土」と左傍にあり
仏 Ⓑ「十二願成就」と右傍註記
其 Ⓑ「三十三願成就」と左傍註記
仏 Ⓑ「十三願成就」と右傍註記
无 Ⓐ「成就土」と左傍にあり
无 Ⓐ「願成就土」と左傍にあり
帛延訳 ◎Ⓐ上欄註記 Ⓑに無し
丈→Ⓑ尺
不 Ⓐ「成就土」と左傍にあり
涅 Ⓐ「成就土」と左傍にあり
死 ◎「生」を「死」と上書訂記
迦→Ⓑ加
略→Ⓑ抄
像→Ⓐ僧(「像歟」と下欄註記)
之 Ⓑに無し
堕→Ⓒ随
是→Ⓒ来(「是」と右傍に貼紙)
是 ◎「亦」を「是」と上欄訂記
略→Ⓑ抄
「又…至」26字 ◎上欄に貼紙
我レ以経ノ中ニ説クニ↢如来ノ身ヲ↡→Ⓑ我レ以テ↢経ノ中ニ説ヲ↡如来身ニ
常→ⒸⒹ[我]常
浄 Ⓐ「成就土」と左傍にあり
註 Ⓐ「成就土」と左傍にあり
云→Ⓑ言
波→Ⓑ婆
諸 Ⓑに無し
法縁 ◎右傍註記→Ⓐ有縁 Ⓑ「或本ニアルイ本ナルベシ」と右下註記
言 Ⓐ「成就土」と左下にあり
「讃…経」25字 ◎に無し 讃 Ⓐ「成就土」と左傍にあり
一 Ⓑに無し
照→Ⓐ照[耀]
惻→Ⓒ測
頽 ◎頽字崩也破也落也纏也と上欄註記
轍 ◎轍字直刹反通也車也跡也と上欄註記
光 Ⓐ「成就土」と左傍にあり
又 Ⓐ「成就土」と左傍にあり
念 ◎「声」を「念」と上書訂記
弁→Ⓒ辨
観 Ⓐ「成就土」と左傍にあり
如 Ⓐ「成就土」と左傍にあり
聖→Ⓑ正
門→Ⓑ聞
分…邪16字→Ⓑ分↢別スル生滅ヲ↡者ハ如シ↠化ノ、不生不滅ノ者ハ不ヲ↠如キニ↠化ノ邪
愁嘆 ◎「或本生死也」と上欄註記→ⒶⒷⒹ生死
日…故13字→Ⓒ日応ガ↢恒ニ照コト不↠周カラ娑婆一耀之カヾヤク光ニ↡故ニ
抄要→Ⓑ抄出→Ⓒ要要
起 Ⓐ「成就土」と左傍にあり
光 Ⓑ「光明中之王也」と上欄註記