0369◎仏説大乗無量寿荘厳経 巻下
*西天*訳経三蔵朝散大夫試光禄卿明教大師*臣法賢奉詔訳
二 Ⅳ ⅲ 十方往覲
【20】◎また次に阿難、 東方恒河沙数の仏刹の一々の刹のなかに、 無量無数の菩薩摩訶薩および無量無数の声聞の衆ありて、 もろもろの香花・幢幡・宝蓋をもつて、 持用して極楽世界の無量寿仏を供養せり。
◎○復次ニ阿難、東方恒河沙数ノ仏刹ノ一一ノ刹ノ中ニ、有リテ↢無量無数ノ菩薩摩訶薩及ビ無量無数ノ声聞之衆↡、以テ↢諸ノ香花・幢幡・宝蓋ヲ↡、持用シテ供↢養セリ極楽世界ノ無量寿仏ヲ↡。
南方恒河沙数の仏刹の一々の刹のなかにも、 また無量無数の菩薩摩訶薩および無量無数の声聞の衆ありて、 もろもろの香花・幢幡・宝蓋をもつて、 持用して極楽世界の無量寿仏を供養せり。
○南方恒河沙数ノ仏刹ノ一一ノ刹ノ中ニモ、亦有リテ↢無量無数ノ菩薩摩訶薩及ビ無量無数ノ声聞之衆↡、以テ↢諸ノ香花・幢幡・宝蓋ヲ↡、持用シテ供↢養セリ極楽世界ノ無量寿仏ヲ↡。
西方恒河沙数の世界の一々の仏刹にも、 また無量無数の菩薩摩訶薩および無量無数の声聞の衆ありて、 もろもろの香花・幢幡・宝蓋をもつて、 持用して極楽世界の無量寿仏を供養せり。
○西方恒河沙数ノ世界ノ一一ノ仏刹ニモ、亦有リテ↢無量無数ノ菩薩摩訶薩及ビ無量無数ノ声聞之衆↡、以テ↢諸ノ香花・幢幡・宝蓋ヲ↡、持用シテ供↢養セリ極楽世界ノ無量寿仏ヲ↡。
北方恒河沙数の仏刹の一々の仏刹にも、 また無量無数の菩薩摩訶薩および無量無数の声聞の衆ありて、 もろもろの香花・幢幡・宝蓋をもつて、 持用して極楽世界の無量寿仏を供養せり。
○北方恒河沙数ノ仏刹ノ一一ノ仏刹ニモ、亦有リテ↢無量無数ノ菩薩摩訶薩及ビ無量無数ノ声聞之衆↡、以テ↢諸ノ香花・幢幡・宝蓋ヲ↡、持用シテ供↢養セリ極楽世界ノ無量寿仏ヲ↡。
四維・上下もまたかくのごとし。 おのおの仏足を礼し、 仏土の功徳荘厳を称讃すと。
○四維・上下モ亦復如シ↠是クノ。各ノ礼シ↢仏足ヲ↡、称↢讃スト仏土ノ功徳荘厳ヲ↡。
・往覲偈
【21】その時世尊すなはち頌を説きてのたまはく、
○爾ノ時世尊即チ説キテ↠頌ヲ曰ク、
東方世界恒河沙の 一々の刹のなかの無数量の
菩薩・声聞勝心を発し おのおの香花・宝蓋等をもつて
~菩薩・声聞発シ↢勝心ヲ↡ | 各ノ以テ↢香花・宝蓋等ヲ↡ |
持して荘厳仏刹のなかに至りて 如来無量寿を供養したてまつる
~持シテ至リテ↢荘厳仏刹ノ中ニ↡ | 供↢養シタテマツル如来無量寿ヲ↡ |
供へをはりて礼足して 最上希有の大福田を称讃す
~供ヘ已リテ礼足シテ而称↢讃ス | 最上希有ノ大福田ヲ↡ |
かくのごとく西・南および北方・ 四維・上下恒沙界の
声聞・菩薩の数もまたしかなり みな香花をもつて供養を伸べ
~声聞・菩薩ノ数モ亦然ナリ | 皆以テ↢香花ヲ↡伸ベ↢供養ヲ↡ |
礼足し旋繞して敬愛を懐く また如来の宿願深くして
~礼足シ旋繞シテ懐ク↢敬愛ヲ↡ | 復讃ズ↧如来ノ宿願深クシテ |
功徳を積集してあまねく 無量無辺の極楽国を荘厳したまふを讃ず
~積↢*集シテ功徳ヲ↡普ク荘↦厳シタマフヲ | 無量無辺ノ極楽国ヲ↥ |
諸仏の国界厳飾なりといへども 如来の宝刹中には比べがたし
●諸仏ノ国界雖モ↢厳飾ナリト↡ | 難シ↠比ベ↢如来ノ宝刹中ニハ↡ |
また天花をもつて仏を供養するに 花虚空に散じて傘蓋となる
復以テ↢天花ヲ↡供↢養スルニ仏ヲ↡ | 花散ジテ↢虚空ニ↡為ル↢傘蓋ト↡ |
縦広の量等しく百由旬なり 色相荘厳比びあることなし
縦広ノ量等シク百由旬ナリ | 色相荘厳無シ↠有ルコト↠比 |
あまねく如来の宝刹中に覆ひて たがひにあひ慶慰して歓喜を生ず
徧ク覆ヒテ↢如来ノ宝刹中ニ↡ | 互ニ相慶慰シテ生ズ↢歓喜ヲ↡ |
かつて過去百千劫において 無量のもろもろの善根を積集し
曽テ於テ↢過去百千劫ニ↡ | 積↢集シ無量ノ衆ノ善根ヲ↡ |
かの輪廻三有の身を捨て いま解脱清浄の刹に至れり
捨テ↢彼ノ輪廻三有ノ身ヲ↡ | *今至レリ↢解脱清浄ノ刹ニ↡ |
その時かの仏無量寿 他方の菩薩の心を化導して
○0371爾ノ時彼ノ仏無量寿 | 化↢導シテ他方ノ菩薩ノ心ヲ↡ |
ひそかに神通を用いて大光を化す その光かの面門より出づること
~密ニ用ヰテ↢神通ヲ↡化ス↢大光ヲ↡ | 其ノ光従リ↢彼ノ面門↡出ヅルコト |
三十六億那由他にして あまねく倶胝千仏の刹を照らす
かくのごときの人天をあまねく照らしをはりて すなはち如来の頂髻中に入る
~如キノ↠是クノ人天ヲ普ク照シ已リテ | 即チ入ル↢如来ノ頂髻中ニ↡ |
時会の一切のもろもろの衆生 仏光の未曽有なるを敬歎し
~時会ノ一切ノ諸ノ衆生 | 敬↢歎シ仏光ノ未曽有ナルヲ↡ |
おのおの倶に菩提心を発す 願はくは塵労を出でて彼岸に登らんと
~各各倶ニ発ス↢菩提心ヲ↡ | 願クハ出デテ↢塵労ヲ↡登ラムト↢彼岸ニ↡ |
【22】その時世尊この偈を説きをはりたまふに、 会中に観自在菩薩ありて、 すなはち座より起ちて合掌し、 仏に向かひてこの言をなせり。 世尊、 なんの因縁をもつてか無量寿仏その面門より無量光を放ちて諸仏の刹を照らしたまふや。 やや願はくは世尊、 方便して解説したまへ。 もろもろの衆生および他方の菩薩をして、 この語を聞きをはりて、 希有の心を生じ、 仏菩提において志楽趣求して不退の位に入らしめんと。
○爾ノ時世尊説キ↢此ノ偈ヲ↡已リタマフニ、会中ニ有リテ↢観自在菩薩↡、即チ従リ↠座起チテ合掌シ、向ヒテ↠仏ニ而作セリ↢是ノ言ヲ↡。世尊、以テカ↢何ノ因縁ヲ↡無量寿仏於リ↢其ノ面門↡放チテ↢無量光ヲ↡照シタマフヤ↢諸仏ノ刹ヲ↡。唯願クハ世尊、方便シテ解説シタマヘ。令メムト↧諸ノ衆生及ビ他方ノ菩薩ヲシテ、聞キ↢是ノ語ヲ↡已リテ、生ジ↢希有ノ心ヲ↡、於テ↢仏菩提ニ↡志楽趣求シテ入ラ↦不退ノ位ニ↥。
【23】その時世尊、 観自在菩薩に告げてのたまはく、 なんぢいまあきらかに聴け、 われなんぢがために説かん。 かの仏如来過去無量無辺阿僧祇劫の前において菩薩たりし時、 大誓言を発したまへり。 われ未来において正覚を成ぜん時、 もし十方世界の無量の衆生ありて、 わが名号を聞きて、 あるいは頂礼し憶念し、 あるいは称讃し帰依し、 あるいは香花供養等をせん。 かくのごときの衆生、 すみやかにわが刹に生じて、 この光明を見れば、 すなはち解脱を得ん。 もし諸菩薩この光明を見れば、 すなはち受記を得て、 不退の位を証し、 手づから香花およびもろもろの供具を持して、 十方界無辺の浄刹に往き、 諸仏を供養して仏事をなし功徳を増益し、 須臾のあひだを経て、 また本土に還り、 もろもろの快楽を受く。 このゆゑに光明しかうして仏頂に入るなり。
○爾ノ時世尊告ゲテ↢観自在菩薩ニ↡言ク、汝今諦ニ聴ケ、吾為ニ↠汝ガ説カム。彼ノ仏如来於テ↢過去無量無辺阿僧祇劫ノ前ニ↡為リシ↢菩薩↡時、発シタマヘリ↢大誓言ヲ↡。我於テ↢未来ニ↡成ゼム↢正覚ヲ↡時、若シ有リテ↢十方世界ノ無量ノ衆生↡、聞キテ↢我ガ名号ヲ↡、或イハ頂礼シ憶念シ、或イハ称讃シ帰依シ、或イハ香花供養等ヲセム。如キノ↠是クノ衆生、速ニ生ジテ↢我ガ刹ニ↡、見レバ↢此ノ光明ヲ↡、即チ得ム↢解脱ヲ↡。若シ諸菩薩0372見レバ↢此ノ光明ヲ↡、即チ得テ↢受記ヲ↡、証シ↢不退ノ位ヲ↡、手ヅカラ持シテ↢香花及ビ諸ノ供具ヲ↡、往キ↢十方界無辺ノ浄刹ニ↡、供↢養シテ諸仏ヲ↡而作シ↢仏事ヲ↡増↢益シ功徳ヲ↡、経テ↢須臾ノ間ヲ↡、復還リ↢本土ニ↡、受ク↢諸ノ快楽ヲ↡。是ノ故ニ光明而シテ入ルナリ↢仏頂ニ↡。
二 Ⅳ ⅳ 道樹楽音荘厳
【24】また次に阿難、 無量寿仏・応・正等覚の所有の菩提の樹は、 高さ一千六百由旬、 よもに布ける枝葉は八百由旬、 根土際に入ること五百由旬にして、 花菓敷栄して無量百千の珍宝の色をなせり。 その樹上において、 また月光摩尼宝・帝釈摩尼宝・如意摩尼宝・持海摩尼宝・大緑宝・莎悉帝迦宝・愛宝瓔珞・大緑宝瓔珞・紅真珠瓔珞・青真珠瓔珞および金銀宝網等をもつて、 種々に荘厳せり。
○復次ニ阿難、無量寿仏・応・正等覚ノ所有ノ菩提之樹ハ、高サ一千六百由旬、四ニ*布ケル枝葉ハ八百由旬、根入ルコト↢土際ニ↡五百由旬ニシテ、花菓敷栄シテ作セリ↢無量百千ノ珍宝之色ヲ↡。於テ↢其ノ樹上ニ↡、復以テ↢月光摩尼宝・帝釈摩尼宝・如意摩尼宝・持海摩尼宝・大緑宝・莎悉帝迦宝・愛宝瓔珞・大緑宝瓔珞・紅真珠瓔珞・青真珠瓔珞及ビ金銀宝網等ヲ↡、種種ニ荘厳セリ。
【25】また次に阿難、 辰時ごとに香風おのづから起こりてこの宝樹を吹く。 樹あひ触して微妙の音を出し、 その声あまねく無量の世界に聞ゆ。
○復次ニ阿難、毎ニ↢於辰時↡香風自ラ起リテ吹ク↢此ノ宝樹ヲ↡。樹相*触シテ出シ↢微妙ノ音ヲ↡、其ノ声普ク聞ユ↢無量ノ世界ニ↡。
衆生聞けばその耳病なく、 乃至阿耨多羅三藐三菩提を成就す。 もし衆生ありてこの樹を見れば、 すなはち成仏に至るまでその中間において眼病を生ぜず。 もし衆生ありて樹の香を聞がば、 すなはち成仏に至るまでその中間において鼻病を生ぜず。 もし衆生ありて樹の菓を食すれば、 すなはち成仏に至るまでその中間において舌また病なし。 もし衆生ありて樹の光に照らさるれば、 すなはち成仏に至るまでその中間において身また病なし。 もし衆生ありて樹を観想すれば、 すなはち成仏に至るまでその中間において心清浄なることを得て、 貪等の煩悩の病を遠離すと。
○衆生聞ケバ者無ク↢其ノ耳病↡、乃至成↢就ス阿耨多羅三藐三菩提ヲ↡。若シ有リテ↢衆生↡見レバ↢此ノ樹ヲ↡者、乃チ至ルマデ↢成仏ニ↡於テ↢其ノ中間ニ↡不↠生ゼ↢眼病ヲ↡。若シ有リテ↢衆生↡聞ゲバ↢樹ノ香ヲ↡者、乃チ至ルマデ↢成仏ニ↡於テ↢其ノ中間ニ↡不↠生ゼ↢鼻病ヲ↡。若シ有リテ↢衆生↡食スレバ↢樹ノ菓ヲ↡者、乃チ至ルマデ↢成仏ニ↡於テ↢其ノ中間ニ↡舌亦無シ↠病。若シ有リテ↢衆生↡樹ノ光ニ照サルレバ者、乃チ至ルマデ↢成仏ニ↡於テ↢其ノ中間ニ↡身亦無シ↠病。若シ有リテ↢衆生↡観↢想スレバ樹ヲ↡者、乃チ至ルマデ↢成仏ニ↡於テ↢其ノ中間ニ↡心得0373テ↢清浄ナルコトヲ↡、遠↢離スト貪等ノ煩悩之病ヲ↡。
仏、 阿難に告げたまはく、 かくのごとく仏刹の花菓樹木、 もろもろの衆生のためにしかうして仏事をなすは、 みなこれかの仏の過去の大願の摂受したまふところなり。
○仏告ゲタマハク↢阿難ニ↡、如ク↠是クノ仏刹ノ花菓樹木、与ニ↢諸ノ衆生ノ↡而シテ作スハ↢仏事ヲ↡、皆是彼ノ仏ノ過去ノ大願之所ナリ↢摂受シタマフ↡。
二 Ⅳ ⅴ 一生補処
【26】また次に阿難、 かの仏刹中のあらゆる現在および未来に生ずる一切の菩薩摩訶薩をして、 一生に阿耨多羅三藐三菩提を得しむるに、 もし菩薩ありて、 宿願をもつてのゆゑに、 生死界に入りて師子吼をなし有情を利益せむとせば、 われ意に随ひて仏事をなさしむ。
○復次ニ阿難、彼ノ仏刹中ノ所有ル現在及ビ未来ニ生ズル一切ノ菩薩摩訶薩ヲシテ、一生ニ令ムルニ↠得↢阿耨多羅三藐三菩提ヲ↡、若シ有リテ↢菩薩↡、以テノ↢宿願ヲ↡故ニ、入リテ↢生死界ニ↡作シ↢師子吼ヲ↡利↢益セムトセバ有情ヲ↡、我令ム↣随ヒテ↠意ニ而作サ↢仏事ヲ↡。
二 Ⅳ ⅵ 菩薩功徳
【27】また次に阿難、 かの仏刹中の一切の菩薩および諸声聞は、 身相端厳に、 円光熾盛にして、 周回照耀すること百千由旬なり。
○復次ニ阿難、彼ノ仏刹中ノ一切ノ菩薩及ビ諸声聞ハ、身相端厳ニ、円光熾盛ニシテ、周*廻照耀スルコト百千由旬ナリ。
二りの菩薩あり、 身光遠く三千大千世界を照らすと。
○有リ↢二ノ菩薩↡、身光遠ク照スト↢三千大千世界ヲ↡。
阿難まうしてまうさく、 この二菩薩の大身光あるは、 その名いかんと。
○阿難白シテ言ク、此ノ二菩薩ノ有ルハ↢大身光↡、其ノ名云何ト。
仏、 阿難に告げたまはく、 二菩薩とは、 一りをば観自在と名づけ、 二りをば大精進と名づく。 現にこの界に居して大利楽をなし、 命終の後まさにかの国に生ずべし。
○仏告ゲタマハク↢阿難ニ↡、二菩薩ト者、一ヲバ名ケ↢観自在ト↡、二ヲバ名ク↢大精進ト↡。○現ニ居シテ↢此ノ界ニ↡作シ↢大利楽ヲ↡、命終之後当ニシ↠生ズ↢彼ノ国ニ↡。
【28】また次に阿難、 かの仏刹中の一切の菩薩は容貌柔和にして、 相好具足せり。
○復次ニ阿難、彼ノ仏刹中ノ一切ノ菩薩ハ容貌柔和ニシテ、相好具足セリ。
禅定・智慧、 通達無礙にして、 神通・威徳、 円満せざることなし。
○禅定・智慧、通達無礙ニシテ、神通・威徳、無シ↠不ルコト↢円満セ↡。
深く法門に入りて、 無生忍を得。
○深ク入リテ↢法門ニ↡、得↢無生忍ヲ↡。
諸仏の秘蔵に究竟し明了に諸根を調伏し、 身心柔軟にして、 寂静大乗涅槃に安住し、 深く正慧に入りて、 また余習なし。
○諸仏ノ秘蔵ニ究竟シ明了ニ調↢伏シ諸根ヲ↡、○身心柔軟ニシテ、○安↢住シ寂静大乗涅*盤ニ↡、○深ク入リテ↢正慧ニ↡、無シ↢復余習↡。
仏の所行の七覚聖道によりて修行して、 五眼真を照らし俗に達す。
○依リテ↢仏ノ所行ノ七覚聖道ニ↡修行シテ、○五眼照シ↠真ヲ達ス↠俗ニ。
弁才総持は自在無礙なり。 よく世間無辺の方便を解し、 いふところ誠諦にして深く義味に入り、 もろもろの有情を度して正法を演説し、 三界平等にしてもろもろの分別を離れ、 無相・無為・無因・無果・無取・無捨・無縛・無脱にして顛倒を遠離す。
○弁才総持ハ自在無礙ナリ。善ク解シ↢世間無辺ノ方便ヲ↡、所↠言フ誠諦ニシテ深ク入リ↢義味ニ↡、度シテ↢諸ノ有情ヲ↡演↢説シ正法ヲ↡、○三界0374平等ニシテ離レ↢諸ノ分別ヲ↡、無相・無為・無因・無果・無取・無捨・無縛・無脱ニシテ遠↢離ス顛倒ヲ↡。
堅固にして動ぜざること須弥山のごとし。
○堅固ニシテ不ルコト↠動ゼ如シ↢須弥山ノ↡。
智慧明了なること日月の朗かなるがごとし。
○智慧明了ナルコト如シ↢日月ノ朗ナルガ↡。
広大なること海のごとくにして功徳の宝を出す。
○広大ナルコト如クニシテ↠海ノ出ス↢功徳ノ宝ヲ↡。
熾盛なること火のごとくにして煩悩の薪を焼く。
○熾盛ナルコト如クニシテ↠火ノ焼ク↢煩悩ノ薪ヲ↡。
忍辱なること地のごとくにして一切平等なり。
○忍辱ナルコト如クニシテ↠地ノ一切平等ナリ。
清浄なること水のごとくにしてもろもろの塵垢を洗ふ。
○清浄ナルコト如クニシテ↠水ノ洗フ↢諸ノ塵垢ヲ↡。
虚空の無辺なるがごとし、 一切に障へられざるがゆゑに。
○如シ↢虚空ノ無辺ナルガ↡、不ルガ↠障ヘラレ↢一切ニ↡故ニ。
蓮花の水より出づるがごとし、 一切の染を離るるがゆゑに。
○如シ↢蓮花ノ出ヅルガ↟水ヨリ、離ルルガ↢一切ノ染ヲ↡故ニ。
雷震の響くがごとし、 法音を出すがゆゑに。
○如シ↢雷震ノ響クガ↡、出スガ↢法音ヲ↡故ニ。
雲の靉靆するがごとし、 法雨を降すがゆゑに。
○如シ↢雲ノ靉靆ルルガ↡、降スガ↢法雨ヲ↡故ニ。
風の樹を動かすがごとし、 菩提の芽を発すがゆゑに。
○如シ↢風ノ動スガ↟樹ヲ、発スガ↢菩提ノ芽ヲ↡故ニ。
牛王の声のごとし、 衆牛に異なるがゆゑに。
○如シ↢牛王ノ声ノ↡、異ナルガ↢衆牛ニ↡故ニ。
竜象の威のごとし、 測るべきこと難きがゆゑに。
○如シ↢竜象ノ威ノ↡、難キガ↠可キコト↠測ル故ニ。
良馬の行くがごとし、 乗るに失なきがゆゑに。
●如シ↢良馬ノ行クガ↡、乗ルニ無キガ↠失故ニ。
師子の坐するがごとし、 怖畏を離るるがゆゑに。
○如シ↢師子ノ坐スルガ↡、離ルルガ↢怖畏ヲ↡故ニ。
尼拘樹のごとし、 覆ふ蔭の大なるがゆゑに。
○如シ↢尼拘樹ノ↡、覆フ蔭ノ大ナルガ故ニ。
須弥山のごとし、 八風に動ぜざるがゆゑに。
○如シ↢須弥山ノ↡、八風ニ不ルガ↠動ゼ故ニ。
金剛の杵のごとし、 邪山を破するがゆゑに。
●如シ↢金剛ノ杵ノ↡、破ルガ↢邪山ヲ↡故ニ。
梵王の身のごとし、 梵衆を生ずるがゆゑに。
○如シ↢梵王ノ身ノ↡、生ズルガ↢梵衆ヲ↡故ニ。
金翅鳥のごとし、 毒竜を食するがゆゑに。
○如シ↢金翅鳥ノ↡、食スルガ↢毒竜ヲ↡故ニ。
空中の禽のごとし、 住処なきがゆゑに。
○如シ↢空中ノ禽ノ↡、無キガ↢住処↡故ニ。
慈氏のごとし、 法界を観ずること等しきがゆゑに。
○如シ↢慈氏ノ↡、観ズルコト↢法界ヲ↡等シキガ故ニ。
かくのごときの菩薩仏刹に徧満して法螺を吹き、 法幢を竪て、 法鼓を撃ち、 法灯を然し、 過を離れて清浄にして、 迷なく失なし。 手中より花鬘・瓔珞・塗香・末香、 一切の供具を出生し、 持して百千倶胝那由他の仏刹に往きて諸仏を供養し、 また手中より別に宝花を出して、 虚空中に散ずるに、 化して宝蓋となること、 広さ十由旬、 あるいは二十由旬、 乃至百千由旬にして、 もろもろの仏刹に徧す。 須臾のあひだを経て、 本国に還来して、 無愛・無著・無取・無捨にして、 身心寂静なりと。
○如キノ↠是クノ菩薩徧↢満シテ仏刹ニ↡吹キ↢法螺ヲ↡、竪テ↢法幢ヲ↡、撃チ↢法鼓ヲ↡、然シ↢法灯ヲ↡、離レテ↠過ヲ清浄ニシテ、無ク↠迷無シ↠失。手中ヨリ出↢生シ花鬘・瓔珞・塗香・*粖香、一切ノ供具ヲ↡、持シテ往キテ↢百千倶胝那由他ノ仏刹ニ↡供↢養シ諸仏ヲ↡、復於リ↢手中↡別ニ出シテ↢宝花ヲ↡、散ズルニ↢虚空中ニ↡、化シテ成ルコト↢宝蓋ト↡、広サ十由旬、或イハ二十由旬、乃至百千由旬ニシテ、徧ス↢諸ノ仏刹ニ↡。経テ↢須臾ノ間ヲ↡、還↢来シテ本国ニ↡、無愛・無著・無取・無捨ニシテ、身心寂静ナリト。
【29】仏、 阿難に告げたまはく、 この諸菩薩はわが土五濁の所にはあることなし。 百千倶胝劫を経て説くとも尽くすことあたはずと。
○仏0375告ゲタマハク↢阿難ニ↡、此ノ諸菩薩ハ我ガ土五濁之所ニハ無シ↠有ルコト。経テ↢百千倶胝劫ヲ↡説クトモ不ト↠能ハ↠尽スコト。
二 Ⅴ 釈迦指勧
ⅰ 霊山現土
【30】仏、 阿難に告げたまはく、 わがいまの此土のあらゆる菩薩摩訶薩は、 すでにかつて無量の諸仏を供養し、 もろもろの徳本を植えたり。 命終の後、 みな極楽世界に生ずることを得ん。 阿難、 なんぢ起ちて合掌し、 西に面して頂礼せよと。
●仏告ゲタマハク↢阿難ニ↡、吾ガ今ノ此土ノ所有ル菩薩摩訶薩ハ、已ニ曽テ供↢養シ無量ノ諸仏ヲ↡、植エタリ↢衆ノ徳本ヲ↡。命終之後、皆得ム↠生ズルコトヲ↢於極楽世界ニ↡。○阿難、汝起チテ合掌シ、面シテ↠西ニ頂礼セヨト。
その時阿難、 すなはち座より起ちて合掌し、 西に面して頂礼するあひだに、 忽然として極楽世界の無量寿仏を見ることを得たり。 容顔広大にして色相端厳なること黄金山のごとし。 また十方世界の諸仏如来の無量寿仏の種々の功徳を称揚し讃歎したまふを聞けり。
○爾ノ時阿難、即チ従リ↠座起チテ合掌シ、面シテ↠西ニ頂礼スル之間ニ、●忽然トシテ得タリ↠見ルコトヲ↢極楽世界ノ無量寿仏ヲ↡。容顔広大ニシテ色相端厳ナルコト如シ↢黄金山ノ↡。又聞ケリ↤十方世界ノ諸仏如来ノ称↢揚シ讃↣歎シタマフヲ無量寿仏ノ種種ノ功徳ヲ↡。
阿難まうしてまうさく、 かの仏の浄刹未曽有を得たり。 われまたかの土に生ぜんと願楽すと。 世尊告げてのたまはく、 そのなかに生ずるもの、 菩薩摩訶薩もすでにかつて無量の諸仏に親近してもろもろの徳本を植えたり。 なんぢかしこに生ぜんと欲せば、 まさに一心に帰依し瞻仰すべしと。
●阿難白シテ言ク、彼ノ仏ノ浄刹得タリ↢未曽有ヲ↡。我亦願↣楽スト生ゼムト↢於彼ノ土ニ↡。世尊告ゲテ言ク、其ノ中ニ生ズルニ者、菩薩摩訶薩モ已ニ曽テ親↢近シテ無量ノ諸仏ニ↡植エタリ↢衆ノ徳本ヲ↡。汝欲セバ↠生ゼムト↠彼ニ、応ニ当シト↢一心ニ帰依シ瞻仰ス↡。
この語をなす時、 無量寿仏手掌のなかより無量の光を放ちて、 東方百千倶胝那由他の仏刹を照らしたまふ。 ここにおいて世界のあらゆる黒山・雪山・金山・宝山・目真隣陀山・摩訶目真隣陀山・須弥山・鉄囲山・大鉄囲山・大海・江河・叢林・樹木および天人の宮殿の一切の境界、 照見せざることなし。
○作ス↢是ノ語ヲ↡時、無量寿仏於リ↢手掌ノ中↡放チテ↢無量ノ光ヲ↡、照シタマフ↢*于東方百千倶胝那由他ノ仏刹ヲ↡。於テ↠此ニ世界ノ所有ル黒山・雪山・金山・宝山・目真隣陀山・摩訶目真隣陀山・須弥山・鉄囲山・大鉄囲山・大海・江河・叢林・樹木及ビ天人ノ宮殿ノ一切ノ境界、無シ↠不ルコト↢照見セ↡。
たとへば日の出でてあきらかに世間を照らすがごとく、 またかくのごとし。 その時会中の苾芻・苾芻尼・優婆塞・優婆夷・天・竜・薬叉・乾闥婆・阿修羅・迦楼羅・緊那羅・摩睺羅伽・人・非人等、 みな極楽世界の種々の荘厳を見、 および無量寿如来を見たてまつるに声聞・菩薩の囲繞し恭敬すること、 たとへば須弥山王の大海に出づるがごとし。
○譬ヘバ如ク↣日ノ出デテ明カニ照スガ↢世間ヲ↡、亦復如シ↠是クノ。爾ノ時会中ノ苾芻・苾芻尼・優婆塞・優婆夷・天・竜・薬叉・乾闥婆・阿修羅・迦楼羅・緊那羅・摩睺羅0376伽・人・非人等、皆見↢極楽世界ノ種種ノ荘厳ヲ↡、及ビ見タテマツルニ↢無量寿如来ヲ↡声聞・菩薩ノ囲繞シ恭敬スルコト、譬ヘバ如シ↣須弥山王ノ出ヅルガ↢*于大海ニ↡。
その時極楽世界は西方百千倶胝那由他の国を過ぎたれども、 仏の威力をもつて目前に対するがごとし。 またかの土を見るに、 清浄平正なること、 たとへば海面のごとく丘陵・山嶮・草木・雑穢あることなし。 ただこれ衆宝もつて荘厳し、 聖賢共住せり。
○爾ノ時極楽世界ハ過ギタレドモ↢於西方百千倶胝那由他ノ国ヲ↡、以テ↢仏ノ威力ヲ↡如シ↠対スルガ↢目前ニ↡。又見ルニ↢彼ノ土ヲ↡、清浄平正ナルコト、譬ヘバ如ク↢海面ノ↡無シ↠有ルコト↢丘陵・山嶮・草木・雑穢↡。唯是衆宝モテ荘厳シ、聖賢共住セリ。
【31】また次に阿難、 またかの無量寿仏ともろもろの菩薩・声聞の衆と、 またみなわが身および娑婆世界の菩薩・声聞・人・天の衆を見ることを得たりと。
○復次ニ阿難、又彼ノ無量寿仏ト与↢諸ノ菩薩・声聞之衆↡、亦皆得タリト↠見ルコトヲ↢我ガ身及ビ娑婆世界ノ菩薩・声聞・人・天之衆ヲ↡。
二 Ⅴ ⅱ 胎化得失
【32】その時世尊慈氏菩薩に告げてのたまはく、 なんぢ極楽世界の功徳荘厳、 宮殿・楼閣・園林・台観・流泉・浴池を見れりやいなや。 慈氏、 なんぢ欲界諸天より上色究竟天に至るまで、 種々の香花を雨らし、 仏刹に徧満して荘厳をなすを見れりやいなや。
○爾ノ時世尊告ゲテ↢慈氏菩薩ニ↡言ク、汝見レリヤ↢極楽世界ノ功徳荘厳、宮殿・楼閣・園林・台観・流泉・浴池ヲ↡不ヤ。慈氏、汝見レリヤ↧欲界諸天ヨリ上至ルマデ↢色究竟天ニ↡、雨ラシ↢種種ノ香花ヲ↡、徧↢満シテ仏刹ニ↡作スヲ↦荘厳ヲ↥不ヤ。
なんぢ菩薩・声聞浄行の衆のしかうして仏声をなし妙法を演説して、 一切の仏刹みな声を聞くことを得て、 利楽を獲るを見れりやいなや。
○汝見レリヤ↧菩薩・声聞浄行之衆ノ而シテ作シ↢仏声ヲ↡演↢説シテ妙法ヲ↡、一切ノ仏刹皆得テ↠聞クコトヲ↠声ヲ、獲ルヲ↦利楽ヲ↥不ヤ。
なんぢ百千倶胝の衆生虚空に游処して宮殿身に随ふを見れりやいなやと。
○汝見レリヤ↧百千倶胝ノ衆生游↢処シテ虚空ニ↡宮殿随フヲ↞身ニ不ヤト。
慈氏菩薩、 仏にまうしてまうさく、 世尊、 仏の所説のごとく一々にみな見たりと。
○慈氏菩薩、白シテ↠仏ニ言ク、世尊、如ク↢仏ノ所説ノ↡一一ニ皆見タリト。
慈氏まうしてまうさく、 いかんぞこの界の一類の衆生、 また善を修すといへども生ずることを求めざるやと。 仏、 慈氏に告げたまはく、 これらの衆生は智慧微浅にして、 西方は天界に及ばずと分別せり。 これをもつて楽にあらずとしてかしこに生ぜんことを求めざるなりと。 慈氏まうしてまうさく、 これらの衆生は虚妄分別して仏刹を求めず、 なんぞ輪廻を免れんと。
●慈氏白シテ言ク、云何ゾ此ノ界ノ一類ノ衆生、雖モ↢亦修スト↟善ヲ而不ルヤト↠*求メ↠生ズルコトヲ。仏告ゲタマハク↢慈氏ニ↡、此等ノ衆生ハ智慧微浅ニシテ、分↢別セリ西方ハ不ト↟及バ↢天界ニ↡。是ヲ以テ非ズトシテ↠楽ニ不ルナリト↠求メ↠生ゼムコトヲ↠彼ニ。慈氏白シテ言ク、此等ノ衆生ハ虚妄分別シテ不↠求メ↢仏刹ヲ↡、何ゾ免レムト↢輪廻ヲ↡。
仏、 慈氏にのたまはく、 極楽国中に胎生ありやいなやと。
○仏言ク↢慈氏ニ↡、極楽国中0377ニ有リヤ↢胎生↡不ヤト。
慈氏まうしてまうさく、 いななり。
○慈氏白シテ言ク、不也。
世尊、 そのなかに生ずるものは、 たとへば欲界の諸天の五百由旬の宮殿に居して自在に遊戯するがごとし。 なんぞ胎生あらん。
○世尊、其ノ中ニ生ズル者ハ、譬ヘバ如シ↧欲界ノ諸天ノ居シテ↢五百由旬ノ宮殿ニ↡自在ニ遊戯スルガ↥。何ゾ有ム↢胎生↡。
世尊、 この界の衆生はなんの因なんの縁ありて胎生に処するやと。
○世尊、此ノ界ノ衆生ハ何ノ因何ノ縁アリテ而処スルヤト↢胎生ニ↡。
仏、 慈氏にのたまはく、 これらの衆生の種うるところの善根は、 相を離るることあたはず、 仏慧を求めず、 みだりに分別を生じて、 深く世楽と人間の福報に著す。 このゆゑに胎生なり。
○仏言ク↢慈氏ニ↡、此等ノ衆生ノ所ノ↠種ウル善根ハ、不↠能ハ↠離ルルコト↠相ヲ、不↠求メ↢仏慧ヲ↡、妄ニ生ジテ↢分別ヲ↡、深ク著ス↢世楽ト人間ノ福報ニ↡。○是ノ故ニ胎生ナリ。
もし衆生ありて、 無相の智慧をもつて、 もろもろの徳本を植え、 身心清浄にして、 分別を遠離し、 浄刹に生ぜんことを求めて、 仏菩提に趣かば、 この人命終刹那のあひだに、 仏の浄土において宝蓮花に坐し身相具足せむ。 なんぞ胎生あらん。
○若シ有リテ↢衆生↡、以テ↢無相ノ智慧ヲ↡、植エ↢衆ノ徳本ヲ↡、身心清浄ニシテ、遠↢離シ分別ヲ↡、求メテ↠生ゼムコトヲ↢浄刹ニ↡、趣カバ↢仏菩提ニ↡、是ノ人命終刹那之間ニ、於テ↢仏ノ浄土ニ↡坐シ↢宝蓮花ニ↡身相具足セム。何ゾ有ラム↢胎生↡。
慈氏、 なんぢ愚痴の人を見よ、 善根を種えず、 ただ世智聰弁をもつて、 みだりに分別を生じ、 邪心を増益す。 いかんぞ生死の大難を出離せん。 また衆生ありて、 善根を種え三宝を供養し大福田となるといへども、 取相分別し、 情執深重にして、 輪廻を出づることを求むとも、 つひに得ることあたはずと。
○慈氏、汝見ヨ↢愚痴之人ヲ↡、不↠種エ↢善根ヲ↡、但以テ↢世智聰弁ヲ↡、妄ニ生ジ↢分別ヲ↡、増↢益ス邪心ヲ↡。云何ゾ出↢離セム生死ノ大難ヲ↡。復有リテ↢衆生↡、雖モ↧種エ↢善根ヲ↡供↢養シ三宝ヲ↡作ルト↦大福田ト↥、取相分別シ、情執深重ニシテ、求ムトモ↠出ヅルコトヲ↢輪廻ヲ↡、終ニ不ト↠能ハ↠得ルコト。
仏、 慈氏に告げたまはく、 たとへば潅頂位を受くる刹帝利王、 一つの大獄を置きて、 その獄内において、 殿堂・楼閣を安置し、 鉤欄・窓牖・床榻・座具、 みな珍宝をもつて厳飾し、 須ゐるところの衣服・飲食豊足せずといふことなからんに、 その時潅頂王太子を駆逐して獄中に禁閉し、 また銭財・珍宝・羅紈・匹帛を与へて意を恣いままにして受用せしめんがごとしと。
○仏告ゲタマハク↢慈氏ニ↡、譬ヘバ如シト↧受クル↢潅頂位ヲ↡刹帝利王、置キテ↢一ノ大獄ヲ↡、於テ↢其ノ獄内ニ↡、安↢置シ殿堂・楼閣ヲ↡、鉤*欄・窓牖・床榻・座具、皆以テ↢珍宝ヲ↡厳飾シ、所ノ↠須ヰル衣服・飲食無カラムニ↠不トイフコト↢豊足セ↡、爾ノ時潅頂王駆↢逐シテ太子ヲ↡禁↢閉シ獄中ニ↡、復与ヘテ↢銭財・珍宝・羅紈・匹帛ヲ↡恣ニシテ↠意ヲ受用セシメムガ↥。
【33】仏、 慈氏に告げたまはく、 意においていかん。 かの太子快楽を得んやいなやと。
○仏告ゲタマハク↢慈氏ニ↡、於テ↠意ニ云何ン。彼ノ太子得ムヤ↢快楽ヲ↡不ヤト。
慈氏まうしてまうさく、 いななり。 世尊、 かしこのなかに堂殿・楼閣・飲食・衣服・銭帛・金宝ありて意に随ひて受用すといへども、 身牢獄に閉ぢられ、 心自在ならざれば、 ただ出離せんことを求めんと。
○慈氏白シテ言ク、不也。世尊、彼ノ中ニ雖モ↧有リテ↢堂殿・楼閣・飲食・衣服・銭帛・金宝↡随ヒテ↠意ニ受用スト↥、身閉ヂラレ↢牢獄ニ↡、心不レバ↢自在0378ナラ↡、唯求メムト↢出離セムコトヲ↡。
仏、 慈氏に告げたまはく、 もし潅頂王その過を捨さざらんに、 かのもろもろの大臣・長者・居士等、 太子をして禁獄を免れしむべきやいなやと。 慈氏まうしてまうさく、 王すでに捨さざれば、 いかんぞ出づることを得んと。
●仏告ゲタマハク↢慈氏ニ↡、若シ潅頂王不ラムニ↠捨サ↢其ノ過ヲ↡、彼ノ諸ノ大臣・長者・居士等、可キヤ↠令ム↣太子ヲシテ免レ↢禁獄ヲ↡不ヤト。慈氏白シテ言ク、王既ニ不レバ↠捨サ、云何ゾ得ムト↠出ヅルコトヲ。
仏のたまはく、 かくのごとしかくのごとし。 かのもろもろの衆生また福を修して三宝を供養すといへども、 虚妄分別して、 人天の果を求めば、 報を得る時、 所居の器界は宮殿・楼閣・衣服・臥具・飲食・湯薬、 一切須ゐるところことごとくみな豊足すれども、 しかもいまだ三界の獄中を出づることあたはず、 つねに輪廻に処して自在ならず。
○仏言ク、如シ↠是クノ如シ↠是クノ。彼ノ諸ノ衆生雖モ↣復修シテ↠福ヲ供↢養スト三宝ヲ↡、虚妄分別シテ、求メバ↢人天ノ果ヲ↡、得ル↠報ヲ之時、所居ノ器界ハ宮殿・楼閣・衣服・臥具・飲食・湯薬、一切所↠須ヰル悉ク皆豊足スレドモ、而モ未ダ↠能ハ↠出ヅルコト↢三界ノ獄中ヲ↡、常ニ処シテ↢輪廻ニ↡而不↢自在ナラ↡。
たとひ父母・妻子・男女・眷属、 あひ救ひ免れしめんと欲すとも、 つひに出づることあたはず、 邪見の業王よく捨離することなからん。
●仮使父母・妻子・男女・眷属、欲ストモ↢相救ヒ免レシメムト↡、終ニ不↠能ハ↠出ヅルコト、邪見ノ業王*無カラム↢能ク捨離スルコト↡。
もしもろもろの衆生妄分別を断じて、 もろもろの善本を植え、 無相無著ならば、 まさに仏刹に生じて永く解脱を得べしと。
○若シ諸ノ衆生断ジテ↢妄分別ヲ↡、植エ↢諸ノ善本ヲ↡、無相無著ナラバ、当ニシト↧生ジテ↢仏刹ニ↡永ク得↦解脱ヲ↥。
二 Ⅴ ⅲ 諸方来生
慈氏菩薩、 仏にまうしてまうさく、 世尊、 いまこの娑婆世界およびもろもろの仏刹に、 幾多の菩薩摩訶薩ありてか、 極楽世界に生ずることを得、 無量寿仏を見たてまつり、 阿耨多羅三藐三菩提を成就すると。
○慈氏菩薩、白シテ↠仏ニ言ク、世尊、今此ノ娑婆世界及ビ諸ノ仏刹ニ、有リテカ↢幾多ノ菩薩摩訶薩↡、得↠生ズルコトヲ↢極楽世界ニ↡、見タテマツリ↢無量寿仏ヲ↡、成↢就スルト阿耨多羅三藐三菩提ヲ↡。
【34】仏、 慈氏にのたまはく、 わがこの娑婆世界に、 七十二倶胝那由他の菩薩摩訶薩あり、 すでにかつて無量の諸仏を供養し、 もろもろの徳本を植え、 まさにかの国に生じて無量寿仏に親近し供養したてまつり、 阿耨多羅三藐三菩提を成就すべしと。
○仏言ク↢慈氏ニ↡、我ガ此ノ娑婆世界ニ、有リ↢七十二倶胝那由他ノ菩薩摩訶薩↡、已ニ曽テ供↢養シ無量ノ諸仏ヲ↡、植エ↢衆ノ徳本ヲ↡、当ニシト↧生ジテ↢彼ノ国ニ↡親↢近シ供↣養シタテマツリ無量寿仏ニ↡、成↦就ス阿耨多羅三藐三菩提ヲ↥。
【35】また次に阿難、 難忍仏刹に、 十八倶胝那由他の菩薩摩訶薩ありて、 かの国土に生ぜん。
○復次ニ阿難、難忍仏刹ニ、有リテ↢十八倶胝那由他ノ菩薩摩訶薩↡、生ゼム↢彼ノ国土ニ↡。
宝蔵仏刹に、 九十倶胝那由他の菩薩摩訶薩ありて、 かの国土に生ぜん。
○宝蔵仏刹ニ、有リテ↢九十倶胝那由他ノ菩薩摩訶薩↡、生ゼム↢彼ノ国土ニ↡。
火光仏刹に、 二十二倶胝那由他の菩薩摩訶薩ありて、 かの国土に生ぜん。
○火光仏刹ニ、有0379リテ↢二十二倶胝那由他ノ菩薩摩訶薩↡、生ゼム↢彼ノ国土ニ↡。
無量光仏刹に、 二十五倶胝那由他の菩薩摩訶薩ありて、 かの国土に生ぜん。
○無量光仏刹ニ、有リテ↢二十五倶胝那由他ノ菩薩摩訶薩↡、生ゼム↢彼ノ国土ニ↡。
世灯仏刹に、 六十倶胝那由他の菩薩摩訶薩ありて、 かの国土に生ぜん。
○世灯仏刹ニ、有リテ↢六十倶胝那由他ノ菩薩摩訶薩↡、生ゼム↢彼ノ国土ニ↡。
竜樹仏刹に、 一千四百の菩薩摩訶薩ありて、 かの国土に生ぜん。
○竜樹仏刹ニ、有リテ↢一千四百菩薩摩訶薩↡、生ゼム↢彼ノ国土ニ↡。
無垢光仏刹に、 二十五倶胝那由他の菩薩摩訶薩ありて、 かの国土に生ぜん。
○無垢光仏刹ニ、有リテ↢二十五倶胝那由他ノ菩薩摩訶薩↡、生ゼム↢彼ノ国土ニ↡。
師子仏刹に、 一千八百の菩薩摩訶薩ありて、 かの国土に生ぜん。
○師子仏刹ニ、有リテ↢一千八百菩薩摩訶薩↡、生ゼム↢彼ノ国土ニ↡。
吉祥峰仏刹に、 二千一百倶胝那由他の菩薩摩訶薩ありて、 かの国土に生ぜん。
○吉祥峰仏刹ニ、有リテ↢二千一百倶胝那由他ノ菩薩摩訶薩↡、生ゼム↢彼ノ国土ニ↡。
仁王仏刹に、 一千倶胝那由他の菩薩摩訶薩ありて、 かの国土に生ぜん。
○仁王仏刹ニ、有リテ↢一千倶胝那由他ノ菩薩摩訶薩↡、生ゼム↢彼ノ国土ニ↡。
花幢仏刹に、 一倶胝の菩薩摩訶薩ありて、 かの国土に生ぜん。
○花幢仏刹ニ、有リテ↢一倶胝菩薩摩訶薩↡、生ゼム↢彼ノ国土ニ↡。
光明王仏刹に、 十二倶胝の菩薩摩訶薩ありて、 かの国土に生ぜん。
○光明王仏刹ニ、有リテ↢十二倶胝菩薩摩訶薩↡、生ゼム↢彼ノ国土ニ↡。
得無畏仏刹に、 六十九倶胝那由他の菩薩摩訶薩ありて、 かの国土に生ぜん、 ことごとくみな無量寿仏に親近し供養したてまつり、 久しからずししてまさに阿耨多羅三藐三菩提を成ずべしと。
○得無畏仏刹ニ、有リテ↢六十九倶胝那由他ノ菩薩摩訶薩↡、生ゼム↢彼ノ国土ニ↡、悉ク皆親↢近シ供↣養シタテマツリ無量寿仏ニ↡、不シテ↠久シカラ当ニシト↠成ズ↢阿耨多羅三藐三菩提ヲ↡。
仏、 慈氏にのたまはく、 かくのごときの功徳荘厳の極楽国土は、 かの算数無量の劫を満てて説くとも尽くすことあたはず。
○仏言ク↢慈氏ニ↡、如キノ↠是クノ功徳荘厳ノ極楽国土ハ、満テテ↢彼ノ算数無量之劫ヲ↡説クトモ不↠能ハ↠尽スコト。
【36】もし善男子・善女人ありて、 無量寿仏の名号を聞くことを得て、 一念の信心を発して、 帰依し瞻礼せん。 まさに知るべし、 この人はこれ小乗にあらず、 わが法のなかにおいて第一の弟子と名づくることを得と。
●若シ有リテ↢善男子・善女人↡、得テ↠聞クコトヲ↢無量寿仏ノ名号ヲ↡、発シテ↢一念ノ信心ヲ↡、帰依シ瞻礼セム。当ニシ↠知ル、此ノ人ハ非ズ↢是小乗ニ↡、於テ↢我ガ法ノ中ニ↡得ト↠名クルコトヲ↢第一ノ弟子ト↡。
仏、 慈氏に告げたまはく、 もし苾芻・苾芻尼・優婆塞・優婆夷・天・竜・薬叉・乾闥婆・阿修羅・迦楼羅・緊那羅・摩睺羅伽・人・非人等ありて、 この経典において書写し供養し、 受持し読誦して、 他のために演説し、 乃至一昼夜においてかの刹および仏身の功徳を思惟せん。 この人命終してすみやかにかしこに生ずることを得て、 阿耨多羅三藐三菩提を成就せん。
●仏告ゲタマハク↢慈氏ニ↡、若シ有リテ↢苾芻・苾芻尼・優婆塞・優婆夷・天・竜・薬叉・乾闥婆・阿修羅・迦楼羅・緊那羅0380・摩睺羅伽・人・非人等↡、於テ↢此ノ経典ニ↡書写シ供養シ、受持シ読誦シテ、為ニ↠他ノ演説シ、乃至於テ↢一昼夜ニ↡思↢惟セム彼ノ刹及ビ仏身ノ功徳ヲ↡。此ノ人命終シテ速ニ得テ↠生ズルコトヲ↠彼ニ、成↢就セム阿耨多羅三藐三菩提ヲ↡。
三 流通分
Ⅰ 慈氏付属
【37】また次に慈氏、 いまこの経典は甚深微妙にして、 広く衆生を利す。 もし衆生ありて、 この正法において、 受持し読誦し、 書写し供養せん。
○復次ニ慈氏、今此ノ経典ハ甚深微妙ニシテ、広ク利ス↢衆生ヲ↡。若シ有リテ↢衆生↡、於テ↢此ノ正法ニ↡、受持シ読誦シ、書写シ供養セム。
かの人臨終に、 たとひ三千大千世界のなかに満てらん大火をも、 またよく超過してかの国土に生ぜん。
○彼ノ人臨終ニ、仮使三千大千世界ノ満テラム↠中ニ大火ヲモ、亦能ク超過シテ生ゼム↢彼ノ国土ニ↡。
この人すでにかつて過去の仏に値ひて菩提の記を受け、 一切の如来に同じく称讃せられ、 無上菩提意に随ひて成就せんと。
●是ノ人已ニ曽テ値ヒテ↢過去ノ仏ニ↡*受ケ↢菩提ノ記ヲ↡、一切ノ如来ニ同ジク所レ↢称讃セ↡、無上菩提随ヒテ↠意ニ成就セムト。
仏、 慈氏にのたまはく、 仏世は値ひがたく、 正法は聞きがたし。 如来の所行また随ひて行ずべし。 この経典において大守護をなし、 もろもろの有情のために長夜に利益して、 衆生をして五趣荘厳の獄中に堕在せしむることなかれ。 もろもろの有情をして福善を種修せしめ、 浄刹に生ぜんことを求めしめよと。
○仏言ク↢慈氏ニ↡、仏世ハ難ク↠値ヒ、正法ハ難シ↠聞キ。如来ノ所行亦応シ↢随ヒテ行ズ↡。於テ↢此ノ経典ニ↡作シ↢大守護ヲ↡、為ニ↢諸ノ有情ノ↡長夜ニ利益シテ、莫レ↠令ムルコト↣衆生ヲシテ堕↢在セ五趣荘厳ノ獄中ニ↡。令メヨト↧諸ノ有情ヲシテ種↢修セシメ福善ヲ↡、求メ↞生ゼムコトヲ↢浄刹ニ↡。
三 Ⅱ 流通偈
【38】その時世尊しかうして頌を説きてのたまはく、
●爾ノ時世尊而シテ説キテ↠頌ヲ曰ク、
もし往昔に福慧を修せざれば この正法において聞くことあたはず
○若シ不レバ↣往昔ニ修セ↢福慧ヲ↡ | 於テ↢此ノ正法ニ↡不↠能ハ↠聞クコト |
すでにかつてもろもろの如来を供養せり このゆゑになんぢらこの義を聞けり
○已ニ曽テ供↢養セリ諸ノ如来ヲ↡ | 是ノ故ニ汝等聞ケリ↢斯ノ義ヲ↡ |
ききをはりて受持しおよび書写し 読誦し讃演してならびに供養せよ
●聞キ已リテ受持シ及ビ書写シ | 読誦シ讃演シテ并ニ供養セヨ |
かくのごとく一心に浄方を求むれば 決定して極楽国に往生せん
●如ク↠是クノ一心ニ求ムレバ↢浄*方ヲ↡ | 決定シテ往↢生セム極楽国ニ↡ |
たとひ大火三千に満てらんも およびかの荘厳せるもろもろの牢獄も
○0381仮使大火満テラムモ↢三千ニ↡ | 及ビ彼ノ荘厳セル諸ノ牢獄モ |
かくのごときの諸難ことごとくよく超えん みなこれ如来の威徳力なり
●如キノ↠是クノ諸難悉ク能ク超エム | 皆是如来ノ威徳力ナリ |
かの仏の利楽のもろもろの功徳は ただ仏と仏とのみすなはちよく知りたまふ
●彼ノ仏ノ利楽ノ諸ノ功徳ハ | 唯仏ト与ノミ↠仏乃チ能ク知リタマフ |
声聞・縁覚世間に満ちて その神力を尽くすともよく測ることなけん↡
○声聞・縁覚満チテ↢世間ニ↡ | ○尽ストモ↢其ノ神力ヲ↡莫ケム↢能ク測ルコト↡ |
たとひ長寿のもろもろの有情 命無数倶胝劫に住して
●仮使長寿ノ諸ノ有情 | 命住シテ↢無数倶胝劫ニ↡ |
如来の功徳身を称讃せんに その形寿を尽くして讃ずとも尽くることなけん
~称↢讃セムニ如来ノ功徳身ヲ↡ | 尽シテ↢其ノ形寿ヲ↡讃ズトモ無ケム↠尽クルコト |
大聖法王の説法したまふところ 一切のもろもろの群生を利益したまふ
○大聖法王ノ所↢説法シタマフ↡ | 利↢益シタマフ一切ノ諸ノ群生ヲ↡ |
もし受持し恭敬するものあらば 仏この人真の善友なりと説きたまふと
~若シ有ラバ↢受持シ恭敬スル者↡ | 仏説キタマフト↢此ノ人真ノ善友ナリト↡ |
【39】その時世尊この法を説きたまふ時、 十二倶胝那由他の人ありて、 塵を遠ざかり垢を離れて法眼浄を得、 八百の苾芻漏尽意解して心に解脱を得、 天人衆のなかに二十二倶胝那由他の人ありて、 阿那含果を証し、 また二十五倶胝の人ありて、 法忍不退を得、 また四十倶胝百千那由他の人ありて、 阿耨多羅三藐三菩提心を発し、 もろもろの善根を種えみな極楽世界に往生して、 無量寿仏を見たてまつらんと願ず。
○爾ノ時世尊説キタマフ↢此ノ法ヲ↡時、有リテ↢十二倶胝那由他ノ人↡、遠ザカリ↠塵ヲ離レテ↠垢ヲ得↢法眼浄ヲ↡、八百ノ苾芻漏尽意解シテ心ニ得↢解脱ヲ↡、天人衆ノ中ニ有リテ↢二十二倶胝那由他ノ人↡、証シ↢阿那含果ヲ↡、復有リテ↢二十五倶胝ノ人↡、得↢法忍不退ヲ↡、復有リテ↢*四十倶胝百千那由他ノ人↡、発シ↢阿耨多羅三藐三菩提心ヲ↡、種エ↢諸ノ善根ヲ↡皆願ズ↧往↢生シテ極楽世界ニ↡、見タテマツラムト↦無量寿仏ヲ↥。
また十方仏刹のもしは現在に生じおよび未来に生じて無量寿仏を見たてまつらんものあり。 おのおの八万倶胝那由他の人ありて、 然灯仏の記を得て、 妙音如来と名づけて、 まさに阿耨多羅三藐三菩提を得べし。 かのもろもろの有情はみなこれ無量寿仏の宿願の因縁をもつて、 倶に極楽世界に往生することを得。
~復有リ↧十方仏刹ノ若シハ現在ニ生ジ及ビ未来ニ生ジテ見タテマツラム↢無量寿仏ヲ↡者↥。各ノ有リテ↢八万倶胝那由他ノ人↡、得テ↢然灯仏ノ記ヲ↡、名ケテ↢妙音如来0382ト↡、当ニシ↠得↢阿耨多羅三藐三菩提ヲ↡。彼ノ諸ノ有情ハ皆是無量寿仏ノ宿願ノ因縁ヲモテ、倶ニ得↣往↢生スルコトヲ極楽世界ニ↡。
仏この語を説きたまふ時、 三千大千世界六種に震動して、 もろもろの香花を雨らし、 積もりて膝に至る。 また諸天ありて、 虚空のなかにおいて妙音楽をなし、 随喜の声を出す。 乃至色界の諸天も、 ことごとくみな聞くことを得て未曽有なりと歎ず。
○仏説キタマフ↢是ノ語ヲ↡時、三千大千世界六種ニ震動シテ、雨ラシ↢諸ノ香花ヲ↡、積リテ至ル↢*于膝ニ↡。復有リテ↢諸天↡、於テ↢虚空ノ中ニ↡作シ↢妙音楽ヲ↡、出ス↢随喜ノ声ヲ↡。乃至色界ノ諸天モ、悉ク皆得テ↠聞クコトヲ歎ズ↢未曽有ナリト↡。
その時尊者阿難および慈氏菩薩等、 ならびに天・竜・八部一切大衆、 仏の所説を聞きてみなおほきに歓喜し、 信受奉行せり。
○爾ノ時尊者阿難及ビ慈氏菩薩等、并ニ天・竜・八部一切大衆、聞キテ↢仏ノ所説ヲ↡皆大ニ歓喜シ、信受奉行セリ。
*仏説大乗無量寿荘厳経 巻下
延書は底本の訓点に従って有国が行った(固有名詞の訓は保証できない)。
底本は◎高麗版(再雕本)¬大蔵経¼所収本、 Ⓐ金版¬大蔵経¼所収本、 Ⓑ宋版(思溪版)¬大蔵経¼所収本、 Ⓒ元版(善寧寺版)¬大蔵経¼所収本、 Ⓓ明版(万歴版)¬大蔵経¼所収本、 Ⓔ¬房山石経(遼金刻経)¼所収本 と対校。
西→Ⓓ[宋]西
訳経 Ⓓになし
臣 Ⓓになし
集→Ⓓ聚
今→Ⓓ令
布→Ⓑ根→Ⓒ相
→Ⓒ掁
廻→ⒷⒸⒹ遍
盤→ⒷⒸⒹ槃
粖→Ⓓ末
于→Ⓔ於
求→Ⓔ来
欄→Ⓓ闌
無→ⒸⒹ未 Ⓑになし
受→Ⓒ授
方→Ⓒ土
四→Ⓒ匹
于→Ⓔ於
仏説 Ⓒになし