0735親鸞しんらんしょうにんしょうそく

 

※「註釈版」 の本文に重ねて、 対校の形で ¬浄土真宗聖典全書¼ の 「真筆消息」・「古写消息」・¬末灯鈔¼・¬御消息集¼・¬善性本¼・¬血脈文集¼ の各本文が確認できるようにしてある。 それにあたり、 通常の脚注に加えて ~:「註釈版」 にある語句がない場合、 +:「註釈版」 にない語句がある場合、 %「註釈版」 と語句が変っている場合 で示した。 ただし、「表記の違い」 のみのものはすべて割愛し、 大きく異なる場合は該当本文を茶字で収録している。 また、 は註釈版で 「対校本によっ」 たとされている箇所で、 底本のもとの内容を示しておいた。

 0768  0777

(1) 「古写消息」(4)、 ¬末灯鈔¼(1)

 ^~ねんねん~こと。 +

 ^+らい+こうしょぎょうおうじょうに​あり、 りきぎょうじゃなる​がゆゑに。 *りんじゅうといふ​こと​は、 しょぎょうおうじょうの​ひと​に​いふ​べし、 いまだ真実しんじつ信心しんじんを​え​ざる​がゆゑなり。 また十悪じゅうあくぎゃく罪人ざいにんの​はじめてぜんしきに​あう​て、 すすめ​らるる​とき​に​いふ​こと+なり。

^真実しんじつ信心しんじんぎょうにんは、 摂取せっしゅしゃのゆゑに正定しょうじょうじゅくらい+じゅうす。 このゆゑにりんじゅう+まつ​こと​なし、 来迎らいこう+たのむ​こと​なし。 信心しんじんさだまるとき+おうじょう%またさだまる​なり。 来迎らいこう*%そくを​また​ず。

 ^しょうねんといふは、 ほんぜいがんしんぎょうさだまる​を​いふ​なり。 この信心しんじん+うる​ゆゑに、 かならずじょうはんに​いたる​なり。 この信心しんじん一心いっしんといふ、 この一心いっしん金剛こんごうしんといふ、 この金剛こんごうしんだいだいしんといふ​なり。 これ​すなはちりきの​なか​のりきなり。

 ^またしょうねんといふ​につきてふたつあり。 ひと~には*じょうしんぎょうにん0778しょうねんふたつには*さん0736しんぎょうにんしょうねんある​べし。 このふたつ​のしょうねんは、 りきの​なか​のりきしょうねんなり。 じょうさんぜんは、 しょぎょうおうじょうの​ことば​に​をさまる​なり。 このぜんは、 りきの​なか​のりきぜんなり。 このりきぎょうにんは、 来迎らいこうを​また​ず​して​は、 %へんたいしょうまんがいまで​もうまる​べから​ず。 このゆゑにだいじゅう誓願せいがんに、 「もろもろ0769ぜんをしてじょうこうしておうじょうせん​と​ねがふひとりんじゅうには、 われげんじ​てむかへ​ん」 とちかひ​たまへ​り。 りんじゅう+まつ+こと​と来迎らいこうおうじょう+といふ​こと​は、 このじょうしん散心さんしんぎょうじゃの​いふ​こと​なり。

 ^せんじゃく本願ほんがん*ねんに​あらず、 *ねんに​あらず。 ねん~は​すなはち*しきイロぎょうカタチを​おもふ​につきて​いふ​こと​なり。 ねんといふは、 かたちを​こころ​に​かけ​ず、 いろ+こころ​に​おもは​ず​して、 ねんも​なき​を​いふ​なり。 これ​みなしょうどうの​をしへ​なり。

^*しょうどうといふは、 すでにぶつり​たまへ​るひと~の、 われら​が​こころ​を​すすめ​ん​が​ため​に、 仏心ぶっしんしゅう真言しんごんしゅうほっしゅうごんしゅう三論さんろんしゅうとうだいじょうごくきょうなり。 仏心ぶっしんしゅうといふは、 このに​ひろまるぜんしゅうこれ​なり。

^また法相ほっそうしゅうじょうじつしゅうしゃしゅうとうごんきょう小乗しょうじょうとうきょうなり。 これ​みなしょうどうもんなり。 ごんきょうといふは、 すなはち​すでにぶつり​たまへるぶつさつの、 かりに​さまざま​のかたちを​あらはし​て​すすめ​たまふ​がゆゑ0737ごんといふ​なり。

 ^じょうしゅうに​またねんあり、 ねんあり。 ねん0779散善さんぜんねんじょうぜんなり。 じょうねんしょうどうねんにはず。 ~また​こしょうどうねんの​なか​に​またねんあり。 よくよく​とふ​べし。

 ^じょうしゅうの​なか​にしんあり、 あり。 しんといふはせんじゃく本願ほんがんなり、 といふはじょうさんぜんなり。 せんじゃく本願ほんがん*じょうしんしゅうなり、 じょうさんぜん方便ほうべんもんなり。 じょうしんしゅうだいじょうの​なか~ごくなり。 ほう0770便べんもんの​なか​に​まただいしょう権実ごんじつきょうあり。

^*しゃ如来にょらいぜんしきいっぴゃくいちじゅうにんなり。 ¬*ごんぎょう¼ に​みえ​たり。

^~南無なも弥陀みだぶつ

   *けんちょう三歳さんさい かのとのい うるうがつ二十はつかのひ

禿とく*親鸞しんらん しちじゅうさい

 0810  0817

(2) ¬末灯鈔¼(20)、 ¬御消息集¼(1)

 ^かたがた​より​のおんこころざし​の​もの​ども、 かずの​まま​に​たしかに​たまはり+そうろふ。 *みょうきょうぼう*のぼら​れ​てそうろふ​こと、 +ありがたき​こと​にそうろふ。 かたがた​のおんこころざし、 もうし​つくし​がたくそうろふ。

^*みょうほうの御房おんぼうおうじょうの​こと、 おどろき​まうす​べき0738には​あら​ねども、 かへすがへす​うれしくそうろふ。 *鹿しま*行方なめかた*奥郡おうぐん、 かやう​のおうじょうねがは​せたまふ​ひとびと​の、 みな​のおんよろこび​にてそうろふ。

^また*ひら・・つか・・にゅうどう殿どのおうじょう%の​こと​ききそうろふ​こそ、 かへすがへすもうすに​かぎり​なく​おぼえそうらへ。 めでたさもうし​つくす​べく​もそうらは​ず。 おのおの+みなおうじょう*いちじょうと​おぼしめす​べし。

^さりながら​も、 おうじょうを​ねがは​せたまふ​ひとびと​の御中おんなかにも、 おんこころえ​ぬ​こと​もそうらひ​き、 いま​も​さ+こそそうろふ​らめ​と​おぼえそうろふ。 きょうにも​こころえ​ず​して、 やうやう0818に​まどひ​あう​てそうろふ​めり。 *くにぐに​にも​おほく​きこえそうろふ。

^*法然ほうねんしょうにんおん弟子でしの​なか​にも、 われ​は*ゆゆしきがくしょうなど​と​おもひ~あひ​たる​ひとびと​も、 このには、 みな​やうやう​にほう%もんを​いひ​かへ​て、 も​まどひ、 ひと​をも​まどはし​て、 わづらひ​あう​てそうろ%めり。

 ^聖教しょうぎょうの​をしへ​をも​み​ず​しら​ぬ、 おのおの​の​やう​に​おはします​ひとびと0811は、 おうじょうに​さはり​なし​と​ばかり​いふ​を​きき​て、 *あしざまにおんこころえ​ある​こと、 おほくそうらひ​き。 いま​も​さこそそうろふ​らめ​と​おぼえそうろ+

^じょうきょうも​しら​ぬ*信見しんけんぼうなど​がもうす​こと​によりて、 *ひがざまに​いよいよ​なり​あはせ​たまひそうろふ​らん%を​ききそうろふ​こそ、 あさましくそうらへ。

 ^0739まづ​おのおの~の、 +むかし​は弥陀みだの​ちかひ​をも​しら​ず、 弥陀みだぶつをももうさ​ず​おはしましそうらひ​し​が、 しゃ弥陀みだ*方便ほうべんに​もよほさ​れ​て、 いま弥陀みだの​ちかひ​をも​きき​はじめ​て​おはしますにてそうろふ​なり。 もと​はみょうさけ+て、 貪欲とんよくしん愚痴ぐち三毒さんどくを​のみこのみ​めし​あう​てそうらひ​つる​に、 ぶつ+ちかひ​を​きき​はじめ​し​より、 みょうひ​も*やうやう​すこし​づつ​さめ、 三毒さんどくをも​すこし​づつこのま​ず​して、 弥陀みだぶつくすりを​つね​にこのみ​めすと​なり​て​おはしまし​あう​てそうろふ​ぞかし。

 ^しかるに、 なほ+ひも​さ0819めやらぬに、 かさねてひをすすめ、 どくえ​やら​ぬ​に、 なほ+どくを​すすめ​られそうろふ​らん​こそ、 あさましく+そうらへ。 煩悩ぼんのうそくなれば~とて、 こころ​に+まかせ~て、 にも​す​まじき​こと​をも​ゆるし、 くちにも​いふ​まじき​こと​をも​ゆるし、 こころ​にも​おもふ​まじき​こと​をも​ゆるし​て、 *いかにも​こころ​の​まま​に~て​ある​べし​ともうし​あう​てそうろふ​らん​こそ、 かへすがへす*便びん0812おぼえそうらへ。

^ひ​も​さめ​ぬ​さき​に、 なほさけを​すすめ、 どくえ​やら​ぬ+に、 いよいよどくを​すすめ​ん​が​ごとし。 くすりありどくこのめ​とそうろふ​らん​こと​は、 *ある​べく​もそうらは​ず​とぞ​おぼえそうろふ。

^ぶつ%御名みなをも​きき念仏ねんぶつ%もうし​て、 ひさしく​なり​て​おはしまさ​ん​ひとびと​は、 %後世ごせの​あしき​こと​を​いとふしるし、 このの​あしき​こと​を~ば​いとひ0740すて​ん​と​おぼしめす​しるし​もそうろふ​べし​と​こそ​おぼえそうらへ。

 ^はじめてぶつの​ちかひ​を​きき​はじむる​ひとびと​の、 わがの​わろく、 こころ​の​わろき​を​おもひしり​て、 このの​やう​にては%なんぞおうじょうせ​んずる​といふ​ひと​に​こそ、 煩悩ぼんのう~そくし​たるなれば、 わが​こころ​の善悪ぜんあくをば沙汰さたせ​ず、 むかへ​たまふ​ぞ​と​はもうそうらへ。

^かく​きき​て​のち、 ぶつしんぜ​ん​と​おもふ​こころ​ふかく​なり​ぬる​には、 まことに​このをも​いとひ、 てんせん​こと​をも​かなしみ​て、 ふかく​ちかひ​をも0820しんじ、 弥陀みだぶつをもこのみ​まうし​なんど​する​ひと​は、 もとこそ、 こころ​の​まま​にてあしき​こと​をも​おもひ、 あしき​こと​をも​ふるまひ​なんど​せ​しかども、 いま​は​さやう​の​こころ​を​すて​ん​と​おぼしめし​あは​せたまは​ば​こそ、 を​いとふ​しるし​にてもそうらは​め。

^またおうじょう信心しんじんは、 しゃ弥陀みだおんすすめ​によりて​おこる​と​こそ​みえ~そうらへ​ば、 さりとも​まこと​の​こころ​おこら​せたまひ​なん​には、 いか%が​むかし​のおんこころ​の​まま​にてはそうろふ​べき。

 ^この御中おんなかの​ひとびと​も0813少々しょうしょうは​あしき​さま​なる​こと%*きこえそうろふ​めり。 を​そしり、 ぜんしきを​かろしめ、 どうぎょうをも*あなづり​なんど​し​あはせ​たまふ​よし​き%そうろ~こそ、 あさましくそうら%へ。 すでに謗法ほうぼうの​ひと​なり、 ぎゃくの​ひと​なり。 *なれ0741むつぶ​べから​ず。

^¬じょうろん¼ (論註・上意)もうす​ふみ​には、 「かやう​の​ひと​は仏法ぶっぽうしんずる​こころ​の​なき​より、 この​こころ​は​おこる​なり」 とそうろふ​めり。 またじょうしんの​なか​には、 「かやうにあくを​このま​ん+には​つつしん​で​とほざかれ、 ちかづく%べから​ず」 (散善義・意) と​こそ%か​れ​てそうらへ。 ぜんしきどうぎょうには​したしみ​ちかづけ​と​こそき​おか​れ​てそうらへ。

 ^あくを​このむ​ひと​にも​ちかづき+なんど​する​こと​は、 じょうに​まゐり​て​のち、 しゅじょうやくに​かへり​て​こそ、 さやう​の罪人ざいにんにも​した0821%がひ​ちかづく​こと​はそうらへ。 それも、 わが​はからひ​には​あらず。 弥陀みだの​ちかひ​に​より~+おんたすけ​に+て​こそ、 おもふ​さま​の​ふるまひ​もそうらは​んずれ。 *とうは、 このども​の​やう​にて​は、 いかがそうろふ​べか~る​らん​と​おぼえそうろふ。 よくよくあんぜ​させたまふ​べくそうろふ。

 ^おうじょう金剛こんごうしんの​おこる​こと​は、 ぶつおんはからひ+より​おこり​てそうらへ​ば、 金剛こんごうしんを​とり​てそうらは​ん​ひと​は、 *よもを​そしりぜんしきを​あなづり​なんど​する​こと​はそうらは​じ​と%こそ​おぼえそうらへ。

^このふみをもつて鹿しま行方なめかた*みなみしょう、 いづかた+も​これ​に​こころざし​おはしまさ​ん​ひと​には、 おなじおんこころ​に​よみ0814きか​せたまふ​べくそうろふ。

^*あなかしこ、 あなかしこ。

   0742*けんちょうねん%がつじゅうよっかのひ

+親鸞

 (808)

(3) ¬末灯鈔¼(19)後半1、 ¬御消息集¼(2)

 ^この*明教みょうきょうぼう~の​のぼら​れ​てそうろふ​こと、 まことに​ありがたき​こと​と​おぼえそうろふ。 *みょうほうの御房おんぼうおうじょうの​こと​を​まのあたり​ききそうろふ​も、 うれしくそうろふ。 +ひとびとのおんこころざし​も、 ありがたく​おぼえそうろふ。 かたがた​この0822ひと~びと​の​のぼり、 思議しぎの​こと​にそうろふ。

^このふみを​たれたれ​にも​おなじ+こころ​に​よみ​きか​せたまふ​べくそうろふ。 このふみ*奥郡おうぐんに​おはしますどう0809ぼう御中おんなかに、 %みな​おなじくらんそうろふ​べし。

^あなかしこ、 あなかしこ。

 ^*としごろ念仏ねんぶつしておうじょう+ねがふ​しるし​には、 もと​あしかり​し​わが​こころ​をも​おもひ​かへし​て、 とも+同朋どうぼうにも​ねんごろ%に​こころ​の​おはしまし​あは​ば​こそ、 を​いとふ​しるし​にて​もそうらは​め​と​こそ​おぼえそうらへ。 よくよくおんこころえそうろふ​べし。

 0806

(4) ¬末灯鈔¼(19)前半、 ¬御消息集¼(3)

 ^御文おんふみたびたび​まゐらせそうらひ​き。 らんぜ​ず​やそうらひ​けん。

^なにごと​より​も*みょうほうの御房おんぼうおうじょうほんとげ​て​おはしましそうろふ​こそ、 常陸ひたちのくにうち​の、 *これ​に​こころざし​おはします​ひとびと​のおんため​に、 *めでたき​こと​にてそうらへ。

^おうじょうは​ともかく0743ぼんの​はからひ​にて​す​べき​こと​にて​もそうらは​ず。 *めでたきしゃも​はからふ​べき​こと​にもそうらは​ず。 *だいしょうしょうにんだに​も、 %ともかくも​はからはc で、 ただ願力がんりきに​まかせ​て​こそ​おはします​こと​にて+そうら%へ。 まして​おのおの​の​やう​に​おはします​ひとびと​は、 ただ​この​ちかひ​あり​と​きき、 南無なも弥陀みだぶつに​あひ​まゐらせ%0823たまふ​こそ、 ありがたく、 めでたくそうろほうにて​はそうろふ​なれ。 +とかく​はからは​せたまふ​こと、 ゆめゆめそうろふ​べから​ず。

^さき​に​くだし​まゐらせそうらひ​し ¬*唯信ゆいしんしょう¼・+¬*りきりき¼ な~んど​の​ふみ+にてらんそうろふ​べし。 *それ​こそ、 このにとりて​は​よき​ひとびと​にて+おはします。 +すでにおうじょうをも​して​おはします​ひとびと​にてそうらへ​ば、 その​ふみ​ども​にか​れ​てそうろふ​には、 なにごと​も​なにごと​も*すぐ​べく​もそうらは​ず。

^法然ほうねんしょうにんおんをしへ​を、 よくよくおんこころえ​たる​ひとびと​にて​おはしま%す​にそうらひ​き。 さればこそ、 おうじょうも​めでたく​して0807おはしましそうらへ。

 ^おほかた​は、 としごろ念仏ねんぶつもうし​あ%ひ​たまふ​ひとびと​の​なか​にも、 ひとへに*わが​おもふ​さま​なる​こと​を​のみもうし​あは​れ​てそうろふ​ひとびと​もそうらひ​き。 いま​も​さ%そうろふ​ら%ん​と​おぼえそうろふ。 みょうほうぼう+ど​のおうじょうして​おはします​も、 もと​は*不可ふか思議しぎの​ひがごと​を​おもひ​なんど​し​たる​こころ​をも​ひるがへし​な~んど​して​こそそうらひ​し0744か。

^*われおうじょうす​べけれ​ば​とて、 す​まじき​こと​をも​し、 おもふ​まじき​こと​をも~おもひ、 いふ​まじき​こと​をも​いひ​な+ど​する​こと​は​ある​べく​もそうらは​ず。 貪欲とんよく~煩悩ぼんのうに​くるはさ​れ​てよくも​おこり、 しん煩悩ぼんのうに​くるはさ​れ​て​ねたむ​べく​も​なきいんを​やぶる​こころ​も​おこり、 愚痴ぐち0824煩悩ぼんのうに​まどはさ​れ​て​おもふ​まじき​こと​など​も​おこる​にて​こそそうらへ。

^めでたきぶつおんちかひ​の​あれば​とて、 わざと​す​まじき​こと​ども​をも​し、 おもふ​まじき​こと​ども​をも​おもひ​な+ど​せ%ん​は、 よくよく​このの​いとはしから​ず、 の​わろき​こと​を+おもひ+しら​ぬ​にてそうらへ​ば、 念仏ねんぶつに​こころざし​も​なく、 ぶつおんちかひ​にも​こころざし​の​おはしまさ​ぬ​にてそうらへ​ば、 念仏ねんぶつせさせたまふ+とも、 そのおんこころざし​にて​は*じゅんおうじょう*かたく​やそうろふ​べから​ん。

^よくよく​この​よし​を​ひとびと​に、 きか​せ​まゐらせ~させたまふ​べくそうろふ。 かやうに​ももうす​べく​もそうらは​ねども、 なに0808と​なく​このへんの​こと​をおんこころ​に​かけ​あはせ​たまふ​ひとびと​にて​おはしまし%あひ​てそうらへ​ば、 かく+もうそうろふ​なり。

^この%念仏ねんぶつは、 やうやう​に​かはり​あう​てそうろふ​めれ​ば、 とかくもうす​に+およば​ずそうらへ​ども、 しょうにん (法然)おんをしへ​を​よくよく​うけたまはり​て​おはします​ひとびと​は、 *いま​も​もと​の​やう​に+かはら​せたまふ​ことそうらは​ず。 *かくれ​なき0745こと​なれば、 きか​せたまひ​あう​てそうろふ​らん。

^*じょうしゅう、 みな​かはり​て​おはしまし​あう​てそうろふ​ひとびと​も、 +しょうにん (法然)おん弟子でしにてそうらへ​ども、 やうやう​にをも​いひ​かへ​な+ど​して、 も​まどひ、 ひと​をも​まどは~かし​あう​てそうろ0825めり。 あさましき​こと​にてそうろふ​なり。 きょうにも​おほく​まどひ​あう​てそうろふ​めり。 まして、 ゐなか​は、 さこそそうろふ​らめ​と*こころにくく​もそうらは​ず。 なにごと​ももうし​つくし​がたくそうろふ。 またまたもうそうろふ​べし。

 (809)

(5) ¬末灯鈔¼(19)後半2、 ¬御消息集¼(4)

 ^ぜんしきを​おろか​に​おもひ、 を​そしる​もの​をば、 謗法ほうぼうの​もの​ともうす​なり。 おや​を​そしる​もの​をば、 ぎゃくの​もの​ともうす​なり。 どう+せ​ざれ​とそうろふ​なり。

^されば*きたこおりそうらひ​し*ぜん%しょうぼうは、 おや​を*のり、 善信ぜんしん (親鸞) を​やうやう​に​そしりそうらひ​しかば、 ちかづき​むつまじく​おもひそうらは​で、 ちかづけ​ずそうらひ​き。 *みょうほうの御房おんぼうおうじょうの​こと​を​きき​ながら、 +*あと​を​おろかに+せん​ひとびと​は、 その同朋どうぼうに​あらずそうろふ​べし。

^みょうさけひ​たるひとに​いよいよひ​を​すすめ、 三毒さんどくを​ひさしくこのみ​く~らふ​ひと​に​いよいよどくを​ゆるしてこのめ​ともうし​あう​てそうろふ​らん、 便びんの​こと​にそうろふ。

^みょうさけひ​たる~こと​を​かなしみ、 三毒さんどくこのみ​くう​て​いまだどく0746せ​はて​ず、 みょうひ​も​いまだ​さめ​やら​ぬ%に​おはしまし​あう​てそうろふ​ぞかし。 よくよくおんこころえそうろふ​べし。

+なに0826ごと​も​まふし​つくし​がたく​さふらふ。 またまた​まふす​べし。 あなかしこ、 あなかしこ。

親鸞

 0743  (770)  (779)  0871

(6) 「真筆消息」(1)、 「古写消息」(5)、 ¬末灯鈔¼(2)、 ¬血脈文集¼(1)

 ^%*かさ念仏ねんぶつしゃうたがひ​とは%れ​たること

 ^それじょう~しんしゅうの​こころ​は、 おうじょうこんりきあり、 りきあり。 この​こと​すでに*天竺てんじく (印度)ろんじょう祖師そしおおせ​られ​たる%こと​なり。

 ^まづりきもうす​こと​は、 ぎょうじゃの​おのおの~えんに​したがひ​て、 *仏号ぶつごうしょうトナウねんし、 善根ぜんごんしゅぎょうして、 わがを​たのみ、 わが​はからひ​の​こころ​をもつてしん口意くいの​みだれごころ​を​つくろひ、 *0780めでたう​し​なし​てじょうおうじょうせん​と​おもふ​をりきもうす​なり。

^またりきもうす​こと​は、 弥陀みだ如来にょらいおんちかひ​の​なか​に、 せんじゃく摂取せっしゅし​たまへるだいじゅうはち念仏ねんぶつおうじょう本願ほんがんしんぎょうする​をりきもうす​なり。 如来にょらいおんちかひ​なれば、 りきにはなき​をと​す」 と、 しょうにん (法然)おおせごと​にて​あり​きといふ​こと​は、 はからふ​ことば​なり。 ぎょうじゃのはからひ​はりきなれば、 0872いふ​なり。 りきは、 本願ほんがん0771しんぎょうしておうじょう%ひつじょうなる​ゆゑに、 *さらに0744義なし​と+なり。

 ^0747しかれば、 わがの​わるけれ​ば、 *いかでか如来にょらいむかへ​たま%は​ん​と​おもふ​べから​ず。 ぼんは​もとよりぼんミヲワヅラハス のうココロヲワヅラハスそくし​たる​ゆゑに、 わるき​もの​と​おもふ​べし。 また​わが​こころ+よけれ​ば、 おうじょうす​べし​と​おもふ​べから​ず。 りきおんはからひ​にて​は真実しんじつほう%うまる​べから​ざる​なり。 「ぎょうじゃの​おのおの​のりき%しんにて​は、 まんへんおうじょうたいしょうじょうじょうまで​ぞおうじょうせ​らるる​こと​にて​ある​べき」 と%ぞ、 うけたまはり​たり​し。

^だいじゅうはち本願ほんがんじょうじゅの​ゆゑに弥陀みだ如来にょらいと​なら​せたまひ​て、 不可ふか思議しぎやくきはまり​ましまさ​ぬおんかたち​を、 *天親てんじんさつじん十方じっぽう無礙むげこう如来にょらいと​あらはし​たまへ​り。 このゆゑに、 よき​あしきひとを​きらは​ず、 煩悩ぼんのうの​こころ​を​えらば​ず、 へだて​ず​して、 おうじょうは​かならず​する​なり​と​しる​べし​となり。

^しかれば、 しんいんしょう (源信) は、 ¬おうじょうようしゅう¼ (下意)0781+本願ほんがん~念仏ねんぶつしんぎょうする​ありさま​を​あらはせ​る​には、 「行住ぎょうじゅう座臥ざがえらば​ず、 しょ諸縁しょえんを​きらは​ず」 とおおせ​られ​たり。 「真実しんじつ信心しんじんを​え​たるひと摂取せっしゅの​ひかり​に​をさめ​とら​れ​まゐらせ​たり」 (往生要集・中意) と、 たしかに​あらはせ​り。

^しかれば、 「みょう煩悩ぼんのう+してあんヤスシにょうヤシナウじょうおうじょうすれば、 ~かならず​すなはちじょうぶっに​いたる」 と、 しゃ如来にょらいき​たまへ​り。

 ^0748しかるに、 「じょく0873あくの​われら、 しゃ一仏いちぶつの​みこと​を信受しんじゅ0772せん​こと*ありがたかる​べし​とて、 十方じっぽう恒沙ごうじゃ諸仏しょぶつしょう0745にんと​なら​せたまふ」 (*散善義・意) と、 *善導ぜんどうしょうしゃくし​たまへ​り。 「しゃ弥陀みだ十方じっぽう諸仏しょぶつ、 みな​おなじおんこころ​にて、 本願ほんがん+念仏ねんぶつしゅじょうには、 かげ~かたちへ​る​が​ごとく​して​はなれ​たまは​ず」 (散善義・意) と​あかせ​り。

^しかれば、 この信心しんじんひとしゃ如来にょらいは、 「~わがしたしきともなり」 (大経・下意) と​よろこび​まします。

^この信心しんじんひとしんぶつ弟子でしと​いへ​り。 このひとしょうねんじゅうするひとと​す。 このひと%は、弥陀みだぶつ摂取せっしゅしてて​たまは​ざれ​ば、 金剛こんごうしんを​え​たるひともうす​なり。 このひと上上じょうじょうにんウエガウエノヒトナリとも、 好人こうにんヨキヒトナリとも、 みょうこうにんタヱニヨキヒトナリとも、 さいしょうにんコトニスグレタルヒトナリとも、 希有けうにんマレニアリガタキヒトナリとももうす​なり。 このひと正定しょうじょうじゅくらいさだ~れ​る​なり​と​しる​べし。 しかれば、 *ろくぶつと​ひとしきひとと​のたまへ​り。 %これ​は真実しんじつ信心しんじんを​え​たる​ゆゑに、 かならず真実しんじつほうおうじょうする​なり​と​しる​べし。

 ^この信心しんじん0782うる​こと​は、 しゃ弥陀みだ十方じっぽう諸仏しょぶつ方便ほうべん+より​たまはり​たる​と​しる​べし。 しかれば、 「諸仏しょぶつおんをしへ​を​そしる​こと​な%し。 善根ぜんごんぎょうずるひとを​そしる​こと​なし。 この念仏ねんぶつするひとを​にくみ​そしるひとをも、 にくみ​そしる​こと​ある​べからず。 あはれみ​を​なし、 *かなしむ​こころ​を​もつ​べし」 と​こそ、 しょうにん0749 (法然)おおせごと​あり​し​か。

^あなかしこ、 あなかしこ。

 0874^仏恩ぶっとんの​ふかき​こと​は、 まんへんおうじょうし、 じょうたいおうじょうする​だに​も、 弥陀みだおんちかひ​の0773なか​に、 だいじゅうだいじゅうがんおんあはれみ​にて​こそ、 0746思議しぎの​たのしみ​に​あふ​こと​にてそうらへ。 仏恩ぶっとんの​ふかき​こと、 その​きは​も​なし。 いかに​いはんや、 真実しんじつほうおうじょうしてだいはんの​さとり​を​ひらか​ん​こと、 仏恩ぶっとんよくよくあんどもそうろふ​べし。 これ​さらに*しょうしんぼう親鸞しんらんが​はからひ​まうす​には​あらずそうろふ。 ゆめゆめ。

   *けんちょう七歳しちさいきのとのうじゅうがつみっかのひ

禿とく親鸞しんらんはちじゅう三歳さんさいこれをく。

   %*建長八歳丙辰四月十三日

釈親鸞 八十四歳 剋作

+此御書者、 自性信聖之遺跡、 以聖人御自筆之本、 写与被門弟中。

+なをなを​よくよく念仏ねむぶちまうさ​せたまは​ん人々ひとびとは、 ほんぐわん念仏ねむぶちしんぜ​させたまふ​べし。

 (747)  (793)  (845)

(7) [信行一念章] 「真筆消息」(3)、 ¬末灯鈔¼(11)、 ¬御消息集¼(14)

 ^がつなぬ御文おんふみがつじゅう六日ろくにちたしかに~たしかに​みそうらひ​ぬ。

^さては、 おおせ​られ​たる​こと、 しん一念いちねんぎょう一念いちねんふたつ​なれども、 しんを​はなれ​たるぎょうも​なし、 ぎょう0846一念いちねんを​はなれ​たるしん一念いちねんも​なし

^そのゆゑは、 ぎょうもうす​は、 本願ほんがんみょうごうを​ひとこゑ​となへ​ておうじょうす​ともうす​こと​を​きき​て、 ひとこゑ​をも​となへ、 もしはじゅうねんをも​せん​はぎょうなり。 このおんちかひ​を​きき​て、 うたがふ​こころ​の​すこし​も​なき0750しん一念いちねんもう%せ​ば、 しんぎょうと​ふたつ​と​きけ​ども、 ぎょうを​ひとこゑ​する​と​きき​てうたが0794は​ねば、 ぎょうを​はなれ​たるしんは​なし*と​きき​てそうろふ。 また、 しん+はなれ​たるぎょうなし​と​おぼしめす​べし。

 ^これ​みな弥陀みだおんちかひ​ともうす​こと​を​こころう​べし。 ぎょうしんと​はおんちかひ​をもうす​なり。

^あなかしこ、 あなかしこ。

 ^いのちそうらは​ば、 かならず~かならず​のぼら​せたまふ​べし。

   がつじゅう%八日はちにち

%(花押)

  ~*かくしんの御房おんぼう おんへん

 0748^*専信せんしんぼうきょうちかく​なら​れ​てそうろふ​こそ、 たのもしう​おぼえそうらへ。

~また、 おんこころざし​のぜに*さんびゃくもん、 たしかに​たしかに​かしこまり​て​たまはり​てそうろふ。

 **けんちょう八歳はっさいひのえたつがつじゅう八日はちにち親鸞しんらんしょうにんおんへん

 (874)

(8) ¬血脈文集¼(2)

 ^この御文おんふみども​の​やう、 くはしく​みそうろふ。

^また、 さては*しん法文ほうもんの​やう​ゆゑに、 常陸ひたち下野しもつけの人々、 念仏ねんぶつもうさせたまひそうろふ​こと​の、 としごろ​うけたまはり​たる​やう​には、 みな​かはり​あう​て​おはします​と​きこえそうろふ。 かへすがへす0875こころ0751うく​あさましく​おぼえそうろふ。 としごろおうじょういちじょうおおせられそうろふ人々、 しんと​おなじ​やう​に、 そらごと​を​みなそうらひ​ける​を、 としごろ​ふかく​たのみ​まゐらせ​てそうらひ​ける​こと、 かへすがへす​あさましうそうろふ。

 ^そのゆゑは、 おうじょう信心しんじんもうす​こと​は、 一念いちねんうたがふ​こと​のそうらは​ぬ​を​こそ、 おうじょういちじょうと​は​おもひ​てそうら

^*こうみょうしょう (善導)しんの​やう​を​をしへ​させたまひそうろふ​には、 「まこと​のしんさだめ​られ​て​のち​には、 弥陀みだの​ごとく​のぶつしゃの​ごとく​のぶつ、 そら​に​みち​みち​て、 しゃの​をしへ、 弥陀みだ本願ほんがんは​ひがごと​なり​とおおせ​らる​とも、 一念いちねんうたがいある​べから​ず」 と​こそ​うけたまはり​てそうらへ​ば、 その​やう​を​こそ、 としごろもうし​てそうろふ​に、 しんほど​の​もの​のもうす​こと​に、 常陸ひたち下野しもつけ念仏ねんぶつしゃの、 みなおんこころ​ども​の*うかれて、 はては、 さしも​たしかなるしょうもんを、 ちから​をつくしてかずあまたき​て​まゐらせ​てそうらへ​ば、 それ​を​みな​すて​あう​て​おはしましそうろふ​と​きこえそうらへ​ば、 ともかくももうす​に​およば​ずそうろふ。

 ^まづしんもうそうろ法文ほうもんの​やう、 *みょうもくをも​きか​ず。 いはんや​ならひ​たる​こと​もそうらは​ねば、 しんに​ひそかに​をしふ​べき​やう​もそうらは​ず。 またよるひるしん一人いちにんに、 ひとには​かくし​て法文ほうもんをしへ​たる​ことそうらは​ず。 もし​この​こと、 しんもう0752ながら、 そらごと0876をももうし​かくし​て、 ひとにも​しら​せ​ず​して​をしへ​たる​ことそうらは​ば、 三宝さんぼうほんとして、 三界さんがい諸天しょてん善神ぜんじんかいりゅうじんはちえん王界おうかいじんみょうどうばつを、 親鸞しんらんに​ことごとく​かぶりそうろふ​べし。

 ^こん以後いごは、 しんにおきて​は、 *おもひきり​てそうろふ​なり。 けんの​こと​にも、 *不可ふか思議しぎの​そらごと、 もうす​かぎり​なき​ことども​を、 もうし​ひろめ​てそうらへ​ば、 しゅっのみ​に​あらず、 けんの​こと​におきて​も、 おそろしきもうしごと​どもかずかぎり​なくそうろふ​なり。

^なか​にも、 この法文ほうもんの​やう​ききそうろふに、 こころ​も​およば​ぬもうしごと​にてそうろふ。 *つやつや親鸞しんらんには、 きき​も​せ​ず、 ならは​ぬ​こと​にてそうろふ。 かへすがへす​あさましう、 こころうくそうろふ。

^弥陀みだ本願ほんがんをすて​まゐらせ​てそうろふ​こと​に、 人々ひとびとの​つき​て、 親鸞しんらんをも​そらごともうし​たる​もの​に​なし​てそうろふ。 こころうく、 *うたてき​こと​にそうろふ。

 ^おほかた​は、 ¬*唯信ゆいしんしょう¼・¬*りきりきふみ¼・¬*後世ごせものがたり聞書ききがき¼・¬*一念いちねんねんしょうもん¼・¬*唯信ゆいしんしょうもん¼・¬*一念いちねんねんもん¼、 これら​をらんじ​ながら、 しん法文ほうもんによりて、 おほく​の念仏ねんぶつしゃたちの、 弥陀みだ本願ほんがんを​すて​まゐらせ​あう​てそうろふ​らん​こと、 もうす​ばかり​なくそうらへ​ば、 かやう​のおんふみ​ども、 これ​より​のち​にはおおせ​らる0753べから​ずそうろふ。

 ^また ¬*しん0877しゅう聞書ききがき¼、 *しょうしんぼうか​せたまひ​たる​は、 すこし​も​これ​にもうしてそうろふ​やう​に​たがは​ずそうらへ​ば、 うれしうそうろふ。 ¬しんしゅう聞書ききがき¼ いちじょうは​これ​に​とどめ​おき​てそうろふ。

 ^また*哀愍あいみんぼうとか​や​の、 いまだ​み​も​せ​ずそうろふ。 またふみいちも​まゐらせ​たる​こと​も​なし。 くに​より​も*ふみたび​たる​こと​も​なし。

^親鸞しんらんふみたる​ともうそうろふ​なる​は、 おそろしき​こと​なり。 この ¬*唯信ゆいしんしょう¼ き​たる​やう、 あさましうそうらへ​ば、 に​やきそうろふ​べし。 かへすがへす​こころうくそうろふ。

^このふみ人々ひとびとにも​み​せ​させたまふ​べし。

^あなかしこ、 あなかしこ。

   *がつじゅうにち

親鸞しんらん

  しょうしんぼうおんへん

 ^なほなほ​よくよく念仏ねんぶつしゃたち信心しんじんいちじょうそうらひ​し​こと​は、 みなおんそらごと​ども​にてそうらひ​けり。 これ​ほど​にだいじゅうはちがんを​すて​まゐらせ​あう​てそうろ人々ひとびとおんことばを​たのみ​まゐらせ​て、 としごろそうらひ​ける​こそ、 あさましうそうろふ。 このふみを​かくさ​る​べき​こと​なら​ねば、 よくよく人々ひとびとに​みせ​まうし​たまふ​べし。

 0754  (765)

(9) [慈信房義絶状] 「古写消息」(3)

 ^おおせ​られ​たる​こと、 くはしく​きき​てそうろふ。 なに​より​は、 *哀愍あいみんぼうとかや​ともうす​なるひとの、 *きょうよりふみたる​とかや​ともうさ​れそうろふ​なる、 かへすがへす思議しぎそうろふ。 いまだ​かたち​をも​み​ず、 ふみいちも​たまはりそうらは​ず、 これ​より​ももうす​こと​も​なき​に、 きょうよりふみたる​ともうす​なる、 あさましき​こと​なり。

 ^また*しんぼう法文ほうもんの​やう、 みょうもくを​だに​も​きか​ず、 しら​ぬ​こと​を、 しん一人いちにんに、 よる親鸞しんらんが​をしへ​たる​なり​と、 ひとしんぼうもうされてそうろふ​とて、 *これ​にも常陸ひたち下野しもつけ人々ひとびとは、 みな親鸞しんらんが​そらごと​をもうし​たる​よし​をもうし​あは​れ​てそうらへ​ば、 いま​は父子ふしは​ある​べから​ずそうろ

 ^また*ははあまにも0766思議しぎの​そらごと​を​いひ​つけ​られ​たる​こと、 もうす​かぎり​なき​こと、 あさましうそうろふ。 *みぶ・・にょうぼうの、 これ​へ​きたり​てもうす​こと、 しんぼう*たう​たるふみとて、 もち​て​きたれ​るふみ、 これ​に​おき​てそうろふ​めり。 しんぼうふみとて​これ​に​あり。 そのふみ*つやつやいろは​ぬこと​ゆゑに、 *ままはは​に*いひ​まどは​され​たるか​れ​たる​こと、 ことに​あさましき​こと​なり。 に​あり​ける​を、 ままはは​のあまの​いひ​まどはせ​り​といふ​こと、 あさましき​そらごと​なり。

^またこのに​いかに​して​あり​けり​とも​しら​ぬ​こと​をみぶ・・にょうぼうの​もと​へ​もふみの​ある​こと0755、 こころ​も​およば​ぬ​ほど​の​そらごと、 こころうき​こと​なり​と​なげきそうろふ。

 ^まことに​かかる​そらごと​ども​を​いひ​て、 *ろく波羅はらへん*鎌倉かまくらなんど​に*ろうせ​られ​たる​こと、 こころうき​こと​なり。 これら​ほど​の​そらごと​は​このの​こと​なれば、 いかで​も​ある​べし。 それ​だに​も、 そらごと​を​いふ​こと、 うたてき​なり。 いかに​いはんや、 おうじょう極楽ごくらくだいを​いひ​まどはし​て、 常陸ひたち下野しもつけ念仏ねんぶつしゃを​まどはし、 おやに​そらごと​を​いひ​つけ​たる​こと、 こころうき​こと​なり。

 ^だいじゅうはち本願ほんがんをば、 しぼめる​はな​に​たとへ​て、 ひとごと​に​みな​すて​まゐらせ​たり​と​きこゆる​こと、 まことに謗法ほうぼうの​とが、 またぎゃくつみこのみ​て、 ひとそんじ​まどはさ​るる​こと0767、 かなしき​こと​なり。

 ^ことに*そうつみもうつみは、 ぎゃくの​そのひとつ​なり。 親鸞しんらんに​そらごと​をもうし​つけ​たる​は、 ちちころす​なり。 ぎゃくの​そのひとつ​なり。 この​こと​ども​つたへ​きく​こと、 あさましさもうす​かぎり​なけれ​ば、 いま​はおやといふ​こと​ある​べから​ず、 と​おもふ​こと​おもひ​きり​たり。 三宝さんぼう神明しんめいもうし​きり​をはり​ぬ。 かなしき​こと​なり。 わが法門ほうもんず​とて、 常陸ひたち念仏ねんぶつしゃみな​まどはさ​ん​とこのまるる​と​きく​こそ、 こころうくそうらへ。 親鸞しんらんが​をしへ​にて、 常陸ひたち念仏ねんぶつもう人々ひとびとそんぜ​よ​としんぼう0756に​をしへ​たる​と鎌倉かまくらまで​きこえ​ん​こと、 あさまし​あさまし。

   がつじゅうにち

在判

    *おなじき六月ろくがつじゅう七日しちにち到来とうらい

     けんちょう八年はちねん六月ろくがつじゅう七日しちにちこれをしるす。

   ^しんぼうおんへん

     *げん三年さんねん七月しちがつじゅう七日しちにち書写しょしゃしをはんぬ。

 (789)

(10) ¬末灯鈔¼(8)

 ^またせつといふは、 よろづ​のきょうか​れそうろふ​に、 しゅにはすぎ​ずそうろふ​なり。 一には仏説ぶっせつ、 二にはしょう弟子でしせつ、 三には天仙てんせんせつ、 四にはじんせつ、 五にはへんせつといへり。 このいつつ​の​なか​に、 仏説ぶっせつを​もちゐ​て​かみ​のしゅを​たのむ​べから​ずそうろふ。 このさんきょうしゃ如来にょらいせつにて​まします​と​しる​べし​となり。

^四土しどといふは、 一には0790法身ほっしん、 二には報身ほうじん、 三には応身おうじん、 四には化土けどなり。 いま​この安楽あんらくじょうほうなり。

^三身さんしんといふは、 一には法身ほっしん、 二には報身ほうじん、 三には応身おうじんなり。 いま​この弥陀みだ如来にょらい報身ほうじん如来にょらいなり。

^三宝さんぼうといふは、 一には仏宝ぶっぽう、 二には法宝ほうぼう、 三には僧宝そうぼうなり。 いま​このじょうしゅう仏宝ぶっぽうなり。

^じょうといふは0757、 一にはぶつじょう、 二にはさつじょう、 三には縁覚えんがくじょう、 四にはしょうもんじょうなり。 いま​このじょうしゅう*さつじょうなり。

^きょうといふは、 一にはとんぎょう、 二にはぜんぎょうなり。 いま​このきょうとんぎょうなり。

^ぞうといふは、 一にはさつぞう、 二にはしょうもんぞうなり。 いま​このきょうさつぞうなり。

^どうといふは、 一にはなんぎょうどう、 二にはぎょうどうなり。 いま​このじょうしゅうぎょうどうなり。

^ぎょうといふは、 一には正行しょうぎょう、 二にはぞうぎょうなり。 いま​このじょうしゅう正行しょうぎょうほんとするなり。

^ちょうといふは、 一にはしゅちょう、 二にはおうちょうなり。 いま​このじょうしゅうおうちょうなり。 しゅちょうしょうどうりきなり。

^えんといふは、 一にはえん、 二にはえんなり。 いま​このじょうえんきょうなり

^じゅうといふは、 一には%じゅう、 二にはじゅうなり。 いま​このじょう~きょうは、 *法滅ほうめつひゃくさいまでじゅうし​たまひ​て、 じょうやくし​たまふ​となり。 じゅうしょうどう諸善しょぜんなり。 諸善しょぜんは​みなりゅうぐうへ​かくれ​いり​たまひ​ぬる​なり。

^不思ふしといふは、 +ほうしょうどう*八万はちまんせん諸善しょぜんなり。 不思ふしといふはじょうきょう不可ふか0791きょうぼうなり。

 ^これら​は​かやうに​しるし​まうし​たり。 よく​しれ​らん​ひと​にたずね​まうし​たまふ​べし。 また​くはしく​は​このふみにてもうす​べく​もそうらは​ず。 も​みえ​ずそうろふ。 なにごと​も​みな​わすれ​てそうろふ​うへに、 ひと+に​あきらかにもうす​べきにも​あらずそうろふ。 0758よくよく*じょうがくしょうに​とひ​まうし​たまふ​べし。

^あなかしこ、 あなかしこ。

   *うるう三月さんがつ%みっかのひ

親鸞しんらん

 0783  (864)  (882)

(11) [金剛信心事] ¬末灯鈔¼(3)、 ¬善性本¼(5)、 ¬血脈文集¼(6)

+金剛信心事。

 ^+信心しんじんを​え​たる​ひと​は、 かならず正定しょうじょうじゅくらいじゅうする​がゆゑに*とうしょうがくくらいもうす​なり。 +¬*だいりょう寿じゅきょう¼ に~は、 摂取せっしゅしゃやくさだまる~もの​を正定しょうじょうじゅと​なづけ、 ¬*りょう寿じゅ如来にょらい¼ にはとうしょうがくき​たまへ​り。 そのこそ​かはり​たれ​ども、 正定しょうじょうじゅとうしょうがく~は、 ひとつ​こころ、 ひとつくらいなり。 とうしょうがくもうくらいは、 しょろく~と​おなじくらいなり。 ろくと​おなじく、 このたびじょうかくに​いたる​べき​ゆゑに、 *ろくに​おなじ​とき​たまへ​り。

 ^さて ¬だいきょう¼ (下) には、 「にょ0883ろく」 と​はもうす​なり。 ろくは​すでにぶつに​ちかく​ましませ​ば、 ろくぶつしょしゅうの​ならひ​はもうす​なり。 しかれば、 ろくに​おなじくらいなれば、 正定しょうじょうじゅひと如来にょらい%と​ひとし​とももうす​なり。 じょう真実しんじつ信心しんじんひとは、 このこそ​あさましきじょう造悪ぞうあくなれども、 こころは​すでに如来にょらいと​ひとし​けれ~ば、 如来にょらい~ひとし​ともうす​こと​も​ある​べし​と​しら​せたまへ。

^ろく~は​すでにじょうかくに​その0865しんさだまり​て%ある​べき​に​なら​せたまふ​によりて、 *さんの​あかつき​ともう0759す​なり。 じょうしん%じつの​ひと​も、 この​こころ​を​こころう​べき​なり。

 ^こうみょうしょう (善導) の ¬*般舟はんじゅさん¼ (意) には、 「信心しんじんの​ひと​は、 %そのしんすでに~つねにじょうす」 としゃくし​たまへ​り。 「す」 といふは、 じょう0784に、 信心しんじんの​ひと​の​こころ​つねに​ゐ​た%り​といふ​こころ​なり。 これ​はろくと​おなじ+といふ​こと​をもうす​なり。 これ​はとうしょうがくろくと​おなじ​ともうす​によりて、 信心しんじんの​ひと​は如来にょらいと​ひとし​ともうす​こころ​なり。

  ~*しょう元年がんねんひのとのみじゅうがつとおかのひ

親鸞しんらん

  *しょうしんの御房おんぼう

+これ​は親鸞聖人御信心の​むね​を​あそばし​たり。 ひざう​の​こと​なり。 ひと​に​ひやうかい​に​しら​しむ​べから​ず。 ゆめゆめ。

 

(12) ¬末灯鈔¼(4)、 ¬善性本¼(6)

+真仏御坊   親鸞

 ^これ​は ¬きょう¼ のもんなり。 ¬ごんぎょう¼ (*入法界品・意)~のたまはく、 「信心しんじんかんしゃしょ如来にょらいとう」 といふは、 「信心しんじん+よろこぶ​ひと​は​もろもろ​の如来にょらいと​ひとし」 といふ​なり。 「~もろもろ​の如来にょらいと​ひとし」 といふは、 信心しんじんを​え​て​ことに​よろこぶ​ひと%は、 しゃくそんの​みこと​には、 「けんきょうとくだいきょうそくぜんしん(大経・下)き​たまへ​り。

^また弥陀みだだいじゅうしちがんには、 「十方じっぽうかい+ りょう+諸仏しょぶつ0866 しつしゃ しょうみょうしゃ しゅしょうがく(大経・上)ちかひ​たまへ​り。 がんじょうじゅの文 (大経・下意) には、 「0760ろづ​のぶつに​ほめ​られ、 よろこび​たまふ」 と​みえ​たり。

 ^すこしもうたがふ​べき​に​あらず。 これ​は 「如来にょらいと​ひとし」 といふもんども​を​あらはし​しるす​なり。

   0785*しょう元年がんねんひのとのみじゅうがつとおかのひ

親鸞しんらん

  *しんぶつの御房おんぼう

 (748)  0797  0853

(13) [慶信上書聖人加筆御返事] 「真筆消息」(4)、 ¬末灯鈔¼(14)、 ¬善性本¼(1)

 ^*かしこまり​てもう+そうろふ。

 ^¬だいりょう寿じゅきょう¼ (下) に 「信心しんじんかんˆ嘉ˇ」 とそうろふ。 ¬~ごんぎょう¼ をき​て ¬*じょうさん¼ (94) にも、 「信心しんじんよろこぶ​その​ひと​を 如来にょらいと​ひとし​と​とき​たまふ だい信心しんじんぶっしょうなり ぶっしょうすなはち如来にょらいなり」 とおおせ​られ​てそうろふ​に、 専修せんじゅひとの​なか​に、 あるひとこころえ​ちがへ​てそうろふ​やらん、 「信心しんじんよろこぶひと如来にょらいと​ひとし​とどうぎょうたちの​のたまふ​はりきなり。 *真言しんごんに​かたより​たり」 ともうそうろふ​なるは、 *ひとの​うへ​をる​べき​にそうらは​ねどももうそうろふ。

 ^また、 「真実しんじつ信心しんじんうる​ひと​は すなはちじょうじゅの​かずˆのˇいる 退たいの​くらゐ​に​いり​ぬれ​ば かならずめつを​さとら​しむ」 (浄土和讃・59)そうろ~。 「めつ0761さとら​しむ」 とそうろふ​は、 このたびこのおわそうらは​ん​とき、 真実しんじつ信心しんじんぎょうじゃこころほうに​いたりそうらひ​なば、 寿じゅみょうりょう0798*たいとして、 こうみょうりょう*徳用とくゆうはなれ​たまは​ざれ​ば、 如来にょらい*心光しんこういちなり。

^このゆゑ+、 「だい信心しんじんぶっしょうなり、 ぶっしょう~は​すなはちにょ0854らいなり」 とおおせ​られ​てそうろふ​やらん。 これ​は十一・二・三のおん0749ちかい+と​こころえ​られそうろふ。 罪悪ざいあくの​われら​がために​おこし​たまへ​るだいおんちかい目出めでたく​あはれに​まします​うれしさ、 こころ​も​およば~れ​ず、 ことば​も​たえ​てもうし​つくし​がたき​こと、 かぎり​なくそうろふ。

^無始むし曠劫こうごうより​このかた、 過去かこ遠々おんおんに、 恒沙ごうじゃ諸仏しょぶつしゅっみもとにて、 だい ˆ自力のˇだいしんおこす​と​いへども、 りきˆさとりˇかなはずそん方便ほうべんに​もよほさ​れ​まゐらせ​て、 ぞうぎょう雑修ざっしゅりきしんの​おもひ​なし。

 

^無礙むげこう如来にょらい摂取せっしゅしゃおんあはれみ​の​ゆゑに、 しんなく​よろこび​まゐらせ​て、 一念いちねん%まで​の ˆするにˇ おうじょうさだ%まり​て、 *誓願せいがん思議しぎと​こころえそうらひ​な*ん​には、 そうろˆるˇ に​あか​ぬじょうしょうˆ御ˇ ぎょうも、 しきに​あひ​まゐらせ​ん​と​おもは​ん​こと​も、 摂取せっしゅしゃも、 しんも、 念仏ねんぶつも、 ひとのため​と​おぼえ​られ+そうろ

 ^いましゅおんおしえの​ゆゑ ˆによりてˇ こころ~を​ぬき​ておんこころむき​を​うかがひそうろふ​によりて0762がんを​さとり、 *直道じきどうを​もとめ​え​て、 まさしき真実しんじつほう~に​いたりそうらは​ん​こと、 このたび一念いちねんもんみょうに​いたるˆにとげ候ひぬるˇまで、 うれしさおんの​いたり+、 その​うへ ¬*弥陀みだきょうしゅう¼ に​おろおろ​あきらかに​お%ぼえ​られそうろふ。

^しか%るに0799けん*そうそう​に​まぎれ​て、 いちもし~くは二時にじさんおこたる​と​いへども、 ちゅうに​わすれ​ず、 おんあはれみ​を​よろこぶ業力ごうりきばかり​にて、 行住ぎょうじゅう座臥ざがしょじょうをも​きらは​ず、 一向いっこう金剛こんごう信心しんじん0750かり0855にて、 仏恩ぶっとんのふかさ、 しゅ恩徳おんどくˆ御とくˇの​うれしさ、 報謝ほうしゃのために​ただ御名みなを​となふる​ばかり​にて、 *しょ%せ​ず。 この​やう*ひがざまに%そうろふ​らん。 いちだい、 ただ​これ​に​すぎ​たる​は​なし。 しかるべくは、 よくよく​こまかにおおせをかぶそうらは​ん​とて、 わづかに​おもふ​ばかり​をしるしてもう~あげそうろふ。

 ^さてはきょうに​ひさしくそうらひ​し​に、 そうそう​に​のみそうらひ​て、 こころ​しづかに​おぼえ​ずそうらひ​し​こと​の​なげか​れそうらひ​て、 わざと​いかにしても​まかり​のぼり​て、 こころ​しづかに、 せめて​はいつもとそうらは​ばや​と​ねがひそうろふ​なり。 ああˆあゝˇ、 かう​までもうそうろふ​もおんの​ちから​なり。

 しんじょう しょうにん (親鸞)もとへ   *れんいの御坊おんぼうもうさ​せたまへ

   0763~じゅうがつとおかのひ

*きょうしんたてまつる (花押)

 ^*つてもうしあげそうろふ。

 念仏ねんぶつもうそうろ人々ひとびとの​なか​に、 南無なも弥陀みだぶつと​となへそうろふ​ひま​には、 無礙むげこう如来にょらいと​となへ​まゐらせそうろひとそうろふ。 これ​を​きき​て、 あるひともう0800そうろふ​なる、 「南無なも弥陀みだぶつと​となへ​て​の​うへ​に、 みょうじん十方じっぽう無礙むげこう如来にょらいと​となへ​まゐら​せそうろふ​こと​は、 おそれ​ある​こと​にて​こそ​あれ、 *いまめがはしく」 ともうそうろふ​なる、 この​やう​いかがそうろふ​べき0751

 (801)  0856

・¬末灯鈔¼(15)後半、 ¬善性本¼(1)続き

^+御返事

 *南無なも弥陀みだぶつを​となへ​て~の​うへ​に、 無礙むげこう%ぶつもう%さ​ん​は​あしき​こと​なり​とそうろふ​なる​こそ、 きはまれ​る~おんひがごと​と​きこえそうらへ。 みょう南無なもなり。 無礙むげこうぶつこうみょうなり、 智慧ちえなり。 この智慧ちえは​すなはち弥陀みだぶつなり。 弥陀みだぶつおんかたち​を​しら​せたま+は​ねば、 そのおんかたち​を​たしかに​たしかに​しら​せまゐらせ​ん​とて、 しんさつ (天親) おんちから​をつくし​て​あらはし​たまへ​る​なり。 この​ほか​の​こと​は、 少々しょうしょう文字もじを​なほし​て​まゐらせそうろ~なり。

+親鸞

  +慶信御坊 御返事

 0764  (859)

・¬善性本¼(3)

 ^*この御文おんふみの​やう、 くはしくもうしあげ​てそうろふ。 すべて​この御文おんふみの​やう、 たがは​ずそうろふ​とおおそうろふ​なり。 ただし、 「一念いちねんする​におうじょうさだまり​て誓願せいがん思議しぎと​こころえそうろふ」 とおおそうろふ​を​ぞ、 「よき​やう​にはそうらへ​ども、 一念いちねんに​とどまる​ところ​あしくそうろふ」 とて、 御文おんふみの​そば​にひつをもつて、 あしくそうろふ​よし​をれ​させ​おはしまし​てそうろふ。 れんに 「かくれ​よ」 とおおせ​を​かぶり​てそうらへ​ども、 ひつは​つよきしょうに​おぼしめさ​れそうらひ​ぬ​と​おぼえそうろふ​あひだ、 をりふし*御咳おんがいびょうにておんわづらひ​に​わたら​せたまひそうらへ​ども、 もうし​てそうろふ​なり。

 ^また*のぼり​てそうらひ​し0752人々ひとびと、 くに​にろんじ​まうす​とて、 あるいはろくと​ひとし​ともうそうろ人々ひとびとそうろふ​よし​をもうそうらひ​しか​ば、 しるしおおせ​られ​てそうろふみそうろふ。 しるし​て​まゐら​せそうろふなり。 らんある​べくそうろふ。

^またろくと​ひとし​とそうろふ​は、 ろく等覚とうがくぶんなり。 これ​はいんぶんなり。 これ​はじゅうじゅうつき円満えんまん0860たまふ​が、 すでにようここぬつきの​いまだ円満えんまんし​たまは​ぬ​ほど​をもうそうろふ​なり。 これ​はりきしゅぎょうの​やう​なり。 われら​は信心しんじんけつじょうぼんくらい〔は〕正定しょうじょうじゅくらいなり。 これ​はいんなり、 これ等覚とうがくぶんなり。 かれ0765りきなり、 これ​はりきなり。 自他じたの​かはり​こそそうらへ​ども、 いんくらいは​ひとし​といふ​なり。 またろくみょうがくの​さとり​は​おそく、 われら​がめつに​いたる​こと​はそうらは​んずる​なり。 かれ​は*じゅうろくおく七千しちせんまんざいの​あかつき​をし、 これ​は*ちくまく​を​へだつる​ほど​なり。 かれ​は漸頓ぜんとんの​なか​のとん、 これ​はとんの​なか​のとんなり。

^めつといふはみょうがくなり。 曇鸞どんらんの ¬ちゅう¼ (論註・下) に​いはく、 「じゅウヘキあり、 好堅こうけんじゅといふ。 このそこひゃくねんわだかまり​ゐ​て、 ふる​とき一日いちにちひゃくじょうそうろふ」 (意) なる​ぞ。 このそこひゃくねんそうろふ​は、 われら​がしゃかいそうらひ​て、 正定しょうじょうじゅくらいじゅうするぶんなり。 一日いちにちひゃくじょうそうろふ​なる​は、 めつに​いたるぶんなり。 これ​に​たとへ​てそうろふ​なり。 これ​はりきの​やう​なり。 まつ生長しょうちょうする​は、 とし​ごと​にすんを​すぎ​ず。 これ​は​おそし、 りきしゅぎょうの​やう​なり。

 ^また如来にょらいと​ひとし​といふ​は、 煩悩ぼんのうじょうじゅぼんぶつ心光しんこうらさ​れ​まゐら​せ​てしん0753じんかんす。 しんじんかんする​ゆゑに正定しょうじょうじゅかずじゅうす。 信心しんじんといふはなり。 このは、 りきこうみょう摂取せっしゅせ​られ​まゐら​せ​ぬる​ゆゑに​うる​ところのなり。 ぶつこうみょう0861なり。 かるがゆゑに、 おなじ​といふ​なり0766。 おなじ​といふは、 信心しんじんを​ひとし​といふ​なり。 かんといふは、 信心しんじんかんする​なり。 わが信心しんじんかんする​ゆゑに​おなじ​といふ​なり。

^くはしくひつに​しるさ​れ​てそうろふ​を、 うつし​て​まゐら​せそうろふ。

 ^また南無なも弥陀みだぶつもうし、 また無礙むげこう如来にょらいと​となへそうろしんも、 くはしくひつしょうそくの​そば​に​あそば​し​てそうろふなり。 かるがゆゑに、 それ​より​の御文おんふみを​まゐら​せそうろふ。 あるいは弥陀みだと​いひ、 あるいは無礙むげこうもうし、 御名みなことなり​と​いへども、 こころひとつ​なり。 弥陀みだといふは*ぼんなり。 これ​にはりょう寿じゅとも​いふ。 無礙むげこうとももうそうろふ。 梵漢ぼんかんことなり​と​いへども、 こころおなじくそうろふ​なり。

 ^そもそも、 *覚信かくしんぼうの​こと、 ことに​あはれに​おぼえ、 また​たふとく​も​おぼえそうろふ。 そのゆゑは、 *信心しんじんたがは​ず​して​をはら​れ​てそうろふ。 また、 たびたび信心しんじんぞんの​やう、 いかやうに​か​と​たびたびもうそうらひ​しか​ば、 とうまで​は​たがふ​べく​もそうらは​ず。 いよいよ信心しんじんの​やうは​つよくぞんずる​よしそうらひ​き。

^*のぼりそうらひ​し​に、 くに​を​たち​て、 *ひと・・いち・・もうし​し​とき、 み​いだし​てそうらひ​しか​ども、 どうぎょうたち​はかえれ​なんどもうそうらひ​しか​ども、 「する​ほど​の​こと​なら0767ば、 かえる​ともし、 とどまる​ともそうらは​んず。 またやまいは​やみそうらは​ば、 かえる​とも​やみ、 0754とどまる​とも​やみそうらは​んず。 おなじく​は、 *みもと​にて0862こそ​をはりそうらは​ば、 をはりそうらは​め​とぞんじ​て​まゐり​てそうろふ​なり」 と、 おんものがたりそうらひ​し​なり。

^この信心しんじんまことに​めでたく​おぼえそうろふ。 善導ぜんどうしょうしゃく (散善義)二河にが譬喩ひゆに​おもひ​あはせ​られ​て、 *よに​めでたくぞんじ、 うらやましくそうろふ​なり。 をはり​の​とき、 南無なも弥陀みだぶつ南無なも無礙むげこう如来にょらい南無なも不可ふか思議しぎこう如来にょらいと​となへ​られ​て、 を​くみ​て​しづかに​をはら​れ​てそうらひ​し​なり。

^また*おくれ​さきだつ​ためし​は、 あはれに​なげかしく​おぼしめさ​れそうろふ​とも、 さきだち​てめつに​いたりそうらひ​ぬれ​ば、 かならず最初さいしょ*いんじょうの​ちかひ​を​おこし​て、 結縁けちえん眷属けんぞくぼうを​みちびく​こと​にてそうろふ​なれば、 しかるべく​おなじ法文ほうもんもんり​てそうらへ​ば、 れんも​たのもしく​おぼえそうろふ。 また、 おやと​なり、 と​なる​も、 せんの​ちぎり​ともうそうらへ​ば、 たのもしく​おぼしめさ​る​べくそうろふ​なり。 この​あはれさ​たふとさ、 もうし​つくし​がたくそうらへ​ば、 とどめそうらひ​ぬ。 いかに​して​か、 みづから​この​こと​をもうそうろふ​べき​や。 くはしく​は​なほなほもうそうろふ​べくそうろふ。

^このふみの​やう​を、 *おんまへ​にて​あしく​も​やそうろ0768ふ​とて、 よみ​あげ​てそうらへ​ば、 「これ​に​すぐ​べく​もそうらは​ず、 めでたくそうろふ」 とおおせ​を​かぶり​てそうろふ​なり。 ことに覚信かくしんぼうの​ところ​に、 おんなみだを​ながさ​せたまひ​てそうろふ​なり。 よに​あはれに​おもは​せたまひ​てそうろふ​なり。

   *じゅうがつじゅうにち

れん

  0755きょうしんの0863御坊おんぼう

 (773)  (785)

(14) [獲得名号自然法爾章] 「古写消息」(6)、 ¬末灯鈔¼(5)

 ^~ねんほうこと

+「獲」◗ぐゐやくのは、 因位のときうるをぐゐやくといふ。
 「得」 字は、 果位のときにいたりてうることを得といふなり。
 「名」 字は、 因位のときのなを名といふ。
 「号」 字は、 果位のときのなを号といふ。

 ^ねん」 といふは、 「」 は​おのづから​といふ、 ぎょうじゃ*はからひ​に​あらず。+ねん」 といふは、 しからしむ​といふ​ことば~なり。 しからしむ​といふは、 ぎょうじゃの​はからひ​に​あらず、 如来にょらいの​ちかひ​にて​ある​がゆゑに~ほうといふ。

^ほう」 といふは、 この如来にょらいおんちかひ0774なる​がゆゑに、 しからしむる​をほうといふ~なり。 ほうは、 このおんちかひ​なり​ける​ゆゑに、 %およそぎょうじゃのはからひ​の​なき​をもつて、 このほうとくのゆゑに​しからしむ​といふ​なり。 すべて、 ひと​の*はじめて​はからは​ざる​なり。 このゆゑに+なき​をと​す​と​しる​べし​と​なり。

^ねん」 といふは、 もとより​しからしむ~る​といふ​ことば​なり。

 ^0769弥陀みだぶつおんちかひ​の、 もとよりぎょうじゃの​はからひ​に​あらず​して、 南無なも弥陀みだ~ぶつと​たのま​せたまひ​て、 むかへ​ん​と​はからは​せたまひ​たる​によりて、 ぎょうじゃの​よから​ん​とも​あしから​ん​とも​おもは​ぬ​を、 ねんと​はもうす​ぞ*と​きき​てそうろふ。

 ^ちかひ​の​やう​は、 「*じょうぶつに​なら​しめ​ん」 とちかひ​たまへ​る​なり。 じょう0786ぶつもうす​は、 かたち​も​なく​まします。 かたち%も​ましまさ​ぬ​ゆゑに、 ねんと​はもうす​なり。 かたち​まします​と​しめす​とき​には、 じょうはんとはもうさ​ず。 かたち​も​ましまさ​ぬ​やう​を​しらせ​ん​とて、 はじめ%弥陀みだぶつ~もうす​と​ぞ、 きき​ならひ​てそうろふ。 弥陀みだぶつねんの​やう​を​しらせ​ん*りょうなり。

^このどうを​こころえ​つる​のち​には、 このねんの​こと​は​つね​に*沙汰さたす​べき​に~は​あらざる​なり。 つね​にねん沙汰さたせ​ば、 なき​をと​す​といふこと​は、 なほの​ある​に​なる​べし。 これはぶっ思議しぎにて​ある​な%る​べし。

   しょうねんじゅうがつじゅうよっかのひ

0775禿とく親鸞しんらんはちじゅう六歳ろくさい

%*正嘉二歳戊午十二月日、 善法坊僧都御坊、 三条とみのこうぢ​の御坊にて、 聖人に​あい​まいらせ​て​の​きゝがき、 その​とき顕智これ​を​かく​なり。

 (755)

(15) 「真筆消息」(5)

 ^うるうじゅうがつ一日ついたち御文おんふみ、 たしかに​みそうろふ。

^*かく・・ねむ・・ばう・・おんこと、 *かたがた​あは0770れにぞんそうろふ。 親鸞しんらんは​さきだち​まゐら​せそうらは​んずらん​と、 まち​まゐら​せ​て​こそそうらひ​つる​に、 さきだた​せたまひそうろふ​こと、 もうす​ばかり​なくそうろふ。 かく・・しん・・ばう・・*ふる​としごろ​は、 かならず​かならず​さきだち​て​また​せたまひそうろふ​らん。 かならず​かならず​まゐり​あふ​べくそうらへ​ば、 もうす​に​およばずそうろふ。 *かく・・ねん・・ばう・・おおせ​られ​てそうろふ​やう、 すこし​もろうに​かはら​ず​おはしましそうらへ​ば、 かならず​かならず*ひとつ​ところ​へ​まゐり​あふ​べくそうろふ。

^みょうねんじゅうがつの​ころ​まで​もき​てそうらは​ば、 この*面謁めんえつうたがいなくそうろふ​べし。 にゅうどう殿どのおんこころ​も、 すこし​も​かはら​せたまは​ずそうらへ​ば、 さきだち​まゐら​せ​ても、 まち​まゐら​せそうろふ​べし。

^人々ひとびとおんこころざし、 たしかに​たしかに​たまはり​てそうろふ。 なにごと​も​なにごと​も、 いのちそうろふ​らん​ほど​はもうす​べくそうろふ。 また*おおせ​を​かぶる​べくそうろふ。 この御文おんふみみ​まゐら​せそうろふ​こそ、 ことに​あはれにそうらへ。 *なかなかもうそうろふ​も*おろかなる​やう​にそうろふ。 またまた、 つてもうそうろふ​べくそうろふ。

^あなかしこ、 あなかしこ。

   0756*うるうじゅうがつじゅうにち

親鸞しんらん (花押)

  *たかにゅうどう殿どのおんへん

 0771  (786)

(16) ¬末灯鈔¼(6)

 ^なによりも、 *去年こぞとしろうしょう男女なんにょおほく​の​ひとびと​の、 に​あひ​てそうろふ​らん​こと​こそ、 あはれにそうらへ。 ただししょうじょうの​ことわり、 くはしく如来にょらいき​おか​せおはしまし​てそうろふ​うへは、 おどろき​おぼしめす​べから​ずそうろふ。

^まづ善信ぜんしん (親鸞)には、 りんじゅう善悪ぜんあくをばもうさ​ず、 信心しんじんけつじょうの​ひと​は、 うたがいなけれ​ば正定しょうじょうじゅじゅうする​こと​にてそうろふ​なり。 さればこそ愚痴ぐち無智むちひとも、 をはり​も​めで0787たくそうらへ。

^如来にょらいおんはからひ​にておうじょうする​よし、 ひとびと~もうさ​れそうらひ​ける、 すこし​も​たがは​ずそうろふ​なり。 としごろ、 おのおの​にもうそうらひ​し​こと、 たがは​ず​こそそうらへ。 *かまへて*がくしょう沙汰さたせさせたまひそうらは​で、 おうじょうを​とげ​させたまひそうろふ​べし。

 ^法然ほうねんしょうにんは、 「じょうしゅうひとしゃに​なり​ておうじょうす」 とそうらひ​し​こと​を、 たしかに​うけたまはりそうらひ​し​うへに、 もの​も​おぼえ​ぬ​あさましき​ひとびと​の​まゐり​たる​をらんじ​て​は、 「おうじょうひつじょうす​べし」 とて、 ま​せたまひ​し​を​み​まゐら​せそうらひ​き。 ふみ沙汰さたして、 *さかさかしき​ひと​の​まゐり​たる​をば、 「おうじょうは​いかが​あら​んずらん」 と、 たしかに​うけたまはり​き。 いま​に​いたる​まで、 おもひ​あはせ​られそうろふ​なり。

^ひとびと​に*すかさ​れ​させたまは​で、 信心しんじんたぢろか​せたまは0772ず​して、 おのおのおうじょうそうろふ​べき​なり。 ただし、 ひと​に​すかさ​れ~させたまひそうらは​ず​とも、 信心しんじんさだまら​ぬひと正定しょうじょうじゅじゅうし​たまは​ず​して、 *うかれ​たまひ​たるひとなり。

 ^*じょうしんぼうに​かやうにもうそうろふ​やう​を、 ひとびと​にももうさ​れそうろふ​べし。

^あなかしこ、 あなかしこ。

   *文応ぶんおう元年がんねんじゅう一月いちがつじゅう三日さんにち

*善信ぜんしんはちじゅう八歳はっさい

  じょうしん御房おんぼう

   +このおんしょうそくしやうほんは、 板東ばんどう下野しもつけのくにおほうち​のしやうたかに​これ​ある​なり​と。

 (841)

(17) ¬御消息集¼(12)

 ^さては*念仏ねんぶつのあひだ​の​こと​によりて、 *ところせき​やう​に​うけたまはりそうろふ。 かへすがへす​こころぐるしくそうろふ。 せんずる​ところ、 その​ところ​のえんき​させたまひそうろふ​らん。 念仏ねんぶつ*さへ​らる​なんどもうさ​ん​こと​に、 ともかくも​なげき​おぼしめす​べから​ずそうろふ。 *念仏ねんぶつとどめ​ん​ひと​こそ、 いかにも​なりそうらは​め。 もうし​たまふ​ひと​は、 なにか​くるしくそうろふ​べき。 *の​ひとびと​をえんとして、 念仏ねんぶつを​ひろめ​ん​と、 はからひ​あはせ​たまふ​こと、 ゆめゆめ​ある​べから​ずそうろ0842ふ。 その​ところ​に念仏ねんぶつの​ひろまりそうらは​ん​こと​も、 *仏天ぶってんおんはからひ​にてそうろふ​べし。

 ^0773*しんぼうが​やうやう​にもうそうろふ​なる​によりて、 ひとびと​もおんこころ​ども​の​やうやう​に​なら​せたまひそうろふ​よし、 うけたまはりそうろふ。 かへすがへす便びんの​こと​にそうろふ。 ともかくも仏天ぶってんおんはからひ​に​まかせ​まゐらせ​させたまふ​べし。 その​ところ​のえんき​て​おはしましそうらは​ば、 いづれ​の​ところ​にて​も​うつら​せたまひそうろう​て​おはします​やう​におんはからひそうろふ​べし。 しんぼうもうそうろふ​こと​を​たのみ​おぼしめし​て、 *これ​より​はひと*強縁ごうえんとして念仏ねんぶつひろめ​よ​ともうす​こと、 ゆめゆめもうし​たる​ことそうらは​ず。 きはまれ​る​ひがごと​にてそうろふ。

^*このの​ならひ​にて、 念仏ねんぶつを​さまたげ​ん+こと​は、 かねてぶつき​おか​せたまひ​てそうらへ​ば、 おどろき​おぼしめす​べから​ず。 やうやう​にしんぼうもうす​こと​を、 これ​よりもうそうろふ​とおんこころえそうろふ、 ゆめゆめ​ある​べから​ずそうろふ。 法門ほうもんの​やう​も、 あら​ぬ​さま​にもうし​なし​てそうろふ​なり。 御耳おんみみにきき​いれ​らる​べから​ずそうろふ。 きはまれ​る​ひがごと​ども​の​きこえそうろふ。 あさましくそうろふ。

 ^*にゅうしんぼうなんど​も便びんに​おぼえそうろふ。 鎌倉かまくらながしてそうろふ​らん、 便びんそうろふ。 とう、 それ​も*わづらふ​べく​て​ぞ0843、 さてもそうろふ​らん。 ちから​およば​ずそうろふ。

 ^*奥郡おうぐんの​ひとびと​の、 しんぼうに​すかさ​れ​て、 信心しんじんみな​うかれ​あう​て​おはしましそうろ0774ふ​なる​こと、 かへすがへす​あはれに​かなしう​おぼえそうろふ。 これ​も​ひとびと​を​すかし​まうし​たる​やう​に​きこえそうろふ​こと、 かへすがへす​あさましく​おぼえそうろふ。 それ​もごろ、 ひとびと​のしんさだまら​ずそうらひ​ける​こと​の​あらはれ​て​きこえそうろふ。 かへすがへす便びんそうらひ​けり。

 ^しんぼうもうす​こと​によりて、 ひとびと​のごろのしんの​たぢろき​あう​て​おはしましそうろふ​も、 せんずる​ところ​は、 ひとびと​の信心しんじんの​まこと​なら​ぬ​こと​の​あらはれ​てそうろふ。 よき​こと​にてそうろふ。 *それ​を、 ひとびと​は、 *これ​よりもうし​たる​やう​に​おぼしめし​あう​てそうろふ​こそ、 あさましくそうらへ。

 ^ごろ​やうやう​のおんふみ​ども​を、 き​もち​て​おはしまし​あう​てそうろ甲斐かいも​なく​おぼえそうろふ。 ¬唯信ゆいしんしょう¼、 やうやう​のおんふみ​ども​は、 いま​はせんなく​なり​てそうろふ​と​おぼえそうろふ。 よくよくき​もた​せたまひ​てそうろ法門ほうもんは、 みなせんなく​なり​てそうろふ​なり。 しんぼうに​みな​したがひ​て、 *めでたきおんふみ​ども​は​すて​させたまひ​あう​てそうろふ​と​きこえそうろふ​こそ、 せんなく​あはれに​おぼえそうらへ。

^よくよく ¬唯信ゆいしんしょう¼・¬後世ごせものがたり¼ なんど​をらんある​べくそうろふ。 とし0844ごろ、 しんあり​とおおせ​られ​あう​てそうらひ​ける​ひとびと​は、 みな​そらごと​にてそうらひ​けり​と​きこえそうろふ。 あさましく0775そうろふ、 あさましくそうろふ。 なにごと​も​なにごと​も、 またまたもうそうろふ​べし。

   しょうがつここぬ

親鸞しんらん

  *しんじょうの御坊おんぼう

 (828)

(18) ¬御消息集¼(6)

 ^なにごと​より​は、 如来にょらい本願ほんがんの​ひろまら​せたまひ​てそうろふ​こと、 かへすがへす​めでたく、 うれしくそうろふ。 その​こと​に、 おのおの​ところどころ​に、 *われ​は​といふ​こと​を​おもう​て​あらそふ​こと、 ゆめゆめ​ある​べから​ずそうろふ。 きょう~一念いちねんねんなんどもうす、 あらそふ​こと​の​おほくそうろふ​やう​に​ある​こと、 さらさらそうろふ​べから​ず。

^ただせんずる​ところ​は、 ¬*唯信ゆいしんしょう¼・¬*後世ごせものがたり¼・¬*りきりき¼、 このおんふみ​ども​を​よくよく​つね​に​み​て、 そのおんこころ​に​たがへ​ず​おはします​べし。 いづかた​の​ひとびと​にも、 この​こころ​をおおせ​られそうろふ​べし。 なほ​おぼつかなき​こと​あらば、 今日こんにちまできてそうらへ​ば、 *わざと​も​これ​へ​たづね​たまふ​べし。 また便びんにもおおせ​たまふ​べし。 *鹿しま*行方なめかた、 その​ならび​の​ひとびと​にも、 この​こころ​を​よくよくおおせ​らる​べし。 一念いちねんねんの​あらそひ​なんど​の​やう​に、 *せんなき​こと0829ろんじ​ごと​を​のみもうし​あは​れ​てそうろふ​ぞかし。 よくよく​つつしむ​べき​こと​なり。

^あなかしこ0776、 あなかしこ。

 ^かやう​の​こと​を​こころえ​ぬ​ひとびと​は、 *その​こと​と​なき​こと​をもうし​あは​れ​てそうろふ​ぞ。 よくよく​つつしみ​たまふ​べし。 かへすがへす。

   がつみっかのひ

親鸞しんらん

 (849)  0878

(19) ¬御消息集¼(18)、 ¬血脈文集¼(3)

 ^諸仏しょぶつ称名しょうみょうがん (第十七願)もうし、 諸仏しょぶつしゃがん (同)もうそうろふ​なる​は、 十方じっぽうしゅじょうを​すすめ​ん​ため​と​きこえ​たり。 また十方じっぽうしゅじょうしんを​とどめ​ん*りょうと​きこえ​てそうろふ。 ¬*弥陀みだきょう¼ の十方じっぽう諸仏しょぶつ証誠しょうじょうの​やう​にて​きこえ​たり。 せんずる​ところ​は、 方便ほうべん誓願せいがんしんじ​まゐらせ+そうろふ。

^念仏ねんぶつおうじょうがん (第十八願) は、 如来にょらい往相おうそうこうしょうごうしょういんなり​と​みえ​てそうろふ。 まこと​の信心しんじんある​ひと​は、 とうしょうがくろくと​ひとしけれ​ば、 如来にょらいと​ひとし​とも諸仏しょぶつの​ほめ​させたまひ​たり​と​こ​そきこえ​てそうらへ。 また 「弥陀みだ本願ほんがんしんそうらひ​ぬる​うへに​は、 なき​をと​す」 と​こそ、 だいしょうにん (*法然)おおせ​にてそうらへ。 かやうにそうろふ​らん​かぎり​は、 りきには​あらず、 りきなり​と​きこえ​てそうろふ。

^またりきもうす​は、 ぶっ思議しぎにてそうろ0850ふ​なる​とき​に、 煩悩ぼんのうそくぼんじょうかくの​さとり​をそうろふ​なる​こと%0777ば、 ぶつぶつ+のみおんはからひ​なり。 さらにぎょうじゃの​はからひ​に​あらず~そうろふ。 しかれば、 なき​をと​す​とそうろふ​なり。 もうす​こと​は、 りきの​ひと​の​はからひ​をもうす​なり。 りきには、 しかれば、 なき​をと​す​とそうろふ​なり。 この​ひとびと​のおおせ​の​やう​は、 これ​には​つやつやと​しら​ぬ​こと​にてそうらへ​ば、 とかくもうす​べき​に​あら0879そうろふ。

^また 「らい」 のは、 しゅじょうやくのために​は、 きたる​ともうす、 方便ほうべんなり。 さとり~を​ひらき​て​は、 かへる​ともうす。 とき​に​したがひ​て、 きたる​とも​かへる​とももうす​と​みえ​てそうろふ。

^なにごとも​なにごと​も、 またまたもうす​べくそうろふ。

   がつ%ここぬ

親鸞しんらん

  *きょう西さいの御坊おんぼう ~おんへん

 (856)

(20) [浄信房御返事・諸仏等同云事] ¬善性本¼(2)

 ^~無礙むげこう如来にょらい慈悲じひこうみょう摂取せっしゅせ​られ​まゐら​せそうろふ​ゆゑ、 みょうごうを​となへ​つつ退たいくらいさだまりそうらひ​なん​には、 こののために摂取せっしゅしゃを​はじめて​たづぬ​べき​には​あらず​と​おぼえ​られ​てそうろふ。

^その​うへ ¬ごんぎょう¼ (入法界品) に、 「もんほうかん信心しんじん無疑むぎしゃ そくじょうじょうどうしょ如来にょらいとう」 とおおせ​られ​てそうろふ。 まただいじゅうしちがんに 「十方じっぽうりょう諸仏しょぶつに​ほめ​となへ​られ​ん」 とおおせ​られ​てそうろふ。 またがんじょうじゅもん (大経・下) に 「十方じっぽう恒沙ごうじゃ諸仏しょぶつ」 とおお0778られ​てそうろふ​は、 信心しんじんひとと​こころえ​てそうろ0857ふ。 このひとは​すなはち​このより如来にょらいと​ひとし​と​おぼえ​られそうろふ。

^この​ほか​は、 ぼんの​はからひ​をば​もちゐ​ずそうろふ​なり。 この​やう​を​こまかにおおせ​かぶり​たまふ​べくそうろふ。 恐々きょうきょう謹言きんげん

   0758がつじゅうにち

*じょうしん

 (757)  0788

・¬末灯鈔¼(7)

 +諸仏等同と云事
 +わうじやうは​なにごと​も​なにごと​もぼむの​はからひ​なら​ず、 如来にょらいおんちかひ​に​まかせ​まいらせ​たれ​ば​こそ、 りきにて​は候へ。 やうやうに​はからひ​あふ​て候らん、 おかしく候。

・「真筆消息」(6)、 ¬善性本¼(2)続き

 ^如来にょらい誓願せいがんしんずるしんさだまる~とき​ともうす​は、 摂取せっしゅオサメムカエトリタマフしゃやくに​あづかる​ゆゑに、 退たいくらいさだまる​とおんこころえそうろふ​べし。 真実しんじつ信心しんじん+さだまる​ともうす​も、 金剛こんごう+信心しんじんさだまる​ともうすも、 摂取せっしゅしゃの​ゆゑに~もうす​なり。 されば​こそ、 じょうかくに​いたる​べきしんの​おこる​ともうす​なり。 これ​を退たいくらいとも+正定しょうじょうじゅくらいる​とももうし、 とうしょうがくに​いたる​とももうす​なり。

^この​こころ​のさだまる​を、 十方じっぽう諸仏しょぶつの​よろこび​て、 諸仏しょぶつおんこころ​に​ひとし​と​ほめ​たまふ​なり。 このゆゑに、 まこと​の信心しんじんひとをば、 諸仏しょぶつと​ひとし​ともうす​なり。 またしょろくと​おなじ​と+もうす​なり。

^このにて真実しんじつ信心しんじんひとをまもら​せたまへ​ば​こそ、 ¬*弥陀みだきょう¼ (意) には、 「十方じっぽう恒沙ごうじゃ諸仏しょぶつねんす」 と​はもうす​こと​にてそうらへ。 安楽あんらくじょうおうじょう0779して​のち%は、 まもり​たまふ​ともうす​こと​にて​はそうらは​ず。 しゃかいたる​ほどねんす​と~もうす​こと0789なり。 信心しんじんまこと​なるひとの​こころ​を、 十方じっぽう恒沙ごうじゃ0858如来にょらいの​ほめ​たまへ​ば、 ぶつと​ひとし​と​はもうす​こと​なり。

 ^またりきもうす​こと​は、 なき​をと​す0757もうす​なり。 もうす​こと​は、 ぎょうじゃの​おのおの​の​はからふ​こと​をと​はもうす​なり。 如来にょらい誓願せいがん不可ふか思議しぎに​まします​ゆゑに、 ぶつぶつとのおんはからひ​なり。 ぼんの​はからひ​に​あらず。 しょろくさつを​はじめ​として、 ぶっ思議しぎを​はからふ​べきひとそうらは​ず。 しかれば、 「如来にょらい誓願せいがんにはなき​をと​す」 と​は、 だいしょうにん (法然)おおせ​にそうらひ​き。 この​こころ​の​ほか​に~*おうじょうに​いる​べき​ことそうらは​ず​と​こころえ​て、 まかり​すぎそうらへ​ば、 ひとおおせごと​には​いら​ぬ​もの​にてそうろふ​なり。 ~しょ恐々きょうきょう謹言きんげん

   +二月廿五日

*親鸞しんらん (花押)

  +浄信御坊 御返事

 (814)

(21) ¬末灯鈔¼(21)、 ¬善性本¼(2)後半

 ^安楽あんらくじょうり​はつ​れ​ば、 すなはちだいはんを​さとる​とも、 ~またじょうかくを​さとる​とも、 めつに​いたる​とももうす​は、 御名みなこそ​かはり​たる​やう​なれども、 これ​みな+法身ほっしんもうぶつのさとり​を​ひらく​べきしょういんに、 弥陀みだぶつおんちかひ​を、 法蔵ほうぞう0780さつわれら​にこうし​たまへ​る​を、 往相おうそうこうもうす​なり。

^このこうせさせたまへ​るがんを、 念仏ねんぶつおうじょうがん (第十八願) と​はもうす​なり。 この念仏ねんぶつおうじょうがん*一向いっこうしんじ​て*ふたごころなき​を、 一向いっこう専修せんじゅ~もうす​なり。 如来にょらい+*しゅこうもうす​こと​は、 このしゅこうがんしんじ、 ふたごころなき​を、 真実しんじつ信心しんじんもうす。 この真実しんじつ信心しんじんの​おこる​こと​は、 しゃ弥陀みだ~そんおんはからひ​より​おこり​たり​と​しら​せたまふ​べ%し。

^あなかしこ、 あなかしこ。

 (758)

(22) 「真筆消息」(7)

 ^*いや・・をんな・・・%が​こと、 ふみき​て​まゐら​せ​られそうろ%めり。 いまだどころも​なく​て、 *わび​ゐ​てそうろふ​なり。 あさましく​あさましく、 *もて​あつかひ​て、 いかに​す​べし​とも​なく​てそうろふ​なり。 あなかしこ。

   三月さんがつじゅう八日はちにち

(花押)

+………(切封)

  *わうごぜん

しんらん

 0763  (791)

(23) [誓願名号同一事] 「古写消息」(1)、 ¬末灯鈔¼(9)

 ^~誓願せいがんみょうごう同一どういつこと

 ^0781御文おんふみくはしくうけたまはりそうらひぬ。

^さては​このしん*しかるべし​とも​おぼえ​ずそうろふ。 そのゆゑは、 誓願せいがんみょうごうもうして​かはり​たる​ことそうらは​ず+誓願せいがんを​はなれ​たるみょうごうそうらは​ず+みょうごうを​はなれ​たる誓願せいがんそうらは​ずそうろふ。 かくもうそうろふ​も、 はからひ​にてそうろふ​なり。 ただ誓願せいがん思議しぎしんじ、 またみょうごう思議しぎ一念いちねんしんじ​となへ​つる​うへは、 *なんでふ​わが​はからひ​を​いたす​べき。

^*きき​わけ、 しり​わくる​など、 わづらはしく​はおお~られそうろふ​やらん。 これ​みな​ひがごと​にてそうろふ​なり。 ただ思議しぎしんじ​つる​うへは、 とかくおんはからひ​ある​べから​ずそうろふ。 *おうじょうごうには、 わたくし​の​はからひ0792は​ある​まじくそうろふ​なり。

^あなかしこ、 あなかしこ。

 ^~ただ如来にょらいに​まかせ​まゐら​せ​おはします​べくそうろふ。 あなかしこ、 あなかしこ。

   がついつ

親鸞しんらん

  0764*きょう%みょうのおんぼう+

 ^~端書はしがきに​いはく

 このふみをもつて、 ひとびと​にも​みせ​まゐらせ​させたまふ​べくそうろふ。 りきにはなき​を~す​とはもうそうろふ​なり。

 0782

(24) [仏智不思議と信ずべき事] 「古写消息」(2)、 ¬末灯鈔¼(10)

 ^~ぶっ思議しぎしんず​べきこと

 ^御文おんふみくはしく​うけたまはりそうらひ​ぬ。

^さては法門ほうもんしんに、 一念いちねんぽっ+の​とき、 無礙むげ心光しんこうしょうせ​られ​まゐら​せそうろふ​ゆゑ~*つね​に*じょう業因ごういんけつじょうす​とおおせ​られそうろふ。 これ​めでたくそうろふ。 かく​めでたく​はおおそうらへ​ども、 これ​みな*わたくし​のおんはからひ​に​なり​ぬ​と​おぼえそうろふ。 ただ思議しぎしんぜ​させたまひそうらひ​ぬる​うへは、 わづらはしき​はからひ​ある​べから​ずそうろふ。

 ^また​あるひと*そうろふ​なる​こと、 *しゅっの​こころ​おほく、 じょう業因ごういんすくなし​とそうろふ​なる​は、 こころえ​がたくそうろふ。 しゅっそうろふ​も、 じょう業因ごういんそうろふ​も、 みな​ひとつ​にてそうろふ​なり。 すべ+て​これ、 *なまじひなる0793おんはからひ​とぞんそうろふ。 ぶっ思議しぎしんぜ​させたまひそうらひ​なば、 べつに​わづらはしく、 とかく​のおんはからひ​ある​べから​ずそうろふ。 *ただ​ひと~びと​の​とかくもうそうらは​ん0765こと​を~ば、 しんある​べから​ずそうろふ。 ただ如来にょらい誓願せいがんに​まかせ​まゐら​せたまふ​べくそうろふ。 とかく​のおんはからひ​ある​べから​ずそうろふ​なり。

^あなかしこ、 あなかしこ。

   がついつかのひ

親鸞しんらん %御判

  *じょうしんの御房おんぼう~

 ^0783~袖書そでがきに​いはく

  りきもうそうろふ​は、 とかく​の​はからひ​なき​をもうそうろふ​なり。

 (829)

(25) ¬御消息集¼(7)

 ^六月ろくがつ一日ついたち御文おんふみ、 くはしく​みそうらひ​ぬ。

^さては鎌倉かまくらにて​のおんうったへ​の​やう​は、 *おろおろ​うけたまはり​てそうろふ。 *この御文おんふみにたがは​ず​うけたまはり​てそうらひ​し​に、 *べつの​こと​は​よもそうらは​じ​と​おもひそうらひ​し​に、 *おんくだり​うれしくそうろふ。

 ^おほかた​は、 このうったへ​の​やう​は、 おんひとり​の​こと​には​あらずそうろふ。 すべてじょう念仏ねんぶつしゃの​こと​なり。 この​やう​は、 しょうにん (法然)おんとき、 このども​の​やうやう​にもうされそうらひ​し​こと​なり。 *こと​も​あたらしきうったへ​にて~そうら*は​ず。 *しょうしんぼうひとり​の沙汰さたある​べき​こと​には​あらず。 念仏ねんぶつもうさ​ん​ひと​は、 みな​おなじ​こころ​におん沙汰さたある​べき​こと​なり。 おんをわらひ​まうす​べき​こと​には​あらず0830そうろふ​べし。

^*念仏ねんぶつしゃの​もの​に​こころえ​ぬ​は、 *しょうしんぼうの​とが​にもうし​なされ​ん​は、 きはまれ​る​ひがごと​にそうろふ​べし。 念仏ねんぶつもうさ​ん​ひと​は、 しょうしんぼう*かたうど​に​こそ​なり​あはせ​たまふ​べけれ。 ははあねいもうとなんど​やうやう​にもうさるる​こと​は、 *ふるごと​にてそうろふ。

^さればとて、 *念仏ねんぶつを​とどめ​られそうらひ​し​が、 *曲事くせごとの​おこりそうらひ​しか0784ば、 それ​につけて​も念仏ねんぶつを​ふかく​たのみ​て、 の​いのり​に​こころ​に​いれ​て、 もうし​あはせ​たまふ​べし​とぞ​おぼえそうろ

 ^御文おんふみの​やう、 おほかた​の*ちんじょう、 よくおんはからひ​どもそうらひ​けり。 うれしくそうろふ。

^せんそうろふ​ところ​は、 おんに​かぎら​ず、 念仏ねんぶつもうさ​ん​ひとびと​は、 わがおんりょうは​おぼしめさ​ず​とも、 ちょうオホヤケノオンおんためタメトマフスナリ 国民こくみんクニノタのたミヒヤクめにシヤウ 念仏ねんぶつもうし​あはせ​たまひそうらは​ば、 *めでたうそうろふ​べし。

^おうじょうじょうに​おぼしめさ​ん​ひと​は、 まづ​わがおうじょうを​おぼしめし​て、 おん念仏ねんぶつそうろふ​べし。 わがおうじょういちじょうと​おぼしめさ​ん​ひと​は、 ぶつおんを​おぼしめさ​ん​に、 報恩ほうおんのために、 おん念仏ねんぶつこころ​に​いれ​てもうして、 の​なか安穏あんのんなれ、 仏法ぶっぽうひろまれ​と​おぼしめす​べしとぞ、 おぼえそうろふ。 よくよくあんそうろふ​べし。

^この​ほか​は、 べつおんはからひ​ある​べし​と​は​おぼえ​ずそうろふ。

 ^なほなほおんくだり​のそうろふ​こそ、 う0831れしうそうらへ。 よくよくおんこころ​に​いれ​て、 おうじょういちじょうと​おもひ​さだめ​られそうらひ​なば、 ぶつおんを​おぼしめさ​ん​には、 *異事ことごとそうろふ​べから​ず。 おん念仏ねんぶつを​こころ​に​いれ​てもうさ​せたまふ​べし​と​おぼえそうろふ。

^あなかしこ、 あなかしこ。

   七月しちがつここぬ

親鸞しんらん

  0785しょうしんの御坊おんぼう

 (794)

(26) ¬末灯鈔¼(12)

 ^たづおおせ​られそうろ念仏ねんぶつしんの​こと。

^念仏ねんぶつおうじょうしんずるひとは、 へんおうじょうとて​きらは​れそうろふ​らん​こと、 *おほかた​こころえ​がたくそうろふ。 そのゆゑは、 弥陀みだ本願ほんがんもうす​は、 みょうごうを​となへ​ん​もの​をば極楽ごくらくむかへ​ん​とちかは​せたまひ​たる​を、 ふかくしんじ​て​となふる​が​めでたき​こと​にてそうろふ​なり。 信心しんじんあり​とも、 みょうごうを​となへ​ざら​ん​は*せんなくそうろふ。 また一向いっこうみょうごうを​となふ​とも、 信心しんじんあさく​はおうじょうし​がたくそうろふ。 されば念仏ねんぶつおうじょうと​ふかくしんじ​て、 しかもみょうごうを​となへ​んずる​は、 うたがいなきほうおうじょうにて​ある​べくそうろふ​なり

^せんずる​ところ、 みょうごうを​となふ​と​いふとも、 りき本願ほんがんしんぜ​ざら​ん​はへんうまる​べし。 本願ほんがんりきを​ふかくしんぜ​ん​とも0795がら​は、 *なにごと​にか​はへんおうじょうにてそうろふ​べき。 この​やう​を​よくよくおんこころえそうろう​ておん念仏ねんぶつそうろふ​べし。

 ^このは、 いま​は、 とし​きはまり​てそうらへ​ば、 さだめて​さきだち​ておうじょうそうらは​んずれ​ば、 じょうにて​かならず​かならず​まち​まゐらせそうろふ​べし。

^あなかしこ、 あなかしこ。

   0786七月しちがつじゅう三日さんにち

親鸞しんらん

  *ゆう弥陀みだぶつ おんかえりごと

 0834

(27) ¬御消息集¼(9)

 ^まづ​よろづ​のぶつさつを​かろしめ​まゐらせ、 よろづ​のじんみょうどうを​あなづり*すて​たてまつる​ともうす​こと、 このこと*ゆめゆめ​なき​こと​なり。

^世々せせ生々しょうじょうりょうへん諸仏しょぶつさつやくによりて、 よろづ​のぜんしゅぎょうせ​しかども、 りきにて​はしょうで​ず​あり​し​ゆゑに、 曠劫こうごうしょうの​あひだ、 諸仏しょぶつさつおんすすめ​によりて、 いま​まうあひ​がたき弥陀みだおんちかひ​に​あひ​まゐらせ​てそうろおんを​しら​ず​して、 よろづ​のぶつさつ*あだ​にもうさ​ん​は、 ふかきおんを​しら​ずそうろふ​べし。

^仏法ぶっぽうを​ふかくしんずる​ひと​をば、 てんに​おはします​よろづ​のかみは、 かげ​の​かたち​にへ​る​が​ごとく​して、 まもら​せたまふ​こと​にてそうらへ​ば、 念仏ねんぶつしんじ​たるにて、 てんかみを​すて​まうさ​ん​と​おもふ​こと、 ゆめゆめ​なき​こと​なり。 *じんとうだに​も​すてら​れ​たまは​ず。 いかに​いはんや、 よろづ​のぶつさつを​あだ​にももうし、 *おろかに​おもひ​まゐらせそうろふ​べし​や。 よろづ​のぶつを​おろかにもうさ​ば、 念仏ねんぶつしんぜず、 弥陀みだ御名みなを​となへ​ぬにて​こそそうらは​んずれ。

^せんずる​ところ​は、 そらごと0787もうし、 ひがごと​を、 こと​に​ふれ​て、 念仏ねんぶつの​ひとびと​におおせ​られ​つけ​て、 念仏ねんぶつを​とどめ​ん​と*りょう*とう*みょうしゅおんはからひ​ども​のそうろふ​らん0835こと、 よくよく*やう​ある​べき​こと​なり。

^そのゆゑは、 しゃ如来にょらいの​みこと​には、 念仏ねんぶつする​ひと​を​そしる​もの​をば みょうげんにん」 とき、 「みょう無耳むににん」 とおおせ​おかれ​たる​こと​にそうろふ。 善導ぜんどうしょうは、 「じょくぞうほう 道俗どうぞく相嫌そうけんようもん けんしゅぎょう瞋毒しんどく 方便ほうべん破壊はえ競生きょうしょうおん(*法事讃・下) と​たしかにしゃくし​おか​せたまひ​たり。

^このの​ならひ​にて念仏ねんぶつを​さまたげ​ん​ひと​は、 その​ところ​のりょうとうみょうしゅ*の​やう​ある​こと​にて​こそそうらは​め。 とかくもうす​べき​に​あらず。 「念仏ねんぶつせ​ん​ひとびと​は、 かの​さまたげ​を​なさ​ん​ひと​をば​あはれみ​を​なし、 便びんに​おもう​て、 念仏ねんぶつをも​ねんごろにもうして、 さまたげ​なさ​ん​を、 たすけ​させたまふ​べし」 と​こそ、 *ふるき​ひと​はもうさ​れそうらひ​し​か。 よくよくおんたづね​ある​べき​こと​なり。

 ^つぎ​に、 念仏ねんぶつせさせたまふ​ひとびと​の​こと、 弥陀みだおんちかひ​は煩悩ぼんのうそくの​ひと​のため​なり​としんぜ​られそうろふ​は、 *めでたき​やう​なり。 ただし​わるき​もの​のため​なり​とて、 ことさらに​ひがごと​を​こころ​にも​おもひ、 にもくちにももうすべしとは、 じょうしゅうもうす​こと​ならねば、 ひとびと​にも​かたる​ことそうらは​ず。

^おほかた​は0788煩悩ぼんのうそくにて、 こころ​をも​とどめ​がたくそうらひ​ながら、 おうじょううたがは​ず​せん​と​おぼしめす​べし​と​こそ、 ぜんしきもうす​こと​にてそうろふ​に、 かかる​わるきなれば0836、 ひがごと​を​ことさらにこのみ​て、 念仏ねんぶつの​ひとびと​の​さはり​と​なり、 のために​もぜんしきのために​も、 とが​と​なさ​せたまふべし​ともうす​こと​は、 ゆめゆめ​なき​こと​なり。

^弥陀みだおんちかひ​にまうあひ​がたく​して​あひ​まゐらせ​て、 仏恩ぶっとんほうじ​まゐらせ​ん​と​こそ​おぼしめす​べき​に、 *念仏ねんぶつを​とどめ​らるる​こと​に沙汰さたし​なさ​れ​てそうろふ​らん​こそ、 かへすがへす​こころえ​ずそうろふ。 あさましき​こと​にそうろふ。 ひとびと​の​ひがざま​におんこころえ​ども​のそうろふ​ゆゑ+*ある​べく​も​なき​こと​ども​きこえそうろふ。 もうす​ばかり​なくそうろふ。

^ただし念仏ねんぶつの​ひと、 ひがごと​をもうそうらは​ば、 そのひとり​こそごくにも​おち、 *てんとも​なりそうらは​め。 よろづ​の念仏ねんぶつしゃの​とが​に​なる​べし​と​は​おぼえ​ずそうろふ。 よくよくおんはからひ​どもそうろふ​べし。 なほなほ念仏ねんぶつせさせたまふ​ひとびと、 よくよく​このふみらんか​せたまふ​べし。

^あなかしこ、 あなかしこ。

   がつふつかのひ

親鸞しんらん

  念仏ねんぶつ人々ひとびと御中おんなか

 0789  0837

(28) ¬御消息集¼(10)

 ^ふみき​て​まゐらせそうろふ。 このふみを、 ひとびと​にもみ​て​きかせ​たまふ​べし。

 ^*遠江とおとうみあまぜんおんこころ​に​いれ​ておん沙汰さたそうろふ​らん、 かへすがへす​めでたく​あはれに​おぼえそうろふ。 よくよくきょうより​よろこびもうす​よし​をもうし​たまふ​べし。

 ^*信願しんがんぼうもうす​やう、 かへすがへす便びんの​こと​なり。 わるきなれば​とて、 ことさらに​ひがごと​をこのみ​て、 のためぜんしきのために​あしき​こと​を沙汰さたし、 念仏ねんぶつの​ひとびと​のために、 とが​と​なる​べき​こと​を​しら​ず​は、 仏恩ぶっとんを​しら​ず、 よくよく​はからひ​たまふ​べし。

 ^また、 もの​に​くるう​てに​けん​ひとびと​の​こと​をもちて、 信願しんがんぼうが​こと​を、 よし​あし​ともうす​べき​には​あらず。 念仏ねんぶつする​ひと​のに​やう​も、 よりやまいを​する​ひと​は、 おうじょうの​やう​をもうす​べから​ず。 こころ​よりやまいを​する​ひと​は、 てんとも​なり、 ごくにも​おつる​こと​にてそうろふ​べし。 *こころ​より​おこるやまいと、 より​おこるやまいと​は、 かはる​べけれ​ば、 こころ​より​おこり​てぬる​ひと​の​こと​を、 よくよくおんはからひそうろふ​べし。

 ^信願しんがんぼうもうす​やう​は、 ぼんの​ならひ​なれば、 わるき​こそ*ほんなれば​とて、 おもふ​まじき​こと​をこのみ、 にも​すまじき​こと​を​し、 くちにも​いふ​まじき​こと​をもうす​べき0790やう0838もうさ​れそうろふ​こそ、 信願しんがんぼうもうし​やう​と​は​こころえ​ずそうろふ。 おうじょうに​さはり​なけれ​ば​とて、 ひがごと​をこのむ​べし​と​は、 もうし​たる​ことそうらは​ず。 かへすがへす​こころえ​ず​おぼえそうろふ。

 ^せんずる​ところ、 ひがごともうさ​ん​ひと​は、 そのひとり​こそ、 *ともかくも​なりそうらは​め。 すべて​よろづ​の念仏ねんぶつしゃの​さまたげ​と​なる​べし​と​は​おぼえ​ずそうろふ。

 ^また念仏ねんぶつを​とどめ​ん​ひと​は、 その​ひと​ばかり​こそ*いかにも​なりそうらは​め。 よろづ​の念仏ねんぶつする​ひと​の​とが​と​なる​べし​と​は​おぼえ​ずそうろふ。 「じょくぞうほう 道俗どうぞく相嫌そうけんようもん けんしゅぎょう瞋毒しんどく 方便ほうべん破壊はえ競生きょうしょうおん(法事讃・下) と、 まのあたり善導ぜんどうおんをしへそうろふ​ぞかし。 しゃ如来にょらいは、 「みょうげんにんみょう無耳むににん」 とか​せたまひ​てそうろふ​ぞかし。 かやうなる​ひと​にて、 念仏ねんぶつをも​とどめ、 念仏ねんぶつしゃをも​にくみ​なんど​する​こと​にて​もそうろふ​らん。 *それは、 *かの​ひと​を​にくま​ず​して、 念仏ねんぶつを​ひとびともうし​て、 たすけ​ん​と​おもひ​あはせ​たまへ​と​こそ​おぼえそうらへ。

^あなかしこ、 あなかしこ。

   がつふつかのひ

親鸞しんらん

  *しんぼう おんへん

 ^0791*にゅうしんぼう*しんじょうぼう*法信ほうしんぼうにも、 このふみみ​きか​せ​たまふ​べし。 かへすがへす0839便びんの​こと​にそうろふ。 *しょうしんぼうには、 はるのぼり​てそうらひ​し​に、 よくよくもうし​てそうろふ。 *くげ・・どの・・にも、 よくよく​よろこびもうし​たまふ​べし。

^この​ひとびと​の​ひがごと​をもうし​あう​てそうらへ​ば​とて、 *どうをばうしは​れそうらは​じ​と​こそ​おぼえそうらへ。 けんことにも、 さる​こと​のそうろふ​ぞかし。 りょうとうみょうしゅの​ひがごと​すれば​とて、 *百姓ひゃくしょうを​まどはす​こと​はそうらは​ぬ​ぞかし。 仏法ぶっぽうをば​やぶる​ひと​なし。 仏法ぶっぽうしゃのやぶるにたとへたるには、 「*獅子しししんちゅうむし獅子ししを​くらふ​が​ごとし」 とそうらへ​ば、 念仏ねんぶつしゃをば仏法ぶっぽうしゃの​やぶり​さまたげそうろふ​なり。 よくよく​こころえ​たまふ​べし。

^なほなほ御文おんふみにはもうし​つくす​べく​もそうらは​ず。

 (879)

(29) ¬血脈文集¼(4)

 ^武蔵むさしより​とて、 *しむ・・にゅうどうどの​ともうひとと、 *しょうねんぼうもうひとの、 *王番おうばんに​のぼら​せたまひてそうろふ​とて​おはしまし​てそうろふ。 み​まゐらせ​てそうろふ。 おん念仏ねんぶつおんこころざし​おはします​とそうらへ​ば、 ことに​うれしう​めでたう​おぼえそうろふ。 *おんすすめ​とそうろふ。 かへすがへす​うれしう​あはれにそうろふ。 なほなほ​よくよく​すすめ​まゐらせ​て、 信心しんじんかはら​ぬ​やう​に人々ひとびともうさせたまふ​べし。 如来にょらいおんちかひ​の​うへ​に0792しゃくそんおんこと​なり。 また十方じっぽう恒沙ごうじゃ諸仏しょぶつ証誠しょうじょうなり。 信心しんじんは​かはら​じ​と​おもひそうらへども、 やうやうにかはりあはせたまひてそうろ0880こと、 ことに​なげき​おもひそうろふ。 よくよく​すすめ​まゐらせ​たまふ​べくそうろふ。

^あなかしこ、 あなかしこ。

   がつなぬ

親鸞しんらん

  *しょうしん御房おんぼう

 ^*念仏ねんぶつの​あひだ​の​こと​ゆゑに、 沙汰さたども​の​やうやう​に​きこえそうろふ​に、 *こころやすく​なら​せたまひ​てそうろふ​と、 この人々ひとびとおんものがたりそうらへ​ば、 ことに​めでたう​うれしうそうろふ。 なにごと​も​なにごと​ももうし​つくし​がたくそうろふ。 いのちそうらは​ば、 またまたもうそうろふ​べくそうろふ。

 (758)  (795)  (863)

(30) [摂取不捨事] 「真筆消息」(8)、 ¬末灯鈔¼(13)、 ¬善性本¼(4)

 ^たずおおせ​られ​てそうろ摂取せっしゅしゃの​こと​は、 ¬*般舟はんじゅ三昧ざんまいぎょうどうおうじょうさん¼ ともうす​におおせ​られ​てそうろふ​を​み​まゐら​せ+そうらへ​ば、 「しゃ如来にょらい弥陀みだ%ぶつ、 われら​が慈悲じひ父母ぶもにて、 さまざま​の方便ほうべんにて、 われら​がじょう+信心しんじんをば​ひらき​おこさ​せたまふ」 (意)そうらへ​ば、 まこと​の0759信心しんじんさだまる​こと​は、 しゃ弥陀みだおんはからひ​と​みえ​てそうろふ。

^おうじょうしんうたがいなく​なりそうろふ​は、 摂取せっしゅせ​られ​まゐら%する​ゆゑ0793+と​みえ​てそうろふ。 摂取せっしゅの​うへ​には、 ともかくもぎょうじゃの​はからひ​ある​べから​ずそうろふ。 じょうおうじょうする​まで​は、 退たいくらい~て​おはしましそうらへ​ば、 しょう0796じょうじゅくらいと​なづけ​て​おはします​こと​にてそうろふ​なり。

^まことの信心しんじんをば、 しゃ如来にょらい弥陀みだ如来にょらいそんおんはからひ​にてほっせ​しめたまひそうろふ​と​みえ​てそうらへ​ば、 信心しんじんさだまる​ともうす​は、 摂取せっしゅに​あづかる​とき​にてそうろふ​なり。 その​のち​は正定しょうじょうじゅくらいにて、 まことにじょううまるる​まで​はそうろふ​べし​と​みえ+そうろふ​なり。 ともかくもぎょうじゃの​はからひ​を​ちり​ばかり​も​ある​べから​ずそうらへ​ば​こそ、 りきもうす​こと​にてそうらへ。

^あなかしこ、 あなかしこ。

   0864じゅうがつむゆかのひ

親鸞しんらん~(花押)

  %*しのぶの御房おんぼう~おんへん

+*康永三歳 甲申 仲春上旬第一日至輔時終漸写微功訖

隠倫乗専 半白

 (848)

(31) ¬御消息集¼(17)

 ^ひとびと​のおおせ​られ​てそうろ*じゅうこうぶつおんこと​の​やう、 き​しるし​て​くだし​まゐらせそうろふ。 くはしくき​まゐらせそうろふ​べき​やう​もそうらは​ず。 *おろおろき​しるし​てそうろふ。

 ^せんずる​ところ​は、 無礙むげこうぶつもうし​まゐらせそうろふ​こと​を*ほんと​せさせたまふ​べくそうろ0794ふ。 無礙むげこうぶつは、 よろづ​の​もの​の​あさましき0849わるき​こと​には​さはり​なく、 たすけ​させたまは​んりょうに、 無礙むげこうぶつもうす​と​しら​せたまふ​べくそうろふ。

^あなかしこ、 あなかしこ。

   じゅうがつじゅう一日いちにち

~親鸞しんらん

  *唯信ゆいしんの御坊おんぼう おんへん

 (759)  (800)  (846)

(32) [如来とひとしといふ事] 「真筆消息」(9)、 ¬末灯鈔¼(15前半)、 ¬御消息集¼(15)

 ^たずおおせ​られ​てそうろふ​こと、 かへすがへす*めでたうそうろふ。 まこと​の信心しんじんを​え​たるひとは、 すでにぶつ%ら​せたまふ​べきおんと​なり​て​おはします​ゆゑに、 「にょ0847らいと​ひとしきひと」 と ¬きょう¼ (華厳経・入法界品)0760か​れ+そうろふ​なり。 ろくは​いまだぶつり​たまは​ねども、 このたび​かならず~かならずぶつり​たまふ​べき​によりて、 ~ろくをば​すでにろくぶつもうそうろふ​なり。 *そのじょうに、 真実しんじつ信心しんじんを​え​たるひと%をば、 如来にょらいと​ひとし​とおおせ​られ​てそうろふ​なり。

^また*%じょうしんぼうの、 ろくとひとしとそうろふも、 ひがごとに+そうらはねども、 りきによりてしんをえてよろこぶこころは如来にょらいとひとしとそうろふを、 りきなりとそうろふらんは、 いますこし%じょうしんぼうおんこころのそこのゆきつかぬやうにき%こえそうろふこそ、 よく~よくあんそうろふべくやそうろふらん。

^0795りきの​こころ​にて、 わが如来にょらいと​ひとし​とそうろ%ふ​らん​は、 まことに​あしうそうろ0801べし。 ~りき信心しんじんの​ゆゑ​に、 *じょうしんぼうの​よろこば​せたまひそうろふ​らん​は、 なにかはりきにてそうろふ​べき。 よくよくおんはからひそうろふ​べし。

^この​やう​は、 この人々ひとびとに​くはしうもうし​てそうろふ。 %じょうしん御房おんぼう+、 とひ​まゐら​せ​ させたまふ​べ%し。

^あなかしこ、 あなかしこ。

   じゅうがつじゅう%一日いちにち

親鸞しんらん

  ~%じょうしんの御房おんぼう おん%へん

 (839)

(33) ¬御消息集¼(11)

 ^がつじゅう七日しちにち御文おんふみ、 くはしく​みそうらひ​ぬ。 さてはおんこころざし​のぜに*かんもんじゅう一月いちがつここぬに​たまはり​てそうろふ。

 ^さては​ゐなか​の​ひとびと、 みな​としごろ念仏ねんぶつせ​し​は、 いたづらごと​にて​あり​けり​とて、 かたがた、 ひとびと​やうやう​にもうす​なる​こと​こそ、 かへすがへす便びんの​こと​に​きこえそうらへ。 やうやう​のふみども0840き​て​もて​る​を、 いかに​みなし​てそうろふ​やらん。 かへすがへす​おぼつかなくそうろふ。

 ^*しんぼうの​くだり​て、 わが​きき​たる法文ほうもんこそ​まこと​にて​は​あれ、 ごろ​の念仏ねんぶつ0796、 みな​いたづらごと​なり​とそうらへ​ば​とて、 *おほぶ・・・ちゅうろうかたの​ひと+は、 じゅうなんひととかや、 みなしんぼうかたへ​とて、 ちゅうろうにゅうどうを​すて​たる​とかや​ききそうろふ。 いかなる​やう​にて、 さやう​にはそうろふ​ぞ。 せんずる​ところ、 信心しんじんさだまら​ざり​ける​と​ききそうろふ。 いかやう​なる​こと​にて、 さほど​に​おほく​の​ひとびと​の*たぢろきそうろふ​らん。 便びんの​やう​と​ききそうろふ。

^また​かやう​の​きこえ​なんどそうらへ​ば、 そらごと​も​おほくそうろふ​べし。 また親鸞しんらん*へんある​もの​と​ききそうらへ​ば、 ちから​をつくし​て ¬*唯信ゆいしんしょう¼・¬*後世ごせものがたり¼・¬*りきりきふみ¼ の​こころ​ども、 二河にが譬喩ひゆなんどき​て、 かたがた​へ、 ひとびと​に​くだし​てそうろふ​も、 みな​そらごと​に​なり​てそうろふ​と​きこえそうろふ​は、 いかやうに​すすめ​られ​たる​やらん。 不可ふか思議しぎの​こと​と​ききそうろふ​こそ、 便びんそうらへ。 よくよく​きか​せたまふ​べし。

^あなかしこ、 あなかしこ。

   じゅう一月いちがつここぬ

親鸞しんらん

  しんの御坊おんぼう

 0841^*真仏しんぶつぼう*しょうしんぼう*にゅうしんぼう*この​ひとびと​の​こと​うけたまはりそうろふ。 かへすがへす​なげき​おぼえそうらへ​ども、 ちから​およば​ずそうろふ。 またの​ひとびと​の​おなじ​こころ​なら​ずそうろふ​らん​も、 ちから​およば​ずそうろふ。 ひとびと​の​おなじ​こころ0797なら​ずそうらへ​ば、 とかくもうす​に​およば​ず。 いま​は*ひと​の​うへ​ももうす​べき​に​あらずそうろふ。 よくよく​こころえ​たまふ​べし。

親鸞しんらん

  しんの御坊おんぼう

 (866)

(34) ¬善性本¼(7)

 ^あるひとの​いはく、

^おうじょう業因ごういんは、 一念いちねんぽっ信心しんじんの​とき、 無礙むげ心光しんこうしょうせ​られ​まゐらせそうらひ​ぬれ​ば、 同一どういつなり。 このゆゑにしんなし。 このゆゑに、 *はじめて​またしんしんろんたずね​まうす​べき​に​あらず​となり。 このゆゑにりきなり、 なき​が​なか​のと​なり。 ただみょうなる​こと、 おほは​るる煩悩ぼんのうばかり​となり。

^恐々きょうきょう謹言きんげん

     じゅう一月いちがつ一日ついたち

*専信せんしんたてまつる

 ^おおそうろふ​ところ​のおうじょう業因ごういんは、 真実しんじつ信心しんじんを​うる​とき摂取せっしゅしゃに​あづかる​と0798おもへ​ば、 かならず​かならず如来にょらい誓願せいがんじゅうす​と、 がんに​みえ​たり。 「せつ得仏とくぶつ こくちゅう0867人天にんでん じゅじょうじゅ ひっめつしゃ しゅしょうがく(大経・上)ちかひ​たまへ​り。 正定しょうじょうじゅ信心しんじんひとじゅうし​たまへ​り​と​おぼしめしそうらひ​なば、 ぎょうじゃの​はからひ​の​なき​ゆゑに、 *なき​をと​す​と、 りきをばもうす​なり。 ぜんともあくとも、 じょうともとも、 ぎょうじゃの​はからひ​なきと​なら​せたまひ​てそうらへ​ば​こそ、 なき​をと​す​と​はもうす​こと​にてそうらへ。

 ^じゅうしちがんに、 「わが​な​を​となへ​られ​ん」 とちかひ​たまひ​て、 じゅうはちがんに、 「信心しんじんまことなら​ば、 もしうまれ​ず​はぶつら​じ」 とちかひ​たまへ​り。 じゅうしちじゅうはちがんみな​まことなら​ば、 正定しょうじょうじゅがん (第十一願)*せんなくそうろふ​べき​か。 しょろくに​おなじくらい信心しんじんひとは​なら​せたまふ​ゆゑに、 摂取せっしゅしゃと​はさだめ​られ​てそうらへ。 このゆゑに、 りきもうす​はぎょうじゃの​はからひ​の​ちり​ばかり​も​いら​ぬ​なり。 かるがゆゑになき​をと​す​ともうす​なり。 この​ほか​に​またもうす​べき​こと​なし。 ただぶつに​まかせ​まゐらせ​たまへ​と、 だいしょうにん (法然) の​みこと​にてそうらへ。

   じゅう一月いちがつじゅうはちにち

親鸞しんらん

  せんしんの御坊おんぼう ほう

 0799  (760)

(35) 「真筆消息」(10)

                 「*おんへん (花押)

 ^常陸ひたち人々ひとびと御中おんなかへ、 このふみを​み​せ​させたまへ。 すこし​も​かはらずそうろふ。 このふみ0761に​すぐ​べから​ずそうらへ​ば、 このふみを、 くに​の人々ひとびと、 おなじ​こころ​にそうらは​んずらん。

^あなかしこ、 あなかしこ。

   じゅう一月いちがつじゅう一日いちにち

(花押)

  *いまごぜんのはは​に

 

(36) 「真筆消息」(11)

 ^この​いま・・ごぜ・・んの・・はは・・の、 たのむ​かた​も​なく、 そらう(所領)を​もちてそうらは​ば​こそ、 ゆずり​も​しそうらは​め。 *せん​しにそうらひ​なば、 くに​の人々ひとびと、 いとほしう​せ​させたまふ​べくそうろふ。 このふみ常陸ひたち人々ひとびとを​たのみ​まゐらせ​てそうらへ​ば、 もうし​おき​て、 あはれみ​あはせ​たまふ​べくそうろふ。 このふみを​ごらん​ある​べくそうろふ。

^この*そく・・しやう・・・ばう・・​も、 *すぐ​べき​やう​も​なき​もの​にてそうらへ​ば、 もうし​おく​べき​やう​もそうらは​ず。 の​かなは​ず、 わびしうそうろふ​こと​は、 ただ​この​こと​おなじ​こと​にてそうろふ。 とき​に​このそく・・しやう・・・ばう・・にも、 もうし​おか​ずそうろふ。 常陸ひたち人々ひとびとばかり​ぞ、 この​ものども​をも、 おんあはれみ​あは​れそうろふ​べから​ん。 いとほしう、 人々ひとびとあはれみ​おぼしめす​べし0800。 このふみにて、 人々ひとびとおなじおんこころ​にそうろふ​べし。

^あなかしこ、 あなかしこ。

   0762じゅう一月いちがつじゅうにち

ぜんしん (花押)

  常陸ひたち ˆのˇ 人々ひとびと御中おんなか

+………(切封)

   常陸ひたち人々ひとびと御中おんなか

(花押)

 0802  (826)

(37) ¬末灯鈔¼(16)、 ¬御消息集¼(5)

 ^なに+より%も、 聖教しょうぎょうの​をしへ​をも​しら​ず、 またじょうしゅう*まこと​の​そこ​をも​しら​ず​して、 不可ふか思議しぎ*放逸ほういつざんの​ものども​の​なか​に、 あくは​おもふさまに​ふるまふ​べし​とおおせ​られそうろなる​こそ、 かへすがへす​ある​べく​もそうらは​ず。 *きたこおりに​あり​し*ぜん%しょうぼうといひ​し​もの​に、 つひに*あひ​むつるる​こと​なく​て​やみ​に​し​をば​み​ざり​ける​にや。

^ぼんなれば​とて、 なにごと​も​おもふさま​ならば、 ぬすみ​をも​し、 ひとをも​ころし​なんど​す​べき​かは。 もと​ぬすみごころ​あら​ん%ひとも、 極楽ごくらくを​ねがひ、 念仏ねんぶつ~もうす​ほど​の​こと​に​なり​なば、 もと*ひがう​たる​こころ~をも​おもひ​なほし​て​こそ​ある​べき​に、 その​しるし​も​なから​ん​ひとびと​に、 *あくくるしから​ず​といふ0801こと、 ゆめゆめ​ある​べから​ずそうろふ。

^煩悩ぼんのうに​くるはさ​れ​て、 おもは​ざる​ほか​に​す​まじき​こと​をも​ふるまひ、 いふ​まじき​こと​をも​いひ、 おもふ​まじき​こと​をも0827おもふ​にて​こそ​あれ。 *さはら​ぬ​こと​なれば​とて、 ひと​のために​も​はらぐろく、 す​まじき​こと​をも​し、 いふ​まじき​こと​をも​いは​ば、 煩悩ぼんのうに​くるはさ​れ​たるには​あら​で、 わざと​す​まじき​こと​をも​せば、 かへすがへす​ある​まじき​こと​なり。

 ^*鹿しま*行方なめかたの​ひとびと​の​あしから​ん​こと​をば​いひ+とどめ、 *そのへん人々ひとびとの、 ことに0803ひがみ​たる​こと​をばせいし​たまは​ば​こそ、 *このへんよりで​きたる​しるし​にて​はそうらは​め。

^+ふるまひ~は、 な%に​とも​こころ​に​まかせ​よ​と​い%ひ​つる​とそうろふ​らん、 あさましき​こと​にそうろふ。 このの​わろき​を~も​すて、 あ~さましき​こと​を~も​せ​ざら​ん​こそ、 を​いとひ、 念仏ねんぶつもうす​こと​にて​はそうら%へ。 としごろ念仏ねんぶつする​ひと​なんど​の、 ひと​のために​あしき​こと​を+し、 また​いひも​せ%ば、 を​いとふ​しるし​も​なし。

 ^されば善導ぜんどうおんをしへ​には、 「あくを​この%ひとをば、 %つつしんで​とほざかれ」 (散善義・意) と​こそ、 じょうしんのなか​には​をしへ​おか​せおはしまし​てそうらへ。 いつか+、 わが​こころ​の​わろき​に​まかせ​て​ふるまへ​と​はそうろふ。 おほかた+経釈きょうしゃく+をも​しら​ず、 如来にょらいおんこと​をも​しら​ぬ+ゆめゆめ​その沙汰さたある​べく​もそうらは​ず

 +またわうじやうは​なにごと​も​なにごと​もぼむの​はからひ​なら​ず、 如来にょらいおんちかひ​に​まかせ​まいらせ​たれ​ば​こそ、 りきにて​は​さふ0828らへ。 やうやうに​はからひ​あふ​て​さふらふ​らん、 をかしく​さふらふ。

^0802なかしこ、 あなかしこ。

   じゅう一月いちがつじゅうよっかのひ

親鸞しんらん

 0848

(38) ¬末灯鈔¼(17)、 ¬御消息集¼(16)

 ^りきの​なか​にはりきもうす​こと​はそうろふ​と​ききそうらひ​き。 りきの​なか​に​またりきもうす​こと​は​ききそうらは​ず。 りきの​なか​にりきもうす​こと​は、 ぞうぎょう雑修ざっしゅ0804じょうしん念仏ねんぶつ~散心さんしん念仏ねんぶつ%を​こころ%がけ​られ​てそうろふ​ひとびと​は、 りきの​なか​のりきの​ひとびと​なりりきの​なか​に​またりきもうす​こと​は​うけたまはりそうらは​ず。 なにごと​も*専信せんしんぼうの​しばらく%たら​ん​とそうらへ​ば、 その​ときもうそうろふ​べし。

^あなかしこ、 あなかしこ。

 ^~ぜにじっ貫文かんもん、 たしかに​たしかにたまはりそうろふ。 あなかしこ、 あなかしこ。

   じゅう一月いちがつじゅうにち

~親鸞しんらん

  +しんぶつの御坊おんぼう おんへん

 

(39) ¬末灯鈔¼(18)

 ^おんたづねそうろふ​こと​は、 弥陀みだりきこう誓願せいがんに​あひ​たてまつり​て、 真実しんじつ信心しんじんを​たまはり​て、 よろこぶ​こころ​のさだまる​とき、 摂取せっしゅしてて​られ​まゐらせ​ざる​ゆゑに、 金剛こんごうしんに​なる​とき​を正定しょうじょうじゅくらいじゅうす​とももうす。 ろくさつと​おなじ0803くらいに​なる​ともか​れ​てそうろふ​めり。

^ろくと​ひとつくらいに​なる​ゆゑに、 信心しんじんまこと​なる​ひと​を+ぶつ%に​ひとし​とももうす。

 ^また諸仏しょぶつ真実しんじつ信心しんじんを​え​て​よろこぶ​をば、 まことに​よろこび​て、 われ​と​ひとしき​もの​なり​とか​せたまひ​てそうろふ​なり。 ¬だいきょう¼ (下) には、 しゃくそんの​みことば​に、 けんミテウヤきょうマヒエとくだいテオホキきょうニヨロそくコブハスぜんしんナハチワガヨ」 と​よキシタシキト0805ろこモナリ ば​せたまひそうらへ​ば、 信心しんじんをえ​たる​ひと​は諸仏しょぶつと​ひとし​とか​れ​てそうろふ​めり

^またろくをば、 すでにぶつら​せたまは​ん​こと​ある​べき​に​なら​せたまひ​てそうらへ​ば​とて、 ろくぶつもうす​なり。 しかれば、 すでにりきしんを​え​たる​ひと​をも、 ぶつと​ひとし​ともうす​べし​と​みえ​たり。 おんうたがいある​べから​ずそうろふ。

 ^おんどうぎょうの 「りんじゅうして」 とおおせ​られそうろふ​らん​は、 ちから​およば​ぬ​こと​なり。 信心しんじんまこと​に​なら​せたまひ​てそうろふ​ひと​は、 誓願せいがんやくにてそうろふ​うへに、 摂取せっしゅしてて​ず​とそうらへ​ば、 来迎らいこうりんじゅうせ​させたまふ​べから​ず​と​こそ​おぼえそうらへ。 いまだ信心しんじんさだまら​ざら​ん​ひと​は、 りんじゅうをもし、 来迎らいこうをも​また​せたまふ​べし。

 ^この御文おんふみぬしみょう*随信ずいしんぼうおおせ​られそうらは​ば、 めでたくそうろふ​べし。 この御文おんふみき​やう​めでたくそうろふ。 おんどうぎょうおおせ​られ​やう​は、 こころえ​ずそうろふ。 それ​をば0804ちから​およば​ずそうろふ。

^あなかしこ、 あなかしこ。

   じゅう一月いちがつじゅう六日ろくにち          親鸞しんらん

  ずいしんの御房おんぼう

 (746)

(40) 「真筆消息」(2)

 ^この*ゑん・・ぶつばう・・、 くだら​れそうろふ。 こころざし​の​ふかくそうろふ​ゆゑに、 ぬしなど​にも​しられ​まうさ​ず​して、 のぼら​れ​てそうろふ​ぞ。 こころ​に​いれ​て、 ぬしなど​にも、 おおせ​られそうろふ​べくそうろふ。 *このとお*せうまう​に​あう​てそうろ。 このおんばう​よくよく​たづねそうらひ​てそうろふ​なり。 こころざし​ありがたき​やう​にそうろふ​ぞ。 さだめて​この​やう​はもうさ​れそうらは​んずらん。 よくよく​きか​せたまふ​べくそうろふ。 なにごと​も​なにごと​も​いそがしさ​に、 くはしうもうさ​ずそうろふ。

^あなかしこ、 あなかしこ。

   *じゅうがつじゅうにち

(花押)

  0747*真仏しんぶつの御房おんぼう

 (831)

(41) ¬御消息集¼(8)

 ^*ねんぼうの​たより​に、 *きょうにん御坊おんぼうよりぜにひゃくもん*おんこころざし​の​もの​たまはり​てそうろふ。 さき​に*念仏ねんぶつの​すすめ​の​もの、 かたがた​の御中おんなかより​とて、 たしかに​たまはり0805そうらひ​き。 ひとびと​に​よろこびもうさ​せたまふ​べくそうろふ。 このおんへんにて、 おなじおんこころ​にもうさ​せたまふ​べくそうろふ。

 ^さては​このおんたづねそうろふ​こと​は、 まことに​よきおんうたがいども​にてそうろふ​べし。

^まづ一念いちねんにておうじょう業因ごういんは​たれ​りもうそうろふ​は、 まことに​さる​べき​こと​にてそうろふ​べし。 されば​とて、 一念いちねんの​ほか​に念仏ねんぶつもうす​まじき​こと​にはそうらは​ず。 その​やう​は、 ¬ゆい0832しんしょう¼ に​くはしくそうろふ。 よくよくらんそうろふ​べし。

^一念いちねんの​ほか​に​あまる​ところ​の念仏ねんぶつは、 十方じっぽうしゅじょうこうす​べし​とそうろふ​も、 さる​べき​こと​にてそうろふ​べし。 十方じっぽうしゅじょうこうすれば​とて、 ねん三念さんねんせん​はおうじょうに​あしき​こと​と​おぼしめさ​れそうらは​ば、 ひがごと​にてそうろふ​べし。 念仏ねんぶつおうじょう本願ほんがんと​こそおおせ​られ​てそうらへ​ば、 おほくもうさ​ん​も、 一念いちねんいっしょうおうじょうす​べし​と​こそ​うけたまはり​てそうらへ。 かならず、 一念いちねんばかり​にておうじょうす​と​いひ​て、 ねんを​せん​はおうじょうす​まじき​ともうす​こと​は、 ゆめゆめ​ある​まじき​こと​なり。 ¬唯信ゆいしんしょう¼ を​よくよくらんそうろふ​べし。

 ^またねんねんもうす​こと​は、 りき法文ほうもんには​あら​ぬ​こと​にてそうろふ。 しょうどうもんもうす​こと​にてそうろふ​なり。 みなりきしょうどう法文ほうもんなり。 弥陀みだ如来にょらいせんじゃく本願ほんがん念仏ねんぶつは、 ねんにも​あらず、 ねんにも​あらずもうそうろふ​なり。 いかなる0806ひともうそうろふ​とも、 ゆめゆめ​もちゐ​させたまふ​べからずそうろふ。 しょうどうもうす​こと​を、 あしざま​に​きき​なし​て、 じょうしゅうもうす​にて​ぞそうろふ​らん。 さらさら​ゆめゆめ​もちゐ​させたまふ​まじくそうろふ。

^またきょうもうそうろふ​こと​は、 りき信心しんじんを​え​て、 おうじょう*いちじょうし​てんず​と​よろこぶ​こころ​をもうす​なり。 常陸ひたちのこくちゅう念仏ねんぶつしゃの​なか​に、 0833ねんねん念仏ねんぶつ沙汰ざたの​きこえそうろふ​は、 ひがごと​にそうろふ​ともうそうらひ​にき。

^ただせんずる​ところ​は、 りきの​やう​は、 ぎょうじゃの​はからひ​にて​は​あらずそうらへ​ば、 ねんに​あらず、 ねんに​あらず​ともうす​こと​を、 あしう​きき​なし​て、 ねんねんなんどもうそうらひ​ける​と​おぼえそうろふ。 弥陀みだせんじゃく本願ほんがんは、 ぎょうじゃの​はからひ​のそうらは​ねば​こそ、 ひとへにりきと​はもうす​こと​にてそうらへ。

^一念いちねんこそ​よけれ、 ねんこそ​よけれ​なんどもうす​こと​も、 ゆめゆめ​ある​べから​ずそうろふ。 なほなほ一念いちねんの​ほか​に​あまる​ところ​のおん念仏ねんぶつ法界ほうかいしゅじょうこうす​とそうろふ​は、 しゃ弥陀みだ如来にょらいおんほうじ​まゐらせ​ん​とて、 十方じっぽうしゅじょうこうせ​られそうろふ​らん​は、 さる​べくそうらへ​ども、 ねん三念さんねんもうし​ておうじょうせん​ひと​を​ひがごと​と​はそうろふ​べから​ず。 よくよく ¬唯信ゆいしんしょう¼ をらんそうろふ​べし。 念仏ねんぶつおうじょうおんちかひ​なれば、 一念いちねんじゅうねんおうじょうは​ひがごと​に​あらず​と​おぼしめす​べき​なり。

^あなかしこ、 あなかしこ。

   0807じゅうがつじゅう六日ろくにち

親鸞しんらん

  きょうにんの御坊おんぼう おんへん

 0815

(42) ¬末灯鈔¼(22)

 ^¬*宝号ほうごうきょう¼ に​のたまは​く、 「弥陀みだ本願ほんがんぎょうに​あらず、 ぜんに​あらず、 ただぶつみょうを​たもつ​なり」。 みょうごうは​これぜんなり、 ぎょうなり。 ぎょうといふは、 ぜんを​する​について​いふ​ことば​なり。 本願ほんがんは​もとよりぶつおん約束やくそくと​こころえ​ぬる​には、 ぜんに​あらず、 ぎょうに​あらざる​なり。 かるがゆゑにりき~もうす​なり。

^本願ほんがんみょうごうのうしょうするいんなり。 のうしょういんといふは​すなはち​これちちなり。 だいこうみょうは​これしょしょうえんなり。 しょしょうえんといふは​すなはち​これははなり。

+*康永元歳 壬子 七月十二日、 終書写筆功遂校合労見訖。 凡斯御消息者、 念仏成仏之咽喉、 愚痴愚迷之眼目也。 可秘可秘而已。   執筆釋乗専

願主釈□□

 (844)

(43) ¬御消息集¼(13)

 ^*くだら​せたまひ​て​のち、 なにごと​かそうろふ​らん。 この*源藤げんとうろう殿どのに​おもは​ざる​に​あひ​まゐらせ​てそうろふ。 便びんの​うれしさ​にもうそうろふ。 その​のち​なにごと​かそうろふ。

 ^念仏ねんぶつうったへ​の​こと、 しづまり​てそうろふ​よし、 かたがた​より​うけたまはりそうらへ​ば、 うれしう​こそそうらへ。 いま​は​よくよく念仏ねんぶつも​ひろまりそうらは​んずらん​と、 よろこび​いり​てそうろふ。

 ^0808これ​につけて​もおん*りょうは​いまさだまら​せたまひ​たり。 念仏ねんぶつおんこころ​に​いれ​て​つねにもうし​て、 念仏ねんぶつそしら​ん​ひとびと、 この・のち​のまで​の​こと​を、 いのり​あはせ​たまふ​べくそうろふ。 おんども​のりょうは、 おん念仏ねんぶつは​いま​は​なにか​は​せさせたまふ​べき。 ただ​ひがう​たる0845ひとびと​を​いのり、 弥陀みだおんちかひ​に​いれ​と​おぼしめし​あは​ば、 ぶつおんほうじ​まゐらせ​たまふ​に​なりそうろふ​べし。 よくよくおんこころ​に​いれ​てもうし​あはせ​たまふ​べくそうろふ。

^しょうにん (法然)*じゅうにちおん念仏ねんぶつも、 せんずる​ところ​は、 かやう​の邪見じゃけんの​もの​を​たすけ​ん*りょうに​こそ、 もうし​あはせ​たまへ​ともうす​こと​にてそうらへ​ば、 よくよく念仏ねんぶつそしら​ん​ひと​を​たすか​れ​と​おぼしめし​て、 念仏ねんぶつし​あはせ​たまふ​べくそうろふ。

 ^また​なにごと​も、 度々たびたび便びんにはもうそうらひ​き。 源藤げんとうろう殿どの便びんに​うれしう​てもうそうろふ。

^あなかしこ、 あなかしこ。

 ^*にゅう西さい御坊おんぼうの​かた​へ​ももうし​たうそうらへ​ども、 おなじ​こと​なれば、 この​やう​を​つたへ​たまふ​べくそうろふ。

^あなかしこ、 あなかしこ。

親鸞しんらん

  *しょうしんの御坊おんぼう

 (762)

真筆消息(12)

ゆづり​わたす​いや女事。 み​の​かわり​を​とら​せ​て​せうあみだ仏が​めしつかう女なり。 しかるを​せうあみだ仏、 ひむがしの女房に​ゆづり​わたす​もの​なり。 さまたげ​を​なす​べき人なし。 ゆめゆめ​わづらい​ある​べから​ず。 のち​の​ため​に​ゆづりふみ​を​たてまつる​なり。 あなかしこ、 あなかしこ。

  *寛元元年癸卯十二月廿一日  (花押)

 (880)

血脈文集(5)

ひとつ 法然ほふねんしやうにん ざいさのくに 幡多はた  ぞくしょう藤井ふぢゐの元彦もとひこ みょう

善信ぜんしん ざい越後えちごのくに こく  ぞくしょう藤井ふぢゐの善信よしざね

つみす↢罪科↡之時勅宣いは

善信ぜんしん ぞくしょうふぢ  ぞくみょう善信よしざね

ぜん0881 どうだいそうじょうぼうちんくわしやうおんことなりにあづけしめおはしましき

幸西かうさい ぞくしやう物部ものゝべじやうかくばう

禿とくつみすざい↡之ときのぞちょくめん↡之とき↡、 あらためふぢゐのしやう↡、 以禿とくちう納言なふごん範光のりみつきやうをもてちょくめんをかぶらんと、 ふる奏聞そうもん範光のりみつきやうをはじめとして、 しよきやうみな禿とくにあらためかきて奏聞そうもんをふること、 めでたくまうしたりとてありき。 そのとき、 ほどなくしやうにんもゆるしましまししに、 おん弟子でし八人はちにんあひしてゆるされたりしなり。 きやうちうにはみなこのやうは、 しられたるなり。

¬教行証きょうぎょうしょう¼ 六末ろくまつ (化身土巻) にいはく、 「禿とくしゃくらん建仁けんにんしんゆうれきぞうぎょうてて本願ほんがんす。 げんきゅうきのとのうしとし恩恕おんじょかぶりて ¬せんじゃく¼ をしょしき。 本願ほんがん念仏ねんぶつしゅう内題ないだい、 ならびに 「南无なも阿弥陀あみだぶつおうじょうごう念仏ねんぶつほん」 と、 しゃくしゃくくうと、 くう真筆しんぴつをもって、 これをしょせしむ。 おなじきくうしんえいもうあづかりて、 図画ずがしたてまつる。 おなじきねんうるう七月しちがつじゅんだいにち真影しんえいめいは、 真筆しんぴつをもつて 「南无なも阿弥陀あみだぶつ」、 「にゃくじょうぶつ十方じっぽうしゅしょうしょうみょうごう下至げしじっしょうにゃくしょうしゃしゅしょうがくぶつこん現在げんざいじょうぶつとう本誓ほんぜいじゅうがん不虚ふこしゅじょうしょうねん必得ひっとくおうじょう」 の真文しんもんとをしょせしむ。 またゆめつげによりて、 しゃくくうあらためて、 おなじきひつをもってしょせしめおはりぬ。 ほんしょうにん今年こんねんしちしゅんさんさいなり」 と。

¬教行証¼ 六末 (化身土巻) 云、 「愚禿釈鸞、 建仁しむいうれき、 棄てゝ↢雑行↡兮帰↢本願↡。 ぐゑんきうきのとの歳、 蒙↢恩恕↡兮書しき↢¬選択¼↡。 本願念仏集内題字、 并南无阿弥陀仏往生之業念仏為↠本、 与↢釈綽空字↡、 以↢空真筆↡、 令↠書↠之。 同日空えいあづか、 奉つる↢図画↡。 同二年閏七月下旬第九日、 真影めい、 以↢真筆↠書↣南无阿弥陀仏、 ↢若我成仏、 十方衆生、 称我名号、 下至十声、 若不生者、 不取正覚。 彼仏今現在成仏、 当知本誓重願不虚、 衆生称念必得往生之真文↡。 又依↢夢↡、 改↢綽空↡、 同日以↢御筆↡令↠書↢名之字↡畢。 本師聖人、 今年七旬三さい也。」

みぎこの真文しんもんをもつてしょうしんたづもうさるるところにはやくかの本尊ほんぞんあずかるところなり。 かの本尊ほんぞんならびに ¬せん択集じゃくしゅう¼ 真影しんえい銘文めいもんとう源空げんくうしょうにんより親鸞しんらんしょうにんゆづりたてまつる親鸞しんらんしょうにんよりしょうしんゆづりたまふところなり。 かの本尊ほんぞん銘文めいもんなり。

0882以↢此真文↡性信ところたづまふさるゝはや所↠預↢彼本尊↡也。 彼本尊并選択集真影之銘文等、 従↢自源空聖人↡たてまつゆづ↢親鸞聖人↡従↢親鸞聖人↡ゆづ↢給↣性信↡也。 彼本尊銘文。

 南无阿弥陀仏

  *建暦第二壬申歳正月廿五日

   黒谷法然上人御入滅 春秋満八十

賢心

 

ª第一通は、 関東在住の門弟の疑問に答えた法語で、 臨終正念を祈り、 有念無念を沙汰することは、 ともに浄土真宗の法義にかなわないことを示す。 なお、 「有念無念の事」 という標題は後世の付加と考えられる。º
◎註釈版の底本は真宗法要所収本(¬末灯鈔¼の対校本Ⓒ)。 「古写消息」(4)の底本は高田派専修寺蔵鎌倉時代書写本、 ¬末灯鈔¼(本)の底本は滋賀県慈敬寺蔵康永三年乗専書写本。
臨終 ここでは臨終の時に初めて浄土往生がけつじょうすることを指す。
儀則 ここでは臨終におけるしょうじゅ来迎らいこうの儀式のこと。
定心の行人の正念 じょうぜんを行ずる人にそなわる正念。
散心の行人の正念 散善さんぜんを行ずる人にそなわる正念。
色形 ここでは仏身ぶっしん・浄土のしょうごんそうなど具体的に示された仏徳のことを指す。
聖道といふは… 親鸞聖人独自の解釈。 しょうどうもんごんしょうじゃの説いた方便誘引の教えと見る意。
釈迦如来の… ¬ごんぎょう¼ 「にゅう法界ほっかいぼん」 (晋訳巻五十八) には 「この童子 (善財ぜんざい童子) は昔頻陀伽羅城において文殊もんじゅ師利しりの教を受け、 ぜんしきを求めて、 展転して一百一十のもろもろの善知識を経由し…」 とある。
ª第二通は、 鹿島・行方なめかた・南の荘などの常陸ひたち (現在の茨城県) 南部の門弟のために書かれたもので、 みょうほうぼうひらつか・・・・の入道の往生について感慨を述べ、 造悪ぞうあくの異義を誡めている。º
◎註釈版の底本は真宗法要所収本(¬末灯鈔¼の対校本Ⓒ)。 ¬末灯鈔¼(末)の底本は大阪府願得寺蔵康永元年乗専書写本、 ¬御消息集¼「広本」の底本は本派本願寺蔵室町末期書写本。
のぼられて 京都へ上られて。
ひらつかの入道 相模さがみ (現在の神奈川県) 大磯の善福寺の開基りょうげんとも伝えられるが、 下総しもうさ結城 (現在の茨城県結城市) の称名寺所蔵文書に出る 「平塚入道」 とみるべきか。 結城市近在の八千代町に平塚という地名が中世から存在する。
くにぐに ここでは京都に対して地方の諸国のことをいう。
ゆゆしき学生 すぐれた学者。
あしざまに まちがって。
信見房 伝未詳。
ひがざまに 誤ったふうに。
御方便 ぜんぎょう方便のこと。 →方便ほうべん
いかにも… どのようにでも、 自分の心のままにすればよいと。
あるべくも… あってよいことではないと思われます。
きこえ うわさ。 評判。
なれむつぶ 親しく交際する。
ª第三通は、 その内容から、 独立した消息ではなく、 追伸であろうと考えられる。º
◎註釈版の底本は真宗法要所収本(¬末灯鈔¼の対校本Ⓒ)。 ¬末灯鈔¼(末)の底本は大阪府願得寺蔵康永元年乗専書写本、 ¬御消息集¼「広本」の底本は本派本願寺蔵室町末期書写本。
ª第四通は、 常陸ひたち (現在の茨城県) の門弟に宛てたもの。 その内容は、 みょうほうぼうしんの事実にことよせて、 造悪ぞうあく無礙むげの異義を誡めたものである。 第二通とは内容的に重なるところが多い。º
◎註釈版の底本は真宗法要所収本(¬末灯鈔¼の対校本Ⓒ)。 ¬末灯鈔¼(末)の底本は大阪府願得寺蔵康永元年乗専書写本、 ¬御消息集¼「広本」の底本は本派本願寺蔵室町末期書写本。
これに 往生ということに。
めでたき智者 すぐれた者。
それこそ ¬唯信鈔¼ ¬自力他力事¼ の著者である聖覚せいかく法印ほういんりゅうかんりっこそは。
すぐべくも候はず まさることのできるものはありません。
わがおもふさまなること 自分勝手なこと。
不可思議のひがごと とんでもない間違い。 考えられないような誤り。 ここではみょうほうぼうがかつて犯した悪事を指していう。
われ往生すべければとて 自分が往生できるはずだからといって。
順次の往生 現世の命が終って、 次にただちに浄土に生れること。
かたくや候ふべからん 困難なことであるはずでしょう。
いまも… 今も法然ほうねん上人御在世の時と同様で異義を立てることはしておりません。
世かくれなきことなれば 世間に知れわたったことなので。
浄土宗の義… 浄土宗の本義と全く異なる自己流の説を立てておられる人々も。
こころにくくも候はず 知りたいとも思いません。
ª第五通は、 一通の独立した消息ではなく、 もとは他の消息に添えられた追伸であったとみられている。
◎註釈版の底本は真宗法要所収本(¬末灯鈔¼の対校本Ⓒ)。 ¬末灯鈔¼(末)の底本は大阪府願得寺蔵康永元年乗専書写本、 ¬御消息集¼「広本」の底本は本派本願寺蔵室町末期書写本。
あとを… みょうほうぼうののこした行跡を疎略にするような人々。
ª第六通は、 笠間の門弟の疑問に答えたもので、 法語の形をとっている。 内容は往生を願うものの中に自力他力の別があることを示して、 義なきを義とする本願他力の趣を明らかにし、 信心の行者を讃嘆したもの。 この消息が書かれた建長七年 (1255) は、 しんぼう善鸞ぜんらん義絶の前年に当っており、 笠間の門弟の疑問の背景にはこの慈信房による異義のあったことが推測される。º
◎註釈版の底本は真宗大谷派蔵親鸞聖人真筆(「真筆消息」(1)と同一)。 「古写消息」(5)の底本は高田派専修寺蔵真仏上人書写本、 ¬末灯鈔¼(本)の底本は滋賀県慈敬寺蔵康永三年乗専書写本、 ¬血脈文集¼ の底本は富山県専琳寺蔵賢心本転写本。
天竺の論家浄土の祖師 しち高僧こうそうをいう。
余の仏号 阿弥陀仏以外の仏名。
めでたうしなして 立派にふるまって。
いかでか… どうして阿弥陀如来が迎え取ってくださろうか、 (迎え取ってはくださらないだろう) と思ってはなりません。
ありがたかるべし 困難であるに違いない。
弥勒仏とひとしき人 弥勒は現在の一生を過ぎると仏となる。 他力の念仏者も現世の一生を終えるとただちに仏のさとりを得るから、 このように称される。 →便同べんどうろく
ª第七通は、 下野しもつけたか (現在の栃木県芳賀郡) の覚信かくしんに与えたもの。 信の一念と行の一念は不離の関係であると説く。 古来、 この消息は 「信行一念章」 と称されている。º
◎註釈版の底本は高田派専修寺蔵親鸞聖人真筆(「真筆消息」(3)と同一)。 ¬末灯鈔¼(本)の底本は滋賀県慈敬寺蔵康永三年乗専書写本、 ¬御消息集¼「広本」の底本は本派本願寺蔵室町末期書写本。
とききて候ふ 法然ほうねん上人から伝え聞いた法義であるから、 「とききて候ふ」 という。
三百文 一千文で一貫。 おおよそ一貫で米一石 (百升) が買えた。
「建…事」 までの十八字は包紙に別筆で記入。
ª第八通は、 しんぼうを義絶したことをしょうしんぼうへ知らせたもので、 第九通の義絶状と同日に書かれている。º
◎註釈版の底本は「富山県専琳寺蔵賢心本転写本(¬血脈文集(2)と同一¼)」。
うかれて 動揺して。
子の義 (親鸞の) 子であるという関係。
不可思議のそらごと 考えられないような虚偽。
つやつや 少しも。 全く。
うたてきことに候ふ なさけないことです。
真宗の聞書 しょうしんぼうが自己のりょうを記したもの。 高田専修せんじゅ蔵の弘安三年 (1280) の写本 ¬しんしゅう聞書ききがき¼ がそれであろうといわれる。 ¬蔵外ぞうがいかんろく¼ にこの書についての評がある。
文たびたること (哀愍房から) 手紙をもらったこと。
唯信鈔 聖覚せいかく法印ほういんの ¬唯信鈔¼ なのか、 あるいは哀愍房の書いたもので、 性信房がそれを親鸞聖人のもとへ送ってきたものなのか不明。
ª第九通は、 しんぼう義絶状ともいわれる。 義絶事件後四十九年を経た嘉元三年 (1305) にけん上人が書写したもので、 古来、 いずれの消息集にも収められず、 また他の書写も伝わっていない。º
◎註釈版の底本は高田派専修寺蔵顕智上人書写本(「古写消息」(3)と同一)。
京より文を… 京都にいるこの親鸞から手紙をもらったとかなんとか。
これにも この親鸞に対しても。
母の尼 親鸞聖人の内室、 しんこう
みぶの女房 伝未詳。
たうたる文  「びたる」 の音便形。 くださった手紙。
つやつや… 少しも手を加えてはありませんので。
ままはは 恵信尼公を中傷していったものか。
いひまどはされたる 慈信房が言いまどわされたとする説と、 親鸞聖人が言いまどわされたとする説との両説がある。
六波羅 六波羅探題。 鎌倉幕府が京都においた出先機関。
鎌倉 鎌倉幕府のこと。
披露 上申すること。
破僧 ごうそうの略。 ぎゃくの一。
ª第十通は、 五説・四土・三身・三宝など、 浄土真宗の教えに関する重要な名目を並べ説かれたもの。 法然上人の 「浄土宗大意」 (¬西方指南抄¼ 所収) の解説と考えられる。º
◎註釈版の底本は真宗法要所収本(¬末灯鈔¼の対校本Ⓒ)。 ¬末灯鈔¼(本)の底本は滋賀県慈敬寺蔵康永三年乗専書写本。
菩薩乗 この注釈のもとになっている ¬浄土宗大意¼ には 「仏乗なり」 とある。
八万四千 多数の意。
浄土の学生 浄土教の学者。
ª第十一通は、 しょうしんぼうに宛てたもので、 信心をえた人はしょろくと同じであり、 如来と等しいと説明している。 なお、 ¬けちみゃくもんじゅう¼(6) では 「金剛信心の事」 と標題が付されている。º
◎註釈版の底本は真宗法要所収本(¬末灯鈔¼の対校本Ⓒ)。 ¬末灯鈔¼(本)の底本は滋賀県慈敬寺蔵康永三年乗専書写本、 ¬善性本¼ の底本は高田派専修寺蔵鎌倉時代書写本、 ¬血脈文集¼ の底本は愛知県上宮寺蔵室町末期書写本。
弥勒におなじ →便同べんどうろく
ª第十二通は、 第十一通と同じ日に書かれたもので、 「如来とひとし」 ということに関する真仏しんぶつ上人の質問に答えたものである。º
◎註釈版の底本は真宗法要所収本(¬末灯鈔¼の対校本Ⓒ)。 ¬末灯鈔¼(本)の底本は滋賀県慈敬寺蔵康永三年乗専書写本、 ¬善性本¼ の底本は高田派専修寺蔵鎌倉時代書写本。
ª第十三通は、 きょうしんの質問状に、 親鸞聖人が直接、 加筆訂正を施し、 余白に簡単な返事を書き入れて、 れんの添状とともに、 慶信のもとに送り返したものである。º
◎註釈版の底本は高田派専修寺蔵慶信真筆・親鸞聖人真筆(「真筆消息」(4)と同一)、 蓮位添状は高田派専修寺蔵善性本より。 ¬末灯鈔¼(末)の底本は大阪府願得寺蔵康永元年乗専書写本、 ¬善性本¼ の底本は高田派専修寺蔵鎌倉時代書写本。
畏まりて… 以下、 慶信の質問状。 親鸞聖人の加筆・訂正を赤、 また抹消は下にˆ ˇで示した。
真言 ここでは真言しんごんしゅうの教えのこと。
人のうへを その人がどんな意味でいっているのかを。
 慶信が 「ん」 と書いていたのを、 親鸞聖人が 「む」 と訂正しているが、 註釈版では表記の統一によりあらためて 「ん」 とされている。
日の所作とせず 日課念仏とはしません。
ひがざまにか候ふらん 間違いでしょうか。
追つて… 以下、 慶信の追伸。
南無阿弥陀仏を… 以下、 慶信の追伸に記された疑問に対する親鸞聖人の返事。
この御文… 以下、 れんの添状。 「この御文」 はきょうしんの上書を指す。
御咳病 せきの出る病気のこと。
のぼりて候ひし人々 京都へ上った人々。
五十六億七千万歳 釈尊のにゅうめつからろく菩薩が成仏するまでの年数 (¬さつしょたいきょう¼ の説)。
ちくまく 竹膜 (竹の内側についている膜) のことか。 きわめて薄いことの喩え。
信心たがはず… 覚信かくしんぼうは最後まで信心が変ることなくして命終されました。
のぼり候ひしに 覚信坊が関東から京都へ上りましたおりに。
ひといち 地名。 「一日市」 か。 下総しもうさ下河辺吉河よしかわいち (毎月一日を市日としていた。 現在の埼玉県吉川市) とみる説がある。
みもとにてこそ… 親鸞聖人のお側で、 死ぬものならば死のうと思って参上しました。
おくれさきだつためし 親しい人に死に遅れたり、 先立って死んだりする例。
引接 浄土へ導き入れること。
御まへにて 親鸞聖人の御前で。
ª第十四通は、 「自然法爾章」 といわれる法語で、 ¬末燈鈔¼ 第五通のほか、 文明版 ¬正像末和讃¼ にも収録され、 また高田派専修せんじゅにはけん上人の書写本が現存する。 顕智上人書写本の後跋には 「正嘉二歳戊午十二月日善法ぜんぽうぼうそう御坊三条富小路の御坊にて聖人にあひまゐらせての聞き書き、 そのとき顕智これをかくなり」 とある。º
◎註釈版の底本は真宗法要所収本(¬末灯鈔¼の対校本Ⓒ)。 「古写消息」(6)の底本は高田派専修寺蔵顕智上人書写本、 ¬末灯鈔¼(本)の底本は滋賀県慈敬寺蔵康永三年乗専書写本。
とききて候ふ 法然ほうねん上人から伝え聞いた法義であるから、 「とききて候ふ」 という。
 ここでは 「…するためのもの」 という意。
沙汰 あれこれ論議し、 せんさくすること。
正嘉二年 1258年。
ª第十五通は、 かく・・ねむ・・ばう・・の往生を知らせた高田入道の書状に対する返信。 なおこの消息には親鸞聖人の署名とおうが付されており、 聖人の消息中、 最も丁重な形式をとっている。º
◎註釈版の底本は高田派専修寺蔵親鸞聖人真筆(「真筆消息」(5)と同一)。
かくしんばう 第十三通のれん添状に出る覚信房か。
ふるとしごろ 先年。
一つところ おなじところ、 つまり阿弥陀仏の浄土のこと。
仰せ (入道殿の) お言葉。
高田の入道 高田派の所伝では、 下野しもつけ (現在の栃木県) かべの城主大内おおうち国時くにときが親鸞聖人に帰依きえして出家し、 高田入道と号したといい、 真仏しんぶつ上人の叔父にあたると伝えられる。
ª第十六通は、 文応元年じょうしんに送ったもので、 信心の行者は、 臨終の善悪にかかわらず救われると説く。 現存する親鸞聖人の消息中、 年月日の明記されている最後のものである。º
◎註釈版の底本は真宗法要所収本(¬末灯鈔¼の対校本Ⓒ)。 ¬末灯鈔¼(本)の底本は滋賀県慈敬寺蔵康永三年乗専書写本。
去年今年 去年 (正元元年・1259年)、 今年 (文応元年・1260年) は全国的な大飢饉と悪疫におそわれ、 死者がはなはだ多かった。
学生沙汰 学者ぶった論議。
さかさかしきひと いかにも賢明なようにふるまう人。
うかれたまひたる人 心が落ち着かない人。
乗信房 ¬交名きょうみょうちょう¼ によると、 常陸ひたち奥郡おうぐん (現在の茨城県北部) の住。 数名の門下の名も伝わる。
ª第十七通は、 しんじょうぼうに宛てたもので、 権力者の力をかりて念仏の布教をはかってはならないと誡め、 弾圧をうけて、 やむを得なければいずれの地へでも移るようにと諭している。º
◎註釈版の底本は真宗法要所収本(¬御消息集¼の対校本Ⓒ)。 ¬御消息集¼の底本は本派本願寺蔵室町末期書写本
念仏のあひだのこと 念仏に関する問題。
ところせき 居づらい。 大へん困っている。
念仏とどめんひと 念仏を禁止する人。
余のひとびと 在地の権力者を指すと考えられる。
これよりは 私の方からは。
この世のならひ この末法まっぽうの世の通例、 きまり。
かねて仏の説きおかせ… ¬ほうさん¼ (下) に 「五濁増の時は多く疑謗し、 道俗あひ嫌ひて聞くことを用ゐず。 修行するものあるを見ては瞋毒を起し、 方便破壊して競ひて怨を生ず」 とあるのを指す。
わづらふべくてぞ… さしつかえるべき事情があって、 そのようなことになっているのでしょう。
それを しんぼうがいっていることを。
これより 私 (親鸞聖人) の方より。
めでたき御ふみ 立派な書物。 ここでは ¬唯信鈔¼ 等の書物のことを指す。
ª第十八通は、 常陸の門弟に宛てたものとみられる。 一念多念の論争を誡め、 ¬唯信鈔¼ ¬後世物語¼ ¬自力他力事¼ などの熟読を勧めている。º
◎註釈版の底本は真宗法要所収本(¬御消息集¼の対校本Ⓒ)。 ¬御消息集¼「広本」の底本は本派本願寺蔵室町末期書写本。
われはといふこと 自分の意見こそは正しいということ。
わざとも あらためてでも。
詮なきこと かいのないこと。
そのこととなきこと 無意味なこと。 重要でもないこと。
ª第十九通は、 きょう西さいに宛てたもの。 第十七願の意趣を示し、 ぼんが仏になることは、 ひとえに仏と仏との御はからいによるといい、 「他力の信心は義なきを義とする」 と説き及んでいる。º
◎註釈版の底本は真宗法要所収本(¬御消息集¼の対校本Ⓒ)。 ¬御消息集¼「広本」の底本は本派本願寺蔵室町末期書写本、 ¬血脈文集¼ の底本は富山県専琳寺蔵賢心本転写本。
 ため。
ª第二十通は、 じょうしんぼうの上書と親鸞聖人の返書からなる。 その返書には、 信心の人は摂取せっしゅしゃやくにあずかり正定しょうじょうじゅとうしょうがくの位に定まること、 その信心の人は十方恒沙の如来によって讃嘆されるところから仏と等しいこと、 さらに他力とは義なきを義とするものであるということが説き示されている。º
◎註釈版の底本は高田派専修寺蔵親鸞聖人真筆(「真筆消息」(6)と同一。 ただし浄信上書は ¬善性本¼(2)より)。 ¬末灯鈔¼(本)の底本は滋賀県慈敬寺蔵康永三年乗専書写本、 ¬善性本¼ の底本は高田派専修寺蔵鎌倉時代書写本。
往生に… 往生のために必要なことはないと心得て、 この世を過ごしてまいりましたので。
ª第二十一通は、 阿弥陀仏の本願力のこうによって、 この上ないさとりを得しめられると信じて、 念仏すべきであると説いたもの。º
◎註釈版の底本は真宗法要所収本(¬末灯鈔¼の対校本Ⓒ)。 ¬末灯鈔¼(末)の底本は大阪府願得寺蔵康永元年乗専書写本、 ¬善性本¼ の底本は高田派専修寺蔵鎌倉時代書写本。
ふたごころなき 疑いがないこと。
二種の回向 往相おうそうこう還相げんそうこうのこと。
ª第二十二通は、 わう・・いや・・をんな・・・の近況を知らせた消息である。º
◎註釈版の底本は本派本願寺蔵親鸞聖人真筆(「真筆消息」(7)と同一)。
いやをんな 親鸞聖人に仕えていた使用人とみられる。
わびゐて候ふなり 貧しく暮らしている。
もてあつかひて もてあまして。
わうごぜん 王御前。 親鸞聖人の末娘の覚信かくしんこうのこと。
ª第二十三通は、 教名きょうみょう (養) の質問に答えたもの。 誓願せいがんみょうごうとを別執すべきでないと説く。 「誓願名号同一の事」 という標題は後世の付加。º
◎註釈版の底本は真宗法要所収本(¬末灯鈔¼の対校本Ⓒ)。 「古写消息」(1)の底本は高田派専修寺蔵鎌倉時代書写本、 ¬末灯鈔¼(本)の底本は滋賀県慈敬寺蔵康永三年乗専書写本。
しかるべし… もっともなこととも思われません。
なんでふわが… どうして自分のはからいをさしはさめましょうか。
ききわけしりわくる 誓願不思議を信ずるのは他力、 名号不思議を信ずるのは自力と、 聞きわけ知りわけねばならないと教える異義。
往生の業 浄土に往き生れるための因となる行為。
ª第二十四通は、 じょうしんの質問に答えたもの。 仏智不思議と信ずるほかに、 私のはからいがあってはならないと説く。 「仏智不思議と信ずべき事」 という標題は後世の付加とみられる。º
◎註釈版の底本は真宗法要所収本(¬末灯鈔¼の対校本Ⓒ)。 「古写消息」(2)の底本は高田派専修寺蔵鎌倉時代書写本、 ¬末灯鈔¼(本)の底本は滋賀県慈敬寺蔵康永三年乗専書写本。
つね 平生。 ふだん。
浄土の業因 浄土往生の因となるべきぎょうごう
わたくしの 自分勝手の。
候ふなること 申すことには。
出世のこころ 浄土往生を願う心
ª第二十五通は、 鎌倉での念仏訴訟が落着したことを報じたしょうしんぼうの書状に対する返書。 聖人は性信房の対処の仕方を称讃している。 なお、 この訴訟に関しては、 第四十三通にも触れられているが、 詳細は明らかでない。º
◎註釈版の底本は真宗法要所収本(¬御消息集¼の対校本Ⓒ)。 ¬御消息集¼「広本」の底本は本派本願寺蔵室町末期書写本。
おろおろ… (性信房のお手紙の前に) 大体のところは聞いております。
この御文 六月一日付の性信房の手紙を指す。
別のことは… 格別のことはまさかあるまいと。
御くだり 訴訟が終って性信房が鎌倉から下総しもうさに帰ったこと。
ことも… とりわけ新しい訴えでもありません。
念仏者の… 念仏者の中のものの道理を心得ていない人が。
性信坊の… 性信坊のとがであるかのように申しなされるのは。
かたうど  「かたびと (方人) 」 の転。 味方。
ふるごと 昔からよくあること。 昔のこと。
念仏をとどめられ じょうげん元年 (1207) の専修せんじゅ念仏ちょうを指す。
曲事 承久の乱 (1221) による三上皇の配流を指すものか。
陳状 原告 (にん) の訴状に対し、 被告 (論人ろんにん) の提出する反論を陳状という。
めでたう候ふべし 結構なことであるに違いありません。
ª第二十六通は、 ゆう弥陀みだぶつの質問に答えたもの。 念仏往生を否定することの誤りをただし、 信心と念仏が不離の関係であると述べる。º
◎註釈版の底本は真宗法要所収本(¬末灯鈔¼の対校本Ⓒ)。 ¬末灯鈔¼(本)の底本は滋賀県慈敬寺蔵康永三年乗専書写本。
おほかた 全く。
なにごとにかは… どうして辺地の往生でありましょうか、 (決してそうではありません)。
有阿弥陀仏 親鸞聖人の門弟の一人。 伝未詳。
ª第二十七通は、 第二十八通と同じく九月二日付であり、 内容も似ていることから、 同日に書かれたものとみられる。 諸神軽視、 造悪ぞうあく無礙むげを口実として念仏者を弾圧する在地権力者がいるが、 そうした権力者に対しては憐れみをもって念仏して彼らをたすけよと諭している。º
◎註釈版の底本は真宗法要所収本(¬御消息集¼「広本」の対校本Ⓒ)。 ¬御消息集¼の底本は本派本願寺蔵室町末期書写本。
すて 「すつ」 は無視するの意。
神祇等だにも… 天神地祇などでさえ (念仏者に) 無視されたまわないのです。
領家 荘園の領有者。
地頭 幕府任命の荘園管理職。
名主 名田を経営管理し、 年貢・公事くじの徴収に当った者。
やうあるべきことなり そのいわれがあるはずのことです。
 であって、 (それは…)。
ふるきひと 法然ほうねん上人を指す。
めでたきやうなり 結構なことであります。
念仏を… 念仏をちょうされるようなことに言動をなされておられるとかいうのは、 ほんとうに腑におちません。
あるべくもなきこと (念仏者はことさらに悪を好み行うものだという) 事実であるはずもない風評。
ª第二十八通は、 しんぼうに宛てたもの。 信願房が造悪ぞうあく無礙むげの主張をするとは思えないと述べ、 臨終のありさまで往生の得否を論ずることは誤りであると指摘して、 念仏をさまたげる者に対しては彼らをたすけようと思って念仏すべきであると説く。 また追伸の部分では仏法を破滅させるのは仏法者自身であると述べる。º
◎註釈版の底本は真宗法要所収本(¬御消息集¼の対校本Ⓒ)。 ¬御消息集¼「広本」の底本は本派本願寺蔵室町末期書写本。
遠江の尼御前 伝未詳。
こころよりおこる病 邪見をいだいて、 仏教をそしったりすることなどをいう。
 本来の姿。
ともかくもなり候はめ・いかにもなり候はめ 悪道に堕するようなことにもなるでありましょう。
それは 念仏を非難妨害されることについては。
かのひと 念仏を非難妨害する人。
法信坊 伝未詳。 「交名牒」 にも見えない。
くげどの 伝未詳。
道理をば… 道理まで失ってはおられまいと思われます。
百姓を… 一般の人々を惑わすことはありません。
ª第二十九通は、 しょうしんぼうに宛てたもの。 大番役で京都へ上ったしむ・・の入道としょうねんぼうに面会したことを喜び記している。º
◎註釈版の底本は「専琳寺蔵賢心書写本」とあるが、 愛知県上宮寺蔵室町末期書写本(¬血脈文集¼の対校本Ⓐ)か。 ¬血脈文集¼ の底本は富山県専琳寺蔵賢心本転写本。
しむの入道 伝未詳。 くうぼん ¬血脈文集¼ には 「しむしの入道」 とある。
正念房 伝未詳。
王番 大番のこと。 宮廷の警護をつとめる役。 幕府の御家人がこの役に当てられた。
御すすめと候ふ あなた (性信房) のお勧めであるということです。
念仏のあひだのこと 念仏に関する問題。 鎌倉での念仏訴訟を指す。
こころやすく 平穏無事なありさま。 ここは念仏訴訟が落着したことを指すものと考えられる。
ª第三十通は、 摂取せっしゅしゃについての質問状に対する返書。 信心が定まることは釈迦・弥陀のはからいであると述べ、 弥陀に摂取されるから信心が定まり、 正定しょうじょうじゅの位に入らしめられると説いて、 行者のはからいを誡めている。º
◎註釈版の底本は高田派専修寺蔵親鸞聖人真筆(「真筆消息」(8)と同一)。 ¬末灯鈔¼(本)の底本は滋賀県慈敬寺蔵康永三年乗専書写本、 ¬善性本¼ の底本は高田派専修寺蔵鎌倉時代書写本。
しのぶの御房 真蹟本の原型は 「しんぶつの御房」 であったが、 後人が 「しのぶの御房」 と改竄したものとみられる。 ¬末灯鈔¼ 所収本では 「真仏御房」 となっている。
ª第三十一通は、 十二光についての解説を唯信ゆいしんに送り与えた際の添状と考えられている。 その解説とは、 ¬弥陀如来名号徳¼ を指すと推測されている。º
◎註釈版の底本は真宗法要所収本(¬御消息集¼の対校本Ⓒ)。 ¬御消息集¼「広本」の底本は本派本願寺蔵室町末期書写本。
十二光仏 →じゅうこう
 根本。
ª第三十二通は、 じょうしんの問いに答えたもの。 真実信心を得た人は、 如来と等しいことを示し、 そのことを自力の信心であると批判することの非を指摘している。º
◎註釈版の底本は高田派専修寺蔵親鸞聖人真筆(「真筆消息」(9)と同一)。 ¬末灯鈔¼(末)の底本は大阪府願得寺蔵康永元年乗専書写本、 ¬御消息集¼の底本は本派本願寺蔵室町末期書写本。
めでたう候ふ 結構でございます。
その定に それと同様に。
承信房 伝未詳。
ª第三十三通は、 しんぼうに宛てたもの。 文面には、 関東の門弟の動揺を伝え聞いて深く悲嘆している様子がうかがわれる。 この時点では、 親鸞聖人はまだ、 慈信房の異義について十分承知していない。º
◎註釈版の底本は真宗法要所収本(¬御消息集¼の対校本Ⓒ)。 ¬御消息集¼の底本は本派本願寺蔵室町末期書写本。
五貫文 おおよそ一貫文で米一石 (百升) が買えた。
おほぶの中太郎 ¬御伝鈔¼【13】に出る平太郎と同一人物ともいわれる。 「おほぶ」 は現在の茨城県水戸市飯富いいとみ町。 同地には真仏寺があり、 平太郎真仏を開基とする。
このひとびとのことうけたまはり候ふ しんぼうは真仏・性信・入信などの信心が変ったと親鸞聖人に報告していたらしい。
ひとのうへも 他人のことについても。
ª第三十四通は、 専信せんしんの上書に対する返事。 現生しょうじょうじゅの義を示して、 義なきを義とする他力のおもむきを明かしている。º
◎註釈版の底本は高田派専修寺蔵鎌倉時代書写本(¬善性本¼(7)と同一)。
せんなく候ふべきか 意味がないことになりましょうか、 そんなはずはありません。
ª第三十五通は、 第三十六通と一連のもの。 いま・・ごぜ・・んの・・はは・・に対し、 第三十六通を常陸の人々に見せるようにと申し送っている。º
◎註釈版の底本は本派本願寺蔵親鸞聖人真筆(「真筆消息」(10)と同一)。
御返事 端裏書であり、 上部に切封がある。
いまごぜんのはは 不明。 親鸞聖人の妻、 末娘の覚信かくしんこう、 親鸞聖人の息男の妻の母など、 諸説があって定まらない。
ª第三十六通は、 常陸ひたち (現在の茨城県) の人々にいま・・ごぜ・・んの・・はは・・そく・・しやう・・・ばう・・の扶持を依頼されたもの。 筆蹟の乱れが著しく、 最晩年に書かれた遺言状であろうともいわれる。º
◎註釈版の底本は本派本願寺蔵親鸞聖人真筆(「真筆消息」(11)と同一)。
せんしに  「善 (信) 死に」 「詮、 死に」 あるいは 「ぜんしん (善信)」 の 「ん」 を脱したもの等の諸説がある。
そくしやうばう 伝未詳。
すぐべきやうもなき… 暮らしを立てて世をすごしてゆく方法も知らない者ですので。
ª第三十七通は、 宛名は不明であるが、 その内容は念仏者の放逸無慚なふるまいを誡めたものである。º
◎註釈版の底本は真宗法要所収本(¬末灯鈔¼ の対校本Ⓒ)。 ¬末灯鈔¼(末)の底本は大阪府願得寺蔵康永元年乗専書写本、 ¬御消息集¼「広本」の底本は本派本願寺蔵室町末期書写本。
まことのそこ 真髄。
放逸無慚 勝手気ままな行動をし、 自己の心に恥じることのないこと。
あひむつるること 相親しむこと。
ひがうたる 「ひがみたる」 の音便形。 曲がった。
悪くるしからず 悪いことをしてもかまわない。
さはらぬ… 浄土往生のさまたげにはならないからといって。
その辺の人々の… 鹿島・行方なめかたの人々の、 間違ったことを説得してやめさせ。
この辺より… この親鸞の門下より出できたしるしである。 あるいは京都より出てきたとみる説もある。
ª第三十八通は、 本願寺藏本 ¬御消息集¼ (広本) には 「真仏しんぶつ上人御返事」 とある。 他力の中に自力ということはあるが、 他力の中にさらに奥深い他力ということはないと示す。º
◎註釈版の底本は真宗法要所収本(¬末灯鈔¼の対校本Ⓒ)。 ¬末灯鈔¼(末)の底本は大阪府願得寺蔵康永元年乗専書写本、 ¬御消息集¼の底本は本派本願寺蔵室町末期書写本。
ª第三十九通は、 随信ずいしんの問いに答えたもの。 信心をたまわった時、 正定しょうじょうじゅに住するので、 信心の人はろくと同じ位であり、 諸仏と等しいと説いて、 来迎らいこう・臨終をまたない旨を示している。º
◎註釈版の底本は真宗法要所収本(¬末灯鈔¼の対校本Ⓒ)。 ¬末灯鈔¼(末)の底本は大阪府願得寺蔵康永元年乗専書写本。
随信房  ¬交名きょうみょうちょう¼ にぜんの門下としてその名がある。
ª第四十通は、 ゑん・・ばう・・が主人に無断で京都の親鸞聖人のもとを訪れたので、 その帰東に際して、 とりなしを真仏しんぶつ上人に依頼したもの。º
◎註釈版の底本は高田派専修寺蔵親鸞聖人真筆(「真筆消息」(2)と同一)。
ゑん仏ばう 伝未詳。 ¬交名きょうみょうちょう¼ の真仏上人門下の信願しんがんの下に出る円仏房のことか。
せうまう 焼亡 (火事) であろう。
ª第四十一通は、 教忍の質問に答えたもの。 一念多念、 有念無念の争いをしてはならないと誡め、 ¬唯信鈔¼ の熟読を勧めている。º
◎註釈版の底本は真宗法要所収本(¬御消息集¼の対校本Ⓒ)。 ¬御消息集¼「広本」の底本は本派本願寺蔵室町末期書写本。
御こころざしのもの・念仏のすすめのもの 「こころざしのもの」 は門徒個人のこん、 「念仏のすすめのもの」 は毎月の 「二十五日の御念仏」 に集まった同行たちが醵出した懇志を意味するようである。
一定してんず 必ずするであろう。
ª第四十二通は、 ¬宝号経¼ によって本願の念仏が非行非善の他力の行であることや、 こうみょうみょうごう因縁いんねんについて述べた法語である。º
◎註釈版の底本は真宗法要所収本(¬末灯鈔¼の対校本Ⓒ)。 ¬末灯鈔¼(末)の底本は大阪府願得寺蔵康永元年乗専書写本。
宝号経 現存の ¬大蔵経¼ には存しない。 ¬弥陀みだきょうしゅう¼ に 「又宝号王経、 非行非善、 但持仏名故、 生不退位」 とある。
ª第四十三通は、 しょうしんぼうに宛てたもの。 念仏訴訟の解決を喜び、 念仏をそしる人々のために念仏することを勧め、 合せてこのことを入西にも伝えるようにと記している。º
◎「註釈版」の底本は真宗法要所収本(¬御消息集¼の対校本Ⓒ)。 ¬御消息集¼「広本」の底本は本派本願寺蔵室町末期書写本。
くだらせたまひてのち 鎌倉から (郷里の下総しもうさに) お帰りになって後。
源藤四郎殿 伝未詳。
 考え。 思いめぐらし。
二十五日の御念仏 法然ほうねん上人の命日にあたる二十五日に集って行う念仏のこと。 上人はけんりゃく二年 (1212) 一月二十五日にじゃく
 ため。
◎底本は本派本願寺蔵親鸞聖人真筆。
◎底本は富山県専琳寺蔵賢心本転写本。
こ/しか 「真筆本」(上書訂正)。
 「註釈版」、 「古写消息(5)」、 ¬末灯鈔¼ 歟室町中期写本、 ¬血脈文集(1)¼。 「真筆消息」(1)にもとづき修正。
 「真蹟消息」(4)になし。 ¬末灯鈔(14)¼ による。
なり 「真蹟消息」(4)になし。 ¬末灯鈔(15)¼ による。
も←ぼ ¬末灯鈔(7)¼による。 (¬善性本(2)¼ も「ぼº)。
 「真蹟消息」(6)になし。 ¬末灯鈔(7)¼、 ¬善性本(2)¼ による。
親鸞(花押) 別筆。
が/の 「註釈版」。 「真筆消息」(7)にもとづき修正。
め/な 「註釈版」。 「真跡本はªめºとも読める」 と脚注があり、 また逆に真跡本にも 「ªなºと読む説あり」 と対校註があるが、 「真筆消息」(7)にもとづき修正。
 「註釈版」。 「真筆消息」(8)にもとづき削除。 ¬末灯鈔(13)¼、 ¬善性本(4)¼にもなし。
(花押) 「註釈版」、 ¬末灯鈔(13)¼、 ¬善性本(4)¼。 「真筆消息(8)」にもとづき修正。
「真筆消息(12)」。
(表題) 「古写消息(1)」、 ¬末灯鈔¼(9)。
 「古写消息(1)」。
ただ 「古写消息(1)」。
名/やう 「古写消息(1)」。
 「古写消息(1)」。
信心 「古写消息(2)」、 ¬末灯鈔(10)ª乗専書写本º¼。
 「古写消息(2)」、 ¬末灯鈔(10)ª乗専書写本º¼
 「古写消息(2)」。
御判/(花押) 「古写消息(2)」、 ¬末灯鈔(10)¼ になし。
端書にいはく 「古写消息(2)」、 ¬末灯鈔(10)ª乗専書写本º¼。
の事 「古写消息(4)」。
禿とく親鸞しんらんいわ (行末)「古写消息(4)」。
 「古写消息(4)」には 「ライハキタルトイフ ジャウドヘコレニヤクフシヤウジヤノチカヒヲアラハスミノリナリ ヱドヲステヽシンジチノホウドニキタラシメントナリ 又カヘルトイフハグワンカイニイリヌルニヨリテカナラズダイネチハンニイタルヲホフシヤウノミヤコヘカヘルトマフスナリ」 と左傍註記あり。
 「古写消息(4)」には 「カウハマツトイフムカフトイフ タリキヲアラハスコヽロナリ」 と右傍注記あり。
信心のさだまるとき 「古写消息(4)」。
 「古写消息(4)」。
 「古写消息(4)」。
 「古写消息(4)」。
また/は 「古写消息(4)」。
 「古写消息(4)」。
 「古写消息(4)」。
辺地・胎生/胎生・辺地 「古写消息(4)」。
 「古写消息(4)」。
といふ 「古写消息(4)」。
をたのむ 「古写消息(4)」。
 「古写消息(4)」。
 「古写消息(4)」。
 「古写消息(4)」。
また 「古写消息(4)」。
 「古写消息(4)」。
南無阿弥陀仏 「古写消息(4)」。
笠間の念仏者の/念仏する人々のなかより 「古写消息(5)」。
れたる/るゝ 「古写消息(5)」、 ¬血脈文集(1)¼。
 「古写消息(5)」。
こと/ところ 「古写消息(5)」。
はん/ふ 「古写消息(5)」。
ぞ/こそ 「古写消息(5)」。
 「古写消息(5)」。
 「古写消息(5)」。
わが 「古写消息(5)」。
は/を 「古写消息(5)」。
 「古写消息(5)」。
「古写消息(5)」。
自然法爾の事。 「古写消息(6)」、 ¬末灯鈔(5)ª乗専書写本º¼。
しからしむといふことばなり。 「古写消息(6)」。
なり。 しからしむといふは 「古写消息(6)」。
法爾といふ 「古写消息(6)」。
なり 「古写消息(6)」。
およそ/すべて 「古写消息(6)」。
他力には 「古写消息(6)」。
 「古写消息(6)」。
 「古写消息(6)」。
「古写消息(6)」。
も/の 「古写消息(6)」、 ¬末灯鈔(5)ª乗専書写本º¼。
申すと 「古写消息(6)」。
るべし/り 「古写消息(6)」、 ¬末灯鈔(5)ª乗専書写本º¼。。
「古写消息(6)」
有念無念の事。 ¬末灯鈔(1)ª乗専書写本º¼。
 ¬末灯鈔(1)ª乗専書写本º¼。
則/式 ¬末灯鈔(1)ª乗専書写本º¼。
の←れ 「真宗法要所収本」(および「蓮如上人書写本」)。
 ¬末灯鈔(2)¼。
 ¬末灯鈔(2)ª真宗法要所収本º¼、 ¬血脈文集(1)¼。
生る/生ず ¬末灯鈔(2)¼。
信/身 ¬末灯鈔(2)ª乗専書写本º¼、 信/み ¬末灯鈔(2)ª真宗法要所収本º¼。
かならず ¬末灯鈔(2)¼。
¬末灯鈔(2)¼。
 ¬末灯鈔(3)ª乗専書写本º¼、 ¬善性本(5)¼、 ¬血脈文集(6)¼。
そ/こ ¬末灯鈔(3)ª乗専書写本º¼。
は/を ¬末灯鈔(4)ª乗専書写本º¼。
て/に ¬末灯鈔(5)ª乗専書写本º¼。
 ¬末灯鈔(5)ª乗専書写本º¼。
 ¬末灯鈔(6)ª乗専書写本º¼。
させ ¬末灯鈔(6)ª乗専書写本º¼。
¬末灯鈔(6)¼。
(浄信書状全) ¬末灯鈔(7)ª乗専書写本º¼。
¬末灯鈔(7)¼。
とき ¬末灯鈔(7)¼。
 ¬末灯鈔(7)¼。
 ¬末灯鈔(7)¼、 ¬善性本(2)¼。
まふし ¬末灯鈔(7)¼。
は/に ¬末灯鈔(7)¼。
 ¬末灯鈔(7)¼、 ¬善性本(2)¼。
 ¬末灯鈔(7)¼、 ¬善性本(2)¼。
諸事恐々謹言 ¬末灯鈔(7)¼。
¬末灯鈔(7)¼、 ¬善性本(2)¼。
¬末灯鈔(7)¼、 ¬善性本(2)¼。
止/正 ¬末灯鈔(8)ª乗専書写本º¼。
 ¬末灯鈔(8)ª乗専書写本º¼。
不思 ¬末灯鈔(8)ª乗専書写本º¼。
など ¬末灯鈔(8)ª乗専書写本º¼。
三/二 ¬末灯鈔(8)ª乗専書写本º¼。
 「古写消息(1)」、 ¬末灯鈔(9)ª乗専書写本º¼。
られ ¬末灯鈔(9)ª乗専書写本º¼。
端書にいはく 「古写消息(1)」、 ¬末灯鈔(9)ª乗専書写本º¼。
すと 「古写消息(1)」、 ¬末灯鈔(9)ª乗専書写本º¼。
仏智不思議と信ずべき事 「古写消息(2)」、 ¬末灯鈔(10)ª乗専書写本º¼。
びと ¬末灯鈔(10)ª乗専書写本º¼。
 ¬末灯鈔(10)ª乗専書写本º¼。
 ¬末灯鈔(10)ª乗専書写本º¼。
たしかに ¬末灯鈔(11)¼。
せば、/すなり。 ¬末灯鈔(11)¼、 ¬御消息集(15)¼。
 ¬末灯鈔(11)¼、 ¬御消息集(15)¼。
かならず ¬末灯鈔(11)¼。
八/六 ¬末灯鈔(11)¼。
(花押)/親鸞 ¬末灯鈔(11)¼、 ¬御消息集(15)¼。
(以下全) ¬末灯鈔(11)¼。
仏/如来 ¬末灯鈔(13)ª乗専書写本º¼。
 ¬末灯鈔(13)¼、 ¬善性本(4)¼。
す/せた ¬末灯鈔(13)¼。
しのぶの/真仏 ¬末灯鈔(13)¼。
 ¬末灯鈔(13)¼。
(奥書) ¬末灯鈔(13)ª乗専書写本º¼。
 ¬末灯鈔(14)¼、 ¬善性本(1)¼。
 ¬末灯鈔(14)¼。
までの/にて ¬末灯鈔(14)¼。
 ¬末灯鈔(14)¼。
にさふらふ ¬末灯鈔(14)¼。
ぼえ/ほせ ¬末灯鈔(14)¼。
せず/す ¬末灯鈔(14)ª乗専書写本º¼。
か/や ¬末灯鈔(14)¼。
らせ/り ¬末灯鈔(15)¼。
 ¬末灯鈔(15)¼。
かならず ¬末灯鈔(15)¼。
弥勒をば ¬末灯鈔(15)ª乗専書写本º¼。
承/乗 ¬末灯鈔(15)¼、 /浄 ¬御消息集(15)¼。
 ¬末灯鈔(15)¼。
承/乗 ¬末灯鈔(15)¼。
こえ/き ¬末灯鈔(15)¼。
よく ¬末灯鈔(15)¼。
ふら/は ¬末灯鈔(15)ª乗専書写本º¼、 ¬御消息集(15)¼。
承/乗 ¬末灯鈔(15)¼。
 ¬末灯鈔(15)¼、 ¬御消息集(15)¼。
し/くさふらふ ¬末灯鈔(15)¼。
一/七 ¬末灯鈔(15)¼、 ¬御消息集(15)¼。
浄信御坊御返事 ¬末灯鈔(15)¼。
 ¬末灯鈔(15)ª乗専書写本º¼。
仏と/如来を ¬末灯鈔(15)¼。
さん/す ¬末灯鈔(15)¼。
 ¬末灯鈔(15)¼。
¬末灯鈔(15)¼、 ¬善性本(1)¼。
¬末灯鈔(15)¼。
証/乗 ¬末灯鈔(16)ª乗専書写本º¼。
散心念仏 ¬末灯鈔(17)ª乗専書写本º¼。
を/と ¬末灯鈔(17)ª乗専書写本º¼、 ¬御消息集(16)¼。
が/にか ¬末灯鈔(17)ª乗専書写本º¼、 ¬御消息集(16)¼。
も/は ¬御消息集(16)¼、 ¬末灯鈔(17)ª乗専書写本º¼になし。
 ¬末灯鈔(18)ª乗専書写本º¼。
に/と ¬末灯鈔(18)ª乗専書写本º¼。
 ¬末灯鈔(19)ª乗専書写本º¼。
 ¬末灯鈔(19)ª乗専書写本º¼。
 ¬末灯鈔(19)ª乗専書写本º¼。
世/余 ¬末灯鈔(19)ª乗専書写本º¼。
 ¬末灯鈔(19)ª乗専書写本º¼、 ¬御消息集(2)¼。
証/乗 ¬末灯鈔(19)ª乗専書写本º¼、 「室町中期書写本」。
前文に続け一通として別出せず 「真宗法要所収本」(および「室町中期書写本」)。
ふし ¬末灯鈔(20)ª乗専書写本º¼、 ¬御消息集(1)¼。
ぞ←こそ 「真宗法要所収本」。
もとこそ、 こころのままにてあしきことをもおもひ、 あしきことをもふるまひなんどせしかども、 いまはさやうのこころをすてん←もともこゝろのまゝにて悪事をもふるまひなんどせじ 「真宗法要所収本」(ほか ¬末灯鈔¼ 系の諸本すべて)。 「御消息集」による。
がひ/しみ ¬末灯鈔(20)ª乗専書写本º¼、 ¬御消息集(1)¼。
 ¬末灯鈔(21)ª乗専書写本º¼。
 ¬末灯鈔(22)ª乗専書写本º¼。
(奥書) ¬末灯鈔(22)ª乗専書写本º¼。
 ¬御消息集(1)¼。
のこと/と ¬御消息集(1)¼。
まことに ¬御消息集(1)¼。
いよいよ ¬御消息集(1)¼。
のみ ¬御消息集(1)¼。
あひ ¬御消息集(1)¼。
文/門 ¬御消息集(1)¼。
め/な ¬御消息集(1)¼。
なり ¬御消息集(1)¼。
を/と ¬御消息集(1)¼。
 ¬御消息集(1)¼。
御こゝろえは ¬御消息集(1)¼。
 ¬御消息集(1)¼。
無明の ¬御消息集(1)¼。
 ¬御消息集(1)¼。
おぼえ ¬御消息集(1)¼。
とて ¬御消息集(1)¼。
 ¬御消息集(1)¼。
 ¬御消息集(1)¼。
 ¬御消息集(1)¼。
もの ¬御消息集(1)¼。
御名/ちかひ ¬御消息集(1)¼。
を/も ¬御消息集(1)¼。
後世/この世 ¬御消息集(1)¼。
 ¬御消息集(1)¼。
なんぞ/いかゞ ¬御消息集(1)¼。
 ¬御消息集(1)¼。
 ¬御消息集(1)¼。
が/でか ¬御消息集(1)¼。
の/も ¬御消息集(1)¼。
き/こえ ¬御消息集(1)¼。
こそ ¬御消息集(1)¼。
へ/ふ ¬御消息集(1)¼。
 ¬御消息集(1)¼。
べからず/ことなかれ ¬御消息集(1)¼。
説かれて/をしへをかれて ¬御消息集(1)¼。
善をせぬひとにもちかづき ¬御消息集(1)¼。
 ¬御消息集(1)¼。
かの ¬御消息集(1)¼。
より ¬御消息集(1)¼。
 ¬御消息集(1)¼。
こそ/ぞ ¬御消息集(1)¼。
二月二十四日/ 壬子 八月十九日 ¬御消息集(1)¼。
¬御消息集(1)¼。
 ¬御消息集(2)¼。
また ¬御消息集(2)¼。
びと ¬御消息集(2)¼。
 ¬御消息集(2)¼。
みなおなじく/おなじくみな ¬御消息集(2)¼。
 ¬御消息集(2)¼。
に/の ¬御消息集(2)¼。
ともかくも/とかく ¬御消息集(3)¼。
 ¬御消息集(3)¼。
へ/ふなり ¬御消息集(3)¼。
たまふ/んこと ¬御消息集(3)¼。
をのをの ¬御消息集(3)¼。
¬後世物語¼・ ¬御消息集(3)¼。
ども ¬御消息集(3)¼。
 ¬御消息集(3)¼。
また ¬御消息集(3)¼。
すに/し ¬御消息集(3)¼。
ひ/はせ ¬御消息集(3)¼。
ぞ/こそ ¬御消息集(3)¼。
ん/め ¬御消息集(3)¼。
 ¬御消息集(3)¼。
おもひ、 いふまじきことをも ¬御消息集(3)¼。
 ¬御消息集(3)¼。
 ¬御消息集(3)¼。
んは/ば ¬御消息集(3)¼。
 ¬御消息集(3)¼。
 ¬御消息集(3)¼。
させ ¬御消息集(3)¼。
あひ/ゐ ¬御消息集(3)¼。
ほど ¬御消息集(3)¼。
 ¬御消息集(3)¼。
 ¬御消息集(3)¼。
たゞ ¬御消息集(3)¼。
 ¬御消息集(3)¼。
 ¬御消息集(3)¼。
まして 「真宗法要所収本」(ほか ¬末灯鈔¼ 系の諸本すべて)になし。 「御消息集」による。
 ¬御消息集(4)¼。
その ¬御消息集(4)¼。
 ¬御消息集(4)¼。
 ¬御消息集(4)¼。
ことを ¬御消息集(4)¼。
に/身にて ¬御消息集(4)¼。
¬御消息集(4)¼。
ごと ¬御消息集(5)¼。
も/は ¬御消息集(5)¼。
人/もの ¬御消息集(5)¼。
 ¬御消息集(5)¼。
 ¬御消息集(5)¼。
 ¬御消息集(5)¼。
たゞしたからんことをばせよ、 ¬御消息集(5)¼。
は、 ¬御消息集(5)¼。
にと/んど ¬御消息集(5)¼。
ひつ/へ ¬御消息集(5)¼。
 ¬御消息集(5)¼。
さま ¬御消息集(5)¼。
 ¬御消息集(5)¼。
へ。/に、 ¬御消息集(5)¼。
 ¬御消息集(5)¼。
ば/んは ¬御消息集(5)¼。
む/まん ¬御消息集(5)¼。
つつしんで/うやまひて ¬御消息集(5)¼。
 ¬御消息集(5)¼。
 ¬御消息集(5)¼。
の文 ¬御消息集(5)¼。
 ¬御消息集(5)¼。
¬御消息集(5)¼。
 ¬御消息集(6)ª室町末期書写本º¼。
 ¬御消息集(7)ª室町末期書写本º¼。 「註釈版」は「恵空書写本(略本)」によって校訂されている。
はず ¬御消息集(7)ª室町末期書写本º¼では「ふなり」。 「註釈版」は「恵空書写本(略本)」によって校訂されている。
する/、 ¬御消息集(9)ª室町末期書写本º¼。
 ¬御消息集(9)ª室町末期書写本º¼。
びと ¬御消息集(11)ª室町末期書写本º¼。
とせん ¬御消息集(12)ª室町末期書写本º¼。
(以下全) ¬御消息集(14)ª室町末期書写本º¼。
をば/は ¬御消息集(15)¼。
ふら/は ¬御消息集(15)¼。
他力の信心のゆゑに、 浄信房のよろこばせたまひ候ふらんは、 ¬御消息集(15)¼。
浄/慶 ¬御消息集(15)¼。
返事/報 ¬御消息集(15)¼。
(一行) ¬御消息集(16)¼。
親鸞 ¬御消息集(16)¼。
¬御消息集(16)¼。
親鸞 ¬御消息集(17)ª室町末期書写本º¼。
 ¬御消息集(18)ª室町末期書写本º¼、 ¬血脈文集(3)¼。
九/廿五 ¬御消息集(18)ª室町末期書写本º¼、 ¬血脈文集(3)¼。
 ¬善性本(1)¼。
華厳経を引きて ¬善性本(1)¼。
。 滅度をさとらしむと候 ¬善性本(1)¼。
 ¬善性本(1)¼。
 ¬善性本(1)¼。
まり/め ¬善性本(1)¼。
 ¬善性本(1)¼。
 ¬善性本(1)¼。
るに/れば ¬善性本(1)¼。
 ¬善性本(1)¼。
あげ ¬善性本(1)¼。
十月十日 ¬善性本(1)¼。
¬善性本(1)¼。
ひ候 ¬善性本(1)¼。
なり ¬善性本(1)¼。
申すなり。 さればこそ、 ¬善性本(2)¼。
 ¬善性本(2)¼。
また無上覚をさとるとも、 ¬善性本(2)¼。
法身とまふす仏となるなり。 ¬善性本(2)¼。
 ¬善性本(2)¼。
 ¬善性本(2)¼。
し/く候 ¬善性本(2)¼。
 ¬善性本(4)¼。
 ¬善性本(4)¼。
 ¬善性本(4)¼。
いまの ¬善性本(5)¼、 ¬血脈文集(6)¼。
 ¬善性本(5)¼。
もの ¬善性本(5)¼。
 ¬善性本(5)¼。
あるべき/あかつき ¬善性本(5)¼、 ¬血脈文集(6)¼。
つねに ¬善性本(5)¼。
 ¬善性本(5)¼、 ¬血脈文集(6)¼。
¬善性本(6)¼。
のたまはく ¬善性本(6)¼。
 ¬善性本(6)¼。
もろもろの ¬善性本(6)¼。
 ¬善性本(6)¼。
必/決 ¬血脈文集(1)¼。
いふ ¬血脈文集(1)¼。
 ¬血脈文集(1)¼。
 ¬血脈文集(1)¼。
 ¬血脈文集(1)¼。
し。/く、 ¬血脈文集(1)¼。
¬血脈文集(1)¼。
こころうくあさましくおぼえ候ふ。 としごろ 「賢心本転写本」になし。 「室町中期書写本」、 「恵空写傳本」によって補われている。
 ¬血脈文集(3)¼。
をば/は ¬血脈文集(3)¼。
候ふ ¬血脈文集(3)¼。
 ¬血脈文集(3)¼。
 ¬血脈文集(3)¼。
¬血脈文集(6)¼。
愚禿親鸞。 ¬血脈文集(6)¼。
は、 ひとつこころ、 ひとつ位なり。 等正覚 ¬血脈文集(6)¼。
 ¬血脈文集(6)¼。
と/に ¬血脈文集(6)¼。
ひとしと ¬善性本(5)¼、 ¬血脈文集(6)¼。
実/宗 ¬血脈文集(6)¼。
り/る ¬血脈文集(6)¼。
(日付・署名・宛名) ¬血脈文集(6)¼。
¬血脈文集(6)¼ª室町末期書写本º。