0735◎親鸞聖人御消息
※「註釈版」 の本文に重ねて、 対校の形で ¬浄土真宗聖典全書¼ の 「真筆消息」・「古写消息」・¬末灯鈔¼・¬御消息集¼・¬善性本¼・¬血脈文集¼ の各本文が確認できるようにしてある。 それにあたり、 通常の脚注に加えて ~:「註釈版」 にある語句がない場合、 +:「註釈版」 にない語句がある場合、 %「註釈版」 と語句が変っている場合 で示した。 ただし、「表記の違い」 のみのものはすべて割愛し、 大きく異なる場合は該当本文を茶字で収録している。 また、 †は註釈版で 「対校本によっ」 たとされている箇所で、 底本のもとの内容を示しておいた。
0768 0777
◎▼(1) 「古写消息」(4)、 ¬末灯鈔¼(1)
^▽~有念無念~の事。 +
^▼+来+迎は諸行往生にあり、 自力の行者なるがゆゑに。 *臨終といふことは、 諸行往生のひとにいふべし、 いまだ真実の信心をえざるがゆゑなり。 また十悪・五逆の罪人のはじめて善知識にあうて、 すすめらるるときにいふこと+なり。
^真実信心の行人は、 摂取不捨のゆゑに正定聚の位に+住す。 このゆゑに臨終+まつことなし、 来迎+たのむことなし。 信心の定まるとき+往生%また定まるなり。 来迎の*儀%則をまたず。
^正念といふは、 本弘誓願の信楽定まるをいふなり。 この信心+うるゆゑに、 かならず無上涅槃にいたるなり。 この信心を一心といふ、 この一心を金剛心といふ、 この金剛心を大菩提心といふなり。 これすなはち他力のなかの他力なり。
^また正念といふにつきて二つあり。 一つ~には*定心の行人0778の正念、 二つには*散0736心の行人の正念あるべし。 この二つの正念は、 他力のなかの自力の正念なり。 定散の善は、 諸行往生のことばにをさまるなり。 この善は、 他力のなかの自力の善なり。 この自力の行人は、 来迎をまたずしては、 %辺地・胎生・懈慢界までも生るべからず。 このゆゑに第十九の誓願に、 「▲もろもろ0769の善をして浄土に回向して往生せんとねがふ人の臨終には、 われ現じて迎へん」 と誓ひたまへり。 臨終+まつ+ことと来迎往生+といふことは、 この定心・散心の行者のいふことなり。
^選択本願は*有念にあらず、 *無念にあらず。 有念~はすなはち*色イロ形カタチをおもふにつきていふことなり。 無念といふは、 形をこころにかけず、 色を+こころにおもはずして、 念もなきをいふなり。 これみな聖道のをしへなり。
^▲*聖道といふは、 すでに仏に成りたまへる人~の、 われらがこころをすすめんがために、 仏心宗・真言宗・法華宗・華厳宗・三論宗等の大乗至極の教なり。 仏心宗といふは、 この世にひろまる禅宗これなり。
^▲また法相宗・成実宗・倶舎宗等の権教、 小乗等の教なり。 これみな聖道門なり。 権教といふは、 すなはちすでに仏に成りたまへる仏・菩薩の、 かりにさまざまの形をあらはしてすすめたまふがゆゑ0737に権といふなり。
^浄土宗にまた有念あり、 無念あり。 有念0779は散善の義、 無念は定善の義なり。 浄土の無念は聖道の無念には似ず。 ~またこ†の聖道の無念のなかにまた有念あり。 よくよくとふべし。
^浄土宗のなかに真あり、 仮あり。 真といふは▲選択本願なり、 仮といふは定散二善なり。 選択本願は▲*浄土真宗なり、 定散二善は方便仮門なり。 浄土真宗は大乗のなか~の至極なり。 方0770便仮門のなかにまた大小・権実の教あり。
^*釈迦如来の御善知識は一百一十人なり。 ¬*華厳経¼ にみえたり。
^~南無阿弥陀仏
*建長三歳 辛亥 閏九月二十日
愚禿*親鸞 七十九歳 ▽
0810 0817
◎(2) ¬末灯鈔¼(20)、 ¬御消息集¼(1)
^†かたがたよりの御こころざしのものども、 数のままにたしかにたまはり+候ふ。 *明教房の*のぼられて候ふこと、 +ありがたきことに候ふ。 かたがたの御こころざし、 申しつくしがたく候ふ。
^*明法御房の往生のこと、 おどろきまうすべき0738にはあらねども、 かへすがへすうれしく候ふ。 *鹿島・*行方・*奥郡、 かやうの往生ねがはせたまふひとびとの、 みなの御よろこびにて候ふ。
^また*ひらつかの入道殿の御往生%のこときき候ふこそ、 かへすがへす申すにかぎりなくおぼえ候へ。 めでたさ申しつくすべくも候はず。 おのおの+みな往生は*一定とおぼしめすべし。
^さりながらも、 往生をねがはせたまふひとびとの御中にも、 御こころえぬことも候ひき、 いまもさ+こそ候ふらめとおぼえ候ふ。 京にもこころえずして、 やうやう0818にまどひあうて候ふめり。 *くにぐににもおほくきこえ候ふ。
^*法然聖人の御弟子のなかにも、 われは*ゆゆしき学生などとおもひ~あひたるひとびとも、 この世には、 みなやうやうに法%文をいひかへて、 身もまどひ、 ひとをもまどはして、 わづらひあうて候ふ%めり。
^聖教のをしへをもみずしらぬ、 おのおののやうにおはしますひとびと0811は、 往生にさはりなしとばかりいふをききて、 *あしざまに御こころえあること、 おほく候ひき。 いまもさこそ候ふらめとおぼえ候ふ+。
^浄土の教もしらぬ*信見房などが申すことによりて、 *ひがざまにいよいよなりあはせたまひ候ふらん%をきき候ふこそ、 あさましく候へ。
^0739まづおのおの~の、 +むかしは弥陀のちかひをもしらず、 阿弥陀仏をも申さずおはしまし候ひしが、 釈迦・弥陀の*御方便にもよほされて、 いま弥陀のちかひをもききはじめておはします身にて候ふなり。 もとは無明の酒に酔ひ+て、 貪欲・瞋恚・愚痴の三毒をのみ好みめしあうて候ひつるに、 仏の+ちかひをききはじめしより、 無明の酔ひも*やうやうすこしづつさめ、 三毒をもすこしづつ好まずして、 阿弥陀仏の薬をつねに好みめす身となりておはしましあうて候ふぞかし。
^しかるに、 なほ+酔ひもさ0819めやらぬに、 かさねて酔ひをすすめ、 毒も消えやらぬに、 なほ+毒をすすめられ候ふらんこそ、 あさましく+候へ。 煩悩具足の身なれば~とて、 こころに+まかせ~て、 身にもすまじきことをもゆるし、 口にもいふまじきことをもゆるし、 こころにもおもふまじきことをもゆるして、 *いかにもこころのままに~てあるべしと申しあうて候ふらんこそ、 かへすがへす*不便に0812おぼえ候へ。
^酔ひもさめぬさきに、 なほ酒をすすめ、 毒も消えやらぬ+に、 いよいよ毒をすすめんがごとし。 ▼薬あり毒を好めと候ふらんことは、 *あるべくも候はずと†ぞおぼえ候ふ。
^仏の%御名をもきき念仏%を申して、 ひさしくなりておはしまさんひとびとは、 %後世のあしきことをいとふしるし、 この身のあしきことを~ばいとひ0740すてんとおぼしめすしるしも候ふべしとこそおぼえ候へ。
^はじめて仏のちかひをききはじむるひとびとの、 わが身のわろく、 こころのわろきをおもひしりて、 この身のやうにては%なんぞ往生せんずるといふひとにこそ、 煩悩具~足したる身なれば、 わがこころの善悪をば沙汰せず、 迎へたまふぞとは申し候へ。
^かくききてのち、 仏を信ぜんとおもふこころふかくなりぬるには、 まことにこの身をもいとひ、 流転せんことをもかなしみて、 ふかくちかひをも0820信じ、 阿弥陀仏をも好みまうしなんどするひとは、 †もとこそ、 こころのままにてあしきことをもおもひ、 あしきことをもふるまひなんどせしかども、 いまはさやうのこころをすてんとおぼしめしあはせたまはばこそ、 世をいとふしるしにても候はめ。
^また往生の信心は、 釈迦・弥陀の御すすめによりておこるとこそみえ~て候へば、 さりともまことのこころおこらせたまひなんには、 いか%がむかしの御こころのままにては候ふべき。
^この御中のひとびとも0813、 少々はあしきさまなること%の*きこえ候ふめり。 師をそしり、 善知識をかろしめ、 同行をも*あなづりなんどしあはせたまふよしき%き候ふ~こそ、 あさましく候%へ。 すでに謗法のひとなり、 五逆のひとなり。 *なれ0741むつぶべからず。
^¬浄土論¼ (論註・上意) と申すふみには、 「▲かやうのひとは仏法信ずるこころのなきより、 このこころはおこるなり」 と候ふめり。 また至誠心のなかには、 「▲かやうに悪をこのまん+にはつつしんでとほざかれ、 ちかづく%べからず」 (散善義・意) とこそ%説かれて候へ。 善知識・同行にはしたしみちかづけとこそ説きおかれて候へ。
^悪をこのむひとにもちかづき+なんどすることは、 浄土にまゐりてのち、 衆生利益にかへりてこそ、 さやうの罪人にもした0821%がひちかづくことは候へ。 それも、 わがはからひにはあらず。 弥陀のちかひにより~て+御たすけに+てこそ、 おもふさまのふるまひも候はんずれ。 *当時は、 この身どものやうにては、 いかが候ふべか~るらんとおぼえ候ふ。 よくよく案ぜさせたまふべく候ふ。
^往生の金剛心のおこることは、 仏の御はからひ+よりおこりて候へば、 金剛心をとりて候はんひとは、 *よも師をそしり善知識をあなづりなんどすることは候はじと%こそおぼえ候へ。
^この文をもつて鹿島・行方・*南の荘、 いづかた+もこれにこころざしおはしまさんひとには、 おなじ御こころによみ0814きかせたまふべく候ふ。
^*あなかしこ、 あなかしこ。
0742*建長四年%二月二十四日 ▽
+親鸞
(808)
◎(3) ¬末灯鈔¼(19)後半1、 ¬御消息集¼(2)
^この*明教房~ののぼられて候ふこと、 まことにありがたきこととおぼえ候ふ。 *明法御房の御往生のことをまのあたりきき候ふも、 うれしく候ふ。 +ひとびとの御こころざしも、 ありがたくおぼえ候ふ。 かたがたこの0822ひと~びとののぼり、 不思議のことに候ふ。
^この文をたれたれにもおなじ+こころによみきかせたまふべく候ふ。 この文は*奥郡におはします同0809朋の御中に、 %みなおなじく御覧候ふべし。
^あなかしこ、 あなかしこ。
^*としごろ念仏して往生+ねがふしるしには、 もとあしかりしわがこころをもおもひかへして、 とも+同朋にもねんごろ%にこころのおはしましあはばこそ、 世をいとふしるしにても候はめとこそおぼえ候へ。 よくよく御こころえ候ふべし。▽
0806
◎(4) ¬末灯鈔¼(19)前半、 ¬御消息集¼(3)
^御文たびたびまゐらせ候ひき。 御覧ぜずや候ひけん。
^なにごとよりも*明法御房の往生の本意とげておはしまし候ふこそ、 常陸国うちの、 *これにこころざしおはしますひとびとの御ために、 *めでたきことにて候へ。
^往生はともかく0743も凡夫のはからひにてすべきことにても候はず。 *めでたき智者もはからふべきことにも候はず。 *大小の聖人だにも、 %ともかくもはからはc で、 ただ願力にまかせてこそおはしますことにて+候%へ。 ましておのおののやうにおはしますひとびとは、 ただこのちかひありときき、 南無阿弥陀仏にあひまゐらせ%0823たまふこそ、 ありがたく、 めでたく候ふ御果報にては候ふなれ。 +とかくはからはせたまふこと、 ゆめゆめ候ふべからず。
^さきにくだしまゐらせ候ひし ¬*唯信鈔¼・+¬*自力他力¼ な~んどのふみ+にて御覧候ふべし。 *それこそ、 この世にとりてはよきひとびとにて+おはします。 +すでに往生をもしておはしますひとびとにて候へば、 そのふみどもに書かれて候ふには、 なにごともなにごとも*すぐべくも候はず。
^法然聖人の御をしへを、 よくよく御こころえたるひとびとにておはしま%すに候ひき。 さればこそ、 往生もめでたくして0807おはしまし候へ。
^おほかたは、 としごろ念仏申しあ%ひたまふひとびとのなかにも、 ひとへに*わがおもふさまなることをのみ申しあはれて候ふひとびとも候ひき。 いまもさ%ぞ候ふら%んとおぼえ候ふ。 明法房な+どの往生しておはしますも、 もとは*不可思議のひがごとをおもひなんどしたるこころをもひるがへしな~んどしてこそ候ひし0744か。
^*われ往生すべければとて、 すまじきことをもし、 おもふまじきことをも~おもひ、 いふまじきことをもいひな+どすることはあるべくも候はず。 貪欲~の煩悩にくるはされて欲もおこり、 瞋恚の煩悩にくるはされてねたむべくもなき因果をやぶるこころもおこり、 愚痴0824の煩悩にまどはされておもふまじきことなどもおこるにてこそ候へ。
^めでたき仏の御ちかひのあればとて、 わざとすまじきことどもをもし、 おもふまじきことどもをもおもひな+どせ%んは、 よくよくこの世のいとはしからず、 身のわろきことを+おもひ+しらぬにて候へば、 念仏にこころざしもなく、 仏の御ちかひにもこころざしのおはしまさぬにて候へば、 念仏せさせたまふ+とも、 その御こころざしにては*順次の往生も*かたくや候ふべからん。
^よくよくこのよしをひとびとに、 きかせまゐらせ~させたまふべく候ふ。 かやうにも申すべくも候はねども、 なに0808となくこの辺のことを御こころにかけあはせたまふひとびとにておはしまし%あひて候へば、 かく+も申し候ふなり。
^この%世の念仏の義は、 やうやうにかはりあうて候ふめれば、 とかく申すに+およばず候へども、 故聖人 (法然) の御をしへをよくよくうけたまはりておはしますひとびとは、 *いまももとのやうに+かはらせたまふこと候はず。 *世かくれなき0745ことなれば、 きかせたまひあうて候ふらん。
^*浄土宗の義、 みなかはりておはしましあうて候ふひとびとも、 +聖人 (法然) の御弟子にて候へども、 やうやうに義をもいひかへな+どして、 身もまどひ、 ひとをもまどは~かしあうて候ふ0825めり。 あさましきことにて候ふなり。 京にもおほくまどひあうて候ふめり。 †まして、 ゐなかは、 さこそ候ふらめと*こころにくくも候はず。 なにごとも申しつくしがたく候ふ。 またまた申し候ふべし。▽
(809)
◎(5) ¬末灯鈔¼(19)後半2、 ¬御消息集¼(4)
^善知識をおろかにおもひ、 師をそしるものをば、 謗法のものと申すなり。 おやをそしるものをば、 五逆のものと申すなり。 同座+せざれと候ふなり。
^されば*北の郡に候ひし*善%証房は、 おやを*のり、 善信 (親鸞) をやうやうにそしり候ひしかば、 ちかづきむつまじくおもひ候はで、 ちかづけず候ひき。 *明法御房の往生のことをききながら、 +*あとをおろかに+せんひとびとは、 その同朋にあらず候ふべし。
^無明の酒に酔ひたる人にいよいよ酔ひをすすめ、 三毒をひさしく好みく~らふひとにいよいよ毒をゆるして好めと申しあうて候ふらん、 不便のことに候ふ。
^無明の酒に酔ひたる~ことをかなしみ、 三毒を好みくうていまだ毒も0746失せはてず、 無明の酔ひもいまださめやらぬ%におはしましあうて候ふぞかし。 よくよく御こころえ候ふべし。▽
+なに0826ごともまふしつくしがたくさふらふ。 またまたまふすべし。 あなかしこ、 あなかしこ。
親鸞▽
0743 (770) (779) 0871
◎(6) 「真筆消息」(1)、 「古写消息」(5)、 ¬末灯鈔¼(2)、 ¬血脈文集¼(1)
^%*笠間の念仏者の疑ひとは%れたる事。
^それ浄土~真宗のこころは、 往生の根機に他力あり、 自力あり。 このことすでに*天竺 (印度) の論家、 浄土の祖師の仰せられたる%ことなり。
^まづ自力と申すことは、 行者のおのおの~の縁にしたがひて、 *余の仏号を称トナウ念し、 余の善根を修行して、 わが身をたのみ、 わがはからひのこころをもつて▼身口意のみだれごころをつくろひ、 *0780めでたうしなして浄土へ往生せんとおもふを自力と申すなり。
^また他力と申すことは、 弥陀如来の御ちかひのなかに、 選択摂取したまへる第十八の念仏往生の本願を信楽するを他力と申すなり。 如来の御ちかひなれば、 「他力には義なきを義とす」 と、 聖人 (法然) の仰せごとにてありき。 義といふことは、 はからふことばなり。 行者のはからひは自力なれば、 義と0872いふなり。 他力は、 本願0771を信楽して往生%必定なるゆゑに、 *さらに0744義なしと+なり。
^0747しかれば、 わが身のわるければ、 *いかでか如来迎へたま%はんとおもふべからず。 凡夫はもとより煩ミヲワヅラハス 悩ココロヲワヅラハス具足したるゆゑに、 わるきものとおもふべし。 またわがこころ+よければ、 往生すべしとおもふべからず。 自力の御はからひにては真実の報土へ%生るべからざるなり。 「行者のおのおのの自力の%信にては、 懈慢辺地の往生、 胎生疑城の浄土までぞ往生せらるることにてあるべき」 と%ぞ、 うけたまはりたりし。
^第十八の本願成就のゆゑに阿弥陀如来とならせたまひて、 不可思議の利益きはまりましまさぬ御かたちを、 *天親菩薩は▲尽十方無礙光如来とあらはしたまへり。 このゆゑに、 よきあしき人をきらはず、 煩悩のこころをえらばず、 へだてずして、 往生はかならずするなりとしるべしとなり。
^しかれば、 恵心院の和尚 (源信) は、 ¬往生要集¼ (下意) に0781+、 本願~の念仏を信楽するありさまをあらはせるには、 「▲行住座臥を簡ばず、 時処諸縁をきらはず」 と仰せられたり。 「▲真実の信心をえたる人は摂取のひかりにをさめとられまゐらせたり」 (往生要集・中意) と、 たしかにあらはせり。
^しかれば、 「無明煩悩を具+して安ヤスシ養ヤシナウ浄土に往生すれば、 ~かならずすなはち無上仏果にいたる」 と、 釈迦如来説きたまへり。
^0748しかるに、 「▲五濁0873悪世のわれら、 釈迦一仏のみことを信受0772せんこと*ありがたかるべしとて、 十方恒沙の諸仏、 証0745人とならせたまふ」 (*散善義・意) と、 *善導和尚は釈したまへり。 「▲釈迦・弥陀・十方の諸仏、 みなおなじ御こころにて、 本願+念仏の衆生には、 影~の形に添へるがごとくしてはなれたまはず」 (散善義・意) とあかせり。
^しかれば、 この信心の人を釈迦如来は、 「▲~わが親しき友なり」 (大経・下意) とよろこびまします。
^この信心の人を▲真の仏弟子といへり。 この人を正念に住する人とす。 この人%は、〔阿弥陀仏〕摂取して捨てたまはざれば、 金剛心をえたる人と申すなり。 ▲この人を 上上人ウエガウエノヒトナリとも、 好人ヨキヒトナリとも、 妙好人タヱニヨキヒトナリとも、 最勝人コトニスグレタルヒトナリとも、 希有人マレニアリガタキヒトナリとも申すなり。 この人は正定聚の位に定ま~れるなりとしるべし。 しかれば、 *弥勒仏とひとしき人とのたまへり。 %これは真実信心をえたるゆゑに、 かならず真実の報土に往生するなりとしるべし。
^この信心を0782うることは、 釈迦・弥陀・十方諸仏の御方便+よりたまはりたるとしるべし。 しかれば、 「▽諸仏の御をしへをそしることな%し。 余の善根を行ずる人をそしることなし。 この念仏する人をにくみそしる人をも、 にくみそしることあるべからず。 あはれみをなし、 *かなしむこころをもつべし」 とこそ、 聖人0749 (法然) は仰せごとありしか。
^あなかしこ、 あなかしこ。
0874^仏恩のふかきことは、 懈慢辺地に往生し、 疑城胎宮に往生するだにも、 弥陀の御ちかひの0773なかに、 第十九・第二十の願の御あはれみにてこそ、 不0746可思議のたのしみにあふことにて候へ。 仏恩のふかきこと、 そのきはもなし。 いかにいはんや、 真実の報土へ往生して大涅槃のさとりをひらかんこと、 仏恩よくよく御案ども候ふべし。 これさらに*性信坊・親鸞がはからひまうすにはあらず候ふ。 ゆめゆめ。
*建長七歳乙卯十月三日
愚禿親鸞八十三歳これを書く。▽
%*建長八歳丙辰四月十三日
釈親鸞 八十四歳 剋作 ▽
+此御書者、 自性信聖之遺跡、 以聖人御自筆之本、 写与被門弟中。 云々 ▽
+なをなをよくよく念仏まうさせたまはん人々は、 本願の念仏を信ぜさせたまふべし。▽
(747) (793) (845)
◎(7) [信行一念章] 「真筆消息」(3)、 ¬末灯鈔¼(11)、 ¬御消息集¼(14)
^四月七日の御文、 五月二十六日たしかに~たしかにみ候ひぬ。
^さては、 仰せられたること、 信の一念・行の一念ふたつなれども、 信をはなれたる行もなし、 行0846の一念をはなれたる信の一念もなし。
^そのゆゑは、 行と申すは、 本願の名号をひとこゑとなへて往生すと申すことをききて、 ひとこゑをもとなへ、 もしは十念をもせんは行なり。 この御ちかひをききて、 疑ふこころのすこしもなき0750を信の一念と申%せば、 信と行とふたつときけども、 行をひとこゑするとききて疑0794はねば、 行をはなれたる信はなし*とききて候ふ。 また、 信+はなれたる行なしとおぼしめすべし。
^これみな弥陀の御ちかひと申すことをこころうべし。 行と信とは御ちかひを申すなり。
^あなかしこ、 あなかしこ。
^いのち候はば、 かならず~かならずのぼらせたまふべし。
五月二十%八日
%(花押)▽
~*覚信御房 御返事
0748^▼*専信坊、 京ちかくなられて候ふこそ、 たのもしうおぼえ候へ。▽
~また、 御こころざしの銭*三百文、 たしかにたしかにかしこまりてたまはりて候ふ。▽
*「*建長八歳丙辰五月二十八日親鸞聖人御返事」
(874)
◎(8) ¬血脈文集¼(2)
^この御文どものやう、 くはしくみ候ふ。
^また、 さては*慈信が法文のやうゆゑに、 常陸・下野の人々、 念仏申させたまひ候ふことの、 としごろうけたまはりたるやうには、 みなかはりあうておはしますときこえ候ふ。 かへすがへす0875†こころ0751うくあさましくおぼえ候ふ。 としごろ往生を一定と仰せられ候ふ人々、 慈信とおなじやうに、 そらごとをみな候ひけるを、 としごろふかくたのみまゐらせて候ひけること、 かへすがへすあさましう候ふ。
^そのゆゑは、 往生の信心と申すことは、 一念も疑ふことの候はぬをこそ、 往生一定とはおもひて候へ。
^*光明寺の和尚 (善導) の信のやうををしへさせたまひ候ふには、 「▲まことの信を定められてのちには、 弥陀のごとくの仏、 釈迦のごとくの仏、 そらにみちみちて、 釈迦のをしへ、 弥陀の本願はひがごとなりと仰せらるとも、 ▲一念も疑あるべからず」 とこそうけたまはりて候へば、 そのやうをこそ、 としごろ申して候ふに、 慈信ほどのものの申すことに、 常陸・下野の念仏者の、 みな御こころどもの*うかれて、 はては、 さしもたしかなる証文を、 ちからを尽して数あまた書きてまゐらせて候へば、 それをみなすてあうておはしまし候ふときこえ候へば、 ともかくも申すにおよばず候ふ。
^まづ慈信が申し候ふ法文のやう、 *名目をもきかず。 いはんやならひたることも候はねば、 慈信にひそかにをしふべきやうも候はず。 また夜も昼も慈信一人に、 人にはかくして法文をしへたること候はず。 もしこのこと、 慈信に申し0752ながら、 そらごと0876をも申しかくして、 人にもしらせずしてをしへたること候はば、 三宝を本として、 三界の諸天善神・四海の竜神八部・閻魔王界の神祇冥道の罰を、 親鸞が身にことごとくかぶり候ふべし。
^自今以後は、 慈信におきては、 *子の義おもひきりて候ふなり。 世間のことにも、 *不可思議のそらごと、 申すかぎりなきことどもを、 申しひろめて候へば、 出世のみにあらず、 世間のことにおきても、 おそろしき申しごとども数かぎりなく候ふなり。
^なかにも、 この法文のやうきき候ふに、 こころもおよばぬ申しごとにて候ふ。 *つやつや親鸞が身には、 ききもせず、 ならはぬことにて候ふ。 かへすがへすあさましう、 こころうく候ふ。
^弥陀の本願をすてまゐらせて候ふことに、 人々のつきて、 親鸞をもそらごと申したるものになして候ふ。 こころうく、 *うたてきことに候ふ。
^おほかたは、 ¬*唯信抄¼・¬*自力他力の文¼・¬*後世物語の聞書¼・¬*一念多念の証文¼・¬*唯信鈔の文意¼・¬*一念多念の文意¼、 これらを御覧じながら、 慈信が法文によりて、 おほくの念仏者達の、 弥陀の本願をすてまゐらせあうて候ふらんこと、 申すばかりなく候へば、 かやうの御ふみども、 これよりのちには仰せらる0753べからず候ふ。
^また ¬*真0877宗の聞書¼、 *性信房の書かせたまひたるは、 すこしもこれに申して候ふやうにたがはず候へば、 うれしう候ふ。 ¬真宗の聞書¼ 一帖はこれにとどめおきて候ふ。
^また*哀愍房とかやの、 いまだみもせず候ふ。 また文一度もまゐらせたることもなし。 くによりも*文たびたることもなし。
^親鸞が文を得たると申し候ふなるは、 おそろしきことなり。 この ¬*唯信鈔¼ 書きたるやう、 あさましう候へば、 火にやき候ふべし。 かへすがへすこころうく候ふ。
^この文を人々にもみせさせたまふべし。
^あなかしこ、 あなかしこ。
*五月二十九日
親鸞
性信房御返事
^なほなほよくよく念仏者達の信心は一定と候ひしことは、 みな御そらごとどもにて候ひけり。 これほどに第十八の願をすてまゐらせあうて候ふ人々の御ことばをたのみまゐらせて、 としごろ候ひけるこそ、 あさましう候ふ。 この文をかくさるべきことならねば、 よくよく人々にみせまうしたまふべし。▽
0754 (765)
◎(9) [慈信房義絶状] 「古写消息」(3)
^仰せられたること、 くはしくききて候ふ。 なによりは、 *哀愍房とかやと申すなる人の、 *京より文を得たるとかやと申され候ふなる、 かへすがへす不思議に候ふ。 いまだかたちをもみず、 文一度もたまはり候はず、 これよりも申すこともなきに、 京より文を得たると申すなる、 あさましきことなり。
^また*慈信房の法文のやう、 名目をだにもきかず、 しらぬことを、 慈信一人に、 夜親鸞がをしへたるなりと、 人に慈信房申されて候ふとて、 *これにも常陸・下野の人々は、 みな親鸞がそらごとを申したるよしを申しあはれて候へば、 いまは父子の義はあるべからず候ふ。
^また*母の尼にも不0766思議のそらごとをいひつけられたること、 申すかぎりなきこと、 あさましう候ふ。 *みぶの女房の、 これへきたりて申すこと、 慈信房が*たうたる文とて、 もちてきたれる文、 これにおきて候ふめり。 慈信房が文とてこれにあり。 その文、 *つやつやいろはぬことゆゑに、 *ままははに*いひまどはされたると書かれたること、 ことにあさましきことなり。 世にありけるを、 ままははの尼のいひまどはせりといふこと、 あさましきそらごとなり。
^またこの世にいかにしてありけりともしらぬことを、 みぶの女房のもとへも文のあること0755、 こころもおよばぬほどのそらごと、 こころうきことなりとなげき候ふ。
^まことにかかるそらごとどもをいひて、 *六波羅の辺、 *鎌倉なんどに*披露せられたること、 こころうきことなり。 これらほどのそらごとはこの世のことなれば、 いかでもあるべし。 それだにも、 そらごとをいふこと、 うたてきなり。 いかにいはんや、 往生極楽の大事をいひまどはして、 常陸・下野の念仏者をまどはし、 親にそらごとをいひつけたること、 こころうきことなり。
^第十八の本願をば、 しぼめるはなにたとへて、 人ごとにみなすてまゐらせたりときこゆること、 まことに謗法のとが、 また五逆の罪を好みて、 人を損じまどはさるること0767、 かなしきことなり。
^ことに*破僧の罪と申す罪は、 五逆のその一つなり。 親鸞にそらごとを申しつけたるは、 父を殺すなり。 五逆のその一つなり。 このことどもつたへきくこと、 あさましさ申すかぎりなければ、 いまは親といふことあるべからず、 子とおもふことおもひきりたり。 三宝・神明に申しきりをはりぬ。 かなしきことなり。 わが法門に似ずとて、 常陸の念仏者みなまどはさんと好まるるときくこそ、 こころうく候へ。 親鸞がをしへにて、 常陸の念仏申す人々を損ぜよと慈信房0756にをしへたると鎌倉まできこえんこと、 あさましあさまし。
五月二十九日
在判
*同六月二十七日到来
建長八年六月二十七日これを註す。
^慈信房御返事
*嘉元三年七月二十七日書写しをはんぬ。▽
(789)
◎(10) ¬末灯鈔¼(8)
^また▲五説といふは、 よろづの経を説かれ候ふに、 五種にはすぎず候ふなり。 一には仏説、 二には聖弟子の説、 三には天仙の説、 四には鬼神の説、 五には変化の説といへり。 この五つのなかに、 仏説をもちゐてかみの四種をたのむべからず候ふ。 この三部経は釈迦如来の自説にてましますとしるべしとなり。
^四土といふは、 一には0790法身の土、 二には報身の土、 三には応身の土、 四には化土なり。 いまこの安楽浄土は報土なり。
^三身といふは、 一には法身、 二には報身、 三には応身なり。 いまこの弥陀如来は報身如来なり。
^三宝といふは、 一には仏宝、 二には法宝、 三には僧宝なり。 いまこの浄土宗は仏宝なり。
^四乗といふは0757、 一には仏乗、 二には菩薩乗、 三には縁覚乗、 四には声聞乗なり。 いまこの浄土宗は*菩薩乗なり。
^二教といふは、 一には頓教、 二には漸教なり。 いまこの教は頓教なり。
^二蔵といふは、 一には菩薩蔵、 二には声聞蔵なり。 いまこの教は菩薩蔵なり。
^二道といふは、 一には難行道、 二には易行道なり。 いまこの浄土宗は易行道なり。
^二行といふは、 一には正行、 二には雑行なり。 いまこの浄土宗は正行を本とするなり。
^二超といふは、 一には竪超、 二には横超なり。 いまこの浄土宗は横超なり。 竪超は聖道自力なり。
^二縁といふは、 一には無縁、 二には有縁なり。 いまこの浄土は有縁の教なり。
^二住といふは、 一には%止住、 二には不住なり。 いまこの浄土~の教は、 *法滅百歳まで住したまひて、 有情を利益したまふとなり。 不住は聖道諸善なり。 諸善はみな竜宮へかくれいりたまひぬるなり。
^思・不思といふは、 思+議の法は聖道*八万四千の諸善なり。 不思といふは浄土の教は不可思0791議の教法なり。
^これらはかやうにしるしまうしたり。 よくしれらんひとに尋ねまうしたまふべし。 またくはしくはこの文にて申すべくも候はず。 目もみえず候ふ。 なにごともみなわすれて候ふうへに、 ひと+にあきらかに申すべき身にもあらず候ふ。 0758よくよく*浄土の学生にとひまうしたまふべし。
^あなかしこ、 あなかしこ。
*閏三月%三日
親鸞 ▽
0783 (864) (882)
◎(11) [金剛信心事] ¬末灯鈔¼(3)、 ¬善性本¼(5)、 ¬血脈文集¼(6)
+金剛信心事。
^+信心をえたるひとは、 かならず正定聚の位に住するがゆゑに*等正覚の位と申すなり。 +¬*大無量寿経¼ に~は、 摂取不捨の利益に定まる~ものを▲正定聚となづけ、 ¬*無量寿如来会¼ には▲等正覚と説きたまへり。 その名こそかはりたれども、 正定聚・等正覚~は、 ひとつこころ、 ひとつ位なり。 等正覚と申す位は、 補処の弥勒~とおなじ位なり。 弥勒とおなじく、 このたび無上覚にいたるべきゆゑに、 *弥勒におなじと説きたまへり。
^さて ¬大経¼ (下) には、 「▲次如0883弥勒」 とは申すなり。 弥勒はすでに仏にちかくましませば、 弥勒仏と諸宗のならひは申すなり。 しかれば、 弥勒におなじ位なれば、 正定聚の人は如来%とひとしとも申すなり。 浄土の真実信心の人は、 この身こそあさましき不浄造悪の身なれども、 心はすでに如来とひとしけれ~ば、 如来と~ひとしと申すこともあるべしとしらせたまへ。
^弥勒~はすでに無上覚にその0865心定まりて%あるべきにならせたまふによりて、 *三会のあかつきと申0759すなり。 浄土真%実のひとも、 このこころをこころうべきなり。
^光明寺の和尚 (善導) の ¬*般舟讃¼ (意) には、 「▲信心のひとは、 %その心すでに~つねに浄土に居す」 と釈したまへり。 「居す」 といふは、 浄0784土に、 信心のひとのこころつねにゐた%りといふこころなり。 これは弥勒とおなじ+といふことを申すなり。 これは等正覚を弥勒とおなじと申すによりて、 信心のひとは如来とひとしと申すこころなり。
~*正嘉元年丁巳十月十日
親鸞
*性信御房
+これは親鸞聖人御信心のむねをあそばしたり。 ひざうのことなり。 ひとにひやうかいにしらしむべからず。 ゆめゆめ。
◎(12) ¬末灯鈔¼(4)、 ¬善性本¼(6)
+真仏御坊 親鸞
^これは ¬経¼ の文なり。 ¬華厳経¼ (*入法界品・意) に~のたまはく、 「▲信心歓喜者与諸如来等」 といふは、 「信心+よろこぶひとはもろもろの如来とひとし」 といふなり。 「~もろもろの如来とひとし」 といふは、 信心をえてことによろこぶひと%は、 釈尊のみことには、 「▲見敬得大慶則我善親友」 (大経・下) と説きたまへり。
^また弥陀の第十七の願には、 「▲十方世界+ 無量+諸仏0866 不悉咨嗟 称我名者 不取正覚」 (大経・上) と誓ひたまへり。 願成就の文 (大経・下意) には、 「▲よ0760ろづの仏にほめられ、 よろこびたまふ」 とみえたり。
^すこしも疑ふべきにあらず。 これは 「如来とひとし」 といふ文どもをあらはししるすなり。
0785*正嘉元年丁巳十月十日
親鸞
*真仏御房 ▽
(748) 0797 0853
◎(13) [慶信上書聖人加筆御返事] 「真筆消息」(4)、 ¬末灯鈔¼(14)、 ¬善性本¼(1)
^*畏まりて申し+候ふ。
^¬大無量寿経¼ (下) に 「▲信心歓喜ˆ嘉ˇ」 と候ふ。 ¬~華厳経¼ を引きて ¬*浄土和讃¼ (94) にも、 「▲信心よろこぶそのひとを 如来とひとしとときたまふ ▽大信心は仏性なり 仏性すなはち如来なり」 と仰せられて候ふに、 専修の人のなかに、 ある人こころえちがへて候ふやらん、 「信心よろこぶ人を如来とひとしと同行達ののたまふは自力なり。 *真言にかたよりたり」 と申し候ふなる†は、 *人のうへを知るべきに候はねども申し候ふ。
^また、 「▲真実信心うるひとは すなはち定聚のかずにˆのˇいる 不退のくらゐにいりぬれば かならず滅度をさとらしむ」 (浄土和讃・59) と候ふ~。 「滅度を0761さとらしむ」 と候ふは、 この度この身の終り候はんとき、 真実信心の行者の心、 報土にいたり候ひなば、 寿命無量0798を*体として、 光明無量の*徳用はなれたまはざれば、 如来の*心光に一味なり。
^このゆゑ+、 「▲大信心は仏性なり、 仏性~はすなはち如0854来なり」 と仰せられて候ふやらん。 これは十一・二・三の御0749誓+とこころえられ候ふ。 罪悪のわれらがためにおこしたまへる大悲の御誓の目出たくあはれにましますうれしさ、 こころもおよば~れず、 ことばもたえて申しつくしがたきこと、 かぎりなく候ふ。
^無始曠劫よりこのかた、 過去遠々に、 恒沙の諸仏の出世の所にて、 大 ˆ自力のˇ菩提心おこすといへども、 自力ˆさとりˇかなはず、 二尊の御方便にもよほされまゐらせて、 雑行雑修自力疑心のおもひなし。
^無礙光如来の摂取不捨の御あはれみのゆゑに、 疑心なくよろこびまゐらせて、 ▽一念%までの ˆするにˇ 往生定%まりて、 *誓願不思議とこころえ候ひな*んには、 聞き見候ふˆるˇ にあかぬ浄土の聖ˆ御ˇ 教も、 知識にあひまゐらせんとおもはんことも、 摂取不捨も、 信も、 念仏も、 人のためとおぼえられ+候ふ。
^いま師主の御教のゆゑ ˆによりてˇ 、 心~をぬきて御こころむきをうかがひ候ふによりて0762、 願意をさとり、 *直道をもとめえて、 まさしき真実報土~にいたり候はんこと、 この度、 一念聞名にいたるˆにとげ候ひぬるˇまで、 うれしさ御恩のいたり+、 そのうへ ¬*弥陀経義集¼ におろおろあきらかにお%ぼえられ候ふ。
^しか%るに世0799間の*そうそうにまぎれて、 一時もし~くは二時、 三時おこたるといへども、 昼夜にわすれず、 御あはれみをよろこぶ業力ばかりにて、 行住座臥に時所の不浄をもきらはず、 一向に金剛の信心ば0750かり0855にて、 仏恩のふかさ、 師主の恩徳ˆ御とくˇのうれしさ、 報謝のためにただ御名をとなふるばかりにて、 *日の所作と%せず。 このやう*ひがざまに%か候ふらん。 一期の大事、 ただこれにすぎたるはなし。 しかるべくは、 よくよくこまかに仰せを蒙り候はんとて、 わづかにおもふばかりを記して申し~あげ候ふ。
^さては京にひさしく候ひしに、 そうそうにのみ候ひて、 こころしづかにおぼえず候ひしことのなげかれ候ひて、 わざといかにしてもまかりのぼりて、 こころしづかに、 せめては五日、 御所に候はばやとねがひ候ふなり。 噫ˆあゝˇ、 かうまで申し候ふも御恩のちからなり。
進上 聖人 (親鸞) の御所へ *蓮位御坊申させたまへ
0763~十月十日
*慶信上 (花押)
^*追つて申しあげ候ふ。
念仏申し候ふ人々のなかに、 南無阿弥陀仏ととなへ候ふひまには、 無礙光如来ととなへまゐらせ候ふ人も候ふ。 これをききて、 ある人の申0800し候ふなる、 「南無阿弥陀仏ととなへてのうへに、 帰命尽十方無礙光如来ととなへまゐらせ候ふことは、 おそれあることにてこそあれ、 *いまめがはしく」 と申し候ふなる、 このやういかが候ふべき0751。▽
(801) 0856
・¬末灯鈔¼(15)後半、 ¬善性本¼(1)続き
^+御返事
*南無阿弥陀仏をとなへて~のうへに、 無礙光%仏と申%さんはあしきことなりと候ふなるこそ、 きはまれる~御ひがごとときこえ候へ。 帰命は南無なり。 無礙光仏は光明なり、 智慧なり。 この智慧はすなはち阿弥陀仏†なり。 阿弥陀仏の御かたちをしらせたま+はねば、 その御かたちをたしかにたしかにしらせまゐらせんとて、 世親菩薩 (天親) 御ちからを尽してあらはしたまへるなり。 このほかのことは、 少々文字をなほしてまゐらせ候ふ~なり。
+親鸞 ▽
+慶信御坊 御返事 ▽
0764 (859)
・¬善性本¼(3)
^*この御文のやう、 くはしく申しあげて候ふ。 すべてこの御文のやう、 たがはず候ふと仰せ候ふなり。 ただし、 「△一念するに往生定まりて誓願不思議とこころえ候ふ」 と仰せ候ふをぞ、 「よきやうには候へども、 一念にとどまるところあしく候ふ」 とて、 御文のそばに御自筆をもつて、 あしく候ふよしを入れさせおはしまして候ふ。 蓮位に 「かく入れよ」 と仰せをかぶりて候へども、 御自筆はつよき証拠におぼしめされ候ひぬとおぼえ候ふあひだ、 をりふし*御咳病にて御わづらひにわたらせたまひ候へども、 申して候ふなり。
^また*のぼりて候ひし0752人々、 くにに論じまうすとて、 あるいは弥勒とひとしと申し候ふ人々候ふよしを申し候ひしかば、 しるし仰せられて候ふ文の候ふ。 しるしてまゐらせ候ふなり。 御覧あるべく候ふ。
^また弥勒とひとしと候ふは、 弥勒は等覚の分なり。 これは因位の分なり。 これは十四・十五の月の円満し0860たまふが、 すでに八日・九日の月のいまだ円満したまはぬほどを申し候ふなり。 これは自力修行のやうなり。 われらは信心決定の凡夫、 位〔は〕正定聚の位なり。 これは因位なり、 これ等覚の分なり。 かれ0765は自力なり、 これは他力なり。 自他のかはりこそ候へども、 因位の位はひとしといふなり。 また弥勒の妙覚のさとりはおそく、 われらが滅度にいたることは疾く候はんずるなり。 かれは*五十六億七千万歳のあかつきを期し、 これは*ちくまくをへだつるほどなり。 かれは漸頓のなかの頓、 これは頓のなかの頓なり。
^滅度といふは妙覚なり。 曇鸞の ¬註¼ (論註・下) にいはく、 「▲樹ウヘキあり、 好堅樹といふ。 この木、 地の底に百年わだかまりゐて、 生ふるとき一日に百丈生ひ候ふ」 (意) なるぞ。 この木、 地の底に百年候ふは、 われらが娑婆世界に候ひて、 正定聚の位に住する分なり。 一日に百丈生ひ候ふなるは、 滅度にいたる分なり。 これにたとへて候ふなり。 これは他力のやうなり。 松の生長するは、 としごとに寸をすぎず。 これはおそし、 自力修行のやうなり。
^また如来とひとしといふは、 煩悩成就の凡夫、 仏の心光に照らされまゐらせて信0753心歓喜す。 信心歓喜するゆゑに正定聚の数に住す。 信心といふは智なり。 この智は、 他力の光明に摂取せられまゐらせぬるゆゑにうるところの智なり。 仏の光明0861も智なり。 かるがゆゑに、 おなじといふなり0766。 おなじといふは、 信心をひとしといふなり。 歓喜地といふは、 信心を歓喜するなり。 わが信心を歓喜するゆゑにおなじといふなり。
^くはしく御自筆にしるされて候ふを、 書き写してまゐらせ候ふ。
^また南無阿弥陀仏と申し、 また無礙光如来ととなへ候ふ御不審も、 くはしく自筆に御消息のそばにあそばして候ふなり。 かるがゆゑに、 それよりの御文をまゐらせ候ふ。 あるいは阿弥陀といひ、 あるいは無礙光と申し、 御名異なりといへども、 心は一つなり。 阿弥陀といふは*梵語なり。 これには無量寿ともいふ。 無礙光とも申し候ふ。 梵漢異なりといへども、 心おなじく候ふなり。
^そもそも、 ▼*覚信坊のこと、 ことにあはれにおぼえ、 またたふとくもおぼえ候ふ。 そのゆゑは、 *信心たがはずしてをはられて候ふ。 また、 たびたび信心存知のやう、 いかやうにかとたびたび申し候ひしかば、 当時まではたがふべくも候はず。 いよいよ信心のやうはつよく存ずるよし候ひき。
^*のぼり候ひしに、 くにをたちて、 *ひといちと申ししとき、 病みいだして候ひしかども、 同行たちは帰れなんど申し候ひしかども、 「死するほどのことなら0767ば、 帰るとも死し、 とどまるとも死し候はんず。 また病はやみ候はば、 帰るともやみ、 0754とどまるともやみ候はんず。 おなじくは、 *みもとにて0862こそをはり候はば、 をはり候はめと存じてまゐりて候ふなり」 と、 御ものがたり候ひしなり。
^この御信心まことにめでたくおぼえ候ふ。 善導和尚の釈 (散善義) の二河の譬喩におもひあはせられて、 *よにめでたく存じ、 うらやましく候ふなり。 をはりのとき、 南無阿弥陀仏、 南無無礙光如来、 南無不可思議光如来ととなへられて、 手をくみてしづかにをはられて候ひしなり。
^また*おくれさきだつためしは、 あはれになげかしくおぼしめされ候ふとも、 さきだちて滅度にいたり候ひぬれば、 かならず最初*引接のちかひをおこして、 結縁・眷属・朋友をみちびくことにて候ふなれば、 しかるべくおなじ法文の門に入りて候へば、 蓮位もたのもしくおぼえ候ふ。 また、 親となり、 子となるも、 先世のちぎりと申し候へば、 たのもしくおぼしめさるべく候ふなり。 このあはれさたふとさ、 申しつくしがたく候へば、 とどめ候ひぬ。 いかにしてか、 みづからこのことを申し候ふべきや。 くはしくはなほなほ申し候ふべく候ふ。
^この文のやうを、 *御まへにてあしくもや候0768ふとて、 よみあげて候へば、 「これにすぐべくも候はず、 めでたく候ふ」 と仰せをかぶりて候ふなり。 ことに覚信坊のところに、 御涙をながさせたまひて候ふなり。 よにあはれにおもはせたまひて候ふなり。
*十月二十九日
蓮位
0755慶信0863御坊へ ▽
(773) (785)
◎(14) [獲得名号自然法爾章] 「古写消息」(6)、 ¬末灯鈔¼(5)
^~自然法爾の事。
+「獲」◗字は、 因位のときうるを獲といふ。
「得」 字は、 果位のときにいたりてうることを得といふなり。
「名」 字は、 因位のときのなを名といふ。
「号」 字は、 果位のときのなを号といふ。
^▲「自然」 といふは、 「自」 はおのづからといふ、 行者の*はからひにあらず。+ 「然」 といふは、 しからしむといふことば~なり。 しからしむといふは、 行者のはからひにあらず、 如来のちかひにてあるがゆゑに~法爾といふ。
^「法爾」 といふは、 この如来の御ちかひ0774なるがゆゑに、 しからしむるを法爾といふ~なり。 法爾は、 この御ちかひなりけるゆゑに、 %およそ行者のはからひのなきをもつて、 この法の徳のゆゑにしからしむといふなり。 すべて、 ひとの*はじめてはからはざるなり。 このゆゑに+義なきを義とすとしるべしとなり。
^「自然」 といふは、 もとよりしからしむ~るといふことばなり。
^0769弥陀仏の御ちかひの、 もとより行者のはからひにあらずして、 南無阿弥陀~仏とたのませたまひて、 迎へんとはからはせたまひたるによりて、 行者のよからんともあしからんともおもはぬを、 自然とは申すぞ*とききて候ふ。
^ちかひのやうは、 「*無上仏にならしめん」 と誓ひたまへるなり。 無上0786仏と申すは、 かたちもなくまします。 かたち%もましまさぬゆゑに、 自然とは申すなり。 かたちましますとしめすときには、 無上涅槃とは申さず。 かたちもましまさぬやうをしらせんとて、 はじめ%て弥陀仏と~申すとぞ、 ききならひて候ふ。 弥陀仏は自然のやうをしらせん*料なり。
^この道理をこころえつるのちには、 この自然のことはつねに*沙汰すべきに~はあらざるなり。 つねに自然を沙汰せば、 義なきを義とすといふことは、 なほ義のあるになるべし。 これは仏智の不思議にてあるな%るべし。
正嘉二年十二月十四日
0775愚禿親鸞八十六歳 ▽
%*正嘉二歳戊午十二月日、 善法坊僧都御坊、 三条とみのこうぢの御坊にて、 聖人にあいまいらせてのきゝがき、 そのとき顕智これをかくなり。
(755)
◎(15) 「真筆消息」(5)
^閏十月一日の御文、 たしかにみ候ふ。
^*かくねむばうの御こと、 *かたがたあは0770れに存じ候ふ。 親鸞はさきだちまゐらせ候はんずらんと、 まちまゐらせてこそ候ひつるに、 さきだたせたまひ候ふこと、 申すばかりなく候ふ。 △かくしんばう、 *ふるとしごろは、 かならずかならずさきだちてまたせたまひ候ふらん。 かならずかならずまゐりあふべく候へば、 申すにおよばず候ふ。 *かくねんばうの仰せられて候ふやう、 すこしも愚老にかはらずおはしまし候へば、 かならずかならず*一つところへまゐりあふべく候ふ。
^明年の十月のころまでも生きて候はば、 この世の*面謁疑なく候ふべし。 入道殿の御こころも、 すこしもかはらせたまはず候へば、 さきだちまゐらせても、 まちまゐらせ候ふべし。
^人々の御こころざし、 たしかにたしかにたまはりて候ふ。 なにごともなにごとも、 いのち候ふらんほどは申すべく候ふ。 また*仰せをかぶるべく候ふ。 この御文みまゐらせ候ふこそ、 ことにあはれに候へ。 *なかなか申し候ふも*おろかなるやうに候ふ。 またまた、 追つて申し候ふべく候ふ。
^あなかしこ、 あなかしこ。
0756*閏十月二十九日
親鸞 (花押)
*高田の入道殿御返事▽
0771 (786)
◎(16) ¬末灯鈔¼(6)
^なによりも、 *去年・今年、 老少男女おほくのひとびとの、 死にあひて候ふらんことこそ、 あはれに候へ。 ただし生死無常のことわり、 くはしく如来の説きおかせおはしまして候ふうへは、 おどろきおぼしめすべからず候ふ。
^まづ善信 (親鸞) が身には、 臨終の善悪をば申さず、 信心決定のひとは、 疑なければ正定聚に住することにて候ふなり。 さればこそ愚痴無智の人も、 をはりもめで0787たく候へ。
^如来の御はからひにて往生するよし、 ひとびと~に申され候ひける、 すこしもたがはず候ふなり。 としごろ、 おのおのに申し候ひしこと、 たがはずこそ候へ。 *かまへて*学生沙汰せさせたまひ候はで、 往生をとげさせたまひ候ふべし。
^故法然聖人は、 「浄土宗の人は愚者になりて往生す」 と候ひしことを、 たしかにうけたまはり候ひしうへに、 ものもおぼえぬあさましきひとびとのまゐりたるを御覧じては、 「往生必定すべし」 とて、 笑ませたまひしをみまゐらせ候ひき。 ▼文沙汰して、 *さかさかしきひとのまゐりたるをば、 「往生はいかがあらんずらん」 と、 たしかにうけたまはりき。 いまにいたるまで、 おもひあはせられ候ふなり。
^ひとびとに*すかされさせたまはで、 御信心たぢろかせたまは0772ずして、 おのおの御往生候ふべきなり。 ただし、 ひとにすかされ~させたまひ候はずとも、 信心の定まらぬ人は正定聚に住したまはずして、 *うかれたまひたる人なり。
^*乗信房にかやうに申し候ふやうを、 ひとびとにも申され候ふべし。
^あなかしこ、 あなかしこ。
*文応元年十一月十三日
*善信八十八歳
乗信御房
+この御消息の正本は、 板東下野国おほうちの荘高田にこれあるなりと。 云々 ▽
(841)
◎(17) ¬御消息集¼(12)
^さては*念仏のあひだのことによりて、 *ところせきやうにうけたまはり候ふ。 かへすがへすこころぐるしく候ふ。 詮ずるところ、 そのところの縁ぞ尽きさせたまひ候ふらん。 念仏を*さへらるなんど申さんことに、 ともかくもなげきおぼしめすべからず候ふ。 *念仏とどめんひとこそ、 いかにもなり候はめ。 申したまふひとは、 なにかくるしく候ふべき。 *余のひとびとを縁として、 念仏をひろめんと、 はからひあはせたまふこと、 ゆめゆめあるべからず候0842ふ。 そのところに念仏のひろまり候はんことも、 *仏天の御はからひにて候ふべし。
^0773*慈信坊がやうやうに申し候ふなるによりて、 ひとびとも御こころどものやうやうにならせたまひ候ふよし、 うけたまはり候ふ。 かへすがへす不便のことに候ふ。 ともかくも仏天の御はからひにまかせまゐらせさせたまふべし。 そのところの縁尽きておはしまし候はば、 いづれのところにてもうつらせたまひ候うておはしますやうに御はからひ候ふべし。 慈信坊が申し候ふことをたのみおぼしめして、 *これよりは余の人を*強縁として念仏ひろめよと申すこと、 ゆめゆめ申したること候はず。 きはまれるひがごとにて候ふ。
^*この世のならひにて、 念仏をさまたげん+ことは、 ▲かねて仏の説きおかせたまひて候へば、 おどろきおぼしめすべからず。 やうやうに慈信坊が申すことを、 これより申し候ふと御こころえ候ふ、 ゆめゆめあるべからず候ふ。 法門のやうも、 あらぬさまに申しなして候ふなり。 御耳にききいれらるべからず候ふ。 きはまれるひがごとどものきこえ候ふ。 あさましく候ふ。
^*入信坊なんども不便におぼえ候ふ。 鎌倉に長居して候ふらん、 不便に候ふ。 当時、 それも*わづらふべくてぞ0843、 さても候ふらん。 ちからおよばず候ふ。
^*奥郡のひとびとの、 慈信坊にすかされて、 信心みなうかれあうておはしまし候0774ふなること、 かへすがへすあはれにかなしうおぼえ候ふ。 これもひとびとをすかしまうしたるやうにきこえ候ふこと、 かへすがへすあさましくおぼえ候ふ。 それも日ごろ、 ひとびとの信の定まらず候ひけることのあらはれてきこえ候ふ。 かへすがへす不便に候ひけり。
^慈信坊が申すことによりて、 ひとびとの日ごろの信のたぢろきあうておはしまし候ふも、 詮ずるところは、 ひとびとの信心のまことならぬことのあらはれて候ふ。 よきことにて候ふ。 *それを、 ひとびとは、 *これより申したるやうにおぼしめしあうて候ふこそ、 あさましく候へ。
^日ごろやうやうの御ふみどもを、 書きもちておはしましあうて候ふ甲斐もなくおぼえ候ふ。 ¬唯信鈔¼、 やうやうの御ふみどもは、 いまは詮なくなりて候ふとおぼえ候ふ。 よくよく書きもたせたまひて候ふ法門は、 みな詮なくなりて候ふなり。 慈信坊にみなしたがひて、 *めでたき御ふみどもはすてさせたまひあうて候ふときこえ候ふこそ、 詮なくあはれにおぼえ候へ。
^よくよく ¬唯信鈔¼・¬後世物語¼ なんどを御覧あるべく候ふ。 年0844ごろ、 信ありと仰せられあうて候ひけるひとびとは、 みなそらごとにて候ひけりときこえ候ふ。 あさましく0775候ふ、 あさましく候ふ。 なにごともなにごとも、 またまた申し候ふべし。
正月九日
親鸞
*真浄御坊 ▽
(828)
◎(18) ¬御消息集¼(6)
^なにごとよりは、 如来の御本願のひろまらせたまひて候ふこと、 かへすがへすめでたく、 うれしく候ふ。 そのことに、 おのおのところどころに、 *われはといふことをおもうてあらそふこと、 ゆめゆめあるべからず候ふ。 京に~も一念多念なんど申す、 あらそふことのおほく候ふやうにあること、 さらさら候ふべからず。
^ただ詮ずるところは、 ¬*唯信鈔¼・¬*後世物語¼・¬*自力他力¼、 この御ふみどもをよくよくつねにみて、 その御こころにたがへずおはしますべし。 いづかたのひとびとにも、 このこころを仰せられ候ふべし。 なほおぼつかなきことあらば、 今日まで生きて候へば、 *わざともこれへたづねたまふべし。 また便にも仰せたまふべし。 *鹿島・*行方、 そのならびのひとびとにも、 このこころをよくよく仰せらるべし。 一念多念のあらそひなんどのやうに、 *詮なきこと0829、 論じごとをのみ申しあはれて候ふぞかし。 よくよくつつしむべきことなり。
^あなかしこ0776、 あなかしこ。
^かやうのことをこころえぬひとびとは、 *そのこととなきことを申しあはれて候ふぞ。 よくよくつつしみたまふべし。 かへすがへす。
二月三日
親鸞 ▽
(849) 0878
◎(19) ¬御消息集¼(18)、 ¬血脈文集¼(3)
^諸仏称名の願 (第十七願) と申し、 諸仏咨嗟の願 (同) と申し候ふなるは、 十方衆生をすすめんためときこえたり。 また十方衆生の疑心をとどめん*料ときこえて候ふ。 ¬*弥陀経¼ の十方諸仏の証誠のやうにてきこえたり。 詮ずるところは、 方便の御誓願と信じまゐらせ+候ふ。
^念仏往生の願 (第十八願) は、 如来の往相回向の正業・正因なりとみえて候ふ。 まことの信心あるひとは、 等正覚の弥勒とひとしければ、 如来とひとしとも諸仏のほめさせたまひたりとこそきこえて候へ。 また 「弥陀の本願を信じ候ひぬるうへには、 義なきを義とす」 とこそ、 大師聖人 (*法然) の仰せにて候へ。 かやうに義の候ふらんかぎりは、 他力にはあらず、 自力なりときこえて候ふ。
^また他力と申すは、 仏智不思議にて候0850ふなるときに、 煩悩具足の凡夫の無上覚のさとりを得候ふなること%を0777ば、 仏と仏+のみ御はからひなり。 さらに行者のはからひにあらず~候ふ。 しかれば、 義なきを義とすと候ふなり。 義と申すことは、 自力のひとのはからひを申すなり。 他力には、 しかれば、 義なきを義とすと候ふなり。 このひとびとの仰せのやうは、 これにはつやつやとしらぬことにて候へば、 とかく申すべきにあら0879ず候ふ。
^▲また 「来」 の字は、 衆生利益のためには、 きたると申す、 方便なり。 ▲さとり~をひらきては、 かへると申す。 ときにしたがひて、 きたるともかへるとも申すとみえて候ふ。
^なにごともなにごとも、 またまた申すべく候ふ。
二月%九日
親鸞
*慶西御坊 ~御返事▽
(856)
◎(20) [浄信房御返事・諸仏等同云事] ¬善性本¼(2)
^~無礙光如来の慈悲光明に摂取せられまゐらせ候ふゆゑ、 名号をとなへつつ不退の位に入り定まり候ひなんには、 この身のために摂取不捨をはじめてたづぬべきにはあらずとおぼえられて候ふ。
^そのうへ ¬華厳経¼ (入法界品) に、 「▲聞此法歓喜信心無疑者 速成無上道与諸如来等」 と仰せられて候ふ。 また第十七の願に 「▲十方無量の諸仏にほめとなへられん」 と仰せられて候ふ。 また願成就の文 (大経・下) に 「▲十方恒沙の諸仏」 と仰せ0778られて候ふは、 信心の人とこころえて候0857ふ。 この人はすなはちこの世より如来とひとしとおぼえられ候ふ。
^このほかは、 凡夫のはからひをばもちゐず候ふなり。 このやうをこまかに仰せかぶりたまふべく候ふ。 恐々謹言。
0758二月十二日
*浄信
(757) 0788
・¬末灯鈔¼(7)
+諸仏等同と云事
+往生はなにごともなにごとも凡夫のはからひならず、 如来の御ちかひにまかせまいらせたればこそ、 他力にては候へ。 やうやうにはからひあふて候らん、 おかしく候。
・「真筆消息」(6)、 ¬善性本¼(2)続き
^如来の誓願を信ずる心の定まる~ときと申すは、 摂取オサメムカエトリタマフ不捨の利益にあづかるゆゑに、 不退の位に定まると御こころえ候ふべし。 真実信心+定まると申すも、 金剛+信心の定まると申すも、 摂取不捨のゆゑに~申すなり。 さればこそ、 無上覚にいたるべき心のおこると申すなり。 これを不退の位とも+、 正定聚の位に入るとも申し、 等正覚にいたるとも申すなり。
^このこころの定まるを、 十方諸仏のよろこびて、 諸仏の御こころにひとしとほめたまふなり。 このゆゑに、 まことの信心の人をば、 諸仏とひとしと申すなり。 また補処の弥勒とおなじと+も申すなり。
^この世にて真実信心の人をま†もらせたまへばこそ、 ¬*阿弥陀経¼ (意) には、 「▲十方恒沙の諸仏護念す」 とは申すことにて候へ。 安楽浄土へ往生0779してのち%は、 まもりたまふと申すことにては候はず。 娑婆世界†に居たるほど護念すと~は申すこと0789なり。 信心まことなる人のこころを、 十方恒沙0858の如来のほめたまへば、 仏とひとしとは申すことなり。
^また他力と申すことは、 義なきを義とす0757と申すなり。 義と申すことは、 行者のおのおののはからふことを義とは申すなり。 如来の誓願は不可思議にましますゆゑに、 仏と仏との御はからひなり。 凡夫のはからひにあらず。 補処の弥勒菩薩をはじめとして、 仏智の不思議をはからふべき人は候はず。 しかれば、 「如来の誓願には義なきを義とす」 とは、 大師聖人 (法然) の仰せに候ひき。 このこころのほかに~は*往生にいるべきこと候はずとこころえて、 まかりすぎ候へば、 人の仰せごとにはいらぬものにて候ふなり。 ~諸事恐々謹言。▽
+二月廿五日
*親鸞 (花押)
+浄信御坊 御返事 ▽
(814)
◎(21) ¬末灯鈔¼(21)、 ¬善性本¼(2)後半
^安楽浄土に入りはつれば、 すなはち大涅槃をさとるとも、 ~また無上覚をさとるとも、 滅度にいたるとも申すは、 御名こそかはりたるやうなれども、 これみな+法身と申す仏のさとりをひらくべき正因に、 弥陀仏の御ちかひを、 法蔵菩0780薩われらに回向したまへるを、 往相の回向と申すなり。
^この回向せさせたまへる願を、 念仏往生の願 (第十八願) とは申すなり。 この念仏往生の願を*一向に信じて*ふたごころなきを、 一向専修と~は申すなり。 如来+*二種の回向と申すことは、 この二種の回向の願を信じ、 ふたごころなきを、 真実の信心と申す。 この真実の信心のおこることは、 釈迦・弥陀~の二尊の御はからひよりおこりたりとしらせたまふべ%し。
^あなかしこ、 あなかしこ。▽
(758)
◎(22) 「真筆消息」(7)
^*いやをんな%がこと、 文書きてまゐらせられ候ふ%めり。 いまだ居所もなくて、 *わびゐて候ふなり。 あさましくあさましく、 *もてあつかひて、 いかにすべしともなくて候ふなり。 あなかしこ。
三月二十八日
(花押)
+………(切封)
*わうごぜんへ
しんらん▽
0763 (791)
◎(23) [誓願名号同一事] 「古写消息」(1)、 ¬末灯鈔¼(9)
^~▼誓願・名号同一の事。
^0781御文くはしくうけたまはり候ひぬ。
^さてはこの御不審*しかるべしともおぼえず候ふ。 そのゆゑは、 誓願・名号と申してかはりたること候はず+。 誓願をはなれたる名号も候はず+、 名号をはなれたる誓願も候はず候ふ。 かく申し候ふも、 はからひにて候ふなり。 ただ誓願を不思議と信じ、 また名号を不思議と一念信じとなへつるうへは、 *なんでふわがはからひをいたすべき。
^*ききわけ、 しりわくるなど、 わづらはしくは仰せ~られ候ふやらん。 これみなひがごとにて候ふなり。 ただ不思議と信じつるうへは、 とかく御はからひあるべからず候ふ。 *往生の業には、 わたくしのはからひ0792はあるまじく候ふなり。
^あなかしこ、 あなかしこ。
^~ただ如来にまかせまゐらせおはしますべく候ふ。 あなかしこ、 あなかしこ。
五月五日
親鸞
0764*教%名御房+
^~端書にいはく
この文をもつて、 ひとびとにもみせまゐらせさせたまふべく候ふ。 他力には義なきを義と~すとは申し候ふなり。
0782
◎(24) [仏智不思議と信ずべき事] 「古写消息」(2)、 ¬末灯鈔¼(10)
^~仏智不思議と信ずべき事。
^御文くはしくうけたまはり候ひぬ。
^さては御法門の御不審に、 一念発起+のとき、 無礙の心光に摂護せられまゐらせ候ふゆゑ~に、 *つねに*浄土の業因決定すと仰せられ候ふ。 これめでたく候ふ。 かくめでたくは仰せ候へども、 これみな*わたくしの御はからひになりぬとおぼえ候ふ。 ただ不思議と信ぜさせたまひ候ひぬるうへは、 わづらはしきはからひあるべからず候ふ。
^またある人の*候ふなること、 *出世のこころおほく、 浄土の業因すくなしと候ふなるは、 こころえがたく候ふ。 出世と候ふも、 浄土の業因と候ふも、 みなひとつにて候ふなり。 すべ+てこれ、 *なまじひなる0793御はからひと存じ候ふ。 仏智不思議と信ぜさせたまひ候ひなば、 別にわづらはしく、 とかくの御はからひあるべからず候ふ。 *ただひと~びとのとかく申し候はん0765ことを~ば、 御不審あるべからず候ふ。 ただ如来の誓願にまかせまゐらせたまふべく候ふ。 とかくの御はからひあるべからず候ふなり。
^あなかしこ、 あなかしこ。
五月五日
親鸞 %御判
*浄信御房~へ
^0783~袖書にいはく
他力と申し候ふは、 とかくのはからひなきを申し候ふなり。▽
(829)
◎(25) ¬御消息集¼(7)
^六月一日の御文、 くはしくみ候ひぬ。
^さては鎌倉にての御訴へのやうは、 *おろおろうけたまはりて候ふ。 *この御文にたがはずうけたまはりて候ひしに、 *別のことはよも候はじとおもひ候ひしに、 *御くだりうれしく候ふ。
^おほかたは、 この訴へのやうは、 御身ひとりのことにはあらず候ふ。 すべて浄土の念仏者のことなり。 このやうは、 故聖人 (法然) の御時、 この身どものやうやうに申され候ひしことなり。 *こともあたらしき訴へにて~も候*はず。 *性信坊ひとりの沙汰あるべきことにはあらず。 念仏申さんひとは、 みなおなじこころに御沙汰あるべきことなり。 御身をわらひまうすべきことにはあらず0830候ふべし。
^*念仏者のものにこころえぬは、 *性信坊のとがに申しなされんは、 きはまれるひがごとに候ふべし。 念仏申さんひとは、 性信坊の*かたうどにこそなりあはせたまふべけれ。 母・姉・妹なんどやうやうに申さるることは、 *ふるごとにて候ふ。
^さればとて、 *念仏をとどめられ候ひしが、 世に*曲事のおこり候ひしか0784ば、 それにつけても念仏をふかくたのみて、 世のいのりにこころにいれて、 申しあはせたまふべしとぞおぼえ候ふ。
^御文のやう、 おほかたの*陳状、 よく御はからひども候ひけり。 うれしく候ふ。
^詮じ候ふところは、 御身にかぎらず、 念仏申さんひとびとは、 わが御身の料はおぼしめさずとも、 朝オホヤ家のケノオン御ためタメトマフス、ナリ 国民クニノタのたミヒヤクめにシヤウ 、 念仏を申しあはせたまひ候はば、 *めでたう候ふべし。
^往生を不定におぼしめさんひとは、 まづわが身の往生をおぼしめして、 御念仏候ふべし。 わが身の往生一定とおぼしめさんひとは、 仏の御恩をおぼしめさんに、 御報恩のために、 御念仏こころにいれて申して、 世のなか安穏なれ、 仏法ひろまれとおぼしめすべしとぞ、 おぼえ候ふ。 よくよく御案候ふべし。
^このほかは、 別の御はからひあるべしとはおぼえず候ふ。
^なほなほ疾く御くだりの候ふこそ、 う0831れしう候へ。 よくよく御こころにいれて、 往生一定とおもひさだめられ候ひなば、 仏の御恩をおぼしめさんには、 *異事は候ふべからず。 御念仏をこころにいれて申させたまふべしとおぼえ候ふ。
^あなかしこ、 あなかしこ。
七月九日
親鸞
0785性信御坊 ▽
(794)
◎(26) ¬末灯鈔¼(12)
^尋ね仰せられ候ふ念仏の不審のこと。
^念仏往生と信ずる人は、 辺地の往生とてきらはれ候ふらんこと、 *おほかたこころえがたく候ふ。 そのゆゑは、 弥陀の本願と申すは、 名号をとなへんものをば極楽へ迎へんと誓はせたまひたるを、 ふかく信じてとなふるがめでたきことにて候ふなり。 信心ありとも、 名号をとなへざらんは*詮なく候ふ。 また一向名号をとなふとも、 信心あさくは往生しがたく候ふ。 されば念仏往生とふかく信じて、 しかも名号をとなへんずるは、 疑なき報土の往生にてあるべく候ふなり。
^詮ずるところ、 名号をとなふといふとも、 他力本願を信ぜざらんは辺地に生るべし。 本願他力をふかく信ぜんとも0795がらは、 *なにごとにかは辺地の往生にて候ふべき。 このやうをよくよく御こころえ候うて御念仏候ふべし。
^この身は、 いまは、 としきはまりて候へば、 さだめてさきだちて往生し候はんずれば、 浄土にてかならずかならずまちまゐらせ候ふべし。
^あなかしこ、 あなかしこ。
0786七月十三日
親鸞
*有阿弥陀仏 御返事 ▽
0834
◎(27) ¬御消息集¼(9)
^まづよろづの仏・菩薩をかろしめまゐらせ、 よろづの神祇・冥道をあなづり*すてたてまつると申すこと、 この事*ゆめゆめなきことなり。
^世々生々に無量無辺の諸仏・菩薩の利益によりて、 よろづの善を修行せしかども、 自力にては生死を出でずありしゆゑに、 曠劫多生のあひだ、 諸仏・菩薩の御すすめによりて、 いままうあひがたき弥陀の御ちかひにあひまゐらせて候ふ御恩をしらずして、 よろづの仏・菩薩を*あだに申さんは、 ふかき御恩をしらず候ふべし。
^仏法をふかく信ずるひとをば、 天地におはしますよろづの神は、 かげのかたちに添へるがごとくして、 まもらせたまふことにて候へば、 念仏を信じたる身にて、 天地の神をすてまうさんとおもふこと、 ゆめゆめなきことなり。 *神祇等だにもすてられたまはず。 いかにいはんや、 よろづの仏・菩薩をあだにも申し、 *おろかにおもひまゐらせ候ふべしや。 よろづの仏をおろかに申さば、 念仏を信ぜず、 弥陀の御名をとなへぬ身にてこそ候はんずれ。
^詮ずるところは、 そらごと0787を申し、 ひがごとを、 ことにふれて、 念仏のひとびとに仰せられつけて、 念仏をとどめんと*領家・*地頭・*名主の御はからひどもの候ふらん0835こと、 よくよく*やうあるべきことなり。
^そのゆゑは、 釈迦如来のみことには、 念仏するひとをそしるものをば ▲「名無眼人」 と説き、 「名無耳人」 と仰せおかれたることに候ふ。 善導和尚は、 「▲五濁増時多疑謗 道俗相嫌不用聞 見有修行起瞋毒 方便破壊競生怨」 (*法事讃・下) とたしかに釈しおかせたまひたり。
^この世のならひにて念仏をさまたげんひとは、 そのところの領家・地頭・名主*のやうあることにてこそ候はめ。 とかく申すべきにあらず。 「△念仏せんひとびとは、 かのさまたげをなさんひとをばあはれみをなし、 不便におもうて、 念仏をもねんごろに申して、 さまたげなさんを、 たすけさせたまふべし」 とこそ、 *ふるきひとは申され候ひしか。 よくよく御たづねあるべきことなり。
^つぎに、 念仏せさせたまふひとびとのこと、 弥陀の御ちかひは煩悩具足のひとのためなりと信ぜられ候ふは、 *めでたきやうなり。 ただしわるきもののためなりとて、 ことさらにひがごとをこころにもおもひ、 身にも口にも申すべしとは、 浄土宗に申すことならねば、 ひとびとにもかたること候はず。
^おほかたは0788、 煩悩具足の身にて、 こころをもとどめがたく候ひながら、 往生を疑はずせんとおぼしめすべしとこそ、 師も善知識も申すことにて候ふに、 かかるわるき身なれば0836、 ひがごとをことさらに好みて、 念仏のひとびとのさはりとなり、 師のためにも善知識のためにも、 とがとなさせたまふべしと申すことは、 ゆめゆめなきことなり。
^弥陀の御ちかひにまうあひがたくしてあひまゐらせて、 仏恩を報じまゐらせんとこそおぼしめすべきに、 *念仏をとどめらるることに沙汰しなされて候ふらんこそ、 かへすがへすこころえず候ふ。 あさましきことに候ふ。 ひとびとのひがざまに御こころえどもの候ふゆゑ+、 *あるべくもなきことどもきこえ候ふ。 申すばかりなく候ふ。
^ただし念仏のひと、 ひがごとを申し候はば、 その身ひとりこそ地獄にもおち、 *天魔ともなり候はめ。 よろづの念仏者のとがになるべしとはおぼえず候ふ。 よくよく御はからひども候ふべし。 なほなほ念仏せさせたまふひとびと、 よくよくこの文を御覧じ説かせたまふべし。
^あなかしこ、 あなかしこ。
九月二日
親鸞
念仏の人々御中へ
0789 0837
◎(28) ¬御消息集¼(10)
^文書きてまゐらせ候ふ。 この文を、 ひとびとにも読みてきかせたまふべし。
^*遠江の尼御前の御こころにいれて御沙汰候ふらん、 かへすがへすめでたくあはれにおぼえ候ふ。 よくよく京よりよろこび申すよしを申したまふべし。
^*信願坊が申すやう、 かへすがへす不便のことなり。 わるき身なればとて、 ことさらにひがごとを好みて、 師のため善知識のためにあしきことを沙汰し、 念仏のひとびとのために、 とがとなるべきことをしらずは、 仏恩をしらず、 よくよくはからひたまふべし。
^また、 ものにくるうて死にけんひとびとのことをもちて、 信願坊がことを、 よしあしと申すべきにはあらず。 念仏するひとの死にやうも、 身より病をするひとは、 往生のやうを申すべからず。 こころより病をするひとは、 天魔ともなり、 地獄にもおつることにて候ふべし。 *こころよりおこる病と、 身よりおこる病とは、 かはるべければ、 こころよりおこりて死ぬるひとのことを、 よくよく御はからひ候ふべし。
^信願坊が申すやうは、 凡夫のならひなれば、 わるきこそ*本なればとて、 おもふまじきことを好み、 身にもすまじきことをし、 口にもいふまじきことを申すべき0790やう0838に申され候ふこそ、 信願坊が申しやうとはこころえず候ふ。 往生にさはりなければとて、 ひがごとを好むべしとは、 申したること候はず。 かへすがへすこころえずおぼえ候ふ。
^詮ずるところ、 ひがごと申さんひとは、 その身ひとりこそ、 *ともかくもなり候はめ。 すべてよろづの念仏者のさまたげとなるべしとはおぼえず候ふ。
^また念仏をとどめんひとは、 そのひとばかりこそ*いかにもなり候はめ。 よろづの念仏するひとのとがとなるべしとはおぼえず候ふ。 「▲五濁増時多疑謗 道俗相嫌不用聞 見有修行起瞋毒 方便破壊競生怨」 (法事讃・下) と、 まのあたり善導の御をしへ候ふぞかし。 釈迦如来は、 「▲名無眼人、 名無耳人」 と説かせたまひて候ふぞかし。 かやうなるひとにて、 念仏をもとどめ、 念仏者をもにくみなんどすることにても候ふらん。 *それは、 *かのひとをにくまずして、 念仏をひとびと申して、 たすけんとおもひあはせたまへとこそおぼえ候へ。
^あなかしこ、 あなかしこ。
九月二日
親鸞
*慈信坊 御返事
^0791*入信坊・*真浄坊・*法信坊にも、 この文を読みきかせたまふべし。 かへすがへす0839不便のことに候ふ。 *性信坊には、 春のぼりて候ひしに、 よくよく申して候ふ。 *くげどのにも、 よくよくよろこび申したまふべし。
^このひとびとのひがごとを申しあうて候へばとて、 *道理をば失はれ候はじとこそおぼえ候へ。 世間の事にも、 さることの候ふぞかし。 領家・地頭・名主のひがごとすればとて、 *百姓をまどはすことは候はぬぞかし。 仏法をばやぶるひとなし。 仏法者のやぶるにたとへたるには、 「*獅子の身中の虫の獅子をくらふがごとし」 と候へば、 念仏者をば仏法者のやぶりさまたげ候ふなり。 よくよくこころえたまふべし。
^なほなほ御文には申しつくすべくも候はず。▽
(879)
◎(29) ¬血脈文集¼(4)
^武蔵よりとて、 *しむの入道どのと申す人と、 *正念房と申す人の、 *王番にのぼらせたまひて候ふとておはしまして候ふ。 みまゐらせて候ふ。 御念仏の御こころざしおはしますと候へば、 ことにうれしうめでたうおぼえ候ふ。 *御すすめと候ふ。 かへすがへすうれしうあはれに候ふ。 なほなほよくよくすすめまゐらせて、 信心かはらぬやうに人々に申させたまふべし。 如来の御ちかひのうへに0792、 釈尊の御ことなり。 また十方恒沙の諸仏の御証誠なり。 信心はかはらじとおもひ候へども、 やうやうにかはりあはせたまひて候ふ0880こと、 ことになげきおもひ候ふ。 よくよくすすめまゐらせたまふべく候ふ。
^あなかしこ、 あなかしこ。
九月七日
親鸞
*性信御房
^*念仏のあひだのことゆゑに、 御沙汰どものやうやうにきこえ候ふに、 *こころやすくならせたまひて候ふと、 この人々の御ものがたり候へば、 ことにめでたううれしう候ふ。 なにごともなにごとも申しつくしがたく候ふ。 いのち候はば、 またまた申し候ふべく候ふ。▽
(758) (795) (863)
◎(30) [摂取不捨事] 「真筆消息」(8)、 ¬末灯鈔¼(13)、 ¬善性本¼(4)
^尋ね仰せられて候ふ摂取不捨のことは、 ¬*般舟三昧行道往生讃¼ と申すに仰せられて候ふをみまゐらせ+候へば、 「▲釈迦如来・弥陀%仏、 われらが慈悲の父母にて、 さまざまの方便にて、 われらが無上+信心をばひらきおこさせたまふ」 (意) と候へば、 まことの0759信心の定まることは、 釈迦・弥陀の御はからひとみえて候ふ。
^往生の心疑なくなり候ふは、 摂取せられまゐら%するゆゑ0793+とみえて候ふ。 摂取のうへには、 ともかくも行者のはからひあるべからず候ふ。 浄土へ往生するまでは、 不退の位に~ておはしまし候へば、 正0796定聚の位となづけておはしますことにて候ふなり。
^まことの信心をば、 釈迦如来・弥陀如来二尊の御はからひにて発起せしめたまひ候ふとみえて候へば、 信心の定まると申すは、 摂取にあづかるときにて候ふなり。 そののちは正定聚の位にて、 まことに浄土へ生るるまでは候ふべしとみえ+候ふなり。 ともかくも行者のはからひをちりばかりもあるべからず候へばこそ、 他力と申すことにて候へ。
^あなかしこ、 あなかしこ。
0864十月六日
親鸞~(花押)
%*しのぶの御房~の御返事 ▽
+*康永三歳 甲申 仲春上旬第一日至輔時終漸写微功訖
隠倫乗専 半白 ▽
(848)
◎(31) ¬御消息集¼(17)
^ひとびとの仰せられて候ふ*十二光仏の御ことのやう、 書きしるしてくだしまゐらせ候ふ。 くはしく書きまゐらせ候ふべきやうも候はず。 *おろおろ書きしるして候ふ。
^詮ずるところは、 無礙光仏と申しまゐらせ候ふことを*本とせさせたまふべく候0794ふ。 無礙光仏は、 よろづのもののあさましき0849わるきことにはさはりなく、 たすけさせたまはん料に、 無礙光仏と申すとしらせたまふべく候ふ。
^あなかしこ、 あなかしこ。
十月二十一日
~親鸞
*唯信御坊 御返事 ▽
(759) (800) (846)
◎(32) [如来とひとしといふ事] 「真筆消息」(9)、 ¬末灯鈔¼(15前半)、 ¬御消息集¼(15)
^尋ね仰せられて候ふこと、 かへすがへす*めでたう候ふ。 まことの信心をえたる人は、 すでに仏に成%らせたまふべき御身となりておはしますゆゑに、 「▲如0847来とひとしき人」 と ¬経¼ (華厳経・入法界品) に0760説かれ+候ふなり。 弥勒はいまだ仏に成りたまはねども、 このたびかならず~かならず仏に成りたまふべきによりて、 ~弥勒をばすでに弥勒仏と申し候ふなり。 *その定に、 真実信心をえたる人%をば、 如来とひとしと仰せられて候ふなり。
^また*%承信房の、 弥勒とひとしと候ふも、 ひがごとに+は候はねども、 他力によりて信をえてよろこぶこころは如来とひとしと候ふを、 自力なりと候ふらんは、 いますこし%承信房の御こころの底のゆきつかぬやうにき%こえ候ふこそ、 よく~よく御案候ふべくや候ふらん。
^0795自力のこころにて、 わが身は如来とひとしと候%ふらんは、 まことにあしう候ふ0801べし。 ~他力の信心のゆゑに、 *浄信房のよろこばせたまひ候ふらんは、 なにかは自力にて候ふべき。 よくよく御はからひ候ふべし。
^このやうは、 この人々にくはしう申して候ふ。 %承信の御房+、 とひまゐらせ させたまふべ%し。
^あなかしこ、 あなかしこ。
十月二十%一日
親鸞 ▽
~%浄信御房 御%返事 ▽
(839)
◎(33) ¬御消息集¼(11)
^九月二十七日の御文、 くはしくみ候ひぬ。 さては御こころざしの銭*五貫文、 十一月九日にたまはりて候ふ。
^さてはゐなかのひとびと、 みなとしごろ念仏せしは、 いたづらごとにてありけりとて、 かたがた、 ひとびとやうやうに申すなることこそ、 かへすがへす不便のことにきこえ候へ。 やうやうの文ども0840を書きてもてるを、 いかにみなして候ふやらん。 かへすがへすおぼつかなく候ふ。
^*慈信坊のくだりて、 わがききたる法文こそまことにてはあれ、 日ごろの念仏は0796、 みないたづらごとなりと候へばとて、 *おほぶの中太郎の方のひと+は、 九十なん人とかや、 みな慈信坊の方へとて、 中太郎入道をすてたるとかやきき候ふ。 いかなるやうにて、 さやうには候ふぞ。 詮ずるところ、 信心の定まらざりけるときき候ふ。 いかやうなることにて、 さほどにおほくのひとびとの*たぢろき候ふらん。 不便のやうときき候ふ。
^またかやうのきこえなんど候へば、 そらごともおほく候ふべし。 また親鸞も*偏頗あるものときき候へば、 ちからを尽して ¬*唯信鈔¼・¬*後世物語¼・¬*自力他力の文¼ のこころども、 二河の譬喩なんど書きて、 かたがたへ、 ひとびとにくだして候ふも、 みなそらごとになりて候ふときこえ候ふは、 いかやうにすすめられたるやらん。 不可思議のことときき候ふこそ、 不便に候へ。 よくよくきかせたまふべし。
^あなかしこ、 あなかしこ。
十一月九日
親鸞
慈信御坊
0841^*真仏坊・*性信坊・*入信坊、 *このひとびとのことうけたまはり候ふ。 かへすがへすなげきおぼえ候へども、 ちからおよばず候ふ。 また余のひとびとのおなじこころならず候ふらんも、 ちからおよばず候ふ。 ひとびとのおなじこころ0797ならず候へば、 とかく申すにおよばず。 いまは*ひとのうへも申すべきにあらず候ふ。 よくよくこころえたまふべし。
親鸞
慈信御坊▽
(866)
◎(34) ¬善性本¼(7)
^ある人のいはく、
^往生の業因は、 一念発起信心のとき、 無礙の心光に摂護せられまゐらせ候ひぬれば、 同一なり。 このゆゑに不審なし。 このゆゑに、 *はじめてまた信不信を論じ尋ねまうすべきにあらずとなり。 このゆゑに他力なり、 義なきがなかの義となり。 ただ無明なること、 おほはるる煩悩ばかりとなり。
^恐々謹言。
十一月一日
*専信上
^仰せ候ふところの往生の業因は、 真実信心をうるとき摂取不捨にあづかると0798おもへば、 かならずかならず如来の誓願に住すと、 悲願にみえたり。 「▲設我得仏 国中0867人天 不住定聚 必至滅度者 不取正覚」 (大経・上) と誓ひたまへり。 正定聚に信心の人は住したまへりとおぼしめし候ひなば、 行者のはからひのなきゆゑに、 *義なきを義とすと、 他力をば申すなり。 善とも悪とも、 浄とも穢とも、 行者のはからひなき身とならせたまひて候へばこそ、 義なきを義とすとは申すことにて候へ。
^十七の願に、 「▲わがなをとなへられん」 と誓ひたまひて、 十八の願に、 「▲信心まことならば、 もし生れずは仏に成らじ」 と誓ひたまへり。 十七・十八の悲願みなまことならば、 正定聚の願 (第十一願) は*せんなく候ふべきか。 補処の弥勒におなじ位に信心の人はならせたまふゆゑに、 摂取不捨とは定められて候へ。 このゆゑに、 他力と申すは行者のはからひのちりばかりもいらぬなり。 かるがゆゑに義なきを義とすと申すなり。 このほかにまた申すべきことなし。 ただ仏にまかせまゐらせたまへと、 大師聖人 (法然) のみことにて候へ。
十一月十八日
親鸞
専信御坊 御報
0799 (760)
◎(35) 「真筆消息」(10)
「*御返事 (花押) 」
^常陸の人々の御中へ、 この文をみせさせたまへ。 すこしもかはらず候ふ。 この文0761にすぐべからず候へば、 この文を、 くにの人々、 おなじこころに候はんずらん。
^あなかしこ、 あなかしこ。
十一月十一日
(花押)
*いまごぜんのははに
◎(36) 「真筆消息」(11)
^このいまごぜんのははの、 たのむかたもなく、 そらうをもちて候はばこそ、 譲りもし候はめ。 *せんしに候ひなば、 くにの人々、 いとほしうせさせたまふべく候ふ。 この文を書く常陸の人々をたのみまゐらせて候へば、 申しおきて、 あはれみあはせたまふべく候ふ。 この文をごらんあるべく候ふ。
^この*そくしやうばうも、 *すぐべきやうもなきものにて候へば、 申しおくべきやうも候はず。 身のかなはず、 わびしう候ふことは、 ただこのことおなじことにて候ふ。 ときにこのそくしやうばうにも、 申しおかず候ふ。 常陸の人々ばかりぞ、 このものどもをも、 御あはれみあはれ候ふべからん。 いとほしう、 人々あはれみおぼしめすべし0800。 この文にて、 人々おなじ御こころに候ふべし。
^あなかしこ、 あなかしこ。
0762十一月十二日
ぜんしん (花押)
常陸 ˆのˇ 人々の御中へ
+………(切封)
常陸の人々の御中へ
(花押)▽
0802 (826)
◎(37) ¬末灯鈔¼(16)、 ¬御消息集¼(5)
^なに+より%も、 聖教のをしへをもしらず、 また浄土宗の*まことのそこをもしらずして、 不可思議の*放逸無慚のものどものなかに、 悪はおもふさまにふるまふべしと仰せられ候ふなるこそ、 かへすがへすあるべくも候はず。 *北の郡にありし*善%証房といひしものに、 つひに*あひむつるることなくてやみにしをばみざりけるにや。
^凡夫なればとて、 なにごともおもふさまならば、 ぬすみをもし、 人をもころしなんどすべきかは。 もとぬすみごころあらん%人も、 極楽をねがひ、 念仏~を申すほどのことになりなば、 もと*ひがうたるこころ~をもおもひなほしてこそあるべきに、 そのしるしもなからんひとびとに、 *悪くるしからずといふ0801こと、 ゆめゆめあるべからず候ふ。
^煩悩にくるはされて、 おもはざるほかにすまじきことをもふるまひ、 いふまじきことをもいひ、 おもふまじきことをも0827おもふにてこそあれ。 *さはらぬことなればとて、 ひとのためにもはらぐろく、 すまじきことをもし、 いふまじきことをもいはば、 煩悩にくるはされたる儀にはあらで、 わざとすまじきことをもせば、 かへすがへすあるまじきことなり。
^*鹿島・*行方のひとびとのあしからんことをばいひ+とどめ、 *その辺の人々の、 ことに0803ひがみたることをば制したまはばこそ、 *この辺より出できたるしるしにては候はめ。
^+ふるまひ~は、 な%にともこころにまかせよとい%ひつると候ふらん、 あさましきことに候ふ。 この世のわろきを~もすて、 あ~さましきことを~もせざらんこそ、 世をいとひ、 念仏申すことにては候%へ。 としごろ念仏するひとなんどの、 ひとのためにあしきことを+し、 またいひもせ%ば、 世をいとふしるしもなし。
^されば善導の御をしへには、 「▲悪をこの%む人をば、 %つつしんでとほざかれ」 (散善義・意) とこそ、 至誠心のなかにはをしへおかせおはしまして候へ。 いつか+、 わがこころのわろきにまかせてふるまへとは候ふ。 おほかた+経釈+をもしらず、 如来の御ことをもしらぬ身に+、 ゆめゆめその沙汰あるべくも候はず。
+また往生はなにごともなにごとも凡夫のはからひならず、 如来の御ちかひにまかせまいらせたればこそ、 他力にてはさふ0828らへ。 やうやうにはからひあふてさふらふらん、 をかしくさふらふ。
^あ0802なかしこ、 あなかしこ。
十一月二十四日
親鸞 ▽
0848
◎(38) ¬末灯鈔¼(17)、 ¬御消息集¼(16)
^他力のなかには自力と申すことは候ふときき候ひき。 他力のなかにまた他力と申すことはきき候はず。 他力のなかに自力と申すことは、 雑行雑修0804・定心念仏・~散心念仏%をこころ%がけられて候ふひとびとは、 他力のなかの自力のひとびとなり。 他力のなかにまた他力と申すことはうけたまはり候はず。 なにごとも*専信房のしばらく%も居たらんと候へば、 そのとき申し候ふべし。
^あなかしこ、 あなかしこ。
^~銭二十貫文、 たしかにたしかに給はり候ふ。 あなかしこ、 あなかしこ。
十一月二十五日
~親鸞
+真仏御坊 御返事 ▽
◎(39) ¬末灯鈔¼(18)
^御たづね候ふことは、 弥陀他力の回向の誓願にあひたてまつりて、 真実の信心をたまはりて、 よろこぶこころの定まるとき、 摂取して捨てられまゐらせざるゆゑに、 金剛心になるときを正定聚の位に住すとも申す。 弥勒菩薩とおなじ0803位になるとも説かれて候ふめり。
^弥勒とひとつ位になるゆゑに、 信心まことなるひとを+、 仏%にひとしとも申す。
^また諸仏の真実信心をえてよろこぶをば、 まことによろこびて、 われとひとしきものなりと説かせたまひて候ふなり。 ¬大経¼ (下) には、 釈尊のみことばに、 「▲見ミテウヤ敬マヒエ得大テオホキ慶ニヨロ則我コブハス善親友ナハチワガヨ」 とよキシタシキト0805ろこモナリ ばせたまひ候へば、 信心をえたるひとは諸仏とひとしと説かれて候ふめり。
^また弥勒をば、 すでに仏に成らせたまはんことあるべきにならせたまひて候へばとて、 弥勒仏と申すなり。 しかれば、 すでに他力の信をえたるひとをも、 仏とひとしと申すべしとみえたり。 御疑あるべからず候ふ。
^御同行の 「臨終を期して」 と仰せられ候ふらんは、 ちからおよばぬことなり。 信心まことにならせたまひて候ふひとは、 誓願の利益にて候ふうへに、 摂取して捨てずと候へば、 来迎臨終を期せさせたまふべからずとこそおぼえ候へ。 いまだ信心定まらざらんひとは、 臨終をも期し、 来迎をもまたせたまふべし。
^この御文主の御名は*随信房と仰せられ候はば、 めでたく候ふべし。 この御文の書きやうめでたく候ふ。 御同行の仰せられやうは、 こころえず候ふ。 それをば0804ちからおよばず候ふ。
^あなかしこ、 あなかしこ。
十一月二十六日 親鸞
随信御房 ▽
(746)
◎(40) 「真筆消息」(2)
^この*ゑん仏ばう、 くだられ候ふ。 こころざしのふかく候ふゆゑに、 主などにもしられまうさずして、 のぼられて候ふぞ。 こころにいれて、 主などにも、 仰せられ候ふべく候ふ。 *この十日の夜、 *せうまうにあうて候ふ。 この御ばうよくよくたづね候ひて候ふなり。 こころざしありがたきやうに候ふぞ。 さだめてこのやうは申され候はんずらん。 よくよくきかせたまふべく候ふ。 なにごともなにごともいそがしさに、 くはしう申さず候ふ。
^あなかしこ、 あなかしこ。
*十二月十五日
(花押)
0747*真仏御房へ▽
(831)
◎(41) ¬御消息集¼(8)
^*護念坊のたよりに、 *教忍御坊より銭二百文、 *御こころざしのものたまはりて候ふ。 さきに*念仏のすすめのもの、 かたがたの御中よりとて、 たしかにたまはり0805て候ひき。 ひとびとによろこび申させたまふべく候ふ。 この御返事にて、 おなじ御こころに申させたまふべく候ふ。
^さてはこの御たづね候ふことは、 まことによき御疑どもにて候ふべし。
^まづ一念にて往生の業因はたれりと申し候ふは、 まことにさるべきことにて候ふべし。 さればとて、 一念のほかに念仏を申すまじきことには候はず。 そのやうは、 ¬唯0832信鈔¼ にくはしく候ふ。 よくよく御覧候ふべし。
^一念のほかにあまるところの念仏は、 十方の衆生に回向すべしと候ふも、 さるべきことにて候ふべし。 十方の衆生に回向すればとて、 二念・三念せんは往生にあしきこととおぼしめされ候はば、 ひがごとにて候ふべし。 ▲念仏往生の本願とこそ仰せられて候へば、 おほく申さんも、 一念一称も往生すべしとこそうけたまはりて候へ。 かならず、 一念ばかりにて往生すといひて、 多念をせんは往生すまじきと申すことは、 ゆめゆめあるまじきことなり。 ¬唯信鈔¼ をよくよく御覧候ふべし。
^また△有念・無念と申すことは、 他力の法文にはあらぬことにて候ふ。 聖道門に申すことにて候ふなり。 みな自力聖道の法文なり。 阿弥陀如来の選択本願念仏は、 有念の義にもあらず、 無念の義にもあらずと申し候ふなり。 いかなる0806ひと申し候ふとも、 ゆめゆめもちゐさせたまふべからず候ふ。 聖道に申すことを、 あしざまにききなして、 浄土宗に申すにてぞ候ふらん。 さらさらゆめゆめもちゐさせたまふまじく候ふ。
^また慶喜と申し候ふことは、 他力の信心をえて、 往生を*一定してんずとよろこぶこころを申すなり。 常陸国中の念仏者のなかに、 有0833念・無念の念仏沙汰のきこえ候ふは、 ひがごとに候ふと申し候ひにき。
^ただ詮ずるところは、 他力のやうは、 行者のはからひにてはあらず候へば、 有念にあらず、 無念にあらずと申すことを、 あしうききなして、 有念・無念なんど申し候ひけるとおぼえ候ふ。 弥陀の選択本願は、 行者のはからひの候はねばこそ、 ひとへに他力とは申すことにて候へ。
^一念こそよけれ、 多念こそよけれなんど申すことも、 ゆめゆめあるべからず候ふ。 なほなほ一念のほかにあまるところの御念仏を法界衆生に回向すと候ふは、 釈迦・弥陀如来の御恩を報じまゐらせんとて、 十方衆生に回向せられ候ふらんは、 さるべく候へども、 二念・三念申して往生せんひとをひがごととは候ふべからず。 よくよく ¬唯信鈔¼ を御覧候ふべし。 念仏往生の御ちかひなれば、 一念・十念も往生はひがごとにあらずとおぼしめすべきなり。
^あなかしこ、 あなかしこ。
0807十二月二十六日
親鸞
教忍御坊 御返事 ▽
0815
◎(42) ¬末灯鈔¼(22)
^▼¬*宝号経¼ にのたまはく、 「弥陀の本願は行にあらず、 善にあらず、 ただ仏名をたもつなり」。 名号はこれ善なり、 行なり。 行といふは、 善をするについていふことばなり。 本願はもとより仏の御約束とこころえぬるには、 善にあらず、 行にあらざるなり。 かるがゆゑに他力と~は申すなり。
^▲本願の名号は能生する因なり。 能生の因といふはすなはちこれ父なり。 大悲の光明はこれ所生の縁なり。 所生の縁といふはすなはちこれ母なり。
+*康永元歳 壬子 七月十二日、 終書写筆功遂校合労見訖。 凡斯御消息者、 念仏成仏之咽喉、 愚痴愚迷之眼目也。 可秘可秘而已。 執筆釋乗専
願主釈□□
(844)
◎(43) ¬御消息集¼(13)
^*くだらせたまひてのち、 なにごとか候ふらん。 この*源藤四郎殿におもはざるにあひまゐらせて候ふ。 便のうれしさに申し候ふ。 そののちなにごとか候ふ。
^念仏の訴へのこと、 しづまりて候ふよし、 かたがたよりうけたまはり候へば、 うれしうこそ候へ。 いまはよくよく念仏もひろまり候はんずらんと、 よろこびいりて候ふ。
^0808これにつけても御身の*料はいま定まらせたまひたり。 念仏を御こころにいれてつねに申して、 念仏そしらんひとびと、 この世・のちの世までのことを、 いのりあはせたまふべく候ふ。 御身どもの料は、 御念仏はいまはなにかはせさせたまふべき。 ただひがうたる世の0845ひとびとをいのり、 弥陀の御ちかひにいれとおぼしめしあはば、 仏の御恩を報じまゐらせたまふになり候ふべし。 よくよく御こころにいれて申しあはせたまふべく候ふ。
^聖人 (法然) の*二十五日の御念仏も、 詮ずるところは、 かやうの邪見のものをたすけん*料にこそ、 申しあはせたまへと申すことにて候へば、 よくよく念仏そしらんひとをたすかれとおぼしめして、 念仏しあはせたまふべく候ふ。
^またなにごとも、 度々便には申し候ひき。 源藤四郎殿の便にうれしうて申し候ふ。
^あなかしこ、 あなかしこ。
^*入西御坊のかたへも申したう候へども、 おなじことなれば、 このやうをつたへたまふべく候ふ。
^あなかしこ、 あなかしこ。
親鸞
*性信御坊へ ▽
(762)
◎真筆消息(12)
ゆづりわたすいや女事。 みのかわりをとらせてせうあみだ仏がめしつかう女なり。 しかるをせうあみだ仏、 ひむがしの女房にゆづりわたすものなり。 さまたげをなすべき人なし。 ゆめゆめわづらいあるべからず。 のちのためにゆづりふみをたてまつるなり。 あなかしこ、 あなかしこ。
*寛元元年癸卯十二月廿一日 (花押)
(880)
◎血脈文集(5)
一 ▲法然聖人者 流罪土佐国 幡多 俗姓藤井元彦 御名
▲善信者 流罪越後国 国府 俗姓藤井善信
坐る↢罪科に↡之時の勅宣に称く
善信者 俗姓藤井 俗名善信
▲善0881恵者 无動寺大僧正御坊慈鎮和尚の御ことなりにあづけしめおはしましき
幸西者 俗姓物部常覚坊
愚禿者、 坐る↢流罪に↡之時、 望む↢勅免↡之時↡、 改て↢藤井姓↡、 以て↢愚禿之字を↡、 中納言範光卿をもて勅免をかぶらんと、 経に↢奏聞↡、 範光の卿をはじめとして、 諸卿みな愚禿の字にあらためかきて奏聞をふること、 めでたくまうしたりとてありき。 そのとき、 ほどなく聖人もゆるしましまししに、 御弟子八人あひ具してゆるされたりしなり。 京中にはみなこの様は、 しられたるなり。
¬教行証¼ 六末 (化身土巻) にいはく、 「▲愚禿釈の鸞、 建仁辛酉の暦、 雑行を棄てて本願に帰す。 元久乙丑の歳、 恩恕を蒙りて ¬選択¼ を書しき。 本願念仏集の内題の字、 ならびに 「南无阿弥陀仏往生之業念仏為↠本」 と、 釈の綽空の字と、 空の真筆をもって、 これを書せしむ。 ◆同じき日空の真影申し預りて、 図画したてまつる。 同じき二年閏七月下旬第九日、 真影の銘は、 真筆をもつて 「南无阿弥陀仏」、 「若我成仏、 十方衆生、 称我名号、 下至十声、 若不生者、 不取正覚。 彼仏今現在成仏、 当知本誓重願不虚、 衆生称念必得往生」 の真文とを書せしむ。 ◆また夢の告によりて、 綽空の字を改めて、 同じき日御筆をもって名の字を書せしめおはりぬ。 本師聖人、 今年七旬三の御歳なり」 と。
¬教行証¼ 六末 (化身土巻) 云、 「愚禿釈の鸞、 建仁辛酉の暦、 棄てゝ↢雑行を↡兮帰す↢本願に↡。 元久乙丑の歳、 蒙て↢恩恕を↡兮書しき↢¬選択を¼↡。 本願念仏集の内題の字、 并に南无阿弥陀仏往生之業念仏為↠本と、 与↢釈の綽空の字↡、 以て↢空の真筆を↡、 令む↠書せ↠之を。 同き日空の真影申預て、 奉つる↢図画↡。 同き二年閏七月下旬第九日、 真影の銘は、 以て↢真筆を↡令む↠書せ↣南无阿弥陀仏、 与を↢若我成仏、 十方衆生、 称我名号、 下至十声、 若不生者、 不取正覚。 彼仏今現在成仏、 当知本誓重願不虚、 衆生称念必得往生之真文↡。 又依て↢夢の告に↡、 改て↢綽空の字を↡、 同日以↢御筆を↡令め↠書↢名之字を↡畢。 本師聖人、 今年七旬三の御歳也。」
右此真文をもつて性信尋ね申さるるところに早くかの本尊を預るところなり。 かの本尊ならびに ¬選択集¼ 真影の銘文等、 源空聖人より親鸞聖人へ譲りたてまつる親鸞聖人より性信へ譲りたまふところなり。 かの本尊銘文なり。
右0882以↢此真文を↡性信所に↢尋ね申さるゝ↡早く所↠預↢彼の本尊を↡也。 彼本尊并に選択集真影之銘文等、 従↢自源空聖人↡奉る↠譲り↢親鸞聖人へ↡従り↢親鸞聖人↡所↤譲り↢給↣性信↡也。 彼の本尊銘文。
南无阿弥陀仏
*建暦第二壬申歳正月廿五日
黒谷法然上人御入滅 春秋満八十
賢心 御判 ▽
ª第一通は、 関東在住の門弟の疑問に答えた法語で、 臨終正念を祈り、 有念無念を沙汰することは、 ともに浄土真宗の法義にかなわないことを示す。 なお、 「有念無念の事」 という標題は後世の付加と考えられる。º
◎註釈版の底本は真宗法要所収本(¬末灯鈔¼の対校本Ⓒ)。 「古写消息」(4)の底本は高田派専修寺蔵鎌倉時代書写本、 ¬末灯鈔¼(本)の底本は滋賀県慈敬寺蔵康永三年乗専書写本。
臨終 ここでは臨終の時に初めて浄土往生が決定することを指す。
儀則 ここでは臨終における聖衆来迎の儀式のこと。
色形 ここでは仏身・浄土の荘厳相など具体的に示された仏徳のことを指す。
聖道といふは… 親鸞聖人独自の解釈。 聖道門を権化の聖者の説いた方便誘引の教えと見る意。
釈迦如来の… ¬華厳経¼ 「入法界品」 (晋訳巻五十八) には 「この童子 (善財童子) は昔頻陀伽羅城において文殊師利の教を受け、 善知識を求めて、 展転して一百一十のもろもろの善知識を経由し…」 とある。
ª第二通は、 鹿島・行方・南の荘などの常陸 (現在の茨城県) 南部の門弟のために書かれたもので、 明法房やひらつかの入道の往生について感慨を述べ、 造悪無礙の異義を誡めている。º
◎註釈版の底本は真宗法要所収本(¬末灯鈔¼の対校本Ⓒ)。 ¬末灯鈔¼(末)の底本は大阪府願得寺蔵康永元年乗専書写本、 ¬御消息集¼「広本」の底本は本派本願寺蔵室町末期書写本。
のぼられて 京都へ上られて。
ひらつかの入道 相模 (現在の神奈川県) 大磯の善福寺の開基了源とも伝えられるが、 下総結城 (現在の茨城県結城市) の称名寺所蔵文書に出る 「平塚入道」 とみるべきか。 結城市近在の八千代町に平塚という地名が中世から存在する。
くにぐに ここでは京都に対して地方の諸国のことをいう。
ゆゆしき学生 すぐれた学者。
あしざまに まちがって。
信見房 伝未詳。
ひがざまに 誤ったふうに。
いかにも… どのようにでも、 自分の心のままにすればよいと。
あるべくも… あってよいことではないと思われます。
きこえ うわさ。 評判。
なれむつぶ 親しく交際する。
ª第三通は、 その内容から、 独立した消息ではなく、 追伸であろうと考えられる。º
◎註釈版の底本は真宗法要所収本(¬末灯鈔¼の対校本Ⓒ)。 ¬末灯鈔¼(末)の底本は大阪府願得寺蔵康永元年乗専書写本、 ¬御消息集¼「広本」の底本は本派本願寺蔵室町末期書写本。
ª第四通は、 常陸 (現在の茨城県) の門弟に宛てたもの。 その内容は、 明法房の回心の事実にことよせて、 造悪無礙の異義を誡めたものである。 第二通とは内容的に重なるところが多い。º
◎註釈版の底本は真宗法要所収本(¬末灯鈔¼の対校本Ⓒ)。 ¬末灯鈔¼(末)の底本は大阪府願得寺蔵康永元年乗専書写本、 ¬御消息集¼「広本」の底本は本派本願寺蔵室町末期書写本。
これに 往生ということに。
めでたき智者 すぐれた智慧者。
それこそ ¬唯信鈔¼ ¬自力他力事¼ の著者である聖覚法印・隆寛律師こそは。
すぐべくも候はず まさることのできるものはありません。
わがおもふさまなること 自分勝手なこと。
不可思議のひがごと とんでもない間違い。 考えられないような誤り。 ここでは明法房がかつて犯した悪事を指していう。
われ往生すべければとて 自分が往生できるはずだからといって。
順次の往生 現世の命が終って、 次にただちに浄土に生れること。
かたくや候ふべからん 困難なことであるはずでしょう。
いまも… 今も法然上人御在世の時と同様で異義を立てることはしておりません。
世かくれなきことなれば 世間に知れわたったことなので。
浄土宗の義… 浄土宗の本義と全く異なる自己流の説を立てておられる人々も。
こころにくくも候はず 知りたいとも思いません。
ª第五通は、 一通の独立した消息ではなく、 もとは他の消息に添えられた追伸であったとみられている。
◎註釈版の底本は真宗法要所収本(¬末灯鈔¼の対校本Ⓒ)。 ¬末灯鈔¼(末)の底本は大阪府願得寺蔵康永元年乗専書写本、 ¬御消息集¼「広本」の底本は本派本願寺蔵室町末期書写本。
あとを… 明法房ののこした行跡を疎略にするような人々。
ª第六通は、 笠間の門弟の疑問に答えたもので、 法語の形をとっている。 内容は往生を願うものの中に自力他力の別があることを示して、 義なきを義とする本願他力の趣を明らかにし、 信心の行者を讃嘆したもの。 この消息が書かれた建長七年 (1255) は、 慈信房善鸞義絶の前年に当っており、 笠間の門弟の疑問の背景にはこの慈信房による異義のあったことが推測される。º
◎註釈版の底本は真宗大谷派蔵親鸞聖人真筆(「真筆消息」(1)と同一)。 「古写消息」(5)の底本は高田派専修寺蔵真仏上人書写本、 ¬末灯鈔¼(本)の底本は滋賀県慈敬寺蔵康永三年乗専書写本、 ¬血脈文集¼ の底本は富山県専琳寺蔵賢心本転写本。
余の仏号 阿弥陀仏以外の仏名。
めでたうしなして 立派にふるまって。
いかでか… どうして阿弥陀如来が迎え取ってくださろうか、 (迎え取ってはくださらないだろう) と思ってはなりません。
ありがたかるべし 困難であるに違いない。
弥勒仏とひとしき人 弥勒は現在の一生を過ぎると仏となる。 他力の念仏者も現世の一生を終えるとただちに仏のさとりを得るから、 このように称される。 →
便同弥勒
ª第七通は、 下野高田 (現在の栃木県芳賀郡) の覚信に与えたもの。 信の一念と行の一念は不離の関係であると説く。 古来、 この消息は 「信行一念章」 と称されている。º
◎註釈版の底本は高田派専修寺蔵親鸞聖人真筆(「真筆消息」(3)と同一)。 ¬末灯鈔¼(本)の底本は滋賀県慈敬寺蔵康永三年乗専書写本、 ¬御消息集¼「広本」の底本は本派本願寺蔵室町末期書写本。
とききて候ふ 法然上人から伝え聞いた法義であるから、 「とききて候ふ」 という。
三百文 一千文で一貫。 おおよそ一貫で米一石 (百升) が買えた。
「建…事」 までの十八字は包紙に別筆で記入。
ª第八通は、 慈信房を義絶したことを性信房へ知らせたもので、 第九通の義絶状と同日に書かれている。º
◎註釈版の底本は「富山県専琳寺蔵賢心本転写本(¬血脈文集(2)と同一¼)」。
うかれて 動揺して。
子の義 (親鸞の) 子であるという関係。
不可思議のそらごと 考えられないような虚偽。
つやつや 少しも。 全く。
うたてきことに候ふ なさけないことです。
真宗の聞書 性信房が自己の領解を記したもの。 高田専修寺蔵の弘安三年 (1280) の写本 ¬真宗聞書¼ がそれであろうといわれる。 ¬蔵外管窺録¼ にこの書についての評がある。
文たびたること (哀愍房から) 手紙をもらったこと。
唯信鈔 聖覚法印の ¬唯信鈔¼ なのか、 あるいは哀愍房の書いたもので、 性信房がそれを親鸞聖人のもとへ送ってきたものなのか不明。
ª第九通は、 慈信房義絶状ともいわれる。 義絶事件後四十九年を経た嘉元三年 (1305) に顕智上人が書写したもので、 古来、 いずれの消息集にも収められず、 また他の書写も伝わっていない。º
◎註釈版の底本は高田派専修寺蔵顕智上人書写本(「古写消息」(3)と同一)。
京より文を… 京都にいるこの親鸞から手紙をもらったとかなんとか。
これにも この親鸞に対しても。
みぶの女房 伝未詳。
たうたる文 「賜びたる」 の音便形。 くださった手紙。
つやつや… 少しも手を加えてはありませんので。
ままはは 恵信尼公を中傷していったものか。
いひまどはされたる 慈信房が言いまどわされたとする説と、 親鸞聖人が言いまどわされたとする説との両説がある。
六波羅 六波羅探題。 鎌倉幕府が京都においた出先機関。
鎌倉 鎌倉幕府のこと。
披露 上申すること。
ª第十通は、 五説・四土・三身・三宝など、 浄土真宗の教えに関する重要な名目を並べ説かれたもの。 法然上人の 「
浄土宗大意」 (¬西方指南抄¼ 所収) の解説と考えられる。º
◎註釈版の底本は真宗法要所収本(¬末灯鈔¼の対校本Ⓒ)。 ¬末灯鈔¼(本)の底本は滋賀県慈敬寺蔵康永三年乗専書写本。
菩薩乗 この注釈のもとになっている ¬浄土宗大意¼ には 「仏乗なり」 とある。
八万四千 多数の意。
浄土の学生 浄土教の学者。
ª第十一通は、 性信房に宛てたもので、 信心をえた人は補処の弥勒と同じであり、 如来と等しいと説明している。 なお、 ¬血脈文集¼(6) では 「金剛信心の事」 と標題が付されている。º
◎註釈版の底本は真宗法要所収本(¬末灯鈔¼の対校本Ⓒ)。 ¬末灯鈔¼(本)の底本は滋賀県慈敬寺蔵康永三年乗専書写本、 ¬善性本¼ の底本は高田派専修寺蔵鎌倉時代書写本、 ¬血脈文集¼ の底本は愛知県上宮寺蔵室町末期書写本。
ª第十二通は、 第十一通と同じ日に書かれたもので、 「如来とひとし」 ということに関する真仏上人の質問に答えたものである。º
◎註釈版の底本は真宗法要所収本(¬末灯鈔¼の対校本Ⓒ)。 ¬末灯鈔¼(本)の底本は滋賀県慈敬寺蔵康永三年乗専書写本、 ¬善性本¼ の底本は高田派専修寺蔵鎌倉時代書写本。
ª第十三通は、 慶信の質問状に、 親鸞聖人が直接、 加筆訂正を施し、 余白に簡単な返事を書き入れて、 蓮位の添状とともに、 慶信のもとに送り返したものである。º
◎註釈版の底本は高田派専修寺蔵慶信真筆・親鸞聖人真筆(「真筆消息」(4)と同一)、 蓮位添状は高田派専修寺蔵善性本より。 ¬末灯鈔¼(末)の底本は大阪府願得寺蔵康永元年乗専書写本、 ¬善性本¼ の底本は高田派専修寺蔵鎌倉時代書写本。
畏まりて… 以下、 慶信の質問状。 親鸞聖人の加筆・訂正を赤、 また抹消は下にˆ ˇで示した。
人のうへを その人がどんな意味でいっているのかを。
ん 慶信が 「ん」 と書いていたのを、 親鸞聖人が 「む」 と訂正しているが、 註釈版では表記の統一によりあらためて 「ん」 とされている。
日の所作とせず 日課念仏とはしません。
ひがざまにか候ふらん 間違いでしょうか。
追つて… 以下、 慶信の追伸。
南無阿弥陀仏を… 以下、 慶信の追伸に記された疑問に対する親鸞聖人の返事。
この御文… 以下、 連位の添状。 「この御文」 は慶信の上書を指す。
御咳病 せきの出る病気のこと。
のぼりて候ひし人々 京都へ上った人々。
ちくまく 竹膜 (竹の内側についている膜) のことか。 きわめて薄いことの喩え。
信心たがはず… 覚信坊は最後まで信心が変ることなくして命終されました。
のぼり候ひしに 覚信坊が関東から京都へ上りましたおりに。
ひといち 地名。 「一日市」 か。 下総下河辺吉河市 (毎月一日を市日としていた。 現在の埼玉県吉川市) とみる説がある。
みもとにてこそ… 親鸞聖人のお側で、 死ぬものならば死のうと思って参上しました。
おくれさきだつためし 親しい人に死に遅れたり、 先立って死んだりする例。
引接 浄土へ導き入れること。
御まへにて 親鸞聖人の御前で。
ª第十四通は、 「自然法爾章」 といわれる法語で、 ¬末燈鈔¼ 第五通のほか、 文明版 ¬正像末和讃¼ にも収録され、 また高田派専修寺には顕智上人の書写本が現存する。 顕智上人書写本の後跋には 「正嘉二歳戊午十二月日善法坊僧都御坊三条富小路の御坊にて聖人にあひまゐらせての聞き書き、 そのとき顕智これをかくなり」 とある。º
◎註釈版の底本は真宗法要所収本(¬末灯鈔¼の対校本Ⓒ)。 「古写消息」(6)の底本は高田派専修寺蔵顕智上人書写本、 ¬末灯鈔¼(本)の底本は滋賀県慈敬寺蔵康永三年乗専書写本。
とききて候ふ 法然上人から伝え聞いた法義であるから、 「とききて候ふ」 という。
料 ここでは 「…するためのもの」 という意。
沙汰 あれこれ論議し、 せんさくすること。
正嘉二年 1258年。
ª第十五通は、 かくねむばうの往生を知らせた高田入道の書状に対する返信。 なおこの消息には親鸞聖人の署名と花押が付されており、 聖人の消息中、 最も丁重な形式をとっている。º
◎註釈版の底本は高田派専修寺蔵親鸞聖人真筆(「真筆消息」(5)と同一)。
かくしんばう 第十三通の
連位添状に出る覚信房
△か。
ふるとしごろ 先年。
一つところ おなじところ、 つまり阿弥陀仏の浄土のこと。
仰せ (入道殿の) お言葉。
高田の入道 高田派の所伝では、 下野 (現在の栃木県) 真壁の城主大内国時が親鸞聖人に帰依して出家し、 高田入道と号したといい、 真仏上人の叔父にあたると伝えられる。
ª第十六通は、 文応元年乗信に送ったもので、 信心の行者は、 臨終の善悪にかかわらず救われると説く。 現存する親鸞聖人の消息中、 年月日の明記されている最後のものである。º
◎註釈版の底本は真宗法要所収本(¬末灯鈔¼の対校本Ⓒ)。 ¬末灯鈔¼(本)の底本は滋賀県慈敬寺蔵康永三年乗専書写本。
去年今年 去年 (正元元年・1259年)、 今年 (文応元年・1260年) は全国的な大飢饉と悪疫におそわれ、 死者がはなはだ多かった。
学生沙汰 学者ぶった論議。
さかさかしきひと いかにも賢明なようにふるまう人。
うかれたまひたる人 心が落ち着かない人。
乗信房 ¬交名牒¼ によると、 常陸奥郡 (現在の茨城県北部) の住。 数名の門下の名も伝わる。
ª第十七通は、 真浄房に宛てたもので、 権力者の力をかりて念仏の布教をはかってはならないと誡め、 弾圧をうけて、 やむを得なければいずれの地へでも移るようにと諭している。º
◎註釈版の底本は真宗法要所収本(¬御消息集¼の対校本Ⓒ)。 ¬御消息集¼の底本は本派本願寺蔵室町末期書写本
念仏のあひだのこと 念仏に関する問題。
ところせき 居づらい。 大へん困っている。
念仏とどめんひと 念仏を禁止する人。
余のひとびと 在地の権力者を指すと考えられる。
これよりは 私の方からは。
この世のならひ この末法の世の通例、 きまり。
かねて仏の説きおかせ… ¬法事讃¼ (下) に 「五濁増の時は多く疑謗し、 道俗あひ嫌ひて聞くことを用ゐず。 修行するものあるを見ては瞋毒を起し、 方便破壊して競ひて怨を生ず」 とあるのを指す。
わづらふべくてぞ… さしつかえるべき事情があって、 そのようなことになっているのでしょう。
それを 慈信房がいっていることを。
これより 私 (親鸞聖人) の方より。
めでたき御ふみ 立派な書物。 ここでは ¬唯信鈔¼ 等の書物のことを指す。
ª第十八通は、 常陸の門弟に宛てたものとみられる。 一念多念の論争を誡め、 ¬唯信鈔¼ ¬後世物語¼ ¬自力他力事¼ などの熟読を勧めている。º
◎註釈版の底本は真宗法要所収本(¬御消息集¼の対校本Ⓒ)。 ¬御消息集¼「広本」の底本は本派本願寺蔵室町末期書写本。
われはといふこと 自分の意見こそは正しいということ。
わざとも あらためてでも。
詮なきこと かいのないこと。
そのこととなきこと 無意味なこと。 重要でもないこと。
ª第十九通は、 慶西に宛てたもの。 第十七願の意趣を示し、 凡夫が仏になることは、 ひとえに仏と仏との御はからいによるといい、 「他力の信心は義なきを義とする」 と説き及んでいる。º
◎註釈版の底本は真宗法要所収本(¬御消息集¼の対校本Ⓒ)。 ¬御消息集¼「広本」の底本は本派本願寺蔵室町末期書写本、 ¬血脈文集¼ の底本は富山県専琳寺蔵賢心本転写本。
料 ため。
ª第二十通は、 浄信房の上書と親鸞聖人の返書からなる。 その返書には、 信心の人は摂取不捨の利益にあずかり正定聚・等正覚の位に定まること、 その信心の人は十方恒沙の如来によって讃嘆されるところから仏と等しいこと、 さらに他力とは義なきを義とするものであるということが説き示されている。º
◎註釈版の底本は高田派専修寺蔵親鸞聖人真筆(「真筆消息」(6)と同一。 ただし浄信上書は ¬善性本¼(2)より)。 ¬末灯鈔¼(本)の底本は滋賀県慈敬寺蔵康永三年乗専書写本、 ¬善性本¼ の底本は高田派専修寺蔵鎌倉時代書写本。
往生に… 往生のために必要なことはないと心得て、 この世を過ごしてまいりましたので。
ª第二十一通は、 阿弥陀仏の本願力の回向によって、 この上ないさとりを得しめられると信じて、 念仏すべきであると説いたもの。º
◎註釈版の底本は真宗法要所収本(¬末灯鈔¼の対校本Ⓒ)。 ¬末灯鈔¼(末)の底本は大阪府願得寺蔵康永元年乗専書写本、 ¬善性本¼ の底本は高田派専修寺蔵鎌倉時代書写本。
ふたごころなき 疑いがないこと。
ª第二十二通は、 わうごぜんにいやをんなの近況を知らせた消息である。º
◎註釈版の底本は本派本願寺蔵親鸞聖人真筆(「真筆消息」(7)と同一)。
いやをんな 親鸞聖人に仕えていた使用人とみられる。
わびゐて候ふなり 貧しく暮らしている。
もてあつかひて もてあまして。
ª第二十三通は、 教名 (養) の質問に答えたもの。 誓願と名号とを別執すべきでないと説く。 「誓願名号同一の事」 という標題は後世の付加。º
◎註釈版の底本は真宗法要所収本(¬末灯鈔¼の対校本Ⓒ)。 「古写消息」(1)の底本は高田派専修寺蔵鎌倉時代書写本、 ¬末灯鈔¼(本)の底本は滋賀県慈敬寺蔵康永三年乗専書写本。
しかるべし… もっともなこととも思われません。
なんでふわが… どうして自分のはからいをさしはさめましょうか。
ききわけしりわくる 誓願不思議を信ずるのは他力、 名号不思議を信ずるのは自力と、 聞きわけ知りわけねばならないと教える異義。
往生の業 浄土に往き生れるための因となる行為。
ª第二十四通は、 浄信の質問に答えたもの。 仏智不思議と信ずるほかに、 私のはからいがあってはならないと説く。 「仏智不思議と信ずべき事」 という標題は後世の付加とみられる。º
◎註釈版の底本は真宗法要所収本(¬末灯鈔¼の対校本Ⓒ)。 「古写消息」(2)の底本は高田派専修寺蔵鎌倉時代書写本、 ¬末灯鈔¼(本)の底本は滋賀県慈敬寺蔵康永三年乗専書写本。
つね 平生。 ふだん。
浄土の業因 浄土往生の因となるべき行業。
わたくしの 自分勝手の。
候ふなること 申すことには。
出世のこころ 浄土往生を願う心
ª第二十五通は、 鎌倉での念仏訴訟が落着したことを報じた性信房の書状に対する返書。 聖人は性信房の対処の仕方を称讃している。 なお、 この訴訟に関しては、 第四十三通にも触れられているが、 詳細は明らかでない。º
◎註釈版の底本は真宗法要所収本(¬御消息集¼の対校本Ⓒ)。 ¬御消息集¼「広本」の底本は本派本願寺蔵室町末期書写本。
おろおろ… (性信房のお手紙の前に) 大体のところは聞いております。
この御文 六月一日付の性信房の手紙を指す。
別のことは… 格別のことはまさかあるまいと。
御くだり 訴訟が終って性信房が鎌倉から下総に帰ったこと。
ことも… とりわけ新しい訴えでもありません。
念仏者の… 念仏者の中のものの道理を心得ていない人が。
性信坊の… 性信坊のとがであるかのように申しなされるのは。
かたうど 「かたびと (方人) 」 の転。 味方。
ふるごと 昔からよくあること。 昔のこと。
念仏をとどめられ 承元元年 (1207) の専修念仏停止を指す。
曲事 承久の乱 (1221) による三上皇の配流を指すものか。
陳状 原告 (訴人) の訴状に対し、 被告 (論人) の提出する反論を陳状という。
めでたう候ふべし 結構なことであるに違いありません。
ª第二十六通は、 有阿弥陀仏の質問に答えたもの。 念仏往生を否定することの誤りをただし、 信心と念仏が不離の関係であると述べる。º
◎註釈版の底本は真宗法要所収本(¬末灯鈔¼の対校本Ⓒ)。 ¬末灯鈔¼(本)の底本は滋賀県慈敬寺蔵康永三年乗専書写本。
おほかた 全く。
なにごとにかは… どうして辺地の往生でありましょうか、 (決してそうではありません)。
有阿弥陀仏 親鸞聖人の門弟の一人。 伝未詳。
ª第二十七通は、 第二十八通と同じく九月二日付であり、 内容も似ていることから、 同日に書かれたものとみられる。 諸神軽視、 造悪無礙を口実として念仏者を弾圧する在地権力者がいるが、 そうした権力者に対しては憐れみをもって念仏して彼らをたすけよと諭している。º
◎註釈版の底本は真宗法要所収本(¬御消息集¼「広本」の対校本Ⓒ)。 ¬御消息集¼の底本は本派本願寺蔵室町末期書写本。
すて 「すつ」 は無視するの意。
神祇等だにも… 天神地祇などでさえ (念仏者に) 無視されたまわないのです。
領家 荘園の領有者。
地頭 幕府任命の荘園管理職。
名主 名田を経営管理し、 年貢・公事の徴収に当った者。
やうあるべきことなり そのいわれがあるはずのことです。
の であって、 (それは…)。
ふるきひと 法然上人を指す。
めでたきやうなり 結構なことであります。
念仏を… 念仏を停止されるようなことに言動をなされておられるとかいうのは、 ほんとうに腑におちません。
あるべくもなきこと (念仏者はことさらに悪を好み行うものだという) 事実であるはずもない風評。
ª第二十八通は、 慈信房に宛てたもの。 信願房が造悪無礙の主張をするとは思えないと述べ、 臨終のありさまで往生の得否を論ずることは誤りであると指摘して、 念仏をさまたげる者に対しては彼らをたすけようと思って念仏すべきであると説く。 また追伸の部分では仏法を破滅させるのは仏法者自身であると述べる。º
◎註釈版の底本は真宗法要所収本(¬御消息集¼の対校本Ⓒ)。 ¬御消息集¼「広本」の底本は本派本願寺蔵室町末期書写本。
遠江の尼御前 伝未詳。
こころよりおこる病 邪見をいだいて、 仏教をそしったりすることなどをいう。
本 本来の姿。
ともかくもなり候はめ・いかにもなり候はめ 悪道に堕するようなことにもなるでありましょう。
それは 念仏を非難妨害されることについては。
かのひと 念仏を非難妨害する人。
法信坊 伝未詳。 「交名牒」 にも見えない。
くげどの 伝未詳。
道理をば… 道理まで失ってはおられまいと思われます。
百姓を… 一般の人々を惑わすことはありません。
ª第二十九通は、 性信房に宛てたもの。 大番役で京都へ上ったしむの入道と正念房に面会したことを喜び記している。º
◎註釈版の底本は「専琳寺蔵賢心書写本」とあるが、 愛知県上宮寺蔵室町末期書写本(¬血脈文集¼の対校本Ⓐ)か。 ¬血脈文集¼ の底本は富山県専琳寺蔵賢心本転写本。
しむの入道 伝未詳。 恵空本 ¬血脈文集¼ には 「しむしの入道」 とある。
正念房 伝未詳。
王番 大番のこと。 宮廷の警護をつとめる役。 幕府の御家人がこの役に当てられた。
御すすめと候ふ あなた (性信房) のお勧めであるということです。
念仏のあひだのこと 念仏に関する問題。 鎌倉での念仏訴訟を指す。
こころやすく 平穏無事なありさま。 ここは念仏訴訟が落着したことを指すものと考えられる。
ª第三十通は、 摂取不捨についての質問状に対する返書。 信心が定まることは釈迦・弥陀のはからいであると述べ、 弥陀に摂取されるから信心が定まり、 正定聚の位に入らしめられると説いて、 行者のはからいを誡めている。º
◎註釈版の底本は高田派専修寺蔵親鸞聖人真筆(「真筆消息」(8)と同一)。 ¬末灯鈔¼(本)の底本は滋賀県慈敬寺蔵康永三年乗専書写本、 ¬善性本¼ の底本は高田派専修寺蔵鎌倉時代書写本。
しのぶの御房 真蹟本の原型は 「しんぶつの御房」 であったが、 後人が 「しのぶの御房」 と改竄したものとみられる。 ¬末灯鈔¼ 所収本では 「真仏御房」 となっている。
ª第三十一通は、 十二光についての解説を唯信に送り与えた際の添状と考えられている。 その解説とは、 ¬弥陀如来名号徳¼ を指すと推測されている。º
◎註釈版の底本は真宗法要所収本(¬御消息集¼の対校本Ⓒ)。 ¬御消息集¼「広本」の底本は本派本願寺蔵室町末期書写本。
本 根本。
ª第三十二通は、 浄信の問いに答えたもの。 真実信心を得た人は、 如来と等しいことを示し、 そのことを自力の信心であると批判することの非を指摘している。º
◎註釈版の底本は高田派専修寺蔵親鸞聖人真筆(「真筆消息」(9)と同一)。 ¬末灯鈔¼(末)の底本は大阪府願得寺蔵康永元年乗専書写本、 ¬御消息集¼の底本は本派本願寺蔵室町末期書写本。
めでたう候ふ 結構でございます。
その定に それと同様に。
承信房 伝未詳。
ª第三十三通は、 慈信房に宛てたもの。 文面には、 関東の門弟の動揺を伝え聞いて深く悲嘆している様子がうかがわれる。 この時点では、 親鸞聖人はまだ、 慈信房の異義について十分承知していない。º
◎註釈版の底本は真宗法要所収本(¬御消息集¼の対校本Ⓒ)。 ¬御消息集¼の底本は本派本願寺蔵室町末期書写本。
五貫文 おおよそ一貫文で米一石 (百升) が買えた。
おほぶの中太郎 ¬御伝鈔¼【13】に出る
平太郎と同一人物ともいわれる。 「おほぶ」 は現在の茨城県水戸市
飯富町。 同地には真仏寺があり、 平太郎真仏を開基とする。
このひとびとのことうけたまはり候ふ 慈信房は真仏・性信・入信などの信心が変ったと親鸞聖人に報告していたらしい。
ひとのうへも 他人のことについても。
ª第三十四通は、 専信の上書に対する返事。 現生正定聚の義を示して、 義なきを義とする他力のおもむきを明かしている。º
◎註釈版の底本は高田派専修寺蔵鎌倉時代書写本(¬善性本¼(7)と同一)。
せんなく候ふべきか 意味がないことになりましょうか、 そんなはずはありません。
ª第三十五通は、 第三十六通と一連のもの。 いまごぜんのははに対し、 第三十六通を常陸の人々に見せるようにと申し送っている。º
◎註釈版の底本は本派本願寺蔵親鸞聖人真筆(「真筆消息」(10)と同一)。
御返事 端裏書であり、 上部に切封がある。
いまごぜんのはは 不明。 親鸞聖人の妻、 末娘の覚信尼公、 親鸞聖人の息男の妻の母など、 諸説があって定まらない。
ª第三十六通は、 常陸 (現在の茨城県) の人々にいまごぜんのははとそくしやうばうの扶持を依頼されたもの。 筆蹟の乱れが著しく、 最晩年に書かれた遺言状であろうともいわれる。º
◎註釈版の底本は本派本願寺蔵親鸞聖人真筆(「真筆消息」(11)と同一)。
せんしに 「善 (信) 死に」 「詮、 死に」 あるいは 「ぜんしん (善信)」 の 「ん」 を脱したもの等の諸説がある。
そくしやうばう 伝未詳。
すぐべきやうもなき… 暮らしを立てて世をすごしてゆく方法も知らない者ですので。
ª第三十七通は、 宛名は不明であるが、 その内容は念仏者の放逸無慚なふるまいを誡めたものである。º
◎註釈版の底本は真宗法要所収本(¬末灯鈔¼ の対校本Ⓒ)。 ¬末灯鈔¼(末)の底本は大阪府願得寺蔵康永元年乗専書写本、 ¬御消息集¼「広本」の底本は本派本願寺蔵室町末期書写本。
まことのそこ 真髄。
放逸無慚 勝手気ままな行動をし、 自己の心に恥じることのないこと。
あひむつるること 相親しむこと。
ひがうたる 「ひがみたる」 の音便形。 曲がった。
悪くるしからず 悪いことをしてもかまわない。
さはらぬ… 浄土往生のさまたげにはならないからといって。
その辺の人々の… 鹿島・行方の人々の、 間違ったことを説得してやめさせ。
この辺より… この親鸞の門下より出できたしるしである。 あるいは京都より出てきたとみる説もある。
ª第三十八通は、 本願寺藏本 ¬御消息集¼ (広本) には 「真仏上人御返事」 とある。 他力の中に自力ということはあるが、 他力の中にさらに奥深い他力ということはないと示す。º
◎註釈版の底本は真宗法要所収本(¬末灯鈔¼の対校本Ⓒ)。 ¬末灯鈔¼(末)の底本は大阪府願得寺蔵康永元年乗専書写本、 ¬御消息集¼の底本は本派本願寺蔵室町末期書写本。
ª第三十九通は、 随信の問いに答えたもの。 信心をたまわった時、 正定聚に住するので、 信心の人は弥勒と同じ位であり、 諸仏と等しいと説いて、 来迎・臨終をまたない旨を示している。º
◎註釈版の底本は真宗法要所収本(¬末灯鈔¼の対校本Ⓒ)。 ¬末灯鈔¼(末)の底本は大阪府願得寺蔵康永元年乗専書写本。
随信房 ¬交名牒¼ に慈善の門下としてその名がある。
ª第四十通は、 ゑん仏ばうが主人に無断で京都の親鸞聖人のもとを訪れたので、 その帰東に際して、 とりなしを真仏上人に依頼したもの。º
◎註釈版の底本は高田派専修寺蔵親鸞聖人真筆(「真筆消息」(2)と同一)。
ゑん仏ばう 伝未詳。 ¬交名牒¼ の真仏上人門下の信願の下に出る円仏房のことか。
せうまう 焼亡 (火事) であろう。
ª第四十一通は、 教忍の質問に答えたもの。 一念多念、 有念無念の争いをしてはならないと誡め、 ¬唯信鈔¼ の熟読を勧めている。º
◎註釈版の底本は真宗法要所収本(¬御消息集¼の対校本Ⓒ)。 ¬御消息集¼「広本」の底本は本派本願寺蔵室町末期書写本。
御こころざしのもの・念仏のすすめのもの 「こころざしのもの」 は門徒個人の
懇志、 「念仏のすすめのもの」 は毎月の 「
二十五日の御念仏」 に集まった同行たちが醵出した懇志を意味するようである。
一定してんず 必ずするであろう。
ª第四十二通は、 ¬宝号経¼ によって本願の念仏が非行非善の他力の行であることや、 光明名号の因縁について述べた法語である。º
◎註釈版の底本は真宗法要所収本(¬末灯鈔¼の対校本Ⓒ)。 ¬末灯鈔¼(末)の底本は大阪府願得寺蔵康永元年乗専書写本。
宝号経 現存の ¬大蔵経¼ には存しない。 ¬弥陀経義集¼ に 「又宝号王経、 非行非善、 但持仏名故、 生不退位」 とある。
ª第四十三通は、 性信房に宛てたもの。 念仏訴訟の解決を喜び、 念仏をそしる人々のために念仏することを勧め、 合せてこのことを入西にも伝えるようにと記している。º
◎「註釈版」の底本は真宗法要所収本(¬御消息集¼の対校本Ⓒ)。 ¬御消息集¼「広本」の底本は本派本願寺蔵室町末期書写本。
くだらせたまひてのち 鎌倉から (郷里の下総に) お帰りになって後。
源藤四郎殿 伝未詳。
料 考え。 思いめぐらし。
二十五日の御念仏 法然上人の命日にあたる二十五日に集って行う念仏会のこと。 上人は建暦二年 (1212) 一月二十五日に示寂。
料 ため。
◎底本は本派本願寺蔵親鸞聖人真筆。
◎底本は富山県専琳寺蔵賢心本転写本。
こ/しか 「真筆本」(上書訂正)。
は 「註釈版」、 「古写消息(5)」、 ¬末灯鈔¼ 歟室町中期写本、 ¬血脈文集(1)¼。 「真筆消息」(1)にもとづき修正。
は 「真蹟消息」(4)になし。 ¬末灯鈔(14)¼ による。
なり 「真蹟消息」(4)になし。 ¬末灯鈔(15)¼ による。
も←ぼ ¬末灯鈔(7)¼による。 (¬善性本(2)¼ も「ぼº)。
に 「真蹟消息」(6)になし。 ¬末灯鈔(7)¼、 ¬善性本(2)¼ による。
親鸞(花押) 別筆。
が/の 「註釈版」。 「真筆消息」(7)にもとづき修正。
め/な 「註釈版」。 「真跡本はªめºとも読める」 と脚注があり、 また逆に真跡本にも 「ªなºと読む説あり」 と対校註があるが、 「真筆消息」(7)にもとづき修正。
て 「註釈版」。 「真筆消息」(8)にもとづき削除。 ¬末灯鈔(13)¼、 ¬善性本(4)¼にもなし。
(花押) 「註釈版」、 ¬末灯鈔(13)¼、 ¬善性本(4)¼。 「真筆消息(8)」にもとづき修正。
「真筆消息(12)」。
(表題) 「古写消息(1)」、 ¬末灯鈔¼(9)。
候 「古写消息(1)」。
ただ 「古写消息(1)」。
名/やう 「古写消息(1)」。
へ 「古写消息(1)」。
信心 「古写消息(2)」、 ¬末灯鈔(10)ª乗専書写本º¼。
に 「古写消息(2)」、 ¬末灯鈔(10)ª乗専書写本º¼
候 「古写消息(2)」。
御判/(花押) 「古写消息(2)」、 ¬末灯鈔(10)¼ になし。
端書にいはく 「古写消息(2)」、 ¬末灯鈔(10)ª乗専書写本º¼。
の事 「古写消息(4)」。
愚禿親鸞曰、 (行末)「古写消息(4)」。
来 「古写消息(4)」には 「ライハキタルトイフ ジャウドヘコレニヤクフシヤウジヤノチカヒヲアラハスミノリナリ ヱドヲステヽシンジチノホウドニキタラシメントナリ 又カヘルトイフハグワンカイニイリヌルニヨリテカナラズダイネチハンニイタルヲホフシヤウノミヤコヘカヘルトマフスナリ」 と左傍註記あり。
迎 「古写消息(4)」には 「カウハマツトイフムカフトイフ タリキヲアラハスコヽロナリ」 と右傍注記あり。
信心のさだまるとき 「古写消息(4)」。
を 「古写消息(4)」。
を 「古写消息(4)」。
に 「古写消息(4)」。
また/は 「古写消息(4)」。
を 「古写消息(4)」。
に 「古写消息(4)」。
辺地・胎生/胎生・辺地 「古写消息(4)」。
を 「古写消息(4)」。
といふ 「古写消息(4)」。
をたのむ 「古写消息(4)」。
は 「古写消息(4)」。
も 「古写消息(4)」。
の 「古写消息(4)」。
また 「古写消息(4)」。
の 「古写消息(4)」。
南無阿弥陀仏 「古写消息(4)」。
笠間の念仏者の/念仏する人々のなかより 「古写消息(5)」。
れたる/るゝ 「古写消息(5)」、 ¬血脈文集(1)¼。
真 「古写消息(5)」。
こと/ところ 「古写消息(5)」。
はん/ふ 「古写消息(5)」。
ぞ/こそ 「古写消息(5)」。
の 「古写消息(5)」。
の 「古写消息(5)」。
わが 「古写消息(5)」。
は/を 「古写消息(5)」。
に 「古写消息(5)」。
「古写消息(5)」。
自然法爾の事。 「古写消息(6)」、 ¬末灯鈔(5)ª乗専書写本º¼。
しからしむといふことばなり。 「古写消息(6)」。
なり。 しからしむといふは 「古写消息(6)」。
法爾といふ 「古写消息(6)」。
なり 「古写消息(6)」。
およそ/すべて 「古写消息(6)」。
他力には 「古写消息(6)」。
る 「古写消息(6)」。
仏 「古写消息(6)」。
「古写消息(6)」。
も/の 「古写消息(6)」、 ¬末灯鈔(5)ª乗専書写本º¼。
申すと 「古写消息(6)」。
るべし/り 「古写消息(6)」、 ¬末灯鈔(5)ª乗専書写本º¼。。
「古写消息(6)」
有念無念の事。 ¬末灯鈔(1)ª乗専書写本º¼。
ば ¬末灯鈔(1)ª乗専書写本º¼。
則/式 ¬末灯鈔(1)ª乗専書写本º¼。
の←れ 「真宗法要所収本」(および「蓮如上人書写本」)。
の ¬末灯鈔(2)¼。
の ¬末灯鈔(2)ª真宗法要所収本º¼、 ¬血脈文集(1)¼。
生る/生ず ¬末灯鈔(2)¼。
信/身 ¬末灯鈔(2)ª乗専書写本º¼、 信/み ¬末灯鈔(2)ª真宗法要所収本º¼。
かならず ¬末灯鈔(2)¼。
¬末灯鈔(2)¼。
は ¬末灯鈔(3)ª乗専書写本º¼、 ¬善性本(5)¼、 ¬血脈文集(6)¼。
そ/こ ¬末灯鈔(3)ª乗専書写本º¼。
は/を ¬末灯鈔(4)ª乗専書写本º¼。
て/に ¬末灯鈔(5)ª乗専書写本º¼。
は ¬末灯鈔(5)ª乗専書写本º¼。
に ¬末灯鈔(6)ª乗専書写本º¼。
させ ¬末灯鈔(6)ª乗専書写本º¼。
¬末灯鈔(6)¼。
(浄信書状全) ¬末灯鈔(7)ª乗専書写本º¼。
¬末灯鈔(7)¼。
とき ¬末灯鈔(7)¼。
の ¬末灯鈔(7)¼。
の ¬末灯鈔(7)¼、 ¬善性本(2)¼。
まふし ¬末灯鈔(7)¼。
は/に ¬末灯鈔(7)¼。
は ¬末灯鈔(7)¼、 ¬善性本(2)¼。
は ¬末灯鈔(7)¼、 ¬善性本(2)¼。
諸事恐々謹言 ¬末灯鈔(7)¼。
¬末灯鈔(7)¼、 ¬善性本(2)¼。
¬末灯鈔(7)¼、 ¬善性本(2)¼。
止/正 ¬末灯鈔(8)ª乗専書写本º¼。
の ¬末灯鈔(8)ª乗専書写本º¼。
不思 ¬末灯鈔(8)ª乗専書写本º¼。
など ¬末灯鈔(8)ª乗専書写本º¼。
三/二 ¬末灯鈔(8)ª乗専書写本º¼。
候 「古写消息(1)」、 ¬末灯鈔(9)ª乗専書写本º¼。
られ ¬末灯鈔(9)ª乗専書写本º¼。
端書にいはく 「古写消息(1)」、 ¬末灯鈔(9)ª乗専書写本º¼。
すと 「古写消息(1)」、 ¬末灯鈔(9)ª乗専書写本º¼。
仏智不思議と信ずべき事 「古写消息(2)」、 ¬末灯鈔(10)ª乗専書写本º¼。
びと ¬末灯鈔(10)ª乗専書写本º¼。
ば ¬末灯鈔(10)ª乗専書写本º¼。
へ ¬末灯鈔(10)ª乗専書写本º¼。
たしかに ¬末灯鈔(11)¼。
せば、/すなり。 ¬末灯鈔(11)¼、 ¬御消息集(15)¼。
を ¬末灯鈔(11)¼、 ¬御消息集(15)¼。
かならず ¬末灯鈔(11)¼。
八/六 ¬末灯鈔(11)¼。
(花押)/親鸞 ¬末灯鈔(11)¼、 ¬御消息集(15)¼。
(以下全) ¬末灯鈔(11)¼。
仏/如来 ¬末灯鈔(13)ª乗専書写本º¼。
の ¬末灯鈔(13)¼、 ¬善性本(4)¼。
す/せた ¬末灯鈔(13)¼。
しのぶの/真仏 ¬末灯鈔(13)¼。
の ¬末灯鈔(13)¼。
(奥書) ¬末灯鈔(13)ª乗専書写本º¼。
に ¬末灯鈔(14)¼、 ¬善性本(1)¼。
は ¬末灯鈔(14)¼。
までの/にて ¬末灯鈔(14)¼。
ず ¬末灯鈔(14)¼。
にさふらふ ¬末灯鈔(14)¼。
ぼえ/ほせ ¬末灯鈔(14)¼。
せず/す ¬末灯鈔(14)ª乗専書写本º¼。
か/や ¬末灯鈔(14)¼。
らせ/り ¬末灯鈔(15)¼。
て ¬末灯鈔(15)¼。
かならず ¬末灯鈔(15)¼。
弥勒をば ¬末灯鈔(15)ª乗専書写本º¼。
承/乗 ¬末灯鈔(15)¼、 /浄 ¬御消息集(15)¼。
て ¬末灯鈔(15)¼。
承/乗 ¬末灯鈔(15)¼。
こえ/き ¬末灯鈔(15)¼。
よく ¬末灯鈔(15)¼。
ふら/は ¬末灯鈔(15)ª乗専書写本º¼、 ¬御消息集(15)¼。
承/乗 ¬末灯鈔(15)¼。
に ¬末灯鈔(15)¼、 ¬御消息集(15)¼。
し/くさふらふ ¬末灯鈔(15)¼。
一/七 ¬末灯鈔(15)¼、 ¬御消息集(15)¼。
浄信御坊御返事 ¬末灯鈔(15)¼。
の ¬末灯鈔(15)ª乗専書写本º¼。
仏と/如来を ¬末灯鈔(15)¼。
さん/す ¬末灯鈔(15)¼。
御 ¬末灯鈔(15)¼。
¬末灯鈔(15)¼、 ¬善性本(1)¼。
¬末灯鈔(15)¼。
証/乗 ¬末灯鈔(16)ª乗専書写本º¼。
散心念仏 ¬末灯鈔(17)ª乗専書写本º¼。
を/と ¬末灯鈔(17)ª乗専書写本º¼、 ¬御消息集(16)¼。
が/にか ¬末灯鈔(17)ª乗専書写本º¼、 ¬御消息集(16)¼。
も/は ¬御消息集(16)¼、 ¬末灯鈔(17)ª乗専書写本º¼になし。
ば ¬末灯鈔(18)ª乗専書写本º¼。
に/と ¬末灯鈔(18)ª乗専書写本º¼。
ん ¬末灯鈔(19)ª乗専書写本º¼。
の ¬末灯鈔(19)ª乗専書写本º¼。
ん ¬末灯鈔(19)ª乗専書写本º¼。
世/余 ¬末灯鈔(19)ª乗専書写本º¼。
を ¬末灯鈔(19)ª乗専書写本º¼、 ¬御消息集(2)¼。
証/乗 ¬末灯鈔(19)ª乗専書写本º¼、 「室町中期書写本」。
前文に続け一通として別出せず 「真宗法要所収本」(および「室町中期書写本」)。
ふし ¬末灯鈔(20)ª乗専書写本º¼、 ¬御消息集(1)¼。
ぞ←こそ 「真宗法要所収本」。
もとこそ、 こころのままにてあしきことをもおもひ、 あしきことをもふるまひなんどせしかども、 いまはさやうのこころをすてん←もともこゝろのまゝにて悪事をもふるまひなんどせじ 「真宗法要所収本」(ほか ¬末灯鈔¼ 系の諸本すべて)。 「御消息集」による。
がひ/しみ ¬末灯鈔(20)ª乗専書写本º¼、 ¬御消息集(1)¼。
の ¬末灯鈔(21)ª乗専書写本º¼。
は ¬末灯鈔(22)ª乗専書写本º¼。
(奥書) ¬末灯鈔(22)ª乗専書写本º¼。
て ¬御消息集(1)¼。
のこと/と ¬御消息集(1)¼。
まことに ¬御消息集(1)¼。
いよいよ ¬御消息集(1)¼。
のみ ¬御消息集(1)¼。
あひ ¬御消息集(1)¼。
文/門 ¬御消息集(1)¼。
め/な ¬御消息集(1)¼。
なり ¬御消息集(1)¼。
を/と ¬御消息集(1)¼。
の ¬御消息集(1)¼。
御こゝろえは ¬御消息集(1)¼。
御 ¬御消息集(1)¼。
無明の ¬御消息集(1)¼。
三 ¬御消息集(1)¼。
おぼえ ¬御消息集(1)¼。
とて ¬御消息集(1)¼。
も ¬御消息集(1)¼。
て ¬御消息集(1)¼。
て ¬御消息集(1)¼。
もの ¬御消息集(1)¼。
御名/ちかひ ¬御消息集(1)¼。
を/も ¬御消息集(1)¼。
後世/この世 ¬御消息集(1)¼。
ば ¬御消息集(1)¼。
なんぞ/いかゞ ¬御消息集(1)¼。
足 ¬御消息集(1)¼。
て ¬御消息集(1)¼。
が/でか ¬御消息集(1)¼。
の/も ¬御消息集(1)¼。
き/こえ ¬御消息集(1)¼。
こそ ¬御消息集(1)¼。
へ/ふ ¬御消息集(1)¼。
人 ¬御消息集(1)¼。
べからず/ことなかれ ¬御消息集(1)¼。
説かれて/をしへをかれて ¬御消息集(1)¼。
善をせぬひとにもちかづき ¬御消息集(1)¼。
て ¬御消息集(1)¼。
かの ¬御消息集(1)¼。
より ¬御消息集(1)¼。
る ¬御消息集(1)¼。
こそ/ぞ ¬御消息集(1)¼。
二月二十四日/ 壬子 八月十九日 ¬御消息集(1)¼。
¬御消息集(1)¼。
の ¬御消息集(2)¼。
また ¬御消息集(2)¼。
びと ¬御消息集(2)¼。
御 ¬御消息集(2)¼。
みなおなじく/おなじくみな ¬御消息集(2)¼。
の ¬御消息集(2)¼。
に/の ¬御消息集(2)¼。
ともかくも/とかく ¬御消息集(3)¼。
は ¬御消息集(3)¼。
へ/ふなり ¬御消息集(3)¼。
たまふ/んこと ¬御消息集(3)¼。
をのをの ¬御消息集(3)¼。
¬後世物語¼・ ¬御消息集(3)¼。
ども ¬御消息集(3)¼。
も ¬御消息集(3)¼。
また ¬御消息集(3)¼。
すに/し ¬御消息集(3)¼。
ひ/はせ ¬御消息集(3)¼。
ぞ/こそ ¬御消息集(3)¼。
ん/め ¬御消息集(3)¼。
ん ¬御消息集(3)¼。
おもひ、 いふまじきことをも ¬御消息集(3)¼。
ん ¬御消息集(3)¼。
ん ¬御消息集(3)¼。
んは/ば ¬御消息集(3)¼。
も ¬御消息集(3)¼。
こ ¬御消息集(3)¼。
させ ¬御消息集(3)¼。
あひ/ゐ ¬御消息集(3)¼。
ほど ¬御消息集(3)¼。
は ¬御消息集(3)¼。
て ¬御消息集(3)¼。
たゞ ¬御消息集(3)¼。
ん ¬御消息集(3)¼。
か ¬御消息集(3)¼。
まして 「真宗法要所収本」(ほか ¬末灯鈔¼ 系の諸本すべて)になし。 「御消息集」による。
を ¬御消息集(4)¼。
その ¬御消息集(4)¼。
も ¬御消息集(4)¼。
ら ¬御消息集(4)¼。
ことを ¬御消息集(4)¼。
に/身にて ¬御消息集(4)¼。
¬御消息集(4)¼。
ごと ¬御消息集(5)¼。
も/は ¬御消息集(5)¼。
人/もの ¬御消息集(5)¼。
を ¬御消息集(5)¼。
を ¬御消息集(5)¼。
も ¬御消息集(5)¼。
たゞしたからんことをばせよ、 ¬御消息集(5)¼。
は、 ¬御消息集(5)¼。
にと/んど ¬御消息集(5)¼。
ひつ/へ ¬御消息集(5)¼。
も ¬御消息集(5)¼。
さま ¬御消息集(5)¼。
も ¬御消息集(5)¼。
へ。/に、 ¬御消息集(5)¼。
も ¬御消息集(5)¼。
ば/んは ¬御消息集(5)¼。
む/まん ¬御消息集(5)¼。
つつしんで/うやまひて ¬御消息集(5)¼。
は ¬御消息集(5)¼。
は ¬御消息集(5)¼。
の文 ¬御消息集(5)¼。
て ¬御消息集(5)¼。
¬御消息集(5)¼。
も ¬御消息集(6)ª室町末期書写本º¼。
も ¬御消息集(7)ª室町末期書写本º¼。 「註釈版」は「恵空書写本(略本)」によって校訂されている。
はず ¬御消息集(7)ª室町末期書写本º¼では「ふなり」。 「註釈版」は「恵空書写本(略本)」によって校訂されている。
する/、 ¬御消息集(9)ª室町末期書写本º¼。
に ¬御消息集(9)ª室町末期書写本º¼。
びと ¬御消息集(11)ª室町末期書写本º¼。
とせん ¬御消息集(12)ª室町末期書写本º¼。
(以下全) ¬御消息集(14)ª室町末期書写本º¼。
をば/は ¬御消息集(15)¼。
ふら/は ¬御消息集(15)¼。
他力の信心のゆゑに、 浄信房のよろこばせたまひ候ふらんは、 ¬御消息集(15)¼。
浄/慶 ¬御消息集(15)¼。
返事/報 ¬御消息集(15)¼。
(一行) ¬御消息集(16)¼。
親鸞 ¬御消息集(16)¼。
¬御消息集(16)¼。
親鸞 ¬御消息集(17)ª室町末期書写本º¼。
と ¬御消息集(18)ª室町末期書写本º¼、 ¬血脈文集(3)¼。
九/廿五 ¬御消息集(18)ª室町末期書写本º¼、 ¬血脈文集(3)¼。
上 ¬善性本(1)¼。
華厳経を引きて ¬善性本(1)¼。
。 滅度をさとらしむと候 ¬善性本(1)¼。
の ¬善性本(1)¼。
れ ¬善性本(1)¼。
まり/め ¬善性本(1)¼。
を ¬善性本(1)¼。
に ¬善性本(1)¼。
るに/れば ¬善性本(1)¼。
く ¬善性本(1)¼。
あげ ¬善性本(1)¼。
十月十日 ¬善性本(1)¼。
¬善性本(1)¼。
ひ候 ¬善性本(1)¼。
なり ¬善性本(1)¼。
申すなり。 さればこそ、 ¬善性本(2)¼。
と ¬善性本(2)¼。
また無上覚をさとるとも、 ¬善性本(2)¼。
法身とまふす仏となるなり。 ¬善性本(2)¼。
は ¬善性本(2)¼。
の ¬善性本(2)¼。
し/く候 ¬善性本(2)¼。
に ¬善性本(4)¼。
て ¬善性本(4)¼。
て ¬善性本(4)¼。
いまの ¬善性本(5)¼、 ¬血脈文集(6)¼。
は ¬善性本(5)¼。
もの ¬善性本(5)¼。
ば ¬善性本(5)¼。
あるべき/あかつき ¬善性本(5)¼、 ¬血脈文集(6)¼。
つねに ¬善性本(5)¼。
く ¬善性本(5)¼、 ¬血脈文集(6)¼。
¬善性本(6)¼。
のたまはく ¬善性本(6)¼。
を ¬善性本(6)¼。
もろもろの ¬善性本(6)¼。
の ¬善性本(6)¼。
必/決 ¬血脈文集(1)¼。
いふ ¬血脈文集(1)¼。
足 ¬血脈文集(1)¼。
の ¬血脈文集(1)¼。
れ ¬血脈文集(1)¼。
し。/く、 ¬血脈文集(1)¼。
¬血脈文集(1)¼。
こころうくあさましくおぼえ候ふ。 としごろ 「賢心本転写本」になし。 「室町中期書写本」、 「恵空写傳本」によって補われている。
て ¬血脈文集(3)¼。
をば/は ¬血脈文集(3)¼。
候ふ ¬血脈文集(3)¼。
を ¬血脈文集(3)¼。
御 ¬血脈文集(3)¼。
¬血脈文集(6)¼。
愚禿親鸞。 ¬血脈文集(6)¼。
は、 ひとつこころ、 ひとつ位なり。 等正覚 ¬血脈文集(6)¼。
と ¬血脈文集(6)¼。
と/に ¬血脈文集(6)¼。
ひとしと ¬善性本(5)¼、 ¬血脈文集(6)¼。
実/宗 ¬血脈文集(6)¼。
り/る ¬血脈文集(6)¼。
(日付・署名・宛名) ¬血脈文集(6)¼。
¬血脈文集(6)¼ª室町末期書写本º。