題目
0131◎▼顕▼浄土▼真実▼教行証▼文類 ▼序
*▼愚禿▼釈▼*親鸞▼述
総序
一 法義を讃嘆す
・他力真宗総標(大経)
◎^▲*ひそかにおもんみれば、 ▼*難思の弘誓は▲*難度海を度する大船、 ▲無礙の光明は▼*無明の闇を破する▲*恵日なり。▼
◎※窃0006カニ以ミレバ、難思ノ弘誓ハ度スル↢難度海ヲ↡大船、无ノ光明ハ破スル↢无明ノ闇ヲ↡恵日ナリ。
・教興の因縁と諸聖の大悲(観経)
^▼しかればすなはち、 ▼*浄邦縁熟して、 ▲調達 (*提婆達多)、 ▼闍世 (*阿闍世) をして▼逆害を興ぜしむ。 ▼*浄業機*彰れて、 ▲*釈迦、 ▼*韋提をして▼安養を選ばしめたまへり。 これすなはち▼権化の仁斉しく苦悩の▼群萌を救済し、 ▼*世雄の悲まさしく▼逆謗▼闡提を恵まんと欲す。▼
然レバ則チ、浄*邦クニ縁熟シテ、調達闍世ヲシテ興ゼシム↢逆害ヲ↡、浄業機*彰シテ、釈迦韋提ヲシテ選バシメタマヘリ↢安養ヲ↡。斯レ乃チ、権化ノ仁、斉シク*救↢タスケ済シスクフ苦悩ノ群萌ヲ↡、世*雄オウノ悲、正シク欲ス↠恵マムト↢逆謗闡提ヲ↡。
・行信の勝徳(小経)
^▼ゆゑに知んぬ、 ▼*円融至徳の嘉号は悪を転じて徳を成す正智、 ▲*難信金剛の信楽は▼疑を除き▼証を獲しむる真理なりと。
故ニ知ヌ、円*融トオル至徳ノ*嘉ヨシ反スグル反号ハミナ反、転ジテ↠悪ヲ成ス↠徳ヲ正智、難信金剛ノ信楽ハ、除キ↠疑ヲ獲シムル↠証ヲ真理也ト。
二 有縁を勧誡す
・易修に約して勧信
^しかれば、 *凡小修し易き真教、 愚鈍往き易き▼*捷径なり。 *大聖一代の教、 この▲徳海に*しくなし。
爾レ者、凡小易キ↠修シ真教、愚鈍易キ↠往キ*捷トシ反径ナリ。スグヂナリ大聖ノ一代ノ教、無シ↠如ク↢是之徳海ニ↡。
^▼穢を捨て浄を欣ひ、 行に迷ひ信に惑ひ、 ▼心昏く識寡なく、 悪重く障多きもの、 ことに▼如来 (釈尊) の*発遣を仰ぎ、 かならず▼最勝の直道に帰して、 もつぱらこの行に奉へ、 ただこの信を崇めよ0132。▼
捨テ↠穢ヲ*忻ヒ↠浄ヲ、迷ヒ↠行ニ惑ヒ↠信ニ、心昏ク識0007寡クワ反ク、悪重ク障多キモノ、特ニ仰ギ↢如来ノ発*遣ヲ↡、必ズ帰シテ↢*最モトモ勝ノスグレ直道ニ↡、専ラ奉ヘ↢斯ノ行ニ↡、唯崇メヨ↢斯ノ信ヲ↡。
・聞法の因縁
^▼ああ、 弘誓の強縁、 *多生にも値ひがたく、 真実の浄信、 *億劫にも獲がたし。 ▼たまたま行信を獲ば、 遠く宿縁を慶べ。
*噫、ナゲク弘誓ノ強縁多生ニモ叵ク↠値ヒ、真実ノ浄信億劫ニモ叵シ↠獲。遇獲バ↢行信ヲ↡遠ク慶ベ↢宿縁ヲ↡。
・疑慮の大過
^▼もしまたこのたび*疑網に覆蔽せられば、 かへつてまた曠劫を*経歴せん。 ▼誠なるかな、 摂取不捨の▼真言、 超世希有の正法、 *聞思して遅慮することなかれ。▼
若シ也、此*廻覆↢蔽セラレバ疑網ニ↡、更テ復逕↢歴セム曠劫ヲ↡。誠ナル哉、摂取不捨ノ真言、超世希有ノ正法、聞思シテ莫レ↢遅オソク慮スルコトオモパカリ ↡。
三 造書の意を述ぶ
・七祖の師訓と選集の意楽
^▼ここに愚禿釈の親鸞、 ▼慶ばしいかな、 ▼*西蕃・月支の聖典、 ▼東夏 (中国)・日域 (日本) の師釈に、 ▲遇ひがたくしていま遇ふことを得たり、 聞きがたくしてすでに聞くことを得たり。 ▼真宗の教行証を敬信して、 ことに如来の恩徳の深きことを知んぬ。 ▼ここをもつて聞くところを慶び、 獲るところを嘆ずるなりと。
爰ニ愚禿釈ノ親鸞、慶シイ哉、西*蕃サカイ・月支ノ聖典、東夏・日域ノ師釈ニ、難クシテ↠遇ヒ今得タリ↠遇フコトヲ、難クシテ↠聞キ已ニ得タリ↠聞クコトヲ。敬↢信シテ真宗ノ教行証ヲ↡、特ニ知ヌ↢如来ノ恩徳ノ深コトヲ↡。斯ヲ以テ、慶ビ↠所ヲ↠聞ク、嘆ホムズルナリト↠所ヲ↠獲ル矣。*
0133
0008
標挙
0134▼大無量寿経 *真実の教 ▼浄土真宗
標列
▼真実の教を顕す | 一 |
真実の行を顕す | 二 |
真実の信を顕す | 三 |
真実の証を顕す | 四 |
真仏土を顕す | 五 |
化身土を顕す | 六 |
題号
0135▼顕浄土真実▼教文類 ▼一
▼愚禿釈親鸞▼集
一 先づ法門を開拓す【真宗大綱】
【1】 ^▼つつしんで▼浄土▼真宗を案ずるに、 ▲二種の*回向あり。 一つには往相、 ▽二つには還相なり。 往相の回向について真実の▽教▽行▽信▽証あり。
※謹0009デ*按ズルニ↢浄土真宗ヲ↡有リ↢二種ノ廻向↡。一ニ者往相、二ニ者還相ナリ。就イテ↢往相ノ廻向ニ↡有リ↢真実ノ教行信証↡。
二 正しく真実教を明かす
Ⅰ 教体を指定す【指定教体】
【2】 ^△それ真実の教を顕さば、 すなはち ¬*大無量寿経¼ これなり。▼
※夫レ顕サ↢真実ノ教ヲ↡者、則チ¬大无量寿経¼是也。
二 Ⅱ 大意を顕示す【大経大意】
ⅰ 正しく大意を明かす
^▼この経の大意は、 ▲弥陀、 誓を超発して、 ▲広く法蔵を開きて、 凡小を哀れんで選んで功徳の宝を施することを致す。 ▲釈迦、 世に出興して、 道教を光闡して、 群萌を拯ひ恵むに真実の利をもつてせんと欲すなり。▼
斯ノ経ノ大意者、弥陀超↢発シテ於↟誓、広ク開キテ↢法蔵ヲ↡、致ス↧哀ンデ↢凡小ヲ↡選ンデ施スルコトヲ↦功徳之宝ヲ↥。釈迦出↢興シテ於↟世、光↢ヒロシ闡シテヒラク 道教ヲ↡、*欲スナリ↧*拯ヒ↢群萌ヲ↡恵ムニ以テセムト↦真実之利ヲ↥。
二 Ⅱ ⅱ 宗体を結示す
^▲ここをもつて如来の本願を説きて経の▼宗致とす、 ▲すなはち仏の名号をもつて経の体とするなり。▼
是ヲ以テ説キテ↢如来ノ本願ヲ↡為↢経ノ宗*致トムネト↡、即チ以0010テ↢仏ノ名号ヲ↡為ル↢経ノ体ト↡也。
二 Ⅲ 真実を証誠す【出世本懐】
ⅰ 徴起
^▼なにをもつてか*出世の大事なりと知ることを得るとならば、
何ヲ以テカ得ルトナラバ↠知ルコトヲ↢出世ノ大事ナリト↡、
二 Ⅲ ⅱ 出文
a 経文
イ ¬大経¼
【3】 ^▼¬大無量寿経¼ (上) にのたまはく、
※¬大无量寿経ニ¼言ハク、
1.阿難請問 ・ 未曽瞻覩
^「▲ª今日世尊、 ▼諸根悦予し姿色清浄にして、 光顔巍々とましますこと、 ▼あきらかなる鏡の浄き影、 表裏に暢るがごと0136し。 威容顕曜にして超絶したまへること無量なり。 いまだかつて瞻覩せず、 殊妙なること今のごとくましますをば。
「今日世尊、諸根*悦ヨロコビ*予シヨロコブ、*姿スガタ色清浄ニシテ、光*顔カオバセ *巍スガタ巍トマシマスコト、如シ↣明ナル鏡ノ浄キ影、暢ルガ↢*表オモテ*裏ウラニ↡。威*容スガタ カオバセ顕*曜カヾヤクニシテ超*絶タエタリシタマヘルコト无量ナリ。未ズ ダ↢曽テ*瞻覩セ↡ミタテマツラ、*殊スグレ妙ナルコト如クマシマスヲバ↠今ノ。
1.阿難請問 ・ 五徳瑞現
^◆やや、 しかなり。 大聖、 わが心に念言すらく、 ^▽今日世尊、 奇特の法に住したまへり。 ^▽今日世雄、 仏の所住に住したまへり。 ^▽今日世眼、 導師の行に住したまへり。 ^▽今日世英、 最勝の道に住したまへり。 ^▽今日天尊、 如来の徳を行じたまへり。
唯然ナリ。大聖、我ガ*心ニ念言スラク、今日世尊、住シタマヘリ↢奇特ノ法ニ↡。今日*世雄、住シタマヘリ↢仏ノ所住ニ↡。今日世眼、住シタマヘリ↢*導師ノ行ニ↡。今日世英、住シタマヘリ↢最勝ノ道ニ↡。今日天尊、行ジタマヘリ↢如来ノ徳ヲ↡。
1.阿難請問 ・ 仏仏相念
^◆去来現の仏、 仏と仏とあひ念じたまへり。 いまの仏も諸仏を念じたまふことなきことを得んや。 ◆なんがゆゑぞ威神の光、 光いまししかるº と。
去来現ノ仏、仏ト仏ト相ヒ念ジタマヘリ。得ム↠无キコトヲ↣今ノ仏モ念ジタマフコト↢諸仏ヲ↡邪。何ガ故ゾ威神ノ光、光乃シ爾ルト。
2.如来審問
^◆ここに世尊、 *阿難に告げてのたまはく、 ª諸天のなんぢを教へて来して仏に問はしむるや、 みづから慧見をもつて威顔を問へるやº と。
於↠是世尊告ゲテ↢阿難ニ↡曰ハク、諸天ノ教ヘテ↠汝ヲ来シテ問ハシムル↠仏ニ邪、自ラ以テ↢慧見ヲ↡問ヘル↢威顔カオバセヲ↡乎ト。
3.阿難実答
^◆阿難、 仏にまうさく、 ª諸天の来りてわれを教ふるものあることなけん。 みづから所見をもつてこの義を問ひたてまつるならくのみº と。
阿難白サク↠仏0011ニ、無ケム↠有ルコト↢諸天ノ来リテ教フル↠我ヲ者↡。自ラ以テ↢所見ヲ↡問ヒタテマツル↢斯ノ義ヲ↡耳ト。
4.如来正答 ・ 先歎所問
^◆仏ののたまはく、 ª▼善いかな阿難、 問へるところはなはだ快し。 ◆深き智慧、 真妙の弁才を発して、 ▼衆生t>を愍念みんねんせんとして、 この慧義えぎを問とへり。
仏ノ言ハク、善イ哉阿難、所↠問ヘル甚ダ快コヽロヨシ。発シテ↢深キ智慧、真妙ノ*弁才ヲ↡、愍↢念セムトシテ衆生ヲ↡、問ヘリ↢斯ノ慧義ヲ↡。
4.如来正答 ・ 正顕本懐 ・ 正明
^◆如来にょらい▼無む蓋がいの大だい悲ひをもつて▼三界さんがいを矜哀こうあいしたまふ。 世よに出しゅっ興こうするゆゑは、 ▼道どう教きょうを光闡こうせんして、 群萌ぐんもうを拯すくひ恵めぐむに▼真実しんじつの利りをもつてせんと欲おぼしてなり。
如来以テ↢无*蓋ガイノオホフ反ケダシ反大悲ヲ↡*矜↢哀アイシタマフ三界ヲ↡。所↣以 ユヘ ハ出↢興スル於ニ↟世、光↢闡シテ道教ヲ↡、欲オボシテナリ↧拯スクヒ↢群萌ヲ↡恵メグムニ以テセムト↦真実之利ヲ↥。
4.如来正答 ・ 正顕本懐 ・ 示難
^◆無む量りょう億おく劫こうに値もうあひがたく見みたてまつりがたきこと、 なほし霊瑞れいずい華けの▼時ときありて時ときにいまし出いづるがごとし0137。
无量億劫ニ難ク↠値マウアヒ難キコト↠見タテマツリ、猶シシ↢霊瑞華ノ時 キアリテ時ニ乃シ出ヅルガ↡。
4.如来正答 ・ 正顕本懐 ・ 問益
^◆いま問とへるところは饒にょう益やくするところ多おおし、 一切いっさいの諸天しょてん・人民にんみんを開かい化けす。
今 マ所↠問ヘル者ハ多オホシ↠所↢饒益スル↡、開↢化ス一切ノ諸天・人民ヲ↡。
4.如来正答 ・ 述成所問
^▽阿あ難なんまさに知しるべし、 ▼如来にょらいの正しょう覚がくは、 ▼その智ち量はかりがたくして、 ▼導どう御ごしたまふところ多おおし。 ▽慧え見けん無礙むげにして▽よく遏絶あつぜつすることなしº」 と。 以上
阿難当ニシ↠知ル、如来ノ正覚ハ、其ノ智難クシテ↠量リ、多シ↠所 ロ↢導御ゴシタマフ↡。慧見无ニシテ无シト↢能ク遏アチトヾム絶スルコト↡。」 已上
二 Ⅲ ⅱ a ロ ¬如来会¼
【4】 ^▼¬*無む量りょう寿じゅ如来にょらい会え¼ (上) にのたまはく、
※¬无量寿如来会ニ¼言ク、
^「▲阿あ難なん、 仏ぶつにまうしてまうさく、 ª世せ尊そん、 われ如来にょらいの*光瑞こうずい希有けうなるを見みたてまつるがゆゑにこの念ねんを発おこせり。 天てん等とうによるにあらずº と。
「阿難白シテ↠仏ニ言サク、世尊、我見タテマツルガ↢如来ノ光瑞希有ナルヲ↡故ニ発セリ↢斯ノ念ヲ↡。非ズト↠*因ヨルニ↢天等ニ↡。
^◆仏ぶつ、 阿あ難なんに告つげたまはく、 ª善よいかな善よいかな、 なんぢいま快こころよく問とへり。 よく微み妙みょうの弁才べんざいを観察かんざつして、 よく如来にょらいに如にょ是ぜの義ぎを問とひたてまつれり。
仏告タマハク↢阿難ニ↡、善イ哉カナ善イ哉0012、汝今快 ヨク問ヘリ。善能ク*観↢察シテミソナハシクカヾミテ微妙ノ*弁才ヲワキマヘシル↡、能ク問ヒタテマツレリ↢如来ニ如是之義ヲ↡。
^◆なんぢ一切いっさい*如来にょらい・応おう・正しょう等覚とうがくおよび大だい悲ひに安あん住じゅうして群ぐん生じょうを利り益やくせんがために、 優う曇どん華げの希有けうなるがごとくして*大だい士じ世せ間けんに出しゅつ現げんしたまへり。 ゆゑにこの義ぎを問とひたてまつる。
汝為タメニ↧一切如来・応・正等覚及ビ安↢住シテ大悲ニ↡利↦益セムガ群ムラガル生ヲ↥、如クシテ↢優曇華ノ希有ナルガ↡大士出↢現シタマヘリ世間ニ↡。故ニ問ヒタテマツル↢斯ノ義ヲ↡。
^◆またもろもろの有う情じょうを哀愍あいみんし*利り楽らくせんがためのゆゑに、 よく如来にょらいに如にょ是ぜの義ぎを問とひたてまつれりº」 と。 以上
又為 メノ↤哀↢愍シ利↣楽セムガ諸ノ*有情ヲ↡故ニ、能ク問ヒタテマツレリト↢如来ニ如是之義ヲ↡。」 已上
二 Ⅲ ⅱ a ハ ¬平等覚経¼
【5】 ^▼¬*平びょう等どう覚がく経きょう¼ (一) にのたまはく、
¬平等覚経ニ¼言ク、
^「▲仏ぶつ、 阿あ難なんに告つげたまはく、 ª世せ間けんに*優う曇どん鉢ば樹じゅあり、 ただ実みありて華はなあることなし。 天てん下げに仏ぶつまします、 いまし華はなの出いづるがごとくならくのみ。 世せ間けんに仏ぶつましませども、 はなはだ値もうあふことを得うること難かたし。 いまわれ仏ぶつになりて天てん下げに出いでたり。
「仏告ゲタマハク↢阿難ニ↡、如シ↧世間ニ有リ↢優曇鉢樹↡、但有リテ↠実无シ↠有ルコト↠華、天下ニ有マシマス↠仏、乃シ華ノ出ヅルガ↥耳ナラクノミ。世間ニ有マシマセドモ↠仏、甚ダ難シ↠得ルコト↠値マ フコトヲ。今我作リテ↠仏ニ出デタリ↠於ニ↢天下↡。
^◆*なんぢ大徳だいとくありて、 聡そう明みょう善心ぜんしんに0138して、 あらかじめ仏ぶつ意いを知しる。 なんぢ忘わすれずして仏辺ぶっぺんにありて仏ぶつに侍つかへたてまつるなり。 なんぢいま問とへるところ、 よく聴きき、 あきらかに聴きけº」 と。 以上
若シ有リテ↢大徳↡、*聡明善心ニシテ、縁テ↠知ニ↢仏意ヲ↡、若シ不ズハ↠*妄レ在リテ↢仏辺ニ↡*侍 カヘタマフ↠仏ニ也。若シ今所↠問ヘル、普ク聴キキ、諦ニ聴ケト。」 已上
二 Ⅲ ⅱ b 師釈
イ 憬興¬述文賛¼
【6】 ^▼*憬きょう興ごう師しのいはく (*述文賛)、
憬興師ノ云ク、
^「△ª今日こんにち世せ尊そん住じゅう奇き特どく法ほうº といふは、 *神通じんずう輪りんによりて現げんじたまふところの相そうなり。 ただつねに異ことなるのみにあらず。 また等ひとしきものなきがゆゑに。
「今日世尊住奇特法トイフハ、 依リテ↢神通輪ニ↡所↠現ジタマフ之相ナリ。非ズ↢唯異ナルノミニ↟常ニ。亦无キガ↢等シキ者ト↡故ニ。
^△ª今日こんにち世せ雄おう住じゅう仏ぶつ所しょ住じゅうº といふは、 *普ふ等とう三昧ざんまいに住じゅうして、 *よく衆しゅ魔ま雄健おうごん天てんを制せいするがゆゑに。
今日世雄住仏所住トイフハ、 住シテ↢普等三昧ニ↡、能ク制スルガ↢衆魔雄健天ヲ↡故ニ。
^△ª今日こんにち世せ眼げん住じゅう導どう師し行ぎょうº といふは、 五ご眼げんを導どう師しの行ぎょうと名なづく。 衆しゅ生じょうを引導いんどうするに過か上じょうなきがゆゑに。
今日世眼住導師行トイフハ、 五眼ヲ名ク↢導師ノ行ト↡。引↢導スルニ衆生ヲ↡无キガ↢過上↡故ニ。
^△ª今日こんにち世せ英よう住じゅう最さい勝しょう道どうº といふは、 仏ぶつ、 四智しちに住じゅうしたまふ。 独ひとり秀ひいでたまへること、 匹ひとしきことなきがゆゑに。
今日世*英住最勝道トイフハ、 仏住シタマフ↢四智ニ↡。独リ秀ヒデタマヘルコト无キガ↠匹ヒトシキコト故ニ。
^△ª今日こんにち天尊てんそん行ぎょう如来にょらい徳とくº といふは、 すなはち*第だい一いち義ぎ天てんなり。 *仏ぶっ性しょう不ふ空くうの義ぎをもつてのゆゑに。
今日天尊行如来徳トイフハ、 即チ第一義天ナリ。以ノ↢仏性不空ノ義ヲ↡故ニ。
^△ª阿あ難なん当とう知ち如来にょらい正しょう覚がくº といふは、 すなはち奇き特どくの法ほうなり。
阿難当知如来正覚トイフハ、 即チ奇キ特ドク之法ナリ。
^△ª慧え見けん無礙むげº といふは、 最さい勝しょうの道どうを述じゅつするなり。
慧見无トイフハ、 *述ジユツスルナリ↢最勝之道ヲ↡。
^△ª無む能のう遏絶あつぜつº といふは、 すなはち如来にょらいの徳とくなり」 と。 以上
无能*遏タヘ*絶タフルトイフハ、 即チ如来之ノ徳ナリ。」 已上
二 Ⅲ ⅲ 結示
【7】 ^▼しかればすなはち、 これ真実しんじつの教きょうを顕あらわす明証みょうしょうなり。
爾0013レ者則チ*此ノ※顕真実教ノ明証也。
二 Ⅳ 結嘆【六句歎釈】
^▼まことにこれ、 ▲如来にょらい興こう世せの正しょう説せつ、 ▲奇き特どく最さい勝しょうの妙みょう典でん、 ▲*一いち乗じょう究く竟きょうの極説ごくせつ、 ▲速疾そくしつ円えん融にゅうの金言きんげん、 ▲十方じっぽう称しょう讃さんの誠じょう言ごん、 ▲時機じき純熟じゅんじゅくの真しん教きょうなりと、 知しるべしと。
誠ニ是レ如来興世之正説、奇特最*勝之妙典、一乗究竟之極説、速疾円融之金言、十方称讃之誠言、時機純熟之真教也、応ベシト↠知ル。
顕けん0139浄じょう土ど真実しんじつ教きょう文類もんるい 一
延書の底本は本山蔵本(所謂清書本)ˆ原漢文の校訂本Ⓐˇ。
愚禿釈親鸞述 現行本にない。 六要鈔の註に対応するため仮に入れた。
ひそかにおもんみれば 仏意に対して、 へりくだる意をあらわす。
彰れて Ⓐ「彰して」
浄邦縁熟して 釈尊が浄土の教えを説き明かす機縁が熟して。
浄業機彰れて 浄土往生の行業 (念仏) を修するにふさわしい機類があらわれて。
大聖一代の教 釈尊が一生の間に説いた教法。
しくなし 及ぶものはない。
多生にも値ひがたく いくたび生を重ねても容易にあえるものではなく。
疑網に覆蔽せられば 疑いの網におおわれたなら。
経歴 ここでは流る転てんをくり返すこと。
聞思して… 本願のいわれを聞きひらき、 疑いためらってはならない。
西蕃月支 月支 (月氏) は中央アジアの民族名であるが、 ここでは西蕃も月支もともにインドを指す。
諸根悦予 諸根は眼・耳・鼻・舌・身の五根 (五種の感覚器官)、 悦予はよろこぶこと。 全身によろこびがあふれている相をあらわした言葉。
大士 一般には菩薩のこと。 ここでは釈尊を指す。
なんぢ…聴け 底本には 「もし大徳ありて、 聡明善心にして、 仏意を知るによって、 もし忘れずは、 仏辺にありて仏に侍へたまふなり。 もしいま問へるところ、 あまねく聴き、 あきらかに聴け」 とある。
よく衆魔雄健天を制するがゆゑに 雄健天を天魔 (
第六天の魔王) と解するものか。 通常は 「よく衆魔を制す。 雄健天 (世雄。 仏のこと) なるがゆゑに」 と読む。
一乗究竟の極説 一切衆しゅ生じょうをことごとく仏のさとりに至らせる一乗教の究極を説きあらわした最高の教え。
底本は◎真宗大谷派蔵親鸞聖人真筆本。 Ⓐ本派本願寺蔵鎌倉時代写本、 Ⓑ高田派専修寺蔵真仏上人書写本、 Ⓒ本派本願寺蔵存如上人授与本、 Ⓓ本派本願寺蔵版 と対校。
総序は底本を欠く。 Ⓐによる。
邦 左◎クニⒷクニ反
彰 左◎シヤウ反Ⓑ―
救済 左◎タスクスクフⒷタスク反スクフ反
雄 左◎オウⒷ―
融 左◎トオルⒷトオル反
嘉 左◎ヨシ反スグル反Ⓑヨシ反
捷 左◎トシ反Ⓑトシ
忻 左Ⓑゴン反
遣 左Ⓑツカハス反
最勝 左◎モトモスグレⒷモトモ反―
噫 左Ⓑナゲク反
廻→Ⓑ回
蕃 左◎サカイ
Ⓐイヒオハルコトバナリ Ⓑイヒオハルコヽロナリ
この段は底本を欠く。 Ⓐによる。
按→Ⓑ案
欲 Ⓐ「オモテナリイ本」と左傍註記 右Ⓑオモテナリ 左Ⓑオボシテナリ
拯 左Ⓑジヨウ反
致 左◎ムネトⒷムネト反
悦 左◎ヨロコビ
予 左◎ヨロコブⒷヨロコブ反
姿 左◎スガタⒷスガタ反
顔 左◎カオバセⒷカオバセ反
巍 左◎スガタⒷスガタト反
表 左◎オモテⒷオモテ反
裏 Ⓑ「裏」と上欄註記 左◎ウラⒷウラト反
容 左◎スガタ カオバセⒷスガタ反 カオバセ反
曜 左◎カヾヤクⒷカヾヤク反
絶 左◎タエタリ
瞻覩 左◎ミタテマツラⒷミタテマツル
殊 左◎スグレⒷスグレル反
心 左◎シクⒷ―
世雄 左◎ヨニスグレタリトⒷ―
導 Ⓐ「道アル本ニコノ字」と下欄註記
弁→Ⓒ辨
蓋 左◎オホフ反ケダシ反Ⓑオヽフ反
矜哀 左Ⓑオホキニ アハレム
因 左◎ヨルⒷ―
観察 左◎ミソナハシクカヾミテⒷミソナハシ反 カヾミテ反
弁 左◎ワキマヘシルⒷ― →Ⓒ辨
有情→Ⓑ衆生
聡 左ⒶトクⒷトク反
妄 左Ⓑワスレ
侍 左Ⓐヘタテマツラムト
英 左◎スグルⒷ―
述 左ⒶⒷノブ反
遏 左◎タヘⒷ―
絶 左◎タフルⒶタフル ゼチ反Ⓑ―
此 ◎「是」を「此」と上書訂記 →Ⓑ是
顕真実教ノ→Ⓑ顕ス↢真実ノ教ヲ↡
勝 ◎右傍補記