0727◎弥み0731陀だ如来にょらい名みょう号ごう徳とく

【1】 ◎^○無む量りょう光こうといふは､ ¬経きょう¼ (*観経) にのたまはく､ ｢^▲無む量りょう寿じゅ仏ぶつに八万はちまん四し千せんの相そうまします｡ 一々いちいちの相そうにおのおの八万はちまん四し千せんの随ずい形ぎょう好こうまします｡ 一々いちいちの好こうにまた八万はちまん四し千せんの光こう明みょうまします｡ 一々いちいちの光こう明みょうあまねく十方じっぽう世せ界かいを照てらしたまふ｡ 念仏ねんぶつの衆しゅ生じょうをば摂取せっしゅして捨すてたまはず｣ といへり｡

^◇*恵え心しん院いんの僧そう都ず (*源信)､ このひかりを勘かんがへてのたまはく (*往生要集・中)､ ｢^▲一々いちいちの相そうにおのおの七しち百ひゃく五ご倶く胝てい六ろっ百ぴゃく万まんの光こう明みょうあり､ 熾し然ねん赫奕かくやく_{ヒノサカリニモユ}たり｣_{ルガゴトシ}(意) といへり｡

^◇一相いっそうより出いづるところの光こう明みょうかくのごとし｡ いはんや八万はちまん四し千せんの相そうより出いでんひかりのおほきことをおしはかりたまふべし｡ この光こう明みょうの数かずのおほきによりて､ 無む量りょう光こうと申もうすなり｡

【2】 ^◇つぎに無む辺へん光こう_{ヒカリノキワ}といふは_{ホトリナキナリ}､ かくのごとく無む量りょうのひかり十方じっぽうを照てらすこと､ きはほとりなきによりて､ 無む辺へん光こうと申もうすなり｡

【07283】 ^◇つぎに無礙むげ光こうといふは､ この日月にちがつのひかりは､ ものをへだてつれば､ そのひかりかよはず｡ この弥陀みだの御おんひかりは､ ものに*さへられずしてよろづの有う情じょうを照てらしたまふゆゑに､ 無礙むげ光こう仏ぶつと申もうすなり｡ 有う情じょうの煩悩ぼんのう悪業あくごうのこころにさへられずま0732しますによりて､ 無礙むげ光こう仏ぶつと申もうすなり｡

^◇無礙むげ光こうの徳とくましまさざらましかば､ いかがし候そうらはまし｡ かの極楽ごくらく世せ界かいとこの娑しゃ婆ば世せ界かいとのあひだに､ ▲十じゅう万億まんおくの三千さんぜん大千だいせん世せ界かいをへだてたりと説とけり｡ その一々いちいちの三千さんぜん大千だいせん世せ界かいにおのおの*四し重じゅう_ヨカサネの鉄てっ囲ち山せん_{クロガネノメ}あ_グレり｡_ルヤマ 高たかさ須しゅ弥み山せんとひとし｡ つぎに小しょう千界せんかいをめぐれる鉄てっ囲ち山せんあり､ 高たかさ第六だいろく天てんに*いたる｡ つぎに中ちゅう千界せんかいをめぐれる鉄てっ囲ち山せんあり､ 高たかさ*色界しきかいの初禅しょぜんにいたる｡ つぎに大だい千界せんかいをめぐれる鉄てっ囲ち山せんあり､ 高たかさ*第だい二に禅ぜんにいたれり｡ ^しかればすなはち､ もし無礙むげ光こう仏ぶつにてましまさずは一いち世せ界かいをすらとほるべからず｡ いかにいはんや十じゅう万億まんおくの世せ界かいをや｡

◇かの無礙むげ光こう仏ぶつの光こう明みょう､ かかる不可ふか思議しぎの山やまを徹てっ照しょうして､ この念仏ねんぶつ衆しゅ生じょうを摂取せっしゅしたまふにさはることましまさぬゆゑに､ 無礙むげ光こうと申もうすなり｡

【4】 ^◇つぎに清浄しょうじょう光こうと申もうすは､ 法蔵ほうぞう菩ぼ薩さつ､ *貪欲とんよく_ムサブルのここ_{ココロナリ}ろなくして得えたまへるひかりなり｡ ◇貪欲とんよくといふに二ふたつあり｡ 一ひとつには婬貪いんとん､ 二ふたつには財貪ざいとんなり｡ この二ふた0729つの貪欲とんよくのこころなくして得えたまへるひかりなり｡ ◇よろづの有う情じょうの汚穢わえ不ふ浄じょうを除のぞかんための御おんひかりなり｡ 婬欲いんよく・財欲ざいよくの罪つみを除のぞきはらはんがためなり｡ このゆゑに清浄しょうじょう光こうと申もうすなり｡

【5】 ^◇つぎに歓かん喜ぎ光こう_{ミニヨロコビ}といふは､_{コヽロニヨロコブナリ} 無む瞋しんの_{イカリハラダ}善根ぜんごんをも_{ツコヽロナキナリ}つて得えたまへるひかりなり｡ 無む瞋しんといふは､ おも0733てにいかりはらだつかたちもなく､ 心こころのうちにそねみねたむこころもなきを無む瞋しんといふなり｡ このこころをもつて得えたまへるひかりにて､ よろづの有う情じょうの瞋しん恚に・_{オモテニイカリ}憎嫉ぞうしつの_{コヽロニイカ}罪つみを除のぞ_{リソネミネタ}きは_ムナリらはんために得えたまへるひかりなるがゆゑに､ 歓かん喜ぎ光こうと申もうすなり｡

【6】 ^◇つぎに智慧ちえ光こうと申もうすは､ これは無痴むちの善根ぜんごんをもつて得えたまへるひかりなり｡ 無痴むちの_{グチノコヽロ}善根ぜんごん_ナキナリといふは､ 一切いっさい有う情じょう､ 智慧ちえをならひ学まなびて無む上じょう_{ウエナキホ}菩ぼ提だいに_{トケニナルコ}いた_トナリらんとおもふこころをおこさしめんがために得えたまへるなり｡ 念仏ねんぶつを信しんずるこころを得えしむるなり｡ 念仏ねんぶつを信しんずるは､ すなはちすでに智慧ちえを得えて仏ぶつに成なるべき身みとなるは､ これを愚痴ぐちをはなるることとしるべきなり｡ このゆゑに智慧ちえ光こう仏ぶつと申もうすなり｡

【7】 ^▲つぎに無む対たい光こう_{タクラブルコ}といふ_{トナキナリ}は､ 弥陀みだのひかりにひとしきひかりましまさぬゆゑに0730､ 無む対たいと申もうすなり｡

【8】 ^▲つぎに炎王えんのう光こう_{ヒヲセンナラ}と申もうす_{ベタラムヨリ}は､ ひ_{モスグレタリ}かり_トナリのさかりにして､ 火ひのさかりにもえたるにたとへまゐらするなり｡ 火ひの炎ほのおの煙けむりなきがさかりなるがごとしとなり｡

【9】 ^▲つぎに不ふ断だん光こう_{トキトシテテ}と申もう_ラサズトすは_イフナリ､ この光ひかりのときとしてたえずやまず照てらし*……

【10】^▲……ちにておはしますひかりなり｡ 超ちょうといふは､ この弥陀みだの光こう明みょうは､ 日月にちがつの光ひかりにすぐ0734れたまふゆゑに､ 超ちょうと申もうすなり｡ 超ちょうは余よのひかりにすぐれこえたまへりとしらせんとて､ 超ちょう日月にちがつ光こうと申もうすなり｡

^十じゅう二に光こうのやう､ *おろおろ書かきしるして候そうろふなり｡ くはしく申もうし尽つくしがたく､ 書かきあらはしがたし｡

【11】^阿あ弥陀みだ仏ぶつは智慧ちえのひかりにておはしますなり｡ このひかりを無礙むげ光こう仏ぶつと申もうすなり｡ 無礙むげ光こうと申もうすゆゑは､ 十方じっぽう一切いっさい有う情じょうの悪業あくごう煩悩ぼんのうのこころにさへられずへだてなきゆゑに､ 無礙むげとは申もうすなり｡ 弥陀みだの光ひかりの不可ふか思議しぎにましますことをあらはししらせんとて､ 帰き命みょう尽じん十方じっぽう無礙むげ光こう如来にょらいとは申もうすなり｡

^無礙むげ光こう仏ぶつをつねにこころにかけ､ となへたてまつれば､ 十方じっぽう一切いっさい諸仏しょぶつの徳とくをひとつに具ぐしたまふによりて､ 弥陀みだを称しょうすれば功く徳どく善根ぜんごんきはまりましまさぬゆゑに､ *龍りゅう樹じゅ菩ぼ薩さつは､ ｢▲*我われ説↢彼尊功徳事↡かのそんのくどくのじをとくに､ 衆善しゅぜん無む辺へん　にして如↢海水↡かいすいのごとし｣ (*十二礼) とをしへ0731たまへり｡ かるがゆゑに*不可ふか思議しぎ光こう仏ぶつと申もうすとみえたり｡ 不可ふか思議しぎ光こう仏ぶつのゆゑに ｢▲尽じん十方じっぽう無礙むげ光こう仏ぶつと申もうす｣ と､ 世せ親しん菩ぼ薩さつ_{テンジントモイフ} (*天親) は_{バソバンヅトモイフ} ¬往おう生じょう論ろん_{セシントモイフ}¼ (*浄土論_{ムヂヤクトモイフ}) にあらは_{ロンヂユトモイフナリ}せり｡ 阿あ弥陀みだ仏ぶつに十じゅう二にのひかりの名なまし*……

ˆ*【12】^…… ¬浄じょう土ど論ろん¼ にあらはしたまへり｡ いふ､ 諸仏しょぶつ咨し嗟しゃの願がん (第十七願) に大だい行ぎょうあり｡ ▲大だい行ぎょうといふは､ 無礙むげ光こう仏ぶつの御名みなを称しょうするなり｡ ▲この行ぎょうあまねく一切いっさいの行ぎょうを摂せっす｡ *極速ごくそく円満えんまんせり｡ かるがゆゑに大だい行ぎょうとなづく｡ ▲このゆゑによく衆しゅ生じょうの一切いっさいの無む明みょうを破はす｡ また煩悩ぼんのうを具ぐ足そくせるわれら､ 無礙むげ光こう仏ぶつの御おんちかひをふたごころなく信しんずるゆゑに､ 無む量りょう光こう明みょう土どにいたるなり｡ 光こう明みょう土どにいたれば､ 自じ然ねんに無む量りょうの徳とくを得えしめ､ 広大こうだいのひかりを具ぐ足そくす｡ 広大こうだいの光ひかりを得うるゆゑに､ さまざまのさとりをひらくなり｡ˇ

【13】^▲難なん思じ光こう仏ぶつと申もうすは､ この弥陀みだ如来にょらいのひかりの徳とくをば､ 釈しゃ迦か如来にょらいも御おんこころおよばずと説ときたまへり｡ こころのおよばぬゆゑに難なん思じ光こう仏ぶつといふなり｡

【073514】^▲つぎに無む称しょう光こうと申もうすは､ これも ｢この不可ふか思議しぎ光こう仏ぶつの功く徳どくは説とき尽つくしがたし｣ と釈しゃく尊そんのたまへり｡ ことばもおよばずとなり｡ このゆゑに無む称しょう光こうと申もうすとのたまへり｡ しかれば、*曇鸞どんらん和か尚しょうの ¬*讃さん阿あ弥陀みだ仏ぶつの偈げ¼ には､ 難なん思じ光こう仏ぶつと0732無む称しょう光こう仏ぶつとを合がっして､ ｢▲南無なも不可ふか思議しぎ光こう仏ぶつ｣ _{シヤカトアミダノチヱヲアフグルコトナリ}とのたまへり｡ この不可ふか思議しぎ光こう仏ぶつのあらはれたまふべきところを､ かねて世せ親しん菩ぼ薩さつ (天親) の*……

【15】^……としとみえたり｡ 自じ力りきの行ぎょう者じゃをば､ 如来にょらいとひとしといふことはあるべからず｡ おのおの自じ力りきの心しんにては､ 不可ふか思議しぎ光こう仏ぶつの土どにいたることあたはずとなり｡ ただ他た力りきの信心しんじんによりて､ 不可ふか思議しぎ光こう仏ぶつの土どにはいたるとみえたり｡

^かの土どに生うまれんとねがふ信者しんじゃには､ *不可ふか称しょう不可ふか説せつ不可ふか思議しぎの徳とくを具ぐ足そくす｡ こころもおよばれず､ ことばもたえたり｡ かるがゆゑに不可ふか思議しぎ光こう仏ぶつと申もうすとみえたりとなり｡

　　南無なも_{ナムハチヱナリ} 不可ふか思議しぎ_{フカシギハリナリ} 光こう仏ぶつ_{カウブチハキヤウナリトシルベシ}

*草本そうほんにいはく

0736*文応ぶんおう元年がんねん庚かのえ申さる十じゅう二に月がつ二ふつ日かこれを書写しょしゃす｡

愚ぐ禿とく親鸞しんらん八はち十じゅう八歳はちさい書かきをはりぬ｡