1305ろくようしょう だいろく きゅうまつ

 

二 Ⅱ ⅵ c ロ 私釈

【74】 とうちょうなかにおいて、 ひょうありもんあり。 ひょう総別そうべつあり。

↢当帖↡、有↠標有↠文。標↢総別↡。

そうひょうといふは、 はじめに きょ」 といふ以下いげいちぎょうこれなり。

言↢総標↡者、初↢「夫拠」↡以下一行二字是也。

べっぴょうといふは、 諸文しょもんかみにおいてだいするところのきょうろんしゃくなり。 いまこのべっぴょうじょうらい諸巻しょかんにみなもつてこれをあんず。 とうちょうにおいてはそうひょうほかずうぜんにさらにわたくしのことばなし、 ただひろ諸文しょもん引用いんようすらくのみ。 このゆゑに短慮たんりょいよいよもんまよふ。 ただし荊渓けいけい (釈韱巻一二) のいはく、 「もんたいつればげんくらからず。」 一々いちいち文言もんごんくわしくするにあたはず、 かつはしゅうしんぎょう大要たいようにあらず、 ただほぼ所引しょいん*梗概こうがいすいして祖意そいあおぐべし。 その祖意そいとは、 すなはちそうひょうあらわる。 すなはちこれ 勘決かんけつしん以下いげ、 そのこころあきらかなり。

言↢別標↡者、於↢諸文↡所↠題スル経論解釈名也。今此別標、上来諸巻皆以↠之。於↢当帖↡者総標之外、流通以前↢私詞↡、只広引↢用スラク諸文↡而已。是短慮弥迷↢文義↡。但荊渓、「得ツレバ↢文大旨↡不↠暗カラ↢元由↡。」 一々文言不↠能↢委スルニ↡、且↢自宗心行大要↡、只粗推↢知シテ所引梗概↡可↠仰↢祖意↡。其祖意者、乃顕ハル↢総標↡。即「勘決真偽」已下、其意明也。

もしぶっきょうによれば、 しんといひしょうといふ。 もしきょうによればじゃといひといふ。 しかるにあるいはによりてないきょうしんぜず。 たとひぶっきょうによれどもあたかもしんしゅうへんし、 たとひ真門しんもんれどもいちぎょうをもつぱらにせず。 あるいはしょぎょうくわへ、 あるいは雑心ざっしんじゅうす。 かくのごときのしんぎょう、 その本心ほんしんたずぬるにぶっわく迷心めいしんよりおこる。 たとひじゃきょうはなるとも化土けどたいしょういんでざるがゆゑに、 当巻とうかんにこれをかしてまさにこれをつべしとすすむ。 これをもつてせんとなす。

レバ↢仏教↡、云↠真↠正。若レバ↢外教↡云↠邪↠偽。而↠外不↠信↢内教↡。縦レドモ↢仏教↡宛↢真宗↡、縦レドモ↢真門↡不↠専ニセ↢一行↡。或↢諸行↡、或↢雑心↡。如↠此心行、尋ヌルニ↢其本心↡起↠自↢仏智疑惑迷心↡。縦ルトモ↢邪教↡不ルガ↠出↢化土胎生↡故、当巻シテ↠之↠当シト↠捨↠之。以↠此↠詮

二 Ⅱ ⅵ c ロ 『涅槃経』文

【75】 まづ ¬はん¼ のもん。 すなはち経名きょうみょうだすはこれべっぴょうなり、 以下いげみなおなじ。

¬涅槃¼文。即出スハ↢経名別標也、已下皆同。

しゅうきょう帰依きえ」 とらいふは、

言↢「終不更帰依」等↡者、

ふ。 天神てんじん地祇じぎたっとぶるところなり、 なんぞこれをいましむるや。

1306。天神地祇之所ナリ↠貴ブル、何ムル↠之乎。

こたふ。 ぶっするは釈教しゃくきょうはんじんみょうあがむるはぞく礼奠らいてんないべつなるゆゑにはっかくのごとし。 これすなはちげっ晨旦しんたんふうきょうあがむるところのかみおおくは邪神じゃしんなるがゆゑに、 三宝さんぽうするものこれにつかふることをず。

答。帰スル↢仏陀↡者釈教軌範、崇ムル↢神明↡者世俗礼奠、内外別ナルガ法度如↠此則月氏・晨旦風教、所↠崇ムル之神多クハ邪神ナルガ、帰スル↢三宝↡者不↠得↠事コトヲ↠之

ゆゑに ¬しゃ¼ (玄奘訳巻一四業品) にいはく、 「衆人しゅにん所逼しょひつおそれておお諸仙しょせん園苑えんおんおよび叢林そうりんじゅせいとう帰依きえす。 この帰依きえすぐれたるにあらず、 この帰依きえとうときにあらず。 この帰依きえによりてよくしゅだつせず。」 しょうどうしゅぎょうすでにこのせいあり、 いはんんや一向いっこう専念せんねんともがらにおいてをや。

¬倶舎¼云、「衆人恐レテ↢所逼↡多帰↢依諸仙・園菀及叢林・孤樹・制多等↡。此帰依非↠勝タルニ、此帰依非↠尊トキニ。不↧因↢此帰依↡能解↦脱衆苦↥。」 聖道修行既↢此制↡、況於↢一向専念↡哉。

このゆゑに善導ぜんどうだい ¬りんじゅうしょうねんけつ¼ にいはく、 「ふ。 じんふくとういかん。 こたふ。 にんみょうちょうたんまれてよりこのかたすでにさだまれり、 なんぞじんりてこれをべんや。 ひと迷惑めいわくしてかえりてさらにじゃもとめてしゅじょう殺害せつがいし、 じんさいしてただ罪業ざいごうし、 ますますおんしゅうむすびてかえりて寿じゅそんす。 だいいみょうもしきなばしょういかがせん、 むなしくみづからしょうおうしてかならずすくふところなし。 たしかによろしくこれをつつしむべし。」

善導大師¬臨終正念¼云、「問。神祇禍福求祷如何。答。人命長短ムマレテヨリコノカタレリ、何↢鬼神↡延ベン↠之耶。世人迷惑シテメテ↠邪殺↢害衆生↡、祭↢祀シテ神鬼↡但増↢罪業↡、マスマス↢怨讎↡反↠寿矣。大命若小鬼奈何イカヾセン、空慞惶シテ無↠所↠済タシカ↠謹シム↠之。」

これらみな邪神じゃしんつかふるはそんありてやくなきことをいましむ。 権社ごんじゃにおいてはこのかぎりにあらざるか。 なかんづくわがちょうはこれ神国しんこくなり、 おうじょう鎮守ちんじゅ諸国しょこく擁衛ようえいしょだいみょうじん、 そのほんたずぬればおう如来にょらい法身ほっしんだいいき邪神じゃしんにあひおなじかるべからず。 こう素意そい、 もともつにあり。 かつは宿しゅくぐう善縁ぜんえんむくひ、 かつはすいしゃくしょう調熟ちょうじゅくによりて、 いましょうぼうしてしょうでんとほっす、 その神恩じんおんおもふに忽諸こっしょすべからず。 しかりといへども一心いっしんいちぎょうをもつぱらにせんとほっするに、 しょうねん結縁けちえん、 なほしばらくこれをさしおくはいっしゅうはいりゅうだいじょうはんなり。 さらにかのしょうとうしんぜざるにあらず、 ただ専念せんねん専修せんじゅまもる。 この専念せんねんによりてじょうしょうずれば、 しょじょう善人ぜんにんともに一処いっしょすること、 そのせつあきらかなるがゆゑに、 しょうじゅ倶会くえわくすべからず。 一切いっさい諸仏しょぶつにともにねんせらる、 そのやくむなしからず。 べつねんぜずといへどもそのやくこうぶる。 ゆゑに弥陀みだねんずればかならず諸仏しょぶつさつみょう、 そのすいしゃくたる天神てんじん地祇じぎ、 またほんしょうりょすべからず、 ゆゑに一心いっしんをもつぱらにしてただ一仏いちぶつねんずる、 これをもつてようとなす。 かの諸神しょしんほんとうにおいては、 ふか信伏しんぶくいたす、 忽諸こっしょすべからず。

是等皆誡シム↧事フル↢邪神↡者有↠損無コトヲ↞益。於↢権社↡者非↢此↡歟。就↠中我神国也。王城鎮守諸国擁衛諸大明神、尋ヌレバ↢其本地↡、往古如来法身大士、不↠可↣↢同カル異域邪神↡。和光素意、本在↢利物↡。且↢宿世値遇善縁↡、且↢垂迹多生調熟↡、今帰シテ↢正法↡欲↠出ント↢生死↡。思↢其神恩↡不↠可↢忽緒↡。↠然リトスルニ↠専ニセント↢一心一行↡、称念結縁、猶且クハ↠之一宗廃立、大師定判ナリ。更↠不ルニ↠信↢彼利生等↡、只守↢専念・専修1307↡。依↢此専念↡生ズレ↢浄土↡者、諸上善人倶コト↢一処↡、其説明ナルガ、聖衆倶会不↠可↢疑惑↡。一切諸仏↢護念↡、其↠空カラ↢別↡蒙↢其利益↡。故ズレバ↢弥陀↡必↢諸仏・菩薩冥護↡。↢其垂迹↡天神地祇、又不↠可↠違↢本地聖慮↡。故ニシテ↢一心↡唯念ズル↢一仏↡、以↠之↠要。於↢彼諸神本地等↡者、深↢信伏↡、不↠可↢忽緒↡。

二 Ⅱ ⅵ c ロ 『般舟経』二文

【76】 つぎに ¬般舟はんじゅ¼ のもん

¬般舟¼文。

優婆うば」 とは対告たいごうひとぐ。 「もん三昧さんまい」 とは念仏ねんぶつ三昧ざんまいみょう」 とらはすなはち弥陀みだかい三宝さんぽうなり。

「優婆夷」者挙↢対告↡。「聞三昧」者念仏三昧。「帰命」等者即弥陀界之三宝也。

じん」 といふは、 いふところのはこれ邪神じゃじんなり。 「とくきちりょうにち」 といふは、 きっきょうふくはもとこれもうじょう分別ふんべつなり。 ぶっきょうがくせんひとこころくにらず、 ゆゑにそのあらわす。 ただしことこころあんずるに、 たとひ内心ないしんにおいて仏法ぶっぽうしんずといへども、 そのいまだ俗塵ぞくじんてざるのたぐいじゅんじてらいまもり、 きょうりてふうふをじんみょうといふべし。 内心ないしんにおいては、 しんむね、 まつたく動転どうてんおよぶべからざるものか。

言↢「鬼神」↡者、所↠言之鬼邪神也。言↢「不得視吉良日」↡者、吉凶・禍福妄情之分別也。学セン↢仏教↡人不↠足↠措↠心、故↢其↡。但ズルニ↢事↡、縦↢内心↡雖↠信ズト↢仏法↡、其身未↠棄↢俗塵↡之類、准ジテ↠世↠礼、入↠境フヲ↠風↠謂↢神妙↡。於↢内心↡者、信知之旨、全不↠可↠及↢動転↡者歟。

【77】 つぎおなじき ¬きょう¼ のもん。 そのこころさきおなじ。

¬経¼文。其意同↠前

二 Ⅱ ⅵ c ロ 『日蔵経』三文

【78】 つぎに ¬日蔵にちぞうきょう¼、 所引しょいんさんあり。

¬日蔵経¼、所引↠三。

いちには第八だいはちかんおうじゅん星宿しょうしゅくぼん」 のもんなかにおいてさんあり。

ニハ第八巻「魔王波旬星宿品」文、於↠中↠三。

はじめに 爾時にじ」 のしもせつきょういたるまでじゅうはちぎょうは、 これだいしょう星宿しょうしゅくあんし、 またせつわかちてしゅじょう安穏あんのんすることをかす。

「爾時」下至マデ↢「已説竟」↡廿八行余↧安↢置大小星宿↡、又分↢時節↡安↦穏1308スルコトヲ衆生↥。

つぎ又復うぶ」 のしもしっいたるまでいちじゅうぎょうは、 これだい天王てんのうならびにじんとうあんしてようせしむることをいたすことをかす。

「又復」下至マデ↢「盧虱」↡一十行余↧安↢置シテ四大天王并鬼神等↡致コトヲ↞令コトヲ↢擁護↡。

のち次復しぶ」 のしも当文とうもんつくすにいたるまでさんぎょうらいかす。

「次復」下至マデ↠尽スニ↢当文↡三行余者明↢未来記↡。

【79】 にはだいかん念仏ねんぶつ三昧ざんまいぼんだいじゅうもん

ニハ第九巻「念仏三昧品」第十文。

ない」 といふにおいてことば広博こうはくなるがゆゑにようにあらざるがゆゑに、 するにのぞくところのもんかんがおよばず。 いま所引しょいん現在げんざいもんきてわたくしにわかちてとなす。

↠云↢「乃至」↡言広博ナルガザルガ↢至要↡故、不↠及↣勘↢戴ルニ↠除之文↡。今就↢所引現在之文↡、私↠九

いち爾時にじ以下いげはちは、 これ結前けつぜんしょうかす。

「爾時」已下八字↢結前生後↡。

しゅ」 のしものうとくしゅがい」 にいたるまでぎょうは、 これにょぶつそんしてすなはちみづからつぶさにもんみょう見仏けんぶつ聞法もんぼうとくぶることをかす。

「彼衆」之下至マデ↢「不能得須臾為害」↡五行余者、↧魔女帰シテ↢仏世尊↡即コトヲ↦聞名・見仏・聞法之徳↥。

さん如来にょらい」 のしもせつごん」 にいたるまでいちぎょうは、 これおなじきにょ仏所ぶっしょかんとほっして、 ちちのためにくことをかす。 つぎに 「ない」 とは、 すなはちじゅなり。 はじめをりゃくしておわりをだす。 いはく 修学しゅがく」 のしもげん如仏にょぶつ」 にいたるまでいち四句しく、 これそのもんなり。

「如来」之下至マデ↢「説偈言」↡一行余者、↧同女欲シテ↠往ント↢仏所↡、為↠父コトヲ↞偈。次「乃至」者、即偈頌也。略シテ↠始↠終。謂「修学」下至マデ↢「還如仏」↡一四句偈、文也。

爾時にじ」 のしもだいしん」 にいたるまでいちぎょうは、 これしょにょ眷属けんぞくきて発心ほっしんすることをかす。

「爾時」之下至マデ↢「菩提心」↡一行余者、↢諸余魔女眷属聞↠偈発心スルコトヲ↡。

是時ぜじ」 のしもしゅう」 にいたるまでいちぎょうは、 これおうかの発心ほっしんてたちまちにしんしょうずることをかす。

「是時」之下至マデ↢「畏憂愁」↡一行余者、↧魔王見↢彼発心↡忽ズルコトヲ↦嗔憂↥。

ろく是時ぜじ」 のしもだい」 にいたるまでぎょうは、 もろもろのにょためにかさねてくことをかす。 にゃく以下いげのう」 にいたるまで七言しちごんはっとう以下いげいち四句しく、 これそのもんなり。

「是時」之下至マデ↢「菩提果」↡五行余者、明↢諸魔女為コトヲ↟偈。「若有」以下至マデ↢「不能壊」↡七言八句、「我等」以下一四句偈、文也。

しち爾時にじ」 のしもない」 にいたるまでいちぎょうは、 これおうかさねてしんすことをかす。

「爾時」之下至マデ↢「坐宮内」↡一行余者、↣魔王重スコトヲ↢瞋怖↡。

はち是時ぜじ」 のしもぼんぎょう」 にいたるまでいちぎょうは、 これさつぶつ説法せっぽうきてもろもろのしゅじょうとうことごとく断惑だんわく修善しゅぜんやくることをかす。

「是時」之下至マデ↢「四梵行」↡一行余者、↧菩薩聞↢仏説法↡諸衆生等尽1309コトヲ↦断惑修善之益↥。

おうじょう」 のしも当文とうもんつくすにいたるまでぎょうは、 これしょうねん観察かんざつほうかし、 また念仏ねんぶつ見仏けんぶつやくく。 このもんなかしょうねんけんしょう大念だいねん」 とらは、 ¬せんじゃくしゅう¼ のなかにこのきょうもんきてわたくしのことばくわへていはく、 「かんしゃくしていはく、 大念だいねんとはだいしょう念仏ねんぶつするなり、 しょうねんとは小声しょうしょう念仏ねんぶつするなり。 ゆゑにんぬ、 ねんすなはちこれしょうなり。」

「応浄」之下至マデ↠尽スニ↢当文↡五行余者、↢正念観察方軌↡、又説↢念仏見仏↡也。此之中、「小念見小大念」等者、¬選択集¼中↢此経文↡加↢私↡云、「感師釈シテ、大念者大声念仏スルナリ、小念者小声念仏スルナリ。故、念即唱也。」

【80】 さんにはおなじきだい十巻じっかんとうぼん」 のもん

ニハ第十巻「護塔品」文。

これじゅんきてつみさんし、 ぶつしょうじゅひてなが仏法ぶっぽうすることをかす。 もんわかちてとなす。

↧波旬説↠偈↠殃、乞↢仏摂受↡長スルコトヲ↦仏法↥。分↠文為↠五

いち時魔じま」 のしもにょ」 にいたるまでいちぎょうは、 およびしゅうともに仏所ぶっしょいたりてかんとほっするこころかす。

「時魔」之下至マデ↢「如是偈」↡一行余者、明↧魔及衆共↢仏所↡欲スル↠説ント↠偈↥。

さん」 のしも如来にょらいほう」 にいたるまでさんぎょうは、 七言しちごんはっまさしきじゅなり。

「三世」之下至マデ↢「如来法」↡三行余者、七言八句正偈頌也。

さん時魔じま」 のしも含忍がんにん」 にいたるまでいちぎょうは、 きてのちわれおよびしょうのためにかさねてしょうじゅふ。

「時魔」之下至マデ↢「悲含忍」↡一行余者、魔説↠偈後為↡重↢摂受↡。

ぶつとう四字しじは、 ぶついんなり。

「仏」等四字、仏印可也。

時魔じま」 のしも当文とうもんつくすにいたるまでぎょうは、 これおうおほきにかん清浄しょうじょうしんしょうじて厭足えんそくなきことをけっす。

「時魔」之下至マデ↠尽スニ↢当文↡二行余者、↧魔王大ジテ↢歓喜清浄之心↡無コトヲ↦厭足↥也。

二 Ⅱ ⅵ c ロ 『月蔵経』八文

【81】 つぎに ¬月蔵がつぞうきょう¼、 所引しょいんはちあり。

¬月蔵経¼、所引↠八。

いちにはだいかん諸悪しょあくじんとくきょうしんぼん第八だいはちじょうもん邪見じゃけん因縁いんねんおんするによりてすみやかにろくまんだいることをかす。 もんわかちてさんとなす。

ニハ第五巻「諸悪鬼神得敬信品」第八文。明↧依↣遠↢離スルニ邪見因縁↡速↢六度↡得コトヲ↦菩提也。分↠文為↠三

いちしょ仁者にんしゃ」 のしもじゅう」 といふにいたるまでいちぎょうは、 まづじゃはなるるにその十種じっしゅあることをひょうし、 つぎちょうもんかす。

「諸仁者」下至マデ↠云↢「為十」↡一行余者、先標↣離ルヽニ↠邪コトヲ↢其十種↡、次↢徴問↡。

一者いっしゃ以下いげしょう善道ぜんどう」 にいたるまでろくぎょうは、 まさしくそのかずぐ。

「一者」以下至マデ↢「生善道」↡六行余者、正↢其↡。

さん以是いぜ」 のしも当文とうもんつくすにいたるまでぎょうは、 そのやくかす。

「以是」之下至マデ↠尽スニ↢当文↡四行余1310者、明↢其↡也。

【82】 には第六だいろっかんおなじき 「ほん」 のもんもんわかちてとなす。

ニハ第六巻同「品」下文。分↠文↠二

はじめに ぶつしゅつ」 のしもじょうそく」 にいたるまでさんぎょうは、 ごんじゅじゅう二句にくなり。 じゅうびょうどうきてもろもろのしゃつねにすみやかにるべきことをかす。

「仏出」下至マデ↢「常速知」↡三行余者、五言偈頌十二句也。説↢十平等↡明↢諸智者常コトヲ↟知

つぎ爾時にじ」 のしも当文とうもんつくすにいたるまでさんぎょうは、 もろもろのあくたいしてかのほうるの因縁いんねんかすらくのみ。

「爾時」下至マデ↠尽スニ↢当文↡三行余者、対シテ↢諸悪鬼↡明スラク↧得↢彼↡之因縁↥耳。

【83】さんにはだい六巻ろっかんしょ天王てんのうぼんだいもん

ニハ第六巻「諸天王護持品」第九之文。

ひろ天王てんのうしょ天仙てんせんとうてん護持ごじ養育よういくするそうく。 もんわかちてとなす。

↧天王・諸天仙等護↢持養↣育スル四天下↡相↥。分↠文↠二

❶↓いちもんはじめより 「しょうぼうとういたるまでしちじゅうぎょうは、 これそん大梵だいぼん問答もんどうかす。

自↢文初↡至マデ↢「正法灯」↡七十五行↢世尊大梵問答↡。

❷↓爾時にじ仏告ぶつごう月蔵がつぞう」 のしも当文とうもんつくすにいたるまでちょうは、 これぶつ月蔵がつぞうさつげて賢劫げんごうぶつてんをもつてぼんしゃくてんとうぞくするそうかし、 またそん大梵だいぼん問答もんどう以下いげ重々じゅうじゅう所説しょせつかす。

「爾時仏告月蔵」下至マデ↠尽↢当文↡五丁余者、↧仏告↢月蔵菩薩↡賢劫四仏以↢四天下↡付↢属スル梵・釈・四天等↡相↥、又明↢世尊大梵問答以下重々所説之義↡。

❶↑はじめのなかさんあり。 はじめに 爾時にじ」 のしも養育よういく」 にいたるまでいちぎょうは、 そんといなり。

三。初「爾時」之下至マデ↢「持養育」↡一行余者、世尊問也。

②↓つぎしゃ」 のしも欲随よくずいいたるまでろくじゅうぎょうじゅう二字にじは、 梵王ぼんのうこたえなり。

「時娑婆」下至マデ↢「欲随喜」↡六十四行十二字者、梵王答也。

③↓のち仏言ぶつごん」 のしも当文とうもんつくすにいたるまではちぎょうは、 また仏説ぶっせつかす。

「仏言」之下至マデ↠尽スニ↢当文↡八行余者、又明↢仏説↡。

②↑なかろくあり。 いちはじめのじゅう四字しじは、 まづ梵答ぼんとうひょうす。

↠六。一十四字、先↢梵答↡。

大徳だいとく以下いげ瞿陀くだ」 にいたるまでぎょうは、 そつ他化たけざいらく天王てんのうしゅ夜摩やまてん、 これらのくうだい天主てんしゅ、 おのおのりょうのわがてんらと、 いでのごとく北東ほくとう南西なんざいだいしゅうようすることをかす。

「大徳」以下至マデ↢「瞿陀尼」↡五行余者、明↧兜率陀・他化自在・化楽天王・須夜摩天、此等空居四大天主、各↢無量天子等↡、如↠次護↦養スルコトヲ北東南西四大洲↥也。

さん大徳だいとく」 のしも西さい瞿陀くだ」 にいたるまでぎょうは、 しゃもん ここにはもんといふだい頭頼ずら ここにはこくといふ毘楼びる勒叉ろくしゃ ここにはぞうじょうといふ毘楼びる博叉はくしゃ ここには広目こうもくといふ、 この天王てんのう、 おのおの眷属けんぞくさきだいのごとくしゅうようすることをかす。

「大徳」之下至マデ↢「西1311瞿陀」↡五行余者、明↧毘沙門 ニハ云↢多聞↡・提頭頼 ニハ云↢持国↡・毘楼勒刄 ニハ云↢増長↡・毘楼博叉 ニハ云↢広目↡、此四天王、各与↢眷属↡如↢前次第↡護↦養スルコトヲ四洲↥。

大徳だいとく」 のしも瞿陀くだいたるまでさんじゅうぎょうは、 これじゅうはっ宿しゅくなか所当しょとうしち宿しゅく七曜しちようなか所当しょとう三曜さんようじゅうしんなか所当しょとう三辰さんしんじゅうてん童女どうにょなかにおのおのさん、 またさきいでのごとくしゅうようすることをかす。 宿しゅくようしんみな本文ほんもんえたり。

「大徳」之下至マデ↢「瞿陀尼」↡三十二行↧二十八宿之中所当七宿、七曜之中所当三曜、十二辰所当三辰、十二天童女各三、亦如↢前↡護↦養スルコトヲ四洲↥。宿・曜・辰名皆見タリ↢本文↡。

このなかじゅうはっ宿しゅく配当はいとう梵漢ぼんかんあり。 げっ配当はいとうぶっきょうせつによる。 震旦しんたん所列しょれつぞくせつか。

二十八宿配当、梵漢有↠異。月氏配当↢仏経↡。震旦所列世俗説歟。

¬けつ¼ (輔行)じゅうにいはく、 「¬とう¼ のなかのごとし、 またれんじつ婆羅ばらもんありてたいしょうひていはく、 なんぢほしるやいなや。 こたへていはく、 密要みつようすらなほれり、 いはんやこの小術しょうじゅつをや。 ひろじゅうはっ宿しゅくおよび七曜しちようとうく。 しかるに ¬きょう¼ にほうほしつらぬること、 こことややことなることあり。 このほうには西方さいほうななつ、 けいろうぼうひつしん南方なんぽうななつ、 せいりゅうせいちょうよくしん東方とうぼうななつ、 かくこうていぼうしん北方ほっぽうななつ、 ぎゅうじょきょしつへき。 ¬きょう¼ につらぬるところは、 西方さいほうぼうしょうよりおわ柳星りゅうしょういたるまで、 かくのごとくはるかにうつれば一方いっぽうにおのおのななつ。 これしちのゆゑに。」

¬弘決¼十、「如↢¬摩蹬伽¼中↡、又有↢蓮華実婆羅門↡問↢帝勝伽↡言、汝知ルヤ↠星。答、密要スラ猶知レリ、況小術ヲヤ。広↢二十八宿及七曜等↡。然¬経¼列ヌルコト↢四方↡、↠此有↢稍異コト↡。此者西方、奎・婁・胃・昂・畢・觜・参。南方七、井・鬼・柳・星・張・翼・軫。東方七、角・亢・氐・房・心・尾・箕。北方七、斗・牛・女・虚・危・室・壁。¬経¼所↠列者、西方従↢昴星↡終マデ↢柳星↡、如↠此レバ一方各七地七異。」

¬とうきょう¼、 いまのぐるところ ¬日蔵にちぞう¼ のせつおなじ。 りょうせつしめさんがためにいまもんだす。

¬摩蹬伽経¼、↢今所↠挙¬日蔵¼説↡同。為↠示サンガ↢両説↡今出↠文也。

五に 大徳だいとく」 のしも養育よういく」 にいたるまでじゅうぎょうは、 これべつにこのえんだいじゅうろく大国だいこくにして、 だい天王てんのうおのおのこくりょうして護持ごじ養育よういくすることをかす。

「大徳」之下至マデ↢「持養育」↡十二行余↧別↢此閻浮提十六大国↡、四大天王各領シテ↢四国↡護持養育スルコトヲ↥。

ろく大徳だいとく」 のしもよくずい」 にいたるまではちぎょうは、 これ梵王ぼんのういにしえかみけっして、 ぶつここにしてもろもろのじんとうぶんあんして護持ごじ養育よういくしたまへとしょうずることをかす。

「大徳」之下至マデ↢「欲随喜」↡八行余者、↧梵王引↠古シテ↠上、請1312ズルコトヲ↦仏↠此分↢布安↣置シテ鬼神等↡護持養育シタマヘト↥。

③↑さんなかさんとなす。 はじめのじゅうは、 ぶついんかす。

↠三。初十字者、明↢仏印可↡。

つぎ爾時にじ」 のしもじゅうさんは、 かんとほっすることをかす。

「爾時」下十三字者、明↠欲スルコトヲ↠説ント↠偈

のちげん」 のしもしちぎょういちは、 まさしくこれごんじゅう四句しくそのじゅなり。 そうじてじょうらい問答もんどうくらくのみ。

後「示現」下七行一字、正是五言二十四句其偈頌也。総ジテクラク↢上来問答↡耳。

❷↑なかとなす。 はじめに 爾時にじ」 のしもじゅう二字にじは、 まづごうみょうかす。

為↠二。初「爾時」下十二字者、先↢告命↡。

つぎりょう」 のしもは、 これしょうせつなり。 なかにおいてしちあり。

「了知」下正説也。於↠中↠七。

いちもんはじめより 「養育よういくいたるまでじゅうぎょうは、 これ賢劫げんごうぶつぞくかす。

自↢文之初↡至マデ↢「持養育」五十行者、↢賢劫四仏付嘱↡。

爾時にじそんもん」 のしも護持ごじいたるまでじゅういちぎょうは、 これそん大梵だいぼん問答もんどうかす。

「爾時世尊復問」之下至マデ↢「応如是」↡廿一行余↢世尊大梵問答↡。

はじめのぎょうはこれそんとい

二行余世尊問、

しゃ」 のしも梵王ぼんのうこたえなり。 このこたえさんあり。 はじめに 過去かこ」 のしも護持ごじ」 にいたるまでいちぎょうは、 まさしく仏問ぶつもんこたふ。

「時娑婆」下梵王答也。此↠三。初「過去」下至マデ↢「作護持」↡一行余者、正↢仏問↡。

つぎ而我にが」 のしも大衆だいしゅ亦願やくがん容恕ようじょ といふにいたるまでろくぎょうは、 大梵だいぼんあやまちしゃす。

「而我」下至マデ↠云↢「大衆亦願容恕」↡六行余者、大梵謝↠過

のち我於がお」 のしもじゅうぎょうは、 あきらかに梵王ぼんのう過去かこ三仏さんぶつ教勅きょうちょく今仏こんぶつちょくこうぶるによるがゆゑに、 三宝さんぽうたねにおいて断絶だんぜつせしめず、 ちかひてあくぎょうしゅじょうしゃしょうぎょうほうしゅじょうようすべきことをぶ。

「我於」下十行余者、明梵王述↫由ルガ↠蒙ルニ↢過去三仏教勅今仏↡故、於↢三宝↡不↠令↢断絶↡、誓コトヲ↪遮↢障悪行衆生↡護↩養行法衆生↨。

さん仏言ぶつごん以下いげじゅうさんは、 ぶついんかす。

「仏言」以下十三字者、明↢仏印可↡。

爾時にじ仏告ぶつごうひゃくおく」 のしも切種さいしゅいたるまでじゅうぎょうは、 これそんだい梵王ぼんのうちょくして邪見じゃけんしゅじょうしゃ善法ぜんぽうじゅうせしめてよういたさば、 なんぢろくまんじてすみやかにしゅじょうずべしときたまふことをかす。

「爾時仏告百億」之下至マデ↢「切種智」↡二十四行↧世尊勅シテ↢大梵王↡説タマフコトヲ↞可シト↧遮↢止邪見衆生↡令メテ↠住↢善法↡致↢護養↡者、汝満ジテ↢六度↡速↦種智↥。

しゃ」 のしもおうにょ」 にいたるまでぎょうは、 これ大梵だいぼんぶっちょくりょうじゅそん梵言ぼんごんいんしたまふことをかす。

「時娑婆」下至マデ↢「応如是」↡四行余者、↧大梵領↢受仏勅↡世尊印↦可シタマフコトヲ梵言↥。

ろく爾時にじ以下いげしゅ善道ぜんどう」 にいたるまでさんぎょうは、 もろもろのさつしょだいしょうもんおよび諸衆しょしゅとう如来にょらいとくさんずることをかす。

「爾時」已下至マデ↢「趣善道1313」↡三行余者、明↣諸菩薩・諸大声聞及諸衆等讃ズルコトヲ↢如来↡。

しち爾時にじ以下いげ当文とうもんつくすにいたるまでじゅうぎょうは、 これそんかさねてじゅきてかみのごときのべたまふことをかす。 はじめのじゅうさんかんとほっすることをかす。 ごう以下いげはいはゆるごんじゅうはっ、 そのじゅなり。

七「爾時」已下至マデ↠尽↢当文↡十五行余↧世尊重↢偈頌↡宣タマフコトヲ↦如↠上↥。初十三字↠欲スルコトヲ↠説ント↠偈。「我告」以下所謂五言四十八句、其偈頌也。

【84】にはおなじき第七だいしちかんしょとくきょうしんぼん」 のもん。 「ない」 のことばまかせてしばらくわかちてさんとなす。

ニハ同第七巻「諸魔得敬信品」之文。任↢「乃至」言↡、且為↠三

はじめに 爾時にじ」 のしも所乏しょもう」 にいたるまでろくぎょうは、 これしょそんまえにしてちかいおこすことをかす。

「爾時」下至マデ↢「无所乏」↡六行余者、↧諸魔↢世尊↡発コトヲ↦護持↥。

つぎ於此おし」 のしもぶつしょうぼう」 にいたるまでしちぎょうは、 これ三仏さんぶつおよびいまのそんしょ隆伏ごうぶくしょうぼう護持ごじすることをかす。

「於此」下至マデ↢「仏正法」↡七行余者、↧三仏及世尊隆↢伏諸魔↡護↦持スルコトヲ正法↥。

のち一切いっさい」 のしもぎょうは、 もろもろの天衆てんしゅことごとくほう息災そくさいちかいおこすことをかすなり。

「一切」下二行余者、明↣諸天衆咸コトヲ↢護法息災↡也。

【85】にはおなじきかんだい頭頼ずら天王てんのう護持ごじぼん」 のもん

ニハ巻「提頭頼天王護持品」文。

はじめにはぶつ日月にちがつてんちょくしてなんぢわが仏法ぶっぽう護持ごじせば、 まさに得寿とくじゅ除災じょさいやくあたふべしとくことをかす。

ニハ↧仏勅シテ↢日月天子↡説コトヲ↦汝護↢持セバ仏法↡者、当シト↞与↢得寿除災之益↡。

のちにはひゃくおく天王てんのうとうおなじく仏前ぶつぜんにしてぶっちょくりょうじゅすることをかす。

ニハ↧百億四天王等、同↢仏前↡領↦受スルコトヲ仏勅↥。

【86】ろくにはおなじきだい八巻はちかん忍辱にんにくぼん」 のもんもんわかちてとなす。

ニハ第八巻「忍辱品」文。分↠文為↠四

いちはじめのじゅうは、 ぶつ対告たいごう所言しょごんいんしたまふことをかす。

十字者、明↣仏印↢可シタマフコトヲ対告所言↡。

にゃくあい」 のしもいちぎょうは、 これえんごんらく仏道ぶつどう護持ごじしてまさに福報ふくほうべきことをかす。

「若有愛」下一行余者、↧厭苦・欣楽之機、護↢持シテ仏道↡当コトヲ↞得↢福報↡。

さんにゃくしゅ」 のしもいちぎょうは、 しゅっものはんいんかぶることをかす。

「若有衆」下一行余者、明↣出家者被コトヲ↢涅槃↡。

にゃくしゅつ」 のしもぎょうは、 ほうをもつて種々しゅじゅあくぎょういたしゅじょう三宝さんぽうしゅだんじてごくすることをかす。

「若復出」下五行余者、明↧以↢非法↡致↢種々之悪行↡衆生、断ジテ↢三宝↡堕スルコトヲ↦地獄↥也。

【87】しちにはおなじき 「ほん」 のもん。 これてんりゅう以下いげ雑類ぞうるいみな仏前ぶつぜんにしてわれらしゅっひとまもりて、 もろもろの所須しょしゅあた悩乱のうらんせしめばよろしく擯罰ひんばつすべしときてのたまふことをかすなり。

1314ニハ同「品」之文。↫天・龍以下雑類皆↢仏前↡説ノタマフコトヲ我等護↢出家↡、与↢諸所須↡令メバ↢悩乱↡者宜シト↩擯罰↨也。

【88】はちにはまたおなじき 「ほん」 のもん。 これまさに占相せんそうもうじょうはなれ、 しゅじゅうしてふかしょうけんしんずべきかすらくのみ。

ニハ又同「品」文。スラク↩当↧離↢占相妄情↡、修習シテ↦正見↥義ノミ

ふ。 ¬だいじゅう¼ の諸文しょもんじょうらい所用しょようなんのようかあるや。

問。¬大集¼諸文、上来所用有↢何↡耶。

こたふ。 引用いんようしゅ、 たやすくもつてはかりがたし。 ただし短慮たんりょをもつてすいくわへば、 そんすでに諸天しょてんないりゅうじんはちたいして、 ちょくしてだいてんぞくしたまふ。 かれらのともがら、 また仏前ぶつぜんにしてぶっちょくりょうのうして、 善人ぜんにんをしてねんしゅせしめて、 もし悩乱のうらんせばたちまちにもつて擯罰ひんばつし、 造悪ぞうあくひとをして善法ぜんぽうじゅうせしめんといふこととう、 そのしゃくねんなり。 これをもつてこれをおもふに、 諸善しょぜんなほしかなり、 いはんや念仏ねんぶつひとそのやくこうぶらんこと、 あへてうたがふべからず。 しかればその諸天しょてんとうつかへざるせつまもりてこれをさしおき、 一心いっしん念仏ねんぶつせば、 おのづからかの諸天しょてんりゅうじんとう護持ごじ養育よういくあずからんこときてろんぜず。 よりて専念せんねんすすめて一心いっしんただしくせんがためにこれをかるるか。 また専念せんねんそむきてかの諸天しょてんりゅうじんとうつかへば、 たとひ念仏ねんぶつまじふとも雑修ざっしゅたるによりてそのやくたいしょうたるべきがゆゑに、 そのしめさんがために当巻とうかんなかにこれをかるるをや。

答。引用意趣、輙↠測。但↢短慮↡加↢愚推↡者、世尊既シテ↢諸天乃至龍神八部↡、勅シテ而付↢嘱シタマフ四大天下↡。彼等之輩、又↢仏前↡領↢納シテ仏勅↡、言コト↧令シメテ↢善人ヲシテ念持守護↡、若悩乱セバ者忽擯罰、令シメント↣造悪ヲシテ↢善法↡等↥、其義灼然ナリ。以↠之フニ↠之、諸善猶然ナリ、況念仏人蒙ランコト↢其護益↡、敢不↠可↠疑。然者守↧其↠事↢諸天等↡説↥閣↠之、一心念仏セバランコト↢彼諸天・龍神等護持養育↡措而不↠論。仍勧↢専念↡為↠正センガ↢一心↡被↠引↠之歟。又背↢専念↡事↢彼諸天・龍神等↡者、縦フトモ↢念仏↡依ルニ↢雑修↡其益可↠為↢胎生↡之故、為↠示サンガ↢其↡当巻之中↠引↠之ヲヤ

二 Ⅱ ⅵ c ロ 『首楞厳経』文

【89】つぎに ¬しゅりょうごん¼ のもん

¬首楞厳¼文。

いまこの ¬きょう¼ は禅門ぜんもんしょしゅちょう法門ほうもん直達じきたつようなり。 しかれどもりきしゅぎょうたるによりて、 進道しんどうりがたく、 とくはかりがたし。 ぎょうもしそむきてふういまだじゅくせずば、 しょうどうおかして退縁たいえんきおひやすからん。 かつはこんどん差別しゃべつにより、 かつはれんぎょうしゅ厚薄こうはくきて、 じきせいさだめてひとによらんか。 きょうぶくしがたきこと、 もんにありて炳然へいねんなり。 修道しゅどうひと、 たれかもつておそれざらん。 しかるにわがしんしゅうばく造悪ぞうあくれったりといへども、 ぶっこうぶるがゆゑにのうおそれず。 まことにこれりき思議しぎなり。 ゆゑに引用いんようこころりき一門いちもんにょうなきことをしきせしめんがためなり。

今此¬経¼者禅門所依、竪超法門、直達要路ナリ。然ドモタル↢自力修行↡、進道難↠知、得悟叵↠測。解行若工夫未↠熟、魔障動退縁易カラン↠競。且↢根機利鈍差別↡、且↢練行苦修厚薄↡、直悟成否定ラン↠人1315歟。魔コト↠伏、在↠文炳然ナリ。修道之人、誰ラン↠恐。而真宗、タリ↢具縛造悪劣機↡、被ブルガ↢仏加↡故不↠恐↢魔悩↡。誠他力不思議也。故引用ナリ↠令ンガ↤識↣知他力一門コトヲ↢魔嬈↡也。

二 Ⅱ ⅵ c ロ 『潅頂経』文

【90】つぎに ¬かんじょうぎょう¼ のもん

¬潅頂経¼文。

ふ。 「さんじゅうろく神王しんのう」 とはなんらをすや。

問。「三十六部之神王」者指↢何等↡乎。

こたふ。 せつありといへども、 いちによらば、 さんじゅう六禽ろっきんこれそのたいなり。 そのたいといふは、 ¬かん¼ のはち (巻八下) にいはく、 「じゅうにすなはちさんじゅう六狩ろくしゅあり。 とらさんあり、 はじめはこれたぬきつぎはこれひょうつぎはこれとらさんあり、 きつねうさぎむじなたつさんあり、 たつみづちうお。 この東方とうぼうぞくせり、 もくなり。 このものはじめなかすえとによりてつたへてぜんをなす。 さんあり、 せみこいへびうまさんあり、 鹿しかうまのろひつじさんあり、 ひつじかりたか。 この南方なんぽうぞくす、 なり。 さるさんあり、 くろさるさるおおさるとりさんあり、 とりにわとりきじいぬさんあり、 いぬおおかみやまいぬ。 この西方さいほうぞくす、 こんなり。 さんあり、 いのこせんざんこういのししさんあり、 ねこねずみ伏翼こうもりうしさんあり、 うしかにかわかめ。 この北方ほっぽうぞくす、 すいなり。」 もし時媚じみぜんときさまたぐ、 まさしくそのときりてべばる。 このゆゑに ¬かん¼ にこのだす。 ほうふる眷属けんぞくたりといへども、 かえりてさんひとしゅすることをかす。

答。雖↠有↢異説↡、依↢一義↡者、三十六禽体也。言↢其体↡者、¬止観¼八云、「十二時即有↢卅六狩↡。寅↠三、初狸、次豹、次是虎。卯↠三、狐・兎・狢。辰↠三、龍・蛟・魚。此セリ↢東↡也。此↢孟トニ↡伝ヘテ↢前後↡也。巳↠三、蝉・鯉・蛇。午↠三、鹿・馬・麞。未有↠三、羊・鴈・鷹。此↢南方↡、火也。申↠三、狖・猿・猴。酉↠三、鳥・鶏・雉。戌↠三、狗・狼・豺。此↢西方↡、金也。亥↠三、豕・㺄・猪。子↠三、猫・鼠・伏翼。丑↠三、牛・胡買反并列反カハカメ。此↢北方↡、水也。」 時媚鬼↢坐禅↡、正↢其↡喚ベバ↠名。是¬止観¼出↢此↡也。↠為↢障↠法之魔眷属↡、明↣還守↢護スルコトヲ三帰↡也。

ふ。 いまのもんまつたく念仏ねんぶつひとまも誠証じょうしょうにあらざるをや、 いかん。

問。今文全ルヲ↧守↢念仏↡之誠証↥哉、如何。

こたふ。 すでに 「さん」 といふ、 ぶつそのはじめなり、 なんぞこれなしといはん。 六念ろくねんこくするところ、 ひとへに専念せんねん弥陀みだぶつにあり。 ゆゑに ¬観念かんねんもん¼ にねんえんしょうすとしてかの ¬きょう¼ のせつく。 かのしょひとをばさんかいたもてるひとといふ。 この所守しょしゅひとをばたださんといふ。 かののうにんろくじゅう一人いちにん、 こののうにんさんじゅう六王ろくおうこうりゃくなりといへども、 彼此ひしこれおなじ。

答。既↢「三帰」↡、帰仏其ナリ、何↠無。六念所↠剋スル、偏↢専念阿弥陀仏↡。故¬観念門¼証ストシテ↢護念縁↡引↢彼¬経¼説↡。彼所護ヲバ↧持テル↢三帰・五1316↡之人↥。此所守ヲバ唯言↢三帰↡。彼能護六十一人、此能護三十六王。広略↠異也ト、彼此

二 Ⅱ ⅵ c ロ 『十輪経』二文

【91】つぎに ¬じゅうりんぎょう¼ の所引しょいんだん

¬十輪経¼所引二段。

二 Ⅱ ⅵ c ロ 『集一切福徳三昧経』文

【92】つぎに ¬じゅう一切いっさい福徳ふくとく三昧ざんまいきょう¼。 所説しょせつしゅ、 そのこころおほきにおなじ。

¬集一切福徳三昧経¼。所説義趣、其意大

二 Ⅱ ⅵ c ロ 『薬師経』二文

【93】つぎに ¬やくきょう¼ の所引しょいんりょうだん

¬薬師経¼所引両段。

はじめのもんこれひとへに三宝さんぽうしてそのほかてんとうつかへざることをかす。 ゆゑに次下つぎしもにいはく (玄奘訳薬師経) 、 「ただまさに一心いっしん仏法ぶっぽうそうすべし。」

↧偏シテ↢三宝↡不コトヲ↞事↢其之余天等↡。故次下云、「唯当↣一心↢仏法僧↡。」

のちもんはこれもしけん妄説もうせつじゃきょうしんずれば、 げん当来とうらいそんありてやくなきことをかす。 いふところのそんとは、 おうなんなり。 いまのもんつぶさならず、 よろしくぜんきてその説相せっそうしめすべし。 いはゆるかの ¬きょう¼ おうありとく、 その初横しょおうなかきてじゅうとなす。 いまの所引しょいんだいじゅうなり。 そのしょじゅうにいはく、 「もろもろのじょうありてやまいることかろしといへども、 しかもやくおよびかんびょうものなし。 たとひまたへども、 さずくにやくをもつてしてじつすべからざれども、 しかもすなはちおうす。」

↧若ズレバ↢世間妄説邪教↡、現世・当来↠損无コトヲ↞益。所↠言損者、九横難也。今文不↠具ナラ、宜↧引↢前後↡示↦其説相↥。所謂彼¬経¼説↠有↢九横↡、其初横↢二重↡。今所引者第二重也。其初重、「有↢諸有情↡得コト↠病雖↠軽、然↢医薬及看病者↡。設復遇ヘドモ↠医、授テシテ↢非薬↡実レドモ↠応↠死、而便。」

いまの所引しょいんしん」 とらは、 すなはちおなじき次下つぎしもだいじゅうなり。

之所引「又信」等者、即同次下第二重也。

ない」 といふは、 これ初横しょおう結文けつもんこのかたそのしも七横しちおうのぞく。 かのつぶさなるもんにいはく、 「これを初横しょおうづく。 にはおう王法おうぼうちゅうろくせらるることをこうむる。 さんにはてんりょう嬉戯きけし、 いんふけさけたしなんで放逸ほういつにしてのりなし、 おうにんのためにそのしょううばはる。 にはおうのためにかる。 にはおうみずのためにおぼる。 ろくにはおう種々しゅじゅあくじゅうのためにだんせらる。 しちにはおう山崖せんがいす。」

言↢「乃至」↡者、↢初横結文以来其七横↡。彼ナル、「是↢初横↡。二者横ブル↣王法之所ルヽコトヲ↢誅戮↡。三者畋猟嬉戯、耽↠淫ンデ↠酒放逸ニシテノリ、横↢非人↡奪ハル↢其精気↡。四者横↠火カル。五者横↠水。六者横↢種々悪獣↡所。七者横↢山崖↡。」

はちおう次下つぎしも所引しょいんもんなり。 また 「ちゅうがい」 のしもだいおうあり。 すなはちそのもんにいはく、 「にはかつたしなまれて飲食おんじきず、 しかもすなわちおうす。 これを如来にょらいりゃくしておうにこのしゅあることをきたまふとなす。」

八横次下所引文也1317。又「中害」下↢第九横↡。即其云、「九者飢渇タシナ不↠得↢飲食↡、而便。是↤如来略シテタマフト↣横死コトヲ↢此九種↡。」

二 Ⅱ ⅵ c ロ 『菩薩戒経』文

【94】つぎに ¬さつかいきょう¼、 もんこころやすし。

¬菩薩戒経¼、文意易↠見。

二 Ⅱ ⅵ c ロ 『仏本行集経』文

【95】つぎに ¬ぶつほんぎょうじっきょう¼ のもん

¬仏本行集経¼之文。

ふ。 いまこのもんく、 なんのゆえかあるや。

問。今引↢此↡、有↢何↡耶。

こたふ。 いま引用いんようこころは、 もとどうしょうもんしゅとう仏法ぶっぽうするときかのじゃきょうつることをげて、 しんしゅう念仏ねんぶつぎょうにんほうによることなかれといふことをれいせんがためにこれをかる。

答。今引用、挙↧本外道声聞衆等帰スル↢仏法↡時捨ルコトヲ↦彼邪教↥、為↠例センガ↢真宗念仏行人勿レト云コトヲ↟依コト↢外法↡被↠引↠之也。

さんしょう」 はこれきょうだいなり。 いちをば優楼うるびんしょうといひ、 をばだいといひ、 さんをば伽耶がやといふ。 天台てんだいしゃく (天台観経疏意) にいはく、 「さんしょうきょうだいせん弟子でしあり、 ともにせつつ、 いまはれんなり。」 もとはこれ祀火しか婆羅ばらもんなり。 のち邪法じゃほうててぶつしょうぼうす。 しゃくそんじょうどう第一だいいちねんときまづにんす、 跋提ばつだいじゅうりきしょう狗梨くりたいしゃくなんなり。 だいねんときさんしょうす、 いまのきょうだいなり。 第三だいさんねんときしゃほつもく犍連けんれんす。

「三迦葉」者兄弟也。一ヲバ云↢優楼頻螺迦葉↡、二ヲバ云↢那提↡、三ヲバ云↢伽耶↡。天臺、「三迦葉兄弟↢千弟子↡、共↠刹、今連枝也。」 祀火婆羅門也。後テヽ↢邪法↡帰↢仏正法↡。釈尊成道第一年時先↢五人↡、頞鞞跋提・十力・迦葉・狗梨太子・釈摩男也。第二年時度↢三迦葉↡、今兄弟也。第三年時度↢舎利弗・目犍連↡也。

二 Ⅱ ⅵ c ロ 『起信論』文

【96】つぎに ¬しんろん¼ のもん

¬起信論¼文。

これしゅじょう善根ぜんごんなきは、 しょとうのためにきょうわくせらるるそうしめす。 末代まつだいぎょうじゃけんみつきょうないきょうをいはず、 りきしゅぎょうたつせんこのしょうまぬかれず、 これによりてしょうどうしょきょうろんとう仏法ぶっぽうしゅじゅうほうきょうするに、 まづごう用心ようじんとうおしふ。 しかるにじょうきょうにかつてをいはず、 けだしこのほうしょうなきをもつてなり。

↧衆生無キハ↢善根↡者、為↢諸魔等↡所ルヽ↢狂惑↡相↥。末代行者不↠謂↢顕・密、教内・教外↡、自力修行未達浅機不↠免↢此↡、依↠之聖道諸経論等教↢示スルニ仏法修習方軌↡、先↢降魔之用心等↡。而浄土不↠言↠魔、蓋以↣此↢魔障↡也。

ゆゑにがんじょうの ¬かんぎょうしょ¼ のなか山陰さんいんしゃくきてこのせつす。 かのしゃくだいかんなかかる、 よつて ¬しょう¼ の新末しんまつにほぼちゅうしをはりぬ。 この論説ろんせつこころかみ所引しょいんの ¬しゅりょうごん¼ とおなじ。 りきぎょうにん障重しょうじゅう根鈍こんどんたりといへども、 ぶっるがゆゑにおのづからもうまぬかる。 仏恩ぶっとんいたりふかくこれをたっとむべし。

元照師¬観経¼中↢山陰↡解↢説1318↡。彼↠引↢第二巻↡、仍¬鈔¼新末粗記註。此論説意与↢上所引¬首楞厳¼↡同。他力行人↠為↢障重根鈍之機↡、得↢仏加↡故↢魔網↡。仏恩之至深↠貴↠之

二 Ⅱ ⅵ c ロ 『弁正論』二文

【97】つぎ所引しょいんもん、 「べんしょうろん」 は、

所引文、「弁正論」者、

選者せんじゃ法琳ほうりん、 これとう沙門しゃもん所造しょぞうほんろうがくぶっきょうれつなりとなしどうきょうしょうたりとなす、 ゆゑにかれをして釈教しゃっきょうりゅうせんがためなり。 この ¬しょ¼ にじょあり、 東宮とうぐうがくちんりょうじゅつ、 このひとちゅうくわふ。

選者法琳、沙門。所造本意、老子学徒仏教為↠劣ナリト道教↠勝タリト、故↣破シテ↠彼センガ↢釈教↡也。此¬書¼有↠序、東宮学士陳子良述、此人加↠註

じゅう」 とらは、 「じゅう」・「きゅうしん」 ともにへんなり。 かん八巻はっかんあり、 へんじゅうあり。 じゅうへんとは、 だい一巻いっかん (弁正論)はじめに目録もくろくげていはく、

「十喩」等者、「十喩」・「九箴」共名也。巻↢八巻↡、篇↢十二↡。十二篇者、第一巻↢目録↡云

さんきょうどうへん第一だいいち 上下 じゅうだい奉仏ほうぶつへんだい 上下
 仏道ぶつどうせんへん第三だいさん 巻第五 しゃく師資ししへんだい
 じゅうへん  だい 巻第六 きゅうしんへん  第六だいろく
気為きい道本どうほんへん第七だいしち しん交報こうほうへん第八だいはち 巻第七
 品藻ひんそう衆書しゅしょへんだいしゅつどうびゅうへんだいじゅう 巻第八
 歴世れきせいそうじょうへんだいじゅういちしんどうへんだいじゅう
「三教治道篇第一 上下 十代奉仏篇第二
 仏道先後篇第三 巻第五 釈李師資篇第四
 十喩篇  第五 巻第六 九箴篇  第六
 気為道本篇第七信毀交報 篇第八 巻第七
 品藻衆書篇第九出道偽謬 篇第十 巻第八
 歴世相承篇第十一帰心有道 篇第十二」

じゅうきゅうしんこの目録もくろくえたり。

十異・九箴見タリ↢此目録↡。

どう」 とは、 ちゅうけいなり、 だいかん (弁正論)えたり。 また ¬けつ¼ (輔行)にいはく、 「どうちゅうけいがごときじゅうろんしるせり。 りんほっじゅうろんててもつてそのさとしてかれににせり。 はなほぎょうのごとし、 かのめいさとすがゆゑなり。」

「李道士」者、李仲卿也、見タリ↢第五巻↡。又¬決¼五1319、「如↢道士李仲卿シルセリ↢十異論↡。琳法師立テヽ↢十喩論↡以サトシ↢其↡而異ニセリ↠彼。喩↠暁、暁スガ↢彼↡故也。」

じゅう」 とらは、 かの 「じゅう」 とは、 李家りけつるところじゅうをもつてさとす。

「十異」等者、彼「十異」者、李家所↠立↢十喩↡暁

九述きゅうじゅつ」 といふは、 また李家りけこころきゅうしんをもつていましむ。 ただし唐本とうほんひらくに、 「じゅつ」 のめい」 たり、 ほんあるか。 しかるにしもきゅうしん目録もくろくぐるにおいて、 まづじょして (弁正論巻六)きゅうめいろんこたふ」 といふ。 これすなはちろんだんごとにけっして (弁正論巻六意) 「そのめいいちなりないきゅうなり」 といふ。 これ李家りけよりしゃほうをもつてめいしょうするところなり。 これにたいして内箴ないしんには、 だんごとにけっして (弁正論巻六意) 「そのもういちなりないきゅうなり」 といふ。 これしゃくより李氏りしきょうしてもうしょうするところなり。 またかみくところの荊渓けいけいしゃくに、 かのめいさとすといふ。 これらのおもふに、 きゅうめいほん、 よろしくしょうとなすべきか。

言↢「九述」↡者、又李家↢九箴↡誡シム。但クニ↢唐本↡、「述」字↠「迷」、本↠異歟。而↣下↢九箴目録↡、先シテ↠「答↢外九迷論↡。」是則外論↠段結シテ↢「其迷一也乃至九也」↡。↢李家↡以↢釈迦↡所↠称↠迷也。対シテ↠之内箴ニハ、毎↠段結シテ↢「其盲一也乃至九也」↡。自↢釈家↡呵シテ↢李氏↡所↠称スル↠盲也。又上↠引荊渓解釈、云↠暁スト↢彼↡。思↢此等↡、九迷之本、宜↠為↠正歟。

いち」 のことば、 「ないいち」 のことば所引しょいんもんにあり。 このいちこころひだりよりしょうじ、 ぶつみぎよりしょうず、 ゆゑに左右さうをもつてしょうれつあらそふ。 このいちこころは、 ひだりれつなるみぎしょうたるれいしらべて相翻そうほんしてれつつるなり。

「外一異」詞、「内一喩」言、所引在↠文。此一異意、李↠左生、仏↠右生、故↢左右↡諍ソフ↢勝劣↡也。此一喩、述↢左劣ナル↡検ベテ↢右勝タル↡相↢翻シテ↡立↢優劣↡也。

かいしゃくなかに、 りょ景裕けいゆうとうぶるところいまだかんがへず。 「しゅう弘政こうせい」 とは、 しょ六巻ろっかんつくる。 このしゃくなかに 「たい」 といふは、 これまた唐本とうほんには 「」 のじょう」 たり、 「じょう」 のよろしきか。 かいしょたいじょうかぶらしむるがゆゑに。

開士、「盧景裕」等、所↠述未↠勘。「周弘政」者、作↢疏六巻↡。此之中言↢「太子」↡者、又唐本ニハ「子」字↢「上」↡、「上」字宜歟。開士所破、被ムルガ↢太上↡故

このしゃくおわりに 「ない」 といふは、 当段とうだん所引しょいんのこりのもんあるにあらず、 これ全文ぜんもんなり。 ない二異にい二喩にゆさんさんのぞくにきて、 ゆゑにしかいふらくのみ。

之終言↢「乃至」↡者、当段所引、非↠有↢残文↡、全文也。就↠除↢外内二異・二喩、三異・三喩↡、故ラク↠爾ノミ

異喩いゆしょりゅうじょうもくしめさんがためにのぞくところこれをす。 すなはちそのもんにいはく、 「二異にいにいはく、 老君ろうくんおしえれてしょうめつちょうせいひらき、 しゃおしえもうけてめつしょう永滅ようめつしめす。 ない二喩にゆにいはく、 たんしつけてしょうありめつあり、 げんしょうしょうおそれてかえりてはくしゅまねく。 しゃかたちれてめつしめしょうしめしてじゃくめつめつしてすなはちこん耀かがやかす。 かいのいはく、 ろうのいはく、 大患だいげんおそるるにしんあるにしくはなし、 われをしてしんなからしめばわれなんのわずらいかあらん。 わずらいのよるところしんにしくはなし。 ろうすでにしんあることをわずらふ、 なやみなきことをもとめんとほっすれどもいまだはくまぬかれず。 ことならず。 もしちょうせいをいはばなにによりてかはやせる。」

異喩所立、為↠示サンガ↢条目↡所↠除↠之。即其云、「外二異、老君垂↠訓↢不生不滅之長生↡、釈1320迦設↠教↢不滅不生之永滅↡。内二喩、李耼稟↠質↠生有↠滅、畏↢患生之生↡反↢白首↡。釈迦垂↠象↠滅シテ↠生シテ↢寂滅之滅↡、乃耀↢金躯↡。開士、老子オソルヽニ↢大患↡莫↠若クハ↠有ルニ↠身、使シメバ↢吾ヲシテカラ↟身ラン↢何↡。患之所↠由シク↠身矣。老子既↠有コトヲ↠身、欲スレドモ↠求メント↠無コトヲ↠悩未↠免↢頭白↡。与↠世不↠殊ナラ。若ハヾ↢長生↡何テカセル。」

この二異にいこころは、 李氏りしちょうせい仙方せんぽうだんずといへどもつひにまぬかれず。 ぶつめつしめすといへどもじゃくめつするがゆゑにろんにあらず。 かいしゃくなかろう本文ほんもんくに、 大患だいげんとは、 なり、 ほんきょうちゅうえたり。

二異、李氏↠談ズト↢長生仙方↡遂不↠免↠死。仏雖↠示スト↠滅スルガ↢寂滅↡故非↢比論↡也。開士↢老本文↡、貴大患者、貴者畏也、見タリ↢本経↡。

さんにいはく、 老君ろうくんおうしょうこのとうづ、 しゃごうしゃくかの西せいじゅうぬきんづ。 ないさんにいはく、 たんぎょうたんじてとうしゅうけんり、 能仁のうじんしゃくくだしてちゅうしんしゅうづ。 かいのいはく、 ¬智度ちどろん¼ にいはく、 千々せんぜんじゅうしゅ三千さんぜんといふ、 二過にかせんふくす、 ゆゑに大千だいせんといふ。 迦羅からそのなかす。 ¬楼炭ろうたんきょう¼ にいはく、 そうとうづけて震旦しんたんとなす、 はじめて東隅とうぐうかがやくをもつてゆゑに震旦しんたんしょうす。 一本いっぽんにいはく、 ゆゑにるなり。 諸仏しょぶつしゅっみなそのなかにあり、 辺邑へんゆうしょうぜず。 もしへんしょうずればこれがためにかたむく。 迦維かいいまだだがえんじて西にしたらず、 そのためせり。」

「外三異、老君応生出↢茲東夏↡、釈迦降迹挺↢彼西戎↡。内三喩、李耼誕ジテ↠形↢東周之苦県↡、能仁降↠迹↢中夏之新州↡。開士曰、¬智度論¼云、千々重数曰↢三千↡、二過復↠千、故曰↢大千↡、迦羅衛居↢其↡也。¬楼炭経¼云、葱河以東為↢震旦↡、以↣日デヽクヲ↢於東隅↡故↢震旦↡。一本、故得↠名也。諸仏出世皆在↢其↡、不↠生↣辺邑↡。若ズレバ↢辺地↡地為↠之 迦維未↢肯↟西、其理験セリ矣。」

このさんこころは、 ろうとうづ、 ぶつ西せいじゅうづ、 ちゅう辺邑へんゆうこれをもつてとなす。 このさんこころはなんぢがしからず、 かの天竺てんじくをもつてちゅうしんとなすゆゑにぶつすぐれたりとなり。

三異、老↢東夏↡、仏↢西戎↡、中夏辺邑以↠之↠異。此三喩解不↠爾、以↢彼天竺↡為↢地中心↡故仏勝タリト也。

四異しい四喩しゆ所引しょいんもんにあり。 ただしいまのぞくところかいしゃくなり。 すなはちそのもんにいはく、 「かいのいはく、 ¬前漢ぜんかんしょ¼ にいはく、 こうじょうとなす、 じょうはこれせいろうちゅうとなす、 ちゅうはこれけんあん王弼おうひつがいはく、 ろうはいまだせいおよばず。 ¬きょうろん¼ にいはく、 ちゅうちょうにある、 もと諧讃かいさんにあらず、 しゅうしんる、 いんがためにどうをいふ、 諸侯しょこうきこゆることなし、 てんまみえじ、 もししゅうたらばめいしょうなし、 せいせつかなはず、 それべけんや。 ¬抱朴ほうぼく¼ にいはく、 文王ぶんおうづ、 けいこうこうひつならびにいんまつうまれたりとは、 けだしどうぶんなり。 国典こくてんするところにあらず。」

四異・四喩所引在↠文。但今所↠除開士釈也。即其文云、「開1321曰、¬前漢書¼云、孔子↠上、上流是聖、老子↠中、中流賢。何晏王弼云、老↠及↠聖。¬二教論¼云、柱史在↠朝、本非↢諧讃↡、出デヽ↠周↠秦、為↠尹↠道、無↠聞ユルコト↢諸侯↡、マミ↢天子↡、若タラ↢周師↡史↢明証↡、不↠カナ↢正説↡、ケン↠得乎。 ¬抱朴¼云、出↢文王↡、嵆康皇謐並タリト↢殷↡者、蓋↠道之偽文ナリ。非↢国典↟載スル也。」

この四異しいこころは、 ろうそうじて隆周りゅうしゅうたり、 しゃくそんはわづかに一国いっこくきょうしゅなり、 ゆゑにしょうれつあり。 おなじき四喩しゆこころは、 しょうしんたり、 またしゅうにあらず。 ぶつはじめにはたいのちにはぶっしょうす。 えんだいにおいてそうじてきょうしゅたり、 ゆゑにしょうとなす。

四異、老子↢隆周之師↡、釈尊一国之教主ナリ、故有↢勝劣↡。同四喩、李↢小臣↡、又非↢周↡。仏ニハ太子、後ニハ↢仏果↡。於↢閻浮提↡総↢教主↡、故↠勝也。

伯陽はくよう」 といふはこれろう、 「ぞう」 というはこれかんなり。 これをちゅうという、 またちゅうといふ。 日本にっぽんにはこれをしょうして大内だいないといふ、 これ儒官じゅかんなり。

言↢「伯陽」↡者老子名、言↢「蔵史」↡者名也。謂↢之柱史↡、又云↢柱下↡。日本ニハシテ↠之↢大内記↡、儒宦也。

五異ごいにいはく、老君ろうくんごうしゃくしゅうおうだいに、 たびかくたびあらわるることひゃくねんしゃおうしょうこくときひとたびめっひとたびしょうじて寿いのちただはちじゅうなり。 ない五喩ごゆにいはく、 李氏りし三隠さんおん三顕さんけんはすでに的拠てききょなし、 たとひひゃく許年きょねんによるべくともなほかく寿いのちづ。 法王ほうおう一滅いちめついっしょうじんすがたせしむることをしめす。 はちじゅうねんあいだ恒沙ごうじゃしゅう開誘かいゆうす。 かいのいはく、 しょせいてんしらぶるに三隠さんおん三顕さんけんしゅつぼつぶんなし。 しゅうにありてはれつしょうしゃにしてひんはつれ、 かんきたりてはすなはちしょううんじゅうしてむなしくかぶ。 かんぽう ¬捜神さくじん¼ いまだそのせつかず、 ¬せいかい異記いき¼ にこのれいせず。 おく論心ろんしんきょうもうもつともはなはだし。」

「外五異曰、老君降迹周王之代、三タビタビハルヽコト五百余年、釈迦応生胡国之時一タビタビジテ寿唯八十ナリ。内五喩曰、李氏三隠・三顕テキマサシキ キョヨドコロ↡、可クトモ↠依↢仮令 タトヒ 五百許年↡猶慚↢亀鶴之寿↡。法王一滅一生↠見セシムルコトヲ↢微塵之容↡。八十年間開↢誘之衆↡。開士、検ルニ↢諸史正典↡無↢三隠・三顕出没之文↡。 テハ↠周劣駕小車ニシテ鬢垂↢絲髪↡、来テハ↠漢即簫鼓雲華羽従シテ干宝¬捜神¼未↠聞↢其↡、¬斉諧異記¼不↠載↢斯↡。撫臆論心、矯妄尤1322。」

この五異ごいこころは、 ろう三隠さんおん三顕さんけんとなす、 しゃくそん一滅いちめついっしょうこれれつなり。 寿じゅみょうちょうたんこれをしゅとなす。

五異、老子三隠・三顕↠奇、釈尊一滅・一生ナリ。寿命長短為↢之殊異↡。

ろくろく所引しょいんもんにあり。

六異・六喩在↢所引↡。

このろくこころは、 ろうしゅっしゅう文王ぶんのうときしゃくそんしょうおなじきしょうおうとき、 いふこころはぜんをもつてしょうれつとなす。 このろくこころは、 ろうはじしゅう桓王かんのうとしうまれて、 景王けいおうとしふ、 ぶんでず。 調じょうしょうおうとしたんじょうしてしょうおうさきで、 穆王ぼくおうとしふ。 もしぜんをもつてしょうれつろんぜば、 ぶつさきろうのち、 なんぞすることをんとなり。

六異、老氏出世文王時、釈尊下生荘王時、↢前後↡為↢勝劣↡也。此六喩、李老始生↢周桓王↡、終↢景王↡、不↠出↢文↡。調御誕↢生シテ昭王之年↢荘王↡、終↢穆王↡。若↢前後↡論↢勝劣↡者、仏前老後、何ント↠比スルコトヲ也。

しょう」 といふはけだしろうす、 すなはちこれほんさつなり。 「しょう」 といふはしゅう文王ぶんのうなり。 文王ぶんのうしゅう始祖しそたりといへどもせいかず、 おうよりこのかたしゅう継体けいたいしゅさんじゅうしちなり。

言↢「迦葉」↡者蓋↢老子↡、乃本地菩薩名也。言↢「姫昌」↡者周文王也。文王↠為↢周之始祖↡不↠即↢正位↡、武王ヨリ以来周継体主三十七也。

桓王かんのう」 といふはだいじゅうだい、 「景王けいおう」 といふはだいじゅうだい、 「しょうおう」 といふはだいだいしゅ、 「穆王ぼくおう」 といふはこれだいだい、 「荘王そうおう」 といふはだいじゅう六代ろくだいおうこれなり。 ぜんるべし。

言↢「桓王」↡者第十五代、言↢「景王」↡者第廿五代、言↢「昭王」↡者第四代主、言↢「穆王」↡者是第五代、言↢「荘王」↡者第十六代之王是也。前後応↠知

かいしゃくのちに 「ない」 といふは、 当文とうもんなかにおいてごんあり。

開士言↢「乃至」↡者、於↢当文↡有↢余言↡也。

しちしちもん所引しょいんにあり。

七異・七喩文在↢所引↡。

このしちこころは、 ろうりゅうきてかくるるところをらず、 いふこころはせんたるなり。 ぶつだいおわりてげんはんとなふ、 いふこころはあり。 おなじきしちこころは、 ろうしょうしょあり、 また葬処そうしょあり、 しょうのがれず、 ぶつ鶴林かくりんかくれてはんしめすといへども、 めつにあらずしてめつげんず。 このゆゑにそのおしえぼんよりかんつたひていまに流布るふし、 ほうみょうじょうおんにしてしゅじょうやくこうぶる、 たいにあらず。

七異、老ユキ↢流沙↡不↠知↠所↠隠ルヽ、言タル↠仙也。仏↢提河↡現↢涅槃↡、言有↠死也。同七喩、老↢生処↡、又有↢葬処↡、不↠遁↢生死↡。仏↢鶴林↡雖↠示スト↢涅槃↡、非シテ↠滅↠滅。是教自↠梵伝↠漢于↠今流布、法命長遠ニシテ衆生蒙↠益、非↢対比↡也。

かいしゃくおわりに 「ない」 といふは、 当段とうだんにおいてざんもんあるにあらず。 ただし 「」 のいち最末さいまつにあり 第八だいはちきゅうじゅう外異げいない省略しょうりゃくするがゆゑに、 しもじゅうじゅうじゅうせつたいしてないといふなり。

開士、言↢「乃至」↡者、非↧於↢当段↡有↢余残↡文↥。「也」一字在↢最末↡矣 第八・九・十1323異・内論省略スルガ之故、対シテ↢下十異・十喩重説↡云↢「乃至」↡也。

かの三段さんだんにいはく、 「はちにいはく、 老君ろうくんとうじゅう美眉びび方口ほうこうそうちゅう参漏さんろう日角にちかく月懸げっけん、 これちゅうごく聖人せいじんそうなり。 しゃはな金挺こんていのごとし、 へいせいるいす、 ひとみしょうれんのごとし、 あたまほつしょうず、 これ西域さいいきぶっそうなり。 ないはちにいはく、 ろう美眉びび方口ほうこう、 けだしこれちょうじゃとうじゅう、 いまだ聖人せいじんそうとせず。 婆伽ばが聚日じゅにち融金ゆうこんいろ、 すでに希有けうそうあらわし、 まん千輻せんぷく、 まことに聖人せいじんそうひょうす。 かいのいはく、 ろうは ¬ちゅうたい¼ とうけいにいはく、 老耼ろうたん黄色おうじき広顙こうそうにしてちょう大目だいもく疎歯そし厚唇こうしんなり、 じゅうもんあし二五にごむ、 ただこれ人間にんげんそう聖者せいじゃ奇姿きしにあらず。 如来にょらいたけじょうろくほうしょうにしてかたむかず、 円光えんこうしちしゃくもろもろのゆうみょうらす。 いただき肉髻にくけいあり、 そのかみこんじょうなり。 みみおおひてたぶれ、 ることかいめいなり。 一光いっこうはなちてはしかもごくそくし、 一法いっぽうぶればつう安寧あんねいならしむ、 つぶさにしゅきょうつらなれり。 わづらはしくくわしくしめさず。」

三段云、「外八異曰、老君蹈五・把十・美眉・方口・双柱・参漏・日角・月懸、中国聖人之相ナリ。釈迦↢金挺↡、眼↢並星↡、精↢青蓮↡、頭↢螺髪↡、西域仏陀之相ナリ。内八喩、李老美眉・方口、蓋長者シルシ。蹈五・把十、未↢聖人之相↡。婆伽聚日融金之色、既↢希有之相↡、万字千輻之奇、誠↢聖人之相↡。開士、老子¬中胎¼等云、老耼黄色・広顙ニシテ長耳・大目・疎歯・厚唇ナリ、手↢十字之文↡脚↢二五之画↡、タヾ人間之異相、非↢聖者之奇姿↡也。 如来長丈六ホウニシテ不↠傾、円光七尺照↢諸エウミヤウ↡。↢肉髻↡、其髪紺青ナリ。耳覆タブ、目視コト開明ナリテハ↢一光↡而地獄休息、演レバ↢一法使↢苦痛安寧ナラ↡、ツブサレリ↢衆経↡。↢煩シク↡。」

このはちこころは、 ろうちゅう聖人せいじんそうそなふ、 ぶつ西域せいいきぶっそうたり。 これちゅうへんわかちてそうへんするなり。

八異、老↢中華聖人之相↡、仏↢西域仏陀之相↡。↢中↡貶スル↢異相↡也。

きゅうにいはく、 老君ろうくんきょうもうくることけいじょう威儀いぎおのづずからちゅうによる、 しゃほうせいすること恭粛きょうしゅくようかえりてこくしたがふ。 ないきゅうにいはく、 ろうはこれ俗人ぞくじんかん末品まっぴんり、 かん拝伏はいぶくおのづから朝章ちょうしょうく。 ぶつしょうしゅとなしてどうぞくそむけり、 ぶくみょう威儀いぎ凡制はんせいおなじからず。 かいのいはく、 むかし丹陽たんようきゅうきょう明真めいしんろんいちじゅうへんえらびて、 もつてどうおどろかしてそのもうだす、 かのろんつまびらかなり。」

「外九異曰、老君コト↠教敬譲、威儀↢中夏↡、釈迦スルコト↠法恭粛、儀容還ガフ↢外国↡。内九喩、老俗人、↢末ビン↡、衣冠拝伏↢朝章↡。仏シテ↢聖主↡道↠俗ソムケリ、服貌威儀不↠同カラハン↡。開士曰、昔丹陽余玖興撰↢明真論一十九篇1324↡、以オドロカシテ↢道士↡出↢其偽妄↡、詳ナリ↢彼↡焉。」

この異喩いゆこころ、 またちゅうへんによりてその威儀いぎきてしょうれつあらそふなり。

異喩意、又依↢中辺↡就↢其威儀↡争↢勝劣↡。

じゅうにいはく、 「老君ろうくんきょうこうふくするをもつてとくほんとなす。 しゃほう親戚しんせきつるをもつてぎょうさきとなす。 ないじゅうにいはく、 老訓ろうくんきょうぼつにしてしんころすをぎょうさきとなす。 釈教しゃくきょうじんにしてしょうすくふをとくほんとなす。 かいのいはく、 なんぢ、 ¬化胡かこけい¼ にいはく、 したがはんとほっす。 たんのいはく、 もししんいたしてわれにしたがひてることあらば、 まさになんぢが父母ぶもさい七人しちにんあたまるべくはすなはちるべからくのみ、 すなはちしんいたしてすなわちみづから父母ぶも七人しちにんりて、 あたまをもつてたんまえいたる、 すなはちしちちょる。 それてんどうしたがふはぎょうなり、 和気わきやぶらざるはこうなり。 丁蘭ていらんかんきゅうぼくつうじ、 薫永くんえいこう天女てんにょいたす。 きんじゅうなほ母子ぼしとしておやることあり、 いはんやたんどうてんおこなふにその父母ふぼる、 なんぞこうづけんや。 そのさいりくする、 あにといはんや。」

「外十異曰、老君之教↠復スルヲ↢孝慈↡為↢徳↡。釈迦之法↠捨ルヲ↢親戚↡為↢行↡。内十喩曰、老訓狂勃ニシテスヲ↢二親↡為↢行↡。釈教仁慈ニシテフヲ↢四生↡為↢徳↡。開士、汝¬化胡経¼言喜欲↠従ハント。耼曰、若有↢至シテ↠心↠我コト↡者、当↠斬↢汝父母・妻子七人↡者乃ラク↠去耳。喜乃至シテ↠心便↢父母七人↡、↠頭↢耼↡、便成↢七猪頭↡。↢天地之道↡者行也、不↠ヤブ↢和気↡者孝也。丁蘭感通↢於朽木↡、薫永孝致↢於天女↡。禽獣猶有↢母子トシテ而知ルコト↟親、況耼喜行フニ↢道於天下↡斬↢其↡、何ケン↠孝乎。戮スル↢其妻子↡、豈謂ハン↠慈乎。」

このじゅうこころは、 ろうこうおしへ、 ぶつ親戚しんせきてしむ、 しょうれつここにあり。 おなじきじゅうこころは、 ろうおしへてしんころさしむ、 これこうぎょうそむく。 ぶつしょうすくふ、 これじんかなふ、 これしょうれつなり。

十異、老↢孝慈↡、仏シム↢親戚↡、勝劣在↠斯。同十喩、老ヘテサシム↢二親↡、↢孝行↡。仏↢四生↡、↢仁慈↡。勝劣也。

かいしゃくなかにいふところのとは、 これいんなり。 ¬ろう¼ のじょにいはく、 「かいおさいん東方とうぼう望見ぼうけんするにきたひとあり、 へんしてつねなし、 すなはちこれをえっしょうす。 ろうどうることをりてここにとどまりてこれとふ。 がいはく、 まさにかくれなんとす。 あながちにわがためにしょしるせ。 ここにろうじょうへんはちじゅういっしょうせんごんしるす。 ゆゑにごうしてろうけいといふ。」

開士↠言者、尹喜也。¬老子¼序云、「開令尹喜望↢見東方↡有↢来人↡、変化シテ↠常、乃謁↢請之↡。老子知↢喜入コトヲ↟道於是↠之言。喜、子将↠隠ナント矣。強↠我シル↠書。於是老子著↢上下二篇八十一章五千余言↡。故シテ↢老子経↡也。」

異喩いゆ十双じっそう相対そうたいしてかくのごとし。

異喩十双相対シテ↠斯

つぎに 「ないじゅうとう」 とらは、 次下つぎしもかさねてじゅうじゅうかす標章ひょうしょうなり。 本書ほんしょなかに、 標章ひょうしょうしも目録もくろく (弁正論巻六)せていはく、

「内十喩答外」等者、次下↢十異・十1325↡之標章也。本書之中、標章之下↢目録↡云、

ないしょうよりしょうれつあるいち きょうつるに浅深せんじんある
 とくこうある  さん えんこうきょうある   
 寿夭じゅよう延促えんそくある   しゃくせんある   ろく
 遷謝せんしゃ顕晦けんまいある  しち 相好そうごうしょうある   はち
 威儀いぎどうある  きゅう法門ほうもん漸頓ぜんとんある   じゅう
 内従↠生有↢勝劣↡一 立ルニ↠教↢浅深↡二
 徳位↢高卑↡  三 化縁↢広狭↡  四
 寿夭↢延促↡  五 化迹↢先後↡  六
 遷謝↢顕晦↡  七 相好↢少多↡  八
 威儀↢同異↡  九 法門↢漸頓↡  十

この十双じっそうとは、 さきじゅうにおいてかさねてそのこころべ、 さきじゅうにおいてふたたびそのかす。 ただこれこうりゃくどうなり。 さきじゅうはこれりゃく、 いまのじゅうこうならくのみ。 ただしさき十双じっそう異喩いゆかみにおのおの 「ちゅう」 のあり。 これをもつてこれをおもふに、 かみちんりょうあらかじめしょうもんさきんじてかつがつちょじゅつするか。 いまこの十双じっそうはこれりんほっのまさしき製作せいさくなり。

十双者、於↢前十異↡重↢其↡、於↢前十喩↡再↢其↡。只是広略之不同也。前略、今ナラク耳。但十双、異喩之上各有↢「注」字↡。以↠之フニ↠之、上陳子良予ジメ↢正文↡且ガツ著述スル歟。今此十双是琳法師製作也。

じゅうしょう左右さう」 とらいふは、 かみ目録もくろくなかにただじゅうせてじゅうださず。 おのおの釈章しゃくしょういたりてないまえ外異げいだいきて外異げいことばぐ。 つぎ内題ないだいきてないことばだす。 すなはちいまぐるところはいちだいなり。 ただししも諸段しょだんのぞくところいちにあらず、 たとひまた異喩いゆことばくといへども、 おお題目だいもくりゃくす。 よりて釈章しゃくしょうさきんじてだいいだし、 かみぐるところない目録もくろくがっして相対そうたいたいあらわすべし。 その題目だいもく (弁正論巻六) にいはく。

言↢「外従生左右」等↡者、上目録唯載↢十喩↡不↠出↢十異↡。各至↢釈章↡内喩之前↢外異↡挙↢外異↡。次↢内題↡出↢内喩↡。即今所↠挙題也。但諸段所↠除↠一、縦又雖↠引↢異喩之言↡、多↢題目↡。仍先↢釈章↡出↢外↡、合シテ↢上↠挙内喩目録↡可↠顕↢相対之大意↡也。其題目云。

しょうより左右さうことなる     いち きょうもんしょうめつことなる     
 ほう東西とうざいことなる      さん てき華夷かいことなる     
 しょうくるに夭寿ようじゅある   しょうよりぜんことなる     ろく
 じんせんじゃくかえることことなるしち 聖賢せいけん相好そうごうことなる      はち
 ちゅうひょう威儀いぎことなる      きゅうもうくることぎゃくじゅんことなるじゅう
 1326↠生左右異ナル     一 外教門生滅異ナル     二
 外方位東西異ナル      三 外適化華夷異ナル     四
 外ルニ↠生↢夭寿異ナルコト↡五 外↠生前後異ナル    六
 外↠神ルコト↠寂ナル  七 外聖賢相好異ナル     八
 外中表威儀異ナル      九 外クルコト↠規逆順異ナル  十

ないじゅう」 とらは、 目録もくろくぐるところのじゅうなかいちだいなり。

「内従」等者、目録↠挙十喩之中一喩題也。

ふ。 目録もくろくなかいちさんないじゅうかずあり。 いまこれをせず、 なんのこころかあるや。

問。目録之中↢一・二・三乃至十数↡。今不↠載↠之、有↢何↡耶。

こたふ。 目録もくろくなかにはただないす、 ゆゑにそのかずす。 いまは外異げいにおいてまづかずするがゆゑに、 かみゆずりてろくせず。 ない相対そうたいして一々いちいち相濫そうらんすべからざるがゆゑなり。

答。目録之中ニハ唯載↢内喩↡、故↢其↡。今↢外異↡先スルガ↠数、譲↠上不↠録。内外相対シテ一々↠可↢相ラン↡故也。

ふ。 いまいち題目だいもくぐるといへども文言もんごんださず、 そのもんいかん。

問。今外一異雖↠挙↢題目↡不↠出↢文言↡、其文如何。

こたふ。 かの本文ほんもん (弁正論巻六) にいはく、 「ろんにいはく、 聖人せいじんおうしゃくはかのぼんことなり。 あるいはりゅうぞうりてもつてたいしょし、 たちまちにわきひらきてづ。 またりょうひらくことなくしんるにあらずいへども、 左右さうしゅいたりてはそのれついちなり。」

答。彼本文、「外論曰、聖人応迹ナリ↢彼凡夫↡。或↢龍象↡以処↠胎、乍↠脇而出。雖↧復無↠開コト↢両気↡非ズト↞仮ルニ↢二親↡、至テハ↢於左右之殊↡其優劣之異一也。」

ない」 とらは、 ないいちなり。 いまぐるところの ないじゅうしょうとう題目だいもくは、 ろんりゃくするがゆゑに外異げいだいぐ。 本書ほんしょのごときは、 ろんあとないまえにあり、 だいるべし。

「内喩」等者、内一喩也。今所↠挙之「内従生」等之題目者、略スルガ↢外論↡故↢外異↡。如↢本書↡者、在↢外論後内喩之前↡、次第応↠知。

このないなかに、 りんしょう」 とらは、 廉藺れんりんといふ。 れんはすなはちれんりんりんしょうじょ一双いっそうしょうなり。 しかるにれんとなす、 しょしょうあやまりか。

内喩、「藺相」等者、世↢廉藺↡。廉則廉頗、藺々相如、一双武将ナリ。而廉↠麁、書生誤歟。

しかのみならずこのなか唐本とうほんもんそうまたおおし。 いちには 「みぎにす」、 「」 のかん」 たり。 には 「温水うんすい」、 「うん」 の」 たり。 さんには 「おう」、 「おう」 の」 たり。 には 「たいはっ」、 「はつ」 のけん」 たり。 には 「人用じんようたのしくす」、 「かい」 の」 たり。 是非ぜひをいふにあらず、 ただしるすらくのみ。

加之此1327唐本文字相違又多。一者「右ニス↠緯」、「緯」字↠「韓」。二者「温水」、「温」字↠「渦」。三者「押事」、「押」字↠「師」。四ニハ「撥↢太史」↡、「撥」字↠「検」。五「快シクス↢人用」↡、「快」字↠「扶」。弗↠謂↢是非↡、只記スラク↠異耳。

しゃく」 のしもに 「ない」 といふは、 このもんのこりよりさんなかばいたるまで省略しょうりゃくするがゆゑなり。

「其迹也」下言↢「乃至」↡者、自↢此残↡至マデ↢三喩↡省略スルガ故也。

しゃくしゃてんじょう」 とらは、 さんなかもんぜんになほぎょう文言もんごんあり、 しかしながらもつてこれをりゃくす。

「夫釈氏者天上」等者、三喩文。前後猶有↢数行文言↡、併以↠之

すいびょう」 のしもに 「ない」 といふは、 当段とうだんなかにおいてなほのこりのもんあり。 また四異しい四喩しゆ以下いげないじゅうのぞく、 ゆゑにしかいふなり。

「推其妙」下言↢「乃至」↡者、於↢当段↡猶有↢残文↡。又除↢四異・四喩已下乃至十異↡、故云↠也。

つぎろんわつ老君ろうくん」 とらは、 だいじゅうなり。 本書ほんしょまづ 「せつ逆順ぎゃくじゅんじゅう(弁正論巻六) といふだいいちぎょうあんじて、 そのつぎに 「ろん(弁正論巻六) とらいふじょうごうあり。

「外論曰老君」等者、第十異也。本書先ジテ↧云↢「外設規逆順異十」↡之題一行↥、其↧云↢「外論」等↡之長行↥也。

つぎないわつない」 とらはだいじゅうなり。 本書ほんしょもんまえだいあんずることさきのごとし。 その題目だいもくとは、 「ない法門ほうもん漸頓ぜんとん」 といふろくこれなり。

次「内喩曰義乃」等者第十喩也。本書ズルコト↠題↠前。其題目者、云↢「内法門有漸頓」↡之六字是也。

当段とうだんなかにまた唐本とうほんしんこれおおし。 いちには 「ぞくおしえにあらず」 といふしもちゅうにいはく、 「こう助祭じょさい」 の、 「かん」 のかみほつ」 のしもにあり、 「こう」 の上下かみしもに 「」・「」 の二字にじともにもつてこれなし。 にはいはく、 「まことに聖王せいおう臣孝しんこうなり」、 「しん」 のきょ」 たり。 さんには 「ふくげん」 のしもに 「おうじょう」 といふ、 「」 のらい」 たり、 「しょう」 のこれなし。 にはいはく、 「怨親おんしんしばしばしきたり、 しきしばしば怨親おんしんたり」 といふ、 上下かみしも二句にくにともに 「しん」 のなし。

当段之中又与↢唐本↡参差多↠之。一ニハ「非ズト云↢華俗之訓」↡下云、「歌孔子助祭」五字、在↢「騎棺而」上「弗譏」之下↡、「孔子」上下「而」・「時」二字共↠之。二ニハ云、「実聖王之臣孝ナリ」、「臣」字↠「巨」。三ニハ「覆慧眼」下↢「未往生」↡、「未」字↠「来」、「生」字無↠之。四ニハ、「怨親数↢知識↡、知識数タリト云↢怨親↡、」上下二句↢「親」字↡。

どうれつじゅう」 といふは、 当篇とうへんない異喩いゆせつ十双じっそうことごとくおわりぬ。

言↢「爾道之劣十也」↡者、当篇外内異喩之説十双悉

これより以下いげつぎきゅうしんかす。 ただしはじめをりゃくするによりて、 文相もんそうじんぜんまよひやすし、 ゆゑに題目だいもくしめす。 その目録もくろく (弁正論巻六) にいはく、 「ないきゅうしんへん第六だいろくきゅう迷論めいろんとうす。

自↠此1328已下、次↢九箴↡。但↠略スルニ↠初、文相起尽前後易↠迷、故示↢題目↡。其目録云、「内九箴篇第六、答↢外九迷論↡。

しゅうなき   いち像塔ぞうとう建造けんぞうする 威儀いぎぶく     さん
 こうててぶんするきょうもとたる ちゅうこうたがふことなき ろく
 三宝さんぽうほんなき    しち ほう同制どうせいの  はち ろうぶつにあらざるきゅう。」
 周世↠機 一 建↢造スル像塔↡二 威儀器服  三
 棄テヽ↠耕分衛スル 教↢治本↡五 忠孝↠違コト
 三宝無↠翻  七 異方同制  八 老身非ザル↠仏九。」

目録もくろくかくのごとし。 まさしく諸段しょだんにおいてあんずるところの題目だいもくはじめにないあり、 またいちないきゅうかみにおのおのあり。 きゅうめいにおいてはべつ題目だいもくなし。

目録如↠此。正↢諸段↡所↠安ズル題目、初↢内字↡、又一乃至九之字各有↢指字↡。於↢九迷↡者別↢題目↡。

こう」 とらは、 すなはちこれ初段しょだん。 いはく 「ないにはしゅうなきいち(弁正論巻六)すえもんなり。

「二皇」等者、即初段。謂「内ニハ周世↠機指」之末文也。

題目だいもくぜんろん文言もんごん題目だいもく以後いご内箴ないしん初文しょもんのぞくところこれおおし。 初段しょだんたるによつて所引しょいんぜん文言もんごんこれをだす。 すなはち本文ほんもん (弁正論巻六) にいはく、 「ろんにいはく、 それことばはなたっとぶにあらず、 ことばとうときことはあたるにあり。 うたせいたっとぶにあらず、 ひびきとうときことはふしかなふにる。 ぶっきょう如来にょらい説法せっぽうとき諸国しょこくてんあまねくきたりてあつまりく、 あるいはこうみょうはなちて大千だいせんへんす。 ただししゃざいはわが周朝しゅうちょうあたる。 さくしょするところまことにろうなし。 いまだ天王てんのうかの葱嶺そうれいもうづることをかず、 あにちゅうみかどにおいてぜんなくしてどうじょうあずからず、 へんきみえんありてあまねくほううるおはんや。 こうみょうらすところすなはちしゅじょうはなる。 しかるにこのなんのつみあつてかひとへにひとさとるなく、 ひとおんへだててかつて見聞けんもんせざるや。」

題目以前外論文言、題目以後内箴初文、所↠除。依↠為↢初段↡所引前後文言出↠之。即本文云、「外論曰、夫言者非タトブニ↢於華↡、コトバキコトハ↢乎アタル↟理。歌者非タトブニ↢於清↡、響コトハ↢乎カナフ↟節。仏経如来説法之時、諸国天子普、或↢光明↡遍↢大千↡。但釈迦在世之日↢我周朝↡。史冊所↠書スルマコト↢遺漏↡。未↠聞↣天王マウヅルコトヲ↢彼葱嶺↡、豈於↢中華之帝↡無シテ↠善不↠預カラ↢道場↡、辺鄙之君有↠縁普ウルホハンヤ↢法座↡。光明所↠照則衆生離↠苦。而土何アテカ↢人↡、独隔テヽ↢恩外↡曽ルヤ↢見聞↡。」 1329

ないにはしゅうなきいち内箴ないしんにいはく、 それじゅんてんつらなれども矇瞍もうそうそのいろかんがみることなし。 雷霆らいていおどろかせども、 ろうそのひびきかざるは、 けだしかんえたるなり。 あらしをなすきょうせきこうももつてそのこころとどむることなし。 ふんむすびて野夫やふつくすがべんも、 よくその忿いかりのぞくことなし。 またじょうせいことなるなり。 ちゅうあり ゆゑにみちかなふときはすなはちばんはるかにおうじ、 いきおいそむくときはすなはち肝胆かんたんえつなり。 いはんや無始むしけつとおし、 悩愛のうあい滄海そうかいふかきことをくらぶ。 有為ういごうひろし、 塵労じんろう巨岳きょがくたかきことをあらそふ。 ぐんじょうたちまちにいたることあたはず、 ゆゑにこれをみちびくにしゃくぜんをもつてす。 しゅぎょうつぶさにしゅすべからず、 ゆゑにこれをはげむに限分げんぶんをもつてす。 なほしてん二化にけはじめてねんかなふがごとし。 ちゅうりゃく せいふたたへんじて、 すなはちどういたる。 密雲みつうん時雨じうみちびけんぴょうしもむにはじまる、 みなぜんしゃくいいなるがゆゑに。」 (弁正論巻六) このしもこうとう以下いげじゅうぎょうしかしながら所引しょいんのごとし

「内ニハ周世↠機指一。内箴曰、夫淳儀ツラナレドモ↠天矇瞍莫↠鑑コト↢其↡。雷霆オドロカセドモ↠地、聾夫↢其↡者、蓋機感之絶タル也。↠暴クヰセキ、孔↣以トヾムルコト↢其↡。結↠憤野夫賜↣能ノゾクコト↢其忿↡。亦情性之殊ナル也。 カナフトキハ則万里ハルカ、勢ソムクトキハ則肝胆楚越ナリ。況無始トヲ、悩愛与↢滄海↡クラ↠深コトヲ。有為業広、塵労将↢巨岳↡争ソフ↠峻コトヲ。群情不↠能↢頓コト↡、故クニ↠之↢積漸↡。衆行不↠可↢ツブサ↡、故ハゲム↠之↢限分↡。猶↣天地二化始カナフ↢於自然↡。 斉魯再タビジテ、乃↢於至道↡。密雲導ビキ↢於時雨↡堅氷ハジマ↢於履ムニ↟霜、皆漸積之謂也故。」此下「二皇統化」以下十四行余併如↢所引↡

内建ないけん」 とらは、 すなはちしんなり。

「内建」等者、即二箴也。

漢明かんめいよりしもれい」 にいたるまでろくぎょうは、 当段とうだんろんもんまっちゅうなり。 このゆゑにこのもん建造けんぞうぞうとうだいまえにありといへども、 このにおいてはろんまつして、 しかもろんこころだんしゃくするところのなるがゆゑに、 そのぎょう内箴ないしんたすくるをもつてのゆゑに、 そのしめさんがためにだいのちあんずるか。

「自↢漢明↡」下至マデ↢「有霊哉」↡六行余者、当段外論註也。是文雖↠在↢「建造像」等↡、於↢此↡者居シテ↢外論↡、而↣弾↢シヤクスル外論↡句ナルガ、以↣其意楽助クルヲ↢内箴↡故、為↠示サンガ↢其↡安ズル↢題↡歟。

然徳ねんとく不備ふびしゃ」 とらは、 内箴ないしんもんなり。 かみぎょうあり、 いままたこれをのぞく。

「然徳無不備者」等者、内箴文也。上↢数行↡、今又除↠之

ふ。 もししかのごとくならば 「れい」 のしも然徳ねんとく」 のかみにもつとももつてないことばくべきや。

問。若クナラ↠然者、「霊哉」之下「然徳」之上尤以可↠置↢乃至↡乎。

こたふ。 かみもん内箴ないしんまえにありといへども、 そのこころつうずるをもつて内箴ないしんくわへてこうとするなり。 もしないといはば、 ただ文段もんだん錯乱さくらんするにあひたるべし。 このゆゑにないことばかず。

答。上文雖↠在↢内箴之前↡、以↢其意通ズルヲ↡引↢加ヘテ内箴↢鉤鎖↡也。若言ハヾ↢乃至↡、只可↤相↣似タル錯↢乱スルニ文段↡。是不↠置↢乃至↡也。

けん」 のしもに 「ない」 といふは、 当段とうだんなかになほのこりのもんあり、 またさんおよびしんはじめをのぞく。 ゆゑにしかいふなり。 これらのしんしげきがゆゑに、 そのもんせざらくのみ。

「可験」之下言↢「乃至」↡者、当段之中1330↢残文↡、又除↢三・四及五箴↡。故云↠爾也。是等数箴繁キガ、不ラク↠載↢其↡而已。

つぎに ¬しょうぼうねんぎょう¼ を以下いげは、 しんおわりのもん、 いまの所引しょいんはこれちゅうもんなり。

↢¬正法念経¼↡以下、五箴文、今所引者文也。

ふ。 このちゅうこころ何事なにごとぶるをや。 当段とうだんろんことばならびに内箴ないしんもんなきによりて、 しゅべんじがたし。 ふ、 つぶさなるもんきてげんらんとおもふ。

問。此之意宣ブルヲ↢何事↡乎。依↠無↢当段外論之言並内箴文↡、難↠辨↢旨趣↡。請、聞↢具ナル↡欲↠知ント↢元由↡。

こたふ。 「ろんにいはく、 それくにたみをもつてもととなす。 もとかたきときはすなはちくにやすし。 これをもつていくもんおよび、 おんようしつながる。 ゆゑにそんきょうしてさいけず。 こうやぶるといへども、 まつりたしめず。 ゆゑにこっきょうにしててんしょうせいなることを。 いまだ人民じんみんちょうじんしてこくぞんずべきことをかず。 いまぶっきょうにはすなはちさいしゅづけてほうぼうとなす。 ただはやせいするをはんごうす。 すでにちょうせいほうく、 また不死ふしじゅつなし。 これすなはちいっなかこくむなし。」 (弁正論巻六)

答。「外論曰、↠民↠本。本固キトキハ則邦ヤス。是以賜及↢育子之門↡、恩流ヨウ之室↡。故子孫享祀シテ世載不↠↢至孝毀↟躬、不↠令↠祀。故↢国家富強ニシテ天下昌盛ナルコトヲ↡。未↠聞↢人民凋尽シテ家国可コトヲ↟存。今仏教ニハ即不妻不娶↢奉法↡。唯早スルヲ↠得↢涅槃↡。既↢長生之方↡、又無↢不死之術↡。則一世之中家国空矣。」

ないきょうもとたる内箴ないしんにいはく、 それじんましせいかえるはにゅうどう要門ようもんじょうよくつるはせいほんなり。 ゆゑにいはく、 どうたかものたっとびらる、 とくひろものしょうせらる、 どうをもつてじんつたとくをもつてせいさずく。 じんせい相伝そうでんす、 これをりょうといふ。 どうみなもとふさぎ、 とくる、 これをあとなしといふ。 よくつるをあとなしとなすといふにはあらず。 かずや、 むかししょうがいへることを。 しゃくならずといふところなし。 まことに人道じんどうきょうげん、 まことに済俗さいぞくしょうしゅなり。 それ一善いちぜんおこなふときはすなはち一悪いちあくる、 一悪いちあくるときはすなはち一刑いっけいむ、 一刑いっけいいえむときはすなはち万刑ばんけいくにむ。 ゆゑにんぬかいじゅうぜんしょうもとたり。 またかいしゅして悪趣あくしゅげんじ、 じゅうぜんびて人天にんでんしげし、 人天にんでんしげくしてすなはちせいさかんなり。 悪趣あくしゅおとろへて災害さいがいほろぶ。」 (弁正論巻六) 所引しょいんちゅうは、 このもんちゅうなり。

「内教↢治本↡指五。内箴曰、↠神ルハ↠性入道之要門、絶↠情ルハ↠欲登聖之遐本ナリ。故云、道高タトビラル、徳弘セラル、以↠道↠神↠徳↠聖。神聖相伝、是↢良嗣↡。塞↢道之源↡、伐↢徳之根↡、此↠無↠後。非↠云ニハ↢棄ルヲ↠欲スト↟無シト↠後也。子↠聞乎、昔何尚ヘルコトヲ。釈氏之化無↠所↠ト云↠可ナラ。諒人道之教源、誠済俗之称首ナリトキハ↢一善↡則↢一悪↡、去トキハ↢一悪↡則↢一刑↡、一刑息トキハ↢於家↡則万刑↢於国↡。故五戒・十善↢正治之本↡矣。又五戒修シテ而悪趣減、十善ノビ而人天1331、人天滋シテ則正化隆ナリ。悪趣衰而災害ホロ。」 所引注者、此注也。

このなかもん、 また唐本とうほんといささかそうあり。 いちに 「かんくだ」 といふ、 「」 のしもこう」 のかみに 「」 のいちあり。 に 「稔穀ねんこくゆたかなり」 といふ、 いちくわへて 「ひゃっこくねんぽう」 といふ。 さんに 「戦息せんそく」 といふ、 「せん」 のしゅう」 たり、 「しゅうかなふか。

文句、又与↢唐本↡聊有↢相違↡。一云↢「甘雨降ルト」↡、「雨」下「降」上↢「時」一字↡。二云↢「稔穀豊ナリト」↡、加↢一字↡云↢「百穀稔豊」↡。三云↢「戈戦息」↡、「戦」字↠「シフ」、「戢」叶↠義歟。

ぎょう」 のしもない」 といふは、 当箴とうしんなかになほのこりのもんあり、 またしもろくしちはちきゅうことごとくのぞく。 ゆゑにこのことばく。

「不行也」下言↢「乃至」↡者、当箴之中猶有↢残文↡、又下六・七・八・九悉。故↢此↡。

くんわつどう」 とらいふは、 だい七巻しちかん (弁正論巻六)なか目録もくろくのごときはだい六巻ろっかんなりどうほんとなすへん第七だいしち」 のもん、 「らく道君どうくんしも当篇とうへん文言もんごんなほはんなり。

言↢「君子曰道士」等↡者、第七巻 如↢目録↡者第六巻也 「気為↢道本↡篇第七」文、「楽道君」下当篇文言猶繁多也。

あんどうしょじょう」 とらいふは、 だい八巻はちかんはじ(弁正論)どうびゅうだすへんだいじゅう」 のもん、 このへん (弁正論巻八)なかにもろもろのあやまりだすにおいて、 これ 「しょ道書どうしょとするあやまり」 をだすもんなり。

言↢「案道士所上」等↡者、第八巻初「出↢道偽謬↡篇第十」文、此之中↠出スニ↢諸↡、↧「諸子↢道書↡謬」↥之破文也。

【98】つぎうんだいきょう」 とらいふは、 おなじきかんおわ(弁正論巻八)しん有地うじへんだいじゅう」 のしゃくもんなり。

言↢「又云大経」等↡者、同之終「帰心有地篇第十二」之釈文也。

だいきょう」 といふは ¬はんぎょう¼ をす。 天台てんだい学者がくしゃおおくかの ¬きょう¼ をもつてだいきょうしょうす。

言↢「大経」↡者、指↢¬涅槃経¼↡。天臺学者多↢彼¬経¼↡称↢大経↡也。

ちんしゃどう以事いじ」 とらは、 「ちん」 とはてんのみづからしょうすることばなり。 むかしりょうていろうきょうててながぶっきょうさつかいく。 いま ¬べんしょうろん¼、 このかすをもつて要須ようしゅとするなり。

「朕捨外道以事」等者、「朕」者天子スル言也。昔梁武帝捨テヽ↢老子↡永↢仏教↡受↢菩薩↡。今¬弁正論¼、以↠明↢此↡為↢要須↡也。

ふ。 いまの ¬しょう¼ のなかにこの論文ろんもんく、 なんのようかあるや。

問。今¬鈔¼之中↢此論文↡、有↢何↡耶。

こたふ。 じゃきょうててないしょうぼうるはしゅじょう依怙えこぶっきょうほんなり。 このあらわすがゆゑに引用いんようせらるるか。 はたまたこれをおもふに、 きょうないきょうすこぶる対論たいろんにあらず、 てんとのごとし。 きょうおよぶは、 きょうしゅそんこれ仏身ぶっしんなりといへども、 なほこれ応身おうじんしゃするがゆゑにたやすくろうをもつてそのしょうれつろんず。 ゆゑにしんかすところの当巻とうかんにおいてこれをく。 弥陀みだ報身ほうじんさらにりょうにあらず。 このあらわさんがためにもつとも大切たいせつなるか。 おほよそこの論文ろんもん一々いちいちもん、 たやすくはすべからず、 また要須ようしゅにあらず。 しかりといへどもほぼ諸篇しょへんだんかんがみて、 もんしゅっしょみょうもくとうしめすらくのみ。

答。捨↢テヽ邪教↡入ルハ↢内正法↡衆生依怙、仏教本意ナリ。顕スガ↢此↡故被↢引用↡歟。将又謂フニ↠之、外教・内教頗↢対論↡、如↢天 トノ↟地。而ブハ↢比1332↡、教主世尊↢仏身也ト↡、猶応身、居スルガ↢娑婆↡故↢季老↡論↢其勝劣↡。故↧所↠明↢化身土↡之当巻↥引↠之。弥陀報身更↢比量↡。為↠顕ンガ↢此↡尤大切ナル歟。凡論文、一一文義、不↠可↢輙↡、又非↢要須↡。雖↠然粗勘↢諸篇科段↡、示スラク↢文出処名目等↡耳。

二 Ⅱ ⅵ c ロ 『法事讃』文

【99】つぎだいしゃくは、 ¬ほうさん¼ の六方ろっぽうだんおわり、 じょうほうさんなり。

大師、¬法事讃¼下六方段終、上方讃也。

還舒かんじょ」 とらは、 「かん」 は ¬ぎょくへん¼ にいはく、 「かんじょせんせつ退たいふくなり。」 ¬広韻こういん¼ にいはく、 「かんせつはんなり、 退たいなり、 なり、 ふくなり。 おんせん。」 いま 「かん」 といふはこれ退たいにあらず、 これふくくんなり。 かみほうたいしていままたといふなり。

「還舒」等者、「還」¬玉篇¼云、「胡関、徐宣二切、退、復也。」¬広韻¼云、「戸関切、反也、退也、顧也、復也。又音旋。」今言↠「還」者是非↢退↡、是復訓也。対シテ↢上五方↡今言↠復也。

じゅうあく」 とらは、 これじゅうあくぎゃく下機げき仏法ぶっぽうほうじゃしんずるがゆゑにもろもろのさいまねくことをかす。 ただしいま一切いっさいあくぎゃくしゅじょうとうかならずかくのごとくなるべしといふにはあらず。 あくぎゃくこんせん念仏ねんぶつじゃしんしょうよくによりて誡勧かいかんしたがふべし。 ゆゑにこれをてて弥陀みだねんずべしとすすむ。 これまた邪神じゃしんつかふるにきてこれをいふ。 ゆゑに 「信邪しんじゃ」 といひ 「しん」 といふ。 ふかちゃくすべし。

「十悪」等者、↧十悪・五逆下機疑↢謗仏法↡信ズルガ↢邪鬼↡故コトヲ↦諸災禍↥。但今非↠謂ニハ↣一切悪逆之衆生等可シト↢必ナル↟此。悪逆下根、専念仏機、邪鬼信不、依↢機性欲↡可↠随↢誡勧↡。故↢捨テヽ↠之シト↟念↢弥陀↡。是又就↠事↢邪神↡言↠之。故↢「信邪」↡云↢「餧神魔」↡。深可↢思択↡。

二 Ⅱ ⅵ c ロ 『法界次第』文

【100】つぎ天台てんだい法界ほうかい」 とらいふは、 かの ¬しょ¼、 天台てんだいだいせんじゅつ三巻さんかんしょなり。 しょじゅつ法門ほうもんおほよそさんびゃっ、 そのだい一巻いっかんじっあり。 そのだいじゅうさんさんかいするところのもんなり。

言↢「天臺法界」等↡者、彼¬書¼、天臺大師撰述三巻書也。所述法門凡三百科、其第一巻↢二十科↡。其第十三、三帰戒↠載スル文也。

その本文ほんもんきょうするにいささかこうりゃく増減ぞうげんとうしゃあり、 かのつぶさなるもん (法界次第巻上) にいはく、 「いちには帰依きえぶつぶっしんには覚者かくしゃといふ。 かくかくす、 ゆゑにづけてぶつとなす。 とは反還ほんげんをもつてとなす。 じゃせずしてかえりてしょうす、 ゆゑにづく。 とはひょうなり、 こころりょうかくたのみてさんおよび三界さんがいしょうづることを。 ゆゑに ¬きょう¼ にいはく、 ぶつ帰依きえするものはつひにさらにそののもろもろの天神てんじん帰依きえせず。

スルニ↢其本文↡聊有↢広略増減等差↡。彼ナル云、「一ニハ帰依仏、仏陀秦ニハ↢覚者1333↡。自覚々他、故↠仏。帰者以↢反還↡為↠義。不シテ↢邪↡還↢正師↡、故↠帰。依憑也。↢心霊覚↡得↠出コトヲ↢三途及三界生死↡也。故¬経¼云、帰↢依スル於仏↣更帰↢依外天神↡也。

には帰依きえほうだつしんにはほうといふ、 ほうをば帰軌ききといふ。 だいしょう所説しょせつ、 もしはきょうもしはしんかなふゆゑにほうといふ。 とは邪法じゃほうかえす。 かえりてしょうぼうしゅす、 ゆゑにづく。 とはこころぶつ所説しょせつほうたのみて、 さんおよび三界さんがいしょうづることを。 ゆゑに ¬きょう¼ にいはく、 ほう帰依きえするものなが殺害せつがいはなる。

ニハ帰依法、達摩秦ニハ言↠法、法ヲバ↢可帰軌↡。大聖所説、若教若理、カナ↢心軌↡故言↠法也。帰者反↢邪法↡。還↢正法↡、故↠帰。依↢心仏所説↡、得↠出コトヲ↢三途及三界生死↡也。故¬経¼云、帰↢依スル於法離↢於殺害↡也。

さんには帰依きえそうそうぎゃしんにはしゅうといふ、 しゅうごうづく。 しゅっさんじょうぎょうじゃこころぶつ所説しょせつ事理じりほうがっす、 ゆゑにづけてそうとなす。 とはじゅうしゅじゃぎょうともづれかえしてこころしゅっさんじょう正行しょうぎょうともす、 ゆゑにづく。 とはこころしゅっさんじょう正行しょうぎょうともたのみて、 さんおよび三界さんがいしょうづることを。 ゆゑに ¬きょう¼ にいはく、 そう帰依きえするものながくまたさらにそのもろもろのどう帰依きえせず。」

ニハ帰依僧、僧伽秦ニハ↠衆、衆↢和合↡。出家三乗行者、心与↢仏所説事理法↡合、故↠僧。帰者反シテ↢九十五種邪行之侶↡帰↢心出家三乗正行之伴↡、故↠帰。依↢心出家三乗正行之伴↡、得↠出コトヲ↢三塗及三界生死↡也。故¬経¼云、帰↢依スル於僧↣復更帰↢依外道↡。」

二 Ⅱ ⅵ c ロ 慈雲釈文

【101】つぎうんしゃく。 かの所造しょぞう ¬おうじょうりゃくでん¼ のじょなかもんなり。

慈雲師釈。彼師所造¬往生略伝¼序文也。

韋陀いだ」 といふは、 天竺てんじくてんこくしょ、 あるいは毘陀びだといひあるいはばいといふ。 ならびにこれ梵言ぼんごん、 ここにはろんといふ。 これにしゅあり。 ¬りつみょう¼ (巻上意) にいはく、 「いちには億力おくりき韋陀いだ事火じかさんほうく。 にはじゅ これにせつあり 韋陀いだ布施ふせ祠祀ししほうく。 さんには阿陀あだ韋陀いだ、 あきらかにこく国戦こくせんほうる。」 いまいふところはこれだいなり。 韋陀いだはこれそう祠祀ししはこれべつさいろんぜんとほっするにただ韋陀いだといふ。 これはこれ総属そうぞくべつみょうなり。

言↢「韋陀」↡者、天竺外典、治国名、或↢毘陀↡或↢吠陀↡。並梵言、此ニハ云↢智論↡。此↢四種↡。¬律名句¼云、「一ニハ億力韋陀、説↢事火懴悔↡。二ニハ耶受 ↢異説↡ 韋陀、説↢布施祠祀↡。三ニハ阿陀韋陀、明↢異国国戦↡。」 今所↠言者第二也1334。韋陀総、祠祀別、欲スルニ↠論ゼント↢祭祀↡只言↢韋陀↡。此総属別名義也。

てん」 といふは、 すなはちこれ祠祀ししかすところのしょなり。 ただしそのつぶさなるもんるにおよばざれば、 しゃくこころたっしがたし。

言↢「祀典」↡者、即↠明↢祠祀↡書也。但不↠及↠見↢其ナル↡者、難↠達↢釈↡。

次上つぎかみもん (楽邦文類巻二) にいはく、 「こん風俗ふうぞくきおいてじんまつりてその福祐ふくゆうもとめ、 のぞみて安穏あんのんじゃしんいのちせっしてつみつくえんむすぶに、 かならずふくきょうとしてひとすべきなし。 むなしくらいしょうごく罪報ざいほうあねく。 ¬えき¼ にいはく、 ぜんいえにはかならずおうあり。 しょうせっいのちがいしてさいじょうすることいっちょう一夕いっせきにあらず、 あにぜんむにあらずや、 おうなんぞうたがはん。 もししょうせっするぜんにあらずといはば、 こん帝王たいおう、 なんがゆゑぞじんしてざんち、 せつきんぎょしょうげて寿域じゅいきのぼらしむるをことごとくぜんしょうするや。」 この次下つぎしもにいまの所引しょいんもんあり

次上云、「今時風俗競↢鬼神↡求↢其福祐↡、望↢安穏↡。信↠邪シテ↠命↠罪ブニエン、必↢福慶トシテ而可↟利↠人。虚↢来生地獄罪報↡。¬易¼曰、積↢不善↡之家ニハ↢余殃↡。殺↠生シテ↠命祖↢承スルコト祭祀↡非↢一朝一夕↡、豈非↠積ムニ↢不善↡耶、殃咎何ハン也。若↣殺スル↠生↢不善↡者、古今帝王、何仁慈化シテ↠世↠残↠殺禽魚遂↠性ルヲ↠登↢寿域↡咸スル↠善耶。」 次下↢今所引文↡

またいはく、 「天趣てんしゅかみにあり、 にんはそのつぎり、 しゅなかり、 ちくはこれしもなり。 いまもつてにんつかふ、 それなほくびせてあしくるがごとし。 そもそもきみたみつかふ、 なんぞぎゃくはなはだしきや。 また邪力じゃりきあり、 これにつかふることすでにひさし。 物党ぶっとうほうるいしてそのなかす、 それまよへるかな」 。

又云、「天趣↠上、人↢其↡、修羅↠中、鬼畜ナリ。今以人事↠鬼フセ↠首ツクルガ↟足。抑君奉↠民、何之甚シキヤ也。又鬼↢邪力↡、事コト↠之。物党方類死シテ↢其↡、世ヘルカナ。」

二 Ⅱ ⅵ c ロ 諦観釈文

【102】つぎかんほっしゃく

観法師釈。

ぼん」 とらは、 ¬けつ¼ (輔行)にいはく、 「とは、 ぼんには闍黎しゃれいといふ、 ここには祖父そふといふ。」 れいことなりといへども二字にじつうず。

「梵語」等者、¬弘決¼二云、「鬼者、梵ニハ↢闍黎多↡、此ニハ云↢祖父↡。」 黎梨↠異ナリト二字通也。

ぼんぎゃく」 とらいふは、 もしじょうごくちくだいによらばちゅうぼんたるべし、 しばらくごくちくしょう餓鬼がきへんによるか。 ¬ほっ¼ のだい譬喩ひゆぼん」 にいはく、 「げんしゅけ、 のちごくちくしょう餓鬼がきく。」 また ¬しゃろん¼ の第八だいはち (玄奘訳世品)じゅしゅげて 「ごくぼうしょう」 といふ。

言↢「作下品五逆」等↡者、若ラバ↢常途地獄・鬼・畜之次第↡者可↠為↢中品↡、且↢地獄・畜生・餓鬼↡歟。¬法¼第二「譬喩品」云、「現↢衆苦↡、後↢地獄・畜生・餓鬼之苦↡。」 又¬倶舎論¼第八1335↢五趣↡云↢「地獄・傍生・鬼」↡。

二 Ⅱ ⅵ c ロ 神智釈文

【103】つぎじんしゃくかみ所引しょいんかんしゃくす。

神智師釈、解↢上所引観師↡也。

鬼之きし」 とらは、 どう ¬けつ¼ の (輔行) にいはく、 「¬爾雅じが¼ にいはく、 とはなり。 ¬尸子しし¼ にいはく、 いにしえにはにんづけてにんとす。 またいはく、 人神じんしんといひ、 じんといひ、 天神てんじんれいといふ。」 いま智師ちしこころ、 このしゃくするか。 ただしかんずるところは人神じんしんしゃく、 またするところは天神てんじんといひれいといふなり。

「鬼之」等者、同¬決¼二云、「¬爾雅¼云、鬼者帰也。¬尸子¼曰、古者イニシヘニハ↢死人↡為↢帰人↡。又云、人神↠鬼、地神↠祇、天神曰↠霊。」 今智師意、摸スル↢此↡歟。但所↠カンズル者人神之釈、又所↠違スル者天神↠鬼↠霊異也。

尸子しし」 といふはしょなり。 ¬爾雅じが¼ のもんにいはく、 「とは」、 ¬尸子しし¼ のことばに 「にんづく」 といふ。 けだしこれ俗典ぞくてんにはしょうだつだんぜざるがゆゑに、 黄泉こうせんおもむくをもつてしょうしてせんといふ。 ゆうみょう魂魄こんぱくをみなとするなり。

言↢「尸子」↡者外書名也。¬爾雅¼之文、「鬼者帰」、¬尸子¼之言↠「名↢帰人↡」。蓋俗典ニハ↠談↢生死解脱↡故、以↠趣クヲ↢黄泉↡称シテ↢帰泉↡。幽冥魂魄皆為↠鬼也。

二 Ⅱ ⅵ c ロ 大智釈文

【104】りっしゃくに、

智律師

そうしゅう」 とらは、 はすなはち餓鬼がき本処ほんじょはこれえんだいしたひゃくじゅんえん王界おうかいにあり。 もししゅつればしゅのぞく。 れつなるものをばせっし、 しょうたるものをばてんぞくす、 ゆゑにてんしゅつうず。 ごくつうずとは、 いはくえんおうごくりょうするがゆゑなり。

「総収」等者、鬼即餓鬼、本処是在↢閻浮提下五百由旬閻魔王界↡。若レバ↢五趣↡除↢阿修羅↡。劣ナルヲバ↠鬼、勝タルヲバ↠天、故↢天修↡。通ズト↢地獄↡者、謂閻魔王領スルガ↠獄故也。

二 Ⅱ ⅵ c ロ 戒度釈文

【105】りっしゃくに、

度律師

そく」 とらは、 あるいは開合かいごうによりあるいはこうきょうきて、 鬼魔きまべつたれどもそのたいつひにおなじ。 またかのさんじゅうろくしゅとうは、 みなこれぎょちゅうきんじゅうるいなるがゆゑに畜趣ちくしゅせっすべし、 ゆゑに 「悪道あくどうしょしゅう」 といふらくのみ。

「魔即」等者、或↢開合↡或↢広狭↡、鬼魔似レドモ↠別体終。又彼三十六狩等者、皆魚・虫・禽・獣ナルガ↠摂↢畜趣↡、故ラク↢「悪道所収」↡而已。

二 Ⅱ ⅵ c ロ 『止観』文

【106】つぎに ¬かん¼ のもんは、 だい八巻はちかんしゃく

¬止観¼文、第八巻釈。

所引しょいんかみのつぶさなるしゃく (止観巻八下) にいはく、 「いまかすにとなす。 いちにはどう分別ふんべつし、 には発相ほっそうかし、 さんには妨損ぼうそんかし、 にはほうかし、 にはかんしゅす。」

所引之上ナル解釈云、「今明↠魔↠五。一ニハ分↢別1336同異↡、二ニハ↢発相↡、三ニハ↢妨損↡、四ニハ↢治法↡、五ニハ↢止観↡。」

みょう」 とらは、 ぐるところのうちだい文段もんだん

「二明」等者、所↠挙之内第二文段。

まんちょう」 とは、 ¬かん¼ (巻八下)本文ほんもんには 「惕ついてき」 といふ。 「つい」 あるいは 「つい」 となす、 「まんちょう」 いまだず、 ほんあるか。 いまこのもんむかひてそのそうりがたし、 よりてつぶさなるもんだす。 そのつぎもんにいはく、 「いち惕ついてきほっすることをいはば、 もしひとするときあるいはめんにより、 あるいはひと身体しんたいによる。 ちてまたがり、 翻覆ほんぷくしてまず、 つうなしといへどもしかも屑々せつせつとしてへがたし。 あるいはひとみみはなそんし、 あるいはほうきゃくらくしてものあるに似如たり。 るにべからず、 おわればまたきたる。 しゅうせいとしてこえをなしてひとみみさわがし。 このかお枇杷びわたり。 もくりょうあり。

「慢悵鬼」者、¬止観¼本文ニハ↢「惕鬼」↡。「」或↠「槌」、「慢悵」未↠見、有↢異本↡歟。今向↢此↡難↠知↢其↡、仍↢具ナル↡。其云、「一ニハ惕スルコトヲイハヾ者、若人坐スル時或↢頭面↡、或↢人身体↡。オチ而復アガ、翻覆シテ不↠、雖↠无↢苦痛↡而セツトシテ↠耐。或↢人耳・眼・鼻↡、或抱持撃擽シテ似↢如タリルニ↟物。トル不↠可↠得、駆レバ復来シウセイトシテシテ↠声↢人↡。此鬼面タリ↢枇杷↡。四目両口アリ

時媚じみおこることをいはば、 ¬だいじゅう¼ にじゅうしゅかす。 宝山ほうざんなかにありて法縁ほうえんしゅす、 これはこれしょうしゅなり。 権応ごんおうものはいまだかならずしものうをなさず。 実者じっしゃはよくぎょうにんみだる。 もし邪想じゃそうぜんおお時媚じみじゃくせらる。 あるいはしょうなんしょうにょ老男ろうなん老女ろうにょきんじゅうぞうとなりて、 しゅぎょうみょう種々しゅじゅどうなり。 あるいはひとらくせしめ、 あるいはおしへてひとしょうす。 いまじゅう分別ふんべつせんとほっせば、 まさにじゅうさっすべし。 いづれのときにかしばしばきたる。 そのきたときしたがひてすなはちこのしゅなり。 もしとらはこれとらないうしはこれうしなり。

時媚ルコトヲイハヾ者、¬大集¼明↢十二狩↡。在↢宝山↡修↢法縁↡、此精媚之主ナリ。権応↢必シモ↟悩。実者↢行人↡。若邪想坐禅セラル↢時媚↡。或↢少男・少女、老男・老女、禽獣之像↡、殊形異メウ種々不同ナリ。或娯↢楽セシメ↡、或↠人。今欲↣分↢別セント時獣↡者、当↠察↢十二時↡。何ニカシバ。随↢其時↡即此狩也。若虎、乃至丑ナリ

つぎ魔羅まらかさば、 ぜんあくぞうせんがためのゆゑに、 このんでこんより強軟ごうなんをなしてきたりてす。 ¬大論だいろん¼ にいはく、 をばせんづく、 またせんづく。 おのおのこんてともにこころす。 こんおのおの一刹いっせつあり。 せつもしてんずればすなはちこんぞくす。 こんもしせばこんあにぞんぜんや。 あいしきるをせんづく、 これ軟賊なんぞくなり。 可畏かいしきるを毒箭どくせんづく、 これ強賊ごうぞくなり。 平々ひょうびょうしきるは、 ごうなんぞくなり。 こんもまたかくのごとし。 がっしてじゅう八箭はちせんはまたはじゅう八受はちじゅづく。 このをもつてのゆゑにあいじゃくすべからず、 じゃくすればすなはちやまいじょうず。 やまいすなはちしがたし、 ながぜんじょうさまたげてしてどうす。」

↢魔羅↡者、為↧破↢二善↡増センガ↦二悪↥故コノン↢五根↡ナシ↢強軟↡来。¬大論¼云、魔ヲバ↢華箭↡、又名↢五箭↡。各射↢五根↡共↢於意↡。五根各一刹那アリ。刹那若ズレバ即属↢意根↡。意根若セバ五根豈存ゼンヤ。眼↢可愛↡名↢華箭↡、軟賊ナリ。見↢可畏↡名↢毒箭↡、強賊ナリ。見ルハ↢平々之色1337↡、不強不軟賊ナリ。余四根亦如↠是。合十八箭亦↢十八受↡。以↢是↡故不↠応カラ愛著↡、著スレバ則成↠病。病則難↠治、永↢禅定↡死シテ↢魔道↡。」

おおぜんみだるゆゑにほうかす。 そのほうとはかんしゅぎょうしゅぎょうじょうぜざればしょうはなれがたし、 ゆゑにこれなんぎょうなり。 念仏ねんぶつぎょうじゃはさらにしょうなし。 りきみょうもつともこれをあおぐべし。

↠禅↢治法↡。其治法者、止観修行、修行不レバ↠成魔障難↠離、故難行ナリ。念仏行者↢魔障↡。他力冥加最↠仰↠之

二 Ⅱ ⅵ c ロ 『往生要集』文

【107】つぎりょうごんしゃく

楞厳釈。

しゃ」 とらは、 わくぼうしゅっしょうびょうだつみょうもんなん真俗しんぞくしょう、 ことにこれをつつしむべし。 現当げんとうなん、 たれかおそれざらんや。

「魔者」等者、起惑妨果出世魔障、起病奪命世門鬼難。真俗障、殊↠慎↠之。現当留難、誰不↠恐乎。

二 Ⅱ ⅵ c ロ 『論語』文

【108】つぎに ¬ろん¼ のもん。 これだい六巻ろっかんだいじゅういちへん先進せんしんことばなり。

¬論語¼文。第六巻第十一篇先進詞也。

わつ」 とらは、 その文点もんてんみてこころぞんずべし。 いちには 「じん」 のよりかえりて 「えん」 の以下いげ五字ごじる。 「じん」 のあるいはなし。 こころひとつかふることなほようならず、 いはんやつかへんや。 いふこころはおよびがたきなり。 いまこの文点もんてんせいちゅうりょうともにきたる、 せつこれ一同いちどうなり。 しかるにこんしょうにんさらにべつぞんじたまふ。 いはくはじめのさんこれをるべし。 いふこころはつかふることなかれとなり。

「子曰」等者、読↢其文点↡可↠存↢二↡。一ニハ↠自↢「人」字↡「焉」字以下五字読。「神」字或。義コト↠人猶不↢容易↡、況ヘンヤ↠鬼乎。言心ハ↠及也。今此文点、清中両家共、説一同也。而今聖人更ジタマフ↢別↡。謂三字可↣読↢切↡。言レト↠事ルコト也。

人焉じんえん」 とらは、 「えん」 はなり。 じんはこれ善趣ぜんしゅはこれ悪趣あくしゅ善趣ぜんしゅとなしてなんぞ悪趣あくしゅつかへん。 ゆゑにかみくところのうんしゃく (楽邦文類巻二) に 「いまひとをもつてつかへば、 それなほくびせてあしくがごとしと」 いふ。 けだしそのこころなり。 のち文点もんてんこのしゃくかなふか。

「人焉」等者、「焉」者何也。「人善趣、鬼悪趣、為シテ↢善趣↡何ヘン↢悪趣↡。故↠引慈雲↣「今以↠人ヘバ↠鬼シトフセ↠首ツケンガ↟足。」蓋意也。後之文点叶↢此↡歟。

流通分

【109】第三だいさんずうぶんとは、 ひつ以下いげ、 これそのもんなり。 また当巻とうかんにおいて四科しかわかとき、 これを総結そうけつとなす。 なかにおいてとなす。

第三流通分者、「竊以」以下、文也。又於↢当巻↡分↢四科↡時、為↢之総結1338↡。於↠中↠二

いちもんはじめより 「けん別伝べつでんいたるまで、 まづたい黒谷くろだにしょうにんしんしゅうこうりゅうとく行状ぎょうじょうかして、 緇素しそ昏迷こんめいをもつてゆゑにみだり浄教じょうきょうしゅんたいしょうなんいたすことをたんずることをしめす。

自↢文之始↡至マデハ↢「見別伝」↡、先シテ↢大祖黒谷聖人真宗興隆至徳行状↡、示↠歎コトヲ↧緇素以↢昏迷↡故コトヲ↦浄教浚怠障難↥。

ねん禿とく」 のしもは、 つぎしんにっしゅうらいかし、 ほんぎょうとくおんよろこぶことをぶ。

「然愚禿」下、次↢自身入由来↡、述↠悦コトヲ↢稟教得利之師恩↡。

はじめのもんなかきて、 しょ」 とらは、 もつぱら興福こうぶくじょうしゅうりゅうすべからざることをそうす。 山門さんもんこれにどうず、 ゆゑに 「しょ」 といふ。

↢初↡、「諸寺」等者、専興福寺奏↠不コトヲ↠可↠立↢浄土宗↡也。山門同↠之、故↢「諸寺」↡。

らく」 とらは、 いはく寺訴じそによりてしょきょうけんさるるとき、 かのてらいわれなきにあらずとそうす。

「洛都」等者、謂↢寺訴↡被↠召↢諸卿意見↡之時、奏↢彼寺訴非ズト↟無↠謂也。

わい」 とらは、 じゅうれん安楽あんらくぜんしゃくしょうがん斬罪ざんざいこれなり。

「猥坐」等者、住蓮・安楽・善綽・性願、ザン罪是也。

或改わくかい」 とらは、 たいをばごうしてふじ元彦もとひこといふ、 しょうしゅをばづけてふじ善信よしざねといふ、 これそのるいなり。 すなはちしもしょうして 「はそのひとつなり」 といふ、 これそのなり。

「或改」等者、大祖ヲバシテ↢藤井元彦↡、鈔主ヲバ↢藤井善信↡、類也。即下シテ↢「豫一也」↡、義也。

そう」 とらは、 だい一巻いっかんはじめにその撰号せんごうしゃくしその字義じぎしゃくするに、 すなはちいまのもんきてちゅうくわおわりぬ。

「非僧」等者、第一巻↢其撰号↡釈スルニ↢其字義↡、即引↢今↡加↢註解↡訖

きょう」 とらは、 はいはじじょうげんねんひのとのうしゅんより、 きょうおわけんりゃく元年がんねんかのえのひつじ*ちゅうとういたるまで、 ねんおわりぬ。

「経五」等者、自↢配流始承元二年丁暮春↡、至マデ↢帰京終建暦元年辛未仲冬↡、↢五年↡畢

居諸きょしょ」 といふは、 これ日月にちがつなり。 つぶさにはにちきょ月諸がつしょといふこれなり。 「しょ」 あるいは 「しょ」 となす、 これはこれなり、 「しょ」 をしょうとすらくのみ。

言↢「居諸」↡者、日月也。具ニハ↢日居月諸↡是也。「諸」或↠「緒」、此是非也、「諸ラク↠正耳。

げつ」 といふは、 これちゅうとうす。

言↢「子月」↡者、↢仲冬↡。

寅月いんがつ」 といふは、 これしょうがつなり。

言↢「寅月」↡者、正月也。

入洛じゅらく」 といふは、 一本いっぽんにゅうよく」、 「よく」 のなり、 「らく」 のたるべし。

言↢「入洛」↡者、一本「入浴」、「浴」字非也、可↠為↢「洛」字↡。

建仁けんにん」 とらは、 元年がんねんかのとのとりたいしょうにんろくじゅうさいしょうしゅしょうにんじゅうさいはじめてもんりてすなはちしゅうつたふ。

「建仁」等者、元年辛酉大祖聖人六十九歳、鈔主聖人二十九歳、始↢門下↡即伝↢宗旨↡。

げんきゅう」 とらは、 ねんきのとのうしかたじけなく恩免おんめんあずかりて ¬せんじゃくしゅう¼ をうつす。 かの建仁けんにんにっしゅうれきよりこのげんきゅう伝書でんしょときいたるまでぜんねん早速さっそく恩許おんきょほうりょうざいしょうせらるゆゑなり。

「元久」等者、二年乙丑忝↢恩免↡写↢¬選択集¼↡。自↢彼建仁入宗1339之暦↡至マデ↢此元久伝書之時↡前後五年、早速恩許被ルヽ↠賞↢法宇良材↡故也。

ぶつ」 とらは、

「彼仏」等者、

ふ。 この所引しょいんもんこん現在げんざい」 といひて 「」 のなし、 そのいかん。

問。此所引文、言↢「今現在」↡無↢「世」之字↡、其義如何。

こたふ。 つたへらるるところのたいおんふで、 このいちなし。 よりてかのほんまかせてこれをのぞかるるか。 これすなはちきょうろんしょうしょ以下いげ、 かくのごときのもん増減ぞうげんしんしゃおおほんあり。 しがたひてたい所覧しょらんほんこのなきか。 ゆゑにそのもんのごとくこれをあたへらる、 なんのしんかあらん。 いま相伝そうでんきてそのほんまもるがゆゑに、 これをりゃくせらる。 この 「」 のいち、 その有無うむにおいていちかまふるにあらず、 善悪ぜんあくをいふにあらず。 ただほんにおいてあるむねぞんずるなり。

答。所↠被↠伝之大祖御筆、無↢此一字↡。仍↢彼↡被↠除↠之歟。是則経論章疏以下、如↠此文字増減参差多↢異本↡。随而大祖所覧之本無↢此字↡歟。故↢其↡被↣書↢与↡、有ラン↢何不審↡。今就↢相伝↡守↢其↡故、被↠略↠之也。此「世」一字、於↢其有無↡非↠構ルニ↢一義↡、非↠謂↢善悪↡。只存ズル↢於↠本↠異旨↡也。

又依うえ」 とらは、 たいげによりてかいみょうさい、 すなはちはじめのかん撰号せんごうおわりぬ。

「又依」等者、依↢太子↡改名子細、即載↢初巻撰号↡訖

りょうしょみょう之字しじひつ」 といふは、 善信ぜんしんこれなり。

言↢「令書名之字畢」↡者、善信是也。

しょうねん」 とらは、 相伝そうでんひとそのかずおおからざることをげて、 わが見写けんしゃほうへることをしめす。

「渉年」等者、挙↢相伝人其数不コトヲ↟多、示↢我見写之遇ヘルコトヲ↟逢也。

きょうさい」 とらは、 まさしくりき安心あんじんりょうべて、 もつぱらとく報謝ほうしゃこうあらわす。 この 「ようしょうしゅうほんひろ順逆じゅんぎゃくえんともにせんことをがんずることをあらわす。

「慶哉」等者、正↢他力安心領解↡、専表↢師徳報謝之至孝↡。顕↣此「要鈔」集記本意、広ズルコトヲ↢順逆二縁共センコトヲ↡。

二 Ⅲ 『安楽集』文

【110】¬安楽あんらくしゅう¼ のもんは、 かの ¬しゅう¼ じょうかん第一だいいち大門だいもんに、 まづきょうこうしょかすしもしゃくなり。

¬安楽集¼文、彼¬集¼上巻第一大門、先↢教興所由↡下ナリ

二 Ⅲ 『華厳経』文

【111】¬ごんぎょう¼ のもん、 そのこころつべし。

¬華厳経¼文、其意可↠見

 

ろくようしょう だいろく きゅうまつ

 

作者さくしゃ奥書おくがきにいはく

1340作者
奥書云

教行きょうぎょうしょうは、 れっそうじょう要須ようしゅしょうにんりょうしょうなり。 しかるに所引しょいん本文ほんもん広博こうはくにして、 ぜん説相せっそうあきらめがたし、 しょりゅうきょう幽玄ゆうげんにして、 甚深じんじんしゅまよひやすし。 しかるあいだいちりゅう伝来でんらいろう、 なほいまだそのこうずるじんかず、 諸国しょこく耽学たんがく群侶ぐんりょおほくこのしょむねりょうせざることをしめす。 がごときせんたやすくもつてあにあへてせんや。 しかりといへどもとく報謝ほうしゃのため、 仏法ぶっぽうずうのため、 こころみに小量しょうりょう註釈ちゅうしゃくくわへ、 かりそめにこう取捨しゅしゃあおぐ、 いち十巻じっかん六要ろくようしょうごうす。 本書ほんしょすなはち六巻ろっかん第三だいさん第六だいろくとはもとより本末ほんまつあるによりて、 わかちて八巻はっかんとなす、 しょうおなじく六巻ろっかんだい六本ろくほんかさねてまたひらくにきて、 本末ほんまつそうじて十巻じっかんとなす。 簡要かんようひろふといへどもただ管見かんけんず、 われすでにかえりみるところ庸昧ようまいなり、 ひとなんぞちょうろういたさざらんや。 しかればかた当台とうだいふみづくえあんじ、 こうりょう流布るふつつしむべし、 ただにはたとひ員外いんがいしょすともみづからはひさしく心底しんていろうす、 これ随分ずいぶんこうなり、 これちょうがいせきなり。 後塵こうじんともがら忽諸こっしょせしむることなかれ。 もし万一まんいち一見いっけんほっする類者るいしゃあらば、 草庵そうあんなかにはこれをゆるすといへども、 竹窓ちくそうそとにはこれをきんずべし、 らんなほせいくわふ、 いはんや書写しょしゃにおいてをや。しかしてこころざしりょうもうにあらず、 慇懃おんごんあらわさんものはや師資しし契約けいやくをなし、 よろしく相伝そうでんけいつのるべし、 そのれいだくせざらんにおいてはそのじつなきをるべきなり。 このじょうすでに懇切こんせつしんあるにあらず、さらに允容いんようことばだすなかれ。 においてまつたく貢高こうこうおもいそむかず、 ほうにおいてひとへにりょうなからんとするのみ。

教行証者列祖相承之要須聖人領解之己証也而所引之本文広博兮前後之説相難明所立之教旨幽玄兮甚深之義趣易迷然間一流伝来之耆老猶未聞講其義之仁諸国耽学之群侶多示不了此書之旨如予浅智輙以豈敢雖然為祖徳報謝為仏法弘通試加小量之註釈偸仰宏智之取捨一部十巻号六要鈔本書則六巻第三与第六元自依有本末分為八巻愚鈔同六巻第二与六本重又就開本末総為十巻雖拾簡要只恥管見我已所顧庸昧也人何不致嘲哢哉然者堅安当台之文机応慎荒涼之流布但他縦処員外自久労心底是随分之功也是超涯之績也後塵之儔莫令忽諸若万一有欲一見之類者草庵之中雖許之竹窓之外可禁之披覧猶加制況於書写乎然而志非仮令望表慇懃者早成師資之契約宜募相伝之譜系於不諾其礼者可知無其実也此条既非有懇切之心更勿出允容之詞於身全不挿貢高之思於法偏為無聊爾之儀而已

   *延文えんぶんさいかのえ八月はちがつ一日いちにち      じょうらくだい主判しゅはん

   延文五歳 八月一日     常楽台主判

 

かさね奥書おくがきにいはく

1341重奥書云

このしょういち禿筆とくひつ草本そうほんをもって。 綱厳こうごんだいそうきんしょくあんせんがためるところなり。 十帖じゅうじょう書写しょしゃこうすでに殷勤おんごんたり、 いちりゅうずうこころざしもつともずいするところなり。 きょうごうのところ、 文点もんてんとうそうなきか、 しょうほんたるにる。 かたきょうかいしゅまもりて、 りょう流布るふゆるすことなからんのみ。

此鈔一部以禿筆草本綱厳大僧都為安置錦織寺所書取也十帖書写之功既為殷勤一流弘通之志尤所随喜也校校合之処文点等無相違歟足為証本堅守教誡之委趣莫許聊爾之流布耳

   *じょうさいみずのとのう三月さんがつじゅうにち    老衲ろうのうはんしちじゅうさい

   貞治二歳 三月廿五日    老衲判七十四歳

   *どう 三年さんねんきのえたつじゅう一月いちがつじゅうにち十帖じゅうじょうだいならびにそでみょう老筆ろうひつおわりぬ。 存覚ぞんかくしちじゅうさい

   同 三年十一月十九日十帖外題並袖名字染老筆訖         存覚七十五歳

 

本願ほんがん主席しゅせきしょうじょうけん奥書おくがきむねまかせて、 よろしく相伝そうでんけいよしつのり、 慇懃おんごんこんぬきんでしむるによりて、 いち十帖じゅうじょうたまひこれをじゅたてまつおわりぬ。 これすなはち仏法ぶっぽうずうやくへんのためなり。

本願寺主席和尚任上件奥書之旨宜募相伝之譜系之由依令抽慇懃之懇志給一部十帖奉授与之訖是則為仏法弘通利益無辺矣

   明徳めいとく三年さんねんみずのえさるがつじゅう六日ろくにち    *桑門そうもんかん

   明徳三年五月十六日    桑門慈観

 

延書は底本の訓点に従って有国が行った(固有名詞の訓は保証できない)。
底本は ◎本派本願寺蔵明徳三年慈観上人書写本。 Ⓐ本派本願寺蔵文安四年空覚書写本、 Ⓑ興正派興正寺蔵蓮如上人書写本 と対校。
→Ⓐ
→Ⓐ
→◎Ⓑ
→Ⓑ
→◎Ⓑ(◎「三歟」と右傍註記)
応如是→(本願寺蔵版)作護持(延書はこれによる)
 左Ⓐタブロカス
→(本願寺蔵版)方[木](書下しはこれによる)
 左Ⓐ余救反
 Ⓐ「㺄[玉云翼乳切 獣名也]」と上欄註記
[法]
→◎Ⓑ
 ◎Ⓑ「或乍鍼」と左傍註記
 ◎ⒶⒷ「三」と右傍注記
 ◎ⒶⒷ「四」と右傍注記
→Ⓐ
→Ⓐ
干宝捜神→◎↠宝コト↠神
→ⒶⒷ
乃至→Ⓐ已上
 ◎「辺歟」と右傍註記→Ⓐ(延書はこれによる)
→Ⓐ
 ◎Ⓑ「尹喜也」と左旁註記
→Ⓐ
→Ⓐ
 Ⓑになし
為道本篇第七文→◎為↢道本篇第七」文↡
 Ⓑになし
→Ⓑ又[勧]
→Ⓐ
→Ⓐ
 Ⓑになし
→Ⓐ
→◎ⒶⒷ
→Ⓐ
 Ⓑになし
→Ⓐ
→Ⓐ