0721◎如0723来二種回向文
【1】 ◎^▲¬*無量寿経優婆提舎願生偈¼ にいはく、
^「▲云何回向 不↠捨↢一切苦悩衆生↡ 心常作願 *回向為↠首得↣成↢就大悲心↡故」 文
「*いかんが回向する。 一切苦悩の衆生を捨てずして、 心につねに作願すらく、 回向を首として大悲心を成就することを得たまえるがゆえに。」
^▲この本願力の回向をもつて、 如来の回向に二種あり。 一つには↓往相の回向、 二つには↓還相の回向なり。
【2】 ^▲↑往相の回向につきて、 ↓*真実の行業あり、 ↓*真実の信心あり、 ↓*真実の証果あり。
【3】 ^▲↑真実の行業といふは、 諸仏称名の悲願 (第十七願) にあらはれたり。 称名の悲願、 ¬*大無量寿経¼ (上) にのたまはく、
^「▲設我得仏 十方世界 無量諸仏 不悉咨嗟 称我名者 不取正覚」 文
【4】 ^▲↑真実信心といふは、 念仏往生の悲願 (第十八願) にあらはれたり。 信楽の悲願、 ¬*大経¼ (上) にのたまはく、
^「▲設我得仏 十方衆生 至心信楽 欲生0722我国 乃至十念 若不生者 不取正覚 唯除五逆 誹謗正法」 文
【5】 ^▲↑真実証果といふは、 必至滅度の悲願 (第十一願) にあらはれたり。 証0724果の悲願、 ¬大経¼ (上) にのたまはく、
^「▲設我得仏 国中人天 不住定聚 必至滅度者 不取正覚」 文
^これらの本誓悲願を選択本願と申すなり。
【6】 ^▲この必至滅度の大願をおこしたまひて、 この真実信楽をえたらん人は、 すなはち正定聚の位に住せしめんと誓ひたまへり。
^▲同本異訳の ¬*無量寿如来会¼ (上) にのたまはく、
^「▲若我成仏 国中有情 若不決定 成等正覚 証大涅槃者 不取菩提」 文
^▲この悲願は、 すなはち真実信楽をえたる人は決定して等正覚にならしめんと誓ひたまへりとなり。 等正覚はすなはち正定聚の位なり。 等正覚と申すは、 補処の弥勒菩薩とおなじからしめんと誓ひたまへるなり。 これらの選択本願は、 法蔵菩薩の不思議の弘誓なり。
^▲しかれば、 真実信心の念仏者は、 ¬大経¼ (下) には 「▲次如弥勒」ツイデミロクノゴトシ とのたまへり。 これらの大誓願を往相の回向と申すとみえたり。 ▲弥勒菩薩とおなじといへりと、 ¬*龍舒浄土文¼ にはあらはせり0723。
【7】 ^▲二つに、 ↑還相回向といふは、 ¬*浄土論¼ にいはく、
^「▲以↢本願力廻向↡故 是コレハ名↢コレゴネ出第五門↡ムモンノウチニヱカウ」 と。モンナリ コレハミダニヨライノリタノヱカウナリ
「*本願力の回向をもってのゆえにと。 これを出第五門と名づく。」
^こ0725れはこれ、 還相の回向なり。
【8】 ^▲このこころは、 一生補処の大願 (第二十二願) にあらはれたり。 大慈大悲の誓願は、 ¬大経¼ (上) にのたまはく、
^「▲設我得↠仏 他方仏土諸菩薩衆 来↢生我国↡ 究竟必至↢一生補処↡ 除↧其本願自在所化 為↢衆生↡故 被↢弘誓鎧↡ 積↢累徳本↡ 度↢脱一切↡ 遊↢諸仏国↡ 修↢菩薩行↡ 供↢養十方諸仏如来↡ 開↢化恒沙無量衆生↡ 使↞立↢无上正真之道↡ 超↢出常倫↡ツネノトモガラ 諸地之行現前 修↢習普賢之徳↡ 若不↠爾者 不↠取↢正覚↡」 文
「*たとひわれ仏を得たらんに、 他方仏土のもろもろの菩薩衆、 わが国に来生して、 究竟してかならず一生補処に至らしめん。 その本願の自在の所化、 衆生のためのゆえに、 弘誓の鎧をきて、 徳本を積累し、 一切を度脱して、 諸仏の国に遊びて、 菩薩の行を修し、 十方の諸仏如来を供養し、 恒沙無量の衆生を開化し、 無上正真の道を立せしめんをば除かんと。 常倫に超出し、 諸地の行現前し、 普賢の徳を修習せん。 もししからずは、 正覚を取らじ。」
^▲これは如来の還相回向の御ちかひなり。 これは他力の還相の回向なれば、 自利利他ともに行者の*願楽にあらず、 法蔵菩薩の誓願なり。 「他力には*義なきをもつて義とす」 と、 大師聖人 (*源空) は仰せごとありき。 よくよくこの選択悲願をこころえたまふべし。
^*正嘉元年丁巳閏三月二十一日これを書写す。
底本は高田派専修寺蔵正嘉元年真仏上人書写本ˆ聖典全書と同一ˇ。
振り仮名の体裁で示されていた訓を、 別書きにした。
回向為首 回向を第一にして。 回向を中心にして。
真実の行業 往生の因となる真実のおこない。 →
補註10
真実の証果 行信の因に報いて得られた果としての真実のさとり。 →
補註2