0297◎観経玄義分 巻第一
沙門*善導集記
一 説偈勧帰【帰三宝偈】
Ⅰ 総標
【1】 ◎^先0433づ大衆を勧めて願を発して三宝に帰せしむ。
0655◎▲先ヅ勧†メテ↢大衆ヲ↡発シテ↠願ヲ帰†セシム↢三宝ニ↡
一 Ⅱ 説偈
ⅰ 勧他
^▼*道俗の時衆等、 おのおの*無上心を発せ。
^生死はなはだ厭ひがたく、 仏法また欣ひがたし。
^▼ともに*金剛の志を発して、 ▼横に*四流を超断すべし。
共ニ発シテ↢金剛ノ志ヲ↡ | 横ニ超↢断†スベシ四流ヲ↡ |
^▼弥陀界に入らんと願じて、 帰依し合掌し礼したてまつれ。
†願ジテ↠入ラムト↢弥陀†界ニ↡ | 帰依シ合掌シ‡礼[シタテマ]ツレ |
一 Ⅱ ⅱ 自帰
a 帰敬
^世尊、 われ一心に*尽十方の
^法性真如海と、 *報化等の諸仏と、
^一々の菩薩身と、 眷属等の無量なると、
^*荘厳および変化と、 *十地と三賢海と、
^*時劫の満と未満と、 *智行の円と未円と、
^*正使の尽と未尽と、 *習気の亡と未亡と、
^0298*功用と無功用と、 *証智と未証智と、
^▼*妙覚および*等覚の、 ▼まさしく金剛心を受け、
^▼*相応する一念の後、 *果徳涅槃のものに帰命したてまつる。
一 Ⅱ ⅱ b 乞加
^われらことごとく*三仏菩提の尊に帰命したてまつる。
我等咸ク帰↢命[シタテマ]ツル | 三仏菩提[ノ]尊ニ↡ |
^無礙の神通力をもつて、 冥に加して願はくは*摂受したまへ。
無礙ノ神通力ヲモテ | 冥ニ加シテ願ハク[ハ]摂受シタマヘ |
^われらことごとく三乗等の*賢聖の、 仏の大悲心を学して、
我等咸ク帰↧命[シタテマ]ツル | 三乗等ノ賢聖[ノ] |
^長時に退することなきものに帰命したてまつる。
学シテ↢仏ノ大悲心ヲ↡ | 長時ニ無キ↠退スルコト者ニ↥ |
^請ひ願はくははるかに*加備したまへ。 念々に諸仏を見たてまつらん。
請ヒ願[ク]ハ遥ニ加備†シタマヘ | 念念ニ見†タテマツラム↢諸仏ヲ↡ |
一 Ⅱ ⅲ 述意
a 嘆自信法義
^わ0434れら愚痴の身、 *曠劫よりこのかた流転して、
0656我等愚痴ノ身 | 曠劫[ヨ]リ来タ流転シテ |
^いま釈迦仏の末法の遺跡たる
^弥陀の本誓願、 極楽の*要門に逢へり。
^▼定散等しく回向して、 すみやかに*無生の身を証せん。
定散等[シ]ク廻向シテ | 速ニ証セム↢無生[ノ]身ヲ↡ |
一 Ⅱ ⅲ b 標能弘心願
^▼われ菩薩蔵▼頓教、 一乗海によりて、
^偈を説きて三宝に帰して、 仏心と相応せん。
説[キ]テ↠偈ヲ帰†シテ↢三宝ニ↡ | 与↢仏心↡相応†セム |
^十方恒沙の仏、 六通をもつてわれを照/rb>知したまへ。
十方恒沙ノ仏 | 六通[ヲ]モテ照↢知[シ]タマヘ我ヲ↡ |
^0299いま二尊 (釈尊・阿弥陀仏) の教に乗じて、 広く浄土の門を開く。
一 Ⅱ ⅳ 廻願
^願はくはこの功徳をもつて、 平等に一切に施し、
願[ク]ハ以[テ]↢此ノ功徳ヲ↡ | 平等ニ†施シ↢一切ニ↡ |
^同じく菩提心を発して、 安楽国に往生せん。
二 文前玄義
Ⅰ 標列【七門料簡】
【2】 ^この ¬*観経¼ 一部のうちに、 先づ七門を作りて*料簡し、 しかして後に文によりて義を釈せん。
▲此ノ¬観経¼一部之内ニ、先ヅ作リテ↢七門ヲ↡料簡†シ、然シテ後[ニ]依[リ]テ↠文ニ釈†セム↠義ヲ。
^第一に↓先づ序題を標す。 第二に↓次にその名を釈す。 第三に↓文によりて義を釈し、 ならびに*宗旨の不同、 *教の大小を弁ず。 第四にまさしく↓説人の差別を顕す。 第五に↓定散二善、 通別に異なることあることを料簡す。 第六に↓経論の相違を和会するに、 広く問答を施して疑情を*釈去す。 第七に↓*韋提の、 仏の正説を聞きて益を得る分斉を料簡す。
▲第一ニ‡先ヅ標†ス↢序題ヲ↡。第二[ニ]次ニ釈†ス↢其ノ名ヲ↡。第三ニ依[リ]テ↠文ニ釈シ↠義ヲ、并ニ弁ズ↢宗旨ノ不同、教之大小ヲ↡。第四[ニ]正シク顕ス↢説人ノ差別ヲ↡。第五[ニ]料↢簡ス定散‡二善、通別ニ有[ル]コトヲ↟†異ナルコト。第六ニ和↢会†スルニ経論ノ相違[ヲ]↡、広ク施シテ↢問答ヲ↡釈↢去ス疑情ヲ↡。第七ニ料↧簡ス韋提[ノ]聞キテ↢仏ノ正説ヲ↡得ル↠益ヲ分斉ヲ↥。
二 Ⅱ 牒釈
ⅰ【序題門】
a 牒標
【3】 ^第一に↑先づ序題を標すとは、
▲第一ニ先ヅ標スト↢序題ヲ↡者、
二 Ⅱ ⅰ b 正釈
イ 総明出世利益
(一)先明出世由
(Ⅰ)性海平等
^▼ひそかにおもんみれば、 真如広大にして五乗もその辺を測らず。 法性深高にして十聖もその際を窮むることなし。 真如の体量、 量性、 *蠢々の心を出でず。 法性無辺なり。 辺体すなはちもとよりこのかた動ぜず。 *無塵の法界は*凡聖斉しく円かに、 *両垢の如々すなはちあまねく*含識を該ね、 恒沙の功徳*寂用湛然なり。
~窃ニ以レバ、真如広大†ニシテ五乗[モ]不↠測ラ↢其ノ辺ヲ↡。法性深高†ニシテ十聖モ莫シ↠窮ムルコト↢其ノ際ヲ↡。真如之体量†、†量性不↠出[デ]↢ 蠢ムクメキ 蠢ムクメク之心ヲ↡、†法性無辺ナリ。辺体則チ元ヨリ来タ不↠動ゼ。無*塵ノ法界[ハ]凡聖斉シク円カニ、両垢ノ如如則チ普ク該ネ‡↢於含識ヲ↡、恒沙ノ功徳寂用湛然ナリ。
二 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)垢障覆深
^▼ただ垢障覆ふこと深きをもつて、 *浄体顕照するに由なし。
~但以テ↢垢障‡覆フコト深[キ]ヲ↡、浄体無シ↠由↢顕照スルニ↡。
二 Ⅱ ⅰ b イ (二)正示出世益
^ゆゑに ˆ釈尊はˇ 大悲をもつて*西化を隠し、 驚きて火宅の0300門に入り、 ▼甘露を灑ぎて*群萌を潤し、 *智炬を輝かせばすなはち*重昏を永夜より朗らかならしむ。 *三檀等しく備0435はり、 四摂をもつて斉しく収めて、 長劫の苦因を開示し、 *永生の楽果に悟入せしむ。
~故ニ†使ム↧大悲ヲモテ隠シ‡↢於西化ヲ↡、驚キヤウキ[テ]入リ↢火宅之門ニ↡、灑ギテ↢甘露ヲ↡潤シ↢於群萌ヲ↡、輝†カセバ↢智炬ヲ↡トモシビ則チ朗カナラ↦重昏クラキヲ於永夜ヨリ↥。三檀等シク備0657†ハリ、四摂[ヲモテ]斉シク収†メテ、開↢示シ‡長劫之苦因ヲ↡、悟↢入セシム永生之楽果ニ↡。
二 Ⅱ ⅰ b ロ 別明二門教益
(一)明化前教益
(Ⅰ)随類開化
【4】 ^*群迷の性の隔たり、 *楽欲の不同をいはず。 *一実の機なしといへども、 等しく五乗の用あれば、 慈雲を三界に布き、 法雨を大悲より注がしむることを致す。 等しく*塵労を洽すに、 あまねく未聞の益を沾さざるはなし。 菩提の種子これによりてもつて心を抽き、 正覚の芽念々にこれによりて増長す。
~不↠謂ハ↢群迷ノ†性ノ隔リ、楽欲ノ不同ヲ↡。雖モ↠無[シ]ト↢一実之機↡、等[シ]ク有レバ↢五乗之用↡、致ス↠使ムルコトヲ↧布キ↢慈雲ヲ†於三界ニ↡、注ガ↦†法雨ヲ於大悲ヨリ↥。莫シ↠†不ルハ↧等シク洽†スニ↢塵労ヲ↡普ク沾サ↦未聞之益ヲ↥。菩提ノ種子藉[リ]テ↠此ニ以テ抽キ‡↠心ヲ、正覚之芽念念ニ因[リ]テ↠茲ニ増長ス。
二 Ⅱ ⅰ b ロ (一)(Ⅱ)随宜得益
^▼心によりて勝行を起すに、 門八万四千に余れり。 *漸頓すなはちおのおの所宜に称ふをもつて、 縁に随ふもの、 すなはちみな解脱を蒙る。
~依[リ]テ↠心ニ起ス[ニ]↢於勝行ヲ↡、門余レリ↢八万四千ニ↡。漸頓則チ各ノ称†フヲモテ↢所宜ニ↡、随フ↠縁ニ者‡、則チ皆蒙ル↢解脱ヲ↡。
二 Ⅱ ⅰ b ロ (二)明今経利益【要弘二門】
(Ⅰ)正明
(ⅰ)明教興因縁
(a)教興因
【5】 ^しかるに衆生障重くして、 悟を取るもの明めがたし。 教益多門なるべしといへども、 *凡惑*遍攬するに由なし。
~然[ル]ニ衆生障重[ク]シテ、取ル↠悟ヲ之者難シ↠明メ。雖モ↠可シト↢教益多門ナル↡、凡惑無シ↠由↢†遍攬スルニ↡。
二 Ⅱ ⅰ b ロ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)教興縁
^たまたま韋提、 請を致して、 「▲われいま安楽に往生せんと楽欲す。 ◆ただ願はくは如来、 われに思惟を教へたまへ、 われに正受を教へたまへ」 といふによりて、
~遇マ因[リ]テ↧韋提致シテ↠請ヲ、我今楽↣欲ス‡往↢生セムト安楽ニ↡、†唯願クハ如来、教ヘ[タマヘ]↢我ニ思惟ヲ↡、教ヘタマヘトイフニ↦我ニ正受ヲ↥、
二 Ⅱ ⅰ b ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)明一部教義
^▼しかも娑婆の化主 (釈尊) はその請によるがゆゑにすなはち広く浄土の↓要門を開き、 *安楽の能人 (阿弥陀仏) は▼*別意の↓弘願を顕彰したまふ。
~然†モ娑婆ノ化主[ハ]因ルガ↢其ノ請ニ↡故ニ即チ広ク開キ↢浄土之要門ヲ↡、安楽ノ能人[ハ]顕↢彰シタマフ別意之弘願ヲ↡。
1.要門
^▼その↑要門とはすなはちこの ¬*観経¼ の定散二門これなり。 ▼「定0301」 はすなはち*慮りを息めてもつて心を凝らす。 「散」 はすなはち悪を廃してもつて善を修す。 この二行を*回して往生を求願す。
~其ノ要門ト者即チ此ノ¬観経ノ¼定散二門是也。定ハ即チ†息メテ↠†慮リヲ以テ凝ラス↠心ヲ。散ハ即チ廃シテ↠悪ヲ以テ修[ス]↠善ヲ。廻シテ↢斯ノ二行ヲ↡求↢願†ス往生ヲ↡也。
2.弘願
^▼↑弘願といふは ¬*大経¼ (上・意) に説きたまふがごとし。 「▲一切▼善悪の凡夫生ずることを得るものは、 ▲みな阿弥陀仏の大願業力に乗じて増上縁となさざるはなし」 と。
~言フ↢弘願ト↡者如†シ↢¬大経ニ¼説[キタマフ]ガ↡。「一切善悪ノ凡夫得ル↠生[ズル]コト[ヲ]者ハ、莫シト↠不†ルハ↧皆乗ジテ↢阿弥陀仏ノ大願業力ニ↡†為サ↦増上縁ト↥也。」
二 Ⅱ ⅰ b ロ (二)(Ⅰ)(ⅲ)顕密意所在
^▼また仏の*密意弘深なり、 教門暁めがたし。 三賢・十聖も測りて闚ふところにあらず。 いはんやわれ*信外の軽毛なり、 あへて旨趣を知らんや。
~又仏ノ密意弘深†ナリ、教門‡難シ↠†暁メ。三賢・十聖モ弗ズ↢測[リ]テ所ニ↟闚フ。況ヤ我信外ノ軽毛ナリ、敢テ知ラムヤ↢旨趣ヲ↡。
^◆仰ぎておもんみれば、 ▼釈迦はこの方より*発遣し、 弥陀はすなはちかの国より来迎したまふ。 かしこに喚ばひここに遣はす、 あに去かざるべけんや。
~仰ギテ惟レバ、釈迦ハ此ノ方†ヨリ発遣シ、弥陀ハ即チ彼ノ国ヨリ来迎†シタマフ。彼ニ‡喚バヒ此ニ†遣ハス、豈ニ容ケム↠不ル↠去カ也。
二 Ⅱ ⅰ b ロ (二)(Ⅱ)結勧
^◆ただ勤心に法を奉けて、 *畢命を期となして、 ▼この穢身を捨てて▼すなはちかの法性の▼常楽を証すべし。
~唯可シ↧†勤心ニ†奉ケテ↠法ヲ、畢命ヲ為シテ↠期ト、捨テヽ↢此ノ穢身ヲ↡即チ証ス↦彼ノ法性之常楽ヲ↥。
二 Ⅱ ⅰ c 総結
^これすなはち略して序0436題を標しをはりぬ。
~此即チ略シテ標シ↢序題ヲ↡竟[リ]ヌ。
二 Ⅱ ⅱ【釈名門】
a 牒標
【6】 ^第二に↑次に名を釈すとは、
▲第0658二ニ次ニ釈†スト↠名ヲ者、
二 Ⅱ ⅱ b 釈義
イ 標挙
^¬経¼ に「↓仏↓説↓無量寿↓観↓経↓一巻」 とのたまへり。
~¬経ニ¼†言ヘリ↢「仏説無量寿観経一巻ト」↡。
二 Ⅱ ⅱ b ロ 正釈
(一)釈仏字
^「↑仏」 といふはすなはちこれ*西国 (印度) の正音なり。 この土 (中国) には 「覚」 と名づく。 ↓自覚・↓覚他・↓覚行窮満、 これを名づけて仏となす。
~言フ↢「仏ト」↡者乃チ是西国ノ正音ナリ。此†ノ†土ニハ名ク↠覚ト。自覚・覚他・覚行窮満†、名ケテ↠之ヲ為ス↠仏[ト]。
^「↑自覚」 といふは凡夫に*簡異す。 これ▼声聞は狭劣にして、 ただよく自利のみありて、 闕けて利他の大悲なきによるがゆゑなり。
~言フ↢自覚ト↡者簡↢異ス凡夫ニ↡。此由ルガ↣声聞ハ狭劣ニシテ、唯能ク自利†ノミアリテ、闕キテ無キニ↢利他ノ大悲↡故†ナリ。
^「↑覚他」 といふは二乗に簡異す。 これ菩0302薩は智あるがゆゑによく自利し、 悲あるがゆゑによく利他し、 つねによく*悲智双行して有無に着せざるによる。
~言フ↢覚他ト↡者簡↢異ス二乗ニ↡。此‡由†ル↢菩薩ハ有ルガ↠智故ニ能[ク]自利シ、有[ルガ]↠悲故ニ能ク利他†シ、常ニ能[ク]悲智†双行シテ不ルニ↟著セ↢有無ニ↡也。
^「↑覚行窮満」 といふは菩薩に簡異す。 これ如来は智行すでに窮まり、 *時劫すでに満ちて、 *三位を出過せるによるがゆゑに、 名づけて仏となす。
~言フ↢覚行窮満ト↡者簡↢異ス菩薩[ニ]↡。此‡由ル[ガ]↣如来ハ智行已ニ窮リ、時劫已ニ満[チ]テ、出↢過†スルニ三位ヲ↡故ニ、名ケテ為ス↠仏ト。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)釈説字
^「↑説」 といふは口音に陳唱す。 ゆゑに名づけて説となす。 また如来、 機に対して法を説きたまふこと多種不同なり。 漸頓よろしきに随ひ、 *隠彰異なることあり。 あるいは六根通じて説きたまふ。 相好もまたしかなり。 念に応じ、 縁に随ひてみな証益を蒙る。
~言フ↢「説ト」↡者口音ニ陳唱ス。故ニ名ケテ為ス↠説ト。又如来対シテ↠機ニ説[キタマフ]コト↠法ヲ多種不同ナリ。漸頓随[ヒ]‡↠宜シキニ、隠彰有リ↠†異ナルコト。或[イ]ハ六根通ジテ説[キ]タマフ。相好モ亦然ナリ。応ジ↠念ニ、随[ヒ]テ↠縁ニ皆蒙ル↢証益ヲ↡也。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (三)釈無量寿
(Ⅰ)梵漢対釈
【7】 ^▼「↑無量寿」 といふは、 すなはちこれこの地 (中国) の漢音なり。 「南無阿弥陀仏」 といふは、 またこれ西国 (印度) の正音なり。 また 「南」 はこれ帰、 「無」 はこれ命、 「阿」 はこれ無、 「弥」 はこれ量、 「陀」 はこれ寿、 「仏」 はこれ覚なり。 ゆゑに 「帰命無量寿覚」 といふ。 これすなはち*梵漢相対するに、 その義かくのごとし。
~言フ↢「無量寿ト」↡者、乃チ是此ノ地ノ漢音ナリ。言フ↢南無阿弥陀仏ト↡者、又是西国ノ正音ナリ。又南‡者是帰、無‡者是命、阿‡者是無、弥‡者是量、陀‡者是寿、仏‡者是覚ナリ。故ニ言フ↢帰命無量寿覚ト↡。此乃チ梵‡漢‡相対†スルニ、其ノ義如[シ]↠此[クノ]。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (三)(Ⅱ)約人法釈
^いま ▼「無量寿」 といふはこれ法、 「覚」 とはこれ人なり。 ↓人法並べ彰す、 ゆゑに阿弥陀仏と名づく。
~今言フ↢無量寿ト↡者是法、覚ト者是人[ナリ]。人・法並ベ‡彰ス、故ニ名ク↢阿弥陀仏ト↡。△
二 Ⅱ ⅱ b ロ (三)(Ⅲ)約観境釈
【8】 ^◆また↑人法といふはこれ所観の境なり。 すなはちその二あり。 一には↓依報、 二には↓正報なり。
又言フ↢人法ト↡者是所観之境ナリ。即チ有リ↢其ノ†二↡。一ニ者依報、二[ニ]者正報ナリ。
・依報
^↑依報のなかにつきてすなはちその三あり。
就キテ↢依報ノ中ニ↡即チ有リ↢其ノ三↡。
・依報 ・地下荘厳
^一には地下の荘厳、 す0303なはち一切の*宝幢光明のたがひにあひ*映発する等これなり。
一[ニ]者地下[ノ]荘厳、即チ一切ノ宝幢光明[ノ]互ニ相映発[スル]等是ナリ。
・依報 ・地下荘厳
^二には0437地上の荘厳、 すなはち一切の宝地・池林・宝楼・宮閣等これなり。
二[ニ]者地上ノ荘厳、即チ一切ノ宝地池林・宝楼・*宮閣等是ナリ。
・依報 ・地下荘厳
^三には虚空の荘厳、 すなはち一切の変化の宝宮・*華網・宝雲・*化鳥・風光の動発せる声楽等これなり。
三[ニ]者虚空[ノ]荘厳、即[チ]一切0659ノ変化ノ宝宮・華網・宝雲・化鳥・風光ノ動発†セル声楽等是ナリ。
^前のごとく三種の差別ありといへども、 みなこれ弥陀浄国の無漏真実の*勝相なり。 これすなはち総じて依報の荘厳を結成す。
如ク↠前ノ雖モ↠有[リ]ト↢三種ノ差別↡、皆是弥陀浄国ノ無漏真実之勝相ナリ。此即チ総ジテ結↢成†ス依報[ノ]荘厳ヲ↡也。
・依報 ・通別
^また依報といふは、 ▲日観より下▲華座観に至るこのかたは、 総じて依報を明かす。 この依報のなかにつきてすなはち↓通あり↓別あり。
又言フ↢依報ト↡者、従リ↢日観↡下至ル↢華座観ニ↡已来[タ]ハ、総ジテ明ス↢依報ヲ↡。就キテ↢此ノ依報ノ中ニ↡即チ有リ↠通有リ↠別。
・別依報
^↑別といふは、 ▲華座の一観はこれその別依なり、 ただ弥陀仏に属す。
言フ↠別ト者、華座ノ一観[ハ]是其ノ別依ナリ、唯属ス↢弥陀仏ニ↡也。
・通依報
^余の*上の六観はこれその↑通依なり、 すなはち法界の凡聖に属す。 ただ生ずることを得れば、 ともに同じく受用す。 ゆゑに通といふ。
余ノ上ノ六観ハ是其ノ通依ナリ、即チ属ス↢法界之凡聖ニ↡。†但使得レバ↠生ズルコトヲ者、共ニ同[ジ]ク受用ス。故ニ言フ↠通ト也。
^またこの六のなかにつきてすなはち↓真あり↓仮あり。
又就[キ]テ↢此ノ†六ノ中ニ↡、即チ有リ↠真有リ↠仮。
・仮依報
^↑仮といふはすなはち▲日想・▲水想・▲氷想等、 これその仮依なり。 これこの界中の相似可見の境相なるによるがゆゑなり。
言フ↠仮ト者、即チ日想・水想・氷想等†、是其ノ仮依ナリ。由ルガ↢是此ノ†界中ノ相似可見ノ境相ナルニ↡故†ナリ。
・真依報
^↑真依といふは、 すなはち▲瑠璃地より下▲宝楼観に至るこのかたは、 これその真依なり。 これかの国の真実無漏の可見の境相なるによるがゆゑなり。
言フ↢真依ト↡者、即チ従リ↢瑠璃地↡下至ル↢宝楼観ニ↡†已来タハ、是其ノ真依ナリ。由[ル]ガ↢是彼ノ国ノ真実無漏[ノ]可見ノ境相ナルニ↡故†ナリ。
・正報
^二には↑正報のなかにつきてまたその二あり。
二[ニ]ハ就キテ↢正報ノ中ニ↡亦有リ↢其ノ二↡。
・正報 ・主
^一には▲主荘厳、 すなはち阿弥陀仏これなり。
一[ニ]者主荘厳、即[チ]阿弥陀仏是ナリ。
・正報 ・聖衆
^二には▲聖衆荘厳、 すなはち現にかしこにある衆および十方法界同生のものこれ0304なり。
二[ニ]者聖衆荘厳、即チ現ニ在[ル]↠彼ニ衆及ビ十方法界‡同生ノ者是ナリ。
・正報 ・通別
^またこの正報のなかにつきてまた↓通あり↓別あり。
又就[キ]テ↢此ノ正報ノ中ニ↡亦有リ↠通有リ↠別。
・別正報
^↑別といふはすなはち阿弥陀仏これなり。 すなはちこの別のなかにまた↓真あり↓仮あり。
言フ↠別ト者即チ阿弥陀仏是也。即チ此ノ別ノ中ニ亦有リ↠真有リ↠仮。
・仮正報
^↑仮正報といふはすなはち第八の▲像観これなり。 ▲観音・勢至等もまたかくのごとし。 これ衆生障重く*染惑処深きによりて、 仏 (釈尊)、 たちまちに*真容を想はんに、 顕現するに由なきことを恐れたまふがゆゑに、 *真像を仮立してもつて*心想を住めしめ、 かの仏に同じてもつて境を証せしめたまふ。 ゆゑに仮0438正報といふ。
言フ↢仮正報ト↡者即チ第八ノ像観是也。観音・勢至等モ亦如シ↠是[ク]ノ。此由[リ]テ↢衆生障重ク染惑処深キニ↡、仏恐レタマフガ↧乍ニ想ハムニ↢真容ヲ↡、無キコトヲ↞由↢顕現スルニ↡故ニ、使†メタマフ↧仮↢立シテ真像ヲ↡以テ†住メシメ↢心想ヲ↡、同ジテ↢彼ノ仏ニ↡以テ証セ↞境ヲ。故ニ言フ↢仮正報ト↡也。
・真正報
^↑真正報といふはすなはち第九の▲真身観これなり。 これ前の仮正によりて、 やうやくもつて乱想を息めて、 心眼開くることを得て、 ほぼかの方の清浄二報、 種々の荘厳を見て、 もつて*昏惑を除く。 障を除くによるがゆゑに、 かの真実の境相を見ることを得。
言フ↢真正報ト↡者即チ第九ノ真身観是也。此由[リ]テ↢前ノ仮正ニ↡、漸ク以テ息メ[テ]↢於乱0660想ヲ↡、心眼得テ↠開[クル]コトヲ、粗見テ↢彼ノ方ノ清浄‡二報、種種ノ荘厳ヲ↡、以テ除ク↢昏惑ヲ↡。由ルガ↠除クニ↠障ヲ故ニ、†得↠見[ル]コトヲ↢彼ノ真実之境相ヲ↡也。
・通正報
^↑通正報といふはすなはち▲観音聖衆等以下これなり。
言フ↢通正報ト↡者即チ観音・聖衆等已下是也。
^向よりこのかたいふところの通別・真仮は、 まさしく依正二報を明かす。
向ヨリ来タ所ノ↠言フ通別・真仮‡者、正[シ]ク明ス↢依正二報ヲ↡也。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (四)釈観字
【9】 ^「↑観」 といふは照なり。 つねに浄信心の手をもつて、 もつて智慧の輝を持ち、 かの弥陀の*正依等の事を照らす。
▲言フ↢「観ト」↡者照也。常ニ以テ↢浄信心ノ手ヲ↡、以テ持[チ]‡↢智慧之輝ヲ↡、照ス‡↢彼ノ弥陀ノ正依等ノ事ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (五)釈経字
^「↑経」 といふは*経なり。 経よく*緯を持ちて*疋丈を成ずることを得て、 その丈用あり。
~言フ↢「経ト」↡者経也。経能ク持[チ]テ↠緯ヲ†得テ↠成ズルコトヲ↢*疋ヒキ丈ヲ↡、有リ↢其ノ丈用↡。
^経よく法を持ちて*理事相応し、 ▼定散機に随ひて義*零落せず。 よく*修趣のものをして、 かならず教行の縁因によ0305りて、 願に乗じて往生してかの*無為の法楽を証せしむ。 すでにかの国に生じぬれば、 さらに畏るるところなし。 長時に行を起して、 果、 菩提を極む。 ▼法身常住なること、 たとへば虚空のごとし。 よくこの益を招く。 ゆゑにいひて経となす。
~経能[ク]持[チ]テ↠法ヲ理事相応シ、定散随[ヒ]テ↠機ニ義‡不↢零落オチセ↡。能[ク]†令ム↧修趣之者ヲシテ、必ズ藉[リ]テ↢教行之縁因ニ↡、乗ジテ↠願ニ往生シ[テ]証セ↦彼ノ無為之法楽ヲ↥。既ニ生[ジ]ヌレバ↢彼ノ国ニ↡、更ニ無シ↠所↠畏ルヽ。長時ニ起シテ↠行ヲ、果極ム↢菩提ヲ↡。法身常住†ナルコト比バ若シ↢虚空ノ↡。能[ク]招†ク↢此ノ益ヲ↡。故ニ曰[ヒ]テ為ス↠経ト。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (六)釈一巻
^「↑一巻」 といふは、 この ¬観経¼ 一部は*両会の正説なりといふといへども、 総じてこの一を成ず。 ゆゑに一巻と名づく。
~言フ↢「一巻ト」↡者、此ノ¬観経¼一部[ハ]雖モ↠言フト↢両会ノ正説ナリト↡、†総ジテ成ズ↢斯ノ一ヲ↡。故ニ名ク↢一巻ト↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ 総結
^ゆゑに 「仏説無量寿観経一巻」 といふ。
~故ニ言フ↢「仏説無量寿観経一巻ト」↡。△
二 Ⅱ ⅱ c 結示
^これすなはちその名義を釈しをはりぬ。
此即チ釈†シ↢其ノ名義ヲ↡竟[リ]ヌ。
二 Ⅱ ⅲ【宗教門】
a 牒標
【10】^三に▲↑↓宗旨の不同、 ↓教の大小を弁釈すとは、
▲三[ニ]弁↢釈†スト宗旨ノ不同、教之大小ヲ↡者、
二 Ⅱ ⅲ b 正釈
イ 宗旨不同
(一)挙他経例
^↑▲¬*維摩経¼ のごときは*不思議解脱をもつて宗となし、 ▲¬*大品経¼ のごときは*空慧をもつて宗となす。 この例一にあらず。
~如キハ↢¬維摩経ノ¼↡以テ↢不思議解脱ヲ↡為シ↠宗ト、如キハ↢¬大品経ノ¼↡以テ↢空慧ヲ↡為ス↠宗ト。此ノ例非ズ↠一ニ。
二 Ⅱ ⅲ b イ (二)正明今経【念観両宗】
^▲いまこの ¬観経¼ はすなはち観仏三昧をもつて宗となし、 また念仏三昧をもつて宗となす。 一心に*回願して浄土に往生するを*体となす。
~今此ノ¬観経ハ¼即[チ]以テ↢観仏三昧ヲ↡為シ↠宗ト、亦以テ↢念仏三昧ヲ↡為ス↠宗ト。*一心ニ廻願シテ往↢生スルヲ浄土ニ↡為ス↠体ト。
二 Ⅱ ⅲ b ロ 教大小
【11】^◆↑教の大小といふは0439、
~言フ↢教之大小ト↡者、
^◆問ひていはく、 この ¬経¼ は*二蔵のなかにはいづれの蔵の摂なる。 *二教のなかにはいづれの教の収なる。
~問[ヒ]テ曰ク、此ノ¬経ハ¼二蔵之中ニハ何ノ蔵†ノ摂ナル。二教之中ニハ何ノ教†ノ収ナル。
^◆答へていはく、 いまこの ¬観経¼ は菩薩蔵の収なり。 頓教の摂なり。
~答ヘテ曰ク、今此ノ¬観経0661ハ¼菩薩‡蔵†ノ収ナリ。頓教ノ摂ナリ。
二 Ⅱ ⅳ【説人門】
a 牒標
【12】^四に▲↑説人の差別を弁ずとは、
▲四[ニ]弁†ズト↢説人ノ差別ヲ↡者、
二 Ⅱ ⅳ b 正釈
イ 挙他経例
^◆おほよそ諸経の起説五種を過ぎず。 一には仏の説、 二には*聖弟子の説、 三には*天仙の説、 四には鬼神の説、 五には変化の説0306なり。
~凡ソ諸経ノ起説不↠過ギ↢五種ヲ↡。一[ニ]者仏[ノ]説、二[ニ]者聖弟子ノ説、三[ニ]者天仙ノ説、四[ニ]者鬼神ノ説、五[ニ]者変化ノ説ナリ。
二 Ⅱ ⅳ b ロ 正明今経
^▼いまこの ¬観経¼ はこれ仏の自説なり。
~今此ノ¬観経ハ¼是仏ノ自説ナリ。
二 Ⅱ ⅳ b ハ 処・対告
^▼問ひていはく、 仏いづれの処にかましまして説き、 何人のためにか説きたまへる。
~問[ヒテ]曰ク、仏在シテ↢何ノ処ニ[カ]↡説キ、為ニカ↢†何人ノ↡説[キタマ]ヘル。
^答へていはく、 仏*王宮にましまして、 韋提等のために説きたまへり。
~答[ヘテ]曰[ク]、仏在[シ]テ↢王宮ニ↡、為[ニ]↢韋提等ノ↡説†キタマヘリ。
二 Ⅱ ⅴ【定散門】
a 牒標
【13】^五に↑*定散両門を料簡するにすなはちその六あり。
▲五[ニ]料↢簡スルニ定散両門ヲ↡即チ有リ↢其ノ六↡。
二 Ⅱ ⅴ b 正釈
イ 条録義門
^一には*能請のひとを明かす、 すなはちこれ韋提なり。 二には*所請のひとを明かす、 すなはちこれ世尊なり。 三には能説のひとを明かす、 すなはちこれ如来なり。 四には所説を明かす、 すなはちこれ定散二善十六観門なり。 五には*能為を明かす、 すなはちこれ如来なり。 六には*所為を明かす、 すなはち韋提等これなり。
~一[ニハ]明†ス↢能請ノ者ヲ↡、即チ是韋提ナリ。二[ニハ]明ス↢所請ノ者ヲ↡、即[チ]是世尊ナリ。三[ニハ]明ス↢能説ノ者ヲ↡、即[チ]是如来ナリ。四[ニハ]明ス↢所説ヲ↡、即[チ]是定散‡二善十六観門ナリ。五[ニハ]明ス↢能為ヲ↡、即[チ]是如来ナリ。六[ニハ]明ス↢所為ヲ↡、即[チ]韋提等是也。
二 Ⅱ ⅴ b ロ 料簡意義
(一)顕所立
(Ⅰ)弁定所立
【14】^問ひていはく、 定散二善はたれの*致請による。
~問[ヒテ]曰[ク]、定散‡二善[ハ]因ル↢誰†ノ致請ニ↡。
^答へていはく、 定善の一門は韋提の致請にして、 *散善の一門はこれ仏の自説なり。
~答[ヘテ]曰[ク]、定善ノ一門ハ韋提[ノ]†致請ニシテ、散善ノ一門ハ是仏ノ自説ナリ。
二 Ⅱ ⅴ b ロ (一)(Ⅱ)料簡所由
(ⅰ)問
^問ひていはく、 いぶかし、 定散二善は↓出でていづれの文にかある。 いますでに教備はりて虚しからず、 ↓いづれの機か受くることを得る。
~問[ヒテ]曰[ク]、未審、定散‡二善[ハ]†出デテ在ル↢何ノ文ニカ↡。今既ニ教備リテ不↠虚[シカ]ラ、何ノ機カ得ル↠受クルコトヲ。
二 Ⅱ ⅴ b ロ (一)(Ⅱ)(ⅱ)答
(a)標挙
^答へていはく、 解するに二義あり。
~答[ヘテ]曰[ク]、解スルニ有リ↢二義↡。
二 Ⅱ ⅴ b ロ (一)(Ⅱ)(ⅱ)(b)正答
(イ)明何機得受
^一には▼謗法と無信と、 八難および*非人、 これらは受けず。 これすなはち*朽林・▲碩石、 生潤の期あるべからず。 これらの衆生はかならず受化の義なし。 これを除きて以外は、 一心に信楽して往生を求願すれば、 上*一形を尽0307し下十念を収む。 仏の願力に乗じてみな往かざるはなし。 これすなはち上の↑いづれの機か受くることを得るの義を答へをはりぬ。
~一[ニ]者謗法†ト与↢無信↡、八難及ビ非人、此等ハ不↠受ケ也。斯乃チ朽林・碩石不↠可[カ]ラ↠有ル↢生潤ウルヲウ之期↡。此等ノ衆生ハ必ズ無シ↢受化之義↡。除キテ↠斯ヲ已外ハ、一心ニ信楽シテ求↢願†スレバ往生ヲ↡、上尽シ↢一形ヲ↡下収ム↢十念ヲ↡。乗ジテ↢仏[ノ]願力ニ↡莫シ↠†不ルハ↢皆往カ↡。此即チ答ヘ↢†上ノ何ノ機カ得ルノ↠受クルコトヲ義[ニ]↡竟[リ]ヌ。
二 Ⅱ ⅴ b ロ (一)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)明出在何文
[一]牒
[二]正釈
[Ⅰ]通別
^二には↑出でていづれの文にかあるとはすなはち↓*通あり↓*別あり。
~二[ニハ]出デヽ在[ル]ト↢何ノ文ニカ↡者即[チ]有[リ]↠通有[リ]↠別。
・通
^「↑通」 といふはすなはち三義0440の不同あり。
~言フ↠通ト者即[チ]有リ↢三‡義ノ不同↡。
^なんとなれば、 一には 「▲韋提白仏唯願↓為我広説無憂悩処」 よりは、 すなはちこれ韋提、 心を標してみづからために通じて所求を請ふ。
~†何トナレバ者一[ニハ]従リ↢「韋提白仏唯願為我広説無憂悩処」‡↡者、即[チ]是韋提0662標シテ↠心ヲ自ラ為ニ通ジテ†請フ↢所求ヲ↡。
^二には 「▲唯願仏日▽教我観於清浄業処」 よりは、 すなはちこれ韋提みづからために通じて*去行を請ふ。
~二[ニハ]従リ↢「唯願仏日教我観於清浄業処」†↡者、即[チ]是韋提自ラ為ニ通ジテ†請フ↢去行ヲ↡。
^三には 「▲世尊光台現国」 よりは、 すなはちこれ前の通請の 「↑為我広説」 の言に酬ゆ。
~三[ニハ]従リ[ハ]↢「世尊光台現国」†↡、即[チ]是†酬ユ↢前ノ通請ノ「為我広説」之†言ニ↡。
^三義の不同ありといへども、 前の通を答へをはりぬ。
~雖モ↠有リト↢三義ノ不同↡、答ヘ↢前ノ通ヲ↡竟[リ]ヌ。
・別
^「↑別」 といふはすなはち二義あり。
~言フ↠別ト者則チ有リ↢二‡義↡。
^一には 「韋提白仏▲我今楽生極楽世界弥陀仏所」 よりは、 すなはちこれ韋提みづからために別して所求を選ぶ。
~一[ニハ]従リ↢「韋提白仏我今楽生極楽世界弥陀仏所」‡↡者、即[チ]是韋提自ラ為ニ別シテ選ブ↢所求ヲ↡。
^二には 「▲唯願▽教我思惟教我正受」 よりは、 すなはちこれ韋提みづからために*別行を修せんと請ふ。
~二[ニハ]従リ↢「唯願教我思惟教我正受」†↡者、即[チ]是韋提自[ラ]為ニ†請フ↠修セムト↢別行ヲ↡。
^二義の不同ありといへども、 上の別を答へをはりぬ。
~雖モ↠有リト↢二義ノ不同↡、答ヘ↢上ノ別ヲ↡竟[リ]ヌ。
二 Ⅱ ⅴ b ロ (一)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅱ]定散
[ⅰ]標示
^これより以下は、 次に定散両門の義を答ふ。
~従リ↠此已下ハ、次ニ答フ↢定散両門之義ヲ↡。
二 Ⅱ ⅴ b ロ (一)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅱ][ⅱ]正明
[a]定定散文処
^問ひていはく、 いかなるをか定善と名づけ、 いかなるをか散善と名づくる。
~問[ヒテ]曰[ク]、云何ナルヲカ名ケ↢定善ト↡、云何[ナルヲ]カ名クル†↢散善ト↡。
^答へていはく、 日観より下十三観に至るこのかたを名づけて定善となし、 三福0308・九品を名づけて散善となす。
~答[ヘテ]曰[ク]、従リ↢日観↡下至[ル]‡↢十三観ニ↡已来ヲ名[ケ]テ為†シ↢定善ト↡、三福九品ヲ名[ケ]テ為ス↢散善ト↡。
二 Ⅱ ⅴ b ロ (一)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅱ][ⅱ][b]明定散差別
^問ひていはく、 定善のなかになんの差別かある、 出でていづれの文にかある。
~問[ヒテ]曰[ク]、定善之中ニ有ル↢†何ノ差別カ↡、出デヽ在ル‡↢何ノ文ニカ↡。
^答へていはく、 いづれの文にか出づるといふは、 ¬経¼ (観経) に 「△↓教我思惟↓教我正受」 とのたまへり、 すなはちこれその文なり。 差別といふはすなはち二義あり。 一にはいはく↓思惟、 二にはいはく↓正受なり。
~答[ヘテ]曰[ク]、†出ヅルトイフハ↢何ノ文ニカ↡者、¬経ニ¼言†ヘリ↢「教我思惟教我正受ト」↡、即[チ]是其ノ文ナリ。言フ↢差別ト↡者即[チ]有リ↢二義↡。一[ニハ]謂ク思惟、二[ニハ]謂ク正受ナリ。
・思惟
^「↑思惟」 といふはすなはちこれ観の*前方便なり。 かの国の依正二報総別の相を思想す。 すなはち地観の文 (観経) のなかに説きて、 「▲かくのごとく想ふものを名づけてほぼ極楽国土を見るとなす」 とのたまへり。 すなはち上の 「↑教我思惟」 の一句に合す。
~言フ↢思惟ト↡者即[チ]是観ノ†前方便ナリ。思↢想†ス彼ノ国ノ依正二報総別ノ相ヲ↡也。即[チ]地観ノ文ノ中ニ説[キ]テ言ヘリ↤「†如ク↠此クノ想フ者ヲ名ケテ為スト↣粗ボ見ルト↢極楽国土ヲ↡。」即[チ]合ス↢上ノ「教我思惟ノ」一句ニ↡。
・正受
^「↑正受」 といふは、 *想心すべて息み、 *縁慮並び亡じて、 三昧相応するを名づけて正受となす。 すなはち地観の文のなかに説きて、 「▲もし三昧を得れば、 かの国0441地を見ること*了々分明なり」 とのたまへり。 すなはち上の 「↑教我正受」 の一句に合す。
~言フ↢正受ト↡者、想心都テ†息ミ、縁慮並ビ亡ジテ、三昧‡相応スルヲ名[ケ]テ為ス↢正受ト↡。即[チ]地観ノ文ノ中ニ説†キテ言†ヘリ↧「†若シ得レバ↢三昧ヲ↡、見ルコト↢彼ノ国地ヲ↡了了分明ナリト」↥。即チ合[ス]↢上ノ「教我正受ノ」一句ニ↡。
二 Ⅱ ⅴ b ロ (一)(Ⅱ)(ⅱ)(c)総結
^定散に二義の不同ありといへども、 総じて上の問を答へをはりぬ。
~定散[ニ]雖モ↠有[リト]↢二義ノ不同↡、総ジテ答ヘ↢上ノ†問ヲ↡竟0663[リ]ヌ。
二 Ⅱ ⅴ b ロ (二)破異解
(Ⅰ)標示
【15】^また向よりこのかたの解は諸師と不同なり。
~又向ヨリ来タ[ノ]解者与↢諸師↡†不同ナリ。
二 Ⅱ ⅴ b ロ (二)(Ⅱ)正明
(ⅰ)挙所被
^*諸師は思惟の一句をもつて、 もつて三福・九品に合して、 もつて散善となし、 正受の一句、 もつて通じて十六観に合して、 もつて定善となす。
~諸師ハ†将テ↢思惟ノ一句ヲ↡、用テ合シテ↢三福九品ニ↡、以テ為シ↢散善ト↡、正受ノ一句†、用テ通ジテ合シテ↢十六観ニ↡、以テ為[ス]↢定善ト↡。
二 Ⅱ ⅴ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)述能破
(a)総非
^かくのごとき解はまさに謂ふにしからず。
~如[キ]‡↠斯クノ†解者将ニ謂フニ不↠然ラ。
二 Ⅱ ⅴ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)正破
(イ)引証
^な0309んとなれば、 ¬*華厳経¼ (意) に、 「思惟正受とはただこれ*三昧の異名なり」 と説きたまふがごときは、 この地観の文と同じ。 この文をもつて証す、 あに散善に通ずることを得んや。
~†何トナレバ者†如キハ↣¬華厳経ニ¼説キタマフガ↢「思惟正受ト者但是三昧之異名ナリト」↡、与↢此ノ地観ノ文↡同ジ。以テ↢斯ノ文ヲ↡証†ス、豈ニ得ムヤ↠通ズルコトヲ↢於散善ニ↡。
二 Ⅱ ⅴ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)立理
^また向よりこのかた、 韋提上には請ひて、 ただ 「△教我観於清浄業処」 といひ、 次下にはまた請ひて 「△教我思惟正受」 といへり。 二請ありといへども、 ただこれ定善なり。
~又†向ヨリ来タ韋提、上[ニハ]†請ヒテ但言ヒ↢「教我観於清浄業処ト」↡、次下ニ[ハ]又†請ヒテ言†ヘリ↢「教我思惟正受ト」↡。雖モ↠有[リ]ト↢二請↡、唯是定善ナリ。
^また散善の文はすべて請へる処なし。 ただこれ仏の自開なり。 次下の*散善縁のなかに説きて、 「▲亦令未来世一切凡夫」 といへる以下はすなはちこれその文なり。
~又散善之文ハ都テ無シ↢請[ヘ]ル処↡。但是仏[ノ]†自開ナリ。次下ノ散善縁ノ中ニ説[キ]テ云ヘル↢「亦令未来世一切凡夫ト」↡已下[ハ]即チ是其ノ文ナリ。
二 Ⅱ ⅵ【和会門】
a牒標
【16】^六に↑経論の相違を和会するに、 広く問答を施して疑情を*釈去すとは、
▲六[ニ]和↢会†スルニ経論ノ相違ヲ↡、広ク施シテ↢問答ヲ↡釈↢去†スト疑情ヲ↡者、
二 Ⅱ ⅵ b 正釈
イ 標列
^この門のなかにつきてすなはちその六あり。 一には↓先づもろもろの法師につきて九品の義を解す。 二には↓すなはち*道理をもつて来してこれを破す。 三には↓かさねて九品を挙げて*返対してこれを破す。 四には↓文を出し来して、 さだめて凡夫のためにして聖人のためにせずといふことを証す。 五には↓*別時の意を*会通す。 六には↓*二乗種不生の義を会通す。
~就キテ↢此ノ門ノ中ニ↡即[チ]有リ↢其ノ†六↡。一ニハ先ヅ就キテ↢諸ノ法師ニ↡解ス↢九品之義ヲ↡。二[ニ]ハ即[チ]以テ↢道理ヲ↡来シテ破ス↠之ヲ。三[ニ]ハ重テ挙ゲテ↢九品ヲ↡返対シテ破ス↠之ヲ。四[ニハ]出シ‡↠文ヲ来シ[テ]、†証ス↧定[メ]テ為ニシテ↢凡夫ノ↡不トイフコトヲ↞為ニセ↢聖人ノ↡。五[ニハ]会↢通ス別時之意ヲ↡。六[ニハ]会↢通ス二乗種不生之義ヲ↡。
二 Ⅱ ⅵ b ロ 随釈
(一)【諸師解】
【17】^初めに↑*諸師の解といふは、
~初[ニ]言フ↢諸師ノ解ト↡者
・上品上生
^先づ上輩の三人を挙ぐ。 ▽上が上といふは、 これ*四地より*七地に至るこのかたの菩薩なり。 なんがゆゑぞ知ることを得る。 かし0310こに到りて▲すなはち無生忍を得るによるがゆゑなり。
~先ヅ挙グ↢上輩ノ三人ヲ↡。言フ↢上[ガ]上ト↡者、是四地ヨリ至ル↢七地ニ↡已来[タ]ノ菩薩[ナリ]。何ガ故ゾ得ル↠知ルコトヲ。由†ルガ↣到[リ]テ↠彼ニ即[チ]得[ル]ニ↢無生忍ヲ↡故ナリ。
・上品中生
^▽上が中とは、 これ*初地より四地に至るこのかた0442の菩薩なり。 なんがゆゑぞ知ることを得る。 かしこに到りて▲一小劫を経て無生忍を得るによるがゆゑなり。
上ガ中[ト]者、是初地ヨリ至ル↢四地ニ↡已来[タ]ノ菩薩ナリ。何ガ故ゾ得ル↠知[ルコ]トヲ。由†ルガ↧到[リ]テ↠彼ニ経テ↢一小劫ヲ↡得[ル]ニ↦無生忍ヲ↥故ナリ。
・上品下生
^▽上が下とは、 これ*種性以上より初地に至るこのかたの菩薩なり。 なんがゆゑぞ知ることを得る。 かしこに到りて▲三小劫を経てはじめて初地に入るによるがゆゑなり。
上[ガ]下[ト]者、是種性以上0664ヨリ至ル↢初地ニ↡已来[タ]ノ菩薩[ナリ]。何[ガ]故ゾ得ル↠知[ルコ]トヲ。由[ル]ガ↧到[リ]テ↠彼ニ経テ↢三小劫ヲ↡始テ入[ル]ニ↦初地ニ↥故ナリ。
^この三品の人はみなこれ大乗の聖人の生ずる位なり。
~此ノ三品ノ人ハ皆是大乗[ノ]聖人ノ†生ズル位ナリ。
・中品上生
^次に中輩の三人を挙げば、 諸師のいはく、 ▽中が上とはこれ*三果の人なり。 なにをもつてか知ることを得る。 かしこに到りて▲すなはち羅漢を得るによるがゆゑなり。
~次ニ挙ゲバ↢中輩ノ三人ヲ↡者、諸師ノ云ク、中ガ上[ト]ハ是三果ノ人ナリ。何ヲ以テカ得ル↠知[ルコ]トヲ。由[ル]ガ↣到[リ]テ↠彼ニ即[チ]得[ル]ニ↢羅漢ヲ↡故ナリ[ト]。
・中品中生
^▽中が中とはこれ*内凡なり。 なにをもつてか知ることを得る。 かしこに到りて▲須陀洹を得るによるがゆゑなり。
中ガ中[ト]者是内凡ナリ。何ヲ以テカ得ル↠知[ルコト]ヲ。由[ル]ガ↣到[リ]テ↠彼ニ得[ル]ニ↢須陀洹ヲ↡故ナリ。
・中品下生
^▽中が下とはこれ世善の凡夫にして、 苦を厭ひて生ずることを求む。 なにをもつてか知ることを得る。 かしこに到りて▲一小劫を経て羅漢果を得るによるがゆゑなり。
中ガ下[ト]者是世善ノ凡夫[ニシテ]、厭ヒテ↠苦ヲ求ム‡↠生[ズルコト]ヲ。何ヲ以[テ]カ得ル↠知[ルコト]ヲ。由[ル]ガ↧到[リ]テ↠彼ニ経テ↢一小劫ヲ↡得[ル]ニ↦羅漢果ヲ↥故ナリ。
^この三品はただこれ小乗の聖人等なり。
~†此之三品ハ唯是小乗ノ聖人等也。
・下輩
^▽下輩の三人はこれ*大乗始学の凡夫なり。 過の軽重に随ひて分ちて三品となす。 ともに同じく一位にして往生を求願すとは、 いまだかならずしもしからず、 知るべし。
~下輩ノ三人者是大乗始学ノ凡夫ナリ。随[ヒ]テ↢過ノ軽重ニ↡分チ[テ]為ス↢三品ト↡。共ニ同[ジ]ク一位ニシテ求↢願スト往生ヲ↡者、未ズ ダ↢必ズシモ然ラ↡也。可シ↠知ル。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (二)【道理破】
【18】^第二に↑すなはち道理をもつて来し破すとは、
~第二[ニ]即[チ]以[テ]↢道理ヲ↡来シ‡破†スト者、
・初地-七地 (上品中生・上品上生)
^上に 「△初地より七地に至るこ0311のかたの菩薩」 といはば、 ¬華厳経¼ (意) に説きたまふがごとく、
~上ニ言†ハバ↧「初地ヨリ至ル↢七地ニ↡已来[タ]ノ菩薩ト」↥者、如†ク↢¬華厳経ニ¼説†キタマフガ↡、
^「▽初地以上七地以来は、 すなはちこれ*法性生身・*変易生身なり。 これらはかつて*分段の苦なし。 その功用を論ずれば、 すでに二大阿僧祇劫を経て、 ならべて*福・智を修し、 *人法両ながら空ず、 ならびにこれ不可思議なり。 神通自在にして*転変無方なり。 身は報土に居してつねに報仏の説法を聞き、 十方を*悲化して須臾に遍満す」 と。
~「初地已上七地已来ハ、即[チ]是法性生身・変易イ 生身ナリ。斯等ハ曽テ無シ↢分段之苦↡。論ズレバ↢其ノ功用ヲ↡、已ニ経†テ↢二大阿僧祇劫ヲ↡、双ベテ修シ↢福・智ヲ↡、人法†両ナガラ空ズ、並ニ是不可思議ナリ。神通自在ニシテ転変無方ナリ。身[ハ]居シテ↢報土ニ↡常ニ聞キ↢報仏ノ説法ヲ↡、悲↢化シテ十方ヲ↡須臾ニ遍満ス[ト]。
^さらに何事を憂へてかすなはち韋提のそれがために仏に請ずるによりて安楽国に生ずることを求めんや。 この文をもつて証するに、 諸師の所説あに錯りにあらずや。 上の二を答へをはりぬ。
~更ニ憂ヘテカ↢†何事ヲ↡乃チ†藉リテ↢韋提ノ為ニ↠其ガ請ズルニ↟仏ニ求メム‡↠生[ズル]コトヲ↢安楽国ニ↡也。以テ↢斯ノ文ヲ↡証スルニ、諸師ノ所説豈ニ非ズ†↠錯ニ也。答ヘ↢上ノ二ヲ↡竟[リ]ヌ。
・種性-初地 (上品下生)
^上が下とは、 上に 「△種性より初0443地に至るこのかた」 といふは、 いまだかならずしもしからず。
~上[ガ]下[ト]者、上[ニ]言フ↧「従リ↢種性↡†至ル↢初地ニ↡已来タト」↥者、未ズ ダ↢必ズシモ然ラ↡也。
^▼*経に説きたまふがごとく、 「これらの菩薩を名づけて不退となす。 身は生死に居して、 生死のために染せられず。 ▲*鵝鴨の水にあるに、 水湿すことあたはざるがごとし」 と。
~如†ク↢¬経ニ¼説[キタマフ]ガ↡、「此等ノ菩薩ヲ名[ケ]テ為ス↢不退ト↡。身ハ居†シテ↢生死0665ニ↡、不↧為ニ↢生死ノ↡所レ↞染セ。如シ[ト]↢鵝鴨カモノ在†ルニ↠水ニ、水不ルガ↟能ハ↠湿[ス]コト。」
^¬*大品経¼ に説きたまふがごとし。 「この位のなかの菩薩は、 二種の真の善知識の守護を得るによるがゆゑに不退なり。 なんとなれば、 一にはこれ十方の諸仏、 二にはこれ十方の諸大菩薩、 つねに三業をもつてほかに加してもろもろの善法において退失あることなし。 ゆゑに不退の位と名づく。
~如†シ↢¬大品経ニ¼説[キタマフ]ガ↡。「此ノ位ノ中ノ菩薩ハ、由ルガ↠得[ル]ニ↢二種ノ真ノ善知識ノ守護ヲ↡故ニ不退‡ナリ。†何トナレバ者一ニハ是十方ノ諸仏、二[ニ]ハ是十方ノ諸大菩薩、常ニ以テ↢三業ヲ↡外ニ加シテ於テ↢諸ノ善法ニ↡無シ↠有[ルコ]ト↢退失↡。故ニ名ク↢不退ノ位ト↡也。
^これらの菩薩もまた0312よく*八相成道して衆生を教化す。 その功行を論ずれば、 すでに一大阿僧祇劫を経て、 ならべて福・智等を修す」 と。
~此等ノ菩薩†モ亦能ク八相成道[シテ]教↢化ス衆生ヲ↡。論ズレバ↢其ノ功行ヲ↡、已ニ経テ↢一大阿僧祇劫ヲ↡、双ベテ修ス[ト]↢福・智等ヲ↡。」
^すでにこの勝徳あり。 さらに何事を憂へてかすなはち韋提の請によりて生ずることを求めんや。 この文をもつて証す。 ゆゑに知りぬ、 諸師の所判還りて錯りとなる。 これ上輩を責めをはりぬ。
~既ニ有リ↢斯ノ勝徳↡。更ニ憂ヘテ[カ]↢†何事ヲ↡†乃チ藉[リ]テ↢韋提ノ請ニ↡求メム↠生[ズル]コトヲ也。以テ↢斯ノ文ヲ↡証ス。故ニ知リヌ、諸師ノ†所判還[リ]テ成ル↠錯ト也。此ハ責メ↢上輩ヲ↡竟[リ]ヌ。
・三果 (中品上生)
^次に中輩の三人を責めば、 諸師のいはく、 「△中が上とはこれ三果のひとなり」 と。 しかるにこれらの人は三塗永く絶え、 四趣生ぜず。 現在に*罪業を造るといへども、 必定して*来報を招かず。 仏説きて、 「この四果の人は、 われと同じく解脱の床に坐す」 とのたまふがごとし。
~次ニ責メバ↢中輩ノ三人ヲ↡者、諸師ノ云ク、「中ガ上[トハ]是三果ノ者ナリ[ト]。」然†ルニ此等之人ハ三塗永ク絶エ‡、四趣‡不↠生ゼ。現在ニ雖モ↠造ルト↢罪業ヲ↡、必定シテ不↠招カ↢来報ヲ↡。†如シ↤仏説キテ、言フガ↣此ノ四果ノ人[ハ]与↠我同[ジ]ク坐†スト↢解脱ノ床ニ↡。
^すでにこの功力あり。 さらにまたなにを憂へてかすなはち韋提の請によりて*生路を求めんや。
~既ニ有リ↢斯ノ功力↡。更ニ復†何ヲ憂ヘテカ乃チ藉[リ]テ↢韋提ノ請ニ↡求メムヤ↢生路ヲ↡。
・大悲於苦者
^しかるに▼*諸仏の大悲は苦あるひとにおいてす、 心ひとへに*常没の衆生を愍念したまふ。 ここをもつて勧めて浄土に帰せしむ。 また水に溺れたる人のごときは、 すみやかにすべからくひとへに救ふべし、 岸上のひと、 なんぞ済ふを用ゐるをなさん。 この文をもつて証す。 ゆゑに知りぬ、 諸師の所判の義、 前の錯りに同じ。
~然[ル]ニ諸仏ノ大悲[ハ]於テ[ス]↢苦アル者ニ↡、心偏ニ愍↢念シタマフ常没ノ衆生ヲ↡。是ヲ以テ勧メテ帰セシム↢浄土ニ↡。亦如キハ↢溺レ[タ]ル↠水ニ之人ノ↡、急[カ]ニ須ベ クシ↢偏ニ救フ↡、岸上之者‡、†何ゾ用ヰルヲ↠済フヲ為サム。†以テ↢斯ノ文ヲ↡証ス。故ニ知リヌ、諸師ノ†所判、義同ジ↢前ノ錯ニ↡也。
^以下知るべし。
~以下可シ↠知ル。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (三)【返対破】
【19】^第三に↑かさねて九品を挙げて返対して破すとは、
~第三ニ重ネテ挙ゲテ↢九品ヲ↡†返対シテ破スト者、
・上品上生
^諸師のいふ、 「△上品上生の人は、 これ四地より七地に至るこ0444のかたの菩薩なり」 とならば、
諸師ノ†云フ、「上品上生ノ人ハ、是四地ヨリ至ル↢七地ニ↡已来タノ菩薩†ナリトナラバ」者、
^なんがゆゑ0313ぞ、 ¬観経¼ (意) にのたまはく、 「▲三種の衆生まさに往生を得べし。 ◆何者をか三となす。 ▼一にはただよく戒を持ち慈を修す。 二には戒を持ち慈を修することあたはざれども、 ただよく大乗を読誦す。 三には戒を持ち経を読むことあたはざれども、 ただよく*仏法僧等を念ず。
何ガ故ゾ¬観経ニ¼†云ク、「三種ノ衆生当ベ ニシ↠得[ト]↢往生‡ヲ↡。†何者ヲカ†為ス↠三ト。一[ニ]者但能ク持チ↠戒ヲ修ス↠慈ヲ。二[ニ]者不レドモ↠能ハ↢持チ↠戒ヲ修スルコト↟慈ヲ、但能[ク]読↢誦ス大乗ヲ↡。三[ニ]者不レドモ↠能ハ↢持チ↠戒ヲ読0666ムコト↟経ヲ、唯能ク念ズ↢仏法僧等[ヲ]↡。
^◆この三人おのおのおのが業をもつて専精に意を励まして、 一日一夜、 乃至七日七夜相続して断ぜず、 おのおの所作の業を回して往生を求願す。 ◆命終らんと欲する時、 阿弥陀仏および化仏・菩薩大衆と光を放ち手を授けて、 ◆*弾指のあひだのごとくにすなはちかの国に生ず」 と。
此之三人各ノ以テ↢己ガ業ヲ↡専精ニ励シテ↠意ヲ、一日一夜乃至七日七夜相続シテ不↠断ゼ、各[ノ]†廻シテ↢所作之業ヲ↡求↢願ス‡往生ヲ↡。命欲スル↠終ラムト時、阿弥陀仏及ビ与↢化仏・菩薩・大衆↡放チ↠光ヲ授ケテ↠手ヲ、如†クニ↢弾指ノ頃ノ↡即チ生[ズト]↢彼ノ国ニ↡。」
^この文をもつて証するに、 まさしく▼これ仏世を去りたまひて後の大乗極善の上品の凡夫、 ▼日数少なしといへども、 業をなす時は猛し、 なんぞ判じて*上聖に同ずることを得んや。
以テ↢此ノ文ヲ↡証スルニ、正シク是仏去[リ]タマヒテ↠世ヲ後ノ、大乗極善ノ上品ノ凡夫†、日数雖モ↠少シト、†作ス↠業ヲ時ハ猛シ、何ゾ得ム↣判ジテ同ズルコトヲ↢上聖ニ↡也。
^しかるに四地より七地以来の菩薩は、 その功用を論ずるに不可思議なり。 あに一日七日の善によりて、 *華台に授手迎接せられて往生せんや。
然ルニ四地ヨリ七地已来ノ菩薩ハ、論ズルニ↢其ノ功用ヲ↡不可思議ナリ。豈藉[リ]テ↢一日七日之善ニ↡、華台ニ†授手迎接セラレテ往生セム也。
^これすなはち上が上を返対しをはりぬ。
此即チ返↢対シ上[ガ]上ヲ↡竟[リ]ヌ。
・上品中生
^次に上が中を対せば、 諸師のいふ、 「△これ初地より四地以来の菩薩なり」 とならば、
次ニ対†セバ↢上[ガ]*中ヲ↡者、諸師ノ†云フ、「是初地ヨリ四地已来ノ菩薩†ナリトナラバ」者、
^なんがゆゑぞ、 ¬観経¼ (意) にのたまはく、 「▲必ずしも大乗を受持せず」 と。 いかんが 「不必」 と名づくる。 あるいは読み読まず、 ゆゑに不必と名づく。 ただ▲*善解といひていまだその行を論0314ぜず。
何ガ故ゾ¬観経ニ¼†云ク、「不ト↣必ズシモ受↢持セ大乗ヲ↡。」†云何ガ名ク[ル]↢「不必ト」↡。或[イ]ハ読ミ不↠読マ、故ニ名ク↢「不必ト」↡。但言ヒテ↢善解ト↡未ズ ダ↠論ゼ↢其ノ行ヲ↡。
^またのたまはく (観経・意)、 「▲深く因果を信じ大乗を謗らず、 この善根をもつて回して往生を願ず。 ◆命終らんと欲する時、 阿弥陀仏および化仏・菩薩大衆と◆一時に手を授けてすなはちかの国に生ず」 と。
又言ク、「深ク信ジ↢因果ヲ↡不↠†謗ラ↢大乗ヲ↡、以テ↢此ノ善根ヲ↡†廻シテ願ズ↢往生ヲ↡。命欲スル↠終ラムト時、阿弥陀仏及ビ与↢化仏・菩薩・大衆↡一時ニ授ケテ↠手ヲ即チ生ズト↢彼ノ国ニ↡。」
^この文をもつて証するに、 またこれ仏世を去りたまひて後の大乗の凡夫、 ▼行業やや弱くして*終時の迎候に異なることあらしむることを致す。
以テ↢此ノ文ヲ↡証[ス]ルニ、亦是仏去リ[タマヒ]テ↠世ヲ後ノ大乗ノ凡夫†、行業稍弱クシテ致ス↠使ムルコトヲ↢†終時ノ迎候ニ有ラ↟†異ナルコト。
^しかるに初地より四地以来の菩薩は、 その功用を論ずるに、 △¬華厳経¼ に説きたまふがごとし。 すなはちこれ不可思0445議なり。 あに韋提の請を致すによりて、 まさに往生を得んや。
然ルニ初地ヨリ四地已来ノ菩薩[ハ]、論ズルニ↢其ノ功用ヲ↡、如†シ↢¬華厳経ニ¼説†キタマフガ↡。乃チ是不可思議ナリ。豈藉[リ]テ↢韋提ノ致スニ↟請ヲ、方ニ得ム↢往生‡ヲ↡也。
^上が中を返対しをはりぬ。
返↢対シ上ガ中ヲ↡竟[リ]ヌ。
・上品下生
^次に上が下を対せば、 諸師のいふ、 「△これ種性以上初地に至るこのかたの菩薩なり」 とならば、
次ニ対†セバ↢上[ガ]下ヲ↡者、諸師ノ†云フ、「是種性以上‡至ル↢初地ニ↡已来[タ]ノ菩薩†ナリトナラバ」者、
^なんがゆゑぞ、 ¬観経¼ にのたまはく、 「▲亦因果を信ず」 と。 いかんが 「亦信」 なる。 あるいは信じ信ぜず、 ゆゑに名づけて亦となす。
何ガ故ゾ¬観経ニ¼†云ク、「亦信ズト↢因果ヲ↡。」†云何ガ「亦信†ナル。」或[イ]ハ信ジ不↠信0667ゼ、故ニ名[ケ]テ為ス↠亦ト。
^またのたまはく (観経)、 「▲大乗を謗らず、 ただ無上道心を発す」 と。 ただこの一句、 もつて正業となす。 さらに余善なし。 「▲この一行を回して往生を求願す。 ◆命終らんと欲する時、 阿弥陀仏および化仏・菩薩大衆と一時に手を授けて◆すなはち往生を得」 (観経・意) と。
又言ク、「不↠†謗ラ↢大乗ヲ↡、但発ス[ト]↢無上道心ヲ↡。」唯此ノ一句†、以テ為†ス↢正業ト↡。更ニ無シ↢余善↡。「†廻シテ↢斯ノ一行ヲ↡求↢願†ス往生ヲ↡。命欲スル↠終ラムト時、阿弥陀仏及ビ与↢化仏・菩薩・大衆↡一時ニ授[ケ]テ↠手ヲ即チ得ト↢往生‡ヲ↡。」
^この文をもつて証するに、 ただこれ仏世を去りたまひて後の一切の*大乗心を発せる衆生、 ▼行業強からずして*去時の迎候0315に異なることあらしむることを致す。
以テ↢斯ノ文ヲ↡証スルニ、唯是仏去[リタマヒ]テ↠世ヲ後ノ一切[ノ]発セル↢大乗心ヲ↡衆生†、行業不シテ↠強カラ致ス↠使ムルコトヲ↢去時ノ迎候ニ有ラ↟†異ナルコト。
^もしこの位のなかの菩薩の力勢を論ぜば、 十方浄土に意に随ひて往生す。 あに韋提それがために仏に請じて、 勧めて西方極楽国に生ぜしむるによらんや。
若シ†論ゼバ↢此ノ位ノ中ノ菩薩ノ力勢ヲ↡、十方浄土ニ随[ヒ]テ↠意ニ往生ス。豈†藉ラム↣韋提為ニ↠其ガ請ジテ↠仏†ニ、勧メテ生ゼシムルニ↢西方極楽国ニ↡也。
^上が下を返対しをはりぬ。
返↢対シ上[ガ]下ヲ↡竟[リ]ヌ。
^すなはちこの三品は去時に異なることあり。 いかんが異なる。 上が上の去時は、 仏、 ▲無数の化仏と一時に手を授く。 上が中の去時は、 仏、 ▲千の化仏と一時に手を授く。 上が下の去時は、 仏、 ▲五百の化仏と一時に手を授く。 ただこれ業に強弱ありて、 この差別あらしむることを致すのみ。
即チ此ノ三品[ハ]†去時[ニ]有リ↠†異ナルコト。云何ガ異ナル。上[ガ]上†ノ†去時[ハ]、仏与↢無数ノ化仏↡一時ニ授†ク↠手ヲ。上[ガ]中[ノ]†去時[ハ]、仏与↢千ノ化仏↡一時ニ授†ク↠手ヲ。上[ガ]下[ノ]†去時†ハ、仏与↢五百ノ化仏↡一時ニ授†ク↠手ヲ。†直是業ニ有[リ]テ↢強弱↡、致ス↠使ムルコトヲ↠有ラ↢斯ノ差別↡†耳。
・中品上生
^次に中輩の三人を対せば、 諸師のいふ、 「△中が上とはこれ小乗の三果のひとなり」 とならば、
次ニ対†セバ↢中輩ノ三人ヲ↡者、諸師ノ†云フ、「中ガ上[ト]ハ是小乗ノ三果ノ者ナリ[トナラバ]、」
^なんがゆゑぞ、 ¬観経¼ (意) にのたまはく、 「▲もし衆生ありて、 五戒・八戒を受持し、 もろもろの戒を修行して五逆を造らず、 もろもろの過患なからんに、 ◆命終らんと欲する時、 阿弥陀仏、 比丘聖衆と光を放ち法を説きて、 来りてその前に現じたまふ。 ◆この人見をはりてすなはち往生を得」 と。
何ガ故ゾ¬観経ニ¼云ク、「若シ有[リ]テ↢衆生↡、受↢持シ五戒・八戒ヲ↡、修↢行シテ諸[ノ]戒ヲ↡不↠造ラ↢五逆ヲ↡、無†カラムニ↢衆ノ過患↡、命欲スル↠終[ラム]ト時、阿弥陀仏与↢比丘聖衆↡放[チ]‡↠光ヲ説キテ↠法ヲ、来[リ]テ現ジタマフ↢其ノ前ニ↡。此ノ人見已[リ]テ即チ得ト↢往生ヲ↡。」
^この文をもつて証するに、 またこれ仏世を去りたまひて後の小乗戒を持てる凡夫なり。 なん0446ぞ*小聖ならんや。
以テ↢此ノ文ヲ↡証ス[ルニ]、亦是仏去[リタマヒ]テ↠世ヲ後ノ持テル↢小乗戒ヲ↡凡夫ナリ。何ゾ小聖ナラム也。
・中品中生
^中が中といふは、 諸師のいふ、 「△*見道以前の内凡なり」 とならば、
中ガ中†トイフ者、諸師ノ†云フ、「見道已前ノ内凡†ナリトナラバ」者、
^なんがゆゑぞ、 ¬観経¼ (意) にのたまはく、 「▲一日一夜の戒を受持して、 ◆回して往生を願ず。 ◆命0316終らんと欲する時、 仏を見たてまつりてすなはち往生を得」 と。
何ガ故ゾ¬観経ニ¼云ク、「受↢持シテ一日一夜ノ戒ヲ↡、†廻シテ願ズ↢往生ヲ↡。命欲スル↠終[ラム]ト時、見[タテマツリ]テ↠仏ヲ即チ得ト↢往生ヲ↡。」
^この文をもつて証するに、 あにこれ内凡の人といふことを得んや。 ただこれ仏世を去りたまひて後の無善の凡夫、 命延ぶること日夜、 *小縁のその*小戒を授くるに逢遇ひて、 回して往生を願ず。 仏の願力をもつてすなはち生ずることを得。
以テ↢此ノ文ヲ↡証[ス]ルニ、豈得ム↠言フコトヲ↢是内凡ノ人‡ト↡也。但0668是仏去[リタマヒ]テ↠世ヲ後ノ無善ノ凡夫†、命延ブルコト日夜、†逢↣遇ヒテ小縁ノ授クルニ↢其ノ小戒ヲ↡、†廻シテ願ズ↢往生ヲ↡。以テ↢仏ノ願力ヲ↡即チ†得↠生[ズル]コトヲ也。
・此経為凡
^もし小聖を論ぜば、 去ることまた妨げなし。 ▼ただこの ¬観経¼ は、 ▽仏、 凡のために説きたまへり、 聖のためにせず。
若シ論ゼバ↢小聖ヲ↡、去ル†コト亦無シ↠妨ゲ。但‡此ノ¬観経ハ¼仏為ニ↠凡ノ説†キタマヘリ、†不↠于セ↠聖ノ也。
・中品下生
^中が下といふは、 諸師のいふ、 「△小乗の内凡以前の世俗の凡夫、 ただ*世福を修して出離を求む」 とならば、
中ガ下[トイフ]者、諸師ノ云フ、「小乗ノ内凡已前ノ世俗ノ凡夫、唯修シテ↢世福ヲ↡求ムト†ナラバ↢出離ヲ↡」者、
^なんがゆゑぞ、 ¬観経¼ (意) にのたまはく、 「▲もし衆生ありて、 父母に孝養し、 世の仁慈を行ぜんに、 ◆命終らんと欲する時、 善知識の、 ためにかの仏の国土の楽事、 四十八願等を説くに遇ふ。 ◆この人聞きをはりてすなはちかの国に生ず」 と。
何ガ故ゾ¬観経ニ¼云ク、「若シ有[リ]テ↢衆生↡、孝↢養シ父母ニ↡、行ゼム[ニ]↢世ノ仁慈ヲ↡、†命欲スル↠終ラムト時、遇†フ↣善知識ノ、為ニ説[ク]ニ↢彼ノ仏ノ国土ノ楽事、四十八願等ヲ↡。此ノ人聞キ已[リ]テ即チ生†ズト↢彼ノ国ニ↡。」
^この文をもつて証するに、 ただこれ仏法に遇はざる人、 孝養を行ずといへども、 またいまだ心に出離を希求することあらず。 ただこれ臨終に善の勧めて往生せしむるに遇ふ。 この人勧めによりて回心してすなはち往生を得。
以テ↢此ノ文ヲ↡証[ス]ルニ、但是不ル↠遇ハ↢仏法ニ↡†之人、雖モ↠行ズト↢孝養ヲ↡、亦未ズ ダ↠有ラ↣心ニ希↢求スルコト出離ヲ↡。†直是臨終ニ遇フ↣善ノ勧メテ令ムルニ↢往生セ↡。此ノ人因[リ]テ↠勧メニ†廻心シテ即チ得↢往生‡ヲ↡。
^またこの人世にありて自然に孝を行ず、 また出離のためのゆゑに孝道を行ぜず。
又此ノ人在[リ]テ↠世ニ自然ニ行ズ↠孝ヲ、亦不↧為ノ↢出離ノ↡故ニ行ゼ↦孝道ヲ↥也。
・下輩
^次に下輩の三人を対せば、 諸師のいふ、 「△これらの人はすなはちこれ大乗始学の凡夫なり。 過の軽0317重に随ひて分ちて三品となす。 いまだ*道位にあらず。 *階降を弁ちがたし」 とは、
次ニ対セ↢下輩ノ三人ヲ↡者、諸師ノ†云フ、「此等之人ハ乃チ是大乗始学ノ凡夫ナリ。随[ヒ]テ↢過ノ軽重ニ↡分[チ]テ為ス↢三品ト↡。未ズ ダ↠有ラ↢道位ニ↡。難シト↠†弁チ↢階クライ降ヲ↡」者、
^まさに謂ふにしからず。 なんとなれば、 この三品の人、 仏法・世俗の二種の善根あることなし。 ただ悪を作ることを知るのみ。
将ニ謂フニ不↠然ラ。†何トナレバ者此ノ三品ノ人‡無シ↠有[ル]コト↢仏法‡・世俗‡ノ二種ノ善根↡。唯知†ルノミ↠†作ルコトヲ↠悪ヲ。
・下品上生
^なにをもつてか知ることを得る。 下が上の文に説くがごとし。 「▲ただ五逆と謗法とを作らず、 自余の諸悪はことごとくみなつぶさに造りて、 慚愧すなはち一念に至るまでもあることなし。
何ヲ以テカ得ル↠知[ル]コトヲ。如シ↢下[ガ]上[ノ]文ニ説[ク]ガ↡。「但‡不↠作ラ↢五逆[ト]謗法[ト]ヲ↡、自余ノ諸悪ハ悉ク皆具ニ造[リ]テ、無シ↠有[ル]コト↣†慚愧乃チ至ルマデモ↢一念ニ↡。
^◆命終らんと欲する時、 善0447知識の、 ために大乗を説き、 教へて仏を称せしむるに遇ひて一声す。 ◆その時阿弥陀仏、 すなはち化仏・菩薩を遣はしてこの人を来迎し、 すなはち往生を得しめたまふ」 (観経・意) と。
命欲スル↠終ラムト時、†遇ヒテ↧善知識ノ、為ニ説[キ]‡↢大乗ヲ↡、教ヘテ令ムルニ↞称セ↠仏ヲ一声ス。爾ノ時‡阿弥陀仏、即チ遣シテ↢化仏・菩薩ヲ↡来↢迎シ‡此ノ人ヲ↡、即チ得†シメタマフト↢往生ヲ↡。」
^ただかくのごとき悪人目に触るるにみなこれなり。 もし*善縁に遇へば、 すなはち往生を得。 もし善に遇はざれば、 さだめて三塗に入りていまだ出づべからず。
但如キ‡↠此[ク]ノ悪人触ルヽニ↠目ニ皆是ナリ。若シ遇ヘバ↢善縁ニ↡、即チ得↢往生ヲ↡。若シ†不レバ↠遇ハ↠善ニ、定[メ]テ入[リ]テ↢三塗ニ↡†未ダ↠可0669[カ]ラ↠出ヅ也。
・下品中生
^下が中とは、 「▲この人先に仏の戒を受く。 受けをはりて持たずしてすなはち毀破す。 また*常住僧物・*現前僧物を偸み、 不浄説法して、 乃至、 一念慚愧の心あることなし。
下ガ中[ト]者、「此ノ人先ニ受†ク↢仏ノ戒ヲ↡。受ケ已[リ]テ不シテ↠†持タ即便チ毀ソシリ 破ヤブルス。又偸ミ↢常住僧‡物・現前僧‡物ヲ↡、不浄‡説法シテ、乃至無シ↠有ルコト↢一念慚愧之心↡。
^◆命終らんと欲する時、 地獄の猛火一時にともに至りて、 現じてその前にあり。 火を見る時に当りて、 すなはち善知識の、 ためにかの仏国土の功徳を説きて、 勧めて往生せしむるに遇ふ。 ◆この人聞きをはりてすなはち仏を見たてまつり、 *化0318に随ひて往生す」 (観経・意) と。
命欲スル↠終ラムト時、地獄ノ猛火一時ニ倶ニ至[リ]テ、現ジテ在リ↢其ノ前ニ↡。当[リ]テ↢見ル↠火ヲ時ニ↡、即チ遇†フ↧善知識[ノ]、為ニ説キテ↢彼ノ仏‡国土ノ功徳ヲ↡、勧[メ]テ令ムルニ↦往生セ↥。此ノ人聞キ已[リ]テ即便[チ]見†タテマツリ↠仏ヲ、随[ヒ]テ↠化ニ往生ス[ト]。」
^初め善に遇はざれば獄火来迎し、 後に善に逢ふがゆゑに化仏来迎す。 これすなはちみなこれ弥陀願力のゆゑなり。
初メ不レバ↠遇ハ↠善ニ獄火来迎†シ、後ニ逢フガ↠善ニ故ニ化仏来迎ス。斯乃チ皆是弥陀‡願力ノ故也。
・下品下生
^下が下とは、 「▲これらの衆生不善業たる五逆・十悪を作り、 もろもろの不善を具す。 この人悪業をもつてのゆゑに、 さだめて地獄に堕して多劫窮まりなからん。
下[ガ]下[ト]者、「此等ノ衆生作リ‡↢不善業タル五逆・十悪ヲ↡、具ス↢諸ノ不善ヲ↡。此ノ人以[テ]ノ↢悪業ヲ↡故ニ、定[メ]テ堕[シ]テ↢地獄ニ↡多劫無カ†ラム↠窮リ。
^◆命終らんと欲する時、 善知識の、 教へて阿弥陀仏を称せしめ、 勧めて往生せしむるに遇ふ。 この人教によりて仏を称し、 ◆念に乗じてすなはち生ず」 (観経・意) と。
†命欲スル↠終ラムト時、遇フ↧善知識ノ教ヘテ称セシメ↢阿弥陀仏ヲ↡、勧[メ]テ令ムルニ↦往生セ↥。此ノ人依[リ]テ↠教ニ称†シ↠仏ヲ、乗ジテ↠念ニ†即チ生ズト。」
^この人もし善に遇はずは、 必定して*下沈すべし。 終りに善に遇ふによりて*七宝来迎す。
此ノ人若シ不ハ↠遇ハ↠善ニ、必定シテ下沈スベシ。由[リ]テ↢終ニ遇フニ↟善ニ七宝‡来迎ス。
・五濁凡夫
^またこの ¬観経¼ の定善および三輩上下の文の意を看るに、 総じてこれ仏世を去りたまひて後の五濁の凡夫なり。 ただ縁に遇ふに異なることあるをもつて、 九品をして差別せしむることを致す。
~又看ルニ↢此ノ¬観経ノ¼定善及ビ三輩上下ノ文ノ意ヲ↡、総ジテ是仏去リ[タマヒ]テ↠世ヲ後ノ五濁ノ凡夫[ナリ]。但‡以テ↢遇フニ↠縁ニ有ルヲ↟‡異ナルコト、致ス↠令ムルコトヲ↢九品ヲシテ差別†セ↡。
^なんとなれば、 上品の三人はこれ*†大に遇へる凡夫、 中品の三人はこれ*小に遇へる凡夫、 下品の三人はこれ▼悪に遇へる凡夫なり。 悪業をもつてのゆゑなり。 終りに臨みて善によりて、 仏の願力に乗じてすなはち往生を得。 かしこに到りて華開0448けてまさにはじめて*発心す。 なんぞこれ始学大乗の人といふことを得んや。 もしこの見をなさば、 みづから失し他を誤りて害をなすことこれはなはだし。
~†何トナレバ者上品ノ三人ハ是†遇ヘル↠大ニ凡夫、中品ノ三人ハ是†遇ヘル↠小ニ凡夫、下品ノ三人ハ是†遇ヘル↠悪ニ凡夫ナリ。以[テ]ノ↢悪業ヲ↡故†ナリ。臨ミテ↠終ニ藉[リ]テ↠善ニ、乗ジテ↢仏[ノ]願力ニ↡乃チ得↢往生‡ヲ↡。到[リ]テ↠彼ニ華開ケテ方ニ始テ発心ス。何ゾ得ム[ヤ]↠言フコトヲ↢是始学大乗[ノ]人[ト]↡也‡。若シ作サバ↢此ノ見ヲ↡、自ラ失シ悞†リテ↠他ヲ†為スコト↠害ヲ茲甚ダシ。
^いまもつて一々に文を出し顕証し0319て、 いまの時の善悪の凡夫をして同じく九品に沾はしめんと欲す。 信を生じて疑なければ、 仏の願力に乗じてことごとく生ずることを得。
~今以テ一一ニ出シ↠文ヲ顕証†シテ、欲ス↠使メムト↣今ノ時ノ善悪ノ凡夫[ヲ]シテ同[ジ]ク沾[ハ]‡↢九品ニ↡。生ジテ↠信ヲ無ケレバ↠疑、乗ジテ↢仏ノ願力ニ↡悉ク得↠生[ズル]コトヲ也。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (四)【出文顕証】
【20】^第四に↑文を出して顕証すとは、
~第0670四ニ†出デテ↠文ヲ顕証スト†者、
^問ひていはく、 上来返対の義、 いかんが知ることを得る。 「△世尊さだめて凡夫のためにして聖人のためにせず」 といふは、 いぶかし、 ただ*人情をもつて準へ義するや、 はたまた聖教ありて来し証するや。
~問[ヒテ]曰ク、上来返対之義、云何ガ得ル↠知[ル]コトヲ。「世尊定[メ]テ為ニシテ↢凡夫ノ↡不トイフ↠為ニセ↢聖人ノ↡」者未審、†直以テ↢人情コヽロヲ↡†準ヘ義スルヤ、為当亦有リテ↢聖教↡来シ証ス[ル]ヤ。
^答へていはく、 衆生は*垢重くして智慧浅近なり。 *聖意は弘深なり。 ▲あにいづくんぞみづからほしいままにせんや。 いま一々にことごとく仏説を取りて、 もつて明証となさん。 この証のなかにつきてすなはちその十句あり。
~答ヘテ*曰ク、衆生[ハ]†垢重クシテ智慧浅近ナリ。聖意[ハ]弘深ナリ。豈†寧ンゾ自ラ†輒セムヤ。今者一一ニ悉ク取[リ]テ↢仏説ヲ↡、以テ†為サム↢明証ト↡。就キテ↢此ノ証ノ中ニ↡即チ有リ↢其ノ十句↡。
・散善顕行縁文
^なんとなれば、 第一には ¬観経¼ にのたまふがごとし。 「仏、 韋提に告げたまはく、 ª▲われいまなんぢがために広くもろもろの譬へを説かん。 ◆また未来世の一切凡夫の浄業を修せんと欲するものをして、 西方極楽国土に生ずることを得しめんº」 とはこれその一の証なり。
~†何トナレバ者第一[ニハ]如シ↢¬観経ニ¼云[フ]ガ↡。「仏告[ゲタマ]ハク↢韋提ニ↡、我今為ニ↠汝ガ広ク説[カム]↢衆ノ譬ヲ↡。亦令メムト↧未来世ノ一切‡凡夫ノ†欲スル↠修セムト↢浄業ヲ↡者ヲシテ、得↞生[ズルコ]トヲ↢西方極楽国土ニ↡」†者、是其ノ一ノ証也。
・定善示観縁文 一
^二には 「▲如来いま未来世の一切衆生の煩悩の賊のために害せらるるもののために清浄の業を説く」 とのたまふは、 これその二の証なり。
~二[ニハ]言フ↪「如来今者‡為ニ↧未来世ノ一切衆生ノ為ニ↢煩悩[ノ]賊ノ↡之所†ルル↠害セ者ノ↥説クト↩清浄ノ業ヲ↨」者、是其ノ二ノ証也。
・定善示観縁文 二
^三には 「▲如来いま韋提希および未来世の一切衆生を教へて西方極楽世界を観ぜしめん」 とのたまふは、 これその三の証なり。
~三[ニハ]†言フ↧「如来今者教ヘテ↢韋提希及ビ未来世ノ一切衆生ヲ↡観ゼシメムト↦於西方極楽世界ヲ↥」者、是其ノ三[ノ]証也。
・定善示観縁文 三
^四には 「▲韋提、 仏0320にまうさく、 ªわれいま仏力によるがゆゑにかの国土を見る。 ◆もし仏滅後のもろもろの衆生等は、 濁悪不善にして五苦に逼められん、 いかんがまさにかの仏の国土を見たてまつるべきº」 とのたまふは、 これその四の証なり。
~四[ニハ]言フ↧「韋提白[サ]ク↠仏ニ、我今因ルガ↢仏力ニ↡故ニ見†ル↢彼ノ国土ヲ↡。若シ仏滅後ノ諸ノ衆生等†ハ、濁悪不善ニシテ五苦ニ†所レム↠逼メ、云何†ガ当ベ ニキト↞見[タテマツ]ル↢彼ノ仏ノ国土ヲ↡」者、是其ノ四[ノ]証也。
・日観文
^五には日観の初めにのたまふがごとし。 「▲仏、 韋提に告げたまはく、 ªなんぢおよび衆生、 念をもつぱらにせよº」 といふより以下、 すなはち 「一切0449衆生*生盲にあらざるよりは有目の徒日を見よ▲」 といふに至るこのかたは、 これその五の証なり。
~五[ニハ]如シ↢日観ノ初ニ云[フ]ガ↡。「仏告[ゲタマ]ハク↢韋提ニ↡、汝及ビ衆生専ニセヨトイフヨリ↠念ヲ」已下、†乃チ至ル↧「一切衆生自リハ↠非ザル↢生盲ニ↡有目之徒見ヨトイフニ↞日ヲ」已来タ者、是其ノ五[ノ]証也。
・地観文
^六には地観のなかに説きてのたまふがごとし。 「▲仏、 阿難に告げたまはく、 ªなんぢ、 仏語を持ち、 未来世の一切衆生の苦を脱れんと欲するもののために、 この観地の法を説けº」 といふは、 これその六の証なり。
~六[ニハ]如シ↢地観ノ中ニ説[キ]テ言フガ↡。「仏告[ゲタマハ]ク↢阿難ニ↡、汝持†チ↢仏語ヲ↡、為ニ↢未来世ノ一切衆生ノ†欲スル↠†脱レムト↠苦ヲ者ノ↡、説†ケトイフ↢是ノ観地ノ法ヲ↡」者、是其ノ六[ノ]証也。
・華座観文 一
^七には華座観のなかに説きてのたまふがごとし。 「▲韋提、 仏にまうさく、 ªわれ仏力によりて阿弥陀仏および二菩薩 (観音・勢至) を見たてまつることを得たり、 ◆未来の衆生はいかんが見たてまつることを得んº」 といふは、 これその七の証なり。
~七[ニハ]如シ↢華座観ノ中ニ†説キテ言フガ↡。「韋提白サク↠仏ニ、我因リテ↢仏力ニ↡得タリ↠見0671タテマツルコトヲ↢阿弥陀仏及ビ二菩薩ヲ↡、未来ノ衆生ハ云何ガ得ムトイフ↠見タテマツルコトヲ」者、是其ノ七[ノ]証也。
・華座観文 二
^八には次下に、 請に答ふるなかに説きてのたまはく、 「▲仏、 韋提に告げたまはく、 ªなんぢおよび衆生、 かの仏を観ぜんと欲するもの、 まさに想念を起すべしº」 といふは、 これその八の証なり。
~八ニ[ハ]†次下ニ、答フル↠請†ニ中ニ説キテ言ク、「仏告[ゲタマハ]ク↢韋提ニ↡、汝及ビ衆生†欲スル↠観[ゼム]ト↢彼ノ仏ヲ↡者、当ベ ニシト[イフ]↠起ス↢想念ヲ↡」者、是其ノ八[ノ]証也。
・像観文
^九には像観のなかに説きてのたまふがごとし。 「仏0321、 韋提に告げたまはく、 ª▲諸仏如来は一切衆生の心想のうちに入りたまふ。 ◆このゆゑになんぢら心に仏 (阿弥陀仏) を想ふ時º」 といふは、 これその九の証なり。
~九[ニハ]如†シ↢像観ノ中ニ説[キ]テ言フガ↡、「仏告[ゲタマハ]ク↢韋提ニ↡、諸仏如来ハ入[リ]タマフ↢一切衆生ノ心想ノ中ニ↡。是ノ故ニ†汝等心ニ想†フ↠仏ヲ時トイフ」者、是其ノ九[ノ]証也。
・九品段文意
^十には九品のなかに一々に説きて、 「▲もろもろの衆生のためにす」 といふがごときは、 これその十の証なり。
~十[ニハ]†如キ↢九品之中ニ一一ニ説キテ言フガ↟「為ニスト↢諸ノ衆生ノ↡」者、是其ノ十[ノ]証也。
^上来十句の不同ありといへども、 如来 (釈尊) この*十六観の法を説きたまふは、 ただ*常没の衆生のためにして、 *大小の聖のためにせずといふことを証明す。 この文をもつて証するに、 あにこれ謬りならんや。
~上来‡雖モ↠有リト↢十句ノ不同↡、証↧明†ス如来説[キタマフ]‡ハ↢此ノ十六観ノ法ヲ↡、但為ニシテ↢常没ノ衆生ノ↡、†不トイフコトヲ↞于セ↢大小ノ聖ノ↡也。以テ↢斯ノ文ヲ↡証スルニ、豈是謬ナラム哉。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (五)【別時意会通】
(Ⅰ)牒標
(Ⅱ)正釈
(ⅰ)正会別時
(a)標挙
【21】^第五に↑▲別時意を会通すといふはすなはちその二あり。
~第五ニ会↢通ス†トイフ別時意ヲ↡者即チ有リ↢其ノ†二↡。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (五)(Ⅱ)(ⅰ)(b)正明
(イ)釈成仏別時
[一]釈論文
^一には ¬論¼ (*摂大乗論・意) にいはく、 「▽人、 ↓*多宝仏を念ずれば、 すなはち無上↓菩提において↓退堕せざることを得るがごとし」 とは、
~一ニハ¬論ニ¼云ク、「†如シト↧人念ズレバ↢多宝仏ヲ↡、即チ於テ↢無上菩提ニ↡得ルガ↞不ルコトヲ↢退堕セ↡」者、
二 Ⅱ ⅵ b ロ (五)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二]釈義意
[Ⅰ]正明別時意
^おほよそ 「↑菩提」 といふはすなはちこれ仏果の名なり、 またこれ正報なり。 道理として成仏の法は、 かならずすべからく万行円かに備へてまさにすなはち*剋成すべし。 あに念仏の一行をもつてせんや。 すなはち成ずることを望まば、 この処あることなからん。 いまだ証せずといふといへども、 万行のなかにこれその一行なり。
~凡ソ言フハ↢菩提ト↡乃チ是仏果之名ナリ、亦是正報ナリ。道理[トシテ]成仏之法ハ、要ズ須クシ↢万行†円カニ備ヘテ方ニ乃チ剋成ス↡。豈将†テセムヤ↢念仏ノ一行ヲ↡。即チ望†マバ↠成[ズルコト]ヲ者、無†カラム↠有ルコト↢是ノ処↡。雖モ↠言フト↠†未ダト↠証セ、万行之中†ニ是其ノ一行ナリ。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (五)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅱ]明念仏一行
^なにをもつてか知ることを得る。 ¬華0450厳経¼ (意) に説きたまふがごとし。 「▲*功徳雲比丘、 *善財に語りていは0322く、 ªわれ仏法三昧海のなかにおいて、 ただ一行を知れり。 いはゆる念仏三昧なりº」 と。
~何ヲ以テカ得ル↠知[ル]コトヲ。如シ↢¬華厳経ニ¼説[キタマフ]ガ↡。「功徳雲比丘語[リ]テ↢善財ニ↡言ク、我†於テ↢仏法三昧海ノ中ニ↡、唯知レリ↢一行ヲ↡。†所謂ル念仏三昧ナリ[ト]。」
^この文をもつて証するに、 あに一行にあらずや。
~以テ↢此ノ文ヲ↡証スルニ、豈非ズ‡↢一行ニ↡也。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (五)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅲ]釈不退堕義
^これ一行なりといへども、 生死のなかにおいてすなはち成仏に至るまで永く退没せず。 ゆゑに 「↑不堕」 と名づく。
~雖モ↢是一行ナリト↡、於テ↢生死ノ中ニ↡†乃チ至ルマデ↢成仏ニ↡永ク不↢退没セ↡。故ニ名ク↢不堕ト↡。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (五)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[三]釈違文
^問ひていはく、 もししからば、 ¬*法華経¼ にのたまはく、 「一たび ª↓南無仏º と称すれば、 みな↓すでに仏道を成ず」 と。 また成仏しをはるべし。 この二文なんの差別かある。
~問[ヒテ]曰ク、若シ†爾ラバ者¬法華経ニ¼云ク、「一タビ称0672†スレバ↢南無仏ト↡、皆已ニ成ズ[ト]↢仏道ヲ↡。」亦応シ↢成仏シ竟†ル↡也。此‡之二文有ル↢何ノ差別カ↡。
^答へていはく、 ¬論¼ (摂大乗論) のなかの↑称仏は、 ただみづから仏果を成ぜんと欲す。 ¬経¼ (法華経) のなかの↑称仏は、 九十五種の外道に*簡異せんがためなり。 しかるに外道のなかにはすべて称仏の人なし。 ただ仏を称すること一口すれば、 すなはち仏道のなかにありて摂す。 ゆゑに 「↑已竟」 といふと。
~答ヘテ曰ク、¬論ノ¼中†ノ†称仏ハ、唯欲ス↣自ラ†成ゼムト↢仏果ヲ↡。¬経ノ¼中†ノ†称仏ハ、為ナリ↣簡↢異セムガ九十五種ノ外道ニ↡。然ルニ外道之中ニハ都テ無シ↢称仏之人↡。†但使称スルコト↠仏ヲ一口‡スレバ、即チ在[リ]テ↢仏道ノ中ニ↡摂ス。故ニ言フ[ト]↢已竟ト↡。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (五)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(ロ)会往生別時
[一]挙論文
【22】^二には ¬論¼ (摂大乗論・意) のなかに説きていはく、 「▽人ありてただ↓*発願するによりて安楽土に生ずるがごとし」 と、
~二ニ[ハ]¬論ノ¼中ニ説キテ云ク、「如シト↧人[アリテ]唯由[リ]テ↢†発願スルニ↡生ズルガ↦安楽土ニ↥」†者、
二 Ⅱ ⅵ b ロ (五)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(ロ)[二]会義意
[Ⅰ]破邪執
[ⅰ]正破
[a]先挙邪計
^久しきよりこのかた、 *通論の家、 論の意を会せずして、 錯りて下品下生の十声の称仏を引きて、 これと相似せしめて、 いまだすなはち生ずることを得ずといふ。 ▲一金銭千を成ずることを0323得るは、 多日にしてすなはち得。 一日にすなはち千を成ずることを得るにはあらざるがごとし。
~久シ†キヨリ来タ、通論之家不[シテ]↠会セ↢論ノ意ヲ↡、錯[リ]テ引キテ↢下品下生ノ十声[ノ]称仏ヲ↡、与↠此†相似セシメテ、未ズ ダ[トイフ]↢即チ得↟生ズルコトヲ。†如シ↣一金銭ノ得ル↠成ズルコトヲ↠千ヲ者、多日ニシテ乃チ得、非ザルガ↢一日ニ即チ得ルニハ↟†成ズルコトヲ↠千ヲ。
^十声の称仏もまたかくのごとし。 ただ*遠生のために因となる。 このゆゑにいまだすなはち生ずることを得ず。 仏ただ*当来の凡夫のために悪を捨て仏を称せしめんと欲して、 *誑言して生ずとのたまふ、 実にはいまだ生ずることを得ず、 名づけて別時意となすといはば、
~十声ノ称仏モ亦復如シ↠是[ク]ノ。但与ニ↢遠生ノ↡作ル↠因ト。是ノ故ニ未ズ ダ↢即チ得↟生ズルコト[ヲ]。†噵ハバ↧仏†直為ニ↢当来ノ凡夫ノ↡欲シテ↠令メムト↢捨テ‡↠悪ヲ称セ↟仏ヲ、誑タハブレ言†シテ噵フ↠†生ズト、†実ニハ†未ダ↠得↠生[ズル]コトヲ、名[ケ]テ†作スト↦別時意ト↥者、
二 Ⅱ ⅵ b ロ (五)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅰ][b]引証破斥
[イ]正引
^なんがゆゑぞ、 ¬*阿弥陀経¼ (意) にのたまはく、 「▲仏、 *舎利弗に告げたまはく、 ªもし善男子・善女人ありて阿弥陀仏を説くを聞かば、 すなはち名号を執持すべし。 ↓一日乃至七日一心に生ぜんと願ずれば、 ◆命終らんと欲する時、 阿弥陀仏、 もろもろの聖衆と*迎接して、 往生せしめたまふº」 と。
~何ガ故ゾ¬阿弥陀経ニ¼云ク、「仏告[ゲタマ]ハク↢舎利弗ニ↡、若シ有リテ↢善男子・善女人↡聞カバ↠説[ク]ヲ↢阿弥陀仏ヲ↡、即チ応シ↣執↢持ス名号ヲ↡。一日乃至七日一心ニ願ズ[レバ]↠†生ゼムト、命欲スル↠終ラムト時、阿弥陀仏与↢諸ノ聖衆↡迎接†シテ往生†セシメタマフト。」
^次下に (小経・意)、 「▲十方におのおの恒河沙等のごとき諸仏、 おのおの広長の舌相を出0451してあまねく三千大千世界に覆ひて、 誠実の言を説。 ªなんぢら衆生みな、 この一切諸仏の↓護念したまふところの経を信ずべしº」 と。
~次下ニ、「十方ニ各ノ如キ‡↢恒河沙等ノ↡諸仏、各ノ出シテ↢広長ノ舌相ヲ↡遍ク覆ヒテ↢三千大千世界ニ↡、説†キタマフ↢誠実ノ言ヲ↡。汝等衆生皆、応シト↠信ズ↧†是ノ一切諸仏[ノ]所ノ↢護念シタマフ↡経ヲ↥。」
二 Ⅱ ⅵ b ロ (五)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅰ][b][ロ]釈成
^「↑護念」 といふは、 すなはちこれ上の文の↑一日乃至七日仏の名を称するなり。
~言フ↢護念ト↡者、即チ是上ノ文ノ一日乃至七日†称スル↢仏之名ヲ↡也。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (五)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅰ][b][ハ]結破
^いますでにこの聖教ありてもつて明証となす。 いぶかし、 今時の一切の行者、 知らずなんの意ぞ、 *凡小の論にすなはち信受を加へ、 諸仏の*誠言を返りてまさに*妄語せんとする。 苦しきかな、 なんぞ劇しくよくかく0324のごとき*不忍の言を出す。
~今既ニ有リ[テ]↢斯ノ聖教↡以テ為ス↢明証ト↡。未審、†今時ノ一切ノ行者不↠知ラ何[ノ]意ゾ、*凡小之論0673ニ‡乃チ加ヘ‡↢信受ヲ↡、諸仏ノ誠言ヲ‡返[リ]テ†将ニル↢妄語セムト↡。苦シキ哉、奈ゾ劇シク能ク出ス↢如[キ]‡↠此[ク]ノ不忍之言ヲ↡。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (五)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ]勧誡
^しかりといへども、 ▼仰ぎ願はくは一切の往生せんと欲する*知識等、 ▼よくみづから思量せよ。 むしろ今世の錯りを傷りて仏語を信ぜよ。 *菩薩の論を執して、 もつて指南となすべからず。 もしこの執によらば、 すなはちこれみづから失し他を誤らん。
~雖モ↠然リト、†仰ギ願クハ一切ノ欲スル↢往生セムト↡知識等、善ク自ラ思量セヨ。寧ロ傷リテ↢今世ノ錯ヲ↡信†ゼヨ↢仏語ヲ↡。不↠可カラ↧執シテ↢菩薩ノ論ヲ↡、以テ為ス↦指南ト↥。若シ依†ラバ↢此ノ執ニ↡者、即チ是自ラ失シ†悞ラム↠他ヲ也。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (五)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(ロ)[二][Ⅱ]立正義
[ⅰ]弁論意
^問ひていはく、 いかんが行を起し、 しかも往生を得ずといふ。
~問[ヒテ]曰[ク]、云何ガ起†セルヲ↠行ヲ、而モ言フ‡↠不ト↠得↢往生ヲ↡。
^答へていはく、 もし往生せんと欲せば、 かならずすべからく行願具足すべし。 まさに生ずることを得べし。 いまこの ¬論¼ (摂大乗論) のなかには、 ただ 「↑発願」 といひて、 行ありと論ぜず。
~答ヘテ曰ク、若シ†欲セバ↢往生セムト↡者、要ズ†須クシ↢行願具足ス↡。方ニ可シ↠得↠生[ズル]コトヲ。今此ノ¬論ノ¼中ニハ、但言ヒテ↢発願ト↡、不↠論ゼ↠有†リト↠行。
^問ひていはく、 なんがゆゑぞ論ぜざる。
~問[ヒテ]曰[ク]、何ガ故ゾ不ル↠論ゼ。
^答へていはく、 すなはち一念に至るまでかつていまだ心を措かず。 このゆゑに論ぜず。
~答[ヘテ]曰ク、†乃チ至ルマデ↢一念ニ↡曽テ未ズ ダ↠措カ↠心ヲ。是ノ故ニ不↠論ゼ。
^問ひていはく、 願行の義になんの差別かある。
~問[ヒテ]曰[ク]、願行之義[ニ]有ル↢†何ノ差別カ↡。
^答へていはく、 経のなかに説きたまふがごとし。 ▼ただその行のみあるは、 行すなはち孤にしてまた至るところなし。 ただその願のみあるは、 願すなはち虚しくしてまた至るところなし。 かならずすべからく願行あひ扶けて所為みな剋すべしと。
~答[ヘテ]曰[ク]、如†シ↢経ノ中ニ説[キタマフ]ガ↡。但有ルハ↢其ノ行ノミ↡、行即チ孤ムナシニシテ亦無シ↠所↠至ル。但有ルハ↢其ノ願ノミ↡、願即チ†虚シクシテ亦無シ↠所↠至ル。要ズ†須クシト↢願行相扶ケテ所為皆剋ス↡。
このゆゑにいまこの ¬論¼ (摂大乗論) のなかには、 ただ 「発願」 といひて、 行ありと論ぜず。 このゆゑに0325いまだすなはち生ずることを得ず。 遠生のために因となるといふは、 その義実なり。
是ノ故ニ今此ノ¬論ノ¼中ニ[ハ]、†直言ヒテ↢発願ト↡、不↠論ゼ↠有†リト↠行。是ノ故ニ未ズ ダ↢即チ得↟生ズルコトヲ、与ニ↢遠生ノ↡作ル†トイフ↠因ト者、其ノ義実也。
^問ひていはく、 願の意いかんぞ、 すなはち生ぜずといふ。
~問[ヒテ]曰[ク]、願ノ意云何†ゾ乃チ言フ‡↠不ト↠†生ゼ。
^答へていはく、 他の説きて、 「西方は快楽不可思議なり」 といふを聞きて、 すなはち願をなしていはく、 「われもまた願はくは生ぜん」 と。 この語をいひをはりてさらに相続せず。 ゆゑに願と名づく。
~答[ヘテ]曰[ク]、聞キテ↣他ノ説キテ、言フヲ↢西方†ハ快楽不可思議ナリト↡、即チ作シテ↠願ヲ言ク、我モ亦願クハ生ゼムト。噵ヒ↢此ノ語ヲ↡已[リ]テ更ニ不↢相続セ↡。故ニ名ク↠願ト也。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (五)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(ロ)[二][Ⅱ][ⅱ]弁経意【六字釈】
^▼いまこの ¬観経¼ のなかの十声の称仏は、 すなはち十願十行あ0452りて具足す。 いかんが具足する。 ▼「南無」 といふはすなはちこれ帰命なり、 またこれ発願回向の義なり。 ▼「阿弥陀仏」 といふはすなはちこれその行なり。 この義をもつてのゆゑにかならず往生を得。
~今此ノ¬観経ノ¼中ノ十声ノ称仏ハ、即チ†有リテ↢十願・十行↡具足ス。云何ガ具足スル。言フ↢南無ト↡者即チ是帰命ナリ、亦是発願廻向之義ナリ。言フ↢阿弥陀仏ト↡者、即[チ]是其ノ行ナリ。以テノ↢斯ノ義ヲ↡故ニ必ズ得↢往生‡ヲ↡。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (五)(Ⅱ)(ⅱ)重弁分斉
(a)弁依正差別
【23】^また ¬論¼ (摂大乗論) のなかに 「△多宝仏を称してために仏果を求むる」 とは、 すなはちこれ正報にして、 下に 「△ただ発願して浄土に生ぜんと求むる」 とは、 すなはちこれ依報なり。 一は正、 一は依、 あに相似することを得んや。
~†又来¬論ノ¼中ニ「称†シテ↢多宝仏ヲ↡†為ニ求ムルトハ↢仏果ヲ↡」、即[チ]是正報†ニシテ、下ニ「唯†発願シテ求[ム]ルトハ↠生ゼムト↢浄土ニ↡」、即[チ]是依報ナリ。一ハ正、一ハ依、豈0674得ムヤ↢相似スルコトヲ↡。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (五)(Ⅱ)(ⅱ)(b)明二種別時
^しかるに▼正報は期しがたし。 一行*精なりといへどもいまだ*剋せず。 依報は求めやすけれども、 一願の心をもつてはいまだ入らざる所なり。
~然ルニ正報ハ難シ↠期シ。一行雖モ↠精ナリト未ズ ダ↠剋キザスセ。依報ハ易†ケレドモ↠求メ、†所ナリ↧以テハ↢一願之心ヲ↡未ダル↞入ラ。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (五)(Ⅱ)(ⅱ)(c)示浄土易往
(イ)約譬明
^しかりといへども、 たとへば*辺方化に投ずるはすなはち易く、 主となることはすなはち難きがご0326とし。 今時の往生を願ずるものは、 *ならびにこれ一切化に投ずる衆生なり。 あに易きにあらずや。
~雖モ↠然リト、譬ヘバ如シ↢辺方‡投[ズ]ル†ハ↠化†ニ即チ易ク、為ルコトハ↠主ト即チ難キガ↡。†今時[ノ]†願ズル↢往生ヲ↡者ハ、並ニ是一切投トウ[ズル]↠化†ニ衆生ナリ。豈非ズ‡↠易キニ也。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (五)(Ⅱ)(ⅱ)(c)(ロ)顕願力
^ただよく上一形を尽し下十念に至るまで、 仏の願力をもつてみな往かざるはなし。 ゆゑに易と名づく。
~但能ク上尽シ↢一形ヲ↡下至[ル]マデ↢十念ニ↡、以テ↢仏[ノ]願力ヲ↡莫シ↠†不ルハ↢皆往カ↡。故ニ名ク↠易ト也。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (五)(Ⅲ)結成
^これすなはち言をもつて義を定むべからず。 取りて信ずるもの、 疑を懐けばなり。 かならず聖教を引きて来し明かし、 これを聞くものをしてまさによく惑ひを遣らしめんと欲す。
~斯乃チ不↠可[カ]ラ↢以テ↠†言ヲ定ム↟義ヲ。†取リテ信ズル之者‡、懐†ケバナリ↠疑ヲ。要ズ引キテ↢聖教ヲ↡*来シ†明シ、欲ス↠使メムト↢†聞ク↠之ヲ者ヲシテ方ニ能ク†遣ラ↟惑ヲ。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)【二乗種不生】
(Ⅰ)牒標
【24】^▼第六に▲↑二乗種不生の義を会通すとは、
~第六ニ会↢通スト二乗種不生ノ義ヲ↡者、
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)正釈
(ⅰ)立義
(a)明報仏報土
(イ)正明報義
[一]問
^▲*問ひていはく、 弥陀の浄国ははたこれ*報なりやこれ*化なりや。
~問[ヒテ]曰[ク]、弥陀ノ浄国ハ為当是報ナリ†ヤ是化ナリ‡也。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(イ)[二]答
[Ⅰ]直答【是報非化】
^◆答へていはく、 これ報にして化にあらず。
~答[ヘテ]曰[ク]、是報ニシテ非ズ↠化ニ。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(イ)[二][Ⅱ]引証
[ⅰ]同性経
^◆いかんが知ることを得る。 ¬*大乗同性経¼ (意) に説きたまふがごとし。 「▲西方安楽の阿弥陀仏はこれ報仏・報土なり」 と。
~云何ガ得ル↠知[ルコ]トヲ。如シ↢¬大乗同性経ニ¼説[キタマフ]ガ↡。「西方安楽ノ阿弥陀仏ハ是報仏報土ナリ[ト]↡。」
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(イ)[二][Ⅱ][ⅱ]大経
[a]正引
^◆また ¬*無量寿経¼ (上・意) にのたまはく、 「▼*法蔵比丘、 *世饒王仏の所にましまして菩薩の道を行じたまひし時、 四十八願を発したまへり。 ▼*一々の願にのたまはく、 ª▲もしわれ仏を得たらんに、 十方の衆生、 わが名号を称してわが国に生ぜんと願ぜんに、 下十念に至るまで、 もし生ぜずは、 正覚を取らじº」 と。
~又¬無量寿経ニ¼云ク、「法蔵比丘在シテ↢世饒王仏ノ所ニ↡行[ジ]タマヒシ↢菩薩ノ道ヲ↡時、発シ†タマヘリ↢四十八願ヲ↡。†一一ノ願ニ言ク、若シ我得[タラム]ニ↠仏ヲ、十方ノ衆生称シテ↢我[ガ]名号ヲ↡願†ゼムニ↠†生ゼムト↢我[ガ]国ニ↡、下至†ルマデ↢十念ニ↡、若シ不†ハ↠†生ゼ者不ト‡↠取[ラ]↢正覚ヲ↡。」
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(イ)[二][Ⅱ][ⅱ][b]釈成
^◆いますでに成仏したまへり。 ▼すなはちこれ*酬因の身なり。
~今既ニ†成仏シタマヘリ。即チ是酬因之身也。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(イ)[二][Ⅱ][ⅲ]観経
[a]正引
^◆また ¬観経¼ (意) のなかの*上輩の三人、 命終の時に臨みて、 みな 「▲阿弥陀仏およ0453び化仏と↓与にこの人を来迎す」 とのたまへり。
~又¬観経ノ¼中ノ上輩[ノ]三人、臨ミテ↢命終ノ時ニ↡、皆†言ヘリ↧「阿弥陀仏及ビ†与ニ↢化仏ト↡来↦迎†スト此ノ人ヲ↥。」
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(イ)[二][Ⅱ][ⅲ][b]釈成
[イ]正釈成
^▼しかるに報身0327、 化を兼ねてともに来りて手を授く。 ゆゑに名づけて 「↑与」 となす。 この文をもつて証す。 ゆゑに知りぬ、 これ報なり。
~然[ル]ニ報身兼ネテ↠化ヲ共ニ来[リ]テ授ク↠手ヲ。故ニ名[ケ]テ為ス↠与ト。以テ↢此ノ文ヲ↡証ス。故ニ知[リ]ヌ、是報ナリ。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(イ)[二][Ⅱ][ⅲ][b][ロ]遮伏疑
ª一º釈報応名
ªⅠº名異
^◆しかるに*報・応の二身は*眼目の異名なり。 *前には 「報」 を翻じて応となし、 後には 「応」 を翻じて報となす。
~然ルニ報・応ノ二身者眼目之異名ナリ。前ニハ†翻ジテ↠報ヲ作シ↠応ト、後ニハ†翻ジテ↠応ヲ作ス↠報ト。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(イ)[二][Ⅱ][ⅲ][b][ロ]ª一ºªⅡº義同
^◆おほよそ報といふは*因行虚しからず、 さだめて来果を招く。 果をもつて因に応ず、 ゆゑに名づけて報となす。 また*三大僧祇の所修の万行、 必定して応じて菩提を得。 いますでに道成ぜり、 すなはちこれ応身なり。
~凡ソ言フ↠報ト者因行不‡↠虚シカラ、定[メ]テ招ク↢来果ヲ↡。†以テ↠果ヲ応ズ↠因ニ、故ニ名[ケ]テ為ス↠報ト。又三大僧祇ノ所修ノ万0675行、必定シテ†応ジテ得↢菩提ヲ↡。今既ニ道成†ゼリ、即チ是応身ナリ。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(イ)[二][Ⅱ][ⅲ][b][ロ]ª二º定三身体
^◆これすなはち*過・現の諸仏に三身を弁立す。 これを除きて以外さらに別の体なし。 たとひ*無窮の八相・名号*塵沙なるも、 体を剋して論ずれば、 すべて化に帰して摂す。
~斯乃チ過・現ノ諸仏ニ弁↢立ス‡三身ヲ↡。除キテ↠斯ヲ已外‡更ニ無シ↢別ノ体↡。縦使無窮ノ八相・名号塵沙†ナルモ、剋シテ↠体ヲ而論ズレバ、†衆テ帰シテ↠化ニ摂ス。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(イ)[二][Ⅱ][ⅲ][b][ハ]結所立
^◆いまかの弥陀は現にこれ報なり。
~今彼ノ弥陀[ハ]現ニ是報也。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ロ)会釈違文
[一]問
^◆問ひていはく、 すでに報といはば、 報身は常住にして永く生滅なし。 なんがゆゑぞ、 ¬*観音授記経¼ (意) に、 「▲阿弥陀仏また*入涅槃の時あり」 と説きたまふ。 この一義いかんが通釈せん。
~問[ヒテ]曰[ク]、既ニ言†ハバ↠報ト者、報身ハ常住ニシテ永ク無シ↢生滅↡。何ガ故ゾ¬観音授記経ニ¼説†キタマフ↣「阿弥陀仏‡亦有リト↢入涅槃ノ時↡。」此之一義若為ガ通釈セム‡。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ロ)[二]答
[Ⅰ]仰推仏境
^◆答へていはく、 入・不入の義はただこれ諸仏の境界なり。 なほ三乗浅智の闚ふところにあらず、 あにいはんや*小凡たやすくよく知らんや。
~答[ヘテ]曰[ク]、入・不入ノ義者唯是諸仏ノ境界ナリ。尚‡非ズ↢三乗‡浅智ノ所ニ↟闚フ、豈況ヤ小凡輒ク能ク知ラムヤ也。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ロ)[二][Ⅱ]引証答釈
[ⅰ]標証
^◆しかりといへども、 かならず知らんと欲せば、 あへて仏経を引きてもつて明証となさん。
~雖モ↠然リト必ズ†欲セバ↠知ラムト者、敢テ引キテ↢仏経ヲ↡以テ†為サム↢明証ト↡。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ロ)[二][Ⅱ][ⅱ]正引
[a]明如化
[イ]明諸法如化
^◆なんとなれば、 ▼¬大品経¼ の 「*涅槃非化品」 (意) の0328なかに説きてのたまふがごとし。
~†何トナレバ者如シ↢¬大品経ノ¼「涅槃非化品ノ」中ニ説キテ云[フガ]↡。
^「◆仏、 *須菩提に告げたまはく、 ªなんぢが意においていかん。 もし*化人ありて化人をなす、 この化すこぶる実事にして、 空ならざるものありやいなやº と。
~「仏告[ゲタマ]ハク↢須菩提ニ↡、於テ↢汝ガ意ニ↡云何‡。若シ有[リ]テ↢化人↡作ス↢化人ヲ↡、是ノ化頗ル†有リヤ↢実事ニシテ不ル↠空ナラ者↡不ヤト。
^◆須菩提まうさく、 ªいななり、 世尊º と。
~須菩提‡言ク、不†也、世尊[ト]。
^◆仏、 須菩提に告げたまはく、 ª*色すなはちこれ化なり。 *受・想・行・識すなはちこれ化なり。 乃至*一切種智すなはちこれ化なりº と。
~仏告[ゲタマ]ハク↢須菩提ニ↡、色即チ是化ナリ。受・想・行・識‡即[チ]是化ナリ。乃至一切種智即[チ]是化ナリ[ト]。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ロ)[二][Ⅱ][ⅱ][a][ロ]約出世間明
^◆須菩提、 仏にまうしてまうさく、 ª世尊、 もし世間の法これ化なり、 出世間の法もまたこれ化ならば、 いはゆる四念処・四正勤・四如意足・五根・五力・七覚分・八聖道分0454・三解脱門・仏の十力・四無所畏・四無礙智・十八不共法、 ならびに諸法の果および賢聖人、 いはゆる須陀洹・斯陀含・阿那含・阿羅漢・辟支仏・菩薩摩訶薩・諸仏世尊、 この法またこれ化なりやいなやº と。
~須菩提白[シテ]↠仏ニ言ク、世尊、若シ世間ノ法是化†ナリ、出世間ノ法モ亦是化†ナラバ、所謂四念処・四正勤・四如意足・五根・五力・七覚分・八聖道分・三解脱門・仏[ノ]十*力・四無所畏・四無礙智・十八不共法、并ニ諸法ノ果及ビ賢聖人、所謂須陀洹・斯陀含・阿那含・阿羅漢・辟支仏・菩薩摩訶薩・諸仏世尊、是ノ法亦是化ナリヤ不ヤ[ト]。
^◆仏、 須菩提に告げたまはく、 ª一切の法みなこれ化なり。 この法のなかにおいて声聞法の*変化あり、 辟支仏法の変化あり、 菩薩法の変化あり、 諸仏法の変化あり、 煩悩法の変化あり、 業因縁法の変化あり。 この因縁をもつてのゆゑに、 須菩提、 一切の法はみなこれ化なりº と。
~仏告[ゲタマハク]↢須菩提ニ↡、一切ノ法‡皆是化ナリ。於テ↢是ノ法ノ中ニ↡有リ↢声聞法ノ変化↡、有リ↢辟支仏0676法[ノ]変化↡、有リ↢菩薩法ノ変化↡、有リ↢諸仏法ノ変化↡。有リ↢煩悩法ノ変化↡、有リ↢業因*縁‡法ノ変化↡。以テノ↢是ノ因縁ヲ↡故ニ、須菩提、一切ノ法ハ皆是化ナリ[ト]。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ロ)[二][Ⅱ][ⅱ][a][ハ]約無為法明
^◆須菩提、 仏にまうしてまうさく、 ª世尊、 このもろもろの*煩悩断の、 いはゆる須陀洹果・斯陀含果・阿那含果・阿羅漢果、 辟支仏道の、 もろもろの煩0329悩の*習を断ぜるも、 みなこれ変化なりやいなやº と。
~須菩提白シテ↠仏[ニ]言ク、世尊、是ノ諸ノ煩悩断[ノ]、所謂須陀洹果・斯陀含果・阿那含果・阿羅漢果、辟支仏道[ノ]断ゼル[モ]↢諸ノ煩悩†ノ習†ヲ↡、皆是変化ナリヤ不ヤ[ト]。
^◆仏、 須菩提に告げたまはく、 ªもし法の生滅の相あるは、 みなこれ変化なりº と。
~仏告[ゲタマ]ハク↢須菩提ニ↡、若シ有ル↢法ノ生滅ノ相↡者、皆是変化ナリ[ト]。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ロ)[二][Ⅱ][ⅱ][b]示非化
^◆須菩提まうさく、 ª世尊、 なんらの法か変化にあらざるº と。
~須菩提‡言ク、世尊、何等ノ法カ非ザル[ト]↢変化ニ↡。
^◆仏のたまはく、 ªもし法の無生無滅なる、 これ変化にあらずº と。
~仏‡言ク、若シ法ノ無生無滅ナル、是非[ズト]↢変化ニ↡。
^◆須菩提まうさく、 ªなんらかこれ不生不滅にして変化にあらざるº と。
~須菩提‡言ク、何等カ是不生不滅ニシテ非ザル[ト]↢変化ニ↡。
^◆仏のたまはく、 ª*誑相なき涅槃、 この法のみ変化にあらずº と。
~仏‡言ク、無キ↢誑クルウ相↡涅槃‡、是ノ法ノミ非ズ[ト]↢変化ニ↡。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ロ)[二][Ⅱ][ⅱ][c]弁異説
^◆ª世尊、 仏のみづから説きたまふがごときは、 諸法は平等にして声聞の作にあらず、 辟支仏の作にあらず、 諸菩薩摩訶薩の作にあらず、 諸仏の作にあらず。 有仏無仏、 諸法の*性はつねに空なり。 性空すなはちこれ涅槃なり。 いかんが涅槃の一法のみ化のごとくにあらざるº と。
~世尊、如キハ↢仏ノ自ラ説[キタマ]フガ↡、諸法ハ平等ニシテ非ズ↢声聞ノ作ニ↡、非ズ↢辟支仏ノ作ニ↡、非ズ↢諸菩薩摩訶薩ノ作ニ↡、非ズ↢諸仏ノ作ニ↡。有仏無仏、諸法ノ性ハ常ニ空ナリ。性空‡即チ是涅槃ナリ。云何†ガ涅槃ノ一法[ノミ]非ザル†ト↠如クニ‡↠化ノ。
^◆仏、 須菩提に告げたまはく、 ªかくのごとしかくのごとし。 諸法は平等にして声聞の所作にあらず。 乃至性空すなはちこれ涅槃なり。 もし*新発意の菩薩、 この一切の法はみな畢竟じて性空なり、 乃至涅槃もまたみな化のごとしと聞かば、 心すなはち驚怖0455せん。 この新発意の菩薩のために、 ことさらに生滅のものは化のごとく、 不生不滅のものは化のごとくにはあらずと分別するなりº」 と。
~仏告[ゲタマ]ハク↢須菩提ニ↡、如シ↠是[ク]ノ如シ↠是[ク]ノ。諸法ハ平等ニシテ非ズ↢声聞ノ所作ニ↡。乃至性空即チ是涅槃ナリ。若シ新発意ノ菩薩†聞カバ↢是ノ一切ノ法[ハ]皆畢竟ジテ性空ナリ、乃至涅槃モ亦皆如シト↟化ノ者、心則チ驚オドロキ怖オソル†セム。 †為ニ↢是ノ新発意ノ菩薩ノ↡、故ラニ†分↢別スルナリ[ト]生滅ノ者ハ如ク↠化ノ、不生不滅ノ者ハ不ズト↟如クニハ↠化ノ耶。」
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ロ)[二][Ⅱ][ⅲ]結顕
^◆いますでにこの聖教をもつてあきらかに知りぬ、 弥陀はさだめてこれ報なることを。 たとひ後に涅槃に入0330るとも、 その義妨げなし。 もろもろの*有智のもの知るべし。
~今既ニ以テ↢斯ノ聖教ヲ↡験ニ知[リ]ヌ、弥陀ハ定メテ是報†ナルコトヲ也。縦使後ニ入[ル]トモ↢涅槃ニ↡、其ノ義無シ↠妨ゲ。諸ノ有智ノ者応シ↠知†ル。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅰ)(b)明凡夫往生
(イ)問
【25】^▼問ひていはく、 かの仏および土すでに報といはば、 *報法は高妙にして、 小聖すら階ひがたし。 垢障の凡夫いかんが入ることを得ん。
~問[ヒテ]曰[ク]、彼ノ仏及ビ土既ニ言†ハバ↠報ト者、報法[ハ]高妙ニシテ、小聖†スラ難シ↠階ヒ。垢障ノ凡夫云何†ガ得ム↠入ルコトヲ。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(ロ)答
^▼答へていはく、 もし衆生の垢障を論ぜば、 実に欣趣しがたし。 ▼まさしく仏願に託してもつて強縁となすによりて、 五乗をして斉しく入らしむることを致す。
~答[ヘテ]曰[ク]、若シ論†ゼバ↢衆生0677ノ垢障ヲ↡、実ニ難シ↢欣趣シ↡。正[シ]ク†由[リ]テ↧託シテ↢仏願ニ↡以テ作スニ↦強縁ト↥、致ス↠使ムルコトヲ↢五乗[ヲ]シテ斉シク入ラ↡。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅱ)釈難
(a)問
^問ひていはく、 もし凡夫・小聖生ずることを得といはば、 なんがゆゑぞ、 天親の ¬*浄土論¼ に、 「▲*女人および根欠、 二乗の↓種生ぜず」 といへる。 いまかの国のなかに現に二乗あり。 かくのごとき*論教、 いかんが*消釈せん。
~問[ヒテ]曰[ク]、若シ言†ハバ↢凡夫・小聖得ト↟生ズルコトヲ者、何ガ故ゾ天親ノ¬浄土論ニ¼、†云ヘル↢「女人‡及ビ根欠、二乗[ノ]種不ト↟生ゼ。」今彼ノ国ノ中ニ現ニ有リ↢二乗↡。如キ‡↠斯クノ論教、若為†ガ消釈セム。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅱ)(b)答
(イ)正会論文不生
[一]明二乗不生
[Ⅰ]呵問標証
[ⅰ]呵問
^答へていはく、 なんぢただその文を誦して理を闚はず、 いはんや加ふるに*封拙懐迷をもつてすれば、 *啓悟するに由なし。
~答[ヘテ]曰[ク]、子但誦シテ↢其ノ文ヲ↡不↠闚ハ↠理ヲ、況ヤ†加フルニ†以テスレバ↢封拙懐迷ヲ↡、無シ↠由↢啓悟スルニサトリテ ↡。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[一][Ⅰ][ⅱ]標証
^いま仏教を引きてもつて明証となして、 なんぢが疑情を却けん。 なんとなれば、 すなはち ¬観経¼ の下輩の三人これなり。
~今引キテ↢仏教ヲ↡以テ為シテ↢明証ト↡、†却ケム↢汝ガ疑情ヲ↡。†何トナレバ者即チ¬観経ノ¼下輩ノ三人是也。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[一][Ⅱ]引証料簡
[ⅰ]引証直答
^↓なにをもつてか知ることを得る。 下品上生にのたまふがごとし。 「▲あるいは衆生ありて、 多く悪法を造りて慚愧あることなし。 かくのごとき愚人◆命終らんと欲する時、 善知識の、 ために大乗を説き、 教へて阿弥陀仏を称せしむるに遇ふ。
~何ヲ以テカ得ル↠知[ルコ]トヲ。如†シ↢下品上生ニ云[フ]ガ↡。「或[イ]ハ有[リ]テ↢衆生↡、多ク造[リ]テ↢悪法ヲ↡無シ↠有[ル]コト↢慚愧↡。如キ‡↠此[ク]ノ愚人†命欲スル↠終ラムト時、遇†フ↧善知識ノ、為ニ説キ↢大乗ヲ↡、教ヘテ令[ム]ルニ↞称セ↢阿弥陀仏ヲ↡。
^◆仏を称する時に当りて化仏・菩薩現じてその前にまします。 金光・*華蓋迎0331へてかの土に還る。 ▲華開以後、 観音、 ↓ために大乗を説きたまふ。 ◆この人聞きをはりてすなはち無上道↓心を発す」 (観経・意) と。
~当[リ]テ↢称[ス]ル↠仏ヲ時ニ↡化仏・菩薩現ジテ在†ス↢其ノ前ニ↡。金光・華蓋迎ヘテ還ル↢彼ノ土ニ↡。華開†已後、観音、為ニ説†キタマフ↢大乗ヲ↡。此ノ人聞キ已[リ]テ即チ発スト↢無上道心ヲ↡。」
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[一][Ⅱ][ⅱ]料簡義意
[a]問
^問ひていはく、 ↑種と↑心となんの差別かある。
~問[ヒテ]曰[ク]、種ト之与↠心有ル‡↢†何ノ差別カ↡。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[一][Ⅱ][ⅱ][b]答
[イ]総答
^答へていはく、 ただ便を取りていふのみ、 義は差別なし。
~答[ヘテ]*曰[ク]、†但以取[リ]テ↠†便ヲ而言フ[ノミ]、義[ハ]無シ↢差別↡。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[一][Ⅱ][ⅱ][b][ロ]別釈
ª一º約上品明
^華開くる時に当りて、 この人身器清浄にして、 まさしく法を聞くに堪へたり。 また*大小を*簡ばず、 ただ聞くことを得ればすなはち信を生ず。
~当[リ]テ↢華開[ク]ル之時ニ↡、此ノ人身器清浄ニシテ、正[シ]ク堪ヘタリ↠聞クニ↠法ヲ。亦不↠簡バ↢大小ヲ↡、†但使得レバ↠聞クコトヲ即便チ生ズ↠信ヲ。
^ここをもつて観音、 ために小を説かず、 先0456づ↑ために大を説きたまふ。 大を聞きて歓喜してすなはち無上道心を発す。 すなはち大乗の種生ずと名づけ、 また大乗の心生ずと名づく。
~是ヲ以テ観音不‡↢為ニ説カ↟小ヲ、先ヅ為ニ説キタマフ‡↠大ヲ。聞[キ]テ↠大ヲ歓喜シテ即チ発ス↢無上道心ヲ↡。即チ名ケ↢大乗ノ種生[ズ]ト↡、亦名ク↢大乗[ノ]心生[ズ]ト↡。
^また華開くる時に当りて、 観音、 先づために小乗を説きたまはば、 小を聞きて信を生ぜん。 すなはち二乗の種生ずと名づけ、 また二乗の心生ずと名づけん。
~又当[リ]テ↢華‡開[ク]ル時ニ↡、観音先ヅ為ニ説†キタマハバ↢小乗ヲ↡者、聞[キ]テ↠小ヲ生†ゼム↠信ヲ。即チ名ケ↢二乗[ノ]種生[ズ]ト↡、亦名†ケム↢二乗[ノ]心生[ズ]ト↡。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[一][Ⅱ][ⅱ][b][ロ]ª二º例下二品
^この品 (下品上生) すでにしかなり、 *下の二もまたしかなり。
~此ノ品既ニ†爾ナリ、下ノ†二モ亦然ナリ。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[一][Ⅱ][ⅱ][b][ロ]ª三º結成道理
^この三品の人はともにかしこにありて発心す。 まさしく大を聞くによりてすなはち大乗の種生ず。 小を聞かざるによるがゆゑに、 ゆゑに二乗の種生ぜず。
~此ノ三品ノ人ハ*倶ニ在[リ]テ↠彼ニ発心†ス。正[シ]ク由[リ]テ↠聞クニ↠大[ヲ]即チ大乗[ノ]種生ズ。由ルガ↠不ルニ↠聞カ↠小ヲ故ニ、所以ニ二乗[ノ]種不↠生0678ゼ。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[一][Ⅱ][ⅱ][b][ハ]結示
^おほよそ種といふはすなはちこれその心なり。
~凡ソ言フ↠種ト者即チ是其ノ心也。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[一][Ⅲ]総結不生
^上来二乗種不生の義を解しをはりぬ。
~上来‡解シ↢二乗種不生ノ義ヲ↡竟[リ]ヌ。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二]例女人根欠
^女人および根欠の義はかしこになきがゆゑに、 知るべし。
~女人及[ビ]根欠ノ義者彼ニ無キガ故ニ、可シ↠知†ル。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(ロ)就小機往生会
^↓また十方の衆生、 小乗の戒行を修して往生を願ずるもの、 一も*妨礙なくこ0332とごとく往生を得。 ただかしこに到りて先づ*小果を証す。 証しをはりてすなはち転じて*大に向かふ。 一たび転じて大に向かひて以去、 さらに退して二乗の心を生ぜず。 ゆゑに二乗種不生と名づく。
~又十方ノ衆生修シテ↢小乗ノ戒行ヲ↡†願ズル↢往生ヲ↡者、一モ無ク↢妨礙↡悉ク得↢往生ヲ↡。但到[リ]テ↠彼ニ先ヅ証†ス↢小果ヲ↡。証シ已[リ]テ即チ転ジテ向フ↠大ニ。一[タ]ビ転ジ[テ]向[ヒ]テ↠大ニ以去、更ニ†不↣退シテ生ゼ↢二乗之心ヲ↡。故ニ名ク↢二乗種不生ト↡。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(ハ)結成二義差別
^↑*前の解は不定の始めに就き、 ↑*後の解は小果の終りに就く、 知るべし。
~前ノ解ハ就キ↢不定之始ニ↡、後ノ解ハ就ク↢小果之終ニ↡†也、応シ↠知ル。
二 Ⅱ ⅶ【得益門】
a 牒標
【26】^第七に↑韋提、 仏の正説を聞きて*益を得る分斉を料簡すとは、
▲第七ニ料↧簡スト韋提聞[キ]テ↢仏ノ正説ヲ↡†得ル↠益ヲ分斉ヲ↥†者、
二 Ⅱ ⅶ b 正釈
イ 定得処
(一)問
^問ひていはく、 韋提すでに*忍を得といふ。 いぶかし、 いづれの時にか忍を得たる、 出でていづれの文にかある。
~問[ヒテ]曰[ク]、韋提既ニ言†フ↠†得ト↠忍ヲ。未審、何ノ時ニカ得[タ]ル↠忍ヲ、出デテ在ル‡↢何ノ文ニカ↡。
二 Ⅱ ⅶ b イ (二)答
(Ⅰ)正答
(ⅰ)直答
^答へていはく、 韋提の得忍は、 出でて*第七観の初めにあり。
~答[ヘテ]曰[ク]、韋提ノ得忍ハ、出デテ在リ↢第七観ノ初ニ↡。
二 Ⅱ ⅶ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)出文
^¬経¼ (観経・意) にのたまはく、 「▲仏、 韋提に告げたまはく、 ª仏まさになんぢがために苦悩を除く法を分別し解説すべしº と。 ▲この語を説きたまふ時、 無量寿仏空中に住立したまふ。 観音・勢至左右に侍立したまへり。 ▲時に韋提、 時に応じて見たてまつることを得て、 接足作礼し◆歓喜讃歎してすなはち無生法忍を得」 と。
~¬経ニ¼云ク、「仏告[ゲタマ]ハク↢韋提ニ↡、仏当ベ ニシ[ト]↫為ニ↠汝ガ分↩別[シ]解↪説ス除ク↢苦悩ヲ↡法ヲ↨。説[キ]タマフ↢是ノ語ヲ↡時、無量寿仏住↢立†シタマフ空‡中ニ↡。観音・勢至侍↢立†シタマヘリ左右ニ↡。時ニ韋提応ジテ↠時ニ得テ↠見[タテマツル]コトヲ、接足作礼シ歓喜讃歎シテ即チ得ト‡↢無生法忍ヲ↡。」
二 Ⅱ ⅶ b イ (二)(Ⅰ)(ⅲ)証定
^なにをもつてか知ることを得る。 下の*利益分のなかに説きてのたまふがごとし。 「▲仏身および二菩薩 (観音・勢至) を見たてまつることを得て、 心に歓喜を生じ、 未曽有なりと歎ず。 廓然として大悟して無生忍を得」 (観経) と。
~何ヲ以[テ]カ得ル↠知[ルコ]トヲ。如シ↢下ノ利益分ノ中ニ説[キ]テ言フガ↡。「得テ↠見[タテマツルコ]トヲ↢仏身及ビ二菩薩ヲ↡、心ニ生ジ‡↢歓喜ヲ↡、歎†ズ↢未曽有ナリト↡。廓然トシテ†大悟シテ得[ト]↢無生忍ヲ↡。」
二 Ⅱ ⅶ b イ (二)(Ⅱ) 簡非
^これ▲光0457台のなかに国を見し時得たるにはあらず。
~非ズ↢是光台ノ中ニ見シ↠国ヲ時‡得†タルニハ↡也。
二 Ⅱ ⅶ b ロ 会余文
(一)問
^0333問ひていはく、 上の文のなかに説きてのたまはく (観経)、 「▲かの国土の極妙の楽事を見れば、 心歓喜するがゆゑに、 時に応じてすなはち無生法忍を得」 と。 この一義いかんが通釈せん。
~問[ヒテ]曰[ク]、上ノ文ノ中ニ説[キ]テ言ク、「見†レバ↢彼ノ国土ノ極妙ノ楽事ヲ↡心歓喜スルガ故ニ、応ジテ↠時ニ即チ得ト↢無生法忍ヲ↡。」此之一義云何ガ通釈セム。
二 Ⅱ ⅶ b ロ (二)答
(Ⅰ)総答
^答へていはく、 かくのごとき義は、 ただこれ世尊、 ▲前の別請に酬いて、 利益を挙勧したまへる▼方便の由序なり。
~答[ヘテ]曰[ク]、†如キ↠此クノ義者、但是世尊†酬ヒテ↢前ノ別請ニ↡、†挙↢勧シタマヘル利益ヲ↡方便之由序ナリ。
二 Ⅱ ⅶ b ロ (二)(Ⅱ)別釈
^なにをもつてか知ることを得る。 次下の文のなかに説きてのたまはく (観経)、 「▲諸仏如来に異の方便ましまして、 なんぢをして見ることを得しめたまふ」 と。
~何ヲ以[テ]カ得ル↠知[ルコ]トヲ。次下0679ノ文ノ中ニ説[キ]テ言ク、「諸仏如来†ニ有シテ↢異ノ方便↡、令メタマフ[ト]↢汝ヲシテ得‡↟見[ル]コトヲ。」
^次下の▼日想・水想・氷想よりすなはち十三観に至るこのかたをことごとく異の方便と名づく。 衆生をしてこの*観門において一々に成ずることを得て、 かの妙事を見て心歓喜するがゆゑに、 すなはち*無生を得しめんと欲す。
~次下ノ日想・水想・氷想†ヨリ乃チ至ル↢十三観ニ↡已来タヲ尽ク名ク↢異ノ方便ト↡也。欲ス↠使メムト↧衆生ヲシテ於[テ]↢此ノ観門ニ↡一一ニ得テ↠成[ズル]コトヲ見テ↢彼ノ妙事ヲ↡心‡歓喜スルガ故ニ、即チ得↦無生ヲ↥。
二 Ⅱ ⅶ b ロ (二)(Ⅲ)結成
^これすなはちただこれ如来末代を慈哀して、 挙勧して修することを励まし、 積学のものをして遺りなく、 *聖力冥に加して*現益あらしめんと欲するがゆゑなり。
~斯乃チ†直是如来慈↢哀シテ末代ヲ↡、挙勧シテ励シ↠修†スルコトヲ、†欲スルガ↠令メムト↢積学之者ヲシテ無ク↠遺リ、聖力冥ニ加シテ現益アラ↡故也。
二 Ⅲ【結証】
【27】^証していはく、 *掌に機糸を握ること*十有三結、 条々理に順じて、 もつて玄門に応じをはりぬ。 この義周りて▼三たび前の証を呈すものなり。
▲証シテ*曰ク、掌ニ握ト ルコトルコト↢機ハタ絲ベキヲ↡十有三結、条条‡順ジテ↠理ニ、以テ応ジ↢玄門ニ↡†訖リヌ。此ノ義†周リテ三タビ呈ス↢前ノ証ヲ↡者矣。
^上来七段の不同ありといへども、 総じてこれ*文前の玄義なり。 経論の相違妨難を料簡するに、 一々に教を引きて証明す。 信ずるものをして疑なく、 求むる0334ものをして滞りなからしめんと欲す、 知るべし。
~上来雖モ↠有[リ]ト↢七段ノ不同↡、総ジテ是文‡前ノ玄義ナリ。料↢簡†スルニ経論ノ相違妨難ヲ↡、一一ニ引キテ↠教ヲ証明ス。欲ス↠使メムト↢†信ズル者ヲシテ無ク↠疑、†求ムル者ヲシテ無カラ↟滞リ、応シ↠知ル。
観経玄義分 巻第一
延書の底本は高田派専修寺蔵鎌倉時代刊本ˆ原漢文の底本と同一ˇ。 ただし返点については本派本願寺蔵版によるか。
道俗の時衆 現在、 道場に参集している出家・在家の人々。
無上心を発せ 無上心は菩提心のこと。 親鸞聖人はこれを自力の菩提心の意とし、 「無上の心を発せども」 (信文類訓) と読まれた。
荘厳および変化 荘厳身 (報身) および変化身 (化身) の菩薩。
時劫 (菩薩としての修行の) 時間。
功用と無功用 修行するうえで、 努力を要する者と、 要しない者。
証智と未証智 真如の理をさとった者と、 さとらない者。
相応 ここでは真如にかなうという意。
果徳涅槃のもの 仏果の徳である涅槃を得た者。
三仏菩提の尊 法身・報身・化身の三身。 または弥陀・釈迦・諸仏を指す。
教の大小 ¬観経¼ が大乘教か小乗教か。
両垢の如々 有垢真如と無垢真如のこと。 煩悩によって覆われている真如とそうでない真如。
寂用湛然 すぐれたはたらきが常に満ちあふれているという意。
浄体 清浄な真如の本体。
西化を隠し 釈尊はその本国であるところの西方
無勝世界の教化をさしおいてという意。
塵労 煩悩の異名。 ここでは煩悩にけがれた衆生のこと。
畢命を期となして 命が終る時を限りとして。
時劫 (菩薩としての修行の) 時間。
隠彰 隠顕に同じ。 文の表にあらわれた意 (彰) と、 文の裏にかくれた意 (隠)。
善導大師の隠顕 (隠彰) はともに真実の説意で、 親鸞聖人が 「化身土文類」 でいわれるような真仮 (真実・方便) を分別する意味ではない。
上の六観 日観・水観・地観・宝樹観・宝池観・宝楼観を指す。
経・緯 たて糸とよこ糸。
理事相応 教 (事) と教に説かれた法義 (理) とがあい離れないこと。
両会の正説 仏が王舎城宮で阿難と韋提希のために説法した王宮会と、 阿難が耆闍崛山の大衆のために王宮会での仏の説法を再説した耆闍会。
体 ここでは観仏三昧および念仏三昧の体 (本質) という意。
能為 教化を行った人。
所為 教化を受けた人。
朽林碩石… 雨を得ても朽ちた林は芽を出すことがなく、 大きな石は中まで潤うことがないという意。
通 一般的な諸仏の国土。
別 特別な阿弥陀仏の国土。
去行 仏国土に生れるための行。
別行 阿弥陀仏の浄土に往生するための特別な行。
縁慮 観ずる対象をとらえようと思いはかる心。
了々分明 はっきりとあきらかな。
諸師は… 諸師とは
浄影寺慧遠、
天台大師
智顗、
嘉祥大師
吉蔵等であるが、 ここではおもに慧遠の ¬観経義疏¼ に見える説を指す。
散善縁 序分の散善顕行縁。
道理を… 筋道を立てて論破する。
返対して… 経の文をあげて論破する。
二乗種不生 天親菩薩の ¬浄土論¼ に出る語。 元来は声聞・縁覚の二乗の種 (種類) は浄土に往生しないという意。 善導大師はこれを往生人には二乗の心が生じないという意とされた。
諸師の解 具体的には
浄影寺慧遠 (523-592) の ¬観経義疏¼ の説を指す。
大乗始学の凡夫 十信位の凡夫。
浄影寺慧遠 (523-529) は十住以上を菩薩、 十信以下を凡夫とする。 →
菩薩
分段の苦 六道に輪廻する凡夫が受ける苦しみ。
転変無方 自由自在にすがたを変えて現れるという意。
経に説きたまふがごとく… 引用は ¬大智度論¼ の取意の文。 ここでは論の文を経の文として引用している。
鵝鴨 がちょうとあひる。 ともに水鳥。
大品経に説きたまふ… 引用は ¬大品般若経¼ の処々の文を合集したもの。
生路 往生浄土の路。
上聖 上位の聖者。
善解 (大乗経典の意を) よく理解すること。
終時の迎候 臨終の際の来迎のありさま。
善縁 善知識の縁。
不浄説法 自己の名誉や利益のために教法を説くこと。
七宝来迎す 七宝の蓮台に迎えとられて往生する。 →
来迎
大 大乗の縁。
小 小乗の縁。
人情 個人的な考え。
観と散善三観のこと。
多宝仏 東方宝浄世界の過去仏のこと。 その誓願により、 入滅後は宝塔中の全身舎利となり、 ¬法華経¼ の説かれるところに出現して、 同経の教えを讃嘆するという。 ¬法華経¼ 「見宝塔品」 などに説かれる。
功徳雲比丘 ¬華厳経¼ 「入法界品」 に説かれる五十三人の善知識の第二。
不忍の言 聞くに耐えないような言葉。
知識 ここでは同行、 法友の意。
菩薩の論 ¬摂大乗論¼ 等の論書。
精 精勤。 つとめはげむこと。
剋せず (正報であるところの仏果は) 成就しない。
辺方化に… 僻地の者が帰順して国王の支配下に入ることはたやすいが、 国王となるのはむずかしい。
一々の願に… 善導大師は四十八願のすべてに第十八願の意を認める。
上輩の三人 九品のうちの上品上生・上品中生・上品下生のこと。
眼目の異名 同一物の異なった名称の意。
前には… ¬摂大乗論¼ の真諦訳 (前訳) で三身中第二身を応身と訳しているのを、 達摩笈多訳 (後訳) では報身と訳したことを指すものか。
無窮の八相 十方世界にくまなく八相成道のすがたを示現するという意。 →
八相
小凡 愚かな凡夫。
涅槃非化品 現行の ¬大品般若経¼ では 「如化品」 とある。
煩悩断 煩悩を断ずること。
有智のもの 了解する智慧をもったもの。
報法 報仏・報土のものがら。
論教 天親菩薩の ¬浄土論¼ と ¬観経¼。
封拙懐迷 つたない考えに固執して迷いをいだくこと。
啓悟 明らかに理解すること。
簡ばず 区別しない。
下の二 下品中生・下品下生を指す。
前の解 下輩についての解釈。
後の解 中輩についての解釈。
益 無生法忍の利益を指す。
第七観 華座観のこと。
利益分 ¬観経¼ の得益分のこと。
廓然 からりと迷いがはれたさま。
観門 観察の法門。 定善観のこと。
現益 現在に無生法忍の利益を受けること。
掌に機糸を握る ¬観経¼ の全体にわたるということをいったもの。
十有三結 序題門・釈名門・宗教門・説人門・定散門・和会門・得益門の七門と第六門の諸師解・道理破・返対破・出文顕証・別時意会通・二乗種不生の六項を合わせて十三とする。
三たび前の証 「散善義」 末尾に示される三度の霊証。
文前の玄義 経文の解釈に至る以前の奥義。
底本は◎高田派専修寺蔵鎌倉時代刊本(宗祖加点本)[ただし訓は○浄聖全三巻の宗祖加点本と全同ではなく大幅に標準化されているため、 相違を†、 加を‡、 減を [ ] で示した]。 Ⓐ大谷大学蔵鎌倉時代刊本、 Ⓑ龍谷大学蔵(写字台旧蔵)室町時代刊本、 Ⓒ本派本願寺蔵版¬七祖聖教¼所収本 と対校。 ª全部対校º 辯→Ⓒ辨
塵→Ⓒ尽
宮→Ⓒ官
疋→Ⓒ匹
一→Ⓒ下
中→Ⓒ帀
曰→Ⓒ口
凡→Ⓒ几
来→Ⓑ求
力→Ⓐ方
縁→Ⓐ経
曰→Ⓐ口
倶→Ⓐ与
曰→Ⓐ日
メテ→○ム
セシム→○シ
スベシ→○シ
ト→○ノ
ノ→○ト
○ノ
○ドモ
願ジテ↠入ラムト↢…↡→○願↢入シテ…↡
○テ
一心ニ→○一ニシテ↠心ヲ
シタテマツリ→○[シ]上ル
○ト
正シク受ケ↢金剛心ヲ↡→○正受金剛身
シタマヘ→○シテ
タテマツラム→○シメ玉
シテ→○ス
セム→○セリ
施シ→○施セム
シ、→○セム。
セム→○[ス]ベシ
○ハ
、→○ハ
ス…。→○シ…、
異ナルコト→○異
スルニ→○シテ
スルニ→○シ
ニシテ→○ナリ、
量性→○量ノ性ナリ。
法性無辺ナリ。辺体→○法性ノ無辺ナルハ辺ノ体ナリ。
○タリ…。
使ム↧大悲ヲモテ…朗カナラ↦…永夜ヨリ↥→○使大悲…朗カニス↢…永夜ニ↡
カセバ→○カシテ
ハリ→○ヘ
メテ、→○ム。
性ノ隔リ→○性隔キヤク
↢…於三界ニ↡→○↣…於↢三界↡
↧…↦法雨ヲ於大悲ヨリ↥→○↫…↪法雨於↩大悲↨
○ヲ
不ルハ→○不ト云コト
スニ→○シテ
フヲモテ…、→○ヘリ…。
遍攬スルニ↡→○遍ク攬ルニ
○ルニ
唯→○唯
モ→○[ル]ニ
○モ
慮リ→○慮
息メテ→○息メテ
ス…也→○スル…也
シ…。→○キハ…、
ルハ→○ルコト
為サ→○為
ナリ→○ニシテ
○ニテハ
暁メ→○暁リ
ヨリ→○ニシテ
シタマフ→○ス
遣ハス→○遣ル
勤心→○勤心
奉ケテ↠法ヲ→○奉ヘテ↠法ニ
スト…者→○セ…者
言ヘリ↢…ト↡。言フ↢「仏ト」↡者→○言ハク、…ト言ハ、「仏」者、
ノ→○ニハ
○土 「イ本」と右傍註記し、 云と左傍註記
、→○ヲ
ノミアリテ→○ニシテ
ナリ→○ニ
ル…也→○[リ]テ…也
シ→○ス
双行シテ→○双ビ行ジテ
スルニ→○セルニ
二→○二ツ
セル→○スル
ス…也→○スル…也
但使得レバ↠生ズルコトヲ者、共ニ同ジク受用ス→○但使シ ム↢得ル↠生ルヽコトヲ者ヲシテ…受用セ↡
六ノ→○六ツガ
、是…仮依ナリ。→○是ナリ。…仮依トイハ、
界中ノ→○界ノ中ノ
已来タハ、是→○已来是ナリ。
メタマフ→○ム
住メシメ↢…ヲ↡→○住セシメ↢…ニ↡
得…也→○得ル…也
○トイフ
○トイフ
得テ…、→○得…。
○ナリ
○[ヲ]シテ
令ム↧修趣之者ヲシテ…証セ↦…↥→○令ムル↢修趣セ↡之者ハ…証ス↢…↡
ナルコト→○ニシテ
ク…。→○クガ…
総ジテ→○総ベテ
シ→○スルコト
スト…者→○セ…者
ノ摂ナル。→○ニカ摂シ、
ノ収ナル→○ニカ収ムル
ノ収ナリ→○ニ収ム
ズト…者→○ゼ…者
ゼバ
何人→○何ノ人
キタマヘリ→○キタマヘルナリ
ス→○シ
ノ→○カ
致請ニシテ→○致ス↠請ヲ
出デテ在ル↢→○出↢在セル
ト与↢無信↡→○与無信
スレバ→○スルニ
不ルハ→○不ト云コト
上ノ何ノ機カ得ルノ↠受クルコトヲ→○上ニ何機得受ノ
何トナレバ者→○何者ゾ、
○ト云
請フ→○請ズ
酬ユ→○酬フ
言ニ→○言ヲ
○ヤ
○マデ
何→○何
出ヅルトイフハ↢何ノ文ニカ↡者→○出何文ト者
ヘリ→○ヘル
前→○前ノ
、
ス…也→○スル…也
↤如ク↠此クノ想フ者ヲ名ケテ為スト↣粗ボ見ルト↢極楽国土ヲ↡→○↢如此想者名為粗見極楽国土ト↡
息ミ→○息シ
キテ→○ク、
ヘリ↧…↥→○フ↢…↡
若シ得レバ↢三昧ヲ↡、見ルコト↢彼ノ国地ヲ↡了了分明ナリト→○若得三昧見彼国地了了分明ト
問→○問
不同ナリ→○不↠同[カ]ラ
将テ↢…↡、→○将ニ…
、→○ヲ
解者→○解者ハ
何→○何
如キハ↣…説キタマフガ↢「…ナリト」↡、→○如シ↢…説[キタマフ]ガ↡。「…ナリ」↡、
ス→○スルニ
向ヨリ来タ→○向来ヨリ
請ヒテ→○請ズルニ
ヘリ→○フ
自開ナリ→○自ラ開シタマヘリ
スト…者→○セ…者
六→○六ツ
、証ス↧…↞…→○証ス。…↠…
ルガ→○テノ
生ズル→○生ルヽ
○ルナリ
此之→○此之ノ
スト者→○セ者
ハバ…者→○フ…者
ク→○キハ
キタマフガ→○クガ
テ…、→○タリ…。
両ナガラ空ズ→○両空
何事→○何ノ事
藉リテ↢韋提ノ…請ズルニ↟仏ニ→○藉テ↢韋提ニ↡…請ジテ↠仏ヲ
↧「…至ル↢…↡已来タト」↥→○↧「…至ルト↦…↥」已来
ク→○キハ
シテ→○スレドモ
ルニ→○レドモ
シ…。→○キハ…、
○ト云
モ→○ハ
乃チ→○乃シ
所判→○所↠判ズル
ルニ→○モ
○ニ
如シ↤仏説キテ、言フガ↣→○如キハ↢仏説ト言フガ↡、
スト…。→○シテ…、
何ヲ憂ヘテカ→○何ノ憂アテカ
○ヲバ
何ゾ用ヰルヲ↠済フヲ為サム→○何ニ用テカ済ウコトヲ為ム
以テ↢斯ノ文ヲ↡証ス。→○以[テ]ノ↢斯ノ文証ヲ↡
所判、義→○所ノ↠判ズル義、
返テ対破スト
云フ→○云ク
ナリトナラバ者→○ナリト者
云ク、…。→○云ル↢…↡。
何者ヲカ→○何者
為ス→○為ル
○スルコト
○レバ…、
廻シテ→○廻シテ
クニ→○キニ
、→○ナリ。
作ス↠業ヲ時ハ→○作業時
授手迎接セラレテ往生セム→○授ク↠手ヲ迎接シテ往生セシメム
ナリトナラバ者→○者
云ク、「不ト↣必ズシモ受↢持セ大乗ヲ↡」→○云フ↢「不必受持大乗ト」↡
云何ガ→○云何
謗ラ→○謗ゼ
廻シテ願ズ↢…↡。→○廻↢願スルニ…↡、
終時ノ→○終ル時
シ…。→○キハ…、
キタマフガ→○クガ
セバ…者→○スト…者
○ヨリ
云ク、「亦信ズト↢因果ヲ↡。」→○云フ↢「亦信因果ト」↡。
ナル→○トイフ
、→○ヲ
ス…。→○シテ…、
廻シテ→○廻シテ
ス…。→○スルニ…、
論ゼバ→○論ズレバ
藉ラム↣韋提…生ゼシムルニ↢…↡→○藉テ↢韋提ニ↡…生ゼシメム↢…↡
ニ→○ヲ
ニ→○ハ
ハ→○ニ
ノ→○ハ
去時→○去ル時
ク→○[ケ]玉フ
直→○直ニ
耳→○耳
セバ…者→○セ…者
カラムニ…、→○カラム…。
トイフ者→○ト者
トイフ…者→○ト…者
ナリトナラバ者→○ト者
廻シテ願ズ↢…↡。→○廻↢願スルニ…↡、
逢遇ヒテ→○逢ヒ遇ヒテ
得…也→○得ル…也
廻シテ願ズ↢…↡→○廻↢願ズ…↡
コト→○ニ
○シ
キタマヘリ→○[キタマ]フ
不↠于セ↠聖ノ→○不ル↠于ハアラ↠聖ノタメ
ナラバ…者→○…者
フ→○ハム
ズト→○ゼムト
命欲スル↠終ラムト→○命欲終ノ
之人→○之人ナリ
直→○直ニ
廻心シテ→○廻シテ↠心ヲ
弁チ→○弁ヘ
何トナレバ者→○何者
ルノミ→○レリ
作ル→○作ス
慚愧乃チ至ルマデモ↢一念ニ↡→○慚↢愧乃至一念モ↡
遇ヒテ↧…令ムルニ↞称セ↠仏ヲ一声ス→○遇フ↧…令ムルニ↦称スルコト↠仏ヲ一声セ↥
シメタマフト→○シム
不レバ→○不ハ
未ダ…也→○未ザ ダルモノ…也
ク…。→○ケ…、
持タ→○持セ
タテマツリ→○テ
ラム→○ルベシ
即チ生ズト→○即生ス
セ→○アラ
遇ヘル↠大ニ→○遇大ノ
遇ヘル↠小ニ→○遇小ノ
遇ヘル↠悪ニ→○遇悪ノ
リテ→○タム
為ス→○為ス
シテ、→○セム。
○サ
出デテ↠文ヲ顕証ス→○出文顕証
者→○者
準ヘ義スルヤ→○準ズルニ↠義ニ
垢重ク→○垢重ニ
寧ンゾ→○寧ロ
輒→○輒
為サム→○為ム
欲スル→○欲ハム
者→○者
ルル→○レム
言フ↧「…今者教ヘテ↢ヲ↡観ゼシメムト↦…↥→○言フ↤「…今者ハ教玉ヘト↣ヲシテ観ゼンコトヲ↢…↡
ル…。→○ツ…、
ハ→○ノ
所レム↠逼メ→○所タラム↠逼メラ
ガ→○シテ
乃チ至ル↧「一切衆生自リハ↠非ザル↢生盲ニ↡有目之徒見ヨトイフニ↞…→○乃至「一切衆生自リハ↠非ズ↢生盲ニ↡有ラム↠目之徒見ヨト云ヨリ↠…
チ→○テ
脱→○脱
ケトイフ…者→○クト…者
如シ↢…説キテ言フガ↡。「…、…得タリ…、…云何ガ得ムトイフ↠…→○如シ↢…説[ク]ガ↡。言フ↧「…、…得ツ…、…云何シテカ得ベキト↞…
次下ニ、→○次ニ下ノ
シ→○ク
汝等→○汝等
如キ↢…説キテ言フガ↟「為ニスト…」者→○如シ↢…説クガ↡。言フ↠「為ト…」者
ス…也→○スル…也
○コト
不トイフコトヲ↞于セ↢…聖ノ↡→○不ザルコトヲ↞于↢聖ノタメ↡
二→○二ツ
如シト↧人念ズレバ↢多宝仏ヲ↡…得ルガ↞…者→○如キ↣人ノ念ズルガ↢多宝仏ヲ↡…得ト↠…者
円カニ備ヘテ→○円備スレバ
テセムヤ…。→○テ…、
マバ…者→○マン…者
カラム→○ケム
↠未ダト↠証セ→○↢未証ト↡
ニ→○ノ
於テ→○於テ
所謂ル→○所↠謂
乃チ至ルマデ↢成仏ニ↡→○乃至成仏マデ
爾ラバ者→○爾ラ者
スレバ→○セシ
ル→○レルナル
ノ→○ニ
称仏ハ→○称スルハ仏ヲ
成ゼムト→○成ラムト
称仏ハ→○称スル仏ヲ
但使→○但使
↢発願スルニ↡→○↠発スニ↠願ヲ
キ→○ク
相似セシメテ→○相似タレバ
如シ↣一金銭ノ得ル↠成ズルコトヲ↠千ヲ者、…非ザルガ↢…↡→○如キ↢一ツノ金銭ヲ得ルガ↟成コトヲ↠千ト者、…非ズ↢…↡
成ズルコトヲ↠千ヲ→○成スコ[ト]ヲ↠千ト
噵ハバ…者→○噵フ…者
直→○直ニ
シテ→○ヲモテ
生ズ→○生ル
実ニハ→○実ニ
未[ズ]ダ→○未[ザ]ダルヲ
作ス→○作ル
生ゼム→○生レム
シテ→○シ玉ヘバ
セシメタマフト→○ス
キタマフ→○ク
是ノ→○是
称スル↢仏之名ヲ↡→○称仏之名
今時→○今ノ時
○バ
将[ス]ニル↢妄語セムト↡→○将ニ妄語トスル↡
仰ギ願クハ→○仰ヒデ願ハク
ゼヨ→○ズベシ
ラバ…者→○ラ…者
悞ラム…也→○悞ムテ…也
セルヲ…、而モ→○シテ…而
欲セバ…者→○欲ハ…者
須[ベ]クシ↢行願具足ス↡→○須ク行願具足[ス]
リト→○[ル]コトヲ
乃チ至ルマデ↢一念ニ↡→○乃至一念モ
シ…。→○キ…、
虚シクシテ→○虚ニシテ
須[ベ]クシト↢…剋ス↡→○須ク…剋ス
直→○直ニ
リト→○ルコトヲ
ゾ→○ガ
生ゼ→○生レ
有リテ↢十願・十行↡具足ス→○有リ↢十願・十行具足セルコト↡
又来¬論ノ¼→○又来¬論ノ¼
シテ→○スルハ
為ニ求ムルハ↢…↡→○為ナリ↠求メムガ↢…↡
ニシテ→○ナリ
発願シテ→○発シテ↠願ヲ
ケレドモ→○シ
所ナリ↧以テハ↢一願之心ヲ↡未ダル↞入ラ→○所以一願之心ノミ↡未ズ ダ↠入[ラ]
ハ→○コト
願ズル→○願フ
不ルハ→○不ト云コト
言→○言
取リテ信ズル→○取ル↠信ヲ
ケバナリ→○ク
明シ→○明ラム
聞ク↠之ヲ→○聞カム之
遣ラ→○遣ラ
ヤ→○トヤセム
○トセム
タマヘリ→○キ
一一ノ願ニ→○一一ニ願ジテ
ゼムニ→○ジテ
ルマデ→○[リ]テ
ハ…者→○…者
○云ヘリ
成仏シタマヘリ→○成リ玉ヘリ仏ニ
言ヘリ→○言フ
与ニ↢化仏ト→○与↢化仏
ス→○シ玉ヘリ
翻ジテ→○翻ホン シテ
○シテ
以テ↠果ヲ応ズ↠因ニ、故ニ→○以[テ]ノ↢果応ズルヲ↟因ニ故ニ、
応ジテ得↢…↡→○応シ得↢…↡
ゼリ→○ズ
○ルナリ
ナルモ→○ナレドモ
衆テ→○衆ク
ハバ…者→○フ…者
キタマフ…。→○クニ…、
欲セバ…者→○欲ハ…者
為サム→○為ム
何トナレバ者→○何者
○ゾ
有リヤ↢実事ニシテ不ル↠空ナラ者↡不ヤト→○有[リ]テ↢実事↡不ヤ↢空ナル者ニ↡不ヤ
也→○也
ナリ→○ナラバ
ナラバ、→○ナリト。
ヲ→○ト
ガ→○ゾ
ト→○ヤ
聞カバ↢…如シト↟…者→○聞キテ…如シト↠…者
者
セム→○シナム
為ニ↢…↡、故ラニ→○為ノ↢…↡故ニ
分↢別スルナリト生滅ノ者ハ如ク↠化ノ、不生不滅ノ者ハ不ズト↟如クニハ↠化ノ耶→○分別スルナリ、生滅スル者ハ如シ↠化ノ、不生不滅ノ者ハ不ト↠如クナラ↠化ノ耶
ナルコトヲ也→○ナリト云也
ル→○[リ]ヌ
スラ→○ハ
ゼバ→○ズレバ
由リテ↧…作スニ↦強縁ト↥→○由[リ]テ↠…作ルニ↢強縁ト↡
云ヘル↢…不ト↟生ゼ→○云ク…不生トイヘリ
加フルニ→○加スルニフルニ
以テスレバ↢封拙懐迷ヲ↡→○以テ↢封カク拙トガヲ↡懐ヒテ↠迷ヲ
却ケム→○却ケム
何トナレバ者→○何ト者
ス…。 →○シテ…、
已後→○已[リ]テ後
キタマフ…。→○[キ]玉[フ]ニ…、
何→○何
但以→○但以テ
便→○便
但使得レバ→○但使ムレバ得セ
キタマハバ…者→○[キ]下ヘ…者
ゼム…。→○[ズル]ヲ…、
ケム→○ク
爾ナリ→○爾リ
二モ→○二ツ
ス。→○シテ
ル→○[リ]ヌ
願ズル↢往生ヲ↡→○願クハ往生スル
ス…。→○シ…、
不…。故ニ→○不ルガ…故ニ
也→○也
得ル↠益ヲ→○得益スル
フ→○ヘリ
得ト→○得[タ]リト
シタマフ→○シ下ヘリ
シタマヘリ→○セリ
○イヘリ
ズ…。→○ジテ…、
大悟シテ→○大ニ悟[リ]テ
タルニハ→○ルニ
レバ→○テ
如キ↠此クノ義者→○如[キ]ノ↢此ノ義ノ↡者ハ
酬ヒテ↢…ニ↡→○酬エテ↢…ヲ↡
挙↢勧シタマヘル…↡→○挙ゲテ勧ムル↢…↡
○セ
ヨリ乃チ至ル↢十三観ニ↡已来タヲ→○乃至十三観ヨリ已来ハ
スル→○セム
欲スルガ↠令メムト↢…之者ヲシテ無ク↠遺リ、…現益アラ↡→○欲ス↠令メムト↢…セン之者ヲ無カラ↟遺、…現益スルガ
○トシテ
訖リヌ。此ノ義→○訖[リ]ヌソフルコト↢此ノ義ヲ↡
周リテ→○周ク
スルニ→○シ
信ズル者→○信者
求ムル者→○求者