0182
標挙
0374無量寿仏▼観経の意なり
▼至心発願の願 ▼邪定聚の機 ▼双樹林下往生
阿弥陀経の意なり
▼至心回向の願 ▼不定聚の機 ▼難思往生
題号
0375◎▼顕浄土▼方便▼化身土文類 六
▼愚禿釈*親鸞集
一 門内の方便を明かす
Ⅰ 正しく方便を明かす
ⅰ 総じて身土を指す【総釈】
a 牒
【1】 ◎^▼つつしんで化身土を顕さば、
◎謹0183デ顕サ↢化身土ヲ↡者、
一 Ⅰ ⅰ b 指
イ 仏を指す
^▽仏は ¬*無量寿仏観経¼ の説のごとし、 ▲真身観の仏これなり。
仏者如シ↢¬无量寿仏観経ノ¼説ノ↡、真身観ノ仏是也。
一 Ⅰ ⅰ b ロ 土を指す
^▽土は *¬*観経¼ の浄土これなり。 ▼また ¬*菩薩処胎経¼ 等の説のごとし、 すなはち懈慢界これなり。 ▼また ¬*大無量寿経¼ の説のごとし、 すなはち▽疑城胎宮これなり。
土者¬観経ノ¼浄土是也。復如シ↢¬菩薩処胎経¼等ノ説ノ↡、即チ懈オコタル 慢アナドル界是也。亦如シ↢¬大无量寿経ノ¼説ノ↡、即チ疑城胎宮是也。
一 Ⅰ ⅱ 別して二願を釈す
a 第十九願を釈す【要門釈】
イ 直明【説意出願】
(一)施権の意を明かす
(Ⅰ)所被を明かす
【2】 ^しかるに*濁世の群萌、 *穢悪の含識、 いまし*九十五種の邪道を出でて、 *半満・権実の法門に入るといへども、 真なるものははなはだもつて難く、 実なるものははなはだもつて希なり。 偽なるものははなはだもつて多く、 虚なるものははなはだもつて滋し。
然ルニ濁世ノ群ムラガリ萌、キザス 穢ケガラハシ悪ノ含フウム識、サトル乃シ出デテ↢九十五種之邪道ヲ↡、雖モ↠入ルト↢半満・権実之法門ニ↡、真ナル者ハ甚ダ以テ難ク、実ナル者ハ甚ダ以テ希ナリ。偽ナルイツハル 者ハ甚ダ以テ多ク、虚ナル者ハ甚ダ以テ滋シ。
一 Ⅰ ⅱ a イ (一)(Ⅱ)正しく施権を明かす
^ここをもつて釈迦牟尼仏、 福徳蔵を顕説して群生海を誘引し、 阿弥陀如来、 本誓願を発してあまねく*諸有海を化したまふ。
是ヲ以テ釈迦牟尼仏、顕↢説シテ福徳蔵ヲ↡誘↢コシラヘ引シ群生海ヲ↡、阿弥陀如来、本発シテ↢誓願ヲ↡普ク化シタマフ↢諸有海ヲ↡。
一 Ⅰ ⅱ a イ (二)悲願の目を示す
(Ⅰ)行に約す
^▼すでにして悲願います。 ▼修諸功徳の願 (第十九願) と名づく、
既ニ而有ス↢悲願↡。名ク↢修諸功徳之願ト↡、
一 Ⅰ ⅱ a イ (二)(Ⅱ)行信の益を明かす
^また▼臨終現前の願と名づく、 また▼現前導生の願と名づく、 また▼来迎引0376接の願と名づく、
復名ク↢臨終現前之願ト↡、復名ク↢現前導生之願ト↡、復名ク↢来迎引接之願ト↡、
一 Ⅰ ⅱ a イ (二)(Ⅲ)信に約す
^また▼至心発願の願と名づくべきなり。▼
亦可キ↠名ク↢至心発願之願ト↡也。
一 Ⅰ ⅱ a ロ 引文
(一)直ちに諸行往生を顕して誘引の願意を示す
(Ⅰ)能入の因を明かす
(ⅰ)因願を出す
(a)¬大経¼
【3】 ^▼ここをもつて ¬*大経¼ (上) の願 (第十九願) にのたまはく、
是ヲ以テ¬大経ノ¼願ニ言ク、
^「▲たとひわれ仏を得たらんに、 十方の衆生、 ▼菩提心を発し、 ▼もろもろの功徳を修し、 ▼心を至し発願してわが国に生ぜんと欲はん。 寿終の時に臨んで、 ▼たとひ▼大衆と囲繞してその人の前に現ぜずは、 正覚を取らじ」 と。
「*設ヒ我得タラムニ↠仏ヲ、十方ノ衆生、発シ↢菩提心ヲ↡、修シ↢諸ノ功徳ヲ↡、至シ↠心ヲ発願シテ欲ハム↠生ゼムト↢我ガ国ニ↡。臨デ↢寿終ノ時ニ↡、仮令不↧与↢大衆↡囲遶シテ現ゼ↦其ノ人ノ前ニ↥者、不ト↠取ラ↢正0184覚ヲ↡。」
一 Ⅰ ⅱ a ロ (一)(Ⅰ)(ⅰ)(b)¬悲華経¼
【4】 ^▼¬*悲華経¼ の 「*大施品」 にのたまはく、
¬悲華経ノ¼大施品ニ言ク、
^「▼願はくは、 われ阿耨多羅三藐三菩提を成りをはらんに、 その余の無量無辺阿僧祇の諸仏世界の所有の衆生、 もし阿耨多羅三藐三菩提心を発し、 もろもろの善根を修して、 わが界に生ぜんと欲はんもの、 臨終の時、 われまさに大衆と囲繞して、 その人の前に現ずべし。 その人、 われを見て、 すなはちわが前にして心に歓喜を得ん。 われを見るをもつてのゆゑに、 もろもろの障礙を離れてすなはち身を捨ててわが界に来生せしめん」 と。 以上
「願クハ我成リ↢阿耨多羅三藐三菩提ヲ↡已ラムニ、其ノ余ノ无量无辺阿僧祇ノ諸仏世界ノ所有ノ衆生、若シ発シ↢阿耨多羅三藐三菩提心ヲ↡、修シテ↢諸ノ善根ヲ↡、欲ハム↠生ゼムト↢我ガ界ニ↡者、臨終之時、我当ニシ↧与↢大衆↡囲メグリ繞シテメグル 現ズ↦其ノ人ノ前ニ↥。其ノ人見テ↠我ヲ、即チ於テ↢我ガ前ニ↡得ム↢心ニ歓喜ヲ↡。以テノ↠見ルヲ↠我ヲ故ニ、離レテ↢諸ノ障サハリ閡ヲサハル↡、即便チ捨テヽ↠身ヲ来↢生セシメムト我ガ界ニ↡。」 已上
一 Ⅰ ⅱ a ロ (一)(Ⅰ)(ⅱ)成就を指す
【5】 ^▼この願 (第十九願) 成就の文は、 すなはち三輩の文これなり、 ▼¬観経¼ の定散九品の文これなり。
此ノ願成就ノ文者、即チ三輩ノトモガラ文是也、¬観経ノ¼定散九品之文是也。
一 Ⅰ ⅱ a ロ (一)(Ⅱ)所入の土を明かす
(ⅰ)¬大経¼
【6】 ^▼また ¬大経¼ (上) にのたまはく、
又¬大経ニ¼言ク、
^「▲また無量寿仏のその道場樹は、 ▼高さ四0377百万里なり、 その本周囲五十由旬なり、 枝葉四に布きて二十万里なり。 一切の衆宝自然に合成せり。 ▼月光摩尼・持海輪宝の衆宝の王たるをもつて、 これを荘厳せり。 ▼乃至
「又无量寿仏ノ其ノ道場ニワ樹ハ、高サ四百万ヨロヅ里ナリ、其ノ本周囲メグリ五十由旬ナリ、枝葉四ニ布キテ二十万里ナリ。一切ノ衆宝自然ニ合成セリ。以テ↢月光摩尼・持海輪宝ノ衆宝之王タルヲ↡而荘↢厳セリ之ヲ↡。 乃至
^▲阿難、 もしかの国の人天、 この樹を見るものは三法忍を得ん。 一つには音響忍、 二つには柔順忍、 三つには無生法忍なり。 ◆これみな無量寿仏の威神力のゆゑに、 本願力のゆゑに、 満足願のゆゑに、 明了願のゆゑに、 堅固願のゆゑに、 究竟願のゆゑなりと。 ▼乃至
阿難、若シ彼ノ国ノ人天見ル↢此ノ樹ヲ↡者ハ得ム↢*三法忍ヲ↡。一ニ者音響忍、二ニ者柔順忍、三ニ者无生法忍ナリ。此皆无量寿仏ノ威神力ノ故ニ、本願力ノ故ニ、満足タル願ノ故ニ、明了願ノ故ニ、堅カタク固願カタシ ノ故ニ、究竟願ノ故ナリト。 乃至
^▲また講堂・▼精舎・宮殿・楼観、 みな七宝をもつて荘厳し、 自然に▼化成せり。 ▼また真珠・明月摩尼▼衆宝をもつて、 もつて交露とす、 その上に覆蓋せり。
又講堂オコナウ ・精舎モンハラ ・宮殿・楼観、皆七宝ヲモテ荘厳シ、自然ニ化成セリ。復以テ↢真珠・明月摩尼衆宝ヲ↡、以テ為↢交マジワ露ル ト↡、覆↢蓋セリオヽフ 其ノ上ニ↡。
^◆内外左右にもろもろの浴池あり。 ▼十由旬、 あるいは二十・三十、 乃至百千由旬なり。 縦広深浅、 ▼おのおのみな一等なり。 ◆八功徳水、 湛然として盈満せり、 ▼清浄香潔にして味はひ甘露のごとし」 と。
内外左右ニ有リ↢諸ノ浴アムル池↡。十由旬、或イハ二十、三十、乃0185至百千由旬ナリ。縦ヨコサマ広深浅、各ノ皆一等ナリ。八功徳水、湛タヽフル然トシテ盈ミチ満セリ、清浄香潔ニシテアザヤカナリ味如シト↢甘露ノ↡。」
一 Ⅰ ⅱ a ロ (二)真仮の得失を対弁して廃立の仏意を示す
(Ⅰ)経説
(ⅰ)¬大経¼
【7】 ^▼またのたまはく (大経・下)、
又*言ク、
^「ª▲それ胎生のものは、 処するところの宮殿、 ▼あるいは百由旬、 あるいは五百由旬なり。 おのおのそのなかにして、 もろもろの快楽を受くること忉利天上のごとし。 またみな自然なりº と。
「其胎生ノ者ハ、所ノ↠処スル宮殿、或イハ百由旬、或イハ五百由旬ナリ。各ノ於テ↢其ノ中ニ↡、受クルコト↢諸ノ快楽ヲ↡如シ↢忉利天上ノ↡。亦皆自然ナリト。
^◆その時に、 慈氏菩薩 (*弥勒)、 仏にまうしてまうさく、 ª世尊、 なんの因なんの縁あつてか、 かの国の人民、 胎生・化生なるº と。
爾ノ時ニ慈氏菩薩白シテ↠仏ニ言サク、世尊、何ノ因何ノ縁アテカ彼ノ国ノ人民タミ、胎生・化生ナルト。
^◆仏、 慈氏に告げたまはく、 ªもし衆生ありて、 疑0378惑の心をもつてもろもろの功徳を修して、 かの国に生ぜんと願ぜん。 ▼仏智・不思議智・不可称智・大乗広智・無等無倫最上勝智を了らずして、 この諸智において疑惑して信ぜず。 しかも、 なほ罪福を信じて、 善本を修習して、 その国に生ぜんと願ぜん。
仏告ゲタマハク↢慈氏ニウヂニ↡、若シ有リテ↢衆生↡、以テ↢疑惑ノ心ヲ↡修シテ↢諸ノ功徳ヲ↡、願ゼム↠生ゼムト↢彼ノ国ニ↡。不シテ↠了ラ↢仏智・不思議智・不可称智・大乗広智・无等无倫最上勝智ヲ↡、於テ↢此ノ諸智ニ↡疑惑シテ不↠信ゼ。然モ猶信ジテ↢罪福ヲ↡、修↢ツクル習シテナラフ 善本ヲ↡、願ゼム↠生ゼムト↢其ノ国ニ↡。
^◆このもろもろの衆生、 かの宮殿に生じて、 寿五百歳、 つねに仏を見たてまつらず、 経法を聞かず、 菩薩・声聞聖衆を見ず。 ◆このゆゑにかの国土にはこれを胎生といふ。 ▼乃至
此ノ諸ノ衆生、生ジテ↢彼ノ宮殿ニ↡、寿五百歳、常ニ不↠見タテマツラ↠仏ヲ、不↠聞カ↢経法ヲ↡、不↠見↢菩薩・声聞聖衆ヲ↡。是ノ故ニ彼ノ国土ニハ謂フ↢之ヲ胎生ト↡。 乃至
^◆弥勒まさに知るべし、 ▼かの化生のものは智慧勝れたるがゆゑに。 その胎生のものはみな智慧なきなりº と。 乃至
弥勒当ニシ↠知ル、彼ノ化生ノ者ハ智慧勝タルガ故ニ。其ノ胎生ノ者ハ皆无キナリト↢智慧↡。 乃至
^◆仏、 弥勒に告げたまはく、 ªたとへば転輪聖王のごとし。 七宝の牢獄あり。 種々に荘厳し床帳を張設し、 もろもろの繒幡を懸けたらん。 もしもろもろの小王子、 罪を王に得たらん、 すなはちかの獄のうちに内れて、 繋ぐに金鎖をもつてせんº と。 乃至
仏告ゲタマハク↢弥勒ニ↡、譬ヘバ如シ↢転輪聖王ノ↡。有ラム↢七宝ノ牢カタク獄↡。イマシム種種ニ荘厳シ張ハリ↢設シマウク床 ユカ 帳ヲ↡、懸ケタラム↢諸ノ繒ハタ幡ハタヲ↡。若シ諸ノ小王子、得タラム↢罪ヲ於王ニ↡、輒チ内レテ↢彼ノ獄ノ中ニ↡、繋グニ以テセムト↢金鎖ヲクサリ↡。 乃至
^◆仏、 弥勒に告げたまはく、 ▼ªこのもろもろの衆生、 またまたかくのごとし。 仏智を疑惑するをもつてのゆゑに、 ▼かの胎宮に生れん。 乃至
仏告ゲタマハク↢弥勒ニ↡、此ノ諸ノ衆生、亦復如シ↠是クノ。以テノ↣疑↢惑スルヲ仏智ヲ↡故ニ生レム↢彼ノ胎宮ニ↡。 乃至
^◆もしこの衆生、 その本の罪を識りて、 深くみづから悔責してかの処を離るることを求めん。 乃至
若シ此ノ衆生、識リテ↢其ノ本ノ罪ヲ↡、深ク自ラ悔クユル責クユシテ求メム↠離ルヽコトヲ↢彼ノ処ヲ↡。 乃至
^◆弥勒まさに知るべし、 それ菩薩ありて疑惑を生ぜば、 ▼大利を失すとすº」 と。 以上抄出
弥勒当ニシ↠知ル、其レ有リテ↢菩薩↡生ゼ↢疑惑ヲ↡者、為ト↠失スト↢大利ヲ↡。」 已上抄出
一 Ⅰ ⅱ a ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)¬如来会¼
【8】 ^▼¬*如来会¼ (下) にのたまはく、
¬如0186来会ニ¼言ク、
^▲「仏、 弥勒に告げたまはく、 ªもし衆生ありて0379、 *疑悔に随ひて善根を積集して、 仏智・*普遍智・不思議智・*無等智・*威徳智・*広大智を希求せん。 みづからの善根において信を生ずることあたはず。 ◆この因縁をもつて、 五百歳において宮殿のうちに住せん。 乃至
「仏告ゲタマハク↢弥勒ニ↡、若シ有リテ↢衆生↡、随ヒテ↢於疑悔ツミニ↡積ツミ↢集シテ善根ヲ↡、希↢マレニ求セム仏智・普徧智・不思議智・无等智・威徳智・広大智ヲ↡。於テ↢自ラノ善根ニ↡不↠能ハ↠生ズルコト↠信ヲ。以テ↢此ノ因縁ヲ↡、於テ↢五百歳ニ↡住セム↢宮殿ノ中ニ↡。 乃至
^▼阿逸多 (弥勒)、 ▼なんぢ*殊勝智のものを観ずるに、 かれは広慧の力によるがゆゑに、 *かの蓮華のなかに化生することを受けて結跏趺坐せん。 なんぢ▼*下劣の輩を観ずるに、 乃至 もろもろの功徳を修習することあたはず。 ゆゑに*因なくして無量寿仏に奉事せん。 このもろもろの人等は、 みな昔の縁、 疑悔をなして致すところなればなりº と。 乃至
阿 逸 多ホシイマヽニ、汝観ズルニ↢殊勝智ノ者ヲ↡、彼ハ因ルガ↢広慧ノ力ニ↡故ニ、受ケテ↣彼ノ化↢生スルコトヲ▼於導華ノ中ニ↡結跏趺座セム。汝観ズルニ↢下劣之輩ヲ↡、 乃至 不↠能ハ↣修↢習ナラウスルコト諸ノ功徳ヲ↡。故ニ無クシテ↠因奉↢事セム无量寿仏ニ↡。是ノ諸ノ人等ハ、皆為シテ↢昔ノ縁疑悔ヲ↡所ナレバナリト↠致ス。 乃至
^◆仏、 弥勒に告げたまはく、 ªかくのごとし、 かくのごとし。 もし疑悔に随ひて、 もろもろの善根を種ゑて、 仏智乃至広大智を希求することあらん。 みづからの善根において信を生ずることあたはず。 仏の名を聞くによりて*信心を起すがゆゑに、 かの国に生ずといへども、 蓮華のうちにして出現することを得ず。 かれらの衆生、 *華胎のうちに処すること、 なほ園苑宮殿の想のごとしº」 と。 抄要
仏告ゲタマハク↢弥勒ニ↡、如シ↠是クノ如シ↠是クノ。若シ有ラム↧随ヒテ↢於疑悔ニ↡、種ヱテ↢諸ノ善根ヲ↡、希↦求スルコト仏智乃至広大智ヲ↥。於テ↢自ラノ善根ニ↡不↠能ハ↠生ズルコト↠信ヲ。由リテ↠聞クニ↢仏ノ名ヲ↡起スガ↢信心ヲ↡故ニ雖モ↠生ズト↢彼ノ国ニ↡、於テ↢蓮華ノ中ニ↡不↠得↢出現スルコトヲ↡。彼等ノ衆生処スルコト↢華胎ノ中ニ↡、猶如シト↢園ソノ苑ソノ宮殿之想ノ↡。」 抄要
一 Ⅰ ⅱ a ロ (二)(Ⅰ)(ⅲ)¬大経¼
【9】 ^▼¬大経¼ (下) にのたまはく、
¬大経ニ¼言ク、
^「▲もろもろの小行の菩薩、 および少功徳を修習するもの、 称計すべからず。 みなまさに往生すべし」 と。
「諸ノ少行ノ菩薩、及ビ修↢習スル少功徳ヲ↡者、不↠可カラ↢称計ス↡。皆当ニシト↢往生ス↡。」
一 Ⅰ ⅱ a ロ (二)(Ⅰ)(ⅳ)¬如来会¼
【10】^▼またのたまはく (如来会・下)、
又*言ク、
^▲「いはんや、 余の菩薩、 少善根によりて0380、 かの国に生ずるもの、 称計すべからず」 と。 以上
「況ヤ余ノ菩薩、由リテ↢少善根ニ↡、生ズル↢彼ノ国ニ↡者、不ト↠可カラ↢称計ス↡。」 已上
一 Ⅰ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)師釈
(ⅰ)終南
(a)「定善義」(正しく終南を引く)
【11】^▼光明寺 (*善導) の釈 (*定善義) にいはく、
光明寺ノ釈ニ云ク、
^「▲華に含みていまだ出でず。 あるいは▼辺界に生じ、 あるいは▼宮胎に堕せん」 と。 以上
「含ガンテ↠華ニ未ズ ダ↠出デ。或イハ生ジ↢辺界ニ↡、或イハ堕オツセムト↢宮胎ニ↡。」 已上
一 Ⅰ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)憬興¬述文賛¼(更に他師を挙げて助証す)
【12】^▼*憬興師のいはく (*述文賛)、
憬興師ノ云ク、
^「▼仏智を疑ふによりて、 かの国に生れて、 辺地にありといへども、 *聖化の事を被らず。 もし胎生せば、 よろしくこれを重く捨つべし」 と。 以上
「由リテ↠疑フニ↢仏智ヲ↡、雖モ↧生レ↢彼ノ国ニ↡而在リト↦辺地ニ↥、不↠被ラ↢聖化ノ事ヲ↡。若シ胎生セバ、宜ベ クシト↢之ヲ重ク捨ツ↡。」 已上
一 Ⅰ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)横川
(a)¬往生要集¼
【13】^▼首楞厳院 (*源信) の ¬*要集¼ (下) に、 ▼感禅師 (*懐感) の釈 (*群疑論) を引きていはく、
首楞厳院ノ¬要集ニ¼引キテ↢感*禅師ノ釈ヲ↡云ク、
^「▲問ふ。 ▼¬*菩薩処胎経¼ の第二に説かく、 ª^西方この閻浮提を去ること十二億那由他に懈慢界あり。 ▼乃至 ◆意を発せる衆生、 *阿弥陀仏国に生ぜんと欲ふもの、 みな深く懈慢国土に着して、 前進んで阿弥陀仏国に生ずることあたはず。 億千万の衆、 時に一人ありて、 よく阿弥陀仏国に生ずº と云々。 ^◆この ¬経¼ をもつて*准難するに、 生ずることを得べしやと。
「問フ。¬菩薩処胎経ノ¼第二ニ説カク、西方去ルコト↢此0187ノ閻浮提ヲ↡十二億那由他ニ有リ↢懈*慢界↡。 乃至 発セル↠意ヲ衆生欲フ↠生ゼムト↢阿弥陀仏国ニ↡者、皆深ク著ツクシテ↢懈慢国土ニ↡、不↠能ハ↣前進ムデ生ズルコト↢阿弥陀仏国ニ↡。億千万ノ衆、時ニ有リテ↢一人↡、能ク生ズト↢阿弥陀仏国ニ↡云云。以テ↢此ノ¬経ヲ¼↡准ナヅラフ難スルニ、可シヤト↠得↠生ズルコトヲ。
^◆答ふ。 ¬群疑論¼ に善導和尚の▼前の文を引きて、 この難を釈して、 また▼みづから助成していはく、 ª^この ¬経¼ の下の文にいはく、 «なにをもつてのゆゑに、 みな懈慢によりて執心牢固ならず» と。
答フ。¬群疑論ニ¼引キ↢善導和尚ノ前ノ文ヲ↡而釈シテ↢此ノ難ヲ↡、又自ラ助タスク成シテ云ク、此ノ¬経ノ¼下ノ文ニ*言ク、何ヲ以テノ故ニ皆由リテ↢懈慢ニ↡執トル心不ト↢牢カタク固ナラカタシ↡。
^◆ここに知んぬ、 雑修のものは執心不牢の0381人とす。 ゆゑに懈慢国に生ず。 もし雑修せずして、 もつぱらこの業を行ぜば、 これすなはち執心牢固にして、 さだめて極楽国に生ぜん。 ▼乃至
是ニ知ヌ、雑修之者ハ為↢執心不牢之人ト↡。故ニ生ズ↢懈慢国ニ↡*也。若シ不シテ↢雑修セ↡専ラ行ゼバ↢此ノ業ヲ↡、此即チ執心牢固ニシテ、定メテ生ゼム↢極楽国ニ↡。 乃至
^◆また報の浄土に生ずるものはきはめて少なし。 化の浄土のなかに生ずるものは少なからず。 ゆゑに ¬経¼ の別説、 実に相違せざるなりº」 と。 以上略抄
又報ノ浄土ニ生ズル者ハ極テ少シ。化ノ浄土ノ中ニ生ズル者ハ不↠少カラ。故ニ経ノ別説、実ニ不ル↢相違セ↡也ト。」 已上略抄
一 Ⅰ ⅱ a ハ 勧誡
【14】^▼しかれば、 それ楞厳の和尚 (源信) の解義を案ずるに、 ▲念仏証拠門 (往生要集・下) のなかに、 第十八の願は▼別願のなかの別願なりと顕開したまへり。 ▼¬観経¼ の定散の諸機は、 極重悪人、 ただ弥陀を称せよと勧励したまへるなり。 濁世の道俗、 ▲よくみづからおのれが*能を思量せよとなり、 知るべし。
爾レ者夫按ズルニ↢楞厳ノ和尚ノ解義ヲハカラフ↡、念仏証拠門ノ中ニ第十八ノ願者顕↢開シタマヘリ別願ノ中之別願ナリト↡。¬観経ノ¼定散ノ諸機者勧スヽメ↢励ハゲマスシタマヘル極重悪人、唯称セヨト弥陀ト↡也。濁世ノ道俗、善ク自ラ思↢量セヨト己ガ能ヲ↡也、応シ↠知ル。
一 Ⅰ ⅱ b 二経の隠顕を釈す
イ 観経の三心を釈す【観経隠顕】
(一)問
【15】^▼問ふ。 ¬*大本¼ (大経) の*三心と ¬観経¼ の*三心と一異いかんぞや。
問フ。¬大本ノ¼三心ト与↢¬観経ノ¼三心↡一異云何ゾヤ。
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)答
(Ⅰ)正釈
(ⅰ)例を作りて略釈す
(a)立例
(イ)標挙
^答ふ。 ▼釈家 (善導) の意によりて ¬無量寿仏観経¼ を案ずれば、 ▼*↓顕↓彰隠密の義あり。
答フ。依リテ↢釈家之意ニ↡按ズレ↢¬无量寿仏観経ヲ¼↡者有リ↢顕彰隠カクス密ノカクス義↡。
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(a)(ロ)解釈
[一]顕を釈す
^▽↑顕といふは、 すなはち定散諸善を顕し、 三輩・三心を開く。 しかるに*二善・三福は報土の真因にあらず。 諸機の三心は、 *自利各別にして*利他の一心にあらず。 如来の*異の方便、 *欣慕浄土の善根なり。 これはこの経 (観経) の意なり。 すなはちこれ顕の義なり。
言フ↠顕ト者、即チ顕シ↢定散諸善ヲ↡開ク↢三輩・三心ヲ↡。然ルニ二善・三福ハ非ズ↢報土ノ真因ニ↡。諸機ノ三心ハ、自利各別ニ而非ズ↢利他ノ一心ニ↡。如来ノ異ノ方便、忻ネガヒ慕浄シタフ 土ノ善根ナリ。是ハ此ノ¬経¼之意ナリ。即チ是顕ノ義也。
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(a)(ロ)[二]彰を釈す
^▽↑彰といふは、 如来の弘0382願を彰し、 利他通入の一心を*演暢す。 ▼達多 (*提婆達多)・闍世 (*阿闍世) の悪逆によりて、 ▲*釈迦微笑の素懐を彰す。 ▲*韋提別選の正意によりて、 弥陀大悲の本願を開闡す。 これすなはちこの経 (観経) の隠彰の義なり。
言フ↠彰トアラハス者0188、彰シ↢如来ノ弘願ヲ↡演ノベ↢暢ノブス利他通入ノ一心ヲ↡。縁リテ↢達多・闍世ノ悪逆ニ↡、彰ス↢釈迦微スコシキ笑ヱムノ素モト懐オモヒヲ↡。因リテ↢韋提別選ノ正意ニ↡、開↢闡スヒラク弥陀大悲ノ本願ヲ↡。斯乃チ此ノ¬経ノ¼隠カクス彰ノ義也。
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(a)(ハ)釈例(¬観経¼「序分」九文、「正宗分」四文、計十三文)
^ここをもつて ¬経¼ (観経) には、 「▲教我観於清浄業処」 といへり。 「清浄業処」 といふは、 すなはちこれ本願成就の報土なり。
是ヲ以テ¬経ニハ¼言ヘリ↢「教我観於清浄業処ト」↡。言フ↢清浄業処ト↡者、則チ是本願成就ノ報土也。
^「▲教我思惟」 といふは、 すなはち方便なり。
言フ↢教我思惟トオモフ↡者、即チ方便也。
^「▲教我正受」 といふは、 すなはち金剛の真心なり。
言フ↢教我正受ト↡者、即チ金剛ノ真心也。
^「▲諦観彼国浄業成者」 といへり、 本願成就の尽十方無礙光如来を観知すべしとなり。
言ヘリ↢「諦観彼国浄業成者ト」↡、応シト↣観↢知ス本願成就ノ尽十方无光如来ヲ↡也。
^「▲広説衆譬」 といへり、 すなはち十三観これなり。
言ヘリ↢「広説衆譬ト」↡、則チ十三観是也。
^「▲汝是凡夫心想羸劣」 といへり、 すなはちこれ悪人往生の機たることを彰すなり。
言ヘリ↢「汝是凡夫心想羸オトリ劣ト」↡、則チ是彰ス↠為ルコトヲ↢悪人往生ノ機↡也。
^「▲諸仏如来有異方便」 といへり、 すなはちこれ定散諸善は方便の教たることを顕すなり。
言ヘリ↢「諸仏如来有異方便ト」↡、則チ是定散諸善ハ顕ス↠為ルコトヲ↢方便之教↡也。
^「▲以仏力故見彼国土」 といへり、 これすなはち他力の意を顕すなり。
言ヘリ↢「以仏力故見彼国土ト」↡、斯乃チ顕ス↢他力之意ヲ↡也。
^「▲若仏滅後諸衆生等」 といへり、 すなはちこれ未来の衆生、 往生の正機たることを顕すなり。
言ヘリ↢「若仏滅後諸衆生等ト」↡、即チ是未来ノ衆生、顕ス↠為ルコトヲ↢往生ノ正機↡也。
^「▲若有合者名為粗想」 といへり、 これ定観成じがたきことを顕すなり。
言ヘリ↢「若有合者名為麁想ト」↡、是顕ス↢定観難キコトヲ↟成ジ也。
^「▲於現身中得念仏三昧」 といへり、 すなはちこれ定観成就の益は、 念仏三昧を獲るをもつて観の益とす0383ることを顕す。 すなはち観門をもつて方便の教とせるなり。
言ヘリ↢「於現身中得念仏三昧ト」↡、即チ是顕ス↧定観成就之益ハ タスク 、以テ↠獲ルヲ↢念仏三昧ヲ↡為ルコトヲ↦観ノ益ト↥。即チ以テ↢観門ヲ↡為ル↢方便之教ト↡也。
^「▲発三種心即便往生」 といへり。 また 「▲復有三種衆生当得往生」 といへり。 ▼これらの文によるに、 三輩について、 ▽*三種の三心あり、 また*二種の往生あり。
言ヘリ↢「発三種心即便往生ト」↡。又言ヘリ↢「復有三種衆生当得往生ト」↡。依ルニ↢此等ノ文ニ↡、就テ↢三輩ニ↡有リ↢三種ノ三心↡、復有リ↢二種ノ往生↡。
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(a)(ニ)結成
^▼まことに知んぬ、 これいましこの ¬経¼ (観経) に顕彰隠密の義あることを。
良ニ知ヌ此乃シ此ノ¬経ニ¼有ルコトヲ↢顕彰隠蜜之義↡。
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)正答
^▼二経 (大経・観経) の三心、 まさに一異を談ぜんとす、 よく思量すべきなり。 ¬大経¼・¬観経¼、 顕の義によれば異なり、 彰の義によれば一なり、 知るべし。
二経ノ三心、将ス ニ↠談ゼムト↢一0189異ヲ↡、応キ↢善ク思量ス↡也。¬大経¼・¬観経¼依レバ↢顕ノ義ニ↡異ナリ、依レバ↢彰ノ義ニ↡一也、可シ↠知ル。
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)釈を挙げて広弁す
(a)引文
(イ)「玄義分」二文
・序題門
【16】^▼しかれば、 光明寺の和尚 (善導) のいはく (*玄義分)、
爾レ者光明寺ノ和尚ノ云ク、
^「▲しかるに娑婆の化主 (釈尊)、 その請によるがゆゑに、 すなはち広く浄土の要門を開く。 安楽の能人 (阿弥陀仏) は別意の弘願を顕彰す。
「然ルニ娑婆ノ化主、因ルガ↢其ノ請コウニ↡故ニ、即チ広ク開ク↢浄土之要門ヲ↡。安楽ノ能人ノ顕↢彰ス別意之弘願ヲ↡。
^◆その要門とはすなはちこの ¬観経¼ の定散二門これなり。 定はすなはち慮りを息めてもつて心を凝らす。 散はすなはち悪を廃してもつて善を修す。 この二行を回して往生を求願せよとなり。
其要門ト者即チ此ノ¬観経ノ¼定散二門是也。定ハ即チ息メテ↠慮ヲ以テ凝ス↠心ヲ。散ハ即チ廃シテ↠悪ヲ以テ修ス↠善ヲ。回シテ↢此ノ二行ヲ↡求↢願セヨト往生ヲ↡也。
^◆弘願といふは ¬大経¼ の説のごとし」 といへり。
言フ↢弘願ト↡者如シトイヘリ↢¬大経ノ¼説ノ↡。」
・宗旨門
【17】^▼またいはく (玄義分)、
又云ク、
^「▲いまこの ¬観経¼ はすなはち▼観仏三昧をもつて▼宗とす、 また▼念仏三昧をもつて宗とす。 ▼一心に回願して浄土に往生するを0384体とす。
「今此ノ¬観経ハ¼即チ以テ↢観仏三昧ヲ↡為↠宗ト、亦以テ↢念仏三昧ヲ↡為↠宗ト。一心ニ回願シテ往↢生スルヲ浄土ニ↡為ト↠体ト。
^◆教の大小といふは、 ◆問うていはく、 この経は▼二蔵のなかには、 いづれの蔵にか摂する、 ▼二教のなかには、 いづれの教にか収むるやと。
言フ↢教之大少ト↡者、問ヒテ曰ク、此ノ¬経ハ¼二蔵之中ニハ何ノ蔵ニカ摂スル、二教之中ニハ何ノ教ニカ収ムルヤト。
^◆答へていはく、 いまこの ¬観経¼ は菩薩蔵に収む。 頓教の摂なり」 と。
答ヘテ曰ク、今此ノ¬観経ハ¼菩薩蔵ニ収ム。頓教ノ摂ナリト。」
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(a)(ロ)「序分義」二文
・証信序
【18】^▼またいはく (*序分義)、
又云ク、
^「▲また ª如是º といふは、 すなはちこれは法を指す、 定散両門なり。 ª是º はすなはち▼定むる辞なり。 ▼機、 行ずればかならず益す。 これは如来の所説の言、 錯謬なきことを明かす。 ゆゑに如是と名づく。
「又言フ↢如是ト↡者、即チ此ハ指ス↠法ヲ、定散両門也。是ハ即チ定ムル辞ナリ。機、行ズレバ必ズ益ス。此ハ明ス↣如来ノ所説ノ言无キコトヲ↢錯謬↡。故ニ名ク↢如是ト↡。
^◆また ª如º といふは▼衆生の意のごとしとなり。 心の所楽に随ひて仏すなはちこれを度したまふ。 機教相応せるをまた称して ª是º とす。 ゆゑに如是といふ。
又言フ↠如ト者如シト↢衆生ノ意ノ↡也。随ヒテ↢心ノ所楽ニ↡仏即チ度シタマフ↠之ヲ。機教相応セルヲ復称イフシテ為↠是ト。故ニ言フ↢如是ト↡。
^◆また如是といふは、 如来の所説を明かさんと欲す。 漸を説くことは漸のごとし、 頓を説くことは頓のごとし。 相を説くことは相のごとし、 空を説くことは空のごとし。
又言フ↢如是ト↡者、欲ス↠明サムト↢如来ノ所説ヲ↡。説クコトハ↠漸ヲヤウヤク如シ↠漸ノ、説クコトハ↠頓ヲ如シ↠頓ノ。説クコトハ↠相ヲ如シ↠相ノ、説クコトハ↠空ヲ如シ↠空ノ。
^◆人法を説くこと人法のごとし、 天法を説くこと天法のごとし。 小を説くこと小のごとし、 大を説くこと大のごとし。
説クコト↢人法ヲ↡如シ↢人法ノ↡、説クコト↢天法ヲ↡如シ↢天法ノ↡。説クコト↠小ヲ如シ↠小ノ、説クコト↠大ヲ如シ↠大ノ。
^◆凡を説くこと凡のごとし、 聖を説くこと聖のごとし。 因を説くこと因のごとし、 果を説くこと果のごとし。
説クコト↠凡ヲ如シ↠凡ノ、説クコト↠聖ヲ如シ↠聖ノ。説クコト↠因ヲ如シ↠因ノ、説クコト↠果ヲ如シ↠果ノ。
^◆苦を説くこと苦のごとし、 楽を説くこと楽のごとし。 遠を説くこと遠のごとし、 近を説くこと近のごとし。
説クコト↠苦ヲ如シ↠苦ノ、説クコト↠楽ヲ如シ↠楽ノ。説クコト↠遠ヲ如シ↠遠ノ、説クコト↠近ヲ如シ↠近ノ。
^◆同を説くこと同のごとし、 別を説0385くこと別のごとし。 浄を説くこと浄のごとし、 穢を説くこと穢のごとし。
説クコト↠同ヲ如シ↠同ノ、説クコト↠別ヲ如シ↠別ノ。説クコト↠浄ヲ如シ↠浄ノ、説クコト↠穢ヲ如シ↠穢ノ。
^◆一切の法を説くこと千差万別なり。 如来の観知、 *歴々了然として、 心に随ひて行を起して、 おのおの益すること同じからず。 *業果法然としてすべて錯失なし、 また称して ª是º とす。 ゆゑに如是といふ」 と。
説クコト↢一切ノ法ヲ↡千差シナ万別ナリ。如来ノ観知、歴フル歴了然トシテ、随ヒテ↠心ニ起シテ↠行ヲ、各ノ益タスクスルコト不↠同ジカラ。業果法然トシテ衆テ无シ↢錯アヤマリ失↡、又称シテ為↠是ト。故ニ言フト↢如是ト↡。」
・散善顕行縁
【19】^▼またいはく (序分義)、
又云ク、
^「▲ª欲生彼国者º より下 ª名為浄業º に至るまでこのかたは、 まさしく三福の行を勧修することを明かす。
「従リ↢欲生彼国者↡下至ルマデ↢名為浄業ニ↡已来タハ正シク明ス↣勧↢修スルコトヲ三福之行ヲ↡。
^◆これは一切衆生の▼機に二種あることを明かす。 一つには定、 二つには散なり。 もし定行によれば、 すなはち生を摂するに尽きず。 これをもつて如来方便して▼三福を顕開して、 もつて散動の根機に応じたまへり」 と。
此ハ明ス↣一切衆生ノ機ニ有ルコトヲ↢二種↡。一ニ者定、二ニ者散ナリ。若シ依レバ↢定行ニ↡、即チ摂スルニ↠生ヲ不↠尽キ。是ヲ以テ如来方便シテ顕↢開シテ三福ヲ↡、以テ応ジタマヘリト↢散動ノ根機ニ↡。」
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(a)(ハ)「散善義」
・上上品釈
【20】^▼またいはく (*散善義)、
又云ク、
^「▲また真実に二種あり。 一つには自利真実、 二つには利他真実なり。
「又真実ニ有リ↢二種↡。一ニ者自利真実、二ニ者利他真実ナリ。
^◆自利真実といふは、 また二種あり。
言フ↢自利真実ト↡者、復有リ↢二種↡。
^◆一つには、 真実心のうちに自他の諸悪および穢国等を制捨して、 行住坐臥に、 一切菩薩の諸悪を制捨するに同じく、 われもまたかくのごとくせんと想ふ。
一ニ者真実心ノ中ニ制↢トヾム作シテ自他ノ諸悪及ビ穢国等ヲ↡、行住坐臥ニ、想フ↧同ジク↣一切菩薩ノ制↢捨スルニ諸悪ヲ↡、我モ亦如クセムト↞是クノ也。
^◆二つには、 真実心のうちに自他・凡聖等の善を勤修す。
二ニ者真実心ノ中ニ懃↢修ス自他凡聖等ノ善ヲ↡。
^◆真実心のうちの口業に、 かの阿弥陀仏および依正二報を讃嘆す。 また真実心のうちの口業に、 三界六道等の自他の依正0386二報の苦悪の事を毀厭す。 また一切衆生の三業所為の善を讃嘆す。 もし善業にあらずは、 つつしんでこれを遠ざかれ、 また随喜せざれとなり。
真実心ノ中ノ口業ニ讃↢嘆ス彼ノ阿弥陀仏及ビ依正二報ヲ↡。又真実心ノ中ノ口業ニ毀↢ソシリ厭スイトフ三界六道等ノ自他ノ依正ノ二報ノ苦悪之事ヲ↡。亦讃↢嘆ス一切衆生ノ三業所為ノ善ヲ↡。若シ非ズ↢善業ニ↡者、敬ム而遠ザカレ↠之ヲ、亦不レト↢随喜セ↡也。
^◆また真実心のうちの身業に、 合掌し礼敬し、 四事等をもつてかの阿弥陀仏および依正二報を供養す。 また真実心のうちの身業に、 この生死三界等の自他の依正二報を軽慢し厭捨す。
又真実心ノ中ノ身業ニ、合掌シ礼敬シ、四事等ヲモテ供↢養ス彼ノ阿弥陀仏及ビ依正二報ヲ↡。又真実心ノ中ノ身業ニ軽カロメ↢慢シアナドル厭↣捨ス此ノ生死三界等ノ自他ノ依正二報ヲ↡。
^◆また真実心のうちの意業に、 かの阿弥陀仏および依正二報を思想し観0387察し憶念して、 目の前に現ぜるがごとくす。 また真実心のうちの意業に、 この生死三界等の自他の依正二報を軽賎し厭捨すと。 ▼乃至
又真実0191心ノ中ノ意業ニ思↢想シ観↣察シ憶↤念シテ彼ノ阿弥陀仏及ビ依正二報ヲ↡、如クス↠現ゼルガ↢目ノ前ニ↡。又真実心ノ中ノ意業ニ軽↢賎シイヤシウス厭↣捨スト此ノ生死三界等ノ自他ノ依正二報ヲ↡。 乃至
^▲また決定して、 釈迦仏、 この ¬観経¼ に三福九品・定散二善を説きて、 かの仏の依正二報を証讃して人をして欣慕せしむと深信すと。 ▼乃至
又決定シテ深↧信スト釈迦仏説キテ↢此ノ¬観経ニ¼三福九品・定散二善ヲ↡、証↢賛シテ彼ノ仏ノ依正二報ヲ↡使ムト↦人ヲシテ忻ネガイ慕セシタウ↥。 乃至
^▲*また深心の深信とは、 決定して*自心を建立して、 教に順じて修行し、 永く疑錯を除きて、 一切の別解・別行・異学・異見・異執のために退失傾動せられざるなりと。 ▼乃至
又深心ノ深信ト者、決定シテ建↢立シテ自心ヲ↡、順ジテ↠教ニ修行シ、永ク除キテ↢疑錯ヲアヤマル↡、不ル↧為ニ↢一切ノ別解・別行・異学・異見・異執之↡所レ↦退失傾カタブク動セ↥也ト。 乃至
^▲次に行について信を立てば、 しかるに行に二種あり。 一つには正行、 二つには雑行なり。
次ニ就テ↠行ニ立テ↠信ヲ者、然ルニ行ニ有リ↢二種↡。一ニ者正行、二ニ者雑行ナリ。
^◆正行といふは、 もつぱら往生経の行によりて行ずるものは、 これを正行と名づく。
言フ↢正行ト↡者、専ラ依リテ↢往生経ノ行ニ↡行ズル者ハ、是ヲ名ク↢正行ト↡。
^◆なにものかこれや。 一心にもつぱらこの ¬観経¼・¬弥陀経¼・¬無量寿経¼ 等を読誦する。 一心にかの国の二報荘厳を専注し思想し観察し憶念する。 もし礼せばすなはち一心にもつぱらかの仏を礼する。 もし口に称せばすなはち一心にもつぱらかの仏を称せよ。 もし讃嘆供養せばすなはち一心にもつぱら讃嘆供養する。 これを名づけて正とす。▼
何者カ是也。一心ニ専ラ読↢誦スル此ノ¬観経¼・¬弥陀経¼・¬无量寿経¼等ヲ↡。一心ニ専↢注シトヾム思↣想シ観↤察シ憶↯念スル彼ノ国ノ二報荘厳ヲ↡。若シ礼セバ即チ一心ニ専ラ礼スル↢彼ノ仏ヲ↡。若シ口ニ称セバ即チ一心ニ専ラ称セヨ↢彼ノ仏ヲ↡。若シ讃嘆供養セバ即チ一心ニ専ラ讃嘆供養スル。是ヲ名ケテ為ト↠正ト。
^◆またこの正のなかについて、 また二種あり。
又就テ↢此ノ正ノ中ニ↡、復有リ↢二種↡。
^▼一つには、 一心に弥陀の名号を専念して、 行住坐臥に時節の久近を問はず、 念々に捨てざるものは、 これを正定の業と名づく、 かの仏願に順ずるがゆゑに。
一ニ者一心ニ専↢念シテ弥陀ノ名号ヲ↡、行住坐臥ニ不↠問ハ↢時節ノ久近ヲ↡、念念ニ不ル↠捨テ者ハ、是ヲ名ク↢正定之業ト↡、順ズルガ↢彼ノ仏願ニ↡故ニ。
^◆もし礼誦等によるは、 すなはち名づけて助業とす。
若シ依ルヲ↢礼誦等ニ↡、即チ名ケテ為↢助業ト↡。
^◆この正助二行を除きて以外の自余の諸善は、 ことごとく雑行と名づく。▼ ^◆もし前の正助二行を修するは、 心つねに親近し、 憶念断えず、 名づけて無間とす。 もし後の雑行を行ずるは、 すなはち心つねに間断す。 回向して生ずることを得べしといへども、▼ すべて疎雑の行と名づくるなり。
除キテ↢此ノ正助二行ヲ↡已外ノ自余ノ諸善ハ、悉ク名ク↢雑行ト↡。若シ修スルハ↢前ノ正助二行ヲ↡、心常ニ親近シ、憶念不↠断ヘ、名ケテ為↢无間ト↡也。若シ行ズルハ↢後ノ雑行ヲ↡、即チ心常ニ間断ス。雖モ↠可シト↢回向シテ得↟生ズルコトヲ、衆テ名クル↢疎雑之行ト↡也。
^◆ゆゑに深心と名づく。
故ニ名0192クト↢深心ト↡。
^◆三つには回向発願心。
三ニ者回向発願心。
^◆回向発願心といふは、 ▼過去および今生の身口意業に修するところの世・出世の善根、 および他の一切の凡聖の身口意業に修するところの世・出世の善根を随喜して、 この自他所修の善根をもつて、 ことごとくみな真実の深信の心のうちに回向して、 かの国に生ぜんと願ず。 ゆゑに回向発願心と名づくるなり」 と。
言フ↢回向発願心ト↡者、過去及以ビ今生ノ身口意業ニ所ノ↠修スル世・出世ノ善根、及ビ随↢喜シテ他ノ一切ノ凡聖ノ身口意業ニ所ノ↠修スル世・出世ノ善根ヲ↡、以テ↢此ノ自他所修ノ善根ヲ↡、悉ク皆真実ノ深信ノ心ノ中ニ回向シテ、願ズ↠生ゼムト↢彼ノ国ニ↡。故ニ名クル↢回向発願心ト↡也。」
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(a)(ニ)「序分義」二文
・定善
【038821】^▼またいはく (序分義)、
又云ク、
^「▲*定善は*観を示す縁なり」 と。
「定善ハ示ス↠観ヲ縁ナリト。」
・散善
【22】^またいはく (序分義)、
又云ク、
^「▲*散善は*行を顕す縁なり」 と。
「散善ハ顕ス↠行ヲ縁ナリト。」
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(a)(ホ)「散善義」
・結嘆
【23】^▼またいはく (散善義)、
又云ク、
^「▲浄土の要逢ひがたし」 と。 文 抄出
「浄土之要難シト↠逢ヒ」*文 抄出
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(a)(ヘ)¬礼讃¼二文
・前序
【24】^▼またいはく (*礼讃)、
又云ク、
^「▲¬観経¼ の説のごとし。 まづ三心を具してかならず往生を得。 なんらをか三つとする。
「如シ↢¬観経ノ¼説ノ↡。先ヅ具シテ↢三心ヲ↡必ズ得↢往生ヲ↡。何等ヲカ為ル↠三ト。
^◆一つには至誠心。 いはゆる身業にかの仏を礼拝す、 口業にかの仏を讃嘆し称揚す、 意業にかの仏を専念し観察す。 おほよそ三業を起すに、 かならず真実を須ゐるがゆゑに至誠心と名づく。 ▼乃至
一ニ者至誠心。所ル↠謂ハ身業ニ礼↢拝ス彼ノ仏ヲ↡、口業ニ讃↢嘆シ称↣揚ス彼ノ仏ヲ↡、意業ニ専↢念シ観↣察ス彼ノ仏ヲ↡。凡ソ起スニ↢三業ヲ↡、必ズ須ヰルガ↢真実ヲ↡故ニ名クト↢至誠心ト↡。 乃至
^▲三つには回向発願心。 所作の一切の善根、 ことごとくみな回して往生を願ず、 ゆゑに回向発願心と名づく。
三ニ者回向発願心。所作ノ一切ノ善根、悉ク皆回シテ願ズ↢往生ヲ↡、故ニ名ク↢回向発願心ト↡。
^◆この三心を具してかならず生ずることを得るなり。 もし一心少けぬればすなはち生ずることを得ず。 ¬観経¼ につぶさに説くがごとし、 知るべしと。 ▼乃至
具シテ↢此ノ三心ヲ↡必ズ得ル↠生ズルコトヲ也。若シ少ケヌレバ↢一心↡即チ不↠得↠生ズルコトヲ。如シ↢¬観経ニ¼具ニ説クガ↡、応シト↠知ル。 乃至
^▲また菩薩は▼すでに生死を勉れて、 ▼所作の善法回して仏果を求む、 すなはちこれ自利なり。 ▼衆生を教化して未来際を尽す、 すなはちこれ利他なり。 ▼しかるに今の時の衆生、 ことごとく煩悩のために繋縛せられて、 いまだ悪道生死等の苦を勉れず。 縁に随ひて行を起して、 一切の善根つぶさにすみやかに回して0389、 阿弥陀仏国に往生せんと願ぜん。 ▼かの国に到りをはりて、 さらに畏るるところなけん。 上のごときの四修、 自然任運にして、 自利利他具足せざることなしと、 知るべし」 と。
又菩薩ハ已ニ勉レテ↢生死ヲ↡、所作ノ善法回シテ求ム↢仏果ヲ↡、即チ是自利ナリ。教↢化シテ衆生ヲ↡尽ス↢未来際ヲ↡、即チ是利他ナリ。然ルニ今ノ時ノ衆生、悉ク為ニ↢煩悩ノ↡繋ツナギ縛シバルセラレテ、未ズ ダ↠勉レ↢悪道生死等ノ苦ヲ↡。随ヒテ↠縁ニ起シテ↠行ヲ、一切ノ善根具ニ速ニ回シテ、願0193ゼム↣往↢生セムト阿弥陀仏国ニ↡。到リ↢彼ノ国ニ↡已リテ、更ニ无ケム↠所↠畏ルヽ。如キノ↠上ノ四修、自然任マカセ運ハコブニシテ、自利利他无シト↠不ルコト↢具足セ↡、応シト↠知ル。」
・前序
【25】^▼またいはく (礼讃)、
又云ク、
^「▲もし専を捨てて雑業を修せんとするものは、 百は時に希に一二を得、 千は時に希に五三を得。
「若シ欲スル↣捨テヽ↠専ヲ修セムト↢雑業ヲ↡者ハ、百ハ時ニ希ニ得↢一二ヲ↡、千ハ時ニ希ニ得↢五三ヲ↡。
^◆なにをもつてのゆゑに、 ▼いまし雑縁乱動す、 正念を失するによるがゆゑに、 仏の本願と相応せざるがゆゑに、 教と相違せるがゆゑに、 仏語に順ぜざるがゆゑに、 ▼係念相続せざるがゆゑに、 ▼憶想間断するがゆゑに、 回願慇重真実ならざるがゆゑに、 貪・瞋・諸見の煩悩来り間断するがゆゑに、 ▼慚愧・懴悔の心あることなきがゆゑに。
何ヲ以テノ故ニ。乃シ由ルガ↣雑縁乱動ス、失スルニ↢正念ヲ↡故ニ、与↢仏ノ本願↡不ルガ↢相応セ↡故ニ、与↠教相違セルガ故ニ、不ルガ↠順ゼ↢仏語ニ↡故ニ、係カクル念不ルガ↢相続セ↡故ニ、憶想間断スルガ故ニ、回願不ルガ↢慇ネムゴロニ重真実ナラ↡故ニ、貪・瞋・諸見ノ煩悩来リ間断スルガ故ニ、無キガ↠有ルコト↢慚ハヂ愧ハヅ・懴クイ悔クユノ心↡故ニ。
^◆懴悔に三品あり。 ▼乃至
懴悔ニ有リ↢三品↡。 乃至
^▲上・中・下なり。
上・中・下ナリ。
^◆上品の懴悔とは、 身の毛孔のうちより血を流し、 眼のうちより血出すをば上品の懴悔と名づく。
上品ノ懴悔ト者、身ノ毛孔ノ中ヨリ血ヲ流シ、眼ノ中ヨリ血出スヲ者名ク↢上品ノ懴悔ト↡。
^◆中品の懴悔とは、 遍身に熱き汗毛孔より出づ、 眼のうちより血の流るるをば中品の懴悔と名づく。
中品ノ懴悔ト者、徧身ニ熱キ汗従リ↢毛孔↡出ヅ、眼ノ中ヨリ血ノ流ルヽ者名ク↢中品ノ懴悔ト↡。
^◆下品の懴悔とは、 遍身徹り熱く、 眼のうちより涙出づるをば下品の懴悔と名づく。
下品ノ懴悔ト者、徧身徹リ熱ク、眼ノ中ヨリ涙出ヅルヲ者名ク↢下品ノ懴悔ト↡。
^◆これらの三品、 差別ありといへども、 これ▼久しく解脱分の善根を種ゑたる人なり。 今生に0390法を敬ひ、 人を重くし、 身命を惜しまず、 乃至小罪ももし懴すれば、 すなはちよく心髄に徹りて、 ◆よくかくのごとく懴すれば、 久近を問はず、 所有の重障みなたちまちに滅尽せしむることを致す。
此等ノ三品、雖モ↠有リト↢差別↡、是久シク種ヱタル↢解脱分ノ善根ヲ↡人ナリ。致ス↠使ムルコトヲ↧今生ニ敬ヒ↠法ヲ重クシ↠人ヲ、不↠惜マ↢身命ヲ↡、乃至小罪モ若シ懴クユスレバ即チ能ク徹リテ↢心髄ニ↡、能ク如ク↠此クノ懴スレ者、不↠問ハ↢久近ヲ↡、所有ノ重障皆頓ニ滅尽セ↥。
^▼もしかくのごとくせざれば、 たとひ日夜十二時、 急に走むれども、 つひにこれ益なし。 *差うてなさざるものは◆知んぬべし。 流涙・流血等にあたはずといへども、 ただよく*真心徹到するものは、 すなはち上と同じ」 と。 以上
若シ不レバ↠如クセ↠此クノ、縦使ヒ日夜十二時、急ニ走ムレドモハシル 終ニ是無シ↠益。差フテ不ル↠作サ者ハ応シト↠知ヌ。雖モ↠不ト↠能ハ↢流涙・ナミダ流血等ニ↡、但能ク真心徹トホリ到スルイタル 者ハ、即チ与↠上同ジト。」 已上
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(a)(ト)¬観念法門¼
・護念縁
【26】^▼またいはく (*観念法門)、
又云ク、
^「▲すべて*余の雑業の行者を照摂すと論ぜず」 と。
「総テ不ト↠論ゼ↣照↢摂スト余ノ雑業ノ行者ヲ↡。」
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(a)(チ)¬法事讃¼
・転経分
【27】^▼またいはく (*法事讃・下)、
又0194云ク、
^「▲如来五濁に出現して、 ▼宜しきに随ひて方便して群萌を化したまふ。 ▼あるいは多聞にして得度すと説き、 ▼あるいは少しき解りて三明を証すと説く。
「如来出↢現シテ於五濁ニ↡ | 随ヒテ↠宜キニ方便シテ化シタマフ↢群萌ヲ↡ |
或イハ説キ↢多聞ニ而得度スト↡ | 或イハ説ク↣少シキ解リテ証スト↢三明ヲ↡ |
^◆あるいは福慧ならべて障を除くと教へ、 ▼あるいは禅念して坐して思量せよと教ふ。 ▼種々の法門みな解脱す」 と。
或イハ教ヘ↢福サイワイ恵メグム双ベテ除クト↟障ヲ | 或イハ教フ↢禅念シテ座シテ思量セヨト↡ |
種種ノ法門皆解脱スト」 |
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(a)(リ)¬般舟讃¼二文
・正讃
【28】^▼またいはく (*般舟讃)、
又云ク、
^「▲万劫▼功を修せんことまことに続きがたし。 一時に煩悩百たび千たび間はる。
もし娑婆にして▼法忍を証せんことを待たば、 ▼六道にして恒沙の劫にもいまだ期あらじ。
「万劫修セムコト↠功ヲ実ニ難シ↠続キ | 一時ニ煩悩百タビ千タビ間ル |
若シ待タバ↣娑婆ニシテ証セムコトヲ↢法忍ヲ↡ | 六道ニシテ恒沙ノ劫ニモ未 ジ ダ↠期アラ |
^▲門々不同なるを漸教と名づく。 万0391劫▼苦行して▼無生を証す。
畢命を期としてもつぱら念仏すべし。 ▼須臾に命断ゆれば、 仏迎へ将てまします。
門門不同ナルヲ名ク↢漸教ト↡ | 万劫苦行シテ証ス↢无生ヲ↡ |
畢命ヲ為テ↠期ト専ラ念仏スベシ | 須スベカラク臾ニ命断フレバ、仏迎ヘ将テマシマス |
^◆一食の時なほ間あり、 いかんが万劫貪瞋せざらん。
▼貪瞋は人天を受くる路を障ふ。 三悪・四趣のうちに身を安んず」 と。 抄要
一食之時尚有リ↠間 | 如何ガ万劫不ラム↢貪瞋セ↡ |
貪瞋ハ障フ↧受クル↢人天ヲ↡路ヲ↥ | 三悪・四趣ノ内ニ安ズト↠身ヲ」 抄要 |
・定散倶回
【29】^▼またいはく (般舟讃)、
又云ク、
^「▲定散ともに回して宝国に入れ。 すなはちこれ如来の異の方便なり。
◆韋提はすなはちこれ女人の相、 貪瞋具足の凡夫の位なり」 と。 以上
「定散倶ニ回シテ入レ↢宝国ニ↡ | 即チ是如来ノ異ノ方便ナリ |
韋提ハ即チ是女人ノ相 | 貪瞋具足ノ凡夫ノ位ナリト」 已上 |
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(a)(ヌ)¬論註¼
・真実功徳釈
【30】^▼¬*論の註¼ (上) にいはく、
¬論ノ註ニ¼曰ク、
^「▲二種の功徳相あり。 一つには有漏の心より生じて法性に順ぜず。 いはゆる凡夫、 人天の諸善、 人天の果報、 もしは因、 もしは果、 みなこれ顛倒す、 みなこれ虚偽なり。 ゆゑに▼不実の功徳と名づく」 と。 以上
「有リ↢二種ノ功徳相↡。一ニ者従リ↢有漏ノ心↡生ジテ不↠順ゼ↢法性ニ↡。所ル↠謂ハ凡夫、人天ノ諸善、人天ノ果報、若シハ因若シハ果、皆是顛倒ス、皆是虚偽ナリヘツラウ 。故ニ名クト↢不実ノ功徳ト↡。」 已上
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(a)(ル)¬安楽集¼二文
・化前の経意
【31】^▼¬*安楽集¼ (上) にいはく、
¬安楽集ニ¼云ク、
^「▲¬*大集経¼ の ª月蔵分º を引きていはく、 ª^▼わが末法の時のなかに、 億々の衆生、 行を起し道を修せんに、 ▼いまだ一人も得るものあらじº と。
「引キテ↢¬大集経ノ¼月蔵分ヲ↡言ハク、▼我ガ末法ノ時ノ中ニ億億ノ衆生、起シ↠行ヲ修セムニ↠道ヲ、未ジ ダト↠有ラ↢一人モ得ル者↡。
^◆当今は末法なり。 この五濁悪世には、 ▼ただ浄土の一門ありて、 通入すべき路なり」 と。
当今ハ末法ナリ。是ノ五濁悪世ニハ、唯有リテ↢浄土ノ一門↡可キ↢通入0195ス↡路ナリト。」
・末法
【32】^▼またいはく (安楽集・下)、
又云ク、
^「▲いまだ一万劫を満たざるこのかたは、 つね0392にいまだ火宅を勉れず、 顛倒墜堕するがゆゑに。 おのおの功を用ゐることは至りて重く、 獲る報は偽なり」 と。 以上
「未ダル↠満タ↢一万劫ヲ↡已来タハ恒ニ未ズ ダ↠勉レ↢火宅ヲ↡、顛倒墜オツ堕オツスルガ故ニ。各ノ用↠功ハ至リテ重ク、※獲ル報ハ偽ヘツラウ也ラウト。」 已上
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)釈義
(イ)通じて三経を判ず
【33】^▼しかるに、 いま ¬大本¼ (大経) によるに、 真実・方便の願を超発す。 また ▼¬観経¼ には、 方便・真実の教を顕彰す。 ▼¬小本¼ (小経) には、 ただ真門を開きて方便の善なし。 ここをもつて三経の真実は、 選択本願を宗とするなり。 また三経の方便は、 すなはちこれもろもろの善根を修するを要とするなり。
然ルニ今拠キヨルニ↢¬大本ニ¼↡、超↢発ス真実・方便之願ヲ↡。亦¬観経ニハ¼顕↢*彰ス方便・真実之教ヲ↡。¬小本ニハ¼唯開キテ↢真門ヲ↡無シ↢方便之善↡。是ヲ以テ三経ノ真実ハ、選択本願ヲ為ル↠宗ト也。復三経ノ方便ハ、即チ是修スルヲ↢諸ノ善根ヲ↡為ル↠要ト也。
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)(ロ)別して観経を釈す
[一]今経に就きて釈す
[Ⅰ]仏願を挙げて法義を標す
^▼これによりて△方便の願 (第十九願) を案ずるに、 仮あり真あり、 また行あり信あり。 ▽願とはすなはちこれ臨終現前の願なり。 ▽行とはすなはちこれ修諸功徳の善なり。 ▽信とはすなはちこれ至心・発願・欲生の心なり。
依リテ↠此ニ按ズルニ↢方便之願ヲ↡、有リ↠仮有リ↠真、亦有リ↠行有リ↠信。願ト者即チ是臨終現前之願也。行ト者即チ是修諸功徳之善也。信ト者即チ是至心・発願・欲生之心也。
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)(ロ)[一][Ⅱ]開説に真仮有るを示す
[ⅰ]方便を明かす
^この願の行信によりて、 浄土の要門、 方便権仮を顕開す。
依リテ↢此ノ願之行信ニ↡、顕↢開ス浄土之要門、方便権仮ヲ↡。
^この要門より*正・助・雑の三行を出せり。 この正助のなかについて、 専修あり雑修あり。 ▽機について二種あり。 一つには*定機、 二つには*散機なり。
従リ↢此ノ要門↡出セリ↢正・助・ タスク 雑ノ三行ヲ↡。就テ↢此ノ正助ノ中ニ↡、有リ↢専修↡有リ↢雑修↡。就テ↠機ニハタモノ有リ↢二種↡。一ニ者定機、二ニ者散機也。
^また△↓二種の三心あり。 また↓二種の▽往生あり。
又有リ↢二種ノ三心↡。亦有リ↢二種ノ往生↡。
^↑二種の三心とは、 一つには定の三心、 二つには散の三心なり。 定散の心はすなはち自利各別の心なり。
二種ノ三心ト者、一ニ者定ノ三心、二ニ者散ノ三心ナリ。定散ノ心者即チ自利各別ノ心也。
^↑二種の往0393生とは、 一つには*即往生、 二つには*便往生なり。 便往生とはすなはちこれ胎生辺地、 双樹林下の往生なり。 即往生とはすなはちこれ報土化生なり。
二種ノ往生ト者、一ニ者即往生、二ニ者便タヨリ往生ナリ。便往生ト者即チ是胎生辺地、双ナラブ樹林下ノ往生也。即往生ト者即チ是報土化生也。
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)(ロ)[一][Ⅱ][ⅱ]真実を明かす
^またこの ¬経¼ (観経) に真実あり。 これすなはち金剛の真心を開きて、 摂取不捨を顕さんと欲す。 しかれば、 濁世*能化の釈迦*善逝、 至心信楽の願心を宣説したまふ。 報土の真因は信楽を正とするがゆゑなり。
亦此ノ¬経ニ¼有リ↢真実↡。斯乃チ開キテ↢金剛ノ真心ヲ↡、欲ス↠顕サムト↢摂取不0196捨ヲ↡。然レ者濁世能化ノ釈迦善逝、ユク サル宣ノベ↢説シタマフ至心信 楽コノミネガフ之願心ヲ↡。報土ノ真因ハ信楽ヲ為ルガ↠正ト故也。
^ここをもつて ¬大経¼ には 「▲信楽」 とのたまへり、 如来の誓願、 疑蓋雑はることなきがゆゑに信とのたまへるなり。 ¬観経¼ には 「▲深心」 と説けり、 諸機の浅信に対せるがゆゑに深とのたまへるなり。 ¬小本¼ (小経) には 「▲一心」 とのたまへり、 二行雑はることなきがゆゑに一とのたまへるなり。 また一心について深あり浅あり。 深とは利他真実の心これなり、 浅とは定散自利の心これなり。▼
是ヲ以テ¬大経ニハ¼言ヘリ↢「信楽ト」↡、如来ノ誓願、疑蓋フタ无キガ↠雑ルコト故ニ言ヘル↠信ト也。¬観経ニハ¼説ケリ↢「深心ト」↡、対スルガムカフ ↢諸機ノ浅信ニ↡故ニ言ヘル↠深ト也。¬小本ニハ¼言ヘリ↢「一心ト」↡、二行無キガ↠雑ハルコト故ニ言ヘル↠一ト也。復就テ↢一心ニ↡有リ↠深有リ↠浅。深ト者利他真実之心是也、浅ト者定散自利之心是也。
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)(ロ)[二]一代に就きて釈す
[Ⅰ]釈を挙げて意を述ぶ
[ⅰ]引文
【34】^宗師 (善導) の意によるに、 「^▲心によりて勝行を起せり。 ↓門八万四千に↓余れり。 漸頓すなはちおのおの所宜に称へり。 縁に随ふものすなはちみな解脱を蒙る」 (玄義分) といへり。
依ルニ↢宗師ノ意ニ↡、云ヘリ↧「依リテ↠心ニ起セリ↢於勝行ヲ↡、門余レリ↢八万四千ニ↡、漸頓則チ各ノ称ヒテ↢所宜ヨロニシ↡、随フ↠縁ニ者則チ皆蒙レリト↦解脱ヲ↥。」
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ]難易・権実の意を述ぶ
^▼しかるに常没の凡愚、 定心修しがたし、 ▼*息慮凝心のゆゑに。 散心行じがたし、 ▼*廃悪修善のゆゑに。 こ0394こをもつて▼*立相住心なほ成じがたきがゆゑに、 「^▲たとひ千年の寿を尽すとも、 法眼いまだかつて開けず」 (定善義) といへり。
然ルニ常没ノ凡愚、定心難シ↠修シ、息ヤメテ 慮オモンパカリ凝コラス心ノ故ニ。散心難シ↠行ジ、廃ステヽ悪修善ノ故ニ。是ヲ以テ立相住心尚難キガ↠成ジ故ニ言ヘリ↧「縦ヒ尽ストモ↢千年ノ寿ヲ↡、法眼未ズ ダト↦曽テ開ケ↥。」
^いかにいはんや、 ▼*無相離念まことに獲がたし。 ゆゑに、 「^▲如来はるかに末代罪濁の凡夫を知ろしめして、 相を立て心を住すとも、 なほ得ることあたはじと。 いかにいはんや、 相を離れて事を求めば、 術通なき人の空に居て舎を立てんがごときなり」 (定善義) といへり。
何ニ況ヤ无相離↠念誠ニ難シ↠獲。故ニ言ヘリ↩「如来懸ニ知ス↢末代罪濁ノ凡夫ヲ↡、立↠相住↠心、尚不ト↠能ハ↠得ルコト、何ニ況ヤ離レ↠相ヲ而求メ↠事ヲ者、如↧似キ无キ↢術通↡人ノ居テ↠空ニ立テムガ↞舎イヱヲ也ト。」↨
・門釈
^▼「門余」 といふは、 「↑門」 はすなはち八万四千の仮門なり、 「↑余」 はすなはち▼本願一乗海なり。
言フ↢門余ト↡者、門者即チ八万四千ノ仮門也、余者則チ本願一乗海也。
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅱ]詳らかに法相を判ず
[ⅰ]聖道門を明かす
【35】^▼おほよそ*一代の教について、 この界のうちにして*入聖得果するを聖道門と名づく、 難行道といへり。 この門のなかについて、 大・小、 漸・頓、 一乗・二乗・三乗、 権・実、 顕・密、 ▼竪出・竪超あり。 すなはちこれ自力、 *利他教化地、 方便権門の道路なり。
凡ソ就テ↢一代ノ教ニ↡、於テ↢此ノ界ノ中ニ↡入聖得果スルヲ名ク↢聖道門ト↡、云ヘリ↢難行道ト↡。就テ↢此ノ門ノ中ニ↡、有リ↢大・小、漸・頓、一乗・二乗・三乗、権・実、顕・密、竪タトサマ出・竪超↡。則チ是自力利0197他教化地、方便権門之道路也。
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅱ][ⅱ]浄土門を明かす
^安養浄刹にして*入聖証果するを浄土門と名づく、 易行道といへり。 この門のなかについて、 ▼↓横出・↓横超、 ↓仮・↓真、 ↓漸・↓頓、 ↓助↓正・↓雑行、 雑修・専修あるなり。
於テ↢安養浄刹ニ↡入聖証果スルヲ名ク↢浄土門ト↡、云ヘリ↢易行道ト↡。就テ↢此ノ門ノ中ニ↡、有ル↢横出・横超、仮・真、漸・頓、助正・雑行、雑修・専修↡也。
・正助雑釈
^↑正とは五種の正行なり。 ↑助とは名号を除きて以外の*五種これなり。 ↑雑行とは、 ↓正助を除きて以外をことごとく雑行と名づく。 これすなはち↑横出・↑漸0395教、 定散・三福、 三輩・九品、 自力↑仮門なり。
正ト者五種ノ正行也。助ト者除キテ↢名号ヲ↡已外ノ*五種是也。雑行ト者、除キテ↢正助ヲ↡已外ヲ悉ク名ク↢雑行ト↡。此乃チ横出・漸教、定散・三福、三輩・九品、自力仮門也。
・横超釈
^↑横超とは、 本願を憶念して自力の心を離る、 これを横超他力と名づくるなり。 これすなはち▼専のなかの専、 ↑頓のなかの頓、 ↑真のなかの真、 乗のなかの一乗なり。 これすなはち真宗なり。 △すでに真実行のなかに顕しをはんぬ。
横超ト者、憶↢念シテ本願ヲ↡離ルヽ↢自力之心ヲ↡、*是ヲ名クル↢横超他力ト↡也。斯即チ専ノ中之専、頓ノ中之頓、真ノ中之真、乗ノ中之一乗ナリ。斯乃チ真宗也。已ニ顕シ↢真実行之中ニ↡畢ヌ。
・雑行釈
【36】^▼それ雑行雑修、 その言一つにして、 その意これ異なり。 雑の言において万行を摂入す。 五正行に対して五種の雑行あり。 雑の言は、 人・天・菩薩等の*解行、 雑せるがゆゑに雑といへり。 もとより往生の因種にあらず、 *回心回向の善なり。 ゆゑに浄土の雑行といふなり。
夫雑行雑修、其ノ言一ニ而其ノ意惟異ナリ。於イテ↢雑之言ニ↡摂↢入ス万行ヲ↡。対シテ↢*五正行ニ↡有リ↢五種ノ雑行↡。雑ノ言ハ、人・天・菩薩等ノ解行、雑セルガ故ニ曰ヘリ↠雑ト。自リ↠本非ズ↢往生ノ因種ニ↡、廻心回向之善ナリ。故ニ曰フ↢浄土之雑行ト↡也。
^▼また雑行について、 ↓専行あり↓専心あり、 また↓雑行あり↓雑心あり。
復就テ↢雑行ニ↡、有リ↢専行↡有リ↢専心↡、復有リ↢雑行↡有リ↢雑心↡。
・専
^↑専行とはもつぱら一善を修す、 ゆゑに専行といふ。 ↑専心とは回向をもつぱらにするがゆゑに専心といへり。
専行ト者専ラ修ス↢一善ヲ↡、故ニ曰フ↢専行ト↡。専心ト者専ニスルガ↢回向ヲ↡故ニ曰ヘリ↢専心ト↡。
・雑
^雑行雑心とは、 諸善兼行するがゆゑに↑雑行といふ、 *定散心雑するがゆゑに↑雑心といふなり。
雑行雑心ト者諸善兼カネテ行スルガ故ニ曰フ↢雑行ト↡、定散心雑スルガ故ニ曰フ↢雑心ト↡也。
・正助釈
^また↑正・助について↓専修あり↓雑修あり。 この雑修について専心あり雑心あり。
亦就テ↢正・助ニ↡有リ↢専修↡有リ↢雑修↡。就テ↢此ノ雑修ニ↡有リ↢専心↡有リ↢雑心↡。
^↑専修について二種あり。 一つにはただ仏名を称す、 二つには▼五専あり。 この行業について↓専心あり↓雑心あり。 五専とは、 一つには専礼、 二つには専読、 三つには専観、 四つには専称、 五0396つには専讃嘆なり。 これを五専修と名づく。 専修、 その言一つにして、 その意これ異なり。 すなはちこれ定専修なり、 また散専修なり。
就テ↢専修ニ↡有リ↢二種↡。一ニ者唯称ス↢仏名ヲ↡、二ニ者有リ↢五専↡。就テ↢此ノ行業ニ↡有リ↢専心↡0198有リ↢雑心↡。五専ト者、一ニハ専礼、二ニハ専読、三ニハ専観、四ニハ専*名、五ニハ専讃嘆ナリ。是ヲ名ク↢五ノ専修ト↡。専修其ノ言一ニ而其ノ意惟異ナリ。即チ是定専修ナリ、復散専修也。
^↑専心とは、 五正行をもつぱらにして、 二心なきがゆゑに専心といふ。 すなはちこれ定専心なり、 またこれ散専心なり。
専心ト者、専ラニ↢五正行ヲ↡而無キガ↢二心↡故ニ曰フ↢専心ト↡。即チ是定専心ナリ、復是散専心也。
^↑雑修とは、 助正兼行するがゆゑに雑修といふ。
雑修ト者、助正兼行スルガ故ニ曰フ↢雑修ト↡。
^↑雑心とは、 定散の心雑するがゆゑに雑心といふなり、 知るべし。
雑心ト者、定散ノ心雑スルガ故ニ曰フ↢雑心ト↡也、応シ↠知ル。
・諸師釈
^おほよそ浄土の一切諸行において、 ▼綽和尚 (道綽) は 「▲万行」 (安楽集・下) といひ、 導和尚 (善導) は 「▲雑行」 (散善義) と称す。 感禅師 (懐感) は 「▲諸行」 (群疑論) といへり。 信和尚 (源信) は感師により、 空聖人 (源空) は▲導和尚によりたまふ。
凡ソ於イテ↢浄土ノ一切諸行ニ↡、綽和尚ハ云ヒ↢「万行ト」↡、*導和尚ハ称ス↢「雑行ト」↡。感禅師ハ云ヘリ↢「諸行ト」↡。信和尚ハ依レリ↢感師ニ↡。空聖人ハ依リタマフ↢導和尚ニ↡也。
^*経家によりて師釈を披くに、 雑行のなかの雑行雑心・雑行専心・専行雑心あり。 また正行のなかの専修専心・専修雑心・雑修雑心は、 これみな辺地・胎宮・懈慢界の業因なり。 ゆゑに極楽に生ずといへども三宝を見たてまつらず。 ▼仏心の光明、 余の雑業の行者を照摂せざるなり。
▼拠リテ↢経家ニ↡披クニ↢師釈ヲ↡、雑行之中ノ雑行雑心・雑行専心・専行雑心ナリ。亦正行之中ノ専修専心・専修雑心・雑修雑心ハ、此皆辺地・胎宮・懈慢界ノ業因ナリ。故ニ雖モ↠生ズト↢極楽ニ↡不↠見タテマツラ↢三宝ヲ↡。仏心ノ光明、不ル↣照↢摂セ余ノ雑業ノ行者ヲ↡也。
^◆仮令の誓願 (第十九願) まことに由あるかな。 *仮門の教、 ▲欣慕の釈、 これいよいよあきらかなり。
◆仮令之誓願良ニ有ル↠由哉。仮門之教、忻ネガイ慕之シタフ 釈、是弥明カ也。
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(c)正答
^二経の三心、 顕の義によれば異なり、 彰の義によれば一なり。
二経之三心、依レバ↢顕之義ニ↡異也、依レバ↢彰内ニアラハス之義ニ↡一也。
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅱ)結答
^▼三心一異の0397義、 答へをはんぬ。▼
三心一異之義、答ヘ竟ヌト。
一 Ⅰ ⅱ b ロ 小経の一心を釈す【小経隠顕】
(一)問
【37】^▼また問ふ。 ¬大本¼ (大経) と ¬観経¼ の三心と、 ¬小本¼ (小経) の*一心と、 一異いかんぞや。
又問フ。¬大本ト¼¬観経ノ¼三心ト、与↢¬小本ノ¼一心↡、一異云何ゾヤ。
一 Ⅰ ⅱ b ロ (二)答
(Ⅰ)正釈
(ⅰ)正弁
(a)隠顕有ることを明かす
^答ふ。 ▼いま方便真門の誓願について、 行あり信あり。 また真実あり方便あり。
答フ。今就テ↢方便真門0199ノ誓願ニ↡、有リ↠行有リ↠信。亦有リ↢真実↡有リ↢方便↡。
^△願とはすなはち植諸徳本の願これなり。 △行とはこれに二種あり。 一つには善本、 二つには徳本なり。
願ト者即チ*植ウヽル諸徳本之願是也。行ト者此ニ有リ↢二種↡。一ニ者善本、二ニ者徳本也。
^△信とはすなはち至心・回向・欲生の心これなり。 二十願なり ^△機について定あり散あり。
信ト者即チ至心・回向・欲生之心*是也。*廿願也 就テ↠機ニ有リ↠定有リ↠散。
^△往生とはこれ難思往生これなり。 ^△仏とはすなはち化身なり。 ^△土とはすなはち疑城胎宮これなり。
往生ト者此難思往生是也。仏ト者即チ化身ナリ。土ト者即チ疑城ミヤコ胎宮是也。
・標挙
^¬観経¼ に*准知するに、 ▼この ¬経¼ (小経) にまた↓顕↓彰隠密の義あるべし。
准↢ナズラウ知スルニ¬観経ニ¼↡、此ノ¬経ニ¼亦応シ↠有ル↢顕彰隠密之義↡。
・顕義
^△↑顕といふは、 ▼経家は一切諸行の少善を*嫌貶して、 善本徳本の真門を開示し、 自利の一心を励まして難思の往生を勧む。
言フ↠顕ト者、経家ハ嫌キラフ↢貶シテオトシム 一切諸行ノ少善ヲ↡、開↢示シ善本徳本ノ真門ヲ↡、励シテ↢自利ノ一心ヲ↡勧ム↢難思ノ往生ヲ↡。
^ここをもつて ¬経¼ (小経) には 「▲*多善根・多功徳・多福徳因縁」 と説き、 釈 (法事讃・下) には 「^▲九品ともに回して不退を得よ」 といへり。 あるいは 「▲無過念仏往西方三念五念仏来迎」 (法事讃・意) といへり。
是ヲ以テ¬経ニハ¼説キ↢「多善根・多功徳・多福徳因縁ト」↡、¬釈ニハ¼云ヘリ↣「九品倶ニ回シテ得ヨト↢不退ヲ↡。」或イハ云ヘリ↢「無過念仏往西方三念五念仏来迎ト」↡
^これはこれ、 この ¬経¼ (小経) の顕の義を示すなり。 これすなはち真門のなかの方便なり。
此ハ*是此ノ¬経ノ¼示ス↢顕ノ義ヲ↡也。此乃チ真門ノ中之方便也。
・彰義
^△↑彰といふは、 真0398実難信の法を彰す。 これすなはち不可思議の願海を光闡して、 無礙の大信心海に帰せしめんと欲す。
言フ↠彰ト者彰ス↢真実難信之法ヲ↡。斯乃チ光↢闡シテヒラク 不可思議ノ願海ヲ↡、欲ス↠令メムト↠帰セ↢*无ノ大信心海ニ↡。
^まことに勧め、 すでに恒沙の勧めなれば、 信もまた*恒沙の信なり。 ゆゑに甚難といへるなり。 釈 (法事讃・下) に、 「^▲ただちに弥陀の弘誓重なれるをもつて、 凡夫念ずればすなはち生ぜしむることを致す」 といへり。
良ニ勧メ既ニ恒沙ノ勧ナレバ、信モ亦恒沙ノ信ナリ。故ニ言ヘル↢甚ハナハダ難ト↡也。¬釈ニ¼云ヘリ↧「直ニ為テ↢弥陀ノ弘誓重レルニ↡致スト↞使ムルコトヲ↢凡夫念ズレバ即チ生ゼ↡」
^これはこれ、 隠彰の義を開くなり。
斯ハ是開ク↢隠彰ノ義ヲ↡也。
一 Ⅰ ⅱ b ロ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)別して実義を弁ず
・執持一心釈
^▼¬経¼ (小経) に 「▲執持」 とのたまへり。 また 「▲一心」 とのたまへり。 ^「執」 の言は心*堅牢にして移転せざることを彰すなり。 ▲「持」 の言は不散不失に名づくるなり。 ^「一」 の言は無二に名づくるの言なり。 「心」 の言は真実に名づくるなり。
¬経ニ¼言ヘリ↢「執持ト」↡。亦言ヘリ↢「一心ト」↡。執ノ言ハ彰ス↣心堅カタク牢ニカタシ而不ルコトヲ↢移ウツリ転セウツル↡也。持ノ言ハ名クル↢不散不失ニ↡也。一之言者名クル↢无二ニ↡之言也。心之言者名クル↢真実ニ↡也。
・無問自説経
^▼この ¬経¼ (小経) は大乗修多羅のなかの*無問自説経なり。 しかれば如来、 世に興出したまふゆゑは、 恒沙の諸仏の証護の正意、 ただこれにあるなり。
斯ノ¬経ハ¼大乗修多羅ノ中之无問自説経也。爾レ者如来所↣以ハ興↢出シタマフ於0200世ニ↡、恒沙ノ諸仏ノ証護ノマモル正意、唯在ル↠斯ニ也。
・列祖弘伝
^▼ここをもつて*四依弘経の大士、 *三朝浄土の宗師、 真宗念仏を開きて、 濁世の邪偽を導く。
是ヲ以テ四依弘経ノ大士、三朝浄土ノ宗師、開キテ↢真宗念仏ヲ↡導ク↢濁世ノ邪偽ヲイツハル↡。
・三経大綱
^▼三経の大綱、 顕彰隠密の義ありといへども、 信心を彰して能入とす。 ゆゑに経のはじめに 「如是」 と称す。
三経ノ大綱ツナ、雖モ↠有リト↢顕彰隠蜜之義↡、彰シテ↢信心ヲ↡為↢能入ト↡。故ニ経ノ始ニ称ス↢「如是ト」↡。
^「如是」 の義はすなはちよく信ずる相なり。 いま三経を案ずるに、 みなもつて金剛の真心を最要とせり。 真心はすなはちこれ大信心なり。 大信心は希有・最勝0399・真妙・清浄なり。 なにをもつてのゆゑに、 ▼大信心海ははなはだもつて入りがたし、 仏力より発起するがゆゑに。 ▼真実の*楽邦はなはだもつて往き易し、 願力によりてすなはち生ずるがゆゑなり。
如是之義ハ則チ善ク信ズル相也。今按ズルニ↢三経ヲ↡、皆以テ金剛ノ真心ヲ為リ↢最要ト↡。真心ハ即チ是大信心ナリ。大信心ハ希有・最勝・真妙・清浄ナリ。何ヲ以テノ故ニ。大信心海ハ甚ダ以テ叵ハ反シ↠入リ、従リ↢仏力↡発起スルガ故ニ。真実ノ楽邦クニ甚ダ以テ易シ↠往キ、籍リテ↢願力ニ↡即チ生ズルガ故ナリ。
一 Ⅰ ⅱ b ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)結成
^いままさに一心一異の義を談ぜんとす、 まさにこの意なるべしと。
今将ス ニ↠談ゼムト↢一心一異ノ義ヲ↡、当ベ ニシト此ノ意ナル↡也。
一 Ⅰ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)結答
^三経一心の義、 答へをはんぬ。
三経一心之義、答ヘ竟ヌ。
一 Ⅰ ⅱ c 第二十願を釈す【真門釈】
イ 略して勧発す【説意出願】
【38】^▼それ濁世の道俗、 すみやかに円修至徳の真門に入りて、 難思往生を願ふべし。
夫濁世ノ道俗、応シ↧速ニ入リテ↢円修至徳ノ真門ニ↡、願フ↦難思往生ヲ↥。
一 Ⅰ ⅱ c ロ 正しく義を明かす
(一)直釈
・真門行信
^真門の方便につきて、 ↓善本あり↓徳本あり。 また定↓専心あり、 また散専心あり、 また定散↓雑心あり。
就キテ↢真門之方便ニ↡、有リ↢善本↡有リ↢徳本↡。復有リ↢定専心↡、復有リ↢散専心↡、復有リ↢定散雑心↡。
^↑雑心とは、 大小・凡聖・一切善悪、 おのおの*助正間雑の心をもつて名号を称念す。 まことに*教は頓にして根は漸機なり。 行は専にして心は間雑す。 ゆゑに雑心といふなり。
雑心ト者、大小・凡聖・一切善悪、各ノ以テ↢助正間雑ノ心ヲ↡称↢念ス名号ヲ↡。良ニ教者頓ニ而根者漸機ナリ。行者専ニ而心者間雑ス。故ニ曰フ↢雑心ト↡也。
^▼定散の↑専心とは、 罪福を信ずる心をもつて本願力を願求す、 これを自力の専心と名づくるなり。
定散之専心ト者、以テ↧信ズル↢罪福ヲ↡心ヲ↥願↢求ス本願力ヲ↡、是ヲ名クル↢自力之専心ト↡也。
^↑善本とは如来の嘉名なり。 この嘉名は万善円備せり、 一切善法の本なり。 ゆゑに善本といふなり。
善本ト者如来ノ嘉ヨシ名ナリ。此ノ嘉名者万善円 備セリ、ソナハル ツブサナリ一切善法之本ナリ。故ニ曰フ↢善本ト↡也。
^↑徳本とは如来の徳号なり。 この徳号は一声称念するに、 至徳成満し衆禍みな転ず、 十方三世の徳号の本なり。 ゆゑに徳本といふなり。
徳本ト者如来ノ徳号ナリ。此ノ徳号者一声称念スルニ、至徳成満シ衆 禍ワザワイ皆転ズ、十方三世0201ノ徳号之本ナリ。故ニ曰フ↢徳本ト↡也。
・二尊能化
^しかればすなはち、 釈迦牟尼仏は、 功徳蔵を開演して、 十方濁世を勧化したまふ。 阿弥陀如来はもと*果遂の誓 こ0400の果遂の願とは二十願なり を発して、 諸有の群生海を悲引したまへり。
然レバ則チ釈迦牟尼仏ハ、開↢演シテ功徳蔵ヲ↡、勧↢化メグムシタマフ十方濁世ヲ↡。阿弥陀如来ハ本発シテ↢果遂ハタシトゲム之誓ヲ↡ *此ノ果遂之願ト者廿願也 悲↢引シタマヘリ諸有ノ群生海ヲ↡。
・出願
^▼すでにして悲願います。 ▼植諸徳本の願と名づく、 また▼係念定生の願と名づく、 また▼不果遂者の願と名づく、 また▼至心回向の願と名づくべきなり。▼
既ニ而有ス↢悲願↡。名ク↢植ウヽル諸徳本之願ト↡、復名ク↢係カク念定生之願ト↡、復名ク↢不果遂者之願ト↡、亦可キ↠名ク↢至心回向之願ト↡也。
一 Ⅰ ⅱ c ロ (二)引文
(Ⅰ)通じて上釈を成ず
(ⅰ)正証
(a)引経
(イ)因願成就を示す
[一]¬大経¼三文
・第二十願文
【39】^▼ここをもつて ¬大経¼ (上) の願 (第二十願) にのたまはく、
是ヲ以テ¬*大経ノ¼願ニ言ハク、
^「▲たとひわれ仏を得たらんに、 十方の衆生、 ▼わが名号を聞きて、 念をわが国に係けて、 もろもろの徳本を植ゑて、 心を至し回向してわが国に生ぜんと欲はん。 ▼果遂せずは正覚を取らじ」 と。
「*設ヒ我得タラムニ↠仏ヲ、十方ノ衆生、聞キテ↢我ガ名号ヲ↡、係ケテ↢念ヲ我ガ国ニ↡、*植ヱテ↢諸ノ徳本ヲ↡、至シ↠心ヲ回向シテ欲ハム↠生ゼムト↢我ガ国ニ↡。不↢果遂セハタシトゲ ↡者不ト↠取ラ↢正覚ヲ↡。」
・胎生得失
【40】^▼またのたまはく (大経・下)、
又言ハク、
^「▲この*諸智において疑惑して信ぜず、 しかるになほ罪福を信じて、 善本を修習して、 その国に生ぜんと願ぜん。 ◆このもろもろの衆生、 かの宮殿に生ず」 と。
「於テ↢此ノ諸智ニ↡疑惑シテ不↠信ゼ、然ルニ猶信ジテ↢罪福ヲ↡、修↢習シテ善本ヲ↡、願ゼム↠生ゼムト↢其ノ国ニ↡。此ノ諸ノ衆生、生ズト↢彼ノ宮殿ニ↡。」
・果遂の益
【41】^▼またのたまはく (大経・下)、
又言ク、
^「▲もしひと善本なければ、 この経を聞くことを得ず。 清浄に戒を有てるもの、 いまし正法を聞くことを獲ん」 と。 以上
「若シ人无ケレバ↢善本↡ | 不↠得↠聞クコトヲ↢此ノ経ヲ↡ |
清浄ニ有テル↠戒ヲ者 | 乃シ獲ムト↠聞クコトヲ↢正法ヲ↡」 已上 |
一 Ⅰ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(a)(イ)[二]¬如来会¼
【42】^▼¬*無量寿如来会¼ (上) にのたまはく、
¬無量寿如来会ニ¼言ハク、
^「▲もしわれ成仏せんに、 無量国のなかの所有の衆生、 わが名を説かんを聞きて、 もつておのれが善根として極楽に回向せん。 ▼もし生れずは、 菩提を取らじ」 と。 以上
「*若シ我成仏セムニ、无量国ノ中ノ所有ノ衆生、聞キテ↠説カムヲ↢我ガ名ヲ↡、以テ己ガ善根トシテ回↢向セム極楽ニ↡。若シ不↠生レ者、不ト↠取ラ↢菩提ヲ↡。」 已上
一 Ⅰ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(a)(イ)[三]¬平等覚経¼
【040143】^▼¬*平等覚経¼ (二) にのたまはく、
¬平等覚経ニ¼言ク、
^「▲この功徳あるにあらざる人は、 この経の名を聞くことを得ず。 ただ清浄に戒を有てるもの、 いまし還りてこの正法を聞く。
「非ザル↠有ルニ↢是ノ功徳↡人ハ | 不↠得↠聞クコトヲ↢是ノ経ノ名ヲ↡ |
唯有テル↢清浄ニ戒ヲ↡者 | 乃シ還リテ聞ク↢斯ノ正法ヲ↡ |
^▲悪と憍慢と蔽と懈怠とは、 もつて*この法を信ずること難し。 *宿世の時に仏を見たてまつれるもの、 楽みて世尊の教を*聴聞せん。
悪ト憍オゴル慢トアナドル蔽トオホフ 懈オコタ怠トハオコタル | 難シ↣以テ信ズルコト↢於此ノ法ヲ↡ |
宿世ノ時ニ見タテマツレル↠仏ヲ者 | 楽ミテ聴↢ユリテキク聞セム信ジテキク世尊ノ教ヲ↡ |
^▲人の命希に得べし。 仏は世にましませどもはなはだ値ひがたし。 *信慧ありて致るべからず。 もし聞見せば精進して求めよ」 と。 以上
人之命希ニ可シ↠得 | 仏ハ在セドモ↠世ニ甚ダ難シ↠値ヒ |
有リテ↢信*慧↡不↠可カラ↠*致ル | 若0202シ聞見セバ精モンハラ進シテコノム 求メヨト」 已上 |
一 Ⅰ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(a)(ロ)随自真実を示す
[一]¬観経¼
【44】^▼¬観経¼ にのたまはく、
¬観経ニ¼言ク、
^「▲仏、 阿難に告げたまはく、 ªなんぢよくこの語を持て。 この語を持てといふは、 すなはちこれ無量寿仏の名を持てとなりº」 と。 以上
「仏告ゲタマハク↢阿難ニ↡、汝好ク持テ↢是ノ語ヲ↡。持テトイフ↢是ノ語ヲ↡者、即チ是持テトナリト↢无量寿仏ノ名ヲ↡。」 已上
一 Ⅰ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(a)(ハ)真門の教相を示す
[一]¬小経¼
【45】^▼¬阿弥陀経¼ にのたまはく、
¬阿弥陀経ニ¼言ク、
^「▲少善根福徳の因縁をもつて、 かの国に生ずることを得べからず。 ◆阿弥陀仏を説くを聞きて、 名号を執持せよ」 と。 以上
「不↠可カラ↧以テ↢少善根福徳ノ因縁ヲ↡、得↞生ズルコトヲ↢彼ノ国ニ↡。聞キテ↠説クヲ↢阿弥陀仏ヲ↡執トリ↢持セヨト名号ヲ↡。」 已上
一 Ⅰ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)引釈
(イ)「定善義」
【46】^▼光明寺の和尚 (善導) のいはく (定善義)、
光明寺ノ和尚ノ云ク、
^「▲自余の衆行、 これ善と名づくといへども、 もし念仏に比ぶれば、 まつたく比校にあらざるなり。 このゆゑに、 諸経のなかに処々に広く念仏の功能を讃めたり。
「自余ノ衆行雖モ↠名クト↢是善ト↡、若シ比ブレ↢念仏ニ↡者、全ク非ザル↢比ナラブ校ニ↡タクラブ也。是ノ故ニ諸経ノ中ニ処処ニ広ク讃メタリ↢念仏ノ功能ヲ↡。
^◆¬無量寿経¼ の四十八願のなかのごとき、 ただ弥陀の名号を専念して生ずることを得と明かす。
如キ↢¬无量寿経ノ¼四十八願ノ中ノ↡、唯明ス↧専↢念シテ弥陀ノ名号ヲ↡得ト↞生ズルコトヲ。
^◆また ¬弥陀経¼ のなかのごとし、 一日七日弥陀の名号を専念して生ずる0402ことを得と。 ^また十方恒沙の諸仏の証誠虚しからざるなり。
又如シ↢¬弥陀経ノ¼中ノ↡、一日七日専↢念シテ弥陀ノ名号ヲ↡得ト↠生ズルコトヲ。又十方恒沙ノ諸仏ノ証成不ル↠虚シカラ也。
^◆またこの ¬経¼ (観経) の定散の文のなかに、 ただ名号を専念して生ずることを得と標す。
又此ノ¬経ノ¼定散ノ文ノ中ニ、唯標ス↧専↢念シテ名号ヲ↡得ト↞生ズルコトヲ。
^◆この例一つにあらざるなり。 広く念仏三昧を顕しをはんぬ」 と。
此ノ例非ザル↠一ニ也。広ク顕シ↢念仏三昧ヲ↡竟ヌト。」
一 Ⅰ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ロ)「散善義」三文
【47】^▼またいはく (散善義)、
*又云ク、
^「▲また決定して、 ¬弥陀経¼ のなかに、 十方恒沙の諸仏、 一切凡夫を証勧して、 決定して生ずることを得と深信せよと。 ▼乃至
「又決定シテ深↧信セヨト¬弥陀経ノ¼中ニ、十方恒沙ノ諸仏、証↢勧シテ一切凡夫ヲ↡、決定シテ得ト↞生ズルコトヲ。 乃至
^▲諸仏は言行あひ違失したまはず。 ◆たとひ釈迦一切凡夫を指勧して、 この一身を尽して専念専修して、 捨命以後さだめてかの国に生るるといふは、 すなはち十方の諸仏ことごとくみな同じく讃め、 同じく勧め、 同じく証したまふ。 なにをもつてのゆゑに、 同体の大悲のゆゑに。 一仏の所化はすなはちこれ一切仏の化なり、 一切仏の化はすなはちこれ一仏の所化なり。
諸仏ハ言行不↢相違失シタマハ↡。縦令釈迦指ヘテ勧テ↢一切凡夫ヲ↡、尽シテ↢此ノ一身ヲ↡専念専修シテツクロフ、捨スツ命已後定メテ生ルヽトイフ↢彼ノ国ニ↡者、即チ十方ノ諸仏悉ク皆同ジク賛メ同ジク勧メ同ジク証シタマフ。何ヲ以テノ故ニ。同体ノ大悲ノ故ニ。一仏ノ所化ハ即チ是一切仏ノ化ナリ、一切仏ノ化ハ即0203チ是一仏ノ所化ナリ。
^◆すなはち ¬弥陀経¼ のなかに説かく、 ▼乃至 ◆ªまた一切凡夫を勧めて、 一日七日、 一心にして弥陀の名号を専念すれば、 さだめて往生を得んº と。
即チ¬弥陀経ノ¼中ニ説カク、 乃至 又勧メテ↢一切凡夫ヲ↡、一日七日、一心ニシテ専↢念スレバ弥陀ノ名号ヲ↡、定メテ得ムト↢往生ヲ↡。
^◆次下の文 (小経・意) にいはく、 ª^十方におのおの恒河沙等の諸仏ましまして、 同じく釈迦を讃めたまはく、 よく五濁悪時・悪世界・*悪衆生・悪煩悩・悪邪無信の盛んなるときにおいて、 弥陀の名号を指讃して衆生を勧励して称念せしむれば、 かならず往生を得º と。 ^すなは0403ちその証なり。
次下ノ文ニ云ク、十方ニ各ノ有シテ↢恒河沙等ノ諸仏↡、同ジク賛メタマハク↢釈迦ヲ↡、能ク於テ↢五濁悪時・悪世界・悪衆生・悪煩悩・悪邪无信ノ盛ナル時ニ↡、指↢賛シテ弥陀ノ名号ヲ↡勧↢励シテ衆生ヲ↡称念セシムレバ必ズ得ト↢往生ヲ↡。即チ其ノ証也。
^◆また十方仏等、 衆生の釈迦一仏の所説を信ぜざらんことを恐畏れて、 すなはちともに同心同時におのおの舌相を出して、 あまねく三千世界に覆ひて誠実の言を説きたまはく、 ª^なんだち衆生、 みなこの釈迦の所説・所讃・所証を信ずべし。 一切の凡夫、 罪福の多少、 時節の久近を問はず、 ただよく上百年を尽し、 下一日七日に至るまで、 一心に弥陀の名号を専念すれば、 さだめて往生を得ること、 かならず疑なきなりº と。
又十方仏等、恐↢畏レテ衆生ノ不ラムコトヲ↟信ゼ↢釈迦一仏ノ所説ヲ↡、即チ共ニ同心同時ニ各ノ出シテ↢舌相ヲ↡、徧ク覆ヒテ↢三千世界ニ↡説キタマハク↢誠実ノ言ヲ↡、汝等衆生、皆応シ↠信ズ↢是ノ釈迦ノ所説・所讃・所証ヲ↡。一切ノ凡夫、不↠問ハ↢罪福ノ多少、時節ノ久近ヲ↡、但能ク上尽シ↢百年ヲ↡、下至ルマデ↢一日七日ニ↡、一心ニ専↢念スレバ弥陀ノ名号ヲ↡、定メテ得ルコト↢往生ヲ↡必ズ无キ↠疑也ト。
^◆このゆゑに一仏の所説は、 一切仏同じくその事を証誠したまふなり。 ◆これを人に就いて信を立つと名づくるなり」 と。 抄要
是ノ故ニ一仏ノ所説ハ、一切仏同ジク証↢成シタマフ其ノ事ヲ↡也。此ヲ名クル↢就テ↠人ニ立ツト↟信ヲ也ト。 抄要
【48】^▼またいはく (散善義)、
又云ク、
^「▲しかるに仏願の意を望むには、 ただ正念を勧め、 名を称せしむ。 往生の義疾きことは、 ▼雑散の業には同じからず。 ▼この経および諸部のなかに処々に広く嘆ずるがごときは、 勧めて名を称せしむるを、 まさに要益とせんとするなり、 知るべし」 と。
「然ルニ望ムニ↢仏願ノ意ヲ↡者、唯勧メ↢正念ヲ↡称セシム↠名ヲ。往生ノ義疾キコトハ不↠同ジカラ↢雑散之業ニハ↡。如キハ↢此ノ経及ビ諸部ノ中ニ処処ニ広ク嘆ズルガ↡、勧メテ令ムルヲ↠称セ↠名ヲ将ス ニル↠為ムト↢要益ト↡也、応シト↠知ル。」
【49】^▼またいはく (散善義)、
又云ク、
^「▲ª仏告阿難汝好持是語º より以下は、 まさしく弥陀の名号を付嘱して、 遐代に流通することを明かす。 上よりこのかた定散両門の益を説くといへども、 仏の本願の意を望まんには、 衆生をして一向に0404もつぱら弥陀仏の名を称するにあり」 と。
「従リ↢仏告阿難汝好持是語↡已下ハ、正シク明ス↧付↢嘱シテ弥陀ノ名号ヲ↡、流↦通スルコトヲ於遐代ハルカニニ↥。上ヨリ来タ雖モ↠説クト↢定散両門之益ヲ↡、望マムニハ↢仏ノ本願ノ意ヲ↡、在リト↣衆生ヲシテ一向ニ専ラ称スルニ↢弥陀仏ノ名ヲ↡。」
一 Ⅰ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)¬法事讃¼三文
【50】^▼またいはく (法事讃・下)、
又0204云ク、
^「▲極楽は無為涅槃の界なり。 随縁の雑善おそらくは生じがたし。 ゆゑに如来 (釈尊) 要法を選びて、 教へて弥陀を念ぜしめてもつぱらにしてまたもつぱらならしめたまへり」 と。
「極楽ハ无為涅槃ノ界ナリ | 随縁ノ雑善恐クハ難シ↠生ジ |
故ニ使メタマヘリト↧如来選ビテ↢要法ヲ↡ | 教エテ念ゼシメテ↢弥陀ヲ↡専ラニシテ復専ナラ↥」 |
【51】^▼またいはく (法事讃・下)、
又云ク、
^「▲劫尽きなんと欲する時、 五濁盛んなり。 衆生邪見にしてはなはだ信じがたし。 もつぱらにしてもつぱらなれと指授して西路に帰せしめしに、 他のために破壊せられて還りて故のごとし。
「劫欲スル↠尽キナムト時五濁盛ナリ | 衆生邪見ニシテ甚ダ難シ↠信ジ |
専ニシテ専ナレト指授シテサヅク 帰セシメシニ↢西路ニ↡ | 為ニ↠他ノ破壊セラレテ還リテ如シ↠故ノ |
^曠劫よりこのかたつねにかくのごとし。 これ今生にはじめてみづから悟るにあらず。 まさしくよき強縁に遇はざるによりて、 輪廻して得度しがたからしむることを致す」 と。
曠劫ヨリ已来タ常ニ如シ↠此クノ | 非ズ↢是今生ニ始テ自ラ悟ルニ↡ |
正シク由リテ↠不ルニ↠遇ハ↢好キ強縁ニ↡ | 致スト↠使ムルコトヲ↣輪回シテ難カラ↢得度シ↡」 |
【52】^▼またいはく (法事讃・下)、
又云ク、
^「▲種々の法門みな解脱すれども、 念仏して西方に往くに過ぎたるはなし。 上一形を尽し、 十念・三念・五念に至るまで、 仏来迎したまふ。 △ただちに弥陀の弘誓重なれるをもつて、 凡夫念ずればすなはち生ぜしむることを致す」 と。
「種種ノ法門皆解脱スレドモ | 無シ↠過ギタルハ↣念仏シテ往クニ↢西方ニ↡ |
上尽シ↢一形ヲ↡至ルマデ↢十念・ | 三念・五念ニ↡仏来迎シタマフ |
直ニ為テ↢弥陀ノ弘誓重レルヲ↡ | 致スト↠使ムルコトヲ↢凡夫念ズレバ即チ生ゼ↡」 |
一 Ⅰ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ニ)¬般舟讃¼
【53】^▼またいはく (般舟讃)、
又云ク、
^「▲一切如来方便を設けたまふこと、 また今日の釈迦尊に同じ。 ◆機に随ひて法を説くにみな益を蒙る。 ▼おのおの悟解を得て真門0405に入れと。 ▼乃至
「一切如来設ケタマフコト↢方便ヲ↡ | 亦同ジ↢今日ノ釈迦尊ニ↡ |
随ヒテ↠機ニ説クニ↠法ヲ皆蒙ル↠益ヲ | 各ノ得テ↢悟解ヲ↡入レト↢真門ニ↡ 乃至 |
^▲仏教多門にして八万四なり。 まさしく衆生の機不同なるがためなり。 安身常住の処を覓めんと欲はば、 まづ要行を求めて真門に入れ」 と。
仏教多門ニシテ八万四ナリ | 正シク為ナリ↢衆生ノ機不同ナルガ↡ |
欲ハヾ↠覓メムト↢安身常住ノ処ヲ↡ | 先ヅ求メテ↢要行ヲ↡入レト↢真門ニ↡」 |
一 Ⅰ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ホ)¬礼讃¼
【54】^▼またいはく、 *智昇師の ¬*礼懴儀¼ の文にいはく、 光明寺 (善導) の ¬礼讃¼ なり
又云ク *智昇師ノ¬礼懴儀ノ¼文ニ云ク、光明寺ノ¬礼賛¼也
^「▲それこのごろ、 みづから諸方の道俗を見聞するに、 解行不同にして専雑、 異あり。 ただ意をもつぱらにしてなさしむれば、 十はすなはち十ながら生ず。 雑を修するは至心ならざれば、 ▼千がなかに一もなし」 と。 以上
「爾比日、自ラ見↢聞スルニ諸方ノ道俗ヲ↡、解行不同ニシテ専*修ニ有リ↠異。但使ムレ↢専ニシテ↠意ヲ作サ↡者、十ハ即チ十ナガラ生ズ。修スルハ↠雑ヲ不レ↢至心ナラ↡者、千ガ中ニ无シト↠一モ。」 已上
一 Ⅰ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)追釈
(a)元照¬阿弥陀経義疏¼
【55】^▼*元照律師の ¬*弥陀経の義疏¼ にいはく、
元照律師ノ¬弥陀経ノ義疏ニ¼云ク、
^「如来、 持名の功勝れたることを明かさんと欲す。 まづ余善を貶して少善根とす。 いはゆる布施・持戒・立寺・造像・礼誦・座禅・懴念・苦行、 一切福業、 もし正信なければ、 回向願求するにみな少善とす。 往生の因にあらず。 もしこの経によりて名号を執持せば、 決定して往生せん。 すなはち知んぬ、 称名はこれ多善根・多福徳なりと。
「如来欲ス↠明サムト↢持名ノ功勝レタルコトヲ↡。先ヅ貶シテオトシム↢余善ヲ↡為↢少善根ト↡。所ル↠謂ハ布施・持戒・立寺・造ツクル像・礼誦ヨム・座禅・懴クユ念・苦行、一切福業、若シ无0205ケレバ↢正信↡、回向願求スルニ皆為↢少善ト↡。非ズ↢往生ノ因ニ↡。若シ依リテ↢此ノ経ニ↡執↢持セバ名号ヲ↡、決定シテ往生セム。即チ知ヌ、称名ハ是多善根・多福徳也ト。
^昔この解をなしし、 人なほ遅疑しき。 近く*襄陽の▼石碑の経の本文を得て、 理冥符せり。 はじめて深信を懐く。 かれにいはく、 ^ª善男子・善女人、 阿弥陀仏を説くを聞きて、 一心にして乱れず、 名号を専▼称せよ。 称名をもつてのゆゑに、 諸罪消滅す。 すなはちこれ▼多功徳・多善根・▼多福徳因縁なりº」 と。 以上
昔作シヽ↢此ノ解ヲ↡、人尚遅オソシ疑シキ。近ク得テ↢襄陽ノ石碑ノアラハス経ノ本文ヲ↡、理コトハリ冥カナイ符セリカナフ 。始テ懐ク↢深信ヲ↡。彼ニ云ク、善男子・善女人、聞キテ↠説クヲ↢阿弥陀仏ヲ↡、一心ニシテ不↠乱レ、専↢称セヨ名号ヲ↡。以テノ↢称名ヲ↡故ニ諸罪消滅ス。即チ是多功徳・多善根・多福徳因縁ナリト。」 已上
一 Ⅰ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)孤山¬阿弥陀経義疏¼
【040656】^▼*孤山の ¬疏¼ (*阿弥陀経義疏) にいはく、
孤山ノ¬疏ニ¼云ク、
^「▼ª執持名号º とは、 ª執º はいはく執受なり、 ª持º はいはく住持なり。 信力のゆゑに執受心にあり、 念力のゆゑに住持して忘れず」 と。 以上
「執持名号ト者、執ハ謂ク執トリ受ウクナリ、持ハ謂ク住持ナリ。信力ノ故ニ執受在リ↠心ニ、念力ノ故ニ住持シテ不ト↠忘レ。」 已上
一 Ⅰ ⅱ c ロ (二)(Ⅱ)別して真実を詳らかにす
(ⅰ)経説
(a)¬大経¼
【57】^▼¬大本¼ (大経・下) にのたまはく、
¬大本ニ¼言ハク、
^「▲如来の興世、 ▼値ひがたく見たてまつりがたし。 ▼諸仏の経道、 ▼得がたく聞きがたし。 ▼菩薩の勝法、 諸波羅蜜、 聞くことを得ることまた難し。 ▼善知識に遇ひ、 法を聞きよく行ずること、 これまた難しとす。 ◆もしこの経を聞きて信楽受持すること、 ▼難のなかの難、 これに過ぎて難きはなけん。
「如来ノ興世、難ク↠値ヒ難シ↠見タテマツリ。諸仏ノ経道、難ク↠得難シ↠聞キ。菩薩ノ勝法、諸波羅蜜、得ルコト↠聞クコトヲ亦難シ。*遇ヒ↢善知識ニ↡、聞キ↠法ヲ能ク行ズルコト、此亦為↠難シト。若シ聞キテ↢*斯ノ経ヲ↡信楽受持スルコト、難ノ中之難无ケム↢過ギテ↠此ニ難キハ↡。
^◆このゆゑにわが法かくのごとくなしき、 かくのごとく説く、 かくのごとく教ふ。 まさに▼信順して法のごとく修行すべし」 と。 以上
是ノ故ニ我ガ法如ク↠是クノ作シキ、如ク↠是クノ説ク、如ク↠是クノ教フ。応シト↢当ニ信順シテ如ク↠法ノ修行ス↡。」 已上
一 Ⅰ ⅱ c ロ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)¬涅槃経¼(正因の義を詳らかにす)
・迦葉品(1)
【58】^▼¬*涅槃経¼ (*迦葉品) にのたまはく、
¬涅槃経ニ¼言ク、
^「▼経のなかに説くがごとし。 ▼一切の*梵行の因は善知識なり。 一切梵行の因無量なりといへども、 善知識を説けばすなはちすでに*摂尽しぬ。 わが所説のごとし、 一切の悪行は邪見なり。 一切悪行の因無量なりといへども、 もし邪見を説けばすなはちすでに摂尽しぬ。 あるいは説かく、 阿耨多羅三藐三菩提は信心を因とす。 これ菩提の因また無量なりといへども、 もし信心を説けばすなはちすでに摂尽しぬ」 と。
「如シ↢経ノ中ニ説クガ↡。▼一切ノ梵行ノ因ハ善知識ナリ。一切梵行ノ因雖モ↢无量ナリト↡、説ケバ↢善知識ヲ↡則チ已ニ摂尽シヌ。如シ↢我ガ所説ノ↡、一切ノ悪行ハ邪見ナリ。一切悪行ノ因雖モ↢无量ナリト↡、若シ説ケバ↢邪見ヲ↡則チ已ニ摂尽シヌ。或イハ説カク、阿耨多羅三藐三菩提ハ信心ヲ為0206↠因ト。是菩提ノ因雖モ↢復无量ナリト↡、若シ説ケバ↢信心ヲ↡則チ已ニ摂尽シヌト。」
・迦葉品(2)
【040759】^▼またのたまはく (涅槃経・迦葉品)、
又言ク、
^「善男子、 信に二種あり。 一つには*信、 二つには*求なり。 かくのごときの人、 また信ありといへども、 推求にあたはざる、 このゆゑに名づけて信不具足とす。
「善男子、信ニ有リ↢二種↡。一ニ者信、二ニ者求ナリ。如キノ↠是クノ之人、雖モ↢復有リト↟信不ル↠能ハ↢推求 モトメ ニ↡、是ノ故ニ名ケテ為↢信不具足ト↡。
^▲信にまた二種あり。 一つには*聞より生ず、 二つには*思より生ず。 この人の信心、 聞よりして生じて思より生ぜざる、 このゆゑに名づけて信不具足とす。
信ニ復有リ↢二種↡。一ニハ従リ↠聞生ズ、二ニハ従リ↠思生ズ。是ノ人ノ信心、従リ↠聞而生ジテ不↢従リ↠思生ゼ↡、是ノ故ニ名ケテ為↢信不具足ト↡。
^◆また二種あり。 一つには*道あることを信ず、 二つには*得者を信ず。 この人の信心、 ただ道あることを信じて、 すべて得道の人あることを信ぜず、 これを名づけて信不具足とす。
復有リ↢二種↡。一ニハ信ズ↠有ルコトヲ↠道、二ニハ信ズ↢得者ヲ↡。是ノ人ノ信心、唯信ジテ↠有ルコトヲ↠道、都テ不↠信ゼ↠有ルコトヲ↢得道之人↡、是ヲ名ケテ為↢信不具足ト↡。
^また二種あり。 一つには信正、 二つには信邪なり。 因果あり、 仏法僧ありといはん、 これを信正と名づく。 因果なく、 *三宝の性異なりといひて、 もろもろの邪語、 *富蘭那等を信ずる、 これを信邪と名づく。 この人、 仏法僧宝を信ずといへども、 *三宝同一の性相を信ぜず。 因果を信ずといへども得者を信ぜず。 このゆゑに名づけて信不具足とす。 この人、 不具足信を成就すと。 乃至
復有リ↢二種↡。一ニ者信正、二ニ者信邪ナリ。言ハム↧有リ↢因果↡有リト↦仏法僧↥、是ヲ名ク↢信正ト↡。言ヒテ↠无シト↢因果↡三宝ノ性異ナリト↡、信ズル↢諸ノ邪語、富闌那等ヲ↡、是ヲ名ク↢信邪ト↡。是ノ人雖モ↠信ズト↢仏法僧宝ヲ↡、不↠信ゼ↢三宝同一ノ性相ヲ↡。雖モ↠信ズト↢因果ヲ↡不↠信ゼ↢得者ヲ↡。是ノ故ニ名ケテ為↢信不具足ト↡。是ノ人成↢就スト不具足信ヲ↡。 乃至
^善男子、 四つの善事あり、 悪果を獲得せん。 なんらをか四つとする。
善男子、有リ↢四ノ善事↡、獲↢得ウ ル セム悪果ヲ↡。何等ヲカ為ル↠四ト。
^一つには*勝他のためのゆゑに経典を読誦す。
一ニ者為ノ↢勝他ノ↡故ニ読↢誦ス経典ヲ↡。
^二つには*利養のためのゆゑに禁戒を受持せん。
二ニ者為ノ↢利*養ノ↡故ニ受↢持セム禁戒ヲ↡。
^三つには*他属のためのゆゑにして布施を行ぜん。
三ニ者為ノ↢他属ノ↡故ニ而行ゼム↢布施ヲ↡。
^四つには*非想非非想処のためのゆゑに*繋念思0408惟せん。
四ニ者為ノ↢非想非非想処ノ↡故ニ繋念思惟セムオモフ 。
^この四つの善事、 悪果報を得ん。 もし人かくのごときの四事を修習せん、 ▼これを、 没して没しをはりて還りて出づ、 出でをはりて還りて没すと名づく。 なんがゆゑぞ没と名づくる、 三有を楽ふがゆゑに。 なんがゆゑぞ出と名づくる、 *明を見るをもつてのゆゑに。 明はすなはちこれ*戒・施・定を聞くなり。 なにをもつてのゆゑに還りて出没するや。 邪見を増長し憍慢を生ずるがゆゑに。
是ノ四ノ善事得ム↢悪果報ヲ↡。若シ人修↢習セムナラフ 如キノ↠是クノ四事ヲ↡、是ヲ名ク↢没シテ没シ已リテ還リテ出ヅ、出デ已リテ還リテ没スト↡。何ガ故ゾ名クル↠没ト、楽フガ↢三有ヲ↡故ニ。何ガ故ゾ名クル↠出ト、以テノ↠見ルヲ↠明ヲ故ニ。明者即チ是聞クナリ↢戒・施・定ヲ↡。何ヲ以テノ故ニ還リテ出没スルヤ、増↢長シ邪見ヲ↡生ズルガ↢憍慢ヲ↡故ニ。
^このゆゑに、 われ経のなかにおいて偈を説かく、
是ノ故ニ我於テ↢経ノ中ニ↡説カク↠偈ヲ、
^ªもし衆生ありて、 諸有を楽んで、 有のために善悪の業を造作する。 この人は涅槃道を迷失するなり。 これを*暫出還復没と名づく。
0207若シ有リテ↢衆生↡楽デ↢諸有ヲ↡ | 為ニ↠有ノ造↢作スル善悪ノ業ヲ↡ |
是ノ人ハ迷↢マドヒ失スルナリ涅槃道ヲ↡ | 是ヲ名ク↢蹔シバラク出還復没ト↡ |
^黒闇生死海を行じて、 解脱を得といへども、 煩悩を雑するは、 この人還りて悪果報を受く。 これを暫出還復没と名づくº と。
行ジテ↢於黒闇生死海ヲ↡ | 雖モ↠得ト↢解脱ヲ↡雑スルハ↢煩悩ヲ↡ |
是ノ人還リテ受ク↢悪果報ヲ↡ | 是ヲ名クト↢蹔出還復没ト↡ |
^如来にすなはち二種の涅槃あり。 一つには有為、 二つには無為なり。 有為涅槃は*常楽我浄なし、 無為涅槃は常楽我浄あり。
如来ニ則チ有リ↢二種ノ涅槃↡。一ニ者有為、二ニ者无為ナリ。有為涅槃ハ无↢常ナリ、*楽我浄ハ↡无為涅槃ナリ有↢常楽我浄↡。
^この人深くこの*二種の戒ともに善果ありと信ず。 このゆゑに名づけて戒不具足となす。 この人は信・戒の二事を具せず、 所修の多聞もまた不具足なり。
有リテ↢常人↡深ク信ゼム↣是ノ二種ノ戒倶ニ有リト↢因果↡、是ノ故ニ名ケテ為↠戒ト、戒不具足、是ノ人ハ不↠具セ↢信・戒ノ二事ヲ↡、所楽多聞ニシテ亦不具足ナリ。
^▲いかなるをか名づけて聞不具足とする。 如来の所説は十二部経なり、 ただ六部を信じていまだ六部を信ぜず。 このゆゑに名づけて聞不具足とす。
云何ルヲカ名ケテ為ル↢聞不具足ト↡。如来ノ所説ハ十二部経ナリ、唯信ジテ↢六部ヲ↡未ズ ダ↠信ゼ↢六部ヲ↡。是ノ故ニ名ケテ為↢聞不具足ト↡。
^またこの六部の経を受持すといへども、 *読誦に0409あたはずして他のために解説するは、 利益するところなけん。 このゆゑに名づけて聞不具足とす。
雖モ↣復受↢持スト是ノ六部ノ経ヲ↡、不シテ↠能ハ↢読ヨミ誦ヨムニ↡為ニ↠他ノ解*説スルハ、无ケム↠所↢利益スル↡。是ノ故ニ名ケテ為↢聞不具足ト↡。
^またこの六部の経を受けをはりて、 論議のためのゆゑに、 勝他のためのゆゑに、 利養のためのゆゑに、 *諸有のためのゆゑに、 *持読誦説せん。 このゆゑに名づけて聞不具足とす」 と。 略抄
又復受ケ↢是ノ六部ノ経ヲ↡已リテ、為ノ↢論議ノ↡故ニ、為ノ↢勝他ノ↡故ニ、為ノ↢利養ノ↡故ニ、為ノ↢諸有ノ↡故ニ、持 読コヽロエヨムナリ誦ウカベヨムナリ説セム。是ノ故ニ名ケテ為ト↢聞不具足ト↡。」 略抄
・徳王品
【60】^▼またのたまはく (涅槃経・*徳王品)、
又言ク、
^「▼善男子、 ▼第一真実の善知識は、 いはゆる菩薩・諸仏なり。 ^世尊、 なにをもつてのゆゑに、 ^つねに三種の*善調御をもつてのゆゑなり。 なんらをか三つとする。 一つには*畢竟軟語、 二つには*畢竟呵責、 三つには*軟語呵責なり。 この義をもつてのゆゑに、 菩薩・諸仏はすなはちこれ真実の善知識なり。
「善男子、第一真実ノ善知識者、所ル↠謂ハ菩薩・諸仏ナリ。世尊、何ヲ以テノ故ニ。常ニ以テノ↢三種ノ善調トヽノフ御ヲ↡故ナリ。何等ヲカ為ル↠三ト。一ニ者畢竟 軟ヤハラカナリ語、二ニ者畢竟呵セメ責 セム 、三ニ者軟語呵責ナリ。以テノ↢是ノ義ヲ↡故ニ菩薩・諸仏ハ即チ是真実ノ善知識也。
^また次に善男子、 仏および菩薩を大医とするがゆゑに、 善知識と名づく。 なにをもつてのゆゑに、 病を知りて薬を知る、 病に応じて薬を授くるがゆゑに。 たとへば良医の善き*八種の術のごとし。 まづ病相を観ず。 相に三種あり。 なんらをか三つとする。 いはく風・熱・水なり。 *風病の人にはこれに*蘇油を授く。 *熱病の人にはこれに*石蜜を授く。 *水病の人にはこれに*薑湯を授く。 病根を知るをもつて薬を授くるに、 差ゆることを得。 ゆゑに良医と名づく。
復次0208ニ善男子、仏及ビ菩薩ヲ為ルガ↢大医ト↡故ニ名ク↢善知識ト↡。何ヲ以テノ故ニ。知リテ↠病ヲ知ル↠薬ヲ、応ジテ↠病ニ授クルガ↠薬ヲ故ニ。譬ヘバ如シ↢良医ノ善キ八種ノ術ノ↡。先ヅ観ズ↢病相ヲ↡。相ニ有リ↢三種↡。何等ヲカ為ル↠三ト。謂ク風・熱・水ナリ。風病之人ニハ授ク↢之ニ蘇油ヲ↡。熱病*之人ニハ授ク↢之ニ石蜜ヲ↡。水病之人ニハ授ク↢之ニ薑湯ヲ↡。以テ↠知ルヲ↢病根ヲ↡授クルニ↠薬ヲ、得↠差ユルコトヲ。故ニ名ク↢良医ト↡。
^仏および菩薩もまたまたかくのごとし。 もろもろの凡夫の0410病を知るに三種あり。 一つには貪欲、 二つには瞋恚、 三つには愚痴なり。 貪欲の病には教へて*骨相を観ぜしむ。 瞋恚の病には慈悲の相を観ぜしむ。 愚痴の病には*十二縁相を観ぜしむ。 この義をもつてのゆゑに諸仏・菩薩を善知識と名づく。
仏及ビ菩薩モ亦復如シ↠是クノ。知ルニ↢諸ノ凡夫ノ病ヲ↡有リ↢三種↡。一ニ者貪欲、二ニ者瞋恚、三ニ者愚痴ナリ。貪欲ノ病ニ者教ヘテ観ゼシム↢骨相ヲ↡。瞋恚ノ病ニ者観ゼシム↢慈悲ノ相ヲ↡。愚痴ノ病ニ者観ゼシム↢十二*縁相ヲ↡。以テノ↢是ノ義ヲ↡故ニ▼諸仏・菩薩ヲ名ク↢善知識ト↡。
^善男子、 たとへば船師のよく人を度するがゆゑに大船師と名づくるがごとし。 諸仏・菩薩もまたまたかくのごとし。 もろもろの衆生をして生死の大海を度す。 この義をもつてのゆゑに善知識と名づく」 と。 抄出
◆善男子、譬ヘバ如シ↣船師ノ善ク度スルガ↠人ヲ故ニ名クルガ↢大船師ト↡。諸仏・菩薩モ亦復如シ↠是クノ。度ス↢諸ノ衆生ヲシテ生死ノ大海ヲ↡。以テノ↢是ノ義ヲ↡故ニ名クト↢善知識ト↡。」 抄出
一 Ⅰ ⅱ c ロ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(c)¬華厳経¼(前を結び後を生ず)
・入法界品(1)
【61】^▼¬*華厳経¼ (*入法界品・唐訳) にのたまはく、
¬華厳経ニ¼言ク、
^「▼なんぢ善知識を念ずるに、 われを生める、 父母のごとし。 われを養ふ、 乳母のごとし。 菩提分を増長す、
「▼汝念ズルニ↢善知識ヲ↡ | 生メル↠我ヲ如シ↢父母ノ↡ |
養フ↠我ヲ如シ↢乳母ノ↡ | 増↢長ス菩*提分ヲ↡ |
^衆の疾を医療するがごとし。 天の甘露を灑ぐがごとし。 日の正道を示すがごとし。 月の浄輪を転ずるがごとし」 と。
如シ↣医↢療スルガ衆ノ疾ヤマヒヲ↡ | 如シ↣天ノ灑シヤグガ↢甘露ヲ↡ |
如シ↣日ノ示スガオシフ ↢正道ヲ↡ | 如シト↣月ノ転ウツルズルガ↢浄輪ヲ↡」 |
・入法界品(2)
【62】^▼またのたまはく (華厳経・入法界品・唐訳)、
又言ク、
^「如来大慈悲、 世間に出現して、 あまねくもろもろの衆生のために、 *無上法輪を転じたまふ。
「如来大慈悲 | 出↢現シテ於世間ニ↡ |
普ク為ニ↢諸ノ衆生ノ↡ | 転ジタマフ↢无上法輪ヲ↡ |
^如来無数劫に勤苦せしことは衆生のためなり。 いかんぞもろもろの世間、 よく▼大師の恩を報ぜん」 と。 以上
如来无数劫ニ | 勤ツトム苦セシコトハ為ナリ↢衆生ノ↡ |
云何ゾ諸ノ世間 | 能ク報ゼムト↢大師ノ恩ヲ↡」 已上 |
一 Ⅰ ⅱ c ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)師釈(仏恩を明かして報謝を勧む)
(a)¬般舟讃¼
【63】^▼光明寺の和尚 (善導) のいはく (般舟讃)、
光明寺ノ和尚ノ云ク、
^「▲ただ恨むらくは、 衆0411生の疑ふまじきを疑ふことを。 ▼浄土対面してあひ▼忤はず。 ▼弥陀の摂と不摂とを論ずることなかれ。 意専心にして回すると回せざるとにあり。
「唯恨ムラクハ衆生ノ疑フコトヲ↠不キヲ↠疑フ | 浄土対面シテ不↢相忤ハ↡ |
莫レ↠論ズルコト↢弥陀ノ摂ト不摂トヲ↡ | 意在リ↢専心ニシテ回スルト不ルトニ↟回セ |
^▲あるいはいはく、 今より仏果に至るまで、 長劫に▼仏を讃めて慈恩を報ぜん。 ▼弥陀の弘誓の力を蒙らずは、 いづれの時いづれの劫にか娑婆を出でん、
或イハ道ハク従リ↠今至ルマデ↢仏果ニ↡ | 長劫ニ讃メテ↠仏ヲ報ゼム↢慈恩ヲ↡ |
0209不ハ↠蒙ラ↢弥陀ノ弘誓ノ力ヲ↡ | 何ノ時何ノ劫ニカ出デム↢娑婆ヲ↡ |
^▲いかんしてか今日宝国に至ることを期せん。 まことにこれ娑婆▼本師の力なり。 もし本師知識の勧めにあらずは、 弥陀の浄土いかんしてか入らん。
何シテカ期マツセム↣今日至ルコトヲ↢宝国ニ↡ | 実ニ是娑婆本師ノ力ナリ |
若シ非ズハ↢本師知識ノ勧ニ↡ | 弥陀ノ浄土云何シテカ入ラム |
^◆浄土に生ずることを得て慈恩を報ぜよ」 と。
一 Ⅰ ⅱ c ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)¬礼讃¼
【64】^▼またいはく (礼讃)、
又云ク、
^「▲仏の世にはなはだ値ひがたし。 ▼人信慧あること難し。 たまたま希有の法を聞くこと、 これまたもつとも難しとす。
「仏ノ世ニハ甚ダ難シ↠値ヒ | 人有ルコト↢信慧↡難シ |
遇聞クコト↢希有ノ法ヲ↡ | 此復最モ為↠難シト |
^▲みづから信じ、 人を教へて信ぜしむること、 難きなかにうたたまた難し。 ▼大悲弘く 弘の字、 *智昇法師の ¬*懴儀¼ の文なり あまねく化するは、 まことに仏恩を報ずるになる」 と。
自ラ信ジ教ヘテ↠人ヲ信ゼシムルコト | 難ノ中ニ転タ更難シ |
大悲弘ク普ク化スルハ | 真ニ成ルト↠報ズルニ↢仏恩ヲ↡」 |
*弘ノ字 知昇法師ノ¬懴儀ノ¼文也 |
一 Ⅰ ⅱ c ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(c)¬法事讃¼二文
【65】^▼またいはく (法事讃・下)、
又云ク、
^「▲*帰去来、 ▼他郷には停まるべからず。 仏に従ひて▼*本家に帰せよ。 *本国に還りぬれば、 ▼一切の行願自然に成ず。
「帰去来 | 他郷ニハ不↠可カラ↠停ル |
従ヒテ↠仏ニ帰セヨ↢本家ニ↡還リヌレバ↢本国ニ↡ | 一切ノ行願自然ニ成ズ |
^▲悲喜交はり流る。 深くみづから度るに、 釈迦仏の開悟によらずは、 弥陀の名願いづ0412れの時にか聞かん。 仏の慈恩を荷なひても、 実に報じがたし」 と。
悲カナシミ 喜ヨロコブ交リ流ル深ク自ラ度ルニ | 不ハ↠因ラ↢釈迦仏ノ開悟ニ↡ |
弥陀ノ名願何ノ時ニカ聞カム | 荷ヒテモ↢仏ノ慈恩ヲ↡実ニ難シト↠報ジ」 |
【66】^▼またいはく (法事讃・下)、
又云ク、
^「▲十方六道、 同じくこれ輪廻して際なし、 循々として愛波に沈みて苦海に沈む。 ◆仏道人身得がたくしていますでに得たり。 浄土聞きがたくしていますでに聞けり。 信心発しがたくしていますでに発せり」 と。 以上
「十方六道、同ジク此輪回シテ无シ↠際、循ナガク循トシテ沈ミ↢愛波ニ↡而沈ム↢苦海ニ↡。仏道人身難クシテ↠得今已ニ得タリ。浄土難クシテ↠聞キ今已ニ聞ケリ。信心難クシテ↠発シ今已ニ発セリト。」 已上
一 Ⅰ ⅱ c ロ (三)結誡
・真門四失
【67】^▼まことに知んぬ、 専修にして雑心なるものは大慶喜心を獲ず。 ゆゑに宗師 (善導) は、 「^▲かの仏恩を念報することなし。 *業行をなすといへども心に軽慢を生ず。 つねに名利と相応するがゆゑに、 人我おのづから覆ひて同行・善知識に親近せざるがゆゑに、 楽みて雑縁に近づきて往生の正行を自障障他するがゆゑに」 (礼讃) といへり。
真ニ知ヌ専修ニ而雑心ナル者ハ不↠獲↢大慶喜心ヲ↡。故ニ宗師ハ云ヘリ↧「無シ↣念↢報スルコト彼ノ仏恩ヲ↡、雖モ↠作スト↢業行ヲ↡心ニ生ズ↢軽カロメ慢ヲ↡アナドル、常ニ与↢名利↡相応スルガ故ニ、人我自ラ覆ヒテ不ルガ↣親↢近セ同行・善知識ニ↡故ニ、楽ミテ近ヅキテ↢雑縁ニ↡自↢*障障↣他スルガ往生ノ正行ヲ↡故ニト」↥。
・悲嘆述懐
^▲悲しきかな、 *垢障の凡愚、 *無際よりこのかた助正間雑し、 定散心雑するがゆゑに、 出離その期なし。 みづから流転輪廻を度るに、 *微塵劫を超過すれども、 仏願力に帰しがたく、 大信海に入りがたし。 まことに*傷嗟すべし、 深く悲歎すべし。
悲シキ哉、垢障ノ凡愚、自↢従リ无際↡已来タ助正間雑シ、定散心雑スルガ故ニ出離无シ↢其ノ期↡。自ラ度ルニ↢流転輪回ヲ↡、超↢過スレドモ微塵劫ヲ↡、叵ク↠帰シ↢仏願力ニ↡、叵シ↠入リ↢*大信海ニ↡。良ニ可シ↢傷ナゲキ嗟スナゲク↡、深ク可シ↢悲0210歎スナゲク↡。
・自力念仏の失
^おほよそ▼大小聖人・一切善人、 本願の嘉号をもつておのれが善根とするがゆゑに、 信を生ずることあたはず、 仏智を了らず0413。 *かの因を建立せることを了知することあたはざるゆゑに、 報土に入ることなきなり。
凡ソ大小聖人・一切善人、以テ↢本願ノ嘉ヨシ号ヲ↡為ルガ↢己ガ善根ト↡故ニ不↠能ハ↠生ズルコト↠信ヲ、不↠了ラ↢仏智ヲ↡。不ル↠能ハ↤了↣知スルコト建↢立セルコトヲ彼ノ因ヲ↡故ニ无キ↠入ルコト↢報土ニ↡也。
一 Ⅱ 自喜を申べて結す
ⅰ 所得の法を明かす【三願転入】
【68】^ここをもつて愚禿釈の鸞、 *論主の解義を仰ぎ、 *宗師の勧化によりて、 ▼久しく▼*万行諸善の仮門を出でて、 永く▼双樹林下の往生を離る。 ▼*善本徳本の真門に回入して、 ひとへに難思往生の心を発しき。
是ヲ以テ▼愚禿釈ノ鸞、仰ギ↢論主ノ解義ヲ↡、依リテ↢宗師ノ勧化ニ↡、久シク出デテ↢万行諸善之仮門ヲ↡、永ク離ル↢双樹林下之往生ヲ↡。回↢入シテ善本徳本ノ真門ニ↡、偏ニ発シキ↢難思往生之心ヲ↡。
^しかるにいまことに方便の真門を出でて、 ▼*選択の願海に*転入せり。 すみやかに難思往生の心を離れて、 難思議往生を遂げんと欲す。 ▼果遂の誓 (第二十願)、 まことに由あるかな。
◆然ルニ*今*特ヒトリニ出デテ↢方便ノ真門ヲ↡転↢入セリ選択ノ願海ニ↡。速ニ離レテ↢難思往生ノ心ヲ↡欲フ↠遂ゲムト↢難思 議ハカラフ往生ヲ↡。果遂之誓、良ニ有ル↠由哉。
一 Ⅱ ⅱ 所得を伝ふることを明かす
^ここに久しく願海に入りて、 深く仏恩を知れり。 至徳を報謝せんがために、 真宗の簡要を摭うて、 恒常に不可思議の徳海を称念す。 いよいよこれを喜愛し、 ことにこれを頂戴するなり。
◆爰ニ久シク入リテ↢願海ニ↡深ク知レリ↢仏恩ヲ↡。為ニ↣報↢謝ノムクフ至徳ヲ↡、摭フテ↢真宗ノ簡要ヲ↡恒ツネ常ニ称↢念ス不可思議ノ徳海ヲ↡。弥喜↢愛シ斯ヲ↡、特ニ頂↢イタヾキ戴スルイタヾク斯ヲ↡也。
一 Ⅱ ⅲ 去就の所を示す【結説総勧】
a 法義の通塞を明かす
【69】^▼まことに知んぬ、 聖道の諸教は、 *在世・正法のためにして、 まつたく*像末・*法滅の時機にあらず。 すでに時を失し機に乖けるなり。
信ニ知ヌ聖道ノ諸教ハ、為ニ↢在世・正法ノ↡而全ク非ズ↢像末・法滅之時機ニ↡。已ニ失シ↠時ヲ乖ケル↠機ニ也。
^浄土真宗は、 在世・正法、 像末・法滅、 濁悪の群萌、 斉しく悲引したまふをや。
浄土真宗者、在世・正法、像末・法滅、濁悪ノ群萌、斉シク悲引シタマフヲ也。
一 Ⅱ ⅲ b 説人の是非を明かす
【70】^ここをもつて▼経家によりて師釈を披きたるに、 「▲説人の差別を弁ぜば、 ◆おほよそ諸経の起説、 五種に過ぎず。 一つには仏説、 二つには聖弟子0414説、 三つには天仙説、 四つには鬼神説、 五つには変化説なり」 (玄義分) と。 ▼しかれば、 四種の所説は信用にたらず。 この三経はすなはち大聖 (釈尊) の自説なり。
是ヲ以テ拠リテ↢経家ニ↡披キタルニ↢師釈ヲ↡、「※*弁ゼワキマウ↢説人ノ差別ヲ↡者、凡ソ諸経ノ起説不↠過ギ↢五種ニ↡。一ニ者仏説、二ニ者聖弟子説、三ニ者天仙説、四ニ者鬼神説、五ニ者変化説ナリト。」爾レ者四種ノ所説ハ不↠足ラ↢信用ニ↡。斯ノ三経者則チ大聖ノ自説也。
一 Ⅱ ⅲ c 所依の正不を明かす(¬大智度論¼)
【71】^▼¬大論¼ (*大智度論) に四依を釈していはく、
▼¬大論ニ¼釈シテ↢四依ヲ↡云ク、
^「*涅槃に入りなんと欲せし時、 もろもろの比丘に語りたまはく、 ª今日より*↓法に依りて*人に依らざるべし、 ↓*義に依りて*語に依らざるべし、 ↓*智に依りて*識に依らざるべし、 ↓*了義経に依りて*不了義に依らざるべし。
◆「欲セシ↠入リナムト↢涅槃ニ↡時、語リタマハク↢諸ノ比丘ニ↡、従リ↢今日↡応シ↢依リテ↠法ニ不ル↟依0211ラ↠人ニ、応シ↢依リテ↠義ニ不ル↟依ラ↠語ニ、応シ↢依リテ↠智ニ不ル↟依ラ↠識ニ、応シト↧依リテ↢了義経ニ↡不ル↞依ラ↢不了義ニ↡。
^↑法に依るとは、 法に*十二部あり、 この法に随ふべし、 人に随ふべからず。
◆依ルト↠法ニ者、法ニ有リ↢十二部↡、応シ↠随フ↢此ノ法ニ↡、不↠応カラ↠随フ↠人ニ。
^↑義に依るとは、 義のなかに好悪・罪福・虚実を諍ふことなし、 ゆゑに語はすでに義を得たり、 義は語にあらざるなり。 ▼人*指をもつて*月を指ふ、 もつてわれを示教す、 指を看視して月を視ざるがごとし。 人語りていはん、 «われ指をもつて月を指ふ、 なんぢをしてこれを知らしむ、 なんぢなんぞ指を看て、 しかうして月を視ざるや» と。 これまたかくのごとし。 語は義の指とす、 語は義にあらざるなり。 これをもつてのゆゑに、 語に依るべからず。
◆依↠義ト者、義ノ中ニ无シ↠諍フコト↢好悪・罪福・虚実ヲ↡、故ニ語コトバハ已ニ得タリ↠義ヲ、義ハ非ザル↠語ニ也。如シ↧人以テ↠指ヲ指フ↠月ヲ以テ示↢教ス我ヲ↡、看ミル↢視ミルシ指ヲ↡而不ルガ↞視↠月ヲ。人語リテ言ハム、我以テ↠指ヲ指フ↠月ヲ令ム↢汝ヲシテ知ラ↟之ヲ、汝何ゾ看テ↠指ヲ而シテ不ルヤト↠*視↠月ヲ。此亦如シ↠是クノ。語ハ為↢義ノ指ト↡、語ハ非ザル↠義ニ也。以テノ↠此ヲ故ニ、不↠応カラ↠依ル↠語ニ。
^↑智に依るとは、 智はよく善悪を*籌量し分別す。 識はつねに楽を求む、 *正要に入らず。 このゆゑに識に依るべからずといへり。
◆依↠智ト者、智ハ能ク籌↢ハカライ量シ分↣別ス善悪ヲ↡。識ハサトル常ニ求ム↠楽ヲ、不↠入ラ↢正要ニ↡。是ノ故ニ言ヘリ↢不↠応↠依↠識ト↡。
^↑了義経に依るとは、 ▼一切智人い0415ます、 仏第一なり。 一切諸経書のなかに仏法第一なり。 ▼一切衆のなかに*比丘僧第一なりº と。
◆依↢了義経↡ト者、有ス↢一切智人↡仏第一ナリ。一切諸経書フミノ中ニ仏法第一ナリ。一切衆ノ中ニ比丘僧第一ナリ。
^無仏世の衆生を、 仏これを重罪としたまへり、 見仏の善根を種ゑざる人なり」 と。 以上
◆无仏世ノ衆生ヲ、仏為シタマヘリ↢此ヲ重罪ト↡、不ル↠種ヘ↢見仏ノ善根ヲ↡人ナリト。」 已上
【72】^▼しかれば、 *末代の道俗、 よく四依を知りて法を修すべきなりと。
◆爾レ者末代ノ道俗、善ク可キ↧知リテ↢四依ヲ↡修ス↞法ヲ也ト。
二 門外の仮偽を簡ぶ
Ⅰ 総標
【73】^◆しかるに正真の教意によつて*古徳の伝説を披く。 聖道・浄土の真仮を顕開して、 ▽邪偽*異執の外教を教誡す。
◆然ルニ拠リテ↢正真ノ教意ニ↡披ク↢古徳ノ伝ツタウ説ヲ↡。顕↢開シテ聖道・浄土ノ真仮ヲ↡、教↢誡スイマシム邪 偽イツワル異執ノ外教ヲ↡。
二 Ⅱ 別弁
ⅰ 真仮を弁ず【聖道釈】
a 聖浄二門の通塞を分別す【二門通塞】
イ 略示
^▽如来涅槃の時代を*勘決して正像末法の*旨際を開示す。
◆勘↢カンガフ決シテサダム 如来涅槃之時代ヲ↡開↢示ス正像末法ノ旨ムネ際キワヲ↡。
二 Ⅱ ⅰ a ロ 引文
(一)¬安楽集¼四文
・第五大門
【74】^▼ここをもつて*玄中寺の綽和尚 (道綽) のいはく (安楽集・下)、
◆是ヲ以テ玄忠寺ノ綽和尚ノ云ク、
^「▲しかるに修道の身、 相続して絶えずして、 ▼一万劫を経てはじめて▼不退の位を証す。 ▼当今の凡夫は現に信想軽毛と名づく、 また仮名といへり、 また不定聚と名づく、 また外の凡夫と名づく。 いまだ火宅を出でず。
◆「然ルニ修道之身、相続ツグシテ不シテ↠絶ヘ、逕テ↢一万劫ヲ↡始テ証ス↢不退ノ位ヲ↡。当今ノ凡夫ハ現ニ名ク↢信想軽毛ト↡。亦曰ヘリ↢仮名ト↡、亦名ク↢不定聚ト↡、亦名ク↢外ノ凡夫ト↡。未ズ ダ↠出デ↢火宅ヲ↡。
^◆なにをもつて知ることを得んと、 ¬*菩薩瓔珞経¼ によりて、 つぶさに入道行位を弁ずるに、 法爾なるがゆゑに難行道と名づく」 と。
◆何ヲ以テ得ムト↠知ルコトヲ、拠リテ↢¬菩薩瓔珞経ニ¼↡、具ニ*弁ワキマフズルニ↢入道行位ヲ↡、法爾ナルガ故0212ニ名クト↢難行道ト↡。」
・第一大門
【75】^またいはく (安楽集・上)、
◆又云ク、
^「▲教興の所由を明かして、 時に約し機に被らしめて浄土に▼勧帰することあらば、 ▲もし機と教と時と乖けば、 修しがたく入0416りがたし。
「有ラ↧明シテ↢教興ノオコル所由ヲ↡、約ヨルシ↠時ニ被ラシメテ↠機ニ勧↦帰スルコト浄土ニ↥者、若シ機ト教ト時ト乖ケバ、難ク↠修シ難シ↠入リ。
^▲¬*正法念経¼ にいはく、
¬正法念経ニ¼云ク、
^ª行者一心に道を求めん時、 つねにまさに時と方便とを観察すべし。 もし時を得ざれば方便なし。 これを名づけて失とす、 利と名づけず。
行者一心ニ求メム↠道ヲ時 | 常ニ当ニシ↣観↢察ス時ト方便トヲ↡ |
若シ不レバ↠得↠時ヲ無シ↢方便↡ | 是ヲ名ケテ為↠失ト不↠名ケ↠利ト |
^◆いかんとならば、
何トナラ者
^湿へる木を攅りてもつて火を求めんに、 火得べからず、 時にあらざるがゆゑに。 もし乾れたる薪を折りてもつて水を覓めんに、 水得べからず、 智なきがごときのゆゑにº と。
如キノ↧攅リテ↢湿ヘル木ヲ↡以テ求メムニ↠火ヲ | 火不↠可カラ↠得非ザルガ↠時ニ故ニ |
若シ折リテ↢乾レタル薪ヲ↡以テ覓ムルニ↠水ヲ | 水不↠可カラ↠得無キガ↞智故ニト |
^◆¬*大集の月蔵経¼ にのたまはく (大集経)、 ª^▽仏滅度の後の第一の五百年には、 わがもろもろの弟子、 慧を学ぶこと堅固なることを得ん。 ◆第二の五百年には定を学ぶこと堅固なることを得ん。 ◆第三の五百年には多聞・読誦を学ぶこと堅固なることを得ん。 ◆第四の五百年には塔寺を造立し、 福を修し、 懴悔すること堅固なることを得ん。 ◆第五の五百年には白法隠滞して多く諍訟あらん、 微しき善法ありて堅固なることを得んº と。
¬大集ノ月蔵経ニ¼云ク、仏滅度ノ後ノ第一ノ五百年ニハ我ガ諸ノ弟子、学ブコト↠慧ヲ得ム↢堅カタク固カタシナルコトヲ↡。第二ノ五百年ニハ学ブコト↠定ヲ得ム↢堅固ナルコトヲ↡。第三ノ五百年ニハ学ブコト↢多聞・読誦ヲ↡得ム↢堅固ナルコトヲ↡。第四ノ五百年ニハ造↢立シ塔寺ヲ↡修シ↠福ヲ、懴悔スルコト得ム↢堅固ナルコトヲ↡。第五ノ五百年ニハ白法隠カクレ滞シテトヾマル多ク有ラム↢諍アラソフ訟↡ウタフ、微シキ有リテ↢善法↡得ム↢堅固ナルコトヲ↡。
^▲今の時の衆生を計るに、 ▼すなはち仏、 世を去りたまひて後の第四の五百年に当れり。 まさしくこれ懴悔し、 福を修し、 仏の名号を称すべき時のものなり。 一念阿弥陀仏を称するに、 すなはちよく八十億劫の生死の罪を除却せん。 一念すでにしかなり。 いはんや常念に修するは、 すなはちこれつねに懴悔する人なり」 と。
計ルニ↢今ノ時ノ衆生ヲ↡、即チ当レリ↢仏去リタマヒテ↠世ヲ後ノ第四ノ五百年ニ↡。正シク是懴悔シ修シ↠福ヲ、応キ↠称ス↢仏ノ名号ヲ↡時ノ者ナリ。一念称スルニ↢阿弥陀仏ヲ↡、即チ能ク除↢却セム八十億劫ノ生死之罪ヲ↡。一念既ニ爾ナリ。況ヤ修スルハ↢常念ニ↡、即チ是恒ニ懴悔スル人也ト。」
・第六大門
【041776】^▼またいはく (安楽集・下)、
又云ク、
^「▲経の住滅を弁ぜば、 いはく、 釈迦牟尼仏一代、 正法五百年、 像法一千年、 末法一万年には、 衆生減じ尽き、 諸経ことごとく滅せん。 如来、 痛焼の衆生を悲哀して、 特に▼此の経を留めて止住せんこと百年ならん」 と。
「*弁ゼワキマフ↢経ノ住滅ヲ↡者、謂ク釈迦牟尼仏一代、正法五百年、像法一千年、末法一万年ニハ、衆生減ジ尽キ、諸経悉ク滅セム。如来悲↢哀シテ痛イタム焼ヤクノ衆生ヲ↡、特ニ留メテ↢此ノ経ヲ↡止住セムコト百年ナラムト。」
・第三大門
【77】^またいはく (安楽集・上)、
又0213云ク、
^「▲¬大集経¼ にのたまはく、 ª^▼わが末法の時のなかの億々の衆生、 行を起し道を修せんに、 いまだ一人も得るものあらじº と。
「¬大集経ニ¼云ク、我ガ末法ノ時ノ中ノ億億ノ衆生、起シ↠行ヲ修セムニ↠道ヲ、未 ジ ダト↠有ラ↢一人モ得ル者↡。
^◆当今は末法にしてこれ五濁悪世なり。 ただ浄土の一門のみありて通入すべき路なり」 と。 以上
当今ハ末法ニシテ是五濁悪世ナリ。唯有リテ↢浄土ノ一門ノミ↡可キ↢通入ス↡路ナリト。」 已上
二 Ⅱ ⅰ b 末法弘化の宗軌を顕示す【三時開遮】
イ 上を承けて道俗を誡む
【78】^▼しかれば、 穢悪濁世の群生、 末代の旨際を知らず、 僧尼の威儀を毀る。 今の時の道俗、 おのれが分を思量せよ。
爾レ者穢悪濁世ノ群生、不↠知ラ↢末代ノ旨際ヲ↡、毀ル↢僧尼ノ威儀ヲ↡。今ノ時ノ道俗思↢量セヨ己ガ分ヲ↡。
二 Ⅱ ⅰ b ロ 弘化の宗軌を顕す
(一)先づ末法の年時を定む
【79】^三時の教を案ずれば、 △*如来般涅槃の時代を勘ふるに、 *周の▽第五の主、 *穆王*五十三年壬申に当れり。 その壬申より▼わが*元仁元年 元仁とは*後堀川院、 諱茂仁の聖代なり 甲申に至るまで、 *二千一百七十三歳なり。 また ¬*賢劫経¼・¬*仁王経¼・¬*涅槃¼ 等の説によるに、 ▼すでにもつて末法に入りて*六百七十三歳なり。
按ズレ↢三時ノ教ヲ↡者、勘フルニ↢如来般涅槃ノ時代ヲ↡、当レリ↢周ノ第五ノ主穆王五十一年壬申ニ↡。従リ↢其ノ壬申↡至ルマデ↢我ガ元仁元年 *元仁ト者後堀河院*諱*茂仁ノ聖代也 甲申ニ↡、二千一百八十三歳也。又依ルニ↢¬賢劫経¼・¬仁王経¼・¬涅槃¼等ノ説ニ↡、已ニ以テ入リテ↢末法ニ↡六百八十三歳也。
二 Ⅱ ⅰ b ロ (二)¬末法燈明記¼を引きて正しく顕す
【041880】^▼¬*末法灯明記¼ *最澄の製作 を披閲するにいはく、
披↢ヒラキ閲ミルスルニ¬末法灯明記ヲ¼↡ 最澄ノ製作 曰ク、
^「それ*一如に範衛してもつて化を流すものは*法王、 ^*四海に光宅してもつて風を垂るるものは*仁王なり。 ^しかればすなはち、 仁王・法王、 たがひに顕れて*物を開し、 *真諦・俗諦たがひによりて教を弘む。 このゆゑに*玄籍*宇内に盈ち、 *嘉猷天下に溢てり。
「夫範↢サカフ衛マモルシテ一如ニ↡以テ流ス↠化ヲ者ハ法王、光↢宅シテ四海ニ↡以テ乗ズル↠風ニ者ハ仁王ナリ。然レバ則チ仁王・法王互ニ顕レ而開シ↠物ヲ、真諦・俗諦遞ニ因リ而弘ム↠教ヲ。所以玄ヨシ籍フダ盈チ↢宇イヱ内ニ↡、嘉猶溢イチテリ↢天下ニ↡。
^ここに愚僧等率して*天網に容り、 俯して*厳科を仰ぐ。 いまだ*寧処に遑あらず。
爰ニ愚僧等率シテ容リ↢天網ニ↡、俯シテ仰グ↢厳イツクシキ科ヲ↡シナワイ。未ズ ダ↠遑アラ↢寧ヤスシ処ニ↡。
^しかるに法に三時あり、 人また三品なり。 *化制の旨、 時によりて興替す。 毀讃の文、 人に逐つて取捨す。 それ*三古の運、 *減衰同じからず。 *後五の機、 慧悟また異なり。 あに一途によつて済はんや、 一理について整さんや。
然ルニ法ニ有リ↢三時↡、人亦三品ナリ。化制之旨依リテ↠時ニ興オコシ讃ス。毀ソシル讃之文遂テ↠人ニ取捨ス。夫三石之運ハコブ、減オトロヘ衰オトロフ不↠同ジカラ。後五之機、慧悟又異ナリ。豈拠テ↢一途ミチニ↡済ハムヤ、就テ↢一理ニ↡整シヤウサム乎。
^ゆゑに正像末の旨際を詳らかにして、 試みに*破持僧の事を彰さん。 ▼なかにおいて三あり。 ▽初めには正像末を決す。 ▽次に破持僧の事を定む。 ▽後に教を挙げて比例す。
故ニ詳ニシテ↢正像末之旨際ヲ↡、試ニ彰サム↢破持タモチ僧之事ヲ↡。於テ↠中ニ有0214リ↠三。初ニハ決スサダム正像末ヲ↡。次ニ定ム↢破持僧ノ事ヲ↡。後ニ挙ゲテ↠教ヲ比例スタクラブ。
^△初めに正像末を決するに、 諸説を出すこと同じからず。 しばらく一説を述せん。
初ニ決スルニ↢正像末ヲ↡、出スコト↢諸説ヲ↡不↠同ジカラ。且ク述ノブセム↢一説ヲ↡。
^▼大乗*基、 ¬▼賢劫経¼ を引きていはく、 ª^仏涅槃の後、 正法五百年、 像法一千年ならん。 ▼この千五百年の後、 釈迦の法滅尽せんº と。 ^末法をいはず。 ▼余の所説に准ふるに、 ▼尼、 ▼八敬に順はずして懈怠なるがゆゑに、 法更増せず。 ゆゑに▼かれによらず。
大乗基ニ、引キテ↢¬賢劫経ヲ¼↡言ク、仏涅槃ノ後、正法五百年、像法一千年ナラム。此ノ千五百年ノ後、釈迦ノ法滅尽セムト。不↠言ハ↢末法ヲ↡。准フルニ↢余ノ所説ニ↡、尼不↠順ハ↢八敬ニ↡而懈怠ナルガ故ニ法不↢更サラニ増セ↡。故ニ不↠依ラ↠彼ニ。
^▼また ¬涅槃経¼ に、 ª^末法のなかにおいて十二万の大0419菩薩衆ましまして、 法を持ちて滅せずº と。 ^これは▼上位によるがゆゑに▼また同じからず。
又¬涅槃経ニ¼、於テ↢末法ノ中ニ↡有シテ↢十二万ノ大菩薩衆↡、持チテ↠法ヲ不ト↠滅セ。此ハ拠ルガ↢上位ニ↡故ニ亦不↠同ジカラ。
^▼問ふ。 もししからば、 千五百年のうちの行事いかんぞや。
問フ。若シ爾ラ者千五百年之内ノ行事云何ゾヤ。
^答ふ。 ¬*大術経¼ によるに、 ª^仏涅槃の後の初めの五百年には、 ▼*大迦葉等の*七賢聖僧、 次第に正法を持ちて滅せず、 五百年の後、 正法滅尽せんと。
答フ。依ルニ↢¬大術経ニ¼↡、仏涅槃ノ後ノ初ノ五百年ニハ、大迦葉等ノ七賢カシコシ聖僧、次第ニ持チテ↢正法ヲ↡不↠滅セ、五百年ノ後、正法滅尽セムト。
^▼六百年に至りて後、 九十五種の外道競ひ起らん。 *馬鳴世に出でてもろもろの外道を伏せん。
至リテ↢六百年ニ↡後、九十五種ノ外道競ヒ起ラム、馬鳴出デテ↠世ニ伏セムシタガフ ↢諸ノ外道ヲ↡。
^▼七百年のうちに、 *龍樹世に出でて邪見の幡を摧かん。
七百年ノ中ニ、龍樹出デテ↠世ニ摧カム↢邪見ノ幢ヲ↡。
^八百年において、 比丘*縦逸にして、 わづかに一二*道果を得るものあらん。
於テ↢八百年ニ↡、比丘縦逸ホシキマヽニシテ、僅マレニニ一二有ラム↠得ルモノ↢道果ヲ↡。
^九百年に至りて、 奴を比丘とし、 婢を尼とせん。
至リテ↢九百年ニ↡、 奴ヲオトコジユシヤ為↢比丘ト↡、 婢ヲオウナジウシヤ為ム↠尼ト。
^▼一千年のうちに、 *不浄観を聞かん、 瞋恚して欲せじ。
一千年ノ中ニ、開カム↢不浄観ヲ↡、瞋恚シテ不↠欲セ。
^千一百年に、 *僧尼嫁娶せん、 僧*毘尼を毀謗せん。
千一百年ニ、僧尼 嫁ムコトリ 娶セムヨメトリ、毀↢謗セム僧毘尼ヲ↡。
^千二百年に、 諸僧尼等ともに子息あらん。
千二百年ニ、諸僧尼等倶ニ有ラム↢子息↡。
^▼千三百年に、 袈裟変じて白からん。
千三百年ニ、袈裟変ジテ白カラム。
^千四百年に、 *四部の弟子みな猟師のごとし、 三宝物を売らん。
千四百年ニ、四部ノ弟子皆如シ↢猟カリ師ノ↡、売ラム↢三宝物ヲ↡。
^▼ここにいはく、 千五百年に▼*拘睒弥国にふたりの僧ありて、 たがひに是非を起してつひに殺害せん、 よつて教法竜宮に蔵まるなりº と。
爰ニ曰ク、千五百年ニ睒弥国ニ有リテ↢二ノ僧↡、互タガヒニ起シテ↢是非ヲ↡遂ニ殺害セム、仍テ教法蔵ル↢於竜宮ニ↡也ト。
^¬涅槃¼ の十八および ¬仁王¼ 等にまたこの文あり。
¬涅槃ノ¼十八及ビ¬仁王¼等ニ復有リ↢此ノ文↡。
^これらの経文に準ふるに、 千五百年の後、 戒・定・慧あることなき0420なり。
準フルニ↢此等ノ経文ニ↡、千五百年ノ後、無キ↠有ルコト↢戒・定・慧↡也。
^▼ゆゑに ¬大集経¼ の五十一にいはく、 ª^▲わが滅度の後、 初めの五百年には、 もろもろの比丘等わが正法において*解脱堅固ならん。 初めに聖果を得るを名づけて解脱とす。 次の五百年には、 *禅定堅固ならん。 次の五百年には、 *多聞堅固ならん。 次の五百年には、 *造寺堅固ならん。 後の五百年には、 *闘諍堅固ならん、 *白法隠没せんº と云々。
故ニ¬大0215集経ノ¼五十一ニ言ク、我ガ滅度ノ後、▼初ノ五百年ニハ、諸ノ比丘等於テ↢我ガ正法ニ↡解脱堅固ナラム。 初ニ得ルヲ↢聖果ヲ↡名ケテ為↢解脱ト↡。 次ノ五百年ニハ、禅定堅固ナラム。次ノ五百年ニハ、多聞堅固ナラム。次ノ五百年ニハ、造寺堅固ナラム。後ノ五百年ニハ、 闘タヽカフ諍アラソフ堅固ナラム。白法隠没セムト云云。
^この意、 初めの三分の五百年は、 次いでのごとく戒・定・慧の三法、 堅固に住することを得ん。 すなはち上に引くところの正法五百年、 像法一千の二時これなり。 ^造寺以後は、 ならびにこれ末法なり。
此ノ意、初ノ三*分ノ五百年ハ、如ク↠*次デノ戒・定・慧ノ三法、堅固ニ得ム↠住スルコトヲ。即チ上ニ所ノ↠引ク正法五百年、像法一千ノ二時是也。造寺已後ハ、並ニ是末法ナリ。
^ゆゑに▼基の ¬*般若会の釈¼ にいはく、 ª^正法五百年、 像法一千年、 この千五百年の後、 正法滅尽せんº と。 ^ゆゑに知んぬ、 以後はこれ末法に属す。
故ニ基ノ¬般若会ノ釈ニ¼云ク、正法五百年、像法一千年、此ノ千五百年ノ後之正法滅尽セムト。故ニ知ヌ已後ハ是属ス↢末法ニ↡。
^▼問ふ。 もししからば、 今の世は、 まさしくいづれの時にか当れるや。
問フ。若シ爾ラ者今ノ世ハ、正シク当レルヤ↢何ノ時ニカ↡。
^答ふ。 滅後の年代多説ありといへども、 しばらく両説を挙ぐ。
答フ。滅後ノ年代雖モ↠有リト↢多説↡、且ク挙グ↢両説ヲ↡。
^一つには*法上師等、 ¬*周異¼ の説によりていはく、 ^仏、 △第五の主、 *穆王満五十三年壬申に当りて入滅したまふと。 ^もしこの説によらば、 その壬申よりわが*延暦二十年辛巳に至るまで、 一千七百五十歳なり。
一ニハ法上師等、依リテ↢¬周異ノ¼説ニ↡言ク、仏当リテ↢*第五ノ主穆王満五十一年壬申ニ↡入滅シタマフト。若シ依ラバ↢此ノ説ニ↡、従リ↢其ノ壬申↡至ルマデ↢我ガ延暦二十年辛巳ニ↡、一千七百五十歳ナリト。
^二つには*費長房等、 魯の ¬*春秋¼ によらば、 ^仏、 周の第二十の主、 *匡王班四年壬子に当りて入滅したまふ。 ^も0421しこの説によらば、 その壬子よりわが延暦二十年辛巳に至るまで、 一千四百十歳なり。
二ニハ費長房等、依ラバ↢魯ノ¬春秋ニ¼↡、仏当リテ↢周ノ第二十ノ主匡王班四年壬子ニ↡入滅シタマフ。若シ依ラバ↢此ノ説ニ↡、従リ↢其ノ壬子↡至ルマデ↢我ガ延暦二十年辛巳ニ↡、一千四百十歳ナリ。
^ゆゑに今の時のごときは、 これ像法最末の時なり。 かの時の行事すでに末法に同ぜり。
故ニ如キハ↢今ノ時ノ↡、*是像法最末ノ時也。彼ノ時ノ行事既ニ同ゼリ↢末法ニ↡。
^しかればすなはち、 ▼末法のなかにおいては、 ただ言教のみありて行証なけん。 もし戒法あらば破戒あるべし。 すでに戒法なし、 いづれの戒を破せんによりてか破戒あらんや。 破戒なほなし。 いかにいはんや持戒をや。 ▼ゆゑに ¬大集¼ にいはく、 ª^仏涅槃の後、 無戒州に満たんº と云々。
然レバ則チ於テハ↢末法ノ中ニ↡、但有リ↢言教ノミ↡而無ケム↢行証↡。若シ有ラバ↢*戒法↡可シ↠有ル↢破戒↡。既ニ無シ↢戒法↡、由リテカ↠破セムニ↢何ノ戒ヲ↡而有ラムヤ↢破戒↡。*破戒尚無シ。何ニ況ヤ持戒ヲヤ。故ニ¬大集ニ¼云ク、仏涅槃ノ後、無戒満タムト↠州ニ云云。
^△問ふ。 諸経律のなかに、 広く破戒を制して衆に入ることを聴さず。 破戒なほしかなり。 いかにいはんや無戒をや。 しかるにいま重ねて末法を論ずるに、 戒なし。 ▼あに瘡なくして、 みづからもつて傷まんや。
問フ。諸経律ノ中ニ、広ク制シテ↢破0216戒ヲ↡不↠聴サ↠入ルコトヲ↠衆ニ。破戒尚爾ナリ。何ニ況ヤ無戒ヲヤト。而ルニ今重ネテ論ズルニ↢末法ヲ↡、無シ↠戒。豈無クシテ↠瘡キズ自ラ以テ傷マム哉ト。
^▼答ふ。 この理しからず。 正像末法の所有の行事、 広く諸経に載せたり。 内外の道俗たれか*披諷せざらん。 あに自身の*邪活を貪求して、 持国の正法を隠蔽せんや。
答フ。此ノ理不↠然ラ。正像末法ノ所有ノ行事、広ク載セタリ↢諸経ニ↡。内外ノ道俗誰カ不ラム↢披ヒラク諷ミルセ↡。豈貪↢求シテ自身ノ邪活ヲ↡、隠↢蔽セム持国之正法ヲ↡乎。
^ただし、 いま論ずるところの末法には、 ▲ただ*名字の比丘のみあらん。 この名字を世の真宝とせん。 *福田なからんや。 ▲たとひ末法のなかに持戒あらば、 すでにこれ怪異なり、 市に虎あらんがごとし。 これたれか信ずべきや。
但シ今所ノ↠論ズル末法ニハ、唯有ラム↢名字ノ比丘ノミ↡。此ノ名字ヲ為ム↢世ノ真*宝ト↡。無カラムヤ↢福田↡。設ヒ末法ノ中ニ有ラ↢持戒↡者、既ニ是怪アヤシミ異ナリ、如シ↢市ニ有ラムガ↟虎。此誰カ可キヤ↠信ズ。
^▼問ふ。 正像末の事、 すでに衆経に見えたり。 末法の名字を世の真宝とせんこ0422とは、 聖典に出でたりや。
問フ。正像末ノ事、已ニ見エタリ↢衆経ニ↡。末法ノ名字ヲ為ムコトハ↢世ノ真宝ト↡、出デタリヤ↢聖典ニ↡。
^▼答ふ。 ¬大集¼ の第九にいはく、 ª^たとへば真金を*無価の宝とするがごとし。 もし真金なくは、 銀を無価の宝とす。 もし銀なくは、 鍮石・偽宝を無価とす。 もし偽宝なくは、 赤白銅・鉄・白鑞・鉛・錫を無価とす。
答フ。¬大集ノ¼第九ニ云ク、譬ヘバ如シ↣真金ヲ為ルガ↢無価アタイノ宝ト↡。若シ無ク↢真金↡者、銀ヲ為↢無価ノ宝ト↡。若シ無ク↠銀者、鍮石・偽宝ヲ為↢無価ト↡。若シ無クハ↢偽宝↡、赤白 銅アカガネ・ 鉄クロガネ・白錫・鉛ナマリ・錫ヲ為↢無価ト↡。
^▼かくのごとき一切世間の宝なれども、 仏法無価なり。 もし仏宝ましまさずは、 縁覚無上なり。 もし縁覚なくは、 羅漢無上なり。 もし羅漢なくは、 余の賢聖衆もつて無上なり。
如キ↠是クノ一切世間ノ宝ナレドモ仏法無価ナリ。若シ無サズ↢仏宝↡者、縁覚無上ナリ。若シ無クハ↢縁覚↡、羅漢無上ナリ。若シ無クハ↢羅漢↡、余ノ賢聖衆以テ無上ナリ。
^もし余の賢聖衆なくは、 *得定の凡夫もつて無上とす。 もし得定の凡夫なくは、 浄持戒をもつて無上とす。 もし浄持戒なくは、 *漏戒の比丘をもつて無上とす。
若シ無クハ↢余ノ賢聖衆↡、得定ノ凡夫以テ為↢無上ト↡。若シ無クハ↢得定ノ凡夫↡、浄持戒ヲ以テ為↢無上ト↡。若シ無クハ↢浄持戒↡、漏モラス戒ノ比丘ヲ以テ為↢無上ト↡。
^もし漏戒なくは、 剃除鬚髪して身に袈裟を着たる名字の比丘を無上の宝とす。
若シ無クハ↢漏戒↡、剃除鬚髪シテ身ニ著タル↢袈裟ヲ↡名字ノ比丘ヲ為↢無上ノ宝ト↡。
^余の*九十五種の異道に比するに、 もつとも第一とす。 世の供を受くべし、 物のための初めの福田なり。 なにをもつてのゆゑに、 よく身を破る衆生、 怖畏するところなるがゆゑに。 *護持養育して、 この人を安置することあらんは、 久しからずして*忍地を得んº と。 以上経文
比スルニ↢余ノ九十五種ノ異道ニ↡、最モ為↢第一ト↡。応シ↠受ク↢世ノ供アタフヲ↡、為ノ↠物ノ初ノ福田ナリ。何ヲ以テノ故ニ。破ル↢能ク身ヲ↡衆生、所ナルガ↢怖オソレ畏スルオソル ↡故ニ。有ラムハ↣護持シ養育シテ安↢置スルコト是ノ人ヲ↡不シテ↠久シカラ得ムト↢忍地ヲ↡。 已上経文
^この文のなかに▽八重の無価あり。 いはゆる如来、 縁覚・声聞および*前三果、 得定の凡夫、 持戒・破戒・無戒名字、 それ次いでのごとし、 名づけて正像末の時の無価の宝とするなり。 初めの四つ0423は正法時、 次の三つは像法時、 後の一つは末法時なり。 これによりてあきらかに知んぬ、 ▽破戒・無戒ことごとくこれ真宝なり。
此ノ文ノ中ニ有リ↢八重ノ無価↡。所ル↠謂ハ如来像、縁覚・声聞及ビ前三果、得0217定ノ凡夫、持戒・破戒・無戒名字、如シ↢其レ次デノ↡、名ケテ為ル↢正像末之時ノ無価ノ宝ト↡也。初ノ四ハ正法時、次ノ三ハ像法時、後ノ一ハ末法時ナリ。由リテ↠此ニ明ニ知ヌ破戒・無戒咸ク是真宝ナリ。
^▼問ふ。 伏して前の文を観るに、 破戒名字、 真宝ならざることなし。 なんがゆゑぞ ¬涅槃¼ と ¬大集経¼ に、 ª^国王・大臣、 破戒の僧を供すれば、 国に*三災起り、 つひに地獄に生ずº と。 ^破戒なほしかなり。 いかにいはんや無戒をや。 しかるに如来、 一つの破戒において、 あるいは毀り、 あるいは讃む。 あに一聖の説に*両判の失あるをや。
問フ。伏シテシタガフ観ルニ↢前ノ文ヲ↡、破戒名字、莫シ↠不ルコト↢真宝ナラ↡。何ガ故ゾ¬涅槃ト¼¬大集経ニ¼、国王・大臣、供アタフスレバ↢破戒ノ僧ヲ↡、国ニ起リ↢三災↡ワザワイ、遂ニ生ズト↢地獄ニ↡。破戒尚爾ナリ。何ニ況ヤ無戒ヲヤ。而爾ニ如来於テ↢一ツノ破戒ニ↡、或イハ毀リ或イハ讃ム。豈一聖之説ニ有ルヲヤ↢両判コトワル之失↡。
^▼答ふ。 この理しからず。 ¬涅槃¼ 等の経に、 しばらく正法の破戒を制す、 像・末代の比丘にはあらず。 その名同じといへども、 時に異あり。 時に随ひて*制許す。 これ大聖 (釈尊) の旨なり。 ゆゑに世尊において両判の失ましまさず。
答フ。此ノ理不↠然ラ。¬涅槃¼等ノ経ニ、且ク制ス↢正法之破戒ヲ↡、非ズ↢像・末代之比丘ニハ↡。其ノ名雖モ↠同ジト、而時ニ有リ↠異。随ヒテ↠時ニ制許スユルス。是大聖ノ旨破ナリ。於テ↢世尊ニ↡無サズ↢両判ノ失↡。
^▼問ふ。 もししからばなにをもつてか知らん、 ¬涅槃¼ 等の経は、 ただ正法所有の破戒を制止して、 像末の僧にあらずとは。
問フ。若シ爾ラバ以テカ↠何ヲ知ラム、¬涅槃¼等ノ経ハ、但制↢止シテ正法所有ノ破戒ヲ↡、非ズトハ↢像末ノ僧ニ↡。
^▼答ふ。 引くところの ¬大集¼ 所説の△八重の真宝のごとし、 これその証なり。 みな時に当りて無価となすゆゑに。
答フ。如シ↢所ノ↠引ク¬大集¼所説ノ八重ノ真宝ノ↡、是其ノ証也。皆為ス↢当リテ↠時ニ無価ト↡故ニ。
^▼ただし正法の時の破戒比丘は、 清浄衆を穢す。 ゆゑに仏固く禁制して衆に入れず。
但シ正法ノ時ノ破戒比丘ハ、穢ス↢清浄衆ヲ↡。故ニ仏固ク禁イマシム制シテ不↠入レ↠衆ニ。
^しかるゆゑは、 ¬涅槃¼ の第三にのた0424まはく、 ª^如来いま無上の正法をもつて、 諸王・大臣・宰相・比丘・比丘尼に付嘱したまへり。 ▼乃至 破戒あつて正法を毀るものは、 王および大臣、 四部の衆、 まさに*苦治すべし。 かくのごときの王臣等、 無量の功徳を得ん。 ▼乃至 これわが弟子なり、 真の声聞なり。 福を得ること無量ならんº と。 ▼乃至
所↢以然ル↡者、¬涅槃ノ¼第三ニ云ク、如来今以テ↢无上ノ正法ヲ↡、付↢嘱シタマヘリ諸王・大臣・宰相・比丘・比丘尼ニ↡。 乃至 有テ↢破戒↡毀ラ↢正法ヲ↡者、王及ビ大臣、四部ノ衆、応シ↢当ニ苦治ス↡。如キノ↠是クノ王臣等、得ム↢无量ノ功徳ヲ↡。 乃至 是我ガ弟子ナリ、真ノ声聞也。得ルコト↠福ヲ无量ナラムト。 乃至
^▼かくのごときの制文の法、 往々衆多なり。 みなこれ正法に明かすところの制文なり。 像末の教にあらず。
如キノ↠是クノ制文ノ法、往往衆多ナリ。皆是正法ニ所↠明ス之制文ナリ。非ズ↢像末ノ教ニ↡。
^しかるゆゑは、 像季・末法には正法を行ぜざれば、 法として毀るべきなし。 なにをか毀法と名づけん。 戒として破すべきなし。 たれをか破戒と名づけん。 ▼またそのとき大王、 行として護るべきなし。 なにによりてか三災を出し、 および戒慧を失せんや。 また像末には証果の人なし。 いかんぞ*二聖に聴護せらるることを明かさん。
所↢以然ル↡者、像季・末法ニハ不レバ↠行ゼ↢正法ヲ↡、無シ↢法トシテ可キ↟毀ル。何ヲカ名ケム↢毀法ト↡。無シ↢戒トシテ可0218キ↟破ス。誰ヲカ名ケム↢破戒ト↡。又其ノ時大王無シ↢行ト而可キ↟護ル。由リテカ↠何ニ出シ↢三災ヲ↡、及ビ於失セムヤ↢戒慧ヲ↡。又像末ニハ無シ↢証果ノ人↡。如何ゾ*明サム↠被ルヽコトヲ↣聴↢護セ二聖ニ↡。
^ゆゑに知んぬ、 上の所説はみな正法の世に持戒あるときに約して、 破戒あるがゆゑなり。
故ニ知ヌ上ノ所説ハ皆約ヨルシテ↧正法ノ世ニ有ル↢持戒↡時ニ↥、有ルガ↢破戒↡故ナリ。
^▼次に像法千年のうちに、 初めの五百年には持戒やうやく減じ、 破戒やうやく増せん。 戒行ありといへども証果なし。
次ニ像法千年ノ中ニ、初ノ五百年ニハ持戒漸ク減ジ、破戒漸ク増セム。雖モ↠有リト↢戒行↡而無シ↢証果↡。
^ゆゑに ¬涅槃¼ の七にのたまはく、 ª^*迦葉菩薩、 仏にまうしてまうさく、 «世尊、 仏の所説のごときは*四種の魔あり。 もし魔の所説および仏の所説、 われまさにいかんしてか分別することを得べ0425き。 もろもろの衆生ありて魔行に随逐せん。 また仏説に随順することあらば、 かくのごときらの輩、 またいかんが知らん» と。
故ニ¬涅槃ノ¼七ニ云ク、迦葉菩薩白シテ↠仏ニ言サク、世尊、如キハ↢仏ノ所説ノ↡有リ↢四種ノ魔↡。若シ魔ノ所説及ビ仏ノ所説、我当ニキ↣云何ン而カ得↢分別スルコトヲ↡。有リテ↢諸ノ衆生↡随↢逐セムシタガフ魔行ニ↡。復有ラ↣随↢順スルコト仏説ニ↡者、如キ↠是クノ等ノ輩復云何ンガ知ラムト。
^仏、 迦葉に告げたまはく、 «われ涅槃して七百歳の後に、 これ*魔波旬やうやく起りて、 まさにしきりにわが正法を壊すべし。 たとへば猟師の身に法衣を服せんがごとし。 魔波旬もまたまたかくのごとし。 比丘像・比丘尼像・優婆塞・優婆夷像とならんこと、 またまたかくのごとしと。 ▼乃至
仏告ゲタマハク↢迦葉ニ↡、我涅槃シテ七百歳ノ後ニ、是魔波旬漸ク起リテ、当ニシ↣頻ニ壊スヤブル↢我ガ之正法ヲ↡。譬ヘバ如シ↣猟カリ師ノ身ニ服セムガ↢法衣ヲ↡。魔波旬モ亦復如シ↠是クノ。作ラムコト↢比丘像・比丘尼像・優婆塞・優婆夷像ト↡、亦復如シト↠是クノ。 乃至
^"もろもろの比丘、 ▼奴婢・僕使、 牛・羊・象・馬、 乃至、 銅鉄釜鍑、 大小銅盤、 所須のものを受畜し、 耕田・種植、 販売・市易して、 穀米を儲くることを聴すと。 かくのごときの衆事、 仏、 大悲のゆゑに衆生を憐愍してみな畜ふることを聴さん" と。 かくのごときの経律は、 ことごとくこれ魔説なり»º と云々。
聴スト↧諸ノ比丘、受↢畜シタクワウ奴婢・僕使、牛・羊・象・馬、乃至 銅アカガネ 鉄クロガネ釜カマ錫カナエ、大小銅盤、所須モチヰル之物ヲ↡、耕ツクル田・種タネ植、販ワカツ売ウル・市イチ易シテカウル 、儲チヨクルコトヲ↦穀コメ米コメヲ↥。如キノ↠是クノ衆事、仏大悲ノ故ニ憐↢アハレミ愍シテアハレム衆生ヲ↡皆聴サムト↠畜ウルコトヲ。如キノ↠是クノ経律ハ、悉ク是魔説ナリト云云。
^すでに ª七百歳の後に波旬やうやく起らんº といへり。 ゆゑに知んぬ、 かの時の比丘、 やうやく▼*八不浄物を貪畜せんと。 この妄説をなさん、 すなはちこれ魔の流なり。 これらの経のなかにあきらかに年代を指して、 つぶさに行事を説けり。 さらに疑ふべからず。 それ一文を挙ぐ、 余みな準知せよ。
既ニ云ヘリ↢七百歳ノ後ニ波旬漸ク起ラムト↡。故ニ知ヌ彼ノ時ノ比丘、漸ク貪↢ムサボリ畜セムトタクワウ 八不浄物ヲ↡。作サム↢此ノ妄説ヲ↡、即チ是魔ノ流ル 也。此等ノ経ノ中ニ明ニ指シテ↢年代ヲ↡、具ニ説ケリ↢行事ヲ↡。不↠可カラ↢更ニ疑フ↡。其挙グ↢一文ヲ↡、余皆準知ナズラヘ セヨ。
^▼次に像法の後半ばは持戒減少し、 破戒巨多ならん。 ゆゑに ¬涅槃¼ の六にの0426たまはく、 ▼乃至
次ニ像法ノ後半ハ持戒減オトロヘ少シ、破戒巨多ナラム。故ニ¬涅槃ノ¼六ニ云ク、 乃至
^▼また ¬*十輪¼ にのたまはく、 ª^もしわが法によりて出家して悪行を造作せん。 これ沙門にあらずしてみづから沙門と称し、 また*梵行にあらずしてみづから梵行と称せん。
又¬十輪ニ¼言ハク、若シ依0219リテ↢我ガ法ニ↡出家シテ造↢作セム悪行ヲ↡。此非ズシテ↢沙門ニ↡自ラ称シ↢沙門ト↡、亦非ズシテ↢梵行ニ↡自ラ称セム↢梵行ト↡。
^かくのごときの比丘、 よく一切天・竜・夜叉、 一切善法功徳の*伏蔵を開示して、 衆生の善知識とならん。 少欲知足ならずといへども、 剃除鬚髪して、 法服を被着せん。 この因縁をもつてのゆゑに、 よく衆生のために善根を増長せん。 もろもろの天・人において善道を開示せん。 乃至
如キノ↠是クノ比丘、能ク開↢示シテ一切天・竜・夜叉、一切善法功徳ノ伏蔵ヲ↡、為ラム↢衆生ノ善知識ト↡。雖モ↠不ト↢少欲知足ナラ↡、剃除鬚髪シテ、被キル↢著キルセム法服ヲ↡。以テノ↢是ノ因縁ヲ↡故ニ能ク為ニ↢衆生ノ↡増↢長セム善根ヲ↡。於テ↢諸ノ天・人ニ↡開↢示セム善道ヲ↡。乃至
^破戒の比丘、 これ死せる人なりといへども、 しかも戒の余才、 *牛黄のごとし。 これ死するものといへども、 人ことさらにこれを取る。 また*麝香の後に用あるがごとしº と云々。
破戒ノ比丘雖モ↢是死セル人ナリト↡、而モ戒ノ余アマル才如タカラ シ↢牛黄ノ↡。此雖モ↠死スルモノト、而人故ニ取ル↠之ヲ。亦如シト↢麝香ノ後ニ有ルガ↟用云云。
^すでに ª*迦羅林のなかに一つの*鎮頭迦樹ありº といへり。 これは像運すでに衰へて、 破戒濁世にわづかに一二持戒の比丘あらんに喩ふるなり。
既ニ云ヘリ↣迦羅林ノ中ニ有リト↢一ノ鎮頭迦樹↡。此ハ喩フルナリト↣像運ハコブ已ニ衰ヘテ、破戒濁世ニ僅 キン ニ有ラムニ↢一二持戒ノ比丘↡。
^▼またいはく、 ª破戒の比丘、 これ死せる人なりといへども、 なほ麝香の死して用あるがごとし、 衆生の善知識となるº と。 あきらかに知んぬ、 このときやうやく破戒を許して世の福田とす。 △前の ¬大集¼ に同じ。
又云ク、破戒ノ比丘、雖モ↢是死セル人ナリト↡、猶如シ↢麝香ノ死シ而有ルガ↟用、為ルト↢衆生ノ善知識ト↡。明ニ知ヌ此ノ時漸ク許シテ↢破戒ヲ↡為↢世ノ福田ト↡。同ジト↢前ノ¬大集ニ¼↡。
^次に像季の後は、 まつたくこれ戒なし。 仏、 時運を知ろしめして、 末俗を済はんがために名字の僧を讃めて世の福田としたまへり。
次ニ像季スエノ後ハ、全ク是無シ↠戒。仏知シテ↢時運ヲ↡、為ニ↠済ハムガ↢末俗ヲ↡讃メテ↢名字ノ僧ヲ↡為タマヘリト↢世ノ福田ト↡。
^▼また ¬大集¼ の五十二0427にのたまはく、 ª^もし後の末世に、 わが法のなかにおいて鬚髪を剃除し、 身に袈裟を着たらん名字の比丘、 もし*檀越ありて捨施供養をせば、 無量の福を得んº と。
又¬大集ノ¼五十二ニ云ク、若シ後ノ末世ニ、於テ↢我ガ法ノ中ニ↡剃ソル↢除鬚ヒゲ髪カミシ↡、身ニ著タラム↢袈裟ヲ↡名字ノ比丘、若シ有リテ↢壇越↡捨テバ↢於供養ヲ↡、得ムト↢無量ノ福ヲ↡。
^▼また ¬*賢愚経¼ にのたまはく、 ª^もし檀越、 将来末世に法尽きんとせんに垂んとして、 まさしく妻を蓄へ、 子を侠ましめん四人以上の名字の僧衆、 まさに礼敬せんこと、 *舎利弗・*大目連等のごとくすべしº と。
又¬賢愚経ニ¼言ク、若シ壇越、将マサニ来末世ニ法乗欲ムニ↠尽キムト、正シク使メム↢蓄ヘ↠妻メ ヲ侠マ↟子ヲ四人以上ノ名字ノ僧衆、応シト↣当ニ礼敬セムコト如クス↢舎利弗・大目連等ノ↡。
^▼*またのたまはく、 ª^もし破戒を打罵し、 身に袈裟を着たるを知ることなからん、 罪は万億の仏身より血を出すに同じからん。 もし衆生ありて、 わが法のために剃除鬚髪し袈裟を被服せんは、 たとひ戒を持たずとも、 かれらはことごとくすでに*涅槃の印のために印せらるるなりº と。 ▼乃至
又云ク、若シ打 ウチ ↢罵ノルシ破戒ヲ↡、無カラム↠知ルコト↣身ニ著タルヲ↢袈裟ヲ↡、罪ハ同ジカラムト↠出スニ↢万億ノ仏身ヨリ血ヲ↡。若シ有リテ↢衆生↡、為ニ↢我ガ法ノ↡剃除鬚髪シ、被キル↢服キルセムハ袈裟ヲ↡、設ヒ不トモ↠持タ↠戒ヲ、彼等ハ悉ク已ニ涅槃ノ為ニ↢印オシテ之↡所ルヽ↠印セ也ト。 乃至
^▼¬*大悲経¼ にのたまはく、 ª^仏、 阿難に告げたまはく、 «将来世において法滅尽せんと欲せん時、 まさに比丘・比丘尼ありて、 わが法のなかにおいて出家を得たらんもの、 おのれが手に児の臂を牽きて、 ともに遊行してかの酒家より酒家に至らん。 わが法のなかにおいて*非梵行をなさん。 かれら酒の因縁たりといへども、 この*賢劫のなかにおいて、 まさに千仏ましまして興出したまはんに、 わが弟子となるべし。
¬大0220悲経ニ¼云ク、仏告ゲタマハク↢阿難ニ↡、於テ↢将来世ニ↡法欲セム↢滅尽セムト↡時、当ニ有リテ↢比丘・比丘尼↡、於テ↢我ガ法ノ中ニ↡得タラムモノ↢出家ヲ↡、己ガ手ニ牽キ↢児ノ臂ヲ↡而共ニ遊行シテ彼ノ酒家ヨリ至ラム↢酒家ニ↡。於テ↢我ガ法ノ中ニ↡作サム↢非梵行ヲ↡。彼等雖モ↠為リト↢酒ノ因縁↡、於テ↢此ノ賢劫ノ中ニ↡、当ニシト↧有シテ↢千仏↡興オコリ出シタマハムニ、我ガ為ル↦弟子ト↥。
^次に後に*弥勒まさにわが処を補ぐべし。 乃至最後*盧至如来まで、 かくのごとき次第になんぢまさに知0428るべし、
次ニ後ニ弥勒当ニシ↠補グ↢我ガ所ヲ↡。乃至最後盧至如来マデ、如キ↠是クノ次第ニ汝応シ↢当ニ知ル↡、
^阿難わが法のなかにおいて、 ただ性のみこれ沙門にして沙門の行を汚し、 みづから沙門と称せん、 形は沙門に似て尚しく袈裟を被着することあらしめんは、 賢劫において弥勒を首として乃至盧至如来まで、 かのもろもろの沙門、 かくのごときの仏の所にして、 *無余涅槃において次第に涅槃に入ることを得ん。 遺余あることなけん。
阿難、於テ↢我ガ法ノ中ニ↡、但使メム↫性ハ是沙門ノ汚↢沙門行ニシテ↡自ラ称セム↢沙門ト↡、形ハ似テ↢沙門ニ↡尚シク有ラ↪被↩著スルコト袈裟ヲ↨者、於テ↢賢劫ニ↡弥勒ヲ為テ↠首ト乃至盧至如来マデ、彼ノ諸ノ沙門、如キノ↠是クノ仏ノ所ニシテ、於テ↢无余涅槃ニ↡次第ニ得ム↠入ルコトヲ↢涅槃ニ↡。無ケム↠有ルコト↢遺ノコリ余↡アマル。
^なにをもつてのゆゑに、 かくのごとき一切沙門のなかに、 乃至一たび仏の名を称し、 ひとたび信を生ぜんもの、 所作の功徳つひに虚設ならじ。 われ仏智をもつて法界を測知するがゆゑなり»º と云々。 ▼乃至
何ヲ以テノ故ニ。如来一切沙門ノ中ニ、乃至一タビ称シ↢仏ノ名ヲ↡、一タビ生ゼム↠信ヲ者ノ、所作ノ功徳終ニ不↢虚設マウナラク ↡。我以テ↢仏智ヲ↡惻↢ハカリ知スルガ法界ヲ↡故ナリト云云。 乃至
^これらの諸経に、 みな年代を指して将来末世の名字の比丘を世の尊師とす。 もし▼正法の時の制文をもつて、 末法世の名字の僧を制せんは、 教機あひ乖き、 人法合せず。 これによりて ¬*律¼ にいはく、 ª^非制を制するは、 すなはち三明を断ず。 記説するところこれ罪ありº と。
此等ノ諸経ニ、皆指シテ↢年代ヲ↡将来末世ノ名字ノ比丘ヲ為ト↢世ノ*尊師ト↡。若シ以テ↢正法ノ時ノ制トヾム文ヲ↡、而制セ↢末法世ノ名字ノ僧ヲ↡者、教機相乖キ、人法不↠合セ。由リテ↠此ニ¬律ニ¼云ク、制スル↢非制ヲ↡者、則チ断ズ↢三明ヲ↡。所↢記シルシ説スル↡是有リト↠罪。
^この上に経を引きて配当しをはんぬ。
此ノ上ニ引キテ↠経ヲ配アテ当アツシ已訖ヌ。
^△後に教を挙げて比例せば、 末法法爾として正法毀壊し、 *三業記なし。 *四儀乖くことあらん。 ▼しばらく ¬*像法決疑経¼ にのたまふがごとし。 乃至 ^▼また ¬*遺教経¼ にのたまはく、 乃至 ^▼また ¬*法行経¼ にのたまはく、 乃至 ^▼¬*鹿子母経¼ にのたまはく、 乃至 ^▼また ¬*仁王経¼ にのたまはく、 乃至」 と。 以上略抄
後ニ挙ゲテ↠教ヲ比例セ者、末法法爾トシテ正法毀ソシリ壊シヤブル、三業無シ↠記。四儀有ラム↠乖クコト。且クカツガツ如シト↢¬像法決疑経ニ¼云フガ、 乃至 又¬遺教経ニ¼云ク、 乃至 又¬法行経ニ¼云ク、 乃至 ¬鹿子母経ニ¼云ク、 乃至 又¬仁王経ニ¼云フガ↡ト。 乃至」 已上略*抄
0221
*顕浄土方便化身土文類*六 愚禿釈親鸞集
二 Ⅱ ⅱ 真偽を弁ず【外教釈】
a 標牒【勘決邪偽】
【042981】^▼それもろもろの修多羅によつて、 ▼真偽を勘決して、 △外教邪偽の異執を教誡せば、
*夫拠リテ↢諸ノ修多羅ニ↡、勘↢決シテ真偽ヲ↡、教↢誡セ外教邪偽ノ異執ヲ↡者、
二 Ⅱ ⅱ b 引文
イ 経
(一)¬涅槃経¼(仏に帰依する者は余の諸天神に帰依せざることを明かす)
【82】^▼¬涅槃経¼ (如来性品) にのたまはく、
¬涅槃経ニ¼言ハク、
^「仏に帰依せば、 ▼つひにまたその余のもろもろの天神に帰依せざれ」 と。 略出
「帰↢依セ於↟仏者、終ニ不レト↣更帰↢依セ其ノ余ノ諸ノ天神ニ↡。」 略出
二 Ⅱ ⅱ b イ (二)¬般舟三昧経¼(涅槃に入れば則ち密に弥陀の三昧を結して以て一代の真正と為すことを成ず)
【83】^▼¬*般舟三昧経¼ にのたまはく、
¬般舟三昧経ニ¼言ハク、
^「▼優婆夷、 この▼三昧を聞きて学ばんと欲せんものは、 乃至 みづから▼仏に帰命し、 法に帰命し、 比丘僧に帰命せよ。 余道に事ふることを得ざれ、 天を拝することを得ざれ、 ▼鬼神を祠ることを得ざれ、 ▼吉良日を視ることを得ざれ」 となり。 以上
「優婆夷聞キテ↢是ノ三昧ヲ↡欲セム↠学バムト者ハ、 乃至 自ラ帰↢命シ仏ニ↡、帰↢命シ法ニ↡帰↢命セヨ比丘僧ニ↡。不レ↠得↠事フルコトヲ↢余道ニ↡、不レ↠得↠拝スルコトヲ↠於↠天、不レ↠得↠祠ルコトヲ↢鬼神ヲ↡、不レトナリ↠得↠視ルコトヲ↢吉良日ヲ↡。」 已上
【84】^▼またのたまはく (般舟三昧経)、
又言ハク、
^「優婆夷、 三昧を学ばんと欲せば、 乃至 天を拝し神を祠祀することを得ざれ」 となり。 略出
「優婆夷欲セバ↠学バムト↢三昧ヲ↡ 乃至 不レトナリ↠得↣拝シ↠天ヲ祠↢祀スルコトヲ神ヲ↡。」 略出
二 Ⅱ ⅱ b イ (三)¬大集経¼
(Ⅰ)日蔵
(ⅰ)「魔王波旬星宿品」(総じて天等の体を示す)
【85】^▼¬*大乗大方等日蔵経¼ ▼巻第八 「魔王波旬星宿品」 第八の二にのたまはく (大集経)、
¬大乗大方等日蔵経¼巻第八「魔王波旬星宿品ノ」第八之二ニ言ハマク、
^「▼ªその時に、 *佉盧虱、 天衆に告げていはまく、 «このもろもろの月等、 おのおの*主あり。 なんぢ四種の衆生を救済すべし。 なにものをか四つとする。 地上の人、 諸竜、 夜叉、 乃至*蝎等を救く。 かくのごときの類、 みなことごとくこれを救けん。 われもろもろの衆生を安楽するをもつてのゆゑ0430に、 *星宿を布置す。 おのおの*分部乃至*摸呼羅の時等あり。 またみなつぶさに説かん。 その国土方面の処に随ひて、 所作の事業、 随順し増長せん» と。
「爾ノ時ニ佉盧虱告ゲテ↢天衆ニ↡言ハク、是ノ諸ノ月等、各ノ有リ↢主↡。汝可シ↣救↢済ス四種ノ衆生ヲ↡。何者ヲカ為ル↠四ト。救ケム↢地上ノ人・諸竜・夜叉乃至蝎等ヲ↡。如キ↠斯クノ之類、皆悉ク救ケム↠之ヲ。我以テノ↣安↢楽スルヲ諸ノ衆生ヲ↡故ニ、布↢置ス星宿ヲ↡。各ノ有リ↢分部乃至模呼羅ノ時等↡。亦皆具ニ説カム。随ヒテ↢其ノ国土方面之処ニ↡、所作ノ事業、随順シ増長セムト。
^佉盧虱、 大衆の前にして掌を合せて説きていはまく、 «かくのごとき日月・年時、 大小星宿を安置す。 なにものをか名づけて六時ありとするや。 正月・二月を暄暖時と名づく。 三月・四月を種作時と名づく。 五月・六月は求降雨時なり。 七月・八月は物欲熟時なり。 九月・十月は寒涼の時なり。 十有一月、 合して十二月は大雪の時なり。 これ十二月を分つて六時とす。
佉盧虱於テ↢大衆ノ前0222ニ↡合セテ↠掌ヲ説キテ言ハマク、如キ↠是クノ安↢置ス日月・年時、大小星宿ヲ↡。何者ヲカ名ケテ為ル↢有六時ト↡也。正月・二月ヲ名ク↢*暖時ト↡。三月・四月ヲ名ク↢種作時ト↡。五月・六月ハ求降雨時ナリ。七月・八月ハ物欲熟時ナリ。九月・十月ハ寒*涼之時ナリ。十*有一月、合シテ十二月ハ大雪之時ナリ。是十二月ヲ分テ為↢六時ト↡。
^また大星宿その数八つあり。 いはゆる*歳星・*熒惑・*鎮星・*太白・*辰星・日・月・*荷羅睺星なり。 また*小星宿二十八あり。 いはゆる昴より胃に至るまでの諸宿これなり。 われかくのごとき次第安置をなす、 その法を説きをはんぬ。 なんだち、 みなすべからくまた見、 また聞くべし。 一切大衆、 意においていかん。 わが置くところの法、 その事是なりやいなや。 二十八宿および*八大星の所行の諸業、 なんぢ喜楽するやいなや。 是とやせん、 非とやせん。 よろしくおのおの宣説すべし» と。
又大星宿其ノ数有リ↠八。所ル↠謂ハ歳星・熒惑・鎮星・太白・辰星・日・月・荷羅睺星ナリ。又小星宿有リ↢二十八↡。所ル↠謂ハ従リ↠昴至ルマデノ↠胃ニ諸宿是也。我作ス↢如キ↠是クノ次第安置ヲ↡、説キ↢其ノ法ヲ↡已ヌ。汝等皆須ベ クシ↢亦見亦聞ク↡。一切大衆於テ↠意ニ云何。我ガ所ノ↠置ク法、其ノ事是不ズ↢。二十八宿及ビ八大星ノ所行ノ*諸業ニ↡、汝ガ喜楽ハ不↢。為ニ↠是ノ為ニセ↟非ノ、宜クシト↢各ノ宣説ス↡。
^その時に一切天人・仙人・阿修羅・竜および*緊那羅等、 みなことごとく掌を合せて、 ことごとくこの言をなさく、 «いま大仙のごときは、 天0431人のあひだにおいてもつとも尊重とす。 乃至諸竜および阿修羅、 よく勝れたるものなけん。 智慧・慈悲もつとも第一とす。 無量劫において忘れず、 一切衆生を憐愍するがゆゑに、 福報を獲、 誓願満ちをはりて功徳海のごとし。 よく過去・現在・当来の一切諸事、 天人のあひだを知るに、 かくのごときの智慧のものあることなし。 かくのごときの*法用、 日夜・刹那および*迦羅時、 大小星宿、 *月半・*月満・*年満の法用、 さらに衆生よくこの法をなすことなけん。 みなことごとく随喜しわれらを安楽にす。 善いかな大徳、 衆生を安穏す» と。
爾ノ時ニ一切天人・仙人・阿修羅・竜及ビ緊那羅等、皆悉ク合セテ↠掌ヲ、咸ク作サク↢是ノ言ヲ↡、如キハ↢今大仙ノ↡、於テ↢天人ノ間ニ↡最モ為↢尊重ト↡。乃至諸竜及ビ阿修羅、無ケム↢能ク勝レタル者↡。智慧・慈悲最モ為↢*第一ト↡。於テ↢無量劫ニ↡不↠忘レ、憐↢愍スルガ一切衆生ヲ↡故ニ獲↢福報ヲ↡、誓願満チ已リテ功徳如シ↠海ノ。能ク知ルニ↢過去・現在・当来ノ一切諸事、天人之間ヲ↡、無シ↠有ルコト↢如キノ↠是クノ智慧之者↡。如キノ↠是クノ法用、日夜・刹那及ビ迦羅時、大小星宿、月半・月満・年満ノ法用、更ニ無ケム↣衆生能ク作スコト↢是ノ法ヲ↡。皆悉ク随喜シ安楽ナラム。我等、善イ哉大徳、安↢*穏スト衆生ヲ↡。
^このとき佉盧虱仙人、 またこの言をなさく、 «この十二月一年始終、 かくのごとく方便す。 大小星等、 刹那の時法、 みなすでに説きをはんぬ。▼
是ノ時佉盧虱仙人、復0223作サク↢是ノ言ヲ↡、此ノ十二月一年始終、如キ↠此クノ方便ス。大小星等、刹那ノ時法、皆已ニ説キ竟ヌ。
^▼またまた*四天大王を須弥山の四方面所に安置す、 おのおの一王を置く。 このもろもろの方所にして、 おのおの衆生を領す。 北方の天王を*毘沙門と名づく。 これその界のうちに多く夜叉あり。 南方の天王を*毘留荼倶と名づく。 これその界のうちに多く*鳩槃荼あり。 西方の天王を*毘留博叉と名づく。 これその界のうちに多く諸竜あり。 東方の天王を*題頭隷と名づく。 これその界のうちに*乾闥婆多し。
又復安↣置ス四天大王ヲ於↢須弥山ノ四方面所↡、各ノ置ク↢一王ヲ↡。是ノ諸ノ方所ニシテ、各ノ領ス↢衆生ヲ↡。北方ノ天王ヲ名ク↢毘沙門ト↡。是其ノ界ノ内ニ多ク有リ↢夜叉↡。南方ノ天王ヲ名ク↢毘留荼ト↡。倶ニ是其ノ界ノ内ニ多ク有リ↢鳩槃荼↡。西方ノ天王ヲ名ク↢毘留博叉ト↡。是其ノ界ノ内ニ多ク有リ↢諸竜↡。東方ノ天王ヲ名ク↢題頭隷ト↡。是其ノ界ノ内ニ多シ↢乾闥婆↡。
^*四方四維みなことごとく一切*洲渚およびもろもろの*城邑を擁護す。 また鬼0432神を置いてこれを守護せしむ» と。
四方四維皆悉ク擁↢護ス一切洲渚及ビ諸ノ城邑ヲ↡。亦置↢鬼神ヲ↡而守↢護セシムト之ヲ↡。
^その時に、 *佉盧虱仙人、 諸天・竜・夜叉・阿修羅・緊那羅・摩睺羅伽、 人・非人等、 一切大衆において、 みな «善いかな» と称して、 歓喜無量なることをなす。 この時に、 天・竜・夜叉・阿修羅等、 日夜に佉盧虱を供養す。▼
爾ノ時ニ佉盧虱仙人、為ス↧於テ↢諸天・竜・夜叉・阿修羅・緊那羅・摩睺羅伽・人・非人等一切大衆ニ↡、皆称シテ↢善イ哉ト↡歓喜無量ナルコトヲ↥。是ノ時ニ天・竜・夜叉・阿修羅等、日夜ニ供↢養ス佉盧虱ヲ↡。
^▼次にまた後に無量世を過ぎて、 また仙人あらん、 伽力伽と名づく。 世に出現して、 またさらに別して、 もろもろの星宿、 小大月の法、 時節要略を説き置かんº と。
次ニ復於↠後過ギテ↢無量世ヲ↡、更有ラム↢仙人↡、名ケム↢伽力*伽ト↡。出↢現シテ於世ニ↡、復更ニ別シテ、説キ↢置カムト諸ノ星宿、小大月ノ法、時節要略ヲ↡。
^その時に、 諸竜、 *佉羅氐山聖人の住処にありて、 *光味仙人を尊重し*恭敬せん、 その竜力を尽してこれを供養せん」 と。 以上抄出
爾ノ時ニ諸竜、在リテ↢佉羅坻山聖人ノ住処ニ↡、尊↢重シ恭↣敬セム光味仙人ヲ↡、尽シ↢其竜力ヲ↡而供↢養セムト之ヲ↡。」 已上抄出
二 Ⅱ ⅱ b イ (三)(Ⅰ)(ⅱ)「念仏三昧品」(一心に帰仏して天神等を拝せざるの相を顕し、魔の害を加へざるはただこの行者のみなることを示す)
【86】^▼¬*日蔵経¼ 巻第九 「念仏三昧品」 第十にのたまはく (大集経)、
¬*日蔵経¼巻第九ニ「*念仏三昧品ノ」第十ニ*言ク、
^「▼その時に、 *波旬、 この偈を説きをはるに、 ▼かの衆のなかにひとりの魔女あり、 名づけて*離暗とす。 この魔女は、 曽過去においてもろもろの徳本を植ゑたりき。
「爾ノ時ニ波旬説キ↢是ノ偈ヲ↡已ルニ、彼ノ衆之中ニ有リ↢一ノ魔女↡、名ケテ為↢離暗ト↡。此ノ魔女者、曽於テ↢過去ニ↡植ヘタリキ↢衆ノ徳本ヲ↡。
^この説をなしていはまく、 ª沙門*瞿曇は名づけて福徳と称す。 もし衆生ありて、 仏の名を聞くことを得て一心に帰依せん、 一切の諸魔、 かの衆生において悪を加ふることあたはず。 いかにいはんや仏を見たてまつり、 親り法を聞かん人、 種々に方便し慧解深広ならん。 乃至 たとひ千万億の一切魔軍、 つひに須臾も0433害をなすことを得ることあたはず。 ▼如来いま涅槃道を開きたまへり。 女、 かしこに往きて仏に帰依せんと欲すº と。
作シテ↢是ノ説ヲ↡言ハマク、沙門瞿曇ハ名ケテ称ス↢福徳ト↡。若シ有リテ↢衆生↡、得テ↠聞クコトヲ↢仏ノ名ヲ↡一心ニ帰依セム、一切ノ諸魔0224、於テ↢彼ノ衆生ニ↡不↠能ハ↠加フルコト↠悪ヲ。何ニ況ヤ見タテマツリ↠仏ヲ、親聞カム↠法ヲ人、種種ニ方便シ慧解深広ナラム。 乃至 設ヒ千万億ノ一切魔軍、終ニ不↠能ハ↠得ルコト↢須臾モ為スコトヲ↟害ヲ。如来今者開キタマヘリ↢涅槃道ヲ↡。女欲フト↣往キテ↠彼ニ帰↢依セムト於↟仏。
^すなはちその父のためにして偈を説きていはまく、 ▼乃至 ª^▼三世の諸仏の法を修学して、 一切の苦の衆生を度脱せん。 よく諸法において自在を得、 当来に願はくはわれ還りて仏のごとくならんº と。
即チ為ニ↢其ノ父ノ↡而説キテ↠偈ヲ言ハマク、 乃至
修↢学シテ三世ノ諸仏ノ法ヲ↡ | 度↢脱セム一切ノ苦ノ衆生ヲ↡ |
善ク於テ↢諸法ニ↡得↢自在ヲ↡ | 当来ニ願クハ我還リテ如クナラムト↠仏ノ |
^▼その時に、 離暗、 この偈を説きをはるに、 父の王宮のうちの五百の魔女、 姉妹眷属、 一切みな菩提の心を発せしむ。
爾ノ時ニ離暗説キ↢是ノ偈ヲ↡已ルニ、父ノ王宮ノ中ノ五百ノ魔女、姉妹眷属、一切皆発セシム↢菩提之心ヲ↡。
^▼この時に、 魔王、 その宮のうちの五百の諸女、 みな仏に帰して菩提心を発せしむるを見るに、 大きに瞋忿・怖畏・憂愁を益すと。 乃至
是ノ時ニ魔王見ルニ↧其ノ宮ノ中ノ五百ノ諸女、皆帰シテ↢於仏ニ↡発セシムルヲ↦菩提心ヲ↥、益スト↢大ニ瞋忿・怖畏・憂愁ヲ↡。 乃至
^▼この時に、 五百のもろもろの魔女等、 また波旬のためにして偈を説きていはまく、
是ノ時ニ五百ノ諸ノ魔女等、更為ニ↢波旬ノ↡而説キテ↠偈ヲ言マク、
^ª▼もし衆生ありて、 仏に帰すれば、 かの人、 千億の魔に畏れず。 いかにいはんや生死の流を度せんと欲ふ。 *無為涅槃の岸に到らん。
若シ有リテ↢衆生↡帰スレ↠仏ニ者 | 彼ノ人不↠畏レ↢千億ノ魔ニ↡ |
何ニ況ヤ欲フ↠度セムト↢生死ノ流ヲ↡ | 到ラム↠於↢無為涅槃ノ岸↡ |
^もしよく一香華をもつて、 三宝仏法僧に持散することありて、 堅固勇猛の心を発さん。 一切の衆魔、 壊することあたはじ。 乃至
若シ有リテ↧能ク以テ↢一香華ヲ↡ | 持↦散スルコト三宝仏法僧ニ↥ |
発サム↢於堅固勇猛ノ心ヲ↡ | 一切ノ衆魔不↠能ハ↠壊スルコト 乃至
|
^▼われら過去の無量の悪、 一切また滅して余あることなけん。 至誠専心に仏に帰したてまつりをはらば、 さだめて*阿耨菩提の果を得んº と。
我等過去ノ無量ノ悪 | 一切亦滅シテ無ケム↠有ルコト↠余 |
至誠専心ニ帰シタテマツリ↠仏ニ已ラバ | 決テ得ムト↢阿耨菩提ノ果ヲ↡ |
^▼その時に、 魔王、 この偈を聞きをはりて、 大きに瞋恚・怖畏を倍して、 心を煎0434がし、 憔悴・憂愁して、 独り宮のうちに坐す。
爾0225ノ時ニ魔王聞キ↢是ノ偈ヲ↡已リテ、倍シテ↢大キニ瞋恚・怖畏ヲ↡、煎シ↠心ヲ憔悴憂愁シテ、独リ坐ス↢宮ノ内ニ↡。
^▼この時に、 光味菩薩摩訶薩、 仏の説法を聞きて、 一切衆生ことごとく*攀縁を離れ、 *四梵行を得しむと。 乃至
是ノ時ニ光味菩薩摩訶薩、聞キテ↢仏ノ説法ヲ↡、一切衆生尽ク離レ↢攀縁ヲ↡、得シムト↢四梵行ヲ↡。 乃至
^▼ª浄く洗浴し、 *鮮潔の衣を着て、 菜食*長斎して、 辛く臭きものを*噉することなかるべし。 寂静処にして、 道場を荘厳して正念*結跏し、 あるいは行じ、 あるいは坐して、 仏の身相を念じて乱心せしむることなかれ。 さらに他縁し、 その余の事を念ずることなかれ。 あるいは一日夜、 あるいは七日夜、 余の業をなさざれ。 至心念仏すれば、 乃至仏を見たてまつる。 ▲小念は小を見たてまつり、 大念は大を見たてまつる。 乃至無量の念は仏の色身無量無辺なるを見たてまつらんº」 と。 略抄
応シ↧浄ク洗浴シ、著テ↢鮮潔ノ衣ヲ↡、菜食長斉シテ、勿ル↞噉スルコト↢辛ク臭キモノヲ↡。於テ↢寂静処ニ↡、荘↢厳シテ道場ヲ↡正念結跏シ、或イハ行ジ或イハ坐シテ、念ジテ↢仏ノ身相ヲ↡無レ↠使ムルコト↢乱心セ↡。更ニ莫レ↣他縁シ念ズルコト↢其ノ余ノ事ヲ↡。或イハ一日夜、或イハ七日夜、不レ↠作サ↢余ノ業ヲ↡。至心念仏スレバ、乃至見タテマツル↠仏ヲ。小念ハ見タテマツリ↠小ヲ、大念ハ見タテマツル↠大ヲ。乃至無量ノ念者見タテマツラムト↢仏ノ色身無量無辺ナルヲ↡。」 略抄
二 Ⅱ ⅱ b イ (三)(Ⅰ)(ⅲ)「護塔品」(魔王と諸眷属との仏法に帰することを明かす)
【87】^▼¬日蔵経¼ の巻第十 「護塔品」 第十三にのたまはく (大集経)、
¬日蔵経ノ¼巻第十「護塔品」第十三ニ言ク、
^「▼時に魔波旬、 その眷属八十億衆と、 前後に*囲繞して仏所に往至せしむ。 到りをはりて、 *接足して世尊を頂礼したてまつる。
「時ニ魔波旬与↢其ノ眷属八十億衆↡、前後ニ囲遶シテ往↢至セシム仏所ニ↡。到リ已リテ接足シテ頂↢礼シタテマツル世尊ヲ↡。
^かくのごときの偈を説かく、 乃至
説カク↢如キノ↠是クノ偈ヲ↡、 乃至
^ª▼三世の諸仏の大慈悲、 わが礼を受けたまへ、 一切の殃を懴せしむ。 法・僧二宝もまたまたしかなり。 至心帰依したてまつるに異あることなし。
三世ノ諸仏ノ大慈悲 | 受ケタマヘ↢我ガ礼ヲ↡懴セシム↢一切ノ殃ヲ↡ |
法・僧二宝モ亦復然ナリ | 至心帰依シタマヘルニ无シ↠有ルコト↠異 |
^願はくは、 われ今日世の導師を供養し恭敬し尊重したてまつるところなり。 もろもろの悪0435は永く尽してまた生ぜじ。 寿を尽すまで如来の法に帰依せんº と。
願クハ我今日所ナリ↯供↢養シ | 恭↣敬シ尊↤重シタマヘル世ノ導師ヲ↡ |
諸ノ悪ハ永ク尽シテ不↢復生ゼ↡ | 尽スマデ↠寿ヲ帰↢依セムト如来ノ法ニ↡ |
^▼時に魔波旬、 この偈を説きをはりて、 仏にまうしてまうさく、 ª世尊、 如来われおよびもろもろの衆生において、 平等無二の心にしてつねに歓喜し、 慈悲*含忍せんº と。
時ニ魔波旬、説キ↢是ノ偈ヲ↡已リテ、白シテ↠仏ニ言サク、世尊、如来於テ↢我及ビ諸ノ衆生ニ↡、平等無二ノ心ニシテ常ニ歓喜シ、慈悲含忍セムト。
^▼仏ののたまはく、 ªかくのごとしº と。
仏ノ言ハク、如シト↠是クノ。
^▼時に魔波旬大きに歓喜を生じて、 清浄の心を発す。 重ねて仏前にして接足頂礼し、 *右に繞ること三帀して恭敬合掌して、 却きて一面に住して、 世尊を*瞻仰したてまつるに、 心に*厭足なし」 と。 以上抄出
時ニ魔波旬生ジテ↢大ニ歓喜ヲ↡、発ス↢清浄ノ心ヲ↡。重ネテ於0226テ↢仏前ニ↡接足頂礼シ、右ニ遶ルコト三帀シテ恭敬合掌シテ、却キテ住シテ↢一面ニ↡、瞻↢仰シタテマツルニ世尊ヲ↡、心ニ無シト↢厭足↡。」 已上抄出
二 Ⅱ ⅱ b イ (三)(Ⅱ)月藏
(ⅰ)「諸悪鬼神得敬信品」(人の仏に帰して益を得ることを説きて、鬼神をして之を聞きて帰仏得益せしむ)
【88】^▼¬*大方等大集月蔵経¼ ▼巻第五 「諸悪鬼神得敬信品」 第八の上にのたまはく (大集経)、
¬大方等大集月蔵経¼巻第五「諸悪鬼神得敬信品」第八ノ上ニ*言ク、
^「▼もろもろの*仁者、 かの邪見を遠離する因縁において、 十種の功徳を獲ん。 なんらをか十とする。
「諸ノ仁者、於テ↧彼ノ遠↢離スル邪見ヲ↡因縁ニ↥、獲ム↢十種ノ功徳ヲ↡。何等ヲカ為ル↠十ト。
^▼一つには心性柔善にして伴侶賢良ならん。
一ニ者心性*柔*善ニシテ伴侶賢良ナラム。
^二つには業報、 乃至奪命あることを信じて、 もろもろの悪を起さず。
二ニ者信ジテ↠有ルコトヲ↢業報乃至奪命↡、不↠起サ↢諸ノ悪ヲ↡。
^三つには三宝を帰敬して天神を信ぜず。
三ニ者帰↢敬シテ三宝ヲ↡不↠信ゼ↢天神ヲ↡。
^四つには*正見を得て歳次日月の吉凶を択ばず。
四ニ者得テ↢於正見ヲ↡不↠択バ↢歳次日月ノ吉凶ヲ↡。
^五つにはつねに人天に生じてもろもろの悪道を離る。
五ニ者常ニ生ジテ↢人天ニ↡離ル↢諸ノ悪道ヲ↡。
^六つには賢善の心あきらかなることを得、 人讃誉せしむ。
六ニ者得↢賢善ノ心明カナルコトヲ↡人讃誉セシム。
^七つには世俗を棄ててつねに*聖道を求めん。
七ニ者棄テヽ↠於↢世俗↡常ニ求メム↢聖道ヲ↡。
^八つには*断・常見を離れて*因縁の法を信ず。
八ニ者離レテ↢断・常見ヲ↡信ズ↢因縁ノ法ヲ↡。
^九つにはつねに正信0436・正行・正発心の人とともにあひ会まり遇はん。
九ニ者常ニ与↢正信・正行・正発心ノ人↡共ニ相会リ遇ハム。
^十には*善道に生ずることを得しむ。
十ニ者得シム↠生ズルコトヲ↢善道ニ↡。
^▼この邪見を遠離する善根をもつて、 阿耨多羅三藐三菩提に回向せん、 この人すみやかに六波羅蜜を満ぜん、 善浄仏土にして正覚を成らん。 菩提を得をはりて、 かの仏土にして、 功徳・智慧・一切善根、 衆生を荘厳せん。 その国に来生して天神を信ぜず、 悪道の畏れを離れて、 かしこにして命終して還りて善道に生ぜん」 と。 略抄
以テ↧是ノ遠↢離スル邪見ヲ↡善根ヲ↥、廻↢向セム阿耨多羅三藐三菩提ニ↡、是ノ人速ニ満ゼム↢六波羅蜜ヲ↡、於↢善浄仏土↡而成ラム↢正覚ヲ↡。得↢菩提ヲ↡已リテ、於テ↢彼ノ仏土ニ↡、功徳・智慧・一切善根、荘↢厳セム衆生ヲ↡。来↢生シテ其ノ国ニ↡不↠信ゼ↢天神ヲ↡、離レテ↢悪道ノ畏ヲ↡、於テ↠彼ニ命終シテ還リテ生ゼムト↢善道ニ↡。」 略抄
二 Ⅱ ⅱ b イ (三)(Ⅱ)(ⅱ)「諸悪鬼神得敬信品」(邪悪を信ずる者は悪報を得ることを明かす)
【89】^▼¬月蔵経¼ 巻第六 「諸悪鬼神得敬信品」 第八の下にのたまはく (大集経)、
¬月蔵経¼巻第六「諸悪鬼神得敬信品ノ」第八ノ下ニ言ク、
^「▼仏の出世はなはだ難し。 法・僧もまたまた難し。 衆生の浄信難し。 諸難を離るることまた難し。
「仏ノ出世甚ダ難シ | 法・僧モ亦復難シ |
衆生ノ浄信難シ | 離ルヽコト↢諸難ヲ↡亦難シ |
^衆生を哀愍すること難し。 *知足第一に難し。 正法を聞くことを得ること難し。 よく修すること第一に難し。
0227哀↢愍スルコト衆生ヲ↡難シ | 知足第一ニ難シ |
得ルコト↠聞クコトヲ↢正法ヲ↡難シ | 能ク修スルコト第一ニ難シ |
^難きを知ることを得て平等なれば、 世においてつねに楽を受く。 この*十平等処は、 智者つねにすみやかに知らん。 乃至
※得テ↠知ルコトヲ↠難キヲ平等ナレバ | 於テ↠世ニ常ニ受ク↠楽ヲ |
此ノ十平等処ハ | 智者常ニ速ニ知ラムト 乃至 |
^▼その時に、 世尊、 かのもろもろの悪鬼神衆のなかにして法を説きたまふ時に、 ªかのもろもろの悪鬼神衆のなかにして、 かの悪鬼神は、 むかし仏法において決定の信をなせりしかども、 かれ後の時において悪知識に近づきて心に他の過0437を見る。 この因縁をもつて悪鬼神に生るº」 と。 略出
爾ノ時ニ世尊於テ↢彼ノ諸ノ悪鬼神衆ノ中ニ↡説キタマフ↠法ヲ時ニ、於テ↢彼ノ諸ノ悪鬼神衆ノ中ニ↡、彼ノ悪鬼神ハ、昔於テ↢仏法ニ↡作セリシカドモ↢決定ノ信ヲ↡、彼於イテ↢後ノ時ニ↡近キテ↢悪知識ニ↡心ニ見ル↢他ノ過ヲ↡。以テ↢是ノ因縁ヲ↡生ルト↢悪鬼神ニ↡。」 略 *出
二 Ⅱ ⅱ b イ (三)(Ⅱ)(ⅲ)「諸天王護持品」(諸天神等に帰依せずと雖も自ら擁護有ることを顕すに在り)
【90】^▼¬大方等大集経¼ 巻第六 「月蔵分」 のなかに 「諸天王護持品」 第九にのたまはく (大集経)、
¬大方等大集経¼*巻第六「月蔵分ノ」中ニ「諸天王護持品」第九ニ*言ク、
^「▼その時に、 世尊、 世間を示すがゆゑに、 娑婆世界の主、 大梵天王に問うてのたまはく、 ªこの四天下に、 これたれかよく護持養育をなすº と。
「爾ノ時ニ世尊示スガ↢世間ニ↡故ニ問フテ↢娑婆世界ノ主大梵天王ニ↡言ハマク、此ノ四天下ニ、是誰カ能ク作スト↢護持養育ヲ↡。
^▼時に娑婆世界の主、 大梵天王かくのごときの言をなさく、 ª▼*大徳婆伽婆、 *兜率陀天王、 無量百千の兜率陀天子とともに*北鬱単越を護持し養育せしむ。
時ニ娑婆世界ノ主大梵天王作サク↢如キノ↠是クノ言ヲ↡、大徳婆伽婆、兜率陀天王、共ニ↢無量百千ノ兜率陀天子ト↡護↢持シ養↣育セシム*北鬱単越ヲ↡。
^*他化自在天王、 無量百千の他化自在天子とともに*東弗婆提を護持し養育せしむ。
他化自在天王、共ニ↢無量百千ノ他化自在天子ト↡護↢持シ養↣育セシム東弗婆提ヲ↡。
^*化楽天王、 無量百千の化楽天子とともに*南閻浮提を護持し養育せしむ。
化楽天王、共ニ↢無量百千ノ化楽天子ト↡護↢持シ養↣育セシム南閻浮提ヲ↡。
^*須夜摩天王、 無量百千の須夜摩天子とともに*西瞿陀尼を護持し養育せしむ。
須夜摩天王、共ニ↢無量百千ノ須夜摩天子ト↡護↢持シ養↣育セシム西瞿陀尼ヲ↡。
^▼大徳婆伽婆、 *毘沙門天王、 無量百千の諸夜叉衆とともに北鬱単越を護持し養育せしむ。
大徳婆伽婆、毘沙門天王、共ニ↢無量百千ノ諸夜叉衆ト↡護↢持シ養↣育セシム北鬱単越ヲ↡。
^*提頭頼天王、 無量百千の乾闥婆衆とともに東弗婆提を護持し養育せしむ。
提頭頼天王、共ニ↢無量百千ノ乾闥婆衆ト↡護↢持シ養↣育セシム東弗婆提ヲ↡。
^*毘楼勒天王、 無量百千の鳩槃荼衆とともに南閻浮提を護持し養育せしむ。
毘楼勒天王、共ニ↢無量百0228千ノ鳩槃荼衆ト↡護↢持シ養↣育セシム南閻浮提ヲ↡。
^*毘楼博叉天王、 無量百千の竜衆とともに西瞿陀尼を護持し養育せしむ。
毘楼博叉天王、共ニ↢無量百千ノ竜衆ト↡護↢持シ養↣育セシム西瞿陀尼ヲ↡。
^▼大徳婆伽婆、 *天仙七宿・*三曜・*三天童女、 北鬱単越を護持し養育せしむ。 か0438の天仙七宿は虚・危・室・壁・奎・婁・胃なり。 三曜は鎮星・歳星・熒惑星なり。 三天童女は鳩槃・弥那・迷沙なり。
大徳婆伽婆、天仙七宿・三曜・三天童女、護↢持シ養↣育セシム北鬱単越ヲ↡。彼ノ天仙七宿者虚・危・室・壁・奎・婁・胃ナリ。三曜者鎮星・歳星・熒惑星ナリ。三天童女者鳩槃・弥那・迷沙ナリ。
^大徳婆伽婆、 かの天仙七宿のなかに虚・危・室の三宿はこれ鎮星の*土境なり、 鳩槃はこれ*辰なり。 壁・奎の二宿はこれ歳星の土境なり、 弥那はこれ辰なり。 婁・胃の二宿はこれ熒惑の土境なり、 迷沙はこれ辰なり。
大徳婆伽婆、彼ノ天仙七宿ノ中ニ虚・危・室ノ三宿ハ是鎮星ノ土境ナリ、鳩槃ハ是辰ナリ。壁・奎ノ二宿ハ是歳星ノ土境ナリ、弥那ハ是辰ナリ。婁・胃ノ二宿ハ是熒惑ノ土境ナリ、迷沙ハ是辰ナリ。
^大徳婆伽婆、 かくのごとき天仙七宿・三曜・三天童女、 北鬱単越を護持し養育せしむ。
大徳婆伽婆、如キ↠是クノ天仙七宿・三曜・三天童女、護↢持シ養↣育セシム北鬱単越ヲ↡。
^大徳婆伽婆、 天仙七宿・三曜・三天童女、 東弗婆提を護持し養育せしむ。 かの天仙七宿は昴・畢・觜・参・井・鬼・柳なり。 三曜は太白星・歳星・月なり。 三天童女は毘利沙・弥偸那・羯迦迦なり。
大徳婆伽*婆、天仙七宿・三曜・三天童*女、護↢持シ養↣育セシム東弗婆提ヲ↡。彼ノ天仙七宿者昴・畢・觜・参・井・鬼・柳ナリ。三曜者太白星・歳星・月ナリ。三天童女者毘利沙・弥偸那・羯迦迦ナリ。
^大徳婆伽婆、 かの天仙七宿のなかに、 昴・畢の二宿はこれ太白の土境なり、 毘利沙はこれ辰なり。 觜・参・井の三宿はこれ歳星の土境なり、 弥偸那はこれ辰なり。 鬼・柳の二宿はこれ月の土境なり、 羯迦迦はこれ辰なり。
大徳婆伽婆、彼ノ天仙七宿ノ中ニ、昴・畢ノ二宿ハ是太白ノ土境ナリ、毘利沙ハ是辰ナリ。觜・参・井ノ三宿ハ是歳星ノ土境ナリ、弥偸那ハ是辰ナリ。鬼・柳ノ二宿ハ是月ノ土境ナリ、羯迦迦ハ是辰ナリ。
^大徳婆伽婆、 かくのごとき天仙七宿・三曜・三天童女、 東弗婆提を護持し養育せしむ。
大徳婆伽婆、如キ↠是クノ天仙七宿・三曜・三天童女、護↢持シ養↣育セシム東弗婆提ヲ↡。
^大徳婆伽婆、 天仙七宿・三曜・三天童女、 南閻浮提を護持し養育せしむ。 かの天仙七宿は星・張・翼・軫・角・亢・氐なり。 三曜は日・辰星・太白星なり0439。 三天童女は訶・迦若・兜羅なり。
大徳婆伽婆、天仙七宿・三曜・三天童女、護↢持シ養↣育セシム南閻浮提ヲ↡。彼ノ天仙七宿者星・張・翼・軫・角・亢・氐ナリ。三曜者日・辰星・太白0229星ナリ。三天童女者*訶・迦若・兜羅ナリ。
^大徳婆伽婆、 かの天仙七宿のなかに、 星・張・翼はこれ日の土境なり、 訶はこれ辰なり。 軫・角の二宿はこれ辰星の土境なり、 迦若はこれ辰なり。 亢・氐の二宿はこれ太白の土境なり、 兜羅はこれ辰なり。
大徳婆伽婆、彼ノ天仙七宿ノ中ニ、星・張・翼ハ是日ノ土境ナリ、訶ハ是辰ナリ。軫・角ノ二宿ハ是辰星ノ土境ナリ、迦若ハ是辰ナリ。亢・氐ノ二宿ハ是太白ノ土境ナリ、兜羅ハ是辰ナリ。
^大徳婆伽婆、 かくのごとき天仙七宿・三曜・三天童女、 南閻浮提を護持し養育せしむ。
大徳婆伽婆、如キ↠是クノ天仙七宿・三曜・三天童女、護↢持シ養↣育セシム南閻浮提ヲ↡。
^大徳婆伽婆、 かの天仙七宿・三曜・三天童女、 西瞿陀尼を護持し養育せしむ。 かの天仙七宿は房・心・尾・箕・斗・牛・女なり。 三曜は熒惑星・歳星・鎮星なり。 三天童女は毘離支迦・檀婆・摩伽羅なり。
大徳婆伽婆、彼ノ天仙七宿・三曜・三天童*女、護↢持シ養↣育セシム西瞿陀尼ヲ↡。彼ノ天仙七宿者房・心・尾・箕・斗・牛・女ナリ。三曜者熒惑星・歳星・鎮星ナリ。三天童女者毘離支迦・檀婆・摩伽羅ナリ。
^大徳婆伽婆、 かの天仙七宿のなかに、 房・心の二宿はこれ熒惑の土境なり、 毘離支迦はこれ辰なり。 尾・箕・斗の三宿はこれ歳星の土境なり、 檀婆はこれ辰なり。 牛・女の二宿はこれ鎮星の土境なり、 摩伽羅はこれ辰なり。
大徳婆伽婆、彼ノ天仙七宿ノ中ニ、房・心ノ二宿ハ是熒惑ノ土境ナリ、毘利支迦ハ是辰ナリ。尾・箕・斗ノ三宿ハ是歳星ノ土境ナリ、*檀*婆ハ是辰ナリ。牛・女ノ二宿ハ是鎮星ノ土境ナリ、摩伽羅ハ是辰ナリ。
^大徳婆伽婆、 かくのごときの天仙七宿・三曜・三天童女、 西瞿陀尼を護持し養育せしむ。▼
大徳婆伽婆、如キ↠是クノ天仙七宿・三曜・三天童女、護↢持シ養↣育セシム西瞿陀尼ヲ↡。
^▼大徳婆伽婆、 この四天下に南閻浮提はもつとも殊勝なりとす。 なにをもつてのゆゑに、 閻浮提の人は勇健聡慧にして、 *梵行、 仏に相応す。 婆伽婆、 なかにおいて出世したまふ。 このゆゑに四大天王、 ここに倍増してこの閻浮提を護0440持し養育せしむ。
大徳婆伽婆、此ノ四天下ニ南閻浮提ハ最モ為↢殊勝ナリト↡。何ヲ以テノ故ニ。閻浮提ノ*人ハ*勇健聡慧ニシテ、梵行相↢応ス仏ニ↡。婆伽婆於イテ↠中ニ出世シタマフ。是ノ故ニ四大天王、於↠此倍増シテ護↢持シ養↣育セシム此ノ閻浮提ヲ↡。
^▼*十六の大国あり。 いはく、 鴦伽摩伽陀国・傍伽摩伽陀国・阿槃多国・支提国なり。 この四つの大国は、 毘沙門天王、 夜叉衆と囲繞して護持し養育せしむ。
有リ↢十六ノ大国↡。謂ク、鴦伽摩伽陀国・傍伽摩伽陀国・阿槃多国・支提国ナリ。此ノ四ノ大国ハ、毘沙門天王、与↢夜叉衆↡囲遶シテ護持シ養育セシム。
^迦尸国・都薩羅国・婆蹉国・摩羅国、 この四つの大国は、 提頭頼天王、 乾闥婆衆と囲繞して護持し養育せしむ。
迦尸国・都薩羅国・婆蹉国・摩羅国、此ノ四ノ大国ハ、提頭頼0230天王、与↢乾闥婆衆↡囲遶シテ護持シ養育セシム。
^鳩羅婆国・毘時国・槃遮羅国・疎那国、 この四つの大国は、 毘楼勒叉天王、 鳩槃荼衆と囲繞して護持し養育せしむ。
鳩羅婆国・毘時国・槃遮羅国・疎那国、此ノ四ノ大国ハ、毘楼勒叉天王、与↢鳩槃荼衆↡囲遶シテ護持シ養育セシム。
^阿湿婆国・蘇摩国・蘇羅国・甘満闍国、 この四つの大国は、 毘楼博叉天王、 もろもろの竜衆と囲繞して護持し養育せしむ。
阿湿婆国・蘇摩国・蘇羅国・甘満闍国、此ノ四ノ大国ハ、毘楼博叉天王、与↢諸ノ竜衆↡囲遶シテ護持シ養育セシム。
^▼大徳婆伽婆、 過去の天仙この四天下を護持し養育せしがゆゑに、 またみなかくのごとき分布安置せしむ。
大徳婆伽婆、過去ノ天仙護↢持シ養↣育セシガ此ノ四天下ヲ↡故ニ、亦皆如キ↠是クノ分布安置セシム。
^後においてその国土、 城邑・村落・塔寺・園林・樹下・*塚間・山谷・曠野・河泉・*陂泊、 乃至、 海中宝洲・*天祠に随ひて、 かの*卵生・胎生・湿生・化生において、 もろもろの竜・夜叉・羅刹・餓鬼・毘舎遮・富単那・迦富単那等、 かのなかに生じて、 かの処に還住して、 繋属するところなし、 他の教を受けず。
於テ↠後ニ随ヒテ↢其ノ国土、城邑ムラ・村落・塔寺・園林・樹下・塚ツカ間・山谷・曠野・河泉・陂泊、乃至、海中宝洲・天祠ニ↡、於イテ↢彼ノ卵カイゴ生・胎生・湿生・化生ニ↡、諸ノ竜・夜叉・羅刹・餓鬼・毘舎遮・富単那・迦富単那等、生ジテ↠於↢彼ノ中↡、還↢*住シテ彼ノ処ニ↡、無シ↠所↢繋属スル↡、不↠受ケ↢*他ノ教ヲ↡。
^このゆゑに願はくは仏、 この閻浮提の一切国土において、 かのもろもろの鬼神、 分布安置したまへ。 護持のためのゆゑに、 一切のもろもろの衆生を護らんがためのゆゑに。 われらこの説において随0441喜せんと欲ふº と。▼
是ノ故ニ願クハ仏、於イテ↢此ノ閻浮提ノ一切国土ニ↡、彼ノ諸ノ鬼神、分布安置シテ、為ノ↢護持ノ↡故ニ為ノ↠護ラムガ↢一切ノ諸ノ衆生ヲ↡故ニ。我等於イテ↢此ノ説ニ↡欲フト↢随喜セムト↡。
^▼仏ののたまはく、 ªかくのごとし、 *大梵、 なんぢが所説のごとしº と。 ^▼その時に、 世尊重ねてこの義を明かさんと欲しめして、 偈を説きてのたまはく、
仏ノ言ハク、如キ↠是クノ大梵、如シト↢汝ガ所説ノ↡。爾ノ時ニ世尊欲シ↣重ネテ明サムト↢此ノ義ヲ↡而説キテ↠偈ヲ言ハク、
^▼ª世間に示現するがゆゑに、 導師、 梵王に問はまく、 «この四天下において、 たれか護持し養育せん» と。 ^かくのごとき*天師梵、 «諸天王を首として、 兜率・他化天・化楽・須夜摩、
示↢現スルガ世間ニ↡故ニ | 導師問ハマク↢梵王ニ↡ |
於イテ↢此ノ四天下ニ↡ | 誰カ護持シ養育セムト |
如キ↠是クノ天師梵 | 諸天王ヲ為テ↠首ト |
兜率・他化天 | 化楽・須夜摩 |
^よくかくのごとき四天下を、 護持し養育せしむ。 四王および眷属、 またまたよく護持せしむ。 ^二十八宿等、 および十二辰・十二天童女、 四天下を護持せしむ» と。
能ク護↢持シ養↣育セシム | 如キ↠此ノ四天下ヲ↡ |
四王及ビ眷属 | 亦復能ク護持セシム |
0231二十八宿等 | 及以十二辰 |
十二天童女 | 護↢持セシムト四天下ヲ↡ |
^その所生の処に随ひて、 竜・鬼・羅刹等、他の教を受けずは、 かしこにおいて還つて護をなさしむ。 ^天神等差別して、 願はくは仏分布せしめたまへ。 衆生を憐愍せんがゆゑに、 正法の灯を*熾然ならしむº と。▼
随ヒテ↢其ノ所生ノ処ニ↡ | 竜・鬼・羅刹等 |
不↠受ケ↢他ノ教ヲ↡者 | 還テ↠於テ↠彼ニ作サシム↠護ヲ |
天神等差別シテ | 願ジテ仏令メタマヘリ↢分布セ↡ |
憐↢愍セムガ衆生ヲ↡故ニ | 熾↢然ナラシムト正法ノ灯ヲ↡ |
^▼その時に、 仏、 *月蔵菩薩摩訶薩に告げてのたまはく、 ª▼*了知清浄士よ、 この賢劫の初め人寿四万歳の時、 *鳩留孫仏、 世に出興したまひき。 かの仏、 無量阿僧祇億那由他百千の衆生のために*生死に回して、 *正法輪を輪転せしむ。 追うて悪道に回して、 善道および解脱の果を安置せしむ。
爾ノ時ニ仏告ゲテ↢月蔵菩薩摩訶薩ニ↡言ハク、了↢知スルニ清浄*士ヲ↡、此ノ賢劫ノ初人寿四万歳ノ時、鳩留孫仏出↢興シタマヒキ於世ニ↡。彼ノ仏為ニ↢無量阿僧祇億那由他百千ノ衆*生ノ↡廻シテ↢生死ニ↡、輪↢転セシム正法輪ヲ↡。追フテ廻シテ↢悪道ニ↡、安↢置セシム善道及ビ解脱ノ果ヲ↡。
^かの仏、 この四大天下をもつて、 娑婆世界の主、 大梵天王・他化自在天王・化楽天王・兜率陀天王・須0442夜摩天王等に付嘱せしむ。 護持のゆゑに、 養育のゆゑに、 衆生を憐愍するがゆゑに、 三宝の種をして断絶せざらしめんがゆゑに、 熾然ならんがゆゑに、 *地の精気、 *衆生の精気、 *正法の精気、 久しく住せしめ増長せんがゆゑに、 もろもろの衆生をして三悪道を休息せしめんがゆゑに、 三善道に趣向せんがゆゑに、 四天下をもつて大梵およびもろもろの天王に付嘱せしむ。
彼ノ仏以テ↢此ノ四大天下ヲ↡、付↢嘱セシム娑婆世界ノ*主大梵天王・他化自在天王・化楽天王・兜率陀天王・須夜摩天王等ニ↡。護持ノ故ニ、養育ノ故ニ、*憐ムガ↢愍*他ノ衆生ヲ↡故ニ、令メムガ↣三宝ノ種ヲシテ不ラ↢断絶セ↡故ニ、熾然ナラムガ故ニ、地ノ精気、衆生ノ精気、正法ノ精気、久シク住セシメ増長セムガ故ニ、令メムガ↣諸ノ衆生ヲシテ休↢息セ三悪道ヲ↡故ニ、趣↢向セムガ三善道ニ↡故ニ、以テ↢四天下ヲ↡付↢嘱セシム大梵及ビ諸ノ天王ニ↡。
^かくのごとき漸次に劫尽き、 もろもろの天人尽き、 一切の善業白法尽滅して、 大悪もろもろの煩悩溺を増長せん。
如キ↠是クノ漸次ニ劫尽キ、諸ノ天人尽キ、一切ノ善業白法尽滅シテ、増↢長セム大悪諸ノ煩悩溺ヲ↡。
^人寿三万歳の時、 *拘那含牟尼仏、 世に出興したまはん。 かの仏、 この四大天下をもつて、 娑婆世界の主、 大梵天王・他化自在天王、 乃至、 四大天王、 およびもろもろの眷属に付嘱したまふ。 護持養育のゆゑに、 乃至一切衆生をして三悪道を休息して三善道に趣向せしめんがゆゑに、 この四天下をもつて大梵および諸天王に付嘱したまへり。
人寿三万歳ノ時、拘那含牟尼仏、出↢興シタマハム於↟世。彼ノ仏以テ↢此ノ四大天下ヲ↡、付↢嘱シタマフ娑婆世界ノ主大梵天王・他化自在天王乃至四大天王、及ビ諸ノ眷属ニ↡。護持養育ノ故ニ乃至令メムガ↧一切衆生ヲシテ休↢息シテ三悪道ヲ↡趣↦向セ三善0232道ニ↥故ニ、以テ↢此ノ四天下ヲ↡付↢嘱シタマフ大梵及ビ諸天王ニ↡。
^かくのごとき次第に劫尽き、 もろもろの天人尽き、 白法また尽きて、 大悪もろもろの煩悩溺を増長せん。
如キ↠是クノ次第ニ劫尽キ、諸ノ天人尽キ、白法亦尽キテ、増↢長セム大悪諸ノ煩悩溺ヲ↡。
^人寿二万歳の時、 *迦葉如来、 世に出興したまふ。 かの仏、 この四大天下をもつて、 娑婆世界の主、 大梵天王・他化自在天王・化楽天王・兜率陀天王・須夜摩天王・*憍尸迦帝釈・四天王等、 およびもろも0443ろの眷属に付嘱したまへり。 護持養育のゆゑに、 乃至一切衆生をして三悪道を休息せしめ、 三善道に趣向せしめんがゆゑに。 かの迦葉仏、 この四天下をもつて、 大梵・四天王等に付嘱し、 およびもろもろの天仙衆・七曜・十二天童女・二十八宿しゅく等とうに付ふしたまへり。 護持ごじのゆゑに、 養育よういくのゆゑに。
人寿二万歳ノ時、迦葉如来出↢興シタマフ於世ニ↡。彼ノ仏以テ↢此ノ四大天下ヲ↡、付↢嘱シタマヘリ娑婆世界ノ主大梵天王・他化自在天王・化楽天王・兜率陀天王・須夜摩天王・憍カウ尸シ迦帝釈・四天王等、及ビ諸ノ眷属ニ↡。護持養育ノ故ニ、乃至令メムガ↧一切衆生ヲシテ休↢息セシメ三悪道ヲ↡趣↦向セ三善道ニ↥故ニ。彼ノ迦葉仏以テ↢此ノ四天下ヲ↡、付↢嘱シ大梵・四天王等ニ↡、及ビ付ケタマヘリ↢諸ノ天仙衆・七曜・十二天童女・二十八宿等ニ↡。護持ノ故ニ、養育ノ故ニ。
^了りょう知ち清浄しょうじょう士しよ、 かくのごとき次し第だいに、 いま劫こう濁じょく・煩悩ぼんのう濁じょく・衆しゅ生じょう濁じょく・大悪だいあく煩悩ぼんのう濁じょく・闘とう諍じょう悪あく世せの時とき、 人寿にんじゅ百ひゃく歳さいに至いたりて、 一切いっさいの白びゃく法ほう尽つき、 一切いっさいの諸悪しょあく闇翳あんえいならん。 世せ間けんはたとへば海水かいすいの一いち味みにして*大鹹だいかんなるがごとし、 大だい煩悩ぼんのうの味あじはひ世よに遍満へんまんせん。 集しゅう会えの悪党あくとう、 手てに髑どく髏ろを執とり、 血ちをその掌たなごころに塗ぬらん、 ともにあひ殺害せつがいせん。
了↢知スルニ清浄*士ヲ↡、如キ↠是クノ次第ニ、至ルマデ↢今劫濁・煩悩濁・衆生濁・大悪煩悩濁・闘諍悪世ノ時トキ、人寿百歳ニ↡、一切ノ白法尽ツキ、一切ノ諸悪闇アンクラク翳エイナラムカスカナリ。世間ハ譬ヘバ如シ↢海水ノ一味ニシテ大鹹カムナルガシハイシ ↡、大煩悩ノ味遍↢満セム於世ニ↡。集会ノ悪党タウ、アツマル手ニ執リ↢髑髏ヲ↡、血ヲ塗ラム↢其ノ掌ニ↡、共ニ相 ヒ殺害セム。
^かくのごときの悪あくの衆しゅ生じょうのなかに、 われいま菩ぼ提だい樹じゅ下げに出しゅっ世せしてはじめて正しょう覚がくを成なれり。 *提だい謂い・波利はりもろもろの商しょう人にんの食じきを受うけて、 かれらがためのゆゑに、 この閻えん浮ぶ提だいをもつて天てん・竜りゅう・乾闥けんだつ婆ば・鳩く槃はん荼だ・夜や叉しゃ等とうに分ぶん布ぷせしむ。 護持ごじ養育よういくのゆゑに。
如キノ↠是クノ悪ノ衆生ノ中ニ、我今出↢世シテ菩提樹下ニ↡初テ成レリ↢正覚ヲ↡。※受ケテ↢*提謂ヒトナリ波利ヒトナリノ諸ノ商シヤウ人ノ食ヲ↡為ノ↢彼 レ等ガ↡故ニ以テ↢此ノ閻浮提ヲ↡分↢布セシム天・竜・乾闥婆・鳩槃荼・夜叉等ニ↡。護持養育ノ故ニ。
^これをもつて大だい集じゅう十方じっぽう所しょ有うの仏ぶつ土ど、 一切いっさい無余むよの菩ぼ薩さつ摩訶まか薩さつ等とう、 ことごとくここに来らい集じゅうせん。 乃ない至しこの娑しゃ婆ば仏ぶつ土どにおいて、 その処ところの百ひゃく億おくの日月にちがつ、 百ひゃく億おくの四し天てん下げ、 百ひゃく億おくの四し大海だいかい、 百ひゃく億おくの鉄てっ囲ち山せん・大だい鉄てっ囲ち山せん、 百ひゃく億おくの須しゅ弥み山せん、 百ひゃく億おくの*四し阿あ0444修しゅ羅ら城じょう、 百ひゃく億おくの四し大だい天王てんのう、 百ひゃく億おくの三さん十じゅう三さん天てん、 乃ない至し百ひゃく億おくの非ひ想そう非非ひひ想処そうしょ、 かくのごときの数かずを略りゃくせり。 娑しゃ婆ば仏ぶつ土ど、 われこの処ところにして仏ぶつ事じをなす。
以テ↠是ヲ大集十方所有ノ仏土、一切無余ノ菩薩摩訶薩等、悉ク来↢集セム此コヽニ↡。乃至於イテ↢此ノ娑婆仏土ニ↡、其ノ処ノ百億ノ日月、百億ノ四天下、百億ノ四大海、百億ノ鉄0233囲山・大鉄囲山、百億ノ須弥山、百億ノ四阿修羅城、百億ノ四大天王、百億ノ三十三天、乃至百億ノ非想非非想処、如キノ↠是クノ略セリ↠数ヲ。娑婆ノ仏土、我於ニ↢是ノ処↡而シテ作ナス↢仏事ヲ↡。
^乃ない至し娑しゃ婆ば仏ぶつ土どの所しょ有うのもろもろの梵ぼん天王てんのうおよびもろもろの眷属けんぞく、 魔ま天王てんのう・他化たけ自じ在ざい天王てんのう・化け楽らく天王てんのう・兜と率そつ陀だ天王てんのう・須しゅ夜摩やま天王てんのう・帝たい釈しゃく天王てんのう・四し大だい天王てんのう・阿あ修しゅ羅ら王おう・竜りゅう王おう・夜や叉しゃ王おう・羅ら刹せつ王おう・乾闥けんだつ婆ば王おう・緊きん那羅なら王おう・迦楼羅かるら王おう・摩睺まご羅伽らが王おう・鳩く槃はん荼だ王おう・餓鬼がき王おう・毘び舎遮しゃしゃ王おう・富ふ単たん那な王おう・迦かた富ふ単たん那な王おう等とうにおいて、 ことごとくまさに眷属けんぞくとしてここに大だい集じゅうせり。 法ほうを聞きかんためのゆゑに。
乃至於テ↢娑婆仏土ノ所有ノ諸ノ梵天王及ビ諸ノ眷属、魔天王・他化自在天王・化楽天王・兜率陀天王・須夜摩天王・帝釈天王・四大天王・阿修羅王・竜王・夜叉王・羅刹王・乾闥婆王・緊那羅王・迦楼羅王・摩睺羅伽王・鳩槃荼王・餓鬼王・毘舎遮王・富単那王・迦富単那王等ニ↡、悉ク将シ ニテ↢眷属ト↡於ニ↠此コヽ大集セリ。為ノ↠聞カム↠法ヲ故ニ。
^乃ない至しここに娑しゃ婆ば仏ぶつ土どの所しょ有うのもろもろの菩ぼ薩さつ摩訶まか薩さつ等とうおよびもろもろの声しょう聞もん、 一切いっさい余よなく、 ことごとくここに来らい集じゅうせり。 聞法もんぼうのためのゆゑに。 われいまこの所しょ集しゅうの大衆だいしゅのために甚深じんじんの仏法ぶっぽうを顕けん示じせしむ。 また世せ間けんを護まもらんがためのゆゑに、 この閻えん浮ぶ提だい所しょ集しゅうの鬼き神じんをもつて分ぶん布ぷ安あん置ちす。 護持ごじ養育よういくすべしº と。▼
乃至於ニ↠此コヽ娑婆仏土ノ所有ノ諸ノ菩薩摩訶薩等及ビ諸ノ声聞、一切無ク↠余悉ク来↢集セリ此ニ↡。為ノ↢聞法ノ↡故ニ。我 レ今 マ為ニ↢此ノ所集ノ大衆ノ↡顕↢示セシム甚深ノ仏法ヲ↡。復為ノ↠護ラムガ↢世間ヲ↡故ニ以テ↢此ノ閻浮提所集ノ鬼神ヲ↡分布安置ス。護持養育スベシト。
^▼その時ときに、 世せ尊そん、 また娑しゃ婆ば世せ界かいの主しゅ、 大梵だいぼん天王てんのうに問とうてのたまはく、 ▼ª過去かこの諸仏しょぶつ、 この四し大だい天てん下げをもつて、 かつてたれに付ふ嘱ぞくして護持ごじ養育よういくをなさしめたまふぞº と。
爾ノ時ニ世尊復問テ↢娑婆世界ノ主大梵天王ニ↡言ノタマハク、過去ノ諸仏、以テ↢此ノ四大天下ヲ↡、曽テ付↢嘱シテ誰ニ↡令シメタマフゾト↠作サ↢護持養育ヲ↡。
^▼時ときに娑しゃ婆ば世せ界かいの主しゅ、 大梵だいぼん天王てんのうまうさく、 ª▼過去かこの諸仏しょぶつ、 この四し天てん下げをもつて、 かつてわれおよび憍きょう尸迦しかに付ふ嘱ぞくしたまへりき。 護持ごじすることをなさ0445しめたまふ。 ▼しかるにわれ失とがありて、 おのれが名なおよび帝たい釈しゃくの名なを彰あらわさず、 ただ諸しょ余よの天王てんのうおよび宿しゅく・曜よう・辰しんを称しょうせしむ、 護持ごじ養育よういくすべしº と。
時ニ娑婆世界ノ主大梵天王言マフサク、過去ノ諸仏、以テ↢此ノ四天下ヲ↡、曽テ付↢嘱シタマヘリキ我 レ及ビ憍尸迦ニ↡。令シメタマフ↠作サ↢護持スルコトヲ↡。而テ我有リヤ↠失不イナヤ、彰 ハス↢己オノレガ名ナ及ビ帝釈ノ名ヲ↡、但称セシム↢諸余ノ天王及ビ宿・曜・辰ヲ↡、護持養育スベシト。
^その時ときに、 娑しゃ婆ば世せ界かいの主しゅ、 大梵だいぼん天王てんのうおよび憍きょう尸迦しか帝たい釈しゃく、 仏足ぶっそくを頂ちょう礼らいしてこの言ごんをなさく、 ª大徳だいとく婆伽ばが婆ば、 *大徳だいとく修しゅ伽陀がた、 われいま過とがを謝しゃすべし。 われ小しょう児にのごとくして愚痴ぐち無智むちにして、 如来にょらいの前みまえにして*みづから称名しょうみょうせざらんや。
爾ノ時ニ娑婆世界ノ主大梵天王及ビ憍尸迦帝釈0234、頂↢礼シ仏足ヲ↡而テ作サク↢是ノ言ヲ↡、大徳婆伽婆、大徳修伽陀、我 レ今 マ謝スベシ↠過ヲ。我如クシテ↢小児ノ↡愚痴無智ニシテ、於シテ↢如来ノ前ミマヘ↡不ラムヤ↢自ミヅカラ称名セ↡。
^大徳だいとく婆伽ばが婆ば、 やや願ねがはくは*容恕ようじょしたまへ。 大徳だいとく修しゅ伽陀がた、 やや願ねがはくは容恕ようじょしたまへ。 諸来しょらいの大衆だいしゅ、 また願ねがはくは容恕ようじょしたまへ。▼
大徳婆伽婆、唯ヤヽ願クハ容恕ジヨシタマヘ。大徳修伽陀、唯ヤヽ願クハ容恕シタマヘ。諸来ノ大衆、亦願クハ容恕シタマヘ。
^▼われ境きょう界がいにおいて言説ごんせつ教令きょうりょうす。 自じ在ざいの処ところを得えて護持ごじ養育よういくすべし。 乃ない至しもろもろの衆しゅ生じょうをして善道ぜんどうに趣おもむかしめんがゆゑに。
我於イテ↢境界ニ↡言説教令ス。得テ↢自在ノ処ヲ↡護持養育スベシ。乃至令メムガ↣諸ノ衆生ヲシテ趣 ムカ↢善道ニ↡故ニ。
^われら曽むかし鳩留くる孫そん仏ぶつのみもとにして、 すでに教勅きょうちょくを受うけたまはりて、 乃ない至し三宝さんぼうの種しゅをしてすでに熾し然ねんならしむ。
我等曽ムカシ於シテ↢鳩留孫仏ノミモトニ↡、已ニ受ウケタマハリテ↢教勅ヲ↡、乃至令シム↣三宝ノ種ヲシテ已ニ作ナラ↢熾然↡。
^拘那くな含ごん牟尼むに仏ぶつ、 迦か葉しょう仏ぶつの所みもとにして、 われ教勅きょうちょくを受うけたまはりしこと、 またかくのごとし。 三宝さんぼうの種しゅにおいてすでにねんごろにして熾し然ねんならしむ。 地じの精しょう気け、 衆しゅ生じょうの精しょう気け、 *正しょう法ぼうの味あじはひ醍だい醐ごの精しょう気け、 久ひさしく住じゅうして増ぞう長じょうせしむるがゆゑに。
拘那含牟尼仏・迦葉仏ノ所 モトニシテ、我 レ受ウケタマハリシコト↢教勅ヲ↡、亦如シ↠是クノ。於イテ↢三宝ノ種ニ↡已ニ勤ネムゴロニシテ熾然ナラシム。地ノ精気ケ、衆生ノ精気、正法ノ味醍醐ノ精気、久シク住シテ増長セシムルガ故ニ。
^またわがごときも、 いま世せ尊そんの所みもとにして、 教勅きょうちょくを頂ちょう受じゅし、 おのれが境きょう界がいにおいて、 言説ごんせつ教令きょうりょうす。
亦如キモ↠我ガ今イマ於シテ↢世尊ノ所ミモトニ↡、※頂↢受シ教勅シテ↡於テ↢己 レガ境界ニ↡、言説教令ス。
^自じ在ざいの処ところを得えて、 一切いっさい闘とう諍じょう・飢け饉ごんを休く息そくせしめ、 乃ない至し三宝さんぼうの種しゅ断絶だんぜつせざらしむるがゆゑ0446に、 三種さんしゅの精しょう気け久ひさしく住じゅうして増ぞう長じょうせしむるがゆゑに、 悪あく行ぎょうの衆しゅ生じょうを*遮しゃ障しょうして行ぎょう法ほうの衆しゅ生じょうを護ご養ようするがゆゑに、 衆しゅ生じょうをして三さん悪道まくどうを休く息そくせしめ、 三さん善道ぜんどうに趣向しゅこうするがゆゑに、 仏法ぶっぽうをして久ひさしく住じゅうせんことを得えしめんがためのゆゑに、 ねんごろに護持ごじをなすº と。▼
得テ↢自在ノ処ヲ↡、休↢息セシメ一切闘諍・飢饉ヲ↡、乃至令ムルガ↣三宝ノ種不ザラ↢断絶セ↡故ニ、三種ノ精気久シク住シテ増長セシムルガ故ニ、遮シヤ↣障シテ悪行ノ衆生ヲ↡護↢養スルガ行法ノ衆生ヲ↡故ニ、休↢息セシメ衆生ヲシテ三悪道ヲ↡、趣↢向スルガ三善道ニ↡故ニ、為ノ↠令メムガ↣仏法ヲシテ得エ↢久シク住セムコトヲ↡故ニ、勤ネンゴロニ作ナスト↢護持ヲ↡。
^▼仏ぶつののたまはく、 ª善よいかな善よいかな、 *妙みょう丈じょう夫ぶ、 なんぢかくのごとくなるべしº と。
仏ノ言ノタマハク、善イ哉カナ善イ哉カナ、妙丈夫、汝 ヂ応ベシト↠如クナル↠是クノ。
^▼その時ときに、 仏ぶつ、 百ひゃく億おくの大梵だいぼん天王てんのうに告つげてのたまはく、 ª所しょ有うの行ぎょう法ほう、 法ほうに住じゅうし法ほうに順じゅんじて悪あくを厭捨えんしゃせんものは、 いまことごとくなんだちが手てのうちに付ふ嘱ぞくす。 なんだち*賢首けんじゅ、 百ひゃく億おくの四し天てん下げ各々かくかくの境きょう界がいにおいて言説ごんせつ教令きょうりょうす。
爾ノ時ニ仏告ゲテ↢百億ノ大梵天王ニ↡言ノタマハク、所有ノ行法住シ↠法ニ順ジテ↠法ニ厭↢捨セム悪ヲ↡者 ノハ、※*今悉ク付↢嘱ス汝等ナンダチガ手ノ中ウチニ↡。汝等ダチ賢首、於テ↢百億ノ四天下各各ノ境界ニ↡言説教令ス。
^自じ在ざいの処ところを得えて、 所しょ有うの衆しゅ生じょう、 弊悪へいあく・粗そ獷こう・悩害のうがい、 他たにおいて慈じ愍みんあることなし。 後世ごせの畏おそれを観かんぜずして、 *刹せつ利り心しんおよび婆羅ばら門もん・毘び舎しゃ・首しゅ陀だの心こころを触悩そくのうせん、 乃ない至し畜ちく生しょうの心こころを触悩そくのうせん。 かくのごとき殺せっ生しょうをなす因縁いんねん乃ない至し邪見じゃけんをなす因縁いんねん、 その所しょ作さに随したがひて非時ひじの風ふう雨うあらん。 乃ない至し地じの精しょう気け、 衆しゅ生じょうの精しょう気け、 正しょう法ぼうの精しょう気け、 損減そんげんの因縁いんねんをなさしめば、 なんぢ*遮しゃ止しして善法ぜんぽうに住じゅうせしむべし。
得テ↢自在ノ処ヲ↡、所有ノ衆生、弊悪・麁ソ獷クワウ・悩害、於テ↠他ニ無シ↠有ルコト↢慈愍↡。不シテ↠観ゼ↢後世ノ畏ヲ↡、触↢悩セム刹利心及ビ婆羅門・毘舎・首0235陀ノ心ヲ↡、乃至触↢悩セム畜生ノ心ヲ↡。如キ↠是クノ作ナス↢殺生ヲ↡因縁乃至作ナス↢邪見ヲ↡因縁、随ヒテ↢其ノ所作ニ↡非時ノ風雨アラム、乃至令メ↣地ノ精気、衆生ノ精気、正法ノ精気、作ナサ↢損減ノ因縁ヲ↡者バ、汝応ベシ↢遮止シテ令ム↟住セ↢善法ニ↡。
^もし衆しゅ生じょうありて、 善ぜんを得えんと欲おもはんもの、 法ほうを得えんと欲おもはんもの、 生しょう死じの彼ひ岸がんに度どせんと欲おもはんもの、 *檀だん婆羅ばら蜜みつを修しゅ行ぎょうすることあらんところのもの、 乃ない至し、 般はん0447若にゃ波羅はら蜜みつを修しゅ行ぎょうせんもの、 所しょ有うの行ぎょう法ほう、 法ほうに住じゅうせん衆しゅ生じょう、 および行ぎょう法ほうのために事じを営いとなまんもの、 かのもろもろの衆しゅ生じょう、 なんだちまさに護持ごじ養育よういくすべし。
若シ有リテ↢衆生↡、欲オモハム↠得ムト↠善ヲ者 ノ、欲ハム↠得ムト↠法ヲ者 ノ、欲ハム↠度セムト↢生死ノ彼岸ニ↡者 ノ、所ノ↠有ラム↣修↢行スルコト檀波羅蜜ヲ↡者 ノ、乃至修↢行セム般若波羅蜜ヲ↡者 ノ、所有ノ行法住セム↠法ニ衆生、及ビ為ニ↢行法ノ↡営マム↠事ヲ者 ノ、彼ノ諸ノ衆生、汝等ナンダチ応ベシ↢当ニ護持養育ス↡。
^もし衆しゅ生じょうありて、 受じゅ持じし読誦どくじゅして、 他たのために演説えんぜつし、 種々しゅじゅに経きょう論ろんを解げ説せつせん。 なんだちまさに*かのもろもろの衆しゅ生じょうと*念ねん持じ方便ほうべんして*堅けん固ご力りきを得うべし。 所聞しょもんに入いりて忘わすれず、 諸法しょほうの相そうを智ち信しんして生しょう死じを離はなれしめ、 八はっ聖しょう道どうを修しゅして*三昧さんまいの根こん、 相応そうおうせん。
若シ有リテ↢衆生↡、受持シ読誦シテ、為ニ↠他ノ演説シ、種種ニ解↢説セム経論ヲ↡。汝等ダチ当ニシ↧与ト↢彼ノ諸ノ衆生↡念持方便シテ得ウ↦堅固力ヲ↥。入リテ↢所聞ニ↡不ズ↠忘レ、智↢信シテ諸法ノ相ヲ↡令シメ↠離レ↢生死ヲ↡、修シテ↢八聖道ヲ↡三昧ノ根相応セム。
^もし衆しゅ生じょうありて、 なんぢが境きょう界がいにおいて法ほうに住じゅうせん。 奢しゃ摩他また・毘婆びば舎しゃ那な、 次し第だい方便ほうべんしてもろもろの三昧さんまいと相応そうおうして、 ねんごろに*三種さんしゅの菩ぼ提だいを修しゅ習じゅうせんと求もとめんもの、 なんだちまさに*遮しゃ護ごし摂しょう受じゅして、 ねんごろに*捨しゃ施せをなして、 乏ぼう少しょうせしむることなかるべし。
若シ有リテ↢衆生↡、於テ↢汝ガ境界ニ↡住セム↠法ニ、奢摩他・毘婆舎那、次第方便シテ与ト↢諸ノ三昧↡相応シテ、勤ネムゴロニ求メム↣修↢習セムト三種ノ菩提ヲ↡者 ノ、汝等ダチ応シ↧当ニ遮護シ摂受シテ、勤ニ作シテ↢捨施ヲ↡、勿ル↞令ムルコト↢乏ボウ少セ↡。
^もし衆しゅ生じょうありて、 その飲食おんじき・衣え服ぶく・臥具がぐを施ほどこし、 病びょう患げんの因縁いんねんに湯薬とうやくを施せせんもの、 なんだちまさにかの施せ主しゅをして五利ごり増ぞう長じょうせしむべし。 なんらをか五いつつとする。 一ひとつには寿じゅ増ぞう長じょうせん、 二ふたつには財ざい増ぞう長じょうせん、 三みつには楽らく増ぞう長じょうせん、 四よつには善ぜん行ぎょう増ぞう長じょうせん、 五いつつには慧え増ぞう長じょうするなり。
若シ有リテ↢衆生↡、施シ↢其ノ飲食・衣服・臥具ヲ↡、病患ノ因縁ニ施セム↢湯薬ヲ↡者 ノ、汝等ダチ応ベシ↣当ニ令ム↢彼ノ施主ヲシテ五利増長セ↡。何等ラヲカ為スル↠五ト。一ニ者ハ寿増長セム、二ニ者ハ財増長セム、三ニ者ハ楽増長セム、四ニ者ハ善行増長セム、五ニ者ハ慧増長スルナリ。
^なんだち長じょう夜やに利り益やく安楽あんらくを得えん。 この因縁いんねんをもつて、 なんだちよく六ろっ波羅ぱら蜜みつを満みてん、 久ひさしからずして一切いっさい種しゅ智ちを成じょうずることを得えんº と。▼
汝等ダチ長夜ニ得エム↢利益ヤク安楽ヲ↡。以テ↢是ノ因縁ヲ↡、汝等ダチ能ク満テム↢六波羅蜜ヲ↡、不ズシテ↠久シカラ得エム↠成ズルコトヲ↢一切種智ヲ↡。
^0448▼時ときに娑しゃ婆ば世せ界かいの主しゅ、 大梵だいぼん天王てんのうを首しゅとして、 百ひゃく億おくのもろもろの梵ぼん天王てんのうとともに、 ことごとくこの言ごんをなさく、 ªかくのごとし、 かくのごとし。 大徳だいとく婆伽ばが婆ば、 われらおのおのにおのれが境きょう界がい、 弊悪へいあく・粗そ獷こう・悩害のうがいにおいて、 他たにおいて慈じ愍みんの心こころなく、 後世ごせの畏おそれを観かんぜざらん。 乃ない至しわれまさに遮しゃ障しょうし、 かの施せ主しゅのために*五事ごじを増ぞう長じょうすべしº と。
時ニ娑婆世界ノ主大梵天王ヲ為シテ↠首ト、共ニ↢百億ノ諸ノ梵天王ト↡、咸コトゴトク作サク↢是ノ言ヲ↡、如シ↠是クノ如0236シ↠是クノ。大徳婆伽婆、我等ラ各各ニ於イテ↢己 レガ境界、弊悪・麁獷・悩害ニ↡、於イテ↠他ニ無ク↢慈愍ノ心↡、不ラム↠観ゼ↢後世ノ畏ヲ↡、乃至我 レ当ニシト↧遮障シ与ト↢彼ノ施主↡増↦長ス五事ヲ↥。
^▼仏ぶつののたまはく、 ª善よいかな善よいかな、 なんぢかくのごとくなるべしº と。
仏ノ言ハク、善イ哉善イ哉、汝応シト↠如クナル↠是クノ。
^▼その時ときに、 また一切いっさいの菩ぼ薩さつ摩訶まか薩さつ、 一切いっさいの諸しょ大だい声しょう聞もん、 一切いっさいの天てん・りゅう竜、 乃ない至し一切いっさいの人にん・非ひ人にん等とうありて、 讃ほめてまうさく、 ª善よいかな善よいかな、 *大だい雄おう猛みょう士じ、 なんだちかくのごとき法ほう久ひさしく住じゅうすることを得え、 もろもろの衆しゅ生じょうをして悪道あくどうを離はなるることを得え、 すみやかに善道ぜんどうに趣おもむかしめんº と。
爾ノ時ニ復有リテ↢一切ノ菩薩摩訶薩、一切ノ諸大声聞、一切ノ天・竜、乃至一切人・非人等↡、讃メテ言サク、善イ哉善イ哉、大雄猛士、汝等ダチ如キ↠是クノ法得エ↢久シク住スルコトヲ↡、令シメムト↧諸ノ衆生ヲシテ得エ↠離ルヽコトヲ↢悪道ヲ↡、速ニ趣 ムカ↦善道ニ↥。
^▼その時ときに、 世せ尊そん重かさねてこの義ぎを明あかさんと欲おぼしめして、 偈げを説ときてのたまはく、
爾ノ時ニ世尊欲オボシメシ↣重ネテ明カナラムト↢此ノ義ヲ↡而テ説キテ↠偈ヲ言ノタマハク、
^▼ªわれ、 月蔵がつぞうに告つげていはく、 この賢劫げんごうの初はじめに入いりて、 *鳩留くる仏ぶつ、 梵ぼん等とうに四し天てん下げを付ふ嘱ぞくしたまふ。
我告ゲテ↢月蔵ニ↡言ハク | 入リテ↢此ノ賢劫ノ初ニ↡ |
鳩*留仏付↢嘱シタマフ | 梵等ニ四天下ヲ↡ |
^諸悪しょあくを遮しゃ障しょうするがゆゑに、 正しょう法ぼうの眼まなこを熾し然ねんならしむ。 もろもろの悪あく事じを捨しゃ離りし、 行ぎょう法ほうのものを護持ごじし、
遮↢障スルガ諸悪ヲ↡故ニ | 熾↢然ナラシム正法ノ眼ヲ↡ |
捨↢離シ諸ノ悪事ヲ↡ | 護↢持シ行法ノ者ヲ↡ |
^三宝さんぼうの種しゅを断たたず、 *三さん精しょう気けを増ぞう長じょうし、 もろもろの悪趣あくしゅを休く息そくし、 もろもろの善道ぜんどうに向むかへしむ。
不ズ↠断タタ↢三宝ノ種ヲ↡ | 増↢長シ三精気ヲ↡ |
休↢息シ諸ノ悪趣ヲ↡ | 令シム↠向ヘ↢諸ノ善道ニ↡ |
^拘那くな含ごん牟尼むに、 また大だい梵王ぼんのう、 他化たけ・化け楽らく天てん、 乃ない至し四し天王てんのうに嘱ぞくしたまふ。
拘那含牟尼 | 復嘱シタマフ↢大梵王 |
他化・化楽天 | 乃至四天王ニ↡ |
^次つぎ後のちに迦か葉しょう仏ぶつ、 ま0449た梵ぼん天王てんのう、 化け楽らく等とうの四し天てん、 帝たい釈しゃく・護世ごせ王おう、
次後ニ迦葉仏 | 復嘱シタマフ↢梵天王 |
化楽等ノ四天 | 帝釈・護世王 |
^過去かこのもろもろの天仙てんせんに嘱ぞくしたまふ。 もろもろの世せ間けんのためのゆゑに、 もろもろの*曜よう宿しゅくを安あん置ちして、 護持ごじし養育よういくせしめたまへり。
過去ノ諸ノ天仙ニ↡ | 為ノ↢諸ノ世間ノ↡故ニ |
安↢置シテ諸ノ曜宿シウヲ↡ | 令シメタマヘリ↢護持シ養育セ↡ |
^濁じょく悪あく世せに至いたりて、 白びゃく法ほう尽滅じんめつせん時とき、 われ*独覚どっかく無む上じょうにして、 人民にんみんを安あん置ちし護まもらん。
至リテ↠於ニ↢濁悪世↡ | 白法尽滅セム時 |
我 レ独覚無上ニシテ | 安↢置シ護ラム↣人民ヲ↡ |
^いま大衆だいしゅの前まえにして、 しばしばわれを悩乱のうらんせん。 まさに説法せっぽうを*捨すつべし。 われを置たもつて護持ごじせしめよ。
今イマ於シテ↢大衆ノ前ニ↡ | 数シバ数シバ悩↢乱セム我ヲ↡ |
応シ↣当ニ捨ツ↢説法ヲ↡ | 置テ↠我ヲ令メヨ↢護持セ↡ |
^十方じっぽうのもろもろの菩ぼ薩さつ、 一切いっさいことごとく来らい集じゅうせん。 天王てんのうもまたこの娑しゃ婆ば仏ぶっ国こく土どに来きたらしめん。
0237十方ノ諸ノ菩薩 | 一切悉ク来集セム |
天王モ亦来ラシメム↢此コノ | 娑婆仏国土ニ↡ |
^われ大だい梵王ぼんのうに問とはく、 «たれか昔むかし護持ごじせしもの» と。 帝たい釈しゃく・大梵だいぼん天てん、 余よの天王てんのうを指示しじす。
我問ハク↢大梵王ニ↡ | 誰 レカ昔ムカシ護持セル者 ノト |
帝釈・大梵天 | 指↢示ス余ノ天王ヲ↡ |
^時ときに釈しゃく・梵王ぼんのう、 過とがを導どう師しに謝しゃしていはまく、 «われら王おうの処ところを所ところとして、 一切いっさいの悪あくを遮しゃ障しょうし
於時ニ釈・梵王 | 謝シテ↢過トガヲ導師ニ↡言ハマク |
我等ラ所 トニシテ↢王ノ処ノ↡ | 遮↢障シ一切ノ悪ヲ↡ |
^三宝さんぼうの種しゅを熾し然ねんならしめ、 三さん精しょう気けを増ぞう長じょうせん。 諸悪しょあくの朋ともを遮しゃ障しょうして、 善ぜんの朋党ほうとうを護持ごじせしむ»º」 と。 以上抄出
熾↢然ナラシメ三宝ノ種ヲ↡ | 増↢長セム三精気ヲ↡ |
遮↢障シテ諸悪ノ朋トモホウヲ↡ | 護↢持セシムト善ノ朋ホウ党ヲ↡」 已上抄出
|
二 Ⅱ ⅱ b イ (三)(Ⅱ)(ⅳ)「諸魔得敬信品」(護持の誓いを発すべきを明かす)
【91】^▼¬月蔵がつぞう経きょう¼ 巻かん第七だいしち 「諸しょ魔ま得とく敬きょう信しん品ぼん」 第だい十じゅうにのたまはく (大集経)、
¬月蔵ザウ経キヤウ¼巻第七「諸魔得敬信品」第十ニ*言ク、
^「▼その時ときに、 また百ひゃく億おくの諸しょ魔まあり。 ともに同どう時じに座ざよりして起たちて、 合がっ掌しょうして仏ぶつに向むかひたてまつりて、 仏足ぶっそくを頂ちょう礼らいして仏ぶつにまうしてまうさく、 ª世せ尊そん、 われらまたまさに大だい勇ゆう猛みょうを発おこして仏ぶつの正しょう法ぼうを護持ごじし養育よういくして、 三宝さんぼうの種しゅを熾し然ねんならしめて、 久ひさしく世せ間けんに住じゅうせしむ。 いま地じの精しょう気け、 衆しゅ生じょうの精しょう気け、 法ほうの精しょう気け、 み0450なことごとく増ぞう長じょうせしむべし。 もし世せ尊そん、 声しょう聞もん弟子でしありて、 法ほうに住じゅうし法ほうに順じゅんじて三業さんごう相応そうおうして修しゅ行ぎょうせば、 われらみなことごとく護持ごじし養育よういくして、 一切いっさいの*所須しょしゅ乏とぼしきところなからしめんº と。 乃至
「爾ノ時ニ復有リ↢百億ノ諸魔↡。倶共 トモ ニ同時ニ従リ↠座而シテ起チテ、合掌シテ向ムカヒタテマツリテ↠仏ニ、頂↢礼シ仏足ヲ↡而テ白シテ↠仏ニ言サク、世尊、我等ラ亦当ニシ↧発シテ↢大勇猛ヲ↡護↢持シ養↣育シテ仏之正法ヲ↡、熾シサカリ↢*然ナラシメテ三宝ノ種ヲ↡、久シク住セシム↢於世間ニ↡、今 マ地ノ精気タマシイ、衆生ノ精気、法ノ精気、皆悉ク増長セシム↥。若シ有リテ↢世尊、声聞弟子↡、住シ↠法ニ順ジテ↠法ニ三業相応シ而テ修行セ者バ、我等ラ皆悉ク護持シ養育シテ、一切ノ所須モチヰル令メムト↠无カラ↠所↠乏トモシキ。 乃至
^▼ªこの娑しゃ婆ば界かいにして、 初はじめ賢劫げんごうに入いりし時とき、 *拘楼くる孫そん如来にょらい、 すでに四し天てんを^帝たい釈しゃく・梵ぼん天王てんのうに嘱そくせしめて、 護持ごじし養育よういくせしむ。 三宝さんぼうの種しゅを熾し然ねんならしめ、 三さん精しょう気けを増ぞう長じょうせしめたまひき。
於シテ↢此ノ娑婆界ニ↡ | 初メ入リシ↢賢劫ニ↡時 |
拘楼孫ソ 如来 | 已ニ嘱セシメテ↢於四*天ヲ |
帝釈・梵天王ニ↡ | 護持シ令ム↢養育セ↡ |
熾↢燃ナラシメ三宝ノ種ヲ↡ | 増↢長セシメタマヒキ三精気ヲ↡ |
^拘那くな含ごん牟尼むに、 また四し天てん下げを梵ぼん・釈しゃく・諸天しょてん王のうに嘱ぞくして、 護持ごじし養育よういくせしむ。 ^迦か葉しょうもまたかくのごとし、 すでに四し天てん下げを梵ぼん・釈しゃく・護世ごせ王おうに嘱ぞくして、 行ぎょう法ほうのひとを護持ごじせしめき。
拘那含牟尼 | 亦嘱シテ↢四天下ヲ |
梵・釈・諸天王ニ↡ | 護持シ令ム↢養育セ↡ |
迦葉モ亦如シ↠是クノ | 已ニ嘱シテ↢四天下ヲ |
梵・釈・護世王ニ↡ | 護↢持セシメキ行法ノ者ヒトヲ↡ |
^過去かこの諸しょ仙衆せんしゅ、 および諸しょ天仙てんせん、 星しょう辰しんもろもろの宿しゅく曜よう、 また嘱ぞくし分ぶん布ぷせしめき。 ^われ五ご濁じょく世せに出いでて、 もろもろの魔まの怨あだを降伏ごうぶくして、 大だい集しゅう会えをなして、 仏ぶつの正しょう法ぼうを顕現けんげんせしむ。 乃至
過去ノ諸仙ヒジリ衆 | 及以 オヨビ 諸天仙 |
星辰諸ノ宿シウ曜 | 亦嘱シ令シメキ↢分布セ↡ |
0238我出デヽ↢五濁世ニ↡ | 降↢伏シ諸ノ魔ノ怨ヲ↡ |
而テ作ナシテ↢大集会ヲ↡ | 顕↢現セシム仏ノ正法ヲ↡ 乃至 |
^▼一切いっさいの諸天しょてん衆しゅ、 ことごとくともに仏ぶつにまうしてまうさく、 «われら王おうの処ところを所ところにして、 みな正しょう法ぼうを護持ごじし、 ^三宝さんぼうの種しゅを熾し然ねんならしめ、 三さん精しょう気けを増ぞう長じょうせしめん。 もろもろの病びょう疫やく、 飢け饉ごんおよび闘とう諍じょうを息やめしめん»º」 と。 乃至略出
一切ノ諸天衆 | 咸ク共ニ白シテ↠仏ニ言サク |
我等ラ所ニシテ↢王ノ処ノ↡ | 皆 ナ護↢持シ正法ヲ↡ |
熾↢燃ナラシメ三宝ノ種ヲ↡ | 増↢長セシメムト三精気ヲ↡ |
令シメムト↠息ヤメ↢諸ノ病疫ヤク | 飢饉及ビ闘諍ヲ↡」 乃至略*出 |
二 Ⅱ ⅱ b イ (三)(Ⅱ)(ⅴ)「提頭頼大王護持品」(四王の護持を誓ふことを明かす)
【92】^▼「提だい頭頼ずらた天王てんのう護持ごじ品ぼん」 にのたまはく (大集経)、
「提頭頼天王護持品ニ」云ク、
^「▼仏ぶつののたまはく、 ª*日にっ天てん子し・*月がっ天てん子し、 なんぢわが法ほうにおいて護持ごじし養育よういくせば、 なんぢ長ちょう寿じゅにしてもろ0451もろの衰患すいげんなからしめんº と。
「仏ノ言ノタマハク日天子・月天子、汝於テ↢我ガ法ニ↡護持シ養育セバ、令メムト↣汝 ヂ長寿ニシテ无カラ↢諸ノ衰スイ患グヱン↡オトロフ。
^▼その時ときに、 また百ひゃく億おくの提だい頭頼ずらた天王てんのう、 百ひゃく億おくの毘楼びる勒叉ろくしゃ天王てんのう、 百ひゃく億おくの毘楼びる博叉はくしゃ天王てんのう、 百ひゃく億おくの毘び沙門しゃもん天王てんのうあり。 かれら同どう時じに、 および眷属けんぞくと座ざよりして起たちて、 衣え服ぶくを整しょう理りし、 合がっ掌しょうし敬きょう礼らいして、 かくのごときの言ごんをなさく、 ª大徳だいとく婆伽ばが婆ば、 われらおのおのおのれが天てん下げにして、 ねんごろに仏法ぶっぽうを護持ごじし養育よういくすることをなさん。 三宝さんぼうの種しゅ、 熾し然ねんとして久ひさしく住じゅうし、 三種さんしゅの精しょう気けみなことごとく増ぞう長じょうせしめんº と。 乃至
爾ノ時ニ復有リ↢百億ノ提頭頼天王、百億ノ毘楼勒叉天王、百億ノ毘楼博叉天王、百億ノ毘沙門天王↡。彼 レ等同時ニ、及ビ与ト↢眷属↡従リ↠座而シテ起チテ、整シヤウ↢ツクロフ 理リシツクロフ衣服ヲ↡、合掌シ敬礼シテ、作サク↢如キノ↠是クノ言ヲ↡、大徳婆伽婆、我等 ラ各各於シテ↢己オノレガ天下ゲニ↡、懃ネムゴロニ作サム↤護↢持シ養↣育スルコトヲ仏法ヲ↡。令メムト↢三宝ノ種タネ熾*然トシテ久シク住シ、三種ノ精気皆 ナ悉ク増長セ↡。 乃至
^ªわれいままた上じょう首しゅ毘び沙門しゃもん天王てんのうと同心どうしんに、 この閻えん浮ぶ提だいと北方ほっぽうとの諸仏しょぶつの法ほうを護持ごじすº」 と。 以上略出
我今 マ亦与ト↢上首毘沙門天王↡同心ニ護↢持スト此ノ閻浮提ト北方トノ諸仏ノ法ヲ↡。 已上略出
二 Ⅱ ⅱ b イ (三)(Ⅱ)(ⅵ)「忍辱品」(仏法を護持せば福報無量なることを明かし、帰仏者を損悩せば則ち堕獄の重罪を得ることを明かす)
【93】^▼¬月蔵がつぞう経きょう¼ 巻かん第八だいはち 「忍辱にんにく品ぼん」 第だい十じゅう六ろくにのたまはく (大集経)、
¬*月蔵経¼巻第八「忍*辱品」*第十六ニ*言ク、
^「▼仏ぶつののたまはく、 ªかくのごとし、 かくのごとし。 なんぢがいふところのごとし。
「仏ノ言ハク、如シ↠是クノ如シ↠是クノ。如シ↢汝ガ所ノ↟言フ。
^▼*もしおのれが苦くを厭いとひ楽らくを求もとむるを愛あいすることあらん、 まさに諸仏しょぶつの正しょう法ぼうを護持ごじすべし。 これよりまさに無む量りょうの福報ふくとくを得うべし。
若シ有ラム↠愛スルコト↢己 レガ厭ヒ↠苦ヲ求ムルヲ↟楽ヲ、応シ↣当ニ護↢持ス諸仏ノ正法ヲ↡。従リ↠此当ニシ↠得↢無量ノ福報ヲ↡。
^▲もし衆しゅ生じょうありて、 わがために出しゅっ家けし、 鬚髪しゅほつを剃除たいじょして袈裟けさを被ひ服ぶくせん。 たとひ戒かいを持たもたざらん、 かれらことごとくすでに涅ね槃はんの印いんのために印いんせらるるなり。
若シ有リテ↢衆生↡、為ニ↠我ガ出家シ、剃↢除シテ鬚髪ヲ↡被↢服セム袈裟ヲ↡。設ヒ不ラム↠持タ↠戒ヲ、彼 レ等ラ悉ク已ニ為ニ↢涅槃ノ印之↡所ラルヽ↠印セ也。
^◆もしまた出しゅっ家けして戒かいを持たもたざらんもの、 非ひ法ほうをもつてして悩乱のうらんをなし、 罵め辱にくし毀呰きしせん、 *手てをもつて刀とう杖じょう*打ちょう縛ばくし、 *斫しゃく截せつすることあらん。 もし衣え鉢はつを奪うばひ、 および種々しゅじゅの資し生しょうの具ぐを0452奪うばはんもの、 この人ひとすなはち三さん世ぜの諸仏しょぶつの真実しんじつの報身ほうじんを壊えするなり。 すなはち一切いっさい天人てんにんの眼目げんもくを排はらふなり。
若シ復出家シテ不ラム↠持タ↠戒ヲ者モノ、有ラム↧以テ↢非法ヲ↡而シテ作ナシ↢悩乱ヲ↡、罵辱シ毀クヰソシリ0239呰セムソシル 、以テ↠手ヲ刀杖打チヤウ縛バクシ斫シヤククダキ截キルスルコト↥。若シ奪ウバヒ↢衣鉢ヲ↡、及ビ奪ウバハム↢種種ノ資生ノ具ヲ↡者 ノ、是ノ人ハ則チ壊スルナリ↢三世ノ諸仏ノ真実ノ報身ヲ↡。則チ排ハラフナリ↢一切天人ノ眼目ヲ↡。
^◆この人ひと、 諸仏しょぶつ所しょ有うの正しょう法ぼう三宝さんぼうの種しゅを隠没おんもつせんと欲おもふがためのゆゑに、 *もろもろの天人てんにんをして利り益やくを得えざらしむ。 地じ獄ごくに堕だせんゆゑに、 三さん悪道まくどう増ぞう長じょうし盈満ようまんをなすなりº」 と。 以上
是ノ人為ノ↠欲フガ↣隠↢没セムト諸仏所有ノ正法三宝ノ種ヲ↡故ニ、令シム↢諸ノ天人ヲシテ不ラ↟得↢利益ヲ↡。堕セム↢地獄ニ↡故ニ、為ナスナリト↢三悪道増長シ盈満ヲ↡。」 已上
二 Ⅱ ⅱ b イ (三)(Ⅱ)(ⅶ)「忍辱品」(諸天善鬼神の仏弟子を擁護することを明かす)
^▲(大集経) ^「その時ときに、 また一切いっさいの天てん・竜りゅう乃ない至し一切いっさいの迦かた富ふ単たん那な・人にん・非ひ人にん等とうありて、 みなことごとく合がっ掌しょうしてかくのごときの言ごんをなさく、 ªわれら、 仏ぶつの一切いっさい声しょう聞もん弟子でし、 乃ない至しもしまた禁戒きんかいを持たもたざれども、 鬚髪しゅほつを剃除たいじょし袈裟けさを片かたに着きんものにおいて、 師し長ちょうの想おもいをなさん。 護持ごじ養育よういくしてもろもろの所須しょしゅを与あたへて乏ぼう少しょうなからしめん。
*又言ク、「爾ノ時ニ復有リテ↢一切ノ天・竜、乃至一切ノ迦富単タン那ナ・人・非人等↡、皆悉ク合掌シテ作サク↢如キノ↠是クノ言ヲ↡、我等於イテ↧仏ノ一切声聞弟子、乃至若シ復 タ不レドモ↠持タ↢禁キム戒ヲ↡、剃ソル↢除シ鬚ヒゲ髪ヲ↡著キム↢袈裟ヲ片カタニ↡者 ノニ↥、作サム↢師長ノ想ヲ↡。護持養育シテ与アタヘテ↢諸ノ所須ヲモチヰル↡令メム↠無カラ↢乏ボフ少↡。
^◆もし余よの天てん・竜りゅう乃ない至し迦かた富ふ単たん那な等とう、 その悩乱のうらんをなし、 乃ない至し悪心あくしんをして眼まなこをもつてこれを視みば、 われらことごとくともに、 かの天てん・竜りゅう・富ふ単たん那な等とう所しょ有うの諸相しょそう欠減けつげんし醜しゅう陋るならしめん。 かれをしてまたわれらとともに住じゅうし、 ともに食じきを与あたふることを得えざらしめん。 またまた同処どうしょにして戯げ笑しょうを得えじ。 かくのごとく擯罰ひんばつせんº」 と。 以上
若シ余ノ天・竜乃至迦富単那等、作シ↢其ノ悩乱ヲ↡、乃至悪心ヲシテ以テ↠眼ヲ視ミバ↠之ヲ、我等悉ク共ニ令シメム↢彼ノ天・竜・富単那等、所有ノ諸相欠クヱチ減カケオトルシ醜シユミニクシ陋ルナラミニクシ↡。令シメム↣彼ヲシテ不ラ↢復 タ得エ↟与アタフルコトヲ↢我等ト共ニ住シ共ニ食ヲ↡。亦復不ジ↠得エ↢同処ニシテ戯ゲタワブレ笑セウヲワラフ↡。如ク↠是クノ 擯ヒンオイヽダス罰バチウツセムト。」 已上
二 Ⅱ ⅱ b イ (四)¬華厳経¼(諸文を総括して非法の行を誡む)
【94】^▼またのたまはく (華厳経・十地品・晋訳)、
*又言ク、
^「占相せんそうを離はなれて正しょう見けんを修しゅ習じゅうせしめ、 決けつ定じょうして深ふかく罪福ざいふくの因縁いんねんを信しんずべし」 と。 抄出
「離レテ↠於ヲ↢占セムウラ相↡修↢習セシメ正見ヲ↡、決定シテ深ク信ズベシト↢罪福ノ因縁ヲ↡。」 抄出
二 Ⅱ ⅱ b イ (五)¬首楞厳経¼(鬼神に近づくべからざることを示す)
【045395】^▼¬*首しゅ楞りょう厳ごん経ぎょう¼ にのたまはく、
¬首楞厳経ニ¼言ク、
^「かれらの*諸しょ魔ま、 かのもろもろの*鬼き神じん、 かれらの*群邪ぐんじゃ、 また徒と衆しゅありて、 *おのおのみづからいはん。 無む上じょう道どうを成なりて、 わが滅めつ度どの後のち、 末法まっぽうのなかに、 この魔ま民みん多おおからん、 この鬼き神じん多おおからん、 この妖邪ようじゃ多おおからん。 世せ間けんに熾し盛じょうにして、 善ぜん知ぢ識しきとなつてもろもろの衆しゅ生じょうをして*愛見あいけんの坑あなに落おとさしめん。 菩ぼ提だいの路みちを失しっし、 *詃惑げんわく無む識しきにして、 おそらくは心こころを失しっせしめん。 *所しょ過かの処ところに、 その家いえ耗散もうさんして、 愛見あいけんの魔まとなりて如来にょらいの種しゅを失しっせん」 と。 以上
「彼等ノ諸魔、彼ノ諸ノ鬼神、彼等ラノ群邪、亦有リテ↢徒ト衆↡、各各自ミヅカラ謂ハム。成リテ↢无上道ヲ↡、我ガ滅度ノ後末法之中ニ、多カラム↢此ノ魔民↡、多カラム↢此ノ鬼神↡、多カラム↢此ノ妖エウホロブ邪↡。熾↢盛サカリニシテ世間ニ↡、為ナテ↢善知識ト↡令メム↣諸ノ衆生ヲシテ落オトサ↢愛見ノ坑アナニ↡。失シ↢菩提ノ路ヲ↡、詃グヱンクルイ惑無マドウ 識ニシテ、恐オソラ0240クハ令メム↠失セ↠心ヲ。所過之処ニ、其ノ家*耗モウチル散シテ、成リテ↢愛見ノ魔ト↡失セムト↢如来ノ種ヲ↡。」 已上
二 Ⅱ ⅱ b イ (六)¬潅頂経¼(三十六神の守護を明かして鬼神を祀ることの非なるを示す)
【96】^▼¬*潅かん頂じょう経ぎょう¼ にのたまはく、
¬潅頂経ニ¼言ク、
^「▼三さん十じゅう六ろく部ぶの神王しんのう、 万まん億おく恒沙ごうじゃの鬼き神じんを眷属けんぞくとして、 相そうを陰かくし*番ばんに代かわりて、 ▼三さん帰きを受うくるひとを護まもる」 と。 以上
「三十六部ノ神王、万億恒沙ノ鬼神ヲ為シテ↢眷クヱン属ト↡、陰カクシ↠相ヲオモヒ番ニ代カハリテ、護ルト↧受クル↢三帰ヲ↡者ヒトヲ↥。」
二 Ⅱ ⅱ b イ (七)¬地蔵十輪経¼二文(外道に帰することを遠離すべきことを明かし、邪神を祭る者は罪を得ることを明かす)
【97】^▼¬*地じ蔵ぞう十じゅう輪りん経ぎょう¼ にのたまはく、
¬地蔵十輪経ニ¼言ク、
^「つぶさにまさしく帰依きえして、 一切いっさいの妄もう執しゅう吉きっ凶きょうを遠おん離りせんものは、 つひに邪神じゃしん・外げ道どうに帰依きえせざれ」 と。 以上
「具ニ正シク帰依シテ、遠↢離セムモノハ一切ノ妄執吉凶ヲ↡、終ニ不レト↣帰↢依セ邪神・外*道ニ↡。」 已上
【98】^またのたまはく (十輪経)、
又言ク、
^「あるいは種々しゅじゅに、 もしは少しょうもしは多た、 吉きっ凶きょうの相そうを執しゅうして、 鬼き神じんを祭まつりて、 乃至 極ごく重じゅうの大罪だいざい悪業あくごうを生しょうじ、 *無む間けん罪ざいに近ちかづく。 かくのごときの人ひと、 もしいまだかくのごときの大罪だいざい悪業あくごうを懴さん悔げし除滅じょめつせずは、 出しゅっ家けしておよび*具ぐ戒かいを受うけしめざらんも、 もしは出しゅっ家けしてあるいは具ぐ戒かいを受うけしめんも、 すなはち罪つみを得えん」 と。 以上
「或イハ執シテ↢種種ニ若シハ少若シハ多、吉凶之相ヲ↡、祭マツリテ↢鬼神ヲ↡、 乃至 而生ジ↢極重ノ大罪悪業ヲ↡、近ヅク↢无間罪ニ↡。如キ↠是クノ之人ヒト、若シ未ズ ダハ↤懴↢悔シ除↣滅セ如キノ↠是クノ大罪悪業ヲ↡、不ラムモ↠令メ↣出家シテ及ビ受ケ↢具戒ヲ↡、若シハ令メムモ↣出家シテ或イハ受ケ↢具戒ヲ↡、即便得エムト↠罪ヲ。」 已上
二 Ⅱ ⅱ b イ (八)¬福徳三昧経¼・¬薬師経¼初文(余道・余天を拝せざることを記す)
【045499】^▼¬*集じゅう一切いっさい福徳ふくとく三昧ざんまい経きょう¼ の中なかにのたまはく、
¬集一切福徳三昧経ノ¼中ニ言ク、
^「*余よ乗じょうに向むかはざれ、 余よ天てんを礼らいせざれ」 と。 以上
「不レ↠向ハ↢余乗ニ↡不レト↠礼セ↢余天ヲ↡。」 已上
【100】^▼¬*本願ほんがん薬やく師し経きょう¼ にのたまはく、
¬本願薬師経ニ¼言ク、
^「▼もし浄じょう信しんの善男ぜんなん子し・善ぜん女人にょにん等とうありて、 乃ない至し*尽じん形ぎょうまでに余よ天てんに事つかへざれ」 と。
「若シ有リテ↢浄信ノ善男子・善女人等↡、乃至尽形マデニ不レト↠事ツカヘ↢余天ニ↡。」
二 Ⅱ ⅱ b イ (九)¬薬師経¼(外道の妄説を信ずれば現当の重罪を得ることを明かす)
【101】^▼またのたまはく (本願薬師経)、
又言ク、
^「▼また世せ間けんの邪じゃ魔ま・外げ道どう、 *妖ようげつの師しの妄説もうせつを信しんじて、 禍か福ふくすなはち生しょうぜん。 おそらくはややもすれば心こころみづから正ただしからず、 卜問ぼくもんして禍わざわいを覓もとめ、 種々しゅじゅの衆しゅ生じょうを殺ころさん。 神明しんめいに解げ奏そうし、 もろもろの*魍もう魎りょうを呼よばうて、 福祐ふくゆうを請しょう乞こつし、 延年えんねんを冀ねがはんとするに、 つひに得うることあたはず。 愚痴ぐち迷惑めいわくして邪じゃを信しんじ、 倒見とうけんしてつひに横おう死しせしめ、 地じ獄ごくに入いりて出しゅつ期ごあることなけん。 ▼乃至
「又信ジテ↢世間ノ邪魔・外道・妖エウホロブゲキ之ホロブ 師ノ妄説ヲ↡、禍クワワザワイ 福サイワイ便チ生ゼム。恐 ソクハ動ヤヽモスレバ心不ズ↢自ミ ラ正タヾシカラ↡、卜ボクウラ問シテ覓モトメ↠禍ヲ、殺セム↢種種ノ衆生ヲ↡。解↢サトス奏ソウシマフス神明ニ↡、呼ヨバフテ↢諸ノ魍マウ魎リヤウヲ↡、請↢ウケコウ乞コチコウシ福祐ユヲ↡、欲スルニ↠冀ネガキ ハムト↢延エン年ヲ↡、終ニ不ズ↠能ハ↠得ルコト。愚痴迷マドイ惑シテ信ジ↠邪ヲ、倒タウ見シテ遂ツイニ令メ↢横死セ↡、入リテ↢於地獄ニ↡無ケム↠有ルコト↢出期↡。 乃至
^▼八やつには、 横よこさまに毒薬どくやく・*厭祷えんとう・呪咀じゅしょし、 *起屍きし鬼き等とうのために中ちゅう害がいせらる」 と。 以上抄出
八ニ者ハ横ニ為ニ↢毒薬・厭イトイ祷タウ・イノル呪ジユノリ咀シヨノルシ、起タツ 屍シシニカバネ鬼等之ノ↡所ラルト↢中アタル害セ↡ソコナウ。」 *抄出已上
二 Ⅱ ⅱ b イ (十)¬菩薩戒経¼(鬼神を礼すべからざるの意を彰す)
【102】^▼¬*菩ぼ薩さつ戒かい経きょう¼ にのたまはく、
¬菩0241薩戒経ニ¼言ク、
^「出しゅっ家けの人ひとの法ほうは、 国王こくおうに向むかひて礼拝らいはいせず、 父母ぶもに向むかひて礼拝らいはいせず、 六親ろくしんに務つかへず、 鬼き神じんを礼らいせず」 と。 以上
「出家ノ人ノ法ハ、不ズ↧向ヒテ↢国王ニ↡礼拝セ↥、不ズ↧向ヒテ↢父母ニ↡礼拝セ↥、六親ニ不ズ↠務ツカヘ、鬼神ヲ不ズト↠礼セ。」 已上
二 Ⅱ ⅱ b イ (士)¬仏本行集経¼(捨邪帰正はすべからく三迦葉の如くなるべきことを示す)
【103】^▼¬*仏ぶつ本ほん行ぎょう集じっ経きょう¼ *闍じゃ那な崛くっ多たの訳やく の第だい四し十じゅう二に巻かん 「優婆うば斯那しな品ぼん」 にのたまはく、
¬仏本行集経ノ¼ *闍那崛多ノ訳 第四十二巻ニ「優婆斯那品ニ」*言ク、
^「その時ときに、 かの▼*三さん迦か葉しょう兄きょう弟だいにひとりの*外甥がいせい、 *螺ら髻けい梵ぼん志じあり。 その梵ぼん志じ0455を優婆うば斯那しなと名なづく。 乃至
「爾ノ時ニ彼ノ三迦葉兄弟ニ有リ↢一ノ外甥セイオイ *甥字 螺ラモトヾリ 髻ケイモトヾリ梵志↡。其ノ梵志ヲ名ク↢優婆斯那ト↡。 乃至
^つねに二に百ひゃく五ご十じゅうの螺ら髻けい梵ぼん志じ弟子でしとともに仙道せんどうを修学しゅがくしき。 かれその*舅きゅう迦か葉しょう三人さんにんを聞きくに、 もろもろの弟子でし、 かの*大だい沙門しゃもんの辺へんに往詣おうげいして、 阿あ舅きゅう鬚髪しゅほつを剃除たいじょし、 袈裟けさ衣えを着きると。 見みをはりて、 舅きゅうに向むかひて偈げを説ときていはく、
恒 ネニ共ニ↢二百五十ノ螺髻梵志弟子ト↡修↢学シキ仙道ヲ↡。彼 レ聞クニ↢其ノ舅キウオヂ *舅字 迦葉三人ヲ↡、諸ノ弟子、往↢詣シテ於彼ノ大沙門ノ辺ニ↡、阿舅剃↢除シ鬚髪ヲ↡、著キルト↢袈裟衣ヲ↡。見ミ已リテ向ヒ↠舅ニ而テ説キテ↠偈ヲ言ク、
^ª舅きゅう等とう虚むなしく火ひを祀まつること百ひゃく年ねん、 またまた空むなしくかの苦く行ぎょうを修しゅしき。 今日こんにち同おなじくこの法ほうを捨すつること、 なほ蛇じゃの故ふるき皮かわを脱ぬぐがごとくするをやº と。
舅等虚シク祀マツルコト↠火ヲ百年 | 亦復空シク修シキ↢彼ノ苦行ヲ↡ |
今日同ジク捨ツルコト↢於此ノ法ヲ↡ | 猶ナホ如クスルヲヤト↣蛇ノ脱ヌグガ↢於故フルキ皮ヲ↡ |
^その時ときに、 かの舅きゅう迦か葉しょう三人さんにん、 同おなじくともに偈げをもつて、 その外甥がいせい、 優婆うば斯那しなに報ほうじてかくのごときの言ごんをなさく、
爾ノ時ニ彼ノ舅迦葉三人、同ジク共ニ以テ↠偈ヲ、報ジテ↢其ノ外甥優婆斯那ニ↡作サク↢如キノ↠是クノ言ヲ↡、
^ªわれら昔むかし、 空むなしく火か神じんを祀まつりて、 またまたいたづらに苦く行ぎょうを修しゅしき。 われら今日こんにちこの法ほうを捨すつること、 まことに蛇じゃの故ふるき皮かわを脱ぬぐがごとくすº」 と。 抄出
我等昔 シ空シク祀マツリテ↢火神ヲ↡ | 亦復徒イタヅラニ修シキ↢於苦行ヲ↡ |
我等今日捨ツルコト↢此ノ法ヲ↡ | 実ニ如クスト↣蛇ジヤノ脱ヌグガ↢於故フルキ皮ヲ↡」 抄出
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二 Ⅱ ⅱ b ロ 論
(一)馬鳴¬起信論¼(他の緇徒の魔の為に誑惑せられて出離を失することを誡む)
【104】^▼¬*起き信論しんろん¼ にいはく、
¬起信論ニ¼曰ク、
^「あるいは衆しゅ生じょうありて、 善根ぜんごん力りきなければ、 すなはち諸しょ魔ま・外げ道どう・鬼き神じんのために*誑惑おうわくせらる。 もしは坐ざ中ちゅうにして形かたちを現げんじて恐怖くふせしむ、 あるいは端たん正じょうの男女なんにょ等とうの相そうを現げんず。 まさに唯心ゆいしんの境きょう界がいを念ねんずべし、 すなはち滅めっしてつひに悩のうをなさず。
「或イハ有リテ↢衆生↡、無ケレバ↢善根力↡、則チ為ニ↢諸魔・外道・鬼神ノ↡所ラル↢誑惑セ↡。若シハ於シテ↢座中ニ↡現ジテ↠形ヲ恐クオソレ怖フオソルセシム、或イハ現ズ↢端タヾシ イツクシキトモ正ノ男女等ノ相ヲ↡。当ニシ↠念ズ↢唯心ノ境界ヲ↡、則チ滅シテ終ニ不ズ↠為ナサ↠悩ヲナヤミヲ。
^あるいは天像てんぞう・菩ぼ薩さつ像ぞうを現げんじ、 また如来にょらい像ぞうの相好そうごう具ぐ足そくせるをなして、 もしは陀羅尼だらにを説とき、 もしは布施ふせ・持じ戒かい・忍辱にんにく・精しょう進じん0456・禅ぜん定じょう・智慧ちえを説とき、 あるいは平びょう等どう、 空くう・無む相そう・無む願がん、 無む怨おん無む親しん、 無む因いん無果むか、 畢ひっ竟きょう空くう寂じゃく、 これ真しんの涅ね槃はんなりと説とかん。
或イハ現ジ↢天像・菩薩像ヲ↡、亦作シテ↢如来像ノ相好具足セルヲ↡、若シハ説キ↢陀羅尼ヲ↡、若シハ説0242キ↢布施・持戒・忍辱・精進・禅定・智慧ヲ↡、或イハ説カム↢平等、空・无相・無願、無怨*無親、無因無果、畢竟空寂、是 レ真ノ涅槃ナリト↡。
^あるいは人ひとをして宿命しゅくみょう過去かこの事じを知しらしめ、 また未み来らいの事じを知しる。 他た心しん智ちを得え、 弁才べんざい無礙むげならしむ。 よく衆しゅ生じょうをして世せ間けんの名みょう利りの事じに貪とん着じゃくせしむ。
或イハ令メ↣人ヲシテ知ラ↢宿シウ命過去之事ヲ↡、亦知ル↢未来之事ヲ↡。得エ↢他心智ヲ↡、弁ワキマウ才無ナラシム。能ク令シム↣衆生ヲシテ貪↢著セ世間ノ名利之事ニ↡。
^また人ひとをしてしばしば瞋いかり、 しばしば喜よろこばしめ、 *性しょう無む常じょうの准ならひならしむ。 あるいは多おおく慈じ愛あいし、 多おおく睡ねむり、 宿やどること多おおく、 多おおく病やまいす、 その心こころ懈け怠だいなり。
又令シム↧使メ↢人ヲシテ数シバシバ瞋リ数シバシバ喜ヨロコバ↡、性无常ノ准ナラヒジユンナラ↥。或イハ多ク慈愛シ、多ク睡ネブリ、多ク↠宿ヤドル、多ク病ス。其ノ心懈怠ナリ。
^あるいはにはかに精しょう進じんを起おこして、 後のちにはすなはち休く廃はいす。 不ふ信しんを生しょうじて疑うたがい多おおく、 慮おもんぱかり多おおし。
或イハ率ニハカニ起シテ↢精進ヲ↡、後ニハ便チ休ク廃ハイス。生ジテ↢於不信ヲ↡多ク↠疑多シ↠慮オモンパカリ。
^あるいはもとの勝行しょうぎょうを捨すてて、 さらに雑業ぞうごうを修しゅせしめ、 もしは世事せじに着じゃくせしめ、 種々しゅじゅに*牽纏けんでんせらる。
或イハ捨テヽ↢本ノ勝行ヲ↡、更 ラニ修セシメ↢雑業ヲ↡、若シハ著ツクセシメ↢世事ニ↡、種種ニ牽ケンヒキ纏デンマツウセラル。
^またよく人ひとをしてもろもろの三昧さんまいの少しょう分ぶん相そう似じせるを得えしむ。 みなこれ外げ道どうの所得しょとくなり、 真しんの三昧さんまいにあらず。
亦能ク使ム↣人ヲシテ得↢諸ノ三昧ノ少分相アヒ似ジニタリセルヲ↡。皆是外道ノ所得ナリ、非ズ↢真ノ三昧ニ↡。
^あるいはまた人ひとをして、 もしは一日いちにち、 もしは二に日にち、 もしは三日さんにち、 乃ない至し七日しちにち、 定中じょうちゅうに住じゅうして自じ然ねんの香こう味み飲食おんじきを得えしむ。 身心しんしん適ちゃく悦えつして、 飢うゑず渇かわかず、 人ひとをして愛あい着じゃくせしむ。
或イハ復令ム↧人ヲシテ若シハ一日、若シハ二日、若シハ三日、乃至七日、住シテ↢於定中ニ↡得エ↦自然ノ香美ミヨシ飲食ヲ↥。身心 適チヤクスナハチ マサニトモ タマタマトモ悦シテ、不↠飢ウヱ不↠渇カハカ、使ム↢人ヲシテ愛著セ↡。
^あるいはまた人ひとをして食じきに*分斉ぶんざいなからしむ、 たちまち多おおく、 たちまち少すくなくして、 顔色げんしき変へん異いす。
或イハ亦令ム↣人ヲシテ食ニ無カラ↢分斉キワ↡。乍タチマサ チ多ク乍チ少クシテ、顔色変カハル異ス。
^この義ぎをもつてのゆゑに、 行ぎょう者じゃつねに智慧ちえをして観察かんざつして、 この心こころをして邪網じゃもうに堕だせしむることなかるべし。 まさにつとめて正しょう念ねんにして、 取とらず着じゃくせずして、 すなは0457ちよくこのもろもろの業ごっ障しょうを遠おん離りすべし。 知しるべし、 外げ道どうの所しょ有うの三昧さんまいは、 みな*見愛けんあい我が慢まんの心こころを離はなれず、 世せ間けんの名みょう利り恭く敬ぎょうに貪とん着じゃくするがゆゑなり」 と。 以上
以テノ↢是ノ義ヲ↡故ニ行者常ニ応シ↢智慧ヲシテ観察シテ、勿カル↟令ムルコト↣此ノ心ヲシテ堕ダセ↢於邪網マウアミニ↡。当ニシ↣勤ツトメテ正念ニシテ、不↠取ラ不ズシテ↠著セ、則チ能ク遠↢離ス是ノ諸ノ業障ヲ↡。応シ↠知ル外道ノ所有ノ三昧ハ、皆不ズ↠離レ↢見愛我慢アナドル之心ヲ↡。貪↢著スルガ世間ノ名利恭敬ニ↡故ナリト。」 已上
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)法琳¬弁正論¼一三文(一を以て諸を例し人をして自余の道は此に類することを知らしむ)
【105】^¬▼*弁べん正しょう論ろん¼ *法琳ほうりんの撰せん にいはく、
¬弁正論ニ¼ 法琳ノ撰 曰ク、
^「▼*十じゅう喩ゆ九きゅう箴しん篇へん、 答とうす、 ▼*李り道どう士し、 ▼十じゅう異い▼九きゅう迷めい。
十喩イウ九キウ 箴シムイマシム篇、ツラヌ答タフスコタフ。李モヽ道士十異九述ジユツ。
^*外げの▼一いち異いにいはく、 ª^*太たい上じょう老君ろうくんは、 *神しんを*玄げん妙びょう玉ぎょく女じょに託たくして、 左さ腋えきを割ひらきて生うまれたり。 釈しゃ迦か牟尼むには、 胎たいを摩耶まや夫ぶ人にんに寄よせて、 右う脇きょうを開ひらきて出いでたりº と。 乃至
外ノ一異ニ曰ク、
太子老君ハ託タクツクシテ↢神ヲタマシイ玄妙玉女ニ↡、割ヒラキ↢左腋エキヲ↡而テ生レタリ。
釈0243迦牟尼ハ、寄ヨセテ↢胎ヲハラム摩*邪夫人ニ↡、開ヒラキ↢右イウ脇ケフヲ↡而テ出デタリト。 乃至
^*内ないの▼一いち喩ゆにいはく、 ª老君ろうくんは常じょうに逆たがひ、 牧女ぼくじょに託たくして左ひだりより出いづ。 世せ尊そんは化けに順したがひて、 聖せい母ぼによりて右みぎより出いでたまふº と。
内ノ一喩ニ曰ク、
老君ハ逆タガヒ↠常ニ、託ツキ↢牧女ニ↡而テ左ヨリ出ヅ。
世尊ハ順ヒテ↠化ニ、因リ↢聖セイ母ボニ↡而テ右ヨリ出デタマフト。
^*開かい士しのいはく、 ª▼慮りょ景裕けいゆう・戴詵たいしん・韋い処玄しょげん等らが*解かい五ご千文せんぶん、 および梁りょうの元帝げんてい・▼周しゅう弘政こうせい等らが*考こう義ぎ類るいを案あんずるにいはく、 ▼太たい上じょうに四よつあり、 いはく*三皇さんこうおよび*尭ぎょう・舜しゅんこれなり。
開士ノ曰ク、案ズルニ↢慮リヨ景ケイ裕ユ・戴タイ詵シン・韋ヰ処玄等ガ解カイ五千文、及ビ梁ノ元グヱン帝テイ・周弘コウ政セイ等ガ老義類ヲ↡云ク、太上ニ有リ↠四、謂ク三皇及ビ尭ゲウ・舜シユン是也。
^いふこころは、 上じょう古こにこの大徳だいとくの君くんあり、 万民ばんみんの上かみに臨のぞめり。 ゆゑに太たい上じょうといふなり。 *郭荘かくそうがいはく、 «時ときにこれを賢けんとするところのものを君くんとす。 *材ざい、 世よに称しょうせられざるものを臣しんとす» と。
言イフコヽロハ上古ニ有リ↢此ノ大徳之君↡、臨ノゾメリ↢万民ノ上ニ↡。故ニ云フ↢太上ト↡也。郭クワク荘ガ云ク、時ニ之ヲ所ノ↠賢カシコシトスル者 ノヲ為ス↠君ト。材ザイ不ザル↠称セラレ↠世ニ者 ノヲ為スト↠臣ト。
^老ろう子し、 帝ていにあらず、 皇こうにあらず、 四し種しゅの限かぎりにあらず。 いづれの典拠てんきょありてか、 たやすく太たい上じょうと称しょうするや。
老子非ズ↠帝ニ非ズ↠皇ニ、不↠在ラ↢四種之限カギリニ↡。有アリテカ↢何ノ典テンフミ拠キヨヨル↡、輒タヤスク称スル↢太上ト↡邪ヤ。
^道どう家かが ¬*玄げん妙びょう¼ および ¬中ちゅう台たい¼・¬朱韜しゅとう玉ぎょく扎さつ¼ 等とうの経けい、 ならびに ¬出しゅっ塞さい記き¼ を0458検かんがふるにいはく、 老ろうはこれ李母りぼが生うめるところ、 玄げん妙びょう玉ぎょく女じょありといはず。 すでに正説せいせつにあらず、 もつとも仮かりの謬びゅう談だんなり。
撿カンガフルニ↢道家ガ¬玄妙¼及ビ¬中胎¼・¬朱シユ韜タウ王礼¼等ノ経ケイ、并ニ¬出塞ソク記ヲ¼↡云ク、老ハ是李リ母ボガ所↠生メル、不ズ↠云ハ↠有リト↢玄妙玉女↡。既ニ非ズ↢正セイ説ニ↡、尤モ仮カリノ謬ベウ談也。
^¬*仙人せんにん玉ぎょく録ろく¼ にいはく、 «^仙人せんにんは妻さいなし、 玉ぎょく女じょは夫ふなし。 女形じょけいを受うけたりといへども、 つひに産さんせず» と。 ^もしこの瑞ずいあらば、 まことに嘉かとすべしといふ。 いづれぞせん、 ¬*史記しき¼ にも文ぶんなし、 ¬*周しゅう書しょ¼ に載のせず。 虚きょを求もとめて実じつを責せめば、 矯きょう盲ぼうのものの言ことばを信しんずるならくのみと。
¬仙人玉録ロクニシルス¼云ク、仙人ハ無シ↠妻サイ、玉女ハ無シ↠夫。雖モ↠受ケタリト↢女形ケイヲ↡、畢竟 ツイ ニ不ズト↠産セ。若シ有ラバ↢茲コノ瑞ズイヨシ↡、誠ニ曰フ↠可シト↠嘉ヨシトス。何イヅレゾ為セム、¬史シ記ニモ¼無シ↠文、¬周シウ書シヨニ¼不↠載ノサイセ。求メテ↠虚ヲ責セメバ↠実ヲ、信ズル↢矯キヨウイツワリ盲バウノメシイ者 ノ之言ヲ↡耳ナラクノミト。
^¬*礼らい¼ にいはく、 «^官かんを退しりぞきて位くらいなきものは左さ遷せんす» と。
¬礼ニ¼云ク、退シリゾキテ↠官ヲ無キ↠位者ハ左遷センストウツル 。
^¬*論ろん語ご¼ にいはく、 «^*左さ衽じんは礼れいにあらざるなり» と。
¬論語ニ¼云ク、左衽ジン者非ザル↠礼ニ也ト。
^もし左ひだりをもつて右みぎに勝すぐるとせんは、 道どう士し行道こうどうするに、 なんぞ左ひだりに旋めぐらずして右みぎに還かえつて転めぐるや。 国くにの詔しょう書しょにみないはく、 «右みぎのごとし» と。 ならびに天てんの常じょうに順したがふなり。 º と。 ▼乃至
若シ以テ↠左ヲ勝ルトセム↠右ニ者ハ、道上行道スルニ、何ゾ不ズ↢左ニ旋メグラ↡而シテ還テ↠右ニ転メグル邪ヤ。国之ノ詔セフ書センジナリニ皆云ク、如シト↠右ノ。並ナラビニ順シタガフ↢天之常ニ↡也ト。 乃至
^外げの▼四異しいにいはく、 ª^老君ろうくんは*文王ぶんのうの日ひ、 *隆周りゅうしゅうの宗そう師したり。 釈しゃ迦かは*荘王そうおうの時とき、 *罽賓けいひんの教きょう主しゅたりº と。
外0244ノ四異ニ曰ク、
老君ハ文王之*日、為タリ↢隆リウ周シウ之宗ソウ師↡。
釈迦ハ荘サウ王之時、為タリト↢罽ケイ賓ヒン之教主↡。
^内ないの▼四喩しゆにいはく、 ª▼*伯陽はくようは職しょく小しょう臣しんに処おり、 かたじけなく▼*蔵ぞう吏りに充あたれり。 文王ぶんのうの日ひにあらず、 また隆周りゅうしゅうの師しにあらず。 牟尼むには、 位くらい太たい子しに居こして、 身み特尊どくそんを証しょうしたまへり。 *昭しょう王おうの盛年せいねんに当あたれり、 閻えん浮ぶの教きょう主しゅたりº と。 乃至
内ノ四喩ニ曰ク、
伯楊ヤウハ職シヨクツカサ処オリ↢小臣ニ↡、忝カタジケナク充アタレリ↢蔵吏ニ↡クニノカミナリ。不↠*在ラ↢文王之*日ニ↡、亦非ズ↢隆周之師ニ↡。
牟尼ハ位居シテ↢太子ニ↡、身証シタマタマヘリ↢特ドク尊ヲ↡。当レリ↢*昭セウ王之盛セイサカリ年ニ↡、為タリト↢閻浮ノ教主↡。 乃至
^外げの▼六ろく異いにいはく、 ª^老君ろうくんは世よに降こうして、 始はじめ*周しゅう文ぶんの日ひより*孔こう丘きゅうの時ときに訖おわれり0459。 釈しゃ迦かははじめて浄じょう飯ぼんの家いえに下か生せいして、 わが荘王そうおうの世よに当あたれりº と。
外ノ六異ニ曰ク、
老君ハ降カウシテクダル ↠世ニ、始メ自リ↢周文之日↡訖オハレリ↢于孔丘キウ之時ニ↡。
釈迦ハ下カ↢生シテ肇ハジメテ於浄飯ボムイヰ之家ニ↡、当レリト↢我ガ荘王之世ニ↡。
^内ないの▼六ろく喩ゆにいはく、 ª▼*迦か葉しょうは▼*桓王かんのう丁卯ていぼうの歳としに生うまれて、 ▼*景王けいおう壬じん午ごの年としに終おわる。 孔こう丘きゅうの時ときに訖おふといへども、 ▼*姫き昌しょうの世よに出いでず。 *調じょう御ごは▼*昭しょう王おう甲寅こういんの年としに誕たんじて、 ▼*穆王ぼくおう壬申じんしんの歳としに終おわる。 これ浄じょう飯ぼんの*胤いんたり。 もと▼荘王そうおうの前さきに出いでたまへりº と。
内ノ六喩ニ曰ク、
迦葉ハ生レテ↢桓クワン王丁テイヒノト卯バウウ 之歳トシニ↡、終フ↢景王 壬ジンミヅノエ午ゴムマ之年ニ↡。雖モ↠訖オフトオワル ↢孔丘之時ニ↡、不↠出デ↢姫キヨワウナリ昌シヤウ之世ニ↡。
調御ハ誕タンジテムマル ↢昭王甲カウ寅イントラ之年ニ↡、終フ↢穆王壬ジン申シンサル之歳ニ↡。是為タリ↢浄飯ボムイヰ之胤インタネ↡。本 ト出デタマヘリト↢荘王之前 キニ↡。
^開かい士しのいはく、 ª孔こう子し、 周しゅうに至いたりて、 *老ろう耼たんを見みて礼れいを問とふ。 ここに ¬史記しき¼ につぶさに顕あらわる。 文王ぶんのうの師したること、 すなはち典てん証しょうなし。 周しゅうの末すえに出いでたり、 そのこと尋たずぬべし。 周しゅうの初はじめにありしごときは史し文ぶんに載のせずº と。 ▼乃至
開0245士ノ曰ク、孔コウ子至リテ↠周ニ、見↢老耼タンヲ、而テ問フ↠礼ヲ。焉コヽニ¬史シ記ニ¼具 サニ顕ル。為タルコト↢文王ノ師↡、則チ無シ↢典テンフミ証↡。出デタリ↢於周ノ末スエニ↡、其ノ事可シ↠尋タヅヌ↢。周ノ初 メニ↡。史シ文ブンニ不↠載ノセ。 乃至
^外げの▼七しち異いにいはく、 ª^老君ろうくんはじめて周しゅうの代だいに生うまれて、 晩のちに*流りゅう沙さに適ゆく。 始し終じゅうを測はからず、 方所ほうしょを知しることなし。 釈しゃ迦かは西国さいこく (印度) に生しょうじて、 かの*提だい河がに終おわりぬ。 弟子でし胸むねを搥うち、 *群ぐん胡こ大おおきに叫さけぶº と。
外ノ七異ニ曰ク、
老君初 メテ生レテ↢周ノ代ニ↡、晩クマクレニ適ユク↢流リウ沙サニ↡。不↠測ハカラ↢始終ヲ↡、莫ナシ↠知ルコト↢方所ヲ↡。
釈迦ハ生ジテ↢於西国ニ↡、終リヌ↢彼ノ提河ニ↡。弟子捉ウチ タヽク ↠胸 ネヲ、 群グンアツマリ胡コアツマル大ニ叫サケブト。
^内ないの▼七しち喩ゆにいはく、 ª老ろう子しは頼郷らいけいに生うまれて、 槐かい里りに葬ほうむらる。 *秦佚しんいつの弔ちょうに詳つまびらかにす。 責せめ*遁天とんてんの形けいにあり。 瞿く曇どんはかの王おう宮ぐに出いでて、 この*鵠樹こくじゅに隠かくれたまふ。 *漢明かんめいの世よに伝つたはりて、 ひそかに*蘭台らんだいの書しょにましますº と。
内ノ七喩ニ曰ク、
老子ハ生レテ↢於頼レイ郷ケイニ↡、葬ハブサウラル↢於槐クワイ里リニ↡。詳ツマビラカニス↠乎ニ↢秦シン佚イチ之弔テウ↡トブラフ。責セメ在リ↢遁トンノガル天之形ケイニ↡。
瞿曇ハ出デテ↢彼ノ王宮ニ↡、隠 クレタマフ↢慈ノ鵠カクツル樹ジユキ ニ↡。伝ツタワリテ↢乎漢カン明之世ニ↡、秘ヒソカニ在マシマスト↢蘭ラン台ダイ之書ニ↡。
^開かい士しのいはく、 ª¬荘そう子し¼ の内篇ないへんにいはく、 «^老耼ろうたん死しして秦佚しんいつ弔とむらふ。 ここに三みたび号さけんで出いづ。 弟子でし怪あやしんで問とふ。 "*夫ふう子しの徒ともがらにあらざるか" と。 ^秦佚しんいついはく0460、 "向さきにわれ入いりて少おさなきものを見みるに、 これを哭こくす、 その父ちちを哭こくするがごとく、 老者ろうしゃこれを哭こくす、 その子こを哭こくするがごとし。 古いにしえはこれを遁天とんてんの形けいといふ。 始はじめはおもへらく、 その人ひとなりと、 しかるにいま非ひなり"» と。
開士ノ曰ク、¬荘子ノ¼内篇ヘンニ云ク、老耼タン死シテ秦シン佚イチ弔トブラフ。焉コ ニ三タビ号サケム而デ出ヅ。弟子怪アヤシムデ問フ。非ザル↢夫子之徒トモガラニ↡歟カト。秦シン佚イチ曰ク、向サキニ吾入リテ見ルニ↢少オサナキ者ヲ↡、哭コクナクス↠之ヲ如ク↠哭スルガ↢其ノ父ヲ↡、老者哭ス↠之ヲ如シ↠哭スルガ↢其ノ子ヲ↡。古イニシヘ者※謂フ↢之ヲ遁トンノガル天之形ケイカタチト↡。始 メハ以為オモヘラク其ノ人也ト、而ルニ今非也ト。
^遁とんは隠いんなり、 天てんは免縛べんばくなり、 形けいは身しんなり。 いふこころは、 始はじめ老ろう子しをもつて*免縛べんばく形けいの仙せんとす、 いますなはち非ひなり。 ああ、 その諂曲てんごくして人ひとの情こころを取とる。 ゆゑに死しを免まぬかれず。 わが友ともにあらずº と。 ▼乃至
遁者ハ隠也、天者免ベンマヌカル縛バク也、形者身也。言イフコヽロハ始以テ↢老子ヲ↡為ス↢免縛形之仙ト↡、今則チ非也。嗟アヽナゲク其ノ諂イツハレル典テンフミ取ル↢人之情 ロヲ↡。故コトサラニ不↠免マヌカレ↠死ヲ。非ズト↢我ガ友トモニ↡。 乃至
^▼内ないの十じゅう喩ゆ、 答とうす、 外げの十じゅう異い。
内ノ十喩答ス外ノ十異。
^▼外げは生しょうより左右さう異ことなる一いち。 ▼内ないは生しょうより勝しょう劣れつあり。
外0246ハ従リ↠生左右異ル一。内ハ従リ↠生有リ↢勝劣↡。
^▼内ないに喩さとしていはく、 ª左さ衽じんはすなはち*戎狄じゅてきの尊とうとむところ、 *右命ゆうめいは中ちゅう華かの尚とうとむところとす。
内ニ喩サトシテ曰ク、左衽ジムハ則チ 戎ジユニシノエビス 狄テキノキタノエビス所↠尊ム、右命ハ為↢中華クワノ所ト↟尚タトム。
^ゆゑに ¬*春秋しゅんじゅう¼ にいはく、 «^*冢ちょう卿けいは命めいなし、 *介卿かいけいはこれあり、 *また左ひだりにあらざるや» と。
故ニ¬春秋ニ¼云ク、冢チヨウ卿ケイハ無シ↠命、介カイ卿ハ有リ↠之、不ザル↢亦左ニ↡乎ヤト。
^¬史記しき¼ にいはく、 «^▼*藺りん相しょう如じょは功こう大おおきにして、 位くらい*廉れん頗ぱが右みぎにあり、 ˆ廉頗ˇ これを恥はづ» と。
¬史シ記キニ¼云ク、藺ラン相如ジヨハ功大キニシテ、位在リ↢*麁ソ頗ハガ右ニ↡、恥ハヅト↠之ヲ。
^またいはく、 «^*張ちょう儀ぎ相しょう、 秦しんを右みぎにして魏ぎを左ひだりにす。 *犀首さいしゅ相しょう、 ▼韓かんを右みぎにして魏ぎを左ひだりにす» と。 ^けだしいはく、 便たよりならざるなり。
又云ク、張儀相右ニ↠秦シンヲ而シテ左ニス↠魏グヰヲ。犀セイ首シユ相シヤウ右ニ↠緯イヲ而シテ左ニスト↠魏ヲ。蓋ニ云ク、不ル↠便タヨリナラ也ヤ。
^¬礼らい¼ にいはく、 «^*左さ道どう乱群らんぐんをばこれを殺ころす» と。 ^あに右みぎは優まさりて左ひだりは劣おとれるにあらずや。
¬礼ニ¼云ク、左道乱ラン群ヲバ殺スト↠之ヲ。豈アニ非ズ↢右ハ優マサリ而テ左ハ劣レルニ↡也ヤ。
^*皇こう甫ほ謐ひつが ¬*高こう士し伝でん¼ にいはく、 «^老ろう子しは楚その*相しょう人じん、 ▼渦か水すいの0461陰みなみに家いえとす。 *常樅じょうしょう子しに▼師事しじす。 常じょう子し疾やまいあるに及およんで、 *李耳りじ往ゆきて疾やまいを問とふ» と。
皇哺ホ謐ヒチガ¬高士伝ニ¼云ク、老子ハ楚ソ之相人、家イエトス↢温水之陰キタニ↡。押ヒトシ↢事ヲ常従シヨウ子ニ↡。及ビテ↢常子有ルニ↟疾ヤマフ、李リ耳往キテ問フト↠疾ヲ。
^ここに*康けいこうのいはく、 «^李耳りじ、 *涓けん子しに従したがつて九く仙せんの術じゅつを学まなぶ» と。 ^▼*太たい史し公こう等らが衆しゅう書しょを検かんがふるに、 老ろう子し、 左さ腋えきを剖ひらいて生うまるといはず。 すでにまさしく出いでたることなし、 承しょう信しんすべからざること明あきらけし。
焉コヽニ嵆ケイ康カウノ云ク、李耳従シ テ↢涓ケン子ニ↡学 ナブト↢九キウ仙之術ジユツヲ↡。※撥ハイスツスルニ↢太史シニ云ク、等ヒ ガ↢衆シウ画グワ ヱ ヲ↡、不↠云ハ↧老子剖ヒライテ↢左腋エキヲ↡生ルト↥。既ニ無シ↢正シク出デタルコト↡、不ルコト↠可カラ↢承シヨウ信ス↡明ケシ矣。
^あきらかに知しんぬ、 *戈かを揮ふるひ*翰かんを操あやつるは、 けだし文ぶん武ぶの先せん、 *五気ごき・三光さんこうは、 まことに陰陽いんようの首はじめなり。 ここをもつて釈しゃく門もんには右みぎに転てんずること、 また▼人用じんようを扶たすく。 *張陵ちょうりょうの左さ道どう、 まことに天てんの常じょうに逆たがふ。 いかんとなれば、 釈しゃ迦か、 無む縁えんの慈じを起おこして、 *有機うきの召しょうに応おうず、 その迹あとを語かたるなり。 ▼乃至
験アキラカニ知ヌ揮フルヒ↠戈クワンホコ ヲ操アヤツレバ↠翰フデヲ蓋ケダシ文武ブ之先、五気キ・三光ハ寔マコトニ陰陽之首ハジメナリ。是ヲ以テ釈門ニハ右ニ転ズルコト且マタ快タノシクス↢人用ヲ↡。張チヤウ陵リヤウノ左道ニス、信ズ↢逆ゲキ天ノ常ニ↡。何イ トナレ者バ釈迦超テ↢无縁之慈ヲ↡、応ヰヨウズ↢有機之召テウメスニ↡、語ル↢其ノ迹アトヲ↡也。 乃至
^▼それ釈しゃく氏しは、 天てん上じょう天てん下げに介然かいぜんとして、 その尊そんに居きょす。 三界さんがい六道ろくどう、 *卓たく爾じとしてその妙びょうを推おすº と。 ▼乃至
夫 レ釈氏者、天上天下ニ介カイ然トシテ居キヨス↢其ノ尊ニ↡。三界六道、卓タク爾ジトシテシカラシム推オスイスト↢其ノ妙ヲ↡。 乃至
^▼外げ論ろんにいはく、 ª^老君ろうくん、 範はんとなす、 ただ孝こうただ忠ちゅう、 世よを救すくひ人ひとを度どす、 慈じを極きわめ愛あいを極きわむ。 ここをもつて声せい教きょう永ながく伝つたへ、 百ひゃく王おう改あらたまらず、 *玄風げんぷう長ながく被かぶらしめて万ばん古こ差たがふことなし。 このゆゑに国くにを治おさめ家いえを治おさむるに、 常じょう然ぜんたり*楷かい式しょくたり。
外論ニ曰ク、老君作ス↠範ハンノリト、唯タヾ孝カウ唯 忠チウ、コヽロザシ救スクヒ↠世ヲ度ス↠人ヲ、極メ↠慈ヲ極ム↠愛ヲ。是ヲ以テ声セイコヱ教カウ永ク伝ヘ百ハク王不↠改アラタマラ、玄ハルカ風長ク被カブラシメテ万古无シ↠差タガフコト。所以コノユヱニ治オサメ↠国ヲ治ムルニ↠家ヲ、常然タリ楷カイカナウ式シヨクノリ タリ
^*釈教しゃくきょうは義ぎを棄すて親しんを棄すて、 仁じんならず孝こうならず。 闍王じゃおう (*阿闍世) 父ちちを殺ころせる、 翻ほんじてとがなしと説とく。 調じょう達だつ (*提婆達多) 兄あにを射いて罪つみを得うることを聞きくことな0462し。 これをもつて凡ぼんを導みちびく、 さらに悪あくを長ますことをなす。 これをもつて世よに範のりとする、 なんぞよく善ぜんを生しょうぜんや。 ^これ逆げき順じゅんの異い、 十じゅうなりº と。
。釈教ケウハ棄ステ↠義ヲ棄テ↠親ヲ、不↠仁ナラアハレミ 不↠孝ナラ。闍王殺セル↠父ヲ、翻ホンジテヒルガヘス説ク↠無シト↠トガ。調達射イテ↠兄アニヲ无間ニ得↠罪ヲ。以0247テ↠此ヲ導ビク↠凡ヲ、更 ラニ為ナス↠長マスコトヲ↠悪ヲ。用モテ↠斯ヲ範ノリハントスル↠世ニ、何ゾ能ク生ゼムヤ↠善ヲ。此 レ逆順之異、十也ト。
^▼内ない喩ゆにいはく、 ª義ぎはすなはち道徳どうとくの卑いやしうするところ、 礼れいは忠ちゅう信しんの薄うすきより生しょうず。 *瑣き仁じん、 匹ひっ婦ぷを譏そしり、 大孝たいこうは*不匱ふきを存そんす。
内喩オシヘニ曰ク、義ハ乃チ道徳ノ所↠卑イヤシウスル、礼レイハ生ズ↢忠信之薄ウスキヨリ↡。瑣サ仁譏ソシリ↢於匹ヒチカタシ婦プメ ヲ↡、大孝カウハ存ス↢乎不匱クヰヲ↡。
^しかうして凶きょうに対むこうて歌うたひ笑わらふ、 中ちゅう夏かの容かたちに乖たがふ。 喪もに臨のぞんで盆ほとぎを扣たたく、 *華か俗ぞくの訓おしえにあらず。 *原げん壌じょう、 母はは死しして棺かんに騎のりて▼歌うたふ。 孔こう子し、 祭まつりを助たすけて譏そしらず。 *子し桑そう死しするとき*子し貢こう弔とむらふ、 四子ししあひ視みて笑わらふ。 *荘そう子し、 妻め死しす、 盆ほとぎを扣たたきて歌うたふなり。
然シ シテ対ム ウテ↠凶クヰヨウニ歌ウタヒ笑ワラフ、乖スタガフ↢中夏之容カタチニ↡。臨デ↠喪モニ扣タヽク↠盆ホトギカハラヲ、非ズ↢華クワ俗ゾク之訓オシヘニ↡。 原壌ジヤウ、母死シテ騎キノル↠棺クワンヒツギシ而テ歌。孔子助↠祭弗ズ↠譏ソシラ。*子桑サウ死スルトキ*子貢コウ弔トブラフ、四子相 ヒ視ミテ歌フ。而孔コウ子時ニ※助タスケテ祭マツリ而テ笑ワラフ。荘子妻メ死ス、扣タヽキ↠盆ホトギヲ而テ歌フ也。
^ゆゑにこれを教おしふるに孝こうをもつてす、 天てん下かの人じん父ぷたるを敬けいするゆゑなり。 これを教おしふるに忠ちゅうをもつてす、 天てん下かの人君じんくんたるを敬けいするなり。 化か、 万国ばんこくに周あまねし、 すなはち*明辟めいへきの至いたれるなり。 仁じん、 四し海かいに形あらわす、 ▼まことに聖王せいおうの巨孝きょこうなり。
故ニ教フルニ↠之ヲ以テス↠孝カウヲオシフ、所↤以 ユヘ 敬ケイスルウヤマフ↣天下之為タルヲ↢人父↡也。教フルニ↠之ヲ以テス↠忠ヲネムゴロ、所以敬スル↣天下之為タルヲ↢人君↡也。化クワ周アマネシ↢万国ニ↡乃チ明メイ辟ヘキ之至ルナリ。仁形アラハル↢于四海ニ↡、実ニ聖セイ王之臣孝ナリ。
^仏ぶっ経きょうにのたまはく、 «^*識体しきたい六趣ろくしゅに輪りん廻ねす、 父母ふぼにあらざるなし。 生しょう死じ三界さんがいに変易へんやくす、 たれか怨親おんしんを弁わきまへん» と。
仏経ケイニ言ハク、識シヨク体テイ輪リン↢回クワイス六趣ニ↡、無シ↠非アラザル↢父母ニ↡。生死※変ハン↢易エキヤクス、三界↡孰タレカ弁 マエム↢怨オンアダ親ヲシタシ↡。
^またのたまはく、 «^無む明みょう慧え眼げんを覆おおふ、 ▼生しょう死じのなかに来往らいおうす。 往来おうらいして所しょ作さす、 さらにたがひに父子ふしたり。 ▼怨親おんしんしばしば知ち識しきたり、 知ち識しきしばしば怨親おんしんたり» と。
又言ク、无ブ明覆フ↢慧ケイ眼ガンヲ↡、未ズ ダ↠往セ↢生セイ死ノ中ニ↡。往来シテ*之所作ス、更ニ互タガヒニ為タリ↢父子↡。怨エン親数シバシバ為リ↢知識↡、知識数シバシバ為リト↢怨親↡。
^ここをもつて沙門しゃもん、 俗ぞくを捨すてて真しんに趣おもむく。 *庶類しょるいを*天てん属しょくに均ひとしうす。 栄えいを遺すてて道どうに即つく。 *含がん気きを*己こ親しんに等ひとしとす。 あまねく正ただしき心こころを行ぎょうじて、 あまねく親したしき志こころざし0463を等ひとしくす。
是ヲ以テ沙門捨テテ↠俗シヨクヲ趣オモムク↠真ニ。均ヒトシウス↢庶シヨ類ルイヲ於天属ニ↡。遺ステヽ↠栄エイサカヘヲ即ツク↠道ニ。等ヒ シトス↢含ガム気キヲ於己コオノレ親ニ↡。 行ジテ↢普ク正シキ之心ヲ↡等クス↢普キ親シキ之志ヲ↡。
^また道どうは*清しょう虚こを尚とうとぶ、 なんぢは恩愛おんないを重おもくす。 法ほうは平びょう等どうを貴とうとぶ、 なんぢは怨親おんしんを簡えらぶ。 あに惑まどひにあらずや。 *勢競せいけい親しんを遺わする、 *文ぶん史し事ことを明あかす、 *斉桓せいかん・*楚そ穆ぼくこれその流ともがらなり。 もつて聖せいを訾そしらんと欲おもふ、 あに謬あやまれるにあらずや。
且マタ道ハ尚タトブ↢清*虚ヲ↡、爾ソレハナンヂハ重クス↢恩愛ヲ↡。法ハ貴タ ブ↢平等ヲ↡、爾ソレナンヂハ簡キラハムヤ↢怨エンアダ親ヲシタシ↡。豈アニ非ズ↠惑ニ也ヤ。 勢セイヨソオイ 競ケイアラソイ遺ワスル↠親ヲ、文史シ明↠事、斉セイ桓クワン・楚ソ穆ボク此 レ其ノ流トモガラ也。欲オモフ↢以テソシラムト↟聖ヲ、豈アニ不ズ↠謬アヤマレルニ哉ヤ。
^▼なんぢが道どうの劣れつ、 十じゅうなりº と。 乃至
爾レナンヂガ道之劣、十也ト。 乃至
^▼ª*二じ皇こう統すべて化けして、 ¬*須しゅ弥み四し域いき経きょう¼ にいはく、 «▲応おう声しょう菩ぼ薩さつを伏ふく羲ぎとす、 吉きっ祥しょう菩ぼ薩さつを女じょ媧かとす» と。 *淳しゅん風ぷうの初はじめに居おり、 *三聖さんせい、 言ことばを立たてて、 ¬*空くう寂じゃく所問しょもん経ぎょう¼ にいはく、 «迦か葉しょうを老ろう子しとす、 儒童じゅどうを孔こう子しとす、 光こう浄じょうを*顔回がんかいとす» と。 *已い澆ぎょうの末すえを興おこす。 *玄虚げんきょ沖ちゅう一いちの旨むね、 *黄こう・*老ろうその談だんを盛さかりにす。 詩し書しょ礼楽れいがくの文ぶん、 *周しゅう・*孔こうその教きょうを隆たかくす。
二皇統スベテ↠化クワヲ、 ¬須シユ弥四域イキ経ニ¼云ク、応声菩薩ヲ為↢伏義ト↡、吉祥菩薩ヲ為ト↢女媧クワト↡也。 居オリ↢渟テイ風之初 メニ↡、三聖立テヽ↠言ヲ、 ¬空寂所問経ニ¼云ク、迦葉ヲ為↢老子ト↡、儒ジユ童ヲ為↢孔子ト↡、光浄ヲ為ト↢顔ガン回クワイト↡也。 興オコス↢已イ澆ゲウ之末スエヲ↡。 玄ハルカナリ虚キヨ*沖一之旨ムネ、黄・老※盛ニス↢其ノ談ヲオシフ↡。詩書シヨ礼楽之文、周シウ・孔コウ隆タカクス↢其ノ教ヲ↡。
^謙けんをあきらかにし、 質しつを守まもる、 すなはち聖せいに登のぼるの階梯かいていなり。 *三さん畏い・五ご常じょうは人天にんでんの*由漸ゆうぜんとす。 けだし冥みょうに仏ぶつ理りに符かなふ、 *正弁せいべん極きょく談だんにあらずや。 なほ道どうを*瘖おん聾りょうに訪とぶらふに、 方ほうを麾おしまどひて*遠えん邇じを窮きわむることなし。 *津しんを兎馬とめに問とふ。 済わたるを知しりて浅深せんじんを測はからず。
明ニシ↠謙ケムヲネンゴロニ守マモル↠質シチヲスガタ、乃チ登ノボルニ↠聖ニ之階カイハシ梯テイハシナリ。三畏ヰ・五常ジヤウハ為ス↢人天之由漸ゼント↡。蓋ケダシ冥ミヤウニカスカニ苻カナ0248フ↢於仏理リニ↡、非ズヤ↢正弁極キヨク談ニ↡。猶 ヲ謗ソシル↢道ヲ於瘖オンオシ聾リヨウニミヽシヰ↡、麾オシマドイテ↠方ヲ而莫ナカレ↠窮キワムルコト↢遠エン邇ジヲ↡。問フ↢律ヲ於菟ト馬メニ↡。知リテ↠済ワタルヲ而不↠測ハカラ↢浅深ヲ↡。
^これによりて談だんずるに、 殷いん・周しゅうの世よは釈教しゃくきょうのよろしく行こうすべきところにあらざるなり。 なほ炎えん威い耀ひかりを赫かがやかす、 童どう子じ目めを正ただしくして視みることあたはず。 迅雷じんらい奮ふるひ撃うつ、 懦夫だふ耳みみを張はりて聴きくことあたはず。
因リテ↠斯ニ而談ズルルニ、殷イン・周シウ之世ハ非ザル↢釈教カウノ所ニ↟宜ヨロシベ クキ↠行カウスル也。猶炎威ヨソオイ赫カヾヤカス↠耀ヒカリヲ、童子不↠能ハ↢正シク↠目ヲ而シテ視ルコト↡。迅ジントシ 雷ライイカヅチ奮フルヒ撃ウツ、*懦ダンヤハラカナリ夫フ不↠能ハ↢張ハリ↠耳ヲ而テ聴キクコト↡。
^ここをもつて河池かち涌わき浮うかぶ、 昭しょう王おう、 *神しんを誕たんずることを懼おそる。 *雲霓うんげい色いろを変へんじ、 穆后ぼくこう、 *聖せい0464を亡うしなはんことを欣よろこぶ。 ¬*周しゅう書しょ異記いき¼ にいはく、 «昭しょう王おう二に十じゅう四よ年ねん四し月がつ八よう日か、 江こう河か泉水せんすいことごとく泛はん漲ちょうせり。 *穆王ぼくおう五ご十じゅう三さん年ねん二に月がつ十じゅう五ご日にち、 暴風ぼうふう起おこりて樹木じゅもく折おれ、 天てん陰くもり、 雲くも黒くろし、 白虹はくこうの怪かいあり» と。
是ヲ以テ*河カ池チ涌ワキ浮ウカブ、昭セウ王懼オソル↢於誕タンズルコトヲ↟神ヲ。雲霓ゲイ変ヘンジ↠色ヲ、穆ボク后コウ欣ヨロコブ↠亡ウシナハムコトヲ↠聖セイヲ。 ¬周書異記ニ¼云ク、昭王廿四年四月八日江河泉セン水悉ク泛ハンウカビ漲チヤウセリミナギル 。穆王五十二年二月十五日暴アラキ風起タチテ樹ジユ木折オレ天陰クモリ雲黒クラシ、有リ↢白虹コウ之怪クヱイ↡アヤシミ也。
^あによく*葱そう河かを越こえて化けを稟うけ、 *雪嶺せつれいを踰こえて誠まことを効いたさんや。 ¬*浄名じょうみょう¼ にいはく、 «これ盲者もうじゃの過あやまちにして日月じつげつの咎とがにあらず» と。 たまたまその*鑿竅さくかくの弁べんを窮きわめんと欲おもふ、 おそらくは*吾子ごし混沌こんとんの性せいを傷いたむ。 なんぢの知しるところにあらず。 その盲もう、 一いちなりº と。
豈 ニ能ク越コエテ↢蔥ソウキナリ河ヲ↡而稟ウケ↠化ヲ、踰コエテ↢*雪嶺レイミネヲ↡而効イタサムヤ↠誠マコトヲ。¬浄名ニ¼云ク、是盲メシヒ者*遇マウアヘリ、非ズト↢日月ノ咎トガニ↡。適タマタマ欲フ↠窮キワメムト↢其ノ鑿シヤク ホル 竅ゲキアキラカナリ之弁ヲ↡、恐クハ傷イタム↢吾ワガ子混コン沌トム之性ヲ↡。非ズ↢爾ソレ所ニ↟知ル。其ノ盲、一也ト。
^▼内ないには像塔ぞうとうを建造けんぞうす、 指しの二に。
内ニハ建↢造ス像塔ヲ↡指↠オシフル二。
^ª▼漢明かんめいより以下いか、 斉せい・梁りょうに訖おわるまで、 王おう・公こう・*守牧しゅぼく、 *清しょう信しんの士し女にょ、 および比丘びく・比丘びく尼に等とう、 冥みょうに至し聖しょうを感かんじ、 国くにに神光じんこうを覩みるもの、 おほよそ二に百ひゃく余よ人にん。
自リ↢漢明↡已下、訖オフマデ↢于斉セイ・梁リヤウニ、王・公・守シウ牧ボク、清信ノ士女、及ビ比丘・比丘尼等↡、冥ニ感ジカナフ↢至聖ヲ↡、国ニ覩ミル↢神光ヲ↡者 ノ、凡ソ二百余人。
^*迹あとを万山ばんざんに見み、 *耀ひかりを滬こ涜とくに浮うかべ、 *清台せいたいの下もとに満月まんげつの容かたちを覩み、 *雍門ようもんの外ほかに相輪そうりんの影かげを観みるがごときに至いたりては、 *南平なんぺいは瑞像ずいぞうに応ようを獲え、 *文宣ぶんせんは夢ゆめを聖せい牙がに感かんず。 *蕭后そうこう一ひとたび鋳いて剋成こくせいし、 *宋皇そうこう四よたび摸もして就ならず。 その例れい、 はなはだ衆おおし、 つぶさに陳のぶべからず。 あになんぢが無む目もくをもつてかの*有う霊りょうを斥きらはんや。
至リテハ↠如キニ↧見↢迹アトヲ万山ニ↡、浮ベ↢耀ヒカリヲ滬コ涜トクニミゾナリ↡、清台之下モトニ覩↢満月之容カタチヲ↡、雍ヰヨウ門之外ニ観ルガ↦相輪之影 ゲヲ↥、南平ハ獲エ↢応ヲ於瑞ズイヨキ像ニ↡、文宣ハ感ズ↢夢ヲ於聖牙ガキバニ↡。蕭サウワウ后コウキサキ一タビ鋳イタウテ剋ウル成シ、宗ソウ皇四タビ摸ボシウツス而テ不↠就ナラ。其ノ例レイ甚ダ衆オヽシ、不↠可カラ↢具 サニ陳ノブ↡。豈 ニ以テ↢爾ナムヂガ之無目ヲ↡而斥キラハム↢彼之有イウ霊レイヲ↡哉ヤ。
^▼しかるに徳とくとして備そなはらざるものなし、 これをいひて涅ね槃はんとす。 道どうとして通つうぜざるものなし、 これを名なづけて菩ぼ提だいとす。 智ちとして周あまねからざるものなし、 これを称しょうして仏ぶっ0465陀だとす。 この漢かん語ごをもつてかの梵言ぼんごんを訳やくす、 すなはち彼此ひしの仏ぶつ、 昭しょう然ねんとして信しんずべきなり。
然ルニ徳トシテ無シ↢不ル↠備ソナハラ者 ノ↡、謂ヒテ↠之ヲ為↢涅ネイ槃ト↡。道トシテ無シ↢不ル↠通トウセ者 ノ↡、名ケテ↠之ヲ為↢菩提テイト↡。智トシテ无シ↢不ル↠周アマネカラ者 ノ↡、称シテ↠之ヲ為↢仏陀ト↡。以テ↢此ノ漢語ギヨヲ↡訳ス↢ツクリツタウ彼0249ノ梵言ヲ↡、則チ彼此之仏、*照然トシテ可キ↠信ズ也。
^なにをもつてかこれを明あかすとならば、 それ仏ぶっ陀だは漢かんには大覚だいかくといふ、 菩ぼ提だいをば漢かんには大道だいどうといふ、 涅ね槃はんは漢かんには無為むいといふなり。 しかるに吾子ごし終しゅう日じつに菩ぼ提だいの地じを践ふんで、 大道だいどうはすなはち菩ぼ提だいの異い号ごうなることを知しらず。 形かたちを大覚だいかくの境きょうに稟うけて、 いまだ大覚だいかくは、 すなはち仏ぶっ陀だの訳やく名みょうなることを閑ならはず。
何ヲ以テカ明ストナラバ↠之ヲ、夫 レ仏陀者ハ漢ニハ言フ↢大覚ト↡也、菩提ヲ者バ漢ニハ言フ↢大道ト↡也、涅槃者ハ漢ニハ言フ↢无ブ為ト↡也。而ルニ吾子終シフ日ヒネモスニ践フンデ↢菩提之地ヲ↡、不↠知ラ↢大道ヲ↡、即チ菩提ノ異号ナルコトヲ也。稟ウケテ↢形ヲ於大覚之境ニ↡、未ズ ダ↠閑ナラハ↢大覚ヲ↡、即チ仏陀之訳名ナルコトヲ也。
^ゆゑに*荘そう周しゅういはく、 «^また大覚だいかくあれば、 後のちにその大だい夢むを知しるなり» と。
故ニ荘周シウ公且マタ有レ↢大覚↡者バ、而後ニ知ル↢其ノ大夢ヲ↡也ト。
^*郭かくが註ちゅうにいはく、 «^覚かくは聖人せいじんなり。 いふこころは、 患うれへ懐こころにあるはみな夢ゆめなり» と。
郭カクガ註チウニシルス云ク、覚者聖人也。言イフコヽロハ患ウレヘグヱン在ル↠懐コヽロニ者ハ皆夢也ト。
^註ちゅうにいはく、 «^夫ふう子しと*子し游ゆうと、 いまだいふことを忘わすれて*神しん解げすることあたはず、 ゆゑに大覚だいかくにあらざるなり» と。
註ニ云ク、夫子ト与ト↢子淤オ↡、未ズ ダ↠能ハ↢忘ワスレテ↠言フコトヲ而神解カイスルコト↡、故ニ非ザル↢大覚ニ↡也ト。
^君くん子しのいはく、 «孔こう丘きゅうの談だん、 ここにまた尽つきぬ» と。
君子ノ曰ク、孔コウ丘キウ之談、茲コヽニ亦尽キヌト矣。
^涅ね槃はん寂照じゃくしょう、 識しきとして識さとるべからず、 智ちとして知しるべからず、 すなはち言げん語ご断たえて*心しん行ぎょう滅めっす。 ゆゑに言ことばを忘わするるなり。 法身ほっしんはすなはち*三点さんてん・四し徳とくの成じょうずるところ、 *蕭しょう然ぜんとして*無ぶ累るいなり。 ゆゑに解げ脱だつと称しょうす。 これその神しん解げとして*患息げんそくするなり。 夫ふう子し、 聖せいなりといへども、 はるかにもつて功こうを仏ぶつに推ゆずれり。
涅ネイ槃寂セキ照、不↠可カラ↢識シヨクトシテ識サトル↡、不↠可カラ↢智ヲシテ智ル↡、則チ言ゲン語ギヨ断エ而テ心行滅ス。故ニ忘ルヽ↠言ヲ也。法身ハ乃チ三点シルス・四徳之所↠成ズル、粛セウ然ゼントシテ無累ルイナリカサナル 。故ニ称ス↢解カイ脱ト↡。此 レ其ノ神解ト而シテ患グヱン息スル也。夫フ子雖 ドモ↠聖ナリト、遥 カニ以テ推ユヅレリ↢功ヲ仏ニ↡。
^いかんとなれば、 *劉向りゅうきょうが ¬*古こ旧きゅう二に録ろく¼ を案あんずるにいはく、 «^仏ぶっ経きょう中ちゅう夏かに流つたはりて一いっ百ぴゃく五ご十じゅう年ねんの後のち、 老ろう子しまさに*五ご千せん文ぶんを説とけり» と。 ^しかるに0466*周しゅうと老ろうと、 ならびに仏ぶっ経きょうの所説しょせつを見みる。 言ごん教きょう往々おうおうたり、 験かんがへつべしº と。 ▼乃至
何者イ トナレバ按ズルニ↢劉リウタカシ向キヤウガ¬古旧キウフルシ二録リヨクシルスヲ¼↡云ク、仏流リウ経ヘテ↢於中夏ヲ↡一百五十年ノ後ノチ、老子方 サニ説ケリト↢五千文ヲ↡。然ル而ニ周ト之与ト↠老、並ビニ見ル↢仏経ノ所ソ説ヲ↡。言ゲン教カウ往往タリ、可シ↠験カンガヘツ。 乃至
^▼¬*正しょう法ぼう念ねん経ぎょう¼ にのたまはく、 ª^人ひと戒かいを持たもたざれば、 諸天しょてん減げん少しょうし、 阿あ修しゅ羅ら盛さかりなり。 善ぜん竜りゅう力ちからなし、 悪あく竜りゅう力ちからあり。 悪あく竜りゅう力ちからあれば、 すなはち霜雹そうはくを降くだして非時ひじの暴風ぼうふう疾しつ雨うありて、 五ご穀こく登みのらず、 疾疫しつやく競きそひ起おこり、 人民じんみん飢け饉ごんす、 たがひにあひ残害ざんがいす。
¬正法念経ニ¼云ク、人不レバ↠持タ↠戒ヲ、諸天減オトル少シ阿修羅盛ナリ。善竜無シ↠力、悪竜有リ↠力。悪竜有レバ↠力、則スナワチ降クダシテ↢霜シヤウ雹ハウアラレヲ↡非時ノ暴風疾雨アリテ、五穀不↠登ミノラ、疾シチ疫ヤク競キヨイ起リ、人民飢ケ饉ゴンス、互タガヒニ相ヒ残ザンコロス害ス。
^もし人ひと戒かいを持たもてば、 多おおく諸天しょてん威い光こうを増足ぞうそくす。 修しゅ羅ら減げん少しょうし、 悪あく竜りゅう力ちからなし、 善ぜん竜りゅう力ちからあり。 善ぜん竜りゅう力ちからあれば、 風ふう雨う時ときに順じゅんじ、 *四気しき和わ暢ちょうなり。 ▼甘かん雨う降くだりて▼稔穀ねんこく豊ゆたかなり、 人民じんみん安楽あんらくにして兵へい▼戈か戢しゅう息そくす。 疾疫しつやく行ぎょうぜざるなりº と。 ▼乃至
若シ人持テバ↠戒ヲ、多ク諸天増↢足タルス威光ヲ↡。修羅減オトル少シ悪竜無シ↠力、善竜有リ↠力。善竜有レバ↠力、風雨順ジ↠時ニ、四気和暢チヤウノブ ナリ。甘雨降リテ稔ネイコメ穀コク豊ユタカフ ナリ、人民安0250楽ニシテ*兵ツワモノ戈クワホコ 戦センタヽカフ息ソクヤムス。疾疫不ル↠行ゼ也ト。 乃至
^▼君くん子しいはく、 ª^道どう士し ¬大だい霄しょう隠書いんしょ¼・¬無む上じょう真書しんしょ¼ 等とうにいはく、 «^*無む上じょう大道だいどう君くんの治ちは五ご十じゅう五ご重ちょう無ぶ極きょく大たい羅ら天てんのうち、 玉ぎょく京けいの上うえ、 七宝しっぽうの台だい、 金きん床しょう玉ぎょく机きにあり。 仙童せんどう・玉ぎょく女じょの侍じ衛えいするところ、 三さん十じゅう三さん天てん三界さんがいの外ほかに住じゅうす» と。
君子曰ク、道士¬大霄セウガ隠イン書¼・¬元上ガ真書¼等ニ云ク、元上大道君ノ治ハ在リ↢五十五重ヂウ无極キヨク大羅天ノ中 チ、玉京之上ウヘ、七宝ノ台、金床シヤウ玉机キツクエニ↡。仙セン童ドウ・玉ギヨク女ヂヨ之所↢侍ジ衛ヱイスル↡、住スト↢卅二天三界之外ニ↡。
^¬神泉しんせん五ご岳がく図ず¼ を案あんずるにいはく、 «^*大道だいどう天尊てんそんは、 太玄たいげん都と、 玉ぎょく光こう州しゅう、 金真きんしんの郡ぐん、 天保てんぽうの県けん、 元明げんめいの郷けい、 定てい志しの里りを治ちす。 災わざわい及およばざるところなり» と。
按ズルニ↢¬神仙五岳ガクオカ図ヅヲシルス¼↡云ク、大道天尊ハ、治ス↢大玄都トミヤコ、玉光州、金真之郡グヰンコホリ、天保之県クヱンアガタ、元明之郷ケイサト、定テイ志之里リサトヲ↡。災ワザワイサイ 所ナリト↠不ル↠及バ。
^¬霊書れいしょ経けい¼ にいはく、 «^大たい羅らはこれ五ご億おく五ご万まん五ご千せん五ご百ひゃく五ご十じゅう五ご重ちょう天てんの上じょう天てんなり» と。
¬霊レイ書シヨ経ケイニ¼云ク、大羅ハ是五億五万五千五百五十五重ヂウ天之上天也ト。
^¬五ご岳がく図ず¼ にいはく、 «^都ととは都みやこなり。 太たい上じょう大道だいどう、 道どうのなかの道どう、 *神明しんめい君最くんさい、 静せいを守まもりて大玄たいげんの都とに居おり» と。
¬五岳オカ図ニ¼云ク、都ト者都ミヤコ也。太上大道、道之中ノ道、神明君最サイスグル、守リテ↠静セイヲシヅカニ居オリト↢太玄之都ニ↡。
^¬諸天しょてん内音ないいん¼ にいはく、 «^天てん、 諸仙しょせんと楼ろう都との鼓つづみを鳴ならす。 玉ぎょく京けいに0467*朝ちょう晏あんして、 もつて道君どうくんを楽たのしましむ»º と。▼
¬諸天内音インニ¼云ク、天与ト↢諸仙↡鳴ナラス↢楼ロウイヱ都之鼓ツヾミヲ↡。朝↢晏アンシテシヅカニ玉京キヤウニ↡、以テ楽タノシマシムト↢道君ヲ↡。
^▼道どう士しの上あぐるところの経けいの目なを案あんずるに、 みないはく、 ª宋人そうじん*陸りく修しゅう静せいによりて一千いっせん二に百ひゃく二に十じゅう八はち巻かんを列つらねたりº と。 もと雑書ざっしょ、 *諸しょ子しの名ななし。 しかるに道どう士しいま列つらぬるに、 すなはち二に千せん四し十じっ巻かんあり。 そのなかに多おおく ¬漢書かんじょ芸文げいもん志し¼ の目なを取とりて、 みだりに八はっ百ぴゃく八はち十じゅう四し巻かんを註しるして道どうの経論けいろんとす。 乃至
案ズルニ↢道士ノ所ノ↠上グル経ノ目ナヲ↡、皆云ク、依リテ↢宋ソウ人陸*修シウナガシ静セイニ↡而列ツラネタリト↢一千二百廿ジヽウ八巻ケンヲ↡。本モト無シ↢雑書、諸子之名↡。而ルニ道士今列ルニ、乃チ有リ↢二千四十巻↡。其ノ中ニ多ク取リテ↢¬漢書芸ゲイ文志ノ¼目ナヲ↡、妄ミダリニ註シテ↢八百八十四巻ヲ↡為ス↢道ノ経論ト↡。 乃至
^陶朱とうしゅを案あんずれば、 すなはちこれ*范蠡はんれいなり。 親まのあたり越えつの王おう*勾践こうせんに事つかへて、 君臣くんしんことごとく呉ごに囚とらはれて、 屎しを嘗なめ尿にょうを飲のんで、 またもつてはなはだし。 また范蠡はんれいの子こは、 斉せいに戮ころさる。 父ちちすでに変へん化げの術じゅつあらば、 なんぞもつて変へん化げしてこれを免まぬかるることあたはざらん。
案ズレ↢陶タウ朱シユヲ↡者バ即チ是范ハン蠡レイナリ。親マノアタリ事ツカヘテ↢越ノ王勾コウ践センニ↡、君臣悉ク囚トラハレテ↢於呉ゴニ↡、嘗ナメ↠屎フンヲ飲ノンデ↠尿ネウヲ、亦以テ甚ハ ダシ矣。又復范ハン蠡レイ之子ハ被ラル↠戮コロサ↢於斉セイニ↡。父既ニ有アラバ↢変ハン化クワ之術↡、何ゾ以テ不ラム↠能ハ↢変化シテ免マヌカルヽコト↟之ヲ。
^¬造立ぞうりつ天てん地ちの記き¼ を案あんずるに称しょうすらく、 ª老ろう子し*幽王ゆうおうの皇后こうごうの腹はらのなかに託生たくせいすº と。 すなはちこれ幽王ゆうおうの子こなり。 また ª身み、 *柱ちゅう史したりº と。 またこれ幽王ゆうおうの臣しんなり。 ¬*化胡かこ経けい¼ にいはく、 ª老ろう子し漢かんにありては*東方とうぼう朔さくとすº と。 もしあきらかにしからば、 知しんぬ、 幽王ゆうおう*犬戎けんじゅのために殺ころさる。 あに君くん父ぶを愛あいして神しん符ぷを与あたへて、 君くん父ぶをして死しせざらしめざるべけんや。 乃至
案ズルニ↢¬造立天地ノ記ヲ¼↡称スラク、老子託タク↢生スト幽イウ王ノ皇后ゴウノ腹 ラノ中ニ↡。即チ是幽王之子ナリ。又身ミ為タリト↢柱チウ史シ↡。復0251是幽王之臣ナリ。¬化胡コ*経ニ¼言ク、老子在リテハ↠漢ニ為スト↢東方朔サクト↡。若シ審アキラカニ爾シカラ者バ知ヌ、幽王為ニ↢犬戎ジユノ↡所ル↠殺サ。豈アニ可ケム↠不ル↧愛シテ↢君父ヲ↡与アタヘテ↢神符ヲ↡、令シメ↦君父ヲシテ不ザラ↞死セ邪ヤ。 乃至
^陸りく修しゅう静せいが目録もくろくを指さす、 すでに正本せいほんなし。 なんぞ謬あやまりのはなはだしきをや。 しかるに修しゅう静せい、 目なをなすこと、 すでにこれ大たい偽ぎなり。 いま ¬玄げん都と録ろく¼ またこれ0468偽ぎ中ちゅうの偽ぎなり」 と。 乃至
指ス↢陸*修シウ静セイガ目録ヲ↡、既ニ無シ↢正本↡。何ゾ謬アヤマリ之甚ハナハダシキヲ也ヤ。然ルニ*修静為ナスコト↠目ナヲ、已スデニ是大偽グヰナリアヤマリ 。今¬玄都録¼復是偽中之偽イツワルナリト矣。」 乃至
二 Ⅱ ⅱ b ロ (三)法琳¬弁正論¼二文(邪正を決判し捨機を勧む)
【106】^▼またいはく (弁正論)、
又云ク、
^「▼¬大だい経きょう¼ (涅槃経) のなかに説とかく、 ª^道どうに九く十じゅう六ろく種しゅあり、 ただ仏ぶつの一道いちどうこれ正道せいどうなり、 その余よの九く十じゅう五ご種しゅにおいてはみなこれ外げ道どうなりº と。
「¬大経ノ¼中ニ説カク、道ニ有リ↢九十六種↡、唯仏ノ一道是於テハ↢正道ナリ、其ノ余ノ九キウ十五種シヨウニ↡皆是外道ナリト。
^▼朕ちん、 外げ道どうを捨すててもつて如来にょらいに事つかふ。 もし公卿こうけいありて、 よくこの誓ちかいに入いらんものは、 おのおの菩ぼ提だいの心しんを発おこすべし。 老ろう子し・周しゅう公こう・孔こう子し等とう、 これ如来にょらいの弟子でしとして化けをなすといへども、 すでに邪じゃなり。 ただこれ世せ間けんの善ぜんなり、 凡ぼんを隔へだてて聖しょうとなすことあたはず。 公卿こうけい・百ひゃっ官かん、 侯王こうおう・宗室そうしつ、 よろしく偽ぎを反かえし真しんに就つき、 邪じゃを捨すて正しょうに入いるべし。
朕チンワレ捨テヽ↢外道ヲ↡以テ事ツカフ↢如来ニ↡。若シ有リテ↢公卿↡、能ク入ラム↢此ノ誓ニ↡者 ノハ、各ノ可シ↠発ス↢菩薩ノ心ヲ↡。老子・周シウ公コウ・孔コウ子等、雖モ↢是如来ノ弟子ト而シテ為ナスト↟化ヲ既ニ邪ナリ。止タヾ是世間之善ナリ、不↠能ハ↢隔ヘダテヽ↠凡ヲ成スコト↟聖ト。公卿・百官・侯コウ王・宗ソウ室、宜ベ クシ↢反カヘシ↠偽ヲイツワリ就ツキ↠真ニ、捨テ↠邪ヲ入ル↟正ニ。
^ゆゑに経教きょうきょう、 ¬*成じょう実論じつろん¼ に説ときていはく、 ª^もし外げ道どうに事つかへて心しん重おもく、 仏法ぶっぽうは心しん軽かろし、 すなはちこれ邪見じゃけんなり。 *もし心しん一等いっとうなる、 これ*無記むきにして善悪ぜんあくに当あたらずº と。 仏ぶつに事つかへて心しん強こわくして老ろう子しに心しん少すくなくは、 すなはちこれ清しょう信しんなり。 清しょうといふは、 清しょうはこれ表ひょう裏りともに浄きよく、 垢穢くえ惑累わくるいみな尽つくす、 信しんはこれ正しょうを信しんじて邪じゃならざるがゆゑに、 清しょう信しんの仏ぶつ弟子でしといふ。 その余よ等ひとしくみな邪見じゃけんなり、 清しょう信しんと称しょうすることを得えざるなり。 乃至
故ニ経教、¬成実論ニ¼説キテ云ク、若シ事ヘテ↢外道ニ↡心重ク、仏法ハ心軽シ、即チ是邪見ナリ。若シ心一等ナル、是无記ニシテ不ト↠当アタラ↢。若善悪↡。事ツ ヒテ↠仏ニ、心強コハクシテ↢孝カウ子ニ↡心少ク者ハ、乃チ是清信ナリ。言フ↠清ト者ハ、清ハ是表裏リウラ倶ニ浄ク、垢アカ穢惑ケガレ 累カサナル皆尽ス、信ハ是信ジテ↠正ヲ不ルガ↠邪ナラ故ニ言フ↢清信ノ仏弟子ト↡。其ノ余等ヒトシク皆邪見ナリ、不ル↠得↠称スルコトヲ↢清信ト↡也。 乃至
^老ろう子しの邪風じゃふうを捨すてて法ほうの真しん教きょうに入流にゅうりゅうせよとなり」 と。 以上抄出
捨テヽ↢老子之邪風ヲ↡※入↢流セヨトナリト法之真教ニ↡。」 已上抄出
二 Ⅱ ⅱ b ハ 釈
(一)¬法事讃¼(邪を信ずる者は現生に悪報を受くることを明かす)
【0469107】^▼光こう明みょう寺じの和か尚しょう (善導) のいはく (法事讃・下)、
光明寺ノ和尚ノ云ク、
^「▲上じょう方ほうの諸仏しょぶつ恒沙ごうじゃのごとし。 ▼還かえりて舌相ぜっそうを舒のべたまふことは、 娑しゃ婆ばの▼*十じゅう悪あく・*五ご逆ぎゃく多おおく疑ぎ謗ほうし、 邪じゃを信しんじ、 鬼きに事つかへ、 神しん魔まを*餧あかしめて、 ^みだりに想おもひて恩おんを求もとめて福ふくあらんと謂おもへば、 災さい障しょう禍か横よこさまにうたたいよいよ多おおし。 連年れんねんに病やまいの床しょう枕ちんに臥ふす。 *聾みみしひ盲めしひ脚あし折おれ、 手て攣ひき撅おる、 ^神明しんめいに承しょう事じしてこの報ほうを得うるもののためなり。 いかんぞ捨すてて弥陀みだを念ねんぜざらん」 と。 以上
「上方ノ諸仏如シ↢恒沙ノ↡ | 還リテ舒ノベタマフコトハ↢舌相ヲ↡為 メナリ↧娑婆ノ |
十悪・五0252逆多ク疑謗シ | 信ジ↠邪ヲ事ツカヘ↠鬼ニ餧アカシメテ↢神魔ヲ↡ |
妄ミダリニ想ヒテ求メテ↠恩ヲ謂 モヘバ↠有ラムト↠福 | 災ワザワイ障 禍クワワザワイ横 マニ転ウタヽ弥イヨイヨ多シ |
連年ニ臥ス↢病ノ於床ユカ枕ニマクラ↡ | 聾ミヽシヒ盲メシヒ脚アシ折オレ手テ攣ヒキ撅オル |
承ジヨウ ウケ ↢事ツカヘシテ神明ニ↡得ルモノヽ↦此ノ報ヲ↥ | 如何 イカン ゾ不ラムト↣捨ステヽ念ゼ↢弥陀ヲ↡」 已上 |
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)智顗¬法界次第¼(三宝に帰することを勧め余道に事ふることを誡む)
【108】^▼*天台てんだいの ¬*法界ほうかい次し第だい¼ にいはく、
天臺ノ¬法界次第ニ¼云ク、
^「▼一ひとつには仏ぶつに帰依きえす。 ¬経きょう¼ (涅槃経) にのたまはく、 ª^仏ぶつに帰依きえせんもの、 つひにまたその余よのもろもろの外げ天神てんじんに帰依きえせざれº と。 ^またのたまはく、 ª^仏ぶつに帰依きえせんもの、 つひに悪趣あくしゅに堕おちずº といへり。
「一ニハ帰↢依ス仏ニ↡。¬経ニ¼云ク、帰↢依セム於仏ニ↡者 ノ終 イニ不レト↣更カヘマタテ帰↢依セ其ノ余ノ諸ノ外天神ニ↡也。又云*謂ク、帰↢依セム仏ニ↡者 ノ終ニ不ズト↠堕オチ↢悪趣ニ↡云ヘリ。
^▼二ふたつには法ほうに帰依きえす。 いはく、 ª大だい聖しょうの所説しょせつ、 もしは教きょうもしは理り、 帰依きえし修しゅ習じゅうせよº となり。
二ニハ帰↢依ス法ニ↡。謂ク大聖ノ所説、若シハ教若シハ理、帰依シ修習ナラフセヨト也。
^▼三みつには僧そうに帰依きえす。 いはく、 ª心こころ、 家いえを出いでたる三さん乗じょう正行しょうぎょうの伴ともに帰きするがゆゑにº と。 ¬経きょう¼ (涅槃経) にのたまはく、 ª^永ながくまた更かえつて、 その余よのもろもろの外げ道どうに帰依きえせざるなりº」 と。 以上
三ニハ帰↢依ス僧ニ↡。謂ク帰スルガ↢心出デタル↠家ヲ三乗正行之伴ニ↡故ニト。¬経ニ¼云ク、永ク不ルナリト↣復マタ更カヘテ帰↢依セ其ノ余ノ諸ノ外道ニ↡。」 *已上
二 Ⅱ ⅱ b ハ (三)宗暁¬楽邦文類¼(祭祀の法は真正に非ざることを明かす)
【109】^▼*慈じ雲うん大だい師しのいはく (*楽邦文類)、
慈雲大師ノ云ク、
^「しかるに祭さい祀しの法ほうは、 天竺てんじく (印度) には▼*韋陀いだ、 支那しな (中国) には▼祀し典てんといへり。 すでにいまだ世よを逃のがれず、 真しんを論ろんずれ0470ば俗ぞくを誘こしらふる権方ごんぼうなり」 と。 文
「然ルニ祭サイマツリ祀シ之マツル 法ハ、天竺ニハ韋陀、支那ニハ祀シ典トイヘリ。既ニ未ズ ダ↠逃ノガレ↢於世ヲ↡、論ズレバ↠真ヲ誘コシラフル↠俗ヲ之権方ナリト。」 *文
二 Ⅱ ⅱ b ハ (四)諦観¬天台四教儀¼(人趣の尊敬すべからざることを明かす)
【110】^▼高麗こうらいの*観かん法ほっ師しのいはく (*天台四教儀)、
高麗ライノ観法師ノ云ク、
^「餓鬼がき道どう、 ▼梵ぼん語ごには闍黎しゃれい多た。 この道どうまた諸趣しょしゅに遍へんす。 福徳ふくとくあるものは山林せんりん塚ちょ廟びょう神じんとなる。 福徳ふくとくなきものは、 不ふ浄じょう処しょに居こし、 飲食おんじきを得えず、 つねに鞭べん打ちょうを受うく。 河かわを填ふさぎ海うみを塞ふさぎて、 苦くを受うくること無む量りょうなり。 諂誑てんおうの心しん意いなり。 ▼下げ品ぼんの五ご逆ぎゃく・十じゅう悪あくを作つくりて、 この道どうの身しんを感かんず」 と。 以上
「餓鬼道、梵語ニハ闍シヤ黎レイ多。此ノ道亦徧ミツス↢諸趣ニ↡。有ル↢福徳↡者 ノハ作ナル↢山林塚チヨツカ広神ト↡。無キ↢福徳↡者 ノハ、居シ↢不浄処ニ↡、不ズ↠得エ↢飲食ヲ↡、常ニ受ク↢鞭ベンムチ打チヤウウツ ヲ↡。填フサギ↠河ヲ塞フサギテ↠海ヲ、受クルコト↠苦ヲ無量ナリ。諂テンヘツラフ誑ノクルフ心意ナリ。作リテ↢下品ノ五逆・十悪ヲ↡、感ウクズト↢此ノ道ノ身ヲ↡。」 已上
二 Ⅱ ⅱ b ハ (五)神智¬天台四教儀集解¼(祭祀する所を尊敬すべからざることを明かす)
【111】^▼*神じん智ち法ほっ師し釈しゃくしていはく (*天台四教儀集解)、
神智法師釈シテ云ク、
^「餓鬼がき道どうはつねに飢うゑたるを餓がといふ、 ▼鬼きとは帰きなり。 ¬▼*尸子しし¼ にいはく、 ª古いにしえは死し人にんを名なづけて帰き人にんとす。 また人神じんしんを鬼きといひ、 地じ神じんを祇ぎといふº と。 乃至 形かたちあるいは人ひとに似にたり、 あるいは獣けだもの等とうのごとし。 ^心こころ正しょう直じきならざれば、 名なづけて諂誑てんおうとす」 と。
「餓鬼道ハ常ニ飢ウヘタルヲ曰フ↠餓ト、鬼之言ハ帰ス↠尸シカバネニ。¬子ノ¼曰ク、古 シヘ者名ク↢人死ト↡為ス↢帰人ト↡。又天神ヲ云ヒ↠鬼ト、地神ヲ曰フト↠祇マコトト也。 乃至 形 タチ或イハ似ニタリ↠人ニ、或イハ如シ↢獣ジユ等ケダモノ ノ↡。心0253不レバ↢正直ナラ↡、名ケテ為スト↢諂誑ト↡。」
二 Ⅱ ⅱ b ハ (六)大智(元照)¬盂蘭盆経疏新記¼(鬼神を尊敬すべからざることを明かす)
【112】^▼*大だい智ち律りっ師しのいはく (*盂蘭盆経疏新記)、
大智律師ノ云ク、
^「神じんはいはく鬼き神じんなり。 ▼すべて四し趣しゅ、 天てん・修しゅ・鬼き・獄ごくに収おさむ」 と。
「神ハ謂ク鬼神ナリ。総スベテ収オサムト↢四趣、天・修・鬼・獄ニ↡。」
二 Ⅱ ⅱ b ハ (七)戒度¬観経扶新論¼(悪道に摂っせられる所の鬼神を尊敬すべからざることを明かす)
【113】^▼*度ど律りっ師しのいはく (*観経扶新論)、
度律師ノ云ク、
^「▼魔まはすなはち悪道あくどうの所しょ収しゅうなり」 と。
「魔ハ即チ悪道ノ所収シユナリト。」
二 Ⅱ ⅱ b ハ (八)智顗¬摩訶止観¼(神魔を尊敬すべからざることを明かす)
【114】^▼¬止し観かん¼ (*摩訶止観) の魔事まじ境きょうにいはく、
¬止観¼ノ魔事境ニ云ク、
^「▼二ふたつに魔まの発相ほっそうを明あかさば、 管属かんぞくに通つうじて、 みな称しょうして魔まとす。 細くわしく枝異しいを尋たずぬれば、 三種さんしゅを出いでず。 一ひとつ0471には▼*慢まん悵ちょう鬼き、 二ふたつには▼*時媚じみ鬼き、 三みつには▼*魔羅まら鬼きなり。 三種さんしゅの発相ほっそう、 各々かくかく不ふ同どうなり」 と。
「二ニハ明スニ↢魔ノ発相ヲ↡者ハ、通ジテ↢管属ニ↡皆称シテ為ス↠魔ト。細クワシク尋タヅヌレバ↢枝異ヲ↡、不ズ↠出デ↢三種ヲ↡。一ニ者ハ慢マン悵鬼、二ニ者ハ時媚ミ鬼、三ニ者魔羅鬼ナリ。三種ノ発相、各各不同ナリト。」
二 Ⅱ ⅱ b ハ (九)¬往生要集¼(決して魔神を尊むべからざることを明かす)
【115】^▼源信げんしん、 ¬止し観かん¼ によりていはく (*往生要集・中意)、
*源信依リテ↢¬止観ニ¼云ク、
^「▲魔まは煩悩ぼんのうによりて菩ぼ提だいを妨さまたぐるなり。 鬼きは病びょう悪あくを起おこし命みょう根こんを奪うばふ」 (意) と。 以上
「魔者依リテ↢煩悩ニ↡而妨サマタグルナリ↢菩提ヲ↡。鬼者起ス↢病悪ヲ↡奪ウバフト↢命根ヲ↡。」 已上
二 Ⅱ ⅱ b ニ 外典
(一)¬論語¼(外典を挙げて例と為し以て勧誡す)
【116】^▼¬論ろん語ご¼ にいはく、
¬論語ニ¼云ク、
^「*季路きろ問とはく、 ª鬼き神じんに事つかへんかº と。 ^▼子しのいはく、 ª事つかふることあたはず。 ▼人ひといづくんぞよく鬼き神じんに事つかへんやº」 と。 以上抄出▼
「季キ路問トハク、事ツカヘムカト↢鬼神ニ↡。子ノ曰ク、※不ズ↠能ハ↠事フルコト。人焉イズクンゾ能ク事ヘムヤト↢鬼神ニ↡。」 已上抄出
後抜
一 禀承に宗有ることを明かす
Ⅰ 師の弘化を明かす
【117】^▼ひそかにおもんみれば、 聖しょう道どうの諸しょ教きょうは行証ぎょうしょう久ひさしく廃すたれ、 浄じょう土どの真しん宗しゅうは証しょう道どういま盛さかんなり。
窃ヒソカニ以オモンミレバ、聖道ノ諸*教ハ行証久シク廃スタレ、浄土ノ真宗ハ証道今盛ナリ。
^◆しかるに▼諸しょ寺じの釈しゃく門もん、 教きょうに昏くらくして真しん仮けの門もん戸こを知しらず、 ▼洛らく都との儒林じゅりん、 行ぎょうに迷まよひて邪じゃ正しょうの道どう路ろを弁わきまふることなし。 ▼ここをもつて、 *興福こうぶく寺じの学がく徒と、 太だ上じょう天皇てんのう *後ご鳥と羽ばの院いんと号ごうす、 諱いみな尊成たかひら 今きん上じょう *土つち御門みかどの院いんと号ごうす、 諱いみな為仁ためひと 聖暦せいれき、 *承じょう元げん丁ひのと卯のうの歳とし、 *仲春ちゅうしゅん上旬じょうじゅんの候こうに奏達そうたつす。
然ルニ諸寺ノ釈門、昏クラク↠教ニ兮シテケイ不↠知ラ↢真仮ノ門戸コト ヲ↡、洛ラクミヤコ都トノミヤコ 儒ジユ林、ゾクガクシヤウナリ迷マドフ↠行ニ兮テ無シ↠*弁フルコト↢邪正ノ道路ヲ↡。斯ヲ以テ興福寺ノ学徒ト、奏ソウ↢マフス達ス
号ス↢後ノチノ鳥羽トバノ院ト↡
太上天皇 諱イミナ尊成ゼイ
号ス↢土御門ノ院0254ト↡
今上 諱為仁タメヒト 聖暦セイレキ、承ジヨウ元丁ヒノトノ卯ノ歳仲春上旬之候カタチニ↡。
^◆主しゅ上じょう臣しん下か、 法ほうに背そむき義ぎに違いし、 忿いかりを成なし怨うらみを結むすぶ。 これによりて、 ▼真しん宗しゅう興こう隆りゅうの大たい祖そ*源空げんくう法ほっ師しならびに門もん徒と数す輩はい、 罪ざい科かを考かんがへず、 ▼*猥みだりがはしく死し罪ざいに坐つみす。 ▼あるいは僧そう儀ぎを改あらためて姓名しょうみょうを賜たもうて遠おん流るに処しょす。 ▼予よはその一ひとつなり。
主上臣下、背ソムキ↠法ハウニ違シタガフ↠義ニ、成シ↠忿イカリヲ結 スブ↠怨ウラミヲ。因リテ↠茲コレニ真宗興隆ノ大祖ソオホヂ源空法師并ニ門徒数スカズノ輩、トモガラ不ズ↠考カムガヘ↢罪科クワヲシナワイ↡、猥ミダリガハシク坐ツミス↢死罪ニ↡。或イハ改アラタメテ↢僧儀ヲ↡賜タマフテ↢姓名ヲ↡処ス↢遠流ニ↡。豫ヨワレハ其ノ一也。
^◆しかれば、 すでに▼僧そうにあらず俗ぞくにあらず。 このゆゑに禿とく0472の字じをもつて姓しょうとす。 空くう師し (源空) ならびに弟子でし等ら、 諸方しょほうの辺へん州しゅうに坐つみして▼五ご年ねんの▼*居諸きょしょを経へたりき。
爾レ者バ已ニ非ズ↠僧ニ非ズ↠俗ニ。是ノ故ニ以テ↢禿トクノカブロナリ字ヲ↡為ス↠姓ト。空師并ニ弟子等ラ、坐ツミシテ↢諸方ノ辺州ニ↡経ヘタリキ↢五年ノ居キヨ諸ヲ↡。
^皇帝こうてい *佐渡さどの院いん、 諱いみな守成もりなり 聖代せいだい、 *建けん暦りゃく辛かのとの未ひつじの歳とし、 ▼*子し月げつの中旬ちゅうじゅん第だい七日しちにちに、 勅ちょく免めんを蒙かぶりて▼入洛じゅらくして以後いご、 空くう (源空)、 洛陽らくようの東ひがし山やまの西にしの麓ふもと、 *鳥とり部野べのの北きたの辺ほとり、 *大谷おおたにに居いたまひき。 *同おなじき二に年ねん壬みずのえ申さる▼*寅月いんがつの下げ旬じゅん第だい五ご日にち*午うまの時ときに入にゅう滅めつしたまふ。 奇き瑞ずい称しょう計げすべからず。 *別伝べつでんに見みえたり。▼
佐*土ノ院 皇帝 諱イミナ守モリシウ成 聖セイ代、建ケン暦*辛カノトノ未ヒツジノ歳子月ノ中旬第七日ニ、蒙リテ↢ 勅免メンヲ↡入ジフ洛シテ已後、空居タマヒキ↢洛陽ノ東山ノ西ノ麓フモト、鳥部野ノ北ノ辺 リ、大谷ニ↡。同ジキ二年壬申寅イン月ノ下旬第五日午時入滅シタマフ。奇キヨシ瑞ズイヨシ不ズ↠可カラ↢称計ス↡。見エタリ↢別伝ニ↡。
一 Ⅱ 自の禀承を明かす
【118】^▼しかるに愚ぐ禿とく釈しゃくの鸞らん、 ▼*建仁けんにん辛かのと酉のとりの暦れき、 雑ぞう行ぎょうを棄すてて本願ほんがんに帰きす。 ▼*元げん久きゅう乙きのと丑のうしの歳とし、 *恩恕おんじょを蒙かぶりて ¬選せん択じゃく¼ (*選択集) を書しょしき。 同おなじき年としの*初しょ夏か中旬ちゅうじゅん第だい四し日にちに、 「選せん択じゃく本願ほんがん念仏ねんぶつ集しゅう」 の内題ないだいの字じ、 ならびに 「▲南無なも阿あ弥陀みだ仏ぶつ 往おう生じょう之し業ごう 念仏ねんぶつ為い本ほん」 と 「釈しゃくの綽しゃく空くう」 の字じと、 空くうの真筆しんぴつをもつて、 これを書かかしめたまひき。
然ルニ愚禿釈ノ鸞、建仁辛カノトノシン 酉イウノ暦レキコヨミ、棄ステ↢雑行ヲ↡兮テ帰ス↢本願ニ↡。元久乙キノトノ丑ウシノ歳、蒙 ブリテ↢恩アハレミ恕ジヨヲ↡アハレミ兮テ書カクシキ↢¬選択ヲ¼↡。同ジキ年ノ初ソハジメ夏カ中旬第四日ニ、「選択本願念仏集ノ」内題ノ字、并ニ「南无阿弥陀仏往生之業念仏為本ト」与ト↢「釈ノ綽空ノ」字↡、以テ↢空ノ真筆ヲ↡、令メタマヒキ↠書カ↠之ヲ。
^◆同おなじき日ひ、 空くうの真影しんねい申もうし預あずかりて、 図画ずがしたてまつる。 ▲*同おなじき二に年ねん閏うるう七月しちがつ下げ旬じゅん第だい九く日にち、 真影しんねいの銘めいは、 真筆しんぴつをもつて 「南無なも阿あ弥陀みだ仏ぶつ」 と 「^▲若にゃく我が成じょう仏ぶつ 十方じっぽう衆しゅ生じょう 称しょう我が名みょう号ごう 下至げし十じっ声しょう 若にゃく不ふ生しょう者じゃ 不ふ取しゅ正しょう覚がく ▼彼ひ仏ぶつ今こん現在げんざい成じょう仏ぶつ 当とう知ち本誓ほんぜい重じゅう願がん不虚ふこ 衆しゅ生じょう称しょう念ねん必得ひっとく往おう生じょう」 (礼讃) の真文しんもんとを書かかしめたまふ。
同ジキ日、空之真影エイ申シ預アヅカリテ、奉 マツル↢図画ヱカクシ↡。同ジキ二年閏ウルフ七月下旬第九日、真影エイノ銘メイシルシニ以テ↢真筆ヲ↡令メタマフ↠書カ↢「南无阿弥陀仏ト」与トヲ↢「若我成仏十方衆生称我名号下至十声若不生者不者正覚彼仏今現在成仏当知本誓重願不虚衆生称念必得往生」之真文↡。
^◆また夢ゆめの告つげによ0473りて、 *綽しゃく空くうの字じを改あらためて、 同おなじき日ひ、 御ご筆ひつをもつて▼名なの字じを書かかしめたまひをはんぬ。 本ほん師し聖しょう人にん (源空) 今年こんねんは*七しち旬しゅん三さんの御歳おんとしなり。
又依リテ↢夢ノ告ニ↡、改アラタ0255メテ↢綽空ノ字ヲ↡、同ジキ日以テ↢御筆ヲ↡令メタマヒ↠書カ↢名之字ヲ↡畢ヌ。本師聖人今年ハ七旬コロ三ノ御歳也。
^▼¬選せん択じゃく本願ほんがん念仏ねんぶつ集しゅう¼ は、 *禅ぜん定じょう博陸はくりく 月輪つきのわ殿どの兼実かねざね、 法ほう名みょう円えん照しょう の教命こうめいによりて撰せん集じゅうせしむるところなり。 真しん宗しゅうの簡要かんよう、 念仏ねんぶつの奥おう義ぎ、 これに摂しょう在ざいせり。 見みるもの諭さとり易やすし。 まことにこれ希有けう最さい勝しょうの華か文もん、 無む上じょう甚深じんじんの宝典ほうでんなり。
¬選択本願念仏集¼者ハ、依リテ↢禅定博陸 月輪殿兼実カネザネケンジチ法名円*照 之教カウ命メイニ↡所↠令ムル↢撰集セ↡也。真宗ノ簡要、念仏ノ奥アウフカシ義、摂↢在セリ于ニ↟斯。見ル者 ノ易シ↠諭サトリ。誠マコトニ是 レ希有最勝之華クワ文、无上甚深之宝典也。
^◆年としを渉わたり日ひを渉わたりて、 その教きょう誨けを蒙かぶるの人ひと、 千万せんまんなりといへども、 親しんといひ疎そといひ、 この見写けんしゃを獲うるの徒ともがら、 はなはだもつて難かたし。 しかるにすでに製作せいさくを書写しょしゃし、 真影しんねいを図画ずがせり。 これ専念せんねん正しょう業ごうの徳とくなり、 これ決けつ定じょう往おう生じょうの徴しるしなり。
渉ワタリ↠年ヲ渉リテ↠日、蒙 ブル↢其ノ教誨ヲ↡之人雖モ↢千万ナリト↡、云ヒ↠親ト云ヒ↠疎ソウトキト、獲ウル↢此ノ見写ヲウツス↡之徒 モガラ甚ダ以テ難シ。爾ルニ既 デニ書↢写シヤシ製作セイサクヲ↡、図↢画セリ真影ヲ↡。是専念正業之徳也、是決定往生之徴シルシチ *徴字 チ反アラハス 也。
^◆よりて悲喜ひきの涙なみだを抑おさへて由ゆ来らいの縁えんを註しるす。
仍ヨンテ抑オサヘテ↢悲喜之涙ヲ↡註ス↢由来之縁ヲ↡。
二 製作の由致を述ぶ
Ⅰ 通じて感荷の恩徳を明かす
^▲慶よろこばしいかな、 *心こころを弘ぐ誓ぜいの仏ぶつ地じに樹たて、 念おもいを難なん思じの法海ほうかいに流ながす。 深ふかく如来にょらいの矜哀こうあいを知しりて、 まことに師し教きょうの恩厚おんこうを仰あおぐ。 慶きょう喜きいよいよ至いたり、 至し孝こういよいよ重おもし。
慶ヨロコバシイ哉カナ、樹タテ↢心ヲ弘*誓ノ仏地ニ↡、流ス↢念ヲ難思ノ*法海ニ↡。深ク知リテ↢如来ノ矜オホキナル哀ヲ↡、良 トニ仰アフグ↢師教ノ恩厚カウアツシヲ↡。慶喜弥イヨイヨ至リ、至孝カウ弥重シ。
二 Ⅱ 別して製作の由致を述ぶ
^これによりて、 真しん宗しゅうの詮せんを鈔しょうし、 浄じょう土どの要ようを摭ひろふ。 ただ仏恩ぶっとんの深ふかきことを念おもうて、 人倫じんりんの嘲あざけりを恥はぢず。 もしこの書しょを見聞けんもんせんもの、 ▲信しん順じゅんを因いんとし、 疑ぎ謗ほうを縁えんとして、 信しん楽ぎょうを願力がんりきに彰あらわし、 妙みょう果かを安あん養にょうに顕あらわさんと。
因リテ↠茲 レニ、鈔セウシ↢真宗ノ詮ヲ↡、摭ヒロフ↢浄土ノ要ヲ↡。唯念フテ↢仏恩ノ深キコトヲ↡、不ズ↠恥ハヂ↢人ジン倫リンノトモガラ嘲アザケリヲ↡。若シ見↢聞セム斯ノ書ヲ↡者 ノ、信順ヲ為シ↠因ト、疑謗ヲ為シテ↠縁ト、信楽ヲ彰アラハシ↢於願力ニ↡、妙果ヲ顕 ハサムト↢於安養ニ↡矣。
【0474119】^▼¬安楽あんらく集しゅう¼ にいはく (上)、
¬安楽集ニ¼云ク、
^「▲真言しんごんを採とり集あつめて、 往益おうやくを助修じょしゅせしむ。 いかんとなれば、 前さきに生うまれんものは後のちを導みちびき、 後のちに生うまれんひとは前さきを訪とぶらへ、 連続れんぞく無む窮ぐうにして、 願ねがはくは休止くしせざらしめんと欲ほっす。 無む辺へんの生しょう死じ海かいを尽つくさんがためのゆゑなり」 と。 以上
「採トリ↢集メテ真言ヲ↡助↢修オコナフセシム往益ヲ↡。何トナレ者バ欲ス↠使メムト↣前ニ生レム者 ノハ導 ビキ↠後ヲ、後ニ生レム者ヒトハ訪トブラヘ↠前ヲ、連続ゾクツグ无窮ニシテ、願クハ不ラ↢休ヤム止セ↡。為ノ↠尽ツクサムガ↢无辺ノ生死海ヲ↡故 ヘナリト。」 已上
【120】^しかれば末代まつだいの道俗どうぞく、 仰あおいで信しん敬きょうすべきなり、 知しるべし。
爾レ者バ末代ノ道俗、可キ↢仰デ信敬ス↡也、可シ↠知ル。
【121】^▼¬華け厳ごん経ぎょう¼ (入法界品・唐訳) の偈げにのたまふがごとし。
如0256シ↢¬華厳経ノ¼偈ニ云フガ↡。
^「▲もし菩ぼ薩さつ、 種々しゅじゅの行ぎょうを修しゅ行ぎょうするを見みて、 善ぜん・不ふ善ぜんの心しんを起おこすことありとも、 菩ぼ薩さつみな摂取せっしゅせん」 と。 以上
「若シ有リトモ↧見テ↣菩薩 | 修↢行スルヲ種種ノ行ヲ↡ |
起スコト↦善・不善ノ心ヲ↥ | 菩薩皆摂取セムト」 已上 |
顕けん浄じょう土ど方便ほうべん化け身しん土ど文類もんるい 六
観経の浄土 ¬観経¼ の定善十三観および九く品ぼん往生の文に説かれる浄土。
大施品 引用の文は 「大施品」 になく 「諸しょ菩ぼ薩さつ本ほん授じゅ記き品ぼん」 にある。
本の罪 仏智を疑惑した罪。
悔責 くいせめること。
普遍智 一切にあまねく満ちわたる智慧ちえ。
無等智 並びなくすぐれた智慧。
威徳智 人間の思いをはるかに超えた、 すぐれた徳をそなえた智慧。
広大智 広く一切を知る智慧。
殊勝智のもの 化生の人は仏の諸智を得るから殊勝智 (ことにすぐれた智慧) の者という。 →
化け生しょう
かの蓮華…趺坐せん ¬三経往生文類¼ (広本) では 「かの化生を受く。 蓮華のなかにおいて結跏趺坐す」 と読んでいる。
因なくして…奉事せん 明信仏智 (明らかに仏智の不思議を信じて疑いのないこと) の正因のないまま無量寿仏にお使えすることになろう。 通常は 「因よって無量寿仏に奉事したてまつることなし」 と読む。
信心 ここでは自力の信のこと。
聖化の事を被らず 阿弥陀仏の教化、 導きを受けることがない。
能 能力。
欣慕浄土の善根 浄土をねがい慕わせるための善根。
釈迦微笑の素懐 韋い提だい希け夫人の別選を聞いて釈尊が微笑したのは、 それに応じて説かれるこの経説が釈尊の本意をあらわすものであることを示す。
韋提別選の正意 韋提希夫人がとくに阿弥陀仏の浄土を選んだ真意。
業果法然… 如来のなす利他の行為とその結果は、 すべて法の道理にかなっていて誤りがない。
また深心の深信とは 高田派専修寺蔵宗祖加点 「散善義」 では 「また深心は深き信なりといふは」 と読んでいる。
自心を建立して 自分の心をしっかりと定め不動のものにして。 ここでは自力の信を確立すること。
定善は…縁なり 「定善示観縁」 は元来 「定善観を示す序分」 の意。 親鸞聖人は訓点を施して 「定善は他力の信心を示す縁」 と転意している。
散善は…縁なり 「散善顕行縁」 は元来 「散善行を顕す序文」 の意。 親鸞聖人は訓点を施して 「自力の散善は、 他力念仏を顕す縁」 と転意している。
行 他力の念仏のこと。
解脱分 順解脱分のこと。 解脱 (さとり) へと方向づけられた階位。
差うて…知んぬべし 高田派専修寺蔵宗祖加点 ¬礼らい讃さん¼ には 「若もしなさざるものは知るべし」 と読んでいる。 この文は通常 「なさざるもののごとし。 知るべし」 と読む。
真心徹到 真実の信心がたしかに定まること。 ここでは如来回え向こうの真実心が衆しゅ生じょうのうえに至りとどいたこと。
正助雑の三行 ここでの正について、 五正行とする説と、 正定しょうじょう業ごう (称名) とする説とがある。 助は助業じょごう、 雑は雑ぞう行ぎょう (五正行以外のあらゆる行ぎょう業ごう) を指す。
利他教化地… 利他教化地という還相げんそうの位相にある菩薩が、 衆しゅ生じょうを真実に導くために仮に用いるのが聖しょう道どう門もんの法であるということ。
五種 五正行の中、 第五の讃嘆さんだん供く養ようを開いて二種とし、 称名を除いて五種とすると解釈する説、 他力の称名を除いたほかの、 自力心をもって行ずる五正行を五種とすると解釈する説などがある。
解行 知解と修行。 宗義を領りょう解げし行を実践すること。
回心回向の善 雑ぞう行ぎょうは元来、 此土しど入にっ聖しょう (この世で聖しょう者じゃの位に入る) の行で往生行ではないから、 浄土願生の心をおこし、 往生行となるようにと回え向こうしなければならない善である。
定散心 定じょう善ぜんや散善さんぜんを修して往生を願い求める心。 転じて自力心のことをいう。
仮門の教 ¬観経¼ の教説を指していう。
多善根… 襄じょう陽よう (現在の中国
湖こ北ほく省襄陽) の石碑に刻まれた異本の ¬小経¼ にこの語がある。 →
襄じょう陽よう石せっ経きょう
恒沙の信 ガンジス河の砂ほどに多い諸仏の勧めによってめぐまれた信心。
四依弘経の大士 衆しゅ生じょうがよりどころとすべき四種の菩薩。 ここでは浄土真宗を顕彰した祖師たちを指すとみられる。 →
四依しえ
三朝浄土の宗師 インド・中国・日本にあらわれて浄土真宗を伝えた祖師たち。
七しち高僧こうそうのこと。
この法 阿弥陀仏の本願を指す。
聴聞 「ゆりてきく」 (左訓) 「ゆりて」 は 「許されて」 の意。
信慧… 信心の智慧ちえを得ることはむずかしい。
悪衆生 高田派専修寺蔵宗祖加点 「散善義」 にはこの語の後に 「悪見」 の語がある。
信 教法を信受し理解すること。
求 教法のめざすところを一途に求めること。
聞 教法の言葉を聞くだけで、 そのいわれを知らないこと。
思 教法のいわれを十分聞きわけて、 如実に思い知ること。
道 さとりへの道。 また、 さとりのこと。
得者 さとりを得た人。
三宝の性異なり 仏法僧の三宝は一体ではなく、 それぞれの本質が異なっている。
三宝同一の性相 仏法僧の三宝はその本質が異ならず、 一体であるということ。
繋念思惟 思いをとどめて心を一つに集中すること。 禅定に同じ。
明 ここでは仏道のこと。
暫出還復没 しばらく生しょう死じ界を出たとしても結局は生死のなかに沈むことになること。
二種の戒 仏教の正しい戒と仏教以外のよこしまな戒。
読誦に…なけん 通常は 「読誦し、 他のために解説することあたはずは、 利益するところなけん」 と読む。
諸有のため 人天等の果か報ほうを得るため。
持読誦説 経典を受じゅ持じし、 理解して読み、 記憶して唱え、 他人のために解説すること。
善調御 衆しゅ生じょうの心をよくととのえる指導方法。
畢竟軟語 この上なくやさしい言葉。
畢竟呵責 この上なくきびしい誡め。
軟語呵責 やさしい言葉ときびしい誡めとを合せ用いること。
八種の術 治身・治眼・治胎・治小児・治瘡・治毒 (中毒や毒虫にさされたのを治す)・治邪 (邪気鬼病を治す)・知星 (治療に当って星のうごきを知る) の八をいう。
風病・熱病・水病 人体を構成する地水火風の四大のうち、 風大の不調によって風病、 火大の不調によって熱病、 水大の不調によって水病がおこるという。
骨相 身体は白骨を連ねたものにすぎないと観ずる修行法。
無上法輪 この上ない教えの輪。 仏の教法は衆しゅ生じょうの煩悩ぼんのうをうちくだき、 次々と広まってゆくので、 車輪に喩える。
本家・本国 阿弥陀仏の浄土を指す。
垢障の凡愚 煩悩ぼんのう悪業あくごうの障りをもった愚かな凡ぼん夫ぶ。
かの因を… 阿弥陀仏が浄土往生の因をたてたことを明らかに信知することができないからという意。
論主・宗師 論主は龍りゅう樹じゅ・天親てんじんの二菩薩、 宗師は曇鸞どんらん大だい師し以下の五祖を指す。
万行諸善の仮門 第
十じゅう九く願の法門のこと。 →
要門ようもん
選択の願海 第十八願のこころ。
転入 転捨てんしゃ帰き入にゅうのこと。 自力の行と信を捨てて、 本願他力の世界にはいること。
在世正法のためにして 釈尊がこの世にいる時と、 滅後五百年 (千年) 間だけ、 解げ脱だつの道として有効であるという意。
涅槃に… (釈尊が) この世から去ろうとする時。
法 教法。
人 教法を説く人。
義 教法の本質的意味内容。
語 教法の言説表現。
智 真実の智慧ちえ。
識 虚こ妄もう分別ふんべつのこころ。
指 「語」 を喩えていう。
月 「義」 を喩えていう。
正要 さとりに入るための正しい肝要な道。
古徳の伝説 古の高徳方が伝え説いたところ。
如来般涅槃の時代 釈尊が入滅された年代。
周の… 紀元前949年にあたる。
五十三年 底本に 「五十一年」 とあるのを改めた。
後堀川院 後醍醐天皇 (1212-1234。 在位1221-1232)。
二千一百七十三歳 底本に 「二千一百八十三歳」 とあるのを改めた。
六百七十三歳 底本に 「六百八十三歳」 とあるのを改めた。
一如に… 唯一絶対の真実にもとづいて教え導く者は。
四海に… 天下を治めて徳風を垂れる者は。
物を開し 人々を導き。
真諦俗諦 仏法と世俗の法 (王法)。
天網 もと ¬老子¼ の言葉。 天が罪人を捕らえるために張りめぐらす網。 ここでは破は戒かい僧を戒めるための詔。
寧処に… 心安らかに落ち着いていられない。
三古の運 中国の古い時代を三期に分け、 各期をその時代の聖賢で代表させたもの。 上古は伏ふく羲ぎ、 中古は文王、 下古は孔子とする。
減衰 現行の ¬末法まっぽう灯とう明みょう記き¼ には 「盛衰」 とある。
後五 仏滅後の二千五百年を五百年ごとに五期に分け、 仏教が次第に衰えていくさまを示したもの。 第一期は解げ脱だつ堅けん固ご、 第二期は禅ぜん定じょう堅けん固ご、 第三期は多た聞もん堅けん固ご、 第四期は造ぞう寺じ堅けん固ご、 第五期は闘とう諍じょう堅けん固ごといわれる。
破持僧 破は戒かい僧と持じ戒かい僧のありさま。
七賢聖僧 仏滅後に大法を伝え護る七僧。 摩訶まか迦か葉しょう・阿あ難なん・優婆うば掬きく多た・尸羅しら難なん陀だ・青蓮花 (華) 眼・牛口・宝天を指す。
不浄観 肉体の不浄を観じて煩悩ぼんのうを取り除く観法。 五ご停じょう心観しんかんの一。
僧尼嫁娶せん 比丘びくは娶り、 比丘尼は嫁ぐことになるであろう。
解脱堅固 さとりを得ることが確かであること。
禅定堅固 心静かに瞑想する修行がよく行われること。
多聞堅固 仏の教えがよく聞かれ、 よく理解されること。
造寺堅固 寺院の建造が盛んに行われること。
闘諍堅固 自説が他説よりもすぐれているとして、 仏弟子たちの言い争いが盛んになること。
白法隠没 仏の教え (白法) がこの世から姿を消し去ること。
穆王満五十三年壬申 底本に 「五十一年」 とあるのを改めた。 紀元前949年。
延暦二十年辛巳 801年。
匡王班四年壬子 紀元前609年。
披諷 披はひもとく、 諷は諳んじる。 諳んじて知っているというほどの意。
邪活 比丘びくにあるまじき仕事をして生活すること。
得定の凡夫 有漏うろ (煩悩ぼんのうのある状態) の禅ぜん定じょうを修める凡ぼん夫ぶ。
漏戒 戒を漏失して守持しないこと。
護持…あらんは 「この人」 は名字の比丘を指す。 通常は 「護持養育して安置することあらば、 この人」 と読む。 この場合の 「この人」 は名字の比丘を護持養育する人。
忍地 無生法忍の地位。 ここでは単にさとりの意。
前三果 声しょう聞もんの
修道しゅどう階位である
預流よる・
一来いちらい・
不ふ還げん・
阿羅あら漢かんの四果のうちの前三をいう。 →
八輩はっぱい
両判の失 矛盾する二通りの見解を説くという過失。
二聖 声しょう聞もんの四果の階位の中の初果 (預流よる果か) と第四果 (阿羅あら漢かん果か) とする説と、 有学 (前三果) の聖しょう者じゃと無学 (阿羅漢果) の聖者とする説とがある。
四種の魔 ここでは魔が仏に似せて説いた経と律、 およびその経・律を奉ずる人をいう。 通常は五陰魔 (五ご蘊うん魔)・死魔・煩悩ぼんのう魔・天魔を指して四魔という。
またのたまはく 引用の意は ¬大集経¼ 巻五十三、 五十四にみえる。
涅槃の… さとりに入ることを約束されるという意。
非梵行 仏の制戒を破る清しょう浄じょうでない行為。
盧至如来 賢劫に出世する千仏の中の最後の如来。
蝎 さそり。
惑 火星。
鎮星 土星。
太白 金星。
辰星 水星。
荷羅睺星 古代インドで日食・月食をおこすと考えられていた星。
小星宿二十八 古代インドの天文学では、 東に昴ぼう・畢ひつ・觜し・参しん・井せい・鬼き・柳りゅうの七しち宿しゅく、 南に星せい・張ちょう・翼よく・軫しん・角かく・亢こう・氐ていの七宿、 西に房ぼう・心しん・尾び・箕き・斗と・牛ぎゅう・女じょの七宿、 北に虚きょ・危き・室しつ・壁へき・奎けい・婁ろう・胃いの七宿があるとする。
八大星 歳星より荷羅睺星の八星のこと。
法用 星宿の運行や季節等の法則とそのはたらき。
年満 十二ヵ月。
四方四維 東西南北および東南・東北・西南・西北。
佉盧虱仙人 高麗こうらい版大蔵経は 「佉盧虱仙人」 の後に 「説法已」 の三字がある。 この場合は 「佉盧虱仙人、 法を説きおはりて」 と読む。。
非人 人間以外の天・竜・夜や叉しゃ・妖鬼などをいう。
佉羅氐山 須しゅ弥み山せんの近くにある山。
離暗 波旬の娘。
鮮潔の衣 袈裟けさのこと。
長斎 午後には食事をとらないという戒めを長く持つこと。
噉する 口にする。 食べる。
仁者 あなたがた。
聖道 聖 (正) 智。 さとりのこと。
天仙七宿 天仙とは
佉盧かる虱しった仙人のことで、 彼がはじめて星宿辰を配置したので、 天仙七宿という。 七宿とは二十八宿の天体を東西南北の四方に配置すると各七宿となる。 そのうち、 ここは、 北方の七宿のこと。
三曜 曜は大きい星のこと。 四方にそれぞれ三曜を配置する。
三天童女 太陽が一年間運行する黄道を十二分して、 十二の星宿宮とする。 この十二宮を司る童女が、 東西南北に三人ずついると考えた。
土境 分野。 領域。
辰 十二の星宿宮 (星のやどり) のことで十二支にあたる。
梵行…婆伽婆 通常は 「梵行相応す。 仏、 婆伽婆」 と読む。 梵行は清浄しょうじょうな行の意。
十六の大国 古代インドにあったという十六の国々。
卵生… 衆しゅ生じょうが生れる四種の形態 (
四し生しょう)。
天師梵 天界の師である梵天王。
月蔵菩薩摩訶薩 ¬大集だいじっ経きょう¼ 「月蔵分」 に対告衆 (仏の説法の相手) として出る菩薩。 西方の月勝世界から眷属けんぞくを率いて来会した。
了知清浄士 「清浄を了知する士」 の意で、 月蔵菩薩を指す。
生死に…悪道に回して 通常は 「生死輪を回して、 正法輪を転じ、 追うて悪道を回して」 と読む。
正法輪 仏の正しい説法は止とどまることなくめぐって次々と広まってゆくので、 車輪に喩える。
地の精気 五穀をみのらせる大地のすぐれた力。
衆生の精気 生きとし生けるものの持つ生命力。
正法の精気 仏法僧の三宝さんぽうの持つ功く徳どく力。
大鹹 塩からいこと。
提謂波利 提謂は梵名トラプシャ (Trapuṣa)、 波利は梵名バッリカ (Bhallika) の音写。 ともに商人の名。 成道後の釈尊に遇い、 食を供く養ようして法を聞いたという。 在家信者の最初。
四阿修羅城 須弥山の四面の海中に四大阿修羅王の城があるという。
みづから称名せざらんや 通常は 「みづから名を称せず」 と読み、 自分から名前をいうことができないという意味。
正法の味はひ醍醐の精気 醍醐は牛乳を精製して作ったもの。 最高の美味であり、 最上の薬とされる。 ここでは正法 (仏法僧の三宝さんぽう) のもつ功く徳どく力を醍醐の味に喩える。
妙丈夫 すぐれた人。 ここでは梵天ぼんてん王のう・帝たい釈しゃく天てんのこと。
賢首 賢者の首たるもの。 ここでは大梵天王等を指す。
かのもろもろの…相応せん 通常は 「かのもろもろの衆生のために念持方便し、 堅固力を得しめ、 所聞不忘智に入りて諸法の相を信ぜしめ、 …三昧の根、 相応せしむべし」 と読む。
念持方便 心が乱れないように思いをかけ、 手だてをめぐらすこと。
堅固力 いかなるものにもさまたげられないかたい力。
三昧の根 さとりに至るはたらきのことで、 信・精進・念・定・慧の
五ご根こんをさす。
三種の菩提 声しょう聞もん・縁覚えんがく・菩薩のさとり。
五事 先に出た五利のこと。
大雄猛士 煩悩ぼんのうの敵を退治する勇ゆう猛みょうな人。 ここでは大梵天王等を指す。
三精気 地の精気・衆しゅ生じょうの精気・正法の精気。 精気とは、 もののうちにひそむすぐれた力。
曜宿 星。 四方に配置された三曜七しち宿しゅくなどのこと。
独覚無上 独ひとり無上を覚さとること
捨つ 捨は捨施の意。 説法を施すこと。
日天子 太陽を神格化したもの。
月天子 月を神格化したもの。
もしおのれが…愛することあらん 通常は 「もしおのれを愛し、 苦を厭ひ楽を求むるものあらば」 と読む。
手をもつて刀杖 通常は 「手、 刀杖をもって」 と読む。
もろもろの天人…盈満をなすなり 高麗こうらい版大蔵経等によれば、 「もろもろの天人をして利益を得ず、 地獄に堕せしむるがゆゑに。 三悪道増長し盈満をなすがゆゑに」 と読む。
諸魔 ¬首楞厳経¼ によれば、 修道しゅどう者が淫欲いんよくを断じないまま禅ぜん定じょうを修すれば、 すべてみな魔道におちるという。
鬼神 ¬首楞厳経¼ によれば、 修道者が殺せっ生しょうを離れずに禅定を修すれば、 すべてみな鬼神になるという。
群邪 ¬首楞厳経¼ によれば、 修道者が盗心を捨てずして禅定を修すれば、 すべてみな邪道におちるという。
おのおの…なりて 通常は 「おのおのみづから無上道をなるといはん」 と読む。
詃惑無識 錯乱して、 識別判断ができなくなること。
所過の処 (魔・鬼き神じん・妖魔などが) 通るところ。
番に代りて かわるがわる。
尽形まで 生涯を終えるまで。
妖の師 あやしげなことを説いて人の心を惑わすもの。
起屍鬼 死体の中にある一種の気をよびおこして、 人に害を与える鬼神。
螺髻梵志 もとどりを螺 (ほらがい) のように束ねている婆羅門。 ここでは事じ火か外げ道どう (火を尊び、 これに供く養ようして福を求める異教徒の一派。 拝火外道ともいう) を指す。
舅 おじ。 次の阿舅は親しみをこめたいい方。
大沙門 釈尊を指す。
性無常の准ひならしむ 通常は 「性、 常準 (准) なからしめ」 と読む。 常準は標準のこと。
分斉 節度。
外の一異 「十異」 の第一。
玄妙玉女 神々しい妙たえなる仙女。 老子の母の尊称。
内の一喩 「十喩」 の第一。
開士 ¬弁べん正しょう論ろん¼ 巻二に仏教側の主張者として総そう持じ開士の号で出る。
解五千文 ¬老子¼ の註釈書。
考義類 ¬老子¼ に関する講義類。
三皇 伏ふく羲ぎ・神農しんのう・黄帝こうていの三皇帝。
尭舜 中国古代の伝説上の二人の帝王。 治世の模範とされる。
郭荘 郭かく象しょう (-312。 字あざなは子玄) が著した ¬荘そう子し¼ の註釈書。
材 素質。 才能。
玄妙および…出塞記 いずれも老子伝の一種。
仙人玉録 老子伝の一種。
隆周 周王朝が栄えた頃。
罽賓 インド西北部の古国。 ガンダーラまたはカシュミールにあたるという。
周文 周の文王。
迦葉 老子のこと。 ¬清しょう浄じょう法ほう行ぎょう経きょう¼ ¬空くう寂じゃく所問しょもん経ぎょう¼ (中国撰述の経典) 等に、 仏弟子の迦葉が中国に生れかわって老子となったという。
桓王丁卯 前714年。
景王壬午 前519年。
姫昌 周の文王のこと。 姫は姓、 昌は名。
調御 釈尊のこと。 仏の十号の一、 調御丈夫の略。
昭王甲寅 前1027年。
穆王壬申 前949年。
胤 あとつぎ。
流沙 現在の中国西北部にあるタクラマカン砂漠。
提河 中インドにある河。 梵名アジタヴァティー (Ajitavatī)。
群胡 外国人たち。 ここでは中国人からインド人を指していう。
秦佚 秦失とも書く。 荘そう子しが創作した人物か。
遁天の形 身体をこの世から隠す仙人の姿。
鵠樹 釈尊が入にゅう滅めつした沙さ羅ら樹林じゅりんのこと。
漢明 後ご漢かんの第二代皇帝、 明帝 (在位57-75) のこと。
蘭台 後漢の宮中の書庫。
夫子 老子を指す。
免縛形の仙 世俗のまつわりをのがれ身を隠す仙人。
また左に… 左は 「たがふ」 の意。 原文の 「不亦左」 は 「またたがはずや」 とも読む。
高士伝 古の隠士の列伝。
李耳 老子のこと。
左道乱群 正しくない政治を行って民衆を困らせるもの。
涓子 春秋しゅんじゅう時代、 斉せいの人。 ¬列仙れっせん伝でん¼ にその名がみえる。 老子との関係は不明。
戈 ほこ (長柄の武器)。
翰 筆。
五気三光 五気は太易・太初・大始・大素・大極の五。 ¬易えき¼ では五気通運するのを天地のはじめとする。 三光は日・月・星のこと。
有機の召 人々の求め。
不匱 富める者。
華俗の訓 中国の習俗。
原壌… 以下の細註の文は ¬弁べん正しょう論ろん¼ の原文にしたがって書き下した。
明辟 賢明な君主。
識体 心の主体。
天属 肉親。
含気 衆生、 有う情じょうに同じ。
己親 自分の親。
勢競親を遺る 勢力を得ようと争って、 肉親を死に至らしめてしまう。
斉桓 斉せいの桓公。 春秋しゅんじゅう時代の斉の君主。 異母兄の糾きゅうを伐って斉侯せいこうとなった。
楚穆 楚の穆王。 春秋時代の楚の成王の子。 父を死に至らしめて王位についた。
三聖 老子・孔子・顔回。
已澆の末 濁った末の世。
玄虚沖一の旨 自己を無にして無為むい自じ然ねんの道と一になるという教え。
黄 黄帝こうていのこと。 中国の伝説上の帝王。 度量衡・音律・衣服・幣制などをはじめて確立したという。
周 周しゅう公こうのこと。 名は旦たん。 周初の名臣。 聖人せいじんとして儒家から尊敬された。
孔 孔子のこと。
三畏 君子が畏れはばかる三のもの。 天命・大人たいじん・聖人の言。
正弁極談 正しい道理を述べた究極の教説。
神・聖 釈尊のこと。
周書異記 正史に記載されていない周代の異聞を記した書。 現存しない。
穆王五十三年 底本に 「五十二年」 とあるのを改めた。 紀元前949年。
葱河 パミール高原より流れるヤルカンド・カシュガル両河。
鑿竅の弁を窮めん 細かく論議をつくそう。
吾子 あなた。 君。
清信の士女 仏教の在家信者の男女。
跡を… 道安どうあん作の襄州じょうしゅう檀渓寺の金像は夜になると万山 (現在の中国湖こ北ほく省襄じょう陽ようにある山) に赴おもむき、 足跡を山にのこしたという。
耀を… 西晋せいしんの建興元年 (313)、 滬こ涜とく (現在の江こう蘇そ省蘇そ州しゅうを流れる松江) に石像二体が浮かび上ったという。
清台… 後ご漢かんの明帝の時代、 インドの迦か葉しょう摩ま騰とうが釈迦像を伝えたので、 明帝はこれを画工に造らせて洛陽らくようの南宮の清涼台に安置したという。 「満月の容」 とは釈迦像のこと。
雍門… 後漢の明帝は雍門 (洛陽の西門) の外に白馬寺を建てたという。 「相輪」 とは仏塔のこと。
南平… 晋しんの南平王は仏像を拝して感応を得たという。
文宣… 北斉ほくせいの文宣帝は聖牙 (仏の歯) の渡来を夢にみたという。
蕭后… 南朝、 斉せいの大祖高帝 (蕭しょう道成どうせい) は ¬法華ほけ経きょう¼ を写し、 ¬般若はんにゃ経きょう¼ を誦じゅして、 仏像の鋳造に一度で成功したという。
宋皇… 劉りゅう宋そうの太祖明帝は仏像を鋳造しようとして四度までも失敗したという。
有霊 奇き端ずい・霊験があること。
郭が註 郭かく象しょうが加えた ¬荘子¼ の註解。
三点 悉曇しったん文字の 「伊」 字の三点。 三の点が三角の形をなしているので、 不縦不横の相即をあらわすとされ、 法身ほっしん・般若はんにゃ・解げ脱だつの三徳に喩える。
古旧二録 不詳。
周と老 荘周 (荘そう子し) と老子のこと。
無上大道君・大道天尊・神明君最 老子の尊称。
朝晏 安らかに朝廷に集まること、 また、 朝廷で酒宴を開くことか。
諸子 ここでは ¬韓かん非子ぴし¼・¬淮え南なん子じ¼ などを指す。
化胡経 ¬老子化胡経¼ (化胡経は 「けこきょう」 とも 「かこきょう」 ともいう) のこと。 老子がインドで釈迦として再誕し、 胡こ人じん (インド人) を教化したと説く。
東方朔 前漢ぜんかんの滑稽文学者。 伝説では方士 (神仙の術を行う人) として知られ、 西せい王おう母ぼの桃を盗食して死ぬことを得ず、 長寿をほしいままにしたという。
もし心一等… 以下の ¬成じょう実論じつろん¼ の引文は ¬弁べん正しょう論ろん¼ の原文にしたがって書き下した。
餧かしめて あがめ供物をして。
尸子 尸し佼こうの著。
季路…事へんや 通常は 「季路、 鬼神に事へんことを問ふ。 子のいはく、 いまだ人に事ふることあたはず、 いづくんぞよく鬼神に事へんや」 と読む。 親鸞聖人はこれを読み改めて鬼神につかえてはならない旨を示す。
猥りがはしく 無法にも。 当時の上訴文書の慣用語。
別伝 不明。 ¬西方さいほう指し南なん抄しょう¼ 中末の 「源空げんくう聖しょう人にん私し日にっ記き」 か。
七旬三 旬は十年の意。
心を… ¬大唐だいとう西域さいいき記き¼ 巻三の 「心を仏地に樹て、 情を法海に流す」 という文による。
設 Ⓐ「十九 修諸功徳之願 至心発願之願 現前導生之願」と右傍註記 Ⓑ「十九願」と右傍註記
「三…者」15字 Ⓑに無し
言 ◎「云」を「言」と上書訂記
言→Ⓑ云
禅 ◎「法」を「禅」と上欄訂記
慢 Ⓐに無し
言→Ⓒ云
「也…國」20字 ◎上欄補記
文 Ⓒに無し
獲ウル報ハ→Ⓒ獲ウコトハ↠報
彰→Ⓑ障
五 Ⓐ「四歟」と右傍註記
是→Ⓒ[専修者唯称↢念仏名↡離↢自力之心↡]是
五→Ⓒ五[種]
名 ◎称を抹消し名と上欄訂記→ⒷⒹ称 Ⓐ称と左傍註記
導→Ⓐ道
植 Ⓐ「殖」と上欄註記
是 ◎「也」を「是」と上書訂記
廿願也 ◎ⒶⒷ上欄註記
是 ◎「即」を「是」と上書訂記
无 ◎「難思」を「无」と上書訂記
「此…也」9字 ◎Ⓑ上欄註記→ⒶⒹ此果遂之願者廿願(Ⓐ上欄註記)→Ⓒ二十願也
大→Ⓒ本(「大」と上欄註記)
設 Ⓐ「二十」と右傍註記 Ⓑ「二十願」と右傍註記
植 Ⓐ「殖」と上欄註記
若 Ⓑ「二十願」と右傍註記
慧→Ⓑ恵
致 Ⓑ「疑イ」と右傍註記
又云 ◎上欄補記
「智…也」14字 ◎Ⓐ上欄註記 ⒷⒸに無し
修→Ⓓ雑 Ⓐ雑歟と右傍註記 Ⓑ雑イ本と右傍註記 Ⓒ雑イと下欄註記
遇→Ⓐ過
斯→Ⓒ此(「斯」と上欄註記)
養→Ⓑ益
楽→ⒷⒸ[常]楽
説→Ⓑ脱
之 Ⓑに無し
縁→Ⓑ[因]縁
提 ◎「薩」を「提」と上書訂記
「弘…也」10字 ◎ⒶⒷ上欄註記 弘字 Ⓒに無し
障→Ⓐ彰
大 Ⓑに無し
今特 ◎二字抹消し「今特」と上書訂記 今 Ⓒ「已」と右傍註記
特 右◎マコトニⒶマサニⒷ「マコトニ」を「コトニ」と訂記
弁ゼワキマウ↢説人ノ差別ヲ↡者バ→Ⓐ弁↢ワキマウ説セ人ノ差別ヲ↡者バ
弁→Ⓒ辨 左Ⓑワキマウ反
視→Ⓒ親(「視」と左傍註記)
弁→Ⓒ辨
弁→Ⓒ辨
「元…也」13字 ◎Ⓐ上欄註記 Ⓑに無し
諱 ◎湮滅
茂仁 ◎湮滅
分 Ⓒ「箇イ」と左傍註記
次 ◎「此」を「次」と上書訂記
第 Ⓒ「周イ」と右傍註記
是→Ⓐ是[像法]
戒→◎我
破戒→Ⓑ戒破
宝→Ⓑ実(「宝イ」と上欄註記)
明被 ◎「被明」を「明被」と訂記
尊→Ⓒ導
抄 ⒶⒷⒹ分冊とせず Ⓒ以下「顕浄土方便化身土文類六本愚禿親鸞」の尾題選号あり
「顕…集」17字 ⒶⒷⒹに無し
六→Ⓒ六[末]
夫 Ⓑ「末始」と上欄註記
→ⒷⒹ暄
涼→ⒷⒸ凍
有 ◎「月」を「有」と上書訂記
諸 Ⓑに無し
第→Ⓑ等(「第イ本と上欄註記)
穏→Ⓑ隠
伽 Ⓑ「仙と上欄註記
日 ◎右傍に「大乗大方等」とあるを抹消
念 ◎上に一字抹消あり
言 ◎「云」を「言」と上書訂記
言 ◎「云」を「言」と上書訂記
柔 ◎「煗」と右傍にあり
善 ◎「煗」と右傍にあり Ⓐ「煗歟」と右傍註記
得テ↠知トヲ↠難ヲ平等ナレバ於テ↠世常ニ→Ⓐ得コト↠知トヲ難シ平等ナレバ於テ↢世常ニ↡→Ⓑ得コト↠知コトヲ難シ平等ナレバ於テ↠世ニ常ニ
出→Ⓑ抄
巻 ◎「月」を「巻」と上書訂記
言 ◎「云」を「言」と上書訂記
北鬱単越 ◎「北州也」と左傍註記 ⒶⒹ「コノ[キタ反歟]北州ナリ」と左傍註記
婆→Ⓑ波
女 Ⓒ「子イ」と右傍註記
◎「」と右傍訂記 Ⓑ綽(「歟と上欄註記) Ⓒ「星黒反須陵反」と割註
女 Ⓒ「子イ」と右傍註記
檀 ◎「壇」を「檀」と上欄訂記
婆 ◎上欄に「摩」とあるを抹消
人 Ⓑに無し
勇 Ⓑ「人イ」と右傍註記
住→Ⓒ往(「住」と下欄註記)
他→Ⓐ化
士→ⒶⒷⒸ土
生→Ⓑ生[輪]
主 ◎「王」を「主」と上書訂記
憐→Ⓑ憐[愍] Ⓐ下に装入符号あり、 「愍イ本アリ」と右傍註記
他→◎Ⓐ陀→Ⓑ陀(「イ無」と左傍註記)
士→ⒶⒸ土 Ⓑ「土」と下欄註記
受テ↢提謂ヒトナリ波利ヒトナリノ諸ノ商シヤウ人ノ食ヲ↡→Ⓐ受提謂イハク↢波利ヒトナリニ↡諸ノ商シヤウ人食セム→Ⓑ受提謂ハク↢波利ヒトナリニ↡諸ノ商シヤウ人食セム→Ⓒ受提謂イハク↢波利ヒトナリニ↡諸ノ商人食セム
提謂 ◎「経名也」と右傍註記 Ⓓ「経名ナリ」と右傍註記
頂↢受シ教勅シテ於己レガ境界ニ↡→Ⓐ頂↢受シ教勅シテ↡於テ↢己レガ境界ニ↡→Ⓒ頂↢受シ教勅ヲ↡於テ↢己レガ境界ニ↡→Ⓓ頂↢受シ教勅↡於テ↢己レガ境界ニ↡
今悉ク付↢嘱ス汝等ナンダチガ手ノ中ウチニ↡→Ⓐ令ム↣悉ク付↢嘱ス汝等ナンダチガ手ノ中ウチニ↡→Ⓑ令メム悉ク付↢嘱セ汝等ナンダチガ手ノ中ニ↡
今→ⒶⒷ令
留→Ⓒ留[孫]
言 ◎「云」を「言」と上書訂記
然 ◎「燃」を「然」と上書訂記→ⒶⒷⒹ燃
天 Ⓑ「下イ」と下欄註記
出→Ⓑ抄
然 ◎「燃」を「然」と上欄訂記
月 ◎上に「大方等大集」とあるを抹消
辱→Ⓒ辰
第 Ⓑに無し([第イ」と右傍註記)
言 ◎「云」を「言」と上書訂記
又言 ◎上欄註記(「云」を「言」と上書訂記) ⒶⒹに無し→Ⓑ又云 Ⓒ「又月蔵分云イ」と右傍註記
「又…出」20字 ◎に無し
耗→◎ⒶⒷⒸ
道→ⒶⒹ道[已上]
抄出已上→ⒶⒷⒸⒹ已上抄出
闍那崛多訳 ◎Ⓐ上欄註記 ⒷⒸに無し
言→Ⓒ言[闍那崛多訳] Ⓑ「闍那崛多訳イ」と右傍註記
甥字 ◎Ⓐ上欄註記 ⒷⒸⒹに無し
舅字 ◎Ⓐ上欄註記 ⒷⒸⒹに無し
無 Ⓑに無し
邪→Ⓒ耶
日→Ⓐ曰
在→Ⓒ在[之]
日→Ⓐ曰
昭→Ⓑ胎
謂↢之ヲ遁トンノガル天之形ケイト カタチ ↡始メハ以為オモヘラク其ノ人也→Ⓐ謂↠之ヲ↣遁トンノガル天之形ケイト カタチ ↢始メハ以モテ為オモヘラク其ノ人↡也
麁→Ⓒ廉
撥ハイス スツ ルニ太史シニ云等ヒ ガ↢衆シウ画グハ ヱ ヲ↡→Ⓒ撥ハイス スツ ルニ↢太史シニ公コウ等ラガ衆シウ画グハ ヱ ヲ↡
子→Ⓐ
助タスケテ祭マツリ→Ⓒ助ケテ↠祭マツリヲ
変ハン易エキヤクス三界→ⒶⒹ変ハン↢易エキヤクス、三界ニ↡→Ⓑ変ハン↢易エキス、三界ニ↡→Ⓒ変ヘン↢易エキス、三界ニ↡
之 ◎右傍註記 ⒶⒷⒸⒹに無し
虚→Ⓑ慮([虚イ」と左傍註記)
盛ニス↢其ノ談ヲ↡詩書シヨ礼楽之文→Ⓐ盛サカリニス↢其ノ談ヲ オシフ ↡詩シ書シヨ礼レイ楽ガク之文ブン↡→Ⓑ盛サカリニス↢其ノ談オシフ詩シ書シヨ礼レイ楽ガク之文ブン
沖→Ⓒ仲
懦→ⒶⒸ𤏙
河Ⓑ何(「河イ」と左傍註記)
雪→ⒶⒷⒸⒹ雲
遇→Ⓒ過
照→ⒶⒹ昭
兵→ⒶⒷ丘(「兵イ」と上欄註記)
修→◎ⒶⒷⒸ循
経→ⒶⒷ俓
入↢流セヨトナリ法之真教ニ↡→ⒶⒹ入イラ↢流リウセヨトナリ法ハフ之真シン教カウニ↡→Ⓑ入イラセヨトナリ↢流リウ法ハフ之真教カウニ↡
謂 ◎「諸」を「謂」と上書訂記し、さらに「无歟」と上欄註記 Ⓒに無し Ⓐ「无歟」と上欄註記
已上 Ⓓに無し
文→Ⓒ已上
源信 ◎本紙を切り抜き折り込んだ裏面に補記
不ズ↠能↠事コト人→Ⓒ不ズ↠能↠事コト↠人
教行 ◎「教教」を「教行」と上書訂記
弁→Ⓒ辨
土→ⒸⒹ渡
辛 ◎上に「元年」とあるを抹消
照→Ⓒ昭
「徴…ス」8字 ◎Ⓐ上欄註記 ⒷⒸに無し
誓→Ⓒ誓[之]
法 ◎「海」を「法」と上書訂記し、さらに「法」と上欄註記