0100◎無量寿経優婆提舎願生偈註 巻下
二 Ⅱ 解義分を釈す【解義分】
ⅰ 科節
【44】 ◎^▲↓論じて↓曰はく。
◎0487†論ジテ0383*曰ク。
^これはこれ*解義分なり。 この分のなかに、 義に十重あり。 一には↓*願偈大意、 二には↓*起観生信、 三には↓*観行体相、 四には↓*浄入願心、 五には↓*善巧摂化、 六には▼↓*離菩提障、 七には↓*順菩提門、 八には↓*名義摂対、 九には↓*願事成就、 十には↓*利行満足なり。
此ハ是解義分ナリ。此ノ分ノ中ニ、義ニ有リ↢十重↡。一[ニ]者願偈大意、二[ニ]者起観生信、三[ニ]者観行体相、四[ニ]者浄入願心、五[ニ]者善巧摂化、六[ニ]者離菩提障、七[ニ]者順菩提門、八[ニ]者名義摂対、九[ニ]者願事成就、十[ニ]者利行満足ナリ。
二 Ⅱ ⅱ 文釈
a 標語を釈す
^「↑論」 とは*議なり。 いふこころは偈の所以を議するなり。 「↑曰」 とは詞なり。 下の諸句を指す。 これは偈を議釈する詞なり。 ゆゑに 「論じて曰はく」 といふ。
「論[ト]」者議也。言フココロハ議スル↢偈ノ所以ヲ↡也。「曰[ト]」者詞也。指ス↢下ノ諸句ヲ↡。是ハ議↢釈スル偈ヲ↡詞也。故ニ言フ↢「論[ジテ]曰[ク]ト」↡。
二 Ⅱ ⅱ b 正章を釈す
イ【願偈大意章】
【45】^↑願偈大意とは、
願偈大意[ト]者、
^▲この願偈はなんの義をか明かす。 かの安楽世界を観じて阿弥陀如来を見たてまつることを示現す。 かの国に生ぜんと願ずるがゆゑなり。
此[ノ]願偈ハ明ス↢何ノ義ヲカ↡。†示↧現ス観ジテ↢彼ノ安楽世界ヲ↡見タテマツルコトヲ↦阿弥陀如来ヲ↥。願ズルガ↠生[ゼム]ト↢彼ノ国ニ↡故ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ロ【起観生信章】
(一)章を標し科を分つ
【46】^↑起観生信とは、 この分のなかにまた二重あり。 一には↓*五念力を示す。 二に0101は↓*五念門を出す。
起観生信[ト]者、此ノ分ノ中ニ又有[リ]↢二重↡。一[ニ]者示ス↢五念力ヲ↡。二[ニ]者出ス↢五念門ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)文を出し義を釈す
(Ⅰ)五念力を示す
【47】^↑五念力を示すとは、
示[ス]ト↢五0488念力0384ヲ↡者、
^▲いかんが観じ、 いかんが信心を生ずる。 もし善男子・善女人、 五念門を修して行成就しぬれば、 *畢竟じて安楽国土に生じて、 かの阿弥陀仏を見たてまつることを得。
云何ガ観ジ云何ガ生ズル↢信心ヲ↡。若シ善男子・善女人修シテ↢五念門ヲ↡行成就シヌレバ、畢竟ジテ得‡↧生ジテ↢安楽国土ニ↡、見タテマツルコトヲ↦彼ノ阿弥陀仏ヲ↥。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)五念門を出す
(ⅰ)科目を牒し論文を出す
【48】^↑五念↓門を出すとは、
出[スト]↢五念門ヲ↡者、
^▲なんらか五念門。 一には↓礼拝門、 二には↓讃嘆門、 三には↓作願門、 四には↓観察門、 五には↓回向門なり。
何等カ五念門。一[ニ]者礼拝門、二[ニ]者讃嘆門、三[ニ]者作願門、四[ニ]者観察門、五[ニ]*者廻向門ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)論文を釈す
(a)総釈
^「↑門」 とは入出の義なり。 人、 門を得ればすなはち入出*無礙なるがごとし。 前の四念はこれ安楽浄土に入る門なり。 後の一念はこれ慈悲教化に出づる門なり。
「門[ト]」者入出ノ義也。如シ↢人得レバ↠門ヲ則[チ]入出无ナルガ↡。前ノ四念ハ是入ル↢安楽浄土ニ↡門ナリ。後ノ一念ハ是出[ヅ]ル↢慈悲教化ニ↡門ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)随釈
(イ)礼拝を釈す
[一]行相
[Ⅰ]論文
【49】 ^▲いかんが↑礼拝する。 身業をもつて阿弥陀↓如来・↓*応・↓正遍知を*礼拝したてまつる。
云何†ガ礼拝[スル]。身業†ヲモテ礼↢拝†シタテマツル阿弥陀如来・応・正遍知ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[一][Ⅱ]註釈
[ⅰ]総釈
^諸仏如来に、 徳無量あり。 徳無量なるがゆゑに*徳号また無量なり。 もしつぶさに談ぜんと欲せば、 紙筆に載することあたはず。 ここをもつて諸経に、 あるい0102は*十名を挙げ、 あるいは三号を騰げたり。 けだし*至宗を存ずるのみ。 あにここに尽さんや。 ^いふところの三号は、 すなはちこれ如来と応と正遍知なり。
諸仏†如来ニ徳有リ↢无量↡。徳无量ナルガ故ニ徳号亦无量ナリ。若シ欲セバ↢具ニ談ゼムト↡紙筆†モ不↠能[ハ]↠載[スルコト]也。是[ヲ]以[テ]諸経ニ、或[イハ]挙†ゲ↢十名ヲ↡、或[イハ]騰ゲタリ↢三号ヲ↡。蓋[シ]存ズ[ル]↢至宗ヲ↡†而已。豈[ニ]†此ニ尽クサム耶。所ノ↠言[フ]三号ハ、即[チ]此如来ト応†ト正遍知也。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[一][Ⅱ][ⅱ]如来を釈す
^「↑如来」 とは、 *法相のごとく解り、 法相のごとく説き、 諸仏の*安穏道より来るがごとく、 この仏もまたかくのごとく来りて、 また*後有のなかに去らず。 ゆゑに如来と名づく。
「如来[ト]」者、如ク↢法相[ノ]↡解リ、如ク↢法相[ノ]↡説キ、如ク↢諸仏[ノ]安*穏道ヨリ来ルガ↡、此ノ仏モ亦如[ク]↠是[クノ]来[リ]テ、更不↠去ラ↢後有ノ中ニ↡。故ニ名ク↢如来ト↡。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[一][Ⅱ][ⅲ]応を釈す
^「↑応」 とは応供なり。 仏は*結使除尽して一切の智慧を得て、 応に一切の天地の衆生の供養を受くべきがゆゑに応といふなり。
「応[ト]」者応供也。仏ハ結使除尽シテ得テ↢一切[ノ]智†恵[ヲ]↡、†応ニキガ↠受ク↢一切[ノ]天地ノ衆生ノ供養ヲ↡故ニ曰フ↠応ト也。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[一][Ⅱ][ⅳ]正遍知を釈す
^「↑正遍知」 とは、 一切諸法は実に不壊の相にして不増不減なりと知る。 いかんが不壊なる。 *心行処滅し、 *言語の道過ぎたり。 諸法は涅槃の相のごとくにして不動なり。 ゆゑに正遍知と名づく。
「正0489遍知0385[ト]」者、知ル↢一切諸法[ハ]実ニ不壊ノ相ニシテ不増不減ナリト↡。云何[ガ]不壊ナル。心行処滅シ‡、†言語ノ道†過ギタリ。諸法ハ†如クニシテ↢涅槃ノ相ノ↡不動ナリ。故ニ名ク↢正遍知ト↡。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[一][Ⅱ][ⅴ]別号を釈す
^無礙光の義は、 ▲前の偈のなかに解するがごとし。
无光ノ義ハ、如シ↢前ノ偈ノ中ニ解スルガ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[二]弁意
[Ⅰ]論文
【50】 ^▲かの国に生ずる意を*なすがゆゑなり。
為†スガ↧生†ズル↢彼ノ国ニ↡意ヲ↥故ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[二][Ⅱ]註釈
^なんがゆゑぞこれをいふとなれば、 菩薩の法は、 つねに昼三時・夜三時をもつて十方一切諸仏を礼す。 かならずしも願生の意あるにあらず。 いまつねに願生の意をなすべきがゆゑに、 阿弥陀如来を礼したてまつるなり。
†何ガ故ゾ言フトナレバ↠此ヲ、菩薩之法ハ、常ニ以テ↢昼三時夜三時ヲ↡礼ス↢十方一切諸仏ヲ↡。†不ズ↣必ズシモ有ルニ↢願生ノ意↡。今応キガ↣常ニ作ス↢願生ノ意ヲ↡故ニ、礼†シタテマツル↢阿弥陀如来ヲ↡也。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)讃嘆を釈す
[一]総示
[Ⅰ]論文
【51】 ^▲いかんが↑↓讃↓嘆する。 ↓口業をもつて*讃嘆したてまつる。
云何†ガ讃嘆スル。口業ヲモテ讃嘆†シタテマツル。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[一][Ⅱ]註釈
^▼「↑讃」 とは讃揚なり。 「↑嘆」 とは歌嘆なり。 讃嘆は口にあらざれば宣べず。 ゆ0103ゑに 「↑口業」 といふなり。
「讃[ト]」者讃揚也。「嘆[ト]」者歌嘆也。讃嘆[ハ]非[ザ]レバ↠口ニ不↠宣[ベ]。故ニ曰フ↢「口業ト」↡也。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[二]別顕
[Ⅰ]論文
【52】 ^▲↓*かの如来の名を称するに、 ↓かの如来の光明智相のごとく、 ↓かの名義のごとく、 如実に修行して相応せんと欲するがゆゑなり。
称†スルニ↢彼ノ如来ノ名ヲ↡、如ク↢彼ノ如来ノ光明智相ノ↡、如ク↢彼ノ名義ノ↡、欲[スル]ガ↢†如実ニ修行シ[テ]相応セムト↡故ナリ‡。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅱ]註釈
[ⅰ]称名を釈す
^◆「↑かの如来の名を称す」 とは、 いはく、 ▼無礙光如来の名を称するなり。
「†称スト↢彼ノ如来ノ名ヲ↡」者、謂ク称†スル↢无光如来ノ名ヲ↡也。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅱ][ⅱ]光明を釈す
^◆「↑かの如来の光明智相のごとく」 とは、 仏の光明はこれ智慧の相なり。 ▼この光明は十方世界を照らしたまふに*障礙あることなし。 ▼よく十方衆生の無明の黒闇を除くこと、 日・月・珠光のただ空穴のなかの闇をのみ破するがごときにはあらず。
「†如クト↢彼ノ如来ノ光明智相ノ↡」者、仏ノ光明ハ是智†恵ノ相也。此ノ光明ハ照シタマフニ↢十方世界ヲ↡无シ↠有[ル]コト↢障↡。能ク除クコト↢十方衆生ノ无明ノ黒闇ヲ↡、非†ズ↠如キニハ↣日月珠光ノ但破スルガ↢空穴ノ中ノ闇ヲ[ノミ]↡也。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅱ][ⅲ]相応を釈す
[a]所相応を標す【名号破満】
^▼「↑かの名義のごとく、 ↓如実に修行して相応せんと欲す」 とは、 ▼かの無礙光如来の名号は、 よく衆生の一切の無明を破し、 よく衆生の一切の*志願を満てたまふ。
「†如ク↢彼ノ名義ノ↡、欲スト↢如実ニ修行シテ相応セムト↡」者、彼ノ无光如来ノ名号ハ、能ク破シ↢衆生ノ一切ノ无明ヲ↡、能ク満テタマフ↢衆生0386ノ一0490切ノ志願ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅱ][ⅲ][b]能相応を弁ず
[イ]不相応を簡ぶ
ª一º不相応行を標す
^◆しかるに名を称し憶念すれども、 無明なほありて所願を満てざるものあり。 ▼なんとなれば、 如実に修行せず、 ▼名義と相応せざるによるがゆゑなり。
然[ル]ニ†有リ↧称シ↠名ヲ憶念スレドモ而无明由†在リテ而不ル↠満[テ]↢所願ヲ↡者↥。何トナレバ*者由[ル]ガ↧†不↢如実[ニ]修行セ↡、与↢名義↡不ルニ↦相応セ↥故也。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅱ][ⅲ][b][イ]ª二º不相応心を弁ず
ªⅠº聞不具足に約す
^◆いかんが如実に修行せず、 名義と相応せざるとなすとならば、 いはく、 如来はこれ*実相身なり、 これ為物身なりと知らざればなり。
云何[ガ]†為ストナラバ↧†不↢如実[ニ]修行セ↡、与↢名義↡不ルト↦相応セ↥、謂ク不†レバナリ↠知ラ↢如来ハ是実相‡身ナリ、是†為物身ナリト↡。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅱ][ⅲ][b][イ]ª二ºªⅡº信不具足に約す【三不知三不信】
^◆また*三種の不相応あり。 ▼一には信心淳からず、 *存ずるがごとく亡ずるがごときゆゑなり。 ▼二には信心一ならず、 決定なきがゆゑなり。 ▼三には信心相続せず、 余念間つるがゆゑなり。
又有[リ]↢三種ノ不相応↡。一ニ者信心不↠淳[カラ]、若†ク↠存[ズ]ルガ若キ‡↠亡[ズ]ルガ故†ナリ。二[ニ]者信心不↠一ナラ、无キガ↢決定↡故†ナリ。三[ニ]者信*心不↢相続セ↡、余念間ツルガ故ナリ。
^▼この三句展0104転してあひ成ず。 信心淳からざるをもつてのゆゑに決定なし。 ▼決定なきがゆゑに念相続せず。 また念相続せざるがゆゑに決定の信を得ず。 ▼決定の信を得ざるがゆゑに心淳からざるべし。
此ノ三句展転シテ相成ズ。以[テ]ノ↢信心不ルヲ↟淳[カ]ラ故ニ无シ↢決定↡。无キガ↢決定↡故ニ念不↢相続セ↡。亦可シ↧念不ルガ↢相続[セ]↡故ニ不↠得↢決定ノ信ヲ↡、不[ル]ガ↠得↢決定ノ信ヲ↡故ニ心不ル↞淳[カラ]。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅱ][ⅲ][b][ロ]能相応を明す
^▼これと相違せるを ▼「↑如実に修行し相応す」 と名づく。
与↠此相違セルヲ名ク↢「如実[ニ]修行[シ]相応[ス]ト」↡。
^◆このゆゑに論主 (*天親)、 「▲我一心」 と建言す。
是ノ故ニ論主†建↢言ス「我一心ト」↡。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅱ][ⅲ][c]問答料簡【名法相即】
[イ]問
^▼問ひていはく、 名をば法の指となす。 指をもつて*月を指すがごとし。 もし仏の名号を称するにすなはち願を満つることを得といはば、 月を指す指、 よく闇を破すべし。 もし月を指す指、 闇を破することあたはずは、 仏の名号を称すとも、 またなんぞよく願を満てんや。
問[ヒテ]曰[ク]、名ヲバ為ス↢法ノ指ト↡。*如シ↢指†ヲモテ†指スガ↟*日[ヲ]。若[シ]称スルニ↢仏ノ名号ヲ↡*便[チ]†得トイハバ↠満[ツル]コトヲ↠願ヲ者、†指ス↠*日ヲ之指、応シ↢能ク破ス↟闇ヲ。若[シ]†指ス↠*日ヲ之指、不ハ↠能[ハ]↠破[スル]コト↠闇ヲ、称ストモ↢仏ノ名号ヲ↡、亦何ゾ能ク満†テム↠願ヲ耶。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅱ][ⅲ][c][ロ]答
^◆答へていはく、 諸法万差なり。 一概すべからず。 ↓*名の法に即するあり。 ↓名の法に異するあり。
答[ヘテ]曰[ク]、諸法万差ナリ。不↠可[カ]ラ↢一概ス↡。有リ↢名ノ即スル↟法ニ。有リ↢名ノ異スル↟法ニ。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅱ][ⅲ][c][ロ]ª一º名の法に即する
^◆↑名の法に即するとは、 諸仏・菩薩の名号、 般若波羅蜜、 および陀羅尼の章句、 *禁呪の音辞等これなり。
名ノ即[スルト]↠法ニ者、諸仏菩薩ノ名号、般若波羅蜜、及[ビ]陀羅尼[ノ]章句、禁*呪[ノ]音辞等是也。
^◆禁腫の辞に、 「*日出東方乍赤乍黄」 等の句をいふがごとし。 たとひ*酉亥に禁を行じて、 日出に関らざれども、 腫、 差ゆることを得。
†如シ↣禁腫ノ辞ニ云フガ↢日出東方乍赤乍黄等ノ句ヲ↡。仮使酉亥ニ行ジテ↠禁ヲ、不レドモ↠関ラ↢日出ニ↡而腫得↠差[ユ]ルコトヲ。
^また師に行くに陣に対ひてただ一たびも切歯のなかに 「*臨兵闘者皆陣列前行」 と誦するがごとし。 この九字を誦するに*五兵の中らざるところなり。 ¬*抱朴子¼ これを*要道といふものなり。
亦如シ↣行クニ↠師ニ対ヒテ↠陣ニ但*一タビモ切ノ歯ノ中ニ誦スルガ↢臨兵闘者皆陣列在前行ト↡。誦[ス]ルニ↢此ノ九字ヲ↡五兵之所ナリ↠不ル↠中ラ。¬抱朴子¼謂フ↢之ヲ要道ト↡者也。
^▼また転筋を苦しむもの、 木瓜をもつて火に対てこれを*熨すにすなはち愈0105えぬ。 また人ありて、 ただ木瓜の名を呼ぶにまた愈えぬ。 わが身にその効を得るなり。
又苦シム‡↢転筋ヲ↡者、以テ↢木*瓜[ヲ]↡対テ↠火[ニ]*慰スニ↠之ヲ則[チ]愈0387エヌ。復0491有[リテ]↠人但呼ブニ↢木*瓜ノ名ヲ↡亦愈[エ]ヌ。吾ガ身ニ得ル↢其ノ効ヲ↡也。
^かくのごとき*近事は世間にともに知れり。 いはんや不可思議の境界なるものをや。 *滅除薬を鼓に塗る喩へ、 またこれ一事なり。 この喩へはすでに▲前に彰すゆゑにかさねて引かず。
如[キ]↠斯[クノ]近事[ハ]世間ニ共ニ知レリ。況ヤ不可思議ノ境界ナル者ヲ乎。滅除薬ヲ塗ル↠鼓ニ之喩、復是一事ナリ。此ノ喩ハ已ニ彰ス†↢於前ニ↡故ニ不↢重テ*引[カ]↡。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅱ][ⅲ][c][ロ]ª二º名の法に異する
^▼↑名の法に異するありとは、 指の月を指すがごとき等の名なり。
有[リ]ト‡↢名ノ異スル↟*法ニ者、†如キ↢指ノ指スガ↟*日ヲ等ノ名也。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ハ)作願を釈す
[一]論文
【53】 ^▲いかんが↑作願する。 *心につねに願を作し、 一心にもつぱら畢竟じて安楽国土に往生せんと念ず。 ↓如実に↓奢摩他を修行せんと欲するがゆゑなり。
云何[ガ]作願スル。心ニ常ニ†作シ↠願ヲ、一心ニ†専ラ念ズ↣畢竟ジテ往↢生セムト安楽国土ニ↡。†欲スルガ↣†如実ニ修↢行セムト奢摩他ヲ↡故†ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ハ)[二]註釈
[Ⅰ]総釈
^「↑奢摩他」 を訳して 「止」 といふ。 「止」 とは、 心を一処に止めて悪をなさず。
訳シテ↢「奢摩他ヲ」↡曰[フ]↠止ト。止[ト]者止[メ]テ↢心ヲ一処ニ↡不ル↠作サ↠悪ヲ也。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ハ)[二][Ⅱ]別弁
[ⅰ]漢語の浮漫を弁ず
^この訳名はすなはち大意に乖かざれども、 義においていまだ満たず。 なにをもつてこれをいふとならば、 *心を鼻端に止むるがごときをもまた名づけて止となす。 *不浄観の貪を止め、 *慈悲観の瞋を止め、 *因縁観の痴を止む。 かくのごとき等をもまた名づけて止となす。 人のまさに行かんとして行かざるがごときをもまた名づけて止となせばなり。
此ノ訳名ハ乃[チ]不レドモ↠乖カ↢大意ニ↡、於テ↠義ニ未ズ ダ↠満タ。何ヲ以テ言[フ]トナラバ↠之ヲ、如キヲモ↠止[ムル]ガ↢心ヲ鼻端ニ↡亦名[ケ]テ為ス↠止ト。不浄観ノ止[メ]↠貪ヲ、慈悲観ノ止[メ]↠瞋ヲ、因縁観ノ止[ム]↠痴ヲ。如[キ]↠是[クノ]等ヲモ亦名[ケテ]為[ス]↠止ト。†如キヲモ↢人ノ将シ ニテ↠行[カム]ト不ルガ↟行カ亦名[ケテ]為†セバナリ↠止ト。
^ここに知りぬ、 止の語は*浮漫にしてまさしく奢摩他の名を得ずと。 ▽*椿・柘・楡・柳のごときをみな木と名づくといへども、 も0106しただ木といふときは、 いづくんぞ楡・柳を得んや。
是ニ知[リ]ヌ止ノ語ハ浮漫[ニ]シテ不[ト]↣正シク得↢奢摩他ノ*名ヲ↡也。如[キ]ヲ↢椿柘楡ニレ柳ノ↡雖[モ]↢皆名[ク]ト↟木ト、若[シ]但云フトキハ↠木ト安ンゾ得[ム]↢楡柳ヲ↡耶。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ハ)[二][Ⅱ][ⅱ]今論の止義を明す
^「奢摩他」 を止といふは*含みて三の義あり。
奢摩他ヲ云[フ]↠止ト者*合シ↠有ル↢三ノ義↡。
^一には一心にもつぱら阿弥陀如来を念じてかの土に生ぜんと願ずれば、 この如来の名号およびかの国土の名号、 よく一切の悪を止む。
一[ニ]者一心ニ専[ラ]念ジテ↢阿弥陀如来ヲ↡願[ズ]レバ↠生[ゼム]ト↢彼ノ土ニ↡、此ノ如来ノ名号及[ビ]彼ノ国土ノ名号能ク止ム↢一切ノ悪ヲ↡。
^二にはかの安楽土は三界の道に過ぎたり。 もし人またかの国に生ずれば、 自然に身口意の悪を止む。
二[ニ]者彼ノ安楽土ハ過[ギ]タリ↢三界ノ道ニ↡。若シ人亦生†ズレバ↢彼ノ国ニ↡、自然ニ止ム↢身口意ノ悪ヲ↡。
^三には阿弥陀如来の正覚住持の力、 自然に声聞・辟支仏を求むる心を止む。
三[ニ]者阿弥陀如来[ノ]正覚住持ノ力‡、自然ニ止ム↧求ムル↢声聞・辟支仏ヲ↡心ヲ↥。
^この三種の止は如来の如実の功徳より生ず。 このゆゑに 「↑如実に奢摩他を修行せんと欲するがゆゑなり」 といへり。
此ノ三種ノ止ハ従リ↢如来[ノ]如実ノ功徳↡生ズ。是ノ故[ニ]†言ヘリ↢「欲↣如実修↢行奢摩他↡故ト」↡。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ニ)観察を釈す
[一]能観を明す
[Ⅰ]論文
【54】 ^▲いかんが↑観察する。 智慧をもつて*観察し、 正念にかしこを観ず。 ↓如実に↓毘婆舎那を修行せんと欲するがゆゑなり。
0492云何0388[ガ]観察スル。智†恵†ヲモテ観察シ‡、正念ニ観†ズ↠彼ヲ。†欲スルガ↣†如実ニ修↢行セムト毘婆舎那ヲ↡故ナリ‡。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ニ)[一][Ⅱ]註釈
[ⅰ]総じて漢語の浮漫を明す
^「↑毘婆舎那」 を訳して 「観」 といふ。 ただ汎く観といふには、 義またいまだ満たず。 なにをもつてこれをいふとならば、 身の無常・苦・空・無我・*九想等を観ずるがごときをも、 みな名づけて観となせばなり。 また△上の木の名の椿・柘を得ざるがごとし。
訳シテ↢「毘婆舎那ヲ」↡曰フ↠観ト。但汎ク言[フ]ニハ↠観ト、義亦未ズ ダ↠満タ。何ヲ以[テ]言フトナラバ↠之ヲ、如キヲモ↠観[ズルガ]↢身ノ无常・苦・空・无我・九*想等ヲ↡、皆名[ケ]テ為†セバナリ↠観ト。亦†如シ↢上ノ木ノ名ノ不ルガ↟得↢椿柘[ヲ]↡也。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ニ)[一][Ⅱ][ⅱ]別して今論の観義を顕す
^「毘婆舎那」 を観といふはまた二の義あり。
毘婆舎那ヲ云[フ]↠観ト者亦有リ↢二ノ義↡。
^一には、 ここにありて想をなして▽かの三種の荘厳功徳を観ずれば、 この功徳如実なるがゆゑに、 修行するものもまた如実の功徳を得。 如実の功徳とは、 決定してかの土に0107生ずることを得るなり。
一[ニ]者在[リ]テ↠此ニ作[シ]テ↠想ヲ観ズレバ↢彼ノ三種ノ荘厳功徳ヲ↡、此ノ功徳如実ナルガ故ニ修行†スル者モ亦得↢如実ノ功徳ヲ↡。*如実ノ功徳[ト]者、決定シテ得ルナリ↠生[ズルコト]ヲ↢彼ノ土ニ↡。
^二には、 またかの浄土に生ずることを得れば、 すなはち阿弥陀仏を見たてまつり、 *未証浄心の菩薩、 畢竟じて*平等法身を証することを得。 *浄心の菩薩と*上地の菩薩と、 畢竟じて同じく*寂滅平等を得るなり。
二[ニ]者亦得レバ↠生[ズルコト]ヲ↢彼ノ浄土ニ↡、即[チ]見†タテマツリ↢阿弥陀仏ヲ↡、未証浄心ノ菩薩、畢竟ジテ†得↠証スルコトヲ↢平等法身ヲ↡。与↢浄心ノ菩薩↡与↢上地[ノ]菩薩↡畢竟ジテ同[ジ]ク得[ルナリ]↢寂滅平等ヲ↡。
^このゆゑに 「↑如実に毘婆奢那を修行せんと欲するがゆゑなり」 といへり。
是ノ故ニ†言ヘリ↢「欲↣如実修↢行毘婆奢那↡故ト」↡。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ニ)[二]所観を出す
[Ⅰ]論文
【55】 ^▲かの↓観↓察に三種あり。 なんらか三種。 一にはかの仏国土の荘厳功徳を観察す。 二には阿弥陀仏の荘厳功徳を観察す。 三にはかの諸菩薩の荘厳功徳を観察す。
彼ノ観察ニ有[リ]↢三種↡。何等カ三種。一[ニ]者観↢察ス彼ノ仏国土ノ荘厳功徳ヲ↡。二[ニ]者観↢察ス阿弥陀仏ノ荘厳功徳ヲ↡。三[ニ]者観↢察ス彼ノ諸菩薩ノ荘厳功徳ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ニ)[二][Ⅱ]註釈
^心にその事を縁ずるを 「↑観」 といふ。 *観心分明なるを 「↑察」 といふ。
心ニ縁[ズル]ヲ↢其[ノ]事ヲ↡曰フ↢「観ト」↡、観心分明†ナルヲ曰フ↢「察ト」↡。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ホ)回向を釈す
[一]論文
【56】 ^▲いかんが↑↓*回向する。 一切苦悩の衆生を捨てずして、 心につねに願を作し、 ↓回向を首となす。 大悲心を成就することを*得んとするがゆゑなり。
云何[ガ]廻向スル。不シテ↠捨[テ]↢一切苦悩ノ衆生ヲ↡、心ニ常ニ作↠願[シ]、廻向ヲ†為ス↠首ト。得†ムトスルガ↣成↢就[スル]コトヲ大悲心ヲ↡故†ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ホ)[二]註釈
[Ⅰ]標列【往還回向】
^▼「↑回向」 に二種の相あり。 一には↓往相、 二には↓還相なり。
「廻向ニ」有リ↢二種ノ相↡。一[ニ]者往相、*二[ニ]者還相ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ホ)[二][Ⅱ]随釈
[ⅰ]往相
^▼「↑往相」 とは、 おのが功徳をもつて*一切衆生に回施して、 ともにかの阿弥陀如来の安楽浄土に往生せんと作願するなり。
往相[ト]者、以テ↢†己ガ功徳ヲ↡廻↢施シテ一切衆0493生ニ↡、0389†作↣願スルナリ共ニ往↢生セムト彼ノ阿弥陀如来ノ安楽浄土ニ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ホ)[二][Ⅱ][ⅱ]還相
^▼「↑還相」 とは、 かの土に生じをはりて、 奢摩他・毘婆舎那を得、 方便力成就すれば、 生死の*稠林に回入して一切衆生を教化して、 ともに*仏道に*向かふなり。
還相[ト]者、生[ジ]↢彼ノ土ニ↡已[リ]テ、†得↢奢摩他・毘*婆舎那ヲ↡、方便力成就スレバ、廻↢入シテ生死ノ稠林ニ↡教↢化シテ一切衆生ヲ↡、共ニ向†フナリ↢仏道ニ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ホ)[二][Ⅲ]結示
^▼もしは往、 もしは還、 みな衆生を抜きて生死海を渡せん0108がためなり。 このゆゑに 「↑回向を首となす。 大悲心を成就することを得んとするがゆゑなり」 といへり。
若[シ]ハ往若[シ]ハ還、皆為ナリ↧抜[キ]テ↢衆生ヲ↡渡[セム]ガ↦生死海ヲ↥。是[ノ]故[ニ]†言ヘリ↢「廻向為↠首†得↣成↢就大悲心↡故ト」↡。
二 Ⅱ ⅱ b ロ ハ【観察体相章】
(一)章を標し科を分つ
【57】^↑*観察体相とは、 この分のなかに二の体あり。 一には↓*器体、 二には↓*衆生体なり。
観察体相[ト]者、此ノ分ノ中ニ有[リ]↢二ノ体↡。一[ニ]者器体、二[ニ]者衆生体ナリ。
^↑器の分のなかにまた三重あり。 一には↓国土の*体相。 二には↓自利利他を示現す。 三には↓第一義諦に入るなり。
器[ノ]分ノ中ニ又有[リ]↢三*重↡。一[ニ]者国土ノ体相。二[ニ]者示↢現ス自利利他ヲ↡。三[ニ]者入ル[ナリ]↢*第一義諦ニ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)文を出し義を釈す
(Ⅰ)器体
(ⅰ)国土体相
(a)科目を標す
【58】^↑国土の体相とは、
国土ノ体相[ト]者、
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)正しく文を釈す
(イ)総嘆
[一]論文
^▲いかんがかの仏国土の荘厳功徳を観察する。 ▼かの仏国土の荘厳功徳は↓不可思議力を成就せるがゆゑなり。 ↓かの摩尼如意宝の性のごときに↓相似相対の法なるがゆゑなり。
云何ガ観↢察スル彼ノ仏国土ノ荘厳功徳ヲ↡。彼ノ仏国土ノ荘厳功徳者成↢就セルガ不可思議力ヲ↡故†ナリ。†如キニ↢彼ノ摩尼如意宝[ノ]性ノ↡相似相対ノ法ナルガ故†ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(イ)[二]註釈
[Ⅰ]釈法
^▼「↑不可思議力」 とは、 総じてかの仏国土の十七種の荘厳功徳力の、 思議することを得べからざるを指すなり。 ▼諸経に統べてのたまはく、 *五種の不可思議あり。 一には衆生多少不可思議、 二には業力不可思議、 三には竜力不可思議、 四には禅定力不可思議、 ▼五には仏法力不可思議なり。
「不可思議力[ト]」者、総ジテ指ス↢彼ノ仏国土ノ十七種ノ荘厳功徳力[ノ]不ルヲ↟可[カラ]↠得↢思議[スル]コトヲ↡也。諸経ニ†統ベテ言ハク、有リ↢五種ノ不*可思議↡。一[ニ]者衆生多少不可思議、二[ニ]者業力不可思議、三[ニ]者竜力不可思議、四[ニ]者禅定力不可思議、五[ニ]者仏法力不可思議[ナリ]。
^▼このなかの仏土不可思議に二種の力あり。 ▼一には業力、 いはく、 法蔵菩薩の出世の善根、 大願業力の所成なり。 ▼二には正覚の*阿弥陀法王善住持力の所摂なり。 この不可思議は下の↓十七種0109のごとし。 一々の相みな不可思議なり。 文に至りてまさに釈すべし。
此ノ中ノ仏土不可思議ニ有[リ]↢二種ノ力↡。一[ニ]者業力、謂ク法蔵菩薩ノ出世ノ善根‡、大願業力‡ノ所成ナリ。二[ニ]者正覚ノ阿弥陀法王善住持力0494†ノ†所0390摂ナリ。此ノ不可思議ハ如シ↢下ノ十七種ノ↡。一一ノ相皆不可思議ナリ。至[リ]テ↠文ニ当ニシ↠釈ス。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅱ]釈譬
[ⅰ]如彼摩尼を釈す
^「↑かの摩尼如意宝の性のごときに相似相対」 といふは、 かの摩尼如意宝の性を借りて、 安楽仏土の不可思議の性を示すなり。
†「如キニ↢彼ノ摩尼如意宝ノ性ノ↡相似相対トイフ」者、借[リ]テ↢彼ノ摩尼如意宝ノ性ヲ↡、示[ス]↢安楽仏土ノ不*可思議ノ性ヲ↡也。
^諸仏*入涅槃の時、 方便力をもつて*砕身の舎利を留めてもつて衆生を福す。 衆生の福尽きぬれば、 この舎利変じて摩尼如意宝珠となる。 この珠は多く大海のなかにあり。 大竜王、 もつて首の飾りとなせり。
諸仏入涅槃ノ時、以テ↢方便力ヲ↡留[メ]テ↢砕身ノ舎利ヲ↡以テ†福ス↢衆生ヲ↡。衆生ノ福尽[キヌ]レバ此ノ舎利変ジテ為ル↢摩尼如意宝珠ト↡。此ノ珠ハ多ク在リ↢大海ノ中ニ↡。大竜王以[テ]為セリ↢首ノ飾ト↡。
^もし転輪聖王世に出づるときは、 慈悲方便をもつてよくこの珠を得て、 閻浮提において*大饒益をなす。 もし衣服・飲食・灯明・楽具、 意の所欲に随ひて種々の物を須ゐる時に、 王すなはち*潔斎して、 珠を長竿の頭に置きて願を発していはく、 「もしわれ実にこれ転輪王ならば、 願はくは宝珠、 かくのごとき物を雨らして、 もしは一里に遍し、 もしは十里、 もしは百里に、 わが心願に随へ」 と。
若シ転輪聖王出[ヅ]ルトキハ↠世ニ、以テ↢慈悲方便ヲ↡能ク得テ↢此ノ珠ヲ↡、於テ↢閻浮提ニ↡作ス↢大饒益ヲ↡。若[シ]須ヰル‡↧衣服・飲食・灯明・楽具、随[ヒ]テ↢意ノ所欲ニ↡種種ノ物ヲ↥時ニ、王便チ潔*斎シテ、†置キテ↢珠ヲ於長*竿サヲノ頭ニ↡発シテ↠願[ヲ]†言ク、若シ我実ニ是転輪王ナラバ者、願[ク]ハ宝珠、†雨ラシテ↢如[キ]↠此[クノ]*之物ヲ↡、若[シ]ハ遍シ↢一里ニ↡、若[シ]ハ十里、若[シ]ハ百里ニ、随ヘト↢我ガ心願ニ↡。
^その時にすなはち、 虚空のなかにおいて種々の物を雨らして、 みな*所須に称ひて天下の一切の人の願を満足せしむ。 この宝性の力をもつてのゆゑなり。
爾[ノ]時ニ即便[チ]於テ↢虚空ノ中ニ↡†雨ラシテ↢種種ノ物ヲ↡、皆称ヒテ↢所*須ニ↡満↢足†セシム天下ノ一切[ノ]人ノ願ヲ↡。以テノ↢此ノ宝性ノ力ヲ↡故ナリ。
^かの安楽仏土もまたかくのごとし。 安楽の性、 種々に成就せるをもつてのゆゑなり。
彼ノ安楽仏土モ亦如シ↠是[ク]ノ。以[テ]ノ↢安楽ノ性種種ニ成就セルヲ↡故†ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅱ][ⅱ]相似相対を釈す
^「↑相似相対」 とは、 かの宝珠の力、 衣食を求むるには、 よく衣食等の物を雨らして求むるものの意に称ふ。 これ求めざるにはあらず。 かの仏土はす0110なはちしからず。 性満足し成就せるがゆゑに、 乏少するところなし。 かの性を片取して喩へとなす。 ゆゑに相似相対といへり。
「相似相対[ト]」者、彼ノ宝珠ノ力求[ム]ルニ↢衣食ヲ↡者、能ク†雨ラシテ↢衣食等ノ物ヲ↡称フ↢求[ムル]者ノ意ニ↡。非ズ↢是不[ル]ニハ↟求メ。彼ノ仏土ハ則[チ]不↠然[ラ]。性満足シ成就[セ]ルガ故ニ、无シ↠所↢乏少[スル]↡。†片↢取シテ*彼ノ性ヲ↡為ス↠喩ト。故ニ†言ヘリ↢相似相対ト↡。
^またかの宝は、 ただよく衆生に衣食等の願を与ふるも、 衆生に*無上道の願を与ふることあたはず。 またかの宝は、 ただよく衆生に一身の願を与ふるも、 衆生に*無量身の願を与ふることあたはず。 かくのごとき等の無量の差別あるがゆゑに相似といへり。
又彼ノ宝ハ但能ク与フ[ルモ]↢衆生†ニ衣食等ノ願ヲ↡、不↠能ハ↠与[フル]コト↢衆生ニ无上道ノ願ヲ↡。又彼ノ宝ハ但能ク与フ[ルモ]↢衆生†ニ一身ノ願ヲ↡、不↠能ハ↠与[フル]コト↢衆生ニ无量身ノ願ヲ↡。有ルガ↢如[キ]↠是[クノ]等ノ无量ノ差別↡故ニ言ヘリ‡↢相似ト↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ロ)挙章【器世間】
[一]論文
【59】 ^▲かの仏国土の荘厳功徳成就を観察すとは↑十七種あり。 知るべし。 なんらか十七。
0495観↢察0391[ス]ト‡彼ノ仏国土ノ荘厳功徳成就ヲ↡者、有リ↢十七種↡。応シ↠知ル。何等カ十七。
^一には↓荘厳清浄功徳成就、 二には↓荘厳*量功徳成就、 三には↓荘厳性功徳成就、 四には↓荘厳形相功徳成就、 五には↓荘厳種々事功徳成就、 六には↓荘厳妙色功徳成就、
一[ニ]者荘厳清浄功徳成就、二[ニ]者荘厳量功徳成就、三[ニ]者荘厳性功徳成就、四[ニ]者荘厳形相功徳成就、五[ニ]者荘厳種種事功徳成就、六[ニ]者荘厳妙色功徳成就、
^七には↓荘厳触功徳成就、 八には↓荘厳三種功徳成就、 九には↓荘厳雨功徳成就、 十には↓荘厳光明功徳成就、 十一↓には荘厳妙声功徳成就、 十二には↓荘厳主功徳成就、
七[ニ]者荘厳触功徳成就、八[ニ]者荘厳三種功徳成就、九[ニ]者荘厳雨功徳成就、十[ニ]者荘厳光明功徳成就、十一[ニ]者荘厳*妙声功徳成就、十二[ニ]者荘厳主功徳成就、
^十三には↓荘厳眷属功徳成就、 十四には↓荘厳受用功徳成就、 十五には↓荘厳無諸難功徳成就、 十六には↓荘厳大義門功徳成就、 十七には↓荘厳一切所求満足功徳成就なり。
十三[ニ]者荘厳眷属功徳成就、十四[ニ]者荘厳受用功徳成就、十五[ニ]者荘厳无*諸難功徳成就、十六[ニ]者荘厳大義門功徳成就、十七[ニ]者荘厳一切所求*満足功徳成就ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ロ)[二]註釈
^先づ*章門を挙げ、 次に続きて*提釈す。
先ヅ挙ゲ↢章門ヲ↡、次ニ†続キテ提釈ス。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)提釈
[一]清浄功徳を釈す
[Ⅰ]論文
【011160】 ^▲↑荘厳清浄功徳成就とは、 偈に 「観彼世界相 勝過三界道」 といへるがゆゑなり。
荘厳清浄功徳成就[ト]者、偈ニ†言ヘルガ↢「観彼世界相勝過三界道ト」↡故†ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)[一][Ⅱ]註釈
^▼これいかんが不思議なる。 ▼凡夫人ありて煩悩成就するもまたかの浄土に生ずることを得れば、 三界の*繋業、 畢竟じて牽かず。 すなはちこれ▼煩悩を断ぜずして*涅槃分を得。 いづくんぞ思議すべきや。
此云何ガ*不思議ハカルナル‡。†有リテ↢凡夫人↡煩悩成就スルモ亦得レバ↠生[ズル]コトヲ↢彼ノ浄土ニ↡、三*界ノ繋業、畢竟ジテ不↠牽ケンカ。*則[チ]*是不シテ↠断ゼ↢煩悩ヲ↡得↢涅槃分ヲ↡。焉ンゾ可キヤ↢思議ス↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)[二]量功徳を釈す
[Ⅰ]論文
【61】 ^▲↑荘厳量功徳成就とは、 偈に 「究竟如虚空 広大無辺際」 といへるがゆゑなり。
荘厳量功徳成就[ト]者、偈ニ言ヘルガ↢「究竟如虚空広大无辺際ト」↡故†ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)[二][Ⅱ]註釈
[ⅰ]広狭無礙を明す
^これいかんが不思議なる。 かの国の人天、 もし意に宮殿・*楼閣、 もしは広さ一由旬、 もしは百由旬、 もしは千由旬、 ˆその数ˇ 千間、 万間ならんと欲すれば、 心に随ひて成ずるところなり。 人おのおのかくのごとし。
此0496云何0392[ガ]不思議ナル‡。彼ノ国ノ人天、若[シ]意ニ†欲スレバ↢宮殿楼閣、若[シ]ハ広サ一由旬、若[シハ]百由旬、若[シハ]千由旬、千間万間ナラムト↡、随[ヒテ]↠心ニ所ナリ↠成ズル。人各[ノ]如シ↠此[ク]ノ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)[二][Ⅱ][ⅱ]受用無尽を示す
^また十方世界の衆生、 往生を願ずれば、 もしはすでに生れ、 もしはいま生れ、 もしはまさに生るべし。 一時一日のあひだをも*算数するに、 その多少を知ることあたはざるところなり。 ▼しかもかの世界つねに虚空のごとし。 ▲*迫迮の相なし。
又十方世界ノ衆生願[ズレバ]↢往生ヲ↡者、若[シ]ハ已ニ生レ、若[シ]ハ今生レ、若[シ]ハ†当ニシ生ル。一時一日之*項[ヲモ]、算数ノ所ナリ↠不ル↠能[ハ]↠知[ル]コト↢其ノ多少ヲ↡。†而モ彼ノ世界常ニ若シ↢虚空ノ↡。无シ↢ 迫セマリ 迮セマルノ相↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)[二][Ⅱ][ⅲ]志願広大を顕す
^◆かしこのなかの衆生、 かくのごとき量のなかに住して、 志願広大にしてまた虚空のごとくして限量あることなからん。 かの国土の量、 よく衆生の*心行の量を成ず。 なんぞ思議すべきや0112。
彼ノ中ノ衆生、住シテ↢如[キ]‡↠此[クノ]量ノ中ニ↡、志願広大ニシテ亦如[ク]シテ↢虚空ノ↡无†カラム↠有[ル]コト↢限量↡。彼ノ国土ノ量、能ク成ズ↢衆生ノ心行ノ量ヲ↡。何ゾ可キヤ↢思議ス↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)[三]性功徳を釈す
[Ⅰ]論文
【62】 ^▲↑荘厳性功徳成就とは、 偈に 「正道大慈悲 出世善根生」 といへるがゆゑなり。
荘厳性功徳成就[ト]者、偈ニ†言ヘルガ↢「正道大慈悲出世善根生ト」↡故†ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)[三][Ⅱ]註釈
^これいかんが不思議なる。 たとへば*迦羅求羅虫の、 その形微小なれども、 もし大風を得れば身は大山のごとし。 風の大小に随ひておのが身相となすがごとし。
此云何[ガ]*不思議ナル。譬[ヘ]バ如シ↧迦羅求羅虫ノ其ノ形微小ナレドモ、若シ得レバ↢大風ヲ↡身[ハ]如シ↢大山ノ↡、随[ヒ]テ↢風ノ大小ニ↡為スガ↦†己ガ身相†ト↥。
^安楽に生ずる衆生もまたかくのごとし。 かの*正道の世界に生ずれば、 すなはち*出世の善根を成就して正定聚に入ること、 またかの風の、 身にあらずして身なるがごとし。 いづくんぞ思議すべきや。
生ズル↢安楽ニ↡衆生モ亦復如[シ]↠是[ク]ノ。生[ズ]レバ↢彼ノ正道ノ世界ニ↡、即[チ]成↢就シテ出世ノ善根ヲ↡入[ル]コト↢正定聚ニ↡、亦如シ↢彼ノ風ノ非ズシテ↠身ニ而身[ナルガ]↡。焉ンゾ可キヤ↢思議ス↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)[四]形相功徳を釈す
[Ⅰ]論文
【63】 ^▲↑荘厳形相功徳成就とは、 偈に 「浄光明満足 如鏡日月輪」 といへるがゆゑなり。
荘厳形相功徳成就[ト]者、偈ニ†曰ヘルガ↢「浄光明満足如鏡日月輪ト」↡故†ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)[四][Ⅱ]註釈
^これいかんが不思議なる。 それ忍辱は*端正を得。 わが心の*影響なり。 一たびかしこに生ずることを得れば、 *瞋・忍の殊なりなし。 人天の*色像は平等妙絶なり。 けだし浄光の力なり。 かの光は心行にあらずして心行の事をなす。 いづくんぞ思議すべきや。
此云何[ガ]不思議ナル。夫忍辱ハ得↢端正ヲ↡。我[ガ]心ノ影*嚮也。一タビ†得レバ↠生[ズル]コトヲ↠彼ニ、无シ↢瞋忍之殊[ナリ]↡。人天ノ色像[ハ]平等妙絶ナリ。蓋シ浄光之力*也。彼ノ光[ハ]非[ズ]↢心行[ニ]↡而為ス↢心行之事ヲ↡。焉ンゾ可キヤ↢思議ス↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)[五]種々事功徳を釈す
[Ⅰ]論文
【64】 ^▲↑荘厳種々事功徳成就とは、 偈に 「備諸珍宝性 具足妙荘厳」 といへる0113がゆゑなり。
荘厳種種事功徳成就[ト]者、偈ニ†曰ヘルガ↢「備諸珍宝性具足妙荘厳ト」↡故†ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)[五][Ⅱ]註釈
^これいかんが不思議なる。 かの種々の事、 あるいは一宝・十宝・百千種宝、 心に随ひ意に称ひて具足せざるはなし。 もしなからしめんと欲すれば、 *儵焉として*化没す。 心に自在を得ること神通に踰えたることあり。 いづくんぞ思議すべきや。
此0497云何0393[ガ]不思議ナル。彼ノ種種ノ事、或[イ]ハ一宝、十宝、百千種宝、随ヒ↠心ニ称ヒテ↠意ニ无シ↠不ルハ↢具足セ↡。若[シ]†欲スレバ↠令メムト↠无カラ、儵焉トシテ化没ス。心ニ得[ル]コト↢自在ヲ↡有リ↠踰エタルコト↢神通ニ↡。安ンゾ可キヤ↢思議ス↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)[六]妙色功徳を釈す
[Ⅰ]論文
【65】 ^▲↑荘厳妙色功徳成就とは、 偈に 「無垢光炎熾 明浄曜世間」 といへるがゆゑなり。
荘厳妙色功徳成就[ト]者、偈ニ言ヘルガ↢「无垢光炎熾明浄曜世間ト」↡故†ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)[六][Ⅱ]註釈
^これいかんが不思議なる。 その光、 *事を曜かすにすなはち表裏を*映徹す。 その光、 心を曜かすにすなはちつひに無明を尽す。 光、 *仏事をなす。 いづくんぞ思議すべきや。
此云何†ガ不思議ナル。其ノ光曜カスニ↠事ヲ則[チ]映↢徹ス表裏ヲ↡。其ノ光曜スニ↠心ヲ則[チ]終ニ尽ス↢无明ヲ↡。光為ス↢仏事ヲ↡。焉[ン]ゾ可キヤ↢思議[ス]↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)[七]触功徳を釈す
[Ⅰ]論文
【66】 ^▲↑荘厳触功徳成就とは、 偈に 「宝性功徳草 柔軟左右旋 触者生勝楽 過迦旃隣陀」 といへるがゆゑなり。
荘厳触功徳成就[ト]者、偈[ニ]言ヘルガ↢「宝性功徳草柔軟左右旋触者生勝楽過迦旃隣陀ト」↡故†ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)[七][Ⅱ]註釈
[ⅰ]正釈
^これいかんが不思議なる。 それ宝の例は堅強なり。 しかるにこれは柔軟なり。 *触の楽は着すべし。 しかるにこれは*道を増す。 事は↓愛作に同じ。 なんぞ思議すべきや。
此云何†ガ不思議ナル。夫宝ノ例ハ†堅強ナリ。而ルニ此ハ柔軟ナリ。触[ノ]楽ハ†応シ↠著ス。而ルニ此ハ増ス↠道ヲ。†事ハ同ジ↢愛作ニ↡。†何ゾ可キヤ↢思議[ス]↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)[七][Ⅱ][ⅱ]追釈
^▼菩薩あり、 ↑愛作と字く。 形容端正にして人の*染着を生ず。 ¬経¼ (*大宝積0114経・意) にのたまはく、 「これに染するものは、 あるいは天上に生じ、 あるいは菩提心を発す」 と。
有リ↢菩薩↡、字ク↢愛作ト↡。形容端正ニシテ生ズ↢人ノ染著ヲ↡。¬経ニ¼言ハク、「†染スル↠之ニ者ハ、或[イ]ハ生ジ↢天上ニ↡、或[イ]ハ発スト↢菩提心ヲ↡」。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)[八]三種功徳を釈す
[Ⅰ]標列
[ⅰ]論文
【67】 ^▲↑荘厳三種功徳成就とは、 三種の事あり。 知るべし。 なんらか三種。 一には↓水、 二には↓地、 三には↓虚空なり。
荘厳三種功徳成就[ト]者、有リ↢三種ノ事↡。応シ↠知[ル]。何等カ三種。一[ニ]者水、二[ニ]者地、三[ニ]者虚空ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)[八][Ⅰ][ⅱ]註釈
^この三種并せていふ所以は、 同類なるをもつてのゆゑなり。 なにをもつてかこれをいふとなれば、 一には六大の類なり。 いはゆる虚空と識と地と水と火と風となり。 二には*無分別の類なり。 いはゆる地・水・火・風・虚空なり。
此ノ三種所↢以†并セテ言フ↡者、以[テ]ノ↢同類ナルヲ↡故也。何ヲ以[テ]カ言フトナレバ↠之ヲ、一[ニ]者六大ノ類ナリ。†所謂ル虚空ト識ト地ト水ト火ト風トナリ。二[ニ]者无分別ノ類ナリ。†所謂ル地・水・火・風・虚空ナリ。
^ただ三類といふは、 識の一大は衆生世間に属するがゆゑに、 火の一大はかしこのなかになきがゆゑに、 風ありといへども風は見るべからざるがゆゑに、 住処なきがゆゑなり。 ここをもつて六大・*五類のなかに、 ありて荘厳すべきを取りて、 三種并せてこれをいふ。
但言[フ]↢三類[ト]↡者0498、識ノ0394一大ハ属スルガ↢衆生世間ニ↡故ニ、火ノ一大ハ彼ノ中ニ无キガ故ニ、雖モ↠有[リ]ト↠風風ハ不ル[ガ]↠可[カラ]↠見ル故ニ、无キガ↢住処↡故†ナリ。是ヲ以テ六大五類ノ中ニ、†取リテ↣*有リテ而可キヲ↢荘厳ス↡、三種†并セテ言フ‡↠之ヲ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)[八][Ⅱ]随釈
[ⅰ]水功徳
[a]論文
【68】 ^▲↑荘厳水功徳成就とは、 偈に 「宝華千万種 弥覆池流泉 微風動華葉 交錯光乱転」 といへるがゆゑなり。
荘厳水功徳成就[ト]者、偈ニ言[ヘル]ガ↢「宝花千万種弥覆池流泉微風動花葉*交*錯光乱転ト」↡故†ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)[八][Ⅱ][ⅰ][b]註釈
[イ]正釈
^これいかんが不思議なる。 かの浄土の人天は*水穀の身にあらず。 なんぞ水を須ゐるや。 清浄成就して洗濯を須ゐず。 またなんぞ水を用ゐるや。 かしこのな0115かには*四時なし。 つねに*調適にして熱に煩はず。 またなんぞ水を須ゐるや。 須ゐずして有なることは、 まさに所以あるべし。
此云何[ガ]不思議ナル。彼ノ浄土ノ人天ハ非ズ↢水穀ノ身ニ↡。何ゾ須ヰル↠水ヲ耶。清浄成就シテ不↠須ヰ↢洗濯ヲ↡。復何ゾ用[ヰル]↠水[ヲ]耶。彼ノ†中ニハ无シ↢四時↡。常ニ調適[ニ]シテ不↠煩ハ↠熱†ニ。*復何ゾ須[ヰ]ル↠水[ヲ]耶。不シテ↠須ヰ而有ナルコトハ、†当ニシ↠有ル↢所以↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)[八][Ⅱ][ⅰ][b][ロ]引経
^¬経¼ (大経・上) にのたまはく、 「▲かのもろもろの菩薩および声聞、 もし宝池に入りて、 意に水をして足を没さしめんと欲すれば、 水すなはち足を没す。 膝に至らしめんと欲すれば、 水すなはち膝に至る。 腰に至らしめんと欲すれば、 水すなはち腰に至る。 頚に至らしめんと欲すれば、 水すなはち頚に至る。 身に潅がしめんと欲すれば、 自然に身に潅ぐ。 還復せしめんと欲すれば、 水すなはち還復す。
¬経ニ¼言ハク、「彼ノ諸ノ菩薩及[ビ]声*聞、若シ入[リ]テ↢宝池[ニ]↡、意ニ†欲スレバ↠令[メム]ト↢水ヲシテ没[サ]↟足ヲ、水即[チ]没ス↠足ヲ。†欲スレバ↠令[メムト]↠至[ラ]↠膝ニ、水即[チ]至[ル]↠膝ニ。欲[スレバ]↠令[メムト]↠至[ラ]↠*腰[ニ]、水即[チ]至[ル]↠腰[ニ]。欲[スレバ]↠令[メムト]↠至[ラ]↠頚[ニ]、*水即[チ]至[ル]↠頚ニ。欲[スレバ]↠令[メムト]↠潅[ガ]↠身ニ、自然ニ潅グ↠身ニ。欲[スレバ]↠令[メム]ト↢還復[セ]↡、水*輒チ還復ス。
^◆*調和冷煖にして自然に意に随ひて、 ^*神を開き体を悦ばしむ。 心垢を蕩除し、 ◆清明澄潔にして浄きこと形なきがごとし。 ˆ池底のˇ 宝沙映徹して深きをも照らさざることなし。
調和冷煖[ニシテ]自然ニ随[ヒ]テ↠意ニ、開キ↠神ヲ悦バシム↠体ヲ。蕩↢除シ心垢ヲ↡、清明澄潔ニシテ浄キコト若シ↠无[キガ]↠形。宝沙映徹シテ无[シ]↢深[キ]ヲモ不ルコト↟照サ。
^◆微瀾回流してうたたあひ潅注す。 安詳としてやうやく逝きて、 遅からず疾からず。
微*灡廻流シテ転タ相潅注ス。安*詳トシテ徐ク逝キテ、不↠遅[カラ]不↠疾[カラ]。
^◆波は無量自然の妙声を揚ぐ。 その*所応に随ひて聞かざるものなし。 あるいは仏の声を聞き、 あるいは法の声を聞き、 あるいは僧の声を聞き、 あるいは寂静の声、 空・無我の声、 大慈悲の声、 波羅蜜の声を聞き、 あるいは十力・無畏・不共法の声、 諸通慧の声、 無所作の声、 不起滅の声、 無生忍の声、 乃至、 甘露潅頂、 もろもろの妙法の声を聞く。 かくのごとき等の声は、 その所聞に称ひ0116て歓喜無量なり。
波[ハ]†揚グ↢无量自然ノ妙声ヲ↡。随[ヒ]テ↢其ノ所応ニ↡莫シ↢不ル↠聞[カ]者↡。或[イハ]聞キ↢仏ノ声ヲ↡、或[イハ]聞キ↢法ノ声ヲ↡、或[イ]ハ聞キ↢僧ノ声ヲ↡、或[イ]ハ聞キ↢寂静ノ声、空无我ノ声、大慈悲ノ声、波羅蜜ノ声ヲ↡、或[イハ]聞ク↢十力・无畏・不共法ノ声、諸通*恵ノ声、无所作ノ声、不起滅ノ声、无生忍ノ声、乃至甘露潅頂、衆ノ妙0499法ノ0395声[ヲ]↡。如[キ]↠是[クノ]等ノ声[ハ]称ヒテ↢其ノ所聞ニ↡歓喜无量ナリ。
^◆ˆ聞くひとはˇ 清浄・離欲・寂滅・真実の義に随順し、 三宝・ˆ十ˇ 力・無所畏・不共の法に随順す。 通慧の菩薩・声聞の所行の道に随順す。
随↢順シ清浄・離欲・寂滅・真実之義ニ↡、随↢順ス三宝・力・无所畏・不共之法ニ↡。随↢順ス通*慧[ノ]菩薩・声聞[ノ]所行之道ニ↡。
^◆三塗苦難の名あることなし。 ただ自然快楽の音のみあり。 このゆゑにその国を名づけて安楽といふ」 と。
无シ↠有[ル]コト↢三塗苦難之名↡。但有リ↢自然快楽之音[ノミ]↡。是ノ故ニ其ノ国ヲ名[ケ]テ曰フ[ト]↢安楽ト↡」。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)[八][Ⅱ][ⅰ][b][ハ]結示
^この水、 仏事をなす。 いづくんぞ思議すべきや。
此ノ水為ス↢仏事ヲ↡。安ンゾ可キヤ↢思議[ス]↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)[八][Ⅱ][ⅱ]地功徳
[a]論文
【69】 ^▲↑荘厳地功徳成就とは、 偈に 「宮殿諸楼閣 観十方無礙 雑樹異光色 宝欄遍囲繞」 といへるがゆゑなり。
荘厳地功徳成就[ト]者、偈ニ言ヘルガ↢「宮殿諸楼閣観十方无雑樹異光色宝*蘭遍囲遶ト」↡故†ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)[八][Ⅱ][ⅱ][b]註釈
[イ]正釈
^これいかんが不思議なる。 かの種々の事、 あるいは一宝・十宝・百宝・無量宝、 心に随ひ意に称ひて荘厳具足せり。 この荘厳の事は、 浄明鏡のごとく、 十方国土の浄穢の諸相、 *善悪の業縁、 一切ことごとく現ず。 かしこのなかの人天、 この事を見るがゆゑに、 *探湯不及の情自然に成就す。
此云何[ガ]不思議ナル。彼ノ種種ノ*事、或[イ]ハ一宝、十宝、百宝、无量宝、随ヒ↠心ニ称ヒテ↠意ニ†荘厳具足セリ。此ノ荘厳ノ事ハ如ク↢浄明鏡ノ↡、十方国土ノ浄穢ノ諸相、善悪ノ業縁、一切悉ク†現ズ。彼ノ中ノ人天、見[ル]ガ↢斯ノ事ヲ↡故ニ†探*湯†不及之†情自然ニ成就ス。
^またもろもろの大菩薩、 法性等を照らす宝をもつて冠となせば、 この宝冠のなかにみな諸仏を見たてまつり、 また一切諸法の性を了達するがごとし。
亦如シ↪諸[ノ]大菩薩†以テ↧照ス↢法性等ヲ↡宝ヲ↥†為セバ↠冠ト、此ノ宝冠ノ中ニ皆見[タテ]マツリ↢諸仏ヲ↡、又了↩達スルガ一切諸法之性ヲ↨。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)[八][Ⅱ][ⅱ][b][ロ]引例
^また仏、 ¬*法華経¼ を説きたまひし時、 眉間の光を放ちて東方万八千土を照らすにみな金色のごとく、 *阿鼻獄より上は*有頂に至るまで、 もろもろの世界のなかの六道の衆生の生死の趣くところ、 善悪の業縁、 受報の好醜、 ここにことごとく見るがごとし。 けだしこ0117の類なり。
又如シ↧仏説[キ]タマヒシ↢¬法華経ヲ¼↡時、放[チ]テ↢眉間ノ光ヲ↡照スニ↢†于東方万八千土ヲ↡皆如†ク↢金色ノ↡、従リ↢阿鼻獄↡上[ハ]至[ル]マデ↢有頂ニ↡、諸ノ世界ノ中ノ六道ノ衆生[ノ]生死ノ†所↠趣ク、善悪[ノ]業縁、受報ノ好醜、†於テ↠此ニ悉ク見ルガ↥。蓋シ斯ノ類也。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)[八][Ⅱ][ⅱ][b][ハ]結示
^この*影、 仏事をなす。 いづくんぞ思議すべきや。
此ノ影為ス↢仏事ヲ↡。安ンゾ可キヤ↢思議[ス]↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)[八][Ⅱ][ⅲ]虚空功徳
[a]論文
【70】 ^▲↑荘厳虚空功徳成就とは、 偈に 「無量宝交絡 羅網遍虚空 種種鈴発響 宣吐妙法音」 といへるがゆゑなり。
荘厳虚空功徳成就[ト]者、偈ニ言[ヘル]ガ↢「无量宝交絡羅網遍虚空種種鈴発0500†嚮0396宣吐妙法音ト」↡故†ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)[八][Ⅱ][ⅲ][b]註釈
[イ]引経
^これいかんが不思議なる。 ¬経¼ (大経・上) にのたまはく、 「▲無量の宝網、 仏土に弥覆し、 みな金縷、 真珠、 百千の雑宝の奇妙珍異なるをもつて荘厳し校飾して、 四面に周帀せり。 垂るるに宝鈴をもつてす。 光色晃耀してことごとくきはめて厳麗なり。
此云何†ガ不思議ナル‡。¬経ニ¼言ハク、「无量ノ宝網、弥↢覆[シ]仏土ニ↡、皆以テ↢金縷、真珠、百千ノ雑宝[ノ]奇妙珍異ナルヲ↡荘厳シ挍飾シテ、周↢帀セリ四面ニ↡。垂ルヽニ以テス↢宝鈴ヲ↡。光色晃耀シテ尽ク極テ厳麗ナリ。
^◆自然の徳風やうやく起りて微動す。 その風、 調和にして寒からず暑からず。 温涼柔軟にして遅からず疾からず。 ◆もろもろの羅網およびもろもろの宝樹を吹きて、 無量の微妙の法音を演発し、 万種の温雅の徳香を流布す。 それ聞ぐことあるものは、 塵労の垢習自然に起らず。 ◆風その身に触るるにみな快楽を得」 と。
自然ノ徳風徐ク起[リ]テ微動ス。其ノ風調和ニシテ不↠寒[カラ]不↠暑[カラ]。温涼柔軟ニシテ不↠遅[カラ]不↠疾[カラ]。吹[キ]テ↢諸ノ羅網及[ビ]衆ノ宝樹ヲ↡、演↢発†シ无量ノ微妙ノ法音ヲ↡、流↢布ス万種ノ 温アタヽカニ雅ヤワラカノ徳香ヲ↡。其レ有ル↠聞グコト者ハ、塵労[ノ]垢*習自然ニ不↠起[ラ]。風触[ル]ルニ↢其ノ身ニ↡皆得ト‡↢*快楽ヲ↡」。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)[八][Ⅱ][ⅲ][b][ロ]結示
^この声、 仏事をなす。 いづくんぞ思議すべきや。
此ノ声為ス↢仏事ヲ↡。焉ンゾ可キヤ↢思議[ス]↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)[九]雨功徳を釈す
[Ⅰ]論文
【71】 ^▲↑荘厳雨功徳成就とは、 偈に 「雨華衣荘厳 無量香普薫」 といへるがゆゑなり。
荘厳雨功徳成就[ト]者、偈[ニ]言[ヘル]ガ↢「雨花衣荘厳无量香普*勲ト」↡故†ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)[九][Ⅱ]註釈
[ⅰ]引経
^これいかんが不思議なる。 ¬経¼ (大経・上) にのたまはく、 「▲風吹きて華を散らしてあまねく仏土に満つ。 色の次第に随ひて雑乱せず。 柔軟光沢にして馨香0118芬烈なり。 足その上を履むに蹈み下ること四寸、 足を挙げをはるに随ひて、 還復すること故のごとし。 ◆華用ゐること已訖りぬれば、 地はすなはち開裂して、 *次いでをもつて化没し、 清浄にして遺りなし。 その時節に随ひて、 風吹きて華を散ずること、 かくのごとく六反す。
此云何[ガ]不思議ナル。¬経ニ¼言ハク、「風吹[キ]テ散[ラシ]テ↠花ヲ遍ク満ツ↢仏土ニ↡。随ヒテ↢色ノ次第ニ↡而不↢雑乱セ↡。柔軟光沢ニシテ馨香芬烈†ナリ。足履ムニ↢其ノ上ヲ↡†蹈ミ下ルコト四寸、随[ヒ]テ↢挙ゲ↠足ヲ已[ル]ニ↡、還復スルコト如シ↠故ノ。花用ヰルコト已訖リヌレバ、地[ハ]輒チ開裂シテ、以テ↠次[デ]ヲ化没†シ、清浄ニシテ无シ↠遺リ。随[ヒ]テ↢其ノ時節ニ↡、風吹[キ]テ散ズルコト↠花ヲ、如ク↠是[クノ]六*反ス。
^◆また衆宝の蓮華、 世界に周遍せり。 一々の宝華に百千億の*葉あり。 その葉の光明、 無量種の色なり。 青き色には青き光、 白き色には白き光、 玄・黄・朱・紫の光色もまたしかなり。 煒燁煥爛として日月よりも明曜なり。
又衆宝ノ蓮花、周↢*遍セリ世界ニ↡。一一ノ宝花ニ百千億ノ葉アリ。其ノ*葉[ノ]光明、无量種ノ色ナリ。青キ色ニ[ハ]青[キ]光、白キ色ニ[ハ]白[キ]光、玄黄朱紫[ノ]光色モ亦然ナリ。*煒カヾヤク燁煥爛ミダルトシテ明↢曜ナリ日月ヨリモ↡。
^◆一々の華のなかより三十六百千億の光を出す。 一々の光のなかより三十六百千億の仏を出す。 身の色は紫金にして相好は殊特なり。 一々の諸仏また百千の光明を放ちて、 あまねく十方のために微妙の法を説く。 かくのごとき諸仏、 おのおの無量の衆生を仏の正道に安立せしめたまふ」 と。
一一ノ花ノ中ヨリ出ス↢三十六百千億ノ光ヲ↡。一一ノ光ノ中ヨリ出ス↢三十六百千億0501ノ仏0397ヲ↡。身ノ色[ハ]紫金ニシテ相好[ハ]殊特ナリ。一一ノ諸仏又放[チ]テ↢百千ノ光明ヲ↡、普ク為ニ↢十方ノ↡説ク↢微妙ノ法ヲ↡。如[キ]↠是[クノ]諸仏、各各‡†安↢立セシメタマフ[ト]无量ノ衆生ヲ於仏ノ正道ニ↡」。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)[九][Ⅱ][ⅱ]結示
^華、 仏事をなす。 いづくんぞ思議すべきや。
花為[ス]↢仏事ヲ↡。安ンゾ可キヤ↢思議[ス]↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)[十]光明功徳を釈す
[Ⅰ]論文
【72】 ^▲↑荘厳光明功徳成就とは、 偈に 「仏慧明浄日 除世痴闇冥」 といへるがゆゑなり。
荘厳光明功徳成就[ト]者、偈ニ言[ヘル]ガ↢「仏*恵明浄日除世痴闇冥ト」↡†故ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)[十][Ⅱ]註釈
^これいかんが不思議なる。 かの土の光明は、 如来の智慧の報より起れり。 これに触るれば、 無明の黒闇つひにかならず消除す。 光明は慧にあらずしてよく慧0119の用をなす。 いづくんぞ思議すべきや。
此云何†ガ不思議ナル。彼ノ土ノ光明ハ、従リ↢如来ノ智†恵ノ報↡起レリ。触[ル]レバ↠之ニ者、无明ノ黒闇終ニ必[ズ]消除ス。光明[ハ]非[ズ]シテ↠*慧[ニ]能ク為ス↢†恵ノ用ヲ↡。焉ンゾ可キヤ↢思議[ス]↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)[一]妙声功徳を釈す
[Ⅰ]論文
【73】 ^▲↑荘厳妙声功徳成就とは、 偈に 「梵声悟深遠 微妙聞十方」 といへるがゆゑなり。
荘厳妙声功徳成就[ト]者、偈[ニ]言[ヘルガ]↢「梵声悟深遠微妙聞十方[ト]」↡故[ナリ]。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)[一][Ⅱ]註釈
[ⅰ]引経
^◆これいかんが不思議なる。 ▼*経にのたまはく、 「▲もし人、 ただかの国土の清浄安楽なるを聞きて、 *剋念して生ぜんと願ずれば、 また往生を得て、 すなはち正定聚に入る」 と。
此云何†ガ不思議ナル‡。¬経ニ¼言ハク、「若シ人但聞[キ]テ↢彼ノ国土ノ清浄安楽ナルヲ↡、剋念シテ†願ズレバ↠生[ゼム]ト、亦†得テ↢往生ヲ↡、†則チ入ル[ト]↢正定聚ニ↡」。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)[一][Ⅱ][ⅱ]結示
^◆これはこれ国土の名字、 仏事をなす。 いづくんぞ思議すべきや。
此ハ是国土ノ名字為ス↢仏事ヲ↡。安ンゾ可[キ]ヤ‡↢思議ス↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)[二]主功徳を釈す
[Ⅰ]論文
【74】 ^▲↑荘厳主功徳成就とは、 偈に 「正覚阿弥陀 法王善住持」 といへるがゆゑなり。
荘厳主功徳成就[ト]者、偈[ニ]言[ヘルガ]↢「正覚阿弥陀法王善住持[ト]」↡故[ナリ]。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)[二][Ⅱ]註釈
[ⅰ]正釈
^◆これいかんが不思議なる。 正覚の阿弥陀不思議にまします。 かの安楽浄土は、 正覚の阿弥陀の善力のために*↓住↓持せられたり。 いかんが思議することを得べきや。
此云何ガ不思議ナル‡。正覚ノ阿弥陀*不思議ニマシマス。彼ノ安楽浄土ハ、為ニ↢正覚[ノ]阿弥陀ノ善力ノ↡住持セラレタリ。云何[ガ]可キ↠得↢思議[スル]コトヲ↡耶。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)[二][Ⅱ][ⅱ]追釈
^◆「↑住」 は不異不滅に名づく。 ▼「↑持」 は不散不失に名づく。 *不朽薬をもつて種子に塗りて、 水に在くに*瀾れず。 火に在くに燋れず。 因縁を得てすなはち生ずるがごとし。 なにをもつてのゆゑに。 不朽薬の力なるがゆゑなり。
「住ハ」名ク↢不異不滅ニ↡。「持ハ」名ク↢不散不失ニ↡。如シ↧以テ↢不朽薬ヲ↡塗リテ↢種子ニ↡、在クニ↠*水ニ不↠*瀾レ、在クニ↠火ニ不↠燋レ、得テ↢因縁ヲ↡*即[チ]生ズルガ↥。何ヲ以[テ]ノ故ニ。不朽薬ノ力ナルガ故ナリ。
^◆もし人、 一たび安楽浄土に生ずれば、 後の時に、 意に三界に生じて衆生を教化せんと願じ0120て、 浄土の命を捨てて、 願に随ひて生ずることを得て、 三界*雑生の火のなかに生ずといへども、 *無上菩提の*種子は畢竟じて朽ちず。 なにをもつてのゆゑに。 正覚の阿弥陀の*善住持を経るをもつてのゆゑなり。
若シ人一タビ生ズレバ↢安楽浄土ニ↡、後ノ時ニ意[ニ]願ジテ↧生[ジ]テ↢三界ニ↡教↦化セムト*衆生ヲ↥、捨テヽ↢浄土0502ノ命0398ヲ↡、随[ヒ]テ↠願ニ得テ↠生[ズルコト]ヲ、雖[モ]↠生[ズ]ト↢三界雑*生ノ火ノ中ニ↡、无上菩提ノ種子[ハ]畢竟ジテ不↠朽[チ]。何ヲ以[テ]ノ故ニ。以[テ]ノ↠逕ルヲ↢正覚[ノ]阿弥陀ノ善‡住持ヲ↡故†ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)[三]眷属功徳を釈す
[Ⅰ]論文
【75】 ^▲↑荘厳眷属功徳成就とは、 偈に 「如来浄華衆 正覚華化生」 といへるがゆゑなり。
荘厳眷属功徳成就[ト]者、偈[ニ]言[ヘルガ]↢「如来浄花衆正覚花化生[ト]」↡故[ニ]。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)[三][Ⅱ]註釈
[ⅰ]三界雑生を明す
^◆これいかんが不思議なる。 ▼おほよそこれ雑生の世界には、 *もしは胎、 もしは卵、 もしは湿、 もしは化、 眷属そこばくなり。 苦楽*万品なり。 *雑業をもつてのゆゑなり。
此云何†ガ不思議ナル‡。凡ソ是雑生ノ世界ニハ、若[シハ]胎、若[シハ]卵、若[シハ]湿、若[シハ]化、眷属若*干ナリ。苦楽万品ナリ。以[テ]ノ↢雑業ヲ↡故†ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)[二][Ⅱ][ⅱ]浄土化生を顕す
^▼かの安楽国土はこれ阿弥陀如来*正覚浄華の化生するところにあらざるはなし。 ▼同一に念仏して▼別の道なきがゆゑなり。 ▼遠く通ずるにそれ*四海のうちみな兄弟たり。 ˆ浄土のˇ 眷属無量なり。 いづくんぞ思議すべきや。
彼ノ安楽国土ハ莫シ↠非[ザ]ルコト↣是阿弥陀如来正覚浄花之所ニ↢化生スル↡。同一ニ念仏シテ无キガ↢別ノ道↡故†ナリ。遠ク通ズルニ夫四海之内皆†為リ↢兄弟↡也。眷属无量ナリ。焉ンゾ可キヤ↢思議ス↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)[四]受用功徳を釈す
[Ⅰ]論文
【76】 ^▲↑荘厳受用功徳成就とは、 偈に 「愛楽仏法味 禅三昧為食」 といへるがゆゑなり。
荘厳受用功徳成就[ト]者、偈ニ言[ヘルガ]↢「愛楽仏法味禅三昧為食ト」↡故†ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)[四][Ⅱ]註釈
^これいかんが不思議なる。 食せずして命を資く。 けだし資くるところ以あるなり。 あにこれ如来、 本願を満てたまへるにあらずや。 仏願に乗ずるをわが命となす。 いづくんぞ思議すべきや。
此云何[ガ]不思議ナル。不↠食[セ]而資ク↠命ヲ。蓋シ†所↠資クル有ル↠以也。豈ニ*不ズ↣是如来満[テ]タマヘルニ↢本願ヲ↡乎。乗ズルヲ↢仏願ニ↡為ス↢我ガ命ト↡。焉[ン]ゾ可キヤ↢思議[ス]↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)[五]無諸難功徳を釈す
[Ⅰ]論文
【012177】 ^▲↑荘厳無諸難功徳成就とは、 偈に 「永離身心悩 受楽常無間」 といへるがゆゑなり。
荘厳無諸難功徳成就[ト]者、偈[ニ]言[ヘ]ル[ガ]↢「永離身心悩受楽常无間ト」↡故†ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)[五][Ⅱ]註釈
^これいかんが不思議なる。 *経にのたまはく、 「身を*苦器となし、 心を*悩端となす」 と。 しかるにかしこに身あり心ありて、 楽を受くること間なし。 いづくんぞ思議すべきや。
此云何ガ不思議ナル‡。¬経[ニ]¼言ク、「身†ヲ為†シ↢*苦器ト↡、心†ヲ為ス[ト]↢悩端ト↡」。而[ルニ]†彼ニ有[リ]↠身有[リ]↠心*而受[クル]コト↠楽ヲ无シ↠間。安ンゾ可キヤ↢思議[ス]↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)[六]大義門功徳を釈す
[Ⅰ]論文
[ⅰ]牒偈
【78】 ^▲↑荘厳大義門功徳成就とは、 偈に 「大乗善根界 ↓等無譏嫌名 *女人及根欠 ▼二乗種不生」 といへるがゆゑなり。
荘厳大義門功徳成就[ト]者、偈[ニ]言ヘルガ↢「大乗善根界等无譏嫌名女人及0503根欠0399二乗種不生ト」↡故†ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)[六][Ⅰ][ⅱ]釈義
[a]総じて二過を標す
^▲浄土の果報は二種の*譏過を離れたり、 知るべし。 一には↓体、 二には↓名なり。
浄土ノ果報ハ離レタリ↢二種ノ譏†過ヲ↡、応[シ]↠知[ル]。一[ニ]者体、二[ニ]者名ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)[六][Ⅰ][ⅱ][b]別して二過を明す
[イ]体
^▲↑体に三種あり。 一には二乗人、 二には女人、 三には諸根不具人なり。 この三の過なし。 ゆゑに体の*譏嫌を離ると名づく。
体ニ有リ↢三種↡。一[ニ]者二乗人、二[ニ]者女人、三[ニ]者諸根不具人ナリ。無シ↢此ノ三ノ過↡。故ニ名ク↠†離ルト↢体ノ譏嫌ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)[六][Ⅰ][ⅱ][b][ロ]名
^▲↑名にまた三種あり。 ただ三の体なきのみにあらず、 乃至二乗と女人と諸根不具の三種の名を聞かず。 ゆゑに名の譏嫌を離ると名づく。
名ニ亦†三種アリ。非ズ↣但無[キ]ノミニ↢三ノ体↡、乃至不↠聞カ↢二乗ト女人ト諸根不具ノ三種ノ名ヲ↡。故ニ名ク↠†離ルト↢名ノ譏嫌ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)[六][Ⅰ][ⅱ][c]等の一字を釈す
^▲「↑等」 とは平等一相のゆゑなり。
等[ト]者平等一相ノ故†ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)[六][Ⅱ]註釈
^これいかんが不思議なる。 それ*諸天の器をともにすれども、 飯に随福の色あり。 ▼*足の指、 地を按ずるにすなはち金礫の旨を詳らかにす。 しかるに▼往生を願ずるもの、 ▼*本はすなはち三三の品なれども、 いまは一二の殊なりなし。 ▼また*淄0122・澠の一味なるがごとし。 いづくんぞ思議すべきや。
此云何[ガ]不思議ナル‡。夫諸天ノ†共ニスレドモ↠器ヲ飯ニ有リ↢随福之色↡。足ノ指†按ズルニ↠地ヲ乃[チ]詳カニス↢金礫之旨ヲ↡。而[ルニ]願ズル↢往生ヲ↡者、本ハ則[チ]三三之品ナレドモ、今ハ无シ↢一二之殊[ナリ]↡。亦如シ↢*淄*澠ノ *食陵[ノ]反 一味ナルガ↡。焉[ン]ゾ可キヤ↢思議[ス]↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)[七]一切所求満足功徳を釈す
[Ⅰ]論文
【79】 ^▲↑荘厳一切所求満足功徳成就とは、 偈に 「衆生所願楽 一切能満足」 といへるがゆゑなり。
荘厳一切所求満足功徳成就[ト]者、偈[ニ]言ヘルガ↢「衆生所願楽一切能満足ト」↡故†ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)[七][Ⅱ]註釈
^これいかんが不思議なる。 かの国の人天、 もし他方世界の無量の*仏刹に往きて諸仏・菩薩を供養せんと欲願せんに、 *所須の供養の具に及ぶまで、 願に称はざるはなからん。 またかしこの寿命を捨てて余国に向かひて、 生じて*修短自在ならんと欲せんに、 願に随ひてみな得。 いまだ*自在の位に階はずして、 自在の用に同じからん。 いづくんぞ思議すべきや。
此云何ガ不思議ナル。彼ノ国ノ人天、若[シ]欲↧願セム[ニ]往[キ]テ↢他方世界ノ无量ノ仏刹ニ↡供↦養セムト諸仏菩薩ヲ↥、†及ブマデ↢所須ノ供養之具ニ↡、无†カラム↠不ルコト↠称ハ↠願ニ。又†欲セムニ↧捨テヽ↢彼ノ寿命ヲ↡向[ヒ]テ↢余国ニ↡、生ジテ修*短自在ナラムト↥、随[ヒ]テ↠願ニ皆得。未ズ ダシテ↠階ハ↢自在之位ニ↡而同ジカラム↢自在之用ニ↡。焉ン[ゾ]可[キ]ヤ↢思議[ス]↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅱ)【示現二利】
(a)科目を牒す
【80】^▼↑自利利他を示現すとは、
示↢現[ス]ト‡自利利他ヲ↡者、
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)論文を出す
^▲↓略してかの阿弥陀仏国土の十七種荘厳功徳成就を説く。 如来の自身利益大功徳力成就と、 利益他功徳成就とを示現せんがゆゑなり。
略シテ説†ク↢彼ノ阿弥陀仏国土ノ十七種荘厳功徳成就ヲ↡。示↢現†セムガ如来ノ自身利0504益大0400功徳力成就ト利益他功徳成就ト[ヲ]↡故ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(c)文句を釈す
^◆「↑略」 といふは、 かの浄土の功徳は無量にして、 ただ十七種のみにあらざることを彰すなり。 それ▼須弥の芥子に入り、 毛孔の大海を納む。 あに山海の*神ならんや。 毛芥の力ならんや。 *能神のひとの神なるのみ。 このゆゑに十七種は利他といふといへども、 自利の義*炳然たり、 知るべし。
言[フ]↠「略ト」者、彰ス↣彼ノ浄土ノ功徳[ハ]无量ニシテ非[ザル]コトヲ↢唯十七種ノミニ↡也。夫†須弥之入†リ↢芥子ニ↡、†毛孔之納ム↢大海ヲ↡。豈ニ山海之神ナラム乎。毛芥之力ナラム乎。能神ノ者ノ神[ナル]之†耳。是ノ故ニ十七種[ハ]雖モ↠曰フ[ト]↢利他ト↡、自利之義炳然アキラカナリ†タリ、可シ‡↠知ル。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅲ)【入第一義諦】
(a)科目
【012381】^↑入第一義諦とは、
入第一義諦[ト]者、
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅲ)(b)論文
^▲かの無量寿仏国土の荘厳は↓第一義諦↓妙境界相なり。 十六句↓および一句次第して説けり、 知るべし。
彼ノ無量寿仏国土ノ荘厳[ハ]第一義諦妙境界相[ナリ]。十六句及[ビ]一*句†次第シテ説ケリ、応シ‡↠知ル。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅲ)(c)註釈
(イ)第一義諦を釈す
^「↑第一義諦」 とは仏 (阿弥陀仏) の*因縁法なり。 この 「諦」 はこれ*境の義なり。 このゆゑに荘厳等の*十六句を称して 「↑妙境界相」 となす。 この義、 ▽入一法句の文に至りてまさにさらに解釈すべし。
「第一義諦[ト]」者仏ノ因縁法也。此ノ諦ハ是境ノ義ナリ。是ノ故ニ荘厳等ノ十六句ヲ称シテ為ス↢「妙境界相ト」↡。此ノ義至[リ]テ↢入*一法句ノ文ニ↡当ニシ↢更ニ解釈ス↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅲ)(c)(ロ)総別次第
[一]略して文意を解す
^「↑および一句次第」 とは、 いはく、 *器浄等を観ずるなり。 *総別の十七句は観行の次第なり。
「及ビ一*句次第ト」者、謂ク観ズルナリ↢器浄等ヲ↡。総別ノ十七句ハ観行ノ次第也。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅲ)(c)(ロ)[二]広く起次を弁ず
[Ⅰ]釈疑
[ⅰ]疑を出す
^いかんが次を起す。 ^*建章に 「▲帰命無礙光如来◆願生安楽国」 といへり。 ^▼このなかに疑あり。 疑ひていはく、 ^「生」 は有の本、 *衆累の元たり。 生を棄てて生を願ず、 生なんぞ尽くべきと。
云何[ガ]起ス↠次ヲ。†建章ニ†言ヘリ↢「帰命无光如来願生安楽国ト」↡。此ノ中ニ有リ↠疑。疑[ヒ]テ†言ク、生ハ為リ↢有ノ本、衆累之元↡。棄テヽ↠生ヲ願ズ↠生ヲ、生何ゾ可†キト↠尽ク。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅲ)(c)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ]疑を釈す
[a]総句に依りて正しく疑を釈す
[イ]標
^この疑を釈せんがために、 このゆゑにかの浄土の荘厳功徳成就を観ず。
為ニ↠釈セム[ガ]↢此ノ疑ヲ↡、是ノ故ニ観ズ↢彼ノ浄土ノ荘厳功徳成就ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅲ)(c)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ][a][ロ]釈
ª一º総示【生即無生】
^▼かの浄土はこれ阿弥陀如来の清浄本願の▽*無生の生なり。 三有虚妄の生のごときにはあらざることを明かすなり。
†明ス↢彼ノ浄土ハ是阿弥陀如来ノ清浄本願ノ无生之生ナリ、非ザルコトヲ↟如キニハ↢三有虚妄ノ生ノ↡也。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅲ)(c)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ][a][ロ]ª二º別釈
ªⅠº正しく生の理を明す
^◆なにをもつてこれをいふとならば、 それ法性は清浄にして畢竟無生なり。 生といふはこれ得生のひとの情なるのみ。 生まことに無生なれば、 生なんぞ尽くるところあらん。
何ヲ以テ言フトナラバ↠之ヲ、夫法性[ハ]清浄ニシテ畢竟无生ナリ。言[フ]↠生[ト]者是得生ノ者之情[ナル]†耳。生苟ニ无生†ナレバ、生何0505ゾ所0401アラム↠尽[ク]ル。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅲ)(c)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ][a][ロ]ª二ºªⅡº彼の偏執を斥す
^かの生を尽さば、 上は*無為能為の身を失し、 下は*三空不空の痼 廃なり。 病なり に 酔なり ひなん。 *根敗永く0124亡じて、 号び*三千を振はす。 *無反無復ここにおいて恥を招く。
尽サバ↢夫†ノ生ヲ↡者、上ハ失シ↢无為能為之身ヲ↡、下ハヒナム↢ 酔[ナリ]亡善[ノ]反 三空不空之痼ニ↡ 癈也病也工路[ノ]反。根敗*永ク*亡ジテ号ビ振†ハス↢三千ヲ↡。无反无復†於テ↠斯ニ招ク↠恥ヲ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅲ)(c)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ][a][ロ]ª二ºªⅢº今の生を結示す
^*かの生の理を体する、 これを浄土といふ。 ^浄土の宅はいはゆる十七句これなり。
†体スル↢夫ノ生ノ理ヲ↡、謂フ↢之ヲ浄*土ト↡。浄*土之宅ハ†所謂ル十七句是也。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅲ)(c)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ][b]諸句に就いて起次を弁ず〔観行次第〕
[イ]総じて総別次第を弁ず
^十七句のなかに、 総別二となす。 ▲初めの句はこれ*総相なり。 いはゆるこれ清浄仏土は、 三界の道に過ぎたり。 かしこの、 三界に過ぐるにいかなる相かある。 下の十六種の荘厳功徳成就の相これなり。
十七句ノ中ニ、総別為ス↠二ト。初ノ句ハ是総相ナリ。†所謂ル是清浄仏土[ハ]、過ギタリ‡↢三界ノ道ニ↡。彼[ノ]過†グルニ↢三界ニ↡有ル‡↢何ナル相カ↡。下ノ十六種ノ荘厳功徳成就ノ相是也。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅲ)(c)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ][b][ロ]諸句の起次を弁ず
^一には▲量、 究竟して虚空のごとし。 広大にして辺際なきがゆゑなり。
一[ニ]者量、究竟シテ如シ↢虚空ノ↡。広*大ニシテ无キガ↢辺際↡故†ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅲ)(c)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ][b][ロ]ª一º量→性
^すでに量を知りぬ。 この量なにをもつてか本となす。 このゆゑに▲性を観ず。 性はこれ本の義なり。 かの浄土は正道の大慈悲、 出世の善根より生ぜり。
既ニ知[リ]ヌ↠量ヲ。此ノ量以テカ↠何ヲ†為ス↠本ト。是ノ故ニ観†ズ↠性ヲ。性ハ是本ノ義ナリ。彼ノ浄土ハ従リ↢正道ノ大慈悲出世ノ善根↡生ゼリ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅲ)(c)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ][b][ロ]ª二º性→形相
^すでに出世善根といへり。 この善根はなんらの相をか生ぜる。 このゆゑに次に荘厳▲形相を観ず。
既ニ言ヘリ↢出世善根ト↡。此ノ善根ハ生ゼル↢何等ノ相ヲカ↡。是ノ故ニ次ニ観†ズ↢荘厳形相ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅲ)(c)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ][b][ロ]ª三º形相→種々事
^すでに形相を知りぬ。 よろしく形相はなんらの体なるかを知るべし。 このゆゑに次に▲種々の事を観ず。
既ニ知[リ]ヌ↢形相ヲ↡。宜[シ]クシ↠知ル↢形相ハ何等ノ体†ナルヲカ↡。是ノ故[ニ]次ニ観†ズ↢種種ノ事ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅲ)(c)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ][b][ロ]ª四º種々事→妙色
^すでに種々の事を知りぬ。 よろしく種々の事の妙色を知るべし。 このゆゑに次に▲妙色を観ず。
既ニ知[リ]ヌ↢種種ノ事ヲ↡。宜[シ]クシ ↠知ル↢種種[ノ]事ノ妙色ヲ↡。是ノ故ニ次[ニ]観†ズ↢妙色ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅲ)(c)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ][b][ロ]ª五º妙色→触
^すでに妙色を知りぬ。 この色いかなる触かある。 このゆゑに次に▲触を観ず。
既ニ知リヌ↢妙色ヲ↡。此ノ色有ル↢†何ナル触カ↡。是[ノ]故[ニ]次[ニ]観†ズ↠触ヲ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅲ)(c)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ][b][ロ]ª六º触→三種
^すでに身の触を知りぬ。 眼触を知るべし。 このゆゑに次に▲水・地・虚空の荘厳の三事を観ず。
既ニ知リヌ↢身ノ触ヲ↡。応[シ]↠知ル↢眼触ヲ↡。是[ノ]故[ニ]次[ニ]観†ズ↢水・地・虚空ノ荘厳ノ三事ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅲ)(c)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ][b][ロ]ª七º三種→雨
^すでに眼触を知りぬ。 鼻触を知るべし。 このゆゑに次に▲衣・華の香薫を観ず。
既ニ知リヌ↢眼触ヲ↡。応[シ]↠知[ル]↢鼻触ヲ↡。是[ノ]故[ニ]次[ニ]観†ズ↢†衣花ノ香薫ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅲ)(c)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ][b][ロ]ª八º雨→光明
^すでに眼・鼻等の触を知りぬ。 すべからく染を離るることを知るべし0125。 このゆゑに次に▲仏慧のあきらかに照らすを観ず。
既ニ知[リ]ヌ↢眼鼻等ノ触ヲ↡。須クシ↠知ル↠離[ルヽ]コトヲ↠染ヲ。是[ノ]故[ニ]次[ニ]観†ズ↢仏*恵ノ明[カ]ニ照[ス]ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅲ)(c)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ][b][ロ]ª九º光明→妙声
^すでに慧光の浄力を知りぬ。 よろしく声名の遠近を知るべし。 このゆゑに次に▲梵声の遠く聞ゆることを観ず。
既ニ知[リ]ヌ↢*恵光ノ浄力ヲ↡。宜[シ]クシ ↠知ル↢声名ノ遠近ヲ↡。是[ノ]故[ニ]次[ニ]観†ズ↢梵声ノ遠ク聞[ユル]コトヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅲ)(c)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ][b][ロ]ª十º妙声→主
^すでに声名を知りぬ。 よろしくたれをか増上となすといふことを知るべし。 このゆゑに次に▲主を観ず。
既ニ知[リ]ヌ↢声名ヲ↡。宜[シ]クシ ↠知ル↣誰[ヲ]カ†為ストイフコトヲ↢増上ト↡。是[ノ]故[ニ]次[ニ]観†ズ↠主ヲ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅲ)(c)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ][b][ロ]ª一º主→眷属
^すでに主あるを知りぬ。 たれをか主の眷属となす。 このゆゑに次に▲眷属を観ず。
既ニ知[リ]ヌ↠有[ルヲ]↠主。誰[ヲカ]†為ス↢主ノ眷属ト↡。是[ノ]故[ニ]次[ニ]観†ズ↢眷属ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅲ)(c)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ][b][ロ]ª二º眷属→受用
^すでに眷属を知りぬ。 よろしくこの眷属はいかんが受用するといふことを知るべし。 このゆゑに次に▲受用を観ず。
既ニ知[リ]ヌ↢眷属ヲ↡。宜[シ]クシ ↠知ル↢此ノ眷属ハ若為ガ受用[スルトイフ]コトヲ↡。是[ノ]故[ニ]次[ニ]観†ズ↢受用ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅲ)(c)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ][b][ロ]ª三º受用→無諸難
^すでに受用を知りぬ。 よろしくこの受用の有難無難を知るべし。 このゆゑに次に▲無諸難を観ず。
既0506ニ知[リ]ヌ↢受用0402ヲ↡。宜[シ]クシ ↠知ル↢此[ノ]受用ノ有難无難ヲ↡。是[ノ]故[ニ]次[ニ]観†ズ↢无諸難ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅲ)(c)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ][b][ロ]ª四º無諸難→大義門
^すでに無諸難を知りぬ。 なんの義をもつてのゆゑに諸難なき。 このゆゑに次に▲大義門を観ず。
既ニ知[リ]ヌ↢无諸難ヲ↡。以[テ]ノ↢何ノ義ヲ↡故ニ无キ↢諸難↡。是ノ故ニ次[ニ]観†ズ↢大義門ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅲ)(c)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ][b][ロ]ª五º大義門→所求満足
^すでに大義門を知りぬ。 よろしく大義門の満不満を知るべし。 このゆゑに次に▲所求満足を観ず。
既ニ知[リ]ヌ↢大義門ヲ↡。宜[シ]クシ ↠知ル↢大義門ノ満不満ヲ↡。是ノ故[ニ]次[ニ]観†ズ↢所求満足ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅲ)(c)(ロ)[二][Ⅱ]生信
^また次に、 この十七句はただ疑を釈するにあらず。 この十七種の荘厳成就を観ずれば、 よく▼真実の浄信を生じて、 必定してかの安楽仏土に生ずることを得。
復次ニ此ノ十七句ハ非ズ↢但釈スルニ↟疑ヲ。観ズレバ↢此[ノ]十七種ノ荘厳成就ヲ↡、能ク生ジテ↢真実ノ浄信ヲ↡、必定シテ得‡↠生[ズルコト]ヲ↢彼ノ安楽仏*土ニ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅲ)(c)(ロ)[三]問答して料簡す
[Ⅰ]問〔実生願生〕
【82】^▼問ひていはく、 上に、 △生は無生なりと知るといふは、 まさにこれ*上品生のものなるべし。 もし下下品の人の、 十念に乗じて往生するは、 あに実の生を取るにあらずや。 ◆ただ実の生を取らば、 すなはち二執に堕しなん。 一には、 お0126そらくは往生を得ざらん。 二には、 おそらくはさらに生ずとも*惑ひを生ぜん。
問[ヒテ]曰[ク]、上ニ言[フ]ハ↠知[ル]ト↢生ハ无生[ナリ]ト↡、当ニシ↢是上品生ノ者ナル↡。若シ下下品ノ人ノ乗ジテ↢十念ニ↡往生スルハ、豈ニ非[ズ]↠取[ル]ニ↢実ノ生ヲ↡耶。但取†ラバ↢実ノ生ヲ↡、即[チ]堕シナム↢二執ニ↡。一ニハ恐[ク]ハ不ラム‡↠得↢往生ヲ↡。二[ニハ]恐[クハ]更ニ†生ズトモ生ゼム↠*惑ヲ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅲ)(c)(ロ)[三][Ⅱ]答
[ⅰ]能生の因に就いて論ず
^答ふ。 ▼たとへば*浄摩尼珠を、 これを濁水に置けば、 水すなはち清浄なるがごとし。 ▼もし人、 無量生死の罪濁にありといへども、 ▼かの阿弥陀如来の至極無生清浄の宝珠の名号を聞きて、 これを濁心に投ぐれば、 念々のうちに罪滅して心浄まり、 すなはち往生を得。
答[フ]。譬[ヘ]バ如シ↧浄摩尼†殊ヲ置[ケ]バ↢之ヲ濁水ニ↡水即[チ]清浄ナルガ↥。若[シ]人雖モ↠有[リ]ト↢无量生*死ノ罪濁ニ↡、聞[キ]テ↢彼ノ阿弥陀如来ノ至極无生清浄ノ宝珠ノ名†号ヲ↡、投グレバ↢之ヲ濁心ニ↡、念念之中ニ罪滅シ[テ]心浄†マリ、即[チ]得↢往生ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅲ)(c)(ロ)[三][Ⅱ][ⅱ]所生の土に約して語る
^◆またこれ摩尼珠を玄黄の幣をもつて裹みて、 これを水に投ぐれば、 水すなはち玄黄にしてもつぱら物の色のごとくなり。 かの清浄仏土に阿弥陀如来無上の宝珠まします。 無量の荘厳功徳成就の帛をもつて裹みて、 これを往生するところのひとの心水に投ぐれば、 あに*生見を転じて*無生の智となすことあたはざらんや。
又†是摩尼珠ヲ以テ↢玄クロク黄ノキナリ幣ヲ↡裹ミテ、投[グレ]バ↢之ヲ†於水ニ↡、水即[チ]玄黄ニシテ一ラ†如クナリ↢物ノ色ノ↡。彼ノ清浄仏土ニ有ス↢阿弥陀如来无上ノ宝*珠↡。以テ↢无量[ノ]荘厳功徳成就[ノ]帛ヲ↡裹[ミ]テ、投[グレバ]↧之ヲ†於所ノ↢往生スル↡者ノ心水ニ↥、豈ニ不ラム↠能ハ↧転ジテ↢生見ヲ↡為†スコト↦无生ノ智ト↥乎。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅲ)(c)(ロ)[三][Ⅱ][ⅲ]能所生に通じて談ず【氷上燃火】
^▼また氷の上に火を燃くに、 火猛ければすなはち氷解く。 氷解くればすなはち火滅するがごとし。 かの下品の人、 法性無生を知らずといへども、 ただ仏名を称する力をもつて往生の意をなして、 かの土に生ぜんと願ずるに、 かの土はこれ無生の界なれば、 見生の火、 自然に滅するなり。
又如シ↢氷[ノ]上ニ燃ク[ニ]↠火ヲ、火猛ケレバ則[チ]氷解ク、氷解[ケ]レバ則[チ]火滅スルガ↡。彼ノ下品[ノ]人、雖モ↠不ト↠知ラ↢法性无生ヲ↡、但以テ↧称スル↢仏名ヲ↡力ヲ↥作シテ↢往生ノ意ヲ↡、願[ズ]ルニ↠生[ゼム]ト↢彼ノ土ニ↡、彼ノ土[ハ]是无生ノ界ナレバ、見生之火、自然ニ而滅スルナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)衆生体【衆生世間】
(ⅰ)分科
【83】^↑衆生体とは、 この分のなかに二重あり。 一には↓観仏、 二には↓観菩薩なり。
衆0507生体0403ト者、此ノ分ノ中ニ有リ↢二重↡。一[ニ]者観仏、二[ニ]者観菩薩ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)正釈
(a)観仏【仏】
(イ)科目
【84】^↑観仏とは、
観仏ト‡者、
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)正文
[一]仏徳体相
[Ⅰ]標数
[ⅰ]論文
^0127▲いかんが仏の荘厳功徳成就を観ずる。 仏の荘厳功徳成就を観ずとは、 八種あり、 知るべし。
云何[ガ]観ズル↢仏ノ荘厳功徳成就ヲ↡。†観ズト↢仏ノ荘厳功徳成就ヲ↡者、有[リ]↢八*種↡、応シ‡↠知ル。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[一][Ⅰ][ⅱ]註釈
^▲この観の義はすでに前の偈に彰せり。
此ノ観ノ義ハ已ニ彰セリ↢前ノ偈ニ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[一][Ⅱ]列門
【85】 ^▲なんらか八種。 一には↓荘厳座功徳成就、 二には↓荘厳身業功徳成就、 三には↓荘厳口業功徳成就、 四には↓荘厳心業功徳成就、 五には↓荘厳*衆功徳成就、 六には↓荘厳上首功徳成就、 七には↓荘厳主功徳成就、 八には↓荘厳不虚作住持功徳成就なり。
何等カ八種。一[ニ]者荘厳座功徳成就、二[ニ]者荘厳身業功徳成就、三[ニ]者荘厳口業功徳成就、四[ニ]者荘厳心業功徳成就、五[ニ]者荘厳衆功徳成就、六[ニ]者荘厳上首功徳成就、七[ニ]者荘厳主功徳成就、八[ニ]者荘厳不虚作住持功徳成就ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[一][Ⅲ]提釈
[ⅰ]座功徳
[a]論文
【86】 ^▲なんとなれば↑荘厳座功徳成就とは、 偈に 「無量大宝王 微妙浄華台」 といへるがゆゑなり。
†何トナレバ者荘厳座功徳成就[トハ]、偈ニ言ヘルガ↢「無量大宝王微妙浄花台ト」↡故†ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[一][Ⅲ][ⅰ][b]註釈
^もし座を観ぜんと欲せば、 まさに ▲¬*観無量寿経¼ によるべし。
若シ†欲セバ↠観[ゼム]ト↠座ヲ、当ニシ↠*依ル↢¬観无量寿経ニ¼↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[一][Ⅲ][ⅱ]身業功徳
[a]論文
【87】 ^▲なんとなれば↑荘厳↓身業功徳成就とは、 偈に 「相好光一尋 色像超群生」 といへるがゆゑなり。
何[トナレバ]者荘厳身業功徳成就[トハ]、偈[ニ]言[ヘ]ルガ↢「相好光一尋色像超*群生ト」↡故†ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[一][Ⅲ][ⅱ][b]註釈
^もし仏身を観ぜんと欲せば、 まさに ▲¬観無量寿経¼ によるべし。
若[シ]†欲セバ↠観[ゼ]ムト↢仏身ヲ↡、当ニシ↠依ル↢¬観无量寿経ニ¼↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[一][Ⅲ][ⅲ]口業功徳
^▲なんとなれば↑荘厳↓口業功徳成就とは、 偈に 「如来微妙声 梵響聞十方」 といへるがゆゑなり。
何[トナレバ]者荘厳口業功徳成就[トハ]、偈ニ言[ヘル]ガ↢「如来微妙声梵*響聞十方ト」↡故†ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[一][Ⅲ][ⅳ]心業功徳
[a]論文
^0128▲なんとなれば↑荘厳↓心業功徳成就とは、 偈に 「同地水火風 虚空無分別」 といへるがゆゑなり。 ^「無分別」 とは分別の心なきがゆゑなり。
何[トナレバ]者荘厳心業功徳成就[トハ]、偈[ニ]言[ヘルガ]↢「同地水火風虚空无分別ト」↡故†ナリ。无分別ト者無キガ↢分別ノ心↡故†ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[一][Ⅲ][ⅳ][b]註釈
[イ]総じて三業の利益を明す
ª一º総示
^▼*凡夫の衆生は身口意の三業に罪を造るをもつて、 三界に輪転して窮まり已むことあることなからん。 このゆゑに諸仏・菩薩は、 身口意の三業を荘厳して、 もつて衆生の*虚誑の三業を治するなり。
凡0508夫ノ0404衆生ハ身口意ノ三業†ニ*以テ↠造ルヲ↠罪ヲ、輪↢転シテ三界ニ↡无†カラム↠有[ル]コト↢*窮リ已ムコト↡。是ノ故ニ諸仏菩薩[ハ]、荘↢厳シテ身口意ノ三業ヲ↡用テ治スル↢衆生ノ虚誑ノ三業ヲ↡也。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[一][Ⅲ][ⅳ][b][イ]ª二º別釈
ªⅠº身業
^いかんがもつて治す。 ^▼↑衆生は*身見をもつてのゆゑに三塗の身・卑賎の身・醜陋の身・八難の身・流転の身を受く。
云何[ガ]用テ†治ス。衆生ハ以[テ]ノ↢身見ヲ↡故ニ受ク↢三塗ノ身・卑賎ノ身・醜陋ノ身・八難ノ身・流転ノ身ヲ↡。
^◆かくのごとき等の衆生、 阿弥陀如来の相好光明の身を見たてまつれば、 上のごとき種々の身業の*繋縛、 みな解脱を得て、 如来の家に入りて畢竟じて平等の身業を得。
如キ↠是[クノ]等ノ衆生、見[タテ]マツレバ↢阿弥陀如来ノ相好光明ノ身ヲ↡者、如[キ]‡↠上[ノ]種種ノ身業[ノ]繋縛、皆†得テ↢解脱ヲ↡、入[リ]テ↢如来ノ家ニ↡畢竟ジテ得↢平等ノ身業ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[一][Ⅲ][ⅳ][b][イ]ª二ºªⅡº口業
^▼↑衆生は憍慢をもつてのゆゑに、 正法を誹謗し、 *賢聖を*毀呰し、 尊長 尊は君・父・師なり。 長は有徳の人および兄党なり を*捐庳す。
衆生[ハ]以[テ]ノ↢憍慢ヲ↡故ニ、誹↢謗シ正法ヲ↡、毀↢呰シ賢聖ヲ↡、*捐↢*庳ス尊長ヲ↡ 尊者君父師也長者有徳之人及[ビ]兄党也。
^◆かくのごとき人、 抜舌の苦・瘖瘂の苦・*言教不行の苦・*無名聞の苦を受くべし。 かくのごとき等の種々の諸苦の衆生、 阿弥陀如来の*至徳の名号、 説法の音声を聞けば、 上のごとき種々の口業の繋縛、 みな解脱を得て、 如来の家に入りて畢竟じて平等の口業を得。
如キ↠是[クノ]之人、応シ↠受ク↢抜舌ノ苦・瘖瘂ノ苦・言教不行ノ苦・无名聞ノ苦ヲ↡。如[キ]↠是[クノ]等ノ種種ノ諸苦ノ衆生、聞[ケ]バ↢阿弥陀如来ノ至徳ノ名号説法ノ音声ヲ↡、如[キ]‡↠上ノ種種ノ口業[ノ]繋縛、皆得テ↢解脱ヲ↡、入[リ]テ↢如来ノ家ニ↡畢竟ジテ得↢平等ノ口業ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[一][Ⅲ][ⅳ][b][イ]ª二ºªⅢº意業
^▼↑衆生は邪見をもつてのゆゑに、 心に分別を生ず。 もしは有、 もしは無、 もしは非、 もしは是、 もしは好、 もしは醜、 もしは善、 もしは悪、 もしは彼、 もし0129は此、 かくのごとき等の種々の分別あり。 分別をもつてのゆゑに長く三有に淪みて、 種々の分別の苦・取捨の苦を受けて、 長く*大夜に寝ねて、 出づる期あることなし。
衆生[ハ]以[テ]ノ↢邪見ヲ↡故ニ心ニ生ズ↢分別ヲ↡。若[シ]ハ有若[シ]ハ无、若[シ]ハ非若[シ]ハ是、若[シ]ハ好若[シ]ハ醜、若[シ]ハ善若[シ]ハ悪、若[シ]ハ彼若[シ]ハ此、有リ↢如[キ]↠是[クノ]等ノ種種ノ分別↡。以テノ↢分別ヲ↡故ニ長ク淪[ミ]テ↢三有ニ↡、受[ケ]テ↢種種ノ分別ノ苦・取捨ノ苦ヲ↡、長ク寝ネテ↢大夜ニ↡、无シ↠有[ル]コト↢出[ヅ]ル期↡。
^◆この衆生、 もしは阿弥陀如来の平等の光照に遇ひ、 もしは阿弥陀如来の平等の意業を聞けば、 これらの衆生、 上のごとき種々の意業の繋縛、 みな解脱を得て、 如来の家に入りて畢竟じて平等の意業を得るなり。
*是ノ衆生若[シハ]†遇ヒ↢阿弥陀如来ノ平等ノ光照ニ↡、若[シ]ハ聞[ケ]バ↢阿弥陀如来ノ平等[ノ]意業ヲ↡、是等ノ衆生如[キ]‡↠上ノ種種ノ意業ノ繋縛、皆得テ↢解脱ヲ↡、入[リ]テ↢如来ノ家ニ↡畢竟ジテ得ルナリ↢平等ノ意業ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[一][Ⅲ][ⅳ][b][ロ]別して心業の無知を弁ず
ª一º初に仏の無知を明す
ªⅠº問
^問ひていはく、 心はこれ覚知の相なり。 いかんが地・水・火・風に同じく分別なきことを得べきや。
問[ヒテ]曰[ク]、心ハ是覚知ノ相ナリ。云何†ガ可キ↠得↧同[ジ]ク↢地・水・火・風ニ↡无[キ]コトヲ↦分別↥耶。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[一][Ⅲ][ⅳ][b][ロ]ª一ºªⅡº答
^答へていはく、 心は知の相なりといへども、 *実相に入ればすなはち無知なり。
答[ヘテ]曰[ク]、心ハ雖モ↢知ノ相ナリト↡、入[レ]バ↢実相ニ↡則[チ]无知也。
^たとへば蛇の性は曲れりといへども、 竹の筒に入るればすなはち直きがごとし。 また人の身の、 もしは針の刺し、 もしは蜂の螫すにはすなはち覚知あり。 もしは*石の蛭の噉み、 もしは*甘刀の割くにすなはち覚知なきがごとし。
譬[ヘバ]如シ↧蛇ノ性0509[ハ]雖0405モ↠曲[レリ]ト、入[ル]レバ↢竹ノ筒ニ↡則[チ]直キガ↥。又如シ↧人ノ身ノ、若[シハ]針ノ刺シ、若[シハ]蜂ノ螫スニハ 式*亦[ノ]反 則[チ]有リ↢覚知↡、若シ[ハ]石ノ蛭ノ 之一[ノ]反 噉ミ、若[シハ]甘刀ノ割クニ則[チ]无[キ]ガ↦覚知↥。
^かくのごとき等の*有知・無知は因縁にあり。 もし因縁にあればすなはち知にあらず、 無知にあらず。
如[キ]↠是[クノ]等ノ有知・无知[ハ]在リ↢†于因縁ニ↡。若[シ]†在レバ↢因縁ニ↡則[チ]非[ズ]↠知ニ非[ザ]ル↢无知ニ↡也。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[一][Ⅲ][ⅳ][b][ロ]ª二º無知而知を明す
ªⅠº問
^問ひていはく、 心、 実相に入れば無知ならしむべし。 いかんが*一切種智あることを得るや。
問[ヒテ]曰[ク]、心入[レ]バ↢実相ニ↡可シ↠令ム↢†无知ナラ↡。云何ガ†得ル↠有[ル]コトヲ↢一切種智↡耶。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[一][Ⅲ][ⅳ][b][ロ]ª二ºªⅡº答
^答へていはく、 凡心は有知なれば、 すなはち知らざるところあり。 *聖心は無知なるがゆゑに知らざるところなし。 無知にして知る知なればすな0130はち無知なり。
答[ヘテ]曰[ク]、凡心ハ†有知ナレバ則[チ]有リ↠所↠不ル↠†知ラ。聖心ハ无知ナルガ故ニ无シ↠所↠不ル↠知ラ。无知ニシテ而†知ル知ナレバ、即チ无知也。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[一][Ⅲ][ⅳ][b][ロ]ª三º無知を明す
ªⅠº問
^問ひていはく、 すでに無知なるがゆゑに知らざるところなしといふ。 もし知らざるところなければ、 あにこれ種々の法を知るにあらずや。 すでに種々の法を知れば、 またいかんが分別するところなしといふや。
問[ヒテ]曰[ク]、既ニ†言フ↢无知ナルガ故ニ无シト↟所↠不ル↠知ラ。*若シ无ケレバ↠所↠不ル↠知ラ者、豈ニ不ズ↣是知[ル]ニ↢種種ノ法ヲ↡耶。既ニ知[レ]バ↢種種[ノ]之法ヲ↡、復云何†ガ言フ↠无[シ]ト↠所↢分別[スル]↡耶。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[一][Ⅲ][ⅳ][b][ロ]ª三ºªⅡº答
^答へていはく、 諸法の種々の相はみな*幻化のごとし。 しかるに幻化の象・馬、 長き頚・鼻・手・足の異なることなきにあらざれども、 智者これを観て、 あにさだめて象・馬、 これを分別することありといはんや。
答[ヘテ]曰[ク]、諸法ノ種種ノ相[ハ]皆如シ↢幻化ノ↡。然[ル]ニ幻化ノ*像・馬、非[ザ]レドモ↠无[キ]ニ↢長キ頚・鼻・手*足ノ異ルコト↡而、智者観†テ↠之ヲ、豈ニ言[ハ]ム↤定[メ]テ有[リ]ト↣*像・馬分↢別スルコト之ヲ↡耶。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[一][Ⅲ][ⅴ]大衆功徳
【88】 ^▲なんとなれば↑荘厳大衆功徳成就とは、 偈に 「天人不動衆 清浄智海生」 といへるがゆゑなり。
何[トナレバ]者荘厳大衆功徳成就[トハ]、偈ニ言ヘルガ↢「天人不動衆清浄智海生ト」↡故†ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[一][Ⅲ][ⅵ]上首功徳
^▲なんとなれば↑荘厳上首功徳成就とは、 偈に 「如須弥山王 勝妙無過者」 といへるがゆゑなり。
何[トナレバ]者荘厳上首功徳成就[トハ]、偈[ニ]言[ヘル]ガ↢「如須弥山王勝妙无過者ト」↡故†ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[一][Ⅲ][ⅶ]主功徳
^▲なんとなれば↑荘厳主功徳成就とは、 偈に 「天人丈夫衆 恭敬繞瞻仰」 といへるがゆゑなり。
何[トナレバ]者荘厳主功徳成就[トハ]、偈[ニ]言[ヘルガ]↢「天人丈夫衆恭敬繞瞻仰ト」↡故†ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[一][Ⅲ][ⅷ]不虚作住持功徳
[a]正説を釈す
[イ]論文
【89】 ^▲なんとなれば↑荘厳↓不虚作住持功徳成就とは、 偈に 「観仏本願力 遇無空過者 能令速満足 功徳大宝海」 といへるがゆゑなり。
何[トナレバ]者荘厳不虚作住持功徳成就[トハ]、偈[ニ]言[ヘルガ]↢「観仏本願力遇无空過者能令速満足功徳大宝海ト」↡故†ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[一][Ⅲ][ⅷ][a][ロ]註釈
ª一º総示
^0131◆「↑不虚作住持功徳↓成就」 とは、 けだしこれ阿弥陀如来の本願力なり。
「不虚作住持功徳成就[ト]」者、蓋シ是阿弥陀如来ノ本願力也。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[一][Ⅲ][ⅷ][a][ロ]ª二º別釈
ªⅠº虚作を挙げて反顕す
^◆いままさに略して虚作の相の住持することあたはざるを示して、 もつてかの↓不虚作住持の義を顕すべし。 ^*人、 餐を輟 止なり めて士を養ふに、 あるいは、 舟のなかに起り、 金を積みて庫に盈てれども、 餓死を免れざることあり。 かくのごとき事、 目に触るるにみなこれなり。 得れども得るとなすにあらず、 あれどもあるを守るにあらず。 みな虚妄の業の作なるによりて住持することあたはず。
今†当ニシ↧略シテ示[シ]テ↢虚0510作之0406相[ノ]不[ル]ヲ↟能[ハ]↢住持[スルコト]↡、用テ顕ス↦彼ノ不虚作住持之義ヲ↥。人†有リ↧輟メテ↠ 止也貞劣[ノ]反 餐ヲ養†フニ↠士ヲ、或[イ]ハ起リ↢舟ノ中ニ↡、積[ミ]テ↠金ヲ盈テレドモ↠庫ニ而不ルコト↞免レ↢餓死ヲ↡。如[キ]↠斯[クノ]之事触[ルル]ニ↠目ニ皆是ナリ。†得レドモ非ズ↠作[ス]ニ↠得†ルト、在†レドモ†非ズ↠守[ル]ニ↠在ルヲ。皆†由リテ↢虚妄ノ業ノ作ナルニ↡不ル↠能[ハ]↢住持スルコト↡也。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[一][Ⅲ][ⅷ][a][ロ]ª二ºªⅡº正しく不虚作を釈す
^▼いふところの 「↑不虚作住持」 とは、 本法蔵菩薩の四十八願と、 今日の阿弥陀如来の*自在神力とによるなり。 *願もつて力を成ず、 力もつて願に就く。 願*徒然ならず、 力*虚設ならず。 力・願あひ符ひて畢竟じて差はざるがゆゑに 「↑成就」 といふ。
所ノ↠言[フ]不虚作住持[ト]者、依[ル]ナリ↢本法蔵菩薩ノ四十八願ト、今日ノ阿弥陀如来ノ自*在神力トニ↡。願以[テ]成ズ↠力ヲ、力以[テ]就ク↠願ニ。願不↢*徒然ナラ↡、力不↢虚設ナラ↡。力願相*苻ヒテ畢竟ジテ不ルガ↠差ハ故ニ曰フ↢成就ト↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[一][Ⅲ][ⅷ][b]追釈を解す
[イ]論文
【90】 ^▲すなはちかの仏を見たてまつれば、 ↓未証浄心の菩薩、 畢竟じて↓平等法身を証することを得て、 浄心の菩薩と上地のもろもろの菩薩と↓畢竟じて同じく↓寂滅平等を得るがゆゑなり。
即[チ]見†タテマツレバ↢彼ノ仏ヲ↡、未証浄心ノ菩薩畢竟ジテ†得テ↠証スルコトヲ↢平等法身ヲ↡、与↢浄心ノ菩薩↡与↢上地ノ諸ノ菩薩↡畢竟ジテ同ジク†得ルガ↢寂滅平等ヲ↡故ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[一][Ⅲ][ⅷ][b][ロ]註釈
ª一º所得の人法を顕す
ªⅠº人法相成を示す
^◆「↑平等法身」 とは、 *八地以上の*法性生身の菩薩なり。 ▼「↑寂滅平等」 とは、 すなはちこの法身の菩薩の所証の寂滅平等の法なり。 この寂滅平等の法を得る0132をもつてのゆゑに名づけて平等法身となす。 平等法身の菩薩の所得なるをもつてのゆゑに名づけて寂滅平等の法となすなり。
「平等法身[ト]」者、八地已上ノ法性生身ノ菩薩也。「寂滅平等[ト]」者、即[チ]此ノ法身ノ菩薩ノ所証ノ寂滅平等之法也。以[テ]ノ↠得[ル]ヲ↢此ノ寂滅平等ノ法ヲ↡故ニ名[ケ]テ為ス↢平等法身ト↡。以[テ]ノ↢平等法身ノ菩薩ノ所得[ナル]ヲ↡故ニ名[ケ]テ為[ス]↢寂滅平等ノ法ト↡也。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[一][Ⅲ][ⅷ][b][ロ]ª一ºªⅡº所得の三昧を明す
^◆この菩薩、 *報生三昧を得て、 三昧の*神力をもつて、 よく一処にして一念一時に十方世界に遍して、 種々に一切諸仏および諸仏の*大会衆海を供養し、 よく無量世界の*仏法僧なき処において、 種々に示現し、 種々に一切衆生を教化し*度脱して、 つねに仏事をなせども、 初めより往来の想、 供養の想、 度脱の想なし。
此[ノ]菩薩得テ↢報生三昧ヲ↡、以[テ]↢三昧ノ神力[ヲ]↡、能ク一処ニシテ一念一時ニ遍シテ↢十方世界ニ↡、種種ニ供↢養シ一切諸仏及[ビ]諸仏ノ大会衆海ヲ↡、能ク於テ↧无量世界ノ†无キ↢仏法僧↡処ニ↥、種種ニ示現シ、種種ニ教↢化シ度↣脱シテ一切衆生ヲ↡、常ニ作セドモ↢仏事ヲ↡、初ヨリ无シ↢往来ノ想・供養ノ想・度脱ノ想↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[一][Ⅲ][ⅷ][b][ロ]ª一ºªⅢº人法不二を結す
^◆このゆゑに、 この身を名づけて平等法身となし、 この法を名づけて寂滅平等の法となすなり。
是ノ故ニ此ノ身ヲ名[ケ]テ為†シ↢平等法身ト↡、此[ノ]法ヲ名[ケテ]†為ス↢寂滅平等ノ法ト↡*也。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[一][Ⅲ][ⅷ][b][ロ]ª二º能得の分位を弁ず
^◆「↑未証浄心の菩薩」 とは、 初地以上七地以還のもろもろの菩薩なり。 この菩薩またよく身を現じて、 もしは百、 もしは千、 もしは万、 もしは億、 もしは百千万億の無仏の国土に仏事を施作すれども、 かならず*作心を須ゐて三昧に入る。 すなはちよく作心せざるにはあらず。 作心をもつてのゆゑに名づけて未得浄心となす。
「未証浄心ノ菩薩0511[ト]」者0407、初地已上七地已還ノ諸ノ菩薩也。此ノ菩薩亦能ク現ジテ↠身ヲ、若[シ]ハ百若[シ]ハ千、若[シハ]万若[シハ]億、若[シ]ハ百千万億ノ无仏ノ国土ニ施↢作ス[レドモ]仏事ヲ↡、要ズ*須ヰテ↢作心ヲ↡入ル↢三昧ニ↡。乃[チ]能ク非ズ↠不ルニハ↢作心セ↡。以[テ]ノ↢作*心ヲ↡故ニ名[ケテ]為ス↢未得浄心ト↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[一][Ⅲ][ⅷ][b][ロ]ª三º畢竟同得を釈す
ªⅠº正釈
ªⅰº見仏の益を明す
^◆この菩薩、 願じて安楽浄土に生ずれば、 すなはち阿弥陀仏を見たてまつる。 阿弥陀仏を見たてまつる時、 *上地のもろもろの菩薩と畢竟じて身等しく法等し。
此ノ菩薩、†願ジテ生ズレバ↢安楽浄土ニ↡即[チ]見[タテ]マツル↢阿弥陀仏ヲ↡。見[タテマ]ツル↢阿弥陀仏ヲ↡時、与↢上地ノ諸ノ菩薩↡畢竟ジテ身等シク法等シ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[一][Ⅲ][ⅷ][b][ロ]ª三ºªⅠºªⅱº願生の例を引く
^◆*龍樹菩薩、 *婆藪槃頭菩薩 (天親) の輩、 かしこに生ぜんと願ずるは、 まさにこれがためなるべきのみ。
龍樹菩薩・婆藪槃頭菩薩ノ輩、願ズル↠生[ゼム]ト↠彼ニ者、当†ニキ↠為ナル↠此ガ†耳。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[一][Ⅲ][ⅷ][b][ロ]ª三ºªⅡº問答
ªⅰº問
^0133◆問ひていはく、 ¬*十地経¼ を案ずるに、 菩薩の*進趣階級、 やうやく無量の功勲ありて多くの劫数を経、 しかして後にすなはちこれを得。 いかんが阿弥陀仏を見たてまつる時、 畢竟じて上地のもろもろの菩薩と身等しく法等しきや。
問[ヒテ]曰[ク]、案ズルニ↢¬十地経ヲ¼↡、菩薩ノ進趣階*級、漸ク有[リ]テ↢无量ノ功勲↡†逕↢多[ク]ノ劫数ヲ↡、然シテ後ニ†乃チ得↠此ヲ。云何[ガ]見[タテマツル]↢阿弥陀仏ヲ↡時、畢竟ジテ与↢上地ノ諸ノ菩薩↡身等シク法等シキ耶。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[一][Ⅲ][ⅷ][b][ロ]ª三ºªⅡºªⅱº答
ªaº畢竟等に約して縦答す
ªイº所難を会す
^◆答へていはく、 「↑畢竟」 とはいまだ即等といふにはあらず。 畢竟じてこの等しきことを失はざるがゆゑに 「等」 といふのみ。
答[ヘテ]†曰[ク]、畢竟[ト]者未†ダズ↠言フニハ↢即等ト↡也。畢竟ジテ不ルガ↠失ハ↢此ノ等シキコトヲ↡故ニ言フ↠等ト†耳。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[一][Ⅲ][ⅷ][b][ロ]ª三ºªⅡºªⅱºªaºªロº余疑を通ず
ˆ一ˇ問
^◆問ひていはく、 もし即等にあらずは、 またなんぞ菩薩といふことを待たん。 ただ初地に登れば、 もつてやうやく増進して、 自然にまさに仏と等しかるべし。 なんぞ上地の菩薩と等しといふことを仮らん。
問[ヒテ]曰[ク]、若シ†不ズハ↢即等ニ↡、復†何ゾ待タム↠言フコトヲ↢菩薩ト↡。但登レバ↢初地ニ↡、以テ漸ク増進シテ、自然ニ当ニシ↢与↠仏等[シ]カル↡。何ゾ†仮ラム↠言フコトヲ↧与↢上*地ノ菩薩↡等シト↥。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[一][Ⅲ][ⅷ][b][ロ]ª三ºªⅡºªⅱºªaºªロºˆ二ˇ答
^◆答へていはく、 *菩薩、 七地のうちにおいて*大寂滅を得れば、 上に諸仏の求むべきを見ず、 下に衆生の度すべきを見ず。 仏道を捨てて*実際を証せんと欲す。 その時に、 もし十方諸仏の神力の*加勧を得ずは、 すなはち滅度して二乗と異なることなからん。 菩薩もし安楽に往生して阿弥陀仏を見たてまつれば、 すなはちこの難なし。 このゆゑにすべからく 「畢竟じて平等なり」 といふべし。
答[ヘテ]曰[ク]、菩薩†於テ↢七地ノ中ニ↡得[レ]バ↢大寂滅ヲ↡、上ニ不↠見↢諸仏ノ可キヲ↟求ム、下ニ不↠見↢衆生ノ可[キ]ヲ↟度ス。欲ス↧捨テヽ↢仏道ヲ↡証セムト↦於実際[ヲ]↥。爾ノ時ニ若[シ]不ハ↠得↢十方諸仏ノ神力†ノ加勧ヲ↡、即便[チ]滅度シテ与↢二乗↡无†カラム↠異[ル]コト。菩薩若シ往↢生シテ安楽ニ↡見[タテマツ]レバ↢阿弥陀仏ヲ↡、即[チ]无シ↢此ノ難↡。是ノ故ニ須クシ↠言フ↢畢竟ジテ平等ナリト↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[一][Ⅲ][ⅷ][b][ロ]ª三ºªⅡºªⅱºªbº即等に就きて奪答す
ªイº願力を明す
ˆ一ˇ願文
^◆また次に ¬無量寿経¼ (上) のなかに、 阿弥陀如来の本願 (第二十二願) にのたまはく、 「▲たとひわれ仏を得んに、 他方仏土のもろもろの菩薩衆、 わが国に来生せば、 究竟してかならず一生補処に至ら0134ん。 その本願の自在に化せんとするところありて、 衆生のためのゆゑに、 弘誓の鎧を被て徳本を積累し、 一切を度脱し、 諸仏の国に遊びて菩薩の行を修し、 十方の諸仏如来を供養し、 恒沙無量の衆生を開化して、 無上正真の道に立せしめんをば除く。 *常倫諸地の行を超出し、 現前に*普賢の徳を修習せん。 もししからずは、 正覚を取らじ」 と。
復次[ニ]¬无量寿経ノ¼中[ニ]、阿弥陀如来ノ本願ニ言ハク、「設[ヒ]我得†ムニ↠仏[ヲ]、他方仏土ノ諸ノ菩薩衆、来↢生セバ我ガ国ニ↡、究竟シテ必[ズ]至ラム↢一生補処ニ↡。除ク↧其ノ本願0408[ノ]自在0512ニ‡所†アリテ↠化[セント]スル、為ノ↢衆生ノ↡故ニ、被テ↢弘誓ノ鎧ヲ↡積↢累シ徳本ヲ↡、度↢脱シ‡一切ヲ↡、遊ビ[テ]↢諸仏ノ国ニ↡修シ↢菩薩ノ行ヲ↡、供↢養シ十方[ノ]諸仏如来ヲ↡、開↢化シテ恒沙无量ノ衆生ヲ↡、使メムヲバ↞立セ↢无上正真之道ニ↡。†超↢出シ常倫諸地之行ヲ↡、現前ニ修↢習セム普賢之徳ヲ↡。若[シ]不ハ↠爾ラ者不ト↠取ラ↢正覚ヲ↡」。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[一][Ⅲ][ⅷ][b][ロ]ª三ºªⅡºªⅱºªbºªイºˆ二ˇ不共
^◆この経を案じてかの国の菩薩を推するに、 あるいは一地より一地に至らざるべし。
案ジテ↢此ノ経ヲ↡推スルニ↢彼ノ国ノ菩薩ヲ↡、或[イ]ハ可シ↠不ル↧従リ↢一地↡至ラ↦一地ニ↥。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[一][Ⅲ][ⅷ][b][ロ]ª三ºªⅡºªⅱºªbºªロº権実を弁ず
ˆ一ˇ権実を分別す
^◆十地の階次といふは、 これ釈迦如来の、 閻浮提における一の*応化道なるのみ。 他方の浄土はなんぞかならずしもかくのごとくならん。 五種の不思議のなかに仏法もつとも不可思議なり。
言フ↢十地ノ階次[ト]↡者、是釈迦如来[ノ]†於ケル↢閻浮提ニ↡一ノ応化道[ナル]†耳。他方ノ浄土ハ何ゾ必[ズシモ]如クナラム↠此[クノ]。五種ノ不思議ノ中ニ仏法最モ不可思議ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[一][Ⅲ][ⅷ][b][ロ]ª三ºªⅡºªⅱºªbºªロºˆ二ˇ漸に執して頓を疑ふを斥す
ˆⅠˇ法
^◆もし菩薩かならず一地より一地に至りて超越の理なしといはば、 いまだあへて詳らかならず。
若[シ]言ハヾ↧菩薩必[ズ]従リ↢一地↡至[リ]テ↢一地ニ↡无[シ]ト↦超越之理↥、未ダル↢敢テ詳カナラ↡也。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[一][Ⅲ][ⅷ][b][ロ]ª三ºªⅡºªⅱºªbºªロºˆ二ˇˆⅡˇ譬
^▼たとへば樹あり、 名づけて*好堅といふ。 この樹、 地に生ずるに*百囲すなはち具せり。 一日に長ずること高さ百丈なるがごとし。 日々にかくのごとし。 百歳の高さを計るに、 あに*修松に類せんや。 松の生長するを見るに、 日に寸を過ぎず。 かの好堅を聞きて、 なんぞよく即日を疑はざらん。
譬[ヘ]バ如シ↧有リ↠樹、名[ケ]テ曰フ↢好堅ト↡、是ノ樹†地ニ生ズルコト百†囲乃チ†具セリ、一日ニ†長ズルコト高サ百丈ナルガ↥。日日ニ如シ↠此[クノ]。計ルニ↢百歳之†高サヲ↡、豈ニ類セム↢修松ニ↡耶。見[ル]ニ↢松ノ生長スルヲ↡、日ニ不↠過ギ↠寸ヲ。聞[キ]テ↢彼ノ好堅ヲ↡、何ゾ能ク不ラム↠疑ハ↢即日ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[一][Ⅲ][ⅷ][b][ロ]ª三ºªⅡºªⅱºªbºªハº権に執すを斥す
^◆人ありて、 釈迦如来の*羅漢を一聴に証し、 *無生を終朝に制するを聞きて、 これ*接誘の言なり、 *称実の説にあらずといひて、 この論事を聞きてまたまさに信ぜざるべし。 それ*非0135常の言は常人の耳に入らず。 これをしからずと謂ふは、 またそれ*宜なり。
有[リ]テ↠人聞[キ]テ↧釈迦如来[ノ]証シ↢羅漢ヲ†於一聴ニ↡、制スルヲ↦无生ヲ†於*終朝ニ↥、謂ヒテ↣是接誘之†言ナリ、非ズト↢称実之説ニ↡、聞[キ]テ↢此ノ論事ヲ↡亦当ニシ↠不ル↠信ゼ。夫非常之言ハ不↠入ラ↢常人之耳ニ↡。謂フ[ハ]↢之ヲ不ト↟然ラ、亦其†宜也。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[二]示現二利
[Ⅰ]論文
【91】 ^▲略して八句を説きて、 如来の自利利他の功徳荘厳、 次第に成就したまへることを示現す、 知るべし。
略[シテ]説[キ]テ↢八句ヲ↡、示↢現ス‡如来ノ自利利他ノ功徳荘厳、次第ニ成就シタマヘルコトヲ↡、応シ↠知ル。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[二][Ⅱ]註釈
[ⅰ]依正の次第を明す
^◆これはいかんが次第する。 前の十七句は、 これ荘厳国土功徳成就なり。 すでに国土の相を知りぬ。 国土の主を知るべし。 このゆゑに次に仏の荘厳功徳を観ず。
此ハ云何ガ次第†スル。前ノ十七句ハ是荘厳国土功徳成就ナリ。既ニ知[リ]ヌ↢国土ノ相ヲ↡。応シ↠知ル↢国土之主ヲ↡。是[ノ]故[ニ]次[ニ]観†ズ↢仏ノ荘厳功徳ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[二][Ⅱ][ⅱ]八句の生起を弁ず
^◆かの仏いかんが荘厳し、 いづれの処においてか坐したまふ。 このゆゑに先づ▲座を観ず。
彼ノ仏若為ガ荘厳†シ、於テカ↢何ノ処ニ↡坐シタマフ。是ノ故ニ先0513ヅ観0409†ズ↠座ヲ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[二][Ⅱ][ⅱ][a]座→身業
^◆すでに座を知りをはりぬ。 よろしく座の主を知るべし。 このゆゑに次に仏の荘厳▲身業を観ず。
既ニ知リ↠座ヲ已[リ]ヌ。宜シクシ ↠知ル↢座ノ主ヲ↡。是[ノ]故ニ次[ニ]観†ズ↢仏ノ荘*厳身業ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[二][Ⅱ][ⅱ][b]身業→口業
^◆すでに身業を知りぬ。 いかなる声名かましますと知るべき。 このゆゑに次に仏の荘厳▲口業を観ず。
既ニ知[リ]ヌ↢身業ヲ↡。応キ↠知[ル]↠有スト↢†何ナル声名[カ]↡。是[ノ]故[ニ]次[ニ]観†ズ↢仏ノ荘厳口業ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[二][Ⅱ][ⅱ][c]口業→意業
^◆すでに*名聞を知りぬ。 よろしく得名の所以を知るべし。 このゆゑに次に荘厳▲心業を観ず。
既ニ知[リ]ヌ↢名聞ヲ↡。宜[シ]クシ ↠知ル↢得名ノ所以ヲ↡。是ノ故[ニ]次[ニ]観†ズ↢荘厳心業ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[二][Ⅱ][ⅱ][d]意業→大衆
^◆すでに三業具足して人天の大師たるべきことを知りぬ。 *化を受くるに堪へたるひとはこれたれぞ。 このゆゑに次に▲大衆の功徳を観ず。
既ニ†知リヌ↢三業具足シテ応キコトヲ↟為ル↢人天ノ大師↡。堪ヘタル↠受クルニ↠化ヲ者ハ是誰ゾ↡。是[ノ]故ニ次ニ観†ズ↢大衆功徳ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[二][Ⅱ][ⅱ][e]大衆→上首
^◆すでに大衆に無量の功徳あることを知りぬ。 よろしく上首はたれぞと知るべし。 このゆゑに次に▲上首を観ず。 上首はこれ仏 (阿弥陀仏) なり。
既ニ知[リ]ヌ↣大衆[ニ]有[ル]コトヲ↢无量ノ功徳↡。宜シクシ ↠知ル↢上首者誰ゾト↡。是[ノ]故ニ次ニ観ズ↢上首ヲ↡。上首ハ是仏ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[二][Ⅱ][ⅱ][f]上首→主
^◆すでに上首を知りぬ。 *長幼に同ずることを恐る。 このゆゑに次に▲主を観ず。
既ニ知[リ]ヌ↢上首ヲ↡。†恐ル↠同ズルコトヲ↢長*幼ニ↡。是[ノ]故ニ次[ニ]観ズ↠主ヲ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[二][Ⅱ][ⅱ][g]主→不虚作住持
^◆すでにこの主を知りぬ。 主にいかなる*増上かまします。 こ0136のゆゑに次に▲荘厳▲不虚作住持を観ず。 ^八句の次第成じをはりぬ。
既ニ知[リ]ヌ↢是ノ主ヲ↡。主[ニ]有ス‡↢何ナル増上カ↡。是[ノ]故[ニ]次ニ観ズ↢荘厳不虚作住持ヲ↡。八句ノ次第†成ジ已リヌ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)観菩薩【菩薩】
(イ)標章
【92】^▼↑菩薩を観ずとは、
観[ズト]↢菩薩ヲ↡者、
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)正釈
[一]総標
[Ⅰ]論文
^▲いかんが菩薩の荘厳功徳成就を観察する。 菩薩の荘厳功徳成就を観察すとは、 かの菩薩を観ずるに*四種の↓正修行功徳成就あり、 知るべし。
云何ガ観↢察スル菩薩ノ荘厳功徳成就ヲ↡。観↢察スト菩薩ノ荘厳功徳成就[ヲ]↡者、観ズルニ↢彼ノ菩薩ヲ↡有[リ]‡↢四種ノ正修行功徳成就↡、応[シ]↠知ル。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[一][Ⅱ]註釈
^▼真如はこれ諸法の正体なり。 *如を体して行ずれば、 すなはちこれ不行なり。 不行にして行ずるを如実修行と名づく。 ▼体はただ一如なれども、 義をもつて分ちて四となす。 このゆゑに四の行、 一の↑正をもつてこれを統ぶ。
真如ハ是諸法ノ正体ナリ。体↠如ニシテ而行ズレバ、則[チ]是不行ナリ。不行ニシテ而行ズルヲ名ク↢如実修行ト↡。体ハ唯一如ナレドモ而義†ヲモテ分[チ]テ為ス↠四ト。是ノ故ニ四ノ行†以テ↢一ノ正ヲ↡†統ブ↠之ヲ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[二]別釈
[Ⅰ]不動而至
[ⅰ]論文
【93】 ^▲何者をか四となす。 一には一仏土において▽身動揺せずして十方に遍して、 種々に応化して如実に修行し、 つねに仏事をなす。 ^偈に 「安楽国清浄 ↓常転↓無垢輪 化仏菩薩↓日 ↓如須弥住持」 といへるがゆゑなり。 ^もろもろの衆生の、 ↓*淤泥華を開くがゆゑなり。
何者ヲカ†為ス↠四ト。一[ニ]者†於テ↢一仏土ニ↡身不シテ↢動揺セ↡而遍シテ↢十方ニ↡、種種ニ応化シテ†如実ニ修行シ‡、常ニ作ス↢仏事ヲ↡。偈[ニ]†言ヘルガ↢「安楽国清浄、常転无垢輪、化仏菩薩日、如須弥住持ト」↡故†ナリ。開クガ↢諸ノ衆生[ノ]淤泥花ヲ↡故†ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ]註釈
[a]句義を釈す
^◆八地以上の菩薩は*つねに三昧にありて、 三昧力をもつて、 身は本処を動ぜずして、 よくあまねく十方に至りて諸仏を供養し、 衆生を教化す。
八0514地已0410上ノ菩薩[ハ]常ニ在リ[テ]↢三昧[ニ]↡、以テ↢三昧力ヲ↡、身[ハ]不シテ↠動ゼ↢本処ヲ↡而能ク遍ク至[リ]テ↢十方ニ↡供↢養シ諸仏ヲ↡、教↢化ス衆生ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ][b]文意を解す
[イ]第二句を釈す
^◆「↑*無垢輪」 とは*仏地の功徳なり。 仏地の功徳は、 *習気煩悩の垢なければなり。 仏 (阿弥陀仏)、 もろもろの菩薩のために、 つねにこの*法輪を転ず。 諸大菩薩もまたよくこの法輪0137をもつて一切を開導すること、 暫時も休息することなし。 ゆゑに 「↑常転」 といふ。
「无垢輪ト‡」者、仏地ノ功徳也。仏地ノ功徳ハ无ケレバナリ↢習気煩悩ノ垢↡。仏為ニ↢諸ノ菩薩ノ↡、常ニ転ズ↢此ノ法輪ヲ↡。諸大菩薩[モ]亦能ク以テ↢此ノ法輪ヲ↡開↢導スルコト一切ヲ↡、无シ↢蹔時モ休息スルコト↡。故ニ言フ↢「常転ト」↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ][b][ロ]三四句を釈す
^◆法身は日のごとくして、 応化身の光もろもろの世界に遍するなり。 「↑日」 といふにはいまだもつて不動を明かすに足らざれば、 また 「↑如須弥住持」 といへるなり。
法身ハ如クシテ↠日[ノ]而応化身ノ光遍スル↢諸ノ世界ニ↡也。言フニハ↠「日ト」†未ダレバ↠足ラ↣以テ明スニ↢不動ヲ↡、復言[ヘ]ル↢「如須弥住持ト」↡也。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ][b][ハ]淤泥華を釈す
^▼「↑淤泥華」 といふは、 ¬経¼ (*維摩経) に、 「高原の陸地には蓮華を生ぜず。 *卑湿の淤泥にすなはち蓮華を生ず」 とのたまへり。 ▼これは凡夫、 煩悩の泥のなかにありて、 菩薩のために開導せられて、 よく仏の正覚の華を生ずるに喩ふ。 まことにそれ三宝を紹隆してつねに絶えざらしむ。
「淤泥花トイフ」者、¬経ニ¼言ヘリ↧「高原ノ陸地ニハ不↠生[ゼ]↢蓮花ヲ↡、卑湿[ノ]淤泥ニ乃チ生ズト↦蓮花[ヲ]↥」。此ハ喩フ↧凡夫在[リ]テ↢煩悩ノ泥ノ中ニ↡、為ニ↢菩薩ノ↡開導セラレテ、能ク生ズルニ↦仏ノ正覚ノ花ヲ↥。諒ニ夫紹ツグ↢*隆タツシテ三宝ヲ↡常ニ使ム‡↠不ラ↠絶エ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅱ]一念遍至
[ⅰ]論文
【94】 ^▲二にはかの応化身、 一切の時に前ならず後ならず、 一心一念に大光明を放ちて、 ことごとくよくあまねく十方世界に至りて衆生を教化す。 種々に方便し修行し、 なすところ一切衆生の苦を滅除するがゆゑなり。 ^偈に 「無垢荘厳光 一念及一時 普照諸仏会 利益諸群生」 といへるがゆゑなり。
二[ニ]者彼ノ応化身、一切ノ時[ニ]不↠前ナラ不↠後ナラ、一心一念ニ放[チ]テ↢大光明ヲ↡、悉ク能[ク]遍ク至[リ]テ↢十方世界ニ↡教↢化ス衆生ヲ↡。種種ニ方便シ修行シ‡、†所↠作ス滅↢除スルガ一切衆生ノ苦ヲ↡故†ナリ。偈[ニ]言ヘルガ↢「无垢荘厳光、一念及一時、普照諸仏会、利益諸*群生ト」↡故†ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅱ][ⅱ]註釈
^△上に不動にして至るといふは、 あるいは至ること前後あるべし。 このゆゑにまた一念一時にして前後なしといへるなり。
上ニ言[フ]ハ↢不動ニシテ而至[ル]ト↡、容シ↣或[イ]ハ至[ル]コト有ル↢前後↡。是ノ故ニ復言[ヘ]ル↣一念一時ニシテ无[シ]ト↢前後↡也。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅲ]無相供養
[ⅰ]論文
【95】 ^▲三にはかれ一切世界において余すことなく、 諸仏の会の*大衆を照らして0138↓余すことなく、 広大無量に諸仏如来の功徳を供養し*恭敬し讃嘆す。 ^偈に 「雨天楽華衣 妙香等供養 讃諸仏功徳 無有分別心」 といへるがゆゑなり。
三[ニ]者彼於テ↢一切世界ニ↡无ク↠余[スコト]、†照シテ↢諸仏ノ会ノ大衆ヲ↡无ク↠余[スコト]、広大无量ニ‡供↢養シ恭↣敬シ讃↤嘆ス諸仏如来ノ功徳ヲ↡。偈[ニ]言ヘルガ↢「雨天楽花衣、妙香等供養、讃諸仏功徳、无有分別心ト」↡故†ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅲ][ⅱ]註釈
^◆「↑余すことなく」 とは、 あまねく一切世界の一切諸仏の大会に至りて、 一世界にも一仏会にも至らざることあることなきを明かすなり。
「†无0515クト↠余0411スコト」者、†明ス↧遍ク至[リ]テ↢一切世界ノ一切諸仏ノ大会ニ↡、无キヲ↞有[ル]コト↢一世界ニモ一仏会ニモ不ルコト↟至ラ也。
^◆肇公 (*僧肇) のいはく (註維摩経)、 「*法身は像なくして殊形並び応じ、 *至韻は言なくして*玄籍弥く布けり。 *冥権謀なくして、 動じて事と会ふ」 と。 ^けだしこの意なり。
肇公ノ言ク、「法身ハ无クシテ↠像而†殊形†並ビ応ジ、至韻ハ无クシテ↠言而玄籍弥ク布ケリ。冥権无クシテ↠謀而動ジテ与↠事†会フト」。蓋シ斯ノ意也。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅳ]示法如仏
[ⅰ]論文
【96】 ^▲四にはかれ十方一切世界の三宝なき処において、 仏法僧宝の功徳の大海を住持し荘厳して、 あまねく示して如実の修行を解らしむ。 ^偈に 「何等世界無 仏法功徳宝 我願皆往生 示仏法如仏」 といへるがゆゑなり。
四[ニ]者彼於テ↧十方一切世界ノ†无キ↢三宝↡処ニ↥、住↢持シ荘↣厳シテ仏法僧宝ノ功徳ノ大海ヲ↡、遍ク示[シ]テ令ム↠解ラ↢如実ノ修行ヲ↡。偈ニ言ヘルガ↢「何等世界无、仏法功徳宝、我願皆往生、示仏法如仏ト」↡故†ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅳ][ⅱ]註釈
^◆上の三句は遍至といふといへども、 みなこれ有仏の国土なり。 もしこの句なくは、 すなはちこれ法身、 法ならざるところあらん。 上善、 善ならざるところあらん。 ^*観行の体相竟りぬ。
上ノ三句ハ雖モ↠言[フ]ト↢遍至ト↡、皆是有仏ノ国土ナリ。若シ无クハ↢此ノ句↡、便[チ]是法身、有ラム↠†所↠不ル↠法ナラ。上善有ラム↠†所↠不ル↠善ナラ。観行ノ体相竟[リ]ヌ。
二 Ⅱ ⅱ b ニ【浄入願心章】
(一)起下
【97】^◆以下はこれ解義のなかの第四重を名づけて↑浄入願心となす。
已下ハ是解義ノ中ノ第四重ヲ名[ケ]テ為ス↢浄入願心ト↡。
二 Ⅱ ⅱ b ニ (二)標章
^▼浄入願心と0139は、
浄入願心ト‡者、
二 Ⅱ ⅱ b ニ (三)正釈
(Ⅰ)願心荘厳を釈す
(ⅰ)論文
^▲また向に荘厳仏土功徳成就と荘厳仏功徳成就と荘厳菩薩功徳成就とを観察することを説けり。 この三種の成就は、 願心をもつて荘厳せり、 ↓知るべし。
又向ニ†説ケリ↣観↢察スルコトヲ荘厳仏土功徳成就ト荘厳仏功徳成就ト荘厳菩薩功徳成就[ト]ヲ↡。此ノ三種ノ成就ハ願心†ヲモテ荘厳セリ‡、応シ‡↠知ル。
二 Ⅱ ⅱ b ニ (三)(Ⅰ)(ⅱ)註釈
^◆「↑知るべし」 とは、 この三種の荘厳成就は、 本四十八願等の清浄願心の荘厳したまへるところなるによりて、 ▼*因浄なるがゆゑに果浄なり。 ▼*無因と他因の有にはあらざるを知るべしとなり。
「†応シト↠知ル」者、応シト↠知ル↧此ノ三種ノ荘厳成就ハ、由[リ]テ↣本四十八願等ノ清浄願心之所ナルニ↢荘厳†シタマヘル↡、因浄ナルガ故ニ果浄ナリ、†非ザルヲ↦无因ト他因ノ有ニハ↥也。
二 Ⅱ ⅱ b ニ (三)(Ⅱ)広略相入を釈す
(ⅰ)略門を明す
(a)総じて一句を標す
(イ)論文
【98】 ^▲略して↓一法句に入ることを説くがゆゑなり。
†略シテ説クガ↠入コトヲ↢一法句ニ↡故†ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ニ (三)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ロ)註釈
[一]総標
^◆上の国土の荘厳十七句と、 如来の荘厳八句と、 菩薩の荘厳四句とを広となす。 一法句に入るを略となす。
上0516ノ国0412土ノ荘厳十七句ト、如来ノ荘厳八句ト、菩薩ノ荘厳四句[ト]ヲ為ス↠広ト。†入ルヲ↢一法句ニ↡†為ス↠略ト。
二 Ⅱ ⅱ b ニ (三)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ロ)[二]別釈
^▼なんがゆゑぞ*広略相入を示現するとなれば、 ▼諸仏・菩薩に二種の法身まします。 一には*法性法身、 二には*方便法身なり。 法性法身によりて方便法身を生ず。 方便法身によりて法性法身を出す。 この二の法身は異にして分つべからず。 一にして同ずべからず。 このゆゑに広略相入して、 統ぶるに法の名をもつてす。
†何ガ故ゾ示↢現†スルトナレバ広略相入ヲ↡、諸仏菩薩ニ有ス↢二種ノ法身↡。一[ニ]者法性法身、二[ニ]者方便法身ナリ。由[リ]テ↢法性法身ニ↡生ズ↢方便法身ヲ↡。由[リ]テ↢方便法身ニ↡出ス↢法性法身ヲ↡。此ノ二ノ法身ハ異ニシテ而不↠可[カラ]↠分ツ。一ニシテ而不↠可[カラ]↠同ズ。是ノ故ニ広略相入シテ、†統ブルニ以テス↢法ノ名ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ニ (三)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ロ)[三]結示
^▼菩薩もし広略相入を知らざれば、 すなはち自利利他することあたはざればなり。
菩薩若シ†不レバ↠知[ラ]↢広略相入ヲ↡、則チ†不レバナリ↠能ハ↢自利利他†スルコト↡。
二 Ⅱ ⅱ b ニ (三)(Ⅱ)(ⅰ)(b)転釈して体を顕す
(イ)論文
【014099】 ^▲↑一法句といふはいはく、 ↓清浄句なり。 清浄句といふはいはく、 ↓真実智慧↓無為法身なるがゆゑなり。
一法句[トイフ]者、謂ク清浄句ナリ。清浄句[トイフ]者、謂ク真実‡智†恵无為法身ナルガ故†ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ニ (三)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(ロ)註釈
[一]三句の相入を略示す
^▼↓この*三句は*展転して相入す。 なんの義によりてか、 これを名づけて法となす。 清浄をもつてのゆゑなり。 なんの義によりてか、 名づけて清浄となす。 真実智慧無為法身なるをもつてのゆゑなり。
此ノ三句ハ展転シテ相入ス。依[リ]テカ↢†何ノ義ニ↡、名[ケ]テ↠之ヲ†為ス↠法ト。以[テ]ノ↢清浄ヲ↡故†ナリ。依[リテ]カ↢†何ノ義ニ↡、*名[ケ]テ†為ス↢清浄ト↡。以[テ]ノ↢真実‡智†恵无為法身[ナル]ヲ↡故ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ニ (三)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(ロ)[二]第三の一句を広釈す
[Ⅰ]即空に約す
[ⅰ]真実智慧を釈す
^▼「↑↓真実智慧」 とは、 実相の智慧なり。 実相は無相なるがゆゑに、 *真智は↓無知なり。
「真実智†恵ト‡」者、実相ノ智*恵也。実相[ハ]无相†ナルガ故ニ、真智ハ无知也。
二 Ⅱ ⅱ b ニ (三)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ]無為法身を釈す
^▼「↑↓無為法身」 とは法性身なり。 ▼法性は寂滅なるがゆゑに、 法身は↓無相なり。
「无為法身ト‡」者、法性身也。法性[ハ]寂滅ナルガ故ニ、法身ハ无相也。
二 Ⅱ ⅱ b ニ (三)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(ロ)[二][Ⅱ]不空に約す
[ⅰ]法身
^◆↑無相のゆゑによく相ならざるはなし。 このゆゑに相好荘厳はすなはち法身なり。
无相ノ故ニ能ク无シ↠不ルコト↠相ナラ。是[ノ]故ニ相好荘厳[ハ]即[チ]法身也。
二 Ⅱ ⅱ b ニ (三)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(ロ)[二][Ⅱ][ⅱ]真智
^◆↑無知のゆゑによく知らざるはなし。 このゆゑに一切種智はすなはち真実の智慧なり。
无知ノ故ニ能ク无シ↠不[ル]コト↠知ラ。是ノ故ニ一切種*智[ハ]即[チ]真実ノ智†恵也。
二 Ⅱ ⅱ b ニ (三)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(ロ)[二][Ⅲ]中道に約す
[ⅰ]二辺を離るを明す
[a]真智
^◆↑真実をもつて智慧に目くることは、 智慧は作にあらず、 非作にあらざることを明かすなり。
以テ↢真実ヲ↡而*目クルコトハ↢智*恵ニ↡、明ス↣智*恵ハ非ズ↠作ニ非[ザル]コトヲ↢非作[ニ]↡也。
二 Ⅱ ⅱ b ニ (三)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(ロ)[二][Ⅲ][ⅰ][b]法身
^◆↑無為をもつて法身を標すことは、 法身は色にあらず、 非色にあらざることを明かすなり。
以[テ]↢无為ヲ↡而標スコトハ↢法身ヲ↡、明ス↣法身ハ非[ズ]↠色ニ非[ザル]コトヲ↢非色ニ↡也。
二 Ⅱ ⅱ b ニ (三)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(ロ)[二][Ⅲ][ⅱ]中に着せざるを明す
^◆非を非するは、 あに非を非するのよく是ならんや。 けだし非を無みする、 これを是といふ。 みづから是にして待することなきも、 また是にあらず。 是にあらず、 非にあらず、 *百非の喩へざるところなり。
†非スル↢于非ヲ↡者、豈ニ†非スル↠非ヲ之能ク是ナラム乎。蓋シ†无スル↠非ヲ之ヲ曰フ↠是ト也。自ラ是ニシテ†无キモ↠待スルコト復非[ザ]ル↠是ニ也。非ズ↠是ニ、非ズ↠非ニ、百非之所ナリ↠不ル↠*喩[ヘ]。
二 Ⅱ ⅱ b ニ (三)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(ロ)[三]二三の相入を結示す
^◆このゆゑに清浄句といふ。 「↑清浄句」 とは、 真実智慧無為法身をいふなり。
是ノ故ニ言フ↢「清浄句ト」↡。*清浄句[ト]者、†謂フ↢真実智*恵无為法身ヲ↡也。
二 Ⅱ ⅱ b ニ (三)(Ⅱ)(ⅱ)広門を明す
(a)標数
(イ)論文〔二種清浄〕
【0141100】 ^▲この清浄に二種あり、 ↓知るべし。
0517此ノ0413清浄ニ有[リ]‡↢二種↡、応シ↠知[ル]。
二 Ⅱ ⅱ b ニ (三)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)註釈
^◆↑上の転入句のなか、 一法に通じて清浄に入り、 清浄に通じて法身に入る。 いままさに清浄を別ちて二種を出さんとするがゆゑに、 ことさらに、 「↑知るべし」 といふ。
上ノ転入句ノ中‡、通ジテ↢一法ニ↡入†リ↢清浄ニ↡、通ジテ↢清浄ニ↡入ル↢法身ニ↡。今将ス ニル[ガ]↧別チテ↢清浄ヲ↡出†デムト↦二種ヲ↥故ニ、*故[ラ]ニ†言フ↠「応シト↠知[ル]」。
二 Ⅱ ⅱ b ニ (三)(Ⅱ)(ⅱ)(b)列釈
(イ)論文
[一]標列
【101】 ^▲なんらか二種。 一には↓器世間清浄、 二には↓衆生世間清浄なり。
何等カ二種。一[ニ]者器世間清浄、二[ニ]者衆生世間清浄ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ニ (三)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[二]器世間清浄
^▲↑↓器世間清浄とは、 向に説くがごとき十七種の荘厳仏土功徳成就なり。 これを器世間清浄と名づく。
器世間清浄[ト]者、†如キ↢向ニ†説クガ↡十七種ノ荘厳仏土功徳成就ナリ。是ヲ名ク↢器世間清浄ト↡。
二 Ⅱ ⅱ b ニ (三)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[三]衆生世間清浄
^▲↑衆生世間清浄とは、 向に説くがごとき八種の荘厳仏功徳成就と四種の荘厳菩薩功徳成就となり。 これを衆生世間清浄と名づく。
*衆生世間清浄[ト]者、如キ↢向ニ説[ク]ガ↡八種ノ荘厳仏功徳成就ト四種ノ荘厳菩薩功徳成就[トナリ]。是ヲ名ク↢衆生世間清浄ト↡。
二 Ⅱ ⅱ b ニ (三)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[四]摂二種
^▲かくのごとく一法句に二種の↓清浄を摂す、 ↓知るべし。
如[ク]↠是[クノ]一法*句ニ摂ス‡↢二種ノ清*浄ヲ↡、応シ↠知ル。
二 Ⅱ ⅱ b ニ (三)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)註釈
[一]直釈
[Ⅰ]依止の一異を弁ず
^◆それ衆生を*別報の体となし、 国土を*共報の用となす。 体・用一にあらず。 ゆゑに 「↑知るべし」 といふ。 しかるに諸法は心をもつて成ず。 余の境界なし。 衆生および器、 また異なることを得ず、 一なることを得ず。 一ならざればすなはち義をもつて分つ。 異ならざれば同じく 「↑清浄」 なり。
夫衆生†ヲ為†シ↢別報之体ト↡、国土†ヲ為ス↢共*報之用ト↡。体*用†不ズ↠一ニ。所以ニ「応[シトイフ]↠知[ル]」。然[ル]ニ諸法ハ心†ヲモテ†成ズ。无シ↢余ノ境界↡。衆生及[ビ]器、復不↠得↠異[ナルコト]ヲ、不↠*得↠一[ナルコト]ヲ。不†レバ↠一[ナラ]則[チ]義†ヲモテ分ツ。不†レバ↠異[ナラ]同ジク清浄†ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ニ (三)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[一][Ⅱ]二浄の相成を明す
^◆「↑器」 とは用なり。 いはく、 かの浄土は、 これかの清浄の衆生の受用するところなるがゆゑに名づけ0142て器となす。 浄食に不浄の器を用ゐれば、 器不浄なるをもつてのゆゑに食また不浄なり。 不浄の食に浄器を用ゐれば、 食不浄なるがゆゑに器また不浄なるがごとし。 かならず二ともに潔くしてすなはち浄と称することを得。 ここをもつて一の清浄の名にかならず二種を摂するなり。
「器[ト]」者用也。謂ク彼ノ浄土ハ、是彼ノ清浄ノ衆生之所ナルガ↢受用スル↡故ニ名[ケ]テ為ス↠器ト。如シ↧浄食ニ用[ヰレ]バ↢不浄ノ器ヲ↡、以[テ]ノ↢器不浄ナルヲ↡故ニ食亦不浄ナリ、不浄ノ食ニ用[ヰレ]バ↢浄器ヲ↡、食不浄ナルガ故ニ器亦不浄ナルガ↥。要ズ†二倶ニ潔クシテ乃チ得↠称[スル]コトヲ↠浄ト。是ヲ以テ†一ノ清浄ノ名ニ必[ズ]摂†スルナリ↢二種ヲ。
二 Ⅱ ⅱ b ニ (三)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[二]問答
[Ⅰ]問
^◆問ひていはく、 衆生清浄といふは、 すなはちこれ仏 (阿弥陀仏) と ˆ浄土のˇ 菩薩となり。 かのもろもろの人天も、 この清浄の数に入ることを得やいなや。
問[ヒテ]曰[ク]、言フハ↢衆生清浄ト↡、則[チ]是仏ト与ナリ↢菩薩↡。彼ノ諸ノ人天[モ]、得[ル]ヤ↠入[ル]コトヲ↢此ノ清浄ノ数ニ↡不ヤ。
二 Ⅱ ⅱ b ニ (三)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅱ]答
^◆答へていはく、 清浄と名づくることを得れども、 実の清浄にあらず。
答[ヘテ]曰[ク]、得†レドモ↠名[クル]コトヲ↢清浄ト↡、非ズ↢実ノ清浄ニ↡。
^◆たとへば出家の聖人は、 煩悩の賊を殺すをもつてのゆゑに名づけて比丘となし、 凡夫の出家のものの、 持戒・破戒もみな比丘と名づくるがごとし。
譬[ヘ]バ如シ↧出家ノ聖人ハ以[テ]ノ↠殺[ス]ヲ↢煩悩ノ賊ヲ↡故ニ名[ケ]テ為†シ↢比丘ト↡、凡0518夫ノ0414出家ノ者ノ、*持戒・破戒[モ]皆名[ク]ルガ↦比丘ト↥。
^◆また*潅頂王子の初生の時に、 三十二相を具してすなはち*七宝の属するところとなる。 いまだ転輪王の事をなすことあたはずといへども、 また転輪王と名づくるがごとし。 それかならず転輪王となるべきをもつてのゆゑなり。
又如シ↧潅頂王子ノ初生之時ニ、具シテ↢三十二相ヲ↡即[チ]†為ル↢七宝ノ所ト↟属スル、雖モ↠未ズ ダト↠能ハ↠為[ス]コト↢転輪王ノ事ヲ↡、亦名クルガ↦転輪王ト↥。以[テ]ノ↣其必[ズ]為ルベキヲ↢転輪王ト↡故ナリ。
^◆かのもろもろの人天も、 またかくのごとし。 みな大乗*正定の聚に入りて、 畢竟じてまさに清浄法身を得べし。 まさに得べきをもつてのゆゑに清浄と名づくることを得るなり。
彼ノ諸ノ人天[モ]、亦復如シ↠是[クノ]。皆入[リ]テ↢大乗正定之聚ニ↡、畢竟ジテ当ニシ↠得↢清浄法身ヲ↡。以[テ]ノ↠当ベ ニキヲ↠得故ニ得ルナリ‡↠名クルコトヲ↢清浄ト↡。
二 Ⅱ ⅱ b ホ【善巧摂化章】
(一)標章
【102】^◆↑善巧摂化とは、
善巧摂化[ト]者、
二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)釈文
(Ⅰ)自利の成就を明す
(ⅰ)柔軟心を釈す
(a)論文
^0143▲かくのごとく菩薩は、 奢摩他と毘婆舎那を広略に修行して↓柔軟心を成就す。
如ク↠是[ク]ノ菩薩[ハ]、奢摩他[ト]毘婆舎那[ヲ]広略ニ修行シテ成↢就ス‡柔軟心ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)註釈
^◆「↑柔軟心」 とは、 いはく、 広略の*止観、 あひ順じ修行して*不二の心を成ずるなり。 たとへば水をもつて影を取るに、 清と静とあひ資けて成就するがごとし。
「柔軟心[ト]」者、謂ク広略ノ止観、†相順ジ修行シテ成†ズル↢不二ノ心ヲ↡也。譬[ヘ]バ*如[シ]↢水ヲモテ取ルニ↠影ヲ清ト静ト相資ケテ而成就スルガ↡也。
二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅰ)(ⅱ)如実知を釈す
(a)論文
【103】 ^▲↓如実に広略の諸法を知る。
†如実ニ知ル‡↢広略ノ諸法ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)註釈
^◆「↑如実に知る」 とは、 実相のごとくに知るなり。 広のなかの二十九句、 略のなかの一句、 ▼実相にあらざるはなし。
「†如実ニ知ルト」者、如ク[ニ]↢実相ノ↡而知[ル]也。広ノ中ノ廿九句、略ノ中ノ一句、莫†シ↠非[ザ]ルコト↢実相ニ↡也。
二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅱ)利他の行相を顕す〔巧方便回向〕
(ⅰ)標
(a)論文
【104】 ^▲↓かくのごとくして↓巧方便回向を成就す。
如[クシテ]↠是[クノ]成↢就ス巧方便廻向ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)註釈
^◆「↑かくのごとく」 とは、 前後の広略みな実相なるがごとくとなり。 ▼実相を知るをもつてのゆゑに、 すなはち三界の衆生の虚妄の相を知るなり。 衆生の虚妄なるを知れば、 すなはち真実の慈悲を生ずるなり。 真実の法身を知れば、 すなはち真実の帰依を起すなり。 ▽慈悲と▽帰依と、 ▽巧方便とは下にあり。
「如[ク]ト‡↠是[クノ]」者、如[クト]↢前後ノ広略皆実相ナルガ↡也。以[テ]ノ↠*知[ル]ヲ↢実相ヲ↡故ニ、則[チ]知[ル]↢三界ノ衆生ノ虚妄ノ相ヲ↡也。知†レバ↢衆生ノ虚妄ナルヲ↡、則[チ]生ズル↢真実ノ慈悲ヲ↡也。知†レバ↢真実ノ法身ヲ↡、則[チ]起ス↢真実ノ帰依ヲ↡也。慈悲ト之与‡↢帰依↡、巧*方便[ト]ハ在リ↠下ニ。
二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅱ)(ⅱ)釈
(a)論文
【105】 ^▲何者か菩薩の↑巧方便回向。 菩薩の↓巧方便↓回向とは、 いはく、 説ける礼拝等の五種の修行をもつて、 集むるところの一切の功徳善根は、 ↓自身住持の楽を求めず、 一切衆生の苦を抜かんと欲するがゆゑに、 一切衆生0144を摂取して、 ともに同じくかの安楽仏国に生ぜんと作願するなり。 これを菩薩の巧方便回向成就と名づく。
0519何者0415カ菩薩ノ巧方便廻向‡。菩薩ノ巧方便廻向ト‡者、謂ク説[ケル]礼拝等ノ五種ノ修行†ヲモテ、所ノ↠集ムル一切ノ功徳善根†ハ、不↠求メ↢自身‡住持之楽ヲ↡、†欲スルガ↠抜[カム]ト↢一切衆生ノ苦ヲ↡故ニ、作↧願†スルナリ摂↢取シテ一切衆生ヲ↡共ニ同ジク生[ゼム]ト↦彼ノ安楽仏国ニ↥。是ヲ名ク‡↢菩薩ノ巧方便廻向成就ト↡。
二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)註釈
(イ)菩提心を明す【菩提心釈】
[一]経を引きて正明す
^▼王舎城所説の ¬無量寿経¼ (下) を案ずるに、 ▼三輩生のなかに、 行に優劣ありといへども、 みな*無上菩提の心を発さざるはなし。 ▼この無上菩提心とは、 すなはちこれ△願作仏心なり。 ▼願作仏心とは、 すなはちこれ△度衆生心なり。 ▼度衆生心とは、 すなはち△衆生を摂取して有仏の国土に生ぜしむる心なり。 このゆゑに▼かの安楽浄土に生ぜんと願ずるものは、 かならず無上菩提心を発すなり。
案ズルニ↢王舎城所説ノ¬无量寿経ヲ¼↡、三輩生ノ中ニ、雖モ↣行ニ有[リ]ト↢優劣↡、莫シ↠不ルハ↣皆†発サ↢无上菩提之心ヲ↡。此ノ无上菩提心†トハ、即[チ]是願作仏心ナリ。*願作仏心[ト]ハ即[チ]是度衆生心ナリ。度衆生心[ト]ハ、即[チ]†摂↢取シテ衆生ヲ↡生ゼシムル↢有仏ノ国土ニ↡心ナリ。是ノ故ニ願ズル↠生[ゼム]ト↢彼ノ安楽浄土ニ↡†者ハ、要ズ†発ス↢无上菩提心ヲ↡也。
二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[二]論を挙げて貼合す
^◆もし人、 無上菩提心を発さずして、 ただかの国土の楽を受くること間なきを聞きて、 楽のためのゆゑに生ずることを願ずるは、 またまさに往生を得ざるべし。 このゆゑに、 「↑自身↓住持の楽を求めず、 一切衆生の苦を抜かんと欲するがゆゑに」 といへり。
若[シ]人不シテ↠発[サ]↢无上菩提心ヲ↡、但聞[キ]テ↢彼ノ国土ノ受[クル]コト↠楽ヲ无キヲ↟間、為ノ↠楽ノ故ニ願ズルハ↠生[ズルコト]ヲ、亦当†ニシ↠不ル↠得↢往生ヲ↡也。是ノ故ニ†言ヘリ↧「不↠求[メ]↢自身住持之楽ヲ↡、欲スルガ↠抜カムト↢一切衆生ノ苦ヲ↡故ニト」↥。
二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)本論の文を釈す
[一]住持楽を釈す
^◆「↑住持の楽」 とは、 いはく、 かの安楽浄土は阿弥陀如来の本願力のために住持せられて、 楽を受くること間なし。
「住持[ノ]楽ト‡」者、謂ク彼ノ安楽浄土ハ為ニ↢阿弥陀如来ノ本願力ノ↡之所レテ↢住持セ↡、†受クルコト↠楽ヲ无†シ↠間也。
二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[二]回向義を釈す
^◆おほよそ 「↑回向」 の名義を釈せば、 いはく、 おのが集むるところの一切の功徳をもつて一切衆生に*施与して、 ともに仏道に向かふなり。
*凡ソ釈セバ↢廻向ノ名義ヲ↡、謂ク以テ↢†己ガ†所ノ↠集ムル一切ノ功徳ヲ↡施↢与シテ一切衆生ニ↡、共ニ向フナリ↢仏道ニ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[三]巧方便を釈す
[Ⅰ]通途に約す
^◆「↑巧↓方便」 とは、 いはく、 菩薩願ずらく、 おのが智慧の火をもつて一切衆生の煩悩の草木を焼かんに、 もし一衆生として成仏せざる0145ことあらば、 われ作仏せじと。 しかるに、 かの衆生いまだことごとく成仏せざるに、 菩薩すでにみづから成仏す。
「巧*方便[ト]」者、謂ク菩薩願ズラク、以[テ]↢†己ガ智†恵ノ火ヲ↡焼カム[ニ]↢一切衆生ノ煩悩ノ草木ヲ↡、若シ†有ラバ↣一衆生トシテ不ルコト↢成仏セ↡、我†不ト↢作仏セ↡。而[ル]ニ*彼ノ衆生†未ダルニ↢尽ク成仏セ↡、菩薩已ニ自ラ成仏†ス。
^◆たとへば*火をして一切の草木を摘みて焼きて尽さしめんと欲するに、 草木いまだ尽きざるに、 火すでに尽くるがごとし。 ▼その身を後にして、 しかも身先だつをもつてのゆゑに巧方便と名づく。
譬[ヘ]バ如シ↩火*[ヲ]シテ 聴念[ノ]反 †欲スルニ↧摘ミテ↢ 聴*歴[ノ]反 一切ノ草木ヲ↡焼[キ]テ令0520↦使メムト0416尽サ↥、草木未ダルニ↠尽キ、火*已ニ尽†クルガ↨。以[テ]ノ↧†後ニシテ↢其ノ身ヲ↡而モ身‡先†ダツヲ↥故ニ名ク↢*巧方便ト↡。
二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[三][Ⅱ]別途に約す
^▼このなかに 「↑方便」 といふは、 いはく、 一切衆生を摂取して、 ともに同じくかの安楽仏国に生ぜんと作願す。 かの仏国はすなはちこれ畢竟成仏の道路、 無上の方便なり。
此ノ中ニ言[フ]↢方便ト↡者、謂ク作↧願ス摂↢取シテ一切衆生ヲ↡、共ニ同[ジ]ク生ゼムト↦彼ノ安楽仏国ニ↥。彼ノ仏国ハ即[チ]是畢竟成仏ノ道路、无上ノ方便也。
二 Ⅱ ⅱ b ヘ【離菩提障章】
(一)標章
【106】^▼↑*障菩提門とは、
障菩提門ト‡者、
二 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)釈文
(Ⅰ)総標
^▲菩薩かくのごとくよく*回向を知りて成就すれば、 三種の菩提門相違の法を遠離す。 なんらか三種。
菩薩如ク↠是[クノ]善ク†知リテ↢廻向ヲ↡成†就スレバ、遠↢離ス‡三種ノ菩提門相違ノ法ヲ↡。何等カ三種。
二 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅱ)別釈
(ⅰ)智慧門
(a)論文
^▲一には▽↓智↓慧門によりて自楽を求めず。 ▽我心の自身に貪着することを遠離するがゆゑなり。
一[ニ]者依[リ]テ↢智*恵門ニ↡不↠求[メ]↢自楽ヲ↡。遠↣離スルガ†我心ヲモテ貪↢着スルコトヲ自身ニ↡故†ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)註釈
^◆*進むを知りて退くを守るを 「↑智」 といふ。 *空・*無我を知るを 「↑慧」 といふ。 智によるがゆゑに自楽を求めず。 慧によるがゆゑに、 我心の自身に貪着することを遠離す。
知[リ]テ↠進[ム]ヲ守ルヲ↠退[ク]ヲ曰フ↠「智ト」。知ルヲ↢空・无我ヲ↡曰フ↠「†恵ト」。依ルガ↠智ニ故ニ不↠求[メ]↢自楽ヲ↡。依[ル]ガ↠*恵ニ故ニ遠↣離ス†我心ヲモテ貪↢着スルコトヲ自身ニ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅱ)(ⅱ)慈悲門
(a)論文
【107】 ^▲二には▽↓慈↓悲門によりて一切衆生の苦を抜く。 ▽衆生を安んずることなき心0146を遠離するがゆゑなり。
二[ニ]者依[リ]テ↢慈悲門ニ↡抜ク↢一切衆生ノ苦ヲ↡。遠↧離スルガ†无キ↠安ズルコト↢衆生ヲ↡心ヲ↥故†ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)註釈
^◆苦を抜くを 「↑慈」 といふ。 楽を与ふるを 「↑悲」 といふ。 慈によるがゆゑに一切衆生の苦を抜く。 悲によるがゆゑに衆生を安んずることなき心を遠離す。
抜[ク]ヲ↠苦ヲ曰フ↠「慈ト」。与[フ]ルヲ↠楽ヲ曰[フ]↠「悲ト」。依ル[ガ]↠慈[ニ]故ニ抜ク↢一切衆生ノ苦ヲ↡。依[ル]ガ↠悲[ニ]故ニ遠↧離ス†无キ↠安ズルコト↢衆生ヲ↡心ヲ↥。
二 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅱ)(ⅲ)方便門
(a)論文
【108】 ^▲三には▽↓方↓便門によりて一切衆生を*憐愍する心なり。 ▽自身を供養し恭敬する心を遠離するがゆゑなり。
三[ニ]者依[リ]テ↢方便門ニ↡†憐↢愍スル一切衆生ヲ↡心ナリ。遠↧離†スルガ供↢養シ恭↣敬スル自身ヲ↡心ヲ↥故†ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(b)註釈
^◆*正直を 「↑方」 といふ。 *外己を 「↑便」 といふ。 正直によるがゆゑに一切衆生を憐愍する心を生ず。 外己によるがゆゑに自身を供養し恭敬する心を遠離す。
正直ヲ曰フ↠「方ト」。*外己ヲ曰フ↠「便ト」。依ルガ↢正直ニ↡故ニ生ズ↧憐↢愍スル一切衆生ヲ↡心ヲ↥。依ルガ↢外己[ニ]↡故ニ遠↧離ス供↢養シ恭↣敬スル自身ヲ↡心ヲ↥。
二 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅲ)結示
^▲これを三種の菩提門相違の法を遠離すと名づく。
0521是ヲ0417名ク↣遠↢離ス[ト]三種ノ菩提門相違ノ法ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ト【順菩提門章】
(一)標章
【109】^▼↑順菩提門とは、
順菩提門ト‡者、
二 Ⅱ ⅱ b ト (二)釈文
(Ⅰ)総標
^▲菩薩はかくのごとき三種の菩提門相違の法を遠離して、 *三種の菩提門に随順する法の満足を得るがゆゑなり。 なんらか三種。
菩薩[ハ]遠↢離シテ如キ↠是[クノ]三種ノ菩提門相違ノ法ヲ↡、得[ル]ガ↧三種ノ†随↢順スル菩提門ニ↡法ノ満足†ヲ↥故†ナリ。何等カ三種。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)別釈
(ⅰ)無染清浄心
(a)論文
^▲一には▽↓無染清浄心なり。 自身のために諸楽を求めざるをもつてのゆゑなり。
一[ニ]者无染清浄心[ナリ]。以[テ]ノ↠不ルヲ↧為ニ↢自身ノ↡求メ↦諸楽ヲ↥故†ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)註釈
^◆菩提はこれ無染清浄の処なり。 もし身のために楽を求むれば、 すなはち菩提に違せり。 このゆゑに 「↑無染清浄心」 は、 これ菩提門に順ずるなり。
菩提ハ是无染清浄ノ処ナリ。若シ為ニ↠身ノ求[ムレ]バ↠楽ヲ、即[チ]違†セリ↢菩提ニ↡。是ノ故ニ「无染清浄心ハ」是†順ズルナリ↢菩提門ニ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)安清浄心
(a)論文
【110】 ^▲二には▽安清浄心なり。 ↓一切衆生の苦を抜くをもつてのゆゑなり。
二[ニ]者安清浄心[ナリ]。以[テ]ノ↠抜[ク]ヲ↢一切衆生ノ苦ヲ↡故†ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)註釈
^0147◆菩提はこれ一切衆生を安穏にする清浄処なり。 もし心をなして、 一切衆生を抜きて生死の苦を離れしめざれば、 すなはち菩提に違せり。 このゆゑに 「↑一切衆生の苦を抜く」 は、 これ菩提門に順ずるなり。
菩提ハ是安↢穏[ニ]スル一切衆生ヲ↡清浄処ナリ。若[シ]†不レバ↧作シテ↠心[ヲ]抜[キ]テ↢一切衆生ヲ↡離レ[シメ]↦生死ノ苦ヲ↥、即便[チ]違†セリ↢菩提ニ↡。是[ノ]故ニ「抜クハ↢一切衆生ノ苦ヲ↡」是†順ズルナリ↢菩提門ニ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)楽清浄心
(a)論文
【111】 ^▲三には▽楽清浄心なり。 一切衆生をして大菩提を得しむるをもつてのゆゑなり。 ↓衆生を摂取してかの国土に生ぜしむるをもつてのゆゑなり。
三[ニ]者楽清浄心[ナリ]。以[テ]ノ↠令[ムル]ヲ↣一切衆生ヲシテ得↢大菩提ヲ↡故†ナリ。以[テ]ノ↧摂↢取シテ衆生ヲ↡生[ゼ]シムルヲ↦彼ノ国土ニ↥故†ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(b)註釈
^◆菩提はこれ*畢竟常楽の処なり。 もし一切衆生をして畢竟常楽を得しめざれば、 すなはち菩提に違せり。 この畢竟常楽はなにによりてか得る。 大乗門による。 大乗門といふは、 いはく、 かの安楽仏国土これなり。 このゆゑにまた 「↑衆生を摂取してかの国土に生ぜしむるをもつてのゆゑなり」 といへり。
菩提ハ是畢竟常楽ノ処ナリ。若シ†不レバ↠令メ↣一切衆生ヲシテ得↢畢竟常楽ヲ↡、則[チ]違†セリ↢菩提ニ↡。此[ノ]畢竟常楽ハ依[リ]テカ↠何ニ而得ル。依ル↢大乗門ニ↡。大乗門トイフ者、謂ク彼ノ安楽仏*国土是也。是[ノ]故ニ又†言ヘリ↩「以[テ]ノ↧摂↢取シテ衆生ヲ↡生ゼシムルヲ↦彼ノ国土ニ↥故ナリト」↨。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅲ)結示
^▲これを三種の菩提門に随順する法の満足と名づく、 知るべし。
0522是ヲ名0418ク‡↧三種ノ†随↢順スル菩提門ニ↡法ノ満足‡ト↥、応シ‡↠知ル。
二 Ⅱ ⅱ b チ【名義摂対章】
(一)標章
【112】^◆↑名義摂対とは、
名義摂対ト‡者、
二 Ⅱ ⅱ b チ (二)釈文
(Ⅰ)権実相摂を明す
(ⅰ)論文
^▲向に説く△智慧と△慈悲と△方便との三種の門は、 ↓般若を摂取し、 般若は↓方便を摂取す、 ↓知るべし。
向ニ説[ク]智*恵ト慈悲ト方便トノ三種ノ門†ハ摂↢取†シ般若ヲ↡、般若[ハ]摂↢取ス‡方便ヲ↡、応[シ]↠知ル。
二 Ⅱ ⅱ b チ (二)(Ⅰ)(ⅱ)註釈
(a)二智を釈す
^◆「↑般若」 といふは、 *如に達する慧の名なり。 「↑方便」 といふは、 *権に通ずる智の称なり。 如に達すればすなはち*心行寂滅なり。 権に通ずればすなはちつぶ0148さに衆機を*省みる。 機を省みる智、 つぶさに応じてしかも*無知なり。 寂滅の慧、 また無知にしてつぶさに省みる。
「般若トイフ」者、達スル↠如[ニ]之*恵ノ名ナリ。「方便トイフ」者、通ズル↠権ニ之智ノ称ナリ。達スレバ↠如[ニ]則[チ]心行寂滅ナリ。通[ズ]レバ↠権[ニ]則[チ]備ニ†省ミル↢衆機†ヲ↡。†省ミル↠機†ヲ之智、備ニ†応ジテ而モ无知ナリ。寂滅之*恵、亦无知ニシテ而備ニ†省ミル。
^◆しかればすなはち智慧と方便とあひ縁じて動じ、 あひ縁じて静なり。 動の静を失せざることは智慧の功なり。 静の動を廃せざることは方便の力なり。 このゆゑに智慧と慈悲と方便とは般若を摂取し、 般若は方便を摂取す。
然レバ則[チ]智恵ト方便ト相縁ジテ而動ジ、相縁ジテ而静ナリ。動[ノ]不ルコトハ↠失セ↠静ヲ智恵之功也。静[ノ]不ルコトハ↠癈[セ]↠動ヲ方便之力也。是ノ故ニ智恵ト慈悲ト方便ト[ハ]摂↢取†シ般若ヲ↡、般若[ハ]摂↢取ス方便ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b チ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)応知を釈す
^◆「↑知るべし」 といふは、 いはく、 ▽智慧と▽方便とはこれ菩薩の父母なり。 もし智慧と方便とによらずは、 菩薩の法、 すなはち成就せずと知るべしとなり。 なにをもつてのゆゑに。 もし智慧なくして衆生のためにする時は、 すなはち顛倒に堕す。 もし方便なくして法性を観ずる時は、 すなはち実際を証す。 このゆゑに 「知るべし」 といふ。
「†応シトイフ↠知ル」者、謂ク応シ[トナリ]↠知ル↧智恵ト方便トハ是菩薩ノ父母ナリ、若[シ]不ハ↠依ラ↢智恵ト方便トニ↡、菩薩ノ法則[チ]不ト↦成就セ↥。何ヲ以[テ]ノ故ニ。若シ无クシテ↢智恵↡為ニスル↢衆生ノ↡時ハ、則[チ]堕ス↢顛倒ニ↡。若[シ]无[ク]シテ↢方便↡観ズル↢法性ヲ↡時ハ、則[チ]証ス↢実際ヲ↡。是ノ故ニ「†応シトイフ↠知ル」。
二 Ⅱ ⅱ b チ (二)(Ⅱ)違順相対を示す
(ⅰ)無障心を明す
(a)論文
【113】 ^▲向に△我心を遠離して自身に貪着せざると、 △衆生を安んずることなき心を遠離すると、 △自身を供養し恭敬する心を遠離するとを説けり。 この三種の法は▽菩提を障ふる心を遠離す、 ↓知るべし。
向ニ†説ケリ↪遠↢離シテ我心ヲ↡不ルト↠貪↢着セ自身ニ↡、遠↧離スルト无キ↠安ズルコト↢衆生ヲ↡心ヲ↥、遠↩離スルトヲ供↢養シ恭↣敬スル自身ヲ↡心ヲ↨。此ノ三種ノ法ハ†遠↧離ス障フル↢菩提ヲ↡心ヲ↥、応シ‡↠知ル。
二 Ⅱ ⅱ b チ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)註釈
^◆諸法におのおの*障礙の相あり。 風はよく静を障へ、 土はよく水を障へ、 湿はよく火を障ふるがごとし。 五悪・十悪は人天を障ふ。 四顛倒は声聞の果を障ふ。 このなかの三種の不遠離は、 菩提を障ふる心なり。
諸法ニ各[ノ]有リ↢障ノ相↡。如シ↢風ハ能ク障ヘ↠静ヲ、土ハ能ク障†ヘ↠水ヲ、湿ハ能ク障フルガ↟火ヲ。五*悪・十悪ハ障[フ]↢人天ヲ↡。四顛倒ハ障フ↢声聞ノ果ヲ↡。此ノ中ノ†三種ノ不遠離ハ、障[フ]ル↢菩*提ヲ↡心ナリ。
^◆「↑知るべし」 といふは、 もし0149障ふることなきことを得んと欲せば、 まさにこの三種の障礙を遠離すべしとなり。
「†応シトイフ↠知ル」者、若シ†欲0523セバ↠得0419[ム]ト↠无[キ]コトヲ↠障[フル]コト、当†ニシト↣遠↢離ス此ノ三種ノ障ヲ↡也。
二 Ⅱ ⅱ b チ (二)(Ⅱ)(ⅱ)勝真心を明す
(a)論文
【114】 ^▲向に△無染清浄心、 △安清浄心、 △楽清浄心を説けり。 この三種の心は、 一処に略して▽*↓妙↓楽↓勝↓真心を*成就す、 知るべし。
向ニ説†ケリ↢无染清浄心・安清浄心・楽清浄心ヲ↡。此ノ三種ノ心ハ略シテ↢一処ニ‡↡成↢就ス‡妙楽勝真心ヲ↡、応シ‡↠知ル。
二 Ⅱ ⅱ b チ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)註釈
^◆楽に三種あり。 一には外楽、 いはく五識所生の楽なり。 二には内楽、 いはく*初禅・二禅・三禅の意識所生の楽なり。 三には*法楽楽、 いはく智慧所生の楽なり。
楽ニ有[リ]↢三種↡。一[ニ]者外楽、謂ク五識所生ノ楽ナリ。二[ニ]者内楽、謂ク初禅・二禅・三禅[ノ]意識所生ノ楽ナリ。三[ニ]者法楽 五角[ノ]反 楽 魯各[ノ]反、謂[ク]智*恵所生ノ楽ナリ。
^◆この智慧所生の↑楽は、 仏 (阿弥陀仏) の功徳を愛するより起れり。 これ我心を遠離すると、 無安衆生心を遠離すると、 自供養心を遠離するとなり。 この三種の心、 清浄にして増進するを、 略して妙楽勝真心となす。
此ノ智恵所生ノ楽ハ、従リ↠愛スル↢仏ノ功徳ヲ↡起レリ。†是遠↢離スルト我心ヲ↡、遠↢離スルト无安衆生心ヲ↡、遠↢離スルトナリ自供養心ヲ↡。是ノ三種ノ心‡、清浄ニシテ増進†スルヲ略シテ為ス↢妙楽勝真心ト↡
^◆「↑妙」 の言は、 それ好なり。 この楽は仏を縁じて生ずるをもつてのゆゑなり。 「↑勝」 の言は、 三界のなかの楽に勝出せり。 「↑真」 の言は、 ▼虚偽ならず顛倒せず。
。「妙ノ」言ハ、其好ナリ。以[テ]ノ↢此ノ楽ハ縁[ジテ]↠仏[ヲ]生ズルヲ↡故†ナリ。「勝ノ」言ハ、勝↢出セリ三界ノ中ノ楽ニ↡。「真ノ」言ハ、不↢虚偽ナラ↡不ルナリ‡↢顛倒セ↡。
二 Ⅱ ⅱ b リ【願事成就章】
(一)標章
【115】^◆↑願事成就とは、
願事成就ト‡者、
二 Ⅱ ⅱ b リ (二)釈文
(Ⅰ)一心の成就を明す
(ⅰ)論文
^▲かくのごとく菩薩は△智慧心・△方便心・△無障心・△勝真心をもつて、 よく清浄の仏国土に*生ず、 ↓知るべし。
如[ク]↠是[クノ]菩薩[ハ]智恵心・方便心・无障心・勝真心†ヲモテ、能ク生ズ‡↢清浄ノ仏国土ニ↡、応[シ]↠知ル。
二 Ⅱ ⅱ b リ (二)(Ⅰ)(ⅱ)註釈
^◆「↑知るべし」 といふは、 いはく、 この四種の清浄功徳をもつて、 よくかの清0150浄仏国土に生ずることを得。 これ他縁をもつて生ずるにはあらずと知るべしとなり。
「†応シトイフ↠知ル」者、謂ク応シト↠知ル↧此ノ四種ノ清浄功徳†ヲモテ、能ク†得↠生[ズルコト]ヲ↢彼ノ清浄仏国土ニ↡、非ズト↦是他縁†ヲモテ†而生ズルニハ↥也。
二 Ⅱ ⅱ b リ (二)(Ⅱ)五行の成就を明す
(ⅰ)論文
【116】 ^▲これを菩薩摩訶薩、 五種の法門に随順し、 所作↓意に随ひて自在に*成就すと名づく。 向の所説のごとき↓身業・↓口業・↓意業・↓智業・↓方便智業は、 法門に随順するがゆゑなり。
是ヲ名ク↧菩薩摩訶薩‡†随↢順シ五種ノ法門ニ↡、所作随[ヒ]テ↠意ニ自在ニ成就†スト↥。如キ↢向ノ所0524説ノ↡身0420業・口業・意業・智業・方便智業ハ、†随↢順スルガ法*門ニ↡故†ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b リ (二)(Ⅱ)(ⅱ)註釈
^◆「↑意に随ひて自在に」 とは、 この五種の功徳力をもつて、 よく清浄仏土に*生ずれば*出没自在なるをいふなり。 「↑身業」 とは礼拝なり。 「↑口業」 とは讃嘆なり。 「↑意業」 とは作願なり。 「↑智業」 とは観察なり。 「↑方便智業」 とは回向なり。 この五種の業和合すれば、 すなはちこれ往生浄土の法門に随順して自在の業*成就するをいふなり。
「†随ヒテ↠意ニ自在ニト」者、†言フ↧此ノ五種ノ功徳力†ヲモテ、能ク生†ズレバ↢清浄仏土ニ↡出没自在ナルヲ↥也。「身業[ト]」者礼拝也。「口業[ト]」者讃嘆也。「意業[ト]」者作願也。「智業[ト]」者観察也。「方便智業[ト]」者廻向也。†言フナリ↧此ノ五種ノ業和合スレバ、則[チ]是随↢順シテ往生浄土ノ法門ニ↡自在ノ業成就スルヲ↥。
二 Ⅱ ⅱ b ヌ【利行満足章】
(一)標章
【117】^◆↑利行満足とは、
利行満足ト‡者、
二 Ⅱ ⅱ b ヌ (二)釈文
(Ⅰ)正釈論文
(ⅰ)五門の入出を明す
(a)標数
^▲また五種の門ありて、 漸次に五種の功徳を*成就す、 知るべし。
復有[リ]テ↢五種ノ門↡漸次ニ成↢就ス‡五種ノ功徳ヲ↡、応[シ]↠知[ル]。
二 Ⅱ ⅱ b ヌ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)列目
(イ)論門
^▲何者か五門。 一には近門、 二には大会衆門、 三には宅門、 四には屋門、 五には園林遊戯地門なり。
何者カ五門。一[ニ]者近門、二[ニ]者大会衆門、三[ニ]者宅門、四[ニ]者屋門、五[ニ]者園林遊戯地門ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ヌ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ロ)註釈
^◆この五種は、 *入出の次第の相を*示現す。
此ノ五種ハ示↢現†ス入出ノ次第ノ相ヲ↡。
^◆入相のなかに、 初めに浄土に至るは0151、 これ近の相なり。 いはく、 大乗正定聚に入りて、 阿耨多羅三藐三菩提に近づくなり。 浄土に入りをはれば、 すなはち如来 (阿弥陀仏) の大会衆の数に入るなり。 衆の数に入りをはれば、 まさに修行安心の宅に至るべし。 宅に入りをはれば、 まさに修行所居の*屋宇に至るべし。 修行成就しをはれば、 まさに*教化地に至るべし。 教化地はすなはちこれ菩薩の*自娯楽の地なり。
入相ノ中ニ、初ニ至ル[ハ]↢浄土ニ↡、是近[ノ]相ナリ。謂ク入†リテ↢大乗正定聚ニ↡、近ヅクナリ↢阿耨多羅三藐三菩提ニ↡。入リ↢浄土ニ↡已レバ、便[チ]入ルナリ↢如来ノ大会衆ノ数ニ↡。入リ↢衆ノ数ニ↡已†レバ、当ニシ↠至ル↢修行安心之宅ニ↡。入[リ]↠宅ニ已[レ]バ、当ニシ↠至ル↢修行所居ノ*屋*ニ↡ 尤挙[ノ]反。修行成就シ已†レバ、当ニシ↠至ル↢教化地ニ↡。教化地ハ即[チ]是菩薩ノ自娯楽ノ地ナリ。
^◆このゆゑに出門を園林遊戯地門と称す。
是ノ故ニ出門ヲ称ス‡↢園林遊戯地門ト↡。
二 Ⅱ ⅱ b ヌ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(c)総判
(イ)論文
【118】 ^▲この五種の門は、 初めの四種の門は入の功徳を*成就し、 第五門は出の功徳を*成就す。
此ノ五種ノ門ハ、初ノ四種ノ門ハ成↢就†シ入ノ功徳ヲ↡、第五門ハ成↢就†ス出ノ功徳ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ヌ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(c)(ロ)註釈
^◆この入出の功徳は、 何者かこれや。 ◆釈していはく、
此0525ノ入0421出ノ功徳ハ、何者カ是ヤ。†釈シテ言ク、
二 Ⅱ ⅱ b ヌ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(d)別釈
(イ)近門
[一]論文
^▲入第一門とは、 阿弥陀仏を礼拝し、 かの国に*生ぜんとなすをもつてのゆゑに、 安楽世界に生ずることを*得。 これを入第一門と名づく。
入第一門ト者、以[テ]ノ↧礼↢拝[シ]阿弥陀仏ヲ↡、†為スヲ↞生[ゼムト]↢彼ノ国ニ↡故ニ、得↠生[ズルコト]ヲ↢安楽世界ニ↡。是ヲ名ク↢入第一門ト↡。
二 Ⅱ ⅱ b ヌ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(d)(イ)[二]註釈
^◆仏を礼して仏国に生ぜんと願ず。 これ初めの功徳の相なり。
礼シテ↠仏ヲ願ズ↠生[ゼム]ト↢*仏国ニ↡。是‡初ノ功徳ノ相ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ヌ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(d)(ロ)大会衆門
[一]論文
【119】 ^▲入第二門とは、 阿弥陀仏を讃嘆し、 名義に随順して如来の名を*称し、 如来の光明智相によりて修行するをもつてのゆゑに、 大会衆の数に入ることを*得。 これを入第二門と名づく。
入第二門[ト]者、以[テ]ノ↧讃↢嘆シ‡阿弥陀仏ヲ↡、随↢順[シテ]名義ニ↡称シ↢如来ノ名ヲ↡、依[リ]テ↢如来ノ光明*智相ニ↡修行[スル]ヲ↥故ニ、得↠入[ル]コトヲ↢大会衆ノ数ニ↡。是ヲ名ク↢入第二門ト↡。
二 Ⅱ ⅱ b ヌ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(d)(ロ)[二]註釈
^0152◆如来の名義によりて讃嘆す。 これ第二の功徳相なり。
依[リ]テ↢如来ノ名義ニ↡讃嘆ス‡。是第二ノ功徳相ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ヌ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(d)(ハ)宅門
[一]論文
【120】^▲入第三門とは、 *一心専念にかの国に生ぜんと作願し、 奢摩他寂静三昧の行を修するをもつてのゆゑに、 蓮華蔵世界に入ることを*得。 これを入第三門と名づく。
入第三門[ト]者、以[テ]ノ↧†一心専念ニ†作↣願シ生ゼムト↢彼ノ*国ニ↡、修スルヲ↦奢摩他寂静三昧ノ行ヲ↥故ニ、得↠入[ル]コトヲ↢蓮花蔵世界ニ↡。是ヲ名ク↢入第三門ト↡。
二 Ⅱ ⅱ b ヌ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(d)(ハ)[二]註釈
^◆寂静止を修せんがためのゆゑに、 一心にかの国に生ぜんと願ず。 これ第三の功徳相なり。
為ノ↠修セム[ガ]↢寂静止ヲ↡故ニ、一心ニ願ズ↠生[ゼム]ト↢彼ノ国ニ↡。是第三ノ功徳相ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ヌ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(d)(ニ)屋門
[一]論文
【121】^▲入第四門とは、 *専念にかの妙荘厳を観察し、 毘婆舎那を修するをもつてのゆゑに、 *かの処に到りて↓種々の法味楽を受用することを得。 これを入第四門と名づく。
入第四門[ト]者、以[テ]ノ↧†専念ニ観↢察シ彼ノ妙荘厳ヲ↡、修[スル]ヲ↦*毘婆舎那ヲ↥故ニ、†得↧到リテ↢彼ノ処ニ↡*受↦用スルコトヲ種種ノ法味楽ヲ↥。是ヲ名ク↢入第四門ト↡。
二 Ⅱ ⅱ b ヌ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(d)(ニ)[二]註釈
^◆「↑種々の法味楽」 とは、 毘婆舎那のなかに、 ▼*観仏国土清浄味・*摂受衆生大乗味・*畢竟住持不虚作味・*類事起行願取仏土味あり。 かくのごとき等の無量の荘厳仏道の味あるがゆゑに 「種々」 といふ。 これ第四の門の功徳相なり。
「種種ノ法味楽ト‡」者、毘婆舎那ノ中ニ、有リ↢観仏国土清浄味・摂受衆生大乗味・畢竟住持不虚作味・類事起行願取仏土味↡。有ルガ↢如キ↠是[クノ]等ノ无量[ノ]荘0422厳0526仏道ノ味↡故ニ言フ↢「種種ト」↡。是‡第四ノ†門ノ功徳相ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ヌ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(d)(ホ)園林遊戯地門
[一]論文
【122】 ^▲出第五門とは、 大慈悲をもつて一切苦悩の衆生を観察して、 ↓応化身を示して、 生死の園、 煩悩の林のなかに回入して↓遊戯し、 神通もつて教化地に至る。 ↓本願力の回向をもつてのゆゑなり。 これを出第五門と名づ0153く。
出第五門ト‡者、以テ↢大慈悲ヲ↡観↢察シテ一切苦悩ノ衆生ヲ↡、示[シ]テ↢応化身ヲ↡、廻↢入シテ生死ノ園、煩悩ノ林ノ中ニ↡†遊戯シ、神通モテ至ル↢教化地ニ↡。以[テ]ノ↢本願力ノ廻向ヲ↡故†ナリ。是ヲ名ク↢出第五門ト↡。
二 Ⅱ ⅱ b ヌ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(d)(ホ)[二]註釈
[Ⅰ]示身を釈す
^▼「↑応化身を示して」 とは、 *¬法華経¼ の普門示現の類のごとし。
「†示シテト↢応化身ヲ↡」者、如[シ]↢¬法花経ノ¼普門示現之類[ノ]↡也。
二 Ⅱ ⅱ b ヌ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(d)(ホ)[二][Ⅱ]遊戯を釈す
^◆「↑遊戯」 に二の義あり。 一には自在の義なり。 菩薩、 衆生を度することは、 たとへば獅子の鹿を搏つがごとく、 なすところ難からざること遊戯するがごとし。 二には*度無所度の義なり。 菩薩、 衆生を観ずるに畢竟じて所有なし。 無量の衆生を度すといへども、 実に一衆生として滅度を得るものなし。 衆生を度するを示すこと遊戯するがごとし。
遊戯ニ有リ↢二ノ義↡。一[ニ]者自在ノ義[ナリ]。菩薩度[スル]コトハ↢衆生ヲ↡、譬[ヘ]バ†如ク↢*師子ノ搏ツガ↟鹿ヲ、所↠為ス不ルコト↠難カラ如↢似シ遊戯†スルガ↡。二[ニ]者度无所度ノ義ナリ。菩薩†観ズルニ↢衆生ヲ↡畢竟ジテ无シ↢所有↡。雖モ↠度[ス]ト↢无量ノ衆生ヲ↡*而実ニ无シ↧一衆生トシテ得ル↢滅度ヲ↡者↥。示[ス]コト†↠度スルヲ↢衆生ヲ↡如↢似シ遊戯†スルガ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ヌ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(d)(ホ)[二][Ⅲ]願力を釈す
^▼「↑本願力」 といふは、 大菩薩、 法身のなかにおいて、 つねに三昧にましまして、 種々の身、 種々の神通、 種々の説法を*現ずることを示す。 みな本願力をもつて起せり。 たとへば阿修羅の琴の鼓するものなしといへども、 音曲自然なるがごとし。 これを教化地の第五の功徳相と名づく。
言フ↢「本願力ト」↡者、示ス↧大菩薩†於テ↢法身ノ中ニ↡、常ニ在シテ↢三昧ニ↡而現ズルコトヲ↦種種ノ身・種種ノ神通・種種ノ説法ヲ↥。皆以テ↢本願力ヲ↡起†セリ。譬[ヘ]バ如シ↧阿修羅ノ琴ノ雖モ↠无[シ]ト↢鼓スル者↡而音曲自然ナルガ↥。是ヲ名ク↢教化地ノ第五ノ功徳相ト↡。
二 Ⅱ ⅱ b ヌ (二)(Ⅰ)(ⅱ)行成得果を顕す
(a)二利行成を結す
(イ)自利成就を結す
[一]論文
【123】 ^▲菩薩は*入の四種の門をもつて自利の行↓成就す、 ↓知るべし。
菩薩ハ入[ノ]四種ノ門†ヲモテ自利ノ行成就ス‡、応シ↠知[ル]。
二 Ⅱ ⅱ b ヌ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(a)(イ)[二]註釈
^◆「↑成就」 とは、 いはく、 自利満足なり。 「↑知るべし」 といふは、 いはく、 自利によるがゆゑにすなはちよく利他す。 これ自利することあたはずしてよく利他するにあらずと知るべしとなり。
「成就[ト]」者、謂ク自利満足也。「†応シトイフ↠知ル」*者、謂ク応シト↠知ル↧由ル[ガ]↢自利ニ↡故ニ*則[チ]能[ク]利他ス、非ズト↦是不シテ↠能[ハ]↢自利†スルコト↡而能ク利他スルニ↥也。
二 Ⅱ ⅱ b ヌ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(a)(ロ)利他成就を結す
[一]論文
【124】 ^▲菩薩は*出の第五門の回向をもつて利益他の行↓成就す、 ↓知るべし。
菩薩ハ出[ノ]第五門ノ廻向[ヲモテ]利益他ノ行成就†ス、応[シ]↠知ル。
二 Ⅱ ⅱ b ヌ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(a)(ロ)[二]註釈
^0154▼「↑成就」 とは、 いはく、 回向の因をもつて教化地の果を証す。 ▼もしは因、 もしは果、 一事として利他することあたはざることあることなし。 「↑知るべし」 といふは、 いはく、 利他によるがゆゑにすなはちよく自利す。 これ利他することあたはずしてよく自利するにはあらずと知るべしとなり。▲
「成0527就[ト]0423」者、謂ク以テ↢廻向ノ因ヲ↡証ス↢教化地ノ果ヲ↡。若[シ]ハ因若[シ]ハ果、无シ‡↠有[ル]コト↢一事トシテ不ルコト↟能[ハ]↢利他†スル↡。「†応シトイフ↠知ル」者、謂ク応シト↠知ル↧由ルガ↢利他[ニ]↡故ニ*則[チ]能ク自利ス、非ズト↦是不シテ↠能[ハ]↢利他†スルコト↡而能ク自利[スル]ニハ↥也。
二 Ⅱ ⅱ b ヌ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)速得菩提を明す
(イ)論文
【125】 ^▲菩薩はかくのごとく*五念門の行を修して自利利他す。 ↓速やかに阿耨多羅三藐三菩提を成就することを*得るがゆゑなり。
菩薩[ハ]如ク↠是[クノ]修シテ↢五*念門ノ行ヲ↡自利利他†ス。速ニ†得ルガ↣成↢就†スルコトヲ阿耨多羅三藐三菩提ヲ↡故†ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ヌ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)(ロ)註釈
[一]総釈
^◆仏の所得の法を名づけて↓阿↓耨多羅↓三藐↓三↓菩提となす。 この菩提を得るをもつてのゆゑに名づけて仏となす。 いま 「↑↓速やかに阿耨多羅三藐三菩提を得」 といふは、 これ早く作仏することを*得るなり。
仏ノ所得ノ法ヲ名[ケ]テ為ス↢阿耨多羅三藐三菩提ト↡。以[テ]ノ↠得[ル]ヲ↢此ノ菩*提ヲ↡故ニ名[ケ]テ為ス‡↠仏ト。今言フハ↣「†速ニ得ルト↢阿耨多羅三藐三菩提ヲ↡」、是得ル↢早ク†作仏スルコトヲ↡也。
二 Ⅱ ⅱ b ヌ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)(ロ)[二]別釈
[Ⅰ]略解
^◆「↑阿」 は無に名づく、 「↑耨多羅」 は上に名づく、 「↑三藐」 は正に名づく、 「↑三」 は遍に名づく、 「↑菩提」 は道に名づく。 統べてこれを訳して、 名づけて 「↓無上↓正↓遍↓道」 となす。
阿ハ名ク↠无ニ、耨多羅ハ名ク↠上ニ、三藐ハ名ク↠正ニ、三ハ名ク↠遍ニ、菩提ハ名ク↠道ニ。†統ベテ而訳シテ↠之ヲ、名[ケ]テ為ス↢无上正遍道ト↡。
二 Ⅱ ⅱ b ヌ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅱ]広釈
[ⅰ]無上を釈す
^◆「↑無上」 とは、 いふこころは、 この道は、 *理を窮め性を尽してさらに過ぎたるひとなし。 なにをもつてかこれをいふとなれば、 「正」 をもつてのゆゑなり。
无上[ト]者、言フコヽロハ此ノ道[ハ]窮メ↠理ヲ尽シテ↠性ヲ更ニ无シ↢過[ギ]タル者↡。何[ヲ]以[テ]カ言フトナレバ↠之ヲ、以[テ]ノ↠正ヲ故†ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b ヌ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅱ][ⅱ]正を釈す
^◆「↑正」 とは聖智なり。 *法相のごとくして知るがゆゑに称して正智となす。 法性無相のゆゑに聖智は無知なり。
正[ト]者聖智也。如クシテ↢法相[ノ]↡而知ルガ故ニ称シテ為ス↢正*智ト↡。法性无相ノ故ニ聖智[ハ]无知也。
二 Ⅱ ⅱ b ヌ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅱ][ⅲ]遍を釈す
^◆「↑遍」 に二種あり。 一には*聖心あまねく一切の法を知ろしめす。 二0155には法身あまねく法界に満つ。 もしは身、 もしは心、 遍せざるはなし。
遍ニ有リ↢二種↡。一[ニ]者聖心遍ク知ス↢一切ノ法ヲ↡。二[ニ]者法身遍ク満ツ↢法界ニ↡。若[シ]ハ身若[シ]ハ心、无†シ↠不ルコト↠遍セ也。
二 Ⅱ ⅱ b ヌ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅱ][ⅳ]道を釈す
^◆「↑道」 とは無礙道なり。 ¬経¼ (*華厳経・意) にのたまはく、 「*十方の無礙人、 一道より生死を出づ」 と。 「一道」 とは一無礙道なり。 「無礙」 とは、 いはく、 ▼生死すなはちこれ涅槃と知るなり。 かくのごとき等の*入不二の法門は、 無礙の相なり。
道[ト]者无道也。¬経ニ¼言ハク、「十方[ノ]无人†、一道ヨリ出ヅト‡↢生死ヲ↡¼。一道[ト]者一无道也。无[ト]者、謂ク知ルナリ↢生死即[チ]是涅槃ト↡。如[キ]↠是[クノ]*等[ノ]入不二ノ法門ハ、无ノ相也。
二 Ⅱ ⅱ b ヌ (二)(Ⅱ)問答料簡
(ⅰ)問
【126】^▼問ひていはく、 なんの因縁ありてか 「↑速やかに阿耨多羅三藐三菩提を成就することを得」 といへる。
問[ヒテ]曰[ク]、有[リ]テカ↢何ノ因縁↡†言ヘル↤「†速ニ得ト↣成↢就スルコトヲ阿耨多羅三藐三菩提ヲ↡」。
二 Ⅱ ⅱ b ヌ (二)(Ⅱ)(ⅱ)答
(a)略答
(イ)論文を引きて直ちに答ふ
^▼答へていはく、 ¬論¼ (浄土論) に 「▲五門の行を修して、 *自利利他成就するをもつてのゆゑなり」 といへり。
答0528[ヘテ]曰0424[ク]、¬論ニ¼†言ヘリ↧「修シテ↢五門ノ行ヲ↡、以[テ]ノ↢自利利他成就スルヲ↡故ナリ[ト]」↥。
二 Ⅱ ⅱ b ヌ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)摂末帰本に約す【覈求其本】
^▼しかるに*覈に其の本を求むるに、 阿弥陀如来を*増上縁となす。
然[ル]ニ覈ニ求[ム]ルニ↢其ノ本ヲ↡、阿弥陀如来ヲ為ス↢増上縁ト↡。
二 Ⅱ ⅱ b ヌ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ハ)以本奪末に約す【他利利他】
^▼*他利と利他と、 談ずるに*左右あり。 もし仏よりしていはば、 よろしく利他といふべし。 ▼衆生よりしていはば、 よろしく他利といふべし。 ▼いままさに仏力を談ぜんとす。 このゆゑに 「利他」 をもつてこれをいふ。 まさにこの意を知るべし。
他利之与↢利他↡談ズルニ有リ↢左右↡。若シ†自リシテ↠仏而言ハヾ、宜シクシ ↠言フ↢利他ト↡。†自リシテ↢衆生↡而言ハヾ、宜シクシ ↠言フ↢他利ト↡。今将ス ニ↠談ゼムト↢仏力ヲ↡。是ノ故ニ以テ↢「*利他ヲ」↡言フ↠之ヲ。当ニシ↠知ル↢†此ノ意ヲ↡也。
二 Ⅱ ⅱ b ヌ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)広く如来願力を明す
[一]総明
^▼おほよそこれかの浄土に生ずると、 およびかの菩薩・人・天の所起の諸行とは、 みな阿弥陀如来の本願力によるがゆゑなり。 なにをもつてこれをいふとなれば、 もし仏力にあらずは、 四十八願すなはちこれ*徒設ならん。
凡ソ是生[ズル]ト↢彼ノ浄土ニ↡、及[ビ]彼ノ菩*薩人天ノ所起ノ諸行[ト]ハ、皆縁ルガ↢阿弥陀如来ノ本願力ニ↡故ナリ。何[ヲ]以テ言フトナレバ↠之ヲ、若シ非[ズ]ハ↢仏力ニ↡、四十八願便[チ]是徒設ナラム。
二 Ⅱ ⅱ b ヌ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[二]別顕
[Ⅰ]総標【三願的証】
^◆*いま的らかに三願を取りて、 もつて義の意を証せん。
今†的ニ取[リ]テ↢三願ヲ↡、用テ証セム↢義ノ意ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ヌ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[二][Ⅱ]別釈
[ⅰ]第十八願
[a]引願
^◆願0156 (第十八願) にのたまはく、 「▲たとひわれ仏を得んに、 十方の衆生、 心を至して信楽してわが国に生ぜんと欲して、 すなはち十念に至るまでせん。 もし生ずることを得ずは、 正覚を取らじ。 ただ五逆と誹謗正法とを除く」 と。
願ニ言ハク、「設ヒ我得ムニ↠仏ヲ、十方ノ衆生、†至シテ↠心ヲ信楽シテ†欲シテ↠生[ゼム]ト↢我ガ国ニ↡、†乃チ至ルマデセム↢十念ニ↡。若シ不ハ↠得↠生[ズルコト]ヲ者、不‡↠取ラ↢正覚ヲ↡。唯除クト↢五逆ト誹謗正法トヲ↡」。
二 Ⅱ ⅱ b ヌ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[二][Ⅱ][ⅰ][b]結証
^◆仏願力によるがゆゑに十念の念仏をもつてすなはち往生を得。 往生を得るがゆゑに、 すなはち三界輪転の事を勉る。 輪転なきがゆゑに、 ゆゑに速やかなることを得る一の証なり。
縁ルガ↢エントスルガ仏願力ニヲ↡故ニ†十念ノ念仏ヲモテ便チ†得↢往生ヲ↡。得ルガ↢往生ヲ↡故ニ、即[チ]*勉ル↢三界輪転之事ヲ↡。无キガ↢輪転↡故ニ、†所以ニ得ル↠速[ナル]コトヲ一ノ証也。
二 Ⅱ ⅱ b ヌ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[二][Ⅱ][ⅱ]第十一願
[a]引願
^◆願 (第十一願) にのたまはく、 「▲たとひわれ仏を得んに、 国のうちの人天、 正定聚に住してかならず滅度に至らずは、 正覚を取らじ」 と。
願ニ言ハク、「設[ヒ]我得ムニ↠仏ヲ、国ノ中ノ人天、不ハ↧住シテ↢正定聚ニ↡必[ズ]至ラ↦滅度ニ↥者、不ト↠取ラ↢正覚ヲ↡」。
二 Ⅱ ⅱ b ヌ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[二][Ⅱ][ⅱ][b]結証
^◆仏願力によるがゆゑに正定聚に住す。 正定聚に住するがゆゑに、 かならず滅度に至りて、 もろもろの*回伏の難なし。 ゆゑに速やかなることを得る二の証なり。
縁[ルガ]↢仏願力[ニ]↡故ニ住ス↢正定*聚ニ↡。住スルガ↢正定聚ニ↡故ニ、必[ズ]至[リ]テ↢滅度ニ↡、无シ↢諸ノ廻伏之難↡。†所以ニ得ル↠速[ナルコト]ヲ二ノ証也。
二 Ⅱ ⅱ b ヌ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[二][Ⅱ][ⅲ]第二十二願
[a]引願
^◆願 (第二十二願) にのたまはく、 「▲たとひわれ仏を得んに、 他方仏土のもろもろの菩薩衆、 わが国に来生せば、 究竟してかならず一生補処に至らん。 その本願の自在に化するところありて、 衆生のためのゆゑに、 弘誓の鎧を被て徳本を積累し、 一切を度脱し、 諸仏の国に遊びて菩薩の行を修し、 十方の諸仏如来を供養し、 恒沙無量の衆生を開化して、 無上正真の道を立せしめんをば除く。 *常倫諸地の行を超出し、 現前に普賢の徳を修習せん。 もししからずは、 正覚を取0157らじ」 と。
願ニ言ハク、「設[ヒ]我得[ム]ニ↠仏ヲ、他方仏土ノ諸ノ菩薩衆、*来↢生†セバ我ガ国ニ↡、究竟シテ必[ズ]至ラム↢一生補処ニ↡。除ク↧其ノ本願ノ自在ニ所アリテ↠化[セムト]スル、為ノ↢衆生ノ↡故ニ、被テ↢弘誓ノ鎧ヲ↡積↢累シ徳本ヲ↡、度↢脱シ‡一切ヲ↡、遊[ビ]テ↢諸仏ノ国ニ↡修シ↢菩薩ノ行ヲ↡、供↢養シ十方ノ諸仏如来ヲ↡、開↢化シテ恒沙无量ノ衆生ヲ↡、使メムヲバ↞立セ↢无上正真之道†ニ↡。†超↢出シ常倫0529諸地0425之行ヲ↡、現前ニ修↢習セム普賢之徳ヲ↡。若[シ]不ハ↠爾[ラ]者、不ト↠取ラ↢正覚ヲ↡」。
二 Ⅱ ⅱ b ヌ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[二][Ⅱ][ⅲ][b]結証
^◆仏願力によるがゆゑに、 *常倫諸地の行を超出し、 現前に普賢の徳を修習せん。 常倫諸地の行を超出するをもつてのゆゑに、 ゆゑに速やかなることを得る三の証なり。
縁[ル]ガ↢仏願力ニ↡故ニ、†超↢出シ常倫諸地之行ヲ↡、現前ニ修↢習セム普賢之徳ヲ↡。以[テ]ノ↣†超↢出スルヲ常倫諸地ノ行ヲ↡故ニ、†所以ニ得ル↠速[ナルコト]ヲ三ノ証也。
二 Ⅱ ⅱ b ヌ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[三]結示
^▼これをもつて推するに、 他力を増上縁となす。 しからざることを得んや。
以テ↠斯ヲ而推スルニ、他力ヲ為ス↢増上縁ト↡。得ム↠不[ル]コトヲ↠然ラ乎。
二 Ⅱ ⅱ b ヌ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)二力の不同を略弁す【自力他力】
[一]総標
^◆まさにまた例を引きて、 自力・他力の相を示すべし。
当ニシ↣復引[キ]テ↠例ヲ示ス↢自力他*力ノ相ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ヌ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[二]別釈
[Ⅰ]自力を明す
^▼人の三塗を畏るるがゆゑに禁戒を受持す。 禁戒を受持するがゆゑによく禅定を修す。 禅定をもつてのゆゑに神通を修習す。 神通をもつてのゆゑによく四天下に遊ぶがごとし。 かくのごとき等を名づけて自力となす。
†如シ↧人ノ畏[ルヽ]ガ↢三塗[ヲ]↡故ニ受↢持ス禁戒ヲ↡、受↢持スルガ禁戒ヲ↡故ニ能ク修ス↢禅定ヲ↡、以[テ]ノ↢禅定ヲ↡故ニ修↢習ス神通ヲ↡、以[テ]ノ↢神通ヲ↡故ニ能[ク]遊ブガ↦四天下ニ↥。如キ↠是[クノ]等ヲ名[ケ]テ為ス↢自力ト↡。
二 Ⅱ ⅱ b ヌ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅱ]他力を明す
^▼また劣夫の*驢に跨りて上らざれども、 転輪王の行に従ひぬれば、 すなはち虚空に乗じて四天下に遊ぶに、 障礙するところなきがごとし。 かくのごとき等を名づけて他力となす。
又如シ↧劣夫ノ跨リテ↠*驢ニ*不レドモ↠上ラ、*従ヒヌレバ↢転輪王ノ†行ニ↡、便チ乗ジテ↢虚空ニ↡遊†ブニ↢四天下ニ↡、无キガ↞所↢障スル↡。如[キ]↠是[クノ]等ヲ名[ケテ]為ス↢他力ト↡。
二 Ⅱ ⅱ b ヌ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[三]勧誡
^▼*愚かなるかな、 後の学者、 他力の乗ずべきことを聞きて、 まさに信心を生ずべし。 みづから*局分することなかれ。▲
*愚ナル哉、後之学者、聞[キ]テ↢他力ノ可[キ]コトヲ↟乗ズ、当ニシ↠生ズ↢信心ヲ↡。勿レ†↢自ラ局分ハヾカルコトスルコト↡也。
二 Ⅱ ⅱ c 結文を釈す【総結釈】
イ 論文
【127】 ^▲無量寿修多羅優婆提舎願生偈、 略して↓義を解しをはりぬ。
無量寿修多羅*憂*婆提舎願*生偈、略シテ解シ↠義ヲ竟[リ]ヌ。
二 Ⅱ ⅱ c ロ 註釈
^▼経の始めに 「如是」 と称するは、 信を*能入となすことを彰す。 末に 「奉行」 といふは、 *服膺の事已ることを表す。 ¬論¼ (浄土論) の初めに 「*帰礼」 するは、 宗0158旨に由あることを明かす。 終りに 「↑義竟」 といふは、 所詮の理畢ることを示す。 *述・作の人殊なれども、 ここにおいて例を成ず。
経ノ始ニ称ス[ルハ]↢如是ト↡、†彰ス↣信ヲ為スコトヲ↢能入ト↡。末ニ言フ‡ハ↢奉行ト↡、†表ス↢服膺ノ事已ルコトヲ↡。¬論ノ¼初ニ帰*礼スル‡ハ、明ス↢宗旨[ニ]有ルコトヲ↟由。終ニ云フハ↢義竟ト↡、†示ス↢所詮ノ理畢ルコトヲ↡。述作ノ人殊†ナレドモ、於テ↠茲ニ成ズ‡↠例ヲ。
無量寿経優婆提舎願生偈註 巻下
†▲釈ノ曇鸞法師者、并州ノ汶水県ノ人也。魏ノ末高斉之初、猶在テ↢神智高遠ニシテ三国ニ↡知聞セラル。洞ニ暁カニシテ↢衆経ニ↡、独出タリ↢人外ニ↡。梁国ノ天子蕭王、恒ニ†向テ↠北ニ礼ツル↢曇鸞菩薩ト↡。注↢解シテ往生論ヲ↡裁テ成ス↢両巻ト↡。事出タル↢釈ノ迦才ノ三巻ノ浄土論ニ↡也。
*建長八歳丙辰七月廿五日 愚禿親鸞 八十四歳 加点了
延書の底本は本派本願寺蔵鎌倉時代刊本(宗祖加点本)ˆ原漢文の底本と同一ˇ。
議 すじ道を通して説き明かすこと。 順序だてて解釈していくこと。
五念力 五念門のはたらきのことで、 信を生ぜしめるはたらきのあることをいう。
礼拝したてまつる 親鸞聖人は 「礼拝したまひき」 (加点本訓) と読まれた。
心行処滅し 心の行処の止滅。 心で思いわけることができないという意。
言語の道過ぎたり 言葉で言い表すことができない。
なすが 親鸞聖人は 「なさせんが」 (加点本訓) と読まれた。
讃嘆したてまつる 親鸞聖人は 「讃嘆したまひき」 (加点本訓) と読まれた。
志願 往生し成仏しようとする願い。
月 底本には 「日」 とあるが、 異本およびこの譬喩の典拠となっている ¬大智度論¼ 巻九等の文では、 「月」 となっているのでこれを改めた。 以下、 同じ。
名の法に即するあり 名と名によって示されるもの (法) のはたらきとが一体であるという意。
禁呪の音辞 悪やわざわいをとどめるための呪文。
日出東方… 中国に古くから伝わる呪文の一種と考えられる。
酉亥に… 酉亥は午後五時頃から午後十一時頃までのこと。 日の出とは関係のないこの時刻に 「日出…」 の呪文をとなえても、 腫物がひくという意。
臨兵闘者… ¬抱朴子¼ に出る呪文。
熨す 上から下へじわじわとおさえていく。
滅除薬を鼓に塗る喩へ ¬首楞厳経¼ に出る喩え。 人が毒矢をうけても滅除薬を塗った鼓の音を聞けば、 矢は抜け毒も除かれるというもの。
心に…ゆゑなり 親鸞聖人は 「心につねに作願したまへりき。 一心に専念して畢竟じて安楽国土に往生して、 実の如く奢摩他を修行せんと欲ふがゆゑにのたまへり」 (加点本訓) と読まれた。
心を鼻端に止むる 出入の息を数えて心の散乱をとどめるという数息観のこと。 五停心観の一。
不浄観 身や三界の不浄を観じて貪欲を離れる観法。 五停心観の一。
慈悲観 すべての衆生を観じて慈悲のおもいを生じ、 いかりをとどめる観法。 五停心観の一。
因縁観 すべての事物がみな因縁によって生じるという道理を観じて、 愚かさをとどめる観法。 五停心観の一。
椿柘楡柳 つばき・やまぐわ・にれ・やなぎ。
含 異本には 「今」 とある。
観察し 親鸞聖人は 「観察したまへりき」 (加点本訓) と読まれた。
観心分明 観ずるこころが明らかな状態。
得んとする 親鸞聖人は 「得たまへる」 (加点本訓) と読まれた。
向かふなり 親鸞聖人は 「向かへしむるなり」 (加点本訓)、 「
向らしめたまふなり」 (信文類訓) などと読まれた。
体相 体はものがらの意。 観の対境となる荘厳相のこと。
阿弥陀法王善住持力 阿弥陀仏の浄土をよくささえたもつはたらき。
大饒益 大きな利益。
所須に称ひて 必要に応じて。
無量身の願 我身だけでなく、 一切の衆生を済度して浄土に往生させようと願う心。
量 ¬浄土論¼ (底本) には 「無量」 とある。
章門 前に掲げた十七種の浄土の荘厳の分類を指す。
出世の善根 迷いの世間を超え出た煩悩のけがれのない善。
影響 うつりあらわれたすがた。
触の楽 接触による快楽。
道を増す 仏道に向かう心を増進させる。
無分別の類 分別の意識のないもの。
五類 地・水・火・風・空。 五大ともいう。
水穀の身 水を飲み穀物を食べて生きる身。
所応 おもいのぞむところ。
善悪の業縁 善悪の行為によって、 苦楽の果報を得ること。
探湯不及の情 悪をさけ善を求めるこころ。 悪を見れば熱湯に手を入れてすぐひっこめるようにこれをさけ、 善を見れば及ばずとも求めたいと思うこと。 もと ¬論語¼ 季氏篇に出る。
影 極楽の荘厳にうつしだされる十方世界のすがた。
馨香芬烈 香気をつよく放っていること。
次いでをもつて… 順序正しく華が消え去り。
葉 はなびら。
剋念…往生を得て 親鸞聖人は 「剋念して生ぜんと願ぜんものと、 また往生を得るものとは」 (加点本訓) と読まれ、 現生正定聚の意を示された。
不朽薬 ものを朽ちさせない薬。
瀾れず くさらない。
善住持 浄土をよくささえたもつはたらき。
苦器 苦しみの容器。
悩端 悩みのはじめ、 糸口。
譏過 ¬浄土論¼ (底本) には 「譏嫌過」 とある。
諸天の器を… 六欲天等の天界では、 同じ器に同じ食物を盛っても、 食するものの福徳の
因縁によって色が変化するという。 もと ¬
維摩経¼ に出る。
足の指… 不浄な心をもつものには
瓦礫にしか見えない世界も、
仏眼をもって見れば黄金の世界であることを、 釈尊が足の指で地をおさえて見せられたこと。 もと ¬
維摩経¼ に出る。
所須の供養の具 供養に必要な品。
能神のひと 神通力をもつ人。 阿弥陀仏のこと。
境 境は対境の意。 智慧によって観知される対象のこと。
十六句 第一の荘厳清浄功徳をのぞく荘厳量功徳などの十六の荘厳をいう。
器浄 国土荘厳の清浄。
総別 国土荘厳十七種のうち、 第一の荘厳清浄功徳を総とし、 他の十六を別という。
建章 「願生偈」 の発端の章。
無為能為の身 無為にして
能く
為す身。 空理に達してしかも利他を行ずる仏身。
三空不空の痼 空、 無相、 無願 (三空) の空理にとらわれることは、 真の空ではないこと (不空) をいう。 真空妙有を知らない小乗を批判したもの。
根敗 大乗の無上のさとりを求める心がすたれることを、 草木の根がくさることに喩えていうもの。
無反無復… 思いかえしてふたたび大乗のさとりをもとめる心をおこすことがないこと。 ¬註維摩経¼ に 「凡夫に反復の名あり、 二乗に根敗の恥あり」 などとあるのによるか。
かの生の理を体する 無生の生の道理を体得する境界が浄土であるという意。
総相 全体に通ずる普遍的な性質。
上品生 ¬観経¼ に説かれる九品往生のうち、上品上生、上品中生、上品下生のものをいう。 →
九品
惑ひ 実体的な消滅があるという惑い。
生見 実の生ありとする生にとらわれる心。
無生の智 不生不滅の理をさとる
智慧のこと。 →
無生
衆 ¬浄土論¼ (底本) には 「大衆」 とある。
身見 自己を実体視する誤った見解。
言教不行の苦 自己の主張が、 他人に受けいれられない苦。
無名聞の苦 名声があがらない苦。
実相に入れば… 無相の
実相にかなう心は
無分別智 (無知) である。
石の蛭 山蛭。
甘刀 よく切れる刀。 利刀。
有知無知 知覚があるかないか。
聖心 聖者の心。 凡心 (凡夫の心) に対す。
人餐を輟めて… 人が自らの食事を節約して士を養っても、舟の中でそのものに殺されるという血なまぐさいできごとが起るということ。 もと ¬呉越春秋¼ ¬魯子春秋¼ に出る 「慶忌の故事」 を引いたもの。 は 釁 (血ぬる) の俗字。
自在神力 自由自在の不思議な力。
願もつて… 因位の願は果上の力を成就し、 かつ果上の力は因位の願のままにはたらくという意。
大寂滅 一切の法は本来空寂であるという空理。
常倫…修習せん 「常倫諸地の行」 とは、 常なみの菩薩が漸次に経過する十地のそれぞれの修行のこと。 親鸞聖人は 「常倫に超出し、 諸地の行現前し、 普賢の徳を修習せん」 (加点本訓) と読まれた。
百囲 囲は長さの単位。 一囲は両手を広げてひと囲みの長さ。 なお、 異本には 「囲」 の字を 「歳」 とするものもある。
羅漢を一聴に証し 一度の説法で阿羅漢果を得させたことをいう。 ¬大智度論¼ に出る。
無生を終朝に制する 終朝は夜明けから朝食までの間のこと。 朝のあいだに無生法忍に至らせる。
宜なり しかたのないことである。
化 阿弥陀仏の教化。
長幼に同ずることを恐る 長幼は年長者と年少者の順序。 阿弥陀仏と聖者の関係は、 長幼の序というようなものでないことを注意したもの。
四種の正修行功徳成就 天親菩薩の ¬浄土論¼ では、 国土荘厳十七種と仏荘厳八種については個々の荘厳の名称が付されているが、菩薩荘厳四種については名称が付されていない。 なお、 後世に付された名称として第一 「不動而至功徳」、 第二 「一念遍至功徳」、 第三 「無相供養功徳」、 第四 「示法如仏功徳」 がある。
如を体して… 真如の本体のままに行ずるので、 すでにみずから行ずるというとらわれの意識を離れた行である。
卑湿の淤泥 湿ったどろ。
法身は… 無相の法身は一定のかたちにとらわれず、 あらゆる形をあらわしてすべてに応じてという意。
玄籍弥く布けり 玄籍は幽玄な書籍の意で、 ここでは仏教の経典のこと。 仏の教説が広く行きわたること。
冥権謀なくして… 冥権は仏・菩薩のはかりしれない権 (てだて)。 はからいをせずとも、 すべてにかなうはたらきをするということ。
観行の体相 観察の対象となる浄土、 仏および菩薩の荘厳相を明かす。
無因と…あらざる 浄土は清浄願心によって成就したのだから無因ではなく、 願心以外に因はないから、 他因の有でもない。 願心荘厳の正縁起の世界であることをあらわす。 なお親鸞聖人は 「因なくして他の因のあるにはあらざるなり」 (加点本訓) と読まれた。
三句 一法句と清浄句と真実智慧無為法身を指す。
真智は無知なり 真智は実智、 如実智ともいい、 無分別智のこと。 すべてのものの本質ありのままが平等で不二であることをさとる智。 無知とは、 すべて因縁によって生じたものは実体がなく空であるから、 対象的に知るということもないという意。
百非の喩へざるところ 言語で表現することができないということ。 相対的に論じられないという意。
不二の心 広(有)略(
空) 不二の実相をさとる
智慧。 それはまた観ぜられる対象 (境) の徳すなわち
実相と、 観ずる心とが境智不二となった心でもある。
畢竟常楽の処 究極的な常住安楽の境地。
省みる 省察する。 知る。
初禅二禅三禅 色界の
四禅天のうちの初めの三。 この
禅定に入る時にはこころに楽を生ずるが、 第四禅天になると不苦不楽であるという。
生ずれば 親鸞聖人は 「
生ぜしめて」 (証文類訓) と読まれた。
出没自在 衆生を救うために、 自由自在に十方世界へあらわれることができるということ。 また自利利他が自在であるということ。
入出 入とは浄土に入ること。 出とは衆生を救うために他方世界に出ること。 入は
自利、 出は
利他にあたる。
示現す 親鸞聖人は 「示現したまふなり」 (加点本訓)、 「
示現せしむ」 (証文類訓) などと読まれた。
自娯楽の地 衆生の教化をみずからの楽しみとする地位。
得 親鸞聖人は 「
得しむ」 (証文類訓) と読まれた。
称し 親鸞聖人は 「
称せしめ」 (証文類訓) と読まれた。
得 親鸞聖人は 「
得しむ」 (証文類訓) と読まれた。
得 親鸞聖人は 「
得しむ」 (証文類訓) と読まれた。
類事起行願取仏土味 諸仏を
供養し、 衆生を
化度し、 無仏の世界に
三宝をひろめる菩薩の徳 (
菩薩四種功徳) を観ずる法味。
法華経の普門示現 ¬
法華経¼ 「
普門品」 に観音菩薩が
衆生の諸難を救い、 諸願を満たすに、 三十三身等の種々の形を現して説法されるとある教説を指す。
度無所度 大菩薩は、 衆生が本来空であることをさとるから、 衆生を済度しても済度しているというとらわれの思いが全くないということ。
現ずる 親鸞聖人は 「
現じたまふ」 (行文類訓) と読まれた。
五念門 ¬浄土論¼ (底本) には 「五門」 とある。
得る 親鸞聖人は 「
得たまへる」 (行文類訓) と読まれた。
得る 親鸞聖人は 「
得たまへる」 (行文類訓) と読まれた。
理を窮め性を尽して 自然の理法や人間の本性を知りつくすこと。 もと ¬易経¼ の説卦に出る。 ここでは真如法性の理をきわめ尽すという意。
法相のごとくして 存在のありのままのすがたにかなって。
十方の無礙人 十方世界の諸仏を指していう。
他利と利他 如来の救済を衆生からいえば他 (仏) が利すといい、 仏からいえば他 (衆生) を利すという。 ここでは仏の方から語るので利他というと釈したのである。
左右 相違。 区別。
いま的しく… 「三願的証の文」 といわれる。 第十八・十一・二十二願をあげて、 衆生の往生成仏の因も果も他力によるものであることを示す。
常倫…修習せん 親鸞聖人は 「常倫に超出し、 諸地の行現前し、 普賢の徳を修習せん」 (加点本訓) と読まれた。
驢 ろば。
愚かなるかな 異本には 「遇かな (まうあへるかな・さいはひなるかな)」 とある。
能入 信によってこそ仏法に入ることができるという意。
服膺の事已ることを表す 仏説を信受しおえたという意。
帰礼 帰命礼拝。
述作の… 経を述べる人と論を作った人はことなるが、 巻首と巻末の形式が相応じているということを示す例である。
底本は◎本派本願寺蔵鎌倉時代刊本(宗祖加点本)[ただし訓は○浄聖全三巻の宗祖加点本と全同ではなく大幅に標準化されているため、 相違を†、 加を‡、 減を [ ] で示した]。 Ⓐ高野山寶壽院蔵鎌倉時代書写本(上巻)、 Ⓑ大阪府金剛寺蔵保延四年書写本(下巻)、 Ⓒ山口県常満寺蔵室町時代刊本、 Ⓓ本派本願寺蔵版¬七祖聖教¼所収本 と対校。
論ジテ曰ク。→○論曰ハ、
曰→Ⓓ曰[已下]
示↧現ス…見タテマツルコトヲ↦…↥。願ズルガ↠…→○示↧現スルガ…見タテマツリ↢…↡、願ズルコトヲ↞…
○トナリ
者 ◎Ⓒになし
云何ガ礼拝スル→○云何ナルガ礼拝
ヲモテ→○ヲシテ
シタテマツル→○シタマヒキ
如来ニ徳→○如来ノ徳ニ
モ→○ニ
ゲ→○グ
而已→○而已ト
此ニ→○此
ト→○・
穏→ⒷⒸ隠
恵→Ⓒ慧 ○恵を慧と上書訂記
恵→Ⓒ慧
応ニキガ↠受ク…故ニ→○応ゼリ↠受[クル]ニ…。故ニ
○テ
言語ノ道過ギタリ→○言語道過セリ
過→Ⓑ慮
如クシテ↢涅槃ノ相ノ↡不動ナリ→○如シ↢涅槃ノ相ノ不動ナル↡
スガ→○サセムガ
ズル→○ゼム
何ガ故ゾ→○何故ニカ
不ズ↣必ズシモ有ルニ↢…↡→○不↣必有ラ↢…↡
シタテマツル→○シタテマツレト
ガ→○ナルカ
スルニ→○シ
如実ニ→○如ク↠実ノ
称スト↢彼ノ如来ノ名ヲ↡→○称彼如来名
スル→○セヨト
如クト↢彼ノ如来ノ光明智相ノ↡→○如彼如来光明智相
如ク↢彼ノ名義ノ↡、欲スト↢如実ニ修行シテ相応セムト↡→○如彼名義欲如実修行相応
ズ→○[ザ]ル
有リ↧…憶念スレドモ而…者↥。→○有レ↢…憶念コト↡而…者、
在リテ而→○在而
者→Ⓑ也
不→○不ルト
為ストナレバ→○為ルトナラバ
レバナリ→○[ル]ナリ
為物→○為ノ↠物ノ
ク→○シ
○ノ
ナリ→○ニ
心 Ⓑになし
建↢言ス→○建ニ言ヘリ↢
如指 Ⓑになし
指スガ→○指フルガ
日→Ⓓ月
便→Ⓑ使
得トイハバ…者→○得ル…者
指ス→○指フル
指ス→○指フル
テム→○タム
如シ↣…云フガ↢…句ヲ↡。→○如[シ]↢…云ガ↡、…句ナリ。
呪→Ⓑ死(呪歟と右傍註記)
一→Ⓑ切
○ニ
瓜→Ⓑ叢
慰→ⒸⒹ熨
引 Ⓑになし
○イフ
法→Ⓑ法[異]
↢於前ニ↡→○↠於↠前
如キ↢…指スガ↟日ヲ等ノ名→○如キ↢…指[フル]↠日ヲ等ノ名ノ↡
作シ↠願ヲ→○作願シタマヘリキ
専ラ念ズ↣…往↢生セムト…↡。→○専念シテ…往↢生シテ…↡、
欲スルガ→○欲フガ
ナリ→○ニノタマヘリ
如キヲモ↢人ノ…不ルガ↟→○如人ノ…不ルオモ↠
セバナリ→○ス
名 Ⓑになし
合→Ⓓ今
ズレバ→○[ジ]ヌレバ
○ヲシテ
言ヘリ→○言ヘリト
→Ⓒ慧 ○恵を慧と上書訂記
○タマヘリキ
ズ…。→○ズルコトハ…、
想→Ⓓ相
セバナリ→○ス
如シ↢…名ノ不ルガ↟…→○如キ↢…名ノ↡不ル↠…
スル者モ→○スレ者
如実功徳 Ⓑになし
タテマツリ…、→○[タテ]マツル…。
得↠証スルコトヲ↢…→○得↢証ス…
言ヘリ→○言ヘリ
ナルヲ→○ナル、
為ス↠…。→○為シテ↠…、
ムトスルガ→○タマヘルガ
ナリ→○ニト
二→Ⓒ一
己→○己
作↣願スルナリ…往↢生セムト…↡→○作願シテ…往↢生セシメムトナリ…↡
得↢…毘婆舎那ヲ↡、…成就スレバ→○得テ↢…毘婆舎那…成就スルコトヲ↡
婆→Ⓑ鉢
フナリ→○ヘシムルナリ
得 ◎Ⓒになし ○右傍補記
重→Ⓑ種
ナリ→○ニ
如キニ↢…性ノ↡…法ナルガ→○如キノ↢…性ノ…法ナルガ↡
第 Ⓑになし
統ベテ→○統ジテスベテ
可 Ⓑになし
ノ→○ニ
所摂ナリ→○所レタリ↠摂セ
「如キニ↢…性ノ↡…相対トイフ」者→○「如[キ]ト↢…性[ノ]…相対[ノ]↡」者
福ス↢衆生ヲ↡→○福トス↢衆生ノ↡
○ベキ
斎→Ⓒ
置キテ↢…於…ニ↡→○置[キ]テ↣…於↢…↡
言ク→○言ハ
竿→Ⓑ于
雨ラシテ→○雨[リ]テ
之→Ⓑ如此
須→Ⓑ願
セシム→○ス
片↢取シテ…↡→○片ニ取[リ]テ↢…↡
ニ→○ノ
彼 Ⓑになし
妙 Ⓑになし
諸→Ⓑ借
満足 Ⓑになし
不→Ⓑ不[可]
続キテ提釈ス→○続ツグ提シテササグ 釈ス
○ヤ
有リテ↢…人↡…成就スルモ→○有[リ]テ↢…人ノ…成就セル↡
界 Ⓑになし
言ヘルガ→○言ヘルガ
則→Ⓒ即
是 Ⓑになし
欲スレバ→○欲ヘバ
項→Ⓓ頃
当ニシ生ル→○当ニ生[レ]ム
而モ→○而[ル]ヲ
ト→○ヲ
言ヘルガ→○言ヘルガ
得レバ→○得ツレバ
曰→ⒷⒹ言 ○曰を言と上書訂記
嚮→Ⓒ響
也 Ⓑになし
欲スレバ↠令メムト↠无カラ、儵焉トシテ化没ス。→○欲ヘバ↠令メムト↠无[カ]ラ↢儵焉ニ化没↡、
有→Ⓑ有[為]
ガ→○ゾ
ナリ。而ルニ→○ナレ而
応シ…。而ルニ→○応ケ[レ]…而
事ハ→○事
何ゾ→○何ゾ
染スル…者ハ→○染スレ…者
并セテ→○并ベテ
所謂ル→○所↠ル謂ハ
取リテ↣有リテ而可キヲ↢荘厳ス↡→○取リ↠有[ヲ]而可シ↢荘厳ス↡
并セテ→○并シテ
中→○中
ニ→○ヲ
当ニシ↠有ル↢所以↡→○当ニキ↠有ル所以ナリ
交→◎災
錯→Ⓑ飾
復 Ⓑになし
聞→Ⓒ聞[衆]
腰→Ⓑ膝
水即至頚 Ⓑになし
輒→◎Ⓒ転
灡→Ⓓ瀾
詳→Ⓓ祥
揚グ↢无量自然ノ妙声ヲ↡。→○揚ガ[リ]テ无量ナリ。自然ノ妙声
慧→○ⒷⒹ恵
蘭→ⒸⒹ欄
事 Ⓑになし
荘厳具足セリ。此ノ荘厳ノ事ハ→○荘厳シ↢具足セリ↣此ノ荘厳ノ事ヲ↡。
現ズ。彼ノ中ノ人天、→○現ズ↢彼ノ中ノ人天ヲ↡。
探湯 ○探湯を称揚と右傍註記
湯→Ⓑ陽
不及→○不↠及
情→○情
以テ↧照ス↢法性等ヲ↡宝ヲ↥→○以テ照[シ]テ↢法性等ノ宝ヲ↡
為セバ→○為レバ
↢于東方万八千土ヲ↡→○↠于↢東方万八千土↡
所↠趣ク→○所趣
於テ↠此ニ→○於↠此
嚮→ⒸⒹ響 ○嚮を響と下欄註記
習→Ⓑ皆
シ→○ス
快→◎Ⓒ决
○ナリ
勲→Ⓓ薫
ナリ→○セリ
蹈ミ下ルコト→○蹈ミ下ルコト
蹈→Ⓓ陥
反→Ⓓ返
遍→ⒷⒹ満
葉→ⒸⒹ華
煒燁→Ⓓ暐曄
慧→ⒷⒹ恵
安↢立セシメタマフト…於仏ノ正道ニ↡→○安↣立セシメタマフ…於↢仏ノ正道↡
故ナリ→○故ニト
則→Ⓑ則[則] ○則を即と上欄訂記
願ズレバ→○願ゼンモノト
得テ→○得ルモノトハ
水→Ⓓ外
瀾→Ⓑ灡
即→ⒷⒹ則
衆→Ⓒ界
○ク
生→Ⓓ生[水]
干→◎Ⓒ于
為リ↢兄弟↡→○為ル↢兄弟ト↡
所↠資クル→○所資
ヲ→○ハ
苦→Ⓑ共
彼ニ→○彼
過 ○過を嫌と上書訂記
↠離ルト↢体ノ譏嫌ヲ↡→○↢離体譏嫌ト↡
↠離ルト↢名ノ譏嫌ヲ↡→○↢離名譏嫌ト↡
三種アリ→○有リ↢三種↡ 有は上欄補記
共ニスレドモ↠器ヲ→○共器ニハ
而 Ⓑになし
按ズルニ↠地ヲ→○按ジテ↠地ニ
按→Ⓑ案→Ⓓ安
溜→Ⓑ謂 Ⓓ水と左傍註記
澠 Ⓓ水名と左傍註記
及ブマデ↢…ニ↡→○及ビ…
カラム→○ケム
欲セムニ→○欲ハム
食→◎Ⓒ食[石]
短→Ⓑ掟
ク…。→○キテ…、
セムガ→○スルガ
須弥之→○須弥ヲ之ヲ
リ→○レ
毛孔之→○毛孔ニ之ヲ
耳→○耳
タリ→○ナリ
句 Ⓑになし
次第シテ説ケリ→○次第ニ説[キ]ツ
建→○建ノ
言ク→○言フココロハ
キト→○キヤ
一 ◎ⒷⒸになし
明ス↢…非ザルコトヲ↟…也→○明ケシ…非ル…也
耳→○耳ト
ナレバ→○ナリ
ノ→○レ
永→Ⓒ身
ハス→○ウ
亡→Ⓑ已
於テ→○於テ
体スル↢夫ノ生ノ理ヲ↡→○体夫レ生ズ↠理ヨリ
○トイヘリ
グルニ→○[グル]トイフニ
為ス→○為ル
ズ→○[ゼ]ヨ
ナルヲカ→○ト
ズ→○ゼヨ
何ナル→○何ノ
衣花ノ香薫ヲ→○衣花香ノ薫ヲ
土→Ⓑ生
為ストイフコトヲ→○為ルコトヲ
為ス→○為ルト
大 Ⓑになし
○トナリ
土→Ⓑ刹
ラバ→○[ル]ハ
○コトヲ
生ズトモ生ゼム↠惑ヲ→○生ゼムヲヤ↢生ノ惑ヲ↡ 或を惑と上書訂記
惑→◎Ⓒ或
殊→ⒷⒹ珠 ○殊を珠と上書訂記
号 ○號を号と上書訂記
マリ→○[ク]シテ
死→Ⓓ死[之]
是→Ⓑ如浄 ○是とあるを抹消し如浄と右傍補記
(是…)如クナリ↢…↡→○(如シ↧…)如クナルガ↦…↥
於水ニ↡→○於↟水
珠→Ⓒ殊
(投↧)…於所ノ↢往生スル↡者ノ心水ニ↥→○(投↣)…於↢所往生ノ者ノ心水↡
スコト→○ルコト
種→Ⓓ種[相]
観ズト↢仏ノ荘厳功徳成就ヲ↡→○観仏荘厳功徳成就
何トナレバ者→○何者カ
欲セバ→○欲ハヾ
依→Ⓑ作
群→Ⓑ郡
響→Ⓐ嚮
ニ以テ↠造ルヲ↠…→○ヲシテ以造[リ]テ↠…
以 Ⓑになし
↢于因縁ニ↡→○↠于↢因縁↡
窮→Ⓑ家
治ス。衆生ハ→○治ストイフハ↢衆生ヲ↡
得テ→○得
捐→◎ⒷⒸ指→○捐キラヒ
庳→Ⓑ片→○片キラフ
遇ヒ→○遇ヒ
是→Ⓑ是[諸]
亦→◎Ⓒ欠
在レバ↢因縁ニ↡→○在ルハ↢因縁↡
↢无知ナラ↡→○↠无[カ]ラ↠知
得ル→○得ム
有知ナレバ→○有[レ]バ↠知
知ラ→○知ナラ
若 Ⓑになし
知ル知ナレバ、即チ无知也→○知ナリ、知即无知ナリ也
言フ↢…无シト↟所↠不ル↠知ラ。若シ无ケレバ↠所↠不ル↠知ラ者→○言ハ↧…无シ↢所トシテ不[ル]コト↟知[ラ]、若无シト↦所トシテ不ルコト↞知ラ者
像→Ⓓ象
足→Ⓑ之
テ→○[ル]ニ
当ニシ↧…顕ス↦…義ヲ↥→○当ニ…顕ス↢…義ヲ↡
有リ↧…起リ↢…↡、…不ルコト↞…→○有リ↣…↢起スコト…↡、…不↠…
フニ→○イ
得レドモ→○得テ
ルト→○[ル]ヲ
レドモ→○[リ]テ
非ズ…。→○非[ザ]ルコト…、
由リテ↢…業ノ作ナルニ↡不ル↠…也→○由リテ↢…業ヲシテ作シテ不[ル]ニ↟…也
在→Ⓑ然
徒然 左Ⓑイタヅラ シカラシム
苻→Ⓓ符
タテマツレバ→○[ソナハ]セバ
得テ↠証スルコトヲ↢→○得↢証シテ
得ルガ→○得シムルガ
无キ→○无サヌ
也 Ⓑになし
須 Ⓑになし
心→Ⓑ心[為]
願ジテ生ズレバ→○願[ジ]テ↠生[ゼ]ムト
キ→○シ
級 Ⓑになし
逕…、→○逕…。
乃チ→○乃
曰→ⒷⒹ曰[言] ○言と右傍補記
ズ→○ル
耳→○耳ト
不ズハ↢即等ニ→○不ハ↢即チ等[シカ]ラ↡
何ゾ待タム↠言フコトヲ→○何ヲ待チテカ言[フ]
地→Ⓑ地[諸]
仮ラム↠言フコトヲ→○仮ニ言[ハ]ムヤ
ノ→○ヲシテ
カラム→○ケム
ムニ→○[タ]ラムニ
○シテ
アリテ→○ノ
遊ビテ→○遊ビ
超↢出シ常倫諸地之行ヲ↡、現前ニ→○超↢出シ常倫ニ↡諸地之行現前シ、
於ケル→○於テ
地ニ生ズルコト→○地ヨリ生ジテ
囲→ⒷⒹ歳 ○囲を歳ナラムと左傍訂記
具セリ、→○具ニ
長ズルコト→○長ノ
高→ⒷⒹ長 ○高を長ヲと右傍訂記
↢…於一聴ニ↡→○↣…於↢一聴↡
↧…↦…於終朝ニ↥→○↫…↪…於↩終朝↨
言→○言
宜→○宜ベ シカルキ
スル→○ナル
シ→○セル
何ナル→○何ノ
知リヌ↢…具足シテ応キコトヲ↟為ル↢人天ノ大師↡。堪ヘタル↠受クルニ↠化ヲ者ハ是誰ゾ↡→○知[リ]ヌ↢…具足セルコトヲ↡、応シト↢為人天ノ大師トシテ堪エタル↠受[クル]ニ↠化ヲ者ハ是レ誰ナル↡
恐ル↠→○恐クハ
ズルコトヲ→○ジキコトヲ
成ジ已リヌ→○成ゼル也ト 已を也と上書訂記
以テ↢一ノ正ヲ↡→○以テ↠一正[シ]ク
統ブ→○統ヌ
終→Ⓑ洛
厳→Ⓑ厳[身業已知]
幼→Ⓑ幻
未ダレバ足ラ↣以テ明スニ↢不動ヲ↡→○未 ズ ダ足ラ、以テ↢明[カ]ニシテ不動ナルヲ↡
隆→◎際
所↠作ス→○所作ニ
照シテ↢諸仏ノ会ノ大衆ヲ↡→○照ス↢諸仏ノ会ヲ↡。大衆
群→◎ⒶⒷⒸ郡
无クト↠余スコト→○无余トイフ
明ス↧…无キヲ↞…→○明ニ…无キ↠…
殊形→○殊ニス↠形ヲ、
並ビ応ジ、至韻ハ→○並ニ↢応ズ↢至韻ニ↡。
会フト→○会ス
无キ↢三宝↡→○无三宝ノ
↠所↠不ル↠法ナラ→○↢所トシテ不ルコト↟法ナラ
↠所↠不ル↠善ナラ→○↢所トシテ不ルコト↟善[ナラ]
説ケリ↣観↢察スルコトヲ…ヲ↡→○説キツ↢観察…ヲ↡
○ト
応シト↠知ル→○応知トイフ
シタマヘル→○シタマフ
非ザルヲ↦无因ト他因ノ有ニハ↥→○非ザルナリト↦无[ク]シテ↠因他ノ因ノ有[ル]ニハ↥
略シテ説クガ↠入コトヲ→○略説シテ入ルガ
入ルヲ↢一法句ニ↡→○入一法句ヲ
為ス→○為ルナリ
何ガ故ゾ→○何ノ故ニカ
スルトナレバ→○シタマフトナレバ
統ブルニ→○統ズルニ
不レバ→○不ハ
不レバナリ→○不
スルコト→○ニ
何ノ→○何ナル
ナリ→○ニ
名→Ⓑ名[之]
智→Ⓑ知
ナルガ→○ノ
目→Ⓑ自
非スル↢于非ヲ↡→○非↠于↠非
非スル↠非ヲ→○非非
无スル↠非ヲ→○无キ↠非
无キモ↠待スルコト→○无シ↠待ツコト
喩→Ⓑ兪
清浄句 Ⓑになし
謂フ↢…法身ヲ↡→○謂ク…法身
リ→○ル
デムト→○ダサムト
故 Ⓑになし
言フ↠→○言フコヽロハ
如 ◎○ⒷⒸになし
(如キ↢…)説クガ↡十七種ノ荘厳仏土功徳成就ナリ→○…説キツ↢十七種ノ荘厳ト仏土功徳成就ヲ↡
説→◎設 上書訂記
衆生世間清浄者 Ⓑになし
句 Ⓑになし
浄→Ⓓ浄[義]
報→◎Ⓒ法
用 Ⓑになし
不ズ…。所以ニ→○不[ザ]ル…所以ヲ
得一不 Ⓑになし
成ズ。无シ↢余ノ境界↡→○成ズ↢无余ノ境界ヲ↡
レバ→○ルハ
ナリ→○ナレバナリ
スルナリ→○スト
レドモ→○ルハ
二→○二ツ
一ノ→○一ツ
持戒破戒皆→Ⓑ亦
為ル↢七宝ノ所ト↟属スル→○為ニ↢七宝ノ↡所ル↠属セ
相順ジ→○相順シ
ズル→○ゼル
如→ⒷⒹ如[以]
如実ニ知ルト→○如実知トイフ
知 Ⓑになし
シ→○キ
レバ→○ル
レバ→○[リ]ヌレバ
方 Ⓑになし
ハ→○ヲシテ
スルナリ→○セリ
発サ→○発セ
トハ→○トイフハ
願作仏心 Ⓑになし
○是 右傍補記
者ハ→○者
発ス→○発スル
言ヘリ↧…欲スルガ↠…故ニト↥→○言[フ]ガ↧…欲フト↞…故ニト
受クルコト↠楽ヲ→○受楽
シ→○キ
凡→Ⓑ凡[夫]
所ノ↠集ムル→○所集ノ
有ラバ↣…不ルコト↢成仏セ↡→○有[ラ]バ↢…不ルコト↟成[ラ]↠仏ニ
不ト↢作仏セ↡→○不ト↠作[ラ]↠仏ニ
方 Ⓑになし
彼 ⒷⒹになし
未ダルニ↢尽ク成仏セ↡、→○未 ズ ダ↠尽キ、成仏セバ
ス→○セ[ム]ト
欲スルニ→○欲フ
→◎ⒷⒸ擿
歴→Ⓑ摩
クルガ→○キムガ
後ニシテ…而モ→○後ニ…而
ヲ
ダツヲ→○トスルヲ
巧 Ⓑになし
知リテ↢廻向ヲ↡成就スレバ→○知[リ]テ↢廻向成就ヲ↡
我心ヲモテ→○我ガ心
↧无キ↠安ズルコト↢衆生ヲ↡心ヲ↥→○↢无安衆生心ヲ↡
就→Ⓓ就[即能] ○即能と右傍補記
○ベシ
憐愍スル…心ナリ。→○憐愍シテ…、心
スルガ→○セルガ
↧…随↢順スル菩提門ニ↡法ノ…↥→○↢…随順菩提門ノ法…↡
外 左Ⓓホカニス
ヲ→○スルコトヲ
順ズルナリ↢菩提門ニ↡→○順ズル↢菩提ニ↡門ナリ
順ズルナリ↢菩提門ニ↡→○順菩提門ナリ
セリ→○ス
国土 Ⓑになし
言ヘリ↩「…故ナリト」↨→○言ク「…故ニト」
随↢順ズル菩提門ニ↡法ノ→○随順菩提門ノ法
○ス
恵→Ⓒ慧
省ミル→○省ク
ヲ→○ニ
応ジテ而モ→○応而
応シトイフ↠知ル→○応知トイフ
応シトイフ↠知ル→○応知トイフト
説ケリ↪遠↢離シテ我心ヲ↡不ルト↠貪↢着セ自身ニ↡、遠↧離スルト无キ↠安ズルコト↢衆生ヲ↡心ヲ↥、遠↩離スルトヲ供↢養シ恭↣敬スル自身ヲ↡心ヲ↨→○説キツ↢遠離我心不貪着自身、遠離无安衆生心、遠離供養恭敬自身心ヲ↡
遠↧離ス障フル↢菩提ヲ↡心ヲ↥→○遠↢離スルナリ障菩提心ヲ↡
○ルナリ
ヘ→○フ
悪→Ⓑ累→Ⓓ黒
ノ→○ハ
三種ノ不遠離ハ、…心ナリ→○三種ハ不↧遠↦離セ…心ヲ↥
提→Ⓑ薩
シト→○キ
恵 Ⓑになし
ケリ→○[キ]ツ
○ハ
スルヲ→○スレバ
ヲモテ→○ハ
得→○得シム
而→→Ⓑ而[能]
是遠↢離スルト我心ヲ↡、遠↢離スルト无安衆生心ヲ↡、遠↢離スルトナリ自供養心ヲ↡→○是ハ遠離我心、遠離无安衆生心、遠離自供養心ナリ
↧…随↢順シ五種ノ法門ニ↡…↥→○↢…随順五種ノ法門…↡
スト→○セリト
随↢順スルガ法門ニ↡→○随順ノ法門ナルガ
門 Ⓑになし
随ヒテ↠意ニ自在ニト→○随意自在トイフ
言フ↧…自在ナルヲ↥→○言フコヽロハ…自在ナル
ズレバ→○[ジ]テ
言フナリ↧…成就スルヲ↥→○言フコヽロハ…成就セルナリ
ス→○シタマフナリ
リテ→○ル
レバ→○[リ]テ
屋 Ⓑになし
→◎Ⓒ寓
ス→○セルナリ
釈シテ言ク、入第一門ト→○釈ニ言フ↢入第一門ト↡
為スヲ→○為ルヲ
仏→Ⓑ彼
○タテマツリテ
○ル
一心専念ニ→○一心ニ専念シ
作↣願シ生ゼムト↢…↡→○作願シテ生[ジ]テ↢…↡
智 Ⓑになし
国 Ⓑになし
専念ニ観↢察シ…↡→○専↢念シ観↣察シテ…↡
毘→◎略
得↧到リテ…受↦用スルコトヲ…↥→○得テ↠到[ル]コトヲ…受↢用ス…↡
受 Ⓑになし
門 ○抹消 ⒷⒹになし
遊戯シ、神通モテ→○遊↢戯シ神通ニ↡、
示シテト↢応化身ヲ↡→○示応化身トイフ
如ク↢…搏ツガ↟…所↠為ス不ルコト↠難カラ→○如シ↢…搏ツニ↠…所為不ルガ↟難ラ、
師→Ⓓ獅
スルガ→○ノ
而 Ⓑになし
観ズルニ↢衆生ヲ↡…无シ↢所有↡。→○観ジテ↣衆生ハ…无シト↢所有↡、
↠度スルヲ↢衆生ヲ↡→○↢度衆生ヲ↡
セリ→○スナリ
者謂応知 Ⓑになし
スル→○ニ
則→Ⓑ有
ス→○シタマヘリト
ス。→○シテ、
スルコトヲ→○シタマヘルコトヲ
↣速ニ得ルト↢阿耨多羅三藐三菩提ヲ↡→○↢速得阿耨多羅三藐三菩提ト↡
得ル→○得タマヘルガ
↢…作仏スルコトヲ↡→○↢…作[ルコトヲ]↟仏[ト]
統ベテ而→○統ネ而
、→○ノ
○イヘリ
念 Ⓑになし
提→Ⓑ提[是]
智→Ⓒ知
等→Ⓑ等[二]
言ヘル→○言フヤ
↤速ニ得ト↣成↢就スルコトヲ阿耨多羅三藐三菩提ヲ↡→○↢速得成就阿耨多羅三藐三菩提ト↡
言ヘリ→○言ハク
自リシテ↠仏而→○自仏ヲ而
自リシテ↢衆生↡而→○自衆生ヲ而
↢此ノ意ヲ↡→○、此ノ意
利他→Ⓑ他利
薩→Ⓑ提
的ニ→○的シク
至シテ↠心ヲ→○至心
欲シテ→○欲フテ
乃チ至ルマデセム↢十念ニ↡→○乃至十念セム
十念ノ念仏ヲモテ→○十念ス。念仏スレバ
得→○得ム
勉→Ⓓ免
所以ニ→○所以ニ
聚 Ⓑになし
来生→Ⓑ生来
セバ→○シテ
超↢出シ常倫諸地之行ヲ↡、現前ニ→○超↢出シ常倫ニ↡諸地之行現前シ、
↣超↢出スルヲ常倫諸地ノ行ヲ↡→○↧超↢出シ常倫ニ↡諸地ノ行ヲ↥
如シ↧人ノ…遊ブガ↦…↥→○如人ノ…遊ブ↢…↡
力 Ⓑになし
驢→◎Ⓒ
不→Ⓑ不[不]
従→Ⓒ徒
行→○行
ブニ→○[ブ]コト
愚→ⒷⒹ遇
憂→ⒷⒹ優
婆→Ⓑ波
彰ス↣信ヲ為スコトヲ↢…↡→○彰シテ↠信ヲ為ス↢…↡
○コト
表ス↢…事已ルコトヲ↡→○表シ↢…事ヲ↡已[リ]ヌ
生 ◎ⒷⒸになし
礼→Ⓑ水
示ス↢…理畢ルコトヲ↡→○示シ↢…理ヲ↡畢[リ]ヌ
ナレドモ→○ニ
○以下、 宗祖真筆の跋文
向 ○右傍補記