0047◎無量寿経優婆提舎願生偈註 巻上
*婆藪槃頭菩薩造 *曇鸞法師註解
一 釈名【浄土論大綱】
Ⅰ 分斉を判ず【本論分斉】
ⅰ 龍樹の判教を述ぶ
a 標列
【1】 ◎^▼つつしみて*龍樹菩薩の ¬*十住毘婆沙¼ (易行品・意) を案ずるに、 いはく、 ^「▲菩薩、 ▼阿毘跋致を求むるに、 二種の道あり。 一には↓難行道、 二には↓易行道なり」 と。
◎†謹0449[ミテ]案0345[ズルニ]↢龍樹菩薩ノ¬十住毘婆沙ヲ¼↡云ク、「菩薩求[ムル]ニ↢阿毘跋致ヲ↡有[リ]↢二種ノ道↡。一[ニ]者難行道、二[ニ]者易行道ナリ[ト]。
一 Ⅰ ⅰ b 随釈
イ 難行道
^▼「↑難行道」 とは、 いはく、 五濁の世、 *無仏の時において阿毘跋致を求むるを難となす。 この難にすなはち多途あり。 ほぼ*五三をいひて、 もつて義の意を示さん。 ^一には外道の*相善は*菩薩の法を乱る。 ^二には声聞は自利にして大慈悲を障ふ。 ^三には無顧の悪人は他の勝徳を破る。 ^四には*顛倒の善果はよく*梵行を壊つ。 ^五にはただこれ自力にして▼他力の持つなし。 ^かくのごとき等の事、 目に触るるにみなこれなり。 ▲たとへば陸路の歩行はすなはち苦しきがごとし。
難行道[ト]者、謂ク*於テ↣五濁之世於↢无仏ノ時↡求[ム]ルヲ↢阿毘跋致ヲ↡為ス↠難ト。此ノ難ニ†乃チ有リ↢多途↡。粗[ボ]言[ヒ]テ↢五三ヲ↡、以テ示†サム↢義ノ意ヲ↡。一[ニ]者外道[ノ]相 修*醤[ノ]反 善ハ乱ル↢菩薩ノ法ヲ↡。二[ニ]者声聞ハ自利ニシテ障フ↢大慈悲ヲ↡。三[ニ]者†无顧ノ悪人ハ†破ル↢他ノ勝徳ヲ↡。四[ニ]者顛倒ノ善果[ハ]能ク†壊ツ↢梵行ヲ↡。五[ニ]者唯是自力ニシテ无シ↢他力ノ持ツ↡。如キ↠斯ク[ノ]等ノ事、触ルヽニ↠目ニ皆是ナリ。譬[ヘ]バ如シ↢陸路ノ歩行ハ則[チ]苦シキガ↡。
一 Ⅰ ⅰ b ロ 易行道
^▼「↑易行道」 とは、 いはく、 ▼ただ*信仏の因縁をもつて浄土に生ぜんと願ずれば、 仏願力に乗じて、 すなはちかの清浄の土に往生を得、 *仏力住持して、 ▼すなはち▼大乗*正定の聚に入る。 正定はすなはちこれ阿毘跋致なり。 ▲たとへば水路に0048船に乗ずればすなはち楽しきがごとし。
易行道[ト]者、謂ク但以[テ]↢信仏ノ因縁ヲ↡願ズ[レバ]↠生[ゼム]ト↢浄土ニ↡、乗ジテ↢仏願力ニ↡、便チ得↣往↢生[スルコト]ヲ彼ノ清浄ノ土ニ↡、仏力住持シテ、即チ入ル↢大乗正定之聚ニ↡。正定ハ即チ是阿毘跋致ナリ。譬[ヘ]バ如シ[ト]↢水路ニ乗ズレバ↠船ニ則チ楽[シキ]ガ↡」。
一 Ⅰ ⅱ 正しく今論の分斉を断ず
^◆この ¬↓無量寿経↓優婆提舎¼ (*浄土論) は、 けだし*上衍の極致、 *不退の風航なるものなり。
此ノ¬无量寿経*優*波提舎ハ¼蓋シ上†衍カン之極*致、不退之*風航ナルフネノホナリ者也。
一 Ⅱ 正しく題名を解す
ⅰ 義意を弁ず【興起体製】
a 所依の宗体を顕す
【2】 ^◆「↑無量寿」 はこれ安楽浄土の如来の別号なり。 *釈迦牟尼仏、 *王舎城および*舎衛国にましまして、 大衆のなかにおいて無量寿仏の荘厳功徳を説きたまへり。 ▼すなはち仏 (*阿弥陀仏) の名号をもつて*経の体となす。
「†无量寿ハ」是安楽浄土ノ如来ノ別†号ナリ。釈迦牟尼仏在シテ↢王舎城及[ビ]舎衛国ニ↡、†於0450テ↢大0346衆之中ニ↡説キタマヘリ↢无量寿仏ノ荘厳功徳ヲ↡。即[チ]以テ↢仏ノ名号ヲ↡為ス↢経ノ体ト↡。
一 Ⅱ ⅰ b 能依の体製を弁ず
イ 総弁
^◆後の聖者婆藪槃頭菩薩 (*天親)、 如来*大悲の教を*服膺して▼経に傍へて願生の偈を作れり。 また長行を造りてかさねて釈す。
後ノ聖者婆*数槃頭菩薩、*服↢膺シテ 一升[ノ]反 如来大悲之教ヲ↡傍ヘテ↠経ニ作レリ↢願生ノ偈ヲ↡。復造[リ]テ↢長行ヲ↡重テ†釈ス。
一 Ⅱ ⅰ b ロ 別示
(一)優婆提舎を釈して総じて一部の体製を顕す
(Ⅰ)梵名を標す
^*梵に 「↑優婆提舎」 といふは、 この間 (中国) に正名あひ訳せるなし。 もしは*一隅を挙げて名づけて論となすべし。 正名訳せることなき所以は、 この間に本仏ましまさざるをもつてのゆゑなり。 この間の書のごときは、 *孔子につきて 「経」 と称す。 余人の制作みな名づけて 「子」 となす。 *国史・国紀の徒*各別の体例なり。
梵ニ言フハ↢「優婆提舎ト」↡此ノ間ニ无シ↢正名相訳セル↡。若シ[ハ]挙[ゲ]テ↢一隅ヲ↡可シ↢名[ケ]テ為ス↟論ト。所↣以无キ↢正名訳セルコト↡者、以[テ]ノ↢此ノ間ニ本无ルヲ↟仏故ナリ。如キハ↢此ノ間ノ書[ノ]↡、就キ↢孔子ニ↡而称ス↠経ト。余人ノ制作皆名[ケ]テ為ス↠子ト。国史・国紀之徒各別ノ†体例ナリ。
^しかるに仏の所説の十二部経のなかに論議経あり、 「優婆提舎」 と名づく。 もしまた仏のもろもろの弟子、 仏の経教を解して仏義と相応すれば、 仏また許して 「優婆提舎」 と名づく。 仏法の相に入るをもつてのゆゑなり。
然ルニ仏ノ所説[ノ]十二部経ノ中ニ有リ↢論議経↡、名ク↢優*波提舎ト↡。若シ復仏ノ諸ノ弟子解[シ]テ↢仏ノ経教ヲ↡与↢仏義↡†相応スレバ者、仏亦許シテ名ク↢優*波提舎ト↡。以[テ]ノ↠入[ル]ヲ↢仏法ノ相ニ↡故†ナリ。
一 Ⅱ ⅰ b ロ (一)(Ⅱ)訳名を弁ず
^この間に論といふは、 ただこれ論議のみ。 あにまさしくかの名を訳することを得んや。 また女人を、 子において母と称し、 兄において0049妹といふがごとし。 かくのごとき等の事、 みな義に随ひて名別なり。 もしただ女の名をもつて汎く母妹を談ずるに、 すなはち*女の大体を失せざれども、 あに尊卑の義を含まんや。 ここにいふところの論もまたかくのごとし。
此ノ間ニ‡云フ[ハ]↠論ト、†直是論†議†而已。豈ニ得ム↣正シク訳スルコトヲ↢彼ノ名ヲ↡耶。又如シ↢女人ヲ於テ↠子ニ称シ↠母ト、於テ↠兄ニ云[フ]ガ↟妹ト。如キ↠是[ク]ノ等ノ事、皆随[ヒ]テ↠義ニ名別ナリ。若[シ]但以テ↢女ノ名ヲ↡汎ク談ズ[ルニ]↢母妹ヲ↡、乃[チ]†不レドモ↠失セ↢女*之大体ヲ↡、豈ニ含[マ]ム↢尊卑之義ヲ↡乎。†此ニ所ノ↠云フ論[モ]亦復如シ↠是[ク]ノ、
一 Ⅱ ⅰ b ロ (一)(Ⅲ)題の意を結す
^ここをもつて仍 因なり りて*梵音を存じて優婆提舎といふ。
*是ヲ以テ†仍 因[ナリ]而[ノ]音 存ジテ↢梵音ヲ↡曰フ‡↢優*波提舎ト↡。
一 Ⅱ ⅰ b ロ (二)二分の大意を弁じて別して偈総題を為すを審す
(Ⅰ)大段
【3】 ^この ¬論¼ (浄土論) の始終におほよそ↓二重あり。 一にはこれ↓総説分、 二にはこれ↓解義分なり。
此ノ¬論ノ¼始終ニ凡ソ有リ↢二重↡。一ニハ是総説分、二ニハ是解義分ナリ。
一 Ⅱ ⅰ b ロ (二)(Ⅱ)文処を指す
^↑総説分とは、 前の五言の偈尽くるまでこれなり。 ↑解義分とは、 「▲論じて曰はく」 以下長行尽くるまでこれなり。
総説分[ト]者前ノ五言[ノ]偈尽[ク]ルマデ是ナリ、解義分[ト]者「論曰」已下長行尽[ク]ルマデ是ナリ。
一 Ⅱ ⅰ b ロ (二)(Ⅲ)所以を弁ず
^↑二重となす所以は二義あり。 偈はもつて経を誦す。 総摂せんがためのゆゑなり。 論はもつて偈を釈す。 解義のためのゆゑなり。
所↣以†為ス↢二重ト↡者有リ↢二義↡。偈ハ†以テ誦ス↠経ヲ。為ノ↢総摂セムガ↡故ナリ。論ハ†以テ釈ス↠偈ヲ。為ノ↢解義ノ↡故ナリ。
一 Ⅱ ⅱ 文相を解す
a 題号を釈す【題号】
【4】 ^「▲無量寿」 とは無量寿如来をいふ。 寿命長遠にして思量すべからず。 「▲経」 とは常なり。 いふこころは安楽国土の仏および菩薩の清浄荘厳功徳と国土の清浄荘厳功徳とは、 よく衆生のために*大饒益をなす。 つねに世に行はるべきがゆゑに名づけて経といふ。 「▲優婆提舎」 はこれ仏の論議経の名なり。
「無量寿」[ト]者、†言フ↢无量寿如来ヲ↡。寿命長遠ニシテ不ル↠可[カ]ラ↢思量[ス]↡也。「経[ト]」者常也。言フココロハ0347安楽0451国土ノ仏及[ビ]菩薩[ノ]清浄荘厳功徳†ト国土[ノ]清浄荘厳功徳[トハ]、能ク与ニ↢衆生ノ↡作ス↢大饒益ヲ↡。可キガ↣常ニ†行ハル↢于世ニ↡故ニ名[ケ]テ曰フ↠経ト。「*優*波提舎ハ」是仏ノ論議経ノ名ナリ。
^「▲願」 はこれ*欲楽の義なり。 「▲生」 は天親菩薩、 かの安楽浄土の如来の浄華のなかに生ぜんと願ずる生なり。 ゆゑに願生といふ。 「▲偈」 はこれ句数の義、 五言0050の句をもつて略して仏経を誦するがゆゑに名づけて偈となす。
「願ハ」是欲楽ノ義ナリ。「生」者天親菩薩†願ズルノ↠生ゼムト↢彼ノ安楽浄土ノ如来ノ浄花ノ中ニ↡生ナリ。故ニ曰フ↢願生ト↡。「偈ハ」是句数ノ義、以[テ]↢五言ノ句ヲ↡略シテ誦スルガ↢仏経ヲ↡故ニ名[ケ]テ為ス↠偈ト。
一 Ⅱ ⅱ b 撰号を釈す
^「▲婆藪」 を訳して 「天」 といふ。 「▲槃頭」 を訳して 「親」 といふ。 この人を*天親と字く。 *事は ¬*付法蔵経¼ にあり。
訳シテ↢「婆†数ヲ」↡云フ↠天ト。訳シテ↢「槃頭ヲ」↡言フ↠親ト。此ノ人ヲ字ク↢天親ト↡。事[ハ]在リ↢¬付法蔵経ニ¼↡。
^「▲菩薩」 とは、 もしつぶさに梵音を存ぜば 「*菩提薩埵」 といふべし。 「菩提」 は、 これ仏道の名なり。 「薩埵」 は、 あるいは衆生といひ、 あるいは勇健といふ。 仏道を求むる衆生、 *勇猛の健志あるがゆゑに菩提薩埵と名づく。 いまただ菩薩といふは訳者 (*菩提流支) の略せるのみ。 「▲造」 はまた作なり。 ^人によりて法を重んずることを庶ふがゆゑに某造といふ。
「菩薩[ト]」者、若シ具ニ存ゼバ↢梵音ヲ↡応シ↠云フ↢菩提薩埵ト↡。菩提*者是仏道ノ名ナリ。薩埵ハ或ハ云†ヒ↢衆生ト↡、或ハ云フ↢勇*揵ト↡。求[ム]ル↢仏道ヲ↡衆生有ルガ↢勇猛ノ健志↡故ニ名ク↢菩提薩埵ト↡。今但言[フハ]↢菩薩ト↡訳者ノ略セル†耳。「造ハ」亦作也。庶フガ↢因テ↠人ニ重[ズルコトヲ]↟法ヲ故ニ云フ↢†某造ト↡。
^このゆゑに 「無量寿経優婆提舎願生偈婆藪槃頭菩薩造」 といへり。 ¬論¼ (浄土論) の名目を解しをはりぬ。
是ノ故ニ言ヘリ↢「无量寿経優*波提舎願生偈婆*数槃頭菩薩造ト」↡。解シ↢¬論ノ¼名目ヲ↡竟[リ]ヌ‡。
二 釈文
Ⅰ 総説分を釈す【総説分】
ⅰ 章を分つ
【5】 ^▲偈のなかを分ちて五念門となす。 ▲下の長行に釈するところのごとし。
†偈ノ中†ヲ分[チ]テ為ス↢五念門ト↡。如シ↢下ノ長行ニ所ノ↟釈スル。
・三念門
^第一行の四句にあひ含みて三念門あり。 ▲上の三句はこれ↓礼拝・↓讃嘆門なり。 ▲下の一句はこれ↓作願門なり。
第一行ノ四句ニ相含[ミ]テ有リ↢三念門↡。上ノ三句ハ是礼拝・讃嘆門ナリ。下ノ一句ハ是作願門ナリ。
・成上起下
^▲第二行は論主 (天親) みづから、 「われ仏経 (浄土三部経) によりて ¬論¼ を造りて仏教と相応す、 服するところ*宗ある」 ことを述ぶ。 なんがゆゑぞいふとならば、 これ優婆提舎の名を成ぜんがためのゆゑなり。 またこれ上の三門を成じて下の二門を起す。 ゆゑにこれに次いで説けり。
第二行ハ論主自[ラ]述ブ↧我依[リ]テ↢仏経ニ↡造[リ]テ↠¬論ヲ¼与↢仏教↡*相応ス、所↠服スル有ルコトヲ↞宗。何ガ故ゾ云[フ]トナラバ、此為ノ↠成ゼム[ガ]↢優*波提舎ノ名ヲ↡故ナリ。亦是成ジテ↢上ノ三門ヲ↡起ス↢下ノ二門ヲ↡。†所以ニ†次[ギ]テ↠之[ニ]説ケリ。
・観察門
^▲第三行よ0051り二十一行尽くるまで、 これ↓観察門なり。
*従[リ]↢第三行↡尽[クル]マデ↢廿*一行↡是観察門ナリ。
・回向門
^▲末後の一行はこれ↓回向門なり。 偈の章門を分ちをはりぬ。
†末後ノ一行ハ是廻向門ナリ。分チ↢偈ノ章門ヲ↡竟[リ]ヌ。
二 Ⅰ ⅱ 文を釈す
a 随釈して法を顕す
イ 三念門を相含む
(一)牒偈
【6】 ^▲↓世尊↓我一心 ↓帰命尽十方 無礙光如来 ↓願生安楽国
0452*世0348尊我一心ニ 帰↢命シ[タテマツリ]テ尽十方 无光如来ニ↡ 願ズ‡↠生[ゼム]ト↢安楽国ニ↡
二 Ⅰ ⅱ a イ (二)釈義
(Ⅰ)第一句を解す
(ⅰ)世尊を釈す
(a)名義
^「↑世尊」 とは諸仏の通号なり。 智を論ずればすなはち義として達せざるはなし。 断を語ればすなはち習気余りなし。 *智断具足してよく世間を利し、 世のために尊重せらるるゆゑに世尊といふ。
「*世尊[ト]」者諸仏ノ通†号ナリ。論ズレバ↠智ヲ則[チ]義トシテ无シ↠不[ル]コト↠達[セ]。語†レバ↠断ヲ則[チ]習気无シ↠余[リ]。智断具足シテ能ク利†シ↢世間ヲ↡、為ニ↠世ノ尊重[セ]ラルヽ故ニ曰フ↢世尊ト↡。
二 Ⅰ ⅱ a イ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)通別
^ここにいふ意は、 釈迦如来に帰したてまつるなり。 なにをもつてか知ることを得となれば、 下の句に 「▲我依修多羅」 といへばなり。 天親菩薩、 釈迦如来の像法のなかにありて釈迦如来の経教に順ず。 ゆゑに生ぜんと願ず。 生ぜんと願ずるに宗あり。 ゆゑにこの言は釈迦に帰したてまつると知るなり。 もしこの意を謂ふに、 あまねく諸仏に告ぐることまた嫌ふことなし。
†此ニ言フ意ハ帰シタテマツル[ナリ]↢釈迦如来ニ↡。何ヲ以テカ得トナレバ↠知[ルコトヲ]、下ノ句ニ言[ヘ]‡バナリ↢「我依修多羅ト」↡。天親菩薩†在リテ↢釈迦如来ノ像法之中ニ↡、順ズ↢釈迦如来ノ経教ニ↡。†所以ニ願ズ↠生[ゼム]ト。†願ズルニ↠生ゼムト有リ↠宗。故ニ†知ルナリ↣此ノ言ハ†帰シタテマツルト↢于釈迦ニ↡。若シ謂フニ↢此ノ意ヲ↡、遍ク告[グル]コト↢諸仏ニ↡亦復无†シ↠嫌[フ]コト。
二 Ⅰ ⅱ a イ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(c)告意
^▼それ菩薩の仏に帰することは、 孝子の父母に帰し、 忠臣の君后に帰して、 *動静おのれにあらず、 *出没かならず由あるがごとし。 *恩を知りて徳を報ず、 理よろしく先づ*啓すべし。 ^▼また所願軽からず。 もし如来、 威神を加したまはずは、 まさになにをもつてか達せんとする。 *神力を加することを乞ふ。 ゆゑに仰ぎて告ぐるなり。
夫レ菩薩†ノ帰ス[ルコトハ]↠仏ニ、如シ↧孝子之帰シ↢父母ニ↡、忠臣之帰シテ↢君后ニ↡、動静非ズ↠†己ニ、出没必ズ†由アルガ↥。知リテ↠恩ヲ報ズ↠徳ヲ、理宜ベ シクシ ↢先ヅ啓ス↡。又所願不↠軽[カ]ラ、若シ如来不ハ↠加シタマハ↢威神ヲ↡、将ス ニル↢何ヲ以テカ*達セムト↡。乞フ↠加[スル]コトヲ↢神力ヲ↡。†所以ニ仰[ギ]テ告[グル]ナリ‡。
二 Ⅰ ⅱ a イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)我一心を釈す
(a)総釈【論主自督】
^◆「↑↓我一心」 とは、 天親菩薩の*自督の詞なり。
「我一心[ト]」者天親菩薩[ノ]自†督之詞ナリ。
二 Ⅰ ⅱ a イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)別釈
(イ)一心
^◆いふここ0052ろは、 無礙光如来を念じて安楽に生ぜんと願ず。 心々相続して他の想*間雑することなしとなり。
言フココロハ念ジ‡テ↢无光如来ヲ↡†願ズ↠生ゼムト↢安楽ニ↡。心心相続シテ无[シ]トナリ↢他ノ想間雑スルコト↡。
二 Ⅰ ⅱ a イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)(ロ)我
^▼問ひていはく、 仏法のなかには我なし。 このなかになにをもつてか我と称する。 ^答へていはく、 「↑我」 といふに三の根本あり。 一にはこれ*邪見語、 二にはこれ*自大語、 三にはこれ*流布語なり。 いま 「我」 といふは、 天親菩薩の自指の言にして、 流布語を用ゐる。 邪見と自大とにはあらず。
問[ヒテ]曰[ク]、仏法ノ中ニハ无シ↠我。此ノ中ニ*何ヲ以[テ]カ称スル‡↠我ト。答[ヘテ]曰[ク]、言フニ↠我ト有[リ]↢三ノ根本↡。一[ニ]ハ是邪見語、二[ニ]ハ是自大語、三[ニ]ハ是流布語ナリ。今言[フ]↠我ト者天親菩薩[ノ]†自指之言ニシテ、用[ヰル]↢流布語ヲ↡。非†ズ↢邪見ト自大トニ[ハ]↡也。
二 Ⅰ ⅱ a イ (二)(Ⅱ)第二三句を解す
(ⅰ)総示
^▼「↑帰命尽十方無礙光如来」 とは、 「↓帰命」 はすなはちこれ礼拝門なり。 「↓尽十方無礙光如来」 はすなはちこれ讃嘆門なり。
「帰命尽十方无光如来[ト]」者、帰命ハ即[チ]是礼拝門ナリ。尽十方无光如来ハ即[チ]是讃嘆門ナリ。
二 Ⅰ ⅱ a イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)別釈
(a)【礼拝門】
^◆なにをもつてか 「↑帰命」 はこれ↑礼拝なりと知るとなれば、 ◆龍樹菩薩の、 阿弥陀如来の讃 (易行品) を造れるなかに、 あるいは 「▲稽首礼」 といひ、 あるいは 「▲我帰命」 といひ、 あるいは 「▲帰命礼」 といへり。 この ¬論¼ (浄土論) の長行のなかにまた 「▲五念門を修す」 といへり。 五念門のなかに礼拝はこれ一なり。 天親菩薩すでに往生を願ず。 あに礼せざるべけんや。 ゆゑに知りぬ、 帰命はすなはちこれ礼拝なり。
何ヲ以[テ]カ知[ル]トナレバ↢帰命ハ是礼拝ナリト↡、龍樹菩薩ノ造レル↢阿弥陀如来ノ讃ヲ↡中0453ニ、或0349[イハ]言ヒ↢「稽首礼ト」↡、或[イハ]言[ヒ]↢「我帰命ト」↡、或[イハ]言ヘリ↢「帰命礼[ト]」↡。此[ノ]¬論ノ¼長行ノ中ニ亦言[ヘリ]↠「修[ス]ト↢五念門ヲ↡」。五念門ノ中ニ礼拝[ハ]是一ナリ。天親菩薩既ニ願ズ↢往生ヲ↡。豈ニ容ケムヤ↠不[ル]↠礼[セ]。故ニ知[リ]ヌ帰命ハ即[チ]是礼拝ナリ[ト]。
^◆しかるに礼拝はただこれ*恭敬にして、 かならずしも帰命にあらず。 帰命はかならずこれ礼拝なり。 もしこれをもつて推せば、 帰命を重しとなす。 偈は*己心を申ぶ。 よろ0053しく帰命といふべし。 論は偈の義を解す。 汎く礼拝を談ず。 *彼此あひ成じて義においていよいよ顕れたり。
*然[ル]ニ礼拝ハ但是恭敬†ニシテ、不ズ↢必ズ[シモ]帰命ニ↡。帰命ハ必[ズ]是礼拝ナリ。若[シ]*以テ↠此ヲ†推セバ、帰命ヲ為[ス]↠重[シ]ト。偈ハ申ブ↢己心ヲ↡。宜ベシクシ ↠言フ↢帰命ト↡。論ハ解ス↢偈ノ義ヲ↡。汎ク談ズ↢礼拝ヲ↡。彼此相成ジテ、於テ↠義ニ弥顕ハレタリ。
二 Ⅰ ⅱ a イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)【讃嘆門】
(イ)正証
^◆なにをもつてか 「↑▼尽十方無礙光如来」 はこれ↑讃嘆門なりと知るとならば、 ◆下の長行のなかに、 「▲いかんが讃嘆門。 いはく、 かの如来の名を称するに、 かの如来の光明智相のごとく、 かの*名義のごとく、 如実に修行して相応せんと欲するがゆゑなり」 といへり。
何ヲ以[テ]カ知ルトナラバ↢尽十方无光如来[ハ]是讃嘆門ナリト↡、下ノ長行ノ中ニ†言ヘリ↧「云何ガ讃嘆門、謂ク称†スルニ↢彼ノ如来ノ名ヲ↡、如ク↢彼ノ如来ノ光明智相ノ↡、如ク↢彼ノ名義ノ↡、†欲スルガ↢†如実ニ修行シ[テ]相応セムト↡故ナリト」↥。
^▼*舎衛国所説の ¬無量寿経¼ (*小経) によらば、 仏、 阿弥陀如来の名号を解したまはく、 「▲なんがゆゑぞ阿弥陀と号する。 ◆かの仏の光明無量にして、 十方国を照らしたまふに障礙するところなし。 このゆゑに阿弥陀と号す。 ◆またかの仏の寿命およびその人民も、 無量無辺阿僧祇なり。 ゆゑに阿弥陀と名づく」 と。
依ラバ↢舎衛国所説ノ¬无量寿経ニ¼↡、仏解シタマハク↢阿弥陀如来[ノ]名号ヲ↡、「何ガ故ゾ†号[ス]ル↢阿弥陀ト↡。彼ノ仏ノ光明无量ニシテ、照†スニ↢十方国ヲ↡无シ↠所↢障[スル]↡。是ノ故ニ号†ス↢阿弥陀ト↡。又彼ノ仏ノ寿命及ビ其ノ人民‡モ、无量无辺阿僧祇ナリ。故ニ名†クト↢阿弥陀ト↡」。
二 Ⅰ ⅱ a イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)料簡
[一]問
^▼問ひていはく、 もし無礙光如来の光明無量にして、 十方国土を照らしたまふに障礙するところなしといはば、 この間の衆生、 なにをもつてか光照を蒙らざる。 光の照らさざるところあらば、 あに礙あるにあらずや。
問[ヒテ]曰[ク]、若[シ]言[ハバ]↧无光如来ノ光明无量ニシテ、照[シタ]マフニ↢十方国土ヲ↡无[シ]ト↞所↢障[スル]↡者、此ノ間ノ衆生何ヲ以[テ]カ不†ル↠蒙ラ↢光照ヲ↡。光[ノ]有ラバ↠所↠不[ル]↠照[サ]、豈ニ非ズ↠有[ルニ]↠耶。
二 Ⅰ ⅱ a イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[二]答
[Ⅰ]正しく所疑を答ふ
^◆答へていはく、 礙は衆生に属す。 光の礙にはあらず。 ^▼たとへば日光は四天下にあまねけれども、 *盲者は見ざるがごとし。 日光のあまねからざるにはあらず。 また▼*密雲の洪きに0054 潅なり げども、 *頑石の潤はざるがごとし。 雨の洽 なり さざるにはあらず。
答[ヘテ]曰[ク]、ハ属ス↢衆生ニ↡。非[ズ]↢光ノニハ↡也。譬[ヘバ]如シ↧日光[ハ]周ケレ↢四天下ニ↡而盲者[ハ]不ルガ↞見。非†ズ↢日光ノ不ルニハ↟周[カラ]也。亦如シ↢密雲ノ洪ニゲ 潅[ナリ]之句[ノ]反 而*頑石[ノ]不ルガ↟潤†ハ。非[ザ]ル↢雨ノ不ルニハ↟*洽†サ *[ナリ]下*恰[ノ]反 也。
二 Ⅰ ⅱ a イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅱ]重ねて二蔵を弁ず
^▼もし一仏、 三千大千世界を主領すといはば、 これ声聞論のなかの説なり。 もし諸仏あまねく十方無量無辺世界を領すといはば、 これ大乗論のなかの説なり。
若[シ]言†ハバ↣一仏*主↢領スト三千大千世界ヲ↡、是声0454聞論0350ノ中ノ説ナリ。若シ言†ハバ↣諸仏遍ク領[スト]↢十方无量无辺世界ヲ↡、是大乗論ノ中ノ説ナリ。
二 Ⅰ ⅱ a イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ハ)結成
^▼天親菩薩、 いま、 「尽十方無礙光如来」 といふは、 すなはちこれかの如来の名により、 かの如来の光明智相のごとく讃嘆するなり。 ゆゑに知りぬ、 この句はこれ讃嘆門なり。
天親菩薩、今†言フハ↢「尽十方无光如来ト」↡、即[チ]是依†リ↢彼ノ如来ノ名[ニ]↡、如ク↢彼ノ如来ノ光明智相ノ↡讃嘆†スルナリ。故ニ知[リ]ヌ此ノ句ハ是讃嘆門ナリ[ト]。
二 Ⅰ ⅱ a イ (二)(Ⅲ)第四句を解す
(ⅰ)正釈【作願門】
^◆「↑願生安楽国」 とは、 この一句はこれ↑作願門なり。 天親菩薩の帰命の意なり。 ▼それ ▽「安楽」 の義は、 つぶさに下の観察門のなかにあり。
「願生安楽国[ト]」者、此ノ一句ハ是作願門ナリ。天親菩薩ノ帰命之意也。其安楽ノ義ハ具ニ在リ↢下ノ観察門ノ中ニ↡。
二 Ⅰ ⅱ a イ (二)(Ⅲ)(ⅱ)問答【願生問答】
(a)生の義を料簡す
(イ)問
^▼問ひていはく、 *大乗経論のなかに、 処々に 「衆生は*畢竟無生にして虚空のごとし」 と説けり。 いかんが天親菩薩 「願生」 といふや。
問[ヒテ]曰[ク]、大乗経論ノ中ニ、処処ニ説ケリ↣衆生ハ畢竟无生ニシテ如[シ]ト↢虚空ノ↡。云何†ガ天親菩薩†言フ↢願生ト↡耶。
二 Ⅰ ⅱ a イ (二)(Ⅲ)(ⅱ)(a)(ロ)答
^◆答へていはく、 「衆生は無生にして虚空のごとし」 と説くに二種あり。
答[ヘテ]曰[ク]、説クニ↣衆生[ハ]无生ニシテ如[シト]↢虚空ノ↡有リ↢二種↡。
^◆一には、 凡夫の謂ふところのごとき実の衆生、 凡夫の見るところのごとき実の生死は、 この所見の事、 畢竟じて所有なきこと、 *亀毛のごとく、 虚空のごとし。
一[ニ]者†如キ↢凡夫ノ所ノ↟謂フ実ノ衆生、†如キ↢凡夫ノ所ノ↟見ル実ノ生死ハ、此ノ所見ノ事畢竟ジテ无キコト↢†所有↡如†ク↢亀毛ノ↡、如シ↢虚空ノ↡
^◆二には、 いはく、 諸法は因縁生のゆゑにすなはちこれ不生なり。 所有なきこと虚空のごとし。 天親菩薩の0055願ずるところの生は、 これ因縁の義なり。 因縁の義のゆゑに仮に生と名づく。 凡夫の、 実の衆生、 実の生死ありと謂ふがごときにはあらず。
。二[ニ]者謂ク諸法ハ因縁生ノ故ニ即[チ]是不生ナリ。无キコト↢†所有↡如シ↢虚空ノ↡。天親菩薩ノ所ノ↠願ズル生者、是因縁ノ義ナリ。因縁ノ義ノ故ニ仮ニ名ク↠生ト。非[ザ]ル↠如キニハ↢凡夫ノ謂フガ↟有[リ]ト↢実ノ衆生実ノ生死↡也。
二 Ⅰ ⅱ a イ (二)(Ⅲ)(ⅱ)(b)往の義を料簡す
(イ)問
^▼問ひていはく、 なんの義によりてか往生と説く。
問[ヒテ]曰[ク]、依[リ]テカ↢何ノ義ニ↡説ク‡↢往生ト↡。
二 Ⅰ ⅱ a イ (二)(Ⅲ)(ⅱ)(b)(ロ)答
^◆答へていはく、 この間の*仮名人のなかにおいて五念門を修するに、 前念は後念のために因となる。 穢土の仮名人と浄土の仮名人と、 決定して一なるを得ず、 決定して異なるを得ず。 前心後心またかくのごとし。 なにをもつてのゆゑに。 もし一ならばすなはち因果なく、 もし異ならばすなはち相続にあらざればなり。 この義は*一異の門を観ずる論のなかに*委曲なり。
答[ヘテ]曰[ク]、於テ↢此ノ間ノ仮名人ノ中ニ↡修スルニ↢五念門ヲ↡、前念[ハ]†与ニ↢後念ノ↡作ル↠因ト。穢土ノ仮名人†ト浄土ノ仮名人[ト]、不↠得↢決定シテ一[ナル]ヲ↡。不↠得↢決定シテ異[ナル]ヲ↡。前心後心*亦如シ↠是[ク]ノ。何ヲ以[テ]ノ故ニ。若シ一ナラバ則[チ]无†ク↢因果↡、若シ異ナラバ則[チ]非†ザレバナリ↢相続ニ↡。是ノ義ハ観ズ[ル]↢一異ノ門ヲ↡論ノ中ニ委曲ナリ。
^◆第一行の三念門を釈しをはりぬ。
釈シ↢第一行ノ三念門ヲ↡竟[リ]ヌ。
二 Ⅰ ⅱ a ロ 所服有宗を述ぶ【成上起下偈】
(一)出科
【7】 ^▼次は 「優婆提舎」 の名を成じ、 また上を成じて下を起す偈なり。
次†ハ成†ジ↢*優*波提舎ノ名ヲ↡、又成ジテ↠上[ヲ]†起ス↠下ヲ偈ナリ。
二 Ⅰ ⅱ a ロ (二)牒偈
^▲↓我依修多羅 ↓真実功徳相 ↓説願偈総持 与仏教相応
0455我依0351[リ]テ↢修多羅[ノ] 真実功徳ノ相ニ↡ 説[キ]テ↢願偈ヲ↡総持シ‡ 与↢仏教↡相応†セム
二 Ⅰ ⅱ a ロ (三)釈義
(Ⅰ)総じて科意を明す
(ⅰ)名を成ずるを顕す
^▼この一行、 いかんが 「優婆提舎」 の名を成じ、 いかんが↓*上の三門を成じ*下の二門を起す。 偈に 「↑我依修多羅 与仏教相応」 といふ。 「↓修多羅」 はこれ仏経の名なり。 われ仏経の義を論じて、 経と相応す。 仏法の相に入るをもつてのゆゑに優婆提舎と名づく。 名、 成じをはりぬ。
此ノ一行云何ガ成ジ↢優*波提舎ノ名ヲ↡、云何[ガ]成ジ↢上ノ三門ヲ↡起ス‡↢下ノ二門ヲ↡。偈ニ†言フ↢「我依修多羅、与仏教相応ト」↡。「修多羅ハ」是仏経ノ名ナリ。我論ジテ↢仏経ノ義ヲ↡、与↠経相応†ス、以[テ]ノ↠入ルヲ↢仏法ノ相ニ↡*故ニ†名ク↢*憂波提舎ト↡。名成ジ竟[リ]ヌ。
二 Ⅰ ⅱ a ロ (三)(Ⅰ)(ⅱ)成上起下を審にす
^◆↑上の三門を成じて下の二門を起すとは、 ▼いづれのところにか依り、 なんのゆゑにか依り、 いかんが依る。 ^いづれの0056ところにか依るとは、 修多羅に依る。 なんのゆゑにか依るとは、 如来はすなはち真実功徳の相なるをもつてのゆゑなり。 いかんが依るとは、 五念門を修して相応するがゆゑなり。 上を成じ下を起しをはりぬ。
成ジテ↢上ノ三門ヲ↡起ス[トハ]↢下ノ二門ヲ↡、何[レ]ノ所ニカ依†リ、何ノ故ニカ依†リ、云何ガ依ル‡。†何レノ所ニカ依[ルト]者、依ル↢修多羅ニ↡。†何ノ故ニカ依ルト者、以[テ]ノ↢如来ハ即[チ]真実功徳ノ相ナルヲ↡故†ナリ。†云何ガ依ルト者、修シテ↢五念門ヲ↡相応スルガ故†ナリ。成ジ‡↠上[ヲ]起†シ↠下ヲ竟[リ]ヌ。
二 Ⅰ ⅱ a ロ (三)(Ⅱ)別して文句を解す
(ⅰ)第一句を釈す
^▼「↑修多羅」 とは、 十二部経のなかの直説のものを修多羅と名づく。 いはく、 *四阿含・三蔵等、 三蔵のほかの大乗の諸経もまた修多羅と名づく。 このなかに 「依修多羅」 といふは、 これ三蔵のほかの大乗の修多羅なり。 阿含等の経にはあらず。
修多羅[ト]者、十二部経ノ中ノ直説ノ者ヲ名ク↢修多羅ト↡。謂ク四阿含・三蔵等ナリ。三蔵ノ外ノ大乗ノ諸経†モ亦名ク↢修多羅ト↡。此ノ中ニ言フ↢「依修多羅ト」↡者、是三蔵ノ外ノ大乗ノ修多羅ナリ。非†ズ↢阿含等ノ経ニハ↡也。
二 Ⅰ ⅱ a ロ (三)(Ⅱ)(ⅱ)第二句を釈す【真実功徳釈】
(a)不実功徳
^◆「↑真実功徳相」 とは、 ▼二種の功徳あり。 一には有漏の心より生じて法性に順ぜず。 いはゆる凡夫人天の諸善、 ▼人天の果報、 もしは因もしは果、 みなこれ顛倒、 みなこれ虚偽なり。 このゆゑに不実の功徳と名づく。
「真実功徳*相[ト]」者、有リ↢二種ノ功徳↡。一[ニ]者従[リ]↢有漏ノ心↡生ジテ不↠順ゼ↢法性ニ↡。†所謂ル凡夫人天ノ諸善、人天ノ果報、若[シ]ハ因若[シ]ハ果、皆是顛倒、皆是虚偽ナリ。是ノ故ニ名ク↢不実ノ功徳ト↡。
二 Ⅰ ⅱ a ロ (三)(Ⅱ)(ⅱ)(b)真実功徳
^◆二には菩薩の智慧清浄の業より起りて*仏事を荘厳す。 法性によりて清浄の相に入る。 この法顛倒せず、 虚偽ならず。 名づけて▼真実功徳となす。 いかんが顛倒せざる。 法性によりて二諦に順ずるがゆゑなり。 いかんが虚偽ならざる。 衆生を摂して*畢竟浄に入らしむるがゆゑなり。
二[ニ]者従[リ]↢菩薩[ノ]智†恵清浄ノ業↡起リテ荘↢厳ス仏事ヲ↡。依[リ]テ↢法性ニ↡入ル↢清浄ノ相ニ↡。是ノ法不↢顛倒セ↡、不↢虚偽ナラ↡。名[ケ]テ為ス↢真実功徳ト↡。云何[ガ]不ル↢顛倒セ↡。依[リ]テ↢法性[ニ]↡順†ズルガ↢二諦ニ↡故†ナリ。云何[ガ]不ル↢虚偽ナラ↡。摂シテ↢衆生ヲ↡入[ラ]シムルガ↢畢竟浄[ニ]↡故†ナリ。
二 Ⅰ ⅱ a ロ (三)(Ⅱ)(ⅲ)後の二句を釈す
^◆「↑説願偈総持 与仏教相応」 とは、 「持」 は不散不失に名づく。 「総」 は少をもつて多を摂するに名づく。 ▼「偈」 の言は五言の句数なり。 「願」 は往生を*欲楽するに名づく。 ▼「説」 はいはく、 もろもろの偈と論を説くなり。 総じて0057これをいふに、 願生するところの偈を説きて、 仏経を*総持し、 仏教と相応するなり。 「相応」 とは、 たとへば*函と蓋とあひ称へるがごとし。
「説願偈総持、与仏教相応[ト]」者、持ハ名ク↢不散不失ニ↡。総ハ名ク↢以テ↠少[ヲ]摂スルニ↟多ヲ。偈ノ言ハ五言ノ句数ナリ。願ハ名[ク]↣欲0352↢楽スルニ往0456生ヲ↡。説ハ謂ク説クナリ↢諸ノ偈ト論ヲ↡。総ジ而言フニ↠之ヲ、説[キ]テ↧所ノ↢願生スル↡偈ヲ↥、総↢持シ‡仏経ヲ↡、与↢仏教↡相応[スル]ナリ。相応[ト]者、譬[ヘ]バ如シ‡↢函ト蓋ト相†称ヘルガ↡也。
二 Ⅰ ⅱ a ハ【観察門】
(一)【器世間】
(Ⅰ)正説
(ⅰ)【清浄功徳】
(a)牒偈
【8】 ^▲↓観↓彼↓世界相 ↓勝過三界道
観[ズル]ニ↢彼ノ世界ノ相ヲ↡ 勝↢過セリ三界ノ道ニ↡
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅰ)(b)釈義
(イ)総じて章を分つ
[一]総じて観察を標す
^▲これより以下は、 これ第四の↑観察門なり。
此ヨリ已下ハ是第四ノ観察門ナリ。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(イ)[二]正しく章門を分つ
[Ⅰ]総じて依正を分つ
^この門のなかを分ちて二の別となす。 一には↓器世間荘厳成就を観察す。 二には↓衆生世間荘厳成就を観察す。
此ノ門ノ中†ヲ分[チ]テ為ス↢二ノ別[ト]↡。一[ニ]者観↢察ス器世間荘厳成就ヲ↡。二[ニ]者観↢察ス衆生世間荘厳成就ヲ↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅱ]別して国徳を指す
[ⅰ]総じて文処を別つ
^▲この句より以下 「願生彼阿弥陀仏国▲」 に至るまでは、 これ↑器世間荘厳成就を観ずるなり。 器世間を観ずるなかに、 また分ちて十七の別となす。 文に至りてまさに目くべし。
此ノ句ヨリ已下、至ルマデハ↢「願生彼阿弥陀仏国ニ」↡是観ズルナリ↢器世間荘厳成就ヲ↡。観ズル↢器世†間ヲ↡中ニ、復分[チ]テ為ス↢十七ノ別ト↡。至[リ]テ↠文ニ当ベニシ↠目ク。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅱ][ⅱ]別して句名を標す
^▲この二句はすなはちこれ第一の事なり。 名づけて観察荘厳↓清浄功徳↓成就となす。
此ノ二句ハ即[チ]是第一ノ事ナリ。名[ケ]テ為ス↢観察荘厳清浄功徳成就ト↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ロ)別して今偈を釈す
[一]下釈に対す
^この↑清浄はこれ*総相なり。
此ノ清浄ハ是総相ナリ。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ロ)[二]本を尋ねて釈す
[Ⅰ]本願
[ⅰ]選捨の境
^仏本この荘厳清浄功徳を起したまへる所以は、 三界を見そなはすに、 これ虚偽の相、 これ*輪転の相、 これ*無窮の相にして、 *蠖 屈まり伸ぶる虫なり の循環するがごとく、 *蚕繭 蚕衣なり の自縛するがごとし。 あはれなるかな衆生、 この三界に締 結びて解けず られて、 顛倒・不浄なり。
仏本所↣以起†シタマヘル↢此[ノ]荘厳清浄功徳ヲ↡者、†見ソナハスニ↢三界ヲ↡是虚偽ノ相、是輪転ノ相、是无窮ノ相ニシテ、如ク↢* 尺[ノ]音 蠖[ノ] 屈マリ*申ブル虫ナリ一郭[ノ]反 *循環スルガ↡、†如シ↢蚕カイコ才含反 繭マユノ 蚕衣[ナリ]公殄[ノ]反 自縛スルガ↡。哀ナル哉衆生締ラレテ↢ 結[ビテ]不↠解[ケ]帝[ノ]音 此ノ三界ニ↡、顛倒・不浄ナリ。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ]摂取の願
^衆生を不虚偽の処、 不輪転の処、 不無窮の処に置きて、 畢竟安楽の大清浄処を得しめんと欲しめす。 このゆゑにこの清浄荘厳功徳を起したまへり。
欲シメス↧†置キテ↢衆生ヲ於不虚偽ノ処、於不輪転ノ処、於不无窮ノ処ニ↡、得シメムト↦畢竟安楽ノ大清浄処ヲ↥。是ノ故ニ起†シタマヘリ↢此ノ清浄荘厳功徳ヲ↡也。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ロ)[二][Ⅱ]成就
^「↑成就」 とは、 いふこころは、 この清浄は破壊すべからず、 汚染すべから0058ず。 三界の、 これ汚染の相、 これ破壊の相なるがごときにはあらず。
成就[ト]者、言フココロハ此ノ清浄ハ不↠可[カラ]↢破壊ス↡、不↠可[カ]ラ↢汚染ス↡。非[ザ]ル↠如キニハ↢三界†ノ是汚染ノ相‡、是破壊ノ相†ナルガ↡也。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ロ)[三]成就
[Ⅰ]初句を釈す
^「↑観」 とは観察なり。 「↑彼」 とはかの安楽国なり。 「↑世界相」 とはかの安楽世界の清浄の相なり。 その相、 別に↓下にあり。
「観[ト]」者観察也。「彼[ト]」者彼ノ安楽国也。「世界相[ト]」者彼ノ安楽世界ノ清浄ノ相也。其ノ相別ニ在リ↠下ニ。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ロ)[三][Ⅱ]後句を釈す
[ⅰ]道を釈す
^「↑勝過↓三界道」 の 「道」 とは通なり。 かくのごとき因をもつて、 かくのごとき果を得。 かくのごとき果をもつて、 かくのごとき因に酬ゆ。 因に通じて果に至る。 果に通じて因に酬ゆ。 ゆゑに名づけて道となす。
「勝過三界*道[ノ]」、道[ト]者通也。以テ↢如キ‡↠此[クノ]因0353ヲ↡、†得0457↢如キ‡↠此[クノ]果ヲ↡。以[テ]↢如キ‡↠此[クノ]果[ヲ]↡、酬ユ↢如キ‡↠此[クノ]因†ニ↡。通ジテ↠因ニ至ル↠果ニ。通ジテ↠果[ニ]酬ユ↠因[ニ]。故ニ名[ケ]テ為ス↠道ト。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ロ)[三][Ⅱ][ⅱ]三界を釈す
^▼「↑三界」 とは、 一にはこれ欲界、 いはゆる六欲天・四天下の人・畜生・餓鬼・地獄等これなり。 二にはこれ色界、 いはゆる初禅・二禅・三禅・四禅の天等これなり。 三にはこれ無色界、 いはゆる空処・識処・無所有処・非想非非想処の天等これなり。
三界[ト]*者、一ニハ是欲界、†所謂ル六欲天・四天下ノ人・畜生・餓鬼・地獄等是也。二ニハ是色界、†所謂ル初禅・二禅・三禅・四禅ノ天等是也。三[ニ]ハ是无色界、†所謂ル空処・識処・无所有処・非想非非想処ノ天等是也。
^▼この三界はけだしこれ生死の凡夫の流転の闇宅なり。 また苦楽小しき殊なり、 *修短しばらく異なりといへども、 統べてこれを観ずるに有漏にあらざるはなし。 *倚伏あひ乗じ、 循環無際なり。 *雑生触受し、 *四倒長く拘はる。 かつは因、 かつは果、 虚偽あひ襲ふ。
此ノ三界ハ蓋シ是生死ノ凡夫[ノ]流転之闇宅ナリ。雖[モ]↢復苦楽小†シク殊†ナリ、†修短暫ク異†ナルト↡、統ベテ而観ズルニ↠之ヲ莫シ↠非[ザ]ルコト↢有漏ニ↡。*倚ヨリ*伏フス‡相乗ジ‡、*循環†无際ナリ。雑生触受シ、四倒長ク*ル。†且ツハ因†且ツハ果、虚偽相襲シフフ。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ロ)[三][Ⅱ][ⅲ]勝過の相を明す
^△↑安楽はこれ菩薩 (*法蔵) の慈悲・*正観の由生、 如来 (阿弥陀仏) の神力本願の所建なり。 *胎・卵・湿の生、 これによりて*高く揖め、 *業繋の長き維、 これより永く断つ。 *続括の権、 勧めを待たずして弓を彎く。 *労謙善譲、 *普賢に斉しくして徳を同じ0059くす。 ^「勝過三界」 とは、 ▼そもそもこれ近言なり。
安楽ハ是菩薩ノ慈悲・正観之†由生、如来ノ神力本願之所建ナリ。胎卵湿ノ*生縁[リ]テ↠茲ニ高ク揖イフメ、業繋ノ長キ*維従[リ]↠此永ク断ツ。続ツイデ括クヽル之†権不↠待タ↠勧ヲ而彎ク↠弓ヲ。労イタハル謙善譲ユヅル斉シク↢普賢ニ↡而同ジクス↠徳ヲ。勝↢過†セリ三界ニ↡†抑モ是近言ナリ。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅱ)【量功徳】
(a)牒偈
【9】 ^▲究竟↓如虚空 ↓広大無辺際
究竟シテ如[ク]↢虚空ノ↡ 広大ニシテ无シ‡↢辺際↡
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅱ)(b)釈義
(イ)句名を標す
^この二句は荘厳量功徳↓成就と名づく。
此ノ二句ハ名ク↢荘厳量功徳成就ト↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅱ)(b)(ロ)本願
[一]正しく本願を明す
[Ⅰ]選捨の境
^仏本この荘厳量功徳を起したまへる所以は、 三界を見そなはすに陜小にして*堕 敗城の阜なり 陘 山の絶坎なり *陪 土を重ぬるなり。 一にはいはく備なり 陼 渚のごときもの、 陼丘なり なり。 あるいは*宮観▼迫迮し、 あるいは*土田逼隘 陋なり す。 あるいは志求するに路促まり、 あるいは山河隔 塞なり ち障ふ。 あるいは*国界分部せり。 かくのごとき等の種々の*挙急の事あり。
仏本所↣以起†シタマヘル↢此ノ荘厳量功徳ヲ↡者、見ソナハスニ↢三界ヲ↡†陜 戸甲[ノ]反 小[ニシテ]†堕 敗*成[ノ]†阜ナリ*式垂[ノ]反 †陘 †山[ノ]絶坎[ナリ]形[ノ]音 †陪 重[ヌルコト]↠土[ヲ]一日[ニシテ]備[ハルナリ]†父才[ノ]反 †陼ナリ 如[キ]↠*緒[ノ]者陼*丘[ナリ]之与[ノ]反。或[イ]ハ宮観†迫 伯[ノ]音 迮シ 子格[ノ]反、或[イ]ハ土田†逼隘ス *陋[ナリ]。或[イ]ハ志求[スルニ]路促リ、或[イ]ハ山河隔†チ 塞[ナリ]公†厄[ノ]反 障フ。或[イハ]国界分*部セリ。有リ↢如キ↠此[ク]ノ等ノ種種ノ挙急ノ事↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅱ)(b)(ロ)[一][Ⅱ]摂取の願
^このゆゑに菩薩、 この荘厳量功徳の願を興したまへり。 「願はくはわが国土虚空のごとく広大にして無際ならん」 と。
是ノ故ニ菩薩興シタマヘリ↢此ノ荘厳量功徳ノ願ヲ↡。願[ク]ハ我ガ国土如0458ク↢虚空0354ノ↡広大[ニシテ]无際ナラムト。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅱ)(b)(ロ)[二]因みに偈句を釈す
^「↑虚空のごとく」 とは、 いふこころは、 来生のもの衆しといへども、 なほなきがごとくならんとなり。 「↑広大にして無際ならん」 とは、 上の 「如虚空」 の義を成ず。 なんがゆゑぞ 「如虚空」 といふ。 広大にして無際なるをもつてのゆゑなり。
「†如クト↢虚空ノ↡」者、言フココロハ来生ノ者雖モ↠衆シト、猶若クナラムト↠无[キ]ガ也。「†広大ニシテ无際ナラムト」者、成ズ↧上ノ†如クノ↢虚空ノ↡義ヲ↥。何ガ故ゾ如†クトイフ↢虚空ノ↡。以[テ]ノ↢広大ニシテ†无際ナルヲ↡故†ナリ。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅱ)(b)(ハ)成就
[一]正釈
^「↑成就」 とは、 いふこころは、 十方衆生の往生するもの、 もしはすでに生じ、 もしはいまに生じ、 もしはまさに生ぜん。 無量無辺なりといへども畢竟じてつねに虚空のごとく、 広大にして無際にして、 つひに満つ時なからん。 このゆゑに0060 「究竟如虚空 広大無辺際」 といへり。
成就[ト]者、言フココロハ十方衆生ノ往生セム者、若[シ]ハ†已ニ生ジ、若[シ]ハ今ニ生ジ、若[シ]ハ†当ニキ↠生ズ、雖モ↢无量无辺ナリト↡畢竟ジテ常ニ如ク↢虚空ノ↡、広大ニシテ†无際ニシテ、終ニ无[カ]ラム↢満ツ時↡。是ノ故ニ言ヘリ↢「究竟如虚空、広大无辺際ト」↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅱ)(b)(ハ)[二]問答
^問ひていはく、 維摩のごときは、 *方丈に苞容して余りあり。 なんぞかならず国界*無貲なるをすなはち広大と称する。
問[ヒテ]曰[ク]、如キハ↢維摩ノ↡、方*丈ニ*苞容シテ有リ↠余。何ゾ必ズ国界无†貲ナルヲ 子*支[ノ]反 †乃チ称†スル↢広大ト↡。
^答へていはく、 いふところの広大は、 かならずしも*畦 五十畝なり 畹 三十畝なり をもつて喩へとなすにあらず。 ただ空のごとしといふ。 またなんぞ方丈を累はさんや。 また方丈の苞容するところは陜にありて広なり。 覈 実なり に果報を論ずるに、 あに広にありて広なるにしかんや。
答[ヘテ]曰[ク]、所ノ↠言[フ]広大ハ非ズ↧必[ズシモ]以テ↢†畦 五十畝[ナリ]下圭[ノ]反 †畹ヲ↡ 三十畝[ナリ]一*遠一万[ノ]反 為[ス]ニ↞喩ト。但言フ↠如[シ]ト↠空ノ。亦何ゾ†累ハサムヤ↢方*丈ヲ↡。又方*丈之*所ハ↢†苞†容スル↡在リ↠†陜ニ而広ナリ。†覈ニ 実[ナリ]下革[ノ]反 論ズルニ↢果報ヲ↡、豈ニ†若カム↢在リ↠広ニ而広ナルニ↡耶。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅲ)【性功徳】
(a)牒偈
【10】 ^▲↓正道大慈悲 ↓出世善根生
正道ノ大慈悲‡ 出世ノ善根ヨリ生ズ‡
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅲ)(b)釈義
(イ)句名を標す
^◆この二句は荘厳↓性功徳成就と名づく。
此ノ二句ハ名ク↢荘厳性功徳成就ト↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅲ)(b)(ロ)本願
[一]選捨の境
^仏本なんがゆゑぞこの荘厳を起したまへる。 ある国土を見そなはすに、 愛欲をもつてのゆゑにすなはち欲界あり。 *攀厭禅定をもつてのゆゑにすなはち色・無色界あり。 この三界はみなこれ有漏なり。 邪道の所生なり。 長く大夢に寝ねて出でんと悕ふを知ることなし。
仏本何ガ故ゾ起†シタマヘル↢此ノ荘厳ヲ↡。見ソナハスニ↢有ル国土ヲ↡、以[テ]ノ↢愛欲ヲ↡故ニ則チ有リ↢欲界↡。以[テ]ノ↢†攀厭禅定ヲ↡故ニ則チ有[リ]↢色・无色界↡。此ノ三界ハ皆是有漏ナリ。邪道ノ所生ナリ。長ク寝ネテ↢大夢ニ↡莫シ↠知[ル]コト↠†悕フヲ↠出デムト。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅲ)(b)(ロ)[二]摂取の願
^このゆゑに大悲心を興したまへり。 「願はくはわれ成仏せんに、 *無上の正見道をもつて清浄の土を起して三界を出さん」 と。
是ノ故ニ興†シタマヘリ↢大悲心ヲ↡。願[ク]ハ我成仏セムニ、以テ↢无上ノ正見道ヲ↡起シテ↢清浄ノ土ヲ↡†出サムト↢于三界ヲ↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅲ)(b)(ハ)句名を釈す
[一]性本義
^▼「↑性」 はこれ本の義なり。 いふこころは、 この浄土は法性に随順して法本に乖かず。 事、 ¬*華厳経¼ の*宝王如来の性0061起の義に同じ。
性ハ是本ノ義ナリ。言フココロハ此ノ浄土ハ随↢順シテ法性ニ↡不↠乖カ↢法本ニ↡。事同ジ↢¬花厳経ノ¼宝王如来ノ性起ノ義ニ↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅲ)(b)(ハ)[二]積習性
^◆またいふこころは、 積習して性を成ず。 *法蔵菩薩、 諸波羅蜜を集めて積習して成ずるところを指す。
又言フココロハ*積習シテ成ズ↠性ヲ。†指ス↧法蔵菩薩集メテ↢諸波羅蜜ヲ↡積習シテ所ヲ↞成ズル。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅲ)(b)(ハ)[三]聖種性
^◆また 「性」 といふは、 これ聖種性なり。 序め法蔵菩薩、 *世自在王仏の所において、 無生法忍を悟りたまへり。 その時の位を聖種性と名づく。 この性のなかにおいて四十八の大願を発してこの土を*修起せり。 すなはち安楽浄土といふ。 これかの因の所得なり。 果のなかに因を説く。 ゆゑに名づけて性となす。
亦言[フ]↠性[ト]者是聖種性ナリ。序メ‡法蔵菩0459薩†於テ↢世0355自在王仏ノ所ニ↡、悟[リタマ]ヘリ↢无生法忍ヲ↡。爾ノ時ノ位ヲ名ク↢聖種性ト↡。†於テ↢是ノ性ノ中ニ↡発シテ↢八ノ大願ヲ↡修↢起セリ此ノ土ヲ↡。即チ曰フ↢安楽浄土ト↡。是彼ノ因ノ所得ナリ。果ノ中ニ説ク↠因ヲ。故ニ名[ケ]テ為ス↠性ト。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅲ)(b)(ハ)[四]必然不改
^▼またいふこころは、 「性」 はこれ必然の義なり、 不改の義なり。 ▼海の性の一味にして、 衆流入ればかならず一味となりて、 海の味はひ、 かれに随ひて改まらざるがごとし。
又言フココロハ性ハ是*必然ノ義ナリ、不改ノ義ナリ。如[シ]‡↧海ノ性‡一味ニシテ、衆流入レ者必[ズ]為リテ↢一味ト↡海ノ味不[ルガ]↦随[ヒ]テ↠彼ニ改[ラ]↥也。
^◆また人の身の性は不浄なるがゆゑに、 種々の妙好の色・香・美味、 身に入ればみな不浄となるがごとし。 安楽浄土はもろもろの往生するもの、 不浄の*色なく、 不浄の心なし。 畢竟じてみな*清浄平等無為法身を得ることは、 安楽国土清浄の性、 成就せるをもつてのゆゑなり。
又如シ↣人ノ身ノ性[ハ]不浄ナルガ故ニ、種種ノ妙好ノ色・香・*美味入レバ↠身ニ皆為ルガ↢不浄ト↡。安楽浄土ハ諸ノ往生スル者、无†ク↢不浄ノ色↡、无シ↢不浄ノ心↡。畢竟ジテ皆得[ル]コトハ↢清浄平等无為法身ヲ↡、以[テ]ノ↢安楽国土清浄ノ性成就セルヲ↡故ナリ。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅲ)(b)(ニ)成就
[一]初句を釈す
^◆「正道大慈悲 出世善根生」 とは、 平等の大道なり。 平等の道を名づけて正道となす所以は、 平等はこれ諸法の*体相なり。 諸法平等なるをもつてのゆゑに*発心等し。 発心等しきがゆゑに道等し。 道等しきがゆゑに大慈悲等し。 大慈悲はこれ仏道の正因なるがゆゑに 「↑正道大慈悲」 といへり。
「正道[ノ]大慈悲、出世[ノ]善根[ヨリ]生[ズ][ト]」者、平等ノ大道也。平等ノ道†ヲ所↣以名[ケ]テ†為ス↢正道ト↡者、平等ハ是諸法ノ体相ナリ。以[テ]ノ↢諸法平等ナルヲ↡故ニ発心等シ。発心等[シ]キガ故ニ道等シ。道等[シ]キガ故ニ大慈悲等シ。大慈悲ハ是仏道ノ正因ナルガ故ニ言[ヘリ]↢「正道大慈悲ト」↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅲ)(b)(ニ)[二]後句を釈す
^◆慈悲0062に三縁あり。 一には衆生縁、 これ小悲なり。 二には法縁、 これ中悲なり。 三には無縁、 これ大悲なり。 大悲はすなはち出世の善なり。 安楽浄土はこの大悲より生ぜるがゆゑなり。 ゆゑにこの大悲をいひて浄土の根となす。 ゆゑに 「↑出世善根生」 といへり。
慈悲ニ有リ↢三縁↡。一[ニ]者衆生縁、是小悲[ナリ]。二[ニ]者法縁、是中悲ナリ。三[ニ]者无縁、是大悲ナリ。大悲ハ*即[チ]出世ノ善也。安楽浄土ハ従[リ]↢此ノ大悲↡生ゼルガ故†ナリ。故ニ謂[ヒ]テ↢此ノ大悲ヲ↡†為ス↢浄土之根[ト]↡。故ニ曰†ヘリ↢「出世善根生ト」↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅳ)【形相功徳】
(a)牒偈
【11】 ^▲浄光明満足 如鏡日月輪
浄光明[ノ]満足[スル]コト 如シ‡↢鏡ト日月輪トノ↡
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅳ)(b)釈義
(イ)句名を標す
^この二句は荘厳形相功徳成就と名づく。
此ノ二句ハ名ク↢荘厳形相功徳成就ト↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅳ)(b)(ロ)本願
[一]選捨の境
^仏本この荘厳功徳を起したまへる所以は、 日の*四域に行くを見そなはすに、 光*三方にあまねからず。 *庭燎、 宅にあるにあきらかなること*十仞に満たず。
仏本所↣以起†シタマヘル↢此ノ荘厳功徳ヲ↡者、見[ソナハス]ニ↣日0460ノ行[ク]ヲ↢四域ニ↡、光不↠周カラ↢三方ニ↡。庭燎 力小[ノ]反 在ルニ↠宅ニ明カナルコト不↠満タ↢十†仞ニ↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅳ)(b)(ロ)[二]摂取の願
^これをもつてのゆゑに浄光明を満たさんと願を起したまへり。
以[テ]ノ↠是ヲ故ニ起シタマヘリ↧満[タサ]ムト↢浄0356光明ヲ↡願ヲ↥。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅳ)(b)(ハ)成就
^日月光輪の、 自体に満足せるがごとく、 かの安楽浄土もまた広大にして辺なしといへども、 清浄の光明、 充塞せざるはなからん。 ゆゑに 「浄光明満足 如鏡日月輪」 といへり。
如ク↣日月光輪ノ満↢足セルガ自体ニ↡、彼ノ安楽浄土[モ]雖モ↢復広大ニシテ无シト↟辺、清浄ノ光明无†カラム↠不ルコト↢充塞セ↡。故ニ曰[ヘリ]↢「浄光明満足、如鏡日月輪ト」↡‡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅴ)【種々事功徳】
(a)牒偈
【12】 ^▲備諸珍宝↓性 具足妙荘厳
備[ヘ]テ↢諸ノ珍宝ノ性ヲ↡ 具↢足セリ妙荘厳ヲ↡
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅴ)(b)釈義
(イ)句名を標す
^この二句は荘厳種々事功徳成就と名づく。
此ノ二句ハ名ク↢荘厳種種事功徳成就ト↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅴ)(b)(ロ)本願
[一]選捨の境
^仏本なんがゆゑぞこの荘厳を起したまへる。 ある国土を見そなはすに、 泥土をもつて宮の飾りとなし、 木石をもつて*華観となす。 あるいは金を彫り玉を鏤むも意願充たず。 あるいは営みて百千0063を備ふれば、 つぶさに辛苦を受く。
仏本何ガ故ゾ起シタマヘル‡↢此[ノ]荘厳ヲ↡。見ソナハスニ↢有ル国土ヲ↡、以テ↢泥土ヲ↡為†シ↢宮ノ飾ト↡、以テ↢木石ヲ↡為ス↢花観ト↡。或[イ]ハ彫リ↠金ヲ鏤ム[モ]↠玉ヲ意願不↠充タ。或[イ]ハ営ミテ備フレバ↢百千ヲ↡具ニ受ク↢辛苦ヲ↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅴ)(b)(ロ)[二]摂取の願
^これをもつてのゆゑに大悲心を興したまへり。 「願はくはわれ成仏せんに、 かならず珍宝具足し、 厳麗自然にして*有余にあひ忘れ、 おのづから仏道を得しめん」 と。
以[テ]ノ↠此ヲ故ニ興†シタマヘリ↢大悲心ヲ↡。願[ク]ハ我成仏セムニ、必ズ使†メムト↧珍宝具足シ、厳麗‡自然ニ[シテ]相↢忘レ†於有余ニ↡、自ラ†得↦於仏道ヲ↥。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅴ)(b)(ハ)成就
^この荘厳の事、 たとひ*毘首羯磨が工妙絶と称すとも、 思を積み想を竭すとも、 あによく取りて図さんや。
此ノ荘厳ノ事、縦使毘首羯磨ガ工称ストモ↢妙絶ト↡、積ミ↠思ヲ竭ストモ↠想ヲ、豈ニ能ク取[リ]テ図サムヤ。
^「↑性」 とは本の義なり。 能生すでに浄し、 所生いづくんぞ不浄を得ん。 ゆゑに ¬経¼ (*維摩経) にのたまはく、 「その心浄きに随ひてすなはち仏土浄し」 と。 このゆゑに 「備諸珍宝性 具足妙荘厳」 といへり。
「性[ト]」者本ノ義也。能生既ニ浄シ、所生焉ゾ得ム↢不浄ヲ↡。故ニ¬経ニ¼言ク、「随[ヒ]テ↢其ノ心浄キニ↡則[チ]仏土浄シ[ト]」。是ノ故ニ†言ヘリ↢「備諸珍宝性、具足妙荘厳ト」↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅵ)【妙色功徳】
(a)牒偈
【13】 ^▲無垢光炎熾 明浄↓曜世間
无垢ノ光炎熾ニシテ 明浄ニシテ曜[カ]ス↢世間[ヲ]↡
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅵ)(b)釈義
(イ)句名を標す
^この二句は荘厳妙色功徳成就と名づく。
此ノ二句ハ名ク↢荘厳妙色功徳成就ト↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅵ)(b)(ロ)本願
[一]選捨の境
^仏本なんがゆゑぞこの荘厳を起したまへる。 ある国土を見そなはすに、 優劣不同なり。 不同なるをもつてのゆゑに*高下もつて形る。 高下すでに形るれば、 是非もつて起る。 是非すでに起れば、 長く三有に淪 没なり む。
仏本何ガ故ゾ起†シタマヘル↢此[ノ]荘厳ヲ↡。見[ソナ]ハスニ↢有[ル]国土ヲ↡、優劣不同ナリ。以[テ]ノ↢不同ナルヲ↡故ニ高下以テ†形ル。高下既ニ†形ルレバ、是非以[テ]起ル。是非既ニ起レバ、長ク淪0461ム↢ 没[ナリ]倫[ノ]音 三有ニ↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅵ)(b)(ロ)[二]摂取の願
^このゆゑに大悲心を興して平等の願を起したまへり。 「願はくはわが国土は光炎熾盛にして第一無比ならん。 人天の金色よく奪ふものあるがごとくならじ」 と。
是ノ故ニ興シテ↢大悲心ヲ↡起シタマヘリ↢平等ノ願ヲ↡。願[ク]ハ我ガ国土ハ光炎熾盛ニシテ第一无比ナラム。不[ト]0357↠如クナラ↣人天ノ金色能ク有[ル]ガ↢奪フ者↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅵ)(b)(ハ)成就
[一]総じて釈す
[Ⅰ]光を顕す
^いかんがあひ奪ふ。 明鏡のごときを金辺に在けばすなはち現ぜず。
若為ガ相奪フ‡。如キヲ↢明鏡ノ↡在ケバ↢金辺ニ↡則[チ]不↠現ゼ。
^今日の時中の金を仏 (釈尊) の在時の金に比するにすな0064はち現ぜず。
今日ノ時中ノ金ヲ比スルニ↢仏ノ在時ノ金ニ↡則[チ]不↠現ゼ。
^仏 (釈尊) の在時の金を*閻浮那金に比するにすなはち現ぜず。
†仏ノ在時ノ金ヲ比スルニ↢閻浮那金ニ↡則[チ]不↠現ゼ。
^閻浮那金を大海のなかの転輪王の道中の*金沙に比するにすなはち現ぜず。
閻浮那金ヲ比[スル]ニ↢大海ノ中ノ転輪王ノ道中ノ金沙ニ↡則[チ]不↠現ゼ。
^転輪王の道中の金沙を*金山に比するにすなはち現ぜず。
転輪王ノ道中ノ金沙ヲ比[スル]ニ↢金山ニ↡則[チ]不↠現ゼ。
^金山を須弥山の金に比するにすなはち現ぜず。
金山ヲ比[スル]ニ↢須弥山ノ金ニ↡則[チ]不↠現[ゼ]。
^須弥山の金を*三十三天の*瓔珞の金に比するにすなはち現ぜず。
須弥山ノ金ヲ比[スル]ニ↢三十*三天ノ瓔珞ノ金ニ↡則[チ]不↠現[ゼ]。
^三十三天の瓔珞の金を*炎摩天の金に比するにすなはち現ぜず。
三十*三天ノ瓔珞ノ金ヲ比[スル]ニ↢炎摩天ノ金ヲ↡則[チ]不↠現[ゼ]。
^炎摩天の金を*兜率陀天の金に比するにすなはち現ぜず。
炎摩天ノ金ヲ比[スル]ニ↢兜率陀天ノ金ニ↡則[チ]不↠現ゼ。
^兜率陀天の金を*化自在天の金に比するにすなはち現ぜず。
兜率陀天ノ金ヲ比[スル]ニ↢化自在天ノ金ニ↡則[チ]不↠現[ゼ]。
^化自在天の金を*他化自在天の金に比するにすなはち現ぜず。
化自在天ノ金ヲ比[スル]ニ↢他化自在天ノ金ニ↡則[チ]不↠現ゼ。
^他化自在天の金を安楽国中の光明に比するにすなはち現ぜず。
他化自在天ノ金ヲ比スルニ↢安楽国中ノ光明ニ↡則[チ]不↠現ゼ。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅵ)(b)(ハ)[一][Ⅱ]無垢を顕す
^所以はいかんとなれば、 かの土の金光は*垢業より生ずることを絶つがゆゑなり。 清浄にして成就せざるはなきゆゑなり。 安楽浄土はこれ無生忍の菩薩の浄業の所起なり。 阿弥陀如来法王の所領なり。 阿弥陀如来を*増上縁となしたまふがゆゑなり。 このゆゑに 「無垢光炎熾 明浄曜世間」 といへり。
所以者何ントナレバ、彼ノ土ノ金光ハ絶†ツガ↧従[リ]↢垢業↡生[ズル]コトヲ↥故†ナリ。清浄ニシテ†无キ↠不ルコト↢成就セ↡故ナリ。安楽浄土ハ是无生忍ノ菩薩ノ浄業ノ所起ナリ。阿弥陀如来法王ノ所領ナリ。阿弥陀如来ヲ為†スガ↢増上縁ト↡故†ナリ。是ノ故ニ†言ヘリ↢「无垢光炎熾、明浄曜世間ト」↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅵ)(b)(ハ)[二]別して後句を釈す
^「↑曜世間」 とは二種世間を曜かすなり。
「曜世間[ト]」者曜[カ]ス↢二種世間ヲ↡也。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅶ)触功徳
(a)牒偈
【14】 ^▲宝性功徳草 柔軟左右旋 触者↓生勝楽 過↓迦旃隣陀
宝性功徳[ノ]草 柔軟ニシテ左右ニ旋レリ 触ルヽ者生ズルコト↢勝楽ヲ↡ 過[ギ]タリ↢迦旃隣陀ニ↡
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅶ)(b)釈義
(イ)句名を標す
^この四句は荘厳触功徳成就と名づく。
此[ノ]四句ハ名ク↢荘厳触功徳成就ト↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅶ)(b)(ロ)本願
[一]選捨の境
^仏本なんがゆゑぞこの荘厳を起したまへ0065る。 ある国土を見そなはすに、 金・玉を宝重すといへども衣服となすことを得ず。 明鏡を珍翫すれども*敷具によろしきことなし。 これによりて目を悦ばしむれども、 身に*便りならず。 身・眼の二情あに鉾楯せざらんや。
仏本何ガ故ゾ起†シタマヘル↢此[ノ]荘厳ヲ↡。見[ソナハス]ニ↢有ル国土ヲ↡、雖モ↣†宝0462↢重スト金玉ヲ↡不↠得↠†為スコトヲ↢衣服ト↡。†珍↢翫スレドモ明鏡ヲ↡无シ↠議キコト†↢於敷具ニ↡。斯ニ縁[リ]テ悦バシムレドモ†↢於目ヲ↡†不0358↠便ナラ†↢於身ニ↡也。身眼ノ二情豈ニ弗ラム↢鉾ホコ楯タテ セ↡乎。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅶ)(b)(ロ)[二]摂取の願
^このゆゑに願じてのたまはく、 「わが国土の人天の*六情、 *水乳に和して、 つひに*楚越の労を去らしめん」 と。
是ノ故ニ願ジテ言ク、使メムト↧我ガ国土ノ人天[ノ]六情和シテ†↢於水乳ニ↡、*卒[ニ]去ラ↦†楚†越之労ヲ↥。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅶ)(b)(ハ)成就
^ゆゑに七宝柔軟にして目を悦ばしめ身に便りなるなり。
†所以ニ七宝柔軟ニシテ悦バシ[メ]↠目ヲ便†ナルナリ↠身ニ。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅶ)(b)(ニ)文義を釈す
[一]迦旃隣陀を釈す
^「↑迦旃隣陀」 とは、 天竺 (印度) の柔軟草の名なり。 これに触るればよく*楽受を生ず。 ゆゑにもつて喩へとなす。
「迦旃隣陀ト」者、天竺ノ柔軟草ノ名也。触[ル]レ↠之ニ者能ク生ズ↢楽受ヲ↡。故ニ以テ為ス↠喩ト。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅶ)(b)(ニ)[二]草を勘ふ
^註者 (曇鸞) のいはく、 この間の土・石・草・木はおのおの定体あり。 訳者 (菩提流支) なにによりてか、 かの宝を目けて草となすや。 まさにその* 草風を得る貌なり 然 草の旋る貌なり 細き草をといふ なるをもつてのゆゑに、 草をもつてこれに目くるのみ。 余もし*参訳せばまさに別に途あるべし。
註者ノ言ハク、此ノ間ノ土石草木ハ各[ノ]有リ↢定体↡。訳者何ニ縁[リ]テカ目ケテ↢彼ノ宝ヲ↡†為ス↠草ト耶。当ニ以テノ↢其ノ† 草得[ル]↠風[ヲ]貌[ナリ]*父虫[ノ]反 †然 草[ノ]旋[ル]貌[ナリ]一煢[ノ]反 [ナル]ヲ↡ 細[キ]草[ヲ]曰[フ]↠[ト]亡小[ノ]反 故ニ、以テ↠草ヲ目ク[ル]↠之[ヲ]耳‡。餘若シ†参訳セバ当ニシ↢別†ニ有ル↟途。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅶ)(b)(ニ)[三]生勝楽を釈す
^「↑生勝楽」 とは、 迦旃隣陀に触るれば*染着の楽を生ず。 かの軟宝に触るれば法喜の楽を生ず。 二事あひはるかなり。 勝にあらずはいかん。 ^このゆゑに 「宝性功徳草 柔軟左右旋 触者生勝楽 過迦旃隣陀」 といへり。
「生[ズ]↢勝楽[ヲ]↡[ト]」者、触[ル]レバ↢迦旃隣陀ニ↡生ズ↢染着ノ楽ヲ↡。触[ル]レバ↢彼ノ軟宝ニ↡生ズ↢法喜ノ楽ヲ↡。二事相玄ナリ。非[ズ]ハ↠勝ニ†如何。是ノ故ニ†言ヘリ↢「宝性功徳草、柔軟左右旋、触者生勝楽、過迦旃隣陀ト」↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅷ)【三種功徳】
(a)水徳【水功徳】
(イ)牒偈
【15】 ^▲宝華千万種 弥覆池流泉 微風動華葉 交錯光乱転
宝華千万種ニシテ 弥↢覆セリ池・流・泉ニ↡ 微風動スニ↢華葉ヲ↡ *交錯シテ光乱転ス
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅷ)(a)(ロ)釈義
[一]句名を標す
^0066この四句は荘厳水功徳成就と名づく。
此[ノ]四句ハ名ク↢荘厳水功徳成就ト↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅷ)(a)(ロ)[二]本願
[Ⅰ]選捨の境
^仏本なんがゆゑぞこの願を起したまへる。 ある国土を見そなはすに、 あるいは澐溺 江の水の大きなる波、 これを澐溺といふ 洪涛 海の波の上がる して*滓沫人を驚かす。 あるいは*凝凘 氷を流す * 凍りてあひ着く して、 *蹙 迫る 架し、 常を失す を懐く。 向に安悦の情なし。 背ろに恐値の慮りあり。
仏本何ガ故ゾ起†シタマヘル↢此[ノ]願ヲ↡。見[ソナハ]スニ↢有ル国土ヲ↡、或[イ]ハ†澐溺 江ノ水ノ大ナル波謂フ↢之[ヲ]澐溺ト↡†云[ノ]音 洪涛シテ 海ノ波ノ上ル大牢[ノ]反 滓アワ沫アワ驚カス↠人ヲ。或[イ]ハ凝コホル*凘 流ス↠*氷ヲ上支[ノ]反 † *古甲[ノ]反 *シテ *凍[リテ]相著[ク]大甲[ノ]反、†蹙 迫ル子六ノ反 *架シ、†壊ク↠ヲ †失ス↠常ヲ他則[ノ]反。†向ニ无シ↢安悦之情↡。†背ニ有リ↢恐オソル*値アフ之慮↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅷ)(a)(ロ)[二][Ⅱ]摂取の願
^菩薩これを見そなはして大悲心を興したまへり。 「願はくはわれ成仏せんに、 ▲あらゆる流・泉・池・沼 池なり 宮殿とあひ称ひ 事、 ¬経¼ (*大経・上) 中に出づ。 ▲種々の宝華布きて水の飾りとなり、 ▲微風やうやく扇ぎて*映発するに*序あり、 ▲*神を開き体を悦ばしめて、 一として可ならずといふことなからん」 と。
菩薩見†ソナハシテ↠此ヲ興シタマヘリ↢大悲心ヲ↡。願[ク]ハ我成仏セムニ、所有ノ流・泉・池・沼 池[ナリ]之小[ノ]反 与↢宮殿↡相称†ヒ 事出[ズ]↢¬経¼中[ニ]↡ 種種ノ宝花布キテ†為リ↢水[ノ]飾ト↡、微風徐ク扇[ギ]テ映発スルニ†有リ↠序、開キ↠神ヲ悦バシメテ↠体ヲ、无カラムト↢一†トシテ†不トイフコト↟可ナラ。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅷ)(a)(ロ)[三]成就
^このゆゑに 「宝華千万種 弥覆池流泉 微風動華葉 交錯光乱転」 といへり。
是ノ故ニ†言ヘリ↢「宝花千万0463種、弥覆池流泉、微風動花葉、交錯光乱転ト」↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅷ)(b)地徳【地功徳】
(イ)牒偈
【16】 ^▲宮殿諸楼閣 観十方無礙 雑樹異光色 宝欄遍囲繞
宮0359殿諸ノ楼閣ニシテ 観ルコト↢十方ヲ↡无ナリ 雑樹ニ異ノ光色アリ 宝*蘭遍ク囲繞セリ
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅷ)(b)(ロ)釈義
[一]句名を標す
^この四句は荘厳地功徳成就と名づく。
此[ノ]四句ハ名ク↢荘厳地功徳成就ト↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅷ)(b)(ロ)[二]本願
[Ⅰ]選捨の境
^仏本なんがゆゑぞこの荘厳を起したまへる。 ある国土を見そなはすに、 *嶕嶢 高き貌なり 峻 高なり 嶺にして枯木岑に横たはり、 *岝峉 岝峉は山斉しからず 深き山谷または山消の貌なり 嶙 深くして崖りなし にして莦 悪き草の貌なり *茅 道に草多くして行くべからず 壑に0067盈てり。 *茫々たる滄海、 *絶目の川たり。 *々たる広沢、 *無蹤の所たり。
仏本何ガ故ゾ起†シタマヘル↢此[ノ]荘厳ヲ↡。見[ソナハ]スニ↢有ル国土ヲ↡、*嶕 高[キ]貌[ナリ]才消[ノ]反 嶢タカク*牛消[ノ]反 峻サカシ 高[ナリ]俊[ノ]音 †嶺ニシテ枯木横†タハリ↠*岑ニ、岝ヤマノカホ 山不↠斉[シカラ]才白[ノ]反 峉ヤマノカホ 岝峉五百[ノ]反 深[キ]山谷亦[ハ]山*消[ノ]貌[ナリ]形[ノ]音 嶙ニシテ 深[クシテ]无[シ]↠*崖力人[ノ]反 莦 悪[キ]*卉[ノ]貌[ナリ]消[ノ]音 *茅 道[ニ]多[クシテ]↠*卉不↠可[カラ]↠行[ク]方*交[ノ]反 盈テリ↠壑ニ。茫茫タル滄海、為リ↢絶目之川↡。タル広沢、為リ↢†无蹤之所↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅷ)(b)(ロ)[二][Ⅱ]摂取の願
^菩薩これを見そなはして大悲の願を興したまへり。 「願はくはわが国土は地平らかにして掌のごとく、 宮殿・楼閣は鏡のごとくして、 十方を納めんにあきらかにして属するところなく、 また属せざるにあらざらん。 宝樹・宝欄たがひに映飾とならん」 と。
菩薩見[ソ]ナハシテ↠此ヲ興シタマヘリ↢大悲ノ願ヲ↡。願[ク]ハ我[ガ]国土ハ地平カニ‡シテ如ク↠掌ノ、宮殿楼閣[ハ]鏡ノゴトクシテ、納メムニ↢十方ヲ↡、†的ニシテ无ク↠所↠†属スル、亦非[ザ]ラム↠不ルニ↠属セ。宝樹・宝*蘭互ニ†為ラムト↢映飾ト↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅷ)(b)(ロ)[三]成就
^このゆゑに 「宮殿諸楼閣 観十方無礙 雑樹異光色 宝欄遍囲繞」 といへり。
是ノ故ニ†言ヘリ↢「宮殿諸楼閣、観十方无、雑樹異光色、宝*蘭遍囲繞ト」↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅷ)(c)虚空【虚空功徳】
(イ)牒偈
【17】 ^▲無量宝交絡 羅網遍虚空 種種鈴発響 宣吐妙法音
无量ノ宝交絡シテ 羅網遍†シ↢虚空ニ↡ 種種ノ鈴発[シ]テ↠*響ヲ 宣ベ↢吐†ク妙法ノ音ヲ↡
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅷ)(c)(ロ)釈義
[一]句名を標す
^この四句は荘厳虚空功徳成就と名づく。
此ノ四句ハ名ク↢荘厳虚空功徳成就ト↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅷ)(c)(ロ)[二]本願
[Ⅰ]選捨の境
^仏本なんがゆゑぞこの荘厳を起したまへる。 ある国土を見そなはすに、 煙・雲・塵・霧、 *太虚を蔽障し、 *震烈 雨の声なり 大雨なり 上よりして堕つ。 *不祥の烖 天の火なり 霓 屈れる紅、 青赤あるいは白色の陰気なり つねに空より来りて、 憂慮百端にしてこれがために毛竪つ。
仏本何ガ故ゾ起†シタマヘル↢此[ノ]荘厳ヲ↡。見[ソナハ]スニ↢有ル国土ヲ↡、煙雲塵霧蔽↢障シ太虚ヲ↡、†震烈* 雨[ノ]声[ナリ]士林[ノ]反 * 大雨[ナリ]下郭[ノ]反 従リ↠上而堕ツ。不祥ノ烖 天[ノ]火[ナリ]葬才[ノ]反 †霓 屈[レル]虹、青赤或[イハ]白色[ノ]陰気[ナリ]五結[ノ]反 毎ニ自[リ]↠空来[リ]テ、憂慮百端ニシテ為ニ↠之ガ毛竪ツ。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅷ)(c)(ロ)[二][Ⅱ]摂取の願
^菩薩これを見そなはして大悲心を興したまへり。 「願はくはわが国土には*宝網*交絡して、 *羅は虚空に遍し、 鈴鐸 大鈴なり *宮商鳴りて道法を宣べん。 これを視て厭ふことなく、 道を懐ひて徳を見さん」 と。
菩薩見[ソナ]ハシテ↠此ヲ興シタマヘリ↢大悲心ヲ↡。願[ク]ハ我ガ国土ニハ宝網交絡シテ、羅[ハ]遍†シ↢虚空ニ↡、鈴鐸 大鈴[ナリ]大各[ノ]反 宮商鳴[リ]テ宣ベム↢道法ヲ↡。視テ↠之ヲ无ク↠厭フコト懐ヒテ↠道ヲ†見サムト↠徳ヲ。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅷ)(c)(ロ)[三]成就
^このゆゑに 「無量宝交絡 羅網遍虚空 種種鈴発響 宣吐妙法音」 といへり。
是ノ故ニ†言ヘリ↢「无量宝交絡、羅網遍虚空、種種鈴発†嚮、宣吐妙0464法音ト」↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅸ)【雨功徳】
(a)牒偈
【006818】 ^▲↓雨華衣荘厳 無量香普薫
0360†雨ラシテ↢花ト衣トヲ↡荘厳シ 无量ノ香普ク*勲†ズ
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅸ)(b)釈義
(イ)句名を標す
^この二句は荘厳雨功徳成就と名づく。
此ノ二句ハ名ク↢荘厳雨功徳成就ト↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅸ)(b)(ロ)本願
[一]選捨の境
^仏本なんがゆゑぞこの荘厳を興したまへる。 ある国土を見そなはすに、 服飾をもつて地に布き、 *所尊を延請せんと欲す。 あるいは香・華・名宝をもつて、 用ゐて恭敬を表せんと欲す。 しかも*業貧しく感薄きものはこの事果さず。
仏本何ガ故ゾ興†シタマヘル↢此ノ荘厳ヲ↡。見[ソナハ]スニ↢有ル国土ヲ↡、†欲ス↧以テ↢服飾ヲ↡布キ↠地ニ、†延↦請[セ]ムト所尊ヲ↥。或[イ]ハ†欲ス↧以テ↢香花名宝ヲ↡、用[ヰ]テ表セムト↦恭敬ヲ↥。而†モ業†貧シク感薄キモノハ是ノ事不↠果サ。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅸ)(b)(ロ)[二]摂取の願
^このゆゑに大悲の願を興したまへり。 「願はくはわが国土にはつねにこの物を雨らして衆生の意に満てん」 と。
是ノ故ニ興シタマヘリ↢大*悲ノ願ヲ↡。願[ク]ハ我ガ国土ニハ常ニ†雨ラシテ↢此ノ物ヲ↡満†タサムト↢衆生ノ意†ヲ↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅸ)(b)(ハ)成就
[一]雨を勘ふ
^なんがゆゑぞ↑雨をもつて言をなすとならば、 おそらくは*取者のいはん。 「もしつねに華と衣とを雨らさば、 また虚空に填ち塞ぐべし。 なにによりてか妨げざらん」 と。 このゆゑに雨をもつて喩へとなす。 雨、 時に適ひぬれば、 すなはち*洪滔 水漫ちて大し の患ひなし。 安楽の報、 あに*累情の物あらんや。
何[ガ]故ゾ以テ↠雨ヲ為ストナラバ↠†言ヲ、恐ラクハ取者ノ*云†ハム。若シ常ニ†雨ラサバ↢花[ト]衣[ト]ヲ↡、亦応シ↣填チ↢塞グ虚空ニ↡、何ニ縁[リ]テカ不ラムト↠妨ゲ。是ノ故ニ以テ↠雨ヲ為ス↠喩ト。雨適ヒヌレバ↠時ニ、則チ无シ↢洪滔 水†漫テ大[シ]他高[ノ]反 之患↡。安楽ノ報豈ニ有[ラム]↢累情之物↡乎。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅸ)(b)(ハ)[二]経証
^*経にのたまはく、 「▲日夜六時に宝衣を雨り宝華を雨る。 宝質柔軟にしてその上を履み践むにすなはち下ること四寸、 足を挙ぐる時に随ひて還復すること故のごとし。 用ゐること訖りぬれば、 宝地に入ること水の坎に入るがごとし」 と。
経ニ言ハク、「日夜六時ニ雨リ↢宝衣ヲ↡雨ル↢宝華ヲ↡。†宝質柔軟ニシテ履ミ↢践ムニ其ノ上ヲ↡則チ下ルコト四寸、随[ヒ]テ↢挙グ[ル]↠足[ヲ]時ニ↡還復スルコト如シ↠故ノ。用ヰルコト訖リヌレバ入[ル]コト↢宝地ニ↡如シ[ト]↢水ノ入ルガ↟坎ニ」。
^このゆゑに 「雨華衣荘厳 無量香普薫」 といへり。
是ノ故ニ†言ヘリ↢「雨花衣荘厳、无量香普薫ト」↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅹ)【光明功徳】
(a)牒偈
【19】 ^▲仏慧明浄日 除世痴闇冥
仏*恵明浄ナルコト日ノゴトク‡ 除ク↢世ノ痴闇冥ヲ↡
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅹ)(b)釈義
(イ)句名を標す
^0069▼この二句は荘厳光明功徳成就と名づく。
此ノ二句†ヲ名ク↢荘厳光明功徳成就ト↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅹ)(b)(ロ)本願
[一]選捨の境
^仏本なんがゆゑぞこの荘厳を興したまへる。 ある国土を見そなはすに、 また*項背に*日光ありといへども愚痴のために闇まさる。
仏本何ガ故ゾ興†シタマヘル↢此ノ荘厳ヲ↡。見[ソナハ]スニ↢有ル国土ヲ↡、雖モ↢復項背ニ日光アリト↡而為ニ↢愚痴ノ↡所↠闇マサ。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅹ)(b)(ロ)[二]摂取の願
^このゆゑに▼願じてのたまはく、 「わが国土のあらゆる光明、 よく痴闇を除きて仏の智慧に入り、 *無記の事をなさざらしめん」 と。
是ノ故ニ願ジテ言ハク、†使メムト↧我ガ国土ノ所有ノ光明、能ク除[キ]テ↢痴闇ヲ↡入リ↢仏ノ智†恵ニ↡、不ラ↞為サ↢无記之事ヲ↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅹ)(b)(ハ)成就
[一]除世闇冥
^◆またいはく、 安楽国土の光明は如来の智慧の報より起るがゆゑに、 よく世の闇冥を除く。
亦云ク、安楽国土ノ光明ハ従リ↢如来ノ智†恵0465ノ報↡起ルガ故ニ、能ク除ク[ト]↢世ノ闇冥ヲ↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅹ)(b)(ハ)[二]経証
^¬経¼ (維摩経) にのたまはく、 「あるいは仏土あり。 光明をもつて仏事をなす」 と。 すなはちこれはこれなり。
¬経ニ¼言ハク、「或[イ]ハ有リ↢仏土↡。以テ↢光明ヲ↡為ス[ト]↢仏事ヲ↡」。即0361[チ]是ハ此也。
^このゆゑに 「仏慧明浄日 除世痴闇冥」 といへり。
*是ノ故ニ†言ヘリ↢「仏*恵明浄日、除世痴闇冥ト」↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅺ)【妙声功徳】
(a)牒偈
【20】 ^▲↓梵↓声悟深遠 ↓微↓妙聞十方
†梵声悟ラシムルコト深遠ニシテ 微妙ナリ聞ユ↢十方ニ↡
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅺ)(b)釈義
(イ)句名を標す
^この二句は荘厳妙声功徳成就と名づく。
此ノ二句ハ名ク↢荘厳妙声功徳成就ト↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅺ)(b)(ロ)本願
[一]選捨の境
^仏本なんがゆゑぞこの願を興したまへる。 ある国土を見そなはすに、 善法ありといへども名声遠からず。 名声ありて遠しといへどもまた*微妙ならず。 名声ありて妙遠なれども、 また*物を悟らしむることあたはず。
仏本何ガ故ゾ興†シタマヘル↢此ノ願ヲ↡。見[ソナハ]スニ↢有ル国土ヲ↡、雖モ↠有[リ]ト↢善法↡而名声不↠遠カラ。有[リ]テ↢名声↡雖モ↠遠[シ]ト復不↢微妙ナラ↡。有[リ]テ↢名声↡†妙遠ナレドモ復不↠能ハ↠悟†ラシムルコト↠物ヲ。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅺ)(b)(ロ)[二]摂取の願
^このゆゑにこの荘厳を起したまへり。
是ノ故ニ起シタマヘリ↢此ノ荘厳ヲ↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅺ)(b)(ハ)成就
[一]梵を釈す
^天竺国 (印度) には浄行を称して 「梵行」 となす。 *妙辞を称して 「梵言」 となす。 かの国には梵天を貴重すれば、 多く 「↑梵」 をもつて讃をなす。 またいはく、 *中国の法、 梵0070天と通ずるがゆゑなり。
天竺国ニハ称シテ↢浄行ヲ↡為ス↢梵行ト↡。称シテ↢妙辞コトバヲ↡為ス↢梵言ト↡。彼ノ国ニ[ハ]貴↢重スレバ梵天ヲ↡、多ク以テ↠梵ヲ為ス↠讃ヲ。亦言[ク]、中国ノ法与↢梵天↡通ズルガ故也。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅺ)(b)(ハ)[二]声を釈す
^「↑声」 とは名なり。 名はいはく、 安楽土の名なり。
「声[ト]」者名也。名ハ謂ク安楽土ノ名ナリ。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅺ)(b)(ハ)[三]経証
^*経にのたまはく、 「▲もし人ただ安楽浄土の名を聞きて往生を欲願するに、 また願のごとくなることを得」 と。 これは名の物を悟らしむる証なり。
経ニ言ハク、「若シ人但聞[キ]テ↢安楽浄土之名ヲ↡欲↢願スルニ往生ヲ↡、亦得ト‡↠如クナルコトヲ↠願ノ」。此ハ名ノ悟†ラシムル↠物ヲ之証也。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅺ)(b)(ハ)[四]論証
^▼¬釈論¼ (*大智度論・意) にいはく、 「かくのごとき浄土は三界の所摂にあらず。 なにをもつてこれをいふとならば、 欲なきがゆゑに欲界にあらず。 *地居なるがゆゑに色界にあらず。 色あるがゆゑに無色界にあらざればなり。 けだし菩薩の*別業の致すところのみ」 と。
¬釈論ニ¼言ハク、「如[キ]‡↠斯[ク]ノ浄土ハ非ズ↢三界ノ所摂ニ↡。何ヲ以テ言フトナラバ↠之ヲ、无キガ↠欲故ニ非ズ↢欲界ニ↡。地居ナルガ故ニ非ズ↢色界ニ↡。有ルガ↠色故ニ非†ザレバナリ↢无色界ニ↡。蓋シ菩薩ノ別業ノ所↠致ス耳ト」。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅺ)(b)(ハ)[五]微妙を釈す
^有を出でてしかうして有なるを 「有を出でて」 とは、 いはく、 三有を出づるなり。 「しかうして有なる」 とはいはく、 浄土の有なり ↑微といふ。 名よく開悟せしむるを↑妙 妙は好なり。 名をもつて、 よく物を悟らしむるゆゑに妙と称す といふ。
出[デ]テ↠有ヲ而[シ]テ有ナルヲ曰フ↠微[ト]。出↠有[ト]者、謂ク出†ヅルナリ↢三*有ヲ↡。而[シ]テ有[ト]者、謂ク浄土ノ有也 名能ク開悟†セシムルヲ曰フ↠妙ト。妙ハ好也。以テ↠名ヲ能ク†悟ラシムル↠物ヲ故ニ称ス↠妙ト
^このゆゑに 「梵声悟深遠 微妙聞十方」 といへり。
是ノ故ニ†言ヘリ↢「梵声悟深遠、微妙聞十方ト」↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅻ)【主功徳】
(a)牒偈
【21】 ^▲↓正覚阿弥陀 法王善↓住持
正覚ノ阿弥陀 法王善ク住持シタマヘリ‡
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅻ)(b)釈義
(イ)句名を標す
^この二句は荘厳主功徳成就と名づく。
此ノ二句ハ名[ク]↢荘厳主功徳成就ト↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅻ)(b)(ロ)本願
[一]選捨の境
^仏本なんがゆゑぞこの願を興したまへる。 ある国土を見そなはすに、 羅刹君となれば、 すなはち*率土あひ噉す。 *宝輪、 殿に駐 馬を立む まればすなはち*四域虞ひなし。 これを風の靡くに譬ふ。 あに本なからんや。
仏本何ガ故ゾ興†シタマヘル↢此[ノ]願ヲ↡。見[ソナハ]スニ↢有ル国土ヲ↡、†羅刹為0466レバ↠君ト則[チ]率土†相噉ズ。宝輪駐†マレバ↠ 立[メル]↠馬[ヲ]長句[ノ]反 殿ニ則[チ]四域无シ↠†虞。譬フ↢之ヲ風ノ靡クニ↡。豈ニ无[カ]ラム↠本耶。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅻ)(b)(ロ)[二]摂取の願
^このゆゑに願を興したまへり。 「願はくはわが国土にはつねに0071法王ましまして、 法王の善力に住持せられん」 と。
是0362ノ故ニ興シタマヘリ↠願ヲ。願[ク]ハ我ガ国土ニハ常ニ有シテ↢法王↡、法王ノ善力ニ之所レム[ト]↢住持セ↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅻ)(b)(ハ)成就
^▽「↑住持」 とは、 ▼*黄鵠、 子安を持てば、 千齢かへりて起り、 ▼魚母、 子を念持すれば、 * 夏水ありて冬水なきをといふ を経て壊せざるがごとし。
「住持[ト]」者如シ↧黄鵠持テバ↢子安†ヲ↡、千齢更[リ]テ起†リ、魚母念↢持スレバ子ヲ↡、逕テ↠ヲ不ルガ↞壊[セ]。夏有[リ]テ↠水冬无[キ]ヲ↠水曰フ↠[ト]火*岳[ノ]反
^安楽国は ˆ阿弥陀仏のˇ ↑正覚のためによくその国を持せらる。 あに正覚の事にあらざることあらんや。
安楽国ハ為ニ↢正覚ノ↡善ク持†セラル↢其ノ国ヲ↡。豈ニ有[ラ]ム↠非[ザ]ルコト↢正覚ノ事[ニ]↡耶。
^このゆゑに 「正覚阿弥陀 法王善住持」 といへり。
是ノ故ニ†言ヘリ↢「正覚阿弥陀、法王善住持ト」↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅼ)【眷属功徳】
(a)牒偈
【22】 ^▲如来浄華衆 正覚華化生
如来浄華ノ衆ハ 正覚ノ花ヨリ化生ス
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅼ)(b)釈義
(イ)句名を標す
^この二句は荘厳眷属功徳成就と名づく。
此ノ二句ハ名ク↢荘厳眷属功徳成就ト↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅼ)(b)(ロ)本願
[一]選捨の境
^仏本なんがゆゑぞこの願を興したまへる。 ある国土を見そなはすに、 あるいは*胞血をもつて身器となす。 あるいは糞尿をもつて生の元となす。 あるいは*槐棘の高き圻より猜狂の子を出す。 あるいは*竪子が婢腹より*卓犖の才を出す。 *譏誚これによりて火を懐き、 *恥辱これによりて氷を抱く。
仏本何ガ故ゾ興†シタマヘル↢此ノ願ヲ↡。見[ソナハ]スニ↢有ル国土ヲ↡、或[イ]ハ以テ↢胞血ヲ↡為ス↢身器ト↡。或[イ]ハ以テ↢糞*屎ヲ↡為ス↢生ノ元ト↡。或[イ]ハ槐棘ノ高キ†圻ヨリ出ス↢猜ソネム狂 クルフ 之子[ヲ]↡。或[イ]ハ竪子ガ婢腹ヨリ出ス↢卓*犖スグレタルコト零角[ノ]反 之才ヲ↡。譏ソシリ 誚ソシル才召[ノ]反 由[リ]テ↠之ニ懐キ↠火ヲ、恥ハヂ辱ハヅ †縁リテ↠以テ抱ク↠氷ヲ。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅼ)(b)(ロ)[二]摂取の願
^ゆゑに願じてのたまはく、 「わが国土にはことごとく如来浄華のなかより生じて、 眷属平等にして*与奪路なからしめん」 と。
†所以ニ願ジテ言ハク、使メム[ト]↧我ガ国土ニハ悉ク於リ↢如来浄花ノ中↡生ジテ、眷属平等ニシテ与奪无[カ]ラ↞路。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅼ)(b)(ハ)成就
^このゆゑに 「如来浄華衆 正覚華化生」 といへり。
*是ノ故ニ†言ヘリ↢「如来浄花衆正覚花化生ト」↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅽ)【受用功徳】
(a)牒偈
【23】 ^▲↓愛楽仏法味 ↓禅↓三昧為食
愛↢楽シ仏法ノ味ヲ↡ 禅三昧ヲ為ス‡↠食ト
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅽ)(b)釈義
(イ)句名を標す
^この二句は荘厳受用功徳成就と名づく。
此ノ二句ハ名ク↢荘厳受用功徳成就ト↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅽ)(b)(ロ)本願
[一]選捨の境
^仏本なんがゆゑぞこの願を興したまへ0072る。 ある国土を見そなはすに、 あるいは巣を探りて卵を破り、 *饛 食を盛り満ちたる貌なり 饒 飽なり、 多し の饍となす。 あるいは*沙を懸けて帒を指すをあひ慰むる方となす。 ああ、 諸子実に痛心すべし。
仏本何ガ故ゾ興†シタマヘル↢此ノ願ヲ↡。見[ソナハ]スニ↢有ル国土ヲ↡、或[イ]ハ探リテ↠巣ヲ破リ↠卵ヲ、為ス↢饛アヂワイ盛[リ]↠食[ヲ]満[チタル]貌[ナリ]*亡公[ノ]反 饒ユタカノ 飽也多[シ]人消[ノ]反 之饍ト↡。或[イ]ハ懸ケテ↠沙ヲ指ス[ヲ]↠帒ヲ為ス↢相†慰ムル之方ト↡。嗚0467呼諸子実ニ可シ↢痛心ス↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅽ)(b)(ロ)[二]摂取の願
^このゆゑに大悲の願を興したまへり。 「願はくはわが国土、 仏法をもつて、 禅定をもつて、 三昧をもつて食となして、 永く他食の労ひを絶たん」 と。
是ノ故ニ興シタマヘリ↢大悲ノ願ヲ↡。願[ク]ハ我ガ国土、以テ‡↢仏法ヲ↡、以テ‡↢禅定ヲ↡、以テ↢三昧0363ヲ↡為シテ↠食ト、永ク絶タム[ト]↢他食之*労ヲ↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅽ)(b)(ハ)成就
[一]初句を釈す
^「↑愛楽仏法味」 とは、 日月灯明仏、 ¬*法華経¼ を説きしに六十小劫なり。 時会の聴者また一処に坐して六十小劫なるも食のあひだのごとしと謂ふ。 一人としてもしは身、 もしは心をして*懈惓を生ずることあることなきがごとし。
「愛↢楽ス仏法ノ味ヲ↡[ト]」者、†如シ↧日月灯明仏説キシニ↢¬法華経ヲ¼↡六十小劫ナリ、時会ノ聴者亦坐シテ↢一処ニ↡六十小劫†ナルモ謂フ↠如シト↢食[ノ]*項ノ↡、无キガ↞有[ル]コト↣一人トシテ若[シ]ハ身、若[シ]ハ心ヲ而生ズルコト↢懈惓[ヲ]↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅽ)(b)(ハ)[二]後句を釈す
^「↑禅定をもつて食となす」 とは、 いはく、 もろもろの大菩薩はつねに三昧にありて他の食なし。 「↑三昧」 とは、 かのもろもろの人天、 もし食を須ゐる時、 *百味の嘉餚羅列して前にあり。 眼に色を見、 鼻に香りを聞ぎ、 身に*適悦を受けて自然に飽足す。 訖已りぬれば化して去り、 もし須ゐるにはまた現ず。 ▲その事、 ¬経¼ (大経・上) にあり。
「以テ↢禅定ヲ↡為スト‡↠食ト」者、謂ク諸ノ大菩薩ハ常ニ在[リ]テ↢三昧[ニ]↡无†シ↢他ノ食↡也。「三昧[ト]」者、彼ノ諸ノ人天、若シ須ヰル↠食ヲ時、百味ノ嘉餚羅列シテ在リ↠前ニ。眼ニ見↠色ヲ、鼻ニ聞ギ↠香ヲ、*身ニ受[ケ]テ↢適悦ヲ↡自然ニ飽足ス。訖已リヌレバ化シテ去リ‡、若シ須ヰルニハ復現ズ。其ノ事在リ↠¬経ニ¼。
^このゆゑに 「愛楽仏法味 禅三昧為食」 といへり。
是ノ故ニ†言ヘリ↢「愛楽仏法味、禅三昧為食ト」↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅾ)無諸難功徳
(a)牒偈
【24】 ^▲永離↓身↓心悩 受楽常無間
永ク離[レ]‡↢身心ノ悩ヲ↡ 受[クル]コト↠楽[ミ]ヲ常ニ[シテ]无シ‡↠間
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅾ)(b)釈義
(イ)句名を標す
^この二句は荘厳無諸難功徳成就と名づく。
此ノ二句ハ名ク↢荘厳无諸難功徳成就ト↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅾ)(b)(ロ)本願
[一]選捨の境
^仏本なんがゆゑぞこの願を興したま0073へる。 ある国土を見そなはすに、 あるいは朝には*袞寵に預びて、 夕には*斧鉞に惶く。 あるいは幼くしては*蓬藜に捨てられ、 長じては*方丈を列ぬ。 あるいは*鳴笳して出づることをいひ、 麻絰して還ることを催す。 かくのごとき等の種々の*違奪あり。
仏本何ガ故ゾ興†シタマヘル↢此ノ願ヲ↡。見[ソナハ]スニ↢有ル国土ヲ↡、或[イ]ハ朝ニハ預[リ]テ↢*袞*寵ニ↡、夕ニハ惶ク↢斧オノ 鉞マサカリニ↡。或[イ]ハ幼クシテハ†捨テラレ↢蓬藜ニ↡、長ジテハ列ヌ↢方丈†ニ↡。或[イ]ハ鳴ラシテ↠笳ヲアシノフヱ†道シ、出シテ↠†麻ヲ*歴*経シテ催ス↠還ルコトヲ。有リ↢如キ↠是[クノ]等ノ種種ノ違奪↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅾ)(b)(ロ)[二]摂取の願
^このゆゑに願じてのたまはく、 「わが国土は安楽相続して畢竟じて間なからしめん」 と。
是ノ故ニ†願ジテ言ハク、使メ[ム]ト↢我ガ国土ハ安楽相続シテ畢竟ジテ无[カ]ラ↟間。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅾ)(b)(ハ)成就
^「↑身悩」 とは飢渇・寒熱・殺害等なり。 「↑心悩」 とは是非・得失・三毒等なり。
「身悩[ト]」者飢渇・寒熱・殺害等也。「心悩[ト]」者是非・得失・三毒等也。
^このゆゑに 「永離身心悩 受楽常無間」 といへり。
是ノ故ニ†言ヘリ↢「永離身心悩、受楽常无間ト」↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅿ)【大義門功徳】
(a)牒偈
【25】 ^▲大乗善根界 等無譏嫌名 *女人及根欠 ▼↓二乗種不生
大乗善根ノ界[ハ] 等[シ]クシテ无シ↢譏嫌ノ名↡ 女人及[ビ]根欠 二乗ノ種不‡↠生ゼ
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅿ)(b)釈義
(イ)正釈
[一]句名を標す
^この四句は荘厳大義門功徳成就と名づく。 「門」 とは大義に通ずる門なり。 「大義」 とは大乗の*所以なり。 人、 城に造りて門を得れば、 すなはち入るがごとし。 もし人安楽に生ずることを得れば、 これすなはち大乗を成就する門なり。
此0468ノ四句ハ名ク↢荘厳大義門功徳成就ト↡。門[ト]者†通ズル↢大義ニ↡之門也。大義[ト]者大乗0364ノ所以也。如シ↢人†造リテ↠城ニ得レバ↠門ヲ則[チ]入ルガ↡。若シ人得レ↠生[ズルコト]ヲ↢安楽ニ↡者、是則[チ]†成↢就スル大乗ヲ↡之門也。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅿ)(b)(イ)[二]本願
[Ⅰ]選捨の境
^仏本なんがゆゑぞこの願を興したまへる。 ある国土を見そなはすに、 仏如来・賢聖等の衆ましますといへども、 国、 濁せるによるがゆゑに、 *一を分ちて三と説く。 あるいは*眉を拓くをもつて誚りを致し、 あるいは*指語によりて譏りを招く。
仏本何ガ故ゾ興†シタマヘル↢此ノ願ヲ↡。見[ソナハ]スニ↢有ル国土ヲ↡、雖モ↠†有スト↢仏如来賢聖等ノ衆↡、由[ル]ガ↢国濁セルニ↡故ニ、分[チ]テ↠一ヲ説ク↠三†ト。或[イ]ハ†以テ↠拓クヲ↠ 聴各[ノ]反 眉ヲ致シ↠誚ヲ、或[イ]ハ縁[リ]テ↢指語ニ↡招ク↠譏ヲ。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅿ)(b)(イ)[二][Ⅱ]摂取の願
^このゆゑに願じてのたまはく、 「わが国土をしてみなこれ大乗一味、 平等一味ならしめん。 *根敗の種子畢竟じて生ぜじ、 女人・*残欠の名字また断たん」 と0074。
是ノ故ニ願ジテ言ハク、使メム‡↢我ガ国土†ヲシテ皆是大乗一味‡、*平等*一味ナラ↡。根敗ヤブルノ種子畢竟ジテ不↠生ゼ、女人残欠ノ名字亦断タムト。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅿ)(b)(イ)[三]成就
^このゆゑに 「大乗善根界 等無譏嫌名 女人及根欠 二乗種不生」 といへり。
是ノ故ニ†言ヘリ↢「大乗善根界、等无譏嫌名、女人及根欠、二乗種不生ト」↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅿ)(b)(ロ)問答
[一]声聞の有無を料簡す
[Ⅰ]問
[ⅰ]証1
^問ひていはく、 *王舎城所説の ¬無量寿経¼ (上・意) を案ずるに、 法蔵菩薩の四十八願のなかにのたまはく、 「▲たとひわれ仏を得んに、 国のうちの声聞、 よく計量してその数を知ることあらば、 正覚を取らじ」 (第十四願) と。 これ声聞ある一の証なり。
問[ヒテ]曰[ク]、案ズルニ↢王舎城所説ノ¬无量寿経ヲ¼↡、法蔵菩薩[ノ]四十八願ノ中ニ言ハク、「設[ヒ]我得[ム]ニ↠仏[ヲ]、国ノ中ノ声聞†有ラバ↣能ク計量シテ知ルコト↢其ノ数ヲ↡者、不ト↠取ラ↢正覚ヲ↡」。是有ル↢声聞↡一ノ証也。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅿ)(b)(ロ)[一][Ⅰ][ⅱ]証2
^また ¬十住毘婆沙¼ (易行品) のなかに龍樹菩薩、 阿弥陀の讃を造りていはく、 「▲三界の獄を超出して、 目は蓮華葉のごとし。 声聞衆無量なり。 このゆゑに稽首し礼したてまつる」 と。 これ声聞ある二の証なり。
又¬十住毘婆沙ノ¼中ニ龍樹菩薩造[リ]テ↢阿弥陀ノ讃[ヲ]↡云ク、「超↢出シテ三界ノ獄ヲ↡、目ハ如シ↢蓮花葉ノ↡。声聞衆无量ナリ。是ノ故ニ†稽首シ礼シタテマツルト」。是有ル↢声聞↡二ノ証也。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅿ)(b)(ロ)[一][Ⅰ][ⅲ]証3
^また ¬摩訶衍論¼ (大智度論・意) のなかにいはく、 「仏土種々不同なり。 あるいは仏土あり、 もつぱらにこれ声聞僧なり。 あるいは仏土あり、 もつぱらにこれ菩薩僧なり。 あるいは仏土あり、 菩薩・声聞会して僧となす。 阿弥陀の安楽国等のごときはこれなり」 と。 これ声聞ある三の証なり。
又¬摩訶衍論ノ¼中ニ言ク、「仏土種種不同ナリ。或[イ]ハ有リ↢仏土↡、純ニ是声聞僧ナリ。或[イ]ハ有リ↢仏土↡、純ニ是菩薩僧ナリ。或[イ]ハ有リ↢仏土↡、菩薩・声聞会シテ為ス↠僧ト。如†キハ↢阿弥陀ノ安楽国等ノ↡是也[ト]」。是有ル↢声聞↡三ノ証也。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅿ)(b)(ロ)[一][Ⅰ][ⅳ]正しく難ず
^諸経のなかに安楽国を説くところありて、 多く声聞ありとのたまひて声聞なしとのたまはず。 声聞はすなはちこれ二乗の一なり。 ¬論¼ (浄土論) に 「▲↓乃至無二乗名」 といへり。 これいかんが*会する。
諸経ノ中ニ†有リテ↧説ク↢安楽国ヲ↡処↥、多ク言ヒテ↠有[リ]ト↢声聞↡不↠言ハ↠无シト↢声聞↡。声聞ハ即[チ]是二乗之一ナリ。¬論ニ¼†言ヘリ↣「乃至无[シ]ト↢二乗0469ノ名↡」。此云何ガ会[セ]ム‡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅿ)(b)(ロ)[一][Ⅱ]答
[ⅰ]浄土には生ぜざるを成ず
[a]正答
^答へていはく、 理をもつてこれを推するに、 安楽浄土には二乗0075あるべからず。 なにをもつてこれをいふとならば、 それ病あるにはすなはち薬あり。 *理数の常なり。
答[ヘテ]曰[ク]、以テ↠理ヲ推スルニ↠之ヲ、安楽浄土ニハ不↠応カラ↠有ル↢二乗↡。何[ヲ]以テ言0365フトナラバ↠之ヲ、夫レ有ルニハ↠病則[チ]有リ↠薬。理数之常也。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅿ)(b)(ロ)[一][Ⅱ][ⅰ][b]引証
^¬法華経¼ (意) にのたまはく、 「釈迦牟尼如来、 五濁の世に出でたまへるをもつてのゆゑに、 一を分ちて三となす」 と。 浄土すでに五濁にあらず。 三乗なきことあきらかなり。
¬法花経ニ¼言ハク、「釈迦牟尼如来以[テ]ノ↠出[デタマヘル]ヲ↢五濁[ノ]世ニ↡故ニ分[チ]テ↠一ヲ為ス[ト]↠三ト」。浄土既ニ非ズ↢五濁ニ↡。无キコト↢三乗↡明カナリ矣。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅿ)(b)(ロ)[一][Ⅱ][ⅱ]他方の来生を明す
[a]総じて経論の説は所由あるを明す
[イ]二乗浄土に生ずべき道理を立つ
^¬法華経¼ (意) にのたまはく、 「もろもろの声聞、 この人いづこにおいてか解脱を得ん。 ただ虚妄を離るるを名づけて解脱となす。 この人実にいまだ一切解脱を得ず。 いまだ*無上道を得ざるをもつてのゆゑなり」 と。 あきらかにこの理を推するに、 阿羅漢すでにいまだ一切解脱を得ず。 かならず生ずることあるべし。 この人更りて三界に生ぜず。 三界のほかに、 浄土を除きてまた*生処なし。 ここをもつてただ浄土に生ずべし。
¬法花経ニ¼†噵ハク、「諸ノ声聞、是ノ人於テ[カ]↠何ニ而得ム↢解脱ヲ↡。但離[ル]ルヲ↢虚妄ヲ↡名[ケ]テ為ス↢解脱ト↡。是ノ人実ニ未ズ ダ↠得↢一切解脱ヲ↡。以[テ]ノ↠未ダルヲ↠得↢无上道ヲ↡故ナリ[ト]」。*覈ニ推スルニ↢此ノ理ヲ↡、阿羅漢既ニ未ズ ダ↠得↢一切解脱ヲ↡。必ズ応シ↠有[ル]↠生[ズルコト]。此ノ人更リテ不↠生ゼ↢三界ニ↡。三界ノ外ニ、除[キ]テ↢浄土ヲ↡更无シ↢生処↡。是ヲ*以テ唯†応シ↢於浄土ニ生ズ↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅿ)(b)(ロ)[一][Ⅱ][ⅱ][a][ロ]旧名を存するものなるを明す
^「声聞」 といふがごときは、 これ他方の声聞来生せるを、 本の名によるがゆゑに称して声聞となす。 *天帝釈の人中に生るる時、 *憍尸迦を姓とせり。 後に天主となるといへども、 仏 (釈尊)、 人をしてその由来を知らしめんと欲して、 帝釈と語らひたまふ時、 なほ憍尸迦と称するがごとし。 それこの類なり。
†如キ↠言フガ↢声聞ト↡者、是他方ノ声聞来生セルヲ仍ルガ↢本[ノ]名ニ↡故ニ称シテ為ス↢声聞ト↡。如シ↧天帝釈ノ生ルヽ↢人中ニ↡時、姓トセリ↢憍尸迦ヲ↡、後ニ雖モ↠為ルト↢天主ト↡、仏欲シテ↠使メムト↣人ヲシテ知ラ↢其ノ由来ヲ↡、与↢帝釈↡語ラヒタマフ時、猶称スルガ↦憍尸迦ト↥。其レ此ノ類也。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅿ)(b)(ロ)[一][Ⅱ][ⅱ][b]別して今論の二乗不生の文を会す
[イ]正しく論意を弁ず
^またこの ¬論¼ (浄土論) にはただ 「↑二乗種不生」 といへり。 いはく安楽国に二乗の種子を生ぜずとなり。 またなんぞ二乗の来生を妨げんや。
又此[ノ]¬論ニハ¼但†言ヘリ↢「二乗ノ種不↟生ゼ」ト↡。謂ク安楽国ニ不トナリ↠生ゼ↢二乗ノ種子ヲ↡。亦何ゾ妨ゲム↢二乗ノ来生ヲ↡耶。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅿ)(b)(ロ)[一][Ⅱ][ⅱ][b][ロ]喩に約して重ねて示す
^たとへば*橘栽は*江北に生0076ぜざれども、 *河洛の*菓肆にまた橘ありと見るがごとし。 また鸚鵡は*壟西を渡らざれども、 *趙魏の*架桁にまた鸚鵡ありといふ。 この二の物、 ただその種渡らずといふ。 かしこに声聞のあることまたかくのごとし。 かくのごとき解をなさば、 経論すなはち会しぬ。
譬[ヘ]バ如シ↧橘†栽ハ不レドモ↠生ゼ↢江北ニ↡、河洛ノ菓肆ニ亦見ルガ↞有[リ]ト↠橘。又言フ↧鸚鵡ハ不レドモ↠渡ラ↢*壟西†ヲ↡、趙魏†ノ架桁ニ亦有[リ]ト↦鸚鵡↥。此ノ二ノ物但言フ↢其ノ種‡不ト↟†渡ラ。彼ニ有[ル]コト↢声聞ノ↡亦如シ↠是[ク]ノ。作†サバ↢如キ↠是[ク]ノ解ヲ↡、経論則チ会シヌ。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅿ)(b)(ロ)[二]離名譏嫌を料簡す
[Ⅰ]問
^問ひていはく、 名はもつて事を召く。 事あればすなはち名あり。 安楽国にはすでに*二乗・女人・根欠の事なし。 またなんぞまたこの三の名なしといふべけんや。
問[ヒテ]曰[ク]、名ハ以テ召ク↠事ヲ。有レバ↠事乃[チ]有リ↠名。安楽国ニハ既ニ无シ↢二乗・女人・根欠之事↡。亦何ゾ†須ヰム↢復言フヲ↟无[シ]ト↢此ノ三ノ名↡耶。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅿ)(b)(ロ)[二][Ⅱ]答
^答へていはく、 軟心の菩薩のはなはだしくは勇猛ならざるを、 譏りて声聞といふがごとし。 人の*諂曲なると、 あるいはまた*儜弱なるを、 譏りて女人といふがごとし。 また眼あきらかなりといへども事を識らざるを、 譏りて盲人といふがごとし。 また耳聴くといへども義を聴きて解らざるを、 譏りて聾人といふがごとし。 また舌語ふといへども*訥口蹇吃なるを、 譏りて人といふがごとし。
答[ヘテ]曰[ク]、如シ↧†軟心ノ菩薩[ノ]不ルヲ↢甚†シクハ勇猛ナラ↡、譏リテ言フガ↦声0470聞ト↥。如シ↣人ノ諂曲ナルト、或[イ]ハ復*ヨハシ弱ヨハシナルヲ、譏リテ言[フ]ガ↢女*人ト↡。又如シ↣眼雖モ↠明[カ]ナリト而不ルヲ↠識ラ↠事ヲ、*譏リテ言0366[フ]ガ↢盲人ト↡。又如シ↣耳雖モ↠†聴クト而聴[キ]テ↠義ヲ不ルヲ↠解ラ、譏リテ言フガ↢†聾人ト↡。又如シ↣舌雖モ↠語フト而*訥コトヾモリ口††吃ナルヲ、譏リテ言[フ]ガ↢†人ト↡。
^かくのごとき等ありて、 根具足せりといへども*譏嫌の名あり。 このゆゑにすべからく 「↑乃至名なし」 といふべし。 浄土にはかくのごとき等の*与奪の名なきことあきらかなり。
†有[リ]テ↢如キ↠是[クノ]等↡、根雖[モ]↢具足セリト↡而有リ↢譏嫌之名↡。是ノ故ニ†須クシ↠言フ↢乃至无[シ]ト↟名。明カナリ↣浄土ニハ无キコト↢如キ↠是[クノ]等ノ与奪之名↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅿ)(b)(ロ)[三]声聞の名有るを料簡す
[Ⅰ]問
^▼問ひていはく、 法蔵菩薩の△本願 (第十四願)、 および龍樹菩薩の△所讃 (易行品) を0077尋ぬるに、 みなかの国に声聞衆多なるをもつて*奇となすに似たり。 これなんの義かある。
問[ヒテ]曰[ク]、尋ヌルニ↢法蔵菩薩ノ本願及[ビ]龍樹菩薩ノ所讃ヲ↡、皆似タリ↧以テ↢彼ノ国ニ声聞衆多ナルヲ↡†為スニ↞*奇ト。此有ル‡↢何ノ義カ↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ⅿ)(b)(ロ)[三][Ⅱ]答
[ⅰ]法
^◆答へていはく、 声聞は*実際をもつて証となす。 計るにさらによく仏道の根芽を生ずべからず。 しかるに仏、 本願の不可思議の神力をもつて、 摂してかしこに生ぜしめ、 かならずまさにまた神力をもつてその*無上道心を生ずべし。
答[ヘテ]曰[ク]、声聞ハ以テ↢実際ヲ↡為ス↠証ト。計ルニ不↠応[カ]ラ↣更ニ能ク生ズ↢仏道ノ根*牙ヲ↡。而[ルニ]仏以テ↢本願ノ不可思議ノ神力ヲ↡、摂シテ令メ↠生ゼ↠彼ニ、必[ズ]当ベ ニシ↧復以テ↢神力ヲ↡生ズ↦其ノ无上道心ヲ↥。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(16)(b)(ロ)[三][Ⅱ][ⅱ]譬
^▼たとへば*鴆鳥の水に入れば*魚蚌ことごとく死し、 *犀牛これに触るれば死せるものみな活るがごとし。 かくのごとく生ずべからずして生ず。 ゆゑに奇とすべし。 ▼しかるに五不思議のなかに、 仏法もつとも不可思議なり。 仏よく声聞をしてまた無上道心を生ぜしむ。 まことに不可思議の至りなり。
譬[ヘバ]如シ↢鴆鳥ノ入[レ]バ↠水ニ魚*蚌ハマグリ咸ク死†シ、犀牛触[ル]レバ↠之ニ死セル者皆活ルガ↡。如†ク↠此[ク]ノ†不シテ↠応カラ↠生[ズ]而生ズ。†所以ニ可シ↠奇トス。然[ル]ニ五不思議ノ中ニ、仏法最[モ]不可思議ナリ。仏能ク*使ム↣声聞ヲシテ復生ゼ↢无上道心ヲ↡。真ニ不可思議之至[リ]也。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ↀ)【一切所求満足功徳】
(a)牒偈
【26】 ^▲衆生所願楽 一切能満足
衆生ノ所↢願楽スル↡ 一切能ク満足ス‡
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ↀ)(b)釈義
(イ)句名を標す
^この二句は荘厳一切所求満足功徳成就と名づく。
此ノ二句ハ名ク↢荘厳一切所求満足功徳成就ト↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ↀ)(b)(ロ)本願
[一]選捨の境
^仏本なんがゆゑぞこの願を興したまへる。 ある国土を見そなはすに、 あるいは名高く位重くして、 *潜処するに由なし。 あるいは人凡に性鄙しくして、 出でんと悕ふに路なし。 あるいは*修短、 業に繋がれて、 制することおのれにあらず。 *阿私陀仙人のごとき類なり。 かくのごとき等の、 *業風のために吹かれて自在を得ざることあり。
仏本何ガ故ゾ興†シタマヘル↢此[ノ]願ヲ↡。見[ソナハ]スニ↢有ル国土ヲ↡、或[イ]ハ名高ク位重クシテ*潜カハル処スルニ无シ↠由。或[イ]ハ人†凡ニ性鄙シクシテ悕フニ↠出[デム]ト靡シ↠路。或[イ]ハ修ナガシ短†繋ガレテ↠業ニ制†スルコト不↠在ラ↠己ニ。如キ‡↢阿私陀仙人ノ↡類也。有リ↧如[キ]↠是[クノ]等ノ、為ニ↢業風ノ↡所テ↠吹カ不[ル]コト↞得↢自在0471ヲ↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ↀ)(b)(ロ)[二]摂取の願
^このゆゑに願じてのたまはく、 「わが国土をしておのおの所求に称ひて、 情願を満足せしめ0078ん」 と。
是ノ故ニ願ジテ言ハク、使メムト↧我ガ国土[ヲシテ]各[ノ]称ヒテ↢所求ニ↡満↦足セ情願ヲ↥。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅰ)(ↀ)(b)(ハ)成就
^このゆゑに 「衆生所願楽 一切能満足」 といへり。
是ノ故ニ†言ヘリ↢「衆生所願楽0367、一切能満足ト」↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅱ)結成
(ⅰ)牒偈
【27】 ^▲是故願生彼 阿弥陀仏国
*是ノ故ニ†願ズ↠生↢[ゼム]ト彼ノ 阿弥陀仏国ニ↡
二 Ⅰ ⅱ a ハ (一)(Ⅱ)(ⅱ)釈義
^この二句は上に十七種荘厳国土成就を観察するは、 願生する所以なることを結成す。 ^器世間清浄を釈すること、 これ上に訖りぬ。
此ノ二句ハ†結↧成ス上ニ観↢察スルハ十七種荘厳国土成就ヲ↡所↦以ナルコトヲ願生スル↥。釈[スル]コト↢器世間清浄ヲ↡、訖リヌ↢之†于上ニ↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)【衆生世間】
(Ⅰ)分章
(ⅰ)正しく章を分つ
【28】^▼次に↑衆生世間清浄を観ず。 この門のなかを分ちて二の別となす。 一には阿弥陀如来の荘厳功徳を観察す。 二にはかのもろもろの↓菩薩の荘厳功徳を観察す。 如来の荘厳功徳を観察するなかに八種あり。 文に至りてまさに目くべし。
次ニ観[ズ]↢衆生世間清浄ヲ↡。此ノ門ノ中†ヲ分[チ]テ為ス↢二ノ別ト↡。一ニ者観↢察ス阿弥陀如来ノ荘厳功徳ヲ↡。二[ニ]者観↢察ス彼ノ諸ノ菩薩ノ荘厳功徳ヲ↡。観↢察スル如来ノ荘厳功徳ヲ↡中ニ有リ↢八種↡。至[リ]テ↠*文ニ当ベ ニシ↠目ク。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅰ)(ⅱ)名義を料簡す【衆生名義】
(a)問
^問ひていはく、 *ある論師、 汎く衆生の*名義を解するに、 それ三有に輪転して衆多の生死を受くるをもつてのゆゑに衆生と名づくと。 いま仏・菩薩を名づけて衆生となす。 この義いかん。
問[ヒテ]曰[ク]、有ル論師、汎ク解スルニ↢衆生ノ名義ヲ↡、以テ[ノ]↧其輪↢転シテ三有ニ↡受[ク]ルヲ↦衆多ノ生死ヲ↥故ニ名ク[ト]↢衆生ト↡。今名[ケ]テ↢仏・菩薩ヲ↡†為ス↢衆生ト↡。是ノ義云何ン‡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)答
^答へていはく、 ¬経¼ (*涅槃経・意) にのたまはく、 「▼一法に無量の名あり、 一名に無量の義あり」 と。 衆多の生死を受くるをもつてのゆゑに名づけて衆生となすがごときは、 これはこれ小乗家の三界のなかの衆生の名義を釈するなり。 大乗家の衆生の名義にはあらず。
答[ヘテ]曰[ク]、¬経ニ¼言ハク、「一法ニ有リ↢无量ノ名↡、一名ニ有リ[ト]↢无量ノ義↡」。如キ↧以[テ]ノ↠受[ク]ルヲ↢衆多ノ生死ヲ↡故ニ名[ケ]テ†為スガ↦衆生ト↥者、此ハ是小乗家ノ釈[スル]ナリ↢三界ノ†中ノ衆生ノ名義ヲ↡。非†ズ↢大乗家ノ衆生ノ名義ニハ↡也。
^大乗家にいふところの衆生とは、 ¬*不増不減経¼ にのたまふがごとし。 「衆生といふはすなはちこれ不生不滅の義なり」 と。 なにをもつてのゆゑに。 もし生あらば生じを0079はりてまた生じ、 *無窮の過あるがゆゑに、 不生にして生ずる過あるがゆゑなり。 このゆゑに無生なり。 もし生あらば滅あるべし。 すでに生なし。 なんぞ滅あることを得ん。 このゆゑに無生無滅はこれ衆生の義なり。
大乗家ニ所ノ↠言フ衆生[ト]者、如シ↢¬不増不*減経ニ¼言フガ↡。「言フ↢衆生ト↡者即[チ]是不生不滅ノ義ナリ[ト]」。何ヲ以[テ]ノ故ニ。若シ有[ラ]バ↠生生ジ已[リ]テ*復生†ジ、有ルガ↢无窮ノ過↡故ニ、有ルガ↢不生ニ而生[ズル]‡過↡故†ナリ。是ノ故ニ无生ナリ。若シ有ラバ↠生可シ↠有ル↠滅。既ニ无シ↠生。何ゾ得ム↠有ルコトヲ↠滅。是ノ故ニ无生无滅ハ是衆0472生ノ義ナリ。
^¬経¼ (維摩経・意) のなかに、 「*五受陰、 通達するに空にして所有なし。 これ苦の義なり」 とのたまふがごとし。 これその類なり。
如シ↧¬経ノ¼中ニ言フガ↦「五受陰、通達スルニ空ニシテ无シ↠所有↡、是*苦ノ義ナリト」↥。斯其ノ類也。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)正釈
(ⅰ)如来荘厳【仏】
(a)正釈
(イ)【座功徳】
[一]牒偈
【29】 ^▲↓無量大宝王 微妙浄華台
0368无量大宝王[ノ] 微妙ノ浄花台†アリ
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(イ)[二]釈義
[Ⅰ]句の名を標す
^この二句は荘厳座功徳成就と名づく。
此ノ二句ハ名ク↢荘厳座功徳成就ト↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(イ)[二][Ⅱ]本願
[ⅰ]選捨の境
^仏本なんがゆゑぞこの座を荘厳したまへる。 ある菩薩を見そなはすに、 *末後の身において、 草を敷きて坐して阿耨多羅三藐三菩提を成じたまふ。 人天の見るもの、 増上の信、 増上の恭敬、 増上の*愛楽、 増上の修行を生ぜず。
仏本何ガ故ゾ荘↢厳シタマヘル此ノ座ヲ↡。見[ソナハ]スニ↢有ル菩薩ヲ↡、於テ↢*末後ノ身ニ↡、敷キ↠草ヲ而坐シテ成†ジタマフ↢阿耨多羅三藐三菩提ヲ↡。人天[ノ]見ル者、不↠生ゼ↢増上ノ信・増上ノ恭敬・増上ノ愛楽・増上ノ修行ヲ↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(イ)[二][Ⅱ][ⅱ]摂取の願
^このゆゑに願じてのたまはく、 「われ成仏する時、 無量の大宝王の微妙の浄華台をして、 もつて仏の座となさしめん」 と。
是ノ故ニ願ジテ言ハク、我成仏セム時、†使メムト↣无量ノ大宝王[ノ]微妙ノ浄花台ヲシテ、以[テ]為サ↢仏ノ坐ト↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(イ)[二][Ⅲ]成就
^「↑無量」 とは、 ¬*観無量寿経¼ にのたまふがごとし。 「▲七宝の地の上に大宝蓮華王の座あり。 ◆蓮華の一々の*葉、 百宝色をなす。 八万四千の*脈あり。 なほ天の画のごとし。 脈に八万四千の光あり。
「无量[ト]」者如シ↢¬観无量寿経ニ¼言フガ↡。「七宝ノ地ノ上ニ有リ↢大宝蓮花王ノ坐↡。蓮花ノ一一ノ葉、作ス↢百宝色ヲ↡。有リ↢八万四千ノ脈↡。†猶如シ↢天ノ画ノ↡。脈ニ有[リ]↢八万四千ノ光↡。
^◆華葉の小さきものは縦広二百五十由旬なり。 かくのごとき華に八万四千の葉あり。 一々の葉のあひだに百億の*摩尼珠王あり、 もつ0080て映飾となす。 一々の摩尼は、 千の光明を放つ。 その光は蓋のごとし。 七宝合成してあまねく地の上に覆ふ。
花葉ノ小キ者ハ縦広二百五十由旬ナリ。如キ‡↠是[クノ]花ニ有リ↢八万四千ノ葉↡。一一ノ葉ノ間ニ有リ↢百億ノ摩尼珠王↡、以テ為ス↢映飾ト↡。一一ノ摩尼[ハ]、放ツ↢千ノ光明ヲ↡。其ノ光[ハ]如シ↠蓋ノ。七宝合成シテ遍ク覆フ↢地ノ上ニ↡。
^◆釈迦毘楞伽宝、 もつてその台となす。 この蓮華台は八万の金剛・甄叔迦宝・梵摩尼宝・妙真珠網、 もつて厳飾となす。
釈迦毘楞伽宝、以テ為ス↢其ノ台ト↡。此ノ蓮花台ハ八万ノ金剛・甄叔迦宝・梵摩尼宝・妙真珠網、以テ為†ス↢*厳飾ト↡。
^◆その台の上において、 自然にして*四柱の宝幢あり。 一々の宝幢は、 八万四千億の須弥山のごとし。 幢の上の宝幔は、 夜摩天宮のごとし。 五百億の微妙の宝珠あり、 もつて映飾となす。
於テ↢其ノ台ノ上ニ↡、自然ニ而有リ↢四柱ノ宝幢↡。一一ノ宝幢[ハ]、如シ↢八万四千億ノ須弥山ノ↡。幢ノ上ノ宝幔[ハ]、如シ↢夜摩天宮ノ↡。有リ↢五百億ノ微妙ノ宝珠↡、以[テ]為ス↢映飾†ト↡。
^◆一々の宝珠に八万四千の光あり。 一々の光、 八万四千の異種の金色をなす。 一々の金光、 安楽宝土に遍す。 処々に変化しておのおの異相をなす。 あるいは金剛台となり、 あるいは真珠網となり、 あるいは雑華雲となる。 十方面において意に随ひて変現し、 仏事を化作す」 と。
一一ノ宝珠ニ有リ↢八0473万四千ノ光↡。一一ノ光作ス↢八万四千ノ異種ノ金色ヲ↡。一一ノ金光遍ス↢安楽宝土ニ↡。処処ニ変化シテ各[ノ]作ス↢異相ヲ↡。或[イ]ハ為リ↢金剛台ト↡、或[イ]ハ作リ↢真珠網ト↡、或[イ]ハ作ル↢雑花†雲ト↡。於0369テ↢十方面[ニ]↡随[ヒ]テ↠意ニ変現シ、†化↢作スト仏事ヲ↡」。
^かくのごとき等の事、 数量に出過せり。 このゆゑに 「無量大宝王 微妙浄華台」 といへり。
如[キ]↠是[クノ]等ノ事、出↢過セリ数量ニ↡。是ノ故ニ†言ヘリ↢「无量大宝王、微妙浄花台ト」↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ロ)【身業功徳】
[一]牒偈
【30】 ^▲相好光一↓尋 ↓色像超群生
相好ノ光一尋†ニシテ 色像超エタマヘリ↢群生ニ↡
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ロ)[二]釈義
[Ⅰ]正釈
[ⅰ]句の名を標す
^この二句は荘厳身業功徳成就と名づく。
此ノ二句ハ名ク↢荘厳身業功徳成就ト↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ]本願
[a]選捨の境
^仏本なんがゆゑぞかくのごとき身業を荘厳したまへる。 ある仏身を見そなはすに、 一丈の光明を受けたり。 人の身光においてはなはだしくは超絶せず。 転輪王の相のごとし。 そもそもまた大きに*提婆達多に同じ。 *減ずるところ唯一なれば、 *阿闍世王をして、 ここをもつて乱0081を懐かしむることを致す。 *刪闍耶等あへて*蟷螂のごとくするも、 あるいはかくのごとき類なり。
仏本何ガ故ゾ荘↢厳†シタマヘル如[キ]↠此[クノ]身業ヲ↡。見[ソナハ]スニ↢有ル仏身ヲ↡、受[ケ]タリ↢一丈ノ光明ヲ↡。於テ↢人ノ身光ニ↡不↢甚†シクハ超絶セ↡。如シ↢転輪王ノ相ノ↡。*抑亦大キニ同ジ↢†提婆達多ニ↡。所↠*減ズル唯*一†ナレバ、致ス↠令ムルコトヲ↢阿闍世王ヲシテ以テ↠茲ヲ懐カ↟乱ヲ。刪闍*耶等‡敢テ如[ク]ス[ルモ]↢蟷蜋ノ↡、或[イ]ハ如†キ↠此[クノ]類也。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ][b]摂取の願
^このゆゑにかくのごとき身業を荘厳したまへり。
是ノ故ニ荘↢厳†シタマヘリ如キ‡↠此[ク]ノ身業ヲ↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ロ)[二][Ⅰ][ⅲ]成就
[a]詁訓
^この間 (中国) の*詁訓を案ずるに、 六尺を↑尋といふ。
案ズルニ↢此ノ間ノ詁訓ヲシヘヲ↡、六尺ヲ曰フ↠尋ト。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ロ)[二][Ⅰ][ⅲ][b]経証
^¬観無量寿経¼ (意) にのたまへるがごとし。 「▲阿弥陀如来の身の高さ六十万億那由他恒河沙由旬なり。 ◆仏の円光は百億の三千大千世界のごとし」 と。
如[シ]↢¬観无量寿経ニ¼言ヘルガ↡。「阿弥陀如来ノ身ノ高サ六十万億那由他恒河沙由旬ナリ。仏ノ円光ハ如シト↢百億ノ三千大千世界ノ↡」。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ロ)[二][Ⅰ][ⅲ][c]尋を勘ふ
^訳者 (菩提流支)、 尋をもつてしていへり。 なんぞそれ晦きや。 *里舎の間の人、 縦横長短を*簡ばず、 ことごとく横に両手の臂を舒べて尋となすといへり。 もし訳者、 あるいはこの類を取りて用ゐて、 阿弥陀如来の、 臂を舒べたまふに准じて言をなす。 ゆゑに一尋と称せば、 円光また径六十万億那由他恒河沙由旬なるべし。
訳者以テ↠尋ヲ而言ヘリ。何ゾ其晦†キ *禾代[ノ]反 乎。里舎ノ間ノ人、不↠簡バ↢縦横長*短ヲ↡、咸ク謂ヘリ↧横ニ舒ベテ↢*両手ノ臂ヲ↡為スト↞尋ト。若シ訳者或[イ]ハ取[リテ]↢此ノ類ヲ↡用[ヰ]テ、*准ジテ↢阿弥陀如来ノ†舒ベタマフニ↟臂ヲ†為ス↠言ヲ。故ニ称セ↢一尋ト↡者、円光亦†応シ↢径六十万億那由他恒河沙由旬ナル↡。
^このゆゑに 「相好光一尋 色像超群生」 といへり。
是ノ故ニ*言ヘリ↢「相好光一尋、色像超群生ト」↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ロ)[二][Ⅱ]問答【法界身義】
[ⅰ]問
^問ひていはく、 ¬観無量寿経¼ にのたまはく、 「▲↓諸仏如来はこれ法↓界↓身なり。 一切衆生の心想のうちに入る。 ◆このゆゑに、 なんぢら↓心に仏を想ふ時、 この心すなはちこれ三十二相・八十随形好なり。 ↓この心作仏す。 ↓この心これ仏なり。 ↓*諸仏正遍知海は心想より生ず」 と。 この義いかん。
▲*問[ヒテ]曰0474[ク]、¬観无量寿経ニ¼言ハク、「諸仏如来ハ是法界身ナリ。入ル↢一切衆生ノ心想ノ中ニ↡。*是ノ故ニ†汝等心ニ想フ↠仏ヲ時、是ノ心即[チ]是三十二相・八十随形好ナリ。是ノ心作仏ス。是ノ心是仏ナリ。諸0370仏正遍知海ハ従[リ]↢心想↡生ズ[ト]」。是ノ義云何[ン]‡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ロ)[二][Ⅱ][ⅱ]答
[a]是法界身を釈す
[イ]名を釈す
^答へていはく、 「↑身」 を*集成と名づく。 「↑界」 を*事別と名づく。
~答[ヘテ]曰[ク]、身ヲ名ク↢集成ト↡。界ヲ名ク↢事別ト↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ロ)[二][Ⅱ][ⅱ][a][ロ]例を引く
^眼界のごときは*根・色・空・明・作意の五0082の因縁によりて生ずるを名づけて眼界となす。 これ*眼ただみづからおのが縁を行じて他縁を行ぜず。 事別なるをもつてのゆゑなり。 耳・鼻等の界もまたかくのごとし。
~†如キハ↢眼界ノ↡†縁リテ↢根・色・空・明・作意ノ五ノ因縁ニ↡生[ズル]ヲ名[ケ]テ為ス↢眼界ト↡。是†眼但自ラ行ジテ↢†己ガ縁ヲ↡不↠行ゼ↢他縁ヲ↡。以[テ]ノ↢事別ナルヲ↡故†ナリ。耳鼻等ノ界モ亦如シ↠是[ク]ノ。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ロ)[二][Ⅱ][ⅱ][a][ハ]正しく釈す
^「↑諸仏如来はこれ法界身なり」 といふは、 「法界」 はこれ衆生の心法なり。 心よく世間・出世間の一切諸法を生ずるをもつてのゆゑに、 心を名づけて法界となす。 法界よくもろもろの如来の相好の身を生ず。 また色等のよく眼識を生ずるがごとし。 このゆゑに仏身を法界身と名づく。 この身、 他の縁を行ぜず。 このゆゑに 「一切衆生の心想のうちに入る」 となり。
~言フ↢諸仏如来[ハ]是法界身[ナリ]ト↡者、法界ハ是衆生ノ心法也。以[テ]ノ↣心能ク生ズルヲ↢世間・出世間ノ一切諸法ヲ↡故ニ、名[ケ]テ↠心ヲ為ス↢法界ト↡。*法界能ク生ズ↢諸ノ如来ノ相好ノ身ヲ↡。亦如シ↣色等ノ能ク生ズルガ↢眼識ヲ↡。是ノ故ニ仏身ヲ名ク↢法界身ト↡。是ノ身不↠行ゼ↢他ノ縁ヲ↡。是ノ故ニ入[ル]トナリ↢一切衆生[ノ]心想ノ中ニ↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ロ)[二][Ⅱ][ⅱ][b]心相即相を釈す
^「↑心に仏を想ふ時、 この心すなはちこれ三十二相・八十随形好なり」 といふは、 ▼衆生の心に仏を想ふ時に当りて、 仏身の相好、 衆生の心中に顕現するなり。 ▼たとへば水清ければすなはち↑*色像現ず、 水と像と一ならず異ならざるがごとし。 ゆゑに仏の相好の身すなはちこれ心想とのたまへるなり。
~*心ニ想フ↠仏ヲ時、是ノ心即[チ]是三十二相・八十随形好[ナリ]トイフ者、†当リテ↢衆生ノ心ニ想フ↠仏[ヲ]時ニ↡、仏身[ノ]相好顕↢現スル衆生ノ心中ニ↡也。譬[ヘ]バ如シ↢水清ケレバ則[チ]色像現ズ、水ト†之与↠像不↠一ナラ不ルガ↟異[ナラ]。故ニ言ヘル↢仏ノ相好ノ身即[チ]是心想ト↡也。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ロ)[二][Ⅱ][ⅱ][c]是心作仏を釈す
^▼「↑この心作仏す」 といふは、 心よく仏を作るといふなり。
~†是ノ心作仏ストイフ者、言[フ]↢心能ク†作ルト↟仏ヲ也。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ロ)[二][Ⅱ][ⅱ][d]是心是仏を釈す
^◆「↑この心これ仏」 といふは、 心のほかに仏ましまさず。 たとへば火は木より出でて、 火、 木を離るることを得ず。 木を離れざるをもつてのゆゑにすなはちよく木を焼く。 木、 火のために焼かれて、 木すなはち火となるがごとし。
~†是ノ心是仏トイフ者、心ノ外ニ无サヾル↠仏也。譬[ヘバ]如シ‡↢火ハ従[リ]↠木出デヽ、火不ル↠得↠離[ルルコトヲ]↠木ヲ也、以[テ]ノ↠不ルヲ↠離レ↠木ヲ故ニ則[チ]能ク焼ク↠*木ヲ、木†為ニ↠火ノ焼カレテ、木即[チ]*為ルガ↟火ト也。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ロ)[二][Ⅱ][ⅱ][e]正遍知海を釈す
^「↑諸仏正遍知海は心想より生ず」 といふは、 「正遍知」 とは0083真正に法界のごとくにして知るなり。 法界無相なるがゆゑに諸仏は*無知なり。 無知をもつてのゆゑに知らざるはなし。 無知にして知るはこれ正遍知なり。 この知、 深広にして測量すべからず。 ゆゑに海に譬ふ。
~諸仏正遍知海ハ従[リ]↢心想↡生ズトイフ者、正遍知[ト]者†真正ニ如[ク]ニ↢法界ノ↡而知ル也。法界无相ナルガ故ニ諸仏[ハ]无知也。以[テ]ノ↢无知ヲ↡故ニ无†シ↠不ルコト↠知0475[ラ]也。无知ニ而†知ル者是正遍知也。†是ノ知深広ニシテ不↠可[カラ]↢測量ス↡。故ニ譬[フ]ル↠海ニ也。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ハ)口業功徳
[一]牒偈
【31】 ^▲如来微妙声 梵響聞十方
如来微妙ノ†声 †梵*響聞ユ↢十方ニ↡
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ハ)[二]釈義
[Ⅰ]句の名を標す
^この二句は荘厳口業功徳成就と名づく。
*此0371ノ二句ハ名ク↢荘厳口業功徳成就ト↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ハ)[二][Ⅱ]本願
[ⅰ]選捨の境
^仏本なんがゆゑぞこの荘厳を興したまへる。 ある如来を見そなはすに、 名の尊からざるに似る。 外道人を* 車を推す して、 *瞿曇姓と称するがごとし。 *道を成ずる日、 声はただ梵天に徹る。
仏本何ガ故ゾ興シタマヘル‡↢此[ノ]荘厳ヲ↡。†見ソナハスニ↢有ル如来ヲ↡名ノ似ル↠不ルニ↠尊カラ。如シ↣外道†シテ↠ 推[ス]↠車[ヲ]*人*冢[ノ]反 人ヲ、*称スルガ↢瞿曇姓ト↡。成ズル↠道ヲ日、声ハ唯徹ル↢梵天ニ↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ハ)[二][Ⅱ][ⅱ]摂取の願
^このゆゑに願じてのたまはく、 「われ成仏せんに、 妙声はるかに布きて、 聞くものをして*忍を悟らしめん」 と。
是ノ故ニ願ジテ言ハク、使メムト↢我成仏セムニ、妙声遐ニ布キテ、†聞ク者ヲシテ悟ラ↟忍ヲ。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ハ)[二][Ⅲ]成就
^このゆゑに 「如来微妙声 梵響聞十方」 といへり。
是ノ故ニ†言ヘリ↢「如来微妙声、梵†嚮聞十方ト」↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ニ)【心業功徳】
[一]牒偈
【32】 ^▲同地水火風 虚空無分別
同ジテ↢地・水・火・風・ 虚空ニ↡无†シ↢分別↡
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ニ)[二]釈義
[Ⅰ]句の名を標す
^この二句は荘厳心業功徳成就と名づく。
此ノ二句ハ名ク↢荘厳心業功徳成就ト↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ニ)[二][Ⅱ]本願
[ⅰ]選捨の境
^仏本なんがゆゑぞこの荘厳を興したまへる。 ある如来を見そなはすに、 法を説くに、 *これは黒、 これは白、 これは不黒・不白、 下法・中法・上法・上上法とのたまふ。 かくのごとき等の無量差別の品あり。 分別あるに似たり。
仏本何ガ故ゾ興†シタマヘル↢此[ノ]荘厳ヲ↡。見[ソナハ]スニ↢有ル如来ヲ↡、説クニ↠法ヲ云フ↢此ハ黒此[ハ]白、此ハ不黒・不白、下法・中法・上法・上上法ト↡。有リ↢如[キ]↠是[クノ]等ノ无量差*別[ノ]品↡。似タリ↠有ルニ↢分別↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ニ)[二][Ⅱ][ⅱ]摂取の願
^このゆゑに願じてのたまはく、 「われ成仏せ0084んに、 地の荷負するに軽重の殊なきがごとく、 水の潤長するに*莦 悪草 瑞草なり の異なきがごとく、 火の成*就するに芳臭の別なきがごとく、 風の起発するに眠悟の差なきがごとく、 空の苞受するに開塞の念なきがごとくならしめん」 と。
是ノ故ニ願ジテ言ハク、†使メムト↫我成仏セムニ如ク↣地ノ荷負スルニ无キガ↢軽重之殊↡、如ク↣水ノ潤長スルニ无キガ↢莦 悪草 瑞草[ナリ]*括ノ音 之異↡、如ク↣火ノ成*就スルニ无キガ↢芳臭之別↡、如ク↣風ノ起発スルニ无キガ↢眠悟之差↡、如クナラ↪空ノ苞受スルニ无キガ↩開塞之念↨。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ニ)[二][Ⅲ]成就
^これを内に得て、 物を外に安んず。 *虚しく往きて実ちて帰り、 ここにおいて息む。
得テ↢之ヲ†于内ニ↡、物ヲ†安ズ↢†於外ニ↡。虚シク往キテ実チテ帰†リ、†於テ↠是ニ*于息ム。
^このゆゑに 「同地水火風 虚空無分別」 といへり。
是ノ故ニ†言ヘリ↢「同地水火風、虚空无分別ト」↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ホ)【大衆功徳】
[一]牒偈
【33】 ^▲天人↓不動衆 清浄智↓海生
天人不動ノ衆 清浄ノ智海ヨリ生ズ‡
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ホ)[二]釈義
[Ⅰ]句の名を標す
^この二句は荘厳衆功徳成就と名づく。
此0476ノ二句ハ名ク↢荘*厳衆功徳成就ト↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ホ)[二][Ⅱ]本願
[ⅰ]選捨の境
^仏本なんがゆゑぞこの荘厳を起したまへる。 ある如来を見そなはすに、 説法輪下のあらゆる大衆、 もろもろの*根・性・欲は種々不同なり。 仏の智慧において、 もしは退きもしは没す。 等しからざるをもつてのゆゑに、 衆、 純浄ならず。
仏本何ガ故ゾ起†シタマヘル↢此ノ荘厳ヲ↡。†見ソナハスニ↢有ル如来ヲ↡、†説法輪下ノ所有ノ†大衆、諸ノ根・性・欲[ハ]種種不同ナリ。於テ↢仏ノ智†恵ニ↡、若[シ]ハ退キ若[シ]ハ没[ス]。以[テ]ノ↠不0372ルヲ↠等シカラ故ニ、衆不↢純浄ナラ↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ホ)[二][Ⅱ][ⅱ]摂取の願
^ゆゑに願を興したまへり。 「願はくはわれ成仏せんに、 あらゆる天・人みな如来の智慧清浄海より生ぜん」 と。
†所以ニ興シタマヘリ↠願ヲ。願[ク]ハ我成仏セムニ、所有ノ天人皆従リ↢如来ノ智†恵清浄海↡生ゼム[ト]。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ホ)[二][Ⅲ]成就
[ⅰ]海を釈す
^▼「↑海」 とは、 仏の一切種智は深広にして崖りなく、 二乗雑善の*中・下の死▼尸を宿さざることをいひて、 これを海のごとしと喩ふ。 このゆゑに 「天人不動衆 清浄智海生」 といへり。
「海[ト]」者†言ヒテ↢仏ノ一切種智[ハ]深広ニシテ无ク↠†崖、不ルコトヲ↟宿サ↢二乗雑善ノ中下ノ死†尸ヲ↡、喩フ↢之ヲ如シト↟海ノ。是ノ故ニ†言ヘリ↢「天人不動衆、清浄智海生ト」↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ホ)[二][Ⅲ][ⅱ]不動を釈す
^◆「↑不動」 とは、 かの天・人、 大乗の根を成就して傾動すべからざるをいふなり。
「不動[ト]」者言フ↧彼ノ天人成↢就シテ大乗[ノ]根ヲ↡†不ルヲ↞可[カ]ラ↢傾動ス↡也。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ヘ)【上主功徳】
[一]牒偈
【008534】 ^▲如須弥山王 勝妙無過者
如ク↢須弥山王ノ↡ 勝妙ニシテ无シ‡↢過ギタル者↡
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ヘ)[二]釈義
[Ⅰ]句の名を標す
^この二句は荘厳上首功徳成就と名づく。
此ノ二句ハ名[ク]↢荘厳上首功徳成就ト↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ヘ)[二][Ⅱ]本願
[ⅰ]選捨の境
^仏本なんがゆゑぞこの願を起したまへる。 ある如来を見そなはすに、 衆のなかにあるいは*強梁のものあり。 提婆達多の流比のごとし。 あるいは国王、 仏と並び治めて、 はなはだ仏に推ることを知らざるあり。 あるいは仏を請じて*他縁をもつて廃忘することあり。 かくのごとき等の上首の力成就せざるに似たるあり。
仏本何ガ故ゾ起†シタマヘル↢此ノ願ヲ↡。*見[ソナハ]スニ↢有ル如来ヲ↡、衆ノ中ニ或[イ]ハ有リ↢強梁[ノ]者↡。如シ↢提婆達多ノ流比ノ↡。或[イ]ハ有リ↢国*王‡与↠仏並[ビ]‡治[メ]テ不ル↟知ラ↢甚ダ推ルコトヲ↟仏ニ。或[イ]ハ有リ↧請ジテ↠仏ヲ以テ↢他縁ヲ↡廃忘スルコト↥。有リ↤如キ↠是[クノ]等[ノ]似タル↣上首ノ力不ルニ↢成就セ↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ヘ)[二][Ⅱ][ⅱ]摂取の願
^このゆゑに願じてのたまはく、 「われ仏となる時、 願はくは一切の大衆、 よく心を生じて、 あへてわれと等しきことなく、 ただひとり法王としてさらに俗王なからん」 と。
是ノ故ニ願ジテ言ハク、我†為ラム↠仏ト時、願[ク]ハ一切[ノ]大衆、†无ク↢能ク生ジテ↠心ヲ敢テ与↠我等シキコト↡、唯一法王トシテ更ニ无カラムト↢俗王↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ヘ)[二][Ⅲ]成就
^このゆゑに 「如須弥山王 勝妙無過者」 といへり。
是ノ故ニ†言ヘリ↢「如須弥山王、勝妙无過者ト」↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ト)【主功徳】
[一]牒偈
【35】 ^▲↓天人丈夫衆 恭敬繞瞻仰
天人丈夫衆 恭敬シテ遶リテ瞻仰シタテマツル‡
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ト)[二]釈義
[Ⅰ]句の名を標す
^この二句は荘厳主功徳成就と名づく。
此ノ二句ハ名ク↢荘厳主功徳成就ト↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ト)[二][Ⅱ]本願
[ⅰ]選捨の境
^仏本なんがゆゑぞこの荘厳を起したまへる。 ある仏如来を見そなはすに、 大衆ありといへども、 衆のなかにまたはなはだ恭敬せざるあり。 一の比丘、 釈迦牟尼仏に、 「もしわがために十四の難を解せずは、 われまさにさらに余道を学すべし」 と語りしがごとし。
仏本何ガ故ゾ起†シタマヘル↢此ノ荘厳ヲ↡。見†[ソナハ]スニ↢有ル仏如来ヲ↡、雖0477モ↠有[リ]ト↢大衆↡衆ノ中ニ亦有リ↠不ル↢甚ダ恭敬セ↡。†如シ↱一ノ比丘語リシガ↫釈迦牟尼仏ニ若シ不ハ↣与ニ↠我[ガ]解セ↢十四ノ難ヲ↡、我当ニシト↪更ニ学ス↩余道ヲ↨。
^また*居迦離、 *舎利弗を謗じて、 *仏三たび語りたまひしに三たび受けざりしがごとし。
亦如シ↧居迦離謗ジテ↢舎利弗ヲ↡、仏三タビ語†リタマヒシニ而三0373[タ]ビ不リシガ↞受[ケ]。
^またもろ0086もろの外道の輩、 かりに仏衆に入りてつねに仏の短を伺ひ求めしがごとし。
又如シ↧諸ノ外道ノ輩、仮ニ入リ↢仏衆ニ↡而常ニ伺ヒ↦求メシガ仏ノ*短ヲ↥。
^また*第六天の魔、 つねに仏の所においてもろもろの留難をなししがごとし。 かくのごとき等の種々の恭敬せざる相あり。
又如シ↧第六天ノ魔、常ニ†於テ↢仏[ノ]所ニ↡作シヽガ↦諸ノ留難ヲ↥。有リ↧如[キ]↠是[クノ]等ノ種種ノ不ル↢恭敬[セ]↡相↥。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ト)[二][Ⅱ][ⅱ]摂取の願
^このゆゑに願じてのたまはく、 「われ成仏せんに、 天・人大衆、 恭敬して惓むことなからしめん」 と。
是ノ故ニ願ジテ言ハク、使メム[ト]↢我成仏セムニ天人大衆恭敬シテ无[カ]ラ↟†惓ムコト。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ト)[二][Ⅲ]成就
^ただ 「↑天・人」 といふ所以は、 浄土には女人および八部鬼神なきがゆゑなり。 このゆゑに 「天人丈夫衆 恭敬繞瞻仰」 といへり。
†所↣以但言フ↢天人[ト]↡者、浄土ニハ无キ[ガ]↢女人及[ビ]八部鬼神↡故也。是ノ故ニ†言ヘリ↢「天人丈夫衆、恭敬遶瞻仰ト」↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(チ)【不虚作住持功徳】
[一]牒偈
【36】 ^▲観仏本願力 遇無空過者 能令速満足 功徳大宝海
観ズルニ↢仏ノ本願力ヲ↡ 遇ヒテ无シ↢空シク過[グ]ル者↡ 能ク令ム‡↣速ニ満↢足セ 功徳ノ大宝海ヲ↡
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(チ)[二]釈義
[Ⅰ]句の名を標す
^▼この四句は荘厳不虚作↓住持功徳成就と名づく。
此ノ四句ハ名ク↢荘厳不虚作住持功徳成就ト↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(チ)[二][Ⅱ]本願
[ⅰ]選捨の境
^◆仏本なんがゆゑぞこの荘厳を起したまへる。 ある如来を見そなはすに、 ただ声聞をもつて僧となし、 仏道を求むるものなし。 あるいは仏に値へども、 三塗を勉れざるあり。 *善星・提婆達多・居迦離等これなり。 また人、 仏 (釈尊) の名号を聞きて無上道心を発せども、 悪の因縁に遇ひて、 退して声聞・辟支仏地に入るものあり。 かくのごとき等の空過のもの、 退没のものあり。
仏本何ガ故ゾ起†シタマヘル↢此ノ荘厳ヲ↡。見[ソナハ]スニ↢有ル如来ヲ↡、但以テ↢声聞ヲ↡為†シ↠僧ト、无シ↧求[ム]ル↢仏道ヲ↡者↥。或[イ]ハ有リ↢†値ヘ↠仏ニ而不ル↟*勉レ↢三塗ヲ↡。善星・提婆達多・居迦離等是也。又人聞[キ]テ↢仏ノ名†号ヲ↡発†セドモ↢无上道心ヲ↡遇[ヒ]テ↢悪ノ因縁ニ↡、退シテ入ル↢声聞・辟支仏地ニ↡者アリ。有リ↢如キ↠是[ク]ノ等ノ空過ノ者退没ノ者↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(チ)[二][Ⅱ][ⅱ]摂取の願
^◆このゆゑに願じてのたまはく、 「▼われ成仏する時、 われに値遇するものをして、 みな速疾に*無上大宝を満足せしめん」 と。
是ノ故ニ願ジテ言ハク、使メムト↧我成仏セム時、値↢遇セム我ニ↡者[ヲシテ]皆速疾ニ満↦足セ无上大宝ヲ↥。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(チ)[二][Ⅲ]成就
^このゆゑに 「観仏本願力 遇無空過者 能令速満足 功徳大宝海」 といへり。 ^「↑住0087持」 の義は△上のごとし。
是ノ故ニ†言ヘリ↢「観仏本願力、遇无空過者、能令速満足、功徳大宝海ト」↡。住持ノ義ハ如シ↠上ノ。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)総結
^仏の荘厳八種の功徳を観ずること、 これ上に訖りぬ。
観ズルコト↢仏ノ荘厳八種ノ功徳ヲ↡、訖[リ]ヌ↢之†于上ニ↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)菩薩荘厳【菩薩】
(a)標目
(イ)正標
【37】^▼次に安楽国のもろもろの↑大菩薩の四種の荘厳功徳成就を観ず。
次0478ニ観†ズ↢安楽国ノ諸[ノ]大菩薩ノ四種ノ荘厳功徳成就ヲ↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)問答
[一]問
^問ひていはく、 如来 (阿弥陀仏) の荘厳功徳を観ずるに、 なんの闕少せるところありてか、 また ˆ浄土のˇ 菩薩の功徳を観ずることを須ゐるや。
問[ヒテ]曰[ク]、観ズルニ↢如来ノ荘厳功徳ヲ↡、何ノ所アリテカ↢闕少セル↡、復†須ヰル↠観ズルコトヲ↢菩薩ノ功徳ヲ↡耶。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[二]答
[Ⅰ]主伴具足を審かにす
^答へていはく、 明君ましますときにはすなはち賢臣あるがごとし。 *堯・舜の無為と称せしは、 これその比なり。 もしただ如来法王ましませども、 大菩薩の法臣なからしめば、 道を*翼讃するにおいてあに満つといふに足らんや。 また薪を積みて小なきときには、 すなはち火大きならざるがごとし。
答[ヘテ]曰[ク]、如シ↧有†ストキニハ↢明君↡則チ有[ル]ガ↦賢臣↥。尭0374舜之称セシ[ハ]↢无為ト↡、是其ノ比也。若シ使メバ↧但有セ↢如来法王↡而无[カラ]↦大菩薩ノ法臣↥、於テ↣翼↢讃スルニ道ヲ↡豈ニ足ラムヤ↠云†フニ↠満ツト。亦*如シ↢薪ヲ𧂐ミテ小†キトキニハ則[チ]火不ルガ↟大キナラ。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[二][Ⅱ]仏徳の広大を成ず
^*経にのたまふがごとし。 「▲阿弥陀仏国に無量無辺のもろもろの大菩薩あり。 観世音・大勢至等のごときは、 みなまさに一生に他方において*次いで仏処に補すべし」 と。 もし人、 名を称して憶念するもの、 帰依するもの、 観察するものは、 ¬法華経¼ の 「*普門品」 に説くがごとく、 願として満たざることなし。 ^しかるに菩薩の功徳を愛楽することは、 海の、 流を呑みて*止足の情なきがごとし。
如シ↢¬経ニ¼言フガ↡。「阿弥陀仏国ニ有リ↢无量无辺[ノ]諸[ノ]大菩薩↡。如キ[ハ]↢観世音・大勢至等ノ↡、皆当ニシ[ト]↧一生ニ†於テ↢他方ニ↡次†ギテ補ス↦仏処ニ↥」。若[シ]人称シテ↠名ヲ憶念スル者、帰依スル者、観察スル者[ハ]、如ク↢¬法花経ノ¼「普門品ニ」説[クガ]↡、无シ↢願†ジテ不ルコト↟満[タ]。然[ル]ニ菩薩ノ愛↢楽[スル]コトハ功徳ヲ↡、如シ↣海ノ呑†ミテ↠流ヲ无キガ↢*止足ノ情↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[二][Ⅲ]功徳を愛楽す
^また釈迦牟尼如来、 一の*目闇の比丘 (*阿楼駄) の吁へてまうすを聞しめすがごとし。 「たれか功徳を愛するも0088の、 わがために針を維げ」 と。 その時に如来、 禅定より起ちて、 その所に来到して語りてのたまはく、 「われ福徳を愛す」 と。 つひにそれがために針を維ぎたまふ。 その時に*失明の比丘、 暗に仏語の声を聞きて、 驚喜こもごも集まりて仏にまうしてまうさく、 「世尊、 世尊の功徳はなほいまだ満たずや」 と。 仏報へてのたまはく、 「わが功徳は円満せり。 また須むべきところなし。 ただわがこの身は功徳より生ず。 功徳の恩分を知るがゆゑに、 このゆゑに愛すといふ」 と。
亦如シ↣釈迦牟尼如来聞スガ↢一ノ目闇[ノ]比丘ノ吁ヘテ言スヲ↡。誰カ愛†スルモノ↢功徳ヲ↡、†為ニ↠我ガ維ゲト↠針ヲ。爾ノ時ニ如来従[リ]↢禅定↡起[チ]テ、来↢到シテ其ノ所ニ↡語リテ言ハク、我愛ス[ト]↢福徳ヲ↡。遂ニ†為ニ↠其ガ維ギタマフ↠針ヲ。爾ノ時ニ失明[ノ]比丘、*聞[キ]テ↢暗ニ仏語ノ声ヲ↡、驚喜†交集リテ白シテ↠仏ニ言サク、世尊、世尊ノ功徳ハ猶未ズ ダ↠満タ耶ト。仏報ヘテ言ハク、我ガ功徳ハ円満セリ。无シ↠所↢復†須ムベキ↡。但我ガ此ノ身ハ従[リ]↢功徳↡生ズ。知ルガ↢功徳ノ恩分ヲ↡故ニ、是ノ故ニ言フ[ト]↠愛スト。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[二][Ⅳ]結答
^問ふところのごとく、 仏 (阿弥陀仏) の功徳を観ずるに、 実に願として充たざるはなし。 また諸菩薩の功徳を観ずる所以は、 上のごとく種々の義あるがゆゑなるのみ。
如ク↠所ノ↠問フ観ズルニ↢仏ノ功徳ヲ↡、実ニ无シ↢願トシテ不ルハ↟充タ。所↣以復観ズル↢*諸菩薩ノ功徳ヲ↡者、有ルガ↢如ク↠上ノ種種ノ義↡故[ナル]†耳。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)正釈
(イ)【不動而至功徳】
[一]牒偈
【38】 ^▲安楽国清浄 常転無垢輪 化仏菩薩日 如須弥住持
安楽国ハ清浄ニシテ 常ニ転ズ↢无垢‡輪ヲ↡ 化仏菩薩ノ日 如シ‡↢須弥ノ住持スルガ↡
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[二]釈義
[Ⅰ]本願
[ⅰ]選捨の境
^仏本なんがゆゑぞこの荘厳を起したまへる。 ある仏土を見そなはすに、 ただこれ*小菩薩のみにして十方世界において広く仏事をなすことあたはず。 あるいはただ声聞・人・天のみにして利するところ狭小なり。
仏0479本何ガ故ゾ起†シタマヘル↢此ノ荘厳ヲ↡。見[ソナハ]スニ↢有ル仏土ヲ↡、但是小菩薩ノミ[ニ]シテ不↠能ハ↧於[テ]↢十方世界ニ↡広ク作スコト↦仏事ヲ↥。或[イ]ハ但声聞人天†ノミニシテ所↠利スル狭小ナリ。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[二][Ⅰ][ⅱ]摂取の願
^このゆゑに願を興したまへり。 「願はくはわが国のうちには無量の大菩薩衆ありて、 ▽本処を動ぜずしてあまねく十方に至りて種々に応化して、 ↓如実に修行してつねに仏事をなさん0089」 と。
是ノ故ニ興†シタマヘリ↠願ヲ。願[ク]ハ我[ガ]国ノ中ニハ有[リ]テ↢无量ノ大0375菩薩衆↡、不シテ↠動ゼ↢本処ヲ↡遍ク至[リ]テ↢十方ニ↡種種ニ応化シテ、†如実ニ修行シテ常ニ作サム[ト]↢仏事ヲ↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[二][Ⅱ]成就
[ⅰ]譬1
^たとへば、 日の天上にありて、 *影は百川に現ずるがごとし。 日あに来らんや、 あに来らざらんや。
譬[ヘ]バ如シ↧日[ノ]在[リ]テ↢天上ニ↡而影[ハ]現ズルガ↦百川ニ↥。日豈ニ来ラム耶、豈ニ不ラム↠来ラ耶。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[二][Ⅱ][ⅱ]譬2
^¬*大集経¼ (意) にのたまふがごとし。 「たとへば、 人ありてよく*堤塘を治して、 その*所宜を量りて水を放つ時に及びて、 心力を加へざるがごとし。 菩薩もまたかくのごとし。 先づ一切諸仏および衆生の供養すべく、 教化すべき種々の堤塘を治すれば、 三昧に入るに及びて身心動ぜざれども、 如実に修行してつねに仏事をなす」 と。
如シ↢¬大集経ニ¼言フガ↡。「譬[ヘ]バ如シ↧有[リ]テ↠人善ク治シテ↢堤塘ヲ↡、量リテ↢其ノ所宜ヲ↡及[ビ]テ↢放ツ↠水[ヲ]時ニ↡、不ルガ↞加ヘ↢心力ヲ↡。菩薩モ亦如シ↠是[ク]ノ。先ヅ治スレバ↧一切諸仏及[ビ]衆生[ノ]†応ク↢供養ス↡†応キ↢教化ス↡種種ノ堤塘ヲ↥、及[ビ]テ↠入[ル]ニ↢三昧ニ↡身心不レドモ↠動[ゼ]、†如実ニ修行シテ常ニ作ス[ト]↢仏事ヲ↡。」
^「↑如実に修行す」 とは、 つねに修行すといへども、 *実に修行するところなし。
如実[ニ]修行[スト]者、雖モ↢常ニ修行スト↡実ニ无†シ↠所↢修行[スル]↡也。
^このゆゑに 「安楽国清浄 常転無垢輪 化仏菩薩日 如須弥住持」 といへり。
是ノ故ニ†言ヘリ↢「安楽国清浄、常転无垢輪、化仏菩薩日、如須弥住持ト」↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)【一念遍至功徳】
[一]牒偈
【39】 ^▲無垢荘厳光 一念及一時 普照諸仏会 利益諸群生
无垢荘厳ノ光 一念及[ビ]一時ニ 普[ク]照シ↢諸仏ノ会ヲ↡ 利↢益ス‡諸ノ群生ヲ↡
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[二]釈義
[Ⅰ]本願
[ⅰ]選捨の境
^仏本なんがゆゑぞこの荘厳を起したまへる。 ある如来の眷属を見そなはすに、 他方無量の諸仏を供養せんと欲し、 あるいは無量の衆生を教化せんと欲するに、 ここに没してかしこに出づ。 南を先にして北を後にす。 一念一時をもつて光を放ちてあまねく照らし、 あまねく十方世界に至りて衆生を教化することあたはず。 出没前後の相あるがゆゑなり。
仏本何[ガ]故ゾ起†シタマヘル↢此[ノ]荘厳ヲ↡。見[ソナハ]スニ↢有ル†如来ノ眷属ヲ↡、†欲シ↣供↢養セムト他方无量ノ諸仏ヲ↡、或[イ]ハ†欲スルニ↣教↢化セムト无量ノ衆生ヲ↡、此ニ没シテ彼ニ出ヅ。先ニシ[テ]↠南ヲ後ニス↠北ヲ。†不↠能ハ↧以テ↢一念一時ヲ↡放[チ]テ↠光ヲ普ク照シ、遍ク至[リ]テ↢十方世界ニ↡教↦化スルコト衆生ヲ↥。有[ル]ガ↢出没前後ノ相↡故†ナリ。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ]摂取の願
^このゆゑに願を興したまへり。 「願はくはわが仏土のもろもろの大菩薩、 一念の時のあひだにおいて、 あまねく十方に至り0090て種々の仏事をなさん」 と。
是ノ故ニ興シタマヘリ↠願ヲ。願[ク]ハ我ガ仏土ノ諸[ノ]大菩薩、於テ↢一念ノ時ノ*項ニ↡、遍ク至[リ]テ↢十方ニ↡作†サムト↢種種ノ仏事ヲ↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅱ]成就
^このゆゑに 「無垢荘厳光 一念及一時 普照諸仏会 利益諸群生」 といへり。
是ノ故ニ†言ヘリ↢「无垢荘0480厳光、一念及一時、普照諸仏会、利益諸群生ト」↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅲ]問答
[ⅰ]問
^問ひていはく、 上の章に、 △身は動揺せずしてあまねく十方に至るといふ。 不動にして至る、 あにこれ一時の義にあらずや。 これといかんが差別する。
問[ヒテ]曰[ク]、上ノ章ニ云フ↧身[ハ]不↢動揺[セ]↡而遍ク至[ル]ト↦十方ニ↥。†不動ニシテ而至ル、豈ニ非ズ↢是一時ノ義ニ↡耶。与↠此若為ガ差別スル‡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅲ][ⅱ]答
^答へていはく、 上にはただ不動にして至るといへども、 あるいは前後あるべし。 ここには無前無後といふ。 これ差別となす。 またこれ上の不動の義を成ずるなり。 もし一時ならずはすなはちこれ往来なり。 もし往来あらばすなはち不動にあらず。 このゆゑに上の不動の義を成ぜんためのゆゑに、 すべからく一時を観ずべし。
答[ヘテ]曰[ク]、上ニハ但言ヘドモ↢不動ニ而至ルト↡、或[イ]ハ容シ↠有ル↢前後↡。此ニハ言フ↢无前无後†ヲ↡。是為ス↢差別ト↡。亦是成0376[ズル]ナリ↢上ノ不動ノ義ヲ↡。若シ†不ハ↢一時ナラ↡則[チ]是往来ナリ。若シ有[ラ]バ↢往来↡則[チ]非ズ↢不動ニ↡。是ノ故ニ為ノ↠成ゼム↢上ノ不動ノ義ヲ↡故ニ、須ベ クシ‡↠観ズ↢一時ヲ↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ハ)【無相供養功徳】
[一]牒偈
【40】 ^▲雨天楽華衣 妙香等供養 讃諸仏功徳 無有分別心
†雨[ラシ]テ↢天ノ楽ト花ト衣ト 妙香等ヲ↡供養シ 讃[ズ]ルニ↢諸仏ノ功徳ヲ↡ 无シ‡↠有[ル]コト↢分別ノ心↡
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ハ)[二]釈義
[Ⅰ]本願
[ⅰ]選捨の境
^仏本なんがゆゑぞこの荘厳を起したまへる。 ある仏土を見そなはすに、 菩薩・人・天、 *志趣広からず、 あまねく十方無窮の世界に至りて諸仏如来・大衆を供養することあたはず。
仏本何ガ故ゾ起†シタマヘル↢此ノ荘厳ヲ↡。見[ソナハ]スニ↢有ル仏土ヲ↡、菩薩人天、志趣不↠広[カ]ラ、不↠能ハ↧遍ク至[リ]テ↢十方无窮ノ世界ニ↡供↦養スルコト諸仏如来大衆ヲ↥。
^あるいはおのが土の穢濁なるをもつて、 あへて浄郷に向詣せず。 あるいは居するところの清浄なるをもつて穢土を*鄙薄す。
或[イ]ハ以テ↢†己ガ土[ノ]穢濁ナルヲ↡不↣敢テ*向↢詣セ浄郷ニ↡。或[イ]ハ以テ↢†所ノ↠居スル清浄ナルヲ↡鄙イヤシ↢薄ス穢土ヲ↡。
^かくのごとき等の種々の*局分をもつて、 諸仏如来の所において周遍供養して広大の0091善根を発起することあたはず。
以テ↢如キ↠此[ク]ノ等ノ種種ノ局カギル分ヲ↡、於テ↢諸仏如来ノ所ニ↡不↠能ハ↣周遍供養シテ発↢起スルコト広大ノ善根ヲ↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ハ)[二][Ⅰ][ⅱ]摂取の願
^このゆゑに願じてのたまはく、 「われ成仏する時、 願はくはわが国土の一切の菩薩・声聞・天・人大衆、 あまねく十方の*一切諸仏の大会の処所に至りて、 天の楽・天の華・天の衣・天の香を雨らして、 *巧妙の弁辞をもつて諸仏の功徳を供養し讃嘆せん」 と。
是ノ故ニ願ジテ言ハク、我成仏セム時、願[ク]ハ我[ガ]国土ノ一切ノ菩薩・声聞・天・人大衆、遍ク至[リ]テ↢十方ノ一切諸仏[ノ]大会ノ処所ニ↡、†雨ラシテ↢天ノ楽・天ノ花・天ノ衣・天ノ香ヲ↡、以テ↢巧妙[ノ]辨辞ヲ↡供↢養シ讃↣嘆セム[ト]諸仏ノ功徳ヲ↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ハ)[二][Ⅱ]成就
^穢土の如来の*大慈謙忍を嘆ずといへども、 仏土に雑穢の相あることを見ず。 浄土の如来の無量の荘厳を嘆ずといへども、 仏土に清浄の相あることを見ず。 なにをもつてのゆゑに。 諸法等しきをもつてのゆゑに、 もろもろの如来等し。 このゆゑに諸仏如来を名づけて*等覚となす。
雖モ↠嘆[ズ]ト↢穢土ノ如来ノ大慈謙忍ヲ↡、†不↠見↣仏土ニ有[ル]コトヲ↢雑穢ノ相↡。雖モ↠嘆[ズ]ト↢浄土ノ如来ノ无量ノ荘厳ヲ↡、†不↠見↣仏土ニ有[ル]コトヲ↢清浄ノ相↡。何ヲ以[テ]ノ故ニ。以[テ]ノ↢諸法等シキヲ↡故ニ諸ノ如来等シ。是ノ故ニ諸仏如来ヲ名[ケ]テ為ス↢等覚0481ト↡。
^もし仏土において優劣の心を起さば、 たとひ如来を供養すれども、 法の供養にはあらず。
若[シ]於テ↢仏土ニ↡起[サ]バ↢優劣ノ心ヲ↡、仮使供↢養スレドモ如来ヲ↡、†非ズ↢法ノ供養ニ[ハ]↡也。
^このゆゑに 「雨天楽華衣 妙香等供養 讃諸仏功徳 無有分別心」 といへり。
是ノ故ニ†言ヘリ↢「雨天楽花衣、妙香等供養、讃諸仏功徳、无有分別心ト」↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ニ)【示法如仏功徳】
[一]牒偈
【41】 ^▲何等世界無 仏法功徳宝 我願皆往生 示仏法如仏
何等ノ世界†ナリトモ†无カラムニハ↢ 仏法功徳ノ宝↡ 我願[ク]ハ皆往生シテ 示[ス]コト↢仏法[ヲ]↡如クセム‡↠仏ノ
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ニ)[二]釈義
[Ⅰ]本願
[ⅰ]選捨の境
^仏本なんがゆゑぞこの願を起したまへる。 ある軟心の菩薩を見そなはすに、 ただ有仏の国土の修行を楽ひて慈悲堅牢の心なし。
仏0377本何[ガ]故ゾ起†シタマヘル↢此ノ願ヲ↡。見[ソナハ]スニ↢有ル軟心ノ菩薩ヲ↡、但楽ヒテ↢有仏ノ国土ノ修行ヲ↡无シ↢慈悲堅牢ノ心↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ニ)[二][Ⅰ][ⅱ]摂取の願
^このゆゑに願を興したまへり。 「願はくはわれ成仏する時、 わが土の菩薩はみな慈悲勇猛堅固の志願ありて、 よく清浄の土を捨て、 他方の仏法僧なき処に至りて、 仏法僧の宝を住持し0092荘厳して示すこと、 仏のましますがごとくし、 *仏種をして処々に断えざらしめん」 と。
是ノ故ニ興シタマヘリ↠願ヲ。願[ク]ハ我成仏セム時、我ガ土ノ菩薩ハ皆慈悲勇猛堅固†ノ志願†アリテ能ク捨テ↢清浄ノ土ヲ↡、至[リ]テ↧他方ノ†无キ↢仏法僧↡処ニ↥、住↢持シ荘↣厳シテ仏法僧[ノ]宝ヲ↡示[ス]コト如クシ‡↠有スガ↠仏ノ、使メムト↢仏種ヲシテ処処ニ不ラ↟断†エ。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ニ)[二][Ⅱ]成就
^このゆゑに 「何等世界無 仏法功徳宝 我願皆往生 示仏法如仏」 といへり。
是ノ故ニ†言ヘリ↢「何等世界无、仏法功徳宝、我願皆往生、示仏法如仏ト」↡。
二 Ⅰ ⅱ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(c)結示
^菩薩の四種荘厳功徳成就を観ずること、 これ上に訖りぬ。
観[ズル]コト↢菩薩ノ四種荘厳功徳成就ヲ↡、訖[リ]ヌ↢之†于上ニ↡。
二 Ⅰ ⅱ a ニ【回向門】
(一)科目
【42】^次に下の四句はこれ↑回向門なり。
次ニ下ノ四句ハ是廻廻向門ナリ。
二 Ⅰ ⅱ a ニ (二)牒偈
▲我作論説偈 願見弥陀仏 ▽普共諸衆生 往生安楽国
我作リ[テ]↠論ヲ説†ク↠偈ヲ 願[ク]ハ見[タテ]マツリ↢弥陀仏ヲ↡ 普ク共ニ↢諸ノ衆生ト↡ 往↢生セム‡安楽国ニ↡
二 Ⅰ ⅱ a ニ (三)釈義
^この四句はこれ論主 (天親) の回向門なり。 「回向」 とは、 おのが功徳を回してあまねく衆生に施して、 ともに阿弥陀如来を見たてまつり、 安楽国に生ぜんとなり。
此ノ四句ハ是論主ノ廻向門ナリ。廻向[ト]者廻シテ↢†己ガ功徳ヲ↡普ク施シテ↢衆生ニ↡、共ニ見[タテ]マツリ↢阿弥陀如来ヲ↡生[ゼム]トナリ↢安楽国ニ↡。
二 Ⅰ ⅱ b 問答して機を彰す【八番問答】
イ 論文を標す
^▲無量寿修多羅の章句、 われ偈頌をもつて総じて説きをはりぬ。
无量寿修多羅ノ章句、我以テ↢偈*誦ヲ↡総[ジ]テ説キ竟[リ]ヌ。
二 Ⅰ ⅱ b ロ 正問答
(一)経を引き総じて悪人正機を立つ〔第一問答〕
(Ⅰ)問
【43】^▼*問ひていはく、 天親菩薩の回向の章のなかに、 「△普共諸衆生 往生安楽国」 といへるは、 これはなんらの衆生とともにと指すや。
問[ヒテ]曰[ク]、天親菩薩[ノ]廻向ノ章ノ中ニ†言ヘルハ↢「普共諸衆生、往生安楽国ト」↡、此ハ指†ス↠共[ニ]ト↢何0482等ノ衆生†ト↡耶。
二 Ⅰ ⅱ b ロ (一)(Ⅱ)答
(ⅰ)大経
^答へていはく、 王舎城所説の ¬*無量寿経¼ (下) を案ずるに、 「仏、 阿難に告げたまはく、 ª▲十方恒河沙の諸仏如来、 みなともに無量寿仏の威神功徳不可思議なるを称嘆したまふ。 ◆諸有の衆生、 その名号を聞きて信心歓喜し、 *すなはち一念に至るまで心を至して回向して、 ▽かの国に生ぜんと願ずれば、 すなはち往生を得て、 不退転に住0093せん。 ただ五逆と誹謗正法とを除くº」 と。
答[ヘテ]曰[ク]、案ズルニ↢王舎城所説ノ¬无量寿経ヲ¼↡、「仏告ゲタマハク↢阿難ニ↡、十方恒河沙ノ諸仏如来、皆共[ニ]称↢嘆シタマフ无量寿仏ノ威神功徳不可思議ナルヲ↡。諸有ノ衆生、聞[キ]テ↢†其ノ名号ヲ↡信心歓喜†シ、†乃チ至ルマデ↢一念ニ↡†至シテ↠心ヲ廻向シテ、願†ズレバ↠生[ゼム]ト↢彼ノ国ニ↡即[チ]得[テ]↢往0378生ヲ↡、住セム‡↢不退転ニ↡。唯除クト↢五逆ト誹謗正法[ト]ヲ↡」。
^これを案じていふに、 一切の*外道・凡夫人、 みな往生を得ん。
案ジ↠此ヲ而†言フニ、一切[ノ]外*道凡夫人、皆得ム↢往生ヲ↡。
二 Ⅰ ⅱ b ロ (一)(Ⅱ)(ⅱ)観経
^また ¬*観無量寿経¼ のごときは九品の往生あり。 「▲下下品の生とは、 ▽あるいは衆生ありて、 不善業たる五逆・十悪を作り、 もろもろの不善を具せん。 かくのごとき愚人、 悪業をもつてのゆゑに悪道に堕して、 多劫を経歴して苦を受くること窮まりなかるべし。
又如[キハ]↢¬観无量寿経ノ¼↡有リ↢九品ノ往生↡。「下*下品ノ生[ト]者、或[イ]ハ有[リ]テ↢衆生↡、作リ↢不善業タル五逆・十悪ヲ↡、具セム↢諸ノ不善ヲ↡。如[キ]‡↠此[ク]ノ†愚人、以[テ]ノ↢悪業ヲ↡故ニ応シ↧堕[シ]テ↢悪道ニ↡*逕↢歴シテ多劫ヲ↡受[ク]ルコト↠苦ヲ无[カ]ル↞窮リ。
^◆かくのごとき愚人、 命終の時に臨みて、 善知識、 種々に安慰して、 ために妙法を説き教へて念仏せしむるに遇はん。 かの人、 苦に逼められて念仏するに遑あらず。 善友告げていはく、 ªなんぢもし念ずることあたはずは無量寿仏と称すべしº と。
如[キ]‡↠此[ク]ノ†愚人、臨[ミ]テ↢*命終ノ時ニ↡、遇ハム↧善知識、種種ニ安慰シテ、為ニ説キ↢妙法ヲ↡教ヘテ令ムルニ↦念仏セ↥。*彼ノ人苦ニ逼メラレテ不↠遑アラ↢念仏[スル]ニ↡。善友告[ゲ]テ言ハク、汝若シ不[ハ]↠能[ハ]↠念†ズルコト者応シ[ト]↠称ス↢无量寿仏ト↡。
^◆かくのごとく心を至して声をして絶えざらしめて、 十念を具足して ª南無無量寿仏º と称せん。 仏の名を称するがゆゑに、 念々のうちにおいて八十億劫の生死の罪を除き、
如†ク↠是[ク]ノ至シテ↠心ヲ令メテ↢声ヲシテ不ラ↟絶エ、具↢足シテ十念ヲ↡称セム↢南无无量寿仏ト↡。称[スルガ]↢仏ノ名[ヲ]↡故ニ、於テ↢念念ノ中ニ↡除†キ↢八十億劫ノ生死之罪ヲ↡、
^◆命終の後に金蓮華のなほ日輪のごとくしてその人の前に住するを見、 一念のあひだのごとくに▽すなはち極楽世界に往生を得ん。
命終之後ニ†見↧金蓮†花ノ†猶如↢クシテ日輪ノ↡住ルヲ↦其ノ人ノ前ニ↥、如[ク]ニ↢一念ノ*項ノ↡即[チ]得ム↣往↢生[スルコト]ヲ極楽世界ニ↡。
^◆蓮華のなかにおいて十二大劫を満てて、 蓮華まさに開けん。 まさにこれをもつて五逆の罪を償ふべし。
†於テ↢蓮†花ノ†中ニ↡満テヽ↢十二大劫ヲ↡、蓮華方ニ開ケム。 当ニシ↣以テ↠此ヲ償フ↢五逆[ノ]罪[ヲ]↡也
^◆観世音・大勢至、 大悲の音声をもつてそれがために広く諸法実相、 罪を除滅する法を説かん。 聞きをはりて歓喜して、 時に応じてすなはち菩提の心を発さん。 ◆これを下品0094下生のものと名づく」 と。
観世音・大勢至、以テ↢大悲ノ音声ヲ↡為ニ↠其ガ広ク説カム↧諸法*実相‡、除↢*滅スル罪ヲ↡法ヲ↥。聞キ已[リ]テ歓喜シテ、応ジテ↠時ニ則[チ]†発サム↢菩提之心ヲ↡。是ヲ名ク[ト]↢下品下生ノ者ト↡」。
^この経をもつて証するに、 あきらかに知りぬ、 下品の凡夫ただ正法を誹謗せざれば、 仏を信ずる因縁をもつてみな往生を得と。
以テ↢此ノ経ヲ↡証スルニ、明[カ]ニ知[リ]ヌ下品ノ凡夫†但令不レバ↣誹↢謗[セ]正法ヲ↡、信[ズル]↠仏[ヲ]因縁†ヲモテ皆得ト↢往0483生ヲ↡。
二 Ⅰ ⅱ b ロ (二)異を会し別して逆罪得生を成ず
(Ⅰ)二経の相違を会す【逆謗除取】
(ⅰ)二罪具欠を弁ず〔第二問答〕
(a)問
^▼問ひていはく、 ¬無量寿経¼ (下・意) にのたまはく、 「△往生を願ずるものみな往生を得。 ただ五逆と誹謗正法とを除く」 と。 ¬観無量寿経¼ (意) にのたまはく、 「△五逆・十悪もろもろの不善を具するも△また往生を得」 と。 この二経、 いかんが会する。
問[ヒテ]曰[ク]、¬无量寿経ニ¼言ハク、「願[ズル]↢往生ヲ↡者†皆得‡↢往生ヲ↡。唯除ク[ト]↢五逆ト誹謗正法トヲ↡」。¬観无量寿経ニ¼*言ハク、「*五逆・十悪*具†スルモ↢諸ノ不善ヲ↡亦†得ト↢往生ヲ↡」。此ノ二経、云何ガ*会†スル。
二 Ⅰ ⅱ b ロ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)答
^◆答へていはく、 一経 (大経) には二種の重罪を具するをもつてなり。 一には五逆、 二には誹謗正法なり。 この二種の罪をもつてのゆゑに、 ゆゑに往生を得ず。 一経 (観経) にはただ十悪・五逆等の罪を作るとのたまひて、 正法を誹謗すとのたまはず。 正法を謗ぜざるをもつてのゆゑに、 このゆゑに生ずることを得。
答[ヘテ]曰[ク]、一経ニハ以テナリ↠具†スルヲ↢二種ノ重罪ヲ↡。一[ニ]者五逆、二[ニ]者誹謗正0379法ナリ。以[テ]ノ↢此ノ二種ノ罪ヲ↡故ニ、†所以ニ不↠得↢往生ヲ↡。一経[ニ]ハ但言[ヒ]テ↠作ルト↢十悪・五逆等ノ罪ヲ↡、不↠言ハ↣誹↢謗スト正法ヲ↡。以[テ]ノ↠不ルヲ↠謗ゼ↢正法ヲ↡故ニ、是ノ故ニ†得↠生[ズルコト]ヲ。
二 Ⅰ ⅱ b ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)但謗不生を明す
(a)謗罪極重を明す〔第三問答〕
(イ)問
^◆問ひていはく、 たとひ一人ありて、 五逆罪を具すれども正法を誹謗せざれば、 ¬経¼ (観経) に生ずることを得と許す。 また一人ありて、 ただ正法を誹謗して五逆の諸罪なし。 往生を願ぜば生ずることを得やいなや。
問[ヒテ]曰[ク]、仮使一人†アリテ、具†スレドモ↢五逆罪ヲ↡而不レバ↣誹↢謗セ正法ヲ↡、¬経ニ¼許ス↠得ト↠生[ズルコト]ヲ。復有[リ]テ↢一人↡、但誹↢謗シ正法ヲ↡而无[シ]↢五逆ノ諸罪↡。願ゼ↢往生[ヲ]↡者†得ルヤ↠生[ズルコト]ヲ以不ヤ。
二 Ⅰ ⅱ b ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(a)(ロ)答
^◆答へていはく、 ただ正法を誹謗せしめば、 さらに余の罪なしといへども、 かならず生ずることを得ず。
答[ヘテ]曰[ク]、†但令誹↢謗シテ正法ヲ↡、雖モ↣更ニ无[シ]ト↢余ノ罪↡、必[ズ]†不↠得↠生[ズルコト]ヲ。
^◆なにをもつてこれをいふとならば、 ¬経¼ (*大品経・意) にのたまはく、 「五0095逆の罪人、 阿鼻大地獄のなかに堕してつぶさに一劫の重罪を受く。 正法を誹謗する人は阿鼻大地獄のなかに堕して、 この劫もし尽きぬれば、 また転じて他方の阿鼻大地獄のなかに至る。 かくのごとく*展転して百千の阿鼻大地獄を経」 と。 仏 (釈尊)、 出づることを得る時節を記したまはず。 誹謗正法の罪きはめて重きをもつてのゆゑなり。
何ヲ以テ言[フ]トナラバ↠之ヲ、¬経ニ¼言ハク、「五逆ノ罪人、堕[シ]テ↢阿鼻大地獄ノ中ニ↡具ニ受ク↢一劫ノ重罪ヲ↡。誹↢謗スル正法[ヲ]↡人ハ堕[シ]テ↢阿鼻大地獄ノ中ニ↡、此ノ劫若シ尽キヌレバ復転ジテ至ル↢他方ノ阿鼻大地獄ノ中ニ↡。如ク↠是[クノ]展転シテ*逕ト‡↢百千ノ阿鼻大地獄ヲ↡」。仏不↠記シタマハ↢得ル↠出[ヅル]コトヲ時節ヲ↡。以[テ]ノ↢誹謗正法ノ罪極テ重[キ]ヲ↡故ナリ。
^◆また正法はすなはちこれ仏法なり。 この愚痴の人すでに誹謗を生ず。 いづくんぞ仏土に生ぜんと願ずる理あらんや。 たとひただかの土の安楽を貪りて生ぜんと願ずるは、 また水にあらざる氷、 煙なき火を求むるがごとし。 あに理を得ることあらんや。
又正法者即[チ]是仏法ナリ。†此愚痴ノ*人既ニ生ズ↢誹謗ヲ↡。安クンゾ有[ラ]ムヤ↧願ズル↠生[ゼム]ト↢仏土ニ↡之理↥。仮使但†貪リテ↢彼ノ†土ノ安楽ヲ↡而†願ズル↠生ゼムト者、亦如シ↠求†ムルガ↢非[ザル]↠水ニ之氷、无キ↠煙之火ヲ↡。豈ニ有[ラ]ムヤ↠得ルコト↠理ヲ。
二 Ⅰ ⅱ b ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)謗法行相を審にす〔第四問答〕
(イ)問
^◆問ひていはく、 なんらの相かこれ正法を誹謗する。
問[ヒテ]曰[ク]、何等ノ相[カ]是誹↢謗スル‡正法ヲ↡。
二 Ⅰ ⅱ b ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)(ロ)答
^◆答へていはく、 もし仏なく、 仏の法なし、 菩薩なく、 菩薩の法なしといはん。 かくのごとき等の見、 もしは心にみづから解し、 もしは他に従ひて受け、 その心決定するをみな正法を誹謗すと名づく。
答[ヘテ]曰[ク]、若[シ]言ハム↧†无ク↠仏无シ↢仏ノ法↡、无[ク]↢菩薩↡无[シ]ト↦菩薩ノ法↥。如キ↠是[クノ]等ノ見、若[シ]ハ心ニ自ラ解シ、若[シ]ハ従ヒテ↠他ニ†受ケ、其ノ心0484決定スルヲ皆名ク↣†誹↢謗スト正法ヲ↡。
二 Ⅰ ⅱ b ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(c)罪重所因を顕す〔第五問答〕
(イ)問
^◆問ひていはく、 かくのごとき等の計はただこれおのが事なり。 衆生においてなんの苦悩ありてか五逆の重罪に踰えたるや。
問[ヒテ]曰[ク]、如[キ]↠是[クノ]等ノ計ハ但是†己ガ事ナリ。於テ↢衆生ニ↡有[リ]テカ↢何ノ苦悩↡踰エタル↢†於五逆ノ重罪ニ↡耶。
二 Ⅰ ⅱ b ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(c)(ロ)答
^◆答へていはく、 もし諸仏・菩薩の、 世間・出世間の善道を説きて衆生を教化するものなくは、 あに*仁・義・礼0096・智・信あることを知らんや。 かくのごとき世間の一切の善法みな断じ、 出世間の一切の*賢聖みな滅しなん。 なんぢただ五逆罪の重たることを知りて、 ▼五逆罪の正法なきより生ずることを知らず。 このゆゑに正法を謗ずる人、 その罪もつとも重し。
答[ヘテ]曰[ク]、若[シ]无クハ↧諸仏・菩薩[ノ]説[キ]テ↢世間・出世間ノ善道ヲ↡教↢化スル衆生ヲ↡者↥、豈ニ知[ラ]ム↠有[ル]コトヲ↢仁・義・礼・智・信↡耶。如キ↠是[ク]ノ世間ノ一切ノ善法皆断ジ、出0380世間ノ一切ノ賢聖皆滅シナム。汝但知リ↢五逆‡罪ノ為ルコトヲ↟重而不↠知ラ↧五逆罪ノ従リ↠无キ↢正法↡生ズルコトヲ↥。是ノ故ニ謗ズル↢正法ヲ↡人、其ノ罪最モ重シ。
二 Ⅰ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)五逆得生を成立す【十念往生】〔第六問答〕
(ⅰ)正しく得生を成ず
(a)問
(イ)先牽を難ず
^▼問ひていはく、 *業道経にのたまはく、 「▼*業道は称のごとし。 重きもの↓先づ牽く」 と。
問[ヒテ]曰[ク]、¬業道経ニ¼言ハク、「業道ハ如シ↠*称ノ。重キ者先ヅ牽クト」。
^◆¬観無量寿経¼ (意) にのたまふがごとし。 「△人ありて五逆・十悪を造りもろもろの不善を具せらん。 悪道に堕して多劫を経歴して無量の苦を受くべし。 命終の時に臨みて、 善知識の教に遇ひて、 ª南無無量寿仏º と称せん。 かくのごとく心を至して声をして絶えざらしめて、 十念を具足してすなはち安楽浄土に往生することを得。 すなはち大乗正定の聚に入りて、 畢竟じて退せず。 三塗のもろもろの苦と永く隔つ」 と。
如シ↢¬観无量寿経ニ¼言フガ↡。「有[リ]テ↠人造リ↢五逆・十悪ヲ↡具セラム↢諸ノ不善ヲ↡。応シ↧堕シテ↢悪道ニ↡*逕↢歴シテ多劫ヲ↡受ク↦无量ノ苦ヲ↥。臨[ミ]テ↢命終ノ時ニ↡、遇[ヒ]テ↢善知識ノ教ニ↡称セム↢南无无量寿仏ト↡。如†ク↠是[ク]ノ至シテ↠心ヲ令[メ]テ↢声ヲシテ不ラ↟絶エ、具↢足シテ十念ヲ↡便チ†得↣往↢生スルコトヲ安楽浄土ニ↡。即[チ]入[リ]テ↢大乗正定之聚ニ↡、畢竟ジテ不↠退セ。与↢三*塗ノ諸ノ苦↡永ク隔†ツト。」
^▼*「↑先づ牽く」 の義、 理においていかんぞ。
先ヅ牽ク之義、於テ↠理ニ如何ゾ。
二 Ⅰ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ロ)繋業を難ず
^▼また*曠劫よりこのかた、 つぶさにもろもろの行を造りて、 有漏の法は三界に*繋属せり。 ただ十念阿弥陀仏を念じたてまつるをもつてすなはち三界を出づ。 *繋業の義またいかんせんと欲する。
又曠劫ヨリ已来タ、備ニ造[リ]テ↢諸ノ行ヲ↡、有漏之法ハ*繋↢属セリ三界ニ↡。但以テ↣十念念[ジタテ]マツルヲ↢阿弥陀仏ヲ↡便チ出ヅ↢三界ヲ↡。繋業之義復†欲スル↢云何セムト↡。
二 Ⅰ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)答【三在釈義】
(イ)標
^▼答へていはく、 なんぢ五逆・十悪の繋業等を重となし、 下下品の人の十念をもつて軽となして、 罪のために牽かれて0097先づ地獄に堕して三界に繋在すべしといはば、 ▼いままさに義をもつて*校量すべし。 軽重の義は心に在り、 縁に在り、 決定に在りて、 時節の久近・多少には在らず。
答[ヘテ]曰[ク]、汝†謂ハバ↫五逆・十悪ノ繋業等ヲ為シ↠重ト、以テ↢下下品ノ人ノ十念ヲ↡為シテ↠軽ト、応シト↪為ニ↠罪ノ所テ↠牽カ先ヅ堕[シ]テ↢地獄[ニ]↡繋↩在ス三界ニ↨者、今†当ニシ↢以テ↠義ヲ校*量ス↡。軽重之義ハ在リ↠心ニ、在リ↠縁ニ、在リ[テ]↢決定ニ↡、†不↠在ラ↢時節ノ久近多少ニハ↡也。
二 Ⅰ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(ロ)釈
[一]在心
^◆いかんが 「心に在る」。 かの造罪の人はみづから*虚妄顛倒の見に依止して生ず。 この十念は善知識の*方便安慰によりて*実相の法を聞きて生ず。 一は実なり、 一は虚なり。 あにあひ比ぶることを得んや。
云何[ガ]在ル↠心ニ。彼ノ造罪ノ人ハ自ラ依↢止シテ虚妄顛倒ノ見ニ↡生ズ。此ノ十念者†依リテ↢善知識[ノ]方便安0485慰ニ↡聞キテ↢実相ノ法ヲ↡生ズ。一ハ実ナリ一ハ虚ナリ。豈ニ得ムヤ↢相比ブルコトヲ↡。
^▼たとへば千歳の闇室に、 光もししばらく至らば、 すなはち明朗なるがごとし。 闇、 あに室にあること千歳にして去らじといふことを得んや。
譬[ヘ]バ如シ↢千歳ノ闇室ニ光若シ蹔ク至[ラ]バ即便[チ]明*朗ナルガ↡。闇豈ニ得ム↠言フコトヲ↢在[ルコト]↠室ニ千歳ニ而不ト↟去ラ耶。
^▼これを心に在りと名づく。
是ヲ†名ク↠在リト↠心ニ。
二 Ⅰ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(ロ)[二]在縁
^▼いかんが 「縁に在る」。 かの造罪の人はみづから妄想の心に依止し、 煩悩虚妄の果報の衆生によりて生ず。 この十念は無上の信心に依止して、 阿弥陀如来の方便荘厳真実清浄無量の功徳の名号によりて生ず。
云何[ガ]在ル↠縁ニ。彼ノ造罪ノ人ハ自ラ†依↢止シ妄想ノ心ニ↡、依[リ]テ↢煩悩虚妄ノ果報ノ衆生ニ↡生ズ。此ノ十念者依↢止0381シ[テ]无上ノ信心ニ↡、依[リ]テ↢阿弥陀如来ノ方便荘厳真実清浄无量ノ功徳ノ名号ニ↡生ズ。
^◆たとへば人ありて毒の箭を被りて、 中るところ筋を截り骨を破るに、 滅除薬の鼓を聞けば、 すなはち箭出で毒除こるがごとし。
譬[ヘバ]如シ↧有[リ]テ↠人被リテ↢毒ノ箭ヲ↡、所↠中ル截リ↠筋ヲ破ルニ↠骨ヲ、聞ケバ↢滅除薬ノ鼓ヲ↡、即[チ]箭出デ毒除コルガ↥。
^◆¬*首楞厳経¼ (意) にのたまはく、 「たとへば薬あり、 名づけて滅除といふ。 もし闘戦の時用ゐてもつて鼓に塗るに、 鼓の声を聞けば箭出で毒除こるがごとし。 菩薩摩訶薩またかくのごとし。 *首楞厳三昧に住してその名を聞けば、 三毒の箭自然に抜け出づ」 と。
¬首楞厳経ニ¼言ハク、「譬[ヘバ]如シ↧有[リ]↠薬、名[ケ]テ曰フ↢滅除ト↡、若シ闘戦ノ時†用ヰテ以テ塗ルニ↠鼓ニ、聞ケ↢鼓ノ声ヲ↡者箭出[デ]毒除[コ]ル[ガ]↥。菩薩摩訶薩亦復如シ↠是[ク]ノ。住[シテ]↢首楞厳三昧[ニ]↡聞ケ↢其[ノ]名ヲ↡者、三毒之箭自然ニ†抜ケ出ヅト。」
^▼あにかの箭深く毒はげしくして、 鼓の音声を聞くとも、 箭を抜き毒を去0098ることあたはずといふことを得べけんや。 これを縁に在りと名づく。
豈ニ可ケム↠得↠言[フ]コトヲ↧彼ノ箭深ク毒厲シクシテ、聞クトモ↢鼓ノ音声ヲ↡不ト↞能ハ↢抜キ↠箭ヲ去[ル]コト‡↟毒ヲ耶。是ヲ†名ク↠在リト↠縁ニ。
二 Ⅰ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(ロ)[三]在決定
^▼いかんが 「決定に在る」。 かの造罪の人は*有後心・*有間心に依止して生ず。 この十念は無後心・無間心に依止して生ず。 これを決定と名づく。
云何[ガ]在ル↢決定ニ↡。彼ノ造罪[ノ]人ハ依↢止シテ有後心・有間心ニ↡生ズ。此ノ十念者依↢止シテ无後心・无間心ニ↡生ズ。是ヲ名ク↢決定ト↡。
二 Ⅰ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(ハ)結
^◆三の義を校量するに十念は重し。 重きもの先づ牽きてよく三有を出づ。 *両経は一義なるのみ。
校↢量スルニ三ノ義ヲ↡、十念者重シ。重キ者先ヅ牽キテ能ク出ヅ↢三有ヲ↡。*両経[ハ]一義ナル†耳。
二 Ⅰ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)念相を料簡す【十念釈義1】〔第七問答〕
(a)問
^▼問ひていはく、 いくばくの時をか名づけて一念となす。
問[ヒテ]曰[ク]、幾ノ時ヲカ名[ケ]テ†為ス↢一念ト↡。
二 Ⅰ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)答
^◆答へていはく、 百一の生滅を一刹那と名づく。 六十の刹那を名づけて一念となす。 ◆このなかに念といふはこの時節を取らず。 ただ阿弥陀仏を憶念するをいふ。 もしは*総相、 もしは*別相、 所観の縁に随ひて、 心に他想なくして十念相続するを名づけて十念となす。 ただ名号を称するもまたかくのごとし。
答[ヘテ]曰[ク]、百一ノ生滅ヲ名ク↢一刹那ト↡。六十ノ刹那ヲ名[ケ]テ為ス↢一念ト↡。此ノ中ニ云[フ]↠念[ト]者†不↠取ラ↢此ノ時節ヲ↡也。但†言フ↣憶↢念スルヲ阿弥陀仏ヲ↡。若[シ]ハ総相若[シ]ハ別相、随[ヒ]テ↢所観ノ縁ニ↡、心ニ无[ク]シテ↢他想↡十念相続スルヲ名[ケ]テ為ス↢十念ト↡。但称[スル]モ↢名号ヲ↡亦復如シ↠是[ク]ノ。
二 Ⅰ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)十数を料簡す【十念釈義2】〔第八問答〕
(a)問
^◆問ひていはく、 心もし他縁せば、 これを摂して還らしめて念の多少を知りぬべし。 ただ多少を知るともまた*無間にはあらず。 もし心を凝らし想を注げば、 またなにによりてか念の多少を記することを得べき。
問[ヒテ]曰[ク]、心若シ他縁セバ、摂[シ]テ↠之ヲ令[メ]テ↠還ラ可シ↠知[リ]ヌ↢念之多少ヲ↡。但知[ル]トモ↢多少ヲ↡復非ズ↢无間ニハ↡。若[シ]†凝シテ↠心ヲ注ゲバ↠想ヲ、復依[リ]テカ↠何ニ可キ‡↠得↠記スルコトヲ↢念之多少ヲ↡。
二 Ⅰ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(b)答〔業事成弁〕
^◆答へていはく、 ¬経¼ (観経) に 「十念」 とのたまへるは、 *業事成弁を明かすのみ。 かならずしも*頭数を知ることを須ゐず。 「*蟪蛄は春秋を識らず」 といふがごとし。 この虫あに*朱陽の節を知らんや。 知るものこれをいふのみ。
答[ヘテ]曰[ク]、¬経ニ¼†言ヘル↢「十念ト」↡者、明ス↢業事0486成*辦ヲ↡†耳。†不ル↢必[ズシ]モ須ヰ↟知[ル]コトヲ↢頭数ヲ↡也。如シ↠†言フガ↢蟪蛄ハ不ト↟識ラ↢春秋ヲ↡。伊[ノ]虫豈ニ知ラム↢*朱陽之節ヲ↡乎。知ル者言フ↠之ヲ†耳。
^▼*十念業成とは、 これまた*神に通ずる0099ものこれをいふのみ。 ただ念を積み相続して他事を縁ぜざればすなはち罷みぬ。 またなんぞ念の頭数を知るを須ゐることを仮らんや。 もしかならずすべからく知るべくはまた方便あり。 かならずすべからく*口授すべし。 これを*筆点に題することを得ざれ。
†十念業成ト者、是亦通ズル↠神ニ者言フ↠之ヲ†耳。但積ミ↠念ヲ相続シテ不レバ↠縁[ゼ]↢他事ヲ↡便[チ]罷ミヌ。復何ゾ*†仮ラム↠須ヰルコトヲ↠知ルヲ↢念之頭数ヲ↡也。若[シ]必[ズ]須ククハ↠知ル亦有リ↢方便0382↡。必ズ†須クシ↢口授[ス]↡。不レ‡↠得↠*題[スル]コトヲ↢之ヲ筆点ニ↡。
無量寿経優婆提舎願生偈註 巻上
延書の底本は本派本願寺蔵鎌倉時代刊本(宗祖加点本)ˆ原漢文の底本と同一ˇ。
顛倒の善果 人間・天上界に生れる果報。 迷いの中の善果であるので
顛倒という。
仏力住持して 仏の本願力が支えたもってという意。
不退の風航 風航は帆かけ船のこと。 不退の位に向かって順風を得た船。 退転することなくかならず仏にならしめる教法を船に喩えたもの。
経 浄土の三部経を指す。
一隅を挙げて 一部分の意味によって。
国史国紀 国史は国王の命などによって公的に記された国の歴史書。 国紀は私人によって私的に記された国の歴史書。
各別の体例 それぞれちがった体裁である。
女の大体… 女性の一般的性質はあらわしているけれども。
梵音を存じて 梵語 (サンスクリット) を音写してという意。
大饒益 大きな利益。
梵音を存ぜば 梵語 (サンスクリット) を音写すればという意。
宗 もとづくところ。 本源。 帰趣。
邪見語 我を実体視し、 それにとらわれるよこしまな見解を表す言葉。 →
邪見
自大語 自分が他よりすぐれていると思う慢心を表す言葉。
流布語 世間一般に使われる言葉。 日常語。
彼此 長行とこの偈頌のこと。
密雲 深くたれこめた雨雲。
頑石 固い石。
仮名人 仮名とは実体のないものに仮につけた名という意で、 人といっても
五蘊 (
五陰) が
因縁によって仮に和合したものであるから仮名人という。
一異の門を観ずる論 龍樹菩薩の ¬
中論¼ 等のこと。
四阿含三蔵 四阿含などの小乗の教えのこと。
三蔵とは経・律・論のことで、 仏教経典の総称。 原始仏教の経典のことであるが、 大乗経典の成立以後は小乗とその経典の呼称となった。
畢竟浄 完全に煩悩を浄化した究極のさとりの境地。
総持 ここでは広博な経の文意を総摂して短い偈のなかにおさめたもつという意。
総相 器世間の十七種だけでなく二十九種荘厳のすべてにわたるすがた。
雑生触受 雑多な生を経て、 さまざまな苦にふれ、 その苦を受けること。
正観の由生 正しくものをみる智慧より生ずるところ。
胎卵湿の生 四生のうちの
胎生・
卵生・
湿生。
高く揖め 高は遠の意で、 揖はあいさつをすること。 礼をして遠くへ去りはなれて。
続括の権… 続括はつづけて矢を射ること。 権は権術の意。 菩薩が退転もせず、 諸仏の勧めもまたずに利他行をなすことを、 名人の連続して射る矢が、 次々と前の矢を支えていっておちることがないのに喩える。
労謙善譲 功労があってもみずから誇らず、 へりくだること。
陪陼 小さな山や中洲のような丘。
宮観迫迮 宮殿や楼観が狭い範囲にたてこんでいること。
土田逼隘 土地や田が狭くせせこましいこと。
国界分部せり 国境でへだてられている。
挙急 あわただしく、 うろたえること。
方丈に… 方丈は一丈四方の部屋のこと。 ここでは維摩がこの狭い部屋に三万二千人の座を設けておさめ入れたという ¬
維摩経¼ の説を出したもの。
無貲 はかりしれないこと。 限りがないこと。
畦畹 田畑や土地の広さをあらわす単位。
攀厭禅定 下位を厭い、 上位の天上界にのぼることをめざして禅定を修すること。 凡夫・外道の観法。
宝王如来の性起の義 ¬
華厳経¼ 「宝王如来性起品」 に、 如来の
身口意のはたらきはすべて
法性の顕現にほかならないと説いていること。 仏果は
法性の理に順じて起ったものであるということ。 →
性起
色 すがた。 身体。
発心 法蔵菩薩のおこされた願心。
三方にあまねからず 日は須弥山の回りをめぐっているので、一方を照らせば他の三方を照らさない。
十仞 仞は長さの単位。 一仞は両手を左右に広げたときの長さ。
有余にあひ忘れ 充分すぎるほどあるので、あることさえ忘れて。
高下 上下の意。
金沙 転輪王が世に出るときは海の水が減じ、 底に金の道ができるとされる。 ここではこの道の金砂のこと。
便りならず 不便である。
水乳 よく調和し融合することを水と乳がよく融和することに喩えていう。
楚越 ¬荘子¼ に出る故事。 楚の国と越の国は隣接していたが、 たがいに利害が対立し、 争いがたえなかったという。 ここでは、 六根が同じ体にあっても必ずしも調和がとれていないことに喩える。
楽受 受は感覚のこと。 身心をこころよくさせる感覚。
然 草が風になびくさま。
参訳 翻訳に参加すること。
滓沫 滓はにごった泥水、 沫はしぶきやあわのこと。
凝凘 氷塊が流れること。 流氷。
流氷がはりつめること。 結氷。
蹙架しを懐く 蹙架は迫りきて自由をうばうこと。 を懐くとは、 平常の心を失わせるという意。
序 一定の順序。
嶕嶢峻嶺 山やみねがひときわ高くけわしいさま。 嶕嶢の註 「高き貌なり」 は底本では嶕の字註として付されてある。
岝峉嶙 山に高低があり、谷やがけが深いさま。
茅 底本には 「茀」 とある。
絶目の川 一時に視界に入ってこないほどの広い水の流れ。
々 は草が風になびくさま。 荒れはてて淋しいようす。
震烈 天地をふるわすような大雨。
不祥の烖霓 不吉な天火や虹。
宮商 宮・
商・
角・
微・
羽の五音 (五種の音階) を略していったもの。 →
五音七声
所尊を延請せんと欲す 人々に尊ばれる仏を招こうと請い願うこと。
業貧しく感薄きもの 善業が少なく、 よい結果を招きがたい者。
取者 文字にとらわれる者。
洪滔 大水。 洪水。
経 ¬大経¼ ¬小経¼ の取意の文。
日光 仏・菩薩の頭頂から放たれる光明。
中国 ここではインドを世界の中心地とみて中国と呼んでいる。
地居 地の上にあること。 色界は空中にあるが、 極楽は七宝の大地の上にある。
別業 特別な行業。 とくにすぐれた因位の行い。
率土 王の率いる国土。 ここではその民のこと。
宝輪殿に… 宝輪は転輪聖王の乗る車。 転輪聖王が車を宮殿に駐め、そこにいて国を治めると、 世は平和におさまるということ。
四域 ここは四方の意。
黄鵠… ¬列異伝¼ に出る故事。 子安にたすけられた鶴 (黄鵠) が、 子安の死後、 三年間その墓の上でかれを思って鳴きつづけ、 鶴は死んだが子安は蘇って千年の寿命を保ったという。 ここでは、 鶴が命の恩人である子安を思う心の強さを住持に喩えたもの。
冬になると枯れる泉。
槐棘の… 槐棘はえんじゅといばらの木で、 中国の官位である三公と
九卿 (三槐九棘) のこと。 朝廷に仕える身分を指す。 →
補註8
譏誚これによりて… 人のそしりをうけて、 全身があつくなるような恥ずかしい思いをすること。
恥辱これによりて… はずかしめられて、 氷を抱くように冷汗をかくこと。
沙を懸けて帒を指すを… 砂を入れた袋を壁にかけ、 その中に食ありと教えて、 空腹をしのぐ一時の慰めとするという喩え。
百味の嘉餚 種々さまざまな美食。
袞寵 袞は天子の礼服、 転じて天子のこと。 天子の恩寵。
斧鉞 おのとまさかり。 刑罰の道具をあらわす。 転じて重刑のこと。
蓬藜 よもぎとあかざ。 あれはてた草むら、 または貧しい家の意。
方丈を列ぬ 一丈四方にごちそうを並べるほど豪華な食事ができる身分になる。
鳴笳して… 笳はあしぶえのこと。 麻絰は喪服のこと。 出発するときは笳を吹いてにぎやかであったが、 喪服を着てかえることになってしまったという意。
所以 いわれ。 本旨。
眉を… 女性が眉をひらいて媚態を呈し、誚りを受けるという意。
根敗の種子 芽の出ない、 腐敗した種子。 ここでは仏果を証すべき因 (種子) のない
声聞、
縁覚の
二乗を喩えていう。
残欠 根欠に同じ。
会する 会通すること。 一見矛盾したように見える記述を道理に照らしあわせて、 趣意の一貫したものとして説明すること。
生処 生まれるべきところ。
憍尸迦 梵語カウシカ (kauśika) の音写。 帝釈天のもとの姓。
橘栽 たちばな、 またはみかんの類 (柑橘類) の総称。
江北 江蘇省北部の地。 広義で長江 (揚子江) より北の地域。
河洛 黄河と洛水にはさまれた流域。 具体的には洛陽の都。
菓肆 肆は店の意。 くだものを売る店のこと。
壟西 隴山の西、隴西郡の地。 現在の甘粛省隴西。
趙魏 戦国七雄の趙国と魏国。 現在の河北省南部、 山西省の南部と北部、 河南省の北部一帯をいう。
架桁 鳥かごのとまり木。
訥口蹇吃 口ごもってなめらかでないこと。
与奪の名… 与はほめること、 奪はそしり、 しりぞけること。 ここでは浄土にはそしりの名さえないという意。
奇 すぐれていること。
修短業に繋がれて 寿命の長短がそれぞれの業報として決定しているという意。
ある論師 小乗の論師を指す。
名義 名の意味。
無窮の過 無限にくりかえして論証が成立しない過失。
末後の身 菩薩が成仏する直前の身。 迷いの尽きる最後の身。
葉 はなびら。
脈 はなびらのすじ。
梵摩尼宝 梵は清浄の意、 きよらかな摩尼宝珠 (如意宝珠) のこと。
妙真珠網 すぐれた真珠をちりばめた飾りあみ。
四柱の宝幢 蓮華台の四方にある宝でできた柱。
雑華雲 種々の色をした花で飾られた雲。
減ずるところ唯一なれば 仏身の三十二相より、 ただ一相を欠いただけということ。 提婆達多は一般には、 白毫相と千輻輪相の二相を欠くとされる。 またこれにより 「減ずるところ唯二」 とする異本もある。
蟷螂 かまきりのこと。 ¬荘子¼ に、 かまきりが車輪に向かっていく喩えがある。
簡ばず 区別しない。
諸仏正遍知海 正しく完全に真理をさとったあらゆる仏陀たちの意。
根色空明作意 眼という器官 (根)、 対象の事物 (色)、 空間 (空)、 明り (明)、 見ようという意思 (意) のこと。
眼ただ… 眼はただ色境 (もの、 すがた、 かたち) という対象 (所縁) を見るだけで、 声を聞く、 香を嗅ぐなどということはない。 ここにいう 「行ず」 は心が対象を認識するはたらきのこと。
して は車をおしかえすこと。 ここでは転じて軽んずる、 けなしおとしめるという意。
瞿曇 ここでは外道が釈尊を軽んじていういい方。
道を成ずる… 釈尊成道の時、 その名声は
色界の
初禅天にとどいたにすぎなかったという意。
これは黒これは白 黒は悪法・悪業、 白は善法・善業の意。
莦 悪い草と善い草。
就 異本には 「熟」 とある。
虚しく往きて実ちて帰り 何ももたずに出かけて、 満ちたりて帰り。 ここでは、 心を虚しくして仏に向かえば、 仏の功徳が満ち入るという意。
根性欲 人々の素質 (機根)、 習性、 望み。
中下の死尸 声聞・縁覚の二乗のこと。 声聞乗を下乗、 縁覚乗を中乗、 菩薩乗を上乗という。 このうちの声聞 (下)・縁覚 (中) の二乗は、 最高のさとりを求める意志がなく、 仏になれないので、 死尸 (死骸の意) という。
強梁のもの 自然の理にさからうような強さ、 不自然な強さのもの。 梁は屋根をささえる横木であるが、 梁ばかりが強いと柱をこわし、 全体を破壊してしまうことからいう。
他縁をもつて廃忘する 他のことに気をとられすっかり忘れてしまう。
仏三たび語りたまひしに… 仏は居迦離が舎利弗を謗るのを三度いさめられるが、 居迦離はいずれもききいれなかったために、 ついに地獄に堕ちたという。
第六天の魔 三界のうち
欲界の最高天である
他化自在天の王のこと。 仏道修行にはげむものを誘惑するので魔といわれる。
無上大宝 この上ないさとりの功徳のことを宝に喩えていう。
堯舜の無為と称せしは 堯・舜は中国の伝説上の王の名。 それぞれ、 すぐれた臣下を持ちみずから何事もしないで天下を泰平におさめたとされることから無為といい、 中国における政事の理想とされる。
経 引用は ¬大経¼ の上巻、 下巻および ¬小経¼ からの取意の文。
止足の情 満ち足りた気持ち。
y>無礙の二利行ができないから小菩薩という。
影 水面にうつった太陽のすがた。
所宜を量りて ちょうどよい時をはかって。
実に修行… 修行したことに少しのとらわれもないということ。
一切諸仏の大会 あらゆる仏たちの説法の会座。
巧妙の弁辞 たくみな弁才。 理解・表現の能力が自由自在であること。
大慈謙忍 衆生救済のために、 忍んで身をへりくだること。
外道凡夫人 異本には 「外凡夫人」 とある。 凡夫の位を内・外にわけたとき、 十住・十行・十回向の三賢位の賢者を内凡というのに対し、 十信以下の善悪の凡夫を外凡という。 また五逆謗法以外の凡夫人のこととする説もある。
仁義礼智信 儒教に説く五種の倫理徳目。
五常のこと。
先づ牽くの義 義は重い方が先に報いがあらわれるという道理。
虚妄顛倒の見に依止して 真実の理にそむいた誤った見解をよりどころにして。
方便安慰 いろいろてだてをして教え、 心を安らかにすること。
両経 ¬観経¼ と業を説く教典のこと。
無間 相続すること。
頭数 念仏の回数の意。
蟪蛄 夏のおわりに鳴く蝉。
朱陽の節 夏の季節。
神に通ずるもの 神通力を持つ仏のこと。
筆点に題する 筆で書き記す。
底本は◎本派本願寺蔵鎌倉時代刊本(宗祖加点本)[ただし訓は○浄聖全三巻の宗祖加点本と全同ではなく大幅に標準化されているため、 相違を†、 加を‡、 減を [ ] で示した]。 Ⓐ高野山寶壽院蔵鎌倉時代書写本(上巻)、 Ⓑ大阪府金剛寺蔵保延四年書写本(下巻)、 Ⓒ山口県常満寺蔵室町時代刊本、 Ⓓ本派本願寺蔵版¬七祖聖教¼所収本 と対校。
○「第一序分」と右傍註記
於 Ⓐになし
乃チ→○乃
サム→○ス
醤→Ⓓ将
无顧ノ悪人→○无キ↠顧コト↠悪ヲ人
破ル→○破ス
壊ツ→○壊ル
優→Ⓐ憂
波→ⒶⒷⒸ婆
衍 ○「衍字[口且反 学也]と下欄註記
致 左Ⓓムネ
風航 左Ⓓホカケブネ
○「第二正宗分三 一大意」と右傍註記
号 ○號を号と上欄訂記
於テ→○於テ
数→ⒶⒹ薮
服膺 左Ⓓシタガヒ ヨハキ モチヰ
釈ス。梵ニ言フハ↢「優婆提舎ト」↡→○釈ス↢梵言ヲ↡。「優婆提舎ハ」
体例ナリ。然ルニ→○体例然ナリ。
為ス→○為ル
之 Ⓐ人イと右傍註記
是 Ⓐになし(是イと右傍註記)
数→Ⓓ薮 ○数を藪と上書訂記し、 さらに藪と左傍註記
相応スレバ者→○相応者
ナリ→○ニ
○ハ
直→○直ニ
議 ○「或本義字也」と上欄註記
而已→○而已ト
不レドモ→○不
此ニ→○此ノ
仍 ○「仍字 如承反」と左傍註記
○ト
以テ誦ス↠経ヲ。為ノ↢総摂セムガ↡故ナリ→○以テ↢誦経ヲ↡為ルガ↢総摂ト↡故ニ
以テ釈ス↠偈ヲ。為ノ↢解義ノ↡→○以テ↢釈偈ヲ↡為ルガ↢解義[ト]↡
言フ↢无量寿如来ヲ↡。→○言フコヽロハ无量寿如来
ト→○・
行ハル↢于世ニ↡→○行↠于↠世
願ズルノ↠生ゼムト↢彼ノ安楽浄土ノ如来ノ浄花ノ中ニ↡生ナリ。→○願ズ↠生[ゼム]ト↢彼ノ安楽浄土ニ↡、如来浄花ノ中ニ生ズルガ…
者 Ⓐになし
ヒ→○フ
揵→Ⓓ健
耳→○耳
某→◎ⒶⒸ其 ○其
○「三入文二 一総説分即上巻也」と右傍註記
ヲ→○ニ
相→Ⓐ想(相と上欄註記)
所以ニ→○所以ニ
次ギテ→○次デ
従第三行 Ⓐになし(従第三行イと右傍註記)
一→Ⓓ四
末→◎未 ○未を末と上書訂記し、 さらに末と下欄註記
世 Ⓐ論イと上欄註記
世 Ⓐ註云イと上欄註記
シ→○ス
レバ→○[ル]ハ
此ニ→○此ノ
○レ
在リテ→○在シテ
願ズルニ↠生ゼムト→○願生ニ
知ルナリ↣此ノ言ハ帰シタテマツルト↢于釈迦ニ↡→○知ヌ此ノ言ハ帰シタテマツルナリ↠於↢釈迦↡
帰于 ○皈于を帰於と上欄訂記
シ→○ケム
如シ↧…由アルガ↥。知リテ↠恩ヲ報ズ↠徳ヲ→○如シ↧…由ルガ↦知テ↠恩ヲ報ズルニ↞徳ヲ
ノ→○ハ
己→Ⓐ己と上欄註記
達 左Ⓓサトル
督 左Ⓐアキラム ○「督字 勤也率也正也」と上欄註記
タテマツリ
願ズ↠…。→○願[ズル]コト↠…、
何以→Ⓐ以何
○ヤ
自指之言ニシテ→○自指フル↠之ヲ言ナリ
ズ→○[ザ]ル…也
然礼拝 Ⓐになし(然禮拝イと右傍註記)
ニシテ→○ナリ
推セバ、帰命ヲ…→○推セバ↢帰命ヲ↡、
以 Ⓒになし
言ヘリ↧「…故ナリト」↥。→○言ク、「…故トナリ。」
スルニ→○シ
欲スルガ→○欲フガ
如実ニ→○如ク↠実ノ
スニ→○[シ]タマフニ
ス→○[シタテ]マツル
○ノ
クト→○[ケタテ]マツル
ル→○ラムヤ
ハ→○ホ
サ→○ホ
頑→Ⓐ碩(頑イと右傍註記)
洽→Ⓐ給
→ⒶⒹ霑
恰→◎Ⓐ捨
主→Ⓐ王(主イと右傍註記)
ハバ→○フハ
言フハ→○言フハ
リ→○ル
○上書訂記
ガ→○ゾ
ク→○シ
言フ→○言フ
如キ↢凡夫ノ所ノ↟謂フ→○如キ↢凡夫ノ↡所↠謂
如キ↢凡夫ノ所ノ↟見ル実ノ生死ハ→○如キハ↢凡夫ノ所ノ↠見ル実ノ生死ノ↡
所有→○所[コト]↠有
与ニ↢後念ノ↡→○与↢後念↡
亦→Ⓓ亦[復]
ク→○ケム
ザレバナリ→○ズ
ハ→○ニ
ジ→○ズ
波→ⒸⒹ婆
起ス↠下ヲ偈ナリ→○起ス↢下ノ偈ヲ↡
○テ
セム→○スト
ス→○シテ
ナリ→○ニト
故→ⒶⒹ故[得] ○得 上欄補記
名ク→○得↠名コトヲ
憂波→Ⓓ優婆
何レノ所ニカ依ルト→○何所依
何ノ故ニカ依ルト→○何故依
云何ガ依ルト→○云何依
ナリ→○ニ
シ→○[ス]コト
モ→○ヲ
相 Ⓐになし
恵→Ⓓ慧 ○恵を慧と下欄訂記
所謂ル→○所↠謂
ズルガ→○ゼルガ
ナリ→○ニト
称→Ⓐ応
右○「ノ」を「カナヘルガ」と上書訂記
間 右○「ノ」を「ヲ」と上書訂記
見ソナハスニ↢三界ヲ↡…衆生締ラレテ↢此ノ三界ニ↡、顛倒・不浄ナリ。→○見ソナハシテ↧三界ハ…衆生締ルヽヲ↦此ノ三界、顛倒ノ不浄ニ↥、
シタマヘル→○シタマフ
シタマヘリ→○シタマフ
尺音蠖 左Ⓐヲギムシ
申→Ⓓ伸
循→◎ⒶⒸ修
如シ↢…自縛スルガ↡→○如クナリ↢…自縛ル↡
置キテ↢衆生ヲ於不虚偽ノ処、於不輪転ノ処、於不无窮ノ処ニ↡→○置テ↣衆生ヲ於↢不虚偽ノ処↡、於↢不輪転ノ処、於↢不无窮処↡
ノ→○ハ
○ナリ
ナルガ→○ノ
道→Ⓐ道[者]
得→○得シム
ニ→○ヲ
者 Ⓐになし
倚 左Ⓐタノム カヽル ヨル
伏 左Ⓐヤスム カヽル イコフ
シク→○シキ
ナリ→○ニ
○修を修と上蘭訂記
ナルト→○ナリト
○シ
无際ナリ→○无シ↠際
→ⒶⒹ拘
且ツハ→○且ノ
由生→○由ヨリ生[ズル]ナリ
生→Ⓐ有(生イと右傍註記)
維 左→Ⓐツナグ
権→Ⓐ催(權イハカリゴトと右傍註記) ○権ハカリゴト
セリ→○シテ
抑モ是近言ナリ→○抑フ是近キ言ヲ↡
陜→◎Ⓒ→Ⓐ浹 →○
左Ⓐメグル
堕→○堕アヤウシ
成→Ⓓ城
阜ナリ→○阜
式→Ⓓ或
陘→Ⓐ径(陘イと上欄註記) →○陘ホトリ
山→◎○ⒶⒸ小
陪→○陪マサル
父→◎○Ⓒ文
陼ナリ→○陼カギルニシテ
緒→Ⓓ渚
丘之 Ⓐ水中高シと右傍註記
迫迮シ→○迫セマリ 迮セマルナリ
逼隘ス→○逼セマリ 隘イヤシシ
チ→○テ
陋→Ⓓ陋[已売反]
厄→◎○Ⓒ危 Ⓐになし
部→Ⓐ障(部イと右傍註記)
如クト↢虚空ノ↡→○如虚空
広大ニシテ无際ナラムト→○広大无際
如クノ↢虚空ノ↡→○如虚空ノ
クトイフ→○シトイフ
无際ナルヲ↡→○无キヲ↟際
已ニ→○已ニ
当ニキ↠生ズ→○当ニ生ゼム
无際ニシテ→○无クシテ際
スル→○セムヤ
丈→Ⓒ大
苞 左Ⓐユタカニ
貲 左Ⓐツクルコト →○貲タカラ
支→◎Ⓒ友
畦→○畦サカイ
左Ⓐナハテ アゼ
畹→○畹サカイ
左Ⓐアシ
累ハサムヤ→○累ネムヤ
遠→◎速
所→Ⓐ所[宅イ无]
苞 左Ⓐカヌ イル →○苞カヌ
容 左Ⓐカヌ →○容ヲサム
陜ニ→Ⓓ狭 →狭ニセバシ
左Ⓐセマシ
覈ニ→○覈ニアキラカニ
左Ⓐアキラカ キハム
若カム↢…広ナルニ↡耶→○若キヲ↢…広ナルガ↡耶
攀厭禅定ヲ→○攀↢厭スルヲ禅定ヲ↡
悕フヲ↠出ムト→○悕ネガイ出ヲ
出サムト↢于三界ヲ↡→○出ムト↠于↢三界↡
指ス↧法蔵菩薩…所ヲ↞成ズル→○指ス↢法蔵菩薩ヲ↡。…所ナリ↠成ジタマヘル
積習 左Ⓓツム ナラフ
必然義 左Ⓓカナラズサダマルコトナリ
美 左Ⓓヨシ
ヲ→○ナレバナリ。
為ス→○為ル
即→Ⓐ即[是]
為ス…。故ニ→○為セル…故ニ
ヘリ→○フ
○也と下欄補記
仞→Ⓐ刃(仞イと右傍註記し、宇析之七八尺曰仞と上欄註記) ○仞ニを刃ニと上書訂記
カラム→○ケム
メムト→○メタマヘリ
得↦於仏道ヲ↥→○得↞於↢仏道↡
○ニシテ
於有余ニ↡→○於↟有[ル]コト↠余
シタマヘル→○シタマフト
形ル→○形トス
形ルレバ→○形ナレバ
三→Ⓐ三[諸イ无]
仏ノ在時→○仏在ノ時
ツガ→○チタマヘルガ
无キ…故ナリ。→○无シ…。故ニ
スガ→○[シ]タマフガ
不→○不ル…也
宝↢重スト…↡→○宝重クスト↢…↡
為スコトヲ→○為ルコトヲ
珍↢翫スレドモ…↡→○珍シク翫ベドモ↢…↡
↢於敷具ニ↡→○↠於↢敷具↡
↢於目ヲ↡→○↠於↠目
↢於身ニ↡→○↠於↠身
↢於水乳ニ↡→○↠於↢水乳↡
楚 ○「北」と左傍註記
越 ○「南」と左傍註記
ナルナリ→○ナラムト
→○ニ
卒→Ⓐ卒[土]
父→◎○Ⓒ文
然→Ⓓ能 Ⓐ能イと右傍註記 ○然を能クと右傍訂記
参 ○或本恭字也と上欄註記
如何。是ノ→○如何ゾ是セム。
言ヘリ→○言フ
言フ→○言フ
交→◎Ⓒ災
澐溺→○澐ウルフ 溺オボル
云→○亡 云を亡と上書訂記
凘→◎○ⒶⒸ澌
氷→◎○ⒶⒸ水
→Ⓐ㳌→Ⓓ浹 →○淌ミヅノナガルカタチ を上書訂記
古→Ⓐ下
→ⒶⒹ㵩
凍→Ⓐ東
蹙→○蹙セマル
架→Ⓓ枷
壊ク↠ヲ→○壊ス
壊→Ⓓ懐
失ス↠常ヲ→○失常ナリ
向ニ→○向フニ
背ニ→○背クニ
ヒ→○フテ
値→Ⓓ懼
テ→○[ソナ]ハスニ
為リ→○為ム
有リ↠序→○有[リ]テ↠序
トシテ→○モ
不トイフコト↟可ナラ→○不可ナルコト↡
シタマヘル→○シタマフヤ
蘭→Ⓓ欄
嶕→Ⓐ
嶺ニシテ ○嶺を嶺ニシテと下欄訂記
タハリ→○タヘ
牛→Ⓐ中(牛イと右傍註記)
岑→Ⓐ峯
消→Ⓓ陗
崖→Ⓒ崔
卉→Ⓓ草
茅→Ⓐ茀
无蹤→○无蹤
属スル→○属ク
的ニシテ→○的シクシテ
為ラムト↢映飾ト↡→○為サム↢映飾ヲ↡
シ→○セム
ク→○カム
交→Ⓐ来(木イと右傍註記)
震烈→○震↢烈シテヲ↡
霓→○霓
シ→○ジ
○シテ
見サムト→○見ム
響→Ⓐ嚮
Ⓐイと上欄註記
→ⒶⒸⒹ霍
嚮→Ⓐ響 ○嚮を響と上書訂記
雨ラシテ↢花ト衣トヲ↡荘厳シ→○雨リ↢花衣ノ荘厳ヲ↡
勲→Ⓓ薫
ズ→○ゼム
欲ス→○欲フ
延↦請セムト所尊ヲ↥→○延[ベ]ムト↦請ヲ所尊ニ↥
欲ス→○欲フ
モ→○[シ]テ
貧シク感→○貧感ニシテ
悲→Ⓐ悲[心]
雨ラシテ→○雨テ
タサムト→○テム
言ヲ→○言ヲ
云→Ⓒ去
ハム。→○フコトヲ、
雨ラサバ→○雨ラバ
宝質→○宝ノ質
漫テ→○漫シ
恵→Ⓓ慧
ヲ→○ハ
使メムト↧…入リ↢仏ノ智恵ニ↡、不ラ↞…→○使メテ↧…入ラ↦仏ノ智慧[ニ]↥、不↠…
恵→Ⓓ慧 ○恵を慧と上書註記
是 ⒶⒹになし
言ヘリ→○言フト
梵声悟ラシムルコト→○梵声ノ悟
妙遠ナレドモ→○妙ニ遠ケレドモ
ラシムルコト→○ラスルコト
○イヘリ
ラシムル→○ラスル
ザレバナリ→○ズ
ヅルナリ…。→○[デ]テ…、
有→Ⓐ界(有イと右傍註記)
セシムルヲ→○スルヲ
悟ラシムル…、→○悟ス…。
言ヘリ→○言ヘリ
言ヘリ→○言ヘリト
羅刹為レバ↠君ト→○羅刹ヲ為ス↠君ト
相噉ズ→○相噉ス
マレバ→○マル
虞→○虞クウ
ヲ→○ト
セラル→○[セ]リ
言ヘリ→○言フ
岳→Ⓐ竺
屎→Ⓓ尿
圻→○圻タカホコ
圻→Ⓐ析(圻イと上欄註記)
犖 左Ⓐスグルタカシ
縁リテ→○縁トシテ
亡→Ⓐ之(亡公反と右傍註記)→Ⓒ已
慰ムル→○慰ム
労 左Ⓐタシナミ
ナルモ→○ナリ
如シ↧日月灯明仏…无キガ↞→○如日月灯明仏…无カリキ↠
項→Ⓓ頃
シ→○キ
身→Ⓐ身[愛]
○ヌ
○イフ
捨テラレ↢蓬藜ニ↡→○捨テ↢蓬藜ヒシヲ↡
袞 左Ⓐソヨメク 衣ノナルナリ
寵→Ⓐ龍(寵イと右傍註記)
左Ⓐメグム
麻 ◎Ⓒになし ○右傍補記
歴→Ⓐ暦(歴イと右傍註記) Ⓓになし
道シ、出シテ↠麻ヲ歴経シテ催ス↠還ルコトヲ→○噵フ↢出デヽ↠麻ヲ歴ヘ 経フルシ催還スト↡
○道を噵と上書訂記し、 さらに噵フと右傍註記
願ジテ→○願ハ
通ズル↢大義ニ↡之門→○通ズル↢大義之門ニ↡
造リテ↠城ニ→○造[リ]テ↠城ヲ
成↢就スル大乗ヲ↡之門→○成↢就スル大乗之門ヲ↡
経→Ⓓ絰(聖教全書の註により補足)
有スト→○有ス[ト]
ト→○ヲ
以テ↠拓クヲ↠眉ヲ致シ↠誚ヲ→○以テシ↢拓ゲテ↠眉ヲ致スヲ↟誚ヲ
拓 左Ⓐツバナガシテ
ヲシテ→○ハ
平 Ⓐになし(平イと右傍註記)
一 Ⓐになし(一イと右傍註記)
有ラバ↣…計量シテ知ルコト↢…↡者→○有テ↢…計量↡知ラ↢…↡者
稽首シ礼シタテマツルト→○稽首礼ストイヘリ
キハ→○シト
有リテ↧説ク↢…↡処↥→○有ル↠説[ク]コト↢…↡処ニ
会セム会ムヤ
噵ハク→○噵ハク
覈 左Ⓐホガラカニ
応シ↢於浄土ニ生ズ↡→○応シ↧於↢浄土↡生ズ↥
如キ↠言フガ→○如言フ
以→Ⓐ知(以イと右傍註記)
言ヘリ→○言ヘリ
栽→○栽テ
壟→Ⓒ龍
ノ→○ガ
渡ラ。彼ニ→○渡サ↠彼ニ。
サバ→○[ス]ハ
須ヰム↢…言フヲ↟→○須ベ クケム↢…言フ↟
軟心菩薩 ○「軟心ノ菩薩ト云ハ金剛心ナラヌ菩薩也」と上欄註記
シクハ→○ダ
○ヲ
→Ⓓ儜
人→Ⓐ人[人]
聴クト→○聴ナリトアキラカ
譏→Ⓒ識
聾→◎Ⓒ龍 ○龍を聾と右傍訂記
訥 左Ⓐコトヾモリ
○を蹇と上書訂記し、 さらに蹇と右傍訂記
左Ⓐフサグ
吃→Ⓐ𠰏 𠰏イコトヾモリ と上欄註記
○吃を乏と上書訂記し、 さらに乏ナルヲと右傍訂記
→○唖オシ →Ⓓ瘂
有リテ↢如キ↠是クノ等↡、根→○有テ↢如キ↠是等[ノ]根↡、
須クシ↠言フ…。明カナリ↣…无キコト↢…↡→○須ベ クキコト↠言フ…明カナリ。…无シ↢…↡
為スニ→○為ルニ
奇 左Ⓓヨシ
牙→Ⓓ芽 左Ⓓクキ
ク→○キ
不シテ…而→○不ルヲ…而
蚌 左Ⓓカイ
使 Ⓐになし
潜 左Ⓐカクル
凡ニ性→○凡性
繋ガレテ↠業ニ→○繋ツナ業
スルコト→○スルニ
是故→Ⓓ故我
言ヘリ→○言ヘリ
願ズ↠→○願[ク]ハ
結↧成ス上ニ観↢察スルハ…成就ヲ↡所↦以ナルコトヲ願生スル↥。→○結↣成ス上ノ観↢察スルコトヲ…成就ヲ↡、所↢以ニ願生ノ↡。
于上ニ↡→○于↟上
文→Ⓒ及
○ゾヤ
為スガ→○為ルガ
中→○中
ジ→○[ズル]ニ
減→◎咸
復→Ⓐ後(復イと右傍註記)
アリ→○ニイマス
ジタマフ…。→○ジテ…、
使メムト↣…台ヲシテ、…為サ↢…↡→○使メテ↢…台ヲ↡、…為ムト↢…↡
猶如シ↢→○猶↢如シ
ス→○ル
キ→○ク
雲ト→○雲ノゴトクニ
化↢作スト→○化シテ作ス↢
苦→◎○Ⓒ名 Ⓐ名イと右傍註記
末→◎Ⓐ未
厳→Ⓐ交
ニシテ→○ナリ
抑→◎Ⓒ御→Ⓓ好
…ニ↡。所↠減ズル→○…ノ所ニ↟減ズル、
減→Ⓐ感
一→Ⓒ二
ナレバ、→○ナリ。
耶→Ⓐ邪
○ヲシテ
シタマヘリ→○セリ
キ→○カ[ラ]ム
禾→ⒸⒹ木
短 Ⓐ短と上欄註記
両→◎雨
准→Ⓓ準 Ⓐ准と上欄註記
舒ベタマフニ↟臂ヲ→○舒ベタマハム臂ニ↡
言ヘリ→○言ヘリ 言 Ⓐになし
為ス↠言ヲ。故ニ→○為ルガ↠言ハムト故ニ、
応シ↢径…由旬ナル↡→○応シ↠径ル↢…由旬ニ↡
問→◎Ⓒ間
是故汝等 Ⓐになし
汝等→○汝等
法界 Ⓐになし
如キハ↢眼界ノ↡→○如眼界
縁リテ↢…因縁ニ↡→○縁ジテ…因縁ヲ↡
眼→○眼
己→○己
心 Ⓐになし
当リテ↢…時ニ↡→○当ニ…時
之→○之
是ノ心作仏ス→○是心作仏
作ルト↟仏ヲ→○作仏スト↡
是ノ心是仏→○是心是仏
為ニ↠火ノ焼カレテ、木→○為ル↠火ト焼[キ]テ↠木ヲ
木→Ⓒ水
真正ニ→○真ナリ、正ナリ。
知ル→○知ナル
為→Ⓐ是
是ノ知→○是ニ知[リ]ヌ
是→Ⓐ[如]是
声→○声
梵響→○梵ノ響
見ソナハスニ↢…如来ヲ↡…。…。成ズル↠道ヲ日、声ハ唯徹ル↢梵天ニ↡。→○見[ソナハ]ス↧…如来ノ…、…、成[ズル]ニ↠道ヲ曰フニ↠声ヲ唯徹スヲ↦梵天ヲ↥。
シテ↠人ヲ→○人
此→Ⓐ此[心]
人→Ⓐ令
聞ク者ヲシテ→○聞カム者
シ→○カラムト
使メムト↫…如クナラ↪…无キガ↩…↨。→○使…如ク↣…无キガ↢…↡、
冢→◎ⒶⒸ家
于内ニ↡→○于↟内
安ズ→○安クス
於外ニ↡→○于↟外
リ→○ルニ
於テ↠是ニ于息ム→○於テヲヤ↢是于↟息[ム]
称→Ⓐ弥(称イと下欄註記)
嚮→Ⓓ響 ○嚮を響と上書訂記
別 Ⓐになし
括→Ⓐ栝
就→Ⓓ熟
于→Ⓓ乎
見ソナハスニ↢…如来ヲ↡…、衆不↢純浄ナラ↡。
→○見ソナハスニ↧…如来、…衆テ不ルヲ↦純浄ナラ↥。
説法輪下ノ→○説タマフ↢法輪ヲ↡下ニ、
大衆、諸ノ根・→○大衆ノ諸根ノ
厳→Ⓓ厳[大]
崖→○崖
崖→Ⓓ涯
言ヒテ↢…不ルコトヲ↟宿サ→○言[ク]、…不↠宿サ
尸→○尸
不ルヲ→○不ト
見 Ⓐ界イと上欄註記
王→Ⓐ土(「王イと右傍註記)
○ニ
為ラム↠仏ト→○為ラム↠仏
无ク↢能ク生ジテ↠心ヲ…等シキコト↡→○无クシテ↢能生ノ心↡…等シカラム
ソナハスニ→○[タテマ]ツルニ
如シ↱…語リシガ↫…仏ニ…当ニシト↪…学ス↩余道ヲ↨。→○如ク↧…語ラハク↢…仏ニ↡…当ニ…学セムトイヒシガ↦余道ヲ↥、
リタマヒシニ→○ルニ
短 Ⓐ短イと右傍註記
惓ムコト→○惓キコト
所↣以→○所以
値→○値
勉→Ⓓ免
セドモ→○[ス]トモ
言ヘリ→○言フ
ズ→○ゼヨ
須ヰル↠観ズルコトヲ→○須ベ クキ↠観ズ
ストキニハ→○ストキンバ
フニ→○ハムニ
キトキニハ→○キトキンバ
如 ◎Ⓑになし
ギテ→○[イ]デ
ジテ→○トシテ
ミテ→○ンデ
止→Ⓒ心
スルモノ→○シテ
為ニ↠我ガ維ゲト↠針ヲ→○為ラム↢我ガ維針↡
為ニ↠其ガ維ギタマフ↠針ヲ→○為ラムト↢其レ維針ト↡
交→○交リ
須ムベキ→○須ツベキ
耳→○耳ト
聞暗→Ⓓ暗聞
諸 Ⓓになし
ノミニシテ→○ノ
応ク↢供養ス↡→○応ジ↢供養ニ↡
応キ↢教化ス↡→○応ズル↢教化ニ↡
如来ノ眷属ヲ↡→○如来ヲ↡眷属
欲シ→○欲ヒ
欲スルニ→○欲フ
不↠能ハ↧…照シ、…教↦化スルコト衆生ヲ↥。…→○不ズ ↠能↧…照コト↥。…教↢化コト衆生ヲ↡、…
項→Ⓓ頃
サムト→○ス
向→Ⓐ之(向イと右傍註記)
不動ニシテ而→○不↠動而
不ハ↢一時ナラ↡→○不ズハ↢一時ニ↡
須クシ→○須クシト
己ガ→○己ガ 右「レガ」と上書訂記
所ノ↠居スル→○所居ノ
不→○不
ナリトモ→○ニカ
无カラムニハ→○无サヌ
ノ→○ニシテ
アリテ→○シテ
无キ→○无サヌ
エ→○タ
ク→○キテ
誦→Ⓓ頌
言ヘルハ→○言ヘルハ
ス→○[シ]タマフ
其ノ→○其
シ→○セムコト
乃チ至ルマデ↢一念ニ↡→○乃至一念セム。
至シテ↠心ヲ廻向シテ、→○至心廻向シタマヘリ。
ズレバ→○[ズル]ハ
道 ⒶⒹになし(Ⓐ道イと右傍註記)
言フニ→○言ク
下品→Ⓒ品下
愚→◎Ⓒ遇 ○遇を愚と上欄訂記
逕→Ⓓ経
命 Ⓐになし
ズルコト→○ズルニ
キ…、→○ク…。
花 ○花を華と上欄訂記
見↧金蓮花ノ…住ルヲ↦…↥→○見[ル]ニ↢金蓮華ヲ↡…住セム↢…↡
花 ○花を華と下欄訂記
猶如クシテ→○猶如クシテ
中→○中
彼→ⒸⒹ此
項→Ⓓ頃
実→Ⓓ宝
発サム→○発セム
滅 Ⓐになし(滅イと右傍註記)
但令…得ト↢…↡→○但令ム↧…得↦…↥
皆得往生 ◎になし ○下欄補記
ヲモテ→○ヲシテ
…。→○ルニ…、
スルモ→○セル
得ト→○得シム
言→Ⓓ言[作]
五→Ⓒ耳
具 Ⓐになし
会 左Ⓓワカツ
スル→○セムヤ
スルヲ→○セルヲ
得→○得シムト
人→Ⓐ大
スレドモ→○シ…而
アリテ→○ハ
得ルヤ→○得ムヤ
但令誹↢謗シテ…↡→○但令メテ↣誹↢謗セ…↡
土→Ⓐ生(土イと右傍註記) ○土を生と上書訂記
此→○此
貪リテ↢彼ノ土ノ安楽ヲ↡而→○貪↣彼生ヲ↢安楽ニ↡而
願ズル↠生ゼムト者→○願ゼ↠生ヲ者
ムルガ→○メムガ
无ク→○无サズ
受ケ、其ノ心→○受ケ↢其ノ心ヲ↡
↣誹↢謗スト正法ヲ↡→○↢誹謗正法ト↡
↢於五逆ノ重罪ニ↡→○↠於↢五逆ノ重罪
称→Ⓓ秤
塗 左Ⓓミチ
得↣往↢生スルコトヲ…↡→○得往↢生シテ…↡
ツト→○テム
繋属 左Ⓓツナギツナグ
欲スル↢云何セムト↡→○欲ハムヤ↢云何ガ↡
謂ハバ↫…応シト↪…繋↩在ス三界ニ↨者→○謂…応ク↧…繋↦在ス三界ニ↥者
当ニシ↢…校量ス↡。…義ハ→○当ニシ↣…校↢量ス…義ヲ↡。
不→○不ル
依リテ↢…安慰ニ↡聞キテ↢…↡→○依[リ]テ↣…安慰シテ聞クニ↢…↡
名ク↠在リト↠心ニ→○名ク↢在心ト↡
依↢止シ→○依リ↢止[マリ]
量 左Ⓓハカラフ
朗 左Ⓓホガラカナリ
用ヰテ以テ塗ルニ↠鼓ニ→○用↢以テ塗[ル]
ヲ↟鼓ニ
抜ケ出ヅト→○抜出スト
名ク↠在リト↠縁ニ→○名ク↢在縁ト↡
両→◎Ⓒ雨
為ス→○為ルヤ
言フ↣→○言ハ
言フ↣憶↢念スルヲ…仏ヲ↡。…別相、→○言フコヽロハ憶↢念シテ…仏ノ…別相ヲ↡、
凝シテ↠心ヲ注ゲバ↠想ヲ→○凝心注想セバ
辦→Ⓓ辨ワキマフ
言ヘル↢「十念ト」↡→○言ハク「十念」
ル…也。→○レト…也、
言フガ↢…不ト↟…。…乎→○言ガ↧…不↠…、乎ト↥
朱 左Ⓓアカシ
仮→Ⓓ暇
十念業成ト→○十念ノ業成ズトイフ
耳→○耳ト
仮ラム↠須ヰルコトヲ↠知ルヲ…→○仮ニ須ヰム↠知ルコトヲ…
須クシ→○須シ
題 左Ⓓシルス