0934◎往生要集 巻中 *尽第六別時念仏門
天台*首楞厳院沙門*源信撰
二 Ⅳ ⅱ d 観察門
【42】◎^第四に△観察門とは、 ▼初心の観行は深奥に堪へず。 ¬*十住毘婆沙¼ (意) にいふがごとし。 「*新発意の菩薩は先づ仏の色相を念ず」 と。 また*諸経のなかに、 初心の人のためには、 多く相好の功徳を説けり。 ◆このゆゑにいままさに色相の観を修すべし。
◎第1095四ニ観察門ト者、初心ノ観行ハ不↠堪ヘ↢深奥ニ↡。如シ↢¬十住毘婆*娑ニ¼云フガ↡。「新発意ノ菩薩ハ先ヅ念ズト↢仏ノ色*相ヲ↡。」又諸経ノ中ニ、為ニハ↢初心ノ人ノ↡多ク説ケリ↢相好ノ功徳ヲ↡。是ノ故ニ今当ニシ↠修ス↢色相ノ観ヲ↡。
^◆これを分ちて三となす。 ▼一には▽別相観、 二には▽総相観、 三には▽雑略観なり。 *意楽に随ひてこれを用ゐるべし。
此ヲ分チテ為ス↠三ト。一ニハ別相観、二ニハ総*相観、三ニハ雑略観ナリ。随ヒテ↢意楽ニ↡応シ↠用ヰル↠之ヲ。
・別相観
【43】^◆初めに△*別相観とは、 また二あり。
初ニ別相観ト者、亦有リ↠二。
・別相観 ・華座
^▼先づ*華座を観ず。
先ヅ観ズ↢花座ヲ↡。
^¬*観経¼ にのたまはく、 「▲かの仏を観ぜんと欲はば、 まさに想念を起すべし。 ◆七宝の地の上において蓮華の想をなし、 ◆その蓮華の一々の葉をして百宝色 ˆありとの想ˇ をなさしめよ。 ˆその葉にˇ 八万四千の脈ありて、 なほ天の画のごとし。 脈に八万四千の光あり。 ◆了々分明にして、 みな見ることを得しめよ。
¬観経ニ¼云ク、「欲ハバ↠観ゼムト↢彼ノ仏ヲ↡者、当ニシ↧起シテ↢想念ヲ↡。於テ↢七宝ノ地ノ上ニ↡作ス↦蓮花ノ想ヲ↥。令メヨ↣其ノ蓮花ノ一々ノ葉ヲシテ作サ↢百宝色ヲ↡。有リテ↢八万四千ノ脈↡、猶如シ↢天ノ*画ノ↡。脈ニ有リ↢八万四千ノ光↡。了々分明ニシテ皆令メヨ↠得↠見ルコトヲ。
^◆華葉の小さきものは、 縦広二百五十由旬なり。 かくのごとき華に八万四千の葉あり。 一々の葉のあひだに0935百億の摩尼珠王ありて、 もつて映飾となせり。 一々の摩尼珠は、 千の光明を放つ。 その光 ˆ天ˇ 蓋のごとくして、 七宝合成して、 あまねく地の上に布けり。
花葉ノ小キ者ハ縦広二百五十由旬ナリ。如キ↠是クノ花ニ有リ↢八万四千ノ葉↡。一々ノ葉ノ間ニ有リテ↢百億ノ摩尼珠王↡、以テ為セリ↢映飾ト↡。一々ノ摩尼珠ハ放ツ↢千ノ光明ヲ↡。其ノ光如クシテ↠蓋ノ、七宝合成シテ、遍ク布ケリ↢地ノ上ニ↡。
^◆釈迦毘楞伽宝、 もつてその台となせり。 この蓮華台は、 八万の金剛・甄叔迦宝・梵摩尼宝・妙真珠網、 もつて交飾となせり。 ◆その台上において、 自然にして四柱の宝幢あり。 一々の宝幢は、 百千万億の須弥山のごとし。 幢の上の宝縵は、 夜摩天宮のごとし。 五百億の微妙の宝珠ありて、 もつて映飾となせり。
釈迦毘楞伽宝ヲ以テ為セリ↢其ノ台ト↡。此ノ蓮花台ハ、八万ノ金剛・甄叔迦宝・梵摩1096尼宝・妙真珠網ヲ以テ為セリ↢交飾ト↡。於テ↢其ノ台上ニ↡自然ニシテ而シテ有リ↢四柱ノ宝幢↡。一々ノ宝幢ハ如クナリ↢百千万億ノ須弥山ノ↡。幢ノ上ノ宝縵ハ如クナリ↢夜摩天宮ノ↡。有リテ↢五百億ノ微妙ノ宝珠↡。以テ為セリ↢映飾スルコトヲ↡。
^◆一々の宝珠に八万四千の光あり。 一々の光、 八万四千の異種の金色をなす。 一々の金光、 その宝土にあまねくして、 処々に変化して、 おのおの異相をなす。 あるいは金剛台となり、 あるいは真珠網となり、 あるいは雑華雲となる。 十方の面において、 意に随ひて変現して仏事を施作す。 ◆これを華座の想となす。
一々ノ宝珠ニ有リ↢八万四千ノ光↡。一々ノ光作ス↢八万四千ノ異種ノ金色ヲ↡。一々ノ金光遍クシテ↢其ノ宝*土ニ↡処処ニ変化シテ、*各ノ作ス↢異相ヲ↡。或イハ為リ↢金剛台ト↡、或イハ作リ↢真珠網ト↡、或イハ作ル↢雑花雲ト↡。於テ↢十方ノ面ゴトニ↡随ヒテ↠意ニ変現シテ、施↢作ス仏事ヲ↡。是ヲ為ス↢花座想ト↡。
^▲かくのごとき妙華は、 これ本法蔵比丘の願力の所成なり。 ◆もしかの仏を念ぜんと欲ふものは、 まさに先づこの華座の想をなすべし。 この想をなす時には雑観することを得ざれ。 みな一々にこれを観ずべし。 一々の葉、 一々の珠、 一々の光、 一々の台、 一々の幢、 みな分明ならしめて、 鏡のなかにみづから面像を見るがごとくせよ。
如キ↠此クノ妙花ハ是本法蔵比丘ノ願力ノ所成ナリ。若シ欲ハム↠念ゼムト↢彼ノ仏ヲ↡者ハ、当ニシ↣先ヅ作ス↢此ノ花座ノ想ヲ↡。作サム↢此ノ想ヲ↡時ニハ不レ↠得↢雑観スルコトヲ↡。皆応シ↢一々ニ観ズ↟之ヲ。一々ノ葉、一々ノ珠、一々ノ光、一々ノ台、一々ノ幢、皆令メヨ↢分明ナラ↡。如クセヨ↧於テ↢鏡ノ中ニ↡自ラ見ルガ↦面像ヲ↥。
^▲この観をなすを、 名づけて正観となす。 もし他観するを、 名づけて0936邪観となす」 と。
作ラム↢此ノ観ヲ↡者ヲ名ケテ為ス↢正観ト↡。若シ他ノ観ゼム者ヲバ名ケテ為スト↢邪観ト↡。」
以上、 この座の相を観ずるものは、 五万劫の生死の罪を滅除して、 必定してまさに極楽世界に生るべし。
已上観ズル↢此ノ座ノ相ヲ↡者ハ、滅↢除シテ五万劫ノ生死之罪ヲ↡、必定シテ当ニシ↠生ル↢極楽世界ニ↡
・相好
^次に▼まさしく相好を観ず。 いはく、 阿弥陀仏は華台の上に坐して、 相好*炳然として、 その身を荘厳したまへり。
次ニ正シク観ゼバ↢相好ヲ↡、謂ク阿弥陀仏ハ坐シテ↢花台ノ上ニ↡、相好炳然トシテ、荘↢厳シタマヘリ其ノ身ヲ↡。
・相好 1. 頂上肉髻
^一には、 ▲頂の上の*肉髻はよく見るものなし。 高顕周円なること、 なほ*天蓋のごとし。
一ニハ頂ノ上ノ肉髻ハ無シ↢能ク見ル者↡。高顕周円ナルコト猶如シ↢天蓋ノ↡。
^あるいは広く観ずることを楽ふものは、 次に観ずべし。 かの頂の上に大光明あり。 千の色を具足せり。 一々の色は、 八万四千の支となり、 一々の支のなかに八万四千の化仏まします。 化仏の頂の上より、 またこの光を放ちたまふ。 この光あひ次いで、 すなはち上方の無量の世界に至る。 上方界においても、 化の菩薩ありて、 雲のごとくして下りて諸仏を*囲繞したてまつれり。
或イハ楽ハム↢広ク観ズルコトヲ↡者ハ、次ニ応シ↠観ズ。彼ノ頂ノ上ニ有リ↢大光明↡。具↢足セリ千ノ色ヲ↡。一々ノ色ハ作ル↢八万四千ノ支ト↡。一々ノ支ノ中ニ有ス↢八万四千ノ化仏↡。化仏ノ頂ノ上ヨリ亦放チタマフ↢此ノ光ヲ↡。此ノ光相次ギテ、乃チ至ル↢上方ノ无量ノ世界マデニス↡。於テモ↢上方界ニ↡有リテ↢化ノ菩薩↡、如クシテ↠雲ノ而下リテ囲↢遶シタテマツレリ諸仏ヲ↡。
^¬*大集経¼ にのたまはく、 「父母・師僧・和上を*恭敬して、 肉髻の相を得たり」 と云々。 もしこの相において随喜を生ずるものは、 千億劫の極重の悪業を除却して、 三途に堕せず。
¬大集経ニ¼云ク、「恭↢敬セル父母・師僧・和上ヲ↡、得タリト↢肉髻ノ相ヲ↡」云々。若シ於テ↢此ノ相ニ↡生ズル↢随喜ヲ↡者ハ、除↢却シテ千億劫ノ極重ノ悪業ヲ↡、不1097↠堕セ↢三途ニ↡
・相好 2. 頂上髪毛
^二には、 頂の上に八万四千の髪毛あり。 みな上に向かひて靡き、 右に旋りて生ひたり。 永く*褫落することなく、 また雑乱せず。 紺青稠密にして、 香潔細軟なり。
二ニハ頂ノ上ニ八万四千ノ髪毛アリ。皆上ニ向ヒテ靡キテ右ニ旋リテ而生ヒタリ。永ク无シ↢*褫落スルコト↡。亦不↢雑乱セ↡。紺青稠密ニシテ香潔細軟ナリ。
^もし広く観ずることを楽ふものは、 観ずべし。 一々の毛孔より旋りて五0937の光をなせり。 もしこれを申ぶる時には、 修長にして量りがたし。 釈尊の髪のごときは、 長さ*尼楼陀精舎より父王の宮に至りて、 城を繞ること*七帀せり。 無量の光あまねく照らして、 *紺琉璃の色をなし、 色のなかに化仏あり、 称数すべからず。 この相を現じをはりて、 還りて仏の頂に住して、 右に旋りて宛転して、 すなはち*蠡文となる。
或楽ハム↢広ク観ズルコトヲ↡者ハ、応シ↠観ズ。一々ノ毛孔ヨリ旋リテ生セリ↢五ノ光ヲ↡。若シ申ブル↠之ヲ時ニハ、修長ニシテ難シ↠量リ。如キハ↢*釈尊ノ髪ノ↡、長サ従リ↢尼楼陀精舎↡至リテ↢父王ノ宮ニ↡、遶ルコト↠城ヲ七帀セリ 無量ノ光普ク照シテ作シ↢紺*琉璃ノ色ヲ↡、色ノ中ノ化仏アリ不↠可カラ↢称数ス↡。現ジ↢此ノ相ヲ↡已リテ還リテ住シテ↢仏ノ頂ニ↡、右ニ旋リテ宛転シテ、即チ成ル↢*蠡文ト↡。
^¬大集経¼ にのたまはく、 「悪事をもつて衆生に加へざるがゆゑに、 髪毛金精の相を得たり」 と。
¬大集*経ニ¼云ク、「不ルガ↧以テ↢悪事ヲ↡加ヘ↦衆生ニ↥故ニ、得タリト↢髪毛金精ノ相ヲ↡。」
・相好 3. 髪際有光
^三には、 その髪の際に五千の光あり。 *間錯分明なり。 みな上に向かひて靡きて、 もろもろの髪を囲繞せり。 頂を繞ること五帀せり。 天の画師の所作の画法のごとし。 *団円正等にして、 細きこと一糸のごとし。 その糸のあひだにもろもろの化仏を生じ、 化の菩薩ありて、 もつて眷属たり。 一切の*色像またなかにおいて見ゆ。
三ニハ於テ↢其ノ髪ノ際ニ↡有リ↢五千ノ光↡。間錯分明ナリ。皆上ニ向ヒテ靡キテ囲↢遶セリ諸ノ髪ヲ↡。遶ルコト↠頂ヲ五帀セリ。如シ↢天ノ*画師ノ所作ノ*画法ノ↡。団円正等ニシテ細キコト如シ↢一絲ノ↡。於テ↢其ノ絲ノ間ニ↡生ゼリ↢諸ノ化仏ヲ↡。有リテ↢化ノ菩薩↡以テ為リ↢眷属↡。一切ノ色像亦於テ↠中ニ見ユ。
^広く観ずることを楽ふものは、 この観を用ゐるべし。
楽ハム↢広ク観ズルコトヲ↡者ハ、可シ↠用ヰル↢此ノ観ヲ↡
・相好 4. 広長輪埵
^四には、 ▲耳厚く、 広く長くして、 *輪埵成就せり。
四ニハ耳厚ク広ク長クシテ、輪埵成*就セリ。
^あるいは広く観ずべし。 七の毛を旋り生じて、 五の光を流出す。 その光に千の色あり。 色ごとに千の化仏まします。 仏ごとに千の光を放ちて、 あまねく十方の無量の世界を照らしたまふ。
或イハ応シ↢広ク観ズ↡。旋リ↢生シテ七ノ毛ヲ↡、流↢出ス五ノ光ヲ↡。其ノ光ニ千ノ色アリ。色ゴトニ千ノ化仏マシマス。仏ゴトニ放チテ↢千ノ光ヲ↡、遍ク照シタマフ↢十方ノ无量ノ世界ヲ↡。
^この*随好の業因は勘ふべし。 ¬*観仏三昧経¼ (意) にのたまはく、 「この好を観ずるも0938のは、 八十劫の生死の罪を滅し、 後世にはつねに*陀羅尼の人と眷属たり」 と云々。 下去もろもろの利益、 みなまた ¬観仏三昧経¼ によりて注す。
此ノ随好之業因ハ可シ↠勘フ。¬観仏三昧経ニ¼云ク、「観ズル↢此ノ好ヲ↡者ハ、滅ス↢八*十劫ノ生死之罪ヲ↡。後世ニハ常ニ*与↢陀羅尼ノ人↡為リト↢眷属↡」云々。下去諸ノ利益、皆*亦依リテ↢¬観仏三昧経ニ¼↡而*注ス
・相好 5. 額広平正
^五には、 ▲額広く平正にして、 形相殊妙なり。
五ニハ額広クシテ平正ニシテ形相殊妙ナリ。
^この*好の業因ならびに利益は勘ふべし。
此ノ*好ノ業因并ニ利益ハ可シ↠勘フ
・相好 6. 面輪円満
^六には、 ▲*面輪円満にして、 *光沢熙怡なり。 *端正皎潔なること、 なほ秋の月のごとし。 双べる眉の皎浄なること、 *天帝の弓に似たり。 その色比なくして、 紺琉璃の光あり。
六ニハ面輪円満ニシテ光沢熙怡ナリ。端正皎潔ナルコト猶如シ↢秋ノ月ノ↡。双ベル眉ノ皎浄ナルコト似タリ↢天帝ノ弓ニ↡。其ノ色*无クシテ↠比、*紺*流璃ノ光ナリ。
^来り求むるものを見て歓喜を生ずるがゆゑに、 面輪円満なり。 この相を観ずるものは億劫の生死の罪を除却して、 後身の生処に、 まのあたり諸仏を見たてまつる。
見テ↢来リ求ムル者ヲ↡生ズルガ↢歓喜ヲ↡故ニ、面輪円満セリ。観ズル↢此ノ相ヲ↡者ハ除↢却シテ億劫ノ生死之罪ヲ↡、後身ノ生処ニ、面見タテマツル↢諸仏ヲ↡
・相好 7. 眉間白毫
^七には、 ▲眉間の*白毫、 右に旋りて宛転せり。 柔軟なること*覩羅綿のごとく、 鮮白なること*珂雪に逾えたり。
七ニハ眉間ノ白毫右ニ旋リテ宛転セリ。柔軟ナルコト如シ↢*覩羅綿ノ↡。鮮白ナルコト逾エタリ↢珂雪ニ↡。
^あるいは次に広く観ずべし。 これを舒ぶれば、 直くして長大なること白琉璃の筒のごとく、 放ちをはれば、 右に旋りて頗梨珠のごとし。 丈六の仏の白毫は*五丈なり。 右に旋ること経一寸、 周囲三寸。
或イハ次ニ応シ↢広ク観ズ↡。舒ブレバ↠之ヲ直クシテ長大ナルコト如シ↢白*琉璃ノ筒ノ↡。*放チ已レバ右ニ旋リテ如シ↢頗梨珠ノ↡。丈六ノ仏ノ白毫ハ、*五丈ナリ。右ニ旋ルコト*経一寸、周囲*三寸
^十方の面において、 無量の光を現ずること、 万億の日のごとくして、 つぶさに見るべからず。 ただ光のなかに、 もろもろの蓮華を現ず。 上は無量塵数の世界を過ぐるまで0939、 華々あひ次いで、 団円正等なり。
於テ↢十方1098ノ面ニ↡現ズルコト↢无量ノ光ヲ↡如クシテ↢万億ノ日ノ↡、不↠可カラ↢具ニ見ル↡。但於テ↢光ノ中ニ↡現ズ↢諸ノ蓮花ヲ↡。上ハ過グルマデニ↢無量塵数ノ世界ヲ↡、花々相次ギテ、団円正等ナリ。
^一々の華の上に、 一の化仏坐したまへり。 相好荘厳し、 眷属囲繞せり。 一々の化仏また無量の光を出し、 一々の光のなかにまた無量の化仏まします。 このもろもろの世尊は、 行ずるもの無数、 住するもの無数、 坐するもの無数、 臥するもの無数にして、 あるいは大慈大悲を説き、 あるいは三十七品、 あるいは六波羅蜜、 あるいはもろもろの*不共の法を説く。
一々ノ花ノ上ニ一ノ化仏坐シタマヘリ。相好荘厳シ、眷属囲遶セリ。一々ノ化仏復出シタマフ↢无量ノ光ヲ↡。一々ノ光ノ中ニ亦无量ノ化仏マシマス。是ノ諸ノ世尊ハ、行ル者無数ナリ。住スル者無数ナリ。坐スル者無数ナリ。臥スル者无数ナリ。或イハ説ク↢大慈大悲ヲ↡。或イハ説ク↢卅七品*或イハ六波羅*蜜*或イハ諸ノ不共ノ*法ヲ↡。
^もし広く説かば、 一切衆生より十地の菩薩に至るまで、 またこれを知ることあたはじ。
若シ広ク説カバ者、一切衆生ヨリ至ルマデニ↢十地ノ菩薩ニ↡、亦不↠能ハ↠知ルコト↠之ヲ。
^¬大集経¼ (意) にのたまはく、 「他の徳を隠さず、 その徳を*称揚して、 この相を得たり」 と。 ¬*観仏経¼ (意) にのたまはく、 「無量劫より昼夜に精進して身心懈ることなきこと、 *頭燃を救ふがごとくして、 六度・三十七品・十力・無畏・大慈大悲のもろもろの妙功徳を勤修して、 この白毫を得たり。 この相を観ずるものは、 九十六億那由他恒河沙微塵数劫の生死の罪を除却す」 と。
¬大集*経ニ¼云ク、「不シテ↠隠サ↢他ノ徳ヲ↡称↢揚セル其ノ徳ヲ↡、得タリト↢此ノ相ヲ↡。」¬観仏経ニ¼云ク、「従リ↢无量劫↡昼夜ニ精進シテ身心无キコト↠懈ルコト、如クシテ↠救フガ↢頭ノ燃ヲ↡勤↢修シテ六度・卅七品・十力・无畏・大慈大悲ノ、諸ノ妙功徳ヲ↡、得タリ↢此ノ白*毫ヲ↡。観ズル↢此ノ相ヲ↡者ハ、除↢却スト九十六億那由他恒河沙微塵数劫ノ生死之罪ヲ↡。」
・相好 8. 牛王眼睫
^八には、 如来の*眼睫はなほ牛王のごとし。 紺青にして斉しく整ほりて、 あひ雑乱せず。
八ニハ如来ノ眼睫ハ、猶*如シ↢牛王ノ↡。紺青ニシテ斉シク整ホリテ不↢相雑乱セ↡。
^あるいは次に広く観ずべし。 上下におのおの生じて、 五百の毛あり。 *優曇華の鬚のごとくして、 柔軟にして愛楽すべし。 一々の毛端より一の光を流出す。 頗梨の色のごとくして、 頭を繞ること一帀し、 もつぱらに微妙のもろもろ0940の青蓮華を生ず。 一々の華台に*梵天王ありて、 青色の蓋を執れり。
或イハ次ニ応シ↢広ク観ズ↡。上下ニ各ノ生ジテ有リ↢五百ノ毛↡。如クシテ↢優曇花ノ*鬚ノ↡柔軟ニシテ可シ↢愛楽ス↡。一々ノ毛端ヨリ流↢出ス一ノ光ヲ↡。如クシテ↢頗梨ノ色ノ↡、遶ルコト↠頭ヲ一帀シ、純ニ生ズ↢微妙ノ諸ノ青蓮花ヲ↡。一々ノ華台ニ有リテ↢梵天王↡、執レリ↢青色ノ蓋ヲ↡。
^¬大集経¼ にのたまはく、 「心を至して無上菩提を求めしがゆゑに、 牛王の睫の相を得たり」 と。 ¬大経¼ (*涅槃経) にのたまはく、 「怨憎を見て善心をなすがゆゑに」 と。
¬大集*経ニ¼云ク、「至シテ↠心ヲ*求ムルガ↢无上菩提ヲ↡故ニ得タリト↢牛王ノ睫ノ相ヲ↡。」¬大経ニ¼云ク、「見テ↢於怨*増ヲ↡生スガ↢於善心ヲ↡故ニト。」
・相好 9. 青白眼相
^九には、 ▲仏眼は青白にして上下ともに眴く。 白きものは白宝に過ぎたり。 青きものは青蓮華に勝れたり。
九ニハ仏眼ハ青白ニシテ上下倶ニ眴グ。白キ者ハ過ギタリ↢白宝ニ↡。青キ者ハ勝レタリ↢青蓮花ニ↡。
^あるいは次に広く観ずべし。 眼より光明を出したまふに、 分れて四支となりて、 あまねく十方の無量の世界を照らす。 青き光のなかには青き色の化仏ましまし、 白き光のなかには白き色の化仏まします。 この青白の化仏、 またもろもろの神通を現じたまふ。
或イハ次ニ応シ↢広ク観ズ↡。眼ヨリ出シタマフニ↢光明ヲ↡、分レテ為ル↢四支ト↡。遍ク照ス↢十方ノ无量ノ世界ヲ↡。於青キ光ノ中ニハ有ス↢青キ色ノ化仏↡、於白キ光ノ中ニハ有ス↢白キ色ノ化仏↡。此ノ青白ノ化仏復現ジタマフ↢諸ノ神通ヲ↡。
^¬大集経¼ (意) にのたまはく、 「慈心を修集し、 衆生を愛視して、 紺色の目の相を得たり」 と云々。 小時のあひだにおいても、 この相を観ずるものは、 未来の生処に、 眼つねに明浄にして、 眼根に病なく、 七劫の生死の罪を除却す。
¬大集経ニ¼云ク、「修↢集シ慈心ヲ↡、愛↢視シテ衆生ヲ↡、得タリト↢*紺色ノ目ノ相ヲ↡」云*々。於テモ↢小時ノ間ニ↡、観ズル↢此ノ相ヲ↡者ハ、未来ノ生処ニ、眼常ニ明浄ニシテ、眼根ニ无シ↠病。除↢却ス七劫ノ生死之罪ヲ↡
・相好 10. 鼻修高直
^十には、 ▲鼻修く、 高く直くして、 その孔現ぜず。 鋳たる*金鋌のごとく、 鸚鵡の嘴のごとし。 表裏清浄にしてもろもろの*塵翳なし。 二の光明を出してあまねく十方を照らし、 変じて種々の無量の仏事をなす。
十ニハ鼻修ク高ク直クシテ、其ノ孔不↠現ゼ。如ク↠鋳1099タルガ↢金*鋌ノ↡、如シ↢鸚鵡ノ嘴ノ↡。表裏清浄ニシテ无シ↢諸ノ塵翳↡。出シテ↢二ノ光明ヲ↡遍ク照シテ↢十方ヲ↡、変ジテ↢作ス種々ノ无量ノ仏事ヲ↡。
^この随好を観ずるものは千劫の罪を滅し、 未来の生処にて上妙の香を聞ぎ、 つねに*戒香をもつて身の*瓔珞となす。
観ズル↢此ノ随好ヲ↡者ハ滅シ↢千劫*之罪ヲ↡、未来ノ生処ニテ聞ギ↢上妙ノ香ヲ↡、常ニ以テ↢戒香ヲ↡為ス↢身ノ瓔*珞ト↡
・相好 11. 脣色赤好
^0941十一には、 ▲唇の色、 赤好なること*頻婆菓のごとし。 上下あひ称へること、 *量りのごとくにして厳麗なり。
十一ニハ脣ノ色赤好ナルコト如シ↢頻婆菓ノ↡。上下相称ヒテ如↠量厳麗ナリ。
^あるいは次に広く観ずべし。 団円の光明、 仏の口より出でて、 なほ百千の赤き真珠の貫くがごとくして、 鼻と白毫と髪とのあひだに入出す。 かくのごとく展転して、 *円光のなかに入る。
或イハ次ニ応シ↢広ク観ズ↡。団円ノ光明従リ↢仏ノ口↡出デテ、猶如クシテ↢百千ノ赤キ真珠ノ貫ノ↡、入↢出シ於鼻ト白毫ト髪トノ間ニ↡、如ク↠是クノ展転シテ入ル↢円光ノ中ニ↡。
^この唇の随好の業等は勘ふべし。
此ノ脣ノ随好ノ業等ハ可シ↠勘フ
・相好 12. 歯斉浄密
^十二には、 ▲四十の歯は、 斉しく、 浄く密にして根深く、 白きこと珂雪に逾えたり。 つねに光明あり。 その光紅白にして、 人の目を映耀す。
十二ニハノ歯ハ斉シク、浄ク密クシテ根深シ。白キコト逾エタリ↢*河雪ニ↡。常ニ有リ↢光明↡。其ノ光紅白ニシテ、映↢耀ス人ノ目ヲ↡。
^¬*大経¼ (涅槃経) にのたまはく、 「両舌・悪口・*恚心を遠離して、 四十の歯、 鮮白斉密なる相を得たり」 と云々。
¬*大経ニ¼云ク、「遠↢離シテ両舌・悪口・恚心ヲ↡、得タリト↢ノ歯鮮白斉密ナル相ヲ↡」*云々
・相好 13. 四牙鮮白
^十三には、 四の牙、 鮮白光潔にして鋒利なること、 月のはじめて生づるがごとし。
十三ニハ四ノ牙鮮白光潔ニシテ鋒利ナルコト、如シ↢月ノ初テ*生ヅルガ↡。
^¬大集¼ にのたまはく、 「身口意浄きがゆゑに、 四牙、 白の相を得たり」 と云々。 この唇・口・歯の相を観ずるものは、 二千劫の罪を滅す。
¬大*集ニ¼云ク、「身口意浄キガ故ニ、得タリト↢*四牙白ノ相ヲ↡」云々。観ズル↢此ノ脣・口・歯ノ相ヲ↡者ハ、滅ス↢二千劫*之罪ヲ↡
・相好 14. 広長舌相
^十四には、 ▲世尊の舌相は、 薄く浄くして、 広く長し。 よく面輪を覆ひて、 耳髪の際より、 乃至梵天に至る。 その色、 赤銅のごとし。
十四ニハ世尊ノ舌相ハ、薄ク浄クシテ広ク長シ。能ク覆ヒテ↢面輪ヲ↡至リ↢耳髪ノ際ニ↡、乃至梵天マデニス。其ノ色如シ↢赤銅ノ↡。
^あるいは次に広く観ずべし。 舌の上に五の画あり、 なほ*印文のごとし。 笑みたまふ時、 舌を動かすに五0942の色光を出し、 仏を繞ること七帀して、 還りて頂より入る。 あらゆる*神変は無量無辺なり。
或イハ次ニ可シ↢広ク観ズ↡。舌ノ上ニ五ノ*画アリ、猶如シ↢印文ノ↡。笑ミタマフ時ニハ、動スニ↠舌ヲ出シテ↢五ノ色光ヲ↡、遶ルコト↠仏ヲ七帀シテ還リテ従リ↠頂入ル。所有ノ神変ハ無量無辺ナリ。
^¬大集¼ にのたまはく、 「*口の四の過を護りて、 広長の舌相を得たり」 と云々。 この相を観ずるものは、 百億八万四千劫の罪を除きて、 他世に八十億の仏に値ふ。
¬大*集ニ¼云ク、「護リテ↢口ノ四ノ過ヲ↡得タリト↢広長ノ舌ノ相ヲ↡」云々。観ズル↢此ノ相ヲ↡者ハ、除キテ↢百億八万四千劫ノ罪ヲ↡、他世ニ値フ↢八十億ノ仏ニ↡
・相好 15. 舌下宝珠
^十五には、 舌の下の両辺に二の宝珠あり。 甘露を流注して、 舌根の上に滴づ。 諸天・世人・十地の菩薩もこの舌根なく、 またこの味はひなし。
十五ニハ舌ノ下ノ両辺ニ有リ↢二ノ宝珠↡。流↢注シテ甘露ヲ↡*滴ヅ↢舌根ノ上ニ↡。諸天・世人・十地ノ菩薩モ无ク↢此ノ舌根↡、亦无シ↢此ノ味↡。
^¬*大般若¼ に異説あり。 勘ふべし。 ¬大経¼ (涅槃経・意) にのたまはく、 「飲食を施与するがゆゑに、 上味の相を得たり」 と。
¬*大般若ニ¼有リ↢異説↡。可シ↠勘フ。¬大経ニ¼云ク、「飲食ヲ施与スルガ故ニ、得タリト↢上味ノ相ヲ↡。」
・相好 16. 瑠璃咽喉
^十六には、 ▲如来の咽喉は*瑠璃の筒のごとし。 状は蓮華を累ねたるがごとし。 出したまふところの音声は*詞韻和雅にして、 等しく聞えずといふことなし。 その声洪きに震ひて、 なほ天の鼓のごとく、 発したまふところの言は、 *均として*迦陵頻の音のごとし。 *任運によく大千世界に遍す。 もし*作意したまふ時には無量無辺なり。 しかも衆生を利せんがために、 類に随ひて増減せず。
十六ニハ如来ノ咽喉ハ如シ↢*瑠璃ノ筒ノ↡、状ハ如シ↠累ネタルガ↢蓮花ヲ↡。所↠出ノ音声ハ詞韻和雅ニシテ、无シ↠不トイフコト↢等シク聞エ↡。其ノ声洪キニ震ヒテ、猶如シ↢天ノ鼓ノ↡、所↠発ノ言ハ均トシテ如シ↢伽陵頻ノ音ノ↡。任運ニ能ク遍ス↢大千世界ニ↡。若シ作意シタマフ時ニハ无量无辺ナリ。然モ為ニ↠利セムガ↢衆生1100ヲ↡、*随ヒテ↠類ニ不↢増減セ↡。
^¬大経¼ (涅槃経・意) にのたまはく、 「かの短を訟はず、 正法を謗ぜずして、 *梵音声の相を得たり」 と。 ¬大集¼ にのたまはく、 「もろもろの衆生において、 つねに柔軟に語りしがゆゑに」 と0943云々。
¬大経ニ¼云ク、「不↠訟ハ↢彼ノ短ヲ↡、不シテ↠謗ゼ↢正法ヲ↡、得タリト↢梵音声ノ相ヲ↡」¬大*集ニ¼云ク、「於テ↢諸ノ衆生ニ↡、常ニ柔軟ノ語スルガ故ニト」云々
・相好 17. 頚出円光
^十七には、 頚より円光を出したまふ。 咽喉の上に*点相ありて分明なり。 一々の点のなかに一々の光を出す。 その一々の光、 前の円光を繞りて七帀を満足して、 衆画分明なり。
十七ニハ頚ヨリ出シタマフ↢円光ヲ↡。咽喉ノ上ニ有リテ↢点相↡分明ナリ。一々ノ点ノ中ニ出ス↢一々ノ光ヲ↡。其ノ一々ノ光遶リテ↢前ノ円光ヲ↡満↢足シテ七帀ヲ↡、衆*画分明ナリ。
^一々の画のあひだに妙蓮華あり。 華の上に七仏まします。 一々の化仏におのおの七菩薩ありて、 もつて侍者となせり。 一々の菩薩、 如意珠を執れり。 その珠に金光あり。 青・黄・赤・白および摩尼の色、 みなことごとく具足して、 諸光を囲繞せり。 上下・左右、 おのおの一尋にして、 仏の頚を囲繞して、 了々なること画のごとし。
一々ノ*画ノ間ニ有リ↢妙蓮花。花ノ上ニ有ス↢七仏↡。一々ノ化仏ニ各ノ有リテ↢七菩薩↡以テ為セリ↢侍者ト↡、一々ノ菩薩執レリ↢如意珠ヲ↡。其ノ珠ニ金光アリ。青・黄・赤・白及ビ摩尼ノ色皆悉ク具足シテ、囲↢遶セリ諸光ヲ↡。上下・左右ニ各々一尋ニシテ、囲↢遶シテ仏ノ頚ヲ↡、了々ナルコト如シ↠*画ノ。
^¬*無上依経¼ (意) にのたまはく、 「衣服・飲食・車乗・臥具、 もろもろの荘厳の物を歓喜して施与し、 身金色にして、 円光一丈なる相を得たり」 と。
¬无上依経ニ¼云ク、「衣服・飲食・車乗・臥具、諸ノ荘厳ノ物ヲ歓喜シテ施与シテ、得タリト↢身金色ニシテ円光一丈ナル相ヲ↡。」
・相好 18. 頚出二光
^十八には、 頚より二の光を出す。 その光万色ありて、 あまねく十方の一切の世界を照らす。 この光に遇ふものは辟支仏となる。 この光、 もろもろの辟支仏の頚を照らす。 この相現ずる時、 行者、 あまねく十方一切のもろもろの辟支仏の、 鉢を虚空に擲げて十八変をなし、 一々の足の下にみな文字ありて、 その字、 十二因縁を宣説するを見る。
十八ニハ頚ヨリ出ス↢二ノ光ヲ↡。其ノ光万色アリテ、遍ク照ス↢十方ノ一切ノ世界ヲ↡。遇フ↢此ノ光ニ↡者ハ成ル↢辟支仏ト↡。此ノ光照ス↢諸ノ辟支仏ノ頚ヲ↡。此ノ相現ズル時ニ、行者遍ク見ルニ↢十方ノ一切ノ諸ノ辟支仏ヲ↡、擲ゲテ↢鉢ヲ虚空ニ↡作ス↢十八変ヲ↡。一々ノ足ノ下ニ皆有リテ↢文字↡、其ノ字宣↢説ス十二因縁ヲ↡。
・相好 19. 欠瓫骨満
^0944十九には、 *欠瓫骨満の相あり。 光十方を照らすに、 虎魄の色をなす。 この光に遇ふものは声聞の意を発す。 このもろもろの声聞、 この光明を見るに、 分れて十支となる。 一支に千の色、 十千の光明あり。 光ごとに化仏まします。 一々の化仏に四の比丘ありて、 もつて侍者となり、 一々の比丘はみな、 苦・空・無常・無我を説く。
十九ニハ*欠瓫骨満ノ相アリ。光照スニ↢十方ヲ↡作ス↢虎魄ノ色ヲ↡。遇フ↢此ノ光ニ↡者ハ発ス↢声聞ノ意ヲ↡。是ノ諸ノ声聞見ルニ↢此ノ光明ヲ↡、*分レテ為ル↢十支ト↡。一支ニ千ノ色、十千ノ光明アリ。光ゴトニ有ス↢化仏↡。一々ノ化仏ニ有リテ↢四ノ比丘↡以テ為リ↢侍者ト↡、一々ノ比丘皆説ク↢苦・空・無常・無我ヲ↡。
^以上三種は、 広く観ずることを楽ふもの、 これを用ゐるべし。
已上三種ハ、楽フ↢広ク観ズルコトヲ↡者、応シ↠用ヰル↠之ヲ
・相好 20. 肩項円満
^二十には、 ▲世尊の肩・項は円満殊妙なり。
廿ニハ世尊ハ肩*項ハ円満殊妙ナリ。
^¬*法華の文句¼ (意) にいはく、 「つねに施をして増長せしめたるがゆゑに、 この相を得たり」 と。
¬法花ノ文句ニ¼云ク、「恒ニ令ムルガ↢施ヲシテ増長セ↡故ニ、得タリト↢此ノ相ヲ↡」
・相好 21. 腋下充実
^二十一には、 如来の腋の下はことごとくみな充実なり。 紅紫の光を放ちて、 もろもろの仏事をなし、 衆生を利益す。
廿一ニハ如来ノ腋ノ下ハ悉ク皆充実ナリ。放チテ↢紅紫ノ光ヲ↡作シ↢諸ノ仏事ヲ↡、利↢益ス衆生ヲ↡。
^¬無上依経¼ (意) にのたまはく、 「衆生のなかにおいて利益の事をなし、 四正勤を修して、 心に畏るるところなくして、 両の肩平整にして、 腋の下満てる相を得たり」 と。
¬无上依経ニ¼云ク、「於テ↢衆生ノ中ニ↡為シ↢利益ノ事ヲ↡、修シテ↢四正勤ヲ↡、心ニ无クシテ↢所↠畏↡、得タリト↢両ノ肩*平整ニシテ而腋ノ下満テル*相ヲ↡」
・相好 22. 臂肘明直
^二十二には、 ▲仏の*双臂肘、 明直にして*円なること象王の鼻のごとく、 平立せるに膝を摩づ。
廿二ニハ仏ノ双臂1101肘、明ニ直ク円ナルコト如ク↢象王ノ鼻ノ↡、平立セルニ摩ヅ↠膝ヲ。
^あるいは次に広く観ずべし。 手掌に*千輻の理あり。 おのおの百千の光を放ちてあまねく十方を照らすに、 化して金水となる。 金水のなかに一の妙水あり、 水精の色のごとし。 餓鬼は見て熱を除き、 畜生は宿命を識り0945、 狂象の見るは獅子王となり、 獅子は*金翅鳥と見、 諸竜もまた金翅鳥王と見る。 このもろもろの畜生、 おのおの尊ぶところと見て、 心に恐怖を生じて、 合掌し恭敬す。 恭敬するをもつてのゆゑに、 命終して天に生る。
或イハ次ニ応シ↢広ク観ズ↡。手掌ニ千*輻ノ理アリ、各ノ放チテ↢百千ノ光ヲ↡遍ク照スニ↢十方ヲ↡、化シテ成ル↢金水ト↡。金水之中ニ有リ↢一ノ妙水↡、如シ↢水精ノ色ノ↡。餓鬼ハ見テ除ク↠熱ヲ、畜生ハ識ル↢宿命ヲ↡。狂*像ノ見ル者為リ↢師子王ト↡。師子ハ見ル↢金翅鳥ト↡。諸竜モ亦見ル↢金翅鳥王ト↡。是ノ諸ノ畜生各ノ見テ↢*所↠尊ト↡、心ニ生ジテ↢恐怖ヲ↡、合掌シ恭敬ス。以テノ↢恭敬スルヲ↡故ニ命終シテ生ル↠天ニ。
^¬大集¼ にのたまはく、 「怖畏あるを救護して、 臂肘、 なることを得、 他の事業を見て佐助せしがゆゑに、 *手摩膝の相を得たり」 と。
¬大*集ニ¼云ク、「救↢護セル怖畏アルヲ↡、得↢臂肘ナルコトヲ↡。見テ↢他ノ事業ヲ↡佐助セルガ故ニ、得タリト↢手摩膝ノ相ヲ↡」
・相好 23. 諸指円満
^二十三には、 ▲もろもろの指円満し、 充密繊長にして、 はなはだ愛楽すべし。 一々の端に、 おのおの*万字を生ぜり。 その爪光潔なること、 華赤銅のごとし。
廿三ニハ諸ノ指円満シ充密繊長ニシテ、甚ダ可シ↢愛楽ス↡。於テ↢一々ノ端ニ↡各ノ生ゼリ↢万字ヲ↡。其ノ爪光潔ナルコト如シ↢花赤銅ノ↡。
^¬瑜伽¼ (*瑜伽論・意) にいはく、 「もろもろの尊長において、 恭敬し、 礼拝し、 合掌し、 起立せしがゆゑに、 指繊長なる相を得たり」 と。
¬瑜*伽ニ¼云ク、「於テ↢諸ノ尊長ニ↡、恭敬シ礼拝シ、合掌シ起立スルガ故ニ、得タリト↢*指繊長ナル*相ヲ↡」
・相好 24. 指間網
^二十四には、 ▲一々の指のあひだは、 なほ雁王のごとく、 ことごとく*網あり。 金色交絡して、 *文、 綺画に同じ。 *閻浮金に勝れたること百千万億なり。 その色明達にして、 眼界に過ぎたり。 張れる時にはすなはち見ゆれども、 指を斂むれば見えず。
廿四ニハ一々ノ指ノ間ハ、猶如ク↢雁王ノ↡、咸ク有リ↢網↡。金色交絡シテ、文同ジ↢綺*画ニ↡。勝レタルコト↢閻浮金ニ↡百千万億ナリ。其ノ色明達ニシテ過ギタリ↢於眼界ニ↡。張レル時ニハ則チ見ユレドモ。*斂ムレバ↠指ヲ不↠見エ。
^¬大経¼ (涅槃経・意) にのたまはく、 「四摂の法を修して、 衆生を摂取せしがゆゑに、 この相を得たり」 と。
¬*大経ニ¼云ク、「修シテ↢四摂ノ法ヲ↡、摂↢取セルガ衆生ヲ↡故ニ、得タリト↢此ノ相ヲ↡」
・相好 25. 其手柔軟
^二十五には、 ▲その手柔軟なること覩羅綿のごとくして、 一切に勝過して、 内外0946にともに握る。
廿五ニハ其ノ手柔軟ナルコト如クシテ↢*覩羅綿ノ↡、勝↢過シテ一切ニ↡、内外ニ倶ニ握ル。
^¬大経¼ (涅槃経・意) にのたまはく、 「父母・*師長の、 もし病苦するに、 みづから手をもつて洗ひ拭ひ、 捉持し、 *安摩せしがゆゑに、 手軟の相を得たり」 と。
¬*大経ニ¼云ク、「父母・師長ノ若シ病*苦スルニ、自ラ手ヲモテ洗ヒ拭ヒ、捉持シ安摩セルガ故ニ、得タリト↢手軟ノ相ヲ↡」
・相好 26. 頷臆広大
^二十六には、 ▲世尊の頷・臆、 ならびに身の上半の、 威容広大なること獅子王のごとし。
廿六ニハ世尊ノ頷・臆并ニ身ノ上半ハ、威容広大ナルコト如シ↢師子王ノ↡。
^¬瑜伽¼ (瑜伽論・意) にいはく、 「もろもろの有情の、 如法の所作においてよく上首たれども、 しかも助伴となりて*我慢を離れ、 もろもろの*獷捩なかりしがゆゑに、 この相を得たり」 と。
¬瑜伽ニ¼云ク、「於テ↢諸ノ有情ノ如法ノ所作ニ↡能ク為レドモ↢上首↡、而モ作リテ↢助伴ト↡離レ↢於我慢ヲ↡、无キガ↢諸ノ*獷*捩↡故ニ、得タリト↢此ノ相ヲ↡」
・相好 27. 胸有万字
^二十七には、 胸に万字あり。 実相の印と名づけ、 大光明を放つ。
廿七ニハ胸ニ有リ↢万字↡。名ク↢*実相ノ印ト↡。放ツ↢大光明ヲ↡。
^あるいは次に広く観ずべし。 光のなかに無量百千のもろもろの華ありて、 一々の華の上に無量の化仏まします。 このもろもろの化仏、 おのおの千の光ありて、 衆生を利益す。 乃至、 あまねく十方の仏の頂に入る。 時に、 もろもろの仏の胸より百千の光を出し、 一々の光、 六波羅蜜を説く。 一々の化仏、 一の化人の、 端正微妙にして状弥勒のごときを遣はして、 行者を安慰せしむ。
或イハ次ニ応シ↢広ク観ズ↡。光ノ中ニ有リテ↢无量百千ノ衆ノ花↡、一々ノ花ノ上ニ有ス↢無量ノ化仏↡。是ノ諸ノ化仏各ノ有リテ↢千ノ光↡、利↢益ス衆生ヲ↡。乃至遍ク入1102ル↢十方ノ仏ノ頂ニ↡。時ニ諸ノ仏ノ胸ヨリ出シタマフ↢百千ノ光ヲ↡。一々ノ光説ク↢六波羅蜜ヲ↡。一々ノ化仏遣シテ↢一ノ化人ノ端正微妙ニシテ状如キヲ↢弥勒ノ↡、安↢慰セシム行者ヲ↡。
^この相の光を見るものは、 十二億劫の生死の罪を除く。
見ル↢此ノ相ノ光ヲ↡者ハ、除ク↢十二億劫ノ生死之罪ヲ↡
・相好 28. 心紅蓮華
^二十八には、 如来の*心相は、 紅蓮華のごとし。 妙なる紫金の光、 もつて*間錯を0947なして、 瑠璃の筒のごとくして、 懸りて仏の胸にあり。 合せず、 開せず、 団円なること、 心のごとし。
廿八ニハ如来ノ心相ハ如シ↢紅蓮花ノ↡。妙ナル紫金ノ光ヲ以テ為リ↢間錯ト↡。如クシテ↢*瑠璃ノ筒ノ↡懸リテ在リ↢仏ノ胸ニ↡。不↠合セ不↠開セ、団円ナルコト如シ↠心ノ。
^万億の化仏、 仏の心のあひだに遊ぶ。 また無量塵数の化仏、 仏の心のなかにましまして、 金剛台に坐して、 無量の光を放ちたまふ。 一々の光のなかに、 また無量塵数の化仏ましまして、 広長の舌を出し、 万億の光を放ちてもろもろの仏事をなしたまふ。
万億ノ化仏遊ブ↢仏ノ心ノ間ニ↡。又無量塵数ノ化仏在シテ↢仏ノ心ノ中ニ↡、坐シテ↢金剛台ニ↡、放チタマフ↢無量ノ光ヲ↡。一々ノ光ノ中ニ亦有シテ↢無量塵数ノ化仏↡、出シ↢広長ノ舌ヲ↡、放チテ↢万億ノ光ヲ↡作シタマフ↢諸ノ仏事ヲ↡。
^仏の心を念ふものは、 十二億劫の生死の罪を除き、 生々に無量の菩薩に値ふことを得と云々。 広く観ずることを楽ふものは、 この観をなすべし。
念フ↢仏ノ心ヲ↡者ハ、除ク↢十二億劫ノ生死之罪ヲ↡。生生ニ得ト↠値フコトヲ↢无*量ノ菩薩ニ↡云々。楽ハム↢広ク観ズルコトヲ↡者ハ応シ↠作ル↢此ノ観ヲ↡
・相好 29. 身皮金色
^二十九には、 世尊の身の皮は、 みな真金の色なり。 光潔*晃耀すること、 妙金台のごとし。 衆宝をもつて荘厳し、 衆の見んと楽ふところなり。
廿九ニハ世尊ノ身ノ皮ハ皆真金ノ色ナリ。光潔晃耀スルコト如クシテ↢妙金台ノ。衆宝ヲモテ荘厳セルガ↡、衆ノ所ナリ↠楽フ↠見ムト。
^¬大経¼ (涅槃経・意) にのたまはく、 「衣服・臥具を施して、 この相を得たり」 と。
¬大経ニ¼云ク、「施シテ↢衣服・臥具ヲ↡、得タリト↢此ノ相ヲ↡」
・相好 30. 身光無量
^三十には、 身光、 任運に三千界を照らす。 もし作意したまふ時には無量無辺なり。 しかももろもろの有情を憐愍せんがためのゆゑに、 光を摂してつねに照らしたまふこと、 面ごとにおのおの一尋なり。
三十ニハ身光任運ニ照ス↢三千界ヲ↡。若シ作意シタマフ時ニハ無量無辺ナリ。然モ為ノ↣憐↢愍セムガ諸ノ有情ヲ↡故ニ、摂シテ↠光ヲ常ニ照シタマフコト面ゴトニ各ノ一尋ナリ。
^¬大経¼ (涅槃経・意) にのたまはく、 「香・華・灯明等をもつて人に施して、 この相を得たり」 と云々。 大光を観ずるものは、 ただ心に見ることを発すに、 衆罪を*除却すと。
¬大経ニ¼云ク、「以テ↢香花・灯明等ヲ↡施シテ↠人ニ、得タリト↢此ノ相ヲ↡」云々。*観ズル↢*大光ヲ↡者ハ、但発スニ↢心ニ見ルコトヲ↡、除↢却スト衆罪ヲ↡*云々
・相好 31. 身相端厳
^0948三十一には、 世尊の身相は、 修く広くして端厳なり。
卅一ニハ世尊ノ身相ハ修ク広クシテ端厳ナリ。
^¬大論¼ (*大智度論) にいはく、 「尊長を恭敬し、 迎送し、 侍繞して、 身の直くして広き相を得たり」 と云々。
¬大論ニ¼云ク、「恭↢敬シ尊長ヲ↡、迎送シ侍遶スル、得タリト↢身ノ直クシテ広ノ相ヲ↡」*云々
・相好 32. 体相円満
^三十二には、 世尊の体相は、 縦広の量等しくして周帀円満せること、 *尼陀樹のごとし。
卅二ニハ世尊ノ体相ハ、縦広ノ量等ニシテ*周帀円満セルコト、如シ↢尼陀樹ノ↡。
^¬大集¼ (意) にのたまはく、 「つねに衆生を勧めて、 三昧を修せしめて、 この相を得たり」 と。 ¬*報恩経¼ (意) にのたまはく、 「もし衆生ありて、 *四大不調なるを、 よく療治することをなせしがゆゑに、 身の*方円なる相を得たり」 と。
¬大*集ニ¼云ク、「常ニ勧メテ↢衆生ヲ↡修セシメタル↢三昧ヲ↡、得タリト↢此ノ相ヲ↡」¬報恩経ニ¼云ク、「若シ有リテ↢衆生↡、四大不調ナルヲ能ク為ルガ↢療治スルコトヲ↡故ニ得タリト↢身ノ方円ナル相ヲ↡」
・相好 33. 容儀洪満
^三十三には、 世尊の容儀は洪満にして端直なり。
卅三ニハ世尊ハ容儀ハ洪満ニシテ端直ナリ。
^¬瑜伽¼ (瑜伽論・意) にいはく、 「疾病のものにおいて、 卑屈して瞻侍し、 良薬を給施せしがゆゑに、 身、 僂曲せざる相を得たり」 と。
¬*瑜*伽ニ¼云ク、「於テ↢疾病ノ者ニ↡、卑屈シテ瞻侍シ、給↢施セルガ良薬ヲ↡故ニ、得タリト↧身不ル↢*僂曲セ↡相ヲ↥↡」
・相好 34. 陰蔵平満
^三十四には、 ▲如来の*陰蔵は平らかなること満月のごとし。 金色の光ありて、 なほ日輪のごとく、 金剛の器のごとく、 中外ともに浄し。
卅四ニハ如来ノ陰蔵ハ平ナルコト如シ↢満月ノ↡。有リテ↢金色ノ光↡、猶如ク↢日輪ノ↡、如ク↢金剛ノ器ノ↡、中外倶ニ浄1103シ。
^¬大経¼ (涅槃経・意) にのたまはく、 「裸なるを見て衣服を施せしがゆゑに、 陰蔵の相を得たり」 と。 ¬大集¼ にのたまはく、 「他の過を*覆蔵せしがゆゑに」 と。 ¬大論¼ (大智度論) にいはく、 「多く慚愧を修し、 および邪婬を断ぜしがゆゑに」 と云々。 導禅師 (*善導) のいはく (*観念法門)、 「▲仏ののたまはく、 ªもし欲色に貪ずること多きものは、 すなはち如来の陰蔵0949の相を想へば、 欲心すなはち息み、 罪障除滅して、 無量の功徳を得たりº」 と。
¬大経ニ¼云ク、「見テ↠裸ナルヲ施セルガ↢衣*服ヲ↡故ニ、得タリト↢*陰蔵ノ相ヲ↡」¬大*集ニ¼云ク、「覆↢蔵セルガ他ノ過ヲ↡故ニト。」¬大論ニ¼云ク、「*多ク修シ↢慚愧ヲ↡、及ビ断ゼルガ↢邪婬ヲ↡*故ニト」*云々。*道禅師ノ云ク、「仏ノ言ク、若シ多キ↠貪ルコト↢欲色ニ↡者ハ、即チ想ヘバ↢如来ノ陰蔵ノ相ヲ↡者、欲心*即チ*息ム。罪障除滅シテ、得タリト↢无量ノ功*徳ヲ↡。」
・相好 35. 七処充満
^三十五には、 世尊の両足、 二手の掌中、 項および双べる肩の七処は充満せり。
卅五ニハ世尊ノ両足、二手ノ掌中、項及ビ双ベル肩ノ七処ハ充満セリ。
^¬大経¼ (涅槃経・意) にのたまはく、 「施を行ぜし時に、 所珍の物をよく捨てて吝せず、 *福田および非福田を観ざりしかば、 七処満の相を得たり」 と。
¬大経ニ¼云ク、「行ズル↠施ヲ之時ニ所珍之物ヲ能ク捨テテ不↠吝セ。不ル↠*観ゼ↢福田及ビ非福田ヲ↡、得タリト↢七*処満ノ相ヲ↡」
・相好 36. 双腨繊円
^三十六には、 ▲世尊の*双腨は漸次に繊円なること、 *翳泥耶仙鹿王の腨のごとし。 膊の鉤璅の骨の、 盤結せるあひだよりもろもろの金光を出す。
卅六ニハ世尊ノ双腨ハ漸次ニ繊円ナルコト、如シ↢翳泥耶仙鹿王ノ腨膊ノ↡。鉤ケ*璅レル骨ノ盤結セル之間ヨリ出ス↢諸ノ金光ヲ↡。
^¬瑜伽¼ (瑜伽論・意) にいはく、 「みづから正法において、 実のごとく摂受し、 広く他人のために説き、 およびまさしく他のためによく給使をなして、 翳泥耶の膊の相を得たり」 と。
¬瑜*伽ニ¼云ク、「自ラ於テ↢正法ニ↡如ク↠実ノ摂受シ、広ク為ニ↢他*人ノ↡説キ、及ビ正シク為ニ↠他ノ善ク作セル↢給使ヲ↡、得タリト↢翳泥耶ノ*膊ノ*相ヲ↡」
・相好 37. 跟趺相称
^三十七には、 ▲世尊の*足跟は広く長く円満して、 *趺とあひ称ひて、 もろもろの有情に勝れたり。
卅七ニハ世尊ノ足跟ハ広ク長ク円満シテ与↠趺相称ヒテ勝レタリ↢諸ノ有情ニ↡。
・相好 38. 足趺修高
^三十八には、 ▲*足趺は修く高くして、 なほ亀の背のごとし。 柔軟妙好にして、 跟とあひ称へり。
卅八ニハ足趺ハ修ク高クシテ猶如シ↢亀ノ背ノ↡。柔軟妙好ニシテ、与↠跟相ヒ称セリ。
^¬瑜伽¼ (瑜伽論・意) にいはく、 「足下平満と、 *千輻輪と、 繊長指との三の相を感ずる業、 総じてよく跟・趺の二の相を感得す。 これ前の三相の依止するところなるがゆゑに」 と。
¬瑜*伽ニ¼云ク、「感ズル↢足下平満ト、千輻輪ト、繊長指トノ三ノ相ヲ↡之業、総ジテ能ク感↢得ス跟趺ノ二ノ相ニ↡是前ノ三相ノ所ナルガ↢依止スル↡故ニ。」
・相好 39. 柔潤毛相
^三十九には、 如来の身の前後左右および頂の上に、 おのおの八万四千の毛あり0950て生ひたり。 柔潤・紺青にして、 右に旋りて宛転せり。
卅九ニハ如来之身ハ前後左右及以頂ノ*上ニ、各ノ有リテ↢八万四千ノ毛↡生ヒタリ。柔潤・紺青ニシテ右ニ旋リテ宛転セリ。
^あるいは次に広く観ずべし。 一々の毛端に百千万塵数の蓮華あり。 一々の蓮華に無量の化仏を生じ、 一々の化仏はもろもろの偈頌を現じて、 声々あひ次げること、 なほ雨の渧るがごとし。
或イハ次ニ応シ↢広ク観ズ↡。一々ノ毛端ニ有リ↢百千万塵数ノ蓮花↡。一々ノ蓮花ニ生セリ↢無量ノ*化仏ヲ↡。一々ノ化仏ハ現ジタマフ↢諸ノ偈頌ヲ↡。声々相次ゲルコト猶如シ↢雨ノ渧ルガ↡。
^¬無上依経¼ (意) にのたまはく、 「もろもろの勝善の法を修して、 中・下品なく、 つねに増上せしめて、 身毛上に靡き、 右に旋りて宛転せる相を得たり」 と。 ¬*優婆塞戒経¼ にのたまはく、 「智者に親近して、 楽ひて聞き、 楽ひて論じ、 聞きをはりて楽ひて修し、 楽ひて道路を治し、 *棘刺を除去せるがゆゑに」 と。
¬無上依経ニ¼云ク、「修セルコト↢諸ノ勝善ノ法ヲ↡无ク↢中・下品↡、恒ニ令メタル↢増上セ↡、得タリト↢身毛上ニ靡キ、右ニ旋リテ宛転セル相ヲ↡」¬優婆塞戒経¼*云、親↢近シテ智者ニ↡、楽ヒテ聞キ楽ヒテ論ジ、聞キ已リテ楽ヒテ修シ、楽ヒテ治シ↢道路ヲ↡、除↢*去セルガ棘刺ヲ↥故ニト。」
・相好 40. 千輻輪文
^四十には、 ▲世尊の足の下に千輻輪の文あり。 *網轂衆相、 円満せざることなし。
四十ニハ世尊ノ足ノ下ニ千輻輪ノ文アリ。*網*轂衆相無シ↠不ルコト↢円満セ↡。
^¬瑜伽¼ (瑜伽論) にいはく、 「その父母において種々に供養し、 もろもろの有情のもろもろの苦悩の事において、 種々に救護して、 往来等の動転の業によるがゆゑに、 この相を得たり」 と云々。 千輻輪の相を見るは、 千劫の極重悪業を却く。
¬瑜*伽ニ¼云ク、「於テ↢其ノ*父母ニ↡種々ニ供養シ、於テ↢諸ノ有情ノ諸ノ苦悩ノ事ニ↡種種ニ救護シテ、由ルガ↢往来等ノ動転ノ業ニ↡故ニ、得タリト↢此ノ相ヲ↡」云々。見ルハ↢千輻輪ノ相ヲ↡、*却ク↢千劫ノ極重悪業ヲ↡
・相好 41. 足下平満
^四十一には、 ▲世尊の足の下には平満の相あり。 妙善安住せること、 なほ*奩底のごとし。 地は*高下なりといへども、 足の蹈むところに随ひて、 みなことごとく*怛然として、 等しく触れずといふことなし。
一ニハ世尊ノ足ノ下ニハ有リ↢平満ノ相↡。妙善安住セルコト猶如シ↢奩底ノ↡。地ハ雖モ↢高下ナリト↡、随ヒテ↢足ノ所ニ↟蹈ム皆悉ク*怛然トシテ、無シ↠不トイフコト↢等シク触レ↡。
^¬大経¼ (涅槃経・意) にのたまはく、 「持戒して動ぜず、 施心移らず、 *実語に安住せるがゆゑに、 この相を得たり0951」 と云々。 その足柔軟なり。 もろもろの指繊長なり。 網具足し、 内外に握る等の相、 および業因は、 前の手相に同じ。
¬大経ニ¼云1104ク、「持戒シテ不↠動ゼ、施心不↠移ラ、安↢住スルガ実語ニ↡故ニ、得タリト↢此ノ相ヲ↡」云々。其ノ足柔軟ナリ。諸ノ指繊長ナリ。*網具足シ、内外ニ握ル等ノ相、及ビ業因ハ同ジ↢前ノ手相ニ↡
・相好 42. 足下一華
^四十二には、 広きを楽ふものは観ずべし。 足下および跟に、 おのおの一の華を生じ、 もろもろの光を囲繞して十帀を満足す。 華々あひ次いで、 一々の華の上に五の化仏まします。 一々の化仏、 五十五の菩薩をもつて侍者となして、 一々の菩薩の頂に摩尼珠の光を生ず。
二ニハ楽ハム↠広キヲ者ハ応シ↠観ズ。足下及ビ跟ニ各ノ生セリ↢一ノ花ヲ↡。囲↢遶シテ諸ノ光ヲ↡満↢足ス十帀ヲ↡。花々相次ギテ一々ノ花ノ上ニ有ス↢五ノ化仏↡。一々ノ化仏五十五ノ菩薩ヲ以テ為シテ↢侍者ト↡、一々ノ菩薩ノ頂ニ生ズ↢摩尼珠ノ光ヲ↡。
^この相現ずる時に、 仏のもろもろの毛孔より八万四千の微細の少光明を生じて、 身光を厳飾して、 きはめて可愛ならしむ。 この光一尋にして、 その相衆多なり。 乃至、 他方のもろもろの大菩薩、 これを観ずる時に、 この光随ひて大なり。 以上
此ノ相現ズル時ニ、仏ノ諸ノ毛孔ヨリ生ジテ↢八万四千ノ微*細ノ少光明ヲ↡、厳↢飾シテ身光ヲ↡極テ令ム↢可愛ナラ↡。此ノ光一尋ニシテ其ノ相衆多ナリ。乃至他方ノ諸ノ大菩薩観ズル↠此ヲ之時ニ、此ノ光随ヒテ大ナリ。 已上
^このもろもろの相好の行相・利益・廃立等の事、 諸文不同なり。 しかるにいま三十二の略相は、 多く ¬大般若¼ による。 *広相と随好とおよびもろもろの利益とは、 ¬観仏経¼ による。
是ノ諸ノ相好ノ行相・利益・癈立等ノ事、諸文不同ナリ。然ニ今卅二ノ略相ハ多ク依ル↢¬大般若ニ¼↡。広相ト随好ト及ビ諸ノ利益トハ依ル↢¬観仏経ニ¼↡。
^また*相好の業に、 その総別あり。
又相好ノ業ニ有リ↢其ノ総別↡。
・相好 ・総因
^総因といふは、 ¬瑜伽¼ (瑜伽論) の四十九にいはく、 「*始め、 *清浄勝意楽地より、 一切所有の*菩提の資糧は、 差別することあることなくして、 よく一切の相および随好を感ず」 と。 云々
言フ↢総因ト↡者、¬瑜*伽ノ¼九ニ云ク、「*如キハ↧従リノ↢清浄勝意楽地↡一切所有ノ菩提ノ資糧ノ↥、無クシテ↠有ルコト↢差別スルコト↡、能ク感ズト↢一切ノ相及ビ*随好ヲ↡。」*云々
・相好 ・別因
^別因といふは、 かの ¬論¼ (瑜伽論) に三種あり。
言フ↢別因ト↡者、彼ノ¬論ニ¼有リ↢三種↡。
^一には*六十二の因0952。 つぶさには ¬論¼ (瑜伽論) の文のごとし。
一ニ者六十二ノ因。具ニハ如シ↢¬論ノ¼文ノ↡。
^二には浄戒。 もしもろもろの菩薩、 浄戒を毀犯するは、 なほ下賎の人身をすら得ることあたはず。 いかにいはんや、 よく*大丈夫の相を感ぜんや。
二ニ者浄戒。若シ諸ノ菩薩毀↢犯スルハ浄戒ヲ↡、尚不↠能ハ↠得ルコト↢下賎ノ人身ヲスラ↡。何ニ況ヤ能ク*感ゼムヤ↢大丈夫ノ相ヲ↡
^三には四種の善修。 一は善修事業、 二は*善巧方便、 三は饒益有情、 四は*無倒回向なり。 以上
三ニ者四種ノ善修。一ハ善修事業、二ハ善巧方便、三ハ饒益有情、四ハ無倒廻向ナリ。 已上
^別因のなかにまた多くの差別あり。 いまはしばらく因果のあひ順ぜるものを取る。
別因之中ニ亦有リ↢多クノ差別↡。今者ハ且ク取ル↢因果ノ相順ゼル*者ヲ↡。
^前後の次第は、 諸文また不同なり。 いまはよろしきに随ひて、 取りて次第となすなり。 *相・好間雑してもつて観法をなすこと、 またこれ ¬観仏経¼ の例なり。 順観の次第は、 大途かくのごとし。 逆観は、 これに反して、 足より頂に至る。
前後ノ次第ハ諸文亦不同ナリ。今者ハ随ヒテ↠宜シキニ、取リテ為ル↢次第ト↡也。相・好間雑シテ以テ為ルコト↢観法ヲ↡、亦是¬観仏経¼之例也。順観ノ次第ハ大途如シ↠是クノ。逆観ハ反1105シテ↠之ニ従リ↠足至ル↠頂ニ。
^¬観仏三昧経¼ にのたまはく、 「眼を閉ぢて見ることを得んには、 心想の力をもつてせよ。 *了々にして分明なること、 仏の在世のごとくせよ。 この相を観ずといへども、 衆多にすることを得ざれ。 一事より起してまた一事を想ひ、 一事を想ひをはればまた一事を想へ。 逆順反覆すること、 十六反を経よ。
¬観仏三昧経ニ¼云ク、「閉ヂテ↠眼ヲ得ンニハ↠見ルコトヲ、以テセヨ↢心想ノ力ヲ↡。了々ニシテ分明ナルコト如クセヨ↢仏ノ在世ノ↡。雖モ↠観ズト↢是ノ相ヲ↡不レ↠得↢衆多ニスルコトヲ↡。従リ↢一事↡起リテ復想ヒ↢一事ヲ↡、*想ヒ↢一事ヲ↡已リテ復想ヘ↢一事ヲ↡。逆順ニ反覆スルコト経ヨ↢十六反ヲ↡。
^かくのごとくして、 心想きはめて明利ならしめ、 しかして後に、 心を住めて念を一処に繋けよ。 かくのごとくして、 *漸々に舌を挙げて齶に向かへ、 舌をしてまさしく住せしめよ。 二七日を経て、 しかして後に、 身心安穏なることを得べし」 と。
如キ↠是クノ心想極テ令メテ↢明利ナラ↡、然シテ後ニ住セシメテ↠心ヲ繋ケヨ↢念ヲ一処ニ↡。如クシテ↠是クノ漸々ニ挙ゲテ↠舌ヲ向ヘテ↠齶ニ、令メヨ↢舌ヲシテ政シク住セ↡。経テ↢二七日ヲ↡然シテ後ニ、身心可シト↠得↢安穏ナルコトヲ↡。」
^導和尚 (善導) のい0953はく (観念法門・意)、 「▲十六遍の後には、 心を住めて白毫相を観ぜよ。 雑乱することを得ざれ」 と。
*道和尚ノ云ク、「十六遍ノ後ニハ、住メテ↠心ヲ観ジテ↢白毫相ヲ↡、不レト↠得↢雑乱スルコトヲ↡。」
・総相観
【44】^▼二に△*総相観とは、 先づ ▼ˆ前のごとくˇ 衆宝荘厳の広大の蓮華を観じ、 次に阿弥陀仏の、 華台の上に坐したまへるを観ぜよ。 身の色は、 百千万億の閻浮檀金のごとし。 身の高さは、 六十万億那由他恒河沙由旬なり。
二ニ総*相観ト者、先ヅ*観ゼヨ↢衆宝荘厳ノ広大ノ蓮花ヲ↡。次ニ観ゼヨ↣阿弥陀仏ノ坐シタマヘルヲ↢花台ノ上ニ↡。身ノ色ハ如シ↢百千万億ノ閻浮檀金ノ↡。身ノ高サハ六十万億那由他恒河沙由旬ナリ。
^眉間の白毫は、 右に旋りて婉転せること五須弥山のごとし。 眼は四大海水のごとくして、 清白分明なり。
眉間ノ白毫ハ、右ニ旋リテ婉転セルコト如シ↢五須弥山ノ↡。眼ハ如クシテ↢四大海水ノ↡、清白分明ナリ。
^身のもろもろの毛孔より光明を演出すること、 須弥山のごとし。 *円光は、 百億の大千界のごとし。 光のなかに無量恒河沙の化仏ましまし、 一々の化仏は、 無数の菩薩をもつて侍者となせり。
身ノ諸ノ毛孔ヨリ演↢出スルコト光明ヲ↡如シ↢須弥山ノ↡。円光ハ如シ↢百億ノ大千界ノ↡。光ノ中ニ有ス↢無量恒河沙ノ化仏↡。一々ノ化仏ハ以テ↢無数ノ菩薩ヲ↡為セリ↢侍者ト↡。
^かくのごとくして八万四千の相あり。 一々の相におのおの八万四千の随好あり。 一々の好にまた八万四千の光明あり。 一々の▼光明あまねく十方世界の念仏の衆生を照らして、 *摂取して捨てたまはず。 まさに知るべし。
如クシテ↠是クノ有リ↢八万四千ノ相↡。一々ノ相ニ各ノ有リ↢八万四千ノ随好↡。一々ノ好ニ復有リ↢八万四千ノ光明↡。一々ノ光明遍ク照シテ↢十方世界ノ念仏ノ衆生ヲ↡、摂取シテ不↠捨テタマハ。当ニシ↠知ル。
^▼一々の相のなかに、 おのおの▼七百五倶胝六百万の光明を具して、 *熾然赫奕として神徳巍々たること、 金山王の大海のなかにあるがごとし。 無量の化仏・菩薩、 光のなかに充満して、 おのおの神通を現じて、 弥陀仏を囲繞したてまつれり。 かの仏、 かくのごとく無量の功徳・相好を具足して0954、 菩薩衆会のなかにましまして、 正法を演説したまふ。
一々ノ相ノ中ニ各ノ具シテ↢七百五倶胝六百万ノ光明ヲ↡、熾然赫奕トシテ神徳巍々タルコト如シ↣金山王ノ在ルガ↢大海ノ中ニ↡。無量ノ化仏1106・菩薩充↢満シテ光ノ中ニ↡、各*各現ジテ↢神通ヲ↡、囲↢遶シタテマツレリ弥陀仏ヲ↡。彼ノ仏如ク↠是クノ具↢足シテ無量ノ功徳相好ヲ↡、在シテ↢於菩薩衆会之中ニ↡、演↢説シタマフ正法ヲ↡。
^行者、 この時にすべて余の色相なく、 *須弥・鉄囲、 大小のもろもろの山もことごとく現ぜず、 大海・江河・土地・樹林もことごとく現ぜず。 目に溢てるものは、 ただこれ弥陀仏の相好、 世界に周遍せるものは、 またこれ閻浮檀金の光明なり。
行者是ノ時ニ都テ無シ↢余ノ色相↡。須弥・鉄囲、大小ノ諸ノ山モ悉ク不↠現ゼ。大海・江河・土地・樹林モ悉ク不↠現ゼ。溢テル↠目ニ之者ハ但是弥陀仏ノ相好、周↢遍セル世界ニ↡*之者ハ亦是閻浮檀金ノ光明ナリ。
^たとへば、 *劫水の、 世界に*弥満せるに、 そのなかの万物は沈没して現ぜず、 *滉瀁浩汗として、 ただ大きなる水のみを見るがごとし。 かの仏の光明もまたかくのごとし。 高く一切世界の上に出でて、 相好・光明、 照曜せずといふことなし。 行者は心眼をもつておのが身を見るに、 またかの光明の所照のなかにあり。
譬ヘバ如シ↧劫水ノ弥↢満シテ世界ニ↡其ノ中ノ万物ハ沈没シテ不↠現ゼ、滉瀁*浩汗トシテ、*唯見ユルガ↦大ナル水ノミヲ↥。彼ノ仏ノ光明モ亦復如シ↠是クノ。高ク出デテ↢一切世界ノ上ニ↡、相好光明靡シ↠不トイフコト↢照曜セ↡。行者ハ以テ↢心眼ヲ↡見ルニ↢於己ガ身ヲ↡、*亦在リ↢*於彼ノ光明ノ所照之中ニ↡。
^以上、 ¬観経¼・¬*双巻経¼ (大経)・¬*般舟経¼・¬大論¼ (大智度論) 等の意による。 この観、 成じて後に楽に随ひて次の観をなせ。
已上依ル↢¬観経¼・¬双巻経¼・¬般舟経¼・¬大論¼等ノ意ニ↡。此ノ*観成ジテ後ニ随ヒテ↠楽ヒニ作レ↢次ノ*観ヲ↡*耳
^あるいは観ずべし。 ▼かの仏はこれ*三身一体の身なり。
▼或イハ応シ↠観ズ。彼ノ仏ハ是三身一体之身也。
・応化身
^かの一身において、 見るところ不同なり。 あるいは*丈六、 あるいは八尺、 あるいは広大の身なり。 所現の身はみな金色にして、 利益したまふところはおのおの無量なり。 一切の諸仏と、 その事同一なり。 応化身なり。
◆於テ↢彼ノ一身ニ↡所↠見不同ナリ。或イハ丈六、或イハ八尺、或イハ広大ノ身ナリ。所現ノ身ハ皆金色ナリ。所ハ↢利益シタマフ↡各ノ無量ナリ。与↢一切ノ諸仏↡其ノ事同一ナリ。応化身*也
・報身
^また一々の相好は、 凡聖その辺を得ず、 梵天もその頂を見ず、 目連もその声を窮めず、 無形第一の体なり。 荘厳にあらず0955して荘厳せり。 十力・四無畏・三念住・大悲、 八万四千の三昧門、 八万四千の波羅蜜門、 恒沙塵数の法門、 究竟円満したまふ。 一切の諸仏と、 その意同一なり。 報身。
又一々ノ相好ハ凡聖不↠得↢其ノ辺ヲ↡。梵天モ不↠見↢其ノ頂ヲ↡。目連モ不↠窮メ↢其ノ声ヲ↡。無クシテ↠形第一ノ体ナリ。非ズシテ↢荘厳ニ↡荘厳セリ。十力・四無畏・三念住・大悲、八万四千ノ三昧門、八万四千ノ波羅蜜門、恒沙塵数ノ法門究竟円満シタマヒテ、与↢一切ノ諸仏↡其ノ意同一ナリ。報身
・法身
^微妙の浄法身に、 もろもろの相好を具足せり。 一々の相好は、 すなはちこれ実相なり。 実相は、 法界具足して減ずることなし。 *生ぜず滅せず、 去・来なし。 一にあらず異にあらず、 断・常にあらず。 有為・無為のもろもろの功徳は、 この法身によりてつねに清浄なり。 一切の諸仏と、 その体同一なり。 法身。
微妙ノ浄法身ニ具↢足セリ諸ノ相好ヲ↡。一々ノ相好ハ即チ是実相ナリ。実相ハ法界具足シテ無シ↠減ズルコト。不↠生ゼ不↠滅セ、無シ↢去来↡。不ズ↠一ニ不ズ↠異ニ、非ズ↢断常ニ↡。有為・無為1107ノ諸ノ功徳ハ、依リテ↢此ノ法身ニ↡常ニ清浄ニシテ、与↢一切ノ諸仏↡其ノ体同一ナリ。法身
^このゆゑに三世十方の諸仏の三身、 *普門塵数の無量の法門、 仏衆法海の*円融の万徳、 おほよそ*無尽の法界は、 つぶさに弥陀の一身にあり。 縦ならず横ならず、 また一・異にあらず。 実にもあらず虚にもあらず、 また有・無にもあらず。 本性清浄にして、 *心言の路絶えたり。 たとへば、 如意珠のなかに、 宝あるにもあらず、 宝なきにもあらざるがごとし。 仏身の万徳もまたかくのごとし。
是ノ故ニ▼三世十方ノ諸仏ノ三身、普門塵数ノ無量ノ法門、仏衆法海ノ円融ノ万徳、凡ソ無尽ノ法界ハ、備ニ在リ↢弥陀ノ一身ニ↡。不↠縦ナラ不↠横ナラ、亦非ズ↢*一異ニ↡。非ズ↠実ニモ非ズ↠虚ニモ、亦非ズ↢有無ニモ↡。本性清浄ニシテ心言ノ路絶エタリ。譬ヘバ如シ↢如意珠ノ中ニ、非ズ↠有ルニモ↠宝ノ非ザルガ↟无キニモ↠宝。仏身ノ万徳モ亦復如シ↠是クノ。
^また*陰入界に即して、 名づけて如来となすにあらず。 かのもろもろの衆生は、 みなことごとくこれあるがゆゑに、 陰入界を離れて、 名づけて如来となすにもあらず。 これを離れては、 すなはちこれ無因縁の法なるがゆゑに、 即にもあらず、 また離にもあらず。 寂静にしてただ名のみあり。
又非ズ↧即シテ↢陰入界ニ↡名ケテ為ルニモ↦如来ト↥。彼ハ諸ノ衆生ニ皆悉ク有ルガ↠之故ニ、非ズ↧離レテ↢陰入界ヲ↡名ケテ為ルニモ↦如来ト↥。離レテハ↠之ヲ則チ是無因縁ノ法ナルガ故ニ、非ズ↠即ニモ、亦非ズ↠離ニモ。寂静トシテ但有リ↠名ノミ。
^このゆゑにまさに0956知るべし。 所観の衆相は、 すなはちこれ*三身即一の相好・光明なり、 諸仏同体の相好・光明なり、 万徳円融の相好・光明なり。 色すなはちこれ空なるがゆゑに、 これを真如実相といふ。 空すなはちこれ色なるがゆゑに、 これを相好・光明といふ。
是ノ故ニ当ニシ↠知ル。所観ノ衆相ハ、即チ是三身即一之相好・光明也。諸仏同体之相好・光明也。万徳円融之相好・光明也。色即チ是空ナルガ故ニ、謂フ↢之ヲ真如実相ト↡。空即チ是色ナルガ故ニ、謂フ↢之ヲ相好・光明ト↡。
^*一色・一香、 中道にあらずといふことなし。 *受・想・行・識もまたかくのごとし。 わが所有の*三道と弥陀仏の万徳と、 本来空寂にして*一体無礙なり。 願はくはわれ仏を得て、 聖法の王と斉しからん。
一色・一香無シ↠*非ズトイフコト↢中道ニ↡。受想行識モ亦復如シ↠是クノ。我ガ所有ノ*三道ト与↢弥陀仏ノ万徳↡、本来空寂ニシテ一体無ナリ。願クハ我得テ↠仏ヲ斉シカラム↢聖法ノ王ト↡。
^以上、 ¬観経¼・¬*心地観経¼・¬*金光明経¼・¬*念仏三昧経¼・¬般若経¼・¬*止観¼ 等の意による。
已上依ル↢¬観経¼・¬心地観経¼・¬金光明経¼・¬念仏三昧経¼・¬般若経¼・¬止観¼等ノ意ニ↡
・雑略観
【45】^▼三に△*雑略観とは、 ▼かの仏の眉間に一の白毫あり。 右に旋りて宛転せること、 五須弥のごとし。
三ニ雑略ノ観ト者、彼ノ仏ノ眉間ニ有リ↢一ノ白毫↡。右ニ旋リテ宛転セルコト如シ↢五須弥ノ↡。
^なかにおいて、 また八万四千の好あり。 一々の好に八万四千の光あり。 その光微妙にして、 衆宝の色を具せり。 総じてこれをいへば、 ▼七百五倶胝六百万の光明なり。 十方の面に赫奕たること、 億千の日月のごとし。 その光のなかに一切の仏身を現じ、 無数の菩薩、 衆会して囲繞せり。 また微妙の音を出して、 もろもろの法海を*宣暢す。
於テ↠中ニ復有リ↢八万四*千ノ好↡。一々ノ好ニ有リ↢八万四千ノ光↡。其ノ光微妙ニシテ具セリ↢衆宝ノ色ヲ↡。総ジテ而言バ↠之ヲ、七百五倶胝六百万ノ光明ナリ。十方ノ面ゴトニ赫奕タルコト如シ↢億千ノ日月ノ↡。其ノ光ノ中ニ現ズ↢一1108切ノ仏身ヲ↡。無数ノ菩薩衆会シテ囲遶セリ。復出シテ↢微妙ノ音ヲ↡宣↢暢ス諸ノ法海ヲ↡。
^またかの一々の▼光明、 あまねく十方世界の念仏の衆生を照らして、 摂取して捨てたまはず。 ▼われまたかの摂取のなかにあれども、 ▼煩悩、 眼を障へて、 見たてまつることあたはずといへども、 大悲0957倦むことなくして、 つねにわが身を照らしたまふ。
*又彼ノ一々ノ光明、遍ク照シテ↢十方世界ノ念仏ノ衆生ヲ↡摂取シテ不↠捨テタマハ。▼我亦在リ↢彼ノ摂取之中ニ↡。煩悩障ヘテ↠眼ヲ雖モ↠不ト↠能ハ↠見タテマツルコト、大悲無クシテ↠惓ムコト常ニ照シタマフ↢我ガ身ヲ↡。
^▼あるいは自心を起して極楽国に生じて、 蓮華のなかに*結跏趺坐し、 蓮華の合する想をなすべし。 尋いで、 蓮華開くる時に、 尊顔を*瞻仰したてまつり、 白毫の相を観ず。 時に五百色の光ありて、 来りてわが身を照らすに、 すなはち無量の化仏・菩薩の、 虚空のなかに満てるを見たてまつる。 水・鳥・樹林および諸仏の出したまふところの音声は、 みな妙法を演ぶと。 かくのごとく思想して、 心をして*欣悦せしめよ。 願はくは、 もろもろの衆生とともに安楽国に往生せん。
或イハ応シ↧起シテ↢自心ヲ↡生ジテ↢極楽国ニ↡、於テ↢蓮華ノ中ニ↡結跏趺坐シ、作ス↦蓮華ノ合スル想ヲ↥。尋ギテ蓮華開クル時ニ、瞻↢仰シタテマツリ尊顔ヲ↡、観ズル↢白毫ノ相ヲ↡。時ニ、有リテ↢五百色ノ光↡来リテ照スニ↢我ガ身ヲ↡、即チ見タテマツル↣無量ノ化仏・菩薩ノ満テルヲ↢虚空ノ中ニ↡。水・鳥・樹林及与諸仏ノ所↠出ノ音声ハ皆演ブト↢妙法ヲ↡。如ク↠是クノ思想シテ、令メテ↢心ヲシテ欣悦セ↡、願ゼヨ↧共ニ↢諸ノ衆生ト↡往↦生セムト安楽国ニ↥。
^以上、 ¬観経¼・¬*華厳経¼ 等の意による。 つぶさには*別巻にあり。
已上依ル↢¬観経¼・¬花厳経¼等ノ意ニ↡。具ニハ在リ↢別巻ニ↡
^もし▼*極略を楽ふものは、 念ふべし。 かの仏の眉間の白毫の相は、 *旋転せること、 なほ頗梨珠のごとし。 光明あまねく照らしてわれらを摂めたまふ。 願はくは、 衆生とともにかの国に生れんと。
若シ楽ハム↢極略ヲ↡者ハ応シ↠念フ。彼ノ仏ノ眉間ノ白毫ノ相ハ、旋転セルコト猶シ如シ↢頗梨珠ノ↡。光明遍ク照シテ摂メタマフ↢我等ヲ↡。願クハ共ニ↢衆生ト↡生レムト↢彼ノ国ニ↡。
・三想
^▼もし相好を観念するに堪へざることあらば、 あるいは帰命の想により、 あるいは*引摂の想により、 あるいは往生の想によりて、 一心に称念すべし。 以上、 意楽不同なり。 ゆゑに種々の観を明かす。
若シ有ラバ↠不ルコト↠堪ヘ↣観↢念スルニ相好ヲ↡、或イハ依リ↢帰命ノ想ニ↡、或イハ依リ↢引摂ノ想ニ↡、或イハ依リテ↢往生ノ想ニ↡応シ↢一心ニ称念ス↡。已上意楽不同ナリ。故ニ明ス↢種々ノ観ヲ↡
^▼*行住坐臥、 語黙作々に、 つねにこの念をもつて胸のなかに在くこと、 飢して食を念ふがごとくし、 渇して水を追ふがごとくせよ。 あるいは頭を低れ手を挙げ、 あるいは声を挙げて名を称せよ。 ▼*外儀は異なりとい0958へども、 心念はつねに存ぜよ。 ▼念々に相続して、 *寤寐に忘るることなかれ。
▼行住坐臥、語黙作々ニ、常ニ以テ↢此ノ念ヲ↡在ケ↢於胸ノ中ニ↡。如クシ↢飢シテ念フガ↟食ヲ、如クセヨ↢渇シテ追フガ↟水ヲ。或イハ低レ↠頭ヲ挙ゲ↠手ヲ、或イハ挙ゲテ↠声ヲ称セヨ↠名ヲ。外儀ハ雖モ↠異ナリト心念ハ常ニ存ゼヨ。念々ニ相続シテ、寤寐ニ莫レ↠忘ルルコト。
^問ふ。 かの仏の*真身は、 これ凡夫の心力の及ぶところにあらず。 ただ像を観ずべし。 なんぞ大身を観ぜん。
問フ。彼ノ仏ノ真身ハ、非ズ↢是凡夫ノ心力ノ所ニ↟及ブ。但応シ↠観ズ↠像ヲ。何ゾ観ゼム↢大身ヲ↡。
^答ふ。 ¬観経¼ にのたまはく、 「▲無量寿仏は身量無辺にして、 これ凡夫の心力の及ぶところにあらず。 ◆しかもかの如来の宿願力のゆゑに、 憶想することあるものは、 かならず成就することを得。 ◆ただ仏像を想ふすら、 無量の福を得。 いはんやまた仏の具足せる身相を観ぜんをや」 と。 以上
答フ。¬観経ニ¼云ク、「無量寿仏ハ身量無辺ニシテ非ズ↢是凡夫ノ心力ノ所ニ↟及ブ。然モ彼ノ如来ノ宿願力ノ故ニ、有ル↢憶想スルコト↡者ハ必ズ得↢成*就スルコトヲ↡。但想フニ↢仏像ヲ↡得↢無量ノ福ヲ↡。況ヤ復観1109ゼムヲヤト↢仏ノ具足ノ身相ヲ↡」 已上
^あきらかに知りぬ、 初心もまた*楽欲に随ひて真身を観ずることを得るなり。
明カニ知リヌ初心モ亦随ヒテ↢楽欲ニ↡得ルナリ↠観ズルコトヲ↢真身ヲ↡。
^問ふ。 いふところの弥陀の一身は、 すなはち一切仏の身なりとは、 なんの証拠かある。
▼問フ。所ノ↠言フ弥陀ノ一身ハ即チ一切ノ仏ノ身ナリト者、有ル↢何ノ証拠カ↡。
^答ふ。 天台大師 (*智顗) のいはく (*十疑論)、 「阿弥陀仏を念ずるは、 すなはち一切の仏を念ずるなり。 ゆゑに ¬華厳経¼ にのたまはく、
◆答フ。天台大師ノ云ク、「念ズルハ↢阿弥陀仏ヲ↡*即チ念ズルナリ↢一切仏ヲ↡。故ニ¬花厳経ニ¼云ク、
^ª一切の諸仏の身は、 すなはちこれ一仏の身なり。
一心なり、 一智慧なり。 *力・無畏もまたしかなりº」 と。 以上
◆一切ノ諸仏ノ身ハ | 即チ是一仏ノ身ナリ |
一心ナリ一智慧ナリ | 力・無畏モ亦然ナリト」 已上 |
^また ¬観仏三昧経¼ にのたまはく、 「もし一仏を思惟すれば、 すなはち一切の仏を見たてまつる」 と。 云々
又¬観仏三昧経ニ¼云ク、「若シ思↢惟スレバ一仏ヲ↡即チ見タテマツルト↢一切ノ仏ヲ↡。」云々
^問ふ。 もし諸仏の*体性の無二なるがごとく、 念者の功徳もまた別なきや。
問フ。為如ク↢諸仏ノ体性ノ無二ナルガ↡、念者ノ功徳モ亦無キ↠別耶。
^答ふ0959。 等しくして差別なし。 ゆゑに ¬*文殊般若経¼ の下巻にのたまはく、 「一仏を念ずるは、 功徳無量無辺なり。 また無量の諸仏の功徳と無二なり。 不思議の仏法は等しくして分別なし。 みな一如に乗じて*最正覚を成じ、 ことごとく無量の功徳、 無量の弁才を具したまへり。 かくのごとくして*一行三昧に入るものは、 ことごとく恒沙の諸仏の法界の、 無差別の相を知る」 と。 以上
答フ。等シクシテ無↢差別ナリ↡。故ニ¬文殊般若経ノ¼下巻ニ云ク、「念ズルハ↢一仏ヲ↡功徳無量無辺ナリ。亦与↢無量ノ諸仏ノ功徳↡無二ナリ。不思議ナリ。仏法ハ等シクシテ無シ↢分別↡。皆乗ジテ↢一如ニ↡成ジタマフ↢最正覚ヲ↡。悉ク具シタマヘリ↢無量ノ功徳、*無量ノ*辨才ヲ↡。如クシテ↠是クノ入ル↢一行三昧ニ↡者ハ、尽ク知ルト↢恒沙ノ諸仏ノ法界ノ無差別ノ相ヲ↡」 *已上
^問ふ。 諸相の功徳は、 肉髻と梵音と、 これを最勝なりとなす。 いま多く白毫を勧むること、 なんの証拠かある。
問フ。諸相ノ功徳ハ、肉髻ト梵音ト、是ヲ為ス↢最勝ナリト↡。今多ク勧ムルコト↢白毫ヲ↡有ル↢何ノ証拠カ↡耶。
^答ふ。 その証はなはだ多し。 略して*一両を出さん。 ¬観経¼ にのたまはく、 「▲無量寿仏を観ずるものは、 一の相好より入れ。 ただ眉間の白毫を観じて、 きはめて明了ならしめよ。 眉間の白毫を見るものは、 八万四千の相好、 自然にまさに見つべし」 と。
答フ。其ノ証甚ダ多シ。略シテ出サム↢一両ヲ↡。¬観経ニ¼云ク、「観ゼム↢無量寿仏ヲ↡者ハ、従リ↢一ノ相好↡入レ。但シ観ジテ↢眉間ノ白毫ヲ↡、極テ令メヨ↢明了ナラ↡。見ル↢眉間ノ白毫ヲ↡者ハ、八万四千ノ相好自然ニ当ニシト↠見ツ。」
^また ¬観仏経¼ にのたまはく、 「如来に無量の相好まします。 一々の相のなかに、 八万四千のもろもろの小相好あり。 かくのごとき相好は、 白毫の少分の功徳に及ばず。 このゆゑに今日、 *来世のもろもろの悪の衆生のために、 白毫相の大慧光明の、 消悪の観法を説く。
又¬観仏経ニ¼云ク、「如来ニ有ス↢無量ノ相好↡。一々ノ相ノ中ニ八万四千ノ諸ノ小相好アリ。如キ↠是クノ相好ハ不↠及バ↢白毫ノ少分ノ功徳ニ↡。是ノ故ニ今日、為ニ↢於来世ノ諸ノ悪ノ衆生ノ↡、説ク↢白毫相ノ大*慧光明ノ消悪ノ観法ヲ↡。
^もし邪見の極重の悪人ありて、 この観法は*相貌を具足すと聞きて、 瞋恨の心をなさば、 この処あることなからん。 たとひ瞋りをなすとも、 白毫相の0960光、 また覆護せん。
若シ有リテ↢邪見ノ極重ノ悪人↡、聞キテ↢此ノ観法ノ具1110↢足ノ相貌ヲ↡生サバ↢瞋恨ノ心ヲ↡、無ケム↠有ルコト↢是ノ処↡。縦使ヒ生ストモ↠瞋ヲ、白毫相ノ光亦復覆護セム。
^しばらくこの語を聞かば、 三劫の罪を除き、 後身の生処は、 諸仏の前に生ぜん。 かくのごとく、 種々の百千億種のもろもろの、 光明を観る微妙の境界は、 ことごとく説くべからず。 白毫を念ふ時、 自然にまさに生ずべし」 と。
暫ク聞カバ↢是ノ語ヲ↡、除カム↢三劫ノ罪ヲ↡。後身ノ生レム処ハ生レム↢諸仏ノ前ニ↡。如ク↠是クノ種々ノ百千億種ノ諸ノ観ノ↢光明↡微妙ノ境界ハ、不↠可カラ↢悉ク説ク↡。念ハム↢白毫ヲ↡時ニ自然ニ当ニシ↠生ズ。」
^またのたまはく (観仏経)、 「*粗心にして像を観ずるに、 なほかくのごとき無量の功徳を得。 いはんやまた念を繋けて、 仏の眉間の白毫相の光を観ぜんをや」 と。
又云ク、「麁心ニシテ観ズルニ↠像ヲ、尚シ得↢如キ↠是クノ無量ノ功徳ヲ↡。況ヤ復繋ケテ↠念ヲ観ゼムヲヤト↢仏ノ眉間ノ白毫相ノ光ヲ↡。」
^またのたまはく (観仏経)、 「*釈迦文仏、 行者の前に現じて、 告げてのたまはく、 ªなんぢ、 観仏三昧力を修す。 ゆゑに、 われ涅槃相の力をもつて、 なんぢに色身を示して、 なんぢをしてあきらかに観ぜしめん。 なんぢ、 いま坐禅して多く観ずることを得ざれ。 なんぢ、 後の世の人、 多くもろもろの悪を作れり。 ただ眉間の白毫の相の光を観ぜよ。 この観をなす時に見るところの境界は、 ↓上の所説のごとしº」 と。 以上、 これを略抄す。
又云ク、「釈迦文仏現ジテ↢行者ノ前ニ↡告ゲテ言ク、汝修スル↢観仏三昧ヲ↡力ノ。故ニ、我以テ↢涅槃相ノ力ヲ↡、示シテ↢汝ニ色身ヲ↡、令メム↢汝ヲシテ諦ニ観ゼ↡。汝今坐禅シテ不レ↠得↢多ク観ズルコトヲ↡。汝後ノ世ノ人多ク作レリ↢諸ノ悪ヲ↡。但観ゼヨト↢眉間ノ白毫ノ相ノ光ヲ↡。作ラム↢此ノ観ヲ↡時ニ所ノ↠見ム境界ハ、如シト↢上ニ所ノ↟説キツル。已上略↢抄ス*之ヲ↡
^「↑上の所説」 とは、 仏の種々の境界を見るなり。 もろもろの余の利益は、 下の▽別時の行および▽利益門に至りて知りぬべし。
上ノ所説ト者、見ル↢仏ノ種々ノ境界ヲ↡也。諸ノ余ノ利益ハ、至リテ↢下ノ別時ノ行及ビ利益門ニ↡応シ↠知リヌ。
^問ふ。 白毫の一相を観ずるをもまた三昧と名づくるや。
問フ。観ズルヲモ↢白毫ノ一相ヲ↡亦名クル↢三昧ト↡耶。
^答ふ。 しかなり。 ゆゑに ¬観仏経¼ の第九にのたまはく、 「もしよく心を繋けて一の毛孔を観ずる、 こ0961の人は名づけて*念仏定を行ずとなす。 仏を念ずるをもつてのゆゑに、 十方の諸仏、 つねにその前に立ちて、 ために正法を説きたまふ。 この人、 すなはちよく三世のもろもろの如来を生ずる種となす。 いかにいはんや、 具足して仏の色身を念ぜんをや」 と。
答フ。爾ナリ。故ニ¬観仏経ノ¼第九ニ云ク、「若シ能ク繋ケテ↠心ヲ観ズル↢一ノ毛孔ヲ↡、是ノ人ハ名ケテ為ス↠行ズト↢念仏定ヲ↡。以テノ↠念ズルヲ↠仏ヲ故ニ、十方ノ諸仏常ニ立チテ↢其ノ前ニ↡、為ニ説キタマフ↢正法ヲ↡。此ノ人ヲバ即チ為ス↧能ク生ズル↢三世ノ諸ノ如来ヲ↡種ト↥。何ニ況ヤ具足シテ念ゼムヲヤアト↢仏ノ色身ヲ↡。」
^問ふ。 なんがゆゑぞ浄土の荘厳を観ぜざるや。
問フ。何ガ故ゾ不ル↠観ゼ↢浄土ノ荘厳ヲ↡*耶。
^答ふ。 いま広行に堪へざるもののために、 ただ略観を勧む。 もし観ぜんと欲ふものは、 ¬観経¼ を読むべし。 いかにいはんや前に△十種の事明かしつ。 すなはちこれ浄土の荘厳なり。
答フ。今為ニ↧不ル↠堪ヘ↢広行ニ↡之者ノ↥、唯シ勧ム↢略観ヲ↡。若シ欲ハム↠観ゼムト者ハ応シ↠読ム↢¬観経ヲ¼↡。何ニ況ヤ前ニ明シツ↢十種ノ事↡。即チ是浄土ノ荘厳也。
^問ふ。 なんがゆゑぞ観音・勢至を観ぜざるや。
問フ。何ガ故ゾ不ル↠観ゼ↢観音・勢至ヲ↡耶。
^答ふ。 略せるがゆゑに述せず。 仏を念じをはりて後は、 二菩薩を観ずべし。 あるいは名号を称せよ。 多少は意に随へ。
答フ。略セルガ故ニ不↠述セ。念ジテ↠仏ヲ已後ニ、応シ↠観ズ↢二菩薩ヲ↡。或イハ称セヨ↢名*号ヲ↡。多少1111ハ随ヘ↠意ニ。
二 Ⅳ ⅱ e 回向門
【46】^第五に△回向門を明かすとは、 五の義具足せるもの、 これ真の回向なり。
第五ニ明スト↢廻向*門ヲ↡者、五ノ義具足セルモノ、是真ノ廻向ナリ。
^一には、 ↓三世の一切の善根を聚集すること、 ¬華厳経¼ の意。
一ニハ聚↢集スルコト三世ノ一切ノ善根ヲ↡、¬花厳経ノ¼意
^二には、 ▽↓*薩婆若の心と相応すること、
二ニハ薩婆若ノ心ト相応スルコト、
^三には、 この善根をもつて↓一切衆生とともにすること、
三ニハ以テ↢此ノ善根ヲ↡共ニスルコト↢一切衆生ト↡、
^四には、 ↓無上菩提に回向すること、
四ニハ廻↢向スルコト無上菩提ニ↡、
^五には、 *能施・所施・施物は↓みな*不可得なりと観じて、 よく諸法の実相と和合せしむることなり。 ¬大論¼ (大智度論) の意。
五ニハ観ジテ↢能施・所施・施物ハ皆不可得ナリト↡、能ク令ムルコトナリ↢諸法ノ実相ト和合セ↡。¬大論ノ¼意
^こ0962れらの義によりて、 心に念ひ、 口にいへ。 修するところの功徳と、 および*三際の一切善根とを、 その一。 自他法界の一切衆生に回向して、 平等に利益し、 その二。 罪を滅し、 善を生じて、 ともに↓極楽に生じて、 *普賢の行願を速疾に円満し、 自他同じく無上菩提を証して、 *未来際を尽すまで衆生を利益し、 その三。 ↓法界に*回施して、 その四。 ↓大菩提に回向するなり。 その五。
依リテ↢此等ノ義ニ↡、心ニ念ヒ口ニ言ヘ。所↠修ノ功徳ト及以三際ノ一切善根トヲ。其ノ一 廻↢向シテ自他法界ノ一切衆生ニ↡平等ニ利益セム。其ノ二 滅シ↠罪ヲ生ジテ↠善ヲ共ニ生ジテ↢極楽ニ↡普賢ノ行願ヲ速疾ニ円満シ、自他同ジク証シテ↢無上菩提ヲ↡、尽クスマデ↢未来際ヲ↡利↢益セム衆生ヲ↡。其ノ三 廻↢施シテ法界ニ↡、其ノ四 廻↢*向スルナリ大菩提ニ。其ノ五
^問ふ。 ↑未来の善いまだあらず。 なにをもつてか回向する。
問フ。未来ノ*善未ダ↠有ラ。以テカ↠何ヲ廻向スル。
^答ふ。 ¬華厳経¼ に、 *第三の回向の*菩薩の行相を説きてのたまはく、 「三世の善根をもつて、 所着なく、 相なく相を離れて、 ことごとくもつて回向す」 (意) と。
答フ。¬花厳経ニ¼説キテ↢第三ノ廻向ノ菩*提ノ行相ヲ↡云ク、「以テ↢三世ノ善根ヲ↡、而シテ無ク↢所著↡、無ク↠相離レテ↠相ヲ、悉ク以テ廻向スト。」
^¬*刊定記¼ に二の釈あり。 一には、 未来の善根はいまだあらずといへども、 いまもし願を発しつれば、 *願薫じて種となり、 摂持する力のゆゑに、 未来の所修任運に衆生と菩提とに注向して、 さらに回向することを待たず。 二には、 この教のなかによれば、 菩薩は、 乃至、 一念の善を修するに、 法性を摂するがゆゑに*九世に遍す。 ゆゑにかの善根をもつて回向すと。 云々
¬刊定記ニ¼有リ↢二ノ釈↡。一ニハ未来ノ善根ハ雖モ↠未ダト↠有ラ、今若シ発シツレバ↠願ヲ、願薫↢成シテ種ヲ↡摂持スル力ノ故ニ、未来ノ所修*任運ニ注↢向シテ衆生ト菩提トニ↡、不↠待タ↢更ニ廻向スルコトヲ↡也。二ニハ依レバ↢此ノ教ノ中ノ菩薩ニ↡、乃至修スルニ↢一念ノ善ヲ↡、摂スルガ↢法性ヲ↡故ニ遍ス↢於九世ニ↡。故ニ用テ↢彼ノ善根ヲ↡廻向スト也。*云々
^問ふ。 第二に、 いかなるをや↑薩婆若相応の心と名づくる。
問フ。第二ニ何ナルヲヤ名クル↢薩婆若相応ノ心ト↡。
^答ふ。 ¬論¼ (大智度論) にいはく、 「▽*阿耨菩提の意、 すなはちこれ薩婆若に応ずる心なりと。 ª応0963º といふは、 心を繋けて、 われまさに仏に作るべしと願ずるなり」 と。
答フ。¬論ニ¼云ク、「阿耨菩提ノ意、即チ是応ズル↢薩婆若ニ↡心ナリト。応トイフ者繋ケテ↠心ヲ、願ズルナリト↢我当ニシト↟作ル↠仏ニ。」
^問ふ。 第三・第四は、 なんがゆゑぞかならず↑一切衆生とともにし、 および↑無上菩提に回向する。
問フ。第三第四ハ、何ガ故ゾ要ズ共ニシ↢一切衆生ト↡、及1112以廻↢向スル无上菩提ニ↡。
^答ふ。 ¬*六波羅蜜経¼ にのたまはく、 「いかんぞ少施の功徳多なるや。 方便の力をもつて、 少分の布施をもつて回向し発願すらく、 ª一切衆生と同じく*無上正等菩提を証せんº と。 これをもつて功徳の無量無辺なること、 なほ小雲の、 やうやく法界に遍するがごとし」 と。 乃至、 一華・一菓をもつて施するもまたしかり。 ¬大論¼ (大智度論) の意またこれに同じ。
答フ。¬六波羅蜜経ニ¼云ク、「云何ゾ少施ノ功徳多ナル耶。以テ↢方便ノ力ヲ↡、少分ノ布施ヲモテ廻向シ発願スラク、与↢一切衆生↡同ジク証セムト↢無上正等菩提ヲ↡。以テ↠是ヲ功徳ノ無量無辺ナルナリ。猶如シト↣小雲ノ漸ク遍スルガ↢法界ニ↡。」乃至以テ↢一花・一菓ヲ↡施スルモ亦爾リ。¬大論ノ¼意*亦同ジ↠之ニ
^また ¬*宝積経¼ の四十六にのたまはく、 「菩薩摩訶薩は、 所有の*已生のもろもろの妙善根を、 一切、 無上菩提に回向して、 この善根をして畢竟じて無尽ならしむ。 たとへば、 小水を大海に投げつれば、 乃至、 *劫焼のなかにも尽くることあることなからんがごとし」 と。
*又¬宝積経ノ¼六ニ云ク、「菩薩摩訶薩ハ、所有ノ已生ノ諸ノ妙善根ヲ一切廻↢向シテ無上菩提ニ↡、令ム↢此ノ善根ヲシテ畢竟ジテ無尽ナラ↡。譬ヘバ如クト↧小水ヲ投ゲツレバ↢于大海ニ↡、乃至劫焼マデニ中ニシテ无カラムガ↞有ルコト↠尽クルコト。」
^また ¬*大荘厳論¼ の偈にいはく、
又¬大荘厳論ノ¼偈ニ云ク、
^「施を行じて*妙色・財を求めず、 また天・人趣を感ずることを願ぜざれ、
もつぱら無上勝菩提を求むれば、 施は微なれどもすなはち無量の福を感ず」 と。 以上
「行ジテ↠施ヲ不↠求メ↢妙色財ヲ↡ | 亦不シテ↠願ゼ↠感ゼムト↢天人趣ヲ↡ |
専ラ求ムルハ↢无上勝菩提ヲ↡ | 施ハ微ナレドモ便チ感ズト↢无量ノ福ヲ↡」 已上 |
^ゆゑにもろもろの善根をもつてことごとく仏道に回向するなり。
故ニ以テ↢諸ノ善根ヲ↡尽ク廻↢向スルナリ仏道ニ↡。
^また ¬大論¼ (大0964智度論) にいはく、 「たとへば、 *慳貪の人の、 因縁なくしては、 乃至一銭をも施せず、 *貪慳積聚してただ増長することを望むがごとく、 菩薩もまたかくのごとし。 福徳の、 もしは多もしは少、 余事には向かへず、 ただ愛惜積集して↓薩婆若に向かふ」 と。 以上
又¬大論ニ¼云ク、「譬ヘバ如ク↧慳貪ノ人ノ無クシテハ↢因縁↡、乃至一銭ヲモ不↠施セ、貪慳積聚シテ但望ムガ↦増長セムコトヲ↥、菩薩モ亦如シ↠是クノ。福徳ノ若シハ多若シハ少、不↠向ヘ↢余事ニハ↡、但愛惜積集シテ向フト↢薩婆若ニ↡。」 *已上
^問ふ。 もししからば、 ただ菩提に回向すべし。 なんがゆゑぞ、 さらに↑往生極楽とはいふ。
問フ。若シ爾ラバ唯応シ↣廻↢向ス菩提ニ↡。何ガ故ゾ更ニ云フ↢往生極楽トハ↡。
^答ふ。 菩提はこれ果報なり。 極楽はこれ華報なり。 果を求むる人、 いかんぞ華を期せざらんや。 このゆゑに九品の業にみないはく、 「回向して極楽国に生ぜんと願求す」 と。
答フ。菩提ハ是果報ナリ。極楽ハ是花報ナリ。求ムル↠果ヲ之人盍ゾラム↠期セ↠花ヲ耶。是ノ故ニ九品ノ業ニ皆云ク、廻向シテ願↣求スト生ゼムト↢極楽国ニ↡。
^問ふ。 発願と回向とは、 なんの差別かある。
問フ。発願ト廻向トハ有ル↢何ノ差別カ↡。
^答ふ。 誓ひて求むるところを期する、 これを名づけて願となす。 所作の業を回してかしこに趣向する、 これを回向といふ。
答フ。誓テ↢期スル↠所↠求ヲ↡、名ケテ↠之ヲ為ス↠願ト。廻シテ↢所作ノ業ヲ↡趣↢向スル於彼ニ↡、謂フ↢之ヲ廻向ト↡。
^問ふ。 薩婆若と無上菩提と、 二は差別なし。 なんぞ分ちて二とはなす。
問フ。薩婆若ト与ハ↢無上菩提↡二ハ无シ↢差別↡。何ゾ分チテ為ル↠二トハ。
^答ふ。 ¬論¼ (大智度論) に回向を明かすに、 △これを分ちて二となせり。 ゆゑにいまこれに順ず。 さらに *¬論¼ (同) の文を撿へよ。
答フ。¬論ニ¼明スニ↢廻向ヲ↡、分チテ↠之ヲ為セリ↠二ト。故ニ今順ズ↠之ニ。更ニ撿ヘヨ↢¬論ノ¼文ヲ↡。
^問ふ。 次に、 なんがゆゑぞ、 あらゆる事を観じて、 ↑ことごとく空ならしむるや0965。
問フ。次ニ何ガ故1113ゾ観ジテ↢所有ノ事ヲ↡悉ク令ムル↠空ナラ耶。
^答ふ。 ¬論¼ (大智度論) にいはく、 「*着心*取相の菩薩の修する福徳は、 草より生ずる火の、 滅することを得べきこと易きがごとし。 もし実相を体得せる菩薩の、 大悲心をもつて行ずる衆行は、 破することを得べきこと難きこと、 水のなかの火の、 よく滅するものなきがごとし」 と。 云々
答フ。¬論ニ¼云ク、「著心取相ノ菩薩ノ修スル福徳ハ、如シ↢草ヨリ生ズル火ノ易キガ↟可キコト↠得↠滅スルコトヲ。若シ体↢得セル実相ヲ↡菩薩ノ以テ↢大悲心ヲ↡行ズル衆行ハ、難キコト↠可キコト↠得↠破コトヲ、如シト↣水ノ中ノ火ノ无キガ↢能ク滅スル者↡。」*云々
^問ふ。 もししからば、 唱へて 「空無所得」 といふべし。 なんがゆゑぞいま 「↑回施法界」 とはいふ。
問フ。若シ爾ラバ応シ↣唱ヘテ言フ↢空无所得ト↡。何ガ故ゾ今云フ↢廻施法界トハ↡。
^答ふ。 理、 実にはしかるべし。 しかれども、 いまは国土の風俗に順ずるがゆゑに 「法界」 といふに、 理また違することなし。 しかる所以は、 法界はすなはちこれ*円融無作の第一義空なり。 所修の善をもつて*回趣し、 かの第一義空に相応するを回施法界と名づく。
答フ。理実ニハ可シ↠然ル。然レドモ今ハ順ズルガ↢於国土ノ風俗ニ↡故ニ云フニ↢法界ト↡、理亦無シ↠違スルコト。所↢以然ル↡者、法界ハ即チ是円融无作ノ第一義空ナリ。以テ↢所修ノ善ヲ↡廻趣シ、相↢応スルヲ彼ノ第一義空ニ↡名ク↢廻施法界ト↡。
^問ふ。 最後に、 なんの意ぞ唱へて 「↑回向大菩提」 といふや。
問フ。最後ニ何ノ意ゾ唱ヘテ言フ↢廻向大菩提ト↡耶。
^答ふ。 これはこれ、 薩婆若と相応せしむるなり。 これまた*土風に順じて、 これを末後に置く。 「↑薩婆若」 といふは、 すなはちこれ菩提なり。 △前の ¬論¼ (大智度論) の文のごとし。
答フ。此ハ是令ムル↧与↢薩婆若↡相応セ↥也。此亦順ジテ↢土風ニ↡、置ク↢之ヲ*末後ニ↡。言フハ↢薩婆若ト↡即チ是菩提ナリ。如シ↢前ノ¬論ノ¼文ノ↡。
^問ふ。 *有相の回向には利益なきや。
問フ。有相ノ廻向ハ无シ↢利益↡耶。
^答ふ。 上にしばしば論ずるがごとし。 勝劣はありといへども、 なほ巨益あり。
答フ。如シ↢上ニ数バ論ズルルガ↡。雖モ↠有リト↢勝劣ハ↡猶有リ↢*巨益↡。
^¬大論¼ (大智度論) の第七にいふがごとし。 「小因の大果、 小縁の大報あり。 仏道を求めて一偈を讃じ、 一たび ª南無仏º と0966称し、 一捻の香を焼きて、 かならず仏に作ることを得るがごときなり。 いかにいはんや、 聞知せんをや。 ª諸法の実相は不生不滅にして、 不生にもあらず、 不滅にもあらざれども、 しかも因縁の業を行ずれば、 また失せざるなりº」 と。 以上
如シ↢¬大論ノ¼第七ニ云フガ↡。「有リ↢小因ノ大果アル、小縁ノ大報アル↡。如キナリ↧求メテ↢仏道ヲ↡讃ジ↢一偈ヲ↡、一タビ称シ↢南無仏ト↡、焼キテ↢一捻ノ香ヲ↡、必ズ得ルガ↞作ルコトヲ↠仏ト。何ニ況ヤ聞知セムヲヤ。諸法ノ実*相ハ不生・不滅ニシテ、不↢々生↡・不↢々滅↡、而モ行ノ↢因縁ノ業↡亦不ルナリト↠失セ。」 已上
^この文深妙なり。 髻のなかの明珠なり。 すなはち知りぬ、 われらも仏になること疑なしと。
此ノ文深妙ナリ。髻ノ中ノ明珠ナリ。則チ知リヌ我等モ成ラムコト↠仏ニ无シト↠疑。
^*龍樹尊に帰命したてまつる。 わが心願を証明したまへ。
帰↢命シタテマツル龍樹尊ニ↡。証↢*明シタマヘ*我ガ心願ヲ↡。
二 Ⅴ 助念方法
【47】^大文第五に、 △*助念方法といふは、 *一目の羅は鳥を得ることあたはず、 万術をもつて観念を助けて、 往生の大事を成ず。 いま七事をもつて、 略して方法を示さん。 ▼一には▽方処供具、 二には▽修行相貌、 三には▽対治懈怠、 四には▽止悪修善、 五には▽懴悔衆罪、 六には▽対治魔事、 七には▽総結要行なり。
大文第五ニ助念ノ方法トイフ者、一目之羅ハ、不↠能ハ↠得ルコト↠鳥ヲ、万術ヲモテ助ケテ↢観念ヲ↡成セ↢往生ノ大事ニ↡。今以テ↢七事ヲ↡略シテ示サム↢方法ヲ↡。一ニハ方処供具、二ニハ修行ノ相貌、三ニハ対治懈怠、四1114ニハ止悪修善、五ニハ懴悔衆罪、六ニハ対治魔事、七ニハ総結*行要ナリ。
二 Ⅴ ⅰ 方処供具
【48】^▼第一に△*方処供具とは、 *内外ともに浄くして一の閑処を卜めて、 力に随ひて香華供具を弁ぜよ。
第一ニ方処供具ト者、内外倶ニ浄クシテ卜メテ↢一ノ閑処ヲ↡、随ヒテ↠力ニ*辨ゼヨ↢於*香花供具ヲ↡。
^もし華香等の事を闕少せることあらば、 ただもつぱら仏の功徳威神を念ぜよ。
若シ有ラバ↣闕↢少セルコト花香等ノ事ヲ↡、但専ラ念ゼヨ↢仏ノ功徳威神ヲ↡。
^もし親しく仏像に対はば、 すべからく灯明を弁ずべし。
若シ親シク対ハバ↢仏像ニ↡、須クシ↠*辨ズ↢灯明ヲ↡。
^もしはるかに西方を観ぜば、 あるいは闇室を須ゐよ。 *感禅師 (*懐感) は闇室を許す。
若シ遥ニ観ゼバ↢西方ヲ↡、或イハ須ヰヨ↢闇室ヲ↡。感禅師ハ許ス↢*暗室ヲ↡
^もし華香を供する時には、 すべからく ¬観仏三昧経¼ の供養の文の意による0967べし。 その得るところの福、 無量無辺なり。 煩悩おのづから減少し、 六度おのづから円満す。 その文、 *通途の所用に異ならず。 ゆゑにさらに抄せず。
若シ供セム↢花香ヲ↡時ニハ、須クハシ ↠依ル↢¬観仏三昧経ノ¼供養ノ文ノ意ニ↡。其ノ所↠得ノ福無量無辺ナリ。煩悩自ラ減少シ、六度自ラ円満ス。其ノ文不↠異ナラ↢通途ノ所用ニ↡。故ニ不↢更ニ抄セ↡
^もし念珠を用ゐん時には、 浄土を求めんと欲はば、 *木槵子を用ゐ、 多功徳を欲はば、 *菩提子、 乃至、 あるいは水精・*蓮子等を用ゐよ。 ¬*念珠功徳経¼ に見えたり。
▼若シ用ヰバ↢念珠ヲ↡、*時ニ欲ハバ↠求メムト↢浄土ヲ↡用ヰヨ↢木槵子ヲ↡。欲ハバ↢多功徳ヲ↡用ヰヨ↢菩提子乃至或イハ水精・蓮子等ヲ↡。見エタリ↢¬念*珠功徳経ニ¼↡
二 Ⅴ ⅱ 修行相貌
【49】^第二に△*修行相貌とは、 ¬*摂論¼ 等によりて四修の相を用ゐよ。
第二ニ修行相貌ト*者、依リテ↢¬摂論¼等ニ↡用ヰヨ↢四修ノ相ヲ↡
^一には長時修。
一ニ者長時修。
^¬要決¼ (*西方要決) にいはく、 「▼初発心よりすなはち菩提に至るまで、 つねに*浄因をなして、 つひに退転なかれ」 と。
¬要决ニ¼云ク、「従リ↢初発心↡乃チ至↢菩提マデニ↡、恒ニ作シテ↢浄因ヲ↡、終ニ無レト↢退転↡。」
^善導禅師のいはく (*礼讃)、 「▲命を畢ふるを期となして、 誓ひて中止せざれ」 と。
善*導禅師ノ云ク、「畢フルヲ↠命ヲ為シテ↠期ト誓ヒテ不レト↢中止セ↡。」
^二には慇重修。
二ニ者慇重修。
^いはく、 極楽の*仏法僧宝において、 心につねに憶念して、 もつぱら尊重をなせ。
謂ク於テ↢極楽ノ仏法僧宝ニ↡心常ニ憶念シテ、専ラ生セ↢尊重ヲ↡。
^¬要決¼ (西方要決) にいはく、 「▼行住坐臥に、 西方を背かざれ。 *啼・唾・便痢は、 西方に向かはざれ」 と。
¬要决ニ¼云ク、「行住坐臥ニ不レ↠背カ↢西方ヲ↡。*啼唾便*痢ハ不レト↠向ハ↢西方ニ↡。」
^導師 (善導) のいはく (礼讃)、 「▲面を西方に向かふるものは最勝なり。 樹の先より傾けるは倒るるに、 かならず曲れるに随ふがごとし。 かならず事の礙ありて西に向かふこと及ばずは、 ただ西に向かふ想をなすにまた得たり」 と。
*導師ノ云ク、「面ヲ向フル↢西方ニ↡者ハ最勝ナリ。如シ↢樹ノ先ヅ傾キ倒ルルニ必ズ随フガ↟曲レルニ。必ズ有リテ↢事ノ礙↡不レバ↠及バ↠向フコト↠*西ニ者、但作スニ↢向フ↠西ニ想ヲ↡亦得タリト。」
^三には無間修。
三ニ者无間修。
^¬要決¼ (西方要決) にいはく、 「▼いはく、 つねに仏を念じて往生の心をなせ。 一切の時において、 心につねに想ひ巧め。
¬要決ニ¼云ク、「謂ク常ニ念ジテ↠仏ヲ作セ↢往生ノ心ヲ↡。於テ↢一切ノ時ニ↡心ニ恒ニ想ヒ巧メ。
^◆たとへば、 人ありて0968、 *他に抄掠せられ、 身、 下賎となりてつぶさに*艱辛を受けん。 たちまちに父母を思ひ、 走りて国に帰らんと欲するに、 *行装いまだ弁ぜずして、 なほ他の郷にありて日夜に思惟し、 苦堪忍せず。 時としてしばらくも捨てて*耶嬢を念はざることなし。 計をなすことすでに成じて、 すなはち帰りて達することを得て、 父母に親近し、 ほしいままに歓娯せんがごとし。
譬ヘバ若ク↧有リテ↠人被レテ↢他ニ抄掠セ↡、身為リテ↢下賎ト↡備ニ受ケム↢艱辛ヲ↡、*忽ニ思1115ヒテ↢父母ヲ↡欲スルニ↢走リテ*帰ラムト↟国ニ↡、行装未ダル↠*辨ゼ、由在リテ↢他ノ郷ニ↡日夜ニ思惟シテ、苦不↢堪忍セ↡、無シ↢時トシテモ暫モ捨テテ不ルコト↟念ハ↢*耶嬢ヲ↡、為スコト↠計ヲ既ニ成ジテ、便チ帰リテ得テ↠達スルコトヲ、親↢近シ父母ニ↡、縦任ニ歓娯セムガ↥、
^◆行者もまたしかなり。 往、 煩悩によりて善心を壊乱し、 福智の珍財、 ならびにみな散失せり。 久しく生死に沈みて制すること自由ならず。 つねに魔王のためにしかも*僕使となりて、 六道に*駆馳せられ、 身心を苦切す。
行者モ亦爾ナリ。往因リテ↢煩悩ニ↡壊↢乱シ善心ヲ↡、福智ノ珍財并ニ皆散失シテ、久シク沈ミテ↢生死ニ↡制シテ不↢自由ナラ↡。恒ニ与ニ↢魔王ノ↡而モ作リテ↢僕使ト↡駆↢馳シテ六道ニ↡、苦↢切ス身心ヲ↡。
^◆いま善縁に遇ひて、 たちまちに弥陀の慈父の、 弘願に違はずして群生を*済抜したまふことを聞き、 日夜に*驚忙し、 心を発して往くことを願ふ。 ゆゑに*精勤すること倦まずして、 まさに仏恩を念じて、 *報の尽くるを期となして、 心につねに計念すべし」 と。 云々
今遇ヒテ↢善縁ニ↡、*忽ニ聞キテ↧弥陀ノ慈父ノ不シテ↠違ハ↢弘願ニ↡済↦抜シタマフコトヲ群生ヲ↥、日夜ニ驚忙シテ、発シテ↠心ヲ願フ↠往カムコトヲ。所以ニ精勤スルコト不シテ↠倦マ、当ニシト↧念ジテ↢仏恩ヲ↡報ジ尽クルヲ為シテ↠期ト、心ニ恒ニ計念ス↥。」*云々
^導師 (善導) のいはく (礼讃)、 「▲心々相続して余業をもつて間へざれ。 また貪瞋等をもつて間へざれ。 随ひて犯せば、 随ひて懴せよ。 念を隔て時を隔て日を隔てしめずして、 つねに清浄ならしめよ」 と。 云々
導師ノ云ク、「心々相続シテ不レ↧以テ↢余業ヲ↡間ヘ↥。又不レ↧以テ↢貪瞋等ヲ↡間ヘ↥。随ヒテ犯セバ随ヒテ懴セヨ。不シテ↠令メ↢隔テ↠念ヲ隔テ↠時ヲ隔テ↟日ヲ、常ニ令メヨト↢清浄ナラ↡。」*云々
^わたくしにいはく、 日夜六時、 あるいは三時・二時に、 かならず方法を具して、 精勤修習せよ。 その余の時処には*威儀を求め0969ず、 方法を論ぜず、 心口に廃することなくして、 つねに仏を念ずべし。
私ニ云ク、*日夜六時或イハ三時・二時ニ、要ズ具シテ↢方法ヲ↡精勤修習セヨ。其ノ余ノ時処ニハ不↠求メ↢威儀ヲ↡、不↠論ゼ↢方法ヲ↡。心口ニ*無クシテ↠癈スルコト、常ニ応シ↠念ズ↠仏ヲ。
^四には無余修。
四ニ者無余修。
^¬要決¼ (西方要決) にいはく、 「▼もつぱら極楽を求めて弥陀を礼念せよ。 ただし諸余の業行は雑起せしめざれ。 所作の業は、 *日別に、 すべからく念仏・読経を修して、 *余課を留めざるべし」 と。
¬要決ニ¼云ク、「専ラ求メテ↢極楽ヲ↡礼↢念セヨ弥陀ヲ↡。但シ諸余ノ業行ハ不レ↠令メ↢雑起セ↡。所作*之業ハ、*日別ニ須クシ↠修ス↢念仏・読経ヲ↡。不ラム↠留メ↢余ノ課ヲ↡耳。」
^導師 (善導) のいはく (礼讃)、 「▲かの仏の名をもつぱら称し、 かの仏および一切の聖衆等をもつぱら念じ、 もつぱら想ひ、 もつぱら礼し、 もつぱら讃じて、 余業を雑へざれ」 と。 以上
導師ノ云ク、「専ラ↢称シ彼ノ仏ノ名ヲ↡、専ラ↢念ジ専ラ↣想ヒ専ラ↤礼シ専ラ↯讃ゼヨ彼ノ仏及ビ一切ノ聖衆等ヲ↡。不レト↠雑セ↢余業ヲ↡。」 已上
^問ふ。 その余の事業は、 なんの過失かある。
問フ。其ノ余ノ事業ハ有ル↢何ノ過失カ↡。
^答ふ。 ¬宝積経¼ の九十二にのたまはく、 「もし菩薩ありて、 楽ひて*世業をなし、 *衆務を営まんを、 応ぜざるところなりとなす。 われ説かく、 ªこの人は生死に住すº」 と。
答フ。¬宝積経ノ¼九十二ニ云ク、「若シ有リテ↢菩薩↡楽ヒテ作シ↢世業ヲ↡営マムヲ↢於衆務ヲ↡、為ス↠所ナリト↠不ル↠応ゼ。我説カク、是ノ人ハ住スト↢於生死ニ↡。」
^また同偈にのたまはく、
又同ジキ偈ニ云ク、
^「▼戯論・諍論の処は、 多くもろもろの煩悩を起す。
智者は遠離すべきこと、 まさに百由旬を去るべし」 と。 云々
「戯論諍論ノ処ハ | 多ク起ス↢諸ノ煩悩ヲ↡ |
智1116者ハ応キコト↢遠離ス↡ | 当ニシト
↠去ル↢百由旬ヲ↡」 *云々 |
^自余の方法は、 つぶさに ¬止観¼ のごとし。
自余ノ方法ハ、具ニ如シ↢¬止観ノ¼↡。
^問ふ。 もししからば、 在家の人は念仏の行に堪へがたし。
問フ。若シ爾ラバ在家ノ人ハ難ケム↠堪ヘ↢念仏ノ行ニ↡。
^答ふ。 もし世俗の人は、 *縁務を棄てがたくは、 ただつねに念を西方に繋けて、 誠心にしてかの仏を0970念ずべし。 ▲¬*木槵経¼ の*瑠璃王の行のごとくせよ。
答フ。*若シ世俗ノ人ハ難クハ↠棄テ↢縁務ヲ↡、但常ニ繋ケテ↢念ヲ西方ニ↡、誠心ニシテ応シ↠念ズ↢彼ノ仏ヲ↡。如クセヨ↢¬木槵経ノ¼瑠璃王ノ行ノ↡。
^また*迦才の ¬*浄土論¼ にいはく、 「たとへば、 竜の行くに、 雲すなはちこれに随ふがごとく、 心もし西に逝けば、 業またこれに随ふ」 と。
*又迦*才ノ¬*浄土論ニ¼云ク、「譬ヘバ如ク↢竜ノ行クニ雲即チ随フガ↟之ニ、心若シ西ニ*逝ケバ、業亦随フト↠*之ニ。」
^問ふ。 すでに知りぬ、 修行に総じて*四の相ありと。 その修行の時の用心いかんぞ。
問フ。既ニ知リヌ修行ニ総ジテ有リト↢四ノ相↡。其ノ修行ノ時ノ用心云何ゾ。
^答ふ。 ¬観経¼ にのたまはく、 「▲もし衆生ありて、 かの国に生れんと願ずるものは、 三種の心を発して即便往生す。 ▲一には至誠心、 二には深心、 三には回向発願心なり」 と。
答フ。¬観経ニ¼云ク、「若シ有リテ↢衆生↡願ゼム↠生レムト↢彼ノ国ニ↡者ハ、発シテ↢三種ノ心ヲ↡即便チ往生ス。一ニハ至誠心、二ニハ深心、三ニハ廻向発願心ナリト。」
^善導禅師のいはく (礼讃)、 「▲一に至誠心といふは、 いはく、 礼拝・讃嘆・*念観の三業はかならず真実を須ゐるがゆゑなり。
善導禅師ノ云ク、「一ニ至誠心トイフハ、謂ク礼拝・讃歎・念観ノ三業ハ必ズ須ヰルガ↢真実ヲ↡故ナリ。
^◆二に深心といふは、 いはく、 自身はこれ煩悩を具足せる凡夫なり。 善根薄少にして三界に流転して、 いまだ火宅を出でずと信知し、 いま弥陀の本弘誓願は、 名号を称すること下十声・一声等に至るに及ぶまで、 さだめて往生を得と信知して、 乃至一念も疑心あることなきなり。
二ニ深心トイフハ、謂ク信↧知シ自身ハ是具↢足セル煩悩ヲ↡凡夫ナリ、善根薄少ニシテ流↢転シテ三界ニ↡、未ダト↞出デ↢火宅ヲ↡、今信↧知シテ弥陀ノ本*弘誓願ハ及ビ称スルコト↢名号ヲ↡下至ルマデニ↢十声・一声等ニ↡、定メテ得ト↦往生スルコトヲ↥、乃至一念モ无キナリ↠有ルコト↢疑心↡。
^◆三に回向発願心といふは、 いはく、 所作の一切の善根をことごとくみな回向して、 往生せんと願ずるがゆゑなり。 ◆この三心を具すれば、 かならず往生することを得。 もし一心も少けぬれば、 すなはち生ずることを得ず」 と。 略してこれを抄す。 経文は上品上生にありといへども、 ▼禅師 (善0971導) の釈のごとくは、 理九品に通ず。 余師の釈つぶさにすることあたはず。
三ニ廻向発願心トイフハ、謂ク所作ノ一切ノ善根ヲ悉ク皆廻向シテ、願ズルガ↢往生セムト↡故ニ。具シテ↢此ノ三心ヲ↡必ズ得↢往生スルコトヲ↡。若シ少ケヌレバ↢一心モ↡、即チ不トイヘリ↠得↠生ズルコトヲ。」略シテ↢抄ス之ヲ↡。経文ハ雖モ↠在リト↢上品上生ニ↡、如ク↢禅師ノ釈ノ↡者、理通ズ↢九品ニ↡。余師ノ釈不↠能ハ↠具スルコト
^¬*鼓音声王経¼ にのたまはく、 「もしよく深く信じて狐疑なきものは、 かならず阿弥陀の国に往生することを得」 と。
¬鼓音声*王経ニ¼云ク、「若シ能ク深ク信ジテ無キ↢*狐疑↡者ハ、必ズ得ト↣往↢生スルコトヲ阿弥*陀ノ国ニ↡。」
^¬涅槃経¼ にのたまはく、 「阿耨菩提は信心を因となす。 この菩提の因また無量なりといへども、 もし信心を説きつればすなはちすでに摂尽しつ」 と。 以上
¬涅槃経ニ¼云ク、「阿耨菩提ニハ信心ヲ為ス↠因ト。是ノ菩提ノ因雖モ↢復無量ナリト↡、若シ説キツレバ↢信心ヲ↡則チ已ニ摂尽シツト。」 已上
^あきらかに知りぬ、 道を修するには信をもつて首めとなす。
明カニ知リヌ修スルニハ↠道ヲ以テ↠信ヲ為ス↠首ト。
^また善導和尚のいはく (礼讃・意)、 「▲もしは入観および睡りの時には、 この願を発すべし。 もしは坐し、 もしは立ちて、 一心に合掌して、 まさしく面を西に向かへて、 十声、 ª阿弥陀仏・観音・勢至・もろもろの菩薩・清浄大海衆º と称しをはりて、 ◆仏・菩薩および極楽界の相を見たてまつらんといふ願を発せ。 ◆すなはち意に随ひて入観し、 および睡りても見ることを得。 心をば至さざるを除く」 と。
又善導和尚ノ云ク、「若シハ入観及ビ睡リノ時ニハ応シ↠発ス↢此ノ願ヲ↡。若1117シハ坐シ若シハ立ツルニ、一心ニ合掌シテ、正シク↠面ヲ向ヘテ↠西ニ、十声称シ↢阿弥陀仏、観音・勢至、諸ノ菩薩、清浄大海衆ヲ↡竟リテ而発セ↧見タテマツラムトイフ↢仏・菩薩及ビ極楽界ノ相ヲ↡之願ヲ↥。即チ随ヒテ↠意ニ入観シ及ビ睡リテモ得↠見ルコトヲ。除クト↠不ルヲ↠至サ↠*心ヲバ。」
^問ふ。 行者、 *常途に往生を計念すること、 その相、 なににか似たる。
問フ。行者常途ニ計↢念セムコト往生ヲ↡、其ノ相似タル↠何ニカ。
^答ふ。 △前に引くところの ¬要決¼ (西方要決) に、 本国に帰らんと欲ふ譬へ、 これその相なり。
答フ。前ニ所ノ↠引ク¬要決ニ¼、欲フ↠帰ラムト↢本国ニ↡之譬、是其ノ相也。
^また綽和尚 (道綽) の ¬*安楽集¼ (上) にいはく、 「▲たとへば、 人ありて空曠のはるかなる処にして、 怨賊の、 剣を抜き勇を奮ひて、 ただちに来りて殺0972さんと欲せんに値遇ひなん。 この人ただちに走るに、 一の河を渡らんと観る。 いまだ河に到るに及ばざるに、 すなはちこの念をなす。 ªわれ河の岸に至りては、 衣を脱ぎてや渡るとやせん、 衣を着てや浮ぐとやせん。 もし衣を脱ぎて渡らば、 ただおそらくは暇なきことを。 もし衣を着て浮がば、 またおそらくは首領を全くすること難しº と。 その時に、 ただ一心に河を渡る方便をなすことのみありて、 余の心想間雑することなからんがごとし。
又*綽和尚ノ¬安楽集ニ¼云ク、「譬ヘバ如ク↧有リテ↠人於テ↢空*曠ノ迥カナル処ニ↡、値↢遇ヒナム怨賊ノ抜キ↠剣ヲ*奮ヒテ↠勇ヲ、直ニ来リテ欲セムニ↟殺サムト、此ノ人径ニ走シテ、観ル↠渡ラムト↢一ノ河ヲ↡、未ダルニ↠及バ↠到ルニ↠河ニ、即チ作ス↢此ノ念ヲ↡、我至リテハ↢河ノ岸ニ↡、為マシ↢脱ギテヤ↠衣ヲ渡ルコトヲ↡、為マシ↢著テヤ↠衣ヲ浮グコトヲ↡、若シ脱ギテ↠衣ヲ渡ラバ、唯恐クハ無カラムコトヲ↠暇、若シ著テ↠衣ヲ浮ガバ、復畏クハ首領ヲ難シト↠全クセムコト、爾ノ時ニ但有リテ↣一心ニ作スコトノミ↢渡ラム↠河ヲ方便ヲ↡、无カラムガ↦余ノ心想間雑スルコト↥、
^◆行者またしかり。 阿弥陀仏を念ずる時には、 またかの人の渡ることを念ふがごとくして、 念々にあひ次いで、 余の心想間雑することなし。 あるいは仏の法身を念ひ、 あるいは仏の神力を念ひ、 あるいは仏の智慧を念ひ、 あるいは仏の毫相を念ひ、 あるいは仏の相好を念ひ、 あるいは仏の本願を念へ。 名を称することもまたしかなり。 ただよくもつぱら至して、 相続して断ぜざるは、 さだめて仏前に生る」 と。 以上
行者亦爾リ。念ゼム↢阿弥陀仏ヲ↡時ニハ、亦如クシテ↢彼ノ人ノ念フガ↟渡ラムコトヲ、念々ニ相次ギテ*無シ↢余ノ心想*間雑スルコト↡。或イハ念ヒ↢仏ノ法身ヲ↡、或イハ念ヒ↢仏ノ神力ヲ↡、或イハ念ヒ↢仏ノ智*慧ヲ↡、或イハ念ヒ↢仏ノ毫相ヲ↡、或イハ念ヒ↢仏ノ相好ヲ↡、或イハ念ヘ↢仏ノ本願ヲ↡。称スルコトモ↠名ヲ亦爾ナリ。但能ク専ラ*至シテ、相続シテ不ルハ↠断ゼ、定メテ生ルト↢仏前ニ↡。」 *已上
^*元暁師これに同じ。
元暁師同ジ↠之ニ。
^問ふ。 念仏三昧は、 ただ心に念ずとやせん、 また口に唱ふとやせん。
問フ。念仏三昧ハ為ム↢唯心ニ念ズトヤ↡、為ム↢亦口ニ唱フトヤ↡。
^答ふ。 ¬止観¼ の第二 (意) にいふがごとし。 「あるいは ˆ唱・念ˇ ともに運び、 あるいは先づ念じ後に唱へ、 あるいは先づ唱へ後に念じて、 唱・念あひ継ぎて休息す0973る時なし。 声々・念々ただ阿弥陀にあり」 と。
答フ。如シ↢¬止観ノ¼第二ニ云フガ↡。「*或イハ倶ニ運ジ、或イハ先ヅ念ジ後ニ唱ヘ、或イハ先ヅ唱ヘ後ニ念ジテ、唱念相継ギテ無シ↢休息スル時↡。声々念々唯シ在リト↢阿弥陀ニ↡。」
^また感禅師 (懐感) のいはく (*群疑論)、 「¬観経¼ にのたまはく、 ª▲この人、 苦に逼められて念仏に遑あらず。 善友、 教令すらく、 «阿弥陀仏を称すべし» と。 ◆かくのごとく心を至して、 声をして絶えざらしむº と。
又感禅師ノ云ク、「¬観経ニ¼言ク、是ノ人苦ニ逼メサレテ不↠遑アラ↢念仏ニ↡。善友教令スラク、可シト↠称ス↢阿弥陀仏ヲ↡。如クシテ↠是クノ至シテ↠心1118ヲ、令メヨト↢声ヲシテ不ラ↟絶エ。
^あに苦悩に逼められて念想成じがたきには、 声をして絶えざらしむるに、 至心にすなはち得るにあらずや。 いまこの声を出して、 念仏定を学することもまたかくのごとし。 声をして絶えざらしむれば、 つひに三昧を得て、 仏・聖衆の*皎然として目の前にましますを見る。
豈ニ非ズヤ↧苦悩ニ所テハ↠逼メサ念想難キニハ↠成リ、令ムルニ↢声ヲシテ不ラ↟絶エ、至心ニ便チ得スルニ↥。今此ノ出シテ↠声ヲ学スルコトモ↢念仏定ヲ↡亦復如シ↠是クノ。令ムレバ↢声ヲシテ不ラ↟絶エ、遂ニ得テ↢三昧ヲ↡、見ル↢仏・聖衆ノ皎然トシテ目ノ前ニマシマスヲ↡。
^ゆゑに *¬大集¼ の ª日蔵分º にのたまはく、 ª▼大念は大仏を見る、 小念は小仏を見るº と。 ▼ª大念º とは大声に仏を称するなり。 ª小念º とは小声に仏を称するなり。 これすなはち聖教なり。 なんの惑ひかあらん。
故ニ¬大集ノ¼「日蔵分ニ」言ク、大念ハ見ル↢大仏ヲ↡、小念ハ見ルト↢小仏ヲ↡。大念ト者大声ニ称スル↠仏ヲ也。小念ト*者小声ニ称スル↠仏ヲ也。斯即チ聖教ナリ。有ラム↢何ノ*或カ↡哉。
^現に見るにすなはちいまのもろもろの修学者、 ただすべからく声を励まして仏を念ずべし。 三昧成じやすし。 小声に仏を称するに、 つひに*馳散多し。 これすなはち学者の知るところにして、 *外人の暁るにあらず」 と。
現ニ見ルニ*即チ今ノ諸ノ修学者、唯須クシ↢励シテ↠声ヲ念ズ↟仏ヲ。三昧易ケム↠成ジ。小声ニ称スルニ↠仏ヲ、遂ニ多シ↢馳散↡。此乃チ学者ノ所↠知ナリ。非ズト↢外人之暁ルニ↡矣。」
^以上、 かの ¬経¼ (大集経) にのたまはく、 「ただ多を欲するは多を見、 小を欲するは小を見る」 等と。 しかるに感師 (懐感)、 すでに三昧を得たり。 かの釈するところ、 仰ぎて信ずべし。 さらに諸本を勘へよ。 「小念は小を見、 大念は大0974を見る」 の文、 ¬*日蔵経¼ の第九に出でたり。
已上*彼ノ¬経ニ¼*云ク、「但欲スルハ↠多ヲ見↠多ヲ、欲スルハ↠小ヲ見ル↠小ヲ」*等ト。然ルニ感師既ニ得タリ↢三昧ヲ↡。*彼ノ所↠釈スル応シ↢仰ギテ*信ズ↡。更ニ勘ヘヨ↢諸本ヲ↡。「*小念ハ見↠小ヲ、大念ハ見ルノ↠大ヲ」文、出デタリ↢¬日蔵経ノ¼第九ニ↡
二 Ⅴ ⅲ 対治懈怠
【50】^第三に△*対治懈怠とは、 *行人、 恒時に勇進することあたはず。 あるいは心蒙昧となり、 あるいは心*退屈す。 その時に種々の勝れたる事に寄せて自心を勧励すべし。
第三ニ対治懈怠ト者、行人不↠能ハ↢恒時ニ勇進スルコト↡。或イハ心蒙昧トナリ、或イハ心退屈ス。爾ノ時ニ応シ↧寄セテ↢種々ノ勝レタル事ニ↡勧↦*励ス自心ヲ↥。
^あるいは三途の苦果をもつて浄土の功徳に比べて、 この念をなすべし。 「われすでに悪道にして多劫を経き。 *無利の勤苦すら、 なほよく超えたり。 小行を修行して菩提を得んは大利なり。 退屈をなすべからず」 と。 △悪趣の苦、 △浄土の相、 一々に前のごとし。
或イハ以テ↢三途ノ苦果ヲ↡比ベテ↢浄土ノ功徳ニ↡、応シ↠作ス↢是ノ念ヲ↡。我已ニ悪道ニシテ経キ↢多劫ヲ↡、无利ノ勤苦スラ尚能ク超エタリ。修↢行シテ小行ヲ↡得ムハ↢菩提ヲ↡大利ナリ。不↠応カラ↠生ス↢退屈ヲ↡。悪趣ノ苦、浄土ノ相、一々ニ如シ↠前ノ
^あるいは往生浄土の衆生を縁じて、 この念をなすべし。 「十方世界のもろもろの有情、 念々に安楽国に往生す。 かれすでに*丈夫なり。 われもまたしかなり。 みづから軽みて退屈をなすべからず」 と。 往生の人は下の▽利益門・▽料簡門のごとし。
或イハ縁ジテ↢往生浄土ノ衆生ヲ↡、応シ↠作ス↢是ノ念ヲ↡。十方世界ノ諸ノ有情、念々ニ往↢生ス安楽国ニ↡。彼既ニ丈夫ナリ。我モ亦爾ナリ。不↠応カラ↣自ラ軽ミテ生ス↢退屈ヲ↡。往生ノ人ハ如シ↢下ノ利益門・*料簡門ノ↡
^あるいは仏の奇妙の功徳を縁ずべし。
或イハ応シ↠縁ズ↢仏ノ奇妙ノ功徳ヲ↡。
^問ふ。 なんらの功徳ぞ。
*問フ。何等ノ功徳ゾ。
^答ふ。 その事、 無量なり。 略してその要を挙げん。
答フ。其ノ事无*量ナリ。略シテ挙ゲム↢其ノ要ヲ↡。
・四十八願
^一には四十八の本願を思念すべし。
一ニハ応シ↣思↢念ス四十八ノ*大願ヲ↡。
^また *¬無量清浄覚経¼ にのたまはく、 「▼阿弥陀仏、 観世音・大勢至と、 大願の船に乗りて生死の海に汎びて、 この娑婆世界につきて、 衆生を呼喚して大願の船に上せて、 西方に送り着けしめたまふ。 もし衆生の、 あへて大願の船に上らば、 ならびにみな去ることを得。 これは0975これ往きやすきなり」 と。
又¬無量清浄覚経ニ¼云ク、「阿弥陀仏与↢観世音・大勢至↡乗ジテ↢大願ノ船ニ↡汎ビテ↢生死ノ海ニ↡、就キテ↢此ノ娑婆世界ニ↡、呼↢喚シテ衆生ヲ↡令メタマフ↧上セテ↢大願ノ*船1119ニ↡送リ↦著ケ西方ニ↥。*若シ衆生ノ肯テ上ル↢大願ノ船ニ↡者ハ、並ニ皆得ト↠去ルコトヲ。」此ハ是易キ↠往キ也。
^¬心地観経¼ の偈にのたまはく、
¬*心地観経ノ¼偈ニ云ク、
^「衆生は生死海に没在して、 五趣に輪廻して出づる期なし。
善逝つねに妙法の船となり、 よく*愛流を截りて彼岸に超えしめたまふ」 と。
「衆生ハ没↢在シテ生死海ニ↡ | 輪↢廻シテ五趣ニ↡無シ↢出ヅル期↡ |
善逝恒ニ為リ↢妙法ノ船ト↡ | 能ク截リテ↢愛流ヲ↡超エシメタマフト↢彼*岸ニ↡」 |
^念ふべし、 「われ、 いづれの時にか悲願の船に乗りて去らん」 と。
応シ↠念フ、我何レノ時ニカ乗ジテ↢悲願ノ船ニ↡去ラムト。
・名号
^二には名号の功徳なり。
二ニハ名号ノ功徳ナリ。
^¬*維摩経¼ にのたまふがごとし。 「▼諸仏の色身の威相・種性、 *戒・定・智慧・解脱・知見、 *力・無所畏・不共の法、 大慈大悲、 威儀所行、 およびその寿命、 説法教化し、 衆生を成就し、 仏の国土を浄め、 もろもろの仏法を具したまへること、 ことごとくみな同等なり。 このゆゑに名づけて*三藐三仏陀となし、 名づけて*多陀阿伽度となし、 名づけて仏陀となす。
如シ↢¬維摩経ニ¼言フガ↡。「諸仏ハ色身ノ威相、種性、戒・定・智*慧・解脱・知見・力・無所畏・不共之法、大慈大悲、威儀所行、及ビ其ノ寿命、説法教化シ、成↢就シ衆生ヲ↡、浄メ↢仏ノ国土ヲ↡、具シタマヘルコト↢諸ノ仏法ヲ↡、悉ク皆同等ナリ。是ノ故ニ名ケテ為シ↢三藐三仏陀ト↡、名ケテ為シ↢多陀阿伽度ト↡、名ケテ為ス↢仏陀ト↡。
^◆阿難、 もしわれ広くこの三句の義を説かば、 なんぢ*劫寿をもつてすとも、 尽して受くることあたはじ。 たとひ三千大千世界のなかに満てらん衆生をして、 みな阿難のごとく多聞第一にして*念総持を得しむとも、 このもろもろの人等も、 劫の寿をもつてすともまた受くることあたはじ」 と。 以上
阿難、若シ我広ク説カバ↢此ノ三句ノ義ヲ↡、汝以テストモ↢劫寿ヲ↡不↠能ハ↢尽シテ受クルコト↡。正使三千大千世界ニ満テル↠中ニ衆生ヲシテ、皆如ク↢阿難ガ↡多聞第一ニシテ得タラム↢念総持ヲ↡。此ノ諸ノ人等モ以テストモ↢劫之寿ヲ↡亦不ト↠能ハ↠受クルコト。」 *已上
^▽¬要決¼ (西方要決) にいはく、 「¬維摩¼ にのたまはく、 ª仏の初めの三号をば、 仏もし広く説きたまはば、 阿難、 劫を経とも領受することあたはじº と。
¬要決ニ¼云ク、「¬維*摩ニ¼云ク、仏ノ初ノ三号ヲバ、仏若シ広ク説キタマハバ、阿難経テモ↠劫ヲ不ト↠能ハ↢領受スルコト↡。
^¬*成実論¼ に、 仏の号を釈するに0976、 *前の九号はみな別義に従ひ、 前の九号の*名義の功徳を総じて、 仏世尊となす。 初めの三号を説かんに、 劫を歴とも周めがたし。 阿難領悟するに、 よく*つぶさに悉することなし。 さらに六号を加へて、 もつて仏号を製せりといふ。 *勝徳すでに円かなれば、 それを念ずるは大善なり」 と。 以上 ¬要決¼ (西方要決)。
¬成実論ニ¼釈スルニ↢仏之号ヲ↡、前之九号ハ皆従フ↢別義ニ↡。総ジテ↢前ノ九号ノ名義ノ功徳ヲ↡為ス↢仏世尊ト↡。説カムニ↢初ノ三号ヲ↡、歴トモ↠劫ヲ難シ↠周ヘ。阿難領悟スルニ莫シ↢能ク具ニ悉スルコト↡。更ニ加ヘテ↢六号ヲ↡、以テ*製セリトイフ↢仏*号ヲ↡。勝徳既ニ円カナレバ、念ズルハ↠其ヲ大善也ナリトイヘリ。」已上¬要決¼
^¬華厳¼ の偈にのたまはく、
¬花厳ノ¼偈ニ云ク、
^「もしもろもろの衆生ありて、 いまだ菩提心を発さざらんに、
一たびも仏の名を聞くことを得ば、 決定して菩提を*成ぜん」 と。
「若シ有リテ↢諸ノ衆生↡ | 未ダラムニ↠発サ↢菩提心ヲ↡ |
一タビモ得テハ↠聞クコトヲ↢仏ノ名ヲ↡ | 決定シテ成ラムトイヘリ↢菩*提ヲ↡。」 |
^この念をなすべし、 「われ、 いますでに仏の尊号を聞くことを得たり。 願はくは、 われまさに仏に作りて十方の諸仏のごとくあるべし」 と。
応シ↠作ス↢是ノ念ヲ↡、我今既ニ得タリ↠聞クコトヲ↢仏ノ尊号ヲ↡。願クハ我*当ニシト↣作リテ↠仏ニ如クアル↢十方ノ諸1120仏ノ↡。
・相好
^三には相好の功徳なり。
*三ニハ相好ノ功徳ナリ。
^¬六波羅蜜経¼ (意) にのたまはく、 「もろもろの世間において、 あるところの三世の一切の衆生、 *学・無学の人、 および辟支仏、 かくのごとき有情の無量無辺の所有の功徳を、 如来の一毛の功徳に比ぶるに、 百千万分がなかにその一にも及ばず。 かくのごとき一々の毛端は、 みな如来の無量の功徳より出生せるところなり。
¬六波羅蜜経ニ¼云ク、「於テ↢諸ノ世間ニ↡所ノ↠有ル三世ノ一切ノ衆生、学・無学ノ人、及ビ辟支仏、如キ↠是クノ有情ノ無量無辺ノ所有ノ功徳ヲ比ブルニ↢於如来ノ一毛ノ功徳ニ↡、百千万分ガ中ニ不↠及バ↢其ノ一ニモ↡。如キ↠是クノ一々ノ毛端ハ、皆従リ↢如来ノ無量ノ功徳↡之所ナリ↢出生セル↡。
^一切の毛端のあらゆる功徳をもつて、 ともに一の髪の功徳を成ず。 かくのごとくして仏の髪は八万四千なり。 一々の髪0977のなかに、 おのおの上のごとき功徳を具せり。
一切ノ毛端ノ所有ノ功徳ヲモテ、共ニ成ズ↢一ノ髪ノ功徳ヲ↡。如クシテ↠是クノ仏ノ髪ハ八万四千ナリ。一々ノ髪ノ中ニ各ノ具セリ↢如キ↠上ノ功徳ヲ↡。
^かくのごとく合集して、 ともに一の*随好の功徳を成ず。 一切の好の功徳をともにして、 一の*相の功徳を成ず。 一切の相の功徳を合集して百千倍に至りて、 眉間の毫相の功徳を成ず。
如ク↠是クノ合集シテ共ニ成ル↢一ノ随好ノ功徳ト↡。一*切ノ好ノ功徳ヲ共ニシテ成ス↢一ノ相ノ功徳ト↡。一*切ノ相ノ功徳ヲ合集シテ至リテ↢百千倍ニ↡、成ス↢眉間ノ*毫相ノ功徳ト↡。
^その相円満にして、 宛転して右に旋れること、 *頗胝迦宝のごとし。 明浄鮮白にして、 夜闇のなかに、 なほあきらかなる星のごとくなり。 毫相これを舒ぶれば、 上は色界の*阿迦膩天までに至る。 これを巻けば、 旧のごとくしてまた毫相となりて、 眉間に住す。 毫相の功徳、 百千倍に至りて肉髻の相を成ず。 かくのごとき肉髻の千倍の功徳は、 *梵音声の相の功徳に及ばじ」 と。
其ノ相円満ニシテ宛転シテ右ニ*旋レルコト、如シ↢頗胝迦宝ノ↡。明浄鮮白ニシテ夜闇之中ニ猶如クナリ↢明カナル星ノ↡。*毫相舒ブレバ↠之ヲ上ハ至ル↢色界ノ阿迦膩天マデニ↡。巻ケバ↠之ヲ如クシテ↠旧ノ復為リテ↢*毫相ト↡於テ↢眉間ニ↡住ス。*毫相ノ功徳至リテ↢百千倍ニ↡成ル↢肉*髻ノ相ト↡。如キ↠是クノ肉髻ノ千倍ノ功徳ハ、不トイヘリ↠及バ↢梵音声ノ相ノ功徳ニ↡。」
^また ¬宝積経¼ に無数の*校量あり。 学者、 勘ふべし。
又¬宝積経ニ¼有リ↢無数ノ挍量↡。学者可シ↠勘フ。
^また ¬*大集の念仏三昧経¼ の第五にのたまはく、 「かくのごとき世界、 および十方の無量無辺のもろもろの世界のなかのあらゆる衆生、 たとひことごとくみな一時に仏となりて、 かのもろもろの世尊、 無量劫を経て、 みな還りて仏の一毛の功徳を嘆めたまふとも、 つひにまた尽さじ」 と。 云々
*又¬大集ノ念仏三昧経ノ¼第五ニ云ク、「如キ↠此クノ世界及ビ十方ノ無量無辺ノ諸ノ世界ノ中ノ所有ノ衆生ノ、*仮使尽ク皆一時ニ成リナム↠仏ト。彼ノ諸ノ世尊経テ↢无量劫ヲ↡皆還リテ嘆メタマフトモ↢仏ノ一毛ノ功徳ヲ↡、終ニ亦不ト↠尽サ。」*云々
^¬華厳¼ の偈にのたまはく、
¬花*厳ノ¼偈ニ云ク、
^「清浄の*慈門、 *刹塵数にして、 ともに如来の一の妙相を生ず。
一々の諸相、 しからずといふことなし。 このゆゑに見るもの、 *厭足すること0978なし」 と。
「清浄ノ慈門刹塵数ニシテ | 共ニ生ズ↢如来ノ一ノ妙相ヲ↡ |
一々ノ諸相莫シ↠不トイフコト↠然ラ | 是ノ故ニ見ル者无シト↢厭足スルコト↡」 |
|
^この念をなすべし、 「願はくは、 われまさに仏の無辺功徳の相を見たてまつるべし」 と。
*応シ↠作ス↢是ノ念ヲ↡、願クハ我1121当ニシト↠見タテマツル↢仏ノ无辺功徳ノ相ヲ↡。
・光明威神
^四には光明の威神なり。
四ニハ光明ノ威神ハ、
^いはく、 ¬*平等覚経¼ (一) にのたまはく、 「▲無量清浄仏 無量清浄仏は、 これ阿弥陀仏なり。 の光明は、 最尊第一にして比びなし。 諸仏の光明、 みな及ばざるところなり。
*謂ク▼¬平等覚経ニ¼云ク、「无量清浄*仏ノ 无量清浄仏者、是阿弥陀*仏ナリ 光明ハ最尊ニシテ第一ニシテ無シ↠比ビ。諸仏ノ光明皆所↠不ル↠及バ也。
^◆ある仏の頂の光明は七尺を照らす。 ある仏は一里を照らす。 ある仏は五里、 *ある仏は二十里・四十里・八十里、 ◆乃至百万の仏国、 二百万の仏国なり。 ◆八方上下、 無央数の諸仏の頂の光の照らしたまふところ、 みなかくのごとし。 無量清浄仏の↓頂のなかの光明は、 千万の仏国を炎照す」 と。
有ル仏ノ頂ノ光明ハ照ス↢七尺ヲ↡。有ル仏ハ照ス↢一里ヲ↡。有ル仏ハ五里、*有ル仏ハ廿里、里、八十里、乃至百万ノ仏国、二百万ノ仏国ナリ。八方上下无央数ノ諸仏ノ頂ノ光ノ所↠照シタマフ、皆如シ↠是クノ也。无量清浄仏ノ頂ノ中ノ光明炎ハ、照スト↢千万仏国ヲ↡。」
^以上取意。 わたくしにいはく、 ¬観経¼ にのたまはく、 「▲かの仏の↓円光は百億の大千界のごとし」 と。 この ¬経¼ (平等覚経・一) にはのたまはく、 「頂のなかの光、 千万仏の国を照らす」 と。 二経の意、 同じきのみ。
已上取ル↠意ヲ。私ニ云ク、¬観経ニ¼云ク、「彼ノ仏ノ*円光ハ如シト↢百億ノ大千界ノ↡。」此ノ¬経ニハ¼云ク、「頂ノ中ノ光照スト↢千万仏ノ国ヲ↡。」二経ノ意同ジキ耳
^¬双巻経¼ (大経) の意、 これに同じ。 ¬経¼ (同・上) にのたまはく、 「▲無量寿仏の威神光明は、 最勝第一にして、 諸仏の光明、 及ぶことあたはざるところなり。
¬双巻経ノ¼*意同ジ↠之ニ。¬経ニ¼*云ク、「无量寿仏ノ威神光明ハ、最勝第一ナリ。諸仏ノ光明所ナリ↠不ル↠能ハ↠及ブコト。
^◆あるいは仏の光の、 百仏世界あるいは千仏世界を照らすあり。 要を取りてこれをいはば、 すなは0979ち東方の恒河沙の仏刹を照らす。 南西北方・四維・上下もまたかくのごとし。
或イハ有リ↣仏ノ光ノ照ス↢百仏世界或イハ千仏世界ヲ↡。取リテ↠要ヲ言バ↠之ヲ、乃チ照ス↢東方ノ恒河沙ノ仏刹ヲ↡。南西北方・四維・上下モ亦復如シ↠是クノ。
^▲このゆゑに無量寿仏を、 無量光仏・無辺光仏・無礙光仏・無対光仏 *玄一師のいはく (無量寿経記)、 ªともに等しきものなきがゆゑにº と。
是ノ故ニ無量寿仏ヲ号ス↢无量光仏・无辺光仏・无礙光仏・無*対光仏 玄一師ノ云ク、无キガ↢与ニ等シキモノ↡故ニト
^炎王光仏 玄一師のいはく (無量寿経記)、 ª最勝自在なるがゆゑにº と。
*炎王光仏 *玄一師ノ云ク、最勝自在ナルガ故ニト
^清浄光仏 一 (玄一) のいはく (無量寿経記)、 ª三垢を滅するがゆゑにº と。 *憬興師のいはく (*述文賛)、 ª無貪の善根の所生なるがゆゑにº と。
清浄光仏 一ガ云ク、滅スルガ↢三垢ヲ↡故ニト。憬興師ノ云ク、无貪ノ善根ノ所生ナルガ故ニト
^歓喜光仏 一のいはく (無量寿経記)、 ª遇ふもの悦意するがゆゑにº と。 興 (憬興) のいはく (述文賛)、 ª無瞋所生なるがゆゑにº と。
歓喜光仏 一ガ云ク、遇フ者悦意スルガ故ニト。興ノ云ク、无瞋所生ナルガ故ニト
^智慧光仏 一のいはく (無量寿経記)、 ª智慧の所発なるがゆゑにº と。 興いはく (述文賛)、 ª無痴の所生なるがゆゑにº と。
智*慧光仏 一ガ云ク、智*慧ノ所発ナルガ故ニト。興云ク、无痴ノ所生ナルガ故ニト
^不断光仏 一のいはく (無量寿経記)、 ª恒相続のゆゑにº と。
不断光仏 一ガ云ク、恒相続ノ故ニト
^難思光仏・無称光仏 一のいはく (無量寿経記)、 ª称嘆して、 その所有を尽すべからざるがゆゑにº と。 自余の名義は知りぬべし。 煩はしく記せず。
難思光仏・無称光仏 一ガ云ク、不ルガ↠可カラ↣称嘆シテ尽ス↢其ノ所有ヲ↡故ニト。自余ノ名義ハ可シ↠知リヌ。不↢煩ク記セ↡
^超日月光仏と号す。
超日月光仏ト↡。
^▲もし三途勤苦の処にありて、 この光明を見るに、 また苦悩なく、 寿終りて後にはみな解脱を蒙る。 ◆ただわれのみ、 いまその光明を称するにあらず。 一切の諸仏またかくのごとし。
若シ在ルニハ↢三途勤苦之処ニ↡、見ルニ↢此ノ光明ヲ↡、無ク↢復苦悩↡、寿終ヘテ之後ニハ皆蒙ル↢解脱ヲ↡。非ズ↣但我ノミ今称スルノミニ↢其ノ光明ヲ↡。一切ノ諸仏亦復如シ↠是クノ。
^◆もし衆生ありて、 その光明の威神の功徳を聞きて、 日夜に称説し、 心を至して断えざれば、 意の所願に随ひて、 その国に生ずることを得ん。 ◆われ、 無量寿仏の0980光明の威神、 巍々として殊妙なることを説かんに、 昼夜にして一劫すとも、 なほ尽すことあたはじ」 と。
若シ有リテ↢衆生↡聞キテ↢其ノ光明ノ威神ノ功1122徳ヲ↡、日夜ニ称説シ至シテ↠心ヲ不レバ↠断エ、随ヒテ↢意ノ所願ニ↡得ム↠生ズルコトヲ↢其ノ国ニ↡。*我説カバ↢无量寿仏ノ光明威神巍々トシテ殊妙ナルコトヲ↡、昼夜ニシテ一劫ストモ尚シ不ト↠能ハ↠尽スコト。」
^以上取意。 ¬平等経¼ には、 別して、 「↑頂の光」 とのたまひ、 ¬観経¼ には、 総じて 「↑光明」 とのたまふ。
已上取意。¬平*等経ニハ¼別シテ云ヒ↢「頂ノ光ト」↡、¬観経ニハ¼総ジテ云フ↢「光明ト」↡
^¬*譬喩経¼ の第三に、 *釈迦文仏の光相を明かしてのたまはく、 「仏 (釈尊) 滅したまひて百年に*阿育王あり。 国のうちの民庶、 仏の遺典を歌しき。 王の、 意に信ぜずして念言すらく、 ª仏にいかなる徳の、 人に過ぎ踰えたるものありて、 しかもともに信をもつぱらにしてその文を誦習すらんº と。
¬譬喩経ノ¼第三ニ明シテ↢釈迦文仏ノ*光相ヲ↡云ク、「仏滅シタマヒテ百年ニ有リ↢阿育王↡。国ノ内ノ民庶歌シキ↢仏ノ遺典ヲ↡。王ノ意ニ不シテ↠信ゼ念言スラク、仏ニ有リテ↢何ノ徳ノ↡過ギ↢踰エタレバカ於人ニ↡、而モ共ニ専ニシテ↠信ヲ誦↢習スラムト其ノ文ヲ↡。
^すなはち大臣に問はく、 ª国のうちに、 もし仏を見たるものありやº と。 答へてまうさく、 ª聞くならく、 *波斯匿王の妹、 出家して比丘尼となれり。 年*西垂にありて、 いひて仏を見たりといふº と。
即チ問ハク↢大臣ニ↡、国ノ中ニ頗有リヤト↢見タル↠仏ヲ者↡。答ヘテ曰ク、聞クナラク、波斯匿王ノ妹出家シテ作レリ↢比丘尼ト↡。年在リテ↢西*垂ニ↡、云ヒテ言フト↠見タリト↠仏ヲ。
^王すなはちみづから出でて往詣して、 問ひていはく、 ª*道人、 仏を見たりやいなやº と。 答へてまうさく、 ª実にしかりº と。 問ひていはく、 ªなんの殊異なることかあるº と。
王即チ自ラ出デテ往詣シテ、問ヒテ曰ク、道人見タリヤ↠仏ヲ不耶ト。答ヘテ云ク、実ニ爾リト。問ヒテ曰ク、有ルト↢何ノ殊異ナルコトカ↡。
^道人のいはく、 ª仏の功徳は巍々として量りがたし。 わが愚浅の、 よくこれを陳ぶるところにあらず。 ほぼ一事を説かば、 殊特なることを知りぬべし。
道人ノ曰ク、仏之功徳ハ巍々トシテ難シ↠量リ。非ズ↣我ガ愚*浅ノ所ニ↢能ク陳ブル↟之ヲ。粗説カバ↢一事ヲ↡、可シ↠知リヌ↢殊特ナルコトヲ↡。
^われ時に八歳、 世尊来りて王宮に入りたまひき。 すなはち前みて足を礼せしに、 頭の上の金の釵、 堕落して地にあり。 これを求むるに得ずして、 その所以0981を怪しみき。 如来の過ぎ去りたまひし足の跡に、 千輻輪ありて、 光明を現じて晃き、 七日ありてすなはち滅しにき。 *登時には、 金の釵地と同色なりき。 ここをもつて見えざりき。 光滅して後に、 釵を得き。
我時ニ八歳、世尊来リテ入リタマヒキ↢王宮ニ↡。即チ前ミテ礼セシニ↠足ヲ、頭ノ上ノ金ノ釵堕落シテ在リ↠地ニ。求ムルニ↠之ヲ不シテ↠得怪ビキ↢其ノ所以ヲ↡。如来ノ過ギ去リタマヘドモ足ノ跡ニ有リテ↢千輻輪↡、現ニ↢光明↡晃ケリキ。七日アリテ即チ滅シニキ。登時ニハ金ノ釵与↠地同色ナリキ。是ヲ以テ不リキ↠見エ。光滅シテ後ニ得ト↠釵ヲ。
^すなはち知りき、 殊特なることをº と。 王聞きて歓喜して、 心あきらかに開悟しき」 と。 略抄
乃チ知リテ為↢殊特ナリト↡。王聞キテ歓喜シテ、心煥ニ開悟シキト。」*略抄
^¬華厳¼ の偈にのたまはく、
¬花*厳ノ¼偈ニ*云ク、
^「一々の毛孔に光雲を現じて、 あまねく虚空に遍して、 大音を発す。
もろもろの*幽冥の所、 照らさざるなし。 地獄の衆苦ことごとく減ぜしむ」 と。
「一々ノ毛孔ニ現ジテ↢光*雲ヲ↡ | 普ク遍ス↢虚空ニ↡発ス↢大音ヲ↡ |
|
諸ノ幽冥ノ所靡シ↠不ル↠照サ | 地獄ノ衆苦咸ク令ムト↠滅セ」 |
^この念をなすべし、 「願はくは、 仏の光明、 われを照らして、 生死の*業苦を滅したまへ」 と。
応シ↠作ス↢是ノ念ヲ↡、願クハ仏ノ光*明照シテ↠我ヲ、滅シタマヘト↢生死ノ業苦ヲ↡。
・無能害者
^五には*よく害するものなし。
五ニハ無シ↢能ク害スル者↡。
^¬宝積経¼ の三十七 (意) にのたまはく、 「*風劫起る時には、 世に大風あり。 僧伽多と名づく。 かの風、 この三千世界の須弥・鉄囲、 および*四大洲、 八万の小洲、 大山・大海を挙ぐること、 高さ百*踰繕那、 乃至、 無量百千踰繕那にして、 すでに砕末して塵となす。 また撃ちて、 *閻魔天宮を壊滅す。 乃至、 遍浄天のあらゆる宮殿またみな散滅す。 すなはちこの0982風をもつて如来の衣を吹かんに、 一の毛端の際をも、 なほ動かすことあたはず。 いかにいはんや衣の角および全き衣をや」 と。
¬宝積経ノ¼卅七ニ云ク、「風劫起ル時ニハ世ニ有リ↢大風↡。名ク↢僧伽多ト↡。彼ノ風挙グルコト↢此ノ三千世界ノ須弥1123・鉄囲、及ビ四大洲、八*万ノ小洲、大山・大海ヲ↡、高サ百踰繕那、乃至無量百千踰繕那シ已リテ*砕*末シテ為ス↠塵ト。又撃チテ壊↢滅ス焔摩天宮ヲ↡。乃至遍浄天ノ所有ノ宮殿亦皆散滅ス。即チ以テ↢此ノ風ヲ↡吹カムニ↢如来ノ衣ノ一ノ毛端ノ際ヲ↡、尚不↠能ハ↠動ズルコト。何ニ況ヤ衣ノ角及ビ全キ衣ヲヤトイヘリ*者。」
^¬十住論¼ (十住毘婆沙論) にいはく、 「諸仏の不可思議なることをば、 仮喩をもつて知りぬべし。 たとひ一切十方世界の衆生みな勢力あり、 たとひ一の魔ありてそこばくの勢力あらん。 また十方の一々の衆生の力をして悪魔のごとくあらしめたらんに、 ともに仏を害せんと欲はんに、 なほ仏の一毛をすら動かすことあたはじ。 いはんや害するものあらんや」 と。
¬十住論ニ¼云ク、「諸仏ノ不可思議ナルコトヲバ、仮喩ヲモテ可シ↠知リヌ。仮使一切十方世界ノ衆生皆有リ↢勢力↡、設ヒ有リテ↢一ノ魔↡有ラム↢爾所ノ勢力↡。復令メム↣十方ノ一々ノ衆生ノ力ヲシテ如クアラ↢悪魔ノ↡。欲ハムニ↢共ニ害セムト↟仏ヲ、尚不↠能ハ↠動スコト↢仏ノ一毛ヲスラ↡。況ヤ有ラムヤト↢害スル者↡。」
^偈 (十住毘婆娑論) にいはく、
偈ニ*云ク、
^「もしもろもろの世間のなかに、 仏を害することあらんと欲はば、
この事みな成ぜじ。 不殺の法を成じたまへるをもつてなり」 と。
「若シ諸ノ世間ノ中ニ | 欲ハバ↠有ラムト↠害スルコト↠仏ヲ者 |
是ノ事皆不↠成ラ | 以テナリト↠成ジタマヘルヲ↢不殺ノ法ヲ↡」 |
^この念をなすべし、 「願はくは、 われまさに仏の金剛不壊の身を得べし」 と。
*応シ↠作ス↢是ノ念ヲ↡、願クハ我当ニシト↠得↢仏ノ金剛不壊ノ身ヲ↡。
・飛行自在
^六には▽飛行自在なり。
六ニハ飛行自在ナリ。
^同論にいはく、 「仏は虚空において、 足を挙げ、 足を下ろし、 行住坐臥したまふこと、 みな自在を得たまへり。 大声聞のごときは、 神通自在にして、 一日に五十三億二百九十六万六千の三千大千世界を過ぐ。 かくのごとき声聞の百歳に過ぎたるところをば、 仏は一念に過ぎたまふ。
同ジキ¬論ニ¼云ク、「仏ハ於テ↢虚空ニ↡挙ゲ↠足ヲ下シ↠足ヲ、行住坐臥シタマフコト、皆得タマヘリ↢自在ヲ↡。若シ↣大声聞ノ神通自在ナルハ一日ニ過グルガ↢五十三億二百九十六万六千ノ三千*大千世界ヲ↡。如キ↠是クノ声聞ノ百歳ニ所ヲバ↠過ギタル、仏ハ一念ニ過ギタマフ。
^乃至、 恒河のなかの沙の、 一の沙を一の河となして、 このもろもろの恒河沙の、 大劫に0983過ぎたるところの国土を、 仏は一念のうちに過ぎたまふ。 もし宝の蓮華を蹈みて去らんと欲せば、 すなはちよく成弁す。 かくのごとく飛行すること一切*無礙なり」 と。
乃至恒河ノ中ノ沙ノ一ノ沙ヲ為ラム↢一ノ河ト↡。是ノ諸ノ恒河沙ノ大劫ニ所ノ↠過ギタル国土ヲ、仏ハ一念ノ中ニ過ギタマフ。若シ欲セバ↧蹈ミテ↢宝ノ蓮花ヲ↡而去ラムト↥、即チ能ク成*辨ス。如ク↠是クノ飛行スルコト一切無礙ナリトイヘリ。」
^¬観仏経¼ にのたまはく、 「虚空において、 足を挙げて行く時に、 千輻輪の相よりみな八万四千の蓮華を雨らす。 かくのごときもろもろの華に塵数の仏ましまして、 また虚空を歩む」 と。 以上略抄
¬観仏経ニ¼云ク、「*於テ↢虚空ニ↡挙ゲテ↠足ヲ行ク時ニ、千輻輪ノ相ヨリ皆雨ル↢八万四千ノ蓮花ヲ↡。如キ↠是クノ衆ノ花ニ有シテ↢塵数ノ仏↡、亦歩ムトイヘリ↢虚空ヲ↡。」 已上略抄
^また 「空を蹈みて行きたまへども、 しかも千輻輪は地際に現ず。 悦意の妙香*鉢特摩華、 自然に踊出して如来の足を承く。 もし畜生趣の一切の有情、 如来の足のために触れらるるものは、 七夜を極め満つるまで、 もろもろの快楽を受け、 命終の後には、 *善趣の楽世界のなかに往生す」 と。 ¬宝積経¼。
又「蹈ミテ↠空ヲ行1124キタマヘドモ、而モ千*輻輪ハ現ズ↢於地際ニ↡。悦意ノ妙香鉢特摩花自然ニ踊出シテ承ク↢如来ノ足ヲ↡。若シ畜生趣ノ一切ノ有情、為ニ↢如来ノ足ノ↡之所ルル↠触レ者ハ、極テ満ツルマデニ↢七夜ヲ↡受ク↢諸ノ快楽ヲ↡。命終之後ニハ往↢生スト善趣ノ楽世界ノ中ニ↡。」¬宝積経¼
^もし四十里の盤石をもつて色究竟天より下すに、 一万八千三百八十三年を経て、 この地に到るべし。 ただちに下るすらなほしかり。 これを推して知りぬべし、 声聞の飛行、 如来の飛行は、 展転して不可思議なることを。
若シ以テ↢里ノ*盤石ヲ↡従リ↢色究竟天↡下スニ、経テ↢一万八千三百八十三年ヲ↡、到ルベシ↢此ノ地ニ↡。直ニ下ルスラ尚シ爾アリ。推シテ↠之ヲ応シ↠知リヌ、声聞ノ飛行、如来ノ飛行ハ展転シテ不可思議ナルコトヲ。
^¬華厳経¼ の恵林菩薩の讃仏の偈にのたまはく、
¬花厳経ノ¼*恵林菩薩ノ讃仏ノ偈ニ云ク、
^「自在神通力は、 無量にして難思議なり。
来もなくまた去もなくして、 法を説きて衆生を度したまふ」 と。
「自在神通ノ力ハ | 無量ニシテ難思議ナリ |
無ク↠来モ亦無クシテ↠去モ | 説キテ↠法ヲ度シタマフト↢衆生ヲ↡」 |
^この念をなすべし、 「願はくは、 われ神通を得て、 諸仏の土に遊戯せん」 と。
*応シ↠作ス↢是ノ念ヲ↡、願クハ我得テ↢神通ヲ↡、遊↢戯セムト諸仏ノ土ニ↡。
・神通無礙
^0984七には神力無礙なり。
七ニハ神*力無礙ナリ。
^¬十住論¼ (十住毘婆沙論・意) にいはく、 「仏はよく恒河沙等の世界を末して、 微塵のごとくならしめて、 またよく還りて合したまふ。 あるいはまたよく無量無辺阿僧祇の世界を変じて、 みな金銀等となさしめたまふ。 またよく恒河沙等の世界の大海水を変じて、 みな*乳蘇等とならしめたまふ」 と。 以上
¬十住論ニ¼云ク、「仏ハ能ク*末シテ↢恒河沙等ノ世*界ヲ↡、令メテ↠如クナラ↢微塵ノ↡、又能ク還リテ*合シタマフ。或イハ又能ク変ジテ↢無量無辺阿僧祇ノ世界ヲ↡、皆令メタマフ↠作サ↢金・銀等ト↡。又能ク変ジテ↢恒河沙等ノ世界ノ大海水ヲ↡、皆使メタマフト↠為ラ↢乳・蘇等ト↡。 已上
^¬浄名経¼ (維摩経・意) に、 菩薩の*不思議解脱を説きてのたまはく、 「三千大千世界を断ち取りて、 *陶家の輪のごとくして、 右の掌のなかに着けて、 擲ぐるに恒河沙の世界のほかに過ぐしたまはん。 そのなかの衆生は、 おのが所住を覚せず、 知せじ。 また還りて本処に置くに、 すべて人をして往来の想あらしめじ。 しかもこの世界の本の相は、 故のごとし。
¬浄名経ニ¼*説キテ↢菩薩ノ不思議解脱ヲ↡云ク、「断チ↢取リテ三千大千世界ヲ↡、如クシテ↢陶家ノ輪ノ↡、著ケテ↢右ノ掌ノ中ニ↡、擲グルニ過グイタマハム↢恒*河沙ノ世界之外ニ↡。其ノ中ノ衆生ハ不↠覚セ↢不↠知セ↣己ガ之所住ヲ↡。又復還リテ置クニ↢本処ニ↡、都テ不↠使メ↣人ヲシテ有ラ↢往来ノ想↡。而シテ此ノ世界ノ本ノ相ハ如シ↠故ノ。
^また下方過恒河沙等の諸仏世界において一仏土を取りて、 上方過恒河沙無数の世界に挙げ着くること、 *針鋒を持ちて一*棗葉を挙ぐるがごとくするも、 嬈はすことなし。 ▲須弥山をもつて芥子のなかに納め、 四大海をもつて一毛孔に入るることまたかくのごとし。 そのなかの衆生は、 覚せず、 知せじ。 ただ度すべきものすなはちこれを知見す」 と。 以上
*又於テ↢下方過恒河沙等ノ諸仏世界ニ↡取リテ↢一仏土ヲ↡、挙ゲ↢著クルコト上方過恒河沙无数ノ世界ニ↡、如クスルモ↧持チテ↢針*鋒ヲ↡挙グルガ↦一*棗葉ヲ↥而*無シ↠嬈スコト。以テ↢須弥1125山ヲ↡納メ↢芥子ノ中ニ↡、以テ↢四大海ヲ↡入ルルコト↢一毛孔ニ↡亦復如シ↠是クノ。其ノ中ノ衆生ハ不↠覚セ不↠知セ。唯シ応キ↠度ス者乃シ知↢見スト之ヲ↡。」 已上
^菩薩なほしかり、 いかにいはんや仏力をや。 ゆゑに ¬*度諸仏境界経¼ にのたまはく、 「よく十方世界をして一毛孔に入れしめ、 乃至 一微0985塵においてよく無量無数不可説の世界を現ずるに、 一切衆生また*迫迮なし。 無量無数不可説劫の威儀果報の事を、 よく一念のうちにおいて現じ、 一念の威儀果報の事を、 無量無数不可説劫のうちにおいて現ず。 かくのごとき所作は、 心に*功用なく、 思惟をなさず」 と。
*菩薩尚爾リ、何ニ況ヤ仏力ヲヤ。故ニ¬度諸仏境界経ニ¼云ク、「能ク令メテム↣十方世界ヲシテ入レ↢一*毛孔ニ↡。 乃至 於テ↢一微塵ニ↡能ク現ズルニ↢無量無数不可説ノ世界ヲ↡、一切衆生亦無シ↢迫迮↡。无量无数不可説劫ノ威儀果報ノ事ヲ能ク於テ↢一念ノ中ニ↡現ズ。一念ノ威儀果報ノ事ヲ於テ↢無量無数不可説劫ノ中ニ↡現ズ。如キ↠是クノ所*作ハ心ニ无シ↢功用↡、不ト↠作サ↢思*惟ヲ↡。」
^¬華厳経¼ の真実幢菩薩の偈にのたまはく、
¬花*厳経ノ¼真実幢菩薩ノ偈ニ云ク、
^「一切のもろもろの如来は、 神通力自在なり。
ことごとく三世のなかにおいて、 これを求むるに不可得なり」 と。
「一切ノ諸ノ如来ハ | 神通力自在ナリ |
悉ク於テ↢三世ノ中ニ↡ | 求ムルニ↠之ヲ不可得ナリト」 |
^この念をなすべし、 「われいままた知らず、 仏の神力のために転ぜられて、 いづれの仏土にかあり、 たれの毛孔にかあるといふことを。 われいづれの時にか、 これを覚知することを得ん」 と。
応シ↠作ス↢是ノ念ヲ↡、我今亦不↠知ラ、為ニ↢仏ノ神力ノ↡転ゼラレテ、在リテ↢何レノ仏土ニカ↡、在ラムトイフコトヲ↢誰ガ毛孔ニカ↡。*我何レノ時ニカ、得ムト↣覚↢知スルコトヲ之ヲ↡。
・随類化現
^八には*随類化現なり。
八ニハ随類化現ナリ。
^¬十住論¼ (十住毘婆沙論・意) にいふがごとし。 「仏は一念のうちに、 十方の無量無辺、 恒河沙等の世界において、 無量の仏身を変化したまふ。 一々の化仏またよく種々の仏事を施す」 と。 以上の*四事は*神境通なり。
*如シ¬十住論ニ¼云フガ。「仏ハ一念ノ中ニ、於テ↢十方ノ无量无辺恒河沙等ノ世界ニ↡、変↢化タマフ無量ノ仏身ヲ↡。一々ノ化仏亦能ク*施スト↢種々ノ仏事ヲ↡。」已上ノ四事ハ神境通*也
^¬度諸仏境界経¼ にのたまはく、 「如来の所現は異の功用なく、 異の思惟なし。 衆生の性に随ひて、 おのづから見ること不同なり。 十五日の夜、 閻浮提の人は、 おのおの月の現じて、 その上にありと見るが、 月は作意して、 われその0986上に現ぜんとせざるがごとし」 と。
¬度諸仏境界経ニ¼云ク、「如来ノ所現ハ无ク↢異ノ功用↡、無シ↢異ノ思惟↡。随ヒテ↢衆生ノ性ニ↡自ラ見ルコト不同ナリ。如シト↫十五日ノ夜、閻浮提ノ人ハ各ノ見ルガ↣月ノ現ニ在リト↢其ノ上ニ↡、月ハ不ルガ↪作意シテ我現ゼムトセ↩其ノ上ニ↨。」
^¬華厳¼ の偈にのたまはく、
¬花厳ノ¼偈ニ云ク、
^「如来の広大の身は、 *法界を究竟したまへり。
この座を離れずして、 一切の処に遍したまふ」 と。
「如来ノ広大ノ身ハ | 究↢竟シタマヘリ於法界ヲ↡ |
不シテ↠離レ↢於此ノ座ヲ↡ | 而遍シタマフト↢一切ノ処ニ↡」 |
^またのたまはく (華厳経)、
又云ク、
^「智慧甚深の功徳海、 あまねく十方の無量の国に現じたまふ。
もろもろの衆生の見るべきところに随ひて、 光明あまねく照らして法輪を転じたまふ」 と。
「智*慧甚深ノ功徳海 | 普ク現ジタマフ↢十方ノ无量ノ国ニ↡ |
随1126ヒテ↢諸ノ衆生ノ所ニ↟応キ↠見ル | 光明遍ク照シテ転ジタマフト↢法輪ヲ↡」 |
^この念をなすべし、 「願はくは、 われまさに*遍法界の身を見たてまつるべし」 と。
応シ↠作ス↢是ノ念ヲ↡、願クハ我当ニシト↠見タテマツル↢遍法界ノ身ヲ↡。
・天眼明徹
^九には*天眼明徹なり。
九ニハ天眼明徹ナリ。
^¬十住論¼ (十住毘婆沙論) にいはく、 「大力の声聞は天眼をもつて*小千国土を見、 またなかの衆生の生時・死時を見る。 小力の辟支仏は十の小千国土を見、 なかの衆生の生時・死時を見る。 中力の辟支仏は百の小千国土を見、 なかの衆生の生時・死時を見る。 大力の辟支仏は三千大千国土を見、 なかの衆生の生死の所趣を見る。 諸仏世尊は無量無辺の不可思議の世間を見そなはし、 またこのなかの衆生の生時・死時を見そなはす」 と。 以上
¬十住論ニ¼云ク、「大力ノ声聞ハ以テ↢天眼ヲ↡見↢小千国土ヲ↡、亦見ル↢中ノ衆生ノ生時・死時ヲ↡。小力ノ辟支仏ハ見↢十ノ小千国土ヲ↡、見ル↢中ノ衆生ノ生時・死時ヲ↡。中力ノ辟支仏ハ見↢百ノ小千国土ヲ↡、見ル↢中ノ衆生ノ生時・死時ヲ↡。大力ノ辟支仏ハ見↢三千大千国土ヲ↡、見ル↢中ノ衆生ノ生*死ノ所趣ヲ↡。諸仏世尊ハ見ソナハシ↢无量无辺ノ不可思議ノ世間ヲ↡、亦見ソナハスト↢是ノ中ノ衆生ノ生時・死時ヲ↡。」 已上
^¬華厳0987経¼ の偈にのたまはく、
¬花厳経ノ¼偈ニ云ク、
^「仏眼は広大にして辺際なし。 あまねく十方のもろもろの国土を見たまふ。
そのなかの衆生は不可量なり。 大神通を現じてことごとく*調伏したまふ」 と。
「仏眼ハ広大ニシテ無シ↢辺際↡ | 普ク見タマフ↢十方ノ諸ノ国土ヲ↡ |
其ノ中ノ衆生ハ不可量ナリ | 現ジテ↢大神通ヲ↡悉ク調伏シタマフト」 |
^この念をなすべし、 「いま弥陀如来は、 はるかにわが身業を見そなはすらん」 と。
応シ↠作ス↢是ノ念ヲ↡、今弥陀如来ハ遥ニ見ソナハスラムト↢我ガ身業ヲ↡。
・聞声自在
^十には*聞声自在なり。
十ニハ*聞声自在ナリ。
^¬十住論¼ (十住毘婆沙論) にいはく、 「たとひ、 恒河沙等の三千大千世界の衆生、 一時に発言し、 また一時に百千種の伎楽を作らん。 もしは遠きも、 もしは近きも、 意に随ひてよく聞きたまふ。 もしなかにおいて、 一の音声を聞かんと欲せば、 意に随ひて聞くことを得、 余をば聞かず。 また無辺世界を過ぎたるに、 最細の声をも、 みなまた聞くことを得たまふ。 もし衆生をして聞かしめんと欲せば、 よく聞くことを得しめたまふ」 と。 略抄
¬十住論ニ¼云ク、「仮令恒河沙等ノ三千大千世界ノ衆生一時ニ発言セム。又一時ニ作ラム↢百千種ノ伎楽ヲ↡。若シハ遠ク若シハ近キヲ、随ヒテ↠意ニ能ク聞キタマフ。若シ欲セバ↣於テ↠中ニ聞カムト↢一ノ音声ヲ↡、随ヒテ↠意ニ得↠聞クコトヲ、余ヲバ者不↠聞カ。又過ギタルニ↢無辺世界ヲ↡最細ノ声ヲモ皆亦得タマフ↠聞クコトヲ。若シ欲セバ↠令メムト↢衆生ヲシテ聞カ↡、能ク令メタマフト↠得↠聞クコトヲ。」略抄
^¬華厳経¼ の文殊の偈にのたまはく、
¬花厳*経ノ¼文殊ノ偈ニ云ク、
^「一切世間のなかのあらゆるもろもろの音声を、
仏智はみな随ひて了りたまふも、 また分別あることなし」 と。
「一切世間ノ中ノ | 所有ノ諸ノ音声ヲ |
仏智ハ皆随ヒテ了リタマフモ | 亦無シト↠有ルコト↢分*別↡」 |
^こ0988の念をなすべし、 「いま弥陀如来は、 さだめてわが所有の語業を聞きたまふらん」 と。
応シ↠作ス↢是ノ念ヲ↡、今弥陀如来ハ定メテ聞キタマフラムト↢我ガ*所有ノ語業ヲ↡。
・知他心智
^十一には*知他心智なり。
十一ニハ知ル↢他心ヲ↡智ナリ。
^¬十住論¼ (十住毘婆沙論) にいはく、 「仏は、 よく無量無辺の世界の現在の衆生の心、 およびもろもろの染浄の所縁等を知りたまひ、 またよく*無色の衆生のもろもろの心を知りたまふ」 と。 略抄
¬十住論ニ¼云ク、「仏ハ能ク知1127リタマフ↢无量无辺ノ世界ノ現在ノ衆生ノ心、及ビ諸ノ染浄ノ所縁等ヲ↡。又能ク知リタマフト↢无色ノ衆生ノ諸ノ心ヲ↡。」略抄
^¬華厳経¼ の文殊の偈にのたまはく、
¬花厳*経ノ¼文殊ノ偈ニ云ク、
^「一切衆生の心、 あまねく三世にあるを、
如来は一念において、 一切ことごとくあきらかに達したまふ」 と。
「一切衆生ノ心 | 普ク在ルヲ↢於三世ニ↡ |
如来ハ於テ↢一念ニ↡ | 一切悉ク明カニ*達シタマフト」 |
^この念をなすべし、 「いま弥陀如来は、 かならずわが意業を知りたまふらん」 と。
応シ↠*作ス↢是ノ念ヲ↡、今弥陀如来ハ必ズ知リタマフラムト↢我ガ意業ヲ↡。
・宿住随念智
^十二には*宿住随念智なり。
十二ニハ宿住随念智ナリ。
^¬十住論¼ (十住毘婆娑論) にいはく、 「仏もし自身および一切衆生の無量無辺の宿命の一切の事を念ぜんと欲せば、 みなことごとく知りて、 過恒河沙等の劫の事に知らずといふことあることなし。 この人はいづれの処に生ぜりき、 姓名・貴賎・飲食・*資生・苦楽、 所作の事業、 所受の果報、 心にはなんの所行ある、 本はいづこより来るといふこと、 かくのごとき等の事を0989すなはちよく知見したまふ」 と。
¬十住論ニ¼云ク、「仏若シ欲セバ↠念ゼムト↢自身及ビ一切衆生ノ无量無辺ノ宿命ノ一切ノ事ヲ↡、皆悉ク知リテ、无シ↠有ルコト↠不トイフコト↠知ラ↢過恒河沙等ノ劫ノ事ニ↡。是ノ人ハ何レノ処ニ生ゼリキ、*姓名・貴賎・飲食・資生・苦楽、所作ノ事業、所受ノ果報、心ニハ何レノ所行アル、本ハ従リ↠何来レリトイフコト、如キ↠是クノ等ノ事ヲ即チ能ク知見シタマフト。」
^偈 (十住毘婆沙論) にいはく、
¬偈ニ¼云ク、
^「宿命智は無量なり。 天眼の見、 無辺なり。
一切の人天のなかには、 よくその限りを知ることなし」 と。
「宿命智ハ無量ナリ | 天眼ノ見无辺ナリ |
一切ノ人天ノ中ニハ | 無シト↣能ク知ルコト↢其ノ限リヲ↡」 |
|
^念ずべし、 「願はくは仏、 わが宿業をして清浄ならしめたまへ」 と。
*応シ↠念ズ、願クハ仏、令メタマヘ↢我ガ宿業ヲシテ清浄ナラ↡。
・智慧無礙
^十三には*智慧無礙なり。
十三ニハ智*慧無礙ナリ。
^¬宝積経¼ の三十七にのたまはく、 「たとひ人ありて、 恒河沙等の世界のあらゆる一切の草木を取り、 ことごとく焼きて墨となし、 擲げて他方の恒河沙等の世界の大海に置き、 百千歳にして、 つきてもつてこれを磨りてことごとく墨の汁となしてん。 仏、 大海のなかより一々の墨の滴りを取りて、 分別し了知したまふ。 これはその世界のかくのごとき草木の、 その根、 その茎、 その枝、 その条、 華・菓・葉等となりと。
¬宝積経ノ¼卅七ニ云ク、「仮使有リテ↠人取リテ↢恒河沙等ノ世界ノ所有ノ一切ノ草木ヲ↡、悉ク焼キテ為シテ↠墨ト、擲ゲテ置キテ↢他方ノ恒河沙等ノ世界ノ大海ニ↡、於テ↢百千歳ニ↡、就キテ以テ磨シテ↠之ニ尽ク為シテム↢*墨ノ汁ト↡。仏従リ↢大海ノ中↡取リテ↢一々ノ墨ノ滴ヲ↡分別シ了知シタマフ。是ハ其ノ世界ノ如キ↠是クノ草木ノ*其ノ根、*其ノ茎、*其ノ枝、*其ノ条・花・菓・葉等トナリト↡。
^またもし人ありて、 一毛端を持ちて水一滴を霑して、 仏の所に来至して、 この言をなさく、 ªあへて滴水をもつて、 もつてあひ寄す。 後にもし須ゐば、 まさにわれに還し賜ふべしº と。 その時に、 如来その滴水を取りて、 *恒河の河のなかに置きたまはんに、 かの河の流浪*回澓のために旋転せられて、 和合し引注して大海に至りなん。
又如有リテ↠人持チテ↢一毛端ヲ↡霑シテ↢水一滴ヲ↡、来↢至シテ仏ノ所ニ↡而シテ作サク↢是ノ言ヲ↡、敢テ以テ↢滴水ヲ↡、持用相寄ス。後ニ若シ須ヰバ者、当ニシト↢還シテ賜フ↟我ニ。爾ノ時ニ如来取リテ↢其ノ滴水ヲ↡、置キタマハムニ↢兢*伽ノ河ノ中ニ↡。而シテ為ニ↢彼ノ河ノ流*浪廻*澓ノ↡之1128所レテ↢旋転セ↡、和合シ引注シテ至リナム↢于大海ニ↡。
^この人、 百年を満てをはりて、 仏にまうしてまうさく、 ª先に寄せたてまつりし滴水を、 い0990ま請ふ、 われに還したまへº と。 その時に、 仏、 一分の毛端をもつて、 大海のうちに就けて、 本の水滴を霑して、 もつてこの人に還したまはん」 と。 略抄
是ノ人満テ↢百年ヲ↡已リテ而白シテ↠仏ニ言ク、先ニ寄セタテマツリシ滴水ヲ今請フ、還シタマヘト↠我ニ。爾ノ時ニ仏以テ↢一分ノ毛端ヲ↡就ケテ↢大海ノ内ニ↡、霑シテ↢本ノ水滴ヲ↡、用テ還シタマハムト↢是ノ人ニ↡。」略抄
^また *¬六波羅蜜経¼ にのたまはく、 「無量恒河沙の十方界の草木を、 ことごとく焚きて墨灰となして、 億載海に歴ん。 十力智深妙にして滴りを取りて、 *含生に示して、 実のごとく分別して、 これ、 それの界の樹等なりと知らしめたまへり」 と。 云々
*又¬六波羅蜜経ニ¼云ク、「*无量兢河沙ノ十方界ノ草木ヲ尽ク焚キテ成シテ↢墨灰ト↡、億載歴ム↢于海ニ↡。十力智深妙ニシテ取リテ↠滴ヲ、示シテ↢含生ニ↡、如ク↠実ノ分別シテ、知ラシメタマヘリト↢此某ノ界ノ樹等ナリト↡。」云々
^またのたまはく (六波羅蜜経・意)、 「かくのごとき*四洲およびもろもろの山王をもつて紙素となし、 八の大海の水、 もつてその墨となし、 一切の草木をもつてその筆となして、 一切の人天一劫に書写せらんを、 舎利弗の所得の智慧に比ぶれば、 十六分がなかにその一にも及ばず。
又云ク、「如キ↠是クノ四*洲及ビ諸ノ山王ヲ用テ為シ↢紙素ト↡、八ノ大海ノ水ヲ以為シ↢其ノ墨ト↡、一切ノ草木ヲ用テ為シテ↢其ノ筆ト↡、一切ノ人天一劫ニ書写セラムヲ比ブレバ↢舎利弗ノ所得ノ智*慧ニ↡、十六分ガ中ニ不↠及バ↢其ノ一ニモ↡。
^またこの三千大千世界において、 そのなかの衆生の所有の智慧をして、 舎利弗のごとく、 等しくして異なることあることなからしめんに、 菩薩の*布施波羅蜜多を了達せる所有の智慧は、 かれに過ぎたること百倍なり。
又於テ↢此ノ三千大千世界ニ↡、其ノ中ノ衆生ノ所有ノ智*慧ヲシテ、如クシテ↢舎利弗ノ↡、等シクシテ无カラム↠有ルコト↠異ナルコト。菩薩ノ了↢達セル布施波羅蜜多ヲ↡所有ノ智*慧ハ、過ギタルコト↠彼ニ百倍。
^またこの三千大千世界のあらゆる衆生をして、 みな布施波羅蜜多の智慧を具せしめんに、 一の菩薩の所得の*浄戒波羅蜜多の智慧に及ばず。 乃至、 般若もまたかくのごとし。
又此ノ三千大千世界ノ所有ノ衆生ヲシテ、皆具セラムハ↢布施波羅蜜多ノ智*慧ヲ↡、不↠及バ↢一ノ菩薩ノ所得ノ浄戒波羅蜜多ノ智*慧ニ↡。乃至般若モ亦復如シ↠是クノ。
^またこの三千大千世界のあらゆる衆生をして、 みな六波羅蜜の智慧を具せしめんに、 一の初地の菩薩の智慧には0991及ばず。 乃至、 十地まで*展転して、 かくのごとし。 またこの十地の菩薩の智慧は、 なんぢ慈氏 (弥勒)、 一生補処の菩薩の智慧に比ぶるに、 百千分がなかにその一にも及ばず。
又此ノ三千大千世界所有ノ衆生ヲシテ、皆具セラムハ↢六波羅蜜ノ智*慧ヲ↡、不↠及バ↢一ノ初地ノ菩薩ノ智*慧ニハ↡。乃至十地マデ展転シテ如シ↠是クノ。又此ノ十地ノ菩薩ノ智恵ハ、比ブルニ↢汝慈氏、一生補処ノ菩薩ノ智*恵ニ↡、百千分ガ中ニ不↠及バ↢其ノ一ニモ↡。
^この三千大千世界の一切衆生の所有の智慧をして、 みな慈氏のごとく、 等しくして異なることあることなからしめんに、 かくのごとき菩薩、 道場に坐して*魔怨を*降伏して、 まさに正覚を成ぜんとする所有の智慧は、 仏の智慧の百千万分においてその一にも及ばず」 と。
此ノ三千大千世界ノ一切衆生ノ所有ノ智*慧ヲシテ皆如クシテ↢慈氏ノ↡、等シクシテ无カラム↠有ルコト↠異ナルコト。如キ↠是クノ菩薩坐シテ↢於道場ニ↡降↢伏シテ魔1129怨ヲ↡、将ニルニ↠成ラムト↢正覚ヲ↡、所有ノ智*慧ハ、於テ↢仏ノ智*慧ノ百千万分ニ↡不ト↠及バ↢其ノ一ニモ↡。」
^¬宝積経¼ にのたまはく、 「たとひ、 十方の無量無辺の一切世界のあらゆる衆生をして、 みなことごとく*繋属一生の菩薩の智慧を成就せしめんに、 如来の十力の一の*処非所智に比せんと欲はんに、 百千万分のその一にも及ばず。 乃至 *烏波尼沙陀分のその一にも及ばず。 乃至、 *算数・譬喩も及ぶことあたはざるところなり」 と。
¬宝積経ニ¼云ク、「仮使十方ノ無量無辺ノ一切世界ノ所有ノ衆生ヲシテ、皆悉ク成↢*就セラム繋属一*生ノ*菩薩之智*恵ヲ↡。欲ハムニ↠比セムト↢如来ノ十力之一ノ処非所智ノ百千万分ニ↡、不↠及バ↢*其ノ一ニモ↡。乃至 烏波尼沙陀分ニシテ不↠及バ↢其ノ一ニモ↡。乃至算数・譬喩ノ所ナリトイヘリ↠不ル↠能ハ↠*及ブコト。」
^¬華厳経¼ の偈にのたまはく、
¬花厳経ノ¼偈ニ*云ク、
^「如来の甚深の智は、 あまねく法界に入りたまふ。
よく三世に随ひて転じて、 世のために明道となりたまふ」 と。
「如来ノ甚深ノ智ハ | 普ク入リタマフ↢於法界ニ↡ |
能ク随ヒテ↢三世ニ↡転ジテ | 与ニ↠世ノ為リタマフト↢明道ト↡」 |
^同経の普明智菩薩の讃仏の偈にのたまはく、
同ジキ¬経ノ¼普明智菩薩ノ讃仏ノ偈ニ云ク、
^「一切諸法のなかには、 法門に辺あることなし。
0992*一切智を成就して、 深法海に入る」 と。 以上
「一切諸法ノ中ニハ | 法門ニ無シ↠有ルコト↠辺 |
成↢就シテ一切智ヲ↡ | 入ルト↢於深法海ニ↡」 已上 |
^この念をなすべし、 「弥陀如来はわが三業を照見したまふらん。 願はくは、 世尊のごとく慧眼第一に浄なることを得ん」 と。
*応シ↠作ス↢是ノ*念ヲ↡、弥陀*如来ハ照↢見シタマヘ我ガ三業ヲ↡。願クハ得ムト↧如ク↢世尊ノ↡恵眼第一ニ浄ナルコトヲ↥。
・能調伏心
^十四には*能調伏心なり。
十四ニハ能調伏心ナリ。
^¬十住論¼ (十住毘婆沙論) にいはく、 「諸仏は、 もしは定に入り、 もしは定に入りたまはずして、 心を*一縁のなかに繋けんと欲せば、 意の久近に随ひて意のごとくよく住したまふ。 この縁のなかよりさらに余の縁に住したまふに、 意に随ひてよく住したまふ。
¬十住論ニ¼云ク、「諸仏ハ若シハ入リ↠定ニ、若シハ不ルニ↠入リタマハ↠定ニ、欲セバ↠繋ケムト↢心ヲ一縁ノ中ニ↡、随ヒテ↢意ノ久近ニ↡如ク↠意ノ能ク住シタマフ。従リ↢此ノ縁ノ中↡更ニ住シタマフニ↢余ノ縁ニ↡、随ヒテ↠意ニ能ク住シタマフ。
^もし仏、 常心に住したまへるに、 人をして知らざらしめんと欲せば、 すなはち知ることあたはず。 たとひ一切衆生の、 他心を知る智をして*大梵王のごとくならしめ、 大声聞・辟支仏のごとく、 智慧を成就して他人の心を知らんとも、 仏の常心を知らんと欲はんに、 もし仏聴したまはずは、 すなはち知ることあたはじ」 と。
若シ仏住シテ↢常心ニ↡、欲セバ↠令メムト↢人ヲシテ不ラ↟知ラ、則チ不↠能ハ↠知ルコト。仮使一切衆生ノ知ル↢他心ヲ↡智ヲシテ、如クナラシメ↢大梵王ノ↡如クシテ↢大声聞・辟支仏ノ↡、成↢就シテ智*慧ヲ↡知ラムトモ↢他人ノ心ヲ↡、欲ハム↠*知ラムト↢仏ノ常心ヲ↡、若シ仏不ハ↠聴シタマハ、則チ不トイヘリ↠能ハ↠知ルコト。」
^念ずべし、 「願はくは、 われをして*仏覚三昧を得しめたまへ」 と。
応シ↠念ズ、願クハ令メタマヘト↣我ヲシテ得↢仏覚三昧ヲ↡。
・常在安慧
^十五には*常在安慧なり。
十五ニハ常在安*慧ナリ。
^同論にいはく、 「諸仏は安穏にして、 つねに念を動かしたまはざれども、 つねに心にあり。 なにをもつてのゆゑに。 *先に知りて後に行生じ、 意の所縁のなかに随ひて無礙の行に住するがゆゑに。 一切の煩悩を0993断ずるがゆゑに。 *動性を出過せるがゆゑに。
同ジキ¬論ニ¼云ク、「諸仏ハ安*隠ニシテ常ニ不シテ↠動ゼ、念ヲ常ニ在リ↠心ニ。何ヲ以テノ故ニ。先ニ知リテ而シテ後ニ行生ズ。随ヒテ↢意ノ所縁ノ中ニ↡住スルガ↢无礙ノ行ニ↡故ニ。断1130ズルガ↢一切ノ煩悩ヲ↡故ニ。出↢過セルガ動性ヲ↡故ニ。
^仏、 阿難に告げたまふがごとし。 ª仏は、 この夜において*阿耨菩提を得て、 一切世間の、 もしは天・魔・梵・沙門・婆羅門を、 尽苦の道をもつて教化することあまねく畢へて*無余涅槃に入りたまふ。 その中間において、 仏は*諸受において*起を知り、 *住を知り、 生を知り、 滅を知ろしめす。 *諸想・諸触・諸覚・諸念においてまた起を知り、 住を知り、 生を知り、 滅を知ろしめす。 悪魔、 七年昼夜に息まずして、 つねに仏に*随逐するに、 仏の*短を得ず、 仏の念の安慧にあらざるを見ずº」 と。
如シ↣仏告ゲタマフガ↢阿難ニ↡。仏ハ於リ↢此ノ夜↡得シ↢阿耨菩提ヲ↡、一切世間ノ若シハ天・魔・梵・沙門・婆羅門ヲ、以テ↢尽苦ノ道ヲ↡教化スルコト周ヘ畢ヘテ入レタマフ↢无余涅槃ニ↡。於テ↢其ノ中間ニ↡、仏ハ於テ↢諸*受ニ↡知リ↠起ヲ知リ↠住ヲ、知リ↠生ヲ、知メス↠滅ヲ。諸*想・諸触・諸覚・諸念ヲモ亦知リ↠起ヲ知リ↠住ヲ、知リ↠生ヲ、知メス↠滅ヲ。悪魔七年昼夜ニ不シテ↠息マ、常ニ随↢*逐スルニ仏ニ↡、不↠得↢仏ノ短ヲ↡、不ト↠見↢仏ノ念ノ不ルヲ↟在ラ↢安*慧ニ↡。」
^偈 (十住毘婆沙論) にいはく、
¬偈ニ¼云ク、
^「その念大海のごとくして、 *湛然として安穏にまします。
世間には法として、 よく擾乱するものあることなし」 と。
「其ノ念如クシテ↢大海ノ↡ | 湛然トシテ在ス↢安*隠ニ↡ |
世間ニハ无シト↠有ルコト↢法トシテ | 而能ク擾乱スル者↡」 |
^念ずべし、 「願はくは仏、 わが*粗動なる覚観の心を除滅したまへ」 と。
応シ↠念ズ、願クハ仏、除↢滅シタマヘト我ガ麁動ナル覚観ノ心ヲ↡。
・悲念衆生
^十六には悲念衆生なり。
十六ニハ悲↢念シタマフ衆生ヲ↡。
^¬*大般若経¼ にのたまはく、 「十方世界には、 一の有情として、 如来の大悲の照らすことあたはざるところなるはなし」 と。
¬大般若経ニ¼云ク、「十方世界ニハ、無シト↢一ノ有情トシテ如来ノ大悲ノ所ナルハ↟不ル↠能ハ↠照スコト。」
^¬宝積経¼ にのたまはく、 「たとひ、 恒河沙等の諸仏の世界を過ぎて、 ただ一の衆生も、 この仏の化すべき限りなるには、 その時に如来みづからその所に往きて0994、 ために*法要を説きて、 それをして悟入せしめたまふ」 と。
¬宝積経ニ¼云ク、「仮使過ギタル↢於*兢伽沙等ニ↡諸仏ノ世界ニ、唯シ一ノ衆生モ是ノ仏ノ化スベキ限リナルニハ、爾ノ時ニ如来躬ラ往キテ↢其ノ所ニ↡、為ニ説キテ↢法要ヲ↡、令メタマフト↢其ヲシテ悟*入セ↡。」
^同経の偈にのたまはく、
*同ジキ¬経ノ¼偈ニ云ク、
^「一の衆生を利せんがために、 無辺の劫海に住して、
それをして調伏することを得しめたまふ。 大悲心かくのごとし」 と。
「為ニ↠利セムガ↢一ノ衆生ヲ↡ | 住シテ↢无辺ノ劫海ニ↡ |
令メタマフ↣其ヲシテ得↢調伏スルコトヲ↡ | 大悲心如シト↠是クノ」 |
^¬華厳経¼ の文殊讃仏の偈にのたまはく、
¬花厳経ニ¼文殊讃仏ノ偈ニ云ク、
^「一々の地獄のなかに、 無量劫を経て、
衆生を度せんがためのゆゑに、 よくこの苦を忍びたまふ」 と。
「一々ノ地獄ノ中ニ | 経テ↢於无量劫ヲ↡ |
為ノ↠度セムガ↢衆生ヲ↡故ニ | 而シテ能ク忍ビタマフト↢是ノ苦ヲ↡」 |
^¬大経¼ (涅槃経) の偈にのたまはく、
¬大経ノ¼偈ニ云ク、
^「一切衆生の、 異の苦を受くるは、 ことごとくこれ如来一人の苦なり。 乃至
衆生は仏のよく救ひたまふことを知らず。 ゆゑに如来および法・僧を謗ず」 と。
「一切衆生ノ受クルハ↢異ノ苦ヲ↡ | 悉ク是如来一人ノ苦ナリ 乃至 |
衆生ハ不↠知ラ↢仏ノ能ク救ヒタマフコトヲ↡ | 故ニ謗ズト↢如来及ビ法僧ヲ↡」 |
^¬大論¼ (大智度論) にいはく、 「仏は仏眼をもつて、 一日一夜、 おのおの三時に一切衆生を観じたまふ、 たれか度すべきものあらんと。 時を失せしむることなし」 と。
¬大論ニ¼云ク、「仏ハ以テ↢仏眼ヲ↡一日一夜各ノ三時ニ観ジタマフ↢一切衆生ヲ↡、誰カ可キ↠度ス者アラント。无シト↠令ムルコト↠失セ↠時1131ヲ。」
^ある ¬論¼ (大智度論・意) にいはく、 「▲たとへば、 魚の子の母もし念ぜざれば、 子すなはち*爛壊しぬるがごとく、 衆生もまたしかなり。 仏もし念じたまは0995ずは、 善根すなはち壊しなん」 と。
有ル¬論ニ¼云ク、「譬ヘバ如シ↢魚ノ子ノ母若シ不レバ↠念ゼ、子則チ爛壊シヌルガ↡。衆生モ亦爾ナリ。仏若シ不ハ↠念ジタマハ、善根*則チ壊シナムト。」
^¬*荘厳論¼ の偈にのたまはく、
¬荘厳論ノ¼偈ニ云ク、
^「菩薩は衆生を念じて、 これを愛すること骨髄に徹り、
恒時に利益せんと欲ふ。 なほ一子のごときがゆゑに」 と。
「菩薩ハ念ジテ↢衆生ヲ↡ | 愛スルコト↠之ヲ徹ス↢骨髄ヲ↡ |
恒時ニ欲フコト↢利益セムト↡ | 猶如キガ↢一子ノ↡故ニト」 |
^これらの義によりて、 ある懴悔の偈にいはく、
由リテ↢此等ノ義ニ↡、有ル懴悔ノ偈ニ云ク、
^「父母に子あり。 はじめて生れてすなはち*盲聾なり。
慈悲の心*慇重にして、 捨てずして養活す。
「如キ↧父母ニ有リ↠子 | 始テ生レテ便チ盲聾ナリ |
慈*悲ノ心慇重ニシテ | 不シテ↠捨テ而養活ス |
^子は父母を見ざれども、 父母はつねに子を見んがごとき、
諸仏は衆生を視そなはすこと、 なほ*羅睺羅のごとし。
^衆生は見たてまつらずといへども、 実に諸仏の前にあり」 と。 以上
子ハ不レドモ↠見↢父母ヲ↡ | 父母ハ常ニ見ムガ↞子ヲ |
諸仏ハ視ソナハスコト↢衆生ヲ↡ | 猶如シ↢羅睺羅ノ↡ |
衆生ハ雖モ↠不ト↠見タテマツラ | 実ニ在リト↢諸仏ノ前ニ↡」 已上 |
^この念をなすべし、 「弥陀如来はつねにわが身を照らし、 わが善根を護念し、 わが機縁を観察したまふ。 われもし機縁熟せば、 時を失はずして*接を被りなん」 と。
応シ↠作ス↢是ノ念ヲ↡、弥陀如来ハ常ニ照シ↢我ガ身ヲ↡、護↢念シ我ガ善根ヲ↡、観↢察シタマフ我ガ機縁ヲ↡。我若シ機縁熟セバ、不シテ↠失ハ↠時ヲ*被リナムト↠接ヲ。
・無礙弁舌
^十七には*無礙弁説なり。
十*七ニハ無礙*弁説ナリ。
^¬十住論¼ (十住毘婆沙論) にいふがごとし。 「もし三千界のあらゆる四天下のなかに満てらん微塵数の三千大千界の衆生、 みな舎利弗のごとき、 辟支仏のごとき、 みなことごとく智慧・*楽説を成就し、 寿命も上0996のごとき塵数の大劫ならんに、 このもろもろの人等、 四念処に因せて、 その*形寿を尽すまで如来を問難せば、 如来還りて四念処の義をもつてその所問を答へたまはんに、 言義重ならず、 楽説無窮ならん」 と。
*如シ¬十住論ニ¼云フガ。「若シ三千界ノ所有ノ四天下ニ満テラム↠中ニ微塵数ノ三千大*千界ノ衆生、皆如キ↢舎利弗ノ↡、如キ↢辟支仏ノ↡、皆悉ク成↢*就シ智*慧・楽説ヲ↡、寿命モ如キ↢上ノ塵数ノ↡大劫ナラムニ。是ノ諸ノ人等、因セテ↢四念処ニ↡尽スマデニ↢其ノ形寿ヲ↡問↢難セム如来ヲ↡。如来還リテ以テ↢四念処ノ義ヲ↡答ヘタマハムニ↢其ノ所問ヲ↡、言義不↠重ナラ、楽説無窮ナラムト。」
^またいはく (十住毘婆沙論)、 「仏の説きたまふところあるは、 みな利益ありてつひに空言ならず。 これまた希有なり。 乃至 もし一切衆生の智慧・勢力、 辟支仏のごとくならんに、 このもろもろの衆生、 もし仏意を承けずして一人を度せんと欲せば、 この処あることなからん。 もしこのもろもろの人、 説く時には、 乃至、 無色界の*結使の一の*毫釐の分をも断つことあたはず。
又云ク、「仏ノ有ルハ↢所↠説キタマフ↡、皆有リテ↢利益↡終ニ不↢空言ナラ↡。是亦希有ナリ。乃至 若シ一切衆生ノ智*慧ノ勢*力如クアラムニ↢辟支仏ノ↡。是ノ諸ノ衆生若シ不シテ↠承ケ↢仏意ヲ↡欲セバ↠度セムト↢一人ヲ↡、無ケム↠有ルコト↢是ノ処↡。若シ是ノ諸ノ人説ク時ニハ、乃至不↠能ハ↠断ツコト↢無色界ノ結使ノ一ノ*毫*釐ノ分ヲモ↡。
^もし仏、 衆生を度せんと欲して、 言説したまふところあれば、 乃至、 外道・邪見、 もろもろの竜・夜叉等、 および余の仏語を解せざるものにも、 みなことごとく解らしめたまふ。 これらもまたよく無量の衆生を転化す。 乃至 このゆゑに、 仏を最上の導師と名づけたてまつる」 と。
若シ仏欲シテ↠度セムト↢衆生ヲ↡、有レバ↠所↢言説シタマフ↡、乃至外道・邪見、諸ノ竜・夜叉等及ビ余ノ不ル↠解セ↢仏語1132ヲ↡者ニモ、皆悉ク令メタマフ↠解ラ。是等モ亦能ク転↢化ス無量ノ衆生ヲ↡。乃至 是ノ故ニ、仏ヲ名ケタテマツルト↢最上ノ導師ト↡。」
^偈 (十住毘婆娑論) にいはく、
¬偈ニ¼*云ク、
^「*四の問答のなかにおいて、 超絶して*倫匹なし。
衆生のもろもろの問難は、 一切みな得やすし。
「於テ↢四ノ*門ノ答ノ中ニ↡ | *超絶シテ无シ↢倫匹↡ |
衆生ノ諸ノ問難ハ | 一切皆易シ↠得 |
^もし三時のうちにおいて、 もろもろの所説あるは、
0997言かならず虚しく設けたるにあらず、 つねに大果報あり」 と。 以上
若シ於テ↢三時ノ中ニ↡ | 諸ノ有ル↢所説↡者 |
言必ズ不ズ↢虚シク設ケタルニ↡ | 常ニ有リト↢大果報↡」 已上 |
^¬華厳¼ の偈にのたまはく、
¬花*厳ノ¼偈ニ云ク、
^「諸仏の広大の音は、 法界に聞えずといふことなし。
菩薩はよく了知して、 よく音声海に入る」 と。
「諸仏ノ広大ノ音ハ | 法界ニ靡シ↠不トイフコト↠*聞エ |
菩薩ハ能ク了知シテ | 善ク入ルト↢音声海ニ↡」 |
^¬浄名経¼ (維摩経) の偈にのたまはく、
¬浄名経ノ¼偈ニ云ク、
^「仏は*一音をもつて法を演説したまふに、 衆生は類に随ひておのおの解を得。
みな謂へり、 世尊はその語を同じくしたまふと。 これすなはち*神力不共の法なり」 と。
「仏ハ以テ↢一音ヲ↡演↢説シタマフニ法ヲ↡ | 衆生ハ随ヒテ↠類ニ各ノ得↠解ヲ |
皆謂フ世尊ハ同ジト↢其ノ語ニ↡ | 斯*則チ神力不共ノ法ナリト」 |
^また *¬譬喩経¼ の第三にのたまはく、 「阿育王、 意に仏を信ぜず。 時に海辺に鳥あり、 名づけて随となす。 その音はなはだ哀和にして、 すこぶる髣髴として、 仏の音声の万分が一に似たることあり。 王、 その音を聞きて歓喜して、 すなはち*無上道の意を発せり。 宮中の*婇女おほよそ七千の人も、 また無上道の意を発してき。 王はこれよりつひに*三尊を信ぜり。 鳥の音声にして、 度するところかくのごとし。 いはんや、 至真の清浄の妙音のものにおいてをや」 と。 取意略抄
又¬譬喩経ノ¼第三ニ云ク、「阿育王意ニ不↠信ゼ↠仏ヲ。時ニ海辺ニ有リ↠鳥、名ケテ為ス↢随ト↡。其ノ*音甚ダ哀和ニシテ、頗ル有リ↣*髣髴ナク似タルコト↢仏ノ音声ノ万分之一ニ↡。王聞キテ↢其ノ音ヲ↡歓喜シテ、即チ発セリ↢无上道ノ意ヲ↡。宮中ノ婇女凡ソ七千ノ人モ、復発シテキ↢无上道ノ意ヲ↡。王ハ従リ↠是遂ニ信ゼリ↢*三尊ヲ↡。鳥之音声ニシテ所↠度スル如シ↠是クノ。況ヤ於テヲ↢至真ノ清浄ノ妙音ノ者ニ↡乎ト。」取意略抄
^念0998ずべし、 「われいづれの時にか、 かの弁説を聞くことを得ん」 と。
応シ↠念ズ、我何レノ時ニカ得ムト↠聞クコトヲ↢彼ノ*弁説ヲ↡。
・観仏法身
^十八には観仏法身なり。
十八ニハ観ズ↢仏法身ヲ↡。
^文殊師利菩薩のいへるがごとし。 「われ、 如来を観ずるに、 すなはち真如の相なり。 動なく作なし。 分別するところなく分別に異なることもなし。 方処に即せず方処に離せず。 有にあらず無にあらず、 常にあらず断にあらず。 三世に即せず三世に離せず。 生なく滅なく、 去なく来なく、 染・不染もなく、 二・不二もなし。 *心言の路絶えたり。
如シ↢文殊師利菩薩ノ言ヘルガ↡。「我観ズルニ↢如来ヲ↡、即チ真如ノ相ナリ。無ク↠動無シ↠作。無ク↠所↢分別スル↡無シ↠異ナルコトモ↢分別ニ↡。非↠即セ↢方処ニ↡非↠離セ↢方処ニ↡。非ズ↠有ニ非ズ↠無ニ、非ズ↠常ニ非ズ↠断ニ、非↠即セ↢三世ニ↡非↠離レ↢三世ニ↡。無ク↠生無ク↠滅、無ク↠去無ク↠来、無ク↢染・不染モ↡、无ク↢二・不二モ↡、心言ノ路絶エタリ。
^もしこれらの真如の相をもつて如来を観ずるを、 真に仏を見たてまつると名づく。 または如来を*礼敬し、 親近すと名づく。 実に有情においてよく利益をなす」 と。 ¬大般若¼。
若シ以テ↢此等ノ真如之相ヲ↡観ズルヲ↢於如来ヲ↡、名ク↢真ニ見タテマツルト↟仏ヲ。亦ハ名ク↤礼↢敬シ親↣近スト如来ヲ↡。実ニ於テ↢有情ニ↡能ク為スト↢利*益1133ヲ↡。¬大般若¼
^¬*占察経¼ の下巻に地蔵菩薩のいはく、 「*一実境界とは、 いはく、 衆生の*心体は、 もとよりこのかた、 生ぜず滅せず、 *自性清浄にして*無障・無礙なること、 なほ虚空のごとし。 分別を離れたるがゆゑに、 平等に普遍して至らざるところなく、 十方に円満す。 究竟して一相にして、 無二無別なり。 変ぜず異せず、 増なく減なし。
¬占察経ノ¼下巻ニ地蔵菩薩ノ*言ク、「一実境界ト者、謂ク衆生ノ心体ノ従リ↠本已来タ不↠生ゼ不↠滅セ、自性清浄ナルナリ。无障无礙ナルコト猶如シ↢虚空ノ↡。離レタルガ↢分別ヲ↡故ニ、平等ニ普遍シテ無シ↠所↠不トイフ↠至ラ。円↢満シテ十方ニ↡、究竟シテ一相ナリ。无二无別ナリ。不↠変セ不↠異セ、无ク↠増无シ↠減。
^一切衆生の心、 一切声聞・辟支仏の心、 一切菩薩の心、 一切諸仏の心は、 みな同じく不生不滅、 *無染寂静の真如の相なるをもつてのゆゑに。 所以はいかん。 一切の、 心ありて分別を起すは、 なほ*幻化のごとくして、 *定実あるこ0999となし。 乃至
以テノ↢一切衆生ノ心、一切声聞・辟支仏ノ心、一切菩薩ノ心、一切ノ諸仏ノ心ハ、皆同ジク不生・不滅ナリ、无染寂静ニシテ真如ノ相ナルヲ↡故ニ。所以者何ン。一切ノ有リテ↠心起スハ↢分別ヲ↡者、猶如クシテ↢*幻化ノ↡无シ↠有ルコト↢定実↡。乃至
^一切世界に心の形状を求むるに、 一区の分として得べきものなし。 ただ衆生の無明痴闇の*勲習の因縁をもつて、 妄りに*境界を現じて、 *念着を生ぜしむ。 いはゆるこの心、 みづから無なりと知ることあたはずして、 妄りにみづから有と謂ひて、 覚知の想を起して、 *我・我所を計す。 しかも実には覚知の想あることなし。 この妄心は畢竟じて体なく、 可見ならざるをもつてのゆゑに」 と。
一切世界ニ求ムルニ↢心ノ形状ヲ↡、无シ↢一区ノ分トシテ而シテ可キ↠得者↡。但シ以テ↢衆生ノ无明痴闇ノ勲習ノ因縁ヲ↡、妄ニ現ジテ↢境界ヲ↡、令ム↠生ゼ↢念著ヲ↡。所謂ル此ノ心不シテ↠能ハ↢自ラ知ルコト↟无ナリト、妄ニ自ラ謂ヒテ↠有ト、起テ↢覚知ノ想ヲ↡、計ス↢我・我所ヲ↡。而モ実ニハ无シ↠有ルコト↢覚知之想↡。以テノ↣此ノ妄心ハ畢竟ジテ无ク↠体不ルヲ↢可見ナラ↡故ニト。」
^乃至広説。 信解をもつてこの理を観念するを、 菩薩の最初根本業となせり。
乃至広説。以テ↢信解ヲ↡観↢*念スルヲ此ノ理ヲ↡、為セリ↢菩薩ノ最初根本業ト↡也
^この一実境界は、 すなはちこれ如来の法身なり。
此ノ一実境界ハ、即チ是如来ノ法*身ナリ。
^¬華厳経¼ の一切慧菩薩の偈にのたまはく、
¬花厳経ニ¼一切*慧菩薩ノ偈ニ云ク、
^「法性はもとより空寂にして、 取なくまた見なし。
性空なるはすなはちこれ仏なり。 思量することを得べからず」 と。 以上
「法性ハ本ヨリ空寂ニシテ | 无ク↠取亦无シ↠見 |
性空ナルハ即チ是仏ナリ | 不ト↠可カラ↠得↢思量スルコトヲ↡」 已上 |
^念ずべし、 「われいづれの時にか*本有の性を顕すことを得ん」 と。
応シ↠念ズ、我何レノ時ニカ得ムト↠顕スコトヲ↢本有ノ性ヲ↡。
・総観仏徳
^十九には*総観仏徳なり。
十九ニハ総観仏徳ナリ。
^普賢菩薩のいふがごとし。 「如来の功徳は、 たとひ十方の一切の諸仏、 不可説の仏刹を、 極微塵数の劫を経て、 相続して演説したまふとも、 窮尽すべからず」 (華厳経) と。 以上
如シ↢普賢菩薩ノ云フガ↡。「如来ノ功徳ヲ、仮使十方ノ一切ノ諸仏、経テ↢不可*説ノ仏刹ヲ極微塵数ノ劫ヲ↡相続シテ演説シタマフトモ、不ト↠可カラ↢窮尽ス↡。」 已上
^また阿弥陀仏の威神無極なることは、 ¬双巻経¼ (大経・下) にのたまふがごとし。 「▲無量寿仏は威神極まりなし1000。 十方世界の無量無辺不可思議の諸仏如来、 称歎したまはざることなし」 と。
又阿弥陀仏ノ威神无極ナルコトハ、如シ↢¬双巻経ニ¼云フガ↡。「无量寿仏ハ威神无シ↠極リ。十方世界1134ノ无量无辺不可思議ノ諸仏如来、莫シト↠不ルコト↢称歎シタマハ↡。」
^龍樹の偈 (十住毘婆沙論) にいはく、
龍樹ノ¬偈ニ¼云ク、
^「世尊のもろもろの功徳は、 度量することを得べからず。
人の、 *尺寸をもつて空を量らんに、 尽すべからざるがごとし」 と。
「世尊ノ諸ノ功徳ハ | 不↠可カラ↠得↢度量スルコトヲ |
如シト↧人ノ以テ↢尺寸ヲ↡ | 量ラムニ↠空ヲ不ルガ↞可カラ↠尽ス」 |
^同じき讃弥陀の偈 (*易行品) にいはく、
同ジキ讃弥陀ノ偈ニ云ク、
^「▲諸仏無量劫に、 その功徳を讃揚したまはんに、
なほ尽すことあたはじ。 清浄の人に帰命したてまつる」 と。
「*諸仏无量劫ニ | 讃↢揚シタマハムニ其ノ功徳ヲ↡ |
猶尚不↠能ハ↠尽スコト | 帰↢命シタテマツルト清浄ノ人ニ↡」 |
^念ずべし、 「願はくは、 われ仏を得て、 正法の王に斉しからん」 と。
*応シ↠念ズ、願クハ我得テ↠仏ヲ斉シカラムト↢正法ノ王ニ↡。
・欣求教文
^二十には欣求教文なり。
二十ニハ欣↢求スル教*文ヲ↡。
^¬般舟経¼ にのたまはく、 「*この三昧は、 値ふことを得ること難し。 たとひこの三昧を求めんに、 百億劫に至り、 ただその名声を聞くことを得んと欲すとも、 聞くことを得ることあたはじ。 いかにいはんや学することを得るものをや。 *うたたまた行じて人に教へんをや」 と。
¬般*舟経ニ¼云ク、「是ノ三昧ハ難シ↠得ルコト↠値フコトヲ。正使求メムニ↢是ノ三昧ヲ↡、至リテ↢百億劫ニ↡但シ欲ストモ↠得ムト↠聞クコトヲ↢其ノ名声ヲ↡、不↠能ハ↠得ルコト↠聞クコトヲ。何ニ況ヤ得ム↠*学スルコトヲ者ヲヤ。転タ復行ジテ教ヘムヲヤト↠人ニ。」
^偈 (般舟経) にのたまはく、
偈ニ*云ク、
^「われみづから*往世の時を識念するに、 その数六万歳を具足するまで、
つねに法師に随ひて捨離せざりしに、 初めより、 この三昧を聞くことを得ざ1001りき。
「我自ラ識↢念スルニ往世ノ時ヲ↡ | 其ノ数具↢足シテ六万歳ヲ↡ |
常ニ随ヒテ↢法師ニ↡不リシニ↢捨離セ↡ | 初メヨリ不リキ↠得↠聞クコトヲ↢是ノ三昧ヲ↡ |
^仏ましましき。 号をば具至誠とまうしき。 時に智の比丘ありき。 和隣と名づけき。
かの仏世尊の*泥洹の後に、 比丘つねにこの三昧を持ちき。
有シキ↠仏号ヲバ曰シキ↢具至誠ト↡ | 時ニ智ノ比丘アリキ名ケキ↢和*隣ト↡ |
彼ノ仏世尊ノ泥洹ノ後ニ | 比丘常ニ持チキ↢是ノ三昧ヲ↡ |
^われ時に王君子の種たりき。 夢のなかにこの三昧を聞くに逮びぬ。
ª和隣比丘この経を有てりき。 王まさに従ひてこの*定意を受くべかりきº と。
我時ニ為リキ↢王ノ君子ノ種↡ | 夢ノ中ニ逮ビヌ↠聞クニ↢是ノ三昧ヲ↡ |
和*隣比丘有テリキ↢斯ノ経ヲ↡ | 王当ニカリキト↣従ヒテ受ク↢此ノ定意ヲ↡ |
^夢より覚めをはりてすなはち往きて求むるに、 すなはち比丘の三昧を持てるを見つ。
すなはち鬚髪を除きて沙門となりにき。 学すること八千歳して一時聞きき。
従リ↠夢覚メ已リテ即チ往キテ求ムルニ | 輒ク見ツ↣比丘ノ持テルヲ↢三昧ヲ↡ |
即チ除キテ↢*鬚髪ヲ↡作リニキ↢沙門ト↡ | 学スルコト八千歳シテ一時聞キキ |
^その数八万歳を具足するまで、 この比丘を供養し*奉事しき。
時に魔の因縁しばしば興起して、 初めよりいまだかつて一反すら聞くことを得ざりき。
其ノ数具↢足シテ八万歳ヲ↡ | 供↢養シ奉↣事シキ此ノ比丘ヲ↡ |
時ニ魔ノ因縁数バ興起シテ | 初メヨリ未ダリキ↣曽ニモ得↢一反スラ聞クコトヲ↡ |
^このゆゑに比丘・比丘尼、 および清信士・清信女、
この経法を持てとなんぢらに属す。 この三昧を聞きては疾く受行せよ。
是ノ故ニ比丘・比丘尼 | 及ビ清信士・清信女 |
持チテ↢是ノ経法ヲ↡属ス↢汝等ニ↡ | 聞キテハ↢是ノ三昧ヲ↡疾ク受行セヨ |
^1002つねにこれを習持せる法師を敬ひて、 一劫を具足するまで懈ることを得ることなかれ。 乃至
たとひ億千*那術劫に、 この三昧を求むるに聞くことを得ること難し。
常ニ敬ヒテ↧習↢持セル是ヲ↡法師ヲ↥ | 具↢足シテ一劫ヲ↡无レ↠得ルコト↠懈ルコトヲ。乃至 |
仮使億千那*術劫ニ | 求ムルニ↢是ノ三昧ヲ↡難シ↠得ルコト↠聞クコトヲ |
^たとひ世界の、 恒沙のごとき、 なかに満てらん珍宝をもつて布施せんも、
もしこの一偈の説を受けて*敬誦することあらんには、 功徳かれに過ぎたらん」 と。
設令世界ノ如キニ↢恒沙ノ↡ | 満テラム↠中1135ニ珍宝ヲ用テ布施セムモ |
若シ有ラムニハ↧受ケテ↢是ノ一偈ノ説ヲ↡ | 敬↥誦スルコト功徳過ギタラムト↢於*彼ニ↡」 |
^¬双巻経¼ (大経・下) にのたまはく、 「▲たとひ大火ありて三千大千世界に充満せりとも、 かならずまさにこれを過ぎて、 この経法を聞きて、 歓喜し信楽し、 受持し読誦して、 説のごとく修行すべし。
¬双巻経ニ¼云ク、「設ヒ有リテ↢大火↡充↢満セリトモ三千大千世界ニ↡、要ズ当ニシ↧過ギテ↠此ヲ聞キテ↢是ノ経法ヲ↡、歓喜シ信楽シ受持シ読誦シテ、如ク↠説ノ修行ス↥。
^◆所以はいかん。 多く菩薩ありてこの経を聞かんと欲すとも、 しかも得ることあたはず。 ◆もし衆生ありてこの経を聞くものは、 無上道においてつひに退転せじ。 このゆゑに、 まさに専心にして信じ、 受持し読誦して、 行ずべし」 と。 以上
所以者何ン。多ク有リテ↢菩薩↡欲ストモ↠聞カムト↢此ノ経ヲ↡而モ不↠能ハ↠得ルコト。若シ有リテ↢衆生↡聞カム↢此ノ経ヲ↡者ハ、於テ↢无上道ニ↡終ニ不↢退転セ↡。是ノ故ニ、応ニ当シト↢専心ニシテ信ジ受持シ読*誦シテ行ズ↡。」 已上
^この念をなすべし、 「あるいは*大千の猛火聚を過ぎ、 あるいは億劫を経とも、 法を求むべし。 われすでに深三昧に値遇せり。 いかんぞ退屈して勤修せざらん」 と。
応シ↠作ス↢*是ノ念ヲ↡、或イハ過ギ↢大千ノ猛火聚ヲ↡、或イハ経テモ↢億劫ヲ↡応シ↠求ム↠法ヲ。我既ニ*値↢遇セリ深三昧ニ↡。如何ゾ退屈シテ不ラムト↢勤修セ↡。
^行者、 このもろもろの事において、 もしは多もしは少、 楽に随ひて憶念せよ。 もし憶念することあたはずは、 すべか1003らく巻を披きて文に対ひて、 あるいは*決択し、 あるいは誦詠し、 あるいは恋慕し、 あるいは敬礼すべし。 近くは*勤心の方便となし、 遠くは見仏の因縁を結べ。 おほよそ三業・四儀に、 仏の境界を忘るることなかれ。
▼行者於テ↢此ノ諸ノ事ニ↡、若シハ多若シハ少、随ヒテ↠楽ヒニ憶念セヨ。若シ不ハ↠能ハ↢憶念スルコト↡、須クシ↢披キテ↠巻ヲ対ヒテ↠文ニ、或イハ決*択シ、或イハ誦詠シ、或イハ恋慕シ、或イハ敬礼ス↡。近クハ為シ↢勤心之方便ト↡、遠クハ結ベ↢見仏之因縁ヲ↡。凡ソ三業・四儀ニ勿レ↠忘ルルコト↢仏ノ境界ヲ↡矣。
^問ふ。 如来のかくのごとき種々の功徳を信受し、 憶念するは、 なんの*勝利やある。
問フ。信↢受シ憶↣念スルハ如来ノ如キ↠是クノ*種々ノ功徳ヲ↡、有ル↢何ノ勝利ヤ↡。
^答ふ。 ¬度諸仏境界経¼ にのたまはく、 「もし十方世界の微塵等の諸仏および声聞衆において、 百味の飲食、 微妙の天衣を施すること、 日々に廃せずして恒沙の劫を満てて、 かの仏の滅後に、 一々の仏のために、 十方界の一々の世界において塵数の塔を起て、 衆宝をもつて荘厳し、 種々に供養すること、 一日に三時、 日々に廃せずして恒沙の劫を満てて、 また無数無量の衆生を教へて、 もろもろの供養を設けしめんに、 もし一人ありて、 この如来の智慧功徳、 不可思議の境界を信ぜば、 所得の功徳はかれに勝れたること無量なり」 と。 取意
答フ。¬度諸仏境界経ニ¼云ク、「若シ於テ↢十方世界ノ微塵等ノ諸仏及ビ声聞衆ニ↡、施シテ↢百味ノ飲食、微妙ノ天衣ヲ↡、日々ニ不シテ↠*廃セ、満テテ↢恒沙ノ劫ヲ↡、彼ノ仏ノ滅後ニ、為ニ↢一々ノ仏ノ↡、於テ↢十方界ノ一々ノ世界ニ↡起テテ↢塵数ノ塔ヲ↡、衆宝ヲモテ荘厳シ、種々ニ供養シ一日ニ三時スルコト、日々ニ不シテ↠*廃セ満テテ↢恒沙ノ劫ヲ↡、復教ヘテ↢无数无量ノ衆生ヲ↡設ケシメムニ↢諸ノ供養ヲ↡。若シ有リテ↢一人↡信ゼム↢此ノ如来ノ智*慧功徳、不可思議ノ境界ヲ↡所得ノ功徳ハ、勝レタルコト↠彼ニ无量ナリト。」取意
^また ¬華厳¼ の偈にのたまはく、
又¬花厳ノ¼偈ニ云ク、
^「如来の自在力は、 無量劫にも遇ふこと難し。
もし一念の信をなすは、 すみやかに無上道を証す」 と。
「如来ノ自在力ハ | 无量劫1136ニモ難シ↠遇フコト |
若シ生スハ↢一念ノ信ヲ↡ | 速ニ証スト↢无上*道ヲ↡」 |
^余は、 ▽下の利益門のごとし。
余ハ如シ↢下ノ利益門ノ↡。
^1004▼問ふ。 凡夫の行人は、 物に逐ひて意移る。 なんぞつねに念仏の心を起すことを得ん。
問フ。凡夫ノ行人ハ逐ヒテ↠物ニ意移ル。何ゾ常ニ得ム↠起スコトヲ↢念仏之心ヲ↡。
^◆答ふ。 かれ、 もしただちに仏を念ずることあたはずは、 事々に寄せてその心を勧発すべし。
答フ。彼若シ不ハ↠能ハ↢直爾ニ念ズルコト↟仏ヲ、応シ↧寄セテ↢事々ニ↡勧↦発ス其ノ心ヲ↥。
^◆いはく、 遊戯・談笑の時には、 極楽界の宝池・宝林のなかにして、 天・人聖衆と、 かくのごとく娯楽することを得んと願へ。 もし憂苦する時には、 もろもろの衆生とともに、 苦を離れて極楽に生ぜんと願へ。 もし*尊徳に対ひては、 まさに極楽に生れて、 かくのごとく世尊に奉らんと願ふべし。 もし卑賎を見ば、 まさに極楽に生じて、 孤独の類を*利楽せんと願ふべし。
謂ク遊戯・談笑ノ時ニハ、願ヘ↧於テ↢極楽界ノ宝池宝林ノ中ニ↡、与↢天人聖衆↡如クシテ↠是クノ得ムト↦娯楽スルコトヲ↥。若シ憂苦セム時ニハ、願ヘ↧共ニ↢諸ノ衆生ト↡離レテ↠苦ヲ生ゼムト↦極楽ニ↥。若シ対ヒテハ↢尊徳ニ↡、当ニシ↠願フ↧生レテ↢極楽ニ↡如クシテ↠是クノ奉ラムト↦世尊ニ↥。若シ見テハ↢卑賎ヲ↡、当ニシ↠願フ↧生ジテ↢極楽ニ↡利↦楽セムト孤独ノ類ヲ↥。
^おほよそ人畜を見るごとに、 つねにこの念をなすべし、 「願はくは、 この衆生とともに安楽国に往生せん」 と。 もし飲食する時には、 まさに極楽の自然の微妙の食を受けんと願ずべし。 衣服・臥具、 行住坐臥、 違縁・順縁、 一切准へて知れ。
凡ソ毎ニ↠見ム↢人畜ヲ↡、常ニ応シ↠作ス↢是ノ念ヲ↡、願クハ共ニ↢此ノ衆生ト↡往↢生セムト安楽国ニ↡。若シ飲食セム時ニハ、当ニシ↠願ズ↠受ケムト↢極楽ノ自然ノ微妙ノ食ヲ↡。衣服・臥具、行住坐臥、違縁・順縁、一切准ヘテ知レ。
^事に寄せて願をなすこと、 これ ¬華厳経¼ 等の例なり。
寄セテ↠事ニ作スコト↠願ヲ、是¬花厳経¼等ノ例也
二 Ⅴ ⅳ 止悪修善
【51】^第四に△*止悪修善とは、 ¬観仏三昧経¼ にのたまはく、 「この念仏三昧を、 もし成就せんには、 五の因縁あり。 ▼一には▽持戒不犯。 二には▽不起邪見。 三には▽不生憍慢。 四には▽不恚不嫉。 五には▽勇猛精進して、 頭燃を救ふがごとくす。
第四ニ止悪修善ト者、¬観仏三昧経ニ¼云ク、「此ノ念仏三昧ヲ若シ成*就スルコト者有リ↢五ノ因縁↡。一ニ者持戒不犯。*二ニハ不起邪見。三ニ者不生憍慢。四ニ者不恚不嫉。五ニ者勇猛精進スルコト如クスルナリ↠救ハムガ↢頭ノ燃エムヲ↡。
^この五の事を行じて、 まさしく諸仏の微妙の色身を念じて、 心をして退せざらし1005めよ。 またまさに▽大乗経典を読誦すべし。 この功徳をもつて仏力を念ずるがゆゑに、 疾々に無量の諸仏を見たてまつることを得」 と。 以上
行ジテ↢此ノ五ノ事ヲ↡正シク念ジテ↢諸仏ノ微妙ノ色身ヲ↡、令メヨ↢心ヲシテ不ラ↟退セ。亦当ニシ↣読↢誦ス大乗経典ヲ↡。以テ↢此ノ功徳ヲ↡念ズルガ↢仏力ヲ↡故ニ、*疾々ニ得ト↠見タテマツルコトヲ↢无量ノ諸仏ヲ↡。」 *已上
^問ふ。 この*六種の法はなんの義かあるや。
問フ。此ノ六種ノ法ハ有ル↢何ノ義カ↡耶。
・戒
^答ふ。 同経にのたまはく、 △「浄戒をもつてのゆゑに、 仏の像面を見たてまつること、 真金の鏡のごとくして、 了々分明なり」 と。
答フ。同ジキ¬経ニ¼云ク、「以テノ↢浄戒ヲ↡故ニ見タテマツルコト↢仏ノ像面ヲ↡、如クシテ↢真金ノ鏡ノ↡了々分明ナリト。」
^また ¬大論¼ (大智度論) にいはく、 「仏は医王のごとく、 法は良薬のごとく、 僧は*瞻病人のごとく、 戒は服薬の禁忌のごとし」 と。 以上
又¬大論ニ¼云ク、「仏ハ如シ↢医王ノ↡。法1137ハ如シ↢良薬ノ↡。僧ハ如シ↢瞻病人ノ↡。*戒ハ如シト↢服薬ノ禁忌ノ↡。」 已上
^ゆゑに知りぬ、 たとひ法薬を服したりとも、 禁戒を持たずは、 煩悩の病患を除愈するに由なし。
故ニ知リヌ、設ヒ服シタリトモ↢法薬ヲ↡、不ハ↠持タ↢禁戒ヲ↡、無シ↠由↣除↢愈スルニ煩悩ノ病患ヲ↡。
^ゆゑに ¬般舟経¼ にのたまはく、 「戒を破ること、 大きさ毛髪のごとくにもすることを得ざれ」 と。 以上、 戒品。
故ニ¬般*舟経ニ¼云ク、「不レト↠得↣破ルコト↠戒ヲ大キサ如クニモスルコトヲ↢毛髪ノ↡。」已上「戒*品」
・邪見憍慢
^△¬観仏経¼ にのたまはく、 「もし*邪念および*貢高の法を起さば、 まさに知るべし、 この人はこれ*増上慢にして、 仏法を破滅す。 多く衆生をして不善の心を起さしめ、 和合僧を乱り、 異を顕して、 衆を惑はす。 これ悪魔の伴なり。
¬観仏経ニ¼云ク、「若シ起ス↢邪*命及ビ貢高ノ法ヲ↡、当ニシ↠知ル、此ノ人ハ是増上慢ナリ。破↢滅ス仏*法ヲ↡。多ク使ム↣衆生ヲシテ起サ↢不善ノ心ヲ↡。乱リ↢和合僧ヲ↡、顕シテ↠異ヲ*惑ス↠*衆ヲ。是悪魔ノ伴ナリ。
^かくのごとき悪人は、 また仏を念ずといへども、 甘露の味はひを失ふ。 この人は生るる処に、 貢高をもつてのゆゑに、 身つねに卑小にして、 下賎の家に生れ、 貧窮の諸衰、 無量の悪業、 もつて*厳飾となす。 かくのごとき種々の衆多の悪事は、 まさにみづから防護して、 永1006く生ぜざらしむべし」 と。 以上、 邪見・憍慢。
如キ↠是クノ悪人ハ、雖モ↢復念ズト↟仏ヲ失フ↢甘露ノ味ヲ↡。此ノ人ハ生ルル処ニ、以テノ↢貢高ヲ↡故ニ身恒ニ卑小ナリ。生ル↢下賎ノ家ニ↡。貧窮ノ諸衰、无量ノ悪業ヲ以テ為リ↢厳飾ト↡。如キ↠*此クノ種々ノ衆多ノ悪事ヲ、当ニシト↣自ラ防護シテ*令ム↢永ク不ラ↟生ゼ。」已上邪見・憍慢
・瞋恚
^△¬六波羅蜜経¼ にのたまはく、 「無量劫のうちにもろもろの善を修行すとも、 *安忍の力および智慧の眼なければ、 一念の瞋火に焼滅して余なし」 と。
¬六波羅蜜経ニ¼云ク、「无量劫ノ中ニ修↢行ストモ諸ノ善ヲ↡、无ケレバ↢安忍ノ力及ビ智慧ノ眼↡一念ノ瞋火ニ焼滅シテ无シト↠余。」
^またある所に説きていはく、 「よく大利を損ずること、 瞋りに過ぎたるはなし。 一念の因縁ことごとく倶胝広劫の所修の善を焚滅す。 このゆゑに慇懃につねに捨離すべし」 と。
*又或ル処ニ説キテ云ク、「能ク損スルコト↢大利ヲ↡莫シ↠過ギタルハ↠瞋ニ。一念ノ因縁悉ク焚↢滅ス倶胝広劫ノ所修ノ善ヲ↡。是ノ故ニ慇懃ニ常ニ捨離スベシト。」
^また ¬*遺教経¼ にのたまはく、 「功徳を劫むる賊は、 瞋恚に過ぎたるはなし」 と。
又¬遺教経ニ¼云ク、「劫ムル↢功徳ヲ↡賊ハ无シト↠過ギタルハ↢瞋*恚ニ↡。」
^¬大集¼ の 「月蔵分」 (意) に、 無瞋の功徳を説きてのたまはく、 「つねに*賢聖とあひ会して、 三昧に着くことを得」 と。 以上、 瞋恚。
¬大集ノ¼「月蔵分ニ」説キテ↢无瞋ノ功徳ヲ↡云ク、「常ニ与↢賢聖↡相会シテ得ト↠著スコトヲ↢於三昧ヲ↡。」已上瞋恚
・嫉妬
^△¬双巻経¼ (大経・下) にのたまはく、 「▲今世の恨みの意は微しきあひ憎嫉すれども、 後世にはうたたはなはだしくして、 大きなる怨となるに至る」 と。 云々
¬双巻経ニ¼云ク、「今世ニ恨ノ意ヲモテ微シキ相憎嫉スレバ、後世ニハ転タ劇シクシテ至ルト↠成スニ↢大ナル怨ヲ↡。」云々
^また他人を*嫉毀する、 その罪はなはだ重し。
又嫉↢毀スル他人ヲ↡、其ノ罪甚ダ重シ。
^また ¬宝積経¼ の九十一にのたまふがごとし。 「仏、 *施鹿園にましましき。 時に六十の菩薩あり。 業障深重にして、 諸根闇鈍なり。 仏足を頂礼して悲感して涙を流す。 みづから起くることあたはず。
*又如シ↢¬宝積経ノ¼九十一ニ云フガ↡。「仏在シキ↢施鹿園ニ↡。時ニ有リ↢六十ノ菩薩↡。業障深重ニシテ諸根闇鈍ナリ。頂↢礼シテ仏足ヲ↡悲感シテ流ス↠涙ヲ。不↠能ハ↢自ラ起クルコト↡。
^時に仏告げてのたまはく、 ªなんぢら、 起くべし。 また悲号して大熱悩をなすことなかれ。 なんぢ、 曽、 *倶留孫仏の法のなかにして、 出家して道をなせしかども、 みづから多聞・持1007戒・頭陀・少欲に執着せりき。 時に二の説法の比丘ありき。 もろもろの親友多く、 名聞・利養ありき。 なんぢら、 嫉妬の心をもつて妄言誹謗して、 かの親友・もろもろの衆生をして、 随順の心なく、 もろもろの善根を断ぜしめき。
時ニ仏告ゲテ言ク、汝等、応シ↠起1138ク。勿レ↣復悲*号シテ生スコト↢大熱悩ヲ↡。汝曽於テ↢*倶留孫仏ノ法ノ中ニ↡出家シテ為レリキ↠道ト。自ラ執↢著セリキ多*聞・持戒・頭陀・少欲ニ↡。時ニ有リキ↢二ノ説法ノ比丘↡。多カリキ↢諸ノ親友↡。名聞・利養アリキ。汝等以テ↢嫉妬ノ心ヲ↡妄言誹謗シテ、令メキ↧彼ノ親友ノ諸ノ衆生ヲシテ、无ク↢随順ノ心↡断ゼ↦諸ノ善根ヲ↥。
^この悪業によりて、 六十百千歳のうちに阿鼻地獄に生れき。 余業いまだ尽きずして、 また四十百千歳のうちに等活地獄に生れ、 また二十百千歳のうちに黒縄地獄に生れ、 また六十百千歳のうちに焼熱地獄に生れき。
由リテ↢此ノ悪業ニ↡於テ↢六十百千歳ノ中ニ↡生レキ↢阿鼻地獄ニ↡。余業未ダシテ↠尽キ、復於テ↢四十百千歳ノ中ニ↡生レキ↢等活地獄ニ↡。復於テ↢二十百千歳ノ中ニ↡生レキ↢黒縄地獄ニ↡。復於テ↢六十百千歳ノ中ニ↡生レキ↢焼熱地獄ニ↡。
^かしこより歿しをはりて、 還りて人となることを得て、 五百世のうちに*生盲にして目なかりき。 在々の所生に正念を忘失し善根を*障礙しき。 形容醜欠にして、 人見んと喜まざりき。 つねに辺地に生れて、 貧窮下劣なりき。
従リ↠彼歿シ已リテ還リテ得テ↠為ルコトヲ↠人ト、五百世ノ中ニ生盲ニシテ无カリキ↠目。在々ノ所生ニ忘↢失シ正念ヲ↡障↢礙シキ善根ヲ↡。形容醜欠ニシテ、人不リキ↠喜マ↠見ムト。常ニ生レテ↢辺地ニ↡貧窮下劣ナリキ。
^ここより歿しをはりて、 後末の五百歳のうちに法滅せんと欲する時に、 還りて辺地にして下劣の家に生れて、 *匱乏飢凍して、 正念を忘失せん。 たとひ善を修せんと欲すとも、 もろもろの*留難多し。
従リ↠此没シ已リテ、於テ↢後*末ノ五百歳ノ中ニ↡法欲セム↠滅セムト時ニ、還リテ於テ↢辺地ニ↡下劣ノ家ニ生レテ、匱乏飢凍シテ、忘↢失セム正念ヲ↡。設ヒ欲ストモ↠修セムト↠善ヲ、多ケム↢諸ノ留難↡。
^五百歳の後に悪業すなはち滅して、 後に阿弥陀仏の極楽世界に生るることを得ん。 この時に、 かの仏、 まさになんぢらがために*阿耨菩提の記を授けたまふべしº と。
五百歳ノ後ニ悪業乃チ滅シテ、於テ↠後ニ得ム↠生ズルコトヲ↢阿弥陀仏ノ極楽世界ニ↡。是ノ時ニ、彼ノ仏当ニシト↧為ニ↢汝等ガ↡*授タマフ↦阿耨菩提ノ記ヲ↥。
^時にもろもろの菩薩、 仏の所説を聞きて、 挙りて身の毛竪ち、 深く憂悔を生じて、 すなはちみづから涙を収めてまうさく、 ªわれ、 今日より*未1008来際に至るまで、 もし*菩薩乗の人において違犯あらんを見て、 その過を挙露さば、 われらすなはち如来を*欺誑したてまつるとせん。
時ニ諸ノ菩薩、聞キタマヒテ↢仏ノ所説ヲ↡、挙リテ身ノ毛竪チ、深ク生ジテ↢憂悔ヲ↡、便チ自ラ収メテ↠涙ヲ、白テ言ク、我従リ↢今日↡至ルマデニ↢未来際ニ↡、若シ於テ↢菩薩乗ノ人ニ↡見テ↠有ラムヲ↢違犯↡挙↢露サバ其ノ過ヲ↡、我等即チ為ムナム↣欺↢誑シタテマツルニ如来ヲ↡。
^われ、 今日より未来際に至るまで、 もし在家・出家の菩薩乗の人の、 欲楽をもつて遊戯し歓娯するを見んも、 つひにその過を伺ひ求めずして、 つねに信敬を生じて、 教師の想を起さん。
我従リ↢今日↡至ルマデニ↢未来際ニ↡、若シ見テ↧在家・出家ノ菩薩乗ノ人ノ以テ↢欲楽ヲ↡遊戯シ歓娯セムヲ↥、終ニ不シテ↣伺ヒ↢求メ其ノ過ヲ↡。常ニ生ジテ↢信敬ヲ↡、起サム↢教師ノ想ヲ↡。
^われ、 今日より未来際に至るまで、 もしよくその身を*摧伏して下劣の想をなすこと、 旃陀羅および狗犬のごとくせずは、 すなはち如来を欺誑したてまつるとせん。 もし持戒・多聞・頭陀・少欲・知足の一切の功徳において、 身みづから*炫曜せば、 すなはち如来を欺誑したてまつるとせん。 所修の*善本をばみづから矜り伐らじ、 所行の罪業をば慚愧発露せん。 もししからずは、 すなはち如来を欺誑したてまつるとせんº と。
我従リ↢今日↡至ルマデニ↢未来際ニ↡、若シ不1139ハ↧善能ク摧↢伏シテ其ノ身ヲ↡、生スコト↢下劣ノ想ヲ↡如クセ↦*旃陀羅及ビ於狗犬ノ↥、則チ為ムナム↣欺↢誑シタテマツルニ如来ヲ↡。若シ於テ↢持戒・多聞・頭陀・少欲知足ノ一切ノ功徳ニ↡身自ラ炫曜セバ、則チ為ムナム↣欺↢誑シタテマツルニ如来ヲ↡。所修ノ善本ヲバ不↢自ラ矜リ伐ラ↡、所行ノ罪業ヲバ慚愧発露セム。若シ不ハ↠爾ラ者*則チ為ムナムト↣欺↢誑シタテマツルニ如来ヲ↡。
^時に仏、 讃じてのたまはく、 ª善きかな、 善きかな。 かくのごとき決定心をもつてせば、 一切の業障みなことごとく消滅し、 無量の善根はまたまさに増長すべしº」 と。 略抄
時ニ仏讃ジテ言ク、善哉善哉。*以テセバ↢如キ↠是クノ決定心ヲ↡、一切ノ業障皆悉ク*銷滅シ、无量ノ善根ハ亦当ニシト↢増長ス↡。」略抄
^このゆゑに ¬大論¼ (大智度論) の偈にいはく、
是ノ故ニ¬大論ノ¼偈ニ云ク、
^「自法に*愛染するがゆゑに、 他人の法を*毀訾するは、
持戒の行人なりといへども、 地獄の苦を脱れず」 と。 以上、 嫉妬。
「自法ニオイテ愛染スルガ故ニ | 毀↢訾スルハ他人ノ法ヲ↡ |
雖モ↢持戒ノ行人ナリト↡ | 不ト↠脱レ↢地獄ノ苦ヲ↡」 已上嫉妬 |
・精進
^△同1009論の偈にいはく、
同ジキ¬論ノ¼偈ニ云ク、
^「*馬・井の二の比丘は、 *懈怠にして悪道に堕したり。
仏を見、 法を聞くといへども、 なほまたみづから勉れざるをもつてなり」 と。 以上
「馬*井ノ二ノ比丘ハ | 懈怠ニシテ堕シタリ↢悪道ニ↡ |
雖モ↢見↠仏ヲ聞クト↟法ヲ | 猶亦不ルヲモテナリト↢自ラ勉レ↡」 已上 |
^またもし精進なくは、 行成就すること難し。 ゆゑに ¬華厳経¼ の偈にのたまはく、
^「*鑚燧して火を求むるがごとし。 いまだ出でざるにしばしば息めば、
火の勢随ひて止滅す。 懈怠のものまたしかなり」 と。 以上、 精進。
又若シ无キハ↢精進↡行難シ↢成*就スルコト↡。故ニ¬花厳*経ノ¼偈ニ云ク、
「如シ↧鑚↢燧テ*火ヲ↡求ムルニ | 未ダルニ↠出デ而数バ息メバ |
*火ノ勢随ヒテ止滅スルガ↥ | 懈怠ノ者モ亦然ナリト」 已上精進 |
・読誦大乗
^△読誦大乗の功徳無量なることは、 ¬*金剛般若論¼ の偈にいふがごとし。
読誦大乗ノ功徳无量ナルコトハ、如シ↢¬金剛般若論ノ¼偈ニ云フガ↡。
^「福は菩提に趣かず。 *二よく菩提に趣く。
*実においては了因と名づく。 *余においては生因と名づく」 と。
「福ハ不↠趣カ↢菩提ニ↡ | 二能ク趣ク↢菩提ニ↡ |
於テハ↠実ニ名ク↢了因ト↡ | 於テハ↠余ニ名クト↢生因ト↡」 |
^以上、 ¬観仏経¼ の*六種の法畢りぬ。 かの ¬経¼ (同) に嫉・恚・精進はつぶさにこれを説かず。 ゆゑに、 余の文をもつて ¬経¼ (同) の意を釈成す。
已上¬観仏経ノ¼六種ノ法畢リヌ。彼ノ¬経ニ¼*嫉・恚・精進ハ不↢具ニ説カ↟之ヲ。故ニ以テ↢余ノ文ヲ↡釈↢成ス¬経ノ¼意ヲ↡
^¬般舟経¼ にまた十の事あり。 かの ¬経¼ (同) にのたまふがごとし。 「もし菩薩ありて*この三昧を学誦せば、 十の事あり。
¬般*舟経ニ¼亦有リ↢十ノ事↡。如シ↢彼ノ¬経ニ¼*云フガ↡。「若シ有リテ↢菩薩↡学↢誦セバ是ノ三昧ヲ↡者、有リ↢十ノ事↡。
^一には他人の利養を嫉妬せざれ。 二1010にはことごとくまさに人を愛敬し、 長老に孝順すべし。 三にはまさに報恩を念ふべし。 四には*妄語せずして非法を離れよ。 五にはつねに*乞食して*請を受けざれ。 六には精進して*経行せよ。 七には昼夜に*臥出することを得ざれ。 八にはつねに布施することを欲ひて、 つひに惜しみ悔ゆることなかれ。 九には深く慧のなかに入りて着するところなかれ。 十には善師に敬事すること、 仏のごとくせよ」 と。 略抄
一ニハ不ル↣嫉↢妬セ他人ノ利*養ヲ↡。二ニハ悉ク当ニシ↧愛↢敬シ人ヲ↡、*教↦順ス於長老ニ↥。三ニハ当ニシ↠念フ↢報恩ヲ↡。四ニハ不シテ↢*妄語セ↡、離ルル↢非法ヲ↡。五ニハ常ニ乞食シテ不ル↠受ケ↠請ヲ。六ニハ精進シテ経行スル。七ニハ昼夜ニ不ル↠得↢臥出スルコトヲ↡。八ニハ常ニ欲ヒテ↢布施セムコトヲ↡、終ニ无シ↢惜シミ悔ユルコト↡。九ニハ深ク入1140リテ↢*恵ノ中ニ↡无キ↢所↠著↡。十ニハ敬↢事スルコト善師ニ↡如クスルト↠仏ノ。」略抄
^問ふ。 ¬般舟経¼ にまた四々十六種の法あり。 ¬十住毘婆沙¼ の第九に百四十余種の法あり。 ¬念仏三昧経¼ に種々の法あり。
問フ。¬般*舟経ニ¼亦有リ↢四々十六*種ノ法↡。¬十住*毘婆*沙ノ¼第九ニ有リ↢百余種ノ法↡。¬念仏三昧経ニ¼有リ↢種種ノ法↡。
^また ¬華厳経¼ の 「入法界品」 の偈にのたまはく、
又¬花厳経ノ¼「入法界品ノ」偈ニ云ク、
^「もし信解して憍慢を離るることあらば、 *発心してすなはち如来を見たてまつることを得るも、
もし*諂誑不浄の心あらば、 億劫に尋求すれども値遇することなからん」 と。
「若シ有リ↢信解↡、離レタルハ↢*憍慢ヲ↡ | 発心ニ即チ得ツモ↠見タテマツルコトヲ↢如来ヲ↡ |
若シ有ルハ↢諂誑不浄ノ心↡ | 億劫ニ尋求スレドモ莫シト↢値遇スルコト↡。」 |
^¬観仏経¼ にのたまはく、 「昼夜六時に*六法を勤行し、 端坐し*正受して、 まさに小語を楽ふべし。 経を読誦し、 広く法教を演ぶるを除きては、 つひに*無義の語を宣説せざれ。 つねに諸仏を念じて、 心々相続せよ。 乃至、 一念のあひだも1011仏を見ざる時あることなし。 心専精なるがゆゑに、 *仏日を離れず」 と。
¬観仏経ニ¼云ク、「昼夜六時ニ勤↢行シ六法ヲ↡、端坐シ正受シテ、当ニシ↠楽フ↢小語ヲ↡。除キテハ↧読↢誦シ経ヲ↡広↦演スルヲ法教ヲ↥、終ニ不レ↣宣↢説セ无義之語ヲ↡。常ニ念ジテ↢諸仏ヲ↡心々相続セヨ。乃至、无シ↠有ルコト↢一念之間モ不ル↠見↠仏ヲ時↡。心専精ナルガ故ニ不ト↠離レ↢仏日ヲ↡。」
^また ¬*遺日摩尼経¼ に説かく、 「沙門の、 牢獄に堕するに、 多くの事あり。 あるいは人を求めて供養を得んと欲し、 あるいは多く衣鉢を積まんと欲し、 あるいは*白衣と厚善し、 あるいはつねに愛欲を念ひ、 あるいは喜みて知友と交結す」 と。 文に多くの法あり、 略してこれを抄す。
又¬遺日摩尼経ニ¼説カク、「沙門ノ堕スルニ↢牢獄ニ↡有リ↢多クノ事↡。或イハ求メテ↠人ヲ欲スル↠得ムト↢供養ヲ↡、或イハ多ク欲↢積スル衣鉢ヲ↡、或イハ与↢白衣↡厚善ナル、或イハ常ニ念ズル↢愛欲ヲ↡、或イハ喜ミテ交↢結スト知友ト↡。」文ニ有リ↢多クノ法↡、略シテ抄ス↠*之ヲ
^なんぞいま、 かれらの法を挙げざるや。
*何ゾ今不ル↠挙ゲ↢彼等ノ法ヲ↡耶。
^答ふ。 もし広くこれを出さば、 還りて行者をして退転の心をなさしめん。 ゆゑに略して要を挙ぐ。
答フ。若シ広ク出サバ↠之ヲ、還リテ令メム↣行者ヲシテ生サ↢退転ノ心ヲ↡。故ニ略シテ挙グ↠要ヲ。
^もし堅く十重・四十八軽戒を持たば、 理かならず念仏三昧を助成して、 また任運に余の行をも持得しつべし。 いはんや六法を具し、 あるいは十法を具せんに、 いづれの行か摂まらざらん。 ゆゑに略して述せず。 しかも*粗強の惑業は、 人をして*覚了せしむれども、 ただ無義の語はその過顕ならずして、 つねに正道を障ふ。 よくこれを治すべし。
若シ堅ク持タバ↢十重・八軽戒ヲ↡、理必ズ助↢成シテ念仏三昧ヲ↡、亦応シ↣任運ニ持↢得シツ余ノ行ヲモ↡。況ヤ具シ↢六法ヲ↡或イハ具セムニ↢十法ヲ↡、何ノ行カ不ラム↠摂マラ。故ニ略シテ不↠述セ。然モ麁強ノ*或業ハ令ムレドモ↢人ヲシテ*学了セ↡。但シ无義ノ語ハ、其ノ過ハ*不シテ↠顕ナラ、恒ニ障フ↢正道ヲ↡。善ク応シ↠治ス↠之ヲ。
^あるいは ¬大論¼ (大智度論) の文によるべし。 いはく、 「人の失火して、 四辺にともに起らんがごときに、 いかんぞそのうちに安処して、 余の事を語説せん。 このなかに仏説きたまはく、 ªもし声聞・辟支仏の事を説くすら、 なほ無益の言となす。 いかにいはんや、 余の事をやº」 と。 以上
或イハ応シ↠依ル↢¬大論ノ¼文ニ↡。*云ク、「*如キニ↢人ノ失シテ↠火ヲ四辺ニ倶ニ起ラムガ↡、云何ゾ安↢処シテ其ノ内ニ↡語↢説セム余ノ事ヲ↡。此ノ中ニ仏説キタマハク、若シ説クスラ↢声聞・辟支仏ノ事ヲ↡猶為ス↢无益之言ト↡。何ニ況1141ヤ余ノ事ヲヤト。」 *已上
^行者つねに娑婆の*依正において火宅の想を生じて、 無益1012の語を絶ち、 相続して仏を念ずべし。
行者常ニ於テ↢娑婆ノ依・*正ニ↡生ジテ↢火宅ノ想ヲ↡、絶チ↢无益ノ語ヲ↡、*相続シテ念ズベシ↠仏ヲ。
^問ふ。 ¬往生論¼ (天親の浄土論) に念仏の行法を説きていはく、 「▲三種の菩提門の相違の法を遠離せよ。 なんらか三種。 ◆一には智慧門によりて、 自楽を求めず。 我心の、 自身に貪着することを遠離するがゆゑに。 ◆二には慈悲門によりて、 一切衆生の苦を抜く。 *無安衆の心を遠離するがゆゑに。 ◆三には方便門によりて、 一切衆生を憐愍する心なり。 自身を供養し恭敬する心を遠離するがゆゑに。 ◆これを、 三種の菩提門の相違の法を遠離すと名づくがゆゑに。
問フ。¬往生論ニ¼説キテ↢念仏ノ行法ヲ↡云ク、「遠↢離セヨ三種ノ菩提門ノ相違ノ法ヲ↡。何等カ三種。一ニ者依リテ↢智*慧門ニ↡、不ル↠求メ↢自楽ヲ↡、遠↣離スルガ我心ニ貪↢著スルコトヲ自身ヲ↡故ニ。二ニ者依リテ↢慈悲門ニ↡、抜ク↢一切衆生ノ苦ヲ↡。遠↢離スルガ无安*衆ノ心ヲ↡故ニ。三ニ者依リテ↢方便門ニ↡、憐↢愍スル一切衆生ヲ↡心ナリ。遠↧離ルガ供↢養シ恭↣敬スル自身ヲ↡心ヲ↥故ニ。是ヲ名クガ↣遠↢離スト三種ノ菩提門ノ相違ノ法ヲ↡故ニ。
^◆菩薩、 かくのごとき三種の菩提門の相違の法を遠離して、 三種の随順菩提門の法満足することを得るがゆゑに。 なんらか三。 ◆一には無染清浄心。 身のためにもろもろの楽を求めざるがゆゑに。 ◆二には安清浄心。 一切衆生の苦を抜くがゆゑに。 ◆三には楽清浄心。 一切衆生をして大菩提を得しむるをもつてのゆゑに。 衆生を摂取して、 かの国土に生れしむるをもつてのゆゑに。 ◆これを三種の随順菩提門の法満足すと名づく」 と。 以上 このなかに、 なんがゆゑぞ、 かの ¬論¼ (浄土論) によらざる。
菩薩遠↢離シテ如キ↠是クノ三種ノ菩提門ノ相違ノ法ヲ↡、得ルガ↢三種ノ随順菩提門ノ法ヲ満足スルコトヲ↡故ニ。何等カ三。一ニ者无染清浄心。不ルガ↣為ニ↠身ノ求メ↢諸ノ楽ヲ↡故ニ。二ニ者安清浄心。抜クガ↢一切衆生ノ苦ヲ↡故ニ。三ニ*者楽清浄心。以テノ↠令ムルヲ↣一切衆生ヲシテ得↢大菩提ヲ↡故ニ。以テノ↧摂↢取シテ衆生ヲ↡生レシムルヲ↦彼ノ国土ニ↥故ニ。是ヲ名クト↢三種ノ随順菩提門ノ法満足スト↡。」 已上 此ノ中ニ、何ガ故ゾ不ル↠依ラ↢彼ノ¬論ニ¼↡。
^答ふ。 △前の*四弘のなかに、 *この六法を具せり。 文言異なりといへども、 その義は闕くることなし。
答フ。前ノ四弘ノ中ニ*具セリ↢此ノ六法ヲ↡。文言雖モ↠異ナリト、其ノ義ハ无シ↠闕クルコト。
^1013▼問ふ。 仏を念ずるに、 おのづから罪を滅す。 なんぞかならずしも堅く戒を持つや。
問フ。念ズルニ↠仏ヲ自ラ滅ス↠罪ヲ。何ゾ必ズシモ堅ク持ツヤ↠戒ヲ。
^◆答ふ。 もし一心に念ぜば、 まことに責むるところのごとし。 しかも*尽日に仏を念ぜんも、 閑かにその実を撿すれば、 浄心はこれ一両、 その余はみな濁乱せり。 野の鹿は繋ぎがたく、 家の狗はおのづから馴れたり。 いかにいはんや、 みづから心をほしいままにせば、 その悪いくばくぞや。
答フ。若シ一心ニ念ゼバ、誠ニ如シ↠所ノ↠責ムル。然モ*尽日ニ念ジテ↠仏ヲ閑ニ撿スレバ↢其ヲ実ヲ↡、浄心ハ是一両、其ノ余ハ皆濁乱セリ。▼野ノ鹿ハ難ク↠繋ギ家ノ狗ハ自ラ馴レタリ。何ニ況ヤ自ラ↢恣ニセバ心ヲ↡、其ノ悪幾許ゾ乎。
^▼このゆゑに、 かならずまさに精進して、 浄戒を持つこと、 なほ明珠を護るがごとくすべし。 後の悔い、 なんぞ及ばんや。 よくこれを思念せよ。
是ノ故ニ、要ズ当ニシ↧精進シテ持ツコト↢浄戒ヲ↡猶如クス↞護ルガ↢明珠ヲ↡。後ノ悔何ゾ及バムヤ。善ク思↢念セヨ之ヲ↡。
^問ふ。 まことにいふところのごとし。 善業はこれ今世の所学、 欣ふといへども、 ややもすれば退す。 妄心はこれ永劫の所習、 厭ふといへども、 なほ起る。 すでにしからば、 なんの方便をもつてかこれを治せん。
問フ。誠ニ如シ↠所ノ↠言フ。▼善業ハ是今世ノ所学、雖モ↠欣フト動バ退ス。妄心ハ是永劫1142ノ所習、雖モ↠厭フト猶起ル。既ニ爾ラバ以テカ↢何ノ方便ヲ↡治セム↠之ヲ。
^答ふ。 その治、 一にあらず。 ¬*次第禅門¼ にいふがごとし。 「^一に、 沈惛闇塞の障を治せんには、 *応仏を観念すべし。
答フ。其ノ治非ズ↠一ニ。如シ↢¬次第禅門ニ¼云フガ↡。「一ニ治セバ↢沈惛闇塞ノ障ヲ↡者、応シ↣観↢念ス応仏ヲ↡。
^三十二相のなかに、 随ひて一を取れ。 あるいは先づ眉間の毫相を取りて、 目を閉ぢて観ぜよ。 もし心闇鈍にしてはるかに成ぜんとするに成ぜずは、 まさに一の*好厳の形像に対ひて、 一心に相を取り、 これを縁じて定に入るべし。 もし明了ならずは、 眼を開きてさらに観じ、 またさらに目を閉ぢよ1014。
卅二相ノ中ニ随ヒテ取レ↠一ヲ。或イハ先ヅ取リテ↢眉間ノ*毫相ヲ↡閉ヂテ↠目ヲ而観ゼヨ。若シ心闇鈍ニシテ懸ニ成ゼムトスルニ不ハ↠成ゼ、当ニ対フテ↢一ノ好厳ノ形像ニ↡、一心ニシテ取リテ↠相ヲ縁ゼヨ↠之ヲ。入リテ↠定ニ。若シ不ハ↢明了ナラ↡、開キテ↠眼ヲ更ニ観ジテ、復更ニ閉ヂヨ↠目ヲ。
^かくのごとくして一相を取ること明了ならば、 次第にあまねく衆相を観じて、 心眼をして開明ならしめ、 すなはち惛睡沈闇の心を破せよ。 仏の功徳を念ずれば、 すなはち罪障を除く。
如クシテ↠是クノ取ルコト↢一相ヲ↡明了ニシテ、次第ニ遍ク観ジテ↢衆相ヲ↡、使メテ↢心眼ヲシテ開明ナラ↡、即チ破セヨ↢惛睡沈闇之心ヲ↡。念↢仏ノ功徳ヲ↡則チ除ク↢罪障ヲ↡。
^二に、 *悪念思惟の障を治せんには、 *報仏の功徳を念ずべし。
二ニ治セバ↢悪念思惟ノ障ヲ↡者、応シ↠念ズ↢報仏ノ功徳ヲ↡。
^正念のうちに、 仏の十力・四無所畏・十八不共・一切種智は、 円かに法界を照らして、 常寂不動にして、 あまねく色身を現じて、 一切を利益したまふ功徳は無量にして不可思議なることを縁ぜよ。 なにをもつてのゆゑに。 この、 仏の功徳を念ずるは、 勝善法を*縁ずるなかより生ずる*心数なれども、 悪念思惟は、 悪法を縁ずるなかより生ずる心数なり。 善はよく悪を破するがゆゑに、 報仏を念ずべし。
正念之中ニ、縁ゼヨ↧仏ノ十力・四无所畏・十八不共・一切種智ノ円カニ照シテ↢法界ヲ↡、常寂不動ニシテ、普ク現ジテ↢色身ヲ↡、利↢益シタマフ一切ヲ↡、功徳ハ无量ニシテ不可思議ナルコトヲ↥。何ヲ以テノ故ニ。此ノ念ズル↢仏ノ功徳ヲ↡従リ↢縁*勝善法ノ中↡生ズル心数ナリ。悪念思惟ハ従リ↧縁ズル↢悪法ヲ↡中↥生ル心数ナリ。善ハ能ク破スルガ↠悪ヲ故ニ応シ↠念ズ↢報仏ヲ↡。
^たとへば、 醜陋少智の人の、 端正大智の人のなかにありては、 すなはちみづから*鄙恥するがごとく、 悪もまたかくのごとし。 善心のなかにありては、 すなはち恥愧しておのづから息む。 仏の功徳を縁ずれば、 念々のうちに一切の障を滅す。
譬ヘバ如ク↧醜*陋少智之人ノ在リテハ↢端正大智ノ*人ノ中ニ↡、即チ自ラ鄙恥スルガ↥、悪モ亦如シ↠是クノ。在リテハ↢善心ノ中ニ↡、則チ恥愧シテ自ラ息ム。縁ズルハ↢仏ノ功徳ヲ↡、念々之中ニ滅ス↢一切ノ障ヲ↡。
^三に、 *境界逼迫の障を治せんには、 *法仏を念ずべし。
三ハ治セバ↢境界逼迫ノ障ヲ↡者、応シ↠念ズ↢法仏ヲ↡。
^法仏とは、 すなはちこれ法性なり。 平等にして不生不滅なり。 形色あることなく、 空寂無為なり。 無為のなかにはすでに境界なし。 何者かこれ逼迫の相ならん。 境界の空なることを知るがゆゑに、 すなはちこれ*対治なり。
法仏ト者即チ是法性ナリ。平等ニシテ不生不滅ナリ。无ク↠有ルコト↢形色↡、空寂无為ナリ。无為之中ニハ既ニ无シ↢境界↡。何者カ是逼迫之相ナラム。知ルガ↢境界ノ空ナルコトヲ↡故ニ、即チ是対治ナリ。
^もし三十二1015相を念ずれば、 すなはち対治にあらず。 なにをもつてのゆゑに。 この人いまだ相を縁ぜざる時に、 すでに境界のために悩乱せらる。 しかるをさらに相を取らば、 この着によりて、 魔はその心を狂乱す。
若シ念ズルハ↢卅二相ヲ↡即チ非ズ↢対治ニ↡。何ヲ以テノ故ニ。是ノ人未ダル↠縁ゼ↠相ヲ時ニ、已ニ為ニ↢境界ノ↡悩1143乱セラルル、而ルヲ更ニ取ラバ↠相ヲ者、因リテ↢此ノ著ニ↡魔ハ狂↢乱ス其ノ心ヲ↡。
^いま空を観じて相を破すれば、 もろもろの境界を除き、 心に在きて仏を念ずれば、 功徳無量にしてすなはち重罪を滅す」 と。 略抄
今観ジテ↠空ヲ破スレバ↠相ヲ除ク↢諸ノ境界ヲ↡。在キテ↠心ニ念ズレバ↠仏ヲ功徳无量ニシテ即チ滅スト↢重罪ヲ↡。略抄
^*別相の治もかくのごとし。 いま三の*通の治を加へん。
別相ノ治モ如シ↠是クノ。今加ヘム↢三ノ通ノ治ヲ↡。
^一には、 よく*惑の起ることを了して、 その心を驚覚して、 煩悩を呵責すること、 悪賊を駆るがごとくし、 三業を防護すること、 油鉢を擎ぐるがごとくせよ。
一ニハ能ク了シテ↢惑ノ起ルコトヲ↡、驚↢覚シテ其ノ心ヲ↡、呵↢*責スルコト煩悩ヲ↡如クシ↠駆ルガ↢悪賊ヲ↡、防↢護スルコト三業ヲ↡如クセヨ↠擎グルガ↢油鉢ヲ↡。
^¬六波羅蜜経¼ にのたまふがごとし。 「結跏趺坐して正念に観察し、 大悲心をもつて屋宅となし、 智慧をもつて鼓となし、 *覚悟の杖をもつてこれを扣き撃ちて、 もろもろの煩悩に告げよ。 ªなんぢら、 まさに知るべし、 もろもろの煩悩の賊は妄想より生ず。 わが法王の家に善事の起ることあり。 なんぢが所為にあらず。 なんぢ、 よろしくすみやかに出づべし。 もし時に出でずは、 まさになんぢが命を断つべしº と。
如シ↢¬六波羅蜜経ニ¼云フガ↡。「結跏趺坐シテ正念ニ観察シ、以テ↢大悲心ヲ↡而シテ為シ↢屋宅ト↡、智*慧ヲモテ為シ↠鼓ト、以テ↢覚悟ノ杖ヲ↡而扣キ↢*撃チテ之ヲ↡、告ゲヨ↢諸ノ煩悩ニ↡。汝等、当ニシ↠知ル、諸ノ煩悩ノ賊ハ従リ↢*妄想↡生ズ。我ガ法王ノ家ニ有リ↢善事ノ起ルコト↡。非ズ↢汝ガ所為ニ↡。汝宜クシ↢速ニ出ヅ↡。若シ不ハ↢時ニ出デ↡当ニシト↠断ツ↢汝ガ命ヲ↡。
^かくのごとく告げをはるに、 もろもろの煩悩の賊は、 尋いでおのづから散滅す。 次に自身において、 よく防護を起して、 放逸すべからず」 と。
如ク↠是クノ告ゲ已ルニ、諸ノ煩悩ノ賊ハ尋ギテ自ラ散*滅ス。次ニ於テ↢自身ニ↡善ク起シテ↢防護ヲ↡不ト↠応カラ↢放逸ス↡。」
^また ¬*菩薩処胎経¼ の偈にのたまはく、
又¬菩薩処胎経ノ¼偈ニ云ク、
^1016「かの犯罪の人の、 満鉢の油を擎げ持して、
もし油を棄つること一渧をもせば、 罪*大僻に交入せん。
「如シ↧彼ノ犯罪ノ人ノ | 擎ゲ↢持シテ満鉢ノ油ヲ↡ |
若シ棄ツルコト↠油ヲ一渧ヲモセバ | 罪交↢入ス大僻ニ↡ |
^左右に伎楽をなせども、 死を懼れて顧視せざるがごとし。
菩薩の*浄観を修するには、 *執意、 金剛のごとく、
左右ニ作レドモ↢伎楽ヲ↡ | 懼レテ↠死ヲ不ルガ↦顧視セ↥ |
菩薩ノ修シテ↢浄観ヲ↡ | 執意如ク↢金剛ノ↡ |
^毀誉および悩乱に、 心意、 *傾動せず。
空は本来浄にして、 彼此、 中間もなしと解す」 と。
毀誉及ビ悩乱ニ | 心意不↢傾動セ↡ |
解スト↣空ハ本来浄ニシテ | 无シト↢彼此中間モ↡」 |
^二には、 通じて*四句を用ゐて、 一切の煩悩の根源を推求せよ。 いはく、 この煩悩は、 *心によりて生ずとやせん、 *縁によりて生ずとやせん、 共に生ずとやせん、 離れて生ずとやせん。
二ニハ通ジテ用ヰテ↢四句ヲ↡、推↢求セヨ一切ノ煩悩ノ根源ヲ↡。謂ク此ノ煩悩ハ、為由リテヤ↠心ニ生ズル、為由リテヤ↠縁ニ生ズル、為共ニ生ヤ、為離レテ生ヤ。
^もし心によりて生ぜば、 さらに縁を待たじ。 あるいは*亀毛・*兎角においても、 貪瞋を生ずべし。
若シ由リテ↠心ニ生ゼバ者、更ニ不↠待タ↠縁ヲ。或イハ於テモ↢亀毛・兎角ニ↡応シ↠生ズ↢貪瞋ヲ↡。
^もし縁によりて生ぜば、 心を用ゐざるべし。 あるいは眠れる人をして煩悩を生ぜしむべし。
若シ由リテ↠縁ニ生ゼバ者、応シ↠不ル↠用ヰ↠心ヲ。或イハ令ムベシ↣眠レル人ヲシテ生ゼ↢於煩悩ヲ↡。
^もし共に生ずとせば、 いまだ共せざるとき、 おのおのなくして、 共の時に、 いづくんぞあらん。 たとへば二の沙の合すといへども、 油なきがごとし。 あるいは*心境ともに合するに、 なんぞ煩悩を生ぜざる時ある。
若シ共ニ生ナラバ者、未ダルトキ↠共セ各ニシテ无シ。共ノ時ニ安ンゾ有ラム。譬ヘバ如ク↢二ノ沙ノ雖モ↠合スト无キガ↟油、或ルトキニ心境倶ニ合スルニ、那ゾ有ル↧不ル↠生ぜ↢煩悩ヲ↡時↥。
^もし離れて生ずとせば、 すでに心を離れ縁を離れたり、 なんぞたちまちに煩悩を生ぜん。 あるいは虚空、 二を離れたり。 つねに1017煩悩を生ずべし。
若シ離テ生1144ナラバ者、既ニ離レ↠心ヲ離レバ↠縁ヲ、那ゾ*急ニ生ゼム↢煩悩ヲ↡。或イハ虚空離レタリ↠二ヲ。*応シ↣常ニ生ズ↢煩悩ヲ↡。
^種々に観察するに、 すでに実の生なし。 よりて来るところなく、 また去るところなし。 内にあらず、 外にあらず、 また中間にあらず。 すべて処所なく、 みな幻有のごとし。 ただ*惑心のみにあらず、 *観心もまたしかなり。 かくのごとく推求するに、 惑心おのづから滅す。
種々ニ観察スルニ、既ニ无シ↢実ノ生↡。无ケレバ↠所↢従ヒテ来ル↡亦无シ↠所↠去ル。非ズ↠内ニ非ズ↠外ニ、亦非ズ↢中間ニ↡。都テ无ク↢処所↡、皆如クシテ↠幻ノ有ナリ。非ズ↢唯シ惑心ノミニ↡、観心モ亦爾ナリ。如ク↠是クノ推求スルニ、惑心自ラ滅ス。
^ゆゑに ¬心地観経¼ の偈にのたまはく、
故ニ¬心地観経ノ¼偈ニ云ク、
^「かくのごとき*心法はもとより有にあらず、 凡夫は執迷して非無なりと謂へり。
もしよく心の*体性の空なることを観ずれば、 *惑障生ぜずしてすなはち解脱す」 と。
「如キ↠是クノ心法ハ本ヨリ非ズ↠有ニ | 凡夫ハ執迷シテ謂ヘリ↢非无ナリト↡ |
若シ能ク観ズルハ↢心ノ体性ノ空ナルコトヲ↡ | 惑障不シテ↠生ゼ便チ解*脱スト」 |
^また ¬*中論¼ の第一の偈にいはく、
又¬中論ノ¼第一ノ偈ニ云ク、
^「諸法は自より生ぜず、 また他よりも生ぜず。
共ならず無因ならず。 このゆゑに無生なりといふことを知りぬ」 と。
「諸法ハ不↢自ヨリ生ゼ↡ | 亦不↢従リモ↠他生ゼ↡ |
不↠共ナラ不↢无因ナラ↡ | 是ノ故ニ知リヌト↢无生ナリトイフコトヲ↡」 |
^この偈によりて、 多くの四句を用ゐるべし。
応シ↧依リテ↢此ノ偈ニ↡用ヰル↦多クノ四句ヲ↥。
^三には、 念ずべし、 「いま、 わが惑心に具足せる八万四千の*塵労門と、 かの弥陀仏の具足したまへる八万四千の*波羅蜜門とは、 本来空寂にして、 *一体無礙なり。 ▼貪欲はすなはちこれ道なり。 恚1018・痴またかくのごとし。 水と氷との、 性の異なる処にあらざるがごとし。
三ニ者応シ↠念ズ、今我ガ惑心ニ具↢足セリ八万四千ノ塵労門ヲ↡。彼ノ弥陀仏ニハ具↢足シタマヘリ八万四千ノ波羅蜜門ヲ↡。本来空寂ニシテ一体无ナリ。貪欲ハ即チ是道ナリ。恚・痴亦如シ↠是クノ。如クナリ↣*水ト与ノ↠*氷性ノ非ザルガ↢異ナル処ニ↡。
^ゆゑに経にのたまはく、 ª煩悩・菩提は体無二なり。 生死・涅槃は異処にあらずº と。
故ニ¬経ニ¼云ク、「煩悩・菩提ハ体无二ナリ。生死・涅槃ハ非ズトイヘリ↢異*処ニ↡。」
^われいま、 いまだ*智火の分あらざるがゆゑに、 ▼煩悩の氷を解きて功徳の水となすことあたはず。 願はくは仏、 われを*哀愍して、 その所得の法のごとく、 *定慧力をもつて荘厳し、 これをもつて解脱せしめたまへ」 と。 かくのごとく念じをはりて、 声を挙げて仏を念じて、 救護を請へ。
我今未ダルガ↠有ラ↢智火ノ分↡故ニ、不↠能ハ↧解キテ↢煩悩ノ氷ヲ↡成スコト↦功徳ノ水ト↥。願クハ仏哀↢愍シタマヘ我ヲ↡。如キハ↢其ノ所得ノ法ノ↡定*恵力ヲモテ荘厳シタマヘリ。以テ↠此ヲ令メタマフベシト↢解脱セ↡。如ク↠是クノ念ジ已リテ、挙ゲテ↠声ヲ念ジテ↠仏ヲ而請ヘ↢救護ヲ↡。
^¬止観¼ にいふがごとし。 「人の重きを引くに、 自力にて前まずは、 傍らの救助を仮りて、 すなはち軽く挙げらるるがごとく、 行人もまたしかなり。 心弱くして障を排ふことあたはずは、 名を称して護を請ふに、 悪縁壊することあたはず」 と。 以上
如シ↢¬止観ニ¼云フガ↡。「如ク↧人ノ引クニ↠重キヲ自力ニテ不レバ↠前マ、仮リテ↢傍ノ救助ヲ↡、則チ*蒙ルルガ↦軽ク挙ゲ↥行人モ亦爾ナリ。心弱クシテ不ハ↠能ハ↠排フコト↠障ヲ、称シテ↠名ヲ請フニ↠護ヲ、悪縁不ト↠能ハ↠*壊スルコト。」 已上
^もし惑、 心を覆ひて*通別の対治を修せんと欲せしめずは、 すべからくその意を知りて、 つねに心が師となりて、 心を師とせざるべし。
若シ惑覆ヒテ↠心ヲ不ハ↠令メ↠欲セ↠修セムト↢通・別ノ対治ヲ↡、須クシ↧知リテ↢其ノ意ヲ↡、常ニ為リテ↢心ガ師ト↡、不ル↞師トセ↢於心ヲ↡。
^問ふ。 もし破戒のもの、 三昧成ぜずは、 いかんぞ、 ¬観仏経¼ に、 「この観仏三昧は、 これ一切衆生の、 罪を犯せるものの薬、 破戒のものの護りなり」 とのたまへるや。
問フ。若シ破戒ノ者ハ三昧不ハ↠成ゼ、云何1145ゾ¬観仏経ニ¼云ヘル↢「此ノ観仏三昧ハ是一切衆生ノ犯セル↠罪ヲ者ノ薬、破戒ノ者ノ護ナリト」↡*耶
^答ふ。 破戒の以後に、 前の罪を滅せんがために一心に仏を念ず。 これがために薬と名づく。 もしつねに毀犯せば、 三昧成じがたし。
答フ。破戒ノ已後ニ為ニ↠滅セムガ↢前ノ罪ヲ↡一心ニ念ズル↠仏ヲ、為ニ↠此ガ名ク↠薬ト。若シ常ニ毀犯セバ、三昧難ケム↠成リ。
二 Ⅴ ⅴ 懴悔衆罪
【101952】^第五に△*懴悔衆罪とは、 *もし煩悩のためにその心を迷乱して禁戒を毀らば、 日を過ぐさずして懴悔を営修すべし。
第五ニ懴悔衆罪ト者、設ヒ*若シ為ニ↣煩悩ノ迷↢乱スルガ其ノ心ヲ↡毀ラバ↢禁戒ヲ↡者、応シ↣不シテ↠過グサ↠日ヲ営テ修ス↢懴悔ヲ↡。
^¬大経¼ (涅槃経) の十九にのたまふがごとし。 「もし罪を覆へば、 罪すなはち増長す。 *発露懴悔すれば、 罪すなはち消滅す」 と。
如シ↢¬大経ノ¼十九ニ云フガ↡。「若シ覆ヘバ↠罪ヲ者罪則チ増長ス。発露懴悔スレバ罪即チ消滅スト。」
^また ¬大論¼ (大智度論・意) にいはく、 「身口の悪を悔いずして仏を見んと欲せば、 この処あることなからん」 と。 以上
又¬大論ニ¼云ク、「身*口ノ悪ヲ不シテ↠悔イ欲セバ↠見ムト↠仏ヲ、无ケムト↠有ルコト↢是ノ処↡。」 已上
^*懴法、 一にあらず。 楽に随ひてこれを修せよ。 あるいは五体を地に投げ、 遍身に汗を流して弥陀仏に帰命し、 眉間の白毫相を念じ、 発露涕泣して、 この念をなすべし、 「過去の空王仏の眉間の白毫相を、 弥陀尊礼敬して、 罪を滅して、 いま仏を得たまへり。 われいま弥陀を礼することは、 またまさにまたかくのごとくなるべし」 と。
*懴法非ズ↠一ニ。随ヒテ↠楽ヒニ修セヨ↠之ヲ。*或イハ五体ヲ投ゲテ↠地ニ遍シテ↠身ニ流シテ↠汗ヲ、帰↢命シテ弥陀仏ニ↡、念ジ↢眉間ノ白毫*相ヲ↡、発露涕泣シテ、応シ↠作ス↢*此ノ念ヲ↡、過去ノ空王仏ノ眉間ノ白毫相ヲ弥陀尊礼*敬シテ、滅シテ↠罪ヲ今得タマヘリ↠仏ヲ。我今*礼スルコトハ↢弥*陀ヲ↡、亦当ニシト↢復如クアル↟是ノ。
^すべからく罪の相に随ひて、 仏の光を哀請すべし。 いはく、 「*檀光を放ちては*慳蔽の罪を滅したまへ。 戒光を放ちては毀禁の罪を滅したまへ。 忍辱の光を放ちては瞋恚の罪を滅したまへ。 精進の光を放ちては懈怠の罪を滅したまへ。 禅定の光を放ちては散乱の罪を滅したまへ。 智慧の光を放ちては愚惑の罪を滅したまへ」 と。
須クシ↧随ヒテ↢罪ノ*相ニ↡哀↦請ス仏ノ光ヲ↥。謂ク放チテハ↢檀光ヲ↡滅シタマヘ↢慳*蔽ノ罪ヲ↡。放チテハ↢戒光ヲ↡滅シタマヘ↢毀禁ノ罪ヲ↡。放チテハ↢忍辱ノ光ヲ↡滅シタマヘ↢瞋恚ノ罪ヲ↡。放チテハ↢精進ノ光ヲ↡滅シタマヘ↢懈*怠ノ罪ヲ↡。放チテハ↢禅定ノ光ヲ↡滅シタマヘ↢散乱ノ罪ヲ↡。放チテハ↢智*慧ノ光ヲ↡滅シタマヘト↢愚*或ノ罪ヲ↡。
^かくのごとくして、 一日もしは七日に至らば、 百千劫の煩悩の重障を除きてん。 あるいは須臾のあひだも、 坐禅入定して仏の白毫を念じ、 心を1020して*了々ならしめ、 謬乱の想なく、 分明にまさしく住して意を注けて息まざれば、 九十六億那由他等の劫の生死の罪を除却す。 あるいは一心にかの仏の*神呪を念ずること、 一返すればよく四重・五逆を滅し、 七返すればよく根本の罪を滅す。 ¬*儀軌¼ に出づ。
如クシテ↠*是ノ一日ヨリ若シハ至ルマデセバ↢七日ニ↡、除キテム↢百千*劫ノ煩悩ノ重障ヲ↡。或イハ須臾ノ間モ坐禅入定シテ念ジテ↢仏ノ白毫ヲ↡、令メ↣心ヲシテ了々ニシテ无カラ↢謬乱ノ想↡、分明ニ正シク住シテ注ケテ↠意ニ不レバ↠息マ、除↢却ス九十六億那由他等ノ劫ノ生死之罪ヲ↡。或イハ一心ニ念ズレバ↢彼ノ仏ノ神呪ヲ↡、一*返ニ能ク滅ス↢四重・五逆ヲ↡。七*返ニ能ク滅ス↢根1146本之罪ヲ↡。出ヅ↢¬儀軌ニ¼↡
^あるいはまた ¬心地観経¼ に、 *理の懴悔を明かしてのたまはく、
或イハ復¬心地観経ニ¼明シテ↢理ノ懴悔ヲ↡云ク、
^「一切のもろもろの罪は、 性みな*如なり。 顛倒の因縁、 妄心より起る。
かくのごとき罪相は本来空なり。 三世のなかに得るところなし。
「一切ノ諸ノ罪ハ性皆如ナリ | 顛倒ノ因縁ヲモテ*妄心ヨリ起ル |
如キ↠是クノ罪相ハ本来空ナリ | 三世之中ニ无シ↠所↠得ル |
^内にあらず外にあらず中間にあらず。 *性相は如々にしてともに不動なり。
真如の妙理は*名言を絶つ。 ただ聖智のみありてよく通達す。
非ズ↠内ニ非ズ↠外ニ非ズ↢中間ニ↡ | 性相ハ如々ニシテ倶ニ不動ナリ |
真如ハ妙理ナリ絶エタリ↢名言ヲ↡ | 唯シ有リテ↢聖智ノミ↡能ク通達ス |
^有にあらず無にあらず有無にあらず。 有無にあらざるにあらず。 *名相を離れ、
法界に周遍して生滅なく、 諸仏は本来同一体なり。
非ズ↠有ニ非ズ↠无ニ非ズ↢有无ニ↡ | 非ズ↠不ザルニ↢有无ニ↡離レタリ↢名相ヲ↡ |
周↢遍シテ法界ニ↡无ク↢生滅↡ | 諸仏ハ本来同一体ナリ |
^ただ願はくは諸仏、 加護を垂れて、 よく一切の顛倒の心を滅したまへ。
願はくはわれ早く*真性の源を悟りて、 すみやかに如来の無上道を証せん」 と。
唯シ願クハ諸仏垂レテ↢加護ヲ↡ | 能ク滅シタマヘ↢一切ノ顛倒ノ心ヲ↡ |
願クハ我早ク悟リテ↢真性ノ源ヲ↡ | 速ニ証セムトイヘリ↢如来ノ无上道ヲ↡。」 |
^1021問ふ。 ただに仏を観念するに、 すでによく罪を滅す。 なんがゆゑぞ、 さらに理の懴悔を修するや。
問フ。*直ニ観↢念スルニ仏ヲ↡、既ニ能ク滅ス↠罪ヲ。何ガ故ゾ更ニ修スル↢理ノ懴悔ヲ↡耶。
^答ふ。 たれかはいふ、 一々にこれを修せよとは。 ただ意楽に随ふべし。 いかにいはんや、 もろもろの罪性は空にして所有なしと観ずるは、 すなはちこれ真実の念仏三昧なり。
答フ。誰カハ言フ、一々ニ修セヨトハ↠之ヲ。但随フベシ↢意楽ニ↡。何ニ況ヤ、観ズルハ↣衆ノ罪性ハ空ニシテ无シト↢所有↡、即チ是真実ノ念仏三昧ナリ。
^¬華厳¼ の偈にのたまふがごとし。
如シ↢¬花厳ノ¼偈ニ云フガ↡。
^「現在は*和合にあらず。 去・来もまたしかなり。
一切の法の無相なる、 これすなはち仏の*真体なり」 と。
「現在ハ非ズ↢和合ニ↡ | *去来モ亦復然ナリ |
一切ノ法ノ无相ナル | 是即チ仏ノ真ノ体ナリト」 |
^また ¬*仏蔵経¼ の 「念仏品」 (意) にのたまはく、 「所有なしと見るを名づけて念仏となし、 諸法の実相を見るを名づけて念仏となす。 分別あることなく、 取なく捨なき、 これ真の念仏なり」 と。 以上
▼*又¬仏蔵経ノ¼「念仏品ニ」云ク、「見ルヲ↠无シト↢所有↡名ケテ為シ↢念仏ト↡、見ルヲ↢諸法ノ実相ヲ↡名ケテ為ス↢念仏ト↡。无ク↠有ルコト↢分別↡、无ク↠取无キ↠捨、是真ノ念仏ナリト。」 已上
^諸余の空・無相等の観も、 これに准じてみな念仏三昧に摂入すべし。
諸余ノ空・无相等ノ観モ、准ジテ↠之ニ皆応シ↣摂↢入ス念仏三昧ニ↡。
^問ふ。 かくのごとき懴悔はなんの*勝徳かある。
問フ。如キ↠是クノ懴悔ハ有ル↢*何ノ勝徳カ↡。
^答ふ。 ¬心地観経¼ の偈にのたまはく、
答フ。¬心地観経ノ¼偈ニ云ク、
^「在家はよく煩悩の因を招き、 出家もまた清浄の戒を破る。
もしよく法のごとく懴悔するものは、 あらゆる煩悩ことごとくみな除こる。 乃至
「在家ハ能ク招ク↢煩悩ノ因ヲ↡ | 出家ハ亦破ル↢清浄ノ戒ヲ↡ |
若シ能ク如ク↠法ノ懴悔スル者ハ | 所有ノ煩悩悉ク皆除コル 乃至 |
^1022懴悔はよく三界の獄を出で、 懴悔はよく菩提の華を開き、
懴悔は仏の*大円鏡を見、 懴悔はよく*宝所に至る」 と。
懴悔ハ能ク出ヅ↢三界ノ獄ヲ↡ | 懴悔ハ能ク開ク↢菩提ノ花ヲ↡ |
懴*悔ハ見ル↢仏ノ大円鏡ヲ↡ | 懴悔ハ能ク至ルト↢於宝所ニ↡」 |
^問ふ。 このなかに何者をか最勝なりとなすや。
問フ。此ノ中ニ何者ヲカ為ル↢最勝ナリトハ↡耶1147。
^答ふ。 もし一人に約せば、 機に順ずるを勝れたりとなす。 もし*汎爾に判ぜば、 *理の懴を勝れたりとなす。
答フ。若シ約バ↢一人ニ↡順ズルヲ↠機ニ為ス↠勝レタリト。若シ汎爾ニ判ズルニハ理ノ懴ヲ為ス↠勝レタリト。
^ゆゑに ¬*如来秘密蔵経¼ の下巻に、 仏、 迦葉に告げてのたまはく、 「もし少不善をも、 もしそれ堅住し、 堅執し、 堅着せば、 一切われ説きて、 これを名づけて犯となす。
故ニ¬如来秘密蔵経ノ¼下巻ニ、仏告ゲテ↢迦葉ニ↡言ク、「若シ少不善ヲモ若シ其レ堅住シ、堅執シ、堅著スレバ、一切我説キテ名ケテ↠之ヲ為ス↠犯ト。
^迦葉、 五無間罪をも、 もし堅住し、 堅執し、 堅着して見をなさざるものをば、 われ、 かれを説きて、 名づけていひて犯となさず。 いはんやまた、 余の*少不善の業道をや。
迦葉、五无間罪ヲモ若シ不ル↣堅住シ、堅執シ、堅著シテ生サ↢於見ヲ↡者ヲバ、我不↢説キテ↠彼ヲ名ケテ曰テ為サ↟犯ト。況ヤ復余ノ少不善ノ業道ヲヤ。
^迦葉、 われは不善の法をもつて菩提を得るにあらず。 また善法をもつて菩提を得るにあらず。 乃至 煩悩は因縁より生ずと解知するを、 菩提を得と名づく。
迦葉、我ハ不ズ↧以テ↢不善ノ法ヲ↡而シテ得ルニ↦菩提ヲ↥。亦不ズ↧以テ↢善ノ法ヲ↡而シテ得ルニ↦菩提ヲ↥。乃至 解↧知スルヲ煩悩ハ従リ↢因縁↡生ズト↥名ク↠得ト↢菩提ヲ↡。
^迦葉、 いかなるをか、 因縁より生ずるところの煩悩を解知すとはなす。 これ*自性なくして起る法は、 これ無生の法なりと解知す。 かくのごとく解知するを、 菩提を得と名づく」 と。 云々
迦葉、云何ナルヲカ為ル↧解↦知ストハ従リ↢因縁↡所ノ↠生ズル煩悩ヲ↥。解↧知スルナリ*是无シ↢自性↡、起ル法ハ是无生ノ法ナリト↥。如ク↠是クノ解知スルヲ、名クト↠得ト↢菩提ヲ↡。」*云々
^また ¬*決定毘尼経¼ (意) にのたまはく、 「大乗のなかにおいて*発起し修行するに、 *日の初分の時に所犯の戒あるに、 日の中分において↓一切智の心を離れずは、 かくのごとき菩薩、 *戒身壊1023せず。 もし日の中分に所犯の戒あるに、 日の後分において一切智の心を離れずは、 かくのごとき菩薩、 戒身壊せず。 乃至
又¬決定毘尼経ニ¼云ク、「於テ↢大乗ノ中ニ↡発起シ修行スルニ、日ノ初分ノ時ニ有ルニ↢所犯ノ*戒↡、於テ↢日ノ中分ニ↡不レバ↠離レ↢一切智ノ心ヲ↡、如キ↠是クノ菩薩*戒身不↠壊セ。*若シ日ノ中分ニ有ルニ↢所犯ノ戒↡、於テ↢日ノ後分ニ↡不レバ↠離レ↢一切智ノ心ヲ↡、如キ↠是クノ菩薩*戒身不↠壊セ。乃至
^もし夜の後分に所犯の戒あるに、 日の初分において一切智の心を離れずは、 かくのごとき菩薩、 戒身壊せず。 この義をもつてのゆゑに、 菩薩乗の人は*開遮の戒を持てば、 たとひ所犯ありとも、 失念して妄りに憂悔を生じて、 みづからその心を悩ますべからず。 声聞乗においては所犯あるものをば、 すなはち声聞の浄戒を破壊しつとなす」 と。 云々
若シ夜ノ後分ニ有ルニ↢所犯ノ戒↡、於テ↢日ノ初分ニ↡不レバ↠離レ↢一切智ノ心ヲ↡、如キ↠是クノ菩薩*戒身不↠壊セ。以テノ↢是ノ義ヲ↡故ニ、菩薩乗ノ人ハ持ツニ↢開遮ノ戒ヲ↡、設ヒ有リトモ↢所犯↡、不↠応カラ↧失念シテ妄ニ生ジテ↢憂悔ヲ↡、自ラ悩マス↦其ノ心ヲ↥。於テハ↢声聞乗ニ↡有ル↢所犯↡者ヲバ、便チ為スト↣破↢壊シツト声聞ノ浄戒ヲ↡。」云々
^「↑一切智の心」 とは、 余処の説に准へば、 これ第一義空相応の心なり。 あるいはこれ*仏の種智を願求する心なるべし。
一切智ノ心ト者、准ヘバ↢余処ノ説ニ↡、是第一義空相応ノ心*也。或イハ*可シ↧是願↢求スル仏ノ種智ヲ↡心ナル↥也。
^問ふ。 もし懴悔を修するに、 よく衆罪を滅せば、 いかんぞ ¬大論¼ (大智度論) の四十六に、 「*戒律のなかの戒は、 また細微なりといへども、 懴悔すればすなはち清浄なり。 十善戒を犯せば、 また懴悔すといへども、 三悪道の罪↓除こらず」 とはいひ、 また ¬*十輪経¼ (意) に説かく、 「▽*十悪輪罪を造れるは、 一切の諸仏の救ひたまはざるところなり」 とはいへる。
問フ。若シ修スルニ↢懴悔ヲ↡能ク滅セバ↢衆罪ヲ↡、云何ゾ¬大論ノ¼六ニ云ヘル↧「戒律ノ中ノ戒ハ、雖モ↢復細1148微ナリト↡、懴*悔シツレバ即チ清浄ナリト。犯シツレバ↢十善戒ヲ↡、雖モ↢復懴悔スト↡、三悪道ノ罪不トハ↞除コラ」。又¬十輪経ニ¼説カク、「造レルハ↢十悪輪罪ヲ↡、一切ノ諸仏之所ナリトハイヘル↠不ル↠救ヒタマハ。」
^答ふ。 ¬観経¼ には、 十念してよく五逆を滅し、 ¬観仏経¼ には、 仏の一相を念ずればよく十悪・五逆を滅し、 ¬大経¼ (涅槃経) には、 闍王、 殺父の罪を懴除し、 ¬*般若経¼ には1024、 読誦・解説すればよく三界の衆生を殺害せる罪を滅して、 悪趣に堕せず、 ¬華厳経¼ には、 普賢の願を誦するに、 一念によく十悪・五逆を滅すと。
答フ。¬観経ニハ¼十念ニ能ク滅ス↢五逆ヲ↡。¬観仏経ニハ¼念ズレバ↢仏ノ一相ヲ↡能ク滅ス↢十悪・五逆ヲ↡。¬大経ニハ¼闍王懴↢除セリ殺父之罪ヲ↡。¬般若経ニハ¼*読誦・解*説スレバ能ク滅シテ↧殺↢害セル三界ノ衆生ヲ↡之罪ヲ↥、不↠堕セ↢悪趣ニ↡。¬花厳経ニハ¼誦スルニ↢普賢ノ願ヲ↡一念ニ能ク滅スト↢十悪・五逆ヲ↡。
^あきらかに知りぬ、 大乗の実説は、 罪を滅せずといふことなし。 しからば、 この ¬論¼ (大智度論) の文は、 あるいはこれ*転重軽受にしてまつたく受けざるにあらざるを、 これを 「↑除こらず」 と名づけ、 あるいはこれ*随転理門の説ならん。
明カニ知リヌ大乗ノ実説ハ无シ↠不トイフコト↠滅セ↠罪ヲ。然モ*此ノ¬論ノ¼文ハ、或イハ是転重軽受ニシテ非ザルヲ↢全ク不ルニ↟受ケ、名クルナリ↢之ヲ不↠除ト↡。或イハ是随転理門之説ナリ。
^また感禅師 (懐感)、 ¬△十輪経¼ を会していはく (群疑論)、 「如来の*密意、 罪を畏さしめんと欲すなり」 と等いへり。 云々
又感禅師会シテ↢¬十輪経ヲ¼↡云ク、「如来ノ密意欲スナリト↠令メムト↠畏サ↠*罪ヲ」等イヘリ。云々
^余は、 下の料簡の▽念仏相門のごとし。 これらはみなこれ*別時の懴悔なり。 しかも行者はつねにまさに三事を修すべし。 ¬大論¼ (大智度論) にいふがごとし。 「菩薩はかならず、 すべからく昼夜六時に、 懴悔・随喜・勧請の三事を修すべし」 と。 略抄
余ハ如シ↢下ノ料簡ノ念仏相門ノ↡。此等ハ皆是別時ノ懴悔ナリ。然モ行者ハ常ニ当ニシ↠修ス↢三事ヲ↡。如シ↢¬大論ニ¼云フガ↡。「菩薩ハ必ズ須クシト↣昼夜六時ニ修ス↢懴悔・随喜・勧請ノ三事ヲ↡。」略抄
^五念門のうちに、 礼拝の次に、 この事を修すべし。
五念門ノ中ニ、礼拝之次ニ応シ↠修ス↢此ノ事ヲ↡。
^¬*十住婆沙¼ の懴悔の偈にいはく、
¬十住婆*娑ノ¼懴悔ノ偈ニ云ク、
^「十方無量の仏は、 知るところ、 尽きたまはずといふことなし。
われいまことごとく前にして、 もろもろの*黒悪を発露す。
「十方无量ノ仏ハ | 所↠知无シ↠不トイフコト↠尽キタマハ |
我今悉ク於テ↠前ニ | 発↢露ス諸ノ黒悪ヲ↡ |
^↓三々合して九種あり、 ↓三煩悩より起る。
今身もしは前身の、 この罪をことごとく懴悔す。
三々合ノ九種アリ | 従リ↢三煩悩↡起ル |
今身若シハ前身ノ | 是ノ罪ヲ*尽ク懴悔ス |
^1025三悪道のなかにして、 もし業報を受くべからんをば、
願はくは今身に償ひて、 悪道に入りては受けじ」 と。
於テ↢三悪道ノ中ニ↡ | 若シ応カラムヲバ↠受ク↢業報ヲ↡ |
願クハ於テ↢今身ニ↡償ヒテ | 不ト↧入リテハ↢悪道ニ↡受ケ↥」 |
^「↑三々合して九種あり」 とは、 身口意におのおの*現・生・後業あり。 「↑三煩悩より起る」 とは、 三界の煩悩なり。
三々合シテ九種アリト者、身口意ニ*各ノ有リ↢現*生*後*業↡。従リ↢三煩悩↡起ルト者、三*界ノ煩悩*也
^勧請の偈 (十住毘婆沙論) にいはく、
勧請ノ偈ニ云ク、
^「十方の一切の仏の、 現在に仏になりたまへるものを、
われ請ひたてまつる。 法輪を転じて、 もろもろの衆生を安楽ならしめたまへと。
「十方ノ一切ノ仏ノ | 現在ニ成リタマヘル↠仏ニ者ヲ |
我請ヒタテマツル転ジテ↢法輪ヲ↡ | 安↢楽ナラシメタマヘト諸ノ衆生ヲ↡ |
^十方の一切の仏、 もし寿命を捨てんと欲したまはば、
われいま頭面をもつて礼して、 勧請して久しく住せしめたてまつらん」 と。
十方ノ一*切ノ仏ノ | 若1149シ欲シタマハムヲ↠捨テムト↢寿命ヲ↡ |
我今頭面ニ礼シテ | 勧請シテ令メタテマツラムト↢久シク住セ↡」 |
^随喜の偈 (十住毘婆娑論) にいはく、
随喜ノ偈ニ云ク、
^「あらゆる布施の福も、 持戒と修禅の行も、
身口意より生ず。 *去・来・今の所有の、
「所有ノ布施ノ福ト | 持チ↠戒ヲ修スル↠禅ヲ行ノ |
従リ↢身口意↡生ズル | 去来今ノ所有ノ |
^三乗を習行する人と、 三乗を具足するものと、
一切の凡夫との福を、 みな随ひて歓喜せん」 と。 以上
習↢行スル三乗ヲ↡人ト | 具↢足セル三乗ヲ↡者ト |
一切ノ凡夫トノ福ヲ | 皆随ヒテ而*歓喜スト」 已上 |
^また*常行三昧・法華三昧・*真言教等に、 みなおのおの文あり。 意に随ひてこれ1026を用ゐよ。
又常行三昧・法花三昧・真言教等ニ皆各ノ有リ↠文。随ヒテ↠意ニ用ヰヨ↠之ヲ。
^もし略を楽はば、 ¬*弥勒菩薩本願経¼ の一偈によるべし。 ¬経¼ (同) にのたまはく、 「^仏、 阿難に語りたまはく、 ª弥勒菩薩、 本道を求めたまひし時に、 耳・鼻・頭・目・手・足・身命・珍宝・城邑・妻子、 および国土を持ちて、 布施して人に与へ、 もつて仏道を成ぜしにはあらず。 ただ*善権安楽の行をもつて、 無上正真の道を致すことを得たりº と。
若シ楽ハバ↠略ヲ者、可シ↠依ル↢¬弥勒菩薩本願経ノ¼一偈ニ↡。¬経ニ¼云ク、「仏語リタマハク↢阿難ニ↡、弥勒菩薩本求メタマヒシ↠道ヲ時ニ、不ズ↧持チテ↢耳・鼻・頭・目・手・足・身命・珍宝・城邑・妻子及以国土ヲ↡、布施シテ与ヘテ↠人ニ以テ成レルニハ↦仏道ヲ↥。但以テ↢善*権安楽之行ヲ↡得タリト↠致ルコトヲ↢无上正真之*道ニ↡。
^阿難、 仏にまうさく、 ª弥勒菩薩は、 なんの善権をもつてか、 仏道を致すことを得たるº と。
阿難白サク↠仏ニ、弥勒菩薩ハ以テカ↢何ノ善*権ヲ↡得タルト↠致ルコトヲ↢仏道ニ↡。
^仏、 阿難に語りたまはく、 ª弥勒菩薩は、 昼夜におのおの三たび、 *正衣束体し、 手を叉へ、 右の膝を地に着けて、 十方に向かひて偈を説きていはく、
仏語タマハク↢阿難ニ↡、弥*勒菩薩ハ昼夜ニ各ノ三タビ正衣束体シ、叉ヘ↠手ヲ右ノ膝ヲ著ケテ↠地ニ、向ヒテ↢於十方ニ↡説キテ↠偈ヲ言ク、
^«われ一切の過を悔いて、 もろもろの*道徳を明かしたまへと勧め、
帰命して諸仏を礼したてまつる。 *無上の慧を得しめたまへ»º と。
我悔イテ↢一切ノ過ヲ↡ | 勧メ↠明シタマヘト↢衆ノ道徳ヲ↡ |
帰命シテ礼シタテマツル↢諸仏ヲ↡ | 令メタマヘト↠得↢无上ノ*慧ヲ↡ |
^仏、 阿難に語りたまはく、 ª弥勒菩薩は、 この善権をもつて無上正真の道を得たりº」 と。 以上
仏語リタマハク↢阿難ニ↡、弥勒菩薩ハ以テ↢是ノ善*権ヲ↡得タリトイヘリ↢於无上正真之道ヲ↡。」 已上
^問ふ。 この懴悔・勧請等の事を修するに、 いくばくの福をか得る。
問フ。修スルニハ↢此ノ懴悔勧請等ノ事ヲ↡、得ル↢幾処ノ福ヲカ↡。
^答ふ。 ¬十住論¼ (十住毘婆沙論) の偈にいはく、
答フ。¬十住論ノ¼偈ニ云ク、
^「もし一時のうちにおいてせんに、 福徳、 形あらば、
1027恒河沙の世界も、 すなはちおのづから容受せじ」 と。
「若シ於テセムニ↢一時ノ中ニ↡ | 福徳有ラバ↠形者 |
恒河沙ノ世界モ | 乃チ自ラ不ト↢容受セ↡」 |
二 Ⅴ ⅵ 対治魔事
【53】^第六に△*対治魔事とは、
第六ニ対治魔事ト者、
^問ふ、 種々の魔事よく正道を障ふ。 あるいは病患を発さしめ、 あるいは観念を失はしめ、 あるいは邪法を得しむ。
問フ。種々ノ魔事能ク障フ↢正道ヲ↡。或イハ令メ↠発サ↢病患ヲ↡、或イハ令メ↠失ハ↢観念ヲ↡、或イハ令ム↠得↢邪法ヲ↡。
^いはゆる、 もしは*有の見もしは*無の見、 もしは明了もしは昏闇、 もしは*邪定もしは*攀縁、 もしは悲もしは喜、 もしは苦もしは楽、 もしは禍もしは福、 もしは悪もしは善、 もしは人を憎みもしは恋着し、 もしは心強くもしは心軟らかなり。 かくのごとき等の事の、 もしは過ぎたる、 もしは及ばざるは、 みなこれ魔事なり。 ことごとく正道を障ふ。 なにをもつてかこれを対治する。
所謂ル若シハ有ノ見若シハ无ノ見、若シハ明了若シハ昏闇、若シハ邪定若シハ攀1150縁、若シハ悲若シハ喜ニマレ、若シハ苦若シハ楽ニマレ、若シハ禍若シハ福ニマレ、若シハ*悪若シハ*善ニマレ、若シハ憎↠人若シハ恋著ニマレ、若シハ心強ク若シハ心軟ニマレ、如キ↠是クノ等ノ事ノ若シハ過ギタル若シハ不ルハ↠及バ、皆是魔事ナリ。悉ク障フ↢正道ヲ↡。何ヲ以テカ対↢治スル之ヲ↡。
^答ふ。 治道多しといへども、 いまただ念仏の一の治によるべし。 このなかにまた↓事↓理あり。
答フ。治道雖モ↠多シト今但応シ↠依ル↢念仏ノ一ノ治ニ↡。此ノ中ニ亦有リ↢事・理↡。
^▽一に↑事の念とは、 言行相応して一心に仏を念ずる時に、 もろもろの悪魔、 *沮壊することあたはず。
一ニ事ノ念ト者、言行相応シテ一心ニ念ズル↠仏ヲ時ニ、諸ノ悪魔不↠能ハ↢俎壊スルコト↡。
^問ふ。 なんがゆゑぞ壊せざる。
問フ。何ガ故ゾ不ル↠壊セ。
^答ふ。 仏、 護念したまふがゆゑに、 法の威力のゆゑに、 沮壊することあたはず。
答フ。仏護念シタマフガ故ニ法ノ威力ノ故ニ不↠能ハ↢俎壊スルコト↡。
^¬大般若¼ に、 魔事を対治するに、 番々の二法を出せるがごとし。 そのなかにのたまはく、 「一には、 いふところのごとくみなことごとくよくなす、 二には、 諸仏のためにつねに護念せらる」 と。
如シ↧¬大般若ニ¼対↢治スルニ魔事ヲ↡出セルガ↦番々ノ二法ヲ↥。其ノ中ニ云ク、「一ニハ如ク↠所ノ↠言フ皆悉ク能ク作ス。二ニハ為ニ↢諸仏ノ↡常ニ為ルナリト↢護念セラルルコトヲ↡。」
^また1028 ¬般舟経¼ にのたまはく、 「もし*閲叉・鬼神の、 人の*禅を壊り、 人の念を奪はんも、 たとひこの菩薩を中らんと欲せば、 つひに中ることあたはじ」 と。
又¬般*舟経ニ¼云ク、「若シ*閲叉・鬼神ノ、壊リ↢人ノ*神ヲ↡奪フモノ↢人ノ念ヲ↡、設ヒ欲セバ↠中ラムト↢是ノ菩薩ヲ↡者終ニ不ト↠能ハ↠*中ルコト。」
^余は下の▽利益門のごとし。
余ハ如シ↢下ノ利益門ノ↡。
^▽二に↑理の念とは、 ¬止観¼ の第八にいふがごとし。 「▼魔界の如と仏界の如とは、 一如にして二如なし。 平等一相なりと知りて、 魔をもつてひとなし、 仏をもつて欣びとなさず、 これを*実際に安く。 乃至
*二ニ理ノ念ト者、如シ↢¬止観ノ¼第八ニ云フガ↡。「知リヌレバ↧魔界ノ如ト、仏界ノ如トハ、一如ニシテ无シ↢二如↡、平等一相ナリト↥、不↢以テ↠魔ヲ為シ↠*ト、以テ↠仏ヲ為サ↟欣ト、安ク↢之ヲ実際ニ↡。乃至
^魔界すなはち仏界なり。 しかも衆生は知らずして仏界に迷ひて、 横に魔界を起し、 菩提のなかにおいて、 しかも煩悩を生ず。 このゆゑに悲を起して、 衆生をして魔界において仏界に即し、 煩悩において菩提に即せしめんと欲ふ。 このゆゑに慈悲を起す」 と。 以上
魔界即チ仏界ナリ。而ルヲ衆生ハ不シテ↠知ラ迷ヒテ↢於テ↢仏界ニ↡横ニ起シ↢魔界ヲ↡、於テ↢菩提ノ中ニ↡而モ生ズ↢煩悩ヲ↡。是ノ故ニ起シテ↠悲ヲ、欲フ↠令メムト↧衆生ヲシテ於テ↢魔界ニ↡即シ↢仏界ニ↡、於テ↢煩悩ニ↡即セ↦菩提ニ↥。是ノ故ニ起スト↢慈*悲ヲ↡。」 已上
^この念をなすべし、 「魔界・仏界および自他界、 同じく空なり、 無相なり。 この諸法の無相、 これすなはち仏の*真体なり。 まさに知るべし、 魔界すなはちこれ仏身なり、 またすなはちわが身なり。 理、 無二なるがゆゑに。 しかるを、 もろもろの衆生は妄想の夢いまだ覚めず。 *一実の相を解らずして、 是非の想を生じて五道に輪廻す。 願はくは、 衆生をして平等の慧に入らしめん」 と。
応シ↠作ス↢是ノ念ヲ↡、魔界・仏界及ビ自他界同ジク空ナリ无相ナリ。此ノ諸法ノ无相是即チ仏ノ真体ナリ。当ニシ↠知ル、魔界即チ是仏身ナリ、亦即チ我ガ身ナリ。理无二ナルガ故ニ。而ルヲ諸ノ衆生ハ妄想ノ夢未ダシテ↠覚メ、不シテ↠解ラ↢一実ノ相ヲ↡、生ジテ↢是非ノ想ヲ↡輪↢廻ス五道ニ↡。願クハ令メムト↣衆生ヲシテ入ラ↢平等ノ*恵1151ニ↡。
^かくのごとく、 深く*無縁の大悲を起して、 乃至 仏の妙色身を観ずといへども、 *三空の門に入1029りて執着すべからず。 熱金丸の、 色の妙なることを見るといへども、 手に触るべからざるがごとし。 いはんや、 余の事において着を生じ、 慢を生ぜんや。 この観をなす時に、 魔、 沮壊せず。
如ク↠是クノ深ク起シテ↢无縁ノ大悲ヲ↡、乃至 雖モ↠観ズト↢仏ノ妙色身ヲ↡、入リテ↢三空ノ門ニ↡不↠応カラ↢執著ス↡。如ク↧熱金丸ノ雖モ↠見ルト↢色ノ妙ナルコトヲ↡、不ルガ↞可カラ↢手ニ触ル↡、況ヤ於テ↢余ノ事ニ↡生ジ↠著ヲ生ゼムヤ↠慢ヲ。作ス↢是ノ観ヲ↡時ニ魔不↢俎壊セ↡。
^ゆゑに ¬大般若経¼ に、 またその治を説きてのたまはく、 「一には諸法はみな*畢竟空なりと観じ、 二には一切有情を棄捨せず」 と。
故ニ¬大般若経ニ¼亦説キテ↢其ノ治ヲ↡云ク、「一ニハ観ズル↢諸法ハ皆畢竟空ナリト↡、二ニハ不ルナリト↣棄↢捨セ一切有情ヲ↡。」
^また ¬大論¼ (大智度論) にいはく、 「十二入はみなこれ*魔網なり。 *虚誑にして実ならず。 このなかにおいて*六種の識を生ずるも、 またこれ魔網にして虚誑なり。 何者かこれ実。 ただ不二の法あるのみ。 眼もなく色もなく、 乃至 意なく法等もなきが、 これを実と名づく。 衆生をして十二入を離れしめんがゆゑに、 つねに種々の因縁をもつてこの不二の法を説く」 と。
又¬大論ニ¼云ク、「十二入ハ皆是魔網ナリ、虚狂ニシテ不↠実ナラ。於テ↢此ノ中ニ↡生ズルモ↢六種ノ識ヲ↡、亦是魔網ニシテ虚狂ナリ。何者カ是実。唯シ不二ノ法ナリ。无ク↠眼モ无ク↠色モ、乃至 无ク↠意无キガ↢法等モ↡、是ヲ名ク↠実ト。令メムガ↣衆生ヲシテ離レ↢十二入ヲ↡故ニ、常ニ以テ↢種々ノ因縁ヲ↡説クト↢是ノ不二ノ*法ヲ↡。」
^問ふ。 なんがゆゑぞ、 空を観ずるに、 魔、 便りを得ざる。
問フ。何ガ故ゾ観ズルニ↠空ヲ、魔不ル↠得↠便ヲ。
^答ふ。 かの ¬論¼ (大智度論) にいはく、 「一切の法のなかにみな*着せず。 着せざるがゆゑに*違錯なし。 違錯なきがゆゑに、 魔、 その便りを得ることあたはず。 たとへば、 人の身に瘡なきときには、 *毒屑のなかに臥すといへども、 毒また入らず。 もし小瘡あらば、 すなはち死ぬるがごとし」 と。
答フ。*彼ノ¬論ニ¼云ク、「一切ノ法ノ中ニ皆不↠著セ。不ルガ↠著セ故ニ无シ↢違錯↡。无キガ↢違錯↡故ニ魔不↠能ハ↠得ルコト↢其ノ便ヲ↡。譬ヘバ、如シト↧人ノ身ニ无キトキニハ↠瘡、雖モ↠臥スト↢毒屑ノ中ニ↡、毒亦不↠入ラ、若シ有ラバ↢小瘡↡、則チ死ヌルガ↥。」
^また ¬大集経¼ の 「月蔵分」 のなかに、 他化天の魔王、 菩提心を発し、 記を受けて、 願を発していはく、 「われら、 現在・未来1030のもろもろの仏弟子の、 第一義と相応して住するものを護念して、 供給し供養せん。 もしわが教に順ぜずして行者を悩乱せば、 すなはちかの類をして種々の病を得しめ、 神通を退失せしめん」 と。 取意
又¬大集経ノ¼「月蔵分ノ」中ニ、他化天ノ魔王発シ↢菩提心ヲ↡、受ケテ↠記ヲ、発シテ↠願ヲ*云ク、「我等護↧念シテ現在・未来ノ諸ノ仏弟子ノ与↢第一義↡相応シテ住セム者ヲ↥、供給シ供養セム。若シ不シテ↠順ゼ↢我ガ教ニ↡悩↢乱セバ行者ヲ↡、即チ令メムト↧彼ノ類ヲシテ得シメ↢種々ノ病ヲ↡、退↦失セ神通ヲ↥。」取意
^あきらかに知りぬ、 *実の魔は便りを得ず、 *権の魔は護念するのみ。 △前の二種の治はみな証拠あり。 ゆゑにさらに諸師の所釈を引かず。
明カニ知リヌ、実ノ魔ハ不↠得↠便ヲ、*権ノ魔ハ護念スラク耳。前ノ二種ノ治ハ皆有リ↢証拠↡。故ニ不↣更ニ引カ↢諸師ノ所釈ヲ↡。
二 Ⅴ ⅶ 総結要行
【54】^▼第七に△*総結要行とは、
第七ニ総結要行ト者、
^◆問ふ、 ▼上の諸門のなかに▼陳ぶるところすでに多し。 ▼いまだ知らず、 いづれの業をか往生の要となす。
問フ。上ノ諸門ノ中ニ所↠陳ブル既ニ多シ。*未ダ↠知ラ何レノ業ヲカ為ル↢往生ノ要ト↡。
^◆答ふ。 大▼菩提心と、 ▼*三業を護ると、 ▼深く信じ、 ▼誠を至して、 ▼常に▼仏を念ずとは、 ▼願に随ひて決定して極楽に生ず。 いはんやまた、 余のもろもろの妙行を具せらんをや。
答1152フ。大菩提心アリテ護リ↢三業ヲ↡、深ク信ジ至↠誠ニシテ常ニ念ズル↠仏ヲ、随ヒテ↠願ニ決定シテ生ル↢極楽ニ↡。況ヤ復具セラムヲヤ↢余ノ諸ノ妙行ヲ↡。
^◆問ふ。 なんがゆゑぞ、 これらを往生の要となす。
問フ。何ガ故ゾ此等ヲ為ル↢往生ノ要ト↡。
^◆答ふ。 菩提心の義は、 △前につぶさに釈するがごとし。 ▼三業の重悪はよく正道を障ふ。 ゆゑにすべからくこれを護るべし。 ▼*往生の業は念仏を本となす。 その念仏の心は、 かならずすべからく理のごとくすべし。 ゆゑに深信・至誠・常念の三の事を具す。
答フ。菩提心ノ義ハ如シ↢前ニ具ニ釈スルガ↡。三業ノ重悪ハ能ク障フ↢正道ヲ↡。故ニ須クシ↠護ル↠之ヲ。往生之業ハ念仏ヲ為ス↠本ト。其ノ念仏ノ心ハ必ズ須クシ↠如クス↠理ノ。故ニ具ス↢深信・至誠・常念ノ三ノ事ヲ↡。
^◆常念に三の益あり。 迦才のいふがごとし。 「一には諸悪の*覚観、 畢竟じて生ぜず。 また業障を消することを得。 二には善根増長し、 また見仏の因縁を種うることを得。 三1031には*薫習熟利して、 命終の時に臨みて、 正念現前す」 (浄土論) と。 以上
常念ニ有リ↢三ノ益↡。如シ↢迦才ノ云フガ↡、「一ニ者諸ノ悪ノ覚観畢竟ジテ不↠生ゼ。亦得↠消スルコトヲ↢於業障ヲ↡。二ニ者善根増長シ、亦得↠種ウルコトヲ↢於見仏ノ因縁ヲ↡。三ニ者薫習熟利シテ、臨↢命終ノ時ニ↡正念現前スト。」 已上
^◆業は願によりて転ず。 ゆゑに随願往生といふ。
業ハ由リテ↠願ニ転ズ。故ニ云フ↢随願往生ト↡。
^◆総じてこれをいへば、 三業を護るは、 これ*止の善なり。 ▼仏を称念するは、 これ*行の善なり。 菩提心および願は、 この二の善を扶助す。 ゆゑにこれらの法を往生の要となす。 その旨経論に出でたり。 これをつぶさにすることあたはず。
総ジテ而言ヘバ↠之ヲ、護ルハ↢三業ヲ↡是*止ノ善ナリ。称↢念スルハ仏ヲ↡是行ノ善ナリ。菩提心及ビ願ハ扶↢助ス此ノ二ノ善ヲ↡。故ニ此等ノ法ヲ為ス↢往生ノ要ト↡。其ノ旨出デタリ↢経論ニ↡。不↠能ハ↠具ニスルコト↠之ヲ。
二 Ⅵ 別時念仏
【55】^大文第六に、 △*別時念仏といふは、 二あり。 ▼初めには▽*尋常の別行を明かす。 次には▽*臨終の行儀を明かす。
大文第六ニ別時念仏トイフ者、有リ↠二。初ニハ明ス↢尋常ノ別行ヲ↡。次ニハ明ス↢臨終ノ行儀ヲ↡。
二 Ⅵ ⅰ 尋常別行
【56】^第一に△尋常の別行とは、 日々の行法においてつねに勇進することあたはず。 ゆゑに、 時ありて別時の行を修すべし。 あるいは一・二・三日、 乃至七日、 あるいは十日乃至九十日、 楽に随ひてこれを修せよ。
第一ニ尋常ノ別行ト者、於テ↢日々ノ行法ニ↡不↠能ハ↢常ニ勇進スルコト↡。故ニ応シ↣有リテ↠時修ス↢別時ノ行ヲ↡。或イハ一・二・三日乃至七日、或イハ十日乃至九十日、随ヒテ↠楽ヒニ修セヨ↠之ヲ。
^いふところの 「一日乃至七日」 とは、 導和尚 (善導) の ¬観念門¼ (観念法門) にいはく、 「^¬*般舟三昧経¼ に、 ª▲仏、 跋陀和に告げたまはく、 «この行法を持てば、 すなはち三昧を得、 現在の諸仏、 ことごとく前にましまして立ちたまふ。
所ノ↠言フ一日乃至七*日ト者、導和尚ノ¬*観念門ニ¼云ク、「¬般舟三昧経ニ¼、仏告ゲタマハク↢跋陀和ニ↡、持セバ↢是ノ行法ヲ↡便チ得テ↢三昧現在スルコトヲ↡、諸仏悉ク在シテ↠前ニ立チタマハム。
^◆それ比丘・比丘尼・優婆塞・優婆夷ありて、 法のごとく、 持戒まつたく具し、 独り一処に止まりて、 西方の阿弥陀仏、 いま現にかしこにましますと念へ。 所聞に随ひてまさに念ずべし1032。 ここを去ること十万億の仏刹なり、 その国を*須摩提と名づく。
其レ有リテ↢比丘・比丘尼・優婆塞・優婆夷↡、如ク↠法ノ持戒完ク具シ、独リ一処ニ*止リテ、念ヘ↢西方ノ阿弥陀仏、今現ニ在スト↟彼ニ。随ヒテ↢所聞1153ニ↡当ニシ↠念ズ。去レルコト↠此ヲ十万億ノ仏刹ナリ、其ノ国ヲバ名ク↢須摩提ト↡。
^◆一心にこれを念ずること、 一日一夜、 もしは七日七夜せよ。 七日を過ぎてより以後に、 これを見たてまつること、 たとへば夢のうちに見るところのごとくせん。 昼夜を知らず、 また内外を知らず、 冥のなかにありて弊礙するところあるによるがゆゑに、 見ざるにあらず。
一心ニ念ズルコト↠之ヲ一日一夜、若シハ七日七夜セヨ。過ギテヨリ↢七日ヲ↡已後ニ、見タテマツルコト↠之ヲ、譬ヘバ如クセム↢夢ノ中ニ所ノ↟見ル。不↠知ラ↢昼夜ヲ↡、亦不↠知ラ↢内外ヲ↡、不ズ↧由リテ↠在ルニ↢冥ノ中ニ↡有ルガ↠所↢弊礙スル↡故ニ不ルニ↞見。
^◆跋陀和、 四衆つねにこの念をなす時に、 諸仏の境界のなかのもろもろの大山・須弥山、 それ幽冥なることある処、 ことごとく*開闢することをなして、 弊礙するところなからん。 この四衆は、 天眼を持ちても徹し視るにあらず、 天耳を持ちても徹し聴くにあらず、 神足を持ちてもその仏刹に到るにあらず、 この間に終りて、 かの間にも生るるにあらずして、 すなはちここに坐してこれを見るなり» と。
跋陀和、四衆常ニ作セ↢是ノ念ヲ↡。時ニ諸仏ノ境界ノ中ノ諸ノ大山・須弥山、其有ル↢幽冥ナルコト↡之処、悉ク為シテ↢*開闢スルコトヲ↡、无ケム↠所↢弊礙スル↡。是ノ四衆ハ不↧持チテモ↢天眼ヲ↡徹シ視ルニアラ↥、不↧持チテモ↢天耳ヲ↡徹シ聴カ↥、不↧持チテモ↢神足ヲ↡到ラ↦其ノ仏刹ニ↥、不ズシテ↧於テ↢此ノ間ニ↡終リテ生ルルニ↦彼ノ間ニモ↥、便チ於テ↠此ニ坐シナガラ見ムト↠之ヲ。
^◆仏ののたまはく、 «四衆、 この間の国土にして、 阿弥陀仏を念ずること、 念をもつぱらにするがゆゑに、 これを見たてまつることを得。 すなはち問へ、 "なんの法を持ちてか、 この国に生るることを得る" と。 阿弥陀仏、 報じてのたまはく、 "来生せんと欲はば、 つねにわが名を念じて休息することを得ることなかれ。 すなはち来生することを得てん"» と。
仏ノ言ク、四衆於テ↢此ノ間ノ国土ニ↡、念ズルコト↢阿弥陀仏ヲ↡専ニスルガ↠念ヲ故ニ、得テ↠見タテマツルコトヲ↠之ヲ、即チ問ハク、持チテカ↢何ノ法ヲ↡得ムト↠生ルルコトヲ↢此ノ国ニ↡。阿弥*陀仏報ジテ言ク、欲ハム↢来生セムト↡者、常ニ念ジテ↢我ガ名ヲ↡莫レ↠得ルコト↢休息スルコトヲ↡。即チ得テムト↢来生スルコトヲ↡。
^◆仏ののたまはく、 «念をもつぱらにするがゆゑに往生することを得。 まさに念ず1033べし、 仏身には三十二相・八十種好ありて、 巨億の光明徹照し、 端正無比にして、 菩薩僧のなかにましまして法を説きたまふことを。 色を壊することなかれ。 なにをもつてのゆゑに。 色を壊せざるがゆゑに、 仏の色身を念ふによるがゆゑに、 この三昧を得»º と。 以上
仏ノ言ノ専ニスルガ↠念ヲ故ニ得トイフハ↢往生スルコトヲ↡、当ニシ↠念フ↧仏身ノ卅二相八十種好アリテ、巨億ノ光明徹照シ、端正无*比ニシテ、在シテ↢菩薩僧ノ中ニ↡説キタマフコトヲ↞法ヲ。莫レ↠壊スルコト↠色ヲ。何ヲ以テノ故ニ。不ルガ↠壊セ↠色ヲ故ニ、由ルガ↠念フニ↢仏ノ色身ヲ↡故ニ得ト↢是ノ三昧ヲ↡。 已上
^◆念仏三昧の法を明かす。
明ス↢念仏三昧ノ法ヲ↡。
^この文はかの ¬経¼ (般舟三昧経) の ª行品º のなかにあり。 もし覚めて仏を見ずは、 夢のうちにこれを見んといへり。
此ノ文ハ在リ↢彼ノ¬経ノ¼「行品ノ」中ニ↡。若シ覚メテ不ハ↠見↠仏ヲ、於テ↢夢ノ中ニ↡見ムトイヘリ↠之ヲ
^▲三昧の道場に入らんと欲ふ時には、 もつぱら仏教の方法によりて、 先づすべからく道場を料理し、 尊像を安置し、 香湯をもつて掃灑すべし。 もし仏堂なきも、 浄き房あらば、 また得たり。 掃灑すること法のごとくして、 一の仏像を取りて西の壁に安置せよ。
欲ハム↠入ラムト↢三昧ノ道場ニ↡時ニハ、一ニハ依リテ↢仏教ノ方法ニ↡先ヅ須クシ↧料↢理シ道場ヲ↡、安↢置シ尊像ヲ↡、香*湯ヲモテ掃灑ス↥。若シ无キハ↢仏堂↡、有バ↢浄キ房モ↡亦得タリ。掃灑スルコト如↠法ニシテ、取リテ↢一ノ仏像ヲ↡西ノ壁ニ安置セヨ。
^◆行者等、 月の一日より八日に至り、 あるいは八日より十五日に至り、 あるいは十五日より二十三日に至り、 あるいは二十三日より三十日に至るまで、 月別に四時するは佳し。 行者等、 みづから家業の軽重を量りて、 この時のうちにおいて浄行の道に入れ。
行者等従リ↢月ノ一日↡至リ↢八日ニ↡、或イハ従リ↢八日↡至リ↢十五日ニ↡、或イハ従リ↢十五日↡至リ↢廿三日ニ↡、或イハ従リ↢廿三*日↡至ルマデセヨ↢卅日ニ↡。月別1154ニ四時スルハ佳シ。行者等、自ラ量リテ↢家業ノ軽重ヲ↡、於テ↢此ノ時ノ中ニ↡入レ↢浄行ノ道ニ↡。
^◆もしは一日乃至七日、 ことごとく浄衣を須ゐよ、 鞋靺もまた新浄なるを須ゐよ。 七日のうちは、 みなすべからく*一食長斎すべし。 軟らかなる餠、 粗き飯、 随時の醤菜、 倹素し節量せよ。
若シハ一日乃至七日尽ク須ヰヨ↢浄衣ヲ↡、鞋靺モ亦須ヰヨ↢新浄ナルヲ↡。七日之中ニ皆須クシ↢一食長斎ス↡。軟カナル餠、麁キ飯、随時ノ醤*菜倹素シ節量セヨ。
^◆道場のなかにして、 昼夜に心を束ね、 相続してもつぱら阿弥陀仏を念ぜよ1034。 心と声と相続して、 ただ坐し、 ただ立して、 七日のうち睡眠を得ざれ。 また時によりて、 仏を礼し経を誦すべからざれ。 数珠をもまた捉るべからず。 ただ合掌して仏を念ずと知り、 念々に見仏の想をなせ。
於テ↢道場ノ中ニ↡昼夜ニ束シテ↠心ヲ相続シテ専ラ念ゼヨ↢阿弥陀仏ヲ↡。心ト与↠声相続セヨ。唯シ坐シ唯シ立セヨ。七日之内ニ不レ↠得↢睡眠ヲ↡。亦不レ↠須カラ↢依リテ↠時ニ礼シ↠仏ヲ誦ス↟経ヲ。数珠ヲモ亦不↠須カラ↠捉ル。但知レ↢合掌シテ念ズルコトヲ↟仏ヲ、念々ニ作セ↢見仏ノ想ヲ↡。
^◆仏ののたまはく、 ª阿弥陀仏の真金色の身に、 光明徹照し、 端正無比にして、 心眼の前にましますと想念せよº と。
仏ノ言ノ想↣念セヨト阿弥陀仏ノ真金色ノ身ニ光明徹照シテ、端正无比ニシテ、在スト↢心眼ノ前ニ↡。
^◆まさしく仏を念ずる時には、 もし立たばすなはち立ちて一万・二万を念ぜよ。 もし坐せばすなはち坐して一万・二万を念ぜよ。 道場のうちにして、 頭を交へてひそかに語らふことを得じ。
正シク念ゼム↠仏ヲ時ニハ、若シ立タバ即チ立チテ念ゼヨ↢一万・二万ヲ↡。若シ坐セバ即チ坐シテ念ゼヨ↢一万・二万ヲ↡。於テ↢道場ノ内ニ↡不↠得↢交ヘテ↠頭ヲ窃ニ語ラフコトヲ↡。
^◆昼夜あるいは三時・六時に、 諸仏、 一切の賢聖、 天曹・地府、 一切の業道に表白して、 一生の己身の身口意業の所造のもろもろの罪を発露懴悔せよ。
昼夜或イハ三時・六時ニ、表↢白シテ諸仏、一切ノ賢聖、天曹・地府、一切ノ業道ニ↡、発↢露懴↣悔セヨ一生ノ*己身ノ身口意業ノ所造ノ衆ノ罪ヲ↡。
^◆事々、 実によりて懴悔しをはりて、 還りて法によりて仏を念ぜよ。 所見の境界は、 たやすく説くことを得ざれ。 善ならばみづから知れ。 悪ならば懴悔せよ。 酒・肉・五辛は、 きはめて願を発して、 手に捉らざれ、 口に喫はざれ。 もしこの語に違はば、 すなはち身口にともに悪瘡を着けんと願ぜよ。
事々、依リテ↠実ニ懴悔シ竟リテ還リテ依リテ↠法ニ念ゼヨ↠仏ヲ。所見ノ境界ハ不レ↠得↢輒ク説クコトヲ↡。善ナラバ者自ラ知レ。悪ナラバ者懴悔セヨ。酒・肉・五辛ハ、極テ発シテ↠願ヲ手ニ不レ↠捉ラ、口ニ不レ↠喫ハ。若シ違ハバ↢此ノ語ニ↡、即チ願ゼヨ↣身口ニ倶ニ著セムト↢悪瘡ヲ↡。
^◆願じて ¬阿弥陀経¼ を誦すること十万遍を満てよ。 日別に仏を念ずること一万遍せよ。 経を誦すること日別に十五遍せよ。 あるいは誦すること二十遍・三十遍せよ。 力の多少に任せよ。 浄土に生れんと誓ひ、 仏1035摂受したまへと願ぜよ。
願ジテ誦スルコト↢¬阿弥陀経ヲ¼↡満テヨ↢十万遍ヲ↡。日別ニ念ズルコト↠仏ヲ一万遍セヨ。誦スルコト↠経ヲ日別ニ十五遍セヨ。或イハ誦スルコト廿遍・卅遍セヨ。任セヨ↢力ノ多少ニ↡。誓ヒ↠生レムト↢浄土ニ↡、願ゼヨ↢仏摂受シタマヘト↡。
^▲またもろもろの行者にまうさく、 ただ今生に日夜相続して、 もつぱら弥陀仏を念じ、 もつぱら ¬弥陀経¼ を誦し、 浄土の聖衆・荘厳とを称揚し、 礼讃して、 生ずることを願はんと欲するものは、
又白サク↢諸ノ行者ニ↡、但欲ス↫今生ニ日夜ニ相続シテ専ラ念ゼム↢弥陀仏ヲ↡、専ラ誦セム↢¬弥陀経ヲ¼↡、称↩揚シ礼↪讃セムコトヲ浄土ノ聖衆荘厳トヲ↨。願ゼム↠生レムト者ハ、
^◆三昧道場に入ることを除きて、 日別に弥陀仏を念ずること一万して、 命を畢るまで相続せば、 すなはち弥陀の*加念を蒙り、 罪障を除くことを得ん。 また仏、 聖衆とつねに来りて護念することを蒙らん。 すでに護念を蒙りなば、 すなはち年を延べ、 転じて長命安楽なることを得ん。
除キテ↠入ルコトヲ↢三1155昧道場ニ↡、日別ニ念ズルコト↢弥陀仏ヲ↡一万シテ、畢ルマデ↠命ヲ相続セバ者、即チ蒙リ↢弥陀ノ加*命ヲ↡、得ム↠除クコトヲ↢罪障ヲ↡。又蒙ラム↧仏与↢聖衆↡常ニ来リテ護念スルコトヲ↥。既ニ蒙リナバ↢護念ヲ↡、*即チ得ム↢延ベ↠年ヲ転ジテ長*命ニシテ安楽ナルコトヲ↡。
^◆因縁の一々は、 つぶさに ¬*譬喩経¼・¬*惟無三昧経¼・¬*浄度三昧経¼ 等に説くがごとし。
因縁ノ一々ハ具ニ如シ↢¬譬喩経¼・¬惟无三昧経¼・¬浄*度三昧経¼等ニ説クガ↡。
^また ¬観仏経¼ にのたまはく、 ª▲もしもろもろの比丘・比丘尼、 もしは男・女の人、 *四根本罪、 十悪等の罪、 五逆の罪を犯し、 および大乗を謗らんに、 かくのごときもろもろの人、 もしよく懴悔して、 日夜六時に身心息まず、 五体を地に投ずること、 大山の崩るるがごとくし、 号泣して涙を雨らし、 合掌して仏に向かひて、 仏の眉間の白毫相の光を念ずること、 一日より七日に至らば、 前の四種の罪は軽微なることを得べし。
又¬観仏経ニ¼云ク、若シ諸ノ比丘・比丘尼、若シハ男・女ノ人犯セラム↢四根本罪、十悪等ノ罪、五逆ノ罪ヲ↡、及ビ謗ゼラムニ↢大乗ヲ↡。如キ↠是クノ諸ノ人若シ能ク懴悔シテ、日夜六時ニシテ身心不↠息マ、五体ヲ投ゲ↠地ニ如クシ↢大山ノ崩ルルガ↡、*号泣シテ雨リ↠涙ヲ、合掌シテ向ヒテ↠仏ニ、念ズルコト↢仏ノ眉間ノ白毫相ノ光ヲ↡一日ヨリ至ラバ↢七日ニ↡、前ノ四種ノ罪ハ可シ↠得↢軽微ナルコトヲ↡。
^◆白毫の毛を観ぜんに、 闇にして見えずは、 塔のうちに入りて、 像の眉間の白毫を観ずべし。 一日より三日に至るまで、 合掌して啼泣せよº」 と。
観ゼムニ↢白毫ノ毛ヲ↡、*闇ニシテ不ハ↠見エ者、応シ↧入リテ↢塔ノ中ニ↡観ズ↦像ノ眉間ノ白*毫ヲ↥。一日ヨリ至ルマデニ↢三日ニ↡合掌シテ啼泣セヨト。」
^以上、 ¬観1036念門¼ (観念法門) の文よりこれを略抄す。
已上¬観念門ノ¼*文ヨリ略↢抄ス*之ヲ↡
^¬大般若¼ の五百六十八に、 七日の行を明かしてのたまはく、 「もし善男子・善女人等、 心に疑惑なく、 七日のうちにおいて、 澡浴清浄にして、 新浄の衣を着、 華香をもつて供養し、 一心にまさしく↓前の所説のごとき、 如来の功徳および大威神を念ぜば、 その時、 如来は慈悲をもつて護念し、 身を現じて見せしめたまひ、 *願をして満足せしめたまふ。 もし華香等の事に闕少せることあらば、 ただ一心に功徳威神を念ぜよ。 まさに命終せんとする時に、 かならず仏を見たてまつることを得ん」 と。 以上
¬大般若ノ¼五百六十八ニ明シテ↢七日ノ行ヲ↡云ク、「若シ善男子・善女人等心ニ无クシテ↠疑、*或イハ於テ↢七日ノ中ニ↡、澡浴清浄ニシテ、著↢新浄ノ衣ヲ↡、花香ヲモテ供養シテ、一心ニ正シク念ゼバ↢如キ↠前ノ所説ノ如来ノ功徳及ビ大威神ヲ↡、爾ノ時ニ如来ハ慈悲ヲモテ護念シテ、現ジテ↠身ヲ令メタマヒ↠見セ、*便チ願ヲシテ満足セム。若シ有ラバ↣闕↢少セルコト花香等ノ事ニ↡、但一心ニ念ゼヨ↢功徳威神ヲ↡。将ニル↢命終セムト↡時ニ必ズ得ムト↠見タテマツルコトヲ↠仏ヲ。」 已上
^「↑前の所説の功徳」 と等いふは、 如来の大慈と大悲と説法と無礙の静慮と、 一念によく*無辺類の身を現ずると、 天眼と天耳と他心智と*無失念と*無漏離垢と、 *得一切法自在平等等の功徳威神なり。
言フ↢前ノ所説ノ功徳ト等↡者、如来ノ大慈ト大悲ト説法ト无礙ト静慮ト、一念ニ能ク現ズルト↢无辺類ノ身ヲ↡、天眼ト天耳ト他心智ト无失念ト无漏離垢ト、得一切法自在平等等ノ功徳威神也。
^¬*大集の賢護経¼ にまた七日の行あり。 ▽次の利益のなかに説くがごとし。
¬大集ノ賢1156護経ニ¼亦有リ↢七日ノ行↡。如シ↢次ノ利益ノ中ニ説クガ↡。
^また迦才の ¬浄土論¼ にいはく、 「綽禅師 (*道綽) 、 ¬経¼ (*木槵子経) の文を撿へ得たるに、 ªただよく仏を念ずること一心に乱れずして、 百万遍以去を得つるものは、 さだめて往生することを得º と。 また綽禅師、 ¬*小阿弥陀経¼ の七日の念仏によりて、 百万遍を撿へ得たるなり。 このゆゑに、 ¬大集経¼・¬*薬師経¼・¬小阿弥陀経¼ にみな七日の念仏を勧めたる1037は、 この意あきらかなり」 と。 以上、 迦才。
又迦才ノ¬浄土論ニ¼云ク、「綽禅師撿ヘ↢得タルニ¬経ノ¼文ヲ↡、但能ク念ズルコト↠仏ヲ一心ニシテ不シテ↠乱レ、得ツル↢百万遍已去ヲ↡者ハ定メテ得ト↢往生スルコトヲ↡。又綽禅師依リテ↢¬小阿弥陀経ニ¼↡、七日ノ念ズルニ↠仏ヲ撿ヘテ↢得タリ百万*返ヲ↡也。是ノ故ニ¬大集経¼・¬薬師経¼・¬小阿弥陀経ニ¼↡皆勧メタル↢七日ノ念仏ヲ↡者、此ノ意明カナリト*矣」已上迦才
^いふところの十日の行とは、 ▽¬*鼓音声経¼・▽¬平等覚経¼ に出でたり。 次の利益門に至りてまさに知るべし。
所ノ↠言フ*十日ノ行ト者、出デタリ↢¬鼓音声経¼・¬平等覚経ニ¼↡。至リテ↢次ノ利益門ニ↡当ニシ↠知ル。
^いふところの九十日の行とは、 ▽¬止観¼ の第二にいはく、
所ノ↠言フ九十日ノ行ト者、¬止観ノ¼第二ニ云ク、
^「*常行三昧とは、 先づは▽方法を明かす。 次には▽勧修を明かす。
「常行三昧ト者、先ヅハ明ス↢方法ヲ↡。次ニハ*明ス↢勧修ヲ↡。
^△方法とは、 ↓*身の開遮、 ↓*口の説黙、 ↓*意の止観なり。 この法は ¬般舟三昧経¼ に出でたり。 ˆ般舟をˇ *翻じて ª仏立º となす。 仏立に三の義あり。 一には仏の威力、 二には三昧力、 三には行者の本功徳力なり。 よく定のなかにして、 十方現在の仏、 その前にありて立ちたまへりと見ること、 明眼の人の、 清夜に星を観るがごとし。 十方の仏を見たてまつることも、 またかくのごとく多し。 ゆゑに仏立三昧と名づく。
方法ト者身ノ開遮、口ノ説黙、意ノ止観ナリ。此ノ法ハ出デタリ↢¬般*舟三昧経ニ¼↡。*翻ジテ為リ↢仏立ト↡。仏立ニ三ノ義アリ。一ニハ仏ノ威力、二ニハ三昧力、三ニハ行者ノ本功徳力ナリ。能ク於テ↢定ノ中ニ↡、見ルコト↧十方現在ノ仏在リテ↢其ノ前ニ↡立チタマヘリト↥、如シ↢明カナル眼ノ人ノ清夜ニ観ルガ↟星ヲ。見タテマツルコトモ↢十方ノ仏ヲ↡、亦如ク↠是クノ多シ。故ニ名ク↢仏立三昧ト↡。
^¬十住毘婆沙¼ の偈にいはく、
¬十住毘婆*娑ノ¼偈ニ云ク、
^ªこの三昧の↓*住処に、 少と中と多との差別あり。
かくのごとき種々の相、 またすべからく論議すべしº と。
是ノ三昧ノ住処ニ | 小ト中ト多トノ差別アリ |
如キ↠是クノ種々ノ相 | 亦応シトイヘリ↢須ク論議ス↡ |
^ª↑住処º とは、 あるいは*初禅・二・三・四の中間とにおいて、 この勢力を発し、 よく三昧を生ず。 ゆゑに住処と名づく。 初禅は少なり、 二禅は中なり、 三・四は多なり。 あるいは少時に住するを少と名づく。 あるいは世界を見ること少なり1038。 あるいは仏を見たてまつること少なり。 ゆゑに少と名づく。 中と多とまたかくのごとし。
住処ト者、或イハ於テ↢初禅・二・三・四ノ中間トニ↡、発シ↢是ノ勢力ヲ↡能ク生ズ↢三昧ヲ↡。故ニ名ク↢住処ト↡。初禅ハ小ナリ、二禅ハ中ナリ、三・四ハ多ナリ。或イハ小時ニ住スルヲ名ク↠少ト。或イハ見ルコト↢世界ヲ↡少ナリ。或イハ見タテマツルコト↠仏ヲ少ナリ。故ニ名ク↠少ト。中ト多ト亦如シ↠是クノ。
^↑身には*常行を開す。 この法を行ずる時には、 *悪知識および痴人・親属・郷里を避れ。 つねに独り処止して、 他人に悕望して求索するところあることを得ざれ。 つねに乞食して*別請を受けざれ。
身ニハ開ス↢常行ヲ↡。行ゼム↢此ノ法ヲ↡時ニハ、避レ↢悪知識及ビ痴人・親属・郷里ヲ↡。常ニ独リ処止シテ、不レ↠得↧*悕↢望シテ他人ヲ↡有ルコトヲ↞所↢求索スル↡。常ニ乞食シテ不レ↠受1157ケ↢別請ヲ↡。
^道場を厳飾して、 もろもろの供具・香餚・甘菓を備へよ。 その身を盥沐し、 左右出入に衣服を改め換へよ。 ただもつぱら*行旋し、 九十日を一期となせ。
厳↢飾シテ道場ヲ↡備ヘヨ↢諸ノ供具・香餚・甘菓ヲ↡。盥↢沐シ其ノ身ヲ↡、左右出入ニ改メ↢換ヘヨ衣服ヲ↡。唯シ専ニシテ行旋シ九十日ヲ為ヨ↢一期ト↡。
^*明師の、 *内外の律によくして、 よく*妨障を開除するを須ゐよ。 所聞の三昧の処において、 世尊を視たてまつるがごとくにし、 嫌せず、 恚せず、 短・長を見ざれ。 まさに肌肉を割きて、 師に供養すべし。 いはんやまた余のものをや。 師に承事すること、 僕の大家に奉るがごとくせよ。 もし師において悪をなすときには、 この三昧を求むるに、 つひに得ること難し。
須ヰヨ↧明カナル師ノ善クシテ↢内外ノ律ニ↡能ク開↦除スルヲ妨障↥。於テ↢所聞ノ三昧ノ処ニ↡如クニシ↠視タテマツルガ↢世尊ヲ↡、不↠嫌セ不↠恚セ、不レ↠見↢短・長ヲ↡。*当ニシ↧割キテ↢肌肉ヲ↡供↦養ス師ニ↥。況ヤ復余ノモノヲ耶。承↢事セムコト師ニ↡如クセヨ↣僕ノ奉ルガ↢大家ニ↡。若シ於テ↠師ニ生ストキニハ↠悪ヲ、求ムルニ↢是ノ三昧ヲ↡終ニ難ケム↠得ルコト。
^*外護の、 母の子を養ふがごときを須ゐ、 *同行の、 ともに嶮を渉るがごときを須ゐよ。
須ヰヨ↣外護ノ如キヲ↢母ノ養フガ↟子ヲ。須ヰヨ↣同行ノ如キヲ↢共ニ渉ルガ↟嶮ヲ。
^すべからく要期し、 誓願すべし。 わが筋骨をして枯れ朽ちせしむとも、 この三昧を学せんに得ずは、 つひに休息せずと。 大信を起さば、 よく壊るものなからん。 大精進を起さば、 よく及ぶものなからん。 所入の智はよく逮ぶものなからん。
須クシ↢要*期シテ誓願ス↡。使ムトモ↢我ガ筋骨ヲシテ枯レ朽チセ↡、学セムニ↢是ノ三昧ヲ↡不ハ↠得、終ニ不シテ↢休息セ↡。起セ↢大信ヲ↡。无ケム↢能ク壊ル者↡。起セ↢大精進ヲ↡。无ケム↢能ク及ブ者↡。所入ノ智ハ无ケム↢能ク逮ブ者↡。
^つねに善師とともに事に従へ。 三月を終竟るま1039で、 *世間の想欲を念ふこと、 *弾指のあひだのごとくすることを得ざれ。 三月終竟るまで、 臥出すること弾指のあひだのごときも得ざれ。 三月を終竟るまで、 行じて休息することを得ざれ。 *坐食・左右をば除く。 人のために経を説かんに、 衣食を望むことを得ざれ。
常ニ与ニ↢善師ノ↡従↠事セヨ。終竟ニ三月↡、不レ↠得↧念フコト↢世間ノ想欲ヲ↡如クスルコトヲ↦弾指ノ*項ノ↥。*三月終竟ニ、不レ↠得↣臥出スルコトヲ如キモ↢弾指ノ*項ノ↡。終竟ニ三月、行ジテ不レ↠得↢休息コトヲ↡。除ク↢坐食・左右ヲバ↡。為ニ↠人ノ説カムニ↠経ヲ、不レ↠得↠望ムコトヲ↢衣食ヲ↡。
^¬婆沙¼ (十住毘婆沙論) の偈にいはく、
¬婆*娑ノ¼偈ニ云ク、
^ª善知識に親近し、 精進して懈怠なく、
智慧はなはだ堅牢にして、 信力妄りに動ずることなかれº と。
親↢近シ善知識ニ↡ | 精進シテ无ク↢懈怠↡ |
智慧甚ダ堅牢ニシテ | 信力无クスト↢妄ニ動ズルコトヲ↡ |
^↑口の説黙とは、 九十日、 身にはつねに行じて休息することなく、 九十日、 口にはつねに阿弥陀仏の名を唱へて休息することなく、 九十日、 心にはつねに阿弥陀仏を念じたてまつりて休息することなかれ。
口ノ説黙ト者、九十日身ニハ常ニ行ジテ无キナリ↢休息スルコト↡。九十日口ニハ常ニ唱フルコト↢阿弥陀仏ノ名ヲ↡无ク↢休息スルコト↡、九十日心ニハ常ニ念ジマツリテ↢*阿弥陀仏ヲ↡无レ↢休息スルコト↡。
^あるいは唱と念とともに運らし、 あるいは先づ念じ後に唱へ、 あるいは先づ唱へ後に念ぜよ。 唱・念あひ継ぎて休息する時なかれ。 もし弥陀を唱ふるは、 すなはちこれ十方の仏を唱へたてまつると功徳等し。 ただもつぱら弥陀をもつて法門の主となす。 要を挙げてこれをいはば、 歩々・声々・念々、 ただ阿弥陀仏にあり。
或イハ唱ト念ト倶ニ運ラシ、或イハ先ヅ念ジ後ニ唱ヘ、或イハ先ヅ唱ヘ後ニ念ゼヨ。唱・念相継ギテ无レ↢休息スル時↡。若シ唱フルハ↢弥陀ヲ↡即チ是唱ヘタテマツルト↢十方ノ仏ヲ↡功徳等シ。但専ラ以テ↢弥陀ヲ↡為ス↢法門ノ主ト↡。挙ゲテ↠要ヲ言ハバ↠之ヲ、歩々・声々・念々唯シ在リ↢阿弥陀仏ニ↡。
^↑意に止観を論ずとは、 西方の阿弥陀仏を念ぜよ。 ここを去ること十万億の仏刹にして、 宝地・宝池・宝樹・宝堂にましまして、 もろもろの菩薩の中央に坐して経を説きたまふ。 三月1040つねに仏を念ぜよ。
意ニ論ゼバ↢止観ヲ↡者、念ズ↧西1158方ノ阿弥陀仏ヲ去リタマヘルコト↠此ヲ十万億ノ仏刹アリテ、在シテ↢宝地・宝池・宝樹・宝堂ニ、衆ノ菩薩ノ中央ニ↡坐シテ説キタマフト↞経ヲ。三月常ニ念ゼヨ↠仏ヲ。
^いかんが念ずる。 三十二相を念ず。 足の下の*千輻輪相より、 一々に*逆に縁じて、 諸相乃至*無見頂を念じ、 また*頂相より*順に縁じて、 すなはち千輻輪に至るべし。 われをしてまたこの相に逮ばしめたまへと。 また念ぜよ、 われまさに心よりや仏を得ん、 身よりや仏を得んと。
云何ガ念ズル。念ズ↢卅二ノ相ヲ↡。従リ↢足ノ下ノ千輻輪ノ相↡一一ニ逆ニ縁ジテ念ゼヨ↢諸相ヲ↡。乃至无見頂マデニス。亦応シ↧従リ↢頂相↡順ニ縁ス↥。乃チ至↢千輻輪マデニ↡、令メタマヘト↣我ヲシテ亦逮バ↢是ノ相ニ↡。又念ズ、我当ニ従リヤ↠心得ム↠仏ヲ、従リヤ↠身得ムト↠仏ヲ。
^仏をば、 心を用ゐても得ず、 身を用ゐても得ず。 心を用ゐても仏の色を得ず。 色を用ゐても仏の心を得ず。 なにをもつてのゆゑに。 心といはば、 仏には心なし。 色といはば、 仏には色なし。 ゆゑに色・心を用ゐても*三菩提を得べからず。
仏ヲバ不↢用ヰテモ↠心ヲ得セ↡、不↢用ヰテモ↠*身ヲ得セ↥。不↣用ヰテモ↠心ヲ得↢仏ノ色ヲ↡。不↣用ヰテモ↠色ヲ得↢仏ノ心ヲ↡。何ヲ以テノ故ニ。心トイハバ者、仏ニハ无シ↠心。色トイハバ者、仏ニハ无シ↠色。故ニ不↧用ヰテモ↢色心ヲ↡得スベカラ↦三菩提ヲ↥。
^仏は*色すでに尽き、 乃至、 *識もすでに尽きたまへり。 仏の諸説の尽をば、 これ痴人は知らず、 智者は*暁了す。 身口を用ゐても仏を得ず、 智慧を用ゐても仏を得ず。 なにをもつてのゆゑに。 智慧は索むるに得べからず、 みづから*我を索むるに、 つひに得べからざればなり。 また所見なし。 一切の法はもとより所有なし。 本を壊し本を絶す。 それ一。
仏ハ色已ニ尽シ、乃至識モ已ニ尽シタマヘリ。仏ノ所ヲバ↠説キタマフ↠尽セリト者是痴人ハ不↠知ラ、智者ハ暁了ス。不↧用ヰテモ↢身口ヲ↡得セ↞仏ヲ、不ラムコトヲ↧用ヰテモ↢智*慧ヲ↡得セ↞仏ヲ。*何ヲ以テノ故ニ。智慧ヲモテ索ムルニ不↠可↠得ナルヲモテナリ。自ラ索ムルニ↠我ヲ了ニ不↠可↠得ナリ。亦无シ↢所見↡。一切ノ法ハ本ヨリ无シ↢所*有↡。壊シ↠本ヲ絶ス↠本ヲ。*其一
^夢に七宝を見て、 親属ありて歓楽するも、 覚めをはりて追ひて念ふに、 いづれの処にあるといふことを知らざるがごとく、 かくのごとくにして仏を念ず。
如ク↧夢ニ見ルトモ↢七宝アリ、親属アリ*勧楽スト↡、覚メ已リテ追ヒテ念ズルニ、不ルガ↞知ラ↠在ルトイフコトヲ↢何レノ処ニ↡、如クニシテ↠是クノ念ズ↠仏ヲ。
^また*舎衛に女ありて須門と名づく。 これを聞きて心に喜ぶ。 夜夢に事に従ふ。 覚めをはりてこれを念ふに、 かれも来らずわれも往かず、 しか1041も楽事*宛然なり。 まさにかくのごとくして仏を念じたてまつるべし。
*又舎衛ニ有リテ↠女名ク↢須門ト↡。聞キテ↠之ヲ心ニ喜ブ。夜夢ニミル↠従フト↠事ニ。覚メ已リテ念フニ↠*此ヲ、彼モ不↠来ラ我モ不↠往カ、而モ楽事宛然ナリ。当ニシ↢如クシテ↠是クノ念ジタテマツル↟仏ヲ。
^人の大きなる沢を行くに、 飢渇して夢に美食を得るも、 覚めをはりて腹空し。 みづから一切のあらゆる法みな夢のごとしと念ふがごとく、 まさにかくのごとく仏を念じたてまつるべし。 しばしば念じて休息することを得ることなかれ。
如ク↧人ノ行クニ↢大ナル沢ヲ↡飢渇シテ夢ニ得ツ↢美食ヲ↡、覚メ已リテ腹空シ、自ラ念フガ↦一切ノ所有ノ法皆如シト↞夢ノ、当ニシ↢如ク↠是クノ念ジタテマツル↟仏ヲ。数々念ジテ莫レ↠得ルコト↢休息スルコトヲ↡。
^この念を用ゐて、 まさに阿弥陀仏の国に生るべし。 これを如想の念と名づく。 人宝をもつて瑠璃の上に倚するに、 影そのなかに現ずるがごとく、 また比丘の、 骨を観ずるに、 骨より種々の光を起すがごとく、 これ持ちて来るものなく、 またこの骨あることもなし。 これ意のなせるのみ。 鏡のなかの像の、 外よりも来らず、 中よりも生ぜず、 鏡浄きをもつてのゆゑに、 おのづからその形を見るがごとし。
用ヰテ↢是ノ念ヲ↡当ニシ↠生ル↢阿弥陀仏ノ国ニ↡。是ヲ名ク↢如想ノ念ト↡。如ク↧人以テ↠宝ヲ倚スルニ↢*瑠璃ノ上ニ↡影現ズルガ↦其ノ中ニ↥、亦如ク↣比丘ノ観ズルニ↠骨ヲ骨ヨリ起スガ↢種々ノ光ヲ↡、此无シ↢持チテ来ル者1159↡。亦无シ↠有ルコトモ↢是ノ骨↡。是意ノ作ス耳。如シ↧鏡ノ中ノ像ノ不↢外ヨリモ来ラ↡、不↢中ヨリモ生ゼ↡、以テノ↢鏡浄キヲ↡故ニ自ラ見ユルガ↦其ノ形ヲ↥。
^*行人、 色清浄なれば、 あらゆるもの清浄なり。 仏を見たてまつらんと欲へば、 すなはち仏を見たてまつる。 見ればすなはち問ひ、 問へばすなはち報へたまふ。 経を聞きて、 大きに歓喜す。 それ二。
行人、色清浄ナレバ所有ノ者清浄ナリ。欲ヘバ↠見タテマツラムト↠仏ヲ即チ見タテマツル↠仏ヲ。見レバ即チ問フ。問ヘバ即チ報ヘタマフ。聞キテ↠経ヲ大ニ歓喜ス。*其二
^みづから念ず。 仏はいづれの所よりか来りたまふ、 われもまた至るところなし。 わが所念をもつて、 すなはち見るなり。 心、 仏に作る。 心みづから心を見るは、 仏心を見るなり。 この仏心は、 これわが心、 仏を見るなり。
自ラ念ズ、仏ハ従リカ↢何レノ所↡来リタマフ、我モ亦无シ↠所↠至ル。我ガ所念ヲモテ即チ見ルナリ。心作ル↠仏ニ、心自ラ見ルハ↠心ヲ見ルナリ↢仏心ヲ↡。是ノ仏心ハ是我ガ心見ルナリ↠仏ヲ。
^心はみづから心を知らず、 心はみづから心を見ず。 心に想1042あるをば痴となし、 心に想なきはこれ*泥洹なり。 この法は示すべきものなし。 みな念の所為なり。 たとひ念ありとも、 また所有なくして空なりと了するのみ。 それ三。
心ハ不↢自ラ知ラ↟心ヲ、心ハ不↢自ラ見↟心ヲ。心ニ有ルヲバ↠想為シ↠痴ト、心ニ无キハ↠*想是泥洹ナリ。是ノ法ハ无キニ↢可キ↠示ス者↡、皆念ノ所為ナリ。設ヒ有リトモ↠念、亦了スラク↧无クシテ↢所*有↡空ナリト↥耳。*其三
^偈 (般舟三昧経) にのたまはく、
偈ニ云ク、
^ª心は心を知らず。 心ありて心を見ず。
心に想を起すは、 すなはち痴なり。 想なきは、 すなはち泥洹なり。
心者不↠知ラ↠心ヲ | 有リテ↠心不↠見↠心ヲ |
心ニ起スハ↠想ヲ即チ痴ナリ | 无キハ↠想即チ泥洹ナリ |
^諸仏は心より解脱を得たまふ。 心は垢なければ、 清浄と名づく。
五道は鮮潔にして色を受けず。 これを解ることあるものは*大道を成ずº と。
諸仏ハ従リ↠心得タマフ↢解脱ヲ↡ | 心者无シ↠垢名ク↢清浄ト↡ |
五道ハ鮮潔ニシテ不↠受ケ↠色ヲ | 有ル↠解ルコト↠此ヲ者ハ成ズト↢大道ヲ↡ |
^これを*仏印と名づく。 所貪なく、 所着なく、 所求なく、 所想なく、 所有尽き、 所欲尽く。 従りて生ずるところなく、 滅すべきところなく、 壊敗するところなし。 道の要、 道の本なり。 この印は、 二乗も壊することあたはず、 いかにいはんや魔をや。 云々
是ヲ名ク↢仏印ト↡。无ク↠所↠貪スル、无ク↠所↠著スル、无ク↢所求↡、无シ↢所想↡。所有尽キ、所欲尽ク。无ク↠所↢従ヒテ生ズルニ↡、無シ↠所↠可キ↠滅ス。无シ↠所↢壊敗スル↡。道ノ要、道ノ本ナリ。是ノ印ハ二乗モ不↠能ハ↠壊スルコト、何ニ況ヤ魔ヲ耶。云々
^¬婆沙¼ (十住毘婆沙論) に明かさく、 ª*新発意の菩薩、 先づ仏の色相、 *相体、 相業、 相果、 相用を念じて、 下の勢力を得。 次に仏の*四十の不共の法を念じて、 心に中の勢力を得。 次に*実相の仏を念じて、 上の勢力を得。 しかも色と法との二身に着せずº と。
¬婆*娑ニ¼明サク、新発意ノ菩薩先ヅ念ジテ↢仏ノ色相、相体・相業・相果・相用ヲ↡得↢下ノ勢力ヲ↡。次ニ念ジテ↢仏ノノ不共ノ法ヲ↡心ニ得↢中ノ勢力ヲ↡。次ニ念ジテ↢実相ノ仏ヲ↡得↢上ノ勢力ヲ↡。而モ不レト↠著セ↢色ト法トノ二身ニ↡。
^偈 (十住毘婆娑論) にいはく、
偈ニ云ク、
^ª色身に貪着せず、 法身にもまた着せず。
1043よく一切の法は、 永寂なること虚空のごとしと知るº と。
不↣貪↢著セ色身ニ↡ | 法身ニモ亦不↠著セ |
善ク知ルト↣一切ノ法ハ | 永寂ナルコト如シト↢虚空ノ↡ |
^△勧修をいはば、 もし人、 智慧大海のごとくにして、 よくわがために師たるものなからしめ、 ここに坐して、 神通を運ばずしてことごとく諸仏を見たてまつり、 ことごとく所説を聞き、 ことごとくよく受持することを得んと欲はば、 つねに三昧を行ぜよ。 もろもろの功徳において、 もつとも第一なりとなす。
勧修ヲイハバ者、若シ*人欲ハバ↠得ムト↧智*慧如クシテ↢大海ノ↡令メ↠无カラ↢能ク為ニ↠我ガ作ル↠師者↡、於テ↠此ニ坐シテ不シテ↠運セ↢神通ヲ↡悉ク見タテマツリ↢諸仏ヲ↡、悉ク聞キ↢所説ヲ↡、悉ク能ク受1160持スルコトヲ↥者、常ニ行ゼヨ↢三昧ヲ↡。於テ↢諸ノ功徳ニ↡最モ為ス↢第一ナリト↡。
^この三昧はこれ諸仏の母なり、 仏の眼なり、 仏の父なり、 無生大悲の母なり。 一切のもろもろの如来は、 この二法より生じたまふ。
此ノ三昧ハ是諸仏ノ母ナリ、仏ノ眼ナリ、仏ノ父ナリ、無生ノ大悲ノ母ナリ。一切ノ諸ノ如来ハ従リ↢是ノ二法↡生ジタマフ。
^大千の地および草木を砕きて塵となし、 一塵を一仏刹となして、 そこばくの世界のなかに満てる宝をもつて布施せんは、 その福はなはだ多し。 この三昧を聞きて驚せず、 畏せざらんにはしかじ。 いはんや信じて受持し、 読誦して人のために説かんをや。 いはんや定心に修習すること、 牛乳を搆るがあひだのごとくせんをや。 いはんやよくこの三昧を成ぜんをや。 ゆゑに無量無辺なり。
砕キテ↢大千ノ地及ビ草木ヲ↡為シテ↠塵ト、一塵ヲ為ム↢一仏刹ト↡。満テル↢爾ノ世界ノ中ニ↡宝ヲ用ヰテ布施セムハ、其ノ福甚ダ多シ。不↠如カ↧聞キテ↢此ノ三昧ヲ↡不↠驚セ不ラムニハ↞畏せ。況ヤ信ジテ受持シ読誦シテ為ニ↠人ノ説カムヲヤ。況ヤ定心ニ修習スルコト如クセムヲヤ↧搆ルガ↢牛乳ヲ↡*項ノ↥。況や能ク成ゼムヲヤ↢是ノ三昧ヲ↡。故ニ无量無*辺ナリ。
^¬婆沙¼ (十住毘婆沙論) にいはく、 ª*劫火・官・賊・怨・毒・竜・獣・衆病、 この人を侵すといはば、 この処あることなからん。 この人はつねに*天竜八部と諸仏のために、 みなともに護念し称讃せらる。 みなともに見んと欲して、 ともにその所に来らんº と。
¬婆*娑ニ¼云ク、劫火・官・賊・怨・毒・竜・獣・衆病侵ストイハバ↢是ノ人ヲ↡者、无ケム↠有ルコト↢是ノ処↡。此ノ人ハ常ニ為ニ↢天竜八部ト、諸仏ノ↡皆共ニ護念シ称讃セラル。皆共ニ欲シテ↠見ムト、共ニ来ラムト↢其ノ所ニ↡。
^もしこの三昧の上1044のごとき四番の功徳を聞きて、 みな随喜すること、 三世の諸仏・菩薩のみな随喜したまふがごとくならんに、 また上の↓四番の功徳に勝る。 もしかくのごとき法を修せざるは、 無量の重宝を失ひ、 人天これがために憂悲す。 *鼻の人の、 栴檀を把りて嗅がさざらんがごとく、 *田家の子の、 摩尼珠をもつて一頭の牛に博ふるがごとし」 と。 云々。
若シ聞キテ↢此ノ三昧ノ如キ↠上ノ四番ノ功徳ヲ↡皆随喜セマク、三世ノ諸仏・菩薩モ皆随喜シタマフト。復勝レリ↢上ノ四番ノ功徳ニ↡。若シ不ルハ↠修セ↢如キ↠是クノ法ヲ↡失フ↢无量ノ重宝ヲ↡。人天為ニ↠之ガ憂悲ス。如ク↧齆鼻ノ人ノ把リテ↢栴檀ヲ↡而不ラムガ↞*嗅ガ、如シト↧田家ノ子ノ以テ↢摩尼珠ヲ↡博フルガ↦一頭ノ牛ニ↥」云*々
^「↑四番の功徳」 とは、 ¬*弘決¼ にいはく、 「また四番の果報あり。 一には驚せざること、 二には信受すること、 三には定心に修すること、 四にはよく成就することなり」 と。
「四番ノ功徳ト」者、¬弘決ニ¼云ク、「又有リ↢四番ノ果報↡。一ニハ不ルコト↠驚セ、二ニハ信受スルコト、三ニハ定心ニ修スルコト、四ニハ能ク成*就スルコトナリト
二 Ⅵ ⅱ 臨終行儀
【57】^第二に△臨終の行儀とは、 先づ↓行事を明かし、 次に↓勧念を明かす。
第二ニ臨終ノ行儀ト者、先ヅ明シ↢行事ヲ↡、次ニ明ス↢*勧念ヲ↡。
・行事
^初めに↑行事とは、 ¬*四分律の抄¼ の*瞻病送終の篇に、 *中国の本伝を引きていはく、 「△*祇園の西北の角、 日光の没する処を無常院となせり。 もし病者あれば、 安置してなかに在く。 おほよそ*貪染を生ずるものは、 本房のうちの衣鉢・衆具を見て、 多く恋着を生じ、 心に*厭背なきをもつてのゆゑに、 制して別処に至らしむるなり。 堂を無常と号くるなり。 来るものはきはめて多く、 還反るものは一二なり。 事につきて求め、 専心に法を念ず。
初ニ行事ト者、¬四分律ノ抄ノ¼瞻病送終ノ篇ニ、引キテ↢中国ノ本伝ヲ↡云ク、「祇洹ノ西北ノ角ノ*日光ノ没スル処ヲ為セリ↢无常院ト↡。若シ有レバ↢病者↡安置シテ在ク↠中ニ。以テノ↧凡ソ生ジテ↢貪染ヲ↡、見テ↢本房ノ内ノ衣鉢・衆具ヲ↡、多ク生ジテ↢恋著ヲ↡无キヲ↦心ニ厭背↥故ニ、制シテ令メテ↠至ラ↢別処ニ↡、堂ヲ号クルナリ↢无常ト↡。来ル者ハ極テ多ク、還リ反ルコト一二ナリ。即シテ↠事ニ而1161シテ求ムトシテ↢専ニシテ↠心ヲ念ゼムコトヲ↟法ヲ、
^その堂のうちに、 一の立像を置けり。 金薄をもつてこれに塗り、 面を西方に向かへたり。 その像の右の手は挙げ、 左の1045手のなかには、 一の*五綵の幡の、 脚垂れて地に曳けるを繋けたり。 まさに病者を安んじて像の後に在き、 左の手に幡の脚を執りて、 仏に従ひて仏の浄刹に往く意をなさしむべし。 瞻病のひとは、 香を焼き華を散らして病者を荘厳し、 乃至、 もし屎尿・吐唾あれば、 あるに随ひてこれを除く」 と。
其ノ堂ノ中ニ置ケリ↢一ノ立像ヲ↡。金薄ヲモテ塗レリ↠之ニ。面ヲ向ヘタリ↢西方ニ↡。其ノ像ノ右ノ手ハ挙ゲ、左ノ手ノ中ニハ繋ケタリ↢一ノ五綵ノ幡ヲ↡。脚垂レテ曳ク↠地ニ。当ニシ↧安ジテ↢病者ヲ↡在キテ↢像之後ニ↡、左ノ手ニ執リテ↢幡ノ脚ヲ↡、作サシム↦従ヒテ↠仏ニ往ク↢仏ノ浄刹ニ↡之意ヲ↥。瞻病ノ者ハ焼キ↠香ヲ散シテ↠花ヲ荘↢厳シ病者ヲ↡、乃至若シ有レバ↢*屎尿・吐唾↡、随ヒテ↠有ルニ除フト↠之ヲ。」
^*ある説には 「仏像を東に向け、 病者を前に在く」 と。 わたくしにいはく、 もし別処なくは、 ただ病者をして面を西に向かへしめて、 香を焼き華を散じて、 種々に勧進せよ。 あるいは、 端厳の仏像を見しむべし。
或説ニハ、「仏像ハ向ヒ↠東ニ、病者ハ在リト↠前ニ。」私ニ云ク、若シ无ケレバ↢別処↡、但令メテ↢病者ヲシテ面ヲ向ヘ↟*西ニ、焼キ↠香ヲ散ジテ↠花ヲ、種々ニ勧進セヨ。或イハ可シ↠令ム↠見↢端厳ノ仏像ヲ↡
^導和尚 (善導) のいはく (観念法門)、 「▲行者等、 もしは病し、 病せざらんも、 命終らんと欲する時には、 もつぱら上の念仏三昧の法によりて、 身心を正当にして、 面を回らして西に向かへ、 心また専注して阿弥陀仏を観想し、 心口相応して声々絶ゆることなく、 決定して往生の想、 *華台の聖衆来りて迎接する想をなせ。
*導和尚ノ云ク、「行者等若シハ病シ不ラムニ↠病セ、欲セム↢命終ムト↡時ニハ、一ツ依リテ↢上ノ念仏三昧ノ法ニ↡、正ニ当シテ↢身心ヲ↡廻シテ↠面ヲ向ヘ↠西ニ、心亦専注シテ観↢想スベシ阿弥陀仏ヲ↡。心口相応シテ声々莫レ↠絶ユルコト。決定シテ作セ↢往生ノ想、華台ノ聖衆来リテ迎接スル想ヲ↡。
^◆病人もし前の境を見ば、 すなはち看病の人に向かひて説け。 すでに説くを聞きをはらば、 すなはち説によりて録記せよ。 また病人、 もし語ることあたはずは、 看病者かならずすべからくしばしば病人に問ふべし、 なんの境界をか見たると。 もし罪の相を説かば、 傍らの人すなはちために仏を念じ、 助けて同じく懴悔して、 かならず罪を滅せしめよ。 もし罪滅するこ1046とを得ば、 華台の聖衆念に応じて現前せん。 前に准へて抄記せよ。
病人若シ見エバ↢前ノ境ヲ↡、則チ向ヒテ↢看病ノ人ニ↡説ケ。既ニ聞キ↠説クヲ已リテ、即チ依リテ↠説ニ録記セヨ。又病人若シ不ハ↠能ハ↠語ルコト、看病*者必ズ須クシ↣数々問フ↢病人ニ↡、見タルト↢何ノ境界ヲカ↡。若シ説カバ↢罪ノ相ヲ↡、傍ノ人即チ為ニ念ジ↠仏ヲ助ケテ同ジク懴悔シテ、必ズ令メヨ↢罪ヲ滅セ↡。若シ得テハ↢罪滅スルコトヲ↡、花台聖衆応ジテ↠念ニ現前セム。准ヘテ↠前ニ抄記セヨ。
^◆また行者等の眷属六親、 もし来りて病を看ば、 酒・肉・五辛を食らへる人をあらしむることなかれ。 もしあらば、 かならず病人の辺に向かふことを得ざれ。 すなはち正念を失ひ、 鬼神交乱し、 病人狂死して、 三悪道に堕しなん。 願はくは行者等、 よくみづから謹慎して仏教を奉持して、 同じく見仏の因縁をなせ」 と。 以上
又行者等ノ眷属・六親若シ来リテ看バ↠病ヲ、勿レ↠令ムルコト↠有ラ↧食ラヘル↢酒・肉・五辛ヲ↡人ヲ↥。若シ有ラバ必ズ不レ↠得↠向フルコトヲ↢病人ノ辺ニ↡。即チ失ヒ↢正念ヲ↡、鬼神交乱シ、病人狂死シテ、*堕シナム↢三悪道ニ↡。願クハ行者等好ク自ラ謹慎シテ奉↢持シテ仏教ヲ↡、同ジク作セト↢見仏ノ因縁ヲ↡。」 已上
^往生の想、 迎接の想をなすこと、 その理しかるべし。
作スコト↢往生ノ想・迎接ノ想ヲ↡其ノ理可シ↠然ル。
^¬大論¼ (大智度論) に、 *神変の作意を説きていふがごとし。 「地の想を取ること多きがゆゑに、 水を履むこと地のごとし。 水の想を取ること多きがゆゑに、 地に入ること水のごとし。 火の想を取ること多きがゆゑに、 身より煙火等を出す」 と。 云々
如シ↧¬大論ニ¼説キテ↢神変ノ作意ヲ↡云フガ↥。「取ルコト↢地ノ*想ヲ↡多キガ故ニ、履ムコト↠水ヲ如シ↠地ノ。取ルコト↢水ノ*想ヲ↡多キガ故ニ、入1162ルコト↠地ニ如シ↠水ノ。取ルコト↢火ノ*想ヲ↡多キガ故ニ、身ヨリ出スト↢煙火等ヲ↡。」云々
^あきらかに知りぬ、 所求の事において、 かの相を取る時には、 よくその事を助けて成就することを得るなり。 ただ臨終のみにあらず。 尋常もこれに准へよ。
明カニ知リヌ於テ↢所求ノ事ニ↡取ル↢彼ノ相ヲ↡時ニハ、能ク助ケテ↢其ノ事ヲ↡而シテ得ルナリ↢成*就スルコトヲ↡。非ズ↢唯シ臨終ノミニ↡。尋常モ*准ヘヨ↠之ニ。
^綽和尚 (道綽) のいはく (安楽集・上)、 「▲↓十念相続することは難からざるがごときに似たり。 しかれども、 もろもろの凡夫、 心は野馬のごとく、 識は猿猴よりもはなはだしく、 六塵に馳騁して、 なんぞかつて停息せんや。 おのおの、 すべからくよろしく信心を致し、 あらかじめみづから剋念し、 積習して*性を成じ、 善根をして堅1047固ならしむべし。
綽和尚ノ云ク、「十念相続スルコトハ似タレドモ↠若キニ↠不ルガ↠難カラ、然モ諸ノ凡夫、心ハ如シ↢野馬ノ↡。識ハ劇シク↢猨猴ヨリモ↡、馳↢騁ス六塵ニ↡。何ゾ曽テ停息セムヤ。各ノ須クシ↧宜ク致シテ↢信心ヲ↡、*預メ自ラ剋念シテ、使ム↦積習シテ成ジ↠性ヲ、善根ヲシテ堅固ナラ↥也。
^◆仏 (釈尊)、 大王に告げたまへるがごとし。 ª人、 善行を積めば、 死するときに悪念なし。 樹の先より傾けるは倒るるに、 かならず曲れるに随ふがごとしº (大智度論) と。
如シ↣仏告ゲタマヘルガ↢大王ニ↡。人積メルハ↢善行ヲ↡死スルトキニ无シ↢悪念↡。如シト↢樹ノ先ヨリ傾ケルガ倒ルルニハ必ズ*随フガ↟曲レルニ也。
^◆もし*刀風一たび至れば、 百苦身に奏まる。 もし習先よりあらずは、 懐念なんぞ弁ずべけんや。 おのおのよろしく同志*三五と、 あらかじめ*言要を結びて、 命終の時に臨みて、 たがひにあひ開暁し、 ために弥陀の名号を称し、 極楽に生るることを願じて、 声々あひ次いで十念を成ぜしむべし」 と。 以上
若シ刀風一タビ至レバ、百ノ苦シビ*奏ル↠身ニ。若シ習ヒ先ヨリ不レバ↠在ラ、懐念何ゾ可ケムヤ↠*弁ズ。各ノ宜ク同志ヲ三五シテ、預メ結ビテ↢言要ヲ↡臨マム↢命終ノ時ニ↡。迭ニ相開*暁シ、為ニ称シ↢弥陀ノ名号ヲ↡、願ジテ↠生レムコトヲ↢極楽ニ↡、声々相次ギテ使メヨト↠成サ↢十念ヲ↡。」 已上
^いふところの 「↑十念」 といふは、 多くの釈ありといへども、 しかも一心に十返 「南無阿弥陀仏」 と称念する、 これを十念といふ。 この義、 経の文に順ぜり。 余は▽下の料簡のごとし。
所ノ↠言フ「十念トイフハ」、雖モ↠有リト↢多ノ釈↡、然モ一心ニシテ十*返称↢念スル南无阿弥陀仏ト↡、謂フ↢之ヲ十念ト↡。此ノ義順ゼリ↢経ノ文ニ↡。余ハ如シ↢下ノ料簡ノ↡。
・観念
^次に臨終の↑勧念とは、 善友・同行のその志あるものは、 仏教に順ずるがために、 衆生を利せんがために、 善根のために、 結縁のために、 患に染まん初めより病の床に来りて問ひて、 幸ひに勧進を垂れよ。
次ニ臨終ノ勧念ト者、善友・同行ノ有ラム↢其ノ志↡者ハ、為ニ↠順ズルガ↢仏教ニ↡、為ニ↠利セムガ↢衆生ヲ↡、*為ニ↢善根ノ↡、為ニ↢結縁ノ↡、従リ↢染ム↠患ニ初↡来リテ↢問フテ病ノ床ニ↡、幸ニ垂レヨ↢勧進ヲ↡矣。
^ただ勧誘の趣は、 人の意にあるべし。 いましばらく自身のために、 その詞を結びていはく、 *仏子、 年来のあひだ、 この界の希望を止めて、 ただ*西方の業を修す。 就中、 もとより期するところは、 これ臨終の十念なり。 いますでに病の床に臥しぬ。 恐れざるべからず1048。
但勧誘之趣ハ、応シ↠在ル↢人ノ意ニ↡。今且ク為ニ↢自身ノ↡結ビテ↢其ノ詞ヲ↡云ク、仏子、年来之間止メテ↢此ノ界ノ*希望ヲ↡唯シ修ス↢西方ノ業ヲ↡。就キテ↠中ニ本ヨリ所ハ↠期セシ、是臨終ノ十念ナリ。今既ニ臥シヌ↢病ノ床ニ↡。不↠可カラ↠不ハアル↠恐ラ。
^すべからく目を閉ぢ、 掌を合せて、 一心に誓期すべし。 仏の相好にあらざるよりは、 余の色を見ることなかれ。 仏の法音にあらざるよりは、 余の声を聞くことなかれ。 仏の正教にあらざるよりは、 余の事を説くことなかれ。 往生の事にあらざるよりは、 余の事を思ふことなかれ。
須クシ↢閉ジ↠目ヲ合セテ↠掌ヲ、一心ニシテ誓期ス↡。自リハ↠非ズ↢仏ノ相好ニ↡、勿レ↠見ルコト↢余ノ色ヲ↡。自リハ↠非ズ↢仏ノ法音ニ↡、勿レ↠聞クコト↢余ノ声ヲ↡。自リハ↠非ズ↢仏ノ正教ニ↡、勿レ↠説クコト↢余ノ事ヲ↡。自リハ↠非ズ↢往生ノ事ニ↡、勿レ↠思1163フコト↢余ノ事ヲ↡。
^かくのごとくして、 乃至、 命終の後に、 宝蓮台の上に坐して、 弥陀仏の後に従ひ、 聖衆囲繞して、 十万億の国土を過ぐるあひだをもまたかくのごとくして、 余の境界を縁ずることなかれ。 ただ極楽世界の七宝の池のなかに至りて、 はじめて目を挙げ、 掌を合せて、 弥陀の尊容を見たてまつり、 甚深の法音を聞き、 諸仏の功徳の香を聞ぎ、 法喜・禅悦の味はひを嘗め、 *海会の聖衆を頂礼し、 普賢の行願に悟入すべし。
如クシテ↠是クノ乃至命終之後ニ、坐シテ↢宝*蓮台ノ上ニ↡、従ヒ↢弥陀仏ノ後ニ↡、聖衆囲遶シテ、過ギム↢十万億ノ国*土ヲ↡間ヲモ亦復如クシテ↠是クノ、勿レ↠縁ズルコト↢余ノ境界ヲ↡。唯シ至リテ↢極楽世界ノ七宝ノ池ノ中ニ↡、始テ応ニシ↧挙ゲ↠目ヲ合セテ↠掌ヲ、見タテマツリ↢弥陀ノ尊容ヲ↡、聞キ↢甚深ノ法音ヲ↡、聞ギ↢諸仏ノ功徳ノ香ヲ↡、嘗メ↢法喜・禅悦ノ味ヲ↡、頂↢礼シ海会ノ聖衆ヲ↡、悟↦入ス普賢ノ行願ニ↥。
^いま十事あり。 まさに心を一にして聴き、 心を一にして念ふべし。 一々の念ごとに疑心をなすことなかれ。
今有リ↢十事↡。応ニ当シ↢一ニシテ↠心ヲ聴キ、一ニシテ↠心ヲ念フ↡。毎ニ↢一々ノ念↡莫レ↠生スコト↢疑心ヲ↡。
^一には先づ大乗の*実智を発して生死の由来を知るべし。
一ニハ先ヅ応シ↧発シテ↢大乗ノ実智ヲ↡知ル↦生死ノ由来ヲ↥。
^¬*大円覚経¼ の偈にのたまふがごとし。
如シ↢¬大円覚経ノ¼偈ニ云フガ↡。
^「一切のもろもろの衆生の、 無始の幻の無明は、
みなもろもろの如来の、 *円覚の心より建立せり」 と。
「一切ノ諸ノ衆生ノ | 无始ノ幻ノ无明ハ |
皆従リ↢諸ノ如来ノ | 円覚ノ心↡建立セリト」 |
^ま1049さに知るべし、 生死即涅槃なり、 煩悩即菩提なり、 円融無礙にして無二無別なり。 しかるを一念の妄心によりて、 生死の界に入りにしよりこのかた、 無明の病に盲ひられて、 久しく*本覚の道を忘れたり。 ただ諸法はもとよりこのかた、 つねにおのづから寂滅の相なり。 幻のごとくして定まれる性なし。 心に随ひて転変す。
当ニシ↠知ル、生死即涅槃ナリ。煩悩即菩提ナリ。円融无礙ニシテ无二无別ナリ。而ルヲ由リテ↢一念ノ*妄心ニ↡入リニシヨリ↢生死ノ界ニ↡来タ、无明ノ病ニ所レテ↠盲ヒ久シク*妄レタリ↢本覚ノ道ヲ↡。但シ諸法ハ従リ↠本来タ常ニ自ラ寂滅ノ相ナリ。如クシテ↠幻ノ无シ↢定マレル性↡。随ヒテ↠心ニ而転変ス。
^このゆゑに、 仏子、 三宝を念じたてまつりて、 邪を翻して正に帰すべし。 しかも仏はこれ医王なり、 法はこれ良薬なり、 僧はこれ瞻病人なり。 無明の病を除き、 正見の眼を開き、 本覚の道を示して、 浄土に引摂することは、 仏法僧にしくはなし。
是ノ故ニ*仏子応シ↧念ジタテマツリテ↢三宝ヲ↡、翻シテ↠邪ヲ帰ス↞正ニ。然モ仏ハ是医王ナリ。法ハ是良薬ナリ。僧ハ是瞻病人ナリ。除キ↢无明ノ病ヲ↡、開キ↢正見ノ眼ヲ↡、示シテ↢本覚ノ道ヲ↡引↢*摂スルコトハ浄土ニ↡、无シ↠如クハ↢仏法僧ニ↡。
^このゆゑに、 仏子、 先づ大医王の想をなして、 一心に仏を念じたてまつるべし。 「南無三世十方一切諸仏・南無本師釈迦牟尼仏・南無薬師琉璃光仏」 と。 三念以上。 「南無阿弥陀仏」 と。 十念以上。
是ノ故ニ仏子、先ヅ応シ↧*作シテ↢大医王ノ想ヲ↡一心ニシテ念ジタテマツル↞仏ヲ。*南无三世十方一切諸仏、南无本師釈迦牟尼仏、南无薬師*琉璃光*仏ト、三念已上 南无阿弥陀*仏ト。十念已上
^次に妙良薬の想を生じて、 一心に法を念ずべし。 「南無三世*仏母摩訶般若波羅蜜・南無平等大慧妙法蓮華経・南無*八万十二一切正法」 と。
次ニ応シ↧生ジテ↢妙良薬ノ想ヲ↡一心ニ念ズ↞法ヲ。南无三世仏母摩訶般若波羅蜜、南无平等大*慧妙法蓮花経1164、南无八万十二一切正法ト。
^次に*随逐護念の想を生じて、 一心に僧を念ずべし。 「南無観世音菩薩・南無大勢至菩薩・南無普賢菩薩・南無文殊師利菩薩・南無弥勒菩薩・南無地蔵菩薩・南無龍樹菩薩・南無三世十方一切聖衆・南無極楽界会一切三宝・南無三世十方一切三宝」 と。
次ニ応シ↧生ジテ↢随*逐護念ノ想ヲ↡一心ニ念ズ↞僧ヲ。南无観世音菩薩、南无大勢至菩薩、南无普賢菩薩、南无文殊師利菩薩、南无弥勒菩薩、南无地蔵菩薩、南无龍樹菩薩、南无三世十方一切聖衆、南无極楽界会一切三宝、南无三世十方一切三宝ト。
^三念以上、 あるいは1050よろしきに随ひて、 同音に助念せよ。 あるいは鐘声を聞かしめて、 正念を増せしめよ。 下去はこれに准ぜよ。
三念已上、或イハ随ヒテ↠宜シキニ、同音ニ助念セヨ。或イハ令メテ↠聞カ↢鐘声ヲ↡、増セシメヨ↢正念ヲ↡。下去ハ准ゼヨ↠之ニ
^二には*法性は平等なりといへども、 また仮有を離れず。
二ニハ法性ハ雖モ↢平等ナリト↡、亦不↠離レ↢仮有ヲ↡。
^弥陀仏ののたまふがごとし。
如シ↢弥陀仏ノ言フガ↡。
^「▲諸法の性は、 一切、 空・無我なりと通達して、
もつぱら浄仏土を求むれば、 かならずかくのごとき浄刹を成ず」 (*大経・下) と。
「通↢達シテ諸法ノ性ハ | 一切空无我ナリト↡ |
専ラ求ムル↢*浄仏土ヲ↡ | 必ズ成ズト↢如キ↠是クノ*浄刹ヲ↡」 |
^ゆゑに浄土に往生せんがために、 先づこの界を厭離すべし。 いまこの娑婆世界は、 これ悪業の所感なり、 衆苦の本源なり。 生老病死は輪転して際なし。 三界は極縛にして一も楽しむべきことなし。 もしこの時においてこれを厭離せずは、 まさにいづれの生にか輪廻を離るべけんや。
故ニ為ニ↣往↢生セムガ浄土ニ↡、先ヅ応シ↣厭↢離ス此ノ界ヲ↡。今此ノ娑婆世界ハ是悪業ノ所感ナリ、衆苦ノ本源也。*生老病死ハ輪転シテ无シ↠際。三界ハ*極縛ニシテ无シ↢一モ可キコト↟楽シブ。若シ於テ↢此ノ時ニ↡不ハ↣厭↢離セ之ヲ↡、当ニケム↣於何レノ生ニカ離ル↢輪廻ヲ↡耶。
^しかも阿弥陀仏には不可思議の威力まします。 もし一心に名を称すれば、 念々のうちに、 八十億劫の生死の重罪を滅したまふ。 このゆゑに、 いままさに一心にかの仏を念じて、 この苦界を離るべし。
然モ阿弥陀仏ニハ有ス↢不*可思議ノ威力↡。若シ一心ニ称スレバ↠名ヲ、念念之中ニ滅シタマフ↢八十億劫ノ生死ノ重罪ヲ↡。是ノ故ニ今当ニシ↧一心ニシテ念ジテ↢彼ノ仏ヲ↡離ル↦此ノ苦界ヲ↥。
^この念をなすべし、 「願はくは阿弥陀仏、 決定してわれを抜済したまへ」 と。 南無阿弥陀仏。 その十念以上の信心の勢ひの尽くるを見て、 次の事を勧む1051べし。 あるいは加へて二菩薩 (観音・勢至) を称せよ。 下去はこれに准ず。
応シ↠作ス↢是ノ念ヲ↡。願クハ阿弥陀仏、決定シテ抜↢済シタマヘト我ヲ↡。南无阿弥陀仏。見レバ↢其ノ十念以*上ノ信心ノ勢ノ尽ク↡、応シ↠勧ム↢次ノ事ヲ↡。*或イハ加ヘテ称セヨ↢二菩薩ヲ↡。下去ハ准ズ↠之ニ
^三には浄土を欣求すべし。
三ニハ応シ↣欣↢求ス浄土ヲ↡。
^西方極楽は、 これ大乗善根の界、 無苦無悩の処なり。 一たび蓮胎に託しぬれば、 永く生死を離れ、 眼には弥陀の聖容を瞻たてまつり、 耳には深妙の尊教を聞く。 一切の快楽、 具足せずといふことなし。
西方極楽ハ、是大乗善根ノ界、无苦无悩ノ処ナリ。一タビ託シヌレバ↢蓮胎ニ↡永ク離ル↢生死ヲ↡。眼ニハ瞻タテマツリ↢弥陀之聖容ヲ↡、耳ニハ聞ク↢深妙之尊教ヲ↡。一切ノ快楽无シ↠不トイフコト↢具足セ↡。
^もし人、 臨終の時に、 十たび弥陀仏を念ずれば、 決定してかの安楽国に往生す。 仏子、 いまたまたま人身を得たり、 また仏教に値へり。 なほ*一眼の亀の、 浮木の孔に値へるがごとし。 もしこの時において、 往生することを得ずは、 還りて三悪・八難のなかに堕して、 法を聞くことなほ難し。 いかにいはんや、 往生をや。 ゆゑに、 一心にかの仏を称念したてまつるべし。
若シ人臨終ノ時ニ十タビ念ズレバ↢弥陀仏ヲ↡、決定シテ往↢生ス彼ノ安楽国ニ↡。仏子1165*今適マ得タリ↢人身ヲ↡、亦値ヘリ↢仏教ニ↡。猶シ↣一眼ノ亀ノ値ヘルガ↢浮木ノ*孔ニ↡。若シ於テ↢此ノ時ニ↡不ハ↠得↢往生スルコトヲ↡、還リテ堕シテ↢三*悪・八難之中ニ↡、聞クコト↠法ヲ尚難ケム。何ニ況ヤ往生ヲヤ。故ニ応シ↣一心ニシテ称↢念シタテマツル彼ノ仏ヲ↡。
^この念をなすべし、 「願はくは仏、 今日決定して、 われを*引接して、 極楽に往生せしめたまへ」 と。 南無阿弥陀仏。
応シ↠作ス↢是ノ念ヲ↡、願クハ仏、今日決定シテ引接シテ、於テ↠我ニ往↢生セシメタマヘト極楽ニ↡。南无阿弥陀仏
^四にはおほよそかの国に往生せんと欲ふものは、 すべからくその業を求むべし。
四ニハ凡ソ欲ハム↣往↢生セムト彼ノ国ニ↡者ハ、須クシ↠求ム↢其ノ業ヲ↡。
^かの仏の本願 (第二十願) にのたまふがごとし。 「▲たとひわれ仏を得たらんに、 十方の衆生、 わが名号を聞きて、 念をわが国に係けて、 もろもろの徳の本を殖ゑて、 心を至して回向して、 わが国に生れんと欲せん。 果し遂げずは、 正覚1052を取らじ」 (大経・上) と。
如シ↢彼ノ仏ノ本願ニ云フガ↡。「設ヒ我得タラムニ↠仏ヲ、十方ノ衆生ノ、聞キテ↢我ガ名号ヲ↡、係ケテ↢念ヲ我ガ国ニ↡、殖ヱテ↢諸ノ徳ノ本ヲ↡、至シテ↠心ヲ廻向シテ欲セムニ↠生レムト↢我ガ国ニ↡、不トイハバ↢果シ遂ゲ↡者、不ト↠取ラ↢正覚ヲ↡。」
^仏子、 一生のあひだ、 ひとへに西方の業を修す。 所修の業多しといへども、 期するところはただ極楽なり。 いますべからくかさねて三際の一切の善根を聚集して、 ことごとく極楽に回向すべし。
仏子一生之間偏ニ修ス↢西方ノ業ヲ↡。所修ノ業雖モ↠多シト、所ハ↠期スル唯シ極楽ナリ。今須クシ↧重ネテ聚↢集シテ三際ノ一切ノ善根ヲ↡、尽ク廻↦向ス極楽ニ↥。
^この念をなすべし、 「願はくは、 わが所有の一切の善根力によりて、 今日決定して極楽に往生せん」 と。 南無阿弥陀仏。
応シ↠作ス↢是ノ念ヲ↡、願クハ由リテ↢我ガ所有ノ一切ノ善根力ニ↡、今日決定シテ往↢生セムト極楽ニ↡。南无阿弥陀仏
^五にはまた本願 (第十九願) にのたまはく、 「▲たとひわれ仏を得たらんに、 十方の衆生、 菩提心を発して、 もろもろの功徳を修して、 至心に願を発して、 わが国に生れんと欲せん。 寿終の時に臨みて、 たとひ大衆と囲繞して、 その人の前に現ぜずは、 正覚を取らじ」 (大経・上) と。
五ニハ又本願ニ云ク、「設ヒ我得タラムニ↠仏ヲ、十方ノ衆生ノ、発シテ↢菩提心ヲ↡、修シテ↢諸ノ功徳ヲ↡、至心ニ発シテ↠願ヲ、欲セムニ↠生レムト↢我ガ国ニ↡、臨ミテ↢寿終ノ時ニ↡、仮令不トイハバ↧与↢大衆↡囲遶シテ現ゼ↦其ノ人ノ前ニ↥者、不ト↠取ラ↢正覚ヲ↡。」
^仏子、 久しくすでに菩提心を発し、 およびもろもろの善根をもつて極楽に回向せり。 いますべからくかさねて菩提心を発して、 かの仏を念じたてまつるべし。
仏子久シク已ニ発シ↢菩提心ヲ↡、及ビ諸ノ善根ヲモテ廻↢向セリ極楽ニ↡。今須クシ↧重ネテ発シテ↢菩提心ヲ↡念ジタテマツル↦彼ノ仏ヲ↥。
^この念をなすべし、 「願はくはわれ、 一切衆生を利益せんがために、 今日決定して極楽に往生せん」 と。 南無阿弥陀仏。
応シ↠作ス↢此ノ念ヲ↡、願クハ我為ニ↣利↢*益セムガ一切衆生ヲ↡、今日決定シテ往↢生セムト極楽ニ↡。南无阿弥陀仏
^六にはすでに知りぬ。 仏子はもとよりこのかた、 往生の業を具せり。 いますべからくもつぱら弥陀如来を念じて、 業をして増盛ならしむべし。
六ニハ既ニ知リヌ。仏子ハ本ヨリ来タ具セリ↢往生ノ業ヲ↡。今須クシ↧専ラ念ジテ↢弥陀如来ヲ↡、令ム↦業ヲシテ増*盛↥ナラ。
^しかも、 かの1053仏の功徳は無量無辺にして、 つぶさに説くべからず。 いま現に十方にまします、 おのおの恒河沙等の諸仏、 つねにかの仏の功徳を称讃したまふ。 かくのごとく称讃したまふこと、 たとひ恒沙劫を経とも、 つひに窮尽すべからず。 仏子、 総じて一心にかの仏の功徳を帰命すべし。
然モ彼ノ仏ノ功徳ハ无量无辺ニシテ不↠可カラ↢具ニ説ク↡。今現ニ在ニ↢十方ニ↡、各ノ恒河沙等ノ諸仏恒常ニ称↢讃シタマフ彼ノ仏ノ功徳ヲ↡。如ク↠是1166クノ称讃シタマフコト、設ヒ経トモ↢恒沙劫ヲ↡終ニ不↠可カラ↢窮尽ス↡。仏子総ジテ応シ↣一心ニ帰↢命ス彼ノ仏ノ功徳ヲ↡。
^念ふべし、 「われいま、 一念のうちに、 ことごとくもつて弥陀如来の一切の万徳を帰命す」 と。 南無阿弥陀仏。
応シ↠念フ、我今一*念ノ中ニシテ、尽ク以テ帰↢命スト弥陀如来ノ一切ノ万徳ニ↡。南无阿弥陀仏
^七には仏子、 弥陀仏の一の色相を念じて、 心をして一境に住せしむべし。
七ニハ仏子応シ↫念ジテ↢*弥陀仏ノ一ノ色相ヲ↡令ム↪心ヲシテ住セ↩一境ニ↨。
^いはく、 かの仏の色身は閻浮檀金のごとし。 威徳巍々たること金山王のごとく、 無量の相好をもつて、 その身を荘厳せり。 そのなかに眉間の白毫は、 右に旋りて婉転せること五須弥のごとし。 七百五倶胝六百万の光明、 熾然赫奕たること億千の日月のごとし。
謂ク彼ノ仏ノ色身ハ如クシテ↢閻浮檀金ノ↡、威徳巍々タルコト如シ↢金山王ノ↡。無量ノ相好ヲモテ荘↢厳セリ其ノ身ヲ↡。其ノ中ニ眉間ノ白毫ハ右ニ旋リテ婉転セルコト、如シ↢*五須弥ノ↡。七百五倶胝六百万ノ光明、熾然ニ赫奕タルコト如シ↢億千ノ日月ノ↡。
^これすなはち無漏の万徳の成就したまへるところ、 大定智悲の流出せるところなり。 須臾のあひだも、 この相を憶へば、 よく九十六億那由他恒河沙微塵数劫の生死の重罪を滅す。 このゆゑに、 いままさにかの相を憶念して、 決定して罪業を滅除すべし。
是即チ无漏ノ万徳之所↢成*就シタマヘル↡、大定智悲之所↢流出セル↡也。須臾之間モ憶ヘバ↢此ノ相ヲ↡者、能ク滅ス↢九十六億那由他恒河沙微塵数劫ノ生死ノ重罪ヲ↡。是ノ故ニ今当ニシ↧憶↢念シテ彼ノ相ヲ↡決定シテ滅↦除ス罪業ヲ↥。
^この念をなすべし、 「願はくは白毫相の光、 わがもろもろの罪を滅したまへ」 と。 南無阿弥陀仏。
応シ↠作ス↢此ノ念ヲ↡、願クハ白毫相ノ*光滅シタマヘト↢我ガ諸ノ罪ヲ↡。南无阿弥陀仏
^八にはかの白毫相のそこばくの光明は、 つねに十方世界の念仏の衆生を照らし1054て、 *摂取して捨てたまはず。 まさに知るべし、 大悲の光明は決定して来りて照らしたまふらん。
八ニハ彼ノ白毫相ノ若干ノ光明ハ、常ニ照シテ↢十方世界ノ念仏ノ衆生ヲ↡、摂取シテ不↠捨テタマハ。当ニシ↠知ル、大悲ノ光明ハ決定シテ来リテ照シタマフラム。
^¬華厳¼ の偈にのたまふがごとし。
如シ↢¬花*厳ノ¼偈ニ云フガ↡。
^「また光明を放ちたまふを見仏と名づく。 かの光は命終のものを覚悟せしめたまふ。
念仏三昧をしてかならず仏を見たてまつり、 命終の後に仏前に生る」 と。
「又放チタマフヲ↢光明ヲ↡名ク↢見仏ト↡ | 彼ノ光ハ覚↢悟セシメタマフ命終ノ者ヲ↡ |
念仏三昧ヲシテ必ズ見タテマツリ↠仏ヲ | 命終之後ニ生ルト↢仏前ニ↡」 |
^ゆゑにいまこの念をなすべし、 「願はくは弥陀仏、 清浄の光を放ちて、 はるかにわが心を照らしたまひ、 わが心を覚悟して、 *境界と自体と当生との三種の愛を転じて、 念仏三昧成就して極楽に往生することを得しめたまへ」 と。 南無阿弥陀仏
故ニ今応シ↠作ス↢是ノ念ヲ↡、願クハ弥陀仏放チテ↢清浄ノ光ヲ↡、遥ニ照シタマヒ↢我ガ心ヲ↡、覚↢悟シテ我ガ心ヲ↡、転ジテ↢境界ト自体ト当生トノ三種ノ愛ヲ↡、令メタマヘト↠得↣念仏三昧成就シテ往↢生スルコトヲ極楽ニ↡。南无阿弥陀仏
^九には弥陀如来は、 ただ光をもつてはるかに照らしたまふのみにあらず。 みづから観音・勢至とつねに来りて行者を擁護したまふ。 いかにいはんや、 父母は病の子においては、 その心ひとへに重し。 ˆ仏はˇ 法性の山を動かし、 生死の海に入りたまふ。 まさに知るべし、 この時に、 仏、 大光明を放ちて、 もろもろの聖衆とともに来りて、 *引接擁護したまふらん。 惑障あひ隔てて、 見たてまつることあたはずといへども、 大悲の願疑ふべからず。 決定してこの室に来入し1055たまふらん。
九ニハ弥陀如来ハ非ズ↢唯シ以テ↠光ヲ遥ニ照シタマフノミニ↡。自ラ与↢観音・勢至↡常ニ来リテ擁↢護シタマフ行者ヲ↡。何ニ況ヤ、父母ハ於テハ↢病ノ子ニ↡其1167ノ心偏ニ重シ。動シ↢法性ノ山ヲ↡、入リタマフ↢生死ノ海ニ↡。当ニシ↠知ル、是ノ時ニ仏放チテ↢大光明ヲ↡、与↢諸ノ聖衆↡倶ニ来リテ引接擁護シタマフラム。*或障相隔テテ雖モ↠不ト↠能ハ↠見タテマツルコト、大悲ノ願不↠可カラ↠疑フ。決定シテ来↢入シタマフラム此ノ室ニ↡。
^ゆゑに仏子、 この念をなすべし、 「願はくは仏、 大光明を放ちて、 観音・勢至とともに来りて、 決定して来迎し、 引接して極楽に往生せしめたまへ」 と。 南無阿弥陀仏。 以上第七・八・九条の事は、 つねに勧誘すべし。 その余の条は、 時々、 これを用ゐよ。
故ニ仏子応シ↠作ス↢是ノ念ヲ↡、願クハ仏放チテ↢大光明ヲ↡*与↢観音・勢至↡倶ニ来リテ、決定シテ来迎シテ、*引接シテ往↢生セシメタマヘト極楽ニ↡。南无阿弥陀仏 *已上第七・八・九条ノ事ハ、常ニ応シ↢勧誘ス↡。其ノ余ノ*条ハ、時々用ヰヨ↠之ヲ
^もし病者の気力、 やうやく羸劣なる時には、 いふべし、 「仏、 観音・勢至、 無量の聖衆とともに来りて、 宝蓮台を擎げて、 仏子を引接したまふらん」 と。
若シ病者ノ気力漸々羸劣ナラム時ニハ、応シ↠云フ、仏与↢観音・勢至、无量ノ聖衆↡倶ニ来リテ、擎ゲテ↢宝蓮台ヲ↡*而引↢*接シタマフラムト仏*子ヲ↡。
^十にはまさしく終りに臨む時にいふべし、 「仏子、 知るやいなや。 ただいまはすなはちこれ最後の心なり。 臨終の一念は百年の業に勝れり。 もしこの刹那を過ぎなば、 生処一定しぬべし。 いままさしくこれその時なり。 まさに一心に仏を念じて、 決定して西方極楽の微妙浄土の*八功徳池のうちの、 七宝蓮台の上に往生すべし」 と。
十ニハ正シク臨ム↠終ニ時ニ応シ↠云フ。仏子知ルヤ*不ヤ。*但今ハ即チ是最後ノ心也。臨終ノ一念ハ勝レリ↢百年ノ業ニ↡。若シ過ギナバ↢此ノ刹那ヲ↡、生処応シ↢*一定シヌ↡。今正シク是其ノ時ナリ。当ニシト↣一心ニシテ念ジテ↠仏ヲ、決定シテ往↢生ス西方極楽ノ微妙浄土ノ八功徳池ノ中ノ、七宝蓮台ノ上ニ↡。
^この念をなすべし、 「如来の本誓は一毫も謬ることなし。 願はくは仏、 決定してわれを引摂したまへ」 と。 南無阿弥陀仏。
応シ↠作ス↢是ノ念ヲ↡、如来ノ本誓ハ一毫モ无シ↠謬ルコト。願クハ仏、決定シテ引↢*摂シタマヘト*於我ヲ↡。南无阿弥陀仏
^あるいは漸々に略を取りて、 念ふべし、 ▼「願はくは仏、 かならず引摂したまへ」 と。 南無阿弥陀仏。
或イハ漸々ニ取リテ↠略ヲ*応シ↠念フ、願クハ仏必ズ引摂シタマヘト。南无阿弥陀仏
^かくのごとく病者の気色を瞻て、 その所応に随順して、 ただ*一の事をもつて最後の念となし、 衆多なることを得ざれ。 その詞の進止は、 ことに用意すべ1056し。 病者をして*攀縁をなさしむることなかれ。
如ク↠是クノ瞻テ↢病者ノ気色ヲ↡、随↢順シテ其ノ所応ニ↡、但以テ↢一ノ事ヲ↡為ヨ↢最*後ノ念ト↡。不レ↠得↢衆多ナルコトヲ↡。其ノ詞ノ進止ハ可シ↢殊ニ用意ス↡。勿レ↠令ムルコト↣病者ヲシテ生サ↢*於攀縁ヲ↡矣。
^問はく、 ¬観仏三昧経¼ に説くがごとし。 「仏、 阿難に告げたまはく、 ªもし衆生ありて、 父を殺し、 母を害し、 六親を*罵辱せらん。 この罪を作れるものは、 ▲命終の時に、 銅の狗、 口を張りて十八の車を化す。 状、 金車のごとし。 宝蓋、 上にありて、 ▽一切の火焔は、 化して玉女となる。 罪人はるかに見て、 心に歓喜を生じて、 «われなかに往かんと欲す» と。
問ク、如シ↢¬観仏三昧経ニ¼説クガ↡。「仏告ゲタマハク↢阿難ニ↡、若シ有リテ↢衆生↡、殺シ↠父ヲ*害シ↠母ヲ、罵↢辱セラム六親ヲ↡。作レル↢是ノ罪ヲ↡者ハ、命終之時ニ、銅ノ狗張リテ↠口ヲ化ス↢十八ノ車ヲ↡。状如クシテ↢金車ノ↡、宝蓋在ケリ↠上ニ。一切ノ火焔ハ化シテ為ル↢玉女ト↡。罪人遥ニ見テ心ニ生ジテ↢歓喜ヲ↡、我欲スト↠往カムト↠中ニ。
^◆風刀の解くる時に、 寒急にして声を失ひ、 «むしろ好火を得て、 車の上にありて、 坐して燃ゆる火にみづから爆られん» と。 この念をなしをはりて、 すなはち命終す。 揮攉のあひだに、 ▽すでに金車に坐しぬ。 玉女を顧み瞻れば、 みな鉄斧を捉りて、 その身を折り截るº」 と。
風1168刀解クル時ニ寒急ニシテ失フ↠声ヲ。寧ロ得テ↢好火ヲ↡、在リテ↢車ノ上ニ↡、坐シテ燃キテ↠火ヲ自ラ爆ラレムト。作シ↢是ノ念ヲ↡已リテ即便チ命終ス。揮攉之間ニ已ニ坐ヌ↢金車ニ↡。顧ミ↢瞻レバ玉女ヲ↡、皆*捉リテ↢鉄斧ヲ↡折リ↢截ルト其ノ身ヲ↡。」
^またのたまはく (観仏三昧経)、 「▽また衆生ありて、 四重禁を犯し、 虚しく*信施を食らひ、 誹謗・邪見にして、 因果を識らず、 般若を学することを断じ、 十方の仏を毀り、 *僧祇物を偸み、 *婬妷無道にして、 浄戒のもろもろの比丘尼、 姉妹・親戚を逼略して、 懴愧することを知らず、 所親を毀辱し、 もろもろの悪事を造れる、 この人の罪報、 ▲命終の時に臨みて、 ▽風刀身を解くに、 *偃坐不定なること、 *杖楚を被るがごとし。
又言ク、「復有リテ↢衆生↡犯シ↢四重禁ヲ↡、虚シク食ヒ↢信施ヲ↡、誹謗・邪見ニシテ不↠識ラ↢因果ヲ↡、断ジ↠学スルコトヲ↢般若ヲ↡、毀リ↢十方ノ仏ヲ↡、偸ミ↢僧*祇物ヲ↡、婬*妷无道ニシテ逼↢略シテ浄戒ノ諸ノ比丘尼、姉妹・親*慼ヲ↡、不↠知ラ↢*懴愧スルコトヲ↡、毀↢辱シ所親ヲ↡、造レル↢衆ノ悪事ヲ↡、此ノ人ノ罪報、臨ミテ↢命終ノ時ニ↡風刀解クニ↠*身ヲ、偃坐不定ナルコト如シ↠被ルガ↢杖*楚ヲ↡。
^◆その心は荒越して、 痴狂の想を発し、 おのが室宅1057を見れば、 男女・大小の一切は、 みなこれ不浄の物なり。 屎尿の臭き処にして、 ほかに盈流せん。 ◆その時に、 罪人すなはちこの語をなしていはく、 ªなんぞ、 この処に好き城廓および好き山林の、 われをして遊戯せしむるものなくして、 すなはちかくのごとき不浄物のあひだに処せるやº と。
其ノ心ハ荒越シテ発シ↢痴狂ノ想ヲ↡、見ユ↢己ガ室宅ノ↡男女・大少一切ハ皆是不浄之物ナリト↡。屎尿ノ臭キ処トシテ盈↢流セム于外ニ↡。爾ノ時ニ罪人即チ作シテ↢是ノ語ヲ↡云ク、何ゾ此ノ処ニ无キ↣好キ城廓及ビ好キ山林ノ*使ムルモノ↢吾ヲシテ遊戯セ↡、乃シ処セルコトヲヤト↢如キ↠此クノ不*浄物ノ間ニ↡。
^◆この語をなしをはるに、 獄卒羅刹、 大きなる鉄叉をもつて、 阿鼻地獄およびもろもろの刀山を擎げて、 化して宝樹および清涼の池となす。 火焔は化して金葉の蓮華となり、 もろもろの鉄の嘴ある虫は、 化して鳧・雁となる。 ▽地獄の痛む声は、 詠歌の音のごとし。 ◆罪人、 聞きをはりて、 ªかくのごとき好き処に、 われまさになかに遊ぶべしº とおもふ。 念じをはりて、 尋いで時に大蓮華に坐せん」 と。 云々
作シ↢是ノ語ヲ↡已ルニ、獄率・羅刹以テ↢大ナル鉄叉ヲ↡擎ゲテ↢阿鼻地獄及ビ諸ノ刀山ヲ↡、化シテ作サム↢宝樹及ビ清涼ノ池ヲ↡。火焔ハ化シテ作ラム↢金葉ノ蓮花ト↡。諸ノ鉄ノ嘴アル虫ハ化シテ為ラム↢鳧・雁ト↡。地獄ノ痛ム声ハ如クアラム↢詠歌ノ音ノ↡。罪人聞キ已リテ、如キ↠此クノ好キ処ニ吾当ニシトオモフ↠遊ブ↠中ニ。念ジ已リテ、*尋ギテ時ニ坐セムト↢大蓮花ニ↡。」云々
^いかんぞ知るや、 今日の蓮華の来り迎ふること、 これ火華にあらずとは。
寧ゾ知ルヤ、今日ノ蓮花ノ来リ迎フルコト非ズトハ↢是火花ニ↡。
^答ふ。 感和尚 (懐感) の釈していはく (群疑論)、 「四の義をもつてのゆゑに、 *火車にあらずといふことを知る。 一には↓行をもつて、 二には↓相をもつて、 三には↓語をもつて、 四には↓仏をもつてなり。 この四義、 火華に異なり。
答スラク、感和尚ノ釈シテ云ク、「以テノ↢四ノ義ヲ↡故ニ知ル↠非ズトイフコトヲ↢火車ニ↡。一ニハ以テ↠行ヲ、二ニハ以テ↠相ヲ、三ニハ以テ↠語ヲ、四ニハ以テナリ↠仏ヲ。此ノ四義異ナリ↢火華ニハ↡。
^一に↑行をもつてとは、 ¬観仏三昧経¼ に、 ª△罪人は罪を造りて、 四重禁を犯し、 乃至、 所親を毀辱してº と説けども、 悔過をなさず、 善友の、 教へて仏を念ぜしむるにも遇はざ1058るがゆゑに、 所見の華はこれ地獄の相なり。 いまこの下品等の三人は、 また生れてよりこのかた、 罪を造れりといへども、 終りの時に、 善知識に遇ひて、 心を至して仏を念ず。 仏を念ずるをもつてのゆゑに、 多劫の罪を滅して、 勝功徳を成じて、 宝池のなかの華来り迎ふることを感得す。 あに前の華に同じからんや。
一ニ以テト↠行ヲ者、¬観仏三昧経ニ¼説カク、罪人ハ造リテ↠罪ヲ、犯シ↢四重禁ヲ↡、乃至毀↢辱シテ所親ヲ↡、不↠生サ↢悔過ヲ↡、不ルガ↠遇ハ↢善1169友ノ教ヘテ令ムルニモ↟念ゼ↠仏ヲ故ニ、所見ノ花ハ是地獄ノ相ナルナリ。今此ノ下品等ノ三人ハ、雖モ↢復生レテヨリ来タ造レリト↟罪ヲ、終ノ*時ニ遇ヒテ↢善知識ニ↡、至シテ↠心ヲ念ズ↠仏ヲ。以テノ↢念↠仏ヲ↡故ニ滅シテ↢多劫ノ罪ヲ↡、成ジテ↢勝功徳ヲ↡、感↢得ス宝池ノ中ノ花来リ迎フルコトヲ↡。豈ニ同ジカラム↢前ノ花ニ↡也。
^二に↑相といふは、 かの ¬経¼ (観仏経) に、 ª△風刀身を解くに、 偃臥定まらず、 楚撻を被るがごとし。 ◇その心は荒越して、 狂痴の想を発す。 おのが室宅を見れば、 男女・大小の一切は、 みなこれ不浄の物なり。 屎尿の臭き処にして、 ほかに盈流せんº と説けども、 いまこれは、 仏を念じて、 身心安穏にして、 悪想すべて滅しぬ。 ただ聖衆を見、 *異香あることを聞ぐ。 ゆゑに類せざるなり。
二ニ相トイフ者、彼ノ経ニ説カク、風刀解キテ↠身ヲ偃臥不↠定マラ、如シ↠被ルガ↢楚*撻ヲ↡。其ノ心ハ荒越シテ発ス↢狂痴ノ想ヲ↡。見ル↣己ガ室宅ノ男女・大少ハ一切ハ皆是不浄之物ナリ、*屎尿ノ臭キ処トシテ盈↢流スト于外ニ↡。今此ノ念ズルニハ↠仏ヲ、身心安*隠ニシテ、悪*想都テ滅シヌ。唯見ユ↢聖衆ヲ↡。聞グ↠有ルコトヲ↢異香↡。故ニ不ル↠類セ也。
^三に↑語といふは、 かの ¬経¼ (観仏経) のなかに、 ª△地獄の痛む声は、 詠歌の音のごとし。 罪人、 聞きをはりて、 «かくのごとき好き処に、 われまさになかに遊ぶべし»º と説けども、 ¬観経¼ のなかに、 讃へてのたまはく、 ª▲善男子、 なんぢ、 仏の名を称するがゆゑに、 もろもろの罪消滅して、 われ来りてなんぢを迎ふº と。 かれ (観仏経) はこれ詠歌の音なり。 これ (観経) は滅罪の語を陳ぶ。 二音すでに別なり。 ゆゑに不同なり。
三ニ語トイフ者、彼ノ¬経ノ¼中ニ説カク、地獄ノ痛ム声ハ如シ↢詠歌ノ音ノ↡。罪人聞キ已リテ、如キ↠此クノ好キ処ニ吾当ニシトイフ↠遊ブ↠中ニ。¬観経ノ¼中ニ*讃ジテ言ク、善男子、汝称スルガ↢仏ノ名ヲ↡故ニ諸ノ罪消滅シテ、我来リテ迎フトイフ↠汝ヲ。彼ハ是詠歌之音ナリ。此ハ陳ブ↢滅罪之語ヲ↡。二音既ニ別ナリ。故ニ不同也。
^四に↑仏といふは、 かの ¬経¼ (観仏経) に1059、 ª△一切の火焔は、 化して玉女となる。 罪人はるかに見て、 心に歓喜を生じて、 «われなかに往かんと欲ふ» と。 ◇金車に坐しをはりて、 玉女を顧み瞻れば、 みな鉄斧を捉りて、 その身を折り截るº と。 ¬観経¼ に、 ª▲その時に、 かの仏、 すなはち化仏・化の観世音・化の大勢至を遣はして、 行者の前に至らしむº とのたまへり。
四ニ仏トイフ者、*彼ノ¬経ニイハク¼一切ノ火焔ハ化シテ為ル↢玉女ト↡。罪人遥ニ見テ心ニ生ジテ↢歓喜ヲ↡、我欲ヒテ↠往カムト↠中ニ、坐シ↢金車ニ↡已リテ、顧ミ↢瞻レバ玉女ヲ↡、皆*捉リテ↢鉄斧ヲ↡折↢截ストイヘリ其ノ身ヲ↡。¬観経ニ¼言ク、爾ノ時ニ彼ノ仏即チ遣シテ↢化仏・化ノ観世音・化ノ大勢至ヲ↡、至シムトイヘリ↢行者ノ前ニ↡。
^この四の義をもつて、 准へて知れ。 蓮華の来迎すること、 ¬観仏三昧経¼ の説には同ぜず」 と。 以上
以テ↢此ノ四ノ義ヲ↡准ヘテ知レ。蓮花ノ来*迎スルコト不ト↠同ゼ↢¬観仏三昧経ノ¼説ニハ↡。」 已上
^看病の人は、 よくこの相を了りて、 しばしば病者の所有のもろもろの事を問ひて、 前の行儀によりて種々に教化せよ。
看病之人ハ、能ク了リテ↢此ノ相ヲ↡、数バ問ヒテ↢病者ノ所有ノ諸ノ事ヲ↡、依リテ↢前ノ行儀ニ↡種々ニ教化セヨ。
往生要集 巻中
尽第六別時念仏門 本書の巻中が大文第六の別時念仏までであるという意。
諸経 以下の第四観察門に引用される経典を指す。
別相観 仏の華座および仏身の相好の一々を観想すること。
尼楼陀精舎 (釈尊の生国) の南にあった庭園。 釈尊がここで父王のために法を説いたので、 精舎 (僧院の意) の語を付して呼ばれる。
七帀 七周。
紺琉璃 琉璃は青色の宝玉で、 瑠璃とも書く。
輪埵 円く盛り上がった耳たぶ。
好 随形好のこと。
光沢熙怡 つややかで柔和なこと。
端正皎潔 よくととのって、 きよらかに澄みわたっていること。
五丈 諸本には 「長丈五」 とある。 丈五は一丈五尺。
のを、 香に喩えていう。
量りのごとくにして 天秤のようにつりあいがとれているという意。
大経 底本 (青蓮院本) には 「大集経」 とある。
大般若 底本 (青蓮院本) には 「大集般若」 とある。
詞韻和雅 言葉の響きが柔和・優雅であること。
梵音声 仏のきよらかな声。
点相 梵字の伊字の三点に似た形。 「∵」 の形のこと。
欠瓫骨満 のどぼとけの突起がないという意。 あるいは両肩のくぼみがないという意か。
双臂肘 両ひじ。
円 まるみを帯びていること。
手摩膝の相 手がひざにまでとどく相。
文綺画に同じ 文様はあやぎぬの画と同じ。
心相 心臓のありさま。
除却すと 底本 (青蓮院本) には下に 「云々」 の二字がある。
四大不調 病気のこと。 身体を構成する地・水・火・風の四大が調和しないと病気になるという。
方円 完全に円満であること。
双腨 両足のふくらはぎ。
翳泥耶仙鹿王 翳泥耶は梵語アイネーヤ (aineya) の音写。 鹿のこと。
趺 足の甲。
棘刺 いばら・とげ。
網轂 網は異本には 「輞」 (車の輪) とある。 轂は車のこしき。
怛 異本には 「坦」 とある。
広相と随好 仏のすぐれた形相の特徴のうち顕著なもの (広相) と微細なもの (随好)。 →
相好
相好の業 相好を得るための業因。
始 底本 (青蓮院本) には 「如」 とある。
清浄勝意楽地 ¬瑜伽論¼ で菩薩の修道階位を七地に分けるうちの第三の浄心地。 十地の位では初地に相当する。
菩提の資糧 さとりに至るためのもととなる善根功徳。
六十二の因 父母に供養をし、 有情を救護する、 尊長を敬い礼拝する、 などの六十二種の善因。
大丈夫 立派な人。 ここでは仏のこと。
善巧方便 たくみな手段、 方法。
無倒回向 真如法性の理にかなったなにものにもとらわれない回向。
相好間雑して 広相と随好とをまじえて。
総相観 仏身の全体を観想すること。
熾然赫奕 さかんに光り暉くさま。
滉瀁浩汗 水が満ちひろがったさま。
三身一体の身 法・報・応の
三身の
功徳をそなえた身体。
生ぜず滅せず… 以下の八種の否定は龍樹菩薩の ¬中論¼ によったもので、 八不とよばれる。
普門塵数 普門はすべて、 あらゆるの意。 塵数は無数の意。
無尽の法界 すべての存在世界。
心言の路絶えたり 思慮や言語を超えている。
三身即一 法・報・応の
三身がそのまま一であるとの意。
一色一香… すべてのものはことごとく
中道実相の理のあらわれであるという意。
天台大師
智顗の ¬
摩訶止観¼ に見える語。
受想行識 五陰 (
五蘊) のうちの精神面の四。
一体無礙 さわりなく一つに融けあっていること。
雑略観 種々の相好を略して白毫相 (眉間にある白色の旋毛) のみを観想すること。
別巻 源信和尚撰 ¬阿弥陀仏白毫観¼ のこと。
極略 きわめて簡略な観想のこと。
行住坐臥語黙作々 歩く、 とどまる、 すわる、 臥す、 話す、 黙る。 いかなる場合にもの意。
能施所施 能施は施し与える人、 所施は施しを受ける人。
三際 前際 (過去)・中際 (現在)・
後際 (未来)。
三世に同じ。
未来際を尽すまで 未来永劫に。
第三の回向 三種回向 (
菩提回向・
衆生回向・
実際回向) のうちの第三、 実際回向のこと。 →
回向
菩薩 底本 (青蓮院本) には 「菩提」 とある。
願薫じて種となり 願の香りが移り付いて善根の種になるという意。
九世 華厳教学では、 過去・現在・未来の三世におのおの三世を認めて九世とし、 それらが一つに融合しているという。
大荘厳論 現存の ¬大荘厳論¼ に該当する文はない。 道世編の ¬諸経要集¼ 巻十に引く ¬大菩薩蔵経¼ の文によったものか。
妙色財 すぐれた容色と財物。
貪慳積聚して むさぼり、 ものおしみをして (財を) 集めて。
論の文 ¬大智度論¼ 巻四六に記す問答の第十を指すものか。
円融無作 無差別平等で、 一切の作為を超え離れていること。
土風に… 日本の仏事法会では、 回向の次第を 「回施法界」 「回向大菩提」 の順とする。
有相の回向 差別の相にとらわれた回向。
一目の羅… 目の一つしかない網では鳥を捕らえることはできない。 天台大師智顗の ¬摩訶止観¼ 巻五にもとづく語。
内外 心と身体。
感禅師は… ¬群疑論¼ 巻七に見える説。
通途の所用 通常、 用いられるもの。
他に抄掠せられ 他人にさらわれて。
報の尽くるを期となして 現在のこの身 (報) が尽きるまでという意。
余課を留めざるべし 課は一日に行うべき仕事を定め置くこと。 念仏と読経以外はこの課に入れないようにせよという意。
瑠璃王の行 政務のために修行に専念できない瑠璃王 (波瑠璃王) は、 釈尊の教えによって、 常に木槵子の数珠を携え、 戦場にあっても仏を念じつづけたという。
外人 余他の人。
行人 (念仏三昧の) 行者。
無利の勤苦 なんの利益もない苦しい勤め。
劫寿 一劫の寿命。
つぶさに悉する 完全に理解するの意。
成ぜんと 諸本には次下に細註で 「首楞厳経の文は下の料簡門のごとし」 とある。
学無学の人 仏道においてなお学ぶべき余地を残す (
有学) 者と、 もはや学ぶべきことのない (
無学) 者。
相 仏のすぐれた形相の特徴のうちの顕著なもの。 →
相好
梵音声 仏のきよらかな声。
慈門 慈悲心の功徳。
刹塵数 刹は梵語クシェートラ (
kṣetra) の音写で国 (土) の意。 国土を
微塵にしたほど数が多いということ。
ある仏 底本 (青蓮院本) には 「仏」 の字なし。
道人 仏道を修める人。
登時 その時。
よく害するものなし 仏は何者によってもそこなわれることがないという意。
善趣の楽世界 六道のうちの地獄・餓鬼・畜生を悪趣、 悪世界というのに対し、 天・人・修羅を善趣、 楽世界という。
乳蘇 牛乳を精製してつくった生蘇や熟蘇。
陶家の輪 陶器をつくるための轆轤。
棗葉 なつめの葉。
随類化現 衆生の根機 (素質能力) に応じて姿を現すこと。
四事 無能害者・飛行自在・神力無礙・随類化現の四。
法界を究竟し 存在世界のすべてにゆきわたり。
遍法界の身 存在世界に遍満している身体。
天眼明徹 三世十方のすべてを明らかに見通すこと。
聞声自在 衆生の声を自由自在に聞きわけること。
知他心智 他人の心のありさまを明らかに知る
智慧。
他心智。
智慧無礙 智慧のはたらきが自由自在であること。
処非所智 理にかなうことと背くことを明瞭に知る智慧。
烏波尼沙陀分 烏波尼沙陀は梵語ウパニシャッド (upaniṣad) の音写。 数の極少の意。
能調伏心 思いのとおりに心を制御する能力。
一縁 ひとつの対象。
仏覚三昧 仏のようなさとりの境地。
常在安慧 つねに安らぎの智慧に住していること。
先に知りて (真実の理を) すでにさとって。
動性 動揺する性質。
無余涅槃 ここでは仏の入滅の意。
諸受 さまざまな感受作用。
起・住 起は生起、 住は存続。
諸想諸触諸覚諸念 想は感受したものを表象すること、 触は接触感覚、 覚はものごとを推し測る心、 念は記憶作用。
短 欠点。 短所。
粗動なる覚観の心 粗雑で動揺する覚想の心。 覚はものごとを推し測る心、 観は覚よりも細密に尋ね知る心。
接 迎接。 迎えとって浄土に導き入れること。
無礙弁舌 自由自在に教えを説く能力。
四の問答 四記答のこと。 他人の問に対して答える四つの形式。 直ちに肯定する一向記、 問を分析して、 一々に諾否を与える分別記、 反問して問意を確認し答える反詰記、 答えるべきものでない問を捨て置く捨置記の四をいう。
神力不共の法 仏のみにそなわる不思議な威神力の徳。
心言の路絶えたり 思慮や言語を超えている。
一実境界 一如平等で真実なるさとりの世界。 →
一実
無障無礙 いかなるさまたげもないこと。
無染寂静 煩悩のけがれがなく絶対の平安であること。
我我所 固定的な自己と自己に所属するものがあるという誤った見解。
本有の性 本来具えている真如法性の性質。
総観仏徳 総じて仏の功徳を観ずること。
尺寸 ものさし。
大千の猛火聚 三千大千世界に満ちわたる猛火のかたまり。
勤心の方便 心をはげますためのてだて。
六種の法 持戒不犯等の五事に読誦大乗を加えていう。
邪念 底本 (青蓮院本) には 「邪命」 とある。
匱乏飢凍して 貧窮し、 飢えて寒さにふるえて。
馬井 馬師と井宿 (満宿) のこと。 釈尊在世当時、 徒党を組んで、 いつも誤った行いをした六人の比丘のうちの二人。
二 経を読誦することと、 説きひろめること。
実に… 法身を明らかにさとる智慧 (了因) と名づけるという意。
余に… 報身・応身を生みだすもと (生因) と名づけるという意。
請 特別の招待。
諂誑不浄の心 他人にへつらいあざむく、 煩悩にけがれた心。
白衣と厚善し 白衣は在俗者のこと。 在俗者と親しくつきあい。
粗強の惑業 あらあらしい煩悩。
覚了 底本 (青蓮院本) には 「学了」 とある。
無安衆の心 無安衆生の心。 衆生を安らかにすることのない心。
この六法 遠離貪着自身心・遠離無安衆心・遠離供養恭敬自身心・無染清浄心・安清浄心・楽清浄心の六。
好厳の形像 厳かですぐれた仏像。
悪念思惟の障 悪しき思念の障。
縁 ¬次第禅門¼ の原文によって 「縁」 の字を付け加えた。
心数 心のはたらき。
境界逼迫の障 対象の世界が来り迫って、 心のはたらきが閉塞すること。
別相の治 個々の煩悩を対治する方法。
通の治 煩悩を総括して対治する方法。
大僻 死刑。
執意 (浄観を修する) 心構え。
心・縁 内なる心・外なる縁。
心境 心と外境 (外縁)。
波羅蜜門 ここではさとりに至った仏の功徳智慧のこと。
一体無礙 さわりなく一つに融けあっていること。
智火の分 智慧の火の持ち分。
通別の対治 煩悩を総括して対治する方法 (通治) と個々の煩悩を対治する方法 (別治)。
もし 底本 (青蓮院本) には 「設若」 とあるが、 「若」 は衍字。
理の懴悔 理は事 (具体的な事物) に対する語で、 普遍的な真理の意。 罪業が本来空不可得であることを体得するための懴悔。
和合 因縁和合。 因と縁が結び合っていること。
真体 真実なるすがた。
宝所 仏のさとりの世界を宝のある場所に喩えていう。
汎爾 一般的。 通常。
理の懴 理の懴悔。 理は事 (具体的な事物) に対する語で、 普遍的な真理の意。 罪業が本来空不可得であることを体得するための懴悔。
少不善の業道 わずかな不善の行為。
日の初分 日の初分を朝、 中分を昼、 後分を夜とする。
戒身 戒体のこと。
受戒によって得られる防悪の力用。 これを戒の本質とする。
開遮の戒 戒のうち許されるもの (開) と禁じられるもの (遮)。
戒律のなかの戒 遮戒のこと。 必要に応じて仏が特に制止した戒。 これに対して、 仏の制止にかかわらず、 本来罪となるものをいましめたのを性戒という。
十悪輪罪 一切の善根を破壊するという十種の悪業。 ¬地蔵十輪経¼ の原文には、 十悪輪、 十種悪輪とある。
般若経 ¬理趣般若経¼ のこと。
転重軽受 重い罪を転じて軽く受けること。
随転理門 真実理門の対。 根機 (素質能力) に応じて説かれた方便の法門。
別時の懴悔 特別に期間を定めて行う懴悔の方法。
黒悪を発露す 罪をあらわに告白する。
現生後業 ①順現受業 (現世の業の報を現世で受ける)、 ②順次受業 。(次生で報を受ける)、 ③順後受業 (第三生以後に報を受ける) の三時業のこと。
去来今 過去・未来・現在。
常行三昧法華三昧 天台大師智顗 (538-597) の ¬摩訶止観¼ に説かれる四種三昧のうちの二種。 ¬般舟三昧経¼ によって、 九十日間、 阿弥陀仏を唱念し、 その像の周囲を不断に回り歩く行法を常行三昧といい、 ¬法華経¼ によって、 二十一日間、 坐禅と行道 (仏座の周囲を回り歩く) を繰り返す半行半座の行法を法華三昧という。
善権安楽の行 善巧方便 (たくみなてだて) による心安らかな修行。 「善権」 は異本に 「善根」 とある。
正衣束体 衣服をただして、 体をととのえること。
道徳 仏法の正しい徳。
無上の慧 この上ない仏のさとりの智慧。
禅 底本 (青蓮院本) には 「神」 とある。
着 執着すること。
毒屑 毒の粉末。
実の魔・権の魔 本来の魔と仮に魔のすがたを現しているもの。
三業を護る 戒によって
身口意の
三業をまもりつつしむという意。
往生の業は念仏を本となす 「本」 は宗要、 かなめの意。 法然上人はこの文によって ¬選択集¼ (親鸞聖人伝授本) の標宗の文を記された。
薫習熟利 薫習は香気を移すように他のものにその性質を移し付けること。 ここでは念仏行が次第に心にしみついてゆくことをいう。
止の善 止善。 悪を制止すること。 行善の対。
行の善 行善。 積極的に善を行うこと。 止善の対。
尋常の別行 平生に特定の期日を定めて行う念仏。
臨終の行儀 臨終時に行う念仏の作法。
加念 底本 (青蓮院本) には 「加命」 とある。
願を…たまふ ¬般若経¼ の原文に 「使願満足」 とあるのによった。 底本 (青蓮院本) には 「便願満足」 (すなはち願満足せん) とある。
無辺類の身 数限りない種類の身体。
無失念 失われることのない記憶力。
無漏離垢 煩悩のけがれを離れていること。
得一切法自在平等 すべてのものにおいて自由自在・平等無差別であること。
身の開遮 身業に許されることと禁じられること。
口の説黙 口にすべきことと黙すべきこと。
意の止観 心の中で観じてはならないこと (止) と、 観じなければならないこと (観)。
翻じて 翻訳して。
住処 「仏の威力・三昧力・本功徳力」 がそなわった状態。
別請 特別の招待。
内外の律 内外は大乗・小乗の意。 または内心・外相の意か。 律は教団の生活規則のこと。
妨障を開除する (仏道修行の) さまたげをとり除く。
世間の想欲 俗世間の想いや願望。
坐食左右 食事と大小便。
逆に縁じ 仏の相好を下から上の順に観想してゆき。
順に縁じ 仏の相好を上から下の順に観想してゆき。
色・識 色・受・想・行・識の
五陰 (
五蘊)。
行人 (常行三昧の) 行者。
仏印 仏の真髄。 印は決定して変ることがないという意。
相体相業相果相用 色相の本体。 色相成就の業因。 その業因の果としての色相そのもの。 色相のはたらき。
実相の仏 法身のこと。
真如実相そのものである仏身。
鼻の人 鼻を病む人。
瞻病送終の篇 看病や葬送について説いた部分。
中国の本伝 元照の ¬四分律行事鈔資持記¼ では、 ¬六祖檀経¼ にいう 「別伝」 を指すとする。
五綵の幡 五色の布。
ある説 道世編の ¬法苑珠林¼ 巻九五、 ¬諸経要集¼ 巻十九に記す説か。
華台の聖衆 蓮華の台にのった浄土の菩薩たち。
神変の作意 心の不思議なはたらき。
性 (善なる) 性質。
三五 三人にしても五人にしても。
言要を結びて 約束して。
仏子 以下、 臨終の念仏行者に対しては、 「仏子」 という言葉で呼びかける。
法喜禅悦 教えを聞くよろこびや禅定のよろこび。
海会 海のように広大な説法の会座。
仏母 般若波羅蜜は三世の諸仏を生む母であるから仏母という。
随逐護念 聖者がつねにつきしたがって、 悪鬼悪神等から行者をまもるということ。
法性は… 真如法性は無差別平等であるけれども、 仮の差別相を離れたものではない。
一眼の亀の… 大海中に住む一眼の亀が、 百年に一度、 海上に顔を出し、 そこに流れてきた板のあなに出遇うことが極めて困難であるように、 仏法に遇うこともきわめて難しいという意。
引接擁護 行者を浄土へ導きまもること。
一の事 「願はくは仏、 かならず引接したまへ」 の句。
攀縁 外界の事物による心の乱れ。
偃坐 諸本によって 「偃」 の字を補う。 偃坐は臥すも坐すもの意。
火車 「火華」 の誤りか。 ¬群議論¼ の原文では 「火華」 とある。
娑→ⒷⒸ沙
相→ⒷⒸ相[云云]
相→ⒹⒺ想
画→ⒸⒹ尽
土→Ⓑ上
各→Ⓔ各[各]
褫→ⒶⒷⒹⒺ
釈→Ⓐ釈[迦]
琉→ⒶⒷⒸ瑠
蠡→Ⓐ螺
経 ⒷⒸになし
画→Ⓓ尽
就→Ⓐ熟
十→ⒹⒺ十[億]
与→ⒹⒺ為
亦 Ⓔになし
注→Ⓐ注[之]→Ⓓ住
好→Ⓔ妙
无 Ⓓになし
紺→Ⓐ鉗
流→ⒶⒷⒸ瑠→琉
覩→ⒸⒹ兜→Ⓔ都
琉→ⒶⒷⒸ瑠
放→Ⓐ放[光]
五丈→ⒶⒷⒸⒹⒺ長丈五
経→ⒷⒸⒹⒺ径
三→Ⓔ二
或→ⒶⒹⒺ或[説]
蜜→Ⓒ密[説]
或→ⒹⒺ或[説]
法→Ⓒ法[説]
経 Ⓑになし
毫→Ⓓ豪
如→ⒶⒹⒺ若
鬚→ⒶⒷⒸⒹ鬢
経 Ⓑになし
求→ⒶⒷⒸⒹⒺ求[於]
増→ⒶⒷⒸⒹ憎
紺→Ⓐ紺[青]
々 Ⓐになし
鋌 ◎挺 テイ と上欄註記
之 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
珞→Ⓑ珞[也]
河→ⒶⒷⒸⒹⒺ珂
大→◎大[集]
云々 ⒶⒹⒺになし
生→ⒷⒸⒹⒺ出
集→ⒸⒹⒺ集[経]
四→ⒶⒸ二
之 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
画→Ⓒ尽
集→ⒶⒷⒸⒹⒺ集[経]
滴→ⒶⒷⒹⒺ適
大→◎大[集]
瑠→ⒹⒺ琉
随→ⒷⒸ隋
集→ⒶⒹⒺ集[経]
欠→Ⓔ鈌
分→ⒹⒺ[光]分
項→Ⓔ頂
平整→Ⓓ十衆
相→Ⓐ相[之]
輻→Ⓔ軸
像→ⒷⒸⒺ象
所→Ⓔ諸
集→ⒶⒸⒹⒺ集[経]
伽→Ⓐ珈
指 Ⓓになし
相→Ⓐ相[之]
斂→Ⓔ歛
大→ⒹⒺ大[集]
覩→ⒷⒸ都
苦→若
獷→Ⓔ儣
捩→ⒶⒷⒸⒹⒺ悷
実→Ⓔ宝
瑠→Ⓓ琉
量→Ⓓ生
観 Ⓓになし
大→Ⓐ丈
云々 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
周→Ⓔ団
集→ⒹⒺ集[経]
瑜→Ⓓ踰
僂 ◎倭イと上欄註記→Ⓐ倭
服 ⒷⒸになし
陰→ⒷⒸ陰[馬]
多→ⒹⒺ亦
故 ⒷⒸになし
道→ⒷⒸⒹⒺ導
即→Ⓐ即[止]
息→ⒷⒸⒹⒺ止
徳→Ⓐ徳[也]
観→ⒹⒺ視
処→Ⓔ所
璅→鏁
伽→Ⓐ珈→Ⓒ加
人 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
膊→膞
相→Ⓑ相[之]
上→Ⓓ土
化 ⒶⒷⒸになし
云→Ⓔ曰
去→ⒹⒺ失
網→ⒷⒸ輞
轂→ⒶⒹ穀→Ⓔ縠
父→Ⓓ文
却→ⒶⒹⒺ[除]却
怛→ⒷⒸ坦
網→Ⓔ綱
細→Ⓓ網
如→ⒶⒷⒸⒹⒺ始
随 Ⓔになし
感→Ⓐ滅
者→ⒷⒸⒹⒺ者[也]
想一事→ⒹⒺ一事想
道→ⒶⒷⒸⒹⒺ導
相→◎想
観→ⒶⒷⒸⒹⒺ観[如前]
各 Ⓔになし
之 Ⓐになし
浩→Ⓐ洪
唯→Ⓔ只
亦 ⒹⒺになし
於 Ⓐになし
観→Ⓓ視
耳 Ⓐになし
也 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
一→ⒶⒺ一[非]
非→Ⓔ不
三→ⒹⒺ三[悪]
千→Ⓐ千[相]
又 ⒷⒸになし
就→Ⓐ熟
即→ⒶⒷⒸⒹⒺ即[是]
無量 ⒹⒺになし
辨→ⒷⒸ弁
已上 ⒹⒺになし
慧→ⒶⒷⒸ悲→ⒹⒺ恵
之 ⒹⒺになし
耶 Ⓐになし
号→Ⓐ字
門 ⒷⒸになし
向→Ⓐ向[无上]
善→Ⓔ善[根] ⒶⒷⒸⒹになし
提→ⒶⒷⒸⒹⒺ薩
任運→Ⓒ住蓮
云々 ⒶⒹⒺになし
亦→ⒷⒸ又
又 ⒹⒺになし
已上 ◎「若」の上に割書
云々 ⒹⒺになし
末→Ⓔ未
巨→◎Ⓓ臣
相 Ⓑになし
明→ⒷⒸⒹⒺ成
我→Ⓐ乗
行要→Ⓒ要行
辨→Ⓑ弁→Ⓒ辦
香花→ⒶⒷⒸⒹⒺ花香
暗→ⒶⒷⒸⒹⒺ闇
時…等25字→Ⓐ専用木槵子菩提子
珠→Ⓔ殊
者 Ⓐになし
導→Ⓐ道
啼→Ⓔ涕
痢→Ⓔ利
導→ⒹⒺ導[禅]
西→ⒶⒷⒸⒹⒺ西[方]
忽→Ⓐ怱
帰→Ⓔ帰[本]
耶→Ⓐ邪→ⒷⒸ
云々 ⒶⒹⒺになし
云々 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
日→ⒶⒷⒸⒹⒺ昼
無→Ⓐ先
之 Ⓐになし
日→Ⓔ口
云々 Ⓐになし
若 ⒹⒺになし
又 Ⓐになし
才→Ⓐ才[師]
浄土論 Ⓐになし
逝→Ⓓ遊
之→ⒷⒸⒹⒺ之[云々]
弘 Ⓐになし
王 ⒹⒺになし
狐→ⒶⒹ孤
陀→ⒹⒺ陀[仏]
心→ⒷⒸ心[云々]
綽和尚 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
曠→Ⓐ瞻
奮→ⒷⒸ奪
無→Ⓐ先
間→Ⓔ問
慧→Ⓐ恵
至→Ⓐ至[心]
已上→Ⓐ云々
或→ⒶⒷⒸⒹⒺ或[唱念]
者 Ⓐになし
或→ⒶⒷⒸⒹⒺ惑
即 Ⓐになし
彼…本30字 Ⓐになし
云但→ⒷⒸⒹⒺ但云
等→ⒷⒸⒹⒺ等[云々]
彼→ⒷⒸ彼[之]
信→ⒹⒺ信[受]
小…九15字 ⒷⒸになし
励 Ⓐになし
料→Ⓐ断
問何等功徳答其事无量 ⒶⒷⒸⒹになし
量→Ⓔ辺
大→ⒶⒷⒸⒹⒺ本
船 Ⓓになし
若→Ⓐ若[有]
心→Ⓐ[又]心
岸→Ⓐ岸[已上]
慧→Ⓐ恵
已上 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
摩→ⒶⒷⒸⒹⒺ摩[経]
製→Ⓐ制
号→ⒶⒷⒸⒹⒺ名
提→ⒷⒸⒹⒺ提[首楞厳経文如下料簡門]
当→Ⓐ当[得]
三→ⒹⒺ三[仏]
切→ⒹⒺ切[随]
切 Ⓐになし
毫→Ⓐ豪
旋→ⒹⒺ遶
毫→ⒶⒹ豪
髻→Ⓐ髻[相]
又 Ⓐになし
仮→Ⓐ設
云々→ⒶⒷⒸⒹⒺ已上
厳→ⒷⒸ厳[経]
應…相14字 ⒷⒸになし
謂 Ⓐになし
仏 ⒹⒺになし
仏→ⒹⒺ仏[也]
有→ⒷⒸⒹⒺ有[仏]
円→◎国
意同之経 ⒹⒺになし
云→Ⓐ云[云]
対→Ⓐ数
炎王光→Ⓐ光炎王
玄 ⒷⒸⒹⒺになし
慧→ⒶⒹⒺ恵
我→Ⓐになし
等→ⒹⒺ等[覚]
光→ⒹⒺ光[明]
垂→Ⓐ乗
浅→ⒸⒹⒺ賎
略抄 Ⓐになし
厳→ⒶⒹⒺ厳[経]
云→Ⓐ曰
雲→ⒹⒺ明
明 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
万→Ⓒ方
砕→Ⓔ辟
末→ⒷⒸⒹ未
者→ⒷⒸⒹⒺ者[已上]
云→ⒷⒸ曰
應…身14字 ⒷⒸになし
大→Ⓔ人
於→Ⓐ[或]於[仏]
輻→Ⓓ福
盤→ⒷⒸ磐
恵→ⒶⒷⒸⒹⒺ慧
應…土14字 ⒷⒸになし
力→ⒹⒺ通
末→ⒸⒹ未
界→Ⓐ界[皆]
合→Ⓓ令
説→Ⓐ説[諸仏]
河 Ⓐになし
又…嬈40字 ◎別筆補記 ⒷⒸになし
鋒→◎鉢
棗→Ⓓ来→Ⓔ稾
無→ⒶⒹⒺ無[所]
菩薩尚爾何況仏力故 Ⓐになし
菩…至26字 ◎別筆補記
毛→Ⓓ手
作→Ⓔ住
惟→ⒷⒸ惟[云々]
厳→Ⓐ変
我→ⒶⒷⒸⒹⒺ我[於]
如 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
施→ⒷⒸ施[作]
也 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
慧→Ⓐ恵
死→Ⓐ死[時]
聞声→Ⓔ声聞
経 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
別→ⒶⒹⒺ別[已上]
所有 ⒶⒹになし
経 ⒶⒹⒺになし
達→ⒷⒸ達[已上]
作 Ⓐになし
姓→Ⓐ性
応念願仏令我宿業清浄 ⒷⒸになし
慧→ⒶⒹⒺ恵
墨→Ⓔ黒
其→ⒶⒷⒸ某
伽 Ⓐになし
浪→ⒶⒸ限
澓→Ⓔ渡
又 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
无…云44字 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
洲→Ⓔ州
慧→ⒹⒺ恵
慧→ⒶⒷⒸⒹⒺ恵
慧→ⒷⒸⒹⒺ恵
恵→Ⓐ慧
就→ⒶⒹ熟
生→ⒷⒸⒹⒺ生[補処]
菩薩 ⒷⒸになし
恵 ⒶⒷⒸになし
其 Ⓐになし
及→ⒶⒷⒸ及[已上]
云→ⒹⒺ言
應…業13字→Ⓐ応念
念→ⒷⒸ念[今]→ⒹⒺ念[願今]
如来 ⒹⒺになし
知 Ⓐになし
隠→ⒷⒸⒹⒺ穏
受→Ⓐ度
想→ⒶⒹⒺ相
逐→Ⓐ遂
兢伽→ⒹⒺ恒河
入→Ⓓ人
同→[又]同
則→ⒹⒺ即
悲 Ⓐになし
被→ⒹⒺ被[引]
七→ⒹⒺ七[仏]
弁→Ⓔ辨
如 ⒷⒸⒹⒺになし
千→ⒶⒷⒸⒹⒺ千[世]
就→ⒶⒹ熟
慧→ⒶⒹⒺ恵
力→ⒶⒷⒸⒹⒺ力[皆]
毫→ⒶⒹⒺ豪
釐→ⒷⒸ氂
云→ⒹⒺ云[問]
門→ⒷⒸⒹⒺ問
超→Ⓐ起
厳→ⒶⒷⒸⒹⒺ厳[経]
聞→Ⓐ周
則→ⒹⒺ即
音→ⒷⒸ音[声]
髣→Ⓓ髪
三 ◎世イと右傍註記
弁→Ⓔ辨
益→ⒶⒷⒸⒹⒺ楽
言→Ⓔ云
幻→ⒹⒺ幼
念→Ⓓ分
身→ⒶⒷⒸⒹⒺ身[也]
慧→ⒶⒷⒸ恵
説→ⒶⒷⒸⒹⒺ説[不可説]
諸→Ⓐ讃
応念願我得仏斉正法王 ⒷⒸになし
文→Ⓐ父
舟→Ⓐ丹
学→Ⓐ覚
云→ⒷⒸⒹⒺ言
隣→ⒷⒸ憐
鬚髪→ⒶⒹⒺ髪鬚鬚→ⒷⒸ鬢
術→Ⓐ衍
彼→ⒶⒷⒸ彼[已上]
誦→Ⓐ誦[如説]→ⒸⒹⒺ誦[如説修]
是→ⒹⒺ此
値 Ⓐになし
択→Ⓐ釈→Ⓓ檡
種々→Ⓐ種之
廃→ⒶⒹ癈
慧→Ⓐ恵
道→ⒷⒸ道[云々]
就→Ⓐ熟
二→ⒶⒷⒸⒹⒺ二[者]
疾々→ⒹⒺ速疾
已上 ⒷⒸになし
戒→Ⓔ或
品→ⒹⒺ已
命→ⒶⒷⒸⒹⒺ念
法 Ⓐになし
或→ⒶⒷⒸⒹⒺ惑
衆→ⒹⒺ衆[生]
此→Ⓔ是
令→Ⓔ今
又…離33字 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
恚→ⒹⒺ恚[又或処説云能損大利莫過瞋一念因縁悉焚滅倶胝広劫所修善是故慇懃常捨離]
又 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
号→Ⓔ啼
倶→ⒹⒺ
聞→Ⓓ問
末→ⒸⒹ未
授→Ⓓ援
旃→ⒷⒸ栴
則 ⒹⒺになし
以→ⒹⒺ以[則]
銷→ⒹⒺ消
井→Ⓐ菩薩(生と右傍註記)
就→Ⓐ熟
経 ⒷⒸになし
火求→ⒶⒷⒸⒹⒺ求火
火→Ⓔ一
嫉→Ⓐ嫉[妬]
云→ⒶⒷⒸⒹⒺ言
養→Ⓐ益
教→ⒶⒷⒸⒹⒺ孝
妄→ⒶⒹ忘
恵→ⒷⒸ慧
種法→ⒹⒺ法種
毘 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
沙→Ⓐ娑
憍→Ⓐ矯→Ⓓ
之 ⒹⒺになし
何今→Ⓐ今何→ⒹⒺ問今何
或→ⒶⒷⒸⒹⒺ惑
学→ⒶⒷⒸⒹⒺ覚
不顕→ⒹⒺ顕不
云 ⒹⒺになし
如→Ⓓ始
已上→ⒷⒸ云々
正→Ⓑ止
相→Ⓔ想
慧→ⒶⒹⒺ恵
衆→Ⓔ衆[生]
者 Ⓐになし
具→ⒶⒹⒺ具[足]
尽→ⒷⒸ昼
毫→Ⓓ豪
勝→ⒷⒸⒹ縁→勝[縁]
陋→ⒶⒹⒺ
人→ⒷⒸ人[之]
責→ⒷⒸ嘖
慧→ⒶⒹⒺ恵
撃→ⒹⒺ繋
妄→ⒶⒹ忘
滅 ⒹⒺになし
急→ⒶⒷⒸⒹⒺ忽
応常→ⒹⒺ常応
脱→ⒹⒺ脱[云々] Ⓐ云と右傍註記
水→ⒹⒺ氷
氷→ⒹⒺ水
処→ⒷⒸⒹⒺ処[云々]
恵→ⒷⒸ慧
蒙→Ⓓ家
壊→Ⓓ懐
耶 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
若 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
口→ⒶⒹⒺ口[意]
懴→Ⓐ懴[悔]
或→Ⓓ戒
相 ⒶⒷⒸⒺになし
此→ⒷⒸ是
敬→Ⓑ拝
礼→Ⓐ礼[敬]
陀→ⒹⒺ陀[仏]
相→Ⓔ根
蔽→ⒷⒸⒹⒺ弊
怠→Ⓓ息
慧→ⒹⒺ恵
或→ⒶⒷⒸⒹⒺ惑
是→ⒹⒺ是[若]
劫→Ⓐ却
返→ⒶⒹⒺ遍→ⒷⒸ徧
妄→Ⓐ忘
直→ⒹⒺ真
去→Ⓔ未
又 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
何→Ⓓ阿
悔→ⒹⒺ悔[能]
是→Ⓔ其
云々 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
戒→Ⓐ或
戒→ⒶⒺ或
若…壊26字 ◎別筆補記
戒→Ⓔ或
也 ⒶⒹⒺになし
可→Ⓐ可[云]
悔 Ⓑになし
読→Ⓒ請
説→Ⓐ脱
此 Ⓐになし
罪 Ⓐになし
尽 Ⓐになし
各有 Ⓐになし
生→Ⓔ世
後→ⒶⒹⒺ後[自作教也(ⒹⒺ使)見(ⒹⒺ見作)随喜也]
業 Ⓐになし
界→Ⓐ界[三毒三品]→ⒹⒺ苛三毒三品
也 ⒶⒺになし
切→Ⓓになし
歓→Ⓐ観
権→Ⓔ根
道→Ⓐ道[已上]
勒 Ⓓになし
慧→Ⓐ恵
悪→ⒷⒸ悪[事]
善→ⒶⒷⒸ善[事]
閲叉→Ⓔ又
神→ⒶⒷⒸⒹⒺ禅
中→ⒶⒷⒸⒹⒺ中[云々]
二→Ⓓ二[中]
→Ⓔ戚
悲 Ⓑになし
恵→ⒶⒷⒹⒺ慧
法→ⒹⒺ法[已上]
彼→Ⓐ彼[大]
云→Ⓑ去
権→Ⓔ推
未→ⒶⒺ末
止→ⒹⒺ正
日→Ⓐ日[法]
観念門 ⒹⒺになし
止→ⒹⒺ正
開→Ⓔ門
陀 ◎になし
比→Ⓑ此
湯→ⒶⒷⒸⒹⒺ湯[掃]
日 ⒹⒺになし
菜→ⒷⒸ啋
己身→Ⓔ已来
命→Ⓒ念
卽…説30字→◎即チ得ム↧延ベ↠年ヲ転ジテ↢長命ニ↡安楽ノ因縁ヲ↥。一々ニ具ニ如シ↢¬比喩経¼・¬惟无三昧経¼・¬浄度三昧経¼等ニ説クガ↡。
命→Ⓓ命[多]
度 Ⓐ土と右傍註記
号→Ⓔ啼
闇→Ⓐ間
毫→ⒶⒷⒸ毛
文→Ⓓ観 ⒷⒸⒺになし
之 ⒶⒹⒺになし
或→ⒶⒷⒸⒹⒺ惑
便→ⒶⒷⒸⒺ使
返→ⒶⒷⒸⒹⒺ遍
矣→Ⓒ美
十→Ⓔ七
明 ⒷⒸになし
翻→Ⓐ番
娑→ⒶⒷⒸⒹⒺ沙
悕→ⒶⒷⒸⒹⒺ希
当→ⒹⒺ常
期→Ⓓ勘
項→ⒹⒺ頃
三月終竟→Ⓐ終竟三月
阿 ⒷⒸになし
身→ⒹⒺ[心]身
慧→ⒹⒺ恵
何→Ⓐ所
有→Ⓐ即
其→ⒹⒺ某
勧→ⒶⒷⒸⒹⒺ歓
又→ⒶⒷⒸⒹⒺ又[如]
此→ⒶⒷⒸⒹⒺ之
瑠→ⒶⒹⒺ琉
想→ⒹⒺ相
有→ⒹⒺ有[念]
娑→ⒷⒸⒹ沙
人→ⒹⒺ又
慧→Ⓐ恵
項→ⒶⒹⒺ頃
辺→ⒶⒷ量
嗅→ⒶⒹⒺ臭
々 ⒹⒺになし
就→ⒶⒹⒺ熟
勧→観
日→Ⓐ曰
屎尿→ⒷⒸ尿屎
西→ⒶⒷⒸ西[方]
導→Ⓓ道
者 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
堕→ⒶⒹ随
想→ⒶⒷⒸⒹⒺ相
就→Ⓐ熟
准→Ⓓ唯
預→ⒷⒸⒹⒺ予
随→Ⓐ随[典]
奏 ◎湊イと上欄註記→ⒶⒷⒸⒹⒺ湊
弁→Ⓒ辦→Ⓔ辨
暁→Ⓓ繞
返→ⒶⒷⒸⒹⒺ遍
為善根為結縁 Ⓓになし
希→ⒷⒸⒹⒺ悕
蓮→ⒷⒸ蓮[華]
土→ⒶⒷⒸⒹⒺ土[之]
妄→Ⓐ忘
妄→ⒶⒷⒸⒹⒺ忘
仏子応→ⒷⒸ応仏子
摂→ⒶⒷⒸⒹⒺ接
作→ⒶⒷⒸⒹⒺ生
南无三世十方一切諸仏 ⒷⒸになし
琉→ⒶⒷⒸ瑠
仏→ⒷⒸ仏[南无三世十方一切諸仏]
仏 Ⓐになし
慧→Ⓐ会
逐→◎Ⓐ遂
浄仏→◎仏浄
浄 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
極→ⒹⒺ獄
生 Ⓓになし
可 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
上 ◎になし
或加称二菩薩 ⒷⒸになし
今 ⒶⒹになし
孔→◎乳
悪→Ⓔ途
益→ⒷⒸ楽
盛→Ⓓ咸
念→ⒹⒺ念[之]
弥→ⒹⒺ[阿]弥
五 ⒹⒺになし
就→Ⓐ熟
光 ⒷⒸになし
厳→Ⓐ厳[経]
或→ⒶⒷⒸⒹⒺ惑
与観音勢至倶来 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
引接 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
已…之19字 ⒹⒺ33字後子の下にあり
已→ⒶⒷⒸⒹⒺ以
条→ⒷⒸⒺ条[事]
而 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
接→ⒹⒺ摂
子 Ⓓになし
不→Ⓔ否
但→Ⓔ唯 ⒶⒷⒹになし
一 ⒶⒹになし
摂→ⒷⒸ接
於 ⒶⒹⒺになし
応→◎応[応]
後→ⒹⒺ後[一]
害→ⒷⒸ殺
捉→ⒹⒺ提
祇→Ⓔ祗
妷→ⒶⒹⒺ佚
慼→ⒷⒸⒹⒺ戚
懴→ⒶⒷⒸⒹⒺ慚
身→ⒶⒷⒸⒹⒺ身[偃]
楚→ⒹⒺ禁
使→Ⓓ便
浄 Ⓓになし
尋→Ⓔ即
時 Ⓓになし
撻→◎Ⓐ揵
屎尿→ⒷⒸ尿屎
隠→ⒶⒷⒸⒹⒺ穏
想→ⒷⒸ相
讃言→ⒶⒷⒸⒹⒺ言讃
彼→ⒷⒸ復
捉→ⒷⒸ投
迎→Ⓓ近