七(76)、往生要集釈
▲往生要集釈第七
まさにこの ¬集¼ を釈せんとするに、 経論を釈するに準ぜば三門るべし。 一には↓大意、 二には↓釈名、 三には↓入文解釈なり。
将ニスルニ↠釈↢此ノ¬集ヲ¼↡、準ゼバ↠釈ルニ↢経論ヲ↡可↠有↢三門↡。一ニハ者大意、二ニハ者釈名、三ニハ者入文解釈ナリ。
・大意
はじめに↑大意とは、 それ法性平等にして浄穢を離るといへども、 また染浄の縁起、 因縁の仮有を離れず。 このゆゑに仏厭穢欣浄を勧めたまふ。 ただし厭ふといへどもむなしく厭ひ、 欣ふといへどもむなしく欣ふ、 もしその行なくはつひに獲るところなし。 このゆゑに念仏を修して往生を求願す、 これその大意なり。
初0077ニ大意トハ者、夫法性平等ニシテ雖↠離↢浄穢↡、亦復不↠離レ↢染浄縁起、因縁仮有ヲ↡。是ノ故ニ仏勧タマフ↢厭穢欣浄ヲ↡。但シ雖↠厭空ク厭ヒ、雖↠欣ト空ク欣フ、若シ無クハ↢其ノ行↡終ニ無↠処↠獲。是ノ故ニ修シテ↢念仏↡求↢願ス往生ヲ↡、是其ノ大意ナリ也。
・釈名
二↑題目を釈すとは、 「▲往生」 といふは、 草庵に目を瞑ぐあひだ、 すなはちこれ蓮台に趺を結ぶほど、 すなはち弥陀仏の後に従ひ、 菩薩衆のなかにあり、 一念のあひだに西方極楽世界に生ずることを得。 ふゑに往生といふなり。
二ニ釈トハ↢題目↡者、言ハ↢「往生ト」↡者、草庵ニ瞑グ↠目ヲ之間、便チ是蓮台ニ結ブ↠趺ヲ之程、即従ヒ↢弥陀仏ノ後ニ↡、在リ↢菩薩衆ノ中ニ↡、一念ノ之頃ニ得↠生コトヲ↢西方極楽世界ニ↡。故ニ言フ↢往生ト↡也。
次に 「▲要」 とは、 この ¬集¼ のなかに念仏・諸行の二門ありといへども諸行をもつてその要とせず、 すなはち念仏をもつて往生の要となす。 ゆゑに序 (要集巻上) にいはく、 「▲念仏の一門によりて、 いささか経論の要文を集む」 と。 第八念仏証拠門 (要集巻下) にまた 「▲往生の要を直弁するに、 多く念仏といふにはしかじ」 と。 また (要集巻下) いはく、 「▲あきらかに知りぬ契経に多く念仏をもつて往生の要とす」 と。 これらの意によるに、 要の言はただ念仏に局りて諸行に通ぜず。
次「要トハ」者、此ノ¬集ノ¼中ニ雖↠有↢念仏・諸行ノ二門↡而以↢諸行ヲ↡不↠為↢其ノ要ト↡、即以↢念仏ヲ↡為ス↢往生ノ要ト↡。○故序ニ云ク、「依テ↢念仏ノ一門ニ↡、聊カ集ムト↢経論ノ要文ヲ↡。」第八念仏証拠門ニ亦「不ト↠如↧直↢弁スルニ往生ノ之要ヲ↡、多云ニハ↦念仏ト↥。」又云ク、「明ニ知ヌ契経ニ多ク以↢念仏ヲ↡為↢往生之要ト↡。」依ルニ↢此等ノ意ニ↡、要ノ之言ハ唯局テ↢念仏ニ↡不↠通↢諸行↡。
次に 「▲集」 とは、 広く経論によりて念仏往生の文を撰集す、 ゆゑに集といふなり。 この ¬集¼ に上・中・下あり、 ゆゑに 「▲巻上」 といふのみ。
次ニ「集ト」者、広ク依テ↢経論ニ↡撰↢集ス念仏往生ノ之文ヲ↡、故ニ言↠集ト也。此¬集ニ¼有リ↢上・中・下↡、故言フ↢「巻上ト」↡耳。
・入文解釈
三に↑入文解釈とは、 これに二の意あり、 一には↓三段を分別し、 二には↓章門の開合を明かす。
三入文解釈トハ者、此有リ↢二ノ意↡、一ニハ者分↢別シ三段ヲ↡、二ニハ者明ス↢章門ノ開合ヲ↡。
・入文解釈 分別三段
一に↑三段を分別すとは、 三段といふは、 一には序分、 二には正宗分、 三には流通分。
一ニ分↢別トハ三段ヲ↡者、言ハ↢三段ト↡者、一ニハ序分、二ニハ正宗分、三ニハ流通分。
一に序分とは、 はじめに 「▲それ往生極楽」 より 「廃忘に備へん▲」 に至るまでは、 これ序分なり。
一ニ序分トハ者、初ニ自リ↢「夫往生ノ極楽」↡至マデハ↢于「備↢於廃忘↡矣」者、是序分ナリ也。
二に正宗といふは、 「▲大文第一」 より下巻の末へ ¬宝性論¼ の偈▲に至るまでは、 正宗分なり。
二ニ言ハ↢正宗ト↡者、自0078リ↢「大文第一」↡至マデハ↢下巻ノ末ヘ¬宝性論ノ¼偈ニ↡、正宗分ナリ也。
三に流通といふは、 下巻の内題の奥▲七言四句の偈、 これ流通分なり。
三ニ言ハ流通ト↡者、下巻ノ内題ノ奥七言四句ノ偈、是流通分ナリ也。
・入文解釈 章門開合
二に↑章門の開合を明かすとは、 まづ↓開し次に↓合す。
二ニ明トハ↢章門ノ開合ヲ↡者、先ヅ開シ次ニ合ス。
・入文解釈 章門開合 開
まづ↑開とは、 序のなか (要集巻上) にいふがごとく 「▲総じて十門あり。 分ちて三巻となす。 一には厭離穢土、 乃至十には問答料簡」 と。 これすなはち開の義なり。
先ヅ○開トハ者、如ク↢序ノ中ニ云ガ↡「総ジテ有リ↢十門↡。分テ為↢三巻ト↡。一ニハ厭離穢土、乃至十ニハ問答料簡。」是則チ開ノ義ナリ也。
・入文解釈 章門開合 合
次に↑合とは、 前の十門を束ねて五門とす。 いはく一には厭離穢土門。 二には欣求浄土門、 この門のなかにすなはち第三の極楽証拠門を摂す。 三には正修念仏門、 この門のなかにすなはち助念・別時・利益・証拠の四門を摂す。 四には往生諸行門。 五には問答料簡なり。
次ニ○合トハ者、前ノ十門ヲ束ネテ為↢五門ト↡。謂ク一ニハ厭離穢土門。二ニハ欣求浄土門、此ノ門ノ之中ニ即摂ス↢第三ノ極楽証拠門ヲ↡。三ニハ正修念仏門、此ノ門ノ中ニ即摂ス助念・別時・利益・証拠ノ四門ヲ↡。四ニハ往生諸行門。五ニハ問答料簡ナリ也。
問ひていはく、 十門の次第、 造主さだめてその意あるべし。 いまなんがゆゑぞ末学庸に稟けたやすく開合の義を論ずる、 なんのゆゑかあるや。 答へていはく、 第三極楽証拠門の意は、 すなはち第二欣求浄土門の疑を釈す。 いはく十方および都卒に対して、 ただひとへに西方の一義を釈成す。 ゆゑに一門となす。
問曰、十門ノ次第、造主定テ可シ↠有ル↢其ノ意↡。今何ガ故ゾ末学稟↠庸ニ輒ク論ズル↢開合ノ之義ヲ↡、有ルヤ↢何ノ故カ↡耶。答曰、第三極楽証拠門之意ハ、即釈ス↢第二欣求浄土門ノ之疑ヲ↡。謂ク対シテ↢十方及ビ都卒ニ↡、唯偏ニ釈↢成ス西方ノ一義ヲ↡。故ニ為ス↢一門ト↡。
問ひていはく、 なんがゆゑぞ第五・第六・第七・第八、 これを合して一門とするや。 答へていはく、 正助、 長時・別時、 修因得果の義に、 一往これを開きて五門とすといへども、 諸行に対するに、 五門ともにこれ念仏なるがゆゑに、 また合して一門とす。 ゆゑに序のなか (要集巻上) にいはく、 「△念仏の↓一門によりて、 いささか経論の要文を集む」 と。云々
問曰、何ガ故ゾ第五・第六・第七・第八、合シテ↠之ヲ為ルヤ↢一門ト↡乎。答曰、依テ↢正助、長時・別時、修因得果ノ義ニ↡、一往開テ↠之ヲ雖↠為ト↢五門ト↡、対スルニ↢諸行ニ↡、五門共ニ是念仏ナルガ故ニ、亦合シテ為↢一門ト↡。故ニ序ノ中ニ云ク、「依テ↢念仏一門ニ、聊カ集ト↢経論ノ要文ヲ」。云云
また第八念仏の証拠門 (要集巻下) のなかに、 「▲問ひていはく、 一切の善業おのおの利益ありて、 おのおの往生を得。 なんがゆゑぞただ念仏の↓一門を勧むるや」 と。
又第八念仏ノ証拠門ノ中ニ、「問曰、一切ノ善業各有リテ↢利益↡、各得↢往生ヲ↡。何ガ故ゾ唯勧ヤ↢念仏ノ一門ヲ↡。」
第九門のはじめ (要集巻下) にいはく、 「▲極楽を求むるものかならず↓念仏をもつぱらにせずは、 すべからく諸行を明かしておのおの楽欲に住すべし」 と。
第九門ノ初ニ謂0079ク、「求ル↢極楽ヲ↡者不ハ↣必専セ↢念仏ヲ↡、須ク↧明シテ↢諸行ヲ↡各住ス↦楽欲ニ↥。」
序のなかに 「↑一門」 といふは、 総じて一部十門のなかにいふところの念仏を指して、 「依念仏一門」 といふ。 これすはなち諸行に対してこれを論ず。
序ノ中ニ言ハ↢「一門ト」者、総ジテ指シテ↢一部十門ノ之中ニ所ノ↠言念仏ヲ↡、云フ↢「依念仏一門ト」。是則対テ↢諸行ニ↡論ズ↠之ヲ。
第八念仏証拠門のなかにいふところの 「↑一門」 とは、 上の正修念仏以下の四門を指す、 また諸行に対して一門といふなり。
第八念仏証拠門ノ中ニ所ノ↠言「一門トハ」者、指ス↢上ノ正修念仏已下ノ四門ヲ↡、亦対シテ↢諸行ニ↡云↢一門↡也。
第九門のはじめに 「↑念仏」 といふは、 一門の言なしといへども、 意は正修以下の五門を指して念仏といふなり。 これは諸行に対してまた念仏といふ。
第九門ノ初ニ言ハ↢「念仏」↡者、雖↠無ト↢一門ノ言↡、意ハ指テ↢正修已下ノ五門ヲ↡云↢念仏ト↡也。是ハ対テ↢諸行ニ↡亦云↢念仏ト↡。
この ¬往生要集¼ につきて↓広と↓略と↓要とあり。
就↢此ノ¬要集ニ¼有↢広ト略ト要ト↡。
・入文解釈 章門開合 広
↑広とは、 この一部三巻に序・正・流通あり、 厭離等の十門を束ねてもつて広と名づく。 十門とは、 「▲一には↓厭離穢土、 二には↓欣求浄土、 三には↓極楽証拠、 四には↓正修念仏、 五には↓助念方法、 六には↓別時念仏、 七には↓念仏利益、 八には↓念仏証拠、 九には↓往生諸業、 十には↓問答料簡なり」 (要集巻上) と。
広トハ者、此ノ一部三巻ニ有リ↢序・正・流通↡、厭離等ノ十門ヲ束テ以テ名ク↠広ト。十門トハ者、「一ニハ厭離穢土、二ニハ欣求浄土、三極楽証拠、四ニハ正修念仏、五ニハ助念方法、六ニハ別時念仏、七ニハ念仏利益、八ニハ念仏証拠、九ニハ往生諸業、十ニハ問答料簡也。」
・入文解釈 章門開合 広 厭離穢土
はじめの↑厭離につきて七あり。 「▲一には↓地獄、 二には餓鬼、 三には畜生、 四には阿修羅、 五には人、 六には天、 七には総結なり」 (要集巻上) と。
初ノ就テ↢厭離ニ↡有リ↠七。「一ニハ地獄、二ニハ餓鬼、三ニハ畜生、四ニハ阿修羅、五ニハ人、六ニハ天、七ニハ総結也。」
↑地獄につきて八あり。 「▲一には等活、 二には黒縄、 三には衆合、 四には叫喚、 五には大叫喚、 六には焦熱、 七には大焦熱、 八には無間なり」 (要集巻上) と。
就テ地獄ニ↡有↠八。「一ニハ等活、二ニハ黒縄、三ニハ衆合、四ニハ叫喚、五ニハ大叫喚、六ニハ焦熱、七ニハ大焦熱、八ニハ無間也。」
・入文解釈 章門開合 広 欣求浄土
↑欣求に十あり。 「▲一には聖衆来迎の楽、 二には蓮華初開の楽、 三には身相神通の楽、 四には五妙境界の楽、 五には快楽無退の楽、 六には引摂結縁の楽、 七には聖衆倶会の楽、 八には見仏聞法の楽、 九には随心供仏の楽、 十には増進仏道の楽なり」 (要集巻上) と。
欣求ニ有リ↠十。「一ニハ聖衆来迎楽、二ニハ蓮華初開楽、三ニハ身相神通楽、四ニハ五妙境界楽、五ニハ快楽無退楽、六ニハ引摂結縁楽、七ニハ聖衆倶会楽、八ニハ見仏聞法楽、九ニハ随心供仏楽、十0080ニハ増進仏道楽ナリ。
・入文解釈 章門開合 広 極楽証拠
次に↑極楽の証拠に二あり。 「▲一には十方に対し、 二には都率に対す」 (要集巻上) と。
次ニ極楽ノ証拠ニ有リ↠二。「一ニハ対シ↢十方ニ↡、二ニハ対ス都率ニ。」
・入文解釈 章門開合 広 正修念仏
次に↑正修につきて五あり。 「▲一には礼拝門、 二には讃嘆門、 三には↓作願門、 四には↓観察門、 五には回向門なり」 (要集巻上) と。
次ニ就テ↢正修ニ↡有↠五。「一ニハ礼拝門、二ニハ讃嘆門、三ニハ作願門、四ニハ観察門、五ニハ廻向門ナリ。」
このなかに、 ↑作願門につきて二あり。 「▲一には縁事の四弘誓願。 二には縁理の四弘誓願なり」 (要集巻上意) と。
此ノ中ニ、付テ↢作願門ニ↡有↠二。「一ニハ縁事ノ四弘誓願。二ニハ縁理ノ四弘誓願也。」
次に↑観察門につきて三あり。 「▽一には別相観、 二には総相観、 三には雑略観なり」 (要集巻中) と。 このなかに、 雑略観あり、 略極観あり。
次ニ就テ↢観察門ニ↡有リ↠三。「一ニハ別相観、二ニハ総相観、三ニハ雑略観也。」此ノ中ニ、有リ↢雑略観↡、有↢略極観↡。
・入文解釈 章門開合 広 助念方法
次に↑助念方法につきて七あり。 「▲一には方処供具、 二には↓修行相貌、 三には対治懈怠、 四には↓止悪衆善、 五には懺悔修罪、 六には対治魔事、 七には総結要行なり」 (要集巻中) と。
次ニ就テ↢助念方法ニ↡有↠七。「一ニハ方処供具、二ニハ修行相貌、三ニハ対治懈怠、四ニハ止悪衆善、五ニハ懺悔修罪、六ニハ対治魔事、七ニハ総結要行ナリ也。」
このなかに、 ↑修行の相貌につきて、 四修あり、 三心あり。 四修とは、 一には長時修、 二には慇重修、 三には無間修、 四には無余修なり。 三心とは、 一には至誠心、 二には深心、 三には回向発願心なり。
此ノ中ニ、就↢修行ノ相貌ニ、有リ↢四修↡、有リ↢三心↡。四修者、一ニハ長時修、二ニハ慇重修、三ニハ無間修、四ニハ無余修ナリ也。三心トハ者、一ニハ至誠心、二ニハ深心、三ニハ廻向発願心ナリ。
次に↑止悪衆善につきて五の因縁あり。 「▲一には持戒不犯。 二には不起邪見。 三には不生憍慢。 四には不恚不嫉。 五には勇猛精進なり」 (要集巻中) と。
次ニ就テ↢止悪衆善ニ↡有↢五ノ因縁↡。「一ニハ持戒不犯。二ニハ不起邪見。三ニハ不生憍慢。四ニハ不恚不嫉。五ニハ勇猛精進ナリ也。」
・入文解釈 章門開合 広 別時念仏
次に↑別時念仏につきて二あり。 「▲一には尋常の行儀。 二には臨終の行儀なり」 (要集巻中) と。
次就↢別時念仏ニ↡有リ↠二。「一ニハ尋常ノ行儀。二ニハ臨終ノ行儀ナリ。」
・入文解釈 章門開合 広 念仏利益
次に↑念仏の利益につきて七あり。 「▲一には滅罪生善。 二には冥得護持。 三には現身見仏。 四には当来勝利。 五には弥陀別益。 六には引例勧信。 七には悪趣利益なり」 (要集巻中) と。
次ニ就↢念仏ノ利益ニ↡有リ↠七。「一ニハ滅罪生善。二ニハ冥得護持。三ニハ現身見仏。四ニハ当来勝利。五ニハ弥陀別益。六ニハ引例勧信。七ニハ悪趣利益ナリ也。」
・入文解釈 章門開合 広 念仏証拠
次に↑念仏の証拠につきて三重の問答あり。
次ニ就テ↢念仏ノ証拠ニ↡有リ↢三重ノ問答↡。
・入文解釈 章門開合 広 往生諸業
次に↑往生諸行門なり。
次ニ往生諸行門ナリ也。
・入文解釈 章門開合 広 問答料簡
次に↑問答料簡につきて十あり。 「▲一には極楽の依正。 二には往生の階位。 三には往生の多少。 四には尋常の念相。 五には臨終の念相。 六には麁心の妙果。 七には諸行勝劣。 八には信毀の因縁。 九には助道の資縁。 十には助道の人法なり」 (要集巻下) と。 云々
次ニ就↢問答料簡ニ↡有リ↠十。「一ニハ極楽ノ依正。二ニハ往生ノ階位。三0081ニハ往生ノ多少。四ニハ尋常ノ念相。五ニハ臨終ノ念相。六ニハ麁心妙果。七ニハ諸行勝劣。八ニハ信毀因縁。九ニハ助道資縁。十ニハ助道人法。」云云
これをもつて広と名づく。
以テ↠此ヲ名ク↠広ト。
・入文解釈 章門開合 略
また↑略とは、 助念方法のなかの、 総結要行の七法これなり。
又略トハ者、助念方法ノ中ノ、総結要行ノ七法是ナリ也。
一往
文 (要集巻中) にいはく、 「▽問ふ。 ↓上の諸文のなかに↓陳ぶるところすでに多し。 いまだ知らずいづれの業をか往生の要とする。 答ふ。 ↓大菩提心と↓護三業と、 ↓深信↓至誠にして↓つねに↓念仏すれば、 ↓願に随ひて決定して極楽に生ず」 と。 以上
○文ニ云ク、「問。上ノ諸文ノ中ニ所↠陳ル既ニ多シ。未↠知何ノ業ヲカ為ル↢往生ノ要ト↡。答。大菩提心護三業、深信至誠常ニ念仏スレバ、随テ↠願ニ決定シテ生↢極楽ニ↡。」已上
わたくしにいはく、 問の意は、 「↑上の諸文」 とは、 厭離等の五門を指すなり。 「↑陳ぶるところはすでに多し」 とは、 厭離に七あり、 欣求に十あり、 証拠に二あり、 正修に五あり、 助念に七あり。 かくのごときの諸文のなかに、 陳ぶるところすでに多し、 いまだ知らずいづれの業をか往生の要となすと問ふなり。
◇私云、問ノ意ハ者、「上ノ諸文ト」者、指ス↢厭離等ノ五門ヲ↡也。「所陳ハ既ニ多トハ」者、厭離ニ有リ↠七、欣求ニ有リ↠十、証拠ニ有リ↠二、正修ニ有↠五、助念ニ有リ↠七。如↠是ノ諸文ノ中ニ、所↠陳ル既ニ多シ、未ダ↠知ラ何ノ業ヲカ為スト↢往生ノ要ト問ナリ也。
答の意は、 しばらく問に准じて七法を撰びて、 もつて往生の要と名づく。 上の五門のなかに、 厭離・欣求・証拠の三門は要にあらず、 ゆゑに捨てて取らず。
◇答ノ意ハ者、且ク准ジテ↠問ニ撰テ↢七法ヲ↡、以テ名ク↢往生ノ要ト↡也。上ノ五門ノ中ニ、厭離・欣求・証拠ノ三門ハ非ズ↠要ニ、故ニ捨テヽ不↠取。
一往 一、菩提心(作願門)
「↑大菩提心」 とは、 上の正修念仏門のなかに五念門あり、 そのなかに作願門を取るなり。
◇「大菩提心トハ」者、上ノ正修念仏門中ニ有↢五念門↡、其ノ中ニ取ル↢作願門ヲ↡也。
一往 二、護三業(十重)
「↑護三業」 とは、 上の止悪衆善のなかに止悪の辺を取るなり。
◇「護三業トハj者、上ノ止悪衆善ノ中ニ取ル↢止悪ノ辺↡也。
問ふ。 止悪のなかに十重・四十八軽あり、 ともにこれを取るか。 答ふ。 しからず、 まさしく十重を取るなり。 ゆゑに下の文 (要集巻中) にいはく、 「▲三業の重悪よく正道を障ふ。 ゆゑにすべからくこれを護るべし」 と、 これなり。
◇問。止悪ノ中ニ有リ↢十重・四十八軽↡、共ニ取ルカ↠之ヲ歟。答。不↠然、正ク取ル↢十重ヲ↡也。故ニ下ノ文ニ云ク、「三業ノ重悪能ク障フ↢正道ヲ↡。故ニ須クト護↠之」、是也。
一往 三、深信(深心)
「↑深信」 とは、上の修行の相貌のなかに四修・三心ある、 三心のなかに深心を取るなり。
◇「深信トハ」者、上ノ修行ノ相貌ノ中ニ有ル↢四修・三心↡、三心ノ中ニ取ル↢深心ヲ↡也。
一往 四、至誠(至誠心)
「↑至誠」 とは、 至誠心を取るなり。
◇「至誠トハ」者、取↢至誠心ヲ↡也。
一往 五、常(無間修)
「↑つねに」 とは、 四修のなかに無間修を取るなり。
◇「常」者、四修ノ中ニ取ル↢無間修ヲ↡也。
一往 六、念仏(称念)
「↑念仏」 とは、 上の五念のなかに観察門を取るなり。
◇「念仏トハ」者、上ノ五念ノ中ニ取↢観察門ヲ↡也。
問ふ。 観察門のなかに、 称念あり、 観念あり。 まさしくはいづれの念ぞや。 答ふ。 称念を取るなり。 ゆゑに下の文 (要集巻中) に 「▲称念仏はこれ行善なり」 と。
◇問。観察門ノ中ニ、有リ↢称念↡、有リ↢観念0082↡。正クハ何ノ念ゾヤ乎。答。取ル↢称念ヲ↡也。故ニ下ノ文ニ云フ↢「称念仏ハ是行善ナリト」↡也。
一往 七、随願(廻向発願心)
「↑随願」 とは、上の三心のなかの回向発願心を取る、 ゆゑに 「大菩提心護三業、 深信至誠常念仏、 随願決定生極楽」 といふ。
◇「随願トハ」者、上ノ三心ノ中ノ取ル↢廻向発願心ヲ↡、故ニ云フ↢「大菩提心護三業、深信至誠常念仏、随願決定生極楽ト」。
これなほ問に准じて要否を尋ぬといへども、 これしばらく助念門の意なり、 この ¬集の¼ 正意にはあらざるなり。
○此尚准ジテ↠問ニ雖↠尋ト↢要否ヲ↡、是且ク助念門ノ意ナリ也、非↢此ノ¬集ノ¼正意ニハ↡也。
問ふ。 なにをもつてか知ることを得たる、 正意にあらずとは。 答ふ。 止悪衆善のなか (要集巻中) にいはく、 「▲問ふ。 念仏すればしばらくみづから罪を滅す。 なんぞかならずしも堅く戒を持せん。 ◆答ふ。 一心に念ぜば、 まことに責むるところのごとし。 しかるに尽日に念仏して閑かにその実を撿するに、 浄心はこれ一両、 その余はみな濁乱なり。 乃至◆このゆゑに、 まさに精進に浄戒を持ちてなほ明珠を護るがごとくすべし」 と。 ゆゑに知りぬ如説に念仏せば、 かならずしも持戒等を具すべからず。
◇問。何ヲ以テカ得タル↠知コト、非トハ↢正意ニ↡乎。答。止悪衆善ノ中ニ云ク、「問。念仏スレバ且ク自滅↠罪。何ゾ必シモ堅ク持セン↠戒ヲ。答。一心ニ念ゼバ、誠ニ如シ↠所ノ↠責ムル。然ニ尽日ニ念仏シテ閑ニ撿ルニ↢其ノ実ヲ↡、浄心ハ是一両、其ノ余ハ皆濁乱ナリ。乃至是ノ故ニ、当 ベ ニシ精進ニ持テ↢浄戒ヲ↡猶如クス↞護ルガ↢明珠↡。」故ニ知ヌ如説ニ念仏セバ、必シモ不↠可↠具↢持戒等ヲ↡。
これをもつて略といふなり。
以↠此ヲ言フ也↠略ト也。
再往 引文
「▲第七に総結要行とは、 △問ふ。 ↓上の諸門のなかに↓陳ぶるところすでに多し。 ↓いまだ知らずいづれの業をか往生の要となす。
○「第七総結要行トハ者、 問。上ノ諸門ノ中ニ所↠陳既ニ多シ。未ダ↠知ラ何ノ業ヲカ為↢往生ノ要ト↡。
◆答ふ。 ▽大▽菩提心あつて▽三業を護り、 ▽深信至誠にしてつねに▽念仏すれば、 願に随ひて決定して極楽に生ず。 いはんやまた余のもろもろの妙行を具せんをや。
◇答。大菩提心アテ護↢三業↡、深信至誠ニシテ常ニ念仏スレバ、随テ↠願ニ決定シテ生↢極楽ニ↡。況ヤ復具ンヲヤ↢余ノ諸ノ妙行ヲ↡。
◆問ふ。 なんがゆゑぞこれらを往生の要とするや。
◇問。何ガ故ゾ此等ヲ為ルヤ↢往生ノ要ト↡。
◆答ふ。 菩提心の義は前につぶさに釈するがごとし。 ▽三業の重悪よく正道を障ふ。 ゆゑにすべからくこれを護るべし。 往生の業には念仏を本となす。 その念仏の心、 かならずすべからく理のごとくすべし。 ゆゑに深信・至誠・常念の三事を具す。
◇答。菩提心ノ義如↢前ニ具ニ釈ガ↡。三業ノ重悪能ク障フ正道↡。故ニ須↠護↠之ヲ。往生ノ之業ニハ念仏ヲ為ス↠本ト。其念仏ノ心、必須クシ↠如↠理ノ。故ニ具ス↢深信・至誠・常念ノ三事ヲ。
◆常念に三の益あり。 迦才のいふがごとし、 一には諸悪の覚観畢竟じて生ぜず。 また業障を消すことを得。 二には善根増長して、 また見仏の因縁を種うることを得。 三には薫習熟利して、 命終の時に臨みて正念現前すと。 以上 ◆業は願によりて転ず。 ゆゑに随願往生といふ。
◇常念ニ有リ↢三ノ益↡。如↢迦才ノ云ガ↡、一ニハ者諸悪覚観畢竟ジテ不↠生ゼ。亦得↠消コトヲ↢於業障ヲ↡。二ニハ者善根増長シテ、亦得↠種ルコトヲ↢見仏ノ因縁ヲ↡。三ニハ者薫習熟利シテ、臨テ↢命終ノ時ニ↡正念現前。已上 業ハ由テ↠願転ズ。故ニ云フ↢随願往生ト↡。
◆総じてこれをいはば、 三業を護るはこれ止善。 ▽念仏を称するはこれ行善なり。 菩提心および願はこの二善を扶助す。 これらの法を往生の要となす。 その旨経論に出でたり。 これをつぶさにすることあたはず」 (要集巻中) と。
◇総ジテ而0083言ハヾ↠之、護ルハ↢三業ヲ↡是止善。称スルハ↢念仏ヲ↡是行善ナリ。菩提心及ビ願ハ扶↢助ス此二善ヲ。此等ノ法ヲ為↢往生ノ要ト↡。其ノ旨出タリ↢経論ニ↡。不↠能↠具ニスルコト↠之。」
再往 私釈
わたくしにいはく、 この第七の総結要行とは、 これすなはちこの ¬集¼ の肝心なり、 決定往生の要法なり。 学者さらにこれを思択して、 その要否を識るべし。 文に二の問答あり。
○私ニ云ク、此ノ第七ノ総結要行トハ者、是則此¬集ノ¼肝心ナリ也、決定往生ノ要法也。学者更ニ思↢択シテ之ヲ、可シ↠識ル↢其ノ要否ヲ↡。文ニ有↢二ノ問答↡。
再往 私釈 第一問答 問
しばらくはじめの問のなかに、 「↑上の諸門」 とは、 上に五門あり。 一には厭離穢土、 二には欣求浄土、 三には極楽証拠、 四には正修念仏、 五には助念方法なり。 ゆゑにこれらを指して上の諸門といふなり。
◇且ク初ノ問ノ中ニ、「上ノ諸門トハ」者、上ニ有↢五門↡。一ニハ厭離穢土、二ニハ欣求浄土、三ニハ極楽証拠、四ニハ正修念仏、五ニハ助念方法也。故ニ指シテ↢此等ヲ↡云↢上ノ諸門ト↡也。
次に 「↑陳ぶるところすでに多し」 とは、 厭離門に七あり、 欣求門に十章あり、 証拠門に二章あり。 正修門に五章あり、 助念門に六章あり。 これらの諸章に明かすところすでに多し。 ゆゑに所陳既多といふなり。
◇次ニ「所↠陳既ニ多トハ」者、厭離門ニ有リ↠七、欣求門ニ有リ↢十章↡、証拠門ニ有リ↢二章↡。正修門ニ有リ↢五章↡、助念門ニ有リ↢六章↡。此等ノ諸章ニ所↠明ス既ニ多シ。故ニ云↢所陳既多ト↡也。
次に 「↑いまだ知らずいづれの業をか往生の要となす」 とは、 上の諸門においておのおの述するところの行、 すでに条数あり。 要否の法において、 学者識りがたし、 要法を決せんがためのゆゑにいまだ知らずといふなり。
◇次ニ「未↠知何ノ業ヲカ為トハ↢往生ノ要ト↡」者、於↢上ノ諸門ニ↡各所ノ↠述行、既ニ有リ↢条数↡。於↢要否ノ法ニ↡、学者叵シ↠識、為ノ↠決ガ↢要法ヲ↡故ニ云↠未ト↠知也。
再往 私釈 第一問答 答
次に答のなかに二あり。 一にはほぼ↓答えの意を述す、 二には↓答の文を釈す。
◇次ニ答ノ中ニ有リ↠二。一ニハ粗述ス↢答ノ意ヲ↡、二ニハ釈ス↢答ノ文ヲ。
はじめに↑答の意とは、 問の意すでに上の諸門の行より出でて、 その要否を問ふ。 ゆゑに答のなかに、 また上の諸門のなかにおいて、 その要を簡びてその要行を示す。 これすなはち答のなかの大意なり。
◇初ニ答意トハ者、問ノ意既ニ出デヽ↢上ノ諸門ノ行ヨリ↡、問フ↢其要否ヲ↡。故ニ答ノ中ニ、又於テ↢上ノ諸門ノ中ニ↡、簡テ↢其ノ要ヲ↡示ス↢其ノ要行ヲ↡。是則答ノ中ノ大意ナリ。
次にまさしく↑答の文を釈すとは、 また分ちて二とす。 一には↓総じて五門に約してこれを簡ぶ、 二には↓別して二門に約してこれを簡ぶ。
◇次ニ正ク釈トハ↢答ノ文ヲ↡者、又分テ為↠二。一ニハ総ジテ約シテ↢五門ニ↡簡↠之、二ニハ別シテ約↢二門ニ↡簡↠之。
総約五門
はじめに↑総じて五門に約して簡ぶとは、 上の厭離等の三門は、 これ往生の要にあらず、 ゆゑに簡びて取らず。 第四・第五の二門は、 まさしくこれ往生の要行なり。 ゆゑに答のなかに 「△↓大菩提心↓護三業」 等といふ。
◇初ニ総ジテ約シテ↢五門ニ↡簡トハ者、上ノ厭離等ノ三門ハ、是非↢往生ノ要ニ↡、故ニ簡テ而不↠取。第四・第五ノ二門ハ、正ク是往生ノ要行ナリ。故ニ答ノ中ニ云フ↢「大菩提心護三業」等ト↡。
「↑大菩提」 および 「念仏」 とは、 これすなはち第四の門なり。 「↑護三業深信至誠」 等とは、 第五門なり。 これすなはち総じて諸門に約してその要を挙げて、 その要否を簡ぶなり。
◇「大菩提」及ビ「念仏トハ」者0084、是即第四ノ門ナリ。「護三業深信至誠」等トハ者、第五門ナリ也。是則総ジテ約シテ↢諸門ニ↡挙テ↢其ノ要ヲ↡、簡↢其ノ要否ヲ↡也。
別約二門
次に↑別して二門に約して簡ぶとは、 また二あり。 一には↓第四門に約してこれを簡び、 二には↓第五門に約してこれを簡ぶ。
◇次ニ別シテ約シテ↢二門ニ↡簡トハ者、又有↠二。一ニハ約シテ↢第四門ニ↡簡ビ↠之、二ハ約シテ↢第五門ニ↡簡ブ之。
別約二門 約正修念仏
はじめに↑第四門に約すとは、 これにつきてまた五門あり。 「△一には礼拝門、 二には讃嘆門、 三には作願門、 四には観察門、 五には回向門なり」 (要集巻上) と。 この五門のなかに、 作願と観察との二門をもつて往生の要となす、 余の三門はこれ要にあらず。 ゆゑにいま「△↓菩提心」 および 「△↓念仏」 といふ、 またさらに礼・讃等といはず。
◇初ニ約ストハ↢第四門ニ↡者、就テ↠之ニ亦有リ↢五門↡。「一ニハ礼拝門、二ニハ讃嘆門、三ニハ作願門、四ニハ観察門、五ニハ廻向門ナリ也。」此ノ五門ノ中ニ、以テ↢作願ト観察トノ二門ヲ↡為ス↢往生ノ要ト↡、余三門ハ是非ズ↠要ニ。故ニ今云フ↢「菩提心」及「念仏ト」↡、又更ニ不↠云ハ↢礼・讃等ト↡。
また↑菩提心につきて、 事あり理あり。 文のなかにいまだこれを簡ばずといへども、 もし念仏に例せば、 しばらく事をもつて往生の要とするなり。
◇又就↢菩提心↡、有↠事有↠理。文ノ中ニ雖↠未ダ↠簡バ↠之ヲ、若シ例セバ↢念仏ニ↡、且以テ↠事ヲ為↢往生ノ要ト↡也。
またいはく、 ↑念仏とはこれ観察門の異名なり。 しかるに念仏の行において、 また観想あり、 称名あり。 二行のなかにおいて、 称名を要とす。 ゆゑに次の答のなかに 「△称念仏はこれ行善なり」 と。 云云
◇又云、念仏ト者是観察門ノ異名ナリ也。然ニ於テ↢念仏ノ行ニ↡、又有↢観想↡、有↢称名↡。於テハ↢二行ノ中ニ↡、称名ヲ為↠要ト。故ニ次ノ答ノ中ニ「称念仏ハ是行善ナリト也。」云云
これをもつて ¬往生要集¼ の意、 称念仏をもつて往生の至要とするなり。
◇以↠之ヲ¬要集ノ¼意、以↢称念仏ヲ↡為ル↢往生ノ至要ト↡也。
別約二門 約助念方法
次に↑第五門に約すとは、 これにつきてまた六あり。 「△一には方処供具、 二には修行相貌、 三には対治懈怠、 四には止悪衆善、 五には懺悔衆罪、 六には対治魔事なり」 (要集巻中) と。 この六法のなかに、 ↓第二・↓第四の二門をもつて往生の要となす。 第一・第三・第五・第六の四門はこれ往生の要にあらず。 ゆゑに捨てて取らざるなり。
◇次ニ約トハ↢第五門ニ↡者、就↠之ニ又有↠六。「一ニハ方処供具、二ニハ修行相貌、三ニハ対治懈怠、四ニハ止悪衆善、五ニハ懺悔衆罪、六ニハ対治魔事ナリ也。」此ノ六法ノ中ニ、以テ↢第二・第四ノ二門ヲ↡為↢往生ノ要ト↡。第一・第三・第五・第六ノ四門ハ非↢是往生ノ要ニ↡。故ニ捨テヽ而不↠取也。
別約二門 約助念方法 修行相貌
↑第二門につきて、 また四修あり、 三心あり。
◇就テ↢第二門ニ↡、又有↢四修↡、有↢三心↡。
別約二門 約助念方法 修行相貌 四修>無間修
四修とは、 一には長時修、 二には慇重修、 三には無間修、 四には無余修なり。 四修のなかにおいて、 ただ無間修を取りてその要となす、 余の三は要にあらず。 ゆゑに文に ¬要決¼ (西方要決) を引きていはく、 「三には無間修、 ▲いはくつねに念仏して往生の想を作せ」 と。
◇四修トハ者、一ニハ長時修、二ニハ慇重修、三ニハ無間修、四ニハ無余修ナリ也。於テ↢四修ノ中ニ↡、唯取テ↢無間修ヲ↡為↢其要ト↡、余ノ三ハ非↠要ニ也。故ニ文ニ引0085テ¬要決¼↡云、「三ニハ無間修、謂ク常ニ念仏シテ作ト↢往生ノ想ヲ↡。」
別約二門 約助念方法 修行相貌 三心:全
三心においてはまつたく取りて棄てず、 みなこれ往生の要なればなり。 ゆゑに文に 「△深信至誠常念仏及随願」 といふ、 すなはちこの意なり。
◇於テハ↢三心ニ↡全ク取テ不↠棄、皆是往生ノ要ナレバナリ也。故文ニ云フ↢「深信至誠常念仏及随願ト」↡、則是ノ意ナリ也。
別約二門 約助念方法 止悪修善(持戒不犯>十重)
次に↑第四門につきて、 また六あり。 「△一には持戒不犯。 二には不起邪見。 三には不生憍慢。 四には不恚不嫉。 五には勇猛精進。 六には▲読誦大乗なり」 (要集巻中意) と。 六法のなかにおいて、 ただ第一を取りて往生の要となす。 文に 「△護三業」 といふ、 要とはこれすなはち持↓戒不犯なり、 余の五は要にあらず、 ゆゑに棄てて取らず。
◇次就テ↢第四門ニ↡、亦有↠六。「一ニハ持戒不犯。二ニハ不起邪見。三ニハ不生憍慢。四ニハ不恚不嫉。五ニハ勇猛精進。六ニハ読誦大乗ナリ。」於テ↢六法ノ中ニ↡、唯取テ↢第一ヲ↡為↢往生ノ要ト↡。文ニ云↢「護三業ト」↡、要トハ者是則持戒不犯ナリ也、余ノ五ハ非↠要ニ、故ニ棄テ而不↠取也。
いはゆる↑戒とは、 これ菩薩戒、 声聞戒にはあらず。 その旨文に見えたり。 ただし菩薩戒においてまた十重あり、 四十八軽あり、 いまの意は軽を捨てて重を取る。 ゆゑに文に 「△三業重悪」 といふ。
◇所謂ル戒トハ者、是菩薩戒、非↢声聞戒ニハ↡。其ノ旨見タリ↠文ニ。但シ於テ↢菩薩戒ニ↡亦有↢十重↡、有リ↢四十八軽↡、今ノ意ハ捨テヽ↠軽ヲ取ル↠重ヲ。故ニ文ニ云↢「三業重悪ト」。
つらつらこの問答を案ずるに、 この ¬要集¼ の意によりて往生を遂げんと欲するものは、 まづ縁事の大菩提心を発し、 次に十重も木叉を持ちて、 深信と至誠とをもつてつねに弥陀の名号を称し、 願に随ひて決定して往生を得べし。 これすなはちこの ¬集¼ の正意なり。
◇倩ラ案ズルニ↢此ノ問答ヲ↡、依テ↢此ノ¬要集ノ¼意ニ↡欲ル↠遂ント↢往生↡者ハ、先ヅ発シ↢縁事ノ大菩提心ヲ↡、次ニ持テ↢十重ノ木叉↡、以テ↢深信ト至誠トヲ↡常ニ称シ↢弥陀ノ名号ヲ↡、随テ↠願ニ決定シテ得ベシ↢往生ヲ↡。是則此ノ¬集ノ¼正意ナリ也。
再往 私釈 第二問答
次にまた△問答あり、 菩提心等の七法をもつて、 往生の要となして、 その由を問答するなり。 その文見やすし、 繁きを恐れて記せず。
◇次ニ又有↢問答↡、以テ↢菩提心等ノ七法ヲ↡、為テ↢往生ノ要ト↡、問↢答スル其由ヲ也。其ノ文易シ↠見、恐テ↠繁ヲ不↠記セ。
また上の厭離等の五門において要否を簡ぶこと、 すでにもつてかくのごとし。 下の別時等の五門また至要にあらざること、 これをもつて知るべし。
◇又於テ↢上ノ厭離等ノ五門ニ↡簡コト↢要否ヲ↡、既ニ以テ如シ↠此ノ。下ノ別時等ノ五門亦非ルコト↢至要ニ↡、以テ↠之可シ↠知ル。
また念仏において二あり。 一には但念仏、 前の正修門の意なり。 二には助念仏、 いまの助念門の意なり。 この ¬要集¼ の意は、 助念仏をもつて決定の業とするか。 ただし善導和尚の御意はしからず 云々。
◇又於テ↢念仏ニ↡有↠二。一ニハ但念仏、前ノ正修門ノ意ナリ也。二ニハ助念仏、今ノ助念門ノ意ナリ也。此ノ¬要集ノ¼意ハ、以↢助念仏↡為ル↢決定ノ業ト↡歟。但シ善導和尚ノ御意ハ不↠爾ラ 云云。
・入文解釈 章門開合 要
三に↑要とは、 念仏の一行に約して勧進する文これなり。
三0086要トハ者、約↢念仏ノ一行ニ↡勧進スル文是ナリ也。
・入文解釈 章門開合 要 正修念仏(観察門)
▽第四の正修念仏門のなかの観察門 (要集巻中) にいふ、 「▲初心の観行は深奥に堪へず。 乃至◆このゆゑに色相観を修すべしと。 ◆これを分ちて三となす。 △一は別相観、 二は総相観、 三は雑略観なり。 意楽に随ひてこれを用ゐるべし。 ◆はじめに別相観とは 云々。 ▲二には総相観とは 云々。 ▲三に雑略観とは 云々。 ▲もし相好を観念するに堪へざることあらば、 あるいは帰命の想により、 あるいは引摂の想により、 あるいは往生の想によりて一心に称念すべし。 以上意楽不同なるがゆゑに種々の観を明かす
第四ノ正修念仏門之中ノ観察門ニ云フ、「初心ノ観行ハ不↠堪↢深奥ニ↡。乃至是ノ故ニ可ト↠修ス↢色相観ヲ↡。此ヲ分テ為↠三ト。一ハ別相観、二ハ総相観、三ハ雑略観ナリ也。随テ↢意楽ニ↡応シ↠用↠之ヲ。初ニ別相観トハ者 云云。二ニハ総相観トハ者 云云。三ニ雑略観トハ者 云云。若有バ↠不コト↠堪↣観↢念スルニ相好ヲ↡、或ハ依リ↢帰命想ニ↡、或ハ依リ↢引摂想↡、或ハ依テ↢往生想ニ↡応シ↢一心ニ称念ス↡。已上意楽不同ナルガ故ニ明ス↢種種ノ観ヲ↡
▽行住坐臥、 語黙作々、 つねにこの念をもつて胸中に在きて、 飢して食を念ふがごとく、 渇して水を追ふがごとくせよ。 低頭挙手にも、 あるいは声を挙げて称名せよ。 外儀は異なりといへども心念はつねに存じて、 念々に相続して、 寤寐に忘るることなかれ」 と。 云々
◇行住坐臥、語黙作作、常ニ以テ↢此ノ念ヲ↡在テ↢於胸中ニ↡、如ク↢飢念ガ↟食ヲ、如セヨ↢渇シテ追フガ↟水ヲ。低頭挙手ニモ、或挙テ↠声ヲ称名セヨ。外儀ハ雖↠異ト心念ハ常ニ存ジテ、念念相続シテ、寤寐莫↠忘。」云云
・入文解釈 章門開合 要 念仏証拠
また念仏証拠門 (要集巻下) に、「▲問ひていはく、 一切の善根おのおの利益あり、 おのおの往生を得。 なんがゆゑぞ▽ただ念仏の一門を勧むるか。
○又念仏証拠門、「問云ク、一切ノ善根各有↢利益↡、各得↢往生ヲ↡。何ガ故ゾ唯勧ルカ↢念仏ノ一門ヲ↡。
◆答ふ。 いま念仏を勧むることは、 これ余の種々の妙行を遮するにはあらず。 ただこれ、 男女・貴賎、 行住坐臥を簡ばず、 時処諸縁を論ぜず、 ▽これを修するに難からず、 乃至臨終に往生を願求するに、 その便宜を得ること念仏にはしかず。
◇答。今勧コトハ↢念仏ヲ↡、非ズ↣是遮ニハ↢余ノ種種ノ妙行ヲ↡。只是、男女・貴賎、不↠簡↢行住坐臥ヲ↡、不↠論↢時処諸縁ヲ↡、修ルニ↠之不↠難カラ、乃至臨終ニ願↢求スルニ往生ヲ↡、得コト↢其便宜ヲ↡不↠如↢念仏ニハ↡。
◆ゆゑに ¬木槵経¼ にのたまはく、 難陀国の波瑠璃王使を遣して仏にまうしてまうさく、 ただ願はくは世尊、 ことに慈愍を垂れて、 われに要法を賜ひたまへ、 われをして日夜に修行を得やすくして、 未来世のなかに衆苦を遠離せしめたまへ。
◇故ニ¬木槵経ニ¼云ク、難陀国ノ波瑠璃王遣シテ↠使ヲ白シテ↠仏ニ言ク、唯願ハ世尊、特ニ垂テ↢慈愍ヲ↡、賜ヘ↢我ニ要法ヲ↡、使ヘ↧我ヲシテ日夜ニ易シテ↠得↢修行↡、未来世ノ中ニ遠↦離セ衆苦ヲ↥。
◆仏大王に告げたまはく、 もし煩悩障・報障を滅せんと欲せば、 まさに木槵子百八を貫きて、 もつてつねにみづから随へて、 もしは行、 もしは住、 もしは坐、 もしは臥、 つねに至心にして分散の意なく、 仏陀・達磨・僧伽の名を称して、 乃至一つの木槵子を過ぐすべし。 かくのごとくして、 もしは十、 もしは千、 乃至百千万億すべし。
仏告ハク↢大王ニ↡、若シ欲ハ↠滅ント↢煩悩障・報障ヲ↡者、当ニ↧貫テ↢木槵子百八ヲ↡、以テ常ニ自随テ、若ハ行、若ハ住、若ハ坐、若ハ臥、恒常ニ至心ニシテ無ク↢分散ノ意↡、称シテ↢仏陀・達磨・僧伽ノ名ヲ↡、乃至0087過グス↦一木槵子ヲ↥。如シテ↠是ノ、若ハ十、若ハ千、乃至百千万億スベシ。
◆もしよく二十万返を満てて、 身心乱れずもろもろの諂曲なくは、 命を捨てて第三の炎魔天に生ずることを得て、 衣食自然にして、 つねに安楽を受けん。
若シ能ク満テ↢二十万返ヲ↡、身心不↠乱無クハ↢諸ノ諂曲↡者、捨テヽ↠命ヲ得テ↠生コトヲ↢第三ノ炎魔天ニ↡、衣食自然ニシテ、常ニ受ン↢安楽ヲ↡。
◆もしまたよく一百万返を満てば、 まさに百八の結業を除断することを得て、 生死の流転を背き、 涅槃道に趣きて、 無上の果を獲べしと。 略抄。 感禅師の意これに同じ
若シ復タ能ク満バ↢一百万返ヲ↡者、当ニシ↧得テ↣除↢断コトヲ百八ノ結業ヲ↡、背キ↢生死ノ流転ヲ↡、趣テ↢涅槃道ニ↡、獲↦無上ノ果ヲ↥。略抄。感禅師ノ意同ジ↠之
◆いはんやまたもろもろの聖教のなかに、 念仏をもつて往生の業となす。 ▽その文はなはだ多し。 略して十文を出さん。
○況ヤ復タ諸ノ聖教ノ中ニ、以テ↢念仏ヲ↡為ス↢往生ノ業ト↡。其文甚多シ。略シテ出サン↢十文ヲ↡。
◆一には ¬占察経¼ の下巻にのたまはく、 もし人他方現在の浄国に生ぜんと欲はば、 まさにかの世界の仏の名字に随ひて、 意をもつぱらにして誦念すべし。 一心不乱なること上の観察のごとくあれば、 決定してかの仏国に生ずることを得て、 善根増長し、 すみやかに不退を成ず。
◇一ニハ¬占察経ノ¼下巻ニ云ク、若シ人欲ハ↠生ント↢他方現在ノ浄国ニ↡者、応↧当ニ随テ↢彼ノ世界ノ仏ノ之名字ニ↡、専ニシテ↠意誦念ス↥。一心不乱ナルコト如クアレバ↢上ノ観察ノ↡者、決定シテ得テ↠生コトヲ↢彼ノ仏国ニ↡、善根増長シ、速ニ成↢不退ヲ↡。
◆上のごとき観察とは、 地蔵菩薩の法身および諸仏の法身、 あるいは自身の本来無二、 不生不滅、 常楽我浄、 功徳円満を観ず、 また己身の無常幻のごとしと観じて、 厭うべき等なり
如上観察トハ者、観ジ↢於地蔵菩薩ノ法身及ビ諸仏ノ法身、或ハ自身本来無二、不生不滅、常楽我浄、功徳円満ヲ↡、又観↢己身ノ無常如シト↟幻、可↠厭等ナリ也
◆二には ¬双巻経¼ の三輩の業浅深ありといへども、 しかも通じてみな一向専念無量寿仏といへり。
○二ニハ¬双巻経ノ¼三輩ノ業雖↠有ト↢浅深↡、然モ通ジテ皆云ヘリ↢一向専念無量寿仏ト↡。
◆三には四十八願のなかに念仏門において別して一願を発して乃至十念、 若不生者、 不取正覚といふ。
◇三ニハ四十八願ノ中ニ於テ↢念仏門ニ↡別シテ発シテ↢一願ヲ↡云フ↢乃至十念、若不生者、不取正覚↡。
◆四には ¬観経¼ の極重悪人 云々。
◇四ニハ¬観経ノ¼極重悪人 云云。
▲五には同 ¬経¼ にいはく、 若欲至心 云々。
◇五ニハ同¬経ニ¼云、若欲至心 云云。
▲六には同 ¬経¼ にいはく、 光明遍照 云々。
◇六ニハ同¬経ニ¼云ク、光明遍照 云云。
▲七には ¬阿弥陀経¼ にいはく、 不可以少善根 云々。
◇七ニハ¬阿弥陀経ニ¼云ク、不可以少善根 云云。
▲八には ¬般舟経¼ にいはく、 阿弥陀仏のたまはく、 欲来生我国者 云々。
◇八ニハ¬般舟経ニ¼云、阿弥陀仏言ハク、欲来生我国者 云云。
▲九に ¬鼓音声経¼ にいはく、 若有衆生 云々。
◇九¬鼓音声経ニ¼云、若有衆生 云云。
▲十には ¬往生論¼ にいはく、 かの仏の依正の功徳を観念して往生の業となす 云々。
◇十ニハ¬往生論ニ¼云、観↢念シテ彼ノ仏ノ依正ノ功徳ヲ↡為↢往生ノ業ト↡ 云云。
◆このなかに、 ¬観経¼ の下品・¬阿弥陀経¼・¬鼓音声経¼、 ともに仏の名号を念ずるをもつて往生の業となす。 いかにいはんや相好を観念せん功徳をや。
◇此ノ中ニ、¬観経ノ¼下品・¬阿弥陀経¼・¬鼓音声経¼、倶ニ以テ↠念ズルヲ↢仏名号ヲ↡為↢往生ノ業ト↡。何況ヤ観↢念セン相好↡功徳ヲヤ耶。
◆問ふ。 余行むしろ勧進の文なからんや。
◇問。余行寧0088ロ無ランヤ↢勧進ノ文↡耶。
◆答ふ。 その余行の法は、 ▽ちなみに彼法の種々の功徳を明かす。 ▽おのづから往生の事を説くに、 ▽ただちに往生の要を弁じて、 多く念仏といふにはしかず。 いかにいはんや仏みづから唱へて当念我名とのたまふをや。 また仏の光明余行の人を▽摂取すといはず。
◇答。其ノ余行ノ法ハ、因ニ明ス↢彼法ノ種種功徳ヲ↡。自説クニ↢往生ノ之事ヲ↡、不↠如カ↧直ニ弁ジテ↢往生ノ之要ヲ↡、多ク云ニハ↦念仏ト↥。何況仏自唱テ言ヲヤ↢当念我名ト↡乎。亦不↠云ハ↣仏ノ光明摂↢取スト余行ノ人ヲ↡。
◆これらの文分明なり。 なんぞかさねて疑を生ぜんや。
◇此等ノ文分明ナリ。何ゾ重テ生ゼン↠疑ヲ乎。
◆問ふ。 諸経の所説▽機に随ひて万品なり。 なんぞ管見をもつて一文を執するや。
◇問。諸経ノ所説随テ↠機ニ万品ナリ。何ゾ以テ↢管見↡執スルヤ↢一文ヲ↡耶。
◆答ふ。 馬鳴菩薩の ¬大乗起信論¼ にいはく、 また次に、 衆生はじめてこの法を学せんに、 その心怯弱にして信心成就すべきこと難しと懼畏して、 意に退せんと欲せば、 まさに知るべし、 如来に勝方便ましまして信心を摂護したまふ。 心に随ひて意をもつぱらにして念仏する因縁をもつて、 願に随ひて他方の浄土に往生することを得。
◇答。馬鳴菩薩ノ¬大乗起信論ニ¼云、復次ニ、衆生初テ学センニ↢此ノ法ヲ↡、其ノ心怯弱ニシテ懼↢畏シテ信心難シト↟可コト↢成就ス↡、意ニ欲セバ↠退ント者、当ニ↠知ル、如来ニ有シテ↢勝方便↡摂↢護シタマフ信心ヲ↡。随テ↠心ニ専ニシテ↠意ヲ念仏スル因縁ヲ以、随テ↠願ニ得↣往↢生コトヲ他方ノ浄土ニ↡。
◆修多羅に説くがごとし。 もし人もつぱら西方の阿弥陀仏を念じ、 所作の善根を回向して、 かの世界に生ぜんと願求すれば、 すなはち往生を得と。
◇如シ↢修多羅ニ説クガ↡。若シ人専ラ念ジ↢西方ノ阿弥陀仏ヲ↡、所作ノ善根ヲ廻向シテ、願↣求スレバ生ント↢彼ノ世界ニ↡、即得ト↢往生ヲ↡。
◆あきらかに知りぬ契経に多く念仏をもつて往生の要とすることを。 もししからずんば、 ▽四依の菩薩すなはち理尽にあらず」 と。 云々
◇明ニ知ヌ契経ニ多ク以テ↢念仏ヲ↡為コトヲ↢往生ノ要ト↡。若シ不ンバ爾者、四依ノ菩薩即非ズ↢理尽↡。」云云
わたくしにいはく、 このなかに三番の問答あり。
◇私ニ云ク、此ノ中ニ有リ↢三番ノ問答↡。
△はじめの問の意は見つべし。 「△唯勧」 の語はまさしく上の観察門 (要集巻中) のなかの △「行住座臥」 等の文を指すなり。 そのゆゑは一部の始末を尋ぬるに、 慇懃に勧進することただ観察門に在り。 余の処にはまつたく見ざるところなり。
◇初ノ問ノ意ハ者可シ↠見。「唯勧ノ」語ハ正ク指ス↢上ノ観察門ノ中ノ「行住座臥」等ノ文ヲ↡也。其ノ故ハ尋ヌルニ↢一部ノ始末ヲ↡、慇懃ニ勧進スルコト只在リ↢観察門ニ↡。余ノ処ニハ全ク所ナリ↠不↠見也。
難易対
答のなかに二義あり。 一には△難行・易行、 いはく難行は修しがたく、 念仏は修しやすし。
◇答ノ中ニ有リ↢二義↡。一ニハ者難行・易行、謂ク難行ハ難ク↠修シ、念仏ハ易シ↠修。
少分多分対
二には少分・△多分、 いはく諸行は勧進の文はなはだ少く、 念仏は諸経に多くこれを勧進すと。
◇二ニハ者少分・多分、謂ク諸行ハ勧進ノ文甚ダ少ク、念仏ハ諸経ニ多ク勧↢進スト之ヲ↡。
△次の問答のなかに、 問の意は知りぬべし。
◇次ノ問答ノ中ニ、問ノ意ハ可シ↠知ヌ。
因明直弁対
答のなかに三義あり。 一には△因明と△直弁となり、 いはく諸行はもつぱら往生のためにこれを説かず、 念仏はもつぱら往生のために撰びてこれを説く。
◇答ノ中ニ有リ↢三義↡。一ニハ者因明ト直弁トナリ、謂ク諸行ハ専ラ為ニ↢往生↡不↠説↠之ヲ、念仏ハ専為ニ↢往生ノ↡撰テ説ク↠之ヲ。
自説不自説対
二には△自説と不自説となり、 いはく諸行は阿弥陀如来みづからまさにこれを修すべしと説かず、 念仏は仏みづからまさにわが名を念ずべしと説きたまふ。
◇二ニハ者自説ト不0089自説トナリ、謂ク諸行ハ阿弥陀如来不↢自説↟当ニ↠修ス↠之ヲ、念仏ハ仏自説タマフ↠当 ベ ニシト↠念↢我ガ名ヲ↡。
摂取不摂取対
三には△摂取と不摂取となり、 いはく諸行は仏光これを摂取したまはず、 念仏は仏光これを摂取す。
◇三ニ者摂取ト不摂取トナリ、謂ク諸行ハ仏光不↣摂↢取タマハ之ヲ↡、念仏ハ仏光摂↢取ス之ヲ↡。
△次の問の意は知りぬべし。
◇次ノ問ノ意ハ可シ↠知ヌ。
如来随義四依理尽対
答のなかに一義あり。 △如来の随機と△四依の理尽となり、 いはく諸行は釈迦如来衆生の機に随ひてこれを説きたまふ、 念仏は四依の菩薩理を尽してこれを勧めたまふ。 これすなはちこの ¬集¼ の本意なり。 委しくこれを思ふべし。
◇答ノ中ニ有ッリ↢一義↡。如来ノ随機ト四依ノ理尽トナリ、謂ク諸行ハ釈迦如来随テ↢衆生ノ機ニ↡説タマフ↠之ヲ、念仏ハ四依ノ菩薩尽シテ↠理ヲ勧タマフ↠之。是則此ノ¬集ノ¼本意ナリ也。委ク可シ↠思↠之。
・入文解釈 章門開合 要 問答料簡(往生階位)
往生の階位 (要集巻下) にいはく、 「▲問ふ。 もし凡下の輩往生を得ば、 いかんぞ、 近代かの国土において求むるものは千万なれども、 得るものは一二もなきや。
◇往生階位ニ云ク、「問。若シ凡下ノ輩得バ↢往生ヲ↡、云何、近代於テ↢彼ノ国土ニ↡求ムル者ハ千万ナレドモ、得ルモノハ無キヤ↢一二モ↡。
◆答ふ。 綽和尚のいはく、 信心深からず、 存ずるがごとく亡ずるがごとくなるがゆゑに。 信心一ならず、 決定せざるがゆゑに。 信心相続せず、 余念間つるがゆゑに。 この三つ相応せざれば、 往生することあたはず。 もし三心を具して往生せずといはば、 この処あることなけん。
◇答。綽和尚ノ云ク、信心不↠深、若ク↠存ガ若クナルガ↠亡ズルガ故ニ。信心不↠一ナラ、不ルガ↢決定↡故ニ。信心不↢相続↡、余念間ルガ故ニ。此ノ三ツ不レバ↢相応↡者、不↠能↢往生スルコト↡。若シ具シテ↢三心ヲ↡不イハヾ↢往生↡者、無ケン↠有コト↢是ノ処。
◆善導和尚のいはく、 もし上のごとく念々相続して畢命を期とするものは、 十はすなはち十生し、 百はすなはち百生す。 もし専を捨ててもつて雑業を修せんと欲するものは、 百の時に希に一二を得、 千の時希に、 三五を得と。 上のごとくとは礼拝等の五門、 至誠等の三心、 長時等の四修を指すなり
◇善導和尚ノ云、若シ如ク↠上念念相続シテ畢命ヲ為↠期者ハ、十即十生シ、百ハ即百生ス。若シ欲スル↣捨テヽ↠専以テ修ント↢雑業ヲ↡者ハ、百ノ時ニ希ニ得↢一二ヲ↡、千ノ時ニ希ニ得ト↢三五ヲ。如上トハ者指ス↢礼拝等ノ五門、至誠等ノ三心、長時等ノ四修ヲ↡也
わたくしにいはく、 恵心理を尽して往生の得否を定めたまふには、 善導・道綽をもつて指南とするなり。 また処々に多く綽・導を引きて、 かの師の釈を用ふ、 これを見るべし。 しかればすなはち恵心を用ゐん輩は、 かならず道綽・善導に帰すべきなり。 これによりてまず綽師の ¬安楽集¼ を披きてこれを覧て、 聖道・浄土の二門の仏教を分つの釈、 これを見よ。 次いで善導の ¬観経の疏¼、 これを見たてまつるべし。
◇私ニ云ク、恵心尽シテ↠理定タマフニハ↢往生ノ得否ヲ↡、以テ↢善導・道綽ヲ↡而為↢指南ト↡也。又処処ニ多ク引テ↢綽・導ヲ↡、用↢於彼ノ師ノ釈ヲ↡、可↠見↠之ヲ。然則用ン↢恵心ヲ↡之輩ハ、必可シ↠帰↢道綽・善導ニ↡也。依テ↠之先ヅ披テ↢綽師ノ¬安楽集ヲ¼覧テ↠之、分ツノ↢聖道・浄土ノ二門ノ仏教ヲ↡釈、見ヨ↠之ヲ。次善導ノ¬観経ノ疏¼、見ルベシ↠之矣。