(95)、往生要集料簡

おうじょうようしゅうりょうけんだい  源空げんくう

¬おうじょうようしゅう¼ のじょ (巻上) にいはく、 「このゆゑに念仏ねんぶつ一門いちもんによりて、 いささかきょうろん要文ようもんあつむ。 これをひらきこれをしゅするに、 かくしやすくぎょうじやすし」 と

¬要集¼序、「是↢念仏一門、聊↢経論要文↡。披↠之修スルニ↠之、易↠覚易↠行。」

わたくしにいはく、 それじょはあらかじめりゃくしていちおうべて、 もつてないがんしめすものなり。 しかるにじょのなかにすでに 「念仏ねんぶつ一門いちもんによる」 といふ。 あきらかにりぬこの ¬しゅう¼ のこころしょぎょうをもつておうじょうようとなさず、 念仏ねんぶつをもつてようとなすといふことを。 しかのみならず処々しょしょおお念仏ねんぶつをもつておうじょうようとなす。

私云、夫者預シテ↢於一部奥旨↡、以↢部内元意↡者也。然↠「依ルト↢念仏一門↡。」明¬集¼意、以↢諸行↡不↠為↢往生↡、以↢念仏↡為スト云コトヲ↠要也。加↠之処処↢念仏↡為↢往生↡。

そのもんいちにあらず。 総結そうけつようぎょう (要集巻中) にいはく、 「おうじょうごうには念仏ねんぶつほんとなす」 と 。 また念仏ねんぶつしょうもん (要集巻下) にいはく、 「ただちにおうじょうようべんずるに、 おお念仏ねんぶつといへるにはしかず」 と。 また (要集巻下) いはく、 「あきらかにりぬかいきょうおお念仏ねんぶつをもつておうじょうようとなす」 と ゆゑに*だい八門はちもんいたりてさんじゅう問答もんどうあり、 *ろくをもつてこれをすすむ。 しょぎょうはしからず、 *だいもんいたりてわずかにこれをかすといへども、 慇懃おんごんにあらず、 また勧進かんじんなし。 ただおのおのぎょうよくにんずるのみ。

文非↠一。総結要行、「往生之業ニハ念仏為↠本。」 又念仏証拠門、「不↠如↧直ズルニ↢往生之要↡、多ヘルニハ↦念仏↥。」又云、「明契経↢念仏↡為↢往生↡。」 所以至↢第八門↡有↢三重問答↡、以↢六義↡勧↠之。諸行不↠爾、至↢第九門↡纔0096雖↠明↠之、非↢慇懃↡、又無↢勧進↡。唯任ズル↢各楽欲而已ノミ

観察かんざつもん (要集巻中) にいはく、 「初心しょしんかんぎょう深奥じんおうへず。 このゆゑにまさに色相しきそうかんしゅすべし。 これにわかちてさんとなす。 いちには別相べっそうかんには総相そうそうかんさんにはぞうりゃくかんぎょうしたがひてこれをもちゐるべし。 はじめに別相べっそうかんとは には総相そうそうかんとは さんぞうりゃくかん。 もし相好そうごう観念かんねんするにへざることあらば、 あるいはみょうおもいにより、 あるいはいんじょうおもいにより、 あるいはおうじょうおもいによりて一心いっしんしょうねんすべし。 じょうぎょうどうなるがゆゑに種々しゅじゅかんかす

観察門、「初心観行不↠堪↢深奥↡。↠修↢色相観↡。為↠三。一ニハ別相観、二ニハ総相観、三ニハ雑略観。随↢意楽↡応↠用↠之。初別相観。二ニハ総相観。三雑略観 。若↠不コト↠堪↣観↢念スルニ相好↡、或↢帰命想↡、或依↢引摂想↡、或↢往生想↡応↢一心称念↡。已上意楽不同ナルガ明↢種種観↡

行住ぎょうじゅう坐臥ざがもく作々ささ、 つねにこのねんをもつて、 胸中きょうちゅうきて、 してじきねんずるがごとくし、 かっしてみずふがごとくせよ。 あるいはていしゅにも、 あるいはこえげて称名しょうみょうせよ。 外儀げぎことなりといへども心念しんねんはつねにぞんじて、 念々ねんねん相続そうぞくして、 寤寐ごびわするることなかれ」 と

行住坐臥、語黙作作、常以↢此念↡、在↢於胸中↡、如↢飢シテ↟食、如セヨ↢渇シテ↟水。或低頭挙手ニモ、或↠声称名セヨ。外儀雖↠異心念ジテ、念念相続シテ、寤寐莫↠忘コト。」

わたくしにいはく、 これすなはちこの ¬しゅう¼ の肝心かんじんなり、 ぎょうじゃよくこころとどむべし。

私云、則此¬集¼肝心ナリ也、行者能可↠留↢於心↡也。

総結そうけつようぎょう (要集巻中) にいはく、 「ふ。 かみ諸門しょもんのなかにぶるところすでにおおし。 いまだらずいづれのごうおうじょうようとするや。 こたふ。 だい提心だいしんあつて三業さんごうまもり、 深信じんしんじょうにしてつねに念仏ねんぶつすれば、 がんしたがひてけつじょうして極楽ごくらくしょうず。 いはんやまたのもろもろの妙行みょうぎょうせんをや。

総結要行云、「問。上諸門所↠陳。未↠知レノ為↢往生↡。答。大菩提心アテ護↢三業↡、深信至誠ニシテ念仏スレバ、随↠願決定シテ生↢極楽↡。況復具ヲヤ↢余妙行↡。

ふ。 なんがゆゑぞこれらをおうじょうようとするや。 こたふ。 提心だいしんさきしゃくするがごとし。 三業さんごうじゅうあくはよくしょうどうふ。 ゆゑにすべからくこれをまもるべし。 おうじょうごうには念仏ねんぶつほんとなす。 その念仏ねんぶつしんかならずすべからくのごとくすべし。 ゆゑに深信じんしんじょうじょうねんさんす。

問。何為↢往生↡。答。菩提心義如↢前具釈スルガ↡。三業重悪能障↢正道↡。故↠護↠之。往生之業ニハ念仏為↠本。其念仏心必↠如↠理。故↢深信・至誠・常念三事↡。

じょうねんさんやくあり。 ざいがいふがごとし、 いちにはもろもろのあく覚観かくかんひっきょうじてしょうぜず。 またごっしょうすことをには善根ぜんごんぞうじょうして、 また見仏けんぶつ因縁いんねんうることをさんにはくんじゅうじゅくして、 命終みょうじゅうときのぞみてしょうねん現前げんぜんすと。 ごうがんによりててんず。 ゆゑに随願ずいがんおうじょうといふ。

常念有↢三益↡。如↢迦才云↡、一ニハ者諸悪覚観畢竟ジテ不↠生。亦得↠消↢於業障↡。二ニハ者善根増長シテ、亦得↠種コトヲ↢於見仏因縁↡。三ニハ0097薫習熟利シテ、臨↢命終時↡正念現前↠願。故云↢随願往生↡。

そうじてこれをいはば、 三業さんごうまもるはこれぜんなり。 ぶつしょうねんするはこれぎょうぜんなり。 提心だいしんおよびがんはこのぜんじょす。 ゆゑにこれらのほうおうじょうようとなす。 そのむねきょうろんでたり。 これをつぶさにすることあたはず。

総而言ハヾ↠之、護ルハ↢三業止善ナリ。称↢念スルハ↡是行善ナリ。菩提心及扶↢助二善↡。故此等為↢往生↡。其旨出タリ↢経論↡。不↠能↠具コト↠之。

わたくしにいはく、 この第七だいしち総結そうけつようぎょうとは、 これすなはちこの ¬しゅう¼ の肝心かんじんけつじょうおうじょう要法ようぼうなり。 学者がくしゃさらにこれをちゃくして、 あきらかにそのようるべし。 もん問答もんどうあり。

云、此第七総結要行トハ者、則此¬集¼肝心、決定往生要法ナリ也。学者更思↢択シテ之↡、明↠識↢其要否↡也。文↢二問答↡。

しばらくはじめのといのなかに、 「かみ諸門しょもん」 とは、 もんあり。 いちにはえん穢土えどにはごんじょうさんには極楽ごくらくしょうにはしょうしゅ念仏ねんぶつには助念じょねん方法ほうほうなり。 ゆゑにこれらをしてかみもんといふなり。

、「上諸門トハ」者、有↢五門↡。一ニハ厭離穢土、二ニハ欣求浄土、三ニハ極楽証拠、四ニハ正修念仏、五助念方法ナリ。故シテ↢此等↡云↢上五門↡也。

つぎに 「ぶるとところすでにおおし」 とは、 えんしちあり、 ごんじゅうあり、 しょうあり、 しょうしゅあり、 助念じょねんろくあり。 これらの諸門しょもんかすところすでにおおし。 ゆゑに所陳しょちん既多きたといふなり。

次「所↠陳既多トハ」者、厭離有↠七、欣求有↠十、証拠有↠二、正修有↠五、助念有↠六。此等諸門所↠明既。故云↢所陳既多↡也。

つぎに 「いまだらずいづれのごうおうじょうようとなす」 とは、 かみ諸門しょもんにおいておのおのぶるところのぎょう、 すでにじょうしゅあり。 ようほうにおいて、 学者がくしゃりがたし、 要法ようぼうけつじょうせんがためのゆゑにこのもんきたるなり。

次「未↠知何業為トハ↢往生要↡」者、於↢上諸門↡各所↠述行、既有↢条数↡。於↢要否↡、学者叵↠識、為↣決↢定セン要法↡故門来也。

つぎこたえのなかにあり。 いちにはほぼこたえこころべ、 にはまさしくこたえもんしゃくす。

有↠二。一ニハ粗述↢答↡、二ニハ↢答文↡。

はじめにこたえとは、 といこころすでにかみ諸門しょもんぎょうにおいて、 そのようふ。 ゆゑにこたえのなかに、 またかみ諸門しょもんのなかにおいて、 そのようえらびてそのようぎょうしめす。 これすなはちこたえのなかのたいなり。

トハ者、問↢上諸門↡、問↢其要否↡。故、又於↢上諸門↡、簡↢其不要↡示↢其要行↡。則答大意ナリ也。

つぎにまさしくこたえもんしゃくすとは、 またわかちてとなす。 いちにはそうじてもんやくしてこれをえらび、 にはべっもんやくしてこれをえらぶ。

トハ↢答文↡者、又分為↠二。一ニハジテシテ↢五門↡簡↠之、二ニハシテ↢二門↡簡↠之

はじめにそうじてもんやくしてえらぶとは、 かみえんとう三門さんもんは、 これおうじょうようにあらず、 ゆゑにえらびてらず。 だいだいもんは、 まさしくこれおうじょうようぎょうなり。 ゆゑにこたえのなかにいはく、 「だい提心だいしん三業さんごうとうと。

ジテシテ↢五門↡簡トハ者、上厭離等三門、非↢往生↡、故而不↠取。第四・第五二門、正往生要行ナリ。故0098、「大菩提心護三業」等

だい提心だいしん」 および 「念仏ねんぶつ」 とは、 これすなはちだいもんなり。 「三業さんごう深信じんしんじょうとうとは、 これだいもんなり。 これすなはちそうじて諸門しょもんやくしてそのようげて、 そのようえらぶなり。

「大菩提心」及「念仏トハ」、即第四門ナリ也。「護三業深信至誠」等トハ者、第五門ナリ也。則総ジテシテ↢諸門↡挙↢其↡、簡↢其不要↡也。

つぎべっしてもんやくしてえらぶとは、 このもんあり。 いちにはだいもんやくしてこれをえらび、 だいもんやくしてこれをえらぶ。

シテシテ↢二門↡簡トハ者、此有↠二。一ニハシテ↢第四門↡簡↠之、二シテ↢第五門↡簡↠之。

はじめにだいもんとは、 これにつきてまたもんあり。 「いちには礼拝らいはいもんには讃嘆さんだんもんさんにはがんもんには観察かんざつもんにはこうもんなり」 (要集巻上)。 このもんのなかに、 がん観察かんざつもんをもつておうじょうようとなす、 三門さんもんはこれようにあらず。 ゆゑにいま 「だいしん」 および 「念仏ねんぶつ」 といひて、 またらいさんとうといはず。

第四門トハ者、就↠之亦有↢五門↡。「一ニハ礼拝門、二ニハ讃嘆門、三ニハ作願門、四ニハ観察門、五ニハ廻向門也。」此五門、以↢作願・観察二門↡為↢往生↡、余三門非↢是要↡。故今云↢「菩提心」及「念仏」↡、又不↠云↢礼・讃等↡。

また提心だいしんにつきて、 ありあり。 もんちゅうにいまだこれをえらばずといへども、 もし念仏ねんぶつれいせば、 またをもつておうじょうようとなす。

又就↢菩提心↡、有↠事有↠理。文中雖↠未↠簡↠之、若セバ↢念仏↡、亦以↠事為↢往生↡。

また念仏ねんぶつといふは、 これ観察かんざつもんみょうなり。 しかるに念仏ねんぶつぎょうにおいて、 また観想かんそう称名しょうみょうとあり。 のなかにおいて、 称名しょうみょうようとなす。 ゆゑにつぎ問答もんどうのなかに 「ぶつしょうねんするこれぎょうぜんなり」 と。

又言↢念仏↡者、観察門異名ナリ也。然↢念仏↡、又有↢観想称名↡。於↢二、称名為↠要。故問答「称↢念スル行善ナリ。」

これをもつてこれをおもふに、 ¬おうじょうようしゅう¼ のこころ称名しょうみょう念仏ねんぶつをもつておうじょうようとなす。

↠之↠之、¬要集¼意、以↢称名念仏↡為↢往生至要↡。

だいもんやくすとは、 これにつきてまた六法ろっぽうあり。 「いちには方処ほうしょ供具くぐにはしゅぎょうそうみょうさんにはたいだいにはあく衆善しゅぜんにはさん衆罪しゅざいろくにはたい魔事まじなり」 (要集巻中) と。 この六法ろっぽうのなかには、 だいだいもんをもつておうじょうようとなす。 もんはこれおうじょうようにあらず。 ゆゑにててらざるなり。

トハ↢第五門↡者、就↠之又有↢六法↡。「一ニハ方処供具、二ニハ修行相貌、三ニハ対治懈怠、四ニハ止悪衆善、五ニハ懺悔衆罪、六ニハ対治魔事ナリ。」此六法ニハ、以↢第二・第四二門↡為↢往生↡。余四門非↢是往生↡。故而不↠取也。

だいもんにつきて、 またしゅ三心さんしんあり。

就↢第二門↡、又有↢四修・三心↡。

しゅのなかにおいて、 ただ間修けんしゅりてそのようとなす。 ゆゑにもんに ¬要決ようけつ¼ (西方要決) きていはく、 「さんには間修けんしゅ、 いはくつねにぶつねんじておうじょうおもいせ」 と。

於↢四修↡、唯取↢無間修為↢其↡。故↢¬要決¼云、「三ニハ者無間修、謂ジテ↠仏↢往生0099。」

三心さんしんにおいてはみなこれおうじょうようなり。 ゆゑにもんに 「深信じんしんじょう」 および 「随願ずいがん」 といふなり。

↢三心↡者皆往生ナリ。故↢「深信至誠」及「随願」也。

つぎだいもんにつきて、 またろくあり。 六法ろっぽうのなかにおいて、 ただ第一だいいちかいぼんりておうじょうようとなす、 ゆゑにもんに 「三業さんごうあく (要集巻中) といふ。 「三業さんごう」 とは、 これすなはちかいぼんなり、 ようにあらず、 ゆゑにててらず。

↢第四門↡、亦有↠六。於↢六法↡、唯取↢第一持戒不犯↡為↢往生↡、故云↢「護三業悪」↡。「護三業トハ」者、則持戒不犯ナリ也、余非↠要、故棄而不↠取

いはゆるかいとは、 これさつかいなり、 しょうもんかいにあらず。 そのむねもんえたり。 ただしさつかいにおいてまた十重じゅうじゅうじゅうはちきょうあり、 いまのこころきょうててじゅうる。 ゆゑにもんに 「三業さんごうじゅうあくのうしょうしょうどう」 といふ。

所謂トハ者、菩薩戒ナリ也、非↢声聞戒↡。其旨見タリ↠文。但於↢菩薩戒↡亦有↢十重・四十八軽↡、今↠軽↠重。故云↢「三業重悪能障正道」↡。

つらつらこの問答もんどうあんずるに、 この ¬ようしゅう¼ のこころによりておうじょうげんとおもはんものは、 まづえんだい提心だいしんおこし、 つぎ十重じゅうじゅう木叉もくしゃし、 深信じんしんじょうをもつてつねに弥陀みだみょうごうしょうすれば、 がんしたがひてけつじょうしておうじょう。 これすなはちこの ¬しゅう¼ のしょうなり。

ルニ↢此問答↡、依↢此¬要集¼意↡欲↠遂ント↢往生、先↢縁事大菩提心↡、次↢十重木叉↡、以↢深信至誠↡常スレバ↢弥陀名号↡、随↠願↡決定シテ得↢往生↡。則此¬集¼正意也。

つぎにまた問答もんどうあり、 提心だいしんとう七法しちほうをもつて、 おうじょうようとなして、 そのゆえ問答もんどうするなり。 そのもんやすし、 しげきをおそれてさず。

又有↢問答↡、以↢菩提心等七法↡、為シテ↢往生↡、問↢答スル其由↡也。其文易↠見、恐↠繁不↠記。

またえんとうもんにおいてようけんちゃくすること、 すでにもつてかくのごとし。 しもべつとうもんまたようにあらざること、 これをもつてるべし。

又於↢厭離等五門↡簡↢択スルコト要否↡、既↠此。下別時等五門亦非ルコト↢至要↡、以↠之可↠知。

また念仏ねんぶつにおいてあり。 いちたん念仏ねんぶつさきしょうしゅもんこころなり。 じょ念仏ねんぶつ、 いまの助念じょねんもんこころなり。 この ¬ようしゅう¼ のこころは、 じょ念仏ねんぶつをもつてけつじょうごうとするか。 ただし善導ぜんどうしょうこころはしからざるか

又於↢念仏↡有↠二。一但念仏、前正修門ナリ也。二助念仏、今助念門ナリ也。此¬要集¼意、以↢助念仏ルカ↢決定業↡歟。但善導和尚不↠然歟

またいはく、 しばらくといじゅんじてようをもつてえらぶといへども、 助念じょねんもんこころにしてこの ¬しゅう¼ しょうにあらざるか。

又云、且准ジテ↠問雖↠簡↢要否↡、助念門ニシテ非↢此¬集¼正意↡歟。

ふ。 なにをもつてかることをたる、 しょうにあらざるとは。 こたふ。 かみあく衆善しゅぜんのなか (要集巻中) にいふ、 「ふ。 念仏ねんぶつすればおのづからつみめっす。 なんぞかならずしもかたかいせんや。 こたふ。 もし一心いっしんねんぜば、 まことにむるところのごとし。 しかるに尽日ひねもす念仏ねんぶつしてしずかにそのじつけんすれば、 じょうしんはこれいちりょう、 そのはみなじょくらんなり。 このゆゑに、 かならずまさにしょうじんしてかいすることなほしみょうしゅまもるがごとくすべし」 と。 ゆゑにりぬ如説にょせつ念仏ねんぶつせば、 かならずしもかいとうすべからず。

問。以テカ↠何得タル↠知コトヲ、非トハ↢正意↡。答。上止悪衆善、「問。念仏スレバ滅↠罪。何シモンヤ↠戒。答。若一心ゼバ、誠↠所↠責。然念仏0100シテレバ↢其↡、浄心一両、其ヂヨクナリ、要↢精進シテスルコト↠戒↠護↢明珠↡。」故如説念仏セバ、必シモ不↠可↠具↢持戒等↡矣。

念仏ねんぶつしょうもん (要集巻中) にいはく、 「ふ。 一切いっさい善業ぜんごうおのおのやくありて、 おのおのおうじょう。 なんがゆゑぞただ念仏ねんぶつ一門いちもんすすむるや。

○念仏証拠門云、「問。一切善業各有↢利益↡、各得↢往生↡。何故唯勧ムルヤ↢念仏一門↡。

こたふ。 念仏ねんぶつすすむることは、 これ種々しゅじゅ妙行みょうぎょうしゃすとにはあらず。 ただこれ、 男女なんにょせん行住ぎょうじゅう坐臥ざがえらばず、 しょ諸縁しょえんろんぜず、 これをしゅするにかたからず、 ないりんじゅうおうじょうがんするに、 その便びんること念仏ねんぶつにはしかず。

答。勧コトハ↢念仏↡、非↣トニハ↢余種種妙行↡。只、男女・貴賎、不↠簡↢行住坐臥、不↠論↢時処諸縁↡、修ルニ↠之不↠難カラ、乃至臨終願↢求スルニ往生↡、得ルコト↢其便宜↡不↠如↢念仏ニハ

ゆゑに ¬木槵もくげんきょう¼ にいはく、 なんこく瑠璃るりおう

¬木槵経¼云、難陀国波瑠璃王

いはんやまた正教しょうきょうのなかに、 おお念仏ねんぶつをもつておうじょうごうとなす。 そのもんはなはだおおし。 りゃくしてじゅうもんいださん。

復正教、多↢念仏↡為↢往生↡。其文甚。略シテ↢十文↡。

いちには ¬占察せんざつきょう¼ のかんにいふ、 もしひとほう現在げんざいじょうこくうまれんとおもはば、 かのかいぶつみょうしたがひて、 こころをもつぱらにして誦念じゅねんして一心いっしんらんなるべし。 かみ観察かんざつのごとくなれば、 けつじょうしてかの仏国ぶっこくうまるることをて、 善根ぜんごんぞうじょうして、 すみやかに退たいじょうずと。

ニハ¬占察経¼下巻、若人欲↠生ント↢他方現在浄国↡者、応↧当↢彼世界之名字↡、専ニシテ↠意誦念シテ一心不乱ナル↥。如ナレバ↢上観察↡者、決定シテ↠生コトヲ↢彼仏国↡、善根増長シテ、速↢不退↡。

は ¬双巻そうかんぎょう¼ の三輩さんぱいごう浅深せんじんありといへども、 しかもつうじてみな一向いっこう専念せんねんりょう寿仏じゅぶつといふ。

¬双巻経¼三輩之業雖↠有↢浅深↡、然ジテ云↢一向専念無量寿仏↡。

さんにはじゅう八願はちがんのなかに念仏ねんぶつもんにおいてべっして一願いちがんおこしていはく、 ないじゅうねんにゃくしょうじゃしゅしょうがくと。

ニハ四十八願↢念仏門↡別シテシテ↢一願↡云、乃至十念、若不生者、不取正覚

には ¬かんぎょう¼ にいはく、 ごくじゅう悪人あくにん と。

ニハ¬観経¼云、極重悪人

にはどう ¬きょう¼ にいはく、 にゃくよくしん と。

ニハ同¬経¼云、若欲至心

ろくにはどう ¬きょう¼ にいはく、 こうみょうへんじょう と。

ニハ同¬経¼云、光明遍照

しちには ¬弥陀みだきょう¼ にいはく、 不可ふかしょう善根ぜんごん と。

ニハ¬阿弥陀経¼云、不可以少善根

はちには ¬般舟はんじゅきょう¼ にいはく、 弥陀みだ仏言ぶつごん と。

ニハ¬般舟経¼云、阿弥陀仏言

は ¬おん声経じょうきょう¼ にいはく、 にゃくしゅじょう と。

¬鼓音声経¼云、若有衆生

じゅうには ¬おうじょうろん¼ にいはく、 かのぶつしょうどく観念かんねんするをもつておうじょうごうとなすと

ニハ¬往生論¼云、以↣観↢念彼依正功徳↡為↢往生

このなかに、 ¬かんぎょう¼ の下下げげぼん・¬弥陀みだきょう¼・¬おん声経じょうきょう¼ は、 ただねんみょうごうをもつておうじょうごうとなす。 いかにいはんや相好そうごう観念かんねんせんどくをや。

0101、¬観経¼下下品・¬阿弥陀経¼・¬鼓音声経¼、但以↢念名号↡為↢往生↡。何観↢念セン相好↡功徳ヲヤ耶。

ふ。 ぎょうにむしろ勧進かんじんもんなからんや。

問。余行ランヤ↢勧進文耶。

こたふ。 そのぎょうほうは、 ちなみにかのほう種々しゅじゅどくかす。 みづからおうじょうき、 ただちにおうじょうようべんずるに、 おお念仏ねんぶつといふにはしかず。 いかにいはんやぶつみづからとうねんとのたまふをや。 またぶつこうみょうぎょうにん摂取せっしゅすといはず。

答。其行法、因明↢彼種種功徳↢往生之事↡、不↠如↧直ルニ↢往生要↡、多ニハ↦念仏↥。何仏自言タマフヲヤ↢当念我↡乎。亦不↠云↣仏光明摂↢取スト余行↡。

これらのもんぶんみょうなり。 なんぞかさねてうたがいしょうぜんや。

此等文分明ナリ。何ンヤ↠疑耶。

ふ。 しょきょう所説しょせつしたがひて万品まんぼんなり。 なんぞ管見かんけんをもつて一文いちもんしゅうするや。

問。諸経所説随↠機万品ナリ。何↢管見↡執スルヤ↢一文↡耶。

こたふ。 みょうさつの ¬だいじょうしんろん¼ にいはく、 またつぎに、 しゅじょうはじめてこのほうがくせんに、 そのこころこうにゃくにしてじょうじゅすべきことかたしと懼畏くいし、 退たいせんとおもはば、 まさにるべし、 如来にょらいしょう方便ほうべんましまして信心しんじんしょうしたまふ。 したがひて専心せんしん念仏ねんぶつ因縁いんねんをもつて、 がんしたがひてほうじょうおうじょうすることをと。

答。馬鳴菩薩¬大乗起信論¼云、復次、衆生初学↢此↡、其心怯弱ニシテ懼↢畏難シト↟成就↡、欲↠退ント者、当↠知、如来シテ↢勝方便↡摂↢護信心↡。随以↢専心念仏因縁↡、随↠願得↣往↢生コトヲ他方浄土↡。

しゅ多羅たらくがごとし。 もしひともつぱら西方さいほう弥陀みだぶつねんじて、 しょ善業ぜんごうこうして、 かのかいうまれんとがんすれば、 すなはちおうじょうと。

如↢修多羅説↡。若人専ジテ↢西方阿弥陀仏↡、所作善業廻向シテ、願↣求スレバント↢彼世界、即得↢往生↡。

あきらかにりぬかいきょうおお念仏ねんぶつをもつておうじょうようとすることを。 もししからずんば、 四依しえさつすなはちじんにあらず」 と。

契経↢念仏↡為コトヲ↢往生↡。若不ンバ↠爾者、四依菩薩即非↢理尽↡。」

わたくしにいはく、 このなかに三番さんばん問答もんどうあり。

、此有↢三番問答↡。

はじめのといこころつべし。 ただ 「すすむ」 のまさしくかみ観察かんざつもん (要集巻中) のなかの 「行住ぎょうじゅう座臥ざがとうもんすなり。 そのゆゑはいちまつたずぬるに、 慇懃おんごん勧進かんじんただ観察かんざつもんり。 ところにはまつたくざるところなり。

意可↠見。唯「勧」語正↢上観察門「行住座臥」等↡也。其ヌルニ↢一部始末↡、慇懃勧進只在↢観察門↡。余ニハナリ↠不↠見也。

こたえのなかに二義にぎあり。 いちにはなんぎょうぎょう、 いはくしょぎょうしゅしがたく、 念仏ねんぶつしゅしやすし。 にはしょうぶんぶん、 いはくしょぎょう勧進かんじんもんはなはだすくなし、 念仏ねんぶつしょきょうおおくこれを勧進かんじんす。

有↢二義↡。一ニハ者難行・易行、謂諸行↠修、念仏↠修ニハ者少分・多分、謂諸行勧進文甚、念仏諸経勧↢進↡。

つぎ問答もんどうのなかに、 といこころりぬべし。 こたえのなかにさんあり。 いちにはいんみょう直弁じきべん、 いはくしょぎょうはもつぱらおうじょうのためにこれをかず、 念仏ねんぶつはもつぱらおうじょうのためにえらびてこれをく。 にはせつせつ、 いはくしょぎょう弥陀みだ如来にょらいみづからまさにこれをしゅすべしときたまはず、 念仏ねんぶつはみづからまさにわれねんずべしときたまふ。 さんには摂取せっしゅ摂取せっしゅ、 いはくしょぎょうしゅするは仏光ぶっこうこれを摂取せっしゅしたまはず、 念仏ねんぶつぎょうずればぶつこうみょうこれを摂取せっしゅしたまふ

問答、問↠知。有↢三0102義↡。一ニハ者因明・直弁、謂諸行↢往生↡不↠説↠之、念仏↢往生↡選↠之。ニハ者自説・不自説、謂諸行阿弥陀如来不↢自説タマハ↟当↠修↠之、念仏自説タマフ↠当↠念↠我。ニハ摂取・不摂取、謂ルハ↢諸行↡仏光不↣摂↢取タマハ之↡、行レバ↢念仏↡仏光明摂↢取タマフ之↡

つぎ問答もんどうのなかに、 といこころべし。 こたえのなかにいちあり。 如来にょらいしたがひ、 四依しえじんす。 いはくしょぎょうしゃ如来にょらいしゅじょうしたがひてこれをき、 念仏ねんぶつ四依しえさつつくしてこれをすす。 これすなはちこの ¬しゅう¼ のほんなり。 くわしくこれをおもふべし。

問答、問可↠得。有↢一義↡。如来↠機、四依理尽。謂諸行釈迦如来随↢衆生↡説↠之、念仏四依菩薩尽シテ↠理勧↠之 則此¬集¼本意ナリ。委可↠思↠之。

おうじょうかい (要集巻下) にいはく、 「ふ。 もしぼんやからおうじょうれば、 いかんぞ、 近代ごんだいかのこくにおいてもとむるもの千万せんまんんれども、 るものはいちもなきや。

往生階位、「問。若凡下↢往生↡、云何、近代於国土↡求千万ナレドモ、得ルモノハキヤ↢一二↡。

こたふ。 しゃくしょうのいはく、 信心しんじんふかからず、 にゃくぞんにゃくもうのゆゑに。 信心しんじんいちならず、 けつじょうせざるがゆゑに。 信心しんじん相続そうぞくせず、 ねんへだつるがゆゑに。 この相応そうおうせざれば、 おうじょうをあたはず。 もし三心さんしんしておうじょうせずといはば、 このことわりあることなし。

答。綽和尚、信心↠深、若存若亡。信心不↠一、不↢決定↡故。信心不↢相続↡、余念間ルガ。此レバ↢相応↡者、不↠能↢往生。若具シテ↢三心↡不トイハヾ往生↡者、無↠有ルコト↢是↡。

どうしょういはく、 もしよくかみのごとく念々ねんねん相続そうぞくしてひつみょうとするものは、 じゅうはすなはちじっしょうし、 ひゃくはすなはち百生ひゃくしょうす。 もしせんてて雑業ぞうごうしゅせんとほっするものは、 ひゃくときまれいちせんときまれさんにょじょうといふはらいさんとうもんじょうとう三心さんしんじょうとうしゅすなり

導和尚云、若能如↠上念念相続シテ畢命為↠期、十即十生、百即百生。若欲↣捨テヽ↠専ント↢雑業、百時希得↢一二↡、千時希得↢三五↡。↢如上↡者指↢礼・讃等五門、至誠等三心、長時等四修↡也

わたくしにいはく、 しんつくしておうじょうとくさだむるには、 善導ぜんどうしょう専修せんじゅぞうぎょうもんをもつてなんとしたまふなり。 また処々しょしょおおくかのしゃく引用いんようす、 つべし 。 しかればすなはちしんもちゐんやからは、 かならず善導ぜんどうすべきか。

私云、恵心尽シテ↠理ルニハ↢往生得否↡、以↢善導和尚専修雑行↡為タマフ↢指南↡也。又処処引↢用於彼↡、可↠見 。然則用↢恵心↡之輩、必可↠帰↢善導↡哉。

わたくしにいはく、 このしょう ¬りゃくりょうけん¼ とおなじ、 ただしもんすこひろし。 しかしてその広文こうもん、 まつたく ¬ようしゅうしゃく¼ におなじ。

0103私云、此抄与↢¬略料簡¼↡同、但スコ。而シテ広文、全同↢¬要集¼↡矣。

 

内容はほぼ 「往生要集略料簡」 に同じ。 異なる箇所はそのまま 「往生要集釈」[略]中、 総結要行の二重の釈の第二重に相応する。
第八門 念仏証拠。
六義 難易対・少分多分対・因明直弁対・自説不自説対・摂取不摂取対・如来随義四依理尽対の六。
第九門 往生所行。