0335◎観経0458序分義 巻第二
沙門*善導集記
一 通裁節一経【一経大科】
Ⅰ 承上総標
【1】 ◎^これより以下は文につきて料簡するに、 略して*五門を作りて義を明かす。
◎従0680リ↠此以下ハ▲就キテ↠文ニ料簡スルニ、略シテ作[リ]テ↢五門ヲ↡明ス↠義ヲ。
一 Ⅱ 随標分章
ⅰ 明王宮四分
a 分文
イ 序分
^▽一に ▲「如是我聞」より下 「五苦所逼云何見極楽世界」▲に至るこのかたは、 その▽↓*序分を明かす。
▲一ニ従リ↢「如是我聞‡」↡下至[ル]‡↢「五苦所逼云何見極楽世界‡ニ」↡已来[タ]ハ、明ス↢其ノ序分ヲ↡。
一 Ⅱ ⅰ a ロ 正宗分
^二に日観の初めの句の ▲「仏告韋提汝及衆生」より下下品下生▲に至るこのかたは、 ▽↓*正宗分を明かす。
~二ニ従リ↢日観ノ初ノ句[ノ]「仏告韋提汝及衆生‡」↡下至ル↢下品下生ニ↡已来[タ]ハ、明ス↢正宗分ヲ↡。
一 Ⅱ ⅰ a ハ 得益分
^三に ▲「説是語時」より下 「諸天発心」▲ に至るこのかたは、 まさしく▽*得益分を明かす。
~三ニ従リ↢「説是語時‡」↡下至ル↢「諸天発心ニ」↡已来[タ]ハ、正[シ]ク明ス↢得益分ヲ↡。
一 Ⅱ ⅰ a ニ 流通分
^四に ▲「阿難白仏」より下 「韋提等歓喜」▲ に至るこのかたは、 ▽↓*流通分を明かす。
~四[ニ]従リ↢「阿難白仏‡」↡下至ル↢「韋提等‡歓喜ニ」↡已来[タ]ハ、明ス↢流通分ヲ↡。
一 Ⅱ ⅰ b 示会
^この四義は仏*王宮にまします一会の正説なり。
~此之†四義[ハ]仏在ス↢王宮ニ↡一会ノ正説ナリ。
一 Ⅱ ⅱ 明耆闍一分
^五に ▲「阿難耆闍の大衆のために伝説する」 よりはまたこれ*一会なり。 また*三分あり。 一に ▲「爾時世尊足歩虚空還耆闍崛山」 よりこのかたは、 その序分を明かす。 二に ▲「阿難広為大衆説如上事」よりこのかたは、 正宗分を明かす。 三に ▲「一切大衆歓喜奉行」よりこのかたは、 流通分を明かす。
~五[ニ]従リハ↧「阿難為ニ↢耆闍ノ大衆ノ↡伝説スル」↥復是一会ナリ。▲亦有リ↢三分↡。一[ニ]従リ↢「爾時世尊足歩虚空還耆闍崛山」↡已来[タ]ハ、明ス↢其ノ序分ヲ↡。二[ニ]従リ↢「阿難広為大衆説如上事‡」↡已来[タ]ハ、明ス↢正宗分ヲ↡。三[ニ]従リ↢「一切大衆歓喜奉行‡」↡已来[タ]ハ、明ス↢流通分ヲ↡。△
一 Ⅲ 摂五帰三
ⅰ 述三分義
^しかるに化にはかならず由あり、 ゆゑに先づ↑序を明かす。 *由序すでに興りぬればまさし0336く所説を陳ぶ。 次に↑*正宗を明かす。 ために説くことすでに周りて、 所説をもつて末代に伝持せしめんと欲して、 *勝を歎じて学を勧む。 後に↑流通を明かす。
▲†然ルニ化[ニ]ハ必ズ有リ↠由、故ニ先ヅ明ス↠序ヲ。由序既ニ†興リヌレバ正[シ]ク†陳ブ↢所説ヲ↡。次ニ明ス↢正宗ヲ↡。為ニ説[ク]コト既ニ†周リテ、†欲シテ↧以テ↢所説ヲ↡伝↦持セシメムト*末代ニ↥、歎ジテ↠勝ヲ勧ム↠学ヲ。後ニ明ス↢流通ヲ↡。
一 Ⅲ ⅱ 結示摂帰
^上来五義の不同ありといへども、 略して序・正・流通0459の義を料簡しをはりぬ。
上来‡雖モ↠有リト↢五義ノ不同↡、略シテ料↢簡シ序・正・流通0681ノ義ヲ↡竟リヌ。
二 別解釈序分
Ⅰ 標科
【2】 ^また前の△序のなかにつきてまた分ちて二となす。 一には ▲「如是我聞」より一句を名づけて↓*証信序となす。 二には ▲「一時」より下 「云何見極楽世界」▲ に至るこのかたは、 まさしく↓*発起序を明かす。
▲又就キテ↢前ノ序ノ中ニ↡復分チテ為ス↠二ト。一[ニハ]従リ↢「如是我聞‡」↡▲一句ヲ名[ケ]テ為ス↢証信序ト↡。二[ニハ]従リ↢「一時‡」↡下至ル↢「云何見極楽世界ニ」↡已来[タ]ハ、▲正[シ]ク明ス↢発起序ヲ↡。
二 Ⅱ 随釈
ⅰ【証信序】
a 双釈二意
イ 述意
【3】 ^初めに↑↓証信といふはすなはち二義あり。
▲初ニ言フ↢証信ト↡者即チ有リ↢二義↡。
・如是
^一にはいはく、 「▲↓如是」 の二字はすなはち総じて教主 (*釈尊) を標す。 *能説の人なり。
~一ニハ謂ク「如是ノ」二字ハ即チ総ジテ標ス↢教主ヲ↡。能説之人ナリ。
・我聞
^二にはいはく、 「▲↓我聞」 の両字はすなはち別して*阿難を指す。 *能聴の人なり。 ゆゑに如是我聞といふ。 これすなはちならべて二の意を釈す。
~二[ニハ]謂ク「我聞ノ」両字ハ即チ別シテ指ス↢阿難ヲ↡。能聴之人ナリ。故ニ言フ↢「如是我聞ト」↡。此即チ双ベテ釈†ス↢†二ノ意ヲ↡也。
二 Ⅱ ⅰ a ロ 釈文
(一)釈如是
(Ⅰ)第一釈
^▼また 「↑如是」 といふはすなはち法を指す。 *定散両門なり。 「是」 はすなはち定むる辞なり。 機、 行ずればかならず益す。 これは如来の所説の言に*錯謬なきことを明かす。 ゆゑに如是と名づく。
~又言フ↢如是ト↡者*即チ指ス↠法ヲ。定散両門也。是[ハ]即チ†定ムル辞ナリ†。機行†ズレバ必ズ益†ス。此ハ明ス↣如来ノ所説ノ†言[ニ]無キコトヲ↢錯謬↡。故ニ名ク↢如是ト↡。
二 Ⅱ ⅰ a ロ (一)(Ⅱ)第二釈
^◆また 「如」 といふは衆生の意のごとし。 心の*所楽に随ひて、 仏すなはちこれを度したまふ。 *機教相応するをまた称して 「是」 となす。 ゆゑに如是といふ。
~又言フ↠如ト者如シ↢衆生ノ意ノ↡也。随[ヒ]テ↢心ノ所楽ニ↡仏即チ度†[シ]タマフ↠之ヲ。機教相応スルヲ復称シテ為ス↠是ト。故ニ言フ↢如是ト↡。
二 Ⅱ ⅰ a ロ (一)(Ⅲ)第三釈
^◆また 「如是」 といふは、 如来の所説は、 漸を説くこと漸のごとく、 頓を説くこと頓の0337ごとく、 相を説くこと相のごとく、 空を説くこと空のごとく、
~又言フ↢如是ト↡者、欲ス↠明[サム]ト↧如来ノ所説[ハ]、説クコト↠漸ヲ如ク↠漸ノ、説[ク]コト↠頓ヲ如ク↠頓ノ、説[ク]コト↠相ヲ如†ク↠相ノ、説[ク]コト↠空ヲ如†ク↠空ノ、
^◆*人法を説くこと人法のごとく、 *天法を説くこと天法のごとく、 *小を説くこと小のごとく、 *大を説くこと大のごとく、
~説[ク]コト↢人法ヲ↡如†ク↢人法ノ↡、説[ク]コト↢天法ヲ↡如†ク↢天法ノ↡、説[ク]コト↠小ヲ如†ク↠小ノ、説[ク]コト↠大ヲ如†ク↠大ノ、
^◆凡を説くこと凡のごとく、 聖を説くこと聖のごとく、 因を説くこと因のごとく、 果を説くこと果のごとく、
~説[クコ]ト↠凡ヲ如†ク↠凡ノ、説[クコ]ト↠聖ヲ如†ク↠聖ノ、説[クコ]ト↠因ヲ如†ク↠因ノ、説[クコ]ト↠果ヲ如†ク↠果ノ、
^◆苦を説くこと苦のごとく、 楽を説くこと楽のごとく、 遠を説くこと遠のごとく、 近を説くこと近のごとく、
~説[クコ]ト↠苦ヲ如†ク↠苦ノ、説[クコ]ト↠楽ヲ如†ク↠楽ノ、説[クコ]ト↠遠ヲ如†ク↠遠ノ、説[クコ]ト↠近ヲ如†ク↠近ノ、
^◆同を説くこと同のごとく、 別を説くこと別のごとく、 浄を説くこと浄のごとく、 穢を説くこと穢のごとく、
~説[ク]コト↠同ヲ如[ク]↠同[ノ]、説[クコト]↠別[ヲ]如[ク]↠別ノ、説[クコト]↠浄[ヲ]如[ク]↠浄[ノ]、説[クコト]↠穢[ヲ]如[ク]↠穢[ノ]、
^◆一切諸法の千差万別なるを説きたまふに、 如来の観知*歴々了然なることを明かさんと欲す。 *随心の起行、 *各益の不同、 *業果の法然たる、 すべて*錯失なきをまた称して是となす。 ゆゑに如是といふ。
~説[キ]タマフ[ニ]↢一切‡諸法ノ千差万別ナルヲ↡、如来[ノ]観知‡歴歴了然ナルコトヲ↥。†随心ノ起行、各益†ノ†不同、業果[ノ]法然†タル、衆テ無†キヲ↢錯失↡又称シテ為ス↠是ト。故ニ言フ↢如是ト↡。
二 Ⅱ ⅰ a ロ (二)釈我聞
^「↑我聞」 といふは、 阿難はこれ仏の侍者にして、 つねに仏後に随ひて多聞広0460識なり。 身座下に臨みてよく聴きよく持ちて、 教旨親しく承くることを明かして、 伝説の錯りなきことを表せんと欲す。 ゆゑに我聞といふ。
~言フ↢我聞ト↡者、†欲ス↩明シテ↧阿難[ハ]是仏ノ侍者ニシテ、常ニ随[ヒ]テ↢仏後ニ↡多聞広識ナリ、身臨ミテ↢座0682下ニ↡能ク聴キ能ク持[チ]テ、教旨親シク承クルコトヲ↥、表セムト↝無キコトヲ↢伝説之錯リ↡。故ニ曰フ↢我聞ト↡也。
二 Ⅱ ⅰ b 就阿難解
^また 「↑証信」 といふは、 阿難仏教を*稟承して末代に伝持するに、 衆生に対するがためのゆゑにかくのごとき観法、 われ仏に従ひて聞くといふことを明かして、 *可信を証誠せんと欲す。 ゆゑに証信序と名づく。 これは阿難につきて解す。
~又言フ↢証信ト↡者、†欲ス↪明シテ↧阿難稟↢承シ[テ]仏教ヲ↡伝↢持†スルニ末代ニ↡、為ノ↠対スルガ↢衆生ニ↡故ニ如†キ↠是クノ観法‡、我従ヒテ↠仏ニ聞クトイフコトヲ↥、証↩誠セムト可信ヲ↨。故ニ名ク↢証信序ト↡。此[ハ]就キテ↢阿難ニ↡解†ス也。△
二 Ⅱ ⅱ【発起序】
a 標章
【03384】 ^二に↑発起序のなかにつきて細しく分ちて七となす。
二ニ就キテ↢▲発起序ノ中ニ↡細シク分[チ]テ為ス↠七ト。
・化前序
^初めに ▲「一時仏在」 より下 「法王子而為上首」▲ に至るこのかたは、 ↓*化前序を明かす。
~初[ニ]従リ↢「一時仏在」↡下至ル↢「法王子而為上首ニ」↡已来[タ]ハ、明ス↢化‡前序ヲ↡。
・禁父縁
^二に ▲「王舎大城」 より下 「顔色和悦」▲ に至るこのかたは、 まさしく発起序の↓*禁父の縁を明かす。
~二[ニ]従リ↢「王舎大城」↡下至ル↢「顔色和悦ニ」↡已来[タ]ハ、正[シ]ク明ス↢発起序ノ禁父之縁ヲ↡。
・禁母縁
^三に ▲「時阿闍世」 より下 「不令復出」▲ に至るこのかたは、 ↓*禁母の縁を明かす。
~三[ニ]従リ↢「時阿闍世」↡下至ル↢「不令復出ニ」↡已来[タ]ハ、明ス↢禁母ノ縁ヲ↡。
・厭苦縁
^四に ▲「時韋提希被幽閉」より下 「共為眷属」▲ に至るこのかたは、 ↓*厭苦の縁を明かす。
~四[ニ]従リ↢「時韋提希被幽閉‡」↡下至[ル]↢「共為眷属ニ」↡已来[タ]ハ、明ス↢厭苦[ノ]縁ヲ↡。
・欣浄縁
^五に ▲「唯願為我広説」より下 「教我正受」▲ に至るこのかたは、 その↓*欣浄の縁を明かす。
~五[ニ]従リ↢「唯願為我広説‡」↡下至ル↢「教我正受ニ」↡已来[タ]ハ、明ス↢其ノ欣浄ノ縁ヲ↡。
・散善顕行縁
^六に ▲「爾時世尊即便微笑」 より下 「浄業正因」▲に至るこのかたは、 ▼↓*散善顕行縁を明かす。
~六[ニ]従リ↢「爾時世尊即便微笑‡」↡下至ル↢「浄業正因ニ」↡已来[タ]ハ、明ス↢散善顕行縁ヲ↡。
・定善示観縁
^七に ▲「仏告阿難等諦聴」より下 「云何得見極楽国土」▲ に至るこのかたは、 まさしく▼↓*定善示観縁を明かす。
~七[ニ]従リ↢「仏告阿難等諦聴‡」↡下至ル↢「云何得見極楽国土ニ」↡已来[タ]ハ、正[シ]ク明ス↢定善示観縁ヲ↡。
^上来七段の不同ありといへども、 広く発起序を*料簡しをはりぬ。
~上来‡雖モ↠有リト↢七段ノ不同↡、広[ク]料↢簡シ発起序ヲ↡竟[リ]ヌ。△
二 Ⅱ ⅱ b 随釈
イ【化前序】
(一)牒標
【5】 ^*二に次に↑化前序を解せば、 この序のなかにつきてすなはちその四あり。
▲二[ニ]次ニ解セ†バ↢↡化前序ヲ↡者、就[キ]テ↢此ノ序ノ中ニ↡即[チ]有リ↢其ノ四↡。
二 Ⅱ ⅱ b イ (二)随釈
(Ⅰ)釈時
(ⅰ)約義旨釈
(a)牒科
^初めに 「▲一時」 といふはまさしく*起化の時を明かす。
~初ニ言フ↢「一時ト」↡者、正[シ]ク明ス↢起化之時ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)述意
^仏まさに説法せんとするに、 先づ*時↓処に託したまふ。 ただ衆生の開悟かならず因縁によるをもつて、 化主 (釈尊) 機に臨みて時処を待ちたまふ。
~仏†将ニルニ↢説法セムト↡、先ヅ託シタマフ↢†於時処ニ↡。但以テ↣†衆生ノ開悟必ズ藉ルヲ↢因縁ニ↡、化主臨ミテ↠機ニ待チタマフ↢†於時処ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(c)釈文
^また 「一時」 といふは、 あるいは日夜十二時、 年月四時等に就く。 これみな0461これ如来、 機に応じて*摂化したまふ時な0339り。
~又言フ↢一時ト↡者、或[イ]ハ就ク↢日夜十二時、年月四時等ニ↡。此皆是如来0683応ジテ↠機ニ摂化シタマフ時也。
^「↑処」 といふは、 かの所宜に随ひて如来説法したまふ。 あるいは山林処にましまし、 あるいは王宮・*聚落処にましまし、 あるいは曠野・*塚間処にましまし、 あるいは多少人天処にましまし、 あるいは声聞・菩薩処にましまし、 あるいは八部・人・天王等の処にましまし、 あるいは*純凡もしは多と一二との処にましまし、 あるいは*純聖もしは多と一二との処にまします。
~言フ↠処ト者、随[ヒ]テ↢彼ノ所宜ニ↡如来†説法シタマフ。或[イ]ハ在シ↢山林処ニ↡、或[イ]ハ在シ↢王宮・聚落処ニ↡、或[イ]ハ在シ↢曠野・塚間処ニ↡、或[イ]ハ在[シ]↢多少人天処ニ↡、或[イ]ハ在[シ]↢声聞・菩薩処ニ↡、或[イ]ハ在[シ]↢八部・人・天王等ノ処ニ↡、或[イ]ハ在[シ]↢純凡†若シハ多ト一二トノ処ニ↡、或[イ]ハ在[ス]↢純聖†若シハ多ト一二トノ処ニ↡。
^その時処に随ひて如来観知して増せず減ぜず、 縁に随ひて法を授けておのおの*所資を益す。 これすなはち*洪鐘響くといへども、 かならず扣くを待ちてまさに鳴る。 大聖 (釈尊) の慈を垂れたまふこと、 かならず*請を待ちてまさに説くべし。 ゆゑに一時と名づく。
~随[ヒ]テ↢其ノ時処ニ↡如来観知[シテ]†不↠増セ不↠減ゼ、随[ヒテ]↠縁ニ†授ケテ↠法ヲ各[ノ]益ス↢所資ヲ↡。斯乃チ洪鐘雖モ↠響クト、必ズ待チ[テ]↠扣クヲ而方ニ鳴ル。大聖[ノ]垂レタマフ[コト]↠慈ヲ、必ズ待チ[テ]↠請ヲ而当ベ ニシ↠説[ク]。故ニ名ク↢一時ト↡也。
・以下形上
^また 「一時」 とは、 *阿闍世まさしく*逆を起す時、 仏いづれの処にかまします。 この一時に当りて、 如来独り二衆 (声聞・菩薩) とかの*耆闍にまします。 これすなはち下をもつて上を形す意なり。 ゆゑに一時といふ。
~又一時ト†者、阿闍世正[シ]ク起†ス↠逆ヲ時†、仏在†ス↢何ノ処ニカ↡。当[リ]テ↢此ノ一時ニ↡、如来独リ†与↢二衆↡在ス↢彼ノ耆闍ニ↡。此即チ以テ↠下ヲ形ス↠上ヲ意也。故ニ曰フ↢一時ト↡。
・以上形下
^また 「一時」 といふは、 仏、 二衆と一時のうちにおいて、 かの耆闍にましまして、 すなはち阿闍世のこの悪逆を起す因縁を聞きたまふ。 これすなはち上をもつて下を形す意なり。 ゆゑに一時といふ。
~又言フ↢一時ト↡者、仏†与↢二衆↡†於テ↢一時ノ中ニ↡、在シテ↢彼ノ耆闍ニ↡、即チ聞†キタマフ↧阿闍世[ノ]†起ス↢此ノ悪逆ヲ↡因縁ヲ↥。此即チ以テ↠上ヲ形ス↠下ヲ意也。故ニ曰フ↢一時ト↡。
二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅱ)釈主
^二に 「▲仏」 といふは、 これすなはち化主を*標定す。 余仏に*簡異して独り釈迦を顕す意なり。
~二[ニ]言フ↢「仏ト」↡者、此即チ標↢定†ス化主ヲ↡。簡↢異シテ余仏ニ↡独リ顕ス↢釈迦ヲ↡意也。△
二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅲ)釈処
^三に ▲「在王舎城」より以下は、 ま0340さしく如来*遊化の処を明かす。 すなはちその二あり。 一には王城・聚落に遊びたまふは、 ↓在俗の衆を化せんがためなり。 二には*耆山等の処に遊びたまふは、 ↓出家の衆を化せんがためなり。
三[ニ]従リ↢「在王舎城‡」↡已下ハ、▲正[シク]明ス↢▲如来遊化之処ヲ↡。即チ有リ↢其ノ二↡。一[ニハ]遊†ビタマフハ↢王城・聚落ニ↡、為ナリ↠化セムガ↢在俗之衆ヲ↡。二[ニハ]遊†ビタマフハ↢耆山等ノ処ニ↡、為ナリ↠化セムガ↢出家之衆ヲ↡。
・在家
^また↑在家といふは、 五欲を貪求すること相続してこれ常なり。 ▼たとひ清心を発せども、 なほ水に画くがごとし。 ただおもんみれば縁に随ひてあまねく益し、 大悲を捨てたまはざれども、 *道俗形殊なればともに住するに由なし。 これを*境界住と名づく。
~又在家†トイフ者、貪↢求†スルコト五欲ヲ↡相続シテ是常ナリ。縦ヒ発[セ]ドモ↢清心ヲ↡、猶如シ↠画クガ↠水ニ。但†以レバ随[ヒ]テ↠縁ニ普ク益シ、†不レドモ↠捨テ[タマハ]↢大悲ヲ↡、道俗形殊†ナレバ無シ↠由↢共ニ住スルニ↡。此ヲ名ク↢境界住ト↡也。
・出家
^また↑出家といふは、 身を亡じ命を捨て、 欲を断じ真に帰す。 心金剛のごとく円鏡に等同なり。 *仏地を悕求してすなはち弘く自0462他を益す。 もし*囂塵を絶離するにあらずは、 この徳、 証すべきに由なし。 これを*依止住と名づく。
~又出家[トイフ]者、*亡ジ↠身ヲ捨テ↠命ヲ、†断ジ↠欲ヲ帰†ス↠真ニ。心若[ク]‡↢金剛ノ↡等↢同ナリ円鏡ニ↡。悕↢求シテ仏地ヲ↡即チ†弘ク益ス↢自他ヲ↡。若シ非†ズハ↣絶↢離スルニ0684囂塵ヲ↡、此ノ徳無シ↠由↠可キニ↠証ス。此ヲ名ク↢依止住ト↡也。△
二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)釈衆
(ⅰ)牒文標科
^四に ▲「与大比丘衆」より下 「而為上首」 に至るこのかたは、 仏の徒衆を明かす。
四[ニ]従リ↢「与大比丘衆‡」↡下至ル↢「而為上首ニ」↡已来[タ]ハ、▲明ス↢仏ノ徒衆ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)(ⅱ)列釈二衆
(a)標列
^この衆のなかにつきてすなはち分ちて二となす。 一には↓声聞衆、 二には↓菩薩衆なり。
~就キテ↢此[ノ]衆ノ中ニ↡即[チ]分[チ]テ為ス↠二ト。一[ニ]者声聞衆、二[ニ]者菩薩衆ナリ。
二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)(ⅱ)(b)随釈
(イ)声聞衆
[一]標
^↑声聞衆のなかにつきてすなはちその九あり。
▲就[キ]テ↢声聞衆[ノ]中ニ↡即[チ]有リ↢其ノ†九↡。
二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)(ⅱ)(b)(イ)[二]釈
[Ⅰ]標列文義
^初めに 「▲与」 といふは仏身、 衆を兼ぬ。 ゆゑに名づけて与となす。 *▲二には*総大、 三には*相大、 四には*衆大、 五には*耆年大、 六には*数大、 七には*尊宿大、 八には*内有実徳大、 九には*果証大なり。
~初ニ言フ↢「与ト」↡者仏身兼†ヌ↠衆ヲ。故ニ名[ケ]テ為ス↠与ト。二[ニ]者総大、三[ニ]者相大、四[ニ]者衆大、五[ニ]者耆年大、六[ニ]者数大、七[ニ]者尊宿大、八[ニ]者内有実徳大、九[ニ]者果証大[ナリ]。
二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)(ⅱ)(b)(イ)[二][Ⅱ]問答料簡
[ⅰ]料簡標数
[a]正釈標数
[イ]問
^問ひていはく、 一切の経の首めにみなこれらの声聞ありて、 もつて*猶置となせ0341るはなんの所以かある。
~問[ヒテ]曰[ク]、一切[ノ]経ノ首ニ皆有[リ]テ↢此等ノ声聞↡、以[テ]為セルハ↢猶置ト↡有ル‡↢何ノ†所以カ↡。
二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)(ⅱ)(b)(イ)[二][Ⅱ][ⅰ][a][ロ]答
^答へていはく、 これに*別意あり。 いかなるか別意。 これらの声聞多くはこれ外道なり。 ¬*賢愚経¼ (意) に説きたまふがごとし。
~答[ヘテ]曰[ク]、此ニ有リ↢別意↡。†云何ナルカ別意‡。此等ノ声聞多ク[ハ]是外道ナリ。如†シ↢¬賢愚経ニ¼説[キタマフ]ガ↡。△
^「*優楼頻螺迦葉は、 五百の弟子を領して邪法を修事す。 *伽耶迦葉は、 二百五十の弟子を領して邪法を修事す。 *那提迦葉は、 二百五十の弟子を領して邪法を修事す。 総じて一千あり。 みな*仏化を受けて*羅漢道を得たり。
▲優楼頻*螺迦葉[ハ]領シテ↢五百ノ弟子ヲ↡修↢事ス邪法ヲ↡。伽耶迦葉[ハ]領シテ↢二百五十ノ弟子ヲ↡修↢事ス邪法ヲ↡。那提迦葉[ハ]領シテ↢二百五十[ノ]弟子ヲ↡修↢事ス邪法ヲ↡。総ジテ有リ↢一千↡。皆受ケテ↢仏化ヲ↡得[タ]リ↢羅漢道ヲ↡。
^その二百五十といふは、 すなはちこれ*舎利と*目連との弟子なり。 ともに一処に領して邪法を修事す。 また仏化を受けてみな*道果を得たり。 これらの四衆を合して一処となす。 ゆゑに▲千二百五十人あり」 と。
~†其ノ二百五十[トイフ]者、即チ是舎利ト目連トノ弟子ナリ。共ニ†領シテ↢一処ニ↡修↢事ス邪法ヲ↡。亦受ケテ↢仏化ヲ↡皆得[タ]リ↢道果ヲ↡。此等ノ四衆ヲ合シテ為ス↢一処ト↡。故ニ有リ[ト]↢千二百五十人↡也。」
二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)(ⅱ)(b)(イ)[二][Ⅱ][ⅰ][b]弁総標意
[イ]問
^問ひていはく、 この衆のなかにまた外道にあらざるものあり。 なんがゆゑぞ総じて標する。
▲問[ヒテ]曰[ク]、此ノ衆ノ中ニ亦有リ↧†非ザル↢外道ニ↡者↥。何ガ故ゾ総ジテ標スル。
二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)(ⅱ)(b)(イ)[二][Ⅱ][ⅰ][b][ロ]答
^答へていはく、 ¬経¼ (賢愚経・意) のなかに説きたまふがごとし。 「このもろもろの外道つねに世尊に随ひてあひ捨離せず」 と。 しかるに*結集の家、 外徳を*簡び取る。 ゆゑに異名あり。 これ外道なるものは多く、 あらざるものは少なし。
~答[ヘテ]曰[ク]、如†シ↢¬経ノ¼中ニ説[キタマフ]ガ↡。「此ノ諸ノ外道‡常ニ随[ヒ]テ↢世尊ニ↡不[ト]↢相捨離セ↡。」然ル†ニ結集之家、簡ビ↢取ル外徳ヲ↡。故ニ有リ↢異名↡。是外道ナル者ハ多ク、非ザル者ハ少シ。
二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)(ⅱ)(b)(イ)[二][Ⅱ][ⅱ]弁常随意
[a]問
^また問ひていはく、 いぶかし、 これらの外道つねに仏後に随へるは、 なんの意かあるや。
~又問[ヒテ]曰[ク]、未審、此等ノ外道常ニ随ヘルハ↢仏後ニ↡、有ル↢何[ノ]意カ↡也。
二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)(ⅱ)(b)(イ)[二][Ⅱ][ⅱ][b]答
^答へていはく、 解するに二義あり。 一には↓仏0463につきて解す。 二には0342↓外道につきて解す。
~答[ヘテ]曰[ク]、解スルニ有リ↢二義↡。一[ニハ]就[キ]テ↠仏ニ解†ス。二[ニハ]就[キ]テ↢外道ニ↡解ス。
・就仏解
^↑仏につきて解すとは、 このもろもろの外道邪風久しく扇ぐこと、 これ一生のみにあらず。 *真門に入るといへども、 *気習なほあり。 ゆゑに如来知覚して*外化せしめざらしむ。 衆生の正見の根芽を損じ、 悪業増長して、 此世・後生に果実を収めざることを畏るればなり。 この因縁のために摂してみづから近づかしめて、 *外益を聴したまはず。 これすなはち仏につきて解しをはりぬ。
~就[キ]テ↠仏0685ニ解†スト者、†此ノ諸ノ外道邪風久シク扇グコト、非ズ↢是一生ノミニ↡。雖モ↠入ルト↢真門ニ↡、気習由在リ。故ニ使ム↢如来知覚†シテ不ラ↟令メ↢外化セ↡。†畏ルレバナリ↧損ジ‡↢衆生[ノ]正見ノ根芽ヲ↡悪業増長シ[テ]、此世・後生ニ不ルコトヲ↞収メ↢果実ヲ↡。為ニ↢此ノ因縁ノ↡摂シテ†令メテ↢自ラ近ヅカ↡、不↠聴シタマハ↢外益ヲ↡。此即チ就キテ↠仏ニ解シ竟[リ]ヌ。
・就外道解
^次に↑外道につきて解すとは、 ▼迦葉等の意、 みづからただ曠劫より久しく生死に沈み六道に*循還して、 苦しみいふべからず。 愚痴・悪見にして邪風に*封執し、 *明師に値はずして永く苦海に流る。 ただ*宿縁をもつてたまたま慈尊 (釈尊) に会ふことを得ることあり。 *法沢わたくしなし。 わが曹、 潤を蒙り、 仏の恩徳を尋思するに、 *砕身の極*惘然たり。 親しく*霊儀に事へて、 しばらくも替るに由なからしむることを致す。 これすなはち外道につきて解しをはりぬ。
~次ニ就キテ↢外道ニ↡解†スト者、迦葉等ノ意、自ラ唯曠劫†ヨリ久シク沈ミ‡↢生死ニ↡循↢還シテ六道ニ↡、苦ミ不↠可カラ↠言フ。愚痴・悪見ニシテ封↢執シ邪風ニ↡、不シテ↠値ハ↢明師ニ↡永ク流†ル↢於苦海ニ↡。但‡以テ↢宿縁ヲ↡有[リ]‡↢遇マ得ルコト↟会†フコトヲ↢慈尊ニ↡。法沢無シ↠私。我ガ曹蒙[リ]‡↠潤ヲ†尋↢思スルニ仏之恩徳ヲ↡、†砕身之極惘然†ナリ。致ス↠使ムルコトヲ↧†親シク事ヘテ↢霊儀ニ↡、無カラ↞由↢暫クモ替ルニ↡。此即チ就[キ]テ↢外道ニ↡解シ竟[リ]ヌ。
二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)(ⅱ)(b)(イ)[二][Ⅱ][ⅱ]料簡嘆徳
[a]問
^また問ひていはく、 これらの尊宿いかんが▲衆所知識と名づくる。
~又問[ヒテ]曰[ク]、此等ノ尊宿云何†ガ名クル↢衆所知識ト↡。
二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)(ⅱ)(b)(イ)[二][Ⅱ][ⅱ][b]答
^答へていはく、 徳高きを尊といひ、 耆年なるを宿といふ。 一切の*凡聖かの内徳の、 人に過ぎたることを知り、 その外相の殊異なるを識る。 ゆゑに衆所知識と名づく。
~答[ヘテ]曰[ク]、徳高キヲ曰†ヒ↠尊ト、耆オイタル年ナルヲ曰フ↠宿ト。一切ノ凡聖知リ↢彼ノ内徳[ノ]過†ギタルコトヲ↟人ニ、識ル↢其ノ外相[ノ]殊異ナル‡ヲ↡。故ニ名ク↢衆所知識ト↡。△
二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)(ⅱ)(b)(イ)[三]結
^上来九句の不同ありといへども、 声聞衆を解しをはりぬ。
上来‡雖モ↠有[リ]ト↢九句ノ不同↡、解シ↢声聞衆ヲ↡竟[リ]ヌ。
二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)(ⅱ)(b)(ロ)菩薩衆
[一]標
^次に↑菩薩衆を解す。 こ0343の衆のなかにつきてすなはちその七あり。
▲次ニ解†ス↢菩薩衆ヲ↡。就[キ]テ↢此ノ衆ノ中ニ↡即チ有リ↢其ノ七↡。
二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)(ⅱ)(b)(ロ)[二]釈
[Ⅰ]標列文義
^▲一には相を標す。 二には数を標す。 三には位を標す。 四には果を標す。 五には徳を標す。 六には別して*文殊の高徳の位を顕す。 七には総じて結す。
~一[ニ]者標†ス↠相ヲ。二[ニ]者標†ス↠数ヲ。三[ニ]者標†ス↠位ヲ。四[ニ]者標†ス↠果ヲ。五[ニ]者標[ス]↠徳ヲ‡。六[ニ]者別シテ顕ス↢文殊ノ高徳之位ヲ↡‡。七[ニ]者総ジテ結ス。
二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅱ]広嘆衆徳
[ⅰ]総嘆
^またこれらの菩薩無量の行願を具し、 一切の功徳の法に安住す。 ▲十方に遊歩して*権方便を行じ、
又此等ノ菩薩具シ‡↢無量ノ行願ヲ↡、安↢住†ス一切[ノ]功徳之法†ニ↡。遊↢歩シテ十方ニ↡行ジ↢権方便ヲ↡、
二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅱ][ⅱ]別嘆
[a]約果嘆
^仏の法蔵に入りて彼岸を究竟す。 無量の世界において、 化して*等覚を成ず。 光明*顕曜にしてあまねく十方を照らす。 無量の仏土*六種に震動す。
入[リ]テ↢仏[ノ]法蔵ニ↡究↢竟ス彼岸ヲ↡。於テ↢無量ノ世界ニ↡、化シテ†成ズ↢等覚ヲ↡。光明顕曜[ニ]シテ普ク照ス↢†十方ヲ↡。無量ノ仏土六種ニ震動†ス。
^縁に随ひて開示してすなはち*法輪を転0464ず。 法鼓を扣き、 法剣を執り、 法雷を震ひ、 法雨を雨らし、 法施を演ぶ。 つねに法音をもつてもろもろの世間を覚せしむ。 *邪網を掴裂し、 *諸見を消滅し、 もろもろの*塵労を散じ、 もろもろの*欲塹を壊り、 *清白を顕明し、 仏法を*光融し、 正化を*宣流す。
随[ヒ]テ↠縁ニ開示†シテ即チ転†ズ↢法輪ヲ↡。扣キ↢法鼓ヲ↡、執リ‡↢法剣ヲ↡、震ヒ↢法‡雷ヲ↡、†雨ラシ↢法雨0686ヲ↡、演†ブ↢法施ヲ↡。常ニ以テ↢法音ヲ↡†覚セシム↢諸ノ世間ヲ↡。掴ツカミ↢裂サクシ邪網アミヲ↡、消↢滅†シ諸見ヲ↡、散ジ↢諸ノ塵労ヲ↡、壊リ↢諸ノ欲塹ヲ↡、顕↢明シ‡清白ヲ↡、光↢融シ仏法ヲ↡、宣↢流†ス正化ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅱ][ⅱ][b]約因嘆
^衆生を愍傷していまだかつて*慢恣せず。 平等の法を得て無量百千三昧を具足す。 一念のあひだにおいて周遍せざるはなし。 *群生を荷負してこれを愛すること子のごとし。 一切の*善本みな彼岸に度す。
愍↢傷シテ衆生ヲ↡未ズ ダ↢曽テ慢恣セ↡。得[テ]↢平等ノ法ヲ↡具↢足†ス無量百千三昧ヲ↡。於テ↢一念ノ頃ニ↡無シ↠†不ルハ↢周遍セ↡。荷↢負シテ群生ヲ↡愛スルコト↠之ヲ如†シ↠子ノ。一切ノ善本、皆度†ス↢彼岸ニ↡。
二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅱ][ⅲ]結嘆
^ことごとく諸仏の無量の功徳を獲て、 智慧開朗なること思議すべからず。
悉ク獲テ↢諸仏ノ無量[ノ]功徳ヲ↡、智慧開朗†ナルコト†不↠可カラ↢思議ス↡。
二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)(ⅱ)(b)(ロ)[三]結
^七句の不同ありといへども、 菩薩衆を解しをはりぬ。
雖モ↠有リト↢七句ノ不同↡、解シ↢菩薩衆ヲ↡訖[リ]ヌ。
二 Ⅱ ⅱ b イ (三)総結
^上来二衆の不同ありといへども、 広く化前序を明かしをはりぬ。
上来‡雖モ↠有リト↢二衆ノ不同↡、広ク明シ↢†化前序ヲ↡竟[リ]ヌ。
二 Ⅱ ⅱ b ロ【禁父縁】
(一)標
【03446】 ^二に↑禁父の縁のなかにつきてすなはちその七あり。
▲二[ニ]就[キテ]↢†禁父ノ縁ノ中ニ↡即[チ]有リ↢其ノ七↡。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)釈
(Ⅰ)釈王舎大城文
(ⅰ)科節
^一に ▲「爾時王舎大城」より以下は、 総じて↓起化の処を明かす。
一[ニ]従リ↢「爾時王舎大城‡」↡以下、▲総ジテ明ス↢起化ノ処ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)釈文
(a)釈名
・王舎
^▲これ往古の*百姓、 ただ城中に舎を造るにすなはち天火のために焼かる。 もしこれ王家の舎宅には、 ことごとく火近づくことなし。 後の時に百姓ともに王に奏す。 「臣等宅を造ればしばしば天火のために焼かる、 ただこれ*王舎のみことごとく火近づくことなし。 なんの所以かあるといふことを知らず」 と。
▲此明ス↧往古ノ百姓、但‡†城中ニ造ルニ↠舎ヲ即[チ]為ニ↢天火ノ↡所↠焼カ、若シ是王家ノ舎宅ニハ、悉ク無シ↢火近ヅクコト↡、後ノ時ニ百姓共ニ奏ス‡↢於王ニ↡、臣等造レバ↠宅ヲ数バ為ニ↢天火ノ↡所↠焼カ、但‡是王‡舎ノミ悉ク無シ↢火近[ヅ]クコト↡、不[ト]↠知ラ↠有[ルトイフ]コトヲ↢何ノ‡所以[カ]↡、
^王、 *奏人に告げたまはく、 「いまより以後なんぢら宅を造る時、 ªただわれいま王のために舎を造るº といふべし」 と。 奏人等おのおの王の勅を奉りて、 帰還りて舎を造るにさらに焼かれず。 これによりて相伝して、 ことさらに王舎と名づくることを明かす。
~王告ゲタマハク↢奏人ニ↡、†自リ↠今以後卿等造†ル↠宅ヲ之時‡、但†言フベシト↢我今為ニ↠王ノ造ルト↟舎ヲ、奏人等各ノ†奉リテ↢王ノ勅ヲ↡、帰還[リ]テ造ルニ↠舎ヲ更ニ不↠被↠焼カ、因[リ]テ↠此ニ†相伝シテ、†故ラニ名クルコトヲ↦「王舎ト」↥。
・大城
^「▲大城」 といふは、 この城きはめて大にして、 *居民九億なり。 ゆゑに王舎大城といふ。
~言フ↢「大城ト」↡者、此ノ城極テ大ニシテ、居民九億†ナリ。故ニ†道フ↢王舎大城ト↡†也。△
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)弁義
^↑起化の処といふはすなはちその二あり。
▲†言フ↢起化ノ処ト↡者、即チ有リ↢†其ノ二↡。
・機相
^一にはいはく、 *闍王悪を起してすなはち父母を禁ずる縁あり。 禁によりてすなはちこの娑婆を厭ひて、 *無憂の世界に託せんと願ず。
~一[ニハ]謂ク闍王起シテ↠悪ヲ即チ有リ↧禁ズル↢父母[ヲ]↡之縁↥。因[リ]テ↠禁‡ニ則チ厭ヒテ↢此ノ娑婆ヲ↡、†願ズ↠託セムト↢†無憂之世界ニ↡。
・法益
^二にはすなはち如来 (釈尊) 請に赴き、 ▽光変じて台となりて*霊儀を影0465現したまふに、 ▽夫人すなはち安楽に生ずることを求む。 また▽心を傾けて行を請ひ、 仏は▽*三福の因を開きたまふ。 正観はすなはちこれ*定門なり。 さらに*九章の益を顕0345す。 この因縁のためのゆゑに起化の処と名づく。
~二[ニハ]則チ如来赴キ‡↠請ニ、光変ジテ為[リ]テ↠台ト影↢現†シタマフニ霊0687儀ヲ↡、夫人即チ求ム↠生[ズル]コトヲ↢安楽ニ↡。又傾ケテ↠心ヲ†請ヒ↠行ヲ、仏[ハ]開キタマフ↢三福之因ヲ↡。正観ハ即チ是定門ナリ。更ニ顕ス↢九章之益ヲ↡。為ノ↢此ノ因縁ノ↡故ニ名ク↢起化ノ処ト↡也。△
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)釈随順悪友文
(ⅰ)科節
^二に ▲「有一太子」より下 「悪友之教」 に至るこのかたは、 まさしく闍王*怳忽のあひだに悪人の誤るところを信受することを明かす。
二[ニ]従リ↢「有一太子‡」↡下至ル↢「悪友之教ニ」↡已来[タ]ハ、▲正[シク]明ス↣闍王怳忽之間ニ信↢受スルコトヲ悪人ノ†所ヲ↟悞ル。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)釈文
(a)弁位釈名
・太子
^「▲太子」 といふはその位を彰す。 「▲阿闍世」 といふはその名を顕す。 また ▼「阿闍世」 といふはすなはちこれ*西国の正音なり。 *この地の往翻には↓*未生怨と名づけ、 また↓折指と名づく。
言フ↢「太子ト」↡者▲彰ス↢其ノ位ヲ↡†也。言フ↢「阿闍世ト」↡者▲顕ス↢其ノ名ヲ↡也。▲又阿闍世†トイフ者乃チ是西国ノ正音ナリ。此ノ地†ノ往翻ニハ名ケ↢未生怨ト↡、亦名ク↢折指ト↡。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)問答料簡
(イ)問
^問ひていはく、 なんがゆゑぞ 「未生怨」 と名づけ、 および 「折指」 と名づくるや。
▲問[ヒテ]曰[ク]、何ガ故ゾ名ケ↢未生怨ト↡、及ビ名クル↢折指ト↡也。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)答
^答へていはく、 これみな昔日の因縁を挙ぐ。 ゆゑにこの名あり。
~答[ヘテ]曰[ク]、此皆挙グ↢昔日ノ因縁ヲ↡。故ニ有リ↢此ノ名↡。
・折指
^▼ˆ「↑折指」 のˇ 因縁といふは、 元本父の王、 子息あることなし。 処々に*神に求むれども、 つひに得ることあたはず。
~言フ↢因縁ト↡者、元本父ノ王無シ↠有ルコト↢子息↡。処処ニ求ム†レドモ↠神ニ、竟ニ不↠能ハ↠得ルコト。
^たちまちに*相師ありて、 王に奏してまうさく、 「臣知れり。 山のなかに一の仙人あり。 久しからずして寿を捨て、 命終しをはりて後かならずまさに王のために子となるべし」 と。
~忽ニ有[リ]テ↢相師↡而奏シテ↠王ニ言サク、臣知レリ‡。山ノ中ニ有リ↢一ノ仙人↡。不シテ↠久シカラ捨†テ↠寿ヲ、†命終シ已リテ後必ズ当ベ [ニ]シ[ト]↢与ニ↠王ノ作ル↟子ト。
^王聞きて歓喜す。 「この人いづれの時にか捨命する」 と。 相師、 王に答ふ。 「さらに三年を経てはじめて命終すべし」 と。 王いはく、 「われいま年老いて国に*継祀なし。 さらに三年を満つるまでなにによりてか待つべき」 と。
~王聞キテ歓喜ス。此ノ人何ノ時ニカ†捨命スルト。相師答†フ↠王ニ。更ニ経テ↢三年ヲ↡始テ可シ[ト]↢命終ス↡。王‡言ク、我今年老イテ国ニ無シ↢継祀↡。更ニ満ツルマデ↢三年ヲ↡何ニ由[リ]テカ可キ‡[ト]↠待ツ。
^王すなはち使ひを遣はして山に入らしめ、 往きて仙人に請じていはしむ。 「大王子なく、 闕けて*紹継なし。 処々に神に求むる0346に、得ることあたはざるに困しむ。 すなはち相師ありて大仙を瞻見るに、 久しからずして捨命して、 王のために子となるべしと。 請ひ願はくは大仙、 恩を垂れて早く赴きたまへ」 と。
~王即チ遣シテ↠使ヲ入†ラシメ↠山ニ、往†キテ請ジテ↢仙人†ニ↡曰†ハシム。大王無†ク↠子、闕ケテ無シ↢紹継↡。処処ニ求ム†ルニ↠神ニ、†困ム↠不ルニ↠能ハ↠得ルコト。†乃チ有[リ]テ↢相師↡瞻↢見ルニ大仙ヲ↡、不シテ↠久[シ]カラ†捨命シテ、与ニ↠王ノ作ルベシト‡↠子ト。請ヒ願クハ大仙垂レテ↠恩ヲ早ク†赴キタマヘト。
^使人、 教を受けて山に入り、 仙人の所に到りて、 つぶさに王請の因縁を説く。 仙人、 使者に報へていはく、 「われさらに三年を経てはじめて命終すべし。 王のすなはち赴けと勅するは、 この事不可なり」 と。
~†使人受ケテ↠教ヲ入[リ]‡↠山ニ、到[リ]テ↢仙人ノ所ニ↡、具ニ説ク↢†王請ノ因縁ヲ↡。仙人報ヘテ↢使者ニ↡言ク、我更ニ経テ↢三年ヲ↡始テ可シ↢命終ス↡。王ノ†勅スル↢即チ赴ケト↡者、是ノ事不可ナリ[ト]。
^使ひ、 仙の教を奉けて、 還りて大王に報ずるに、 つぶさに仙の意を述ぶ。 王いはく、 「われはこれ一国の主なり。 あらゆる0466人物みなわれに帰属す。 いまことさらに礼をもつてあひ屈するに、 すなはちわが意を承けざるや」 と。
~使奉ケテ↢仙ノ教ヲ↡、還[リ]テ報ズルニ↢大王ニ↡、具ニ述ブ↢仙ノ意ヲ↡。王‡曰ク、我ハ是一国之†主ナリ。†所有ル人物皆帰↢属ス我ニ↡。今0688故ラニ以テ↠礼ヲ相屈スルニ、乃チ†不ルヤト↠承ケ↢我ガ意ヲ↡。
^王さらに使者に勅す。 「なんぢ往きてかさねて請ぜよ。 請ぜんにもし得ずは、 まさにすなはちこれを殺すべし。 すでに命終しをはりなば、 わがために子とならざるべけんや」 と。
~王更ニ勅†ス↢使者ニ↡。卿往キテ重テ請ゼヨ。†請ゼムニ若シ不ハ↠得、当ベ ニシ↢即チ殺ス↟之ヲ。既ニ命終シ已リナバ、可ケム↠不ル↢与ニ↠我ガ作ラ↟子ト也ト。
^使人、 勅を受けて、 仙人の所に至りて、 つぶさに王の意をいふ。 仙人、 使ひの説を聞くといへども、 意にまた受けず。
~†使人受ケテ↠勅ヲ、至[リ]テ↢仙人ノ所ニ↡、具ニ噵フ↢王ノ意ヲ↡。仙人雖モ↠聞クト↢使ノ説ヲ↡、意ニ亦不↠受ケ。
^使人、 勅を奉けてすなはちこれを殺さんと欲す。 仙人いはく、 「なんぢまさに王に語るべし。 ªわが命いまだ尽きざるに、 王、 *心口をもつて人をしてわれを殺さしむ。 われもし王のために児とならば、 また心口をもつて人をして王を殺さしめんº」 と。 仙人0347この語をいひをはりてすなはち死を受く。
~†使人奉[ケ]テ↠勅ヲ即チ欲†ス↠殺サムト↠之ヲ。仙人曰ク、卿当ベ ニシ↠語ル↠王ニ。我ガ命未ダルニ↠尽キ、王以テ↢心口ヲ↡†遣ム↢人ヲシテ殺サ↟我ヲ。我若シ与ニ↠王ノ作†ラバ↠児ト者、†還タ以テ↢心口ヲ↡†遣メムト↢人ヲシテ殺サ↟王ヲ。仙人噵ヒ↢此ノ語ヲ↡已[リ]テ即チ受†ク↠死ヲ。
^すでに死しをはりて、 すなはち王宮に託して生を受く。 その日の夜に当りて夫人すなはち*有身すと覚ゆ。 王聞きて歓喜す。
~既ニ死[シ]已[リ]テ、即チ託シテ↢王宮ニ↡受ク↠生ヲ。当[リ]テ↢其ノ日[ノ]夜ニ↡夫人即[チ]覚ユ↢†有身スト↡。王聞キテ歓喜ス。
^天明けてすなはち相師を喚びて、 もつて夫人を観しむ。 これ男なりやこれ女なりや。 相師観をはりて王に報へていはく、 「この児は女にあらず。 この児、 *王において損あるべし」 と。 王いはく、 「わが国土はみなこれを*捨属すべし。 たとひ損ずるところありとも、 われまた畏れなし」 と。 王この語を聞きて憂喜交はり懐く。
~天明ケテ即チ喚ビテ↢相師ヲ↡、以テ観‡シム↢夫人ヲ↡。是†男ナリヤ是女[ナリ]ヤ。相師観已[リ]テ而報ヘテ↠王ニ言ク、†是ノ児ハ非ズ↠女ニ。此ノ児‡於テ↠王ニ有†ルベシト↠損。王曰ク、我ガ之国土ハ皆捨↢属スベシ之ヲ↡。縦ヒ有リトモ↠所↠損ズル、吾亦無シ[ト]↠畏レ。王聞キテ↢此ノ語ヲ↡憂喜交リ懐†ク。
^王、 夫人にまうしてまうさく、 「われ夫人とともにひそかにみづから*平章せん。 相師、 児われにおいて損あるべしといふ。 夫人これを生む日を待ちて、 高楼の上にありて天井のなかに当りてこれを生み、 人をして承け接らしむることなかれ。 落して地にあらんに、 あに死せざるべけんや。 われまた憂ふることなく、 *声もまた露れじ」 と。
~王白シテ↢夫人ニ↡言サク、吾共ニ↢夫人ト↡私ニ自ラ†平章セム。相師噵†フ↢児‡於テ↠吾ニ有ルベシト↟損。夫人待[チ]テ↢生ム↠之ヲ日ヲ↡、在[リ]テ↢高楼ノ上ニ↡当[リ]テ↢天井ノ中ニ↡生[ミ]‡↠之ヲ、勿レ↠令ムルコト↢人ヲシテ承ケ接ラ↡。†落シテ在ラムニ↢於地ニ↡、豈容ケム↠不[ル]↠死セ也。吾亦無ク↠†憂フルコト、声コヘモ亦不[ト]↠露レ。
^夫人すなはち王の計を可とし、 その生む時におよびてもつぱら前の法のごとくす。 生みをはりて地に堕つるに、 命すなはち断えず、 ただ手の小指を損ず。 よりてすなはち*外人同じく唱へて 「折指太子」 といふ。
~夫人即チ可[ト]シ↢王之計ヲ↡、及[ビ]テ↢其ノ生†ム時ニ↡一ラ如[ク]ス↢前ノ法ノ↡。†生ミ已[リ]テ堕†ツルニ↠地ニ、命便チ不↠断エ、唯損ズ↢手ノ†小指ヲ↡。因[リ]テ即チ外人同[ジ]ク唱ヘテ言フ↢折指太子ト↡也。
・未生怨
^「↑未生怨」 といふは、 これ▲*提婆達多悪妬の心を起すがゆゑにかの太子に対して昔日の悪縁を顕発するによる。
~言フ↢未生怨アダト↡者、此†因ル↧提婆達多‡起スガ↢悪妬ソネム之心ヲ↡故ニ対シテ↢彼ノ太子ニ↡顕↦発スルニ昔ムカシ日ノ悪縁ヲ↥。
^いかんが妬心して悪縁を起0348す。 提婆悪性にして、 *為人匈猛なり。 また0467出家すといへども、 つねに仏の名聞・利養を妬む。
~云何†ガ妬心シテ而起ス↢悪縁ヲ↡。提婆悪性ニシテ為人匈アシク 猛タケシナリ。雖モ↢復出家スト↡、恒常ニ†妬ム↢仏ノ名聞利養ヲ↡。
^しかるに父の王はこれ仏の*檀越なり。 一時のうちにおいて多く供養をもつて如来に奉上す。 いはく、 金・銀・七宝・名衣・上服・百味の菓食等、 一々色々みな五百車なり。 香・華・*伎楽し、 百千万の衆、 讃歎*囲繞して*仏会に送向して、 仏および僧に施す。
~然ルニ父ノ王0689ハ是仏ノ檀越ナリ。於テ↢一時ノ中ニ↡多ク将テ↢供養ヲ↡†奉↢上ス如来ニ↡。謂ク金・銀・七宝・†名衣・†上服・百味ノ菓食等‡、一一色色‡皆五百車ナリ。香・華・伎楽シ、百千万ノ衆‡讃歎‡囲遶シテ†送↢向シテ仏会ニ↡、†施ス↢仏及ビ僧ニ↡。
^時に調達 (提婆達多) 見をはりて妬心さらに盛りなり。 すなはち*舎利弗の所に向かひて*身通を学せんと求む。 尊者語りていはく、 「なんぢしばらく四念処を学せよ。 身通を学すべからず」 と。 すでに請ずれども心を遂げず。 さらに余の尊者の辺に向かひて求む。 乃至五百の弟子等ことごとく人として教ふるものなし、 みな四念処を学せしむ。
~時ニ調達見已[リ]テ妬心更ニ盛ナリ。即チ向[ヒ]テ↢舎利弗ノ所ニ↡求ム↠学セム†ト↢身通ヲ↡。尊者語[リ]テ言ク、†人者且ク学セヨ↢四念処ヲ↡。不[ト]↠須カラ↠学ス↢身通ヲ↡也。既ニ請ズレドモ不↠遂ゲ↠心ヲ。更ニ向[ヒ]テ↢余ノ尊者ノ辺ホトリニ↡求ム。乃至五百ノ弟子等悉ク†無シ↢人トシテ教フルモノ↡、皆遣ム↠学セ↢四念処ヲ↡。
^請ずること已むことを得ずして、 つひに阿難の辺に向かひて学す。 阿難に語りていはく、 「なんぢはこれわが弟なり。 われ通を学せんと欲す。 一々次第にわれに教へよ」 と。 しかるに阿難*初果を得たりといへども、 いまだ*他心を証せず。 *阿兄のひそかに通を学して、 仏の所において*悪計を起さんと欲することを知らず。 阿難つひにすなはち喚びて静処に向かひて、 次第にこれを教ふ。
~請ズルコト不シテ↠得↠已ムコト[ヲ]、遂ニ向[ヒ]テ↢阿難ノ†辺ニ↡学ス。語[リ]テ↢阿難ニ↡言ク、汝ハ是我ガ弟ナリ。我†欲ス↠学セムト↠通ヲ。一一次第ニ教†ヘヨト↠我ニ。然ルニ阿難雖モ↠得タリト↢初果ヲ↡、未ズ ダ↠証セ↢他心ヲ↡。†不↠知ラ↫阿兄ノ私密ニ学シテ↠通ヲ、欲スルコトヲ↪†於テ↢仏ノ所ニ↡起サムト↩於†悪計ヲ↨。阿難遂ニ即チ†喚ビテ向[ヒ]テ↢静処ニ↡、次第ニ教フ↠之ヲ。△
^*跏趺正坐せしめて、 先づ心をもつて身を挙ぐることを教ふ。 動くに似たりと想へ。 地を去ること一分・一寸すると想へ。 一尺・一丈すると想へ。 舎に至るに、 *空無礙の想をなし、 ただちに過ぎて空中に上ると想へ。 また心を摂して下り、 本の坐処に至ると想へ。
~跏趺正坐†セシメテ、先ヅ†教フ↢将テ↠心ヲ挙グルコトヲ↟身ヲ。†似タリト↠動クニ想ヘ。去ルコト↠地ヲ一分・一寸[スル]ト想ヘ。一尺・一丈[スル]ト想ヘ。至ルニ↠舎ニ、作†シ↢空無礙ノ想ヲ↡、直ニ過ギテ上ルト↢†空中ニ↡想ヘ。†還タ摂シテ↠心ヲ下リ‡、至ルト↢本ノ坐処ニ↡想ヘ。
^次に身をもつて心を挙げ、 初めの時に地を去ること0349一分・一寸する等、 また前の法のごとくせよ。 身をもつて心を挙げ、 心をもつて身を挙ぐるに、 また随ひてすでに至る。 空に上りをはりて、 また身を*摂取して下り、 本の坐処に至れ。
次ニ将テ↠身ヲ挙†ゲ↠心ヲ、初ノ時ニ去ルコト↠地ヲ一分・一寸[スル]等、亦如ク†セヨ↢前ノ法ノ↡。以[テ]↠身ヲ挙ゲ↠心ヲ、以テ↠心ヲ挙[グ]†ルニ↠身ヲ、亦随[ヒ]テ既ニ†至ル。上リ↠空ニ已リテ、†還タ摂↢取シテ身ヲ↡下リ‡、至†レ↢†本ノ坐処ニ↡。
^次に身心合して挙ぐと想へ。 また前の法に同じく、 一分・一寸する等、 周りてまた始めよ。
次ニ想ヘ↢身心合シテ挙グト↡。†還タ同[ジ]ク↢前ノ法ニ↡、一分・一寸スル等、周リテ而復始メヨ。
^次に身心一切の*質礙*色境のなかに入ると想ひ、 不質礙の想をなせ。 次に一切の山河大地等の色、 自身0468のなかに入るに、 空のごとく*無礙にして色相を見ずと想へ。
次ニ†想ヒ↣身心入ルト↢一切ノ質サヘ ノサヘラル色境ノ中ニ↡、作セ↢不質ノ想ヲ↡。次ニ†想ヘ↧一切ノ山・河・大地等ノ色入ルニ↢自身ノ中ニ↡、如ク↠空ノ無礙ニシテ不ト↞見↢色相ヲ↡。
^次に自身、 あるいは大にして虚空に*遍満して坐臥自在なり、 あるいは坐し、 あるいは臥して、 手をもつて日月を捉り動かすと想へ。 あるいは小身となりて*微塵のなかに入るに、 一切みな無礙の想をなせと。
次ニ†想ヘ↧自身‡或[イ]ハ大ニシテ遍↢満シテ虚空ニ↡坐0690臥自在ナリ、或[イ]ハ坐シ或[イ]ハ臥シテ、以[テ]↠手ヲ捉リ↦動スト日月ヲ↥。或[イ]ハ作[リ]テ↢小身ト↡入[ル]ニ↢微塵ノ中ニ↡、一切皆作セ[ト]↢無礙†ノ想ヲ↡。
^阿難かくのごとく次第に教へをはりぬ。 時に調達 (提婆達多) すでに法を受得しをはりて、 すなはち別して静処に向かひて七日七夜一心専注して、 すなはち身通を得たり。 一切自在にしてみな成就することを得たり。
▲阿難如ク↠是[ク]ノ次第ニ教ヘ已[リ]ヌ。時ニ調達既ニ受↢得シ法ヲ↡已[リ]テ、即チ別†シテ向[ヒ]テ↢静処ニ↡七日七夜一心専注シテ、即チ得†タリ↢身通ヲ↡。一切自在ニシテ皆†得タリ↢成就スルコトヲ↡。
^すでに通を得をはりてすなはち太子の殿の前に向かひて、 空中にありて大神変を現ず。 身上より火を出0350し、 身下より水を出す。 あるいは左辺に水を出し、 右辺に火を出す。 あるいは大身を現じ、 あるいは小身を現ず。 あるいは空中に坐臥し、 意に随ひて自在なり。
~既ニ得↠通ヲ已[リ]テ即チ向[ヒ]テ↢太子ノ殿ノ前ニ↡、在[リ]テ↢於空‡中ニ↡現ズ↢大神変ヲ↡。†身上ヨリ出シ↠火ヲ、†身下ヨリ出ス↠水ヲ。或[イ]ハ左辺ニ出シ↠水ヲ、右辺ニ出ス↠火ヲ。或[イ]ハ現ジ↢大身ヲ↡、或[イ]ハ現†ズ↢小身ヲ↡。或[イ]ハ坐↢臥シ空中ニ↡、随[ヒ]テ↠意ニ自在ナリ。
^太子見をはりて左右に問ひていはく、 「これはこれ何人ぞ」 と。 左右、 太子に答へてまうさく、 「これはこれ尊者提婆なり」 と。
~太子見已[リ]テ問[ヒ]テ↢左右ニ↡曰ク、此ハ是何人ゾ‡[ト]。左右答ヘテ↢太子ニ↡言ク、此ハ是尊者提婆ナリ[ト]。
^太子聞きをはりて心大きに歓喜す。 つひにすなはち手を挙げて喚びていはく、 「尊者なんぞ下り来らざる」 と。 提婆すでに喚ぶを見をはりてすなはち化して嬰児となり、 ただちに太子の膝の上に向かふ。 太子すなはち抱きて、 口を嗚ひてこれを弄び、 また口のなかに唾はく。 ▼嬰児つひにこれを咽む。 須臾に還りて本身に復す。 太子すでに提婆の種々の神変を見て*うたた敬重を加ふ。
~太子聞キ已[リ]テ心大ニ歓喜†ス。遂ニ即[チ]挙ゲテ↠手ヲ†喚ビテ言ク、尊者何ゾ不ル[ト]↢下リ来ラ↡。提婆既ニ見↠†喚ブヲ已[リ]テ即[チ]化シテ作[リ]‡↢嬰児ト↡、直ニ向フ↢太子ノ膝ノ上ニ↡。太子即チ抱キテ、†嗚シテ↠口ヲ弄†ビ↠之ヲ、又唾ハク↢口ノ中ニ↡。嬰児遂ニ咽ム↠之ヲ。須臾ニ還[リ]テ復ス↢本身ニ↡。太子既ニ見テ↢提婆†ノ種種ノ神変ヲ↡転タ加フ↢敬重ヲ↡。
^すでに太子の心敬重せるを見をはりて、 すなはち父の王の供養の因縁を説く。 「色別に五百乗の車に載せ、 仏の所に向かひて仏および僧にたてまつる」 と。 太子聞きをはりてすなはち尊者に語る。 「弟子またよく色おのおの五百車を備へ具へて、 尊者を供養し、 および衆僧に施すこと、 かれのごとくならざるべけんや」 と。 提婆いはく、 「太子、 この意大きに善し」 と。
~既ニ見↢太子ノ心‡敬重†ナルヲ↡已[リ]テ、即チ説ク↢父ノ王ノ供養ノ因縁ヲ↡。色別[ニ]五百乗ノ車ニ載セ‡、向[ヒ]テ↢仏[ノ]所ニ↡奉ル†ト↢仏及ビ僧ニ↡。太子聞キ已[リ]テ即チ語†ル↢尊者ニ↡。弟子亦能ク備ヘ↢具ヘテ色†各ノ五百車ヲ↡、供↢養シ尊者†ヲ↡、及ビ†施スコト↢衆僧ニ↡、可ケム↠†不ル↠如クナラ↠彼ノ也ト。提婆言ク、太子、此ノ意大ニ善シ[ト]。
^これより以後大きに供養を得、 心うたた高慢なり。 たとへば杖をもつて悪狗の鼻を打つに、 うたた狗の悪を増すがごとし。 これまた0351かくのごとし。 太子いま*利養の杖0469をもつて提婆が貪心の狗の鼻を打つに、 うたた悪を加すこと盛りなり。 これによりて僧を破し、 仏法の戒を改めて、 教戒不同なり。
~自リ↠此已後‡大ニ得‡↢供養ヲ↡、心転タ高慢ナリアナヅル。譬ヘバ如シ↧以テ↠杖ヲ打†ツニ↢†悪狗ノ鼻ヲ↡、転タ増スガ↦†狗ノ†悪ヲ↥。此亦如シ↠是[ク]ノ。太子今将テ↢利養之杖ヲ↡打ツニ↢提婆ガ貪心ノ†狗ノ鼻ヲ↡、転タ加スコト↠悪ヲ盛†ナリ。因[リ]テ↠此ニ破シ↠僧ヲ、改メテ↢仏法[ノ]戒ヲ↡、教戒不同0691ナリ。
^仏あまねく凡聖大衆のために法を説きたまふ時を待ちて、 すなはち*会中に来りて仏に従ひ、 *徒衆ならびにもろもろの*法蔵ことごとくわれに付嘱したまへと索む。 「世尊は年まさに老邁したまへり。 よろしく静内につきてみづから*将養したまふべし」 と。 一切の大衆、 提婆がこの語を聞きて、 *愕爾としてたがひにあひ看てはなはだ*驚怪を生ず。
~待[チ]テ↧仏普ク為ニ↢凡聖大衆ノ↡†説キタマフ↠法ヲ之時ヲ↥、即[チ]来[リ]テ↢会‡中ニ↡従ヒ‡↠仏ニ、†索ム↣於徒衆并ニ諸ノ法蔵‡尽ク付↢嘱シタマヘト我ニ↡。世尊[ハ]年将ニ老邁シタマヘリ。宜シク可シ[ト]↧就キテ↢静内ニ↡自ラ†将養シタマフ↥。一切ノ大衆聞キテ↢提婆ガ此ノ†語ヲ↡、愕爾サハイデトシテ迭互ニ相看テ甚ダ生ズ↢驚オドロキ怪ヲ↡アヤシム。
^その時世尊、 すなはち大衆に対して提婆に語りてのたまはく、 「舎利・目連等のすなはち大*法将なるすら、 われなほ仏法をもつて付嘱せず、 いはんやなんぢ痴人唾を食らへるものをや」 と。
~爾[ノ]時世尊、即チ対シテ↢大衆ニ↡語[リ]テ↢提婆ニ↡言ク、舎利・目連等ノ即チ大法将ナル‡スラ、我尚不↧将テ↢仏法ヲ↡付嘱セ↥。況ヤ汝痴人‡、食ヘル↠唾ヲ者ヲ乎[ト]。
^時に提婆、 仏の、 衆に対して*毀辱したまふを聞き、 なほ*毒箭の心に入るがごとし、 さらに痴狂の意を発す。 この因縁によりてすなはち太子の所に向かひてともに悪計を論ず。 太子すでに尊者を見て、 敬心をもつて承問していはく、 「尊者、 今日顔色憔悴せること、 往昔に同じからず」 と。
~時ニ提婆聞キ‡↢仏ノ対シテ↠衆ニ毀辱シ†タマフヲ↡、由‡如†シ↢†毒箭ノ入ルガ↟心ニ、更ニ発ス↢痴狂之意ヲ↡。藉[リ]テ↢此ノ因縁ニ↡即チ向[ヒ]テ↢太子ノ所ニ↡共ニ論ズ↢†悪計ヲ↡。太子既ニ見テ↢尊者ヲ↡、敬心ヲモテ承問†シテ言ク、尊者、†今日顔カヲノ色憔悴カシケ †セルコト不‡ト↠同[ジ]カラ↢往昔ニ↡。
^提婆答へていはく、 「われいま憔悴することはまさしく太子のためなり」 と。
~提婆答[ヘテ]曰[ク]、我今憔悴†スルコトハ正[シ]ク為↢太子ノ↡也[ト]。
^太子敬ひて問はく、 「尊者、 わがためになんの意かあるや」 と。
~太子敬[ヒ]テ問ハク、尊者、為ニ↠我[ガ]有ル↢何[ノ]意カ↡也ト。
^提婆すなはち答へていはく、 「太子知るやい0352なや。 世尊年老いて*堪任するところなし。 まさにこれを除きてわれみづから仏と作るべし。 父の王年老いたり。 またこれを除きて太子みづから正位に坐すべし。 新王と新仏と治化せんに、 あに楽しからざらんや」 と。
~提婆即チ答[ヘテ]云[ク]、太子知†ルヤ不ヤ。世尊年老イテ無シ↠所↢堪任†スル↡。当ニ可シ↢除キテ↠之ヲ我自ラ作ル↟仏ト。父ノ王年老†イタリ。亦可シ↣除キテ↠之ヲ太子自ラ坐†ス↢正位ニ↡。新王ト新仏ト治化セム[ニ]、豈不ラム↠楽シカラ乎[ト]。
^太子これを聞きてきはめて大きに瞋怒して、 「この説をなすことなかれ」 といふ。
~太子聞キテ↠之ヲ極テ大ニ瞋怒シテ、勿レトイフ↠作スコト↢是ノ説ヲ↡。
^またいはく、 「太子瞋ることなかれ。 父の王、 太子においてまつたく恩徳なし。 はじめて太子を生ぜんと欲せし時、 父の王すなはち夫人をして百尺の楼の上にありて天井のなかに当りて生ぜしめて、 すなはち地に堕して死せしめんと望む。 まさしく太子の福力をもつてのゆゑに命根断えず、 ただ小指を損ず。 もし信ぜずは、 みづから小指を看たまへ。 もつて験となすに足れり」 と。
~又言ク、太子莫レ↠瞋ルコト。父ノ王於テ↢太子ニ↡全ク無シ↢恩徳↡。†初テ欲セシ↠生ゼムト↢太子ヲ↡時、父ノ王即チ†遣メテ↧夫人ヲシテ在[リ]テ↢百尺ノ楼ノ上ニ↡当[リ]テ↢天*井ノ中ニ↡生ゼ↥、即チ望†ム↢堕[シ]テ↠地ニ令†メムト↟死セ。正[シ]ク以[テ]ノ↢太子ノ福力ヲ↡故ニ命根不↠断エ、但損†ス↢小指‡ヲ↡。若シ†不ハ↠信ゼ者、自ラ看†タマヘ↢小指ヲ↡。足レリ[ト]↢以テ†為スニ↟†験ト。
^太子すで0470にこの語を聞きて、 さらにかさねて審めていはく、 「実にしかりやいなや」 と。
~太子既ニ聞キテ↢此ノ語ヲ↡、更ニ重テ審メテ言ク、実ニ爾已ヤ不ヤ[ト]。
^提婆答へていはく、 「これもし不実ならば、 われことさらに来りて*漫語をなすべけんや」 と。
~提婆答ヘテ言ク、此若シ†不実ナラバ、我可ケム↣故ラニ来[リ]テ作ス↢漫語ヲ↡ミダレガハシキ也[ト]。
^この語によりをはりてつひにすなはち提婆が悪見の計を信用す。
~因リ↢此ノ語ニ↡已[リ]テ遂0692ニ即チ信↢用ス提婆ガ悪見之計ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(c)結示順教
^ゆゑに 「随順調達悪友之教」 といふ。
~故ニ噵フ↢「†随順調達悪友之教ト」↡也。△
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅲ)釈父王幽禁文
(ⅰ)科節
^三に ▲「収執父王」より下 「一不得往」に至るこのかたは、 まさしく父の王子のために幽禁せらるることを明かす。
三[ニ]従リ↢「収執父王‡」↡下至ル↢「一不得往‡ニ」↡已来[タ]ハ、▲正[シク]明ス↢†父ノ王為ニ↠子ノ幽禁†セラルルコトヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅲ)(ⅱ)述意
^これ闍世、 提婆の悪計を取りて、 たちま0353ちに父子の情を捨つることを明かす。 ただ*罔極の恩を失するのみにあらず、 *逆の響きこれによりて路に満てり。
~此‡明ス‡↧闍世取[リ]テ↢提婆†之†悪計ヲ↡、頓チニ捨ツルコトヲ↦父子之†情ヲ↥。非ズ↣†直†失スルノミニ↢於†罔極之恩ヲ↡。逆ノ響キ因[リ]テ↠茲ニ満†テリ↠路ニ。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅲ)(ⅲ)釈文
・収執
^▲たちまちに王の身を掩ふを 「収」 といひ、 すでに得て捨てざるを 「執」 といふ。 ゆゑに収執と名づく。
~忽ニ掩フヲ↢王ノ身ヲ↡曰†ヒ↠収ト、既ニ得テ不ルヲ↠捨テ曰フ↠執ト。故ニ名ク↢「収執ト」↡也。△
・父王
^▲「父」 といふは別して親の極を顕す。 「王」 とはその位を彰す。 「頻婆」 とはその名を彰す。
▲†言フ↢「父ト」↡者別シテ顕ス↢親之†極ヲ↡也。「王ト」†者彰ス↢其ノ位ヲ↡也。「頻婆ト」†者彰ス↢其ノ名ヲ↡也。
・幽閉
^▲「幽閉七重室内」 といふは、 所為すでに重し、 事また軽きにあらず。 浅く*人間に禁ずべからず、 まつたく守護なければなり。 ただ王の*宮閤は理として*外人を絶つとも、 ただ群臣あればすなはち久しきよりこのかた*承奉せるをもつて、 もし厳制せずはおそらくは*情通あらん。 ゆゑに内外をして交はりを絶たしめて、 閉ぢて七重のうちに在く。
言フ↢「幽閉七重室内ト」↡者、所為既ニ重シ、†事亦非ズ↠軽キニ。不↠†可カラ↣浅ク禁ズ↢人間ニ↡、全ク無ケレバナリ↢守護↡。但以テ↧王之宮閤ハ†理トシテ絶ツトモ↢外人ヲ↡、唯有†レバ↢群臣‡↡則チ久シ†キヨリ来タ承奉セルヲ↥、若シ不ハ↢厳キビシク制セ↡恐クハ有ラム↢‡情コヽロノ通‡カヨウ↡。故ニ使メ†テ↢内外[ヲシテ]絶†タ↟交リヲ、閉ヂテ在ク↢七重之内ニ↡也。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅳ)釈夫人奉食文
(ⅰ)科節
^四に ▲「国大夫人」より下 「密以上王」に至るこのかたは、 まさしく夫人密かに王に食をたてまつることを明かす。
四[ニ]従リ↢「国大夫人‡」↡下至ル↢「密以上王‡ニ」↡已来[タ]ハ、正[シク]明ス↣夫人密ニ奉ルコトヲ↢王ニ食ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅳ)(ⅱ)釈文
・国大夫人
^「▲国大夫人」 といふは、 これ最大なることを明かす。 「夫人」 といふはその位を標す。 「韋提」 といふはその名を彰す。
言フ↢「国大夫人ト」↡者、▲此明ス↢最大ナルコトヲ↡也。言フ↢夫人ト↡者標ス↢其ノ位ヲ↡也。言フ↢「韋提ト」↡者彰ス↢其ノ名ヲ↡也。
・恭敬大王
^「▲恭敬大王」 といふは、 これ夫人すでに王の身禁ぜらるるを見るに、 門戸きはめて難くして、 音信通ぜず、 おそらくは王の身命を絶つことを。
言フ↢「恭敬大王ト」↡者、▲此明ス↧夫人既ニ見ルニ↢王ノ身被ルルヲ↟禁ゼ、門戸ト 極テ難クシテ音オム信不↠通ゼ、恐クハ絶†ツコトヲ↢王[ノ]身命ヲ↡、
^つひにすなはち香湯*滲浴して身をして清浄ならしめて、 すなはち*酥蜜を取りて先づその身に塗り、 後に*乾麨を取りてはじめて酥蜜の上に安き、 すなはち0354浄衣を着てこれを覆ひて、 外衣の上にありてはじめて*瓔珞を着ること、 常0471の服法のごとくにして、 *外人をして怪しまざらしむ。
遂ニ即チ香湯‡滲浴シテ令メテ↢身ヲシテ清浄ナラ↡、即チ取[リ]テ↢酥蜜ヲ↡先ヅ塗リ↢其ノ身ニ↡、後ニ取[リ]テ↢†乾麨ヲ↡始テ安†キ↢酥蜜之上ニ↡、即チ著テ↢浄衣ヲ↡覆†ヒテ↠之ヲ、在[リ]テ↢外衣ノ上ニ↡始テ著ル[コト]↢瓔珞ヲ↡、如ク[ニ]シテ↢常ノ服キモノ法ノ↡、令ム↢外人ヲシテ不ラ↟怪マ、
^また瓔珞を取りて孔の一頭*蝋をもつてこれを塞ぎ、 一頭の孔のなかに蒲桃の*漿を盛りて、 満てをはりてまた塞ぐに、 ただこれ瓔珞なり。 ことごとくみなかくのごとくす。
又取[リ]テ↢†瓔珞ヲ↡孔ノ一頭以テ↠*臘ヲ塞†ギ↠之ヲ、一頭ノ孔ノ中ニ盛リ[テ]↢蒲桃ノ†漿ヲ↡、満テ已[リ]テ†還タ塞グニ、但是瓔珞ナリ、悉ク皆如ク‡ス↠此[ク]ノ、
^荘厳することすでに竟りて、 *やうやく歩みて宮に入りて、 王とあひ見ゆることを明かす。
荘厳0693[スルコト]既ニ竟[リ]テ、徐ク歩ミテ入[リ]テ↠宮ニ与↠王相†見ユルコトヲ↥。
^問ひていはく、 諸臣は勅を奉けて王に見ゆることを許さず。 いぶかし、 夫人は*門家制せずしてほしいままに入ることを得しむるは、 なんの意かあるや。
▲問[ヒテ]曰[ク]、†諸臣[ハ]奉ケ‡テ↠勅ヲ不↠許サ↠†見ユルコトヲ↠王ニ。未審、夫人†ハ門家不シテ↠制セ放ニ令ムル†ハ↠得↠入ルコトヲ者、有ル↢何[ノ]意カ↡也。
^答へていはく、 諸臣は身異なりて、 またこれ*外人なり。 情通あることを恐れて、 厳しく重制を加へしむることを致す。 また夫人は身これ女人にして、 心に*異計なし。 王と*宿縁業重くして、 久しく近づきて夫妻なり。 別体同心にして、 人をして外慮なからしむることを致す。 ここをもつて入りて、 王とあひ見ゆることを得しむ。
~答[ヘテ]曰[ク]、諸臣ハ身異†ナリテ、復是外人ナリ。恐レ†テ↠有[ル]コトヲ↢情通↡、致ス↠使ムルコトヲ↣†厳シク加ヘ↢重制ヲ↡。又夫人者身‡是女人†ニシテ、心ニ無シ↢†異計↡。与↠王宿縁‡業重†クシテ、久シク近ヅキテ夫妻ナリ。†別体同心ニシテ、致ス↠使ムルコトヲ↣人ヲシテ無カラ↢外慮↡。是ヲ以テ得シム↢入[リ]テ与↠王相†見ユルコトヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅴ)釈父王請法文
(ⅰ)科節
^五に ▲「爾時大王食麨」より下 「授我八戒」に至るこのかたは、 まさしく父の王、 禁によりて法を請ずることを明かす。
五[ニ]従リ↢「爾時大王食麨‡」↡下至ル↢「授我八戒‡ニ」↡已来[タ]ハ、正[シク]明ス↢父ノ王因[リ]テ↠禁ニ請ズルコトヲ↟法ヲ。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅴ)(ⅱ)述意
・王得食
^▲これ夫人すでに王に見えをはりて、 すなはち身上の*酥を刮り取りて、 *麨団をもつて王に授与す。 王得てすなはち食す0355。 麨を食することすでに竟りて、 すなはち宮内において夫人浄水を求め得て、 王に与へて口を漱がしむ。
此明ス↧夫人既ニ†見エ↠王ニ已[リ]テ、即チ†刮リ↢取リテ†身上ノ酥ヲ↡、麨団ヲ†モテ授↢与ス‡王ニ↡、王得†テ即チ食ス‡、食スルコト↠麨ヲ既ニ竟[リ]テ、即チ†於テ↢†宮内ニ↡夫人求メ↢得テ浄水ヲ↡、与ヘテ↠王ニ漱ガシム↠口ヲ、
・請求加護
^▲口を浄めをはりて虚しく時を引くべからず。 *朝心寄るところなし。 ここをもつて*虔恭合掌して、 面を回らして耆闍に向かひ、 敬を如来に致して*加護を請求することを明かす。
浄メ↠口ヲ已竟[リ]テ不↠可[カ]ラ↢虚シク引ク↟時ヲ、朝心シバラク無シ↠所↠寄ル、是ヲ以テ虔ツヽシミ恭合掌シテ、廻シテ↠面ヲ向†ヒ↢於耆闍ニ↡、致シテ↢敬ヲ如来ニ↡請↦求スルコトヲ加護ヲ↥。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅴ)(ⅲ)釈文
(a)正釈
・身業敬
^これ身業の敬を明かす、 また通じて意業あり。
此明ス↢身業ノ敬ヲ↡、亦通ジテ有リ↢意業↡也。
・口業請
^▲「而作是言」以下は、 まさしく口業の請を明かす、 また通じて意業あり。
「而作是言‡」已下[ハ]、正[シク]明ス↢口業ノ請ヲ↡、亦通ジテ有リ↢意業↡也。
・目連親友
^「▲大目連是吾親友」 といふはその二意あり。 ただ目連俗にありてはこれ王の*別親なり。 すでに出家を得てすなはちこれ*門師なり。 宮閤に往来することすべて*障礙なし。 しかるに俗にありては親となし、 出家しては友と名づく。 ゆゑに親友と名づく。
言フ↢「大目連是吾親友ト」↡者有リ↢其ノ二意↡。但目連‡在[リ]テハ↠俗ニ是王ノ別親ナリ。既ニ得テ↢出家‡ヲ↡即チ是門師ナリ。往↢来スル†コト宮閤ニ↡都テ無シ↢障礙↡。▲†然ルニ在[リ]テハ↠俗ニ為シ↠親ト、出家†シテハ名ク↠友ト。故ニ名ク↢親友ト↡也。
・授我八戒
^「▲願興慈悲授我八戒」 といふは、 これ父の王、 法0472を敬ふ情深くして、 人を重んずることおのれに過ぎたることを明かす。 もしいまだ*幽難に逢はずは、 仏僧を奉請するに難しとなすに足らず。 いますでに囚はれて*屈を致すに由なし。 ここをもつてただ目連を請じて八戒を受く。
言フ↢「願興慈悲授我八戒ト」↡者、▲此明ス↢父ノ王敬フ↠法ヲ†情深クシテ、†重ズルコト↠人ヲ過[ギタル]コトヲ↟己ニ。若シ未ズ ダハ↠逢ハ↢幽難ニ↡、†奉↢請スルニ仏僧ヲ↡不↠足ラ↠†為スニ↠難シト。今既ニ被テ↠囚ハシフセ無シ↠由↠致スニ↠屈ヲ。是ヲ以テ但請ジテ↢目連ヲ↡受ク↢於八戒ヲ↡也。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅴ)(ⅲ)(b)料簡
・礼世尊請目連意
^問ひていはく、 父の王はるかに敬ふには、 先づ世尊を礼し、 その受戒に及びてすなはち目連を請ずるは、 なんの意かあるや。
▲問[ヒテ]曰[ク]、父ノ王遥ニ敬キヤウフニハ、先ズ礼シ↢世尊0694ヲ↡、及[ビ]テ‡↢其ノ†受戒ニ↡即チ請ズル[ハ]↢目連ヲ↡、有ル↢何[ノ]意カ↡也。
^答へていはく、 凡聖の極尊、 仏に過ぎたるはなし。 心を傾けて願を発すにはすなはち先づ大師 (釈尊) を礼す0356。 戒はこれ小縁なり。 ここをもつてただ目連の来りて授くることを請ず。 しかるに王の意は貴ぶこと得戒に存ず。 すなはちこれ義あまねし。 なんぞ労しく迂げて世尊を屈せんや。
~答[ヘテ]曰[ク]、凡聖ノ極尊‡無シ↠過ギタルハ↢於仏ニ↡。傾ケテ↠心ヲ発†スニハ↠願ヲ即チ先ヅ礼ス↢大師ヲ↡。戒ハ是小縁ナリ。是ヲ以テ唯請ズ↢目連ノ来リテ授クルコトヲ↡。然[ル]ニ王ノ意者貴ブコト存ズ↢得戒†ニ↡。即チ†是義周シ。何ゾ†労シク迂ゲテ屈セム↢世尊ヲ↡也。
・請八戒不請余意
^問ひていはく、 如来の戒法すなはちあること無量なるに、 父の王ただ八戒のみを請じて余を請ぜずや。
~問[ヒテ]曰[ク]、如来ノ戒法‡†乃チ有ルコト無量ナルニ、父ノ王唯請ジテ↢八戒[ノミ]ヲ↡†不↠請ゼ↠余ヲ也。
^答へていはく、 余戒はやや寛くして*時節長遠なり。 おそらくは中間に失念して生死に流転することを。 その八戒とは*余の仏経に説きたまふがごとし。 在家の人、 出家の戒を持つ。 この戒の*持心極細極急なり。 なんの意ぞしかるとなれば、 ただ時節やや促まりて、 ただ一日一夜を限りて作法してすなはち捨つ。
~答[ヘテ]曰[ク]、余‡戒ハ稍寛[ク]シテ時節長遠ナリ。恐畏ハ中間ニ失念シテ流↢転†スルコトヲ生死ニ↡。其ノ八戒ト†者如シ↢余ノ†仏経ニ説キタマフガ↡。在家ノ人‡持ツ‡↢出家ノ戒ヲ↡。此ノ戒†ノ持心†極細極急ナリ。何[ノ]意ゾ然ルトナラバ者、但時節稍促[リ]テ、唯限リ[テ]↢一日一夜†ヲ↡作法シテ即チ捨ツ。
^いかんがこの戒の*用心と行との*細なることを知る。 *戒文のなかにつぶさに顕していふがごとし。 「*仏子、 *今旦より*明旦に至るまで一日一夜、 諸仏の殺生したまはざるがごとくよく持つやいなや」 と。 答へていはく、 「よく持つ」 と。
~云何†ガ知ル↢此ノ戒ノ用心[ト]†行トノ細ナルコトヲ↡。如シ↢戒文ノ中ニ具ニ顕シテ云[フ]ガ↡。仏子従リ↢今旦↡至†ルマデ↢明旦ニ↡一日一夜、†如ク↣諸仏ノ不ルガ↢殺生シタマハ↡†能ク持ツヤ不ヤト。答ヘテ言ク、能ク持†ツト。
^第二にまたいはく、 「仏子、 今旦より明旦に至るまで一日一夜、 諸仏の、 偸盗せず、 婬を行ぜず、 妄語せず、 飲酒せず、 脂粉を身に塗ることを得ず、 歌舞唱伎しおよび往きて観聴することを得ず、 高広の大床に上ることを得たまはざるがごとくすべし」 と。
~第二ニ又云ク、仏子従リ↢今旦↡至†ルマデ↢明旦ニ↡一日一夜、如[ク]スベシ[ト]↧諸仏ノ不↢偸盗†セ↡、不↠行ゼ↠婬ヲ、不↢妄語セ↡、不↢飲酒サケ
セ↡、不↠得↢脂粉ヲ塗ルコトヲ↟身ニ、不↠得↢歌ウタイ舞マウ‡唱トナフ伎シギカク及ビ往キテ観ミル聴キク スルコト[ヲ]↡、不ルガ↞得[タマハ]↠上ルコト[ヲ]↢高広ノ大床ユカ ニ↡。
^この上の八はこれ戒にして斎にあらず。 *中0357を過ぎて食することを得ず、 この一はこれ斎にして戒にあらず。 これらの諸戒みな諸仏を引きて証となす。 なにをもつてのゆゑに。 ただ仏と仏とのみ*正習ともに尽したまへり。 仏を除きて以還は*悪習等なほあり0473。 このゆゑに引きて証となさず。 ここをもつて知ることを得。 この戒の用心と起行ときはめてこれ*細急なり。
~此ノ上ノ八ハ是戒ニシテ非ズ↠斎ニ。†不↠得↢過ギテ↠中ヲ食スルコト[ヲ]↡、此ノ一ハ是斎ニシテ非ズ↠戒ニ。此等ノ諸戒皆引キテ↢諸仏ヲ↡為ス↠証ト。何ヲ以[テ]ノ故ニ。唯仏ト与ノミ↠仏正習倶ニ尽シタマヘリ。除[キ]テ↠仏ヲ†已還ハ悪習†等由在リ。是ノ故ニ不↢引キテ†為サ↟証ト也。是ヲ以テ†得↠知[ル]コトヲ。此ノ戒ノ用心[ト]起行[ト]極テ是細急ナリ。
^またこの戒には、 仏八種の*勝法ありと説きたまへり。 もし人一日一夜つぶさに持ちて犯さざれば、 所得の功徳、 人・天・二乗の境界に超過せり。 *経に広く説きたまふがごとし。 この益あるがゆゑに、 父の王をして日々にこれを受けしむることを致す。
~又†此ノ戒ニ[ハ]仏説[キ]タマヘリ↠有リト↢八種ノ勝法↡。若シ人一日一夜具ニ持[チ]テ不レバ↠†犯サ、所得ノ功徳超↢過セリ人・天・二乗ノ境界ニ↡。如シ↢経ニ広0695ク説[キタマフ]ガ↡。有[ル]ガ↢斯ノ益↡故ニ、致ス↠使[ム]ルコトヲ↢父ノ王[ヲシテ]日日ニ受ケ↟之ヲ。△
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅵ)釈父王受法文
(ⅰ)科節
^六に ▲「時大目連」より下 「為王説法」に至るこのかたは、 その父の王請によりて聖法を蒙ることを得ることを明かす。
六[ニ]従リ↢「時大目連‡」↡下至ル↢「為王説法‡ニ」↡已来[タ]ハ、明ス↢其ノ父ノ王‡因[リ]テ↠請ニ得[ル]コトヲ↟蒙ルコトヲ↢聖法ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅵ)(ⅱ)述意
^これ目連、 他心智を得てはるかに父の王の請意を知りて、 すなはち神通を発して*弾指のあひだのごとくに王の所に到ることを明かす。
此明ス↧目連得テ↢他心智ヲ↡遥ニ知[リ]テ↢父ノ王ノ請‡意ヲ↡、即チ発シテ↢神通ヲ↡如クニ↢弾指ノ頃ノ↡到ルコトヲ↦於王ノ所ニ↥。
^またおそらくは人神通の相を識らざらん。 ゆゑに*快鷹を引きて喩へとなす。 しかるに目連の通力は、 一念のあひだに四天下を繞ること百千の帀なり。 あに鷹と類をなすことを得んや。 かくのごとき*比校はすなはち衆多あり。 つぶさに引くべからず。 ¬賢愚経¼ につぶさに説きたまふがごとし。
又恐クハ人†不ラム↠識ラ↢神通之相ヲ↡。故ニ▲引キテ↢†快鷹ヲ↡為ス↠喩ト。†然ルニ目連†ノ通力ハ、一念之頃ニ遶ルコト↢四天下ヲ↡百千之帀ナリ。豈得ム↢与↠†鷹†為スコトヲ↟†類ト也。如キ‡↠是[ク]ノ比校†ハ乃チ有リ↢衆多↡。不↠可[カ]ラ↢具ニ引ク↡。如シ↢¬賢愚経ニ¼具ニ説[キタマフ]ガ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅵ)(ⅲ)釈文
・受戒
^「▲日0358日如是授王八戒」 といふは、 これ父の王命を延べて、 目連しばしば来りて戒を受けしむることを致すことを明かす。
言フ↢「日日如是授王八戒ト」↡者、▲此明ス↧父ノ王‡延ベテ↠命ヲ致スコトヲ↞使[ムル]コトヲ↢目連‡数バ来[リ]テ受ケ↟戒ヲ。
^問ひていはく、 八戒すでに勝れたりといふは、 一たび受くるにすなはち足りぬ。 なんぞ日々にこれを受くるを須ゐん。
▲問[ヒテ]曰[ク]、八戒既ニ言フ↠勝レタリト者、一[タ]ビ受クルニ即チ足リヌ。何ゾ†須ヰム↢日日ニ受クルヲ↟之ヲ。
^答へていはく、 山は高きを厭はず、 海は深きを厭はず、 刀は利きを厭はず、 日は明きを厭はず、 人は善を厭はず、 罪は除こるを厭はず、 賢は徳を厭はず、 仏は聖を厭はず。
~答[ヘテ]曰[ク]、山ハ不↠厭ハ↠高キ‡ヲ、海ハ不↠厭ハ↠深キ‡ヲ、刀ハ不↠厭ハ↠利キ‡ヲ、日ハ不↠厭ハ↠明[キ]ヲ、人ハ不↠厭ハ↠善ヨキヲ、罪ハ不↠厭ハ↠除コルヲ、賢ハカシコシ不↠厭[ハ]↠徳ヲ、仏ハ不↠厭[ハ]↠聖ヲ。
^しかるに王の意はすでに囚禁せられて、 さらに進止を蒙らず。 念々のうちに人の喚び殺すことを畏る。 これがために昼夜に心を傾け、 仰ぎて八戒を憑む。 善を積むことますます高きことを望欲して*来業を資せんと擬す。
~†然ルニ王ノ意者既ニ被レテ↢囚禁イマシメセ↡、更ニ不↠蒙ラ↢進止ヲ↡。念念之中ニ畏ル↢人ノ†喚ビ殺†スコトヲ↡。為ニ↠此ガ昼夜ニ傾ケ‡↠心ヲ、仰ギテ憑ム↢八戒ヲ↡。†望↢欲シテ積ムコト↠善ヲ増ス高キコトヲ↡擬ス↠資セムト↢来業ヲ↡。△
・説法
^「▲世尊亦遣富楼那為王説法」 といふは、 これ世尊慈悲の意重くして、 王の身を愍念したまふに、 たちまちに囚労に遇ひて、 おそらくは憂悴を生ずることを。
言フ↢「世尊亦遣富楼那為王説法ト」↡者、▲此†明ス↧世尊‡慈悲ノ意重クシテ、愍↢念シタマフニ王[ノ]身ヲ↡、忽ニ遇ヒテ↢囚イマシメ 労ニワヅラフ↡、恐クハ生†ズルコトヲ↢憂悴ヲ↡、
^しかるに*富楼那は聖弟子0474のなかにおいてもつともよく説法し、 よく方便ありて人の心を開発す。 この因縁のために、 如来*発遣して王のために法を説きて、 もつて憂悩を除かしめたまふことを明かす。
~†然ルニ富楼那者於テ↢聖弟子ノ中ニ↡最モ能ク†説法シ、善ク有[リ]テ↢方便↡開↢発ス人ノ心ヲ↡、為ニ↢此ノ因縁ノ↡、如来発遣シテ為ニ↠王ノ説†キテ↠法ヲ、以[テ]除カシメタマフコトヲ↦憂悩ヲ↥。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅶ)釈多日不死文
(ⅰ)科節
^七に ▲「如是時間」より下 「顔色和悦」に至るこのかたは、 まさしく父の王、 食と聞法とによりて多日死せざること0359を明かす。
七[ニ]従リ↢「如是時間‡」↡下至ル↢「顔色和悦‡ニ」↡已来[タハ]、▲正[シ]ク明ス↧父ノ王因[リ]テ↢食ト聞法トニ↡多日‡不ルコトヲ↞死セ。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅶ)(ⅱ)述意
^これまさしく夫人多時に食をたてまつりて、 もつて飢渇を除き、 二聖 (目連・富楼那) また戒法をもつてうちに資けてよく王の意を開く。 食はよく命を延べ、 戒法は*神を養ひて、 苦を失し憂ひを亡じて、 顔容和悦ならしむることを致すことを明かす。
~此‡正[シク]†明0696ス↧夫人多時ニ奉[リ]テ↠食ヲ以テ除キ↢飢渇ヲ↡、二聖又以テ↢戒法ヲ↡†内ニ資ケテ善ク開ク↢王ノ意ヲ↡、食ハ能ク延ベ↠命ヲ、戒法ハ養ヒテ↠神ヲ、失シ↠苦ヲ亡ジテ↠憂ヲ、致スコトヲ↞使ムルコトヲ↢顔容和悦ナラ↡也。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (三)結
^上来七句の不同ありといへども、 広く禁父の縁を明かしをはりぬ。
上来雖モ↠有リト↢七句ノ不同↡、広ク明シ↢禁父ノ縁ヲ↡竟[リ]ヌ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ【禁母縁】
(一)標
【7】 ^三に↑禁母の縁のなかにつきてすなはちその八あり。
▲三[ニ]就キテ↢禁母ノ縁ノ中ニ↡即チ有リ↢其ノ八↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)釈
(Ⅰ)釈問父音信文
(ⅰ)科節
^一には ▲「時阿闍世」より下 「由存在耶」に至るこのかたは、 まさしく父の音信を問ふことを明かす。
一[ニハ]従リ↢「時阿闍世‡」↡下至ル↢「由存在耶‡ニ」↡已来[タ]ハ、▲正[シ]ク明ス↠問[フ]コトヲ↢父ノ音信ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅱ)述意
^これ闍王、 父を禁ずること日数すでに多し。 人の交はりすべて絶え、 水食通ぜずして*二七有余なり。 命終るべし。 この念をなしをはりて、 すなはち宮門に致りて守門のものに問ひて、 「父の王いまなほ存在せりや」 といふことを明かす。
~此†明ス↧闍王禁ズルコト↠父ヲ日数既ニ多シ、人ノ交リ†総テ絶エ、水食不シテ↠通ゼ二七有余ナリ、命応シ↠終ル也、作シ↢是ノ念ヲ↡已[リ]テ即チ*致[リ]テ↢宮門ニ↡問†ヒテ↢守門ノ者ニ↡、父ノ王†今者猶存在セリ耶トイフコトヲ↥。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅲ)料簡
(a)問
^問ひていはく、 もし人一餐の飯を食して、 限り七日に至りぬればすなはち死す。 父の王*三七を経たるをもつて計るに、 命断ゆべきこと疑なし。 闍王なにをもつてかただちに問ひて、 「門家、 父の王いま死しをはれりや」 といはずして、 いかんぞ疑を致して「なほ存在せりや」 と問へるは、 なんの意かあるや。
問[ヒテ]曰[ク]、若シ人食シテ↢一餐之†飯ヲ↡、限リ至[リ]ヌレバ↢七日ニ↡即チ死ス。父ノ王以テ↠経タルヲ↢三七ヲ↡計ルニ、合キコト↢命断ユ↡無シ↠疑。闍王何ヲ以テカ不シテ↣直ニ問[ヒ]テ、曰ハ↢門家†、父ノ王今者死シ竟レリ耶ト↡、†云何ゾ致シテ↠†疑ヲ†而問ヘル↢猶存在†セリヤト↡者、有ル↢何[ノ]意カ↡也。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅲ)(b)答
^答へていはく、 これはこれ闍王*意密の問なり。 ただおもんみれば*万基の主なれば、 *挙0360動随宜なるべからず。 父の王すでにこれ天性情親し、 いひて 「死せりや」 と問ふべきことなし。 おそらくは失、 当時にありて、 もつて*譏過を成ずることを。 ただおもんみれば内心に死を標して、 口に 「ありや」 と問へるは、 永き*悪逆の声を息めんと欲するがためなり。
答[ヘテ]曰[ク]、此ハ是闍王意密ノ†問也。†但†以レバ万基之主ナレバ、挙動不↠†可カラ↢随宜ナル↡。父ノ王既ニ是天性情親シ、無シ↠容キコト↢†言ヒテ問フ↟死セリヤト。恐クハ失在[リ]テ↢当時ニ↡、以テ‡成†ズルコトヲ↢譏ソシリ過トガヲ↡。但以レバ内心ニ標シテアラハス ↠死ヲ、口ニ問†ヘル↠在リヤト者、為↠欲スルガ↠息メムト↢永キ悪逆之声ヲ↡也。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)釈門家具答文
(ⅰ)科節
^二に ▲「時守門人白言」より下 「不可禁制」に至るこのかた0475は、 まさしく門家事をもつてつぶさに答ふることを明かす。
二[ニ]従リ↢「時守門人白言‡」↡下至ル↢「不可禁制‡ニ」↡已来[タハ]、▲正[シ]ク明ス↢門家以テ↠事ヲ具ニ答フルコトヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)述意
^これ闍世前に 「父の王ありや」 と問へば、 いま次に門家奉答することを明かす。
此‡明ス↧闍世前ニ†問ヘバ↢父[ノ]王在リヤト↡者、今次ニ門家奉答スルコトヲ↥。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅲ)釈文
・奉食事
^▲「白言大王国大夫人」 といふ以下は、 まさしく夫人密かに王に食をたてまつるに、 王すでに食を得。 食よく命を延べて、 多日を経といへども父の命なほ存ず。 これすなはち夫人の意にして、 この門家の過にはあらずといふことを明かす。
「白言大王国大夫人トイフ‡」已下ハ、▲正[シク]†明ス↧夫人密ニ奉ル[ニ]↢王ニ食ヲ↡、王既ニ†得↠食ヲ、食能ク延ベテ↠命ヲ、雖モ↠経ト↢多日ヲ↡父ノ命0697猶存ズ、此乃チ夫人之意†ニシテ、非ズトイフコトヲ↦†是ノ門家之過ニハ↥。
^問ひていはく、 夫人食をたてまつるに、 身の上に麨を塗りて衣の下に密かに覆ふ。 出入往還するに、 人の見ることを得ることなし。 なんがゆゑぞ門家つぶさに夫人食をたてまつる事を顕す。
問[ヒテ]曰[ク]、夫人奉ルニ↠食ヲ、身ノ上ニ塗リ[テ]↠麨ヲ†衣ノ下ニ密ニ覆†フ。出入往ユキ還カヘルスルニ、無シ↢人[ノ]得[ル]コト↟見[ル]コト[ヲ]。何ガ故ゾ門家具ニ顕ス‡↢夫人‡奉ル↠食ヲ之†事ヲ↡。
^答へていはく、 一切の*私密久しく行ずべからず。 たとひ巧みに牢く蔵せども、 事還りて彰露る。 父の王すでに禁ぜられて宮内にあり、 夫人日々に往還す。 もし密かに麨を持ちて食せしめずは、 王の命0361活くること得るに由なし。
答[ヘテ]曰[ク]、一切ノ†私密不↠可[カ]ラ↢久[シ]ク行ズ↡。縦ヒ巧ニ牢ク蔵セドモ、事還[リ]テ彰露アラハレアラハル†ル。父ノ王既ニ禁ゼラレテ在リ↢宮内ニ↡、夫人日日ニ往還ス。若シ不ハ↢密ニ持[チ]テ↠麨ヲ食セシメ↡、王ノ命無シ↠由↠得ルニ↠活クルコト。
^いま 「密」 といふは、 門家に望めて夫人の意を述ぶるなり。 夫人密して*外人知らずと謂へども、 その門家ことごとくもつてこれを覚らざらんや。 いますでに事窮まりて、 あひ隠すに由なし。 ここをもつて一々つぶさに王に向かひて説く。
今言フ↠密ト者、望メテ↢門家ニ↡述ブル↢夫人ノ意ヲ↡也。夫人謂ヘドモ↢密シテ外人‡不ト↟知ラ‡、不ラムヤ↢其ノ門家尽ク以テ覚ラ↟之ヲ。今既ニ†事†窮リテ、無シ↠由↢相隠スニ↡。是ヲ以テ一一‡具ニ向[ヒ]テ↠王ニ説ク。
・説法事
^▲「沙門目連」 といふ以下は、 まさしく二聖 (目連・富楼那) 空に騰りて来去し、 門路によらず。 日々に往還して王のために法を説く。 大王まさに知るべし。 *夫人の進食先に王の教を奉けず、 ゆゑにあへて*遮約せず。 二聖空に乗ず、 これまた*門制によらずといふことを明かす。
言フ↢「沙門目連ト」↡已下ハ、正[シク]†明ス↧二聖†騰[リ]テ↠空ニ来去†シ、不↠由ラ↢門路ニ↡、日日ニ往還シテ為ニ↠王[ノ]説ク↠法ヲ、大王当ベ ニシ↠知ル、夫人ノ†進食先ニ不↠†奉ケ↢王ノ教ヲ↡、†所以ニ不↢敢テ遮サヘギリ約セ↡トヾメズ、二聖乗ズ↠空ニ、此亦不トイフコトヲ↞猶ラ↢門制ニ↡也。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅲ)釈闍王瞋怒文
(ⅰ)科節
^三に ▲「時阿闍世聞此語」より下 「欲害其母」に至るこのかたは、 まさしく世王の瞋怒を明かす。
三[ニ]従リ↢「時阿闍世聞此語‡」↡下至ル↢「欲害其母‡ニ」↡已来[タハ]、▲正[シク]明ス↢世王ノ†瞋怒ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅲ)(ⅱ)述意
^これ闍王すでに門家の*分疏を聞きをはりて、 すなはち夫人において心に悪怒を起し、 口に悪辞を陳ぶることを明かす。
~此明†ス↧闍王既ニ聞キ↢門家ノ分疏ヲ↡已[リ]テ、即チ†於テ↢夫人ニ↡心ニ起シ↢悪怒ヲ↡、口ニ陳ブルコトヲ↦†悪辞ヲ↥。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅲ)(ⅲ)釈文
・逆悪
^また三業の逆と三業の悪とを起す。 父母を罵りて賊となすを口業の逆と名づく。 沙門を罵るを口業の悪と名づく。 剣を執りて母を殺さんとするを身業の逆と名づく。 身口の所為、 心をもつて主となすを、 すなはち意0476業の逆と名づく。 また*前方便を悪となし、 *後の正行を逆となす。
~又†起ス↢三業ノ逆ト三業ノ悪トヲ↡。†罵リテ↢父母ヲ↡†為スヲ↠賊ト名†ク↢口業ノ逆ト↡。†罵ルヲ↢沙門ヲ↡†者名†ク↢口業ノ悪ト↡。執[リ]テ↠剣ヲ†殺サムトスルヲ↠母ヲ名ク↢身業ノ逆ト↡。身口ノ†所為以テ↠心ヲ為ス[ヲ]↠主ト、即チ名ク↢意業ノ逆ト↡。又復前方便ヲ為シ↠悪ト、後[ノ]正行ヲ為ス↠逆ト。△
・罵其母
^▲「我母是賊」 といふ以下は、 まさしく口に悪辞を出すことを明かす。 いかんぞ母を罵りて、 「賊0362なり、 賊の伴なればなり」 となす。 ただ闍王の元の心怨を父に致し、 早く終らざることを恨むに、 母すなはち和してために糧を進むるがゆゑに死せざらしむ。 このゆゑに罵りて、 「わが母はこれ賊なり、 賊の伴なればなり」 といふ。
言フ‡↢「我母是賊ト‡」↡已下[ハ]、▲正[シク]明ス↣口ニ出スコトヲ↢†悪辞ヲ↡。云何ゾ†罵リテ↠母ヲ、†為ス↢賊ナリ賊之伴ナレバナリト↡也。†但闍王[ノ]元ノ心致†シ↢†怨ヲ於父ニ↡、†恨ムニ↠不ルコトヲ↢早ク終ラ↡、母‡乃チ*和シテ†為ニ進ムルガ↠糧ヲ故ニ令ム↠不ラ↠死0698セ。是ノ故ニ†罵リテ言フ↢我ガ母ハ是賊ナリ、賊之伴[ナレバ]ナリト↡†也。
・瞋二聖
^▲「沙門悪人」 といふ以下は、 これ闍世、 母の食を進むることを瞋り、 また*沙門、 王のために来去することを聞きて、 さらに瞋心を発さしむることを致すことを明かす。 「ゆゑになんの呪術ありてか悪王をして多日に死せざらしむ」 といふ。
言フ↢「沙門悪人ト」↡已下[ハ]、▲此‡†明ス↧闍世瞋リ↢母ノ進ムルコトヲ↟食ヲ、復聞キテ↢沙門与ニ↠王ノ来去スルコトヲ↡、致スコトヲ↞使[ムル]コトヲ↣更ニ発サ↢瞋心ヲ↡。故ニ云フ↧有[リ]テカ↢†何ノ呪術↡而令ム‡ト↦悪王ヲシテ多日ニ不ラ↞死セ。
・欲害母
^▲「即執利剣」 といふ以下は、 これ世王の瞋り盛りにして、 逆母に及ぶことを明かす。 なんぞそれ痛ましきかな。 頭を撮りて剣を擬す。 身命たちまちに須臾にあり。 *慈母合掌して身を曲げ頭を低れ、 *児の手に就く。 夫人その時熱き汗あまねく流れて、 *心神悶絶す。 ああ哀れなるかな、 *怳忽のあひだにこの苦難に逢へること。
言フ↢「即執利剣ト」↡已下[ハ]、▲此明ス↣世王ノ瞋盛ニシテ、逆及ブコトヲ↢於母ニ↡。何ゾ其痛マシキ哉‡。撮リテ↠頭ヲ†擬ス↠剣ヲ。身命頓チニ在リ↢須臾ニ↡。慈母合掌シテ曲ゲ↠身ヲ†低レ↠頭ヲ、就ク↢†児之手ニ↡。夫人爾[ノ]時熱キ汗遍ク流レテ、心神悶絶ス。嗚呼哀レナル哉、怳忽之間ニ逢ヘル[コト]↢斯ノ苦難ニ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅳ)釈二臣切諌文
(ⅰ)科節
^四に ▲「時有一臣名曰月光」より下 「却行而退」に至るこのかたは、 まさしく二臣 (*月光・*耆婆) *切諌して聴さざることを明かす。
四[ニ]従リ↢「時有一臣名曰月光‡」↡下至ル↢「却行而退‡ニ」↡已来[タ]ハ、▲正[シク]明ス↢二臣切諌オシフシテ不ルコトヲ↟聴サ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅳ)(ⅱ)述意
^これ二臣はすなはちこれ国の輔相、 立政の綱紀なり。 万国に名を揚げ、 *八方*昉習することを得んと望む。 たちまちに闍王の*勃逆を起して、 剣を執りてその母を殺さんと欲するを見て、 この悪事を見るに忍びず。 つひに耆婆と*顔を犯して諌を設くることを0363明かす。
▲此‡明ス↩二臣[ハ]乃チ是国之輔相、立政マツリゴト之 綱オホツナ*記ナリ、望ム↠得ムト↢万国ニ揚ゲ↠名ヲ、八方‡昉習スルコトヲ↡、忽ニ†見テ↧闍王ノ起シテ↢於勃ニワカニ逆ヲ↡執[リ]テ↠剣ヲ欲スルヲ↞殺サムト↢其ノ母ヲ↡、†不↠忍ビ↠見[ル]ニ↢斯ノ悪事ヲ↡、遂ニ与↢耆婆↡犯シテ↠顔ヲ設クルコトヲ↝諌ヲイサミ也。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅳ)(ⅲ)釈文
^「▲時」 といふは、 闍王母を殺さんと欲する時に当れり。 「▲有一大臣」 といふはその位を彰す。 「▲月光」 といふはその名を彰す。 「▲聡明多智」 といふはその徳を彰す。
▲言フ↢「時ト」↡者、†当レリ↢闍王欲スル↠殺サムト↠母ヲ時ニ↡也。言フ↢「有一大臣ト」↡者彰ス↢其ノ位ヲ↡也。言フ↢「月光ト」↡者、▲彰ス↢其ノ名ヲ↡也。言フ↢「聡明多智ト」↡者▲彰ス↢其ノ徳ヲ↡也。
^「▲及与耆婆」 といふは、 耆婆はまたこれ父の王の子にして、 *奈女の児なり。 たちまちに*家兄の母において逆を起すを見て、 つひに月光と同じく諌0477む。
言フ↢「及与耆婆ト」↡者、耆婆[ハ]▲亦是父ノ王之子[ニシテ]、奈女之†児ナリ。忽ニ見テ↢家兄 アニ ノ於テ↠母ニ起スヲ↟逆ヲ、遂ニ与↢月光↡同[ジ]ク諌[ム]†。
^「▲為王作礼」 といふは、 おほよそ*大人を*諮諌せんと欲する法は、 かならずすべからく拝を設けて、 もつて身敬を表すべし。 いまこの二臣 (月光・耆婆) もまたしかなり。 先づ身敬を設けて王の心を覚動し、 手を斂め躬を曲げてまさに本意を陳ぶ。
言フ↢「為王作礼ト」↡者、凡ソ欲スル↣諮↢トブラヒ諌セムトオソフ 大人ヲ↡之法ハ、要ズ須クベシ ↣設ケテ↠拝ヲ、以テ†表ス↢身敬ヲ↡。今此ノ二臣[モ]亦爾ナリ。先ヅ設ケテ↢身敬ヲ↡覚↢動†シ王ノ心ヲ↡、斂メ↠手ヲ曲ゲテ↠†躬ヲ方ニ陳ブ↢本意ヲ↡也。
^また 「▲白言大王」 といふは、 これ月光まさしく辞を陳べんと欲して、 闍王、 心を開き*聴攬することを得んと望むことを明かす。 この因縁のためのゆゑに、 先づ 「白」 を須ゐる。
又「白言大王トイフ」者、此‡明ス↢月光正[シ]ク†欲シテ↠陳ベムト↠辞ヲ、望ムコトヲ↟得ムト↢闍王開キ‡↠心ヲ聴 キヽ 0699攬ミル†スルコトヲ↡。為ノ↢此ノ因縁ノ↡故ニ、†須ヰル↢先ヅ白スヲ↡。
^「▲臣聞毘陀論経説」 といふは、 これ広く*古今の書史、 歴帝の文記を引くことを明かす。 古人いはく、 「いふこと典に関らざるは君子の慚づるところなり」 と。 いますでに諌事軽からず、 あに虚言をもつて妄説すべけんや。
言フ↢「臣聞毘陀論経説ト」↡者、▲此‡明ス↣広ク引クコトヲ↢古今ノ書フミ史・歴帝之文記ヲシルス↡。古イニシヘ人‡云ク、言フコト不ルハ↠関ラ↠典ニ君子ノ所ナリ[ト]↠慚ヅル。今既ニ†諌事不↠軽カラ。豈可[ケ]ムヤ↢虚言ヲモテ妄説ス↡。
^「▲劫初以来」 といふはその時を彰す。
言フ↢「劫初已来ト」↡者▲彰ス↢其ノ時ヲ↡也。
^「▲有諸悪王」 といふは、 これ総じて非礼暴逆の人を標することを明かす。
言フ↢「有諸悪王ト」↡者、▲此‡明ス↣総ジテ†標スルコトヲ↢非礼暴アラキ逆之人ヲ↡也。
^「▲貪国位故」 といふは、 これ*非意に父の坐処を貪奪するところを明かす。
言フ↢「貪国位故ト」↡者、▲此‡明ス↤非意ニ所ヲ↣貪↢奪ウバウスル父ノ坐処ヲ↡也。
^「▲殺害其父」 といふは、 こ0364れすでに父において悪を起すことは久しく留むべからず。 ゆゑにすべからく命を断ずべしといふことを明かす。
言フ↢「殺害其父ト」↡者、▲此‡明ス↧既ニ於テ↠父ニ起ス†コトハ↠悪ヲ不↠可[カ]ラ↢久シク留†ム↡、故ニ須ベ クシトイフコトヲ↞†断ズ↠命ヲ也。
^「▲一万八千」 といふは、 これ王いま父を殺すことは、 かれと類同することを明かす。
言フ↢「一万八千ト」↡者、▲此明ス↢王今殺†スコト[ハ]↠父ヲ、与↠彼類同スルコトヲ↡也。
^「▲未曽聞有無道害母」 といふは、 これ古より今に至るまで、 父を害して位を取ることは*史籍やや談ずるも、 国を貪じて母を殺すことはすべて記せる処なきことを明かす。 もし劫初以来を論ぜば、 悪王国を貪ぜしに、 ただその父を殺して慈母に加へず。
言[フ]↢「未曽聞有無道害母ト」↡者、▲此明ス↣自リ↠古至†ルマデ↠今ニ、害シテ↠父ヲ取†ルコトハ↠位ヲ史籍‡†良談ズルモ、貪ジテ↠国[ヲ]†殺スコトハ↠母ヲ都テ無[キ]コトヲ↢記セル処↡。若シ論ゼバ↢†劫初已来ヲ↡、悪王‡貪†ゼシニ↠国ヲ、但殺シテ↢其ノ父ヲ↡不↠加ヘ↢慈母†ニ↡。
^これすなはち古の今に異なるを引く。 大王いま国を貪じて父を殺す。 父はすなはち位の貪ずべきことあり。 古に類同せしむべし。 母はすなはち位の求むべきなし。 横に逆害を加ふ。 ここをもつて今をもつて昔に異す。
此則チ†引ク↢古ノ異ナルヲ↟今ニ。大王今者貪ジテ↠国[ヲ]殺ス↠父ヲ。父ハ則チ有リ↢位ノ可キ[コト]↟貪ズ。可シ↠使ム↣類↢同セ於古ニ↡。母ハ即チ無シ↢位†ノ可キ↟求ム。†横ニ加フ↢逆害ヲ↡。是ヲ以テ†将テ↠今ヲ異ス↠昔ニ也。
^「▲王いまこの殺母をなさば、 刹利種を汚さん」 といふ。 「刹利」 といふは、 すなはちこれ四姓の高元、 王者の種なり、 代々相承す。 あに凡砕に同じからんや。
言フ↧「王今為†サバ↢此ノ殺母ヲ↡者、汚†サムト↦刹利‡種ヲ↥」也。▲言[フ]↢「刹利ト」↡者、乃チ是四姓ノ高元 モト 、王者之種[ナリ]、代代相承ス。豈同ジカラムヤ↢凡砕ニ↡。
^「▲臣不忍聞」 といふ0478は、 王、 悪を起して宗親を損辱するを見ば、 悪声流布せん。 わが性望恥慚するに地なし。
言[フ]↢「臣不忍聞ト」↡者、▲†見バ↣王起シテ↠悪ヲ損↢辱スルヲ宗親ヲ↡、悪声流布セム。我[ガ]之性望ノゾム†恥慚スルニ無シ↠地。
^「▲是旃陀羅」 といふはすなはちこれ四姓の下流なり。 これすなはち性、 匈悪を懐きて仁義を閑はず。 人の皮を着たりといへども、 行ひ禽獣に同じ。 王は上族に居して、 押して万基に臨む主なり。 いますでに悪を起して恩に加ふ、 かの下流となんぞ異0365ならんや。
言フ↢「是旃陀羅ト」↡者▲乃チ是四姓之下流也。此乃チ性懐キテ↢匈アシク悪ヲ↡不↠閑ハ↢仁義ヲ↡。雖モ↠著タリト↢人ノ皮ヲ↡、行[ヒ]同ジ↢禽獣ニ↡。王ハ居シテ↢上族ヤカラニ↡、押シテ臨ム↢†万基ニ↡之主ナリ。今既ニ起シテ↠悪ヲ加フ↠恩0700ニ、与↢彼ノ下流↡何ゾ異ナラム也。
^「▲不宜住此」 といふはすなはち二義あり。 一には王いま悪を造りて*風礼を存ぜず。 *京邑神州、 あに旃陀羅をして主たらしめんや。 これすなはち宮城を擯出する意なり。 二には王国にありといへどもわが宗親を損せば、 遠く他方に擯して永く*無聞の地に絶たんにはしかず。 ゆゑに不宜住此といふ。
言フ↢「不宜住此ト」↡者▲即[チ]有リ↢二義↡。一[ニ]者王今造リテ↠悪ヲ不↠存ゼ↢風礼ヲ↡。京キヤウ邑サト神州‡、豈†遣メム↢旃陀羅ヲシテ為ラ↟主也。此即[チ]擯ヤリ↢出スルイダス 宮城ヲ↡意也。二[ニ]者王雖モ↠在リト↠国ニ損†セバ↢我[ガ]宗親ヲ↡、†不↠如カ↧遠ク擯シテ↢他方ニ↡永ク絶タムニハ↦無聞之地ニ↥。故ニ云フ↢「不宜住此ト」↡也。
^▲「時二大臣説此語」 といふ以下は、 これ二臣 (月光・耆婆) の直諌切にして、 語きはめて粗くして、 広く古今を引きて、 王の心開悟することを得んと望むことを明かす。
言[フ]↢「時二大臣説此語ト」↡已下ハ、▲此‡明ス↧二臣[ノ]†直諌切ニシテ、語極メテ麁クシテ、広ク引キテ↢古今ヲ↡、望ムコトヲ↞†得ムト↢王ノ心開悟スルコトヲ↡。
^「▲以手按剣」 といふは、 臣みづから手中の*剣を按ずるなり。
言フ↢「以手按剣ト」↡者、▲臣自ラ†按ズル↢手中ノ剣ヲ↡也。
^問ひていはく、 *諌辞粗悪にして顔を犯すことを避けず、 君臣の義すでに乖けり。 なにをもつてか身を回らしてただちに去らずして、 すなはち*却行而退すといふや。
~問[ヒテ]曰[ク]、諌辞コトバ麁悪ニシテ†不↠避ケ↠犯スコトヲ↠†顔ヲ、君臣之義既ニ*乖ケリ。何[ヲ]以[テ]カ不シテ↢†廻シテ↠身ヲ直ニ去ラ↡、乃チ言フ↢「却行而退[ス]ト」↡也。
^答へていはく、 粗言王に逆ふといへども、 害母の心を息むることを望む。 またおそらくは*瞋毒いまだ除こらず、 繋けたる剣おのれを危ふくすることを。 ここをもつて剣を按じてみづから防ぎて、 却行して退く。
~答[ヘテ]曰[ク]、麁アラキ言雖モ↠†逆フト↠王ニ、望ム↠息†ムルコトヲ↢†害母之心ヲ↡。又恐ハ瞋イカリ毒未ズ ダ↠除†コラ、†繋ケタル剣危ク†スルコトヲ↠己ヲ。是ヲ以テ†按ジテ↠剣ヲ自ラ防ギテ、却行シテ而退ク。△
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅴ)釈世王生怖文
(ⅰ)科節
^五に ▲「時阿闍世驚怖」より下 「汝不為我耶」に至るこのかたは、 まさしく世王怖れを生ずることを明かす。
五[ニ]従リ↢「時阿闍世 驚オドロキ 怖オソル‡」↡下至ル↢「汝不為我耶‡ニ」↡已来[タ]ハ、正[シク]明ス↢世王生ズルコトヲ↟怖ヲ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅴ)(ⅱ)述意
^これ闍世すでに二臣の諌辞粗切なるを見、 また剣を按じて去るを覩て、 臣われを背きてかの父の王に向かひてさらに*異計を生ず0366ることを恐れ、 *情地をして安からざらしむることを致すことを明かす。
此†明ス↩闍世既ニ見↢二臣[ノ]諌辞麁切ナルヲ↡、又覩テ↢†按ジテ↠剣ヲ而去ルヲ↡、恐レ↧臣背キテ↠我ヲ向ヒテ↢彼ノ父ノ王ニ↡更ニ生ズルコトヲ↦異計ヲ↥、致スコトヲ↝使[ムル]コトヲ↢情地ヲシテ不ラ↟安カラ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅴ)(ⅲ)釈文
^ゆゑに 「▲惶懼」 と称す。 かれすでにわれを捨つ、 たれがためにすといふことを知らず。 心疑ひて決せず。 つひ0479にすなはち口に問ひてこれを審らかにす。 ゆゑに 「耆婆▲汝不為我」 といふ。
故ニ称ス↢ 惶オノヽキ懼ヲツト↡。彼既ニ捨†ツ↠我ヲ、不↠知ラ↠為ニスト[イフコトヲ]↠誰ガ。心‡疑[ヒ]テ不↠決セ。遂ニ即チ口ニ問[ヒ]テ†審カニス↠之ヲ。故ニ云フ↢「耆婆汝不為我也ト」↡。
^「▲耆婆」 といふはこれ王の弟なり。 古人いはく、 「家に衰禍あるときは、 親にあらざれば救はず」 と。 なんぢすでにこれわが弟なれば、 あに月光に同ぜんや。
▲言フ↢耆婆ト↡者是王之弟也。古人‡云ク、家ニ有[ル]トキハ↢衰禍ワザワイ↡、非ザレバ↠親ニ不[ト]↠救ハ。汝既ニ是我ガ弟†ナレバ者、豈†同ゼム↢月光ニ↡也。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅵ)釈二臣重諌文
(ⅰ)科節
^六に ▲「耆婆白言」より下 「慎莫害母」に至るこのかたは、 二臣 (月光・耆婆) かさねて諌むることを明かす。
六[ニ]従リ↢「耆婆白言‡」↡下至ル↢「慎莫害母‡ニ」↡已来[タ]ハ、明ス↢▲二臣重テ†諌ムルコトヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅵ)(ⅱ)述意
^これ耆婆実をもつて大王に答ふることを明かす。 「もしわれらを得て*相となさんと欲せば、 願はくは母を害することなかれ」 となり。 ここに直諌すること竟りぬ。
~此‡明ス↣耆婆実ヲモテ答[フル]コトヲ↢大王ニ↡。若シ†欲セバ↧得テ↢我等ヲ↡為0701サムト↞相ト者、願クハ勿レ[ト]↠害[スル]コト↠母ヲ也。†此ニ†直諌スルコト竟[リ]ヌ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅶ)釈闍王受諌文
(ⅰ)科節
^七に ▲「王聞此語」より下 「止不害母」に至るこのかたは、 まさしく闍王諌を受けて母の*残命を放すことを明かす。
七[ニ]従リ↢「王聞此語‡」↡下至ル↢「止不害母‡ニ」↡已来[タ]ハ、▲正[シク]明ス↣闍王受ケテ↠諌イサムヲ放スコトヲ↢母ノ残命ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅶ)(ⅱ)述意
^これ世王すでに耆婆が諌を得をはりて、 心に悔恨を生じ、 前の所造を愧ぢて、 すなはち二臣に向かひて哀れみを求め命を乞ふ。 よりてすなはち母を放して死の難を脱れしめ、 手中の剣本の匣に還帰することを明かす。
~此‡明ス↧世王既ニ得↢耆婆ガ諌ヲ↡已[リ]テ、心ニ生ジ‡↢悔クヰ恨ヲウラミ↡、愧ヂテ↢前ノ所造ヲ↡、即チ向[ヒ]テ↢二臣ニ↡求メ‡↠哀ミヲ乞フ‡↠命ヲ、因[リ]テ即チ放シテ↠母ヲ脱†レシメ↢於死ノ難ヲ↡、†手中之剣‡†還↦帰スルコトヲ本ノ匣ニ↥。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅷ)釈闍王禁母文
(ⅰ)科節
^八に ▲「勅語内官」より下 「不令復出」に至るこのかたは、 その世王の余瞋母を禁ずることを明かす。
八[ニ]従リ↢「勅語内官‡」↡下至ル↢「不令復出‡ニ」↡已来[タ]ハ、▲明ス↢其ノ世王ノ余瞋イカル禁ズルコトヲ↟母ヲ。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅷ)(ⅱ)述意
^これ世王、 臣の諌を受けて母を放すといへども、 なほ余瞋0367ありてほかにあらしめず。 内官に勅語し深宮に閉置して、 さらに出して父の王とあひ見えしむることなきことを明かす。
此‡明ス↩世王雖モ↧受ケテ↢臣ノ諌ヲ↡放スト↞母ヲ、猶有[リ]テ↢余瞋↡不↠令メ↠在ラ↠外ニ、勅↢語シ‡内官ニ↡†閉↢置シテ深宮ニ↡、更ニ莫キコトヲ↝令ムルコト↧出シテ与↢父ノ王↡相†見エ↥。
二 Ⅱ ⅱ b ハ (三)結
^上来八句の不同ありといへども、 広く禁母の縁を明かしをはりぬ。
上来‡雖モ↠有[リ]ト↢八句ノ不同↡、広ク明シ↢禁母ノ縁[ヲ]↡竟[リ]ヌ。
二 Ⅱ ⅱ b ニ【厭苦縁】
(一)標
【8】 ^四に↑厭苦の縁のなかにつきてすなはちその四あり。
▲四[ニ]就[キ]テ↢厭イトフ苦ノ縁ノ中ニ↡即[チ]有リ↢其ノ四↡。
二 Ⅱ ⅱ b ニ (二)釈
(Ⅰ)釈為子幽禁文
(ⅰ)科節
^一には ▲「時韋提希」より下 「憔悴」に至るこのかたは、 まさしく夫人子のために幽禁せらるることを明かす。
一[ニハ]従リ↢「時韋提希‡」↡下至ル↢「憔悴‡ニ」↡已来[タハ]、▲正[シク]明ス↢夫人為ニ↠子ノ幽禁セラルルコトヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ニ (二)(Ⅰ)(ⅱ)述意
^これ夫人死の難を勉るといへども、 さらに深宮に閉ぢ在かれて、 *守当きはめて牢くして出づることを得るに由なし。 ただ念々に憂ひを懐くことのみありて、 自然に憔悴することを明かす。
~此明[ス]↧夫人雖モ↠†勉ルト↢死ノ難ヲ↡、更ニ*閉ヂ↢在カレテ深フカキ宮ミヤニ↡、守マモル当極メテ牢クシテ無シ↠由↠得[ル]ニ↠出[ヅルコ]トヲ、唯有[リ]テ↢念念ニ懐クコトノミ↟憂ヲ、自然ニ憔カシケ悴ヲトロフスルコトヲ↥。
二 Ⅱ ⅱ b ニ (二)(Ⅰ)(ⅲ)傷歎
^傷歎していはく、 「禍なるかな今日の苦、 闍王喚びて利刃の中間に結ぎ、 また深宮に置く難に遇値ふ」 と。
~傷歎シテ曰ク、禍ナル哉†今日ノ†苦、遇↧値フ†ト闍王‡喚ビテ利刃ノ中間ニ†結ギ、復置ク↢深宮ニ↡難ニ↥。△
二 Ⅱ ⅱ b ニ (二)(Ⅰ)(ⅳ)料簡
^問ひていはく、 夫人すでに死を勉れて宮0480に入ることを得。 よろしく*訝楽すべし、 なにによりてかかへりてさらに愁憂するや。
▲問[ヒ]テ曰ク、夫人既ニ†得↢勉レテ↠死ヲ入[ル]コトヲ↟宮ニ。宜シク応シ↢訝イサミ楽ス↡、何ニ因リテカ反[リ]テ更ニ愁ウレヘ 憂ウレフスル也。
^答へていはく、 すなはち三義の不同あり。
~答[ヘテ]曰[ク]、即チ有リ↢三‡義ノ不同↡。
^一には夫人すでにみづから閉ぢられて、 さらに人の食を進めて王に与ふるなし。 王またわが難にあるを聞きてうたたさらに愁憂せん。 いますでに食なくして憂ひを加へば、 王の身命さだめて久しからざるべきことを明かす。
~一[ニハ]明ス↧夫人既ニ自ラ被レテ↠閉ヂ、更ニ無シ↢人†ノ進メテ↠食ヲ与フル‡↟王ニ、王又聞キテ↢我ガ在ルヲ↟難ニ転タ更ニ愁憂セム‡、今既ニ無クシテ↠食加ヘ†バ↠憂ヲ者、王之身命定メテ応キコトヲ↞不ル↠久シカラ。
^二には夫人すでに囚難を被る、 いづれの時にかさらに如来 (釈尊) の面およびも0368ろもろの弟子を見たてまつらんといふことを明かす。
~二[ニハ]明ス↧夫人既ニ†被ル↢囚イマシメ難ヲ↡、何ノ時ニカ更ニ見タテマツラムトイフコトヲ↦如来之†面0702及ビ諸ノ弟子ヲ↥。
^三には夫人教を奉けて禁ぜられて深宮にあり。 内官守当して*水泄すら通ぜず。 *旦夕のあひだ、 ただ死路のみを愁ふることを明かす。
~三[ニハ]明[ス]↧夫人奉ケテ↠教ヲ禁†ゼラレテ在リ↢深宮ニ↡、内官‡守当シテ†水泄スラ不↠通ゼ、旦アシタ夕ユフベ之間‡唯愁フルコトヲ↦死路[ノミ]ヲ↥。
^この三義ありて身心を切逼す。 憔悴することなきことを得んや。
~有[リ]テ↢斯ノ三‡義↡切↢逼ス身心ヲ↡。得ム↠無[キ]コトヲ↢憔悴スルコト↡也。△
二 Ⅱ ⅱ b ニ (二)(Ⅱ)釈夫人請仏文
(ⅰ)科節
^二に ▲「遥向耆闍崛山」より下 「未挙頭頃」に至るこのかたは、 まさしく夫人禁によりて仏を請じ、 意に陳ぶるところあることを明かす。
二[ニ]従リ↢「遥向耆闍崛山‡」↡下至ル↢「未挙頭頃‡ニ」↡已来[タハ]、▲正[シ]ク明ス↢夫人因[リ]テ↠禁ニ請ジ↠仏ヲ、意ニ有[ル]コトヲ↟所↠陳ブル。
二 Ⅱ ⅱ b ニ (二)(Ⅱ)(ⅱ)述意
^これ夫人すでに囚禁にありて、 自身仏辺に到ることを得るに由なし。 ただ*単心のみありて、 面を耆闍に向かへ、 はるかに世尊を礼したてまつりて、 「願はくは仏の慈悲、 弟子が愁憂の意を*表知したまへ」 といふことを明かす。
~此明ス↧夫人既ニ在[リ]テ↢囚禁ニ↡、自身無シ↠由↠得ルニ↠到ルコト[ヲ]↢仏辺ニ↡、唯有[リ]テ↢単心ノミ↡、面ヲ向ヘ‡↢耆闍ニ↡、遥ニ礼[シ]タテマツリテ↢世尊ヲ↡、願クハ仏ノ慈悲、表↦知シタマヘトイフコトヲ弟子ガ愁憂之意ヲ↥。
二 Ⅱ ⅱ b ニ (二)(Ⅱ)(ⅲ)釈文
^▲「如来在昔之時」 といふ以下は、 これに二義あり。
言フ↢「如来在昔之時ト」↡已下[ハ]、▲此[ニ]有リ↢二義↡。
^一には父の王いまだ禁ぜられざる時は、 あるいは王およびわが身親しく仏辺に到るべし、 あるいは如来およびもろもろの弟子親しく王の請を受くべし。 しかるにわれおよび王の身ともに囚禁にありて、 因縁断絶し、 *彼此情乖けることを明かす。
~一[ニハ]明[ス]↧父ノ王未ザ ダル↠被レ↠禁ゼ時ハ、或[イ]ハ可シ↣王及ビ†我ガ身親シク到†ル↢仏辺ニ↡、或[イ]ハ可シ↣如来及ビ諸ノ弟子‡親[シ]ク受†ク↢王ノ請ヲ↡、†然ルニ我及ビ王ノ身倶ニ在[リ]テ↢囚禁ニ↡、因縁断絶シ、彼此情乖†ケルコトヲ↥。
^二には父の王、 禁にありてよりこのかた、 しばしば世尊、 阿難を遣はして来りてわれを慰問せしめたまふことを蒙ることを明かす。 いかんが慰問する。 父の王の囚禁せらるるを見るをもつて、 仏、夫人の0369憂悩することを恐れたまふ。 この因縁をもつてのゆゑに慰問せしめたまふ。
~二[ニハ]明ス↫父ノ王在[リ]テヨリ↠禁[ニ]已来タ、数蒙ルコトヲ↪世尊遣シテ↢阿難ヲ↡来†リテ慰↩コシラヘ問†セシメタマフコトヲ我ヲ↨。云何ガ慰問スル。以テ↠見[ル]ヲ↢父ノ王ノ囚禁セラルルヲ↡、仏†恐レタマフ↢夫人[ノ]憂ウレヘ悩ナヤム†スルコトヲ↡。†以テノ↢是ノ因縁ヲ↡故ニ†遣メタマフ↢慰コシラヘ問セ↡也。△
^「▲世尊威重無由得見」 といふは、 これ夫人うちにみづから卑謙して、 仏弟子に帰尊す。 「*穢質の女身、 *福因尠薄なり。 仏徳は威高し、 軽しく触るるに由なし。 願はくは目連等0481を遣はしてわれとあひ見えしめたまへ」 といふことを明かす。
言フ↢「世尊威重無由得見ト」↡者、▲此明ス↧夫人内ニ自ラ卑謙シテ、帰↢尊ス於仏弟子ニ↡、穢質ノ女身、福因 尠スクナク薄ウスシナリ、仏徳[ハ]威高シ、無シ↠由↢軽タヤスクシク触ルルニ↡、願クハ遣シテ↢目連等ヲ↡†与↠我相見エシメタマヘトイフコトヲ↥。
^問ひていはく、 如来はすなはちこれ化主なり。 *時宜を失はざるべし。 夫人なにをもつてか*三たび致請を加へずして、 すなはち目連等を喚ぶはなんの意かあるや。
▲問[ヒテ]曰[ク]、如来ハ即チ是化主ナリ。応シ↠不ル↠失 トガ ハ↢時宜ヲ↡。夫人何ヲ以テ[カ]不シテ↣三タビ加ヘ↢致請ヲ↡、乃チ†喚ブハ↢目連等ヲ↡有ル↢何[ノ]意カ↡也。
^答へていはく、 仏徳は尊厳なり。 小縁をもつてあへてたやすく請ぜず。 ただ阿難を見て、 語を伝へて、 往きて世尊にまうさしめんと欲す。 仏わが意を知りたまはば、 また阿難をして仏の語を伝へて、 われに*指授せしめたまはん。 この義をもつてのゆゑに阿難を見んと願ふ。
~答[ヘテ]曰[ク]、仏徳[ハ]尊厳ナリ。小縁ヲモテ不↢敢テ輒ク請ゼ↡。但見テ↢阿難ヲ↡、†欲ス↣伝ヘテ↠†語ヲ、往キテ白サ[シメ]ムト↢世尊ニ↡。仏知リタマ†ハバ↢我[ガ]意ヲ↡、復使メタマ†ハム↧阿難ヲシテ伝ヘテ↢仏之†語ヲ↡、指サシ↦授セサヅク†於我ニ↥。以0703テノ↢斯ノ義ヲ↡故ニ願フ↠見ムト↢阿難ヲ↡。
^「▲作是語已」 といふは総じて前の意を説きをはるなり。
言フ↢「作是語已ト」↡者総ジテ説キ↢前ノ意ヲ↡竟ル也。
^「▲悲泣雨涙」 といふは、 これ夫人みづからただ罪重し。 仏の加哀を請ずるに、 敬を致す情深くして悲涙目に満てり。
言フ↢「悲泣ナク雨涙ナンダト」↡者、▲此明[ス]↧夫人自ラ唯‡罪重シ、請[ズ]ルニ↢仏ノ加哀ヲアハレミ↡、致ス↠敬ヲ情深クシテ、悲涙満テリ↠目ニ、
二 Ⅱ ⅱ b ニ (二)(Ⅱ)(ⅳ)結意
^ただ霊儀を*渇仰するをもつて、 またますますはるかに礼し、 頂を叩きて*跱し、 しばらくいまだ挙げざることを明かす。
~但以テ↣渇↢仰スルヲ霊儀ヲ↡、復加遥ニ礼シ、叩キテ↠†頂ヲ†跱シ、須臾未ザ ダルコトヲ↞挙ゲ。
二 Ⅱ ⅱ b ニ (二)(Ⅲ)釈如来赴請文
(ⅰ)科節
^三に ▲「爾時世尊」より下 「天華持用供養」 に至るこのかたは、 まさしく世尊みづから来りて請に赴0370くことを明かす。
三[ニ]従リ↢「爾時世尊‡」↡下至ル↢「天華持用供養ニ」↡已来[タハ]、▲正[シク]明ス↢世尊自ラ来[リ]テ赴†クコトヲ↟請ニ。
二 Ⅱ ⅱ b ニ (二)(Ⅲ)(ⅱ)述意
^これ世尊耆闍にましますといへども、 すでに夫人の心念の意を知ることを明かす。
~此明ス↧世尊雖モ↠在スト↢耆闍ニ↡、已ニ知ルコトヲ↦夫人ノ心念之意ヲ↥。
二 Ⅱ ⅱ b ニ (二)(Ⅲ)(ⅲ)釈文
^「▲勅大目連等従空而来」 といふは、 これ夫人の請に応ずることを明かす。
言フ↢「勅大目連等従空而来ト」↡者、▲此明ス↠応ズルコトヲ↢夫人ノ請ニ↡†也。
^「▲仏従耆山没」 といふは、 これ夫人宮内の禁約きはめて難し。 仏もし身を現じて来赴したまはば、 おそらくは闍世知聞してさらに*留難を生ずることを。 この因縁をもつてのゆゑに、 すべからく*ここに没して*かしこに出でたまふべきことを明かす。
言フ↢「仏従耆山没ト」↡者、▲此明ス↧夫人宮内ノ禁約極メテ難シ、仏若シ現ジテ↠身ヲ来赴シタマハバオモムク 、恐畏ハ闍世知聞シテ更ニ生†ズルコトヲ↢留トヾマル難ヲ↡、以テノ↢是ノ因縁ヲ↡故ニ、須ベ クキコトヲ↦此ニ没シテ彼ニ出†デタマフ↥也。
^「▲時韋提礼已挙頭」 といふは、 これ夫人敬を致す時を明かす。
言フ↢「時韋提礼已挙アゲ頭トカウベ」↡者、▲此明ス↢夫人‡致ス↠敬ヲ之時ヲ↡也。
^「▲見仏世尊」 といふは、 これ世尊宮中にすでに出でて、 夫人をして頭を挙げてすなはち見しむることを致すことを明かす。
言フ↢「見仏世尊ト」↡者、▲此明ス↢世尊宮中ニ已ニ出デテ、致[ス]コトヲ↟使[ムル]コトヲ↢夫人ヲシテ挙ゲテ↠頭ヲ即チ見‡↡。
^「▲釈迦牟尼仏」 といふは余仏に*簡異す。 ただ諸仏は名通じ、 身相異ならず。 いまことさらに釈迦を*標定して疑なからしむ。
言フ↢「釈迦牟尼仏ト」↡者▲簡↢異ス余仏ニ↡。†但諸仏†ハ名通ジ‡、身相不↠異ナラ。今故ニ標↢定 アラハス シテ釈迦ヲ↡使ム↠無カラ↠疑也。
^「▲身紫金色」 といふはその相を顕し定む。 「▲坐百宝華」 といふは余座に簡異す。 ▲「目連侍左」 等といふ0482は、 これさらに余の衆なくして、 ただ二僧 (目連・阿難) のみあることを明かす。
言フ↢「身紫金色ト」↡者▲顕シ↢定ム其ノ相ヲ↡也。言フ↢「坐百宝華ト」↡者▲簡↢異†ス余座ニ↡也。言フ↢「目連侍左」等ト↡者、▲此明ス↧更ニ無クシテ↢余ノ衆↡、唯有[ル]コトヲ↦二僧[ノミ]↥。
^「▲↓釈↓梵↓護世」 といふは、 これ天王衆等、 仏世尊隠れて王宮に顕れたまふを見るに、 「かならず*希奇の法を説きたまはん、 われら天・人、 韋提によるがゆゑに*未聞の益を聴くことを得ん」 と。 おのおの本念に乗じてあまねく空に住臨して、 天耳はるかに餐して、 華0371を雨らして供養することを明かす。
言フ↢「釈梵護世ト」↡者、▲此明ス↧天王衆等、見ルニ↣仏世尊隠レテ†顕レタマフヲ↢王宮ニ↡、必ズ説†キタマハム↢希奇之法ヲ↡、我等天・人因ルガ↢韋提ニ↡故ニ得ム[ト]↠聴クコトヲ↢未聞之益ヲ↡、各[ノ]乗ジテ↢本念ニ↡普ク住↢臨シテ空ニ↡、天耳遥ニ餐シテアデハウ、†雨ラシテ↠華[ヲ]供養スルコトヲ↥。
^また 「↑釈」 といふは、 すなはちこれ*天帝なり。 「↑梵」 といふは、 すなはちこれ色界の*梵王等なり。 「↑護世」 といふは、 すなはちこれ四天王なり。 「▲諸天」 といふは、 すなはちこれ色・欲界等の天衆なり。 すでに天王の仏辺に来り向かへるを見て、 かのもろもろの天衆また王に従ひて来りて、 法を聞きて供養す。
又言フ↠釈ト者、即チ是天0704帝也。言フ↠梵ト者、即チ是色界ノ梵王等也。言フ↢護世ト↡者、即チ是四天王也。言フ↢「諸天ト」↡者、即チ是色・欲界等ノ天衆[ナリ]。既ニ見テ↣天王ノ来リ↢向ヘルヲ仏辺ニ↡、彼ノ諸ノ天衆亦従[ヒ]テ↠王ニ来[リ]テ、聞キテ↠法ヲ供養ス。
二 Ⅱ ⅱ b ニ (二)(Ⅳ)釈夫人傷歎文
(ⅰ)科節
^四に ▲「時韋提希見世尊」より下 「与提婆共為眷属」 に至るこのかたは、 まさしく夫人頭を挙げて仏を見たてまつり、 口言に傷歎し、 怨結の情深きことを明かす。
四[ニ]従リ↢「時韋提希見世尊‡」↡下至ル↢「与提婆共為眷属ニ」↡已来[タハ]、▲正[シク]明ス↢夫人挙[ゲ]テ↠頭ヲ見タテマツリ‡↠仏[ヲ]、口言[ニ]傷イタミ 歎ナゲキシ、怨アダ結ノ情深キコトヲ↡也。
二 Ⅱ ⅱ b ニ (二)(Ⅳ)(ⅱ)釈文
^「▲自絶瓔珞」 といふは、 これ夫人身の荘りの瓔珞なほ愛していまだ除かず、 たちまちに如来を見たてまつりて羞ぢ慚ぢてみづから絶つことを明かす。
言[フ]↢「自絶瓔珞ト」↡者、▲此明ス↧夫人身ノ荘[ノ]瓔珞猶愛シテ未ズ ダ↠除カ、忽ニ見タテマツリテ↢如来ヲ↡羞ヂ*慚†ヂテ自ラ絶ツコトヲ↥。
^問ひていはく、 いかんぞみづから絶つや。
▲問[ヒテ]曰[ク]、云何ゾ自ラ†絶ツ也。
^答へていはく、 夫人はすなはちこれ貴のなかの貴、 尊のなかの尊なり。 身の四威儀に多くの人供給し、 着たるところの衣服みな傍人を使ふ。 いますでに仏を見たてまつりて恥ぢ愧づる情深くして、 *鉤帯によらず、 たちまちにみづから掣き却く。 ゆゑに自絶といふ。
~答[ヘテ]曰[ク]、夫人ハ乃チ是†貴ノ中之貴、尊ノ中之尊ナリ。身ノ四威儀ニ多クノ人供給シ、所ノ↠着タル衣服皆使フ↢傍人ヲ↡。今既ニ見[タテマツリ]テ↠仏ヲ恥ヂ愧ヅル情深クシテ、不↠依ラ↢鉤クサリ帯ヲビニ↡、†頓チニ自ラ掣キ却ク。故ニ云フ↢自絶ト↡也。
^「▲挙身投地」 といふは、 これ夫人内心*感結して怨苦堪へがたし。 ここをもつて坐より身を踊らして立し、 立せるより身を踊らして地に投ぐることを明かす。 こ0372れすなはち歎恨処深くして、 さらに礼拝の威儀を事とせず。
言フ↢「挙身投地ト」↡者、▲此明ス↢夫人内心‡感結シ[テ]怨アダ苦難シ↠堪ヘ、是ヲ以テ従リ↠坐†踊ラシテ↠身ヲ而立シ、従リ↠立[セル]†踊ラシテ↠身ヲ投グルコト[ヲ]↟地ニ。此乃チ歎 タン 恨 コム †処深クシテ、更ニ不↠事トセ↢礼拝[ノ]威儀ヲ↡也。
^「▲号泣向仏」 といふは、 これ夫人仏前に*婉転し、 悶絶号哭することを明かす。
言[フ]↢「号泣向仏ト」↡者、▲此明ス↧夫人婉↢転シ‡仏前ニ↡、悶イキドヲリ絶‡号サケブ哭ナクスルコトヲ↥。
^▲「白仏」 といふ以下は、 これ夫人婉転涕哭することやや久しくして、 少しき惺めて0483はじめて*身の威儀を正しくして、 合掌して仏にまうすことを明かす。 「われ一生よりこのかた、 いまだかつてその大罪を造らず。 いぶかし、 宿業の因縁、 なんの*殃咎ありてかこの児とともに母子たる」 と。
言フ↢「白仏ト」↡已下[ハ]、▲此明[ス]↧夫人婉転涕ナク哭ナキスルコト量久シク[シテ]、少†シク惺メテ始テ正シクシテ↢身ノ威儀ヲ↡、合掌シテ白[ス]コトヲ↞仏ニ。我自リ↢一生↡已来、未ズ ダ↣曽テ造ラ↢其ノ大罪ヲ↡。未審、宿業ノ因縁有[リ]テ[カ]↢何ノ殃咎↡†而与↢此ノ†児↡共ニ為ル[ト]↢母子↡。
^これ夫人すでにみづから障深くして*宿因を識らず。 いま児に害を被る。 これ横に来れりと謂ひて、 「願はくは仏の慈悲、 われに*径路を示したまへ」 といふことを明かす。
~此明ス↧夫人既ニ自ラ障深クシテ不↠識ラ↢宿因ヲ↡、今被ル↢†児ニ害ヲ↡、謂ヒテ↢是†横ニ来レリト↡、願クハ仏ノ慈悲、示シタマヘトイフコトヲ↦我ニ径路ヲ↥。
^▲「世尊復有何等因縁」 といふ以下は、 これ夫人仏に向かひて陳訴す。 「われはこれ凡夫なり。 罪惑尽きざれば、 この悪報あり。 この事*甘心す。 世尊は曠劫に道を行じて、 正習ともに亡じたまへり。 衆智朗然として果円かなるを仏と号けたてまつる。 いぶかし、 なんの因縁ありてかすなはち提婆とともに眷属となりたまふ」 といふことを明かす。
▲言フ↢「世尊復有何等因縁ト」↡已下[ハ]、此0705明[ス]↧夫人向ヒテ↠仏ニ†陳訴ス、我ハ是凡夫[ナリ]、罪惑マドヒ不レバ↠尽キ、有リ↢斯ノ悪報↡、是ノ事甘心ス、世尊ハ曠劫ニ行ジテ↠道[ヲ]正習倶ニ亡ジ[タマヘリ]、衆智朗然トシテ果円カナルヲ†号ケタテマツル↠仏ト、未審、有[リ]テカ↢何ノ因縁↡乃チ与↢提婆↡共ニ†為リタマフトイフコトヲ↦眷属ト↥。
^この意に二あり。 一には夫人怨を子に致すことを明かす。 たちまちに父母において狂れて逆心を起せばなり。 二にはまた恨むらくは提婆、 わが闍世を教へてこの悪計を造らしむ。 もし提婆によらずは、 わが児つひにこの意なからんと0373いふことを明かす。 この因縁のためのゆゑにこの問を致す。
~此ノ意ニ有リ↠二。一[ニハ]明ス↣夫人致スコトヲ↢†怨ヲ於子ニ↡。忽ニ於テ↢父母ニ↡狂レテ起†セバナリ↢逆心ヲ↡。二[ニハ]明[ス]↧又恨ムラクハ提婆教ヘテ↢我ガ闍世ヲ↡造ラシム↢斯ノ悪計ヲ↡ハカリゴト、若シ不†ハ↠因ラ↢提婆ニ↡者、我[ガ]†児終ニ無†カラムトイフコトヲ↦此ノ意↥†也。為ノ↢此ノ因縁ノ↡故ニ致ス↢斯ノ問ヲ↡。
^また夫人、 仏に問ひて 「▲与提婆眷属」 といふはすなはちその二あり。 一には在家の眷属、 二には出家の眷属なり。
~又夫人問[ヒ]テ↠仏ニ云フ↢「与提婆眷属ト」↡者即チ有リ↢其[ノ]二↡。一[ニ]者在家ノ眷属、二[ニ]者出家ノ眷属[ナリ]。
^在家といふは、 仏の伯叔にその四人あり。 仏はすなはちこれ白浄王 (浄飯王) の児、 金毘は白飯王の児、 提婆は斛飯王の児、 釈魔男はこれ甘露飯王の児なり。 これを在家の外眷属と名づく。
~言フ↢在家ト↡者、仏之伯ヲヂ叔ニ有リ↢其ノ四人↡。仏†者即チ是白浄王ノ児、金毘者白飯王ノ児、提婆者斛飯王ノ児、釈魔男者是甘露飯王ノ児[ナリ]。此ヲ名ク↢在家ノ外眷属ト↡†也。
^出家の眷属といふは、 仏のために弟子となる、 ゆゑに内眷属と名づく。
~言フ↢出家ノ眷属ト↡者、与ニ↠仏ノ作ル↢弟子ト↡†、故ニ名ク↢内眷属ト↡也。△
二 Ⅱ ⅱ b ニ (三)結
^上来四句の不同ありといへども、 広く厭苦の縁を明かしをはりぬ。
上来‡雖モ↠有[リ]ト↢四句ノ不同↡、広ク明シ↢厭苦[ノ]縁ヲ↡竟[リ]ヌ。
二 Ⅱ ⅱ b ホ【欣浄縁】
(一)標
【9】 ^五に↑欣浄の縁のなかにつきて、 すなはちその八あり。
▲五[ニ]就キテ↢欣浄[ノ]縁ノ中ニ↡、即[チ]有リ↢其ノ八↡。
二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)釈
(Ⅰ)釈通請所求文
(ⅰ)科節
^一に ▲「唯願世尊為我広説」 より下 「濁悪0484世也」 に至るこのかたは、 まさしく夫人通じて*所求を請じ、 別して苦界を標することを明かす。
一[ニ]従リ↢「唯願世尊為我広説」↡下至ル↢「濁悪世也ニ」↡已来[タハ]、▲正[シク]明ス↧夫人通ジテ請ジ↢所求ヲ↡、別シテ標スルコトヲ↦苦界ヲ↥。
二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅰ)(ⅱ)述意
^これ夫人自身の苦に遇ひて、 世の*非常を覚るに、 六道同じくしかなり。 安心の地あることなし。 ここに仏、 浄土の無生なるを説きたまふを聞きて、 穢身を捨ててかの無為の楽を証せんと願ずることを明かす。
~此†明ス↫夫人遇ヒテ↢自身[ノ]苦ニ↡覚ルニ↢世ノ非常ヲ↡、六道同[ジ]ク然ナリ、無シ↠有ルコト↢†安心之地↡、†此ニ†聞キテ↣仏説キタマフヲ↢浄土ノ無生ナルヲ↡、願ズルコトヲ↪捨テテ↢穢身ヲ↡証セムト↩彼ノ無為之楽ヲ↨。
二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅱ)釈挙所厭境文
(ⅰ)科節
^二に ▲「此濁悪処」より下 「不見悪人」 に至るこのかたは、 まさしく夫人所厭の境を挙出することを明かす。
二[ニ]従リ↢「此濁悪処‡」↡下至ル↢「不見悪人ニ」↡已来[タハ]、▲正[シク]明0706ス↣夫人†挙↢出スルコトヲ所厭之境ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅱ)(ⅱ)述意
^これ*閻浮はすべて悪にして、 いまだ一処として貪ずべきことあらず。 ただ幻惑の愚夫なるをもつて、 この長苦を飲む0374といふことを明かす。
~此†明ス↧閻浮†ハ†総ジテ悪ニシテ、未ダ↠有ラ↢一処トシテ可キコト↟貪ズ、†但以テ↢幻惑ノ愚夫ナルヲ↡、飲ムトイフコトヲ↦斯ノ長苦ヲ↥。
二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅱ)(ⅲ)釈文
^「▲此濁悪処」 といふはまさしく苦界を明かす。 また器世間を明かす。 またこれ衆生の依報の処なり。 また衆生の所依の処と名づく。
言フ↢「此濁悪処ト」↡者▲正[シク]明ス↢苦界ヲ↡也。又明ス↢器世間ヲ↡。亦是衆生ノ依報ノ処ナリ。亦名ク↢衆生ノ所依†ノ処ト↡也。
^▲「地獄」 等といふ以下は、 *三品の悪果もつとも重ければなり。
~言フ↢「地獄」等ト↡†已下ハ、三品ノ悪果最モ重ケレバ也。
^「▲盈満」 といふは、 この*三の苦聚はただ独り閻浮を指すのみにあらず、 娑婆もまたみなあまねくあり。 ゆゑに盈満といふ。
~言フ↢「盈満ト」↡者、此ノ三[ノ]苦聚[ハ]非ズ↣直独リ指ス[ノミ]ニ↢†閻浮ヲ↡、娑婆モ亦皆遍ク有リ。故ニ言フ↢盈満ト↡。△
^「▲多不善聚」 といふは、 これ三界・六道不同にして種類恒沙なるは、 心の差別に随ふことを明かす。 *経にのたまはく、 「業よく識を荘り、 世々処々におのおの趣きて、 縁に随ひて果報を受け、 対面すれどもあひ知らず」 と。
言フ↢「多不善聚ト」↡者、▲此†明ス↣三界・六道不同ニシテ種類恒沙†ナルハ、随フコトヲ↢心ノ差別ニ↡。経ニ云ク、「業能ク荘†リ↠識ヲ、世世処処ニ各趣キテ、随[ヒテ]↠縁ニ受†ケ↢果報ヲ↡、対面†スレドモ不[ト]↢相知ラ↡。」
^▲「願我未来」 といふ以下は、 これ夫人▼真心徹到して苦の娑婆を厭ひ、 楽の無為を欣ひて永く常楽に帰することを明かす。 ただ無為の境、 *軽爾としてすなはち階ふべからず。 苦悩の娑婆、 *輒然として離るることを得るに由なし。 ▼金剛の志を発すにあらざるよりは、 永く生死の元を絶たんや。 もし親しく慈尊 (釈尊) に従はずは、 なんぞよくこの長歎を勉れん。
▲言フ↢「願我未来ト」↡已下ハ、此明ス↧夫人真心徹トヲリ到イタリシテ厭ヒ↢苦ノ娑婆ヲ↡、欣†ヒテ↢楽ノ無為ヲ↡永ク帰スルコトヲ↦常楽ニ↥。但無為之境、不↠可[カ]ラ↢ 軽カロガロシ爾トシテ即チ階フ↡。苦悩ノ娑婆、無シ↠由↢輒然トシテ得ルニ↟離ルルコトヲ。自リハ↠非†ザル↠発スニ↢金剛之志ヲ↡、永ク絶タムヤ↢生死之†元ヲ↡。若シ†不ハ↣親シク従ハ↢慈尊ニ↡、何ゾ能ク勉レム‡↢斯ノ長歎ヲナゲキ↡。
^しかして 「願我未来不聞悪声悪人」 とは、 これ闍王・調達 (提婆達多) がごとき、 父を殺し僧を破するもの、 および悪声等、 願はくはまた聞かず、 見ざらんといふことを明かす。 ただ闍王はすでにこれ親生の子なるも、 上父母において殺0485心を起す。 いか0375にいはんや疎き人にしてあひ害せざらんや。 このゆゑに夫人親疎を*簡ばず、 総じてみなたちまちに捨つ。
~†然シテ「願我未来不聞悪声悪人ト」†者、此明ス↧如キ↢闍王・調達†ガ↡、殺シ↠父ヲ破ス[ルモノ]↠僧ヲ、及ビ悪声等、願クハ亦不↠聞カ†不ラムトイフコトヲ↞見。但闍王[ハ]既ニ是親生之子†ナルモ、上於テ↢父母ニ↡起ス↢於殺心ヲ↡。何ニ況ヤ疎キ人[ニシテ]而不ラムヤ↢相害セ↡。是ノ故ニ夫人不↠簡バ↢親疎ヲ↡、総ジテ皆†頓チニ捨ツ。
二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅲ)釈求哀懴悔文
^三に ▲「今向世尊」より下 「懴悔」 に至るこのかたは、 まさしく夫人浄土の妙処は善にあらずは生ぜず、 おそらくは*余ありて障へて往くことを得ざることを。 ここをもつて求哀してさらにすべからく懴悔すべきことを明かす。
三[ニ]従リ↢「今向世尊‡」↡下至ル↢「懴悔ニ」↡已来[タ]ハ、▲正[シク]明[ス]↧夫人浄土ノ妙処ハ†非ズハ↠善ニ不↠生ゼ、恐クハ有[リ]テ↢余↡ツミトガ障ヘテ†不ルコトヲ↠得↠往クコトヲ、是ヲ以テ求哀シテ更ニ須ベ クキコトヲ↦懴悔ス↥。
二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅳ)釈通請去行文
(ⅰ)科節
^四に ▲「唯願仏日」より下 「清浄業処」 に至るこのかたは、 まさしく夫人通じて*去行を請ずることを明かす。
四[ニ]従リ↢「唯願仏日‡」↡下至ル↢「清浄業処ニ」↡已来0707[タハ]、▲正[シク]明ス↣夫人通ジテ請ズルコトヲ↢去行ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅳ)(ⅱ)述意
^これ夫人▲上にはすなはち通じて*生処を請じ、 いままた通じて*得生の行を請ずることを明かす。
~此明ス↧夫人上ニ[ハ]即チ通ジテ請ジ↢生処ヲ↡、今亦通ジテ請ズルコトヲ↦得生之行ヲ↥。
二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅳ)(ⅲ)釈文
^「▲仏日」 といふは法・喩ならべて標す。 たとへば日出でて衆闇ことごとく除こるがごとく、 仏智光を輝かして、 無明の夜日のごとくに朗らかなり。
▲言フ↢「仏日ト」↡者法・喩タトヘ双ベテ標†ス也。譬ヘバ如†ク↢日出デテ衆闇ヤミ尽ク除コルガ↡、仏智輝カシテ↠光ヲ無明之†夜日ノゴトク朗カナリ。
^▲「教我観於清浄」 といふ以下は、 まさしくすでによく穢を厭ひ浄を欣ふ。 いかんが安心注想して清浄の処に生ずることを得るといふことを明かす。
言フ↢「*教我観於清浄ト」↡已下[ハ]、▲正[シク]明ス↢既ニ能ク厭ヒ↠穢ヲ欣フ↠浄ヲ、若為ガ安心‡注想シテ†得ルトイフコトヲ↟生[ズル]コトヲ↢清浄ノ処ニ↡也。
二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅴ)【光台現国】
(ⅰ)科節
^五に ▲「爾時世尊放眉間光」より下 「令韋提見」 に至るこのかたは、 まさしく世尊広く浄土を現じて▲前の通請に酬へたまふことを明かす。
五[ニ]従リ↢「爾時世尊放眉間光‡」↡下至ル↢「令韋提見ニ」↡已来[タハ]、▲正[シク]明ス↧世尊広ク現ジテ↢浄土ヲ↡酬ヘタマフコトヲ↦前ノ通請†ニ↥。
二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅴ)(ⅱ)述意
^これ世尊、 夫人の広く浄土を求むることを見たまへるをもつて、 如来すなはち眉間の光を放ちて十方国を照らし、 光をもつて国を摂し、 頂上に還来して化して金台となるに、 須弥山のごとし。
~此†明ス↧世尊以テ↠見タマヘルヲ↣夫人[ノ]広ク求ムルコトヲ↢浄土ヲ↡、如来即チ放[チ]テ↢眉間ノ光ヲ↡照シ↢十方‡国ヲ↡、以テ↠光ヲ摂シ↠国ヲ、†還↢来シテ頂上ニ↡化シテ†作ルニ↢金台ト↡、如シ↢須弥山ノ↡、
^「▲如」 の言は似な0376り、 須弥山に似たり。 この山腰は細く、 上は闊し。 あらゆる仏国*ならびになかにおいて現じ、 種々不同にして荘厳異なることあり。 仏の*神力のゆゑに*了々として分明なり。 韋提に*加備してことごとくみな見ることを得しむることを明かす。
~「如」之言ハ似ナリ、似タリ↢須弥山ニ↡、此ノ山‡腰ハ細ク上ハ闊シ、†所有ル仏国並ニ於テ↠中ニ現ジ、種種不同ニシテ荘厳有リ↠異ナルコト、仏ノ神力ノ故ニ了了[トシテ]分明ナリ、加↢備シテ韋提ニ↡尽ク皆得シムルコトヲ↞見ルコトヲ。
二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅴ)(ⅲ)料簡
^問ひていはく、 韋提上には 「▲わがために広く無憂の処を説きたまへ」 と請ず。 仏いまなんがゆゑぞために広く説きたまはずして、 すなはちために金台にあまねく現ずるはなんの意かあるや。
~問[ヒテ]曰[ク]、韋提上ニ[ハ]請ズ↣†為ニ↠我ガ広ク説キタマヘト↢無憂之処ヲ↡。仏今何ガ故ゾ不シテ↢為ニ広ク説キタマハ↡、乃チ†為ニ金台ニ普ク現†ズル者有ル↢何ノ意カ↡也。
^答へていはく、 これ如来の*意密を彰す。 しかるに韋提、 言を発して請を致すは、 すなはちこれ広く浄土の門を開けとなり。 もしこれがために総じて説0486かば、 おそらくはかれ見ずして心なほ惑ひを致すことを。 ここをもつて一々に顕現してかの眼前に対して、 かの*所須に信せて心に随ひみづから選ばしむ。
~答[ヘテ]曰[ク]、此‡彰ス↢如来ノ意密ヲ↡†也。†然ルニ韋提発シテ↠†言ヲ致ス[ハ]↠請ヲ、即[チ]是広ク開[ケト]ナリ↢浄土之門ヲ↡。若シ為ニ↠之ガ総ジテ説カバ、恐クハ彼不シテ↠見心‡猶致†スコトヲ↠惑ヲ。是ヲ以テ一一ニ顕現シテ対シテ↢彼ノ†眼前ニ↡、信セテ↢彼ノ所須ニ↡随[ヒ]↠心ニ自ラ選バシム。△
二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅵ)釈総領所現文
(ⅰ)科節
^六に ▲「時韋提白仏」より下 「皆有光明」 に至るこのかたは、 まさしく夫人総じて*所現を領して、 仏恩を*感荷することを明かす。
六[ニ]従リ↢「時韋提白仏‡」↡下至ル↢「皆有光明ニ」↡已来[タハ]、▲正[シク]明ス↧夫人総ジテ領シテ↢所現ヲ↡、感エタリ↦荷ニナウスルコトヲ仏恩ヲ↥。
二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅵ)(ⅱ)述意
^▼これ夫人総じて十方の仏国を見るに、 ならびにことごとく*精華なれども、 極楽の荘厳に比せんと欲するに、 まつたく比況にあらざることを明かす。 ゆゑに 「我今楽生安楽国」 といふ。
~此明ス↧夫人総ジテ見[ル]ニ↢十方[ノ]仏国ヲ↡、並ニ悉ク精華ナレドモ、欲スルニ↠比セムト↢極楽ノ荘厳ニ↡、全ク非ザルコトヲ↦比況ニ↥。故ニ云0708フ↢「我今楽生安楽国ト」↡†也。
二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅵ)(ⅲ)料簡
^0377問ひていはく、 十方の諸仏は*断惑殊なることなく、 行畢り果円かなること、 また二なかるべし。 なにをもつてか一種の浄土にすなはちこの優劣あるや。
~問[ヒテ]曰[ク]、十方ノ諸仏ハ断惑無†ク↠†殊ナルコト、行畢リ果円カナルコト、亦応シ↠無カル↠二。何ヲ以[テ]カ一種ノ浄土ニ即チ†有ル↢斯ノ優マサリ劣↡オトル也。
^答へていはく、 仏はこれ法王、 神通自在なり。 優と劣と*凡惑の知るところにあらず。 隠顕、 機に随ひて*化益を存ずることを望む。 あるいはことさらにかの優となすことを隠して、 独り西方を顕して勝となすべし。
~答[ヘテ]曰[ク]、仏ハ是法王、神通自在ナリ。優ト之与↠劣非ズ↢凡惑ノ所ニ↟知ル。隠顕随[ヒテ]↠機ニ望ム↠†存スルコトヲ↢化益ヲ↡。或[イ]ハ可シ↧故ニ隠シテ↢彼ノ†為スコトヲ↟優ト、独リ顕シテ↢西方ヲ↡為ス↞勝ト。△
二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅶ)釈別選所求文
(ⅰ)科節
^七に ▲「我今楽生弥陀」 より以下は、 まさしく夫人*別して所求を選ぶことを明かす。
七[ニ]▲従リ↢「我今楽生弥陀」↡已下[ハ]、▲正[シク]明ス↣夫人別シテ選ブコトヲ↢所求ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅶ)(ⅱ)述意
・総標
^◆これ弥陀の本国は四十八願よりす。
▲此†明ス↧弥陀[ノ]本国[ハ]四十八願ヨリス、
・別顕
^◆願々みな*増上の勝因を発し、 因によりて勝行を起し、 行によりて勝果を感じ、 果によりて勝報を感成し、 報によりて極楽を感成し、 楽によりて*悲化を顕通し、 悲化によりて智慧の門を顕開す。
~願願皆発†シ↢増上ノ勝因ヲ↡†、依[リ]テ↠†因ニ起†シ↢於勝行ヲ↡、依[リ]テ↠行ニ感†ジ↢於勝果ヲ↡、依[リテ]↠果ニ感↢成†シ勝報[ヲ]↡、依[リテ]↠報ニ感↢成†シ極楽ヲ↡、依[リテ]↠楽ニ顕↢通†シ悲化ヲ↡、依[リ]テ↢於悲化ニ↡顕↢開ス智慧之門ヲ↡†、
・一代化儀
^◆しかるに悲心無尽なれば、 智もまた無窮なり。 *悲智双行してすなはち広く*甘露を開く。 これによりて*法潤あまねく群生を摂す。
~然ルニ悲心無尽†ナレバ、智[モ]亦無窮ナリ†、悲智双行シテ即チ広ク開ク↢甘露†ヲ↡、因[リ]テ↠茲ニ法潤普ク摂ス↢群生ヲ↡也†、
・末仏勧讃
^◆諸余の経典に勧むる処いよいよ多し。 *衆聖心を斉しくしてみな同じく*指讃す。
~諸余ノ経典ニ勧ムル処弥多シ†、衆聖斉シクシテ↠心ヲ皆同[ジ]ク指讃ス†、
・別選所由
^▼この因縁ありて、 如来ひそかに夫人を遣はして、 別して選ばしめたまふことを致すことを明かす。
~有[リ]テ↢此ノ因縁↡、致スコトヲ↞使†メタマフコトヲ↧如来密ニ遣シテ↢夫人ヲ↡別シテ選バ↥也。△
二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅷ)釈請求別行文
(ⅰ)科節
^八に ▲「唯願世尊」 より以下は、 まさしく夫人*別行を請求することを明かす。
八[ニ]従リ↢「唯願世尊‡」↡已下[ハ]、▲正[シク]明ス↣夫人請↢求スルコトヲ別行ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅷ)(ⅱ)述意
^これ韋提すでに得生の処を選びて、 還りて別行を修して、 おのれを励まし心を注めて、 か0378ならず*往益を望むことを明かす。
~此明ス↧韋提既ニ選[ビ]テ↢得生ノ処ヲ↡、還[リ]テ修シテ↢別行ヲ↡、励シ‡↠己ヲ注メテ↠心ヲ必ズ望ムコトヲ↦往益ヲ↥。
二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅷ)(ⅲ)釈文
・教我思惟
^「▲教我思惟」 といふは、 すなはち0487これ*定の前方便、 かの国の依正二報・*四種の荘厳を思想し憶念するなり。
▲言フ↢「教我思オモヒ惟ト」ハカラウ↡者、即[チ]是定ノ†前方便、思↢想[シ]憶↣念スル彼ノ国ノ依正二報・四種ノ荘厳ヲ↡也。
・教我正受
^「▲教我正受」 といふは、 これ前の思想漸々に微細にして、 *覚想ともに亡ずるによりて、 ただ定心のみありて*前境と合するを名づけて正受となすことを明かす。 このなかに略してすでに料簡す。 *下の観門に至りてさらにまさに広く弁ずべし、 知るべし。
言フ↢「教我正受ト」↡者、此明ス↧†因リテ↢前ノ思想漸漸ニ微細ニシテ、覚想倶ニ亡ズルニ↡、唯有[リ]テ↢定心ノミ↡与↢†前境↡合スルヲ名[ケ]テ†為スコトヲ↦正受ト↥。此ノ中ニ略シテ已ニ料簡ス。至[リ]テ↢下ノ観門ニ↡更ニ当ベ ニシ↢広ク弁ズ↡、応シ↠知ル。
二 Ⅱ ⅱ b ホ (三)結
^上来八句の不同ありといへども、 広く欣浄の縁を明かしをはりぬ。
上来‡雖モ↠有[リ]ト↢八句ノ不同↡、広ク明シ↢欣浄[ノ]縁ヲ↡竟[リ]ヌ。
二 Ⅱ ⅱ b ヘ【散善顕行縁】
(一)標
【10】^六に↑散善顕行縁のなかにつきてすなはちその五あり。
▲六0709[ニ]就[キ]テ↢散善顕行縁[ノ]中ニ↡即[チ]有リ↢其ノ五↡。
二 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)釈
(Ⅰ)釈光益父王文
(ⅰ)科節
^一に ▲「爾時世尊即便微笑」より下 「成那含」 に至るこのかたは、 まさしく光、 父の王を益することを明かす。
一[ニ]従リ↢「爾時世尊即便微スコシ笑エム‡」↡下至†ル↢「成那含ニ」↡已来[タ]ハ、▲正[シク]明ス↣光益スルコトヲ↢父ノ王ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅰ)(ⅱ)述意
^▼これ如来夫人の極楽に生ぜんと願じ、 さらに得生の行を請ずるを見たまふに、 仏の本心に称ひ、 また弥陀の願意を顕すをもつて、 この二請によりて広く浄土の門を開けば、ただ韋提のみ去くことを得るにあらず、 *有識これを聞きてみな往く。 この益あるがゆゑに、 ゆゑに如来微笑したまふことを明かす。
~此†明ス↭如来以テ↪見タマフニ↧夫人ノ願ジ↠生ゼムト↢極楽ニ↡、更ニ請ズルヲ↦得生之行ヲ↥、称ヒ↢仏ノ本心ニ↡、又顕スヲ↩弥陀ノ願‡意ヲ↨、因[リ]テ↢斯ノ二請ニ↡広ク開†ケバ↢浄土之門ヲ↡、非ズ↢†直韋提†ノミ得ル‡ニ↟†去クコトヲ、有識聞キテ↠之ヲ皆往ク†、有[ル]ガ↢*斯ノ益↡故ニ、†所以ニ如来微笑シタマフコトヲ↬也。
二 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅰ)(ⅲ)釈文
・光益所由
^「▲有五色光従仏口出」 といふは、 これ一切諸仏の心口の常の*威儀、 *法爾としておほよそ出すところの光かならず利益あることを明かす。
言フ↢「有五色光従仏口出ト」↡者、▲此明ス↣一切‡諸仏ノ心口ノ常ノ威儀、法爾トシテ凡ソ所ノ↠出ス光必ズ有ルコトヲ↢利益↡。
・唯照頻婆
^「▲一一光照頻婆頂」 といふは、 まさしく口の光、 余方を照らさずして、 ただ王頂を照らすことを0379明かす。
言フ↢「一一光照頻婆頂ト」↡者、▲正[シク]明ス↧口ノ光不シテ↠照サ↢余方ヲ↡、唯照[ス]コトヲ↦王頂ヲ↥。
^しかるに仏の光、 身の出処に随ひてかならずみな益あり。 仏の足の下より光を放てば、 すなはち地獄道を照益す。 もし光膝より出づれば、 畜生道をを照益す。 もし光*陰蔵より出づれば、 鬼神道を照益す。 もし光臍より出づれば、 修羅道を照益す。 光心より出づれば、 人道を照益す。 もし光口より出づれば、 二乗の人を照益す。 もし光眉間より出づれば、 大乗の人を照益す。
~然ルニ仏[ノ]光随[ヒテ]↢身ノ†出処ニ↡必ズ皆有[リ]↠益。仏ノ足ノ下ヨリ放テバ↠光ヲ、即[チ]照↢益ス地獄道ヲ↡。若シ光従リ↠膝出ヅレバ、照↢益ス畜生道ヲ↡。若シ光従リ↢陰蔵↡出[ヅレ]バ、照↢益ス鬼神道ヲ↡。若シ光従リ↠臍出[ヅレ]バ、照↢益ス修羅道ヲ↡。光従[リ]↠心出[ヅレ]バ、照↢益ス於人道ヲ↡。若シ光従リ↠口出[ヅレ]バ、照↢益ス二乗之人ヲ↡。若シ光従リ↢眉間↡出[ヅレ]バ、照↢益ス大乗ノ†人ヲ↡。
^いまこの光口より出でてただちに王頂を照らすは、 すなはちその*小果を授0488くることを明かす。 もし光眉間より出でてすなはち仏頂より入るは、 すなはち菩薩に*記を授くるなり。 かくのごとき義は広多にして無量なり、 つぶさに述ぶべからず。
~今明ス↧此ノ光従リ↠口出デテ直ニ照ス↢王頂ヲ↡者、即[チ]授クルコトヲ↦其ノ小果ヲ↥。若シ光従リ↢眉間↡出デテ即[チ]従リ↢仏頂↡入ル者、即[チ]授クル↢菩薩ニ記ヲ↡也。如キ‡↠斯クノ義者広多ニシテ無量ナリ、不↠可[カ]ラ↢具ニ述ブ↡ジユムス。△
・頻婆得益
^▲「爾時大王雖在幽閉」 といふ以下は、 まさしく父の王、 光の頂を照らすことを蒙りて心眼開くることを得て、 *障隔多しといへども自然にあひ見る。 これすなはち光によりて仏を見たてまつるは、 意の期するところにあらず、 敬を致し帰依するにすなはち*第三の果を超証することを明かす。
言フ↢「爾時大王雖在幽閉ト」↡已下ハ、▲正[シ]ク†明ス↧父ノ王蒙[リ]テ↢光ノ照[ス]コトヲ↟頂ヲイタヾキ心眼得テ↠開[クル]コトヲ、障隔ヘダツ雖モ↠多シト自然ニ相見ル、斯乃チ因[リ]テ↠光ニ見タテマツル[ハ]↠仏ヲ、非ズ↢意ノ†所ニ↟期スル、致シ↠敬ヲ帰カヘシ依†スルニ即チ超↦証スルコトヲ第三之果ヲ↥。
二 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅱ)釈酬請許説文
(ⅰ)科節
^二に ▲「爾時世尊」 より下 「広説衆譬」 に至るこのかたは、 まさしく▲前に夫人別して*所求の行を選ぶに答ふることを明かす。
二[ニ]従リ↢「爾時世尊‡」↡下至ル↢「広0710説衆譬ニ」↡已来[タハ]、▲正[シク]明ス↠†答[フル]コトヲ↣前ニ夫人別シテ選ブニ↢所求之行ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅱ)(ⅱ)述意
^これ如来▲上の耆闍に没して王宮に出でをはるよりこの文に至るまで、 世尊*黙然として坐して、 総じていまだ言説したまはざることを明か0380す。
~此明ス↧如来†従リ↢上ノ耆闍ニ没シテカクレテ王宮ニ出[デ]訖ル↡至†ルマデ↢此ノ文ニ↡、世尊嘿然トシテ†而坐シテ、†総ジテ未ザ ダルコトヲ↦言説シタマハ↥。
^ただ中間の夫人の懴悔・請問・放光・現国等は、 すなはちこれ阿難、 仏に従ひて王宮にしてこの因縁を見て、 事了りて山に還り、 伝へて耆闍の大衆に向かひて上のごとき事を説くに、 はじめてこの文あり。 またこれ時に仏語なきにあらず、 知るべし。
~但中間ノ夫人ノ懴悔・請問・放光・現国等ハ、乃チ是阿難従[ヒ]テ↠仏ニ王宮ニシテ見テ↢此ノ因縁ヲ↡、†事了[リ]テ還[リ]‡↠山ニ、伝ヘテ向[ヒ]テ↢耆闍ノ大衆ニ↡説[ク]ニ↢如[キ]‡↠上ノ事ヲ↡、始テ有リ↢此ノ文↡。亦非ズ↣是無[キ]ニ↢時ニ仏語↡†也、応シ↠知[ル]。△
二 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅱ)(ⅲ)釈文
・告命許説
^▲「爾時世尊告韋提」 といふ以下は、 まさしく*告命許説を明かす。
言フ↢「爾時世尊告韋提ト」↡已下[ハ]、▲正[シク]明ス↢告命許ユルス説ヲ↡†也。
・去此不遠
^「▲阿弥陀仏不遠」 といふは、 まさしく*境を標してもつて心を住むることを明かす。 すなはちその三あり。
言フ↢「阿弥陀仏不遠ト」↡者、▲正[シク]明ス↢標シテ↠境ヲ以テ†住ムルコトヲ↟心ヲ。即チ有リ↢其ノ三↡。
^一には*分斉遠からず。 これより十万億の刹を超過して、 すなはちこれ弥陀の国なることを明かす。
▲一[ニハ]明ス↧分斉不↠遠カラ、従リ↠此超コヘ↢過スグ
シテ十万億ノ†刹ヲ↡、即[チ]是弥陀之国ナルコトヲ↥。
^二には▼*道里はるかなりといへども、 去く時一念にすなはち到ることを明かす。
~二[ニハ]明ス↢道里雖モ↠遥ナリト、†去ク時一念[ニ]即[チ]到ルコトヲ↡。
^三には韋提等および未来有縁の衆生、 心を注めて観念すれば*定境相応して、 行人自然につねに見ることを明かす。
~三[ニハ]明ス↢韋提等†及ビ未来有縁ノ衆生、注メテ↠心ヲ観念スレバ、定境相応シテ、行人自然ニ常ニ見ルコトヲ↡。
^この三義あるがゆゑに不遠といふ。
~有[ル]ガ↢斯ノ三‡義↡故ニ云フ↢不遠ト↡†也。△
・浄業成
^▲「汝当繋念」 といふ以下は、 ▼まさしく凡惑障深くして、 心多く散動す。 もしたちまちに*攀縁を捨てずは、 *浄境現ずることを得るに由なきことを明かす。 これすなはちまさしく安心住行を教ふ。 もしこの法によるを名づけて 「*浄0489業成ず」 となす。
言フ↢「汝当繋念ト」↡已下[ハ]、▲正[シク]明ス↧凡惑障深[ク]シテ心多ク散動ス、若シ不ハ↣†頓チニ捨テ↢攀縁ヲ↡、浄境無キコトヲ↞由↠得[ル]ニ↠現ズルコト[ヲ]。此即チ正[シク]教フ↢安心住行ヲ↡。若シ依ルヲ‡↢此ノ法ニ↡名[ケ]テ為ス‡↢浄業成ズト↡†也。
・自開散善
^▲「我今為汝」 といふ以下は、 これ機縁いまだ具せず、 ひとへに*定門を説くべからず、 仏さらに機を観じて、 みづから三福の行を開きたまふことを明かす。
言フ↢「我今為汝ト」↡已下ハ、▲此明ス↧機縁†未ダ↠具セ、不↠可[カ]ラ↣偏ニ説ク↢定門ヲ↡、仏更ニ観ジテ↠機ヲ、自ラ†開キタマフコトヲ↦三福之行ヲ↥。
二 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅲ)釈挙機勧修文
(ⅰ)科節
^三に ▲「亦令来世」よ0381り下 「極楽国土」 に至るこのかたは、 まさしく機を挙げて修を勧め、 益を得ることを明かす。
三[ニ]従リ↢「亦令未来世‡」↡下至ル↢「極楽国土ニ」↡已来[タ]ハ、▲正[シク]明ス↢挙ゲテ↠機ヲ†勧メ↠修ヲ、得ルコトヲ↟益ヲ。
二 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅲ)(ⅱ)述意
^これ夫人の請ずるところ、 利益いよいよ深くして、 未来に及ぶまで回心すればみな到ることを明かす。
~此明ス↧夫人ノ所↠請ズル、利益弥深ク[シテ]、及[ブ]マデ↢未来ニ↡廻心†スレバ皆到ルコトヲ↥。
二 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅳ)釈勧修三福文
(ⅰ)科節
^四に ▲「欲生彼国者」 より下 「名為浄業」 に至るこのかたは、 まさしく勧めて三福の行を修せしむることを明かす。
四[ニ]従リ↢「欲生彼国者」↡下至ル↢「名為浄業ニ」↡已来[タハ]、▲正[シク]明ス↣†勧メテ修セシムルコトヲ↢三福之0711行ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅳ)(ⅱ)述意
^▼これ一切衆生の機に二種あり。 一には*定、 二には*散なり。 ▼もし定行によれば、 すなはち*生を摂するに尽きず。 ここをもつて如来 (釈尊) 方便して三福を顕開して、 もつて散動の根機に応じたまふことを明かす。
~此†明ス↧一切衆生ノ機ニ有リ↢二種↡、一[ニ]者定、二[ニ]者散[ナリ]†、若シ依レバ↢定行ニ↡、即[チ]摂スルニ↠生ヲ不↠尽キ†、是ヲ以テ如来方便シテ顕↢開シテ三福ヲ↡、以テ応ジタマフコトヲ↦散動ノ根機ニ↥。
二 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅳ)(ⅲ)釈文
・所帰
^「▲欲生彼国」 といふは所帰を標指す。
▲言フ↢「欲生彼国ト」↡者標↢指†ス所帰ヲ↡也。
・行門
^「▲当修三福」 といふは総じて行門を標す。 いかんが三と名づくる。
~言フ↢「当修三福ト」↡者総ジテ†標ス↢行門ヲ↡也。云何ガ名クル↠三ト。
・行門 ・世福
^「▲一者孝養父母」、 すなはちその四あり。
~「一者孝養父母」、即チ有リ↢其ノ四↡。
・行門 ・世福 ・孝養父母
^一に 「▲孝養父母」 といふは、 これ一切の凡夫みな縁によりて生ずることを明かす。
~一[ニ]言フ↢「孝養父母ト」↡者、此‡明ス↢一切ノ凡夫皆藉[リ]テ↠縁ニ而生ズルコトヲ↡。
^いかんが縁による。 あるいは*化生あり、 あるいは湿生あり、 あるいは卵生あり、 あるいは*胎生あり。 この四生のなかにおのおのにまた四生あり。 *経に広く説きたまふがごとし。
~云何ガ藉ル↠縁ニ。或[イ]ハ有リ↢化生↡、或[イ]ハ有[リ]↢湿ウルヲス生↡、或[イ]ハ有リ↢卵カイコ生↡、或[イ]ハ有リ↢胎ハラマル生↡。此ノ四生ノ中ニ各各‡復有リ↢四生↡。如シ↢経ニ広ク説†キタマフガ↡。
^ただこれあひよりて生ずればすなはち父母あり。 すでに父母あればすなはち大恩あり。 もし父なくは*能生の因すなはち闕け、 もし母なくは*所生の縁すなはち乖きなん。 もし二人ともになくはすなはち託生の地を失はん。 かならずすべからく父母の縁0382具して、 まさに受身の処あるべし。
~†但是‡相因[リ]テ†而生ズレバ、即チ有リ↢父母↡。既ニ有レバ↢父母↡即チ有リ↢大恩↡。若シ†無クハ↠父者能生之因即チ闕ケ‡、若シ†無クハ↠母者所生之縁即チ乖キナム。若シ二人倶ニ無クハ即チ失†ハム↢託生之地ヲ↡。要ズ須ベ クシ↣父母ノ縁具シテ、方ニ有ル↢受身之処↡。
^すでに身を受けんと欲するに、 みづからの*業識をもつて内因となし、 父母の精血をもつて外縁となして、 因縁和合するがゆゑにこの身あり。 この義をもつてのゆゑに父母の恩重し。
~既ニ欲スルニ↠受ケムト↠身ヲ、以テ↢自ラノ業識ヲ↡為シ↢内因ト↡、以テ↢父母ノ精血ヲ↡為シテ↢外縁ト↡、因縁和合スルガ故ニ有リ↢此ノ身↡。以[テ]ノ↢斯ノ義ヲ↡故ニ父母ノ恩重シ。
^母懐胎しをはりて十月を経るまで、 *行住坐臥につねに苦悩を生ず。 また0490産の時の死の難を憂ふ。 もし生じをはりぬれば、 三年を経るまでつねに屎に眠り尿に臥す。 *床被・衣服みなまた不浄なり。
~母懐ハラミ胎シハラム已[リ]テ†経ルマデ↢於十月[ヲ]↡、行住坐臥[ニ]常ニ生ズ↢苦悩ヲ↡。復憂フ↢産ノ時[ノ]死ノ難ヲ↡。若シ生[ジ]已[リ]ヌレバ、†経ルマデ↢於三年[ヲ]↡†恒常ニ眠リ↠屎ニ臥ス↠尿ニ。†床被・衣服皆亦不浄ナリ。
^その長大に及びて婦を愛し児を親しみて、 父母の処においてかへりて憎疾を生じ、 恩孝を行ぜざるものはすなはち畜生と異なることなし。
~及[ビ]テ↢其ノ長大ニ↡愛シ↠婦ヲ親ミテ↠児ヲ、於テ↢父母ノ処ニ↡†反リテ生ジ‡↢憎*疾ヲ↡、不ル↠行ゼ↢恩孝ヲ↡者ハ即チ与↢畜生↡無†シ↠異ナルコト也。△
^また父母は世間の*福田の極みなり。 仏はすなはちこれ*出世の福田の極みなり。
▲又父母者世間ノ福田之†極ミ也。仏者即チ是出世ノ福田之†極ミ也。
^しかるに仏在世の時、 時年*飢倹せるに遇値ひて、 人みな餓死して白骨*縦横なり。 もろもろの比丘等*乞食するに得がたし。 時に世尊、 比丘等の去りぬる後を待ちて、 独りみづから城に入りて乞食したまふ。 旦より中に至るまで門々に喚び乞ひたまへども、 食を与ふるものなし。 仏また鉢を空しくして帰りたまふ。
~然ルニ仏在世ノ時、遇↢値ヒテ時年飢カツヘ倹ウヘセルニ↡、人皆餓ウヘ死シニシテ白シロキ骨ホネ 縦タヽサマ 横ナリヨコサマ 。諸ノ比丘等乞コフ食スルニ難シ↠得0712。†於テ↠時ニ世尊待[チ]テ↢比丘等[ノ]去†リヌル後ヲ↡、独リ自ラ入リテ↠†城ニ乞食シタマフ。従リ↠旦至[ル]マデ↠中ニ門門ニ†喚ビ乞ヒタマヘドモ、無シ↢与フル↠食ヲ者↡。仏‡†還タ空シクシテ↠鉢ヲ而帰リタマフ。
^明日また去きて、 また得たまはず。 後の日また去きたまふに、 また得たまはず。
~明日復去キテ、†又還不↠得タマハ。†後ノ日復去キタマフニ、又亦不↠得[タマハ]。
^たちまちに一の比丘ありて、 道に逢ひて仏を見たてまつるに、 顔色常よりも異にして飢相ましますに似たり。
~忽ニ有[リ]テ↢一ノ比丘↡、道ニ逢ヒテ見[タテマツル]ニ↠仏ヲ、顔カオ 色シヨク異ニシテ↠常ヨリモ似タリ↠†有スニ↢飢ウヘ相↡。
^すなはち仏に問ひたてまつりてまうさく0383、 「世尊いますでに食しをはりたまへりや」 と。
~即チ問ヒタテマツリテ↠仏ニ†言ク、世尊今已ニ食シ竟リタマヘリ也ト。
^仏のたまはく、 「比丘、 われ三日を経てよりこのかた、 乞食するに一匙をも得ず。 われいま飢虚にして力なし、 よくなんぢとともに語らんや」 と。
~仏‡言ク、比丘、我経テヨリ↢三日ヲ↡已来[タ]、乞コフ食スルニ不↠得↢†一匙ヲ[モ]↡。我今飢虚ニシテ無シ↠力、能ク共ニ↠汝ト†語ラムヤ[ト]。
^比丘仏語を聞きをはりて、 悲涙してみづから勝ふることあたはず。 すなはちみづから念言すらく、 「仏はこれ無上の福田、 衆生の*覆護なり。 われこの*三衣売却して、 一鉢の飯を買ひ取りて仏に奉上せん、 いままさしくこれ時なり」 と。
~比丘聞キ↢仏語ヲ↡已[リ]テ、悲涙シテナミダ 不↠能ハ↢自ラ†勝フルコト↡。即チ自ラ念言スラク、仏ハ是無上ノ福田、衆生ノ覆オヽフ護ナリマモル 。†我此ノ三衣†売却シテ、買ヒ↢取[リ]テ一鉢ノ†飯ヲ↡奉↢上 タテマツル †セム於仏ニ↡。今正[シ]ク†是ノ時也。
^この念をなしをはりてすなはち一鉢の飯を買ひ得て、 すみやかにもつて仏にたてまつる。
~作シ↢是ノ念ヲ↡已[リ]テ即チ買ヒ↢得テ一鉢ノ飯ヲ↡、急ニ将テ上ル↠仏ニ。
^仏知ろしめして、 ことさらに問ひてのたまはく、 「比丘、 時年飢倹にして人みな餓死す。 なんぢいまいづれの処にしてかこの一鉢の純色の飯を得て来れる」 と。
~仏知シテ†而故ニ問[ヒ]テ言ハク、比丘、時年飢倹ニシテ人皆餓死ス。汝今何ノ処ニシテ[カ]得テ↢此ノ一鉢ノ純色ノ†飯ヲ↡来レル‡[ト]。
^比丘前のごとくつぶさに世尊にまうす。 仏またのたまはく、 「比丘の三衣はすなはちこれ三世の諸仏の*幢相なり。 この衣因縁きはめて尊く、 きはめて重く、 きはめて恩あり。 なんぢいまこの飯を易へ得てわれに与ふることは、 大きになんぢ0491が好心を領すれども、 われこの飯を消せず」 と。
~比丘如ク↠前ノ具ニ白ス↢世尊ニ↡。仏又†言ク、比丘ノ三衣者即[チ]是三世ノ諸仏之幢相ナリ。此ノ†衣因縁極メテ尊ク極メテ重†ク極メテ恩アリ。汝今易ヘ↢得テ此ノ†飯ヲ↡与フルコト↠我ニ者、大キニ領スレドモ↢汝ガ好心ヲ↡、我†不ト↠消セ↢此ノ飯ヲ↡也。
^比丘かさねて仏にまうしてまうさく、 「仏はこれ三界の福田、 聖のなかの極なるに、 なほ消せずといはば、 仏を除きて以外はたれかよく消せんや」 と。
~比丘重ネテ白シテ↠仏ニ言サク、仏ハ是三界ノ福田、聖ノ中之†極ナルニ、†尚†言ハバ↠†不ト↠消セ者、除[キ]テ↠仏ヲ已外ハ誰カ能ク†消セム也[ト]。
^仏のたまはく、 「比丘、 なんぢ父母ありやいなや」 と0384。 答へてまうさく、 「あり」 と。 「なんぢもつて父母に供養し去れ」 と。
~仏‡言ハク、比丘、汝有リヤ↢父母↡已不ヤ[ト]。答[ヘ]テ言サク、有リ[ト]。汝将テ供↢養シテ父母ニ↡去レ[ト]。
^比丘まうさく、 「仏なほ消せずとのたまふ、 わが父母あによく消せんや」 と。
~比丘言サク、仏尚云フ↠†不ト↠消セ、我[ガ]父母豈能ク†消セム也[ト]。
^仏のたまはく、 「消することを得。 なにをもつてのゆゑに。 父母よくなんぢが身を生ぜり。 なんぢにおいて大重恩あり。 これがために消することを得」 と。
~仏言ハク、†得↠†消スルコトヲ。何ヲ以[テ]ノ故ニ。父母能ク生ゼリ↢汝ガ身ヲ↡。於テ↠汝ニ有リ↢大重恩↡。為ニ↠此ガ†得[ト]↠†消スルコトヲ。
^仏また比丘に問ひたまはく、 「なんぢが父母、 仏を信ずる心ありやいなや」 と。 比丘まうさく、 「すべて信心なし」 と。
~仏又問[ヒタマ]ハク↢比丘ニ↡、汝ガ父母有リヤ↢信0713ズル↠仏ヲ心↡不ヤ[ト]。比丘言ハク、都テ無シ[ト]↢信心↡。
^仏のたまはく、 「いま信ずる心あるべし。 なんぢの飯を与ふるを見て大きに歓喜を生じて、 これによりてすなはち信心を発さん。 先づ教へて三帰依を受けしめよ。 すなはちよくこの食を消せん」 と。
~仏言ハク、今有ルベシ↢†信ズル心↡。見テ↢汝†ノ与†フルヲ↟†飯ヲ大ニ生ジテ↢歓喜ヲ↡、因[リ]テ↠此ニ即チ発サム↢信心[ヲ]↡。先ヅ教ヘテ受ケシメヨ↢三帰依ヲ↡。即チ能ク†消セム[ト]↢此ノ食ヲ↡也。
^時に比丘すでに仏の教を受けて*愍仰して去りぬ。
~時ニ比丘既ニ受ケテ↢†仏ノ教ヲ↡愍仰シテ而去リヌ。
^この義をもつてのゆゑに、 大きにすべからく父母に孝養すべし。
~以[テ]ノ↢此ノ義ヲ↡故ニ、大ニ須ベ クシ↣孝↢養[ス]父母ニ↡。
^また*仏母*摩耶、 仏を生じて七日を経をはりてすなはち死して、 忉利天に生ず。 仏後に成道したまひて、 四月十五日に至りてすなはち忉利天に向かひ、 一夏母のために説法したまふ。 十月懐胎の恩を報ぜんがためなり。 仏すらなほみづから恩を収めて父母に孝養したまふ、 いかにいはんや凡夫にして孝養せざらんや。
~又仏母摩耶生ジテ↠仏ヲ経↢七日ヲ↡已[リ]テ即チ死シテ、生ズ↢忉利天ニ↡。仏†後ニ成道シ[タマヒ]テ、至[リ]テ↢四月十五日ニ↡即チ向ヒ‡↢忉利天ニ↡、一夏ナツ為ニ↠母ノ説法シタマフ。為ナリ↠報ゼムガ↢十月懐胎之恩ヲ↡。仏[スラ]尚自ラ収メテ↠恩ヲ孝↢養シタマフ父母ニ↡、何ニ況ヤ凡夫[ニシテ]而不ラム[ヤ]↢孝養セ↡。
^ゆゑに知りぬ、 父母の恩深くしてきはめて重し。
~故ニ知リヌ、父母ノ恩深ク[シテ]†極テ重シ也。△
・行門 ・世福 ・奉事師長
^「▲奉事師長」 とは、 これ▼礼節を教示して学識、 徳を成じ、 *因行虧くる0385ことなくすなはち成仏に至るは、 これなほ師の善友力なり。 この大恩もつともすべからく敬重すべきことを明かす。
「奉事師長ト」者、▲此明ス↧教↢示シ[テ]礼節ヲ↡学識†成ジ↠徳ヲ、因行無ク↠虧クルコト†乃チ至ルハ↢成仏ニ↡、此猶師之善友‡力也、此之大恩最モ須ベ クキコトヲ↦敬重ス↥。
^しかるに父母および*師長は名づけて*敬上の行となす。
~‡然ルニ父母及ビ師長†者名[ケ]テ為ス↢敬上ノ行ト↡也。
・行門 ・世福 ・慈心不殺
^「▲慈心不殺」 といふは、 これ一切衆生みな命をもつて本となすことを明かす。
▲言フ↢「慈心不殺ト」↡者、此明ス↢一切衆生皆以テ↠命ヲ†為スコトヲ↟本ト。
^もし悪縁を見て、 怖れ走り蔵れ避くるは、 ただ命を護らんがためなり。
~若シ見テ↢悪縁ヲ↡怖レ走リ蔵レ†避クル者、但為↠護ラムガ↠命ヲ也。
^¬経¼ (涅槃経・意) にのたまはく、 「一切のもろもろの衆生、 寿命を愛せざるはなし。 殺すことなかれ、 杖を行0492ずることなかれ。 おのれを*怒るに喩しをなすべし」 と。 すなはち証となす。
~¬経ニ¼云ハク、「一切ノ諸ノ衆生無シ↠†不ルハ↠愛セ↢寿命ヲ↡。勿レ↠殺スコト、勿レ↠行ズルコト↠杖ヲ。*怒ルニ↠己ヲ可シ[ト]↠為ス↠†喩ヲ。」即チ為ス↠†証ト也。△
・行門 ・世福 ・修十善業
^「▲修十善業」 といふは、 これ十悪のなかに殺業もつとも悪なることを明かす。
言フ↢「修十善業ト」↡者、▲此明ス↢十悪之中ニ殺業最モ悪ナルコトヲ↡。
^ゆゑにこれを列ねて初めに在く。 *十善のなかには長命もつとも善なり。 ゆゑにこれをもつて相対す。 以下の九悪九善は、 下の九品のなかに至りて、 次に広く述ぶべし。
~故ニ列ネテ↠之ヲ在ク↠初ニ。▲十善之中ニハ長命最モ善ナリ。故ニ以テ↠之ヲ†相対ス也。已下ノ九悪九善者、至[リ]テ↢下ノ九品ノ中ニ↡、次ニ応シ↢広ク†述ブ↡。
^これ世善を明かす。 また*慈下の行と名づく。
~此‡明ス↢世善ヲ↡。又名ク↢慈下ノ行ト↡†也。
・行門 ・戒福 ・受持三帰
^二に 「▲受持三帰」 といふは、 これ世善軽微にして*感報具ならず。 *戒徳巍々としてよく菩提の果を感ずることを明かす。
▲二[ニ]言フ↢「受持三帰ト」↡者、此明ス↣世善軽微ニシテ感報不↠具ナラ、戒徳巍巍トシテ能ク感ズルコトヲ↢菩提之果ヲ↡。
^ただ衆生の帰信浅きより深きに至る。 先づ*三帰を受けしめ、 後に衆戒を教ふ。
~†但衆生ノ帰信従0714リ↠浅キ至[ル]↠深[キニ]。先ヅ受ケシメ‡↢三帰ヲ↡、後ニ教フ↢衆戒ヲ↡。
・行門 ・戒福 ・ 具足衆戒
^「▲具足衆戒」 といふは、 しかるに戒に多種あり。 あるいは*三帰戒、 あるいは*五戒・*八戒・*十善戒・*二百五十戒・*五百戒・*沙弥戒、 あるいは菩薩の*三聚戒、 *十無尽戒等なり。 ゆゑに0386具足衆戒と名づく。
▲言フ↢「具足衆戒ト」↡者、†然ルニ戒ニ有リ↢多種↡。或[イ]ハ三帰戒、或[イ]ハ五戒・八戒・十善戒・二百五十戒・五百戒・沙弥戒、或[イ]ハ菩薩[ノ]三聚戒・十無尽戒等ナリ。故ニ名ク↢具足衆戒ト↡†也。
^また一々の*戒品のなかにまた*少分戒・多分戒・全分戒あり。
~又一一ノ戒品ノ中ニ亦有†リ↢少分戒・多分戒・全分戒↡也。
・行門 ・戒福 ・不犯威儀
^「▲不犯威儀」 といふは、 これ身口意業、 行住坐臥によく一切の戒のために方便の威儀をなすことを明かす。
▲言フ↢「不犯威儀ト」↡者、此明ス↧身口意業行住坐臥ニ能ク与ニ↢一切ノ戒ノ↡作スコトヲ↦方便ノ威儀ヲ↥也。
^もしは軽重粗細みなよく護持して、 犯せばすなはち悔過す。 ゆゑに不犯威儀といふ。 これを戒善と名づく。
~若シハ軽重麁細皆能ク護持シテ、†犯セバ即チ悔過ス。故ニ云フ↢不犯威儀ト↡。此ヲ名ク↢戒善ト↡†也。
・行門 ・行福 ・発菩提心
^三に 「▲発↓菩提↓心」 といふは、 これ衆生の*欣心*大に趣く。 浅く*小因を発すべからず。 広く*弘心を発すにあらざるよりは、 なんぞよく菩提とあひ会することを得んといふことを明かす。
▲三[ニ]言フ↢「発菩提心ト」↡者、此†明ス↧衆生ノ欣心趣†ク↠大ニ、不↠可カラ↣浅ク発ス↢小因ヲ↡、自リハ↠非†ザル↣広ク発[ス]ニ↢弘心ヲ↡、何ゾ能ク得ムトイフコトヲ↦与↢菩提↡相会スルコトヲ↥。
^◆ただ願はくはわが身、 身は虚空に同じく心は法界に斉しく、 衆生の性を尽さん。 われ身業をもつて恭敬し供養し礼拝し、 *来去を迎送して*運度して尽さしめん。 またわれ口業をもつて讃歎し説法して、 みなわが*化を受けて、 言の下に*道を得るもの、 尽さしめん。 またわれ意業をもつて入定観察し、 身は法界に分身して機に応じて0493度して、 一として尽さざるはなからん。
~唯願クハ我ガ身、身[ハ]同[ジ]ク↢虚空ニ↡心[ハ]斉シク↢法界ニ↡、尽†サム↢衆生[ノ]性ヲ↡。我以テ↢身業ヲ↡ 恭ツヽシミ敬[シ]ウヤマテ 供マウク養シ礼拝 オガム シ‡、迎ムカヘ↢送オクルシ[テ]来去ヲ↡運ハコビ度シテ令メム↠尽サ。又我以テ↢口業ヲ↡讃歎[シ]説法シテ、皆受ケテ↢我ガ化ヲ↡、言ノ†下ニ得[ル]↠道ヲ者‡、令メム↠尽サ。又我以テ↢意業ヲ↡入定観察シ‡、身ハ分ケ‡↢身ヲ法界ニ↡応ジテ↠機ニ而度シテ、無カラム↢†一トシテ†不ルハ↟尽サ。
^◆われこの願を発す。 運々増長してなほ虚空のごとく、 処として遍せざるはなく、 行流無尽にして*後際を徹窮し、 身に*疲倦なく心に*厭足なからん。
~我発ス↢此ノ願ヲ↡。運運‡増長シテ猶如ク↢虚空ノ↡、無ク↢処トシテ不ル†ハ↟遍セ、行流無尽ニシテ徹↢窮シ後際ヲ↡、身ニ無ク↢疲ツカレ倦モノウシ↡心ニ無カラム↢厭アクコト足↡。
^◆また 「↑菩提」 といふはすなはちこれ仏果の名なり。 また 「↑心」 といふはすなはちこれ衆生の*能求の心なり。 ゆゑに発菩提心といふ。
~又言フ↢菩提ト↡者即チ是仏果之名ナリ。又言フ↠心ト者即[チ]是衆生ノ能求之心ナリ。故ニ云フ↢発菩提心ト↡†也。△
・行門 ・行福 ・深信因果
^四に 「▲深信因果」 といふはすなはちその二あり。
▲四[ニ]言フ↢「深信因果ト」↡者即チ有リ↢†其ノ二↡。
^一0387には世間の苦楽の因果を明かす。 もし苦の因を作ればすなはち苦の果を感じ、 もし楽の因を作ればすなはち楽の果を感ず。 ▲*印をもつて泥に印するに、 印壊れて文成ずるがごとし。 疑ふことを得ず。
~一[ニハ]明ス↢世間ノ苦楽ノ因果ヲ↡。若シ作レバ↢苦ノ因ヲ↡即[チ]感†ジ↢苦ノ果ヲ↡、若シ†作レバ↢楽ノ因ヲ↡即[チ]感ズ↢楽ノ果ヲ↡。如↢似シ以テ↠印ヲ印†スルニ↠泥†ニ、印0715†壊シテ文成ズルガ↡。†不↠得↠†疑フコトヲ也。
・行門 ・行福 ・読誦大乗
^「▲読誦大乗」 といふは、 これ経教はこれを喩ふるに鏡のごとし。 しばしば読みしばしば尋ぬれば、 智慧を開発す。 もし智慧の眼開けぬれば、 すなはちよく苦を厭ひて涅槃等を欣楽することを明かす。
~言フ↢「読誦大乗ト」↡者、此明[ス]↧経教ハ喩フルニ↠之ヲ如シ↠鏡ノ、数読ミ数尋ヌレバ、開↢発ス智慧ヲ↡、若シ智慧ノ眼開ケヌレバ、即[チ]能ク厭ヒテ↠苦ヲ欣↦楽スルコトヲ涅槃等ヲ↥也。
・行門 ・行福 ・勧進行者
^「▲勧進行者」 といふは、 これ苦法は毒のごとく、 悪法は刀のごとし。 三有に流転して衆生を損害す。 いますでに善は明鏡のごとく、 法は甘露のごとし。 鏡はすなはち正道を照らしてもつて真に帰し、 甘露はすなはち法雨を注ぎて竭くることなく、 *含霊をして潤を受け、 等しく法流に会せしめんと欲することを明かす。 この因縁のためのゆゑにすべからくあひ勧むべし。
~言フ[ハ]↢「勧進行*者ト」↡、此明ス↧苦法ハ如†ク↠毒ノ、悪法ハ如シ↠†刀ノ、流↢転シテ三有ニ↡損↢害ス衆生ヲ↡、今既ニ善ハ如†ク↢明鏡ノ↡、法ハ如シ↢甘アマキ露ツユノ↡、鏡ハ即[チ]照シテ↢正道ヲ↡以テ帰シ↠真ニ、甘露ハ即[チ]注ギテ↢法雨ヲ↡而無†ク↠†竭クルコト、欲スルコトヲ↞使メムト↣含霊ヲシテ受ケ↠†潤ヲ、等シク会セ↢法流ニ↡。為ノ↢此ノ因縁ノ↡故ニ須ベ クシ↢相勧ム↡。△
・結行
^▲「如此三事」 といふ以下は、 総じて上の行を結成す。
言フ↢「如此三事ト」↡已下ハ、▲総ジテ結↢成ス上ノ行ヲ↡也。
二 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅴ)釈引聖励凡文
(ⅰ)科節
^五に ▲「仏告韋提」より下 「正因」 に至るこのかたは、 それ聖を引きて凡を励ますことを明かす。
五[ニ]従リ↢「仏告韋提‡」↡下至ル↢「正因ニ」↡已来[タ]ハ、▲明ス↢†其引キテ↠聖ヲ励スコトヲ↟凡ヲ。
二 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅴ)(ⅱ)述意
^ただよく決定して心を注むれば、 かならず往くこと疑なし。
~但能ク決定アキラメシテ注ムレバ↠心ヲ、必ズ往クコト無シ↠疑。
二 Ⅱ ⅱ b ヘ (三)結
^上来五句の不同ありといへども、 広く散善顕行縁を明かしをはりぬ。
上来雖[モ]↠有[リ]ト↢五句ノ不同↡、広ク明シ↢散善顕行縁ヲ↡竟[リ]ヌ。
二 Ⅱ ⅱ b ト【定善示観縁】
(一)標
【11】^七に↑定善示観縁のなかにつきてすなはちその七あり。
▲七[ニ]就キテ↢定善示観縁ノ中ニ↡即チ有リ↢其ノ†七↡。
二 Ⅱ ⅱ b ト (二)釈
(Ⅰ)釈勅聴許説文
(ⅰ)科節
^一に ▲「仏告阿難」 よ0388り下 「清浄業」 に至るこのかたは、 まさしく*勅聴許説を明かす。
一[ニ]従リ↢「仏告阿難」↡下至ル↢「清浄業†ト」↡已来[タ]ハ、▲正[シク]明ス↢勅聴 キヽ 許ユルス説ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ト (二)(Ⅰ)(ⅱ)述意
^これ韋提前に▲極楽に生ぜんと願ずることを請じ、 また▲得生の行を請ずるに、 如0494来すでに許したまへり。 いまこの文につきてまさしく*正受の方便を開顕せんと欲することを明かす。
~此明ス↫韋提前ニ請ジ↠願ズルコトヲ↠†生ゼムト↢極楽ニ↡、又請ズ[ルニ]↢得生之行ヲ↡、如来已ニ許シ†タマヘリ、今就キテ↢此ノ文ニ↡正[シク]欲[ス]ルコトヲ↪開↩顕セムト正受之方便ヲ↨。
^これすなはち因縁の極要にして利益する処深し。 曠劫にも聞くこと希なり。 いまはじめて説く。 この義のためのゆゑに、 如来総じて*二人に命ぜしむることを致す。
~此乃チ因縁ノ極要†ニシテ利益[スル]処深シ。曠劫ニモ希ナリ↠聞ク†コト。如今始テ説ク。為ノ↢斯ノ義ノ↡故ニ、致ス↠使ムルコトヲ↣如来総ジテ命ゼ↢二人[ニ]↡。△
二 Ⅱ ⅱ b ト (二)(Ⅰ)(ⅲ)釈文
^「▲告阿難」 といふは、 「われいま浄土の門を開説せんと欲す。 なんぢよく伝持して遺失せしむることなかれ」 となり。
▲言フ↢「告阿難ト」↡者、我今†欲ス↣開↢説セムト浄土之門ヲ↡。汝好ク伝持シテ莫レ[トナリ]↠令ムルコト↢遺失セ↡。
^「▲告韋提」 といふは、 「なんぢはこれ請法の人なり。 われいま説かんと欲す。 なんぢよく審らかに聴き、 思量*諦受して、 *錯失せしむることなかれ」 となり。
▲言フ↢「告韋提ト」↡者、汝ハ是請法之人ナリ。我今†欲ス↠説[カム]ト。汝好ク†審カニ聴キ、思量諦受シテ、莫レ[トナリ]↠令[ムル]コト↢錯失セ↡。
^「▲為未来世一切衆生」 といふは、 ただ如来化に臨みたまふことは、 ひとへに*常没の衆生のためなり。 いますでに等しく慈雲を布きて、 あまねく*来潤を沾さんと望欲す。
言フ↢「為未0716来世一切衆生ト」↡者、▲†但如来臨ミタマフコトハ↠化ニ、偏ニ為ナリ↢常没ノシヅム衆生ノ↡。今既ニ等シク布キテ↢慈雲ヲ↡、望↣ノゾミ欲ス普ク沾サム†ト↢来潤ヲ↡。
^「▲為煩悩賊害」 といふは、 これ凡夫障重く、 妄愛迷ひ深くして、 三悪の*火坑闇くして人の足下にあることを謂はず。 ▼縁に随ひて行を起して、 *進道の資糧となさんと擬するも、 なんぞそれ*六賊知聞し、 競ひ来りて侵し奪ふ。 いますでにこの法財を失ふ、 なんぞ憂苦なきことを得んやといふことを明かす。
▲言フ↢「為煩悩賊害ト」↡者、此†明[ス]↧凡夫‡障重ク、妄愛迷ヒ深クシテ、不↠謂ハ↣三悪ノ火*坑闇クシテ在ルコトヲ↢人之†足下ニ↡、随[ヒテ]↠縁ニ起シテ↠行ヲ、擬スル†モ↠作サムト↢進道ノ資糧†ト↡、何ゾ其レ六賊知聞シ‡、競ヒ来[リ]テ侵シ シ奪ダツフ、今既ニ失フ↢此ノ法財ヲ↡、何ゾ得ム↠無キコトヲ↢憂苦↡也トイフコトヲ↥。
^「▲説清浄業」 といふ0389は、 これ如来衆生の罪を見たまふをもつてのゆゑに、 ために懴悔の方を説き、 相続して断除せしめ、 *畢竟じて永く清浄ならしめんと欲することを明かす。 ▼また 「清浄」 といふは、 ▼*下の観門によりて専心に念仏し、 想を西方に注むれば、 念々に罪除こるがゆゑに清浄なり。
言[フ]↢「説清浄業ト」↡者、▲此明ス↫如来以[テ]ノ↠見[タマフ]ヲ↢衆生ノ罪ヲ↡故ニ、為ニ説キ‡↢懴悔之方ヲ↡、欲スルコトヲ↪令[メ]↢相続‡シテ断除セ↡、畢竟ジテ永ク令メムト↩清浄ナラ↨。又言フ↢清浄ト↡者、依[リ]テ↢下ノ観門ニ↡専心ニ念仏シ、注ムレバ↢想ヲ西方ニ↡、念念ニ罪除コル[ガ]故ニ清浄也。
二 Ⅱ ⅱ b ト (二)(Ⅱ)釈如来可問文
^二に ▲「善哉」より以下は、 まさしく夫人の問*聖意に当れることを明かす。
二[ニ]従リ↢「善哉‡」↡已下[ハ]、▲正[シク]明ス↣夫人ノ問‡当レルコトヲ↢聖意ニ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ト (二)(Ⅲ)釈勧持勧説文
(ⅰ)科節
^三に▲「阿難汝当受持」より下 「宣説仏語」 に至るこのかたは、 まさしく勧持と勧説とを明かす。
三[ニ]従リ↢「阿難汝当受持‡」↡下至ル↢「宣説仏語ニ」↡已来[タハ]、▲正[シク]明ス↢勧持[ト]勧説[ト]ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ト (二)(Ⅲ)(ⅱ)述意
^この法深要なり、 よくすべからく流布すべし。 これ如来▲前にはすなはち総じて告げて安心聴受せしむ。 この文はすなはち別して阿難に勅して、 受持して忘るることなく、 広く多人の処にして、 ために説きて流行せしむることを明かす。
~此ノ法深要ナリ、好ク須ベ クシ↢流布ス↡。此明ス↧如来前ニハ則チ総ジテ告ゲテ令ム↢安心聴受セ↡、此ノ文ハ則チ別シテ勅シテ↢阿難ニ↡、受持シテ勿ク↠忘ルルコト、広ク多人ノ処ニシテ、為ニ説キテ流行セシムルコトヲ↥。
二 Ⅱ ⅱ b ト (二)(Ⅲ)(ⅲ)釈文
^「▲仏語」 といふは、 これ如来曠0495劫にすでに口の過を除きたまひて、 言説あるに随ひて一切聞くものの自然に信を生ずることを明かす。
▲言フ↢「仏語ト」↡者、此明ス↧如来曠劫ニ已ニ除キ[タマヒ]テ↢口ノ過ヲ↡、随[ヒ]テ↠有ルニ↢言説↡一切聞ク者ノ自然ニ生[ズル]コトヲ↞信ヲ。
二 Ⅱ ⅱ b ト (二)(Ⅳ)釈勧修得益文
(ⅰ)科節
^四に▲「如来今者」より下 「得無生忍」 に至るこのかたは、 まさしく勧修得益の相を明かす。
四[ニ]従リ↢「如来今者‡」↡下至ル↢「得無生忍[ニ]」↡已来[タ]ハ、▲正[シ]ク明ス↢勧修得益之相ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ト (二)(Ⅳ)(ⅱ)述意
^これ如来、 夫人および*未来等のために観の方便を顕して、 想を西方に注めしめて、 娑婆を*捨厭し極楽を*貪欣せしめんと欲することを明かす。
~此‡明ス↫如来欲[ス]ルコトヲ↪為ニ↢夫人及ビ未来等ノ↡顕シテ↢観[ノ]方便ヲ↡、注メ[シメ]テ↢想ヲ西方ニ↡、捨ステ↢厭シイトフ娑婆ヲ↡貪↩欣セシメムト極楽ヲ↨。
二 Ⅱ ⅱ b ト (二)(Ⅳ)(ⅲ)釈文
^▲「以仏力故」 といふ以下は、 これ衆生の*業障目に触るるに*生盲なれば、 掌を指すに遠しと謂ひ、 他方*竹を隔つるにすなはち0390これを千里に踰ゆとす。 あにいはんや凡夫分外の諸仏の境内、 心に闚はんや。 *聖力の冥に加するにあらざるよりは、 かの国なにによりてか覩ることを得んといふことを明かす。
言フ↢「以仏力故ト」↡已下[ハ]、▲此明ス↧衆生ノ業障触ルルニ↠目ニ生盲ナレバ、指†スニ↠掌ヲ謂†ヒ↠遠シト、他方†隔ツルニ↢竹*ヲ↡即[チ]踰ユ[トス]↢之ヲ千里ニ↡、豈況ヤ凡夫0717†分外ノ諸仏ノ境内‡†闚ハムヤ↠心ニ、自リハ↠非†ザル↢聖力ノ冥ニ加スルニ↡、彼ノ国何ニ由[リ]テカ得ムトイフコトヲ↞覩ルコトヲ。
^▲「如執明鏡自見面像」 といふ以下は、 これ夫人および衆生等入観して心を住め、 *神を凝して捨てざれば、 *心境相応してことごとくみな顕現することを明かす。 境現ずる時に当りて、 鏡のなかに物を見るに異なることなきがごとし。
言フ↢「如執明鏡自見面像ト」↡已下[ハ]、▲此明ス↢夫人及ビ衆生等入観シテ†住メ↠心ヲ、凝シテ↠神ヲ不レバ↠捨テ、心境相応シテ悉ク皆顕現スルコトヲ↡。当[リ]テ↢†境現ズル時ニ↡、如↢似シ鏡ノ中ニ見[ル]ニ↠物ヲ無キガ↟†異ナルコト也。
・得忍相
^「▲心歓喜故得忍」 といふは、 これ阿弥陀仏国の清浄の光明、 たちまちに眼前に現ず、 なんぞ*踊躍に勝へん。 ▼この喜によるがゆゑに、 すなはち*無生の忍を得ることを明かす。 また*喜忍と名づけ、 また*悟忍と名づけ、 また*信忍と名づく。 これすなはちはるかに談じていまだ*得処を標せず、 夫人等をして心にこの益を悕はしめんと欲す。 *勇猛専精にして心に〔仏を〕想ひて見る時、 まさに忍を悟るべし。 これ多くこれ*十信のなかの忍にして、 *解行以上の忍にはあらず。
▲言フ↢「心歓喜故得忍ト」↡者、此明ス↧阿弥陀仏‡国[ノ]清浄†ノ光明、忽ニ現ズ↢†眼前ニ↡、何ゾ勝ヘム↢踊躍[ニ]↡、因ルガ↢茲ノ†喜ニ↡故ニ、即[チ]得[ル]コトヲ↦無生之忍ヲ↥。亦‡名†ケ↢喜忍ト↡、亦名†ケ↢悟忍ト↡、亦名ク↢信忍ト↡。此乃チ玄グヱンニ談†カタラウジテ未ズ ダ↠標セアラハス↢得処ヲ↡、欲ス↠令メムト↣夫人等ヲシテ悕ハ↢心ニ此ノ益ヲ↡。勇猛タケシ専精ニ[シテ]心[ニ]想ヒテ見†ル時、方ニ応シ↠悟ル↠忍ヲ。此多ク是十信ノ中ノ忍†ニシテ、非ズ↢解行已上ノ忍ニハ↡也。
二 Ⅱ ⅱ b ト (二)(Ⅴ)釈仏力観成文
(ⅰ)科節
^五に ▲「仏告韋提」より下 「令汝得見」 に至るこのかたは、 まさしく夫人はこれ*凡にして*聖にあらず。 聖にあらざるによるがゆゑに、 仰ぎておもんみれば聖力冥に加して、 かの国はるかなりといへども覩ることを得ることを明かす。
五[ニ]従リ↢「仏告韋提‡」↡下至ル↢「令汝得見ニ」↡已来[タハ]、▲正[シク]明ス↢夫人[ハ]是凡ニシテ非ズ↠聖ニ、由ルガ↠非ザルニ↠聖ニ故ニ、仰ギテ惟レバ聖力冥ニ加シテ、彼ノ国雖モ↠遥ナリト得[ル]コトヲ↟覩ルコトヲ。
二 Ⅱ ⅱ b ト (二)(Ⅴ)(ⅱ)述意
^これ如来、 衆生惑ひを置きて、 *夫人はこれ聖にして凡にあらずといひて0391疑を起すによるがゆゑにすなはちみづから*怯弱を生じ、 しかるに▼韋提は現にこれ菩薩にしてかりに凡身を示0496す、 われら罪人比及するに由なしといふことを恐る。 この疑を断ぜんがためのゆゑに 「汝是凡夫」 とのたまふことを明かす。
▲此明ス↪如来†恐ル↧衆生置キテ↠惑ヲ、謂↢言ヒテ夫人ハ是聖ニシテ非ズト↟凡ニ由ルガ↠起スニ↠疑ヲ故ニ即チ自ラ生†ジ↢怯弱ヨハシ ヲ↡、†然ルニ韋提ハ現ニ是菩薩†ニシテ仮ニ示ス↢凡身ヲ↡、我等罪人‡無シトイフコトヲ↞由↢†比及スルニ↡、為ノ↠断ゼムガ↢此ノ疑ヲ↡故ニ言[フ]コトヲ↩汝是凡夫ト↨†也。
二 Ⅱ ⅱ b ト (二)(Ⅴ)(ⅲ)釈文
・心想羸劣
^「▲心想羸劣」 といふは、 これ凡なるによるがゆゑにかつて大志なし。
言フ↢「心想羸劣ト」↡者、▲由ルガ↢是凡ナルニ↡故ニ曽テ無シ↢†大志↡也。
・未得天眼
^「▲未得天眼」 といふは、 これ夫人肉眼の見るところの遠近は言をなすに足らず、 いはんや浄土いよいよはるかなり、 いかんぞ見るべきといふことを明かす。
言フ↢「未得天眼ト」↡者、▲此明ス↢夫人‡肉眼[ノ]所ノ↠見ル遠近[ハ]不↠足ラ↠†為スニ↠†言ヲ、況ヤ浄土弥遥ナリ、云何ゾ可キトイフコトヲ↟見ル。
・異方便
^▲「諸仏如来有異方便」 といふ以下は、 これもし心によりて見るところの国土の荘厳は、 なんぢ凡のよく*普悉するにあらずと、 功を仏に帰することを明かす。
言フ↢「諸仏如来有異方便ト」↡已下ハ、▲此明ス↧若シ依[リ]テ↠心ニ所ノ↠見ル国土ノ荘厳†者、非ズ[ト]↢汝凡ノ能ク†普悉スルニ↡、帰スルコトヲ↦功ヲ於仏ニ↥也。
二 Ⅱ ⅱ b ト (二)(Ⅵ)釈牒前起後文
(ⅰ)科節
^六に ▲「時韋提白仏」より下 「見彼国土」 に至るこのかたは、 それ夫人かさねて*前の恩を*牒し、 後の問を生起せんと欲する意を明かす。
六[ニ]従リ↢「時韋提0718白仏‡」↡下至ル↢「見彼国土ニ」↡已来[タハ]、▲明ス↧†其夫人重テ牒シ‡↢前ノ恩ヲ↡、欲スル↣生↢起セムト後ノ問ヲ↡之意ヲ↥。
二 Ⅱ ⅱ b ト (二)(Ⅵ)(ⅱ)述意
^▼これ夫人仏意を領解するに、 上の光台の所見のごときは、 これすでによく向に見たりと謂ひき、 世尊開示したまふに、 はじめてこれ仏の方便の恩なりと知る。 もししからば、 仏いまに世にましませば、 衆生念を蒙りて西方を見ることを得しむべし。 仏もし涅槃したまひて加備を蒙らざるものは、 いかんが見ることを得んやといふことを明かす。
▲此明ス↧夫人領↢解スルニ仏意ヲ↡、如キ[ハ]↢上ノ光台ノ所見ノ↡、謂ヒキ↢是已ニ能ク向ニ見†タリト↡、世尊開示シタマフニ始テ知†ル↢是仏ノ方便之恩ナリト↡、若シ爾†ラバ者、仏今ニ在セバ↠世ニ、衆生蒙リテ↠念ヲ可シ↠使ム↠得↠見ルコトヲ↢西方ヲ↡、仏若シ涅槃シタマヒテ不ル↠蒙ラ↢加備ヲ↡者ハ、云何ガ得ム↠見ルコトヲ也トイフコトヲ↥。
二 Ⅱ ⅱ b ト (二)(Ⅶ)釈悲心為物文
(ⅰ)科節
^七に ▲「若仏滅後」より下 「極楽世界」 に至るこのかたは、 ▼まさしく夫人の悲心*物0392のためにすること、 おのが往生に同じく、 永く娑婆を逝きて、 長く安楽に遊ばしめんといふことを明かす。
七[ニ]従リ↢「†若仏滅後‡」↡下至ル↢「極楽世界ニ」↡已来[タ]ハ、▲正[シク]明ス↧夫人ノ悲心為ニスルコト↠物ノ、同[ジ]ク↢†己ガ往生ニ↡、永ク逝キテ↢娑婆ヲ↡、長ク遊バシメムトイフコトヲ↦安楽ニ↥。
二 Ⅱ ⅱ b ト (二)(Ⅶ)(ⅱ)述意
^これ如来、 心に期したまふ運度は、 後際を徹窮していまだ休まず。 ただ世代り時移りて、 群情*浅促なるをもつてのゆゑに、 如来をして永生の寿を減じ、 *長劫を*泯じてもつて*人年に類し、 憍慢を摂せんとしてもつて無常を示し、 剛強を化せんとして同じく*磨滅に帰せしむることを明かす。 ゆゑに若仏滅後といふ。
~此†明ス↫如来†期シタマフ↠心ニ運ハコブ度[ハ]、徹↢窮シテ後際ヲ↡而未ダ↠休マ、†但以テノ↢世代リ時移[リ]テ、群情浅促ナルヲ↡故ニ、使ムルコトヲ↪如来[ヲシテ]減ジ↢永生之†寿ヲ↡、†泯ジテ↢長劫ヲ↡以テ類シ↢人年ニ↡、摂[セムト]シテ↢憍オゴル慢ヲ↡アナドル以テ示シ↢無常ヲ↡、化セムトシテ↢剛コハク強ヲコハシ↡同[ジ]ク帰セ↩於磨滅ニ↨。故ニ云フ↢「若仏滅後ト」↡也。
二 Ⅱ ⅱ b ト (二)(Ⅶ)(ⅲ)釈文
^「▲諸衆生」 といふは、 これ如来化を息めたまはば、 衆生帰依するに処なし。 *蠢々周慞して、 縦横に六道に走ることを明かす。
~言フ↢「諸衆生ト」↡者、此明ス↧如来息メ†タマハバ↠化ヲ、衆生無†シ↠処↢帰依[スルニ]↡、蠢蠢周慞シテ、縦横ニ走ルコトヲ↦†於六道ニ↥。△
・濁悪不善
^「▲濁悪不善」 といふは、 これ▼五濁を明かす。 一には↓劫0497濁、 二には↓衆生濁、 三には↓見濁、 四には↓煩悩濁、 五には↓命濁なり。
▲言フ↢「濁悪不善ト」↡者、此明ス↢五濁ヲ↡也。一[ニ]者劫濁、二[ニ]者衆生濁、三[ニ]者見濁、四[ニ]者煩悩濁、五[ニ]者命濁ナリ。
・劫濁
^「↑劫濁」 といふは、 しるに劫は実にこれ濁にあらず、 劫減ずる時に当りて諸悪加増す。
~言フ↢劫濁ト↡者、†然ルニ劫ハ実ニ非ズ↢是濁ニ↡、当[リ]テ↢†劫減ズル時ニ↡諸悪加増ス也。
・衆生濁
^「↑衆生濁」 といふは、 劫もしはじめて成ずる時は衆生純善なり、 劫もし末なる時は衆生の十悪いよいよ盛りなり。
~言フ↢衆生濁ト↡者、劫若シ初テ成†ズルトキハ衆生純モハラ善ナリ、劫若シ†末ナル時ハ衆生ノ十悪弥盛也。
・見濁
^「↑見濁」 といふは、 自身の衆悪は総じて変じて善となし、 他の上に非なきをば見て是ならずとなす。
~言フ↢見濁ト↡者、自身ノ衆悪ハ†総ジテ変ジテ為†シ↠善ト、他ノ上ニ無キヲ[バ]↠非見テ為ス↠†不ト↠是ナラ†也。
・煩悩濁
^「↑煩悩濁」 といふは、 当今の劫末の衆生悪性にして親しみがたし。 六根に随対して*貪瞋競ひ起る。
~言フ↢煩悩濁ト↡者、当今[ノ]劫*末ノ衆生悪性ニシテ難シ↠親ミ。随↢対シテ六根ニ↡貪瞋競ヒ起ル也。
・命濁
^「↑命濁」 といふは、 前の見・悩の二濁によりて多く殺害を行じて、 慈しみ恩養することなし。 すでに0393*断命の苦因を行じ、 長年の果を受けんと欲するも、 なにによりてか得べき。
~言フ↢命濁ト↡者、由[リ]テ↢前ノ見・悩ノ二0719濁ニ↡多ク行ジテ↢殺害ヲ↡、†無シ↢慈シミ恩養スルコト↡。既ニ行†ジ↢断命之苦‡因ヲ↡、†欲スルモ↠受ケムト↢長年之果ヲ↡者、何ニ由[リ]テカ可キ↠得也。
^しかるに濁は*体これ善にあらず。 いま略して五濁の義を指しをはりぬ。
~†然ルニ濁者体非ズ↢†是善ニ↡。今略シテ指[シ]↢五濁ノ義ヲ↡竟[リ]ヌ。
・五苦所逼
^「▲五苦所逼」 といふは、 八苦のなかに生苦・老苦・病苦・死苦・*愛別苦を取りて、 これを五苦と名づく。 さらに三苦を加ふればすなはち八苦となる。 一には*五陰盛苦、 二には*求不得苦、 三には*怨憎会苦、 総じて八苦と名づく。
~言フ↢「五苦所逼ト」↡者、八苦ノ中ニ取[リ]テ↢生苦・老苦・病苦・死苦・愛別‡ワカレ苦ヲ↡クルシミ、此[ヲ]名ク↢五苦ト↡†也。更ニ加†フレバ↢三苦ヲ↡即チ†成ル↢八苦ト↡。一[ニ]者五陰盛苦、二[ニ]者求不得苦、三[ニ]者怨アダ 憎ソネミ会苦、総ジテ名ク↢八苦ト↡也。
^▼この五濁・五苦・八苦等は六道に通じて受く、 いまだなきものあらず。 つねにこれを*逼悩す。 もしこの苦を受けざるものは、 ▼すなはち*凡数の摂にあらず。
~此ノ五濁・五苦・八苦等[ハ]通ジテ↢六道ニ↡受ク、未ズ ダ↠有ラ↢無キ者↡。常ニ逼↢悩ス之ヲ↡。若シ不ル↠受ケ↢此ノ苦ヲ↡者ハ、即チ非ズ↢凡数ノ摂ニオサム↡也。
^▲「云何当見」 といふ以下は、 ▼これ夫人*苦機を挙出して、 これらの*罪業きはめて深くして、 また仏を見たてまつらず、 加備を蒙らずは、 いかんがかの国を見るべきといふことを明かす。
~言フ↢「云何当見ト」↡已下[ハ]、此明ス↧夫人†挙↢出シテ苦機ヲ↡、此等ノ罪業極テ深†クシテ、又不↠見[タテマツラ]↠仏ヲ、不ハ↠蒙ラ↢加備ヲ↡、云何†ガ見†ルベキトイフコトヲ↦於彼ノ国ヲ↥也。△
二 Ⅱ ⅱ b ト (三)結
^上来七句の不同ありといへども、 広く定善示観縁を明かしをはりぬ。
上来‡雖モ↠有リト↢七句ノ不同↡、広ク明†シ↢定善示観‡縁ヲ↡竟[リ]ヌ。
二 Ⅲ 総結
【12】^初めには*証信序を明かし、 次には*化前序を明かし、 後には*発起序を明かす。
▲初ニ[ハ]明シ↢証信序ヲ↡、次ニ[ハ]明シ↢化前序ヲ↡、後ニ[ハ]明ス↢発起序ヲ↡。
^上来三序の不同ありといへども、 総じて序0498分を明かしをはりぬ。
上来‡雖モ↠有[リ]ト↢三序ノ不同↡、総ジテ明シ↢序分ヲ↡竟リヌ。
観経序分義 巻第二
延書の底本は高田派専修寺蔵鎌倉時代刊本ˆ原漢文の底本と同一ˇ。 ただし返点については本派本願寺蔵版によるか。
五門 五分。
浄影寺慧遠 (523-592)・
嘉祥大師
吉蔵 (549-623) 等の諸師は ¬観経¼ に三分 (
序分・
正宗分・
流通分) を立てて解釈するが、
善導大師は、 五分 (序分・正宗分・
得益分・流通分・
耆闍分) を立てて解釈する。
得益分 その経の教えによって利益を得ることを示す部分。
王宮にまします一会 王宮会のこと。 仏が王舎城宮で阿難と韋提希のために説法した会座。
一会 耆闍会のこと。 阿難が耆闍崛山の大衆のために王宮会での仏の説法を再説した会座。 「散善義」 では耆闍分ともよぶ。
三分 善導大師は全四十五字の耆闍会 (耆闍分) にも序分・正宗分・流通分の三分があるとする。
勝を歎じて (¬観経¼ の教説が) すぐれていることを讃嘆して。
能説の人 教えを説く人。
能聴の人 教えを聞く人。
歴々了然 きわめて明らかであること。
随心の起行 (衆生が) その心にしたがって行をおこすこと。
各益の不同 (その行によって得る) 利益はそれぞれ同じではないということ。
業果の法然 業因によって果報を得ることが道理として自然にあること。
可信を証誠せん 信ずべきことを証明しよう。
禁父の縁 阿闍世が父の頻婆娑羅王を幽閉する因縁。
禁母の縁 阿闍世が母の韋提希を幽閉する因縁。
厭苦の縁 韋提希が苦悩の穢土を厭う因縁。
欣浄の縁 韋提希が浄土を願い求める因縁。
散善顕行縁 散善行を顕す序文。 親鸞聖人は 「
散善は行を顕す縁なり」 (化身土文類訓) と読み、 「自力の散善は他力念仏を顕す縁」 と転意した。
定善示観縁 定善観を示す序文。 親鸞聖人は 「
定善は観を示す縁なり」 (化身土文類訓) と読み、 「定善は他力の信心 (観) を示す縁」 と転意した。
二 化前序の七段を指してならばこれは 「一」 の誤りと思われる。【4】の標列を一と考えて二としたものか。(有国)
起化の時 説法教化をおこす時。
純凡 凡夫のみ (がいる場所)。
純聖 聖者のみ (がいる場所)。
逆 父王を殺すという逆罪。
二には… 以下、 「大比丘衆」 の大についていう。
総大 以下の七大の総句。
相大 すがたがすぐれていること。
衆大 僧衆が巧みに和合していること。
耆年大 長老の比丘であること。
数大 比丘の数が多いこと。
尊宿大 高徳の長老であること。
内有実徳大 内に尊い徳をそなえていること。
果証大 すぐれた証果を得ていること。
猶置 安置の意。 あるいは由致 (由序) の意か。
簡び 区別して。
真門に入る 真実の教えである仏法に帰入すること。
砕身の極 仏の恩徳は身を砕いてもなお報じがたいほど深いという意。
邪網を掴裂し よこしまな教えの網を切り裂いて。
百姓 (王舎城中の) 人民。
王舎 王家の舎宅。
無憂の世界 いかなる憂いもない極楽世界。
霊儀を影現し 釈尊が十方の仏の尊いありさまを韋提希に示したことをいう。
この地の往翻には 中国語の意訳では。
未生怨 出生以前より既に父に怨を懐いた者という意。
継祀 先祖の祭祀をうけつぐこと。 ここでは王位を相続する者の意。
心口をもつて 心に殺意をいだき、 口に命令を発して。
王において… 王に害を加えるであろう。
捨属 (生れてくる子に) 与えること。
平章 正しく明らかにすること。 ここでは適切な処置をとるという意。
声 風聞。 うわさ。
外人 王族以外の人々。
為人匈猛 性格が凶暴であること。
仏会 釈尊の説法の会座。
空無礙の想 虚空を自由自在に行く想い。
摂取 おさめとること。
堪任するところなし (教団を率いてゆく) 能力がない。
罔極の恩 極まりない恩。
逆の響き 逆罪を犯したという噂。
人間 人の出入りするところ。
外人 他の人々。
蝋 蜜蝋のこと。 蜂蜜の巣を精製してつくった蝋。
漿 汁。
門家 守門の者。 門番のこと。
異計 特別なはかりごと。
宿縁業 過去の因縁。
酥 酥蜜のこと。 牛乳を精製してつくった乳酥に蜂蜜を加えたもの。
麨団 乾麨のこと。 炒った麦をひいた粉。 麦こがし。
朝心 王の心の意か。
別親 母方の親類。
門師 頻婆娑羅王家の師匠。
幽難 幽閉の難。
屈 屈請。 尊い人の来臨を請うこと。
時節長遠 (戒をたもつべき) 時間が長いこと。
余の仏経 ¬受十善戒経¼ などを指す。
持心極細極急 戒をたもつ心が細密で精励であること。
用心 (戒をたもつ) 心がまえ。
細 細密。
戒文 戒を説く律文。 ¬四分律¼ ¬五分律¼ など。
仏子 持戒の人。 仏弟子。
今旦・明旦 今朝・明朝。
中 正午。
悪習 悪の余残の気分。
快鷹 空を早く飛ぶ鷹。
来業を資せんと擬す 来世の果報を招く業因の資糧にしたいと望む。
発遣 (富楼那を) 派遣すること。
二七有余 十四日余り。 ¬観経¼ には 「
三七日」 とある。
三七 二十一日間。
意密の問 本心を隠した問いかけ。
万基の主 国を統治する者。 国王。
挙動… 行動が気ままであってはならない。
悪逆の声 悪逆を犯したという評判。
麨 乾麨のこと。 炒った麦をひいた粉。 麦こがし。
夫人の… 韋提希夫人が食物をもちこむことができたのは、 阿闍世があらかじめこれを禁じていなかったからである。
門制 宮殿の出入りについての制禁。
後の正行 行為そのもの。
沙門 目連と富楼那のこと。
慈母 韋提希のこと。
児 阿闍世のこと。
八方 四方および四維。 ここではすべての民衆のこと。
顔を犯して 遠慮しないという意。
家兄 阿闍世のこと。
古今の書史歴帝の文記 古今の歴史書や歴代帝王の記録。
京邑神州 京邑は都、 神州は国土の美称。 ここでは王舎城、 摩竭陀国を指す。
無聞の地 たよりの聞えないようなところ。
剣を按ずる 剣のつかに手をおく。
諌辞 (阿闍世を) いさめることば。
却行而退 後向きに退くこと。
異計 (阿闍世を追放するための) 陰謀。
情地 心地。 気持ち。
相 大臣。
訝楽 憩いたのしむこと。
水泄すら通ぜず 水も漏らさないように厳重に警備するという意。
彼此 彼は釈尊、 此は韋提希と頻婆娑羅王を指す。
福因尠薄なり 過去の善根の因がとぼしい。
三たび致請 仏を懇請すること。 三度請をかさねることは仏を請ずるときの礼法。
ここ 耆闍崛山。
かしこ 王舎城の王宮。
未聞の益 いままでに聞いたことのないすぐれた利益。
鉤帯 瓔珞のとめひも。
婉転 ころびたおれること。
身の威儀を正しくして 身だしなみをととのえて。
径路 (阿闍世王が逆罪をおこすに至った) 道筋。
甘心 甘んじて受けるの意か。 またここでの甘を厭の義と解する説もある。
by>と習気のこと。
増上の勝因 この上なくすぐれた原因。
三本の悪果 地獄・餓鬼・畜生の三悪道の果報。
経にのたまはく… 引用は ¬華厳経¼ 等の諸経の取意の文か。
簡ばず 区別しない。
生処 往生すべき浄土。
得生の行 往生を得るための行業。
所現 金台に現れた十方仏国のありさま。
甘露 ここでは浄土の法門を甘露に喩える。 →
甘露
衆聖 数多くの聖者たち。 ここでは諸仏のこと。
指讃 阿弥陀仏の浄土を指し示してほめたたえること。
別行 阿弥陀仏の浄土に往生するための特別な行。
四種の荘厳 定善十三観を依報と正報に分け、 そのそれぞれに通と別とを分つので、 四種の荘厳となる。
前境 所観の境としての依正二報の荘厳相。
下の観門 定善十三観のこと。
威儀 ふるまい。 作法。
第三の果 声聞乗の修道階位である四向四果のうちの阿那含果のこと。 →
阿那含
所求の行 阿弥陀仏の浄土に往生するための行。
告命許説 告命は仏が韋提希に告げること。 許説は仏が韋提希の願いをききいれて法を説くこと。
境 所観の境。 観想の対象となるところの浄土。
分斉遠からず ここでの分斉は程度の意。 十万億刹は二十万億刹、 三十万億刹等の距離に比べれば遠くないということ。
道里 (西方浄土への) みちのり。
定境相応して 定心と所観の境が合致して。
浄境 清浄なる境界であるところの浄土のありさま。
生を摂するに尽きず すべての衆生をおさめとることはできない。
能生の因・所生の縁 父は子種を下すから子を能く生ずる因といい、 母は子種をたもち育てるから子を生ずる所の縁であるという。
飢倹 飢饉。
縦横 至るところにあること。
幢相 はたじるし。 袈裟は煩悩の敵を破るはたじるしに喩えられる。
仏母… 以下の説は ¬大方便仏報恩経¼ に出る。
敬上の行 上を敬う行為。
怒 異本には 「恕」 とある。
慈下の行 下を慈しむ行為。
戒徳巍々として 戒をたもつ徳はおごそかである。
少分戒… 少分戒は戒のうちのいくつかをたもつこと。 多分戒は戒の過半をたもつこと。 全分戒は戒のすべてをたもつこと。
弘心 大乗のさとりを求める心。
来去を迎送して 来る者を迎え、 去る者を送って。
後際を徹窮し 未来永遠に。
印を… 臘印を熱い泥土におすと臘印は壊れるが文字のみが残る。
勅聴許説 勅聴は仏が韋提希に聞くことを命じること。 許説は仏が韋提希の願いに応じて法を説くこと。
正受の方便 定善観の方法。
二人 阿難と韋提希を指す。
来潤 未来の衆生。 潤は法のうるおいを受くべき者の意。
進道の資糧 さとりの道をあゆむためのかて。
下の観門 定善十三観。
未来 未来世の衆生。
貪欣 ねがい求めること。
竹 竹の皮を薄く編んだものの意か。 異本には 「竹篾」 (竹の皮の意) とある。
心境相応して 観ずる心と観の対象とが完全に合致して。
得処 無生法忍を得るところ。 善導大師は韋提希が無生法忍を得るのは第七華座観のはじめに住立空中尊があらわれるところにおいてであるとする。
勇猛専精 いさましく一筋にはげむこと。
十信の… 無生法忍は
十信位の
凡夫の得る
利益であって、
十住・
十行以上の高位の菩薩の得る利益ではないとするのが善導大師の理解である。
凡・聖 凡夫、 聖者。
夫人は… 浄影寺慧遠 (523-592) 等の諸師が韋提希を高位の聖者としたことを受けていう。
普悉 あまねく知るの意か。
前の恩 仏の力によって光台のうちに十方諸仏の国土を見ることができたことを指す。
浅促 心が浅く寿命が短いという意。
泯じて 減らして。
人年 人間の寿命。
磨滅 死。
蠢々周慞して うごめきあわてて。
断命の苦因 苦の原因となる殺生。
苦機 苦悩の機類。
底本は◎高田派専修寺蔵鎌倉時代刊本[ただし訓は○浄聖全三巻の宗祖加点本と全同ではなく大幅に標準化されているため、 相違を†、 加を‡、 減を [ ] で示した]。 Ⓐ大谷大学蔵鎌倉時代刊本、 Ⓑ龍谷大学蔵(写字台旧蔵)室町時代刊本、 Ⓒ本派本願寺蔵版¬七祖聖教¼所収本 と対校。 ª全部対校º 辯→Ⓒ辨
末→Ⓑ未
即→Ⓒ即[此]
亡→Ⓑ立
螺→Ⓒ蠃
井→Ⓑ并
臘→Ⓒ蝋
致→Ⓒ倒
私→◎ⒶⒷ和
和→Ⓒ私
記→Ⓒ紀
乖→Ⓒ乗
閉→◎閑
慚→Ⓒ漸
教→Ⓒ殺
斯→Ⓒ此
疾→Ⓒ嫉
怒→Ⓒ恕
者→Ⓒ者[者]
坑→Ⓒ阬
→Ⓒ篾
末→Ⓑ未
○ト云
○マデ
○ノ
四→○四ノ
興リヌレバ→○興ジテ
陳ブ→○陳ズ
周リテ→○周シ
欲シテ↧…伝↦持セシメムト末代ニ↥、…勧ム↠学ヲ。→○欲シテ↧…伝↢持シテ末代ニ↡、…勧学セムト↧、
○ニ
ス…也→○スル…也
二ノ意→○二意
定ムル→○定レル
ズレバ→○ジテ
。→○、
ス→○スルコトヲ
言→○言
シタマフ…。→○[シ]玉フニ…、
ク→○シ
○シテ
随心ノ起行→○随テ↠心ニ起スニ↠行ヲ
ノ→○スルコト
不同→○不同[ジカ]ラ
タル→○トシテ
キヲ↢錯失↡→○シ↢錯アヤマリ失↡、
欲ス↩明シテ↧…、…、…承クルコトヲ↥、表セムト↝…→○欲ス↠明[サム]ト↧…、…、…承ケテ、表スルコトヲ↞…
欲ス↪明シテ↧…、…従ヒテ↠仏ニ聞クトイフコトヲ↥、証↩誠セムト可信ヲ↨→○欲ス↠明[サム]ト↧…、…従リ↠仏聞イテ、証誠スルコト可キコトヲ↞信ジツ
スルニ→○シテ
キ→○ク
ス也→○スル也
バ…者→○…者
将[ス]ニルニ↢説法セムト↡→○将シ ニテ↠説[キ]下ハムト↠法ヲ
↢於時処ニ↡→○↠於↢時処↡
衆生ノ開悟→○衆生ヲ開悟スルコト
↢於時処ヲ↡→○↠於↢時処↡
説法シタマフ。→○説[キ]下フコト↠法ヲ、
若シハ多ト一二トノ処→○若多一二処
不↠増セ不↠減ゼ→○不↠増不↠減
授ケテ↠法ヲ→○授ク↠法ヲ。
者→○者
ス→○シヽ
、→○ナリ。
ス…。→○[シ]テ…、
与↢二衆↡→○与ニ↢二衆ト↡
於テ→○於テ
キタマフ→○カシメ下[フ]
起ス↢此ノ悪逆ヲ↡因縁ヲ→○起スコトヲ↢此ノ悪逆ノ因縁ヲ↡
ス…。→○シ…、
ビタマフハ→○ンデ
ビタマフハ→○ン下フ
トイフ者→○ノ者ハ
スルコト↢五欲ヲ↡→○ス↢五欲ヲ↡、
以レバ→○以テミレバ
不レドモ→○不
ナレバ→○ニシテ
断ジ→○断チ
ス…。→○シテ…、
弘ク益ス↢…↡→○弘ク↢益ス…↡
ズハ→○ザレバ
九→○九ツ
ヌ→○ネタリ
○ヤ
所以→○所以
云何ナルカ→○云何ガ
○ナル
シ…。→○キ…、
其ノ→○其レ
領シテ↢一処ニ↡→○領シテ一処ニシテ
非ザル↢外道ニ↡→○非ル↢外道ナラ↡
○ハ
ニ→○ヲ
ス。→○シ、
スト者→○セ者
此ノ→○此
シテ→○セシメテ
畏ルレバナリ↧…、不ルコトヲ↞収メ…。→○畏ラクハ↧…、不ルコトヲ↠収メ…、
令メテ↢自ラ近ヅカ↡、不↠聴シタマハ↢…→○令ム↢自ラ近ヅケテ不ラ↟聴サ…
スト者→○セ者
ヨリ→○ニ
リ…。○[リ]テ…、
ル→○レタリ
○シ
フコトヲ→○ヒ下フコト
尋↢思スルニ…↡→○尋イデ思フニ↢…↡
砕身之極→○砕ク↠身ヲ之極
ナリ→○タリ
親シク→○親リ
ガ→○ゾ
ヒ→○フ
ギタル→○グレタル
○テ
○コト
ス…。→○スルニ…、
ス…。→○シ…、
成ズ→○成ル
十方ヲ↡。無量ノ仏土→○十方ノ無量ノ仏土ヲ↡。
ス。→○シテ、
シテ→○ス。
ズ…。→○ジ…、
雨ラシ→○雨ラシテ
ブ…。→○ベテ…、
覚セシム…。→○覚ラシメ…、
シ…、→○ス…。
不ルハ→○不ト云コト
シ…。→○ク…、
ナルコト→○ニシテ
不↠可カラ↢思議ス↡→○不可思議ナリ
化前→○化ノ前ノ
禁父ノ→○禁ズル↠父ヲ
城中→○城ノ中
○ラク
自リ↠今→○自今
卿等→○卿等
ル→○ラム
言フベシト↢…造ルト↟舎ヲ→○言ヘ…造ルト↠舎ヲ
奉リテ→○奉ケテ
相伝シテ→○相伝ヘテ
明ス↧…/……故ラニ名クルコトヲ↦…↥→○明ス↧…/…故名ケタルコトヲ↦…↥
ナリ→○アリ
道フ→○噵フ
也→○也
言フ…者→○言ハ…者
其ノ→○其
○ズル
願ズ→○願フ
無憂→○無キ↠憂
シタマフニ…、→○ス…。
請ヒ→○請ズルニ
所ヲ↟悞ル→○所ルコトヲ↟悞タ
トイフ者→○ト者
ノ→○ニハ
レドモ→○ルニ
テ→○ツベシ
命終シ已リテ後→○命終テ已後
捨命スル→○捨ツベキ↠命ヲ
フ…。→○フラク…、
ラシメ→○[リ]テ
キテ→○カシメテ
ハシム。→○ク、
ルニ→○レドモ
困ム↠不ルニ↠…→○困ンデ不↠…
乃チ→○乃シ
捨命シテ→○捨テヽ命ヲ
○云リ
赴キタマヘト→○赴キ下ヘ
使人→○使人
王請ノ→○王ノ請ズル
勅スル↢即チ赴ケト↡者→○勅ニ即チ赴カ者
主→○主
所有ル→○所有ノ
不ルヤ→○不
ス…。→○スラク…、
請ゼムニ→○請ハムニ
ス…。→○スルニ…、
遣ム↢人ヲシテ殺サ↟我ヲ→○遣シテ↠人ヲ殺ス↠我ヲ
ラバ…者→○ラ…者
還タ→○還[リ]テ
遣メムト↢人ヲシテ殺サ↟王ヲ→○遣シテ↠人ヲ殺サム↠王ヲ
ク→○ケツ
有身スト→○有身ミヌト
○セ
男→○男
是ノ児ハ→○是児ニシテ
ルベシト→○ラム
ク。→○イテ、
平章セム。相師→○平↢章セム相師[ヲ]、
フ→○ヘリ
落シテ在ラムニ↢…↡→○落チテ在カバ↢…↡
憂フルコト→○憂
ム→○メル
生ミ→○生レ
ツルニ→○チテ
小指→○小指
因ル↧…起スガ↢…↡対シテ↢…↡顕↦発スルニ…↥。→○因ルガ↣…起スニ↢…↡対ヒテ↢…↡顕↢発ス…↡。
妬ム→○妬ム
奉↢上ス→○奉↢上ル
名衣→○名アル衣
上服→○上タル服
○ニシテ
送↢向シテ…↡→○送[リ]テ向ヘテ↢…↡
施ス→○施ス
ト→○コトヲ
人者→○人者ナンヂ
無シ↢人トシテ教フルモノ↡→○無シ↠人↠教[フ]ル
辺→○辺
欲ス→○欲フ
ヘヨト→○[ヘ]玉ヘヨ[ト]
不…。→○不シテ…、
於テ↢仏ノ所ニ↡→○於テ↢仏所ニ↡
悪計→○悪ノ計
喚ビテ→○喚[ヒ]テ
セシメテ→○シテ
教フ↢…挙グルコトヲ↟身ヲ。→○教ヘテ…挙ゲテ↠身ヲ
似タリト↠動クニ想ヘ→○似タラシム↢動想ニ
シ…、→○セ…。
空中→○空ノ中
ゲ…、→○ゲヨ…。
セヨ→○スベシ
ルニ…、→○ベシ…。
至ル。上リ↠空ニ已リテ→○至リ↠上リ↠空ニ已リナバ
レ→○ルベシ
本→○本
想ヒ↣…入ルト↢…↡、作セ↢…想ヲ↡→○想ヘ、…入[ラ]シム↢…↡、作スコトヲ↢…想ヲ↡
想ヘ↧…、…不ト↞…→○想ヘ、…、…不ルコトヲ↠…
想ヘ↧…自在ナリ、…、…捉リ↦動スト…↥→○想ヘ、…自在ナルコトヲ、…、…捉リ↢動スト…↡
ノ→○ナル
シテ→○ニ
タリ…。→○テ…、
得タリ→○得
身上→○身ノ上
身下→○身ノ下
ズ…。→○ジ…、
喚ビ→○喚ヒ
喚ブ→○喚フ
嗚シ→○嗚ヒ
ビ→○ブ
ノ→○ガ
ナル→○スル
ト→○コトヲ
ル…。→○ラク…、
各ノ→○各
ヲ→○ニ
施ス→○施セム
不ル↠如クナラ→○不ザル↠如ク
ツニ→○テバ
悪狗→○悪シキ狗ク
狗→○狗
悪→○悪シキコト
ナリ→○ニス
説キタマフ↠法ヲ→○説法
索ム↣於徒衆…付↢嘱シタマヘト我ニ↡→○索メ↢於徒衆ヲ↡…付↢嘱[シタマ]ヘト我ニ↡
○ヲ
将養シタマフ→○将ニ養ヒ上ル
語→○語
タマフ→○下ヘル
シ→○[ク]ニシテ
毒箭→○毒ノ箭
シテ→○ス。
今日→○今日
セルコト→○セリ
スル→○セル
ル→○[レ]リ
スル→○セル
イタリ→○[イ]玉ヘリ
ス→○シ玉ウ
初テ→○初ニ
遣メテ↧夫人ヲシテ…生ゼ↥→○遣シテ↢夫人ヲ↡…生ゼシメテ
ム…。→○メシカドモ…、
メムト→○ムルコト[ヲ]
ス→○セリ
○ノミ
不ハ…者→○不…者
タマヘ→○ヨ
為ス→○為ル
験→○験
不実ナラバ→○不ハ↠実ナラ
↢随順調達悪友之教ト↡→○↣随スト↢順調達悪友之教ニ↡
父ノ王→○父王
セラルル→○スル
之→○之
悪計→○悪ノ計
情→○情
直→○直ニ
失スル→○失ナウ
罔極→○罔キ↠極リ
テリ→○ツコトヲ
ヒ→○フ
言フ↢父ト↡者→○言ハ↠父ト者
極→○極
者→○者
事→○事
可カラ↣…禁ズ↢…↡…無ケレバナリ↢…↡→○可カラ↧…禁ジテ…↡…無カル↦…↥
理トシテ絶ツトモ↢…↡→○理メテ絶ヘタリ↢…↡
レバ→○[リ]テ
キ→○ク
○コトヲ
○スルコト
テ…、→○キ…。
タ→○ヘ
ツ→○タム
乾麨→○乾ケル麨
ヒテ→○フ
↢瓔珞ヲ↡孔ノ一頭→○↢瓔珞ノ孔ノ一ノ頭ヲ↡
ギ→○イデ
漿→○漿
見ユル→○見ル
諸→○諸ノ
○下ハ[リ]
見ユルコトヲ↠王ニ→○見[ル]コトヲ↠王ヲ
ハ→○ヲバ
ハ…者→○…者
ナリテ→○ニ
テ→○バ
厳シク→○厳シク
ニシテ→○ナリ
異計→○異ル計
クシテ→○シ
別体同心ニシテ→○別ナレドモ↠体ハ同ジ↠心
見エ↠王ニ→○見↠王ヲ
刮リ→○刮ベキリ
身上→○身ノ上
モテ→○シテ
○ルニ
テ→○ツ
○ルコトヲ
於テ→○於テ
宮内→○宮ノ内
ヒ→○ヘテ
○ト云ヨリ
コト→○ニ
シテハ→○セルヲ
情→○情
重ズル→○重クスル
奉↢請スルニ…↡→○奉ルニ↠請ジ↢…↡
受戒ニ→○受ルニ↠戒ヲ
○ナルコト
スニハ→○シテ
是→○是ノ
労シク→○労シク
乃チ有ルコト無量ナルニ→○乃ニ有リ↢無量ニ
不→○不ル
スル→○セム
者→○者
仏経ニ説キタマフガ→○仏経説ノ
ノ→○ハ
極細極急ナリ→○極メテ細ナリ極メテ急ナリ
行トノ細ナル→○行細ナリト云
ル→○[リ]テ
如ク↣諸仏ノ不ルガ↢殺生シタマハ↡→○如ク↢諸仏ノ↡不↢殺生セ↡、
能ク持ツ→○能持ナラム
ツト→○テ□□
ルマデ→○[リ]テ
セ→○シ下ハ
不→○不レ
已還→○已還
等→○等シク
為サ→○為
得…。→○得ルニ…、
此ノ→○此
犯サ→○犯セ
不ラム→○不
快鷹→○快キ鷹
鷹→○鷹
類→○類
ハ→○ニ
○[ヲ]シテ
須ヰム…受クルヲ↟…→○須ベ クキ…受ク↟…
喚ビ→○喚イ
ス→○サム
望↢欲シテ積ムコト↠善ヲ増ス高キコトヲ↡擬ス↠資セムト↢来業ヲ↡→○望↢欲ス積善増高ニシテ↡擬スルコトヲ↟資セムコトヲ↢来業ニ↡
明ス↧…、愍↢念シタマフニ…↡、/…除カシメタマフコトヲ↦…↥。→○明ス↣…、愍↢念[シ]玉フコトヲ…↡。/…除ク↢…↡。
ズル→○ゼム
説法シ、→○説ク法ヲ。
キ→○カシメ
明ス↧…、…開ク↢…↡、…、…、…、…、致スコトヲ↞使ムルコトヲ↢…↡→○明ス↧…、…開クコトヲ↦…↥。…、…、…、…、致ス↠使[ムル]コトヲ↢…↡
内ニ→○内ヨリ
○ナリ
明ス↧…、…、…、…応シ↠終ル也、…、…、…猶存在セリ耶トイフコトヲ↥→○明ス↢…、…、…、…応キコトヲ↟終ル也。…、…、…猶存在セリ耶
総テ→○総ジテ
ヒテ→○ハク
今者→○今者
飯→○飯イヒ
、→○ノ
云何ゾ→○云何
疑→○疑
而→○而モ
セリヤ→○セルカ
問→○問
但→○但シ
以レバ…主ナレバ→○以テナリ↢…主タルヲ↡
可カラ↢随宜ナル↡→○可↠随↠宜ニ
↢言ヒテ問フ↟死セリヤト→○↠言フ↢問[ヒ]テ死セリヤト↡
○↠
ヘル→○フ
明ス↧…、…、…、…存ズ、…非ズトイフコトヲ↦…過ニハ↥→○明ス↧…、…、…、…存ズルコトヲ↥、…非ズ↢…過ニハ↡
問ヘバ↢…在リヤト↡者→○問フニ↢…在者ト↡
○ヨリ
得→○得テ
ニシテ→○ナリ
是ノ→○是
衣→○衣
フ。→○フテ、
ル→○レヌ
○レ
窮リテ→○窮メテ
明ス↧…、…説ク↠法ヲ、…、…、…、…、…不トイフコトヲ↞猶ラ→○明ス↧…、…説クコトヲ↞法ヲ。…、…、…、…、…不↠猶ラ
騰リテ→○騰[リ]テ
シ→○スルコト
進食→○進ス↠食ヲ
奉ケ→○奉ラ
所以ニ→○所以ニ
瞋怒→○瞋怒
ス…。→○シ…、
悪辞→○悪シキ辞
起ス↢…逆ト…悪トヲ↡。→○起ス↢…逆ヲ↡。…悪ト云ハ、
ク…。→○ケ…、
罵リテ→○罵[リ]テ
罵ル→○罵ル
者→○者
殺サムトスル→○殺スル
所為→○所↠為ス
○云
悪辞→○悪ノ辞ジ
為ス↢賊ナリ賊之伴ナレバナリト↡也→○為ル↠賊ト、賊之伴ナレバ也
シ→○ス
怨→○怨
恨ムニ↠不ルコトヲ↢…↡→○恨ムラクハ不ルコト↢…↡
為ニ進ムルガ→○為ノ↠進ムルガ
明ス↧闍世瞋リ↢母ノ進ムルコトヲ↟食ヲ、…致スコトヲ↞…→○明ス↣闍世ノ瞋[ヲ]↢母ノ進ムルヲ↟食ヲ、…致ス↠…
何ノ→○何ナル
○ル
擬ス→○擬ツ
低レ→○低レ
見テ↧…起シテ↢…↡…欲スルヲ↞殺サムト↢…↡→○見テ↣…起スヲ↢…↡…欲ス↠殺セムト↢…↡
不↠忍ビ→○不シテ↠忍バ
当レリ→○当ニアタレリ
児→○児
表ス→○表ス
躬→○躬
明ス↢…欲シテ↠…、望ムコトヲ↟…→○明ス↢…欲スルコトヲ↟…。望ム↠…
須ヰル↢…白スヲ→○須ベ クシ↢…白ス
諌事→○諌ズル事
標スル→○標ス
コトハ→○ニ
ム→○マル
断ズ→○断ツ
ス→○セル
ルマデ→○[リ]テ
ル→○レル
良談ズルモ→○良談ナリ
殺ス→○殺スル
劫初已来→○劫初ヨリ已来
ゼシニ→○ゼン
引ク↢古ノ異ナルヲ↟今ニ→○引[キ]テ↠古ヲ異ス↠今ニ
ノ→○トシテ
横→○横
将テ↠今ヲ→○将ニ今
サバ…者→○サ…者
サム→○シテム
見バ↣王起シテ↠…損↢辱スルヲ…↡→○見ルニ↢王ノ起スヲ↟…損↢辱シテハヂシム…↡
恥慚スルニ→○恥ヂ慚ズルコト
臨ム↢万基ニ↡之主ナリ→○臨ム↢万基之主ヲ↡
遣メム↢…ヲシテ為ラ↟…→○遣シテ↢…ヲ↡為ラシメムヤ↠…
セバ→○ス
不↠如カ↧…絶タムニハ↦…↥→○不↠如カ、…絶ヘテン↢…↡
直諌→○直ニ諌ムルコト
得ムト→○得[ル]コトヲ
按ズル↢手中ノ剣ヲ↡→○按ヘテ↠手ヲ中ツル↠剣ニ
不↠避ケ→○不シテ↠避ラ
顔→○顔
廻シ→○廻シ
逆フ→○逆フ
ムル→○メム
害母→○害スル↠母ヲ
コラ→○カ
繋ケタル剣→○繋クルコト↠剣ヲ
按ジテ↠剣ヲ→○按シテ↠剣ヲ
明ス↩…見↢…↡、…、恐レ↧…更ニ生ズルコトヲ↦…↥、致スコトヲ↝…→○明ス↣…見ルコトヲ↢…↡。…、恐ラクハ…生ゼムコトヲ↢…↡、致ス↠…
按ジ→○按シ
ツ→○テヽ
審カニス→○審ム
ナレバ者→○者
同ゼム→○同[ジ]カラム
諌ムル→○諌ズル
欲セバ↧得テ↢…↡為サムト↞…者→○欲ハ↠得ムト↢…為ルコト↟…者
此ニ→○此ハ
直諌スルコト→○直ニ諌イサム[スル]コト
レシメ→○ラシメツ
手中→○手ノ中
還帰スル→○還[リ]テ帰ムル
閉置シテ→○閉ジ置イテ
見エ→○見セ
勉ル→○勉ル
苦→○苦
ト→○テ
結ギ→○結ラレ
得→○得タリ
ノ→○ヲシテ
○モノ
○コトヲ
被ル→○被[リ]テ
面→○面
ゼラレテ→○ジテ
水泄スラ→○水泄セツルコト
我ガ身→○我身
ル→○リヌ
○ヲシテ
ク→○ケシメツ
然ルニ→○然モ
ケル→○ケリト云
リ→○ラシメ
セシメ→○シ
恐レタマフ↢…↡→○恐ラクハ…
以テノ↢…↡故ニ→○以テ↢…↡故ニ
遣メタマフ↢…セ↡也→○遣シテ…スル也
与↠我→○与ニ↠我ガ
喚ブハ↢…↡→○喚フ↢…↡。
語→○語
ハバ→○ヘリ
ハム→○ヘ
<於我ニ↥→○於↞我
頂→○頂
跱シ、須臾→○跱タチ↢シモトヲル須臾ニ↡
ク→○キ下
ズル→○ゼン
デタマフ→○ヅ
ハ→○ノ
ス…也→○スル…也
顕レ→○顕シ
キタマハム→○[キ]下ベシ
雨ラシテ→○雨[リ]テ
ヂテ→○ヅルニ
絶ツ→○絶ク
貴ノ中→○貴中
頓チニ→○頓ニタチマチニ
踊ラシテ→○踊シテ
処→○処
シク→○シキ
児→○児
児ニ→○児ノ
横→○横
陳訴ス→○陳ベ訴フ
号ケタテマツル→○号ス
為リ→○為
怨→○怨
セバナリ→○ス
カラム→○シ
者→○ト者
、→○。
明ス↫…、…、無シ↠有ルコト…、…、願ズルコトヲ↪…↩…↨→○明ス↧…、…、無キコトヲ↞有[ル]コト…。…、願フ↧…↦…↥
安心之地→○安ズルニ↠心ヲ之地
此ニ→○此ハ
聞キテ↣仏説キタマフヲ↢浄土ノ無生ナルヲ↡→○聞キテ↢仏説ノ浄土ノ無生ヲ↡
挙↢出スル→○挙[リ]テ↢出[ス]
総ジテ→○総テ
明ス↧…未ダ↠…、…、飲ムトイフコトヲ↦…↥→○明ス↢…未ザ ダルヲ↟…、…、飲ム↢…↡
ノ処→○処
已下ハ、三品ノ→○已下ノ三品ハ
↢閻浮ヲ↡、娑婆モ→○↢閻浮娑婆[ヲ]↡、
明ス↣…随フコトヲ↢心ノ差別ニ↡→○明ス↢…随[フ]↠心ニ差別ナルコトヲ↡
ナルハ→○ナリ
ケ→○ク
リ→○ル
スレドモ→○シテ
ヒテ↢…↡→○フ↢…↡。
ザル→○ズ
元→○元 モト
不ハ→○不ラマシカバ
然シテ→○然モ
者→○者
ガ→○ノ
不ラム→○不
ナルモ→○ナリ
頓チニ→○頓ニ
非ズハ→○非ザレバ
不ルコトヲ→○不
○ト
夜日ノゴトク→○夜日
得ル→○得ム
明ス↧…以テ↠…、…、…/…、…、…、…現ジ、…、…、…得シムルコトヲ↞…。→○明ス↢…以テ↟…。…、…/…、…。…。…現ズ。…。…。…得タリ↠…。
還来シテ→○還シ来シテ
作ルニ→○作ス
所有ル→○所有
為ニ↠我ガ広ク説キタマヘト↢無憂之処ヲ↡→○為我広説無憂之処ト
為ニ金台ニ→○為シテ↢金台ヲ↡
ズル→○ゼル
ス→○サン
眼前→○眼ノ前
ク…、→○シ…。
殊ナルコト→○殊コトナルコト
有ル→○有ル
存ス→○存ゼン
為ス↟優ト→○為ル↟優
明ス↧…四十八願ヨリス、…/…/…/…、致スコトヲ↞…→○明ス↢…四十八願ヲ↡。…/…/…/…、致ス↠…
因→○因
ジ→○ズ
ナレバ→○ナリ
メタマフ→○[ム]ル
前→○前ノ
因リテ↢…思想…亡ズルニ↡→○因[リ]テ↢…思想ニ↡…亡ジテ
前境→○前ノ境
ル→○[リ]テ
明ス↭…以テ↪見タマフニ↧夫人ノ…、…請ズルヲ↦…↥、…、…顕スヲ↩…↨、…微笑シタマフコトヲ↬也→○明ス↪…以テ↧見下ニ↢夫人ヲ↡…、…請ズルヲ↦…↥、…、…顕[ス]コトヲ↩…↨。…微笑シ下也
ケバ…、→○ク…。
ノミ→○ノ
去ク→○去ル
所以→○所以
出処→○出処
人→○人
明ス↧…授クルコトヲ↦…↥→○明[カ]ニ…授クルナリ↢…↡
明ス↧…見ル、…超↦証スルコトヲ…↥→○明ス↧…見[ル]コトヲ↥。…超ヘテ証ス↢…↡
↢…所ニ↟期スル→○↢…所期ニ↡
スルニ→○シテ
答フルコトヲ↣…選ブニ↢所求之行ヲ↡→○答[フル]コトヲ↧…選ブ↢所求ヲ↡之行ニ↥
従リ↢上ノ耆闍ニ…訖ル↡→○従リ↢上耆闍↡…訖[リ]テ
ルマデ→○リテ
也→○也
住ムル→○住スル
刹→○刹
及ビ→○及
○バ
未ダ↠具セ→○未ザ ダレバ↠具ラ
開キ→○開シ
勧メ↠修ヲ、得ルコトヲ↟益ヲ→○勧修得益スルコトヲ↡
スレバ→○シテ
勧メテ修セシムル→○勧修スル
明ス↧…有リ↢…↡…応ジタマフコトヲ↦…↥→○明ス↣…有ルコトヲ↢…↡…応ズ↢…↡
標ス→○標ス
キタマフ→○ク
無クハ…者→○無[ク]…者
○ナン
ハム→○ヒテン
経ルマデ→○経テ
恒常ニ→○恒常
床被・→○被タル (床を抹消)
反リテ→○反ビテカヘ[リ]テ
シ…也→○キ…也
極ミ→○極
於テ↠時ニ→○於↠時
リヌル→○ル
城→○城
喚ビ→○喚ヒ
還タ→○還[リ]テ
又還→○又還[リ]下ニ
後ノ日→○後日
有ス→○有ス
言ク→○言ス
一匙→○一匙
語ラム→○語セン
勝フル→○勝ユル
我→○我ガ
売却シテ→○売リ却ゲテ
飯→○飯
セム…。→○セムコト…、
是ノ→○是
○ゾ
言ク、比丘ノ→○言ハク↢比丘ニ、
衣→○衣
不ト↠消セ→○不↠消サ
極ナルニ→○極ナリ
尚→○尚シ
言ハバ…者→○言[ハ]…者
不ト↠消セ→○不ト↠消[サ]
消セム→○消サン
不ト↠消セ→○不ト↠消サ
消セム→○消サム
得→○得テム
消スル→○消ス
得→○得テン
信ズル心→○信心
フル→○ヘム
消セム→○消サン
仏ノ教→○仏教
後→○後
極テ重シ也→○極重也
成ジ→○成ス
乃チ至ルハ↢成仏ニ↡→○乃至成ルマデ↠仏ニ
者→○ヲ者
避クル→○避ル
不ルハ→○不ト云コト
喩→○喩
証ト→○証スト
相対ス→○相対ス
述ブ→○述ス
リ…也→○ル…也
犯セバ→○犯スレバ
明ス↧…、不↠…得ムトイフコトヲ↦…↥→○明ス↢…、不ルコトヲ↟…得ム↧…↥
ク→○キテ
ザル→○ズ
サム…。→○シテ…、
下→○下
一トシテ→○一モ
不ルハ→○不ト云コト
ハ→○コト
其ノ→○其
ジ…、→○ズ…。
作レバ→○作セバ
スルニ→○スレバ
壊シ→○壊レ
不→○不レト
疑フコト→○疑
刀→○刀
竭クル→○竭ルヽ
潤→○潤
其→○其ノ
七→○七ツ
ト→○ニ
生ゼ→○生レ
タマヘリ→○テ
ニシテ→○ナリ。
コト→○ニ
審カニ→○審カニ
ト→○コトヲ
明ス↧…得ム↠…也トイフコトヲ↥→○明ス↧…得ト云コト[ヲ]↞…也
足下→○足ノ下
モ→○ニ
ト→○ヲ
スニ→○シテ
ヒ→○フ
隔ツルニ↢竹ヲ↡→○隔タレルコト竹ウスヤウナレドモ
分外ノ→○分ノ外ニシテ
闚ハムヤ↠心ニ→○闚ハシメムト↠心ヲ
住メ→○住セシメ
境現ズル→○境現ノ
異ナルコト→○異
ノ→○ニシテ
眼前→○眼ノ前
喜→○喜
ジテ→○ズ
ル→○ム
恐ル↧…無シトイフコトヲ↞…→○恐ラクハ…無シ↠…
ジ→○ゼム
ニシテ→○ナリ、
比及スルニ→○比ビ及ブニ
大志→○大ノ志
言→○言
者→○ナラ者
普悉スル→○普ク悉スル
其→○其ノ
タリ→○ツ
ル→○[リ]ヌ
ラバ者→○ラ者
若→○若シ
己→○己
明ス↫…未ダ↠…、…使ムルコトヲ↪…帰セ↩於磨滅ニ↨→○明ス↧…未ザ ダルコトヲ↞…。…使メ下↧…クヰセ↞於↢磨滅↡
期シタマフ↠心ニ→○期心ノ
但以テノ↢…ナルヲ↡→○但以レバ…ナルガ
寿→○寿
泯ジテ→○泯ケテ
タマハバ→○テ
シ→○ク
↧…↦於六道ニ↥→○↧…↞於↢六道↡
劫減ズル→○劫減ノ
ズルトキハ→○ズレバ
末→○末 Ⓒ未
不ト↠是ナラ→○不ト↠是ニ
無シ↢慈シミ恩養スルコト↡→○無シ↠慈↢恩養ニ↡
欲スルモ…者→○欲ハ…者
是→○是
フレバ→○ヘテ
成ル↢八苦ト↡→○成ズ↢八苦ヲ↡
挙↢出シテ→○挙ゲ↢出ス
クシテ→○シ
ガ→○シテカ
ル→○上[ル]