0132
標挙
0306▼必至滅度の願
▼*難思議往生
題号
0307◎▼顕浄土真実証文類 四
愚禿釈*親鸞集
一 往相の真証を明かす【真実証釈】
Ⅰ 正しく証果を明かす
ⅰ 釈義
a 果体を定む【果体出願】
【1】 ◎^△つつしんで*真実の証を顕さば、 すなはちこれ▼*利他円満の妙位、 ▼*無上涅槃の極果なり。
◎謹0133デ顕サ↢真実ノ証ヲ↡者、則チ是利他円満之妙位、无上涅槃之極果也。
一 Ⅰ ⅰ b 出拠を指す
^▼すなはちこれ必至滅度の願 (第十一願) より出でたり。
即チ是出デタリ↠於リ↢必至滅度之願↡。
一 Ⅰ ⅰ c 義意を述ぶ【証果徳相】
^▲また証大涅槃の願と名づくるなり。
亦名クル↢証大涅槃之願ト↡也。
・挙因弁果
^▼しかるに▲*煩悩成就の凡夫、 ▲生死罪濁の群萌、 往相回向の*心行を獲れば、 ▼即のときに▲大乗正定聚の数に入るなり。 正定聚に住するがゆゑに、 かならず滅度に至る。
然ルニ煩悩成就ノ凡夫、生死罪濁ノ群ムラガル萌、キザス獲レバ↢往相回向ノ心行ヲ↡、即ノ時ニ入ルナリ↢大乗正定聚之トモガラ 数ニ↡。住スルガ↢正定聚ニ↡故ニ必ズ至ル↢滅度ニ↡。
・転釈滅度
^▼かならず滅度に至るはすなはちこれ▲*常楽なり。 常楽はすなはちこれ*畢竟▲寂滅なり。 寂滅はすなはちこれ無上涅槃なり。 無上涅槃はすなはちこれ▲無為法身なり。 無為法身はすなはちこれ▲実相なり。 実相はすなはちこれ▲法性なり。 法性はすなはちこれ▲真如なり。 真如はすなはちこれ▲一如なり。
必ズ至ルハ↢滅度ニ↡即チ是常楽ナリ。常楽ハ即チ是畢オハリ 竟キワマル寂滅ナリ。寂滅ハ即チ是无上涅槃ナリ。无上涅槃ハ即チ是无為法身ナリ。无為法身ハ即チ是実相ナリ。実相ハ即チ是法性ナリ。法性ハ即チ是真如ナリ。真如ハ即チ是一如ナリ。
・主伴同証
^▼しかれば、 弥陀如来は*如より来生して、 *報・応・化、 種々の身を示し現じたまふなり。
然レ者弥陀如来ハ従リ↠如来生シテ、示シ↢現ジタマフ報・応・化種種ノ身ヲ↡也。
一 Ⅰ ⅱ 引文
a 経説
イ 因願
(一)¬大経¼
【2】 ^▼必至滅度の願文、 ¬*大経¼ (上) にのたまはく、
必至滅度ノ願文、¬大経ニ¼言ク、
^「▲たとひわれ仏を得たらん0308に、 国のうちの人天、 ▼定聚に住し、 かならず▼滅度に至らずは、 正覚を取らじ」 と。 以上
「*設ヒ我得タラムニ↠仏ヲ、国ノ中ノ人天、不↧住シ↢定聚ニ↡、必ズ至ラ↦滅度ニ↥者、不ト↠取ラ↢正覚ヲ↡。」 已上
一 Ⅰ ⅱ a イ (二)¬如来会¼
【3】 ^▼¬*無量寿如来会¼ (上) にのたまはく、
¬无量寿如来会ニ¼言ク、
^「▲もしわれ成仏せんに、 国のうちの有情、 もし▼決定して▼等正覚を成り、 ▼大涅槃を証せずは、 ▼菩提を取らじ」 と。 以上
「若シ我成仏セムニ、国ノ中ノ有情、若ナサケゴヽロシ不ハ↧決定シテ成リ↢等正覚ヲ↡証0134セ↦大涅槃ヲ↥者、不ト↠取ラ↢菩提ヲ↡。」 已上
一 Ⅰ ⅱ a ロ 成就
(一)¬大経¼二文
【4】 ^▼願 (第十一願) 成就の文、 ¬経¼ (大経・下) にのたまはく、
願成就ノ文、¬経ニ¼言ク、
^「▲それ衆生ありて、 かの国に生るれば、 みなことごとく正定の聚に住す。 ゆゑはいかん。 かの仏国のうちにはもろもろの邪聚および不定聚なければなり」 と。
「其有リテ↢衆生↡、生ルレ↢彼ノ国ニ↡者、皆悉ク住ス↢於正定之聚ニ↡。所以者何ン。彼ノ仏国ノ中ニハ无ケレバナリト↢諸ノ邪聚及ビ不定聚↡。」
【5】 ^▼またのたまはく (大経・上)、
又言ク、
^「▲かの仏国土は、 清浄安穏にして微妙快楽なり。 無為▼泥洹の道に▼次し。
「彼ノ仏国土ハ、清浄安穏オダシニシテ微妙快タノシ楽ナリ。コヽロヨシ次シ↢於无為泥洹之道ニ↡。
^◆それもろもろの声聞・菩薩・天・人、 ▼智慧高明にして、 ▼神通洞達せり。 ◆ことごとく同じく一類にして、 形異状なし。 ▼ただ余方に因順するがゆゑに、 人天の名あり。 ◆顔貌端正にして世に超えて希有なり。 容色微妙にして、 ▼天にあらず人にあらず。 ▼みな▼自然虚無の身、 無極の体を受けたるなり」 と。
其諸ノ声聞・菩薩・天・人、智慧高明ニシテ、神通洞ホガラカナリ達セリサトル 。咸ク同ジク一類ニシテ、形无シ↢異状↡カタチ。但因↢順スルガ余方ニ↡故ニ、有リ↢人天之名↡。顔カヲバセ 貌カヲバセ 端ナヲシ 政タヾシニシテ超エテ↠世ニ希マレナリ有ナリ。容カヲバセ色微妙コマカナリニシテ、非ズ↠天ニ非ズ↠人ニ。皆受ケタルナリト↢自然虚无之身、无極之体ヲ↡。」
一 Ⅰ ⅱ a ロ (二)¬如来会¼
【6】 ^▼またのたまはく (如来会・下)、
又言ク、
^「▲かの国の衆生、 もしまさに生れんもの、 みなことごとく無上菩提を究竟し、 涅槃の処に到らしめん。 なにをもつてのゆゑ0309に。 もし邪定聚および不定聚は、 *かの因を建立せることを了知することあたはざるがゆゑなり」 と。 以上抄要
「彼ノ国ノ衆生、若シ当ニ生レム者、皆悉ク究↢キワメ竟シキワム无上菩提ヲ↡、到ラシメム↢涅槃ノ処ニ↡。何ヲ以テノ故ニ。若シ邪定聚及ビ不定聚ハ、不ルガ↠能ハ↤了↣知スルコト建↢立セルコトヲ彼ノ因ヲ↡故ナリト。」 已上抄要
一 Ⅰ ⅱ b 師釈
イ 雁門(¬論註¼五文)
(一)妙声功徳釈文
・正定現益
【7】 ^▼¬浄土論¼ (*論註・下) にいはく、
¬浄土論ニ¼曰ク、
^「▲ª荘厳妙声功徳成就とは、 偈に、 «^梵声悟深遠 微妙聞十方» といへるがゆゑにº (浄土論) と。
「*荘厳妙声功徳成就ト者、偈ニ言ヘリト↢梵声 ナ 悟サトリ深遠微妙聞十方ノ故ニト↡。
^◆これいかんぞ不思議なるや。 ▼経にのたまはく、 ªもし人ただかの国土の清浄安楽なるを聞きて、 *剋念して生ぜんと願ぜんものと、 また往生を得るものとは、 ▼すなはち正定聚に入るº と。 ◆これはこれ、 国土の名字、 仏事をなす。 いづくんぞ思議すべきやと。
此云何ゾ不思議ナルヤ。経ニ言ハク、若シ人但聞キテ↢彼ノ国土ノ清浄安楽ナルヲ↡、剋念キザス シテ願ゼムモノト↠生ゼムト、亦得ルモノトハ↢往生ヲ↡、即チ入ルト↢正定聚ニ。此ハ是国土ノ名字アザナ為ス↢仏事ヲ↡。安ンゾ可キヤト↢思議ス↡ハカラウ。
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)主功徳釈文
・滅度当益・果相
^◆ª荘厳主功徳成就とは、 偈に、 «^正覚阿弥陀 法王善住持» といへるがゆゑにº (浄土論) と。
荘厳主功徳成就ト者、偈ニ言ヘリト↢正覚阿弥陀法王善住持ノ故ニト↡。
^◆これいかんが不思議なるや。 正覚の阿弥陀、 不可思議にまします。 かの安楽浄土は正覚阿弥陀の善力のために住持せられたり。 いかんが思議することを得べきや。
此云何ガ不思議ナルヤ。正覚ノ阿弥陀、不可思議ニマシマス。彼ノ安楽浄土ハ為ニ↢正覚阿弥陀ノ善力ノ↡住0135持セラレタリ。云何ガ可キ↠得↢思議スルコトヲ↡邪。
^◆ª住º は不異不滅に名づく、 ª持º は不散不失に名づく。 ▼不朽薬をもつて種子に塗りて、 水に在くに瀾れず、 火に在くに燋れず。 因縁を得てすなはち生ずるがごとし。 なにをもつてのゆゑに。 不朽薬の力なるがゆゑなり。
住ハ名ク↢不異コトナリ不滅ニ↡、持ハ名ク↢不散不失ニ↡。如シ↧以テ↢不朽クチサル薬ヲクスリ↡塗ヅ リテ↢種子ミ ニ↡、在クニ↠水ニ不↠蘭レ、在クニ↠火ニ不↠燋レ、得テ↢因タネ縁ヲ↡タスク 即チ生ズルガ↥。何ヲ以テノ故ニ。不朽薬ノ力ナルガ故ナリ。
^◆もし人一たび安楽浄土に生ずれば、 後の時に意に三界に0310生れて衆生を教化せんと願じて、 浄土の命を捨てて願に随ひて生を得て、 三界雑生の火のなかに生るといへども、 無上菩提の種子、 畢竟じて朽ちず。 なにをもつてのゆゑに。 正覚阿弥陀のよく住持を経るをもつてのゆゑにと。
若シ人一タビ生ズレバ↢安楽浄土ニ↡、後ノ時ニ意ニ願ジテ↧生レテ↢三界ニ↡教↦化セムト衆生ヲ↥、捨テヽ↢浄土ノ命ヲ↡随ヒテ↠願ニ得テ↠生ヲ、雖モ↠生ルト↢三界雑生ノ火ノ中ニ↡、无上菩提ノ種子、畢竟ジテ不↠朽キウチ。何ヲ以テノ故ニ。以テノ↠逕ルヲ↢正覚阿弥陀ノ善ク住持ヲ↡故ニト。
一 Ⅰ ⅱ b イ (三)眷属功徳釈文
・滅度当益 ・果相
^▼ª荘厳眷属功徳成就とは、 偈に、 «^如来浄華衆 正覚華化生» といへるがゆゑにº (浄土論) と。
荘厳眷属功徳成就ト者、偈ニ言ヘリト↢如来浄華衆正覚華化生ノ故ニト↡。
^◆これいかんぞ不思議なるや。 おほよそこれ雑生の世界には、 もしは胎もしは卵もしは湿もしは化、 眷属そこばくなり。 苦楽万品なり。 雑業をもつてのゆゑに。
此云何ゾ不思議ナルヤ。凡ソ是雑生ノ世界ニハ、若シハ胎若ハラム シハ卵、カイゴ若シハ湿若ウルオウ シハ化、眷属若干ナリ。苦楽万品ナリ。以テノ↢雑業ヲ↡故ニ。
^◆かの安楽国土は▼これ阿弥陀如来正覚浄華の化生するところにあらざることなし。 ▼同一に念仏して別の道なきがゆゑに。 遠く通ずるに、 ▼それ四海のうちみな兄弟とするなり。 *眷属無量なり。 いづくんぞ思議すべきや」 と。
彼ノ安楽国土ハ莫シ↠非ザルコト↣是阿弥陀如来正覚サトル浄華之所ニ↢化生スル↡。同一ニ念仏シテ无キガ↢別ノ道↡故ニ。遠ク通ズルニ、夫四海之内*皆為ル↢兄弟ト↡也。眷属无量ナリ。焉ンゾ可キヤ↢思議ス↡。」
一 Ⅰ ⅱ b イ (四)大義門功徳釈文
・滅度当益 ・果相
【8】 ^▲またいはく (論註・下)、
又言ク、
^「▲往生を願ふもの、 ▼本はすなはち三三の品なれども、 いまは一二の殊なし。 また▼淄澠の一味なるがごとし。 いづくんぞ思議すべきや」 と。
「願フ↢往生ヲ↡者、本ハ則チ三三之品ナレドモ、今ハ无シ↢一二之殊↡。コトナル亦如シ↢溜澠ノ 食陵ノ反 一味ナルガ↡。焉ンゾ可キヤト↢思議ス↡。」
一 Ⅰ ⅱ b イ (五)清浄功徳釈文
・滅度当益 ・結
【9】 ^▼また ¬論¼ (論註・下) にいはく、
又¬論ニ¼曰ク、
^「▲ª荘厳▼清浄功徳成就とは、 偈に、 «^▼観彼世界相 勝過三界道» といへるがゆゑにº (浄土論) と。
「荘厳清浄功徳成就ト者、*偈ニ言ヘリト↢観彼世界相勝過三界道ノ故ニト↡。
^◆これいかんぞ0311不思議なるや。 ▼凡夫人の煩悩成就せるありて、 またかの浄土に生ずることを得れば、 三界の繋業畢竟じて牽かず。 すなはちこれ煩悩を断ぜずして▼涅槃分を得。 いづくんぞ思議すべきや」 と。 以上抄要
此云何ゾ不思議ナルヤハカル 。有リテ↢凡夫人ノ煩悩成就セル↡、亦得レバ↠生ズルコトヲ↢彼ノ浄土ニ↡、三界ノ繋ツナグ業畢竟ジテ不↠牽ケンカ。則チ是不シテ↠断ゼ↢煩悩ヲ↡得↢涅槃分ヲ↡。焉ンゾ可キヤト↢思議ス↡。」 已上抄要
一 Ⅰ ⅱ b ロ 西河
(一)¬安楽集¼
・仏徳平等力
【10】^▼¬*安楽集¼ (下) にいはく、
¬安0136楽集ニ¼云ク、
^「▲しかるに*二仏の*神力また斉等なるべし。 ただし*釈迦如来おのれが能を申べずして、 ことさらにかの長ぜるを顕したまふことは、 一切衆生をして斉しく帰せざることなからしめんと欲してなり。 このゆゑに釈迦、 処々に嘆帰せしめたまへり。 すべからくこの意を知るべしとなり。
「*然ルニ二仏ノ神力応シ↢亦斉ヒトシ等ナル↡。但シ釈迦如来不シテ↠申ベ↢己ガ能ヲ↡、故ニ顕シタマフコトハ↢彼ノ長ゼルヲ↡、欲シテナリ↠使メムト↢一切衆生ヲシテ莫ラ↟不ルコト↢斉サイシク帰セ↡。是ノ故ニ釈迦処処ニ嘆ホメ帰セシメタマヘリ。須クシト↠知ル↢此ノ意ヲ↡也。
^◆このゆゑに曇鸞法師の正意、 西に帰するがゆゑに、 ¬大経¼ に傍へて奉讃していはく (*讃阿弥陀仏偈)、 ª^安楽の声聞・菩薩衆・人・天、 智慧ことごとく洞達せり。 身相荘厳殊異なし。 ただ他方に順ずるがゆゑに名を列ぬ。 顔容端正にして比ぶべきなし。 精微妙躯にして人・天にあらず。 虚無の身、 無極の体なり。 このゆゑに平等力を頂礼したてまつるº」 と。 以上
是ノ故ニ曇鸞法師ノ正意、帰ヘルガ↠西ニ故ニ傍ヘテ↢¬大経ニ¼↡奉タテマツル讃シテ曰ク、
安楽ノ声聞・菩薩衆・ | 人・天 智慧咸ク洞達セリアキラカニサトル |
身相荘厳无シ↢殊コトニ スグルトモ異↡ | 但順ズルガ↢他方ニ↡故ニ列レチヌ↠名ヲ |
顔カヲバセ 容カヲバセ 端ナヲシ 政タダシニシテ无シ↠可キ↠比ブ | 精ヨシ微ヨシ妙躯ミ ニシテ非ズ↢人天ニ↡ |
虚无之身 无極ノ体ナリ | 是ノ故ニ頂↢礼シタテマツルト平等力ヲ↡」 已上 |
一 Ⅰ ⅱ b ハ 終南(¬観経疏¼二文)(西方は涅槃界なることを明かす)
(一)「玄義分」
・往生即成仏
【11】^▼光明寺 (善導) の ¬疏¼ (*玄義分) にいはく、
光明寺ノ疏ニ云ク、
^「▲弘願といふは、 ¬大経¼ の説のごとし。 一切善悪の凡夫、 生ずることを得るは、 みな阿弥陀仏の大願業力に乗じて増上縁とせざることなしとなり。
「*言フ↢弘願ト↡者如シ↢¬大経ノ¼説ノ↡。一切善悪ノ凡夫、得ル↠生ズルコトヲ者、莫シト↠不ルハ↧皆乗ジテ↢阿弥陀仏ノ大願業力ニ↡為↦増上縁ト↥也。
^◆また仏の密意弘深なれば0312、 ▼教門をして暁りがたし。 ▼三賢・十聖測りて闚ふところにあらず。 ▼いはんやわれ▼*信外の▼軽毛なり。 あへて旨趣を知らんや。
又仏ノ密意弘深ナレバ、教門ヲシテ難シ↠暁リ。三賢・十聖弗ズ↢惻リテ所ニ↟闚キ フ。況ヤ我信外ノ軽毛ナリ。敢テ知ラムヤ↢旨趣ヲ↡。
^◆仰いでおもんみれば、 釈迦はこの方より発遣し、 弥陀はすなはちかの国より来迎す。 かしこに喚びここに遣はす。 あに去かざるべけんや。
仰デ惟レバ、釈迦ハ此ノ方ヨリ発遣シ、弥陀ハ即チ彼ノ国ヨリ来迎ス。彼ニ喚ビ此ニ遣ス、豈ニ容ケム↠不ル↠去カ也。
^◆ただ▼ねんごろに▼法に奉へて、 ▼畢命を期として、 ▼この穢身を捨てて、 ▼すなはちかの▼法性の▼常楽を証すべし」 と。
唯可シト↧懃ニ奉ヘテ↠ウケタマハリテ法ニ、畢命ヲ為テ↠期ト、捨テヽ↢此ノ穢身ヲ↡、即チ証ス↦彼ノ法性之常楽ヲ↥。」
一 Ⅰ ⅱ b ハ (二)「定善義」
・果徳具用
【12】^▼またいはく (*定善義)、
又云ク、
^「▲西方*▼寂静▼無為の▼楽には、 ▼畢竟逍遥して▼有無を離れたり。 ▼大悲、 心に熏じて法界に遊ぶ。 *分身して物を利すること等しくして▼殊なることなし。 ^▼あるいは▼神通を現じて▼法を説き、 あるいは▼相好を現じて▼無余に入る。 ▼変現の荘厳、 意に随ひて出づ。 群生見るもの罪みな除こると。
「西方寂静无為ノ楽ニハ | 畢竟逍ハルカニ 遥シテハルカナリ離レタリ↢有无ヲ↡ |
大悲熏ジテ↠心ニ遊ブ↢法界ニ↡ | 分身シテ利スルコト↠物ヲ等シクシテ无シ↠殊ナルコト |
或イハ現ジ↢神通ヲ↡而説キ↠法ヲ、 | 或イハ現ジテ↢相好ヲ↡入ル↢无余ニ↡ |
変現ノ荘厳 随ヒテ↠意ニ出ヅ | 群生見ル者罪皆除コルト |
^◆また讃じていはく、 ^▼帰去来、 ▼魔郷には停まるべからず。 曠劫よりこのかた六道に流転して、 ことごとくみな経たり。 ^到る処に余の楽しみなし。 ▼ただ愁歎の声を聞く。 この生平を畢へて後、 かの涅槃の城に入らん」 と。 以上
又賛ジテ云ク、
帰去来 | 魔郷ニハ不↠可カラ↠停ル |
曠劫ヨリ来タ流0137↢転シテ | 六道ニ↡ 尽ク皆逕タリ |
到ル処ニ无シ↢余ノ楽↡ | 唯聞ク↢*愁歎ノナゲキ声ヲ↡ |
畢ヘテ↢此ノ生*平ヲ↡後 | 入ラムト↢彼ノ涅槃ノ城ニ↡」 已上 |
一 Ⅱ 通じて四法を結す【四法結釈】
【13】^▼それ真宗の教行信証を案ずれば、 如来の大悲回向の利益なり。
夫案ズレ↢真宗ノ教行信証ヲ↡者、如来ノ大悲回向之利益ナリ。
^▼ゆゑに、 ▲もしは因、 もしは果、 一事として阿弥陀如来の*清浄願心の回向成就したまへるところにあらざることあることなし。 ▲因浄なるがゆゑに0313、 果また浄なり、 知るべしとなり。▼
故ニ若シハ因若シハ果、无シ↠有ルコト↤一事トシテ非ザルコト↣阿弥陀如来ノ清浄願心之所ニ↢回向成就シタマヘル↡。因浄ナルガ故ニ、果亦浄也、応シトナリ↠知ル。
二 還相の悲用を明かす【還相回向釈】
Ⅰ 正釈
ⅰ 直明
【14】^△二つに*還相の回向といふは、 すなはちこれ*利他教化地の益なり。
二ニ言フ↢還相ノ回向ト↡者、則チ是利他教化地ノ益マス タスクトモ也。
二 Ⅰ ⅱ 出拠
^▼すなはちこれ必至補処の願 (第二十二願) より出でたり。 また一生補処の願と名づく。 また還相回向の願と名づくべきなり。
則チ是出デタリ↠於リ↢必至補処之願↡。亦名ク↢一生補処之願ト↡。亦可キ↠名ク↢還相回向之願ト↡也。
二 Ⅱ 引文
ⅰ 経説は註を指す
^▼¬註論¼ (論註) に顕れたり。 ゆゑに▽願文を出さず。 ¬論の註¼ を披くべし。▼
顕レタリ↢¬註論ニ¼↡。故ニ不↠出サ↢願文ヲ↡。可シ↠披ク↢¬論ノ註ヲ¼↡。
二 Ⅱ ⅱ 広く師釈を引く
a 略して別に還相回向あることを示す
イ 還相の義を挙ぐ(¬浄土論¼)
【15】^▼¬*浄土論¼ にいはく、
¬浄土論ニ¼曰ク、
^「▲出第五門とは、 大慈悲をもつて一切苦悩の衆生を観察して、 応化の身を示す。 生死の園、 煩悩の林のなかに回入して、 神通に遊戯して教化地に至る。 本願力の回向をもつてのゆゑに。 これを出第五門と名づく」 と。 以上
「出第五門ト者、以テ↢大慈悲ヲ↡観↢ミソナハシ察シテカヾム 一切苦悩ノ衆生ヲ↡、示ス↢応化ノ身ヲ↡。回↢入シテ生死ノ園、オン エン煩悩ノ林ノ中ニ↡、遊↢戯シテタワブル 神通ニ↡至ル↢教化地ニ↡。以テノ↢本願力ノ回向ヲ↡故ニ。是ヲ名クト↢出第五門ト↡。」 已上
二 Ⅱ ⅱ a ロ 還相の名を出す(¬論註¼)
【16】^▼¬論註¼ (下) にいはく、
¬*論註ニ¼曰ク、
^「▲還相とは、 かの土に生じをはりて、 ▼奢摩他・▼毘婆舎那・▼方便力成就することを得て、 生死の▼稠林に回入して、 一切衆生を教化して、 ともに仏道に*向かへしむるなり。
「還相ト者生ジ↢彼ノ土ニ↡已リテ、得テ↢奢摩他・毘婆舎那・方便力成就スルコトヲ↡、回↢入シテ生死ノ稠シゲシ林ニ↡、教↢化シテ一切衆生ヲ↡、共ニ向ヘシムルナリ↢仏道ニ↡。
^▼もしは往、 もしは還、 みな衆生を抜いて生死海を度せんがためなり。 このゆゑに、 ª回向を首として大悲心を成就することを*得たまへるがゆゑにº (浄土論) とのたまへり」 と。
若シハ往若シハ還、皆為ナリ↧抜イテ↢衆生ヲ↡渡セムガ↦生死海ヲ↥。是ノ故ニ言ヘリト↧回向ヲ為テ↠首ト得タマヘルガ↣成↢就スルコトヲ大悲心ヲ↡故ニト↥。」
二 Ⅱ ⅱ b 広く還相摂化の徳相を顕す(¬論註¼)
イ 摂化の徳相を顕す
(一)願の大義を明かす(観察体相)
(Ⅰ)一生補処を釈す
【17】^▼またいはく (論註・下)、
又0138言ク、
^「▲ªすなはちかの仏を見たてまつれば、 未証浄0314心の菩薩、 畢竟じて平等法身を得証す。 浄心の菩薩と、 上地のもろもろの菩薩と、 畢竟じて同じく寂滅平等を得るがゆゑにº (浄土論) とのたまへり。
「即チ見タテマツレバ↢彼ノ仏ヲ↡、未証浄心ノ菩薩、畢竟ジテ得↢証ス平等法身ヲ↡。与↢浄心ノ菩薩↡、与↢上地ノ諸ノ菩薩↡、畢竟ジテ同ジク得ルガ↢寂滅平等ヲ↡故ニトノタマヘリ。
^◆ª平等法身º とは、 八地以上法性生身の菩薩なり。 ª寂滅平等º とは、 すなはちこの法身の菩薩の所証の寂滅平等の法なり。 この寂滅平等の法を得るをもつてのゆゑに、 名づけて平等法身とす。 平等法身の菩薩の所得なるをもつてのゆゑに、 名づけて寂滅平等の法とするなり。
平等法身ト者、八地已上法性生身ノ菩薩也。寂滅平等ト者、即チ此ノ法身ノ菩薩ノ所証ノ寂滅平等之法也。以テノ↠得ルヲ↢此ノ寂滅平等ノ法ヲ↡故ニ、名ケテ為↢平等法身ト↡。以テノ↢平等法身ノ菩薩ノ所得ナルヲ↡故ニ、名ケテ為ル↢寂滅平等ノ法ト↡也。
^◆この菩薩は報生三昧を得。 三昧神力をもつて、 よく一処・一念・一時に、 十方世界に遍して、 種々に一切諸仏および諸仏大会衆海を供養す。 よく無量世界に仏法僧ましまさぬ処にして、 種々に示現し、 種々に一切衆生を教化し度脱して、 つねに仏事をなす。 *初めに往来の想、 供養の想、 度脱の想なし。
此ノ菩薩ハ得↢報生三昧ヲ↡。以テ↢三昧神力ヲ↡、能ク一処・一念・一時ニ、徧シテ↢十方世界ニ↡、種種ニ供↢養ス一切諸仏及ビ諸仏大会衆海ヲ↡。能ク於テ↧无量世界ニ无サヌ↢仏法僧↡処ニ↥、種種ニ示現シ、種種ニ教↢化シ度↣脱シテマヌカル 一切衆生ヲ↡、常ニ作ス↢仏事ヲ↡。初ニ无シ↢往来ノ想・供養ノ想・度脱ノ想↡。
^◆このゆゑにこの身を名づけて平等法身とす。 この法を名づけて寂滅平等の法とす。
是ノ故ニ此ノ身ヲ名ケテ為↢平等法身ト↡。此ノ法ヲ名ケテ為↢寂滅平等ノ法ト↡。
^◆ª未証浄心の菩薩º とは、 初地以上七地以還のもろもろの菩薩なり。 この菩薩、 またよく身を現ずること、 もしは百もしは千、 もしは万もしは億、 もしは百千万億、 無仏の国土にして仏事を施作す。 かならず心をなして三昧に入りて、 いましよく▼作心せざるにあらず。 作心をもつてのゆゑに、 名づけて未証浄心とす。
未証浄心ノ菩薩ト者、初地已上七地以還ノ諸ノ菩薩也。此ノ菩薩、亦能ク現ズルコト↠身ヲ、若シハ百若シハ千、若シハ万若シハ億、若シハ百千万億、无仏ノ国土ニシテ施↢ホドコス ハヅストモ作ス仏事ヲ↡。要ズモトム作シテ↠心ヲ入リテ↢三昧ニ↡、乃シ能ク非ズ↠不ルニ↢作心セ↡。以テノ↢作心ヲ↡故ニ、名ケテ為↢未証浄心ト↡。
^◆この菩薩、 安楽0315浄土に生じてすなはち阿弥陀仏を見んと願ず。 阿弥陀仏を見る時、 上地のもろもろの菩薩と、 畢竟じて▼身等しく▼法等しと。 ◆*龍樹菩薩・*婆藪槃頭菩薩 (天親) の輩、 かしこに生ぜんと願ずるは、 まさにこのためなるべしならくのみと。
此ノ菩薩、願ズ↧生ジテ↢安楽浄土ニ↡即チ見ムト↦阿弥陀仏ヲ↥。見ル↢阿弥陀仏ヲ↡時、与↢上地ノ諸ノ菩薩↡、畢竟ジテ身等シク法等シト。龍樹菩薩・婆藪槃頭菩薩ノ輩、願ズル↠生ゼムト↠彼ニ者、当ニシ↠為ナル↠此ノ耳ト。
^◆問うていはく、 ¬*十地経¼ を案ずるに、 菩薩の進趣階級、 やうやく無量の功勲あり。 多くの劫数を経。 しかうして後、 いましこれを得。 いかんぞ阿弥陀仏を見たてまつる時、 畢竟じて上地のもろもろの菩薩と、 身等しく法等しきやと。
問ウテ曰ク、案ズルニ↢¬十地経ヲ¼↡、菩薩ノ進スヽミ 趣オモムク 階シナワイ 級シナワイ漸ク有リ↢无量ノ功勲↡ニホフ。逕↢多クノ劫数ヲ↡。然フシテ後乃シ得↠此ヲ。云何ゾ見タテマツル↢阿弥0139陀仏ヲ↡時、畢竟ジテ与↢上地ノ諸ノ菩薩↡、身等シク法等シキ邪ト。
^◆答へていはく、 ª畢竟º はいまだすなはち等しといふにはあらずとなりと。 畢竟じてこの等しきことを失せざるがゆゑに、 ª等しº といふならくのみと。
答ヘテ曰ク、畢竟者未アラダズト↠言フニハ↢即チ等シト↡也ト。畢竟ジテ不ルガ↠失セ↢此ノ等シキコトヲ↡故ニ、言フ↠等シト耳ト。
^◆問うていはく、 もしすなはち等しからずは、 またなんぞ菩薩といふことを得ん。 ただ初地に登れば、 もつてやうやく増進して、 自然にまさに仏と等しかるべし。 なんぞ仮に上地の菩薩と等しといふやと。
問ウテ曰ク、若シ不ハ↢即チ等シカラ↡、復何ゾ得ム↠言フコトヲ↢菩薩ト↡。但登レバ↢初地ニ↡、以テ漸ク増進シテ、自然ニ当ニシ↢与↠仏等シカル↡。何ゾ仮ニ言フヤト↧与↢上地ノ菩薩↡等シト↥。
^◆答へていはく、 ▼菩薩、 七地のなかにして▼大寂滅を得れば、 ▼上に諸仏の求むべきを見ず、 下に衆生の度すべきを見ず。 仏道を捨てて実際を証せんと欲す。 その時に、 もし▼十方諸仏の神力加勧を得ずは、 すなはち滅度して二乗と異なけん。 菩薩もし安楽に往生して阿弥陀仏を見たてまつるに、 すなはちこの難なけ0316ん。 このゆゑにすべからく ª畢竟平等º といふべし。
答ヘテ曰ク、菩薩於テ↢七地ノ中ニ↡得レバ↢大寂滅ヲ↡、上ニ不↠見↢諸仏ノ可キヲ↟求ム、下ニ不↠見↢衆生ノ可キヲ↟度ス。欲ス↧捨テヽ↢仏道ヲ↡証セムト↦於実際キワヲ↥。爾ノ時ニ若シ不ハ↠得↢十方諸仏ノ神力加クワウ勧ヲスヽム↡、即便チ滅度シテ与↢二乗↡无ケム↠異。菩薩、若シ往↢生シテ安楽ニ↡見タテマツルニ↢阿弥陀仏ヲ↡、即チ无ケム↢此ノ難↡。是ノ故ニ須ベ クシ↠言フ↢畢竟平等ト↡。
^◆また次に ¬*無量寿経¼ (上) のなかに、 阿弥陀如来の本願 (第二十二願) にのたまはく、 ª^△たとひわれ仏を得たらんに、 他方仏土のもろもろの菩薩衆、 わが国に来生して、 究竟してかならず一生補処に至らん。 その本願の自在の所化、 衆生のためのゆゑに、 弘誓の鎧を被て、 徳本を積累し、 一切を度脱せしめ、 諸仏の国に遊びて、 菩薩の行を修し、 十方の諸仏如来を供養し、 恒沙無量の衆生を開化して無上正真の道を立せしめんをば除く。 *常倫に超出し、 諸地の行現前し、 ▼普賢の徳を修習せん。 もししからずは、 正覚を取らじº と。
復次ニ¬无量寿経ノ¼中ニ、阿弥陀如来ノ本願ニ言ク、*設ヒ我得タラムニ↠仏ヲ、他方仏土ノ諸ノ菩薩衆、来↢生シテ我ガ国ニ↡、究竟シテ必ズ至ラム↢一生補処ニ↡。除ク↧其ノ本願ノ自在ノ所*化、為ノ↢衆生ノ↡故ニ、被テ↢弘誓ノ鎧ヨロイヲ↡、積ツミ↢累カサヌシ徳本ヲ↡、度↢脱セシメ一切ヲ↡、遊ビテ↢諸仏ノ国ニ↡、修シ↢菩薩ノ行ヲ↡、供↢養シ十方ノ諸仏如来ヲ↡、開↢化シテメグム 恒砂无量ノ衆生ヲ↡使メムヲバ↞立セ↢无上正真之道ヲ↡。超↢出シ常倫ニトモガラ↡、諸地之行現前シ、修↢習セムナラフ 普賢之徳ヲ↡。若シ不↠爾ラ者、不ト↠取ラ↢正覚ヲ↡。
^◆この ¬経¼ を案じて、 かの国の菩薩を推するに、 あるいは一地より一地に至らざるべし。 ◆十地の階次といふは、 これ釈迦如来、 閻浮提にして一つの応化道ならくのみと。 他方の浄土は、 なんぞかならずしもかくのごとくせん。 ▼五種の不思議のなかに、 仏法もつとも不可思議なり。 ◆もし菩薩かならず一地より一地に至りて、 超越の理なしといはば、 いまだあへて詳らかならざるなり。
按ジテ↢此ノ¬経ヲ¼↡推スルニ↢彼ノ国ノ菩薩ヲ↡、或イハ可シ↠不ル↧従リ↢一地↡至ラ↦一地ニ↥。言フ↢十地ノ階シナワイ次ト↡者、是釈迦如来於テ↢閻浮提ニ↡一ノ応化道耳ト。他方ノ浄土ハ、何ゾ必ズシモ如クセム↠此クノ。五種ノ不思議ノ中ニ、仏法最サイモ不可思議ナリ。若シ言ハヾ↧*菩薩必ズ従リ↢一地↡至リテ↢一地ニ↡、无シト↦超越之理↥コトワリ、未ダル↢敢テ詳ナラ↡也0140。
^◆たとへば樹あり、 名づけて好堅といふ。 この樹、 *地より生じて百歳ならん。 いましつぶさに一日に長高くなること百丈なるがごとし。 日々にかくのごとし。 百歳の長を計るに、 あに修松に0317類せんや。 松の生長するを見るに、 日に寸を過ぎず。 かの好堅を聞きて、 なんぞよく即日を疑はざらん。
譬ヘバ如シ↧有リ↠樹、名ケテ曰フ↢好堅ト↡、是ノ樹、地ヨリ生ジテ百歳ナラム、乃シ具ニ一日ニ長高クナルコト百丈ナルガ↥。日日ニ如シ↠此クノ。計ルニ↢百歳之長ヲ↡、豈類セムタトウ 循ナガシ松 マツ ニ↡邪。見ルニ↢松ノ生長スルヲ↡、日ニ不↠過ギ↠寸ヲ。聞キテ↢彼ノ好堅ヲ↡、何ゾ能ク不ラム↠疑ハ↢即日ヲ↡。
^◆人ありて、 釈迦如来、 ▼羅漢を一聴に証し、 無生を終朝に制すとのたまへるを聞きて、 これ接誘の言にして称実の説にあらずと謂へり。 この論事を聞きて、 またまさに信ぜざるべし。 それ非常の言は、 常人の耳に入らず。 これをしからずと謂へり。 またそれ宜しかるべきなりと。
有リテ↠人聞キテ↧釈迦如来証シ↢羅漢ヲ於一聴キクキテ↡、制トヾムストノタマヘルヲ↦无生ヲ於終朝ニ↥、謂ヘリ↣是接トル 誘コシラフ之言ニシテ非ズト↢称実之説ニ↡。聞キテ↢此ノ論事ヲ↡、亦当ニシ↠不ル↠信ゼ。夫非常之言ハ、不↠入ラ↢常人之耳ニ↡。謂ヘリ↢之ヲ不ト↟然ラ。亦可キ↢其宜シカル↡也ト。
^▲ª略して*八句を説きて、 如来の自利利他の功徳荘厳、 ▼次第に成就したまへるを示現したまへるなりと、 知るべしº (浄土論) と。
略シテ説キテ↢八句ヲ↡、示↢現シタマヘルナリト如来ノ自利利他ノ功徳荘厳、次第ニ成就シタマヘルヲ↡、応シト↠知ル。
^◆これはいかんが次第なるとならば、 前の十七句は、 これ荘厳国土の功徳成就なり。 すでに国土の相を知んぬ、 *国土の主を知るべし。 このゆゑに次に仏荘厳功徳を観ず。
此ハ云何ガ次第ナルトナラバ、前ノ十七句ハ是荘厳国土ノ功徳成就ナリ。既ニ知ヌ↢国土ノ相ヲ↡、応シ↠知ル↢国土之主ヲ↡。是ノ故ニ次ニ観ズ↢仏荘厳功徳ヲ↡。
^◆かの仏もし荘厳をなして、 いづれの処にしてか坐すると。 このゆゑにまづ座を観ずべし。
彼ノ仏若シ為シテ↢荘厳ヲ↡、於テカ↢何ノ処ニ↡座スルト。是ノ故ニ先ヅ観ズベシ↠座ヲ。
^◆すでに座を知んぬ、 すでによろしく座主を知るべし。 このゆゑに次に仏の身業を荘厳したまへるを観ず。
既ニ知ヌ↠座ヲ、已ニ宜クシ↠知ル↢座主ヲ↡。是ノ故ニ次ニ観ズ↣仏ノ荘↢厳シタマヘルヲ身業ヲ↡。
^◆すでに身業を知んぬ、 いかなる声名かましますと知るべし。 このゆゑに次に仏の口業を荘厳したまへるを観ず。
既ニ知ヌ↢身業ヲ↡、応シ↠知ル↠有スト↢何ナル声名カ↡。是ノ故ニ次ニ観ズ↣仏ノ荘↢厳シタマヘルヲ口業ヲ↡。
^◆すでに名聞を知んぬ、 よろしく得名のゆゑを知るべし。 このゆゑに次に仏の心業を荘厳したまへるを観ず。
既ニ知ヌ↢名聞ヲ↡、宜クシ↠知ル↢得名ノ所以ヲ↡。是ノ故ニ次ニ観ズ↣仏ノ荘↢厳シタマヘルヲ心業ヲ↡。
^◆すでに三業具足したまへるを知んぬ、 人天の大師とな0318つて化を受くるに堪へたるひとは、 これたれぞと知るべし。 このゆゑに次に大衆の功徳を観ず。
既ニ知ヌ↢三業具足シタマヘルヲ↡、応シ↠知ル↧為テ↢人天ノ大師ト↡堪ヘタル↠受クルニ↠化ヲ者ハ是誰ゾト↥。是ノ故ニ次ニ観ズ↢大衆ノ功徳ヲ↡。
^◆すでに大衆無量の功徳いますことを知んぬ、 よろしく上首はたれぞと知るべし。 このゆゑに次に上首を観ず。 上首はこれ仏なり。
既ニ知ヌ↣大衆有スコトヲ↢无量ノ功徳↡、宜クシ↠知ル↢上首者誰ゾト↡。是ノ故ニ次ニ観ズ↢上首ヲ↡。*上首ハ是仏ナリ。
^◆すでに上首を知んぬ、 おそらくは長幼に同じことを。 このゆゑに次に主を観ず。
既ニ知ヌ↣上首恐ラクハ同ジキコトヲ↢長*劫ニ↡。是ノ故ニ次ニ観ズ↠主ヲ。
^◆すでにこの主を知んぬ、 主いかなる増上かましますと。 このゆゑに次に荘厳不虚作住持を観ず。 八句の次第成ぜるなり。
既ニ知ヌ↢是ノ主ヲ↡、主有スト↢何ナル増マサル スグルトモ上カ↡。是ノ故ニ次ニ観ズ↢荘厳不虚作住持ヲ↡。八句ノ次第成ゼル也。
二 Ⅱ ⅱ b イ (一)(Ⅱ)自在摂化を釈す
^◆菩薩を観ぜば、
観ゼ↢菩薩ヲ↡者、
^ª▲いかんが菩薩の荘厳功徳成就を観察する。 菩薩の荘厳功徳成就を観察せば、 ▼かの菩薩を観ずるに、 四種の正修行功徳成就したまへることありと、 知るべしº (浄土論) と。
云何ガ観↢ミソナハス察スルカヾム 菩薩ノ荘厳功0141徳成就ナルヲ↡。観↢察セ菩薩ノ荘厳功徳成就ヲ↡者、観ズルニ↢彼ノ菩薩ヲ↡、有リト↢四種ノ正修行功徳成就シタマヘルコト↡、応シト↠知ル。
^◆真如はこれ諸法の正体なり。 *体、 如にして行ずればすなはちこれ▼不行なり。 不行▼にして行ずるを如実修行と名づく。 体はただ一如にして義をして分ちて四つとす。 このゆゑに四行、 *一をもつてまさしくこれを統ぬ。
真如ハ是諸法ノ正体ナリ。体、如ニ而行ズレバ則チ是不行ナリ。不行ニ而行ズルヲ、名ク↢如実修行ト↡。体ハ唯一如ニ而義ハカラフヲシテ分チテ為↠四ト。是ノ故ニ*四行、以テ↠一ヲ正シク*ヌ↠之ヲ。
^◆ªなにものをか四つとする。 一つには、 一仏土において身、 動揺せずして十方に遍す、 種々に応化して実のごとく修行してつねに仏事をなす。 偈に、 «^安楽国は清浄にして、 つねに無垢輪を転ず、 化仏・菩薩は、 日の須弥に住持するが0319ごとし» といへるがゆゑに。 ^もろもろの衆生の淤泥華を開くがゆゑにº (浄土論) とのたまへり。
何者ヲカ為ル↠四ト。一ニ者於テ↢一仏土ニ↡身不↢動オゴク揺セウゴク↡而徧ス↢十方ニ↡、種種ニ応化シテ如ク↠実ノ修行シテ常ニ作ス↢仏事ヲ↡。偈ニ言ヘリ↧安楽国ハ清浄ニシテ、常ニ転ズ↢无垢ノ輪ヲ↡、化仏・菩薩ハ、日ノ如キノ↢須弥ニ住持スルガ↡故ニト↥。開クガ↢諸ノ衆生ノ淤ケガラハシ泥華ヲ↡故ニトノタマヘリ。
^◆八地以上の菩薩は、 つねに三昧にありて、 三昧力をもつて身本処を動ぜずして、 よくあまねく十方に至りて、 諸仏を供養し、 衆生を教化す。
八地已上ノ菩薩ハ、常ニ在リテ↢三昧ニ↡、以テ↢三昧力ヲ↡身不↠動ゼ↢本処ヲ↡而能ク徧ク至リテ↢十方ニ↡、供↢養シ諸仏ヲ↡、教↢化ス衆生ヲ↡。
^◆ª無垢輪º は▼仏地の功徳なり。 仏地の功徳は習気・煩悩の垢ましまさず。 仏、 もろもろの菩薩のためにつねにこの法輪を転ず。 もろもろの大菩薩、 またよくこの法輪をもつて、 一切を開導して暫時も休息なけん。 ゆゑに ª常転º といふ。
无垢輪者仏地ノ功徳也。仏地ノ功徳ハ无サズ↢習気・煩悩ノ垢↡。仏為ニ↢諸ノ菩薩ノ↡常ニ転ズカブル↢此ノ法輪ヲ↡。諸ノ大菩薩、亦能ク以テ↢此ノ法輪ヲ↡、開↢導シテ一切ヲ↡无ケム↢蹔暫時モ休息ヤミヤム↡。故ニ言フ↢常転ト↡。
^◆法身は日のごとくして、 応化身の光もろもろの世界に遍するなり。 ª日º といはばいまだもつて不動を明かすに足らざれば、 また ª如須弥住持º といふなり。
法身ハ如ク↠日ノ而応化身ノ光徧スル↢諸ノ世界ニ↡也。*言ハヾ↠日ト未ダレバ↠足ラ↣以テ明スニ↢不動ヲ↡、復言フ↢如須弥住持ト↡也。
^◆ª淤泥華º とは、 ▼¬経¼ (*維摩経) にのたまはく、 ª高原の陸地には蓮華を生ぜず。 卑湿の淤泥にいまし蓮華を生ずº と。 これは凡夫、 煩悩の泥のなかにありて、 菩薩のために開導せられて、 よく仏の正覚の華を生ずるに喩ふ。 まことにそれ三宝を紹隆して、 つねに絶えざらしむと。
*淤泥華ト者、¬経ニ¼言ク、高原ノ陸地ニハ不↠生ゼ↢蓮華ヲ↡。卑イヤシク 湿ノウルホフ淤泥ニ乃シ生ズト↢蓮華ヲ↡。此ハ喩フ↧凡夫在リテ↢煩悩ノ泥ノ中ニ↡、為ニ↢菩薩ノ↡開導セラレテ能ク生ズルニ↦仏ノ正覚ノ華ヲ↥。諒ニ夫紹 ツギ ↢隆タツシテ三宝ヲ↡、常ニ使ムト↠不ラ↠絶ヘ。
^◆ª二つには、 かの応化身、 一切の時、 前ならず後ならず、 一心一念に大光明を放ちて、 ことごとくよくあまねく十方世界に至りて、 衆生を教化す。 種々に方便し、 修行所作して、 一切衆生の苦を滅除するがゆゑに。 偈に、 «^▼無垢荘0320厳の光、 一念および一時に、 あまねく諸仏の会を照らして、 もろもろの群生を利益す» といへるがゆゑにº (浄土論) と。
二ニ者彼ノ応化身、一切ノ時、不↠前ナラ不↠後ナラ、一心一念ニ放チテ↢大光明ヲ↡、悉ク能ク徧ク至リテ↢十方世界ニ↡、教↢化ス衆生ヲ↡。種種ニ方便シ、修行所作シテ、滅↢除スルガ一切衆生ノ苦ヲ↡故0142ニ。偈ニ言ヘリ↧无垢荘厳ノ光、一念及ビ一時ニ、普ク照シテ↢諸仏ノ会ヲアツマル↡、利↢益スル諸ノ群生ヲ↡故ニト↥。
^◆上に ª不動にして至るº といへり。 あるいは至るに前後あるべし。 このゆゑに、 また 一念一時無前無後º とのたまへるなり。
上ニ言ヘリ↢不動ニ而至ルト↡。容シ↣或イハ至ルニ有ル↢前後↡。是ノ故ニ復言ヘル↢一念一時无前无後ト↡也。
^◆ª三つには、 かれ一切の世界において、 余なくもろもろの仏会を照らす。 大衆余なく広大無量にして、 諸仏如来の功徳を供養し恭敬し讃嘆す。 偈に、 «^天の楽・華・衣・妙香等を雨りて、 諸仏の功徳を供養し讃ずるに、 分別の心あることなし» といへるがゆゑにº (浄土論) と。
三ニ者彼於テ↢一切ノ世界ニ↡、无ク↠余アマル照ス↢諸ノ仏会ヲ↡。大衆无ク↠余広大无量ニシテ供↢養シ恭↣敬シ賛↤嘆ス諸仏如来ノ功徳ヲ↡。偈ニ言ヘリト↧雨リテ↢天ノ楽・華・衣・妙香等ヲ↡、供↢養シ讃ズルニ↣諸仏ノ功徳ヲ↡、无キガ↠有ルコト↢分別ノ心↡故ニト↥。
^◆ª余なくº とは、 あまねく一切世界、 一切諸仏の大会に至りて、 一世界・一仏会として至らざることあることなきことを明かすなり。
无↠余ト者、明ス↧徧ク至リテ↢一切世界、一切諸仏ノ大会ニ↡、无キコトヲ↞有ルコト↢一世界・一仏会トシテ不ルコト↟至ラ也。
^◆*肇公のいはく、 ª^*法身は像なくして形を殊にす。 ならびに至韻に応ず。 言なくして玄籍いよいよ布き、 冥権謀なくして動じて事と会すº と。 ^けだしこの意なり。
肇公ノ言ハク、法身ハ无ク↠像而殊ニス↠形ヲ。並ニ応ズ↢至韻ニヒビキ↡。无ク↠言而玄アラハス籍フミ弥布キアマネシ、冥権カソカナリ 无ク↠謀ボウ反 而動ジテ与↠事会ストカナフ 。蓋シ斯ノ意也。
^◆ª四つには、 かれ十方一切の世界に三宝ましまさぬ処において、 仏法僧宝功徳大海を住持し荘厳して、 あまねく示して如実の修行を解らしむ。 偈に、 «^なんらの世界にか、 仏法功徳宝ましまさざらん。 われ願はくはみな往生して0321、 仏法を示して仏のごとくせん» といへるがゆゑにº (浄土論) と。
四ニ者彼於テ↧十方一切ノ世界ニ无サヌ↢三宝↡処ニ↥、住↢持シ荘↣厳シテ仏法僧宝功徳大海ヲ↡、徧ク示シテ令ム↠解ラ↢如実ノ修行ヲ↡。偈ニ言ヘルガ↧何等ノ世界ニカ、无サザラム↢仏法功徳宝↡、我願クハ皆往生シテ、示シテ↢仏法ヲ↡如クセムト↞仏ノ故ニト。
^◆上の三句は、 あまねく至るといふといへども、 みなこれ有仏の国土なり。 もしこの句なくは、 ▼すなはちこれ法身、 所として法ならざることあらん。 ▼上善、 所として善ならざることあらん。 観行の体相は竟りぬ。
上ノ三句ニ雖モ↠言フト↢徧ク至ルト↡、皆是有仏ノ国土ナリ。若シ无クハ↢此ノ句↡、便チ是法身有ラム↢所トシテ不ルコト↟法ナラ。上善有ラム↢所トシテ不ルコト↟善ナラ。観行ノ体相ハ竟リヌ。
二 Ⅱ ⅱ b イ (二)願の由来を示す(浄入願心)
(Ⅰ)願心荘厳を明かす
^◆以下はこれ、 解義のなかの第四重なり。 名づけて浄入願心とす。
已下ハ是解義ノ中ノ第四重ナリ。名ケテ為↢浄入願心ト↡。
^◆浄入願心とは、
浄入願心ト者、
^ª▲また向に観察荘厳仏土功徳成就と荘厳仏功徳成就と荘厳菩薩功徳成就とを説きつ。 この三種の成就は願心の荘厳したまへるなりと、 知るべしº (浄土論) といへり。
又向ニ説キツ↢観察荘厳仏土功徳成就ト・荘厳仏功徳成就ト・荘厳菩薩功徳成就トヲ↡。此ノ三種ノ成就ハ願心ノ荘厳シタマヘルナリト、応シトイヘリ↠知ル。
^◆ª応知º とは、 この三種の荘厳成就は、 もと四十八願等の清浄の願心の荘厳せるところなるによりて、 ▼因浄なるがゆゑに果浄なり。 *▼因なくして▼他の因のあるにはあらずと知るべしとなり。
応知ト者、応シト↠知ル↧此ノ三種ノ荘厳成就ハ、由リテ↣本四十八願等ノ清浄ノ願心之所ナルニ↢荘厳セル↡、因浄ナルガ故0143ニ果浄ナリ、非ズト↦无クシテ↠因他ノ因ノ有ルニハ↥也。
二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅱ)広略相入を明かす
^◆ª略して▼*入一法句を説くがゆゑにº (浄土論) とのたまへり。
略シテ説クガ↢入一法句ヲ↡故ニトノタマヘリ。
^◆上の国土の荘厳十七句と、 如来の荘厳八句と、 菩薩の荘厳四句とを広とす。 入一法句は略とす。
上ノ国土ノ荘厳十七句ト、如来ノ荘厳八句ト、菩薩ノ荘厳四句トヲ為↠広ト。入一法句者為↠略ト。
^◆なんがゆゑぞ広略相入を示現するとならば、 諸仏菩薩に二種の法身あり。 ▼一つには法性法身、 二つには方便法身なり。 法性法身によりて方便法身を▼生ず。 方便法身によりて法性法身を▼出す。 この二の法身は、 異にして分0322つべからず。 一にして同じかるべからず。 ▼このゆゑに広略相入して、 統ぬるに法の名をもつてす。
何ガ故ゾ示↢現スルトナラバ広略相入ヲ↡、諸仏・菩薩ニ有リ↢二種ノ法身↡。一ニ者法性法身、二ニ者方便法身ナリ。由リテ↢法性法身ニ↡生ズ↢方便法身ヲ↡。由リテ↢方便法身ニ↡出ス↢法性法身ヲ↡。此ノ二ノ法身ハ、異ニ而不↠可カラ↠分ツ、一ニ而不↠可カラ↠同ジカル。是ノ故ニ広略相入シテ、*ヌルニ以テス↢法ノ名ヲ↡。
^◆菩薩、 もし広略相入を知らざれば、 すなはち▼自利利他するにあたはず。
菩薩若シ不レバ↠知ラ↢広略相入ヲ↡、則チ不↠能ハ↢自利利他スルニ↡。
^◆ª一法句とは、 いはく清浄句なり。 清浄句とは、 いはく真実の智慧無為法身なるがゆゑにº (浄土論) とのたまへり。
一法句ト者、謂ハク清浄句ナリ。清浄句ト者、謂ク真実ノ智慧无為法身ナルガ故ニトノタマヘリ。
^◆この三句は展転してあひ入る。 なんの義によりてかこれを名づけて法とする、 清浄をもつてのゆゑに。 なんの義によりてか名づけて清浄とする、 ▼真実の智慧無為法身をもつてのゆゑなり。
此ノ三句ハ展転シテ相入ル。依リテカ↢何ノ義ニ↡名ケテ↠之ヲ為ル↠法ト、以テノ↢清浄ヲ↡故ニ。依リテカ↢何ノ義ニ↡名ケテ為ル↢清浄ト↡、以テノ↢真実ノ智慧无為法身ヲ↡故ナリ。
^◆真実の智慧は実相の智慧なり。 実相は無相なるがゆゑに、 真智は無知なり。
真実ノ智慧者実相ノ智慧也。実相ハ无相ナルガ故ニ、真智ハ无知也。
^◆無為法身は法性身なり。 法性寂滅なるがゆゑに法身は無相なり。
无為法身者法性身也。法性寂滅ナルガ故ニ法身ハ无相也。
^◆無相のゆゑによく相ならざることなし。 このゆゑに*相好荘厳すなはち法身なり。
无相ノ故ニ能ク无シ↠不ルコト↠相ナラ。是ノ故ニ相好荘厳即チ法身也。
^◆無知のゆゑによく知らざることなし。 このゆゑに一切種智すなはち真実の智慧なり。
无知ノ故ニ能ク无シ↠不ルコト↠知ラ。是ノ故ニ一切種智即チ真実ノ智慧也。
^◆真実をもつてして智慧に目づくることは、 智慧は作にあらず非作にあらざることを明かすなり。
以テ↢真実ヲ↡而目クルコトハ↢智慧ニ↡、明ス↣智慧ハ非ズ↠作ニ非ザルコトヲ↢非作ニ↡也。
^◆無為をもつてして法身を樹つることは、 法身は色にあらず非色にあらざることを明かすなり。
以テ↢无為ヲ↡而樹ツルコトハ↢法身ヲ↡、明ス↣法身ハ非ズ↠色ニ非ザルコトヲ↢非色ニ↡也。
^◆*非にあらざれば、 あに非のよく是なるにあらざらんや。 けだし非なき、 これを是といふなり。 おのづから是にして、 また是に0323あらざることを待つことなきなり。 是にあらず非にあらず、 ▼*百非の喩へざるところなり。
非ザレ↠于↠非者、豈非ザラム↢非之能ク是ナルニ↡乎。蓋フタシ无キ↠非之ヲ曰フ↠是ト也。自ラ是ニシテ无キ↠待ツコト↢復非ザルコトヲ↟是ニ也。非ズ↠是ニ非ズ↠非ニ、百非之所ナリ↠不ル↠喩ヘ。
^◆このゆゑに清浄句といへり。 清浄句とは、 いはく真実の智慧無為法身なり。
是ノ故ニ言ヘリ↢清浄句ト↡。清浄句ト者、謂ク真実0144ノ智慧无為法身也。
^◆ªこの清浄に二種あり、 知るべしº (浄土論) といへり。
此ノ清浄ニ有リ↢二種↡、応シトイヘリ↠知ル。
^◆上の転入句のなかに、 一法に通じて清浄に入る、 清浄に通じて法身に入る、 いままさに清浄を別ちて二種を出すがゆゑなり。 ゆゑに ª知るべしº といへり。
上ノ転入句ノ中ニ、通ジテ↢一法ニ↡入ル↢清浄ニ↡、通ジテ↢清浄ニ↡入ル↢法身ニ↡。今将ニ別チテ↢清浄ヲ↡出スガ↢二種ヲ↡故ナリ。故ニ言ヘリ↠応シト↠知ル。
^◆ªなんらか二種。 一つには器世間清浄、 二つには衆生世間清浄なり。
何等ヲカ二種。一ニ者器世ウツワモノ間清浄、二ニ者衆生世間清浄ナリ。
^◆器世間清浄とは、 向に説くがごときの十七種の荘厳仏土功徳成就、 これを器世間清浄と名づく。
器世間清浄ト者、如キノ↢向ニ説クガ↡十七種ノ荘厳仏土功徳成就、是ヲ名ク↢器世間清浄ト↡。
^◆衆生世間清浄とは、 向に説くがごときの八種の荘厳仏功徳成就と、 四種の荘厳菩薩功徳成就と、 これを衆生世間清浄と名づく。
衆生世間清浄ト者、如キノ↢向ニ説クガ↡八種ノ荘厳仏功徳成就ト、四種ノ荘厳菩薩功徳成就ト、是ヲ名ク↢衆生世間清浄ト↡。
^◆かくのごときの一法句に二種の清浄の義を摂すと、 知るべしº (浄土論) とのたまへり。
如キノ↠是クノ一法句ニ摂スト↢二種ノ清浄ノ義ヲ↡、応シトノタマヘリ↠知ル。
^◆それ▼衆生は別報の▼体とす、 ▼国土は共報の▼用とす。 体用一ならず。 このゆゑに ª知るべしº。 ^しかるに▼*諸法は心をして無余の境界を成ず。 衆生および器、 また異にして一ならざることを得ず。 すなはち義をして分つに異ならず、 同じく清浄なり。
夫衆生ハ為↢別報之体ト↡、国土ハ為↢共報之用ト↡。体用不↠一ナラ。所以応シ↠知ル。然ルニ諸法ハ心ヲシテ成ズ↢无余ノ境界ヲ↡。衆生及ビ器、復不↠得↢異ニシテ不ルコトヲ↟一ナラ。則チ義ヲシテ分ツニ不↠異ナラ、同ジク清浄ナリ。
^◆器は用なり。 いはくかの浄土は、 これかの▼清浄の衆生0324の受用するところなるがゆゑに、 名づけて器とす。 ▼浄食に不浄の器を用ゐれば、 器不浄なるをもつてのゆゑに、 食また不浄なり。 不浄の食に浄器を用ゐれば、 食不浄なるがゆゑに、 器また不浄なるがごとし。 かならず二つともに潔くして、 いまし浄と称することを得しむ。 ここをもつて一つの清浄の名、 かならず二種を摂す。
器者用也。謂ク彼ノ浄土ハ、是彼ノ清浄ノ衆生之所ナルガ↢受用スル↡故ニ名ケテ為↠器ト。如シ↧浄食ニ用ヰレバ↢不浄ノ器ヲ↡、以テノ↢器不浄ナルヲ↡故ニ食亦不浄ナリ、不浄ノ食ニ用ヰレバ↢浄器ヲ↡、食不浄ナルガ故ニ、器亦不浄ナルガ↥。要ズ二倶ニ潔ケチ クシテ、乃シ得シム↠称スルコトヲ↠浄ト。是ヲ以テ一ノ清浄ノ名、必ズ摂ス↢二種ヲ↡。
^◆問うていはく、 衆生清浄といへるは、 すなはちこれ仏と菩薩となり。 かのもろもろの人天、 この清浄の数に入ることを得んやいなやと。
問ウテ曰ク、言ヘルハ↢衆生清浄ト↡、則チ是仏ト与ナリ↢菩薩↡。彼ノ諸ノ人天、得ムヤ↠入ルコトヲ↢此ノ清浄ノ数ニ↡不ヤト。
^◆答へていはく、 清浄と名づくることを得るは、 実の清浄にあらず。
答ヘテ曰ク、得ルハ↠名ヅクルコトヲ↢清浄ト↡、非ズ↢実ノ清浄ニ↡。
^◆たとへば出家の聖人は、 煩悩の賊を殺すをもつてのゆゑに名づけて比丘とす、 凡夫の出家のものをまた比丘と名づくるがごとし。
譬ヘバ如シ↧出家ノ聖人ハ、以テノ↠殺スヲ↢煩悩ノ賊ヲ↡故ニ名ケテ為↢比丘ト↡、凡夫ノ出家ノ者ヲ亦名クルガ↦比丘ト↥。
^◆また潅頂王子初生の時、 三十二相を具して、 すなはち*七宝のために属せらる。 いまだ転輪王の事をなすことあたはずといへども、 また転輪王と名づくるがごとし。 それかならず転輪王たるべきをもつてのゆゑに。
又如シ↧潅ソヽグ頂王子初生之時、具シテ↢三十二相ヲ↡、即チ為ニ↢七宝ノ↡所ル↠属セ、雖モ↠未ズ ダト↠能ハ↠為スコト↢転輪王0145ノ事ヲ↡、亦名クルガ↦転輪王ト↥。以テノ↣其必ズ為ルベキヲ↢転輪王↡故ニ。
^◆かのもろもろの人天もまたまたかくのごとし。 みな大乗正定の聚に入りて、 畢竟じてまさに清浄法身を得べし。 まさに得べきをもつてのゆゑに、 清浄と名づくることを得るなりと。
彼ノ諸ノ人天モ亦復如シ↠是クノ。皆入リテ↢大乗正定之聚ニ↡、畢竟ジテ当ニシ↠得↢清浄法身ヲ↡。以テノ↠当ニキヲ↠得故ニ得ルナリト↠名クルコトヲ↢清浄ト↡。
二 Ⅱ ⅱ b ロ 摂化の始末を証す
(一)因
(Ⅰ)因体を挙示す(善巧摂化)
^◆善巧摂化とは、
善巧摂化ト者、
^0325◆ª*かくのごときの菩薩は、 奢摩他・毘婆舎那、 広略修行成就して柔軟心なりº (浄土論) とのたまへり。
如キノ↠是クノ菩薩ハ、奢摩他・毘婆舎那、広略修行成就シテ柔*軟心ヤハラカナリナリトノタマヘリ。
^◆ª柔軟心º とは、 いはく広略の止観、 相順し修行して、 ▼不二の心を成ぜるなり。 たとへば水をもつて影を取るに、 清と静とあひ資けて成就するがごとしとなり。
柔*軟心ト者、謂ク広略ノ止観、相順シ修行シテ、成ゼル↢不二ノ心ヲ↡也。譬ヘバ如シト↧以テ↠水ヲ取ルニ↠影ヲ、清ト静シヅト相カナリ資ケ而成就スルガ↥也。
^◆ª実のごとく広略の諸法を知るº (浄土論) とのたまへり。
如ク↠実ノ知ルトノタマヘリ↢広略ノ諸法ヲ↡。
^◆ª如実知º といふは、 実相のごとくして知るなり。 広のなかの二十九句、 略のなかの一句、 実相にあらざることなきなり。
如実知トイフ者、如ク↢実相ノ↡而知ル也。広ノ中ノ二十九句、略ノ中ノ一句、莫キ↠非ザルコト↢実相ニ↡也。
^▲ªかくのごとき巧方便回向を成就したまへりº (浄土論) とのたまへり。
如キ↠是クノ成↢就シタマヘリトノタマヘリ巧方便回向ヲ↡。
^◆ªかくのごときº といふは、 前後の広略みな実相なるがごときなり。 実相を知るをもつてのゆゑに、 すなはち三界の衆生の虚妄の相を知るなり。 ▼衆生の虚妄を知れば、 すなはち真実の慈悲を生ずるなり。 ▼真実の法身を知るは、 すなはち真実の▼帰依を起すなり。 ▼慈悲と帰依と巧方便とは、 下にあり。
如キトイフ↠是クノ者、如キ↢前後ノ広略皆実相ナルガ↡也。以テノ↠知ルヲ↢実相ヲ↡故ニ則チ知ル↢三界ノ衆生ノ虚妄ノ相ヲ↡也。知レバ↢衆生ノ虚妄ヲ↡、則チ生ズル↢真実ノ慈悲ヲ↡也。知ルハ↢真実ノ法身ヲ↡、則チ起ス↢真実ノ帰依ヲ↡也。慈悲ト之与ハ↢帰依ト巧方便トハ↡在リ↠下ニ。
^▲ªなにものか菩薩の巧方便回向。 菩薩の巧方便回向とは、 いはく、 *礼拝等の五種の修行を説く、 所集の一切の功徳善根は、 自身住持の楽を求めず、 一切衆生の苦を抜かんと欲すがゆゑに、 *作願して一切衆生を摂取して、 ともに同じ0326くかの安楽仏国に生ぜしむ。 これを菩薩の巧方便回向成就と名づくº (浄土論) とのたまへり。
何者カ菩薩ノ巧方便回向。菩薩ノ巧方便回向ト者、謂ク説ク↢礼拝等ノ五種ノ修行ヲ↡、所集ノ一切ノ功徳善根ハ、不↠求メ↢自身住持之楽ヲ↡、欲スガ↠抜カムト↢一切衆生ノ苦ヲ↡故ニ、作願シテ摂↢取シテ一切衆生ヲ↡、共ニ同ジク生ゼシム↢彼ノ安楽仏国ニ↡。是ヲ名クトノタマヘリ↢菩薩ノ巧方便回向成就ト↡。
^◆王舎城所説の ¬無量寿経¼ を案ずるに、 三輩生のなかに、 行に優劣ありといへども、 みな無上菩提の心を発せざるはなけん。 この無上菩提心は、 すなはちこれ願作仏心なり。 願作仏心は、 すなはちこれ度衆生心なり。 度衆生心は、 すなはちこれ衆生を摂取して有仏の国土に生ぜしむる心なり。 このゆゑに、 かの安楽浄土に生ぜんと願ずるものは、 かならず無上菩提心を発するなり。
案ズルニ↢王舎城所説ノ¬无量寿経ヲ¼↡、三輩生ノ中ニ、雖モ↣行ニ有リト↢優マサル劣↡オトル、莫ケム↠不ルハ↠発セ↢皆无上菩提之心ヲ↡。此无上菩提心ハ即チ是願作仏心ナリ。願作仏心ハ即チ是度衆生心ナリ。度衆生心ハ即チ是摂↢取シテ衆生ヲ↡生ゼシムル↢有仏ノ国0146土ニ↡心ナリ。是ノ故ニ願ズル↠生ゼムト↢彼ノ安楽浄土ニ↡者、要ズ発スル↢无上菩提心ヲ↡也。
^◆もし人無上菩提心を発せずして、 ただかの国土の受楽無間なるを聞きて、 楽のためのゆゑに生ぜんと願ずるは、 またまさに往生を得ざるべきなり。 このゆゑに、 ª自身住持の楽を求めず、 一切衆生の苦を抜かんと欲すがゆゑにº とのたまへり。
若シ人不シテ↠発セ↢无上菩提心ヲ↡、但聞キテ↢彼ノ国土ノ受楽无間ナルヲ↡、為ノ↠楽ノ故ニ願ズルハ↠生ゼムト、亦当ニキ↠不ル↠得↢往生ヲ↡也。是ノ故ニ言ヘリ↧不↠求メ↢自身住持之楽ヲ↡、欲スガ↠抜カムト↢一切衆生ノ苦ヲ↡故ニト↥。
^◆ª住持楽º とは、 いはく、 かの安楽浄土は、 阿弥陀如来の本願力のために住持せられて、 楽を受くること間なきなり。
住持楽ト者、謂ク彼ノ安楽浄土ハ、為ニ↢阿弥陀如来ノ本願力之↡所レテ↢住持セ↡、受クルコト↠楽ヲ无キ↠間也。
^◆おほよそ ª回向º の名義を釈せば、 いはく、 おのれが所集の一切の功徳をもつて、 一切衆生に施与して、 ともに仏道に*向かへしめたまふなりと。▼
凡ソ釈セバ↢回向ノ名義ヲ↡、謂ク以テ↢己ガ所集ノ一切ノ功徳ヲ↡、施↢与シテ一切衆生ニ↡、共ニ向ヘシメタマフナリト↢仏道ニ↡。
^◆ª巧方便º とは、 いはく、 菩薩願ずらく、 おのれが智慧の火をもつて一切衆生の煩悩の草木を焼かんと、 もし一衆生として成仏せざることあらば、 われ仏になら0327じと。 しかるに衆生いまだことごとく成仏せざるに、 菩薩すでにみづから成仏せんは、 ◆たとへば火して、 一切の草木を▼擿 (擿の字、 排ひ除くなり) んで焼きて尽さしめんと欲するに、 草木いまだ尽きざるに、 火すでに尽きんがごとし。 その身を後にして身を先にするをもつてのゆゑに、 巧方便と名づく。
巧*方便ト者、謂ク菩薩願ズラク以テ↢己ガ智慧ノ火ヲ↡焼カムト↢一切衆生ノ煩悩ノ草木ヲ↡、若シ有ラバ↣一衆生トシテ不ルコト↢成仏セ↡、我不ト↠作ラ↠仏ニ。而ルニ衆生未ダルニ↢尽ク成仏セ↡、菩薩已ニ自ラ成仏セムハ、譬ヘバ如シ↩火*擿ウツシテ ▼聴念反 *擿字 他暦反 排ヒ除ク也 トル ツム オク タク 欲スルニ↧擿ムデ↢ 聴歴反 一切ノ草木ヲ↡焼キテ令↦使メムト尽サ↥、草木未ダルニ↠尽キ、火*擿已ニ尽キムガ↨。以テノ↧後ニ↢其ノ身ヲ↡而身ヲ先ニスルヲ↥故ニ、名ク↢巧方便ト↡。
^◆このなかに ª方便º といふは、 いはく*作願して一切衆生を摂取して、 ともに同じくかの安楽仏国に生ぜしむ。 かの仏国はすなはちこれ畢竟成仏の道路、 無上の方便なり。
此ノ中ニ言フ↢方便ト↡者、謂ク作願シテ摂↢取シテ一切衆生ヲ↡、共ニ同ジク生ゼシム↢彼ノ安楽仏国ニ↡。彼ノ仏国ハ即チ是畢竟成仏ノ道路、无上ノ方便也。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (一)(Ⅱ)菩提心の義を示す
・障菩提門
^◆障菩提門とは、
障菩提門ト者、
^ª▲菩薩かくのごとくよく*回向成就したまへるを知れば、 すなはちよく三種の菩提門相違の法を▼遠離するなり。 なんらか三種。
菩薩如キ↠是クノ善ク知レバ↢回向成就ツク ナルシタマヘルヲ↡、即チ能ク遠↢離スルナリ三種ノ菩提門相違ノタガフ法ヲ↡。何等カ三種。
^◆一つには智慧門によりて、 自楽を求めず、 わが心自身に貪着するを遠離せるがゆゑにº (浄土論) とのたまへり。
一ニ者依リテ↢智慧門ニ↡、不↠求メ↢自楽ヲ↡、遠↣離スルガ我ガ心貪↢著スルヲ自身ニ↡故ニトノタマヘリ。
^◆進むを知りて退くを守るを ª智º といふ。 ▼空無我を知るを ª慧º といふ。 智によるがゆゑに自楽を求めず、 慧によるがゆゑに▼わが心自身に貪着するを遠離せり。
知リテ↠進ムヲ守ルヲ↠退クヲ曰フ↠智ト。知ルヲ↢空无我ヲ↡曰フ↠慧ト。依ルガ↠智ニ故ニ不↠求メ↢自楽ヲ↡、依ルガ↠慧ニ故ニ遠0147↣離セリ我ガ心貪↢著スルヲ自身ニ↡。
^◆ª二つには慈悲門によれり。 一切衆生の苦を抜いて、 *無安衆生心を遠離せるがゆゑにº (浄土論) とのたまへり。
二ニ者依レリ↢慈悲門ニ↡。抜イテ↢一切衆生ノ苦ヲ↡、遠↢離セルガ无安衆生心ヲ↡故ニトノタマヘリ。
^◆苦を抜くを ª慈º といふ。 楽を与ふるを0328 ª悲º といふ。 慈によるがゆゑに一切衆生の苦を抜く。 悲によるがゆゑに▼無安衆生心を遠離せり。
抜クヲ↠苦ヲ曰フ↠慈ト。与フルヲ↠楽ヲ曰フ↠悲ト。依ルガ↠慈ニ故ニ抜ク↢一切衆生ノ苦ヲ↡。依ルガ↠悲ニ故ニ遠↢離セリ无安衆生心ヲ↡。
^▲ª三つには方便門によれり。 一切衆生を*憐愍したまふ心なり。 自身を供養し恭敬する心を遠離せるがゆゑにº (浄土論) とのたまへり。
三ニ者依レリ↢方便門ニ↡。憐↢アハレミ愍アハレムシタマフ一切衆生ヲ↡心ナリ。遠↧離セルガ供↢養シ恭↣敬スル自身ヲ↡心ヲ↥故ニトノタマヘリ。
^◆正直を ª方º といふ。 ▼おのれを外にするを ª便º といふ。 正直によるがゆゑに▼一切衆生を憐愍する心を生ず。 おのれを外にするによるがゆゑに▼自身を供養し恭敬する心を遠離せり。
正直ヲ曰フ↠方ト。外↠ホカニス己ヲオノレ曰フ↠便ト。依ルガ↢正直ニ↡故ニ生ズ↧憐↢愍スル一切衆生ヲ↡心ヲ↥。依ルガ↢外↠己ニ↡故ニ遠↧離セリ供↢養シ恭↣敬スル自身ヲ↡心ヲ↥。
^◆ªこれを三種の菩提門相違の法を遠離すと名づくº (浄土論) と。
是ヲ名ク↣遠↢離スト三種ノ菩提門相違ノ法ヲ↡。
・順菩提門
^◆順菩提門とは、
順菩提門ト者、
^ª▲菩薩はかくのごとき三種の菩提門相違の法を遠離して、 *三種の随順菩提門の法、 満足することを得たまへるがゆゑに。 なんらか三種。
菩薩ハ遠↢離シテ如キ↠是クノ三種ノ菩提門相違ノ法ヲ↡、得タマヘルガ↢三種ノ随順菩提門ノ法満足スルコトヲ↡故ニ。何等カ三種。
^◆一つには無染清浄心。 自身のためにもろもろの楽を求めざるをもつてのゆゑにº (浄土論) とのたまへり。
一ニ者无染清浄心。以テノ↠不ルヲ↧為ニ↢自身ノ↡求メ↦諸ノ楽ヲ↥故ニトノタマヘリ。
^◆菩提はこれ無染清浄の処なり。 もし身のために楽を求めば、 すなはち菩提に違しなん。 このゆゑに無染清浄心は、 これ菩提門に順ずるなり。
菩提ハ是无染清浄ノ処ナリ。若シ為ニ↠身ノ求メバ↠楽ヲ即チ違シナム↢菩提ニ↡。是ノ故ニ无染清浄心ハ、是順ズルナリ↢菩提門ニ↡。
^◆ª二つには安清浄心。 一切衆生の苦を抜くをもつてのゆゑにº (浄土論) とのたまへり。
二ニ者安清浄心。以テノ↠抜クヲ↢一切衆生ノ苦ヲ↡故ニトノタマヘリ。
^◆菩提はこれ一切衆生を安穏する清浄の処なり。 もし作心して一切0329衆生を抜きて生死の苦を離れしめずは、 すなはち菩提に違しなん。 このゆゑに一切衆生の苦を抜くは、 これ菩提門に順ずるなりと。
菩提ハ是安↢穏スル一切衆生ヲ↡清浄ノ処ナリ。若シ不ハ↧作心シテ抜キテ↢一切衆生ヲ↡離レシメ↦生死ノ苦ヲ↥、即便違シナム↢菩提ニ↡。是ノ故ニ抜クハ↢一切衆生ノ苦ヲ↡、是順ズルナリト↢菩提門ニ↡。
^◆ª三つには楽清浄心。 一切衆生をして大菩提を得しむるをもつてのゆゑに、 衆生を摂取してかの国土に生ぜしむるをもつてのゆゑにº (浄土論) とのたまへり。
三ニ者楽清浄心。以テノ↠令ムルヲ↣一切衆生ヲシテ得↢大菩提ヲ↡故ニ、以テノ↧摂↢取シテ衆生ヲ↡生ゼシムルヲ↦彼ノ国土ニ↥故ニトノタマヘリ。
^◆菩提はこれ畢竟常楽の処なり。 もし一切衆生をして畢竟常楽を得しめずは、 すなはち菩提に違しなん。 この畢竟常楽はなにによりてか得る、 大乗門によるなり。 大乗門とは、 いはくかの安楽仏国土これなり。 このゆゑにまた ª衆生を摂取してかの国土に生ぜしむるをもつてのゆゑにº (浄土論) とのたまへり。
菩提ハ是畢竟常楽ノ処ナリ。若シ不ハ↠令メ↣一切衆生ヲシテ得↢畢竟常楽ヲ↡、則チ違シナム↢菩提ニ↡。此ノ畢竟常楽ハ依リテカ↠何ニ而得ル、依ルナリ↢大*乗門ニ↡。大*乗門ト者、謂ク彼ノ安楽仏国土是也。是ノ故ニ又言ヘリ↩以テノ↧摂↢取シテ衆生0148ヲ↡生ゼシムルヲ↦彼ノ国土ニ↥故ニト↨。
^◆ªこれを三種の随順菩提門の法、 満足せりと名づくと、 知るべしº (浄土論) と。
是ヲ名クト↢三種ノ随順菩提門ノ法、満足セリト↡、応シト↠知ル。
・名義摂対
^◆名義摂対とは、
名義摂対ト者、
^◆ª向に智慧・慈悲・方便の三種の門は▼般若を摂取す。 般若、 方便を摂取すと説きつ、 知るべしº (浄土論) とのたまへり。
向ニ説キツ↧智慧・慈悲・方便ノ三種ノ門ハ摂↢取ス般若ヲ↡、般若摂↦取スト方便ヲ↥、応シトノタマヘリ↠知ル。
^◆ª般若º とは如に達するの慧の名なり。 ▼ª方便º とは権に通ずるの智の称なり。 ▼如に達すればすなはち心行寂滅なり。 権に通ずれば、 すなはちつぶさに*衆機に省く。 ▼*機に省くの智、 つぶさに応じて無知なり。 寂滅の慧、 また無知にしてつぶさに省く。
般若ト者達スル↠如ニ之慧ノメグム サトル名ナリ。方便ト者通ズル↠権カリニ之智ノ称ナリナヅク 。達スレバ↠如ニ則チ心行寂滅ナリ。通ズレバ↠権ニ、則チ備ビ ニ省ク↢衆機ニ↡。省↠機之智ナリ、備ニ応ジ而无知ナリ。寂滅之慧、亦无知ニ而備ニ省ク。
^0330◆しかればすなはち、 智慧と方便と、 あひ縁じて動じ、 あひ縁じて静なり。 動、 静を失せざることは智慧の功なり。 静、 動を廃せざることは方便の力なり。 このゆゑに智慧と慈悲と方便と、 般若を摂取す。 般若、 方便を摂取す。
然レバ則チ智慧ト方便ト、相縁ジ而動ジ、相縁ジ而静ナリシヅカ反。動不ルコトハ↠失セ↠静ヲ智慧之功也。静不ルコトハ↠廃セ↠動ヲ方便之力也。是ノ故ニ智慧ト慈悲ト方便ト摂↢取ス般若ヲ↡。般若摂↢取ス方便ヲ↡。
^◆ª応知º とは、 いはく、 智慧と方便はこれ菩薩の父母なり、 もし智慧と方便とによらずは、 菩薩の*法則成就せざることを知るべし。 なにをもつてのゆゑに。 もし智慧なくして衆生のためにする時には、 すなはち顛倒に堕せん。 もし方便なくして法性を観ずる時には、 すなはち実際を証せん。 このゆゑに知るべしと。
応知ト者、謂ク応シ↠知ル↧智慧ト方便ハ是菩薩ノ父母ナリ、若シ不ハ↠依ラ↢智慧ト方便トニ↡、菩薩ノ法則不ルコトヲ↦成就セ↥。何ヲ以テノ故ニ。若シ无クシテ↢智慧↡為ニスル↢衆生ノ↡時ンバ、則チ堕オツセム↢顛タフレ倒ニタフル↡。若シ无クシテ↢方便↡観ズル↢法性ヲ↡時ンバ、則チ証セム↢実際キワヲ↡。是ノ故ニ応シト↠知ル。
^◆ª向に遠離我心貪着自身・遠離無安衆生心・遠離供養恭敬自身心を説きつ。 この三種の法は、 障菩提心を遠離するなりと、 知るべしº (浄土論) とのたまへり。
向ニ説キツ↢遠離我心貪著自身・遠離无安衆生心・遠離供養恭敬自身心ヲ↡。此ノ三種ノ法ハ、遠↢離スルナリト障菩提心ヲ↡、応シトノタマヘリ↠知ル。
^◆諸法におのおの障礙の相あり。 風はよく静を障ふ。 土はよく水を障ふ。 湿はよく火を障ふ。 ▼*五黒・▼十悪は人天を障ふ。 四顛倒は声聞の果を障ふるがごとし。 このなかの*三種は菩提を障ふる心を遠離せずと。
諸法ニ各ノ有リ↢障ノサウル相↡。如シ↧風ハ能ク障フ↠静ヲ、シヅカナリ土ハ能ク障フ↠水ヲ、湿ハ能ク障フ↠火ヲ、五*黒・十悪ハ障フ↢人天ヲ↡、四顛タフレ倒ハタフレ障フルガ↦声聞ノ果ヲ↥。此ノ中ノ三種ハ不ト↧遠↦離セ障フル↢菩提ヲ↡心ヲ↥。
^◆ª応知º とは、 もし無障を得んと欲はば、 まさにこの三種の障礙を遠離すべきなり。
応知ト者、若シ欲ハヾ↠得ムト↢无障ヲ↡、当ニシト↣遠↢離ス此ノ三種ノ障ヲ↡也。
^▲ª向に無染清浄心・安清浄心・楽清浄心を説きつ。 この三種の心は略して一処にして、 ▼妙楽勝真心を*成就したまへりと、 知るべしº (浄土論) との0331たまへり。
向ニ説キツ↢无染清浄心・安清浄心・楽清浄心ヲ↡。此ノ三種ノ心ハ略シテ一処ニシテ、成↢就シタマヘリト妙楽勝真心ヲ↡、応シトノタマヘリ↠知ル。
^◆楽に三種あり。 一つには▼外楽、 いはく▼五識所生の楽なり。 二つには▼内楽、 いはく初禅・二禅・三禅の意識所生の楽なり。 三つには法楽楽、 いはく智慧所生の楽なり。
楽ニ有リ↢三種↡。一ニ者外楽、謂ク五識サトル所0149生ノ楽ナリ。二ニ者内楽、謂ク初禅・二禅・三禅ノ意識所生ノ楽ナリ。三ニ者法楽 五角反 楽 魯各反 謂ク智慧所生ノ楽ナリ。
^◆この智慧所生の楽は、 仏の功徳を愛するより起れり。 これは遠離我心と遠離無安衆生心と遠離自供養心と、 この三種の心、 清浄に増進して、 略して妙楽勝真心とす。
此ノ智慧所生ノ楽ハ、従リ↠愛スル↢仏ノ功徳ヲ↡起レリ。是ハ遠離我心ト遠離无安衆生心ト遠離自供養心ト、是ノ三種ノ心、清浄ニ増進シテ、略シテ為↢妙楽勝真心ト↡。
^◆妙の言はそれ好なり。 この楽は仏を縁じて生ずるをもつてのゆゑに。 勝の言は三界のうちの楽に勝出せり。 真の言は虚偽ならず、 顛倒せざるなり。
妙ノ言ハ其好ナリ。以テノ↢此ノ楽ハ縁ジテ↠仏ヲ生ズルヲ↡故ニ。勝ノ言ハ勝↢出セリ三界ノ中ノ楽ニ↡。真ノ言ハ不↢虚偽ナラ↡、不ルナリ↢顛倒セ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (一)(Ⅲ)因徳を挙示す(願事成就)
^◆願事成就とは、
願事成就ト者、
^▲ªかくのごとき菩薩は▼智慧心・▼方便心・▼無障心・▼勝真心をもつて、 よく清浄仏国土に*生ぜしめたまへりと、 知るべしº (浄土論) とのたまへり。
如キ↠是クノ菩薩ハ智慧心・方便心・无障心・勝真心ヲモテ、能ク生ゼシメタマヘリト↢清浄仏国土ニ↡、応シトノタマヘリ↠知ル。
^◆ª応知º とは、 いはく、 この四種の清浄の功徳、 よくかの清浄仏国土に生ずることを得しむ、 ▼これ他縁をして生ずるにはあらずと知るべしとなり。
応知ト者、謂ク応シト↠知ル↧此ノ四種ノ清浄ノ功徳、能ク得シム↠生ズルコトヲ↢彼ノ清浄仏国土ニ↡、非ズト↦是他縁ヲ而生ズルニハ↥也。
^▲ªこれを菩薩摩訶薩、 五種の法門に随順して、 所作意に随ひて自在に*成就したまへりと名づく。 向の所説のごとき身業・口業・意業・智業・方便智業、 法門に随順せるがゆゑにº (浄土論) とのたまへり。
是ヲ名ク↧菩薩摩訶薩、随↢順シテ五種ノ法門ニ↡、所作随ヒテ↠意ニ自在ニ成就シタマヘリト↥。如キ↢向ノ所説ノ↡身業・口業・意業・智業・方便智業、随↢順セルガ法門ニ↡故ニトノタマヘリ。
^◆ª随意自在º とは、 いふこころは、 この五種の功徳力、 よく清浄仏土に*生ぜしめて、 ▼出没自在なるなり0332。 ▼ª身業º とは礼拝なり。 ª口業º とは讃嘆なり。 ª意業º とは作願なり。 ▼ª智業º とは観察なり。 ▼ª方便智業º とは回向なり。 この五種の業和合せり、 すなはちこれ往生浄土の法門に随順して、 自在の業成就したまへりとのたまへりと。
随意自在ト者、言ハ此ノ五種ノ功徳力、能ク生ゼシメテ↢清浄仏土ニ↡、出没イルトモ自在ナル也。身業ト者礼オガム拝也。口業ト者讃嘆也。意業ト者作願也。智業ト者観察也。方便智業ト者回向也。言ヘリト↧此ノ五種ノ業和合セリ、則チ是随↢順シテ往生浄土ノ法門ニ↡、自在ノ業成就シタマヘリト↥。
二 Ⅱ ⅱ b ロ(二)果(通じて上因に酬ゆるの果徳を明かす)(利行満足)
^◆利行満足とは、
利行満足ト者、
^▲ªまた五種の門ありて、 漸次に五種の功徳を成就したまへりと、 知るべし。 ◆なにものか五門。 一つには近門、 二つには大会衆門、 三つには宅門、 四つには屋門、 五つには園林遊戯地門なりº (浄土論) とのたまへり。
復有リテ↢五種ノ門↡、漸ヤウヤク次ニ成↢就シタマヘリト五種ノ功徳ヲ↡、応シト↠知ル。何者カ五門。一ニ者近門、二ニ者大会衆門、三ニ者宅門、四ニ者屋門、五ニ者園ソノ林遊戯タワブル地門ナリトノタマヘリ。
^◆この五種は、 入出の次第の相を*示現せしむ。
此ノ五種ハ、示↢現セシム入出ノ次第ノ相0150ヲ↡。
^◆入相のなかに、 ▼初めに浄土に至るは、 これ近相なり。 いはく大乗正定聚に入るは、 阿耨多羅三藐三菩提に近づくなり。 浄土に入りをはるは、 すなはち如来の大会衆の数に入るなり。 衆の数に入りをはりぬれば、 まさに修行▼安心の宅に至るべし。 宅に入りをはれば、 まさに修行▼所居の屋宇に至るべし。 修行成就しをはりぬれば、 まさに教化地に至るべし。 教化地はすなはちこれ菩薩の自娯楽の地なり。
入相ノ中ニ、初ニ至ルハ↢浄土ニ↡、是近相ナリ。謂ク入ルハ↢大乗正定聚ニ↡、近ヅクナリ↢阿耨多羅三藐三菩提ニ↡。入リ↢浄土ニ↡已ルハ、便チ入ルナリ↢如来ノ大会衆ノ数ニ↡。入リ↢衆ノ数ニ↡已リヌレバ、当ニシ↠至ル↢修行安心之宅ニ↡。入リ↠宅ニ已レバ、当ニシ↠至ル↢修行所居ヰルノ屋イエ宇イエニ↡。 尤挙反 修行成就シ已リヌレバ、当ニシ↠至ル↢教化地ニ↡。教化地ハ即チ是菩薩ノ自娯タノシミ楽ノ地ナリ。
^◆このゆゑに出門を園林遊戯地門と称すと。
是ノ故ニ出門ヲ称イフスト↢園林遊戯地門ト↡。
^▲ªこの五種の門は、 初めの四種の門は入の功徳を成就したまへり、 第五門は出0333の功徳を成就したまへりº (浄土論) とのたまへり。
此ノ五種ノ門ハ、初ノ四種ノ門ハ成↢就シタマヘリ入ノ功徳ヲ↡、第五門ハ成↢就シタマヘリトノタマヘリ出ノ功徳ヲ↡。
^◆この入出の功徳は、 なにものかこれや。
此ノ入出ノ功徳ハ、何者カ是ヤ。
^◆釈すらく、
釈スラク
^▲ª入第一門といふは、 阿弥陀仏を礼拝してかの国に*生ぜしめんがためにするをもつてのゆゑに、 ▼安楽世界に生ずることを*得しむ。 これを入第一門と名づくº (浄土論) と。
言フ↢入第一門ト↡者、以テノ↧礼↢拝シテ阿弥陀仏ヲ↡為ニスルヲ↞生ゼシメムガ↢彼ノ国ニ↡故ニ、得シム↠生ズルコトヲ↢安楽世界ニ↡。是ヲ名クト↢第一門ト↡。
^◆仏を礼して仏国に生ぜんと願ずるは、 これ初めの功徳の相なりと。
礼シテ↠仏ヲ願ズルハ↠生ゼムト↢仏国ニ↡、是初ノ功徳ノ相ナリト。
^▲ª入第二門とは、 阿弥陀仏を讃嘆し、 名義に随順して如来の名を*称せしめ、 如来の*光明智相によりて修行せるをもつてのゆゑに、 大会衆の数に入ることを得しむ。 これを入第二門と名づくº (浄土論) とのたまへり。
入第二門ト者、以テノ↧賛↢嘆シ阿弥陀仏ヲ↡、随↢順シテ名義ニ↡称セシメ↢如来ノ名ヲ↡、依リテ↢如来ノ光明智相ニ↡修行セルヲ↥故ニ得シム↠入ルコトヲ↢大会衆ノ数ニ↡。是ヲ名クトノタマヘリ↢入第二門ト↡。
^◆如来の名義によりて讃嘆する、 これ第二の功徳の相なりと。
依リテ↢如来ノ名義ニ↡讃嘆スル、是第二ノ功徳ノ相ナリト。
^▲ª入第三門とは、 一心に専念し作願して、 かしこに生じて奢摩他寂静三昧の行を修するをもつてのゆゑに、 ▼蓮華蔵世界に入ることを得しむ。 これを入第三門と名づくº (浄土論) 。
入第三門ト者、以テノ↣一心ニ専念シ作願シテ、生ジテ↠彼ニ修スルヲ↢奢摩他寂静三昧ノ行ヲ↡故ニ得シム↠入ルコトヲ↢蓮華蔵世界ニ↡。是ヲ名ク↢入第三門ト↡。
^◆寂静止を修せんためのゆゑに、 一心にかの国に生ぜんと願ずる、 これ第三の功徳の相なりと。
為ノ↠修セム↢寂静止ヲ↡故ニ一心ニ願ズル↠生ゼムト↢彼ノ国ニ↡、是第三ノ功徳ノ相ナリト。
^▲ª入第四門とは、 かの妙荘厳を専念し観察して、 毘婆舎那を修せしむるをも0334つてのゆゑに、 ▼かの所に到ることを得て、 種々の法味の楽を受用せしむ。 これを入第四門と名づくº (浄土論) とのたまへり。
入第四門ト者、以テノ↧専↢念シ観↣察シテ彼ノ妙荘厳ヲ↡、修セシムルヲ↦毘婆舎那ヲ↥故ニ得テ↠到ルコトヲ↢彼ノ所ニ↡、受↢用セシム種種ノ法味ノ楽ヲ↡。是ヲ名クトノタマヘリ↢入第四門ト↡。
^◆ª種々の法味の楽º とは、 毘婆舎那のなかに、 観仏国土清浄味・摂受衆生大乗味・畢竟住持不虚作味・▼類事起行願取仏土味あり。 かくのごときらの無量の荘厳仏道の味あるがゆゑに、 ª種々º とのたまへり。 これ第四の功徳の相なりと。
種種ノ法味ノ楽ト者、毘婆舎那ノ中ニ、有リ↢観仏国土清浄味・摂受衆生大乗味・畢竟住持不虚作0151味・類事起行願取仏土味↡。有ルガ↢如キ↠是クノ等ノ无量ノ荘厳仏道ノ味↡故ニ言ヘリ↢種種ト↡。是第四ノ功徳ノ相ナリト。
^◆ª出第五門とは、 大慈悲をもつて一切苦悩の衆生を観察して、 応化身を示して、 生死の園、 煩悩の林のなかに回入して、 神通に遊戯し、 教化地に至る。 本願力の回向をもつてのゆゑに。 これを出第五門と名づくº (浄土論) とのたまへり。
出第五門ト者、以テ↢大慈悲ヲ↡観↢察カヾムシテ一切苦悩ノ衆生ヲ↡、示シテ↢応化身ヲ↡、回↢入シテ生死ノ園、煩悩ノ林ノ中ニ↡、遊↢戯シ神通ニ↡、至ル↢教化地ニ↡。以テノ↢本願力ノ回向ヲ↡故ニ。是ヲ名クトノタマヘリ↢出第五門ト↡。
^◆ª応化身を示すº といふは、 ▼¬法華経¼ の普門示現の類のごときなり。
示↢応化身↡トイフ者、如キ↢¬法華経ノ¼普門示現之類タグイノ↡也。
^◆ª遊戯º に二つの義あり。 一つには自在の義。 菩薩衆生を度す。 たとへば▼獅子の鹿を搏つに、 所為難らざるがごときは、 遊戯するがごとし。 二つには度無所度の義なり。 菩薩衆生を観ずるに、 畢竟じて*所有なし。 無量の衆生を度すといへども、 実に一衆生として滅度を得るものなし。 衆生を度すと示すこと遊戯するがごとし。
遊戯ニ有リ↢二ノ義↡。一ニ者自在ノ義。菩薩度ス↢衆生ヲ↡。譬ヘバ如キハ↢師子ノ搏ツニ↠*鹿ヲ、所為不ルガ↟難ラ、如↢似シ遊戯スルガ↡。二ニ者度无所度ノ義ナリ。菩薩観ズルニ↢衆生ヲ↡畢竟ジテ无シ↠所↠有ユル。雖モ↠度スト↢无量ノ衆生ヲ↡、実ニ无シ↧一衆生トシテ得ル↢滅度ヲ↡者↥。示スコト↠度スト↢衆生ヲ↡如↢似シ遊戯スルガ↡。
^◆ª本願力º といふは、 大菩薩、 法身のなかにおいて、 つねに三昧にましまして、 種々の身、 種々の神通、 種々の説法を現ずることを示すこ0335と、 みな本願力より起るをもつてなり。 ▼たとへば阿修羅の琴の鼓するものなしといへども、 しかも音曲自然なるがごとし。 これを教化地の第五の功徳の相と名づくとのたまへり」 と。 以上抄出
言フ↢本願力ト↡者、示スコト↧大菩薩於テ↢法身ノ中ニ↡、常ニ在シ↢三昧ニ↡而現ズルコトヲ↦種種ノ身、種種ノ神通、種種ノ説法ヲ↥、皆以テナリ↢本願力ヨリ起ルヲ↡。譬ヘバ如シ↧阿修羅ノ琴ノ雖モ↠无シト↢鼓ウツスル者↡、而モ音曲自然ナルガ↥。是ヲ名クトノタマヘリト↢教化地ノ第五ノ功徳ノ相ト↡。」 已上抄出
三 総じて往還の義を結ぶ【往還結釈】
【18】^▼しかれば、 *大聖 (釈尊) の真言、 まことに知んぬ、 大涅槃を証することは願力の回向によりてなり。 還相の利益は利他の正意を顕すなり。 ▼ここをもつて論主 (天親) は広大無礙の一心を宣布して、 あまねく雑染*堪忍の群萌を開化す。 宗師 (曇鸞) は大悲*往還の回向を顕示して、 ねんごろに▲他利利他の深義を弘宣したまへり。 仰いで奉持すべし、 ことに頂戴すべしと。
爾レ者大聖ノ真言、誠ニ知ヌ証スルコトハ↢大涅槃ヲ↡籍リテナリ↢願力ノ回向ニ↡。還相ノ利益ハ顕スナリ↢利他ノ正意ヲ↡。是ヲ以テ論主ハ宣ノベ↢布シクシテ広大无ノ一心ヲ↡、普徧ク開↢化ス雑染ソム堪忍カナフ ノ群ムラガル萌ヲキザス↡宗師ハ顕↢示シテ大悲往還ノ回向ヲ↡、慇懃ニ弘↢宣シタマヘリ他利利他ノ深義ヲ↡。仰デ可シ↢奉ウケタマハル持ス↡、特トクニ可シト↢頂戴スイタヾク↡矣。
顕浄土真実証文類 四
延書の底本は本山蔵本(所謂清書本)ˆ原漢文の校訂本Ⓐˇ。
利他円満の妙位 他力より与えられた功徳の欠けめのないすぐれた仏の位。
無上涅槃の極果 この上ない仏のさとりの果。
煩悩成就 あらゆる煩悩を欠くことなくそなえていること。
畢竟寂滅 煩悩を滅した究極的なさとりの境地。
かの因を… 阿弥陀仏が浄土往生の因をたてたことを明らかに信知することができないからという意。
剋念して…入る ¬論註¼ の当分では 「剋念して生ぜんと願ずれば、 また往生を得て、 すなはち正定聚に入る」 と読む。 剋念願生する者が浄土に往生して正定聚に入る義であるが、 親鸞聖人は原文を読みかえて、 剋念往生する者 (此土) と浄土に往生した者 (彼土) との二種の正定聚があることを示した。 剋念は心を専注して一心になること。 ここは信心の異名。
分身して 仮に身を分ちすがたを変えて。
向かへしむる・得たまへる 通常は 「向かふ」 「得んとする」 と読む。
初めに 通常は 「初めより」 と読む。
常倫に…現前し 通常は 「常倫諸地の行を超出し、 現前に」 と読む。 常倫はつねなみ、 普通一般の意。
地より…高くなること 通常は 「地に生ずるに百歳 (百囲) すなはち具せり。 一日に長ずること高さ」 と読む。
国土の主 浄土の主人、 阿弥陀仏のこと。
体如にして 通常は 「如を体して」 と読む。
一を…統ぬ 通常は 「一の正をもってこれを統ぶ」 と読む。
法身は…布き 通常は 「法身は像なくして殊形並び応じ、 至韻は言なくして玄籍弥く布けり」と読む。
因なくして…知るべしとなり 通常は 「無因と他因の有にはあらざるを知るべしとなり」 と読む。
真智は無知なり 真智は実智、 如実智ともいい、 無分別智のこと。 ものの本質のありのままが平等で不二であることをさとる智。 無知とはすべて因縁によって生じたものは実体がなく空であるから、 対象的に知るということもないとの意。
相好荘厳… 仏のすがたも実体的にあるのではなく、 それがそのまま色も形もない絶対の真理そのものにかなっていること。
非にあらざれば…待つことなきなり ¬論註¼ の原文は 「非を非するは、 あに非を非するのよく是ならんや。 けだし非を無みする、 これを是といふ。 みづから是にして待することなきも、 また是にあらず」 とも読める。
諸法は…成ず 通常は 「諸法は心をもって成ず。 余の境界なし」 と読む。
七宝のために属せらる 通常は 「七宝の属するところとなる」 と読む。 →
七宝
かくのごときの菩薩 ¬論註¼ の当分では、 願生行者のことであるが、 親鸞聖人は
還相 (従果還因の相状) の菩薩のこととし、 その根源に
法蔵菩薩の修行成就があることを示唆する。
不二の心 観ぜられる対象 (境) の徳すなわち実相 (絶対の真理) と、 観ずる心とが境智不二となった心をいう。
作願して…生ぜしむ 通常は 「一切衆生を摂取して、 ともに同じくかの安楽仏国に生ぜんと作願するなり」 と読む。
向かへしめたまふなり 通常は 「向かふなり」 と読む。
回向…知れば 通常は 「回向を知りて成就すれば」 と読む。
無安衆生心 衆生を安らかにすることのない心。
憐愍したまふ心なり 通常は 「憐愍する心なり」 と読む。
三種の…ゆゑに 通常は 「三種の菩提門に随順する法の満足を得るがゆゑなり」 と読む。
衆機に省く・機に省く 衆機はすべての衆生、 省くは分かち与えるの意。 通常は 「衆機を省みる」 「機を省みる」 と読む。 省みるは省察する、 知るの意。
法則 「法すなわち」 とも読む。
三種は…遠離せずと 通常は 「三種の不遠離は、 菩提を障ふる心なり」 と読む。
成就したまへり 通常は 「成就す」 と読む。
初禅二禅… 色界の四禅天のうちはじめの三には楽があるが、 第四禅天になると不苦不楽であるという。 →
四禅
生ぜしめたまへり 通常は 「生ず」 と読む。
成就したまへり 通常は 「成就す」 と読む。 いかに出る場合も同じ。
生ぜしめて 通常は 「生ずれば」 と読む。
示現せしむ 通常は 「示現す」 と読む。
生ぜしめんがためにする 通常は 「生ぜんとなすを」 と読む。
得しむ 通常は 「得」 と読む。
称せしめ 通常は 「称し」 と読む。
所有なし 通常は 「所有なし」 と読む。
大聖の真言 上に引かれた ¬大経¼ 「如来会」 の教説を指す。
底本は◎真宗大谷派蔵親鸞聖人真筆本。 Ⓐ本派本願寺蔵鎌倉時代写本、 Ⓑ高田派専修寺蔵真仏上人書写本、 Ⓒ本派本願寺蔵存如上人授与本、 Ⓓ本派本願寺蔵版 と対校。
設 Ⓐ「十一必至滅度願」と右傍註記
荘 Ⓐ「難思議往生成就」と右傍註記
皆 Ⓑに無し
偈 Ⓐ「難思議往生成就」と右傍にあり
然 Ⓐ「難思議往生成就」と右傍にあり
言 Ⓐ「難思議往生成就」と右傍にあり
愁歎 ◎Ⓑ或本生死字也と上欄註記→Ⓐ歎愁生死→Ⓓ生死愁
平 Ⓑ死イ」と左傍註記
論 Ⓐ「難思議往生成就」と左傍にあり
設 Ⓐ「廿二一生補処之願還相廻向之願」と右傍註記
化→Ⓐ他
菩 ◎若を菩と上書訂記
上首 Ⓑに無し
劫 Ⓑ幼と上欄註記 Ⓒ幼と上欄註記
四行 Ⓑ「如大経説」と左傍に貼紙
→Ⓒ統
言日…不動 Ⓑ「日イマダタラザレドモアキラカナルヲモテフドウトイフイ本」と左傍註記
淤→Ⓒ於
軟 Ⓒと下欄に貼紙
軟 Ⓒと上欄に貼紙
方 ◎に無し
擿→Ⓓ Ⓒ「玉ニイハク他念切木杖ナリ広ニイハク火杖ナリ」と上欄註記
擿…也8字 ◎上欄註記 ⒶⒷⒸⒹに無し
擿→Ⓓ Ⓒ「玉ニイハク雉戟反投也棄也広イハク投也掻也振也」と下欄註記
乗→ⒶⒷⒸⒹ義
黒 Ⓑ悪と上欄註記
鹿 ◎一字抹消し鹿と上欄註記