◎経釈文聞書
(1) 蓮華面経文
◎¬蓮華面経¼ (巻上意) にのたまはく、
◎¬蓮華面経¼言、
「仏、 阿難に告げたまはく、 師子のもし命終すれば、 もしは水もしは陸にあらゆる衆生、 噉食せず、 ただ師子の身よりみずから生じたるもろもろの虫、 かえってみずから師子の完を噉食するがごとき、 阿難、 わが仏法余の壊するにあらず。 これわが法の中の、 もろもろの悪比丘・比丘尼、 みずから毀壊ゆゑにと。」文
「仏告ゲタマハク↢阿難ニ↡、如キ↧師子ノ若シ命終スレ者、若ハ水若ハ陸ニ所↠有衆生、不↢噉食セ↡、唯▼師子ノ身ヨリ自ラ生ジタル諸ノ蟲、還テ自ラ噉↦食スルガ師子之完ヲ↥、阿難、我之仏法非ズ↢余ノ壊スルニ。是我法ノ中ノ、諸ノ悪比丘・比丘尼、自ラ毀壊スルガ故ト。」文
(2) 法事讃文
末法弘通の謗難を鑑て、
鑑テ↢末法弘通ノ謗難ヲ↡、
善導 ¬法事讃¼ (巻下) にいはく、
善導¬法事讃¼云、
「世尊法を説きたまふ時に了らんとして、 慇懃に弥陀の名を付属したまへり。
五濁増の時は多く疑謗せん。 道俗あひ嫌ひて聞くことを用いじ。
「▲世尊説キタマフ↠法ヲ時将シテニ↠了ラムト | 慇懃ニ付↢属シタマヘリ弥陀ノ名ヲ↡ |
五濁増ノ時ハ多ク疑謗セム | 道俗相嫌フテ不↠用ヰ↠聞クコトヲ |
修行することあるを見ては瞋毒を起し、 方便して破壊し競いて怨を生ゼム。
かくのごときの生盲闡提の輩、 頓教を毀滅して永く沈淪せん。
◆見テハ↠有ルヲ↢修行スルコト↡起シ↢瞋毒ヲ↡ | 方便シテ破壊シ競イテ生ゼム↠怨ヲ |
如キ↠此ノ生盲闡提ノ輩 | 毀↢滅シテ頓教ヲ↡永ク沈淪セム |
大地微塵劫を超過すとも、 いまだ三塗の身を離るることを得べからず。
大衆同心にみな所有の破法の罪の因縁を懴悔せよと。」文
◆超↢過ストモ大地微塵劫ヲ↡ | 未ズトダ↠可カラ↠得↠離ルヽコトヲ↢三塗ノ身ヲ↡ |
大衆同心ニ皆懴↢悔セヨト | 所有ノ破法ノ罪ノ因縁ヲ↡」文 |
(3) 行巻文
親鸞聖人いはく、 ¬教行証¼ (行巻) にいはく、
親鸞聖人曰、¬教行証¼言、
「専心はすなはち一心、 二心なき形なり。 専念といふはすなはち一行、 二行なき形なり。 今弥勒付嘱の一念すなはちこれ一声なり。 一声すなはちこれ一念なり。 一念すなはちこれ一行なり。 一行すなはちこれ正行なり。 正行すなはちこれ正業なり。 正業すなはちこれ正念なり。 正念すなはちこれ念仏なり。 すなはちこれ南無阿弥陀仏なり。」
「▲専心者即チ一心ナリ、形↠无キ↢二心↡也。云フ↢専念ト↡者即チ一行ナリ、形↠无キ↢二行↡也。◆今弥勒付嘱之一念ハ即チ是一声ナリ。一声即是一念ナリ。一念即是一行。一行即チ是正行ナリ。正行即チ是正業ナリ。正業即是正念ナリ。正念即チ是念仏ナリ。則チ是南无阿弥陀仏ナリ。」
(4) 述文賛文
憬興師 (述文賛巻下) のいはく、
憬興師ノ (述文賛巻下) 云ク、
「仏智 清浄法界 不思議智 大円鏡智 不可称智 平等性智 大乗広智 妙観察智 無等無倫最上勝智 成所作智」
「▼仏智 清浄法界 不思議智 大円鏡智 不可称智 平等性智 大乗広智 妙観察智 无等无倫最上勝智 成所作智」
(5) 四依供仏略頌文
四依供仏の略頌 (北本巻六如来性品意 南本巻六四依凡意)
砂数仏値供養人なり
四依供仏ノ略頌
砂数仏値供養人也
「熙連受持不ふ 誹ひ 謗ほう 一恒愛楽、 二読恒 誦 三恒浅義、初依 四一、五八、第二依 六・七、十二・四、三依 八恒十六、第四依」
「熙連受持不フ 誹ヒ 謗ハウ 一恒愛楽、二読恒 誦 三恒浅義、初依 四一、五八、第二依 六・七、十二・四、三依 八恒十六、第四依」
(6) 華厳経文 一
¬華厳経¼ (晋訳巻六〇 入法界品) にのたまはく、
¬華厳経¼言、
「この法を聞きて信心を歓喜し、 疑いなき者は、 速に無上道を成る。 もろもろの如来と等しと。」
「▲聞テ↢此法ヲ↡歓↢喜シ 信心ヲ↡無キ↠疑者ハ 速ニ成ル↢无上道ヲ↡ 与↢諸ノ如来↡等シト」
(7) 涅槃経文 一
¬涅槃経¼ (北本巻二〇梵行品 南本巻一八梵行品) にのたまはく、
¬涅槃経¼言、
「如来一切のためにつね慈父母となりたまへり。 まさに知るべし、 もろもろの衆生はみなこれ如来の子なり。 世尊大慈悲、 衆のために苦行を修したまふこと、 人の鬼魅に著されて狂乱して所為多きがごとし。」
「如来為ニ↢一切ノ↡ 常ニ作リタマヘリ↢慈父母ト↡ 当ベ ニシ知ル諸ノ衆生ハ 皆是如来ノ子ナリ 世尊大慈悲 為ニ↠衆ノ修シタマフコト↢苦行ヲ↡ 如シ↧人ノ著サレテ↢鬼魅ニ↡ 狂乱シテ多キガ↦所為↥」
(8) 法華経文 一
¬法華経¼ (巻二 譬喩品) にのたまはく、
¬法華経¼言、
「もろもろの苦のもろもろの因は、 貪欲を本となす。 もし貪欲を滅すれば、 依り止るところなし。」
「諸ノ苦ノ諸ノ因ハ 貪欲ヲ為ス↠本ト 若シ滅スレバ↢貪欲↡ 无シ↠所↢依リ止ル」
(9) 大経文
¬大経¼ (巻下) にのたまはく、
¬大経¼言、
「心口おのおの異にして、 言念実なし。」
「▲心口各異ニシテ、言念無シ↠実。」
(10) 涅槃経文 二
¬涅槃経¼ (北本巻三六和尚品意 南本巻三二和尚品意) にのたまはく、
¬涅槃経¼言、
「四善事悪法 一利養 二名聞 三勝他 四他属 。」
「四善事悪法 一利養 二名聞 三勝他 四他属 。」
(11) 大品経文
¬大品経¼ (巻一序品) にのたまはく、
¬大品経¼言、
「利養名聞を捨てよと。」 ¬大論¼ にこの文を述する下にいはく、 「まさに業に雑毒を捨つべしといふは、 一声一念なほこれを具せば、 実心のなき相なり。 内を翻じて外を矯るといふは、 仮令外相不法なれども、 内心真実にして往生を願ずれば、 往生を遂ぐべきなりと。」云々
「捨テヨト↢利養名聞ヲ↡。」¬大論ニ¼述スル↢此文ヲ↡之下ニ云ク、「当ベ ニシトイフ↣業ニ捨ツ↢雑毒ヲ↡者、一声一念猶具セバ↠之ヲ、无キ↢実心ノ↡相也。翻ジテ↠内ヲ矯ルトイフ↠外ヲ者、仮令外相不法ナレドモ、内心真実ニシテ願ズレ↢往生ヲ↡者、可キ↠遂グ↢往生ヲ↡也ト。」云々
(12) 華厳経文 二
¬華厳経¼ (唐訳巻一四 賢首品) にのたまはく、
¬華厳経¼言、
「信は道の元となす、 功徳の母なり。 一切のもろもろの善法を長養す。
疑網を断除すれば愛流を出でて、 涅槃無上の道を開示す。」文
「▲信ハ為↢道ノ元ト↡功徳ノ母ナリ | 長↢養ス一切ノ諸ノ善法ヲ↡ |
断↢除スレバ疑網ヲ↡出デヽ↢愛流ヲ↡ | 開↢示ス涅槃无上ノ道ヲ↡」文
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▲道ハ无上道、 元ハ根本ナリ、 諸法ノハジメ也。 マズ成仏セムトオモフニ、 信心ヲモチテミナモトヽス。 ハジメトモスルコトナリ。 ヨロズノ功徳ノハヽニテオハスルナリ。 コノ母ニ一切ノモロモロノ善根オモ修シ、 三宝オモ恭敬シ、 供養スルコトヲヤシナイタテヽ、 ウタガヒノコヽロオバナガクノゾキステヽ、 三毒煩悩アイヨクノナガレヲイデヽ、 无上道ニイタルヲ涅槃ヲサトルトハマフスナリ。 涅槃ノサトリヲウレバ、 スナワチ衆生ヲリヤクスルユヘニ、 開示ストハマフスナリ。 シカレバ、 无上道ニイタルトマフスハ自利ナリ、 開示ストマフスハ利他ナリトシラセタマフベシ。
(13) 業報差別経文
¬業報差別経¼ にのたまはく、
¬業報差別経¼言、
「高声に念仏し読経するに、 十種の功徳あり。 一にはよく睡眠 ねぶり を遣く、 二は天魔恐怖す、 三は声十方に徧す、 四は三途の苦を息む、 五には外の声入らず、 六には心をして散さざらしむ、 七には勇猛精進なり、 八は諸仏歓喜したまふ、 九には三昧現前す、 十にはさだめて浄土に生ずと。」已上抄出
「▼高声ニ念仏シ読経スルニ、有リ↢十種ノ功徳↡。一ニハ能ク遣ク↢睡眠 ネブリ ヲ↡、二ハ天魔恐オドロキ怖スオソル、三ハ声徧ス↢アマネシ十方ニ、四ハ三途ノ息ム↠苦ヲ、五ニハ外ノ声不↠入ラ、六ニハ令ム↢心ヲシテ不ラ↟散サ、七ニハ勇猛精進ナリ、八ハ諸仏歓ヨロコビ喜シタマフヨロコブ 、九ニハ三昧 現アラハル前スマヘニ、十ニハ定メテ生ズト↢浄土ニ↡。」已上抄出
(14) 諸経文
諸経にのたまはく、
諸経言、
「生るればかならず滅す、 会う者はさだめて離る。 始あれば終あり、 楽尽きては悲来る。」
「生ルレ者必ズ滅ス 会フ者ハ定メテ離ル 有レバ↠始有リ終 楽尽キテハ悲来ル」
(15) 法句譬喩経文
¬法句譬喩経¼ (修行本起経巻下出家品) にのたまはく、
¬法句譬喩経¼言、
「身強けれども病を得れば砕く、 気盛なれども老いぬれば衰ふるに至る。 死しては亡ぶ、 生きては別れ離る。 いかんが世間を楽まんと。」
「身強ケレドモ得レバ↠病ヲ砕ク 気盛ナレドモ老イヌレバ至ル↠衰フルニ 死シテハ亡ブ生キテハ別レ離ル 云何楽マムト↢世間ヲ↡」
(16) 焼法門誦文
法門を焼く誦文 (大智度論巻一一初品意) 三反
▲焼ク↢法門ヲ↡誦文 三反
「もろもろの法は縁より生ず、 この法縁より滅す。 如来この因を説きたまふ。 これ大沙門の説なり。」
「諸ノ法ハ従リ↠縁生ズ 此法従リ↠縁滅ス 如来説キタマフ↢是因ヲ↡ 是大沙門ノ説ナリ」
(17) 親鸞夢記文
¬親鸞夢記¼ にいはく、
¬親鸞夢記¼云、
「六角堂の救世大菩薩、 顔容端政の僧形を示現して、 白納の御袈裟を服↢著せしめて、 広大の白蓮に端座して、 善信に告命してのたまはく、
「▲六角堂ノ救世大菩薩、示↢現シテ顔容端政之僧形ヲ↡、令メテ↣服↢著セ白納ノ御袈裟ヲ↡、端↢座シテ広大ノ白蓮ニ↡、告↢命シテ善信ニ↡言ク、
行者宿報にてたとひ女犯すとも、 われ玉女の身となり犯せられん
一生の間よく荘厳して、 臨終に引導して極楽に生ぜしめん。 文
◆行ギヤウ者ジヤ宿シウ報ホウニテ設セチヒ女ニヨ犯ボムストモ
我 ガ 成ジヤウ↢玉ギヨク女ニヨノ身シント↡被ピ レム↠犯ボムセ
一生シヤウ之 シ 間 ケン 能ノウク荘シヤウ厳ゴムシテ
臨リム終ジユニ引イン導ダウシテ生シヤウゼシメム↢極楽ニ↡ 文
救世菩薩、 この文を誦してのたまはく、 この文は、 わが誓願なり。 一切群生に説き聞かすべしと告命したまへり。 この告命によりて、 数千万の有情にこれを聞かしむと覚えて、 夢悟め了りぬ。」
◆救世菩薩、誦シテ↢此文ヲ↡言ク、此文ハ、吾誓願ナリ。一切群生ニ可シト↢説キ聞カス↡告命シタマヘリ。因テ↢斯告命ニ↡、数千万ノ有情ニ令ムト↠聞カ↠之 ヲ覚エテ、夢悟メ了ヌ。」
(18) 浄土本縁経文 一
¬観世音菩薩往生浄土本縁経¼ にのたまはく、
¬観世音菩薩往生浄土本縁経¼言、
「もし重き業障ありて浄土に生るる因なからむものは、 弥陀の願力に乗じぬればかならず安楽国に生ず。」
「▲若シ有テ↢重キ業障↡ 无カラムモノハ↧生ルヽ↢浄土ニ↡因タネ↥ 乗ジヌレバ↢弥陀ノ願力ニ↡ 必ズ生ズ↢安楽国ニ↡」
(19) 浄土本縁経文 二
また (浄土本縁経) のたまはく、
▲又言、
「もし人多くの罪を造れば、 地獄の中に堕つべし。 わずかに弥陀の名を聞けば、 猛火清涼となると。」
「若シ人造レバ↢多クノ罪↡ 応シ↠堕ツ↢地獄ノ中ニ↡ 纔ニ聞ケバ↢弥陀ノ名ヲ↡ 猛火為ルト↢清涼ト↡」
(20) 観仏三昧経文
¬観仏三昧経¼ にのたまはく、
¬観仏三昧経¼言、
「無始よりこのかたの無量の罪、 今世に犯すところの極重悪、
日日夜夜に作すところの罪、 念念歩歩に起すところの罪、
念仏の威力にてみな生滅す。 命終して決定して極楽に生ずと。」文
「无始ヨリ已来ノ无量ノ罪 | 今世ニ所ノ↠犯ス極重悪 |
日日夜夜ニ所ノ↠作ス罪 | 念念歩歩ニ所ノ↠起ス罪 |
念仏ノ威力ニテ皆生滅ス | 命終シテ決定シテ生ズト↢極楽ニ↡」文 |
(21) 平等覚経文
¬平等覚経¼ にのたまはく、 帛延三蔵
¬平等覚経¼言、 帛延三蔵
「十方三世の仏と一切のもろもろの菩薩、 一切のもろもろの聖教、 みなこれ阿弥陀なり。」
「▲十方三世ノ仏ト 一切ノ諸ノ菩薩 一切ノ諸ノ聖教 皆是阿弥陀ナリ」
(22) 法華経文 二
¬法華経¼ (巻二) にのたまはく、 「譬喩品」
¬法華経¼言、
「華光仏の住世の寿十二小劫なり。 その国の人民衆、 寿命八小劫なり。」
「華光仏ノ住世ノ 寿十二小劫ナリ 其国ノ人民衆 寿命八小劫ナリ」
(23) 法華経文 三
同じき ¬経¼ (法華経巻四 提婆達多品)、 「五障といふは、 一は梵天王、 二は帝釈、 三は魔王、 四は転輪聖王、 五は仏身。」
同¬経¼、「五障ト者 一者梵天王、二者帝釈、三者魔王、四者転輪聖王、五者仏身。」
(24) 法華経文 四
同じき ¬経¼ (法華経巻四) にのたまはく、 「安楽行品」
同¬経¼言、
「外道梵士尼健子等。」
「外道梵士尼健子等。」
(25) 法華経文 五
同じき ¬経¼ (法華経巻六)に、 「薬王品」
同¬経¼、
「如来滅後、 後五百歳中、 もし女人ありてこの経典を聞きて説のごとくに修行せば、 この命終において、 すなはち安楽世界阿弥陀仏のみもとに住す。」
「如来滅後、後五百歳中、若有女人聞是経典如説修行、於此命終、即住安楽世界阿弥陀仏。」
延書は底本の訓点にしたがって有国が行った。 なお、 表記は現代仮名遣いとしている。