0581◎破邪顕正抄 上
・序説
◎*専修念仏の行人某等、 謹で言上。
はやく山寺聖道の諸僧ならびに*山伏・*巫女・陰陽師等が無実非分の讒言濫妨を停止せられて、 かつは*帰仏信法の*懇志に優せられ、 かつは*治国撫民の恩*憐をたれられて、 もとのごとく*本宅に*還住して念仏を勤行すべきよし、 裁許をかうぶらんとおもふ子細の事。
右専修念仏の勝業は、 決定往生の正因なり。 *安楽の能仁はねんごろにきたれとをしへ、 *娑婆の*化主はしゐてゆけとすゝめたまへり。 しかのみならず、 六方の諸仏はしたをのべて仏語を*証誠し、 一切の菩薩はいたゞきをなでゝ行者を護念す。 これを行ずれば仏陀も納受をたれ、 これを修すれば神明も擁護をいたす。 これによりて当流の祖師親鸞聖人、 明師源空聖人のをしへをうけられしよりこのかた、 こゝろを弘誓の仏地にたて、 念を難思の法海にながす。 帰依のこゝろ他事なく、 渇仰のおもひ余念なし。 このゆへに末代罪濁の*愚鈍をかゞみ、 こと0582に在家无智の群類をあはれみて、 をしふるに弥陀の一行をもてし、 すゝむるに西方の*一路をもてせり。 しかるあひだ*京中・洛外、 遠邦・近国、 かのながれをくみ、 そのをしへをつたふるひと、 *済々焉たり。 われらすなはちその随一なり。
おほよそ当流の勧化にをいては、 あながちに*捨家・棄欲のすがたを標せず。 出家発心の儀をことゝせざるあひだ、 *農業をつとむるものは、 つとめながらこれを行じ、 *官仕をいたすものは、 いたしながらこれを信ず。 しかれば、 つとむべき所役ををこたらず、 かぎりある*公務をいるかせにすることなし。 くにゝをいてわづらひなく、 ところにをいてつゐえなし。 たゞ愚痴闇鈍のあま入道等、 聖道諸宗の修行にたへざるあひだ、 涯分相応の易行を修して、 順次の往生を期するばかりなり。 これすなはち時機をはかるがゆへなり。 仏法につけ、 世間につけて、 さらにそのあやまつところなし。 しかるに山寺聖道の僧徒をはじめとして、 別解・異学・偏執・邪見のともがら、 種々の无実をたくみ、 条々の悪名をかまへて、 みだりがはしく上訴にをよび、 あまさへ在所を*追出せらるゝ条、 *愁吟のいたりなにごとかこれにしかん。 浄土の大祖善導和尚とをくこのことをかゞみて、 「*見有修行起瞋毒、 方便破壊競生怨」 (法事讃巻下) と釈したまへり。 はじめておどろくべ0583きにあらず。 *末代の邪悪をかへりみて、 しりぞいて正法の*再興をまつべしといへども、 *耳目にふるゝところの*无実、 いかでか披陳せざらん。 ほゞ*一端をあげて、 たゞ*万察をあをぐ。 つぶさに*高聞に達して恩裁にあづからんとおもふものなり。
・本論
(1)
一 一向専修といふは仏法にあらず、 外道の法なるによりてこれを停止せらるべき事。
この条、 おそらくは経釈をうかゞはざるひとのことば歟。 そのゆへは、 一向といふはわたくしのことばにあらず、 *修多羅の直説なり。 ¬无量寿経¼ (巻下) のなかに三輩の往生をとくとして、 一々にみな 「一向専念無量寿仏」 といへり。 みなもとこの誠説よりいでゝ、 高祖善導和尚またこの義を判じたまへり。 いはゆる ¬観経¼ の 「*汝好持是語」 の文を釈するとき、 「*望仏本願、 意在衆生一向專称弥陀仏名」 (散善義) といへる釈、 これなり。 こゝをもて源空聖人は、 五竺の三種のてらをひいて ¬双巻¼ の一向の義を成ぜり。 かくのごとく、 かみ仏説よりおこりて、 しも先徳の解釈にいたるまで、 その文証*炳焉なり。 たれかこれを*見聞せざらん。 もし見聞せば、 いかんが一向の名言を謗説せん。 もしまた見聞しながらこれを禁0584ぜしめば、 あに偏執にあらずや。 おほよそ八万四千の教門は、 衆生入聖の要路なり。 ともに釈迦一仏の所説なれば、 いづれを是し、 いづれを非すべきにあらず。 このゆへに善導和尚、 あるひは 「*随縁者即皆蒙解脱」 (玄義分) と釈し、 あるひは 「*仏教多門八万四、 正為衆生機不同」 (般舟讃) と判ぜり。 機にしたがひてこれを行ずればみな生死をいで、 縁におもむいてこれを修すればことごとく菩提にいたる。 いま専修の行人は、 弥陀有縁の機なるがゆへに念仏を行じて往生をねがふ。 かの聖道の学者は、 諸教有縁の機なるがゆへに衆行を修して成仏を期する歟。 なんぞあながちに、 わが有縁の要行にあらざるをもて、 他人の行用をさまたぐるや。 しかれば、 ¬本願薬師経¼ には 「*自是非他、 嫌謗正法、 為魔伴党」 ととき、 ¬智度論¼ (巻一初品) には 「*自法愛染故、 毀呰他人法、 雖持戒行人、 不脱地獄苦」 と判ぜり。 なかんづくに、 誹謗正法のものは弥陀の本願に*除却せり。 たれかこれをおそれざらんや。 しかのみならず善導和尚は、 「他の有縁の教行を*軽毀して、 自の有縁の要法を*讃ずることをえざれ。 すなはちこれみづから諸仏の*法眼をあひ*破壊するなり。 法眼すでに滅しなば、 菩提の*正道*履足するによしなし。 浄土の門、 な0585んぞよくいることをえん」 (般舟讃) といましめられたり。 これによりていまこの一向専念の行者は、 これらの文理をまもりてさらに余行を謗ぜず、 あへて諸宗を*非せず。 しかるにかの僧徒等は、 すがたは仏法修行のうつはものににたりといへども、 こゝろは撥無因果のたぐひにおなじ。 そのゆへは、 在々処々にをいて念仏者の堂舎を破壊し、 ことにふれおりにつけて、 浄土門の行者を阿党す。 弥陀の絵像・木像をば外道の形像なりといひて、 あしをもてこれを*蹂躙し、 真宗の法門聖教をば外道の所説なりと称して、 つばきをはいてこれを*毀破す。 あまさへ浄土の本書 「三部経」 以下五祖の釈等数十帖をして、 これをうばひとらしめをはりぬ。 世間の*財宝にあらずといへども、 *盗犯の*罪責そのとがおなじかるべき歟。 そのときくだんの諸僧等、 人勢悪徒を引率して念仏の行者の住宅に発向す。 行者の*所犯なにごとぞや、 われらが臓物なにものぞや。 そのとがといふは仏法の修行、 その臓物といふは念仏の一行歟。 言語道断の所行なり。 その体たらく、 解脱幢相のころものうへには、 かたじけなく放逸のよろひを帯し、 *鬀除鬚髪のいたゞきのあひだにはほしいまゝに邪見のかぶとを著せり。 *弓箭をよこたへ*刀剣をさゝげて、 よそほひ目をおどろかし、 *高天にさけび*厚地をたゝひて、 こえ0586みゝに*徹す。 おほよそその勢力、 大千界をひゞかす。 ほとほと修羅の*軍衆にすぎたり。 しかりといへども、 われらほかには合戦の重犯を*眼前におそれ、 うちには出離の大事を*生後にかなしむがゆへに、 一分の遺恨をさしはさまず、 *一言の*返答にをよばず。 すみやかに住所をしりぞいておだやかに訴訟をふるところなり。 いまかの僧徒にさいだちて穢土をいでんおもひをなして、 *年来の在所をいづるわれらをば、 三世の諸仏もさだめて随喜をくはへ、 十方の薩埵もあらたに納受をたれたまふらん。 しかるにとき末代にをよべりといへども、 日月なを天にかゝれり。 世五濁に属すといへども、 仏法いまだ地におちず。 いまの所行すでに*常篇にたえたり。 冥の照覧はゞかりあり、 ひとの謗難いくそばくぞや。 一向専念の行者等にをいては、 身のうへにきたれる*災難なをかくのごとくこれをふせがず。 いはんや、 みづからそのわざはひをおこさず。 このゆへにいにしへよりいまにいたるまで、 いまだ悪行のくはだてにをよばざるものなり。 身にをいてあやまりなき条、 これらをもて御*迹あるべきもの歟。
(2)
一 法華・真言等の大乗をもて雑行と称する条、 しかるべからざるよしの事。
こ0587の条、 しづかに善導和尚の解釈をひらいて、 つらつら浄土一家の廃立を案ずるに、 弥陀一仏にをいて帰するところの行体をもて正行と称し、 自余の仏経にをいてなすところの行業をもて雑行と号す。 たとひ法華・真言等の甚深の教なりといふとも、 なんぞ雑行のことばにおさまらざらんや。 これ弥陀如来の往生の本願にあらざるがゆへなり。 けだし教の*浅深を論ずるにあらず、 行の*優劣を*比するにあらざるがゆへなり。 *此土の得道をあかす教をもて聖道門とし、 他土の得生を期する門をもて浄土宗とす。 かのもろもろの大乗は、 もはら即身頓悟のむねををしふるがゆへに、 すでに聖道の教門なり。 しかれば、 たとひこれを修して西方に廻向すれども、 弥陀如来の本願にあらざるがゆへに、 これを雑行となづけて往生不定なり。 浄土の正行といふは、 もとより西方の入因たる行体にをいて正行の名をたつるところなり。 一宗の教相、 すでにみだるゝところなし。 二行の差別、 さらに*混ずべからざるものなり。 これによりて恵心の先徳の ¬往生要集¼ に十門をたつるなかに、 第九の往生諸業門にをいて、 法華・真言等のもろもろの大乗の行をいれたり。 諸業といひ雑行といへる、 そのことばことなりといへども、 その体これおなじ。 善導和尚は弥陀の化身、 釈尊の*再誕、 源信僧都は遠劫の0588古仏、 霊山の聴衆なり。 たれのひとか、 かの両師の解釈を難破すべきや。
(3)
一 念仏は天臺・法相等の八宗のうちにあらず、 浄土宗と号して宗の名をたつること自由たるよしの事。
この条、 もとより宗の名をたつることは仏説にあらず。 滅後の人師、 こゝろざすところの経論についてその名をたつるところなり。 いま世間に流布するところの八宗といふは、 真言・天臺・華厳・三論・律宗・倶舎・成実なり。 これすなはち聖武天皇の勅願として東大寺をたてられしとき、 このてらにはこの八宗を兼学すべきよし、 さだめをかれしよりこのかた、 八宗の号あり。 しかれば、 *諸寺・諸山にこれを学し、 *南京・*北京にこれを行じて*朝用にかなひ、 公請をつとむるについて八宗といふものなり。 浄土の一宗にをいては、 かのときいまだわが朝にわたらず、 桓武天皇の御とき、 智証大師おほくこれを*請来したまへり。 そのゝちもこの宗にいたては公請をのぞまず、 名利をもとめず、 たゞ无上菩提のために修行する教なるがゆへに、 かの一烈にこれをいれず。
しかりといひて、 この八宗のほかに宗なきにはあらず。 すなはちかの仏心宗もそのときわが朝にわた0589らざるゆへに八宗にいらず。 これまた朝用にあらざる宗なれども、 請来ののちひとこれをよびくはふるとき九宗と称す。 浄土宗をくはへんとき十宗と号せんこと、 またなにのさまたげかあらん。 おほよそ*震旦にをいては、 この八宗にかぎらず種々の宗あり。 いはゆる四論宗・涅槃宗・地論宗・摂論宗等なり。 これみなその経をもて所依とし、 その論をもて本論として義をたて行を修すれば、 すなはちその宗となづく。 なんぞ浄土の一門にかぎりて宗の名ををさゑられんや。 しかれば、 善導一師のみにあらず、 元暁・迦才・慈恩等の諸師みな念仏の門にをいて諸師の名をたてられたり。 はじめて難破にをよぶべからざるものをや。
(4)
一 念仏は小乗の法なるがゆへに、 真実出離の行にあらざるよしの事。
この条、 安養は大乗善根の妙土、 念仏は大乗无上の勝行なり。 なんぞ小乗の修行をもてたやすく大乗の国土にいらんや。 なかんづくに、 ¬般舟経¼ (一巻本勧助品意) の説のごときは 「三世の諸仏、 念弥陀三昧によりて正覚をなる」 とゝき、 ¬弥陀経¼ の説にまかせば、 釈迦如来この念仏三昧を行じて阿耨菩提をうとゝけり。 諸仏成道の要法、 むしろ小乗の*劣行ならんや。 釈尊凡地の本行、 あに*半字の小業な0590らんや。 しかれば、 ¬双巻¼ (大経巻下意) には 「无上大利の功徳」 ととき、 ¬浄土論¼ には 「真実功徳の相」 と判ぜり。 これ大乗の義をあらはすものなり。 こゝをもて善導和尚、 一宗の教相を判ずるとき、 「菩薩蔵頓教」 (玄義分) と釈せり。 いかでか小乗の教たりといふべきや。 いかにいはんや、 善導和尚の解釈のみにあらず。 諸師の釈、 その義また*一致なり。 くはしくしるすにいとまあらずといへども、 略して少々をあぐべし。 いはゆる天臺大師は ¬観経¼ をもて方等大乗の部に判属し、 三論の祖師嘉祥大師はまたこの経をもて和尚の料簡のごとく菩薩蔵と釈成し、 法相の祖師慈恩大師は念仏をもて大善と釈し、 律宗の祖師大智律師は 「大乗円頓成仏の法」 (小経義疏) と釈せり。 念仏三昧の教行、 大乗大善の要法なる条、 文釈ほゞかくのごとし。 そもそも、 また曇鸞法師は四論宗の*賢哲なり、 その講説をすてゝ一向に浄土に帰せり。 道綽禅師は涅槃宗の学生なり、 かの広業をさしをいて、 ひとへに西方の行をひろめき。 また恵心の古徳は天臺宗の*碩才なり、 三諦相即のまどをいでゝ順次往生ののぞみをかく。 永観律師は三論宗の名匠なり、 八不正観のゆかを辞して西方往詣のこゝろざしをいたす。 念仏の行もし小乗ならば、 これらの明徳あに大乗の修行をすてゝ小乗の教門にいらんや。 謗難のむねすこぶる*不0591足言のいたりなり。 おほよそ自宗・他宗の高祖といひ、 震旦・*日域の人師といひ、 念仏をもて小乗に判属すること、 いまだその一文をみず。 もし難破をいたさんとおもはんひとは、 すべからく誠証をかんがへまふすべきものなり。 しかるに経論の説文をいださず、 解釈の証拠をひかず。 たゞ自由の*荒言をはいて、 あるひは外道の法にして仏教にあらざるよし、 これを謗じ、 あるひは浄土宗の名をたつべからざるむねをこれを難じ、 あるひは小乗の教にして大乗の法にあらざるよし、 これをまふす条、 不可説の次第なり。 誹謗のおもむき、 そのむねいさゝかことなれども、 みなこれ謗法の*大罪なり。 その報、 *捺落にあるべし。 毀破のともがら、 はやく日ごろの*先非をあらためて、 当来の*罪苦を*懺ずべきものなり。
(5)
一 念仏は世間のため*不吉の法なるによりて停止せらるべきよしの事。
この条、 また*員外の次第歟。 念仏の行はたとひ世間のため不吉の法なりといふとも、 往生のため決定の業ならば、 これを制止せらるべきにあらず。 生あるものはかならず滅し、 さかんなるものはつゐにおとろふ。 世間は一旦の浮生、 出世は永劫の楽果なるがゆへなり。 いかにいはんや、 念仏の行は*現当かねて利し、 *存0592没ともに益す。 弥陀は諸仏の本師、 念仏は万善の総体なるがゆへなり。 しかるあひだ、 これを念じこれを行ずれば、 たゞ浄土の往生をうるのみにあらず。 また今生の災難をはらふものなり。 これによりて、 ¬金光明経¼ の 「寿量品」 をば弥陀如来*息災延命の教主としてこれをとき、 伝教大師はこの六字の名号をもて七難消滅の誦文としたまへり。 なかんづくに、 ¬観念法門¼ (意) に念仏の行者にをいて五種の増上縁をたつるなかに、 護念増上縁を釈すとして諸経の文をひけり。 そのなかに ¬譬喩経¼・¬惟无三昧経¼・¬浄土三昧経¼ 等のこゝろによりて 「念仏の行人は、 菩薩聖衆の護念をかうぶりて、 としをのべいのちを転じて、 *長命安楽なることをう」 と釈せり。 すでに長命の業因なり、 なんぞ不吉の劣行たらんや。 謗難のむね、 言語のをよぶところにあらず。
破邪顕正抄 上
大谷本願寺親鸞聖人之御流之正理也。
本願寺住持存如(花押)
0593破邪顕正抄 中
(6)
一 戒行をたもつは仏法の修行にあらずといひて、 これを停止すべきむね、 勧化せしむるよしの事。
この条、 持戒・持斎の行をもて仏法の修行にあらざるよし、 宣説のむねまふさしむる条、 不可説の謀言なり。 戒はこれ仏法の大地、 修行の根本なり。 これを受持せんは仏法の威儀なり、 たれかこれを*非せんや。 たゞし在家愚鈍の道俗をこしらへて、 専修念仏の一法を行ぜよとをしふるとき、 あながちに持戒をことゝすべきよし、 勧化をいたさざることはしかなり。 そのゆへは、 ¬大集経¼ (巻五月蔵分閻浮提品意) のこゝろを案ずるに、 「釈尊の滅後にをいて五箇の五百年あり。 いはゆる第一の五百年は、 *解脱堅固なり。 第二の五百年は、 *禅定堅固なり。 第三の五百年は、 *持戒堅固なり。 第四の五百年は、 *多聞堅固なり。 第五の五百年は、 *闘0594諍堅固なり」 といへり。 この経のこゝろならば、 たとひ正法五百年の義によるとも、 たとひ正法千年の説によるとも、 ともに持戒の行は像法のときにあたれり。 また ¬像法決疑経¼ の所説によらば、 正法五百年は持戒堅固なり、 像法一千年は坐禅堅固なり、 末法万年は念仏堅固なりとみえたり。 この二経の説をおもふに、 あるひは正法のときの行ととき、 あるひは像法のときの法とあかせり。 いまだ末法にをいて持戒堅固の義をとかず。 これによりて、 伝教大師の ¬末法灯明記¼ (意) には、 「正法のときは持戒の僧をもてたからとし、 像法のときは破壊の僧をもてたからとし、 末法のときは无戒名字の比丘をもてたからとす。 もし末法のなかに持戒のものあらば、 怪異なり、 いちにとらのあらんがごとし」 といへり。 これらの所説をうかゞふに、 たとい*鬀髪染衣のすがたとなりて持戒・持律の儀をかいつくろふといふとも、 真実にたもちうるひとはかたかるべし。 これ行人のとがにあらず、 すでに末法のしるしたり。 いかにいはんや、 在家止住のやからにいたりては、 たもちうべきひとなし。 このゆへに、 末法相応の要法たるにより、 下根易行の本願たるについて、 ひとへに安養の一土をねがひ、 念仏の一行をつとむべきよし、 みづからもふかくこれを信じ、 ひとををしえても行ぜ0595しむるものなり。 持戒の行にをいては、 をのれが分にあらざるあひだ、 これを*楽行せずといへども、 *敬重のおもひにをいては、 もともあさからず。 なにゝよりてか仏教にあらざるよし、 *悪言をはくべきや。 末世のなかには名字の比丘なをくにのたからなり。 いはんや末代なりとも、 もし持得のひとあらば、 ことにこれをたうとむべし。 いかでか*慢想を生ずべきや。 しかしながら*上察をあふぐところなり。
(7)
一 ¬阿弥陀経¼ ならびに ¬礼讃¼ をもて外道の教となづけて地獄の業と称し、 わが流にもちゐる和讃をば往生の業なりと号するよしの事。
この条、 不可思議の虚誕なり。 ¬四紙の小経¼ は諸仏証誠の実語、 ¬六時の礼讃¼ は五部九巻の随一なり。 これをはなれては、 念仏の功能をしるべからず。 これにあらずは、 往生の行願をたつべからず。 外道の教なりといはゞ、 そのひとすなはち外道なるべし。 地獄の業なりと称せば、 かのひとすなはち地獄をまぬかれがたし。 たゞしかの誦経・礼讃等は善導和尚のこゝろによるに、 正行・雑行と分別するときは、 正行にして雑行にあらず。 正業・助業と選択するときは、 助業にして正業にあらず。 そのゆへは、 浄土の行にをいて五種のしなあり。 一に0596は読誦、 二には観察、 三には礼拝、 四には称名、 五には讃嘆供養なり。 このなかに第四の称名をもて正定の業とし、 自余の四種をもて助業となづく。 かの ¬観経義¼ の第四 (散善義) に 「*一心専念弥陀名号、 行住座臥不問時節久近念々不捨者、 是名正定之業、 順彼仏願故、 若依礼誦等即名為助業」 といへる釈、 このこゝろすでに称名をもて正定の業となづくれば、 その余は正定の業にあらずときこへたり。 念仏をもて仏の本願に順ずと釈すれば、 そのほかは本願に順ぜずとしられたり。 かるがゆへに*読経にもたへぬべく、 礼讃をも行じつべからんひとは、 これを修せんこと浄土の正行にそむかず、 これもとも往生の助業なり。 たとひまたこれを行ぜずといへども、 往生の業には念仏を本とするがゆへに不足あることなし。 しかれども、 いたりてつたなき一文不通のあま入道等は、 ¬阿弥陀経¼ を読誦することもはなはだかたく、 ¬六時礼讃¼ を*勤行することもかなひがたし。 たとひまた、 いさゝか*黒白をわきまふるたぐひなれども、 あるひは主君につかへて奉公をはげむもの、 あるひは*商売をことゝして世路をわしるやから、 六字の名号すらこれをとなふるになをものうく、 なをいとまなし。 いはんや長日に ¬阿弥陀経¼ を誦せよとすゝめ、 六時に ¬礼讃¼ を行ぜよとをし0597へば、 浄土をねがふものはいとありがたかるべし。 このゆへに祖師親鸞聖人、 もとより下根の衆生をさきとしておこしたまへる本願の意趣をしりて、 こゝろを四種の助業にかくべからず、 行を第四の正業にもはらにすべきよし、 これをすゝめらるゝところなり。 これ如来の本誓にそむくべからず、 また和尚の釈義にたがふべからざるをや。
つぎに和讃の事。 かみのごときの*一文不知のやから、 経教の*深理をもしらず、 釈義の*奥旨をもわきまへがたきがゆへに、 いさゝかかの経釈のこゝろをやはらげて无智のともがらにこゝろえしめんがために、 ときどき念仏にくはへてこれを誦しもちゐるべきよし、 さづけあたへらるゝものなり。 これまた往生の正業にあらず、 たゞ念仏の助業なり。 もし五種の正行に*配せば、 第五の讃嘆に*摂すべき歟。 またく誦経等に対して差別を論ずるに、 全分文盲のともがらにをいては、 かの誦経等はなを成じがたく、 この和讃等はまなびやすきがゆへに、 もし称名にものうからんとき、 かつは音声をやすめしめんがため、 かつは法味をあぢはゝしめんがために、 これをしめしをかるゝばかりなり。 しかりといひてこれを誦せざらんもの、 往生をえざるべきにあらず。 往生の正業は、 ただ南無阿弥陀仏の一行なり。
0598(8)
一 神明をかろしめたてまつるよしの事。
この条、 あとかたなき虚誕なり。 そのゆへは神明について権実の不同ありといへども、 おほくはこれ諸仏・菩薩の変化なり。 衆生を利益せんがため、 群類を化度せんがために、 かりに凡惑のちりにまじはりて、 しばらく分段のさかひに現じたまへり。 これすなはち仏法にをいて、 さしたる善因をたくはへざる无縁无怙のともがら、 信をいたしてわがまえにいたらば、 これをもて*来縁として、 つゐに三界の火宅をいださしめて、 すみやかに一実の金刹にいたらしめんとなり。 いま念仏の行者は、 ふかくその垂迹の本意をしり、 かの大悲の恩致をさとりて、 専心に往生をもとめ一向に念仏を修す。 さだめて釈迦・弥陀ならびに六方恒沙仏をよび一切の菩薩等の*本懐にかなふべし。 仏・菩薩の本懐にかなはゞ、 その垂迹たらん神明、 したがひてまた随喜をいたしたまふべしといふこと、 その道理必然なり。 これによりて、 かみ梵天・帝釈・四大天王よりはじめて、 しも琰魔法王・五道冥官、 乃至六十余州普天率土、 大小権実の神祇冥道にいたるまで、 ことごとく*随逐して行者を*影護したまふ。 このゆへに神明は擁護を一向専修の行人にたれ、 行人は尊敬を一切諸神0599の明徳にぬきいづ。 西方欣求の行者、 なにゝよりてか神明を*忽諸したてまつらんや。 ひとたとひ讒言をいたすといふとも、 神むしろ照鑑をたれたまはざらんや。
(9)
一 触穢をはゞからず日の*吉凶等をえらばざる条、 不法の至極たるよしの事。
この条、 仏法のなかには生死煩悩をもて*穢とし、 功徳善根をもて*浄とす。 これすなはち仏陀の教をたるゝおもむき、 菩薩の生を利するみちなり。 世間の儀には死生等の禁忌をもて穢とし、 これをさるをもて浄とす。 これすなはち神明のひとをいましむる法、 王法の制をさだむる式なり。 かるがゆへに俗塵をいでゝ*山林にまじはり、 *世務をすてゝ仏法を行ぜんひとは、 たとひ死生の穢にまじはるといふとも、 仏陀まなじりをめぐらしたまふべからざる歟。 しかれども、 いま一向専修の行者にをきては、 さらに世俗をはなれず公役をつとめながら、 しかも内心に仏道をねがふゆへに、 あるひは神職につかふるやからもあり、 あるひは奉公をつとむるたぐひあり。 かくのごときのともがら、 たとひ仏法のなかに死生・浄穢等の差別なきことをしるといふとも、 いかでか世間の風俗をわすれて、 みだりがはしく触穢をはゞからざらんや。 不法をいたすよし、 かすめまふす条、 毛をふいて0600きずをもとむるいひ、 まことにこのたぐひ歟。
つぎに日月の吉凶の事。 ¬涅槃経¼ (北本巻二〇梵行品 南本巻一八梵行品) の説を案ずるに、 「如来の法のなかには*良日・*吉辰を*選択することなし」 といへり。 このゆへに、 あるひは恒例、 あるいは臨時、 念仏を勤行し追善をいとなむとき、 さらに日の吉凶をえらばず。 これ公方にむけて不忠を存ずるにあらず、 他人に対して不法をいたすにあらず。 かの僧徒等なんぞこれをとがめまふすべきや。 もし如来の法のなかに吉日をえらぶべきことはりなきむね信知せしむる条、 邪見のいたりにして仏神の照覧にそむかば、 神は*非礼をうけず。 仏*質直をさきとするがゆへに、 その罰すでに自身にあるべし。 そのわざはひ他人にをよぶべからず。 しかれば、 かみとして*禁遏せらるべきにあらず、 ひとゝしてまた*説諌にあたはざる歟。 いかにいはんや、 もしは神事にしたがひ公役をつとむるとき、 ところの法にまかせ、 つねの式について、 日ついでをまもること子細にをよばず。 たゞあながちに吉凶ををのれがこゝろにかけざるばかりなり。 あゑて普通の儀を*遺失せずうたへまふすむき、 かたがたよりどころなきものをや。
(10)
一 仏法を破滅し王法を忽諸するよしの事。
こ0601の条、 仏法・王法は一双の法なり。 とりのふたつのつばさのごとし、 くるまのふたつの輪のごとし、 ひとつもかけては不可なり。 かるがゆへに仏法をもて王法をまもり、 王法をもて仏法をあがむ。 これによりて上代といひ当時といひ、 国土をおさめまします明主、 みな仏法紹隆の御願をもはらにせられ、 聖道といひ浄土といひ、 仏教を学する諸僧、 かたじけなく天下安穏の祈請をいたしたてまつる。 一向専修のともがら、 なんぞこのことはりをわすれんや。 なかんづくに、 *曠劫流転のあひだ、 *多生沈没のほど善根*薄少にして、 いまだ火宅をいでざるところに、 たまたま南浮の人身をうけて、 さいはひに西方の仏教にあへり。 このゆへに生々にうけし六道の生よりは、 このたびの人身はもともよろこばしく、 世々にかうぶりし国王の恩よりは、 このところの*皇恩はことにをもし。 世間につけ出世につけ、 恩をあふぎ徳をあふぐ。 いかでか王法を忽諸したてまつるべきや。 いかにいはんや専修念仏の行者、 在々所々にして*一渧をのみ、 *一食をうくるにいたるまで、 総じては公家・関東の恩化なりと信じ、 別しては領主・地頭の恩致なりとしる。 公私につけてさらに違背の儀なし。 たゞ自身得道のためにこれを修するばかりなり。 けだしこれ末法にいたり濁世にをよびぬれば、 *智目・*行足ともにかけて出離のみち0602にまどへる在家无智のやから、 後生の悪果はおそるべしといへども、 自余の諸行は修することあたはざるがゆへに、 ひとへに易行の一道におもむいて、 たゞ西方の往生をねがふものなり。 これなんぞ王法をそむくならんや、 これむしろ仏法を破するならんや。 たちまちに国中を追出せらるゝ条、 不便の次第なり。 そもそも、 王法をいのり仏法をあがむと称する山寺聖道の僧徒等、 所行のくはだてもとも穏便ならず。 一天四海の要器として公家・武家の人民たるわれら、 後世をねがひ仏法を信ずる、 さらになにのとがゝあらん。 しかるにこれをもて*重科と称し、 これをもて*大罪と号して、 あるひは在所に発向して追出をいたし、 あるひは住宅を破却して*愁嘆をくはふ。 *濫吹のはなはだしきこと、 すこぶる是非にまどふものなり。 しかのみならず、 あるひは念仏を行ずべからざるよし、 起請文をかゝしめて三塗の*苦患をうれへしめ、 あるひは国中を*追放すべきむね、 綸旨ありと称して自由虚誕をかまへ、 あるひは打擲刃傷をくはへて面々に*恥辱をあたへ、 あるひは*逃脱牢篭にをよんで一々に山林にまじはらしむる条、 悪行のいたりおほよそ常篇にこえたり。 すでに人民をわづらはすは王法をかろしむるなり。 また念仏をさまたぐるは仏法を滅するなり。 なにをもてか王法をいのると称し、 なにゝよりてか仏法をあ0603がむと号すべきや。 みづからのとがをもて他人にゆづる条、 *姧曲の至極なり。
(11)
一 念仏の行者はひとの死後にみちををしえざる条、 邪見のきはまりなるよしの事。
この条にをいては、 まことにしかなり。 一向専修の行者、 死人にみちををしへざる条、 さらにあらがひまうすべからず。 たゞし、 をしへざるは邪見のよしまふさしむる条、 理不尽の申状なり。 そのゆへは、 田舎等にみちををしふと称して、 もちゐるところの无常導師の作法は、 六道方角ををしへ、 極楽の方所をしめす歟。 しかれば、 念仏のひとにをいては、 これををしふべきにあらず、 六道の*幽途にまよふべからず。 西方の浄刹にいたるべきがゆへなり。 たとひまた往生をとげざるひとなりといふとも、 これををしへて詮なし。 こゝにしてみちををしへんによりて、 かのひと浄土にむまるべからざるがゆへなり。 そのゆへは、 冥途のありさまをとぶらひ、 出離の*方法をしめさんこと、 もとも仏説の*誠言にまかせ聖教の施設によるべし。 しかるに亡者の死後に六道のちまたををしふべき条、 いまだ経論解釈の正説をきかず。 たゞのちのひとのをろかなるたくみをもて、 もちゐはじめたるところ歟。 これをもちゐこれをもちゐざらんこと、 よろしくひと0604のこゝろにあるべし。 他人のいふところにあらず。 おほよそ没後の追善にをいては、 たとひ讃仏・講経等の殊勝の功徳を修して廻向すれども、 七分がなかにをいて、 わづかにその一分のみ冥途に達すとみえたり。 いはんや、 仏教にあらざるわたくしの*意巧をもて六趣のつじをしめさん、 あにその利益あらんや。 しかるあひだ、 念仏の行者にをいては、 かの作法をもちゐざるところなり。 なかんづくに、 ¬観仏三昧経¼ の説をうかゞふに、 念仏三昧は*失道のものゝ*指南なり。 *黒闇のものゝ*灯燭なりとみえたり。 しからば、 六道のくらきちまたにまよひ、 三有のかすかなるみちにやすらはんとき、 この念仏を修して、 かの*生処をとぶらはゞ、 そのみちしるべとなり、 かのあきらかなるともしびとならんこと、 仏説すでにたなごゝろをさす。 感応なんぞくびすをめぐらさんや。 かるがゆへに専修の行人は、 ふかく仏教の誠言をまもりて、 *愚人の意巧をもちゐざるものなり。
破邪顕正抄 中
大谷本願寺親鸞聖人之御流之正理也。
本願寺住持存如(花押)
0605破邪顕正抄 下
(12)
一 仏前にをいて、 *山野・*江河もろもろの畜類の不浄の*肉味をそなふるよしの事。
この条、 ほとほと言上にをよばず。 虚誕のいたり、 しかしながら*御推量にたりぬべきものをや。 そのゆへは、 弥陀如来は安養浄刹の能忍、 勝過三界の教主なり。 しかれば、 *色・声・香・味の境界に著せず、 みづから法喜禅悦のあぢはひをなめたまふ。 三界穢土の供養にをいては、 ひとつとして清浄なることなれば、 *奉献するにあたはずといへども、 いま住持の三宝にむかひたてまつるとき、 *散華・焼香・燃灯・懸幡等の供養をもちゐるべきむねみえたり。 これすなはち凡夫のために利益をなしたまふ体なるがゆへに、 穢土の供養をまうくるものなり。 このほか仏前の供具、 浄土門にをいていまだこれをことゝせず。 なにゝよりてか*山禽・野獣のけがらはしき肉味をそなふべきをや、 さらに御信用にたらざるものな0606り。 たゞし結衆の同行、 一味の道俗、 そのかずすでにもておほし、 たやすくたづねあなぐるにをよばず。 もし万が一かくのごときの非法をいたすひとあらば、 すみやかに交名をさゝるべし。 こともし実ならば、 すでに仏法破滅のともがらなり。 これ放逸邪見のたぐひなり。 はやく門徒を追放すべし。 たゞ展転の*浮言を信じて偏執の上訴にをよばゞ、 かつは荒涼なり、 かつは*姧謀なり、 ことにあきらめ御沙汰あるべきものなり。
(13)
一 *魚鳥に別名をつけて、 念仏勤行の時中に道場にしてこれを受用せしむるよしの事。
この条、 さらに御承引にをよぶべからず。 いまこの専修の行者は、 おほくはこれ在家止住のともがらなり。 このゆへにあるいは*妻子にともなひて愛欲にまつはれ、 あるいは主君につかへて弓箭を帯せり。 あるひはまた*耕作をことゝして、 *鋤鍬をひさぐるものもあり。 あるいは*商沽を業として*朝夕のさゝへとするものもあり。 しかるに弥陀如来は、 五劫思惟の本願*深重超絶にして諸仏にすぐれ、 兆載永劫の修行不可思議にして群生を利しまします。 たとひ十悪・五逆・四重0607・謗法・闡提・破戒・破見等の罪人なりといへども、 廻心念仏すれば、 これをもらさず。 至心信楽すれば、 かならずこれを度したまふ。 破戒无慚のともがら、 在家無智のたぐひ、 もともこれを行ずべきむね、 知識勧進のあひだ、 一心にかのをしへをたのみて、 一向にこの行をつとむるばかりなり。 もとより煩悩を断ぜず山林にまじはらざる根機なれば、 魚鳥を食するをもてひとにはゞからず。 いはんや、 念仏勤修の日は一道場の分、 大旨は一月に一度なり。 しかれば、 長時にはゞかりをなさずして魚鳥を食用するともがら、 いづれの篇によりてか、 かだましく別名をつけて念仏勤行の*片時のあひだにこれをもちゐるべきや。 さらに御信用のかぎりにあらざるものなり。
(14)
一 念仏勤行のついでに、 仏前にして*親子の儀を存ぜず、 自他の妻をいはず、 たがひにこれをゆるしもちゐるよしの事。
この条、 子細またさきにおなじかるべし。 すみかを在家にしめて*昼夜に妻子にまつはるゝ身、 なにのかだましきこゝろありてか、 念仏のとき仏前にしてかくのごときの邪行をいたすべきや。 なかんづくに、 婬事を行ずるは愛欲の*所為なり。 欲0608をはなれずして婬を行ぜん機、 いかでか嫉妬をはなれて*自妻を他人にゆるすべきや。 御迹にたりぬべし。 いかにいはんや、 われら曠劫よりこのかた、 ひさしく六道四生にめぐりて、 いたづらに十悪・三毒にまつはれたり。 このゆへにむなしく多生の親子、 各々恩愛のかうばしきよしみをもわすれ、 三世の諸仏、 番々出世の慈悲をもわきまへずして、 いまにいたるまで生死の*長夜にさまよい、 三界の*牢獄にとぢられたり。 これをなげき、 これをかなしむがゆへに、 穢土を*厭離する身となり、 浄土を*欣求するこゝろをおこせり。 *希有の仏法にあひて*今度の出離をねがふ身、 なにゝよりてか山野のとり・けだものに同じて、 しかのごときの不調をいたさんや。 もとも*高察あるべきものなり。
(15)
一 一向専修の行者、 灯明となづけて*銭貨を師範に沙汰する条、 邪法のいたすところなるよしの事。
この条、 仏教に帰依するやから、 仏前の灯明料を沙汰せむ条、 道理にそむくべからざる歟。 おほよそ仏法修行の法、 *供仏施僧のいとなみをさきとし、 仏道欣求のならひ、 *不惜身命のをもゐを本とす。 身命なをおしむべからず、 いはんや財宝に0609をいてをや。 これによりて一向専修の行人等、 かつは師恩を報謝せんがため、 かつは自身の冥加のため、 仏前の灯明に*擬し、 後生の*資糧にあてゝ、 わたくしにもちゐるところの*活計の上分をもて師範のところにをくりあげん条、 これすでに信心のいたすところなり。 さらに他人のいろふところにあらず。 わたくしのちからをもちいて公事を減ぜざれば、 かみとして禁ぜらるべきにあらず。 わがこゝろざしをはげまして国土をつゐやさゞれば、 ひとゝしてうたへをいたすべきにあらず。 なすところの功は少分なりといへども、 うるところの益はさだめて莫大ならん歟。 なかんづくに、 ¬観念法門¼ (意) に ¬般舟三昧経¼ の説をひいて、 「この念仏三昧にをいて四事供養あり。 *飲食・衣服・臥具・湯薬をもて、 それをたすけて歓喜す。 三世の諸仏みな*念阿弥陀仏三昧四事助歓喜をもて、 成仏したまへり」 といへり。 すなはち斯笒王の私訶提仏にあひ、 梵摩達が珍宝比丘につかへし、 みな四事の供養をのべ六字の名号をきゝて、 つゐに得益せることをあかせり。 この説のごとくならば、 念仏の行者、 ちからのたえんにしたがひて供養を師長にいたし、 こゝろざしのひかんにまかせて財宝を仏道になぐべしとみゑたり。 しかれども、 とき末代にをよび、 ひとおほく*慳貪にして、 そのまことをぬきいづる0610ともがら、 はなはだもてかたし。 たまたま随分のつとめをいたさんものをば、 これをみな*随喜すべし、 なんぞかへりて*毀辱にをよばんや。
(16)
一 念仏もし往生の業ならば、 みづからこれをとなへんに往生をうべし。 あながちに知識をあふいで*師資相承をたつべからざるよしの事。
この条、 総じて仏法修行の法をみるに、 みな師資相承あり。 なんぞ浄土の一家にをいて血脈なからんや。 なかんづくに、 弥陀の本願をきくによりてすでに往生の信心をたくはふ。 きくことをうるは知識の恩なり、 なんぞ知識をあふがざらん。 これをあふがば、 むしろ血脈なからんや。 このゆへに ¬大経¼ (巻下) のなかには、 「*遇善知識聞法能行」 ととけり。 知識にあひて法をきかば、 その義相承なり。 これによりて善導和尚処々の解釈のなかに、 知識のをしへにあらずは、 往生をえがたきむねを判ぜり。 いましげきがゆへにこれを略す。 おほよそ仏教の門にいりて出離のみちをしること、 あるひは経巻のをしへにより、 あるひは知識のすゝめによる。 しかるに一文不知の愚鈍のともがらにいたりては、 経教をひらいてみづから仏教のことはりをさとることなし。 たゞひとへに知識のちからによる0611がゆへに、 そのことばをたのみて*仏語を信ずるおもひをなし、 かのをしへをまもりて経教に帰するこゝろに住す。 いかでか*面授の恩徳をわすれ、 いかでか*口決の血脈をあふがざらん。 しかれば、 黒谷の源空聖人、 浄土宗にをいて師資相承の義あるべきことを判じて、 五祖等の血脈をひかれたり。 *上古にをいてすでに血脈あり、 末代にいたりなんぞ相承なからんや。
(17)
一 念仏を修せば自行のためにこれをつとめて往生をねがふべし。 無智の身をもてひとを教化せしむる条、 しかるべからざるよしの事。
この条、 *上求菩提・下化衆生は菩薩の行願なり。 したがひて浄土門の行者、 このこゝろなきにあらず。 いはゆる*願作仏心、 度衆生心これなり。 しかれば、 善知識にあひてわが往生の信心をうるゆへに、 *踊躍歓喜のあまり、 在家无智のやからをあひかたらひて末代相応の易行を修すべきよし、 縁にしたがひてこれをすゝめん条、 仏法修行の*大意にそむくべからざる歟。 无智の身をもて有智のひとををしへば、 まことにおほけなきににたり。 无智の身なりといへども、 無智のひとをこしらへて念仏せしめんこと、 なんぞ如来の本懐にたがはんや。 これによ0612りて善導和尚の解釈をうかゞふに、 ¬観経義¼ (定善義意) のなかには 「一人をしても生死をいづることをえしむるは、 *真に仏恩を報ずとなづく。 このゆへに今時の有縁、 あひすゝめてちかひて浄土に生ぜしむるは、 すなはち諸仏の本願のこゝろにかなふなり」 といひ、 ¬往生礼讃¼ には、 「みづからも信じ、 ひとをしても信ぜしむる、 かたきがなかにうたゝさらにかたし、 大悲つたへてあまねく化する、 真に仏恩を報ずるになる」 と釈せり。 ちからのをよばんにしたがひて*親疎をこしらへ、 縁にふれて道俗をすゝめんこと、 二尊の本意にかなひ、 諸仏の方便に順ずべきをや。 難破のむね、 もとも存知しがたきものなり。
・結釈
以前条々、 *風聞の説について子細を*勒して言上することかくのごとし。 おほよそ念仏三昧は、 弥陀選択の本願、 釈尊付属の勝行、 諸仏証誠の実語、 衆生得脱の正門なり。 八万四千の行願この三昧より成就し、 十方三世の諸仏この六字より出生せり。 なかんづくに、 末代の行者、 无智の道俗、 この行にあらずは生死をいでがたく、 この法にあらずは菩提を生じがたし。 いはゆる如来の滅後にをいて三時の不同あり、 正・像・末法これなり。 衆生の根性について三種の差別あり、 上・中・下根これなり。 このゆへに如来、 ときをはかり機をはかりて、 法0613をさづけたまふ。 衆生また、 ときをはかり機をはかりて、 これを行ずべし。 かの正・像二時のあひだには、 戒定恵の三学みな堅固にして得道のひとおほく、 末法濁乱のいまは、 念仏三昧の得道さかりなるべきむねををしへたまへり。 しかるにかの三時をもてその三根に配せば、 正法は上根、 像法は中根、 末法は下根にあたれり。 しかれば、 正・像二時の上・中の根機は、 聖道の教を行じても生死を解脱すべし。 末法万年の最下の群類は、 浄土の行にあらずは、 菩提を証得しがたし。 かるがゆへに時機相応すれば、 修行成就することをえ、 機教あひそむけば、 利益速疾なることなし。 このむねを存ぜずして、 正法のときの修行をもて像法の機にをしへ、 像法のときの修行をもて末法の機にすゝめば、 ときと機と相違し、 機と法と相応せずして、 勝利はなはだすくなかるべし。 またその根機について、 上・中・下の別あるのみにあらず。 在家・出家の二衆あひわかれたるがゆへに、 仏在世には住所また各別なり。 まづ在家の衆といふは、 五欲を*貪求すること相続してこれつねなり。 たとひ*清心をおこせども、 なをしみづにゑがくがごとし。 この衆は*男女交懐、 *飲酒食肉等をいましむるにをよばず。 つぎに出家のものといふは、 身を*亡じいのちをすて、 欲を断じ真に帰し、 こゝろ金剛のごと0614く*円鏡に*等同なり。 仏地を*悕求して*自他を*弘益す。 もし*囂塵を絶離するにあらずは、 この徳証すべきによしなし。 この衆をば、 婬酒食肉等をいましめたまへり。 こゝにしりぬ、 、 如来大悲をもてひとにしたがひ、 ときによりて、 あるひはゆるし、 あるひは制したまへり。 しかれば、 伝教大師の解釈にも、 「正法のときの制文をもて、 末法の世の名字の比丘を制せば、 人と法と合せず。 これによりて ¬律¼ のなかには、 非制を制すれば、 三明を断ず。 記説するところつみあり」 (末法灯明記意) といましめたまへり。 かるがゆへに、 その欲を断じ真に帰せん出家清浄のひとをば、 をいてこれを論ぜず。 かの聖道門の学者等はこのたぐひ歟。 たゞし当今末法のありさまをみるに、 鬀髪染衣のともがらおほしといへども、 在世の出家の作法のごとく、 まことに身を亡じいのちをすつるひと、 はなはだまれなり。 おほくはこれ住所を在家・出家にわかたず、 おなじく妄念を愛塵・欲塵におこすものなり。 かうべをそるといへども、 俗家につかへて弓箭を帯し*剣戟をさゝぐるひともあり。 ころもをそむといへども、 妻子にまつはれて*田畠をたがやし*屠沽をことゝするものもあり。 出家のひとのなかに、 なをかくのごときのたぐひあり。 けだしこれ末代のならひ、 法のごとくなること、 もともかたきがゆへなり。 いかに0615いわんや、 いまわれらがともがらは、 もとより在家止住のたぐひ、 愚痴無智のあま入道なれば、 五欲を貪ずるをもて朝夕のおもひとし、 三毒にまつはるゝをもて昼夜の能とせり。 かくのごときの機、 この法によらずは、 たやすく生死をいでがたきがゆへに、 一心に帰依し一向に勤修するものなり。 これすなはち弥陀の本願はもと凡夫をすくひ、 如来の大悲はことに罪人にかうぶらしむるがゆへなり。 おほよそ仏法修行のならひ、 をのをの自行をつとめしむるに、 あへて余業を*遮せず。 縁にしたがひて行をおこせば、 みな解脱をう。 一向専修の行人にかぎりて、 なんぞあながちに種々の無実をかまへ、 条々の悪名をあげて在所を追放せしめ、 念仏を停止せらるゝや。 *末弟もしあやまつところあらば、 とがを制し非をあらたむべきよし、 *示誨をくわへられん条、 これ自他宗の学者の本意なり。 しかるにことを左右によせ、 とがを*竪横にもとめて、 仏道の修行を障せらるゝ条、 言語道断の所行なり。 まことにこれ悪世のさだまれる法、 邪見の至極なり。 和尚の未来記みぎにのせて炳焉なり。 かなしむべし、 かなしむべし。 なげかずはあるべからず。 しかれば、 はやく御*哀憐をたれられて、 山寺聖道の諸僧ならびに山伏・巫女・陰陽師等の念仏誹謗のともがらと、 一向専修の行者と両0616方をめし決せられて、 称名念仏の勝行、 外道邪見の法にあらず。 西方往生の要路、 時機相応の教たる条、 理致の*淵源をきわめられてのち、 もとのごとく本宅に還住して専修念仏を勤行すべきよし、 御成敗をかうぶらば、 いよいよ*憲政の無偏をあふいで、 まさに真宗の*巨益をしらんとおもふ。 よてほゞ言上、 くだんのごとし。
破邪顕正抄 下
大谷本願寺親鸞聖人之御流之正理也。
本願寺住持存如(花押)
底本は龍谷大学蔵存如上人書写本。
山伏 ヤマブシ(左訓)
巫女 カンナギ(左訓)
帰仏信法 ブチニクヰシ ホフヲシンズル(左訓)
懇志 ネンゴロナルコヽロザシ(左訓)
治国撫民 クニヲオサメ タミヲナヅル(左訓)
憐 アハレミ(異本左訓)
本宅 モトノイヘ(左訓)
還住 カヘリスミテ(左訓)
愚鈍 ヲロカニニブキ(異本左訓)
一路 ヒトツノミチ(異本左訓)
京中洛外遠邦近国 ミヤコノウチ ミヤコノホカ トヲキクニ チカキクニ(左訓)
済々焉 オホシトイフコヽロナリ(左訓)
捨家棄欲 イエヲステ ヨクヲスツル(左訓)
農業 タツクルワザナリ(左訓)
官仕 ミヤヅカヘ(左訓)
公務 オホヤケノコトナリ(左訓)
追出 ヲヒイダサルヽ(異本左訓)
愁吟 ウレヘ(左訓)
見有… シユギヤウスルコトアルヲミテハシンドクヲオコシ ハウベンハエシテキホイテアダヲナス(左訓)
末代 スエノヨ(異本左訓)
再興 フタヽビヲコランコトヲ(左訓)
耳目 ミヽ メ(左訓)
一端 ヒトハシ(左訓)
无実 マコトナキコト(異本左訓)
万察 ヨロヅヲシハカラルベシトナリ(左訓)
高聞 カミヘキコシメサレテトイフコヽロナリ(左訓)
汝好… ナンヂヨクコノコトバヲタモテ(異本左訓)
望仏… ブチノホングワンニノゾムルニ コヽロシユジヤウヲシテヰチカウニモハラミダブチノミナヲシヨウセシムルニアリ(左訓)
炳焉 アキラカナリ(左訓)
見聞せざらん ミキカザラントナリ(異本左訓)
随縁… エンニシタガフモノハ スナハチミナゲダチヲカウブル(異本左訓)
仏教… ブチケウノカドオホクシテハチマンシナルコトハ マサシクシユジヤウノキノオナジカラザルガタメナリ(異本左訓)
自是… ミヅカラヲゼシタヲヒシテ シヤウボフヲソシレバ マノトモガラトナル(左訓)
自法… ミヅカラノホフヲアイゼンスルガユヘニ タニンノホフヲソシレバ カイギヤウヲタモテルヒトナリトイヘドモ ヂゴクノクヲマヌカレズ(左訓)
除却せり ノゾキシリゾケラレタリ(左訓)
軽毀して カロシメソシリテ(左訓)
讃 ホムル(異本左訓)
法眼 ミノリノマナコ(異本左訓)
破壊 ヤブリソコナフ(異本左訓)
正道 タヾシキミチ(左訓)
履足するによしなし アシヲフミイレズトナリ(左訓)
非せず ソシラズ(異本左訓)
蹂躙 フミニジル(左訓)
毀破 ソシリヤブル(異本左訓)
盗犯 ヌスミ ヲカス(左訓)
罪責 ツミノセメ(左訓)
財宝 タカラ(異本左訓)
所犯 ヲカストコロ(左訓)
剃除鬚髪 ヒゲカミヲソリタルコト(異本左訓)
弓箭 ユミヤ(左訓)
刀剣 カタナツルギ(左訓)
高天 タカキソラ(左訓)
厚地 アツキツチ(左訓)
徹す トホル(左訓)
軍衆 イクサノシユ(左訓)
眼前 マナコノマヘ(左訓)
生後 ノチノヨナリ(異本左訓)
一言 ヒトコトバ(左訓)
返答 カヘリゴト(左訓)
年来 トシゴロ(異本左訓)
常篇にたえたり ヨノツネニコヘタリトイフコヽロナリ(左訓)
災難 ワザハイ(左訓)
浅深 アサキフカキ(左訓)
優劣 マサリオトリ(左訓)
比するに ナラブルニ(左訓)
此土 コノド(左訓)
混ずべからざる ヒタヽクベカラズトナリ(異本左訓)
再誕 フタヽビムマレタマフ(左訓)
諸寺諸山 モロモロノテラ モロモロノヤマ(左訓)
南京 ミナミノミヤコハナラ(左訓)
北京 キタノミヤコハヤマミヰデラ(左訓)
朝用 ダイリニモチヰラルヽコト(異本左訓)
請来 ワタシタマフナリ(異本左訓)
震旦 タウドナリ(異本左訓)
劣行 オトレルギヤウ(異本左訓)
半字 セウジヨウナリ(異本左訓)
一致 ヒトツ ムネ(異本左訓)
賢哲 カシコカリシヒト(異本左訓)
碩才 ガクシヤウトイフコヽロナリ
不足言 イフニタラザル(左訓)
日域 ニチポン(異本左訓)
荒言 アレタルコトバ(左訓)
捺落 ヂゴクナリ(異本左訓)
大罪 オホキナルツミ(異本左訓)
先非 サキノヒガゴト(左訓)
罪苦 ツミ クルシミ(異本左訓)
懺ず クヰヨトナリ(左訓)
不吉 イマイマシキトイフコヽロナリ(異本左訓)
員外 サタノホカトイフコヽロナリ(異本左訓)
現当 コノヨ アノヨ(異本左訓)
存没 イキタルモノ シニタルモノ(左訓)
息災延命 ワザワヒヲヤメテ イノチヲノブ(異本左訓)
長命安楽 ナガキイノチヲヤスクタノシムトナリ(左訓)
非せんや ソシランヤトナリ(左訓)
解脱堅固 シヤウジヲハナルヽコトサカリナルナリ(左訓)
禅定堅固 ザゼンノサカリナルナリ(左訓)
持戒堅固 カイヲタモツコトノサカリナルナリ(左訓)
多聞堅固 シヤウギヤウヲオホクキヽタモツコトサカリナルナリ(左訓)
闘諍堅固 タタカヒアラソフコトノサカリナルナリ(左訓)
剃髪染衣 カミヲソリ コロモヲソムル(左訓)
楽行せず ネガヒオコナハズトナリ(左訓)
敬重 ウヤマヒヲモクスル(左訓)
悪言 アシキコトバ(左訓)
慢想 アナヅルオモヒ(左訓)
上察 カミトシテヲシハカリタマフベシ
一心… イチシンニモハラミダノミヤウガウヲネンジテ ギヤウヂユザグワニジセチノヒサシキチカキヲトハズネムネムニステザルヲバ コレヲシヤウヂヤウノゴフトナヅク カノブチノグワンニジユンズルガユヘニ モシライジユトウニヨルヲバスナハチナヅケテジヨゴフトス(左訓)
読経 キヤウヲヨム(異本左訓)
勤行 ツトメヲコナフ(左訓)
黒白 クロク シロシ(左訓)
商売 アキナヒ(左訓)
一文不知 モンジヒトツヲモシラザルヒトヽイフナリ(左訓)
深理 フカキコトハリ(異本左訓)
奥旨 フカキムネ(左訓)
配せば アテバ(異本左訓)
摂す オサム(異本左訓)
来縁 ミライノエン(左訓)
本懐 モトノオモヒ(異本左訓)
随逐 シタガヒテ(左訓)
影護 カゲノゴトクニマモリタマフ(異本左訓)
忽諸したてまつらんや イルカセニシタテマツランヤトナリ(左訓)
吉凶 ヨシアシ(異本左訓)
穢 ケガレ(異本左訓)
浄 キヨシ(異本左訓)
山林 ヤマハヤシ(左訓)
世務 ヨノイトナミ(左訓)
良日 ヨキヒ(左訓)
吉辰 ヨキトキ(左訓)
選択することなし エラビエラブコトナシト(左訓)
非礼 ヒガゴトナリ(異本左訓)
質直 スナホナルコトナリ(左訓)
禁遏せらるべきにあらず イマシメトドメラルベカラズトナリ(左訓)
説諌にあたはざる トキイサムルニアラズトナリ(異本左訓)
遺失せず タガヒウシナワレズトナリ(左訓)
曠劫流転のあひだ ムカシヨリロクダウニナガレメグルアヒダ(左訓)
多生沈没のほど オホクノアシヤウニサンヅニシヅミツルホド(左訓)
薄少 ウスクスクナシ(左訓)
皇恩 オホヤノヲン(左訓)
一渧 ヒトシタヽリノサケ(左訓)
一食 ヒトカハラケクヒモノ(左訓)
智目 チヱノメ(異本左訓)
行足 ギヤウノアシ(異本左訓)
重科 ヲモキトガ(左訓)
大罪 オホキナルツミ(左訓)
愁嘆 ウレエナゲク(異本左訓)
濫吹 ラウゼキノフルマヒナリ(異本左訓)
苦患 クルシミ ウレヘ(異本左訓)
追放 ヲイハナツ(左訓)
恥辱 ハヂ(左訓)
逃脱牢篭 ニゲノガレテマドウコトナリ
奸曲の至極 カダマシクマガレルコトノイタレルキハマリナリ(左訓)
幽途 カスカナルミチ(左訓)
方法 ミチ(異本左訓)
誠言 マコトノコトバ(異本左訓)
意巧 コヽロノタクミ(左訓)
失道 ミチヲウシナヘル(異本左訓)
指南 シルベ(左訓)
黒闇 クラキヤミ(左訓)
灯燭 トモシビ(左訓)
生処 ウマルヽトコロ(左訓)
愚人 ヲロカナルヒト(異本左訓)
山野 ヤマ ノ(左訓)
江河 エ カハ(左訓)
肉味 シシムラノアヂハヒ(左訓)
御推量 オンオシハカリアルベシトナリ(左訓)
色声香味 イロ コヱ カ アヂハヒ(異本左訓)
奉献 タテマツル(左訓)
散華焼香燃灯懸幡 ハナヲチラシ カウヲタキ トモシビヲトモシ ハタヲカク(左訓)
山禽野獣 ヤマノトリ ノノケダモノ(左訓)
浮言 ウカベルコトバ(左訓)
奸謀 カダマシキハカリゴト(左訓)
魚鳥 ウホ トリ(左訓)
妻子 メ コ(左訓)
耕作 タガヘシ ツクル(左訓)
鋤鍬 スキ クワ(左訓)
商沽 アキナヒ ウル(左訓)
朝夕 アシタ ユフベ(異本左訓)
深重超絶 フカクヲモクコエスグレテ(異本左訓)
昼夜 ヒル ヨル(左訓)
片時 カタトキ(異本左訓)
親子 オヤコ(異本左訓)
所為 ナストコロ(異本左訓)
自妻 ミヅカラノメ(左訓)
長夜 ナガキヨ(異本左訓)
牢獄 カタメタルヒトヤ(左訓)
厭離 イトヒハナルヽ(左訓)
銭貨 ゼニ タカラ(異本左訓)
供仏施僧 ブチニクシ ソウニホドコス(異本左訓)
欣求 ネガヒモトムル(左訓)
希有 マレナル(左訓)
今度 コノタビ(左訓)
高察 ヲシハカリアルベシトナリ(左訓)
不惜身命 シンミヤウヲヲシマズトナリ(左訓)
擬 ナゾラフ(異本左訓)
資糧 タスケ カテ(左訓)
活計 イノチイクルハカリゴト(左訓)
飲食衣服臥具湯薬 ノミクウ イシヤウ フストキノグワグ クスリ(異本左訓)
念阿… ワアミダブチサムマイヲネムジテシジヲモテタスケテヨロコブ(異本左訓)
慳貪 オシミムサボル(異本左訓)
随喜 シタガヒヨロコブ(異本左訓)
毀辱 ソシリハヂシム(左訓)
師資相承 シシヤウヨリアヒウケツタフル(異本左訓)
遇善知識… ゼンヂシキニアヒテホフヲキヽテヨクギヤウズトナリ(左訓)
仏語 ミコトバ(異本左訓)
面授 メンニアフテサヅクルナリ(異本左訓)
口決 クチヅカラツタフルナリ(異本左訓)
上古 トヲキイニシヘ(異本左訓)
末代 スエノヨ(異本左訓)
上求菩提下化衆生 カミボダイヲモトメ シモシユジヤウヲクヱスルナリ(異本左訓)
願作仏心度衆生心 ネガハクハブチニナラントオモフコヽロ シユジヤウヲドセントオモフコヽロナリ(異本左訓)
踊躍 オドリオドル(異本左訓)
大意 オホコヽロ(異本左訓)
真に マコトニ(左訓)
親疎 シタシキウトキ(左訓)
風聞 ホノカニキコユル(左訓)
勒 シロシテ(異本左訓)
貪求 ムサボリモトムルコト(異本左訓)
清心 キヨキコヽロ(異本左訓)
男女交懐 ヲトコヲンナマジハリイダク(左訓)
飲酒食肉 サケヲノミシヽムラヲクラフ(左訓)
亡じ ホロボシ(左訓)
円鏡 マドカナルカヾミ(異本左訓)
等同 ヒトシクオナジ(異本左訓)
悕求 ネガヒモトム(左訓)
自他 ワレ ヒト(異本左訓)
弘益 ヒロクリヤクス(異本左訓)
囂塵を絶離するにあらずは カマビスシクケガラハシキコトヲタチハナルルニアラズハトイフナリ(左訓)
剣戟 ツルギホコ(左訓)
田畠 タ ハタケ(異本左訓)
屠沽 ホフリ ウル(左訓)
示誨 シメシヲシフル(左訓)
遮 サイギル(異本左訓)
末弟 スヱノデシ(異本左訓)
竪横 タタサマ ヨコサマ(左訓)
哀憐 アハレミアハレム(異本左訓)
淵源 フカキミナモト(左訓)
憲政の無偏 カシコキッマツリゴトノヘンバナキコト(左訓)
巨益 オホキナルヤク(異本左訓)