一六(256)、諸起請文
▲諸起請文第十六 ▽三通あり
・0257没後起請文
△没後起請文一
起請 没後二箇条の事。
一 葬家追善の事。
没後起請文一
○起請 没後二箇条事。
◇一 葬家追善事。
右葬家の次第、 すこぶるその存ずる旨あり。 篭居の志あらん遺弟・同法ら、 まつたく一処に群会すべからざるものなり。 そのゆゑいかんとなれば、 また和合するに似たりといへども、 集まればすなはち闘諍を起すといふ。 この言誠かな、 はなはだ謹慎すべし。 もししからばわが同法ら、 わが没後においてはおのおの住しおのおの居して会せざらんにはしかじ。 闘諍の基、 集会によるがゆゑなり。 羨はくはわが弟子・同法ら、 おのおの閑かに本在の草庵に住して、 ねんごろにわが新生の蓮台を祈るべし。 ゆめゆめ一所に群居して、 諍論を致し忿怒を起すことなかれ。 知恩の志あらん人、 毫末も違すべからざるものなり。
◇右葬家之次第、頗ル有リ↢其ノ存ズル旨↡。有ラン↢篭居之志↡遺弟・同法等、全ク不↠可↣群↢会ス一処ニ↡者也。其ノ故何レバ者、雖↣復似タリト↢和合スルニ↡、集レバ則起スト云↢闘諍ヲ↡。此ノ言誠カナ哉、甚可↢謹慎ス↡。若然バ者我ガ同法等、於テハ↢我ガ没後ニ↡各住シ各居シテ不↠如カ↠不ランニハ↠会セ。闘諍之基、由ガ↢集会ニ↡之故ナリ也。羨クハ我ガ弟子・同法等、各ノ閑ニ住シテ↢本在之草庵ニ↡、苦ニ可↠祈ル↢我ガ新生之蓮台ヲ↡。努々莫レ↧群↢居シテ一所ニ↡、致↢諍論ヲ↡起コト↦忿怒ヲ↥。有ン↢知恩ノ志↡之人、毫末モ不↠可↠違ス者也。
兼ねてまた追善の次第、 また深く存ずる旨あり。 図仏・写経等の善、 浴室・檀布等の行、 一向にこれを修すべからず。 もし報恩の志あらん人、 ただ一向に念仏の行を修すべし。 平生の時、 すでに自行化他につきて、 ただ念仏の一行に局る。 没故の後、 あにむしろ報恩追修のために、 自余の修善を雑へんや。 ただし念仏の行においてはなほ用心あるべし。
◇兼テ又追善之次第、亦深ク有リ↢存ズル旨↡。図仏・写経等ノ善、浴室・檀布等ノ行、一向ニ不↠可↠修↠之ヲ。若有ン↢報恩ノ志↡之人、唯一向ニ可シ↠修↢念仏之行ヲ↡。平生ノ之時、既就テ↢自行化他ニ↡、唯局ル↢念仏ノ之一行ニ↡。没故之後、豈寧ロ為ニ↢報恩追修ノ↡、雑ヘン↢自余ノ之修善ヲ↡哉。但シ於ハ↢念仏ノ行ニ↡尚可↠有ル↢用心↡。
あるいは眼閉づる後、 一昼夜即時よりこれを始め、 あるいは気絶えて後、 七昼夜即日よりこれを始む。 誠を標し心を至しておのおの念仏すべし。 中陰の間、 不断に念仏すれば、 ややもすれば懈倦の咎を生じ、 還りて勇進の行を闕かん。 およそ没後の次第、 みな真実心を用ゐて虚仮の行を棄つべし。 志あらん倫、 遺言に乖くことなからんのみ。
◇或ハ眼閉之後、一昼夜自リ↢即時↡始メ↠之ヲ、或ハ気絶テ之後、七昼夜自リ↢即日↡始↠之。標シ↠誠至0258シテ↠心ヲ各可シ↢念仏ス。中陰之間、不断ニ念仏スレバ、動スレバ生ジ↢懈倦之咎ヲ↡、還テ闕カン↢勇進之行ヲ↡。凡ソ没後ノ之次第、皆用テ↢真実心ヲ↡可↠棄ツ↢虚仮ノ行↡。有ン↠志之倫、勿↠乖コト↢遺言↡而已。
一 房舎・資具・衣鉢・遺物等を諍論すべからざる事。
一 不↠可↣諍↢論房舎・資具・衣鉢・遺物等↡事。
右古に聞き今を見るに、 人の没後において多く喧嘩の事あり。 そもそもこれ遺塵を諍ふによりてなり。 しかるあひだ、 あるいは在家の兄弟はたちまちに六親の昵を忘れ、 あるいは釈門の法孫はにはかに一器の志を変ず。 この事を見聞するごとに、 あへて安忍するに勝へず。 しかればすなはちわが弟子・同法、 志あらん倫、 あきらかにこの趣を察して、 わが没後において諍論を起すことなかれ。
右聞キ↠古ニ見ルニ↠今ヲ、於↢人ノ没後ニ↡多ク有リ↢喧嘩ノ之事↡。抑是由テ↠諍フニ↢遺塵ヲ↡也。然ル間、或ハ在家之兄弟ハ忽ニ忘レ↢六親之昵ヲ↡、或ハ釈門ノ之法孫ハ俄ニ変ズ↢一器ノ之志ヲ↡。毎ニ↣見↢聞スル此ノ事ヲ↡、敢テ不↠勝ヘ↢安忍スルニ↡。然バ則我ガ弟子・同法、有ン↠志之倫、明カニ察シテ↢此ノ趣ヲ↡、於↢我ガ没後ニ↡莫レ↠起コト↢諍論ヲ↡。
但弟子多しといへども、 入室のものはわづかに七人なり。 いはゆる*信空・感西・澄空・円親・長尊・感聖・良清なり。 これらの諸人、 かしこにおいては世・出世間の恩ふかし、 われにおいて至順・至孝の至篤のものなり、 たれの人か二世の恩徳を忘れて、 一旦の諍論を致さんや。
但弟子雖↠多シト、入室ノ者ハ僅ニ七人也。所謂信空・感西・澄空・円親・長尊・感聖・良清也。此等ノ諸人、於テハ↠彼ニ世・出世間之恩深シ、於↠我ニ至順・至孝之至篤者也。誰ノ人カ忘テ↢二世之恩徳ヲ↡、致ンヤ↢一旦之諍論ヲ↡乎。
このなか信空大徳は、 これ多年入室の弟子なり。 その志たがひにして誠あり、 懇志を表さんがためにいささか遺属あり。 いはく黒谷の本房 寝殿雑舎、 白川の本房 寝殿雑舎、 坂下の園一所、 洛中の地一所、 この外本尊 三尺弥陀立像、 定朝、 聖教 摺写六十巻等、 これを付属しおはりぬ その状別紙にあり。
此ノ中信空大徳ハ者、是多年入室之弟子也。其ノ志互ニシテ而有リ↠誠、為ニ↠表ガ↢懇志ヲ↡聊有↢遺属↡。謂ク黒谷ノ本房 寝殿雑舎、白川ノ本房 寝殿雑舎、坂下ノ園一所、洛中ノ地一所、此ノ外本尊 三尺弥陀立像、定朝、聖教 摺写六十巻等、付↢属シ之ヲ↡了ヌ 其ノ状在リ↢別紙↡。
感西大徳は、 またこれ年来常随給仕の弟子なり。 その思ひあひともにして浅からず、 給仕の恩を酬いんがために、 またいささか付属するところあり。 いはく吉水のなかの房 もと西山の広谷にあり、 高畠の地一所 ただし売買の時半直これを与ふ、 これを付属しおはりぬ。
感西大徳ハ、亦是年来常随給仕之弟子也。其ノ思ヒ相共ニシテ而不↠浅カラ、為↠酬ガ↢給仕之恩ヲ↡、又聊有リ↠所0259↢付属スル↡。謂ク吉水ノ中ノ房 本在リ↢西山広谷↡、高畠ノ地一所 但売買之時半直与↠之、付↢属シ之ヲ↡了ヌ。
吉水の東の新房はこれ円親大徳の所領なり。 これ本主なるがゆゑに六条の尼御前その養子となして付属す。 ならびに六条の敷地も、 手みづから付属状を書きてこれを与へおはりぬ。 しかりといへども源空一期の間は、 進止すべきの由、 かの状に載せらる。 よりていまかさねて付属するところなり その状別紙にあり。
吉水ノ東ノ新房ハ是円親大徳ノ所領也。是本主故六条ノ尼御前為シテ↢其ノ養子ト↡付属ス。并ニ六条ノ敷地モ、手自ラ書テ↢付属状ヲ↡与↠之ヲ了ヌ。雖↠然源空一期之間ハ、可キノ↢進止↡之由、被ル↠載↢彼ノ状ニ↡。仍テ今重テ所↢付属スル↡也 其状在↢別紙↡。
長尊大徳は、 故如行が死去のきざみ、 覚悟房ならびに付帳一口沙汰しこれを与へおはりぬ。
長尊大徳ハ者、故如行死去ノ之刻、覚悟房并ニ付帳一口沙汰シ与↠之ヲ了。
また白川の辺において一屋を買ひまうけするのきざみ 価直これを与へおはりぬ、 またこの吉水の西の旧房は、 その本主顕然なり、 人みな知るところなり、 分配するにあたはざるものなり。
又於↢白川ノ辺↡買↢儲スルノ一屋ヲ↡之刻 価直与ヘ↠之了、又此ノ吉水ノ西ノ旧房ハ、其ノ本主顕然也、人皆所↠知也、不↠能↢分配スルニ↡者也。
持仏堂 もと大谷にあり、 西の坊の尼御前、 西尊成乗房の手よりこれを乞ふ、 壊ち渡すところなり。
持仏堂 本在↢大谷↡、西ノ坊ノ尼御前、自リ↢西尊成乗房之手↡乞↠之、所↢壊チ渡ス↡也。
この外雑舎一両、 潤色を加ふといへども、 みな西本房につけておはりぬ、 先例一にあらず、 白川の房に経回せん時、 廊ならびに門等において修造を加ふといへども、 亭主につけて去りおはりぬ。 嵯峨の辺に経回せん時、 新しく荘厳を添へ新しく築垣を構ふといへども、 また家主につけて去りおはりぬ。 この吉水の西の房、 またかくのごとし。 旧きを治し新しきを構ふといへども、 みな西の房の本主に付しおはりぬ。 左右にあたはざるものなり。
此ノ外雑舎一両、雖↠加↢潤色ヲ↡、皆付テ↢西本房ニ↡了ヌ。先例非↠一ニ、経↢回セン白川ノ房ニ↡之時、雖↧於テ↢廊并ニ門等ニ↡加ト↦修造ヲ↥、付ケテ↢亭主ニ↡而去リ了ヌ。経↢回セン嵯峨ノ辺ニ↡之時、雖↧新ク添ヘ↢荘厳ヲ↡新構ト↦築垣ヲ↥、亦付ケテ↢家主ニ↡而去リ了ヌ。此ノ吉水ノ西ノ房、亦復如↠是。雖↢治↠旧ヲ構ト↟新ヲ、皆付シ↢西ノ房ノ本主ニ↡了ヌ。不↠能↢左右ニ↡者也。
この外には房舎なく、 また領地なし、 自余の諸人に付属するにあたはざるものなり。
此ノ外ニハ無ク↢房舎↡、亦無シ↢領地↡、不↠能↣付↢属スルニ自余ノ諸人ニ↡者也。
およそつらつら事の情を按ずるに、 これらの諸人は、 みなこれ年来の同室にして、 よくその心性を知る。 あるいは内に道心を蓄へ外に忍辱を行じ、 あるいは内に道理を懐きて外に僻見を忘れ、 生前すでに至順の心あり、 没後あに反逆の事あらんや。 しかればすなはちたとひかくのごときの遺誡の詞なくとも、 向後の事の不審さらにもつてあるべからざるものをや。
凡ソ倩ツラ按ニ↢事ノ情ヲ↡、此等ノ諸人ハ者、皆是年来ノ同室ニシテ、能知ル↢其心性ヲ↡。或ハ内ニ蓄ヘ↢道心ヲ↡外ニ行↢忍辱ヲ↡、或ハ内ニ懐テ↢道理ヲ↡外ニ忘レ↢僻見ヲ↡、生前既有↢至順ノ之心↡、没後豈有ンヤ↢反逆之事↡哉。然バ則縦ヒ無トモ↢如ノ↠此遺誡0260之詞↡、向後之事不審更以不↠可↠有者ヲヤ哉。
しかりといへども人の心時に随ひて定まらず、 好悪またもつて量りがたきものなり。 未来の法ひそかにもつて知りがたし。 これによりていまこれらの事を鑑みて、 委曲の状を注ぎてにはかにもつて遺誡するところなり。
雖↠然人ノ心随テ↠時ニ而不↠定ラ、好悪亦以叵↠量リ者也。未来ノ法暗ニ以難シ↠知リ。因テ↠之今鑑テ↢此等ノ事ヲ↡、注テ↢委曲之状ヲ↡慥ニ以所↢遺誡スル↡也。
もしこれらの衆中において、 たがひに競望の心を発して、 あるいは年来と称し、 あるいは親族と称し、 あるいは謀書を構へてわれは付属を得たりといひ、 あるいは虚言を構へてわれは約諾を蒙るといひ、 あるいは六人語らひ合ひていま一人を乖き、 あるいは三人語らひ合ひていま四人を乖き、 乃至その半あひ分ちて諍論を両方に起し、 乃至一人群に抜でて所分を一方に押さふ。 かくのごときらの事、 あるいは自心よりして起り、 あるいは人の勧めによりて起らん。 かくのごときの未然の事、 みなもつて堅く禁制するところなり。
若シ於↢此等ノ衆中ニ↡、互ニ発シテ↢競望之心ヲ↡、或ハ称↢年来ト↡、或ハ称シ↢親族ト↡、或ハ構テ↢謀書ヲ↡我ハ謂ヒ↠得タリト↢付属ヲ↡、或構テ↢虚言ヲ↡謂ヒ我ハ蒙ルト↢約諾ヲ↡、或ハ六人語ヒ合テ乖キ↢今一人ヲ↡、或ハ三人語ヒ合テ乖キ↢今四人ヲ↡、乃至其ノ半相分テ起シ↢諍論ヲ於両方ニ↡、乃至一人抜デヽ↠群ニ押サフ↢所分ヲ於一方ニ↡。如↠此等事、或ハ従↢自心↡而起リ、或ハ由テ↢人ノ勧ニ↡而起ラン。如ノ↠是未然之事、皆以堅ク所↢禁制スル↡也。
庶幾はくくはわが弟子・同法たらん人、 この禁遏を毀るべからず。 もしこの遺誡を乖きて、 濫妨を至さん倫出で来らば、 ただちに門弟にあるべからず。 すでに門弟にあらざれば、 これ何者ぞや。 よろしく怨敵といふべし、 また盗人といふべし、 親近するべからざるものなり。
庶幾クハ我ガ為ラン↢弟子・同法↡之人、不↠可↠毀ル↢此ノ禁遏ヲ↡。若シ乖テ↢此ノ遺誡ヲ↡、至ン↢濫妨ヲ↡之倫出来ラバ、直可↠非↢門弟ニ↡。既ニ非↢門弟ニ↡者、是何者ゾヤ乎。宣↠云↠怨敵ト↡、亦可↠云↢盗人ト↡、不↠可↢親近↡者也。
およそ付属するところあるは、 みな自筆をもつてこれを書す。 もし他筆をもつて証文とする者、 盗犯に処すべし、 人面の畜生といふべし。 この外年来にあらずといへども、 当時同法の者の三人、 いはゆる遵西・直念・欣西なり。 その証人となしてことさらに註し列ぬるところなり。
凡ソ有ルハ↠所↢付属スル↡、皆以↢自筆ヲ↡書↠之ヲ。若以↢他筆↡而為↢証文ト↡者、可シ↠処ス↢盗犯ニ↡、可↠云↢人面之畜生ト↡。此ノ外雖↠非ト↢年来ニ↡、当時同法ノ者ノ三人、所謂遵西・直念・欣西也。為シテ↢其ノ証人ト↡故ニ所↢註シ列↡也。
また西より来り東より来り法門を問ふものあり、 西に去り東に去り行方を知らず、 朝に来り暮に往く人はなはだ多し。 誠にもつていふに足らざるものなり。 なほなほわが没後において報恩の志あらん人、 固くこの遺誡の旨を守りて、 毫末といふといへども遺失するべからず。
又西ヨリ来リ東ヨリ来リ有↠問↢法門↡、西ニ去リ東ニ去リ不↠知↢行方ヲ↡、朝ニ来リ暮ニ往之人甚多シ。誠ニ以テ不↠足↠言フニ者也。尚々於↢我ガ没後↡有ン↢報恩之志↡人、固ク守テ↢此ノ遺誡之旨ヲ↡、雖↠云ト↢毫末ト↡不↠可↢遺失ス↡矣。
以前の二箇条の起請かくのごとし。 もしそれ累劫の縁を忘れざらんものは、 この遺誡を忘れざるべし。 また半偈の功を厚くせんものは、 すこぶるこの遺言を厚くすべし。 これをもつて報恩となすべし、 他事あるべからざるなり。 羨はくはわが同法・遺弟等、 わが没後において、 たがひに水と水とのごとくしてともに石と石とのごとくすべからざるものなり。 あなかしこあなかしこ。 ゆめゆめあへて遺失することなかれ。 よりてことさらにもつて遺言す。
以0261前二箇条ノ起請如↠右。若夫不ン↠忘↢累劫ノ之縁ヲ↡者ハ、可シ↠不ル↠忘↢此ノ遺誡ヲ↡。亦厚クセン↢半偈之功ヲ↡者ハ、頗ル可シ↠厚ス↢此ノ遺言ヲ↡。以↠此可↠為↢報恩ト↡、不↠可↠有↢他事↡也。羨クハ我ガ同法・遺弟等、於↢我ガ没後↡、互ニ如シテ↢水ト与ノ↟水共ニ不↠可↠如クス↢石ト与ノ↟石者也。穴賢穴賢。努努敢テ莫レ↢遺失スルコト↡。仍テ故ニ以遺言ス而已。
建久九年四月八日 釈源空 在御判
建久九年四月八日 釈源空 在御判
・七箇条起請文
△七箇条起請文二
あまねく予が門人と号する念仏の上人等に告ぐ。
○普ク告グ↧号スル↢豫ガ門人ト↡之念仏ノ上人等ニ↥。
一 いまだ一句の文章をも窺はずして真言・止観を破したてまつり、 余の仏・菩薩を謗ずることを停止すべき事。
◇一 可↫停↪止未↠窺↢一句ノ文章ヲモ↡奉リ↠破↢真言・止観ヲ↡、謗ズルコトヲ↩余ノ仏・菩薩ヲ↨事。
右立破の道に至りては、 これ学匠の経るところなり、 愚人の境界にあらず。 しかのみならず誹謗正法はすでに弥陀の本願に除けり。 その報まさに那落に堕すべし。 あに痴暗の至にあらずや。
◇右至テハ↢立破ノ道ニ↡者、是学匠之所↠経ル也、非↢愚人ノ之境界ニ↡矣。加之ズ誹謗正法ハ既除リ↢弥陀ノ本願ニ↡。其ノ報当↠堕↢那落ニ↡。豈非ズト↢痴暗ノ之至リニ↡哉。
一 無智の身をもつて有智の人に対し、 別行の輩に遇ひて好みて諍論を致ことを停止すべき事。
◇一 可↫停↪止以テ↢無智ノ身↡対シ↢有智ノ人ニ↡、遇↢別行ノ輩ニ↡好テ致コトヲ↩諍論↨事。
右論義は、 これ智者の有つなり。 さらに愚人の分にあらず。 また諍論の処にはもろもろの煩悩起る。 智者はこれを遠離すること百由旬なり。 いはんや一向念仏の行人においてをや。
◇右論義ハ者、是智者之有也。更ニ非↢愚人ノ之分ニ↡矣。又諍論ノ之処ニハ諸ノ煩悩起ル。智者ハ遠↢離コト之ヲ↡百由旬也。況ヤ於ヲヤ↢一向念仏ノ行人ニ↡乎。
一 別行の人に対して、 愚痴偏執の心をもつて本業を毀て置くべしと称して、 あながちにこれを嫌喧することを停止すべき事。
◇一0262 可↫停↪止対シテ↢別行ノ人ニ↡、以↢愚痴偏執ノ心ヲ↡称シテ↠当ト↣毀↢置ク本業ヲ↡、強ニ嫌↩喧コトヲ之ヲ↨事。
右修道の習、 ただおのおの自行を勤めてあへて余行を遮せず。 ¬西方要決¼ (意) にいはく、 「別解・別行のものには総じて敬心を起すべし。 もし軽慢を生ぜば、 罪を得ること窮なし」 と。 云々 なんぞこの制を背かんや。 しかのみならず善導和尚これを大呵したまふ。 いまだ祖師の誡を知らず、 愚闇のいよいよはなはだしきなり。
◇右修道ノ之習ヒ、只各ヲノ勤テ↢自行ヲ↡敢テ不↠遮↢余行ヲ↡。¬西方要決ニ¼云、「別解・別行ノ者ニハ総ジテ起スベシ↢敬心ヲ↡。若シ生ゼバ↢軽慢ヲ↡、得コト↠罪ヲ無ト↠窮。」云云 何ゾ背ン↢此ノ制ヲ↡哉。加之ズ善導和尚大呵シタマフ↠之ヲ。未↠知↢祖師之誡ヲ↡、愚闇ノ之弥イヨ甚キ也。
一 念仏門において、 戒行なしと号してもつぱら婬酒食肉を勧して、 たまたま律儀を守るものをば雑行の人と名づけて、 弥陀の本願を憑ものは、 造罪を恐るることなかれと説くことを停止すべき事。
◇一 可↧停↦止於テ↢念仏門ニ↡、号シテ↠無シト↢戒行↡専ラ勧シテ↢婬酒食肉ヲ↡、適タマ守ル↢律儀ヲ↡者ヲバ名テ↢雑行ノ人ト↡、憑ム↢弥陀ノ本願↡者ハ、説コトヲ↞勿レト↠恐コト↢造罪ヲ↡事。
右戒はこれ仏法の大地なり、 衆行まちまちといへども同じくこれをもつぱらにす。 これをもつて善導和尚は、 目を挙げて女人を見ず。 この行状の趣、 本律の制にも過ぎたり。 浄業の類これに順ずるにあらざれば、 総じては如来の遺教を失し、 別しては祖師の旧跡に背けり。 かたがた拠るところなきものか。
◇右戒ハ是仏法ノ大地也、衆行雖↠区同ク専ニス↠之ヲ。是以善導和尚ハ、挙テ↠目ヲ不↠見↢女人ヲ↡。此ノ行状之趣、過タリ↢本律ノ制ニモ↡。浄業ノ之類不レバ↠順↠之ニ者、総ジテハ失シ↢如来之遺教ヲ↡、別シテハ背ケリ↢祖師之旧跡ニ↡。旁ガタ無↠拠者哉。
一 いまだ是非を辨ぜざる痴人、 聖教を離れ師説にあらずして、 ほしいままにわたくしの義を述べみだりに諍論を企てて、 智者に笑はる、 愚人を迷乱することを停止すべき事。
◇一 可↫停↪止未ル↠辨↢是非ヲ↡痴人、離レ↢聖教ヲ↡非ズシテ↢師説ニ↡、恣ニ述ベ↢私ノ義ヲ↡妄リニ企テ↢諍論ヲ↡、被↠笑ハ↢智者ニ↡迷↩乱スルコトヲ愚人↨事。
右無智の大天、 この朝に再誕してみだりに邪義を述ぶること、 すでに九十六種の異道に同ず。 もつともこれを悲しむべし。
◇右無智ノ大天、此ノ朝ニ再誕シテ猥リニ述コト↢邪義ヲ↡、既ニ同ズ↢九十六種ノ異道ニ↡。尤可↠悲ム↠之。
一 痴鈍の身をもつてことに唱導を好み、 正法を知らずして種々の邪法を説きて、 無智の道俗を教化することを停止すべき事。
◇一 可↫停↪止以↢痴鈍ノ身ヲ↡殊ニ好ミ↢唱導ヲ↡、不↠知↢正法ヲ↡説テ↢種種ノ邪法ヲ↡、教↩化コトヲ無智0263ノ道俗ヲ↨事。
右解なくして師となることは、 これ ¬梵網¼ の制戒なり。 愚闇の類おのが才を顕さんと欲ひ、 浄土の教をもつて芸能となし、 名利を貪り檀越を望み、 ほしいままに自由の妄説を成じて、 世間の人を誑惑す。 誑報の過ことに重し。 これむしろ国賊にあらずや。
◇右無シテ↠解作コトハ↠師ト者、是¬梵網¼之制戒也。愚闇之類欲↠顕ント↢己ガ才ヲ↡、以↢浄土ノ教ヲ↡為↢芸能ト↡、貪リ↢名利ヲ↡望ミ↢檀越ヲ↡、恣ニ成ジテ↢自由ノ之妄説ヲ↡、誑↢惑ス世間ノ人ヲ↡。誑報ノ之過殊ニ重シ。是寧ロ非ズヤ↢国賊ニ↡乎。
一 みづから仏法にあらざる邪法を説きて正法となす、 偽りて師範の説なりと号することを停止すべき事。
◇一 可↫停↪止自説テ↧非ル↢仏法ニ↡邪法ヲ↥為↢正法ト↡、偽テ号コトヲ↩師範ノ説ナリト↨事。
右おのおの一人の説といへども、 積もるところ予が一身の衆悪たり。 弥陀の教文を汚し、 師匠の悪名を揚ぐ、 不善のはなはだしきことこれに過ぎたるはなきものなり。
◇右各雖↢一人ノ説ト↡、所↠積ル為リ↢豫ガ一身ノ衆悪↡。汚シ↢弥陀ノ教文ヲ↡、揚グ↢師匠之悪名ヲ↡、不善ノ之甚コト無キ↠過タルハ↠之者也。
以前の七箇条甄録かくのごとし。 一分も教文を学せん弟子らは、 すこぶる旨趣を知れ。 年来の間念仏を修するといへども、 聖教に随順してあへて人の心に逆へず、 世の聴を驚かすことなし。 これによりて今に十箇年無為にして、 日月を渉る。 しかるに近年に至りてこの十箇年より以後、 無智不善の輩時々到来す。 ただ弥陀の浄業を失するのみにあらず、 また釈迦の遺法を汚穢す。 なんぞ炳誡を加へざらんや。
◇以前ノ七箇条甄録如シ↠斯。一分モ学セン↢教文ヲ↡弟子等ハ者、頗ル知レ↢旨趣ヲ↡。年来ノ之間雖↠修↢念仏ヲ↡、随↢順シテ聖教ニ↡敢テ不↠逆ヘ↢人ノ心ニ↡、無シ↠驚コト↢世ノ聴ヲ↡。因テ↠茲ニ于↠今ニ十箇年無為ニシテ、渉ル↢日月ヲ↡。而ニ至テ↢近年ニ↡此ノ十箇年ヨリ以後、無智不善ノ輩時時到来ス。非ズ↣啻失ノミニ↢弥陀ノ浄業ヲ↡、又汚↢穢ス釈迦之遺法ヲ↡。何ゾ不ンヤ↠加↢炳誡ヲ↡乎。
この七箇条の外、 不当の聞巨細の事ら多しといへども、 つぶさに註述しがたし。 総じてかくのごときらの無方は、 慎みて犯すべからず。 このうへなほ制法に背く輩は、 これ予が門人にあらず、 魔の眷属なり。 さらに草菴に来るべからず。
◇此ノ七箇条ノ外、不当之聞ヘ巨細ノ事等雖↠多、具ニ難シ↢註述シ↡。総ジテ如↠此等ノ之無方ハ、慎テ不↠可↠犯ス。此ノ上猶背↢制法ニ↡之輩ハ者、非ズ↢是豫ガ門人ニ↡、魔ノ眷属也。更ニ不↠可↠来↢草菴ニ↡。
自今以後、 おのおの聞き及ぶに随ひて、 かならずこれを余人に触れらるるべし、 あひ伴ふことなかれ。 もししからざれば、 これ同じ意の人なり。 かの過作すもののごとし、 同法を瞋り師匠を恨むことあたはざれ。 自業自得の理、 ただおのが心にあるのみ。
◇自今以後、各ノ随テ↢聞及ニ↡、必可↠被↠触↢之ヲ余人ニ↡、勿レ↢相伴コト↡。若シ不↠然者、是同意ノ人也0264。彼ノ過如シ↢作ス者ノ↡、不レ↠能↧瞋リ↢同法ヲ↡恨コト↦師匠ヲ↥。自業自得之理、只在↢己ガ心ニ↡而已。
このゆゑに今日西方の行人を催して、 一室に集めて告命す。 わづかに風聞ありといへどもにはかにたれの人と知らざれば、 沙汰するに拠りどころを失ふ、 愁嘆して年序を送る、 黙止すべきにあらざれば、 まづ力の及ぶに随ひて、 禁遏の計ごとを回らすところなり。 よりてその趣を録して門葉らに示す状、 件のごとし。
◇是故今日催シテ↢西方ノ行人↡、集メテ↢一室ニ↡告命ス。僅ニ雖↠有↢風聞↡慥ニ不レバ↠知↢誰ノ人↡、失フ↠拠ヲ↢于沙汰スルニ↡、愁嘆シテ送ル↢年序ヲ↡、非レバ↠可キニ↢黙止ス↡、先ヅ随テ↢力ノ及ブニ↡、所↠回ラス↢禁遏ノ之計ゴトヲ↡也。仍録シテ↢其ノ趣↡示ス↢門葉等ニ↡之状、如↠件。
元久元年 甲午 十一月七日 沙門源空 御判
◇元久元年 甲午 十一月七日 沙門源空 御判
信空 法連坊 感聖 定生房 尊西 相縁房 証空 善恵房 源智 勢観房
行西 聖蓮 見仏 大和入道 道亘 玄教房 道西 敬光房 寂西 真阿弥陀仏
宗慶 西縁 兵庫入道 親蓮 性善房 幸西 成覚房 住蓮 西意 善寂房
仏心 源蓮 信願房 源雲 欣西 唯願房 生阿弥陀仏 安照
如進 導空 昌西 道也 遵西 安楽房 義蓮 安蓮 如願房 道源
証阿弥陀仏 念西 行首 尊浄 帰西 行空 法本房 道感
西観 尊成 禅忍 学西 玄耀 澄西 大阿 西住
実光 覚妙 西入 円智 導衆 心性房 尊仏 蓮恵 証法房
源海 安西 教芳 詣西 祥円 辨西 空仁 示蓮
念生 尊蓮 尊忍 参西 仰善 忍西 住阿弥陀仏
鏡西 仙空 惟西 好西 祥寂 戒心 顕願 仏真
西尊 良信 綽空 善蓮 蓮生 法力 熊谷 阿日 静西
度阿弥陀仏 成願 覚信 尊性房 自阿弥陀仏 願西
◇信空 法連坊 感聖 定生房 尊西 相縁房 証空 善恵房 源智 勢観房
行西 聖蓮 見仏 大和入道 道亘 玄教房 道西 敬光房 寂西 真阿弥陀仏
宗慶 西縁 兵庫入道 親蓮 性善房 幸西 成覚房 住蓮 西意 善寂房
仏心 源蓮 信願房 源雲 欣西 唯願房 生阿弥陀仏 安照
如進 導空 昌西 道也 遵西 安楽房 義蓮 安蓮 如願房 道源
証阿弥陀仏 念西 行首 尊浄 帰西 行空 法本房 道感
西観 尊成 禅忍 学西 玄耀 澄西 大阿 西住
実光 覚妙 西入 円智 導衆 心性房 尊仏 蓮恵 証法房
源海 安西 教芳 詣西 祥円 辨西 空仁 示蓮
念0265生 尊蓮 尊忍 参西 仰善 忍西 住阿弥陀仏
鏡西 仙空 惟西 好西 祥寂 戒心 顕願 仏真
西尊 良信 綽空 善蓮 蓮生 法力 熊谷 阿日 静西
度阿弥陀仏 成願 覚信 尊性房 自阿弥陀仏 願西
わたくしにいはく、 執筆法連坊なり。 右大辨行隆の息なり
私云、執筆法連坊也。右大辨行隆息也
・送山門起請文
△山門に送る起請文三
送↢山門ニ↡起請文三
叡山黒谷の沙門源空敬して白さく。
当寺住持の三宝護法善神の御宝前。
叡山黒谷沙門源空敬白。
当寺住持ノ三宝護法善神ノ御宝前。
右源空壮年の昔日は、 ほぼ三観の戸を窺ひ、 衰老の今の時は、 ひとへに九品の境を望む。 これまた先賢の古跡、 さらに下愚の所顕にあらず。 しかるを近日の風聞にいはく、 源空ひとへに念仏の教を勧めて余の教法を謗ずと。 諸宗これによりて陵夷し、 諸行これによりて滅亡すと 云々。
右源空壮年ノ之昔日ハ、粗窺ヒ↢三観ノ戸ヲ↡、衰老ノ之今ノ時ハ、偏ニ望ム↢九品ノ境ヲ↡。是又先賢ノ之古跡、更ニ非ズ↢下愚ノ之所顕ニ↡。然ヲ近日ノ風聞ニ云、源空偏ニ勧テ↢念仏ノ教ヲ↡謗ズト↢余ノ教法ヲ↡。諸宗依テ↠此ニ陵夷シ、諸行依テ↠之ニ滅亡スト 云云。
この旨を伝へ聞くに、 心神驚怖す。 つひに事山門に聞こへ、 議衆徒に及べり。 炳誡を加ふべきの由、 貫首に申達せられおはりぬ。 この条、 一つには衆勘を恐れ、 一つには衆恩を喜ぶ。 恐るるところは、 貧道の身をもつてたちまちに山洛の禁に及び、 悦ぶは、 謗法の名を銷して永く花夷の誹り止まんことを。 もし衆徒の糾断にあらずは、 いかでか貧道の愁歎を慰めんか。
伝↢聞クニ此ノ旨ヲ↡、心神驚怖ス。終ニ事聞ヘ↢于山門ニ↡、議及ベリ↢于衆徒ニ↡。可キノ↠加↢炳誡ヲ↡之由、被レ↠申↢達セ貫首ニ↡畢ヌ。此ノ条、一ニハ者恐レ↢衆勘ヲ↡、一ニハ者喜ブ↢衆恩ヲ↡。所ハ↠恐者、以テ↢貧道ノ之身ヲ↡忽ニ及↢山洛之禁ニ↡、所ハ↠悦0266者、銷テ↢謗法之名ヲ↡永止ンコトヲ↢花夷之誹↡。若非ズハ↢衆徒ノ糾断ニ↡者、争カ慰メン↢貧道之愁歎ヲ↡哉。
およそ弥陀の本願 (大経巻上) にいはく、 「ただ五逆と誹謗正法とを除く」 と。 云々 念仏を勧むる徒、 いかでか正法を謗ぜん。 恵心の ¬要集¼ (巻上) にいはく、 「一実の道を聞きて普賢の願海に入る」 と。 云々 浄土を欣はん類、 あに妙法を捨てんや。 なかんづく源空念仏の余暇に当りて天台の教釈を披き、 信心を玉泉の流に凝らし、 渇仰を銀池の風に致す。 旧執なほ存ず、 本心なんぞ忘れん。 かつは冥鑑を憑み、 かつは衆察を仰ぐ。
凡ソ弥陀ノ本願ニ云、「唯除クト↢五逆ト誹謗正法トヲ↡。」云云 勧ル↢念仏ヲ↡之徒、争カ謗ゼン↢正法ヲ↡。恵心ノ¬要集¼云、「聞テ↢一実ノ道ヲ↡入ルト↢普賢ノ願海ニ↡。」云云 欣ン↢浄土ヲ↡之類、豈捨ンヤ↢妙法ヲ↡哉。就↠中源空当テ↢念仏ノ余暇ニ↡披キ↢天臺ノ教釈ヲ↡、凝シ↢信心ヲ於玉泉ノ之流ニ↡、致↢渇仰ヲ於銀池之風ニ↡。旧執猶存ズ、本心何ゾ忘ン。且ハ憑ミ↢冥鑑ヲ↡、且ハ仰グ↢衆察ヲ↡。
ただし老後遁世の輩、 愚昧出家の類、 あるいは草庵に入りて頭を剃り、 あるいは松窓に臨みて志をいふ次に、 極楽をもつて所期となすべし、 念仏をもつて所行となすべきの由、 時々もつて諷諌す。 これすなはち齢衰へて練行にあたはず、 性鈍にして研精に堪へざるのあひだ、 しばらく難解難入の門を置きて、 試に易往易修の道を示す。 仏智なほ方便を設けて、 凡慮あに斟酌なからんや。 あへて教の是非を存ずるにあらず、 ただひとへに機の堪不を思ふなり。
但老後遁世ノ之輩、愚昧出家ノ之類、或ハ入テ↢草庵ニ↡剃リ↠頭ヲ、或臨テ↢松窓ニ↡言フ↠志ヲ之次ニ、以↢極楽ヲ↡可↠為↢所期ト↡、以↢念仏ヲ↡可キノ↠為↢所行ト↡之由、時時以テ諷諌ス。是則齢衰テ不↠能↢練行ニ↡、性鈍ニシテ不ルノ↠堪↢研精ニ↡之間、暫ク置テ↢難解難入ノ之門ヲ↡、試ニ示ス↢易往易修ノ之道ヲ↡。仏智猶設テ↢方便ヲ↡、凡慮豈無ンヤ↢斟酌↡也。敢テ非ズ↠存ズルニ↢教ノ之是非ヲ↡、只偏ニ思フ↢機之堪不ヲ↡也。
この条もし法滅の縁になるべくんば、 向後よろしく停止に従ふべし。 愚朦ひそかに惑ふ、 衆断よろしく定むべし。 本来化導を好まず、 天性弘教をもつぱらにせず。 この外に僻説をもつて弘通し、 虚誕をもつて披露せば、 もつとも糾断あるべし、 もつとも炳誡あるべし。 望むところなり、 欣ふところなり。 これらの子細、 先年沙汰の時起請を進じおはりぬ。 その後今に変らず。 かさねて陳ぶるにあたはずといへども、 厳誡すでに重畳するあひだ、 誓状また再三に及ぶ。
此ノ条若可ンバ↠為ル↢法滅之縁↡者、向後宜ク↠従フ↢停止ニ↡。愚朦窃ニ惑フ、衆断宜↠定ム。本来不↠好マ↢化導ヲ↡、天性不↠専セ↢弘教ヲ↡。此ノ外ニ以テ↢僻説ヲ↡弘通シ、以テ↢虚誕ヲ↡披露セバ、尤可↠有↢糾断↡、尤可シ↠有↢炳誡↡。所↠望ム也、所↠欣フ也。此等子細、先年沙汰ノ之時進ジ↢起請ヲ↡了ヌ。其ノ後于↠今ニ不↠変。雖↠不↠能↢重テ陳ルニ↡、厳誡既ニ重畳スル之間、誓状又及ブ↢再三ニ↡。
上件の子細、 一事一言虚言をもつて会釈を設けば、 毎日七万遍の念仏、 むなしくその利を失ひて三塗に堕在し、 現当二世の依身、 つねに重苦に沈みて永く楚毒を受けん。 伏して乞ふ、 当寺の諸尊、 万山の護法、 証明知見したまへ。 源空敬白。
上件ノ子細、一事一言以テ↢虚言ヲ↡設↢会釈0267ヲ↡者、毎日七万遍ノ念仏、空ク失テ↢其ノ利ヲ↡堕↢在シ三塗ニ↡、現当二世依身、常ニ沈テ↢重苦ニ↡永ク受ン↢楚毒ヲ↡。伏乞、当寺ノ諸尊、万山ノ護法、証明知見シタマヘ。源空敬白。
元久元年 甲子 十一月七日 沙門源空 在御判
元久元年 甲子 十一月七日 沙門源空 在御判
わたくしにいはく、 執筆宰相の法印聖覚なり。
私云、執筆宰相法印聖覚也。▽