八(955)、七箇条起請文
一 あまねく予が門人念仏上人等に告たまはく。
▲一 普告↠于↢豫門人念仏上人等↡。
いまだ一句の文を窺はず真言・止観を破し、 余仏・菩薩を謗じ奉ことを停止すべき事。
◇可↱停↫止未↠窺↢一句文↡奉↪破↢真言・止観↡、謗↩余仏・菩薩↨事。
右道を立破するに至ては、 学生の経るところなり、 愚人の境界にあらず。 しかのみならず、 誹謗正法弥陀願に免除せられたり。 その報まさに那落に堕すべし。 あに痴闇の至にあらずや。
◇右至↣立↢破道↡者、学生之所↠経也、非↢愚人之境界↡。加之、誹謗正法免↢除弥陀願↡。其報当↠堕↢那落↡。豈非↢痴闇之至↡哉。
一 无智の身をもて有智の人に対ひ、 別行の輩に遇てこのみて諍論を致ことを停止すべき事。
◇一 可↫停↪止以↢无智身↡対↢有智人↡、遇↢別行輩↡好致↩諍論↨事。
右論義は、 これ智者の有なり、 さらに愚人の分にあらず。 また▼諍論の処はもろもろの煩悩起る。 智者これを遠離すること百由句なり。 いはむや一向念仏の行人においてをや。
◇右論義者、是智者之有也、更非↢愚人之分↡。又諍論之処諸煩悩起。智者遠↢離之↡百由句也。況於↢一向念仏之行人↡乎。
一 別解・別行人に対て、 愚痴偏執の心をもてまさに本業を棄置し、 しゐてこれを嫌喧すべしと傋ことを停止すべき事。
◇一 可↧停↦止対↢別解・別行人↡、以↢愚痴偏執心↡傋↞当↧棄↢置本業↡、強嫌↦キラヒ喧キラ之フ ↥事。
右修道の習、 おのおの勤るにあえて余行を遮せず。 ¬西方要決¼ (意) に云く、 「別解・別行はすべて敬心を起せ。 もし軽慢を生ぜば、 罪を得むこと窮なしと。」 云云 なんぞこの制を背かむや。
◇右修道之習、各勤敢不↠遮↢余行↡。¬西方要決¼ 云、「別解・別行者総起↢敬心↡。若生↢軽慢↡、得↠罪无↠窮。」 云云 何背↢此制↡哉。
一0956 念仏門において、 戒行なしと号してもはら淫酒食肉を勧め、 たまたま律儀を守る者を雑行と名く、 弥陀の本願を馮む者、 説て造悪を恐ゝことなかれといふことを停止すべき事。
◇一 可↧停↦止於↢念仏門↡、号↠无↢戒行↡専勧↢淫酒食肉↡、適守↢律儀↡者名↢雑行↡、馮↢弥陀本願↡者、説勿↞恐↢造悪↡事。
右戒はこれ仏法の大地なり、 衆行まちまちなりといゑども同くこれをもはらにす。 これをもて善導和尚、 目を挙て女人を見ず。 この行状の趣、 本律の制浄業の類に過たり。 これに順ぜずは、 すべて如来の遺教を失たり、 別しては祖師の旧跡に背く。 かたがた拠るところなき者かと。
◇右戒是仏法大地也、衆行雖↠区同専↠之。是以善導和尚、挙↠目不↠見↢女人↡。此行状之趣、過↢本律制浄業之類↡。不↠順↠之者、総失↢如来之遺教↡、別背↢祖師之旧跡↡。旁无↠拠者歟。
一 ▼いまだ是非を辨ず痴人、 聖教を離れ師説にあらず、 おそらくは私の義を述しみだりに諍論を企て、 智者に笑れ愚人を迷乱することを停止すべき事。
◇一 可↫停↪止未↠辨↢是非↡痴人、離↢聖教↡非↢師説↡、恐述↢私義↡妄企↢諍論↡、被↠笑↢智者↡迷↩乱愚人↨事。
右无智の大天、 この朝に再誕してみだりがわしく邪義を述す。 すでに九十五種の異道に同じ、 もともこれを悲むべし。
◇右无智大天、此朝再誕猥述↢邪義↡。既同↢九十五種異道↡、尤可↠悲↠之。
一 痴鈍の身をもてことに唱導を好み、 正法を知ずして種種の邪法を説て、 无智の道俗を教化することを停止すべき事。
◇一 可↫停↪止以↢痴鈍身↡殊好↢唱導↡、不↠知↢正法↡説↢種種邪法↡、教↩化无智道俗↨事。
右解なくして師と作るは、 これ ¬梵網¼ の制戒なり。 黒闇の類己が才を顕さむと欲て、 浄土の教をもて芸能として、 名利を貪じ檀越を望む。 おそらくは自由の妄説を成て、 世間の人を狂惑せむ。 誑法の過ことに重し。 この輩は国賊にあらずや。
◇右無↠解作↠師、是 ¬梵網¼ 之制戒也。黒闇之類欲↠顕↢己才↡、以↢浄土教↡為↢芸能↡、貪↢名利↡望↢檀越↡。恐成↢自由之妄説↡、狂↢惑世間人↡。誑法之過殊重。是輩非↢国賊↡乎。クニノヌスビトヽイフ
一 みづから仏教にあらざる邪法を説て正法とし、 偽て師範の説と号することを停止すべき事。
◇一 可↫停↪止自説↧非↢仏教↡邪法↥為↢正法↡、偽号↩師範説↨事。
右0957おのおの一人なりといゑども、 積るところわが一身の為なりと説く。 衆悪をして弥陀の教文を汚す、 師匠の悪名を揚ぐ、 不善の甚しきことこれに過たることなき者なり。
◇右各雖↢一人↡、説↣所↠積為↢豫一身↡。衆悪汚↢弥陀教文↡、揚↢師匠之悪名↡、不善之甚无↠過↠之者也。
以前七箇条甄録かくのごとし。 一分教文を学ばむ弟子等は、 すこぶる旨趣を知て年来の間念仏を修すといゑども、 聖教に随順してあえて人心に逆はず、 世の聴を驚ことなかれ。 これによて今に三十箇年无為なり。 日月を渉て近き王に至までこの十箇年より以後、 无智不善の輩時時到来す。 たゞ弥陀の浄業を失するのみにあらず、 また釈迦の遺法を汚穢す。 なんぞ烱誡を加へざらむや。
◇以前七箇条甄録如↠斯。一分学↢教文↡弟子等者、頗知↢旨趣↡年来之間雖↠修↢念仏↡、随↢順聖教↡敢不↠逆↢人心↡、无↠驚↢世聴↡。因↠茲于↠今三十箇年无為。渉↢日月↡而至↢近王↡此十箇年以後、无智不善輩時時到来。非↣啻失↢弥陀浄業↡、又汚↢穢釈迦遺法↡。何不↠加↢烱誡↡乎。
この七箇条の内、 不当の間巨細の事等多し。 つぶさに註述しがたし。 すべてかくのごときらの無方、 慎で犯すべからず。 この上なほ制法を背く輩は、 これ予が門人にあらず、 魔の眷属なり。 さらに草庵に来るべからず。
◇此七箇条之内、不当之間巨細事等多。具難↢註述↡。総如↠此等之無方、慎不↠可↠犯。此上猶背↢制法↡輩者、是非↢豫門人↡、魔眷属也。更不↠可↠来↢草庵↡。
自今以後、 おのおの聞ゝ及ばむに随て、 かならずこれを触れらるべし。 余人あひ伴ことなかれ。 もししからずは、 これ同意の人なり。 かの過作すごときの者は、 同法を瞋り師匠を恨ることあたはず、 自業自得の理、 ただ己が身に在りならくのみ。
◇自今以後、各随↢聞及↡、必可↠被↠触↠之。余人勿↢相伴↡。若不↠然者、是同意人也。彼過如↠作者、不↠能↧瞋↢同法↡恨↦師匠↥、自業自得之理、只在↢己身↡而已。
このゆへに今日四方の行人を催て、 一室に集て告命すらく、 わずかに風聞ありといゑどもたしかにたれの人の失と知ず、 沙汰によて愁歎す。 年序を遂る、 黙止すべきにあらず。 まづ力の及に随て、 禁遏の計を廻すところなり。 よてその趣を録して門葉等に示す状、 件のごとし。
◇是故今日催↢四方行人↡、集↢一室↡告命、僅雖↠有↢風聞↡慥不↠知↢誰人失↡、拠↠于↢沙汰↡愁歎。遂↢年序↡、非↠可↢黙止↡。先随↢力及↡、所↠廻↢禁遏之計↡也。仍録↢其趣↡示↢門葉等↡之状、如↠件。
◇元久元年十一月七日 沙門源空
◇信空 感聖 尊西 証空 源智 行西 聖蓮 見仏 道亘 導西 寂西 宗慶 西0958縁 親蓮 幸西 住蓮 西意 仏心 源蓮 蓮生 善信 行空 已上 已上二百余人、連署了。 ▽