(174)
▼そもそも十悪・五逆といふつみふかき人も、 また五障・三従の女人も、 もろもろの雑行をうちすてゝ、 一心に阿弥陀如来にむかひたてまつりて今度の後生をたすけたまへと、 ひしとたのみ申さん人は、 十人も百人もみなことごとく極楽浄土に往生すべき事、 さらにうたがふこゝろつゆちりほどもあるべからず。 このほかにはたゞねてもさめても南无阿弥陀仏とまふすこゝろはなにとしたるこゝろぞといふに、 たとへば一念に阿弥陀仏をたのみたてまつるところに、 なにのわづらひもなくやすくたすけまします弥陀如来の御恩のありがたさたふとさをおもひまいらせて念仏申べし。 これをすなはち弥陀如来の御恩報謝の念仏とは申こゝろなりとおもふべきものなり。 あなかしこ、 あなかしこ。
明応七年極月上旬第八日書之