0371◎拾遺黒谷上人語灯録巻上 上漢語 中下和語
厭欣沙門了慧集録
◎▼三昧発得記第一 付夢記
▼浄土宗見聞第二 付臨終記
▼御教書御請第三
◎三昧発得記第一 付夢記
浄土宗見聞第二 付臨終記
御教書御請第三
拾(393)遺黒谷語灯録巻上
予二十余年の間久しく花夷を尋ね、 くはしく真偽を験べて撰集するところ、 漢語の ¬語灯録¼ ならびに ¬拾遺¼ すべて二十一件あり。 この外世に綴集あり。 ¬本願奥義¼ 一巻・¬往生機品¼ 一巻、 黒谷作と注すもまつたくこれ偽書なり。 また ¬三部経総章¼ 一巻あり、 四十八願の名目を列ね第十八願を十念往生の願と名づく。
豫廿余年之間久ク尋↢花夷ヲ↡、委験テ↢真偽ヲ↡所↢撰集スル↡、漢語ノ¬語灯録¼并ニ¬拾遺¼都有↢廿一件↡矣。此外世ニ有↢綴集↡。¬本願奥義¼一巻・¬往生機品¼一巻、注0394↢黒谷作ト↡全是偽書也。又有↢¬三部経総章¼一巻↡、列↢四十八願名目↡第十八願名↢十念往生願↡也。
¬問決¼ 一巻またこれ偽書か。
¬問決¼一巻亦是偽書歟。
黒谷、 鎮西に遣はす状にいはく、 「¬金剛宝戒章¼ は疑書、 源空まつたくもつてかくのごとき事申さず候ふ、 釈迦・弥陀を証となす」 と。 云々 いはんやまた聖道の法門なり、 浄録に編入することあたはず。 管見の及ぶところ、 取捨かくのごとし。 もし誤るところあらば、 後覧かならずこれを糾せ、 また遺るところあらば、 乞ふこれを続けよ。
黒谷遣↢鎮西ニ↡状云、「¬金剛宝戒章¼疑書、源空全以如是事不申候、釈迦・弥陀ヲ為スト↠証ト。」云云 況復聖道法門也、不↠能↣編↢入浄録ニ↡也。管見所↠及、取捨如↠斯。若有ラバ↠所↠誤者、後覧必糾↠之、又有ラバ↠所↠遺者、乞続之矣。
わたくしにいはく、 中・下両巻の ¬和語¼ は流布の ¬語灯録¼ 六・七の巻とまつたく同じきゆゑ、 略してこれを書かず。 三巻全部ならんと欲せば、 かの六・七巻をもつてこれに次ぐべきものなり。
私云、中・下両巻之¬和語ハ¼流布之¬語灯録¼六・七ノ巻ト全同故、略シテ不↠書↠之。三巻欲セバ↢全部ナラント↡者、以↢彼六・七巻ヲ↡可↠次↠之者也。
右この一册、 写本の章段文字乱脱せしむといへども、 いささか了簡を加へたてまつりて書写したてまつるものなり。 後輩正本を感得せばかならずこれを糾せ。
これ時に元禄十五 壬午 十二月上旬 六十歳 興誉恩哲これを書く
南無阿弥陀仏
右此一册、雖令写本之章段文字乱脱、聊加了簡奉書写者也。後輩感得正本者必糾之。
維時元禄十五 壬午 十二月上旬 六十歳 興誉恩哲書之
南無阿弥陀仏
延書は底本の訓点に従って有国が行った。 なお、 訓(ルビ)の表記は現代仮名遣いにしている。
底本は龍谷大学蔵元亨元年刊本。