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夫当宗を一向宗と、 わが宗よりもまた他宗よりもその名を一向宗といへること、 さらにこゝろゑがたき次第なり。 祖師聖人はすでに浄土真宗とこそおほせさだめられたり。 他宗の人の一向宗といふことは是非なし。 当流の中にわれとなのりて一向宗といふことはおほきなるあやまりなり。 まづ当流のことは自余の浄土宗よりもすぐれたる一義あるによりて、 わが聖人も別してしんの字をおきて浄土真宗とさだめたまへり。 つぶさにいへば浄土真宗といふ、 略していへば真宗といふべきなり。 されば他宗には宗の字にごりてつかふなり、 当流はすみてつかふべきなりとこゝろうべきものなり。 [あなかしこ、 あなかしこ。

0270文明五年九月下旬]