底本は高田派専修寺に蔵せられ、 宗祖の老年期のものとされる。 冒頭に 「須弥四域経」 とあるが、 この経典は中国撰述経典とされ、 現存していない。 内容は二つに分かれており、 前半部の 「宝応声菩薩」 が 「日天子」 へ、 「宝吉祥菩薩」 が 「月天子」 へ応化したという内容は、 ¬安楽集¼ にこの経典から同内容を示す引用があることから、 同経からの引用であることは明らかであり、 宗祖は ¬唯信鈔文意¼ にて註釈を施されている。 一方、 後半部の内容については、 同じくこの経典に依拠したものかどうかは不明であるが、 内容は 「迦葉菩薩」 が 「老子」 へ、 「儒童菩薩」 が 「孔子」 へ、 「光浄菩薩」 が 「顔回」 へと応化したとするものであり、 本典所引の ¬弁正論¼ に引用される ¬空寂所問経¼ と同一の内容である。 なお中央部に折り目のあることから、 もとは書籍の一部だったものが切り離されたものではないかと言われている。