本書は、 蓮如上人が八十四歳の時、 明応七 (1498) 年五月下旬から同七月下旬にかけて制作された 「御文章」 であり、 古来、 本願寺の夏安居においてのみ儀式として拝読されてきたものである。 毎年五月十五日から八月十五日までの九十日間、 正午の勤行に拝読される。 本派本願寺では、 初日より七月二十五日までは第一通から第四通を繰り返し、 翌二十六日からは第五通を入れて巡読する。 そして八月十五日に第五通を拝読して本書を収軸する慣わしとなっている。
 本書の内容は、 「もろもろの雑行をすてゝ一心に弥陀如来をたのみ、 今度の我等が後生たすけたまへと申す」 とあるように、 安心の相状を詳らかにして信心を勧められている。 中でも第四通は、 夏中の期間における聴聞の姿勢について厳しく諭されている。 ところで、 ¬蓮如上人御一期記¼ によると、 「明応七年四月初此より、 去年のごとく又御不例にて、 慶通医師にまいり」 とあり、 蓮如上人は明応七 (1498) 年四月頃、 前年に患った病が再発したため名医の診察を受けられている。 そして同五月には、 山科の親鸞聖人影像に暇乞いのために上洛されたとある。 そのような病身でありながら、 聞法の肝要なることを厳しく諭された内容となっている。 なお、 第四通は末語の文勢や義旨の上から誤って混じたものとみて、 第十七代宗主法如上人が二通とみなされてから、 本願寺派では本書を全五通としている。