1429いち0005まいしょうもん

*源空げんくうじゅつ

 

もろこし (中国)・わがちょうに、 もろもろ​のしゃたち*沙汰さたし​まうさ​るる*観念かんねんねんにも​あらず。 また、 学文がくもんを​して*ねんこころさとり​てもう念仏ねんぶつにも​あらず。 ただおうじょう極楽ごくらくの​ため​には南無なも弥陀みだぶつもうし​て、 うたがいなくおうじょうする​ぞ​と*おもひとり​てもうす​ほか​にはべつさいそうらは​ず。

ただし三心さんしんしゅもうす​こと​のそうろふ​は、 みなけつじょうし​て南無なも弥陀みだぶつにておうじょうする​ぞ​とおもふ​うち​にこもそうろふ​なり。

*この​ほか​に​おくふかき​こと​をぞんぜ​ば、 そんの​あはれみ​に​はづれ、 本願ほんがんに​もれそうろふ​べし。 念仏ねんぶつしんぜ​んひとは、 たとひ*一代いちだいほうを​よくよくがくす​とも、 *一文いちもん不知ふちどんに​なし​て、 *あまにゅうどう無智むちの​ともがら​に​おなじく​して、 しゃの​ふるまひ​を​せず​して、 ただ一向いっこう念仏ねんぶつす​べし。 *為証以両手印

 じょうしゅう安心あんじんぎょう、 このいっごくせ​り。 源空げんくう所存しょぞん、 この​ほか​に​まつたくべつぞん1430ず。 めつじゃを​ふせが​んがため​に、 所存しょぞんしるし​をはり​ぬ。

  *けんりゃくねんしょうがつじゅう三日さんにち

源空げんくう (花押)

 

底本は京都府金戒光明寺蔵伝源空聖人自筆本ˆ聖典全書と同一ˇ。
観念の念 観念の念仏、 すなわち阿弥陀仏の相好そうごうどくを観ずること。 口称念仏に対する。
念の心を悟りて 念仏の功徳や意味を詳しく知って。
思ひとりて 思いさだめて。
このほかに… 念仏して往生すると信じること以外に、 奥深いことを存知するなら。
一代の法 釈尊が一生の間に説いた教法。
尼入道 尼とは女性の出家者を指すが、 ここでは在俗生活のまま髪をおろして仏門に入った女性をいう。 入道は在俗生活のまま剃髪して仏門に入った男性をいう。
為証以両手印 大事の証文であるから両手の印を押したという意。 原本には本文の上に両手の印が押してある。