九(958)、起請没後二箇条事
▲起請 没後二箇条◗事。
◇一 葬家追善◗事。
右葬家の次第、 すこぶるその採旨あり。 篭居の志あらむ遺弟・同法等、 またく一所に群会すべからざるものなり。 そのゆへいかんとならば、 また和合するに似たりといゑども、 集ればすなわち闘諍を起す。 この言誠なるかな、 はなはだ謹み慎むべし。 もししからばわが同法等、 わが没後において各住各居して会はざるにはしかじ。 闘諍の基なるゆへは、 集会のゆへなり。 羨くはわが弟子・同法等、 おのおの閑に本在の草庵に住し、 ねむごろにわが新生の蓮台を祈るべしと。 ゆめゆめ一所に群居すとも、 諍論を致し忿怨を起すことなかれ。 恩志を知ことあらむ人は、 毫末も違すべからざるものなり。
◇右葬家之次第、 頗有↢其採旨↡。 有↢篭居之志↡遺弟・同法等、 全不↠可↣群↢会一所↡者也。 其故何者、 雖↣復似↢和合↡、 集則起↢闘諍↡。 此言誠哉、 甚可↢謹慎↡。 若然者我同法等、 於↢我没後↡各住各居不↠如↠不↠会。 闘諍之基由、 集会之故也。 羨我弟子・同法等、 各閑住↢本在之草庵↡、 苦可↠祈↢我新生之蓮台↡。 努々群↢居一所↡、 莫↧致↢諍論↡起↦忿怨↥。 有↠知↢恩志↡之人、 毫末不↠可↠違者也。
兼てはまた追善の次第、 また深く存する旨あり。 図仏・写経等の善、 浴室・檀施等の行、 一向にこれを修すべからず。 もし追善報恩の志あらむ人は、 たゞ一向に念仏の行を修すべし。 平生の時、 すでに自行化他について、 たゞ念仏の一行に局る。 歿没の後、 あに報恩追修の為に、 むしろ自余の衆善を雑えむや。 たゞ念仏の行においてな0959ほ用心あるべし。
◇兼又追善之次第、 亦深有↢存旨↡。 図仏・写経等善、 浴室・檀施等行、 一向不↠可↠修↠之。 若有↢追善報恩之志↡人は、 唯一向可↠修↢念仏之行↡。 平生之時、 既付↢自行化他↡、 唯局↢念仏之一行↡。 歿没之後、 豈為↢報恩追修↡、 寧雑↢自余之衆善↡哉。 但於↢念仏行↡尚可↠有↢用心↡。
あるいは眼閉ての後、 一昼夜即時よりこれを始めよ。 誠至心を標しておのおの念仏すべし。 中陰の間、 念仏を断ゝざれ。 やゝもすれば懈惓を生じて、 おのおの還て勇進の行を闕ゝむ。 おほよそ没後の次第、 みな真実心をもて虚仮の行を棄つべし。 志あらむ倫、 遺言を乖くことなかれならくのみ。
◇或眼閉之後、 一昼夜自↢即時↡始↠之。 標↢誠至心↡各可↢念仏↡。 中陰之間、 不↠断↢念仏↡。 動生↢懈惓↡、 各還闕↢勇進之行↡。 凡没後之次第、 皆用↢真実心↡可↠棄↢虚仮行↡。 有↠志之倫、 勿↠乖↢遺言↡而已。▽