一八(1016)、基親取信信本願之様
▲基親取↠信◗信↢ 本願↡之様。
◇¬双巻¼ (大経) 上に云く、
「たとひわれ仏を得たらむに、 十方の衆生、 心を至し信楽してわが国に生れむと欲ふて、 乃至十念せむ。 もし生れずは、 正覚を取らじ」 と。
「設我得↠仏、 十方衆生、 至↠心信楽欲↠生↢我国↡、 乃至十念。 若不↠生者、 不↠取↢正覚↡。」
◇同◗ (大経) 下◗云、
「それ名号を聞ゝて信心歓喜して、 乃至一念せむ。 心を至し廻向して、 かの国に生れむと願ぜむ。 すなわち往生を得、 不退転に住せむと。」
「聞↢其名号↡信心歓喜、 乃至一念。 至↠心廻向、 願↠生↢彼国↡。 即得↢往生↡、 住↢不退転↡。」
◇¬往生礼讃¼ 云、
「今信知す、 弥陀の本弘誓願は、 名号を称すること下至十声一声等に及ぶまで、 さだめて往生を得、 乃至一念疑心あることなかれと。」
「今信知、 弥陀本弘誓願、 及↧称↢名号↡下至十声一声等↥、 定1017得↢往生↡、 乃至一念無↠有↢疑心↡。」
◇¬観経◗疏¼ (散善義) 云、
「一には決定して深く自身は現にこれ罪悪生死の凡夫、 昿劫よりこのかた常に没み常に流転して、 出離の縁あることなしと信ず。 二には決定して深くかの阿弥陀仏の四十八願衆生を摂受して、 疑なく慮なくかの願力に乗じて、 さだめて往生を得と信ず。」
「一者決定深信↢自身現是罪悪生死凡夫、 昿劫已来常没常流転、 無↟有↢出離之縁↡。 二者決定深信↧彼阿弥陀仏四十八願摂↢受衆生↡、 無↠疑無↠慮乗↢彼願力↡、 定得↦往生↥。」
◇これらの文を按じ候て、 基親罪悪生死の凡夫なりといゑども、 一向に本願を信じて、 名号をとなえ候、 毎日に五万返なり。 決定仏の本願に乗じて上品に往生すべきよし、 ふかく存知し候也。 このほか別の料間なく候。
◇しかるに或人、 本願を信ずる人は一念なり、 しかれば、 五万返無益也、 本願を信ぜざるなりと申す。 基親こたえていはく、 念仏一声のほかより、 百返乃至万返は、 本願を信ぜずといふ文候やと申す。 難者云く、 自力にて往生はかなひがたし、 たゞ一念信をなしてのちは、 念仏のかず無益なりと申す。
◇基親また申ていはく、 自力往生とは、 他の雑行等をもて願ずと申さばこそは、 自力とは申候はめ。 したがひて善導の ¬疏¼ (散善義) にいはく、
「上尽百年下至一日七日、 一心に弥陀の名号を専念すれば、 さだめて往生を得。 かならず疑なし」
「上尽百年下至一日七日、 一心専↢念弥陀名号↡、 定得↢往生↡。 必無↠疑」
と候めるは、 百年念仏すべしとこそは候へ。
◇また聖人◗御房七万返を1018となえしめまします。 基親御弟子の一分たり、 よてかずおほくとなえむと存じ候なり、 仏の恩を報ずる也と申す。 すなわち ¬礼讃¼ に
「相続してかの仏恩を念報せざるがゆへに、 心に軽慢を生ず。 業行を作すといゑども、 つねに名利と相応するがゆへに、 人我おのづから覆ふて同行善知識に親近せざるがゆへに、 楽みて雑縁に近きて、 往生の正行を自障障他するがゆへにと。」 云云
「不↣相続念↢報彼仏恩↡故、 心生↢軽慢↡。 雖↠作↢業行↡、 常与↢名利↡相応故、 人我自覆不↣親↢近同行善知識↡故、 楽近↢雑縁↡、 自↢障障↣他往生正行↡故。」 云云
◇基親いはく、 仏恩を報ずとも、 念仏の数返おほく候はむ。▽