0351◎出世元意
◎法華念仏同体異名事。
五味 者、 乳味・酪味・生蘇味・熟蘇味・醍醐味。
この中に醍醐のあぢはひをもて最なりとす。 これを出世の本意とする ¬法花経¼ にたとふるなり。 しかるに、 浄土真宗をば法花同味の教とさだめらる。 しかれば、 浄土真宗をばこれも出世の本意とす。 されば、 三経のなかの ¬大无量寿経¼ (巻上) の説相にそのむね歴然なり。 すなはち 「爾時世尊、 諸根悦予、 姿色清浄、 光顔巍巍」 と等ときたまふ。 すなわちその証なり。 しかれば、 法花・念仏同味の教なりとみえたることあきらけし。 すなはち同体異名なり。 ともに醍醐味の教なり。 そのむね ¬選択本願念仏集¼ にみえたり。 法花は八箇年の説なり。 その説時にあたりて、 頻婆娑羅王の王宮に五逆発現するにちなんで、 韋提の請に応じて、 はるかに霊鷲山の会座を没して、 阿難・目連の二聖を侍者として王宮に影臨しましまして、 夫人に対して頓説しましますを ¬観无量寿経¼ となづく。 ¬法花¼ 同時の説なるによりて、 同醍醐味の教といふなり、 しるべし。
底本は本派本願寺蔵蓮如上人書写本。 ただし訓(ルビ)は有国による。