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文明七、 八年之比、 参河国野寺同宿に誓珍備前、 伊勢国香取浄賢子安田主計助に、 秘事法門さづけたる趣は、 吉崎にてひそかにつたえ申すなりとて、 其詞にい0354はく、 仏性と我心をおもはぬ間は沈淪し、 又仏性と我心のおもひ候へば、 すなはち如来なりと心得候へとさづけたり。 これをもて正理とおもふべし。 如此伝へ候者をさして、 滅後の如来とも信ずべきなり。 而間安田此趣を相伝して、 真実当流一大事秘事と心中におもふ間、 此趣を又安田方より人に相伝る人数は、 中島の等善、 又新兵衛両人につたへたり 云々

文明九年正月比聞之

  以御筆御うつし候御本にて又写申候。 正本は加州長流谷ふるや殿に御座候也。