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▼*応仁二年孟冬仲旬之比より江州志賀郡大津辺より忍出、 紀伊国高野山一見のついでに、 和州吉野の奥十津川のな0233がせ鬼が城といひし所へゆきはんべりし時、 あまりに道すがら難所なりし間、 かなしかりしほどに、 かくぞつゞけ侍しなり。
高野山より十津河小田井の道にて、
▼奥吉野 きびしき山の そわづたひ
十津河をつる のながせの水
▼十津河の 鬼すむ山と きゝしかど
すぎにし人の あとゝおもへば
▼これほどに はげしき山の 道すがら
のりのゆかりに あふてやはゆく
十津川より小田井の道にて、
▼谷々の さかりの紅葉 三吉野の
山の秋ぞ 物うき
▼山々の さかしき道を すぎゆけば
河にぞつれて かへる下淵
下淵より河づらの道にて、
▼三吉野の 河づらつゞく いゝがゐの
いもせの山は ちかくこそみれ
河づらよりし吉野蔵王堂一見の時、 一年のうかりし事をいまおもひ出て、
▼いにしへの 心うかりし 三吉野の
いふは紅葉も さかりとぞみる
応仁二年猛冬仲旬信証院兼寿法印 御判有之