本書の編者は実悟である。 その内容は山科本願寺及びその時代の情勢を伝えるものである。 これは、 実悟における著作の多くが蓮如上人とその言行について述べられていることと性格を異にしている。 全79箇条ある中、 全体としては山科本願寺に伝わる故実が中心であり、 行事や習慣、 儀式や作法、 堂舎の構造に関する事項などが記録されている。 また、 後半には、 第九代実如上人に対する排斥運動をはじめとした、 本願寺を取り巻く情勢が詳細に示されている。 ¬本願寺作法之次第¼ とともに、 その当時の本願寺の動きを把握する上で重要な史料といえる。 本書の成立については、 本文中の識語に 「右此条々は、 御所望により思出るにしたがひて注進する也。 …天正参年 乙亥 林鐘上旬 日 苾蒭兼俊 八十四歳/(花押)書之/願入寺まいる」 とあることから、 天正三 (1575) 年六月に願入寺の所望に応じて著されたことが窺われる。