本書の編者は実悟である。 本書の内容は大きく二段に分けられ、 蓮如上人の事績や奇瑞を示す 「蓮如上人事」 と、 寺院の由緒を示す 「御建立寺々事」 とで構成されている。 「蓮如上人事」 では、 蓮如上人の誕生から山科本願寺時代までを年次順に示されており、 主な事績として、 得度と修学、 生母との別れ、 継職、 吉崎御坊の建立などがある。 「御建立寺々事」 では、 飯貝本善寺や下市願行寺をはじめとした各寺院の譏嫌などについて記されている。 特に加賀の本泉寺に関することが詳細に述べられており、 これは実悟が本泉寺蓮悟 (蓮如上人の第七男) の養子となったことによると考えられている。 本書は奥書を欠いており、 成立年代は明らかではなく、 他の言行録との関係から諸説が上げられている。 本文に 「弘治の比、 河内国玉くし里に、 同聖人御筆の名号侍り…」 とあることから、 遅くとも弘治年間以降には実悟が筆を執っていたことがわかる。 また、 本書の特徴としては、 白紙の料紙が多くみられることも挙げられる。 これは奥書がないことと合わせて考えれば、 実悟にはさらに書き足して内容を充実させる意図があったことが想定され、 本書が未定稿であったことを意味するといわれている。 また、 全体にわたって墨書による加筆や訂正の跡がみられ、 現行の形に至るまでに補訂・推敲が重ねられたことが窺われる。