古写消息
 古写消息とは、 高田派専修寺に所蔵される宗祖の直弟達が書写した六通の消息を指す。 この中、 特に注意すべきは、 (3)の 「慈信房義絶状」 と (6)の 「獲得名号自然法爾章」 とである。 (3)は、 その奥書から、 建長八年に送られたものを、 顕智上人が嘉元三 (1305) 年に書写したものであることが知られる。 なお、 義絶の事実を関係者に知らせるために、 本書簡の案文が回覧されたようで、 奥書にある 「同六月廿七日到来」 「建長八年六月廿七日註之」 は、 その案文に書き加えられた註記とされる。 本書簡は、 他の消息集にも収録されておらず、 宗祖の真筆や他に書写されたものも現存しない唯一のものである。 ¬血脈文集¼ (2)¬親鸞聖人御消息集¼ (12) などにも関連する消息がある。 (6)は、 その奥書から、 「正嘉二歳戊午十二月十四日」、 顕智上人が三条富小路の善法坊におられた宗祖を訪ねて、 筆授されたものであることが知られる。 なお、 顕智上人筆の ¬聞書¼ と ¬見聞¼ や ¬末灯鈔¼ (5)、 文明本 ¬正像末和讃¼ の末尾にも、 同様の文が収録されている。 ただし、 ¬末灯鈔¼ (5) は、 「獲得名号」 の解釈が述べられていない。
 なお、 高田派の寺院には、 高田派専修寺に所蔵される宗祖真筆や古写消息に関連する 「五巻書」 と呼ばれる消息集がある。 本書は宗祖の書簡を一通ごとに巻子本とし、 各巻に表題をつけたもので、 顕智上人によって集成されたものと考えられている。 各巻と高田派専修寺所蔵の宗祖真筆消息・古写消息との対応関係は、 「摂取不捨章」 ª¬真筆消息¼ (8)º・「諸仏等同云事」 ª¬真筆消息¼ (6)º・「如来とひとしといふ事」 ª¬真筆消息¼ (9)º・「仏智不思議と信ずべき事」 ª¬古写消息¼ (2)º・「誓願名号同一事」 ª¬古写消息¼ (1)º となっている。