本偈頌は、 龍樹菩薩が阿弥陀仏の威徳を讃えた礼讃文で、 七言四句を一頌とした十二頌四十八句からなる。 ¬出三蔵記集¼ や ¬歴代三宝記¼ などの古い経録にはその名が見えず、 単独で成立したものか、 龍樹菩薩の著述から抽出されたものか、 成立について明らかではない。
本偈頌の初出は、 迦才の ¬浄土論¼ である。 ¬浄土論¼ 巻中には、 「第五引聖教為証」 として十二経・七論が引用され、 その中に 「六如禅那崛多三蔵別訳龍樹賛礼阿弥陀仏文有十二礼」 として本偈頌の全文が引用される。 この文によれば、 本偈頌は禅那崛多三蔵の訳出とされる。 禅那崛多三蔵は、 現存する僧伝に見られず、 詳細は不明である。
本偈頌の呼称は、 迦才の ¬浄土論¼ に、 「礼阿弥陀仏文有十二礼」 とあることから、 当時すでに 「十二礼」 とされていたことが知られる。 ただし、 ¬浄土論¼ の他、 善導大師の ¬往生礼讃¼ などに引用され、 ¬往生礼讃¼ では 「龍樹菩薩願往生礼讃偈」、 智昇の ¬集諸経礼懺儀¼ では 「願生礼讃偈」 とあり、 「十二礼」 以外の呼称もあったことが知られる。
本偈頌は、 冒頭の 「稽首天人所恭敬」 以下の四句に、 仏の徳・国土の徳・菩薩の徳が総讃され、 「金色身浄如山王」 以下の二十四句に仏の徳、 「十方所来諸仏子」 以下の八句に菩薩の徳、 「彼尊仏刹無悪名」 以下の八句に国土の徳があらためて別讃される。 そして、 「我説彼尊功徳事」 以下の四句に回向句として結嘆の文が置かれる。
なお、 ¬往生礼讃¼、 迦才の ¬浄土論¼ 所収本では、 各頌の冒頭に 「南無至心帰命礼西方阿弥陀仏」 (¬浄土論¼ は 「南無」 を欠き、 初めの頌に付するのみ) との帰命の句と、 末尾に 「願共諸衆生往生安楽国」 (¬浄土論¼ は一箇所のみ 「国」 を欠く) との願生の句とが付される。 また、 本偈頌は別出された例は少ないが、 本派本願寺蔵版 ¬七祖聖教¼ において本文はないものの題号が掲載されている。