四0069、浄土三部経如法経次第
▲浄土三部経如法経次第 第四 黒谷記
一 御料紙の事。
紙曽を殖え、 千日これを行ひて用ふべし。 ただ紙曽を行はん間は、 念仏・礼讃を修すべし。 経を讃誦せんと欲する時は、 「三部経」 を用ふべし。 もしかくのごとくこれを行ふ料紙なくば、 市の料紙を用ふべし。 その次第常のごとし。
一 御料紙事。
殖エ↢紙曽ヲ↡、千日行テ↠之ヲ可↠用。但行ハン↢紙曽↡之間ハ、可↠修↢念仏・礼讃↡。欲↣讃↢誦経↡之時ハ、可↠用↢「三部経」↡也。若無↢如↠此行↠之料紙↡者、可↠用↢市ノ料紙↡。其次第如↠常。
一 堂の荘厳の事。 常のごとし
一 堂荘厳事。 如↠常
一 前方便七箇日の事。
沐浴潔斎して、 浄衣等常のごとし。 ただし絹・綿の類に至るは、 用否人意に在るべし。
一 前方便七箇日事。
沐浴潔斎シテ、浄衣等如↠常。但至↢絹・綿之類↡者、用否可↠在↢人意↡。
一 入道場の次第。
まづ門前の灑水 ならびに 香呂・花筥・香合等常のごとし。 次に無言の行道三遍、 奉請・合殺等常のごとし。 次に諸衆宝座の前に列立して、 総礼の伽陀を誦す。 その詞にいはく、
一 入道場次第。
先門前ノ灑水 香呂・花筥・香合等如↠常。次無言行道三遍、奉請・合殺等如↠常。次諸衆列↢立テ宝座ノ前ニ↡、誦↢総礼ノ伽陀↡。其詞曰、
「▲帰命本師釈迦仏 | 十方世界諸如来 |
願受施主衆生請 | 不捨慈悲入道場」(法事讃巻上) |
南無十方三世一切諸仏、 哀愍納受入此道場。
「帰命本師釈迦仏 | 十方世界諸如来 |
願受施主衆生請 | 不捨慈悲入道場」 |
0070南無十方三世一切諸仏、哀愍納受入此道場。
「▲本国弥陀諸聖衆 | 平等倶来坐道場 |
道場聖衆実難逢 | 衆等頂礼弥陀会」(法事讃巻上) |
南無極楽世界諸尊聖衆、 慈悲護念証明功徳。
「本国弥陀諸聖衆 | 平等倶来坐道場 |
道場聖衆実難逢 | 衆等頂礼弥陀会」 |
南無極楽世界諸尊聖衆、慈悲護念証明功徳。
次に弥陀讃嘆。
「▲弘誓多門四十八 | 偏標念仏最為親 |
人能念仏仏還念 | 専心想仏仏知人」(法事讃巻上) |
南無極楽化主弥陀如来、 命終決定往生。
次弥陀讃嘆。
「弘誓多門四十八 | 偏標念仏最為親 |
人能念仏仏還念 | 専心想仏仏知人」 |
南無極楽化主弥陀如来、命終決定往生。
次に経讃嘆。
「▲念々思聞浄土教 | 文々句々誓当勤 |
憶想長時流浪久 | 専心聴法入真門」(法事讃巻上) |
南無浄土三分甚深妙典、 命終決定往生極楽。
次経讃嘆。
「念念思聞浄土教 | 文文句句誓当勤 |
憶想長時流浪久 | 専心聴法入真門」 |
南無浄土三分甚深妙典、命終決定往生極楽。
次に礼讃。 日没の時よりこれを始む
諸衆著座、 導師礼盤に登り礼讃の後、 高声念仏三百遍。 ただし時の早晩によるべし。
次礼讃。 自日没時始之
諸衆著座、導師登↢礼盤↡礼讃之後、高声念仏三百遍。但可↠依↢時ノ早晩0071ニ↡。
次仏経讃嘆。伽陀、其詞如↠前。但開白之時者、可↠略↢念仏以後ノ讃嘆ヲバ↡、又開白以後者、可↠略↢総礼伽陀↡。
次に例時の作法常のごとし。 ただし日没の一時に付く。
次例時作法如↠常。但付↢日没一時↡。
次に読経。 ¬双巻¼ ¬観経¼ ただし転読の多少は随時の早晩。
次読経。 ¬双巻¼¬観経¼ 但転読ノ多少ハ随時ノ早晩。
次に出堂。
次出堂。
後々の時これに准じて知るべし。 七箇日の間、 日別にかくのごとし。 以上前方便の次第
後後時准↠之可↠知。七箇日之間、日別如↠此。 已上前方便ノ次第
一 写経七箇日の事。
沐浴潔斎して道場に入り、 礼讃・念仏・讃嘆・読経等の次第、 前方便のごとし、 一事として相違なし。
一 写経七箇日事。
沐浴潔斎シテ入道場、礼讃・念仏・讃嘆・読経等ノ次第、如↢前方便↡、一事シテ無↢相違↡。
まづ筆立の次第。
初日晨朝の礼讃以後、 啓白の導師その器量を選ぶべし。 分経 ならびに 墨筆等、 以下諸事常のごとし。
先筆立ノ次第。
初日晨朝ノ礼讃以後、啓白導師可↠選↢其器量↡。分経 墨筆等、以下諸事如↠常。
次に日別の書写。
礼讃以後、 多少は時による。 ただし七箇日の間その功を修すべきなり。
次日別書写。
礼0072讃以後、多少ハ依↠時ニ。但七箇日ノ間可↠修↢其功↡也。
次に日別の解説は日中の礼讃以後なるべし。
日々の次第これに准じて知るべし。 七箇日の間の儀式かくのごとし。 以上写経の次第
次ニ日別ノ解説ハ日中礼讃以後ナルベシ。
日日次第准↠之可↠知。七箇日之間ノ儀式如↠此。 已上写経次第
一 奉納の次第。 常のごとし
仏経讃嘆前のごとし。 ただし讃嘆の多少は時宜によるべし。 奉納の路の間合殺等常のごとし。
一 奉納次第。 如↠常
仏経讃嘆如↠前。但讃嘆ノ多少可↠依↢時宜↡。奉納之路ノ間合殺等如↠常。
一 礼讃の時剋。
日没 申時 初夜 戌時 半夜 子時
後夜 寅時 晨朝 辰時 日中 午時
一 礼讃時剋。
日没 申時 初夜 戌時 半夜 子時
後夜 寅時 晨朝 辰時 日中 午時
浄土如法経次第 おはりぬ
浄土如法経次第 竟
本にいはく、 この法則は、 黒谷の上人法華の如法経に准じてこれを選出せらる。 大和の入道見仏 後白河法皇の御菩提をしたてまつるに、 いづれの行法にか修すべき。 これを思惟するところに見仏が夢に入りて、 菩提をば如法に訪ぬべしと示したまふ。 よりてこの由を上人に申すあひだ、 浄土如法経始行の次第・法則これを出さる 云々。 この本は二尊院にあり
本曰、此法則者、黒谷上人准↢法華ノ如法経ニ↡被↣選↢出之↡。大和入道見仏奉↠為↢ 後白河法皇御菩提↡、可↠修↢何ノ行法ニカ↡。思↢惟之↡処ニ入テ↢見仏ガ夢ニ、菩提ヲバ如法ニ可シト↠訪示シ給。仍テ申↢此ノ由ヲ於上人ニ↡之間、浄土如法経始行次第・法則被↠出↠之 云云。此本ハ在↢二尊院ニ↡
わたくしにいはく、 広き法則あり、 ¬般舟讃¼ の文を載す。 おそらくはこれ偽書か
私曰、有↢広法則↡、載↢¬般舟讃ノ¼文。恐ハ是偽書歟