◎古へ東山殿野村殿にての事或承及見及申事等思出次第不同注置条々目録
一 (1)御堂衆之事
一 (2)綽如上人御時御戸役之事
一 (3)称名は小原流事
一 (4)念珠くるべき事
一 (5)堂衆心得行儀事
一 (6)仏前の花事 如何
一 (7)座に付べき様事 内陣
一 (8)仏をおがむ事
一 (9)早おがみ果したるは悪也事
一 (10)勤つくべき事
一 (11)焼香事
一 (12)やらひの事
一 (13)阿弥陀堂・御影堂参銭事
一 (14)勤終に人々立さはぐ事
一 (15)皮たびはく事
一 (16)したうづはかせられべき事候歟
一 (17)番屋掟条々事 鐘数之事
一 (18)寺々の開山の日末寺に各斎以下有之事
一 (19)蓮如上人御建立の寺の事
一 (20)客人もてなし遊山時事
一 (21)他所へ御出時も道中は精進事
一 (22)客人に精進の儀破候事
一 (23)同精進たるべき日の事
一0964 (24)精進日町中も魚物不通事
一 (25)前住御正忌日 非御年忌時 之時前日夕は御精進事
一 (26)一家衆有所へや事
一 (27)教行信証請候事 条々有之事也
一 (28)霜月廿八日に明日之御精進ほどき進上事 廿九日可参
一 (29)
一 (30)末々一家衆袴著せられ候事
一 (31)古へ東山御坊ちいさく候事
一 (32)蓮
一 (33)武者少路殿事御上にて人すくなに小殿原は只二人事
一 (34)同御うへにて御相伴時事
一 (35)一家衆息女物よまれ候事、 下間衆若時経論等常よまれたる事
一 (36)人志被申点心計被申事
一 (37)代々御前灯明事
一 (38)二月十五日に勤行なき事他宗に難じ申事
一 (39)正月廿五日事 蓮
一 (40)廿五日御斎前に蓮
一 (41)二月十五日事
一 (42)仏前畳まはり敷の所事
一 (43)東山野村殿御
一 (44)御うへにて一家衆・女房衆相伴時事
一 (45)廿五日朝、 知恩講式実如上人あそばされぬ事
一 (46)
一 (47)内陣まはり敷中比上人のきはに一通しかれ下輩衆つかれ候はかいさまなる申自と々被申事
(一 (48)代々の御影二幅に成申候事)
一 (49)代々御明日勤の事
一 廿五日勤の事
一 (50)帷七月七日・五月五日各へ実如上人御時は被下事
一0965 (51)御本寺御指合時勤の調声人事
一 (52)同勤ぜゞの事
一 (53)毎月廿五日の私記事
一 (54)廿二日勤儀被仰事
一 (55)廿七日勤事
一 (56)野村殿南殿持仏堂儀念仏行道堂の御建立あり度候由仰の御物語事
一 同持仏堂勤事
一 (57)蓮
一 (58)昔の報恩講様体事
一 (59)報恩講中の問事
一 (60)勤の儀蓮如の仰実如御物語事 二ヶ条
一 (61)毎朝勤終百返念仏事
一 (62)帰命二字の申様の事
一 (63)本堂漢音経事、 同百返念仏事
一 (64)御影堂後百返念仏事
一 (65)古は一家衆讃を不出衆勤いづれも助音候き、 当時は一向無音也
一 (66)私記のよみ様の事
一 (67)日没八時に成たる事
一 (68)普請あがりの鐘をそく打せられんとて太夜の早く成事
(一 (69)毎月の代々御明日の朝勤)
一 (70)勤の調子たかゝらぬ事
一 (71)唐帽子のかけ様事 実如御かけ候様
一 (72)勤の讃の出様儀事
一 (73)正月七日御鏡卓とらるゝ事
(一 (74)代々の御前灯明は)
一0966 (75)死人小袖等打敷に俄にさせられたる事 蓮
一 (76)賀州三ヶ寺内者蓮
一 (77)如秀禅尼 本泉寺蓮乗女中 如宗 松岡寺蓮綱女 如専 山田光教寺蓮誓女中 往生時弔に御堂衆御下御香典有たる事
一 (78)賀州三ヶ寺依御免誰人にも法名出申事、 依仰拙者出申事
一 (79)末々若衆一家衆実名を可出之由依仰拙者出申事
一 (80)斎時膳をくむ事
一 (82)斎時膳をくむ事
一 (83)実如御時布施を御前にてひかせらるゝに如何と被思食事、 ひかせられず主々の宿へひかせられたる事あり、 近年は又御前にて有事
一 (84)野村殿御
一 (85)聖教外題御免事
一 (86)教行信証御免時之事
一 (87)上人御戸事
一 (88)勤に扇事、 斎之時つかひ候事
一 (89)霜月上洛衆小袖被下事
一 (90)上洛一家御上御亭にて供御被下候つる事
一 (91)御堂辺にて老少正教よみ申たる事
一 (92)御堂衆灯明以下役にて跡へかへられ候事
一 (93)日没短念仏上られ候事
一 (94)私記よみ帰候時の事
一 (95)衣の色くろき事
一 (96)遠国人被遣肴等事
一 (97)御本寺の御住持をばあがむる事 これは不可書申歟也
一 (98)御堂の打置をばのけられ
一 (99)御簾のかけ様こまるの事
一 (100)実如の御時本尊名号の事 経文事
一 (101)座上にをかるゝ人々の事
一 (102)法儀心に入人を御
一0967 (103)一家衆袴之儀筑前被申事
一 (104)一家衆椀の事
一 (105)六要抄の事
一 (106)浄土具書よみ可申由くはだて候へ共、 師匠なく断絶事
一 (107)六要抄はよみ申べきも伺申本を可仕立会実如御意候事
一 (108)うつぼ字の名号事
一 (109)万の外題の事
一 (110)田舎より上洛衆御相伴事
一 (111)御相伴させらる禅衣衆の事
一 (112)代々の御明日之時の勤座事
一 (113)勤の後南の座敷ある時事
一 (114)蓮
一 (115)蓮
一 同実如御代御心ばせの事
(一 (116)実如前住の御時は、 過分に物を進上し)
一 (117)上洛
一 (118)徳度一家衆御礼等事
一 (119)外人 殊公家衆 四日十五日御相伴御精進事
一 (120)慈鎮和尚御寿像事
一 (121)遠国人上洛儀堅両御代仰事
一 (122)遠国俗人等同御調事
一 (123)勤はて時分の事 相働歟
一 (124)廿七日の掃除之時下間衆も被出候し事
一 (125)実如御時御堂衆へ可有讃嘆様、 御文よむべき様被仰出事
一 (126)鐘の前に本堂に実如仰事に蓮
一0968 (127)阿弥陀経始様等の事
一 (127)阿弥陀経始様等の事
一 (128)毎月廿五日の事
一 (129)実如御時五日・廿五日・廿八日等斎日中以下の事
一 (130)布施の引手等事
一 (131)実如御時常御菜三に御申候時深御斟酌冥伽被思食事
一 (132)霜月勤稽古事
一 (133)冥加之儀第一可存事
一 (134)讃嘆申所に相違之段いかにもいかにも能々可心得被仰事
一 (135)蓮如上人御手水の儀水かなしく存候へ共冥加を被思食事
一 (136)実如上人勤行単皮めさぬ事
一 (137)蓮如上人朝勤に御はだより物めしかへたる事
一 (138)野村殿にて霜月廿八日を女房衆取越申儀無之事
一 (139)坊主衆法儀之人被懸御目候事
一 (140)親不孝の仁孝々仁事
一 (141)賀州三ヶ寺寿像 証如御時也 事
一 (142)本尊開山裏書事
一 (143)霜月椽廊下いなばき事
一 (144)将軍御通之時葬所之屋つゝむ事
一 (145)野村殿に正月十五日間椽廊莚敷事
一 (146)報恩講前信上物事
一 (147)精進ちかきに精進入と申事
一 (148)精進ほどきの事
(一 (149)女中がたには)
一 (150)一家衆有所事
一 (151)毎月風呂事
一 (152)十二月はすゝはき事
一 (153)御亭の座上仏法世間に用らるゝ方事
一 (154)凡僧方諸僧方用子細条々事
一 (155)志可引之事
一0969 (156)灯心二筋を被用事
一 (157)二月十五日法事事
一 (158)六時礼讃は存如上人御代迄也、 四反返之事
一 (159)御斎御相伴等案内之事
一 (160)男女たれも御他言申に女房衆方に一切無御知子細事
一 (161)讃の出様の事
(一 (162)実如上人御往生之砌条々被仰置候)
(一 (163)同時一ヶ条に所領方之儀)
(一 (164)今一ヶ条は)
(一 (165)廿八日以下の祖師の御明日に)
(一 (166)御住持様勤行に御出仕之時)
(一 (167)蓮如上人御内衆へ度々堅被仰付事)
(一 (168)邪法を申仁体を)
(一 (169)後生の御免と申事近代被申人候)
(一 (170)蓮如上人の御時には第一冥加のかたを本と)
(一 (171)何よりも親に不孝なる人)
(一 (172)蓮如上人は御膳と被申より)
(一 (173)あたら敷御衣装を蓮如上人はめし候ては)
0970本願寺作法之次第
昔人物語又見及申事等書注申条々
一 ▲古は御堂衆は六人候つると申、 六人供僧とて、 是は平生精進にて候き。 妻子もなく、 不断経論聖教にたづさはり、 法文の是非・邪正の沙汰計にて候つる由候。
一 ▲綽如上人の御時より、 御堂衆に下間名字の人をなされ、
一 当流の称名は小原流也。 総而諸宗共に称名は、 小原・千本両宗を本とする也。 然者円如の仰事には、 下間名字の幼少の人を一人、 小原の称名の弟子になして置、 よく稽古の功ゆき候はゞ、 こなたへ取てをきて、 称名の譜をよくならはせ置て、 当流によく可覚悟自也と仰候き。
一 実如上人被仰しは、 珠数はたゞもたぬ物也、 くるべし、 蓮如上人も御持候ては御くり候ぞかしと、 勤座敷にても仰事候し。 霜月廿六日に日中の間に仰きかせられし。 御そばちかく侍し実円の下に北につき申候時事也。
一 御堂衆こんがうもはかで、 内陣をあるかれ候事、 事の外曲言と被仰候し。 総而
一 実如被仰しは、 蓮如前住仰事候しは、 何時をいはず、 仏前の花のしほれしは、 そればかりたてかへても可然と被仰しと、 実如被仰候し也。
一 座に付べき時は、 へりに衣のすそもかゝらぬやうに、 へりより二寸ばかりのきて付べし。 扇もへりにかゝらぬやうに、 是も二寸ものけて置べし。
一 仏をおがむも、 手をあまりあげたるもわろし、 又あまりさがりたるも悪也。 けさのむすみめの上に手ををきたるよし。
一 おがむに早くはてたるは、 麁相に敬なくて見苦しき也。 心に別なる心もちは有べからざれ共、 しとしととおがみ、 しづかにおがみたるはよし。 実如仰也
一 ねぶるは第一わろし、 見苦て不可然。 内陣の衆は老若共に先よく勤を付べし、 助音なきは、 不可然とて、 実如はつけうつけうと、 御堂にいて勤の間に御さいそく候。 前住証如も付られう付られうと、 仰事候し。
一 焼香は、 蓮如の御時はわろき沈を焼香とてたかせられ候。 よき沈はかうばしき匂候へば、
一 御堂の上壇と下談との間の
一 阿弥陀堂・御影堂の参銭は、 昔より丹後給はる事にて候を、 蓮応丹後代に寄進被申候 明応五、 六也、 奇特の志にて候との御沙汰にて候き。 先阿弥陀堂計のを寄進被申候て、 又一両年後に御影堂の参銭をも寄進被申上候。 殊勝の志よし、 其比の沙汰のみにて候き。 永正初比事也
一 御堂勤行のをはりに戸障子はづし、 各たちさはばれ候事、 実如御時はみまいらせ候事なく候き。
一
一 勤行の時したうづは、 はかせらる物候や。 板こんがうの緒の付やうも二筋にて、 中へ足をさし入候やうに仕候。 したうづの時の緒の付けやうにて候。 ことに開山の三百年忌の時は、 はかせられ侍りき。
一 ▲寺内町の掟を番屋にをさせられ候し、 定て今も所持せられたる人もあるべく候歟。 其内に吹物音曲停止の日、 御仏事七日之間、 毎月廿八日廿五日、 盆・彼岸等停止の事也。 魚売買なき日、 御遊山などの日、 御迎人之儀等、 或鐘数など被注候し。
一 末寺にも、 一寺開山の日勤行ありて、 斎なども昔よ0973りある事候。 然ば其住持は精進にて候き。
一 蓮
一 ▲昔は客人 公家 武家衆も精進にて 汁菜等 御もてなし也、 魚物は不被出也。 但不断出入之輩、 それはさもなく魚物也。 或御遊山の時、 野山にて樽もたせらるゝも、 皆精進なり。 然ば末々の愚老ごときの者の野山へ出申候も、 何ぞ御樽類歟、 又は小漬などもたせらるゝも、 皆精進也。
一 ▲実如の御時、 山科殿より大坂殿へ御下之時、 山科にて 一日のうちに昼御伏とて、 七ヶ所御小供御参らせける事ありき。 七ヶ所ながら精進にこしらへ進上候。 前々如此候。
一 面向之御客人の事、 精進にて候をやぶれ候事は、 細河右京大夫政元 号大心院 のやぶられたる事候。 其初細々野村殿へ政元被参候に、 始精進にて候つるが、 或時政元深草瑞林院に被申事は、 本願寺に行てなぐさみ活計せんとおもへば精進なり、 魚物を被食候と聞に、 精進にて何共わろしと物語せられ候を、 瑞林野村殿にて
一 祖師御命日、 又御仏事中、 盆三ヶ日、 彼岸一七日の御客人、 昔よりのごとく精進の御あひしらひにて候。 今も如此御入候はゞ、 外聞はよく御入候べき歟。 出家の人の御相伴の時魚物など参事、 且以なき御事にて候。
一 町中も御精進日は、 樽のさかなにても御入候へ、 御坊中又町をも持とおる事停止候き。
一 実如の御時は、 毎年三月廿四日夕供御精進也、 仍田舎末寺も同前に候。 蓮
一 ▲一家衆之物ぬぎかへなど候座敷御入候はでは、 いかゞにて候。 野村殿にては、 御堂北南に両所にへや候き。 小便所・手水桶両所に候き。 是又今も御入候はゞ、 尤一家衆可存候。 有所なくて各一段迷惑候。
一 教行信証は、 蓮如上人の仰には、 廿歳より内にはよますべからず候。 若時は何としても聊爾に存ずる間、 廿より以後よますべしとの仰候間、 愚老も廿五にてよみ申候。 兄弟中悉慶聞坊被教事候由被申候て、 我等よみ果候て宿へ罷越候時、 前住様へ講習申候て、 今拙者兄弟中にも皆々教候とて、 落涙候つる事にて候き。 慶聞は大涯空に一部は被覚たると見え申候き。 第一始一丁御住持へ請申事とて、 各請申候。 拙者も少実如へ請申候。 御目かすみ候とて、 始少請申、 次を円如へ一丁計の末を請申候き。 実従 順興寺 同前候き。 近年人々御堂0975にて請申候に被申候。 拙者などは南殿御亭にて請申候き。 南殿と申は野村殿にて蓮
一 ▲霜月廿八日御斎もいまだ過ざるに、 近年は御精進ほどきのためとて、 魚物を各進上候。 あまりにはやく見え申候。 野村殿などにて見及申さるゝ御事に候。 併廿八日の晩は、 魚物もまいり候様にうち見まいらせ候体、 見苦存候。 古も一向なき体の様申人も候き。 これは御停止候ても見よく御入候べき歟。
一
一 ▲末々の一家衆袴を著候事、 古はなき事候。 越前の吉崎立候て明る年、 蓮如御越年候し 文明二歟 正月二日、 照護寺玄永、 年始の御礼に参候時、 著袴候て、 其まゝぬぎかねて著し候事にて候と、 玄永 後には岡崎と申所隠居候てより岡崎と申 主の雑談被申も、 聞申たる事にて候。 さらに上より著し候へと、 被仰たる事もなくて、 いまに加様に著し候とかたり被申候き。 然間永正十年比、 野村殿実賢 超勝0976寺・賢心 瑞泉寺 上洛申候。 報恩講あひ申され候時、 袴を一七日の間ぬがせられ侍し。 両人外あまた末の一家衆候つる由候。 みなみな袴をぬがせられ、 白衣にて侍りき。 実如上人の仰にて侍りき。 一七日間斎非時も如勤行、 一家衆をのをの加様に候き。 一七日すぎて北国へ下られ候時、 近年著せられたる事にて候程にとて、 又著せられき。 北国賀州にても著仕べきかと被申候しに、 それはかさねて可有御思案候、 まづ此間のごとく末寺の間にては白衣たるべしと被仰候て、 北国にては白衣にて候つるが、 袴を著せられたる方もありげに候。 これは勤行などに被著候事みぐるしく、 他宗人も難じ申事にて候。
一 昔東山大谷殿などにては、 御坊中にいづくに女房衆御入候共見えず候きと被申候。 大谷殿は本堂 阿弥陀堂 三間四面、 御影堂は五間四面也。 ちいさく御入候つる事候。 慶聞坊さし図をせられ候つる。 御亭と御堂の間、 竹の
一 蓮如御時は、 昼夜不断仏法の事より外之儀被仰srはぬ様に候しと、 各被申候。 第一冥加のかた事外に被仰候しと、 各被申候事にて候。 当時は仏法方の事さへ被申出候人さへ、 且以候はず候、 冥加と申事は、 かりそめにも被申出人承候はず候。 勿体なき事候也。
一 野村殿にて、 武者少路殿には女房衆十人計、 比丘尼衆四人歟、 若殿原衆は二人、 下間源五・同名源十郎 刑部卿祖父 両人計にて候き。 いづれも若年の時は、 御うへに奉公候し、 廿年ばかりより後は、 いづれもおもてへ出られ、 御
0977(34)
一 御うへにて供御などの各一家衆・女房衆御相伴之時は双方へわけられて、 一方は法師衆、 一方は女房衆にて候つる事候。
一 一家衆のむすめ共も、 むかしは和讃・正信偈をも経をもよみ申、 御堂などにて連経の時は、
一 人の志申され候事つゞきて、 すくのなき事候つるに、 点心ばかり、 むしむぎ・うどむ計被申たる事候き。 一家衆
一 代々の御影御前は灯明計、 灯明四日・十九日・廿日・廿四日・十四日・十八日に計参、 末香も参候。 其時は、 廿五日は前住にて御入候間、 申にをよばず候。 証如御代より毎朝灯明の参候は、 尤の御事と申あひ候。 同正月の修正七ヶ日、 彼岸七ヶ日、 本尊の御前の蝋燭のとぼされ事、 証如の御代より始候。 是又尤0978御事と候。
一 永禄三年二月十五日に、 御代に一度御入候松ばやし御入候つるは、 他宗の人々事外に難じ申候御事候。 一日御延引候て、 十六日に御入候へば、 珍重に御入候事にて候。 釈尊御命日に法事の御入候はぬ事をこそ難じ申事にて候、 松ばやしは如何御事候やと申事に候。
一 正月十五日には、 蓮如の御時は毎年三ヶ日御仏事御入候と、 申にも御入候、 覚不申候と、 申にも御入候。 毎月廿五日には、 御
一 蓮如の御時は、 廿五日御斎前に名号を三百幅まであそばされ候と、 注たる物に御入候き。 然ば廿八日十八日御斎前にも、 百幅二百幅名号を被遊たる事に候間、 実如の御時又同前に御入候き。
一 二月十五日に勤行斎など御入なき儀、 他宗の聞及候て、 事の外に不審をなして難じ申事にて候が、 田舎如何の御事候や。 蓮如の御時は、 勤御入候と、 申人も候。 円如には他宗難じ申事御聞候、 一段と勝事に思食、 実如の御時可有御申との御事にて候き。 既盆も彼岸も就仏説御入候うへは、 涅槃はそと御入候はでは、 不可叶御事とて候つる。 諸宗一同涅槃儀ある事にて候由申候。
一 堂の内陣に畳まはり敷の事。 越中瑞泉寺は、 綽如の御時御建立にて候間、 畳まはり敷也。 然而一乱に焼候て後、 草屋に坊中立候時、 堂の押板に仕候てより、 近年如此。 此寺を引て立候間、 本泉寺又まはり敷に候つ0979ると申候。 三河国土呂、 播磨国の英賀両所共に蓮如上人御建立、 畳まはり敷の内陣にて候。 坊主衆の所も、 ふるき所は畳まはり敷の内陣多候へ共、 一乱以後は草屋に立候とて、 皆々常の押板にて候。 二俣本泉寺、 始は内陣畳まはり敷にて候つる。 一段としげく焼、 五、 六度火事に及候て後には、 草屋により、 常の押板候。
一 昔は東山に御座候時より、 御亭は上段御入候と、 各物語候。 蓮如上人御時、 上段をさげられ、 下段と同物に平座にさせられ候。 其故は、 仏法を御ひろめ御勧化につきては、 上臘ぶるまひにては成べからず、 下主ちかく万民を御誘引あるべきゆへは、 いかにもいかにも下主ちかく諸人をちかく召て、 御すゝめ有べきとての御事にて候と被仰候て、 平座に御
一 女房方にて一家衆、 同女中衆、 ひとつに供御など御入候時は、 女中衆は内方、 一家衆は庭の方、 左右にわけて座山科にて御入候き。 当時は女中方は上に御入候て、 男方衆は下に御入候やうに、 昔は御入候はで対座の心候き。
一 蓮
一 代々御影を二幅にさせられ候事、 証如前住御往生已後、 祐誓 慶寿院殿 させられたる事候。 前には一幅に七代の御影御入候き。 八代に御成候間とて、 二幅にさせられたる御事にて候歟。 他流などには七代の外、 別に書事候由申。 但如何事候哉。
一 御堂内陣、 開山聖人三百年忌比、 昔内陣三間の座のとおりに畳しかせられ候つれ共、 下座の心にて一家衆・下輩の衆つかせられ侍り、 烏丸殿の意見にて、 御入候つる歟、 かいさまなる由、 各申事候き。 他宗には、 いく通も押板きはよりうしろの方へ下座の方へ敷候ては、 仏のきはが上座にて、
一 代々の御影二幅に成申候事は、 証如御往生候てより、 慶寿院殿 鎭永 の御料簡候。 前は一幅に六代御入候つる事候。 其後二代御影のせ被申て、 八代御入候事にて候。 天文廿三年以来事候。
一 代々御命日に正信偈くり引になり、 讃之終ゆりのなく成候事は、 証如の御事よりの事也。 実如之御事までは、 正信偈くり引にあらず、 少早く御申候し、 讃之終0981にもゆり御入候事にて候き。 廿五日に蓮如の御命日ながら、 法然上人御命日候間、 何とぞ可有御座事候哉。 蓮如は山科殿・大坂殿の開山也、 法然上人の御命日也。 蓮如之御時までは、 大坂・日中斎御入候つると、 各被申候。 実如の御時には前住にて御入候間、 太夜・日中真御入候間、 法然上人の御命日儀式まぎれ申候て、 此比は無分別候。 蓮如上人御時には、 法然上人御命日儀式御入候し由、 各申され候間、 此比も其儀可有御入候歟との各申事候。
一 実如上人御時は、 毎年色々の帷を下間上野介やどにて五百させられ、 ぬいたてられ候。 同名兵庫助宿にて二百以上、 七百の分をさせられ、 五月五日と七月七日、 不断祗候の座頭三人、 猿楽四、 五人、 北国より上られ候一家衆、 遠国より上洛候坊衆、 又不断御とぎ被申候出家十人計、 以下衆被下たる事にて候。
一 ▲宿老衆物語申されしは、 御本寺にはつとめの調声人、 御本寺には御堂衆・御同宿衆などにははじめさせられず、 必ず御留守などの時は、 一家衆にはじめさせられ候事にて候よし申されし。 虚言申さぬ衆の物語にて候つる事。
一 ▲御本寺にむかしは朝勤の正信偈のぜゞに御申候は、 正月朔日と七月十五日の朝と二度ならでは、 昔はぜゞに御申なく候由候き。 其外は正信偈ぜゞにはあらず、 はかせに御申候事にて候と物語候き。 上古にか様に御入候事に候。 定子細御入候べく候。
0982(53)
一 蓮如上人の御代には、 毎月廿五日の勤の後に、 知恩講私記をあそばされ候き。 実如上人御時よりあそばさず候。 蓮如の御時も、 何事ぞ御さし合の時は私記はあそばされ候はで、 早引にて御入候由候。
一 ▲廿二日は早引ばかり御入候つると被申候。 蓮如上人仰に、 今日は太子講の私記をあそばされ度候と度々仰事候つると、 各宿老衆物語に被申候。 実如の仰をも承候き。
一 廿七日も毎月両師講式を如廿五日、 常の勤の座敷にて、 さはりにても、 廿五日廿七日の式はあそばされ候由候。 御堂に七高僧の御影かゝり申たる時も候つる。 年余御往生五、 六年後は、 みどうにかゝり申候。 七高僧にては御入なくて、 法然上人をのけて六高僧にて、 野村殿に本堂にかゝり申たる事にて候。
一 ▲野村殿南殿に念仏行道堂を御たて候て、 念仏を行道をおりて御申あり度候と、 蓮如上人度々仰事候つると、 宿老衆も物語被申候。 実如上人も蓮如の仰とて御物語候つるを、 数度うけ給候き。 さ候時分、 永正十三年夏、 南殿御亭の庭に水をたゝへられ候を半分ほどうめられて、 持仏堂を立られ候き。 やねはこけらぶき、 本尊は興正寺門徒の人、 本尊の木仏を寄進申たるをすへられ候き。 其時是は行道堂にて侍らんと各申候き。 然共さ候はで、 たゞの持仏堂にて、 両脇三尺余押板に、 一方は蓮如の御影に三具足灯台以下如常、 一方には連祐禅尼の御影かゝり、 三具足以下あり。 五日の朝と廿五日の朝と、 毎月勤行御出候て、 実如上人御調声あり。 廿五日正信偈又念仏正信偈の時もあり、 讃三首。 五日は正信偈ぜゞ也、 讃三首也。 正つきの時は太鼓・日中、 花0983足も打敷もあり、 助音何時も同、 御堂衆二人・一家衆・内陣衆計参、 助音申也。
一 ▲蓮如上人御年忌三年七年以下の一七日の御仏事の時は、 南殿昔の
▲報恩講の儀、 御文にもあそばしをかれ候ごとく、 太夜過候へば、 人をことごとく出され、 御影堂に一人も人なきやうに成候て、 のぞみの人五人三人残り候やうに見え候。 人多き時は御堂衆・坊主衆、 手蝋燭・しそくをともし持て人を出され候て、 門をばたて候。 御影堂には五十人人候て、 第一坊主衆改悔候て、 次に其外一人づゝ前へ出られ、 坊主衆の中をわけられをかれて、 前にすゝみ、 諸人改悔候間、 一人づゝの覚悟申され、 聴聞申候に、 殊勝に候し。 縁などより申候は不可然候。 一大事之其法の一儀を縁の端などより被申は不可然とて、 一人宛前へ出て改悔名をなのり高らかに被申候て、 一人一人の覚悟も聞え殊勝候き。 当時の様に五十人百人一度安心とて被申候へども、 わけもきこえず、 悤々しきばかりにて、 何たる事のたうときも義理の相違も何もきこえず候事は、 前代なき事にて候。
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一 一七日の間は仏法ばかりにて、 世間の物語の一言もなきやふに候つる、 蓮如の御時の事をば皆々被申候。 又は実如も報恩講中には、 蓮
一 勤に蓮如常に仰事、 実如御物語数々御入候き、 忘申候。 正信偈を付候に、 初に 「法蔵菩薩」 と云を、 「ほざう」 と付るはわろし、 「ほうざう」 とすべし。 又廻向の末 「往生安楽国」 のはじめ、 「わう」と口をひろげ申は聞にくし「をう生」 と云心に申べしと、 これをば常に細々被仰しと御物語候き。 其外仰無限事候。
一 念仏をかろく申べし、 讃をもかろく出すべしと、 条々仰事候き。 毎朝勤の上の百辺は、 代々の報謝の心と候。 百返よりたらぬもまろし、 あまるもわろしと仰事也。
一 浄土和讃の終に 「帰命せよ」 の 「命」 の字、 「う」 のかなをはりて申はわろし、 「うせよ」 ときこゆ、 聞わろし。 「う」 のかな、 そとかろく云べしと仰也。 加様事あまたありき。
一 ▲本堂の阿弥陀経は、 嵯峨本とて弥陀経のすり本候、 漢音を付たる本にて候。 綽如上人あそばされたる弥陀経本被見申候つるにも、 嵯峨本のごとく御付候て、 如此嵯峨本のごとく毎朝すべし、 奥書にあそばしをかれ候0985き。 此本は漢音ばかりにあらず、 御恩も少まじり、 唐音もあり、 くだらよみとて、 聖徳太子の百済国より取よせられたるよみにて候間、 くだらよみと申にて候。 当時はちとかはり申候歟。 古円如の御稽古候つる、 件のさが本にて御稽古候き。 当時は御恩おほくまじりたるやうに候。 阿弥陀経念仏百返よりあまり候へば、 実如上人は物を御ならし候て御成敗候し。 たゞ百返よく申べしと被仰き。
一 御影堂の毎朝の短念仏は、 古はながく御入候き。 「陀仏」 とはきこえず 「阿仏」 と御申候やうに、 「陀」 の字あたらで御申候き。 子細あるべし。
一 昔上檀の人数、 一家衆は阿弥陀経以下、 何をも助音申され候き。 当時は一向音出されず無言なる事、 いはれなき御事候や。 但如何。
一 私記あそばし候時、 三らい一向きこえ申候はぬ事、 如何御事候哉。 実如のあそばしたる時は、 あきらかに諸人耳にきこえ申候、 少はかすかにも成やうの時も御入候し。 円如はうち上てあきらかに候き。 ひくからぬ物にて有べき事と仰候き。 他宗は何宗も私記の調子に出候。 昔は何も高く出され候き。
一 ▲日没も昔は七時だありし事本式也、 日の没する時の声命也。 然を永正七、 八年の時分より八時になりたる。 さ候間、 則末寺にも八時に成たる事也。 大坂殿にも永正十八年辺に八時に有之。
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一 ▲太夜と申も、 昔は七時過半時也、 大略六時以後有たる事也。 実如御時も、 大略六時打廿七日廿四日の太夜ありつる事候。 普請の時を早くさせられ、 八時になり申候き。 普請のあがりの鐘を七時過につかせられ候て、 八時に有つる事也。 太夜はよる本とみえ候也。 善導和尚の行事の時分候也。
一 毎月の代々御明日の朝勤正信偈の終くり引は、 証如之御時より如此、 讃のをはりゆりのなき事同御代より被定也。 実如之御時は、 すこし真に御入候き。 平生の勤も少真に実如の御時は御入候き。 但不同御事候き。
一 実如上人御時は、 つよくてうしさがり申候間、 たかく被出候つる事候故、 中山黄門 宣親卿 小原の声名師、 名仁語候つるとて物語候つるは、 声名はさのみ高からぬ事にて候と申たると物語申されてより、 たかくはさのみ御沙汰なく候つる。
一 実如上人
一 実如の御時、 蓮芸を御使にて、 一家衆讃出候衆に可申とて被仰候しは、 実如御出しあるべきは、 念仏を申はてゝ、 しづかに御出しあるべし、 各は申はてはに 「南無阿」 といふ時、 かろく出され候へと被仰出候し。 あまりはやきもわろしと、 仰事候しを覚申候。 其後又如0987覚を御使に、 同前に被仰出候と、 如覚物語も候き。
一 正月初一七日の修正の時、 代々の御影ことごとく懸候時、 御鏡参にみなみな御前に
一 代々の御前灯明は、 実如の御代までは御明日にばかり、 四日・十九日・廿日・廿九日・廿四日・十四日・十八日計ともされ候つる。 証如の御時より不断ともされ候。 背は尤の御事と存候。 末香も同前候歟。
一 人々下々の衆にても候へかし、 死人の遺物などに小袖の類ひ遺物に進上候をば、 蓮
一 蓮
一 大永元年二月五日に如秀禅尼 本泉寺蓮乗女中 往生之時、 二月下旬比、 実如上人より御弔とて、 御堂衆浄頓を若松へ下され、 御香典五百疋下され候き。 波左谷の如宗禅尼 蓮綱女中 永正十一年夏往生候時も、 御堂衆を御弔にさし下され、 御香典実如上人より被下侍りき。 同年十月に光教寺如専 蓮誓女中 往生の時、 同御堂衆御弔に御香典被下候き。 同年十二月富田へ事愚老が妻了忍往生し候にも、 御堂衆可被下之由被仰出侍しを、 本泉寺蓮悟野村殿に有合て留申、 御香典を三百疋被下侍りき。 古は如此御入候き、 当時はあるべからざる御事にて候へ共、 古の事を申候計候。 同年二月七日富田教行寺 蓮芸女中 御弔に御堂衆被下候つる、 同前事候き。
一 波左谷蓮綱・山田蓮誓・若松蓮悟三人は、 自門徒之事は不及申候、 他門徒直参の人にても候へ、 俄事などに入候事候へば、 法名を出し可申由、 蓮如上人の仰にて出し被申事存知候間、 実如上人へ拙者伺申候て、 俄人の所望候事候間、 出し可申歟と申入候へば、 三人と同前に出し申候へと被仰候間、 拙者も出申候事候。
一 興行寺蓮恵 実名兼英 松尾玄喜 実名兼泰 了忍実名可申入候由、 賴被申候時、 外記に文字音相尋宗申入候時、 教恩院殿、 末々の一家衆には名字を出し申せと被仰候てより、 少々五人三人へは実名愚老が俊の字すへて出し遣候き。
一 斎非時に膳をくむ事、 昔なき事也。 諸宗共当時はくみ候程に、 これにも如此膳をくむ事に候と、 実如上人斎の上に御物語候し事を覚申候。 信証院殿七年は永正二年にて候。 其御仏事前より膳くむ事出来候。 永正四0989、 五年の年より、 是の斎非時にもくませられたる事候。
一 ▲時大鼓、 野村殿にて
一 日没昔より七時打也、 八時を打て有事は近年の事也。 永正十年比より也。
一 斎非時の上に茶子あくべき前に、 人の志の布施は引也。 永正十一年の比、 人斎の上に布施ひかれしに、 上への御布施ひかれて、 一家衆・坊主衆までひかれて、 俗人の人々にはもとよりなし。 然而不同なる事の又見苦き事も候つるとて、 人の不審の儀候つる間、 御前にては無用とて、 其比より停止候て、 各々別々其人の処へ引べき由教恩院殿の仰にて、 其人々座敷宿所へひかせられたる事也。 近年はひかせらるゝ事候歟。
一 持仏堂は野村殿にも昔より御入候へ共、 永正十三年に結構に立らるゝ。 南殿御ていの庭中の池をなからはうめられ、 横二間長三間半に畳つめしき、 まはり敷にあらず、 九重座の上木像本尊は、 興正寺門徒寄進申候。 御豆子のせらるべきにて候つるが、 結構にみ事にて候つる間とて、 御づしながらすゑ、 かな戸びら半金子なるにて候き。 本尊脇には、 南に蓮如上人御影、 北には蓮祐禅尼聊ちいさく新敷をかけられ、 廿五日と五日とに朝ばかり讃三首毎月在之。 やねはこけら葺、 あ0990つさ四寸五分、 板敷は南殿御ていのなげしの上一尺計に候つる。 此立られ候つる間、 御
一 聖教等の外題は、 我本には御らかき候由候。 さも候事候や。 申入候て御免候てかく事と、 宿老衆物語候間、 教恩院殿へ教行信証外題、 其外上人の御作抄等之外題申入候時、 人所望候に可書遣歟之由申入候へば、 可書遣之由、 直に被仰候。 申入時は以筑前法橋申入候し。 御免之由被仰間、 以悪筆所望人に書遣事候。
一 教行信証は、 昔は若年の人にもよませられ候きなれど、 信証院殿仰には、 若時は何として聊爾に取
一 昔は上人御戸はたと立つめらるゝ事無之候。 明らるゝ事而已繁候処、 御門徒中之間申事候つる問答にまけ候仁口惜との両人まで、 開山聖人御前卓のきはにて腹をきる事有之。 実如御代永正之初比事に候。 其砌より御戸はたてつめられ候事候。 本来上人の御戸は御住持之御役にて候へ共、 事繁候間、 御代官に一家衆・下間丹後等明られ候。 綽如上人の御時は、 鎰取の役人下間名字一人被定侍りき。
一 ▲勤行之時、 内陣にて夏扇つかはれぬ事は近年事候。 前住蓮
一 報恩講に上洛し会申候一家衆、 霜月廿日比、 白小袖一被下候き。 愚老兄弟中愚老なども被下候。 さのみ末々の衆には被下たるとも覚不申候き。
一 何時にても候へ、 兄弟中又は上洛の一家衆御礼申候明る朝、 御上にて御相伴に供御被下候。 御汁二、 菜四、 五にて、 茶子ふちだかにて三、 五色御入候き。 又二、 三日のうちに御亭にて御相伴供御被下 汁二 菓子二、 三 菜三又は五 にて御入候き。
一 ▲野村殿の御堂にては、 いかなる朝も五、 六十人百人ばかり、 坊主衆子共、 又は其外人の子ども、 又は老者・入道のやうなる人ならびゐて、 かしましき程に和讃・正信偈、 経論正教をよむ人おほく候しが、 当時は一向なき事候。 これいかがの儀候や。
一 御堂衆の勤前に焼香・末香等を本尊・上人へまいらせて跡へかへられ候事、 古はさもなかりしと申人も候、 愚老なども覚申さず候。 其まゝ上人の御前へ出て、 下檀へかへられ候つるが、 上人の御前をとおらじとて返0992られ候て、 南の方へ出られば、 上人の御前をばとおらではかなふまじく候や、 如何。
一 毎日日没の短念仏は上られずと各覚たると申人候。 愚老もさ候つる歟と覚申候。 総じて短念仏はあげぬ事と申ならひ候。
一 ▲私記よみに上人の御前へ御まいり候は、 北より御参候て、 よみ果られては、 南へ御かへり候也。 蓮如も若御入候時は、 南へ御まいり候て、 本座へ御帰候也と申候。 実如は五十余年の時分よりは、 南へ御まいり候はで、 北の本典へ御帰候し事也。 左へ御まいり候はぬは、 御位上の心歟。
一 ▲直綴などの墨染の色くろき不可然候とて、 ふかく曲言之由、 蓮如上人は仰事候き。 されど世間の人外人にはくろきを著し、 一家衆は被出候事候時、 著したるを御覧ぜられ、 近比近比殊勝に候と被仰て、 いや殊勝にも候はず候、 をれは弥陀の本願こそたふとふ候へ、 更にたうとくもなきぞと常々被仰侍しと、 各宿老衆かたり被申候き。 いかにもいかにも当流の儀は、 うす炭なるが肝要候と被仰、 教信沙弥の作法たるべきと常に被仰し也。
一 遠国より坊主衆・御門徒衆上洛候時、 御見参之
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一 実如上人御物語次でに被仰事には、 愚老が耳を引よせられて仰には、 本寺の住持もつ者は、 はしに目鼻を付たるやうなる者なり共、 皆門徒以下の人は賞翫すべしと意得あがむべし。 上人の御代官を申身にて候間、 敬しむべきが肝要也。 加様の事はこと人には云まじを、 主なればこそいへ、 弟にて候間いふぞと仰侍る也 御言ばを其まゝしるし申也。 かたじけなくありがたく存侍る事也。 この段三度歟、 愚老わかく侍比仰事候也。
一 ▲野村殿にて御堂の
一
一 実如の御時は、 本尊・御影の御礼、 名号・御文の御礼申候代物をば別にをかせられ、 不辨
一 ▲昔は法義心に入、 信心の人をば座上させられたる事にて候きと、 各物語候。 其証拠には法敬坊にて候。 前には御下部にて、 御輿かきたる人にて候へ共、 めし上られ座上させられ、 坊主衆座上にて候き。 近年は遠国次第に座上させられ候とて候。
一 坊主衆にも、 仏法を心に入嗜人々をば、 袴御免候て、 白衣になさせられ候人候き。 近代もあり。
一 吉崎殿にて或人、 下間筑前法眼 玄永 にたづね申候には、 坊主衆をさへ袴御免候て、 白衣の人御入候が、 何とて御一家衆には御免の御方も御入候はぬぞと尋候へば、 玄永の返事に、 御一家衆には袴をめさせられ候はぬ事にて候き。 御一家衆のわれわれにめし候事にて候間、 御存知なき事にて候まゝ、 ゆるしまいらせられ候はぬ事にて候歟と存候。 御一家衆御袴勤行などにめし候事は、 他宗の人もみぐるしき事と申され候。 諸宗になき事にて候と申され候き。
一 御一門の椀とて、 昔より椀各別、 聊も下輩の人にもつかはれざる椀御入候事にて候。 当時も御入候由候。 この椀を興正寺の蓮秀の前へすゑ候て、 蓮秀たべられたる事候き。 これを御覧ぜられ、 蓮如上人大に曲言の由被仰、 其椀をめしよせられ、 御前にて火ふき竹にて、 御てづから悉く打くだかれさせ給ひ候き。 聊の事も
一 六要抄をば当時よむ人なく笑止との仰事。 蓮
一 永正十五年の夏、 浄土の本書四帖疏をば各よみ申候へ共、 具書 善導御作 分はよむ人なく候間、 おむべく候て、 愚老興行せしめ、 弟にて候本善寺 実孝・順興寺 実従、 道心によみ候はんと興行仕候へ共、 師匠なく候し、 よみ様存知の人なくて候。 既に断絶事候、 勝事之儀候哉。
一 六要抄は、 本こしらへ候事も、 よみ申事も申入て仕候。 教行信証の注なるによりて同前に仕候。 愚老は、 実如上人御往生の十日ばかり前によみ申べき事も、 本を仕立べき事まで申入候き。
一 うつぼ字の名号は 泥にて書候名号 絵師が所に本御入候。 以上四幅の分歟。 大幅三、 六字名号少きなる共に、 四ふく御入候。 野村殿にて御影堂に南の押板の中に不断かゝり申候は、 蓮
一 三部経外題は、 上巻は无量寿経上、 下巻は同下とあり、 観経は歟无量寿経、 小経は四紙弥陀経と也。 又正教之外題も本を、 蓮
一 田舎・遠国より上洛一家衆は、 実如の御時は、 初は御上にて供御下され候。 其後も細々御亭にて実如御相伴に五三日あひ候て、 被下侍し時也。 同遠国より上洛大坊主衆も、 同前に緒御亭御相伴にて飯を下されし事也。
一 蓮
一 御代々太夜・日中は、 御影前は脇二間押板間にて候へば、 御住持御一人勤は御役候。 一家衆五人十人押合次に付申候に、 北方に付申候人計押板のかたへ少向申候。 聖人を
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一 勤など過候て、 脇の座へ一家衆出候時、 縁に畳しかれ所有事如何之由、 光応寺蓮淳など常申候て、 うへに各あがり居候き。 縁の座は坊主衆の座候間、 不可有候由、 宿老衆御申候き。 尤候歟。
一 蓮
一 同蓮
一 実如前住の御時は、 過分に物を進上し候へ共、 何とぞ必被遣事候き。 心に入申候と思召され、 何物をそも必々其志を御感の心のみにて候き。
一 ▲上洛之一家衆、 年頭之御礼皆心々に申され候。 過分0998儀如何之沙汰に及候し時、 各以談合
一 ▲同一家衆子ども徳度之時御礼之儀、 同時過分之儀不可然との儀也。 是も被定て大納言殿御手にてあそばし被出候。 各所持候き、 我等も持申候き。 御明 百疋、 御住持 百疋、 御堂衆 五十疋、 別の剃人何ぞつかはし候き 是も日記になき事也、 武者少路殿 五十疋、 大納言殿 五十疋、 丹後法眼 疋、 左衛門大夫 廿疋。 是は左衛門大夫へは無用之由被仰候間、 強而申入候へ共、 努無益と堅被仰候き。 両条共に永正十年也。
一 実如御時に客人御入候に、 四日十五日には精進にて候入つる。 子細は四日青蓮院殿尊応の御命日、 師匠の御心ねにて候間、 公家衆其外の外人には、 精進にて御入候き。 公家衆へは魚物の事にて候、 人により精進人も御入候き。 十五日は日野殿唯称院殿の命日なれば、 外人には精進にて候き。 然ば順如の御時、 十五日にも精進にて御入候。
一 山科殿にては、 慈鎮和尚御寿像御入候き。 親鸞上人御秘像、 讃も慈鎮の御自讃にて候。 一段結構の表襃衣0999にて御入候き。 是も御師匠とて御申ありたると存候。 御命日は九月廿五日なれば、 法然上人と同日の御事にて候つれば、 不及御精進之沙汰候と存候。 実如御時事
一 遠国より上洛の大坊主衆、 上洛の時は必御対面の時もさかな・雑煮などにて、 麁相には御入なく候。 末々衆遠国より上洛御門徒衆にも、 雑煮のやうなる物にて、 御さかな蓮如上人の御時よりさせ候。 聊も悪こしらへ候ては、 可為曲言之由度々被仰たるとて、 此儀実如上人御物語候つるは、 前住蓮如の御時、 雑煮を被仰付たるをめしよせられ、 先きこしめしたるに、 散々に塩をからく味ひわろくこしらへたるを、 誰かしたると御尋候て、 其中居衆御折勘候つる。 遠国よりもはるばると上候聖人の御門徒の人に、 加様にわろく
一 遠国より上洛候大坊主衆は不及申候、 長男の様俗人にも、 在寺中に御亭にて御相伴にて魚物のめし被下たる事にて候。
一 野村殿にては、 御堂の勤のはて時分に、 障子はづされてさうとうしたる事もなく候。 はて時分、 少男女共に末座の衆立さばく様の事は候つる。 さのみ今の様にはなく候。
1000(124)
一 廿七日ごとの掃除、 御仏事前のさうぢには、 丹州兄弟、 又慶聞坊・
一 実如上人御時、 下間駿河入道をめして、 御使として御堂衆被仰出候し、 勤後には御文よみても讃嘆すべし、 先讃嘆しても御文よむべし、 讃嘆の中にも御文よむべし、 御文よまずして讃嘆ばかりもすべし、 一様にはすべからずと被仰出候て、
一 実如上人被仰候しは、 阿弥陀堂へ鐘より前に御参候て、 しばらく御座候し時、 御法談候て、 法語共仰候て、 堂衆の不法なるは浅
一 本堂にて鐘より前に御参の時、 鐘のはつるとおなじ様に御堂衆経を始られ候しを、 曲言と仰事候し也。 鐘のりうりうと末のひゞきある内に
一 蓮如上人の御時は、 廿五日には御精心にて候とみえ候。 法然聖人の御命日にて候間、 廿四日に太夜、 廿五日に日中も御入候歟。 御斎まへと被注候事共候、 廿五1001日の御斎前に必名号を各申されしを、 一度に三百幅あそばされたると、 被註候事候。
一 実如上人御時、 野村殿にては、 廿五日御斎は 汁二 菜五 茶子五、 年始には菜六、 三月御正忌日には御汁三 菜八 菓子七。 五日毎月 汁二 菜三、 年始菜四、 御正忌十二月五日 汁三 菜八 菓七。 廿八日は毎月は 汁二 菜六 菓子三、 年始 汁二 菜六 菓子七、 十一月 汁三 菜十三 菓子七 九歟。 近年は結構に成申候歟。
一 布施被申時は、 斎茶子あがらぬ前に被露也。 一家衆への布施は下間衆使也。 坊主衆へは殿原衆誰にても。 末の俗人などへは布施はなし。 布施の後、 茶子をあげられ候。 近年実如の布施を御停止にて候き。 さ候へば斎日中過て各々に志を被申候き。 是は子細有事候
一 実如御時は、
一 霜月朔日二日頃よりは、 入夜て一家衆 内陣衆・御堂1002衆、 毎夜勤稽古御入候事、 自前々有事候。 近年一向無其沙汰候、 如何候哉。 廿八日之私記あひの讃・念仏稽古は、 廿五、 六日之間に入夜有之事候。
一 冥加のかた専可存の由、 前住蓮如上人仰とて実如上人も仰事候き。 深く時々剋々万の儀に付て深く可存子細、 兄弟中存候て、 今おさな者共に成仁候はゞ、 堅固可申聞之由、 被仰置候由、 皆々も被申事に候き。
一 各讃嘆被申儀に付て、 諸浄土宗法文も当宗も面向同様事多候へ共、 内証各別之儀候。 他力と被勘候へ共、 諸浄土宗は皆自力候。 大各別の事にて候に、 他
一 蓮如はいかなる極寒にも、 御手水には水を御つかひ候。 湯をまいらせ候も、 無冥加之由被仰候き。 あまり極寒の折節、 湯を少御手水の中へ、 各かなしがり候て、 入られたると候。
一 実如は御往生の前の年夏比より痲病の御煩候し間、 秋末比より御足冷候ては不可然の由申候て、 勤行に御参之時、
一 ▲蓮如上人は、 夜めしたる物はきたなきとて、 いかなる極寒にも仏前へ御参之時は御はだより別の物めしかへ御参候。 各さむき時には、 かなしがりまいらせ候て、 夜中よりこたつの上にめし物ををき、 あたゝめ候1003てまいらせ候共、 召候時は、 打はらひ候てえしたるとて候。 冥加をふかく被思食候て、 如此候つる由、 各宿老衆物語候。 是は中々不可成事候。
一 野村殿にては、 女中衆御座候方には、 持仏堂の様なる事御入なく候。 霜月廿八日前にも、 廿八日之御志とても、 女中方に且以下々衆迄も、 御仏事取越て被申人たれも無御入候き。 当時は女中方其御志候やうにみえ申候事ありがたき御事にて候。 但如何。
一 蓮
一 親に不孝の人は一段曲言之由被仰、 折々御折檻の事候。 二親に孝々なる人をば一段と御崇敬の事にて候。 蓮如上人以来、 如此候。
一 波佐谷松岡寺蓮綱・山田光教寺蓮誓・若松本泉寺蓮悟、 三人往生の時、 影を申入候、 何も寿像に御免候し。 殊に蓮綱と蓮誓は、 現存之時於野村殿かゝせられたる事候き。
一 順如上人 願成就院殿 御時、 御病気によりて不断御酒ばかりにて御煩候し間、 本尊・開山の御うら書もあそばさず、 慶聞坊 幽玄・越中正珍御堂衆にかゝせられ、 御判ばかりあそばしたるとて候。 さ候間、 実如上人の御1004時みなあそばし直され候、 聊爾なるとてあそばし被直候。 然ば本尊・御影うら書を、 末寺の人書たるは有べからず候。
一 野村殿にては、 報恩講七日の間、 廿一日の晩景より、
一 野村殿実如上人御座候時 年忌忘、 江州山家へ将軍義稙御没落時、 都へ御帰洛時、 伊勢貞宗江州へ御仰に参候之時、 山科葬所通条とて、 御坊へ被申入時は、 此葬所を御所御通候べき由申て、 葬所如何候間、 無常堂の後前ぞとつゝませられば可然由、 貞宗申入しかば、 安き事、 報恩講大庭にしかるゝいなばきをもたせ、 打かけ打かけつゝませられ、 即時に一円に堂もみえぬ様につゝませられ候へば、 勢州きもをつぶし、 此大なる堂つゝまれたる事は何方にも不可有候とて、 貞宗感じ候けると、 其比沙汰にて候つる事候。
一 又正月十五日の間も、 山科殿にて御堂縁、 南殿・北殿道すがら、 皆いなばきをつなぎしかれたる事にて候。 当時も覚たる人も御入候べく候。
一 報恩講前には、 諸国一家衆堪忍もよく候ほどの人、 おなじく坊主分、 又御門徒の衆長男のたぐひ、 白御少袖のためにとて、 上品の絹を上せ申され候。 今は御入候まじき歟。 信州三ヶ寺以下の人々、 御素絹の為にとても絹を上まいらせし。 御講中に内陣衆上洛候しには、 白1005小袖の一は被下たると、 各物語候き。
一 報恩講前ちかく也候て、 御精進入と号して、 上下各の間魚物・御汁・等令進上、 脇々にも其儀候よし申入侍し。 愚老などは承も及ばず候。 御仏事精進ちかく候て、 魚物各用られ候風聞は不可然、 祖師の仰にもなし、 恵心院の御掟 四十二ヶ条 等にも相違とて不可然之由、 各仰られしなどは承及候し。 不可然沙汰候歟事。
一 一七日の御仏事の以後、 又二七日・三七日も精進儀候旁々へ、 長々精進候とて、 魚物のもてなしなど互に音信候事も候き。 精進ほどきとて、 魚物・汁・菜にて、 一家衆十二月朔日以後まで祗候候つる一家衆は御前にて、 遠国坊主衆五人三人御亭にて、 被下たると承及候。 野村殿にて候事也。
一 女中がたには、 小殿原一両人いにしへ御入候し。 それも年たけ候へば、 御亭へ出られし也。 公武の家々にも、 女中方には、 十五才までは女中かたに奉公候。 十六才より侍方へ出され、 女中がたへは影ざしもなき事にて候。 畠山方にも如此候由申候。 其外諸家にも如此候方々候由候。
一 ▲一家衆不断は大勢参候事も候はね共、 此近年は依錯乱一所にあつまり申候。 御仏事などには、 又各まいりつどひ候事候へば、 有所を被仰付候てある様に御入候はゞ、 各畏入可存候。 野村殿にての程に御入候はゞ、 よく御入候はん。 六間の座敷、 小者中間の有所二間三間1006にて、 大小便所二所、 手水桶二所に候て、 よく御入候。 それさへ大勢参つどひ候時は、 せばくて難儀に御入候つる事候。
一 野村殿にては、 毎月風呂立申候に、 風呂の入口は二御入候。 御住持の御出入の口は脇に御入候。 総出入の口は如常。 是も昔は只一にて御入候を、 五山などの長老の出入の口は、 わきに別に候段きこしめし、 円如御申候て如此候。 一家衆、 其禅衣の人々、 御内衆、 同前に入申候。 一家衆は召仕候者一人宛つれて入申候。
一 すゝはきは十二月廿日、 古よりかはらず御入候。 七時に朝勤御入候て、 無讃嘆も、 宵に仏前道具大概取をき、 当座入候物ばかりをかれ、 脇なる物はみな取のけられて、 朝勤も御入候て、 過候へば、 則すゝはき候。 夜明候はではほこり不見候間、 夜の明ると同在之。 一家衆も各袴ばかりにて出申候。 上段もいづくもげゞをはき申、 御住持御出候時、 一家衆上段の左右並ゐ、 そとすゝを、 御住持、 上人の上をはかせられ御帰候へば、 各上段をば、 一家衆・御堂衆同前、 殿井より下はき申候。 げゞも一家衆分は、 御堂衆仰申付候き。 御堂衆・坊主衆の分は自身自身こしらへはきて被出候。 御祝とて、 御堂にて五時の比、 御住持北の局にてきこしめし、 坊主衆・御堂衆御相伴のやうにたべられて、 白御酒一返ありと承候。 一家衆などは御相伴も不申候間、 不存候事にて候。 白酒にて候歟。
一 斎非時の時、 御亭座敷は、 むかしは御住持の右方を1007あがりとせられて、 右座上には
一
一 永正十三年之夏比、 実如上人或人斎の上に一家衆香典被申たる事候に、 次第相違之事候て、 御意にあはざる事ありしかば、 其後より斎の上に志ありとも、 斎の上に一家衆のをば不可引之由、 御停止の事にて候き。 尤の御事にて候由にて、 各の斎すぎて座敷座敷へ被帰候所にて、 布施をば被出候き。 次第相違けぢめみせられしが為歟、 尤被仰事の沙汰にて候き。 其後又此仰もやぶられて、 斎上茶子のあがらぬに被引候は、 近年の事にて候。
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一 蓮
一 二月十五日は仏入滅日にて候。 諸宗に法事ある事にて候、 当流に計何事も御入候はぬ事、 諸宗難じ申事にて候。 蓮如上人の御時はいかゞ御入候つる事候や、 宿老衆に尋申べき事にて候を、 由断にて候。 何と案じ申候へ共、 法事のなきは他宗の人は難じ申事にて候。 殊更遊事などは、 不可有之候事にて候。 朝之魚物いかゞにて候、 せめて可為精進事候。
一 ▲当流の朝暮の勤行、 念仏に和讃六首加へて御申候事は近代の事にて候。 昔も加様には御申ありつる事有げに候へ共、 朝暮になく候つるときこえ申候。 存如上人御代まで、 六時礼讃にて候つるとの事に候。 越中国瑞泉寺は綽如上人の御建立にて、 彼寺にしばらく御座候つると申伝候。 其後住持なくて、 御留守の御堂衆ばかり三、 四人侍りし也。 文明の初比まで、 朝暮の勤行には、 六時礼讃を申て侍りし也。 然に蓮如上人越前之吉崎へ御下向候ては、 念仏に六種御沙汰候しを承候てより以来、 六時礼讃をばやめ、 当時の六種和讃を致↢稽古↡、 瑞泉寺の御堂衆も申侍し事也。 然ば存如上人の御代より、 六種の和讃勤に也申たる事に候。 実如上人の御時、 四反がへしと申勤、 いまの六反がへしより、 二1009反みじかくはかせ御入候つると申候。 慶聞坊へ覚たる歟と御尋候て、 末々御門徒衆には申させられ度との仰にて候へ共、 慶聞坊わすれ申たるとの御返事申されて、 四反がへしの沙汰もなくて果申候き。
一 昔は人の志に御
実如上人の御時、 女房衆御折檻かうぶりたる人、 御わびごと被申にも、 女房衆へ付て被申候事なし。 一切人侘言男女共に総じて男衆へ付て奏者へ申されたり。 且以女房方には取次もなし、 毎事女房衆方より被申事なし。 大法の様に各存知候事。
一 和讃の讃を出され候に、 讃一行を二息、 或は三息に被出候事なし、 一行の分一息なりし。 当時二息などに被申儀、 承及ざる事
一 実如上人御往生之砌、 条々被仰置候に、 第一諸国の武士を敵にせらるゝ儀不可然。 何之国守護等にも入魂せられ和与ありて、 諸国の仏法を開山聖人御本意のご1010とく立られべく候之由被仰、 三ヶ条専可申付之由御遺言にて、 一家中其外坊主衆・御門徒中へ御遺言候間、 御往生年諸国方々へ被申調事。
一 同時一ヶ条に、 所領方之儀可停止之由被仰定たる事候間、 御内方一家中召仕候者などに、 所労儀不可預候檀申合事。
一 今一ヶ条は正法を守、 仏法方如聖人御時と被仰定たる事。 此三ヶ条、 近年皆破候事無勿体、 如先規開山聖人之仰可有之由事。
一 廿八日以下の祖師の御明日に、 白小袖のしたにもえりをしろく著し候事、 むかしはなき事にて候。 蓮如上人・実如上人の御時は、 白小袖のしたには色なる何をも著し、 紋のあるをさへ、 一家衆も坊主衆もきられ候つる事にて候。 近代結構にはだより白く著し候事、 各迷惑がりの事にて候。 如何御入候はんや。 此四十年以来の事候。
一 御住持様勤行に御出仕之時、 御堂へ御供衆の多きは不可然之由、 実如上人の仰事候。 御堂へ参ならば表へ参、 本尊・上人をおがみ候べき、 御供御とて大勢御堂のうしろに参るは不可然とて、 おい返させられたる事にて候。 ことに御仏事の間には、 面へ各被参候へと被仰付候。 又一家衆も勤より立申にも、 御供衆おほきは迷惑にて候。
一 蓮
一 邪法を申仁体を、 曲言は勿論に候へ共、 生涯させられ候は不可然とて、 蓮
一 ▲後生の御免と申事、 近代被申人候。 いづれの経論に御入候字候哉、 正教にも御入候歟、 未承及之由各申事候。 これも実如上人の御時までは無其沙汰事にて候。 近年天文年中以来いでき申候。 ことに死去したる人の上にも、 被申人ある事にて候。 いづれの祖師の仰にて候や、 各の不審候。
一 蓮
一 何よりも親に不孝なる人、 蓮
一 蓮
一 ▲あたら敷御衣装を蓮
右此条々者、 実如上人御時、 城州山科郷野村里御坊之時、 細々令上洛、 行事以下諸事奉相候之間、 不忘申次第連々書付之。 但不同雖無正体、 自然古之儀者、 有御存知度事共侍覧と書付申候也。 落字以下如何憚之者也。 愚存分雖有恐一言虚説等不書付申者也。 仍御局迄進置之条々也。 以御分別御目一不可有他見儀、 奉憑者也。
*天正八年三月二日 覚悟(花押)
八十九歳所之
御局参