御消息集 (善性本)
 本集は、 他に書写伝来された形跡はなく、 高田派専修寺蔵鎌倉時代書写本が唯一の書写本である。 表紙には、 本文と同筆で左上に 「御消息集」、 左下に 「釈善性」 と書かれている。 また包袋には、 本文と別筆で中央に 「御消息集 一冊/飯沼善性房筆」 とある。
 本集所収の通数は一般的に七通とされる。 そのうち蓮位の添状を除く六通が宗祖のものである。 本集の内容は、 如来等同、 弥勒等同などの同趣のもので、 慶信、 浄信、 専信といった門弟の上書を宗祖の御消息と併せて収録している点が大きな特徴である。 末尾には、 二種の和讃が収録されているが、 これは高田派第五代定専上人の筆といわれている。 書名は、 表紙にあるように 「御消息集」 であるが、 他の消息集と区別するためか一般に 「善性本御消息集」 と呼ばれる。
 編者は、 宗祖の門弟である飯沼の善性で、 成立年時は関東の門弟の間で如来等同などが問題になった正嘉二 (1258) 年からそれほど下らない時期の成立と考えられている。 また、 一方で筆跡の時代的特徴より、 鎌倉末期から南北朝期の書写と判定されることなどから顕智上人門下の善性との説もある。