御消息集善性本
 一般に ¬善性本御消息集¼ といわれ、 高田派専修寺に所蔵されてきたものであり、 ほかに写伝された形跡はない。 表紙の中央に 「御消息集」、 その左下に 「釈善性」 とあり、 本文と同筆である。 また、 包袋に 「御消息集一冊 飯沼善性房筆」 とあり、 また別の包紙の右下の貼紙に 「御所持顕智上人」 と記されている。 これらによって、 本集は親鸞聖人の門弟で下総しもうさ飯沼いいぬまぜんしょうの編集したものであり、 顕智上人の伝持と考えられている。 本集の成立年時については所説があるが、 門弟間において 「如来にょらい等同とうどう」 のことなどが論義された正嘉二年以後の数年間の成立と推定される。 一方、 筆跡の時代的特徴より鎌倉末期から南北朝の間に成立したもので、 包袋・包紙の記述の信頼性や伝持の経緯などから、 本集の編者を飯沼の善性ではなく顕智上人の弟子の善性とみる説もある。
 また、 通数についても所説があるが、 全七通とみるのが妥当とされている。 しかし、 この七通のうち第三通はれんの書状で第一通に添えられたものであるから、 親鸞聖人の御消息は六通である。 そのうち、 第七通目が他の消息類と重複しないこと、 門弟の慶信、 浄信、 専信せんしんの上書を併せて収めていることは本書の特徴である。