本書は親鸞聖人が、 同じ法然上人門下の先輩にあたる聖覚法印の著された ¬唯信鈔¼ について、 その題号および引用された経釈の要文に註釈を施されたものである。 このなか題号および初めの三文 (法照禅師の ¬五会法事讃¼ の文、 慈愍三蔵の文、 善導大師の ¬法事讃¼ の文) については、 教義的に重要な註釈が詳細に施されている。
聖人が ¬唯信鈔¼ を尊重され、 また、 門弟にしばしばこれを熟読するよう勧められていることは、 御消息の記事や数回にわたる書写の事実などから知られるところであるが、 ¬唯信鈔¼ に引文される経釈の文について、 聖覚法印は詳細な解釈は施されていない。 本書は巻末の文からもうかがえるように、 この ¬唯信鈔¼ の要文を解釈し、 人々がその意を受け取りやすいように懇切に説き示されるとともに、 「極楽無為涅槃界」 を註釈した文に見られるような深遠な解釈を施して、 浄土真宗の法義をより明らかにされたものである。