底本は茨城県称名寺に蔵せられ、 真仏上人の書写によるものである。 表紙は後補のものであり、 旧表紙は本紙共紙で、 外題は中央に 「往生要集云」 と墨書されている。 内題も同じく 「往生要集云」 とある。 体裁は半葉六行、 一行十九字内外である。
内容は ¬往生要集¼ 大門第十 「問答料簡」 の第八 「信毀因縁」 の延書と、 それに続いて ¬大経¼ 「往覲偈」 より八句が引用されている。 ¬往生要集¼ の引文の中途には白紙二葉が挿入され、 次葉より文が続けられているが、 これより以後の筆跡は真仏上人のものとは異なるものである。 また、 「往覲偈」 の文の直後は紙が切り取られており、 次葉からは聖教に用いられる漢字や熟語の音訓についての覚書が付されているが、 本書の本文に直接関連を持つ内容ではないため、 本聖典では翻刻していない。
ところで、 ¬往生要集¼ の引文については同じ高田門徒の顕智上人も同箇所を ¬聞書¼ に一部引用しているが、 本書はそれに比べ、 訓読や本文について相違があることから、 宗祖所覧本とは異なる本文系統の ¬往生要集¼ であろうと思われる。